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特表2025-503041神経障害および精神障害におけるリソソーム機能障害
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】神経障害および精神障害におけるリソソーム機能障害
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20250123BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/519
A61K31/427
A61K31/505
A61P3/00
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P43/00 121
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/04
A61P25/14
A61P25/18
A61P25/32
A61P25/30
A61P25/20
A61P25/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543115
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-09-17
(86)【国際出願番号】 US2023061044
(87)【国際公開番号】W WO2023141606
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/301,403
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】サワ アキラ
(72)【発明者】
【氏名】イシヅカ コウコ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン クン
(72)【発明者】
【氏名】サイトウ アツシ
(72)【発明者】
【氏名】貴田 葉菜
(72)【発明者】
【氏名】堀口 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】中井 良雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 知法
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA051
4C084ZA052
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA181
4C084ZA182
4C084ZA221
4C084ZA222
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC391
4C084ZC392
4C084ZC412
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC82
4C086CB09
4C086GA02
4C086GA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA22
4C086ZA94
4C086ZC39
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
リソソーム蓄積症、神経セロイドリポフスチン症、神経障害および精神障害を含む特発性/散発性脳障害におけるリソソーム欠損を処置する組成物は、トログリタゾン、ロスバスタチン、化合物A、またはこれらの組み合わせ等の剤を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の危険があるまたはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害と診断された対象を処置する方法であって、
リソソームの機能または活性を調整する1つまたは複数の剤の治療有効用量を該対象に投与する工程
を含み、
それによって、リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の危険があるまたはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害と診断された対象を処置する、
前記方法。
【請求項2】
リソソームの前記機能または活性が、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、リソソーム酵素、またはこれらの組み合わせの調整により決定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の剤の治療効果が、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、およびこれらの組み合わせによりモニタリングされる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
リソソーム蓄積症(LSD)または神経セロイドリポフスチン症(NCL)に罹患しているまたは罹患しやすい対象を処置する方法であって、リソソームの機能または活性を調整する1つまたは複数の剤の有効量を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の剤が1つまたは複数の有機低分子化合物を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
リソソーム蓄積症(LSD)または神経セロイドリポフスチン症(NCL)に罹患しているまたは罹患しやすい対象を処置する方法であって、
(i)トログリタゾンおよび/もしくはロスバスタチン;
(ii)1つもしくは複数のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)活性化剤;
(iii)1つもしくは複数のチアゾリジンジオン化合物;
(iv)1つもしくは複数のスタチン化合物;ならびに/または
(v)化合物A
より選択される1つまたは複数の剤の有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の剤がトログリタゾンおよび/またはロスバスタチンを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記剤が、1つまたは複数の低分子化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、抗体、抗体フラグメント、単鎖抗体、抗体模倣物、ペプトイド、アプタマー、酵素、ペプチド、有機もしくは無機分子、天然もしくは合成化合物、あるいはこれらの組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の剤が、糖脂質代謝を調整する低分子である、請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の剤が、1つまたは複数のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)活性化剤を含む、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数の剤が、1つまたは複数のPPAR-γ活性化剤を含む、請求項1~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数の剤が、1つまたは複数のチアゾリジンジオン化合物を含む、請求項1~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記1つまたは複数の剤が、ピオグリタゾンおよび/またはロシグリタゾンを含む、請求項1~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の剤が、1つまたは複数のスタチン化合物を含む、請求項1~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数の剤が、アトルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、および/またはシンバスタチンのうちの1つまたは複数を含む、請求項1~14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
リソソーム機能障害に関連する疾患または障害が、リソソーム蓄積症(LSD)、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、神経学的、精神的、または機能的脳障害を含む特発性/散発性脳障害を含む、請求項1~15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
LSDが、糖原病、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、オリゴサッカリドーシス、リピドーシス、スフィンゴリピドーシス、リソソーム輸送病、原発性リソソームヒドロラーゼ欠陥、リソソーム酵素の翻訳後プロセシング欠陥、リソソーム酵素の輸送欠陥、リソソーム酵素保護の欠陥、可溶性非酵素性リソソームタンパク質の欠陥、膜貫通(非酵素性)タンパク質欠陥または未分類の欠陥、テイ-サックス病、サンドホフ病、ニーマン-ピック病、ファブリー病、クラッベ病、ファーバー病、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、マルチプルスルファターゼ欠損症、ムコリピドーシスII型、ムコリピドーシスIII型、ムコ多糖症、MPS III、MPS VII、GM1ガングリオシドーシス、およびシンドラー病を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
NCL(またはBD)が、CLN1病、CLN2病、CLN3病、CLN4病、CLN5病、CLN6病、CLN7病、CLN8病、CLN9病、CLN10病、CLN11病、CLN12病、CLN13病、またはCLN14病を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、
アルツハイマー病、レビー小体型認知症(LBD)、パーキンソン病、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、ピック病、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、多発性硬化症、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)、スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)、タンジール病、ペリツェウス-メルツバッハ病、進行性核上性麻痺、脊髄性筋萎縮症、または脊髄小脳変性症および他の失調性状態
である神経疾患に罹患している、請求項1~18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、
統合失調症、気分障害、アルコール依存症および他の物質使用障害、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、ナルコレプシーもしくは他の睡眠障害、または不安障害
である精神障害に罹患している、請求項1~19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記1つまたは複数の剤とは異なる第2の治療剤を投与する工程をさらに含む、請求項1~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
候補治療剤を同定する方法であって、リソソーム欠損を含む細胞と候補治療剤を接触させる工程、正常対照と比較してリソソームの機能の調整をアッセイする工程を含み、それによって候補治療剤を同定する、前記方法。
【請求項23】
前記候補治療剤が、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、リソソーム酵素、およびこれらの組み合わせを調整する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記候補治療剤が、低分子化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、抗体、抗体フラグメント、単鎖抗体、抗体模倣物、ペプトイド、アプタマー、酵素、ペプチド、有機もしくは無機分子、天然もしくは合成化合物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、幹細胞、臍帯血細胞、成体幹細胞、間葉系幹細胞、間葉系間質細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、自家細胞、自家幹細胞、骨髄細胞、造血細胞、造血幹細胞、体細胞、生殖系列細胞、分化細胞、体性幹細胞、胚性幹細胞、細胞株、患者細胞、哺乳類細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、神経細胞、脳細胞、または中枢神経系細胞を含む、請求項22~24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、自家細胞、同種細胞、ハプロタイプ一致細胞、ハプロタイプ不一致細胞、ハプロ同一細胞、または異種細胞を含む、請求項22~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
同定される候補治療剤が、請求項1~21のいずれか1項記載の処置方法において有用である、請求項22~26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
1つまたは複数の変異を有するCLN3核酸を含むベクターを含む、単離された細胞。
【請求項29】
前記変異が認知障害またはリソソーム欠損に関連する、請求項28記載の単離された細胞。
【請求項30】
前記細胞が、幹細胞、臍帯血細胞、成体幹細胞、間葉系幹細胞、間葉系間質細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、自家細胞、自家幹細胞、骨髄細胞、造血細胞、造血幹細胞、体細胞、生殖系列細胞、分化細胞、体性幹細胞、胚性幹細胞、細胞株、患者細胞、哺乳類細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、神経細胞、脳細胞、または中枢神経系細胞を含む、請求項28または29記載の単離された細胞。
【請求項31】
CLN3核酸配列を含むベクター。
【請求項32】
CLN3が、誘導性プロモーター、構成性プロモーター、または組織特異的プロモーターに機能的に連結されている、請求項31記載のベクター。
【請求項33】
CLN3核酸配列が1つまたは複数の変異を含む、請求項31または32記載のベクター。
【請求項34】
リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の危険があるまたはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害と診断された対象を処置する方法であって、
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩の治療有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項35】
リソソーム機能障害に関連する疾患または障害が、リソソーム蓄積症(LSD)、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、神経学的、精神的、または機能的脳障害を含む特発性/散発性脳障害を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記疾患がバッテン病(BD)である、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記疾患または障害が、CLN1病、CLN2病、CLN3病、CLN4病、CLN5病、CLN6病、CLN7病、CLN8病、CLN9病、CLN10病、CLN11病、CLN12病、CLN13病、またはCLN14病を含む、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記対象がCLN3症に罹患している、請求項34記載の方法。
【請求項39】
疾患病理が、脳の海馬CA3領域または大脳皮質において生じる、請求項34~38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
1つまたは複数の低分子化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、抗体、抗体フラグメント、単鎖抗体、抗体模倣物、ペプトイド、アプタマー、酵素、ペプチド、有機もしくは無機分子、天然もしくは合成化合物、あるいはこれらの組み合わせを含む追加の剤を投与する工程をさらに含む、請求項34~39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
トログリタゾン、ロスバスタチン、またはこれらの組み合わせを投与する工程をさらに含む、請求項34~40のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
1つまたは複数のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)活性化剤を投与する工程をさらに含む、請求項34~41のいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
1つまたは複数のPPAR-γ活性化剤を投与する工程をさらに含む、請求項34~42のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
1つまたは複数のチアゾリジンジオン化合物を投与する工程をさらに含む、請求項34~43のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
ピオグリタゾンおよび/またはロシグリタゾンを投与する工程をさらに含む、請求項34~44のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
1つまたは複数のスタチン化合物を投与する工程をさらに含む、請求項34~45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、および/またはシンバスタチンのうちの1つまたは複数を投与する工程をさらに含む、請求項34~46のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
バッテン病の危険があるまたはバッテン病と診断された対象を処置する方法であって、
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩の治療有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項49】
バッテン病の危険があるまたはバッテン病と診断された対象を処置する方法であって、
化合物トログリタゾン、ロスバスタチン、またはこれらの組み合わせの治療有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項50】
バッテン病の危険があるまたはバッテン病と診断された対象を処置する方法であって、
1つまたは複数のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)活性化剤の治療有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項51】
バッテン病の危険があるまたはバッテン病と診断された対象を処置する方法であって、
1つまたは複数のチアゾリジンジオン化合物の治療有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項52】
バッテン病の危険があるまたはバッテン病と診断された対象を処置する方法であって、
1つまたは複数のスタチン化合物の治療有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項53】
1つまたは複数のスタチン化合物が、アトルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、および/またはシンバスタチンのうちの1つまたは複数を含む、請求項52記載の方法。
【請求項54】
バッテン病の危険があるまたはバッテン病と診断された対象を処置する方法であって、
リソソームの機能または活性を調整することができる1つまたは複数の低分子化合物の治療有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項55】
本明細書で開示される疾患もしくは障害の危険があるまたは本明細書で開示される疾患もしくは障害と診断された対象を処置する方法であって、
リソソームの機能または活性を調整することができる1つまたは複数の低分子化合物の治療有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項56】
本明細書で開示される疾患または障害に罹患しているまたは罹患しやすい対象を処置する方法であって、
(i)トログリタゾンおよび/もしくはロスバスタチン;
(ii)1つもしくは複数のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)活性化剤;
(iii)1つもしくは複数のチアゾリジンジオン化合物;
(iv)1つもしくは複数のスタチン化合物;ならびに/または
(v)化合物A
より選択される1つまたは複数の剤の有効量を該対象に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項57】
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項58】
請求項57記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および担体を含む、薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2022年1月20日に出願された米国仮出願第63/301,403号の優先権の恩典を主張し、その全体はすべての目的に関して参照により本明細書に組み入れられている。
【0002】
分野
本開示は、認知変化および神経精神病学的徴候をしばしばともなうリソソーム機能障害に関連する疾患または障害を処置する方法に関する。特に、組成物は、疾患または障害においてリソソーム機能または活性を調整し、それによって次に認知および神経精神病学的徴候を調整する、1つまたは複数の剤を含む。これらには、例えば、リソソーム蓄積症(LSD)、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、ならびにリソソーム機能欠損をともなう特発性/散発性神経精神病学的状態、例えば統合失調症(SZ)およびアルツハイマー病(AD)が含まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
特発性/散発性の神経精神病学的障害は、リソソーム異常を示すことが見いだされている。リソソームは、動物細胞における分解プロセスの中心となる膜結合型細胞オルガネラである。細胞外物質、例えば、食作用により取り込まれた微生物、エンドサイトーシスによる巨大分子、および望ましくない細胞オルガネラは、リソソームと融合して、それらの基本分子まで分解される。したがって、リソソームは、細胞のリサイクルユニットである。リソソームはまた、分泌、細胞膜修復、細胞シグナル伝達、およびエネルギー代謝におけるそれらの役割についての細胞のホメオスタシスも担っている。
【0004】
細胞の分解プロセスにおけるリソソームの必須の役割のために、これらのオルガネラは、いくつかの細胞プロセスの岐路に位置し、健康および疾患に対して大きな影響を有している。60種のリソソーム酵素、膜貫通タンパク質、またはこのオルガネラの他の構成要素のうちの1つにおける欠陥が、標的分子の分解を妨げ、60種を超える様々なヒト遺伝病の原因となり、これらは集合的にリソソーム蓄積症として知られている。異常なリソソーム機能が原因でないとしてもそれによって特徴づけられるヒト病理学的状態の数および種類が多いことは、細胞代謝に対するオートファジー-リソソーム経路の高い重要性を強調している。これらの疾患およびリソソーム機能障害によって特徴づけられる疾患において、分解されていない物質がリソソーム内に蓄積し、これが、リソソーム蓄積症から癌まで、さらには心血管疾患に及ぶ、疾患の存在または重篤度に寄与する。例えば、バッテン病(BD)は、いくつかの集団において12,500人に1人の有病率である、最も一般的な神経遺伝的NCLとみなされる神経精神病学的障害の群である。現時点で、多様な14形態のバッテン病に対して満足のいくまたは完全な承認された処置は存在しない。
【発明の概要】
【0005】
概要
1つの局面において、本発明者らは目下、稀な遺伝病(例えば、BD)および特発性/散発性脳障害(例えば、SZ、AD)の両方が、機能的欠損、特に認知機能障害を明確に示す共通のリソソーム異常を共有している証拠および新しい概念を提供する。
【0006】
特定の態様において、リソソーム機能障害に関連する疾患または障害は、LSD、NCL、広範囲の神経学的、精神的、または機能的脳障害を含む特発性/散発性脳障害を含む。特定の態様において、LSDは、糖原病、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、オリゴサッカリドーシス、リピドーシス、スフィンゴリピドーシス、リソソーム輸送病、原発性リソソームヒドロラーゼ欠陥(primary lysosomal hydrolase defect)、リソソーム酵素の翻訳後プロセシング欠陥、リソソーム酵素の輸送欠陥、リソソーム酵素保護の欠陥、可溶性非酵素性リソソームタンパク質の欠陥、膜貫通(非酵素性)タンパク質欠陥または未分類の欠陥、テイ-サックス病、サンドホフ病、ニーマン-ピック病、ファブリー病、クラッベ病、ファーバー病、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、マルチプルスルファターゼ欠損症、ムコリピドーシスII型、ムコリピドーシスIII型、ムコ多糖症、MPS III、MPS VII、GM1ガングリオシドーシス、およびシンドラー病を含む。特定の態様において、NCL(またはBD)は、CLN1病、CLN2病、CLN3病、CLN4病、CLN5病、CLN6病、CLN7病、CLN8病、CLN9病、CLN10病、CLN11病、CLN12病、CLN13病、およびCLN14病を含む。
【0007】
特定の態様において、神経疾患は、アルツハイマー病、レビー小体型認知症(LBD)、パーキンソン病、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、ピック病、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、多発性硬化症、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)、スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)、タンジール病、ペリツェウス-メルツバッハ病、進行性核上性麻痺、脊髄性筋萎縮症、ならびに様々なタイプの脊髄小脳変性症および他の失調性状態を含む。特定の態様において、精神障害は、統合失調症、気分障害、アルコール依存症および他の物質使用障害、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、ナルコレプシーおよび他の睡眠障害、広範囲の不安障害を含む。
【0008】
特定の局面において、リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の危険があるまたはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害と診断された対象を処置する方法であって、治療有効用量の剤を対象に投与する工程を含み、剤が、リソソームの機能または活性を、好ましくは適切なホメオスタシスバランス内で好ましくは調整し、それによって、リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の危険があるまたはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害と診断された対象を処置する方法が、提供される。特定の態様において、適切なホメオスタシスバランス内のリソソームの機能または活性は、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、リソソーム酵素またはこれらの組み合わせの調整により、決定される。特定の態様において、剤の治療効果は、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、およびこれらの組み合わせによりモニタリングされる。
【0009】
特定の好ましい局面において、リソソームの機能または活性を調整する剤は、有機低分子剤である。特定の好ましい局面において、リソソームの機能または活性を好ましくは調整することができる1つまたは複数の有機低分子剤を含む、1つまたは複数の有機低分子剤が、本明細書に開示される疾患または障害を処置するために対象に投与される。1つの局面において、有機低分子剤が、特定の障害または本明細書に開示される障害に適したインビトロおよび/またはインビボモデルにおける効果を、例えば、対照(例えば対照は該有機低分子剤の非存在下で行われるアッセイであり得る)に対し、試験した特性またはパラメータにおける少なくとも約3、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、または100パーセント増加を示す場合に、該剤はリソソームの機能または活性を調整することができる剤とみなされ得る。適切なインビトロおよびインビボアッセイは、本明細書に開示されておりかつ/または公知である。
【0010】
特定の局面において、神経セロイドリポフスチン(NCL)疾患または障害に罹患しているまたは罹患しやすい対象の処置のための方法および使用が提供される。特定の好ましい局面において、本明細書に開示されるリソソームの機能または活性を好ましくは調整することができる1つまたは複数の有機低分子剤を含む、1つまたは複数の有機低分子剤が、神経セロイドリポフスチン(NCL)疾患または障害を処置するために対象に投与される。
【0011】
特定の局面において、CLN3病に罹患しているまたは罹患しやすい対象の処置のための方法及び使用が提供される。特定の好ましい局面において、本明細書に開示されるリソソームの機能または活性を好ましくは調整することができる1つまたは複数の有機低分子剤を含む、1つまたは複数の有機低分子剤が、CLN3病を処置するために対象に投与される。
【0012】
特定の局面において、バッテン病に罹患しているまたは罹患しやすい対象の処置のための方法及び使用が提供される。特定の好ましい局面において、本明細書に開示されるリソソームの機能または活性を好ましくは調整することができる1つまたは複数の有機低分子剤を含む、1つまたは複数の有機低分子剤が、バッテン病を処置するために対象に投与される。
【0013】
特定の態様において、本方法および使用における投与のための1つまたは複数の低分子は、トログリタゾン、ロスバスタチン、またはこれらの組み合わせを含む。脂質およびタンパク質の代謝全体を調整する低分子のセット、例えばトログリタゾンおよびロスバスタチンは、リソソーム機能を直接的に調整する(特に、向上させる)ことができる。
【0014】
特定の態様において、本方法および使用における投与のための1つまたは複数の低分子は、トログリタゾン以外にまたはトログリタゾンに加えて1つまたは複数のチアゾリジンジオン化合物、例えばピオグリタゾンおよび/またはロシグリタゾンを含み得る。
【0015】
特定の態様において、本方法および使用における投与のための1つまたは複数の低分子は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)を活性化する1つまたは複数の化合物を含み得る。特定の態様において、本方法および使用における投与のための1つまたは複数の低分子は、PPAR-γを活性化する1つまたは複数の化合物を含み得る。
【0016】
さらなる態様において、本方法および使用における投与のための1つまたは複数の低分子は、1つまたは複数のスタチン化合物を含み得る。特に、1つまたは低分子化合物は、アトルバスタチン(Lipitor)、フルバスタチン(Lescol XL)、ロバスタチン(Altoprev)、ピタバスタチン(Livalo)、プラバスタチン(Pravachol)、ロスバスタチン(Crestor、Ezallor)、および/またはシンバスタチン(Zocor、FloLipid)のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0017】
特定の態様において、剤は、他の低分子化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、抗体、抗体フラグメント、単鎖抗体、抗体模倣物、ペプトイド、アプタマー、酵素、ペプチド、有機もしくは無機分子、天然もしくは合成化合物、またはこれらの組み合わせを含む。特定の態様において、剤は、1つまたは複数の低分子化合物を含む。特定の態様において、1つまたは複数の低分子は、糖脂質代謝を調整する。特定の態様において、本方法は、第2の治療剤を投与する工程をさらに含む。
【0018】
別の局面において、候補治療剤(有機低分子剤を含む)を同定する方法は、リソソーム欠損を含む細胞と候補治療剤を接触させる工程、正常対照と比較したリソソームの機能の調整をアッセイする工程を含み、それによって候補治療剤を同定する。特定の態様において、候補治療剤は、それらのホメオスタシスバランスを維持するよう細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、リソソーム酵素、およびこれらの組み合わせを調整する。
【0019】
特定の態様において、候補治療剤は、低分子化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、抗体、抗体フラグメント、単鎖抗体、抗体模倣物、ペプトイド、アプタマー、酵素、ペプチド、有機もしくは無機分子、天然もしくは合成化合物、またはこれらの組み合わせを含む。特定の態様において、細胞は、幹細胞、臍帯血細胞、成体幹細胞、間葉系幹細胞、間葉系間質細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、自家細胞、自家幹細胞、骨髄細胞、造血細胞、造血幹細胞、体細胞、生殖系列細胞、分化細胞、体性幹細胞、胚性幹細胞、細胞株、患者細胞、哺乳類細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、神経細胞、脳細胞、または中枢神経系細胞を含む。特定の態様において、細胞は、自家細胞、同種細胞、ハプロタイプ一致細胞、ハプロタイプ不一致細胞、ハプロ同一細胞、または異種細胞を含む。
【0020】
1つの局面において、低分子剤(例えば、本明細書に開示される疾患もしくは障害の危険があるまたは本明細書に開示される疾患もしくは障害と診断された対象を処置する方法における使用において)は、
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0021】
特定の態様において、リソソーム機能障害に関連する疾患または障害は、リソソーム蓄積症(LSD)、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、神経学的、精神的、または機能的脳障害を含む特発性/散発性脳障害を含み、特に、疾患はバッテン病(BD)である。特定の態様において、NCLまたはBDはCLN3病を含む。特定の態様において、化合物は、PLA2遺伝子、特にPLA2G4Aおよび/またはPLA2G7遺伝子の発現を制御または調整できる。特定の局面において、化合物は、脳における海馬CA3領域または大脳皮質で生じる疾患病理に影響を及ぼし得る。
【0022】
定義
それ以外の定義がなされていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される用語のうち多くの一般的定義を当業者に提供する:Academic Press Dictionary of Science and Technology, Morris (Ed.), Academic Press (1st ed., 1992);Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, Smith et al. (Eds.), Oxford University Press (revised ed., 2000);Encyclopaedic Dictionary of Chemistry, Kumar (Ed.), Anmol Publications Pvt. Ltd. (2002);Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, Singleton et al. (Eds.), John Wiley & Sons (3rd ed., 2002);Dictionary of Chemistry, Hunt (Ed.), Routledge (1st ed., 1999); Dictionary of Pharmaceutical Medicine, Nahler (Ed.), Springer-Verlag Telos (1994);Dictionary of Organic Chemistry, Kumar and Anandand (Eds.), Anmol Publications Pvt. Ltd. (2002);およびA Dictionary of Biology (Oxford Paperback Reference), Martin and Hine (Eds.), Oxford University Press (4th ed., 2000)。加えて、以下の定義が、本発明の実施にあたって読み手を支援するために提供される。
【0023】
本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈においてそうではないと明確に示されていない限り、それらの複数形も包含することが意図されている。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、またはそれらの派生語が詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される範囲において、そのような用語は「含む(comprising)」という用語と同様の様式で包括的であることが意図されている。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される「または」という用語は通常、文脈においてそうではないと明確に示されていない限り、「および/または」を含む意味で使用される。具体的に言及されていない限りまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「約」という用語は、当技術分野における一般公差の範囲内、例えば、平均値の2標準偏差内であると理解される。約とは、言及されている値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%内であると理解され得る。それ以外のことが文脈から明らかでない限り、本明細書に提供されるすべての数値は、約という用語により修飾される。
【0025】
本明細書で使用される「投与する(administer)」、「投与」、または「投与する(administering)」という用語は、(1)保健医もしくは彼が承認した代理人のいずれかによりまたはその指揮の下で、本開示にしたがう組成物を提供すること、与えること、投薬すること、および/または処方すること、ならびに(2)患者または本人自身が、本開示にしたがう組成物を投入すること、吸収すること、または摂取することを指す。
【0026】
本明細書で使用される「剤」または「候補治療剤」という用語は、リソソーム機能障害または他の医学的状態を予防、改善、または処置することができる任意の分子、化学的実体、組成物、薬物、治療剤、化学療法剤、または生物学的剤を包含することを意味する。この用語には、低分子化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、抗体、エピトープ認識部位を保持する抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、単鎖抗体、抗体模倣物(例えば、DARPin、アフィボディ分子、アフィリン(affilin)、アフィチン(affitin)、アンチカリン(anticalin)、アビマー(avimer)、フィノマー(fynomer)、クニッツドメインペプチド、およびモノボディ)、ペプトイド、アプタマー、酵素、ペプチド、有機または無機分子、天然または合成化合物等が含まれる。剤には、公知の薬物である化合物、治療活性は同定されているがさらなる治療的評価を受けている化合物、および、薬理学的活性についてスクリーニングされる対象となる集合およびライブラリのメンバーである化合物が含まれる。剤を、臨床試験の間、前臨床試験の間、またはFDA承認後の任意の段階で本発明の方法にしたがいアッセイすることができる。
【0027】
本明細書で使用される「認知機能」は、知覚、作業記憶を含む様々なタイプの記憶、感情制御、認識、注意、推理、思考および判断能力、思考の柔軟性、ならびに実行機能を含む任意の精神的プロセスを意味することができる。認知機能の測定には、例えば、(a)一般的知能、(b)非言語的知能、(c)達成、(d)注意/実行機能、(e)記憶、(f)視覚運動および運動機能、(g)感情および不安制御、(h)報酬プロセス、意欲、および快不快尺度、(i)認知的柔軟性、セット転換および逆転学習、ならびに(j)言語を測定するよう設計された評価ツールが含まれる。そのような評価ツールは、当技術分野で周知であり、例えば以下を含む:ウェクスラー成人知能検査および認知能力に関するウッドコック・ジョンソンIIIテスト(両方とも一般知能の評価用)、レーヴン漸進的マトリックス(非言語的知能の評価用)、広範囲達成度テストおよび達成度に関するウッドコック・ジョンソンIIIテスト(学力の評価用)、コナーの連続遂行テストII(注意/実行機能の評価用)、記憶および学習の広範囲評価(記憶および学習の評価用)、ベンダー視覚運動ゲシュタルトテスト、ハルステッド-レイタン握力テスト、ハルステッド-レイタン指タッピングテスト、およびラファイエット溝ありペグボードタスク(すべて視覚運動および運動機能の評価用)、ケンブリッジ神経心理学的テスト自動バッテリー(CANTAB)感情認識タスク、ペンコンピュータ神経認識バッテリー(PCNB)ペン感情特定テスト、およびペン感情識別テスト、メイヤー-サロベイ-カルソ感情知能テスト(MSCEIT(商標)):感情管理、感情増幅および低下尺度、感情制御問診、ズン自己評価式不安尺度、ハミルトン不安尺度、ベック不安調査表、ペン心配状態問診、曖昧さ不耐性尺度、行動抑制尺度、否定的評価懸念尺度、不安感受性指数、およびライフイベント・困難スケジュール(感情および不安制御の評価用)、強化学習、金銭的インセンティブ報酬、適応型ケンブリッジギャンブル、累進比率、単純推測タスク、固定比率満足スケジュール、格下げタスク、習慣タスク、習慣学習タスク、確率的報酬タスク、パブロフ型条件付け、ドリフティングダブルバンディット、確率選択タスク、支払意欲タスク、遅延報酬割引タスク、および報酬に対する努力支払いタスク(報酬プロセス、意欲、および快不快尺度の評価用)、CANTABイントラ・エクストラ次元セット転換、PCNBペン条件付き除外テスト、およびウィスコンシンカードソーティングテスト(認知的柔軟性、セット転換、および逆転学習の評価用)、ならびにピーボディー絵画語彙テスト(言語の評価用)。本明細書で言及される「認知機能を向上させる」というフレーズは、対象の、象徴的動作を行う能力、例えば、知覚する、記憶する、心像を創造する、思考の明瞭さを有する、認識する、推理する、考える、または判断する能力における、正の変化を意味する。本明細書で使用される「認知機能の低下」という用語は、対象の、象徴的動作を行う能力、例えば、知覚する、記憶する、心像を創造する、思考の明瞭さを有する、認識する、推理する、考える、または判断する能力における、負の変化を指す。
【0028】
本明細書で使用される「併用療法」という用語は、対象が両方の剤に同時に曝露されるような重複するレジメンで2つまたはそれ以上の異なる剤が投与される状況を指す。併用療法において使用される場合、2つまたはそれ以上の異なる剤は、同時にまたは別々に投与され得る。この併用投与には、同一の剤形での2つまたはそれ以上の剤の同時投与、別々の剤形での同時投与、および別々の投与を含めることができる。すなわち、2つまたはそれ以上の剤を、同一の剤形で一緒に製剤化し、同時に投与することができる。あるいは、別々の製剤中に存在する2つまたはそれ以上の剤を、同時に投与することができる。別の代替例として、第1の剤を投与した直後に、1つまたは複数の追加の剤を投与することができる。別々の投与プロトコルにおいて、2つまたはそれ以上の剤を、数分間隔で、または数時間間隔で、または数日間隔で投与してもよい。
【0029】
物品、組成物、装置、方法、プロセス、システム等の所定のまたは記載された要素への言及において本明細書で使用される「含む(comprising)」、「含む(comprise)」、または「含まれる」という用語およびそれらの派生語は、包括的またはオープンエンドであることを意味し、これは、追加の要素を許容し、それによって、該所定のまたは記載された物品、組成物、装置、方法、プロセス、システム等が、指定された要素(または適切な場合その等価物)を含むことと、かつ他の要素が含まれることができかつそれでもなお該所定の物品、組成物、装置、方法、プロセス、システム等の範囲/定義の範囲内であることとを示す。
【0030】
「接触させる」という用語は、その通常の意味を有し、2つまたはそれ以上の剤を合わせること、剤と細胞を合わせること、または異なる細胞の2つの集団を合わせることを指す。接触させることは、インビトロで、例えば、試験管または成長培地中でトログリタゾンおよび/またはロスバスタチンと細胞を混合すること、または抗体の集団を細胞の集団と混合することを生じることができる。接触させることはまた、細胞内またはインサイチューで、例えば、2つのポリペプチドを、その2つのポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドの細胞内での共発現により細胞内で、または細胞溶解物中で接触させることを生じることができる。接触させることはまた、インビボで、対象または非ヒト動物内で、例えば、剤を対象に、標的細胞への該剤の送達のために投与することにより、行うことができる。
【0031】
「決定する」、「測定する」、「評価する(evaluating)」、「検出する」、「評価する(assessing)」、および「アッセイする」という用語は、任意の形態の測定を指すために本明細書で互換的に使用され、ある要素が存在するか否かを決定することを含む。これらの用語には、定量的および/または定性的決定の両方が含まれる。評価することは、相対的または絶対的であり得る。「~の存在を評価する」ことには、存在する何かの量を決定すること、およびそれが存在するか存在しないかを決定することが含まれる。
【0032】
本明細書で使用される「診断」は、病理学的状態の存在、程度、および/または性質を特定することを意味する。診断方法は、それらの特異性および選択性の点で相違する。特定の診断方法は、ある状態の決定的な診断を提供しない場合があるが、診断を補助する正の指標を該方法が提供するならばそれで十分である。
【0033】
本明細書で使用される「リソソーム機能障害」または「リソソーム欠損」は、対照に対して負の様式で影響を受けているリソソームの任意の活性、酵素的もしくは非酵素的、または任意の特性を意味する。これには、リソソームへのまたはリソソームからの小胞輸送、エンドサイトーシス経路、ヘテロファジーまたはオートファジー、ならびにリソソーム内に局在化する酵素の発現および活性が含まれる。「リソソーム機能を調整する」とは、1つまたは複数のそのような活性を、正常対照状態においてまたは適切なホメオスタシスバランス内で見いだされるそのような活性のレベルまたは量から増加または減少させることを意味する。調整されることのできるリソソーム酵素の例には、リソソーム酸性ヒドロラーゼ、リソソームプロテアーゼ、リソソームヌクレアーゼ、リソソームリパーゼ、アミラーゼ、およびカテプシンが含まれる。カテプシンB、カテプシンH、またはカテプシンLを、例えば参照により本明細書に組み入れられるBarrett, A. J. et al., Meth. Enzymol. 80:535 (1981), Academic Press, New Yorkに記載されるような当技術分野で公知の方法を用いてアッセイすることができる。リソソーム機能障害または欠損は、リソソームまたは細胞にとって有害である異常なリソソーム形態、化学、または活性としてさらに説明される。リソソーム機能障害の例には、エンドサイトーシス経路の正常な活性における増加もしくは減少のいずれかである有害な変化、リソソーム形態における有害な変化、リソソーム内pH、および/またはリソソーム酵素の活性における有害な変化が含まれる。
【0034】
「モジュレーター」という用語は、関心対象の活性が観察される系におけるその存在が、そのモジュレーターが存在しない以外は同等である条件下で観察されるものと比較した該活性のレベルおよび/または性質の変化と相関する実体を指すために使用される。いくつかの態様において、モジュレーターは、そのモジュレーターが存在しない以外は同等である条件下で観察されるものと比較してその存在下で活性が増加するという点で、活性化因子である。いくつかの態様において、モジュレーターは、そのモジュレーターが存在しない以外は同等である条件と比較してその存在下で活性が減少するという点で、阻害因子である。いくつかの態様において、モジュレーターは、その活性が関心対象となる標的実体と、直接的に相互作用する。いくつかの態様において、モジュレーターは、その活性が関心対象となる標的実体と、間接的に(すなわち、標的実体と相互作用する中間作用物質と直接的に)相互作用する。いくつかの態様において、モジュレーターは、関心対象の標的実体のレベルに影響し、あるいはまたは加えて、いくつかの態様において、モジュレーターは、標的実体のレベルに影響することなく関心対象の標的実体の活性に影響する。いくつかの態様において、モジュレーターは、活性において観察される違いがレベルにおいて観察される違いによって完全には説明されずかつレベルにおいて観察される違いと同程度ではないように、関心対象の標的実体のレベルおよび活性の両方に影響する。
【0035】
本明細書で使用され得る「核酸」、「核酸分子」、「核酸オリゴマー」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸配列」、「核酸フラグメント」、および「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に使用され、かつ、デオキシリボヌクレオチドおよび/もしくはリボヌクレオチドのいずれかである、様々な長さを有し得る一緒に共有結合されたヌクレオチド、ならびに/またはそのアナログ、誘導体、もしくは修飾物のポリマー形態を含むがこれらに限定されないことが意図される。異なるポリヌクレオチドは、異なる3次元構造を有し得、かつ、既知または未知の様々な機能を発揮し得る。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、ゲノムDNA、ゲノム、ミトコンドリアDNA、遺伝子、遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、遺伝子間DNA(非限定的にヘテロクロマチンDNAを含む)、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、単離されたDNAの配列、単離されたRNAの配列、核酸プローブ、およびプライマーが含まれる。本開示の方法において有用なポリヌクレオチドは、天然核酸配列およびそのバリアント、人工核酸配列、またはそのような配列の組み合わせを含み得る。
【0036】
ホスホロチオエート骨格を有する核酸を例えば含む、核酸は、1つまたは複数の反応性部分を含むことができる。本明細書で使用される反応性部分という用語には、共有結合的、非共有結合的、または他の相互作用を通じて別の分子、例えば、核酸またはポリペプチドと反応することができる任意の基が含まれる。例として、核酸は、共有結合的、非共有結合的、または他の相互作用を通じてタンパク質またはポリペプチド上のアミノ酸と反応するアミノ酸反応性部分を含むことができる。
【0037】
この用語はまた、既知のヌクレオチドアナログまたは修飾骨格残基もしくは連結を含む核酸も包含し、これらは、合成性である、天然に存在する、および天然に存在しない、かつこれらは、参照核酸と類似の結合特性を有する、かつこれらは、参照ヌクレオチドと類似の様式で代謝される。そのようなアナログの例には非限定的に、例えばホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、ホスホロチオエート(ホスフェート内の酸素と置き換わっている二重結合硫黄を有するホスホチオエートとしても公知)、ホスホロジチオエート、ホスホノカルボン酸、ホスホノカルボキシレート、ホスホノ酢酸、ホスホノギ酸、メチルホスホネート、ホスホン酸ホウ素、またはO-メチルホスホロアミダイト連結を含むホスホジエステル誘導体(Eckstein, OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES: A PRACTICAL APPROACH, Oxford University Pressを参照のこと)、ならびに、例えば、5-メチルシチジンまたはシュードウリジンにおけるなどのヌクレオチド塩基に対する修飾;ならびに、ペプチド核酸骨格および連結が含まれる。他のアナログ核酸には、米国特許第5,235,033号および同第5,034,506号ならびにASC Symposium Series 580、CARBOHYDRATE MODIFICATIONS IN ANTISENSE RESEARCH、Sanghui & Cook編の第6および第7章に記載されるものを含む、正の骨格、非イオン性骨格、修飾糖、および非リボース骨格(例えば、当技術分野で公知のホスホロジアミデートモルホリノオリゴまたはロックド核酸(LNA))を有するものが含まれる。1つまたは複数の炭素環糖を含む核酸もまた、核酸の1つの定義に含まれる。リボース・ホスフェート骨格の修飾は、様々な理由から、例えば、生理学的環境内でのまたはバイオチップ上のプローブとしてのそのような分子の安定性および半減期を増大させるために、なされ得る。天然に存在する核酸およびアナログの混合物を作製することができ、あるいは、異なる核酸アナログの混合物ならびに天然に存在する核酸およびアナログの混合物を作製してもよい。複数の態様において、DNAにおけるヌクレオチド間連結は、ホスホジエステル、ホスホジエステル誘導体、または両方の組み合わせである。
【0038】
「機能的に連結される」とは、そのように記載された構成要素が、それらがその意図された様式で機能することを可能にする関係にあるような並置を指す。コード配列に「機能的に連結」された制御配列は、該制御配列に適合する条件下で該コード配列の発現が達成されるように、ライゲートされている。
【0039】
本明細書で言及される「薬学的に許容される塩」は、薬学的用途での使用に適した任意の塩調製物である。薬学的に許容される塩には、アミン塩、例えば、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミン、および他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、1-パラ-クロロ-ベンジル-2-ピロリジン-1'-イルメチルベンゾイミダゾール、ジエチルアミン、および他のアルキルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等;アルカリ金属塩、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム等;アルカリ土類金属塩、例えば、バリウム、カルシウム、マグネシウム等;遷移金属塩、例えば、亜鉛、アルミニウム等;他の金属塩、例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸二ナトリウム等;無機酸、例えば、塩酸塩、硫酸塩等;ならびに有機酸の塩、例えば、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、フマル酸塩等が含まれるがこれらに限定されない。
【0040】
「薬学的に許容される担体」とは、標準的な薬学的担体、緩衝剤等のいずれか、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロースの5%水溶液、およびエマルジョン(例えば、油/水または水/油エマルジョン)を指す。賦形剤の非限定的な例には、アジュバント、結合剤、増量剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、湿潤剤、滑沢剤、流動化剤、甘味剤、芳香剤、および着色剤が含まれる。適切な薬学的担体、賦形剤、および希釈剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Ed.(Mack Publishing Co., Easton, 1995)に記載されている。好ましい薬学的担体は、活性剤の意図されている投与様式によって決まる。典型的な投与様式には、経腸(例えば、経口)または非経口(例えば、皮下、筋内、静脈内、もしくは腹腔内注射;または局所、経皮、もしくは経粘膜投与)が含まれる。
【0041】
「薬学的組成物」とは、ヒトおよび哺乳類を含む対象動物における薬学的使用に適した組成物を指す。薬学的組成物は、治療有効量の、本明細書に開示される治療剤(例えば、剤は、リソソームの機能または活性を調整し、それが次に認知機能を調整する)、任意に、別の生物学的活性剤、および任意に、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む。1つの態様において、薬学的組成物は、活性成分と担体を構成する不活性成分とを含む組成物、ならびに任意の2つもしくはそれ以上の成分の組み合わせ、複合体形成、もしくは凝集から、または1つもしくは複数の成分の解離から、または1つもしくは複数の成分の他のタイプの反応もしくは相互作用から、直接的または間接的に生じる任意の産物を包含する。したがって、本開示の薬学的組成物は、本開示の化合物および薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を混合することにより作製される任意の組成物を包含する。
【0042】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始するのに必要とされる、細胞の合成機構、または導入された合成機構により認識されるDNA配列として定義される。
【0043】
本明細書で使用される「プロモーター/調節配列」という用語は、そのプロモーター/調節配列に機能的に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を意味する。いくつかの例において、この配列は、コアプロモーター配列であり得、他の例において、この配列はまた、エンハンサー配列と、該遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節エレメントとを含み得る。プロモーター/調節配列は、例えば、遺伝子産物を組織特異的な様式で発現させるものであり得る。
【0044】
「構成性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするまたは指定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に細胞の大半のまたはすべての生理学的条件下で該遺伝子産物を該細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
【0045】
「誘導性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするまたは指定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、該プロモーターに対応する誘導因子が細胞内に存在するときに実質的に限って、該遺伝子産物を該細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
【0046】
「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子によりコードされるまたは指定されるポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、細胞が該プロモーターに対応する組織タイプの細胞であるときに実質的に限って、該遺伝子産物を該細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
【0047】
「予防的」処置とは、疾患の兆候を示していないかまたは疾患の初期兆候のみを示している対象に対して、病理が進展する危険を低下させる目的で施される処置である。本開示の化合物または組成物は、病理が進展する可能性を下げるためまたは、進展した場合に病理の重篤度を最小限に抑えるための予防的処置として与えられ得る。
【0048】
本明細書で使用される「対象」という用語は、哺乳類を包含する。哺乳類の例には、哺乳類綱の任意のメンバーが含まれるがこれらに限定されない:ヒト、非ヒト霊長類、例えば、チンパンジー、ならびに他の類人猿および猿種;家畜動物、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;飼育動物、例えば、ウサギ、イヌ、およびネコ;げっ歯類、例えば、ラット、マウス、およびモルモットを含む実験動物等。この用語は、特定の年齢または性別を示すものではない。様々な態様において、対象はヒトである。
【0049】
「治療的」処置とは、病理の兆候または症候を示している対象に対して、それらの兆候または症候を縮小または消滅させる目的で施される処置である。兆候または症候は、生化学的、細胞的、組織学的、機能的または物理的、主観的または客観的であり得る。
【0050】
「処置」とは、予防的処置または治療的処置を指す。特定の態様において、「処置」とは、治療または予防目的での対象への化合物または組成物の投与を指す。
【0051】
本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒトおよび動物対象のための統一された投与に適した物理的に隔離された単位を指し、各々の単位は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体、またはビヒクルと任意で共同して、所望の効果を生じるのに十分な量で算出された既定量の本開示の化合物を含む。本開示の新規の単位剤形の詳細は、用いられる特定の化合物および達成されるべき効果、ならびに宿主における各化合物に関連する薬力学によって決まる。
【0052】
本明細書における「化合物A」への言及は、以下の構造:
の化合物またはその薬学的に許容される塩を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1A~1Cは、統合失調症(SZ)を有する患者由来の細胞において見いだされる様々なタイプのリソソーム関連異常が認知変化と相関することを示す一連のプロットおよび電子顕微鏡画像である。図1A:細胞の自家蛍光(AF)は、統合失調症(SZ)患者由来の末梢血細胞において、健常対照(CON)由来のものと比較して有意に上昇した。図1B:免疫電子顕微鏡観察により、SZ患者の一部由来の末梢血細胞において変化したリソソームが検出された。本発明者らは、このオルガネラの形状およびサイズの変化と、ストレスシグナルの兆候である、リソソームにおけるGAPDHの蓄積とを検出した。緑色の三角はリソソームの境界を示し、赤色の三角はGAPDH免疫反応性を示す。図1C:AFのレベルと認知的柔軟性(ウィスコンシンカードソーティングテスト(Wisconsin Card Sorting Test))スコアは負に相関した。CON(白色)、SZ(黒色)。
図2A図2A~2Dは、BD細胞モデルからの結果を示す一連のプロットおよびグラフである。図2A:健常者(白色の丸)および若年性NCL(JNCL)患者(緑色の丸)由来のリンパ芽球における自家蛍光(AF)の強度とLAMP1領域の間の相関。図2B:JNCL患者由来のリンパ芽球は、上昇したAFを示した。トログリタゾン(3μM)およびロスバスタチン(10μM)はそれを減少させた。図2C:JNCL患者由来のリンパ芽球は、抗LAMP1抗体により強く染色された。トログリタゾン(3μM)およびロスバスタチン(10μM)はそれを減少させた(n=3)。図2D:Cln3変異体iPSCから分化させたニューロン細胞は、抗LAMP1抗体により強く染色される。トログリタゾン処置(0.08~2μM)およびロスバスタチン処置(0.4~10μM)はそれを用量依存的に減少させた(n=2~3)。
図2B図2Aの説明を参照されたい。
図2C図2Aの説明を参照されたい。
図2D図2Aの説明を参照されたい。
図3A図3A~3Cは、BD動物モデル(Cln3-/-マウス)からの結果を示す一連の免疫染色およびグラフである。図3A: 6ヶ月齢野生型マウス、未処置およびトログリタゾン(0.06~0.3 mg/g食物、4ヶ月間)処置Cln3-/-マウス由来の脳切片(CA2/3およびVPL/VPM)のLAMP1の免疫組織化学の代表図(左)。CA2/3およびVPL/VPMにおけるLAMP1陽性領域の定量的分析。本発明者らが未処置Cln3-/-マウス脳においてLAMP1の蓄積を見出したのに対して、トログリタゾン処置マウス由来の脳はLAMP1陽性領域の減少を示した(右、n=8~10)。図3B:6ヶ月齢野生型マウス、未処置およびトログリタゾン(0.06~3 mg/g食物、4ヶ月間)処置Cln3-/-マウスを用いた新規オブジェクト認識(NOR)テスト。未処置Cln3-/-マウスはNORテストにおける低下を示したのに対して、トログリタゾン処置Cln3-/-マウスはそれを示さなかった。図3C:抗LAMP1抗体で強く染色されたCln3-/-マウス由来の末梢白血球。トログリタゾン処置(0.06~3 mg/g食物、4ヶ月間)はそれを減少させた(n=8~10)。
図3B図3Aの説明を参照されたい。
図3C図3Aの説明を参照されたい。
図4A図4A~4Dは、ヒト細胞およびマウス疾患モデルにおけるバッテン関連病理に対する化合物Aの有益な効果(細胞病理、行動)を示している。A、化合物Aによる、バッテン病(BD)リンパ芽球における上昇した自家蛍光(AF)の改善。B、化合物Aによる、バッテン病(BD)リンパ芽球における上昇したLAMP1シグナルの改善。C、化合物Aによる、BDマウス[CLN3ノックアウト(KO)マウス]の末梢白血球における上昇したLAMP1シグナルの改善。D、化合物Aによる、BDマウス認知障害の改善(新規オブジェクト認識テスト)。
図4B図4Aの説明を参照されたい。
図4C図4Aの説明を参照されたい。
図4D図4Aの説明を参照されたい。
図5図5Aおよび5Bは、化合物AによるPLA2G4A(図5A)およびPLA2G7(図5B)の発現制御を示す。化合物Aは、バッテンCLN3病の病理学的改善の主要機構の根底をなし得るPLA2遺伝子の発現に有意に影響した。データはRNA配列決定分析を通じて得られ、ここで本発明者らは、(i)野生型(WT)ニューロン+モック、(ii)WTニューロン+化合物A、(iii)バッテン細胞モデルCLN3ノックアウト(KO)ニューロン+モック、および(iv)KOニューロン+化合物Aのグループ内で遺伝子発現を比較した。ニューロンは、ヒト人工多能性幹細胞を分化させることによって調整した。
図6図6Aおよび6Bは、自家蛍光(AF)の組織学的分析を行うことによる、細胞/組織病理と行動/神経精神病学的表現型の間の関連性を示す。図6Aは、脳におけるバッテンCLN3病の病理が海馬CA3領域において顕著であったことを示しており、図6Bも、CLN3 KOマウスにおいて大脳皮質が関係していたことを示している。したがって、PLA2遺伝子がG3PIの代謝に直接関与していることを一つの理由として、PLA2遺伝子に対する化合物Aの影響が病理学的改善の主要機構であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
特発性/散発性脳障害は、リソソーム異常を示すことが見いだされている。これらの欠損は、例えばアルツハイマー病(AD)において強調される。リソソーム欠損は、精神障害の病態生理に関与している可能性がある。例えば、統合失調症(SZ)患者由来のSZ死後脳における遺伝子発現プロフィールの変化が報告されている。しかし、精神障害におけるリソソーム欠損の調査は未だその初期段階にある。理論により束縛されることを望むわけではないが、リソソーム欠損は神経機能障害の主たる駆動機構であり得るという仮説を立てた。
【0055】
リソソーム機能障害がその中心的病理とみなされている、稀な遺伝障害のグループがある。その代表的な障害の1つはBDであり、これはNCLとも呼ばれる。BDは、視力の問題、てんかん、感情/不安制御を含む認知障害、ならびに精神症により特徴づけられ得る。BD患者は、その子供時代に機能障害となりはじめ、20~30年しか生きることができない。Cln3と呼ばれる遺伝子における変異がBDの症例の約半数を引き起こし、Cln2のような他のいくつかの顕著な遺伝子も存在する。Cln3に駆動されるBDが、リソソーム病理を示す同種の状態とみなされる。したがって、Cln3の疾患関連変異(またはCln3の機能喪失)を有する動物および細胞モデルが、その遺伝子が1995年に同定されて以降、研究でしばしば使用されている。これらのモデルは実際、脳障害におけるリソソーム欠損を調査するのに効果的であるとみなされている。
【0056】
組成物
1つの局面において、本開示は、糖脂質代謝を調整する剤を活性成分として含む組成物を提供する。特定の態様において、組成物は、リソソームの機能または活性を調整する治療有効用量の少なくとも1つの剤を含む。特定の態様において、リソソームの機能または活性は、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、リソソーム酵素、またはこれらの組み合わせの調整により決定される。特定の態様において、剤の治療効果は、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、およびこれらの組み合わせによりモニタリングされる。
【0057】
特定の態様において、組成物は、脂質およびタンパク質の代謝全体を調整してそれが次にリソソーム機能を直接的に調整する(特に、向上させる)ことができる、低分子のセットであるトログリタゾンおよびロスバスタチンを含む、薬学的組成物を含む。
【0058】
特定の態様において、組成物は、他の低分子化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、抗体、抗体フラグメント、単鎖抗体、抗体模倣物、ペプトイド、アプタマー、酵素、ペプチド、有機もしくは無機分子、天然もしくは合成化合物、またはこれらの組み合わせを含む薬学的組成物を含む。
【0059】
特定の態様において、組成物は、1つまたは複数の低分子化合物を含む薬学的組成物を含む。特定の態様において、1つまたは複数の低分子は、糖脂質代謝を調整する。特定の態様において、1つまたは複数の低分子は、トログリタゾン、ロスバスタチン、またはこれらの組み合わせを含む。
【0060】
述べられたように、特定の態様において、1つまたは複数の低分子は、トログリタゾン以外にまたはトログリタゾンに加えて、1つまたは複数のチアゾリジンジオン化合物、例えば、ピオグリタゾンおよび/またはロシグリタゾンを含み得る。特定の態様において、1つまたは複数の低分子は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)を活性化する1つまたは複数の化合物を含み得る。適切なトログリタゾン化合物は、米国特許第6207690号にも開示されている。
【0061】
特定の態様において、1つまたは複数の低分子は、
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を含み得る。
【0062】
化合物Aは、容易に調製され得る。以下のスキーム1はその例である。
【0063】
スキーム1:
スキーム1で工程a)に適切に示されるように、その環窒素をアルキル基で置換するような塩基性条件下でハロゲン化アリールa1を反応させ得る。例えば、上記スキーム1においてa2により例示される置換環窒素化合物を提供するために、求電子試薬、例えばハロゲン化アルキルを反応させ得る。a1のような試薬は、商業的に入手可能であり得るかまたは、例えばTetrahedron (2007), 63(4), 847-854に記載される方法により容易に調製され得る。上記スキーム1で工程b)に示されるように、化合物Aに関して示されているような所望の置換基を提供するために化合物a2をさらに反応させる。
【0064】
さらなる態様において、1つまたは複数の低分子は、1つまたは複数のスタチン化合物を含み得る。特に、1つまたは低分子化合物は、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、および/またはシンバスタチンのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0065】
特定の態様において、組成物は、ケンペリド(3,5,7-トリヒドロキシ-4'-メトキシフラボン)、イミグルセラーゼ、ベラグルセラーゼ、タリグルセラーゼ、ミグルスタット、エリグルスタット、アガルシダーゼベータ、アガルシダーゼアルファ、ミガラスタット、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、スルファミダーゼ、エロスルファーゼ、ガルスルファーゼ、セベリパーゼ、セルリポナーゼ、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物を含む。
【0066】
特定の態様において、組成物は、ホスホリパーゼA2(PLA2)の発現または活性を調整する少なくとも1つの物質を含む薬学的組成物を含む。
【0067】
特定の態様において、PLA2には、分泌型PLA2(グループI、II、III、V、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIV;例えば、PLA2G1A、PLA2G1B、PLA2G2A、PLA2G2B、PLA2G2C、PLA2G2D、PLA2G2E、PLA2G2F、PLA2G3、PLA2G5、PLA2G9、PLA2G10、PLA2G11A、PLA2G11B、PLA2G12A、PLA2G12B、PLA2G13、およびPLA2G14)、細胞質PLA2(グループIV;例えば、PLA2G4A、PLA2G4B、PLA2G4C、PLA2G4D、PLA2G4E、およびPLA2G4F)、Ca2+非依存性PLA2(グループVI;例えば、PLA2G6A、PLA2G6B、PLA2G6C、PLA2G6D、PLA2G6E、およびPLA2G6F)、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(グループVIIおよびVIII;例えば、PLA2G7A、PLA2G7B、PLA2G8A、およびPLA2G8B)、リポタンパク質関連PLA2(グループXV;例えば、PLA2G15)、脂肪PLA2(グループXVI;例えば、PLA2G16)(Dennis et al., Chem Rev. 111 : 6130 (2011))、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0068】
(表1)リソソーム蓄積症の処置に関して承認された薬物の概要および希少疾病用医薬品指定がなされた開発中のいくつかの製品の例
CHO、チャイニーズハムスター卵巣細胞;MPS、ムコ多糖症;HIRMAb、ヒトインスリン受容体モノクローナル抗体
【0069】
処置の方法および併用療法
特定の態様において、リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の危険があるまたはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害と診断された対象を処置する方法は、リソソームの機能を調整する治療有効用量の剤(有機低分子剤を含む)を該対象に投与する工程を含み、それによって、リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の危険があるまたはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害と診断された対象を処置する。
【0070】
特定の態様において、対象は、治療有効用量の少なくとも1つの剤(有機低分子剤を含む)を含む組成物を投与され該剤は、リソソームの機能または活性を調整する。特定の態様において、リソソームの機能または活性は、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、リソソーム酵素、またはこれらの組み合わせの調整により決定される。特定の態様において、剤の治療効果は、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、およびこれらの組み合わせによりモニタリングされる。
【0071】
特定の態様において、脂質およびタンパク質の代謝全体を調整してそれが次にリソソーム機能を直接的に調整する(特に、向上させる)ことができる低分子のセットであるトログリタゾンおよびロスバスタチンを含む薬学的組成物を含む組成物を、対象は投与される。
【0072】
特定の態様において、対象は、他の低分子化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、抗体、抗体フラグメント、単鎖抗体、抗体模倣物、ペプトイド、アプタマー、酵素、ペプチド、有機もしくは無機分子、天然もしくは合成化合物、またはこれらの組み合わせを含む薬学的組成物を含む組成物を投与される。
【0073】
特定の態様において、対象は、ケンペリド(3,5,7-トリヒドロキシ-4'-メトキシフラボン)、イミグルセラーゼ、ベラグルセラーゼ、タリグルセラーゼ、ミグルスタット、エリグルスタット、アガルシダーゼベータ、アガルシダーゼアルファ、ミガラスタット、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、スルファミダーゼ、エロスルファーゼ、ガルスルファーゼ、セベリパーゼ、セルリポナーゼ、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物を含む組成物を投与される。
【0074】
特定の態様において、対象は、1つまたは複数のチアゾリジンジオン化合物を含む薬学的組成物を含む組成物を投与される。
【0075】
特定の態様において、対象は、トログリタゾン以外にまたはトログリタゾンに加えて1つまたは複数のチアゾリジンジオン化合物、例えば、ピオグリタゾンおよび/またはロシグリタゾンを含む薬学的組成物を含む組成物を投与される。
【0076】
特定の態様において、対象は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)を活性化する1つまたは複数の化合物を含み得る、本方法および使用における投与のための1つまたは複数の低分子を含む薬学的組成物を含む組成物を投与される。特定の態様において、本方法および使用における投与のための1つまたは複数の低分子は、PPAR-γを活性化する1つまたは複数の化合物を含み得る。
【0077】
特定の態様において、対象は、1つまたは複数のスタチン化合物を含む薬学的組成物を含む組成物を投与される。特に、1つまたは低分子化合物は、アトルバスタチン(Lipitor)、フルバスタチン(Lescol XL)、ロバスタチン(Altoprev)、ピタバスタチン(Livalo)、プラバスタチン(Pravachol)、ロスバスタチン(Crestor、Ezallor)、および/またはシンバスタチン(Zocor、FloLipid)のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0078】
特定の態様において、対象は、化合物Aを含む薬学的組成物を含む組成物を投与される。
【0079】
特定の態様において、対象は、1つまたは複数の低分子化合物を含む薬学的組成物を含む組成物を投与される。特定の態様において、1つまたは複数の低分子は糖脂質代謝を調整する。特定の態様において、1つまたは複数の低分子は、トログリタゾン、ロスバスタチン、またはこれらの組み合わせを含む。
【0080】
特定の態様において、1つまたは複数の治療剤、例えば、トログリタゾン、ロスバスタチンもしくはこれらの組み合わせ、またはスタチン化合物、または化合物Aは、1つまたは複数の第2の療法または治療剤と組み合わされる。これらには、造血幹細胞移植(HSCT)、酵素置換療法(ERT)、薬理学的シャペロン療法(PCT)、基質合成抑制療法(SRT)、および遺伝子療法(GT)が含まれる(Parenti G, et al. New strategies for the treatment of lysosomal storage diseases (Review). Int J Mol Med 31 : 11-20, 2013. Michael Beck, Treatment strategies for lysosomal storage disorders. Developmental Medicine & Child Neurology 2018, 60: 13-18)。
【0081】
本治療方法において使用するための低分子剤は、公知の方法を用いて同定および化学合成され得る。低分子は通常、約2000ダルトン未満のサイズであるか、あるいは代替的に約1500、750、500、250、または200ダルトン未満のサイズであり、そのような低分子は、インビトロまたはインビボ(インビボモデルを含む)で本明細書に開示されるような結果を提供することができる。これに関して、ポリペプチド標的に結合することができる分子について低分子ライブラリをスクリーニングする技術は当技術分野で周知であることに留意されたい(例えば、PCT公開第WO00/00823号および同第WO00/39585号を参照のこと)。低分子は、例えば縮合環系(2つ、3つ、またはそれ以上の縮合環および1つまたは複数のN、O、またはS環原子を含むもの、例えば、本明細書に開示される化合物Aを含む)であり得、かつ、1つまたは複数の他の官能基、例えばアミン(1級またはより好ましくは2級もしくは3級アルキルアミン部分)、アルデヒド、ケトン、エポキシド、またはアルコールを含み得る。
【0082】
低分子化学物質は、コンビナトリアル化学ライブラリの構成要素であり得る。コンビナトリアル化学ライブラリは、より小さなサブユニットまたはモノマーから構成される複数種の化学物質の集合である。コンビナトリアルライブラリには、数百~数十万の異なる種の化学物質の範囲にわたる様々なサイズのものがある。炭水化物、オリゴヌクレオチド、および小さな有機分子等の化合物から構成されるオリゴマーおよびポリマーライブラリを含む様々なライブラリタイプも存在する。そのようなライブラリは、化学物質の固定およびクロマトグラフィー分離などの様々な用途、ならびに、アクセプター分子に結合することができるかまたは関心対象の生物活性を媒介することができるリガンドを同定するおよび特徴づけるための用途を有する。固相支持体上で化合物のライブラリを合成するための様々な技術が当技術分野で公知である。固相支持体は典型的に、そのライブラリの化合物を形成するためにサブユニットまたはモノマーに結合するように官能化された表面を有するポリマー物体である。1つのライブラリの合成は、典型的に、多数の固相支持体を必要とする。コンビナトリアルライブラリを作成するために、固相支持体を、化合物の1つまたは複数のサブユニットと、および1つまたは複数の多くの試薬と、注意深く制御された、既定の順番の化学反応において反応させる。すなわち、ライブラリサブユニットは、固相支持体上で「成長」させられる。ライブラリが大きいほど、必要とされる反応の数が増え、これにより、そのライブラリを構成する多数種の化合物の化学的組成の状況を常に把握する作業が複雑になる。いくつかの態様において、低分子は、約2000ダルトン未満のサイズであるか、あるいは約1500、750、500、250、または200ダルトン未満のサイズである。
【0083】
造血幹細胞移植: HSCTは、健常ドナー由来の造血幹細胞の治療剤としての使用に基づく。このアプローチにより、二重の効果が達成され得;1つ目は、ドナーの健常細胞により特定の組織を再配置することであり、2つ目のかつ鍵となる効果は、細胞外空間におけるおよび血液循環へのドナーの細胞による機能的リソソームヒドロラーゼの分泌に関連する。分泌される正常な酵素は、レシピエント細胞により取り込まれ得、そしてこれらの細胞における酵素欠陥を交差修正(cross-correct)し得る。HSCTの大きな利点は、ドナー由来の酵素産生細胞が脳に移動できることである。この手法は、特に疾患過程の初期に行われた場合に、神経認知機能および生活の質を改善する可能性を有する。
【0084】
酵素置換療法: ERTは、組換えDNA技術を用いて異なる供給源から大規模に産生され精製されたヒト組換えリソソーム酵素の定期的な静脈内注入に基づく。注射されると、組換え野生型酵素は組織に分布し、細胞によりインターナライズされ、かつリソソーム区画へとターゲティングされ、そこでそれらは欠陥酵素と置き換わる。
【0085】
低分子薬理学的シャペロン: 薬理学的シャペロン療法は、機能喪失型疾患が、変異体タンパク質のミスフォールディング(異常な立体配置)を引き起こすミスセンス変異にしばしば起因するという概念に基づく。ミスフォールディングされたタンパク質は、小胞体の品質管理システムにより認識され、分解される。したがって、これらのいわゆる「ミスフォールディングタンパク質疾患」において、機能喪失は、触媒活性の消失に起因するのではなく、異常タンパク質の分解の結果である。低分子リガンド(薬理学的シャペロン)は、変異体タンパク質と相互作用でき、その正しい立体配置を支持でき、かつその安定性を向上させることができることが示されている。結果として、変異体タンパク質の酵素活性は部分的にレスキューされる。リソソーム蓄積疾患の処置のための薬理学的シャペロンの使用は、ファブリー病に関して最初に提唱された。ファブリー病患者由来の細胞において、α-gal Aの最も強力な阻害剤の1つである1-デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)は、残存するα-ガラクトシダーゼA活性を向上させることが逆説的に示された。原理上は、(一般に、基質合成抑制薬(substrate reducing drug)および低分子薬と同様に)シャペロンは、それらを経口投与することができ、それによって非侵襲的処置が可能になり、非免疫原性であり、およびこれらの障害のいくつかにおいて二次的に損傷され得るマンノース-6-リン酸経路を通じて細胞に送達される必要がないというような、ERTと比較したいくつかの利点を有する。加えて、低分子シャペロンは、CNSを含む異なる組織および系において、細胞膜を通じて自由に拡散して治療濃度に達すると予想される。GM1ガングリオシドーシスの動物モデルにおいて、シャペロンであるN-オクチル4-エピ-β-バリエナミン(NOEV)の使用は、脳における増加した残留活性および基質のより大きなクリアランスをもたらした。
【0086】
プロテオスタシス調節剤: シャペロンは、変異体タンパク質と特異的に相互作用する(かつしたがって単一のタンパク質をレスキューすることができる)リガンドであるのに対して、他の薬物はタンパク質のホメオスタシスまたはプロテオスタシスを制御する細胞機構を調節することができる。プロテオスタシスは、タンパク質の合成、フォールディング、輸送、凝集、および分解を制御する複雑なネットワークである。プロテオスタシス調節剤としても公知のこれらの低分子薬は、このネットワークの能力を調節することができ、かつ、タンパク質フォールディング、輸送、および分解の間の正常なバランスを回復させる可能性がある。2つのプロテオスタシス調節剤が、ゴーシェ病およびGM2ガングリオシドーシスという2つの異なるLSDにおいて2つの変異体リソソーム酵素の機能を回復させることが報告されている。薬理学的シャペロンおよびプロテオスタシス調節剤の同時投与は、相乗作用を示し、酵素活性のさらなる向上をもたらした。このアプローチは、大部分が未だ実験段階にある。
【0087】
遺伝子療法: 遺伝子療法は、酵素的欠陥の完全かつ持続的な修正に関する最も高い潜在能力を有する。遺伝子療法は、患者の細胞における欠陥酵素の活性を増加または回復させることを目的とする。これは、失われた酵素タンパク質を供給することによってではなく、欠陥遺伝子の正常なコピーを送達することによって得られ、これが、レシピエントの細胞による正常な酵素の合成を指示する。インビボ遺伝子移入を達成するために様々なウイルスベクターおよび様々な戦略が調査されている。ヘルペスウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス(Ad)等がベクターとして試験されている。遺伝子修飾は、エクスビボまたはインビボのいずれかで行われ得る。第1の戦略は、細胞のエクスビボ修飾および修飾された細胞の患者への移植に基づく。LSDに関して最も広く認識されている治療標的である細胞は、造血前駆細胞である。
【0088】
基質合成抑制療法(Substrate Reduction Therapy): SRTは、基質の生合成経路の特定の工程の阻害が、リソソームへのそれらの流入を減少させ得、そしてそれらの合成と異化の間の平衡の回復を助け得るという概念に基づく。この課題は一般に、基質の生合成に関与する酵素の低分子阻害剤を用いることによって達成される。SRTは、最も蔓延しているLSDであり、β-グルコセレブロシダーゼ欠損に起因し、かつグリコスフィンゴリピド蓄積により特徴づけられる、1型ゴーシェ病、および、細胞内コレステロール輸送の欠陥であるニーマン-ピック病C型(NPC)の処置のための臨床使用について、すでに承認されている。
【0089】
CRISPR/Cas9: CRISPR/Cas9(クラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し/カスパーゼ-9)は、長期の有害な副作用なしに特定の遺伝的欠陥を修正する可能性を有する。CRISPR/Casは、「分子はさみ」をゲノム内の特定部位に誘導してエンドヌクレアーゼであるカスパーゼ9により二本鎖DNAを切断するためのガイドリボ核酸の使用に基づく。その後、二本鎖DNA切断物は、ドナーDNAを添加することによって修復され、最終的には、制御された遺伝子修飾を導く。
【0090】
特定の態様において、リソソーム機能障害に関連する疾患または障害を処置する方法は、LSD、NCL、広範な神経学的、精神的、または機能的脳障害を含む特発性/散発性脳障害を処置する工程を含む。特定の態様において、LSDは、糖原病、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、オリゴサッカリドーシス、リピドーシス、スフィンゴリピドーシス、リソソーム輸送病、原発性リソソームヒドロラーゼ欠陥、リソソーム酵素の翻訳後プロセシング欠陥、リソソーム酵素の輸送欠陥、リソソーム酵素保護の欠陥、可溶性非酵素性リソソームタンパク質の欠陥、膜貫通(非酵素性)タンパク質欠陥または未分類の欠陥、テイ-サックス病、サンドホフ病、ニーマン-ピック病、ファブリー病、クラッベ病、ファーバー病、ゴーシェ病、異染性白質ジストロフィー、マルチプルスルファターゼ欠損症、ムコリピドーシスII型、ムコリピドーシスIII型、ムコ多糖症、MPS III、MPS VII、GM1ガングリオシドーシス、およびシンドラー病を含む。
【0091】
特定の態様において、NCL(またはBD)は、CLN1病、CLN2病、CLN3病、CLN4病、CLN5病、CLN6病、CLN7病、CLN8病、CLN9病、CLN10病、CLN11病、CLN12病、CLN13病、およびCLN14病を含む。
【0092】
別の態様において、処置方法は、アルツハイマー病、レビー小体型認知症(LBD)、パーキンソン病、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、ピック病、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、多発性硬化症、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)、スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)、タンジール病、ペリツェウス-メルツバッハ病、進行性核上性麻痺、脊髄性筋萎縮症、ならびに様々なタイプの脊髄小脳変性症および他の失調性状態を処置することを対象とする。
【0093】
特定の態様において、精神障害は、統合失調症、気分障害、アルコール依存症および他の物質使用障害、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、ナルコレプシーおよび他の睡眠障害、広範囲の不安障害を含む。
【0094】
特定の態様において、対象の処置は、認知機能を改善することを含む。特定の態様において、対象の処置は、認知機能障害またはそのサブセットを処置することを含む。認知機能の例には、非限定的に、知覚、作業記憶を含む様々なタイプの記憶、感情制御、認識、注意、推理、思考および判断能力、思考の柔軟性、ならびに実行機能が含まれる。
【0095】
特定の態様において、リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害、またはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症候を処置することは、典型的な疾患進行と比較して該疾患または該疾患の1つもしくは複数の症候の進行を時間的に遅らせることを含む。本明細書で使用される「リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害またはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害に関連する1つもしくは複数の症候の進行を時間的に遅らせること」等とは、疾患または疾患の1つもしくは複数の症候の進行を時間的に減速させることおよび/または停止させること(例えば、疾患または疾患の1つもしくは複数の症候の悪化または重篤度上昇を減速させることおよび/または停止させること)を指す。疾患進行は、例えば、公知の尺度、指数、等級、もしくはスコア、例えば、本明細書における例として記載されるそれら、または進行を評価するための別の適切な試験を用いて決定され得る。例えば、尺度、指数、等級、スコア、または他の適切な試験は、疾患全体の進行または疾患に関連する1つもしくは複数の症候の進行に対応し得る。1つの態様において、リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害、またはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症候の進行を遅らせることは、公知の尺度、指数、等級、スコア等、または重篤度を評価するための他の適切な試験により決定される対象の疾患重篤度値(例えば、全体的重篤度または1つもしくは複数の症候の重篤度)が有意義に増加しない(例えば、実質的に一定に少なくとも維持される)ことを意味する。1つの態様において、リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害、またはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症候の進行を遅らせることは、典型的な疾患進行に対応する値と比較して進行を評価するための、公知の尺度、指数、等級、スコア等、または他の適切な試験にしたがう重篤度値に対象が達するのを妨げること、またはそれに対象が達するのに要する時間を増加させる(例えば、重篤度上昇の変化速度を減少させる)ことを意味する。例えば、重篤度値に達するための時間が、典型的な疾患進行にしたがい観察されるものよりも少なくとも5%長くなる場合に、進行が遅れたと言うことができる。さらに、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%の時間増加が観察される。リソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害、またはリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症候の進行を処置が遅らせる時間は、本明細書に記載される処置の期間と一致し得る。1つの態様において、処置は、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、または少なくとも約6ヶ月、進行を遅らせる。処置は、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、少なくとも約5年、または少なくとも約10年、進行を遅らせ得る。処置は、患者の生涯にわたって進行を遅らせ得る。
【0096】
例えば、全体的な神経学的状態を評価するために、4分野尺度(歩行、操作、言語、および嚥下)であるmDRSが適用され得る。小脳の機能は、8項目臨床等級付け尺度(歩き方、姿勢、着座、発話、微細運動機能、および走性;0~40の範囲、ここで0が最良の神経学的状態であり、40が最悪である)であるSARA、ならびに8m歩行時間(8MW:患者を一方の線から別の線まで折り返しなしにできるだけ速く2回歩かせることにより行われる)を含むSCAFI、9ホールペグテスト(9HPT)、ならびに10秒間の「PATA」反復数を用いて評価され得る。主観的な不調および生活の質は、EQ-5D-5L問診およびVASを用いて評価され得る。眼球運動機能を評価するため、3次元ビデオ眼球運動記録法(EyeSeeCam)を使用して、サッケードのピーク速度、円滑追跡性の増加、注視誘発眼振(凝視保持機能)のピーク緩徐相速度、視運動性眼振のピーク緩徐相速度、および水平前庭動眼反射の増加が測定され得る。認知状態を評価するため、注意および集中、実行機能、記憶、言語、視覚構成能力、概念的思考力、計算、および方向を含む異なる認知分野を最高30点およびカットオフスコア26で評価するWAIS-RまたはWISC-IV、およびMoCAが使用され得る。当業者には、これらおよびその他のそのような試験を実施する方法は周知である。
【0097】
別の態様において、リソソーム機能障害に関連する疾患または障害に対する処置を決定するために、バイオマーカー、発現レベル、翻訳後修飾等の同定が使用され得る。時間とともにバイオマーカーは変化し得、これにより医療実施者は、対象の処置の調節を促される。例えば、主要なCSFバイオマーカー(T-tau、P-tau、およびA1342)、CSF NFL、p-tau231、ならびに血漿T-tauはアルツハイマー病と強く関連し、これらの主要なバイオマーカーは、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害と強く関連している。
【0098】
候補治療剤
特定の態様において、リソソーム機能障害に関連する疾患または障害を処置する上で有用であり得る治療活性を有する剤(有機低分子剤を含む)を同定する方法が提供される。様々な態様において、本開示のスクリーニング方法は、インビトロで、細胞内で、またはトランスジェニック動物を用いて実施され得る。好ましくは、リソソーム機能障害に関連する疾患または障害、例えば、BD、SZ、AZ、およびその他の疾患に関する細胞または動物モデルが、本方法で使用される。モデルはまた、リソソーム機能障害に関連する疾患または障害の特徴を示すトランスジェニック動物であることもできる。典型的に、細胞または動物モデルは、複数の候補剤と接触させられるまたはそれらを投与される。細胞または動物はその後、潜在的治療活性を証明する細胞応答または表現型について試験される。上記のように、機能障害についてのこれらの方法において様々な治療活性が試験され得る。例えば、これらの方法は、リソソーム酵素を調整する能力について候補剤を試験する工程を含むことができる。いくつかの態様において、候補剤を、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、リソソーム酵素、およびこれらの組み合わせにおける変化についてアッセイすることにより活性についてスクリーニングすることができる。
【0099】
いくつかの態様において、そのような活性を有することが細胞モデルにおいて同定された剤を、例えばBDの動物モデルの2次スクリーニングにおいて、または運動、行動、認知、もしくはその疾患の他の症候に対する活性を決定するための臨床試験においてさらに評価することができる。いくつかの関連する態様において、本開示はまた、リソソーム機能障害に関連する疾患または障害の処置に対する既知の薬物および他の剤の効果を評価するための方法も提供する。特定の態様において、候補剤または潜在的治療剤は、インビボまたはインビトロでリソソームのいくつかの活性または機能を調整する。
【0100】
特定の態様において、スクリーニング方法に基づき同定された潜在的治療剤は、それらの治療活性を試験するために選択される。特定の態様において、候補または潜在的治療剤の治療活性は、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、およびこれらの組み合わせによりモニタリングされる。
【0101】
特定の態様において、候補または潜在的治療剤の治療活性は、PLA2、例えば、PLA2G4AまたはPLA2G7によりモニタリングされる。
【0102】
候補/試験剤: 任意の天然に存在するまたは人為的に作製される剤を含む様々な候補剤を、本発明のスクリーニング方法において用いることができる。それらは、任意の化学クラスのもの、例えば、抗体、タンパク質、ペプチド、小有機化合物、糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、核酸、およびこれらの様々な構造アナログまたは組み合わせであることができる。いくつかの態様において、スクリーニング方法は、候補剤のコンビナトリアルライブラリを使用する。ステップ・バイ・ステップ様式で合成することができる多くのタイプの化合物に関するコンビナトリアルライブラリが作成することができる。そのような化合物には、ポリペプチド、ベータ・ターン模倣物、核酸、多糖、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環式化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーN置換グリシン、およびオリゴカルバメートが含まれる。化合物の大型コンビナトリアルライブラリは、Affymax, WO 95/12608、Affymax, WO 93/06121、Columbia University, WO 94/08051、Pharmacopeia, WO 95/35503、およびScripps, WO 95/30642(各々がすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる)に記載されたコード化合成ライブラリ(ESL)法により構築することができる。
【0103】
候補剤には多数の化学クラスが含まれるが、典型的にそれらは、小有機化合物、オリゴヌクレオチドを含む核酸、ペプチド、または抗体を含む有機化合物である。小有機化合物は、適切には、例えば、約40または50を超えるが約2,500未満である分子量を有し得る。候補剤は、タンパク質および/またはDNAと相互作用する官能性化学基を含み得る。
【0104】
候補剤は、合成または天然化合物のライブラリを含む多種多様な供給源から入手され得る。例えば、多種多様な有機化合物および生体分子の無作為および誘導的合成に関して、無作為化オリゴヌクレオチドの発現を含む多数の手段が利用可能である。あるいは、例えば細菌、真菌、および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリが利用可能であるかまたは容易に作成される。
【0105】
化学ライブラリ: コンビナトリアル化学の発展により、数百~数千の異なる化合物の高速かつ経済的な合成が可能となっている。これらの化合物は典型的に、効率的なスクリーニングのために設計された中程度のサイズの低分子ライブラリに配置される。コンビナトリアル法は、新規化合物の同定に適した偏りのないライブラリを作成するために使用されることができる。加えて、以前に決定された生物学的活性を有する単一の親化合物から派生する、より小さくより多様性の低いライブラリが作成される可能性がある。
【0106】
コンビナトリアル化学ライブラリは、化学的合成または生物学的合成のいずれかにより、多数の化学的「構成単位」、例えば試薬を組み合わせることにより作製される、多様な化学物質の集合である。例えば、リニアコンビナトリアル化学ライブラリ、例えばポリペプチドライブラリは、化学的構成単位(アミノ酸)のセットを、所与の化合物長(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)についての多数の組み合わせでかつ潜在的にすべての可能性のある様式で組み合わせることにより、形成される。数百万の化学物質を、化学的構成単位のそのようなコンビナトリアル混合を通じて合成することができる。
【0107】
「ライブラリ」は、2~50,000,000個の多様なメンバー化合物を含み得る。好ましくは、ライブラリは、少なくとも48個の多様な化合物、好ましくは96個またはそれを超える多様な化合物、より好ましくは384個またはそれを超える多様な化合物、より好ましくは10,000個またはそれを超える多様な化合物、好ましくは100,000個を超える多様な化合物、最も好ましくは1,000,000個を超える多様なメンバー化合物を含む。「多様」とは、ライブラリ内の化合物の50%超が、そのライブラリの任意の他のメンバーと同一でない化学構造を有することを意味する。好ましくは、ライブラリ内の化合物の75%超、より好ましくは90%超、最も好ましくは約99%超がその集合の任意の他のメンバーと同一でない化学構造を有する。
【0108】
コンビナトリアル化学ライブラリの調製は、当業者に周知である。概説に関しては、Thompson et al., Synthesis and application of small molecule libraries, Chem Rev 96:555-600, 1996;Kenan et al., Exploring molecular diversity with combinatorial shape libraries, Trends Biochem Sci 19:57-64, 1994;Janda, Tagged versus untagged libraries: methods for the generation and screening of combinatorial chemical libraries, Proc Natl Acad Sci USA. 91: 10779-85, 1994;Lebl et al., One-bead-one-structure combinatorial libraries, Biopolymers 37: 177-98, 1995;Eichler et al., Peptide, peptidomimetic, and organic synthetic combinatorial libraries, Med Res Rev. 15:481-96, 1995;Chabala, Solid-phase combinatorial chemistry and novel tagging methods for identifying leads, Curr Opin Biotechnol. 6:632-9, 1995;Dolle, Discovery of enzyme inhibitors through combinatorial chemistry, Mol. Divers. 2:223-36, 1997;Fauchere et al., Peptide and nonpeptide lead discovery using robotically synthesized soluble libraries, Can J. Physiol Pharmacol. 75:683-9, 1997;Eichler et al., Generation and utilization of synthetic combinatorial libraries, Mol Med Today 1: 174-80, 1995;およびKay et al., Identification of enzyme inhibitors from phage-displayed combinatorial peptide libraries, Comb Chem High Throughput Screen 4:535-43, 2001を参照のこと。
【0109】
化学的多様性ライブラリの作成のための他の化学もまた使用することができる。そのような化学には、ペプトイド;コード化ペプチド;無作為バイオオリゴマー;ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号);ダイバーソマー(diversomer)、例えばヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチド;ビニル性ポリペプチド;β-D-グルコーススキャホールディングを伴う非ペプチド性ペプチド模倣物;小化合物ライブラリの類似の有機合成(Chen, et al., J. Amer. Chem. Soc., 116:2661 (1994));オリゴカルバメート(Cho, et al., Science, 261 : 1303 (1993));ならびに/またはペプチジルホスホネート(Campbell, et al., J. Org. Chem. 59:658 (1994));核酸ライブラリ(Ausubel、Berger、およびSambrook、すべて前記、を参照のこと);ペプチド核酸ライブラリ(例えば、米国特許第5,539,083号を参照のこと);抗体ライブラリ(例えば、Vaughn, et al., Nature Biotechnology, 14(3):309-314 (1996)およびPCT/US96/10287を参照のこと);炭水化物ライブラリ(例えば、Liang, et al., Science, 274: 1520-1522 (1996)および米国特許第5,593,853号を参照のこと);小有機分子ライブラリ(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&E News, January 18, 第33頁 (1993)を参照のこと);イソプレノイド(米国特許第5,569,588号);チアゾリジノンおよびメタチアザノン(米国特許第5,549,974号);ピロリジン(米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号);モルホリノ化合物(米国特許第5,506,337号);ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)等が含まれるがこれらに限定されない。
【0110】
コンビナトリアルライブラリの調製のためのデバイスは、商業的に入手可能である(例えば、357 MPS、390 MPS、Advanced Chem. Tech, Louisville Ky.、Symphony, Rainin, Woburn, Mass.、433A Applied Biosystems, Foster City, Calif.、9050 Plus, Millipore, Bedford, Mass.を参照のこと)。加えて、多数のコンビナトリアルライブラリ自体が商業的に入手可能である(例えば、ComGenex, Princeton, N.J.、Asinex, Moscow, Ru、Tripos, Inc., St. Louis, Mo.、ChemStar, Ltd., Moscow, RU、3D Pharmaceuticals, Exton, Pa.、Martek Bio sciences, Columbia, Md.等を参照のこと)。
【0111】
本開示のスクリーニングアッセイは適切に、動物モデル、細胞ベースの系、および非細胞ベースの系を含みかつ具現化する。同定された遺伝子、これらのバリアント、フラグメント、またはオリゴペプチドは、例えば化合物のライブラリをスクリーニングすることにより治療的関心対象の剤を同定するために、またはそうでなければ様々な薬物スクリーニングもしくは分析技術のいずれかにより関心対象の化合物を同定するために、使用される。そのようなスクリーニングに用いられる遺伝子、これらの対立遺伝子、フラグメント、またはオリゴペプチドは、溶液中で遊離状態であり得るか、固体支持体に固定され得るか、細胞表面上で生み出されるか、または細胞内に局在化され得る。測定は、以下の実施例の節で詳細に記載されるように行われ得る。
【0112】
いくつかの態様において、候補治療剤を同定する方法は、特定の標的分子を含むサンプルを高スループットスクリーニングアッセイにおいてスクリーニングする工程を含む。
【0113】
別の態様において、疾患の処置のために候補治療剤を同定する方法は、標的分子を発現する単離された細胞を培養する工程、培養された細胞に候補治療剤を投与する工程、対照細胞と比較した候補治療剤の存在下または非存在下での標的分子の発現、活性、および/または機能と相関させる工程を含み、薬物は、所望の治療アウトカムに基づき同定される。例えば、そのようなレベルが疾患状態の原因となるような、標的分子、例えばリソソーム酵素のレベルを調整する薬物、または標的分子は、経路の上流であろうが下流であろうが別の分子の活性または量を調整する。他の例において、アッセイはキナーゼ活性を測定する。他の例において、アッセイは結合パートナーを測定する。他の例において、アッセイは、所望の治療アウトカムを提供する候補治療剤の量を測定する。
【0114】
診断および候補薬物探索のための別の適切な方法は、標的分子を発現する細胞と試験サンプルを接触させる工程、および、標的分子、その対立遺伝子もしくはフラグメント、または標的分子、その対立遺伝子もしくはフラグメントの発現産物との試験剤の相互作用を検出する工程を含む。
【0115】
別の好ましい態様において、例えば患者由来の細胞または体液などのサンプルを単離し、候補治療分子と接触させる。遺伝子、その発現産物を、その薬物によってどの遺伝子または発現産物が調節されるかを同定するためにモニタリングする。
【0116】
別の局面において、本開示は、リソソーム機能障害に関連する疾患または障害に罹患している対象における疾患進行を診断するまたはモニタリングする方法を提供する。剤の治療効果は、細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、およびこれらの組み合わせによりモニタリングされる。これらの方法は、対象由来の生物学的サンプル(例えば、組織または体液サンプル)において細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、LAMP1発現、およびこれらの組み合わせを検出および測定する工程を含む。いくつかの方法において、生物学的サンプルは、対象の脳から得られる。生物学的サンプルにおける細胞の自家蛍光(AF)、リソソームサイズ、およびLAMP1発現の検出および定量は、本明細書に例示される技術または当技術分野で慣用的に実践されているプロトコルにしたがい容易に実施され得る。
【0117】
本開示はまた、リソソームタンパク質または酵素を発現する操作された細胞(例えば、神経細胞)およびトランスジェニック動物も提供する。操作された細胞およびトランスジェニック動物は、上記のようなリソソーム機能障害に関連する疾患もしくは障害を研究するために、または治療剤の効果を試験するために、インビトロでまたは動物モデルにおいて使用され得る。導入遺伝子は、好ましくは、トランスジェニック動物の体細胞および生殖系列細胞のすべてまたは実質的にすべてに存在する。全長および/または変異および/または短縮リソソーム酵素をコードするポリヌクレオチドは、その酵素が動物の細胞内で発現されることを可能にする1つまたは複数の調節セグメントに機能的に連結される。プロモーター、例えばラットニューロン特異的エノラーゼプロモーター、プリオンタンパク質プロモーター、ヒトベータ-アクチン遺伝子プロモーター、ヒト血小板由来成長因子B(PDGF-B)鎖遺伝子プロモーター、ラットナトリウムチャネル遺伝子プロモーター、マウスミエリン塩基性タンパク質遺伝子プロモーター、ヒト銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子プロモーター、および哺乳類POUドメイン調節遺伝子プロモーターを、導入遺伝子を発現させるのに使用することができる。任意で、誘導性プロモーターを使用することができる。マウスの飲み水または餌への亜鉛などの重金属の添加により調節することができるマウスメタロチオネインプロモーターが適している。本発明の操作された細胞またはトランスジェニック動物は、当技術分野で説明されている一般的アプローチ、例えばMasliah et al., Am. J. Pathol. 148:201-10, 1996; Feany et al, Nature 404:394-8, 2000、および米国特許第5,811,633号により作製することができる。
【0118】
薬学的組成物
特定の態様において、薬学的組成物は、リソソームの機能または活性を調整する少なくとも1つの剤を含む。薬学的組成物は、剤、例えばトログリタゾン、ロスバスタチン、またはこれらの薬学的に許容される塩、ならびに薬学的に許容される担体を含み得る。薬学的組成物への言及は、単独(例えば、トログリタゾン、ロスバスタチン、もしくはこれらの薬学的に許容される塩、またはスタチン、または化合物A)、または薬学的組成物の形態の活性剤を包含する。
【0119】
薬学的組成物は、当技術分野で公知の技術にしたがい製剤化されて、対象に投与され得る。薬学的組成物は、それが使用されるべきである様式に特に応じて、多くの異なる形態のいずれかをとり得る。したがって、例えばそれは、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアゾール、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁物の形態、または、処置を必要とするヒトもしくは動物に投与され得る任意の他の適切な形態であり得る。
【0120】
本明細書で言及される「薬学的に許容される担体」とは、薬学的組成物を製剤化するのに有用であることが当業者に知られている任意の公知の化合物または公知の化合物の組み合わせである。薬学的組成物の担体は、それを与えられる対象に認容されるものであるべきであることが理解されるであろう。
【0121】
1つの態様において、薬学的に許容される担体は固体であり得、組成物は粉末または錠剤の形態であり得る。固体の薬学的に許容される担体には、芳香剤、緩衝剤、滑沢剤、安定化剤、溶解剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、色素、増量剤、流動促進剤、圧縮補助剤、不活性結合剤、甘味剤、保存剤、色素、コーティング剤、または錠剤崩壊剤としても機能し得る1つまたは複数の物質が含まれ得るがこれらに限定されない。担体はまた、カプセル化物質であってもよい。粉末状態では、担体は、本発明にしたがう微粉化された活性剤との混合状態である微粉化された固体であり得る。錠剤状態では、活性剤は、必要とされる圧縮特性を有する担体と適切な比率で混合され得、そして所望の形状およびサイズに圧縮され得る。粉末および錠剤は、例えば、最大99%の活性剤を含む。適切な固体担体には、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂が含まれる。別の態様において、薬学的に許容される担体はゲルであり得、組成物はクリーム等の形態であり得る。
【0122】
担体には、1つまたは複数の賦形剤または希釈剤が含まれ得るがこれらに限定されない。そのような賦形剤の例は、ゼラチン、アラビアガム(gum arabicum)、ラクトース、微結晶セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルカム、コロイド状二酸化ケイ素等である。
【0123】
別の態様において、薬学的に許容される担体は液体であり得る。1つの態様において、薬学的組成物は溶液の形態である。液体担体は、溶液、懸濁物、乳化物、シロップ、エリキシル、および加圧組成物を調製する際に使用される。剤は、薬学的に許容される液体担体、例えば、水、有機溶媒、両者の混合物、または薬学的に許容される油もしくは脂肪に溶解または懸濁され得る。液体担体は、他の適切な薬学的添加物、例えば、溶解剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、芳香剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、溶解剤、または浸透圧調節剤を含み得る。経口および非経口投与用の液体担体の適切な例には、水(上記の添加物、例えばセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含む)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを含む)およびこれらの誘導体、ならびに油(例えば、分留ココナツ油および落花生油)が含まれる。非経口投与の場合、担体は、油性エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルでもあり得る。滅菌液体担体は、非経口投与用の滅菌液体形態組成物において有用である。加圧組成物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される推進剤であり得る。
【0124】
滅菌溶液または懸濁物である液体薬学的組成物は、例えば、筋内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内、および皮下注射により用いられ得る。活性剤は、投与時に滅菌水、生理食塩水、または他の適切な滅菌性の注射可能な媒体を用いて溶解または懸濁され得る滅菌固体組成物として調製され得る。
【0125】
組成物は、他の溶質または懸濁剤(例えば、その溶液を等張性にするのに十分な生理食塩水またはグルコース)、胆汁酸塩、アカシア、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(酸化エチレンと共重合体化されたソルビトールのオレイン酸エステルおよびその無水物)等を含む滅菌の溶液または懸濁物の形態で経口投与され得る。組成物はまた、液体または固体組成物形態のいずれかで経口投与され得る。経口投与に適した組成物には、固体形態、例えば、ピル、カプセル、顆粒、錠剤、および粉末、ならびに液体形態、例えば、溶液、シロップ、エリキシル、および懸濁物が含まれる。非経口投与に有用な形態には、滅菌溶液、乳化物、および懸濁物が含まれる。
【0126】
組成物は代替的に、吸入により(例えば、鼻内に)投与され得る。組成物はまた、局所使用のために製剤化され得る。例えば、クリームまたは軟膏が皮膚に適用され得る。
【0127】
組成物は、徐放性デバイスまたは遅延放出デバイスに組み入れられ得る。そのようなデバイスは、例えば、皮膚上にまたは皮膚下に挿入され得、医薬は数週間にわたってまたは数ヶ月間にわたってさえ放出され得る。そのようなデバイスは、長期的処置が必要とされかつ頻繁な投与(例えば、少なくとも毎日の投与)を必要とし得る場合に有利であり得る。
【0128】
1つの態様において、薬学的組成物は、固体経口剤形、例えば錠剤である。錠剤状態では、活性剤は、必要な圧縮特性を有するビヒクルと、例えば薬学的に許容される担体と適切な比率で混合され得、そして所望の形状およびサイズで圧縮され得る。錠剤は、最大99重量%の活性剤を含み得る。
【0129】
固体経口剤形、例えば錠剤である薬学的組成物は、製薬分野で公知の任意の方法により調製され得る。薬学的組成物は通常、従来的な薬学的に許容される担体と活性剤を混合することにより、調製される。
【0130】
錠剤は、当技術分野で公知のように製剤化され得、例えばそれは、賦形剤として小麦デンプン、アルファ化トウモロコシ(コーン)デンプン、炭酸カルシウム、およびステアリン酸マグネシウムを含み得る。同一または同様の賦形剤が、例えば、本開示と共に用いられ得る。
【0131】
上述のように、剤またはその薬学的に許容される塩は、任意の多くの異なる形態をとる薬学的組成物として製剤化され投与され得る。例えば、剤またはその薬学的に許容される塩は、血液脳関門を通じたその送達を容易にするための薬学的組成物として製剤化され得る。さらなる例として、剤は、血液脳関門を迂回するための薬学的組成物として製剤化され得る。血液脳関門を通じた送達を容易にするまたは血液脳関門を迂回する様式での投与に適している製剤が、本明細書に記載されるように剤を調製および投与するために使用され得る。そのような、血液脳関門を通過するまたは血液脳関門を迂回する様式での投与に適した送達は、本明細書で使用される「直接送達」とみなすことができる。
【0132】
1つの態様において、(例えば、トログリタゾン、ロスバスタチン、またはこれらの組み合わせを含む)薬学的組成物は、ナノ送達、例えばコロイド状薬物-担体システム用に製剤化される。適切な例には、リポソーム、ナノ粒子(例えば、ポリマー、脂質、および無機ナノ粒子)、ナノゲル、デンドリマー、ミセル、ナノエマルジョン、ポリマーソーム、エクソソーム、および量子ドットが含まれるがこれらに限定されない。例えば、Patel et al., “Crossing the Blood-Brain Barrier: Recent Advances in Drug Delivery to the Brain,” CNS Drugs 31: 109-133 (2017);Kabanov et al., “New Technologies for Drug Delivery across the Blood Brain Barrier,” Curr Pharm Des., 10(12): 1355-1363 (2004);Cheng et al., “Highly Stabilized Curcumin Nanoparticles Tested in an In Vitro Blood-Brain Barrier Model and in Alzheimer's Disease Tg2576 Mice,” The AAPS Journal, vol. 15, no. 2, pp. 324-336 (2013);Lahde et al. “Production of L-Leucine Nanoparticles under Various Conditions Using an Aerosol Flow Reactor Method,” Journal of Nanomaterials, vol. 2008, article ID 680897 (2008)を参照のこと。例えば、本明細書で使用される直接送達は、ナノ送達用の製剤を包含し得る。
【0133】
1つの態様において、(例えば、トログリタゾン、ロスバスタチン、もしくはこれらの組み合わせ、またはスタチン、または化合物Aを含む)薬学的組成物は、例えば注射または注入による、中枢神経系(CNS)への直接送達用に製剤化される。CNSへの直接送達のための製剤およびその方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第9,283,181号を参照のこと。そのような投与の例には、鼻内、脳室内、髄腔内、頭蓋内、鼻粘膜移植を通じた投与、静脈内投与(例えば、IV注射)、および経口投与(P.O.)が含まれるがこれらに限定されない。
【0134】
1つの態様において、薬学的組成物は、鼻内送達のために製剤化される(およびそれにより投与される)。例えば、Hanson et al., BMC Neurosci. 9(Suppl 3):S5 (2008)を参照のこと。1つの態様において、薬学的組成物は、鼻粘膜移植を通じた送達のために製剤化される(およびそれにより投与される)。1つの態様において、薬学的組成物は、脳室内注射または注入のために製剤化される(およびそれにより投与される)。別の態様において、薬学的組成物は、髄腔内大槽内注射または注入のために製剤化される(およびそれにより投与される)。1つの態様において、薬学的組成物は、髄腔内腰部注射または注入のために製剤化される(およびそれにより投与される)。例えば、活性剤は、Ory et al., “Intrathecal 2-hydroxypropyl-beta-cyclodextrin decreases neurological disease progression in Niemann-Pick disease, type C1: a non-randomized, open-label, phase 1-2 trial,” Vol. 390, Issue 10104, pp. 1758-1768 (2017)により述べられたのと同一または同様の様式で髄腔内投与のために製剤化され得、かつ/または髄腔内投与され得る。
【0135】
当技術分野で公知の穿頭孔または大槽もしくは腰椎穿刺等を通じた注射を含むがこれらに限定されない様々な技術が使用され得る。内部的(例えば、移植される)か外部的かにかかわらず、様々なデバイス、例えば、ポンプ、カテーテル、リザーバ等が、当技術分野で公知の送達のために使用され得る。1つの態様において、投与間隔は、2週間毎に1回である。
【0136】
なおさらなる態様において、薬学的組成物は、静脈内注射または注入のために製剤化される(およびそれにより投与される)。例えば、トログリタゾン、ロスバスタチン、またはこれらの組み合わせが、ニードルまたはチューブを用いる静脈内投与のために製剤化され得る。別の態様において、薬学的組成物は、経口投与のために製剤化される(およびそれにより投与される)。
【0137】
1つの態様において、投与間隔は1ヶ月毎に1回である。1つの態様において、投与間隔は2ヶ月毎に1回である。1つの態様において、投与間隔は1ヶ月に2回である。1つの態様において、投与間隔は1週間毎に1回である。1つの態様において、投与間隔は1週間に2回または数回である。1つの態様において、投与間隔は毎日である。1つの態様において、投与は連続的であり、例えば連続注入である。
【0138】
以下の非限定的な実施例は一例である。
【実施例
【0139】
理論により束縛されることを望むわけではないが、リソソーム欠損は神経機能障害の主要な駆動機構であり得るという仮説を立てた。
【0140】
実施例1
方法
研究参加者の募集: 統合失調症(SZ)患者ならびに年齢、性別、および人種が一致する対照をジョンズホプキンス大学統合失調症センター(Johns Hopkins Schizophrenia Center)で募集した。
【0141】
神経認知試験: 6つの認知分野(認知的柔軟性、注意、処理速度、言語的学習/記憶、視覚的学習/記憶、および流暢さ)の範囲にわたる認知試験バッテリーを、本発明らの公開されたプロトコル(Horiuchi et al., Transl Psychiatry, 2016)を用いることによって行った。認知的柔軟性は、ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)を用いて評価した。
【0142】
ヒト細胞の電子顕微鏡観察: ヒト血液細胞の70 nm片を、80 kVで動作するHitachi H 7600 TEM上で観察し、ER-50 AMT(5メガピクセル)CCDカメラを用いてデジタル画像を撮影した。第1抗体なしのグリッドを陰性対照とした。すべてのデータを、ジョンズホプキンス大学(Johns Hopkins)のコアファシリティサービスを通じて得た。
【0143】
自家蛍光(AF): ヒト血液細胞におけるAFレベルは、BD FACSCalibur(商標)(BD Biosciences)(励起;488 nm、発光;530±15 nm)を用いたFL-1でのフローサイトメトリーを用いて30,000個の細胞で測定した(図1A~1C)。リンパ芽球におけるAFレベルは、Attune Flow Cytometer(Thermo Fisher Scientific)(励起;488 nm、発光;530 nm)におけるフローサイトメトリーを用いて20,000個の細胞中で測定した(図2Aおよび2B)。
【0144】
LAMP1染色: リンパ芽球をメタノールで固定し、抗ヒトLAMP1抗体(1:400、Cell Signaling Technology)と、その後に二次抗体(Alexa Fluor 488ロバ抗ウサギIgG、1:1000、Thermo Fisher Scientific)と共に4℃で一晩インキュベートした。iPS細胞から分化させたニューロン細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、抗ヒトLAMP1抗体(1:400、Cell Signaling Technology)と、続いて二次抗体(Alexa Fluor 488ロバ抗ウサギIgG、1:1000、Thermo Fisher Scientific)と共に4℃で一晩インキュベートした。マウス由来の白血球をメタノールで固定し、LAMP1抗体(1:1000、Abcam)と、続いて二次抗体(Alexa Fluor 488ロバ抗ウサギIgG、1:1000、Thermo Fisher Scientific)と共に4℃で一晩インキュベートした。画像化定量には、KEYENCE BZ-X710およびBX-Zアナライザソフトウェアを使用した。
【0145】
新規オブジェクト認識テスト (NORT): この試験は、以前に検証された方法(Hatayama et al., Neuroscience 265 (2014) 217-25)にしたがい実施した。すべてのマウスを、試験日の1日前に、NORTアリーナに1時間馴らした。試験当日に、マウスに、1時間の間隔をあけて2回の5分間試験(2つの同一オブジェクトを用いたT1およびT1由来の馴染みのあるオブジェクトと新規オブジェクトを用いたT2)を行った。T2試験において、識別指数(DI)((新規オブジェクトを探索するのに消費した時間-馴染みのあるオブジェクトを探索するのに消費した時間)/総探索時間)を算出した。
【0146】
組織学的分析: マウスを屠殺し、脳を切り出し、4%パラホルムアルデヒドを用いて固定を一晩続けた。脳切片を、マウスLAMP1に特異的な抗体(1:200、Abcam)と、続いて二次抗体(Histofine Simple Stain Mouse MAX-PO(登録商標)、Nichirei Bioscience)と共に4℃で一晩インキュベートした。画像化定量のために、個々の切片を、Aperio AT-2およびImageScope(Leica)を用いて分析した。
【0147】
マウスの末梢血からの白血球の単離: 20μLのマウス血液を、ACK溶解緩衝液(Lonza)を用いて1分間溶解させた。洗浄後、細胞をRPMIで再懸濁させた。
【0148】
iPS細胞由来ニューロンにおけるRNA配列決定: 細胞をiPS細胞から分化させ、0.1% DMSOまたは化合物Aのいずれかで2週間処置した。RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてRNAを抽出した。RNA配列決定用のライブラリを、SMART-Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit(Takara bio)により構築した。
【0149】
結果
ジョンズホプキンス大学統合失調症センターは、過去10年間にわたりSZ患者を募集し、該患者および対応対照から広範囲の組織収集を行った。この取り組みの目的の1つは、疾患および特異的な臨床的/行動的徴候に関連する優れたバイオマーカーを確立することであった。そのような取り組みの際の興味深い知見が、SZ患者由来の末梢血細胞における細胞の自家蛍光(AF)は健常対照由来のものと比較して上昇するという発見であった(図1A)。上昇したAFはBDにおいてしばしば報告されており、したがってSZ患者の血液細胞においてリソソーム変化を観察できるという仮説を立てた。細胞を電子顕微鏡レベルで試験し、一部のSZ患者由来の細胞において異常に拡大したリソソーム(リソソームの機能的欠損の兆候)を見出した(図1B)。SZは多くの臨床的徴候を含み、これらの個別の臨床的様相のどれがAF関連であるかを試験した。興味深いことに、AFは、認知機能と負の相関を有するが、正および負の症状との相関はない(図1C)。複数の認知的な下位様相の体系的評価により、認知的柔軟性が、AFとの相関を示す独特な様相であることを解明した(図1C)。
【0150】
次に、BD細胞および動物モデル、特にCln3遺伝子モデルを研究した。これらの遺伝子モデルは、BDの病態生理に関連するリソソーム欠損を再現している。Cln3変異を有するBD患者由来のリンパ芽球におけるリソソーム欠損は、LAMP1発現およびAFレベルという2つの独立した測定を用いて確認した。この研究においてLAMP1とAFの間の相関(図2A)を観察した。実際に、一致する様式でのこれらの2つの測定により、リソソーム欠損を確認した(図2B、2C)。BD患者細胞においてリソソーム欠損が確認されたことに刺激され、次に、この疾患が処置可能かどうかに取り組んだ。効果的な様式での処置に関して見込みのある化合物を探索するため、仮説に基づくアプローチを採用し、ここで、糖脂質代謝に影響することが知られている化学物質がリソソーム機能に直接影響し得るという仮説を立てた。それにしたがい、約50個の化合物をこのカテゴリーで試験した。トログリタゾンおよびロスバスタチンが、BDリンパ芽球において見いだされたリソソーム欠損を改善し得ることが見いだされた(図2C、2D)。これらの有益な影響の発見は新規であり、誰にも示唆および予測されていない。最後に、人工多能性幹(iPS)細胞株を試験し、ここでBD関連Cln3変異を導入した。iPS細胞をニューロンに分化させ、BD関連リソソーム欠損を確認した(図2D)。BDリンパ芽球における観察と一致して、Cln3変異を有するiPS細胞由来ニューロンにおいてもトログリタゾンの処置効果が検出された(図2D)。
【0151】
BD患者の死後脳には、病理がより目立ついくつかの個別の脳領域すなわち海馬および視床がある。したがって、これらの領域において潜在的な病理を試験し、最も代表的なBD動物モデルの1つ(Cln3ノックアウトマウス)における海馬および視床の組織切片においてリソソーム欠損の兆候を観察した(図3A)。最も重要なのは、BD細胞モデルにおける新規の知見と一致して、トログリタゾンの投与がその病理を改善したことである(図3A)。導入の節に記載されたように、BD患者は複数のタイプの神経学的および精神的徴候を示す。神経学的徴候、例えば発作に対処するいくつかの取り組みが行われ、BD患者ケアにおけるいくつかの良いアウトカムを示した。しかし、BDにおける認知障害に対処する方法はない。したがって、動物モデルを通じてこれに取り組んだ。最初に観察されたのは、新規オブジェクト認識テストでのBD動物モデルにおける認知障害であった(図3B)。したがって、トログリタゾンがその欠損を改善できるかどうかを試験し、有益なアウトカムを実際に観察した(図3B)。動物モデルのレベルでさえ、これは、BDに関連する認知障害および小さな化合物によるその改善の最初の実証である。臨床状況において、末梢バイオマーカーは常に、疾患病理および処置応答の評価のために非常に重要である。したがって、次の疑問は、BDに関連するリソソーム欠損が動物モデルの末梢細胞において見られるかどうかである。リソソーム欠損は末梢血細胞において試験され、欠損が観察された。さらにより重要なことに、インビボでのトログリタゾンの投与は血液病理の改善をもたらし、血液細胞に対するそのような処置効果はニューロンおよび行動的変化に対するものと一致していた(図3C)。
【0152】
まとめ
本実験を通じて本発明者らは、SZ細胞がリソソームに関連する欠損も有しているという見込みのある証拠を得た。これらには、BDと同様の上昇したAFが含まれ、SZにおいて見出される欠損は、個別の認知領域における機能障害との相関を示し、かつ、BD動物モデルもまた、認知的変化の根底をなすと考えられるリソソーム欠損を示す。まとめると、今や、稀な遺伝病(例えば、BD)および特発性/散発性脳障害(例えば、SZ、AD)の両方が、機能的欠損の根底をなす共通のリソソーム異常を共有し得ると論理的に考えられる。さらなる実験がこの新規の概念を確たるものにするであろう。実験データはまた、末梢バイオマーカーが確立されリソソーム欠損と関連付けられ、それによりAFが注目されるという将来性および可能性も示している。最後に、結果はまた、リソソーム欠損および結果として生じるアウトカム例えば行動的変化が小さな化合物により処置可能であることも示している。
【0153】
実施例2: 化合物A(8-{[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}-1-(2-メチルプロピル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-6H-ピリミド[2,1-b]キナゾリン-6-オン)の合成
化合物Aは、以下のスキーム1に示されるように合成することができる。
【0154】
8-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロ-6H-ピリミド[2,1-b]キナゾリン-6-オン(化合物a1)は商業的に入手可能な製品であり、かつまた、Tetrahedron (2007), 63(4), 847-854に記載される方法もしくは他の方法にしたがい合成され得る。
【0155】
8-ブロモ-1-(2-メチルプロピル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-6H-ピリミド[2,1-b]キナゾリン-6-オン(化合物a2)の合成: DMF(50ml)中の化合物a1(5g)および炭酸セシウム(11.6g)の混合物に1-ブロモ-2-メチルプロパン(3.1ml)を滴下して加えた。100℃の温度で5時間攪拌した後、反応混合物を水(300ml)でクエンチした。得られた固体をろ過により収集し、水およびヘキサンで洗浄した。得られた白色固体を50℃の温度にて減圧下で乾燥させて化合物a1(5.1g)を得た。
【0156】
8-{[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}-1-(2-メチルプロピル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-6H-ピリミド[2,1-b]キナゾリン-6-オン(化合物A)の合成: 化合物a2(450mg)、N,N-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(139μl)、Brettphos Pd G3(116mg)、およびナトリウムtert-ブトキシド(184mg)の4-メチルテトラヒドロピラン(15ml)溶液を100℃の温度で3時間攪拌した。水(50ml)を反応混合物に添加し、続いて酢酸エチルを用いて抽出を行った。合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮した。その粗生成物をアミノシリカゲルカラムに添加し、ヘキサン/AcOEt、続いてAcOEt/MeOHを用いて溶出して、表題化合物(235mg)を黄色固体として得た。
【0157】
実施例3
図4A~4Dは、ヒト細胞およびマウス疾患モデルにおけるバッテン関連病理(細胞病理、行動)に対する化合物Aの有益な効果を示す。図4Aは、化合物Aによる、バッテン病(BD)リンパ芽球における上昇した自家蛍光(AF)の改善を示す。図4Bは、化合物Aによる、バッテン病(BD)リンパ芽球における上昇したLAMP1シグナルの改善を示す。図4Cは、化合物Aによる、BDマウス[CLN3ノックアウト(KO)マウス]の末梢白血球における上昇したLAMP1シグナルの改善を示す。図4Dは、化合物Aによる、BDマウスの認知障害の改善(新規オブジェクト認識テスト)を示す。
【0158】
実施例4
図5Aおよび5Bは、化合物AによるPLA2G4A(図5A)およびPLA2G7(図5B)の発現制御を示す。化合物Aは、バッテンCLN3病の病理学的改善の主要な機構の根底をなし得るPLA2遺伝子の発現に有意に影響した。データはRNA配列決定分析を通じて得られ、ここで本発明者らは、群(i)野生型(WT)ニューロン+モック、(ii)WTニューロン+化合物A、(iii)バッテン細胞モデルCLN3ノックアウト(KO)ニューロン+モック、および(iv)KOニューロン+化合物Aの間で遺伝子発現を比較した。ニューロンは、ヒト人工多能性幹細胞を分化させることによって調整した。
【0159】
実施例5
図6Aおよび6Bは、自家蛍光(AF)の組織学的分析を行うことによる、細胞/組織病理と行動/神経精神病学的表現型の間の関係を示す。図6Aは、脳におけるバッテンCLN3病の病理が海馬CA3領域において顕著であったことを示しており、図6Bも、CLN3 KOマウスにおいて大脳皮質が関係していたことを示している。したがって、PLA2遺伝子がG3PIの代謝に直接関与していることを一つの理由として、PLA2遺伝子に対する化合物Aの影響は、病理学的改善の主要な機構であり得る。
【0160】
その他の態様
上記の記載から、本明細書に記載される本発明に対して、それを様々な用途および状況に取り入れるために変更および改変がなされ得ることが明らかであろう。そのような態様もまた、添付の特許請求の範囲内である。
【0161】
本明細書における配列、特許および刊行物に対するすべての引用は、各々独立した特許および刊行物が具体的かつ個別に参照により組み入れられることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
【国際調査報告】