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特表2025-503009アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20250123BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542950
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 CN2023071987
(87)【国際公開番号】W WO2023138481
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202210059880.4
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519255447
【氏名又は名称】アカデミー オブ ミリタリー メディカル サイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マ, ボー
(72)【発明者】
【氏名】ワン, リリ
(72)【発明者】
【氏名】リ, ジー
(72)【発明者】
【氏名】グオ, レイ
(72)【発明者】
【氏名】シュ, フア
(72)【発明者】
【氏名】シエ, ジャンウェイ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QR41
4B063QR48
4B063QR66
4B063QR77
4B063QS28
4B063QS36
4B063QS40
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法に関し、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするためのキット及びシステムに更に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法であって、
1)被スクリーニング試料を、アセチルコリンエステラーゼと混合するステップ;
2)ステップ1)で得られた混合系を、アセチルコリンと混合するステップ;
3)レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSを、ステップ2)で得られた混合系と接触させるステップ;
4)前記レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの活性化度を、検出するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの活性化度を、前記レポーター細胞の細胞質から核へのNFATc1-EGFPの移行度として表現し、
前記レポーター細胞内の前記NFATc1-EGFPが細胞質から核へと移行する場合、前記被スクリーニング試料がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含むと判断し、
好ましくは、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤のアセチルコリンエステラーゼに対する阻害活性を、細胞質から核へ移行した細胞内NFATc1-EGFPの数に従って定量する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アセチルコリンがヨウ化アセチルコリンであり、前記アセチルコリンエステラーゼが組換えヒトアセチルコリンエステラーゼである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ1)において、前記被スクリーニング試料を、第1の溶媒の前記アセチルコリンエステラーゼと混合し;
ステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系を、第2の溶媒の前記アセチルコリンと混合し;
前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒は、同じであるか、又は異なり、各々独立的に、前記レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの通常の増殖に適した培地、例えば、DMEM高グルコース培地であり、
好ましくは、ステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、前記得られた混合系のアセチルコリンエステラーゼの初濃度が、0.005~0.018U/mL、好ましくは0.007~0.015U/mL、更に好ましくは0.01U/mLであり、
好ましくは、ステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、前記得られた混合系のアセチルコリンの初濃度が、10~1000nM、好ましくは30~800nM、更に好ましくは30~500nM、更に好ましくは30~400nM、更に好ましくは30~300nM、更に好ましくは30~200nM、更に好ましくは30~100nMである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
好ましくは、ステップ1)において、前記被スクリーニング試料を、25~40℃(例えば、30℃、32℃、35℃、37℃)の温度で、前記アセチルコリンエステラーゼと10~60分間、例えば、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、50分間混合し、
好ましくは、ステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系を、25~40℃(例えば、30℃、32℃、35℃、37℃)の温度で、前記アセチルコリンと10~60分間、例えば、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、50分間混合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ3)において、前記レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSを、ステップ2)で得られた混合系と10~60分間、例えば、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、50分間接触させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ4)の前に、
前記レポーター細胞を、リン酸緩衝液で希釈したホルムアルデヒド溶液で固定するステップ;
前記レポーター細胞の核及び/又は細胞骨格(アクチン、チューブリン)を染色(例えば、蛍光染色)するステップ
を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ハイコンテント細胞イメージング及び分析システムが、レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの活性化度を検出するのに使用されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OS、アセチルコリン(例えば、ヨウ化アセチルコリン)、アセチルコリンエステラーゼ(例えば、組換えヒトアセチルコリンエステラーゼ)及び蛍光色素(例えば、ヘキスト33342、ファロイジン)を含み、
好ましくは、前記レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの増殖に適した培地、例えば、DMEM高グルコース培地を更に含み、
好ましくは、リン酸緩衝物質(水溶液の形態又は無水形態の)、及びホルムアルデヒドを更に含み、
任意選択で、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を説明する説明書を更に含む、キット。
【請求項9】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための請求項8に記載のキットの使用。
【請求項10】
請求項8に記載のキットと、ハイコンテント細胞イメージング及び分析システムとを含む、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品、環境、薬理学及び医学の分野に属し、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法に特に関し、また、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするためのキット及びシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)は、真性コリンエステラーゼとしても知られ、生物学的神経伝導過程における重要な酵素である。AChEは、コリン作動性シナプスでアセチルコリン(ACh)を分解し、シナプス後膜における神経伝達物質の興奮作用を停止し、体内の神経信号の正常な伝達を保証することができる。現在知られている有機リン酸塩(OP)神経毒性物質、カーバメイト(CM)農薬、及びアルツハイマー病(AD)治療薬はすべて、AChEを重要な標的としており、正常又は病的に上昇したAChE活性を阻害することによって神経毒性作用を誘導するか又はADにおいて認知機能を改善する。OPは、最大のクラスのAChE阻害剤(AChEI)であり、関連化合物としては農薬、落葉剤、難燃剤、工業用溶媒、滑沢剤、可塑剤、燃料添加剤、及び神経毒性化学戦剤、並びにAD処方薬メトリホネートが挙げられ、現在世界中で使用されている数百種類の製品に見出される。農業の生産性の改善及び致死的なベクター媒介疾患の制御における農薬の大きな利点と、工業化の急速な発展とにより、OPは広範囲に利用されている。統計によると、OPは、毎年世界的規模で環境、食品、及び水の供給源に約十億ポンドのOPが放出されることで、環境、動物組織、及びヒト組織において検出される最も一般的な合成化学物質の一つとなっている。このことは、益々深刻になってくる環境及び生態学的問題をもたらし、人間の健康と公共の安全に対する重大な脅威となってきている。さらに、世界人口が高齢化し、AD治療への必要性が全く充足されていないという益々厳しくなる問題に直面して、AD治療薬として認められている新規のタイプ(非有機リン)のAChEIは、依然としてAD薬の研究開発の焦点となっている。したがって、既知及び潜在的なAChEI(有機リン神経剤を含む)のスクリーニング及び正確な特性決定は、環境及び食品の安全性の早期警告、潜在的に有毒な物質の理解、中毒の正確な治療、並びに新規でより効果的なAD薬の研究のために重要である。
【0003】
現在までのところ、3つの主要なタイプの一般に使用されるAChEIスクリーニング方法、すなわち、既知のOP構造に基づく決定、AChE活性の阻害に基づく分析、及びOP免疫原性に基づく免疫測定が存在する。強力な親和性と高い特異性を有する抗体を調製するのには限界があるため、免疫測定方法は、低レベルのOPを成功裏に検出するのに課題があるだけでなく、構造が異なるOPを区別することもできない。化学構造に基づく分析は、クロマトグラフィー法、例えば、液体クロマトグラフィー(LC)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)、ガスクロマトグラフィー(GC)、及びガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)を主として使用する。これらの方法は、ナノモル濃度範囲内の検出限界の高感度をもたらし、微量成分定量分析に好ましい方法である。しかし、これらの方法は、既知の分子にのみ適しており、スループットが低く、大規模スクリーニングに適していない。さらに、これらの方法は、時間がかかり、高価な装置を使用し、十分な訓練を受けた技術者によって実施されなければならない。酵素活性阻害法はAChEの阻害に基づくもので、AChEIを、被検試料への曝露前後の酵素活性を測定することで検出できる。酵素活性は、Ellman比色分析、放射能分析、蛍光分析、電気化学分析、又は化学発光分析によって通常測定される。これらの方法は、コストが低く、スループットが高く、分析速度が速く、古典的な方法(GC/MS、LC/MS)に代わる最も有望な方法である。しかし、これらの方法は、いくつかのOP化合物に曝露した後の酵素活性変化への感度が低く、このことは、これらの方法の検出感度を著しく制限する。さらに、AChEIの効率的なスクリーニングという観点からは、上記の方法は、既知の構造又は酵素分子のレベルでの被検化学物質の単一の特性決定をすることができるのみで、潜在的に有毒な分子の生物学的特性決定をすることができず、正確な早期警告及び効果的な治療ガイダンスのための多次元的情報をもたらすこともできない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法であって、
1)被スクリーニング試料を、アセチルコリンエステラーゼと混合するステップ;
2)ステップ1)で得られた混合系を、アセチルコリンと混合するステップ;
3)レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSを、ステップ2)で得られた混合系と接触させるステップ;
4)レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの活性化度を、検出するステップを含む、方法に関する。
【0005】
いくつかの実施形態では、レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの活性化度は、レポーター細胞の細胞質から核へのNFATc1-EGFPの移行度として表現する。レポーター細胞内のNFATc1-EGFPが細胞質から核へと移行するとき、被スクリーニング試料がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含むと判断する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤のアセチルコリンエステラーゼに対する阻害活性はまた、細胞質から核へ移行した細胞内NFATc1-EGFPの数に従って定量できる。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示に従う被スクリーニング試料は、化学物質、食品(例えば、様々な肉、野菜、茶等)、環境中の有機リン農薬、AD治療薬、神経剤等でもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、アセチルコリンはヨウ化アセチルコリンであり、アセチルコリンエステラーゼは組換えヒトアセチルコリンエステラーゼである。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ1)において、被スクリーニング試料は、第1の溶媒のアセチルコリンエステラーゼと混合する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系は、第2の溶媒のアセチルコリンと混合する。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の溶媒及び第2の溶媒は、同じであるか、又は異なり、各々独立的に、レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの通常の増殖に適した培地、例えば、DMEM高グルコース培地である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、得られた混合系のアセチルコリンエステラーゼの初濃度(アセチルコリンと反応していないときの濃度)は、0.005~0.018U/mL、好ましくは0.007~0.015U/mL、また更に好ましくは0.01U/mLである。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、得られた混合系のアセチルコリンの初濃度(アセチルコリンエステラーゼと反応していないときの濃度)は、10~1000nM、好ましくは30~800nM、更に好ましくは30~500nM、更に好ましくは30~400nM、更に好ましくは30~300nM、更に好ましくは30~200nM、更に好ましくは30~100nMである。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ1)において、被スクリーニング試料は、25~40℃(例えば、30℃、32℃、35℃、37℃)で、アセチルコリンエステラーゼと10~60分間、例えば、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、50分間混合する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系は、25~40℃(例えば、30℃、32℃、35℃、37℃)で、アセチルコリンと10~60分間、例えば、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、50分間混合する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、得られた混合系のアセチルコリンエステラーゼの初濃度(アセチルコリンと反応していないときの濃度)は、0.005~0.018U/mLであり、得られた混合系のアセチルコリンの初濃度は、10~1000nM(例えば、30~800nM、30~500nM、30~400nM、30~300nM、30~200nM、又は30~100nM)である。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、得られた混合系のアセチルコリンエステラーゼの初濃度(アセチルコリンと反応していないときの濃度)は、0.007~0.015U/mLであり、得られた混合系のアセチルコリンの初濃度は、10~1000nM(例えば、30~800nM、30~500nM、30~400nM、30~300nM、30~200nM、又は30~100nM)である。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、得られた混合系のアセチルコリンエステラーゼの初濃度(アセチルコリンと反応していないときの濃度)は、0.01U/mLであり、得られた混合系のアセチルコリンの初濃度は、10~1000nM(例えば、30~800nM、30~500nM、30~400nM、30~300nM、30~200nM、又は30~100nM)である。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、得られた混合系のアセチルコリンエステラーゼの初濃度は、0.01U/mLであり、得られた混合系のアセチルコリンの初濃度は、30nMであり、好ましくは、ステップ1)で得られた混合系は、アセチルコリンと10分間混合する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、得られた混合系のアセチルコリンエステラーゼの初濃度は、0.01U/mLであり、得られた混合系のアセチルコリンの初濃度は、100nMであり、好ましくは、ステップ1)で得られた混合系は、アセチルコリンと20分間混合する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ3)において、レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSを、ステップ2)で得られた混合系と10~60分間、例えば、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、50分間接触させる。
【0021】
いくつかの実施形態では、本方法は、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法のステップ4)の前に、
レポーター細胞を、リン酸緩衝液(PBS)で希釈したホルムアルデヒド溶液で固定するステップ;
レポーター細胞の核及び/又は細胞骨格(アクチン、チューブリン)を染色(例えば、蛍光染色)するステップを更に含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法は、レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの活性化度を検出するためのハイコンテント細胞イメージング及び分析システムを使用する。
【0023】
本開示はまた、レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OS、アセチルコリン(例えば、ヨウ化アセチルコリン)、アセチルコリンエステラーゼ(例えば、組換えヒトアセチルコリンエステラーゼ)、及び蛍光色素(例えば、ヘキスト33342、ファロイジン)を含む、キットにも関する。
【0024】
いくつかの実施形態では、キットは、レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの増殖に適した培地、例えば、DMEM高グルコース培地を更に含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、キットは、リン酸(PBS)緩衝物質(水溶液の形態又は無水形態のいずれか)、及びホルムアルデヒドを更に含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、キットは、本開示に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法を説明する説明書を更に含む。
【0027】
本開示はまた、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするためのキットの使用にも関する。
【0028】
本開示はまた、キットと、ハイコンテント細胞イメージング及び分析システムとを含む、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするためのシステムにも関する。
【0029】
本開示に記載のレポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSは、ヒトムスカリン性M3受容体(ムスカリン性受容体3、M3)と、EGFP(enhanced green fluorescent protein)のC末端に融合したヒトNFATc1(Nuclear Factor Of Activated T Cells 1)とを安定に発現するU2OS細胞であり、M3がアゴニストAChによって活性化されると、細胞内Ca2+が放出され、カルシウムレベルの増加により、NFATc1は、脱リン酸化され、細胞質から核へと急速に移行する。細胞は、市販されているか、又は既存の技術に従って構築できる。
【0030】
本開示では、特に説明がない限り、本明細書で使用する科学用語及び技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用する細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、及び免疫学の実験室操作ステップは、対応する分野で広く使用されている通常の操作ステップである。
【0031】
本開示の有益な効果
本開示では、ACh活性に基づくAChE阻害剤のハイスループットスクリーニング方法が、M3受容体活性化レポーター細胞を検出装置として使用し、rhAChE反応系を最適化することによって確立される。この方法は、OP農薬、神経剤、及びAD薬のコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするのに成功裏に使用され、パラオクソンに対する検出限界が1nMであり、ドネペジルに対する検出限界が1nMであり、GD(ソマン)に対する検出限界が0.1nMであり、VXに対する検出限界が30pMである。これまでの方法と比較して、この方法は、ハイスループット、高感度、及び時間と試薬の低消費コストを達成できる。特に、この方法は、一回の実験で、被検物質の細胞毒性及び細胞効果に関する表現型スペクトル情報を得ることで、潜在的な薬物又は毒性物質を同定するためのより豊富な特性情報をもたらし、多数の神経毒性化合物をスクリーニングするための新規の効果的なツールをもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本開示の実施例で確立された、AChEIをスクリーニングするための方法の検出システムを示す図である。
図2A】AChIが、レポーター細胞株を濃度依存的に活性化し、M3:NFATc1-EGFP U2OSヒト骨肉腫細胞においてEGFP-NFATc1の核移行を誘導することを示す図である。
図2B】AChIが、レポーター細胞株を濃度依存的に活性化し、M3:NFATc1-EGFP U2OSヒト骨肉腫細胞においてEGFP-NFATc1の核移行を誘導することを示す図である。
図3A】異なる濃度のrhAChEのAChIとの10分インキュベーションによる、EGFP-NFATc1の核移行への影響を示す図である。
図3B】異なる時間での0.01U/mL rhAChEの異なる濃度のAChIとのインキュベーションによる、EGFP-NFATc1の核移行への影響を示す図である。
図3C】VXによる、2つの反応系におけるEGFP-NFATc1の核移行への影響を示す図である。
図4A】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用した有機リン農薬AChEIの検出結果を示す図であり、Aはパラオクソンの検出結果を表し;Bはジクロルボスの検出結果を表し;Cはクロルピリホスの検出結果を表す。
図4B】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用した有機リン農薬AChEIの検出結果を示す図であり、Aはパラオクソンの検出結果を表し;Bはジクロルボスの検出結果を表し;Cはクロルピリホスの検出結果を表す。
図4C】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用した有機リン農薬AChEIの検出結果を示す図であり、Aはパラオクソンの検出結果を表し;Bはジクロルボスの検出結果を表し;Cはクロルピリホスの検出結果を表す。
図5A】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用したAD治療薬AChEIの検出結果を示す図であり、Aはドネペジルの検出結果を表し;Bはリバスチグミンの検出結果を表す。
図5B】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用したAD治療薬AChEIの検出結果を示す図であり、Aはドネペジルの検出結果を表し;Bはリバスチグミンの検出結果を表す。
図6A】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用した神経剤AChEIの検出結果を示す図であり、Aはタブンの検出結果を表し;Bはサリンの検出結果を表し;Cはソマンの検出結果を表す。
図6B】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用した神経剤AChEIの検出結果を示す図であり、Aはタブンの検出結果を表し;Bはサリンの検出結果を表し;Cはソマンの検出結果を表す。
図6C】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用した神経剤AChEIの検出結果を示す図であり、Aはタブンの検出結果を表し;Bはサリンの検出結果を表し;Cはソマンの検出結果を表す。
図7A】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用したAChEIの細胞表現型スペクトルの特性決定及び分析結果を示す図である。
図7B】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用したAChEIの細胞表現型スペクトルの特性決定及び分析結果を示す図である。
図7C】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用したAChEIの細胞表現型スペクトルの特性決定及び分析結果を示す図である。
図7D】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用したAChEIの細胞表現型スペクトルの特性決定及び分析結果を示す図である。
図7E】本開示の実施例で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用したAChEIの細胞表現型スペクトルの特性決定及び分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[発明を実施するための特定のモデル]
本開示のいくつかの実施形態での技術的解決法は、本開示の実施例における図面を参照して、以下に明確に且つ完全に記載される。もちろん、記載した実施例は、実施例の全てではなく、本開示の実施例のいくつかに過ぎない。少なくとも1つの例示的な実施例の以下の記載は、本質的に単なる例示であり、本開示、その用途又は使用を制限することを意図するものではない。本開示における実施例に基づき、当業者によって創造的な取組みをすることなく得られる他の全ての実施例は、本開示の保護の範囲に含まれる。
【0034】
本明細書で示され、論考される全ての実施例では、任意の特定の値は、例示的なものとしてのみ理解されるべきであり、限定的なものとして理解されるべきではない。したがって、例示的な実施例の他の実施例は、異なる値を有し得る。
【実施例
【0035】
本開示は、特定の実施例を通して以下に詳細に説明される。
【0036】
特に示されない限り、本開示で使用される分子生物学的実験方法及び免疫アッセイは、Sambrook Jら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989、及びF.M.Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、John Wiley & Sons,Inc.、1995に記載の方法に実質的に従って実施される。具体的な条件が実施例に示されていない場合、条件は、従来の条件又は製造元が推奨する条件に従って実施されるべきである。使用した試薬又は機器の製造元は、示されていない場合、すべて市販品として購入できる従来品であった。当業者であれば、実施例は、例示として本開示を説明するものであり、本開示の保護の範囲を制限することを意図するものではないことを理解する。
【0037】
本開示の実施例で使用した主な薬物及び試薬としては以下が挙げられる:Gibcoから購入した、DMEM高グルコース培養培地、ウシ胎仔血清(FBS)、G418(ジェネテシン、50mg/mL)、ペニシリン/ストレプトマイシン混合溶液(100×)、0.05%トリプシン-EDTA溶液、1×PBSリン酸緩衝溶液(pH=7.4)、及び10×PBSリン酸緩衝溶液(pH=7.4);Amrescoから購入したウシ血清アルブミン(BSA);Selleckから購入したヨウ化アセチルコリン(AChI);Sigma-Aldrichから購入した組換えヒトアセチルコリンエステラーゼ(rhAChE);Invitrogenから購入したヘキスト33342蛍光色素;Solarbioから購入した633標識ファロイジン;Thermoから購入したマウス抗ヒトα-チューブリン一次抗体;Invitrogenから購入したAlexa Flour 546標識ロバ抗マウス二次抗体;Merckから購入したパラオクソン、ジクロルボス、及びクロルピリホス;Selleckから購入したドネペジル及びリバスチグミン;Institute of Chemical Defenseから購入したサリン、タブン、及びソマン及びVX;並びに分析グレード試薬のものである他の試薬。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態で使用される主な機器は、Perkin Elmerのオペラフェニックス(Opera Phenix)(商標)ハイコンテント細胞イメージング及び分析システムである。
【0039】
本開示の実施例で使用される細胞株及び培養条件:M3:NFATc1-EGFP U2OSヒト骨肉腫細胞株(Thermo社)を、37℃、5%COインキュベーターにおいて、10%FBSを含むDMEM高グルコース培地で培養した。さらに、0.5mg/mL G418、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンを、培養培地に添加した。
【0040】
本開示の実施例で使用した溶液の調製:
1.組換えヒトアセチルコリンエステラーゼ(rhAChE)は、0.1%BSAを含む10×PBS緩衝液(pH=7.4)を使用して1U/mL保存溶液へと調製し、実験の際に無血清培養培地を用いて保存溶液を目的の使用溶液へと希釈した。
【0041】
2.ヨウ化アセチルコリン(AChI)は、滅菌脱イオン水を使用して5mM保存溶液へと調製し、実験の際に無血清培養培地を用いて保存溶液を目的の使用溶液へと希釈した。
【0042】
3.パラオクソン、ジクロルボス、及びクロルピリホスは、メタノールを使用して500μM保存溶液へと調製し、実験の際に無血清培地を用いて保存溶液を目的の使用溶液へと希釈した。
【0043】
4.塩酸ドネペジル(ドネペジル)及び酒石酸リバスチグミン(リバスチグミン)は、滅菌脱イオン水を使用して5mM保存溶液へと調製し、実験の際に無血清培地を用いて保存溶液を目的の使用溶液へと希釈した。
【0044】
5.タブン(GA)、サリン(GB)、ソマン(GD)、及びVXは、アセトニトリルを使用して0.1M保存溶液へと調製し、実験の際に無血清培地を用いて保存溶液を目的の使用溶液へと希釈した。
【0045】
本開示の実施例で確立された、AChEIをスクリーニングするための方法の検出システムは、図1に示され、(1)コリン作動性受容体に基づくレポーター細胞株、(2)AChE反応系、並びに(3)(1)及び(2)から構成されるハイコンテントスクリーニング(HCS)検出システムを含んでいた;ここで、(1)は、コリン作動性受容体細胞株M3:NFATc1-EGFP U2OSであり、これは、ヒトムスカリン性コリン受容体3(M3)と、EGFP(enhanced green fluorescent protein)のC末端に融合したヒトNFATc1とを安定に発現するU2OS細胞であり、M3がアゴニストAChによって活性化されると、細胞内Ca2+が放出され、カルシウムレベルの増加により、NFATc1は、脱リン酸化され、細胞質から核へと急速に移行するが、このことに基づき、アゴニストの活性を定量的に分析できた;(2)は、組換えヒトAChE(rhAChE)、ACh及びレポーター細胞株を含む検出システムであり、その含有量は、最適化された後に決められた;また、(3)は、最適化されたHCS検出システムをAChEIを検出するのに使用した。本開示では、最適化濃度のヨウ化アセチルコリン(ACh)をアゴニストとして使用し;AChEをAChEIで予め処理し、次いでAChを添加し、ある特定の期間インキュベートし、レポーター細胞株を、得られた混合系を使用して処理し、HCSシステムを、AChEIをAChE反応系へと添加した後でレポーター細胞の活性を定量的に検出するのに使用することで、AChEIのAChEに対する阻害活性及びその固有の細胞応答特性を決めた。
【0046】
実施例1:AchによるM3:NFATc1-EGFP U2OSレポーター細胞株の活性化のハイコンテント分析
この実施例では、AChがM3:EGFP-NFATc1細胞を安定に活性化できるかどうか調べた。AChIをAchとして選択し、レポーター細胞株のACh処理後に、ハイコンテント細胞イメージング分析システムを細胞の画像を収集するのに使用し、EGFP-NFATc1の核移行度を定量的に分析することで、ACh活性化M3受容体の程度及び濃度範囲を決めた。具体的なステップは以下の通りである:
1×10細胞/mLの細胞懸濁液を調製し、黒色透明底96ウェル培養プレートに100μL/ウェルで播種し、次いで24時間培養し、培養上清を捨て、細胞を無血清培地で2回洗浄し、次いでAChI勾配溶液(無血清培養培地で希釈、最終濃度は、それぞれ0、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300、1000、3000、10000、30000、100000nmol/Lであり、各濃度に対して3ウェル)をそれぞれ100μL/ウェルで添加し、次いで細胞を37℃、5%COインキュベーターに20分間置いた。次いで12%ホルムアルデヒドを含む1×PBS溶液を50μL/ウェルで添加して(ホルムアルデヒドの最終濃度は4%であった)、室温で暗所にて20分固定した。細胞は、1×PBS溶液で2回洗浄し、1μMヘキスト33342を含む1×PBS溶液200μL/ウェルを添加し、次いで細胞を37℃で暗所にて30分インキュベートした。細胞は、1×PBS溶液で2回洗浄し、次いで1×PBS 100μL/ウェルを添加した。細胞は、器械にロードし、Alexa 488(吸収波長:495nm、発光波長:519nm)及びDAPI(吸収波長:340nm、発光波長:488nm)チャンネルを選択し、20×対物レンズを使用して細胞の画像を収集し、ウェルあたり9視野を設定して検出した。Harmony 4.9ソフトウェアを、細胞核の数と、細胞質から核への細胞内NFATc1-EGFP移行とを定量的に分析するのに使用し、AChの活性化効果は、3複製ウェル、ウェルあたり1,000細胞以上で、各細胞におけるNFATc1-EGFPの平均核移行度として表現され、EC50値はPrism 8を使用して計算した。
【0047】
M3:NFATc1-EGFP U2OSを異なる濃度のAChIで処理した後、細胞内EGFP-NFATc1移行のハイコンテント分析の結果を、図2に示した。レポーター細胞株を0.1~100nMの範囲でAChI濃度依存的に活性化し、AChIの濃度が0.3nMであったとき、細胞は活性化反応を示し;AChIの濃度が1nMに達したとき、EGFP-NFATc1の核移行度は最大核移行度の約40%であり;AChIの濃度が10nMに達したとき、EGFP-NFATc1の核移行度は最大核移行度に近づき;AChIの濃度が30nMであったとき、EGFP-NFATc1の最大核移行度に達した。Prism 8.0ソフトウェアをlog(アゴニスト)対応答を非線形にフィッティングするのに使用してS字型曲線を得た後、分析により、AChIのEC50値が1.76±0.34nMであり、Z’因子が0.685であることが示され、このことより、AChIをアゴニストとして使用するコリン作動性受容体レポーター細胞の分析モデルが高感度で安定なHTS法であることが示された。
【0048】
実施例2:AChE反応系の確立
この実施例では、レポーター細胞株に適したAChE反応系を確立した。基質(AChI)濃度の違い、酵素(rhAChE)濃度の違い、及び酵素基質反応時間の違いが反応系に及ぼす影響を、レポーター細胞株の活性化の定量分析結果に従って検討した。具体的なステップは以下の通りである:
まず、勾配rhAChE使用溶液及びAChI使用溶液は、相互に組み合わせ、96ウェルプレートにて1:1(v/v)の比で混合し、37℃で5、10、15、及び20分間それぞれ反応させた。次いで混合溶液は、レポーター細胞株を予め播種した黒色透明底96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加し、細胞を20分間インキュベーションし、次いで、レポーター細胞株の活性化度を実施例1に記載の方法に従って定量的に分析し、Z’因子を計算して最適な実験系を得た。
Z’因子の計算式は以下の通りである:
【0049】
【数1】

(式中、「σ」は標準偏差を表し;「μ」は平均シグナルを表し;「c+」は陽性対照を表し;「c-」は陰性対照を表す)。
【0050】
Z’因子の値は、0~1となるはずである。Z’因子が0である場合、実験系は確立されていないことが示され;0<Z’因子<0.5である場合、実験系は安定性が悪く、信頼性が低いことが示され;0.5≦Z’因子<1である場合、実験系は安定性が良く、信頼性が高いことが示され;Z’因子が1である場合、陽性対照及び陰性対照の標準偏差は0であり、実験系が理想的な実験系であることが示された(Zhang、Chung、Oldenburg.A Simple Statistical Parameter for Use in Evaluation and Validation of High Throughput Screening Assays.Journal of biomolecular screening、1999、4(2):67~73)。
【0051】
レポーター細胞株を活性化するAChIの濃度範囲に従って、AChI濃度の5点を、10~1×10nMの範囲で選択し、AChE反応系における最適なAChEの含有量及び反応時間をこれらの条件下で検討した。
【0052】
0.001、0.003、0.01及び0.02U/mLのrhAChE(この濃度は、AChE反応系におけるrhAChEの初濃度、すなわち、AChIと反応していないときの系における酵素濃度である)を、異なる濃度のAChIと10分間インキュベーションした場合の各反応系によるレポーター細胞株の活性化の結果を図3Aに示した。酵素の含有量が低すぎる場合(≦0.003U/mL)、AChIの加水分解は効果的に行われることができず;酵素の含有量が高すぎる場合(0.02U/mL)、AChIの加水分解は過剰に行われ、レポーター細胞分析において2つの条件間の差は限られていた;0.01U/mL rhAChEの条件下では、AChIは、10~1000nMの範囲で濃度依存的にEGFP-NFATc1の核移行を誘導した。上記の濃度範囲のAChIは、酵素を含まない系においてほぼ100%の細胞活性化効果を有し、このことより、10分以内に0.01U/mL rhAChEによって加水分解される基質AChIの量をレポーター細胞株で定量できることが示唆された。したがって、反応系におけるrhAChEの適切な初濃度は、0.005~0.018U/mL、好ましくは0.007~0.015U/mL、また更に好ましくは0.01U/mLでもよい。
【0053】
アンタゴニストスクリーニング実験の実施可能性を考慮し、AChE反応系における基質AChIの初濃度は、濃度依存性を示す範囲内の10、30、100、及び300nMに設定し、0.01U/mL酵素及び基質のインキュベーション時間の違いによる、結果への影響を検討した。結果は図3Bに示した。最も低い基質濃度(10nM)では、加水分解は5分以内に完了し、その後の実験の実施可能性は低かった。最も高い基質濃度(300nM)では、各時点での基質の残存量が高すぎ、差が顕著であったため、その後の実験に十分なウィンドウ及び安定性を欠く一方、以下の2つの場合、すなわち、濃度30nMの基質を酵素と10分間インキュベートした場合、及び濃度100nMの基質を酵素と20分間インキュベートした場合では、AChIの加水分解は90%超であり、系は基本的に安定に達していた。この条件は、阻害剤スクリーニングに関する最大ウィンドウ値の要件を満たすのみでなく、系の安定性にも有益であり、高い操作性を有していた。したがって、2つの反応系、すなわち、0.01U/mL rhAChE及び30nM AChを10分間インキュベートすることと、0.01U/mL rhAChE及び100nM AChを20分間インキュベートすることとが好ましいことが事前に求められた。
【0054】
これに基づいて、上記の2つのスクリーニング系を、既知のアセチルエステラーゼ阻害剤VXを使用して更に評価した。結果は、図3Cに示され、両反応系において、VXは、濃度依存的にレポーター細胞のコリン作動性受容体の活性を上昇させる、すなわち、レポーター細胞のEGFP-NFATc1の核移行を誘導することができ、最も低い検出濃度が0.1nMであった;2つの反応系から構成される2つの方法のZ’因子はそれぞれ、0.716及び0.614であり、すなわち、2つの反応系は両方とも、レポーター細胞株と組み合わせたときにVXのAChEに対する阻害活性を敏感且つ確実に反映でき、ここで、0.01U/mL rhAChEを30nM AChと10分間インキュベーションした条件下のZ’因子がより高かったため、この系が最適な反応系として選択された。この系とレポーター細胞株とから構成されるコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)をスクリーニングするための方法は、ハイスループット検出能を有し、比較的良好な安定性及び感度を有していた。
【0055】
実施例3:本開示で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法を使用する、異なるタイプのAChEIのAChEに対する阻害活性の評価
この実施例では、本開示の実施例で確立された方法は、農業生産に一般的に使用される有機リン農薬、例えば、パラオクソン、ジクロルボス(DDVP)及びクロルピリホス、AD治療薬、例えば、ドネペジル及びリバスチグミン、並びに神経剤、例えば、サリン(GB)、タブン(GA)、ソマン(GD)及びVXのAChEに対する阻害活性を検出するのに使用した。具体的なステップは以下の通りである:
各ウェルのrhAChE使用溶液30μLに、対応する勾配濃度を有するAChEI 30μLを添加し、AChEIとrhAChEとが十分に相互作用できるように混合溶液を37℃で30分インキュベートし、次いでAChI使用溶液60μLを添加し、37℃で10分反応させた。次いで100μLの反応溶液をピペッティングし、レポーター細胞株を予め播種した黒色透明底96ウェルプレートに添加した。20分間のインキュベーション後、レポーター細胞株の活性化度を、実施例1に記載の方法に従って定量的に分析して、AChEIのAChEに対する阻害活性を決めた。
【0056】
有機リン農薬のrhAChE活性に対する阻害効果の結果は、図4に示され、パラオクソン、ジクロルボス、及びクロルピリホスはすべて、細胞検出システムのrhAChEを阻害し、システムのAChIの加水分解を低下させ、次いで、レポーター細胞のM3受容体を活性化して、EGFP-NFATc1の核移行を促進することができた。3つの有機リン農薬の最も低い検出濃度はそれぞれ、1nM、0.3μM、及び3μMであり、IC50値はそれぞれ、4.75±0.05nM、0.93±0.04μM、及び13.28±0.87μMであった。この3つの阻害活性の順序は、パラオクソン>ジクロルボス>クロルピリホスであることが示唆され、報告された結果と一致しており、このことは、本開示の実施例で確立された方法が異なるOP農薬のアセチルコリンエステラーゼ阻害活性を評価するのに使用できることを示している。
【0057】
ドネペジル及びリバスチグミンのrhAChEに対する阻害効果の結果は図5に示され、ドネペジル及びリバスチグミンの両方は、細胞検出システムのrhAChEを阻害することによりEGFP-NFATc1の核移行を促進でき、IC50値がそれぞれ、26.21±1.45nM、4.05±1.26μMであった。この結果は、文献で報告されている結果と基本的に一致していた。
【0058】
OP神経剤のrhAChEに対する阻害効果の結果は、図6及び図3Cに示され、タブン、サリン、ソマン及びVXはすべて、細胞検出システムのrhAChEを顕著に阻害し、EGFP-NFATc1の核移行を促進し、IC50値が3.75±0.03nM(GA);0.62±0.05nM(GB);0.19±0.05nM(GD)、0.19±0.03nM(VX)であった。VXの最小検出濃度は30pMに達した。この結果は、Ellman法を使用した本発明者らの研究室の結果(タブンが部分的に分解された)と一致した。
【0059】
上記3つの主要なカテゴリーのAChEIの評価結果に基づき、本開示で確立された方法は、異なるタイプのAChEIをハイスループットで定量的にスクリーニングでき、この方法は、高感度、高い安定性、簡便な操作、及び低消費の特性を有していることが示された。
【0060】
実施例4:AChEI細胞の表現型特性の特性決定における、本開示で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法の適用
AChEIのスクリーニング及びAChEIの酵素阻害効果の検出に加えて、本開示で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法はまた、核及び細胞骨格(アクチン、チューブリン)の蛍光染色と組み合わせて、AChEIを検出するのに使用される細胞の表現型特性(被検物質の固有の細胞活性及び毒性の情報を示す)を特性決定することができた。具体的な方法は以下の通りである:
処理細胞は、実施例1に記載の方法に従ってヘキスト33342で染色し、0.3%トリトンX-100を含む1×PBS溶液200μLを使用して37℃で暗所にて30分間透過処理した;次いで、633標識ファロイジンを50μL/ウェルで添加し、37℃で暗所にて30分染色した。上清は捨てた。細胞は、1×PBS溶液で3回洗浄し、次いで、200μLのブロッキング溶液(5%BSAを含むPBS溶液)を各ウェルに添加し、細胞を室温で1hブロッキングした。ブロッキング溶液を捨て、50μLのマウス抗ヒトα-チューブリンモノクローナル抗体を一次抗体として各ウェルに添加し、次いで、細胞を37℃で暗所にて1hインキュベートした。一次抗体を回収し、細胞をブロッキング溶液で3回洗浄し、50μLのAlexa Flour 546標識ロバ抗マウスIgGを二次抗体として各ウェルに添加し、細胞を室温で暗所にて30分インキュベートした。細胞を1×PBS溶液で2回洗浄し、1×PBS溶液100μLをウェルに添加した。ハイコンテント細胞イメージング及び分析システムは、細胞の画像を取得し、核形態、アクチン、及びチューブリンの状態を分析するのに使用した。
【0061】
異なる外因性物質は、異なる標的を有し、異なる細胞変化を誘導し、異なる細胞表現型特性を有する。AChEIは、構造が多様で生物学的効果が異なる多くのタイプが存在する。研究により、特定の標的AChEに加えて、OPはまた、他の標的、例えば、何百もの酵素、受容体及び他のタンパク質にも影響を及ぼすことが示されており、該他の標的のうちのいくつかは、慢性的なOP曝露による長期CNS効果及び発育神経毒性と特に関連している可能性があり、これらの標的とのAChEの相互作用は、OPの累積リスクアセスメントの一部となりつつある。本開示で確立されたAChEIをスクリーニングするための方法は、EGFP-NFATc1の核移行度を検出することによってAChEIを同定するだけでなく、同じ実験での適合する蛍光標識を通して、被検分子によって誘導される細胞及び細胞内の形態構造、シグナル伝達経路並びに標的タンパク質の変化をも定量的に検出し、これによって、被検分子の固有の細胞表現型スペクトル特性を得ることができた。これにより、新規AChEIをスクリーニングし、同定するための情報をより豊富に得られる。
【0062】
この実施例では、異なるタイプのAChEI(神経剤VX、OP農薬パラオクソン、及びAD薬ドネペジル)を代表として使用して、標的特異的活性を決めるためにEGFP-NFATc1の核移行を検出し、同じ分析過程で、チャンネルの異なる蛍光標識を通して、細胞核、アクチン及びチューブリンの変化を例示的且つ定量的に分析した。これらは、外因性物質の干渉によって引き起こされる細胞及び細胞内の形態並びに細胞骨格の迅速な応答特性を反映するのみならず、毒性及び潜在的な機構の重要な指標にもなることができる。異なるタイプのAChEIで処理した細胞の4つのパラメーターの蛍光イメージング及び定量的結果を、図7に示した。EGFP-NFATc1の核移行像に示されるように、VX、パラオクソン及びドネペジルはすべて、濃度依存的にAChEの活性を阻害できるが、しかし、濃度活性曲線の範囲及び傾きが異なっていた。VX及びパラオクソンの傾きは基本的に同じであり、ドネペジルの傾きは顕著に小さいことから、ドネペジルがAChEに結合する仕方が、VX及びパラオクソンとは異なることが示唆された(これは、基本的に文献報告と一致していた)。3つすべてが濃度依存的に細胞アクチン(アクチン)の発現レベルの増加を示した(図7のA及びB)が、曲線の傾きは全く異なっていた;3つすべてが核領域の増加を示した(図7のA及びC)が、しかし、濃度効果曲線が異なっていた;さらに、これら3つは、処理後、細胞内チューブリン分布が明らかに異なっていた(図7のA)、すなわち、ドネペジルは、1nMから開始して、濃度依存的にチューブリン分布の増加を示したが、一方、VX及びパラオクソンは、細胞チューブリン分布が、濃度が増加するにつれてわずかに減少した。これらの結果は、AChE活性を阻害するのに加えて、3者がそれぞれの表現型変化特性を示すことを示した;VX及びパラオクソンは両方ともOPであり、AD薬ドネペジルとは極めて異なる、より類似した細胞表現型特性を有していた。したがって、スクリーニングの目的に従って、表現型特性は、時点の拡張及び細胞表現型の変更によって際立たせることができ、最終的に、各被検物質の固有の表現型スペクトルを得て、スクリーニング及び同定のためのより多くの根拠を得ることができる。
【0063】
本開示の特定の実施形態を詳細に説明したが、当業者であれば、開示されている全ての教示に基づいて様々な修正及び変更を細部に加えることができ、これらの変更は本開示の保護の範囲内であることを理解するであろう。本開示の全体は、添付の特許請求の範囲及びその均等物から得られる。
【0064】
本出願は、2022年1月19日に出願した中国出願第202210059880.4号に基づき、その優先権の利益を主張するものであり、その開示内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
【手続補正書】
【提出日】2024-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための方法であって、
1)被スクリーニング試料を、アセチルコリンエステラーゼと混合するステップ;
2)ステップ1)で得られた混合系を、アセチルコリンと混合するステップ;
3)レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSを、ステップ2)で得られた混合系と接触させるステップ;
4)前記レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの活性化度を、検出するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの活性化度を、前記レポーター細胞の細胞質から核へのNFATc1-EGFPの移行度として表現し、
前記レポーター細胞内の前記NFATc1-EGFPが細胞質から核へと移行する場合、前記被スクリーニング試料がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含むと判断し
セチルコリンエステラーゼ阻害剤のアセチルコリンエステラーゼに対する阻害活性を、細胞質から核へ移行した細胞内NFATc1-EGFPの数に従って定量する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アセチルコリンがヨウ化アセチルコリンであり、前記アセチルコリンエステラーゼが組換えヒトアセチルコリンエステラーゼである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ1)において、前記被スクリーニング試料を、第1の溶媒の前記アセチルコリンエステラーゼと混合し;
ステップ2)において、ステップ1)で得られた混合系を、第2の溶媒の前記アセチルコリンと混合し;
前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒は、同じであるか、又は異なり、各々独立的に、前記レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの通常の増殖に適した培地でる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
培地が、DMEM高グルコース培地である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
テップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、前記得られた混合系のアセチルコリンエステラーゼの初濃度が、0.005~0.018U/mLであり、
テップ2)において、ステップ1)で得られた混合系をアセチルコリンと混合した後、前記得られた混合系のアセチルコリンの初濃度が、10~1000nMである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
以下のi)及びii)の1以上により特徴づけられる、請求項6に記載の方法。
i)前記得られた混合系のアセチルコリンエステラーゼの初濃度が、0.007~0.015U/mLである、
ii)前記得られた混合系のアセチルコリンの初濃度が、30~800nMである。
【請求項8】
以下のi)及びii)の1以上により特徴づけられる、請求項7に記載の方法。
i)前記得られた混合系のアセチルコリンエステラーゼの初濃度が、0.01U/mLである、
ii)前記得られた混合系のアセチルコリンの初濃度が、30~500nMである。
【請求項9】
前記得られた混合系のアセチルコリンの初濃度が、30~400nMである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記得られた混合系のアセチルコリンの初濃度が、30~300nMである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記得られた混合系のアセチルコリンの初濃度が、30~200nMである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記得られた混合系のアセチルコリンの初濃度が、30~100nMである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
テップ1)において、前記被スクリーニング試料を、25~40℃の温度で、前記アセチルコリンエステラーゼと10~60分間混合し、
テップ2)において、ステップ1)で得られた混合系を、25~40℃の温度で、前記アセチルコリンと10~60分間混合する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
ステップ3)において、前記レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSを、ステップ2)で得られた混合系と10~60分間接触させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
ステップ4)の前に、
前記レポーター細胞を、リン酸緩衝液で希釈したホルムアルデヒド溶液で固定するステップ;
前記レポーター細胞の核及び/又は細胞骨格を色するステップ
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
ハイコンテント細胞イメージング及び分析システムが、レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの活性化度を検出するのに使用されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項17】
レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OS、アセチルコリン、アセチルコリンエステラーゼ及び蛍光色素をキット。
【請求項18】
以下のi)~vi)の1以上により特徴づけられる、請求項17に記載のキット。
i)アセチルコリンがヨウ化アセチルコリンである、
ii)アセチルコリンエステラーゼが組換えヒトアセチルコリンエステラーゼである、
iii)蛍光色素がヘキスト33342又はファロイジンである、
iv)前記レポーター細胞M3:NFATc1-EGFP U2OSの増殖に適した培地を更に含む、
v)リン酸緩衝物質、及びホルムアルデヒドを更に含む、
vi)請求項1に記載の方法を説明する説明書を更に含む。
【請求項19】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするための請求項17又は18に記載のキットの使用。
【請求項20】
請求項17又は18に記載のキットと、ハイコンテント細胞イメージング及び分析システムとを含む、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をスクリーニングするためのシステム。
【国際調査報告】