(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】リステリア属バリアント及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20250123BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20250123BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250123BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250123BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250123BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20250123BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250123BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20250123BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250123BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20250123BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20250123BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20250123BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20250123BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
C12N1/21
C07K16/46
C12N15/12
C12N15/63 Z
A61P37/04
A61P35/00
A61K35/74
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K48/00
A61K39/00 H
A61K38/02
A61K35/76
C07K16/28
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542288
(86)(22)【出願日】2023-01-26
(85)【翻訳文提出日】2024-09-05
(86)【国際出願番号】 US2023011628
(87)【国際公開番号】W WO2023146967
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ポートノイ ダニエル エー.
(72)【発明者】
【氏名】リベラ-ルゴ ラファエル ホセ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA15X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065BB13
4B065CA24
4B065CA44
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4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA03
4C085AA14
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4C085BB11
4C085CC07
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
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4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC76
4C087BC83
4C087CA12
4C087CA20
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4C087MA52
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB09
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4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、機能性ribC及びribF遺伝子を欠くバリアントリステリア属細菌を提供する。さらに提供するのは、該バリアントリステリア属細菌を、例えば、ベクター、ワクチン、及び治療薬として作製及び使用する方法である。本開示は、インビボで粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞リガンドの産生をもたらすバリアントリステリア属細菌を提供する。さらに提供するのは、例えば、個体におけるMAIT細胞を刺激する及びその数を増大させるための、該バリアントリステリア属細菌を作製及び使用する方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラビンモノヌクレオチド(FMN)及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)生合成に必要な遺伝子の変異を含むバリアントリステリア属(Listeria)細菌であって、哺乳類においては細胞外で増殖しない、前記バリアントリステリア属細菌。
【請求項2】
FMN及びFAD合成に必要な前記遺伝子が、ribC遺伝子及び/またはribF遺伝子である、請求項1に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項3】
条件的偏性細胞内細菌である、請求項1または請求項2に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項4】
増殖するためにフラビンモノヌクレオチド及びフラビンアデニンジヌクレオチドの補給を必要とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項5】
前記変異が、前記ribC遺伝子及び/または前記ribF遺伝子のすべてまたは一部の欠失を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項6】
前記バリアントが、少なくとも1つの異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含むように遺伝子改変されている、請求項5のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項7】
前記異種核酸が、前記細菌のゲノムに組み込まれている、請求項6に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項8】
前記少なくとも1つの異種遺伝子産物が、抗原を含む、請求項6または請求項7に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項9】
前記抗原が、がん関連抗原である、請求項8に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項10】
バリアントリステリア・モノサイトジェネス(Listeria monocytogenes)細菌である、請求項1~9のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項11】
前記細菌に弱毒化表現型を付与する1つ以上のさらなる変異、及び/または増殖優位性をもたらす1つ以上のさらなる変異をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項12】
前記弱毒化表現型を付与する1つ以上のさらなる変異が、actA及びinlBから選択される遺伝子の変異を含み、前記増殖優位性をもたらす1つ以上のさらなる変異が、eetB遺伝子の変異を含む、請求項11に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項13】
a)請求項1~12のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属細菌、及び
b)多重特異性抗体
を含む、組成物。
【請求項14】
前記多重特異性抗体が、i)がん関連抗原に特異的な第一の抗原結合部位、及びii)T細胞に特異的な第二の抗原結合部位を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記T細胞が、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、γ/δ T細胞、CD8
+T細胞、またはナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属を含む、免疫原性組成物。
【請求項17】
個体における免疫応答を誘導する方法であって、請求項16に記載の免疫原性組成物の有効量を前記個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項18】
前記バリアントリステリア属細菌が、異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含むように遺伝子改変されており、前記免疫応答が、前記異種ポリペプチドに対して誘導される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記異種ポリペプチドが、抗原である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗原が、がん関連抗原である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫応答が、ガンマ-デルタT細胞応答を含む、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
請求項16に記載の免疫原性組成物の単位用量を含む、キット。
【請求項23】
前記単位用量が、経口用量である、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記単位用量が、注射用である、請求項22に記載のキット。
【請求項25】
異種抗原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターをさらに含む、請求項22~24のいずれか1項に記載のキット。
【請求項26】
粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞リガンド5-(2-オキソプロピリデンアミノ)-6-D-リビチルアミノウラシル(5-OP-RU)の産生をもたらす、5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属。
【請求項27】
前記バリアントリステリア属が、異種ribDEAHTオペロンを含み、前記バリアントリステリア属が、リボフラビンを合成し、MAIT細胞の増殖を刺激する、請求項26に記載の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属。
【請求項28】
前記バリアントリステリア属が、異種のribD及びribA遺伝子を含む、請求項26に記載の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属。
【請求項29】
前記バリアントが、少なくとも1つの異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含むように遺伝子改変されている、請求項26~28のいずれか1項に記載の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属。
【請求項30】
前記異種核酸が、前記細菌のゲノムに組み込まれている、請求項29に記載の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属細菌。
【請求項31】
前記少なくとも1つの異種遺伝子産物が、抗原を含む、請求項29または請求項30に記載の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属細菌。
【請求項32】
前記抗原が、がん関連抗原である、請求項31に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項33】
前記少なくとも1つの異種遺伝子産物が、キメラ抗原受容体を含む、請求項29または請求項30に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項34】
前記細菌に弱毒化表現型を付与する1つ以上のさらなる変異、及び/または増殖優位性をもたらす1つ以上のさらなる変異をさらに含む、請求項26~33のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項35】
前記弱毒化表現型を付与する1つ以上のさらなる変異が、actA及びinlBから選択される遺伝子の変異を含み、前記増殖優位性をもたらす1つ以上のさらなる変異が、eetB遺伝子の変異を含む、請求項34に記載のバリアントリステリア属細菌。
【請求項36】
請求項26~35のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属を含む、組成物。
【請求項37】
個体における粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)細胞の数及び活性化状態を増大させる方法であって、前記個体に、請求項26~35のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項38】
個体におけるがんの治療方法であって、前記個体に、請求項26~35のいずれか1項に記載のバリアントリステリア属の有効量を投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2022年1月28日に出願された米国仮特許出願第63/304,235号の利益を主張するものであり、当該出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
合衆国政府の支援による研究に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所により付与された認可番号AI027655及び認可番号AI063302の下、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
序論
リステリア・モノサイトジェネス(Listeria monocytogenes)は、免疫不全の個体及び妊娠中の女性における重篤な感染症の原因であるグラム陽性の食品媒介性のヒト及び動物病原体である。ヒトにおける重度のL.モノサイトジェネス(L.monocytogenes)感染症は、髄膜炎、髄膜脳炎、敗血症、及び胎児死亡を特徴とする。L.モノサイトジェネスは、自然界に偏在している上、多種多様な温血動物から単離され得る。
【0004】
L.モノサイトジェネスは、動物に接種されると主に細胞性免疫応答を誘発する。したがって、L.モノサイトジェネスは、感染及び免疫の多くの側面を研究するための実験モデルとして広く使用されている。重要なことに、致死未満量のL.モノサイトジェネスをマウスに感染させることにより、長期の細胞性免疫(CMI)が誘導される。前臨床試験では、L.モノサイトジェネスの弱毒化株は、組み換えワクチンベクターとしての途方もない可能性を示している。弱毒化組み換え株は、がん免疫療法のための治療用ワクチンとして臨床効果を示している。
【0005】
多くの既知の原核生物は、ribC(または生物によってはribF)遺伝子によってコードされ、リボフラビンキナーゼ/FADシンテターゼ(FADS)と呼ばれる単一の二機能性酵素に依存して、リボフラビン(RF)を最初にフラビンモノヌクレオチド(FMN)に変換し、その後、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)に変換する。リステリア属(Listeria)は、遺伝子ribC及びribFによってコードされる2つの別個の酵素を有する。
【発明の概要】
【0006】
概要
本開示は、機能性ribC及びribF遺伝子を欠くバリアントリステリア属細菌を提供する。さらに提供するのは、該バリアントリステリア属細菌を、例えば、ベクター、ワクチン、及び治療薬として作製及び使用する方法である。本開示は、インビボで粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞リガンドの産生をもたらすバリアントリステリア属細菌を提供する。さらに提供するのは、例えば、個体におけるMAIT細胞を刺激する及びその数を増大させるための、バリアントリステリア属細菌を作製及び使用する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1A~1D。
図1Aは、リボフラビン、FMN、及びFADの構造を示す。
図1Bは、富栄養型培地で増殖させたL.モノサイトジェネス株のブロス増殖曲線を示す。
図1C~1Dは、1x10
5CFUの各株を静脈内感染させた48時間後のマウスの脾臓(C)及び肝臓(D)におけるL.モノサイトジェネス株のコロニー形成単位(CFU)を示す。
【
図2】
図2A~2B。
図2Aは、フラビンを欠く既知組成培地で増殖させたL.モノサイトジェネス株のブロス増殖曲線を示す。
図2Bは、37℃で振とうしながら24時間増殖させた後の野生型(左)及びΔribU+ribDEAHT株(右)の培地上清の画像を示す。
【
図3】
図3A~3D。
図3Aは、感染した骨髄由来マクロファージ(BMM)においてオートファジー受容体p62と共局在したL.モノサイトジェネス株のパーセンテージを示す。
図3B~Cは、BMMにおけるL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。(B)は、野生型BMMにおける示されたL.モノサイトジェネス株の成長曲線を示す。(C)は、感染の直前に1μMのリボフラビンを補給した、リボフラビンを(3時間)与えない野生型BMMにおける示されたフラビン飢餓L.モノサイトジェネス株の成長曲線を示す。
図3Dは、リボフラビンが十分なBMM及びリボフラビンを与えないBMMにおいて細胞内で増殖するL.モノサイトジェネス株の2~5時間の間の世代時間を示す。
【
図4】
図4A~4F。
図4A~Cは、BMMにおけるL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。(A)は、野生型BMMにおける示されたL.モノサイトジェネス株の成長曲線を示す。(B)は、感染の過程で過剰の(10μM)のリボフラビンを含む細胞培地でインキュベートした野生型BMMにおける示されたL.モノサイトジェネス株の成長曲線を示す。(C)は、リボフラビン欠乏野生型BMMにおける示されたフラビン欠乏L.モノサイトジェネスの成長曲線を示す。
図4D~Eは、特定のL.モノサイトジェネス株に感染させた野生型(D)またはAIM2 KO(E)BMMの細胞死を示す。
図4Fは、AIM2 KO BMMにおける示されたL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。
【
図5】
図5A~5F。
図5A~Cは、異なるフラビン源を含む既知組成の合成培地で増殖させたL.モノサイトジェネス株のブロス増殖曲線を示す。(A)は、リボフラビン、FMN、またはFADを唯一のフラビン源として含む培地で増殖させた野生型L.モノサイトジェネスの増殖曲線を示す。(B)は、リボフラビン、FMN、またはFADを唯一のフラビン源として含む培地で増殖させたΔribU変異L.モノサイトジェネス株の増殖曲線を示す。(C)は、リボフラビンを含む培地で増殖させた示されたL.モノサイトジェネス株の増殖曲線を示す。
図5Dは、マウスBMMにおけるL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。
図5E~5Fは、1x10
5CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を静脈内感染させたCD-1マウスの感染の48時間後の脾臓(C)及び肝臓(D)における細菌量を示す。
【
図6】
図6A~6C。
図6Aは、脱繊維素ヒツジ血中でのL.モノサイトジェネス株のインビトロ増殖を示す。
図6Bは、1x10
5CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を静脈内感染させたCD-1マウスの感染の48時間後の胆嚢における細菌量を示す。
図6Cは、1x10
8CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を経口感染させたCD-1マウスの胃腸管における細菌量を示す。
【
図7】示されたpHyper(構成的プロモーター)及びpNative(誘導性、B.スブチリス(B.subtilis)由来の天然プロモーター)の両方とともに、L.モノサイトジェネス染色体に導入されたリボフラビンオペロンの図である。
【
図8】マウスBMMにおけるL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。
【
図9】1x10
3CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を静脈内感染させたB6マウスの感染の96時間後の脾臓及び肝臓における細菌量を示す。
【
図10A】
図10A~10D。ActAマイナスバックグラウンドでの弱毒化リボフラビン産生L.モノサイトジェネス株による感染の影響を示す。
【
図11A】
図11A~11B。リボフラビン産生L.モノサイトジェネスにおけるパーフォリンマイナスMAIT細胞の影響を示す。
【
図12】野生型マウス骨髄由来マクロファージ(BMM)におけるL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。
【
図13】様々なL.モノサイトジェネス株を静脈内感染させたCD-1マウスの感染の47時間後の脾臓及び肝臓における細菌量を示す。
【
図14】脱繊維素ヒツジ血中でのL.モノサイトジェネスのΔactAΔinlB、ΔactAΔinlB+ΔribCΔribF、及びΔactAΔinlB+ΔribCΔribF+eetB::tn株の成長を示す。
【
図15】L.モノサイトジェネスのΔactA及びΔactAΔribCΔribF変異株によるワクチン接種の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
本開示は、機能性ribC及びribF遺伝子を欠くバリアントリステリア属細菌を提供する。さらに提供するのは、該バリアントリステリア属細菌を、例えば、ベクター、ワクチン、及び治療薬として作製及び使用する方法である。本開示は、インビボで粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞リガンドの産生をもたらすバリアントリステリア属細菌を提供する。さらに提供するのは、例えば、個体におけるMAIT細胞を刺激する及びその数を増大させるための、バリアントリステリア属細菌を作製及び使用する方法である。
【0009】
本発明をさらに説明する前に、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、したがって、当然のことながら変化し得ることが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを目的とするものではないことも理解されるべきである。
【0010】
ある範囲の値が提供される場合、文脈が明らかにそうではないことを示さない限り、その範囲の上下限、及び、その述べられた範囲内の任意の他の述べられた値または介在値の間の各介在値は、その下限の単位の10分の1まで本発明に包含されることが理解されるべきである。これらのより小さい範囲の上下限は、述べられた範囲内の任意の具体的に除外された限定を有することを条件として、独立してより小さな範囲に含まれ得、本発明にも包含される。述べられた範囲が上下限の一方または両方を含む場合、それらの含まれた上下限のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0011】
別段定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法及び材料もまた、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料をここに記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれ、方法及び/または材料を当該刊行物が引用されているものに関連して開示及び記載する。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかにそうではないことを示さない限り、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。したがって、例えば、「バリアントリステリア属細菌(a variant Listeria bacterium)」への言及は、複数のかかるバリアントリステリア属細菌を含み、「免疫原性組成物(the immunogenic composition)」への言及は、1つ以上の免疫原性組成物及び当業者に既知のその均等物への言及を含む、等である。さらに、特許請求の範囲は、いかなる任意の要素も除外するように起草され得ることが留意される。したがって、本記述は、クレーム要素の列挙と関連した「唯一」、「のみ」等の排他的な用語の使用、または「否定的な」限定の使用の先行詞としての役割を果たすことが意図される。
【0013】
明確にするために別個の実施形態の文脈で記載される本発明のある特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが理解される。反対に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特徴はまた、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで提供され得る。本発明に関する実施形態のすべての組み合わせは、本発明に具体的に包含され、ありとあらゆる組み合わせが個別にかつ明示的に開示されたものとして、本明細書に開示される。さらに、様々な実施形態及びその要素のすべてのサブコンビネーションもまた、本発明に具体的に包含され、ありとあらゆるかかるサブコンビネーションが個別にかつ明示的に本明細書に開示されたものとして、本明細書に開示される。
【0014】
本明細書において論じられている刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみが提供されている。本明細書中のいかなるものも、先行発明のために、本発明がかかる刊行物に先行する権利がないということの承認として解釈されるべきではない。さらに、提示される公開日が、実際の公開日と異なる場合もあり、それは、個別に確認する必要がある場合がある。
【0015】
FMN及びFAD生合成に必要な遺伝子に変異を含むバリアントリステリア属細菌
本開示は、フラビンモノヌクレオチド(FMN)及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)生合成に必要な遺伝子の変異を含むバリアントリステリア属細菌を提供し、該バリアントリステリア属は、インビボで条件的偏性細胞内細菌である(すなわち、哺乳類においては細胞外で増殖することができない)。該バリアントリステリア属は、FMN及びFADが補給された培地中でインビトロで増殖(培養)することができるが、インビボ(例えば、哺乳動物内)では細胞外で増殖することはできない。本開示のバリアントリステリア属は、増殖するためにフラビンモノヌクレオチド及びフラビンアデニンジヌクレオチドの補給を必要とし、ひいては、インビボの場合(例えば、哺乳類または他の動物宿主内の場合)、条件的偏性細胞内細菌である。
【0016】
FMN及びFAD生合成に必要な遺伝子としては、ribC及びribFが挙げられる。本開示は、機能性ribC及びribF遺伝子を欠くバリアントリステリア属細菌を提供する。バリアントリステリア属細菌は、ribC及びribF遺伝子が機能しないように親リステリア属細胞を遺伝子改変することによって生成され得る。非機能性遺伝子は、完全に欠失した遺伝子;5%~95%欠失した(すなわち、対応する野生型遺伝子と比較して、ヌクレオチドの5%~95%が欠失した)遺伝子;対応する野生型遺伝子と比較して、1つ以上のヌクレオチド(例えば、1~10、10~100、または100を超えるヌクレオチド)の挿入を有する遺伝子であって、該1つ以上のヌクレオチドの挿入により、該遺伝子が機能しなくなる、遺伝子、等であり得る。場合によっては、本開示のバリアントリステリア属を生成するために、5%~100%(例えば、5%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、または90%~100%)のribC遺伝子及び/またはribF遺伝子が削除される。
【0017】
場合によっては、本開示のバリアントリステリア属細菌は、ΔribC/ΔribF細菌であり、例えば、ribC及びribF遺伝子が削除される。RibCは、リボフラビンからFMNへのリン酸化及びFADを形成するためのFMNのアデニリル化を触媒する二機能性酵素である。RibFもまた、アデニリル化によってFMNをFADに変換する。
【0018】
本開示のバリアントリステリア属細菌を生成するために使用されるリステリア属細胞(例えば、親リステリア属細胞)は、いくつかの異なるリステリア属種のいずれか1つでよく、通常、リボフラビン要求性株である。目的のリステリア属種としては、L.フレイシュマンニ(L.fleischmannii)、L.イノキュア(L.innocua)、L.イバノビイ(L.ivanovii)、L.マルスイ(L.marthii)、L.モノサイトジェネス(L.monocytogenes)、L.ルコウルティアエ(L.rocourtiae)、L.シーリゲリ(L.seeligeri)、L.ウェイヘンステファネンシス(L.weihenstephanensis)、及びL.ウェルシメリ(L.welshimeri)が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、L.モノサイトジェネス以外のリステリア属株も宿主細胞であり得る。ある特定の場合には、該リステリア属株は、L.モノサイトジェネスである。
【0019】
場合によっては、該リステリア属宿主細胞は弱毒化される。「弱毒化」及び「弱毒化された」は、病原性を低下させるように改変されたリステリア属宿主細胞を包含する。該宿主は、ヒトもしくは動物宿主、または器官、組織、もしくは細胞であり得る。非限定的な例を挙げると、該リステリア属宿主細胞は、宿主細胞(例えば、ヒトもしくは非ヒト動物細胞、例えば、ヒトもしくは非ヒト哺乳類細胞)への結合を低減するため、1つの宿主細胞から別の宿主細胞への拡散を低減するため、細胞外増殖を低減するため、または宿主細胞での細胞内増殖を低減するために弱毒化され得る。弱毒化は、例えば、病原性の指標、LD50、器官からのクリアランス率、または競争指標を測定することによって評価され得る(例えば、Auerbuch,et al.(2001)Infect.Immunity 69:5953-5957参照)。一般に、弱毒化により、LD50(致死量、50%、特定の試験期間後に試験された集団のメンバーの半数を死滅させるために必要な用量(細菌数))の増加及び/またはクリアランス率の増加が、少なくとも25%、より一般的には、少なくとも50%、最も一般的には、少なくとも100%(2倍)、標準的には、少なくとも5倍、さらに標準的には、少なくとも10倍、最も標準的には、少なくとも50倍、多くの場合、少なくとも100倍、さらに多くの場合、少なくとも500倍、最も多くの場合、少なくとも1000倍、通常は、少なくとも5000倍、より通常は、少なくとも10,000倍、最も通常は、少なくとも50,000倍、及び最も多くの場合、少なくとも100,000倍もたらされる。弱毒化はまた、コロニー形成単位(CFU)の数を測定することによっても評価され得る。
【0020】
ある特定の実施形態では、本開示による弱毒化リステリア属は、Auerbach et al.,“Development of a Competitive Index Assay To Evaluate the Virulence of Listeria monocytogenes actA Mutants during Primary and Secondary Infection of Mice,”Infection and Immunity,September 2001,p.5953-5957,Vol.69,No.9に記載の競合指標アッセイにおいて、対応する野生型株と比較して、病原性の低下を示すものである。本アッセイでは、マウスに試験及び参照、例えば、野生型細菌株を接種する。ある期間後、例えば48~60時間後、接種したマウスをサクリファイスし、1つ以上の器官、例えば、肝臓、脾臓の細菌の存在量を評価する。これらの実施形態では、所与の細菌株は、脾臓におけるその存在量が、対応する野生型株で観察されるものの少なくとも約1/50以上、例えば、1/70以上少ない場合、及び/または肝臓におけるその存在量が、対応する野生型株で観察されるものの少なくとも約1/10以上少ない、例えば、1/20以上少ない場合に、病原性が低いと見なされる。
【0021】
さらに他の実施形態では、細菌は、Jones and Portnoy,Intracellular growth of bacteria.(1994b)Methods Enzymol.236:463-467に記載のアッセイを使用して測定される、約8時間未満、例えば、約4時間未満を含め、約6時間未満の複製の失敗を示す場合、病原性が低いと見なされる。さらに他の実施形態では、細菌は、野生型と比較して、米国特許第7,794,728号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)で採用されているプラークアッセイにおいてより小さなプラークを形成する場合、弱毒化されたまたは病原性が低いと見なされる。該アッセイでは、細胞、例えば、マウスL2細胞を、例えば、6ウェル組織培養ディッシュにて、コンフルエンシーまで増殖させ、その後細菌に感染させる。その後、ゲンタマイシンを含むDME寒天を加え、プラークをある期間、例えば3日間増殖させる。その後、例えば、ニュートラルレッド(GIBCO BRL)を含む追加のDME寒天オーバーレイを添加することによって、生細胞を可視化し、終夜インキュベートする。かかるアッセイでは、野生型と比較して弱毒化変異体で観察されるプラークサイズの減少の程度は、ある特定の実施形態では、10%であり、15%が含まれ、例えば、25%以上である。
【0022】
弱毒化細菌は、弱毒化表現型を付与する1つ以上の異なる変異を含んでよく、目的の変異としては、例えば、米国特許第7,794,728号(その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載のhly変異及び/またはlplA変異、例えば、Dung et al.,Clin.Cancer Res.(2012)18:858-868に報告されているactA及び/またはインターナリンB(InlB)変異等が挙げられる。したがって、場合によっては、本開示のバリアントリステリア属は、ribC及びribF遺伝子が機能しないようにする変異(例えば、ribC及びribF遺伝子のすべてまたは一部の削除によって)に加えて、actA(acting assembly-inducing protein ActAをコードする)及び/またはinlB(インターナリンBをコードする)の変異を含む。場合によっては、本開示のバリアントリステリア属は、a)ribCのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりribC遺伝子が機能しなくなる)を含み、b)ribFのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりribF遺伝子が機能しなくなる)、c)actAのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりactA遺伝子が機能しなくなる)、及びd)inlBのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりinlB遺伝子が機能しなくなる)を含む。
【0023】
本開示のバリアントリステリア属細菌は、上記のribC/ribFの改変に加えて、eetB遺伝子のすべてまたは一部の欠失を含み得る。eetB遺伝子のすべてまたは一部を削除することにより、増殖上の利点がもたらされ得る。場合によっては、かかるバリアント株は、ribC/ribFの改変を含み、eetB遺伝子の欠失がないリステリア属細菌のインビトロでのブロス中での増殖率と比較して、該ブロス中での増殖率の増加を示す。場合によっては、本開示のバリアントリステリア属は、a)ribCのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりribC遺伝子が機能しなくなる)、b)ribFのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりribF遺伝子が機能しなくなる)、及びc)eetBのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりeetB遺伝子が機能しなくなる)を含む。場合によっては、本開示のバリアントリステリア属は、a)ribCのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりribC遺伝子が機能しなくなる)、b)ribFのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりribF遺伝子が機能しなくなる)、c)actAのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりactA遺伝子が機能しなくなる)、d)inlBのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりinlB遺伝子が機能しなくなる)、及びe)eetBのすべてまたは一部の欠失(この欠失によりeetB遺伝子が機能しなくなる)を含む。
【0024】
本開示のバリアントリステリア属細菌は、上記のribC/ribFの改変に加えて1つ以上の遺伝子改変を含んでもよく、該1つ以上のさらなる改変は、宿主細胞において望ましい性質、例えば、弱毒化、免疫原性の向上等を提供する。かかるさらなる改変の例としては、PCT公開出願第WO 2014/106123号、同第WO 2014/074635号、同第WO 2009/143085号、同第WO 2008027560号、同第WO 2008066774号、同第WO 2007117371号、同第WO 2007103225号、同第WO 2005071088号、同第WO 2003102168号、同第WO 2003/092600号、同第WO/2000/009733号、及び同第WO 1999/025376号に記載のものが挙げられるがこれらに限定されない。これらの出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
本開示のバリアントリステリア属細菌は、上記のribC/ribFの改変に加えて、Lm-RIID(L.モノサイトジェネスリコンビナーゼ誘導細胞内死)変異を含み得る。例えば、USPN9,511,129を参照されたい。
【0026】
該細菌は、生きている場合もあれば、死滅しているが代謝的に活性な(「KBMA」)場合もある。KBMAワクチン株は、DNA修復遺伝子、例えば、uvrA及びuvrBの削除を介してヌクレオチド除去修復の能力を破棄することによって構築される。該遺伝子の削除により、該細菌は、ソラレンとUVAの併用処理を介した光化学的不活性化に弱くなる。形成されたソラレン誘導性のDNA架橋を修復することができないため、KBMA細菌株は、複製することができず、したがって、機能的に非感染性である。この特性により、生弱毒化株と比較して安全性プロファイルが改善される。しかしながら、架橋の数は非常に限られており、抗原の発現を含めたそれらの代謝活性、ひいてはそれらの免疫能が維持される。KBMAワクチン株については、米国特許第7,833,775号に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
ある特定の例では、本開示のバリアントリステリア属細菌は、異種抗原を発現する。該異種抗原は、ある特定の実施形態では、該異種抗原が由来する感染性因子による抗原投与から動物を保護することができるもの、または宿主生物にとって有益に、腫瘍の増殖及び転移に影響を与えることができるものである。したがって、異種抗原をコードするDNAによって本開示のリステリア属株に導入され得る異種抗原は、リステリア属によって発現された場合に、応答が誘導される宿主にとって有益である細胞性免疫応答を誘発するのに役立つ任意の抗原を含む。したがって、異種抗原としては、感染性因子によって特定されるものが挙げられ、該抗原に対する免疫応答が、該因子によって引き起こされる疾患を予防または治療する役割を果たす。かかる異種抗原としては、ウイルス、細菌、真菌、または寄生生物の表面タンパク質及び任意の他のタンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質等が挙げられるがこれらに限定されない。異種抗原には、腫瘍抗原が含まれる。異種抗原としては、該異種抗原を発現する腫瘍をもたらすリスクがある、またはそれを有すると診断される宿主生物に利益をもたらすものも挙げられる。該宿主生物は、哺乳類、例えば、ヒトであり得る。
【0028】
本明細書で使用される、「異種抗原」という用語は、リステリア属で通常発現されないタンパク質もしくはペプチド、糖タンパク質もしくは糖ペプチド、リポタンパク質もしくはリポペプチド、または任意の他の高分子を意味し、実質的には、感染性因子、腫瘍細胞または腫瘍関連タンパク質における同じ抗原に対応する。該異種抗原は、本開示によるリステリア属株によって発現され、該株による哺乳類細胞の感染後に、プロセッシングされ、細胞傷害性T細胞に提示される。リステリア属種によって発現される異種抗原は、哺乳類で自然に発現される未改変の抗原またはタンパク質を認識するT細胞応答をもたらす限り、腫瘍細胞または感染性因子内の対応する未改変の抗原またはタンパク質と正確に一致する必要はない。他の例では、該腫瘍細胞抗原は、哺乳類において自然に発現されるものの変異型であってもよく、リステリア属種によって発現される抗原は、その腫瘍細胞変異抗原に適合する。本明細書で使用される、「腫瘍関連抗原」という用語は、宿主生物における腫瘍の増殖または転移に影響を与える抗原を意味する。該腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞によって発現される抗原の場合もあれば、非腫瘍細胞によって発現されるが、そのように発現された際に、腫瘍細胞の増殖または転移を促進する抗原の場合もある。腫瘍抗原及び腫瘍関連抗原をコードするDNAを組み込むことによってリステリア属に導入され得る該腫瘍抗原及び腫瘍関連抗原のタイプとしては、あらゆる既知の、またはこれまで知られていなかった腫瘍抗原が挙げられる。他の例では、該「腫瘍関連抗原」は、腫瘍の増殖にも転移にも影響を与えないが、該腫瘍が由来する組織(及び腫瘍)で特異的に発現することから、リステリア属ワクチンの成分として使用される。さらに他の例では、該「腫瘍関連抗原」は、腫瘍の増殖にも転移にも影響を与えないが、該腫瘍細胞で選択的に発現され、任意の他の正常組織では発現されないことから、リステリア属ワクチンの成分として使用される。
【0029】
ワクチン開発において有用な異種抗原は、当業者に入手可能な知識を使用して選択されてもよく、腫瘍細胞によって発現される、または腫瘍の増殖もしくは転移に影響を与える、または感染性因子によって発現される多くの抗原性タンパク質が現在知られている。例えば、異種抗原として有用であると見なされ得るウイルス抗原としては、インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)及びHIVのgagタンパク質が挙げられるがこれらに限定されない。他の異種抗原としては、HIVのenvタンパク質またはその構成部分gp120及びgp41、HIVのnefタンパク質、ならびにHIVのpolタンパク質、逆転写酵素及びプロテアーゼが挙げられるがこれらに限定されない。さらに他の異種抗原は、E1及びE2糖タンパク質、ならびに非構造(NS)タンパク質、例えば、NS3が挙げられるがこれらに限定されない、C型肝炎ウイルス(HCV)に関連するものであり得る。さらに、他のウイルス抗原、例えば、ヘルペスウイルスタンパク質も有用であり得る。該異種抗原は、ウイルス起源のものであることに限定される必要はない。寄生生物抗原、例えば、マラリア抗原等が含まれ、真菌抗原、細菌抗原、及び腫瘍抗原も含まれる。
【0030】
本明細書に記載の通り、腫瘍細胞によって発現されるいくつかのタンパク質も既知であり、本発明のワクチン株に挿入され得る異種抗原として目的のものである。これらとしては、白血病におけるbcr/abl抗原、子宮頸癌に関連する発がん性ウイルスのHPVE6及びE7抗原、黒色腫におけるまたはそれに関連するMAGE1及びMZ2-E抗原、ならびに乳癌におけるまたはそれに関連するMVC-1及びHER-2抗原が挙げられるがこれらに限定されない。適切な異種抗原としては、がん関連抗原、例えば、がん胎児性抗原(CEA)、上皮糖タンパク質-2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児アセチルコリン受容体、ガングリオシド抗原GD2、Her2/neu、IL-13R-a2、カッパ軽鎖、LeY、L1細胞接着分子、黒色腫関連抗原(MAGE)、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、NKG2Dリガンド、がん胎児抗原(h5T4)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質-72(TAG-72)、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGF-R2)、及び上皮増殖因子受容体(EGFR)vIIIポリペプチド等が挙げられる。他の目的のコード配列としては、共刺激分子、免疫調節性分子等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
本明細書に記載の細菌は、様々な異なるプロトコルを使用して生成され得る。したがって、該対象弱毒化細菌の生成は、欠失突然変異誘発、挿入突然変異誘発、点変異、フレームシフト変異の生成をもたらす突然変異誘発、タンパク質の未成熟末端をもたらす変異、及び遺伝子発現に影響を与える調節配列の変異を含めた当業者に周知のいくつかの方法で達成され得る。突然変異誘発は、組み換えDNA技術を使用して、または変異原性の化学物質もしくは放射線を使用し、その後変異体を選択する従来の突然変異誘発技術を使用して達成され得る。本発明にしたがって細菌を生成する様々な方法の代表的なプロトコルを、以下の実験セクションで提供する。
【0032】
異種抗原をコードするDNAのリステリア属株への導入は、例えば、異種抗原をコードするDNAが、ベクター、例えば、プラスミド等に担持された組み換えリステリア属の創出によって達成されてもよく、該プラスミドは、該リステリア属種において維持及び発現され、その抗原発現は、原核生物のプロモーター/調節配列の制御下にある。代替的に、該異種抗原をコードするDNAは、例えば、トランスポゾン突然変異誘発、相同組み換え、またはインテグラーゼ媒介性部位特異的組み込み(その開示が参照により本明細書に組み込まれる出願第10/136,860号に記載の通り)を使用することによってリステリア属染色体に安定に組み込まれ得る。
【0033】
本開示を与えられた後の当業者には理解されるように、リステリア属種において異種抗原を発現させるためにいくつかのアプローチが使用され得る。ある特定の実施形態では、異種抗原をコードする遺伝子は、該細菌からの異種抗原の分泌を促進するように、またはリステリア属細胞表面での該異種抗原の発現を促進するように設計される。
【0034】
ある特定の実施形態では、所望の異種抗原及びリステリア属の分泌されたまたは細胞表面タンパク質を含む融合タンパク質が使用される。かかる融合タンパク質の適切な成分であるリステリア属タンパク質としては、リステリオリシンO(LLO)及びホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼ(PI-PLC)が挙げられるがこれらに限定されない。融合タンパク質は、両方の遺伝子が互いにインフレームであるように、所望の融合タンパク質の成分の各々をコードする遺伝子をライゲートすることによって生成され得る。したがって、ライゲートされた遺伝子の発現により、異種抗原とリステリア属タンパク質の両方を含むタンパク質が得られる。ライゲートされた遺伝子の発現は、該遺伝子の発現が該生物の増殖及び複製中にもたらされるように、リステリア属プロモーター/調節配列の転写制御下に置かれ得る。該融合タンパク質の細胞表面発現及び/または分泌のためのシグナル配列はまた、該融合タンパク質の細胞表面発現及び/または分泌をもたらすために、異種抗原をコードする遺伝子に付加され得る。該異種抗原が単独で(すなわち、融合されたリステリア属配列の非存在下で)使用される場合、該異種抗原の細胞表面発現及び/または分泌のためにシグナル配列をそれに融合することが有利な場合がある。これを達成するための手順は、細菌学及び分子生物学の技術分野で周知である。
【0035】
発現される異種抗原をコードするDNAには、いくつかの実施形態では、かかる発現を促進するために適切なプロモーターが先行する。使用される適切なプロモーター/調節配列及びシグナル配列は、該融合タンパク質において所望されるリステリア属タンパク質のタイプに依存し、リステリア属分子生物学の当業者には容易に分かるであろう。例えば、融合タンパク質の発現を導くために使用され得るL.モノサイトジェネスのプロモーター/調節配列及び/またはシグナル配列としては、LLOをコードするリステリア属のhly遺伝子、リステリア属のp60(iap)遺伝子、及びL.モノサイトジェネスのアクチン集合に必要な表面タンパク質をコードするリステリア属のactA遺伝子に由来する配列が挙げられるがこれらに限定されない。他の目的のプロモーター配列としては、PI-PLCをコードするplcA遺伝子、メタロプロテアーゼをコードするリステリア属のmpl遺伝子、及びリステリア属の膜タンパク質であるインターナリンをコードするリステリア属のinlA遺伝子が挙げられる。該異種調節エレメント、例えば、ファージに由来するプロモーター及び他の細菌種に由来するプロモーターまたはシグナル配列が、該リステリア属種による異種抗原の発現に使用され得る。別の適切なプロモーターは、構成的HyPerプロモーターであり、例えば、Renier et al.(2016)PLoS Pathogens doi.org/10.1371/journal.ppat.1005741を参照されたい。
【0036】
ある特定の実施形態では、該弱毒化リステリア属は、ベクターを含む。該ベクターは、異種抗原をコードするDNAを含み得る。場合によっては、該ベクターは、リステリア属内で複製が可能なプラスミドである。該ベクターは、異種抗原をコードしてもよく、該抗原の発現は、真核生物のプロモーター/調節配列の制御下にあり、例えば、発現カセットに存在する。目的のものである適切なプロモーターを有する典型的なプラスミドとしては、ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーター/エンハンサー領域を含むpCMVベータ、及びSV40初期プロモーター領域またはマウス乳癌ウイルスLTRプロモーター領域を含むものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
したがって、ある特定の実施形態では、該対象細菌は、上記の異種ポリペプチド/タンパク質の少なくとも1つのコード配列を含む。場合によっては、該コード配列は、イントロンを欠くものであり、例えば、染色体配列から産生され得るcDNA配列と同じ配列を有する連続オープンリーディングフレームである。いくつかの実施形態では、このコード配列は、発現カセットの一部であり、該発現カセットは、該リステリア属細胞において該コード配列の発現をもたらし、そのために該ベクターが設計される。本明細書で使用される、「発現カセット」という用語は、少なくとも1つの所望のコード配列及び作動可能に連結された該コード配列の特定の宿主生物、すなわち、該ベクターが設計されるリステリア属細胞内での発現に必要な適切な核酸配列、例えば、上で特定したプロモーター/調節/シグナル配列を含む組み換えDNA分子から構成される発現モジュールまたは発現構築物を指し、該発現カセットは、2つ以上の異なるポリペプチドのコード配列、または同じコード配列の複数のコピーを所望の通りに含み得る。したがって、該コード産物のサイズは、大幅に変動する場合があり、広範囲の異なる産物が、本実施形態のベクターに存在する発現カセットによってコードされ得る。
【0038】
上述のように、該ベクターは、少なくとも1つのコード配列を含んでよく、ある特定の実施形態では、該ベクターは、2つ以上のコード配列を含み、該コード配列は、同時に作用して所望の結果を提供する産物をコードし得る。一般に、該コード配列は、いくつかの異なる産物のいずれをコードしてもよく、様々な異なるサイズのものであってもよく、上記の考察は、代表的な目的のコード配列を提供するにすぎない。
【0039】
バリアントリステリア属を含む組成物
本開示は、本開示のバリアントリステリア属(FMN及びFAD生合成に必要な1つ以上の遺伝子に1つ以上の変異を含むバリアントリステリア属、例えば、ΔribCΔribFバリアント)を含む組成物を提供する。本開示の組成物は、本開示のバリアントリステリア属に加えて、塩(例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4等)、緩衝剤等のうちの1つ以上を含み得る。場合によっては、本開示の組成物は、本開示のバリアントリステリア属に加えて、生理食塩水を含む。場合によっては、本開示の組成物はさらに、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含む。多重特異性抗体は、場合によっては、二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体である。多重特異性抗体は、がん関連抗原に特異的な第一の抗原結合部位及びT細胞(例えば、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、γ/δT細胞、CD8+細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)に特異的な第二の抗原結合部位を含み得る。
【0040】
本開示は、本開示のバリアントリステリア属を含む免疫原性組成物(本明細書では「ワクチン組成物」とも呼ばれる)を提供する。本開示の免疫原性組成物は、a)本開示のバリアントリステリア属、及びb)抗原を含み得る。適切な抗原としては、がん関連抗原、病原体関連抗原(例えば、ウイルス抗原、病原性動物抗原等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0041】
場合によっては、本開示のバリアントリステリア属(FMN及びFAD生合成に必要な1つ以上の遺伝子に1つ以上の変異を含むバリアントリステリア属、例えば、ΔribCΔribFバリアント)を含む組成物は、該バリアントリステリア属の単位用量を含む。該バリアントリステリア属の単位用量は、用量当たり104~1010個の細菌の範囲であり得る。例えば、場合によっては、本開示のバリアントリステリア属(FMN及びFAD生合成に必要な1つ以上の遺伝子に1つ以上の変異を含むバリアントリステリア属、例えば、ΔribCΔribFバリアント)の「有効量」は、単位用量当たり、104~5x104、5x104~105、105~5x105、5x105~106、106~5x106、5x106~107、107~5x107、5x107~108、108~109、または109~1010個の細菌の範囲である。本開示はさらに、バリアントリステリア属の単位用量を含むキットを提供する。
【0042】
有用性
上記の細菌(FMN及びFAD生合成に必要な1つ以上の遺伝子に1つ以上の変異を含むバリアントリステリア属、例えばΔribCΔribFバリアント)は、いくつかの異なる用途に使用される。該対象細菌の代表的な使用としては、(a)リステリア属種に対する抗体を生成するための免疫原、(b)免疫化プロトコルにおけるアジュバント組成物、(c)高分子、例えば、核酸またはタンパク質を標的細胞の細胞質に導入するためのベクター、及び(d)例えば、宿主における細胞性免疫応答を誘発または増強するためのワクチン組成物が挙げられるがこれらに限定されない。ここで、これらの代表的な用途の各々を、以下に個別にさらに説明する。弱毒化リステリア属種の使用はまた、米国特許第8,679,476号、同第8,277,797号、同第8,192,991号、同第7,842,289号、同第7,794,728号、同第7,749,510号、同第7,488,487号、同第7,425,449号、同第6,599,502号、同第6,504,020号、同第6,287,556号、同第6,099,848号、同第6,004,815号、同第5,830,702号、及び同第5,643,599号にも記載されている。これらの出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
ワクチン
該対象細菌(FMN及びFAD生合成に必要な1つ以上の遺伝子に1つ以上の変異を含むバリアントリステリア属、例えばΔribCΔribFバリアント)は、ワクチン(本明細書では「免疫原性組成物」とも呼ばれる)として使用される。本開示のワクチンは、脊椎動物を、致死未満量の弱毒化リステリア属ワクチンと接触させることによって該脊椎動物に投与され、接触は通常、該ワクチンを該宿主に投与することを含む。いくつかの実施形態では、該細菌は、医薬的に許容される製剤で提供される。投与は、経口、非経口、鼻腔内、筋肉内、皮内、腹腔内、血管内、皮下、リンパ節の直接ワクチン接種、カテーテルによる投与、または様々な周知の投与経路のいずれか1つ以上であり得る。例えば、家畜において、該ワクチンは、飼料または液体(例えば、水)中に該ワクチンを組み込むことによって経口投与され得る。それは、凍結乾燥粉末として、凍結製剤として、もしくはカプセルの成分として、または該ワクチンの抗原性を維持する任意のその他の都合のよい医薬的に許容される製剤として供給され得る。いくつかの周知の医薬的に許容される希釈剤または賦形剤のうちのいずれか1つが、本発明のワクチンに使用され得る。適切な希釈剤としては、例えば、滅菌蒸留水、生理食塩水、リン酸緩衝液等が挙げられる。希釈剤の量は、当業者には認識されるように、大きく異なり得る。適切な賦形剤もまた当業者には周知であり、例えば、A.Wade and P.J.Weller,eds.,Handbook of Pharmaceutical Excipients(1994)The Pharmaceutical Press:Londonから選択され得る。投与される用量は、患者の年齢、健康状態、及び体重、患者のタイプ、ならびにもしあれば、併用療法の存在に依存し得る。該ワクチンは、経口投与のための剤形、例えば、カプセル、溶液、懸濁液、もしくはエリキシルで、または非経口、鼻腔内、筋肉内、もしくは血管内使用のための製剤、例えば、溶液もしくは懸濁液のための滅菌液体で使用され得る。本発明によれば、該ワクチンは、選択された生物もしくはウイルスの感染に対して、または腫瘍等に関して患者を免疫化する上で有用なワクチン組成物として、医薬的に許容される希釈剤と組み合わせて使用され得る。患者を免疫化するとは、選択された病原体、がん細胞等に対する少なくともある程度の治療的または予防的免疫を患者に提供することを意味する。
【0044】
該対象ワクチンは、脊椎動物において、選択された因子、例えば、病原生物、腫瘍等に対する細胞性免疫応答、例えば、ヘルパーT細胞または細胞傷害性T細胞応答を誘発または増強するための方法で使用され、かかる方法は、有効量の該リステリア属ワクチンを投与することを含む。該対象ワクチンは、該抗原特異的免疫応答を増強する自然免疫応答を脊椎動物において誘発するための方法で使用される。さらに、本発明のワクチンは、曝露後または診断後の治療に使用され得る。一般に、曝露後治療のためのワクチンの使用は、例えば、狂犬病及び破傷風の治療において、当業者には認識されよう。本発明の同じワクチンは、例えば、免疫化と曝露後の免疫増強の両方に使用され得る。代替的に、本発明の異なるワクチン、例えば、曝露の後期で発現する抗原に特異的なもの等を曝露後の治療に使用してもよい。したがって、該対象ベクターを用いて調製される該対象ワクチンは、様々な病状に関連する抗原に特異的な免疫応答を誘導するために、予防ワクチン及び治療ワクチンの両方として使用される。
【0045】
該患者は、選択された生物に感染しやすい任意のヒト及び非ヒト動物であり得る。該対象ワクチンは、特に哺乳類(ヒト及び非ヒト哺乳類を含む)等の脊椎動物に、及び家畜に使用される。家畜としては、家禽、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ科(例えば、ウサギ)、または他の非ヒト動物が挙げられる。
【0046】
該対象ワクチンは、PCT公開出願第WO2014/106123号、同第WO2014/074635号、同第WO 2009/143085号、同第WO 2008027560号、同第WO 2008066774号、同第WO 2007117371号、同第WO 2007103225号、同第WO 2005071088号、同第WO 2003102168号、同第WO 2003/092600号、同第WO/2000/009733号、及び同第WO 1999/025376号に記載のワクチン接種用途に使用される。これらの出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
アジュバント組成物
該対象細菌株(FMN及びFAD生合成に必要な1つ以上の遺伝子に1つ以上の変異を含むバリアントリステリア属、例えばΔribCΔribFバリアント)は、免疫増強剤として、すなわち、アジュバントとしても使用される。かかる用途において、該対象弱毒化細菌は、生きた細菌株がアジュバントとして使用される当技術分野で既知の方法にしたがって、免疫原、例えば、腫瘍抗原、改変腫瘍細胞等と組み合わせて投与され得る。例えば、Berd et al.,Vaccin 2001 Mar 21;19(17-19):2565-70を参照されたい。
【0048】
いくつかの実施形態では、該細菌株は、感作抗原に化学的にカップリングすることによってアジュバントとして使用される。該感作抗原は、任意の目的の抗原でよく、代表的な目的の抗原としては、ウイルス性因子、例えば、単純ヘルペスウイルス、マラリア原虫、細菌、例えば、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)細菌、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、幼住血吸虫、腫瘍細胞、例えば、CAD2乳腺腺癌腫瘍細胞、ならびにホルモン、例えば、チロキシンT4、トリヨードチロニンT3、及びコルチゾールが挙げられるがこれらに限定されない。該感作抗原の該免疫増強剤へのカップリングは、2つの反応部位を有する様々な化学的因子、例えば、ビスジアゾベンジジン、グルタルアルデヒド、ジヨードアセテート、ならびにジイソシアネート、例えば、m-キシレンジイソシアネート及びトルエン-2,4-ジイソシアネート等によって達成され得る。リステリア属種のアジュバントとしての使用はさらに、米国特許第4,816,253号に記載されている。その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
送達媒体
該対象細菌(FMN及びFAD生合成に必要な1つ以上の遺伝子に1つ以上の変異を含むバリアントリステリア属、例えば、ΔribCΔribFバリアント)はまた、例えば、PCT公開第WO00/09733号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)、及びDietrich et al.,Nature Biotechnology(1998)16:181-185に記載の通り、標的細胞への高分子の送達用ベクターまたは送達媒体としても使用される。これらの刊行物に記載されているように、核酸、ポリペプチド/タンパク質等が挙げられるがこれらに限定されない様々な異なるタイプの高分子が送達され得る。
【0050】
MAIT細胞リガンドを産生するバリアントリステリア属
本開示は、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞リガンド5-(2-オキソプロピリデンアミノ)-6-D-リビチルアミノウラシル(5-OP-RU)の産生をもたらし、MAIT細胞を活性化及び刺激するバリアントリステリア属を提供する。場合によっては、MAIT細胞リガンドを産生する本開示のバリアントリステリア属は、リボフラビンも産生する。本開示は、リボフラビンを産生し(すなわち、リボフラビンをデノボ合成する)、インビボでMAIT細胞の増殖を活性化及び刺激するバリアントリステリア属を提供する。本開示のリボフラビンを産生するMAIT細胞刺激型バリアントリステリア属は、本明細書では「ribDEAHTバリアントリステリア属」とも呼ばれる。本開示のribDEAHTバリアントリステリア属は、リステリア属以外の細菌に由来するリボフラビンオペロン(「ribDEAHTオペロン」)を含むように遺伝子改変される。したがって、本開示のribDEAHTバリアントリステリア属は、異種ribDEAHTオペロン(すなわち、リステリア属以外の細菌に由来するribDEAHTオペロン)を含むように遺伝子改変される。異種ribDEAHTオペロンは、任意のリボフラビン合成型細菌に由来し得る。例えば、異種ribDEAHTオペロンは、グラム陽性細菌、例えば、バチルス属(Bacillus)種、例えば、B.スブチリスに由来し得る。
図7に示すように、異種ribDEAHTは、ribD、ribE、ribA、ribH、及びribT遺伝子を含むことができ、これらの遺伝子は、転写制御因子(例えば、プロモーター)に作動可能に連結することができ、該プロモーターは、構成的であっても誘導性であってもよい。
【0051】
場合によっては、該MAIT細胞リガンド5-OP-RUを産生する(かつMAIT細胞の増殖を活性化及び刺激することができる)本開示のバリアントリステリア属は、リボフラビンを産生しない。かかるバリアントリステリア属の例は、異種ribD遺伝子及び異種ribA遺伝子で遺伝子改変されているものである。かかるバリアントリステリア属は、本明細書では、「ribDAバリアントリステリア属」と呼ばれる。
【0052】
本開示のribDEAHTバリアントリステリア属及びribDAバリアントリステリア属は、本明細書では「5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属」と総称される。本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属は、前駆体5-アミノ-6-(D-リビチルアミノ)ウラシル(5-A-RU)を産生し、これがメチルグリオキサールまたはグリオキサールと呼ばれる内因性求電子剤と反応して、5-OP-RUを生じる。
【0053】
場合によっては、本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属はまた、gloA遺伝子に変異を有する(例えば、gloA-株である)。例えば、Anaya-Sanchez et al.(2021)PLoS Pathogens 17:e1009819を参照されたい。
【0054】
場合によっては、本開示のribDEAHTバリアントリステリア属は、ribUタンパク質を産生しないように、ribU遺伝子に欠失を有する。したがって、例えば、場合によっては、本開示のribDEAHTバリアントリステリア属は、ΔribUバリアントである。
【0055】
本開示のribDEAHTバリアントリステリア属または本開示のribDAバリアントリステリア属(すなわち、本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属)を生成するために使用されるリステリア宿主細胞は、いくつかの異なるリステリア属種のいずれか1つでよく、通常、リボフラビン要求性株である。目的のリステリア属種としては、L.フレイシュマンニ、L.イノキュア、L.イバノビイ、L.マルスイ、L.モノサイトジェネス、L.ルコウルティアエ、L.シーリゲリ、L.ウェイヘンステファネンシス、及びL.ウェルシメリが挙げられるがこれらに限定されない。したがって、L.モノサイトジェネス以外のリステリア属株も宿主細胞であり得る。ある特定の場合には、該リステリア属株は、L.モノサイトジェネスである。
【0056】
場合によっては、該リステリア属宿主細胞は弱毒化される。「弱毒化」及び「弱毒化された」は、病原性を低下させるように改変されたリステリア属宿主細胞を包含する。該宿主は、ヒトもしくは動物宿主、または器官、組織、もしくは細胞であり得る。非限定的な例を挙げると、該リステリア属宿主細胞は、宿主細胞への結合を低減するため、1つの宿主細胞から別の宿主細胞への拡散を低減するため、細胞外増殖を低減するため、または宿主細胞での細胞内増殖を低減するために弱毒化され得る。弱毒化は、例えば、病原性の指標、LD50、器官からのクリアランス率、または競争指標を測定することによって評価され得る(例えば、Auerbuch,et al.(2001)Infect.Immunity 69:5953-5957参照)。一般に、弱毒化により、LD50(致死量、50%、特定の試験期間後に試験された集団のメンバーの半数を死滅させるために必要な用量(細菌数))の増加及び/またはクリアランス率の増加が、少なくとも25%、より一般的には、少なくとも50%、最も一般的には、少なくとも100%(2倍)、標準的には、少なくとも5倍、さらに標準的には、少なくとも10倍、最も標準的には、少なくとも50倍、多くの場合、少なくとも100倍、さらに多くの場合、少なくとも500倍、最も多くの場合、少なくとも1000倍、通常は、少なくとも5000倍、より通常は、少なくとも10,000倍、最も通常は、少なくとも50,000倍、及び最も多くの場合、少なくとも100,000倍もたらされる。
【0057】
ある特定の実施形態では、本開示による弱毒化リステリア属は、Auerbach et al.,“Development of a Competitive Index Assay To Evaluate the Virulence of Listeria monocytogenes actA Mutants during Primary and Secondary Infection of Mice,”Infection and Immunity,September 2001,p.5953-5957,Vol.69,No.9に記載の競合指標アッセイにおいて、対応する野生型株と比較して、病原性の低下を示すものである。本アッセイでは、マウスに試験及び参照、例えば、野生型細菌株を接種する。ある期間後、例えば48~60時間後、接種したマウスをサクリファイスし、1つ以上の器官、例えば、肝臓、脾臓の細菌の存在量を評価する。これらの実施形態では、所与の細菌株は、脾臓におけるその存在量が、対応する野生型株で観察されるものの少なくとも約1/50以上、例えば、1/70以上少ない場合、及び/または肝臓におけるその存在量が、対応する野生型株で観察されるものの少なくとも約1/10以上少ない、例えば、1/20以上少ない場合に、病原性が低いと見なされる。
【0058】
さらに他の実施形態では、細菌は、Jones and Portnoy,Intracellular growth of bacteria.(1994b)Methods Enzymol.236:463-467に記載のアッセイを使用して測定される、約8時間未満、例えば、約4時間未満を含め、約6時間未満の複製の失敗を示す場合、病原性が低いと見なされる。さらに他の実施形態では、細菌は、野生型と比較して、米国特許第7,794,728号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)で採用されているプラークアッセイにおいてより小さなプラークを形成する場合、弱毒化されたまたは病原性が低いと見なされる。該アッセイでは、細胞、例えば、マウスL2細胞を、例えば、6ウェル組織培養ディッシュにて、コンフルエンシーまで増殖させ、その後細菌に感染させる。その後、ゲンタマイシンを含むDME寒天を加え、プラークをある期間、例えば3日間増殖させる。その後、例えば、ニュートラルレッド(GIBCO BRL)を含む追加のDME寒天オーバーレイを添加することによって、生細胞を可視化し、終夜インキュベートする。かかるアッセイでは、野生型と比較して弱毒化変異体で観察されるプラークサイズの減少の程度は、ある特定の実施形態では、10%であり、15%が含まれ、例えば、25%以上である。
【0059】
弱毒化細菌は、弱毒化表現型を付与する1つ以上の異なる変異を含んでよく、目的の変異としては、例えば、米国特許第7,794,728号(その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載のhly変異及び/またはlplA変異、例えば、Dung et al.,Clin.Cancer Res.(2012)18:858-868に報告されているactA及び/またはインターナリンB(InlB)変異等が挙げられる。したがって、場合によっては、本開示のribDEAHTバリアントリステリア属は、異種ribDEAHTオペロンに加えて、actA及び/またはlnlBに変異を含む。
【0060】
本開示のバリアントリステリア属細菌は、上記の通り、異種ribDEAHTオペロンまたは異種ribDA遺伝子に加えて1つ以上の遺伝子改変を含んでもよく、該1つ以上のさらなる改変は、宿主細胞において望ましい性質、例えば、弱毒化、免疫原性の向上等を提供する。かかるさらなる改変の例としては、PCT公開出願第WO 2014/106123号、同第WO 2014/074635号、同第WO 2009/143085号、同第WO 2008027560号、同第WO 2008066774号、同第WO 2007117371号、同第WO 2007103225号、同第WO 2005071088号、同第WO 2003102168号、同第WO 2003/092600号、同第WO/2000/009733号、及び同第WO 1999/025376号に記載のものが挙げられるがこれらに限定されない。これらの出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
該細菌は、生きている場合もあれば、死滅しているが代謝的に活性な(「KBMA」)場合もある。KBMAワクチン株は、DNA修復遺伝子、例えば、uvrA及びuvrBの削除を介してヌクレオチド除去修復の能力を破棄することによって構築される。該遺伝子の削除により、該細菌は、ソラレンとUVAの併用処理を介した光化学的不活性化に弱くなる。形成されたソラレン誘導性のDNA架橋を修復することができないため、KBMA細菌株は、複製することができず、したがって、機能的に非感染性である。この特性により、生弱毒化株と比較して安全性プロファイルが改善される。しかしながら、架橋の数は非常に限られており、抗原の発現を含めたそれらの代謝活性、ひいてはそれらの免疫能が維持される。KBMAワクチン株については、米国特許第7,833,775号に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
ある特定の例では、本開示のribDEAHTバリアントリステリア属または本開示のribDAバリアントリステリア属(本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属)は、異種抗原を発現する。該異種抗原は、ある特定の実施形態では、該異種抗原が由来する感染性因子による抗原投与から動物を保護することができるもの、または宿主生物にとって有益に、腫瘍の増殖及び転移に影響を与えることができるものである。したがって、異種抗原をコードするDNAによって本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属に導入され得る異種抗原は、リステリア属によって発現された場合に、応答が誘導される宿主にとって有益である細胞性免疫応答を誘発するのに役立つ任意の抗原を含む。したがって、異種抗原としては、感染性因子によって特定されるものが挙げられ、該抗原に対する免疫応答が、該因子によって引き起こされる疾患を予防または治療する役割を果たす。かかる異種抗原としては、ウイルス、細菌、真菌、または寄生生物の表面タンパク質及び任意の他のタンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質等が挙げられるがこれらに限定されない。異種抗原としては、該異種抗原を発現する腫瘍をもたらすリスクがある、またはそれを有すると診断される宿主生物に利益をもたらすものも挙げられる。該宿主生物は、哺乳類、例えば、ヒトであり得る。
【0063】
本明細書で使用される、「異種抗原」という用語は、リステリア属で通常発現されないタンパク質もしくはペプチド、糖タンパク質もしくは糖ペプチド、リポタンパク質もしくはリポペプチド、または任意の他の高分子を意味し、実質的には、感染性因子、腫瘍細胞または腫瘍関連タンパク質における同じ抗原に対応する。該異種抗原は、本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属によって発現され、該株による哺乳類細胞の感染後に、プロセッシングされ、細胞傷害性T細胞に提示される。本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属によって発現される異種抗原は、哺乳類で自然に発現される未改変の抗原またはタンパク質を認識するT細胞応答をもたらす限り、腫瘍細胞または感染性因子内の対応する未改変の抗原またはタンパク質と正確に一致する必要はない。他の例では、該腫瘍細胞抗原は、哺乳類において自然に発現されるものの変異型であってもよく、リステリア属種によって発現される抗原は、その腫瘍細胞変異抗原に適合する。本明細書で使用される、「腫瘍関連抗原」という用語は、宿主生物における腫瘍の増殖または転移に影響を与える抗原を意味する。該腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞によって発現される抗原の場合もあれば、非腫瘍細胞によって発現されるが、そのように発現された際に、腫瘍細胞の増殖または転移を促進する抗原の場合もある。腫瘍抗原及び腫瘍関連抗原をコードするDNAを組み込むことによってリステリア属に導入され得る該腫瘍抗原及び腫瘍関連抗原のタイプとしては、あらゆる既知の、またはこれまで知られていなかった腫瘍抗原が挙げられる。他の例では、該「腫瘍関連抗原」は、腫瘍の増殖にも転移にも影響を与えないが、該腫瘍が由来する組織(及び腫瘍)で特異的に発現することから、リステリア属ワクチンの成分として使用される。さらに他の例では、該「腫瘍関連抗原」は、腫瘍の増殖にも転移にも影響を与えないが、該腫瘍細胞で選択的に発現され、任意の他の正常組織では発現されないことから、リステリア属ワクチンの成分として使用される。
【0064】
ワクチン開発において有用な異種抗原は、当業者に入手可能な知識を使用して選択されてもよく、腫瘍細胞によって発現される、または腫瘍の増殖もしくは転移に影響を与える、または感染性因子によって発現される多くの抗原性タンパク質が現在知られている。例えば、異種抗原として有用であると見なされ得るウイルス抗原としては、インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)及びHIVのgagタンパク質が挙げられるがこれらに限定されない。他の異種抗原としては、HIVのenvタンパク質またはその構成部分gp120及びgp41、HIVのnefタンパク質、ならびにHIVのpolタンパク質、逆転写酵素及びプロテアーゼが挙げられるがこれらに限定されない。さらに他の異種抗原は、E1及びE2糖タンパク質、ならびに非構造(NS)タンパク質、例えば、NS3が挙げられるがこれらに限定されない、C型肝炎ウイルス(HCV)に関連するものであり得る。さらに、他のウイルス抗原、例えば、ヘルペスウイルスタンパク質も有用であり得る。該異種抗原は、ウイルス起源のものであることに限定される必要はない。寄生生物抗原、例えば、マラリア抗原等が含まれ、真菌抗原、細菌抗原、及び腫瘍抗原も含まれる。
【0065】
本明細書に記載の通り、腫瘍細胞によって発現されるいくつかのタンパク質も既知であり、本発明のワクチン株に挿入され得る異種抗原として目的のものである。これらとしては、白血病におけるbcr/abl抗原、子宮頸癌に関連する発がん性ウイルスのHPVE6及びE7抗原、黒色腫におけるまたはそれに関連するMAGE1及びMZ2-E抗原、ならびに乳癌におけるまたはそれに関連するMVC-1及びHER-2抗原が挙げられるがこれらに限定されない。適切な異種抗原としては、がん関連抗原、例えば、がん胎児性抗原(CEA)、上皮糖タンパク質-2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児アセチルコリン受容体、ガングリオシド抗原GD2、Her2/neu、IL-13R-a2、カッパ軽鎖、LeY、L1細胞接着分子、黒色腫関連抗原(MAGE)、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、NKG2Dリガンド、がん胎児抗原(h5T4)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質-72(TAG-72)、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGF-R2)、及び上皮増殖因子受容体(EGFR)vIIIポリペプチド等が挙げられる。他の目的のコード配列としては、共刺激分子、免疫調節性分子等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0066】
場合によっては、本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属は、キメラ抗原受容体(CAR)を産生するように遺伝子改変される。CARは、がん関連抗原に結合する抗原結合部分を含み得る。該抗原結合部分は、例えば、一本鎖Fv、ナノボディ等であり得る。
【0067】
ribDEAHTバリアントリステリア属またはribDAバリアントリステリア属を含む組成物
本開示は、本開示のバリアントリステリア属(本開示のribDEAHTバリアントリステリア属、本開示のribDAバリアントリステリア属)を含む組成物を提供する。本開示の組成物は、本開示のバリアントリステリア属に加えて、塩(例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4等)、緩衝剤等のうちの1つ以上を含み得る。場合によっては、本開示の組成物は、本開示のバリアントリステリア属に加えて、生理食塩水を含む。場合によっては、本開示の組成物はさらに、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含む。多重特異性抗体は、場合によっては、二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体である。多重特異性抗体は、がん関連抗原に特異的な第一の抗原結合部位及びT細胞(例えば、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、γ/δT細胞、CD8+細胞傷害性T細胞)に特異的な第二の抗原結合部位を含み得る。
【0068】
本開示は、本開示のバリアントリステリア属を含む免疫原性組成物(本明細書では「ワクチン組成物」とも呼ばれる)を提供する。本開示の免疫原性組成物は、a)本開示のバリアントリステリア属、及びb)抗原を含み得る。適切な抗原としては、がん関連抗原、病原体関連抗原(例えば、ウイルス抗原、病原性原生動物抗原等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0069】
有用性
本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属は、MAIT細胞の増殖を活性化及び/または刺激することに使用される。MAIT細胞は、制限分子主要組織適合複合体(MHC)関連タンパク質-1(MR1)に提示されるリボフラビン合成の低分子生合成誘導体を認識するそれらのセミインバリアントαβT細胞受容体(TCR)によって定義される自然様T細胞である。MAIT細胞リガンドとしては、5-(2-オキソプロピリデンアミノ)-6-D-リビチルアミノウラシル(5-OP-RU)及び5-(2-オキソエチリデンアミノ)-6-D-リビチルアミノウラシル(5-OE-RU)が挙げられ、これらは、多種多様な細菌、マイコバクテリア、及び酵母によってリボフラビン(ビタミンB2)合成の過程で産生される。MAIT細胞は、固有のエフェクターメモリー表現型、例えば、CD45RA-CD45RO+CD95HiCD62LLoCD44Hiを有し、様々な炎症性サイトカインを分泌する能力を有する。
【0070】
場合によっては、本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属が個体に投与され、該投与により、該個体におけるMAIT細胞の数が増加する。場合によっては、有効量の本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属を個体に投与することにより、該個体のMAIT細胞の数が少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、または50%超増加する。場合によっては、有効量の本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属の個体への投与により、該個体においてMAIT細胞が活性化する。
【0071】
場合によっては、本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属は、個体に経口投与され、該個体の腸内の免疫応答が調節される。
【0072】
本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属の「有効量」は、それを必要とする個体に投与された場合に、該個体に有益な効果(例えば、臨床的に有益な効果)をもたらす量である。場合によっては、本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属の有効量は、それを必要とする個体に投与された場合に、該個体においてMAIT細胞の数を増加させる量である。場合によっては、本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属の有効量は、腫瘍を有する個体に投与された場合に、該個体において腫瘍体積を減少させる量、及び/またはがん細胞の数を減少させる量である。
【0073】
場合によっては、本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属の「有効量」は、用量当たり104~1010個の細菌の範囲である。例えば、場合によっては、本開示の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属の「有効量」は、単位用量当たり、104~5x104、5x104~105、105~5x105、5x105~106、106~5x106、5x106~107、107~5x107、5x107~108、108~109、または109~1010個の細菌の範囲である。
【0074】
本開示の非限定的態様の例
上記本主題の実施形態を含む態様は、単独で、または1つ以上の他の態様もしくは実施形態との組み合わせで有益であり得る。先の記載を限定することなく、本開示のある特定の非限定的な態様を以下に示す。本開示の読後に当業者には明らかであるように、個々の番号が付された態様のそれぞれは、先行または後続の個々の番号が付された態様のうちのいずれかとともに使用され得るか、または組み合わされ得る。これは、すべてのかかる態様の組み合わせに対する支持を提供することを意図するものであり、以下に明示的に示される態様の組み合わせに限定されるものではない。
【0075】
態様1.フラビンモノヌクレオチド(FMN)及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)生合成に必要な遺伝子の変異を含むバリアントリステリア属細菌であって、哺乳類においては細胞外で増殖しない、前記バリアントリステリア属細菌。
【0076】
態様2.FMN及びFAD合成に必要な前記遺伝子が、ribC遺伝子及び/またはribF遺伝子である、態様1に記載のバリアントリステリア属細菌。
【0077】
態様3.条件的偏性細胞内細菌である、態様1または態様2に記載のバリアントリステリア属細菌。
【0078】
態様4.増殖するためにフラビンモノヌクレオチド及びフラビンアデニンジヌクレオチドの補給を必要とする、態様1~3のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属細菌。
【0079】
態様5.前記変異が、前記ribC遺伝子及び/または前記ribF遺伝子のすべてまたは一部の欠失を含む、態様2~4のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属細菌。
【0080】
態様6.前記バリアントが、少なくとも1つの異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含むように遺伝子改変されている、態様5のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属細菌。
【0081】
態様7.前記異種核酸が、前記細菌のゲノムに組み込まれている、態様6に記載のバリアントリステリア属細菌。
【0082】
態様8.前記少なくとも1つの異種遺伝子産物が、抗原を含む、態様6または態様7に記載のバリアントリステリア属細菌。
【0083】
態様9.前記抗原が、がん関連抗原である、態様8に記載のバリアントリステリア属細菌。
【0084】
態様10.バリアントリステリア・モノサイトジェネス細菌である、態様1~9のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属細菌。
【0085】
態様11.前記細菌に弱毒化表現型を付与する1つ以上のさらなる変異、及び/または増殖優位性をもたらす1つ以上のさらなる変異をさらに含む、態様1~10のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属細菌。
【0086】
態様12.前記弱毒化表現型を付与する1つ以上のさらなる変異が、actA及びinlBから選択される遺伝子の変異を含み、任意に、前記増殖優位性をもたらす1つ以上のさらなる変異が、eetB遺伝子の変異を含む、態様11に記載のバリアントリステリア属細菌。
【0087】
態様13.
a)態様1~12のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属細菌、及び
b)多重特異性抗体
を含む、組成物。
【0088】
態様14.前記多重特異性抗体が、i)がん関連抗原に特異的な第一の抗原結合部位、及びii)T細胞に特異的な第二の抗原結合部位を含む、態様13に記載の組成物。
【0089】
態様15.前記T細胞が、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、γ/δ T細胞、CD8+T細胞、またはナチュラルキラー(NK)細胞である、態様14に記載の組成物。
【0090】
態様16.態様1~12のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属を含む、免疫原性組成物。
【0091】
態様17.個体における免疫応答を誘導する方法であって、態様16に記載の免疫原性組成物の有効量を前記個体に投与することを含む、前記方法。
【0092】
態様18.前記バリアントリステリア属細菌が、異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含むように遺伝子改変されており、前記免疫応答が、前記異種ポリペプチドに対して誘導される、態様17に記載の方法。
【0093】
態様19.前記異種ポリペプチドが、抗原である、態様18に記載の方法。
【0094】
態様20.前記抗原が、がん関連抗原である、態様18に記載の方法。
【0095】
態様21.前記免疫応答が、ガンマ-デルタT細胞応答を含む、態様17~20のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
態様22.態様16に記載の免疫原性組成物の単位用量を含む、キット。
【0097】
態様23.前記単位用量が、経口用量である、態様22に記載のキット。
【0098】
態様24.前記単位用量が、注射用である、態様22に記載のキット。
【0099】
態様25.異種抗原をコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクターをさらに含む、態様22~24のいずれか1つに記載のキット。
【0100】
態様26.粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞リガンド5-(2-オキソプロピリデンアミノ)-6-D-リビチルアミノウラシル(5-OP-RU)の産生をもたらす、5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属。
【0101】
態様27.前記バリアントリステリア属が、異種ribDEAHTオペロンを含み、前記バリアントリステリア属が、リボフラビンを合成し、MAIT細胞の増殖を刺激する、態様26に記載の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属。
【0102】
態様28.前記バリアントリステリア属が、異種のribD及びribA遺伝子を含む、態様26に記載の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属。
【0103】
態様29.前記バリアントが、少なくとも1つの異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含むように遺伝子改変されている、態様26~28のいずれか1つに記載の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属。
【0104】
態様30.前記異種核酸が、前記細菌のゲノムに組み込まれている、態様29に記載の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属細菌。
【0105】
態様31.前記少なくとも1つの異種遺伝子産物が、抗原を含む、態様29または態様30に記載の5-OP-RU前駆体産生型バリアントリステリア属細菌。
【0106】
態様32.前記抗原が、がん関連抗原である、態様31に記載のバリアントリステリア属細菌。
【0107】
態様33.前記少なくとも1つの異種遺伝子産物が、キメラ抗原受容体を含む、態様29または態様30に記載のバリアントリステリア属細菌。
【0108】
態様34.前記細菌に弱毒化表現型を付与する1つ以上のさらなる変異、及び/または増殖優位性をもたらす1つ以上のさらなる変異をさらに含む、態様26~33のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属細菌。
【0109】
態様35.前記弱毒化表現型を付与する1つ以上のさらなる変異が、actA及びinlBから選択される遺伝子の変異を含み、前記増殖優位性をもたらす1つ以上のさらなる変異が、eetB遺伝子の変異を含む、態様34に記載のバリアントリステリア属細菌。
【0110】
態様36.態様26~35のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属を含む、組成物。
【0111】
態様37.個体における粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)細胞の数及び活性化状態を増大させる方法であって、前記個体に、態様26~35のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属の有効量を投与することを含む、前記方法。
【0112】
態様38.個体におけるがんの治療方法であって、前記個体に、態様26~35のいずれか1つに記載のバリアントリステリア属の有効量を投与することを含む、前記方法。
【実施例】
【0113】
以下の実施例は、当業者に本発明をいかに作製及び使用するかの完全な開示及び説明を提供するために提示されるものであり、本発明者らが自身の発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また以下の実験が実施されたすべてまたは唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。使用した数値(例えば、量、温度等)に関しては、正確さを確保するための努力がなされているが、多少の実験誤差及び偏差を考慮されたい。別途示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。例えば、bp、塩基対、kb、キロベース、pl、ピコリットル、sまたはsec、秒、min、分、hまたはhr、時間、aa、アミノ酸、kb、キロベース、bp、塩基対、nt、ヌクレオチド、i.m.、筋肉内(筋肉内に)、i.p.、腹腔内(腹腔内に)、i.v.、静脈内(静脈内に)、s.c.、皮下(皮下に)等の標準的な略語が使用され得る。
【0114】
実施例1:L.モノサイトジェネスの偏性細胞内病原性株
材料及び方法
細菌培養及び株
L.モノサイトジェネスの株(表1)は、野生型10403S株に由来し、200μg/mLのストレプトマイシン(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を含むフィルター滅菌富栄養型ブレインハートインフュージョン(BHI)培地(BD、Sparks,MD,USA)で培養した。ΔribU(lmo1945)、ΔribC(lmo1329)、ΔribF(lmo0728)、及びΔribCΔribF株の構築を、温度感受性プラスミドpKSV7での対立遺伝子交換を使用して行った。ΔribC、ΔribF、及び二重ribC/ribF変異株の生成プロセスの間、細菌を常に2.5μMのFMN(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)及び2.5μMのFAD(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を含むBHI培地で培養し、合成致死性を回避した。ΔribC、ΔribF、及びΔribCΔribF株を使用したすべての手順について、細菌を常に2.5μMのFMN及び2.5μMのFADを含むBHI培地で増殖させた。
【0115】
ribDEAHTオペロンを発現するΔribU株またはribUを発現する相補株の生成は、それぞれ、ribDEAHTオペロンをバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)由来の天然プロモーターで、及びribU遺伝子を野生型L.モノサイトジェネス由来の天然プロモーターで増幅し、それらをpPL2組み込みベクターにクローニングすることによって行った。同様に、ΔribCΔribF変異体の補完は、ribC遺伝子を野生型L.モノサイトジェネス由来の天然プロモーターで増幅し、それをpPL2ベクターにクローニングすることによって行った。それらを、コンジュゲーションを介してL.モノサイトジェネスのゲノムに組み込んだ。ブロス増殖曲線は、37℃で振とう(200rpm)にて増殖させた終夜培養物からのL.モノサイトジェネス株を用いて行った。富栄養型(BHI)及び既知組成の合成培地の増殖曲線を光学濃度(OD600)0.03から開始した。増殖曲線は、波長600nmでの光学密度(OD600)によって分光光度法で測定した。
【0116】
組織培養及び増殖培地
骨髄由来マクロファージ(BMM)を、8週齢の雌の野生型(Jackson laboratory)及びAIM2 KO(University of Massachusetts Medical School)のC57BL/6Jマウスから骨髄を採取することによって調製した。BMMを、20%ウシ胎児血清(FBS)(Avantor-Seradigm,Radnor,PA,USA)、10%M-CSF産生型3T3細胞上清、1%L-グルタミン(Corning,Lowell,MA,USA)、1%ピルビン酸ナトリウム(Corning,315Lowell,MA,USA)、14mMの2-メルカプトエタノール(Gibco Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)を用いた高グルコースGibco Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)にて、または実験手順で説明している修正DMEMレシピを用いて培養した。
【0117】
細胞内増殖曲線
感染の16~18時間前に、3x106個のBMMを、14 12mmのガラスカバースリップ(Thermo Fischer Scientific,Waltham,MA,USA)を各ディッシュに含む60mmの非TC処理ディッシュ(MIDSCI,St.Louis,MO,USA)に播種した。L.モノサイトジェネス株を、14mlのラウンドポリプロピレンチューブ(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)内で、傾斜位にて30℃で終夜増殖させた。細菌を洗浄し、滅菌1Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈し、BMMに感染の多重度(MOI)0.25で感染させた。感染後30分で、細胞を1X PBSで2回洗浄した。感染後1時間で、50μg/mLの硫酸ゲンタマイシン(Sigma Aldrich,St.Louis,MO,USA)を細胞培地に加えて、細菌を死滅させ/細菌の細胞外での増殖を防止した。
【0118】
リボフラビンを欠く培地における細胞内増殖曲線
L.モノサイトジェネスの細胞内フラビンを枯渇させるために、BMM感染の2日前に1μMのリボフラビンを含む既知組成培地で細菌培養を開始し、37℃で振とうしながら増殖させた。細菌を、感染の16~18時間前に1X PBSで2回洗浄し、次いで、フラビンを欠く既知組成培地で希釈し、37℃で振とうしながら増殖させた。
【0119】
マクロファージをBMM感染の3時間前に1X PBSで2回洗浄し、細胞培地を、SnakeSkin透析チューブを使用した20%透析FBS、3.5K MWCO(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)、及び上記の組織培養及び増殖培地のセクションに記載した他の成分を含む、リボフラビンを欠くDMEM高グルコース(Millipore Sigma,Burlington,MA,USA)と交換した。これらのリボフラビン飢餓L.モノサイトジェネスを洗浄し、滅菌1X PBSで希釈し、BMMにMOI0.25にて感染させた。これらの増殖曲線は、凡例に別途記載のない限り、リボフラビンを添加せずに行った。
【0120】
細胞死(乳酸脱水素酵素放出)アッセイ
感染の16~18時間前に、5x105個のBMM/ウェルを、100ng/mLのPam3CSK4(InvivoGen,San Diego,CA,USA)を含むDMEM培地で24ウェルプレートに播種した。BMMに感染させる前に、この細胞培地を5%FBSを含むDMEM培地と交換した。L.モノサイトジェネス株を30℃で傾斜して終夜増殖させた。感染に関しては、細菌を1X PBSで希釈し、BMMにMOI4で感染させた。感染後30分で、BMMを1X PBSで2回洗浄し、5%FBS及び50μg/mLのゲンタマイシンを含むDMEM培地をウェルに添加した。
【0121】
マウス静脈内感染
8週齢の雌のCD-1マウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA,USA)に、尾静脈を介して1x105個の対数増殖中の細菌を含む200μLのPBSを感染させた。感染後48時間でマウスを安楽死させ、脾臓、肝臓、及び胆嚢を採取し、ホモジナイズし、プレーティングして、器官ごとのCFU数を測定した。
【0122】
血液増殖曲線
血中のL.モノサイトジェネス株の増殖は、脱繊維素ヒツジ血(HemoStat Laboratories,Dixon,CA,USA)を使用して測定した。細菌を2.5時間対数増殖させ、洗浄し、3mLの脱繊維素ヒツジ血中に濃度1x106/mLにて再懸濁した。血液培養を37℃で振とうしながらインキュベートした。血中のL.モノサイトジェネスの増殖を、血液を1X PBSで希釈し、プレーティングすることによって3日間観察し、全血中のCFU数を特定した。
【0123】
マウス経口感染
マウスに、5mg/mLのストレプトマイシン硫酸塩(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を含む飲料水を感染の48時間前に与えた。感染の18~24時間前にマウスを清潔なケージに移し、食物源(mouse colony chow)を除去して終夜の絶食を開始した。感染当日に、3mmのパン片に1x108個の対数増殖中の細菌を含む1X PBSを植菌し、3μLのバターを塗った。次に、各8週齢の雌のCD-1マウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA,USA)に、植菌したパンを一片与えた。硫酸ストレプトマイシン水を標準的な飲料水と交換し、食事を元に戻した。フン試料を感染後5日間毎日採集し、重量を測定し、4℃で10分間ボルテックスし、プレーティングして、フン便1グラム当たりのCFU数を測定した。
【0124】
ファゴソーム脱出アッセイ
12mmのガラスカバースリップ(Thermo Fischer Scientific,Waltham,MA,USA)を含む24ウェルプレートにBMMを播種し、終夜培養した。BMMを250ng/mLのサイトカラシンD(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)で処理し、30分後に、傾斜位置で30℃にて終夜増殖させたL.モノサイトジェネス株に感染させた(MOI15)。感染後1時間15分で、BMMを1X PBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences,Hatfield,PA,USA)で15分間固定した。次いで、免疫蛍光染色、顕微鏡検査、及び画像解析を進めた。使用した一次抗体は、1:1000希釈のウサギ抗リステリア属(BD Difco,Franklin Lakes,NJ,USA、カタログ番号223021)、及び1:200希釈のモルモット抗p62(Fitzgerald,Acton,MA,USA、カタログ番号20R-PP001)であった。使用した二次抗体は、1:2000希釈のRhodamine Red-Xヤギ抗ウサギIgG(Invitrogen-Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA、カタログ番号R6394)及び1:2000希釈のAlexaFluor-647ヤギ抗モルモットIgG(Invitrogen-Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA、カタログ番号A21450)であった。条件ごとに少なくとも100個の細菌を分析のために定量化した。
【0125】
結果
RibUはマウスにおける病原性に必要である
L.モノサイトジェネスにおいて唯一のアノテーションされたリボフラビントランスポーターである、ribU遺伝子にトランスポゾンが挿入されたL.モノサイトジェネスの変異株を単離した。RibUが増殖に必須ではないことを確認し、発病の過程でのフラビンの獲得及び必要性を評価するために、ribUがインフレームで欠失しているL.モノサイトジェネス株(ΔribU)を生成した。トランスポゾン変異体と同様に、ΔribU株は、野生型L.モノサイトジェネスと比較して、富栄養型培地において検出可能な増殖欠陥を有さなかった(
図1b)。対照的に、ΔribU株は、野生型L.モノサイトジェネスと比較して、マウスの脾臓に5logの病原性の欠損を有し(
図1c)、感染マウスの肝臓からはコロニー形成単位(CFU)を回収することができなかった(
図1d)。ΔribU変異体のribU遺伝子での、その内在性プロモーターによる補完(ΔribU+ribU)により、インビボでの病原性が完全に回復した(
図1c、d)。
【0126】
ΔribU株の病原性の欠損がインビボでのリボフラビン飢餓によって引き起こされたかどうかを判断するために、近縁グラム陽性細菌であるB.スブチリス由来のリボフラビンオペロンribDEAHTを、L.モノサイトジェネス染色体に挿入することによって、リボフラビンを合成するようにΔribU変異体を操作した。この株は、リボフラビンを補給しない無色の既知組成の合成培地で増殖し、培地を、フラビンの天然色である黄色に変化させた(
図2)。ribDEAHTオペロンの発現は、マウスの脾臓及び肝臓において、ΔribU株の病原性を野生型L.モノサイトジェネスのレベルまでレスキューした(
図1c、d)。これらの観察に基づいて、RibUがL.モノサイトジェネスの発病に不可欠であること、及びRibUマイナス株におけるリボフラビンのデノボ産生がインビボでRibUの不可欠性を完全に回避したため、その機能がフラビンの獲得に関連していることが結論付けられる。
【0127】
L.モノサイトジェネスはRibUを使用してマクロファージ中で増殖する
RibUがマウスにおけるL.モノサイトジェネスの増殖に不可欠である理由を調べるために、感染を骨髄由来マクロファージ(BMM)を使用してインビトロで行った。感染後2時間では、ΔribU変異体は、小さいが野生型L.モノサイトジェネスよりも顕著な増殖優位性を有し(
図4a)、これは、ファゴソーム脱出の増加と関連していた(
図3a)。しかしながら、指数増殖中(感染後2~5時間)、ΔribU変異体は、複製速度に明らかな欠陥を有し、感染後期(感染後5~8時間)にCFUの損失を示した(
図4a)。ΔribU株のribU遺伝子またはribDEAHTオペロンでの補完により、BMMにおける増殖欠陥が完全に回復した(
図3b)。
【0128】
ΔribU株が、リボフラビンに関連しない固有の細胞内病原性欠損を有するかどうかを調べるために、感染前にBMMを過剰のリボフラビン(10μM)とインキュベートし、細胞内リボフラビンの濃度を増加させた。このリボフラビン過剰の条件において、ΔribU変異体は、野生型レベルまで複製した(
図4b)。BMMにおける指数増殖期に観察されたΔribU株の増殖(
図4a)が、培地に由来する残留フラビンに起因するかどうかを評価するために、リボフラビン欠乏BMMにリボフラビン飢餓細菌を感染させた。本実験では、ΔribU変異株及び野生型L.モノサイトジェネス株を、感染前に、フラビンを欠く既知組成の合成培地で16~18時間インキュベートした。BMM細胞培地を、リボフラビンを欠く培地と交換し、マクロファージを3時間インキュベートした後、リボフラビン飢餓細菌に感染させた。リボフラビン飢餓野生型L.モノサイトジェネスは、リボフラビン欠乏BMMにおいて増殖することができることが観察された。しかしながら、リボフラビン飢餓ΔribU変異体は、リボフラビン欠乏BMMでは複製することができなかった(
図4c)。リボフラビン飢餓ΔribU変異体は、感染直前に1μMのリボフラビンを補給したリボフラビン欠損BMMにおいて増殖することができた(
図3c)。
【0129】
ΔribU株による感染が宿主細胞死をもたらしたかどうかを調べるために、乳酸脱水素酵素(LDH)放出アッセイを行った。これらの結果は、ΔribUが宿主細胞死の有意な増加を引き起こすことを示した(
図4d)。ΔribUがAIM2依存性パイロトーシスを誘発しているかどうかを調べるために、AIM2ノックアウト(KO)BMMを使用してLDH放出アッセイを行ったところ、ΔribU変異体がLDH放出を引き起こさないことが観察された(
図4e)。対照として、NLRC4インフラマソームを活性化するフラジェリンを分泌するL.モノサイトジェネス(WT+L.p.flaA)は、感染したAIM2 KO BMMにおいて依然として細胞死を媒介した(
図4e)。ΔribU変異体は、AIM2 KO BMMでは細胞死を引き起こさなかった。実際、感染後8時間では、ΔribU変異体のCFUの損失はなかった(
図4f)。これらのデータは、RibUマイナス株がインビボである程度溶解し、AIM2依存性パイロトーシスを活性化し、これが株の病原性にマイナスの影響を与えることを示唆した。
【0130】
L.モノサイトジェネスはRibUを使用して宿主細胞のサイトゾルからFMN及びFADを捕捉する
リボフラビン欠乏BMMにおけるリボフラビン飢餓野生型L.モノサイトジェネスの倍加時間は、リボフラビンとともにBMMで増殖する野生型L.モノサイトジェネスの倍加時間と非常に類似しており、それぞれ、48.6分及び51.5分であった(
図3d)。これらの結果及び哺乳類細胞が取り込み時にリボフラビンをFMN及びFADに急速に変換するという事実の両方が、野生型L.モノサイトジェネスが細胞内でFMN及び/またはFADを取り込み、それらの輸送にRibUを使用して増殖することを示している。L.モノサイトジェネスがFMN及びFADを取り込んで増殖を支援することができるかどうかを調べるために、唯一のフラビンとしてリボフラビン、FMN、またはFADを補給した既知組成の合成培地を使用したところ、野生型L.モノサイトジェネスは、3つのフラビンの各々を含む培地で増殖することが分かった(
図5a)。対照的に、ΔribU株は、FMNまたはFADを含む既知組成培地では複製せず(
図5b)、リボフラビンを含む培地では増殖にわずかな欠陥を有するのみであった。これらの結果は、RibUがFMN及びFADによる増殖に関与していること、ならびにリボフラビンが、RibU及び/または別のまだ同定されていないリボフラビントランスポーターを使用して細胞に進入することができることを示唆している。
【0131】
L.モノサイトジェネスがRibUを利用して宿主細胞のサイトゾルからFMN及びFADを捕捉するかどうかを調べるために、L.モノサイトジェネスのFMN及びFAD要求性株を、ribCを欠く、ribFを欠く、またはその両方(ΔribCΔribF)、すなわち、リボフラビンをFMN及びFADに変換することに関与する酵素を欠く株を構築することによって生成した。FMN及びFADは必須補因子であるため、この株の構築を、合成致死性を回避するために過剰なFMN及びFADを含む富栄養型培地で行った。ΔribCΔribF変異体は、リボフラビンを唯一のフラビン源として有する既知組成培地では複製することができなかった(
図5c)。
【0132】
L.モノサイトジェネスが宿主サイトゾルからFMN及びFADを取り込む場合、ΔribCΔribF変異体は、細胞内増殖が損なわれないはずである。実際、これらの株は、BMMの細胞内で野生型L.モノサイトジェネスのレベルまで複製した(
図5d)。ΔribC、ΔribF、及びΔribCΔribF変異L.モノサイトジェネス株がインビボで増殖するかどうかを調べるために、マウス病原性アッセイを行った。ΔribC、ΔribF、及びΔribCΔribF変異体は、病原性を維持し、マウスの脾臓及び肝臓の両方で高レベルまで増殖したが、ΔribC及びΔribCΔribF株は、肝臓で統計学的に有意な2logの欠損を有した(
図5e、f)。ΔribCΔribF株のribC遺伝子での、その内在性プロモーターによる補完により、感染マウスの脾臓及び肝臓における増殖のほとんどを回復することが可能であった(
図5e、f)。したがって、これらの結果は、L.モノサイトジェネスがRibUを使用して宿主細胞のサイトゾルからFMN及びFADを取り込むモデルを裏付ける。
【0133】
ΔribCΔribF変異体は、血液、胆嚢、または胃腸管では増殖できない
野生型L.モノサイトジェネスは、マウスの胆嚢、血液、及び胃腸(GI)管において、細胞外増殖することができる。感染時、L.モノサイトジェネスは、胆管を介して肝臓に接続される胆嚢の内腔にコロニー形成し、胆汁において細胞外で急速に複製して、この器官を細菌の保有宿主として確立する。ΔribCΔribF変異体は、胆嚢にコロニー形成することができなかったが、ΔribC及びΔribF株は、野生型L.モノサイトジェネスのレベルまで増殖した(
図6a)。ΔribCΔribF変異体のribC遺伝子での、その内在性プロモーターによる補完により、胆嚢におけるΔribCΔribF株の増殖が完全にレスキューされた。
【0134】
ΔribCΔribF変異株が血中で細胞外増殖できるかどうかを評価するために、脱繊維素ヒツジ血中での増殖曲線を行ったところ、ΔribCΔribF変異体は複製しないことが分かり、接種後24時間までに2~3logのCFUの損失が観察された(
図6b)。ΔribCΔribF変異体がGI管の内腔内で細胞外増殖できるかどうかを調べるために、感染の2日前にマウスをストレプトマイシンで前処理し、1x10
8CFU/マウスにて感染させた。フン便ペレットを5日間毎日採集し、プレーティングして細菌量を評価した。ΔribCΔribF変異体は、感染後24時間で、野生型L.モノサイトジェネスと比較して、フンペレットのCFUに7logの欠損を有した(
図6c)。感染後1日目以降、ΔribCΔribF変異体感染マウスからCFUは回復しなかった(
図6c)。まとめると、これらの観察結果は、ΔribCΔribF株が胆嚢、血液、またはGI管中で細胞外増殖することができないこと、及びこの変異体がインビボでは細胞内増殖に限定されることを示唆している。
【0135】
図1Aは、リボフラビン(黒)、FMN(赤)、及びFAD(紫)の構造を示す。
図1Bは、富栄養型培地で増殖させたL.モノサイトジェネス株のブロス増殖曲線を示す。3つの独立した実験の平均及び標準偏差を表示している。
図1C~1Dは、1x10
5CFUの各株を感染させた48時間後のマウスの脾臓(C)及び肝臓(D)におけるL.モノサイトジェネス株のコロニー形成単位(CFU)を示す。黒線は、各株のCFUの中央値を表す。破線は、検出限界を表す。
【0136】
図2Aは、フラビンを欠く既知組成培地で増殖させたL.モノサイトジェネス株のブロス増殖曲線を示す。3つの独立した実験の平均及び標準偏差を表示している。フラビンを欠く既知組成培地では、野生型L.モノサイトジェネスは、そのフラビンプールを枯渇させるまで増殖する。対照的に、ΔribU+ribDEAHT株は、より高い密度まで増殖する。
図2Bは、37℃で振とうしながら24時間増殖させた後の野生型(左)及びΔribU+ribDEAHT株(右)の培地上清の画像を示す。
【0137】
図3Aは、感染した骨髄由来マクロファージ(BMM)においてオートファジー受容体p62と共局在したL.モノサイトジェネス株のパーセンテージを示す。サイトカラシンDで処理したBMMでは、ファゴソームを脱出する細菌は、p62でタグ付けされる。ファゴソーム脱出パーセントは、全細菌のp62
+細菌の数を計数することによって計算される。データは、2つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を示す。
図3B~3Cは、BMMにおけるL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。BMMをMOI0.1で感染させ、CFUを示された時間に数えた。(B)は、野生型BMMにおける示されたL.モノサイトジェネス株の増殖曲線を示す。データは、2つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を示す。(C)は、感染直前に1μMのリボフラビンを補給したリボフラビンを(3時間)与えない野生型BMMにおける示されたフラビン飢餓L.モノサイトジェネス株の増殖曲線を示す。データは、3つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を表す。
図3Dは、リボフラビンが十分なBMM及びリボフラビンを与えないBMMにおいて細胞内で増殖するL.モノサイトジェネス株の2~5時間の間の世代時間を示す。負の値は、回復可能な細菌の数が経時的に減少したことを示す。
【0138】
図4A~4Cは、BMMにおけるL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。BMMをMOI0.1で感染させ、CFUを示された時間に数えた。(A)は、野生型BMMにおける示されたL.モノサイトジェネス株の増殖曲線を示す。データは、2つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を示す。(B)は、感染時、過剰(10μM)のリボフラビンを含む細胞培地でインキュベートした野生型BMMにおける示されたL.モノサイトジェネス株の増殖曲線を示す。3つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を示す。(C)は、リボフラビン欠乏野生型BMMにおける示されたフラビン飢餓L.モノサイトジェネス株の増殖曲線を示す。データは、3つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を表す。
図4D~Eは、特定のL.モノサイトジェネス株に感染させた野生型(D)またはAIM2 KO(E)BMMの細胞死を示す。データは、それぞれ、少なくとも2つまたは4つの独立した実験の3回のテクニカルレプリケートの平均及び平均の標準誤差を示す。
図4Fは、AIM2 KO BMMにおける示されたL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。5つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を示す。
【0139】
図5A~5Cは、異なるフラビン源を含む既知組成の合成培地で増殖させたL.モノサイトジェネス株のブロス増殖曲線を示す。(A)は、リボフラビン、FMN、またはFADを唯一のフラビン源として含む培地で増殖させた野生型L.モノサイトジェネスの増殖曲線を示す。データは、4つの独立した実験の平均及び標準偏差を示す。(B)は、リボフラビン、FMN、またはFADを唯一のフラビン源として含む培地で増殖させたΔribU変異L.モノサイトジェネス株の増殖曲線を示す。リボフラビンを含む培地で増殖させた野生型L.モノサイトジェネスを参照として使用する。データは、4つの独立した実験の平均及び標準偏差を示す。(C)は、リボフラビンを含む培地で増殖させた示されたL.モノサイトジェネス株の増殖曲線を示す。データは、2つの独立した実験の平均及び標準偏差を示す。
図5Dは、マウスBMMにおけるL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。BMMをMOI0.1で感染させ、CFUを示された時間に数えた。2つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を示す。
図5E~5Fは、1x10
5CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を静脈内感染させたCD-1マウスの感染の48時間後の脾臓(5E)及び肝臓(5F)における細菌量を示す。データは、少なくとも2つの独立した実験の組み合わせを示す。黒線は、各株のCFUの中央値を表す。
【0140】
図6Aは、脱繊維素ヒツジ血中でのL.モノサイトジェネス株のインビトロ増殖を示す。3つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を示す。
図6Bは、1x10
5CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を静脈内感染させたCD-1マウスの感染の48時間後の胆嚢における細菌量を示す。データは、少なくとも2つの独立した実験の組み合わせを示す。黒線は、各株のCFUの中央値を表す。破線は、検出限界を表す。
図6Cは、1x10
8CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を経口感染させたCD-1マウスの胃腸管における細菌量を示す。マウスをストレプトマイシンで経口的に前処理した後に感染させた。フン便試料を1~5日目に採集し、プレーティングして、フン便1グラム当たりのCFUを測定した。データは、3つの独立した実験の組み合わせからの平均及び平均の標準偏差を示す。破線は、検出限界を表す。
【0141】
実施例2:操作されたL.モノサイトジェネス株を使用したMAIT細胞の活性化
L.モノサイトジェネスがMAIT細胞応答を回避している場合に対処するために、リボフラビンをデノボ合成するL.モノサイトジェネス株を、近縁細菌であるバチルス・スブチリス由来のリボフラビン生合成オペロン(ribDEAHT)を、L.モノサイトジェネス染色体にクローニングすることによって操作した。2つのバックグラウンド株を2つの異なるプロモーターを用いて創出した。第一のものは、野生型L.モノサイトジェネスバックグラウンドにおいて構成的活性化プロモーター(pHyper)からオペロン、すなわち、pHyper ribDEAHT(
図7)を発現する。第二の株は、天然のB.スブチリスプロモーター(pNative)からリボフラビンオペロン(
図7)、FMNリボスイッチを発現し、これは、この細菌の宿主細胞からのフラビンの取り込みを防ぎ、ひいてはこれにリボフラビンをデノボ産生させる、リボフラビントランスポーター(ribU)マイナスL.モノサイトジェネスバックグラウンドにおいてこの細菌内のフラビン濃度に応じてribDEAHTの翻訳をオン/オフにする。ribDEAHT株がリボフラビンをデノボ合成することができたかどうかを判断するために、フラビンを欠く既知組成培地でブロス増殖曲線を行ったところ、野生型L.モノサイトジェネスが内部のフラビンプールを枯渇させるまである程度増殖するが、ΔribU pNative ribDEAHT株は、より高い密度まで増殖することが分かった(
図2a)。さらに、ribDEAHTオペロンを含む株の培地では、無色から明黄色(フラビンの天然の色)への色の視覚的な変化があり、ribDEAHTオペロンが機能的であること、及び操作された株においてリボフラビンをデノボ合成することができることを示唆している。L.モノサイトジェネスに外因性オペロンを発現させ、リボフラビンを合成させると、その病原性または適応度に影響する可能性があるため、骨髄由来マクロファージの細胞内増殖曲線を行った。ribDEAHTオペロンを発現する株は、野生型L.モノサイトジェネスと同様に細胞内で増殖したため、リボフラビンの産生は、インビトロでL.モノサイトジェネスの細胞内適応度に影響を与えないことが分かった(
図3b及び
図8)。これらの結果は、ribDEAHT株がリボフラビンを産生することができること、及びそれらの細胞内増殖に関しては減弱されていないことを示唆した。
【0142】
L.モノサイトジェネスがインビボでのMAIT細胞応答を回避している可能性があるかどうかを判断するために、マウスに野生型L.モノサイトジェネスまたはリボフラビン産生(ribDEAHT)株を感染させた。感染後4日目までに、pHyper ribDEAHT及びΔribU pNative ribDEAHT株は、感染マウスの脾臓及び肝臓において、野生型L.モノサイトジェネスと比較して高度に弱毒化されることが判明し、MAIT細胞がリボフラビンを産生する株を感知していること、及び細菌量を制御していることが示唆された(
図9)。MAIT細胞がリボフラビン産生株に応答し、感染組織で活性化及び/または蓄積しているかどうかを判断するために、マウスにΔactAバックグラウンドのリボフラビン産生株を感染させ、脾臓及び肝臓を採取して、MAIT細胞の数を調べた(
図10A)。ActAは、L.モノサイトジェネスが細胞間で広がることを可能にする病原性因子であり、この因子を欠く株は病原性が低いため、このバックグラウンドの株を使用することにより、マウスにより高用量の細菌を感染させることができ、MAIT細胞が、ribDEAHT株に感染した細胞と遭遇する機会を増加させることができる。ΔactA pHyper ribDEAHTを感染させたパーフォリンKOマウスにおけるMAIT細胞の頻度は、脾臓及び肝臓における全ab-T細胞のそれぞれ約15%及び20%であり(
図11B)、野生型感染マウスで観察された頻度(
図10C)と同様であった。
【0143】
図7は、示されたpHyper(構成的プロモーター)及びpNative(誘導性、B.スブチリス由来の天然プロモーター)の両方とともに、L.モノサイトジェネス染色体に導入されたB.スブチリス由来のリボフラビンオペロンの図である。
【0144】
図8は、マウスBMMにおけるL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。BMMをMOI0.1で感染させ、CFUを示された時間に数えた。2つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を示す。
【0145】
図9は、1x10
3CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を静脈内感染させたB6マウスの感染の96時間後の脾臓及び肝臓における細菌量を示す。データは、少なくとも3つの独立した実験の組み合わせを示す。黒線は、各株のCFUの中央値を表す。
【0146】
実施例3
リボフラビン産生L.モノサイトジェネスに感染した組織では、MAIT細胞の5倍の増加が観察されたが、マウスにより多くの細菌を感染させることによってこの応答を増強できるかどうかの疑問が出た。しかしながら、前の実験で使用した株は、野生型L.モノサイトジェネスのバックグラウンドであり、マウスの50%致死量(LD50)は投与した用量の約5倍であるため、より高用量での感染は、マウスの死をもたらすことになる。したがって、pNative及びpHyper ribDEAHTオペロン構築物を、AcAマイナスL.モノサイトジェネスのバックグラウンドに導入することを決定した(ΔactAΔribU pNative及びpHyper ribDEAHT)。ActAマイナスL.モノサイトジェネスは、細胞から細胞へ広がることができないため、マウスでは高度に弱毒化され(BALB/Cでは野生型と比較して約1000倍)、これにより、マウスを殺傷することなく実質的により多くの細菌に感染させることが可能になった。
【0147】
野生型バックグラウンドのリボフラビン産生株で観察された弱毒化が再現可能であることを確認するため、第一に、AcAマイナスバックグラウンドの株を、前に投与したものよりも高用量(1x10
7CFU/マウス、1x10
3CFU/マウスの代わりに)でマウスに感染させることにより、病原性実験を行った。実際、感染後4日目で、AcAマイナスリボフラビン産生株は、野生型L.モノサイトジェネスバックグラウンドの株で観察された通り、脾臓及び肝臓で2log弱毒化された(
図10A)。驚くべきことに、AcAマイナスpHyper ribDEAHT株に感染させたマウスにおけるMAIT細胞(CD3
+TCR-β
+MR1:5-OP-RU四量体
+T細胞)の頻度は、感染マウスの肝臓において、30%の高さのαβ-T細胞を示すことが観察された(
図10B)。ActAマイナスpHyper ribDEAHT株を感染させたマウスの脾臓及び肝臓におけるMAIT細胞の頻度の中央値は、それぞれ、全αβT細胞の15%及び20%であった(
図10C)。対照的に、ΔactA L.モノサイトジェネス対照を感染させたマウスの脾臓及び肝臓におけるMAIT細胞の頻度は、全T細胞の0.5%~1%であり、これはナイーブマウスと同じであった(
図10C)。
【0148】
感染の後、MAIT細胞は、感染が治まってからかなり後にも組織内に残存し得る。それが、リボフラビンを産生するL.モノサイトジェネスに感染した後の場合に該当するかどうかの疑問が出た。マウスにAcAマイナスpHyper ribDEAHTを感染させ、感染後2、4、7、14、及び60日目に脾臓及び肝臓を採取した。感染後2日での全αβT細胞の1%未満から、MAIT細胞の頻度は、感染後4日の脾臓及び感染後14日の肝臓で最大20%に達した(
図10D)。感染後60日で、MAIT細胞は、脾臓及び肝臓においてそれぞれ、全αβT細胞の平均5%及び10%を構成していた(
図10D)。CD8+T細胞の頻度は、両器官で約20%から始まり、感染後4日で脾臓では最大40%、肝臓では最大60%に達した(
図10D)。対照的に、感染後2日でCD4+T細胞は最も高い頻度であり、脾臓でαβT細胞の60%、肝臓で40%であった(
図10D)。感染後4日では、それらの頻度は、脾臓及び肝臓でそれぞれ25%及び10%の低さであった(
図10D)。感染後60日で、CD4+T細胞は、両器官で、実験開始時の初期頻度よりも低い頻度で終了した(
図10D)。これらのMAIT細胞動態実験により、MAIT細胞の頻度が、脾臓では感染後4日、及び肝臓では14日でピークに達し、これらの器官では、ナイーブマウス(
図10C)及び2日の感染マウス(
図10D)におけるMAIT細胞の頻度よりも高い頻度で60日間維持されることが分かった。これらのデータは、MAIT細胞が、感染した器官に高頻度で蓄積することによって弱毒化リボフラビン産生L.モノサイトジェネス株に強く応答すること、及びそれらがナイーブマウスで見出されるものよりも高頻度で組織に残留することができることを示唆している。
【0149】
図10A~10D。ActAマイナスバックグラウンドの弱毒化リボフラビン産生L.モノサイトジェネス株による感染は、感染組織におけるMAIT細胞の実質的かつ持続的な蓄積をもたらす。(A)1×10
7CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を静脈内感染させたC57BL/6マウスの細菌量。感染後4日で、脾臓(左)及び肝臓(右)を採取し、ホモジナイズし、プレーティングして、器官ごとのCFUを測定した。これらのデータは、3つの独立した実験:ΔactA、ΔactAΔribU pNat ribDEAHT、及びΔactA pHyp ribDEAHT(n=15マウス)の組み合わせを示す。黒線は、各株のCFUの中央値を表す。破線は、検出限界を表す。対数的に変換されたCFU値の統計的有意性を、一元配置分散分析及び対照としてWTを使用してダネットの事後検査を使用して決定した。****P<0.0001。(B及びC)(B)肝臓MAIT細胞からの代表的なフローサイトメトリープロット及び(C)C57BL/6マウスの感染後4日のナイーブ、ΔactA、またはΔactA pHyper ribDEAHTにおけるMAIT細胞の頻度を示す脾臓及び肝臓からの要約データ。感染させる用量は、1x10
7CFU/マウスであった。生存、CD45陽性、TCRβ陽性、MR1:5-OP-RU四量体陽性T細胞のMAIT細胞パーセンテージを示す。(C)では、3つの独立した実験:ナイーブ(n=14マウス)、ΔactA(n=10マウス)、及びΔactA pHyp ribDEAHT(n=13マウス)の平均及びSEMを示す。統計的有意性を、一元配置分散分析及び対照として(PBS)ナイーブマウスを使用してダネットの事後検査を使用して決定した。****P<0.0001、ns、有意でない、P>0.05。(D)1x10
7CFU/マウスのΔactA pHyper ribDEAHTに感染させたマウスにおける感染後2、4、7、14、及び60日でのMAIT細胞、CD4
+T細胞、及びCD8
+T細胞の頻度を示すMAIT細胞動態実験。生存、CD45陽性、TCRβ陽性、ならびにその後MR1:5-OP-RU四量体陽性CD4
-/CD8
-陰性細胞(MAIT細胞)、CD4
+/CD8
-(CD4
+T細胞)、及びCD4
-/CD8
+(CD8
+T細胞)としてゲートした細胞のパーセンテージを示す。PBS、リン酸緩衝生理食塩水。
【0150】
これらのデータは、MAIT細胞がリボフラビン産生L.モノサイトジェネスを特異的に制限することを示す。どのメカニズムが関与しているかについての疑問が出た。MAIT細胞は、病原体の制御を媒介する2つの主要なエフェクター機能を有し、バイスタンダー細胞を活性化するサイトカインを産生するか、または細胞溶解性エフェクターであるグランザイムB及びパーフォリンを使用して感染細胞を直接殺傷する。L.モノサイトジェネスは細胞内病原体であるため、感染細胞の直接的な殺傷が、リボフラビン産生L.モノサイトジェネスを制限するためにMAIT細胞が使用する応答であるという仮説を立てた。MAIT細胞を含めたすべての細胞傷害性細胞が感染細胞を直接殺傷することを防ぐはずのパーフォリンを欠く(パーフォリンKO)マウスを感染させた。リボフラビン産生L.モノサイトジェネスは、野生型L.モノサイトジェネスと比較して病原性欠損を有しないことが観察された(
図11A)。MAIT細胞が依然として応答し、感染組織に蓄積していること、及び感染後4日目の応答がパーフォリンKOマウスで異なっていないことを確認するために、これらのマウスにActAマイナスリボフラビン産生L.モノサイトジェネス株を感染させ、器官におけるMAIT細胞の頻度を特定した。パーフォリンKOマウスにおけるMAIT細胞の頻度は、脾臓及び肝臓における全αβ-T細胞のそれぞれ15%及び20%であり(
図11B)、野生型感染マウスで観察された頻度と同様であった。これらの結果は、リボフラビン産生L.モノサイトジェネスを制限するためにMAIT細胞が使用する主な機序が、感染細胞の直接殺傷であることを示唆した。
【0151】
図11A~11B。パーフォリンマイナスMAIT細胞は、リボフラビン産生L.モノサイトジェネスを制限する。1×10
3CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を静脈内感染させた細胞溶解性エフェクターパーフォリンを欠くパーフォリンKO C57BL/6マウスの細菌量。感染後4日で、脾臓(左)及び肝臓(右)を採取し、ホモジナイズし、プレーティングして、器官ごとのCFUを測定した。これらのデータは、2つの独立した実験:WT(n=10マウス)、ΔribU pNat ribDEAHT(n=11マウス)、及びpHyper ribDEAHT(n=10マウス)の組み合わせを示す。対数的に変換されたCFU値の統計的有意性を、一元配置分散分析及び対照としてWTを使用してダネットの事後検査を使用して決定した。ns、有意でない、P>0.05。(B)パーフォリンKO C57BL/6マウスの感染後4日のナイーブ、ΔactA、またはΔactA pHyper ribDEAHTの脾臓及び肝臓におけるMAIT細胞の頻度を示す要約データ。感染させる用量は、1x10
7CFU/マウスであった。生存、CD45陽性、TCRβ陽性、MR1:5-OP-RU四量体陽性T細胞のMAIT細胞パーセンテージを示す。2つの独立した実験:ΔactA(n=8マウス)、ΔactAΔribU pNat ribDEAHT (n=9マウス)、及びΔactA pHyp ribDEAHT(n=9マウス)の平均及びSEMを示す。統計的有意性を、一元配置分散分析及び対照としてΔactAマウスを使用してダネットの事後検査を使用して決定した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05、ns、有意でない、P>0.05。
【0152】
実施例4:ActA及びinlB変異を有するRibC/RibF株
L.モノサイトジェネスのΔribC、ΔribF、ΔactA、ΔinlB株を構築した。この株を、インビトロのマクロファージにおいて、L.モノサイトジェネスのΔactA、ΔinlB株及び野生型L.モノサイトジェネスと比較した。データを
図12に示す。
【0153】
図12は、野生型マウスBMMにおけるL.モノサイトジェネス株の細胞内増殖曲線を示す。BMMをMOI0.1で感染させ、CFUを示された時間に数えた。このデータは、L.モノサイトジェネスのΔribCΔribFΔactAΔinlB株が、細胞内で野生型、ΔactAΔinlB、及びΔribCΔribF株のレベルまで増殖したことを示す(欠陥は検出されなかった)。actA及びinlBの欠失をL.モノサイトジェネスのΔribCΔribF株と組み合わせると、ΔribCΔribF株を、その細胞内複製に影響を与えることなく、より安全なワクチンベクターまたは治療薬にすることができる。
【0154】
図13は、1x10
5CFUの示されたL.モノサイトジェネス株を静脈内感染させたCD-1マウスの感染の48時間後の脾臓及び肝臓における細菌量を示す。このデータは、ΔribCΔribFΔactAΔinlB及び ΔribCΔribFΔactAΔinlB+eetB::tn株がΔactAΔinlBのCFUレベルまで増殖することを示す(欠陥は検出されなかった)。このバックグラウンドにおいて、actA及びinlBの欠失をΔribCΔribF株と組み合わせ、eetB遺伝子を破壊する(当該遺伝子を機能させない)と、マウスのインビボで対照ΔactAΔinlB株と同程度に病原性が高い株がもたらされた。
【0155】
ΔactAΔinlB+ΔribCΔribF及びΔactAΔinlB+ΔribCΔribF+eetB::tn変異株が血中で細胞外増殖できるかどうかを評価するために、脱繊維素ヒツジ血中での増殖曲線を行った。血中のL.モノサイトジェネス株のΔactAΔinlB+ΔribCΔribF及びΔactAΔinlB+ΔribCΔribF+eetB::tn変異株の増殖を、脱繊維素ヒツジ血(HemoStat Laboratories,Dixon,CA,USA)を使用して測定した。細菌を対数期まで2.5時間増殖させ、洗浄し、3mLの脱繊維素ヒツジ血中に濃度1x10
6/mLにて再懸濁した。血液培養を37℃で振とうしながらインキュベートした。血中のL.モノサイトジェネスの増殖を、血液を1X PBSで希釈し、プレーティングすることによって4日間観察し、全血中のCFU数を特定した。データを
図14に示す。
【0156】
図14に示すように、血液の接種後24時間では、ΔactAΔinlB+ΔribCΔribF及びΔactAΔinlB+ΔribCΔribF+eetB::tnの両方は増殖せず、多数まで複製したΔactAΔinlBと比較して、2~3logのCFUの損失が両株に関して観察された。ΔactAΔinlB+ΔribCΔribF及びΔactAΔinlB+ΔribCΔribF+eetB::tnは、ΔribCΔribF変異体(
図6A)で観察されたように、血中で高度に弱毒化されている。
【0157】
実施例5:ワクチン接種
ΔribCΔribF変異株が適応免疫応答を堅牢に誘導し、将来のL.モノサイトジェネスによる抗原投与に対して保護を生じさせることができるかどうかを調べるために、マウスを1x105用量のΔactA及びΔactAΔribCΔribFで免疫した。30日間マウスの感染を取り除き、休ませた後、マウスに5x104個の野生型L.モノサイトジェネスを感染させ、ΔactAΔribCΔribF株によって提供される保護のレベルを調べた。一般に、ワクチン接種に使用される株が、L.モノサイトジェネスに対して堅牢な免疫応答を生成することができる場合、マウスは、抗原投与に対して強力な二次免疫応答を開始することが可能であり、そのマウスは保護される。適応免疫応答の活性化におけるこの実験株の有効性に応じて、異なるレベルの保護を観察することができる。
【0158】
C57BL/6マウスを、1x105用量の対数増殖期のΔactA及びΔactAΔribCΔribF細菌に感染させ、マウスの感染を30日間消散させた。その後、マウスに5x104個の対数増殖期の野生型L.モノサイトジェネスを抗原投与し(感染させ)、ΔactAΔribCΔribF株によって提供される保護のレベルを調べた。抗原投与の3日後、脾臓(左)及び肝臓(右)を採取し、プレーティングして、器官あたりのCFUを計数した。ΔactA及びΔactAΔribCΔribF、n=10、PBS対照(0日目に対照として1X PBSを注射したマウス)、n=5。
【0159】
データを
図15に示す。
図15に示すように、ΔactA及びΔactAΔribCΔribFは、同じレベルの保護を提供し、ΔactAΔribCΔribFが、インビボでT細胞/免疫刺激に対する安全かつ有効なワクチンプラットフォームまたは治療薬であり得ることが示唆される。
【0160】
本発明を、その特定の実施形態を参照して説明してきたが、当業者によれば、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、均等物に置き換え得る点は理解されるはずである。さらに、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスステップ、またはステップを本発明の目的、趣旨及び範囲に適合させるために多くの改変がなされ得る。すべてのかかる改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。
【国際調査報告】