(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】少なくとも1つの排気再循環システムを備えた自動車の変速時に付与されるトルクを制御する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20250123BHJP
F02P 15/08 20060101ALI20250123BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20250123BHJP
F02M 26/06 20160101ALN20250123BHJP
【FI】
F02D45/00 364A
F02P15/08 301M
F02D43/00 301B
F02D43/00 301N
F02D43/00 301Z
F02M26/06 311
F02M26/06 321
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542216
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2023050816
(87)【国際公開番号】W WO2023139013
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】324012970
【氏名又は名称】ホース パワートレイン ソリューションズ ソシエダッド リミターダ ウニペルソナル
【氏名又は名称原語表記】HORSE POWERTRAIN SOLUTIONS S.L.U
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ロマン ゲルー
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン ネリエール
(72)【発明者】
【氏名】リュック ペレイラ
【テーマコード(参考)】
3G019
3G062
3G384
【Fターム(参考)】
3G019AB04
3G019AB08
3G019AC09
3G062BA08
3G062CA09
3G062DA02
3G062ED01
3G062ED03
3G062GA05
3G062GA30
3G384AA01
3G384BA02
3G384BA24
3G384BA27
3G384CA11
3G384DA04
3G384DA15
3G384FA48Z
(57)【要約】
本発明は、エンジン吸気口に少なくとも1つの部分排気再循環システムを備えた自動車用内燃エンジンによる変速時に付与されるトルクを制御する方法に関する。本方法は、ギア比変更に必要な目標トルク値(C_target)を求めるステップ(ステップ41)と、エンジンの現在の動作点から、点火進角の後退の実行によりエンジンが生成できる第1トルク値(C_withdrawal)を求めるステップ(ステップ42)と、エンジンの現在のトルクよりも低く、そこから前記エンジン(6)の点火進角の後退のみを用いて目標トルク値(C_target)を生成可能である第2トルク値(C_intermediate)を求めるステップ(ステップ45)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン吸気口に少なくとも1つの部分排気再循環システム(21)を備えた自動車用内燃エンジン(6)による変速時に付与されるトルクを制御する方法であって、
ギア比変更に必要な目標トルク値(C_target)を求めるステップと、
前記エンジンの現在の動作点から、点火進角の後退の実行により前記エンジンが生成できる第1トルク値(C_withdrawal)を求めるステップと、
前記エンジン(6)の現在のトルクよりも低く、そこから前記エンジン(6)の点火進角の後退のみを用いて前記目標トルク値(C_target)を生成可能である第2トルク値(C_intermediate)を求めるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第2トルク値(C_intermediate)は、前記エンジン(6)に入る空気の質量流量を減らすことにより得られる方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記空気の質量流量の低減を所定の値に制限して、トルクを所定の最大期間内に回復させることができる方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記空気の質量流量の低減は、バタフライハウジングを閉じることにより達成される方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、前記第2トルク値(C_intermediate)は、トルク値をEGR率に結び付ける曲線網を用いてコンピュータ(28)により算出される方法。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の方法において、前記モータ(6)のトルク設定値は、前記第2トルク値(C_intermediate)に等しい方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記エンジンにより付与された現在のトルクが前記第2トルク値(C_intermediate)に達すると、前記コンピュータは、点火進角の後退を実行して、前記エンジン(6)にギア比変更に必要な前記目標トルク(C_target)を発生させることができる方法。
【請求項8】
請求項3~5のいずれか1項に記載の方法において、進角の後退のみで前記目標トルク(C_target)に達することを可能にする第2トルク値(C_intermediate)が見付からない場合、前記コンピュータは、ゼロEGR設定値を設定し、EGR弁を閉じることによりEGR率を低下させるよう制御する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、EGR率が前記設定値まで低下する間に、前記コンピュータは、進角の後退のみにより達成可能な最小トルクを高頻度で評価する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記コンピュータ(28)は、ギア比変更に必要な前記目標トルク(C_target)を得るのに必要な進角の後退を実行する方法。
【請求項11】
吸気口に少なくとも1つの部分排気再循環システムを備えた自動車用内燃エンジンによる変速時に付与されるトルクを制御するシステムであって、
ギア比変更に必要な目標トルク値(C_target)を求める手段と、
前記エンジンの現在の動作点から、点火進角の後退の実行により前記エンジンが生成できる第1トルク値(C_withdrawal)を求める手段と、
前記エンジン(6)の現在のトルクよりも低く、そこから前記エンジン(6)の点火進角の後退のみを用いて前記目標トルク値(C_target)を生成可能である第2トルク値(C_intermediate)を求める手段と
を備えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気口に少なくとも1つの部分排気再循環回路を備えた自動車用内燃エンジンに関する。
【0002】
特に、本発明は、発明の一用途において、変速の場合にモータにより付与されるトルクの管理に関する。
【背景技術】
【0003】
内燃エンジン、より詳細には火花点火エンジンを備えた自動車では、エンジンの吸気マニホルドの負圧は、概してエンジントルクを発生させることができる空気の特定の質量流量を得るためにエンジンのスロットルハウジングにより調整されるが、吸気マニホルドのプレナムとエンジンの排気マニホルドとの間の圧力差により誘発されるポンピングロスを引き起こす。
【0004】
図1は、圧力-体積図を示し、従来の4サイクルエンジンの動作を特徴付けるものである。ポンピングロスは、モータにより付与される仕事を表す斜線領域1とは異なり、モータにより消費される仕事を表す斜線領域2に対応する。エンジン気筒内のガスが経る段階を表す
図1の従来のサイクルによれば、吸気段階(吸気行程)はセグメントABに対応し、圧縮はセグメントBCに対応し、燃焼はセグメントCDに対応し、膨張はセグメントDEに対応し、排気はセグメントEAに対応する。
【0005】
エンジンポンピングロスを低減するために、吸気マニホルド圧をエンジン排気マニホルド圧にできる限り近い値に上昇させることが有利である。したがって、吸気ステップ中のガスの圧力は、排気位相のガスの圧力に近付き、エンジンにより消費される仕事量が減る。
【0006】
従来、車両の運転者は、アクセルペダルの作動により車両加速設定値を決定する。加速設定値及びエンジン回転数から、コンピュータがこの加速設定値に達するために得るべきエンジントルク設定値を定義する。トルク設定値は、空気質量流量設定値Qairと、概して効率を最適化する点火進角値と、1に略等しいリッチネス設定値とに変換され、このリッチネス設定値は、未燃の炭化水素、一酸化炭素、及び酸化窒素を処理可能な触媒操作範囲でエンジン除害触媒を操作しつつトルクを得るために化学量論比で燃焼させなければならない燃料流量に対応する。
【0007】
さらに、車両がエンジンの吸気口に部分排気再循環回路を備えている場合、吸気口における還流ガスの質量流量の設定値Qegrも定義され、これは目標燃料消費量に従うために適用すべき再循環率に対応する。この排気再循環(EGR)率は、単位時間当たりにエンジン燃焼室に入るガスの総質量に対する単位時間当たりに吸気系に入る再導入排気ガスの質量の比として定義される。
【0008】
空気流量Qairと再循環排気流量Qegrとの和は、エンジンに入る総ガス質量流量Qwordを表し、これは概して、求める総流量に対応するエンジン吸気マニホルド内の圧力値Pcollarを得るためにエンジン吸気回路内のスロットルハウジングの位置を調整することにより調整される。
【0009】
エンジンコンピュータは、エンジントルク設定値を満たす最小吸気マニホルド圧の値を求める空気充填モデルを用いる。
【0010】
この充填パターンは、次式に従う。
【0011】
【0012】
式中、ηrdvlは、無次元での体積効率又は「充填」を意味し、
Qwordは、kg/sでの実際に入る総質量流量を指し、
Nは、回転/分での回転数であり、
Displacementは、m3でのエンジンの変位を意味し、
Pcollarは、Paでの吸気マニホルド内の圧力を意味し、
Tcollarは、Kでの吸気マニホルド内の温度を示し、
Rは、約287.058J/kg×Kに等しい空気の理想気体の質量定数である。
【0013】
用語「充填」は、吸い込まれた空気の質量と、気筒の総体積のみを考慮した場合に入る可能性がある空気の質量との比に等しいと定義される。
【0014】
いずれの場合も、効率ηrdvlの値は、回転数N及び吸気マニホルド内の圧力Pcolarに応じて変わる。
【0015】
部分負荷時、すなわち必要な空気流が少ない場合、吸気マニホルド内の圧力は、自然吸気エンジンの場合及びエンジンに空気のみを入れる場合には全負荷に対応する大気圧よりもはるかに低くなり得ることで、ポンピングロスが大きくなる。
【0016】
これらのポンピングロスを減らすためには、吸気マニホルド内の圧力を高めて、排気マニホルド内の圧力の値にできる限り近付けなければならない。
【0017】
吸気マニホルド内の圧力を高める1つの方法は、排気再循環すなわちEGRを用いることである。
【0018】
このEGR法は、排気からガスをサンプリングして、例えばエンジンの気流制御弁の下流で吸気口に送ることからなる。吸気口への還流排気ガスの供給により、トルクの発生に必要な空気流と同じ値でエンジンの吸気マニホルド内の圧力を高めることが可能となり、したがってポンピングロスの低減、ひいてはエンジンの効率及び燃料消費量の向上が可能となる。
【0019】
従来、エンジンの点火進角値は、燃焼の進展に要する時間を考慮するために上死点(TDC)の少し前に点火が行われるように設定される。
【0020】
したがって、所与のトルクを発生させるには、燃焼効率を最大にするように、エンジンの点火進角値は、最適進角に等しい値に、又はそれが無理であればノッキングが発生しない最適進角に最も近い値に概して設定され、すなわち、選択された進角は同じ空気及び燃料の流れでトルクを最大にするものである。
【0021】
しかしながら、変速時には、エンジントルクを一時的に、エンジン摩擦を補償するだけの非常に低いトルク、略ゼロにする必要がある。この場合、バタフライハウジング又はEGR弁等の空気回路アクチュエータの位置を変えることなくトルク値を非常に急速に低下させるように、進角の後退が実行される。
【0022】
実際には、トルクを急速に低下させるには、気流制御弁の位置よりも点火進角を変更する方が効率的であり、その理由は、進角の後退を実行した場合にはトルクが実際に急落する応答時間が大幅に短いからである。
【0023】
しかしながら、EGRを燃焼室に加えた場合、燃焼は概してEGR無しの場合よりも緩慢で不安定になるので、変速の場合にトルクを急落させて失火することなく進角の後退を実行することが困難であり、その理由は、燃焼が完全に停止してしまうほどこのようなサブ進角の影響下で非常に緩慢になるからである。
【0024】
図2は、燃焼室内のEGRレベルの関数としての燃焼時間を示す。EGR率が高いほど燃焼時間が長くなり、密閉された燃料が全て燃焼する前に燃焼サイクルが終了すると燃焼が不安定になることに留意されたい。
【0025】
図3は、EGR率の関数としての点火進角の考えられる変動範囲を定性的に示す。燃焼効率は、同一の空気流及びリッチネス1で、点火進角の関数に従って得られるエンジントルクに対応する。各曲線の頂点は、EGR率毎の最良の燃焼効率及び最適進角に対応する。全ての曲線は、右側がノッキング現象により、左側が燃焼不安定により制限され、すなわち、点火進角の増減により、燃焼が不安定になる低閾値と、ノッキングに特有の未燃ガスの自着火で燃焼が不均一になる高閾値とにそれぞれ達する。
【0026】
燃焼室内にEGRがない場合に対応する
図3の曲線3で示すように、点火進角値を減らして燃焼効率を特に低下方向に変更することが可能である。したがって、EGR無しの場合、最適進角に関して行われる進角の後退により、エンジンが発生するトルクを略瞬時に低減することが可能である。
【0027】
問題は、EGR率が上がるにつれて点火進角についてとり得る値範囲が小さくなることである。それぞれEGR率0%、10%、及び20%に対応する
図3の曲線3、4、及び5では、ギャップ3a-3bの幅はギャップ4a-4bの幅よりも大きく、ギャップ4a-4bの幅自体は範囲5a-5bの幅よりも大きい。これは、EGR率が上がるにつれて進角の後退によりエンジントルクを大幅に低下させる機会が少なくなることを意味する。したがって、
図3の曲線5で示すように、高いEGRレベルでは、トルクを大きく減らすよりもかなり前に燃焼安定限界(5a)に達する。
【0028】
技術水準の既知の方法では、EGR率は低下しないので、トルクを変速に必要な値まで急落させるために実行される進角の後退により、触媒の作用を低下させることで汚染物質の放出を増加させ得る失火をもたらし得る燃焼不安定のリスクが生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
上記に鑑みて、本発明は、EGR率を消費の最適設定に近い値に維持しつつ、トルクを変速に必要な値まで急落させるために実施される進角の後退中の燃焼不安定のリスクを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、吸気口に少なくとも1つの部分排気再循環システムを備えた自動車用内燃エンジンによる変速時に付与されるトルクを制御する方法に関する。
【0031】
本方法は、
変速に必要な目標トルク値を求めるステップと、
エンジンの現在の動作点から、点火進角の後退の実行によりエンジンが生成できる第1トルク値を求めるステップと、
エンジンの現在のトルクよりも低く、そこからエンジンの点火進角の後退のみを用いて目標トルク値を生成可能である第2トルク値を求めるステップと
を含む。
【0032】
例えば、第2トルク値は、エンジンに入る空気の質量流量を減らすことにより得られる。
【0033】
有利なのは、空気の質量流量の低減を所定の値に制限して、トルクを所定の最大期間内に回復させることができることである。
【0034】
例えば、空気の質量流量の低減は、エンジンのスロットルハウジングを閉じることにより達成される。
【0035】
別の特徴によれば、第2トルク値は、トルク値をEGR率に結び付ける曲線網を用いてコンピュータにより算出される。
【0036】
例えば、モータのトルク設定値は第2トルク値に等しい。
【0037】
有利なのは、エンジンにより付与された現在のトルクが第2トルク値に達すると、コンピュータが点火進角の後退を実行して、エンジンにギア比変更に必要な目標トルクを発生させることができることである。
【0038】
有利なのは、進角の後退のみで目標トルクに達することを可能にする第2トルク値が見付からない場合、コンピュータがゼロEGR設定値を設定し、EGR弁を閉じることによりEGR率の低下を制御することである。
【0039】
有利な特徴によれば、EGR率が設定値まで低下する間に、コンピュータは、進角の後退のみにより達成可能な最小トルクを高頻度で評価する。
【0040】
有利なのは、コンピュータが、ギア比変更に必要な目標トルクを得るのに必要な進角の後退を実行することである。
【0041】
本発明は、吸気口に少なくとも1つの部分排気再循環システムを備えた自動車用内燃エンジンによる変速時に付与されるトルクを制御するシステムにも関する。
【0042】
トルク制御システムは、ギア比変更に必要な目標トルク値を求める手段と、エンジンの現在の動作点から、点火進角の後退の実行によりエンジンが生成できる第1トルク値を求める手段と、エンジンの現在のトルクよりも低く、そこからエンジンの点火進角の後退のみを用いることにより目標トルク値を生成可能である第2トルク値を求める手段とを備える。
【0043】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、非限定的な例としてのみ与えられると共に添付図面を参照して行われる以下の説明を読めば明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】従来のサイクルに従った自動車の4サイクル内燃エンジンの気筒の圧力-体積図を示す。
【
図2】燃焼室内のEGR率の関数としての燃焼時間を示す。
【
図3】EGR率の関数としての点火進角の考えられる変動範囲を示す。
【
図4】本発明によるトルク制御システムを備えた自動車の内燃エンジンの構造を概略的に示す。
【
図5】本発明の一実施形態による制御システムにより実施されるトルク制御方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図4に示す例において、内燃エンジン6は、3つの直列の気筒7、新気用吸気マニホルド8、排気マニホルド9、及びターボ過給システム又はターボチャージャ10を非限定的に備える。
【0046】
気筒7には、吸気マニホルド8又は吸気分配器を介して空気が供給され、吸気マニホルド8自体には、エアフィルタ12を設けた管11及びエンジン6のターボチャージャ10により空気が供給される。
【0047】
ターボチャージャ10は、同一の体積流量に対してエンジン6の気筒7に導入される空気の量(質量流量)を増加させることを目的として、排気ガスにより駆動されるタービン10aと、タービン10aと同じ軸に取り付けられてエアフィルタ12により分配された空気を圧縮するコンプレッサ10bとを本質的に含む。
【0048】
タービン10aは、「可変容量」型とすることができ、すなわち、排気ガスから取り込まれるエネルギーの量、ひいては過給圧を変調するためにタービンインペラに可変傾斜ベーンが設けられる。代替として、本発明は、固定容量のタービン10aを用いてもよい。固定容量のタービン10aの使用の場合(図示せず)、タービン10aにより取り込まれるエネルギー量は、タービン10aに関連するバイパス回路に取り付けられた排気排出弁を用いて、タービンを通過する排気ガス流量の割合を調整することにより調整される。
【0049】
したがって、内燃エンジン6は、吸気回路Ca及び排気回路Ceを備える。
【0050】
吸気回路Caは、空気循環方向の上流から下流に向かって、
-エアフィルタ12又はエアボックス、
-エアフィルタ12の下流の吸気管11に配置され、エンジン6に入る空気流の実際値を測定するよう構成された流量計13、
-吸気弁14、
-後述するように、新吸気ガス及び還流排気ガスを低圧で圧縮するよう構成されたターボチャージャ10のコンプレッサ10b、
-スロットルハウジング15又はエンジンの吸気弁、
-新気と再循環ガスとの混合物に対応する吸気ガスをコンプレッサ10bでの圧縮後に冷却するよう構成された熱交換器16、及び
-吸気マニホルド8
を含む。
【0051】
コンプレッサは、例えば車両の運転者がアクセルペダルから足を急に離した場合にコンプレッサ10bとスロットルハウジング15との間に位置する圧縮空気がコンプレッサ10bを通過してこれを劣化させるのを防止するために、スロットルハウジング15の急閉の場合に開く吸気逃し弁17を備えたバイパス回路に関連付けられる。
【0052】
排気回路Ceは、既燃ガス流方向の上流から下流に向かって、
-排気マニホルド9、
-通過する排気ガスからエネルギーを引き出すよう構成され、吸気ガスの圧縮のためにその膨張エネルギーを共通の軸を介してコンプレッサ10bに伝達する、ターボチャージャ10のタービン10a、及び
-エンジン燃焼ガス除害システム18
を含む。
【0053】
排気マニホルド9に関して、これは、燃焼からの排気ガスを回収し、ターボチャージャ10のタービン10aに通じる排気ダクト19とタービン10aの下流に取り付けられた排気ライン20とを介して外部に排出する。
【0054】
エンジン6は、部分排気再循環(EGR)回路21をさらに備える。
【0055】
この回路21は、ここでは非限定的に、「LP EGR」と呼ばれる低圧排気再循環回路である。これは、上記タービン10aの下流、特にガス除害システム18の下流の排気ライン20に接続され、ターボチャージャ10のコンプレッサ10bの上流、特に流量計13の下流の新気供給ライン11に排気ガスを戻す。流量計13は、新気流量のみを測定する。
【0056】
図示のように、この再循環回路21は、還流ガスの循環方向に、クーラ21a、フィルタ21b、及びエンジンの吸気口に還流される低圧排気ガスの流量を調節するよう構成された「V EGR BP」弁21cを含む。「V EGR LP」弁21cは、クーラ21a及びフィルタ21bの下流且つコンプレッサ10bの上流に配置される。
【0057】
排気回路と吸気回路との間の真空が不十分な場合に、吸気弁14を用いてLP EGR回路に低圧排気ガス流を循環させることもできることに留意されたい。この場合、弁14を閉じると下流が真空となり、LP EGR回路からのガスを吸引することができる。
【0058】
エンジン燃焼排ガス除害システム18は、電気的に加熱可能な直列の2つの三元触媒22a、22bを含む第1後処理装置22を含み、少なくとも1つの第1酸素プローブ23が第1後処理装置22の上流に取り付けられる。
【0059】
上流の第1酸素プローブ23は、概して、エンジン内の混合気のリッチネスの値を閉ループで設定値、例えば化学量論比の混合気に対応する値1付近に調節する働きをする。
【0060】
さらに、リッチネス調節ループの設定値を補正することができるように、特に第1除害装置22内に貯蔵される酸素量を調整する目的で、例えば2値又は比例型の任意選択的な第2酸素プローブ24を、第1後処理装置の下流に取り付けることができる。
【0061】
ガス除害システム18は、ここでは微粒子フィルタである第2後処理装置25と第3後処理装置26、例えば三元触媒とをさらに含む。ガス除害システム18は、例えば診断目的で第2装置25の下流に取り付けられた例えば2値型の第3酸素プローブ27も含み得る。
【0062】
エンジン6は、燃料タンク(図示せず)から各気筒7にガソリンを直接注入する燃料インジェクタ(符号なし)を例えば含む燃料回路に関連付けられる。
【0063】
さらに、エンジン6は、内燃エンジンの種々の要素をエンジンの種々の場所のセンサが収集したデータに基づいて制御するよう構成されたコンピュータ28を含む。
【0064】
コンピュータ28は、計算モジュール29、測定モジュール30、及び制御モジュール31からなる。
【0065】
火花点火エンジンでは、エンジンの回転数-負荷動作点は、空気量、LP EGR吸気口に還流される排気ガス量、及び燃料量を特に調整することによりエンジンコンピュータ28により調整される。「量」は、ここでは質量流量を意味する。
【0066】
上述のような従来のサイクル内燃エンジンにより行われるトルク制御方法40を、次に
図5を参照して説明する。方法40により、ギアボックスの変速に必要な値に達するためにエンジンが発生するトルクの値を制御することが可能である。
【0067】
ギアボックスの変速は、コンピュータ28により、又は運転者により、例えばギアシフトレバーの操作により開始することができる。
【0068】
例えば、運転者の意思とは無関係に変速を決定する自動ギアボックスの場合、コンピュータ28が実施する方策は、等しい出力でエンジンの消費率を低減するために、現在のトルクとは異なるトルクを有するエンジンの動作点でギア比を変更することにあり得る。
【0069】
第1ステップ41において、コンピュータ28は、このような変速を行うことを検出し、変速時にギアボックスに必要なトルクC_targetの超過すべきでない値を求めるようギアボックス制御システムに要求する。
【0070】
ギアボックス入力軸に伝達されるトルクを発生するのが唯一モータである場合、C_targetの値は実質的にゼロであり得る。代替として、熱機関のトルクを補償するためにギアボックス入力軸に負のトルクを付与する電気機械と組み合わせてエンジンがハイブリッド車両に取り付けられる場合、これは僅かに高い値となり得る。このようなハイブリッド駆動装置は、例えば仏国特許出願公開第3022495号に開示されている。
【0071】
次のステップ42において、コンピュータ28は、エンジンがその現在の動作点からの進角の後退の実行により、燃焼不安定を生じることなく発生することができるトルクの最小値C_withdrawalを求める。エンジン6の動作点は、特定の空気流量、特定のEGR率、及び最適点火進角を用いてエンジンにより付与される現在のトルクを特徴とする。所与のEGR率で、トルクC-withdrawalは、
図3の対応する曲線の低閾値で表されるような燃焼安定限界に対応し、そのピークは、最適点火進角で得られる現在のトルクに対応する。
【0072】
次のステップ43において、コンピュータ28は、ステップ41で求めたトルク値C_targetがステップ42で求めたトルク値C_withdrawalよりも小さいか否かを調べる。
【0073】
小さくない場合、EGR率を低下させる必要もスロットルハウジングの位置を変更する必要もなく、コンピュータ28は、燃焼不安定を生じることなくC_targetトルクを得るのに必要な点火進角の除去を実行するだけである(ステップ44)。
【0074】
ステップ41で求めたトルク値C_targetがステップ42で求めたトルク値C_withdrawalよりも小さい場合、コンピュータ28は、次のステップ45において、現在のトルクよりも低いトルク値C_intermediateを求めるが、これは、(例えば、バタフライハウジングを閉じることにより)導入空気量を減らすことにより得られ、これに対して進角の後退のみによりトルクC_targetを得ることが可能となる。空気量は質量流量と理解される。コンピュータ28は、所定の最大期間内でギア比変更後にトルクを回復させることができる所定の値に空気質量流量の減少を制限する。トルク値C_intermediateがある場合、これは、現在のトルクの一定のEGR率に対する異なるトルク値をつなぐ、予めプログラムされてコンピュータ28のメモリに収容された
図3のもの等の曲線網に基づいて、コンピュータ28により求められる。
【0075】
次のステップ46において、コンピュータ28は、このようなトルク値C_intermediateがステップ45で見付かったか否かを調べる。
【0076】
見付かった場合、次のステップ47において、コンピュータ28は、値C_intermediateをトルク設定値に割り当て、特にバタフライハウジングを閉じることにより空気流を減らす。
【0077】
ステップ47でのトルクC_intermediateの取得後に、コンピュータ28は、トルクC_targetの取得を可能にする点火進角の後退を実行する(ステップ48)。
【0078】
ギア比の変更を行った後に、コンピュータ28は、以前の点火進角の値を調整することによりトルクを値C_intermediateに回復させ、続いて特にスロットルハウジングを再度開くことにより空気流を増加させてギア比変更前のトルクの値を得る。
【0079】
次のステップ49において、トルク値C_intermediateがステップ45で見付からなかった場合、コンピュータ28は、ゼロEGR率設定値を設定し、EGR弁21cの閉鎖を命令する(ステップ49a)。ゼロ値へのEGR率の事実上の低下には、エンジン流量及び吸気口のEGR量に従って200ms~1000msかかる。この時間の大部分は、例えば次のギアの係合又はクラッチのスリップを含むギアボックスの準備時間に相当する。このEGR率の低下時間中に、コンピュータ28は、新たなEGR率に従って進角の後退のみにより達成可能な最小トルクを高頻度で再評価する(ステップ49b)。
【0080】
例えば、コンピュータ28は、EGR弁を閉じ始めた後に、気筒に実際に入るEGR率の値を求める。EGR弁を通る流量の値は、サンブナン方程式、EGR弁21cと気筒7との間の距離を考慮するために適用される遅延時間、及びこの関係式からのエンジン充填モデルから計算される。
【0081】
【0082】
式中、ηrdvlは、無次元での体積効率又は「充填」を意味し、
Qwordは、kg/sでの実際に入る総質量流量を指し、
Nは、回転/分での回転数であり、
Displacementは、m3でのエンジンの変位を意味し、
Pcollarは、Paでの吸気マニホルド内の圧力を意味し、
Tcollarは、Kでの吸気マニホルド内の温度を示し、
Rは、約287.058J/kg×Kに等しい空気の理想気体の質量定数である。
【0083】
換言すれば、コンピュータ28は、現時点のモータ内のEGR流量が現時点から遅延時間の値だけ離れた前時点の弁を通る流量に等しいとみなす。EGR率がゼロ値まで低下する間に、コンピュータ28は、燃焼不安定を生じることなくトルクC_targetを得るのに必要な点火進角の除去を実行する(ステップ49c)。
【国際調査報告】