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特表2025-502955抗体内包金属フラーレン複合体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】抗体内包金属フラーレン複合体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20250123BHJP
   A61K 33/244 20190101ALI20250123BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 49/16 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 49/10 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 41/17 20200101ALI20250123BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K33/244
A61K47/06
A61K49/16
A61K49/10
A61K9/08
A61K9/12
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 125
A61K41/17
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540930
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-15
(86)【国際出願番号】 US2023060922
(87)【国際公開番号】W WO2023141518
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/300,698
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521230148
【氏名又は名称】ワイエーイー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュマン,フェルナンド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA24
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB22
4C076BB27
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD21
4C076DD34
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF67
4C084AA11
4C084AA19
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA57
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA07
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZC711
4C084ZC751
4C085HH03
4C085KA03
4C085KA36
4C085KB11
4C085KB12
4C085KB37
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA52
4C086MA57
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA07
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZC71
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、癌及び他の増殖性疾患の治療における使用のための内包金属フラーレン誘導体に関する。特に、本発明は、金属フラーレン-抗体複合体又はそれを含む組成物及びX線照射などの電離放射線療法の併用投与を含む、増殖性疾患、特に癌の治療のための内包フラーレン抗体複合体及びその誘導体の使用を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低レベルの電離放射線と組み合わせた増殖性疾患の治療における使用のための式(I):
AbC@F2v (I)
(Abは、細胞結合剤を示す;
Mは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウム又はその組み合わせを含む群から選択される元素の周期表における希土類元素を示す;
Fは、v炭素原子を有するフラーレン分子を示す;
Cは、フラーレンFを前記Abとつなぐリンカーを示す;
nは、1~3の整数を示す;
mは、0~3の整数を示す;並びに
vは、約20~約60の整数を示す)
の内包金属フラーレン-抗体複合体であって、
前記金属フラーレン-抗体複合体は、任意選択で、前記電離放射線によって治療上活性化される、内包金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項2】
Abは、キメラ、CDR移植、ヒト化又は組換えヒト抗体を含む群から選択される細胞結合剤であり、より好ましくは、Abは、腫瘍関連抗原又は細胞表面受容体に特異的に結合する、請求項1に記載の金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項3】
Abは、以下:HER2、HER2、HER3、HER4 CD52、VEGF(血管内皮成長因子)、EGFR(上皮成長因子受容体)、CD11a、CCR4(ケモカインC-C受容体4)、CD105、CD123、CD137、CD19、CD22、CD23、CD3、CD30、CD38、CD4、CD40、CD55SC-1、CD56、CD6、CD74、CD80、CS1(細胞表面糖タンパク質1)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4、別名CD152)、DR5(細胞死受容体5)、Ep-CAM(上皮細胞接着分子)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、GPNMB、糖タンパク質NMB、HGF/SF(肝細胞成長因子/細胞分散因子)、IGF-1(インスリン様成長因子)、IGF1-受容体(インスリン様成長因子-1受容体)、IL13(インターロイキン-13)、IL6(インターロイキン-6)、IL-6R(インターロイキン-6受容体)、免疫優性真菌性抗原、熱ショックタンパク質90(hsp90)、インテグリンアルファ5ベータ3、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスII、MN-抗原(別名G250抗原)、MUC1、PD-1(プログラム死1)、PIGF(胎盤成長因子)、PDGFRa(血小板由来成長因子受容体アルファ)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク質)、CD200受容体、核内因子カッパBリガンド受容体活性化因子(RANKL)、スフィンゴシン-1-リン酸(SIP)、TGFベータ(トランスフォーミング成長因子ベータ)、TRAIL(腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘発リガンド)受容体1、腫瘍壊死因子受容体2、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR-2)、CD33、CD20、CA125(癌抗原125)又は上皮成長因子受容体を標的にする癌腫学において使用される抗体又は抗体断片の群から選択される、請求項1に記載の金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項4】
前記抗体は、EGFR、HER2、HER3及びHER4結合抗体の1つ以上から選択される、請求項2に記載の金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項5】
前記抗体は、デパツキシズマブ、バリサクマブ及びトラスツズマブの1つ以上から選択される、請求項2に記載の金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項6】
Mは、ホルミウム、ルテチウム及びスカンジウムの1つ以上から選択される、請求項1に記載の金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項7】
前記増殖性疾患は、癌である、請求項1に記載の金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項8】
癌の種類は、肺癌、前立腺癌、頭頸部癌、膵臓癌、結腸/結腸直腸癌、膀胱癌、甲状腺癌、乳癌細胞、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌細胞、腎臓癌、脳癌又は黒色腫の1つ以上の群から選択される、請求項7に記載の金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項9】
前記低レベルの電離放射線は、約0.02mGy~約60Gyの範囲に及ぶ、請求項1に記載の金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項10】
請求項1に記載の金属フラーレン-抗体複合体及び薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又はビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項11】
経口投与、静脈内投与、局所投与、吸入による投与又は坐剤を介した投与に適した形態をした請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
追加の治療剤をさらに含む請求項1に記載の金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項13】
細胞増殖関連障害又は疾患を治療するための方法であって、式(I):
AbC@F2v (I)
(Abは、細胞結合剤を示す;
Mは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウム又はその組み合わせから選択される元素の周期表における希土類元素を示す;
Fは、v炭素原子を有するフラーレン分子を示す;
Cは、フラーレンFを前記Abとつなぐリンカーを示す;
nは、1~3の整数を示す;
mは、0~3の整数を示す;並びに
vは、約20~約60の整数を示す)
の有効量の金属フラーレン-抗体複合体を患者に投与すること、並びに
低レベルの電離放射線を投与することを含み、前記金属フラーレン-抗体複合体は、任意選択で、前記電離放射線によって治療上活性化される、方法。
【請求項14】
Abは、キメラ、CDR移植、ヒト化又は組換えヒト抗体を含む群から選択される細胞結合剤であり、より好ましくは、Abは、腫瘍関連抗原又は細胞表面受容体に特異的に結合する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Abは、以下:HER2、HER2、HER3、HER4 CD52、VEGF(血管内皮成長因子)、EGFR(上皮成長因子受容体)、CD11a、CCR4(ケモカインC-C受容体4)、CD105、CD123、CD137、CD19、CD22、CD23、CD3、CD30、CD38、CD4、CD40、CD55SC-1、CD56、CD6、CD74、CD80、CS1(細胞表面糖タンパク質1)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4、別名CD152)、DR5(細胞死受容体5)、Ep-CAM(上皮細胞接着分子)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、GPNMB、糖タンパク質NMB、HGF/SF(肝細胞成長因子/細胞分散因子)、IGF-1(インスリン様成長因子)、IGF1-受容体(インスリン様成長因子-1受容体)、IL13(インターロイキン-13)、IL6(インターロイキン-6)、IL-6R(インターロイキン-6受容体)、免疫優性真菌性抗原、熱ショックタンパク質90(hsp90)、インテグリンアルファ5ベータ3、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスII、MN-抗原(別名G250抗原)、MUC1、PD-1(プログラム死1)、PIGF(胎盤成長因子)、PDGFRa(血小板由来成長因子受容体アルファ)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク質)、CD200受容体、核内因子カッパBリガンド受容体活性化因子(RANKL)、スフィンゴシン-1-リン酸(SIP)、TGFベータ(トランスフォーミング成長因子ベータ)、TRAIL(腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘発リガンド)受容体1、腫瘍壊死因子受容体2、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR-2)、CD33、CD20、CA125(癌抗原125)又は上皮成長因子受容体を標的にする癌腫学において使用される抗体又は抗体断片の群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体は、EGFR、HER2、HER3及びHER4結合抗体の1つ以上から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体は、デパツキシズマブ、バリサクマブ及びトラスツズマブの1つ以上から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
Mは、ホルミウム、ルテチウム及びスカンジウムの1つ以上から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記増殖性疾患は、癌である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
癌の種類は、肺癌、前立腺癌、頭頸部癌、膵臓癌、結腸/結腸直腸癌、膀胱癌、甲状腺癌、乳癌細胞、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌細胞、腎臓癌、脳癌及び黒色腫の1つ以上から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記低レベルの電離放射線は、約0.02mGy~約60Gyの範囲に及ぶ、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記複合体は、賦形剤、希釈剤又はビヒクルを含む薬学的に許容される組成物中に含まれる、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記医薬組成物は、経口投与、静脈内投与、局所投与、吸入による投与又は坐剤を介した投与に適した形態をしている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1つ以上の追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記金属フラーレン-抗体複合体は、静脈内注入の用量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記複合体は、第1選択療法として前記患者に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
前記複合体は、第2、第3、第4、第5又は第6選択の治療として前記患者に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
前記複合体は、少なくとも1回の抗癌療法による治療後に前記患者に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞増殖関連障害又は疾患は、少なくとも1つの抗癌剤に対して抵抗性である、請求項13に記載の方法。
【請求項30】
細胞増殖関連障害又は疾患を治療するための前記方法は、前記患者において転移を阻害する、請求項13に記載の方法。
【請求項31】
前記複合体は、前記患者に投与され、前記複合体が前記標的細胞に集中したら、続いて低レベルの電離放射線を投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項32】
前記低レベルの電離放射線は、前記複合体の投与の24時間以内に、好ましくは12時間以内に、より好ましくは6時間以内に前記患者に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
式(I):
AbC@F2v (I)
(Abは、細胞結合剤を示す;
Mは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウム又はその組み合わせから選択される元素の周期表における希土類元素を示す;
Fは、v炭素原子を有するフラーレン分子を示す;
Cは、フラーレンFを前記Abとつなぐリンカーを示す;
nは、1~3の整数を示す;
mは、0~3の整数を示す;並びに
vは、約20~約60の整数を示す)
のコンピューター断層撮影造影薬の調製における使用のための内包金属フラーレン-抗体複合体。
【請求項34】
患者において腫瘍を画像診断するための方法であって:
請求項33に記載の内包金属フラーレン-抗体複合体の有効量を前記患者に投与すること;及び
前記患者の組織を低レベルの電離放射線に被ばくさせることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、開示がこれによって全文組み込まれる2022年1月19日に出願された米国仮特許出願第63/300,698号に対する優先権及び利益を主張するPCT国際特許出願として2023年1月19日に出願されている。
【0002】
分野
金属フラーレン-抗体複合体の使用及び増殖性疾患、詳細には癌を治療するための方法が、本明細書において開示される。実施形態は、癌細胞を選択的に標的にする内包金属フラーレン-抗体複合体を含む併用療法及び1つ以上の特定の電離放射線療法と組み合わせた癌の治療のためのその使用を含む。実施形態はまた、そのような構成要素を含むキット及び前記1つ以上の併用療法による増殖性疾患、詳細には癌の治療のための方法も含む。
【背景技術】
【0003】
背景
正常細胞は、成長因子受容体チロシンキナーゼなどの成長因子受容体の、それらのそれぞれのリガンドによる高度に制御された活性化によって増える。
【0004】
癌細胞もまた、成長因子受容体の活性化によって増殖するが、正常な増殖の制御を喪失している。制御の喪失は、成長因子の自己分泌、受容体の発現の増加及び成長因子によって調節される生化学的経路の自律的活性化などの一連の要因によって引き起こされてもよい。
【0005】
正常細胞は、一般に、単一の核、大きな細胞質体積、制御された成長と、同一の球状の細胞形状を有し、一般に、それらの目的の場所にとどまる。一方、癌細胞などの悪性細胞は、例えば図1において図示されるように、ふぞろいな細胞形状及びサイズ、複数のふぞろいな形状の核、小さな細胞質体積を有する並びに/又は制御されていない成長を有する。
【0006】
癌は、冠状動脈疾患の次にヒトが死亡する第2位の主な原因である。世界規模で、何百万人もの人々が、毎年、癌又は関連疾患で死ぬ。米国のみでは、米国癌学会によって報告されるように、癌は、毎年500,000人を超える人々の死亡を引き起こし、1年につき120万超の症例が新たに診断されている。心疾患由来の死亡は、かなり減少してきているが、癌に起因する死亡は、増加していると報告されている。癌は、今後の数十年において死亡の主な原因になると予測される。
【0007】
世界的に、いくつかの悪性腫瘍は、主な致死性の癌として突出する。特に、肺、前立腺、乳房、結腸、膵臓及び卵巣の癌腫は、癌による死亡の主要な原因にあたる。これらの及びほとんどすべての他の癌腫は、共通の致死性の要因を共有する。ほとんど例外なしに、癌腫由来の転移性疾患は、致命的である。さらに、最初の癌を初期に乗り切る癌患者でさえ、共通の経験は、彼らが新たな再発エピソードを有していない場合であっても、彼らの生活が劇的に変わっていることを示した。多くの癌患者は、再発又は治療が効かないといった可能性を意識することが動因となる強いメンタルヘルスへの影響を経験する。多くの生存患者、とりわけ再発を経験する患者は、治療後に身体的な衰弱を経験する。
【0008】
癌の中で、結腸癌、肺癌、乳癌、胃癌、前立腺癌、膵臓癌などの固形癌として知られている臓器及び固形組織から発生する癌は、最も一般的に確認されるヒト癌の一つである。
【0009】
2005年に、推定2700万人の人々が、世界的に、癌に罹患しており、510万人の死亡が、悪性腫瘍のせいだとされた。毎年、1000万件超の新たな症例があり、その数は、次の15年の間に50%成長することが予想される。現在の癌治療は、一般に、侵襲手術、放射線療法及び化学療法に制限されており、それぞれ、重度の副作用、非特異的な毒性並びに/又は人のボディーイメージ及び/若しくは生活の質に精神的外傷を与える変化を伴うことが知られている。癌は、化学療法に対して抵抗性になるかもしれず、これは、さらに、選択肢及び成功の可能性を低下させるかもしれない。ある種類の癌についての診断は、他よりも不十分で、肺癌又は膵臓癌のようないくつかのものは、大抵致命的である。加えて、乳癌などの比較的高い治療成功率を有する特定の癌もまた、非常に高い発生率を有し、よって、重大な死因のままである。
【0010】
例えば、毎年、世界規模で、100万件超の乳癌の新たな症例がある。乳癌を治療するための治療は、一般に、放射線及び化学療法による、乳房組織及びリンパ節の最小限~根治的な外科的除去を含む。限局性癌についての成功率は、比較的良く、5年生存率はおよそ50%である。しかしながら、ほとんど不治である転移性癌については、およそ2年の平均生存期間が予想される。400,000人近い女性が、医薬品及び特異的な治療におけるあらゆる向上にもかかわらず、毎年乳癌で死んでおり、女性における癌による死亡の数で最も高く、肺癌による死亡より多い。
【0011】
肝臓癌は、予後不良を有する別の癌にあたり、毎年の新たな症例は50万件よりも多く、治療の有効性が不良なために死亡の数が同数に近い。肝細胞癌は、すべての肝臓癌のおよそ80%の原因となっており、めったに治らない。5年生存率は、わずか約10%であり、診断後の生存期間は、多くの場合、6ヵ月未満である。患部組織の外科的切除は有効となり得るが、それは、肝硬変の存在を理由に、大半の症例について選択肢とならない。
【0012】
2021年の米国における膀胱癌の米国癌学会の推定は、約83,730件の膀胱癌の新たな症例(男性において約64,280件及び女性において約19,450件)並びに膀胱癌による約17,200人の死亡(男性において約12,260件及び女性において約4,940件)である。新たな膀胱癌及び膀胱癌に関連する死亡の率は、近年女性においてわずかに下がってきていた。男性において、発生率は減少してきていたが、死亡率は安定していた。現在の治療は、化学療法の血管内送達及び結核菌による全身感染の追加のリスクを伴うカルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチンによる免疫療法を含む。この積極的な治療法にもかかわらず、これらの表在性乳頭状腫瘍の70%は、長期臨床経過の間に再発し、浸潤癌に進行するものもある。
【0013】
現在の治療が有効性の不足により並びに/又は高い罹患率及び重度の副作用を有するといった理由で患者の必要を満たしていない悪性腫瘍についてのさらに多くの例がある。本明細書において提示される統計及び一般のデータは、より優れた安全性及び有効性プロファイルを有する癌治療の必要をよく示す。
【0014】
現在の癌治療が不完全である原因の1つは、患部組織及び細胞に対する選択性の不足である。外科的除去は、一般に、「安全域」として明らかに正常な組織の除去を伴い、これは、病的状態及び合併症のリスクを増加させるかもしれない。それは、常に、腫瘍細胞が播種しているかもしれない及び患部臓器又は組織の機能を維持する又は回復させることができるかもしれない健康な組織のいくらかを除去する。さらに、従来の放射線及び化学療法は、作用様式が非特異的であることにより、腫瘍又は癌細胞だけでなく多くの正常細胞も死滅させる又はそれに損傷を与えるかもしれない。これは、重度の悪心、体重減少及び脱毛等の深刻な副作用並びに将来二次癌を発症するリスクの増加をもたらすかもしれない。癌細胞に対してより高い選択性を有する治療は、正常細胞を無傷のまま残し、よって、転帰、副作用プロファイル及び生活の質を改善すると思われ、現在、当分野において最も大きな課題の1つとなっている。
【0015】
癌治療の選択性は、癌細胞上にだけ又は主に癌細胞上に存在する分子に対して特異的である抗体を使用することによって改善することができる。そのような抗体は、標的分子の、例として癌細胞の機能を遮断する又は改変するのみならず、免疫系を調整し且つ患者の自身の免疫系によって癌の認識及び破壊を向上させるために使用することができる。抗体はまた、薬、遺伝子、毒素又は他の医学的に適切な分子を癌細胞に向けるために使用されてもよい。
【0016】
放射線療法
放射線療法又は照射療法は、一般に悪性細胞を制御する又は死滅させるための癌治療の一部としての、電離放射線の医学的使用である。放射線療法は、多くの種類の癌において完治的であってもよく、原発性悪性腫瘍を除去するための手術後に腫瘍再発を予防するために、完治的療法の一部として使用されてもよい。放射線療法は、一般に、選択された癌における化学療法の前、その間及びその後に使用される。
【0017】
放射線療法は、一般的に、細胞成長を制御するその能力を理由に、癌性腫瘍に適用される。電離放射線は、被ばくした組織のDNAに損傷を与えることによって作用し、細胞死に至る。正常組織(腫瘍を治療するために放射線が通過しなければならない皮膚又は臓器など)もまた、放射線量を受け、時に深刻な副作用に至る細胞損傷及び死を引き起こす。
【0018】
酸素欠乏腫瘍細胞は、放射線及び既存の化学療法技術に対して抵抗性である。癌性腫瘍とは対照的に、正常組織は、いかなる低酸素細胞も有していない。したがって、腫瘍における低酸素細胞の放射線感受性を放射線増感剤を導入することによって向上させる場合、癌を治療するための照射療法は、より有効となる。放射線増感剤などの様々な化合物を使用して細胞の放射線感受性を増加させるための試みがなされてきたが、結果は複雑で、選択的に癌細胞を攻撃しながら、放射線療法の副作用を最小限にするために克服するべき多くの課題がまだある。
【0019】
照射療法を受けている患者のほとんどの症例において、細胞死滅を生じさせることを目的とする、別々の回にわたって行われる、標的領域へのおよそ40~60Gyの放射線の線量は、許容される又は医学的標準の範囲内にあると考えられる。これらの「高」線量は、標的組織からの距離と共に減少すると思われ、組織の中には、「低線量」(100mGy以下)と呼ばれる線量を受けるものもあるかもしれない。
【0020】
対照的に、放射線診断手順は、一般に、標的臓器に対して少ない線量しかもたらさない。以下の表は、放射線診断による被ばくからの有効線量の範囲の推定を要約する。
【0021】
【表1】
【0022】
すべての症例において、照射療法は、特に、高線量が一回で又は短い期間内に投与される必要がある場合、程度は様々であるが、患者の命及び回復に悪い影響を及ぼすかもしれない望ましくない副作用を引き起こすことが知られている。
【0023】
コンピューター断層撮影
コンピューター断層撮影(CT)は、高分解能、低費用及び高画像診断効率という利点を有し、医療現場において最も一般的に使用される画像診断法の1つになった。CTは、体内の軽微な病変を見つけるため、検査部位を画像診断するために人体の様々な組織ごとのX線の吸収及び透過における差を利用する。現在、市場に出ているほとんどのCT造影剤は、ヨウ素化合物を含有する。ヨウ素は、大きな原子番号を有し、ほとんどのヨウ素含有化合物は、強力な組織浸透力を有し、適切なエリアにおける強化は、画像診断の明るさを増加させ、診断精度を改善することができる。
【0024】
しかしながら、これらの一般的に使用される造影剤が腫瘍組織との親和性を欠いているので、CTは、大量の腫瘍血液供給を通して腫瘍病変の密度を増加させることができるが、程度が限られており、腫瘍病変に対する特異性を欠いている。そのため、CT及びMRIスキャンは、腫瘍診断のための非常に信頼性があるパラメータ指標をなお欠いている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
このために、本出願の目的及び趣旨の1つはまた、CT造影スキャニングのための腫瘍組織ガイド機能を有する静脈造影剤であり且つCTスキャンによる腫瘍病変の分解能及び可能性としてそれらの治療を改善する腫瘍標的造影剤を提供することであってもよい。
【0026】
本発明の構成要素としてのフラーレンの化学的特性
フラーレンは、六角形及び五角形が配置した、sp2混成炭素から主として構成される、閉じたかご状の分子である。フラーレン(例えばC60)は、最初に、蒸発した炭素から凝縮によって生成される、閉じた球状のかごとして確認された。フラーレンは、典型的に、炭素原子の数に従って分類される、例えばC60-フラーレン、C70-フラーレン、C76-フラーレン、C78-フラーレン、C80-フラーレン等。最も知られているフラーレンの1つは、図2において図示されるように、「C60」又は「バッキーボール」と一般的に呼ばれるバックミンスターフラーレン(IUPAC名(C60-Ih)[5,6]フラーレン)である。抗体-内包フラーレン複合体が、複合体形成の際に2つ以上のsp3混成炭素を含む内包フラーレンを含んでいてもよいことは十分に理解される。
【0027】
フラーレン及びそれらの誘導体は、超伝導物質、触媒及び非線形光学材料として有用である。生物医学分野において、フラーレン化合物は、薬又は触媒のための分子キャリアとして並びに癌に対する標的療法における放射性金属のキャリアとして及び放射性核種トレーサとして有用性を見出す。
【0028】
C60フラーレンは、ビタミンCの125倍の抗酸化力を有する非常に強力な酸化防止剤である。その抗酸化特性に加えて、C60フラーレンはまた、フリーラジカルを捕捉する及び皮膚細胞を活性化する(死亡の予防)などの機能も有する。1990年以降、C60フラーレンのフリーラジカル捕捉機能に対する研究において大きな進歩が遂げられてきた。多くの科学的研究結果は、C60フラーレンが非常に強力なフリーラジカル捕捉分子であることを立証し、これは、癌治療のための新たな療法の研究において著しい発展を生む可能性を有する。
【0029】
内包フラーレン
内包金属フラーレン(EMF)は、金属又は金属クラスターを封入するフラーレンである。内包金属フラーレンは、閉じ込められた金属原子から炭素かごへの電子移動が起こることが知られているといった理由で興味深いクラスのフラーレンであり、これは、しばしば、フラーレンの電気的及び磁気的特性を劇的に改変する。フラーレンの発見以来、炭素構造の中に様々な成分を封入するための多くの試みは、医学的及び生物学的診断薬及び治療薬における多くの用途に適した注目すべき構造的、電気的及び化学的特性を有する化合物の供給をもたらしてきた。
【0030】
内包金属フラーレン(EMF)は、それらの形状、様々な封入剤の収容能力及び生物学的環境からの良好な分離を理由に、とりわけ魅力的なナノ粒子であり、次世代の診断用及び治療用生物医学的薬剤を設計するための理想的なナノプラットフォームにあたる。これらのナノ粒子は、血液プールから腫瘍組織中への血管外遊出を容易に受け、リンパ液排出不良を理由に保持され得る。腫瘍組織の近くのナノサイズの粒子の選択的蓄積というこの現象は、血管透過性滞留性亢進(又はEPR)効果と呼ばれ、腫瘍組織の近くのナノ粒子の蓄積に至る。内包金属フラーレンの最近の製造及び分離の成功は、内包金属フラーレンの化学的機能化を促進しており、これは、それらの物理的及び化学的特性の明確化を容易にする。
【0031】
EMFの治療上の可能性もまた、非常に関心のあるエリアであった。数多くの検討は、フラーレンのフリーラジカル捕捉能力を実証し、一部の著者がフラーレンを「フリーラジカルスポンジ」として記載したほどであった。加えて、Gd@C82プラットフォームなどの少数の金属フラーレンについて抗腫瘍特性及びラジカル捕捉特性が報告されている。
【0032】
腫瘍及び癌を含む増殖性疾患の重症度及び広さのために、外科手術、化学療法及び放射線治療の弱点を克服するそのような疾患の治療のための有効な医薬組成物、使用及び方法が大いに必要とされる。フラーレン、特に、本明細書において記載される内包フラーレンは、癌を含む増殖性疾患の治療のための効果的な新規な方法の開発にとって適した候補にあたる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、正常細胞(1)対癌又は悪性(2)細胞の概略図を示す図である。
図2図2は、フラーレンC60-かごの化学構造の概略図を示す図である。
図3図3は、電離放射線をあてた内包フラーレンの概略図を示す図である。
図4図4は、正常細胞(1)、正常な膜受容体(1a)、悪性細胞(2)、改変された膜受容体(3)及び改変された膜受容体(3)の金属フラーレン-抗体複合体(5)への結合の概略図を示す図である。
図5図5は、低レベルの電離放射線(6)にかけた金属フラーレン-抗体複合体(5)への、改変された膜受容体(3)の結合の概略図を示す図である。
図6図6は、低レベルの放射線(6)にかけた、2つのフラーレン成分を含む金属フラーレン-抗体複合体(5)の細胞結合成分(4)への、改変された膜受容体(3)の結合の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
ここで、特定の実施形態を詳しく参照する。列挙した実施形態について説明するが、それらは、本発明をそれらの実施形態に限定することを意図するものではないことが理解される。これに反して、本発明は、代替物、変形物及び等価物を包含することが意図され、これらは、請求項によって定められる本発明の範囲内に含まれていてもよい。当業者は、本明細書において記載される方法に等価ないくつかの方法を認識し、これらは、本発明の実施において使用することができる。組み込まれた文献及び類似資料の1つ以上が、これらに限定されないが、定義された用語、用語の使い方、説明される技術又はその他同種のものを含め、本出願と異なる又は一致しない場合、本出願が統制をとる。
【0035】
先行技術における上述の問題を解決するために、本開示の目的は、癌を含む増殖性疾患の治療における使用のために電離放射線によって治療上活性化される内包金属フラーレン誘導体並びに腫瘍及び癌の治療のための治療方法を提供することとする。
【0036】
本発明は、特定の癌細胞の改変された受容体又は膜を標的にするモノクローナル若しくはポリクローナル抗体-内包金属フラーレン複合体又はそれを含む組成物を患者に投与することであって、金属は希土類元素である投与すること及び続いて、X線照射などの低強度の電離放射線の放射源を、患者、特に腫瘍が位置するエリアにあてることにより、生体内原位置で前記癌細胞を標的にすることができ、治療の有効性は高く、細胞の遺伝物質、そのDNA、その膜、受容体又はその組み合わせに損傷を与え、放射線の線量をそれほど必要とせず、続いて、引き起こされる望ましくない副作用は少ない~全くないという発見に基づく。
【0037】
特に、驚くべきことに、電離放射線に対する希土類金属元素の反応性は、フラーレン内に金属元素を埋め込み、よって内包フラーレンを形成することによって指数関数的に増加するかもしれないことがわかった。X線照射に対する、希土類ランタニド金属を封じ込めている60-、80-炭素又は82-炭素フラーレン誘導体などのフラーレンの反応性は、有望な結果を示した。ランタニド内包フラーレンを、例えば160電子ボルトのX線照射にかけた場合、ランタニド元素に電子を失うよう促す反応が起き、ランタニド元素は、より低いレベルの原子に遷移する。その遷移している電子の空いている場所は、続いて、希土類ランタニド元素からの外殻電子が占め、そのような電子遷移によって産み出されるエネルギーは、炭素フラーレンかご又は別のランタニド原子によって吸収される。ここで電子移動連鎖反応とも呼ばれるこの現象は、分子に低X線照射をあてることによって、放射線による細胞の損傷の誘発を容易にし、これは、フラーレンかごが産み出すエネルギー吸収に基づき、そのような低X線放射の効果を向上させ、高度に特異的な局所的及び標的細胞損傷を産み出してもよい。さらに、本明細書において記載される電子移動連鎖反応は、金属フラーレン-抗体複合体を取り囲む又はその近くに位置するすべての悪性細胞において生体内原位置での細胞損傷を可能にし、これは、治療の選択性を増加させ、健康な正常細胞への損傷を低下させる。本発明の金属フラーレン-抗体複合体は、そのため、電離放射線のアクセプター及びそのエンハンサーとして作用する可能性を有する。
【0038】
本発明は、増殖性疾患、特に癌の治療における使用のための内包金属フラーレン-抗体複合体並びに前記複合体を含む組成物を提供する。本発明は、X線照射などの低レベル電離放射線と組み合わせて患者に内包金属フラーレン-抗体複合体を投与することを含む方法をさらに記載する。本発明の内包金属フラーレン-抗体複合体及び方法は、驚くべきことに、高い治療効率を達成しながら、患者における前記放射線の被ばくの必要を抑えることを示した。別の実施形態では、本発明は、内包金属フラーレンを含む組成物及び腫瘍標的造影剤としてのその使用を提供する。
【0039】
本発明は、癌及び他の増殖性疾患の最先端の治療法における飛躍的な発展にあたり、以下を含む利点を有する。
【0040】
悪性(癌)細胞の高度に特異的なターゲティング
本発明によって達成される癌細胞における生体内原位置での細胞損傷は、特定の悪性細胞を標的にし、それらのすぐ近くに蓄積する金属フラーレン-抗体複合体の投与により容易にされる。上記に説明されるように、金属フラーレン-抗体複合体は、電離放射線のアクセプター及びそのエンハンサーとして作用し、金属フラーレン-抗体複合体のそのような標的投与は、悪性細胞のみを標的にし、死滅させる電離放射線の特異性を増加させ、よって、健康な正常細胞への損傷を低下させ、従来の照射療法において通常見られるものとはっきりとした対照をなす。
【0041】
低レベルの電離放射線
本発明の方法の特異性の増加の結果として、放射線量は、電離放射線の効果を維持しながら又はさらに改善しながら、同時にその放射能毒性を低下させながら、大幅に減少させることができる。詳細な説明において説明されるように、本発明は、従来の治療と比較して、悪性細胞を破壊するのに必要な電離放射線の量を低下させる可能性を有する。
【0042】
広範囲の癌細胞の種類
本発明の内包金属フラーレン-抗体複合体が様々な成長因子、受容体又は膜と結合する1つ以上の抗体キャリアを含んでいてもよいことを想定すれば、本発明の方法は、肺癌、前立腺癌、頭頸部癌、膵臓癌、結腸/結腸直腸癌、膀胱癌、甲状腺癌、乳癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌細胞、腎臓癌、脳癌又は黒色腫細胞を含む広範な悪性癌を標的にして、死滅させる能力を有する。いくつかの症例において、腫瘍細胞は、非小細胞肺癌(NSCLC)細胞とすることができる。
【0043】
本発明の特定の実施形態では、フラーレンが内包金属フラーレンである金属フラーレン-抗体複合体が、記載され、これは、癌を含む増殖性疾患の治療において有用である。
【0044】
本発明によれば、低レベルの電離放射線と組み合わせた増殖性疾患の治療における使用のための内包金属フラーレン-抗体複合体は、式(I):
AbC@F2v (I)
(Abは、細胞結合剤を示す;
Mは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム又はその組み合わせから選択される元素の周期表における希土類元素を示す;
Fは、v炭素原子を有するフラーレンを示す;
Cは、フラーレンFを抗体Aと化学結合させるリンカーを示す;
nは、1~3の整数を示す;
mは、0~3の整数を示す;及び
vは、約20~約60の整数を示す)
によって示され、金属フラーレン-抗体複合体は、電離放射線によって治療上活性化される。
【0045】
本発明の一態様では、Abは、キメラ、CDR移植、ヒト化又は組換えヒト抗体から選択される細胞結合剤である。好ましくは、Abは、腫瘍関連抗原又は細胞表面受容体に特異的に結合する。別の態様では、Abは、以下を標的にする癌腫学において使用される抗体又は抗体断片の群から選択される:HER2、CD52、VEGF(血管内皮成長因子)、EGFR(上皮成長因子受容体)、CD11a、CCR4(ケモカインC-C受容体4)、CD105、CD123、CD137、CD19、CD22、CD23、CD3、CD30、CD38、CD4、CD40、CD55SC-1、CD56、CD6、CD74、CD80、CS1(細胞表面糖タンパク質1)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4、別名CD152)、DR5(細胞死受容体5)、Ep-CAM(上皮細胞接着分子)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、GPNMB、糖タンパク質NMB、HGF/SF(肝細胞成長因子/細胞分散因子)、IGF-1(インスリン様成長因子)、IGF1-受容体(インスリン様成長因子-1受容体)、IL13(インターロイキン-13)、IL6(インターロイキン-6)、IL-6R(インターロイキン-6受容体)、免疫優性真菌性抗原、熱ショックタンパク質90(hsp90)、インテグリンアルファ5ベータ3、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスII、MN-抗原(G250抗原)、MUC1、PD-1(プログラム死1)、PIGF(胎盤成長因子)、PDGFRa(血小板由来成長因子受容体アルファ)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク質)、CD200受容体、核内因子カッパBリガンド受容体活性化因子(RANKL)、スフィンゴシン-1-リン酸(SIP)、TGFベータ、TRAIL(腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘発リガンド)受容体1、腫瘍壊死因子受容体2、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR-2)、CD33、CD20、CA125(癌抗原125)又は上皮成長因子受容体。
【0046】
別の態様では、金属フラーレン-抗体複合体の抗体は、HER2(トラスツズマブ)-25%~30%の乳癌によって過剰発現される細胞表面チロシンキナーゼ受容体であるヒト上皮成長因子受容体2型(HER2)に対して特異的な治療用モノクローナル抗体から選択される。別の態様では、金属フラーレン-抗体複合体の抗体は、EGFR(デパツキシズマブ)-過剰発現が多くの癌に関連し、過剰発現(アップレギュレーション又は増幅として知られている)が、肺の腺癌(症例の40%)、肛門癌、膠芽腫(50%)及び頭頸部の上皮腫瘍を含む多くの癌と関連してきた上皮成長因子受容体に対して特異的なモノクローナル抗体から選択される。別の態様では、金属フラーレン-抗体複合体の抗体は、VEGF(バリサクマブ)-過剰発現が転移の過程における初期の段階であるかもしれない血管内皮成長因子に対して特異的な抗体から選択される。
【0047】
別の態様では、Mは、好ましくは、ホルミウム、ルテチウム、スカンジウム、ガドリニウム及びその組み合わせから選択される元素の周期表における希土類元素を示す。
【0048】
一態様では、抗体は、mが例えば2である場合、例えばAb[CM@F2v,CM2v]として示される複合体を提供するために、2つ又は3つなどの複数の内包金属フラーレンを含んでいてもよい。
【0049】
別の態様では、mは、0(ゼロ)であり、その場合、Ab及びM成分は、直接連結される。
【0050】
式(I)の内包金属フラーレン及びそれらのそれぞれの抗体複合体は、知られている手順に従って調製されてもよい。例えばBolskar、Chen、Shultz及びYangを参照されたい。
【0051】
さらに別の態様では、本発明は、低レベルの電離放射線と組み合わせた増殖性疾患の治療における使用のための有効量の式(I)の金属フラーレン-抗体複合体及び薬学的に許容されるキャリア又はビヒクルを含む医薬組成物を提供する。好ましくは、低レベルの電離放射線と組み合わせた増殖性疾患の治療における使用のために、金属フラーレン-抗体複合体は、電離放射線によって治療上活性化される。
【0052】
さらに別の態様では、本発明は、増殖関連障害又は疾患の治療のための内包金属フラーレン-抗体複合体の使用を提供する。本発明はまた、増殖関連障害又は疾患の治療のための低レベルの電離放射線と組み合わせた金属フラーレン-抗体複合体の使用も提供する。さらに別の態様では、本発明は、増殖関連障害又は疾患の治療のためのX線などの電離放射線を通して治療上活性化される金属フラーレン-抗体複合体の使用を提供する。
【0053】
別の態様では、本発明は、癌を治療するための方法であって、過剰増殖性障害を有するヒトに、金属フラーレン-抗体複合体及び薬学的に許容される希釈剤、キャリア又は賦形剤を含む組成物を投与することを含む方法を含む。別の態様では、本発明は、腫瘍細胞又は癌細胞の分裂増殖を予防する及び/又は治療するための方法であって、過剰増殖性障害を有する患者などの哺乳動物に、増殖関連障害又は疾患、好ましくは癌の治療のために、低レベルの電離放射線と組み合わせて、有効量の金属フラーレン-抗体複合体を投与することを含む方法を提供する。
【0054】
別の態様では、本発明は、有効量の式(I)の内包金属フラーレン-抗体複合体又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される希釈剤、キャリア又は賦形剤を含む医薬組成物を含む。組成物は、さらに、治療有効量の化学療法剤を含んでいてもよく、増殖関連障害又は疾患の治療のために低レベルの電離放射線と組み合わせて提供される。
【0055】
医薬組成物は、経口投与、静脈内投与、局所投与、吸入による投与又は坐剤を介した投与に適した形態をしている。
【0056】
本発明による方法は、腫瘍エリアに式(I)の内包金属フラーレン-抗体複合体又は複合体を含む組成物を提供するステップ及び処理された腫瘍エリアを本明細書において定められる電離放射線に被ばくさせるステップを含んでいてもよい。
【0057】
本発明による方法はまた、腫瘍エリアを式(I)の金属フラーレン-抗体複合体により処理するステップ、複合体又はその構成要素を腫瘍エリア中に又はその周辺に集中させるステップ及び処理された腫瘍エリアを本明細書において定められる電離放射線に被ばくさせるステップを含んでいてもよい。
【0058】
式(I)の金属フラーレン-抗体複合体及び電離放射線、好ましくは低強度の放射線の投与は、式(I)の金属フラーレン-抗体複合体、その成分及び電離放射線のいずれかにより個々に達成される併用効果よりも大きな、抗腫瘍効果などの相乗効果を生成することを示した。
【0059】
さらなる態様では、本発明は、CT造影薬の調製において使用するための式(I)の内包金属フラーレン-抗体複合体の使用を開示する。
【0060】
本発明において、用語「電離放射線」は、十分なエネルギーを有する粒子若しくは光子を含む又は原子核との相互作用を介して十分なエネルギーを生成し、電離(電子の獲得若しくは喪失)を生じさせることができる放射線を意味する。例示的な及び好ましい電離放射線は、X線放射であり、これは、好ましくは、低強度の放射線である。標的組織又は細胞にX線放射を送達するための手段は、当技術分野においてよく知られている。与えられた細胞において必要な電離放射線の量は、一般に、その細胞の性質次第であるが、一般に、伝統的な照射療法によって必要とされるものよりも低い。本明細書において使用されるように、電離放射線の「有効線量」という用語は、本発明の内包フラーレン複合体と同時に与えられ、任意選択で化学療法剤とさらに組み合わせられた場合に細胞の損傷又は死における増加を生じさせる電離放射線の線量を意味する。有効線量は、約0.02mGy~約60Gy並びに例えば0.04mGy、0.06mGy、0.08mGy、0.1mGy、0.2mGy、0.4mGy、0.6mGy、0.8mGy、1mGy、2mGy、4mGy、6mGy、8mGy、10mGy、20mGy、40mGy、60mGy、80mGy、100mGy、200mGy、400mGy、600mGy、800mGy、1000mGy(又は1Gy)、2Gy、4Gy、6Gy、8Gy、10Gy、12Gy、14Gy、16Gy、18Gy、20Gy、22Gy、24Gy、26Gy、28Gy、30Gy、32Gy、34Gy、36Gy、38Gy、40Gy、42Gy、44Gy、46Gy、48Gy、50Gy、52Gy、54Gy、56Gy及び58Gyを含むその間のすべての値の線量を含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0061】
語句「薬学的に許容される」は、物質又は組成物が、製剤を含む他の成分及び/又はそれにより治療されている哺乳動物と化学的に及び/又は毒性学的に適合性であることを示す。
【0062】
語句「治療有効量」又は「有効量」は、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与された場合に、(i)特定の疾患、状態若しくは障害を治療する若しくは予防する、(ii)特定の疾患、状態若しくは障害の1つ以上の症状を弱める、回復させる若しくは排除する又は(iii)本明細書において記載される特定の疾患、状態若しくは障害の1つ以上の症状の発症を予防する若しくは遅延させるのに十分である本明細書において記載される化合物の量を意味する。そのような量に対応する化合物の量は、特定の化合物、疾患の状態及びその重症度、治療を必要とする人の個性(例えば体重)などの要因次第で変動するが、それにもかかわらず、当業者によってルーチン的に決定することができる。
【0063】
用語「治療する」又は「治療」は、治療的、予防的、対症的又は防止的処置を指す。有益な又は所望の臨床結果は、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の安定した(すなわち悪化していない)状態、疾患進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の回復又は緩和及び寛解(部分的であるか総合的であるかにかかわらず)を含むが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長することを意味することもできる。治療を必要とする人々は、すでに状態若しくは障害を有する人々及び状態若しくは障害を有する傾向がある人々又は状態若しくは障害を予防するべき人々を含む。
【0064】
与えられた治療(例えば、増殖性障害(例えば癌)の治療又はCTスキャニング)において使用するための内包金属フラーレン-抗体複合体の量が決定されてもよい。例えば、注射用のHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)は、一般に、特定の投薬量及びスケジュールに従って、術後補助乳癌、転移性乳癌及び転移性乳癌の治療のためにあげられる。HERCEPTIN(登録商標)PI。本明細書において開示される内包金属フラーレン-抗体複合体の量は、HERCEPTIN(登録商標)に関しては、同じ量、例えば2mg/kg、4mg/kg、6mg/kg及び/又は8mg/kgで投薬されてもよい。投薬スケジュールは、腫瘍成長及び/又はサイズを最小限にするような、本明細書において開示される低レベルの電離放射線の投与と関連してもよい。前述のことを考慮して、内包金属フラーレン-抗体複合体の有効量は、約0.001mg/kg~約100mg/kg及びその間のすべての値の範囲に及ぶ。
【0065】
用語「約」は、ほぼ、の辺り、だいたい又はおよそを意味するために本明細書において使用される。用語「約」が数値範囲と併せて使用される場合、それは、記載される数値の上及び下に限度を広げることによってその範囲を修飾する。一般に、用語「約」は、20%の変動幅によって、示される値の上及び下に数値を修飾するために本明細書において使用される。
【0066】
態様
態様1.低レベルの電離放射線と組み合わせた増殖性疾患の治療における使用のための式(I):
AbC@F2v
(I)
(Abは、細胞結合剤を示す;
Mは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウム又はその組み合わせを含む群から選択される元素の周期表における希土類元素を示す;
Fは、v炭素原子を有するフラーレン分子を示す;
Cは、フラーレンFをAbとつなぐリンカーを示す;
nは、1~3の整数を示す;
mは、0~3の整数を示す;並びに
vは、約20~約60の整数を示す)
の内包金属フラーレン-抗体複合体であって、
金属フラーレン-抗体複合体は、任意選択で、電離放射線によって治療上活性化される、内包金属フラーレン-抗体複合体。
【0067】
態様2.Abは、キメラ、CDR移植、ヒト化又は組換えヒト抗体を含む群から選択される細胞結合剤であり、より好ましくは、Abは、腫瘍関連抗原又は細胞表面受容体に特異的に結合する、態様1の金属フラーレン-抗体複合体。
【0068】
態様3.Abは、以下:HER2、HER2、HER3、HER4 CD52、VEGF(血管内皮成長因子)、EGFR(上皮成長因子受容体)、CD11a、CCR4(ケモカインC-C受容体4)、CD105、CD123、CD137、CD19、CD22、CD23、CD3、CD30、CD38、CD4、CD40、CD55SC-1、CD56、CD6、CD74、CD80、CS1(細胞表面糖タンパク質1)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4、別名CD152)、DR5(細胞死受容体5)、Ep-CAM(上皮細胞接着分子)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、GPNMB、糖タンパク質NMB、HGF/SF(肝細胞成長因子/細胞分散因子)、IGF-1(インスリン様成長因子)、IGF1-受容体(インスリン様成長因子-1受容体)、IL13(インターロイキン-13)、IL6(インターロイキン-6)、IL-6R(インターロイキン-6受容体)、免疫優性真菌性抗原、熱ショックタンパク質90(hsp90)、インテグリンアルファ5ベータ3、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスII、MN-抗原(別名G250抗原)、MUC1、PD-1(プログラム死1)、PIGF(胎盤成長因子)、PDGFRa(血小板由来成長因子受容体アルファ)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク質)、CD200受容体、核内因子カッパBリガンド受容体活性化因子(RANKL)、スフィンゴシン-1-リン酸(SIP)、TGFベータ(トランスフォーミング成長因子ベータ)、TRAIL(腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘発リガンド)受容体1、腫瘍壊死因子受容体2、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR-2)、CD33、CD20、CA125(癌抗原125)又は上皮成長因子受容体を標的にする癌腫学において使用される抗体又は抗体断片の群から選択される、態様1~2のいずれか1つの金属フラーレン-抗体複合体。
【0069】
態様4.抗体は、EGFR、HER2、HER3及びHER4結合抗体の1つ以上から選択される、態様2の金属フラーレン-抗体複合体。
【0070】
態様5.抗体は、デパツキシズマブ、バリサクマブ及びトラスツズマブの1つ以上から選択される、態様2の金属フラーレン-抗体複合体。
【0071】
態様6.Mは、ホルミウム、ルテチウム及びスカンジウムの1つ以上から選択される、態様1~5のいずれか1つの金属フラーレン-抗体複合体。
【0072】
態様7.増殖性疾患は、癌である、態様1~6のいずれか1つの金属フラーレン-抗体複合体。
【0073】
態様8.癌の種類は、肺癌、前立腺癌、頭頸部癌、膵臓癌、結腸/結腸直腸癌、膀胱癌、甲状腺癌、乳癌細胞、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌細胞、腎臓癌、脳癌及び黒色腫の1つ以上から選択される、態様7の金属フラーレン-抗体複合体。
【0074】
態様9.低レベルの電離放射線は、約0.02mGy~約60Gyの範囲に及ぶ、態様1~8のいずれか1つの金属フラーレン-抗体複合体。
【0075】
態様10.態様1~8のいずれか1つの金属フラーレン-抗体複合体及び薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又はビヒクルを含む医薬組成物。
【0076】
態様11.経口投与、静脈内投与、局所投与、吸入による投与又は坐剤を介した投与に適した形態をした態様10の組成物。
【0077】
態様12.追加の治療剤をさらに含む態様1~9のいずれか1つの金属フラーレン-抗体複合体又は態様10~11のいずれか1つの医薬組成物。
【0078】
態様13.細胞増殖関連障害又は疾患を治療するための方法であって:
式(I):
AbC@F2v (I)
(Abは、細胞結合剤を示す;
Mは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウム又はその組み合わせから選択される元素の周期表における希土類元素を示す;
Fは、v炭素原子を有するフラーレン分子を示す;
Cは、フラーレンFをAbとつなぐリンカーを示す;
nは、1~3の整数を示す;
mは、0~3の整数を示す;
vは、約20~約60の整数を示す)
の有効量の金属フラーレン-抗体複合体を患者に投与すること、並びに
低レベルの電離放射線を投与することを含み、金属フラーレン-抗体複合体は、好ましくは、電離放射線によって治療上活性化される、方法。
【0079】
態様14.Abは、キメラ、CDR移植、ヒト化又は組換えヒト抗体を含む群から選択される細胞結合剤であり、より好ましくは、Abは、腫瘍関連抗原又は細胞表面受容体に特異的に結合する、態様13の方法。
【0080】
態様15.Abは、以下:HER2、HER2、HER3、HER4 CD52、VEGF(血管内皮成長因子)、EGFR(上皮成長因子受容体)、CD11a、CCR4(ケモカインC-C受容体4)、CD105、CD123、CD137、CD19、CD22、CD23、CD3、CD30、CD38、CD4、CD40、CD55SC-1、CD56、CD6、CD74、CD80、CS1(細胞表面糖タンパク質1)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4、別名CD152)、DR5(細胞死受容体5)、Ep-CAM(上皮細胞接着分子)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、GPNMB、糖タンパク質NMB、HGF/SF(肝細胞成長因子/細胞分散因子)、IGF-1(インスリン様成長因子)、IGF1-受容体(インスリン様成長因子-1受容体)、IL13(インターロイキン-13)、IL6(インターロイキン-6)、IL-6R(インターロイキン-6受容体)、免疫優性真菌性抗原、熱ショックタンパク質90(hsp90)、インテグリンアルファ5ベータ3、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスII、MN-抗原(別名G250抗原)、MUC1、PD-1(プログラム死1)、PIGF(胎盤成長因子)、PDGFRa(血小板由来成長因子受容体アルファ)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク質)、CD200受容体、核内因子カッパBリガンド受容体活性化因子(RANKL)、スフィンゴシン-1-リン酸(SIP)、TGFベータ(トランスフォーミング成長因子ベータ)、TRAIL(腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘発リガンド)受容体1、腫瘍壊死因子受容体2、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR-2)、CD33、CD20、CA125(癌抗原125)又は上皮成長因子受容体を標的にする癌腫学において使用される抗体又は抗体断片の群から選択される、態様13~14のいずれか1つの方法。
【0081】
態様16.抗体は、EGFR、HER2、HER3及びHER4結合抗体の1つ以上から選択される、態様14の方法。
【0082】
態様17.抗体は、デパツキシズマブ、バリサクマブ及びトラスツズマブの1つ以上から選択される、態様14の方法。
【0083】
態様18.Mは、ホルミウム、ルテチウム及びスカンジウムの1つ以上から選択される、態様13~17のいずれか1つの方法。
【0084】
態様19.増殖性疾患は、癌である、態様13~18のいずれか1つの方法。
【0085】
態様20.癌の種類は、肺癌、前立腺癌、頭頸部癌、膵臓癌、結腸/結腸直腸癌、膀胱癌、甲状腺癌、乳癌細胞、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌細胞、腎臓癌、脳癌及び黒色腫の1つ以上から選択される、態様19の方法。
【0086】
態様21.低レベルの電離放射線は、約0.02mGy~約60Gyの範囲に及ぶ、態様13~20のいずれか1つの方法。
【0087】
態様22.複合体は、賦形剤、希釈剤又はビヒクルを含む薬学的に許容される組成物中に含まれる、態様13~21のいずれか1つの方法。
【0088】
態様23.医薬組成物は、経口投与、静脈内投与、局所投与、吸入による投与又は坐剤を介した投与に適した形態をしている、態様22の方法。
【0089】
態様24.1つ以上の追加の治療剤を投与することをさらに含む、態様13~23のいずれか1つの方法。
【0090】
態様25.金属フラーレン-抗体複合体は、静脈内注入の用量で投与される、態様13~24のいずれか1つの方法。
【0091】
態様26.前記複合体は、第1選択療法として患者に投与される、態様13~25のいずれか1つの方法。
【0092】
態様27.前記複合体は、第2、第3、第4、第5又は第6選択の治療として患者に投与される、態様13~25のいずれか1つの方法。
【0093】
態様28.前記複合体は、少なくとも1回の抗癌療法による治療後に患者に投与される、態様13~27のいずれか1つの方法。
【0094】
態様29.前記細胞増殖関連障害又は疾患は、少なくとも1つの抗癌剤に対して抵抗性である、態様13~28のいずれか1つの方法。
【0095】
態様30.細胞増殖関連障害又は疾患を治療するための前記方法は、前記患者において転移を阻害する、態様13~29のいずれか1つの方法。
【0096】
態様31.前記複合体は、患者に投与され、複合体が標的細胞に集中したら、続いて低レベルの電離放射線を投与する、態様13~30のいずれか1つの方法。
【0097】
態様32.低レベルの電離放射線は、複合体の投与の24時間、好ましくは12時間以内に、より好ましくは6時間以内に患者に投与される、態様13~31のいずれか1つの方法。
【0098】
態様33.式(I):
AbC@F2v (I)
(Abは、細胞結合剤を示す;
Mは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウム又はその組み合わせから選択される元素の周期表における希土類元素を示す;
Fは、v炭素原子を有するフラーレン分子を示す;
Cは、フラーレンFをAbとつなぐリンカーを示す;
nは、1~3の整数を示す;
mは、0~3の整数を示す;並びに
vは、約20~約60の整数を示す)
のコンピューター断層撮影造影薬の調製における使用のための内包金属フラーレン-抗体複合体。
【0099】
態様2~12は、態様33に同様に適用可能である。例えば、態様2は、Abは、キメラ、CDR移植、ヒト化又は組換えヒト抗体を含む群から選択される細胞結合剤であり、より好ましくは、Abは、腫瘍関連抗原又は細胞表面受容体に特異的に結合することを明示する。態様2は、態様33及び態様3~12のいずれか1つに同様に適用可能である。
【0100】
態様34.患者において腫瘍を画像診断するための方法であって:
態様33の内包金属フラーレン-抗体複合体の有効量を患者に投与すること;及び
患者の組織を低レベルの電離放射線に被ばくさせることを含む方法。
【0101】
態様2~12は、態様34に同様に適用可能である。例えば、態様2は、Abは、キメラ、CDR移植、ヒト化又は組換えヒト抗体を含む群から選択される細胞結合剤であり、より好ましくは、Abは、腫瘍関連抗原又は細胞表面受容体に特異的に結合することを明示する。態様2は、態様34及び態様3~12のいずれか1つに同様に適用可能である。
【0102】
開示された情報
Chen et al.,Applications of functionalized fullerenes in tumor theranostics、Theranostics(2012)2:238-250(「Chen」)。
【0103】
2018年11月29日時点のHERCEPTIN(登録商標)(trastuzumab)for injection prescribing information(「HERCEPTIN(登録商標)PI」)。
【0104】
Shultz et al.,Encapsulation of a radiolabeled cluster inside a fullerene cage 177LuxLu(3-x)N@C80:an Interleukin-13-conjugated radiolabeled metallofullerene platform,J.Am.Chem.Soc.(2010)132(14):4980-4981。
【0105】
TDA Research,Inc.のBolskar et al.に対して2007年4月24日に発行された米国特許第7,208,132B2号、Purification of endohedral and other fullerenes by chemical methods及びTDA Research,Inc.のBolskar et al.に対して2010年3月2日に発行された米国特許第7,671,230B2号、Bolskar et al.,Derivation and solubilization of insoluble classes of fullerenes(まとめて「Bolskar」)。
【0106】
Yang et al.,Fullerene-biomolecule conjugates and their biomedical applications,International Journal of Nanomedicine(2014)9:77-92(「Yang」)。
【0107】
2022年1月19日に出願された米国仮特許出願第63/300,698号の主題は、参照によって組み込まれる。必要な程度に、本明細書において開示される情報は、これによって参照によって組み込まれる。組み込まれた主題が本明細書において開示される主題と対立する場合、本明細書において開示される主題が統制をとる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】