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特表2025-502861抗FXI/FXIa抗体を含む医薬組成物及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】抗FXI/FXIa抗体を含む医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20250121BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250121BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20250121BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250121BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250121BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20250121BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K9/08 ZNA
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/18
A61P7/02
A61K9/19
A61P9/06
A61P9/10
A61P11/00
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540670
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(85)【翻訳文提出日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 CN2023070573
(87)【国際公開番号】W WO2023131213
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210006206.X
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210053441.2
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】524250857
【氏名又は名称】上▲海▼▲邁▼晋生物医▲薬▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】沈 立君
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 志▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】李 磊
(72)【発明者】
【氏名】▲湯▼ 辰翔
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC14
4C076CC29
4C076DD38
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE23
4C076FF14
4C076FF36
4C076FF63
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB12
4C085BB36
4C085CC02
4C085CC03
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE05
4C085EE07
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
(57)【要約】
抗FXI/FXIa抗体を含む医薬組成物及びその使用である。具体的に関わる医薬組成物は、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片及び緩衝剤を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、及び緩衝剤を含み、前記緩衝剤は、酢酸塩緩衝剤、ヒスチジン塩緩衝剤、Tris-塩酸塩緩衝剤、Tris-クエン酸塩緩衝剤及びリン酸塩緩衝剤から選ばれる1つ又は複数であり、
好ましくは、前記緩衝剤は、ヒスチジン塩緩衝剤、Tris-塩酸塩緩衝剤又はリン酸塩緩衝剤である、
医薬組成物。
【請求項2】
前記緩衝剤又は前記医薬組成物のpH値は、約4.0~約8.5、好ましくは約6.5~約7.5、より好ましくは約7.0である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記緩衝剤の濃度は、約5mM~約100mM、好ましくは約10mM~約30mM、より好ましくは約5mM~約15mMである、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片の濃度は、約1mg/mL~約300mg/mL、好ましくは約50mg/mL~約150mg/mLである、
請求項1~3の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
界面活性剤をさらに含み、
好ましくは、前記界面活性剤はポロキサマー188、ポリソルベート80又はポリソルベート20である、
請求項1~4の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤の濃度は約0.1mg/mL~約10mg/mL、好ましくは約1.5mg/mL~約4mg/mL、好ましくは約0.4mg/mL~約0.8mg/mLである、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
浸透圧調整剤をさらに含み、
好ましくは、前記浸透圧調整剤は、スクロース、トレハロース、ソルビトール、アルギニン、プロリン、グリシン及び塩化ナトリウムからなる群から選ばれる1つ又は複数であり、
より好ましくは、前記浸透圧調整剤は、スクロース、プロリン及びスクロース、又はグリシン及びスクロースから選ばれる、
請求項1~6の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記浸透圧調整剤は、
約10mg/mL~約150mg/mLのスクロース、
約10mM~200mMのグリシン及び約10mg/mL~約100mg/mLのスクロース、又は
約10mM~200mMのプロリン及び約10mg/mL~約100mg/mLのスクロースから選ばれ、
好ましくは、前記浸透圧調整剤は、
約80mg/mLのスクロース、
約100mMのグリシン及び約40mg/mLのスクロース、又は
約100mMのプロリン及び約40mg/mLのスクロースから選ばれる、
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬組成物であって、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片を含み、前記医薬組成物は自己緩衝系であり、好ましくは、前記医薬組成物は塩基性アミノ酸を含み、より好ましくは、前記塩基性アミノ酸はヒスチジンである、
医薬組成物。
【請求項10】
前記抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片の濃度は約1mg/mL~約300mg/mL、好ましくは約30mg/mL~約200mg/mL、より好ましくは約70mg/mL~約130mg/mLである、
請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記塩基性アミノ酸の濃度は約1mM~約100mM、好ましくは10mM~約60mM、より好ましくは約30mM~約40mM、最も好ましくは約35mMである、
請求項9又は10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
pH値は約4.0~約8.5、好ましくは約6.5~約7.5、より好ましくは約6.7~約7.3、最も好ましくは約7.0である、
請求項9~11の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
浸透圧調整剤をさらに含み、
好ましくは、前記浸透圧調整剤は、スクロース、トレハロース、ソルビトール、アルギニン、プロリン、グリシン及び塩化ナトリウムから選ばれる1つ又は複数であり、
より好ましくは、前記浸透圧調整剤はスクロースである、
請求項9~12の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記浸透圧調整剤の濃度は約10mg/mL~約400mg/mL、好ましくは約50mg/mL~約200mg/mL、より好ましくは約80mg/mLである、
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
界面活性剤をさらに含み、
好ましくは、前記界面活性剤はポロキサマー188、ポリソルベート80又はポリソルベート20である
請求項9~14の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記界面活性剤の濃度は約0.1mg/mL~約10mg/mL、好ましくは約1.8mg/mL~約2.8mg/mL、より好ましくは約2mg/mLである、
請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬組成物であって、(a)及び(b)を含み、選択的に、(c)及び/又は(d)をさらに含み、そのうち、
(a)約1mg/mL~約500mg/mLの抗FXI/FXIa抗体、
(b)約1mM~約100mMのヒスチジン、
(c)約10mg/mL~約400mg/mLのスクロース又はトレハロース、
(d)約0.5mg/mL~約80mg/mLのポロキサマー、ポリソルベート80又はポリソルベート20であり、
前記医薬組成物のpHは約4.0~約8.5であり、
或いは、
(a)約30mg/mL~約200mg/mLの抗FXI/FXIa抗体、
(b)約10mM~約60mMのヒスチジン、
(c)約50mg/mL~約200mg/mLのスクロース、
(d)約1.5mg/mL~約5.0mg/mLのポロキサマー188であり、
前記医薬組成物のpHは約6.5~約7.5であり、
或いは、
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体、
(b)約30mM~約40mMのヒスチジン、
(c)約60mg/mL~約150mg/mLのスクロース、及び
(d)約1.8mg/mL~約2.8mg/mLのポロキサマー188であり、
前記医薬組成物のpHは約6.7~約7.3であり、
或いは、
(a)約70mg/mL~約200mg/mLの抗FXI/FXIa抗体、
(b)約30mM~約100mMのヒスチジン、
(c)約60mg/mL~約150mg/mLのスクロース、及び
(d)約1.8mg/mL~約2.8mg/mLのポロキサマー188であり、
前記医薬組成物のpHは約6.7~約7.3である、
医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物は、
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約35mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2mg/mLのポロキサマー188を含み、
前記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約35mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2mg/mLのポロキサマー188を含み、
前記医薬組成物のpHは約6.7であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約35mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2mg/mLのポロキサマー188を含み、
前記医薬組成物のpHは約7.3であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約30mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約1.8mg/mLのポロキサマー188を含み、
前記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約30mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2.8mg/mLのポロキサマー188を含み、
前記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約40mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約1.8mg/mLのポロキサマー188を含み、
前記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約40mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2.3mg/mLのポロキサマー188を含み、
前記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約40mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2.8mg/mLのポロキサマー188を含み、
前記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約35mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2.3mg/mLのポロキサマー188を含み、
前記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約35mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約1.8mg/mLのポロキサマー188を含み、
前記医薬組成物のpHは約7.0である、
請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
医薬組成物であって、請求項17又は18に記載の医薬組成物を、0.9%の生理食塩水又は5%のグルコース溶液で希釈して得られるか、或いは請求項16に記載の医薬組成物を、0.9%の生理食塩水又は5%のグルコース溶液で希釈した後、静脈注射剤として利用可能な濃度を有する抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、ヒスチジン、スクロース、ポロキサマー188を含み、
好ましくは、そのうち、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片の濃度は、約0.01mg/mL~約50mg/mLであり、
より好ましくは、そのうち、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片の濃度は、約0.1mg/mL~約30mg/mLであり、
最も好ましくは、そのうち、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片の濃度は、約0.20mg/mL~約13.30mg/mLである、
医薬組成物。
【請求項20】
前記抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、前記重鎖可変領域はそれぞれ配列番号7、8、9に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、及び、前記軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号10、11、12に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む、
請求項1~19の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は以下から選ばれる:
重鎖可変領域の配列は、配列番号5又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列であり、軽鎖可変領域の配列は、配列番号6又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
重鎖可変領域の配列は、配列番号13又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列であり、軽鎖可変領域の配列は、配列番号14又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
重鎖可変領域の配列は、配列番号15又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列であり、軽鎖可変領域の配列は、配列番号16又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列であり、或いは
重鎖可変領域の配列は、配列番号17又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列であり、軽鎖可変領域の配列は、配列番号16又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列である、
請求項1~20の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片はヒトIgG1 Fc又はヒトIgG4 Fcをさらに含み、前記ヒトIgG4 FcはS241P変異を含むことが好ましい、
請求項1~21の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片は重鎖及び軽鎖を含み、そのうち、前記重鎖配列は、配列番号21又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、及び前記軽鎖配列は配列番号22又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、
請求項1~22の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1~23の何れか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥することで得られるか、又は再溶解されると、請求項1~23の何れか一項に記載の医薬組成物を形成することができる、凍結乾燥製剤。
【請求項25】
請求項24に記載の凍結乾燥製剤を再溶解することで調製されて得られる、再溶解溶液。
【請求項26】
静脈注射剤、皮下注射剤、腹腔注射剤又は筋肉注射剤であり、好ましくは静脈又は皮下注射剤である、
請求項1~23の何れか一項に記載の医薬組成物又は請求項25に記載の再溶解溶液。
【請求項27】
請求項1~23の何れか一項に記載の医薬組成物、請求項24に記載の凍結乾燥製剤又は請求項25に記載の再溶解溶液が収容された容器を含む、製品。
【請求項28】
疾患を治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象に治療又は予防有効量の請求項1~22の何れか一項に記載の医薬組成物、請求項23に記載の凍結乾燥製剤、請求項25に記載の再溶解溶液又は請求項27に記載の製品を投与することを含み、そのうち、
前記疾患は、血栓形成性若しくは血栓塞栓性疾患及び/又は血栓形成性若しくは血栓塞栓性合併症、又は不整脈、心原性血栓塞栓、びまん性血管内血液凝固であり、
好ましくは、前記血栓形成性又は血栓塞栓性疾患又はその合併症は、心冠動脈疾患、例えば、急性冠動脈症候群(ACS)、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)と非ST上昇型心筋梗塞(非STEMI)、安定狭心症、不安定狭心症、冠動脈インターベンション後の再閉塞と再狭窄、及び末梢動脈閉塞性疾患、肺塞栓、静脈血栓塞栓、静脈血栓形成、一過性脳虚血発作、及び血栓形成性脳卒中と血栓塞栓性脳卒中を引き起こす他の血管中の血栓形成性又は血栓塞栓性疾患、慢性血栓塞栓(CTEPH)による肺疾患と肺動脈高血圧又はそれらの組み合わせから選ばれ、
好ましくは、前記投与の方式は皮下又は静脈注射である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、出願日が2022年01月05日、出願番号が202210006206.X、及び出願日が2022年01月18日、出願番号が202210053441.2、発明の名称が「抗FXI/FXIa抗体を含む医薬組成物及びその使用」である中国特許出願という特許出願の優先権を主張し、上記特許出願の全内容は、参照により本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示は、薬物製剤の分野に属し、具体的に、抗FXI/FXIa抗体及びその抗原結合断片を含む医薬組成物、並びにその薬剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
FXI遺伝子はヒト第4染色体にあり、607個のアミノ酸からなる分泌タンパク質をコードしており、FXIタンパク質分子は4つのアップルドメイン(apple domains)及び1つの触媒ドメイン(catalytic domain)を含み、ヒト血液においてホモ二量体の形態で存在し、HKと非共有結合複合物を形成するタンパク質FXIは、ヒト血漿において約30nM(15~45nM)のFXI濃度で循環しており、ヒトFXI分子は、サル及びマウスのFXI分子とそれぞれ88%、67%、及び58%(2つの種、3つの相同性データ)の相同性を有する。
【0004】
現在、FXI及びその形質転換されたFXIaの活性を阻害することで、血栓の形成を効果的に低減することができると共に、見られる出血リスクが引き起こされないことを示している文献と臨床試験が既に多数ある。現在開示された臨床結果によると、従来の経口抗凝固剤(NOAC)に対して、抗FXI/FXIa抗体は、類似の、又はより良い抗血栓効果を有すると共に、出血リスクがより低く、患者がより安全な治療を受けることができる。
【0005】
ヒトモノクローナル抗体などの治療用タンパク質は、その特性のため、液体薬物製剤として注射投与されることが一般的である。しかし、抗体薬物は、その分子量が大きく、構造が複雑で、分解や重合したり、望ましくない化学修飾などが生じたりして不安定になることが容易である。抗体が投薬に適し、且つ保存中及びその後の使用中に安定性を維持し、より良い効果を果たすことを可能にするために、抗体薬物の安定化製剤の研究が特に重要である。本開示は、十分に安定で、且つ投与により適した、抗FXI/FXIa抗体を含む医薬組成物(製剤)を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、タンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)を含む医薬組成物を提供する。また、上記医薬組成物を調製する方法、及びその疾患を治療又は予防する方法又は関連する製薬的使用を提供する。
【0007】
幾つかの実施形態において、本開示に係る医薬組成物中のタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)は、約5.0~約6.6のPI値を有し、例えば、約5.2~約6.4、約5.3~約6.3、約5.4~約6.2、約5.5~約6.1、約5.6~約6.0、約5.7~約5.9(例えば、約5.8)、又はそれらの点値間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、上記PI値は、キャピラリー電気泳動装置(ProteinSimple社、Maurice)により検出して取得され、検出条件は以下の通りである:
実験温度:15℃、フォーカス時間:1500V 1min、3000V 6min
方法:対照品及び試験品(脱塩した場合、脱塩された試験品を選択する)を調製して均一に混合し、13000rpmで5分間遠心分離した。80μLを取ってMaurice 96ウェルプレート又はMaurice iCIEF注入フラスコに移し、13000rpmで5分間遠心分離し(注入フラスコへの注入)又は4000rpmで5分間遠心分離した(96ウェルプレートへの注入)。
【0008】
幾つかの実施形態において、本開示のタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)含有医薬組成物は、約100~約300mS/cmの導電率を有し、例えば、約120~約260mS/cm、約130~約250mS/cm、約140~約240mS/cm、約150~約220mS/cm、約170~約200mS/cm、約180~約190mS/cm(例えば、約183.7mS/cm)、又はそれらの点値間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、上記導電率は、導電率計(メトラー社、FE38-Standard)により測定される。
【0009】
幾つかの実施形態において、本開示のタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)含有医薬組成物は、約250~約450mOsmol/kgの浸透圧を有し、例えば、約270~約430mOsmol/kg、約290~約410mOsmol/kg、約300~約400mOsmol/kg、約310~約390mOsmol/kg、約320~約380mOsmol/kg、約330~約370mOsmol/kg、約340~約360mOsmol/kg(例えば、約350mOsmol/kg)、又はそれらの点値間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、上記浸透圧は、浸透圧計(ルーザー社、OM819.C)により測定され、検出方法が凝固点降下法である。
【0010】
幾つかの実施形態において、本開示に係る医薬組成物中のタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)は、約5.7~約5.9のPI値を有する。幾つかの実施形態において、本開示のタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)含有医薬組成物は、約180~約190mS/cm(例えば、約183.7mS/cm)の導電率を有し、及び/又は約320~約380mOsmol/kgの浸透圧を有する。
【0011】
自己緩衝系
本開示は、上記何れか1つに記載のタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)を含む医薬組成物を提供する。上記医薬組成物は、自己緩衝系である。当該組成物は、治療又は予防活性を有する。さらに、当該組成物はまた、安定性が良いといった利点を有してもよい。
【0012】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、塩基性アミノ酸、例えば、ヒスチジン、アルギニン、リジン又はその任意の組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、上記塩基性アミノ酸(例えば、ヒスチジン)とタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)により自己緩衝系を形成する。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物中のヒスチジン濃度は、約1mM~約100mM、例えば、約2mM~約80mM、約5mM~約70mM、約10mM~約60mM、約20mM~約50mM、約25mM~約45mM、約30mM~約40mM、約30mM~約100mM、約60mM~約100mM、約30mM~約90mM、又はそれらの点値間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、上記ヒスチジン濃度は、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM、約34mM、約35mM、約36mM、約37mM、約38mM、約39mM、約40mM、約41mM、約42mM、約43mM、約44mM、約45mM、約46mM、約47mM、約48mM、約49mM、約50mM、例えば、約35mMである。
【0014】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、それは界面活性剤を含む。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は非イオン界面活性剤である。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20(即ち、PS20)、ポリソルベート80(即ち、PS80))、ポロクサマー、Triton、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、オクチルグルコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノール-スルホベタイン、ステアリン-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノール-サルコシン、ステアリン-サルコシン、リノール-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウラミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミタミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミタミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、メチルココイルナトリウム、メチルオレイルタウリンナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレン及びプロピレングリコールの共重合体など、又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は、ポリソルベート又はポロキサマーである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20又はポロキサマー188である。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤はポロキサマー188である。
【0015】
幾つかの実施形態において、上記界面活性剤の濃度は、約0.1mg/mL~約10mg/mL、例えば、約0.2mg/mL~約8mg/mL、約0.5mg/mL~約6mg/mL、約0.8mg/mL~約5mg/mL、約1.0mg/mL~約4mg/mL、約1.2mg/mL~約3.8mg/mL、約1.3mg/mL~約3.6mg/mL、約1.4mg/mL~約3.4mg/mL、約1.5mg/mL~約3.3mg/mL、約1.6mg/mL~約3.2mg/mL、約1.7mg/mL~約3mg/mL、約1.8mg/mL~約2.8mg/mL、約1.9mg/mL~約2.5mg/mL、約1.8mg/mL~約2.4mg/mL、約1.9mg/mL~約2.2mg/mL、約1.8mg/mL~約2.2mg/mL、約1.9mg/mL~約2.1mg/mL、又はそれらの点値間の任意の範囲である。例えば、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約0.6mg/mL、約0.7mg/mL、約0.8mg/mL、約0.9mg/mL、約1.0mg/mL、約1.1mg/mL、約1.2mg/mL、約1.3mg/mL、約1.4mg/mL、約1.5mg/mL、約1.6mg/mL、約1.7mg/mL、約1.8mg/mL、約1.9mg/mL、約2.0mg/mL、約2.1mg/mL、約2.2mg/mL、約2.3mg/mL、約2.4mg/mL、約2.5mg/mL、約2.6mg/mL、約2.7mg/mL、約2.8mg/mL、約2.9mg/mL、約3.0mg/mL、約3.1mg/mL、約3.2mg/mL、約3.3mg/mL、約3.4mg/mL、約3.5mg/mL、約3.6mg/mL、約3.7mg/mL、約3.8mg/mL、約3.9mg/mL、約4.0mg/mL、約4.5mg/mL、約5.0mg/mL、約5.5mg/mL、約6.0mg/mL、約6.5mg/mL、約7.0mg/mL、約7.5mg/mL、約8.0mg/mL、約8.5mg/mL、約9.0mg/mL、約9.5mg/mL、約10.0mg/mL、例えば、約2mg/mLである。
【0016】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、それは浸透圧調整剤を含む。幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤は、糖(単糖、二糖、三糖、多糖、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む)、アミノ酸(アルギニン、グリシン、システイン、ヒスチジンなどを含む)又は塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなど)である。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は糖であり、上記糖は、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール(ソルビットともいう)、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンニノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、マルチトール、ラクチトールとイソ-マルツロースから選ばれる。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、スクロース、トレハロース、ソルビトール、アルギニン、プロリン、グリシン及び塩化ナトリウムからなる群から選ばれる1つ又は複数である。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は非還元二糖であり、幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤はトレハロース又はスクロースであり、幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤はスクロースである。
【0017】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物中の上記浸透圧調整剤の濃度は、約1mg/mL~約300mg/mL、約1mg/mL~約400mg/mL、例えば、約10mg/mL~約400mg/mL、約5mg/mL~約200mg/mL、約10mg/mL~約150mg/mL、約20mg/mL~約140mg/mL、約30mg/mL~約130mg/mL、約40mg/mL~約120mg/mL、50mg/mL~約200mg/mL、約50mg/mL~約110mg/mL、約60mg/mL~約100mg/mL、約70mg/mL~約90mg/mL(例えば、約80mg/mL)、又はそれらの点値間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤の濃度は、約10mg/mL、約20mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL、約50mg/mL、約60mg/mL、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL、約200mg/mLである。
【0018】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物のpH値は、約4.0~約8.5、例えば、約5.0~約8.0、約6.0~約7.5、約6.5~約7.5、約6.6~約7.4、約6.7~約7.3、約6.8~約7.2、約6.9~約7.1(例えば、約7.0)、又はそれらの点値間の任意の範囲である。幾つかのpH値の非限定的な実施例は、約4.0、約4.5、約5.0、約6.0、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5を含む。
【0019】
一般的に、緩衝剤の置換によって得られた医薬組成物は、pHが緩衝剤pHとほぼ一致する。同時に、当業者に公知されているように、薬物製剤化のプロセスにおいて、pHドリフトが存在する場合があるが、薬物製剤のpHのドリフトは一般的に小さい(±0.3の範囲内)。幾つかの実施形態において、薬物製剤のpHのドリフトは、±0.1の範囲内にある。
【0020】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物中のタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)の濃度は、約0.1mg/mL~約1000mg/mL、例えば、約1mg/mL~約500mg/mL、約1mg/mL~約300mg/mL、約10mg/mL~約400mg/mL、約20mg/mL~約350mg/mL、約30mg/mL~約300mg/mL、約30mg/mL~約200mg/mL、約130mg/mL~約200mg/mL、約40mg/mL~約250mg/mL、約50mg/mL~約200mg/mL、約60mg/mL~約180mg/mL、約50mg/mL~約150mg/mL、約60mg/mL~約150mg/mL、約70mg/mL~約130mg/mL、約80mg/mL~約120mg/mL、約90mg/mL~約110mg/mL、又はそれらの点値間の任意の範囲である。例えば、約1mg/mL、約5mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約35mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約61mg/mL、約62mg/mL、約63mg/mL、約64mg/mL、約65mg/mL、約66mg/mL、約67mg/mL、約68mg/mL、約69mg/mL、約70mg/mL、約71mg/mL、約72mg/mL、約73mg/mL、約74mg/mL、約75mg/mL、約76mg/mL、約77mg/mL、約78mg/mL、約79mg/mL、約80mg/mL、約81mg/mL、約82mg/mL、約83mg/mL、約84mg/mL、約85mg/mL、約86mg/mL、約87mg/mL、約88mg/mL、約89mg/mL、約90mg/mL、約91mg/mL、約92mg/mL、約93mg/mL、約94mg/mL、約95mg/mL、約96mg/mL、約97mg/mL、約98mg/mL、約99mg/mL、約100mg/mL、約101mg/mL、約102mg/mL、約103mg/mL、約104mg/mL、約105mg/mL、約106mg/mL、約107mg/mL、約108mg/mL、約109mg/mL、約110mg/mL、約111mg/mL、約112mg/mL、約113mg/mL、約114mg/mL、約115mg/mL、約116mg/mL、約117mg/mL、約118mg/mL、約119mg/mL、約120mg/mL、約121mg/mL、約122mg/mL、約123mg/mL、約124mg/mL、約125mg/mL、約126mg/mL、約127mg/mL、約128mg/mL、約129mg/mL、約130mg/mL、約131mg/mL、約132mg/mL、約133mg/mL、約134mg/mL、約135mg/mL、約140mg/mL、約145mg/mL、約150mg/mL、約155mg/mL、約160mg/mL、約165mg/mL、約170mg/mL、約175mg/mL、約180mg/mL、約185mg/mL、約190mg/mL、約195mg/mL、約200mg/mLである。
【0021】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物は、a)~g)の何れか1つを含む:
a)約1mg/mL~約500mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、及び約1mM~約100mMのヒスチジン、上記医薬組成物のpHは約4.0~約8.5であり、選択的に、上記医薬組成物は、約1mg/mL~約500mg/mLのスクロース又はトレハロース、及び/又は約0.1mg/mL~約10mg/mLのポロキサマー188又はポリソルベートをさらに含んでもよい。
【0022】
b)約10mg/mL~約300mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、約5mM~約80mMのヒスチジン、上記医薬組成物のpHは約6.0~約8.0であり、選択的に、上記医薬組成物は、約10mg/mL~約400mg/mLのスクロース又はトレハロース、及び/又は約0.5mg/mL~約8.0mg/mLのポロキサマー188又はポリソルベートをさらに含んでもよい。
【0023】
c)約30mg/mL~約200mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、及び約10mM~約60mM、約20mM~約50mM、約30mM~約40mM(例えば、約35mM)のヒスチジン、
d)約50mg/mL~約150mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、及び約10mM~約60mM、約20mM~約50mM、約30mM~約40mM(例えば、約35mM)のヒスチジン、
e)約70mg/mL~約130mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、及び約10mM~約60mM、約20mM~約50mM、約30mM~約40mM(例えば、約35mM)のヒスチジン、
h)約130mg/mL~約200mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、及び約30mM~約100mM、約60mM~約100mM、約60mM~約90mMのヒスチジン、
I)約30mg/mL~約200mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、及び約30mM~約100mM、約60mM~約100mM、約60mM~約90mMのヒスチジン、
そのうち、c)~e)、h)~I)中の医薬組成物のpHは、約6.5~約7.5(例えば、約6.7~約7.3、例えば、約7.0)であり、
選択的に、c)~e)、h)~I)中の医薬組成物は、スクロース又はトレハロース、及びポロキサマー188又はポリソルベート(例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20)をさらに含み、
幾つかの実施形態において、c)~e)、h)~I)中の医薬組成物はスクロースを含み、濃度が約40mg/mL~約300mg/mL、約50mg/mL~約200mg/mL、約60mg/mL~約150mg/mL、約70mg/mL~約120mg/mL(例えば、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL)であり、
幾つかの実施形態において、c)~e)、h)~I)中の医薬組成物はポロキサマー188を含み、濃度が約1.5mg/mL~約6mg/mL、約1.5mg/mL~約5.0mg/mL、約1.8mg/mL~約3.5mg/mL、約1.8mg/mL~約2.8mg/mL(例えば、約1.8mg/mL、約1.9mg/mL、約2.0mg/mL、約2.1mg/mL、約2.2mg/mL、約2.3mg/mL、約2.4mg/mL、約2.5mg/mL、約2.6mg/mL、約2.7mg/mL、約2.8mg/mL)である。
【0024】
f)約70mg/mL~約130mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体)、約30mM~約40mM(例えば、約35mM)のヒスチジン、約60mg/mL~約200mg/mLのスクロース、及び約1.8mg/mL~約2.8mg/mLのポロキサマー188を含み、
g)約70mg/mL~約130mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体)、約30mM~約40mM(例えば、約35mM)のヒスチジン、約80mg/mLのスクロース、及び約2.0mg/mLのポロキサマー188を含む。
【0025】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、以下の何れか1つを含む:
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約35mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2mg/mLのポロキサマー188、
上記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約35mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2mg/mLのポロキサマー188、
上記医薬組成物のpHは約6.7であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約35mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2mg/mLのポロキサマー188、
上記医薬組成物のpHは約7.3であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約30mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約1.8mg/mLのポロキサマー188、
上記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約30mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2.8mg/mLのポロキサマー188、
上記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約40mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約1.8mg/mLのポロキサマー188、
上記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約40mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2.3mg/mLのポロキサマー188、
上記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約40mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2.8mg/mLのポロキサマー188、
上記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約35mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約2.3mg/mLのポロキサマー188、
上記医薬組成物のpHは約7.0であり、或いは
(a)約70mg/mL~約130mg/mLの抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、
(b)約35mMのヒスチジン、
(c)約80mg/mLのスクロース、
(d)約1.8mg/mLのポロキサマー188、
上記医薬組成物のpHは約7.0である。
【0026】
他の緩衝系
本開示は、抗FXI/FXIa抗体及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供する。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤は、酢酸塩緩衝剤、ヒスチジン塩緩衝剤、Tris-塩酸塩緩衝剤、Tris-クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤から選ばれる。当該組成物は、治療又は予防活性を有する。さらに、当該組成物はまた、安定性が良いといった利点を有してもよい。
【0027】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物のpH値は約4.0~約8.5、例えば、約5.0~約8.0、約6.0~約7.5、約6.5~約7.5、約6.6~約7.4、約6.7~約7.3、約6.8~約7.2、約6.9~約7.1(例えば、約7.0)、又はそれらの点値間の任意の範囲である。幾つかのpH値の非限定的な実施例は、約4.0、約4.5、約5.0、約6.0、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5を含む。
【0028】
一般的に、緩衝剤の置換によって得られた医薬組成物は、pHが緩衝剤pHとほぼ一致する。同時に、当業者に公知されているように、薬物製剤化のプロセスにおいて、pHドリフトが存在する場合があるが、薬物製剤のpHのドリフトは一般的に小さい(±0.3の範囲内)。幾つかの実施形態において、薬物製剤のpHのドリフトは、±0.1の範囲内にある。
【0029】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片の濃度は約0.1mg/mL~約1000mg/mL、例えば、約1mg/mL~約500mg/mL、約1mg/mL~約300mg/mL、約10mg/mL~約400mg/mL、約20mg/mL~約350mg/mL、約30mg/mL~約300mg/mL、約40mg/mL~約250mg/mL、約50mg/mL~約200mg/mL、約60mg/mL~約180mg/mL、約50mg/mL~約150mg/mL、約60mg/mL~約150mg/mL、約70mg/mL~約130mg/mL、約80mg/mL~約120mg/mL、約90mg/mL~約110mg/mL、約1mg/mL~約300mg/mL、約1mg/mL~約200mg/mL、又はそれらの点値間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、上記抗FXI/FXIa抗体の濃度は1mg/mL~100mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗FXI/FXIa抗体の濃度は40mg/mL~100mg/mLである。幾つかの非限定的な実施形態において、上記抗FXI/FXIa抗体の濃度は、約1mg/mL、約10mg/mL、約20mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL又は約200mg/mLである。
【0030】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記医薬組成物は界面活性剤を含む。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は非イオン界面活性剤である。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80)、ポロクサマー、Triton、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、オクチルグルコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノール-スルホベタイン、ステアリン-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノール-サルコシン、ステアリン-サルコシン、リノール-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウラミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミタミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミタミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、メチルココイルナトリウム、メチルオレイルタウリンナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレン及びプロピレングリコールの共重合体などから選ばれる。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤はポリソルベート又はポロキサマーである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20又はポロキサマー188である。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤はポロキサマー188である。
【0031】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記界面活性剤の濃度は0.05mg/mL~10mg/mL、例えば、0.1mg/mL~10mg/mL、0.05mg/mL~1.0mg/mL、0.1mg/mL~1.0mg/mL、0.2mg/mL~0.8mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤の濃度は0.2mg/mL~0.6mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤の濃度は0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mL又は1.0mg/mL、又はそれらの点値間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤の濃度は0.4mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は0.4mg/mLのポロキサマー188である。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は0.4mg/mLのポリソルベート80である。
【0032】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、それは浸透圧調整剤を含む。幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤は、糖(単糖、二糖、三糖、多糖、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む)、アミノ酸(アルギニン、グリシン、システイン、ヒスチジンなどを含む)又は塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなど)である。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は糖であり、上記糖は、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール(ソルビットともいう)、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンニノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、マルチトール、ラクチトールとイソ-マルツロースから選ばれる。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、スクロース、トレハロース、ソルビトール、アルギニン、プロリン、グリシン及び塩化ナトリウムからなる群から選ばれる1つ又は複数である。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は非還元二糖であり、幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤はトレハロース又はスクロースであり、幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤はスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、スクロース、プロリン及びスクロース、又はグリシン及びスクロースから選ばれる。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、浸透圧調整剤の濃度は1mg/mL~300mg/mL、例えば、約5mg/mL~約200mg/mL、約10mg/mL~約150mg/mL、約20mg/mL~約140mg/mL、約30mg/mL~約130mg/mL、約40mg/mL~約120mg/mL、約50mg/mL~約110mg/mL、約60mg/mL~約100mg/mL、約75mg/mL~約100mg/mL、約70mg/mL~約90mg/mL、約75mg/mL~約85mg/mL、約75mg/mL~約80mg/mL、約1mg/mL~約100mg/mL、約1mg/mL~約80mg/mL、約1mg/mL~約40mg/mL、又はそれらの点値間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤の濃度の非限定的な実施例は、約7.5mg/mL、約11.5mg/mL、約40mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、約100mg/mLを含む。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は等張製剤である。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は80mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、40mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、約10mM~約300mMのプロリン及び約1mg/mL~約200mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、約10mM~約200mMのプロリン及び約10mg/mL~約100mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、約50mM~約150mMのプロリン及び約10mg/mL~約80mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、約80mM~約120mMのプロリン及び約40mg/mL~約80mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、約100mMのプロリン及び約40mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、約10mM~約300mMのグリシン及び約1mg/mL~約200mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、約10mM~約200mMのグリシン及び約10mg/mL~約100mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、約50mM~約150mMのグリシン及び約10mg/mL~約80mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、約80mM~約120mMのグリシン及び約40mg/mL~約80mg/mLのスクロースである。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、約100mMのグリシン及び約40mg/mLのスクロースである。
【0034】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、上記緩衝剤の濃度は約5mM~約100mMである。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤の濃度は約10mM~約30mMである。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤の濃度は約5mM~約15mMである。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤の濃度は約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約40mM、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM又は約100mM、及びそれらの点値間の何れかの範囲である。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤は、約10mMのヒスチジン-塩酸塩である。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤は、約10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムである。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤は、約10mMのTris-塩酸である。
【0035】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物は、a)~i)の何れか1つを含む:
a)約1mg/mL~約300mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体)、及び約5mM~約100mM、約10mM~約30mM、約5mM~約15mM(例えば、約10mM)のヒスチジン-塩酸塩又はリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム又はTris-塩酸、
b)約50mg/mL~約150mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体)、及び約5mM~約100mM、約10mM~約30mM、約5mM~約15mM(例えば、約10mM)のヒスチジン-塩酸塩又はリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム又はTris-塩酸、
c)約70mg/mL~約130mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体)、及び約5mM~約100mM、約10mM~約30mM、約5mM~約15mM(例えば、約10mM)のヒスチジン-塩酸塩又はリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム又はTris-塩酸、
そのうち、a)~c)中の医薬組成物のpHは約4.0~約8.5(例えば、約6.5~約7.5、例えば、約7.0)であり、
選択的に、a)~c)中の医薬組成物は、スクロース、又はトレハロース、又はグリシン及びスクロース、又はプロリン及びスクロース、並びにポロキサマー188又はポリソルベート(例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20)をさらに含み、
幾つかの実施形態において、a)~c)中の医薬組成物は、スクロース又はトレハロースをさらに含み、例えば、濃度は約1mg/mL~約300mg/mL、約10mg/mL~約150mg/mL、約75mg/mL~約100mg/mL(例えば、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL)であり、
幾つかの実施形態において、a)~c)中の医薬組成物は、グリシン及びスクロースをさらに含み、例えば、濃度は約10mM~約300mMのグリシン及び約1mg/mL~約200mg/mLのスクロース、約10mM~約200mMのグリシン及び約10mg/mL~約100mg/mLのスクロース、約80mM~約120mMのグリシン及び約40mg/mL~約80mg/mLのスクロース(例えば、約100mMのグリシン及び約40mg/mLのスクロース、約90mMのグリシン及び約50mg/mLのスクロース、約110mMのグリシン及び約30mg/mLのスクロース)であり、
幾つかの実施形態において、a)~c)中の医薬組成物は、プロリン及びスクロースをさらに含み、例えば、濃度は約10mM~約300mMのプロリン及び約1mg/mL~約200mg/mLのスクロース、約10mM~約200mMのプロリン及び約10mg/mL~約100mg/mLのスクロース、約80mM~約120mMのプロリン及び約40mg/mL~約80mg/mLのスクロース(例えば、約100mMのプロリン及び約40mg/mLのスクロース、約90mMのプロリン及び約50mg/mLのスクロース、約110mMのプロリン及び約30mg/mLのスクロース)であり、
幾つかの実施形態において、a)~c)中の医薬組成物は、ポロキサマー188又はポリソルベート(例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20)をさらに含み、濃度は約0.1mg/mL~約10mg/mL、約1.5mg/mL~約4.0mg/mL、約1.8mg/mL~約3.5mg/mL、約1.8mg/mL~約2.8mg/mL(例えば、約1.8mg/mL、約1.9mg/mL、約2.0mg/mL、約2.1mg/mL、約2.2mg/mL、約2.3mg/mL、約2.4mg/mL、約2.5mg/mL、約2.6mg/mL、約2.7mg/mL、約2.8mg/mL)である。
【0036】
d)約1mg/mL~約300mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、約10mMのヒスチジン-塩酸塩又はリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム又はTris-塩酸を含み、上記医薬組成物のpHは約6.5~約7.5であり、選択的に、上記医薬組成物は、約80mg/mLのスクロース、及び約0.1mg/mL~約10mg/mLのポロキサマー188又はポリソルベートをさらに含んでもよい。
【0037】
e)約1mg/mL~約300mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、約10mMのヒスチジン-塩酸塩又はリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム又はTris-塩酸を含み、上記医薬組成物のpHは約6.5~約7.5であり、選択的に、上記医薬組成物は、約100mMのグリシン又はプロリン、約40mg/mLのスクロース、及び約0.1mg/mL~約10mg/mLのポロキサマー188又はポリソルベートをさらに含んでもよい。
【0038】
f)約50mg/mL~約150mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、約5mM~約100mMのヒスチジン-塩酸塩又はリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム又はTris-塩酸を含み、上記医薬組成物のpHは約4.0~約8.5であり、選択的に、上記医薬組成物は、約10mg/mL~約150mg/mLのスクロース、及び約0.1mg/mL~約10mg/mLのポロキサマー188又はポリソルベートをさらに含んでもよい。
【0039】
g)約50mg/mL~約150mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、約5mM~約100mMのヒスチジン-塩酸塩又はリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム又はTris-塩酸を含み、上記医薬組成物のpHは約4.0~約8.5であり、選択的に、上記医薬組成物は、約10mM~約200mMのグリシン又はプロリン、約10mg/mL~約100mg/mLのスクロース、及び約0.1mg/mL~約10mg/mLのポロキサマー188又はポリソルベートをさらに含んでもよい。
【0040】
h)約70mg/mL~約130mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、約5mM~約15mMのヒスチジン-塩酸塩又はリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム又はTris-塩酸を含み、上記医薬組成物のpHは約6.5~約7.5であり、選択的に、上記医薬組成物は、約80mg/mLのスクロース、及び約1.5mg/mL~約4mg/mLのポロキサマー188又はポリソルベートをさらに含んでもよい。
【0041】
i)約70mg/mL~約130mg/mLのタンパク質(例えば、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片)、約5mM~約15mMのヒスチジン-塩酸塩又はリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム又はTris-塩酸を含み、上記医薬組成物のpHは約6.5~約7.5であり、選択的に、上記医薬組成物は約100mMのグリシン又はプロリン、約40mg/mLのスクロース、及び約1.5mg/mL~約4mg/mLのポロキサマー188又はポリソルベートをさらに含んでもよい。
【0042】
本開示に係る医薬組成物は、溶媒をさらに含む。医薬組成物中の溶剤は、無毒性の生理学的に許容される液体ベクター、例えば、生理食塩水、注射用水、グルコース溶液(例えば、5%のグルコース注射液、グルコース塩化ナトリウム注射液)などから選ばれるが、これらに限定されない。
【0043】
本開示は、0.9%の生理食塩水又は5%のグルコース溶液で希釈して得られるか、或いは上記医薬組成物を、0.9%の生理食塩水又は5%のグルコース溶液で希釈した後の、静脈注射剤として利用可能な濃度を有する抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片、ヒスチジン、スクロース、ポロキサマー188を含む医薬組成物をさらに提供する。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物における抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片の濃度は、約0.01mg/mL~約50mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物における抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片の濃度は、約0.1mg/mL~約30mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物における抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片の濃度は、約0.20mg/mL~約13.30mg/mLである。
【0044】
幾つかの実施形態において、本開示の医薬組成物におけるタンパク質は、抗体、抗体断片又はFc融合タンパク質である。幾つかの実施形態において、上記抗体、抗体断片又はFc融合タンパク質が標的とする抗原は、第VIIIC因子、第IX因子、第XI因子/第XIa(FXI/FXIa)因子、組織因子、血管内皮増殖因子(VEGF)、レニン、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、リポタンパク質、α-1-抗トリプシン、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、上皮増殖因子(EGF)、形質転換増殖因子(TGF)、インターフェロン、M-CSF、GM-CSF、G-CSF、IL-1~IL-10、HER2、HER3又はHER4受容体、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM3、41BB、41BBL、OX40、OX40L、GITRL、GITR、CD25、CD27、CD70、CD80、TNFRSF25、CD40L、CD40、B7 H3、B7 H4、VISTA、TMIGD2、HHLA2-TMIGD2、ブチロフィリン(BTNL2を含む)、Siglecファミリー、TIGIT及びPVRファミリーメンバー、KIRs、ILTs及びLIRs、CD79、GARP、GITR、PSMA、ニューロピリン(Neuropilin)、CD160、CD30及びCD155、並びに任意の上記ポリペプチドの断片から選ばれる。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物中のタンパク質は、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片である。
【0045】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物に記載される抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号7、8、9に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、且つ上記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号10、11、12に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。
【0046】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体から選ばれてもよく、例えば、ヒト化抗体である。
【0047】
選択的な実施形態において、医薬組成物に記載されるヒト化抗FXI/FXIa抗体の軽鎖と重鎖可変領域における軽鎖と重鎖FRの配列は、それぞれヒト生殖細胞系の軽鎖と重鎖のFR又はその変異配列に由来する。
【0048】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片は、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
重鎖可変領域の配列は、配列番号5又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列であり、軽鎖可変領域の配列は、配列番号6又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
重鎖可変領域の配列は、配列番号13又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列であり、軽鎖可変領域の配列は、配列番号14又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
重鎖可変領域の配列は、配列番号15又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列であり、軽鎖可変領域の配列は、配列番号16又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
重鎖可変領域の配列は、配列番号17又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列であり、軽鎖可変領域の配列は、配列番号16又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列であり、
幾つかの具体的な実施形態において、医薬組成物に記載される抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片は抗体重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域の配列は配列番号17に示され、及び上記軽鎖可変領域の配列は配列番号16に示される。
【0049】
幾つかの実施形態において、上記抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含む。選択的な実施形態において、上記重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG4P(即ち、IgG4のS241P変異体)定常領域から選ばれ、上記軽鎖定常領域はヒトκ及びλ鎖定常領域から選ばれる。上記IgG4P Fc(即ち、S241Pを含むIgG4 Fc)の配列は、例えば、配列番号19に示される。幾つかの実施形態において、上記重鎖CH1の配列は、配列番号18に示されるか又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列であり、及び/又は上記軽鎖定常領域の配列は、配列番号20に示されるか又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列である。
【0050】
幾つかの実施形態において、上記抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片は重鎖及び軽鎖を含み、そのうち、上記重鎖は、配列番号21に示される配列又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列であり、及び上記軽鎖は、配列番号22に示される配列又はそれと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の同一性を有する配列である。
【0051】
本開示において、上記「少なくとも90%の同一性」は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性をカバーする。
【0052】
本開示において、上記「少なくとも90%の同一性」は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性をカバーする。
【0053】
幾つかの具体的な実施形態において、医薬組成物に記載される抗FXI/FXIa抗体は抗体の重鎖及び軽鎖を含み、そのうち、上記重鎖の配列は配列番号21に示され、及び上記軽鎖の配列は配列番号22に示される。
【0054】
幾つかの実施形態において、上記抗FXI/FXIa抗体の抗原結合断片は、Fab、Fv、sFv、Fab’、F(ab’)2、線形抗体、単鎖抗体、scFv、sdAb、sdFv、ナノボディ、ペプチド抗体peptibody、ドメイン抗体及び多重特異性抗体(二重特異性抗体、diabody、triabody及びtetrabody、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFv)であり、例えば、具体的にscFv、Fv、Fab又はFab’断片である。
【0055】
幾つかの実施形態において、上記抗FXI/FXIa抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸変化を含む。上記アミノ酸変化は、可変領域中のアミノ酸残基の保存的置換であってもよい。
【0056】
幾つかの実施形態において、上記抗FXI/FXIa抗体は、
内在の血液凝固経路又は共通の血液凝固経路の活性化を防止すること、
FXI及び/又はFXIaが、血液凝固因子IX、血液凝固因子XIIa又はトロンビンのうちの1つ又は複数及び血液凝固経路の他の成分に結合するのを遮断すること、
FIX、FXI及びFXIaのうちの1つ又は複数が、血小板受容体に結合するのを遮断すること、
≦10-9KDでヒトFXI及び/又はFXIaタンパク質に結合すること、
FXI/FXIaに結合した場合、FXI/FXIaの触媒ドメインが活性立体配座を示すことを阻止すること、
皮下投与又は静脈内投与に適用できること、
の何れか1つ又は複数の特性を有してもよい。
【0057】
上記親和性の測定方式は例えば、BIACORETMである。
【0058】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つの医薬組成物は、静脈注射剤、皮下注射剤、腹腔注射剤又は筋肉注射剤であってもよい。
【0059】
幾つかの実施形態において、本開示は、上記何れか1つの医薬組成物を調製する方法を提供し、上記方法は、抗FXI/FXIa抗体又はその抗原結合断片原液を緩衝剤で置換するステップを含む。
【0060】
本開示は、上記何れか1つに記載の医薬組成物を含む液体製剤をさらに提供する。
【0061】
本開示に係る医薬組成物は、十分な創薬安定性を持っており、長期間安定に放置することができる。
【0062】
本開示は、抗FXI/FXIa抗体を含む医薬組成物の凍結乾燥製剤を調製する方法をさらに提供し、上記方法は、上記医薬組成物を凍結乾燥するステップを含む。
【0063】
本開示は、抗FXI/FXIa抗体を含む医薬組成物の凍結乾燥製剤をさらに提供し、上記凍結乾燥製剤は、上記何れか1つに記載の医薬組成物を凍結乾燥することで得られる。
【0064】
幾つかの実施形態において、凍結乾燥製剤は、2~8℃で暗所で保存されると、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも30ヶ月間安定している。
【0065】
幾つかの実施形態において、上記凍結乾燥製剤は、25℃で少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間安定している。
【0066】
幾つかの実施形態において、上記凍結乾燥製剤は、40℃で少なくとも7日間、少なくとも14日間又は少なくとも30日間安定している。
【0067】
本開示は、抗FXI/FXIa抗体医薬組成物を含む再溶解溶液をさらに提供し、上記再溶解溶液は、上記何れか1つの凍結乾燥製剤を再溶解することで調製されて得られる。
【0068】
本開示は、上記何れか1つに記載の医薬組成物、液体製剤、凍結乾燥製剤又は再溶解溶液が収容された容器を含む製品をさらに提供する。幾つかの実施形態において、上記容器は、中性ホウケイ酸ガラス管製の注射剤バイアルであってもよいが、これに限定されない。
【0069】
本開示は、上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つの液体製剤、上記何れか1つの凍結乾燥製剤、上記何れか1つの再溶解溶液又は上記何れか1つに記載の製品の、疾患を治療するための薬剤の調製における使用をさらに提供する。
【0070】
本開示は、疾患を治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象に有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つの液体製剤、上記何れか1つの凍結乾燥製剤、上記何れか1つの再溶解溶液又は上記何れか1つに記載の製品を投与することを含む方法をさらに提供する。
【0071】
本開示は、疾患を治療する使用のための上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つの液体製剤、上記何れか1つの凍結乾燥製剤、上記何れか1つの再溶解溶液又は上記何れか1つに記載の製品をさらに提供する。
【0072】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の疾患であって、それは、血栓形成性若しくは血栓塞栓性疾患及び/又は血栓形成性若しくは血栓塞栓性合併症、又は不整脈、心原性血栓塞栓、びまん性血管内血液凝固である。
【0073】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の疾患であって、上記血栓形成性又は血栓塞栓性疾患は、心冠動脈疾患、例えば、急性冠動脈症候群(ACS)、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)と非ST上昇型心筋梗塞(非STEMI)、安定狭心症、不安定狭心症、冠動脈インターベンション後の再閉塞と再狭窄、及び末梢動脈閉塞性疾患、肺塞栓、静脈血栓塞栓、静脈血栓形成、一過性脳虚血発作、及び血栓形成性脳卒中と血栓塞栓性脳卒中を引き起こす他の血管中の血栓形成性又は血栓塞栓性疾患、慢性血栓塞栓(CTEPH)による肺疾患と肺動脈高血圧又はそれらの組み合わせから選ばれるが、これらに限定されない。
【0074】
本開示は、疾患を治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象に治療又は予防有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つの液体製剤、上記何れか1つの凍結乾燥製剤、上記何れか1つの再溶解溶液又は上記何れか1つに記載の製品を投与することを含む方法を提供し、そのうち、上記疾患は、血栓形成性若しくは血栓塞栓性疾患及び/又は血栓形成性若しくは血栓塞栓性合併症、又は不整脈、心原性血栓塞栓、びまん性血管内血液凝固である。幾つかの実施形態において、上記血栓形成性若しくは血栓塞栓性疾患又はその合併症は、心冠動脈疾患、例えば、急性冠動脈症候群(ACS)、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)と非ST上昇型心筋梗塞(非STEMI)、安定狭心症、不安定狭心症、冠動脈インターベンション後の再閉塞と再狭窄、及び末梢動脈閉塞性疾患、肺塞栓、静脈血栓塞栓、静脈血栓形成、一過性脳虚血発作、及び血栓形成性脳卒中と血栓塞栓性脳卒中を引き起こす他の血管中の血栓形成性又は血栓塞栓性疾患、慢性血栓塞栓(CTEPH)による肺疾患と肺動脈高血圧又はそれらの組み合わせから選ばれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、上記投与の方式は、皮下又は静脈注射である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】抗FXI/FXIa抗体のインビトロFXIIa媒介性のFXI活性化酵素活性阻害試験である。
図2】ヒト血のaPTT/PT抗血液凝固活性の検出であり、そのうち、図2A、2Bは、それぞれ抗FXI/FXIa抗体のヒト血でのaPTT及びPT試験結果である。1209は、本願のスクリーニングにより得られた別の抗FXI/FXIa抗体である。
図3】サル血のaPTT/PT抗血液凝固活性の検出であり、そのうち、図3A、3Bは、それぞれ抗FXI/FXIa抗体のサル血でのaPTT及びPT試験結果である。
図4】抗FXI/FXIa抗体のカニクイザルでの動物実験検出であり、そのうち、図4Aは、抗体3882のカニクイザル体内でのaPTT、血漿薬物濃度、FXI:C%及び遊離FXIの変化曲線であり、図4Bは、抗体3882のカニクイザル体内での血栓生成阻害作用であり、図4C及び図4Dは、抗体3882のカニクイザル体内での安全性試験であり、それぞれ出血時間測定及びPT検出結果である。
図5】抗FXI/FXIa抗体のカニクイザルでのインビボ薬力学(PD)試験結果であり、そのうち、図5AはAPTT(s)検出結果であり、図5BはFXI:C(%)検出結果であり、3882(1mg/kg)は静脈内投与及び皮下投与という2つの方式であり、対照BAY1213790(1mg/kg)は静脈内投与方式である。
図6】抗FXI/FXIa抗体製剤緩衝系のpH値のスクリーニングであり、そのうち、図6A、6B、6Cはそれぞれ異なるpH/buffer 40℃の条件下でのSEC、NRCE、iCIEFの変化傾向である。
図7】抗FXI/FXIa抗体製剤中のpH、添加物及び界面活性剤の濃度のファインスクリーニングであり、そのうち、図7A、7B、7Cは、それぞれ異なるpH/buffer 40℃の条件下でのSEC、NRCE、CEXの変化傾向である。
図8】抗FXI/FXIa抗体製剤緩衝系及び界面活性剤の種類のスクリーニングであり、そのうち、図8A、8Bは、それぞれ異なる界面活性剤の40℃の条件下でのSEC、CEXの変化傾向である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
用語
本開示がさらに容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本明細書で別途明確に定義しない限り、本明細書に使用される他の技術及び科学用語の全ては、当業者に通常理解されている意味を持っている。
【0077】
「緩衝剤」は、その酸-塩基共役成分の作用によりpHの変化に耐える緩衝剤を指す。pHを適当な範囲に制御する緩衝剤の例は、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン、シュウ酸塩、乳酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グリシルグリシン及び他の有機酸緩衝剤を含む。
【0078】
「ヒスチジン緩衝剤」は、ヒスチジンイオンを含む緩衝剤である。ヒスチジン緩衝剤の実例は、ヒスチジン-塩酸塩、ヒスチジン-酢酸塩、ヒスチジン-リン酸塩、ヒスチジン-硫酸塩などの緩衝剤を含み、好ましくはヒスチジン-塩酸塩緩衝剤である。ヒスチジン-塩酸塩緩衝剤は、ヒスチジンと塩酸又はヒスチジンとヒスチジン塩酸塩で調製される。
【0079】
「自己緩衝の」とは、他の緩衝剤のない場合、薬物タンパク質などの物質(例えば、抗体又はその抗原結合断片、幾つかの実施形態において、抗FXI/FXIa抗体、例えば、本開示の3882抗体)が、ある使用のpH変化に抵抗するのに十分な能力を指す。
【0080】
「Tris-クエン酸塩緩衝剤」は、クエン酸イオンを含む緩衝剤である。Tris-クエン酸塩緩衝剤の実例は、Tris-塩酸塩、Tris-酢酸塩、Tris-リン酸塩、Tris-硫酸塩、Tris-クエン酸塩などの緩衝剤などを含み、好ましくはTris-クエン酸塩である。
【0081】
「Tris-塩酸塩緩衝剤」は、塩酸イオンを含む緩衝剤である。Tris-塩酸塩緩衝剤の実例は、Tris-塩酸塩、Tris-酢酸塩、Tris-リン酸塩、Tris-硫酸塩、Tris-クエン酸塩などの緩衝剤などを含む。好ましいクエン酸塩緩衝剤は、Tris-塩酸塩緩衝剤である。
【0082】
「リン酸塩緩衝剤」は、リン酸イオンを含む緩衝剤である。リン酸塩緩衝剤の実例は、リン酸水素二ナトリウム酸-リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム酸-リン酸二水素カリウムなどを含む。好ましいリン酸塩緩衝剤は、リン酸水素二ナトリウム酸-リン酸二水素ナトリウム緩衝剤である。
【0083】
「酢酸塩緩衝剤」は、酢酸イオンを含む緩衝剤である。酢酸塩緩衝剤の実例は、酢酸-酢酸ナトリウム、酢酸-ヒスチジン塩、酢酸-酢酸カリウム、酢酸-酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウムなどを含む。好ましい酢酸塩緩衝剤は、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝剤である。
【0084】
「医薬組成物」は、1つ又は複数の本明細書に記載される化合物又はその生理学的/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと、生理学的/薬学的に許容されるベクター及び賦形剤などの他の化学成分とを含む混合物を示す。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与してさらに生物活性を発揮するためのものである。本明細書において、「医薬組成物」と「製剤」は互いに排他的ではない。
【0085】
本開示に記載される医薬組成物の溶液形態は、特に説明のない限り、その中の溶媒は何れも水である。
【0086】
本明細書に使用される「約」という用語は、数値が当業者により測定される具体値の許容可能な誤差範囲内にあることを意味し、上記数値部分は、如何に計測又は測定するか(即ち、計測システムの限度)によって決められる。例えば、この分野での各回の実行において、「約」は、1以内又は1を超えた標準差を意味してもよい。或いは、「約」又は「基本的に含む」は、多くとも20%の範囲を意味してもよい。さらに、特に生物学的システム又はプロセスについて、当該用語は、多くとも1桁又は数値の多くとも5倍を意味してもよい。特に説明のない限り、具体値が本願及び特許請求の範囲に現れる場合、「約」又は「基本的に含む」の意味は、当該具体値の許容可能な誤差範囲内にあると仮定すべきである。
【0087】
本開示に記載される医薬組成物は、安定な効果を達成することができ、即ち、その中の抗体が貯蔵後に基本的にその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を保持しており、好ましくは、医薬組成物は貯蔵後に、基本的にその物理的・化学的安定性及びその生物学的活性を保持している。貯蔵期間は、一般的に医薬組成物の所定の保存期間に基づいて選択される。現在、タンパク質の安定性を測定する分析技術が複数種あり、所定の温度で、所定の期間貯蔵した後の安定性を測定することができる。
【0088】
安定な薬物抗体製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、より好ましくは1年間、且つさらにより好ましくは最長2年間保存された場合に、顕著な変化が認められない製剤である。また、安定な液体製剤は、25℃を含む温度で1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、又は40℃で1ヶ月を含む期間保存した後、所望の特徴を示している液体製剤を含む。安定性の典型的な許容可能な基準は、SEC-HPLCによって測定され、通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えない抗体モノマーが分解されることである。視覚的分析により、薬物抗体製剤は、無色又は黄色、透明からやや乳白光である。上記製剤の濃度、pH及び重量モル浸透圧濃度は、±10%を超えない変化を有する。通常、約10%を超えず、好ましくは、約5%を超えない切断が見られ、通常、約10%を超えず、好ましくは、約5%を超えない凝集が形成される。
【0089】
色及び/又は透明度を目視で検査したところ、又はUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び動的光散乱(DLS)により測定したところ、抗体が顕著な凝集の増加、沈殿及び/又は変性を示さない場合、上記抗体は、薬物製剤において「その物理的安定性を保持している」とする。タンパク質の立体配座の変化は、蛍光分光法(タンパク質の三次構造を決定するもの)により、及びFTIR分光法(タンパク質の二次構造を決定するもの)により評価することができる。
【0090】
抗体が顕著な化学的変化を示さない場合、上記抗体は、薬物製剤において「その化学的安定性を保持している」とする。化学的安定性は、化学的に形態が変化されたタンパク質を検出・定量することにより、評価することができる。タンパク質の化学構造を常に変化させる分解プロセスは、加水分解又は切断(サイズ排除クロマトグラフィー及びSDS-PAGEなどの方法により評価される)、酸化(質量分析法又はMALDI/TOF/MSと組み合わせるペプチドマッピングなどの方法により評価される)、脱アミド作用(イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸の測定などの方法により評価される)及び異性化(イソアスパラギン酸の含有量の測定、ペプチドマッピングなどにより評価される)を含む。
【0091】
所定の期間における抗体の生物活性が薬物製剤の調製時に示された生物活性の所定範囲にあると、上記抗体は、薬物製剤において「その生物活性を保持している」とする。抗体の生物活性は、例えば、抗原結合測定によって決定することができる。
【0092】
「第XI因子」は、本明細書において「血液凝固因子XI」、「FXI」又は「fXI」とも呼ばれ、分子量が約160キロダルトン(kD)の二本鎖糖タンパク質である。2つの鎖は、同一のジスルフィド結合を介して連結された、約80,000ダルトンの分子量を有するポリペプチドであってもよい。FXIは、4つの「アップルドメイン(apple domains)」(N-末端由来のA1~A4、重鎖)とC-末端触媒ドメイン(軽鎖)を含む。特定の理論に制限されることが望まれず、4つのアップルドメインは他のタンパク質へのFXI結合部位を含むと考えられ、例えば、A1対トロンビン、A2対HK、A3対第IX因子(FIX)、GPIbとヘパリン、A4対FXIIaである。FXIは、第XIIa(FXIIa)因子によりその活性形態である血液凝固因子XIa(FXIa)に形質転換することができる。セリンプロテアーゼFXIaは、血液凝固因子IXを血液凝固因子IXaに形質転換し、後者はその後、血液凝固因子X(Xa)を活性化する。Xaはその後、血液凝固因子II/トロンビンの活性化を媒介することができる。
【0093】
本開示に用いられるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J.biol.chem、243、p3558(1968)に記載された通りである。
【0094】
「抗体」又は「免疫グロブリン」は、最も広義に使用され、且つ種々の抗体構造をカバーし、従来の抗体(2つの同じ重鎖と2つの同じ軽鎖が鎖間ジスルフィド結合によって連結されてなるテトラペプチド鎖構造抗体)、及び抗原結合活性を有するFab、Fv、sFv、F(ab’)2、線形抗体、単鎖抗体、scFv、sdAb、sdFv、ナノボディ、ペプチド抗体peptibody、ドメイン抗体(重鎖(VH)抗体、軽鎖(VL)抗体)及び多重特異性抗体(二重特異性抗体、diabody、triabodyとtetrabody、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFv)を含むが、これらに限定されない。本開示に使用される「抗体」という用語は、全長抗体、その単一の鎖、及びその抗原結合活性を有する任意の部分(即ち、抗原結合断片)、ドメイン又は断片、並びにその単一の鎖と、抗原結合活性を有する任意の部分、ドメイン又は断片とを含む多重特異性抗体(抗原結合ドメイン又は断片、それぞれ例えば、VHHドメイン又はVH/VLドメインを含むが、これらに限定されない)を含む。従来の抗体又は免疫グロブリンは、通常、2つの同じ重鎖及び2つの同じ軽鎖が鎖間ジスルフィド結合によって連結されてなるテトラペプチド鎖構造である。重鎖定常領域のアミノ酸組成及び配列順序によって、免疫グロブリンは、5種類に分けられ、又はIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEという免疫グロブリンのアイソタイプと呼ばれてもよく、その対応する重鎖は、それぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖、及びε鎖である。同一種類のIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成及び重鎖ジスルフィド結合の数と位置の違いによって、さらに異なるサブクラスに分けることができ、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができる。軽鎖は、定常領域の違いによって、κ鎖又はλ鎖に分けられる。5種類のIgのそれぞれは、何れもκ(kappa)鎖又はλ(lambda)鎖を有してもよい。幾つかの実施例において、本開示の抗体は、ヒトFXI/FXIaに特異的に又は基本的に特異的に結合する。
【0095】
抗体の重鎖及び軽鎖は、N末端に近い約110個のアミノ酸の配列の変化がとても大きくて、可変領域(Fv領域)となり、C末端に近い残りのアミノ酸配列が比較的に安定で、定常領域となる。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)と、配列が比較的に保存的である4つの骨格領域(FR)とを含む。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも称される。それぞれの軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)は、3つのCDR領域と、4つのFR領域とからなり、アミノ基末端からカルボキシ基末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列されている。軽鎖の3つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。本開示に記載される抗体又は抗原結合断片のLCVR領域及びHCVR領域のCDRアミノ基酸残基は、数量と位置において既知のKabat番号付け規則(LCDR1-3、HCDR2-3)に適合し、又はkabatとchothia番号付け規則(HCDR1)に適合する。
【0096】
本開示の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体を含み、好ましくはヒト化抗体である。
【0097】
「キメラ抗体(chimeric antibody)」という用語は、マウス抗体の可変領域をヒト抗体の定常領域と融合してなる抗体であり、マウス抗体により誘発される免疫応答反応を低減することができる。キメラ抗体を作成するには、まず、マウス特異的モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作成し、そしてマウスハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子をクローニングし、さらに、必要に応じてヒト抗体の定常領域遺伝子をクローニングし、マウス可変領域遺伝子とヒト定常領域遺伝子とをキメラ遺伝子になるように連結した後、ヒトベクターに挿入し、最後に真核細胞系又は原核細胞系においてキメラ抗体分子を発現する。本開示の一好ましい実施形態において、上記FXIキメラ抗体の抗体軽鎖は、ヒトκ、λ鎖又はその変異体の軽鎖定常領域をさらに含む。上記FXIキメラ抗体の抗体重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はその変異体の重鎖定常領域をさらに含む。
【0098】
「ヒト化抗体(humanized antibody)」という用語は、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)とも呼ばれ、マウスのCDR配列をヒトの抗体可変領域フレームワーク、即ち、異なる種類のヒト生殖細胞系の抗体フレームワーク配列に移植して発生された抗体を指す。キメラ抗体が大量のマウスタンパク質成分を持っていることにより誘導された強い抗体反応を克服することができる。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む共通DNAデータベース又は開示された参考文献から取得することができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(インターネットwww.mrccpe.com.ac.uk/vbaseで取得可能)、及びKabat、E.A.et al.、1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th editionから見出すことができる。免疫原性の低下に伴う活性の低下を回避するために、上記ヒト抗体可変領域フレームワーク配列に対して最も少ない逆変異又は復帰変異を行うことにより、活性を保つことができる。本開示のヒト化抗体は、さらにファージで提示される、CDRに対して親和性成熟を行ったヒト化抗体も含む。
【0099】
本開示に記載される変異配列における「変異」は、「復帰変異」、「保存的修飾」又は「保存的置換又は置換」を含むが、これらに限定されない。本開示に記載される「保存的修飾」又は「保存的置換又は置換」は、類似の特徴(例えば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、主鎖の立体配座や剛性など)を有する他のアミノ酸でタンパク質中のアミノ酸を置換することで、タンパク質の生物学的活性を変えずに頻繁に変化可能にすることを意味する。当業者に知られているように、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換によって、基本的に生物学的活性を変えることはない(例えば、Watson et al.(1987) Molecular Biology of the Gene、The Benjamin/Cummings Pub.Co.、224ページ、(4th edition)を参照)。また、構造又は機能が類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。
【0100】
本開示に記載される「変異配列」は、本開示のヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列に対して適当な置換、挿入や欠失などの変異修飾を行った場合に、得られた本開示のヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列と異なる百分率の配列同一性程度を有するヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列を指す。本開示に記載される配列同一性は、少なくとも85%、90%又は95%、例えば、少なくとも95%であってもよい。非限定的な実施例は、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%を含む。2つの配列間の配列比較及び同一性の百分率測定は、National Center For Biotechnology Instituteのホームページから取得可能なBLASTN/BLASTPアルゴリズムのデフォルト設定により行うことができる。
【0101】
本開示の「FXI/FXIaに結合する」という用語は、FXI/FXIa又はそのエピトープと相互作用可能であることを指し、上記FXI/FXIa又はそのエピトープはヒト由来であってもよい。本開示の「抗原結合部位」という用語は、抗原において連続しておらず、本開示の抗体又は抗原結合断片により認識される3次元空間部位を指す。
【0102】
「特異的結合」という用語は、本分野で利用可能な技術、例えば、競合ELISA、BIACORE(登録商標)測定又はKINEXA(登録商標)測定によって測定されるものを指す。当該用語は、例えば、本開示に係る抗体の抗原結合ドメインが、多くの抗原で担持された特定のエピトープに特異的である場合にも適用され、この場合、抗原結合ドメインを担持した抗体は、当該エピトープを担持した多種の抗原に特異的に結合することができる。
【0103】
「保存的修飾」又は「保存的置換又は置換」は、類似の特徴(例えば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、主鎖の立体配座や剛性など)を有する他のアミノ酸でタンパク質中のアミノ酸を置換することで、タンパク質の生物学的活性を変えずに頻繁に変化可能にすることを意味する。当業者に知られているように、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換によって、基本的に生物学的活性を変えることはない(例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene、The Benjamin/Cummings Pub.Co.、224ページ、(4th edition)を参照)。また、構造又は機能が類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。
【0104】
アミノ酸配列の「同一性」は、2つのタンパク質又はポリペプチドの間の配列の類似性を指す。2つの比較される配列における位置が何れも同じアミノ酸残基に占められる場合、例えば、2つのポリペプチドの1つの位置が同一のアミノ酸残基に占められる場合、上記分子は当該位置で相同である。配列同一性百分率及び配列類似性百分率を決定するのに適したアルゴリズムの実例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、それらは、それぞれAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1977)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは、米国国立生物工学情報センターから公的に入手可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0105】
従来技術においてよく知られている抗体及び抗原結合断片の産生・精製方法は、例えば、コールド・スプリング・ハーバーの抗体実験技術マニュアルの5章~8章及び15章の通りである。発明に記載される抗体又は抗原結合断片は、遺伝子工学的方法により、非ヒトCDR領域に1つ又は複数のヒトFR領域が加えられる。ヒトFR生殖細胞系配列は、IMGTヒト抗体可変領域生殖細胞系遺伝子データベースとMOEソフトウェアをアラインメントすることにより、ImMunoGeneTics(IMGT)のホームページであるhttp://imgt.cines.frから取得し、又は免疫グロブリン雑誌である2001ISBN012441351から取得することができる。
【0106】
本開示に係る工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により調製・精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローンニングしてGS発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定的にトランスフェクションすることができる。さらに好ましい従来技術の一つとして、哺乳類発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端部位において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。ヒトFXIに特異的に結合する抗体を発現することにより、安定なクローンが得られる。陽性のクローンは、バイオリアクターの無血清培地において拡大培養することで、抗体を産生する。抗体が分泌された培養液は、通常の技術により精製することができる。例えば、調整された緩衝剤を含むA又はG Sepharose FFカラムで精製が行われる。非特異的に結合した成分を洗い流す。さらに、pH勾配法により、結合した抗体を溶離し、SDS-PAGEで抗体断片を検出し、収集する。抗体は、通常の方法によりろ過して濃縮することができる。可溶性の混合物及びポリマーは、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに-70℃などで冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0107】
「投与」及び「処理」は、動物、ヒト、実験の対象、細胞、組織、器官や生物流体に適用される場合に、外因性薬剤、治療剤、診断薬又は組成物と、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官や生物流体との接触を意味する。「投与」及び「処理」は例えば、治療、薬物動態、診断、研究及び実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬の細胞との接触、及び試薬の流体との接触を含み、そのうち、上記流体は細胞と接触する。「投与」及び「処理」は、また、試薬、診断、結合組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで例えば細胞を処理することを意味する。「処理」はヒト、獣医学又は研究対象に使用される場合に、治療的処理、予防又は予防的措置、研究及び診断的使用を意味する。
【0108】
「治療」は、例えば、本開示の何れか1つの結合化合物の組成物を含む経口又は外用治療剤を患者に与えることを意味し、上記患者は1つ又は複数の疾患症状を有するが、既知の上記治療剤は、これらの症状に対して治療作用を有する。通常、治療される患者又は集団には、1つ又は複数の疾患症状を効果的に緩和する量で治療剤を与えることにより、これらの症状の解消を誘導し、又は臨床的に測定可能な任意の程度まで進行しないようにこれらの症状を阻害する。何れかの具体的な疾患症状を効果的に緩和する治療剤の量(「治療有効量」ともいう)は、患者の疾患状態、年齢と体重、及び薬剤の患者において必要な治療効果を発生させる能力など、種々の要因により変化することができる。当該症状の重症度又は進行状況の評価に医者又は他のプロのヘルスケアプロバイダによく用いられる任意の臨床的検出方法により、疾患症状が低減されたか否かを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、それぞれの目標疾患症状の緩和において無効な可能性があるが、本分野で知られている任意の統計的検定方法、例えばStudent t検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定とWilcoxon検定により、統計的に顕著な数の患者において目標疾患症状を低減可能なことが決定される。
【0109】
「有効量」は、医学的疾患の症状又は病状の改善又は予防に十分な量を含む。有効量は、さらに、診断の許容又は促進に十分な量を指す。特定の患者又は獣医対象に用いられる有効量は、例えば、治療すべき病状、患者の全体的な健康状況、投与の方法経路と用量及び副作用の重症度などの要因によって変化することができる。有効量は、顕著な副作用又は毒性作用が回避される最大用量又は投与計画であってもよい。
【0110】
「Tm値」とは、タンパク質の熱変性温度、即ち、タンパク質の半分がアンフォールディングした場合の温度であり、この場合、タンパク質の空間構造が破壊されたので、Tm値が高いほど、タンパク質の熱安定性が高くなる。
【0111】
実施例
以下、実施例と合わせて本開示をさらに説明するが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。本開示の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に、例えばコールド・スプリング・ハーバーの抗体技術実験マニュアル、分子クローニングマニュアルなどの通常の条件、或いは原料又は商品メーカーにより提案された条件に従う。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0112】
実施例1.抗FXI/FXIaのハイブリドーマモノクローナル抗体のスクリーニング及び調製
1、ヒトFXI/FXIa抗原及び検出タンパク質の調製
ヒトFXI/FXIaタンパク質(Uniprot Acc No.P03951)は、本開示に係る抗原及び検出用タンパク質として、Enzyme research laboratories(FXI:Cat.HFXI1111、FXIa:HFXIa 1111a)から購入された。以下のFXI/FXIa抗原は、特に説明のない限り、何れもヒトFXI/FXIaを指す。
【0113】
>ヒトFXI/FXIaのアミノ酸配列:
【化1】
同時に、以下のKLH複合のFXIa特異的ポリペプチドを人工合成してマウスの免疫に使用した。
【0114】
【化2】
【化3】
【化4】
【0115】
2、FXI/FXIa関連組換えタンパク質の精製、及びハイブリドーマ抗体、組換え抗体の精製
(1)マウスハイブリドーマ上清の単離精製/ProteinG親和性クロマトグラフィー:
マウスハイブリドーマ上清の精製に対して、好ましくは、ProteinG充填剤(KANEKA:Cat.KanCapTMG)により親和性クロマトグラフィーを行い、培養して得られたハイブリドーマを遠心分離して上清を取り、ProteinG充填剤が入った重力カラムを精製に使用し、まず、6Mの塩酸グアニジン(Simga:Cat.G3272-1KG)により3~5倍のカラム体積で再生し、次に純水により3~5倍のカラム体積で洗浄し、さらに1×PBS(pH7.4)(Sangon Biotech(Shanghai)co.、Ltd.:Cat.E607016-0500)緩衝系を平衡緩衝剤としてクロマトグラフィーカラムを3~5倍のカラム体積で平衡し、細胞上清を低流速でカラムにかけて結合し、保持時間が約1min又はそれ以上になるように流速を制御し、紫外線吸収が基線に反落されるまで、1×PBS(pH7.4)でクロマトグラフィーカラムを3~5倍のカラム体積で洗浄し、0.1MのGlycine(pH3.0)(Sigma:Cat.410225-250G)緩衝剤により試料を溶離し、紫外線検出により溶離ピークを収集し、溶離生成物を1MのTris-HCl(pH8.0)(Vetec、Cat.V900483)でpH7~8に速く調整し、暫く保存した。溶離生成物は、例えば、限外ろ過管による限外ろ過濃縮、溶液の所望の緩衝系への置換、又は分子排除クロマトグラフィー、例えば、G-25脱塩による所望の緩衝系への置換など、当業者によく知られている方法により溶液を置換することができる。
【0116】
(2)Protein A親和性クロマトグラフィーによる、ヒトFcタグ付きの融合タンパク質又は抗体の抽出:
まず、Fc融合タンパク質又は抗体を発現した細胞培養上清を高速で遠心分離し、上清を収集した。ProteinA(GE、Cat:17-5474-99)親和性カラムを0.1MのNaOH(Sigma:Cat:71687-500g)により5倍のカラム体積で再生し、次に1×PBS(pH7.4)(Sangon Biotech(Shanghai)co.、Ltd.:Cat.E607016-0500)により5倍のカラム体積で洗浄して平衡した。細胞上清を低流速でカラムにかけて結合し、保持時間が約1min又はそれ以上になるように流速を制御し、結合完了後に1×PBS(pH7.4)により、紫外線吸収が基線に反落されるまで、クロマトグラフィーカラムを5倍のカラム体積で洗浄した。0.1MのGlycine(pH3.0)(Sigma:Cat.410225-250G)緩衝剤により試料を溶離し、紫外線検出により溶離ピークを収集し、溶離生成物を1MのTris-HCl(pH8.0)(Vetec、Cat.V900483)によりpH7~8に速く調整し、暫く保存した。溶離生成物は、例えば、限外ろ過管による限外ろ過濃縮、溶液の所望の緩衝系への置換、又は分子排除クロマトグラフィー、例えば、G-25脱塩による所望の緩衝系への置換など、当業者によく知られている方法により溶液を置換することができる。
【0117】
(3)陰イオンクロマトグラフィーによる抗体の精製:
まず、平衡緩衝剤である20mMのTris pH8.0(Vetec、Cat.V900483)により試料を導電率が3ms/cm未満になるまで希釈し、Q HP(GE、Cat:17-1014-01)陰イオンクロマトグラフィーカラムを0.5MのNaOH(Sigma:Cat:71687-500g)により5倍のカラム体積で再生し、次に20mMのTris pH8.0(Vetec、Cat.V900483)により15倍のカラム体積で洗浄して平衡した。試料を低流速でカラムにかけて結合し、保持時間が約2min又はそれ以上になるように流速を制御し、結合完了後に20mMのTris pH8.0(Vetec、Cat.V900483)により、紫外線吸収が基線に反落されるまで、クロマトグラフィーカラムを10倍のカラム体積で洗浄した。溶離緩衝剤である20mMのTris pH8.0(Vetec、Cat.V900483)0.5MのNaCl(Vetec、Cat.V900058)により0~100%の勾配で溶離し、SEC-UPLC(Column:Waters ACQUITY UPLC(登録商標)Protein BEH SEC column 200Å、1.7μm、Cat.186005225)純度によって溶離ピークを検出して収集した。溶離生成物は、例えば、限外ろ過管による限外ろ過濃縮、溶液の所望の緩衝系への置換、又は分子排除クロマトグラフィー、例えば、G-25脱塩による所望の緩衝系への置換など、当業者によく知られている方法により溶液を置換することができる。
【0118】
3、抗体のスクリーニング
SJL白いマウス5匹、Balb/c白いマウス5匹を取り、それぞれ25μgのFXIa抗原と3つのKLH複合のポリペプチドをアジュバントと混合して免疫した。時間は0、14、35日目である。0日目に、乳化された抗原を25μg/匹で腹腔内(IP)注射した。14、35日目に12.5μg/匹で注射した。21、42日目に採血し、ELISA方法でマウス血清中の抗体価を決定した。4回目~5回目の免疫後に、血清中の抗体価が高くて安定する傾向があるマウスを選択して脾細胞の融合を行った。
【0119】
最適化されたPEG媒介性の融合ステップにより、脾リンパ球を骨髄腫細胞Sp2/0-Ag14細胞と融合してハイブリドーマ細胞を得た。ハイブリドーマ細胞の成長密度によって、結合ELISA方法によりハイブリドーマ培養上清に対して精製、細胞結合実験及び細胞遮断実験を行い、陽性のウェル細胞を適時に増幅、凍結保存、品種保存、及びシークエンシングを行った。ELISA方法によりハイブリドーマ細胞をさらにスクリーニングした後、ハイブリドーマクローンを得て、次に抗体を調製して精製した。
【0120】
陽性クローン3807を得て、対応する抗体の可変領域のアミノ酸配列は以下の通りである:
>3807-VH:
【化5】
>3807-VL:
【化6】
【0121】
【表1】
【0122】
実施例2.抗FXI/FXIaハイブリドーマ抗体のヒト化及び免疫原性の改変
1、ヒト化
抗体分子3807に対して3次元相同モデリングを行うことにより、V-baseヒト生殖細胞系配列データベース、IMGTヒト抗体重鎖可変領域生殖細胞系遺伝子データベースとアラインメントした結果と合わせて、スクリーニングされた抗体と相同性の高い重鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をテンプレートとして選択し、マウス由来のモノクローナル抗体のCDRを対応するヒトモジュールに移植した。移植された抗体に対して改めて3次元構造のシミュレーションと分析を行い、FR領域におけるCDR領域の構造形態に影響を与える特定の部位を復帰変異した。そのうち、アミノ酸残基は、Kabat番号付けシステムによって決定されて注釈されている。
【0123】
ハイブリドーマクローン3807のヒト化アーキテクチャは、軽鎖テンプレートがIGKV3-11*01、重鎖テンプレートがIGHV1-69-2*01であり、ヒト化可変領域配列が以下の通りである(下線はCDRである):
>3807VH-CDR graft
【化7】
>3807VL-CDR graft
【化8】
ハイブリドーマクローン3807の復帰変異部位及び変異方式は、表2のように設計された。
【0124】
【表2】
【0125】
そのうち、3807-VH1及び3807-VL3の具体的配列は以下の通りである。
>3807-VH1:
【化9】
>3807-VL3:
【化10】
抗体3871は、VHが3807-VH1、VLが3807-VL3である。
【0126】
2、免疫原性の改変
抗体がより高い安定性、より低い免疫原性を有するように、3871に対して遺伝子改変を行った。重鎖可変領域FR領域のみを改変し、軽鎖可変領域を変更しなかった。
【0127】
ヒト化抗体3871の遺伝子改変された重鎖可変領域配列は、以下の通りである(軽鎖は変更せず):
>3807-VH1(GTFS)
【化11】
【0128】
抗体3882は、VHが3807-VH1(GTFS)、VLが3807-VL3である。
【0129】
以上の各重鎖可変領域を対応するヒト抗体重鎖CH1(配列番号18)及びヒト抗体IgG4のFc(S241P変異を含む)(配列番号19)と融合し、軽鎖可変領域をヒトkappa(配列番号20)と融合し、組換えキメラ抗体を構成して後続の検出を行った。
【0130】
>ヒト抗体重鎖CH1:
【化12】
>ヒト抗体IgG4PFc(即ち、S241P変異を含む):
【化13】
>ヒト抗体軽鎖Cκ:
【化14】
3882で抗体全長配列を例示する。
>3882-HC:
【化15】
>3882-LC:
【化16】
通常の方法により抗体の発現ベクターを調製し、CHO細胞をトランスフェクションし、単離し、精製し、検出して、標的抗体を得た。
【0131】
実施例3.抗FXI/FXIa抗体の機能の検証
1.親和性の測定
Biacore法を利用した。Protein Aバイオセンサーチップ(Cat.#29127556、GE)で一定量の測定待ちの抗体を親和的に捕捉した後、チップ表面において一連の濃度勾配でのヒトFXI/FXIaを流し、Biacore機器(Biacore T200、GE)により反応シグナルをリアルタイムで検出することで結合・解離曲線を得た。各サイクルの解離が完了した後、ヒト抗体捕捉試薬キットに配置された再生溶液又はpH1.5のグリシン-塩酸再生溶液(Cat.#BR-1003-54、GE)でバイオチップを洗浄して再生した。実験に使用された緩衝剤は、HBS-EP+10×緩衝溶液(Cat.#BR-1006-69、GE)をD.I.Waterで1×(pH7.4)に希釈したものである。
【0132】
実験で得られたデータをBIAevaluation version 4.1、GEソフトフェアにより(1:1)Langmuirモデルでフィッティングし、親和性の値を得て、試験結果は表3に示される。
【0133】
【表3】
【0134】
2、インビトロFXIIa媒介性のFXI活性化酵素活性阻害試験
トリプシノーゲンFXIと結合してFXIIaのFXIへの酵素切断を遮断する抗FXI/FXIa抗体の能力を検出した。
【0135】
予めSpectraMax M5プレートリーダーを37℃に設定しておき、氷上で384ウェルプレートを予冷した後、それぞれ緩衝剤(20mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl及び0.1%のBSA)で希釈された10μLのFXI(12μg/mL)、10μLのFXIIa(7.8μg/mL)、10μLのFXI/FXIaの測定待ちの抗体(300μg/mL)、10μLのDextran(100μg/mL)を加え、37℃で60minインキュベートし、次に氷上に置いて5minインキュベートし、10μLのS-2366(8mM)(Chromogenix、S821090)を加えた後、プレートリーダーにより検出した。結果は図1に示されており、そのうち、ヒトIgGアイソタイプを陰性対照(NC)として使用した。
【0136】
3、ヒト血/サル血のaPTT/PT抗血液凝固活性の検出
クエン酸ナトリウム管により新鮮なヒト血/サル血を採取し、3000rpmで15min遠心分離し、上層の血漿を取った。
【0137】
Sysmex試薬キットにより、異なる濃度の候補抗体(PBSで希釈された)の存在下での活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を測定し、試験すべき候補抗体を血漿により37℃で3分間インキュベートした後、25mMの塩化カルシウム試薬を加えることで血液凝固を開始させ、血液凝固の発生時の時間を測定した。aPTTを50%延長させた候補抗体の濃度(EC50)を測定し、一部の抗体の試験結果は図2A図3A及び表4に示される。そのうち、1209は、本願のスクリーニングにより得られた別の抗FXI/FXIa抗体である。
【0138】
Sysmex試薬キットにより、異なる濃度の候補抗体(PBSで希釈された)の存在下でのプロトロンビン時間(PT)を測定し、試験すべき候補抗体を血漿により37℃で3分間インキュベートした後、トロンボプラスチンを加えることで血液凝固を開始させ、血液凝固の発生時の時間を測定した。一部の抗体の試験結果は、図2B及び図3Bに示される。
【0139】
【表4】
【0140】
4、カニクイザルのインビボ薬物動態(PK)/薬力学(PD)試験
正常な成体の雄のカニクイザル(体重が4.0kg~4.7kgの範囲)を体重別に群に配属し(体重の1、4、5番目を1群に配属し、体重の2、3、6番目をもう1群に配属した)、1群あたり3匹で、14日間観察した。
【0141】
投与の前日にクエン酸ナトリウム採血管で血液試料を採取し、投与前サンプルとして、aPTT、PT、血漿薬物濃度、血漿活性XI因子(FactorXI、FXI)の割合(FXI:C%、即ち、血液凝固活性を持つFXIの割合)及び血漿遊離FXI濃度を測定し、同時にそれぞれの動物の出血時間を測定した。2群の動物のうち、1群はブランクで投与せず、もう1群は、3882を5ミリグラム/キログラム体重(mg/kg、mpk)で投与した。薬剤を5ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)の濃度でリン酸塩緩衝剤(PBS)に溶かし、静脈注射で投与した。
【0142】
ブランク対照群は、投与後の15分間(min)、3時間(h)にそれぞれ出血時間を観察し、投与後の15min、3h、6h及び1日間(d)にそれぞれ上記方法に従って血漿を採取してaPTTとPTを観察した。投与群は、投与後の15min、3h、2d、4d、1週間(w)、2w及び3wにそれぞれ出血時間を観察し、投与後の15min、3h、6h、1d、2d、4d、1w、2w、3w、4w、5w及び6wにそれぞれ上記方法に従って血漿を採取してaPTT、PT、血漿薬物濃度、血漿FXI:C%と血漿遊離FXI濃度を観察した。2群の動物は何れも投与後の1dにAV-shuntにより血栓を作成し、血栓作成時間が10minで、血栓を作成した後、血栓の正味重量を秤量した。
【0143】
そのうち、aPTT、PTと血漿FXI:C%は、血液凝固装置及び対応する試薬キットにより測定され、血漿遊離FXI濃度と血漿薬物濃度は、ELISA方法により測定された。血栓の重さは、投与群と対照群を比較し、t検定で統計的分析を行った。
【0144】
抗体の試験結果は図4A図4Dが参照され、そのうち、陰性対照(NC)は未投与である。その結果、5mpkでは血栓の生成を良く阻害したと共に、内因性血液凝固時間を延長させたが、動物出血時間と外因性血液凝固時間に顕著な影響がなく、PKの結果から、半減期が20日間程度であることが示される。
【0145】
5、カニクイザルのインビボ薬力学(PD)試験
正常な成体の雄のカニクイザル(体重が7kg~9kgの範囲)6匹を、それぞれBAY1213790静脈内投与1ミリグラム/キログラム体重(mg/kg)群、3882静脈内投与1ミリグラム/キログラム体重(mg/kg)群、3882皮下投与1ミリグラム/キログラム体重(mg/kg)群という3群にランダムに分けた。静脈内投与群の動物は投与前及び投与後の5min、1h、1d、2d、3d、5d、1w、2w、3w、4wに、皮下投与群は投与前及び投与後の1h、1d、2d、3d、5d、1w、2w、3w、4wに、クエン酸ナトリウム採血管で血液試料を採取し、血液凝固装置及び対応する試薬キットでaPTTと血漿FXI:C%を測定した。
【0146】
試験の結果は図5A、5Bが参照される。その結果、3882皮下投与と静脈内投与は、何れも内因性血液凝固時間を顕著に延長させ、FXIの活性を阻害することができる。等用量の投与条件で、3882とBAY1213790を比べると、3882は、内因性血液凝固時間の延長維持時間がより長く、FXIへの阻害作用がより強い。
【0147】
>BAY1213790の重鎖:
【化17】
>BAY1213790の軽鎖:
【化18】
【0148】
実施例4~実施例9における抗FXI/FXIa抗体は、何れも重鎖配列が配列番号21に示され、軽鎖配列が配列番号22に示される3882である。
【0149】
実施例4.抗FXI/FXIa抗体製剤緩衝系のpH値のスクリーニング
表5中の緩衝剤を調製し、抗FXI/FXIa抗体濃度が120mg/mLである抗体製剤を調製し、試料を取って高温40℃・振とう・凍結融解安定性を検討した。
【0150】
【表5-1】
【表5-2】
【0151】
注:C=無色、CL=透明、WO=やや乳白光、SO=強烈な乳白光、P+(少量の粒子)、P++(多くの粒子)、P+++(大量の粒子)
外観の結果によると、5D振とうの場合、全ての処方に何れも粒子が生じておらず、5cycle凍結融解の場合、全ての処方に何れも粒子が生じており、そのうち、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH4.5及びpH5.0系、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5系及び10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムpH7.0系は、生じた粒子が比較的少なく、40℃15Dの場合、全ての処方の外観に何れも粒子が生じており、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5及び10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムpH7.0系は、生じた粒子数が他の2つの系よりも少なかった。
【0152】
SEC(図6A)の結果によると、40℃-15Dの場合、全ての処方の凝集体が何れも増加されており、40℃-15Dでは、pH4.5~6.5の範囲内にあり、pHの上昇に伴い、SEC凝集体が明らかに低減され、40℃-15Dでは、pHが8.0から8.5に増加された場合、SEC凝集体が明らかに増加され、pHが6.0~8.0の間にある場合、40℃-15Dでは、SECはT0に比べて、凝集体が<2.5%増加され、許容可能な範囲内にある。
【0153】
NRCE(図6B)の結果によると、40℃-15Dの場合、NRCE純度が低下しており、10mMのTris-塩酸系においては、pHの上昇(pH7.5~8.5)に伴い、NRCE純度が明らかに低下し、pH4.5~7.5範囲の他のbuffer系においては、NRCE純度に明らかな差がなかった。
【0154】
iCIEF(図6C)の結果によると、同一のbuffer系においては、pHの上昇に伴い、酸性ピークが明らかに向上した。
【0155】
外観、SEC、NRCE及びiCIEFの結果を合わせると、pH6.5~7.5の緩衝系(ヒスチジン-塩酸ヒスチジン、リン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム及びTris-塩酸系)は比較的好適である。
【0156】
実施例5.抗FXI/FXIa抗体製剤におけるpH、添加物及び界面活性剤濃度のスクリーニング
pH6.5~7.5の範囲において、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン、10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、10mMのTris-クエン酸及び10mMのTris-塩酸緩衝系を選択して、120mg/mLの抗FXI/FXIa抗体と、異なる種類の添加物と、異なる種類の界面活性剤とを含む製剤を調製した。試料を40±2℃、75±5%RHインキュベーターに入れ、安定性を調べた。その結果、3882抗体はイオン強度に比較的敏感であり、高イオン強度では、抗体安定性が比較的低くて、且つ粒子が現れやすいことが示された。
【0157】
10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5、7.0及び10mMのTris-塩酸pH7.0、7.5の緩衝系を選択して、60mg/mLの抗FXI/FXIa抗体と、0.4mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、添加物である80mg/mLのスクロース又は100mMのグリシン+40mg/mLのスクロース又は100mMのプロリン+40mg/mLのスクロースとを含む製剤を調製し、高温40℃・振とう・凍結融解安定性を検討した:
F2)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5、0.4mg/mLのポリソルベート80、80mg/mLのスクロース、
F3)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5、0.6mg/mLのポリソルベート80、80mg/mLのスクロース、
F4)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5、0.8mg/mLのポリソルベート80、80mg/mLのスクロース、
F5)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5、0.4mg/mLのポリソルベート80、100mMのグリシン+40mg/mLのスクロース、
F6)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5、0.4mg/mLのポリソルベート80、100mMのプロリン+40mg/mLのスクロース、
F7)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH7.0、0.4mg/mLのポリソルベート80、80mg/mLのスクロース、
F8)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH7.0、0.4mg/mLのポリソルベート80、100mMのプロリン+40mg/mLのスクロース、
F10)10mMTris-塩酸pH7.0、0.4mg/mLのポリソルベート80、80mg/mLのスクロース、
F11)10mMTris-塩酸pH7.5、0.4mg/mLのポリソルベート80、80mg/mLのスクロース、
【0158】
【表6-1】
【表6-2】
【0159】
注:C=無色、CL=透明、WO=やや乳白光、SO=強烈な乳白光、P(幾つかの粒子)、P+(少量の粒子)、P++(多くの粒子)、P+++(大量の粒子)、
外観の結果によると、5cycle凍結融解の場合、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5系は何れも大量の粒子が生じ、そのうち、F4、F6処方は3D振とう後にも大量の粒子が現れ、F2、F3及びF5は振とう後に粒子が生じておらず、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH7.0系(F7、F8)は3D振とう後に、何れも粒子が生じておらず、5cycle凍結融解後に、F7だけは少量の粒子が生じ、40℃2Wの場合、F7及びF8だけは粒子が生じておらず、残りの処方は何れも粒子が生じ、そのうち、F3(8%スクロース+0.06%ポリソルベート80)、F4(8%スクロース+0.08%ポリソルベート80)、F5(100mMのGly+4%スクロース+0.04%ポリソルベート80)、F6(100mMのPro+4%スクロース+0.04%ポリソルベート80)は何れも大量の粒子が生じ、F2(8%スクロース+0.04%ポリソルベート80)だけは少量の粒子が生じ、40℃1Mの場合、全ての処方は何れも粒子が生じ、F7及びF8処方は依然として良好に表現され、F7処方は少量の粒子であり、F8は幾つかの粒子であり、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH7.0系は10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5及び10mMのTris-塩酸系よりも明らかに優れ、40℃1Mの場合、F2~F6は何れも大量の粒子が生じたので、グリシン、プロリンの添加及びポリソルベート80の濃度の増加は、外観に対して明らかな改善がないことが示された。
【0160】
SEC(図7A)の結果によると、凍結融解、振とうの条件下、SECはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、SECがT0に比べて何れも低下しており、F2~F8(10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン系)処方間に明らかな差がなく、F10、F11(10mMのTris-塩酸系)処方は、SEC純度が10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン系よりも僅かに高かった。
【0161】
NRCE(図7B)の結果によると、凍結融解、振とうの条件下、NRCEはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、NRCEがT0に比べて何れも低下しており、処方間に明らかな差がなかった。
【0162】
CEX(図7C)の結果によると、凍結融解、振とうの条件下、酸性ピークはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、酸性ピークがT0に比べて何れも増加され、同一のbuffer系では、pHの上昇に伴い、酸性ピークが明らかに増加された。
【0163】
外観、SEC、NRCE及びCEXの結果を合わせると、純度検出項目に僅かな変化があるが、何れも許容範囲内にある。外観の観点から、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH7.0系は、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.5及び10mMのTris-塩酸系よりも優れている。pH/Bufferのスクリーニング及び添加物、界面活性剤のスクリーニングの結果によると、抗体は、pH6.5~7.5の範囲において安定性が比較的良く、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン系は、リン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、Tris-塩酸、酢酸-酢酸ナトリウム及びTris-クエン酸などの系よりも優れ、且つ3882抗体はイオン強度に比較的敏感である。本発明者らは、ヒスチジン-抗体自己緩衝系を用いて製剤をさらに最適化した。
【0164】
実施例6.抗FXI/FXIa抗体製剤緩衝系及び界面活性剤の種類のスクリーニング
ヒスチジン-抗体自己緩衝系pH7.0を選択して、60mg/mLのタンパク質と、添加物である80mg/mLのスクロースと、界面活性剤であるポロキサマー188又はポリソルベート80とを含む抗FXI/FXIa抗体製剤を調製した。試料を40±2℃、75±5%RHインキュベーターに入れ、安定性を調べた:
F1)35mMのヒスチジンpH7.0、1mg/mLのポリソルベート80、80mg/mLのスクロース、
F2)35mMのヒスチジンpH7.0、1mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、
F3)35mMのヒスチジンpH7.0、2mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、
【0165】
【表7】
【0166】
注:C=無色、Y=淡黄色、Y+=黄色、CL=透明
外観の結果によると、40℃2W及び40℃4Wの場合、全ての処方は何れも粒子が生じていなかった。
【0167】
SEC(図8A)の結果によると、高温後に、異なる処方は、SECがT0に比べて何れも低下しており、そのうち、F1処方(35mMのHis+8%スクロース+0.1%ポリソルベート80)は最も多く低下しており、F2(35mMのHis+8%スクロース+0.1%ポロキサマー188)及びF3(35mMのHis+8%スクロース+0.2%ポロキサマー188)よりも明らかに低かった。
【0168】
NRCEの結果によると、高温後に、異なる処方は、NRCEがT0に比べて何れも低下しており、処方間に明らかな差がなかった。
【0169】
CEX(図8B)の結果によると、高温後に、異なる処方は、酸性ピークがT0に比べて何れも増加されており、そのうち、F1処方は最も多く増加され、F2及びF3よりも明らかに高かった。
【0170】
外観、SEC、NRCE及びCEXの結果を合わせると、ヒスチジン-抗体自己緩衝系を使用する場合、pHを約7.0に維持することができ、全ての処方は何れも40℃で粒子が生じておらず、界面活性剤であるポリソルベート80を使用した処方は、純度検出項目でT0と顕著な差がある。従って、pH/bufferは、ヒスチジン-抗体自己緩衝系pH7.0と決定され、界面活性剤はポロキサマー188が好ましい。
【0171】
実施例7.抗FXI/FXIa抗体製剤緩衝系の確認及び界面活性剤濃度のスクリーニング
薬剤の最終用量を考慮して、抗FXI/FXIa抗体の濃度を向上させ、ヒスチジン-抗体自己緩衝系pH7.0を選択して、80mg/mLのタンパク質と、添加物である80mg/mLのスクロースと、界面活性剤である1mg/mL~2mg/mLのポロキサマー188とを含む製剤を調製した。試料を-35℃/室温で放置して5サイクル凍結融解し、40℃-2W、40℃-4W、3日間振とう(25℃、300rpm)し、安定性を調べた:
F1)35mMのヒスチジンpH7.0、1mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、
F2)35mMのヒスチジンpH7.0、1.5mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、
F3)35mMのヒスチジンpH7.0、2mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、
【0172】
【表8-1】
【表8-2】
【0173】
注:Y=淡黄色、WO=やや乳白光、SO=強烈な乳白光、P+(少量の粒子)
外観の結果によると、3D振とうの場合、全ての処方は何れも粒子が生じておらず、5cycle凍結融解の場合、F1(35mMのHis、0.1%ポロキサマー188)、F2(35mMのHis、0.15%ポロキサマー188)は少量の粒子が生じており、40℃2Wの場合、全ての処方は何れも粒子が生じておらず、40℃4Wの場合、F1、F2は少量の粒子が生じた。
【0174】
SECの結果によると、凍結融解、振とうの条件下、SECはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、SECがT0に比べて何れも低下しており、処方間に明らかな差がなかった。
【0175】
NRCEの結果によると、凍結融解、振とうの条件下、NRCEはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、NRCEがT0に比べて何れも低下しており、処方間に明らかな差がなかった。
【0176】
CEXの結果によると、凍結融解、振とうの条件下、酸性ピークはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、酸性ピークがT0に比べて増加されており、処方間に明らかな差がなかった。
【0177】
外観、SEC、NRCE及びCEXの結果を合わせると、pH/bufferは、ヒスチジン-抗体自己緩衝系pH7.0と決定され、界面活性剤は0.2%ポロキサマー188である。
【0178】
実施例8.抗FXI/FXIa抗体製剤における抗体濃度のスクリーニング
ヒスチジン-抗体自己緩衝系pH7.0を選択して、60mg/mL~100mg/mLの抗FXI/FXIa抗体と、2mg/mLのポロキサマー188と、添加物である80mg/mLのスクロースとを含む製剤を調製した。試料を-35℃/室温で放置して5サイクル凍結融解し、40℃-2W、40℃-4W、3日間振とう(25℃、300rpm)し、安定性を調べた:
F1)35mMのヒスチジンpH7.0、2mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、60mg/mLのタンパク質、
F2)35mMのヒスチジンpH7.0、2mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、80mg/mLのタンパク質、
F3)35mMのヒスチジンpH7.0、2mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、100mg/mLのタンパク質、
【0179】
【表9】
【0180】
注:Y=淡黄色、WO=やや乳白光
外観の結果によると、3D振とう、5cycle凍結融解、40℃2W及び40℃4Wの場合、全ての処方は何れも粒子が生じておらず、
SECの結果によると、凍結融解、振とうの条件下、SECはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、SECがT0に比べて何れも低下しており、処方間に明らかな差がなかった。
【0181】
NRCEの結果によると、凍結融解、振とうの条件下、NRCEはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、NRCEがT0に比べて何れも低下しており、処方間に明らかな差がなかった。
【0182】
CEXの結果によると、凍結融解、振とうの条件下、酸性ピークはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、酸性ピークがT0に比べて増加されており、処方間に明らかな差がなかった。
【0183】
外観、SEC、NRCE及びCEXの結果を合わせると、処方は、最初に、35mMのヒスチジン、80mg/mLのスクロース、2mg/mLのポロキサマー188、pH7.0、抗FXI/FXIa抗体濃度80mg/mLと決定された。
【0184】
実施例9.抗FXI/FXIa抗体製剤処方のロバスト性の考察
製造の操作可能性を考慮し、ヒスチジン-タンパク質自己緩衝系、ヒスチジン濃度、タンパク質濃度及びポロキサマー188濃度を変数としてDoE設計を行い、因子レベルとしては、ヒスチジン濃度30mM~40mM、タンパク質濃度70mg/mL~130mg/mL、ポロキサマー188濃度1.8g/L~2.8g/Lであり、Minitabソフトフェアを用いてDoE実験を行い、一連の処方を得て、試料を-35℃/室温で放置して5サイクル凍結融解し、40℃-2W、40℃-26D、3日間振とう(25℃、300rpm)し、安定性を調べた:
F1)30mMのヒスチジンpH7.0、1.8mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、70mg/mLのタンパク質、
F2)30mMのヒスチジンpH7.0、1.8mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、130mg/mLのタンパク質、
F3)30mMのヒスチジンpH7.0、2.8mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、70mg/mLのタンパク質、
F4)30mMのヒスチジンpH7.0、2.8mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、130mg/mLのタンパク質、
F5)40mMのヒスチジンpH7.0、1.8mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、70mg/mLのタンパク質、
F6)40mMのヒスチジンpH7.0、1.8mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、130mg/mLのタンパク質、
F7)40mMのヒスチジンpH7.0、2.8mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、70mg/mLのタンパク質、
F8)40mMのヒスチジンpH7.0、2.8mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、130mg/mLのタンパク質、
F9)35mMのヒスチジンpH7.0、2.3mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、100mg/mLのタンパク質、
F10)35mMのヒスチジンpH7.0、2.3mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、100mg/mLのタンパク質、
F11)35mMのヒスチジンpH7.0、2.3mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、100mg/mLのタンパク質、
F12)35mMのヒスチジンpH7.0、2mg/mLのポロキサマー188、80mg/mLのスクロース、120mg/mLのタンパク質、
【0185】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【0186】
注:C=無色、Y=淡黄色、CL=透明
外観の結果によると、3D振とう、5cycle凍結融解、40℃2W及び40℃26Dの場合、全ての処方は何れも粒子が生じていなかった。
【0187】
SECの結果によると、凍結融解、振とうの条件下、SECはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、SECがT0に比べて何れも低下しており、処方間に明らかな差がなかった。
【0188】
NRCEの結果によると、凍結融解、振とうの条件下、NRCEはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、NRCEがT0に比べて何れも低下しており、処方間に明らかな差がなかった。
【0189】
CEXの結果によると、凍結融解、振とうの条件下、酸性ピークはT0に比べて明らかな差がなく、高温後に、異なる処方は、酸性ピークがT0に比べて増加されており、処方間に明らかな差がなかった。
【0190】
外観、SEC、NRCE及びCEXの結果を合わせると、即ち、抗FXI/FXIa抗体が70mg/mL~130mg/mL、ヒスチジン濃度が30mM~40mM、ポロキサマー188濃度が1.8g/L~2.8g/Lの範囲にある場合、純度項目に顕著な差がなく、製剤安定性が何れも比較的良好である。
【0191】
実施例10.抗FXI抗体製剤の使用中の安定性
抗FXI抗体製剤の完成品を取り、それぞれ0.9%の生理食塩水注射液(輸液バッグの材質:ポリプロピレン)及び5%のグルコース注射液(輸液バッグ材質:ポリプロピレン)を使用して輸液バッグにおいて0.20mg/mL、13.30mg/mLにそれぞれ希釈し、同時に、希釈された薬液の使い捨て輸液管路(管路の材質:ポリプロピレン、ろ過膜の材質:ポリエーテルスルホン)における2℃~8℃24h+室温6h光照射の安定性を調べた。実験の結果は表12に示される。
【0192】
抗FXI抗体製剤を5%のグルコース及び0.9%の生理食塩水で希釈した後(0.20mg/mL~13.30mg/mL)、2℃~8℃24h+室温6h光照射したところ、調べられた検出項目は何れも許容可能な基準範囲内にある。従って、希釈された薬液は輸液システムとの相容性が良好で、輸液システムにおいて希釈した後、2℃~8℃24h+室温6h以内に使用することができる。
【0193】
【表11】
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
【配列表】
2025502861000001.xml
【国際調査報告】