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特表2025-502891自己免疫性脳炎のサトラリズマブによる治療
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  • 特表-自己免疫性脳炎のサトラリズマブによる治療 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-28
(54)【発明の名称】自己免疫性脳炎のサトラリズマブによる治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20250121BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 31/664 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20250121BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P25/00
A61P37/02
A61K45/00
A61K31/52
A61K31/365
A61K31/664
A61K31/573
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543040
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2023001270
(87)【国際公開番号】W WO2023140269
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/300,893
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】小澤 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】井田 広顕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 創
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】スミス ジリアン
(72)【発明者】
【氏名】レノン-クライムズ シアン
(72)【発明者】
【氏名】クリンゲルシュミット ガエル
(72)【発明者】
【氏名】フォン ビューディンゲン ハンス-クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シルバー バウマン ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】オーヴェレル ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ラジャン シャルミラ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZB07
4C084ZB08
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085EE01
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086CB07
4C086DA10
4C086DA38
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZB07
4C086ZB08
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
抗NMDAR脳炎および抗LGI1脳炎などの自己免疫性脳炎について現在利用可能な治療選択肢はすべて、実質的な潜在的安全性リスクを有する。さらに、抗NMDAR脳炎および抗LGI1脳炎について、承認された治療法は存在しない。本発明は、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片などのIL-6阻害剤を含む、NMDAR脳炎および抗LGI1脳炎などの自己免疫性脳炎(AIE)の治療のための手段を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サトラリズマブを含む、対象において自己免疫性脳炎(AIE)を治療するための医薬品。
【請求項2】
自己免疫性脳炎の、再発を遅らせる、再発の頻度を低減させる、再発の重症度を低減させる、または再発のリスクを低減させるための、請求項1記載の医薬品。
【請求項3】
自己免疫性脳炎が、抗N-メチル-Dアスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎または抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎である、請求項1または2記載の医薬品。
【請求項4】
対象に皮下投与される、請求項1~3のいずれか一項記載の医薬品。
【請求項5】
対象に対して60 mg、120 mg、180 mg、または240 mgの投与量単位のサトラリズマブを提供する、請求項1~4のいずれか一項記載の医薬品。
【請求項6】
各投与について、60 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用される、請求項1~5のいずれか一項記載の医薬品。
【請求項7】
各投与について、120 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用される、請求項1~5のいずれか一項記載の医薬品。
【請求項8】
各投与について、120 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用される、請求項1~5のいずれか一項記載の医薬品。
【請求項9】
各投与について、180 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用される、請求項1~5のいずれか一項記載の医薬品。
【請求項10】
各投与について、180 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用される、請求項1~5のいずれか一項記載の医薬品。
【請求項11】
各投与について、240 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用される、請求項1~5のいずれか一項記載の医薬品。
【請求項12】
対象に、3回は2週間隔(Q2W)で、およびその後は4週間隔(Q4W)で投与される、請求項1~11のいずれか一項記載の医薬品。
【請求項13】
免疫抑制療法(IST)と組み合わせて使用される、請求項1~12のいずれか一項記載の医薬品。
【請求項14】
前記ISTが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドからなる群より選択される免疫抑制剤;(ii)経口コルチコステロイド(OCS);または(iii)(i)と(ii)との組み合わせ、による治療法である、請求項13記載の医薬品。
【請求項15】
前記免疫抑制剤が、プレドニゾン、プレドニゾロン、またはその等価物を含む、請求項14記載の医薬品。
【請求項16】
皮下投与デバイスによって投与される、請求項5記載の医薬品。
【請求項17】
前記皮下投与デバイスが、任意で針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)であるプレフィルドシリンジ(PFS)、またはオートインジェクター(AI)である、請求項16記載の医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片を含む、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を含むがそれらに限定されない自己免疫性脳炎(AIEまたはAEとも呼ばれる)の治療のための、またはその再発のリスクを低減させるための、医薬品または薬学的組成物に関する。本発明はまた、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することによる、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を含むがそれらに限定されない前記自己免疫性脳炎(AIE)の治療の方法、またはその再発のリスクを低減させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
急性脳炎は、すべての年齢の患者において発症し、脳炎症の結果として急速に進行する脳障害として現れる、希少なかつ衰弱性の神経障害である[非特許文献1]。自己免疫性脳炎(AIE)には、特定可能な病因的ドライバー、通常は腫瘍に関連する障害、および特発性とみなされる障害が含まれる。腫瘍随伴性免疫媒介性脳炎症候群は、細胞内ニューロンタンパク質に対する抗体(抗Huなどのオンコニューロン(onconeuronal)タンパク質)に関連している可能性がある。これらは、病原性の意義が不明であり、免疫療法に対する応答が不十分である症候群を意味する傾向がある。
【0003】
直接的に病原性であると考えられる神経細胞表面タンパク質およびシナプスタンパク質に対する抗体の特定により、関連する腫瘍が特定されてもまたは特定されなくても、一般的に免疫療法に対してより良好な応答を有する集団が示される。これらのAIEサブタイプの中で、NMDAR媒介性およびLGI1媒介性の脳炎は、最も一般的な[非特許文献2]かつ最もよく特徴決定された症候群のうちの2つに相当する。
【0004】
NMDAR脳炎は、認知障害および発作を含む複雑な神経精神症候群、ならびにNMDARのGluN1サブユニットに対する脳脊髄液(CSF)抗体の存在によって特徴付けられる、免疫媒介性疾患である。マウスモデルを用いて、これらの抗体は、NMDARを架橋し、その表面動態および他のシナプスタンパク質との相互作用を変化させ、かつシナプス可塑性およびNMDARネットワーク機能の重度の障害とともにその内在化を引き起こすことが示された[非特許文献3~6]。NMDAR脳炎は、1年に100万人の人口あたり1.5人の推定発生率を有し、ほとんどが女性において起こり(およそ8:2の女性対男性の比)、21歳の発生年齢中央値を有する(年齢範囲:1歳未満~85歳)。患者は、疾患の段階に応じて異なる、および臨床的に診断を示唆する、一群の症状を発症する[非特許文献7]。
【0005】
LGI1脳炎は、多くの場合に発作を伴う、記憶および行動の亜急性障害によって特徴付けられる辺縁系脳炎をほとんどの患者が呈する、免疫媒介性疾患である。これは、LGI1タンパク質に対する抗体に関連している。LGI1脳炎は、中年および高齢の男性(50歳を超える)において、より一般的である[非特許文献8]。ほとんどのLGI1タンパク質は、海馬およびより広い内側側頭葉において発現しており、そこからシナプス空間中に分泌される。LGI1は、シナプス前電位依存性K+チャネル(VGKC)とシナプス後a-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸受容体(AMPAR)とを連結する抑制性経路の一部である[非特許文献9および非特許文献10]。LGI1脳炎は、100万人の人口あたり7人の推定有病率[非特許文献11]、および100万人の個体あたり0.83人の推定発生率[非特許文献12]を有する。
【0006】
NMDAR脳炎またはLGI1脳炎について、承認された治療法は存在しない。NMDAR脳炎およびLGI1脳炎に対する治療アプローチは、自己免疫性脳炎同盟臨床医ネットワーク(Autoimmune Encephalitis Alliance Clinicians Network)によって実施された最近の調査に詳述されているように、最初に、第一選択療法(例えば、ステロイド、静脈内免疫グロブリン[IVIG]、または血漿交換)を含む[非特許文献13]。高用量ステロイドが、最も一般的に用いられるが、上記2つの最も一般的な障害における第一選択治療の分布は、以下に示されるように、非常に類似している。
【0007】
段階的増大の原則、第二選択療法の利用、および使用される特定の第二選択療法は、上記2つの障害の間で類似しているが、LGI1脳炎において、ステロイド応答性がより一般的に見られ[非特許文献14]、この障害においては、ステロイドの長期使用がより一般的に用いられる。
【0008】
細胞表面抗体陽性疾患を有する患者の大多数は、現在使用される治療選択肢で安定な状態を達成するが、いかなる前向き無作為化試験も、今までこの集団において報告されておらず、すべての治療薬は、事例証拠に基づいて使用される。いくつかの限界が、現在のAIE治療パラダイムにあてはまり、これは、迅速なかつ長期の有効性および安全性に関して実証された効果を有する治療に対する、重大なまだ満たされていない必要性が残っていることを強調する。例えば、すべての患者が、これらの薬物療法に応答するわけではなく、認知欠損、不十分な発作回復、高用量コルチコステロイドへの依存、および持続的なより速く作用する剤の必要性を含む、欠陥が残っている。このまれな神経障害の急性および長期の両方の影響に対処するための治療選択を手引きする、AIEにおける前向きに生成されたエビデンスが、緊急に必要である。
【0009】
トシリズマブのようなヒト化抗体は、第1世代抗体医薬である。第1世代抗体医薬を改良することによって、有効性、利便性、およびコストが改良された第2世代抗体医薬が開発されている[特許文献2および特許文献3]。第2世代抗体医薬の中に、抗原結合能、薬物動態、および安定性の増強、ならびに免疫原性リスクの低減などの改良技術が適用された新規抗IL-6受容体抗体である、サトラリズマブ(SA237)がある[特許文献3および特許文献4]。
【0010】
サトラリズマブは、pH依存性の抗原結合を有するヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体である。これは、ヒトIL-6受容体(IL-6R)を特異的に標的とし、IL-6の膜結合型IL-6Rおよび可溶性IL-6Rに対する結合を阻害することによって、IL-6シグナル伝達を抑制する。サトラリズマブは、その血漿半減期を延長するようにトシリズマブのアミノ酸配列を改変することによって、構築された。サトラリズマブはまた、トシリズマブと比較して、低下した抗体分子等電点、およびFcRnに対するより強い結合を示す。さらに、そのFc領域は、トシリズマブと比較して、抗体依存性細胞性細胞傷害および補体依存性細胞傷害性エフェクター活性を最小化するように改変されている。
本出願の発明に関連する先行技術の文献情報を、以下に示す。
【0011】
サトラリズマブは、有効性および安全性が実証されており、単剤療法としてまたは免疫抑制療法(IST;すなわち、経口コルチコステロイド[OCS]、アザチオプリン、もしくはミコフェノール酸モフェチル)に対するアドオンとして、別の自己抗体媒介性疾患(すなわち、NMOSD)に適応される。NMOSDにおける第III相試験の二重盲検期間は、合計178人の参加者を含んでいた。178人の参加者のうち、104人の参加者を、皮下への120 mgのサトラリズマブ用量で4週間隔(Q4W)で治療し、74人の参加者は、プラセボで治療した。全体的に、単剤療法としてまたはISTと組み合わせてのサトラリズマブは、NMOSDを有する参加者が十分に耐容性を示した。
【0012】
AIEについて現在利用可能な治療選択肢(高用量コルチコステロイドおよびシクロホスファミドを含む)はすべて、実質的な潜在的安全性リスクを有する。治療の決定を支持する、無作為化対照試験からのエビデンスはない。加えて、すべての患者が、現在使用されている薬物療法に応答するわけではなく、認知欠損、不十分な発作回復、高用量コルチコステロイドへの依存、および持続的なより速く作用する剤の必要性を含む、欠陥が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US2012/0039840
【特許文献2】WO2009/041621
【特許文献3】WO2010/035769
【特許文献4】WO2016/136933
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Venkatesan A, Tunkel AR, Bloch KC, et al., Clin Infect Dis 2013;57:1114-28
【非特許文献2】Leypoldt F, Wandinger K-P, Bien C, et al., Eur Neurol Rev 2013;8:31-7
【非特許文献3】Hughes EG, Peng X, Gleichman AJ, et al., J Neurosci 2010;30:5866-75
【非特許文献4】Mikasova L, De Rossi P, Bouchet D, et al., Brain 2012;135:1606-21
【非特許文献5】Moscato EH, Peng X, Jain A, et al., Ann Neurol 2014;76:108-19
【非特許文献6】Rosch RE, Wright S, Cooray G, et al., Proc Natl Acad Sci USA 2018;115:E9916-25
【非特許文献7】Dalmau J, Armangue T, Lancet Neurology 2019;11:1045-1057
【非特許文献8】Hang HL, Zhang JH, Chen DW, et al., Front Neurol 2020;11:852
【非特許文献9】Petit-Pedrol M, Sell J, Planaguma J, et al., Brain 2018;141:3144-59
【非特許文献10】Ohkawa T, Fukata Y, Miwako Y, et al., J Neurosci 2013;33:18161-74
【非特許文献11】Dubey D, Pittock S, Kelly C, et al., Ann Neurol 2018;83:166-77
【非特許文献12】van Sonderen A, Thijs R, Coenders E, et al., Neurology 2016;87:1449-56
【非特許文献13】Abboud H, Probasco J, Irani SR, et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 2021. doi: 10.1136/jnnp-2020-325302
【非特許文献14】Gadoth A, Pittock S, Dubey D, et al., Ann Neurol. 2017;82:79-92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎などの自己免疫性脳炎(AIE)の現在の治療は、専ら適応外の免疫療法を使用しており、専門家の意見、遡及的な症例シリーズ、および非盲検試験に基づく。AIEについて現在利用可能な治療選択肢(高用量コルチコステロイドおよびシクロホスファミドを含む)はすべて、実質的な潜在的安全性リスクを有する。さらに、抗NMDAR脳炎および抗LGI1脳炎について、承認された治療法は存在しない。長期認知欠損の頻繁な発生、不十分な発作制御、高用量コルチコステロイドへの頻繁な依存、およびより速く作用するが持続的な免疫療法を含む、いくつかのまだ満たされていない必要性が存在する。これらの障害の急性および長期の重大性を有意義に減らすために、前向きに生成されたエビデンスに基づく治療が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決するために、本発明者らは、抗NMDAR脳炎および抗LGI1脳炎の治療について、プラセボと比較してサトラリズマブの有効性、安全性、薬物動態、および薬力学を評価するために、第III相、無作為化、二重盲検(DB)、プラセボ対照、多施設バスケット試験をデザインした。試験は、サトラリズマブが、上記のまだ満たされていない必要性に対処することを実証し、かつまた、AIEを治療する、AIEの再発を予防する、およびAIEの再発のリスクを低減させるための、NMDAR脳炎またはLGI1脳炎を有する患者におけるサトラリズマブの効果を立証する。
【0017】
本開示は、以下に例示的に記載されるような態様を含むが、それらに限定されない。
[A1.1]対象において自己免疫性脳炎(AIE)を治療するかまたはその再発のリスクを低減させるための、IL-6阻害剤を活性成分として含む医薬品。
[A1.2]前記IL-6阻害剤が、抗IL-6抗体もしくはその抗原結合断片、または抗IL-6受容体抗体もしくはその抗原結合断片である、A1.1の医薬品。
[A1.3]前記IL-6阻害剤が、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、A1.1またはA1.2の医薬品。
[A1.4]前記IL-6阻害剤が、ヒト化抗体である、A1.1~A1.3のいずれか1つの医薬品。
[A1.5]前記IL-6阻害剤が、配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)CDR1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)CDR1、配列番号:9のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号:10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、A1.1~A1.4のいずれか1つの医薬品。
[A1.6]前記抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、配列番号:1のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号:2のアミノ酸配列を含むVLを含む、A1.5の医薬品。
[A1.7]前記IL-6阻害剤が、配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗IL-6受容体抗体である、A1.5またはA1.6の医薬品。
[A1.8]前記IL-6阻害剤が、サトラリズマブである、A1.5~A1.7のいずれか1つの医薬品。
[A1.9]対象において自己免疫性脳症の再発を遅らせる、その再発の頻度を低減させる、その再発の重症度を低減させる、またはその再発についての救助療法の必要性を低減させるための、A1.1~A1.8のいずれか1つの医薬品。
[A1.10]前記対象が、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)抗体または抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)抗体について陽性である、A1.1~A1.9のいずれか1つの医薬品。
[A1.11]前記自己免疫性脳炎が、ビッカースタッフ脳幹脳炎、急性散在性脳脊髄炎、橋本脳症、原発性中枢神経系(CNS)血管炎、およびラスムッセン脳炎以外の疾患である、A1.1~A1.10のいずれか1つの医薬品。
[A1.12]抗NMDAR抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の脳脊髄液(CSF)において検出される、A1.1~A1.11のいずれか1つの医薬品。
[A1.13]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎である、A1.1~A1.12のいずれか1つの医薬品。
[A1.14]抗LGI1抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の血清または脳脊髄液(CSF)において検出される、A1.1~A1.11のいずれか1つの医薬品。
[A1.15]前記対象が、作業記憶欠損、発作、または大脳辺縁系の関与を示唆する神経医学的症状を経験したことがある、A1.14の医薬品。
[A1.16]前記自己免疫性脳炎が、抗LGI1脳炎である、A1.1~A1.11およびA1.14~A1.15のいずれか1つの医薬品。
[A1.17]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎である、A1.1~A1.16のいずれか1つの医薬品。
[A1.18]前記対象が、抗caspr2抗体、抗IgLON5抗体、抗DPPX抗体、抗GABAA抗体、抗ニューレキシン-3α抗体、および抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)抗体について陰性である、A1.1~A1.17のいずれか1つの医薬品。
[A1.19]前記対象が、抗NMDAR抗体および抗LGI1抗体以外の細胞表面ニューロン抗体またはグリア抗体について陰性である、A1.1~A1.18のいずれか1つの医薬品。
[A1.20]前記対象が、(i)抗NMDAR抗体陽性かつ年齢12歳以上;または(ii)抗LGI1抗体陽性かつ年齢18歳以上である、A1.1~A1.19のいずれか1つの医薬品。
[A1.21]前記対象が、いかなる継続中の慢性免疫抑制療法も受けていない、A1.1~A1.20のいずれか1つの医薬品。
[A1.22]前記対象が、安定用量のアザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、静脈内(IV)シクロホスファミド、経口コルチコステロイド(OCS)、またはAZAもしくはMMFもしくはIVシクロホスファミドとOCSとの組み合わせによる継続中の治療を受けている、A1.1~A1.20のいずれか1つの医薬品。
[A1.23]各投与について、60 mgまたは120 mg、120 mgまたは180 mg、および180 mgまたは240 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ、40 kg未満、40~100 kg、および100 kg超の体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用されることを特徴とする、A1.5~A1.22のいずれか1つの医薬品。
[A1.24]各投与について、60 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40 kg未満の体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用されることを特徴とする、A1.5~A1.22のいずれか1つの医薬品。
[A1.25]各投与について、120 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40 kg未満の体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用されることを特徴とする、A1.5~A1.22のいずれか1つの医薬品。
[A1.26]各投与について、120 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40~100 kgの体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用されることを特徴とする、A1.5~A1.22のいずれか1つの医薬品。
[A1.27]各投与について、180 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40~100 kgの体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用されることを特徴とする、A1.5~A1.22のいずれか1つの医薬品。
[A1.28]各投与について、180 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、100 kg超の体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用されることを特徴とする、A1.5~A1.22のいずれか1つの医薬品。
[A1.29]各投与について、240 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、100 kg超の体重を有する対象に投与されるように、前記医薬品が使用されることを特徴とする、A1.5~A1.22のいずれか1つの医薬品。
[A1.30]抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に皮下投与されるように、前記医薬品が使用されることを特徴とする、A1.5~A1.29のいずれか1つの医薬品。
[A1.31]抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で投与されるように、前記医薬品が使用されることを特徴とする、A1.5~A1.30のいずれか1つの医薬品。
[A1.32]免疫抑制療法(IST)と組み合わせて前記医薬品が使用されることを特徴とする、A1.1~A1.31のいずれか1つの医薬品。
[A1.33]前記ISTが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドからなる群より選択される免疫抑制剤;(ii)経口コルチコステロイド(OCS);または(iii)(i)と(ii)との組み合わせ、による治療法である、A1.32の医薬品。
[A1.34]前記免疫抑制剤が、プレドニゾン、プレドニゾロン、またはその等価物を含む、A1.33の医薬品。
[A1.35]修正ランキンスケール(modified Rankin Scale)(mRS)スコアを改善する、A1.1~A1.34のいずれか1つの医薬品。
[A1.36]- 救助療法の使用を伴わずに修正ランキンスケール(mRS)スコアの改善までの時間を低減させる、
- 救助療法までの時間を遅らせる、
- 救助療法の使用を伴わずに発作消失もしくはてんかん重積状態の停止までの時間を遅らせる、
- 脳炎の臨床評価尺度(Clinical Assessment Scale of Encephalitis)(CASE)スコアを改善する、
- モントリオール認知評価(Montreal Cognitive Assessment)(MOCA)総スコアを改善する、
- 抗LGI1抗体を有する対象についてレイ聴覚性言語学習検査(Rey Auditory Verbal Learning Test)(RAVLT)スコアを改善する、および/または
- 抗NMDAR抗体を有する対象についてmRSスコアを改善する、
A1.35の医薬品。
[A1.37]対象の、修正ランキンスケール(mRS)、脳炎の臨床評価尺度(CASE)、モントリオール認知評価(MOCA)、レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)、またはコロンビア自殺重症度評価尺度(Columbia-Suicide Severity Rating Scale)(C-SSRS)のうちの1つまたは複数のスコアを改善する、A1.1~A1.36のいずれか1つの医薬品。
[A1.38]対象の修正ランキンスケール(mRS)スコア、もしくは脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを低減させる;または対象のモントリオール認知評価(MOCA)総スコア、もしくはレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを増大させる、A1.1~A1.36のいずれか1つの医薬品。
[A1.39]皮下投与デバイスによって投与される、A1.1~A1.38のいずれか1つの医薬品。
[A1.40]前記皮下投与デバイスが、任意で針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)であるプレフィルドシリンジ(PFS)、またはオートインジェクター(AI)である、A1.39の医薬品。
【0018】
[A2.1]対象において自己免疫性脳炎(AIE)を治療するかまたはその再発のリスクを低減させるための、IL-6阻害剤を活性成分として含む薬学的組成物。
[A2.2]前記IL-6阻害剤が、抗IL-6抗体もしくはその抗原結合断片、または抗IL-6受容体抗体もしくはその抗原結合断片である、A2.1の薬学的組成物。
[A2.3]前記IL-6阻害剤が、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、A2.1またはA2.2の薬学的組成物。
[A2.4]前記IL-6阻害剤が、ヒト化抗体である、A2.1~A2.3のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.5]前記IL-6阻害剤が、配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)CDR1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)CDR1、配列番号:9のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号:10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、A2.1~A2.4のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.6]前記抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、配列番号:1のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号:2のアミノ酸配列を含むVLを含む、A2.5の薬学的組成物。
[A2.7]前記IL-6阻害剤が、配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗IL-6受容体抗体である、A2.5またはA2.6の薬学的組成物。
[A2.8]前記IL-6阻害剤が、サトラリズマブである、A2.5~A2.7のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.9]対象において自己免疫性脳症の再発を遅らせる、その再発の頻度を低減させる、その再発の重症度を低減させる、またはその再発についての救助療法の必要性を低減させるための、A2.1~A2.8のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.10]前記対象が、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)抗体または抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)抗体について陽性である、A2.1~A2.9のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.11]前記自己免疫性脳炎が、ビッカースタッフ脳幹脳炎、急性散在性脳脊髄炎、橋本脳症、原発性中枢神経系(CNS)血管炎、およびラスムッセン脳炎以外の疾患である、A2.1~A2.10のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.12]抗NMDAR抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の脳脊髄液(CSF)において検出される、A2.1~A2.11のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.13]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎である、A2.1~A2.12のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.14]抗LGI1抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の血清または脳脊髄液(CSF)において検出される、A2.1~A2.11のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.15]前記対象が、作業記憶欠損、発作、または大脳辺縁系の関与を示唆する神経医学的症状を経験したことがある、A2.14の薬学的組成物。
[A2.16]前記自己免疫性脳炎が、抗LGI1脳炎である、A2.1~A2.11およびA2.14~A2.15のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.17]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎である、A2.1~A2.16のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.18]前記対象が、抗caspr2抗体、抗IgLON5抗体、抗DPPX抗体、抗GABAA抗体、抗ニューレキシン-3α抗体、および抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)抗体について陰性である、A2.1~A2.17のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.19]前記対象が、抗NMDAR抗体および抗LGI1抗体以外の細胞表面ニューロン抗体またはグリア抗体について陰性である、A2.1~A2.18のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.20]前記対象が、(i)抗NMDAR抗体陽性かつ年齢12歳以上;または(ii)抗LGI1抗体陽性かつ年齢18歳以上である、A2.1~A2.19のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.21]前記対象が、いかなる継続中の慢性免疫抑制療法も受けていない、A2.1~A2.20のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.22]前記対象が、安定用量のアザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、静脈内(IV)シクロホスファミド、経口コルチコステロイド(OCS)、またはAZAもしくはMMFもしくはIVシクロホスファミドとOCSとの組み合わせによる継続中の治療を受けている、A2.1~A2.20のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.23]各投与について、60 mgまたは120 mg、120 mgまたは180 mg、および180 mgまたは240 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ、40 kg未満、40~100 kg、および100 kg超の体重を有する対象に投与されるように、前記薬学的組成物が使用されることを特徴とする、A2.5~A2.22のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.24]各投与について、60 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40 kg未満の体重を有する対象に投与されるように、前記薬学的組成物が使用されることを特徴とする、A2.5~A2.22のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.25]各投与について、120 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40 kg未満の体重を有する対象に投与されるように、前記薬学的組成物が使用されることを特徴とする、A2.5~A2.22のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.26]各投与について、120 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40~100 kgの体重を有する対象に投与されるように、前記薬学的組成物が使用されることを特徴とする、A2.5~A2.22のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.27]各投与について、180 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40~100 kgの体重を有する対象に投与されるように、前記薬学的組成物が使用されることを特徴とする、A2.5~A2.22のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.28]各投与について、180 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、100 kg超の体重を有する対象に投与されるように、前記薬学的組成物が使用されることを特徴とする、A2.5~A2.22のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.29]各投与について、240 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、100 kg超の体重を有する対象に投与されるように、前記薬学的組成物が使用されることを特徴とする、A2.5~A2.22のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.30]抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に皮下投与されるように、前記薬学的組成物が使用されることを特徴とする、A2.5~A2.29のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.31]抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で投与されるように、前記薬学的組成物が使用されることを特徴とする、A2.5~A2.30のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.32]免疫抑制療法(IST)と組み合わせて前記薬学的組成物が使用されることを特徴とする、A2.1~A2.31のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.33]前記ISTが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドからなる群より選択される免疫抑制剤;(ii)経口コルチコステロイド(OCS);または(iii)(i)と(ii)との組み合わせ、による治療法である、A2.32の薬学的組成物。
[A2.34]前記免疫抑制剤が、プレドニゾン、プレドニゾロン、またはその等価物を含む、A2.33の薬学的組成物。
[A2.35]修正ランキンスケール(mRS)スコア改善を改善する、A2.1~A2.34のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.36]- 救助療法の使用を伴わずに修正ランキンスケール(mRS)スコアの改善までの時間を低減させる、
- 救助療法までの時間を遅らせる、
- 救助療法の使用を伴わずに発作消失もしくはてんかん重積状態の停止までの時間を遅らせる、
- 脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを改善する、
- モントリオール認知評価(MOCA)総スコアを改善する、
- 抗LGI1抗体を有する対象についてレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを改善する、および/または
- 抗NMDAR抗体を有する対象についてmRSスコアを改善する、
A2.35の薬学的組成物。
[A2.37]対象の、修正ランキンスケール(mRS)、脳炎の臨床評価尺度(CASE)、モントリオール認知評価(MOCA)、レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)、またはコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)のうちの1つまたは複数のスコアを改善する、A2.1~A2.36のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.38]対象の修正ランキンスケール(mRS)スコア、もしくは脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを低減させる;または対象のモントリオール認知評価(MOCA)総スコア、もしくはレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを増大させる、A2.1~A2.36のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.39]皮下投与デバイスによって投与される、A2.1~A2.38のいずれか1つの薬学的組成物。
[A2.40]前記皮下投与デバイスが、任意で針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)であるプレフィルドシリンジ(PFS)、またはオートインジェクター(AI)である、A2.39の薬学的組成物。
【0019】
[B1]対象において自己免疫性脳炎(AIE)を治療するためまたはその再発のリスクを低減させるための、医薬品の調製における、IL-6阻害剤の使用。
[B2]前記IL-6阻害剤が、抗IL-6抗体もしくはその抗原結合断片、または抗IL-6受容体抗体もしくはその抗原結合断片である、B1の使用。
[B3]前記IL-6阻害剤が、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、B1またはB2の使用。
[B4]前記IL-6阻害剤が、ヒト化抗体である、B1~B3のいずれか1つの使用。
[B5]前記IL-6阻害剤が、配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)CDR1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)CDR1、配列番号:9のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号:10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、B1~B4のいずれか1つの使用。
[B6]前記抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、配列番号:1のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号:2のアミノ酸配列を含むVLを含む、B5の使用。
[B7]前記IL-6阻害剤が、配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗IL-6受容体抗体である、B5またはB6の使用。
[B8]前記IL-6阻害剤が、サトラリズマブである、B5~B7のいずれか1つの使用。
[B9]前記医薬品が、対象において自己免疫性脳症の再発を遅らせる、その再発の頻度を低減させる、その再発の重症度を低減させる、またはその再発についての救助療法の必要性を低減させるためのものである、B1~B8のいずれか1つの使用。
[B10]前記対象が、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)抗体または抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)抗体について陽性である、B1~B9のいずれか1つの使用。
[B11]前記自己免疫性脳炎が、ビッカースタッフ脳幹脳炎、急性散在性脳脊髄炎、橋本脳症、原発性中枢神経系(CNS)血管炎、およびラスムッセン脳炎以外の疾患である、B1~B10のいずれか1つの使用。
[B12]抗NMDAR抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の脳脊髄液(CSF)において検出される、B1~B11のいずれか1つの使用。
[B13]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎である、B1~B12のいずれか1つの使用。
[B14]抗LGI1抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の血清または脳脊髄液(CSF)において検出される、B1~B11のいずれか1つの使用。
[B15]前記対象が、作業記憶欠損、発作、または大脳辺縁系の関与を示唆する神経医学的症状を経験したことがある、B14の使用。
[B16]前記自己免疫性脳炎が、抗LGI1脳炎である、B1~B11およびB14~B15のいずれか1つの使用。
[B17]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎である、B1~B16のいずれか1つの使用。
[B18]前記対象が、抗caspr2抗体、抗IgLON5抗体、抗DPPX抗体、抗GABAA抗体、抗ニューレキシン-3α抗体、および抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)抗体について陰性である、B1~B17のいずれか1つの使用。
[B19]前記対象が、抗NMDAR抗体および抗LGI1抗体以外の細胞表面ニューロン抗体またはグリア抗体について陰性である、B1~B18のいずれか1つの使用。
[B20]前記対象が、(i)抗NMDAR抗体陽性かつ年齢12歳以上;または(ii)抗LGI1抗体陽性かつ年齢18歳以上である、B1~B19のいずれか1つの使用。
[B21]前記対象が、いかなる継続中の慢性免疫抑制療法も受けていない、B1~B20のいずれか1つの使用。
[B22]前記対象が、安定用量のアザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、静脈内(IV)シクロホスファミド、経口コルチコステロイド(OCS)、またはAZAもしくはMMFもしくはIVシクロホスファミドとOCSとの組み合わせによる継続中の治療を受けている、B1~B20のいずれか1つの使用。
[B23]各投与について、60 mgまたは120 mg、120 mgまたは180 mg、および180 mgまたは240 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ、40 kg未満、40~100 kg、および100 kg超の体重を有する対象に投与されるように使用されることを、前記医薬品が特徴とする、B5~B22のいずれか1つの使用。
[B24]各投与について、60 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40 kg未満の体重を有する対象に投与されるように使用されることを、前記医薬品が特徴とする、B5~B22のいずれか1つの使用。
[B25]各投与について、120 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40 kg未満の体重を有する対象に投与されるように使用されることを、前記医薬品が特徴とする、B5~B22のいずれか1つの使用。
[B26]各投与について、120 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40~100 kgの体重を有する対象に投与されるように使用されることを、前記医薬品が特徴とする、B5~B22のいずれか1つの使用。
[B27]各投与について、180 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40~100 kgの体重を有する対象に投与されるように使用されることを、前記医薬品が特徴とする、B5~B22のいずれか1つの使用。
[B28]各投与について、180 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、100 kg超の体重を有する対象に投与されるように使用されることを、前記医薬品が特徴とする、B5~B22のいずれか1つの使用。
[B29]各投与について、240 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、100 kg超の体重を有する対象に投与されるように使用されることを、前記医薬品が特徴とする、B5~B22のいずれか1つの使用。
[B30]抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に皮下投与されるように使用されることを、前記医薬品が特徴とする、B5~B29のいずれか1つの使用。
[B31]抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で投与されるように使用されることを、前記医薬品が特徴とする、B5~B30のいずれか1つの使用。
[B32]免疫抑制療法(IST)と組み合わせて使用されることを、前記医薬品が特徴とする、B1~B31のいずれか1つの使用。
[B33]前記ISTが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドからなる群より選択される免疫抑制剤;(ii)経口コルチコステロイド(OCS);または(iii)(i)と(ii)との組み合わせ、による治療法である、B32の使用。
[B34]前記免疫抑制剤が、プレドニゾン、プレドニゾロン、またはその等価物を含む、B33の使用。
[B35]前記医薬品が、修正ランキンスケール(mRS)スコア改善を改善する、B1~B34のいずれか1つの使用。
[B36]前記医薬品が、
- 救助療法の使用を伴わずに修正ランキンスケール(mRS)スコアの改善までの時間を低減させる、
- 救助療法までの時間を遅らせる、
- 救助療法の使用を伴わずに発作消失もしくはてんかん重積状態の停止までの時間を遅らせる、
- 脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを改善する、
- モントリオール認知評価(MOCA)総スコアを改善する、
- 抗LGI1抗体を有する対象についてレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを改善する、および/または
- 抗NMDAR抗体を有する対象についてmRSスコアを改善する、
B35の使用。
[B37]前記医薬品が、対象の、修正ランキンスケール(mRS)、脳炎の臨床評価尺度(CASE)、モントリオール認知評価(MOCA)、レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)、またはコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)のうちの1つまたは複数のスコアを改善する、B1~B36のいずれか1つの使用。
[B38]前記医薬品が、対象の修正ランキンスケール(mRS)スコア、もしくは脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを低減させる;または対象のモントリオール認知評価(MOCA)総スコア、もしくはレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを増大させる、B1~B36のいずれか1つの使用。
[B39]前記医薬品が、皮下投与デバイスによって投与される、B1~B38のいずれか1つの使用。
[B40]前記皮下投与デバイスが、任意で針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)であるプレフィルドシリンジ(PFS)、またはオートインジェクター(AI)である、B39の使用。
【0020】
[C1]対象において自己免疫性脳炎(AIE)を治療する際の、またはその再発のリスクを低減させる際の使用のためのIL-6阻害剤。
[C2]抗IL-6抗体もしくはその抗原結合断片、または抗IL-6受容体抗体もしくはその抗原結合断片である、C1の使用のためのIL-6阻害剤。
[C3]抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、C1またはC2の使用のためのIL-6阻害剤。
[C4]ヒト化抗体である、C1~C3のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C5]配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)CDR1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)CDR1、配列番号:9のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号:10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、C1~C4のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C6]前記抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、配列番号:1のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号:2のアミノ酸配列を含むVLを含む、C5の使用のためのIL-6阻害剤。
[C7]配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗IL-6受容体抗体である、C5またはC6の使用のためのIL-6阻害剤。
[C8]サトラリズマブである、C5~C7のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C9]対象において自己免疫性脳症の再発を遅らせる、その再発の頻度を低減させる、その再発の重症度を低減させる、またはその再発についての救助療法の必要性を低減させるための、C1~C8のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C10]前記対象が、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)抗体または抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)抗体について陽性である、C1~C9のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C11]前記自己免疫性脳炎が、ビッカースタッフ脳幹脳炎、急性散在性脳脊髄炎、橋本脳症、原発性中枢神経系(CNS)血管炎、およびラスムッセン脳炎以外の疾患である、C1~C10のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C12]抗NMDAR抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の脳脊髄液(CSF)において検出される、C1~C11のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C13]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎である、C1~C12のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C14]抗LGI1抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の血清または脳脊髄液(CSF)において検出される、C1~C11のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C15]前記対象が、作業記憶欠損、発作、または大脳辺縁系の関与を示唆する神経医学的症状を経験したことがある、C14の使用のためのIL-6阻害剤。
[C16]前記自己免疫性脳炎が、抗LGI1脳炎である、C1~C11およびC14~C15のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C17]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎である、C1~C16のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C18]前記対象が、抗caspr2抗体、抗IgLON5抗体、抗DPPX抗体、抗GABAA抗体、抗ニューレキシン-3α抗体、および抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)抗体について陰性である、C1~C17のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C19]前記対象が、抗NMDAR抗体および抗LGI1抗体以外の細胞表面ニューロン抗体またはグリア抗体について陰性である、C1~C18のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C20]前記対象が、(i)抗NMDAR抗体陽性かつ年齢12歳以上;または(ii)抗LGI1抗体陽性かつ年齢18歳以上である、C1~C19のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C21]前記対象が、いかなる継続中の慢性免疫抑制療法も受けていない、C1~C20のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C22]前記対象が、安定用量のアザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、静脈内(IV)シクロホスファミド、経口コルチコステロイド(OCS)、またはAZAもしくはMMFもしくはIVシクロホスファミドとOCSとの組み合わせによる継続中の治療を受けている、C1~C20のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C23]各投与について、60 mgまたは120 mg、120 mgまたは180 mg、および180 mgまたは240 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、それぞれ、40 kg未満、40~100 kg、および100 kg超の体重を有する対象に投与されることを特徴とする、C5~C22のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C24]各投与について、60 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40 kg未満の体重を有する対象に投与されることを特徴とする、C5~C22のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C25]各投与について、120 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40 kg未満の体重を有する対象に投与されることを特徴とする、C5~C22のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C26]各投与について、120 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40~100 kgの体重を有する対象に投与されることを特徴とする、C5~C22のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C27]各投与について、180 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、40~100 kgの体重を有する対象に投与されることを特徴とする、C5~C22のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C28]各投与について、180 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、100 kg超の体重を有する対象に投与されることを特徴とする、C5~C22のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C29]各投与について、240 mgの抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、100 kg超の体重を有する対象に投与されることを特徴とする、C5~C22のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C30]抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に皮下投与されることを特徴とする、C5~C29のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C31]抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で投与されることを特徴とする、C5~C30のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C32]免疫抑制療法(IST)と組み合わせて使用される、C1~C31のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C33]前記ISTが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドからなる群より選択される免疫抑制剤;(ii)経口コルチコステロイド(OCS);または(iii)(i)と(ii)との組み合わせ、による治療法である、C32の使用のためのIL-6阻害剤。
[C34]前記免疫抑制剤が、プレドニゾン、プレドニゾロン、またはその等価物を含む、C33の使用のためのIL-6阻害剤。
[C35]修正ランキンスケール(mRS)スコア改善を改善する、C1~C34のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C36]- 救助療法の使用を伴わずに修正ランキンスケール(mRS)スコアの改善までの時間を低減させる、
- 救助療法までの時間を遅らせる、
- 救助療法の使用を伴わずに発作消失もしくはてんかん重積状態の停止までの時間を遅らせる、
- 脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを改善する、
- モントリオール認知評価(MOCA)総スコアを改善する、
- 抗LGI1抗体を有する対象についてレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを改善する、および/または
- 抗NMDAR抗体を有する対象についてmRSスコアを改善する、
C35の使用のためのIL-6阻害剤。
[C37]対象の、修正ランキンスケール(mRS)、脳炎の臨床評価尺度(CASE)、モントリオール認知評価(MOCA)、レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)、またはコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)のうちの1つまたは複数のスコアを改善する、C1~C36のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C38]対象の修正ランキンスケール(mRS)スコア、もしくは脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを低減させる;または対象のモントリオール認知評価(MOCA)総スコア、もしくはレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを増大させる、C1~C36のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C39]皮下投与デバイスによって投与される、C1~C38のいずれか1つの使用のためのIL-6阻害剤。
[C40]前記皮下投与デバイスが、任意で針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)であるプレフィルドシリンジ(PFS)、またはオートインジェクター(AI)である、C39の使用のためのIL-6阻害剤。
【0021】
[C2.1]抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.2]各投与について60 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.3]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.4]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.5]各投与について180 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.6]各投与について180 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.7]各投与について240 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.8]アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.9]各投与について60 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.10]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.11]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.12]各投与について180 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.13]各投与について180 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.14]各投与について240 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.15]経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.16]各投与について60 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.17]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.18]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.19]各投与について180 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.20]各投与について180 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.21]各投与について240 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.22](i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.23]各投与について60 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.24]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.25]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.26]各投与について180 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.27]各投与について180 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.28]各投与について240 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.29]抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.30]各投与について60 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.31]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.32]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.33]各投与について180 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.34]各投与について180 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.35]各投与について240 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.36]アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.37]各投与について60 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.38]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.39]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.40]各投与について180 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.41]各投与について180 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.42]各投与について240 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、アザチオプリン(AZA)またはミコフェノール酸モフェチル(MMF)または静脈内(IV)シクロホスファミドと組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.43]経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.44]各投与について60 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.45]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.46]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.47]各投与について180 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.48]各投与について180 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.49]各投与について240 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.50](i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.51]各投与について60 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.52]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40 kg未満の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.53]各投与について120 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.54]各投与について180 mgのサトラリズマブが、40~100 kgの体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.55]各投与について180 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
[C2.56]各投与について240 mgのサトラリズマブが、100 kg超の体重を有する対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で皮下投与され;かつサトラリズマブが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドのいずれか1つ、ならびに(ii)経口コルチコステロイド(OCS)と組み合わせて使用される、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を治療する際の使用のためのサトラリズマブ。
【0022】
[D1]対象において自己免疫性脳炎(AIE)を治療するための、またはその再発のリスクを低減させるためのキットであって、
(1)A2.1~A2.40のいずれか1つの薬学的組成物;および
(2)対象に対する薬学的組成物の投与を指示する添付文書またはラベル
を含む、前記キット。
[D2]皮下投与デバイスは、任意で針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)であるプレフィルドシリンジ(PFS)、またはオートインジェクター(AI)である。
[D2]薬学的に許容される賦形剤中に60 mgの固定用量のサトラリズマブを含む、皮下投与デバイス。
[D3]薬学的に許容される賦形剤中に240 mgの固定用量のサトラリズマブを含む、皮下投与デバイス。
[D4]任意で針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)であるプレフィルドシリンジ(PFS)である、D2またはD3の皮下投与デバイス。
[D5]オートインジェクター(AI)である、D2またはD3の皮下投与デバイス。
[D6]薬学的に許容される賦形剤中に60 mgの固定用量のサトラリズマブを含む、皮下投与デバイスであって、針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)である、前記皮下投与デバイス。
[D7]薬学的に許容される賦形剤中に120 mgの固定用量のサトラリズマブを含む、皮下投与デバイスであって、針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)である、前記皮下投与デバイス。
[D8]薬学的に許容される賦形剤中に120 mg、180 mg、または240 mgの固定用量のサトラリズマブを含む、皮下投与デバイスであって、オートインジェクター(AI)である、前記皮下投与デバイス。
【0023】
[E1]自己免疫性脳炎(AIE)を有する対象を治療する方法であって、有効量のIL-6阻害剤を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
[E2]前記IL-6阻害剤が、抗IL-6抗体もしくはその抗原結合断片、または抗IL-6受容体抗体もしくはその抗原結合断片である、E1の方法。
[E3]前記IL-6阻害剤が、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、E1またはE2の方法。
[E4]前記IL-6阻害剤が、ヒト化抗体である、E1~E3のいずれか1つの方法。
[E5]前記IL-6阻害剤が、配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)CDR1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)CDR1、配列番号:9のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号:10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、E1~E4のいずれか1つの方法。
[E6]前記抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、配列番号:1のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号:2のアミノ酸配列を含むVLを含む、E5の方法。
[E7]前記IL-6阻害剤が、配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗IL-6受容体抗体である、E5またはE6の方法。
[E8]前記IL-6阻害剤が、サトラリズマブである、E5~E7のいずれか1つの方法。
[E9]前記対象が、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)抗体または抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)抗体について陽性である、E1~E8のいずれか1つの方法。
[E10]前記自己免疫性脳炎が、ビッカースタッフ脳幹脳炎、急性散在性脳脊髄炎、橋本脳症、原発性中枢神経系(CNS)血管炎、およびラスムッセン脳炎以外の疾患である、E1~E9のいずれか1つの方法。
[E11]抗NMDAR抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の脳脊髄液(CSF)において検出される、E1~E10のいずれか1つの方法。
[E12]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎である、E1~E11のいずれか1つの方法。
[E13]抗LGI1抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の血清または脳脊髄液(CSF)において検出される、E1~E10のいずれか1つの方法。
[E14]前記対象が、作業記憶欠損、発作、または大脳辺縁系の関与を示唆する神経医学的症状を経験したことがある、E13の方法。
[E15]前記自己免疫性脳炎が、抗LGI1脳炎である、E1~E10およびE13~E14のいずれか1つの方法。
[E16]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎である、E1~E15のいずれか1つの方法。
[E17]前記対象が、抗caspr2抗体、抗IgLON5抗体、抗DPPX抗体、抗GABAA抗体、抗ニューレキシン-3α抗体、および抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)抗体について陰性である、E1~E16のいずれか1つの方法。
[E18]前記対象が、抗NMDAR抗体および抗LGI1抗体以外の細胞表面ニューロン抗体またはグリア抗体について陰性である、E1~E17のいずれか1つの方法。
[E19]前記対象が、(i)抗NMDAR抗体陽性かつ年齢12歳以上;または(ii)抗LGI1抗体陽性かつ年齢18歳以上である、E1~E18のいずれか1つの方法。
[E20]前記対象が、いかなる継続中の慢性免疫抑制療法も受けていない、E1~E19のいずれか1つの方法。
[E21]前記対象が、安定用量のアザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、静脈内(IV)シクロホスファミド、経口コルチコステロイド(OCS)、またはAZAもしくはMMFもしくはIVシクロホスファミドとOCSとの組み合わせによる継続中の治療を受けている、E1~E19のいずれか1つの方法。
[E22]前記対象が、40 kg未満の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、60 mgまたは120 mgである;あるいは
前記対象が、40~100 kgの体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、120 mgまたは180 mgである;あるいは
前記対象が、100 kg超の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、180 mgまたは240 mgである、
E5~E21のいずれか1つの方法。
[E23]前記対象が、40 kg未満の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、60 mgである、E5~E21のいずれか1つの方法。
[E24]前記対象が、40 kg未満の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、120 mgである、E5~E21のいずれか1つの方法。
[E25]前記対象が、40~100 kgの体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、120 mgである、E5~E21のいずれか1つの方法。
[E26]前記対象が、40~100 kgの体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、180 mgである、E5~E21のいずれか1つの方法。
[E27]前記対象が、100 kg超の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、180 mgである、E5~E21のいずれか1つの方法。
[E28]前記対象が、100 kg超の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、240 mgである、E5~E21のいずれか1つの方法。
[E29]前記抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に皮下投与される、E5~E28のいずれか1つの方法。
[E30]前記抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で投与される、E5~E29のいずれか1つの方法。
[E31]免疫抑制療法(IST)が、IL-6阻害剤と同時に対象に投与される、E1~E30のいずれか1つの方法。
[E32]前記ISTが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドからなる群より選択される免疫抑制剤;(ii)経口コルチコステロイド(OCS);または(iii)(i)と(ii)との組み合わせを含む、E31の方法。
[E33]前記免疫抑制剤が、プレドニゾン、プレドニゾロン、またはその等価物を含む、E32の方法。
[E34]前記対象に対するIL-6阻害剤の投与が、修正ランキンスケール(mRS)スコア改善を改善する、E1~E33のいずれか1つの方法。
[E35]前記対象に対するIL-6阻害剤の投与が、
- 救助療法の使用を伴わずに修正ランキンスケール(mRS)スコアの改善までの時間を低減させる、
- 救助療法までの時間を遅らせる、
- 救助療法の使用を伴わずに発作消失もしくはてんかん重積状態の停止までの時間を遅らせる、
- 脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを改善する、
- モントリオール認知評価(MOCA)総スコアを改善する、
- 抗LGI1抗体を有する対象についてレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを改善する、および/または
- 抗NMDAR抗体を有する対象についてmRSスコアを改善する、
E34の方法。
[E36]前記対象に対するIL-6阻害剤の投与が、対象の、修正ランキンスケール(mRS)、脳炎の臨床評価尺度(CASE)、モントリオール認知評価(MOCA)、レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)、またはコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)のうちの1つまたは複数のスコアを改善する、E1~E35のいずれか1つの方法。
[E37]前記対象に対するIL-6阻害剤の投与が、対象の修正ランキンスケール(mRS)スコア、もしくは脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを低減させる;または対象のモントリオール認知評価(MOCA)総スコア、もしくはレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを増大させる、E1~E35のいずれか1つの方法。
[E38]前記IL-6阻害剤が、皮下投与デバイスによって投与される、E1~E37のいずれか1つの方法。
[E39]前記皮下投与デバイスが、任意で針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)であるプレフィルドシリンジ(PFS)、またはオートインジェクター(AI)である、E38の方法。
【0024】
[F1]対象において自己免疫性脳炎(AIE)の再発のリスクを低減させる方法であって、有効量のIL-6阻害剤を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
[F2]前記IL-6阻害剤が、抗IL-6抗体もしくはその抗原結合断片、または抗IL-6受容体抗体もしくはその抗原結合断片である、F1の方法。
[F3]前記IL-6阻害剤が、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、F1またはF2の方法。
[F4]前記IL-6阻害剤が、ヒト化抗体である、F1~F3のいずれか1つの方法。
[F5]前記IL-6阻害剤が、配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)CDR1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)CDR1、配列番号:9のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号:10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である、F1~F4のいずれか1つの方法。
[F6]前記抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、配列番号:1のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号:2のアミノ酸配列を含むVLを含む、F5の方法。
[F7]前記IL-6阻害剤が、配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗IL-6受容体抗体である、F5またはF6の方法。
[F8]前記IL-6阻害剤が、サトラリズマブである、F5~F7のいずれか1つの方法。
[F9]再発のリスクを低減させることが、対象において自己免疫性脳症の再発を遅らせること、その再発の頻度を低減させること、その再発の重症度を低減させること、またはその再発についての救助療法の必要性を低減させることを含む、F1~F8のいずれか1つの方法。
[F10]前記対象が、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)抗体または抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)抗体について陽性である、F1~F9のいずれか1つの方法。
[F11]前記自己免疫性脳炎が、ビッカースタッフ脳幹脳炎、急性散在性脳脊髄炎、橋本脳症、原発性中枢神経系(CNS)血管炎、およびラスムッセン脳炎以外の疾患である、F1~F10のいずれか1つの方法。
[F12]抗NMDAR抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の脳脊髄液(CSF)において検出される、F1~F11のいずれか1つの方法。
[F13]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎である、F1~F12のいずれか1つの方法。
[F14]抗LGI1抗体が、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の血清または脳脊髄液(CSF)において検出される、F1~F11のいずれか1つの方法。
[F15]前記対象が、作業記憶欠損、発作、または大脳辺縁系の関与を示唆する神経医学的症状を経験したことがある、F14の方法。
[F16]前記自己免疫性脳炎が、抗LGI1脳炎である、F1~F11およびF14~F15のいずれか1つの方法。
[F17]前記自己免疫性脳炎が、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎である、F1~F16のいずれか1つの方法。
[F18]前記対象が、抗caspr2抗体、抗IgLON5抗体、抗DPPX抗体、抗GABAA抗体、抗ニューレキシン-3α抗体、および抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)抗体について陰性である、F1~F17のいずれか1つの方法。
[F19]前記対象が、抗NMDAR抗体および抗LGI1抗体以外の細胞表面ニューロン抗体またはグリア抗体について陰性である、F1~F18のいずれか1つの方法。
[F20]前記対象が、(i)抗NMDAR抗体陽性かつ年齢12歳以上;または(ii)抗LGI1抗体陽性かつ年齢18歳以上である、F1~F19のいずれか1つの方法。
[F21]前記対象が、いかなる継続中の慢性免疫抑制療法も受けていない、F1~F20のいずれか1つの方法。
[F22]前記対象が、安定用量のアザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、静脈内(IV)シクロホスファミド、経口コルチコステロイド(OCS)、またはAZAもしくはMMFもしくはIVシクロホスファミドとOCSとの組み合わせによる継続中の治療を受けている、F1~F21のいずれか1つの方法。
[F23]前記対象が、40 kg未満の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、60 mgまたは120 mgである;あるいは
前記対象が、40~100 kgの体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、120 mgまたは180 mgである;あるいは
前記対象が、100 kg超の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、180 mgまたは240 mgである、
F5~F22のいずれか1つの方法。
[F24]前記対象が、40 kg未満の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、60 mgである、F5~F22のいずれか1つの方法。
[F25]前記対象が、40 kg未満の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、120 mgである、F5~F22のいずれか1つの方法。
[F26]前記対象が、40~100 kgの体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、120 mgである、F5~F22のいずれか1つの方法。
[F27]前記対象が、40~100 kgの体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、180 mgである、F5~F22のいずれか1つの方法。
[F28]前記対象が、100 kg超の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、180 mgである、F5~F22のいずれか1つの方法。
[F29]前記対象が、100 kg超の体重を有すると判定され、かつ、各投与において該対象に投与される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の量が、240 mgである、F5~F22のいずれか1つの方法。
[F30]前記抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に皮下投与される、F5~F29のいずれか1つの方法。
[F31]前記抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片が、対象に、2週間隔(Q2W)で3回、およびその後4週間隔(Q4W)で投与される、F5~F30のいずれか1つの方法。
[F32]免疫抑制療法(IST)が、IL-6阻害剤と同時に対象に投与される、F1~F31のいずれか1つの方法。
[F33]前記ISTが、(i)アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドからなる群より選択される免疫抑制剤;(ii)経口コルチコステロイド(OCS);または(iii)(i)と(ii)との組み合わせを含む、F32の方法。
[F34]前記免疫抑制剤が、プレドニゾン、プレドニゾロン、またはその等価物を含む、F33の方法。
[F35]前記対象に対するIL-6阻害剤の投与が、修正ランキンスケール(mRS)スコア改善を改善する、F1~F34のいずれか1つの方法。
[F36]前記対象に対するIL-6阻害剤の投与が、
- 救助療法の使用を伴わずに修正ランキンスケール(mRS)スコアの改善までの時間を低減させる、
- 救助療法までの時間を遅らせる、
- 救助療法の使用を伴わずに発作消失もしくはてんかん重積状態の停止までの時間を遅らせる、
- 脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを改善する、
- モントリオール認知評価(MOCA)総スコアを改善する、
- 抗LGI1抗体を有する対象についてレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを改善する、および/または
- 抗NMDAR抗体を有する対象についてmRSスコアを改善する、
F35の方法。
[F37]前記対象に対するIL-6阻害剤の投与が、対象の、修正ランキンスケール(mRS)、脳炎の臨床評価尺度(CASE)、モントリオール認知評価(MOCA)、レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)、またはコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)のうちの1つまたは複数のスコアを改善する、F1~F36のいずれか1つの方法。
[F38]前記対象に対するIL-6阻害剤の投与が、対象の修正ランキンスケール(mRS)スコア、もしくは脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを低減させる;または対象のモントリオール認知評価(MOCA)総スコア、もしくはレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを増大させる、F1~F36のいずれか1つの方法。
[F39]前記IL-6阻害剤が、皮下投与デバイスによって投与される、E1~E38のいずれか1つの方法。
[F40]前記皮下投与デバイスが、任意で針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)であるプレフィルドシリンジ(PFS)、またはオートインジェクター(AI)である、E39の方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、抗NMDAR脳炎および抗LGI1脳炎などの、自己免疫性脳炎を治療するため、予防するため、その再発を予防するため、またはその再発のリスクを低減させるための、サトラリズマブを含む医薬品(薬学的組成物)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を有する患者においてサトラリズマブの有効性、安全性、薬物動態、および薬力学を評価するための、第III相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設バスケット試験の試験スキーマの一次治療期間を示す。AIE=自己免疫性脳炎;LGI1=ロイシンリッチグリオーマ不活性化1;NMDAR=N-メチル-D-アスパラギン酸受容体;PK=薬物動態;Q4W=4週間隔;R=無作為化。注記:0週目ベースライン評価は、投与前に行う。サトラリズマブ(または対応するプラセボ)の特定の用量は、以下のように、個々の参加者の体重に基づく:40 kg未満:60 mgまたは120 mg Q4W;40~100 kg:120 mgまたは180 mg Q4W;100 kg超:180 mgまたは240 mg Q4W。
図2】60 mg(40 kg未満)、120 mg(40~100 kg)、または180 mg(100 kg超)のQ4W投与後の、定常状態の曝露パラメータおよび受容体占有率の体重に対する依存性を示す。注記:Cmax、Cトラフ、およびROの予測を、それぞれ、左から右へ示す。シミュレーションは、2000人の個体に基づく。点は、NMOSD試験において観察されたような、類似した割合の参加者におけるADA陽性を仮定するシミュレーションデータである。体重40 kg未満については、ADAは仮定されない。破線の横線を、参考のために追加した。ADA=抗薬物抗体;Cmax=観察された最大濃度;Ctr=投与間隔の終了時の定常状態濃度;NMOSD=視神経脊髄炎スペクトラム障害;RO=受容体占有率;Q4W=4週間隔。
【発明を実施するための形態】
【0027】
態様の説明
本発明は、対象において、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を含むがそれらに限定されない自己免疫性脳炎(AIE)を治療するための、または自己免疫性脳炎(AIE)における再発のリスクを低減させるための、IL-6阻害剤を活性成分として含む医薬品(薬学的組成物)に関する。再発は、新たな臨床エピソード(例えば、最後の発作の1ヶ月後に出現するAIEの、新たなまたは悪化した、急性症状および臨床徴候)として定義される。
別の局面において、本発明はまた、対象において、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を含むがそれらに限定されない自己免疫性脳炎(AIE)を治療するための、または自己免疫性脳炎(AIE)における再発のリスクを低減させるための医薬品の調製における、IL-6阻害剤の使用に関する。
さらに別の局面において、本発明は、対象において、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を含むがそれらに限定されない自己免疫性脳炎(AIE)を治療する際の、または自己免疫性脳炎(AIE)における再発のリスクを低減させる際の使用のための、IL-6阻害剤に関する。
さらに、本発明はまた、対象において、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を含むがそれらに限定されない自己免疫性脳炎(AIE)を治療するための、または自己免疫性脳炎(AIE)における再発のリスクを低減させるためのキットであって、IL-6阻害剤を含む薬学的組成物、および対象に対する薬学的組成物の投与を指示する添付文書またはラベルを含む、前記キットに関する。
さらに、本発明はまた、対象において、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を含むがそれらに限定されない自己免疫性脳炎(AIE)を有する対象を治療するか、または自己免疫性脳炎(AIE)における再発のリスクを低減させる方法であって、有効量のIL-6阻害剤を該対象に投与する工程を含む、前記方法に関する。
本開示の「IL-6阻害剤」とは、IL-6によるシグナル伝達を遮断し、IL-6の生物学的活性を阻害する物質である。IL-6阻害剤は、好ましくは、IL-6とIL-6受容体との間、および/または、IL-6/IL-6受容体複合体とgp130との間の結合を阻害する物質である。本開示のIL-6阻害剤の例には、抗IL-6抗体もしくはその抗原結合断片、抗IL-6受容体抗体もしくはその抗原結合断片、抗gp130抗体もしくはその抗原結合断片、IL-6バリアント、可溶性IL-6受容体バリアント、またはIL-6もしくはIL-6受容体の部分ペプチド、および類似した活性を示す低分子量物質が含まれるが、特にそれらに限定されない。本開示のIL-6阻害剤の例は、好ましくは、抗IL-6抗体もしくはその抗原結合断片、または抗IL-6受容体抗体もしくはその抗原結合断片、より好ましくは、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片、任意で、ヒト化抗体であり得る。
【0028】
本開示のいくつかの態様において、IL-6阻害剤は、配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)CDR1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)CDR1、配列番号:9のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号:10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片である。本開示におけるある特定の態様において、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号:2のアミノ酸配列を含むVLを含む。本開示におけるある特定の態様において、IL-6阻害剤は、配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗IL-6受容体抗体である。本開示におけるある特定の態様において、IL-6阻害剤は、サトラリズマブである。本開示のいくつかの態様において、「サトラリズマブ」という用語は、配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号:7のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号:9のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号:10のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む;好ましくは、配列番号:1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む;ならびに最も好ましくは、配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗IL-6受容体抗体である。
【0029】
本開示におけるある特定の態様において、自己免疫性脳炎(AIE)には、特定可能な病因的ドライバー、通常は腫瘍に関連する障害、および特発性とみなされる障害が含まれる。腫瘍随伴性免疫媒介性脳炎症候群において、それらは、細胞内ニューロンタンパク質に対する抗体(抗Huなどのオンコニューロンタンパク質)に関連している可能性がある。一局面において、AIEは、AIEにとって直接的に病原性であると考えられる、Hu(ANNA1)、Ma2、GAD、N末端エノラーゼ(NAE)、NMDA受容体、AMPA受容体、GABAA受容体、GABAB受容体、mGluR5、ドーパミンD2受容体、抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)、CASPR2、およびDPPXなどの神経細胞表面タンパク質およびシナプスタンパク質に対する抗体の特定によって描写される(Graus et al., Lancet Neurol., 15, 391-404, 2016;Lancaster et al., Neurology, 77, 179-189, 2011)。それらの自己抗体の特定は、本発明に対してより良好な応答を有する集団を描写するのに役立つ可能性がある。本開示において、AIEには、自己抗体のうちの1つまたは複数が、病気を起こす原因の1つであると考えられる、任意のAIEサブタイプが含まれ、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎は、最も一般的なかつ最もよく特徴決定されたAIEのうちの2つに相当する(Leypoldt F, Wandinger K-P, Bien C, et al., Eur Neurol Rev 2013;8:31-7)。一局面において、本開示におけるAIEにはまた、ビッカースタッフ脳幹脳炎、急性散在性脳脊髄炎、橋本脳症、原発性中枢神経系(CNS)血管炎、およびラスムッセン脳炎が含まれる。本開示において、抗NMDAR脳炎および抗LGI1脳炎が、より具体的な態様として記載される。
【0030】
本開示において、「患者」とも呼ばれ得る「対象」は、上記の自己免疫性脳炎(AIE)、例えば抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を有する。一局面において、対象は、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)抗体または抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)抗体について陽性である。一局面において、対象が、抗NMDARまたは抗LGI1について陽性であるか否かは、細胞ベースのアッセイを用いて対象由来の脳脊髄液(CSF)において検出される。一局面において、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎を有する対象は、抗caspr2抗体、抗IgLON5抗体、抗DPPX抗体、抗GABAA抗体、抗ニューレキシン-3α抗体、および抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)抗体について陰性である。一局面において、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎を有する対象は、抗NMDAR抗体および抗LGI1抗体以外の細胞表面ニューロン抗体またはグリア抗体について陰性である。一局面において、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎を有する対象は、作業記憶欠損、発作、または大脳辺縁系の関与を示唆する神経医学的症状を経験したことがある。別の局面において、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎を有する対象は、慢性免疫抑制療法(IST)を受けたことがあるか、受けたことがないか、受けているか、または受けていない。一局面において、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎を有する対象は、安定用量のアザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、静脈内(IV)シクロホスファミド、経口コルチコステロイド(OCS)、またはAZAもしくはMMFもしくはIVシクロホスファミドとOCSとの組み合わせによる治療を有するか、受けたことがあるか、受けたことがないか、受けているか、または受けていない。一局面において、抗NMDAR脳炎または抗LGI1脳炎を有する対象は、(i)抗NMDAR抗体陽性かつ年齢12歳以上;または(ii)抗LGI1抗体陽性かつ年齢18歳以上である。
【0031】
ある特定の態様において、本発明の医薬品または薬学的組成物は、免疫抑制療法(IST)と組み合わせて使用される。ある特定の態様において、ISTは、アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、および静脈内(IV)シクロホスファミドからなる群より選択される1つもしくは複数の免疫抑制剤;(ii)経口コルチコステロイド(OCS);または(iii)(i)と(ii)との組み合わせである。
【0032】
ある特定の態様において、本発明の医薬品または薬学的組成物は、IL-6阻害剤の投与から、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を含むがそれらに限定されない自己免疫性脳炎(AIE)の再発の最初の発生までの時間を遅らせることができる。ある特定の態様において、本発明の医薬品または薬学的組成物は、以下の1つまたは複数をさらに低減させることができる:
(a)自己免疫性脳炎(AIE)の再発の比率;
(b)神経軸のMRI上での活動性病変の比率;
(c)救助療法を受ける対象の割合;または
(d)入院の比率。
【0033】
本開示において、「治療」という用語は、たとえAIEの完全寛解が達成されなくても、軽微症状(minimal manifestation)(MM)が維持され得るレベルまで症状を緩和もしくは改善すること、またはそのような状態を維持することもまた、AIEの「治療」に含まれるという意味で用いられる。
【0034】
本開示において、AIEの治療のためのサトラリズマブなどのIL-6阻害剤の有効性、安全性、薬物動態、および/または薬力学は、下記のような1つまたは複数の局面および/またはスコアに基づいて評価され得る。
i. 修正ランキンスケール(mRS)スコア改善を改善すること。
ii. 救助療法の使用を伴わずに修正ランキンスケール(mRS)スコアの改善までの時間を低減させること。
iii. 救助療法までの時間を遅らせること。
iv. 救助療法の使用を伴わずに発作消失またはてんかん重積状態の停止までの時間を遅らせること。
v. 脳炎の臨床評価尺度(CASE)スコアを改善すること。
vi. モントリオール認知評価(MOCA)総スコアを改善すること。
vii. 抗LGI1抗体を有する対象についてレイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)スコアを改善すること。
viii. 抗NMDAR抗体を有する対象についてmRSスコアを改善すること。
viii. 修正疲労影響尺度(Modified Fatigue Impact Scale)(MFIS)を改善すること。
ix. モントリオール認知評価(MOCA)を改善すること。
x. レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)を改善すること。
xi. EQ-5D-5Lを改善すること。
xii. コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)を改善すること。
xiii. ベック抑うつ質問票(Beck Depression Inventory)(BDI II)を改善すること。
【0035】
有効性を評価するために本発明を適用する(例えば、本発明の医薬品または薬学的組成物を投与する)所与の期間は、特に限定されず、1週間、2週間、4週間、8週間、12週間、24週間、48週間、1年、2年、3年、4年、および5年を含み、かつ期間は、例示された期間よりも短くてもよく、または長くてもよい。
【0036】
本発明において、自己免疫性脳炎(AIE)を有する対象(例えば、患者)は、本発明の治療(例えば、医薬品、薬学的組成物、方法など)を、例えば、2週間隔(Q2W)で3回(すなわち、ゼロ時点で、ならびに2週目および4週目にさらに)、およびその後4週間隔(Q4W)で受けてもよい。いくつかの態様において、対象(例えば、患者)は、皮下投与経路を介して、本発明の医薬品または組成物に含有される抗IL-6受容体抗体(例えば、サトラリズマブ)またはその抗原結合断片を受けることができる。
【0037】
本発明の対象におけるAIEの治療に加えて、本発明はまた、対象におけるAIEの再発において再発のリスクを低減させるために使用される。本発明において、再発のリスクの低減には、AIEの再発を遅らせること、その再発の頻度を低減させること、またはその再発の重症度を低減させること、またはその再発についての救助療法の必要性を低減させることが含まれるが、それらに限定されない。
【0038】
本発明において使用される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片は、IL-6受容体に結合し、IL-6のIL-6受容体に対する結合を阻害し、IL-6によるシグナル伝達を遮断し、かつIL-6の生物学的活性を阻害する。
【0039】
本発明において使用される抗IL-6受容体抗体は、公知の方法を用いて得ることができる。特に、本発明において使用される抗IL-6受容体抗体は、好ましくは、哺乳動物由来のモノクローナル抗体である。哺乳動物由来のモノクローナル抗体には、ハイブリドーマによって産生されるもの、および遺伝子操作法を用いて抗体遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換された宿主によって産生されるものが含まれる。
【0040】
本発明における「IL-6受容体抗体」の好ましい例には、トシリズマブの可変領域および定常領域を改変することによって産生されるヒト化抗IL-6受容体抗体、具体的には、配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号:7のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号:9のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号:10のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体が含まれる。
【0041】
本発明におけるより好ましい抗体には、配列番号:1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体が含まれる。さらにより好ましいのは、配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖(サトラリズマブ(一般名);SA237(非公式名)の重鎖)、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖(サトラリズマブの軽鎖)を含む抗体である。サトラリズマブ(非公式名:SA237)が特に好ましい。
【0042】
サトラリズマブの政府による販売承認は、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発の予防」という適応に基づいて、日本、米国、および欧州を含む多くの国において得られている。視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)および/または視神経脊髄炎(NMO)を有する患者の集団を標的とした国際共同第III相臨床試験(SA-307JG/BN40898試験およびSA-309JG/BN40900試験)中に特定された安全性プロファイルは概ね適正であった。いかなる死亡例も報告されなかった。サトラリズマブ群において重度の有害事象を経験した患者のパーセンテージは、プラセボ群におけるものとほぼ同じであった。試験薬の投与の中止につながった有害事象の頻度において、または薬物脱落につながった有害事象の頻度において、2つの群の間に大きな違いはなかった。安全性プロファイルは、単剤試験であったSA-309JG試験と、既存の治療法(経口ステロイドおよび/または免疫抑制剤)との併用試験であったSA-307JG試験との間で類似していた。
【0043】
そのような抗体は、WO2010/035769、WO2010/107108、WO2010/106812などに記載されている方法に従って得ることができる。具体的には、抗体は、上述のIL-6受容体抗体の配列に基づいて、当業者に公知の遺伝子組換え技術を用いて作製することができる(例えば、1990年にMACMILLAN PUBLISHERS LTDによって英国において出版されたBorrebaeck CAK and Larrick JW, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIESを参照されたい)。組換え抗体は、抗体をコードするDNAを、ハイブリドーマまたは抗体産生細胞、例えば抗体産生感作リンパ球からクローニングし、そのDNAを適切なベクター中に挿入し、そして該ベクターを宿主(宿主細胞)中に導入して抗体を産生させることによって、得ることができる。
【0044】
そのような抗体は、非限定的に、抗体精製のために従来用いられている単離および精製の方法を用いて、単離および精製することができる。例えば、抗体は、カラムクロマトグラフィー、濾過、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動、透析、再結晶などを適切に選択し、組み合わせることによって、単離および精製することができる。
【0045】
本発明において使用される抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)、放射性物質、および毒素などの様々な分子に結合した、コンジュゲート抗体であってもよい。そのようなコンジュゲート抗体は、得られる抗体を化学的に修飾することによって、得ることができる。抗体修飾のための方法は、この分野において既に確立されている。したがって、本発明における「抗体」という用語は、そのようなコンジュゲート抗体を包含する。
【0046】
本発明において使用される抗体は、それらが本発明において好適に使用され得る限り、抗体断片(抗体の抗原結合断片とも称される)またはその修飾産物であってもよい。例えば、抗体断片には、Fab、F(ab')2、Fv、ならびに、H鎖およびL鎖のFvが適切なリンカーを介して連結されている一本鎖Fv(scFv)が含まれる。
具体的には、抗体断片は、抗体をパパインもしくはペプシンなどの酵素で処理することによって、または代替的に、これらの抗体断片をコードする遺伝子を構築して発現ベクター中に導入し、次いで適切な宿主細胞においてベクターを発現させることによって、作製される(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976;Better, M. & Horwitz, A. H., Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496;Plueckthun, A. & Skerra, A., Methods in Enzymology (1989) 178, 497-515;Lamoyi, E., Methods in Enzymology (1989) 121, 652-663;Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology (1989) 121, 663-666;およびBird, R. E. et al., TIBTECH (1991) 9, 132-137を参照されたい)。
【0047】
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することによって、得ることができる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域とは、リンカーを介して、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85, 5879-5883)。scFv中のH鎖およびL鎖のV領域は、上記の抗体のいずれに由来してもよい。V領域を連結するためのペプチドリンカーには、例えば、12~19アミノ酸残基からなる任意の一本鎖ペプチドが含まれる。
【0048】
scFvをコードするDNAは、鋳型配列中の所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、該部分の末端を規定するプライマー対を用いたPCRにより増幅することであって、前述の抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNAおよびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAが鋳型として用いられる、こと、ならびに次いで、増幅されたDNA部分を、ペプチドリンカー部分をコードするDNAと、該H鎖および該L鎖の各々に連結され得るように該リンカーの両端を規定するプライマー対とを用いてさらに増幅することによって、得ることができる。
scFvをコードするDNAが調製されたら、該DNAを含む発現ベクターおよび該発現ベクターで形質転換された宿主を、従来の方法に従って得ることができる。加えて、宿主を用いることによって、従来の方法に従ってscFvを得ることができる。
上記と同様に、抗体断片は、それ自体の遺伝子を得て、発現させ、次いで宿主を用いることによって、作製されることができる。
【0049】
本発明において、「活性成分として」とは、成分が、主要な活性成分として薬学的組成物に含有されることを意味し、本発明のために使用される抗体またはその抗原結合断片が薬用成分として含まれる限り、その含有量は、具体的に示されない限り限定されない。
【0050】
本発明の医薬品または組成物に含有される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の用量は、特に限定されず、例には、1投与当たり50~800 mgの抗体、好ましくは、1投与当たり60~240 mgの抗体、およびより好ましくは、60 mg、120 mg、180 mg、または240 mgの抗体が含まれる。本発明の医薬品または組成物に含有される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の用量は、患者の体重に応じて変動し得る。本発明のある特定の態様において、40 kg未満の体重を有する対象に好適な抗IL-6受容体抗体または抗原結合断片の用量は、60 mgまたは120 mgであり;40 kg~100 kgの体重を有する対象に好適な用量は、120 mgまたは180 mgであり;および100 kg超の体重を有する対象に好適な用量は、180 mgまたは240 mgである。本発明の抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片を含む医薬品または組成物は、皮下、静脈内、筋肉内、および注入を含むがそれらに限定されない任意の経路を介して、対象に投与される。好ましい態様は、皮下投与である。
【0051】
本発明のある特定の態様において、本発明の医薬品または組成物に含有される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の2つ以上の連続した用量を初期期間中に対象に投与し、ここで、該初期期間中に投与される該用量は、第1の投与間隔(慣用的な投与間隔よりも短い投与間隔とも称される)、例えば、20週間、8週間、4週間、または2週間の間隔をあけられ;そして、初期期間の最終用量投与の後、第1の投与間隔よりも長い第2の投与間隔をおき、次いで、本発明の医薬品または組成物に含有される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の用量をヒト患者に投与し、ここで、任意で、複数の連続的な用量が、初期期間の最終用量投与の後に投与され、かつ、第1の投与間隔よりも長いこと以外は特に限定されない第2の投与間隔(「慣用的な投与間隔」とも称される)の間隔をあけられる。第2の投与間隔の例には、1日~24週間、好ましくは2週間~8週間、より好ましくは3~5週間、およびさらにより好ましくは4週間が含まれる。
本発明のある特定の態様において、本発明の医薬品または組成物に含有される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片は、2週間隔(Q2W)で3回およびその後4週間隔(Q4W)で、対象に投与される。
【0052】
本発明の医薬品または組成物に含有される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片の好ましい投与スケジュールは、例えば、疾患の状態および血液検査値の変化をモニターすることにより投与間隔を適切に延長することによって、調整することができる。
【0053】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物または医薬品を含有する、本発明の方法における使用のための製品、例えばキット、デバイスなどを提供する。本発明の薬学的組成物または医薬品は、本明細書に記載されるようなIL-6阻害剤を含む。製品は、追加の薬学的に許容される担体もしくは媒体、またはキットの使い方などを記載する取扱説明書と共に包装され得る。
【0054】
一態様において、製品は、容器、および容器上のラベルまたは容器に付随する添付文書を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ(プレフィルドシリンジおよびオートインジェクターを含む)、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。一態様において、容器は、単独であるまたは、状態を治療する、予防する、および/もしくは診断するのに有効な別の組成物と組み合わされた、組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、シリンジ、オートインジェクター、静脈内溶液バッグ、または皮下注射針によって突き刺し可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性成分は、本開示に記載されるようなIL-6阻害剤、好ましくは抗IL-6受容体抗体、およびより好ましくはサトラリズマブである。
【0055】
一態様において、上記のような本発明の製品としてのデバイスは、薬学的に許容される賦形剤中に、固定用量の、本開示に記載されるようなIL-6阻害剤、好ましくは抗IL-6受容体抗体、およびより好ましくはサトラリズマブを含む、静脈内、皮下などのような任意の投与経路を介した注射のための、任意で針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)であるプレフィルドシリンジ(PFS)であってもよい。別の態様において、デバイスは、薬学的に許容される賦形剤中に、固定用量の、本開示に記載されるようなIL-6阻害剤、好ましくは抗IL-6受容体抗体、およびより好ましくはサトラリズマブを含む、皮下投与のためのオートインジェクター(AI)であってもよい。ある特定の態様において、デバイスは、60 mg、120 mg、180 mg、または240 mgのサトラリズマブを含み得る、皮下投与デバイス、例えばプレフィルドシリンジ(PFS)およびオートインジェクター(AI)である。一態様において、皮下投与デバイスは、60 mgまたは180 mgの用量を対象に送達するための、60 mg(例えば、60 mg/mL)のサトラリズマブを含む、針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)である。別の態様において、皮下投与デバイスは、120 mg、180 mg、または240の用量を対象に送達するための、120 mg(例えば、60 mg/0.5 mL)のサトラリズマブを含む、針安全デバイスを備えるプレフィルドシリンジ(PFS-NSD)である。他の態様において、皮下投与デバイスは、120 mg、180 mg、または240 mgのサトラリズマブを含むオートインジェクター(AI)である。
【0056】
本発明において、ラベルまたは添付文書は、薬学的組成物または医薬品が、選択された状態を治療するために使用されることを示す。さらに、製品は、(a)上記のようなIL-6阻害剤、好ましくは抗IL-6受容体抗体、およびより好ましくはサトラリズマブを含む組成物がその中に含有される、第1の容器;ならびに(b)さらなる治療剤を含む組成物がその中に含有される、第2の容器を含んでもよい。本発明のこの態様における製品は、特定の状態を治療するために組成物が使用され得ることを示す添付文書をさらに含んでもよい。代替的に、または追加的に、製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第2の(または第3の)容器をさらに含んでもよい。これは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的なおよびユーザーの観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0057】
添付文書
「添付文書」という用語は、治療用製品の商用パッケージに慣例的に含まれる説明書を指すように用いられ、これは、そのような治療用製品の使用に関する適応症、用法、投与量、投与、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含有する。
【0058】
本発明の薬学的組成物または医薬品を、必要な場合には、好適な薬学的に許容される担体、ビヒクルなどと混合することによって、凍結乾燥製剤または溶液製剤を作製するために製剤化することができる。好適な薬学的に許容される担体およびビヒクルには、例えば、滅菌水、生理的食塩水、安定化剤、賦形剤、抗酸化剤(アスコルビン酸など)、緩衝剤(リン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、および他の有機酸など)、防腐剤、界面活性剤(PEGおよびTweenなど)、キレート剤(EDTAなど)、および結合剤が含まれる。他の低分子量ポリペプチド、タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、および免疫グロブリン、アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸、アスパラギン酸、メチオニン、アルギニン、およびリジン、糖および糖質、例えば多糖類および単糖類、ならびに糖アルコール、例えばマンニトールおよびソルビトールもまた、製剤に含有されてもよい。注射用水溶液を調製する場合に、生理的食塩水、ならびにグルコースおよび他のアジュバント、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、および塩化ナトリウムを含む等張液が用いられてもよく;かつ適切な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(プロピレングリコールおよびPEGなど)、ならびに非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー188、およびHCO-50など)が、組み合わせで用いられてもよい。ヒアルロニダーゼを製剤中に混合することによって、より多くの液量を皮下投与することができる(Expert Opin. Drug Deliv. 2007 Jul; 4(4): 427-40)。さらに、シリンジに、本発明の薬学的組成物を予め充填してもよい。溶液製剤は、WO2011/090088に記載される方法に従って調製することができる。
【0059】
必要な場合には、本発明の薬学的組成物または医薬品は、マイクロカプセル(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、およびポリ(メチルメタクリラート)で作られたもの)内にカプセル化されてもよく、またはコロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)中に組み込まれてもよい(例えば、"Remington's Pharmaceutical Science 16th edition", Oslo Ed. (1980)を参照されたい)。薬剤を制御放出薬剤として調製するための方法もまた、公知であり、そのような方法が、本発明の薬学的組成物に適用されてもよい(Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15: 267-277 (1981);Langer, Chemtech. 12: 98-105 (1982);米国特許第3,773,919号;欧州特許出願公開番号EP 58,481;Sidman et al., Biopolymers 22: 547-556 (1983);およびEP 133,988)。
【0060】
本発明の医薬品または組成物に含有される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片は、任意の適切な経路を介して患者に投与することができる。例えばこれを、ボーラス注射もしくは連続的注入により静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、脳脊髄内に、経皮的に、皮下的に、関節内に、舌下に、滑液内に、経口的に、吸入により、局所的に、または外部に、ある特定の期間にわたって患者に投与することができる。静脈内投与または皮下投与が好ましい。本発明のある特定の態様において、本発明の医薬品または組成物に含有される抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片は、対象に皮下投与される。
【0061】
本明細書において引用されるすべての先行技術参考文献は、参照により本明細書中に組み入れられる。
【実施例
【0062】
本明細書の以下において、本発明を、実施例に関連して具体的に説明するが、それに限定されていると解釈されるべきではない。
【0063】
実施例1:サトラリズマブ(SA237)の調製
配列番号:26(本明細書では配列番号:3)のアミノ酸配列を有する重鎖および配列番号:29(本明細書では配列番号:4)のアミノ酸配列を有する軽鎖を含むとして特許文献WO 2010/035769に記載されているIL-6受容体抗体である、一般名サトラリズマブ(およびSA237という非公式名)を有する抗体を、該特許文献の記載に従って調製した。重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:1に示し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。調製された抗体を用いて、皮下投与調製物を、特許文献WO 2011/090088に記載されている方法によって調製した。
【0064】
実施例2:抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎または抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を有する患者においてサトラリズマブの有効性、安全性、薬物動態、および薬力学を評価するための第III相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設バスケット試験
【0065】
1. 序文
1.1 試験の理論的根拠
この試験の目的は、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎および抗ロイシンリッチグリオーマ不活性化1(LGI1)脳炎を有する参加者において、サトラリズマブの有効性、安全性、薬物動態、および薬力学を評価することである。
NMDAR脳炎およびLGI1脳炎は、別個の、診断学的に区別可能な疾患サブタイプであるが、両方は、発作および認知障害という中核の臨床的特徴を共有し;したがって、各サブタイプに同じ試験評価項目、試験の持続期間、および試験デザインを適用するが、各サブタイプにおいて独立してアウトカムを解析することが適切である。これらの考慮のバランスをとるために、これらの2つの脳炎のいずれかを有する参加者を、各々がそれ自体のプラセボ対照および解析を伴う、別個のコホートに明確に分離する。
これらの障害の現在の治療は、専ら適応外の免疫療法を使用しており、専門家の意見、遡及的な症例シリーズ、および非盲検試験に基づく。長期認知欠損の頻繁な発生、不十分な発作制御、高用量コルチコステロイドへの頻繁な依存、およびより速く作用するが持続的な免疫療法を含む、いくつかのまだ満たされていない必要性が存在する。これらの障害の急性および長期の重大性を有意義に減らすために、前向きに生成されたエビデンスに基づく治療が必要である。
【0066】
1.2 ベネフィット-リスク評価
この試験の目的は、AIEを有する参加者における有意なまだ満たされていない医学的必要性に対処するために、IL-6R遮断薬であるサトラリズマブの有効性および安全性を評価することである。
サトラリズマブは、抗NMDAR媒介性脳炎または抗LGI1媒介性脳炎のいずれかを有する患者において以前に試験されたことはないが、非臨床データおよび臨床データにより、IL-6がこれらの疾患の病態生理において鍵となる役割を果たすことが示唆される。IL-6は、炎症誘発性Th17細胞および形質芽細胞の分化および増殖の誘導、ならびに形質細胞成熟を含む多面的な機能を有する炎症誘発性サイトカインである。IL-6R遮断は、自己抗体のタイプとは無関係に、AIEの免疫病原機構を調節する可能性を有する。B細胞およびT細胞の分化、B細胞の増殖、ならびに血液脳関門の制御などの、IL-6Rシグナル伝達によって制御されるプロセスは、抗NMDAR媒介性AIE(Armangue et al. 2018;Martinez-Hernandez et al. 2011;Bien et al. 2012;Leypoldt et al. 2015;Ding et al. 2018)および抗LGI1媒介性AIE(Helmstaedter et al. 2021)の両方の病因において役割を有すると示唆されている。
【0067】
IL-6ノックアウトマウスおよびIL-6中和抗体を用いてもたらされた非臨床データにより、実験的AIEの病因におけるIL-6の明らかな役割が実証される。NMDAR抗体を投与したラットにおいて、IL-6の脳注入は、NMDAR媒介性の興奮性シナプス後電流の悪化に関連し、記憶および学習能力の高まった障害を伴っていた(Wang et al. 2019)。加えて、CSF IL-6レベルの増大が、NMDAR脳炎を有する患者において、および一般的にAIEに関連する状態である新規発症難治性てんかん重積状態を有する患者において観察されている(Jun et al. 2018;Kirmani et al. 2018)。
【0068】
さらに、臨床症例シリーズにより、AIEおよび関連症状を有する患者におけるIL-6R拮抗作用に関連する有益性が示唆される。遡及的研究により、事前のリツキシマブに対して不完全な応答を有した様々な抗体サブタイプ(抗NMDARおよび抗LGI1を含む)を有する成人患者に投与された、抗IL-6R治療(トシリズマブ)の有意な有益性が実証された(Lee et al. 2016a;Lee et al. 2016b)。類似した応答が、小児において見られた(Randell et al. 2018)。IL-6R拮抗作用はまた、最近症状が発症した新規発症のNMDAR陽性AIE患者およびCASPR2陽性AIE患者に投与した場合に、有意な臨床的改善にも関連していた(Lee et.al. 2020;Krogias et al. 2013)。類似した有益な効果が、「確度の高いAIE」(すなわち、AIE臨床基準を満たすが、明らかな自己抗体の関連がない)患者において観察された(Lee et.al. 2000)。最後に、IL-6R阻害は、急性期治療におけるAIEを有する患者の30%もの多くにおいて観察される生命を脅かす状態である、難治性てんかん重積状態の停止に関連している(Cadena et al. 2017;Jun et al. 2018)。
【0069】
サトラリズマブは、有効性および安全性が実証済であり、単剤療法としてまたは免疫抑制療法(IST;すなわち、経口コルチコステロイド[OCS]、アザチオプリン、もしくはミコフェノール酸モフェチル)に対するアドオンとして、別の自己抗体媒介性疾患(すなわち、NMOSD)に適応される。NMOSDにおける第III相試験の二重盲検期間は、合計178人の参加者を含んでいた。178人の参加者のうち、104人の参加者を、皮下への120 mgのサトラリズマブ用量で4週間隔(Q4W)で治療し、74人の参加者は、プラセボで治療した。全体的に、単剤療法としてまたはISTと組み合わせてのサトラリズマブに、NMOSDを有する参加者は十分に耐容性を示した。
【0070】
AIEについて現在利用可能な治療選択肢(高用量コルチコステロイドおよびシクロホスファミドを含む)はすべて、実質的な潜在的安全性リスクを有する。治療の決定を支持する、無作為化対照試験からのエビデンスはない。加えて、すべての患者が、現在使用されている薬物療法に応答するわけではなく、認知欠損、不十分な発作回復、高用量コルチコステロイドへの依存、および持続的なより速く作用する剤の必要性を含む、欠陥が残っている。提唱されるサトラリズマブの治験は、これらのまだ満たされていない必要性に対処し、NMDAR脳炎またはLGI1脳炎を有する患者におけるサトラリズマブの効果を立証する。承認された薬物が存在しない患者における有効性の潜在性、サトラリズマブの安全性プロファイル、および試験についてのリスク軽減手段を考慮すると、NMDAR脳炎およびLGI1脳炎の両方の治療におけるサトラリズマブについて、ベネフィット-リスク比は許容されると予想される。
【0071】
2. 目的および評価項目
この試験は、以下のコホートの各々において、プラセボと比較してサトラリズマブの有効性、安全性、薬物動態、および薬力学を評価する:
*NMDAR AIEコホート:確定のまたは確度の高いNMDAR脳炎を有する成人および未成年
*LGI1 AIEコホート:LGI1脳炎を有する成人。
【0072】
有効性解析のために、各コホートは、別々の集団として治療され、5%有意水準での独立した第一種過誤制御を有する。
両方のコホートについての具体的な目的および対応する評価項目を、表1においてパート1(一次治療期間)について概説する。
【0073】
(表1)パート1についての目的および対応する評価項目
ADA=抗薬物抗体;AIE=自己免疫性脳炎;BDI-II=ベック抑うつ質問票、第2版;CASE=自己免疫性脳炎における臨床評価尺度;C-SSRS=コロンビア自殺重症度評価尺度;EEG=脳波図;LGI1=ロイシンリッチグリオーマ不活性化1;MFIS=修正疲労影響尺度;MOCA=モントリオール全体認知評価;mRS=修正ランキンスケール;NMDAR=N-メチル-D-アスパラギン酸受容体;PK=薬物動態;QOL=生活の質;RAVLT=レイ聴覚性言語学習検査。
【0074】
3. 試験デザイン
3.1 全体のデザイン
3.1.1 試験デザインの概要
この第III相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設試験は、NMDAR脳炎およびLGI1脳炎の治療について、プラセボと比較したサトラリズマブの有効性、安全性、薬物動態、および薬力学を評価するためにデザインされている。有効性解析のために、NMDAR AIEコホートおよびLGI1 AIEコホートを、バスケット試験デザインにおいて別々の集団として治療する。試験は、最長で28日のスクリーニング期間を含み、その間に、試験参加について患者の適格性を評価する。スクリーニングには、以下が続く:
*パート1:52週間の一次治療期間
*パート2:最後の参加者が延長期間に入る時からおよそ2年続く、または市販のサトラリズマブがAIEの治療のために利用可能になるまでの、任意の延長期間。
薬物動態(PK)中間解析を、標的濃度が達成されていることを確認するために行う(セクション7.4.1を参照されたい)。
NMDAR AIEコホートにおけるおよそ102人の参加者およびLGI1 AIEコホートにおける50人の参加者を、グローバル登録段階においてすべての場所にわたって登録する。
試験スキーマを、図1に提供する。
【0075】
3.1.2 パート1:一次治療期間
パート1中に、参加者を、NMDAR AIEコホートおよびLGI1 AIEコホートの各々において、プラセボ、または60 mg(40 kg未満)、120 mg(40~100 kg)、もしくは180 mg(100 kg超)のサトラリズマブを受けるように、1:1の比で無作為に割り当てる。
【0076】
各コホート内の無作為化は、以下によって層別化される:
*患者集団:新規発症 対 不完全レスポンダー(セクション4.1.1に記載される通り)
*地域。
【0077】
盲検化された試験薬を、0、2、4週目に、およびその後パート1の終了までQ4Wで、単剤療法としてまたはバックグラウンド治療に加えて、参加者に皮下投与する。
パート1中に、サトラリズマブまたはプラセボに加えて、両方のコホートにおける参加者は、組み入れ基準において概説されるように疾患のステージに応じて、ISTでのバックグラウンド治療(セクション5.1.2のバックグラウンド治療を参照されたい)および対症療法(セクション5.2.2の対症療法を参照されたい)を受けてもよい。
【0078】
ベースラインで経口またはIV投与のコルチコステロイドを受けており、かつ救命救急環境(すなわち、集中治療室、高度看護病棟(high dependency unit))にいない参加者は、無作為化の4週間後(4週目)から開始して、標準的な漸減法を用いてそのOCSを漸減する。
【0079】
救命救急環境(すなわち、集中治療室、高度看護病棟)にいる、かつベースラインで経口またはIVコルチコステロイドを受けている参加者について、ステロイド漸減は、医師の判断により任意であり、行われる場合には、非救命救急環境についての漸減スケジュール(上記に示される)に従うべきである。救命救急から出る時には、無作為化から4週間が経過している(4週目以降)という条件で、非救命救急環境についての漸減スケジュールが開始される。
バックグラウンド治療および対症療法の用量は、安全性の理由でいつでも低減させることができる。
予め指定された中間PK解析および定期的な安全性検討が、パート1の間、独立したデータモニタリング委員会(iDMC)によって行われる。中間PK解析は、達成されたサトラリズマブ曝露(および予測される受容体占有率[RO])が目標範囲内であることを確認する目的で、行われる。中間PK解析からの結果および予め指定された基準に基づいて、試験薬の用量を増大させてもよい(サトラリズマブ用量の理論的根拠についてのセクション3.3を参照されたい)。PK中間解析、定期的な安全性検討、およびいずれかの任意の有効性中間解析について、治験依頼者、参加者、および治験責任医師は、盲検のままである。
【0080】
3.2 試験デザインの理論的根拠
3.2.1 試験集団および解析群の理論的根拠
試験は、単一試験内の別々のコホートとしてのNMDAR脳炎およびLGI1脳炎を有する参加者における治療としてのサトラリズマブを調査し、各コホートは、それ自体のプラセボアームを含み、5%有意水準での独立した第I種過誤制御で、別々に解析される。この試験の集団には、NMDAR脳炎またはLGI1脳炎の診断を受けるための臨床基準(セクション4.1を参照されたい;Graus et al. 2016から適応)を満たし、かつそのAIEが、以前の活動を行う機能および能力の低下(mRSスコア2未満によって定義される)をもたらしている参加者が含まれる。
【0081】
直接的に病原性であると考えられる、神経細胞表面タンパク質およびシナプスタンパク質に対する抗体の特定により、一般的に免疫療法に対して改善された応答を有する集団が描写される。これらの中で、抗NMDAR媒介性および抗LGI1媒介性の脳炎は、最も一般的な(Leypoldt et al. 2013)かつ最もよく特徴決定された症候群に相当する。
【0082】
NMDAR脳炎は、NMDARのGluN1サブユニットに対するCSF IgG抗体に関連している。これらの抗体は、非常に特異的であり、それらの病原性は、培養ニューロンおよびインビボモデルにおいて実証されている。臨床的実践において、抗体研究は、CSFの分析を含むべきであり;血清のみを用いた場合には、偽陰性または偽陽性の診断のリスクが存在する(Graus et al. 2016)。
【0083】
臨床的実践において、抗NMDARアッセイへのアクセス、具体的には抗NMDAR抗体のためのCSFサンプリングは、一貫性がないか、遅れるか、または達成が困難である場合がある。治療の決定は、多くの場合、臨床的特徴に基づいて行われる。結果として、確度の高いNMDAR脳炎の基準は、コンセンサス文書において公開されており、高い感度および特異性を、成人において(それぞれ、87.2%および96.7%;Kaneko 2018)、オーストラリアの小児において(それぞれ、90%および96%;Ho et al. 2017)、ならびに日本の小児において(それぞれ、81.2%および76.9%;Nishida et al. 2021)示している。
【0084】
この試験における参加者はすべて、無作為化の前に第一選択療法(例えば、高用量コルチコステロイド、IVIG、またはプラズマフェレーシス)を受けており、「不完全レスポンダー」カテゴリーにおける参加者は、急性第一選択療法後6週間を超えて、免疫療法の治療を受けている。これらの治療法の投与は、抗NMDAR抗体の検出に影響を及ぼし、偽陽性および偽陰性の両方をもたらす可能性がある(Gruter et al. 2020)。したがって、既に治療を受けた集団において抗体陽性を確認することは、診断のための信頼できるゴールドスタンダードではない可能性があり、治療前に抗体陽性を必要とすることは、適用性および募集を制限する。
【0085】
確度の高いNMDAR脳炎を有する臨床的実践における多くの患者が、非常に示唆的な臨床的特徴に基づいて治療されると仮定し、かつ「確度の高い」基準の証明された有用性と抗NMDAR抗体検出に対する免疫調節療法の予想される影響とを考慮して、試験集団は、NMDAR集団中に、確定NMDAR脳炎(CSF抗体陽性および一貫した臨床的特徴を必要とするコンセンサス基準によって定義される)ならびに確度の高いNMDAR脳炎(陽性の準臨床(paraclinical)調査[CSFおよび脳波図;EEG]とともに厳密な臨床的特徴を必要とするコンセンサス基準に従って定義される)の両方を含む。
【0086】
事前の薬物療法の使用由来のアッセイ干渉での懸念にかかわらず、血清収集は、LGI1脳炎の診断においてCSFよりも感度が高いと仮定すると、世界的により広く採用される可能性が高い(van Sonderen et al. 2016)。いかなるコンセンサス診断基準も公開されていないが、コンセンサス文書(Graus et al 2016)において辺縁系脳炎(一般的な臨床症状)について記載され、陽性の血清またはCSFサンプルと組み合わせて用いられることが最大の公開されたLGI1 AIEシリーズ(van Sonderen et al. 2016)において確認されている、鍵となる臨床的特徴を必要とする診断基準が、開発され、プロトコルに概説されている。
【0087】
細胞内抗原と会合する抗体の未知の意義および病原性、ならびにがんとのそのより高い関連のために、これらの抗体の診断または履歴を有する患者は、試験から除外される。具体的には、抗Hu抗体、抗Ma2抗体、抗CRMP5抗体、抗Yo抗体、抗アンフィフィシン抗体、AMPA抗体、mGluR5抗体、およびGABAB抗体の既知の診断または陽性の検査履歴を有する患者は、除外される。同様に、治療されていない奇形腫/胸腺腫、悪性腫瘍の履歴(スクリーニング前に5年間、再発のエビデンスがなく、適切な治療によって治癒したとみなされる場合を除く)、または腫瘍随伴性脳炎の確認された診断を有する患者は、登録から除外される。
【0088】
3.2.2 対照群の理論的根拠
試験における対照群は、プラセボを受ける。セクション5.1.2に概説されるように、参加者は、パート1中に、選択バックグラウンド療法を安定用量で受け続けることができる。この状況でのプラセボの使用は、AIEを有する患者について現実世界のシナリオを表す、臨床状況におけるサトラリズマブの有効性および安全性を確立するのに役立つ。NMDAR脳炎およびLGI1脳炎のサブタイプにおけるプラセボ対照データは、承認された薬物療法がないこれらの個々の症候群におけるエビデンスを提供するだけではなく、より広い範囲のAIEの理解に適切な情報も生成し得る。
【0089】
3.2.3 薬物動態サンプル収集スケジュールの理論的根拠
より長期の治療後のNMDAR/LGI1脳炎集団におけるサトラリズマブの薬物動態を探索するために、サトラリズマブの血清濃度を評価するためのサンプルを、各試験薬の投与の前に採取する。これらの評価は、NMDAR/LGI1脳炎集団におけるサトラリズマブの推奨用量を支持するための、曝露に対する共変量の範囲(例えば、性別、人種、年齢、および体重)の影響の解析、ならびに、曝露とPD、有効性、免疫原性、および安全性の評価項目との間の関係の解析を含む。PK評価はまた、AIE集団におけるサトラリズマブの適切な用量を確認するためにPK中間解析に情報を与えるためにも用いられる。
【0090】
3.2.4 免疫原性サンプル収集の理論的根拠
ADA用の血清サンプルを、NMDAR/LGI1脳炎集団におけるADAの発生率および力価-時間プロファイル、ならびに、サトラリズマブへの曝露に対する、ならびに安全性および有効性に対する影響を評価するために、PKサンプルと並行して採取する。ADAデータは、サトラリズマブ濃度データの解釈を助けるために、完全な試験データセットに基づくその後の解析に加えて、8週目のPKデータの盲検検討に含まれる。
【0091】
3.2.5 バイオマーカー評価の理論的根拠
試験は、バイオマーカーが、NMDAR/LGI1脳炎におけるサトラリズマブの作用機序の特徴決定を助けるか、NMDAR/LGI1脳炎におけるサトラリズマブ活性のエビデンスを提供するか、またはNMDAR/LGI1脳炎疾患生物学の知識および理解を増大させることができるかどうかを評価する。
【0092】
3.2.6 主要評価項目の理論的根拠
本発明者らは、NMDAR脳炎またはLGI1脳炎のいずれかを有する参加者の臨床状態および能力障害に影響を及ぼす複数の症状に対するサトラリズマブの有益性を評価するために、この第III相試験の主要アウトカム尺度として、修正ランキンスケール(mRS)を用いることを提唱している。mRSは、能力障害および依存性を測定するスコアである。
【0093】
mRSスケールの選択は、以下によって支持される:
*その証明された妥当性および信頼性:mRSは、脳卒中の重症度(7つの重症度グレード:0=全く症状なしから、6=死亡まで)、およびAIEを有する患者に存在しかつ臨床的に関連することが示されている、日常生活の活動を行う際の機能的制限(すなわち、歩く、ならびに通常の勤めおよび活動に参加する能力)を評価するために、John Rankin博士によって開発された。mRSは、症状の重症度を測定するAIE用に最近開発された尺度である、AIEにおける臨床評価尺度(CASE)と相関させると、良好な構成妥当性を示す(r=0.86、p=0.001;Lim et al. 2019)。テスト-再テスト信頼性が、2つの別々の評価で照会された患者のサンプル(n=48)において決定され、高度の再現性を示した(r=0.94;Wilson et al. 2005)。
*NMDAR脳炎におけるその内容の妥当性:NMDAR脳炎において見られる複雑な神経精神症状発現および全体的な認知障害は、mRSスコアによって十分に反映される、罹患者における能力障害および依存性をもたらす。さらに、スコアは、急性神経学環境にある臨床医にとって、管理し、理解するのが単純かつ簡単明瞭である。mRSはまた、一般的に投与される薬物療法の短期的および長期的アウトカムを研究するために、NMDAR脳炎を有する患者において用いられている(Titulaer et al. 2013;Gadoth et al. 2017)。したがって、本発明者らは、mRSスケールが、NMDAR脳炎を有する患者における臨床的に有意な神経学的改善を適切に測定し、同時に、障害を与えかつ多くの場合多様である症状を有する患者の群について最も臨床的に有意義なアウトカムを表すと確信する(Dubey et al. 2015)。
*LGI1脳炎におけるその内容の妥当性:記憶および発作に影響を及ぼす、解剖学的に限定された認知障害によって支配されるが、行動障害も含む、LGI1脳炎における障害は、mRSスコアを用いた単純な評価および測定に適する能力および依存性に対して重大な影響を有する。追加的に、LGI1 AIE陽性の患者におけるmRSスコアの変化は、発作頻度および認知欠損などの鍵となる症状の変化を一般的にたどることが示され(van Sonderen et al. 2016)、これは、スケールが、LGI1脳炎に関連する優勢な個々の症状が患者の日常機能にいかに影響を及ぼすかの合理的な尺度であることを示す。これらの理由で、mRSは、治療された自然の履歴を検討する利用可能な文献において、短期的および長期的アウトカムを研究するために、LGI1 AIEを有する患者において用いられている(van Sonderen et al. 2016;Gadoth et al. 2017;Gadoth et al. 2018)。
*グレードを評価するガイダンスは、患者面接中に認知欠損(記憶喪失)を含むAIEの重要な局面を評価するように調整される。このガイダンスは、一貫性を確保するために、すべての場所にわたってmRS必須トレーニングの一部となる。
【0094】
最後に、mRSはまた、NMDAR脳炎およびLGI脳炎の両方を有する患者を含む、AIEにおけるいくつかの無作為化対照および非盲検試験における主要評価項目として利用されている(NCT04372615、NCT03993262、NCT03542279、およびNCT04175522)。AIEにおけるmRSスケールについて利用可能なデータは、特にプラセボアームにおける予想される変化に関して、提唱される試験デザインに情報を与えるのを助けるために用いられている(Gadoth et al. 2017;Titulaer et al. 2013)。
【0095】
NMDAR AIEコホートおよびLGI1 AIEコホートにおける主要評価項目は、それぞれ、NMDAR脳炎およびLGI1脳炎を有する参加者において、24週目のレスポンダーの割合におけるサトラリズマブとプラセボとの間の差を評価する。
【0096】
レスポンダーは、24週目に、1ポイント以上のベースラインからのmRSスコア改善を有し、かつ救助療法の使用を伴わない参加者として定義される。1つのmRSグレードの変化は、スケールグレードによってカバーされる重症度の範囲に基づいて臨床的に有意であるとみなされ(Banks and Marotta 2007;Harrison et al. 2013)、日常生活の活動に従事する患者の能力における有意義な変化を表すために、AIEの臨床的実践および観察研究において用いられる。本発明者らは、ベースラインで、(2以上のmRSによって測られるような)少なくともすべてのその以前の活動を行うのが不可能な患者を含むことを提唱する。したがって、(スケール上で「良好なアウトカム」に一般的に相当する、mRSスコア0~2よりもむしろ)1のスコア改善は、異なる症状レベルおよび示している能力障害の程度を有する試験におけるすべての参加者において、有意義な改善を適切に捉える。mRSスケールを用いた追加のデータを、副次および探索的評価項目の一部として収集する(2以下のmRSスコアを有する参加者のmRSスコア[7ポイントスケールで測定される]および割合)。
【0097】
3.3 用量およびスケジュールの根拠
表2に示されるように、NMDAR脳炎およびLGI1脳炎におけるサトラリズマブの有効性および安全性の調査のために、この試験において、SC注射を介した体重段階的投与を用いる。
【0098】
(表2)NMDAR脳炎およびLGI1脳炎の治療のためのサトラリズマブの第III相試験における調査用の投与レジメン
PK=薬物動態;Q4W=4週間隔。
注記:用量は、PK中間解析後に増大させてもよい。以下の詳細を参照されたい。
【0099】
投与レジメンは、NMOSDにおける初期開発のためのサトラリズマブのPK、PD、および安全性データを含む、情報源の組み合わせに基づく。
【0100】
NMOSDにおける第III相試験において調査された120 mgの固定投与レジメン(0、2、および4週目に、ならびにその後Q4Wで投与)は、ほとんどの参加者において(95%以上の中央値)、定常状態で高い予測トラフ受容体占有率(ROtr,ss)に関連しており、すべての体重群(すなわち、40 kg以上)において安全かつ有効であることが示された。4週間の維持投与間隔は、およそ30日というサトラリズマブの半減期によって支持される。80%未満の予測ROtr,ss値を有した、NMOSDの数少ない参加者は、概して、100 kg超のベースライン体重を有し、かつ、安全性プロファイルは、体重群全体にわたって類似していたが、最も軽い体重の参加者におけるサトラリズマブ曝露は、近最大(near-maximal)ROtr,ssを維持するために必要とされるものを超過していた。
【0101】
NMOSDを有する参加者とNMDAR/LGI1脳炎を有する参加者との間で予想される類似した標的発現を仮定すると、NMOSDにおいて見られるものに類似した曝露も、NMDAR脳炎およびLGI1脳炎において有効であることが予想される。したがって、予想される体重範囲にわたってNMDAR脳炎およびLGI1脳炎を有する参加者について同じ近最大ROtr,ss値を達成するために必要とされる用量を推定するために、本発明者らは、既存のpopPKモデル(健常ボランティアおよびNMOSDを有する参加者におけるデータに基づく)を用いてシミュレーションを行い、有効性の潜在性を最大化した。
【0102】
これらのシミュレーションは、提唱される体重段階的投与レジメンが、NMOSD第III相試験において観察されたものに類似した、定常状態で観察された最大濃度(Cmax)中央値(Cmax,ss)の値および定常状態でのトラフ濃度(Ctr,ss)の値を達成すると予想されることを示し、これは、投与間隔全体を通して近最大ROに関連していた(図2を参照されたい)。180 mgのサトラリズマブを受ける100 kg超の体重の参加者において予測される曝露の範囲は、NMOSDにおける第III相試験において達成された最大曝露を有意には超えず、したがって、既存の曝露-安全性の適用範囲内に留まる。逆に、40 kg未満の参加者における60 mgレジメンの予測される曝露は、投与間隔にわたって高い標的関与を維持し、不必要な過剰曝露を回避するのに十分であると予想される。
【0103】
この第III相試験の初期用量の設定における仮定は、NMDAR脳炎およびLGI1脳炎を有する参加者におけるサトラリズマブの薬物動態が、NMOSDでのものに類似していることである。しかし、本発明者らは、NMOSD集団と比較した健常ボランティアにおける、より高いクリアランス(CL)値に見られるように、PKの差が、集団の間にあり得ることに留意する(共変量値:95.8%;95% CI:67.5~124.1)。したがって、提唱される試験デザインは、初期用量を確認するため、または、(健常ボランティアにおいて観察されるように)NMDAR/LGI1集団においてCLがより高い場合には、iDMCの推奨で用量を予め指定されたレベルまで増大させるために、PK中間解析を用意し、治験依頼者は、この重要な試験の完全性の維持を助けるために、盲検のままである。提唱されるPK中間解析についてのさらなる詳細は、セクション7.4.1に見出すことができる。
【0104】
最初に提唱された用量が目標曝露を達成しない場合に代替用量を規定するために、既存のpopPKモデルを用いたシミュレーションが用いられる。標的が同じであり(すなわち、NMOSDおよびNMDAR/LGI1脳炎について)、かつ類似した標的発現がNMDAR脳炎およびLGI1脳炎について予想されると仮定すると、この中間解析におけるROの予測の基盤としての既存のROモデルの使用は、適切とみなされる。この試験におけるCL値が、健常ボランティアにおけるものを反映する(NMOSD集団におけるものよりも高い)場合、用量適応の選択肢は、参加者について120 mg(40 kg未満)、180 mg(40~100 kg)、および240 mg(100 kg超)の予め規定された投与レジメンまで用量を増大させることである。いずれの場合にも、選択される投与レジメンは、既存の曝露-安全性の適用範囲を有意には超えない曝露に関連する。
【0105】
NMOSDを有する未成年参加者におけるPKパラメータは、成人参加者におけるものに類似しており、この投与レジメンから結果として生じる予測される曝露は、NMOSDを有する成人参加者および未成年参加者における第III相試験で確立された既存の安全性プロファイルによって支持される。
【0106】
3.4 試験の終了の定義
参加者は、最後の来院/最後の予定された処置を含む、試験のすべての段階を完了した場合に、試験を完了したとみなされる。
この試験の終了は、両方のコホートにわたる試験における最後の参加者の最後の来院の日、または統計解析もしくはSFUに必要とされる最後のデータポイントをいずれかのコホートにおける最後の参加者から受け取る日の、どちらかより遅い方として定義される。
【0107】
4. パート1の終了は、最後の参加者が試験集団に登録された52週間後に起こると予想される
NMDAR脳炎を有する参加者およびLGI1脳炎を有する参加者を、この試験のグローバル登録段階中に登録する。
プロトコルの放棄または免除としても公知である、募集および登録の基準に対するプロトコル逸脱の前向き承認は、許容されない。
【0108】
4.1 組み入れ基準
NMDAR AIEコホートにおける参加者は、セクション4.1.1および4.1.2に概説される組み入れ基準を満たさなければならない。LGI1 AIEコホートにおける参加者は、セクション4.1.1および4.1.3に概説される組み入れ基準を満たさなければならない。
【0109】
4.1.1 すべての参加者の組み入れ基準
参加者は、以下の基準が当てはまる場合のみ、試験への組み入れに適格である:
*インフォームドコンセント用紙およびこのプロトコルに列記される要件および制限の遵守を含む、署名したインフォームドコンセントを与えることができる
*ベースライン来院(無作為化)前の腫瘍または悪性腫瘍の合理的除外
*無作為化前9ヶ月以内のAIE症状の発症
*「新規発症」または「不完全レスポンダー」AIEの定義を満たす。
参加者は、その最初の第一選択治療と試験療法の開始との間の間隔、および受けた追加の治療に基づいて、以下のように、「新規発症」または「不完全レスポンダー」のいずれかとして下位分類される:
-新規発症:以下の基準を満たす、NMDAR AIEまたはLGI1 AIEを有する参加者として定義される:
〇ベースラインで測定される、2以上の安定した(少なくとも24時間の)mRSスコアを有する
〇無作為化(ベースライン来院)の前6週間以内に、その最初の急性第一選択療法を受けたことがある
急性第一選択療法は、最短で3日の、1日あたり500 mg以上の投与量のIVメチルプレドニゾロン(もしくは等価の経口グルココルチコイド用量)ならびに/または少なくとも3日のIVIG療法および/もしくはPLEX、またはこれらの任意の組み合わせとして定義される。OCSおよび/または反復コース(最初のコースに続く)の急性第一選択療法の両方が許容される。OCSを受けているLGI AIEを有する参加者については、無作為化時に毎日20 mg以上の用量のプレドニゾロン(またはその等価物)が必要とされる。無作為化後は、セクション3.1.2における漸減スケジュールに従うべきである。
〇AIEについてリツキシマブまたは任意の他のIST(例えば、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン)またはトシリズマブでの事前治療を受けたことがない。
-不完全レスポンダー:以下の基準を満たす、NMDAR AIEまたはLGI1 AIEを有する参加者として定義される:
〇ベースラインで測定される、2以上の安定した(少なくとも24時間の)mRSスコアを有する
〇無作為化(ベースライン来院)の6週間超前に、その最初の急性第一選択療法を受けたことがある。急性第一選択療法は、最短で3日の、1日あたり500 mg以上の投与量のIVメチルプレドニゾロン(もしくは等価の経口グルココルチコイド用量)ならびに/または少なくとも3日のIVIG療法および/もしくはPLEX、またはこれらの任意の組み合わせとして定義される。
〇その最初の急性第一選択療法コースを超えて、免疫療法を受けたことがある。以下の基準が満たされなければならない:
*リツキシマブを受けたことがある参加者について、治療コースはスクリーニングの少なくとも2ヶ月前に開始され、最後の用量は無作為化の少なくとも4週間前に投与され、かつ無作為化前4週間以内にmRSスコアの改善がない
*他のIST(すなわち、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド[IVのみ]、またはアザチオプリン)を受けている参加者について、治療は、スクリーニング前少なくとも4週間にわたって安定である用量での、スクリーニング前の少なくとも2ヶ月間であり、かつ無作為化前4週間以内にmRSスコアの改善がない
*OCSを受けている参加者について、毎日20 mg以上の安定用量のプレドニゾロン(またはその等価物)であり、スクリーニング前の4週間中にステロイド用量の増大はなく、かつ無作為化前4週間以内にmRSスコアの改善がない
*反復コース(パルス)の急性第一選択療法を受けたことがある参加者について、治療は、無作為化(ベースライン来院)の少なくとも2週間前に完了していなければならない。
【0110】
4.1.2 NMDAR AIEコホートの追加の組み入れ基準
セクション4.1.1に概説された基準に加えて、参加者は、以下の基準が当てはまる場合に、NMDAR AIEコホートへの組み入れに適格である:
*インフォームドコンセント用紙に署名する時点で年齢12歳以上
未成年参加者、およびその疾患の重症度のためにその他の点で同意能力が無い参加者については、現地の要件に従い、インフォームドコンセント用紙が法的に権限を付与された代諾者によって署名されて、参加者の同意が得られてもよい。
*適切な場合(患者の年齢、ならびに個々の場所および国の標準によって決定される)、署名されたアセント用紙
*以下のような、確度の高い、または確定のNMDAR脳炎の診断:
確度の高いNMDAR脳炎の診断は、以下の3つの基準が満たされた場合に行うことができる:
1. 以下の6つの主要な症状の群のうちの、少なくとも4つの急速な発症(3ヶ月未満):
-異常(精神医学的)行動または認知機能障害
-発話機能障害(切迫談話(pressured speech)、言語減少(verbal reduction)、緘黙症)
-発作
-運動障害、ジスキネジア、または硬直/異常な姿勢
-意識レベルの低下
-自律神経機能障害または中枢性換気低下
2. 以下の検査結果のうちの、少なくとも1つ:
-異常なEEG(焦点性もしくはびまん性の遅いもしくは無秩序な活動、てんかん性活動、または極度のデルタブラッシュ(extreme delta brush))
-髄液細胞増加症またはオリゴクローナルバンドを有するCSF
3. 脳炎の別の原因および他の十分に定義された症候群(例えば、ビッカースタッフ脳幹脳炎、急性散在性脳脊髄炎、橋本脳症、原発性中枢神経系[CNS]血管炎、ラスムッセン脳炎)の合理的除外。
確度の高いNMDAR脳炎の診断はまた、全身性奇形腫を伴う場合には、上記の基準1における症状の群のうちの3つの存在下で行うことができる。
確定NMDAR脳炎の診断は、以下の基準のうちの3つが満たされた場合に行うことができる:
1. 確度の高いNMDAR脳炎の基準1に述べられる6つの主要な症状の群のうちの、1つまたは複数の存在
2. 細胞ベースのアッセイを用いてCSFにおいて検出される抗NMDAR(GluN1) IgG抗体の、記録された履歴またはスクリーニング時の存在
3. 脳炎の別の原因および他の十分に定義された症候群(例えば、ビッカースタッフ脳幹脳炎、急性散在性脳脊髄炎、橋本脳症、原発性CNS血管炎、ラスムッセン脳炎)の合理的除外。
【0111】
4.1.3 LGI1 AIEコホートの追加の組み入れ基準
セクション4.1.1に概説された基準に加えて、参加者は、以下の基準が当てはまる場合に、LGI1 AIEコホートへの組み入れに適格である:
*インフォームドコンセント用紙に署名する時点で年齢18歳以上
その疾患の重症度のためにその他の点で同意能力が無い参加者については、現地の要件に従い、インフォームドコンセント用紙が法的に権限を付与された代諾者によって署名されて、参加者の同意が得られてもよい。
*LGI1脳炎の診断
LGI1脳炎の診断は、以下の基準の存在下で行うことができる:
1. 細胞ベースのアッセイを用いた、(血清またはCSFにおける)抗LGI1 IgG抗体の、記録された履歴またはスクリーニング時の存在
2. 作業記憶欠損、発作(顔面上腕ジストニー発作(facio-brachio dystonic seizure)を含む)、または大脳辺縁系の関与を示唆する神経医学的症状の亜急性発症(4ヶ月未満の進行)。
LGI1脳炎の診断は、脳炎の別の原因および他の十分に定義された症候群(例えば、ビッカースタッフ脳幹脳炎、急性散在性脳脊髄炎、橋本脳症、原発性CNS血管炎、ラスムッセン脳炎)を合理的に除外するべきである。
【0112】
4.2 除外基準
参加者は、以下の基準のいずれかが当てはまる場合には、試験から除外される:
*ベースライン来院(無作為化)でのいずれかの治療されていない奇形腫または胸腺腫
スクリーニング期間の前またはその最中に検出された奇形腫または胸腺腫は、ベースラインの1週間前までに、治療(通常は外科的除去)後に治癒したとみなされた場合には、許容される。
*適切な治療によって治癒したとみなされ、スクリーニング前に少なくとも5年間再発のエビデンスがないものを除く、癌腫または悪性腫瘍の履歴(完全に切除されて治癒した、皮膚の基底細胞癌および扁平上皮癌、または子宮頸部の上皮内癌を除く)
*NMDAR AIEを有する患者について、症状発症から9ヶ月以内の、細胞ベースのアッセイを用いたCSFにおける抗NMDAR抗体陰性の履歴
*がんと高い関連を有する細胞内抗原(例えば、抗Hu、抗Ma2、抗CRMP5、抗Yo、抗アンフィフィシン、AMPA、mGluR5、およびGABAB)またはGAD-65に対する、履歴的に既知の陽性
*NMDARおよびLGI1以外の任意の細胞表面ニューロン抗体(例えば、caspr2、IgLON5、DPPX、GABAA、およびニューレキシン-3α)に対する、履歴的に既知の陽性
*確認された腫瘍随伴性脳炎
*確認された中枢神経系または末梢神経系の脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄多発神経炎)
*CNS感染症、敗血症性脳症、代謝性脳症、てんかん性障害、ミトコンドリア性疾患、クライン-レヴィン症候群、クロイツフェルト-ヤコブ病、リウマチ性障害、ライ症候群、または先天性代謝異常を含む、関連症状の別の原因
*事前の24週間における単純ヘルペスウイルス脳炎の履歴。
【0113】
5. 試験治療および同時療法
試験治療とは、試験プロトコルに従って試験参加者に投与されるように意図された、任意の治験治療、市販製品、プラセボ、または医用デバイスとして定義される。
この試験のための治験医薬品(investigational medicinal product)(IMP)は、サトラリズマブおよびプラセボである。バックグラウンド療法、救助療法、および対症療法は、非IMPとみなされる。
【0114】
5.1 投与される試験治療
5.1.1 サトラリズマブおよびプラセボ
この試験における試験品(test product)は、サトラリズマブである。このプロトコルにおいて、「試験薬」とは、(バックグラウンド療法に加えて割り当てられる)サトラリズマブまたはプラセボを指す。パート1において、試験薬は、0、2、4週目に、およびその後Q4Wで、施設来院時に投与される。参加者は、体重に応じて、60 mg(40 kg未満)、120 mg(40~100 kg)、または180 mg(100 kg超)のサトラリズマブを受ける。
試験薬は、試験に関連するすべての他の手法が施設来院時に行われた後、腹部または大腿部にSC注射によって投与される。
【0115】
5.1.2 バックグラウンド治療
不完全レスポンダー(セクション4.1.1を参照されたい)として分類された参加者は、パート1中に、試験薬に加えて、バックグラウンド治療を受けていてもよく、または受け続ける。
【0116】
バックグラウンド治療の薬物療法は、以下に例示される:
*アザチオプリン
*ミコフェノール酸モフェチル
*IVシクロホスファミド。
【0117】
試験中に許容される対症薬物療法については、セクション5.2.2を参照されたい。
試験参入前にバックグラウンド治療を中止した参加者については、全血球数および差分血球数についての試験適格性(セクション4.2を参照されたい)が、無作為化時に満たされなければならない。
【0118】
5.2 同時療法
同時療法は、試験治療の開始の7日前から最終のSFU来院まで、プロトコルで義務付けられた治療に加えて参加者によって用いられる、任意の薬物療法(例えば、処方薬、大衆薬、ワクチン、ハーブもしくはホメオパシー療法、および/または栄養補助食品)からなる。そのような薬物療法はすべて、以下の情報とともに同時薬物療法eCRFに記録されなければならない:
*使用の理由
*開始日および終了日を含む、投与の日付
*用量および頻度を含む、投与量情報。
【0119】
同時療法または事前の療法に関して何か質問がある場合には、メディカルモニターに相談してもよい。
パラセタモール/アセトアミノフェンは、1日あたり2 g以下の用量で、試験中およびスクリーニング期間中にいつでも使用が許容される。
【0120】
5.2.1 救助療法
救助療法は、IST薬物療法(許容されるバックグラウンド療法の詳細についてはセクション5.1.2を参照されたい)、リツキシマブ、OCSの開始もしくは用量の増大、反復する第一選択免疫療法(IVIG、IVメチルプレドニゾロン、もしくはプラズマフェレーシス)の使用、またはプロトコルにより指示される漸減に従ってOCSを漸減できないこととして定義される。
【0121】
以下の救助手法が、使用されてもよい:
*血漿交換(PLEX)。
【0122】
以下の救助薬物療法が、使用されてもよい:
*IVIG
*リツキシマブ
*IVシクロホスファミド
*アザチオプリン
*ミコフェノール酸モフェチル
*コルチコステロイド(OCSまたはIVメチルプレドニゾロン)。
【0123】
5.2.2 対症療法
下記のように、AIEの対症的管理のために一般的に使用される以下の薬物療法の使用(Abboud et al. 2021)が、許容される:
*AED(例えば、カルバマゼピン、ラコサミド、レベチラセタム)
*疼痛薬物療法(例えば、局所剤、抗てんかん薬[例えば、プレガバリン、ガバペンチン、カルバマゼピン])
*抗うつ薬(例えば、三環系抗うつ薬、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤[例えば、デュロキセチン])
*抗精神病剤(例えば、クエチアピン)
*気分安定薬(例えば、バルプロ酸)
*β遮断薬(例えば、プロプラノロール)
*α-2遮断薬(例えば、クロニジン)
*α-アドレナリン作動薬(例えば、ミドドリン)
*交感神経ドライブの増大のためのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ピリドスチグミン)
*非オピオイド鎮痛薬(例えば、パラセタモールまたはアセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬)
*睡眠障害のためのモダフィニルまたはメラトニン
*運動障害のための抗ムスカリン薬、筋弛緩薬、抗ドーパミン薬、およびドーパミン作動薬。
【0124】
5.2.3 他の許容される治療法
一般的に、治験責任医師は、禁止されている治療法を除き、かつ注意すべき治療法を考慮して、臨床的に示されるように、かつ現地の標準的な実施に従って、支持療法の使用を通して参加者の医療(既存の状態を含む)を管理してもよい。注入に関連した症状を経験する参加者は、現地の標準的な実施に従って、パラセタモール/アセトアミノフェン、イブプロフェン、ジフェンヒドラミン、および/もしくはH2受容体拮抗薬(例えば、ファモチジン、シメチジン)、または等価の薬物療法で、対症的に治療されてもよい。呼吸困難、低血圧、喘鳴、気管支痙攣、頻脈、酸素飽和度の低減、または呼吸窮迫によって現れる重篤な注入関連事象は、臨床的に必要が示されるような支持療法(例えば、酸素の補充およびβ-2アドレナリン作動薬)で管理されるべきである。
抗ヒスタミン薬、解熱性薬物療法、および/または鎮痛薬の前投薬が、治験責任医師の裁量で施されてもよい。
【0125】
下記のように、以下の同時療法の使用が許容される:
*経口避妊薬(セクション4.1を参照されたい)
*ホルモン補充療法
*セクション5.1.2に列記されるようなバックグラウンド治療
*治療の持続期間を可能な限り短く保つという条件での、有害事象(すなわち、バックグラウンドAIE療法以外の適応症)に対する局所(例えば、眼、鼻、耳、皮膚)のコルチコステロイドによる治療
*薬物療法ではない介入(例えば、個別心理療法、認知行動療法、理学療法、およびリハビリテーション療法)。
【0126】
6. 試験の評価および手順
6.1 有効性評価
参加者は、スクリーニング時およびその後の時点で有効性評価を受ける。有効性を評価するための評価には、参加者報告アウトカム(PRO)、パフォーマンスベースアウトカム(PerfO)、および臨床医報告アウトカム(ClinRO)(セクション6.2を参照されたい);ならびに疾患重症度を捉えるいずれの任意の評価(腰椎穿刺を含む)も含まれる。追加的に、EEGもまた、探索的アウトカムとして解析される(セクション6.3を参照されたい)。
【0127】
6.2 臨床アウトカム評価
パフォーマンスベースアウトカム(PerfO)、および臨床医報告アウトカム(ClinRO)文書を完成させて、サトラリズマブの治療有益性を評価する。
臨床アウトカム評価指標を、表3に列記する。
【0128】
(表3)臨床アウトカム評価
CASE=脳炎の臨床評価尺度;ClinRO=臨床医報告アウトカム、C-SSRS=コロンビア自殺重症度評価尺度;MOCA=モントリオール認知評価;mRS=修正ランキンスケール;PerfO=パフォーマンスベースアウトカム;RAVLT=レイ聴覚性言語学習検査。
【0129】
6.2.1 臨床アウトカム評価のためのデータ収集方法
診療所において、文書は、別段指定されない限り、参加者が疾患状態について何らかの情報を受け取る前に、PRO(参加者報告アウトカム)ではない評価の実行前に、および試験治療の投与前に、執り行う。
【0130】
PerfOおよびClinROの文書は、試験中の指定された時点に、診療所で完成させる。PerfOおよびClinROの文書は、身体検査の完了前に、任意の安全性評価前に、および試験治療の投与前に、執り行う。臨床医は、治験依頼者によって提供されるような、各ClinRO文書の正式版を完成させなければならない。文書を、プロトコルからコピーしてはならない。
【0131】
6.2.2 臨床アウトカム評価指標の説明
6.2.2.1 修正ランキンスケール(mRS)
mRSは、脳卒中後の全体的な能力障害を測定するために開発された尺度であり、急性脳卒中管理の無作為化対照試験において主要アウトカムを評価するために広く適用されている(Rankin 1957)。7ポイントスケールが、運動機能に重みづけし、歩く能力を評価して、機能的自立度を測定する。mRSは、臨床医が査定する評価であり、0から5までの6つのグレードからなり、0は症状なしに対応し、5は重度の能力障害に対応する。より高いスコアは、より重度の能力障害を表す。別の(6の)カテゴリーが、通常、評価ウインドウの前に死亡した患者を分類するために追加される。尺度の例は、Banks JL et al. (Stroke. 2007;38:1091-1096)に示される。mRSは通常、検証された疾患特異的尺度の非存在下で、AIEにおける神経学的アウトカムを測定するために用いられる。mRSおよびその関連した構造化面接は、完遂するのにおよそ15分かかり、指定された時点で執り行われる。
【0132】
6.2.2.2 脳炎の臨床評価尺度(CASE)
CASEは、多様なAIE症候群を有する患者において重症度を査定するための新規尺度であり、9項目(発作、記憶機能障害、精神症状、意識、言語の問題、ジスキネジア/ジストニア、歩行不安定性および運動失調、脳幹機能障害、ならびに衰弱)からなる。各項目に、最大で3ポイントの値が割り当てられ、より高いスコアは、より高い重症度の症状に対応する。総スコアは、0~27の範囲である。CASEは、臨床的実践における応用のために開発され、将来、臨床試験の状況においてAIEについての現在のアウトカム尺度の限界を克服するのに役立つ可能性がある(Lim et al. 2019)。この尺度の例は、Lim JA et al. (Ann Neurol. 2019 Mar;85(3):352-358.)によって示される。CASEは、完遂するのにおよそ10分かかり、指定された時点で執り行われる。
【0133】
6.2.2.3 モントリオール認知評価(MOCA)
MOCAは、疑われる認知欠損を早期に検出するために開発された、全体的な認知機能の30項目の尺度である。以下の認知ドメインをカバーする:
*方向定位:曜日、日付、および自分の現在地がわかること
*短期記憶想起:ある単語を聞いて、短い時間の後にそれを繰り返す能力
*集中および空間認識:番号が付いた点を順番につなぐこと、および3次元の形状を描くこと
*言語:文章全体を話し、理解する、および周知の動物または物の名前を覚える能力
*集中力:単純な順序を前後に繰り返すこと
*視空間:時計描画テスト(すなわち、認知症の警告徴候を評価するため)を行うこと。
MOCAは、行うのに数分がかかるだけであり、3ヶ月以内毎に執り行う場合に可能性がある学習効果を減少させるために3つのバージョンが利用可能である。MOCAスコアは、0~30の範囲である。より高いスコアは、より良好な認知機能を表す。26以上のスコアは、正常な認知機能と解釈される(https://www.mocatest.org/を参照されたい)。MOCAは、指定された時点で執り行われる。
【0134】
6.2.2.4 レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)
RAVLTは、直接記憶範囲、新たな学習、干渉に対する感受性、および認識記憶を評価するための、言語を用いた神経心理学的検査である。各試験で想起された単語の数が、パフォーマンスの尺度である。
【0135】
5回反復の自由想起の後に、2番目の「干渉」リスト(リストB)が同じ様式で提示され、参加者は、リストBからできる限り多くの単語を想起するように求められる。干渉試験の後に、参加者は直ちに、前に5回聞いた、リストAから単語を想起するように求められる。30分の遅延の後に、参加者は、再度リストAから単語を想起するように求められる。この「遅延想起」課題の後に、リストAおよびリストB由来の単語のすべてを、20個の音素的および/または意味的に類似した単語に加えて含有する、50単語のリストが提示される。この試験は、自由想起とは反対に、認識記憶を直接検査する。RAVLTによって評価される複数の記憶プロセスは、記憶能力に関する豊富なデータを提供する(Peaker and Stewart 1989;Spreen and Strauss 1991)。より高いスコアは、より良好な記憶能力を表す。RAVLTは、完遂するのにおよそ35分かかり、指定された時点で執り行われる。
【0136】
6.2.2.5 コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)
C-SSRSは、患者の生涯自殺傾向を評価するため、および治療全体を通して自殺事象を追跡するために用いられる、臨床医査定ツールである。この尺度は、実際のおよび潜在的な致死性を伴う念慮、行動、および試みの強さを含む、自殺念慮の速やかな再収集のために、指定された時点で執り行われる。「ベースラインでのC-SSRS」は、ベースラインで収集され、「最後の来院以降のC-SSRS」は、その後の来院で収集される。C-SSRSは、完遂するのに5~10分かかる。C-SSRSフォームの例は、https://cssrs.columbia.edu/にてオンラインで入手可能である。
【0137】
6.2.2.6 発作日誌
発作日誌は、参加者または介護者が完成させるために提供される。発作タイプ、頻度、および持続期間を収集する方法についての指示が、提供される。
【0138】
6.3 追加の探索的評価
6.3.1 脳波検査
EEGを、指定された時点で参加者に対して実施する。
EEG評価およびデータ取扱いの詳細は、別のEEG記録および取扱いマニュアルに記載する。
【0139】
7. 統計的考察
この試験は、試験適格性基準によって定義されるようなNMDAR脳炎およびLGI1脳炎を有する参加者において52週間投与される、対応するプラセボとサトラリズマブとを比較する。NMDAR AIEコホートおよびLGI1 AIEコホートは、別々の集団として治療し、別々に解析する。各コホートは、5%の有意水準での独立した第一種過誤制御を有する。具体的に別段述べられない限り、統計的考察は、NMDAR AIEコホートおよびLGI1 AIEコホートについて同じである。バックグラウンド療法を受けている参加者は、セクション5.1.2に概説されるように、パート1についてのプロトコルで定義された規則に従うことが要求される。
【0140】
7.1 統計的仮説
この試験は、プラセボを上回るサトラリズマブの優位性を実証することを目標にする。主要有効性解析および副次有効性解析は、以下のコホートの各々において、サトラリズマブとプラセボとを比較する:
*NMDAR AIEコホート:確定のまたは確度の高いNMDAR脳炎を有する成人および未成年
*LGI1 AIEコホート:LGI1脳炎を有する成人。
【0141】
主要有効性解析は、24週目にサトラリズマブをプラセボと比較する。以下の帰無仮説および対立仮説を、NMDAR AIEコホートおよびLGI1 AIEコホートの各々において、5%の両側有意性レベルで検定する:
ここで、pサトラリズマブおよびpプラセボは、それぞれ、サトラリズマブ群およびプラセボ群における、24週目で、mRSにおいてベースラインからの少なくとも1ポイントの改善を有し、かつ救助療法の使用を伴わない参加者の割合を指す。
類似した形態の帰無仮説および対立仮説を、すべての副次有効性解析について検定する。すべての仮説検定は、別段述べられない限り、両側であることに注意されたい。
【0142】
7.2 サンプルサイズの決定
NMDAR AIEコホートにおいては、およそ92人の評価可能な参加者がこのコホートにおける試験を完了するように、およそ102人のNMDAR脳炎を有する参加者を、試験治療に無作為に割り当てる。LGI1 AIEコホートにおいては、およそ45人の評価可能な参加者がこのコホートにおける試験を完了するように、およそ50人のLGI1脳炎を有する参加者を、試験治療に無作為に割り当てる。
【0143】
各コホートについて、参加者を、各治療群(サトラリズマブまたはプラセボ)に1:1の比で無作為化する。無作為化は、以下の基準によって層別化される:
*患者集団:新規発症 対 不完全レスポンダー(セクション4.1.1に記載される通り)
*地域。
【0144】
mRSに関して有効性を実証するために必要とされる推定サンプルサイズを、NMDAR AIEコホートおよびLGI AIEコホートについて別々に計算した。
【0145】
これらの仮定に基づいて、かつ5%の両側有意性レベルを用いて、各コホートにおいて80%のパワーを達成するサンプルサイズは、NMDAR AIEコホートにおいて102人の参加者(1群あたり51人)およびLGI1 AIEコホートにおいて50人の参加者(1群あたり25人)と推定された。
【0146】
7.3 統計解析
統計解析計画書(SAP)は、試験非盲検化およびデータベースロックの前に最終決定され、このセクションに記載される統計解析のより技術的かつ詳細な説明を含む。このセクションは、主要評価項目および主要副次評価項目を含む、最も重要な評価項目の計画される統計解析の概要である。
【0147】
7.3.1 主要評価項目
7.3.1.1 主要有効性のエスティマンド(estimand)および推定量
主要有効性の目的は、NMDAR脳炎およびLGI1脳炎を有する参加者において、能力障害の程度および臨床的重症度に対するサトラリズマブ対プラセボの有効性を評価することである。関心対象の主要比較は、24週目の、mRSにおける少なくとも1ポイントのベースラインからの改善を有し、かつ救助療法の使用を伴わない参加者の割合における、プラセボ群とサトラリズマブ群との間の差である。主要有効性のエスティマンドは、NMDAR AIEコホートおよびLGI1 AIEコホートにおいて別々に評価する。
【0148】
参加者が治療から脱落した場合には、脱落の理由を、試験薬もしくは状態に関連するもの(SDCR)、または試験薬もしくは状態に関連しないもの(NSDCR)のいずれかとして分類する。この分類のより詳細については、SAPに記載される。主要比較は、NSDCRの理由により脱落した参加者が、その無作為化された治療を受け続けると仮定して、SDCRおよびNSDCRの理由により脱落した両方の参加者をも含む。
【0149】
主要比較は、参加者が、治療中断(例えば、感染症によるもの)、または救助とはみなされないバックグラウンド療法における変化を有するかどうかにかかわらず、行われる。
【0150】
試験治療からのSDCR脱落、治療中断、または救助とはみなされないバックグラウンド療法における変化にかかわらず、24週目にmRSのベースラインからの1ポイント以上の改善を有しかつ救助療法の使用を伴わない参加者の割合を評価し、かつ、NSDCR脱落した参加者が、その無作為化された治療を受け続けると仮定する、主要エスティマンドの要素は、表4において定義される。主要解析アプローチおよびサンプルサイズの決定は、主要エスティマンドに合致している。
【0151】
(表4)主要エスティマンドの属性
LGI1=ロイシンリッチグリオーマ不活性化1;mRS=修正ランキンスケール;NMDAR=N-メチル-D-アスパラギン酸受容体;NSDCR=試験薬または状態に関連しない;SDCR=試験薬または状態に関連する。
a 治療方針:変数の値が、中間事象が起こるか否かにかかわらず用いられる。
b 仮説的:中間事象が起こらないシナリオが想定される。
c 複合:評価項目の定義における中間事象の組み入れ。
【0152】
中間事象を取り扱うための様々なアプローチを組み込む補足的エスティマンドは、SAPに詳述され、救助療法を採る中間事象に対する治療方針アプローチの使用を含む。
【0153】
7.3.1.2 欠測データの取扱い
欠測データに関しては、縦断的なmRSデータが補完され(impute)、次いで、レスポンダーの定義(少なくとも1ポイントのmRS改善)が適用される。NSDCR脱落については、データが、治療脱落時に打ち切りとなる。NSDCR脱落後に収集されたどのデータも、無視される。NSDCRであると判定される脱落後の欠測データ(救助療法の使用を含む)は、「ランダムな欠測」の仮定での多重補完法を用いて補完される。SDCRであると判定される脱落後の欠測データは、「コピー参照(Copy Reference)」の仮定での参照ベースの(reference based)多重補完法を用いて補完される。救助療法の使用は、プラセボアームに基づいて補完される。このアプローチは、治療脱落後の観察データが利用可能ではない場合に用いられるだけである。観察データが利用可能である場合、それらは、解析に含められ続ける。治療中断(例えば、感染症によるもの)、および救助とはみなされないバックグラウンド療法における変化後のデータは、解析に含められる。主要推定法の堅牢性は、多重補完戦略および治療脱落中間事象のSDCRまたはNSDCRとしての分類の根底となる、様々な仮定に基づく一連の感度推定量によって探索される。
追加の詳細は、SAPに提供される。
【0154】
7.3.2 副次評価項目
両方のコホートにおいて試験されるべき最初の評価項目は、主要評価項目である。続いて、副次評価項目の解析は、コホート特異的な階層に従う。以下に提示される副次評価項目の順序は、必ずしも各コホートの階層を反映しない。
【0155】
以下の副次有効性評価項目を、事象までの時間のエスティマンドおよび推定量を用いて解析する:
*救助療法の使用を伴わない、ベースラインから少なくとも1ポイントのmRSスコア改善までの時間
*救助療法までの時間
*救助療法の使用を伴わない、発作消失(発作消失は、連続した少なくとも6週間にわたる発作の停止として定義される)またはてんかん重積状態の停止までの時間。
【0156】
以下の副次有効性評価項目を、平均変化のエスティマンドおよび推定量を用いて解析する:
*24週目の、ベースラインからのCASEスコアの変化。
以下の副次有効性評価項目を、平均スコアのエスティマンドおよび推定量を用いて解析する:
*24週目の、MOCA総スコア
*24週目の、RAVLTスコア(LGI AIEコホート)。
【0157】
以下の副次有効性評価項目を、カテゴリースコアのエスティマンドおよび推定量を用いて解析する:
*24週目の、mRSスコア(7ポイントスケールで測定される;NMDAR AIEコホート)。
各評価項目についての補足的エスティマンドは、SAPに詳述される。
【0158】
7.3.2.1 事象までの時間のエスティマンドおよび推定量
事象までの時間のエスティマンドの要素は、救助療法までの時間の評価項目を例として用いて、表5において定義される。関心対象の比較は、試験治療からのSDCR脱落、治療中断、または救助とはみなされないバックグラウンド療法における変化にかかわらず、かつNSDCR脱落した参加者が、その無作為化された治療を受け続けると仮定した、救助療法までの時間におけるプラセボ群とサトラリズマブ群との間の差である。
【0159】
(表5)事象までの時間のエスティマンドの属性
LGI1=ロイシンリッチグリオーマ不活性化1;NMDAR=N-メチル-D-アスパラギン酸受容体;NSDCR=試験薬または状態に関連しない;SDCR=試験薬または状態に関連する。
a 治療方針:変数の値が、中間事象が起こるか否かにかかわらず用いられる。
b 仮説的:中間事象が起こらないシナリオが想定される。
c 複合:評価項目の定義における中間事象の組み入れ。
【0160】
7.3.2.2 平均変化のエスティマンドおよび推定量
平均変化のエスティマンドの要素は、表6において定義される。関心対象の比較は、試験治療からのSDCR脱落、治療中断、または救助とはみなされないバックグラウンド療法における変化にかかわらず、救助療法が利用可能ではなかったと仮定した、かつNSDCR脱落した参加者が、その無作為化された治療を受け続けると仮定した、24週目のベースラインからのCASEスコアの変化におけるプラセボ群とサトラリズマブ群との間の差である。
【0161】
(表6)平均変化のエスティマンドの属性
CASE=脳炎の臨床評価尺度;LGI1=ロイシンリッチグリオーマ不活性化1;MMRM=混合モデル反復測定;NMDAR=N-メチル-D-アスパラギン酸受容体;NSDCR=試験薬または状態に関連しない;SDCR=試験薬または状態に関連する。
a 治療方針:変数の値が、中間事象が起こるか否かにかかわらず用いられる。
b 仮説的:中間事象が起こらないシナリオが想定される。
【0162】
7.3.2.3 平均スコアのエスティマンドおよび推定量
平均スコアのエスティマンドの要素は、MOCA総スコアの評価項目を例として用いて、表7において定義される。関心対象の比較は、試験治療からのSDCR脱落、治療中断、または救助とはみなされないバックグラウンド療法における変化にかかわらず、救助療法が利用可能ではなかったと仮定した、かつNSDCR脱落した参加者が、その無作為化された治療を受け続けると仮定した、24週目のMOCA総スコアにおけるプラセボ群とサトラリズマブ群との間の差である。
【0163】
(表7)平均スコアのエスティマンドの属性
LGI1=ロイシンリッチグリオーマ不活性化1;MOCA=モントリオール認知評価;MMRM=混合モデル反復測定;NMDAR=N-メチル-D-アスパラギン酸受容体;NSDCR=試験薬または状態に関連しない;SDCR=試験薬または状態に関連する。
a 治療方針:変数の値が、中間事象が起こるか否かにかかわらず用いられる。
b 仮説的:中間事象が起こらないシナリオが想定される。
【0164】
7.3.2.4 カテゴリースコアのエスティマンドおよび推定量
カテゴリースコアのエスティマンドの要素は、表8において定義される。関心対象の比較は、試験治療からのSDCR脱落、治療中断、または救助とはみなされないバックグラウンド療法における変化にかかわらず、救助療法が利用可能ではなかったと仮定した、かつNSDCR脱落した参加者が、その無作為化された治療を受け続けたと仮定した、24週目のmRSスコアにおけるプラセボ群とサトラリズマブ群との間の差である。
【0165】
(表8)カテゴリースコアのエスティマンドの属性
LGI1=ロイシンリッチグリオーマ不活性化1;mRS=修正ランキンスケール;NMDAR=N-メチル-D-アスパラギン酸受容体;NSDCR=試験薬または状態に関連しない;SDCR=試験薬または状態に関連する。
a 治療方針:変数の値が、中間事象が起こるか否かにかかわらず用いられる。
b 仮説的:中間事象が起こらないシナリオが想定される。
【0166】
7.3.2.5 安全性解析
安全性を、試験治療に対する曝露、有害事象、臨床検査結果の変化、ならびにバイタルサイン、体重、身長(18歳未満のみ)、およびECGの変化のまとめを通して評価する。
試験治療曝露(治療持続期間、受ける総用量、および用量改変など)を、記述統計でまとめる。
【0167】
すべての逐語的有害事象用語を、Medical Dictionary for Regulatory Activitiesシソーラス用語に対応付け、有害事象の重症度を、米国国立がん研究所(NCI)有害事象共通用語規準(CTCAE) v5.0に従って格付けする。すべての有害事象、重篤な有害事象、死をもたらす有害事象、特に関心対象の有害事象、および試験治療の最初の投与時またはその後に起こった試験治療の中止をもたらす有害事象(すなわち、治療下で発現した有害事象(treatment-emergent adverse event))を、対応付けられた用語、適切なシソーラスレベル、および重症度グレード毎にまとめる。異なる重症度の事象については、最も高いグレードを、まとめにおいて用いる。死亡および死因をまとめる。
【0168】
関連する検査室、バイタルサイン(脈拍数、呼吸数、血圧、パルスオキシメトリ、および体温)、ならびにECGのデータを、時間毎に表示し、適切な場合にはグレードを特定する。追加的に、選択された臨床検査のシフト表を用いて、ベースラインのおよび最大のベースライン後重症度グレードをまとめる。バイタルサイン、体重、身長(18歳未満のみ)、およびECGの変化をまとめる。
【0169】
7.3.3 探索的評価項目
サブグループ解析を、以下の集団について行う:
*NMDAR脳炎を有する未成年参加者
*確度の高いNMDAR脳炎を有する参加者。
探索的評価項目の定義および解析のより詳細については、SAPに記載される。
【0170】
7.3.4 他の解析
7.3.4.1 薬物動態解析
PK解析集団は、投与記録およびサンプリング時間を伴う少なくとも1つの妥当な投与後濃度結果を有する、安全性解析セットにおけるすべての参加者からなる。治験は、要約統計量および非線形混合効果解析(popPK)によって、サトラリズマブ治療のPK特性を評価する。
サトラリズマブ濃度データおよびpopPK解析の結果は両方とも、CSRとは別々に報告される。
【0171】
7.3.4.2 免疫原性解析
免疫原性解析集団は、少なくとも1つのADA評価を有するすべての参加者からなる。参加者は、受けた治療に従って、または、試験中止前にいかなる治療も受けていない場合には、割り当てられた治療に従って、群分けされる。
【0172】
ベースラインでの(ベースライン有病率)および薬物投与後の(ベースライン後発生率)、ADA陽性参加者およびADA陰性参加者の数および割合を、治療群毎にまとめる。ベースライン後発生率を決定する時、参加者は、治療誘導性ADA応答または治療増強性ADA応答を示すならば、ADA陽性であると考えられる。ベースラインでADA陰性であるかまたは欠測データを有するが、試験薬曝露後にADA応答を生じる参加者は、治療誘導性ADA応答を有する。ベースラインでADA陽性であり、かつ1つまたは複数のベースライン後サンプルの力価がベースラインサンプルの力価よりも少なくとも4倍(0.60力価単位)高い参加者は、治療増強性ADA応答を有する。ベースラインでADA陰性であるかもしくは欠測データを有しかつすべてのベースライン後サンプルが陰性である場合には、または、ベースラインでADA陽性であるが、ベースラインサンプルの力価よりも少なくとも4倍(0.60力価単位)高い力価を有するベースライン後サンプルを全く有しない(治療に影響を受けない)場合には、参加者はいかなるADA陰性であると考えられる。
【0173】
サトラリズマブについて陽性または陰性のADA結果を有する参加者のパーセンテージを、表にまとめる。PK、PD、有効性パラメータ、および安全性を、抗サトラリズマブ抗体(すなわち、サトラリズマブADA)の状態毎にまとめる。
【0174】
7.3.4.3 薬力学解析
血清IL-6およびsIL-6Rレベルを、適切に、グラフでおよび記述的に治療群および時点毎にまとめる。
【0175】
7.4 中間解析
7.4.1 計画される中間薬物動態解析
達成された曝露(および予測されるRO)が、予想される目標範囲内であると確認する目的で、中間PK解析を、治療の8週目に行う。達成された曝露(および予測されるRO)が、予想される目標範囲内ではない場合には、用量を、40 kg未満、40~100 kg(両端の値を含む)、および100 kg超の参加者に対して、それぞれ、120 mg、180 mg、および240 mgに適応させてもよい。選択される投与レジメンは、既存の曝露-安全性の適用範囲を有意には超えない曝露に関連している。
iDMCは、(i)治験を、初期用量で継続することができるか、または(ii)予め指定されたより高い用量に、用量を適応させることができるか、について推奨を行う。
【0176】
7.4.2 任意の中間解析
この試験の経過中に明らかになり得る情報に適応するために、治験依頼者は、1回の中間無益性解析を実施することを選択してもよい。以下は、任意の中間解析が実行される場合に、試験が完全性の最高の標準を満たし続けることを確実にするための規格である。
【0177】
中間解析が実施される場合、治験依頼者は、盲検のままである。中間解析は、外部の統計グループによって実施され、iDMCによって検討される。iDMCと治験依頼者との間の対話は、iDMCチャーターに明記されるように実施される。
【0178】
任意の中間解析を実施する決定は、解析の理論的根拠、タイミング、および統計的詳細とともに、SAPにおいて記録に残される。iDMCチャーターは、解析の結果としてiDMCが治験依頼者に行う可能性のある潜在的な推奨(修正を伴わずに試験を続ける、無益性のために試験を中止する)を記録に残すように更新され、iDMCチャーターはまた、関連する保健当局に対して入手可能とされる。
【0179】
中間解析の結果として、無益性のために試験が中止される可能性がある場合には、無益性を表すための閾値には、指定された評価項目が統計的有意性を達成するという予測確率の評価が含まれ得る。無益性のために試験が中止されることを推奨することに関する基準が、iDMCチャーターに加えられてもよく、SAPに記録に残される。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片を含む、NMDAR脳炎またはLGI1脳炎などの自己免疫性脳炎の治療のための、およびまた、該脳炎を再発するリスクの低減のための手段を提供する。本発明はまた、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片を含む、前記脳炎の治療、またはそれを再発するリスクの低減のための、医薬品または薬学的組成物も提供する。本発明はさらに、抗IL-6受容体抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することによる、前記脳炎の治療、またはそれを再発するリスクの低減の方法を提供する。
【0181】
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図1
図2
【配列表】
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【国際調査報告】