(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】デュアルモード非観血血圧測定
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0225 20060101AFI20250123BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61B5/0225 F
A61B5/022 J
A61B5/0225 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529809
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 US2022013162
(87)【国際公開番号】W WO2023140850
(87)【国際公開日】2023-07-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524188228
【氏名又は名称】スペースラブズ ヘルスケア リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】SPACELABS HEALTHCARE L.L.C.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230754
【氏名又は名称】水口 拓歩
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ジェイ ギラム
(72)【発明者】
【氏名】ニシャント ゴパラクリシュナン
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB01
4C017AC01
4C017AD01
4C017AD07
4C017AD11
4C017AD15
4C017BC11
4C017BD04
4C017BD06
4C017DD11
4C017DD14
4C017DE01
4C017DE05
4C017FF05
(57)【要約】
本明細書は、様々なサイズのカフに適した直線加圧非観血血圧(NIBP)測定の方法及びシステムを記載する。実施形態では、カフをNIBP装置に接続するアダプタホースが動的に識別される。実施形態は、カフ膨張プロセス中のNIBP装置からの空気の放出を制御できるように、装置の弁の少なくとも1つに絞りを設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧監視システムであって、
ハウジングと、
該ハウジング内に位置付けられたコントローラと、
前記ハウジング内に位置付けられたポンプであり、ポンプは前記コントローラと導通し、前記コントローラはポンプを作動させポンプを停止させるよう構成される、ポンプと、
前記ハウジング内に位置付けられた圧力センサ・分析システムであり、前記コントローラとデータ通信する圧力センサ・分析システムと、
第1内径により規定される第1ホースと、
該第1ホースに接続するよう構成された第1カフと、
第2内径により規定される第2ホースと、
該第2ホースに接続するよう構成された第2カフと、
前記第1ホース又は前記第2ホースに結合されるようになされたカフコネクタと、
前記ハウジング内に位置決めされた少なくとも2つの弁であり、少なくとも2つの弁のうち第1弁が第1空気流量を可能にするよう構成され、少なくとも2つの弁のうち第2弁が第2空気流量を可能にするよう構成され、前記コントローラは、前記カフコネクタが前記第1ホース及び前記第1カフに結合されているか前記カフコネクタが前記第2ホース及び前記第2カフに結合されているかに基づいて第1弁及び第2弁の少なくとも一方又は両方を作動させるようになされる、少なくとも2つの弁と
を備えた血圧監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧監視システムにおいて、前記第1ホースの前記第1内径は、前記第2ホースの前記第2内径よりも大きい血圧監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載の血圧監視システムにおいて、前記カフコネクタは、少なくとも1つのアダプタを介して前記第1ホース又は前記第2ホースに結合される血圧監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の血圧監視システムにおいて、前記第1カフは、成人患者又は小児患者の肢に嵌まるよう構成される血圧監視システム。
【請求項5】
請求項1に記載の血圧監視システムにおいて、前記第2カフは、新生児患者の肢に嵌まるよう構成される血圧監視システム。
【請求項6】
請求項1に記載の血圧監視システムにおいて、前記第1カフ及び前記第2カフの少なくとも一方は、患者の肢に巻き付くよう構成され、前記第1カフ及び前記第2カフの少なくとも一方は、前記ポンプと空気流連通し、該ポンプが前記コントローラにより作動されると空気を受け入れるよう構成される血圧監視システム。
【請求項7】
請求項1に記載の血圧監視システムにおいて、前記第1弁及び前記第2弁は同一であり、絞りが前記第1弁の流路内の空気流を制限するよう構成される血圧監視システム。
【請求項8】
請求項1に記載の血圧監視システムにおいて、前記第1弁は、該第1弁を通る空気流が前記第2弁を通る空気流に比べて制限されるように前記第2弁よりも小さい血圧監視システム。
【請求項9】
請求項5に記載の血圧監視システムにおいて、前記第2カフの収縮中、前記コントローラは、前記収縮の少なくとも一部の間は前記第1弁を開放させるよう構成される血圧監視システム。
【請求項10】
請求項5に記載の血圧監視システムにおいて、前記第2カフの収縮中、前記コントローラは、前記収縮の少なくとも一部の間は前記第1弁及び前記第2弁を開放させるよう構成される血圧監視システム。
【請求項11】
請求項1に記載の血圧監視システムにおいて、前記カフコネクタは、雌レクタスコネクタを含む血圧監視システム。
【請求項12】
請求項1に記載の血圧監視システムにおいて、血圧測定、前記第1カフに接続された前記第1ホースの状態、前記第2カフに接続された前記第2ホースの状態、前記第1カフ又は前記第2カフが前記カフコネクタに結合されている状態、及び/又は前記アダプタが前記カフコネクタに取り付けられているか否かの少なくとも1つに関する情報を表示するモニタをさらに備えた血圧監視システム。
【請求項13】
非観血血圧(NIBP)装置を用いて患者の血圧を判定する方法であって、前記NIBP装置は、ハウジング内に位置決めされたコントローラと、カフコネクタと、第1内径を有し、第1カフに接続されるようになされ、且つ前記カフコネクタに結合されるよう構成された第1ホースと、第2内径を有し、第2カフに接続されるようになされ、且つ前記カフコネクタに結合されるよう構成された第2ホースと、前記カフコネクタと流体連通するポンプと、少なくとも2つの弁であり、該少なくとも2つの弁のうち第1弁が開放構成で第1空気流量を可能にするよう構成され、前記少なくとも2つの弁のうち第2弁が開放構成で第2空気流量を可能にするよう構成され、前記第1空気流量は前記第2空気流量よりも少ない、少なくとも2つの弁とを備えた方法において、
前記第1カフ及び前記第2カフの少なくとも一方を前記カフコネクタに結合するステップと、
前記第1カフ又は前記第2カフを人の肢に装着するステップと、
前記コントローラを操作して前記カフコネクタが前記第1カフに結合されているか前記第2カフに結合されているかを判定するステップと、
前記コントローラを操作して前記ポンプを作動させるステップであり、作動すると前記ポンプは人の肢に位置決めされた前記第1カフ又は前記第2カフに空気を送り込むステップと、
前記第1カフ又は前記第2カフのどちらが前記カフコネクタに結合されているか、及び前記コントローラが前記第1カフを膨張又は収縮させているか前記第2カフを膨張又は収縮させているかに基づいて、前記コントローラを操作して前記第1弁及び/又は前記第2弁を開放及び/又は閉鎖するステップと
を含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記コントローラを操作して前記第1ホースが前記第1カフに接続されているか又は前記第2ホースが前記第2カフに接続されているかを判定するステップをさらに含む方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記第1ホースの前記第1内径は、前記第2ホースの前記第2内径よりも大きい方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法において、前記カフコネクタは、少なくとも1つのアダプタを介して前記第1ホース又は前記第2ホースに結合される方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法において、前記第1カフは、成人患者又は小児患者の肢に嵌まるよう構成され、前記第2カフは、新生児患者の肢に嵌まるよう構成される方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記第1カフの膨張中、該第1カフは成人患者の肢に嵌められ、前記コントローラは、前記膨張中は前記第1弁及び前記第2弁を閉鎖させるよう構成される方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、血圧の判定が前記第1カフの膨張中に実行され、前記第1カフが小児患者の肢に嵌められている場合、前記コントローラは、前記膨張中は前記第1弁を少なくとも部分的に開放させて前記第2弁を閉鎖させるよう構成される方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法において、血圧の判定が前記第2カフの収縮中に実行される場合、前記コントローラは、上記収縮の少なくとも一部の間は前記第1弁を開放させるよう構成される方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法において、血圧の判定が前記第1カフの収縮中に実行される場合、前記コントローラは、前記第1弁及び前記第2弁を開放させるよう構成される方法。
【請求項22】
請求項13に記載の方法において、前記第1カフ又は前記第2カフの前記膨張中又は前記収縮中に前記第1カフ又は前記第2カフの圧力振動を検出して人の血圧を判定するステップをさらに含む方法。
【請求項23】
請求項13に記載の方法において、前記コントローラが前記第1カフを膨張させているか又は前記第2カフを膨張させている場合に、異常を識別するステップと、前記コントローラを用いて減圧プロセス中は前記第1弁及び前記第2弁の少なくとも一方を閉鎖させるステップとをさらに含む方法。
【請求項24】
請求項14に記載の方法において、前記コントローラを操作して前記第1カフが前記カフコネクタに結合されているか前記第2カフが前記カフコネクタに結合されているかを判定するステップは、
前記第1弁を開放するステップと、
第1期間に前記ポンプを運転するステップと、
前記第1期間後に前記ポンプの運転により生じた空気圧パルスの第1振幅を測定するステップと、
第2期間に前記ポンプを運転するステップと、
前記第2期間後に前記ポンプの運転により生じた空気圧パルスの第2振幅を測定するステップと、
前記第1振幅及び前記第2振幅の関数を計算するステップと、
前記関数の出力に基づいて、前記第1ホース及び前記第2ホースの少なくとも一方が前記カフコネクタに結合されているか否か、前記第1ホース及び前記第2ホースの少なくとも一方が捩れているか否か、前記第1ホースが前記第1カフに接続されているか否か、又は前記第2ホースが前記第2カフに接続されているか否かを判定するステップと
を含む方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、前記関数は、前記第1振幅及び前記第2振幅の平均である方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法において、前記第1期間及び前記第2期間のそれぞれは、10ミリ秒~100ミリ秒、好ましくは50ミリ秒である方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法において、前記第1期間と前記第2期間との間の時間間隔をさらに含む方法。
【請求項28】
請求項24に記載の方法において、前記ポンプを運転するステップは、90%~100%に等しい範囲のデューティサイクルでの運転を含む方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法において、前記第1ホースが前記第1カフに接続されているか又は前記第2ホースが前記第2カフに接続されているかを判定するステップは、
前記第1期間中は前記第1弁及び前記第2弁を開放するステップと、
前記第1期間後に30%~50%の範囲のデューティサイクルで前記ポンプを運転するステップと、
前記第1振幅を測定するステップと、
該第1振幅に基づいて、前記第1ホースが前記第1カフに接続されているか否か及び前記第2ホースが前記第2カフに接続されているか否かの少なくとも一方を判定するステップと
を含む方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、前記判定するステップは、前記振幅が第1値を有する場合は前記第1ホースが前記第1カフに接続されており、前記振幅が第2値を有する場合は前記第2ホースが前記第2カフに接続されていると結論付けるステップを含み、前記第1値は前記第2値よりも小さい方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、生理学的パラメータの監視、より詳細には、非観血血圧(NIBP)装置からの測定を用いて血圧測定値を取得し且つ/又は血圧を監視する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
非観血血圧(NIBP)は、世界中で販売されている略全てのベッドサイドモニタで測定される重要な生理学的パラメータである。外来血圧(ABP)測定では、NIBP測定能力を小型のウェアラブルレコーダ内に配備して、患者の日常活動中に患者の連続測定値を得る。
図1を参照すると、従来の外来血圧測定システム100が示されている。システム100は、カフ115と、カフ115内の空気袋をハウジング105内に位置決めされた空気ポンプと空気連通させるチューブ110とを備える。弁120が、カフ115の空気袋から空気を選択的に放出することができるように位置決めされる。ハウジング105は、カフ115からの圧力振動を検出して、拡張期測定値及び収縮期測定値を含む血圧測定値を生成する測定システムをさらに含む。拡張期及び収縮期は、心筋の弛緩時及び収縮時を指し、弛緩期間が拡張期、収縮期間が収縮期であり、両者間のバランスにより人の血圧が決まる。
【0003】
従来のNIBP測定値は、患者の肢の周囲に位置付けた
図1のカフ115等の可撓性のカフを急速に膨張させることにより取得される。急速な膨張は、ポンプを用いてカフに空気を送り込むことにより達成され、カフ圧が標準血圧の収縮期値を大幅に上回る圧力レベルに上昇するまでポンプ作用が維持され、圧力レベルは、患者の脈拍を監視して、患者の脈拍が消失する点よりも約30mmHg高い点までカフを膨張させ続けることにより、特定されることがある。オシロメトリック法を用いた測定では、患者の脈拍は、臨床医が聴診器で行う聴診法を用いた測定のように実際には消失しない。一部の装置では、急速な膨張は、ポンプを用いてカフに空気を送り込み、カフ圧が以前の測定値を大幅に上回る圧力レベルに上昇するまでポンプ作用を維持することで達成される。一例では、患者の前回の測定値が120/80であった場合、装置は前回の収縮期プラス35mmHg(したがって、この例では155mmHg)まで膨張する。その上昇した圧力レベルに達したら、空気ポンプをオフにし、カフを制御下で徐々に収縮させる。カフ圧は、通常は8ミリメートル水銀柱(mmHg)程度の小さな圧力刻みで下げられる。各段階で圧力振動の測定が行われる。動脈拍動に対応するカフの振動が続いて分析されて、血圧が決定される。最大振動点は、平均動脈内圧に対応する。減圧中に、患者タイプに応じたデフォルト値であるか又は以前の測定値に基づく目標血圧に対して測定が行われる。
【0004】
従来のNIBP装置は、通常はカフからの空気抜きを制御する2つの弁を含む。概して、各弁は、作動時に弁が閉位置になることによりカフを気密にし、電源切断時又は弁の非作動時に弁が開状態に移行することによりカフから空気を流出させるように構成される。通常は2つの弁が用いられる理由は、第1弁が実際の収縮機構として機能するのに対し、第2弁は第1弁が故障した場合のバックアップとして機能するからである。さらに、第2弁を用いて、測定の完了時により急速にカフからの圧力をなくす又は除去する機構を提供することができる。
【0005】
NIBP測定に対する別の手法は、「直線加圧」システムの使用である。カフが完全に膨張した後で収縮中にのみ測定が行われる従来の減圧NIBPシステムとは対照的に、直線加圧システムでは、カフ膨張中に測定が行われる。弁とポンプとの間の特殊な空気圧構成により、カフの内部チャンバの膨張及び収縮の制御が可能となる。直線加圧測定の主な利点として、測定の高速化、最大カフ圧の低減、及びポンプからの周囲騒音の低減が挙げられる。ポンプは、装置を作動させてカフをゆっくりと膨張させるために低いRPMで運転されるので、ポンプは、従来のフルスピード測定に比べて比較的静かでもある。これらの特徴は、単独でも組み合わせても、腕の「圧迫」の強度及び持続時間が低減され、全速運転中のポンプからの大きな騒音が最小化されるので、患者の快適性が増す。直線加圧測定方法及び装置は、子供又は身体構造が弱い患者での使用に対して外傷が少ない。さらに、臨床医がより迅速に、通常は、約30%速く測定を行うことができる。
【0006】
直線加圧NIBP装置は、速度及び快適性の利益を患者に与えることができるが、小柄な成人(カフサイズ12cm×22cm)又は小児(4cm×8cm~9cm×18cm)等の小さなカフサイズでは、膨張速度を制御する作業は困難である。膨張率は、ポンプの速度又は毎分回転数(RPM)の調整により変えることができる。ポンプRPMは印加電圧の上昇に伴い増加するので、ポンプ速度は、ポンプの端子間に印加される駆動電圧を用いてさらに変更することができる。電圧閾値は、各NIBP装置の現在の圧力に関連付けられ、それ未満だとポンプが回転不可能又は「デッドヘッド」状態である。閾値を約10%上回る電圧の印加は、ポンプの低RPMを誘発すると考えられ得る。小型のカフの場合、1拍あたり3mmHg~6mmHgの有効膨張率を得るためにポンプ速度を低くする必要がある。この低流量では、印加電圧がポンプの回転可能速度の下限に近いので、ポンプが不安定になる傾向がある。この不安定性により、小型のカフの膨張率の確実な制御は困難になる。さらに、ポンプRPMが低い、つまりデッドヘッド閾値を10%上回る範囲内にある場合、ポンプ摂動の周波数は脈波識別の関心範囲の上限周波数(10Hz)に近付き、ポンプからの騒音が関心信号(脈波)を不明瞭にし始める。したがって、ポンプからの圧力信号に対する摂動の大きさは、NIBP装置で測定しようとしている脈波信号を不明瞭にする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、現在の標準的及び直線加圧NIBP装置の1つ又は複数の欠点を克服することができる非観血血圧測定の方法及びシステムが必要である。特に、実質的に一定の膨張率を維持しながら低流量で動作することができるNIBPシステムが必要である。小さなカフサイズで要求される一定の流量を確実に発生させることができるNIBPシステムも必要である。ポンプの下限電圧又はその付近の印加電圧でポンプを運転する場合に、ポンプ摂動の頻度を最低限に抑えるNIBPシステムも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の実施形態及びそれらの態様を、例示的且つ説明的であることが意図され範囲を制限する意図はないシステム、ツール、及び方法と共に説明及び図示する。
【0009】
本明細書は、血圧監視システムであって、ハウジングと、ハウジング内に位置付けられたコントローラと、ハウジング内に位置付けられたポンプであり、ポンプはコントローラと導通し、コントローラはポンプを作動させポンプを停止させるよう構成されるポンプと、ハウジング内に位置付けられた圧力センサ・分析システムであり、コントローラとデータ通信する圧力センサ・分析システムと、第1内径により規定される第1ホースと、第1ホースに接続するよう構成された第1カフと、第2内径により規定される第2ホースと、第2ホースに接続するよう構成された第2カフと、第1ホース又は第2ホースに結合されるようになされたカフコネクタと、ハウジング内に位置決めされた少なくとも2つの弁であり、少なくとも2つの弁のうち第1弁が第1空気流量を可能にするよう構成され、少なくとも2つの弁のうち第2弁が第2空気流量を可能にするよう構成され、コントローラは、カフコネクタが第1ホース及び第1カフに結合されているかカフコネクタが第2ホース及び第2カフに結合されているかに基づいて第1弁及び第2弁の少なくとも一方又は両方を作動させるようになされる、少なくとも2つの弁とを備えた血圧監視システムを開示する。
【0010】
任意選択で、第1ホースの第1内径は、第2ホースの第2内径よりも大きい。任意選択で、カフコネクタは、少なくとも1つのアダプタを介して第1ホース又は第2ホースに結合される。任意選択で、第1カフは、成人患者又は小児患者の肢に嵌まるよう構成される。任意選択で、第2カフは、新生児患者の肢に嵌まるよう構成される。
【0011】
任意選択で、第1カフ及び第2カフの少なくとも一方は、患者の肢に巻き付くよう構成され、第1カフ及び第2カフの少なくとも一方は、ポンプと空気流連通し、ポンプがコントローラにより作動されると空気を受け入れるよう構成される。
【0012】
任意選択で、第1弁及び第2弁は同一であり、絞りが第1弁の流路内の空気流を制限するよう構成される。任意選択で、第1弁は、第1弁を通る空気流が第2弁を通る空気流に比べて制限されるように第2弁よりも小さい。任意選択で、第2カフの収縮中、コントローラは、上記収縮の少なくとも一部の間は第1弁を開放させるよう構成される。任意選択で、第2カフの収縮中、コントローラは、上記収縮の少なくとも一部の間は第1弁及び第2弁を開放させるよう構成される。
【0013】
任意選択で、カフコネクタは、雌レクタスコネクタを含む。
【0014】
任意選択で、血圧監視システムは、血圧測定、第1カフに接続された第1ホースの状態、第2カフに接続された第2ホースの状態、第1カフ又は第2カフがカフコネクタに結合されている状態、及び/又はアダプタがカフコネクタに取り付けられているか否かの少なくとも1つに関する情報を表示するモニタをさらに備える。
【0015】
本明細書は、非観血血圧(NIBP)装置を用いて患者の血圧を判定する方法も開示され、NIBP装置は、ハウジング内に位置決めされたコントローラと、カフコネクタと、第1内径を有し、第1カフに接続されるようになされ、且つカフコネクタに結合されるよう構成された第1ホースと、第2内径を有し、第2カフに接続されるようになされ、且つカフコネクタに結合されるよう構成された第2ホースと、カフコネクタと流体連通するポンプと、少なくとも2つの弁であり、少なくとも2つの弁のうち第1弁が開放構成で第1空気流量を可能にするよう構成され、少なくとも2つの弁のうち第2弁が開放構成で第2空気流量を可能にするよう構成され、第1空気流量は第2空気流量よりも少ない、少なくとも2つの弁とを備え、本方法は、第1カフ及び第2カフの少なくとも一方をカフコネクタに結合するステップと、第1カフ又は第2カフを人の肢に装着するステップと、コントローラを操作してカフコネクタが第1カフに結合されているか第2カフに結合されているかを判定するステップと、コントローラを操作してポンプを作動させるステップであり、作動するとポンプは人の肢に位置決めされた第1カフ又は第2カフに空気を送り込むステップと、第1カフ又は第2カフのどちらがカフコネクタに結合されているか、及びコントローラが第1カフを膨張又は収縮させているか第2カフを膨張又は収縮させているかに基づいて、コントローラを操作して第1弁及び/又は第2弁を開放及び/又は閉鎖するステップとを含む。
【0016】
任意選択で、本方法は、コントローラを操作して第1ホースが第1カフに接続されているか又は第2ホースが第2カフに接続されているかを判定するステップをさらに含む。
【0017】
任意選択で、第1ホースの第1内径は、第2ホースの第2内径よりも大きい。
【0018】
任意選択で、カフコネクタは、少なくとも1つのアダプタを介して第1ホース又は第2ホースに結合される。
【0019】
任意選択で、第1カフは、成人患者又は小児患者の肢に嵌まるよう構成され、第2カフは、新生児患者の肢に嵌まるよう構成される。任意選択で、第1カフの膨張中、第1カフは成人患者の肢に嵌められ、コントローラは、上記膨張中は第1弁及び第2弁を閉鎖させるよう構成される。任意選択で、血圧の判定が第1カフの膨張中に実行され、第1カフが小児患者の肢に嵌められている場合、コントローラは、上記膨張中は第1弁を少なくとも部分的に開放させて第2弁を閉鎖させるよう構成される。任意選択で、血圧の判定が第2カフの収縮中に実行される場合、コントローラは、上記収縮の少なくとも一部の間は第1弁を開放させるよう構成される。任意選択で、血圧の判定が第1カフの収縮中に実行される場合、コントローラは、第1弁及び第2弁を開放させるよう構成される。
【0020】
任意選択で、本方法は、第1カフ又は第2カフの膨張中又は収縮中に第1カフ又は第2カフの圧力振動を検出して人の血圧を判定するステップをさらに含む。
【0021】
任意選択で、本方法は、コントローラが第1カフを膨張させているか又は第2カフを膨張させている場合に、異常を識別するステップと、コントローラを用いて減圧プロセス中は第1弁及び第2弁の少なくとも一方を閉鎖させるステップとをさらに含む。任意選択で、コントローラを操作して第1カフがカフコネクタに結合されているか第2カフがカフコネクタに結合されているかを判定するステップは、第1弁を開放するステップと、第1期間にポンプを運転するステップと、第1期間後にポンプの運転により生じた空気圧パルスの第1振幅を測定するステップと、第2期間にポンプを運転するステップと、第2期間後にポンプの運転により生じた空気圧パルスの第2振幅を測定するステップと、第1振幅及び第2振幅の関数を計算するステップと、関数の出力に基づいて、第1ホース及び第2ホースの少なくとも一方がカフコネクタに結合されているか否か、第1ホース及び第2ホースの少なくとも一方が捩れているか否か、第1ホースが第1カフに接続されているか否か、又は第2ホースが第2カフに接続されているか否かを判定するステップとを含む。
【0022】
任意選択で、関数は、第1振幅及び第2振幅の平均である。任意選択で、第1期間及び第2期間のそれぞれが10ミリ秒~100ミリ秒、好ましくは50ミリ秒である。任意選択で、本方法は、第1期間と第2期間との間の時間間隔をさらに含む。任意選択で、ポンプを運転するステップは、90%~100%に等しい範囲のデューティサイクルでの運転を含む。任意選択で、第1ホースが第1カフに接続されているか又は第2ホースが第2カフに接続されているかを判定するステップは、第1期間中は第1弁及び第2弁を開放するステップと、第1期間後に30%~50%の範囲のデューティサイクルでポンプを運転するステップと、第1振幅を測定するステップと、第1振幅に基づいて、第1ホースが第1カフに接続されているか否か及び第2ホースが第2カフに接続されているか否かの少なくとも一方を判定するステップとを含む。任意選択で、この判定は、振幅が第1値を有する場合は第1ホースが第1カフに接続されており、振幅が第2値を有する場合は第2ホースが第2カフに接続されていると結論付けるステップを含み、第1値は第2値よりも小さい。
【0023】
本明細書の上記及び他の実施形態は、下記の図面及び詳細な説明においてより深く説明されるものとする。
【0024】
本明細書のこれら及び他の特徴及び利点は、添付図面に関連して考えて以下の詳細な説明を参照することにより理解が深まれば認められるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】本明細書の一実施形態による例示的な血圧測定システムの概略図を示す。
【
図3A】本明細書の実施形態による、カフ接続を確認するために実行される例示的な動作シーケンスを示すフローチャートである。
【
図3B】本発明の一実施形態による例示的な血圧測定方法の第1ステップセットを示すフローチャートである。
【
図3C】本発明の一実施形態による例示的な血圧測定方法の第2ステップセットを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
様々な実施形態において、本明細書は、非観血血圧(NIBP)監視装置を用いて患者の生理学的特性を監視する方法及びシステムを提供する。NIBP装置は、2つのモードで測定を実行する。モードは患者に基づいて選択される。装置は、選択されたモードが選択された患者に用いるカフのタイプに対応することを確認する。動作の際、2つのホースを伴うアダプタが、NIBP装置のカフコネクタに取り外し可能に取り付けられる。第1ホースは、成人/小児患者のNIBP測定用のカフに接続されるよう構成されるが、第2ホースは、新生児患者用のカフとインタフェース接続するよう構成される。各ホースは、そこを通る空気流に対して異なる抵抗を与える異なる内径を有する。異なる抵抗がNIBPシステムにより検出されて、成人/小児タイプの患者が接続されているのか新生児タイプの患者が接続されているのかが判定/確認される。各測定前に、アダプタの有無の確認、及びアダプタがある場合は患者設定に一致する正しいカフタイプにアダプタが接続されていることの確認のために、NIBP装置と一体型のモニタでチェックが実行される。アダプタが取り付けられていないか又は誤ったホースがカフに取り付けられている場合、測定は行われず、不一致に関するメッセージがユーザに伝えられる。
【0027】
さらに、患者が成人/小児患者か新生児患者かをNIBP装置が識別可能となったら、測定方法は、減圧(step-deflate)プロセス又は直線加圧(on-inflate)プロセスを用いて測定するよう調整される。したがって、NIBPシステムの実施形態は、一方のモードでは通常の成人/小児用カフ、別のモードでは非常に小さな新生児用カフで測定を実行することができる。新生児モードでの測定は、従来の加圧及び減圧プロセスを用いて実行される。一実施形態では、NIBP装置の空気圧構成が、小型の新生児用カフサイズに適した制御下の収縮を可能にする特別な設計の制限流路構成を有する。制限流路により、減圧プロセスを制御して小型の新生児用カフに対して正確な圧力制御を得ることが容易になる。さらに、ポンプの高速運転は、ポンプからの空力騒音をより高い周波数に且つ関心の脈波信号から離れてシフトさせ、効果的にフィルタリングできるようにする。成人/小児モードでの測定は、NIBP測定の直線加圧又は減圧プロセスを用いて実行することができる。いくつかの実施形態では、直線加圧測定モードは速度及び快適性のために用いられることが好ましく、減圧モードは、直線加圧測定が失敗した場合のフォールバックとして成人/小児測定に好ましい。
【0028】
本明細書は、複数の実施形態を対象とする。以下の開示は、当業者が本発明を実施できるようにするために提供される。本明細書で用いる文言は、特定の一実施形態を一般に否認するものと解釈されるべきではなく、本明細書で用いる用語の意味を超えて特許請求の範囲を制限するために用いられるべきでもない。本明細書で定義される一般的な原理は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り他の実施形態及び用途に適用することができる。また、用いられる用語及び表現は、例示的な実施形態を説明するためのものであり、限定的なものとみなされるべきではない。したがって、本発明は、開示された原理及び特徴と一致する多くの代替形態、変更形態、及び等価物を包含する最も広い範囲を与えられるものとする。明確化のために、本発明に関連する技術分野で既知の技術的内容に関する詳細は、本発明を不必要に曖昧にしないように詳述していない。
【0029】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「備える」「含む」及び「有する」という言葉のそれぞれ及びそれらの変化形は、その言葉が関連し得るリスト内の要素に必ずしも限定されない。本明細書では、特定の実施形態に関連して説明されるいずれの特徴又は構成要素も、特に明記しない限り他の実施形態と共に用いることができることに留意されたい。
【0030】
いくつかの実施形態では、システムは、システム全体及びそのコンポーネントの動作を制御する少なくとも1つのプロセッサ(図示せず)を含む。少なくとも1つのプロセッサは、プログラム命令を処理可能であり、プログラム命令を記憶可能なメモリを有し、且つ本明細書に記載のプロセスを実行するための複数のプログラム命令からなるソフトウェアを用いることをさらに理解されたい。一実施形態では、少なくとも1つのプロセッサは、揮発性又は不揮発性コンピュータ可読媒体に記憶された複数のプログラム命令を受け取り、実行し、且つ送ることが可能なコンピューティング装置である。したがって、様々な実施形態において、コンピューティング装置は、データ信号を受け取って処理するために用いられ、入力/出力コントローラ、少なくとも1つの通信インタフェース、及びシステムメモリを含み得る。システムメモリは、少なくとも1つのランダムアクセスメモリ(RAM)及び少なくとも1つのリードオンリメモリ(ROM)を含み得る。これらの要素は、プロセッサ又は中央処理装置(CPU)と通信してコンピューティング装置の動作を可能にする。
【0031】
実施形態では、システムは、GUIにより少なくとも1つの患者パラメータ及びシステムの動作に関する情報を表示する少なくとも1つのディスプレイに結合される。GUIは、ユーザが自身の要求に従って設定を構成することができるようにする様々なメニューも提示する。
【0032】
様々な実施形態において、コンピューティング装置は、従来のスタンドアロンコンピュータであり得るか、あるいはコンピューティング装置の機能が、複数のコンピュータシステム及びアーキテクチャのネットワークに分散され得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の不揮発性メモリに記憶されるプログラム命令又はコードの複数のシーケンスの実行により、コンピューティング装置のCPUが、様々な機能、プロセス、及びアルゴリズム、例えば非観血血圧(NIBP)装置からの測定を用いた血圧測定値の取得及び/又は血圧の監視等を実行可能であるか又は可能にする。代替的な実施形態では、本願に記載のシステム及び方法のプロセスの実施のためのソフトウェア命令の代わりに、又はこれと組み合わせて、ハードワイヤード回路を用いることができる。したがって、記載のシステム及び方法は、ハードウェア及びソフトウェアのいかなる特定の組み合わせにも限定されない。
【0033】
実施形態において、本明細書は、成人又は小児患者の生理学的パラメータを測定するためのカフ並びに新生児患者用に構成された比較的小型のカフとインタフェース接続するよう構成されたNIBP装置を提供する。この装置は、異なる方法を用いて異なるタイプの患者のBP測定を可能にするようさらに構成される。
【0034】
図2は、本明細書のいくつかの実施形態によるNIBP装置又はシステム200の構成を示す。1つ又は複数のプリント回路基板に集積された1つ又は複数の電気回路、メモリ、及びプロセッサを含むコントローラ204が、筐体又はハウジング202内に位置決めされ得る。タッチスクリーンディスプレイ等のディスプレイ又はモニタ206も、システム200と一体化され得る。いくつかの実施形態では、ディスプレイ206は、ユーザが患者設定を入力してシステム200の動作モードを選択することを可能にし、システム200により選択されたモードを表示し、且つシステム200により監視された測定に加えてシステム200により識別された異常又は一致を伝えることができる。ハウジング202は、空気ポンプ210及び圧力センサ・分析システム213をさらに含み、圧力センサ・分析システム213も、1つ又は複数のプリント回路基板に集積された1つ又は複数の電気回路、メモリ、及びプロセッサを含む。空気ポンプ210及び圧力センサ・分析システム213の両方が、コントローラ204及びモニタ206と電気的に通信する。圧力センサ・分析システム213は、ポンプ210により少なくとも2つの弁218及び220まで空気を圧送する経路を提供するマニホルド208内に位置付けられる。圧力センサ・分析システムは、マニホルド208内で発生する空気圧に対応するアナログ電圧を生成し、このアナログ電圧は、圧力の測度を提供するようにアナログ-デジタル変換器によりサンプリングされる。圧力センサ・分析システム213は、コントローラ204とも通信する。コントローラ204は、以下で説明するように、直線加圧血圧測定プロセスを実行するよう構成される。
【0035】
NIBPシステム200は、単一のフロントパネルコネクタポート216(一実施形態では雌レクタスコネクタポート)と、第1アダプタホース212及び第2アダプタホース214とを含む。実施形態では、第1アダプタホース212又は第2アダプタホース214の近位端がコネクタのポート216に接続される。一実施形態では、第1アダプタホース212の遠位端が成人/小児患者用のカフに接続されるよう構成されるのに対し、第2アダプタホース214の遠位端は新生児測定用のカフとインタフェース接続するよう構成される。実施形態では、新生児用カフは圧力安全限界が異なり(成人の300mmHgに対して約150mmHg)、カフ端のアダプタが異なるので、第2アダプタホース214は新生児用だが、第1アダプタホース212は成人用である。実施形態では、新生児用カフに位置決めされたアダプタは、成人用カフのものよりも直径が小さい。新生児用のアダプタホース214は、比較的大きな内径を有する成人用のアダプタホース212よりも内径が小さく狭い。いくつかの実施形態では、第1アダプタホース212及び第2アダプタホース214は長さが等しい。いくつかの実施形態では、第1アダプタホース212及び第2アダプタホース214は長さが相互に等しくない。いくつかの実施形態では、第1アダプタホース212及び第2アダプタホース214は、それぞれ長さが6フィート~10フィートである。実施形態では、第1アダプタホース212及び第2アダプタホース214は、システム200のフロントパネル上の共通のカフコネクタポート216に差し込まれる。
【0036】
アダプタホース212及びアダプタホース214は、内径が異なり、システム200に対して異なる流動抵抗を示す。一実施形態では、成人に用いるアダプタホース212は、内径1/8インチである。一実施形態では、新生児設定に用いるアダプタホース214は、内径1/16インチである。測定のためのシステム200の作動前に、ポンプ210からの空気の圧送と、圧力センサ・分析システム213により測定される流動抵抗の測定とによりチェックが実行される。実施形態では、HIBPシステム200は、少なくとも2つの圧力変換器を有することで、1つの変換器が故障した場合に第2(バックアップ)変換器が患者に危険な圧力がかからないようにすることを確実にする「フォールトトレラント」である。測定された流動抵抗は、カフがアダプタに適切に接続されていること及びそのカフが接続されているホース(212又は214)のタイプの指標とされる。アダプタホースのタイプは、システム200の動作モードの選択又は患者設定でユーザが選択したモードの検証の基礎として用いられる。システム200が、アダプタホース212もアダプタホース214もカフに取り付けられていないこと、又は誤ったタイプのアダプタホースが取り付けられていることを検出した場合、測定は行われない。ユーザに不一致を知らせるメッセージがモニタ206に表示される。
【0037】
カフコネクタ216を介してハウジング202をカフに接続すると、ポンプ210が作動されてカフに空気を送り込む。ポンプ210は、ポンプ210の端子間に印加される電圧を変調することにより制御される。デューティサイクルが増加すると、印加電圧の上昇によりポンプ210に与えられる「スロットル」が大きくなる。カフの膨張は、一実施形態では高流量弁である第1弁218及び第2弁220で制御される。第1弁218及び第2弁220は、ポンプ210からカフコネクタ216へのマニホルド208内の圧送空気の経路に設けられ、カフコネクタ216は、第1アダプタホース212又は第2アダプタホース214を介して接続されたカフに空気を送り込む。いくつかの実施形態では、第1弁218及び第2弁220は同一の構造を有する。一実施形態では、第1弁218の入口が流量絞り222で変更されることで、制限された第1流量弁218は、第1弁218を通る流量をより精密に制御するために狭いオリフィスで設計された弁と同様に機能することができる。いくつかの実施形態では、第1弁218等の弁の1つは、高流量弁220に対して狭い流路を有する構成である。例として、制限されない場合、第1弁218は高流量弁であり、内径が0.04インチ~0.08インチ、好ましくは約0.066インチであり、制限された場合、第1弁218の内径は0.05インチ~0.020インチ、好ましくは約0.012インチの直径に縮小される。
【0038】
コネクタ216を介して接続されたカフは、ポンプ210の全速運転で50mmHgの圧力まで急速に膨張する。一実施形態では、12Vポンプが用いられるので、12Vをポンプに印加すると最大RPMが得られる。12V未満のより低い実効印加電圧では、ポンプの運転が低速になる。膨張中、圧力センサ・分析システム213は、220Hzで圧力波形を捕捉する。モジュールは、圧力の微分値を求めた後に、ローパスフィルタを適用して10Hz未満の周波数の微分波形を生成する。圧力とローパスフィルタ処理された微分波形とから、いくつかの特徴が抽出される。実施形態において、抽出されるいくつかの例示的な特徴を表1に示す。
【0039】
【0040】
ホース検出及びカフサイズ判定
図3Aは、システム200により実施される、アダプタホース212又はアダプタホース214の接続、したがってそれに接続されたカフのタイプを識別するための例示的な方法を示す。取り付けられたカフの有無及び/又はタイプは、アダプタホースの有無及びタイプの検出により検出することができる。アダプタホース検出プロセスは、各血圧測定の開始時に開始される。測定が要求されると、システムは、後述するようにホースがあること及びそれが患者タイプに一致することを自動的に確認する。ホースがない場合、第1エラータイプメッセージが表示されて測定は行われない。誤ったアダプタホースが検出された場合、第2エラータイプメッセージが表示される。ホース検出プロセスは、一次ホース検出フェーズ及び二次ホース検出フェーズを含む。前述のように、第2アダプタホース214は第1アダプタホース212よりも比較的小さく、内径が小さい第2アダプタホース214は新生児用カフとインタフェース接続するよう構成される。第1アダプタホース212は、成人又は小児NIBPで用いるカフとインタフェース接続するよう構成される。
【0041】
図2及び
図3Aを同時に参照すると、ステップ302において、流量絞り222を装着した第1弁218を開放し、一実施形態では高流量弁である弁220を閉鎖することにより、一次フェーズを開始する。実施形態では、流量絞り222を装着した第1弁218を制限弁と称する。ステップ304において、第1期間中は100%のデューティサイクルでポンプ210を運転することにより、マニホルド208内で第1圧力パルスを生成する。一実施形態では、ポンプ210は、10ミリ秒~100ミリ秒、好ましくは50ミリ秒(ms)の第1期間中運転される。ポンプ210のオフ後の数サンプルと略同等の短期間に圧力は上昇し続けるので、ステップ306において、その期間待機した後に、生成された第1パルスの第1パルス振幅を測定する。いくつかの実施形態では、この待期期間は20ms~40msの範囲である。圧力センサ・分析システム213により測定された測定圧力は、遠位端がカフに接続された第1アダプタホース212又は第2アダプタホース214により生じた背圧による流動抵抗を示す。ステップ308において、第1パルスの振幅の測定後に、システム200は20ミリ秒~100ミリ秒、好ましくは50ミリ秒(ms)の第2期間にポンプを運転することにより、第2パルスを生成する。いくつかの実施形態では、第1及び第2期間は等しい期間であり、50msであることが好ましい。ステップ310において、ポンプ210のオフ後の短期間待機後に、生成された第2パルスの振幅を測定する。いくつかの実施形態では、この短期間は20ms~40msの範囲である。ステップ312において、コントローラは、第1パルス及び第2パルスの記録された振幅を処理して平均パルス振幅を得る。平均パルス振幅値を用いて、アダプタホースのタイプ及び/又はカフコネクタ216に接続されているホースの状態を判定する。
【0042】
いくつかの実施形態では、40mHgを上回る平均値は、接続されたホースが捩れていることを示す。実施形態では、20mmHg~40mmHgの平均値は、第2アダプタホース214(新生児用)が接続されていることを示す。さらに、20mmHg未満且つ3.5mmHg以上の平均値は、第1アダプタホース212(成人用)が接続されていることを示す。さらに、3.5mmHg未満の平均値は、ホースがコネクタ216に接続されていないことを示す。ホースが接続されていない場合、平均値の計算に用いられる第1パルス及び第2パルスの振幅は1mmHg以内に収まる。第1アダプタホース212が接続されている場合、平均値の計算に用いられる第1パルス及び第2パルスの振幅は10mmHg以内に収まる。第2アダプタホース214が接続されている場合、平均値の計算に用いられる第1パルス及び第2パルスの振幅は10mmHg以内に収まる。第1パルス及び第2パルスの振幅間の大きな差は、記録されたデータが信頼できないことを示し得ることに留意されたい。この場合、ホース検出プロセスの一次フェーズを繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、検出プロセスの一次フェーズは最大2回繰り返され、その後にカフ/ホースの組み合わせの識別の失敗が報告される。ステップ314において、平均パルス振幅を用いて、第1アダプタホース212又は第2アダプタホース214のいずれかの遠位端がカフに接続されているか否か、及び接続されている場合はどのホース/カフの組み合わせが検出されたかを判定する。
【0043】
実施形態では、平均パルス振幅は、コントローラ204により記憶されたパルス振幅の所定の閾値と比較される。いくつかの実施形態では、所定の閾値は、プロトタイプのパルスの振幅を測定すること、及び全ての状態を合理的に識別するのに十分なマージンを確保することにより導出される。第1パルス振幅及び第2パルス振幅も比較され得る。実施形態では、コントローラ204は、平均パルス振幅をパルス波高/振幅の所定の閾値と比較して、第1アダプタホース212又は第2アダプタホース214のどちらがカフに接続されているかを識別するよう構成される。新生児用のアダプタホース214は、内径が小さい結果として可能な空気流量が少ないので、成人用のアダプタホース212に比べてパルス振幅が大きくなる。
【0044】
さらに、別の状況では、第1アダプタホース212も第2アダプタホース214もカフに接続されていない場合、記録される平均パルス振幅は非常に小さな値を有する。さらに別の状況では、第1アダプタホース212又は第2アダプタホース214に捩れ又は他の異常がある場合、記録される平均パルス振幅は大きな値となる。様々な状況の例示的な値は上記の通りである。
【0045】
カフの接続及び存在が検出されたら、システム200は第2フェーズを実行する。
図3Bは、本明細書のいくつかの実施形態による、第2フェーズでシステム200により実行されるプロセスの例示的なシーケンスを示すフローチャートである。ステップ320において、第1弁218及び第2弁220の両方を最初に一定期間開放し、その後、第1弁218及び第2弁220の両方を閉鎖する。実施形態では、この期間は10ミリ秒~20ミリ秒(ms)の範囲内であり得る。一実施形態では、第1弁218及び第2弁220を15.6ms開放する。ステップ322において、弁218及び220の開放中に30%~50%、好ましくは40%のデューティサイクルでポンプ210をパルス運転する。ステップ324において、観測された圧力パルス振幅を記録する。ステップ326において、記録されたパルス振幅を一次検出フェーズ中に観測された平均パルス振幅と比較する。
図3Aに関して上述したように、第1フェーズは、ホース(第1アダプタホース212又は第2アダプタホース214)が接続されているか否かを識別する。ここで、第2フェーズを用いて、接続されているホース(第1アダプタホース212又は第2アダプタホース214)のタイプを判定する。ステップ328において、パルス振幅が一次フェーズで測定された平均パルス振幅よりも小さい場合、アダプタホースの「検出失敗」を報告する。したがって、一次判定と二次判定とが一致しない場合、測定が中止される。
【0046】
さらに、測定中のアダプタホースに捩れ又は欠陥があることで不規則な又は偏った背圧となる場合、測定が完了しない。一実施形態では、ユーザは、音声、視覚、又は視聴覚警報の組み合わせにより通知される。視覚警報は、モニタ206に表示されるメッセージの形態であり得る。ユーザは、ホースを物理的に検査して、カフがホースに接続されているか否か及びカフが捩れていないことをチェックしてもよい。
【0047】
ステップ330において、パルス振幅が一次フェーズの平均パルス振幅以上である場合、パルスを所定の閾値と比較していくつかの異なるカフ接続の1つを判定する。いくつかの実施形態では、パルス振幅が25mmHg未満である場合、接続されているホースは第1アダプタホース212と識別され、パルス振幅が25mmHg以上である場合、接続されているホースは第2アダプタホース214と識別される。成人用のアダプタホース212は、新生児用のアダプタホース214に比べてパルスの振幅が小さくなる。ステップ332において、二次ホース検出フェーズの終わりに、システム200は、識別されたアダプタホースのタイプを報告する。いくつかの実施形態では、
図3A及び
図3Bに記載のプロセスは1秒未満で完了する。システム200は、続いて接続されているカフのタイプに基づいてNIBP測定に進む。測定方法は、第1アダプタホース212/関連カフと第2アダプタホース214/関連カフとで異なる。
【0048】
HIBP測定
二次検出フェーズの完了時に、アダプタホースが(患者設定で与えられた)選択された測定モード用の対応するカフに接続されていると判定された場合、ステップ340において、
図3Cに記載のように測定が始まる。
図3Cは、本明細書の実施形態による、アダプタホースの、ひいてはカフタイプ(新生児用カフに対応し第2アダプタホース214に接続された小型又は成人/小児用カフに対応し第1アダプタホース212に接続された大型)の識別に基づいてシステム200により実行される例示的な方法を示す。
【0049】
ステップ342において、患者タイプ及びアダプタホースタイプを
図3A、
図3B、及び
図3Cに関連して説明したプロセスに従って識別する。
図2及び
図3Cを同時に参照すると、ステップ342において、ホース212が成人/小児患者用の対応するカフに接続されていると判定された場合、方法はステップ344に進む。ステップ344において、BPの直線加圧測定が実行される。測定中、弁218及び220の両方が閉鎖したままである。第1アダプタホース212は第2アダプタホース214よりも大きい(第2アダプタホースは新生児患者用に設計されている)ので、第1アダプタホース212は、様々なカフサイズに対応し得る。第1アダプタホース212は、新生児患者に利用可能なカフサイズよりは依然として大きい成人及び小児患者又は子供用の小さなカフサイズから、成人に適した比較的大きなカフサイズに及ぶ対応するカフサイズを有し得る。したがって、第1アダプタホース212に接続したまま成人患者と小児患者とを区別可能であることも望ましい。NIBP測定方法は、成人患者と小児患者で異なる。小児用/子供用等の小さなカフサイズでは、場合によっては任意選択で、直線加圧測定中に制限弁218を開放したままとしてより良好なポンプ制御を可能にする。
【0050】
したがって、追加のステップを用いて、第1アダプタホース212に接続されている場合のカフのサイズ(成人用か小児用か)を判定することができる。小児用カフは、成人用カフに対してカフ容積が小さい。成人用カフサイズと小児用カフサイズとの区別は、第1アダプタホース212を通してゼロから低い目標圧力までカフを膨張させるのに要する時間に基づいて決まる。所要時間が長いほど、カフは大きくなり、これは成人用カフサイズに相当する。ステップ346において、測定で異常が識別された場合、システム200は、任意選択でステップ352に進み、チェック方法として減圧を用いた測定を実行する。異常は、圧力測定が不規則である場合に特定され得る。ステップ356において、減圧法を用いた測定は、弁218及び弁220の両方を測定中に次の「ステップ」に開放されるまで閉じた状態で実行される。測定が完了すると、両方の弁218及び220を開放して圧力を解放する。ステップ346で異常がない場合、ステップ344の直線加圧測定をステップ350で完了する。前述のように、カフサイズが子供(小児)用であると判定された場合、流量制限弁218を開放した状態で直線加圧測定が実行される。弁218を開放したままとすることで、「小さな漏れ」がシミュレートされ、ポンプを若干速く動かすことができ、より制御しやすい。さらに、ポンプ騒音(空気圧)が測定に干渉しない。一方、カフサイズが子供(小児)用よりも大きいと判定された場合、直線加圧測定中に制限弁218を閉鎖する。いくつかの実施形態では、カフ膨張中に観測された圧脈波振幅を分析するアルゴリズムを用いて血圧が判定される。いくつかの実施形態では、カフの膨張に要する時間も監視される。実施形態では、最大脈波振幅のロバスト推定値が得られるので、測定は(現実的条件を仮定して)信頼性が高く、モーションアーチファクト又は他の外乱の結果ではない。実施形態では、脈波振幅が脈波最大値の約50%に達したところで収縮期圧の推定値が求められる。同様に、脈波振幅がそのピーク値の約75%に達したときに拡張期圧が推定される。
【0051】
しかしながら、ステップ342において、ホース214が新生児患者用の対応するカフに接続されていることが特定された場合、方法はステップ352に進み、減圧を用いた測定を開始する。減圧測定は新生児患者用なので、ステップ358において、収縮ステップ中に空気の漏出又は抜出を可能にする場合は測定のブリードステップ中に第1弁218を開放して第2弁220を閉鎖する。血圧測定中に開放されたままの弁218は、弁218の排気路内に位置決めされた流量制限構造222を有する構造である。いくつかの実施形態では、弁218の排気路は、制限構造222を装着した制御オリフィスを有する構成であり、これがさらに、膨張及び収縮中に放出される空気の量を制限することにより膨張速度の制御を可能にする。いくつかの実施形態では、弁218の排気路のオリフィスのサイズは、開放時は0.012インチであるように構成される。実施形態では、制限構造222は、測定後に第2弁220が故障した場合に制限された経路により規制基準の許容マージン内でカフを安全に収縮させることができるようなサイズである。実施形態では、規制基準は、膨張したシステムが容積500mLに基づいて15mmHgに達するのに要する時間に関して指定されるものであり、約30秒であり得る。実施形態では、開放した弁218の排気路の制限は、ポンプのより高いPPMでの運転を可能にしつつ経路が実行可能なバックアップ圧力リリーフを兼ねるように構成される。
【0052】
制限されると、第2弁218は、従来技術で既知の装置で通常行われるよりも高いRPMでポンプ210を運転させることを可能にする。高RPMでのポンプ210の運転は、コントローラにより制御される。ポンプ210の高速運転は、ポンプ210からの空力騒音をより高い周波数に且つ関心の脈波信号から離れてシフトさせ、効果的にフィルタリングできるようにする。弁218により得られる制限経路により、減圧プロセスの制御が容易になり、小型の新生児用カフの正確な圧力制御が得られる。成人/小児モードでの測定は、NIBP測定の直線加圧又は減圧プロセスのいずれかを用いて実行することができる。いくつかの実施形態では、直線加圧測定モードは速度及び快適性のために用いられることが好ましく、減圧モードは、直線加圧測定が失敗した(異常が報告された)場合のフォールバックとして成人/小児測定に好ましい。ステップ360において、測定値がユーザに伝えられる。いくつかの実施形態では、測定データがモニタ206に表示される。
【0053】
上記実施例は、本発明のシステムの多くの用途を説明するものにすぎない。本発明のいくつかの実施形態のみを本明細書に記載したが、本発明の趣旨又は範囲から逸脱しない限り本発明を多くの他の特定の形態で具現してもよいことを理解されたい。したがって、本実施例及び実施形態は、制限的ではなく例示的なものとみなされるべきであり、本発明は、添付の特許請求の範囲内で変更することができる。
【国際調査報告】