(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 10/02 20060101AFI20250123BHJP
C03C 10/08 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C03C10/02
C03C10/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502516
(86)(22)【出願日】2023-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 CN2023100450
(87)【国際公開番号】W WO2024130985
(87)【国際公開日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】202211666239.3
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521475495
【氏名又は名称】重慶▲シン▼景特種玻璃有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】周靖鵬
(72)【発明者】
【氏名】田遷
(72)【発明者】
【氏名】黄昊
(72)【発明者】
【氏名】謝暁蘭
(72)【発明者】
【氏名】向文浩
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA11
4G062BB06
4G062BB20
4G062DA05
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4G062KK10
4G062MM12
4G062NN33
4G062QQ15
4G062QQ20
(57)【要約】
本発明は、高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスを開示しており、前記強化結晶化ガラスは圧縮応力層と引張応力層とを含み、前記強化結晶化ガラスの主結晶相は(Zn,Mg)Al
2O
4であり、前記強化結晶化ガラスにNa
2Oが含まれており、前記強化結晶化ガラスの表面K
2O濃度は7.00wt%以上であり、選択的に7.00~15.00wt%であり、前記強化結晶化ガラスにおいて、ガラスの厚さ方向に沿って、強化結晶化ガラスのいずれかの表面から当該表面の近くにありかつ強化結晶化ガラスの中心と同様なカリウム(K)濃度を有する位置までの深さは0.07t以上であり、選択的に0.07t~0.10tであり、tは強化結晶化ガラスの厚さである。本発明は、結晶化ガラスの固有強度と強化後のガラスから得られる応力特性について鋭意検討を行い、固有強度の高い特定体系の結晶化ガラスを強化して特定の応力特徴を満たすことで、最終的に優れた耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスが得られ、当該強化結晶化ガラスはサファイアガラスに匹敵する耐スクラッチ傷性効果を達成することができる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮応力層と引張応力層とを含み、高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスであって、
前記強化結晶化ガラスの主結晶相は、(Zn,Mg)Al
2O
4であり、前記強化結晶化ガラスにNa
2Oが含まれており、前記強化結晶化ガラスの表面K
2O濃度は7.00wt%以上であり、選択的に7.00~15.00wt%であり、
前記強化結晶化ガラスにおいて、ガラスの厚さ方向に沿って、強化結晶化ガラスのいずれかの表面から当該表面の近くにあり且つ強化結晶化ガラスの中心と同様なカリウム(K)濃度を有する位置までの深さは、0.07t以上であり、選択的に0.07t~0.10tであり、tは強化結晶化ガラスの厚さである、
ことを特徴とする高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項2】
厚さが0.7mmである場合、前記強化結晶化ガラスの単一ロッド静圧強度は、450N以上であり、選択的に450~650Nである、
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項3】
前記強化結晶化ガラスのヤング率は、110GPa以上であり、選択的に110~140GPaである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項4】
前記強化結晶化ガラスのビッカース硬度は、750kgf/mm
2以上であり、選択的に750~900kgf/mm
2であり、さらに選択的に800~900kgf/mm
2である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項5】
前記強化結晶化ガラスにおいて、平均結晶粒径は、15.00nm以下であり、選択的に1.00~10.00nmであり、さらに選択的に4.50~8.00nmであること、および/または、
前記強化結晶化ガラスにおいて、結晶含有量は、20.00~50.00wt%であり、選択的に25.00~50.00wt%であり、さらに選択的に25.00~45.00wt%である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項6】
前記強化結晶化ガラスの副結晶相は、正方晶ZrO
2、Zn
2SiO
4、Mg
2SiO
4から選ばれる1種または複数種を含む、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項7】
前記強化結晶化ガラスは、可視光範囲内で透明である、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項8】
自動鉛筆硬度計によって、45°の角度でモース硬度7レベルの宝石鉱物硬度計を固定し、750gの荷重で、前記強化結晶化ガラスの表面をスクラッチし、スクラッチされた結晶化ガラスを400倍率の顕微鏡で観察したところ、前記強化結晶化ガラスの表面にスクラッチ傷がない、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項9】
酸化物の質量百分率で、前記強化結晶化ガラスの引張応力層は、30.00%≦SiO
2<35.00%、Al
2O
3:30.00%~40.00%、ZnO:10.00%~12.00%、MgO:2.00%~4.00%、ZrO
2:5.00%~7.00%、Na
2O:2.00%~9.00%、Li
2O:0~2.00%、およびB
2O
3:0~8.00%、との成分を含むと共に、前記強化結晶化ガラスの引張応力層の成分は、
(1)X=((Na
2O+B
2O
3)/ZrO
2)/Al
2O
3、X≧2.00;
(2)Y=ln[(Na
2O+B
2O
3)/ZrO
2]、Y≧0;
(3)Z=(SiO
2+Al
2O
3-MgO-ZnO)/(Li
2O+Na
2O+B
2O
3)、4.00≦Z≦10.00;
式(1)~(3)において、酸化物は、前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たすことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項10】
前記強化結晶化ガラスの引張応力層の成分は、さらに、
(4)W=(0.8×(Al
2O
3-SiO
2)+1.5×(ZnO-MgO))/ZrO
2,0≦W≦3.00;
式(4)において、酸化物は、前記酸化物成分の質量百分率を表すことを、
満たすことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項11】
前記強化結晶化ガラスの引張応力層において、SiO
2の質量百分率が32.00%~34.95%であり、および/または、Al
2O
3の質量百分率が32.00%~38.00%であり、および/または、ZnOが10.00%~11.48%であり、および/または、MgOが2.50%~3.50%であり、および/または、ZrO
2が5.40%~6.50%であり、および/または、Na
2Oが2.50%~8.50%であり、および/または、B
2O
3が2.50~8.00%である、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項12】
前記強化結晶化ガラスの引張応力層は、さらに、0~3.00wt%のBaOおよび/または、0~2.00wt%のY
2O
3を含む、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項13】
前記強化結晶化ガラスには、TiO
2およびP
2O
5が基本的に含まれない、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項14】
前記強化結晶化ガラスは、化学強化用結晶化ガラスに対して化学強化処理を行って得られたものであり、具体的に、
前記化学強化用結晶化ガラスを、カリウム塩を含有する380℃~550℃のソルトバスに投入して化学強化処理を行い、前記化学強化処理の時間が1h~96hであり、選択的に1h~48hであり、前記強化結晶化ガラスを得て、前記カリウム塩は、硝酸カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウムから選ばれる1種または複数種を含み、選択的に硝酸カリウムである、
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の強化結晶化ガラスを製造するための化学強化用結晶化ガラスであって、
前記化学強化用結晶化ガラスの主結晶相は、(Zn,Mg)Al
2O
4であり、前記化学強化用結晶化ガラスにおいて、酸化物のモル百分率で、Al
2O
3のモル百分率は、MgOとZnOのモル百分率の合計よりも大きく、前記化学強化用結晶化ガラスの理論結晶化度は、少なくとも30.00wt%以上であり、選択的に30.00wt%~50.00wt%であり、かつ、前記化学強化用結晶化ガラスが理論結晶化度を満たす場合、前記化学強化用結晶化ガラスにおける残留ガラス相の単位体積あたりの解離エネルギーUは、71.00kJ・cm
-3以上であり、選択的に71.00KJ・cm
-3~134.00kJ・cm
-3である、
ことを特徴とする化学強化用結晶化ガラス。
【請求項16】
酸化物の質量百分率で、前記化学強化用結晶化ガラスは、30.00%≦SiO
2<35.00%、Al
2O
3:30.00%~40.00%、ZnO:10.00%~12.00%、MgO:2.00%~4.00%、ZrO
2:5.00%~7.00%、Na
2O:2.00%~9.00%、Li
2O:0~2.00%、およびB
2O
3:0~8.00%との成分を含むと共に、前記化学強化用結晶化ガラスの成分は、
(1)X=((Na
2O+B
2O
3)/ZrO
2)/Al
2O
3、X≧2.00;
(2)Y=ln[(Na
2O+B
2O
3)/ZrO
2]、Y≧0;
(3)Z=(SiO
2+Al
2O
3-MgO-ZnO)/(Li
2O+Na
2O+B
2O
3)、4.00≦Z≦10.00;
式(1)~(3)において、酸化物は、前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たすことを特徴とする請求項15に記載の化学強化用結晶化ガラス。
【請求項17】
前記化学強化用結晶化ガラスの成分は、さらに、
(4)W=(0.8×(Al
2O
3-SiO
2)+1.5×(ZnO-MgO))/ZrO
2,0≦W≦3.00;式(4)において、酸化物は、前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、を満たし、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスのヤング率が110GPa以上であり、選択的に110~140Gpaであること、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスにおいて、平均結晶粒径は15.00nm以下であり、選択的に1.00~10.00nmであり、さらに選択的に4.50~8.00nmであること、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスにおいて、結晶含有量は、20.00~50.00wt%であり、選択的に25.00~50.00wt%であり、さらに選択的に25.00~45.00wt%であること、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスの副結晶相は、正方晶ZrO
2、Zn
2SiO
4、Mg
2SiO
4から選ばれる1種または複数種を含むこと、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスは、さらに、0~3.00wt%のBaOおよび/または0~2.00wt%のY
2O
3を含むこと、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスにはTiO
2およびP
2O
5が基本的に含まれていないこと、
を特徴とする請求項15または16に記載の化学強化用結晶化ガラス。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項に記載の強化結晶化ガラスによって製造され、または由請求項15~17のいずれか1項に記載の化学強化用結晶化ガラスによって製造された、ガラス器具。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項に記載の強化結晶化ガラスまたは請求項15~17のいずれか1項に記載の化学強化用結晶化ガラスを含む、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2022年12月23日に中国国家知的財産権局へ提出された、出願番号が202211666239.3であり、発明の名称が「高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス」である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その全ての内容が援用により本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ガラス材料技術の分野に関し、具体的に、高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスに関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスは、優れた光学特性を有するため、プラスチックに代わって、携帯型電子機器の保護カバーとして徐々に使用されている。スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット端末などの携帯型電子製品の保護カバーや筐体材料などとして、優れた耐スクラッチ傷性が求められている。現在、耐圧性も耐スクラッチ傷性も優れた材料はサファイアガラスであるが、サファイアガラスの生産や加工が難しく、加工コストが高く、そして、欠陥に対する許容度が低く、割れやすい。一般的なガラスは、耐スクラッチ傷性が低く、ガラスに二ケイ酸リチウムやペタライトなどの結晶相が析出した結晶化ガラスでも、耐スクラッチ傷性の向上には限界があり、ハイエンド製品の性能要求を満たすことが困難である。
【0004】
亜鉛マグネシウムスピネル結晶は、高いヤング率とせん断弾性率を有するため、ガラスの耐スクラッチ傷性を向上させるための好ましい結晶相となっている。
【0005】
特許CN111615500Aは、スピネルを主結晶相とした透明な亜鉛スピネル-スピネルガラスセラミックスを開示しており、当該ガラスセラミックスは、約98.0GPa以上約114.0GPa以下のヤング率を有し、約9.0GPa以上約11.2GPa以下の硬度を有する。当該特許にかかるガラスセラミックスの耐スクラッチ傷性は、従来の結晶化ガラスに比べて大幅に向上されるが、その耐スクラッチ傷性、ヤング率および硬度についてさらに向上する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術における上記の欠点に鑑み、本発明の目的は、従来技術における結晶化ガラスの耐スクラッチ傷性が不十分であるという問題を解決するように、高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の技術問題を解決するために、以下の態様を採用する。
【0008】
第1態様として、本発明は、高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスを提供し、前記強化結晶化ガラスは、圧縮応力層と引張応力層とを含み、前記強化結晶化ガラスの主結晶相は、(Zn,Mg)Al2O4であり、前記強化結晶化ガラスにNa2Oが含まれており、前記強化結晶化ガラスの表面K2O濃度は、7.00wt%以上であり、選択的に7.00~15.00wt%であり、前記強化結晶化ガラスにおいて、ガラスの厚さ方向に沿って、強化結晶化ガラスのいずれかの表面から当該表面の近くにあり且つ強化結晶化ガラスの中心と同様なカリウム(K)濃度を有する位置までの深さは、0.07t以上であり、選択的に0.07t~0.10tであり、tが強化結晶化ガラスの厚さである。選択的に、厚さが0.7mmである場合、前記強化結晶化ガラスの単一ロッド静圧強度(a single-rod static pressure)は450N以上であり、選択的に450~650Nである。
【0009】
選択的に、前記強化結晶化ガラスのヤング率は、110GPa以上であり、選択的に110~130GPaである。
【0010】
選択的に、前記強化結晶化ガラスのビッカース硬度は、750kgf/mm2以上であり、選択的に750~900kgf/mm2であり、さらに選択的に800~900kgf/mm2である。
【0011】
選択的に、前記強化結晶化ガラスにおいて、平均結晶粒径は、15.00nm以下であり、選択的に1.00~10.00nmであり、さらに選択的に4.50~8.00nmである。
【0012】
選択的に、前記強化結晶化ガラスにおいて、結晶含有量は20.00~50.00wt%であり、選択的に25.00~50.00wt%であり、さらに選択的に25.00~45.00wt%である。
【0013】
選択的に、前記強化結晶化ガラスの副結晶相は、正方晶ZrO2、Zn2SiO4、Mg2SiO4から選ばれる1種または複数種を含む。
【0014】
選択的に、前記強化結晶化ガラスは、可視光範囲で透明である。
【0015】
選択的に、自動鉛筆硬度計によって、45°の角度でモース硬度7レベルの宝石鉱物硬度計を固定し、750gの荷重で、前記強化結晶化ガラスの表面をスクラッチし、スクラッチされた結晶化ガラスを400倍率の顕微鏡で観察したところ、前記強化結晶化ガラスの表面に傷がない。
【0016】
選択的に、酸化物の質量百分率で、前記強化結晶化ガラスの引張応力層は、30.00%≦SiO2<35.00%、Al2O3:30.00%~40.00%、ZnO:10.00%~12.00%、MgO:2.00%~4.00%、ZrO2:5.00%~7.00%、Na2O:2.00%~9.00%、Li2O:0~2.00%、およびB2O3:0~8.00%との成分を含み、ここで、前記強化結晶化ガラスの引張応力層の成分は、
(1)X=((Na2O+B2O3)/ZrO2)/Al2O3、X≧2.00;
(2)Y=ln[(Na2O+B2O3)/ZrO2]、Y≧0;
(3)Z=(SiO2+Al2O3-MgO-ZnO)/(Li2O+Na2O+B2O3)、4.00≦Z≦10.00;
式(1)~(3)において、酸化物は前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たす。
【0017】
選択的に、前記強化結晶化ガラスの引張応力層の成分は、さらに、
(4)W=(0.8×(Al2O3-SiO2)+1.5×(ZnO-MgO))/ZrO2、0≦W≦3.00;
式(4)において、酸化物は前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たす。
【0018】
選択的に、前記強化結晶化ガラスの引張応力層において、SiO2の質量百分率が32.00%~34.95%であり、および/または、Al2O3の質量百分率が32.00%~38.00%であり、および/または、ZnOが10.00%~11.48%であり、および/または、MgOが2.50%~3.50%であり、および/または、ZrO2が5.40%~6.50%であり、および/または、Na2Oが2.50%~8.50%であり、および/または、B2O3が2.50~8.00%である。
【0019】
選択的に、前記強化結晶化ガラスの引張応力層に、さらに、0~3.00wt%のBaOおよび/または0~2.00wt%のY2O3を含む。
【0020】
選択的に、前記強化結晶化ガラスに、TiO2およびP2O5が基本的に含まれていない。
【0021】
選択的に、前記強化結晶化ガラスは、化学強化用結晶化ガラスに対して化学強化処理を行って得られたものである。なお、酸化物の質量百分率で、前記化学強化用結晶化ガラスの組成は、前記強化結晶化ガラスの引張応力層の組成と基本的に同じである。
【0022】
選択的に、当該化学強化用結晶化ガラスを、カリウム塩を含有する380℃~550℃のソルトバスに投入して化学強化処理を行い、化学強化処理の時間が1h~96hであり、選択的に1h~48hであり、これにより前記強化結晶化ガラスを得ており、前記カリウム塩は、硝酸カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウムから選ばれる1種または複数種を含み、選択的に硝酸カリウムである。
【0023】
第2態様として、本発明は、上記強化結晶化ガラスを製造するための化学強化用結晶化ガラスをさらに提供し、前記化学強化用結晶化ガラスの主結晶相は、(Zn,Mg)Al2O4であり、前記化学強化用結晶化ガラスにおいて、酸化物のモル百分率で、Al2O3のモル百分率はMgOとZnOのモル百分率の合計よりも大きく、当該化学強化用結晶化ガラスの理論結晶化度は少なくとも30.00wt%以上であり、選択的に30.00wt%~50.00wt%であり、かつ、当該化学強化用結晶化ガラスが理論結晶化度を満たす場合、結晶化ガラスにおける残留ガラス相の単位体積あたりの解離エネルギーUは、71.00kJ・cm-3以上であり、選択的に71.00kJ・cm-3~134.00kJ・cm-3である。
【0024】
選択的に、酸化物の質量百分率で、前記化学強化用結晶化ガラスは、30.00%≦SiO2<35.00%、Al2O3:30.00%~40.00%、ZnO:10.00%~12.00%、MgO:2.00%~4.00%、ZrO2:5.00%~7.00%、Na2O:2.00%~9.00%、Li2O:0~2.00%、およびB2O3:0~8.00%との成分を含むと共に、前記化学強化用結晶化ガラスの成分は、
(1)X=((Na2O+B2O3)/ZrO2)/Al2O3、X≧2.00;
(2)Y=ln[(Na2O+B2O3)/ZrO2]、Y≧0;
(3)Z=(SiO2+Al2O3-MgO-ZnO)/(Li2O+Na2O+B2O3)、4.00≦Z≦10.00;
式(1)~(3)において、酸化物は前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たす。
【0025】
選択的に、前記化学強化用結晶化ガラスの成分は、さらに、
(4)W=(0.8×(Al2O3-SiO2)+1.5×(ZnO-MgO))/ZrO2、0≦W≦3.00;
式(4)において、酸化物は前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たす。
【0026】
選択的に、前記化学強化用結晶化ガラスのヤング率は110GPa以上であり、選択的に110~140GPaである。
【0027】
選択的に、前記化学強化用結晶化ガラスにおいて、平均結晶粒径は15.00nm以下であり、選択的に1.00~10.00nmであり、さらに選択的に4.50~8.00nmである。
【0028】
選択的に、前記化学強化用結晶化ガラスにおいて、結晶含有量は20.00~50.00wt%であり、選択的に25.00~50.00wt%であり、さらに選択的に25.00~45.00wt%である。
【0029】
選択的に、前記化学強化用結晶化ガラスの副結晶相は、正方晶ZrO2、Zn2SiO4、Mg2SiO4から選ばれる1種または複数種を含む。
【0030】
選択的に、前記化学強化用結晶化ガラスは、さらに、0~3.00wt%のBaOおよび/または0~2.00wt%のY2O3を含む。
【0031】
選択的に、前記化学強化用結晶化ガラスには、TiO2およびP2O5が基本的に含まれていない。
【0032】
第3態様として、本発明は、上記強化結晶化ガラスまたは上記化学強化用結晶化ガラスによって製造されたガラス器具をさらに提供する。
【0033】
第4態様として、本発明は、上記強化結晶化ガラスまたは上記化学強化用結晶化ガラスを含む電子デバイスをさらに提供する。
【発明の効果】
【0034】
従来技術に比べて、本発明は、以下の有利な効果を奏する。
【0035】
本発明は、結晶化ガラスの固有強度と、強化後のガラスから得られる応力特性とについて鋭意検討を行い、固有強度の高い特定体系の結晶化ガラスを強化して特定の応力特徴を満たすことで、最終的に優れた耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスを得る。本発明において、強化結晶化ガラスが有する高い表面K2O濃度および高いカリウム・ナトリウム交換深さは、強化結晶化ガラスに優れた表面応力特性と深層応力特性を付与するため、結晶化ガラスが元々有する高い固有強度と組み合わせると、最終的に本発明にかかる強化結晶化ガラスの機械特性が大幅に向上し、強化結晶化ガラスがサファイアガラスの耐スクラッチ傷性の効果に匹敵する耐スクラッチ傷性の効果を達成することができる。優れた機械特性および耐スクラッチ傷性の効果に基づいて、本発明の強化結晶化ガラスは、ハイエンド電子製品のカバーガラスの応用要求を満たすことができる。
【0036】
本発明は、化学強化用結晶化ガラスに対して配合の最適化を行い、配合系における各酸化物および各酸化物の含有量の関係を調整する。一方では、基材ガラスの溶融難度、および基材ガラスを用いて目的とする化学強化用結晶化ガラスを製造する際の熱処理温度が低減され、化学強化用結晶化ガラスの量産の難度が低減される。本発明が提供するガラス配合は、通常の連続溶融、圧延等方法で量産して基材ガラスを得ることができ、基材ガラスの成形性を保証できる。そして、本発明にかかるガラス配合に対応する基材ガラスは、熱処理温度が800℃以下である場合、主結晶相が亜鉛マグネシウムスピネル固溶体であり、かつ良い光学特性を有する透明な化学強化用結晶化ガラスを得ることができる。従来技術に比べて、本発明が提供する配合系は、明らかに熱処理温度を低減し、さらにスピネル結晶化ガラスの量産の難度を低減し、スピネル結晶化ガラスの量産性を向上させることができる。他方では、特定の含有量の各酸化物成分の相乗効果によって、所望の含有量を有する目的の主結晶相(Zn,Mg)Al2O4が得られるとともに、化学強化用結晶化ガラスにおける残留ガラス相の固有強度が向上する。高いヤング率およびせん断弾性率を有する主結晶相(Zn,Mg)Al2O4を、高い固有強度を有する残留ガラス相と組み合わせることで、最終的に得られた化学強化用結晶化ガラスは、高い固有強度を有し、従来のスピネル系の結晶化ガラスよりも優れた機械特性、例えば耐スクラッチ傷性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は実施例S4における基材ガラスのTGA曲線図である。
【
図2】
図2は実施例S1の化学強化用結晶化ガラスサンプルのXRDスペクトルである。
【
図3】
図3は実施例S1の化学強化用結晶化ガラスサンプルの透過率曲線図である。
【
図4】
図4は異なる条件で実施例S1の化学強化用結晶化ガラスに対してスクラッチ傷性試験を行ったスクラッチ傷効果図であり、ここで、(a)が対応する試験条件はR1:モース硬度7レベルの宝石鉱物硬度計、荷重250gであり、(b)が対応する試験条件はR2:モース硬度7レベルの宝石鉱物硬度計、荷重500gであり、(c)が対応する試験条件はR3:モース硬度6レベルの宝石鉱物硬度計、荷重750gである。
【
図5】
図5は試験条件R4で実施例S2とS8の化学強化用結晶化ガラスに対してスクラッチ傷性試験を行ったスクラッチ傷効果図であり、ここで、試験条件R4はモース硬度7レベルの宝石鉱物硬度計、荷重750gであり、(d)が実施例S2の化学強化用結晶化ガラスに対応し、(e)が実施例S8の化学強化用結晶化ガラスに対応する。
【
図6】
図6は試験条件R4で実施例S1の強化結晶化ガラスに対してスクラッチ傷性試験を行ったスクラッチ傷効果図であり、ここて、試験条件R4は、モース硬度7レベルの宝石鉱物硬度計、荷重750gである。
【
図7】
図7は試験条件R5で実施例S2とS8の強化結晶化ガラスとサファイアガラスに対してスクラッチ傷性試験を行ったスクラッチ傷効果図であり、ここで、試験条件R5はモース硬度8レベルの宝石鉱物硬度計、荷重750gであり、(g)が実施例S2の強化結晶化ガラスに対応し、(h)が実施例S8の強化結晶化ガラスに対応し、(i)がサファイアガラスに対応する。
【
図8】
図8は試験条件R4で比較例D1とD2の強化結晶化ガラスに対してスクラッチ傷性試験を行ったスクラッチ傷効果図であり、ここで、試験条件R4はモース硬度7レベルの宝石鉱物硬度計、荷重750gであり、(j)が比較例D1の強化結晶化ガラスに対応し、(k)が比較例D2の強化結晶化ガラスに対応する。
【
図9】
図9は試験条件R3で比較例D6の化学強化用結晶化ガラスに対してスクラッチ傷性試験を行ったスクラッチ傷効果図であり、ここで、試験条件R3はモース硬度6レベルの宝石鉱物硬度計、荷重750gであり、(l)が比較例D6の化学強化用結晶化ガラスにおけるスクラッチ傷の頭部に生じた紋様に対応し、(m)が比較例D6の化学強化用結晶化ガラスにおけるスクラッチ傷の中部の魚鱗斑の紋様に対応する。
【
図10】
図10は試験条件R3で比較例D6の強化結晶化ガラスに対してスクラッチ傷性試験を行ったスクラッチ傷効果図であり、ここで、試験条件R3はモース硬度6レベルの宝石鉱物硬度計、荷重750gである。
【
図11】
図11は本発明の実施例S3の化学強化用結晶化ガラスのSEM像である。
【
図12】
図12は実施例S1の強化結晶化ガラスにおいて、厚さ断面電子プローブにより測定したNa
2OとK
2Oの濃度関数の関係図である。
【
図13】
図13は実施例S2の強化結晶化ガラスにおいて、厚さ断面電子プローブにより測定したNa
2OとK
2Oの濃度関数の関係図である。
【
図14】
図14は実施例D2の強化結晶化ガラスにおいて、厚さ断面電子プローブにより測定したNa
2OとK
2Oの濃度関数の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
一、以下、本発明にかかる関連する専用名称および関連する測定方法について説明する。
【0039】
基材ガラス:核生成処理、結晶化処理および強化処理が行われていないガラスである。
【0040】
結晶化ガラス:ガラスセラミックスとも呼ばれ、目標を持って基材ガラスを結晶化制御することで調製したガラス相と結晶相(又は、微結晶相、結晶化相、晶相とも呼ばれる)とを同時に含む固体複合材料である。
【0041】
強化結晶化ガラス:結晶化ガラスを化学強化処理して得られた固体複合材料である。高温化学強化処理を行う時に、結晶化ガラスにおけるイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオンやリチウムイオン)を、ソルトバス・溶融塩におけるイオン半径が大きいアルカリ金属イオン(例えば、カリウムイオンやナトリウムイオン)に置き換えることで、イオン交換による体積の差が発生し、結晶化ガラスの表面に圧縮応力が生じる。
【0042】
残留ガラス相:結晶化ガラス系における非結晶相の部分であり、結晶化ガラスに結晶相と残留ガラス相とを含む。
【0043】
解離エネルギー:一般的に、解離するのに必要なエネルギーを指し、最もエネルギーの低い状態にある1つの分子を、完全に独立した原子に分解する際に、外部から吸収される最小のエネルギーであり、結合を切断するために必要なエネルギーでもある。
【0044】
核生成:熱処理によりガラスにおける核形成物質に小さな結晶核を成長させる。
【0045】
結晶化:熱処理により結晶核を基にある結晶が成長する。
【0046】
結晶相:結晶相は、結晶の微視的構造であり、結晶における高分子鎖の立体配座およびその配置によって決定される。
【0047】
理論的結晶化度:結晶化ガラス配合系の理論的な最高の結晶化の程度である。
【0048】
平均結晶粒径:X線回折装置を使用して結晶化ガラスサンプルを測定し、Scherrer式D=Kλ/(βcosθ)により、XRD測定で得られた結果データを演算して平均結晶粒径を取得し、ここで、λはX線の波長であり、即ち0.154056nmであり、βは回折ピークの半値幅であり、K=0.89であり、θはブラッグ回折角である。例示的に、XRD装置から出力したRAWファイルをJadeソフトウェアでカーブフィッティングし、Jadeがフィッティングレポートを出力し、フィッティングレポートにおける各回折ピークに対応する角度2θの値とPeak FWHMの値(回折ピーク半値幅)とに基づいて、Peak FWHMの値をラジアンに変換し、即ちβ=(FWHM/180×3.14)であり、Scherrer式D=Kλ/(βcosθ)により各回折ピークの結晶粒径を算出した後、平均を求めて、平均結晶粒径を得る。本発明で使用されるX線回折装置は、島津製作所製のXRD-6100であり、ターゲット材は銅であり、測定に用いられる回折角度範囲は2θ=10~80°であり、走査速度は0.2°/minであり、動作電圧は40kVであり、動作電流は30mAである。
【0049】
結晶含有量:結晶の総質量が結晶化ガラスの総質量に占める割合であり、実際の結晶化度とも呼ばれる。なお、結晶相と結晶粒は、いずれも結晶化ガラス中に析出する結晶を指し、記述方法が異なる。
【0050】
透過率:入射光束が被照射面または媒体の入射面から他の面へ出射する過程において、物体に入射した全放射エネルギーに対する物体を透過した放射エネルギーの比である。本発明の実施例と比較例において、550nm波長における結晶化ガラスの透過率とは、同一バッチの複数のガラスサンプルについて、550nm波長において測定した透過率の平均値を指す。各バッチから少なくとも5枚の結晶化ガラスサンプルを取って、測定を行う。
【0051】
屈折率:真空中の光の伝播速度と当該媒体中の光の伝播速度との比である。本発明では、単眼アッベ屈折計(WYA-2WAJ、BELL Analytical Instruments Co.,Ltd)を用いて、波長を589nmに設定して、結晶化ガラス片の屈折率を測定する。
【0052】
b値:材料の黄色・青色の値であり、本発明の実施例における前記b値は透過光のb値であり、b値が正の数であることは材料の青味が強いことを表し、日本コニカミノルタ社製の分光測色計CM-3600Aを用いて測定する。
【0053】
ビッカース硬度:イギリスのロバート・L・スミス(Robert L.Smith)とジョージ・E・サンドランド(George E.Sandland)が1921年にビッカース社(Vickers Ltd)で提出した材料の硬さを表す基準である。
【0054】
サンプル厚さ測定:マイクロメータによって測定する。なお、厚さ方向において、イオン交換の程度は表面から中心まで勾配で変化するが、全体のNa-Kおよび/またはLi-Naの交換量は、一般的に、サンプルの総質量の1%を超えておらず、かつ、イオン半径の差はpmレベルであるため、厚さ方向での膨張効果が極めて軽微であり、厚さが基本的に変化しないと近似的に考えてよい。即ち、化学強化の前後で、結晶化ガラス片の厚さの変化が非常に小さく、無視できる。
【0055】
光学特性測定:「GB/T 7962.12-2010 無色光学ガラス測定方法 第12部分:スペクトル内透過率」の規格を参照して、専門的な測定装置を使用して結晶化ガラスのヘイズ、b値および透過率を測定する。本発明では、日本コニカミノルタ社製の分光測色計CM-3600Aを使用してヘイズおよびb値を測定する。本発明では、島津製作所製のUV-2000紫外可視分光光度計を使用して透過率およびその曲線を測定する。
【0056】
結晶含有量の測定方法:X線回折装置を使用して結晶化ガラスサンプルを測定し、XRD測定結果を得て、X線回折装置の測定結果ファイル(RAW形式)をX線回折データRietveldリートベルト精密化ソフトウェア(例えば、Gsas、Fullprof、Maud)に導入し、フィッティングおよび計算を行い、フィッティングの結晶相ピーク面積とフィッティングの全ピーク面積との比の値は結晶含有量である。本発明で使用されるX線回折装置は島津製作所製XRD-6100であり、ターゲット材は銅であり、測定に用いられる回折角度範囲が2θ=10~80°であり、走査速度は0.2°/minであり、動作電圧は40kVであり、動作電流は30mAである。
【0057】
密度測定:「アルキメデス法」の原理に応じて結晶化ガラスサンプルの密度を測定し、測定機器はALFA MIRAGE電子比重計SD-200Lである。
【0058】
ヤング率の測定:測定機器はUMS-100超音波材料特徴づけシステムである。
【0059】
示差走査熱量法(DSC)の測定:測定機器はメトラー・トレド社製のTGA /DSC3+熱重量・同時熱分析装置である。測定時、サンプルを粉末化した後、200メッシュの篩を通過させる。測定条件は、室温~1100℃であり、昇温速度が10℃/minである。測定に用いられる標準物質はα-Al2O3粉末であり、機器の設置環境の温度は24℃であり、空気湿度は40%である。
【0060】
単一ロッド静圧:強化された結晶化ガラスを引張試験機(LT-850A)のボトムリングに設置し、測定ソフトウェアを起動し、押圧ロッド(ロッド直径が8mmであり、圧子の円弧半径が10mmである)の移動速度を50mm/minにし、測定開始をクリックすると、押圧ロッドは設定された移動速度に従って、結晶化ガラスに亀裂が発生し破砕するまで、測定対象となる結晶化ガラス片の中心に力を加える。測定ソフトウェアは、ガラスが破砕される際の力(N)を測定結果として自動的に読み取る。同じ状態の結晶化ガラスサンプルを10枚取って測定し、測定結果の平均値を結晶化ガラスの単一ロッド静圧強度とする。
【0061】
スクラッチ傷測定:測定機器は自動鉛筆硬度計(ZIPANG MOTOR)である。測定方法:自動鉛筆硬度計によって、45°の角度でモース硬度計を固定し、その先端をガラスサンプルの表面に接触させ、所定の荷重で、60mm/minの移動速度でガラス載置台を移動させることにより、スクラッチ傷性試験を行う。ガラス載置台に、拭き取った測定対象となるガラスサンプルが載置されており、所定の荷重は対応する重量の分銅を戴せて設定する。本発明で使用される宝石鉱物硬度計6~8号は、それぞれ、モース硬度6~8レベルに対応する。スクラッチ傷試験が終了した後、スクラッチされたガラスサンプルを400倍率の顕微鏡に置き、スクラッチ傷の状態を観察して、写真を撮って記録する。スクラッチの有無とスクラッチの状態によって、被測定ガラスサンプルの硬度を判断する。スクラッチがある場合は、被測定ガラスサンプルの硬度が測定用硬度計よりも低いことを意味しており、スクラッチがない場合は、被測定ガラスサンプルの硬度が測定用硬度計よりも高いことを意味している。
【0062】
電子プローブ測定:測定機器は島津製作所製の電子プローブEPMA-1720である。電子線をサンプルに作用させて発生した特性X線によって、微小領域の成分分析を行う。本発明では、化学強化して得られた強化結晶化ガラスにおいて、カリウム・ナトリウム交換によって形成された圧縮応力層の深さが、電子プローブによって測定して得られる。
【0063】
表面K2O濃度の測定:表面K2O濃度はK2O質量を酸化物の総質量で割ったものに等しく、そのうち、酸化物の総質量は、SiO2、Al2O3、P2O5、ZrO2、Na2O、K2OなどのXRFで正確に測定できる酸化物の含有量を含み、Li2O、B2O3などのXRFで正確に測定できない酸化物の含有量を含まない。本発明にかかる強化結晶化ガラスの表面K2O濃度は、蛍光X線分光分析装置(XRF)によって測定して得られ、測定に用いられる機器はThermo Scientific ARL(登録商標) PERFORM’Xである。ターゲット材はRh(ロジウム)であり、管電圧は40kWであり、電流は60mAであり、コリメータは0.15であり、結晶はLiF200を選択し、検出器はFPCを選択し、測定範囲は29mmの円であり、解析ソフトウェアはUniQuantであり、スタンダードレス分析を行うためのものである。XRF測定時、スタンダードレス測定を用いるが、ガラスにおける原子番号6以下の元素やその酸化物の質量を測定しない。即ち、本発明において、XRF測定によって得られたK2O濃度を計算すると、酸化物の総質量がガラスにおける原子番号6以下の元素やその酸化物の質量を含まない。
【0064】
ビッカース硬度(HV)測定:化学強化された強化結晶化ガラス片を長さ50mm×幅50mm×厚さ0.7mmの小片に製作して、表面が清潔であり且つ視認できるスクラッチ傷、くぼみおよび亀裂などの損傷がないガラスサンプルを測定試料として選択した後、ビッカース硬度計により強化結晶化ガラスのビッカース硬度を測定する。測定条件:荷重は300gfであり、負荷時間は10sであり、圧痕の有効性はGB/T 16534に準拠する。同一試料の表面における3つの異なる箇所を選択して測定し、3回の測定結果の平均値を最終的な測定結果とする。本発明で使用されるビッカース硬度計は、デジタル型低荷重ビッカース硬度計(北京科威科技有限会社製、VTD405)である。
【0065】
二、高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスおよび化学強化用結晶化ガラス
【0066】
本発明は、従来の結晶化ガラスの成分を検討した結果、亜鉛マグネシウムスピネル結晶が高いヤング率とせん断弾性率を有するため、ガラスの耐スクラッチ傷性を向上させる好ましい結晶相となったが、従来の透明スピネル結晶化ガラスの耐スクラッチ傷性はハイエンド製品の保護カバーの応用要求を満たすには十分ではなく、さらに向上する必要があることを見出した。
【0067】
本発明は、高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスを提供し、前記強化結晶化ガラスは圧縮応力層と引張応力層とを含み、前記強化結晶化ガラスの主結晶相は(Zn,Mg)Al2O4である。前記強化結晶化ガラスはNa2Oを含む。前記強化結晶化ガラスの表面K2O濃度は7.00wt%以上であり、選択的に7.00~15.00wt%である。前記強化結晶化ガラスにおいて、ガラスの厚さ方向に沿って、強化結晶化ガラスのいずれかの表面から当該表面の近くにあり且つ強化結晶化ガラスの中心と同様なカリウム(K)濃度を有する位置までの深さは0.07t以上であり、選択的に0.07t~0.10tであり、tは強化結晶化ガラスの厚さである。
【0068】
本発明は、結晶化ガラスの固有強度と強化後のガラスで得られる応力特性について鋭意検討を行い、固有強度の高い特定体系の化学強化用結晶化ガラスを強化して特定の応力特徴を満たすことで、最終的に優れた耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスを得る。本発明において、強化結晶化ガラスが有する高い表面K2O濃度および高いカリウム・ナトリウム交換深さは、強化結晶化ガラスに優れた表面応力特性と深層応力特性を付与するため、化学強化用結晶化ガラスが元々有する高い固有強度と組み合わせると、最終的に本発明にかかる強化結晶化ガラスの機械特性が大幅に向上し、強化結晶化ガラスがサファイアガラスの耐スクラッチ傷性効果に匹敵する耐スクラッチ傷性効果を達成することができる。
【0069】
なお、化学強化イオン交換プロセスを行った後、結晶化ガラスの表面における組成は、形成したばかりの結晶化ガラス(即ち、イオン交換されていない化学強化用結晶化ガラス)の組成と異なる可能性がある。即ち、強化結晶化ガラスの表面におけるイオン交換によって形成される圧縮応力層の組成は、化学強化用結晶化ガラスの組成と異なる可能性がある。これは、イオン交換の時、形成したばかりの結晶化ガラスにおける1種類のアルカリ金属イオン(例えば、Li+またはNa+)が大きなアルカリ金属イオン(例えば、Na+またはK+)に置換され、例えば、ガラスにおけるNa+が強化用ソルトバスにおけるK+と交換され、K+に置換され、および/または、ガラスにおけるLi+が強化用ソルトバスにおけるNa+と交換され、Na+に置換されるためである。しかし、実施形態において、結晶化ガラスは、ガラス製品の深さの中心または深さの中心に近い箇所における組成は、依然として、形成したばかりの結晶化ガラスの組成を有する。即ち、強化結晶化ガラスにおけるイオン交換を行っていない引張応力層の組成は、依然として、化学強化用結晶化ガラスの組成を有する。これにより、強化結晶化ガラスの中心におけるカリウム濃度は、依然として、化学強化用結晶化ガラスの組成のカリウム濃度を有する。
【0070】
化学強化プロセスにおいて発生するのはアルカリ金属イオンの交換であるが、本発明にかかる化学強化用結晶化ガラスの主結晶相は(Zn,Mg)Al2O4であり、副結晶相は正方晶ZrO2、Zn2SiO4、Mg2SiO4から選ばれる1種または複数種を含み、アルカリ金属を含まず、イオン交換に関与しないため、強化前後で結晶相の組成は基本的に変化しない。そのため、化学強化して得られた強化結晶化ガラスの主結晶相は依然として(Zn,Mg)Al2O4であり、副結晶相は正方晶ZrO2、Zn2SiO4、Mg2SiO4から選ばれる1種または複数種を含む。
【0071】
本発明のいくつかの実施案において、前記強化結晶化ガラスの表面K2O濃度は7.00wt%以上であり、選択的に7.00~15.00wt%である。いくつかの実施形態において、表面K2O濃度は7.00wt%~8.00wt%、7.00wt%~9.00wt%、7.00wt%~10.00wt%、7.00wt%~11.00wt%、7.00wt%~12.00wt%、7.00wt%~13.00wt%、7.00wt%~14.00wt%、7.00wt%~15.00wt%、8.00wt%~10.00wt%、9.00wt%~14.00wt%、9.00wt%~13.00wt%、7.00wt%、8.00wt%、9.00wt%、10.00wt%、11.00wt%、12.00wt%、13.00wt%、14.00wt%、15.00wt%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。
【0072】
前記強化結晶化ガラスにおいて、ガラスの厚さ方向に沿って、強化結晶化ガラスのいずれかの表面から、当該表面の近くにあり且つ強化結晶化ガラスの中心と同様なカリウム(K)濃度を有する位置までの深さは0.07t以上であり、選択的に0.07t~0.10tであり、tは強化結晶化ガラスの厚さである。いくつかの実施形態において、ガラスの厚さ方向に沿って、強化結晶化ガラスのいずれかの表面から、当該表面の近くにあり且つ強化結晶化ガラスの中心と同様なカリウム(K)濃度を有する位置までの深さは、0.07t~0.08t、0.07t~0.09t、0.08t~0.09t、0.08t~0.10t、0.09t~0.10t、0.07t、0.08t、0.09t、0.10tなど、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。例示的に、強化結晶化ガラスの厚さが0.7mmである場合、ガラスの厚さ方向に沿って、強化結晶化ガラスのいずれかの表面から、当該表面の近くにあり且つ強化結晶化ガラスの中心と同様なカリウム(K)濃度を有する位置までの深さは49.00μm以上であり、選択的に49.00μm~70.00μmであり、さらに49.00μm~55.00μm、49.00μm~60.00μm、49.00μm~55.00μm、50.00μm~60.00μm、50.00μm~70.00μm、60.00μm~70.00μm、55.00μm~70.00μm、65.00μm~70.00μm、49.00μm、50.00μm、55.00μm、60.00μm、65.00μm、70.00μmなど、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。本発明において、強化結晶化ガラスのいずれかの表面から、当該表面の近くにあり且つ強化結晶化ガラスの中心と同様なカリウム(K)濃度を有する位置までの深さが大きいほど、化学強化を行うときに、ソルトバスにおけるKイオンの結晶化ガラスに入り込む深さが深く、これにより、強化結晶化ガラスにおいて、カリウム・ナトリウム交換(ソルトバスにおけるカリウムイオンと結晶化ガラスにおけるNaイオンとの交換を指す)により形成される圧縮応力層の深さが深いことを示す。
【0073】
本発明のいくつかの実施案において、厚さが0.7mmである場合、前記強化結晶化ガラスの単一ロッド静圧強度は450N以上であり、選択的に450~650Nである。いくつかの実施形態において、前記強化結晶化ガラスの単一ロッド静圧強度は450N~500N、450N~600N、450N~490N、480N~570N、470N~610N、520N~650N、540N~630N、450N、500N、550N、600N、650Nなど、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0074】
本発明のいくつかの実施案において、化学強化用結晶化ガラスのヤング率は110.00GPa以上であり、選択的に110.00GPa~140.00GPaである。なお、本発明において、化学強化処理後、結晶化ガラスのヤング率は適切に増加するため、前記強化結晶化ガラスのヤング率は110GPa以上であり、選択的に110~140GPaである。いくつかの実施形態において、前記強化結晶化ガラスのヤング率は110GPa~140GPa、110GPa~115GPa、110GPa~120GPa、110GPa~125GPa、115GPa~128GPa、121GPa~129GPa、114GPa~127GPa、113GPa~129GPa、126GPa~130GPa、110GPa、115GPa、118GPa、120GPa、123GPa、126GPa、130GPa、135GPa、140GPaなど、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施案において、前記強化結晶化ガラスのビッカース硬度は750kgf/mm2以上であり、選択的に750~900kgf/mm2であり、さらに選択的に800~900kgf/mm2である。いくつかの実施形態において、前記強化結晶化ガラスのビッカース硬度は750kgf/mm2~810kgf/mm2、800kgf/mm2~820kgf/mm2、810kgf/mm2~850kgf/mm2、840kgf/mm2~880kgf/mm2、860kgf/mm2~890kgf/mm2、870kgf/mm2~900kgf/mm2、850kgf/mm2~880kgf/mm2、830kgf/mm2~845kgf/mm2、860kgf/mm2~875kgf/mm2、750kgf/mm2、800kgf/mm2、820kgf/mm2、845kgf/mm2、860kgf/mm2、870kgf/mm2、885kgf/mm2、890kgf/mm2など、および上記値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施案において、化学強化用結晶化ガラスの平均結晶粒径は15.00nm以下であり、選択的に1.00~10.00nmであり、さらに選択的に4.50~8.00nmである。なお、本発明では、化学強化プロセスは結晶粒径を著しく変化させないため、前記強化結晶化ガラスにおいて、平均結晶粒径は15.00nm以下である。いくつかの実施形態において、平均結晶粒径は1.00nm~4.00nm、1.00nm~9.00nm、1.00nm~13.00nm、3.00nm~5.00nm、6.00nm~10.00nm、7.00nm~9.00nm、5.00nm~6.00nm、5.00nm~7.00nm、5.00nm~8.00nm、6.00nm~8.00nm、8.00nm~10.00nm、7.00nm~12.00nm、1.00nm、2.00nm、3.00nm、4.00nm、5.00nm、6.00nm、7.00nm、8.00nm、9.00nm、10.00nm、11.00nm、12.00nm、13.00nm、14.00nm、15.00nmなど、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよく、選択的に1.00~10.00nmであり、さらに選択的に4.50~8.00nm等である。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施案において、化学強化用結晶化ガラスの結晶含有量は20.00~50.00wt%であり、選択的に25.00~50.00wt%であり、さらに選択的に25.00~45.00wt%である。なお、本発明にかかる化学強化用結晶化ガラスの主結晶相は(Zn,Mg)Al2O4であり、副結晶相は正方晶ZrO2、Zn2SiO4、Mg2SiO4から選ばれる1種または複数種を含み、アルカリ金属イオンを含まないため、イオン交換に関与しない。そのため、前記強化結晶化ガラスにおいて、結晶含有量は20.00~50.00wt%に維持されたままであり、選択的に25.00~50.00wt%であり、さらに選択的に25.00~45.00wt%である。いくつかの実施形態において、前記強化結晶化ガラスにおいて、結晶含有量は20.00wt%、25.00wt%、28.00wt%、30.00wt%、33.00wt%、35.00wt%、38.00wt%、40.00wt%、43.00wt%、45.00wt%、48.00wt%、50.00wt%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施案において、厚さが0.7mmである場合、波長550nmの光に対して、化学強化用結晶化ガラスの透過率は85.00%以上であり、選択的に89.00%以上である。なお、本発明において、化学強化処理後、結晶化ガラスの透過率は基本的に変化しない。そのため、前記強化結晶化ガラスは可視光範囲で透明であり、依然として化学強化用結晶化ガラスと基本的に同じ透過率を有する。
【0079】
いくつかの実施形態において、厚さが0.7mmである場合、波長550nmの光に対して、化学強化用結晶化ガラスの透過率は85.00%~89.00%、85.00%~96.00%、85.00%~90.00%、88.00%~95.00%、88.00%~96.00%、88.00%~99.00%、86.00%、87.00%、88.00%、89.00%、90.00%、91.00%、92.00%、93.00%、94.00%、95.00%、96.00%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0080】
本発明のいくつかの実施案において、電動鉛筆硬度計によって、45°の角度でモース硬度7レベルの宝石鉱物硬度計を固定し、750gの荷重で、前記強化結晶化ガラスの表面をスクラッチし、スクラッチされた結晶化ガラスを400倍率の顕微鏡で観察した結果、前記強化結晶化ガラスの表面に傷がない。
【0081】
なお、化学強化イオン交換プロセスを行った後、結晶化ガラスの表面における組成は、形成したばかりの結晶化ガラス(即ち、イオン交換を行っていない化学強化用結晶化ガラス)の組成と異なる可能性がある。しかし、実施形態において、ガラス製品の深さの中心または深さの中心に近い箇所における結晶化ガラスの組成は、依然として、形成したばかりの結晶化ガラスの組成を有する。即ち、本発明において、前記強化結晶化ガラスの引張応力層の組成は、依然として、化学強化用結晶化ガラスの組成を有する。
【0082】
本発明のいくつかの実施案において、酸化物の質量百分率で、前記強化結晶化ガラスの引張応力層または化学強化用結晶化ガラスは、30.00%≦SiO2<35.00%、Al2O3:30.00%~40.00%、ZnO:10.00%~12.00%、MgO:2.00%~4.00%、ZrO2:5.00%~7.00%、Na2O:2.00%~9.00%、Li2O:0~2.00%、B2O3:0~8.00%との成分を含み、同時に、前記強化結晶化ガラスの引張応力層または化学強化用結晶化ガラスの成分は、
(1)X=((Na2O+B2O3)/ZrO2)/Al2O3、X≧2.00;
(2)Y=ln[(Na2O+B2O3)/ZrO2]、Y≧0;
(3)Z=(SiO2+Al2O3-MgO-ZnO)/(Li2O+Na2O+B2O3)、4.00≦Z≦10.00;
式(1)~(3)において、酸化物は前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たす。
【0083】
選択的に、前記強化結晶化ガラスの引張応力層または化学強化用結晶化ガラスの成分は、さらに、
(4)W=(0.8×(Al2O3-SiO2)+1.5×(ZnO-MgO))/ZrO2、0≦W≦3.00;
式(4)において、酸化物は前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たす。
【0084】
本発明のいくつかの実施例において、前記強化結晶化ガラスの引張応力層または化学強化用結晶化ガラスにおいて、SiO2の質量百分率が32.00%~34.95%であり、および/または、Al2O3の質量百分率が32.00%~38.00%であり、および/または、ZnOが10.00%~11.48%であり、および/または、MgOが2.50%~3.50%であり、および/または、ZrO2が5.40%~6.50%であり、および/または、Na2Oが2.50%~8.50%であり、および/または、B2O3が2.50~8.00%である。
【0085】
本発明のいくつかの実施例において、前記強化結晶化ガラスの引張応力層または化学強化用結晶化ガラスは、さらに、0~3.00wt%のBaOおよび/または0~2.00wt%のY2O3を含む。
【0086】
本発明のいくつかの実施例において、前記強化結晶化ガラスまたは化学強化用結晶化ガラスには、TiO2およびP2O5が基本的に含まれていない。
【0087】
本発明は、化学強化用結晶化ガラスに対して、配合の最適化を行い、配合系における各酸化物および各酸化物の含有量の関係を調節する。本発明は、化学強化用結晶化ガラスの各酸化物成分を検討した結果、各酸化物成分の間には一定の相関関係があり、この相関関係は化学強化用結晶化ガラスの構造と性能に影響を与え、本発明に必要な結晶化ガラスの耐スクラッチ傷性にも関係し、結晶化ガラスの他の性能にも関係することを見出した。
【0088】
本発明者が検討したところ、酸化アルミニウムは極めて高い解離エネルギーG=134KJ・cm-3を有するため、スピネル結晶化ガラス配合系におけるAl2O3の含有量を増やすことで、結晶相のアルミナ飽和度を増加できる一方、残留ガラス相の解離エネルギーを向上させ、残留ガラス相の固有強度を向上させるのに有利であり、そして、ガラスの原子堆積密度はアルミニウムの配位数が増大するとともに増大し、Al2O3の含有量を増やすことは結晶化ガラス系の緻密性を向上させるのに有利であることを見出した。しかしながら、酸化ケイ素の代わりに酸化アルミニウムを用いると、ガラスの溶融、成形がより困難になり、例えばアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ホウ素などのフラックス作用を有する成分を添加する必要がある。アルカリ金属酸化物は、アルカリ金属イオンを提供して、化学強化による結晶化ガラスの強靭化を実現するとともに、遊離酸素を提供して、ガラスの網目構造に影響を与えることができる。酸化ホウ素のフラックス効果が良いが、酸化ホウ素の配位構造はアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属によって提供された遊離酸素の影響を受ける。酸化ホウ素の含有量が多すぎると、ガラス相におけるホウ素‐酸素四面体およびホウ素‐酸素三角形の割合が低下し、ガラス相の一部が元の3次元空間のかご状構造から2次元空間の層状構造に変化し、ガラスの網目構造を弱める。同時に、酸化ホウ素の含有量が多すぎると、ガラスの光学特性に悪影響を与える。酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムは目的の主結晶相((Zn,Mg)Al2O4)の組成成分であり、ZrO2は核生成剤である。これらの酸化物の含有量の関係は、化学強化用結晶化ガラスにおける主結晶相の含有量を決定するだけでなく、化学強化用結晶化ガラスにおける残留ガラス相の構造と固有強度も決定する。
【0089】
これを基にして、本発明は、各酸化物の用量範囲に基づいて、結晶化ガラス配合系を調整することによって、基材ガラスの溶融の難度と、基材ガラスを用いて目的の化学強化用結晶化ガラスを製造する際の熱処理温度を低減できることを意図せずに見出した。本発明が提供するガラス配合は、通常の連続溶融、圧延等方法によって量産して基材ガラスを得ることで、ガラスの成形性を保証することができる。そして、本発明にかかるガラス配合に対応する基材ガラスは、熱処理温度が800℃以下である場合、亜鉛マグネシウムスピネル固溶体を主結晶相とし、良い光学特性を有する透明な化学強化用結晶化ガラスを得ることができる。従来技術に比べて、本発明が提供する配合系は、明らかに熱処理温度を低減することができ、さらにスピネル結晶化ガラスの量産の難度を低減し、スピネル結晶化ガラスの量産性を向上させることができる。一方、特定含有量の各酸化物成分の相乗効果によって、所望の含有量を有する目的の主結晶相(Zn,Mg)Al2O4が得られるとともに、化学強化用結晶化ガラスにおける残留ガラス相の固有強度が向上する。高いヤング率およびせん断弾性率を有する主結晶相(Zn,Mg)Al2O4と、高い固有強度を有する残留ガラス相とを組み合わせることで、最終的に、得られた化学強化用結晶化ガラスは、高い固有強度を有し、従来のスピネル系の結晶化ガラスよりも優れた耐スクラッチ傷性を有する。本発明にかかる化学強化用結晶化ガラスを強化して得られた強化結晶化ガラスによる耐スクラッチ傷効果は、サファイアガラスの耐スクラッチ傷効果に匹敵でき、ハイエンド電子製品のカバーガラスの要求に応えることができる。
【0090】
SiO2は、ガラス網目形成酸化物であり、ガラス網目構造を構成するために不可欠の成分である。SiO2の含有量を適切に高めると、ガラスの安定性および機械的強度を増加できるが、過剰なSiO2は、基材ガラスの粘度が上昇し、ガラスの溶融の難度が高まることで、基材ガラスの成形性が低下する。本発明において、SiO2の質量百分率は30.00%~35.00%であり、ガラスの安定性、成形性および機械的強度性能をバランス良く向上するには有利である。いくつかの実施形態において、SiO2の含有量は、30.00%~31.00%、30.00%~32.00%、30.00%~33.00%、32.00%~34.95%、31.00%~34.95%、31.00%~34.00%、30.00%、30.50%、31.00%、31.50%、32.00%、32.50%、33.00%、33.50%、34.00%、34.50%、34.95%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0091】
Al2O3はガラス形成時の中間体酸化物であり、ガラスの化学的安定性を改善することができる。Al2O3は基材ガラスの結晶化後に亜鉛マグネシウムスピネル結晶相を形成する成分の1つであり、主結晶相(Zn,Mg)Al2O4の含有量に直接影響する。同時に、[AlO4]は体積が[SiO4]よりも大きいため、イオン交換ためのより大きな空間を提供し、化学強化の進行を促進することができる。そして、Al2O3は、極めて高い解離エネルギーにより、残留ガラス相の固有強度に大きな影響を与える。しかしながら、過剰なAl2O3は、基材ガラスの粘度が上昇することで、基材ガラスの成形性が低下する。本発明において、Al2O3の質量百分率は30.00~40.00%である。いくつかの実施形態において、Al2O3の含有量は30.00%~31.00%、30.00%~32.00%、30.00%~33.00%、32.00%~35.00%、31.00%~35.00%、31.00%~34.00%、33.00%~36.00%、32.00%~38.00%、30.00%~35.00%、34.00%~39.00%、35.00%~40.00%、36.00%~40.00%、30.00%、31.00%、32.00%、33.00%、34.00%、35.00%、37.00%、38.00%、39.00%、40.00%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0092】
ZnOは基材ガラスの結晶化後に亜鉛マグネシウムスピネル結晶相を形成するのに必要な亜鉛を提供する。ZnOは、ガラスの熱膨張係数を低減し、ガラスの化学的安定性、熱安定性および屈折率を高めることができる。本発明において、ZnOの質量百分率は10%~12%である。いくつかの実施形態において、ZnOの含有量は10.00%~11.00%、10.00%~11.40%、11.00%~12.00%、11.50%~12.00%、10.00%、10.50%、11.00%、11.48%、11.50%、12.00%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0093】
MgOは基材ガラスが結晶化して亜鉛マグネシウムスピネル結晶相を形成するのに必要なマグネシウムを提供する。MgOは、ガラスの硬化速度を遅くし、ガラスの成形性能を改善することができる。MgOは、さらに、結晶化傾向および結晶化速度を低減し、ガラスの高温粘度を高め、ガラスの化学的安定性および機械的強度を向上させることができる。本発明において、MgOの質量百分率は2%~4%である。いくつかの実施形態において、MgOの含有量は2.00%~3.00%、3.00%~4.00%、2.00%~2.50%、2.50%~3.00%、2.50%~4.00%、3.50%~4.00%、2.00%、2.50%、3.00%、3.50%、4.00%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0094】
ZrO2は、カチオン電荷が高く、電界強度が強いため、ガラス構造に大きな蓄積作用を齎し、基材ガラスにおいて核生成剤として機能する。同時に、ZrO2は、さらに、結晶化ガラスの強度と靱性を高め、酸およびアルカリに対する耐食性を改善することができる。そのほか、ZrO2はその体系の結晶化ガラスの第2結晶相である。しかし、ZrO2の溶融の難度が極めて大きいため、過剰なZrO2は、基材ガラスに均一に分散できず、例えば未溶融物や沈殿などの溶融欠陥が発生しやすい。本発明において、ZrO2の質量百分率は5%~7%である。いくつかの実施形態において、ZrO2の含有量は5.00%~6.00%、5.50%~6.00%、5.50%~7.00%、6.00%~7.00%、6.50%~7.00%、5.00%、5.40%、5.50%、6.00%、6.50%、7.00%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0095】
本発明にかかる強化結晶化ガラスの引張応力層または化学強化用結晶化ガラスは、1種または複数種のアルカリ金属酸化物が含まれており、例えばLi2O、Na2Oが含まれており、この両者は、イオン交換プロセスによる結晶化ガラスの化学強化を促進し、結晶化ガラスの機械的強度特性を高めることができる。同時に、アルカリ金属酸化物は、ガラス形成時の網目修飾酸化物として、遊離酸素を提供し、ガラスの網目構造を破壊し、さらにガラスの固有強度に影響を与える。しかし、ガラスの網目構造を破壊することは、ガラスの高温粘度を低減し、ガラス液の溶融と清澄を促進するのに有利である。
【0096】
様様な影響のバランスをとり、結晶化ガラスが所望の性能を満たすことを保証するように、本発明において、Na2Oの質量百分率は2.00%~9.00%である。Na+は化学強化プロセスに必要なイオン交換成分であり、溶融ソルトバスにおけるイオン半径が大きいK+と、結晶化ガラスにおけるイオン半径が小さいNa+とが交換反応を行うことにより、結晶化ガラスの表面に表面圧縮応力が発生し、結晶化ガラスの単体強度および耐スクラッチ傷性のレベルをさらに向上させることができる。いくつかの実施形態において、Na2Oの含有量は2.00%~3.00%、2.00%~5.00%、2.00%~8.00%、2.50%~8.50%、3.00%~6.00%、4.00%~9.00%、2.00%~7.00%、5.00%~8.00%、6.00%~9.00%、2.00%、2.50%、3.00%、4.00%、5.00%、6.00%、7.00%、8.00%、8.50%、9.00%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0097】
本発明において、Li2Oの質量百分率は0.00%~2.00%である。溶融ソルトバスにおけるイオン半径が大きいNa+と、結晶化ガラスにおけるイオン半径が小さいLi+とが交換反応を行うことにより、結晶化ガラスにおいて深層応力を形成し、結晶化ガラスの単体強度と耐スクラッチ傷性のレベルを向上させるとともに、結晶化ガラスの耐衝撃性を向上させることができる。いくつかの実施形態において、Li2Oの含有量は0.00~1.00%、0.00~1.50%、1.00%~1.50%、1.00%~2.00%、1.50%~2.00%、0.00%、1.00%、1.50%、2.00%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0098】
B2O3は、ガラス形成プロセスにおける融剤として機能する。アルカリ金属またはアルカリ土類金属が提供する遊離酸素は、酸化ホウ素の配位に影響を与え、酸化ホウ素がホウ素‐酸素三角形から架橋酸素からなるホウ素‐酸素四面体に変換され、ガラス相の一部が元の2次元空間の層状構造から3次元空間のかご状構造に変化し、ガラス網目構造が補強される。B2O3はガラスの高温粘度を低減し、ガラスの清澄を加速させ、ガラスの結晶化能力を低減し、高含有量の酸化アルミニウムによる基材ガラスの溶融困難という問題を効果的に緩和することができるが、過剰なB2O3は、ガラスの化学的安定性と機械的強度が低下し、ガラスの光学特性に影響を与える。本発明において、B2O3の質量百分率は0~8%である。いくつかの実施形態において、B2O3の含有量は1.00%~6.00%、2.00%~3.00%、1.00%~4.00%、1.00%~5.00%、2.00%~5.00%、2.50%~8.00%、3.00%~6.00%、4.00%~9.00%、2.00%~7.00%、5.00%~8.00%、6.00%~9.00%、0.00%、1.00%、2.00%、2.50%、3.00%、4.00%、5.00%、6.00%、7.00%、8.00%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、X=((Na2O+B2O3)/ZrO2)/Al2O3の値は2.00~3.00、2.00~4.00、2.00~5.00、2.00~6.00、2.00~7.00、2.00~8.00、2.00~9.00、2.00~10.00、3.00~4.00、3.00~6.00、3.00~9.00、5.00~9.00、6.00~9.00、8.00~9.00、2.00、3.00、4.00、5.00、6.00、7.00、8.00、9.00、10.00など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、Y=ln[(Na2O+B2O3)/ZrO2]の値は0.00~0.10、0.00~1.00、0.00~0.30、0.00~0.60、0.00~0.90、0.00~0.40、0.10~0.90、0.30~0.70、0.30~0.90、0.20~0.50、0.40~0.80、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1.00、1.10など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、Z=(SiO2+Al2O3-MgO-ZnO)/(Li2O+Na2O+B2O3)の値は4.00~10.00、4.00~5.00、4.00~6.00、4.00~7.00、4.00~8.00、4.00~9.00、5.00~6.00、5.00~7.00、5.00~8.00、5.00~9.00、5.00~10.00、6.00~7.00、6.00~8.00、6.00~9.00、6.00~10.00、7.00~8.00、7.00~9.00、7.00~10.00、8.00~9.00、8.00~10.00、9.00~10.00、4.00、5.00、6.00、7.00、8.00、9.00、10.00など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0102】
本発明のいくつかの実施案において、強化結晶化ガラスの引張応力層または化学強化用結晶化ガラスにおける各酸化物の含有量は、さらに、
(4)W=(0.8×(Al2O3-SiO2)+1.5×(ZnO-MgO))/ZrO2、0≦W≦3.00;
との要件を満たす。
式(4)において、酸化物は前記酸化物成分の質量百分率を表す。各酸化物の範囲および(1)~(3)の式の要求を満たす上で、Al2O3、SiO2、ZnO、MgO、ZrO2の含有量の関係を式(4)を満たすように調整することにより、透明な結晶化ガラスが優れた光学特性を有することを確保することができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、W=(0.8×(Al2O3-SiO2)+1.5×(ZnO-MgO))/ZrO2の値は0.00~3.00、0.00~1.00、0.00~2.00、1.00~2.00、1.00~3.00、2.00~3.00、0.00~0.50、0.00~1.50、0.00~2.50、1.00~1.50、1.00~2.50、2.00~2.50、2.5.00~3.00、0.00、0.50、1.00、1.50、2.00、2.50、3.00など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
本発明のいくつかの実施案において、前記強化結晶化ガラスは化学強化用結晶化ガラスに対して化学強化処理を行って得られたものである。
【0104】
本発明のいくつかの実施案において、前記化学強化用結晶化ガラスにおいて、酸化物のモル百分率で、Al2O3のモル百分率はMgOとZnOのモル百分率の合計よりも大きく、当該化学強化用結晶化ガラスの理論結晶化度は少なくとも30.00wt%以上であり、選択的に30.00wt%~50.00wt%であり、かつ、当該化学強化用結晶化ガラスが理論結晶化度を満たす場合、化学強化用結晶化ガラスにおける残留ガラス相の単位体積あたりの解離エネルギーUは71.00KJ・cm-3以上であり、選択的に71.00KJ・cm-3~134.00KJ・cm-3である。
【0105】
いくつかの実施形態において、化学強化用結晶化ガラスの理論結晶化度は30.00wt%~40.00wt%、30.00wt%~60.00wt%、30.00wt%~70.00wt%、35.00wt%~45.00wt%、32.00wt%~48.00wt%、41.00wt%~49.00wt%、30.00wt%、35.00wt%、40.00wt%、45.00wt%、50.00wt%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0106】
なお、理論結晶化度とは、ある配合の基材ガラスが特定の結晶相を形成する際の理論上最高の結晶化の程度を指す。理論結晶化度は、理論上最高の結晶化度であり、主要の結晶相の成分に対する予備的な基本制御を行うことで、目的の結晶相を必要な含有量で有する結晶化ガラスを確実に得るための重要なパラメータである。
【0107】
異なる体系の結晶化ガラスに対して、その結晶相および結晶化度が異なるため、その理論結晶化度の計算方法も異なる。異なる結晶化ガラス系の理論結晶化度は、その成分における例えばZrO2などの核生成剤と特定の結晶相を構成する酸化物との2つの部分によって決定される。本発明において、化学強化用結晶化ガラスの主結晶相は亜鉛マグネシウムスピネル固溶体(Zn,Mg)Al2O4であり、副結晶相は正方晶ZrO2、Zn2SiO4、Mg2SiO4から選ばれる1種または複数種を含む。そのため、本発明にかかる結晶化ガラスの理論結晶化度は、成分における例えばZrO2などの核生成剤と結晶相を構成する酸化物Al2O3、MgO、ZnOとの2つの部分によって決定される。
【0108】
本発明にかかる化学強化用結晶化ガラスの主結晶相は亜鉛マグネシウムスピネル固溶体(Zn,Mg)Al2O4であり、結晶相の組成を酸化物のモル百分率で表すと、MgAl2O4においてMgO/Al2O3=1であり、ZnAl2O4においてZnO/Al2O3=1である。高い結晶化度と良い強化効果を得るために、ZnAl2O4および/またはMgAl2O4を完全に形成した後、Al2O3の一部が残留ガラス相に残存することが要求される。[AlO4]四面体は[SiO4]四面体よりも体積が大きいため、残留ガラス相において適量のAl2O3が残り、化学強化処理プロセスにおけるイオン交換ためのより大きい空間を提供し、イオン交換の進行を促進することができる。その上で、本発明にかかる化学強化用結晶化ガラスにおいて、Al2O3のモル百分率はZnOとMgOとのモル百分率の合計よりも大きい。
【0109】
本発明のいくつかの実施案において、化学強化用結晶化ガラスが理論結晶化度を満たす場合、化学強化用結晶化ガラスにおける残留ガラス相の単位体積あたりの解離エネルギーUは71.00kJ・cm-3以上であり、選択的に71.00KJ・cm-3~134.00kJ・cm-3である。いくつかの実施形態において、化学強化用結晶化ガラスにおける残留ガラス相の単位体積あたりの解離エネルギーUは71.00KJ・cm-3~75.00KJ・cm-3、71.00KJ・cm-3~80.00KJ・cm-3、71.00KJ・cm-3~90.00KJ・cm-3、71.00KJ・cm-3~100.00KJ・cm-3、71.00KJ・cm-3~110.00KJ・cm-3、71.00KJ・cm-3~120.00KJ・cm-3、71.00KJ・cm-3~130.00KJ・cm-3、80.00KJ・cm-3~90.00KJ・cm-3、80.00KJ・cm-3~100.00KJ・cm-3、80.00KJ・cm-3~110.00KJ・cm-3、80.00KJ・cm-3~120.00KJ・cm-3、80.00KJ・cm-3~130.00KJ・cm-3、90.00KJ・cm-3~100.00KJ・cm-3、90.00KJ・cm-3~110.00KJ・cm-3、90.00KJ・cm-3~120.00KJ・cm-3、90.00KJ・cm-3~130.00KJ・cm-3、100.00KJ・cm-3~110.00KJ・cm-3、100.00KJ・cm-3~120.00KJ・cm-3、100.00KJ・cm-3~130.00KJ・cm-3、71.00KJ・cm-3、80.00KJ・cm-3、90.00KJ・cm-3、100.00KJ・cm-3、110.00KJ・cm-3、120.00KJ・cm-3、134.00KJ・cm-3など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0110】
本発明にかかるスピネル系の結晶化ガラスを例として、残留ガラス相の単位体積あたりの解離エネルギーUの計算について説明する。
【0111】
ガラスの配合では、Al2O3のモル百分率がaであり、ZnOのモル百分率がbであり、MgOのモル百分率がcであると仮定すると、a>b+cである。当該配合の基材ガラスから理論結晶化度を有する亜鉛マグネシウムスピネル結晶化ガラスを製造した後の、残留ガラス相の単位体積あたりの解離エネルギーUは、以下のように計算される。
【0112】
1、残留ガラス相におけるZnO、MgO、Al2O3のモル百分率を確定する。
【0113】
理論結晶化度であり、つまりZnOとMgOとの両方がスピネルの析出に関与した場合に達する結晶化度であるため、ZnOとMgOとが全て結晶相に存在しており、即ち、残留ガラス相においてZnOとMgOとの含有量が0である。a>b+cであるため、a-(b+c)のAl2O3は残留ガラス相に残っており、残留ガラス相における各酸化物の含有量によって、残留ガラス相におけるAl2O3が占めるモル百分率を換算する。
【0114】
2、残留ガラス相におけるAl2O3、ZnO、MgOを除く他の酸化物のモル百分率を確定する。
【0115】
(1)核生成剤は、一般に結晶より優先して析出する。例えば、核生成剤であるZrO2は、結晶化ガラスの核生成ステップでサイズが1nm未満の微小な結晶粒が析出され、その上に結晶が成長する。核生成剤であるTiO2は、結晶化ガラスの核生成ステップでチタン酸塩結晶核が形成され、その誘導下で結晶が成長し、それを被覆する。核生成剤は、一般的に結晶の中心にあるため、理論的に、核生成剤の全ては結晶相内に存在し、残留ガラス相における核生成剤の含有量が0である。
【0116】
(2)結晶相を構成する酸化物と核生成剤とを除いて、理論的に、基材ガラスにおける他の酸化物はいずれも残留ガラス相に存在する。残留ガラス相における各酸化物の含有量によって、残留ガラス相における他の酸化物のそれぞれが占めるモル百分率を換算する。
【0117】
3、残留ガラス相において、あるi酸化物が占めるモル百分率をniと定義し、酸化物の解離エネルギー係数をUiと定義すると、MakishimaおよびMackenzieにより、Uiの値を取得することができる。下記の表1に示すとおりである。
【0118】
残留ガラス相の単位体積あたりの解離エネルギーをUと定義すると、
(式1)
U=ΣUi×ni
Uiは解離エネルギー係数であり、単位がkJ・cm-3であり、niは残留ガラス相におけるあるi酸化物が占めるモル百分率である。
【0119】
【0120】
本発明のいくつかの実施案において、上記強化結晶化ガラスの引張応力層または化学強化用結晶化ガラスは、さらに、0~3.00wt%のBaOおよび/または0~2.00wt%のY2O3が含まれる。
【0121】
Y2O3は、高電界強度のカチオンとして、Al2O3と協働して、ガラスの原子堆積密度を高めるのに有利であり、結晶化ガラスの硬度およびヤング率を向上させることにも有利である。本発明において、Y2O3の質量百分率は0.00~2.00%である。いくつかの実施形態において、Y2O3の含有量は0.00~1.00%、0.00~1.50%、1.00%~1.50%、1.00%~2.00%、1.50%~2.00%、0.00、1.00%、1.50%、2.00%など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0122】
BaOは、良好なフラックス作用を有し、特にこの体系ではその効果が極めて顕著である。同時に、BaOは、ガラス相の屈折率が増加し、ガラスの光学特性を改善することができる。本発明において、BaOの質量百分率は0~3.00%である。いくつかの実施形態において、BaOの含有量は0.00~3.00、0.00~1.00、0.00~2.00、1.00~2.00、1.00~3.00、2.00~3.00、0.00~0.50、0.00~1.50、0.00~2.50、1.00~1.50、1.00~2.50、2.00~2.50、2.5.00~3.00、0.00、0.50、1.00、1.50、2.00、2.50、3.00など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。なお、実施案において、任意の上記範囲は、任意の他の範囲と組み合わせることができる。
【0123】
本発明のいくつかの実施案において、上記強化結晶化ガラスまたは化学強化用結晶化ガラスは、TiO2および/またはP2O5が基本的に含まれていない。ここで、「基本的に含まれていない」とは、TiO2および/またはP2O5をガラスに積極的に添加または配合しないが、僅かの量で汚染物として存在する可能性があることを指す。本発明者は、本発明の配合系にTiO2を添加すると、望ましくない色が生じることを見出した。所望の透明的な結晶化ガラスを得るために、選択的に、TiO2が含まれていない。
【0124】
本発明において、化学強化用結晶化ガラスは、以下の方法によって製造して得られるものである。
【0125】
ステップ1:基材ガラスを取得し、前記基材ガラスにおいて、酸化物の質量百分率で、30.00%≦SiO2<35.00%、Al2O3:30.00%~40.00%、ZnO:10.00%~12.00%、MgO:2.00%~4.00%、ZrO2:5.00%~7.00%、Na2O:2.00%~9.00%、Li2O:0~2.00%、およびB2O3:0~8.00%との成分を含み、ここで、前記基材ガラスにおける各酸化物の含有量は、さらに、
(1)X=((Na2O+B2O3)/ZrO2)/Al2O3、X≧2.00;
(2)Y=ln[(Na2O+B2O3)/ZrO2]、Y≧0;
(3)Z=(SiO2+Al2O3-MgO-ZnO)/(Li2O+Na2O+B2O3)、4.00≦Z≦10.00;
式(1)~(3)において、酸化物は前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たす。
【0126】
ステップ2:前記基材ガラスに対して熱処理を行って、前記化学強化用結晶化ガラスを取得し、前記熱処理は核生成処理および/または結晶化処理を含む。なお、基材ガラスに対して熱処理を行う際、1段階の熱処理を行ってよく、2段階または多段階の熱処理を行ってもよい。1段階の熱処理を行うと、単独に核生成処理を行わず、核生成と目的の結晶成長を1段階の昇温プロセスで直接に行うことを意味し、結晶化処理を直接に行うと理解される。2段階の熱処理を行うと、2段階の昇温プロセスを行い、まず核生成処理、即ち核形成処理を行い、その後、目的の結晶成長処理、即ち結晶化処理を行うことを意味する。
【0127】
なお、前記基材ガラスは、酸化物の質量百分率で、前記化学強化用結晶化ガラスの組成を有する。
【0128】
選択的に、ステップ2において、核生成処理を行う時、核生成温度は650℃~850℃であり、選択的に650℃~750℃であり、核生成処理時間は0~72hであり、選択的に0~24hである。
【0129】
選択的に、ステップ2において、結晶化処理を行う時、結晶化温度は700℃~1000℃であり、選択的に700℃~850℃であり、結晶化処理時間は0.1~72hであり、選択的に0.1~24hである。
【0130】
選択的に、ステップ2において、熱処理を行う時、昇温速度は5~30℃/minに制御され、選択的に5~15℃/minに制御される。
【0131】
選択的に、前記基材ガラスにおける各酸化物の含有量は、さらに、
(4)W=(0.8×(Al2O3-SiO2)+1.5×(ZnO-MgO))/ZrO2,0≦W≦3.00;
式(4)において、酸化物は前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たす。
【0132】
選択的に、前記基材ガラスは、さらに、0~3.00wt%のBaOおよび/または0~2.00wt%のY2O3を含む。
【0133】
選択的に、前記基材ガラスには、TiO2および/またはP2O5が基本的に含まれていない。
【0134】
本発明において、基材ガラスの成形方法は、フロート法、オーバーフロー、圧延、又は鋳造プロセスを含むが、これらに限定されない。例示的に、配合に従って各成分を均一に混合し、溶融成形した後、冷却、アニール処理を行うことにより、基材ガラスを取得する。例えば、1480℃~1650℃の溶融温度で基材ガラス原料に対して溶融処理を行い、溶融されたガラス液に対して成形処理を行い、成形後に、冷却、アニールすることによって、基材ガラスを取得する。選択的に、アニール温度は500℃~650℃であり、アニールする時に12~48h保温する。
【0135】
本発明において、基材ガラスを製造する時に、基材ガラスの製造原料に清澄剤を添加してよく、前記清澄剤はNaCl、Na2SO4、SnO2、As2O3、Sb2O3、NaNO3、KNO3、CeO2および(NH4)2SO4の中の1種または2種以上を含み、選択的にNaCl、SnO2、NaNO3およびCeO2の中の1種または2種以上を含むが、これらに限定されない。基材ガラスの原料の総質量を基準として、清澄剤の添加量は0.01wt%~2.00wt%であり、選択的に0.01wt%~1.50wt%である。
【0136】
本発明のいくつかの実施案において、化学強化用結晶化ガラスを、カリウム塩を含有する380℃~550℃のソルトバスに投入して化学強化処理を行い、化学強化処理の時間が1h~96hであり、選択的に1h~48hであり、前記強化結晶化ガラスを得ることができ、前記カリウム塩は、硝酸カリウム、硫酸カリウム、および炭酸カリウムから選ばれる1種または複数種が含まれ、選択的に硝酸カリウムである。
【0137】
いくつかの実施形態において、カリウム塩を含有するソルトバスは100wt%のカリウム塩であり、選択的に100wt%の硝酸カリウムであり、カリウム塩とナトリウム塩との混合塩であってもよく、選択的に硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとの混合塩である。ソルトバスは、0~1wt%のリチウム塩がさらに含まれてよく、選択的に、0~1wt%の硝酸リチウムが含まれる。化学強化処理を行う時、1段階の化学強化を行ってもよく、2段階または多段階化学強化を行ってもよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、化学強化処理の時間は1.00h~5.00h、1.00h~6.00h、3.00h~10.00h、5.00h~10.00h、7.00h~12.00h、9.00h~24.00h、12.00h~36.00h、24.00h~44.00h、8.00h~24.00h、9.00h~44.00h、25.00h~36.00h、22.00h~37.00h、48.00h~96.00h、6.00h、8.00h、12.00h、14.00h、24.00h、32.00h、36.00h、22.00h、18.00h、28.00h、42.00h、48.00h、60h、65h、70h、80h、90h、96hなど、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。
【0139】
いくつかの実施形態において、化学強化処理に用いられるソルトバスの温度は380℃~400℃、400℃~450℃、450℃~500℃、500℃~550℃、400℃~420℃、450℃、480℃、500℃、510℃、530℃、540℃、550℃など、および上記の値の間のすべての範囲と部分範囲であってよい。
【0140】
三、本発明は、上記強化結晶化ガラスまたは上記化学強化用結晶化ガラスによって製造されたガラス器具をさらに提供する。
【0141】
本発明にかかるガラス器具は規則的なものであってもよく、不規則的なものであってもよい。当業者であれば、必要に応じて製造することができる。
【0142】
四、本発明はさらに、上記強化結晶化ガラスまたは上記化学強化用結晶化ガラスを含む電子デバイスを提供する。
【0143】
本発明にかかる電子デバイスは、携帯電話、ディスプレイ(例えば、車載用ディスプレイ、航空機搭載用ディスプレイ等)、タブレット、デジタル腕時計、スマートウェアラブル端末(例えば、スマートバンド、スマートウォッチ、スマートグラス)、テレビの中の少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
本発明の電子デバイスにおいて、前記カバー部件の表面に層を設けてもよく、設けなくてもよい。
【0144】
例示的に、本発明が提供する電子デバイスは、
前面と、裏面と、側面とを含むケースと、
少なくとも一部が前記ケース内に配置され、少なくともコントローラと、メモリと、ディスプレイと含む電子部品であって、前記ディスプレイは、前記ケースの前面に配置され、または前記ケースの前面に隣接される電子部品と、
ディスプレイの上方に配置される被覆基材と、を備え、
ここで、ケースまたは被覆基材の中の少なくとも1つの少なくとも一部は、上記したいずれかの化学強化用結晶化ガラスまたは強化結晶化ガラスを含む。
【0145】
本発明にかかる化学強化用結晶化ガラスおよび強化結晶化ガラスは、優れた特性を有し、他の製品だけでなく、一定の透明度、耐スクラッチ傷性または他の組み合わせを必要とする任意の製品に含まれる/適用されることもできる。
【0146】
五、具体的な実施例
【0147】
実施例S1:
【0148】
(1)基材ガラスの製造:
配合に従って、総質量1000gの原料を取って混合し、30分間均一に混合した後、清澄剤として5gのNaClを添加した。得られた混合物を白金坩堝に入れて、1650℃の温度で5時間溶融した後、型に流し込んで成形して冷却し、900℃まで冷却して、620℃のアニール炉に入れて12時間アニールを行った後、室温まで炉冷することで、基材ガラスが得られる。
【0149】
(2)結晶化ガラス(即ち、化学強化用結晶化ガラス)の製造:
基材ガラスに対して熱処理を行い、10℃/minの昇温速度で、690℃の核生成温度まで昇温し、核生成処理時間が240minである。その後、10℃/minの昇温速度で、760℃の結晶化温度まで昇温し、結晶化処理時間が240minである。これにより、結晶化ガラスブロックが得られる。ここで、核生成処理時間とは、設定された昇温速度に従って、結晶化炉を設定された核生成温度まで昇温した後、保温する時間を指す。結晶化処理時間とは、設定された昇温速度に従って、結晶化炉を設定された結晶化温度まで昇温した後、保温する時間を指す。
【0150】
(3)冷間加工処理:上記結晶化ガラスブロックに対して冷間加工処理を行い、前記冷間加工処理は、整形処理とスライス処理とを含み、例えば長さ50mm×幅50mm×厚さ0.7mmのような所望のサイズの結晶化ガラス片を得る。
【0151】
スライス処理の後、CNC処理、研削処理、研磨処理を順次に行ってよく、または、スライス処理の後、CNC処理、研削処理、研磨処理のうちの少なくとも1つの方法を選択して、ガラス片の修飾処理を行ってよい。
【0152】
実施例S1において、結晶化ガラスの物性パラメータの測定および化学強化を行うための結晶化ガラスサンプル(即ち、化学強化用結晶化ガラス片)は、長さ50mm×幅50mm×厚さ0.7mmの研磨片である。
【0153】
(4)強化結晶化ガラスの製造:上記化学強化用結晶化ガラス片を480℃の100wt%KNO3に入れて、1段階の化学強化イオン交換を行い、強化時間が6h(即ち、360min)であり、これにより強化結晶化ガラスが得られる。
【0154】
実施例S2~S10:
表2と表4のそれぞれに示したように、成分含有量、関連パラメータを調整することを除いて、その他は実施例S1と同じである。
【0155】
比較例D1~D7:
表3と表5のそれぞれに示したように、成分含有量、関連パラメータを調整することを除いて、その他は実施例S1と同じである。
【0156】
表2~7は、実施例および比較例の配合表と、実施例および比較例の化学強化用結晶化ガラスの特性パラメータおよび強化結晶化ガラスの特性パラメータと、耐スクラッチ傷性実験案と、実施例および比較例の化学強化用結晶化ガラスおよび強化結晶化ガラスのスクラッチ傷実験結果とをそれぞれ示したものである。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
以上の結果から分かるように、本発明は、実施例S1~S10における各酸化物の含有量を厳密に制御し、X、YおよびZで重要な酸化物の含有量を調整することで、得られた化学強化用結晶化ガラスに高い残留ガラス相解離エネルギーを持たせ、そして当該化学強化用結晶化ガラスにおいて本発明の望ましいスピネル結晶が形成されるとともに、優れた光学特性が維持される。高いヤング率およびせん断弾性率を有する主結晶相(Zn,Mg)Al2O4と、高い固有強度を有する残留ガラス相を組み合わせることで、最終的に得られた化学強化用結晶化ガラスに高い固有強度を持たせて、従来のスピネル系の結晶化ガラスよりも優れた耐スクラッチ傷性を有する。そして、当該化学強化用結晶化ガラスを強化して特定の応力特徴を満たすことで、強化結晶化ガラスに優れた表面応力特性と深層応力特性を付与し、最終的に本発明にかかる強化結晶化ガラスの機械特性を大幅に向上させ、強化結晶化ガラスがサファイアガラスの耐スクラッチ傷性効果に匹敵する耐スクラッチ傷性効果を達成することができる。
【0164】
本発明の実施例S1の化学強化用結晶化ガラスは、250g、500gの荷重、宝石鉱物硬度計7号(モース硬度7レベル)および750gの荷重、宝石鉱物硬度計6号(モース硬度6レベル)によるスクラッチ傷検証に合格でき、スクラッチされた結晶化ガラスの表面にいずれもスクラッチ傷が無い。スクラッチ効果を
図4に示す。
【0165】
本発明の実施例S2とS8の化学強化用結晶化ガラスは、750gの荷重、宝石鉱物硬度計7号(モース硬度7レベル)によるスクラッチ傷検証に合格でき、スクラッチされた結晶化ガラスの表面にいずれもスクラッチ傷がない。スクラッチ効果を
図5に示す。
【0166】
表7および
図4、
図5から分かるように、本発明にかかる化学強化用結晶化ガラスは、いずれも良い耐スクラッチ傷性効果を有する。
【0167】
本発明の実施例S1の強化結晶化ガラスは、750gの荷重、宝石鉱物硬度計7号(モース硬度7レベル)によるスクラッチ傷検証に合格でき、スクラッチされた結晶化ガラスの表面にスクラッチ傷がない。スクラッチ効果を
図6に示す。
【0168】
本発明の実施例S2、S8の強化結晶化ガラスは、750gの荷重、宝石鉱物硬度計8号(モース硬度8レベル)によるスクラッチ傷検証において、スクラッチされた結晶化ガラス表面のスクラッチ傷効果が、同じ条件で測定したサファイアガラスのスクラッチ傷効果と近似している。スクラッチ効果を
図7に示す。これは、本発明の実施例S2、S8の強化結晶化ガラスの耐スクラッチ傷性効果がサファイアガラスに匹敵できることを示す。
【0169】
表7および
図6、
図7から分かるように、本発明にかかる化学強化用結晶化ガラスを強化処理して得られた強化結晶化ガラスを用いることで、耐スクラッチ傷性効果は、化学強化用結晶化ガラスよりもさらに向上した。本発明にかかる強化結晶化ガラスによって達成できる耐スクラッチ傷性効果は、サファイアガラスの耐スクラッチ傷性効果に匹敵でき、ハイエンド電子製品のカバーガラスの需要を満たすことができる。
【0170】
比較例D1~D7は、本発明のガラス配合案の要求を十分に満たすことができず、強化後の応力特性も本発明の案の要求を満たさなく、最終的に得られた化学強化用結晶化ガラスおよび強化結晶化ガラスはいずれも本発明と異なり、かつ、耐スクラッチ傷性は明らかに本発明の実施例の案よりも劣った。
【0171】
比較例D1、D2の強化結晶化ガラスは、750gの荷重、宝石鉱物硬度計7号(モース硬度7レベル)によるスクラッチ傷検証に合格できず、スクラッチされた結晶化ガラスは、いずれも表面に明らかなスクラッチ傷があった。スクラッチ効果を
図8に示す。D1とD2の強化結晶化ガラスを比較すると、D1の強化結晶化ガラスの耐スクラッチ傷性はD2よりも優れている。
【0172】
比較例D5における残留ガラス相の単位体積あたりの解離エネルギーは比較的に高く、75.46kJ・cm-3であるが、当該案において、解離エネルギーの向上は、体系内に大量に含まれるLiに起因するためである。本発明は、試験を通じて、当該案が熱処理によって透明な化学強化用結晶化ガラスサンプルを得ることができないことを見出した。
【0173】
比較例D6は、現在のカバー市場において主流の結晶化ガラス製品である。比較例D6の化学強化用結晶化ガラスは、750gの荷重、宝石鉱物硬度計6号(モース硬度6レベル)によるスクラッチ傷検証に合格できず、スクラッチされた結晶化ガラスの表面に明らかなスクラッチ傷があり、スクラッチ傷が深くて幅広く、魚鱗斑の紋様またはスクラッチ傷の屑を伴う。スクラッチ効果を
図9示す。比較例D6の強化結晶化ガラスは、依然として750gの荷重、宝石鉱物硬度計6号(モース硬度6レベル)によるスクラッチ傷検証に合格できず、スクラッチされた結晶化ガラスの表面に明らかなスクラッチ傷があった。スクラッチ効果を
図10に示す。
【0174】
表7および
図8~
図10から分かるように、比較例D1~D7の化学強化用結晶化ガラスおよび強化結晶化ガラスの耐スクラッチ傷性は、本発明にかかる化学強化用結晶化ガラスおよび強化結晶化ガラスの耐スクラッチ傷性より明らかに劣っている。
【0175】
また、本発明のすべての実施例の案は、熱処理温度がいずれも比較例D1~D5よりも低いことにより、本発明の配合系で得られた基材ガラスは、熱処理温度が800℃以下の場合、主結晶相が亜鉛マグネシウムスピネル固溶体であり、良好な光学特性を有する透明な化学強化用結晶化ガラスを取得することができ、従来技術に比べると、本発明が提供する化学強化用結晶化ガラスの成分系は明らかに熱処理温度を低減でき、さらにスピネル結晶化ガラスの量産の難度を低減し、スピネル結晶化ガラスの量産性が向上する。即ち、本発明にかかる化学強化用結晶化ガラス配合系の量産性が高いことを示した。同時に、本発明にかかる配合系は、比較的に少ないリチウムを含むため、原料コストが市場主流のリチウムアルミノシリケート結晶化ガラスよりもはるかに低く、応用の将来性が良い。
【0176】
最後に、上記した実施例は、本発明の技術案を限定するものではなく、本発明の技術案を説明するためにのみ使用され、当業者は、本発明の趣旨および範囲を逸脱しないように、本発明の技術案を修正又は均等に置換するものは、本発明の特許請求の範囲に含まれることを理解できる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮応力層と引張応力層とを含み、高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラスであって、
前記強化結晶化ガラスの主結晶相は、(Zn,Mg)Al
2O
4であり、前記強化結晶化ガラスにNa
2Oが含まれており、前記強化結晶化ガラスの表面K
2O濃度は7.00wt%以上であり、選択的に7.00~15.00wt%であり、
前記強化結晶化ガラスにおいて、ガラスの厚さ方向に沿って、強化結晶化ガラスのいずれかの表面から当該表面の近くにあり且つ強化結晶化ガラスの中心と同様なカリウム(K)濃度を有する位置までの深さは、0.07t以上であり、選択的に0.07t~0.10tであり、tは強化結晶化ガラスの厚さである、
ことを特徴とする高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項2】
厚さが0.7mmである場合、前記強化結晶化ガラスの単一ロッド静圧強度は、450N以上であり、選択的に450~650Nである、
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項3】
前記強化結晶化ガラスのヤング率は、110GPa以上であり、選択的に110~140GPaである、
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項4】
前記強化結晶化ガラスのビッカース硬度は、750kgf/mm
2以上であり、選択的に750~900kgf/mm
2であり、さらに選択的に800~900kgf/mm
2である、
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項5】
前記強化結晶化ガラスにおいて、平均結晶粒径は、15.00nm以下であり、選択的に1.00~10.00nmであり、さらに選択的に4.50~8.00nmであること、および/または、
前記強化結晶化ガラスにおいて、結晶含有量は、20.00~50.00wt%であり、選択的に25.00~50.00wt%であり、さらに選択的に25.00~45.00wt%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項6】
前記強化結晶化ガラスの副結晶相は、正方晶ZrO
2、Zn
2SiO
4、Mg
2SiO
4から選ばれる1種または複数種を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項7】
前記強化結晶化ガラスは、可視光範囲内で透明である、
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項8】
自動鉛筆硬度計によって、45°の角度でモース硬度7レベルの宝石鉱物硬度計を固定し、750gの荷重で、前記強化結晶化ガラスの表面をスクラッチし、スクラッチされた結晶化ガラスを400倍率の顕微鏡で観察したところ、前記強化結晶化ガラスの表面にスクラッチ傷がない、
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項9】
酸化物の質量百分率で、前記強化結晶化ガラスの引張応力層は、30.00%≦SiO
2<35.00%、Al
2O
3:30.00%~40.00%、ZnO:10.00%~12.00%、MgO:2.00%~4.00%、ZrO
2:5.00%~7.00%、Na
2O:2.00%~9.00%、Li
2O:0~2.00%、およびB
2O
3:0~8.00%、との成分を含むと共に、前記強化結晶化ガラスの引張応力層の成分は、
(1)X=((Na
2O+B
2O
3)/ZrO
2)/Al
2O
3、X≧2.00;
(2)Y=ln[(Na
2O+B
2O
3)/ZrO
2]、Y≧0;
(3)Z=(SiO
2+Al
2O
3-MgO-ZnO)/(Li
2O+Na
2O+B
2O
3)、4.00≦Z≦10.00;
式(1)~(3)において、酸化物は、前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項10】
前記強化結晶化ガラスの引張応力層の成分は、さらに、
(4)W=(0.8×(Al
2O
3-SiO
2)+1.5×(ZnO-MgO))/ZrO
2,0≦W≦3.00;
式(4)において、酸化物は、前記酸化物成分の質量百分率を表すことを、
満たすことを特徴とする請求項9に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項11】
前記強化結晶化ガラスの引張応力層において、SiO
2の質量百分率が32.00%~34.95%であり、および/または、Al
2O
3の質量百分率が32.00%~38.00%であり、および/または、ZnOが10.00%~11.48%であり、および/または、MgOが2.50%~3.50%であり、および/または、ZrO
2が5.40%~6.50%であり、および/または、Na
2Oが2.50%~8.50%であり、および/または、B
2O
3が2.50~8.00%である、
ことを特徴とする請求項9に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項12】
前記強化結晶化ガラスの引張応力層は、さらに、0~3.00wt%のBaOおよび/または、0~2.00wt%のY
2O
3を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項13】
前記強化結晶化ガラスには、TiO
2およびP
2O
5が基本的に含まれない、
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項14】
前記強化結晶化ガラスは、化学強化用結晶化ガラスに対して化学強化処理を行って得られたものであり、具体的に、
前記化学強化用結晶化ガラスを、カリウム塩を含有する380℃~550℃のソルトバスに投入して化学強化処理を行い、前記化学強化処理の時間が1h~96hであり、選択的に1h~48hであり、前記強化結晶化ガラスを得て、前記カリウム塩は、硝酸カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウムから選ばれる1種または複数種を含み、選択的に硝酸カリウムである、
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐スクラッチ傷性を有する強化結晶化ガラス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の強化結晶化ガラスを製造するための化学強化用結晶化ガラスであって、
前記化学強化用結晶化ガラスの主結晶相は、(Zn,Mg)Al
2O
4であり、前記化学強化用結晶化ガラスにおいて、酸化物のモル百分率で、Al
2O
3のモル百分率は、MgOとZnOのモル百分率の合計よりも大きく、前記化学強化用結晶化ガラスの理論結晶化度は、少なくとも30.00wt%以上であり、選択的に30.00wt%~50.00wt%であり、かつ、前記化学強化用結晶化ガラスが理論結晶化度を満たす場合、前記化学強化用結晶化ガラスにおける残留ガラス相の単位体積あたりの解離エネルギーUは、71.00kJ・cm
-3以上であり、選択的に71.00KJ・cm
-3~134.00kJ・cm
-3である、
ことを特徴とする化学強化用結晶化ガラス。
【請求項16】
酸化物の質量百分率で、前記化学強化用結晶化ガラスは、30.00%≦SiO
2<35.00%、Al
2O
3:30.00%~40.00%、ZnO:10.00%~12.00%、MgO:2.00%~4.00%、ZrO
2:5.00%~7.00%、Na
2O:2.00%~9.00%、Li
2O:0~2.00%、およびB
2O
3:0~8.00%との成分を含むと共に、前記化学強化用結晶化ガラスの成分は、
(1)X=((Na
2O+B
2O
3)/ZrO
2)/Al
2O
3、X≧2.00;
(2)Y=ln[(Na
2O+B
2O
3)/ZrO
2]、Y≧0;
(3)Z=(SiO
2+Al
2O
3-MgO-ZnO)/(Li
2O+Na
2O+B
2O
3)、4.00≦Z≦10.00;
式(1)~(3)において、酸化物は、前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、
を満たすことを特徴とする請求項15に記載の化学強化用結晶化ガラス。
【請求項17】
前記化学強化用結晶化ガラスの成分は、さらに、
(4)W=(0.8×(Al
2O
3-SiO
2)+1.5×(ZnO-MgO))/ZrO
2,0≦W≦3.00;式(4)において、酸化物は、前記酸化物成分の質量百分率を表すこと、を満たし、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスのヤング率が110GPa以上であり、選択的に110~140Gpaであること、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスにおいて、平均結晶粒径は15.00nm以下であり、選択的に1.00~10.00nmであり、さらに選択的に4.50~8.00nmであること、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスにおいて、結晶含有量は、20.00~50.00wt%であり、選択的に25.00~50.00wt%であり、さらに選択的に25.00~45.00wt%であること、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスの副結晶相は、正方晶ZrO
2、Zn
2SiO
4、Mg
2SiO
4から選ばれる1種または複数種を含むこと、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスは、さらに、0~3.00wt%のBaOおよび/または0~2.00wt%のY
2O
3を含むこと、および/または、
前記化学強化用結晶化ガラスにはTiO
2およびP
2O
5が基本的に含まれていないこと、
を特徴とする請求項16に記載の化学強化用結晶化ガラス。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項に記載の強化結晶化ガラスによって製造された、ガラス器具。
【請求項19】
請求項15に記載の化学強化用結晶化ガラスによって製造された、ガラス器具。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか1項に記載の強化結晶化ガラスを含む、電子デバイス。
【請求項21】
請求項15に記載の化学強化用結晶化ガラスを含む、電子デバイス。
【国際調査報告】