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特表2025-502851水和可能な融解塩浴中で炭素含有材料を変換する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】水和可能な融解塩浴中で炭素含有材料を変換する方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 49/14 20060101AFI20250121BHJP
   C10B 53/07 20060101ALI20250121BHJP
   C10J 3/57 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C10B49/14
C10B53/07
C10J3/57 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024540047
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2022087898
(87)【国際公開番号】W WO2023126410
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】21218502.9
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524247639
【氏名又は名称】イェッラワ・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】YERRAWA B.V.
【住所又は居所原語表記】Hogebrinkerweg 15e,3871 KM Hoevelaken,The NETHERLANDS
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】オコナー、ポール
(72)【発明者】
【氏名】バビッチ、イゴール
(72)【発明者】
【氏名】ダーメン、シュールト
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012HB00
(57)【要約】
本発明は、廃棄物中に含有されている炭素含有材料、たとえば合成ポリマーおよび/または炭化水素を変換し、炭素および任意に水素も生成する効果的な炭化を提供する方法であって、炭素含有材料を水和可能な融解塩と接触させ混合すること、ならびに炭化反応器内で変換ガスおよび固体炭素である非揮発性変換生成物を含む反応混合物に変換すること、変換ガスを回収し、水または水蒸気を反応混合物に加えて融解塩を再水和させることにより相分離が起こり、非揮発性炭素含有相および再水和した融解塩相を形成すること、融解塩相を分離および脱水し、脱水された融解塩をリサイクルし、水蒸気を戻すことを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有材料を変換する方法であって、以下の工程:
a.前記炭素含有材料を水和可能な融解塩と接触させ混合する工程、
b.前記融解塩中の前記炭素含有材料を炭化条件
i.200℃~500℃、好ましくは200℃~400℃、より好ましくは200℃~350℃の温度T1で、かつ
ii.好ましくは50バール未満、より好ましくは15バール未満、さらにより好ましくは10バール未満、最も好ましくは1バール未満の圧力で、
iii.酸素がなく、
iv.前記水和可能な融解塩は、少なくとも部分的に脱水されており、
v.不活性ガスとしての水蒸気が存在し、
vi.変換ガスおよび前記融解塩中の炭素を含む非揮発性変換生成物を含む反応混合物を形成する
のもと反応器内で変換する工程、
c.変換ガスを前記反応器の出口から回収し、水蒸気でパージすることによって任意に補助し、前記変換ガスを任意に冷却して前記水蒸気を凝縮し、乾燥変換ガスを回収する工程、
d.水または水蒸気を前記反応混合物に加えて前記反応混合物を冷却し、前記融解塩を再水和させることにより相分離が起こり、非揮発性炭素相および少なくとも部分的に再水和した融解塩相を形成する工程、
e.前記非揮発性炭素相を前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相から分離する工程、
f.得られた部分的に再水和した融解塩相を加熱して少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気を、好ましくは工程a)で、工程b)で、または別の工程で形成する工程、
g.少なくとも部分的に脱水された融解塩相を工程a)またはb)で使用する工程
h.好ましくは、方法において、工程f)で得られた水蒸気を、好ましくは工程a)で前記反応器および前記炭素含有材料から酸素をパージするため、および/または工程d)で前記融解塩の水和のために使用する工程、
i.分離工程において無機物を任意に分離する工程であり、無機固体が前記融解塩から密度差によって、好ましくは工程a)の後で工程b)の前に分離される、工程
を含む方法。
【請求項2】
前記炭素含有材料が、炭化水素を含有する廃棄物、好ましくは廃油または精製所残渣、および/または合成ポリマー、好ましくは熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭素含有材料が、少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも60wt.%、70wt.%、80wt.%、またはさらにより好ましくは少なくとも90wt.%の熱可塑性ポリマー(TP)と、好ましくは40wt.%未満、より好ましくは30wt.%未満、さらにより好ましくは20wt.%未満の熱硬化性ポリマーとを含み、好ましくは、20wt.%未満の他の廃棄物供給物成分も含む、熱可塑性廃棄物(TPW)であり、熱可塑性ポリマー廃棄物は、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、またはそれらの混合物、コポリマー、ブレンド、もしくは複合体からなる群から選択される1つ以上の熱可塑性ポリマーを含み、好ましくはヘテロ原子O、N、またはハロゲンを含まない熱可塑性ポリマー、最も好ましくはポリオレフィンを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水和可能な融解塩が、水和可能なハロゲン化金属塩であり、金属が、好ましくは、亜鉛、アルミニウム、アンチモン、マンガン、カルシウム、鉄、もしくはマグネシウムまたはそれらの組合せであり、好ましくはZnCl、FeCl、MgCl、MnCl、CaClもしくはそれらの臭素類似体またはそれらのブレンドであり、最も好ましくは、前記融解塩が、少なくとも70wt.%、より好ましくは少なくとも80wt%、さらにより好ましくは少なくとも90wt%、最も好ましくは少なくとも95wt%のZnClを含み、前記融解塩の残りが、好ましくは、1つ以上の他のハロゲン化金属塩、好ましくはAlCl、MnCl、SbCl、またはFeClである、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
- 工程b)において、前記融解塩が、前記融解塩および水の総重量に対して20wt.%未満、好ましくは10wt%未満、より好ましくは5wt.%未満、さらにより好ましくは1wt%未満の水和水を含み、
- 工程e)において、再水和した融解塩が、10~60wt.%、好ましくは15~50wt.%、より好ましくは15~35wt.%の水を含み、
- 前記再水和した融解塩が、前記脱水された融解塩相よりも、少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも20wt%、より好ましくは少なくとも30wt%多い水を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
冷却および分離工程d)およびe)は、1つ以上の冷却および分離工程を含み、好ましくは、
- 前記反応混合物を200℃未満、好ましくは150℃未満の温度TIまで冷却し、水和させる、または
- 前記反応混合物の少なくとも一部を200℃を超える、好ましくは250℃またはさらに300℃を超える温度Thまで冷却し、任意に圧力をかけ、この圧力は、好ましくは、水蒸気でかける、または
- 2つ以上のその後の冷却および分離工程を異なる温度で適用し、好ましくは初めは工程iii)を高温Thで適用し、それから工程ii)を低温TIで適用し、組成の異なる2つ以上の異なるNVC画分が得られる、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程e)で得られた前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を、工程f)で250℃を超える、好ましくは300℃を超える温度まで加熱して前記融解塩を脱水させる、または工程f)で少なくとも部分的に再水和した融解塩を、100Pa未満、より好ましくは0.1Pa未満、さらにより好ましくは0.0001Pa未満の圧力で、好ましくは175℃未満、より好ましくは150℃未満、かつ100℃を超える、好ましくは120℃を超える温度で加熱および真空を適用することによって脱水させ、加熱の前または加熱中に任意に金属酸化物を加え、金属が、好ましくは、前記融解塩の金属と同じである、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程e)で得られた前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を工程b)の前記反応器にリサイクルし、脱水された融解塩を形成するために工程f)の前記再水和した融解塩の加熱を炭化反応器内で行う、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
固体炭素供給源またはその前駆体を、好ましくは工程a、b)、および/またはd)で、変換および/または炭素相の前記融解塩相からの分離を促進するためのシードとして加える、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程c)で回収された前記変換ガスを冷却して前記水蒸気を凝縮して水および乾燥変換ガスを回収し、この乾燥変換ガスが、2個以上の炭素原子を有する炭化水素を10wt%未満、好ましくは5wt%未満、さらにより好ましくは3wt%未満を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)の前記融解塩が、方法における水素収率を高めるために、Ni、Fe、Zn、またはCuの群から好ましくは選択され、金属-有機錯体、たとえば金属アルキル、金属酸化物、または金属-塩化物錯体の形態で好ましくは加えられ、前記融解塩中の金属のモルに対して好ましくは10モル%未満、好ましくは5モル%未満またはさらに3モル%未満の前記金属の量で、前記融解塩中の金属とは異なる触媒量の1つ以上の脱水素触媒金属をさらに含み、1つ以上の脱水素触媒は、好ましくは、FeCl、NiCl、CuCl、Fe、NiO、およびCuOの群から選択され、前記1つ以上の脱水素触媒金属は、固体炭素供給源またはその前駆体に任意に担持されている、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程a)またはb)で1つ以上の反応物を前記融解塩に加えて炭化変換工程b)の間に存在するまたは形成したヘテロ原子含有不純物と反応させ、好ましくは、1つ以上の不純物がハロゲン、CO、SOx、およびNOxからなる群から選択され、前記反応物が、分離することができる沈殿物を形成し、この反応物が、好ましくは、金属化合物、より好ましくは金属酸化物または金属水酸化物、さらにより好ましくは酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、または酸化ニッケルであり、1つ以上の金属ハロゲン化物、金属カルボネート、金属スルフェート、または金属ナイトレートを形成する、または好ましくは、ヘテロ原子が、ハロゲンであり、金属酸化物、好ましくは酸化亜鉛と変換してハロゲン化金属、好ましくはハロゲン化亜鉛に変換し、これは、方法において使用される前記融解塩の一部であり、分離する必要がない、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程e)で得られた前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相が、脱水され工程a)またはb)で使用される前に、生物有機廃棄物、好ましくはセルロース、ヘミセルロース、および/またはリグニンを含む生物有機廃棄物の300℃未満、好ましくは250℃未満の温度での分離または炭化のために別の工程e.1)で使用される、請求項1~12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程e)で得られた前記非揮発性炭素相を、100℃未満の温度で水で洗浄し、前記融解塩の残渣を溶解し、除去し、好ましくは、洗浄水を工程d)にリサイクルする、請求項1~13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
炭素含有供給物、好ましくはTPWが、
1)炭素含有供給物および水和可能な融解塩を供給し、炭化反応器内で前記融解塩中、前記炭素含有供給物を少なくとも部分的に変換して、変換ガスおよび炭素を形成すること、
2)前記変換ガスを前記炭化反応器から液化装置に送って水蒸気を凝縮させて乾燥変換ガスを分離し、前記炭素を含有する前記融解塩の一部を分離反応器に移動すること、
3)水または水蒸気を、前記分離反応器内の前記炭素を含有する前記融解塩に加えて前記融解塩を冷却および再水和させて相分離した非揮発性炭素相および少なくとも部分的に再水和した融解塩相を形成すること、
4)前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を前記分離反応器から分離し、移動すること、
5)生物有機廃棄物の分離または炭化のために前記分離反応器からの前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を任意に使用し、少なくとも部分的に再水和した融解塩をこの工程での使用後に分離すること、
6)前記少なくとも部分的に再水和した融解塩を加熱反応器に移動し、前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を加熱して少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気へと脱水させ、前記少なくとも部分的に脱水された融解塩を前記炭化反応器に戻してリサイクルするか、または前記少なくとも部分的に再水和した融解塩を直接炭化反応器に移動し、前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を前記炭化反応器内で加熱して、少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気へと脱水させること、
7)前記炭化反応器に戻してリサイクルする前に、前記少なくとも部分的に脱水された融解塩、または前記少なくとも部分的に再水和した融解塩から、任意に不純物を除去する、
8)前記非揮発性炭素相を前記分離反応器から連続的に、または半連続的に除去し、前記非揮発性炭素相を水で洗浄して前記融解塩の残渣を除去することが任意に続き、前記非揮発性炭素相の一部または前記分離した非揮発性炭素相から単離された固体炭素の一部をリサイクルし、前記変換および/または前記非揮発性炭素の分離を促進するためのシードとして前記炭化反応器に戻すことが任意に続くこと、
9)任意に無機物が前記融解塩中の前記炭素含有供給物の混合物から炭化の前に密度差によって分離される、
を連続して含む連続方法で変換される、請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
[0001]本発明は、炭素含有材料、好ましくは、炭化水素を含有する廃棄物、たとえば廃油または精製所残渣、および/または合成ポリマー、好ましくは熱可塑性ポリマー含有廃棄物(TPW)を変換する方法に関する。本方法は、価値ある、(再)利用可能な炭素材料を生成する。
【0002】
関連技術の説明
[0002]プラスチックによって引き起こされる環境問題およびプラスチックを再利用する難しさを考慮して、プラスチックを燃料、水素、炭素等に変換するのに多くの研究開発努力が費やされている。
【0003】
[0003]US2015/0001061は、プラスチックを融解するためのプリメルトリアクター、熱分解、蒸発、および選択凝縮を含む、プラスチックを石油に変換するための熱分解方法を記載しており、これにより、最終的な規格内の石油製品が生産される。
【0004】
[0004]US2012/0261247は、プラスチック材料を顆粒または薄片に加工し、加熱をして融解させた後、熱分解反応器に入れ、融解材料を熱分解して熱分解ガスを供給し;熱分解ガスを、ひとそろいの液化装置要素を有する接触器に導き、一部の長鎖ガス成分を前記要素で凝縮させ、前記凝縮した長鎖材料を戻してさらに熱分解させて熱分解を達成し、短鎖ガス成分をガス状の形態で接触器から排出させ;接触器からの前記熱分解ガスを蒸留カラムで蒸留して1つ以上の燃料生成物を提供する、熱分解方法を記載している。
【0005】
[0005]US7758729は、一連の段階的温度設定点を含む熱分解熱処理チャンバーから蒸気を除去するための真空システムを含む廃棄物燃料化(WTF:waste to fuel)方法であって、各段階的温度設定点が前記プラスチック材料の個々の副生成物の蒸発温度に対応し、処理チャンバーで各温度設定点で不活性ガスを真空引きして温度設定点に対応する個々の副生成物を選択的に除去する、方法を記載している。
【0006】
[0006]Alamer,A.、およびAwaji,M.は、表題「Molten Salt Pyrolysis of Waste Polystyrene」(2014)、Worcester Polytechnic Instituteの卒業論文において、様々な条件で高スチレン収率を達成するために共融融解塩混合物を利用することによる廃ポリスチレンのシングルポット熱分解技術を記載している。融解塩は、低粘度の優れた伝熱媒体となり、共融融解塩が低融解温度を有するためにここで使用される。この方法は、燃焼および方法の危険を回避するためにヘリウムを不活性ガスとして使用する。Alamerらは、3元混合物組成、温度等の熱分解への影響を研究するために、熱分解工程にのみ焦点を当てており、そのような方法から水素および炭素を回収するための経済的に実現可能な方法については記載していない。
【0007】
[0007]US4104056は、融解塩中で石炭の水素化と酸化を交互に行うことを含む、石炭を燃料として効果的に使用するための方法を記載している。融解塩中で石炭を溶解し、水素化条件下で水蒸気を導入して、熱分解を防止するために非常に短い滞留時間を使用して揮発性炭化水素を生成し、続いて酸化性ガスを、溶解非揮発性残余を含む融解塩に燃料酸化条件下で加えて熱を生成することを含む方法。ここで使用される融解塩は、塩化亜鉛と他のハロゲン化金属の共融混合物を含む共融融解塩混合物である。
【0008】
[0008]WO2020/248914は、廃棄物プラスチックを高温の液体で直接加熱して、200℃~500℃の高温の液体において熱分解反応を経て、熱分解油(液化装置における熱分解ガスの凝縮による)およびスラグを生成することによるプラスチック廃棄物の熱分解を記載している。高温の液体は、融解金属または金属合金、特に鉛または鉛合金である。塩化亜鉛についても言及されている。
【0009】
[0009]CN110538637は、ポリエチレンテレフタレートプラスチックを炭素質ナノ構造材料に変換する方法を記載しており、工程a)において塩または塩混合物がプラスチックを加熱するために使用され、それから工程b)では洗浄および脱塩が実行されて炭素質ナノ構造材料が得られる。得られた炭素質ナノ構造材料は、それから保護希ガス雰囲気中または融解塩媒体中450℃~1300℃の温度で加熱され、ナノ構造炭素材料が得られる。言及された塩は、加熱温度270~450℃でのZnCLを含む。
【0010】
[0010]WO2018141911Aは、炭化水素を水素および分離した炭素相に変換する方法を記載しており、炭化水素、特に天然ガスは、500℃を超える非常に高い温度で融解塩と接触させる。
【0011】
[0011]US2014/135510は、無機融解塩水和物中の多糖、特に、リグノセルロース系バイオマス材料をプラットフォーム化学物質に変換する方法であって、溶解する工程、単糖へと加水分解する工程、糖アルコールへと水素化する工程、および無水糖へと脱水する工程を含む方法を記載している。
【0012】
[0012]Chambersらは、Industrial & Engineering Chemistry Process Design And Development、23(4)、648~654、表題「Polymer waste reclamation by pyrolysis in molten salts」(1984)の論文に、380~570℃の温度で、熱分解媒体として融解塩を使用した、細断されたタイヤ、プラスチック、および他の廃棄物を含む自動車シュレッダー廃棄物の再生利用に由来するポリマー廃棄物供給物の熱分解の方法を記載している。この方法は、液体窒素中での粉砕を含む。この方法は、燃焼および方法の危険を回避するために乾燥窒素を不活性ガスとして使用する。したがって、この方法は高価であり、実用的ではない。得られる生成物はほとんど炭化物であり、これは低価値の生成物である。Chambersは、融解塩の種類、温度等の熱分解への影響を研究するために、熱分解工程にのみ焦点を当てており、そのような方法から廃棄物を水素および炭素に変換するための経済的に実現可能な方法については記載していない。
【0013】
[0013]記載された方法は、非常に高いエネルギー投入を必要とすること、莫大な投資を必要とする規模の経済においてのみ経済的に実現可能でありうること、許容できない環境的影響を有すること、形成される価値ある生成物が低収率であること;特に、水素および炭素の収率が比較的低いこと、および毒素、たとえばジオレフィン、ニトロソアミン、多環芳香族化合物等も形成される可能性があり、これらはガス相、液相、または水相に行き着き、これらの毒素の流れを処理することに由来する余計な費用につながることの、1つ以上の欠点を有する。
【0014】
[0014]本発明の目的は、炭素含有材料、好ましくは、合成ポリマーおよび/または炭化水素を含む廃棄物供給物を変換し、経済的かつ環境的に魅力的な方法で良好な収率の水素および炭素を生成する効果的な炭化を提供し、一方でCOを排出しないまたは最小限のCOを排出し、それによりCO排出全体がマイナスになる方法を提供することである。
【発明の概要】
【0015】
[0015]本発明は、炭素含有材料を変換する方法であって、以下の工程:
a.炭素含有材料を水和可能な融解塩と接触させ混合する工程、
b.融解塩中の炭素含有材料を炭化条件
i.200℃~500℃、好ましくは200℃~400℃、より好ましくは200℃~350℃の温度T1で、かつ
ii.好ましくは50バール未満、より好ましくは15バール未満、さらにより好ましくは10バール未満、最も好ましくは1バール未満の圧力で、
iii.酸素がなく、
iv.水和可能な融解塩は、少なくとも部分的に脱水されており、
v.不活性ガスとしての水蒸気が存在し、
vi.変換ガスおよび融解塩中の炭素を含む非揮発性変換生成物を含む反応混合物を形成する
のもと反応器内で変換する工程、
c.変換ガスを反応器の出口から回収し、水蒸気でパージすることによって任意に補助し、変換ガスを任意に冷却して水蒸気を凝縮し、乾燥変換ガスを回収する工程、
d.水または水蒸気を反応混合物に加えて反応混合物を冷却し、融解塩を再水和させることにより相分離が起こり、非揮発性炭素相および少なくとも部分的に再水和した融解塩相を形成する工程、
e.非揮発性炭素相を少なくとも部分的に再水和した融解塩相から分離する工程、
f.得られた部分的に再水和した融解塩相を加熱して少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気を、好ましくは工程b)でまたは別の工程で形成する工程、
g.少なくとも部分的に脱水された融解塩相を工程a)またはb)で使用する工程、
h.好ましくは、方法において、工程f)で得られた水蒸気を、好ましくは工程a)で反応器から酸素をパージするため、および/または工程d)で融解塩の水和のために使用する工程、
i.分離工程において無機物を任意に分離する工程であり、無機固体が融解塩から密度差によって、好ましくは工程a)の後で工程b)の前に分離される、工程を含む方法を提供することによってこれらの問題に対処する。
【0016】
[0016]本発明の方法において、炭素含有材料が効果的にかつ効率的に炭素に、炭素含有材料の種類によっては、水素にも変換されることが判明し、これらは価値ある生成物である。得られた乾燥変換ガスは、Hを含んでもよく、2個以上の炭素原子を有する炭化水素を10wt%未満、好ましくは5wt%未満、さらにより好ましくは3wt%未満含み、このことは、凝縮後に室温で液体である高級炭化水素(主にC5~C20炭化水素を含む)を主にもたらす熱分解方法とは異なる。
【0017】
[0017]炭素含有廃棄物を変換する他の方法、たとえば熱分解またはスチームクラッキングに対する本発明の方法の利点は、方法を低い圧力および比較的低い温度で実行することができるということである。熱分解は、典型的に、450℃を超える温度で行われ、液体の油およびガスを生成する。スチームクラッキング熱分解は、350℃を超える温度および20バールまでの高い圧力で行われ、液体の油およびガスを生成する。熱水変換方法は、300℃を超える温度および100バールを超える圧力で行われて主に固体炭素を生成する。本発明の方法は、著しく低い温度、200~300℃程度の低い温度であっても行うことができ、原理上は、融解塩中の炭化処理のために工程b)での炭化反応器において過圧を必要としない。酸素が反応器に入るのを防止するためにのみ、ある程度の過圧が好ましい。
【0018】
[0018]本方法は、所望の水素ガス生成物の収率を低下させる、生成された水素ガスとの反応を回避するために、また安全上の理由から、酸素のない状態で実行されなければならない。本発明の方法の利点は、水蒸気を不活性ガスとして使用することができるということである。水蒸気は、本方法において、融解塩を脱水することによって発生し、凝縮し、再利用される。したがって、別の不活性ガスを使用する必要がなく、方法をより単純により安価にする。好ましくは、変換工程b)の前に、酸素が反応器から水蒸気でパージされ、好ましくは炭素含有材料からもパージされる。
【0019】
[0019]本発明の特徴は、溶媒品質の異なる融解塩溶媒を供給するために、水和可能な融解塩が、方法の異なる工程において水和度が異なる(含水量が異なる)、方法における唯一の溶媒媒体として使用されるということである。これは、方法をより複雑で高価にする、異なる溶媒を使用しなくてはならないことを回避する。水和可能な融解塩および水を方法においてリサイクルおよび再利用することができ、排出の点とエネルギー消費の点の両方で環境的影響が少ない方法を提供する。
【0020】
[0020]溶媒品質を容易に変化させる可能性は、溶媒品質を異なる供給物に適応させるために使用することもでき;たとえば、ポリマー材料、たとえばTPW中のポリマー材料は、炭化水素材料よりも炭化するのが難しいことが判明した。したがって、ポリマー材料は、好ましくは、含水量が非常に少ない融解塩中で炭化され、より好ましくは無水融解塩中で、またいくらか高い温度で炭化される。炭化水素材料、たとえば油は、比較的含水量が高い融解塩で、低い温度で炭化することができ、これはエネルギー消費においてより経済的である。これにより、本発明の方法は、異なる種類の供給物を変換するのに非常にフレキシブルなものとなり、費用効率を良くするには高価すぎることが多い、前分離および洗浄工程の必要性を減らす。
【0021】
[0021]さらなる利点は、本方法が、廃棄物供給物中の水にあまり影響されないということであり、これは、洗浄後に乾燥させる必要がある以前の方法に対する大きな利点である。廃棄物供給物中の水は、水和可能な融解塩を水和させるおよび/または本方法で使用される炭化反応器から水蒸気として消失する。工程b)における水和可能な融解塩中の含水量は、無水融解塩を加えることによって減らすことができる。
【0022】
[0022]本方法は、廃棄物の流れにおけるヘテロ原子不純物の排出を防止し、特に、環境に非常に悪いおよび/または追加のガス洗浄工程を必要とするNOxおよびSOxガスとしての窒素および硫黄不純物の排出を防止することが判明した。本発明の方法において、不純物は、生成された炭素に捕捉され、この炭素は実際、特定の用途に追加の経済的価値を有することができる。
【0023】
[0023]本発明の方法は、ヘテロ原子不純物、たとえばハロゲンを容易に除去することも可能にする。ハロゲンは、特定のプラスチック添加剤、たとえば難燃剤、またはハロゲン化ポリマー、たとえばPVC中にありうる。
【0024】
[0024]特に、本発明の方法において、熱可塑性ポリマー含有廃棄物供給物(TPW)は、含水量の少ない融解塩中で、特に無水の水和可能な融解塩(AMS)中で、非常に効率的に炭化されることが判明した。発明者らは、熱可塑性ポリマー(以降、プラスチックとも言う)は、プラスチックが融解すると、それは炭化する前に融解塩から相分離する傾向があり、結果として伝熱が損なわれるため、水和した融解塩中で容易に変換できないことを見出した。TPWは、含水量の少ない融解塩またはAMS中で効率的に混合され、溶解または分散し、非常に良好な伝熱効率を与えることができる。融解塩の金属および融解塩中に溶解した任意の追加の金属は、炭化変換に触媒効果を与えることもできる。
【0025】
[0025]本発明の方法の別の利点は、無機汚染物質を炭素含有廃棄物から分離することが比較的容易であるということである。したがって、炭素含有供給物が無機材料を含む場合、これらは、好ましくは、無機固体が密度差によって融解塩から分離される無機物分離工程i)で、好ましくは工程a)の後で炭化工程b)の前に除去される。水和可能な融解塩は、炭素含有材料の密度よりも著しく大きい密度(約0.5~1.5g/cm)を有し、炭素含有材料は、大きい密度を有する無機物から分離した融解塩上に浮く。したがって、無機物は、方法の残りの部分で使用される同じ融解塩溶媒媒体で、比較的容易に除去することができる。
【0026】
[0026]方法は、C1~C4、CO、およびCO生成を最小限にし、液体の油および/またはタールの生成を最小限にするかまたは全く伴わずに、炭素および任意のHの高い収率をもたらす。タールがないことは、熱分解および/または気化の方法と比較して重要な利点である。正確な数値は、原料の種類によって決まる。また、最小限の量の毒性副生成物が形成され、これも、多くの小分子(ダイオキシン等)が油相および水相で生成される熱分解方法と比較して重要な利点である。本発明の方法では、これらの材料小分子は、炭素に十分に変換され、および/または活性炭吸着体として作用する方法で形成された炭素によって吸収される。本発明の方法は、融解塩を水和させることによって生成された炭素の容易で効果的な分離を可能にする。
【0027】
[0027]本発明の特徴および利点は、以下の図面を参照すれば理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】[0028]図1は、本発明の方法の1態様の概略図である。
図2】[0029]図2は、連続的方法のさらなる概略図である。
図3】[0030]図3は、図2の方法における熱の流れの概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0029】
[0031]本発明は、炭素含有材料、好ましくは廃棄物供給物中の炭素含有材料、好ましくは熱可塑性ポリマーを含む廃棄物供給物(TPW)および/または炭化水素を含む廃棄物供給物(HCW)を変換する方法に関する。以降、炭素含有材料は、本方法の供給物または廃棄物供給物とも呼ばれる。
【0030】
[0032]本発明の特に有利な態様では、炭素含有廃棄物供給物は、好ましくは、少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも60wt.%の熱可塑性ポリマー(TP)を含む、熱可塑性ポリマー含有廃棄物(TPW)である。廃棄物の流れは、TPの他に、TPとは異なる有機材料、たとえばバイオポリマー、たとえばセルロース、ヘミセルロース、または熱硬化性ポリマー材料も含んでもよい。これらの有機材料も、本発明の方法において変換することができるが、それらは望ましくない副生成物、たとえば炭化物を生成し、得られた炭素および水素の収率および純度を低下させる可能性があり、追加の精製工程が必要になる場合がある。熱可塑性ポリマーはより容易に変換されるが、方法は、架橋または加硫処理ポリマーも変換することができる。そのような廃棄物材料供給物の重要な例が、使用済みタイヤである。しかし、方法において変換生成物の収率を最大にするために、かつ方法の複雑化と追加の精製工程を回避するために、TPWは、好ましくは、熱可塑性ポリマーを可能な限り多く含む。供給物がきれいで均一であるほど良い。好ましくは、TPWは、少なくとも60wt.%、70wt.%、80wt.%、またはさらにより好ましくは少なくとも90wt.%のTPと、好ましくは40wt.%未満、より好ましくは30wt.%未満、さらにより好ましくは20wt.%未満の熱硬化性ポリマーとを含み、好ましくは、20wt.%未満の他の廃棄物供給物成分も含む。
【0031】
[0033]本発明で使用されるTPWは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、またはそれらの混合物、コポリマー、ブレンド、もしくは複合体からなる群から選択される1つ以上のTPを典型的に含み、好ましくは、ヘテロ原子O、N、またはハロゲンを含まないTP、最も好ましくは、変換生成物の収率および純度を最大にすることを考慮するとポリオレフィンを含む。
【0032】
[0034]別の態様では、炭素含有廃棄物供給物は、炭化水素を含む(HCW)。炭化水素含有廃棄物供給物の例は、その元々の意図した目的のために使用するには十分に純粋ではなく、さらなる精製工程は経済的に実現可能ではない油、燃料、ワックス、油精製所からの残渣である。明らかに、供給物は、熱可塑性ポリマーと炭化水素廃棄物材料の両方を含むこともできる。炭化水素供給源の例は、廃棄物化石燃料残渣およびタール類、タール、熱分解油等である。
【0033】
[0035]未加工の廃棄物の流れは、前処理されて非有機(無機)材料、たとえば金属、砂等を大部分除去することが好ましい。炭化水素は除去する必要がない。生物系原料からの有機材料、たとえば炭水化物、タンパク質、セルロース、リグニン、糖等は、方法において変換することができるが、好ましくない。第一に、それらを分離し、リサイクルまたは再利用する価値がある。さらに、炭水化物は炭化の間に水を生成し、それは問題ではないが方法において好ましくない。したがって、好ましくは、廃棄物供給物は、少なくとも60wt%のTPWおよび/または炭化水素を含むように精製される。本発明による方法において地方自治体の廃棄物が使用される場合、それは、好ましくは、金属部品、砂、ガラス等を洗浄し、および/または水を除去するために乾燥させる。廃棄物供給物が固体、たとえばプラスチックを含む場合、水和可能な融解塩との接触を増やすために、現実的に可能な限りサイズを小さくすることが好ましい。
【0034】
[0036]供給物を変換する方法は、反応器および供給物を提供すること、ならびに好ましくは反応器および供給物から水蒸気で酸素をパージすることを含む。
【0035】
[0037]方法の工程a)は、炭素含有材料を水和可能な融解塩と接触させ混合することを含む。接触させることは、別の工程で、または炭化反応器内で直接行うことができる。接触させることは、効率的な接触のために、好ましくは、高剪断条件下であり、好ましくは撹拌反応器である。
【0036】
[0038]工程b)は、融解塩中の炭素含有材料を反応器内で、200℃~500℃、好ましくは200℃~400℃、より好ましくは200℃~350℃の温度T1で、炭化条件下、変換することを含む。炭化するのがより困難である供給物、たとえばポリマー廃棄物材料は、好ましくは、いくらか高い温度で炭化される。TPWでは、温度は、好ましくは、220℃~450℃、より好ましくは220℃~400℃、さらにより好ましくは220℃~350℃である。変換温度は、従来技術の熱分解方法と比較して低く、これは、方法のエネルギー費用を削減し複雑さを減らすのに大きな利点である。特別なさらなる利点は、水素生成が低い温度で促進されるということである。低い温度はエネルギー消費の点からも好ましく、一方で高い温度は収率および速度の点から好ましい。最適なバランスは、具体的な組成および最終的な所望の生成物に応じて、それぞれの場合で、当業者が見出すことができる。
【0037】
[0039]原理上は、融解塩中の炭化処理のために工程b)での炭化反応器において過圧を必要としない。酸素が反応器に入るのを防止するために、ある程度の過圧が好ましいが、好ましくは、1~5バール以下である。圧力は、典型的に自生圧;すなわち、炭化条件で水の蒸発によって生じる圧力であり;外圧をかけることによるものではない。炭化の間に蒸発する水は、炭化反応器の出口で圧力弁を介して典型的に除去される。方法はより高い圧力で機能するが、高価で必要のない特別な装備が必要になるため、方法の経済上の理由から、圧力は、好ましくは、50バール以下である。方法の経済上の点から、圧力は、好ましくは、15バール未満、より好ましくは10バール未満、さらにより好ましくは8または5バール未満、最も好ましくは1バール未満(ゲージ圧力)である。炭化条件にかける時間は、熱分解方法よりも著しく長い。時間は、いくつかの要因、たとえば供給物の性質およびサイズ、使用する反応器の種類、混合効率等に依存する。時間は、示された温度で炭素および変換ガスへの実質的に完全な変換(たとえば供給物の90または95%超)を達成するのに十分に長く選ばれる。
【0038】
[0040]塩化亜鉛の場合、約290℃を超える高温で、かつ本方法で使用される低圧では、水和可能な融解塩は、実質的に無水のままである。供給物中に存在する残留水分または炭化処理の間に形成された水は、低圧および高い温度の条件で、融解塩を水和させないが、水蒸気として蒸発し、これは反応器から除去される。融解塩融解物中の有機廃棄物の炭化の間、水蒸気を不活性ガス媒体として使用することができ、これは、不活性ガスとして窒素またはヘリウムを使用しなければならない従来技術の方法と比較して、方法を単純で費用対効果の高いものにする。特別な利点は、水蒸気は、凝縮によって、たとえば熱交換器において容易にかつ連続的に変換ガスから分離し、本方法においてリサイクルすることができるということであり、これは、環境的および費用的な利点を示す。
【0039】
[0041]本発明による方法、工程b)は、変換ガスを生成し、これは工程c)で反応器の出口から回収され、水蒸気でパージすることによって任意に補助される。変換ガスの組成は、炭素含有材料の性質に依存する。炭化水素は、炭素および水素に変換する。炭水化物は、炭素および水に変換し、わずかな水素を形成するか、または水素を形成しない。工程c)で回収された変換ガスは、冷却されて水蒸気を凝縮させて水を回収し、炭素含有材料の性質に応じて、乾燥変換ガスも回収される。得られた乾燥変換ガスは、Hを含んでもよく、2個以上の炭素原子を有する炭化水素を10wt%未満、好ましくは5wt%未満、さらにより好ましくは3wt%未満含み、このことは、凝縮後に室温で液体である高級炭化水素(主にC5~C20炭化水素を含む)を主にもたらす熱分解方法とは異なる。
【0040】
[0042]工程d)は、水または水蒸気を炭素を含む反応混合物に加えて反応混合物を冷却し、融解塩を再水和させることにより、炭素を含む非揮発性変換生成物を含む相(NVCまたは炭素相と呼ばれる)と少なくとも部分的に再水和した融解塩相との間で相分離が起こり、外部冷却手段によって、任意にさらに冷却を行うことを含む。低密度で疎水性の炭素相は、より親水性の再水和した融解塩(HMSと呼ばれる)の表面に浮き、容易に除去することができる。冷却および水和工程d)は、相分離を作り出すために重要なだけでなく、工程e)で分離され、外気と接触するときに、NVCの自己燃焼を回避するためにも重要である。
【0041】
[0043]工程e)は、NVC相を少なくとも部分的に再水和した融解塩相から分離することを含む。冷却および分離工程d)およびe)は、1つ以上の冷却および分離工程を含む。好ましくは、反応混合物を200℃未満、好ましくは150℃未満の温度TIまで冷却し、水和させる。低い温度TIで、固体または液体炭素相は融解塩から分離される。低温分離工程の利点は、分離NVCの高い収率である。低い温度は、空気と接触したときに炭素の燃焼のリスクを下げるためにも良い;したがって、安全上の理由のため、さらに低い温度、たとえば100℃未満が好ましい。無水融解塩を水和させて融解塩水和物を形成することにより、融解塩の融解温度を低くすることによって低温化することができることは、水和可能な融解塩を使用することの特別な利点である。脱水融解塩と比較して、低い温度は、再水和した融解塩の溶媒の質の変化と組み合わされ、固体または液体炭素相を分離するのを比較的容易にする。
【0042】
[0044]低温TIまで冷却することは、NVCの収率の点から好ましい。しかし、比較的高い温度Thまで冷却することが、エネルギー消費の点から好ましい。代替的態様では、反応混合物の少なくとも一部を200℃を超える、好ましくは250℃またはさらに300℃を超える温度Thまで冷却し、任意に圧力をかけ、この圧力は、好ましくは、水蒸気でかける。冷却が少なければその後の脱水および再加熱工程でエネルギー投入が少なくて済むことが、前記高温分離工程の利点である。さらに、高い温度では、200℃未満の低温TIまで直接冷却後に分離されたNVCとは異なる組成を有するNVC画分が分離される可能性がある。
【0043】
[0045]反応混合物は、炭化温度T1から1工程で冷却することができるが、2つ以上の工程で冷却することもでき;工程は温度間隔を意味する。たとえば、第1の冷却工程を、比較的高い温度Thまで行うことができ、その後たとえば相分離させる待機時間、別の反応器への移動、分離工程、または精製工程が続き、2回目のさらなる冷却工程が続く。
【0044】
[0046]高い温度Thでは、すべてのNVCが融解塩から分離するわけではないということは、欠点となる場合がある。したがって、高温Thが使用される場合、好ましくは、低い温度の分離工程が続く。任意に、反応混合物の一部のみが温度Thまで冷却され、残りの部分がTIまで冷却される。
【0045】
[0047]さらなる代替的態様では、2つ以上のその後の冷却および分離工程を異なる温度で適用し、好ましくは始めは工程を高温Thで適用し、それから工程を低温TIで適用し、組成の異なる2つ以上の異なるNVC画分が得られる。組成の異なる2つ以上の異なるNVC画分を高い質の生成物を得ることができることは、この代替的工程の利点である。
【0046】
[0048]再水和した融解塩相からNVC相を分離した後、工程e)で生成されて得られた少なくとも部分的に再水和した融解塩相を加熱して、融解塩を少なくとも部分的に脱水する。これは、別の加熱工程で、または炭化工程b)で炭化条件下で直接、または接触工程a)の間に行うことができる。
【0047】
[0049]好ましくは、工程f)における加熱は、250℃を超える、好ましくは300℃を超える温度T2までである。しかし、高温にあまり長くさらすと、HCl、HClO等の実質的な形成を伴う融解塩の熱分解のリスクがある。したがって、工程f)では、真空を適用し、より低い温度を使用することが好ましい。これは、別の加熱工程でより都合よく行うことができる。発明者らは、(深い)真空下、比較的穏やかな温度での塩化亜鉛の脱水が、実質的な量のHClを形成することなくZnClを100%近く脱水し、濃縮することができることを見出している。したがって、工程f)では、少なくとも部分的に再水和した融解塩を、100Pa未満(中真空)、より好ましくは0.1Pa未満(高真空)、さらにより好ましくは0.0001Pa未満(超高真空)の圧力で、好ましくは175℃未満、より好ましくは150℃未満、かつ100℃を超える、好ましくは120℃を超える温度で加熱および真空を適用することによって脱水させることが好ましく、加熱の前または加熱中に任意に金属酸化物を加え、金属は、好ましくは、融解塩の金属と同じである。真空の適用および低い温度の代替として、またはそれに加えて、HCl(またはHBr)の形成は、HClまたはHBrと反応する金属酸化物を加えることによって抑制することができ;塩化亜鉛融解塩の場合、酸化亜鉛が好ましくは加えられる。
【0048】
[0050]特別な利点は、すべての工程の溶媒が含水量の異なる融解塩であり、これは水の添加および除去のみを必要とするということであり、水は、水蒸気として不活性パージガスとして使用することができ、リサイクルすることもできる。したがって、工程g)は、工程f)で得られた少なくとも部分的に脱水された融解塩を工程a)またはb)で使用することを含み、工程h)は、方法において工程f)で得られた水蒸気を、好ましくは工程a)で反応器から酸素をパージするのに、および/または工程d)で融解塩の水和のために使用することを含む。
【0049】
[0051]本発明による方法では、水和可能な融解塩は、水和可能なハロゲン化金属塩であり、金属は、好ましくは、亜鉛、アルミニウム、アンチモン、マンガン、カルシウム、鉄、もしくはマグネシウムまたはそれらの組合せであり、好ましくはZnCl、FeCl、MgCl、MnCl、CaClもしくはそれらの臭素類似体またはそれらのブレンドである。これらの化合物はすべて(再)水和可能であり、構造中の水和した水分子の数(式ハロゲン化金属・nHO)のnを変えることが可能であることを意味する。触媒特性の点から、炭化処理では、ZnCl、FeCl、およびMnClが好ましい。AlClは可能であるが、500℃未満の温度で既にガスを形成するため、あまり適していない。最も好ましくは、水和可能な融解塩は、少なくとも70wt.%、より好ましくは少なくとも80wt%、さらにより好ましくは少なくとも90wt%、最も好ましくは少なくとも95wt%のZnClを含み、水和可能な融解塩の残りは、好ましくは、1つ以上の他のハロゲン化金属塩、好ましくはMgCl、MnCl、AlCl、SbCl、またはFeClである。
【0050】
[0052]ZnClは、蒸気圧が非常に低いため、高温での炭化に非常に適した媒体である。温度を上げたときに圧力がほとんど上がらないことは、ZnClを使用する方法の特別な利点である。圧力はだいぶ低いため、装備にかける投資も少ない。これは、他の融解塩、たとえば、蒸気圧がはるかに高いAlClと比較して好ましい。したがって、圧力は、それほど重要ではなく、利便性の理由から、変換工程b)の間、大気圧または周囲圧力が好ましい。高い圧力を使用してもよいが、好ましくは10バール未満である。
【0051】
[0053]本発明による方法では、工程b)の融解塩は、好ましくは、融解塩および水の総重量に対して20wt.%未満、好ましくは10wt%未満、より好ましくは5wt.%未満、さらにより好ましくは3wt.%未満、最も好ましくは、1wt%未満の水和水を含み、低い含水量は、たとえばポリマーを炭化するために必要な炭化変換力を高めるために好ましいが、他方で、高い含水量は、特に、工程f)で水の除去を少なくする必要があるため、エネルギー消費を少なくする点から好ましい。工程e)で形成された再水和した融解塩は、好ましくは、10~60wt.%、より好ましくは15~50wt.%、さらにより好ましくは15~35wt.%の水を含み、wt%は、融解塩の総重量に対するものであり、好ましくは、融解塩は、ZnClである。再水和した融解塩は、融解塩の溶媒の質を変化させるために、工程b)の脱水された融解塩よりも、少なくとも10wt%、より好ましくは少なくとも20wt%、さらにより好ましくは少なくとも25wt%または30wt%多い水を含む(wt%は、融解塩および水の総重量に対するものである)。
【0052】
[0054]本発明による方法では、固体炭素供給源またはその前駆体を、好ましくは工程a)、b)、および/またはd)で、変換および/または炭素相の融解塩相からの分離を促進するためのシードとして加える。固体炭素は、変換反応を触媒し、炭素相の形成および成長の核となる可能性があると考えられている。固体炭素供給源の例は、木炭、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー等である。固体供給源前駆体は、融解塩中で固体炭素供給源、たとえばセルロースまたはリグニンに直接変換される化合物である。
【0053】
[0055]有用な態様では、工程c)で回収された変換ガスは、水および乾燥変換ガスへとさらに分離され、これは、H、ならびに最小限のC1~C4、CO、およびCO生成を含んでもよい。正確な生成数値は、原料の種類によって決まる。Hおよび/または純粋な炭素生成が最適化される場合、セルロースは事前にTPWから除去される。任意に、HSの形成を回避するために硫黄を捕捉することができる。工程d)で分離した水は、水和工程で使用してもよく、AMSはHMSに変換されるか、または反応器から酸素をパージするために蒸気として使用される。
【0054】
[0056]本発明による方法では、融解塩は、さらに好ましくは、方法における水素収率を高めるために、Ni、Fe、Zn、またはCuの群から好ましくは選択され、金属-有機錯体、たとえば金属アルキル、金属酸化物、または金属-塩化物錯体の形態で好ましくは加えられ、融解塩中の金属のモルに対して好ましくは10モル%未満、好ましくは5モル%未満またはさらに3モル%未満の前記金属の量で、融解塩中の金属とは異なる触媒量の1つ以上の脱水素触媒金属を含み、1つ以上の脱水素触媒は、好ましくは、FeCl、NiCl、CuCl、Fe、NiO、およびCuOの群から選択され、1つ以上の脱水素触媒金属は、固体炭素供給源またはその前駆体に任意に担持されている。脱水素触媒の使用は、比較的低い変換温度の使用を可能にするため、特に好ましい。最も好ましいのは、脱水素触媒金属としてNiまたはFe金属イオンを含むZnCl融解塩を使用することである。炭素供給源からの活性金属触媒の磁気分離を可能にする活性金属としてFeを使用することが特に好ましい。
【0055】
[0057]任意に、1つ以上の脱水素触媒金属は、固体炭素供給源またはその前駆体に担持されている。反応および/または分離工程中のシードとして、または1つ以上の脱水素触媒金属の担体として使用するための固体炭素供給源またはその前駆体は、カーボンファイバー、リグニン、セルロース系繊維、カーボンナノファイバー、またはカーボンナノチューブから選択される同一または異なる化合物である。
【0056】
[0058]あるいは、1つ以上の脱水素触媒金属は、反応器内で水和可能な融解塩と接触する前に、炭素含有材料供給物に加えられてもよい。
【0057】
[0059]供給物がかなりの量のヘテロ原子、たとえばN、O、S、P、またはハロゲンを含む場合、方法において、変換工程b)の間に形成されたヘテロ原子含有不純物を変換するために;特に1つ以上のハロゲン、CO、SO、NOを変換するために、1つ以上の反応物を融解塩に加えることが好ましい。好ましくは、反応物は、不純物と反応して沈殿物を形成し、これはその後分離することができる。好ましくは、反応物は、金属化合物、より好ましくは金属酸化物または金属水酸化物、さらにより好ましくは酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、または酸化ニッケルであり、ハロゲン、CO、SO、またはNOと反応して、1つ以上の金属ハロゲン化物、金属カルボネート、金属スルフェート、または金属ナイトレートを形成する。ヘテロ原子がハロゲンである場合、たとえばPVCポリマーからの場合、変換中に形成されたハロゲンガス(たとえばCl)は、金属酸化物とともにハロゲン化金属に変換される。このハロゲン化金属は、分離することができ、または方法において使用される融解塩の一部となり、分離する必要がない。
【0058】
[0060]たとえば、酸素含有化合物は、分解してCOを生成し、これは金属酸化物によって捕捉されて金属カルボネートを生成することができる。TPW中のPVCまたはハロゲンベースの難燃剤は、融解塩と接触するとハロゲンを生成する。これらのハロゲンは、金属酸化物と反応し、毒性ハロゲン排出を減らすことができる。好ましい態様では、反応物は、酸化亜鉛であり、これはPVCの分解において形成された塩素と反応してZnClを生成することができ、これは好ましい融解塩であり、その後方法において使用することができる。汚染物質ヘテロ原子がBrまたはFを含む場合、反応物である酸化亜鉛は、反応生成物ZnBrまたはZnFをそれぞれ形成する。臭化物は、MgOを加えることによって除去することができる。最も好ましい態様では、方法において使用される融解塩は、塩化亜鉛であり、ハロゲン含有TPW、特にハロゲン含有TPを変換する方法では、酸化亜鉛が反応物として加えられ、塩化亜鉛を形成する。硫黄含有混合物の場合、それは分解してSOを生成し、これは金属酸化物と反応して金属スルフェートを生成するか、または直接反応して金属硫化物を生成することができる。Znハロゲン化物は、NaOHと接触させることによって変換してZn(OH)を形成することができ(ZnCl+NaOH=Zn(OH)+NaCl)、これは沈殿して分離することができる。得られた水酸化亜鉛が加熱されると、酸化亜鉛の形成を引き起こし、これは方法において反応物として使用することができる。
【0059】
[0061]代替的な態様では、廃棄物供給物が炭水化物、たとえばセルロースを含む生物廃棄物材料を含む場合、炭水化物を最初に分離し、除去することが有利である。第一に、これは、別の価値ある生成物を生成するからであるが、炭水化物は水を生成するため、炭化処理においてあまり好まれないからでもある。したがって、本発明による方法では、工程d)で生成され、工程e)で分離された少なくとも部分的に再水和した融解塩が、好ましくは工程f)で脱水される前に、生物有機廃棄物、好ましくはセルロース、ヘミセルロース、および/またはリグニンを含む生物有機廃棄物の300℃未満、好ましくは250℃未満の温度での分離のために別の工程e.1)で使用される。工程d)で生成され、工程e)で分離された少なくとも部分的に再水和した融解塩は、生物有機廃棄物を個別に炭化するために使用することができ、なぜなら、これは、低い温度および高い含水量でより容易に炭化することができるからである。
【0060】
[0062]本発明による方法では、工程e)で分離されたNVC相を、100℃未満の温度で水で洗浄し、融解塩の残渣を溶解し、除去し、好ましくは、洗浄水を工程d)にリサイクルする。
【0061】
[0063]加熱および変換のために方法において必要なエネルギーは、方法で生成された水素の燃焼によって生成されることが好ましい。この方法の利点は、TPWの変換によって得られたエネルギーが、方法自体に必要なエネルギーよりも一般に高いということである。
【0062】
[0064]工程e)で融解塩から分離された固体炭素相が、価値ある高い質の炭素材料を生成することができる、または生成するために使用することができることは、本方法の特別な利点である。好ましくは、炭素相は、活性炭(すなわち吸着剤)、土壌強化化合物、電子材料、カーボンファイバー、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノファイバー前駆体、グラフェンまたはグラフェン前駆体(すなわち材料)を生成することができる、または生成するために使用することができる。単離後の形成生成物は、同じ方法でシードとして使用することもできる。
【0063】
[0065]本発明は、炭素含有供給物、好ましくは合成ポリマーを含む廃棄物供給物、好ましくは熱可塑性ポリマー含有廃棄物(TPW)および/または炭化水素廃棄物(HCW)であって、炭素含有供給物、好ましくはTPWが、
1)炭素含有供給物および水和可能な融解塩を供給し、炭化反応器内で融解塩中、炭素含有供給物を少なくとも部分的に変換して、変換ガスおよび炭素を形成すること、
2)変換ガスを炭化反応器から液化装置に送って水蒸気を凝縮させて乾燥変換ガスを分離し、炭素を含有する融解塩の一部を分離反応器に移動すること、
3)水または水蒸気を、分離反応器内の炭素を含有する融解塩に加えて融解塩を冷却および再水和させて相分離した非揮発性炭素相および少なくとも部分的に再水和した融解塩相を形成すること、
4)少なくとも部分的に再水和した融解塩相を分離反応器から分離し、移動すること、
5)生物有機廃棄物の分離または炭化のために分離反応器からの少なくとも部分的に再水和した融解塩相を任意に使用し、少なくとも部分的に再水和した融解塩をこの工程での使用後に分離すること、
6)少なくとも部分的に再水和した融解塩を加熱反応器に移動し、少なくとも部分的に再水和した融解塩相を加熱して少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気へと脱水させ、少なくとも部分的に脱水された融解塩を炭化反応器に戻してリサイクルするか、または少なくとも部分的に再水和した融解塩を直接炭化反応器に移動し、少なくとも部分的に再水和した融解塩相を炭化反応器内で加熱して、少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気へと脱水させること、
7)炭化反応器に戻してリサイクルする前に、少なくとも部分的に脱水された融解塩、または少なくとも部分的に再水和した融解塩から、任意に不純物を除去する、
8)非揮発性炭素相を分離反応器から連続的に、または半連続的に除去し、非揮発性炭素相を水で洗浄して融解塩の残渣を除去することが任意に続き、非揮発性炭素相の一部または分離した非揮発性炭素相から単離された固体炭素の一部をリサイクルし、変換および/または非揮発性炭素の分離を促進するためのシードとして炭化反応器に戻すことが任意に続くこと、
9)任意に無機物が融解塩中の炭素含有供給物の混合物から炭化の前に密度差によって分離される、を連続して含む連続方法で変換される、方法にさらに関する。
【0064】
好ましくは、工程b)での変換の少なくとも一部は、非常に高い剪断速度を示すミキサー、たとえばスタティックミキサー内で実行される。
【0065】
例示的態様の説明
[0066]図1は、本発明の方法の態様の概略図であり、熱可塑性廃棄物供給物TPWが予熱器PH1に供給され、酸素が水蒸気STでパージされ、温度が、TPW供給物中のTPを融解し、ポリマー融解物Pmを形成する温度Tpまで上げられ、AMSが、第1の反応器R1に供給される前に水蒸気雰囲気下([HO])、予熱器PH2で予熱される。あるいは、TPWおよびAMSは異なる順番で混合および加熱することができ、または反応器R1に直接供給することができる。
【0066】
[0067]ポリマー融解物Pmおよび予熱AMSを混合し、供給ユニットF(たとえば押出し機またはインラインミキサー)を介して第1の反応器R1に供給し、TPは、変換ガスG1に変換され、これは主に水素および水蒸気を含み、上部で放出される。AMSおよび非揮発性変換生成物を含む反応混合物は、分離反応器R2に移動される。
【0067】
[0068]反応器R2では、水または水蒸気が反応混合物に加えられて反応混合物を冷却し、AMSを水和した融解塩(HMS)に変換し、相分離したNVC相およびHMS相を形成する。好ましくは、リサイクルされた水蒸気または凝縮された蒸気をガス分離器CRから使用し、ガスG1中の水蒸気は、凝縮されて水を分離し、水を含まない変換ガスG2を生成する。
【0068】
[0069]HMS相は分離され、リサイクルのために第2の反応器R2から移動される。任意に、HMS相の少なくとも一部が、当技術分野で知られているように、生物有機廃棄物(BOC)、たとえばセルロース含有廃棄物の分離または炭化のために、第2の反応器R2から第3の反応器R3に移動される。好ましくは、この反応工程において、セルロースはHMS中に溶解することができ、HMS中のセルロースの溶液は分離され、それからセルロースは、たとえば貧溶媒を加えることによって沈殿し、分離される。あるいは、BOCを反応器R3で炭化することもできる。また、この工程の後に、HMS相は使用後にリサイクルのために分離される。このようにして、TPおよびBOCを含む廃棄物の流れは、TPおよびBOCの分離後に、有用な生成物に効率的に変換される。
【0069】
[0070]第2の反応器R2からのNVC相は、連続的にまたは半連続的に分離することができ、NVC相を水で洗浄して融解塩の残渣を除去することが任意に続き、NVC相の一部、または分離したNVC相から単離された固体炭素の一部をリサイクルし、変換および/またはNVCの分離を促進するためのシードとして第1の反応器に戻すこと(図1に示されていない)が任意に続く。
【0070】
[0071]R2および/またはR3からのHMS相は、第4の反応器R4に移動され、リサイクルされた使用済みHMS相を加熱すること(T)によってAMSおよび水蒸気に再び変換し、その後AMSは、直接R1に、または予熱器PH2および/もしくは供給ユニットFを介して間接的にリサイクルされて第1の反応器R1に戻される。R4で発生した水蒸気は、PH1、PH2、または他の反応器でパージするために使用することができ、またはガスの流れG1でCRにリサイクルされる。
【0071】
[0072]任意に、第5の反応器R5で、反応器R2および/もしくはR3からくるリサイクルされたHMS相(の一部)に、ならびに/または反応器R4からくるAMS(の一部)に、融解金属塩の金属を金属酸化物に変換するために塩基Bを加えることができ、金属酸化物は分離され、R1に移動される。金属酸化物REは、反応器R1で形成されたヘテロ原子含有不純物を捕捉する反応物REとして作用する。融解塩が塩化亜鉛である好ましい態様では、R5で、酸化亜鉛がREとして形成される。任意に(図1に示されていない)、R5におけるこの任意の工程の代わりに、またはR5におけるこの任意の工程に加えて、第1の反応器R1で形成されたヘテロ原子含有不純物を捕捉するために他の反応物REを反応器R1に個別に加えることができる。
【0072】
[0073]図2は、炭化水素供給物が炭素[C]および主にH、CH、COを含む変換ガスに変換される本発明の方法の実際の具体的な簡略化された態様の概略図であり、反応器および方法の工程は、
1.融解塩水和物と混合された炭素含有供給物
2.任意の前処理による無機物の除去
3.炭化反応器
4.融解塩含有炭素相
5.再生融解塩
6.炭素分離区画
7.炭化によって生成されたガス(水蒸気を含む)
8.水および乾燥炭化ガス;主にH、CH、COを分離する液化装置
9.水収集器
10.反応器区画への水(または水蒸気)のリサイクル
11.圧力制御、を示すように示されている。
【0073】
[0074]図3は、熱の流れが示された、図2の方法の同じ態様の概略図であり:Q1=反応器の加熱、Q2=供給物の加熱、Q3=ガスの冷却および水の凝縮、ならびにQ4=炭化反応器からの流出物の冷却である。
【0074】
[0075]本発明は、下記に記載される実験によってさらに例証される。
【0075】
実験1
[0076]リグニン(0.5gr)を70wt%ZnCl(ZnClおよび水和水の総重量に対して)を含むZnCl水和物16grと混合し、ハステロイ製管状反応器(16ml体積)に入れた。実験中、混合物を連続的に撹拌した。真空の適用と8バールの窒素での加圧を交互に3サイクル行うことによって、反応器内の空気を窒素で置きかえた。反応器を大気圧で閉じ、加熱オーブンに入れた。反応器の温度を290℃まで上げ、反応器をこの温度で90分間維持した。反応器をオーブンから取り出し、室温まで冷却した。水蒸気によって増大した圧力を解放することによってガス相を反応器から取り出し、ガスクロマトグラフィーおよび質量分析を使用して分析した。水を加えて炭素相を分離し、ZnClを洗い流した。結果を表1に示す。Hおよび炭素の収率は、原料重量に対する重量%である。0%液体炭化水素は、22℃の室温まで冷却した後、凝縮された液体炭化水素が観察されなかったことを意味する。
【0076】
実験2~8
実験2~8は、炭素含有材料、炭化時間および温度、ならびに融解塩含水量を表1に記載したように変えたことを除き、実験1に記載したのと同じように行った。無水ZnCl融解塩は、水を含まなかった。
【0077】
【表1】
【0078】
[0077]実験は、異なる種類の供給物について、非常に低い温度で非常に高い収率の炭素を得ることができることを示している。実験は、生物ベースの材料(リグニン、セルロース、および糖)を変換するほうが、ポリマーを変換するよりも容易であることを示しているが、ポリマーは、いくらか高い温度で、よく変換された。290℃以上の温度で、融解塩は脱水し、320℃以上の温度で、融解塩は無水であった。炭水化物は、主に炭素および水を生成するため、H収率が低い。ポリエチレンの炭化から良好なH収率が得られた。実験は、本発明の可能性を示している。
【0079】
[0078]本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、ここで記載の構造および技術に対して、上述のものに加えてさらなる改変を加えることができる。したがって、具体的な態様を説明してきたが、これらは単なる例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有材料を変換する方法であって、以下の工程:
a.前記炭素含有材料を水和可能な融解塩と接触させ混合する工程、前記炭素含有材料は、炭化水素を含有する廃棄物、好ましくは廃油または精製所残渣、または合成ポリマー、好ましくは熱可塑性ポリマー、または、炭水化物、タンパク質、セルロース、リグニン、糖等の生物系原料からの有機材料であり、
b.前記融解塩中の前記炭素含有材料を炭化条件
i.200℃~500℃、好ましくは200℃~400℃、より好ましくは200℃~350℃の温度T1で、かつ
ii.好ましくは50バール未満、より好ましくは15バール未満、さらにより好ましくは10バール未満、最も好ましくは1バール未満の圧力で、
iii.酸素がなく、
iv.前記水和可能な融解塩は、少なくとも部分的に脱水されており、
v.不活性ガスとしての水蒸気が存在し、
vi.変換ガスおよび前記融解塩中の炭素を含む非揮発性変換生成物を含む反応混合物を形成する
のもと反応器内で変換する工程、
c.変換ガスを前記反応器の出口から回収し、水蒸気でパージすることによって任意に補助し、前記変換ガスを任意に冷却して前記水蒸気を凝縮し、乾燥変換ガスを回収する工程、
d.水または水蒸気を前記反応混合物に加えて前記反応混合物を冷却し、前記融解塩を再水和させることにより相分離が起こり、非揮発性炭素相および少なくとも部分的に再水和した融解塩相を形成する工程、
e.前記非揮発性炭素相を前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相から分離する工程、
f.得られた部分的に再水和した融解塩相を加熱して少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気を、好ましくは工程a)で、工程b)で、または別の工程で形成する工程、
g.少なくとも部分的に脱水された融解塩相を工程a)またはb)で使用する工程
h.好ましくは、方法において、工程f)で得られた水蒸気を、好ましくは工程a)で前記反応器および前記炭素含有材料から酸素をパージするため、および/または工程d)で前記融解塩の水和のために使用する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記炭素含有材料が、少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも60wt.%、70wt.%、80wt.%、またはさらにより好ましくは少なくとも90wt.%の熱可塑性ポリマー(TP)と、好ましくは40wt.%未満、より好ましくは30wt.%未満、さらにより好ましくは20wt.%未満の熱硬化性ポリマーとを含み、好ましくは、20wt.%未満の他の廃棄物供給物成分も含む、熱可塑性廃棄物(TPW)であり、熱可塑性ポリマー廃棄物は、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、またはそれらの混合物、コポリマー、ブレンド、もしくは複合体からなる群から選択される1つ以上の熱可塑性ポリマーを含み、好ましくはヘテロ原子O、N、またはハロゲンを含まない熱可塑性ポリマー、最も好ましくはポリオレフィンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記水和可能な融解塩が、水和可能なハロゲン化金属塩であり、金属が、好ましくは、亜鉛、アルミニウム、アンチモン、マンガン、カルシウム、鉄、もしくはマグネシウムまたはそれらの組合せであり、好ましくはZnCl、FeCl、MgCl、MnCl、CaClもしくはそれらの臭素類似体またはそれらのブレンドであり、最も好ましくは、前記融解塩が、少なくとも70wt.%、より好ましくは少なくとも80wt%、さらにより好ましくは少なくとも90wt%、最も好ましくは少なくとも95wt%のZnClを含み、前記融解塩の残りが、好ましくは、1つ以上の他のハロゲン化金属塩、好ましくはAlCl、MnCl、SbCl、またはFeClである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
- 工程b)において、前記融解塩が、前記融解塩および水の総重量に対して20wt.%未満、好ましくは10wt%未満、より好ましくは5wt.%未満、さらにより好ましくは1wt%未満の水和水を含み、
- 工程e)において、再水和した融解塩が、10~60wt.%、好ましくは15~50wt.%、より好ましくは15~35wt.%の水を含み、
- 前記再水和した融解塩が、前記脱水された融解塩相よりも、少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも20wt%、より好ましくは少なくとも30wt%多い水を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
冷却および分離工程d)およびe)は、1つ以上の冷却および分離工程を含み、好ましくは、
- 前記反応混合物を200℃未満、好ましくは150℃未満の温度TIまで冷却し、水和させる、または
- 前記反応混合物の少なくとも一部を200℃を超える、好ましくは250℃またはさらに300℃を超える温度Thまで冷却し、任意に圧力をかけ、この圧力は、好ましくは、水蒸気でかける、または
- 2つ以上のその後の冷却および分離工程を異なる温度で適用し、好ましくは初めは工程iii)を高温Thで適用し、それから工程ii)を低温TIで適用し、組成の異なる2つ以上の異なるNVC画分が得られる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
工程e)で得られた前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を、工程f)で250℃を超える、好ましくは300℃を超える温度まで加熱して前記融解塩を脱水させる、または工程f)で少なくとも部分的に再水和した融解塩を、100Pa未満、より好ましくは0.1Pa未満、さらにより好ましくは0.0001Pa未満の圧力で、好ましくは175℃未満、より好ましくは150℃未満、かつ100℃を超える、好ましくは120℃を超える温度で加熱および真空を適用することによって脱水させ、加熱の前または加熱中に任意に金属酸化物を加え、金属が、好ましくは、前記融解塩の金属と同じである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
工程e)で得られた前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を工程b)の前記反応器にリサイクルし、脱水された融解塩を形成するために工程f)の前記再水和した融解塩の加熱を炭化反応器内で行う、請求項に記載の方法。
【請求項8】
固体炭素シードを、好ましくは工程a、b)、および/またはd)で、変換および/または炭素相の前記融解塩相からの分離を促進するため加える、請求項に記載の方法。
【請求項9】
工程c)で回収された前記変換ガスを冷却して前記水蒸気を凝縮して水および乾燥変換ガスを回収し、この乾燥変換ガスが、2個以上の炭素原子を有する炭化水素を10wt%未満、好ましくは5wt%未満、さらにより好ましくは3wt%未満を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)の前記融解塩が、方法における水素収率を高めるために、Ni、Fe、Zn、またはCuの群から好ましくは選択され、金属-有機錯体、たとえば金属アルキル、金属酸化物、または金属-塩化物錯体の形態で好ましくは加えられ、前記融解塩中の金属のモルに対して好ましくは10モル%未満、好ましくは5モル%未満またはさらに3モル%未満の前記金属の量で、前記融解塩中の金属とは異なる触媒量の1つ以上の脱水素触媒金属をさらに含み、1つ以上の脱水素触媒は、好ましくは、FeCl、NiCl、CuCl、Fe、NiO、およびCuOの群から選択され、前記1つ以上の脱水素触媒金属は、固体炭素に任意に担持されている、請求項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)またはb)で1つ以上の反応物を前記融解塩に加えて炭化変換工程b)の間に存在するまたは形成したヘテロ原子含有不純物と反応させ、好ましくは、1つ以上の不純物がハロゲン、CO、SOx、およびNOxからなる群から選択され、前記反応物が、分離することができる沈殿物を形成し、この反応物が、好ましくは、金属化合物、より好ましくは金属酸化物または金属水酸化物、さらにより好ましくは酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、または酸化ニッケルであり、1つ以上の金属ハロゲン化物、金属カルボネート、金属スルフェート、または金属ナイトレートを形成する、または好ましくは、ヘテロ原子が、ハロゲンであり、金属酸化物、好ましくは酸化亜鉛と変換してハロゲン化金属、好ましくはハロゲン化亜鉛に変換し、これは、方法において使用される前記融解塩の一部であり、分離する必要がない、請求項に記載の方法。
【請求項12】
工程e)で得られた前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相が、脱水され工程a)またはb)で使用される前に、生物有機廃棄物、好ましくはセルロース、ヘミセルロース、および/またはリグニンを含む生物有機廃棄物の300℃未満、好ましくは250℃未満の温度での分離または炭化のために別の工程e.1)で使用される、請求項に記載の方法。
【請求項13】
工程e)で得られた前記非揮発性炭素相を、100℃未満の温度で水で洗浄し、前記融解塩の残渣を溶解し、除去し、好ましくは、洗浄水を工程d)にリサイクルする、請求項に記載の方法。
【請求項14】
炭素含有供給物が、
1)前記炭素含有供給物および水和可能な融解塩を供給し、炭化反応器内で前記融解塩中、前記炭素含有供給物を少なくとも部分的に変換して、変換ガスおよび炭素を形成すること、
2)前記変換ガスを前記炭化反応器から液化装置に送って水蒸気を凝縮させて乾燥変換ガスを分離し、前記炭素を含有する前記融解塩の一部を分離反応器に移動すること、
3)水または水蒸気を、前記分離反応器内の前記炭素を含有する前記融解塩に加えて前記融解塩を冷却および再水和させて相分離した非揮発性炭素相および少なくとも部分的に再水和した融解塩相を形成すること、
4)前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を前記分離反応器から分離し、移動すること、
5)生物有機廃棄物の分離または炭化のために前記分離反応器からの前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を任意に使用し、少なくとも部分的に再水和した融解塩をこの工程での使用後に分離すること、
6)前記少なくとも部分的に再水和した融解塩を加熱反応器に移動し、前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を加熱して少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気へと脱水させ、前記少なくとも部分的に脱水された融解塩を前記炭化反応器に戻してリサイクルするか、または前記少なくとも部分的に再水和した融解塩を直接炭化反応器に移動し、前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を前記炭化反応器内で加熱して、少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気へと脱水させること、
7)前記炭化反応器に戻してリサイクルする前に、前記少なくとも部分的に脱水された融解塩、または前記少なくとも部分的に再水和した融解塩から、任意に不純物を除去する、
8)前記非揮発性炭素相を前記分離反応器から連続的に、または半連続的に除去し、前記非揮発性炭素相を水で洗浄して前記融解塩の残渣を除去することが任意に続き、前記非揮発性炭素相の一部または前記分離した非揮発性炭素相から単離された固体炭素の一部をリサイクルし、前記変換および/または前記非揮発性炭素の分離を促進するためのシードとして前記炭化反応器に戻すことが任意に続くこと、
を連続して含む連続方法で変換される、請求項に記載の方法。
【請求項15】
好ましくは、炭化温度T1は200℃~500℃である、請求項1に記載の方法によって取得可能な固体炭素相。
【請求項16】
請求項15に記載の前記固体炭素相から、活性炭、土壌強化化合物、電子材料、カーボンファイバー、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノファイバー前駆体、グラフェンまたはグラフェン前駆体を生成するための方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
[0078]本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、ここで記載の構造および技術に対して、上述のものに加えてさらなる改変を加えることができる。したがって、具体的な態様を説明してきたが、これらは単なる例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
以下に、本願発明の実施態様を付記する。
[1] 炭素含有材料を変換する方法であって、以下の工程:
a.前記炭素含有材料を水和可能な融解塩と接触させ混合する工程、
b.前記融解塩中の前記炭素含有材料を炭化条件
i.200℃~500℃、好ましくは200℃~400℃、より好ましくは200℃~350℃の温度T1で、かつ
ii.好ましくは50バール未満、より好ましくは15バール未満、さらにより好ましくは10バール未満、最も好ましくは1バール未満の圧力で、
iii.酸素がなく、
iv.前記水和可能な融解塩は、少なくとも部分的に脱水されており、
v.不活性ガスとしての水蒸気が存在し、
vi.変換ガスおよび前記融解塩中の炭素を含む非揮発性変換生成物を含む反応混合物を形成する
のもと反応器内で変換する工程、
c.変換ガスを前記反応器の出口から回収し、水蒸気でパージすることによって任意に補助し、前記変換ガスを任意に冷却して前記水蒸気を凝縮し、乾燥変換ガスを回収する工程、
d.水または水蒸気を前記反応混合物に加えて前記反応混合物を冷却し、前記融解塩を再水和させることにより相分離が起こり、非揮発性炭素相および少なくとも部分的に再水和した融解塩相を形成する工程、
e.前記非揮発性炭素相を前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相から分離する工程、
f.得られた部分的に再水和した融解塩相を加熱して少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気を、好ましくは工程a)で、工程b)で、または別の工程で形成する工程、
g.少なくとも部分的に脱水された融解塩相を工程a)またはb)で使用する工程
h.好ましくは、方法において、工程f)で得られた水蒸気を、好ましくは工程a)で前記反応器および前記炭素含有材料から酸素をパージするため、および/または工程d)で前記融解塩の水和のために使用する工程、
i.分離工程において無機物を任意に分離する工程であり、無機固体が前記融解塩から密度差によって、好ましくは工程a)の後で工程b)の前に分離される、工程
を含む方法。
[2] 前記炭素含有材料が、炭化水素を含有する廃棄物、好ましくは廃油または精製所残渣、および/または合成ポリマー、好ましくは熱可塑性ポリマーである、[1]に記載の方法。
[3] 前記炭素含有材料が、少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも60wt.%、70wt.%、80wt.%、またはさらにより好ましくは少なくとも90wt.%の熱可塑性ポリマー(TP)と、好ましくは40wt.%未満、より好ましくは30wt.%未満、さらにより好ましくは20wt.%未満の熱硬化性ポリマーとを含み、好ましくは、20wt.%未満の他の廃棄物供給物成分も含む、熱可塑性廃棄物(TPW)であり、熱可塑性ポリマー廃棄物は、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、またはそれらの混合物、コポリマー、ブレンド、もしくは複合体からなる群から選択される1つ以上の熱可塑性ポリマーを含み、好ましくはヘテロ原子O、N、またはハロゲンを含まない熱可塑性ポリマー、最も好ましくはポリオレフィンを含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記水和可能な融解塩が、水和可能なハロゲン化金属塩であり、金属が、好ましくは、亜鉛、アルミニウム、アンチモン、マンガン、カルシウム、鉄、もしくはマグネシウムまたはそれらの組合せであり、好ましくはZnCl 、FeCl 、MgCl 、MnCl 、CaCl もしくはそれらの臭素類似体またはそれらのブレンドであり、最も好ましくは、前記融解塩が、少なくとも70wt.%、より好ましくは少なくとも80wt%、さらにより好ましくは少なくとも90wt%、最も好ましくは少なくとも95wt%のZnCl を含み、前記融解塩の残りが、好ましくは、1つ以上の他のハロゲン化金属塩、好ましくはAlCl 、MnCl 、SbCl 、またはFeCl である、[1]~[3]の何れか1項に記載の方法。
[5] - 工程b)において、前記融解塩が、前記融解塩および水の総重量に対して20wt.%未満、好ましくは10wt%未満、より好ましくは5wt.%未満、さらにより好ましくは1wt%未満の水和水を含み、
- 工程e)において、再水和した融解塩が、10~60wt.%、好ましくは15~50wt.%、より好ましくは15~35wt.%の水を含み、
- 前記再水和した融解塩が、前記脱水された融解塩相よりも、少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも20wt%、より好ましくは少なくとも30wt%多い水を含む、[1]~[4]の何れか1項に記載の方法。
[6] 冷却および分離工程d)およびe)は、1つ以上の冷却および分離工程を含み、好ましくは、
- 前記反応混合物を200℃未満、好ましくは150℃未満の温度TIまで冷却し、水和させる、または
- 前記反応混合物の少なくとも一部を200℃を超える、好ましくは250℃またはさらに300℃を超える温度Thまで冷却し、任意に圧力をかけ、この圧力は、好ましくは、水蒸気でかける、または
- 2つ以上のその後の冷却および分離工程を異なる温度で適用し、好ましくは初めは工程iii)を高温Thで適用し、それから工程ii)を低温TIで適用し、組成の異なる2つ以上の異なるNVC画分が得られる、[1]~[5]の何れか1項に記載の方法。
[7] 工程e)で得られた前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を、工程f)で250℃を超える、好ましくは300℃を超える温度まで加熱して前記融解塩を脱水させる、または工程f)で少なくとも部分的に再水和した融解塩を、100Pa未満、より好ましくは0.1Pa未満、さらにより好ましくは0.0001Pa未満の圧力で、好ましくは175℃未満、より好ましくは150℃未満、かつ100℃を超える、好ましくは120℃を超える温度で加熱および真空を適用することによって脱水させ、加熱の前または加熱中に任意に金属酸化物を加え、金属が、好ましくは、前記融解塩の金属と同じである、[1]~[6]の何れか1項に記載の方法。
[8] 工程e)で得られた前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を工程b)の前記反応器にリサイクルし、脱水された融解塩を形成するために工程f)の前記再水和した融解塩の加熱を炭化反応器内で行う、[1]~[7]の何れか1項に記載の方法。
[9] 固体炭素供給源またはその前駆体を、好ましくは工程a、b)、および/またはd)で、変換および/または炭素相の前記融解塩相からの分離を促進するためのシードとして加える、[1]~[8]の何れか1項に記載の方法。
[10] 工程c)で回収された前記変換ガスを冷却して前記水蒸気を凝縮して水および乾燥変換ガスを回収し、この乾燥変換ガスが、2個以上の炭素原子を有する炭化水素を10wt%未満、好ましくは5wt%未満、さらにより好ましくは3wt%未満を含む、[1]~[9]の何れか1項に記載の方法。
[11] 工程b)の前記融解塩が、方法における水素収率を高めるために、Ni、Fe、Zn、またはCuの群から好ましくは選択され、金属-有機錯体、たとえば金属アルキル、金属酸化物、または金属-塩化物錯体の形態で好ましくは加えられ、前記融解塩中の金属のモルに対して好ましくは10モル%未満、好ましくは5モル%未満またはさらに3モル%未満の前記金属の量で、前記融解塩中の金属とは異なる触媒量の1つ以上の脱水素触媒金属をさらに含み、1つ以上の脱水素触媒は、好ましくは、FeCl 、NiCl 、CuCl 、Fe 、NiO、およびCuOの群から選択され、前記1つ以上の脱水素触媒金属は、固体炭素供給源またはその前駆体に任意に担持されている、[1]~[10]の何れか1項に記載の方法。
[12] 工程a)またはb)で1つ以上の反応物を前記融解塩に加えて炭化変換工程b)の間に存在するまたは形成したヘテロ原子含有不純物と反応させ、好ましくは、1つ以上の不純物がハロゲン、CO 、SOx、およびNOxからなる群から選択され、前記反応物が、分離することができる沈殿物を形成し、この反応物が、好ましくは、金属化合物、より好ましくは金属酸化物または金属水酸化物、さらにより好ましくは酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、または酸化ニッケルであり、1つ以上の金属ハロゲン化物、金属カルボネート、金属スルフェート、または金属ナイトレートを形成する、または好ましくは、ヘテロ原子が、ハロゲンであり、金属酸化物、好ましくは酸化亜鉛と変換してハロゲン化金属、好ましくはハロゲン化亜鉛に変換し、これは、方法において使用される前記融解塩の一部であり、分離する必要がない、[1]~[11]の何れか1項に記載の方法。
[13] 工程e)で得られた前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相が、脱水され工程a)またはb)で使用される前に、生物有機廃棄物、好ましくはセルロース、ヘミセルロース、および/またはリグニンを含む生物有機廃棄物の300℃未満、好ましくは250℃未満の温度での分離または炭化のために別の工程e.1)で使用される、[1]~[12]の何れか1項に記載の方法。
[14] 工程e)で得られた前記非揮発性炭素相を、100℃未満の温度で水で洗浄し、前記融解塩の残渣を溶解し、除去し、好ましくは、洗浄水を工程d)にリサイクルする、[1]~[13]の何れか1項に記載の方法。
[15] 炭素含有供給物、好ましくはTPWが、
1)炭素含有供給物および水和可能な融解塩を供給し、炭化反応器内で前記融解塩中、前記炭素含有供給物を少なくとも部分的に変換して、変換ガスおよび炭素を形成すること、
2)前記変換ガスを前記炭化反応器から液化装置に送って水蒸気を凝縮させて乾燥変換ガスを分離し、前記炭素を含有する前記融解塩の一部を分離反応器に移動すること、
3)水または水蒸気を、前記分離反応器内の前記炭素を含有する前記融解塩に加えて前記融解塩を冷却および再水和させて相分離した非揮発性炭素相および少なくとも部分的に再水和した融解塩相を形成すること、
4)前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を前記分離反応器から分離し、移動すること、
5)生物有機廃棄物の分離または炭化のために前記分離反応器からの前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を任意に使用し、少なくとも部分的に再水和した融解塩をこの工程での使用後に分離すること、
6)前記少なくとも部分的に再水和した融解塩を加熱反応器に移動し、前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を加熱して少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気へと脱水させ、前記少なくとも部分的に脱水された融解塩を前記炭化反応器に戻してリサイクルするか、または前記少なくとも部分的に再水和した融解塩を直接炭化反応器に移動し、前記少なくとも部分的に再水和した融解塩相を前記炭化反応器内で加熱して、少なくとも部分的に脱水された融解塩および水蒸気へと脱水させること、
7)前記炭化反応器に戻してリサイクルする前に、前記少なくとも部分的に脱水された融解塩、または前記少なくとも部分的に再水和した融解塩から、任意に不純物を除去する、
8)前記非揮発性炭素相を前記分離反応器から連続的に、または半連続的に除去し、前記非揮発性炭素相を水で洗浄して前記融解塩の残渣を除去することが任意に続き、前記非揮発性炭素相の一部または前記分離した非揮発性炭素相から単離された固体炭素の一部をリサイクルし、前記変換および/または前記非揮発性炭素の分離を促進するためのシードとして前記炭化反応器に戻すことが任意に続くこと、
9)任意に無機物が前記融解塩中の前記炭素含有供給物の混合物から炭化の前に密度差によって分離される、
を連続して含む連続方法で変換される、[1]~[14]の何れか1項に記載の方法。
【国際調査報告】