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特表2025-503015アルドステロン合成酵素を周期的に抑制することによる高血圧症の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】アルドステロン合成酵素を周期的に抑制することによる高血圧症の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20250123BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P9/12
A61P43/00 111
A61K31/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543009
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-09-17
(86)【国際出願番号】 IB2023050444
(87)【国際公開番号】W WO2023139506
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/300,967
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/400,301
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523147200
【氏名又は名称】ミネラリス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Mineralys Therapeutics, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ロッドマン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】スリングズビー,ブライアン テイラー
(72)【発明者】
【氏名】コングレトン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シミズ,ヒデトシ
(72)【発明者】
【氏名】オオタ,ヨシヤス
(72)【発明者】
【氏名】オリハシ,マドリ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA42
4C084ZC20
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC64
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、該対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を24時間の40-60%の期間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の50%以上を阻害するのに十分な量で一日に付き1回または2回投与し、それによって高血圧対象における高血圧症を治療することを含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、該対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、それにより高血圧対象における高血圧症を治療するのに、24時間の期間の40~60%にて、CYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の50%またはそれ以上を阻害するのに十分な量で一日に1回または2回投与することを含む、方法。
【請求項2】
CYP11β2ベータ水酸化酵素活性の50%またはそれ以上が24時間うち10~14時間の期間で阻害される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、
a)対象の薬物投与前の血清中アルドステロンのレベルと比べて、対象の血清中アルドステロンレベルを、8時間よりも短くなく、16時間よりも長くない期間にわたって、50~90%低下させるのに十分な量のCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回または2回対象に投与するか;または
b)CYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の50%またはそれ以上を、1時間と16時間との間、好ましくは3時間と8時間との間にわたって阻害するのに十分な量のCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回対象に投与する
ことを含む、方法。
【請求項4】
CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が
a)対象の薬物投与前の血清中アルドステロンのレベルと比べて、対象の血清中アルドステロンレベルを8時間よりも短くなく、16時間よりも長くない期間にわたって、60~80%低下させ;および/または
b)用量を投与した後の16時間と24時間との期間の間に、対象の血清中アルドステロンを、対象の薬物投与前の血清中アルドステロンのレベルに、またはそれ以上のレベルに戻るようにする、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
高血圧対象が、利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、あるいはそれらの2種またはそれ以上の組み合わせより選択される高血圧治療薬を服用しているか、または服用したことがあり、好ましくは高血圧対象が該高血圧治療薬の少なくとも2種を服用しているか、または服用したことがある、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
a)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が、一日に1回、好ましくは午前中に対象に投与されるか;または
b)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が、一日に2回対象に投与される
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
一定量のCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が、
(a)少なくとも1週間にわたって毎日投与されるか;
(b)少なくとも2週間にわたって毎日投与されるか;
(c)少なくとも4週間にわたって毎日投与されるか;または
(d)少なくとも8週間にわたって毎日投与される
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が
a)CYP11β1ベータ水酸化酵素活性の阻害と比べてCYP11β2ベータ水酸化酵素活性の阻害について選択的であり、好ましくはここでCYP11β1ベータ水酸化酵素の阻害定数(Ki)をCYP11β2ベータ水酸化酵素のKiで割った値が100よりも大きいか;
b)対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチステロン(11-DOC)レベルが600ピコモル/Lを超えるようになる量よりも少ない量で、好ましくは対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルが400ピコモル/Lを超えるようになる量よりも少ない量で高血圧対象に投与されるか;
c)対象において0.1ng/mLよりも多い11-DOCの蓄積を生じさせる量よりも少ない量で高血圧対象に投与されるか;
d)対象の副腎皮質ホルモン合成の臨床的に有意義なアップレギュレーションを生じさせない量で高血圧対象に投与されるか;
e)高血圧対象に
i)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルの臨床的に有意義な低下を生じさせないか;
ii)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルの臨床的に有意義な増加を生じさせないか;および/または
iii)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルの臨床的に有意義な増加を生じさせない
量で高血圧対象に投与されるか;および/または
f)高血圧対象に
i)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルにて20%よりも大きな低下を生じさせず、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルにて10%よりも大きな低下を生じさせないか;
ii)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルにて20%よりも大きな増加を生じさせず、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルにて10%よりも大きな増加を生じさせないか;および/または
iii)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルにて20%よりも大きな増加を生じさせず、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルにて10%よりも大きな増加を生じさせない
量で高血圧対象に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が、式(A):
【化1】
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩であり、好ましくは該化合物が式(A)の化合物のHBr塩の形態である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
a)5mg~100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
b)10mg~50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
c)5mg~100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか;または
d)10mg~50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与する
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
a)12.5mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
b)25mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
c)12.5mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか;
d)50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか;または
e)100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与する
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
a)診察室で測定される対象の収縮期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の診察室で測定される対象の収縮期血圧と比べて低下しており;および/または
b)対象の24時間自由行動下血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の自由行動下収縮期血圧と比べて低下している
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
a)診察室で測定される対象の収縮期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の診察室で測定される対象の収縮期血圧と比べて、少なくとも10mmHg低下しており;および/または
b)対象の自由行動下収縮期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の自由行動下収縮期血圧と比べて、少なくとも10mmHg低下している、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
a)診察室で測定される対象の拡張期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前に診察室で測定される対象の拡張期血圧と比べて、低下しており;
b)診察室で測定される対象の収縮期および拡張期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前に診察室で測定される対象の収縮期および拡張期血圧と比べて、低下しており;
c)対象の自由行動下収縮期および拡張期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の自由行動下収縮期および拡張期血圧と比べて、低下しており;および/または
d)対象の収縮期血圧が130mmHg未満に低下し、および/または対象の拡張期血圧が80mmHg未満に低下する
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
a)対象の自由行動下収縮期血圧、および対象の自由行動下拡張期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の自由行動下収縮期血圧、および拡張期血圧と比べて、各々、少なくとも10mmHg、および少なくとも5mmHg低下しており;
b)診察室で測定される対象の収縮期血圧、および診察室で測定される対象の拡張期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の診察室で測定される収縮期血圧、および拡張期血圧と比べて、各々、少なくとも10mmHg、および少なくとも5mmHg低下しており;および/または
c)対象の収縮期血圧が130mmHg未満に低下し、および/または対象の拡張期血圧が80mmHg未満に低下する
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
高血圧対象の睡眠中の平均収縮期血圧が
a)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が投与される前の高血圧対象の睡眠中の平均収縮期血圧と比べて、低下しており;および/または
b)高血圧対象の日中の平均収縮期血圧と比べて、低下しており;
好ましくは、ここで高血圧対象の睡眠中の平均収縮期血圧が
i)高血圧対象の日中の平均収縮期血圧と比べて、少なくとも10%、10%~40%、10%~30%、または10%~20%低下し;および/または
ii)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が投与される前の高血圧対象の睡眠中の平均収縮期血圧と比べて、少なくとも8mmHg、少なくとも10mmHg、8~55mmHg、10~45mmHg、10~45mmHg、または10~25mmHg低下する
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
a)CYP11β2ベータ水酸化酵素活性を阻害する持続時間が、高血圧対象におけるナトリウムの状態および体液枯渇を維持するのに十分であり;
b)高血圧対象において高カリウム血症の持続的な状態または軽度の非アニオン性ギャップ代謝性アシドーシスを生成せず;
c)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が高血圧対象にて実質的に蓄積せず、好ましくはここで、高血圧対象にてCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の実質的な蓄積の欠如により、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が投与された後の24~48時間以内に、より好ましくは、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が投与された後の16~24時間以内に、高血圧対象のアルドステロンレベルが薬物投与前のベースラインに戻ることが可能であり;
d)高血圧対象のカリウムレベルが、一般に、臨床的に正常な範囲に維持され、好ましくはここで、高血圧対象のカリウムレベルが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の高血圧対象のカリウムレベルと比べて、若干高く、より好ましくここで、高血圧対象のカリウムレベルが0.35ミリモル/L以下で高く、より好ましくはここで、高血圧対象のカリウムレベルが5.5ミリモル/Lのレベルよりも低く維持され、より好ましくは、高血圧対象のカリウムレベルが3.5mEq/L~5.1mEq/Lに維持され;および/または
e)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が高血圧対象に:
i)対象におけるアルドステロン産生を抑制する量;
ii)対象における血清および/または血漿中カリウムレベルを増大させる量;および/または
iii)対象における血漿レニン活性(PRA)を増加させる量;
好ましくはここで、
iv)対象における血清および/または血漿中アルドステロンAUC-24が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象におけるアルドステロンレベルと比べて、少なくとも25%減少する量;
v)対象における血清および/または血漿中カリウムレベルが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象における血清および/または血漿中カリウムレベルと比べて、少なくとも0.2ミリモル/L増加する量;および/または
vi)対象におけるPRAが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象におけるPRAと比べて、少なくとも5ng/mL/時間増大させる量
にて投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
高血圧対象のアルドステロンレベルが実質的に正常な概日リズムをフォローする、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
高血圧対象の
a)血漿レニン活性が
i)4ng/mL/時間以下であり;
ii)3ng/mL/時間以下であり;
iii)2ng/mL/時間以下であり;
iv)1ng/mL/時間以下であり;および/または
v)0.6ng/mL/時間以下であるか;
および/または
b)血漿中アルドステロン濃度が
i)免疫アッセイで測定すると6ng/dL以上であるか;および/または
ii)LC-MSで測定して1ng/dL以上である
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、高血圧対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の高血圧対象の自由行動下収縮期血圧と比べて、高血圧対象の自由行動下収縮期血圧を少なくとも10mmHg低下させるのに十分な量で一日に1回または2回投与することを含む、方法。
【請求項21】
睡眠中の高血圧対象の収縮期血圧を降下させる方法であって、該対象に、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、(a)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が投与される前の高血圧対象の睡眠中の平均収縮期血圧と比べて、および/または(b)高血圧対象の日中の平均収縮期血圧と比べて、高血圧対象の睡眠中の平均収縮期血圧を下げるのに十分な量にて一日に1回または2回投与することを含む、方法。
【請求項22】
高血圧対象の睡眠中の平均収縮期血圧が、
a)高血圧対象の日中の平均収縮期血圧と比べて、少なくとも10%、10%~40%、10%~30%、または10%~20%降下し;
b)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が投与される前の高血圧対象の睡眠中の平均収縮期血圧と比べて、少なくとも8mmHg、少なくとも10mmHg、少なくとも8~55mmHg、10~45mmHg、または10~25mmHg降下する
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
高血圧対象が、利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、あるいはそれらの2種またはそれ以上の組み合わせより選択される高血圧治療薬を服用しているか、または服用したことがあり、好ましくは高血圧対象が該高血圧治療薬の少なくとも2種を服用しているか、または服用したことがある、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
a)50%またはそれ以上のCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性が24時間のうち40~60%の期間で阻害されるか;
b)50%またはそれ以上のCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性が24時間のうち10~14時間の期間で阻害されるか;
c)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が、薬物を投与する前の対象の血清中アルドステロンレベルと比べて対象の血清中アルドステロンレベルを、8時間より短くなく、16時間よりも長くない期間にわたって、50~90%減少させるか;
d)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が、薬物を投与する前の対象の血清中アルドステロンレベルと比べて対象の血清中アルドステロンレベルを、8時間より短くなく、16時間よりも長くない期間にわたって、60~80%減少させるか;
e)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤により、対象の血清中アルドステロンを、用量を投与した後の16時間~24時間の間に薬物を投与する前の対象の血清中アルドステロンレベルに、またはそれ以上に戻すか;および/または
f)50%またはそれ以上のCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性が、24時間のうちの1~16時間、または好ましくは、3~8時間の期間にわたって阻害される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
a)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、対象に一日に1回、好ましくは午前中に投与するか;または
b)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を対象に一日に2回投与する、
請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が
(a)少なくとも1週間にわたって毎日投与されるか;
(b)少なくとも2週間にわたって毎日投与されるか;
(c)少なくとも4週間にわたって毎日投与されるか;または
(d)少なくとも8週間にわたって毎日投与される、
請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
a)高血圧対象の自由行動下収縮期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を少なくとも8週間の期間にわたって投与する前の高血圧対象の自由行動下収縮期血圧と比べて、10~55mmHg、10~50mmHg、10~45mmHg、10~40mmHg、10~35mmHg、10~30mmHg、10~25mmHg、10~20mmHg、または10~15mmHg低下するか、および/または
b)高血圧対象の自由行動下拡張期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を少なくとも8週間の期間にわたって投与する前の高血圧対象の自由行動下拡張期血圧と比べて、5~25mmHg、5~20mmHg、または5~15mmHg低下する、
請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
a)CYP11β2ベータ水酸化酵素活性を阻害する持続時間が、高血圧対象におけるナトリウムの状態および体液枯渇を維持するのに十分であり;
b)高血圧対象において高カリウム血症の持続的な状態または軽度の非アニオン性ギャップ代謝性アシドーシスを生成せず;
c)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が高血圧対象にて実質的に蓄積せず、好ましくはここで、高血圧対象にてCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の実質的な蓄積の欠如により、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が投与された後の24~48時間以内に、より好ましくは、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が投与された後の16~24時間以内に、高血圧対象のアルドステロンレベルが薬物投与前のベースラインに戻ることが可能であり;
d)高血圧対象のカリウムレベルが、一般に、臨床的に正常な範囲に維持され、好ましくはここで、高血圧対象のカリウムレベルが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の高血圧対象のカリウムレベルと比べて、若干高く、より好ましくここで、高血圧対象のカリウムレベルが0.35ミリモル/L以下で高く、より好ましくはここで、高血圧対象のカリウムレベルが5.5ミリモル/Lのレベルよりも低く維持され、より好ましくは、高血圧対象のカリウムレベルが3.5mEq/l~5.1mEq/lに維持され;および/または
e)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が高血圧対象に:
i)対象におけるアルドステロン産生を抑制する量;
ii)対象における血清および/または血漿中カリウムレベルを増大させる量;および/または
iii)対象における血漿レニン活性(PRA)を増加させる量;
好ましくはここで、
iv)対象における血清および/または血漿中アルドステロンAUC-24が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象におけるアルドステロンレベルと比べて、少なくとも25%減少する量;
v)対象における血清および/または血漿中カリウムレベルが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象における血清および/または血漿中カリウムレベルと比べて、少なくとも0.2ミリモル/L増加する量;および/または
vi)対象におけるPRAが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象におけるPRAと比べて、少なくとも5ng/ml/時間増大させる量
にて投与される、
請求項20~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
高血圧対象のアルドステロンレベルが実質的に正常な概日リズムをフォローする、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が
a)CYP11β1ベータ水酸化酵素活性の阻害と比べてCYP11β2ベータ水酸化酵素活性の阻害について選択的であり、好ましくはここでCYP11β1ベータ水酸化酵素の阻害定数(Ki)をCYP11β2ベータ水酸化酵素のKiで割った値が100よりも大きいか;
b)対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチステロン(11-DOC)レベルが600ピコモル/Lを超えるようになる量よりも少ない量で、好ましくは対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルが400ピコモル/Lを超えるようになる量よりも少ない量で高血圧対象に投与されるか;
c)対象において0.1ng/mlよりも多い11-DOCの蓄積を生じさせる量よりも少ない量で高血圧対象に投与されるか;
d)対象の副腎皮質ホルモン合成の臨床的に有意義なアップレギュレーションを生じさせない量で高血圧対象に投与されるか;
e)高血圧対象に
i)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルの臨床的に有意義な低下を生じさせないか;
ii)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルの臨床的に有意義な増加を生じさせないか;および/または
iii)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルの臨床的に有意義な増加を生じさせない
量で高血圧対象に投与されるか;および/または
f)高血圧対象に
i)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルにて20%よりも大きな低下を生じさせず、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中コルチゾールレベルにて10%よりも大きな低下を生じさせないか;
ii)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルにて20%よりも大きな増加を生じさせず、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-DOCレベルにて10%よりも大きな増加を生じさせないか;および/または
iii)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルにて20%よりも大きな増加を生じさせず、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清中および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルにて10%よりも大きな増加を生じさせない
量で高血圧対象に投与される、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が、式(A):
【化2】
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩であり、好ましくは該化合物が式(A)の化合物のHBr塩の形態である、請求項20~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
a)5mg~100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
b)10mg~50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
c)5mg~100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか;または
d)10mg~50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与する
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
a)12.5mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
b)25mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
c)12.5mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか;
d)50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか;または
e)100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与する
請求項31に記載の方法。
【請求項34】
高血圧対象の
a)血漿レニン活性が
i)4ng/mL/時間以下であり;
ii)3ng/mL/時間以下であり;
iii)2ng/mL/時間以下であり;
iv)1ng/mL/時間以下であり;および/または
v)0.6ng/mL/時間以下であるか;
および/または
b)血漿中アルドステロン濃度が
i)免疫アッセイで測定すると6ng/dL以上であるか;および/または
ii)LC-MSで測定して1ng/dL以上である
請求項20~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
高血圧対象が二次性高血圧症、好ましくは原発性アルドステロン症を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
高血圧対象が原発性アルドステロン症を有さず、好ましくは高血圧対象が原発性高血圧症を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年8月23日付け出願の米国仮特許出願第63/400,301号、および2022年1月19日付け出願の米国仮特許出願第63/300,967号の優先権を主張するものであり、その各出願の内容は出典明示によって本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本願では、括弧内で言及されるものを含め、様々な刊行物が引用されている。本願にて言及されるすべての刊行物の開示は、本発明が関与する技術、および本発明を利用し得る技術における特徴についてさらなる説明を提供するために、そのすべてが出典明示により本願に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本発明は、アルドステロン合成酵素(CYP11β2ベータ水酸化酵素)を阻害することによる、高血圧症の治療方法に関する。
【背景技術】
【0004】
アルドステロンは、アルドステロン合成酵素(CYP11β2ベータ水酸化酵素)によって副腎皮質の球状帯で産生される、ヒトでの主要な電解質コルチコイドである。アルドステロンは、主に電解質と体液とのホメオスタシスのレギュレータとして作用する、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の重要な構成要素である。
【0005】
スピロノラクトンおよびエプレレノンなどの電解質コルチコイド受容体遮断剤(電解質コルチコイド受容体アンタゴニスト、MRA)は、アルドステロンが電解質コルチコイド受容体と結合することを防止する。数種の臨床研究によって高血圧症の治療にてその有効性が証明された。アルドステロンがRAASで果たす役割を考慮した場合、アルドステロン合成酵素の阻害は、高血圧症を治療するための電解質コルチコイド受容体-遮断剤に取って代わる可能性のあることを示す。しかしながら、従来の研究は、アルドステロンの作用のいくつかが、電解質コルチコイド受容体/古典的なステロイド受容体の複合モジュレーションの刺激とは独立して起こる可能性のあることを示唆する(Grossmann, C. & Gekle, M.、2009;Good, D. W.、2007;Mihailidou, A. S. & Funder, J. W.、2005)。加えて、電解質コルチコイド受容体は、グルココルチコイドのコルチゾールとコルチコステロンに対して同様のアフィニティを有するのに対して、アルドステロンに対しては選択的ではない。
【0006】
さらには、血漿中アルドステロン(PA)レベルは概日リズムをフォローしており、PAは、典型的には、朝にて起床した際にピークに到達し、その後は一日を通して徐々に低下する(Williams, G. H. 1972)。一日を通してPAの異なるレベルが高血圧対象の血圧にどの程度の影響を及ぼすかは不明であり、一日の一部でアルドステロンの合成を阻害することが高血圧対象の血圧を効果的に降下させ得るかどうかも不明である。高血圧症を効果的に治療するために、アルドステロン合成酵素を適切な量で、かつ適切な時に阻害する方法が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、該対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、それにより高血圧対象における高血圧症を治療するのに、24時間のうち40~60%の期間にて、CYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の50%またはそれ以上を阻害するのに十分な量で一日に1回または2回投与することを含む、方法を提供する。
【0008】
本発明は、高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、該対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、8時間よりも短くなく、16時間よりも長くない期間にわたって、該対象の薬物投与前の血清中アルドステロンレベルと比べて該対象の血清中アルドステロンレベルを50~90%まで下げるのに十分な量で一日に1回または2回投与することを含む、方法を提供する。
【0009】
本発明は、高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、該対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、1時間と16時間との間に、好ましくは3時間と8時間との間にCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性を50%またはそれ以上で阻害するのに十分な量で一日に1回投与することを含む、方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、該高血圧対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、該高血圧対象の外来収縮期血圧をCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の高血圧対象の外来収縮期血圧と比べて少なくとも10mmHg降下させるのに十分な量にて、一日に1回または2回で少なくとも8週間にわたって投与することを含む、方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、睡眠中の高血圧対象の収縮期血圧を低下させる方法であって、該対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、睡眠時の高血圧対象の収縮期血圧を低下させるのに十分な量で一日に1回または2回投与することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】SAD研究からのPKPDモデリングに基づき、種々の用量の化合物A・HBrでIC50より上にある推定時間を示す。
【0013】
図2】4週目の収縮期血圧のベースラインからの平均変化量を示す。
【0014】
図3】100mgQDおよび25mgBIDのコホートでの個々の収縮期血圧のベースラインからの変化量を示す。中央値は各コホートの左および右側にある黒色の横棒で示される。
【0015】
図4】4週目の収縮期血圧のベースラインからの変化量を箱ひげ図で示す。
【0016】
図5】プラセボ、25mgBIDおよび100mgQDのコホートでの血清中カリウムの中央値を経時的に比較して示す。
【0017】
図6】プラセボおよび100mgQDのコホートでの血清中K値の利用可能なすべてのデータのグラフを示す。
【0018】
図7】100mgのコホートでの自動診察室測定血圧(AOBP)、血清中K+、および推算糸球体ろ過量(eGFR)の個々の応答を示す。中央値は各コホートの左および右側にある黒色の横棒で示される。
【0019】
図8】投与群による単回投与用量漸増試験の薬物動態プロファイル(平均値±SE)を示す。SE=標準偏差
【0020】
図9】投与群および日数による反復投与用量漸増試験の薬物動態プロファイル(平均値±SE、時間は最終用量に対して相対的である)を示す。SE=標準偏差
【0021】
図10】投与群による単回投与用量漸増試験に関するアルドステロンの時間プロファイルを示す。-1日目は、正常な概日リズムを反映する、投与前日である。1日目は投与当日であり、その日は血漿中アルドステロンの抑制(平均値±SE)を示す。SE=標準偏差
【0022】
図11】投与群による反復投与用量漸増試験に関するアルドステロンの時間プロファイルを示す。-1日目は投薬開始の前日であり、正常な概日リズムを反映する。7日目は投薬の最終日であり、その日は血漿中アルドステロンの抑制(平均値±SE)を示す。SE=標準偏差
【0023】
図12】7日目の投与群による反復投与用量漸増試験での、アルドステロンのベースラインからのパーセント変化、時間プロファイルを示す(平均値±SE)。SE=標準偏差
【0024】
図13】投与群による単回投与用量漸増試験での、アルドステロンのベースラインからのパーセント変化、時間プロファイルを示す。
【0025】
図14】パート1の単回用量漸増試験でのアルドステロンの抑制と回復の個々の薬物動態および時間経過を示す。
【0026】
図15】パート1の単回用量漸増試験での化合物Aのアルドステロンおよびコルチゾールに対する効果;パート1の単回用量漸増試験でのアルドステロンAUC0-24;AUC0-24:0~24時間の曲線下面積;AUC0-72:0~72時間の曲線下面積を示す。
【0027】
図16】パート1の単回用量漸増試験での化合物Aのアルドステロンおよびコルチゾールに対する効果;パート1の単回用量漸増試験でのコルチゾールAUC0-72;AUC0-24:0~24時間の曲線下面積;AUC0-72:0~72時間の曲線下面積を示す。
【0028】
図17】パート2の反復用量漸増試験での化合物Aの血漿レニン活性に対する効果を示す。
【0029】
図18】パート2の反復用量漸増試験での化合物Aの11-DOCに対する効果を示す。
【0030】
図19】化合物Aの腎ナトリウムおよびカリウム処理に対する効果、尿中Naおよびlog10(Na/K)割合を示す。
【0031】
図20】化合物Aの腎ナトリウムおよびカリウム処理に対する効果、血清中Kを示す。
【0032】
図21】化合物A・HBrの研究概要を示す。ABPM=自由行動下血圧測定;BP=血圧;BID=一日2回;EOT=治療終了;FU=追跡;PRA=血漿レニン活性;QD=一日1回;=スクリーニング結果を利用できる場合には、包含/除外の評価を行った。対象がスクリーニング結果に基づいて適格でない場合には、該対象は続けて診察(visit)4に進めなかった。スクリーニング結果が利用できない場合には、対象は診察4に進んだ。スクリーニング結果が診察4で入手できなかった場合には、対象は最終的な適格性を決定するために診察5に進むべきである。スクリーニング結果に基づいて適格であれば、診察5でABPM評価を開始する。=ABPM操作は無作為化(研究日1)の約24時間前にホームで開始された。別法として、ABPM操作を開始するために、サイトは研究日0(診察5)に診察室を訪ねることを選択することが許可された。ABPM操作のためのトレーニングは、診察室を訪ねる際に、または電話を介するかのいずれかで行われた。
【0033】
図22】8週目の収縮期血圧のAOBP変化量を示すウォーターフォール(Waterfall)プロットを表す。図面は、プラセボ、50mg QDおよび100mg QD群の最大の解析対象集団(FAS)および安全性解析集団、および100mg群のプロトコル遵守((Per Protocol)PP)の解析のウォーターフォールプロットを示す。また、各群についてモデル化された平均値およびプロトコル遵守の観察された平均値も示される。
【0034】
図23】8週目の収縮期血圧のAOBP変化量を示すウォーターフォールプロットを表す。図面は、8週目に測定を行ったすべての対象による12.5mg QD、12.5mg BID、および25mg BIDのFAS解析のウォーターフォールプロットを示す。また、各群についてモデル化された平均値およびプロトコル遵守の観察された平均値も示す。
【0035】
図24】収縮期血圧のベースラインからの平均変化量を示す棒グラフを表す。図面は、完全な解析対象集団(FAS、化合物A・HBrを少なくとも1回投与されている評価可能なすべての対象)およびプロトコル遵守(PP、8週目の診察で研究薬の75%を受けている対象のみ)の両方を含む、最終解析を提供する。パート2のデータは最終の診察である5-6週目の中間アベレージを示す。
【0036】
図25】QD投与レジメンで8週目のベースラインからの自動診察室血圧の観測された平均値の変化であって、化合物A・HBrとの用量応答を示すグラフを表す。BIDプロトコル遵守のコホートをグラフの右端に示す。
【0037】
図26】50mg QD、100mg QD、12.5mg BID、および25mg BIDのプールされたコホート、応答が最も低い四分位値のプールされたコホート、応答が最も高い四分位値のプールされたコホート、およびプラセボについて8週目の収縮期血圧のベースラインからの変化量を示すグラフを表す。
【0038】
図27】パート1および2の両方からプールされたプラセボおよび100mg QD群から由来の収縮期血圧の変化を示す、ウォーターフォールプロットを表す。すべての対象が無作為に選択され、平均して最終診察から5-6週目で、最小でも2週目である、中間スナップショットからのパート2のデータを示す。
【0039】
図28】異なる用量コホートにおける推算糸球体ろ過量(eGFR)の変化量を示すグラフを表す。
【0040】
図29】24時間自由行動下血圧測定を一例として示すグラフを表す。該グラフは化合物A・HBrを100mg QDで投与された対象の24時間自由行動下血圧(収縮期血圧)をベースラインに対して示しており、平均した24時間血圧の低下および正常な夜間降下パターンの回復を示す。
【0041】
図30】ABPMの最大の解析対象集団を用いて測定された、8週目の収縮期血圧のベースラインと比較した変化量を示すグラフを表す。
図31】8週目の平均した24時間、および平均した夜間のベースラインと比較したABPM変化量を示すウォーターフォールプロットを表す。100mg QD用量レベルは優れた24時間の血圧低下をもたらす。100mg QD用量レベルでの夜間の血圧低下は25mg BIDよりも優れているようである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
高血圧症の治療方法
本発明は、高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、該対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、それにより高血圧対象における高血圧症を治療するのに24時間のうち40~60%の期間にて、CYP11β2ベータ水酸化酵素の活性を50%またはそれ以上阻害するのに十分な量で一日に1回または2回投与することを含む、方法を提供する。
【0043】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素活性の50%またはそれ以上が24時間うち10~14時間の期間で阻害される。
【0044】
本発明は、高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、該対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、8時間よりも短くなく、16時間よりも長くない期間にわたって、該対象の薬物投与前の血清中アルドステロンレベルと比べて該対象の血清中アルドステロンレベルを50~90%まで下げるのに十分な量で一日に1回または2回投与することを含む、方法を提供する。
【0045】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、8時間よりも短くなく、16時間よりも長くない期間にわたって、対象の血清中アルドステロンの薬物投与前レベルと比べて、その対象の血清中アルドステロンレベルを60~80%まで低下させる。
【0046】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、用量を投与した後の16時間と24時間との期間にわたって血清中アルドステロンを対象の薬物投与前のレベルまたはそれ以上に回復させる。
【0047】
本発明は、高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、該対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、1時間と16時間との間で、好ましくは3時間と8時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性を50%またはそれ以上にて阻害するのに十分な量で一日に付き1回投与することを含む、方法を提供する。
【0048】
本発明は、高血圧の対象における高血圧症の治療方法であって、該対象に
(a)1時間と16時間との間で、好ましくは3時間と8時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の50%またはそれ以上を阻害する;
(b)1時間と13時間との間で、好ましくは2時間と6時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の60%またはそれ以上を阻害する;
(c)1時間と9時間との間で、好ましくは2時間と5時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の70%またはそれ以上を阻害する;
(d)1時間と6時間との間で、好ましくは1時間と3時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の80%またはそれ以上を阻害する;および/または
(e)0時間と3時間との間で、好ましくは0時間と1時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の90%またはそれ以上を阻害する
のに十分な量にてCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回投与し、それによって高血圧対象における高血圧症を治療することを含む、方法を提供する。
【0049】
本発明は、高血圧の対象における高血圧症の治療方法であって、該対象に
(a)1時間と20時間との間で、好ましくは4時間と11時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の50%またはそれ以上を阻害する
(b)1時間と17時間との間で、好ましくは3時間と9時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の60%またはそれ以上を阻害する;
(c)1時間と15時間との間で、好ましくは2.5時間と7時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の70%またはそれ以上を阻害する;
(d)1時間と10時間との間で、好ましくは2時間と5時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の80%またはそれ以上を阻害する;および/または
(e)1時間と5時間との間で、好ましくは0.5時間と2.5時間との間でCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の90%またはそれ以上を阻害する;
のに十分な量にてCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回投与し、それによって高血圧対象における高血圧症を治療することを含む、方法を提供する。
【0050】
本発明の実施態様において、高血圧対象は、利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬またはそれらの2種またはそれ以上の組み合わせより選択される高血圧治療薬を服用しているか、または服用したことがある。
【0051】
本発明の実施態様において、高血圧対象は該高血圧治療薬の少なくとも2種を服用しているか、または服用したことがある。
【0052】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は該対象に一日に1回投与される。
【0053】
本発明の実施態様において、一定量のCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が午前中に投与される。
【0054】
本発明の実施態様において、一定量のCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が午前中に一日に1回投与される。
【0055】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が一日に2回対象に投与される。
【0056】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は:
(a)少なくとも1週間にわたって毎日投与されるか;
(b)少なくとも2週間にわたって毎日投与されるか;
(c)少なくとも4週間にわたって毎日投与されるか;または
(d)少なくとも8週間にわたって毎日投与される。
【0057】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、CYP11β1ベータ水酸化酵素活性の阻害と比べて、CYP11β2ベータ水酸化酵素活性の阻害に対して選択的であり、CYP11β1ベータ水酸化酵素の阻害定数(Ki)をCYP11β2ベータ水酸化酵素のKiで割った値が100よりも大きいことが好ましい。
【0058】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチステロン(11-DOC)レベルが600ピコモル/Lを超える原因となる量よりも少ない量で、好ましくは対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルが400ピコモル/Lを超える原因となる量よりも少ない量で高血圧対象に投与される。
【0059】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、対象において11-DOCを0.1ng/mlを超えて蓄積させる量よりも少ない量にて高血圧対象に投与される。
【0060】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、対象の副腎皮質ホルモン合成の臨床的に有意義なアップレギュレーションを惹起しない量で高血圧対象に投与される。
【0061】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、
(a)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルの臨床的に有意義な低下を惹起せず;
(b)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルの臨床的に有意義な上昇を惹起しない
量で高血圧対象に投与される。
【0062】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルで臨床的に有意義な増加は惹起されない。
【0063】
実施態様にて、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、
(a)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルにて20%より大きな減少を惹起させない、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルにて10%より大きな減少を惹起させない量にて;
(b)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルにて20%より大きな増加を惹起させない、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルにて10%より大きな増加を惹起させない量にて;および/または
(c)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルにて20%より大きな増加を惹起させない、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルにて10%より大きな増加を惹起させない量にて、
高血圧対象に投与される。
【0064】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、米国特許第10,029,993号(その内容が出典明示によって本明細書の一部とされる)にて記載される化合物である。実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、米国特許第10,329,263号(その内容が出典明示によって本明細書の一部とされる)にて記載される化合物である。実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は1,2,4-トリアジン化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0065】
実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、式(A):
【化1】
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0066】
実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は式(A)の化合物の医薬的に許容される塩である。
【0067】
実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は式(A)の化合物の一臭化水素酸塩、すなわち化合物A・HBrである。
【0068】
実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は式(A)の化合物の遊離塩基の形態である。
【0069】
実施態様において:
(a)5mg~100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
(b)10mg~50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
(c)5mg~100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか;または
(d)10mg~50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与する。
【0070】
実施態様において:
(a)12.5mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
(b)25mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
(c)12.5mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか;
(d)50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか; または
(e)100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与する。
【0071】
実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、式(I):
【化2】
[式中:
1)XおよびYは次の(i)ないし(iii)のいずれかを表し:
(i)XはNであり、YはCHまたはC-Rであるか、
(ii)XはCHであり、YはNであるか、または
(iii)XはCHであって、YはCHであり;
2)Rはアルキル基を表し;
3)Rは、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいシクロアルケニル基、置換されてもよいアリール基、あるいは一部にて水素添加されてもよく、かつ置換されてもよい6~10員の単環式または二環式のヘテロアリール基であり;
4)Rは水素原子またはアルキル基を表し;
5)Rは、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよい脂肪族ヘテロ環基、あるいは一部にて水素添加されてもよく、かつ置換されてもよいヘテロアリール基を表し;および
6)Rは水素原子またはアルキル基を表す]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0072】
本発明の実施態様において:
(a)診察室で測定される対象の収縮期血圧は、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前に診察室で測定される対象の収縮期血圧と比べて、低下しており;および/または
(b)対象の24時間自由行動下収縮期血圧は、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期血圧と比べて、低下している。
【0073】
本発明の実施態様において:
(a)診察室で測定される対象の収縮期血圧は、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前に診察室で測定される対象の収縮期血圧と比べて、少なくとも10mmHgは低下しており;および/または
(b)対象の自由行動下収縮期血圧は、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期血圧と比べて、少なくとも10mmHgは低下している。
【0074】
本発明の実施態様において:
(a)診察室で測定される対象の拡張期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前に診察室で測定される対象の拡張期血圧と比べて、低下しており;
(b)診察室で測定される対象の収縮期および拡張期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前に診察室で測定される対象の収縮期および拡張期血圧と比べて、低下しており;
(c)対象の自由行動下収縮期および拡張期血圧が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期および拡張期血圧と比べて、低下しており;および/または
(d)対象の収縮期血圧が130mmHgより下に低下し、および/または対象の拡張期血圧が80mmHgより下に低下している。
【0075】
本発明の実施態様において:
(a)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の、対象の自由行動下収縮期および拡張期血圧と比べて、各々、対象の自由行動下収縮期血圧が少なくとも10mmHg低下し、対象の自由行動下拡張期血圧が少なくとも5mmHg低下しており;
(b)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の、診察室で測定される対象の収縮期および拡張期血圧と比べて、各々、診察室で測定される対象の収縮期血圧が少なくとも10mmHg低下し、診察室で測定される対象の拡張期血圧が少なくとも5mmHg低下しており;および/または
(c)対象の収縮期血圧が130mmHgより下に低下し、および/または対象の拡張期血圧が80mmHgより下に低下している。
【0076】
本発明の実施態様において、高血圧対象の睡眠中の収縮期血圧は低い。
【0077】
本発明の実施態様において、高血圧対象の睡眠中の収縮期平均血圧が、
(a)高血圧対象の日中の収縮期平均血圧と比べて、少なくとも10%、10%~40%、10%~30%、または10%~20%低下し;
(b)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を受ける前の睡眠中のその収縮期平均血圧と比べて、少なくとも8mmHg、少なくとも10mmHg、8~55mmHg、10~45mmHg、または10~25mmHg低下している。
【0078】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素活性を阻害する持続時間は、高血圧対象におけるナトリウムの状態および体液枯渇を維持するのに十分である。
【0079】
本発明の実施態様において、方法は高血圧対象において持続的な高血圧血症または軽度の非アニオン性ギャップ代謝性アシドーシス状態を生じさせない。
【0080】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は高血圧対象にて実質的には蓄積せず、好ましくは、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の高血圧対象における実質的な蓄積の欠如により、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与した24-48時間以内に、より好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与した16-24時間以内に、高血圧対象のアルドステロンレベルが薬物投与前のベースラインに戻ることを可能とする。
【0081】
本発明の実施態様において、高血圧対象のカリウムレベルは、一般に、臨床的に正常な範囲に維持され、好ましくは、その高血圧対象のカリウムレベルが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の高血圧対象のカリウムレベルと比べて、緩やかに上昇していることであり、より好ましくは高血圧対象のカリウムレベルが0.35ミリモル/L以下で上昇していることであり、より好ましくは高血圧対象のカリウムレベルが5.5ミリモル/Lのレベルよりも低く維持されていることであり、より好ましくは高血圧対象のカリウムレベルが3.5mEq/l~5.1mEq/lに維持されることである。
【0082】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、
(a)対象においてアルドステロン産生を抑制する量;
(b)対象において血清および/または血漿中カリウムレベルを上げる量;および/または
(c)対象において血漿レニン活性(PRA)を増大させる量
で高血圧対象に投与される。
【0083】
本発明の実施態様において、
(a)血清および/または血漿中アルドステロンAUC-24が、対象において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象でのアルドステロンレベルと比べて、少なくとも25%低下しており;
(b)対象における血清および/または血漿中カリウムレベルが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象での血清および/または血漿中カリウムレベルと比べて、少なくとも0.2ミリモル/L増加しており;および/または
(c)対象におけるPRAが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の対象におけるPRAと比べて、少なくとも5ng/ml/時間増加している。
【0084】
本発明の実施態様において、高血圧対象のアルドステロンレベルは実質的に正常な概日リズムをフォローする。
【0085】
本発明の実施態様において、高血圧対象は血漿レニン活性が1ng/mL/時間以下である。
【0086】
本発明の実施態様において、高血圧対象は血漿レニン活性が0.6ng/mL/時間以下である。
【0087】
本発明の実施態様において、高血圧対象は血漿レニン活性が4ng/mL/時間以下である。
【0088】
本発明の実施態様において、高血圧対象は血漿レニン活性が3ng/mL/時間以下である。
【0089】
本発明の実施態様において、高血圧対象は血漿レニン活性が2ng/mL/時間以下である。
【0090】
本発明の実施態様において、高血圧対象は、イムノアッセイで測定した場合に、血漿中アルドステロン濃度が6ng/dL以上である。
【0091】
本発明の実施態様において、高血圧対象は、LC-MSで測定した場合に、血漿中アルドステロン濃度が1ng/dL以上である。
【0092】
本発明の好ましい実施態様において、高血圧対象は血漿レニン活性が1ng/mL/時間以下であり、イムノアッセイで測定した場合に、血漿中アルドステロン濃度が6ng/dL以上である。本発明の好ましい実施態様において、高血圧対象は血漿レニン活性が1ng/mL/時間以下であり、血漿中アルドステロン濃度が、LC-MSで測定した場合に、1ng/dL以上である。さらに好ましい実施態様において、この高血圧対象は、利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、あるいはその2種またはそれ以上の組み合わせから選択される高血圧用治療薬を服用しているか、または服用したことがある。
【0093】
本発明はまた、高血圧対象における高血圧症を治療する方法であって、高血圧対象に、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、高血圧対象の自由行動下収縮期血圧をCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の高血圧対象の自由行動下収縮期血圧と比べて、少なくとも10mmHg低下させるのに十分な量で一日に1回または2回投与することを含む、方法を提供する。
【0094】
実施態様において、該方法は、高血圧対象の自由行動下収縮期血圧を、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を少なくとも8週間の期間にわたって投与する前の高血圧対象の自由行動下収縮期血圧と比べて、少なくとも10mmHg低下させる。
【0095】
本発明はまた、高血圧対象の睡眠中の収縮期血圧を低下させる方法であって、該対象にCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を、高血圧対象の睡眠中の収縮期血圧を低下させるのに十分な量で該対象に一日に1回または2回投与することを含む、方法を提供する。
【0096】
本発明の実施態様において、高血圧対象の睡眠中の収縮期平均血圧は、
(a)高血圧対象の日中の収縮期平均血圧と比べて、少なくとも10%、10%~40%、10%~30%、または10%~20%低下し;
(b)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を受ける前の睡眠中のその収縮期平均血圧と比べて、少なくとも8mmHg、少なくとも10mmHg、8~55mmHg、10~45mmHg、または10~25mmHg低下する。
【0097】
本発明の実施態様において、高血圧対象は、利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、あるいはその2種またはそれ以上の組み合わせから選択される高血圧用治療薬を服用しているか、または服用したことがある。本発明の実施態様において、高血圧対象は、少なくとも2つの該高血圧用治療薬を服用しているか、または服用したことがある。
【0098】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素活性の50%またはそれ以上が24時間のうち40~60%の期間にわたって阻害される。
【0099】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素活性の50%またはそれ以上が24時間のうち10~14時間の期間にわたって阻害される。
【0100】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、対象の薬物投与前の血清中アルドステロンのレベルと比べて、対象の血清中アルドステロンのレベルを8時間よりも短くなく、16時間よりも長くない期間にわたって、50~90%低下させる。
【0101】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、対象の血清中アルドステロンレベルを、薬物投与前の対象の血清中アルドステロンレベルと比べて、8時間よりも短くなく、16時間よりも長くない期間にわたって、60~80%低下させる。
【0102】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、用量を投与した16時間と24時間との期間内に、対象の血清中アルドステロンを薬物投与前の対象の血清中アルドステロンレベルまたはそれ以上に戻すことを可能とする。
【0103】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素活性の50%またはそれ以上が、24時間のうち1時間と16時間との間の期間にわたって、または好ましくは3時間と8時間との間の期間にわたって阻害される。
【0104】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は対象に一日に1回投与される。本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は午前中に投与される。本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は対象に一日に1回または2回投与される。
【0105】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、
(a)少なくとも1週間にわたって毎日投与されるか;
(b)少なくとも2週間にわたって毎日投与されるか;
(c)少なくとも4週間にわたって毎日投与されるか;または
(d)少なくとも8週間にわたって毎日投与される。
【0106】
本発明の実施態様において、高血圧対象の自由行動下収縮期血圧は、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を少なくとも8週間の期間にわたって投与する前の高血圧対象の自由行動下収縮期血圧と比べて、10~55mmHg、10~50mmHg、10~45mmHg、10~40mmHg、10~35mmHg、10~30mmHg、10~25mmHg、10~20mmHg、または10~15mmHg低下する。本発明の実施態様において、高血圧対象の自由行動下拡張期血圧は、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を少なくとも8週間の期間にわたって投与する前の高血圧対象の自由行動下拡張期血圧と比べて、5~25mmHg、5~20mmHg、または5~15mmHg低下する。
【0107】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素活性を阻害する持続期間は高血圧対象においてナトリウムの状態および体液枯渇を維持するのに十分である。
【0108】
本発明の実施態様において、該方法は、高血圧対象にて高カリウム血症または軽度の非アニオン性ギャップ代謝性アシドーシスの持続的状態を生じさせない。
【0109】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、実質的には高血圧対象では蓄積せず、好ましいことに、ここでCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の高血圧対象での実質的な蓄積の欠如により、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与した24-48時間以内に、より好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与した16-24時間以内に、高血圧対象のアルドステロンレベルが薬物投与前のベースラインに戻ることが可能となる。
【0110】
本発明の実施態様において、高血圧対象のカリウムレベルは、一般に、臨床的な正常な範囲に維持されており、好ましくは、高血圧対象のカリウムレベルが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の高血圧対象のカリウムレベルと比べて、緩やかに上昇しており、より好ましくは、高血圧対象のカリウムレベルが、0.35ミリモル/L以下で上昇しており、より好ましくは、高血圧対象のカリウムレベルが、5.5ミリモル/Lのレベルより低く維持されており、より好ましくは、高血圧対象のカリウムレベルが、3.5mEq/l~5.1mEq/lに維持される。
【0111】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、
(a)対象でのアルドステロン産生を抑制する量;
(b)対象での血清および/または血漿中カリウムレベルを上昇させる量;および/または
(c)対象での血漿レニン活性(PRA)を増大させる量
で高血圧対象に投与される。
【0112】
本発明の実施態様において:
(a)血清および/または血漿中アルドステロンAUC-24が、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の対象におけるアルドステロンレベルと比べて、該対象にて少なくとも25%減少しており;
(b)対象における血清および/または血漿中カリウムレベルが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の対象における血清および/または血漿中カリウムレベルと比べて、該対象にて少なくとも0.2ミリモル/L増加しており;および/または
(c)対象におけるPRAが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の対象におけるPRAと比べて、少なくとも5ng/mL/時間増加している。
【0113】
本発明の実施態様において、高血圧対象のアルドステロンレベルは、実質的に正常な概日リズムをフォローする。
【0114】
本発明の実施態様において、該CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、CYP11β1ベータ水酸化酵素活性の阻害と比べて、CYP11β2ベータ水酸化酵素活性の阻害について選択的であり、好ましくはCYP11β1ベータ水酸化酵素の阻害定数(Ki)をCYP11β2ベータ水酸化酵素のKiで割った値が100よりも大きいことである。
【0115】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチステロン(11-DOC)レベルが600ピコモル/Lを超える原因となる量よりも少ない量で、好ましくは対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルが400ピコモル/Lを超える原因となる量よりも少ない量で高血圧対象に投与される。
【0116】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、対象において0.1ng/mlより上の11-DOCの蓄積の原因となる量よりも少ない量で高血圧対象に投与される。
【0117】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、対象の副腎皮質ホルモン合成の臨床的に有意義なアップレギュレーションを生じさせない量で高血圧対象に投与される。
【0118】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、
(a)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルの臨床的に有意義な低下を生じさせない量で;
(b)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルの臨床的に有意義な増加を生じさせない量で;および/または
(c)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与前の対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、臨床的に有意義な増加を生じさせない量にて
高血圧対象に投与される。
【0119】
本発明の実施態様において、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、
(a)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルにて20%より大きな減少を生じさせない、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中コルチゾールレベルにて10%より大きな減少を生じさせない量にて;
(b)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルにて20%より大きな増加を生じさせない、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-DOCレベルにて10%より大きな増加を生じさせない量にて;および/または
(c)CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルにて20%より大きな増加を生じさせない、好ましくはCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルと比べて、対象の血清および/または血漿中11-デオキシコルチゾールレベルにて10%より大きな増加を生じさせない量にて、
高血圧対象に投与される。
【0120】
実施態様において、該CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、式(A):
【化3】
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0121】
実施態様において、該化合物は式(A)の化合物の医薬的に許容される塩の形態である。
【0122】
実施態様において:
(a)5mg~100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
(b)10mg~50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
(c)5mg~100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか;または
(d)10mg~50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与する。
【0123】
実施態様において:
(a)12.5mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
(b)25mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を12時間空けて一日に2回経口投与するか;
(c)12.5mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか;
(d)50mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与するか; または
(e)100mgのCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を一日に1回経口投与する。
【0124】
本発明の実施態様において、高血圧対象の血漿レニン活性は1ng/mL/時間以下である。
【0125】
本発明の実施態様において、高血圧対象の血漿レニン活性は0.6ng/mL/時間以下である。
【0126】
本発明の実施態様において、高血圧対象の血漿レニン活性は4ng/mL/時間以下である。
【0127】
本発明の実施態様において、高血圧対象の血漿レニン活性は3ng/mL/時間以下である。
【0128】
本発明の実施態様において、高血圧対象の血漿レニン活性は2ng/mL/時間以下である。
【0129】
本発明の実施態様において、高血圧対象は、イムノアッセイで測定した場合に、血漿中アルドステロン濃度が6ng/dL以上である。
【0130】
本発明の実施態様において、高血圧対象は、LC-MSで測定した場合に、血漿中アルドステロン濃度が1ng/dL以上である。
【0131】
本発明の実施態様において、高血圧対象は二次性高血圧症を、好ましくは原発性アルドステロン症を有する。本発明の別の実施態様において、高血圧対象は原発性アルドステロン症ではなく、好ましくは該高血圧対象は原発性高血圧症を有する。
【0132】
本発明の好ましい実施態様において、高血圧対象は血漿レニン活性が1ng/mL/時間以下であり、イムノアッセイで測定した場合に、血漿中アルドステロン濃度が6ng/dL以上である。本発明の好ましい実施態様において、高血圧対象は血漿レニン活性が1ng/mL/時間以下であり、血漿中アルドステロン濃度が、LC-MSで測定した場合に、1ng/dL以上である。さらに好ましい実施態様において、この高血圧対象は、利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、あるいはその2種またはそれ以上の組み合わせから選択される高血圧用治療薬を服用しているか、または服用したことがある。
【0133】
あるいはまた、高血圧対象が、利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬から選択される高血圧用治療薬を服用していない実施態様において、一の実施態様では、高血圧対象は血漿レニン活性が0.6ng/mL/時間以下であり、血漿中アルドステロン濃度がイムノアッセイで測定した場合に6ng/dL以上であるか、またはLC-MSで測定した場合に1ng/dL以上である。
【0134】
組成物
本発明はまた、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つ方法で使用するための医薬組成物を提供する。
【0135】
定義
特記されない限り、本明細書にて使用されるすべての技術的および/または科学的用語は、本発明の属する分野の当業者によって共通して理解されるのと同じ意義を有する。本明細書に記載の方法および材料と同様または均等の方法および材料も本発明の実施態様を実施または試験するのに用いることができるが、例示的な方法および/または材料を下記にて説明する。矛盾が生じた場合には、定義を含む、本願の特許明細書が優先されるであろう。加えて、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、必ずしも限定するものではない。
【0136】
特記されない限り、説明において、本発明の実施態様の特徴の条件または関係特性を修飾する「実質的に」および「約」などの形容詞は、その条件または特性が、その意図される用途に対して実施態様の操作に許容され得る範囲内に定義されることを意味すると理解される。実施態様において、「約」とは、当該分野にて一般的に許容される測定手段を用いて標準偏差の範囲内にあることを意味する。実施態様において、「約」は特定の値の±10%に及ぶ範囲を意味する。実施態様において、「約」は特定の値を包含する。特記されない限り、明細書および特許請求の範囲に記載の「または」なる語は、排他的な「または」よりもむしろ包括的な「または」であると考えられ、その結合する項目のうちの少なくとも1つ、およびそれらの任意の組み合わせを示す。
【0137】
上記にて、および本明細書のいずれの箇所でも使用される「a」および「an」なる語は、「1または複数」の列挙されたコンポーネントをいう。単数形の使用は、特記されない限り、複数形を包含することは当業者に明らかであろう。従って、「a」、「an」および「少なくとも1つ」なる語は、本願において互換的に使用される。
【0138】
本発明の教示をより良く理解し、その教示の範囲を何ら限定するものではないとの目的を達成するため、特記されない限り、本明細書および特許請求の範囲にて使用される量、百分率または割合を表す、すべての数、および他の数値は、あらゆる場合において、「約」なる語によって修飾されると理解すべきである。従って、反対の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、取得したいとする所望の特性に応じて変化し得る概数である。少なくとも、各数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮し、通常の丸め技法を適用することで解釈されるべきである。
【0139】
本願の明細書および特許請求の範囲において、「含む」、「包含する」および「有する」なる動詞ならびにその活用語は、動詞の目的語が、必ずしも、動詞の主語のコンパートメント、要素または部分の完全なリスティングであるとは限らないことを示すのに使用される。本明細書で使用される他の用語は、当該分野におけるその周知の意味によって定められるものとする。
【0140】
「高血圧」は、高い血圧とも称され、血圧が正常値よりも高い。2017年に、米国心臓病学会と米国心臓協会は高血圧症を管理するための指針を公表し、高血圧症を収縮期血圧が130mmHg、拡張期血圧が80mmHg以上の血圧であると定義した。段階1の高血圧症は、収縮期血圧が130~139mmHg、拡張期血圧が80~89mmHgの血圧として定義され、その一方で段階2の高血圧症は、収縮期血圧が140mmHgより高い、拡張期血圧が90mmHgより高い血圧として定義される。本明細書にて使用される場合、「高血圧症」は、反対の指示がない限り、段階1と2の両方の高血圧症を包含する。1の実施態様において、高血圧対象は段階1の高血圧症である。もう一つ別の実施態様において、高血圧対象は段階2の高血圧症である。高血圧症には、多因子性であり、1つの明確な原因を有しない高血圧(原発性高血圧症)、および直接的原因を有する高血圧(二次性高血圧症)が含まれる。本明細書にて使用される場合、「高血圧症」は、反対の指示がない限り、原発性および二次性の両方の高血圧症を包含する。実施態様において、高血圧対象は原発性高血圧症を有する。他の実施態様において、高血圧対象は二次性高血圧症を有する。原発性アルドステロン症(高アルドステロン症)は、二次性高血圧症の最も一般的な形態であり、副腎がアルドステロンを多く産生し過ぎる場合に起こる症状である。高血圧対象が二次性高血圧症を有する場合の実施態様において、該対象は原発性アルドステロン症を有する。
【0141】
「CYP11β2」、「Cyp11B2」、または「CYP11β2ベータ水酸化酵素」は、ヒトにてCYP11B2遺伝子によってコードされる、チトクロームP450酵素であり、11-デオキシコルチコステロン(すなわち、アルドステロン前駆体)からアルドステロンに至る一連の反応を触媒する。かくして、これは当該分野にて「アルドステロン合成酵素」と称されている。Cyp11B2は、主に、副腎皮質球状層において発現しており、血漿中アルドステロンのレベルは副腎に存在するCyp11B2の酵素活性によって調節される。アルドステロンは、心血管、腎臓、脂肪、および脳などの他の組織にて発現する。
【0142】
「CYP11β1」、「Cyp11B1」、または「CYP11β1ベータ水酸化酵素」は、ヒトにてCYP11B1遺伝子によってコードされる、チトクロームP450酵素であり、副腎皮質ステロイドの生合成に関与する。当該分野にて「ステロイド11β-水酸化酵素」と称される。
【0143】
「阻害剤」とは、化合物の非存在下で、または不活性であることが知られている化合物などの対照と比較した場合に、活性を減少させる化合物(例えば、本明細書に記載の化合物)をいう。阻害剤は、低分子阻害剤、抗体阻害剤、タンパク質阻害剤、生体分子阻害剤、天然リガンド等であり得る。「阻害剤」は、例えば、本明細書に記載の化合物の医薬的に許容される塩の形態であってもよい。
【0144】
本明細書にて使用される「化合物A」は、式(A):
【化4】
で示される二置換の1,2,4-トリアジン化合物、すなわち、3-[4-[[トランス-4-(アセトアミノ)シクロヘキシル]カルバモイルメチル]ピペラジン-1-イル]-5-(p-トリル)-1,2,4-トリアジンをいう。
【0145】
「化合物A・HBr」は化合物Aの臭化水素酸(HBr)塩をいう。「化合物A・HBr」および本発明の「化合物」の重量および/または強度は、HBr塩の遊離塩基(すなわち、化合物A)の重量をいい、HBr塩の重量ではない。
【0146】
化合物Aおよびその医薬的に許容される塩は、例えば、米国特許第10,029,993号および欧州公開第3549935号(これらの開示はその全体が出典明示によって本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって製造され得る。
【0147】
本明細書にて使用されるように(かつ当該分野にて十分に理解されるように)「治療する」または「治療」はまた、臨床結果を含め、対象の状態において有益な結果または所望の結果を得るためのいずれの解決方法をも広く包含する。有益なまたは所望の臨床結果には、部分的であるか、全体的であるかどうか、検出可能であるか、検出可能でないかどうかのいずれかで、限定されないが、1または複数の徴候または症状の緩和または改善、疾患の範囲の縮小、病態の安定化(すなわち、悪化ではない)、疾患の伝染または拡張の防止、疾患の進行の遅延または減速、病態の改善または緩和、疾患の再発の減少、および寛解が含まれ得る。言い換えれば、本明細書にて使用される「治療」には、疾患のいずれの治癒、改善または防止が含まれる。治療では、疾患の発生を防止し;疾患の拡張を阻害し;疾患の徴候を緩和し;疾患の根本原因を完全または部分的に取り除き;疾患の期間を短縮し;またはこれらの事項の組み合わせを行ってもよい。
【0148】
本明細書にて使用されるように「治療する」および「治療」には、予防的治療が含まれる。治療方法は治療的に効果的な量の活性剤を対象に投与することを含む。投与工程は単回投与であってもよく、または一連の投与を包含してもよい。治療期間の長さは、症状の重篤度、患者の年齢、活性剤の濃度、治療にて使用される組成物の活性、またはその組み合わせなどの種々の因子に依存する。治療または予防に使用される剤の効果的な投与量は、特定の治療または予防レジメンの過程で増減し得ることも理解されよう。投与量の変化は、当該分野にて公知の標準的な診断アッセイによって、もたらされてもよく、明らかとなってもよい。実施態様において、慢性投与が必要な可能性がある。例えば、組成物は対象に該患者を治療するのに十分な量かつ十分な期間で投与される。実施態様において、治療することまたは治療は、予防的治療ではない。
【0149】
「利尿剤」とは、尿の生成を増大させ、それによって体内から排泄される水および塩の量を増大させる高血圧治療薬をいう。利尿剤は、炭酸脱水酵素阻害剤、ループ利尿剤、カリウム保持性利尿剤、チアジド利尿剤、または当該分野にて公知のいずれか他の利尿剤であり得る。例示的な炭酸脱水酵素阻害剤には、アセタゾールアミド、ブリンゾールアミド、ドルゾラミド、ジクロルフェナミド、エトキシゾラミド(ethoxaolamide)、ゾニサミド(zoniamide)、インジスラム、およびメタゾラミドが含まれる。例示的なループ利尿剤には、ブマテニド、エタクリン酸、トルセミド、およびフロセミドが含まれる。例示的なカリウム保持性利尿剤には、エペレレノン、トリアムテレン、スピロノラクトン、およびアミロライドが含まれる。例示的なチアジド利尿剤には、インダパミド、ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、メトラゾン、メチクロチアジド、クロロチアジド、メチルクロチアジド、メトラゾン、ベンドロフルメチアジド、ポリチアジド、およびヒドロフルメチアジドが含まれる。他の利尿剤としてパマブロムおよびマンニトールが挙げられる。
【0150】
「アンジオテンシン変換酵素阻害剤」または「ACE阻害剤」とは、アンジオテンシンIがアンジオテンシンIIに変換されるのを遮断し、それによって血管を拡張して血圧を下げる、高血圧治療薬をいう。例示的なACE阻害剤には、ベナゼプリル、ゾフェノプリル、ペリンドプリル、トランドラプリル、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、およびラミプリルが挙げられる。
【0151】
「アンジオテンシン受容体遮断剤」または「アンジオテンシンII阻害剤」とは、受容体がアンジオテンシンIIと結合するのを遮断し、それによって血管を拡張し、血圧を下げる、高血圧治療薬をいう。例示的なアンジオテンシン受容体遮断剤には、エプロサルタン、オルメサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、およびアジルサルタンメドキソミルが挙げられる。
【0152】
「カルシウムチャネル遮断剤」とは、カルシウムチャネルを介してカルシウムが心臓および動脈の細胞に入るのを遮断し、それによって血圧を下げることのできる、高血圧治療薬をいう。カルシウムチャネル遮断剤は、ジヒドロピリジン系カルシウムチャネル遮断薬、フェニルアルキルアミン系カルシウムチャネル遮断薬、ベンゾチアゼピン系カルシウムチャネル遮断薬、非選択性カルシウムチャネル遮断薬、または当該分野にて公知の他の任意のカルシウムチャネル遮断薬であり得る。ジヒドロピリジン系カルシウムチャネル遮断薬には、アモルジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジン、クレビジピン、エホニジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、およびプラニジピンが含まれる。フェニルアルキルアミン系カルシウムチャネル遮断薬には、フェンジリン、ガリパミル、およびバラパミルが含まれる。ベンゾチアゼピン系はジルチアゼムを包含する。非選択性カルシウムチャネル遮断薬は、ミベフラジル、ベプリジル、フルナリジン、フルスピリレン、およびフェンジリンを包含する。他のカルシウムチャネル遮断薬は、ガバペンチン、プレガバリン、およびジコノチドを包含する。
【0153】
アルドステロンレベルの「正常な概日リズム」は日周パターンをフォローし、底は深夜にあり、ピークは早朝の覚醒前にある。1の実施態様において、高血圧対象のアルドステロンレベルは実質的に正常な概日リズムをフォローする。かかる実施態様の一例において、本発明のCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤は、起床後の午前中にて一日に1回投与されると、起床時間中のアルドステロンの異常に高い産生を抑制する。夕方には、アルドステロン産生の抑制が弱まり始め、血清中アルドステロンの正常な増加は、通常の状況下と同様に、夜明けまでに正常に戻る。健常な対象と原発性アルドステロン症の対象とのアルドステロンの概日リズムが、Kem, David C.ら、「Circadian rhythm of plasma aldosterone concentration in patients with primary aldosteronism」 The Journal of clinical investigation 52. 9 (1973) : 2272-2277(その内容は、具体的には、出典明示によって本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0154】
本発明は、高血圧対象の「睡眠中の」収縮期血圧を下げる方法を提供する。この文脈において、「睡眠中」は、高血圧対象の正常な睡眠/覚醒のサイクルでの睡眠期間をいう。言い換えれば、「睡眠中」とは、高血圧対象の一日の約15ないし17時間の覚醒と覚醒の間に発生する、対象の約7ないし9時間(典型的には夜間)の睡眠をいい、対象の正常な睡眠/覚醒のサイクルの睡眠相の範囲外で発生し得る短時間のいずれの睡眠(すなわち、昼寝)も言わない。高血圧でない個体の血圧は、典型的には、睡眠中に下がり、覚醒中と比べて、睡眠中の血圧値は約10%~15%低い。対照的に、高血圧対象は睡眠中に血圧のより小さな降下を経験するか、または血圧が全く降下しないことを経験するかもしれない。かくして、本発明の方法は、高血圧対象にとって、正常な非高血圧対象が睡眠中に経験する、血圧の降下を回復させる助けとなる。
【0155】
対象の血清中アルドステロンの「薬物投与前のレベル」とは、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を用いて治療されていない場合の、1日の同じ時間での、対象の血清中アルドステロンレベルをいう。上記されるように、アルドステロンレベルは、底が深夜にあり、ピークが早朝の覚醒前にある、日周パターンをフォローする。従って、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤の投与が、その「薬物投与前のレベル」に対して相対的な割合で、対象の血清中アルドステロンのレベルを低下させるところの実施態様において、血清中アルドステロンの減少は、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与していない場合の、1日の同じ時間での、同じ対象の血清中アルドステロンのレベルと比べて測定される。例えば、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与した時の午前11時の対象の血清中アルドステロンのレベルが、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤を投与する前の午前11時の同じ対象の血清中アルドステロンのレベルに対して相対的に測定される。
【0156】
概要
上記した実施態様では、本明細書に開示される各実施態様は、他に開示される実施態様の各々に適用可能であることが企図される。
【0157】
本明細書にて使用される場合、見出しはすべて単に整理のためであり、いかなる方法でもその開示を限定しようとするものではない。個々のセクションの内容はすべてのセクションに等しく適用され得る。本明細書に開示の種々のセクションの組み合わせはすべて本発明の範囲内にある。
【0158】
本発明のさらなる目的、利点、および新規な特徴は、限定することを意図としない、以下のの実施例を検討することで当該分野の当業者に明らかとなるであろう。加えて、本明細書において上記で画定され、以下の特許請求の範囲のセクションにて請求される本発明の種々の実施態様および態様には、各々、以下の実施例において実験的な支持が見出される。
【0159】
明確とするために別個の実施態様の文脈で記載される、本発明の特定の特徴はまた、単一の実施態様において組み合わせて提供され得ることが理解される。反対に、簡潔にするために単一の実施態様の文脈にて記載される、本発明の種々の特徴はまた、別個に、またはいずれか適切なサブコンビネーションにて、あるいは本発明の任意の他に記載の実施態様において適切であるとして提供されてもよい。種々の実施態様の文脈において記載される特定の特徴は、実施態様がそれらの因子なしでは動作しない場合を除き、それらの実施態様の本質的な特徴であるとはみなされない。
【0160】
本発明のより完全な理解を促進するために実施例を下記に示す。以下の実施例は本発明を製造し、実施するための例示としてのモードを示す。しかしながら、本発明の範囲は、説明することだけを目的とする、これらの実施例に開示される特定の実施態様に限定されるものではない。
【0161】
実施例
実施例1
116人の患者を無作為に分類し、87人に化合物A・HBrを投与する、無作為化した二重盲検のプラセボを対照とする研究を行った。
【0162】
単回投与用量漸増(SAD)研究を、以下の試験される投与量:
(a)5mg
(b)10mg
(c)20mg
(d)50mg
(e)100mg
(f)200mg
(g)400mg
(h)800mg
を用いて行った。
【0163】
化合物A・HBrによるCYP11β2ベータ水酸化酵素を阻害するIC50および各投与量でIC50より上にある時間を、SAD研究から由来のデータをPKPDモデリングに付すことで推定した。フェーズ2の概念実証研究にて提案される用量についてIC50よりも上にある時間の推定値および24時間のうちIC50よりも上にある期間の割合を外挿し、下記の表および図1に示す。
【表1】
【0164】
IC50よりも上にある時間は、SAD研究にてアルドステロン抑制の持続時間と密接に相関付けられた。
【0165】
反復投与用量漸増(MAD)研究では、40mg、120mg、および360mgのQD投与で薬物の蓄積はほとんど観察されなかった。
【0166】
実施例2
研究デザイン
化合物A・HBrの安全性および有効性に関する二重盲検の無作為化されたプラセボを対照とする試験を高血圧症の対象に対して行った。
【0167】
高血圧対象を次の6つの実験群:
(a)プラセボ群:研究薬物の大きさ、色相、および形状に合わせたプラセボ錠を毎日午前中に1回経口投与する群;
(b)12.5mg BID:12.5mgの化合物A・HBrを含有する1個の錠剤を毎日12時間空けて朝夕に各1回経口投与する群;
(c)25mg BID:25mgの化合物A・HBrを含有する1個の錠剤を毎日12時間空けて朝夕に各1回経口投与する群;
(d)12.5mg QD:12.5mgの化合物A・HBrを含有する1個の錠剤を毎日午前中に1回経口投与する群;
(e)50mg QD:25mgの化合物A・HBrを含有する2個の錠剤を毎日午前中に1回経口投与する群;および
(f)100mg QD:100mgの化合物A・HBrを含有する1個の錠剤を毎日午前中に1回経口投与する群
の1つに無作為に割り当てた。
【0168】
包含基準
研究の対象は、次の包含基準:
(a)18歳以上の男性、および妊娠しておらず、授乳していない女性の対象であること;
(b)書面によるインフォームド・コンセントの医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act)の承認、およびこの研究に必要な地域の患者のプライバシーに関する文書が得られていること;
(c)自動診察室血圧(AOBP)でSBP130mmHgであること;
(d)2種類以上の薬物による降圧治療の病歴のあること;
(e)PRA1.0ng/mLであること;
(f)血清中アルドステロン1ng/dLであること;および
(g)朝の血清中コルチゾールが正常範囲にあること;ベースラインの血清中コルチゾールが<18mcg/dLである場合、その時にはベースラインの時点でベースラインコルトロシン(Cortrosyn)刺激試験を実施する
を満たした。
【0169】
除外基準
包含基準を満たした対象も、以下の除外基準:
(a)上皮性ナトリウムチャネル阻害剤または電解質コルチコイド受容体アンタゴニストを併用していること;
(b)低カリウム血症の対象であること;
(c)高カリウム血症の対象であること;
(d)血清中コルチゾールが<3mcg/dLの対象であること;
(e)血清中ナトリウムが<135mEq/Lの対象であること;
(f)推算糸球体ろ過量が<60mL/分/1.73mの対象であること;
(g)1型または制御されていない(ヘモグロビンA1cが9%である)2型糖尿病の対象であること;
(h)ボディマス指数が>40kg/mの対象であること;
(i)不安定狭心症の対象であること;
(j)SBPが175mmHgまたはDBPが100mmHgの対象であること;
(k)座位から立位となることでSBPで20mmHgまたはDBPで10mmHgの減少のある対象であること;
(l)治験責任医師の見解において、抗高血圧治療に対する不遵守が疑われる対象であること;
(m)治験責任医師の見解において、重大な何らかの内科的疾患または徴候のある対象であること;
(n)治験責任医師の見解において、急性または慢性の何らかの内科的または精神科的症状のある対象であること;
(o)以下のいずれかの薬剤:
(i)局所コルチコイド;
(ii)交感神経刺激性鬱血除去剤;
(iii)テオフィリン;
(iv)ホスホジエステラーゼ5型阻害剤;
(v)NSAID;
(vi)筋肉内ステロイド;
(vii)エストロゲン;
(viii)サイトクロム;
(ix)強力CYP3AおよびCYP3A4誘導剤;
による治療を受けている対象であること;
(p)化合物A・HBrまたはいずれかの賦形剤に対して既知の過敏症のある対象であること;および
(q)夜勤ワーカーである対象であること
に基づき除外された。
【0170】
結果
4週目の収縮期血圧のベースラインからの変化
治療した4週目に、化合物A・HBrを一日に1回投与することによって、50mgQDで活性が認められ、100mgQDでその活性がさらに増加する、投与量-応答が実証された。プラセボは小さな有意ではない減少を示した。25mgBIDの一日に2回投与することで100mgQDと同様に効果的であった。図2を参照のこと。
【0171】
4週目の収縮期血圧のベースラインからのコホート内での変化に関する集計表を下記に示す:
【表2】
【0172】
100mgのQDおよび25mgのBIDコホートにおけるベースラインからの個々の収縮期血圧の変化を図3に示す。これらのコホートは応答率が高く、有益性の大きさが一貫していた。
【0173】
図4は4週目のベースラインからの収縮期血圧の変化の箱ひげ図を提供する。100mgのQDおよび25mgのBIDの両方の用量レベルは、プラセボ群にて認められる収縮期血圧の低下よりも有意に大きな低下をもたらした。正式なコホート間の比較は、混合効果モデル(mixed-effects model)を用いて研究の終わりに行われるであろう。下記の表に結果を要約する:
【表3】
【0174】
血清中Kに対する効果
100mg QDコホートにおいて、血清中カリウム(K)の中央値にて0.2ミリモル/Lの中央値の増加が観察された。図5を参照のこと。100mg QDコホートでは、Kの上昇と関連付けられる用量保留または用量減少のあった対象はいなかった。試験を通して、血清中K値が上昇した大部分は単発的な事象であった。プラセボおよび100mg QDコホートにおける血清中K値に関して利用可能なすべてのデータを示すグラフを図6にて提供する。
【0175】
100mgコホートにおける個々の応答
図7は、100mgコホートにおける自動診察室測定血圧(AOBP)、血清中K、および推算糸球体ろ過量(eGFR)でのすべての個々の応答を示す。
【0176】
BPの低下は、血清中Kにおける標的とする緩やかな上昇、およびeGFRの減少と関連付けられた。血清中KとeGFRの両方の変化はモニター観察でき、化合物A・HBrが保持されるか、用量が調節されるか、中止された場合には、可逆的であった。
【0177】
考察
実施例2に記載される二重盲検の無作為化されたプラセボを対照とする試験では、化合物A・HBrを100mg用量で一日に1回投与すること、25mg用量で一日に2回投与することが、試験したあらゆる投与レジメンの中で収縮期血圧に対して最も大きな効果を有することを実証する。図2を参照のこと。実施例1にて要約されるSAD研究からのデータをPKPDモデリングに付すことに基づいて、これらの投与レジメンは、平均して、24時間の期間に付き約12.5ないし13.5時間のIC50(CYP11β2ベータ水酸化酵素の阻害)より上にある時間を提供することが決定された。
【0178】
特定の理論に限定されるとするものではないが、本発明者らは、24時間のうち40~60%の期間で、すなわち、1日に付き約10~14時間にわたって、50%またはそれ以上のCYP11β2ベータ水酸化酵素活性を阻害する方法は、高血圧対象における高血圧症を安全に、かつ効果的に治療するのに使用され得ると仮定する。実施例2に記載された結果は、この量のCYP11β2ベータ水酸化酵素活性の阻害が、血清中カリウムの有害な増加、または治療の中止を必要とする他の有害な反応を引き起こすることなく、高血圧対象にて収縮期血圧を降下させ得ることを実証する。
【0179】
さらには、100mg QD投与レジメンが高血圧対象の血圧を降下させるのに有効であることは有益である。実施例2の100mg QDコホートでは、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤が午前中に一日に1回にて投与された。IC50より上にある時間は平均して約13.5時間であり(実施例1を参照のこと)、100mg QDの投与レジメンの結果は、1日の約半分にわたるCYP11β2ベータ水酸化酵素の阻害が高血圧対象の血圧を降下させるのに効果的であることを実証する。加えて、25mg BIDの投与レジメンの結果から、約12時間にわたってアルドステロンを産生するためにIC50を超えてCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤に暴露するのが、血圧の降下が一日に1回または一日に2回の投与によって達成されるかどうかに関係なく、それを達成するのに効果的であることが確認された。
【0180】
かくして、本明細書に記載の研究は、CYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤をCYP11β2ベータ水酸化酵素の活性の50%またはそれ以上を24時間のうち40~60%の期間にわたって阻害する量で一日に1回または2回投与することにより、血圧が高血圧対象において効果的に降下され得ることを実証する。
【0181】
実施例3
方法
インビトロ研究
hCYP11B2およびhCYP11B1阻害のアッセイ
化合物AのヒトCYP11B1(hCYP11B1)およびヒトCYP11B2(hCYP11B2)酵素活性に対する阻害効果を、hCYP11B1については11-デオキシコルチゾールからコルチゾールへの、hCYP11B2については11-DOCからアルドステロンへの酵素変換率を測定することによって評価した。hCYP11B1およびhCYP11B2の両方の強力な阻害剤である、オシロドロスタット(Osilodrostat)を陽性対照として用いた。hCYP11B2に対する化合物A(遊離塩基)およびオシロドロスタットの阻害定数は、hCYP11B2を酵素供給源として安定して発現するV79細胞のミトコンドリア画分を用いて、基質11-DOCからのアルドステロン生成速度(pg/μgタンパク質/時間)に基づいて算出した。同様に、化合物AおよびオシロドロスタットのhCYP11B1に対する阻害定数は、hCYP11B1を酵素供給源として安定して発現するV79細胞のミトコンドリア画分を用いて、基質11-デオキシコルチゾールからのコルチゾール生成速度(ピコモル/mgタンパク質/時間)に基づいて算出した。
【0182】
パン(pan)-受容体スクリーニング
化合物Aを、10マイクロモル/Lの濃度で、受容体結合研究および酵素阻害研究において46個の標的に対してスクリーニングし、化合物Aがいずれの標的外の酵素または受容体と相互作用するかどうかを測定した。
【0183】
hERG電流に対する効果
化合物Aのヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(human ether-a-go-go-related gene、hERG)電流に対する効果を、hERGチャネルを安定して発現するヒト胚性腎臓(HEK293)細胞にて、全細胞パッチクランプ法を用いて評価した。細胞を化合物Aと1、3、10、および30マイクロモル/Lの濃度で、陽性対照(E-4031)と0.1マイクロモル/Lの濃度で、またはビヒクル(0.3v/v%ジメチルスルホキシド)と10分間にわたって処理した。
【0184】
副腎ステロイド生成に対する阻害効果
複数の濃度の化合物Aおよびアミノグルテチミド(陽性対照)をヒト副腎皮質NCI-H295R細胞培養にて評価した。化合物Aの副腎ステロイド生成に対する効果は、3日間にわたってインキュベートした後に培地中に12種のステロイドホルモンを測定することで決定された。次のステロイド:プレグネノロン、11-デオキシコルチゾール、17α-ヒドロキシプレグネノロン、11-DOC、デヒドロエピアンドロステロン、コルチコステロン、プロゲルテロン、コルチゾール、17α-ヒドロキシプロゲステロン、アンドロステロン、アンドロステンジオン、およびテストステロンを測定した。
【0185】
インビボ動物研究
すべての研究(ACTH処理のカニクイザル実験、およびハロタン麻酔イヌにおける心血管系の研究を除く)は、the Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)Internationalによって認定された委託研究機関で行われた。最も完全で正確な研究は、AAALACによって認定された委託研究試験所で優良試験所基準(Good Laboratory Practices、GLP)の規制に従って行われた。
【0186】
ハロタン麻酔に付したイヌでの心血管系
化合物Aの心血管系に対する作用をハロタン麻酔に付したイヌを用いて評価した。0、0.3、1、および3mg/kgの用量の化合物Aを、遊離塩基として、注入を開始する間に30分間の間隔を置いて累積的に10分間に0.1mL/kg/分の速度で同じ3匹の雄イヌに昇順にて静脈内に注入した。心拍数、収縮期、拡張期、および平均血圧、心拍出量、全末梢血管抵抗、左心室拡張末期圧、左心室圧の最大立ち上がり速度、ならびに心電図パラメータ(PR間隔、QRS時間、QT間隔、およびQTcV)を評価した。
【0187】
テレメーター装着のサルでの心血管系
化合物Aの心血管系に対する作用をテレメーター装着の意識のあるサルを用いて評価した。0、10、30、または100mg/kgの単回用量の化合物Aを、遊離塩基として、ラテン方格(Latin-square)デザインにて、投与の間に7日間の間隔を設けて4匹の雄ザルに経口投与した。血圧、心拍数、および心電図パラメータ(PR間隔、QRS時間、QT間隔、およびQTcB)を各投与から24時間後まで評価した。
【0188】
ナトリウム欠乏カニクイザル実験
二次性高アルドステロン症のナトリウム欠乏カニクイザルで実験を行い、化合物Aの血漿中アルドステロン濃度(PAC)に対する効果を評価した。この実験では、低ナトリウムの食餌と、5mg/kgのフルセミドの3用量とを用いた。各2匹の動物を、ビヒクル群と、5つの化合物A(遊離塩基)の群(0.3、1、3、10、および30mg/kg)とからなる6群に割り当てた。すべての動物が各群に割り当てられるように、6回のクロスオーバーを行った。高アルドステロン症は3週間に1回誘発された。PACをラジオイムノアッセイによって決定し、化合物Aを投与した後の24時間にわたって測定した。
【0189】
ACTH処理のカニクイザル実験
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)処理のカニクイザル実験を行い、化合物Aの血漿中コルチゾール濃度(PCC)に対する効果を評価した。PACを低下させるのに必要とされる量(経口、0.3mg/kg)よりも100倍多い用量の化合物Aを遊離塩基として投与し、その直後にACTH(皮下、50μg/kg)を投与した。PACもその動物にて評価した。PACおよびPCCをラジオイムノアッセイによって決定し、化合物Aを投与した後の24時間にわたって測定した。
【0190】
毒性研究
化合物Aの毒性プロファイルは、スプレーグドーリーラットおよびカニクイザルでの13週間に及ぶ反復経口投与研究、標準的な集団の遺伝毒性研究、ラットおよびウサギでの予備的胚-胎児発生研究、ならびにインビトロおよびインビボでの光毒性研究を含む、数種の毒性研究にて評価された。ラットおよびサルは、これらの動物がヒトの代謝と同様の代謝を有するであろうことを示す薬理学的データおよび代謝データに基づき、一般的毒性研究に選択された。研究はGLPレギュレーションに従って行われた。
【0191】
13週間の毒性研究での用量は、スプレーグドーリーラットにおいて0、50、150、450(雌)、および600(雄)mg/kg/日であった。カニクイザル(雌および雄)では、用量は0、10、30、および100mg/kg/日であった。ヘマトキシリンおよびエオシン染色切片(公称の厚さは約5μmである)を、毒性研究のすべての動物のホルマリン固定したパラフィン包埋臓器/組織から製造した。
【0192】
臨床研究
4部構成の、第1相にて無作為化された、二重盲検の、プラセボを対照とするファースト・イン・ヒューマン研究を行い、健常な参加者での化合物A・HBrの単回投与用量漸増試験(SAD;パート1)および反復投与用量漸増試験(MAD;パート2)の安全性、忍容性、PKおよびPDを測定した。また、該研究は、化合物A・HBrの単回投与のPKに対して性別の効果(パート3)および加齢関連の効果(パート4)があるかどうかも評価した。この研究は、地元の独立倫理委員会;オランダ、アッセンのBEBO財団;およびオランダ、ハーグのヒト対象を含む研究に関する中央委員会によって承認され、ヘルシンキ宣言の規定に従って実施された。任意のプロトコル関連の操作を行う前に各研究の参加者から書面によるインフォームド・コンセントを得た。
【0193】
パート1では、化合物A・HBrまたはプラセボを、18歳から55歳まで(両端を含む)の、各コホートにて8人の参加者からなる8つのコホートにて64人の健康な白人男性に投与した。各コホートにて、6人の参加者は単回用量の化合物A・HBrを受けるのに無作為に割り当てられ、2人の参加者は適合するプラセボを受けるように無作為に割り当てられた。すべてのコホートは2人の見張り参加者を含み、そのうちの1人は化合物A・HBrを受け、1人は適合するプラセボを受けた。残りの6人の参加者は、そのうちの5人が化合物A・HBrを、1人がプラセボを受け、見張り参加者の24時間以上後に投与された。コホートの用量は5、10、20、50、100、200、400、および800mgであった。コホートに付き昇順にて用量を投与し、連続投与レベルの間隔は最低でも10日間であった。参加者は空腹状態で単回用量の化合物A・HBrまたはプラセボを受けた。
【0194】
パート2では、化合物A・HBrまたはプラセボを、19歳から54歳まで(両端を含む)の、各コホートにて12人の参加者からなる3つのコホートにて、36人の健康な白人男性に投与した。各コホートにおいて、9人の参加者は反復用量の化合物A・HBrを受けるのに無作為に割り当てられ、3人の参加者は適合するプラセボを受けるように無作為に割り当てられた。参加者は1日目~7日目まで摂食状態にて毎日投与を受けた。コホートに付き昇順にて用量を投与した。次の用量レベルへの進行および用量の選択は、パート1から、ならびにパート2での先行する用量コホートから入手可能なデータ(先行する用量コホートにおける最低で10人の参加者[化合物A・HBr n7]からの安全性、忍容性、およびPDのデータ[最終投与した後の48時間までのデータ]、および入手可能なPKデータ[最終投与した後の24時間までのデータ])に基づいた。パート2に関する化合物A・HBrの最終用量レベルは40、120、および360mgであった。ACTH攻撃試験を2日目と6日目に行い、アルドステロン合成に対する化合物A・HBrの選択性を評価した。アルドステロンと11-デオキシコルチゾールの血漿中濃度、およびコルチゾールと11-DOCの血清中濃度を、2日目と6日目のACTHの投与前に、およびACTH投与した30分および60分後に測定した。
【0195】
本研究のパート3では、化合物A・HBrの安全性、忍容性、およびPKに対する性別に関連した効果を評価した。20歳~35歳(両端を含む)の8人の健康な白人女性の1コホートにおいて、6人の参加者が100mgの単回用量の化合物A・HBrを受けるように無作為に割り当てられ、2人の参加者が適合するプラセボを受けるように無作為に割り当てられた。化合物A・HBrまたはプラセボは空腹状態で投与された。結果をパート1と同じ用量のコホートの結果と比較した。
【0196】
本研究のパート4では、化合物A・HBrの安全性、忍容性、およびPKに対する加齢に関連した効果を評価した。68歳~80歳の8人の健康な白人男性の1のコホートにおいて、6人の参加者が100mgの単回用量の化合物A・HBrを受けるように無作為に割り当てられ、2人の参加者が適合するプラセボを受けるように無作為に割り当てられた。化合物A・HBrまたはプラセボは空腹状態で投与された。結果をパート1と同じ用量のコホートの結果と比較した。
【0197】
統計学的、薬物動態学的、および薬力学的解析
安全性測定(有害事象[AE]、実験室での安全性、バイタルサイン、心電図、身体検査)を要約および/または列挙した。
【0198】
薬物動態学
血漿中PKパラメータを、ウィン・ノンリン(Win Nonlin(登録商標))(バージョン6.3)を用いる非コンパートメント解析に付して誘導した。用量比例性は、パート1(SAD)についてはAUC0-∞、AUC0-last、およびCmaxを用い、パート2(MAD)についてはAUC0-last、AUC0-∞、AUC0-τ、およびCmaxを用いるパワーモデルを使用して評価した。パラメータの対数変換後に、線形モデル(ln(Y)=α+βxln(X)、ここでYは薬物動態学的パラメータであり、Xは投与量である)を用いてパワーモデルに適合させた。傾き(β)の95%信頼限界(CI)が1の数値を含む場合、用量比例性があると結論付けられた。
【0199】
AUC0-last、AUC0-∞、およびCmaxは、性別および年齢のいずれか関連の効果(各々、パート3および4)を探るために使用された。線形モデルを使用し、性別または年齢を固定された効果として用いて対数変換したAUCおよびCmaxを解析した。最小二乗平均(LSM)の差および対応する90%CIを逆変換し、女性と男性との、および65歳と<65歳との参加者の幾何平均割合およびそのCIの推定値を得た。90%CIが1を含まない場合には、結果は統計的に有意であると判定された。
【0200】
薬力学
アルドステロン、11-デオキシコルチゾール、およびACTHの血漿中濃度;レニン活性;レニン濃度;ならびにコルチゾールおよび11-DOCの血清中濃度を、研究のあらゆるパートで測定した。アルドステロン、コルチゾール、ナトリウム、およびカリウムの排泄量、ならびに尿中log10(10xNa/K)割合を収集のインターバル毎に列挙した。
【0201】
PDパラメータは、WinNonlin(登録商標)Professional(バージョン6.3)を用い、非コンパートメント解析によって誘導化された。可能な限り、血漿中アルドステロンおよび血清中コルチゾールについてのAUC0-24を測定した。
【0202】
血漿中アルドステロンおよび血清中コルチゾールにおける、24時間でのベースライン(1日目、投与前)からの対数変換した変化、および1日目で22時間でのベースラインからの対数変換した変化(ベースラインは-1日目、22時間)を、投与群(各化合物A・HBr用量およびプールされたプラセボ)を固定効果として、対応する1日目の投与前を共変量とする線形モデルを用いて解析した。プラセボと比較した各化合物A・HBrの用量との間のLSMの差異を90%CIを有するモデルから得、ついで逆変換(指数化)して調整された幾何平均および90%CIの比率の推定値を得た。血漿中アルドステロンおよび血清中コルチゾールの投与した0~24時間後のベースラインからの対数変換の変化(時間一致)を、反復測定して、投与群(活性化合物A・HBrの各用量およびプールされたプラセボ)を固定された効果として用い、-1日目の対応する時間一致の値を共変量の非構造共分散として用いる線形混合モデルを使用して解析した。1日目の投与前の時点が-1日目の24時間の時点として用いられた。プラセボと比較した化合物A・HBrの各用量の間のLSMの差異を90%CIと一緒にモデルから得、次に逆変換して調整された幾何平均と90%CIの割合の推定値を得た。算定されたAUCパラメータを線形モデルを用いて解析した。目的とする対数変換したパラメータは投与群(化合物A・HBrの各用量およびプールされたプラセボ)の固定効果として、かつ-1日目の対数変換されたAUC0-24を共変量として従属的に可変性であった。プラセボと比較した各化合物A・HBrの用量との間のLSMの差異および90%CIを算出し、ついで逆変換して調整された幾何平均および90%CIの比率の推定値を得た。
【0203】
解析方法
固相抽出、および質量分析検出器を備えた高性能液体クロマトグラフィーを用いてヒト血漿(二カリウム エチレンジアミン四酢酸[K2-EDTA])およびヒト尿中の化合物Aを測定する解析方法によって、臨床試験を開始する前に、0.1000ng/mL(定量下限)ないし100.0ng/mLの濃度範囲にわたって有効性のあることが立証された。タンデム式質量分析検出器を備えた超高性能液体クロマトグラフィーを用いてヒトエチレンジアミン四酢酸(EDTA)血漿サンプル中の11-DOCを測定するための定量分析方法によって、0.0400ng/mL(定量下限)ないし32.2ng/mLの濃度範囲にわたって有効性のあることが立証された。他のすべての解析には、検証済みの定量的測定方法を用いた。
【0204】
結果
インビトロでのhCYP11B2およびhCYP11B1阻害
化合物Aの薬学的プロファイルを評価することで、化合物AがhCYP11B2およびhCYP11B1を、各々、1.27ナノモル/Lおよび475ナノモル/Lの阻害定数の値で阻害することが実証された。比較して、対照となる化合物のオシロドロスタットはhCYP11B2およびhCYP11B1を、各々、0.151ナノモル/Lおよび0.546ナノモル/Lの阻害定数の値で阻害した。化合物Aはオシロドロスタットと比べてhCYP11B2に対して非常に高い選択性を示した(表2)。これらの結果は、化合物AがCYP11B2をCYP11B1と比べて374倍の高い選択性で阻害することを示す。
表2:hCYP11B2およびhCYP11B1阻害
【表4】
【0205】
前臨床薬理学スクリーニング
化合物Aは、10マイクロモル/Lの濃度で、46種の一次分子標的受容体または酵素のいずれの活性も実質的には阻害しなかった。化合物Aのこれらの標的外のいずれかの受容体または酵素に対する半最大阻害濃度(IC50)は>10マイクロモル/Lであり、このことは標的外の薬理作用のリスクが低いことを示した。
【0206】
化合物Aは、30マイクロモル/LでhERG電流を27%阻害し、これはhERGIC50が>30マイクロモル/Lであることを示した。ハロタン麻酔のイヌにおいて、非GLP条件下で化合物Aを遊離塩基として3mg/kgまで静脈内注入した後であっても心血管系に対して何ら作用は認められなかった。テレメーターを装着したサルでは、100mg/kgまでの化合物Aを遊離塩基として単回経口投与した後であっても、血圧、心拍数、または心電図を含む心血管パラメータについて何の影響もなかった。サルでの13週間の毒性研究において、100mg/kg/日までの用量で心電図の値に対して化合物A関連の作用は認められなかった。これらの研究は、化合物Aでの心血管に対する有害作用のリスク、特に心臓電気生理学に対するリスクが低レベルであることを示す。
【0207】
副腎ステロイド生成に対する阻害作用
ヒト副腎皮質NCI-H295R細胞培養において、化合物Aの副腎ステロイド生成に対する効果を、3日間にわたってインキュベートした後に12種のステロイドホルモンを測定することで決定した。副腎ステロイド生成に対する効果は、アルドステロン生成に対して最も広い範囲に及んだ。濃度が0.11マイクロモル/Lである化合物Aは、アルドステロン分泌にて50%の減少をもたらし;同様の減少(>50%)がまた、濃度が1マイクロモル/Lでコルチコステロンにて観察された。最大濃度(3マイクロモル/L)でプレグネノロン、プロゲステロン、17α-ヒドロキシプロゲステロン、11-DOC、コルチコステロン、およびコルチゾールの減少は、50%の減少に至らなかった。副腎ステロイド生成に対するすべての作用はメカニズムに基づくものであり、非特異的な阻害作用は観察されなかった。
【0208】
13週間の毒性研究における副腎組織病理学
ラットを用いた13週間の長期にわたる連日投与の毒性研究において、150mg/kg/日の用量での組織病理学的知見には、副腎の束状帯細胞の空砲化、および球状帯細胞の肥大が含まれ、化合物Aの予想される薬理作用と一致した。副作用の観察されないレベル(NOAEL)は50mg/kg/日であった。
【0209】
サルを用いた13週間の長期にわたる連日投与の毒性研究において、アルドステロン前駆体およびアルドステロンに対する用量関連作用が認められ、コルチゾールに対する作用はなかった。副腎皮質の球状帯細胞の肥大と、PACの減少とが、すべての用量レベルで観察された。副腎皮質の糸球体肥大は化合物Aで処理したすべての群で認められ、4週間の回復期間の経過後、100mg/kg/日で1匹の動物にて最小限で観察された。球状層において最小限の細胞死が化合物A処理(100mg/kg/日)の動物にて、30mg/kg/日にて1匹の雌で観察されたが、4週間の回復期間の後では観察されなかった。NOAELは雄動物で30mg/kg/日であり、雌動物で10mg/kg/日であった。
【0210】
動物研究における薬理作用
化合物Aの単回経口投与は、ナトリウム欠乏のサル実験にてPACを有意に減少させた。しかしながら、化合物Aの単回経口投与は、PAC産生を阻害する用量よりも100倍多い用量でACTHローディングしたサルにおいてPCCに影響を及ぼさなかった。これらの結果は化合物AがCYP11B1よりも100倍高い選択性でCYP11B2を阻害することを示す。
【0211】
臨床研究
合計で245人の参加者がスクリーニングされ、そのうちの116人が無作為に割り当てられた。パート1、パート3、およびパート4に無作為に割り当てられたすべての参加者はプロトコルにあるように研究を完了した。パート2のコホート3にある1人の参加者は、洞性頻脈のAEにより2日目に中止となり、1日目に360mgの化合物A・HBrを単回用量で受けたに過ぎなかった。
【0212】
安全性および忍容性
研究の間に重篤なAEは発生しなかった。TEAEの全体としての発生率は、化合物A・HBrで処理した参加者(87人中41人[47%])とプラセボで処理した参加者(29人中18人[62%])との間で同等であった。全コホートを通じて、(軽度の)眩暈は、化合物A・HBr処理の参加者では9人(10.3%)であるのに対して、プラセボ参加者では1人(3.4%)であると報告された。化合物A・HBrの単回投与または反復投与レベルを通してTEAEの頻度において他の傾向は何ら同定されなかった。
【0213】
薬物動態
化合物A・HBrの5~800mgの用量範囲において、AUCの傾きの95%CIは一体化を包含し、それは、AUC0-lastおよびAUC0-∞の観点から、全身暴露での用量比例性増加を示す。対照的に、Cmaxの傾きの推定値(95%CI)は1.104(1.043-1.164)であり、Cmaxの用量比例性増加よりもわずかに大きい増加が5~800mgの範囲で観察された(図8;表3)。Tmaxの中央値は1と1.5時間の間にあり、t1/2の平均値は7.92と10.54時間の間にあった。
【0214】
40~360mgの範囲にある用量の化合物A・HBrを一日に1回、7日間にわたって経口投与した後、AUCおよびCmaxの観点からの全身暴露は、1日目と7日目に試験された複数回の用量の範囲にわたって、用量比例方式よりもわずかに増加するようであった(図9;表4)。1日目のAUCおよびCmaxについて、傾きの推定値は1.136~1.146(95%CI、1.011-1.281)の範囲にあり、7日目のAUC0-τについて、傾きの推定値は1.147(95%CI、1.060-1.234)であった。定常状態は約5日目までに達成され、極めてわずかな化合物A・HBrの蓄積が1日目と比べて複数の投与の後に観察され、蓄積値の平均割合は用量範囲の全体を通して1.15ないし1.19の範囲にあった。単回用量の投与と同様に、7日目のt1/2は約10時間であった。化合物A・HBrを100mgの用量で単回投与した後、CmaxおよびAUCの観点からの暴露は、男性参加者よりも女性参加者において、各々、25%および19%高かったが、その差異は90%CIに基づき統計学的に有意ではなかった。CmaxおよびAUCは、65歳の男性では、<65歳の男性よりも、各々、約14%および12%低かった。化合物A・HBrのPKに対する性別および年齢に関連した効果は90%CIに基づき統計学的に有意ではなかった。
【表5】
【表6】
【0215】
薬理学
あらゆる単回用量レベルの化合物A・HBrは、投与した4時間および8時間後のベースラインとの比較でPACにて明らかな減少を示した(図10)。最も低い用量レベル(化合物A・HBr 5-50mg)では、PACは投与した後の24時間以内にベースライン付近の値に戻った。最も高い用量レベル(化合物A・HBr 100-800mg)では、PACの減少は投与してから24時間後まで持続した。投与した後の24時間で、化合物A・HBrの単回投与は、プラセボと比べて、100および200mgの用量でPACを約-40%まで減少させ、400および800mgの用量で約-70%まで減少させた。100ないし800mgの用量の化合物A・HBrでPACの減少は統計学的に有意であった。PACは投与した4時間および8時間後に最大の減少を示した(プールされたプラセボに対して400mgの用量で、各々、幾何平均割合[90%CI]:0.20[0.15-0.26]および0.15[0.11-0.21])。10~800mgの範囲にある化合物A・HBrの単回投与は、特に、用量依存的方法にて、プラセボに対して-36%~-77%の範囲にある統計学的に有意な減少をもってPACのAUC0-24を低下させた(表5および表6)。化合物A・HBrの100mgの単回投与および化合物A・HBrの120mgの反復投与は16時間までにベースラインのアルドステロンレベルへの回復を可能とした(図10図12)。
【0216】
パート3および4において、100mgの化合物A・HBrを単回投与した24時間後のPACおよび血清中コルチゾール濃度のベースラインからの変化量は、男性および女性の参加者において、ならびに<65歳および>65歳の参加者において同様であった。
【0217】
アルドステロンのSADでのベースラインからのパーセント変化についてのタイムプロファイルによって、20mg以下の用量でベースラインに戻ることが証明された(図13)。SAD群での個々のPKと、アルドステロン抑制および回復の時間経過との関係は明確なPK-PD関係を実証した(図14)。化合物A・HBrのアルドステロンに対する抑制作用は用量と関連付けられ、SADにおいてコルチゾールに対する用量関連の作用は示されなかった(図15および図16)。
【0218】
化合物A・HBrの、血漿レニン活性および11-DOCのMADからの増加に対する作用、ならびに化合物A・HBrの、研究のSADおよびMAD部分からの腎ナトリウムおよびカリウム処理に対する作用は、尿中ナトリウムおよび尿中Na+/K+割合の増加を示し、血漿中K+の増加に対して適度な作用を示す(図17図18図19、および図20)。アルドステロンのAUCを表5および表6に示す。
【0219】
一日に1回の投与を7回した後の24時間以内に、プラセボと比べてPACのAUC0-24にて90%CIに基づき約-50%の統計学的に有意な減少が360mgの用量の化合物A・HBrで観察された。試験したすべての用量レベルで、PACは、7日目の投与した2時間と12時間の間に、明らかな用量依存的方法にて減少した。特に、より低い複数の用量レベル(40および120mg)では、PACの減少は、化合物A・HBrを単回投与した後に観察されるよりも顕著ではなかった。プラセボと比べて、PACは、360mgの用量だけで、2日目ないし5日目にて24時間で減少し、6日目および7日目では変化は観察されなかった。7日目の最終投与から24時間経過した後から、プラセボと比べて70%ないし160%の範囲にあるPACの明らかなリバウンドが、化合物A・HBrの複数のすべての用量レベルで観察された。これらの増加は少なくとも10日目まで、最終投与した後の3日間は持続された。化合物A・HBrを反復投与する間の血清中コルチゾール濃度および血漿中11-デオキシコルチゾール濃度については、ベースラインからの関連する変化は観察されなかった。
【0220】
いずれの複数回の用量レベルでも、化合物A・HBrは、プラセボと比べて、6日目にACTH刺激のアルドステロン応答を完全に鈍化させたが、コルチゾール応答には何ら効果がなかった。360mgの化合物A・HBrで、6日目のACTH刺激は、プラセボと比べて、11-DOCおよび11-デオキシコルチゾール濃度において上昇傾向を示した。これらの結果から、化合物Aが、健康なボランティアにて血清中コルチゾール濃度に影響を及ぼすことなく、PACを減少させるCYP11B2の強力で高い選択性のある阻害剤であることが確認される。
【0221】
さらには、化合物Aを一日に1回投与すると、プラセボと比べて、すべての用量レベルで血清中11-DOC、血漿レニン活性、およびカリウム濃度を増加させるようであった。これらの効果は投与を停止するとすぐに消失した。また、尿中log10(10xNa/K)比率は、すべての複数回用量レベルで、1日目にて最初のうちは増加したが、その比率は7日目の投与期間の終わりの次のサンプリング時点でベースラインのレベルに戻った。7日目から9日目にかけて、尿中log10(10xNa/K)比率の明らかな減少が観察され、ナトリウム/カリウムの割合にも同様に、リバウンド作用を示唆するものである。
【表7】
【表8】
【0222】
考察
レニン-アンジオテンシン-アンドロステン系(RAAS)は、血管内容量、血圧、および血清中カリウム濃度を制御するのに中心的役割を果たす。Yin, L.ら(2012);Nehme, A.ら(2019)を参照のこと。通常、短いおよび長い負のフィードバックループがRAAS系において恒常性を維持する。Chong, C.ら(2017)を参照のこと。低血管内容量は腎プロレニン発現を増加させ、アンジオテンシノーゲンのアンジオテンシン-1(Ang-1)へのレニン介在性変換、Ang-1のアンジオテンシン-2(Ang-2)へのアンジオテンシン変換酵素(ACE)変換、およびAng-2の副腎皮質での1型アンジオテンシン受容体との結合の増加をもたらし、アルドステロンの産生を刺激する。Laragh, J.H. & Sealey J.E.(2011);Nehme, A.ら(2019)を参照のこと。次に増加したアルドステロンはミネラルコルチコイド受容体(MR)と結合し、最終的に遠位ネフロンにおいてナトリウム再吸収を増大させる。Yin, L.ら(2012);Atlas, S.A.(2007);Brown, J.M.ら(2020)を参照のこと。このナトリウム再吸収は、血管内容量を増大させ、かくしてプロレニン産生を減らし、長い負のフィードバックループを閉じて恒常性を確保する。Yin, L.ら(2012)を参照のこと。副腎における短いフィードバックループは、副腎で増加したアルドステロンがMRと局所的に結合し、アルドステロンのさらなる産生を調節するように、補完的な役割を果たす。Chong, C.ら(2017)を参照のこと。
【0223】
容量および血圧の制御を維持するにおいてRAAS系が重要であるため、経路の各工程が高血圧症を治療するための治療標的として探索されてきた。ヒトで最も早期に使用された治療剤が、スピロノラクトン、MRのステロイド阻害剤であるが、その使用は副作用(特にはエストロゲン)によって妨げられてきた。Brown, J.M.ら(2020);Williams、B.ら(2015)を参照のこと。最近になって、非ステロイド系MR阻害剤の改善もまた開発されている。複数のACE阻害剤およびアンジオテンシン受容体遮断剤(ARB)が20世紀の後半から使用されている。Laragh, J.H. & Sealey J.E.(2011); Atlas, S.A.(2007)を参照のこと。最近になって、レニン阻害剤が治療道具に加わり、経路の上流成分を広く標的とするようになった。Laragh, J.H. & Sealey J.E.(2011); Atlas, S.A.(2007)を参照のこと。残念ながら、これらの解決方法には、各々、重大な限界があり、満たされていない医療ニーズは高いままである。Atlas, S.A.(2007)を参照のこと。
【0224】
かかる制限の1つが、特に慢性腎疾患(CKD)における、MRアンタゴニストに付随する高カリウム血症である。加えて、コルチゾールはMRに結合し、そのMRはコルチゾールを分解する酵素と共存する。CKDにおいて、この活性は低く、コルチゾールがMRを刺激する。CKDにおいてアルドステロンおよびコルチゾールの両方の作用を遮断すると、高カリウム血症がもたらされ得る。Pfizer(2020)を参照のこと。アルドステロン合成酵素阻害剤(ASI)はコルチコステロイドのMRへの結合に干渉しないため、それらはMRの弱アゴニストとして機能し、腎機能の障害のある患者でも高カリウム血症が起こりにくくなる。血管平滑筋細胞の肥大、心血管線維症、および腎臓の間質性線維症などの劇症臓器リモデリングは、少なくとも部分的には、アルドステロンの非MR依存的効果を介してアルドステロンによって媒介される。
【0225】
アンジオテンシンIIの生成または作用を防止することでアルドステロンの分泌が防止されると期待されるが、これは普遍的には当てはまらない。左心室機能障害(RESOLVD)での試験にて、ACE阻害剤およびARBを用いてのRAAS抑制が長期に及ぶアルドステロン分泌を抑制しないことが示された。この現象は「アルドステロンエスケープ」として説明されている。治療抵抗性高血圧の根本原因として、古典的な高アルドステロン症および肥満関連の不適切なアルドステロン産生の認識が増えることでその状況をさらに複雑なものとしている。Brown, J.M.ら(2020);Calhoun, D.A.ら(2002);Calhoun, D.A.(2016)を参照のこと。全体として、治療抵抗性高血圧症の世界的有病率は10.3%であると推定されるが、その割合は、CKDの患者、腎移植患者、および高齢者の間ではさらに高い(各々、22.9%、56.0%、および12.3%)。Noubiap, J.J.ら(2018)。塩感受性高血圧は、肥満およびアフリカ系アメリカ人の血統と一般的には関連付けられるが、これらの関連性の作用機序はしっかりと確立されていない。Calhoun, D.A.ら(2002);Calhoun, D.A.(2016)を参照のこと。これらの多様な個体は、一般には、古典的な高アルドステロン集団と同等であるとは考えられず、おそらくは、より適切には、アルドステロン産生を制御する正常なフィードバックループに干渉する、システム生物学における後天性異常を有すると考えられる。
【0226】
原発性アルドステロン症(PA)は、高血圧症および心血管疾患を引き起こす、制御不能なレニン非依存性のアルドステロン産生の症候群である。抵抗性高血圧症の患者の>20%で発症する可能性があり、二次性高血圧症の最も一般的な原因である。Brown, J.M.ら(2020);Calhoun, D.A.(2016);Parasiliti-Caprino, M.ら(2020);Pfizer(2020);Strauch, B.ら(2003)を参照のこと。PAは、通常、副腎腺腫あるいは片側または両側の副腎過形成(BAH)によって引き起こされるが;稀なケースで、副腎がん、または家族性高アルドステロン症の遺伝性症状によって引き起こされる可能性がある。片側の腺腫は外科的に治癒することができるが、MRアンタゴニストは外科的に切除できない原因に対して選択される治療法である。原発性(または本態性)高血圧症と比較して、PAはより多くの末端臓器障害を惹起し、心不全、卒中、非致死的心筋梗塞、および心房細動を含む、過度の心血管罹患率と関連付けられる。Byrd, J.B.(2015);Monticone, S.ら(2017)を参照のこと。生化学的には、PAはアルドステロン-レニン比率が高いことで定義され、フルドロコルチゾン抑制試験、カプトプリルチャレンジ試験、またはセイライン負荷試験で確認される。Calhoun, D.A.ら(2002);Strauch, B.ら(2003)を参照のこと。
【0227】
抵抗性高血圧症を治療するための実行可能な解決方法としてのアルドステロン阻害を支持するエビデンスがPATHWAY-2試験で提供された。Williams, B.ら(2015)を参照のこと。レニン産生についてアルドステロン介在の負のフィードバックを示す、血漿レニン活性の最も低い個体は、スピロノラクトンで治療した場合に、血圧の劇的な低下を示した。このことは、血漿レニンが正常ないし高い値の個体で見られる相対的に穏やかな血圧の降下とは対照的であり、α-またはβ-遮断剤では達成されなかった。Williams, B.ら(2015)を参照のこと。比較的に小規模な試験において、25ないし50mgのスピロノラクトンを一日に1回投与することで許容可能な安全性プロファイルを実証した。しかしながら、MR遮断剤は、臨床的に有意義な約10%の発生率、時には生命を脅かす高カリウム血症、特に随伴心不全またはCKDのある個体、およびレニン・アンジオテンシン系経路遮断剤を含む、複雑な薬物レジメンで治療されている個体における高カリウム血症と関連付けられる。Kem, David C.ら、「Circadian rhythm of plasma aldosterone concentration in patients with primary aldosteronism.」 The Journal of clinical investigation 52.9(1973):2272-2277を参照のこと。
【0228】
Kovesdy, C.P.(2017);Young, W.F.(2007)も参照のこと。MR遮断剤はまた、副腎において短いフィードバック(パラクリン)ループに干渉する付加的な特性を有し、結果として、血管平滑筋細胞にて非ゲノム経路を介してシグナル伝達がなされ、心血管にて有害な影響を与える可能性のある、アルドステロン産生の実質的な増加がもたらされる。Yin, L.ら(2012);Brown, J.M.ら(2020)を参照のこと。オシロドロスタットはこれまで中期臨床開発を完了している唯一のASIである。高アルドステロン症の個体において、オシロドロスタットは、コルチゾールと相対してアルドステロン合成に対する選択性が不十分であるために阻止されるが、血圧を若干降下させた。このため、主要なMRアゴニストとしてアルドステロンに取って代わる可能性のある、活性中間体の11-デオキシコルチコステロン(11-DOC)の蓄積がもたらされ、こうして潜在的な有益性が減少した。Schumacher, C.D.ら(2013)を参照のこと。この知見に基づき、開発は中止され、最近まで、十分な選択性を有し、その他に好ましい薬物動態および安全性プロファイルのある他のASIは開発されてこなかった。しかしながら、この医療ニーズは持続して満たされていないため、高血圧症を治療し、関連する心血管合併症を軽減するためにASIを開発することへの関心は依然として高いままである。
【0229】
アルドステロン合成酵素(CYP11B2)は、11-DOCをコルチコステロンに変換し、それを11-ヒドロキシコルチコステロンに変換し、そしてそれをアルドステロンに変換する、連続する3回の工程で11-DOCをアルドステロンに変換する、ミトコンドリアのチトクロームP450(CYP)酵素である。Yin, L.ら(2012)を参照のこと。グルココルチコイドの生合成にて重要な酵素である、CYP11B1はCYP11B2と高い相同性(>93%)を有する。CYP11B1よりもCYP11B2に対して高い選択性のあることはASIを成功させるのに不可欠な特性である。Hartmann, R.ら(2003)を参照のこと。潜在的に重要なことは、11-DOCの代謝およびクリアランスを可能とし、高カリウム血症を悪化させる可能性を減らすために、毎日、一定期間にわたって、不完全なアルドステロン合成酵素を阻害する可能性を含め、システムの恒常性の重要となる態様を回復させる能力である。ヒト使用に適するCYP11B2の改善され、より選択的な阻害剤の開発は、困難であることが証明されており、最近では2種の薬物だけが臨床段階の試験に到達した。これらの薬物の1つが、この報告にて記載される化合物Aであり、CYP11B2の高選択的阻害剤である、新たに合成され、経口投与される、非ペプチド性の低分子である。健康なヒトボランティアにおいて、化合物Aは、広範囲に及ぶ用量にわたって、基礎または刺激コルチゾール産生を抑制することなく、腎尿管アルドステロンのシグナル伝達を阻害する、最適化された薬物動態学的(PK)および薬力学的(PD)エビデンスを示した。これらの知見に基づき、化合物Aは、高血圧症で、自律的アルドステロン過剰産生のエビデンスのある個体での新規な標的第II相試験に移行した。化合物Aの非制御の高血圧患者における安全性および有効性に関する試験(target-HTN)に付した。Clinical Trials.gov identifier:NCT05001945を参照のこと。
【0230】
化合物A
化合物AはhCYP11B2の強力な阻害剤であり、予想される臨床用量でhCYP11B1の阻害は最小限である(各々、1.27ナノモル/L vs 475ナノモル/L)。化合物AのhCYP11B2 vs hCYP11B1に関する約374倍の選択性は、対照となる化合物のオシロドロスタットで観察される3.6倍の選択性よりもずっと大きかった。動物研究において、遊離塩基の化合物Aを単回経口投与に付すと、ナトリウム欠乏サル実験にてPACが有意に減少し、それに対してACTH負荷のサルではPCCは影響を受けず、これにより化合物AはインビボにてCYP11B2を非常に強力かつ選択的に阻害することが示された。毒性研究から得られた知見はその薬理活性に関連していると考えられた。
【0231】
化合物AのSADおよびMAD部分における投与は、健康な男性において、空腹状態下で800mgまでの単回用量で、かつ摂食状態下で360mgまでの一日に1回の用量で十分な忍容性を示した。化合物Aは、年齢が>65歳で健康な女性および男性でも十分な忍容性を示した。参加者の性別および年齢は化合物AのPKに有意な影響を与えなかった。
【0232】
プラセボと比べて、単回用量の化合物Aを投与した後に、PAC AUC0-24において統計的に有意な減少は観察されなかった。減少は投与した後に2時間から少なくとも12時間にわたって観察され、投与後の24時間まで用量依存的に持続された。PAC(AUC0-24)は単回の100ないし200mgの用量で40%まで、単回の400ないし800mgの用量で70%まで減少した。アルドステロンの有意な減少とは対照的に、血清中コルチゾールレベルについては有意義な効果は試験したいずれの用量でも観察されなかった。化合物Aの血清中コルチゾールレベルに対する効果の欠如はまた、研究のMADパート(パート2)でも、ベースラインで、およびACTH刺激に対する応答の両方で見られた。PACの変化は男性および女性の参加者の間で、同様に65歳vs <65歳の男性の間でも同様であった。
【0233】
化合物Aの腎ナトリウム排泄に対する効果を測定することで、アルドステロンの腎尿細管機能に対する効果が直接測定され、かくして血管内容量を減少させ、容量依存性全身性高血圧症を改善する可能性が提供される。研究のSAD部分にて、化合物Aの用量が10mgでは、尿中log10(10xNa/K)比の増加をもたらし、観察されたアルドステロンの減少が、少なくともアルドステロン産生の初期の抑制の間、予想される機能的効果を有することを確認した。PACを測定することでアルドステロン抑制の持続期間に対する用量依存的効果が実証された。研究のMAD部分にて、化合物Aの用量が40、120、および360mgでは、最大PAC抑制が約12時間にわたって維持されることが示された。
【0234】
尿中電解質の測定で、試験したすべての用量でナトリウム利尿作用の速やかな開始のあったことが確認されたが、ナトリウム枯渇の持続時間および安定性はこの測定では対処されない。実際、アルドステロンの抑制が短すぎるならば、1日の後半に代償的なナトリウム貯留があって、それに伴ってカリウム利尿が起こり、血管内容量および血圧に対する持続的な効果がない可能性がある。しかしながら、血清中カリウムの測定、および程度は低いがナトリウムの測定は、この問題に対処するのに役立つ。化合物Aの処理の開始から2日以内に、血清中カリウムは3種のすべての用量コホート(パート2)にて約0.5ミリモル/Lの上昇があり、残りの7日間の処理を通してずっと高いままであった。化合物Aの処理を中止すると、血清中カリウムレベルは処理前のベースラインに向かって迅速に低下した。アルドステロン抑制の持続時間が腎尿管効果を維持するのに不十分であると、その場合、特に低用量のコホートにて、血清中カリウムの上昇(および血清中ナトリウムの緩やかな減少)が維持されなかったと予想されるであろう。このことは、アルドステロン産生を抑制する持続時間がナトリウムの状態および体液枯渇を維持するのに十分であったという、強力なPDエビデンスを提供する。
【0235】
アルドステロンの分泌には、起床前の時間帯にてPACを開始してスパイクに至り、つづいて日中で時間の経過と共に段階的に減少する、典型的な日内パターンがある。かくして、日中のアルドステロン産生の抑制は、睡眠中に抑制がないか、または不完全であったとしても、電解質および容量の恒常性を含め、下流の生物学的効果に有意かつ持続的な効果があると予想されるであろう。化合物Aの100mgの単回投与、および化合物Aの120mgの反復投与は16時間までにアルドステロンのレベルをベースラインに戻すことを可能とした(図10図12)。アルドステロンの完全な抑制が、高カリウム血症および軽度の非アニオン性ギャップ代謝性アシドーシスの永続的状態をもたらし得るため、このことは重要である。Szylman, P.ら(1976);Harris, A.N.ら(2018)を参照のこと。
【0236】
高カリウム血症は、MRアンタゴニストであるスピロノラクトンが、複雑な一連の活性代謝産物を有し、そのいくつかの半減期が24時間を超えており、問題であることが知られている。スピロノラクトンは、高カリウム血症のリスクが最大で10%であり、非常に効果的な降圧剤であるにもかかわらず、比較的に稀にしか使用されない。実質的な蓄積を伴わない化合物Aの一日に1回の投与は安全性の重要な決定要素であると予想される。高カリウム血症を発症した場合には、化合物Aの投与を中止することで高カリウム血症を迅速に解消させることができるはずである。
【0237】
オシロドロスタットの制限因子の1つが11-DOCの過剰蓄積であった。11-DOCそれ自体がMRアゴニストであるため、その蓄積はアルドステロンの合成阻害の潜在的な利益に逆行し得る。研究のMADパートにおいて、化合物Aは11-DOCの血清中レベルを上昇させることが観察された。しかしながら、1日に40mgおよび120mgのコホートで蓄積は相対的に有意ではなく、正常な範囲を超えることはなかった。対照的に、1日に360mgの用量のコホートでは、問題となることが予想され得るレベルまで11-DOCのずっと大きな劇的な上昇を示した。腎電解質制御に対する最大のPD効果が、1日に40mgで最大に近い、相対的にフラットな用量応答であることを鑑みれば、11-DOCの蓄積データは、高血圧症を治療するための用量選択は高用量レベルを避け、1日に120mgまでの用量に焦点を当てるべきであると示唆する。
【0238】
総合的に、この一連の薬理研究の結果は、化合物AがhCYP11B2の選択的阻害剤であって、中枢神経系、呼吸器系、または心血管系でのいかなるAEとも関連していないことを示した。
【0239】
見解
ヒトでの使用に適するCYP11B2の改善されたより選択的な阻害剤の開発は、チャレンジであることが証明された。新規で選択性の高いhCYP11B2阻害剤である、化合物Aの前臨床的および臨床的開発は、ヒト以外の霊長類および健康なヒト参加者において好ましい安全性プロファイルを実証した。健康なヒト参加者にて、化合物Aは広範な用量範囲にわたって腎尿細管アルドステロンのシグナル伝達を阻害する最適化されたPKおよびPDエビデンスを示し、基礎または刺激コルチゾール産生を抑制しなかった。これらの知見に基づき、化合物Aは、高血圧で、自律的なアルドステロン過剰産生のエビデンスのある個体での新規な標的化2相試験に移行した。Monticone, S.ら(2017)を参照のこと。
【0240】
病態生理学的な新規性および関連性
化合物Aは、
(a)CYP11β1ベータ水酸化酵素よりもCYP11β2ベータ水酸化酵素に対して選択的であり;
(b)臨床的に有意義なアルドステロンの減少をもたらし;
(c)毎日の投与で約16時間でベースラインのアルドステロンレベルへの戻りを可能とする、
新規なCYP11β2ベータ水酸化酵素阻害剤である。
【0241】
古典的な高アルドステロン症の患者におけるPACの減少は、肥満関連の不適切なアルドステロン産生と同様に、治療抵抗性高血圧症に対処する際の重要な要素である。PACの完全な抑制の主たるリスクは高カリウム血症であり、それは化合物Aの連日投与のPK/PDプロファイルで回避される可能性がある。
【0242】
実施例4
無作為化した、二重盲検の、プラセボを対照とし、用量を一定範囲とした研究を複数のセンターで実施し、年齢が18歳の男性および女性の対象において高血圧症を治療するために、経口投与した化合物A・HBrの血圧に対する効果を評価した。
【0243】
研究の設計
研究は2つのパートから構成される。研究のパート1に登録されるためには、対象の血漿レニン活性(PRA)の値が午前中の測定に基づいて1ng/mL/hでなければならない。PRAの値が午前中の測定で>1ng/mL/hである場合、その時には対象は研究のパート2に参加する適格を有し得る。
【0244】
パート1では、年齢が18歳の163人の参加した対象を、12.5mg BID、25mg BID、12.5mg QD、50mg QD、100mg QD、またはプラセボの6群の均等な処理群(1:1:1:1:1:1)に無作為に割り当てた。中間臨床データを検討した後、2つの最低レベル(12.5mg QDおよび12.5mg BID)は、血圧の一貫した有意義な減少がなかったため、今後の無作為化は停止されたが、その時点で無作為に割り当てられた患者は終了まで該研究に残った。かくして、中間臨床データを検討した後、対象は25mg BID、50mg QD、100mg QD、またはプラセボの4群の均等な処理群(1:1:1:1)に無作為に割り当てられた。
【0245】
パート2では、36人の年齢が18歳の登録した対象を、化合物A・HBrの処理群が約30人の対象からなり、プラセボの処理群が約6人の対象からなるように、100mg QDの化合物A・HBrまたはプラセボのいずれかに無作為に割り当てた(5:1)。
【0246】
対象に、研究の1日目から開始して8週間に及ぶ指定された投与レジメンに従って、指定された研究用薬物(化合物A・HBrまたはプラセボ)を経口投与した。パート1のすべての対象(投与群に関係なく)は、BID投与を受け、盲検の完全性を保持し;すべてのQD投与群では、朝の投与として活性な薬物が投与される。対象は、研究の1、2、3、4、5、6、7および8週目の終わりに(±2日)研究施設に戻るか、または治験責任医師もしくは承認された在宅医療従事者と会って、プロトコルで規定された有効性および安全性を評価して操作し、有害事象(AE)を評価し、研究薬物の利用のコンプライアンスを確認した。対象にはまた、研究用薬物の最後の投与から約3日後に電話での診療および自宅での血圧(BP)チェックを行った。対象には、スクリーニング前の診察、スクリーニング/プラセボランインの開始の診察、プラセボランインの間の2回目の診察、ABPM操作を開始するための臨床診察、無作為化割り当ての診察、二重盲検治療の間の8回の週間診察、および最終的な有効性および安全性を評価するために最後に研究処理した4週間後に予定される研究終了の診察を含め、最大14回の臨床診察を施した。
【0247】
研究設計の概略を図21に図示する。
【0248】
自動診察室血圧(AOBP)操作
自動オシロメトリック血圧計の装置を用い、座位で約5分間の休憩に付した後、対象の収縮期および拡張期血圧を診察室で測定した。
【0249】
24時間の自由行動下血圧測定(ABPM)の操作
自由行動下血圧測定は、典型的には、対象のベルトまたはウエストバンドに装着される小型記録装置に取り付けられる、対象の腕に装着される血圧計カフからなる、自由行動下血圧測定装置を用いて達成された。
【0250】
ABPM装置は24時間装着される。その期間を通して、該装置は、対象の日常活動中、および対象の睡眠中、対象の血圧を定期的に記録する。このように、ABPMは24時間にわたって対象の血圧の完全な記録を提供する。
【0251】
24時間のABPMはベースラインと研究7週目にてクリニックで測定された。何らかの理由で、研究7週目の終わりにABPM操作が失敗したとみなされた場合、研究8週目にその操作を繰り返してもよく、従ってレスキュー薬の使用に拘わらず、補完は行われなかった。加えて、ABPMはパート2の研究の4週目の終わりにも集められた。再検査が行われた場合、それはその診察の最初の試験結果に優先する。
【0252】
ABPM測定に基づく特定の派生変数には、SBP、DBP、および心拍数の24時間平均、日中平均、夜間平均が含まれる。
【0253】
ABPMに基づく24時間の平均SBP(およびDBP)でのベースラインから7週目までの変化量は、ANCOVAを共変量として治療群の項およびベースラインの平均24時間値を用いて解析されるであろう。
【0254】
夜間ディップは、
100%x(日中平均SBP-夜間平均SBP)/日中平均SBP
として定義される。
【0255】
それはパーセンテージで表され、記述統計学を用いて処理群と診察別で要約される。加えて、ディッパーカテゴリー(Bloomfield & Park, 2015)の各々での夜間ディップを有する対象の数およびパーセンテージを処理群および診察別で表す。カテゴリーは:
(a)<10%
(b)10~20%(両端を含む)
(c)>20%
である。
【0256】
適格基準
包含基準
研究は次の包含基準を満たす対象を用いて行われた:
(a)年齢が18歳の男性および妊娠しておらず、授乳していない女性であること;
(b)自動診察室血圧 (AOBP)で収縮期血圧(SBP)130mmHgであること;
(c)2種の薬物の降圧治療歴のあること;
(d)血清中コルチゾールが18mcg/dLであること
【0257】
除外基準
対象が以下の除外基準のいずれかに合致する場合は研究から除外された:
(a)上皮用ナトリウムチャネル阻害剤または電解質コルチコイド受容体アンタゴニストを併用していること;
(b)低カリウム血症の対象であること;
(c)高カリウム血症の対象であること;
(d)血清中コルチゾールが<3mcg/dLの対象であること;
(e)血清中ナトリウムが<135mEq/Lの対象であること;
(f)推算糸球体ろ過量が<60mL/分/1.73mの対象であること;
(g)1型または制御されていない(ヘモグロビンA1cが9%である)2型糖尿病の対象であること;
(h)ボディマス指数が>40kg/mの対象であること;
(i)不安定狭心症の対象であること;
(j)スクリーニング前、スクリーニング/プラセボランインの開始、または無作為化割り当ての際の、パート1についてSBPが175mmHgであるか、または拡張期血圧(DBP)が100mmHgであり、パート2についてSBPが160mmHgであるか、またはDBPが100mmHgである対象であること;
(k)スクリーニングにて座位から立位となることでSBPが20mmHgまたはDBPが10mmHgで減少する対象であること;
(l)治験責任医師の見解において、抗高血圧治療に対する不履行が疑われる対象であること;
(m)治験責任医師の見解において、重大ないずれかの内科的疾患または徴候のある対象であること;
(n)治験責任医師の見解において、急性または慢性のいずれかの内科的または精神科的症状のある対象であること;
(o)以下のいずれかの薬剤:
(i)外用コルチコイド;
(ii)交感神経刺激性鬱血除去剤;
(iii)テオフィリン;
(iv)ホスホジエステラーゼ5型阻害剤;
(v)NSAID;
(vi)筋肉内ステロイド;
(vii)エストロゲン;
(viii)サイトクロム;
(ix)強力CYP3AおよびCYP3A4誘導剤;
による治療を受けている対象であること;
(p)化合物A・HBrまたはいずれかの賦形剤に対して既知の過敏症のある対象であること;および
(q)夜勤ワーカーである対象であること
に基づき除外された。
【0258】
アームおよび介入
研究は以下のアームおよび対応する介入を含んだ:
【表9】
【0259】
研究評価項目
主要評価項目
主要評価項目は、ベースラインから研究8週目の終了までの診察室で測定された(自動オシロメトリック血圧計の装置を用い、座位で約5分間休んだ後、5回の無人測定のうち最後の2回の平均値の)収縮期血圧(SBP)の変化である。
【0260】
副次的評価項目
この研究の副次的評価項目は:
(a)ベースラインから研究7週目までの24時間の自由行動下血圧測定(ABPM)パラメータ(収縮期および拡張期)の変化;
(b)ベースラインから研究1、2、3、4、5、6、および7週目の終わりまでの診察室で測定したSBPの変化;
(c)ベースラインから研究1、2、3、4、5、6、7、および8週目の終わりまでの診察室で測定した拡張期血圧(DBP)の変化;
(d)研究の8週目の終わりまでに診察室で測定したBPが130/80mmHgを達成する対象の割合
である。
【0261】
薬力学的評価項目
この研究の薬力学的評価項目は:
(a)血漿中11-デオキシコルチゾールおよびPRAの、ベースラインから研究4週目の終わりまでの、および追跡終了(すなわち、パート1については研究12週目の終わり、パートについては研究10週目の終わり)までの変化;
(b)血清中アルドステロン、コルチゾール、および11-デオキシコルチコステロン濃度の、ベースラインから研究4週目の終わりまでの、および追跡終了までの変化
であった。
【0262】
薬物動態学的評価項目
この研究の動態学的評価項目は、血漿中濃度対時間の曲線下面積(AUC)、最大血漿中濃度(Cmax)、最大濃度までの時間(Tmax)、および半減期(t1/2)を含む、PKパラメータであり、無作為化(ベースライン)および研究1、4、および8週目について記述的に要約されるであろう。
【0263】
安全性評価項目
この実験の安全性評価項目は:
(a)自発的に報告されたすべての有害事象(AE)の発生率および重篤度;
(b)バイタルサイン(立位SBP、立位DBP、体温、心拍数、および呼吸数)の変化;
(c)心電図パラメータ(心拍数の間隔:PR、QRS、QT、およびフリデリシア(Fridericia)式を用いて補正したQT間隔を含む)の変化;
(d)臨床検査室アセスメント(血液学、化学、凝固、および尿検査)の変化;
(e)研究8週目(治療期間の終了)から追跡の終了(すなわち、パート1では研究12週目の終了、およびパート2では研究10週目の終了)までの診察室で測定したSBPの変化
であった。
【0264】
解析方法
以下の解析集団をこの研究にて規定する:
最大の解析対象集団(FAS)
【0265】
FASは、少なくとも1回の無作為化された治験薬(MLS-101またはプラセボ)の投与を受けたことがある、すべての無作為に選出された対象を包含する。FASは有効性を解析するための主たる集団であろう。FASで行われる解析では、特記されない限り、対象は無作為に選出される研究処理群に応じて解析されるであろう。
【0266】
プロトコル遵守集団(PPS(Per-Protocol Set)またはPP)
プロトコル遵守集団には、主要有効性評価のデータの妥当性に影響を及ぼし得る何らかの重大なプロトコル違反もなく、研究の8週目の来院を完了したFASのすべての対象が含まれる。PPSに基づく解析において、対象は無作為化の研究治療群に応じて解析されるであろう。対象をPPSから排除する基準はすべて、研究のブラインドを外す前のデータをブラインド・レビューすることに基づいてなされるであろう。
【0267】
対象は、以下の基準:
(a)包含/除外基準に合致しないこと;
(b)禁止薬剤を使用していること;レスキュー薬を用いる対象は、対象がその対象をPPSから除外する他の基準に合致しない限り、PPSから除外されないであろう。
(c)治験薬をもって遵守しないこと;
(d)実験の8週目の診察の際に有効性評価の対象外であること
のいずれかに合致した場合にプロトコル遵守解析集団(Per-Protocol Analysis Set)から除外され得る。
【0268】
プロトコル遵守解析集団から除外するため代替基準も適用し、研究を実施している間に発生した予期せぬ事象に対応した。
【0269】
プロトコル遵守解析集団の解析は、補助を目的とし、主要評価項目(すなわち、「プロダクトエスティマンド(Estimand)」)に限定されるであろう。
【0270】
安全性解析集団(SAF)
安全性解析集団には、少なくとも1回の治験薬(MLS-101またはプラセボ)の投与を受けたことがある、すべての登録された対象が含まれる。安全性解析集団で行われる解析では、対象はその実際に受けた治療に従って解析されるであろう。
【0271】
PK/PD解析集団(PKPD)
PK/PD解析集団には、薬物動態学的および薬力学的測定値を解析するのに利用し得る十分なデータを有する、SAFのすべての対象が含まれる。PKPDに基づく解析では、対象はその実際に受けた治療に従って解析されるであろう。
【0272】
ベースラインの定義
ベースラインとは、二重盲検治療期間の間で治験薬(IMP)を最初に投与する前の目的とするパラメータの最新の利用可能な観察値として、定義される。
【0273】
スクリーニングおよびベースラインの診察時に再現性のある評価がなされる、AOBP測定値、ならびに他のいずれかの臨床的可変値または実験室可変値の場合、ベースラインは、二重盲検治療期間においてIMPが最初に投与される前の、最後の2つの非欠測値の平均として定義される。
【0274】
ベースラインからの変化は、
ベースライン後の結果 - ベースラインの結果
で計算される。
【0275】
ベースラインからの%変化は、
(ベースラインからの変化/ベースラインの結果)x100%
で計算される。
【0276】
結果の要約
QD用量の範囲全体で用量応答関係があり、50mgと100mgの用量ではAOBP測定の収縮期BPが平均して-11ないし-13mmHg減少したことと関連付けられた(プロトコル遵守、プラセボ補正、パート1の100mgコホートの解析=-10.3mmHg、パート1とパート2(中間)を合わせた最大の解析対象集団=-9.9mmHg、N=58活性)。
【0277】
一日に1回の投与は一日に2回の投与と同様に効果的であり、2つのBIDコホートの結果は50mgおよび100mgのQDコホートの結果よりも優れてはいなかった。
【0278】
50mg QD、100mg QD、12.5mg BIDおよび25mg BIDコホート(N=103)のプール解析にて、25%の対象がBPsys>-25mmHgの変化を示し、41%で変化が>-15mmHgであった。
【0279】
自動診察室血圧(AOBP)を用いると、パート1での個体と、パート2から入手可能な結果との間で治療応答にほとんど違いはなく、このことはPRAが応答の強力な決定因子ではないようであることを示唆した(血清中および尿中アルドステロンもまた何ら有益ではなかった)。
【0280】
24時間自由行動下血圧測定は、100mg QDコホートにおいて収縮期BPが一夜にて-11.5±2.9mmHgの低下を示し、夜間における「BP-ジッピング」の増加と関連付けられ、朝に投与した後の持続的な夜間の利益と一致する。
【0281】
プールした(パート1およびパート2)100mgのQD安全性集団(n=60)は、血清中コルチゾールに対して効果がなく、軽度または中等度の高カリウム血症のエピソードもほとんどなく、重度の高カリウム血症のエピソードは全くなく、良好な安全性および忍容性を示した。
【0282】
自動診察室血圧測定結果
最大の解析対象集団(FAS)の安全性解析を、8週目の測定を終えたすべての対象を用いて行った。プロトコル遵守(PP)解析も、8週目の診察を通して治療を終えているすべての対象を用いて行われた。プラセボ、50mg QDおよび100mg QD群のFAS解析、および100mg群のPP解析から由来の、8週目の収縮期血圧のAOBP変化を示すウォーターフォールプロットを図22で提供する。12.5mg QD、12.5mg BID、および25mg BID群のFAS解析から由来の8週目の収縮期血圧のAOBP変化を示すウォーターフォールプロットを図23にて提供する。モデル化された平均値およびプロトコル遵守で観察された平均値も各群について示されている。
【0283】
収縮期血圧のベースラインからの変化量の平均値を図24に示す。この図は、最大の解析対象集団(FAS、化合物A・HBrの少なくとも1回の投与を受けている評価可能なすべての対象)およびプロトコル遵守(PP、8週目の診察で75%の治験薬を投与されている対象のみ)の両方を含む、最終の解析を提供する。パート2のデータは5~6週目の最終診察の中間平均値を示す。
【0284】
化合物A・HBrの用量-応答を、QDレジメンの中で収縮期AOBPのベースラインからの変化を解析することに基づいて観察した。図25は、QD投与レジメンの8週目に観察された自動診察室血圧のベースラインからの変化の平均値を示す。BIDのプロトコル遵守コホートはこのグラフの右端に図示されている。
【0285】
解析は、50mg QD、100mg QD、12.5mg BID、および25mg BIDコホートについて、8週目に収縮期血圧のベースラインからの変化をプールし、ついで収縮期血圧応答の程度に基づき四分位に分離して行われた。図26は、プールされたコホート、最低応答四分位、最高応答四分位、およびプラセボについて8週目の収縮期血圧のベースラインからの変化を示すグラフである。25%の対象は収縮期血圧にて>-23mmHgの降下を達成し、平均して-33.4+1.5mmgHgの降下であった。41%の対象は収縮期血圧にて>15mmHgの降下を達成した。
【0286】
図27は、パート1およびパート2の両方からプールされたプラセボおよび100mg QD群からの収縮期血圧の変化を示す、ウォーターフォールプロットである。パート2のデータは、無作為化され、平均して最後の診察が5~6週目で、最低でも2週目である、すべての対象の中間のスナップショットから得た。
【0287】
血圧の変化に影響を及ぼす因子の解析
解析は高血圧対象の血圧の降下の程度に影響を及ぼす因子を同定するために行われた。それを以下の表に要約する。
【表10】
【0288】
値はすべて、入手可能なすべての情報を用い、モデル化された平均値の最小二乗解析を用いて決定された。**:プラセボ応答の不均衡に起因する2種および3種以上の薬での治療歴の間の効果の差
【0289】
自由行動下血圧測定(ABPM)結果
24時間自由行動下血圧測定の一例を示すグラフを図29にて提供する。グラフは、化合物A・HBrを100mg QDで投与されている一人の対象の24時間の自由行動下血圧(収縮期)をベースラインに対して図示しており、平均24時間血圧低下および正常な夜間ジッピングパターンの回復を示す。
【0290】
ベースラインに対して8週目の収縮期血圧の変化を示すグラフを、ABPMの最大の解析対象集団を用いて測定されるように、図30にて提供する。ベースラインに対して8週目の24時間平均および夜間平均ABPMの変化を示すウォーターフォールプロットを図31にて提供する。100mg QD用量レベルは優れた24時間血圧低下を提供する。100mg QD用量レベルからの一夜の血圧低下は25mg BIDよりも優れているようである。
【0291】
以下の表にて要約して示されるように、すべての測定基準で最も一貫した利益は100mg QDコホートにて観察された。
【表11】
【0292】
夜間ディップは
100%x(24時間自由行動下日中SBP-24時間自由行動下測定夜間SBP)/24時間自由行動下測定日中
として定義される。
【0293】
安全性
治験薬と関連付けられる重篤な有害事象(SAE)は試験にて観察されなかった。薬物投与の中止または用量の減少を必要とする有害事象を、パート1での発生率をパート2での発生率に対して示しながら、下記の表10にて提供する。
【表12】
【0294】
血清中カルシウム
群平均血清中カリウム(K+)の変化量を下記の表にて示す。
【表13】
【0295】
100mg QDコホートにおいて、治療の間に正常な範囲を超えて血清中カリウムの増加が確認されるか、または複数回確認された個体の数を下記の表に示す。
【表14】
【0296】
*:測定が治験薬の中止により反復測定で検証されなかった唯一の事件であった(プロトコル逸脱)
【0297】
推算糸球体ろ過量(eGFR)の変化
eGFRにて用量依存的および可逆的な減少が観察された。この現象はACE/ARBで、より最近では糸球体内圧の減少に起因するSGLT2阻害で報告されており、高血圧性腎症の進行を抑制すると考えられる。異なる用量コホートにおける推算糸球体ろ過量(eGFR)の変化を示すグラフを図28にて提供する。
【0298】
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図1
図2
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【国際調査報告】