(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】エアロゾル発生デバイス用の加熱装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20250123BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20250123BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531387
(86)(22)【出願日】2023-01-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2023052174
(87)【国際公開番号】W WO2023144381
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハ, ケビン
(72)【発明者】
【氏名】フォイヤーシュタイン, サンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ガルシア, エデュアルド ホセ
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AC21
4B162AD06
(57)【要約】
エアロゾル発生デバイス用の加熱装置(100)が開示される。加熱装置(100)は、主長手方向軸を有するとともに、真空(108)が間に閉じ込められる内壁(104)及び外壁(106)を含む真空絶縁体(102)と、エアロゾル形成物質を受け入れることができるキャビティ(110)であって、内壁の径方向内側に位置決めされたキャビティ(110)と、真空絶縁体の内壁に熱接触する、真空絶縁体の内部に設けられたヒータ(112)であって、キャビティ内に受け入れられたエアロゾル形成物質を熱伝導によって加熱してエアロゾルを発生させるように構成された、ヒータ(112)と、ヒータを電源に接続するように構成された1つ以上のワイヤ(132)であって、1つ以上のワイヤは、真空絶縁体の外壁における少なくとも1つの孔を貫通して延び、1つ以上のワイヤは、絶縁体(130)によって円周方向に取り囲まれる、1つ以上のワイヤ(132)とを含む。絶縁体はガラスを含み、1つ以上のワイヤは、絶縁体の熱膨張特性と実質的に一致する熱膨張特性を有する材料から作られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生デバイス用の加熱装置であって、
主長手方向軸を有するとともに、真空が間に閉じ込められる内壁及び外壁を含む真空絶縁体と、
エアロゾル形成物質を受け入れることができるキャビティであって、前記内壁の径方向内側に位置決めされたキャビティと、
前記真空絶縁体の前記内壁に熱接触する、前記真空絶縁体の内部に設けられたヒータであって、前記キャビティ内に受け入れられたエアロゾル形成物質を熱伝導によって加熱してエアロゾルを発生させるように構成された、ヒータと、
前記ヒータを電源に接続するように構成された1つ以上のワイヤであって、前記1つ以上のワイヤは、前記真空絶縁体の前記外壁における少なくとも1つの孔を貫通して延び、前記1つ以上のワイヤは、絶縁体によって円周方向に取り囲まれる、1つ以上のワイヤと
を含み、
前記絶縁体はガラスを含み、前記1つ以上のワイヤは、前記絶縁体の熱膨張特性と実質的に一致する熱膨張特性を有する材料から作られる、
加熱装置。
【請求項2】
前記外壁における第1の孔を貫通して延びる第1のワイヤと、前記外壁における第2の孔を貫通して延びる第2のワイヤとを含む、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記1つ以上のワイヤは、コバールを含む、請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記真空絶縁体内に位置決めされたセンサと、前記センサに接続され、前記真空絶縁体におけるさらなる孔を貫通して延びるセンサワイヤとをさらに含み、前記センサワイヤは、絶縁体によって円周方向に取り囲まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記さらなる孔は、前記真空絶縁体の前記外壁を貫通して延びる、請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記さらなる孔は、前記真空絶縁体の前記内壁と前記外壁との間に延びる、請求項4に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記ヒータは抵抗ヒータである、請求項1から6のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記ヒータは、酸素の存在下で酸化反応を受けやすい材料を有する露出した外表面を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記内壁は、約0.1mm以下の厚さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記絶縁体は、ホウケイ酸ガラスを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記1つ以上のワイヤは各々、前記外壁における異なるそれぞれの孔を貫通して延び、各孔は、対応するワイヤを取り囲む対応する絶縁体を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項12】
それぞれの各孔は、主に、前記外壁に接触する絶縁体の量を最小限に抑えるように前記対応するワイヤを収容するような大きさとされる、請求項11に記載の加熱装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の加熱装置を含む、ユーザが吸入するためのエアロゾルを発生させるように構成されたエアロゾル発生デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生デバイス用の加熱装置に関する。具体的には、本発明は、真空絶縁体を有する加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル発生デバイス用の1つのタイプの加熱装置は、真空絶縁体と、真空絶縁体の内壁に熱接触して設けられたヒータとを使用する。真空絶縁体は、典型的には、内壁に隣接して位置決めされた、エアロゾル発生物質を受け入れることができる中央キャビティを含む。ヒータは、エアロゾル発生基材を加熱して、吸入可能であるエアロゾルを発生させることができる。真空絶縁体は、ユーザがエアロゾル発生デバイスを快適に保持できるように、エアロゾル発生デバイスの外表面をヒータから熱的に絶縁することができる。
【0003】
このタイプの加熱装置を製造する際に克服する課題の1つは、有効な真空を維持しながら、真空絶縁体の外側の電源からヒータにどのように電力を供給するかということにある。本発明の目的は、これらの課題に対処することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、エアロゾル発生デバイス用の加熱装置であって、主長手方向軸を有するとともに、真空が間に閉じ込められる内壁及び外壁を含む真空絶縁体と、エアロゾル形成物質を受け入れることができるキャビティであって、前記内壁の径方向内側に位置決めされたキャビティと、真空絶縁体の内壁に熱接触する、真空絶縁体の内部に設けられたヒータであって、キャビティ内に受け入れられたエアロゾル形成物質を熱伝導によって加熱してエアロゾルを発生させるように構成されたヒータと、ヒータを電源に接続するように構成された1つ以上のワイヤであって、1つ以上のワイヤは、真空絶縁体の外壁における少なくとも1つの孔を貫通して延び、1つ以上のワイヤは、絶縁体によって円周方向に取り囲まれる、1つ以上のワイヤとを含み、絶縁体はガラスを含み、1つ以上のワイヤは、絶縁体の熱膨張特性と実質的に一致する熱膨張特性を有する材料から作られる、加熱装置が提供される。
【0005】
このように、ヒータと電源との電気的接続を可能にしながら、有効な真空を維持することができる。これは、1つ以上ワイヤを外壁における1つ以上の孔に通すことと、ワイヤと真空絶縁体との間に絶縁体を設けることによって達成することができる。本発明は、真空を損なうことなくワイヤを外壁の孔に貫通させて位置決めできる方法を提供する。
【0006】
好ましくは、絶縁体は、熱絶縁体及び電気絶縁体である。熱絶縁は、熱がワイヤに沿って伝導し、それにより真空絶縁体の壁を加熱することを防止するため有利である。電気絶縁は、電源の2つの端子間を短絡させることなく、金属などの電気を伝導する材料で真空絶縁体が作られることを可能にするので有利である。
【0007】
ヒータは、好ましくは、真空絶縁体上に印刷又はコーティングされたトラックヒータである。ヒータは、好ましくは、内壁の外表面に設けられる。
【0008】
外壁は、円周部分と底部分とを有し得る。外壁における面法線ベクトルは、円周部分に径方向に延び、底部分に軸方向に延び得る。少なくとも1つの孔は、円周部分を貫通して又は底部分を貫通して延び得る。いくつかの実施形態では、第1の孔は、円周部分を貫通して延び得、第2の孔は、底部分を貫通して延び得る。
【0009】
好ましくは、加熱装置は、外壁における第1の孔を貫通して延びる第1のワイヤと、外壁における第2の孔を貫通して延びる第2のワイヤとを含む。このように、第1のワイヤ及び第2のワイヤ用にそれぞれ別個の孔を設けることができる。これにより、ワイヤ間の効果的な電気的絶縁を提供できることが分かっている。また、これにより、ヒータの異なる箇所への接続のためにワイヤが互いに間隔を空けて配置されることを可能にすることができる。
【0010】
代替的に、外壁は、第1のワイヤと第2のワイヤの両方が貫通して位置決めされる孔を含み得る。この場合、第1のワイヤ及び第2のワイヤは、各ワイヤを円周方向に取り囲む共用の絶縁体シート又は片に埋め込まれ得る。この場合、第1のワイヤ及び第2のワイヤは、電源の端子間の短絡を回避するために、間隔を空けて配置することができる。
【0011】
絶縁体はガラスを含む。一例では、絶縁体は、ホウケイ酸ガラスを含む。他の実施形態では、絶縁体は、他の適切な絶縁ガラス材料を含むことができる。
【0012】
1つ以上のワイヤは、絶縁体の熱膨張特性と実質的に一致する熱膨張特性を有する材料から作られる。これにより、機械的接合の完全性が広い温度範囲にわたって維持されるため、真空チャンバの気密で且つ安定したシールを提供することができる。ヒータへのワイヤの接続に起因してワイヤが伝導によって加熱されるときでも維持される非常に強固な接続をもたらすために、各ワイヤをオーブン内でガラス製の絶縁体と接合することができる。
【0013】
好ましくは、1つ以上のワイヤは、鉄合金の群である、コバールを含む。一例では、ニッケル-コバルト鉄合金を使用することができる。これらの材料は、室温からヒータの少なくとも通常動作温度に及ぶ広範囲の温度にわたってガラスと実質的に同じ熱膨張特性を提供する。
【0014】
好ましくは、絶縁体はホウケイ酸ガラスを含み、1つ以上のワイヤはコバールを含む。この組み合わせは、加熱装置の動作温度全体にわたって真空のための特に有効なシールを提供する。
【0015】
好ましくは、加熱装置は、真空絶縁体内に位置決めされたセンサと、センサに接続されて真空絶縁体におけるさらなる孔を貫通して延びるセンサワイヤとを含み、センサワイヤは、絶縁体によって円周方向に取り囲まれる。これにより、真空の完全性を損なうことなく、主にヒータの動作及び機能を監視するために、真空チャンバ内にセンサを設けることを可能にすることができる。これは、好ましくは、ガラス製の絶縁体で包まれたコバール製のセンサワイヤを用いて達成される。温度センサ又は圧力センサなどの、任意の種類のセンサを使用することができる。いくつかの実施形態では、複数のセンサが設けられ得る。
【0016】
好ましくは、さらなる孔は、真空絶縁体の外壁を貫通して延びる。さらなる孔は、外壁の円周部分又は底部分に設けられ得る。
【0017】
代替的に、さらなる孔は、真空絶縁体の内壁と外壁との間に延びる。
【0018】
いくつかの実施形態では、センサワイヤは、ヒータ用の1つ以上のワイヤと比較して、真空絶縁体の異なる領域に、又は外壁の異なる面に設けられ得る。
【0019】
好ましくは、ヒータは、抵抗ヒータである。ヒータは、内壁に印刷又はコーティングされた電気抵抗トラックを含み得る。抵抗トラックは、内壁の特定のセクションに設けることができ、又は内壁の実質的に全てを覆うように内壁にコーティング又は印刷することができる。抵抗トラックは、トラックの第1の端部から第2の端部まで内壁上の蛇行状又は波状経路を辿り得る。他の例では、ヒータは、内壁に設けられた1つ以上の抵抗加熱板又は要素を含むことができる。加熱板又は要素は、波状又は蛇行状の抵抗トラックとして設けることもできる。
【0020】
好ましくは、ヒータは、酸素の存在下で酸化反応を受けやすい材料を有する露出した外表面を含む。多くのヒータは、耐酸化コーティングが施されていなければヒータの性能に悪影響を及ぼす可能性がある、酸素の存在下で酸化する材料を含む。このように、ヒータが耐酸化コーティングのない露出した外表面を有することを可能にすることで、ヒータが真空内に設けられることを利用して、ヒータをより安価にし、低質量化し、及び/又はより容易に生産できるようにする。
【0021】
好ましくは、内壁は、約0.1mm以下の厚さを有する。このように、内壁は、真空絶縁体の大幅に改善された熱効率の閾値に対応する厚さを有する。外壁は、約0.25mmの厚さを有し得る。
【0022】
好ましくは、1つ以上のワイヤは各々、外壁における異なる孔を貫通して延び、各孔は、対応するワイヤを取り囲む対応する絶縁体を含む。より好ましくは、それぞれの各孔は、主に、外壁に接触する絶縁体の量を最小限に抑えるように対応するワイヤを収容するような大きさとされる。このように、各孔は、真空絶縁体内の真空をより良好に保持する、絶縁体に接触する外壁の円周又は周長を最小限に抑えるような大きさとすることができる。当業者であれば、「主に単一のワイヤを収容するような大きさとされる」とは、各ワイヤの周囲への絶縁体の実際的な組み付けを依然として可能にする一方で、単一の絶縁ワイヤを保持するように各孔が可能な限り小さく作成されることを意味することを理解するであろう。したがって、いくつかの例では、各孔は、その対応するワイヤの直径の約1.5倍、2倍、又は3倍の直径を有し得る。各孔内の絶縁体は、対応するワイヤの厚さと略等しい厚さを有して、すなわちワイヤの厚さの約0.5倍~2倍の厚さを有して対応するワイヤを取り囲み得る。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、ユーザが吸入するためのエアロゾルを発生させるように構成されたエアロゾル発生デバイスであって、上記したような加熱装置を含む、エアロゾル発生デバイスが提供される。
【0024】
ここで、図面を参照して例として本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態による加熱装置の斜視図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態による加熱装置の一部の概略断面図を示す。
【
図3A】本発明の一実施形態による加熱装置の一部の斜視図を示す。
【
図3B】本発明の一実施形態による加熱装置の一部の斜視図を示す。
【
図3C】本発明の一実施形態による加熱装置の一部の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の一実施形態によるエアロゾル発生デバイス用の加熱装置の概略斜視図を示す。
図2は、
図1に示す加熱装置の一部の概略断面図を示す。
【0027】
図1及び
図2を参照すると、加熱装置100が提供され、加熱装置100は、内壁104と外壁106との間に真空108が閉じ込められるように、互いに径方向に間隔を空けて配置された、内壁104と外壁106とを含む真空絶縁体102を含む。加熱装置100は、内壁104に隣接して設けられたキャビティ110であって、チップラッパーによって一緒に保持されたタバコロッド及びフィルタを含む消耗品を受け入れるように構成されたキャビティ110を含む。消耗品は、内壁104との摩擦によって適所に保持されるように、ユーザがキャビティ110への開口部111を通してキャビティ110に挿入することができる。
【0028】
ヒータ112は、真空108内に且つ内壁104の外表面に設けられる。ヒータ112は、ヒータ112に電流が流れると加熱され、この熱を伝導によって内壁104に伝えるように構成される。次いで、熱は、内壁104の内表面がキャビティ110内の消耗品及び空気を加熱するように、伝導によって内壁104を介して伝達される。ヒータ112には、エアロゾル発生デバイス上に設けられたバッテリ又は任意の他の電源によって電力を供給することができる。
【0029】
外壁106は、キャビティ110内に径方向に延びる面法線ベクトルを有する円周部分106aと、真空絶縁体102の主長手方向軸に平行な面法線ベクトルを有する底部分106bとを含む。第1のヒータワイヤ114及び第2のヒータワイヤ116は各々、底部分106bにおけるそれぞれの孔に挿通され、エアロゾル発生デバイス上に設けられた電源及び制御電子機器にヒータ112を電気的に接続するように構成される。第1の接続リード118は、ヒータ112の第1の端部120を第1のヒータワイヤ114に電気的に接続するために設けられる。第2の接続リード122は、第2のヒータワイヤ116をヒータ112の第2の端部124に電気的に接続するために設けられる。第1の接続リード及び第2の接続リード118、122は、ヒータ112又は内壁104に溶着され得る。
【0030】
真空絶縁体102内に温度センサ(図示せず)が設けられる。第1のセンサワイヤ126及び第2のセンサワイヤ128もまた、底部分106bにおけるそれぞれの孔を貫通して設けられる。第1のセンサワイヤ126及び第2のセンサワイヤ128は、エアロゾル発生デバイス上に設けられた電源及び制御電子機器に温度センサを電気的に接続するように構成される。第1のセンサワイヤ126及び第2のセンサワイヤ128は、各センサワイヤを温度センサに電気的に接続するように構成された追加のそれぞれの接続リード(図示せず)にも取り付けられ得る。
【0031】
第1及び第2のヒータワイヤ114、116、並びに第1及び第2のセンサワイヤ126、128は、まとめて「ワイヤ」132と称されることがある。
図1及び
図2に示すように、ワイヤ132の各々は、底部分106bにおけるそれぞれの孔を貫通して設けられる。ワイヤ132の各々は、真空絶縁体102の内部への空気の侵入を防止する複数の気密シール130のうちの1つによって底部分106bに接合される。シール130の各々は、ワイヤ132のうちの1つを円周方向に取り囲む絶縁体を含む。
【0032】
真空絶縁体102は、中空であり、その湾曲した内壁104と湾曲した外壁106との間に真空108を閉じ込める。真空絶縁体102は、真空絶縁体102が消耗品を完全に取り囲むことを可能にする略円筒形状を有する。真空絶縁体102は、ヒータ112がエアロゾル発生基材を効果的に加熱できる一方で、エアロゾル発生デバイスの他の部分、特にユーザによって保持されるエアロゾル発生デバイスの部分を加熱しないように、熱絶縁を提供する。真空絶縁体102は、
図1に示すように、その主長手方向軸に沿って細長い。これにより、真空絶縁体102が、タバコを含む細長いロッドの形態の消耗品を受け入れることが可能となる。真空絶縁体102は、その長手方向軸に平行な、真空絶縁体102の端部の一方に沿って見ると、略楕円形又は略円形の断面形状を有する。しかしながら、他の実施形態では、真空絶縁体102は、他のタイプの断面形状、例えば略正方形又は略多角形の形状を有し得る。
【0033】
真空絶縁体102は、消耗品を受け入れるための開口部111を一方の長手方向端部に含み、反対側の端部では閉鎖されている。したがって、
図1及び
図2に示すように、真空絶縁体102は、その長手方向軸に垂直方向に見て、カップ状の断面を有する。他の実施形態では、真空絶縁体102は、その長手方向軸に垂直方向に見て、管状の断面を有するように、両方の長手方向端部が開放している場合がある。そのような場合、外壁106は、円周部分106aのみ又は主に円周部分106aを含み得、ワイヤ132の各々は、それぞれのシール130によって取り囲まれる一方で、円周部分106aにおけるそれぞれの孔を貫通して設けられ得る。
図1及び
図2の実施形態では、内壁104及び外壁106は、開口部111が見られる真空絶縁体102の同じ端部において互いに接合又は溶着される。底部分106b及び円周部分106aもまた、
図2に示す接合部134において接合又は溶着される。
【0034】
開口部111及び内壁104は、内壁104の長手方向の全範囲にわたって同じ横断面を有する。他の実施形態では、開口部111は、ユーザが消耗品をキャビティ110により容易に挿入することを可能にするために外方に広がっている場合がある。
【0035】
外壁106はステンレス鋼を含む。他の実施形態では、外壁106は、他の金属、合金、又はプラスチックなどの、他の適切な材料を含むことができる。外壁106の円周部分106aは、実質的又は全体的に円筒状の単一の曲面を含む。外壁106は、代替形状の真空絶縁体に応じて他の形状を有することができる。
【0036】
内壁104は、約0.1ミリメートル(mm)以下の厚さを有し得る。比較的薄い厚さを有することによって、真空絶縁体102の熱質量が低減され、内壁104を通ってキャビティ110及び消耗品に伝わる熱伝導率が高まる。特に、内壁104の外面によって、キャビティ110から離れる方向に伝導される熱は少なくなる。0.1mm以下の閾値は、これらの機構による加熱装置100のエネルギー効率を向上させる点で重要であることが分かっている。特に、0.1mmの内壁厚さは、0.25mmの内壁厚さと比較して、大幅に向上した熱効率をもたらすことが分かっている。
【0037】
外壁106は、約0.25mmの厚さを有し得、この厚さは、向上した機械的堅固さ及び熱絶縁性を真空絶縁体102に与えるために、0.1mmの厚さよりも好ましい場合がある。
【0038】
キャビティ110は、実質的に円筒状であり、内壁104にすぐ隣接して位置決めされる。好ましくは、消耗品がキャビティ110内に受け入れられたときに消耗品が内面に直接接触できるように、キャビティ110に面する内壁104の側、すなわち内壁104の「内表面」には、実質的に又は全く追加の構成要素がない。これにより、内壁104から消耗品への熱伝達の効率を最大化することができる。さらに、追加の構成要素がないことで、加熱装置の熱質量が小さく保たれ、これにより、タバコをエアロゾル発生温度まで加熱するのに必要な時間を改善することができる。
【0039】
図1及び
図2の実施形態では、ヒータ112は、電流が印加されると熱を発生させるように構成された抵抗ヒータである。ヒータ112は、ヒータ112の第1の端部120から第2の端部124に延びる巻線状の抵抗加熱トラックを含む。トラックは、
図1に示すように、内壁104の長さに沿った波状経路を辿る。ヒータ112の第1の端部120及び第2の端部124は、それぞれ第1の接続リード118及び第2の接続リード122に接続される。第1のヒータワイヤ114は、エアロゾル発生デバイスにおけるバッテリの第1の端子と電気的に接続するように構成され、第2のヒータワイヤ116は、バッテリの反対側の端子と接続するように構成される。したがって、加熱装置100の動作中に、加熱トラックを通して電流を供給するためにバッテリを使用することができる。次に、ヒータ112の電気抵抗によって、第1のヒータワイヤ114及び第2のヒータワイヤ116を通ってヒータ112を流れる電流に応じてヒータ112が熱を発生させる。
【0040】
ヒータ112は、内壁104の外面に印刷又はコーティングされる。他の実施形態では、ヒータ112は、内壁104に設けられ、取り付けられた加熱要素又は加熱板を含むことができる。したがって、ヒータ112は、キャビティ110に「トレース加熱」を提供し得る。ヒータ112は、
図1に示すように、内壁104の略全長が加熱を受けるように、内壁104の表面に波形状を有し得る。他の実施形態では、ヒータ112は、内壁104の略全周及び/又は略全領域を覆い得る。
【0041】
ヒータ112は、酸素の存在下で酸化反応を受けやすい材料を含み得、また、耐酸化コーティングなしに設けられ得る。このようにヒータ112を真空108にさらすことで、真空絶縁体102内の酸素の欠乏を利用して、ヒータ112をより安価にし及び/又はより容易に製造できるようにする。
【0042】
この実施形態では、ワイヤ132の各々は、ホウケイ酸ガラスなどの、ガラスの特性と一致する特定の熱膨張特性を呈するように構成された鉄合金の群である、コバールを含む。一例では、コバールは、30~200℃で約5×10-6/K、800℃で約10×10-6/Kの熱膨張特性を有し得る。ホウケイ酸ガラスは、20℃で3×10-6/Kの熱膨張係数を有し得る。コバールは、ホウケイ酸ガラスと一致する熱膨張特性を有するように構成することができるため、ホウケイ酸ガラスが特に好ましい。これにより、広い温度範囲にわたってホウケイ酸ガラスがコバール製のワイヤの周囲に密封シールを形成することが可能となる。
【0043】
シール130の各々は、それぞれのワイヤ132のうちの1つを円周方向に取り囲む絶縁体を含む。各シール130は、底部分106bにおけるそれぞれの孔に埋め込まれ、ワイヤ132の各々は、それぞれの孔を貫通して位置決めされる。この実施形態では、シール130は、コバール製のワイヤ132及びシール130が広範囲の温度にわたって気密接合部を形成することを可能にする、ガラスを含む。典型的には100℃を超える温度で動作する、ヒータ112からの熱が、内壁104及び円周部分106aを通しての伝導によって底部分106bに到達する可能性があるため、実質的に一致する熱膨張特性を有することが重要である。したがって、ワイヤ132及びシール130のためのこの特定の材料選択は、広範囲の動作温度にわたって特に効果的な機械的接合を提供し、それにより、真空の完全性を維持するのに役立つ。追加的に、ガラスは、ワイヤ132から底部分106bを電気的に絶縁し、それにより、ワイヤ132から外壁106への電気伝導を防止するための別個の絶縁層が不要になる。
【0044】
加熱装置100の製造中に、シール130は、ワイヤ132をシール130に挿通する前に、底部分106bにおける孔の内側で環状に予め成形される。その後、シール130及びワイヤ132は、冷却後に強固な永久接合部を形成するように、オーブンを用いて互いに接合又は溶着され得る。これにより、加熱装置100を製造する簡便な方法が提供され得る。
【0045】
他の実施形態では、ワイヤ132及びシール130は、それぞれ、他の導電材料及び絶縁材料を含み得る。特に、ワイヤ132及びシール130は、加熱装置100の典型的な動作温度にわたって実質的に一致する熱膨張特性を有するように選択された材料を含み得る。
【0046】
図1及び
図2の実施形態では、ワイヤ132は、外壁106の底部分106bにおける孔を貫通して設けられる。しかしながら、他の実施形態では、ワイヤ132及びシール130は、外壁106上の他の箇所に、例えば円周部分106aにおける孔を貫通して又は底部分106b上の異なる位置に設けられ得る。
【0047】
温度センサ(図示せず)は、真空絶縁体102内における外壁106の内面又は内壁104の外面に設けられ得る。温度センサは、ヒータ112又はキャビティ110の温度を検出し、加熱装置100を組み込んだエアロゾル発生デバイス上に設けられたコントローラに検出温度を送信するように構成することができる。温度センサは、第1のセンサワイヤ126又は第2のセンサワイヤ128の一方又は両方に取り付けられた1つ以上の追加の接続リード(図示せず)を介して検出温度を送信し得る。一例では、温度センサは、サーミスタを含み得る。他の実施形態では、温度センサは、圧力センサなどの、他のタイプのセンサに併設することができ、又は他のタイプのセンサに置き換えることができる。
【0048】
上記したように、加熱装置100をエアロゾル発生デバイスと共に使用するか又はエアロゾル発生デバイス内に設けることができる。エアロゾル発生デバイスは、典型的には、ヒータ112に電力を供給するためのバッテリ又は他の電源と、ユーザがヒータ112を起動することを可能にするためのボタン又は他の入力機構と、ヒータ112などの、デバイスの電子構成要素を制御するためのコントローラとを含む。加熱装置100は、エアロゾル発生デバイスのハウジング内に設けられ得、ハウジングは、加熱装置100の開口部111と位置合わせされた開口部を含む。エアロゾル発生デバイスは、電子喫煙デバイスとして構成され得る。
【0049】
加熱装置100は、タバコとフィルタとを含む消耗品と共に使用されるように構成され、タバコ及びフィルタは、チップラッパーによって一緒に保持され得る。消耗品は円筒状ロッドであり得るが、キャビティ110内に受け入れられるように設計された他の形状の消耗品も使用することができる。他の形態のエアロゾル形成物質もタバコに代えて又は加えて使用され得る。
【0050】
ここで、
図1及び
図2を参照して、エアロゾル発生デバイス内で使用される加熱装置100の例示的な使用について説明する。
【0051】
使用時に、ユーザは、開口部111を通して消耗品をキャビティ110に挿入することができる。ユーザが気化を開始する準備を整えると、ユーザは、エアロゾル発生デバイス上に設けられたボタンを押し、その後、コントローラが、第1のヒータワイヤ114及び第2のヒータワイヤ116を介してバッテリからヒータ112に電流が流れることを許容し得る。ヒータ112は、伝導及び放射によって内壁104に伝達される熱を、ヒータ112の電気抵抗により発生させる。
【0052】
ヒータ112が動作している間、真空絶縁体102内の真空108により、キャビティ110からの熱の漏洩が抑制される。このように、キャビティ110、ヒータ112、及び真空絶縁体102は、消耗品中のタバコを所望のエアロゾル発生温度まで加熱できる高効率の加熱オーブンを形成する。コントローラは、タバコの燃焼温度よりも低い温度までタバコを加熱するようにヒータ112に指示するように構成され得る。キャビティ110がエアロゾル発生温度に達するまでに数秒かかる場合がある。
【0053】
タバコが加熱されるにつれて、キャビティ110内にエアロゾルが生成される。次いで、ユーザは、フィルタを介してキャビティ110から空気を引き込むことによってエアロゾルを吸入することができる。これにより、ユーザがキャビティ110からエアロゾルを連続的に吸入できるように、開口部111の周縁からキャビティ110に空気が引き込まれ得る。
【0054】
同時に、ヒータ112が動作している間、熱は、放射と、真空絶縁体102の壁を通しての伝導とによってシール130及びワイヤ132に到達する。ワイヤ132及びシール130は、ワイヤ132及びシール130の温度上昇と実質的に同じ割合で熱膨張することを可能にする、それぞれコバール及びガラスを含む。これにより、ヒータ112がオンにされており、加熱装置100がピーク動作温度に達している間でも、確実且つ気密な機械的接合が提供される。
【0055】
図1及び
図2の実施形態では、真空絶縁体102を通しての伝導によってワイヤ132及びシール130に伝達されるヒータ112からの熱は、開口部111における内壁104と外壁106との間の接合部に向かって上方に移動しなければならない。続いて、熱は、底部分106bに到達してワイヤ132及びシール130を加熱する前に円周部分106aを下方に移動しなければならない。したがって、この実施形態では、底部分106bは、真空絶縁体102を通って移動するヒータ112からの熱の最大「伝導経路長さ」に実質的に対応する。熱が伝導によって移動している間、一部の熱は、放射によって内壁104に再び伝達されるか、又は真空絶縁体102から失われる。よって、最小伝導経路長さの観点から、ヒータ112からより遠くの領域に到達する熱が少なくなる。これらのさらなる領域は、一般的に、使用中の真空絶縁体102の最も冷たい領域に対応する。最も冷たい領域は、概して、真空絶縁体の特定の形状とヒータの位置とによって決まる。
【0056】
したがって、ワイヤ132及びシール130を底部分106bに位置決めすることによって、真空絶縁体102の壁を通しての伝導によりキャビティ110から失われる熱の量を最小限に抑えることで加熱装置100の効率を高めることができる。
【0057】
図3A~
図3Cは、本発明の様々な実施形態による加熱装置の一部の斜視図を示す。
図3Aは、
図1及び
図2の真空絶縁体102の底部分106bの斜視図を示す。
【0058】
図3Bは、上記したような加熱装置100内で底部分106bに代えて使用され得る代替的な底部分206bを示す。底部分206bは、2つのヒータワイヤと2つ以上のセンサワイヤとを含む、複数のワイヤ232を含む。ワイヤ232の各々は、底部分206bにおけるそれぞれの孔を貫通して設けられ、複数のシール230のうちの1つによってシールされる。底部分206bは、さらなる数のセンサ又は他の電子構成要素が真空絶縁体102内に設けられることを可能にし得る。
【0059】
ワイヤ232及びシール232は、上記したようなワイヤ132及びシール130の実施形態のいずれかと同じように構成され得る。特に、ワイヤ232及びシール230は、それぞれコバール及びガラスを含み得るか、又は代替的に、上記したような他の適切な導体及び絶縁体を含み得る。
【0060】
図3Cは、上記したような加熱装置100内で底部分106bに代えて使用され得る代替的な底部分306bを示す。底部分306bは、ヒータ112のいずれか一方の端部との接続のための2つの個別のヒータワイヤを備える中央の対の加熱ワイヤを含む、複数のワイヤ332を含む。ワイヤ332はまた、真空絶縁体102内に設けられた2つのセンサとの接続のために設けられた4つのより細いワイヤを含む。底部分306bは、ステンレス鋼(又は他の適切な材料)のリングと、リングの内側に設けられて外壁106の略円形端部を形成するガラスを含む絶縁シート330とを含む。ワイヤ332の各々は、絶縁シート330におけるそれぞれの孔を貫通して設けられ、絶縁シート330に気密に接合される。したがって、絶縁シート330は、ワイヤ332の各々を円周方向に取り囲む。ワイヤ332は、ワイヤ332のいずれかの間の短絡を防止するために間隔を空けて配置される。シール330の絶縁特性によって、ワイヤ332の各々の間の不必要な電気的接続が防止される。
【0061】
さもなければ、ワイヤ332及び絶縁シート330は、上記したようなワイヤ132及びシール130の実施形態と同じように構成され得る。特に、ワイヤ332及び絶縁シート330は、それぞれコバール及びガラスを含み得るか、又は代替的に、他の適切な導体及び絶縁体を含み得る。
【0062】
図3Aの実施形態に戻ると、この配置の1つのさらなる利点は、底部分106bとシール130との間の接合部の全周に関する。この実施形態では、各ワイヤ132及び対応するシール130は、底部分106bにおける専用孔を貫通して設けられる。各ワイヤ132に専用孔を使用することは、孔がより小さな直径を有することができ、これによって、シール130と底部分106bとの間の全接触周長が最小限に抑えられることを意味する。このことは、底部分106bがシール130の熱膨張特性と一致する熱膨張特性を有しない場合があるため、密閉真空108のより確実な保持に寄与する。
【0063】
対照的に、例えば、
図3Cの実施形態は、単一の絶縁シート330と、いくつかのワイヤ332を収容するような大きさとされる内孔を備えたリングを含む底部分306bとを使用する。したがって、
図3Cでは、絶縁シート330と底部分306bとの間の接合部又は境界面の円周は、底部分306bを構成するリングの内周に等しい。この配置は、
図3Aの配置と比較して、絶縁シート330と底部分306bとの接触部の円周がより大きくなる場合があり、
図3Aと同様の実施形態と比較して、真空108を保持するのにあまり効果的でない場合がある。
【0064】
4つのワイヤ132を有する
図3Aの例では、各ワイヤ132に専用孔を使用することによって、絶縁シートを用いた4つのワイヤの同様の配置と比較して、各専用孔の大きさを調整することでシール130と底部分106bとの間の境界部分の全周を大幅に低減することができる。
【0065】
各孔の大きさは、真空絶縁体102の構造を妨げることなく、すなわち、真空108を維持しながらシール130及びワイヤ132を組み付けることを過度に困難にすることなく、可能な限り小さくされ得る。したがって、各孔は、主に、換言すれば実際的に可能な限り、シール130と底部分106bとの間の接触周長を最小限に抑えるような大きさとされる。
【0066】
これらの利点は、各ワイヤ232に専用孔を同様に使用する、
図3Bの配置にも等しく適用される。このように使用される専用孔は、外壁106上の別の箇所にも位置決めされ得る。
【国際調査報告】