(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】液体有機金属前駆体を用いたセラミック層の堆積方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20250123BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/31 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024543041
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 US2023060964
(87)【国際公開番号】W WO2023141550
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519461772
【氏名又は名称】エックス-エナジー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハワード タエリー
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA09
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA10
4K030BA13
4K030BA17
4K030BA18
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4K030BA36
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4K030BA46
4K030BB13
4K030CA18
4K030EA03
4K030EA08
4K030KA09
5F045AA03
5F045AB31
5F045AC01
5F045AC11
5F045AC15
5F045AE21
5F045AE23
5F045AE25
(57)【要約】
金属層またはセラミック層は、非ハロゲン化液体有機金属前駆体を使用する化学気相成長法によって核物質上に堆積され得る。化学的気相成長は、流動層反応器に核燃料粒子を導入し、流動層反応器を所望の動作温度T1に加熱する工程を含む方法によって行われる。キャリアガスの供給が気化器を通して開始され、非ハロゲン化液体有機金属前駆体が気化器に注入され、気化される。キャリアガスと気化した非ハロゲン化液体有機金属前駆体との第1の混合物を、ガス状炭素源、ガス状窒素源、ガス状酸素源、またはこれらの混合物と混合して第2の混合物を生成することができる。第2の混合物は、作動温度T1で流動層反応器に流入し、粒子上に所望のセラミックコーティングを堆積させる。非ハロゲン化液状有機金属前駆体は、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Tiの化合物またはこれらの混合物であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学気相成長によって金属またはセラミック層を堆積する方法であって、
a)粒子を流動層反応器へ導入する工程と、
b)流動層反応器を所定の運転温度T
1まで加熱する工程と、
c)キャリアガスの供給を気化器を通して開始する工程と、
d)非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化器に注入し、非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化させる工程と、
e)キャリアガスと気化された非ハロゲン化液体有機金属前駆体との第1の混合物を気化器から離脱させる工程と、
f)第1の混合物をガス状炭素源、ガス状窒素源、ガス状酸素源、またはそれらの混合物と任意に混合して第2の混合物を生成する工程と、
g)前記第1の混合物を作動温度T
1で流動層反応器に流入させ、前記粒子上に金属コーティングを堆積させる工程、または前記第2の混合物を作動温度T
1で流動層反応器に流入させ、前記粒子上にセラミックコーティングを堆積させる工程
を含む方法。
【請求項2】
前記粒子が核燃料核である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子が、ウラン、プルトニウム、およびトリウムからなる群から選択される金属の酸化物、炭化物、酸炭化物、および窒化物からなる群から選択される核燃料核、ならびにそれらの混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子が、酸化ウラン、炭化ウラン、窒化ウラン、酸炭化ウラン、およびそれらの混合物からなる群から選択される核燃料核である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、
前記核燃料核が、
セラミックウラン材料、セラミックプルトニウム材料、セラミックトリウム材料またはこれらの混合物の核、および
多孔質または非多孔質熱分解炭素の少なくとも1つのコーティング
ことを含む方法。
【請求項6】
各粒子が、核燃料核と、前記核上の多孔質炭素緩衝層と、前記緩衝層上の熱分解炭素の緻密層とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法において、
工程(g)は、前記第2の混合物を流動層反応器に流入させる工程であり、
前記方法は、さらに、
工程(d)の前に内部炭素層を核燃料核上に堆積させる工程、および外側炭素層を前記セラミックコーティング上に堆積させる工程
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記非ハロゲン化液体有機金属前駆体が、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非ハロゲン化液体有機金属前駆体が、式M
+nL
n、M
+nL
1
(n-m)L
2
(m)または、(L
3=)
pM
+nL
(n-2p)で表され、ここで、
Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、またはこれらの混合物であり、
LおよびL
1は独立して、C1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、ビス(C1~C4ジアルキル)アミド基、またはそれらの組み合わせから選択され、
L
2はシクロペンタジエニルアニオンであり、
L
3はO=またはRN=であり、式中、Rはアルキル基であり、
mは1または2、
pが1または2であり、
nは金属Mの原子価である、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記非ハロゲン化液体有機金属前駆体が、
チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)イソブトキシド、ハフニウ(IV)ブトキシド、ニオブ(V)t-ブトキシド、ニオブ(III)t-ブトキシド、およびジルコニウム(IV)ブトキシドからなる群より選択される金属アルコキシド、または
以下からなる群から選択される金属アミン、
(t-ブチルイミノ)トリス(ジエチルアミノ)タンタル(V)、
(t-ブチルイミノ)トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(V)、
(t-ブチルイミノ)トリス(メチルエチルアミノ)ニオブ(V)、
トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(III)、
トリス(メチルエチルアミノ)ニオブ(III)、
トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(III)、
トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)、
テトラキス(イソプロピルメチルアミノ)ジルコニウム(IV)、
テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(IV)、
テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(IV)、
トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルハフニウム(IV)、
ビス(メチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)、および
ビス(t-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)
である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
工程(f)は、前記第1の混合物をガス状炭素源と混合して前記第2の混合物を生成することを含み、
工程(g)は、前記第2の混合物を作動温度T
1で流動層反応器に流入させ、粒子上に金属炭化物コーティングを堆積させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス状炭素源が、メタン、エタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、天然ガス、またはそれらの混合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
工程(f)は、前記第1の混合物をガス状窒素源と混合して第2の混合物を生成することを含み、
工程(g)は、前記第2の混合物を作動温度T
1で流動層反応器に流入させ、粒子上に金属窒化物コーティングを堆積させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ガス状窒素源が、窒素ガス、アンモニア、またはそれらの混合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
工程(f)は、第1の混合物をガス状酸素源と混合して第2の混合物を生成することを含み、
工程(g)は、前記第2の混合物を作動温度T
1で流動層反応器に流入させ、粒子上に金属酸化物コーティングを堆積させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ガス状酸素源が、オゾン、酸素、一酸化窒素、亜酸化窒素、またはそれらの混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
化学気相含浸によって金属またはセラミックマトリックスを有する多孔質体を提供する方法であって、
h)多孔質体を化学気相含浸反応器へ導入する工程と、
i)化学気相含浸反応器を所定の作動温度T
1まで加熱する工程と、
j)キャリアガスの供給を気化器を通して開始する工程と、
k)非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化器に注入し、非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化させる工程と、
l)キャリアガスと気化された非ハロゲン化液体有機金属前駆体との第1の混合物を気化器から離脱させる工程と、
m)第1の混合物をガス状炭素源、ガス状窒素源、ガス状酸素源、またはそれらの混合物と任意に混合して第2の混合物を生成する工程と、
n)前記第1の混合物を流動層反応器に流入させ、作動温度T
1で前記多孔質体を通過させ、前記多孔質体内の空隙内に金属マトリックスを堆積させる工程、または前記第2の混合物を流動層反応器に流入させ、作動温度T
1で前記多孔質体を通過させ、前記多孔質体内の空隙内にセラミックマトリックスを堆積させる工程
を含む方法。
【請求項18】
前記非ハロゲン化液体有機金属前駆体が、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属の化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
化学気相成長によって固体材料上に金属層またはセラミック層をコーティングする方法であって、
o)固体材料を化学気相成長反応器する工程と、
p)化学気相成長反応器を所定の作動温度T
1まで加熱する工程と、
q)キャリアガスの供給を気化器を通して開始する工程と、
r)非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化器に注入し、非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化させる工程と、
s)キャリアガスと気化された非ハロゲン化液体有機金属前駆体との第1の混合物を気化器から離脱させる工程と、
t)第1の混合物をガス状炭素源、ガス状窒素源、ガス状酸素源、またはそれらの混合物と任意に混合して第2の混合物を生成する工程と、
u)前記第1の混合物を動作温度T
1で化学気相成長反応器に流入させ、前記固体材料上に金属コーティングを堆積させる工程、または前記第2の混合物を動作温度T
1で化学気相成長反応器に流入させ、前記固体材料上にセラミックコーティングを堆積させる工程
を含む方法。
【請求項20】
前記非ハロゲン化液体有機金属前駆体が、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属の化合物である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この非仮出願は、2022年1月21日に出願された米国仮出願第63/301,656号の利益を主張する。先行出願の開示全体を参照により援用する。
【0002】
本明細書に開示される種々の例示的な実施形態は、一般に、金属前駆体として非ハロゲン化液体有機金属化合物を使用するセラミック材料の堆積に関する。特に、本明細書に開示される実施形態は、金属前駆体として非ハロゲン化液体有機金属化合物を使用する固体基板上のセラミック層の化学気相成長に関する。また、本明細書に開示される実施形態は、金属前駆体として非ハロゲン化液体有機金属化合物を使用する多孔質または微粒子基板へのセラミック材料の化学気相含浸に関する。
【背景技術】
【0003】
核燃料粒子のための金属を含有したセラミックスの化学気相成長(CVD)は伝統的に流動層反応器内で金属ハロゲン化物を用いて行われてきた。いくつかのハロゲン含有金属または半金属化合物は、CVD成長システムに容易に供給される液体である。例えば、Si(CH3)(4-n)Clnなどのシランは、CVD成長システムのキャリアガスラインに注入することができる液体である。しかし、多くの金属のハロゲン化物は高融点固体、すなわち、200℃より高い温度で融解する固体であり、CVDシステムに容易に供給することができない。また、金属ハロゲン化物堆積源は副生成物として有毒なハロゲン含有ガスを生成することがある。
【0004】
化学気相成長法は核燃料粒子の製造に用いられる。例えば、三構造等方性(TRISO)核燃料粒子は、核燃料核の上に堆積した炭素の2つの層を含み、その上に炭化ケイ素(SiC)の層と高密度熱分解炭素(PyC)の外層が続く。SiC層は、典型的には、キャリアガスを用いて化学気相成長反応器に導入されるメチルトリクロロシラン(MTS)または別の液体クロロシランを用いて堆積される。この方法は、シリコンベースのセラミック層の堆積には有効であるが、他の金属、例えばジルコニウム、ハフニウム、またはタングステンの塩化物を化学気相成長に使用することは、通常これら塩化物が高融点の固体であるために不便である。
【0005】
上述の観点から、液体または低融点の金属を含有した前駆体ガスを用いてセラミック層を堆積するための技術を開発することが望ましい。特に、非ハロゲン化金属を含有した前駆体ガスを用いてセラミック層を堆積するための技術を開発することが望ましい。
【0006】
本開示は、ガス状炭素、窒素、または酸素前駆体を液体有機金属前駆体と混合することを可能にする新規なCVDおよび化学気相含浸(CVI)システムおよび方法に関する。得られた混合物をCVDまたはCVI反応器に供給し、セラミック層を堆積するために使用することができる。液体有機金属前駆体は、一定の液体流量で、例えばボールバルブまたはニードルバルブといったバルブのような液体マスフローコントローラを介して気化ユニットに供給され得る。一定の液体の流れが気化器に流入すると、キャリアガスが液体と混合し、気化ユニット内で液体の沸騰温度以上に加熱される。液体を蒸発させ、CVDまたはCVI反応室に送り込む。本明細書に開示されるシステムおよび方法は、セラミック材料を直接核燃料上に成長させるために使用することができる。また、このシステムおよび方法は、多孔質燃料形態へのセラミックス基質材料の化学的金属含浸、または固体燃料形態の表面コーティングを可能にする。したがって、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、構造用金属またはセラミック核燃料の製造を可能にする。
【0007】
ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、タングステン、チタンおよびバナジウムの液体有機金属化合物などの新規な有機金属前駆体は、本明細書に開示されたシステムおよび方法を用いてセラミック材料を堆積するために使用することができる有用なCVDまたはCVI金属前駆体として同定されている。これらの液体有機金属化合物は、複雑な送達システムを必要とすることなく、CVDまたはCVIシステムまたは反応器に導入することができる。液体有機金属前駆体を、液体気化器を用いてCVDまたはCVIシステムに送達するための技術が開発されており、この気化器は、化学反応器に送達するためのキャリアガスを飽和させる。この飽和ガス混合物は、金属層の堆積のために反応器に直接供給することができるか、または、例えばガス状炭素源、ガス状窒素源、および/またはガス状酸素源のような追加のガスと混合して、様々なセラミックコーティングを生成し、あるいは、CVIによって多孔質材料にセラミック基質材料を堆積させることもできる。
【0008】
また、本明細書に開示されたシステムおよび方法は、セラミック材料のCVDまたはCVI堆積のための金属前駆体としてハロゲンを含まない液体有機金属化合物を使用することにより、核燃料核を含む微粒子基板上へのセラミック層の堆積中の毒性および腐食を有意に低減および/または排除する。本明細書に開示されたシステムおよび方法は、安全性を高め、毒性ハロゲンガスの環境への放出を防ぎながら、核燃料上に金属セラミックを直接製造することを可能にする。
【0009】
本明細書に開示される様々な実施形態は、粒子を流動層反応器に導入することによって、化学気相成長法により金属またはセラミック層を堆積する方法に関する。流動層反応器を所定の運転温度T1まで加熱し、キャリアガスの供給を気化器を通して開始し、非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化器に導入して気化させる。キャリアガスと気化した非ハロゲン化液体有機金属前駆体との第1の混合物は、気化器を離脱し、必要に応じてガス状炭素源、ガス状窒素源、ガス状酸素源、またはこれらの混合物と混合されて第2の混合物を生成する。ガス状炭素源、ガス状窒素源、またはガス状酸素源を使用しない場合、第1の混合物は、作動温度T1で流動層反応器に流入し、粒子上に所望の金属コーティングを堆積させる。あるいは、炭素、窒素、または酸素源を含有する第2の混合物は、作動温度T1で流動層反応器に流入し、粒子上に所望のセラミックコーティングを堆積させる。
【0010】
本明細書に開示される様々な実施形態において、粒子を流動層反応器に導入する工程は、核燃料核である粒子を導入する工程を含む。粒子は、ウラン、プルトニウム、およびトリウムからなる群から選択される金属の酸化物、炭化物、酸炭化物、および窒化物からなる群から選択される核燃料核であってもよい。粒子は、酸化ウラン、炭化ウラン、窒化ウラン、酸炭化ウラン、およびそれらの混合物からなる群から選択される核燃料核であってもよい。
【0011】
様々な実施形態では、各粒子は、核燃料核および核上の少なくとも1つの炭素層を含む。各核燃料核は、例えば、核上の多孔質炭素緩衝層、および緩衝層上の熱分解炭素の緻密層を含む複数の炭素層を有することができる。
【0012】
様々な実施形態では、各粒子は、核燃料核および核上の少なくとも1つのセラミック層を含む。各核燃料核は、複数のセラミック層、例えば、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属酸炭化物、またはこれらの合金の層を有することができる。
【0013】
化学気相成長法によって金属またはセラミック層を堆積させる方法の様々な実施形態において、炭素、窒素、または酸素源を含有する第2の混合物は、作動温度T1で流動層反応器に流入し、粒子上に所望のセラミックコーティングを堆積させることができる。このような方法は、さらに以下の工程を含むことができる。
【0014】
非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化器に導入する前に、核燃料核の上に内部炭素層を堆積させること、そして所望のセラミックコーティング上に外側炭素層を堆積する。
【0015】
非ハロゲン化液体有機金属前駆体は、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Tiからなる群から選択される金属の化合物およびそれらの混合物であってもよい。非ハロゲン化液状有機金属前駆体中の金属は、アルコキシド基、アミノ基、イミノ基またはこれらの組み合わせと結合していてもよい。
【0016】
様々な実施形態では、非ハロゲン化液体有機金属前駆体は、式M+nLn、M+nL1
(n-m)L2
(m)または、(L3=)pM+nL(n-2p)で表され、式中、
Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、またはこれらの混合物であり、
LおよびL1は独立して、C1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、ビス(C1~C4ジアルキル)アミド基、またはそれらの組み合わせから選択され、
L2はシクロペンタジエニルアニオンであり、
L3はO=またはRN=であり、式中、Rはアルキル基であり、
Mは1または2、
pは1または2、そして
金属Mの原子価はnである。
【0017】
非ハロゲン化液体有機金属前駆体は、
チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)イソブトキシド、ハフニウム(IV)ブトキシド、ニオブ(V)t-ブトキシド、ニオブ(III)t-ブトキシド、およびジルコニウム(IV)ブトキシドからなる群より選択される金属アルコキシド、または
以下からなる群から選択される金属アミンである。
(t-ブチルイミノ)トリス(ジエチルアミノ)タンタル(V)、
(t-ブチルイミノ)トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(V)、
(t-ブチルイミノ)トリス(メチルエチルアミノ)ニオブ(V)、
トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(III)、
トリス(メチルエチルアミノ)ニオブ(III)、
トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(III)、
トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)、
テトラキス(イソプロピルメチルアミノ)ジルコニウム(IV)、
テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(IV)、
テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(IV)、
トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルハフニウム(IV)、
ビス(メチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)、そして
ビス(t-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)。
【0018】
様々な実施形態において、第2の混合物は、炭素、窒素、または酸素源を含む。第2の混合物は、ガス状炭素源を含んでいてもよい。第2の混合物は流動層反応器に流入し、粒子上に所望の金属炭化物コーティングを堆積させることができる。第2の混合物は、ガス状窒素源を含んでいてもよい。第2の混合物は流動層反応器に流入し、粒子上に所望の金属窒化物コーティングを堆積させることができる。第2の混合物は、ガス状酸素源を含んでいてもよい。第2の混合物は流動層反応器に流入し、粒子上に所望の金属酸化物コーティングを堆積させることができる。
【0019】
本明細書に開示される様々な実施形態は、化学気相含浸法によって金属またはセラミック基質を有する多孔質体を提供する方法に関する。本方法は、以下の工程を含む。
多孔質体を化学気相含浸反応器へ導入し、
化学気相含浸反応器を所定の作動温度T1まで加熱し、
キャリアガスの供給を気化器を通して開始し、
非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化器に注入し、非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化させ、
キャリアガスと気化された非ハロゲン化液体有機金属前駆体との第1の混合物を気化器から離脱させ、
第1の混合物をガス状炭素源、ガス状窒素源、ガス状酸素源、またはそれらの混合物と任意に混合して第2の混合物を生成し、
第1の混合物を作動温度T1で化学気相含浸反応器に流入させて多孔質体を通過させ、多孔質体内の空隙内に所望の金属基質を堆積させる、または
第2の混合物を作動温度T1で化学気相含浸反応器に流入させて多孔質体を通過させ、多孔質体内の空隙内に所望のセラミック基質を堆積させる。
【0020】
化学気相含浸方法において、非ハロゲン化液体有機金属前駆体は、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、およびこれらの混合物からなる群から選択される金属の化合物であってもよい。非ハロゲン化液状有機金属前駆体中の金属は、アルコキシド基、アミノ基、イミノ基またはこれらの組み合わせと結合していてもよい。非ハロゲン化液体有機金属前駆体は、式M+nLn、M+nL1
(n-m)L2
(m)または、(L3=)pM+nL(n-2p)を有し、式中、
Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、またはこれらの混合物であり、
LおよびL1は独立して、C1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、ビス(C1~C4ジアルキル)アミド基、またはそれらの組み合わせから選択され、
L2はシクロペンタジエニルアニオンであり、
L3はO=またはRN=であり、式中、Rはアルキル基であり、
mは1または2、
pが1または2であり、
nは金属Mの原子価である。
【0021】
本明細書に開示される様々な実施形態は、化学気相成長法によって固体材料上に金属層またはセラミック層をコーティングする方法に関し、以下の工程を含む。
固体材料を化学気相成長反応器へ導入し、
化学気相成長反応器を所望の作動温度T1まで加熱し、
キャリアガスの供給を気化器を通して開始し、
気化器に非ハロゲン化液体有機金属前駆体を注入し、非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化させ、
キャリアガスと気化された非ハロゲン化液体有機金属前駆体との第1の混合物を気化器から離脱させ、
第1の混合物をガス状炭素源、ガス状窒素源、ガス状酸素源、またはそれらの混合物と任意に混合して第2の混合物を生成し、
第1の混合物を動作温度T1で化学気相成長反応器に流入させ、固体材料上に所望の金属コーティングを堆積させる、または
第2の混合物を動作温度T1で化学気相成長反応器に流入させ、固体材料上に所望のセラミックコーティングを堆積させる。
【0022】
化学気相成長法によって固体材料上に金属またはセラミック層をコーティングする方法において、非ハロゲン化液体有機金属前駆体は、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属の化合物であってよい。非ハロゲン化液状有機金属前駆体中の金属は、アルコキシド基、アミノ基、イミノ基またはこれらの組み合わせと結合していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
種々の例示的な実施形態をよりよく理解するために、添付の図面を参照する。
【
図1】セラミック層の堆積のための金属前駆体として固体金属ハロゲン化物を使用する流動層CVDの従来技術のシステムを示す。
【
図2a】
図1のシステムによって堆積されたセラミック層を有する粒子を示す。
【
図2b】
図1のシステムによって堆積されたセラミック層を有する粒子を示す。
【
図3】
図1のシステムによって堆積されたセラミック層を有する核燃料粒子を示す。
【
図4】金属の混合物を含むセラミック層の堆積を可能にする
図1のシステムの変形例を示す。
【
図5】金属の混合物を含むセラミック層の堆積を可能にする
図1のシステムの変形例を示す。
【
図6】セラミック層の堆積のための金属前駆体として液体有機金属化合物を使用する流動層CVDのためのシステムを示す。
【
図7】セラミック層の堆積のための金属前駆体として液体有機金属化合物を使用する流動層CVDの方法を示すフローチャートである。
【
図8】液体有機金属化合物を気化させて、セラミック層の堆積のためのガス状金属前駆体を生成するためのシステムを示す。
【
図9】液体有機金属化合物を気化させて、セラミック層の堆積のためのガス状金属前駆体を生成するためのシステムを示す。
【
図10a】金属の混合物を含むセラミック層の堆積を可能にする、
図6のシステムにおける気化器の第1の変形例を示す。
【
図10b】金属の混合物を含むセラミック層の堆積を可能にする、
図6のシステムで使用するための気化器システムの第2の変形例を示す。
【
図11】混合金属を含むセラミック層の堆積のための金属前駆体として液体有機金属化合物の混合物を使用する流動層CVDの方法を示すフローチャートである。
【
図12a】等圧化学気相含浸(CVI)反応器を示す。
【
図12b】等圧化学気相含浸(CVI)反応器を示す。
【
図13】化学気相含浸(CVI)によって生成された生成物を示す。
【
図14】バルク材料上に化学気相成長(CVD)によって生成された生成物を示す。
【
図15】強制流動化学気相含浸(CVI)反応器を示す。
【
図16】管状化学気相成長(CVD)反応器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで図面を参照すると、同様の番号は同様の構成要素または工程を示しており、様々な例示的実施形態の広範な態様が開示されている。
【0025】
本明細書で使用されるとき、TRISO粒子は、コアとしてウランベースのセラミック核燃料核を含み、以下の層により順次コーティングされている。
内側の多孔質炭素層、
内側の緻密な熱分解炭素層、
金属の炭化物、窒化物、酸化物、酸炭化物などのセラミック層、そして
外側の緻密な熱分解炭素層。
【0026】
本明細書で使用されるとき、TRISO様粒子は、セラミック核燃料核、例えば、ウラン、プルトニウム、トリウムまたはこれらの混合物の酸化物、炭化物、窒化物または酸炭化物をコアとして含み、少なくとも1つの炭素層および少なくとも1つのセラミック層、例えば金属の炭化物、窒化物、酸化物または酸炭化物でコーティングされている。炭素層およびセラミック層は、任意の順序で堆積され得る。
【0027】
ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、チタンなどの金属の酸化物、炭化物、窒化物、およびホウ化物は、その化学的および機械的性質のために高く評価される。これらの特性には、高い融点、密度および硬度が含まれる。これにより、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、またはそれらの混合物のセラミックの薄膜層は、地上および宇宙の両方の原子力用途において非常に価値がある。しかし、これらの金属の塩化物および他のハロゲン化物は表1に見られるように高融点固体である。これらの化合物は昇華によって気化するが、多くの場合、表1に示すように300℃を超える温度で起こる。
【0028】
遷移金属の酸化物、炭化物、ホウ化物および窒化物の化学気相成長(CVD)および化学気相含浸(CVI)は、表1の金属ハロゲン化物塩などのハロゲン化物ベースの金属前駆体を利用するため、歴史的に困難であった。これらのハロゲン化物ベースの前駆体の利用は、2つの理由から困難である。それは、毒性および腐食の懸念があるハロゲン化物の存在、およびハロゲン化物の非理想的な化学的性質である。
表1 ハロゲン化金属のCVD原料化合物の熱特性
【0029】
表1のハロゲン化物は、標準温度および圧力(STP)で固体として存在し、および/またはSTPで蒸気圧が低いため、CVD/CVIには理想的ではない。これらの非理想的な化学特性のために、表1にあるような前駆体の送達は、空気輸送システム、金属塩素化システム、または塩昇華炉のような複雑な送達システムを必要としてきた。これは、金属炭化物のCVDおよびCVI製造を非常に困難にし、実験室規模の操作を超えての実行を不可能にしている。
【0030】
塩化バナジウム(IV)や塩化チタン(IV)のような金属ハロゲン化物前駆体はSTPで液体である。このことは、これらは有用なCVD/CVI金属堆積材料であると思わせるが、問題がないわけではない。これらはハロゲン化物を含み、堆積温度でハロゲンガスおよび/またはハロゲン化水素ガスを生成し得る。例えば、塩化バナジウム(IV)を加熱すると、酸化バナジウムおよび塩素含有ガスの有毒な蒸気を生成することがある。
【0031】
図1は、金属源11として固体金属ハロゲン化物MX
4を使用してセラミック層を堆積する従来技術のシステムを示す。キャリアガスは、ガス導入部12を通って昇華炉10に入る。キャリアガスは、昇華炉10から排出部13を通って蒸発金属ハロゲン化物MX
4(vap)を運ぶ。バルブまたは他のマスフローコントローラ14は、キャリアガスが排出部13を通過する速度を制御する。バルブ14は、キャリアガス中のMX
4(vap)の濃度を測定するセンサ(図示せず)からの信号に応答してキャリアガスの流量を調節することができる。キャリアガス中の金属濃度が所望よりも低い場合、バルブ14を使用してキャリアガス流量を増加させることができる。キャリアガス中の金属濃度が所望よりも高い場合、バルブ14を使用してキャリアガス流量を減少させることができる。
【0032】
図1のシステムは、ガス状酸素源16a、ガス状窒素源16b、およびガス状炭素源16cのうちの少なくとも1つを含む。これらの酸素、窒素、および炭素源は、それぞれガス導入部15a、15b、および15cを通って流れる。バルブ17a、17b、および17cを使用して、酸素、窒素、および炭素源の流量をそれぞれ制御することができる。炭化物セラミックを所望する場合、例えば、バルブ17cを開き、バルブ17aおよび17bを閉じればよい。窒化物セラミックを所望する場合、バルブ17bを開き、バルブ17aおよび17cを閉じればよい。炭窒化物セラミックを所望する場合、バルブ17bおよび17cを開き、バルブ17aを閉じればよい。酸素、窒素および炭素源は、昇華炉10からの排出部13に出会うガス流路15を通って流れる。次に、排出部13内のキャリアガスは流路18に入り、流動層反応器19に流れ、ガス流路15から気化した金属ハロゲン化物MX
4(vap)および酸素、窒素、および/または炭素源ガスを運ぶ。流動層反応器19では、気化した金属ハロゲン化物MX
4(vap)と、酸素、窒素、および/または炭素源ガスとが反応して、粒子21上にセラミックコーティングを生成し、キャリアガスは流路20を通って反応器19から出る。流動層反応器19は熱源19aで加熱される。この熱源19aは、反応器19を通って電気エネルギーを流すように構成された抵抗熱源19aであってもよい。
【0033】
図2aは、
図1のシステムによって製造されたセラミックコーティング4を有するコア粒子1を示す。粒子1は、
図1の流動層反応器19内の堆積温度で溶融しない固体金属またはセラミックであってもよい。様々な実施形態では、コア粒子1は核燃料核である。本明細書において、「燃料核1」とは、放射性セラミック材料からなるコア粒子1である。
【0034】
図2bは、
図1のシステムによって製造されたセラミックコーティング4を有する粒子1を示しており、コーティング4は可変構造を有することができる。粒子1は、固体金属またはセラミックであってもよい。コーティング4は、内層4aと、中間層4bと、外層4cとを有し、流動層反応器19での堆積中に堆積ガスの流量を調整することによって形成することができる。例えば、一実施形態では、内層4a~4cは、金属対炭素の比率が変化する金属炭化物層M
nC
(2-n)である。内層4aの堆積中に、気化された金属ハロゲン化物MX
4(vap)に対して高濃度の炭素源ガスを使用すれば、M
nC
(2-n)においてn<1、<0.8または0.5以下であり、金属炭化物層4aが炭素に富む。中間層4bの堆積中、炭素源ガスの濃度を気化した金属ハロゲン化物MX
4(vap)よりも低くすれば、M
nC
(2-n)においてn=1となり、金属炭化物層4bはMCとなる。外層4cの堆積中に、炭素源ガスの濃度は、気化された金属ハロゲン化物MX
4(vap)に対してさらに低減され得るので、M
nC
(2-n)においてn>1であり、金属炭化物層4cは炭素欠乏である。
【0035】
図1のシステムは、
図3に示す三構造等方性(TRISO)核燃料粒子を製造するために使用することができる。TRISO粒子はコア粒子1を含有し、粒子1は、ウランセラミック材料、例えば、中心部は酸化ウラン(UO
2やU
3O
8など)、炭化ウラン(UC)、窒化ウラン(UN
2またはU
2N
3など)または酸炭化ウラン(UCO)から構成され、流動層反応器19内で化学気相成長法によって堆積された3つの等方性材料でコーティングされた燃料核である。燃料核1は、炭素からなる多孔性緩衝層2、次に熱分解炭素(PyC)の緻密な内層3、その次に、TRISO粒子の構造一体性を高めるためのセラミック層4、さらにその次にPyCの緻密な外層5でコーティングされる。
【0036】
様々な実施形態において、
図1のシステムを使用して、
図3に示すものと同様のTRISO様核燃料粒子を生成することができる。TRISO様粒子は、中心部にプルトニウムまたはトリウムの酸化物、炭化物、酸炭化物または窒化物等の放射性セラミック材料からなる燃料核1を含む。燃料核1は、流動層反応器19内で化学気相成長法によって堆積された等方性材料でコーティングされる。燃料核1は、以下のうちの少なくとも1つでコーティングされていてもよい。それは、
燃料核に堆積した炭素からなる多孔質緩衝層2と、
燃料核に堆積した熱分解炭素(PyC)の緻密な内層3、そして
セラミック層4である。
【0037】
燃料核1は、多孔質炭素緩衝層および熱分解炭素の内層の両方でコーティングされ、燃料核1上に順次堆積されていてもよい。次に、炭素でコーティングされた燃料核をセラミック層4でコーティングすることでTRISO様粒子の構造一体性を高め、さらに必要に応じてPyCの緻密な外層5をコーティングしてもよい。様々な実施形態において、燃料核1は、燃料核1上に介在する炭素層を堆積させることなく、セラミック層でコーティングすることができる。
【0038】
様々な実施形態において、
図1のシステムを使用して、放射性セラミック材料、例えば、ウラン、プルトニウム、またはトリウムの酸化物、炭化物、酸炭化物、または窒化物からなる燃料核1を中心部に含むTRISO様核燃料粒子を製造することができる。そして、燃料核は、介在する炭素層なしに、セラミック層4で直接コーティングされ得る。さらに必要に応じて、セラミックコーティング燃料核をPyCの外層5でコーティングすることができる。
【0039】
図1のシステムにおいて、金属源として固体金属ハロゲン化物を用いて作業することに関する1つの問題は、CVDによって混合金属を含むセラミック層を調製するための選択肢を制限することである。例えば、
図4は、昇華炉10における第1の固体金属ハロゲン化物11a(M
1X
4)、および第2の固体金属ハロゲン化物11b(M
2X
4)、の使用を示すための
図1のシステムの変形例を示す。排出部13を通って排出されるキャリアガスは、昇華炉10からの気化した金属ハロゲン化物M
1X
4(vap)およびM
2X
4(vap)の両方を運ぶ。しかしながら、昇華炉では、ハロゲン化物11aおよび11bは両方とも昇華温度で固体でなければならず、両方とも所望の昇華温度で適当な蒸気圧を有していなければならない。表1を参照すると、ZrCl
4およびHfCl
4は、同様の融点および昇華温度を有し、
図4に示すように、昇華炉10からCVDによって同時に堆積することができる。しかし、昇華炉10内では、気化した金属ハロゲン化物M
1X
4(vap)とM
2X
4(vap)が平衡状態で存在するため、M
1とM
2との比率が一定の混合金属セラミックが析出し、最終生成物の制御が困難であった。さらに、高い昇華点を有する金属ハロゲン化物、例えばZrCl
4のような第1の金属と、低い昇華点を有する金属ハロゲン化物、例えばTaCl
5のような第2の金属とを同時に堆積させることが望ましい場合があるが、これは、
図4に示すように、単一の昇華炉10では都合よく行うことができない。
【0040】
これらの問題は、
図5に示すように、複数の昇華炉を用いて対処することができる。昇華炉10aは、ガス導入部12aを介してキャリアガスを受け取り、第1の昇華温度を有する式M
1X
4を有する第1の金属堆積前駆体11aを含む。キャリアガスは、昇華炉10aから排出部13aを通って気化した金属ハロゲン化物M
1X
4(vap)を運ぶ。昇華炉10bは、ガス導入部12bを介してキャリアガスを受け取り、第2の昇華温度を有する式M
2X
4を有する第2の金属堆積前駆体11bを含む。キャリアガスは、昇華炉10bから排出部13bを通って気化した金属ハロゲン化物M
2X
4(vap)を運ぶ。排出部13aおよび13bはそれぞれ、昇華炉10aおよび10bからのガス流量を制御するバルブ(それぞれ14aおよび14b)を有する。排出部13aおよび13bは、組み合わされて、一般に
図1に示されるような流動層反応器につながる共通のガス流路排出部13を形成することができる。
【0041】
図5のシステムは、例えばZrCl
4のような高い昇華点を有する第1の金属ハロゲン化物昇華源11aからの第1の金属と、例えばTaCl
5のような低い昇華点を有する第2の金属ハロゲン化物昇華源11bからの第2の金属との、同時堆積を可能にする。これは、金属ハロゲン化物昇華源11aが昇華する温度、例えばZrCl
4の場合は331℃まで炉10aを加熱し、金属ハロゲン化物昇華源11bが昇華する温度、例えばTaCl
5の場合は~200℃まで炉10bを加熱することによって行うことができる。また、
図5のシステムは、第1のハロゲン化金属昇華源11aからの第1の金属と、第2のハロゲン化金属昇華源11bからの第2の金属との同時堆積を可能にし、このとき11aおよび11bは、例えばZrCl
4とHfCl
4のような同様の昇華点を有する。これは、炉10aおよび炉10bを昇華温度に加熱することによって行うことができる。最終堆積生成物中のM
1対M
2の比は、バルブ22aおよび22bを用いて炉10aからの金属含有キャリアガスと炉10bからの金属含有キャリアガスとの相対流量を調整することによって制御することができる。しかしながら、
図5のシステムは動作するものの、2つの別個の昇華炉を使用すると、システムが複雑になる。しかも、それは有毒なハロゲンおよびハロゲン化水素ガスの生成を回避するわけではない。
【0042】
図6は、金属源として液体非ハロゲン化金属化合物ML
4(l)を用いたセラミック層の堆積システムを示す。液体非ハロゲン化金属化合物の使用は、昇華炉の必要性を回避し、CVD/CVI中の生成物による有毒なハロゲン含有物の生成を防止する。
図6のシステムにおいて、キャリアガスはガス導入部12を通って気化器23に入り、キャリアガスの流量はバルブ30によって制御される。液体非ハロゲン化金属化合物は、導入部32を介して気化器23に注入される。金属化合物は気化し、キャリアガスは気化した金属化合物ML
4(vap)を気化器23から排出部13を通って運ぶ。バルブまたは他のマスフローコントローラ14は、キャリアガスが排出部13を通過する速度を制御する。
図6のシステムは、ガス状酸素源16a、ガス状窒素源16b、およびガス状炭素源16cのうちの少なくとも一つを含む。これらの酸素、窒素、および炭素源は、
図1に示すものと同様の方法で、それぞれガス導入部15a、15b、および15cを通って流れる。酸素、窒素、および炭素源は、それぞれバルブ17a、17b、および17cを通って、気化器23からの排出部13に出会うガス流路15に流入する。次に、排出部13内のキャリアガスは、流路18に入り、流動層反応器19に流れ、ガス流路15から気化した金属化合物および酸素、窒素、および/または炭素源ガスを運ぶ。流路18を通って排出部13から反応器19へのキャリアガスの流量は、バルブ14によって制御することができる。
図6のシステムで使用される制御バルブは、ニードルバルブであってもよい。ニードルバルブは、流体またはガス流の流れを段階的な量で制限することができ、キャリアガス、気化した金属前駆体を運ぶキャリアガス、および反応器19への炭素、窒素、および/または酸素源の流れの流量を調整することができる。
図6のシステムで使用されるバルブは、ボールバルブであってもよい。しかしながら、ボールバルブは、流量の段階的な調整ができないため、あまり好ましくない。使用され得る他のタイプのバルブには、ダイヤフラムバルブ、グローブバルブ、ピンチバルブ、ベローシール、およびバタフライまたはスロットルバルブが含まれる。特に堰型ダイヤフラムバルブは、流体またはガス流の流れを段階的に制限することによって、バルブを通る流量を制御するために使用することができる。
【0043】
流動層反応器19は、粒子21上のコーティング層の堆積に適した所望の温度T1で、堆積に適した圧力で維持される。流動層反応器19は熱源19aで加熱される。この熱源は、反応器19を通って電気エネルギーを流すように構成された抵抗熱源19aであってもよい。堆積圧力は、例えば大気圧よりも高くすることができ、または、大気圧、または、例えば大気圧未満の部分真空であってもよい。流動層反応器19では、蒸発した金属化合物と酸素、窒素、および/または炭素源ガスとが反応して、粒子21上にセラミックコーティングを生成し、キャリアガスは流路20を通って反応器から出る。気化器に注入された金属化合物前駆体はハロゲン化されないので、ハロゲンまたはハロゲン化水素ガスを生成することなく、セラミックコーティングが粒子21上に堆積される。様々な実施形態において、金属前駆体として有機金属化合物を使用するセラミック層の化学気相成長は、大気圧下または部分真空下において流動層反応器内で実施することができる。反応器内での堆積は、1~760Torr、1~20Torr、10~200Torr、20~400Torr、20~300Torr、400~760Torr、400~550Torr、300~600Torr、または200~500Torrの圧力で行うことができる。
【0044】
図6のシステムにおいて、気化器23および流動層反応器19内の温度測定は、気化器、反応器19の筐体、および粒子21の温度を測定することができる熱電対およびパイロメータ(図示せず)の組み合わせを用いて行われる。これにより10℃の低温から3000℃の高温まで正確に測定できる。
【0045】
非ハロゲン化液体有機金属前駆体は、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Tiからなる群から選択される金属の化合物およびそれらの混合物であってもよい。非ハロゲン化液状有機金属前駆体中の金属は、アルコキシド基、アミノ基、イミノ基またはこれらの組み合わせと結合していてもよい。
【0046】
本明細書に開示する方法は、式M+nLn、M+nL1
(n-m)L2
(m)および(L3=)pM+nL(n-2p)で表される非ハロゲン化液体金属化合物を使用して金属の窒化物、炭化物、および酸化物を堆積することを目的とする。
式中、
Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、またはこれらの混合物であり、
LおよびL1は独立して、C1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、ビス(C1~C4ジアルキル)アミド基、またはそれらの組み合わせから選択され、
L2はシクロペンタジエニルアニオンであり、
L3は2価のラジカル、例えばO=またはRN=であり、ここでRはアルキル基であって、
mは1または2、
pが1または2であり、
nは金属Mの原子価である。
本明細書では、金属前駆体として用いる液体有機金属化合物の一例として、化合物ML4を挙げることができる。これは、三価、五価または六価金属の化合物を除外するわけではないと理解するべきである。
【0047】
CVD用の金属堆積源として有用な液体金属化合物には、以下のものが含まれる。
金属アルコキシド、例えばチタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)イソブトキシド、ハフニウム(IV)ブトキシド、ニオブ(V)t-ブトキシド、ニオブ(III)t-ブトキシド、およびジルコニウム(IV)ブトキシドなどの金属C1~C4アルコキシド、および
次のような金属アミンである。
(t-ブチルイミノ)トリス(ジエチルアミノ)タンタル(V)(tBuN=Ta(NEt2)3,TBTDET)、
(t-ブチルイミノ)トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(V)(tBuN=Nb(NEt2)3,TBTDEN)、
(t-ブチルイミノ)トリス(メチルエチルアミノ)ニオブ(V)(tBuN=Nb(NMeEt)3)、
トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(III)(Nb(NEt2)3)、
トリス(メチルエチルアミノ)ニオブ(III)(Nb(NMeEt)3)、
トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(III)(Nb(NEt2)3)、
トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)(CpZr(NMe2),ZyALD)、
テトラキス(イソプロピルメチルアミノ)ジルコニウム(IV))(Zr(NiPrMe)4,TMPAZ)、
テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(IV)(Zr(NEtMe)4TEMAZ)、
テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(IV)(Zr(NiPrMe)4,TDEAZ)
トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルハフニウム(IV)(CpZr(NMe2))、
ビス(メチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)、((MeN=)2W(NMe2)2)、そして
ビス(t-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)((tBuN=)2W(NMe2)2)。
【0048】
適切なキャリアガスには、アルゴン、水素、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、および当技術分野で公知の他のキャリアガスが含まれる。金属堆積源は、金属炭化物セラミックコーティングを生成するためにガス状炭素源と組み合わせてもよい。CVDでの使用に適した炭素源には、ガス状炭化水素、例えば、メタン、エタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、および天然ガスが含まれる。あるいは、金属堆積源をガス状酸素源と組み合わせて、金属酸化物セラミックコーティングを生成してもよい。CVDで使用するのに適した酸素源には、オゾン、酸素、一酸化窒素、および亜酸化窒素が含まれる。金属堆積源をガス状窒素源と組み合わせて、金属窒化物セラミックコーティングを生成してもよい。CVDでの使用に適した窒素源には、窒素ガスおよびアンモニアが含まれる。また、所望であれば、気化した金属堆積源を含むキャリアガスは、炭素、酸素、または窒素源を導入することなく気化器23から流動層反応器19に流れ、セラミックコーティング層の代わりに金属コーティング層を堆積させることができる。
図6のシステムを使用して、純粋な金属層は、CVD/CVI中にバルブ17a、17b、および17cを閉じ、任意として、供給源16a、16b、および16cをシステムから除去することによって堆積され得る。
【0049】
図7は、
図6のシステムを使用して粒子21上にセラミックを堆積するためのフローチャートを示す。工程100において、粒子21はコーティングのために流動層反応器19に添加される。工程110において、流動層反応器19は、所望の作動温度T
1まで加熱される。工程120において、キャリアガスの供給を気化器23を通して開始する。工程130では、液体金属前駆体ML
4(L)を気化器23に注入する。工程140において、キャリアガスは、気化した金属前駆体ML
4(v)を担持して排出部13を通って気化器23を出て、ガス状の炭素、窒素、または酸素源と混合される。工程150において、混合ガスは、作動温度T
1で流動層反応器19に流入し、工程160において粒子21上に所望のセラミックコーティングを堆積させる。
【0050】
図8は、金属堆積前駆体として用いる液体有機金属化合物を気化させる装置の第1の実施形態を示す。液体前駆体化合物26は、規定の液体流量で気化器23に送り込まれる。液体供給シリンダ25は、導入部24を介して供給される不活性ガス、例えばアルゴン、ヘリウム、水素または窒素によって加圧される。シリンダ25内の圧力を制御するために、加圧ガスの流れはレギュレータまたはマスフローコントローラ、例えばバルブ28によって制御される。シリンダ25内の圧力は、液体前駆体化合物26を吸上管27内に流入させるための動力を提供する。吸上管27は液体前駆体化合物26を気化器23に運ぶ。液体前駆体化合物26が気化器23に入る速度は、吸上管27を通る流れを制御する液体マスフローコントローラ、例えばバルブ29によって制御することができる。液体前駆体化合物26が気化器23に流入すると、キャリアガスがガス導入部12を通って気化器23に流入する。気化器内のキャリアガスの圧力は、バルブ30によってキャリアガス流量を調節することによって制御することができる。気化器23において、液体前駆体化合物26は、化合物26が気化する温度および圧力の条件下に置かれ、気化した化合物26はキャリアガスと混合される。気化した前駆体化合物26は、キャリアガスの流れによって、
図6に示すように流動層反応器19につながる排出部13に運ばれる。
【0051】
液体前駆体化合物26が低沸点である場合、気化器23を大気圧に維持し、液体前駆体化合物26の通常の沸点以上の温度、すなわち1気圧での沸点以上に加熱させて、化合物26を気化させることができる。あるいは、低沸点前駆体化合物26については、気化器23を常温、例えば25℃±5℃に維持し、気化器23内の圧力を液体前駆体化合物26が沸騰するまで低下させてもよい。液体前駆体化合物26が高沸点である場合、気化器23を減圧下に維持して化合物26の沸点を下げ、化合物26が気化するまで加熱することができる。高沸点化合物26の場合、減圧下での沸騰は気化器23における化合物26の熱分解の可能性を減少させる。
【0052】
様々な実施態様において、液体前駆体化合物26は、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、タングステン、バナジウムまたはチタンの液体有機金属化合物である。液体前駆体化合物26が液体有機金属化合物である場合には、金属を含むセラミック層を流動層反応器19に堆積させることができる。例えば、液体前駆体化合物26がZyALDである場合、ジルコニウムセラミック、例えば、ZrC、Zr3N4またはZrO2の層を流動層反応器19に堆積させることができる。
【0053】
本明細書に開示される様々な実施形態は、キャリアガスの流れを液体前駆体化合物26からの蒸気で飽和させるための気泡シリンダを含む。キャリアガスは、ガス導入部12を通って液体供給シリンダ25に流入する。液体供給シリンダ25へのキャリアガスの流量は、マスフローコントローラ、例えばバルブ30を使用して制御することができる。ガス導入部12からのキャリアガスは、液体供給シリンダ25内の液体前駆体化合物26の水面下に発生している気泡31に流入する。キャリアガスが気泡31から流出し、液体供給シリンダ25内の液体前駆体化合物26を通過すると、液体前駆体化合物26が蒸気としてキャリアガスに巻き込まれる。気化した前駆体化合物26を含むキャリアガスは、
図6に示すように、液体供給シリンダ25から排出部13を通って排出され、流動層反応器19に至る。
【0054】
液体前駆体化合物26が高い蒸気圧および/または低い沸点を有する場合、液体前駆体化合物26からの蒸気は、液体供給シリンダ25内の液体前駆体化合物26を加熱することなく、
図9のシステムを使用してキャリアガスに巻き込まれる。しかしながら、液体前駆体化合物26が低い蒸気圧および/または高い沸点を有する場合には、
図9のシステムを用いて液体前駆体化合物26からの蒸気をキャリアガスにうまく巻き込ませるために、液体供給シリンダ25を加熱する必要がある。
【0055】
様々な実施形態では、
図9のシステムで使用される液体前駆体化合物26は、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、タングステン、バナジウム、またはチタンの液体有機金属化合物である。
【0056】
本明細書に開示されたこの技術は、液体有機金属前駆体を互いにおよび/または付加的なガスと同時に堆積させることによりセラミック合金を製造するために使用することができる。これにより、地球および宇宙の核応用のための特徴的な合金金属セラミックの製造が可能になる。
【0057】
図10aは、
図6のシステムで使用するための気化器の第1の変形例を示す。
図10aのシステムでは、キャリアガスがガス導入部12を通って気化器23に入り、キャリアガスの流量はバルブ30によって制御される。第1の液体非ハロゲン化金属化合物M
1L
4(L)が導入部32aから気化器23に注入される。第2の液体非ハロゲン化金属化合物M
2L
4(L)が導入部32bを介して気化器23に注入される。第1および第2の液体非ハロゲン化金属化合物の流量は、それぞれバルブ33aおよび33bによって制御される。各液体非ハロゲン化金属化合物の供給源は、必要に応じて、
図8または
図9によるシステムであってもよい。
【0058】
気化器23において、金属化合物M
1L
4およびM
2L
4は気化され、キャリアガスは気化器23から排出部13を通って気化された金属化合物を運ぶ。バルブまたは他のマスフローコントローラ14は、キャリアガスが排出部13を通過する速度を制御する。次に、
図6に示すように、排出部13内のキャリアガスは流動層反応器19に流れ、気化した金属化合物を運ぶ。様々な実施形態では、M
1L
4およびM
2L
4が一定の質量比で気化器23に流入し、反応器19内に一定組成のセラミック合金を堆積させることができるように、バルブ33aおよび33bを調節することができる。
【0059】
あるいは、M1L4およびM2L4が可変の比率で気化器23に流入し、反応器19内に可変の組成を有するセラミック合金を堆積させることができるように、バルブ33aおよび33bを調節してもよい。例えば、M1L4およびM2L4が2:1のモル比で気化器23に流入するようにバルブ33aおよび33bを最初に設定する場合、M1に富むセラミック合金層が最初に堆積される。バルブ33aおよび33bを、M1L4およびM2L4が1:2のモル比で気化器23に流入するように調節しながら堆積を続けると、M2に富む第2のセラミック合金層が続いて堆積される。バルブ33aおよび33bが元の位置に戻されると、M1に富む第3のセラミック合金層が堆積され、多層セラミックコーティングが生成される。これは、堆積プロセスを終了することなく、流動層反応器19において行われ、第1のセラミック材料の二層が第2のセラミック材料の層によって分離される複数の交互層を生じる。
【0060】
あるいは、単一の堆積手順において、バルブ33aおよび33bは、
M1L4とM2L4が2:1のモル比で気化器23に流入するように最初に設定され、M1に富む第1のセラミック合金層が最初に反応器19に堆積され、
M1L4とM2L4が1:1のモル比で気化器23に流入するように調整され、M1とM2とをほぼ同量含有する第2のセラミック合金層が第1のセラミック合金層の上に堆積され、次に、
M1L4とM2L4が1:2のモル比で気化器23に流入するように調整され、M2に富む第3のセラミック合金層が第2のセラミック合金層の上に堆積される。
したがって、本明細書に開示された技術は、複数のセラミック層の堆積を可能にし、この場合において、層の組成は段階的に変化する。
【0061】
図10bは、
図6のシステムで使用するための気化器システムの第2の変形例を示す。
図10bのシステムでは、キャリアガスがガス導入部12aを通って第1気化器23aに入り、キャリアガスの流量はバルブ30aによって制御される。第1液体非ハロゲン化金属化合物M
1L
4(L)は、導入部32aから第1気化器23aに注入される。キャリアガスはガス導入部12bを通って第2気化器23bに入り、キャリアガスの流量はバルブ30bによって制御される。第2の液体非ハロゲン化金属化合物M
2L
4(L)は、導入部32bを介して第2気化器23bに注入される。第1および第2の液体非ハロゲン化金属化合物の流量は、それぞれバルブ33aおよび33bによって制御される。各液体非ハロゲン化金属化合物の供給源は、必要に応じて、
図8または
図9によるシステムであってもよい。
【0062】
気化器23a、23bでは、金属化合物M
1L
4およびM
2L
4が気化する。キャリアガスは、気化した金属化合物M
1L
4を、気化器23aから排出部13aを通って運ぶ。バルブまたは他のマスフローコントローラ14aは、キャリアガスが排出部13aを通過する速度を制御する。同様に、キャリアガスは気化した金属化合物M
2L
4を気化器23bから排出部13bを通って運び、バルブ14bはキャリアガスが排出部13bを通過する速度を制御する。排出部13aおよび13bは、排出部13に結合されてもよく、次に、キャリアガスは流動層反応器19に流れ、気化した金属化合物を概して
図6に示すように運ぶ。様々な実施形態において、バルブ33aおよび33bは、M
1L
4およびM
2L
4がそれぞれ一定の質量比で気化器23aおよび23bに流入し、一定の組成のセラミック合金を反応器19内に堆積させることができるように調節されてもよい。M
1L
4およびM
2L
4が可変の質量比で気化器23aおよび23bにそれぞれ流入し、反応器19内に可変の組成のセラミック合金を堆積できるように、バルブ33aおよび33bを調節することができる。
【0063】
図11は、
図6のシステムを使用して粒子21上にセラミック合金を堆積するために変形したフローチャートを示し、ここで、気化器23は、
図10aに示される気化器である。工程100から120は、
図7のフローチャートの工程100から120と略同一である。工程120において、気化器23へキャリアガスを流入させる。工程131において、第1の液体金属前駆体M
1L
4(L)が気化器23に注入される。工程132において、第2の液体金属前駆体M
2L
4が気化器23に注入される。所望であれば、気化器23へのM
1L
4(L)およびM
2L
4の相対流量は、工程133に示すように、
図10aのバルブ33aおよび33bを使用して調整することができる。工程141において、キャリアガスは、気化された金属前駆体M
1L
4(vap)およびM
2L
4(vap)の混合物を担持して排出部13を通って気化器23を出て、ガス状の炭素、窒素、または酸素源と混合される。工程151において、混合ガスは、作動温度T
1で流動層反応器19に流入し、工程161において粒子21上に所望のセラミック合金コーティング、例えばM
1
nM
2
(1-n)Cを堆積させる。
【0064】
図12aおよび12bは、化学気相含浸による、気化した有機金属化合物から多孔質体への金属堆積を示す。化学気相含浸は、異なる反応器34が使用されることを除いて、
図6のシステムと同様のシステムを使用する。反応器34は、気化した有機金属堆積前駆体ML
4(vap)、キャリアガス、および任意選択的に炭素、窒素、または酸素源を反応器34に運ぶガス導入部38を含む。反応器34は、実質的に
図6に示すように、気化器23から気化された有機金属堆積前駆体を受け取ることができ、実質的に
図6に示すように、供給源16a、16b、および16cから炭素、窒素、または酸素源を受け取ることができる。流動層反応器34は、抵抗熱源であってもよい熱源42で加熱される。
【0065】
図12aおよび12bにおいて、篩または格子35は、化学気相含浸のための基板として機能する多孔質体を支持する。
図12aに示すように、多孔質体は、金型36によって支持された粒子37を含む。
図12aに示すように、有機金属前駆体ガスは、炭素、窒素、または酸素源および/またはキャリアガスと混合することができ、試料を取り囲む一定の圧力で多孔質体の周囲を流れる。このシステムは、等圧化学気相含浸を提供し、金属またはセラミック層の一貫した高品質の成長を可能にするが、長い処理時間を必要とし、試料を均一に浸透させない可能性がある。様々な実施形態では、多孔質体は、繊維材料、例えば炭素繊維またはセラミック繊維のフェルトまたはマットであってもよい。
【0066】
図12に示すように、キャリアガスは、ML
4(vap)を反応器内に、粒子または繊維の多孔質体37を通って上方に運ぶ。金属またはセラミックは、粒子または繊維37の間の空間に堆積され、固体を形成する。キャリアガスは、排気39を通って反応器から出る。金型36から分離した後の生成物を
図13に示す。粒子または繊維37は、堆積された金属またはセラミック38の基質によって取り囲まれる。
図12のシステムは、固体材料上に金属またはセラミック40の層を堆積するためにも使用することができる。
【0067】
図12bにおいて、篩または格子35は、粒子または繊維44の自立性固体43を含む多孔質体を支持する。様々な実施形態では、自立性固体43は、焼結粒子からなる固体44または繊維からなる不織布固体44を含むことができる。焼結粒子44はセラミック粒子であってもよい。繊維からなる不織布固体44は、セラミック繊維または炭素繊維の塊であってもよい。
図12bに示されるように、有機金属前駆体ガスは、試料を取り囲む一定の圧力で、多孔質体の周囲全体を流れる。このシステムは、固体43への等圧化学気相含浸を提供し、金属またはセラミック層の一貫した高品質成長を可能にする。固体43は自立しているため、金型は不要である。
【0068】
図6のシステムは、TRISO核粒子上へのセラミック層の堆積中に使用することができる。
図6のシステムは、酸化ウランまたは酸炭化ウランのようなコーティングされていない核燃料物質上にセラミック層を堆積する際に使用することができる。
図12bのシステムは、
図14に示すように、固体構造核材料または燃料要素41上に金属またはセラミック層40を直接堆積するために使用することができる。
図12aのシステムは、多孔質核物質へのセラミックまたは金属材料の含浸に使用され、
図13に示すように、金型36の除去に続いて、金属基質またはセラミック基質38に分散された燃料粒子37を生成する。
【0069】
図15は、強制流動反応器を用いた化学気相含浸法による、気化した有機金属化合物から多孔質体への金属堆積を示す。
図15において、反応器34は、気化した有機金属堆積前駆体ML
4(vap)、キャリアガス、および任意に選択する炭素、窒素、または酸素源を反応器34内に運ぶガス導入部38を含む。反応器34は、実質的に
図6に示すように、気化器23から気化された有機金属堆積前駆体を受け取ることができ、実質的に
図6に示すように、供給源16a、16b、および16cから炭素、窒素、または酸素源を受け取ることができる。流動層反応器34は、抵抗熱源であってもよい熱源42で加熱される。
【0070】
図12aおよび
図12bの等圧反応器が、ガスが反応器34を通って一定の圧力で流れることを可能にする篩または格子35を使用する場合、
図15の反応器34は、前駆体ガスがCVIシステムに注入される体積に対して、試料が部分的に封入される強制流動反応器である。
図15に見られるように、金型36によって支持され得る粒子または繊維の多孔質体37は、ガス透過性支持体46上に支持される。多孔質体が自立性固体、例えば焼結粒子の固体または不織材料である場合には、金型36は不要である。支持体46は、ガス不透過性支持体45によって支持されてもよい。これにより、支持体46の下の圧力P
1が支持体46の上の圧力P
2よりも大きい圧力勾配が形成される。これにより、CVIシステムの初期容積とCVIシステムの排気容積との間に圧力勾配が生じる。この結果生じる圧力勾配は、粒子または繊維の多孔質体を通して前駆体を「強制」的に移動させる。このシステムの利点は、試料の空容積/細孔への浸透が増加し、金属またはセラミック材料の成長速度が増加することである。しかしながら、強制流動システムの使用は、
図12aの等圧システムと比較して、多孔質体内に堆積された金属またはセラミック材料の品質を低下させる可能性がある。様々な実施形態では、P
1は、大気圧以上であり、例えば、1気圧~5気圧、1.1気圧~4気圧、1.2気圧~3気圧、または1.3気圧~2.5気圧、または1.35気圧~2気圧である。様々な実施形態では、P
2はP
1以下である。
【0071】
チューブ炉化学気相成長反応器を使用して、金属またはセラミックコーティングを、一般的に固体であり、場合によっては非多孔性の材料上に堆積することができる。これは、核物質上の金属またはセラミックコーティングの製造に使用することができる。
図15は、反応器48の管状壁と接触していない試料47のすべての表面をコーティングすることができるチューブ炉CVD反応器48を示す。試料47は、例えば、固体セラミック、金属、または黒鉛塊のような、概ね均質な材料であってもよい。試料47は、不均質材料、例えば、セラミック、金属、またはグラファイト基質内に分散または分布した固体粒子または繊維であってもよい。試料47は、不均質核燃料要素、例えば、黒鉛基質内に分散したTRISO粒子を有する核燃料要素とすることができる。これは、特定の表面のみが金属またはセラミックコーティング層を有することが望まれる材料に対して有利であり得る。反応器48は、気化した有機金属堆積前駆体ML
4(vap)、キャリアガス、および任意に選択する炭素、窒素、または酸素源を反応器34内に運ぶガス導入部38を含む。反応器34は、実質的に
図6に示すように、気化器23から気化された有機金属堆積前駆体を受け取ることができ、実質的に
図6に示すように、供給源16a、16b、および16cから炭素、窒素、または酸素源を受け取ることができる。反応器48は、抵抗熱源であってもよい熱源42で加熱される。反応器48内では、試料47の表面の露出した部分を金属またはセラミック層でコーティングすることができ、キャリアガスを、排気39を通して回収することができる。試料47の表面のすべての部分をコーティングすることが望ましい場合には、反応器48は、当該技術分野で公知の方法によって、その軸回りに回転させればよく、これにより、試料47が反応器48内で回転し、その結果、表面のすべての部分が金属またはセラミック前駆体ガスにさらされる。
【0072】
有機金属前駆体による金属セラミック材料の堆積は、従来の核燃料と比較して、出力密度を増加させ、燃焼度を増加させ、高温での応用を向上させることができる。有機金属前駆体を用いて製造された金属セラミック材料は、材料試験炉、同位体製造炉、および宇宙での発電と推進の両方のために開発された炉での応用がある。有機金属液体前駆体から調製した耐火セラミックのセラミック不織材料への化学気相含浸は、高強度と耐熱性の複合材料を生成する。
[実施例1]TRISO粒子の調製
【0073】
図3に示すように、TRISO粒子を、
図6のシステムを用いて調製した。粒子21として二酸化ウラン核を用いてTRISO粒子を調製し、これを堆積温度まで抵抗で加熱した流動層反応器19に入れた。液体ZyALDをジルコニウム源として用いた。キャリアガスとしてアルゴンを用いた。炭素源としてエチレンとプロピレンを用いた。
【0074】
流動層反応器を1400℃の初期堆積温度に加熱し、アルゴンをキャリアガスとして使用し、エチレンと混合して得られたガス混合物を、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。多孔質炭素層(
図3の層2)を、二酸化ウラン核(
図3のコア1)上に堆積させた。
【0075】
流動層反応器の温度を1200℃から1350℃の堆積温度まで下げ、アルゴンをキャリアガスとして使用し、炭素源としてエチレンとプロピレンとの混合物と混合し、得られたガス混合物を、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。内側熱分解炭素層(
図3の層3)を多孔質炭素層2上に堆積した。
【0076】
流動層反応器の温度を1400℃から1500℃の堆積温度まで上げた。キャリアガスとしてアルゴン流を用い、
図6の気化器23に流入させた。液体ZyALDをジルコニウム源として気化器23に注入し、アルゴンと気化したZyALDとの混合物を、排出部13を通して気化器から排出する。ZyALD/アルゴン混合物を、炭素源としてエチレンと組み合わせる。ZyALDおよびエチレンを含む得られたガス混合物を、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。セラミック炭化ジルコニウム層(
図3の層4)を内側熱分解炭素層3上に堆積した。
【0077】
セラミック層の堆積に続いて、流動層反応器の温度を1200℃から1350℃の堆積温度まで下げ、ZyALDの反応器19への供給を停止した。キャリアガスのアルゴンと炭素源としてのエチレンとプロピレンとの混合物とを混合し、得られたガス混合物を、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。外側熱分解炭素層(
図3の層5)をセラミック炭化ジルコニウム層4上に堆積し、所望のTRISO粒子の形成を完了した。
[実施例2]セラミック多層を有するTRISO粒子の調製
【0078】
図3に示すように、TRISO粒子を、
図6のシステムを用いて調製した。粒子21として二酸化ウラン核を用いてTRISO粒子を調製し、これを堆積温度まで抵抗で加熱した流動層反応器19に入れた。液体ZyALDをジルコニウム源として用いた。キャリアガスとしてアルゴンを用いた。炭素源としてエチレンとプロピレンを用いた。
【0079】
流動層反応器を1400℃の初期堆積温度に加熱し、アルゴンをキャリアガスとして使用し、エチレンと混合して得られたガス混合物を、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。多孔質炭素層(
図3の層2)を、二酸化ウラン核(
図3のコア1)上に堆積させた。
【0080】
流動層反応器の温度を1200℃から1350℃の堆積温度まで下げ、アルゴンをキャリアガスとして使用し、炭素源としてのエチレンとプロピレンとの混合物と混合し、得られたガス混合物を、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。内側熱分解炭素層(
図3の層3)を多孔質炭素層2上に堆積した。
【0081】
流動層反応器の温度を1400℃から1500℃の堆積温度まで上げた。キャリアガスとしてアルゴン流を用い、
図6の気化器23に流入させた。液体ZyALDをジルコニウム源として気化器23に注入し、アルゴンと気化したZyALDとの混合物を、排出部13を通して気化器から排出する。ZyALD/アルゴン混合物を、炭素源としてエチレンと組み合わせる。ZyALDおよびエチレンを含む得られたガス混合物は、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。セラミック炭化ジルコニウム層(
図3の層4)を内側熱分解炭素層3上に堆積した。ZyALDのエチレンに対するモル比を、
図6のバルブ17cおよび14を用いて調節した。ZyALDとエチレンの初期モル比は1:2であった。これを1:1のモル比に、次に2:1に増加させた。得られたセラミック炭化ジルコニウム層4は、炭素に富む内層とジルコニウムに富む外層を有する三層であった。
【0082】
セラミック三層の堆積に続いて、流動層反応器の温度を1200℃から1350℃の堆積温度まで下げ、反応器19へのZyALDの流れを停止した。キャリアガスのアルゴンと炭素源としてのエチレンとプロピレンとの混合物とを混合し、得られたガス混合物を、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。外側熱分解炭素層(
図3の層5)をセラミック炭化ジルコニウム層4上に堆積し、所望のTRISO粒子の形成を完了した。
[実施例3]セラミック多層を有するTRISO粒子の調製
【0083】
図3に示すように、TRISO粒子を、
図10aによる気化器を含むように変形させた
図6のシステムを用いて調製した。粒子21として二酸化ウラン核を用いてTRISO粒子を調製し、これを堆積温度まで抵抗で加熱した流動層反応器19に入れた。液体ZyALDをジルコニウム源として用いた。タングステン源としてビス(メチルイミノ)―ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)を用いた。キャリアガスとしてアルゴンを用いた。炭素源としてエチレンとプロピレンを用いた。
【0084】
流動層反応器を1400℃の初期堆積温度に加熱し、アルゴンをキャリアガスとして使用し、エチレンと混合して得られたガス混合物を、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。多孔質炭素層(
図3の層2)を、二酸化ウラン核(
図3のコア1)上に堆積させた。
【0085】
流動層反応器の温度を1200℃から1350℃の堆積温度まで下げ、アルゴンをキャリアガスとして使用し、炭素源としてのエチレンとプロピレンとの混合物と混合し、得られたガス混合物を、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。内側熱分解炭素層(
図3の層3)を多孔質炭素層2上に堆積した。
【0086】
流動層反応器の温度を1400℃から1500℃の堆積温度まで上げた。キャリアガスとしてアルゴン流を用い、
図6の気化器23に流入させた。液体ZyALDを、ジルコニウム源として導入部32aを通して気化器23に注入し、液体ビス(メチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)を、タングステン源として導入部32bを通して気化器23に注入した。アルゴンと、気化したZyALDと、気化したタングステン源との混合物は、排出部13を通して気化器から排出する。ZyALD/タングステン源/アルゴン混合物を炭素源としてエチレンと組み合わせた。得られたガス混合物は、流路18を通して流動層反応器19に流入した。セラミック炭化ジルコニウムタングステン層(
図3の層4)を内側熱分解炭素層3上に堆積させた。
【0087】
層4の堆積の開始時に、バルブ33aおよび33bを用いて、ZyALDとビス(メチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)との相対流量を調整し、それらが2:1のモル比で気化器に入るようにした。熱分解炭素層3上にジルコニウムに富む炭化ジルコニウムタングステン層を堆積した。次に、バルブ33aおよび33bを使用して、ZyALDとビス(メチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)との相対流量を、それらが1:2のモル比で気化器に入るように調整し、タングステンに富む炭化ジルコニウムタングステン層を堆積し、セラミック二重層を形成した。
【0088】
セラミック層の堆積に続いて、流動層反応器の温度を1200℃から1350℃の堆積温度まで下げ、ZyALDの反応器19への供給を停止した。キャリアガスアルゴンと炭素源としてのエチレンとプロピレンとの混合物とを混合し、得られたガス混合物を、流路18を通して流動層反応器19に流入させた。外側熱分解炭素層(
図3の層5)をセラミック炭化ジルコニウム層4上に堆積し、所望のTRISO粒子の形成を完了した。
[実施例4]炭化ジルコニウム基質中に炭素繊維を含む複合材料の調製
【0089】
炭化ジルコニウム基質中に炭素繊維を含む複合材料は、
図6による気化器を含む
図12aのシステムを用いて調製することができる。繊維37を含む炭素繊維フェルトを、堆積温度まで抵抗加熱される化学気相含浸反応器34内の篩35上に配置することができる。液体ZyALDをジルコニウム源として使用することができる。キャリアガスとしてアルゴンを用いてもよい。エチレンおよびプロピレンを炭素源として使用することができる。
【0090】
化学気相含浸反応器34の温度を、1400℃~1500℃の堆積温度に上昇させる。アルゴン流はキャリアガスとして用いられ、
図6の気化器23に流入する。液体ZyALDは、導入部32を通してジルコニウム源として気化器23に注入される。アルゴンと気化したZyALDとの混合物は、排出部13を通して気化器から排出する。ZyALD/アルゴン混合物を、炭素源としてエチレンと組み合わせる。得られたガス混合物は、ガス導入部38を通って化学気相含浸反応器34に流入する。セラミック炭化ジルコニウムが炭素繊維フェルトの繊維37の間の空間に堆積され、繊維37の周りに
図13の基質38を形成する。
[実施例5]黒鉛基板上への炭化ジルコニウムの堆積
【0091】
コーティングされた黒鉛塊は、
図6による気化器を含む
図16のシステムを使用して調製することができる。100mm×50mm×25mmのサイズおよび99.9%の純度を有する黒鉛インゴット塊47を、堆積温度まで抵抗で加熱される化学気相成長反応器48に配置することができる。反応器48は、その軸回りに回転して、試料47を反応器48内で回転させることができる。液体ZyALDをジルコニウム源として使用することができる。キャリアガスとしてアルゴンを用いてもよい。エチレンおよびプロピレンを炭素源として使用することができる。
【0092】
化学気相成長反応器48の温度を、1400℃~1500℃の堆積温度に上昇させる。アルゴン流はキャリアガスとして用いられ、
図6の気化器23に流入する。液体ZyALDは、導入部32を通してジルコニウム源として気化器23に注入される。アルゴンと気化したZyALDとの混合物は、排出部13を通して気化器から排出する。ZyALD/アルゴン混合物を、炭素源としてエチレンと組み合わせる。得られたガス混合物は、ガス導入部38を通って化学気相成長反応器48に流入する。黒鉛インゴット塊47の外面にセラミック炭化ジルコニウム層を堆積し、インゴット塊47上に炭化ジルコニウム層を形成する。
[実施例6]核燃料要素上への炭化ジルコニウムの堆積
【0093】
コーティング核燃料要素は、
図6による気化器を含む
図16のシステムを用いて調製することができる。黒鉛基質中にTRISO粒子を含有する核燃料要素47は、堆積温度まで抵抗加熱される化学気相堆積反応器48内に配置することができる。反応器48は、その軸回りに回転して、核燃料要素47を反応器48内で回転させることができる。液体ZyALDをジルコニウム源として使用することができる。キャリアガスとしてアルゴンを用いてもよい。エチレンおよびプロピレンを炭素源として使用することができる。
【0094】
化学気相成長反応器48の温度を、1400℃~1500℃の堆積温度に上昇させる。アルゴン流はキャリアガスとして用いられ、
図6の気化器23に流入する。液体ZyALDは、導入部32を通してジルコニウム源として気化器23に注入される。アルゴンと気化したZyALDとの混合物は、排出部13を通して気化器から排出する。ZyALD/アルゴン混合物を、炭素源としてエチレンと組み合わせる。得られたガス混合物は、ガス導入部38を通って化学気相成長反応器48に流入する。核燃料要素47の外表面にセラミック炭化ジルコニウム層を堆積し、核燃料要素47上に炭化ジルコニウム層を形成する。得られた核燃料要素は、
図14に概ね対応する構造を有し、炭化ジルコニウム層40が固体バルク材料41上に堆積されている。この例では、固体バルク材料41は、黒鉛基質と、固体黒鉛基質内に分散されたTRISO粒子とを含む。
【0095】
様々な例示的な実施形態を、その特定の例示的な態様を特に参照して詳細に説明してきたが、本発明は他の実施形態も可能であり、その詳細は様々な明白な点で変更可能であることを理解されたい。当業者には容易に明らかなように、変形および修正は、本発明の精神および範囲内にとどまりながら影響され得る。したがって、前述の開示、説明、および図は、例示のみを目的としており、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明を制限するものではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学気相成長によって金属またはセラミック層を堆積する方法であって、
a)粒子を流動層反応器へ導入する工程と、
b)流動層反応器を所定の運転温度T
1まで加熱する工程と、
ここで、T
1
は1400℃~1500℃であり、
c)キャリアガスの供給を気化器を通して開始する工程と、
d)非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化器に注入し、非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化させる工程と、
e)キャリアガスと気化された非ハロゲン化液体有機金属前駆体との第1の混合物を気化器から離脱させる工程と、
f)第1の混合物をガス状炭素源、ガス状窒素源、ガス状酸素源、またはそれらの混合物と任意に混合して第2の混合物を生成する工程と、
g)
前記第1の混合物を作動温度T
1で流動層反応器に流入させ、前記粒子上に金属コーティングを堆積させる工程、または
前記第2の混合物を作動温度T
1で流動層反応器に流入させ、前記粒子上にセラミックコーティングを堆積させる工程
を含む方法。
【請求項2】
前記粒子が核燃料核である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子が、ウラン、プルトニウム、およびトリウムからなる群から選択される金属の酸化物、炭化物、酸炭化物、および窒化物からなる群から選択される核燃料核、ならびにそれらの混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子が、酸化ウラン、炭化ウラン、窒化ウラン、酸炭化ウラン、およびそれらの混合物からなる群から選択される核燃料核である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、
前記核燃料核が、
セラミックウラン材料、セラミックプルトニウム材料、セラミックトリウム材料またはこれらの混合物の核、および
多孔質または非多孔質熱分解炭素の少なくとも1つのコーティング
ことを含む方法。
【請求項6】
各粒子が、核燃料核と、前記核上の多孔質炭素緩衝層と、前記緩衝層上の熱分解炭素の緻密層とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法において、
工程(g)は、前記第2の混合物を流動層反応器に流入させる工程であり、
前記方法は、さらに、
工程(d)の前に内部炭素層を核燃料核上に堆積させる工程、および外側炭素層を前記セラミックコーティング上に堆積させる工程
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記非ハロゲン化液体有機金属前駆体が、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非ハロゲン化液体有機金属前駆体が、式M
+nL
n、M
+nL
1
(n-m)L
2
(m)または、(L
3=)
pM
+nL
(n-2p)で表され、ここで、
Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、またはこれらの混合物であり、
LおよびL
1は独立して、C1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、ビス(C1~C4ジアルキル)アミド基、またはそれらの組み合わせから選択され、
L
2はシクロペンタジエニルアニオンであり、
L
3はO=またはRN=であり、式中、Rはアルキル基であり、
mは1または2、
pが1または2であり、
nは金属Mの原子価である、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記非ハロゲン化液体有機金属前駆体が、
チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)イソブトキシド、ハフニウ(IV)ブトキシド、ニオブ(V)t-ブトキシド、ニオブ(III)t-ブトキシド、およびジルコニウム(IV)ブトキシドからなる群より選択される金属アルコキシド、または
以下からなる群から選択される金属アミン、
(t-ブチルイミノ)トリス(ジエチルアミノ)タンタル(V)、
(t-ブチルイミノ)トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(V)、
(t-ブチルイミノ)トリス(メチルエチルアミノ)ニオブ(V)、
トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(III)、
トリス(メチルエチルアミノ)ニオブ(III)、
トリス(ジエチルアミノ)ニオブ(III)、
トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)、
テトラキス(イソプロピルメチルアミノ)ジルコニウム(IV)、
テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(IV)、
テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(IV)、
トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルハフニウム(IV)、
ビス(メチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)、および
ビス(t-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)
である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
工程(f)は、前記第1の混合物をガス状炭素源と混合して前記第2の混合物を生成することを含み、
工程(g)は、前記第2の混合物を作動温度T
1で流動層反応器に流入させ、粒子上に金属炭化物コーティングを堆積させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス状炭素源が、メタン、エタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、天然ガス、またはそれらの混合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
工程(f)は、前記第1の混合物をガス状窒素源と混合して第2の混合物を生成することを含み、
工程(g)は、前記第2の混合物を作動温度T
1で流動層反応器に流入させ、粒子上に金属窒化物コーティングを堆積させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ガス状窒素源が、窒素ガス、アンモニア、またはそれらの混合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
工程(f)は、第1の混合物をガス状酸素源と混合して第2の混合物を生成することを含み、
工程(g)は、前記第2の混合物を作動温度T
1で流動層反応器に流入させ、粒子上に金属酸化物コーティングを堆積させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ガス状酸素源が、オゾン、酸素、一酸化窒素、亜酸化窒素、またはそれらの混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
化学気相含浸によって金属またはセラミックマトリックスを有する多孔質体を提供する方法であって、
h)多孔質体を化学気相含浸反応器へ導入する工程と、
i)化学気相含浸反応器を所定の作動温度T
1まで加熱する工程と、
ここで、T
1
は1400℃~1500℃であり、
j)キャリアガスの供給を気化器を通して開始する工程と、
k)非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化器に注入し、非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化させる工程と、
l)キャリアガスと気化された非ハロゲン化液体有機金属前駆体との第1の混合物を気化器から離脱させる工程と、
m)第1の混合物をガス状炭素源、ガス状窒素源、ガス状酸素源、またはそれらの混合物と任意に混合して第2の混合物を生成する工程と、
n)
前記第1の混合物を流動層反応器に流入させ、作動温度T
1で前記多孔質体を通過させ、前記多孔質体内の空隙内に金属マトリックスを堆積させる工程、または
前記第2の混合物を流動層反応器に流入させ、作動温度T
1で前記多孔質体を通過させ、前記多孔質体内の空隙内にセラミックマトリックスを堆積させる工程
を含む方法。
【請求項18】
前記非ハロゲン化液体有機金属前駆体が、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属の化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
化学気相成長によって固体材料上に金属層またはセラミック層をコーティングする方法であって、
o)固体材料を化学気相成長反応器する工程と、
p)化学気相成長反応器を所定の作動温度T
1まで加熱する工程と、
q)キャリアガスの供給を気化器を通して開始する工程と、
r)非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化器に注入し、非ハロゲン化液体有機金属前駆体を気化させる工程と、
s)キャリアガスと気化された非ハロゲン化液体有機金属前駆体との第1の混合物を気化器から離脱させる工程と、
t)第1の混合物をガス状炭素源、ガス状窒素源、ガス状酸素源、またはそれらの混合物と任意に混合して第2の混合物を生成する工程と、
u)
前記第1の混合物を動作温度T
1で化学気相成長反応器に流入させ、前記固体材料上に金属コーティングを堆積させる工程、または
前記第2の混合物を動作温度T
1で化学気相成長反応器に流入させ、前記固体材料上にセラミックコーティングを堆積させる工程
を含む方法。
【請求項20】
前記非ハロゲン化液体有機金属前駆体が、Zr、Hf、Nb、Ta、W、V、Ti、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属の化合物である、請求項19に記載の方法。
【国際調査報告】