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特表2025-503013オランザピン、その組成物及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】オランザピン、その組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5513 20060101AFI20250123BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20250123BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20250123BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20250123BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K31/5513
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/24
A61K9/08
A61K9/10
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/44
A61K47/32
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543004
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-09-12
(86)【国際出願番号】 IB2023050494
(87)【国際公開番号】W WO2023139531
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/301,202
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514244479
【氏名又は名称】テバ・ファーマシューティカルズ・インターナショナル・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Teva Pharmaceuticals International GmbH
【住所又は居所原語表記】Schluesselstrasse 12, 8645 Jona,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダリオ・クラリッチ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーニャ・シリッチ
(72)【発明者】
【氏名】アントニア・ジャコビ・マルティネッリ
(72)【発明者】
【氏名】サーニャ・マテチッチ・ムサニッチ
(72)【発明者】
【氏名】ダミール・シャニッチ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA22
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC01
4C076EE06
4C076EE22
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE26
4C076EE30
4C076EE37
4C076EE41
4C076EE55
4C076FF04
4C076FF12
4C076FF68
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB30
4C086GA15
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA66
4C086NA10
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZA18
(57)【要約】
本開示は、オランザピン、その組成物及び使用方法を対象とし、オランザピンは、良好な流動性及び注射器通過性を呈する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約20μm~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、若しくは約0.35g/ml~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せを有する、オランザピン又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
粒径分布が20μm~約37μmのD(90)を特徴とする、請求項1に記載のオランザピン。
【請求項3】
粒径分布が約24μm~約35μmのD(90)を特徴とする、請求項2に記載のオランザピン。
【請求項4】
粒径分布が約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のオランザピン。
【請求項5】
粒径分布が約5.8μm~約7.0μmのD(3,2)を特徴とする、請求項4に記載のオランザピン。
【請求項6】
オランザピンのタップ密度が約0.35g/ml~約0.44g/mlである、請求項1から5のいずれか一項に記載のオランザピン。
【請求項7】
粒径分布が、約20μm~約37μmのD(90)及び約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のオランザピン。
【請求項8】
粒径分布が、約20μm~約37μmのD(90)及び約0.35g/ml~約0.44g/mlのタップ密度を特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のオランザピン。
【請求項9】
粒径分布が、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)及び約0.35g/ml~約0.44g/mlのタップ密度を特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のオランザピン。
【請求項10】
粒径分布が、約20μm~約37μmのD(90)、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)及び約0.35g/ml~約0.44g/mlのタップ密度を特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のオランザピン。
【請求項11】
パウダーレオメーターFT4により測定されたオランザピンのフローファンクションが約2.0以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載のオランザピン。
【請求項12】
パウダーレオメーターFT4により測定されたオランザピンのフローファンクションが約1.0~約2.0である、請求項11に記載のオランザピン。
【請求項13】
充填重量のRSD%が1.5%以下である、及び/又は充填速度が14%以上である、請求項1から12のいずれか一項に記載のオランザピン。
【請求項14】
オランザピンII型形態である、請求項1から13のいずれか一項に記載のオランザピン。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のオランザピンを含む容器。
【請求項16】
バイアル、シリンジ又はアンプルである、請求項15に記載の容器。
【請求項17】
バイアルである、請求項16に記載の容器。
【請求項18】
約100mg~約1,000mgのオランザピン、又は約300mg~約700mgのオランザピンを含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の容器。
【請求項19】
オランザピンが最終滅菌された、請求項15から18のいずれか一項に記載の容器。
【請求項20】
オランザピンが無菌である、請求項15から18のいずれか一項に記載の容器。
【請求項21】
請求項1から14のいずれか一項に記載のオランザピン、及び1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項22】
非経口投与のための溶液又は懸濁液の形態である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
水性又は非水性懸濁液の形態である、請求項21又は22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤が、ポリマー又は非ポリマーを含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
賦形剤が、生分解性ポリマーを含み、それにはポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ-1-乳酸、ポリ-d-乳酸、ポリエチレングリコール、又は上述のもののコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリホスファジン、ポリ(アルキレンアルキレート)、生分解性ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリアルカン酸、アルブミン、キトサン、カゼイン、ワックス、又はそれらのブレンド若しくはコポリマーが含まれる、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
溶媒を更に含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
注射用製剤の形態である、請求項21から26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
バイアル中又はシリンジ中の、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
約100mg~約1,000mgのオランザピンを含む、請求項21から28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
約300mg~約700mgのオランザピンを含む、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
患者への投与後、少なくとも14日、又は少なくとも21日間、精神神経疾患の治療のためのオランザピンの治療有効血漿濃度をもたらす、請求項21から30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
約14日、21日、約28日、約30日、約42日又は約56日の間、オランザピンの治療有効血漿濃度をもたらす、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
請求項1から14のいずれか一項に記載のオランザピン又は請求項15から20のいずれか一項に記載の容器を含み、任意選択で薬学的に許容される賦形剤、シリンジ及び/又は使用のための説明書を更に含む、キット。
【請求項34】
精神神経疾患又は別種の疾患を患い、その治療を必要とする対象を治療する方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載のオランザピン、又は請求項21から32のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含み、オランザピン又は前記医薬組成物が、対象への投与後少なくとも約14日、又は少なくとも21日の期間、オランザピンの治療有効血漿濃度をもたらす、方法。
【請求項35】
オランザピン又は医薬組成物が約14日、約21日、約28日、約30日、約42日又は約56日の間、オランザピンの治療有効血漿濃度をもたらす、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
オランザピンが対象に筋肉内投与される、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
オランザピンが対象に皮下投与される、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項38】
精神神経疾患が統合失調症である、請求項34から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
精神神経疾患が双極性障害である、請求項34から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
容器にオランザピン又は薬学的に許容されるその塩を充填する方法であって、約20μm~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、若しくは約0.35g/ml~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せを有するオランザピンを用意する工程、及び半自動又は完全自動充填機械を使用して容器を充填し、
それにより、容器にオランザピン又は薬学的に許容されるその塩を充填する工程
を含む、方法。
【請求項41】
容器にオランザピン又は薬学的に許容されるその塩を充填する方法であって、充填重量のRSD%が1.5%以下であるか、又は充填速度が14%以上であり、
それにより、容器にオランザピン又は薬学的に許容されるその塩を充填する工程
を含む、方法。
【請求項42】
充填重量のRSD%が1.5%以下、又は1.0%~1.5%である、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
充填速度が14%以上、又は14%~20%である、請求項40から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
容器がバイアル、シリンジ、カプセル、ボトル、サシェ又はアンプルである、請求項40から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
容器がバイアルである、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月20日に提出された、あらゆる目的のためにその全体が参照として本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第63/301,202号の優先権の利益を主張する。
【0002】
分野
本明細書においては、好都合な流動特性を有するオランザピン原薬及びそれを含む医薬品が提供される。
【背景技術】
【0003】
オランザピンは、良好に特徴付けされ、広く処方される非定型抗精神病薬であり、経口及び非経口(筋肉内、IM)の配合物で利用可能である。オランザピンは、チエノベンゾジアゼピンクラスに属し、その化学名は2-メチル-4-(4-メチル-1-ピペラジニル)-10H-チエノ[2,3-b][1,5]ベンゾジアゼピンである。
【0004】
【化1】
【0005】
米国特許第5,229,382号及び5,736,541号は、オランザピンのI型及びII型についてそれぞれ記載している。米国特許第7,323,459号は、結晶形態のオランザピンH、G、Y、X、K、S、Q、Z及びJについて記載している。遊離塩基又は塩、例えば塩酸塩又はパモ酸塩として、オランザピンは、統合失調症並びに他の精神神経疾患及び障害の治療に使用される医薬の医薬品有効成分(API)である。オランザピンの経口配合物(ジプレキサ)及びオランザピンパモ酸塩を含有する長期作用型筋肉内(IM)デポ製剤(ZYPREXA RELPREVV(登録商標)、イーライリリー社)は、米国で統合失調症に罹患した成人及び青年の治療用に承認されている。オランザピンの経口配合物は、双極性障害I型の治療用にも米国で承認されている。オランザピンのIM配合物は、統合失調症又は双極性I型躁状態に伴う急性興奮の成人の治療用に承認されている。
【0006】
オランザピンは、不良な水溶性、溶解性及び流動特性を呈する。これらの特徴を改善する方法には、例えば、粒径の低減、塩のスクリーニング、噴霧乾燥及びミクロスフェアへの封入等が挙げられる。しかし、全ての公知の方法が全ての形態のAPIについて実用的であるわけではない。APIの粒径低減は溶解性を増大させ得るが、流動性及び充填性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、非経口投与のために賦形剤と共に薬学的容器、すなわち、バイアル、シリンジ、カプセル、ボトル、サシェ又はアンプル中に存在するオランザピンには、用量の正確性及び容器充填(例えばバイアル充填)のために、APIの流動性が重大である。更に、賦形剤と組み合わされた場合、好都合な溶解性又は懸濁性及び首尾良い注射器通過性特性のうち1つ又は複数が求められる。
【0007】
したがって、こうした特性を呈するオランザピンの流動性配合物の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,229,382号
【特許文献2】米国特許第5,736,541号
【特許文献3】米国特許第7,323,459号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sun等。Modeling Olanzapine Solution Growth Morphologies。Cryst. Growth Des. 2018、18、905~911頁
【発明の概要】
【0010】
オランザピンはその本来の凝集性のため、バイアル充填が困難である。オランザピン原薬のフローファンクション、充填重量の低い相対標準偏差(RSD)及び良好な充填速度と、特定の範囲のD(90)粒径分布(PSD)、D(3,2)PSD、タップ密度又はそれらの任意の組合せとの間の予期されなかった相関性が特定された。本開示の発明者らは、オランザピン非経口製剤のための、用量正確性、並びに、良好な懸濁性及び注射器通過性特性を兼ね備えるバイアル充填を提供する好都合な流動特性を有する、オランザピン原薬の特徴を特定した。本明細書においては、オランザピン原薬、及び望ましい特徴を有するオランザピンを含む容器又はキット、並びにその医薬組成物及び使用方法が開示される。
【0011】
一態様では、本明細書においては、以下の特性:約20~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、若しくは約5.5~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、若しくは約0.35~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せのうち少なくとも1つを有するオランザピン又は薬学的に許容されるその塩が提供される。オランザピン又は薬学的に許容されるその塩は、約2.0以下のフローファンクション及び/又は約1.5%以下の充填重量のRSD(%)及び/又は14%以上の充填速度を呈する。一部の実施形態では、オランザピン又は薬学的に許容されるその塩は、約2.0以下又は約1.0~約2.0、又は1.4~約2.0のフローファンクションを呈する。一部の実施形態では、オランザピン又は薬学的に許容されるその塩は、約1.5%以下又は約1.0%~約1.5%の充填重量のRSD(%)を呈する。一部の実施形態では、オランザピン又は薬学的に許容されるその塩は、約14%以上又は約14%~約20%の充填速度を呈する。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン塩基である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン塩である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン多形である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピンII型である。
【0012】
更に、約20~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、約0.35~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せを有する、オランザピンII型を含む容器が提供される。オランザピンは、約2.0以下のフローファンクション及び/又は約1.5%以下の充填重量のRSD(%)及び/又は14%以上の充填速度を呈する。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン塩基である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン塩である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン多形である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピンII型である。一部の実施形態では、容器は滅菌済み又は無菌のオランザピンII型を含む。容器は、バイアル又は他の薬学的に許容される器でもよい。
【0013】
別の態様では、医薬組成物は、以下の特性:約20~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、約0.35~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを有するオランザピン、及び1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピンII型である。一部の実施形態では、オランザピンの粒径分布は20~約37μmのD(90)を特徴とする。オランザピンは、約2.0以下のフローファンクション及び/又は約1.5%以下の充填重量のRSD(%)及び/又は14%以上の充填速度を呈する。一部の実施形態では、オランザピン又は薬学的に許容されるその塩は、約2.0以下又は約1.0~約2.0、又は1.4~約2.0のフローファンクションを呈する。一部の実施形態では、オランザピン又は薬学的に許容されるその塩は、約1.5%以下又は約1.0%~約1.5%の充填重量のRSD(%)を呈する。一部の実施形態では、オランザピン又は薬学的に許容されるその塩は、14%以上又は約15%~約20%の充填速度を呈する。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン塩基である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン塩である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン多形である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピンII型である。一部の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与のための懸濁液又は溶液の形態であり、例えば1種又は複数のポリマー又は非ポリマー賦形剤を含む。医薬組成物は、例えば、皮下又は筋肉内注射用製剤、例えばシリンジに収容された形態でもよい。シリンジは、ポリマー又は非ポリマー賦形剤中の約100~約1,000mgのオランザピン、又は約300~約800mgのオランザピンを含み得る。
【0014】
更に、以下の特性:約20~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、約0.35~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを有するオランザピンを含み;任意選択で、薬学的に許容される賦形剤、シリンジ及び/又は使用のための説明書を更に含む、キットが提供される。オランザピンは、約2.0以下のフローファンクション及び/又は約1.5%以下の充填重量のRSD(%)及び/又は14%以上の充填速度を呈する。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン塩基である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン塩である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン多形である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピンII型である。オランザピンは、容器、例えばバイアル、カプセル、ボトル、サシェ、シリンジ又はアンプル中でもよい。
【0015】
更に、精神神経疾患又は別種の疾患を患い、その治療を必要とする対象を治療する方法であって、以下の特性:約20~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、約0.35~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有するオランザピンを対象に投与する工程を含み;任意選択で薬学的に許容される賦形剤、シリンジ及び/又は使用のための説明書を更に含む、方法が提供される。オランザピンは、約2.0以下のフローファンクション及び/又は約1.5%以下の充填重量のRSD(%)及び/又は14%以上の充填速度を呈する。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン塩基である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン塩である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピン多形である。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピンII型である。好ましくは、オランザピンは、対象への投与後少なくとも約21日の期間、オランザピンの治療有効血漿濃度をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】オランザピンII型のX線回折分析(XRD)プロファイルの図である。
図2】微粒子化されたオランザピンII型の粒子形態を示す電子顕微鏡写真(×1,000)の図である。
図3A】フローファンクションとD(90)との間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図3B】フローファンクションとD(3,2)との間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図3C】フローファンクションとTDとの間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図3D】充填重量のRSDとD(90)との間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図3E】充填重量のRSDとD(3,2)との間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図3F】充填重量のRSDとTDとの間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図3G】充填重量のRSDとフローファンクションとの間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図3H】充填速度(%)とD(90)との間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図3J】充填速度(%)とD(3,2)との間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図3K】充填速度(%)とTDとの間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図3L】充填速度(%)とフローファンクションとの間の相関性を示す二変量プロットを示す図である。
図4A】滅菌後のバイアル中のAPIのPSDに比較したバルクAPIのPSDを描くグラフである。Y軸は体積密度(%、均等目盛)を表し、X軸はマイクロメーターでのサイズ(μ、対数目盛)を表す。
図4B】滅菌後のバイアル中のAPIのPSDに比較したバルクAPIのPSDを描くグラフである。Y軸は体積密度(%、均等目盛)を表し、X軸はマイクロメーターでのサイズ(μ、対数目盛)を表す。
図4C】滅菌後のバイアル中のAPIのPSDに比較したバルクAPIのPSDを描くグラフである。Y軸は体積密度(%、均等目盛)を表し、X軸はマイクロメーターでのサイズ(μ、対数目盛)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、例示的な実施形態が参照され、それらを記載するために本明細書において特定の用語が使用される。それにもかかわらず、それによる本発明の範囲の限定が意図されないことが理解される。関連分野の本開示を所有する当業者には起こり得る、本明細書において例示される本発明の特徴の変更及び更なる修正、並びに本明細書に例示される通りの本発明の原理の追加的な適用は、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0018】
本開示は、約20μm~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、若しくは約0.35g/ml~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せを有する、オランザピン、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。一部の実施形態では、粒径分布は20μm~約37μmのD(90)を特徴とする。一部の実施形態では、粒径分布は24μm~約35μmのD(90)を特徴とする。オランザピンの粒径分布は、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)を特徴とし得る。一部の実施形態では、粒径分布は約5.8μm~約7.0μmのD(3,2)を特徴とする。オランザピンのタップ密度は、約0.35~約0.44g/mlである。
【0019】
一部の実施形態では、オランザピンは、約20μm~約37μmのD(90)、及び約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布を有する。
【0020】
一部の実施形態では、オランザピンは、約20μm~約37μmのD(90) を特徴とする粒径分布、及び約0.35g/ml~約0.44g/mlのタップ密度を有する。
【0021】
一部の実施形態では、オランザピンは、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2) を特徴とする粒径分布、及び約0.35g/ml~約0.44g/mlのタップ密度を有する。
【0022】
代替的な実施形態では、オランザピンは、約20μm~約37μmのD(90)、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2) を特徴とする粒径分布、及び約0.35g/ml~約0.44g/mlのタップ密度を有する。
【0023】
本明細書において開示されるオランザピン原薬は、パウダーレオメーターFT4により測定された約2.0以下のフローファンクションを有する。一部の実施形態では、パウダーレオメーターFT4により測定されたフローファンクションは、約1.0~約2.0である。
【0024】
本明細書において開示されるオランザピン原薬は、1.5%以下、又は1.0%~1.5%の充填重量のRSD%を結果として示す。一部の実施形態では、充填速度は14%以上又は14%~20%である。
【0025】
更に、例えば、約20μm~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、若しくは約0.35g/ml~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せを有するオランザピン又は薬学的に許容されるその塩等、本明細書において開示されるオランザピンを含む容器が提供される。一部の実施形態では、容器はバイアル、シリンジ又はアンプルである。特定の実施形態では、容器はバイアルである。容器は、約100mg~約1,000mgのオランザピン、又は約300mg~約700mgのオランザピンを含み得る。一部の実施形態では、オランザピンは容器内で最終滅菌される。また他の実施形態では、オランザピンは無菌である。
【0026】
更に、本明細書において開示されるオランザピン及び1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。オランザピン又は薬学的に許容されるその塩は、約20μm~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、若しくは約0.35g/ml~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せを有する。医薬組成物は、非経口投与のための溶液又は懸濁液の形態でもよい。一部の実施形態では、医薬組成物は水性懸濁液又は非水性懸濁液である。医薬組成物は、ポリマー又は非ポリマーを含む薬学的に許容される賦形剤を含み得る。一部の実施形態では、賦形剤は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ-1-乳酸、ポリ-d-乳酸、ポリエチレングリコール、又は上述のもののコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリホスファジン、ポリ(アルキレンアルキレート)、生分解性ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリアルカン酸、アルブミン、キトサン、カゼイン、ワックス、又はそれらのブレンド若しくはコポリマーを含む、生分解性ポリマーでもよいポリマーを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、溶媒を更に含む。
【0027】
一部の実施形態では、医薬組成物は、例えばバイアル中又はシリンジ中の、注射用製剤の形態である。医薬組成物は、約100mg~約1,000mgのオランザピン、約300mg~700mgのオランザピン、若しくは約300mg~約600mgのオランザピン、又は薬学的に許容されるその塩を含む。医薬組成物は、患者への投与後、少なくとも14日、又は少なくとも21日の間、精神神経疾患の治療のためのオランザピンの治療有効血漿濃度をもたらす。一部の実施形態では、医薬組成物は、約14日、21日、約28日、約30日、約42日又は約56日の間、オランザピンの治療有効血漿濃度をもたらす。オランザピン又は薬学的に許容されるその塩は、容器を含み、任意選択で薬学的に許容される賦形剤、シリンジ及び/又は使用のための説明書を更に含む、キット中で提供され得る。
【0028】
更に、精神神経疾患又は別種の疾患を患い、その治療を必要とする対象を治療する方法であって、本明細書において開示されるオランザピン又は医薬組成物を対象に投与する工程を含みオランザピン又は医薬組成物が、対象への投与後、少なくとも約14日若しくは少なくとも21日の期間、又は約14日、約21日、約28日、約30日、約42日若しくは約56日の間、オランザピンの治療有効血漿濃度をもたらす、方法が提供される。医薬組成物は、対象に非経口で、例えば筋肉内又は皮下、特に皮下に投与される。一部の実施形態では、精神神経疾患は統合失調症又は双極性障害である。
【0029】
更に、容器にオランザピン又は薬学的に許容されるその塩を充填する方法であって、約20μm~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5μm~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、若しくは約0.35g/ml~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せを有するオランザピンを用意する工程、並びに半自動又は全自動充填機械を使用して容器を充填し、それにより容器にオランザピン又は薬学的に許容されるその塩を充填する工程を含む、方法が提供される。
【0030】
更に、容器にオランザピン又は薬学的に許容されるその塩を充填する方法であって、充填重量のRSD%が1.5%以下であるか、又は充填速度が14%以上であり、それにより容器にオランザピン又は薬学的に許容されるその塩を充填する方法が提供される。
【0031】
方法の一部の実施形態では、充填重量のRSD%は1.5%以下、又は1.0%~1.5%である。方法の一部の実施形態では、充填速度は14%以上又は14%~20%である。方法の一部の実施形態では、容器はバイアル、シリンジ、カプセル、ボトル、サシェ又はアンプル、特にバイアルである。
【0032】
相対標準偏差(RSD)は、試料の標準偏差と平均との比である。それは、充填方法の正確性を表す変動係数である。
【0033】
用語D(90)、D(99)及びD(100)は、当技術分野では良好に理解される。例えば、25μmのD(90)(又はd(90))は、粒子の(体積の)90%が25μm以下の直径を有することを意味する。例えば、50μmのD(99)(又はd(99))は、粒子の(体積の)99%が50μm以下の直径を有することを意味する。例えば、300μmのD(100)は、粒子の(体積の)100%が300μm以下の直径を有することを意味する。D(3,2)は、表面積のモーメント平均(ザウター平均直径、SMD)を指し、例えば溶解等、表面積が重要である場合に関与する可能性があり、試料中の微粒子の量を反映する。D(4,3)は、体積/質量モーメント平均(De Brouckere平均直径)を指し、試料のバルクを構成する粒径を反映する。粒径は、レーザー回折法の手段により決定することができる。一部の実施形態では、粒径は、Malvern Instruments社のMastersizerデバイスを使用して決定することができる。
【0034】
タップ密度(TD)は、粉体試料がタップされた際に詰まる能力を指し、その流動性及び充填性能に関連し得る粉体の凝集性の尺度を与える。タップ密度は、以下、実施例において記載される通りに、タップ密度メーターを使用して決定することができる。
【0035】
フローファンクション(FF)は、一般に粉体の流動性を格付けするために使用されるパラメーターであり、高い値である程、試料の流動特性が良好であることを示す。FFは、以下、実施例において記載される通りに得られた。本明細書において記載されるオランザピンは凝集性粉体の形態であり、好都合な流動特性を有し、例えばパウダーレオメーターFT4を使用して測定した場合、例えば約2.0以下のフローファンクション値を有し、例えば1.4~2.0のフローファンクションを有する。一部の実施形態では、パウダーレオメーターFT4により測定した場合、オランザピンのフローファンクションは、約2.0以下、又は約1.4~2.0である。
【0036】
充填重量の相対標準偏差は、以下の通りに算出される:
RSD(%)=(SD(mg))/(MEAN(mg))
(式中、RSDは相対標準偏差であり、SDはミリグラムでの充填重量分布の標準偏差であり、MEANはミリグラムでの平均充填重量である)。
【0037】
一部の実施形態では、充填重量のRSD%は1.5%以下である。
【0038】
本明細書において使用される場合、充填速度は、機械の技術仕様書に記載のその最大能力のパーセント(%)での1分当たり単位数を指す。一部の実施形態では、充填速度は14%以上である。一部の実施形態では、充填速度は14%~20%である。一部の実施形態では、充填速度は20%以上である。
【0039】
粒子の形態は、例えば走査電子顕微鏡(SEM)で粒子を調査することにより得ることができる。本明細書において開示されるオランザピンの粒子形態は不規則であり、実質的に、図2に示す通りである。
【0040】
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、特段別に言及がない限り、複数の物品を指し得る。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「約」は、それが修飾する数値を認証し、そのような値が±10wt%の差の中で可変であることを示すことを意図する。同一の構成要素又は特性を対象とする全ての範囲の端点は範囲に含まれ、独立に組合せが可能である(例えば、「25wt%以下、又は5wt%~20wt%」の範囲は、「5wt%~25wt%」の範囲の端点及び全ての中間の値を含む等である)。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内であり、ヒトの組織との接触に好適であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題のある合併症を伴わず、妥当な利益/リスク比に見合うような化合物、物質、組成物、及び/又は賦形剤を指す。
【0043】
本明細書において使用される場合、バイアルは、組成物のパッケージング、配布、及び使用における使用に好適な容器を指す。バイアルは単回量バイアル(すなわち、単回用量、例えば単回ヒト用量に等しいAPIの量を含有するバイアル)でもよい。代替的に、バイアルは複数回の用量を含有する(多回用量バイアル)こともできる。本明細書において使用される場合、バイアル充填とは、ある量のAPI、例えばオランザピンを、単一のバイアル又は他の容器に入れることを指す。バイアル充填は手作業、半自動又は自動で実施することができる。
【0044】
本開示の医薬組成物は、医薬品有効成分、又はその塩形態、及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。前記医薬組成物は、ポリマー及び/又は他の好適な物質を使用し、当技術分野で公知の方法を使用して配合することが可能である。医薬組成物は、水性又は非水性でもよい。一部の実施形態では、API、例えばオランザピン、及び賦形剤、例えばポリマーは、in situでデポを形成し、例えば筋肉内又は皮下投与に続いて、そこからAPIが経時的に放出される。
【0045】
本開示の医薬組成物を調製するために有用な賦形剤の例としては、ポリ(ラクチド)(ポリ乳酸、PLA)、ポリ(グリコリド)(ポリグリコール酸、PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ-1-乳酸(PLLA)、ポリ-d-乳酸(PDLA)、ポリエチレングリコール、又は上述のもののコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリホスファジン、ポリ(アルキレンアルキレート)、生分解性ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリアルカン酸;アルブミン、キトサン、カゼイン、ゼラチン、ワックス、又はそれらのブレンド若しくはコポリマーを含む、生分解性ポリマーを含む。非ポリマー賦形剤は、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)を含む。
【0046】
有効成分を当座の方法での使用に好適な医薬組成物に配合する方法は、当業者には理解される。
【0047】
本開示の方法において使用されるオランザピンは、オランザピン又はオランザピンの薬学的に許容される塩としてのいずれかとして医薬組成物中に存在し得る。薬学的に許容される塩の例としては、酒石酸塩、例えば(D)(-)酒石酸塩若しくは(L)(+)酒石酸塩、塩酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、特にD-リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パモ酸塩、ギ酸塩、マロン酸塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸塩、サリチル酸塩、シクロヘキサンスルファミン酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、特に(R)(-)マンデル酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、スクアリン酸塩、バニリン酸塩、オキサロ酢酸塩、アスコルビン酸塩、特に(L)-アスコルビン酸塩及び硫酸塩が挙げられる。ある態様では、オランザピンの形態はオランザピン塩基II型であり、図1に示す通りのXRDプロファイルを有する。
【0048】
非経口投与は、経口投与以外の投与を指す。本明細書において使用される場合、「皮下投与」は、真皮及び表皮の直接下にある皮膚の層への投与を指す。この用語は特に、筋肉内及び静脈内への投与方法を除外する。ある態様では、皮下投与方法は、皮下注射を含む。
【0049】
本明細書において使用される場合、「治療有効量」は、患者における統合失調症の陽性及び/若しくは陰性症状並びに/又は双極性障害を緩和するのに十分なオランザピンの量を指す。
【0050】
各容器は、約100mg~約1,000のオランザピン又はオランザピンの薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、各容器は、約150mg~約800mgのオランザピン若しくはオランザピンの薬学的に許容される塩、又は約300mg~700mgのオランザピン若しくはオランザピンの薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、容器はバイアル、特にガラス製バイアルである。一部の実施形態では、本明細書において開示される場合、容器はオランザピンII型を含む。
【0051】
本明細書において使用される場合、「オランザピン又は薬学的に許容されるその塩」の特定の量又は量の範囲への言及は、任意のオランザピンの薬学的に許容される塩の量がオランザピンの特定の量又は量の範囲に等量であることを意味する。
【0052】
一部の実施形態では、本明細書において開示される組成物及び方法を含む医薬組成物、シリンジは、約100mg~約1,000mgのオランザピン又は薬学的に許容されるその塩を含む。例えば、本開示の医薬組成物及び方法は、約150~約700mg、又は約300~約600mgのオランザピン又は薬学的に許容されるその塩を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示される場合、医薬組成物及び方法はオランザピンII型を含む。
【0053】
本開示の医薬組成物及び方法は、少なくとも14日又は少なくとも21日の間、治療有効量のオランザピンをもたらす。一部の実施形態では、医薬組成物及び方法は、少なくとも約14日、21日、28日、30日、45日、56日、60日又は90日の間、治療有効量のオランザピンをもたらす。
【0054】
記載される方法によれば、医薬組成物は、月に1回を超えない(すなわち、約28~30日に1回を超えない)頻度で投与することができる。代替的に、医薬組成物は、約2カ月に1回を超えない(すなわち、約56~60日に1回を超えない)頻度で投与することができる。他の方法では、医薬組成物は、3カ月に1回の(すなわち、約84~90日に1回を超えない)頻度で投与することができる。当業者であれば、本明細書における日数への言及が、例えば、「少なくとも約28日の間」という表現が「少なくとも約28日の期間に」と等価であると理解され、「少なくとも約56日の間」という表現が「少なくとも約56日の期間に」と等価であると理解されるような期間を指すことを理解するであろう。
【0055】
更に、本明細書において開示されるオランザピンを含むキットが提供される。キットは、オランザピンを含む容器を含み得る。容器は、バイアルでもよい。バイアルは、バイアルアダプターを含み得る。キットは、1本又は複数のシリンジを含んでもよく、少なくとも1本のシリンジは賦形剤を含み、賦形剤は再構成に使用され得る。シリンジは、バイアル又はバイアルアダプターと共に使用することが可能である。賦形剤は、例えば溶媒及び/又はポリマーを含み得る。シリンジは、追加的又は代替的に、薬物、例えばバイアルに含有されるAPIとは異なる薬物を含み得る。シリンジは代替的に空でもよく、別個の容器から流体を回収するために利用することができる。キット中のシリンジは、APIを再構成するために用いる溶媒を含有し得る。キット中のシリンジは、APIを再構成するために用いるポリマーを含有し得る。シリンジは、APIを再構成するために用いる溶媒及びポリマー溶液の両方を含み得る。一部の実施形態では、溶媒は薬学的に許容される溶媒であり、水性溶媒又は非水性溶媒でもよい。溶媒の非限定的な例には、水、ベンジルアルコール(BA)、ベンジルベンゾエート(BB)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、及びそれらの混合物が挙げられる。バイアルは、(例えば、唯一)オランザピン又は薬学的に許容されるその塩を含有し得る。一部の実施形態では、APIは、以下の特性:約20~約37μmのD(90)を特徴とする粒径分布、約5.5~約7.5μmのD(3,2)を特徴とする粒径分布、若しくは約0.35~0.44g/mlのタップ密度、又はそれらの任意の組合せのうちの少なくとも一つを有し、任意選択で、薬学的に許容される賦形剤、シリンジ及び/又は使用のための説明書を更に含む、オランザピンである。一部の実施形態では、オランザピンはオランザピンII型である。オランザピンは、容器、例えばバイアル、カプセル、ボトル、サシェ、シリンジ又はアンプル中で提供され得る。キットは任意選択で、注射を実施するための1本又は複数の針又はシリンジを更に含み得る。前記シリンジは、溶液を再構成するために、及び/又はバイアルから再構成された溶液を回収するために使用可能である。本明細書において使用される場合、「再構成された溶液」は、再構成された溶液又は再構成された懸濁液を指し、ここでAPIは完全に又は部分的に溶解している。キットは任意選択で、バイアル又はバイアルアダプターと共に使用されるように構成されたシリンジアダプターを含み得る。シリンジアダプターは、例えばバイアルアダプターのシリンジ接続ポートに接続されるように構成され得る。シリンジは流体混合を可能にし得る。キットは追加的に又は代替的に、使用者のための指示書を含み得る。
【0056】
上述の実施形態について、本明細書において開示されるそれぞれの実施形態は、本開示の他の実施形態のそれぞれに適用可能であることが企図される。例えば方法実施形態に詳述される要素は、本明細書において記載される医薬組成物、キット、プロセス及び使用実施形態において使用することができ、逆も同様である。
【0057】
以下の実施例は、本発明を限定することなく例示する役割を果たす。
【実施例
【0058】
(実施例1)標準方法
1. 粒径分布(PSD)
本明細書における目的のために、粒径分布(PSD)をパーセント体積、すなわちD(90)及びD(3,2)として決定し、Hydro 2000S分散ユニットを装備したMalvern社のMastersizer 2000を使用してレーザー回折により測定した。
【0059】
測定は、飽和水分散媒(屈折率=1.22(一般目的))中で行った。水は、測定中の試料溶解を防止するため、オランザピンで飽和させた。分散媒は、1リットルの水に約3gmのオランザピンを添加し、30分間超音波浴中でソニケーションし、濾過する(0.22~0.45um)ことにより調製した。試料を濃縮懸濁液として、撹拌下、10~20%の不透明度に達するまで添加した。結果は、30秒の再循環時間(ソニケーション後)で10の測定サイクルから生じた値であった。以下のパラメーターが使用された。
・ 分散ユニット:Hydro 2000S
・ 測定範囲:0.02~2000μm
・ 分析モデル:一般目的、通常、Mieモデル
・ 感度:通常
・ 粒子形状:不規則
・ 試料の屈折率:1.709
・ 吸光:0.01
・ 分散剤:オランザピン飽和水分散媒
・ 分散媒の屈折率:1.330
・ 不透明度:10~20%
・ ポンプ/撹拌速度:2500rpm
・ レベルセンサー閾値:64%
・ 試料測定時間:10s
・ バックグラウンド測定時間:10s
・ 繰り返し測定(1分量につき):10
・ 内部超音波:90%出力で30s
・ 再循環時間(ソニケーション後):30s
・ 測定回数(各分量):1
【0060】
試料調製:試料を濃縮懸濁液として調製した。約50~100mgのオランザピン試料をスパチュラを用いて小形のガラスビーカーに添加し、飽和水分散媒を数滴添加した。穏やかに混合することでペーストが得られ、濃縮均質懸濁液を得る目的で追加量(1ml)の飽和水分散媒を添加した。
【0061】
異なるバッチのオランザピンの粒径分布及び他の粉体特性を、表1に示す。
【0062】
2. 嵩密度/タップ密度
嵩密度/タップ密度は、欧州薬局方2.9.34.方法1(https://www.drugfuture.com/Pharmacopoeia/EP7/DATA/20934E.PDF、2021年11月14日PDFダウンロード)により決定した。
【0063】
嵩密度及びタップ密度は、100mLのガラスシリンダーを装備したERWEKA社のタップ密度テスターSVM122を使用して決定した。おおよそ30gの粉体を、100mLのメスシリンダーに漏斗を用いて注意深く注ぎ入れた。嵩密度は、粉体の量(グラム)を測定した体積(mL)で割ることにより算出した。次いで、タップ密度を以下の通りに決定した。
タップ10× - 読み取り体積(=V10)
タップ500×(10+490) -> 読み取り体積(=V500)
タップ1250×(500+750) - 読み取り体積(=V1250)
タップ2500×(1250+1250) - 読み取り体積(=V2500)
【0064】
V500とV1250との間の差が2mLより大きい場合、タップを繰り返した、すなわち、更に1250×タップし、差が2mL未満となるまで繰り返した。
嵩密度=試料重量/タップ前の体積。
タップ密度=重量/タップ後の体積。
計算:
嵩密度=m(mg)/V0(mL)
タップ密度=m(mg)/V2500(mL)
異なるバッチのオランザピンのタップ密度は、表1に示す。
【0065】
3. フローファンクションの決定
フローファンクション(FF)は、パウダーレオメーターFT4、フリーマン社FT4機器、及び標準フリーマン社剪断試験-9kPa(小形セル1mlを使用)を、下の手順に従って使用することにより決定した。
・ 9kPaまで60sの間、圧縮する
・ 予備剪断7kPaで16s間、保持
・ 7kPaでの剪断試験(18°/minで10°剪断、自動検出されたピークトルクあり)
・ 予備剪断6kPaで16s間、保持
・ 6kPaでの剪断試験(18°/minで10°剪断、自動検出されたピークトルクあり)
・ 予備剪断5kPaで16s間、保持
・ 5kPaでの剪断試験(18°/minで10°剪断、自動検出されたピークトルクあり)
・ 予備剪断4kPaで16s間、保持
・ 4kPaでの剪断試験(18°/minで10°剪断、自動検出されたピークトルクあり)
・ 予備剪断3kPaで16s間、保持
・ 3kPaでの剪断試験(18°/minで10°剪断、自動検出されたピークトルクあり)
【0066】
異なるバッチのオランザピンの流動特性は、表1に示す。
【0067】
4. SEM(走査電子顕微鏡)
導電性両面粘着テープを用いて粉体試料をアルミニウムのスタブに固定し、金を用いてコーティングした。金をエドワーズ社のS150スパッタコーターを使用してスパッタした。試料を、日本電子社のJSM-5800走査顕微鏡、オックスフォード社のAztec X-max 20mm2によるEDSで、条件:WD=20、HT=10kV、(倍率500×、及び1,000×)で走査した。
【0068】
5. バイアルへのAPI充填
バルクAPI(すなわち本明細書において記載されるオランザピンII型)は得られ次第、オーガー技術(バウシュウントストレーベル社(ドイツ)製、SVP100)を使用する半自動粉体充填機械を使用して、ガラス製バイアルに充填した。粉体充填機械は、粉体をガラス製バイアルに充填するために、オーガー及び撹拌子のセットを使用した。各バイアルは、インプロセスの重量コントロール(100%)に供した。バイアルはゴムのキャップ及びアルミニウムのキャップで閉め、クリンプした。
【0069】
6. 乾燥熱による最終滅菌
APIを充填して閉められ、クリンプされたバイアルを、Kambic社(スロベニア)製の乾燥熱オーブンSP-470で乾燥熱を使用して150~160℃で2時間、最終滅菌した。最終滅菌の追加的方法には、放射線、例えばガンマ放射線、X線、電子ビームその他が含まれ、結果は類似している。代替的に、APIは無菌的に調製することもできる。
【0070】
7. JMPソフトウェア分析
二変量フィットについてのプロットを、JMP(登録商標)バージョン13.2.1ソフトウェアを使用して準備し、分析した。
【0071】
(実施例2)微粒子化オランザピンII型の調製
オランザピンI型(4.00kg)を溶解器に投入し、窒素を用いて反応器をブランケットした。溶解器のジャケットを75~80℃まで加熱した。トルエン(48kg)を結晶化器に投入し、窒素を用いて反応器をブランケットした。トルエンに加えて、アセトン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、又はメチルイソブチルケトンを溶媒として使用することができる(Sun等。Modeling Olanzapine Solution Growth Morphologies。Cryst. Growth Des. 2018、18、905~911頁)。結晶化器中の溶媒を75~80℃まで加熱した。加熱したトルエンを、結晶化器から溶解器に窒素圧を使用して移動した。混合物を75~80℃で、完全な溶解が観察されるまで撹拌した(目視で点検)。溶液の機械的濾過を、溶解器から結晶化器へ、加熱した移動ライン及びフィルターカートリッジを通じて実施した。溶解器と結晶化器との間の移動ラインは、トルエン(0.7kg)で洗浄した。結晶化器の内部温度を75~80℃に調節した。溶液を61~63℃まで冷却した。オランザピンII型の微粒子化シード(20g)を結晶化器に添加した。溶液を50~70分かけて、線形冷却勾配を使用して53~57℃まで冷却した。溶液を50~70分かけて、線形冷却勾配を使用して43~47℃まで更に冷却した。次いで溶液を80~100分かけて、線形冷却勾配を使用して2~8℃まで更に冷却した。懸濁液を80~100min、2~8℃で撹拌し、次いでフィルタードライヤーを通して濾過した。ケーキを、トルエン(3.5kg)を用いて洗浄し、2~8℃まで冷却した後、トルエン(1.7kg)を用いてもう1度洗浄し、2~8℃まで追加冷却を行った。
【0072】
生成物を75~100℃のドライヤージャケット温度及び100~200mbarの真空下で、0.5%未満の検出限界(LOD)レベルが達成されるまで乾燥させ、その後乾燥物質を20~30℃まで冷却し、フィルタードライヤーから取り外した。乾燥物質を、振動ふるいを使用してスクリーンサイズ300ミクロンを通してふるいにかけた。次いでふるいにかけた物質を、1.5~4バールの範囲の窒素圧を使用してエアジェットマイクロナイザーで微粒子化した。ここに記載されるオランザピンII型のXRDプロファイルは図1に示す。オランザピンII型の主な典型的ピークは、約8.7、12.5、17.4、19.9、21.1、21.6、22.4、24.0、25.3及び29.8±0.2度の2θでのピークと決められる。本明細書において開示されるオランザピンII型の粒子形態は不規則であり、実質的に、図2に示す通りである(×1,000拡大)。
【0073】
(実施例3)オランザピンを有する滅菌バイアルの調製
実施例1からのバッチのそれぞれを、実施例1、セクション5及び6に従ってオーガー充填によりバイアルに充填し、最終滅菌した。各充填実行の間、充填重量の相対標準偏差(RSD)(%)及び充填速度(機械の技術仕様書に記載のその最大能力に対する%)を含む、充填性能の重大なパラメーターをモニターした。
【0074】
充填性能は、2つのパラメーターにより測定した:充填重量のRSD及び充填速度。充填重量のRSDは、充填操作の正確性の直接的な尺度であり、数が小さいほど変動が低いことを指す。充填重量の変動は、重大な品質属性である最終製剤の用量均一性に影響する。充填速度は、製造時間を決定し、より高い速度が好ましい。各APIバッチについての充填性能パラメーターの結果は表1に示す。
【0075】
微粒子化オランザピンをバイアルに充填する初めの実験の間、異なるバッチ間で充填性能の有意な差異が認められた。充填は、極めて不良から良好な充填までとして評定した。
【0076】
結果
限定することなく、充填重量のRSDは約2.0%以下、具体的には1.5%以下、より具体的には約1.0%~約1.5%である。
【0077】
限定することなく、一部の実施形態では、充填速度は約14~約20%であり、充填機械の技術仕様書に記載のその能力に依存して異なり得る。一部の実施形態では、容器の充填、例えばバイアル充填は、オーガー充填により実施される。一部の実施形態では、容器の充填、例えばバイアル充填は、真空充填により実施される。充填の方法が企図され得る通り、充填方法は限定的ではない。オランザピンの充填特性を改善し、異なる製造バッチの充填性能を定量する目的で、オランザピンの特性、例えばLALLSによる粒径分布(PSD)、タップ密度(TD)、及びフリーマン社によるフローファンクション(FF)を、充填性能に対して分析した:充填重量の相対標準偏差(RSD)、及び充填速度(機械の技術仕様書に記載のその最大能力に対する%)については、表1参照。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示す結果は、望ましい流動特性及び充填特性並びにその後の再構成及び注入操作性を最も示すパラメーターは、D(90)粒径、D(3,2)又はタップ密度であることを示している。
【0080】
追加的に、APIのパラメーターを充填性能と関連付けるためにJMPソフトウェアにおいて分析を行ったが、最も意義があることが示されたパラメーターは、D(90)、D(3,2)での粒径又はタップ密度である。この分析は図3A図3Lに可視化することができる。プロット中央の黒丸の集まりは、各特色の好ましい値を表す。望ましい流動性及び充填性を有する全てのバッチは、黒丸により描かれている。全ての黒丸は二変量フィット分析において集まっている。全てのプロットが基準を満たすバッチと共に示されている場合、全ての黒丸は記載された通りの範囲内に収まる。
【0081】
変数D(90)、D(3,2)及びTDへのフローファンクションの二変量フィットを、図3A図3Cにそれぞれ示す。図3Aでは、黒丸の集まりが、約20~約37μmのD(90)について、フローファンクションは1.4以上、具体的には約1.4~約2.0であることを示している。図3Bでは、黒丸の集まりが、約5.5~約7.5μmのD(3,2)について、フローファンクションは2.0以下、具体的には約1.4~約2.0であることを示している。図3Cでは、黒丸の集まりが、約0.38g/mL~約0.44のTDについて、フローファンクションは約1.4~約2.0であることを示している。一部の実施形態では、フローファンクションは約1.5~約2.0である。
【0082】
変数D(90)、D(3,2)、TD及びフローファンクションによる充填重量のRSD(%)の二変量フィットを、図3D図3Gにそれぞれ示す。図3Dでは、黒丸の集まりが、約20~約37μmのD(90)について、充填重量のRSD(%)は1.5%未満であることを示している。図3Eでは、黒丸の集まりが、約5.5~約7.5μmのD(3,2)について、充填重量のRSD(%)は1.5%未満であることを示している。図3Fでは、黒丸の集まりが、約0.35~約0.44g/mLのTDについて、充填重量のRSD(%)は1.5%未満であることを示している。図3Gでは、黒丸の集まりが、2.0未満のフローファンクションについて、充填重量のRSD(%)は1.5%未満であることを示している。
【0083】
変数D(90)、D(3,2)、TD及びフローファンクションによる充填速度の二変量フィットを、図3H図3Lにそれぞれ示す。図3Hでは、黒丸の集まりが、約20~約37μmのD(90)について、充填速度は14%以上であることを示している。図3Jでは、黒丸の集まりが、約5.5~約7.5μmのD(3,2)について、充填速度は14%以上であることを示している。図3Kでは、黒丸の集まりが、約0.35~約0.44g/mLのTDについて、充填速度は14%以上であることを示している。図3Lでは、黒丸の集まりが、2.0未満のフローファンクション、具体的には約1.4~約2.0で、充填速度は14%以上であることを示している。
【0084】
【表2】
【0085】
最終製剤の製造プロセスは、最終滅菌工程を含み、特にバルクAPIの品質は滅菌により影響されるべきではない。したがって、乾熱滅菌の後、2バッチ(低PSDを有する)を充填したバイアル中のAPI試料は、PSDについて分析され、出発API材料と比較された。結果は表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
表3は、20~37μmのD(90)を特徴とするPSDを有する乾熱滅菌前のオランザピン原薬が、最終滅菌プロセスの後に若干変化するが、D(90)は許容範囲内にとどまることを示す。表3はまた、5.5~7.5μmのD(3,2)を特徴とするPSDを有する乾熱滅菌前のオランザピン原薬が、最終滅菌プロセスの後に若干変化するが、D(3,2)は許容範囲内にとどまることを示す。
【0088】
例えば最終製品が非経口投与用の溶液又は懸濁液である場合、最大の粒径であるD(99)及びD(100)を制御することが所望となり得る。一部の実施形態では、D(99)及びD(100)を特徴とするオランザピンのPSDは、投与針の内径(I.D.)の約2/3、1/2又は約1/3に制限される。理論に縛られることは望まないが、この値を超える値は、針の詰まり及び注射器通過性の問題のリスクを増大させる可能性がある。例えば21ゲージ(21g)の針は、約490~510μmのI.D.を有する。一部の典型的なD(90)、D(99)及びD(100)の値を表4に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
更に、サンプルシーフを使用して階層化した試料により得られたバッチのPSDパラメーターD(100)の結果は、粒子が約100μm未満のD(99)を特徴とするPSD及び/又は約250μm未満、約210μm未満若しくは約60~約210μmのD(100)を特徴とするPSDを有することを示している。
【0091】
好ましいD(90)の範囲の上限もまた、D(100)により測定される最大粒子の存在に関して制限され得る。具体的には、本明細書において記載される場合、オランザピンII型は、投与針の内径(I.D.)未満のD(100)を特徴とする。例えば、標準の21g、長さ16mmの針は、おおよそ0.49~0.51mmである。
【0092】
図4A図4Cは、滅菌後のバイアル中のAPIのPSDに比較したバルクAPIのPSDを示す。図4A:オランザピンAPI S1-920(若干左側の曲線)、滅菌後のバイアル中API(右側の曲線)。図4B:滅菌前(下の曲線)及び滅菌後(上の曲線)のオランザピンAPI S3-020は、曲線が非常に類似していることを示す。図4C:オランザピンAPI S1-220(若干左側の曲線)、滅菌後のバイアル中API(右かつ若干上の曲線)。
【0093】
全ての特許文献及び刊行物は本明細書において、各別個の刊行物が参照として具体的かつ個別に組み込まれるかのように、同一の程度まで本明細書に参照として組み込まれる。本明細書において例示的に記載される本発明は、本明細書において具体的に開示されない任意の要素の非存在下で好適に実践することができる。したがって、例えば本明細書におけるそれぞれの場面において、用語「含む(comprising)」及び「のみからなる(consisting of)」のいずれも、2つの用語のもう一方で置き換えることができる。上述の実施形態について、本明細書において開示される各実施形態は、開示される他の実施形態のそれぞれに適用可能であることが企図される。例えばAPI実施形態において詳述される要素は、本明細書において記載される医薬組成物実施形態、キット実施形態及び方法実施形態において使用することができ、逆も同様である。使用される用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現の使用において、示され記載される特徴又はそれらの部分のいかなる等価物をも除外する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態及び任意選択の特徴により具体的に開示されるが、本明細書において開示される概念の修正及び変形を当業者が企図することができ、そのような修正及び変形は、添付される特許請求の範囲により定義されるこの発明の範囲内にあると考えられることを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3J
図3K
図3L
図4A
図4B
図4C
【国際調査報告】