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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】2系統液圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
F15B15/14 315
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543116
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 US2023061811
(87)【国際公開番号】W WO2023158928
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】63/310,679
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514196156
【氏名又は名称】パーカー ハネフィン コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Parker Hannifin Corporation
【住所又は居所原語表記】6035 Parkland Boulevard Cleveland, OH 44124, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】リー ジェイムズ イー
(72)【発明者】
【氏名】フィン ガブリエル ティ
(72)【発明者】
【氏名】トラン コン
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA08
3H081BB01
3H081CC18
3H081DD16
3H081DD21
3H081DD33
3H081FF01
3H081FF13
3H081HH01
3H081HH10
(57)【要約】
アクチュエータは、シリンダアセンブリ内で軸線方向に一緒に可動の一次ピストンおよび二次ピストンと、第1の室、第2の室、第3の室および第4の室を備え、第1の室内に流体が流れると、一次ピストンが前進し、第2の室内に流体が流れると、一次ピストンが後退し、第3の室内の流体により加えられる、二次ピストンを前進させるための前進流体力が、第4の室内の流体により加えられる、二次ピストンを後退させるための後退流体力と異なっている、複数の室と、第3の室または第4の室から流体を受け取って、二次ピストンに作用している流体力に抵抗するかまたは二次ピストンに作用している流体力に加算するための釣合い力を二次ピストンに加え、これによって、前進流体力と後退流体力との間の差を補償するように構成された力釣合い室とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータであって、
シリンダアセンブリの内部に少なくとも部分的に配置された一次ピストンと、
前記シリンダアセンブリの内部に少なくとも部分的に配置された二次ピストンであって、前記一次ピストンと前記二次ピストンとは、前記シリンダアセンブリの内部で軸線方向に一緒に運動するように構成されている、前記二次ピストンと、
前記シリンダアセンブリの内部に形成された複数の室であって、(i)第1の室であって、該第1の室に流体が流れると、前記一次ピストンが前進する、前記第1の室と、(ii)第2の室であって、該第2の室に流体が流れると、前記一次ピストンが後退する、前記第2の室と、(iii)第3の室であって、該第3の室に流体が流れると、前記二次ピストンが前進する、前記第3の室と、(iv)第4の室であって、該第4の室に流体が流れると、前記二次ピストンが後退する、前記第4の室と、を備え、前記第3の室内の流体により加えられる、前記二次ピストンを前進させるための前進流体力が、前記第4の室内の流体により加えられる、前記二次ピストンを後退させるための後退流体力と異なっている、前記複数の室と、
前記第3の室または前記第4の室から流体を受け取って、前記二次ピストンに作用している流体力に抵抗するかまたは前記二次ピストンに作用している前記流体力に加算するための釣合い力を前記二次ピストンに加え、これによって、前記前進流体力と前記後退流体力との間の差を補償するように構成された力釣合い室と、
を備える、アクチュエータ。
【請求項2】
前記シリンダアセンブリは、
一次シリンダと、
前記一次シリンダに結合された二次シリンダと
を備え、
前記一次シリンダと前記二次シリンダとは、前記一次ピストンと前記二次ピストンとを内部で軸線方向に運動させることができる円筒形の長手方向空洞を形成している、
請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記一次シリンダはフランジを有し、前記二次シリンダは各々のフランジを有し、
前記アクチュエータは、
前記一次シリンダの前記フランジと前記二次シリンダの前記各々のフランジとの間に配置された中央グランドと、
前記一次シリンダの前記フランジと、前記二次シリンダの前記各々のフランジと、前記中央グランドとを互いに結合する複数の締結具と、
をさらに備える、請求項2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記中央グランドは、
前記一次シリンダの前記フランジと相互作用する第1のグランド部分と、
前記二次シリンダの前記各々のフランジと相互作用する、前記第1のグランド部分と別体の第2のグランド部分と
を備える、請求項3記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記シリンダアセンブリの内部に部分的に配置された、前記二次ピストンに結合されたピストンロッドをさらに備え、前記一次ピストンは、前記二次ピストンと前記ピストンロッドとの間に固定されており、これによって、前記一次ピストンと、前記二次ピストンと、前記ピストンロッドとが、軸線方向に一緒に運動する、請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記アクチュエータは、
固定されたままとなるように、前記シリンダアセンブリに結合された静止ピストンと、
前記二次ピストンに結合されていて、前記静止ピストンの外面をスライド可能である内側シリンダと
をさらに備え、
前記力釣合い室は、前記静止ピストンの前記外面と前記内側シリンダの内面との間に形成されており、これによって、前記釣合い力が前記内側シリンダに加えられ、該内側シリンダが前記釣合い力を前記二次ピストンに伝達する、
請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記力釣合い室は、前記静止ピストンに形成された長手方向通路と1つ以上の交差穴とを介して前記第3の室に流体接続されており、これによって、前記二次ピストンが前進するときに、前記力釣合い室が前記第3の室から流体を受け取り、前記力釣合い室内の流体は、前記第3の室内の流体により前記二次ピストンに加えられている前記前進流体力に抵抗するために、前記釣合い力を前記二次ピストンに加える、請求項6記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記力釣合い室は前記第4の室に流体接続されており、これによって、前記二次ピストンが後退するときに、前記力釣合い室が前記第4の室から流体を受け取り、前記力釣合い室内の流体は、前記第4の室内の流体により前記二次ピストンに加えられている前記後退流体力への加算力として、前記釣合い力を前記二次ピストンに加える、請求項6記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記アクチュエータは、前記静止ピストンに結合された、半径方向において前記内側シリンダと前記二次ピストンとの間に介在させられた釣合い管をさらに備え、前記二次ピストンは、該二次ピストンが前進または後退するときに、前記釣合い管の外面を軸線方向に運動するように構成されている、請求項6記載のアクチュエータ。
【請求項10】
流体をアクチュエータの第1の室と第3の室とに供給して、前記アクチュエータのピストンロッドを前進させることであって、前記アクチュエータは、一次ピストンと二次ピストンとを備え、該二次ピストンは前記ピストンロッドに結合されており、前記一次ピストンは、前記二次ピストンと前記ピストンロッドとに固定されており、これによって、前記一次ピストンと、前記二次ピストンと、前記ピストンロッドとが、軸線方向に一緒に運動し、流体を前記第1の室に供給することによって、前記一次ピストンが前進し、流体を前記第3の室に供給することによって、前記二次ピストンを前進させるための前進流体力が加えられる、前進させることと、
流体を前記アクチュエータの第2の室と第4の室とに供給して、前記アクチュエータの前記ピストンロッドを後退させることであって、流体を前記第2の室に供給することによって、前記一次ピストンが後退し、流体を前記第4の室に供給することによって、前記二次ピストンを後退させるための、前記前進流体力と異なる後退流体力が加えられる、前記後退させることと、
流体を前記第3の室または前記第4の室から力釣合い室に供給して、前記二次ピストンに作用している流体力に抵抗するかまたは前記二次ピストンに作用している前記流体力に加算するための釣合い力を前記二次ピストンに加え、これによって、前記前進流体力と前記後退流体力との間の差を補償することと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記アクチュエータは、(i)前記一次ピストンと前記二次ピストンとを内部で軸線方向に運動させることができるシリンダアセンブリと、(ii)固定されたままとなるように、前記シリンダアセンブリに結合された静止ピストンと、(iii)前記二次ピストンに結合されていて、前記静止ピストンの外面をスライド可能である内側シリンダとをさらに備え、
前記釣合い力を前記二次ピストンに加えることが、前記釣合い力を内側シリンダに加え、該内側シリンダが前記釣合い力を前記二次ピストンに伝達することを含む、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
流体を前記力釣合い室に供給することは、
前記二次ピストンが前進するときに、流体を前記第3の室から、前記静止ピストンに形成された1つ以上の交差穴と長手方向通路とを通して前記力釣合い室に供給することと、
前記第3の室内の流体により前記二次ピストンに加えられている前記前進流体力に抵抗するために、前記釣合い力を前記二次ピストンに加えることと
を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
流体を前記力釣合い室に供給することは、
前記二次ピストンが後退するときに、流体を前記第4の室から前記力釣合い室に供給することと、
前記第4の室内の流体により前記二次ピストンに加えられている前記後退流体力への加算力として、前記釣合い力を前記二次ピストンに加えることと
を含む、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2022年2月16日に出願された米国仮特許出願第63/310,679号の優先権を主張し、その内容全体を参照により、本明細書に完全に記載してあるかのごとく本明細書に援用するものとする。
【背景技術】
【0002】
液圧シリンダアクチュエータは、機械的な操作を容易にするために液圧力を使用するシリンダを含んでいる。特に、液圧シリンダアクチュエータは、ピストンが内部でスライドすることができる中空円筒形の管を含んでいる。ピストンはシリンダを2つの室に分割することができる。一方の室に加圧流体が供給されると、ピストンが運動する。複動式のアクチュエータは、両方向に運動することができるピストンを有している。このピストンの両側の間のあらゆる流体圧差によって、シリンダの内部でピストンが運動させられる。
【0003】
液圧アクチュエータは、種々の用途、例えば、液圧式の機械類(例えば掘削機、ローダ等)の器具の制御および航空機の操縦翼面の運動に使用されてよい。例えば、航空機は、典型的には、操縦可能に位置決めされているときに航空機の動きを誘導する複数の飛行操縦翼面(固定翼航空機)または1つ以上のサイクリックピッチ制御スワッシュプレート(回転翼航空機)を含んでいる。
【0004】
幾つかの重要な用途、例えば航空機操縦系統では、冗長的な制御、例えば、操縦翼面を運動させるための複数のアクチュエータを設けて、1つのアクチュエータの制御が失われても、別のアクチュエータが操縦翼面を安全に運動させることができるようにすることが所望される場合がある。さらに、これらのアクチュエータの力は加算的であり、これによって、アクチュエータが加えることができる力を増大させることができる。
【0005】
幾つかの用途、例えば軍事用途では、さらに、アクチュエータを耐弾性に構成して、アクチュエータの一部が損傷しても、アクチュエータが作動し続けることができるようにすることが所望される場合がある。アクチュエータの重量を実質的に増加させることなく、アクチュエータを耐弾性にすることが所望される場合がある。
【0006】
本明細書の開示が提示しているのは、考慮すべき上記の問題および別の問題に関することである。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、2系統液圧アクチュエータに関する実施形態を説明している。
【0008】
第1の例示的な実施形態において、本開示は、アクチュエータを説明している。このアクチュエータは、シリンダアセンブリの内部に少なくとも部分的に配置された一次ピストンと、シリンダアセンブリの内部に少なくとも部分的に配置された二次ピストンであって、一次ピストンと二次ピストンとが、シリンダアセンブリの内部で軸線方向に一緒に運動するように構成されている、二次ピストンと、シリンダアセンブリの内部に形成された複数の室であって、(i)第1の室であって、この第1の室に流体が流れると、一次ピストンが前進する、第1の室と、(ii)第2の室であって、この第2の室に流体が流れると、一次ピストンが後退する、第2の室と、(iii)第3の室であって、この第3の室に流体が流れると、二次ピストンが前進する、第3の室と、(iv)第4の室であって、この第4の室に流体が流れると、二次ピストンが後退する、第4の室とを備え、第3の室内の流体により加えられる、二次ピストンを前進させるための前進流体力が、第4の室内の流体により加えられる、二次ピストンを後退させるための後退流体力と異なっている、複数の室と、第3の室または第4の室から流体を受け取って、二次ピストンに作用している流体力に抵抗するかまたは二次ピストンに作用している流体力に加算するための釣合い力を二次ピストンに加え、これによって、前進流体力と後退流体力との間の差を補償するように構成された力釣合い室とを含む。
【0009】
第2の例示的な実施形態において、本開示は、第1の例示的な実施形態のアクチュエータを作動させる方法を説明している。
【0010】
第3の例示的な実施形態において、本開示は、流体の供給源と、流体リザーバと、第1の例示的な実施形態のアクチュエータと、流体の供給源からアクチュエータに流れ、このアクチュエータから流体リザーバに流れる流体流を制御する1つ以上のマニホールドとを含む、液圧系統を説明している。
【0011】
前述した概要は例示的なものにすぎず、なんら限定を意図するものではない。図面および以下の詳細な説明を参照することで、上述した例示的な態様、実施形態および特徴に加えて、更なる態様、実施形態および特徴が明らかになるはずである。
【0012】
例示的な例の特徴と考えられる新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載してある。しかしながら、例示的な例のほかに、使用の好適な形態、更なる対象およびその説明は、本開示の例示的な例の以下の詳細な説明を添付の図面に相俟って読みながら参照することで、最もよく理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】例示的な実施形態によるアクチュエータの斜視図である。
図2】別の例示的な実施形態による、図1のアクチュエータの断面側面図である。
図3】例示的な実施形態による、図1のアクチュエータの別の断面側面図である。
図4】例示的な実施形態による、アクチュエータを作動させるための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、2系統液圧アクチュエータに関する。幾つかの用途では、複数の液圧シリンダアクチュエータは、1つのアクチュエータの制御が失われた場合に冗長性を提供するだけでなく、アクチュエータにより操縦される部材(例えば、ヘリコプタの回転翼または固定翼航空機の操縦翼面)に加えることができる力を増大させるためにも使用されてよい。
【0015】
1つの例では、アクチュエータは、長いシリンダが多数のピストン、例えば、共通のロッドに結合された2つのピストンを収容するように、一列にずらされた2つの系統を含んでいてよい。しかしながら、このような構成では、このような長いシリンダを装甲して、ピストンを弾道損傷に対して防護することが難しくなってしまう場合がある。さらに、このようなアクチュエータでは、一方の系統に対する損傷が他方の系統に伝播して、アクチュエータ全体の制御が失われてしまう場合がある。
【0016】
別の例では、アクチュエータが3つの別体のピストンを含んでいてよく、中央のピストンが1つの系統によって制御され、中央のピストンの各側に設けられた外側の2つのピストンが第2の系統によって制御される。この例では、中央のピストンに割り当てられた系統が作動しなくても、第2の系統が別の2つのピストンを作動させ、これによって、アクチュエータが作動し続けることが可能となる。一方の系統に対する損傷が他方の系統に伝播することはないものの、このような構成は大型の構造に繋がってしまう。このことは、幾つかの用途において所望されない場合がある。さらに、3つの別体のシリンダを装甲すると、アクチュエータが大幅に重くなってしまう場合がある。
【0017】
さらに、このような3ピストン構成では、ピストンが共通のヨークに結合されている。外側の2つのピストンは、ヨークに作用する間接的な負荷経路を有している。これによって、剛性が減じられ、アクチュエータが振動に基づく損傷をより被りやすくなってしまう場合がある。さらに、外側のピストンの間の力の不釣合いが、曲げおよび側方負荷に繋がってしまう場合がある。
【0018】
したがって、冗長性を提供する2系統液圧アクチュエータを有することが所望される場合がある。さらに、このような2系統アクチュエータが、一方の系統から他方の系統への損傷の伝播を阻止することが所望される場合がある。こうして、一方の系統が故障しても、他方の系統が作動し続けることができる。また、このような2系統アクチュエータを、3ピストン構成と比べて、より小さな構造(例えば、端から端までのより小さな長さ)で構成することが所望される場合もある。このようなアクチュエータはより高い剛性を有していて、これによって、振動性能を向上させることができる。
【0019】
図1には、例示的な実施形態によるアクチュエータ100の斜視図が示してある。このアクチュエータ100は、シリンダアセンブリ102とピストンロッド104とを含んでいてよい。このピストンロッド104は、シリンダアセンブリ102の内部にスライド可能に収容されている。「スライド可能に収容され」という表現は、本明細書では、第1の構成要素(例えばピストン)が、第2の構成要素(例えばシリンダ)に対して相互間に十分なクリアランスを有して位置決めされており、これによって、第1の構成要素が、第2の構成要素に対して相対的に近位方向および遠位方向に運動することが可能となることを示すために使用している。
【0020】
シリンダアセンブリ102の近位端は、シリンダアセンブリ102をフレームまたは構造体(例えば航空機のフレーム)に結合するためのピンが配置されてよい貫通した穴107を有する接続部分106を有している。類似して、ピストンロッド104の遠位端は、ピストンロッド104を可動の部材、例えば航空機の操縦翼面またはヘリコプタの回転翼に結合するためのピンが配置されてよい貫通した穴109を有する接続部分108を有している。
【0021】
例示的な実施形態では、シリンダアセンブリ102は、一次シリンダ200と二次シリンダ202とを含んでいてよい。一次シリンダ200は二次シリンダ202と別体である。
【0022】
一次シリンダ200はフランジ204を有していてよく、二次シリンダ202は各々のフランジ206を有していてよい。フランジ204は、シリンダアセンブリ102を中心として円形の配列で配置された複数の締結具(例えばボルト)、例えば締結具208を介してフランジ206に結合されている。有利には、シリンダアセンブリ102は互いに別体の2つのシリンダを備えているので、これら2つのシリンダのうちの一方(例えば一次シリンダ200)が損傷しても、他方のシリンダ(例えば二次シリンダ202)を作動させ続けることができる。
【0023】
図2には、例示的な実施形態によるアクチュエータ100の断面側面図が示してあり、図3には、例示的な実施形態によるアクチュエータ100の別の断面側面図が示してある。図3の断面は、図2の断面図の平面に対して垂直である平面に沿っている。
【0024】
アクチュエータ100は、一次シリンダ200と二次シリンダ202との間の境界部分に配置された中央グランド300を有している。一例では、この中央グランド300は2つの部分、つまり、第1のグランド部分302と第2のグランド部分304とを含んでいてよい。中央グランド300は、一次シリンダ200と二次シリンダ202とを分離していて、一次シリンダ200を二次シリンダ202に結合する締結具(例えば締結具208)を介して一次シリンダ200と二次シリンダ202とに結合されている。
【0025】
中央グランド300はシール支持体として働く。例えば、中央グランド300は多数の内側の環状溝を有していてよく、これらの環状溝内にシール(例えばOリング、Tシール等)を配置することができる。これによって、流体室を互いに封止しつつ、スライド可能な構成要素、例えばピストンを中央グランド300に対して相対的に運動させることが可能となる。さらに、以下でより詳細に説明するように、中央グランド300は、一次ピストンを制御する第1の系統を、二次ピストンを制御する第2の系統から隔離している。
【0026】
一次シリンダ200および二次シリンダ202は、共に内部に円筒形の空洞を形成している。この空洞内には、一次ピストン306と二次ピストン308とが少なくとも部分的に配置されている。この一次ピストン306と二次ピストン308とは、シリンダアセンブリ102の内部で軸線方向に可動である。
【0027】
一次ピストン306と二次ピストン308とは両方とも中空である。特に、一次ピストン306は、内部に形成された円筒形の長手方向空洞を有している。この空洞内には、二次ピストン308の一部が配置されており、また、空洞を通して、ピストンロッド104の一部も配置されている。
【0028】
二次ピストン308はピストンロッド104に結合されており、これによって、二次ピストン308とピストンロッド104とが一緒に運動する。例えば、このピストンロッド104は、その近位端でその外面に形成されたねじ山を有していてよく、二次ピストン308は、その遠位端でその内面に形成された対応するねじ山を有していてよい。こうして、ピストンロッド104を二次ピストン308に螺合領域309で螺合することができる。
【0029】
さらに、一次ピストン306の近位端が、二次ピストン308により形成された肩部310に当て付けられているかまたは連結されているのに対して、一次ピストン306の遠位端は、ピストンロッド104に連結されている。こうして、一次ピストン306と、二次ピストン308と、ピストンロッド104とが一緒に運動する。特に、一次ピストン306に力が加えられると、このような力は、二次ピストン308とピストンロッド104とにも伝達される。二次ピストン308に力が加えられると、このような力は、一次ピストン306とピストンロッド104とにも伝達される。
【0030】
一次ピストン306は、この一次ピストン306を運動させるために流体が作用する(つまり、流体力を加える)ピストンヘッド312を有している。一次ピストン306は、一次シリンダ200の内部にスライド可能に収容されており、これによって、一次ピストン306が軸線方向に運動するときに、ピストンヘッド312が、一次シリンダ200の内面に沿ってスライドする。
【0031】
図2図3に示したように、二次ピストン308の外周面と一次シリンダ200の内周面との間にまたは二次ピストン308の外周面と一次シリンダ200の内周面とにより画定されて、かつピストンヘッド312と第1のグランド部分302との間に、第1の室314が形成されている。この第1の室314は、図示のように環状室である。第1の室314に加圧流体が供給されると、一次ピストン306が前進する。「前進する/させる」または「前進」という用語は、本明細書では、遠位方向(例えば図2図3で見て右側)への運動に言及するために使用しており、これに対して、「後退する/させる」または「後退」という用語は、本明細書では、近位方向(例えば図2図3で見て左側)への運動に言及するために使用している。
【0032】
さらに、一次ピストン306の外周面と一次シリンダ200の内周面との間にまたは一次ピストン306の外周面と一次シリンダ200の内周面とにより画定されて、かつピストンヘッド312と端グランド318との間に、第2の室316が形成されている。この第2の室316も環状室である。第2の室316に加圧流体が供給されると、一次ピストン306が後退する。
【0033】
端グランド318は、一次シリンダ200の遠位端で一次ピストン306と一次シリンダ200との間に配置されている。端グランド318は内側の環状溝を有していてよく、この環状溝内にシールが配置されている。こうして、シールが、第2の室316からアクチュエータ100の外部環境への漏れを阻止しつつ、一次ピストン306が、端グランド318に対して相対的に軸線方向に運動またはスライドすることができる。第2の室316は後退室と呼ばれる。なぜならば、第2の室316に加圧流体が供給されると、一次ピストン306が後退するからである。
【0034】
アクチュエータ100は第1のポート320を有している。この第1のポート320は、一次シリンダ200に形成されていて、流体を第1の室314に供給し、また、流体を第1の室314から受け取るように構成されている。アクチュエータ100は、さらに、第2のポート322を有している。この第2のポート322は、一次シリンダ200に形成されていて、流体を第2の室316に供給し、また、流体を第2の室316から受け取るように構成されている。
【0035】
例えば、加圧流体が、流体の供給源(例えばポンプ)から第1のポート320を通って第1の室314に供給されると、流体が、流体力をピストンヘッド312に遠位方向で加え、一次ピストン306が前進する(遠位方向に運動する)。一次ピストン306が前進するときに第2の室316から放出された流体は、第2のポート322を通って、例えば流体リザーバに流れる。
【0036】
他方、加圧流体が、流体の供給源から第2のポート322を通って第2の室316に供給されると、流体が、流体力をピストンヘッド312に近位方向で加え、一次ピストン306が後退することができる(つまり、近位方向に運動することができる)。一次ピストン306は、中央グランド300の第1のグランド部分302に達するまで後退することができる(つまり、一次ピストン306が第1のグランド部分302に達したときに、後退中の一次ピストン306のボトミングが生じる)。
【0037】
一次ピストン306が後退するときに第1の室314から放出された流体は、第1のポート320を通って流体リザーバに流れる。上述したように、一次ピストン306の運動によって、この一次ピストン306と共にピストンロッド104と二次ピストン308とが運動させられる。
【0038】
図3を参照すると、一次ピストン306のピストンヘッド312の外径(または一次シリンダ200の内径)が「D1」で示してあるのに対して、一次ピストン306の残りの部分の外径は「D2」で示してある。第1の室314を画定する部分を通る二次ピストン308の外径もD2に等しい。この構成によって、一次ピストン306を前進させるために流体が作用する第1の室314内の一次ピストン306の環状の表面積が、一次ピストン306を後退させるために流体が作用する第2の室316内の一次ピストン306の環状の表面積に等しくなっている。
【0039】
したがって、一次ピストン306の釣合いが保たれる。つまり、前進時に一次ピストン306に作用する流体力が、後退時に一次ピストン306に作用する流体力に等しい。第1の室314に供給される供給流体の圧力レベルをPS、第2の室316(から放出された流体)における戻し流体をPRと仮定すると、一次ピストン306が前進していようと後退していようと、一次ピストン306に作用する流体力は、
【数1】
となる。一例として、供給圧力レベルPSが高い圧力レベル、例えば3000~5000psiであってよいのに対して、戻し圧力レベルPRは低い圧力レベル、例えば50~100psiであってよい。
【0040】
一次シリンダ200と、一次ピストン306と、それぞれ割り当てられた流体室とは、ピストンロッド104の前進および後退を制御する第1の系統と見なすことができる。アクチュエータ100は、さらに、二次ピストン308と、(この二次ピストン308を介して)ピストンロッド104の前進および後退を制御する割り当てられた流体室とを含む第2の系統を有している。こうして、アクチュエータ100は、一方の系統が作動しなくても、他方の系統が、アクチュエータ100により制御される可動の部材(例えば航空機の操縦翼面または回転翼)を安全に操作することができる2系統アクチュエータを成している。
【0041】
二次ピストン308は、この二次ピストン308を運動させるために流体が作用する(つまり、流体力を加える)ピストンヘッド324を有している。二次ピストン308は、二次シリンダ202の内部にスライド可能に収容されており、これによって、二次ピストン308が軸線方向に運動するときに、ピストンヘッド324が二次シリンダ202の内面に沿ってスライドする。
【0042】
二次ピストン308は、図2図3に示したように中空であり、内部に形成された円筒形の長手方向空洞を含んでいる。アクチュエータ100は、二次ピストン308の円筒形の長手方向空洞の内部にそれぞれ少なくとも部分的に収容された釣合い管326、内側シリンダ328および静止ピストン330を含んでいる。
【0043】
静止ピストン330は、この静止ピストン330が二次シリンダ202の内部に固定されたままであるかまたは不動に配置されているように、二次シリンダ202に結合されている。例えば、静止ピストン330の近位端が、二次シリンダ202内にねじ込まれていてもよいし、保持リングによって二次シリンダ202に保持されていてもよい。
【0044】
釣合い管326は、保持リング332(例えばワイヤリングまたは保持Oリング)を介して静止ピストン330に結合されており、これによって、釣合い管326も固定されたままとなる。内側シリンダ328は、静止ピストン330の外面を取り囲んでスライド可能である。特に、内側シリンダ328は、この内側シリンダ328が釣合い管326と静止ピストン330とに対して相対的に軸線方向に運動することができるように、釣合い管326と静止ピストン330との間にスライド可能に収容されている。
【0045】
静止ピストン330の外周面と内側シリンダ328の内周面との間で、静止ピストン330の拡大された遠位端335と内側シリンダ328の近位端336との間に、力釣合い室334が形成されている。内側シリンダ328の近位端336は、外側溝と内側溝とを有しており、これらの溝内にシールを配置することができ、これによって、内側シリンダ328が静止ピストン330の外面を取り囲んで軸線方向に運動するときに、力釣合い室334からの流体漏れを阻止することができる。図2図3に示したように、釣合い管326は、(半径方向で)内側シリンダ328と二次ピストン308との間に介在させられている。二次ピストン308は、この二次ピストン308が前進または後退するときに、釣合い管326の外面を取り囲んで軸線方向に運動するように構成されている。
【0046】
さらに、図2図3に示したように、釣合い管326の外周面と二次シリンダ202の内周面との間にまたは釣合い管326の外周面と二次シリンダ202の内周面とにより画定されて、かつピストンヘッド324と二次シリンダ202の内側の近位面との間に、第3の室338が形成されている。また、二次ピストン308の外周面と二次シリンダ202の内周面との間にまたは二次ピストン308の外周面と二次シリンダ202の内周面とにより画定されて、ピストンヘッド324と中央グランド300の第2のグランド部分304との間に、第4の室340が形成されている。
【0047】
第3の室338と第4の室340とは両方とも環状である。加圧流体が第3の室338に供給されると、二次ピストン308が前進する。他方、加圧流体が第4の室340に供給されると、二次ピストン308は後退する。
【0048】
ピストンヘッド324は外側の環状溝を有していてよく、この環状溝内にシールが配置されている。こうして、このシールが、第4の室340と第3の室338との間での漏れを阻止しつつ、二次ピストン308が軸線方向に運動またはスライドすることができる。
【0049】
アクチュエータ100は、さらに、第3のポート342を有している。この第3のポート342は、二次シリンダ202に形成されていて、流体を第3の室338に供給し、また、流体を第3の室338から受け取るように構成されている。アクチュエータ100は第4のポート344も有している。この第4のポート344は、二次シリンダ202に形成されていて、流体を第4の室340に供給し、また、流体を第4の室340から受け取るように構成されている。
【0050】
加圧流体が、第3のポート342を通って第3の室338に供給されると、流体が、流体力をピストンヘッド324に遠位方向で加え、二次ピストン308が前進する(遠位方向に運動する)。この二次ピストン308は、中央グランド300の第2のグランド部分304に達するまで前進(つまり、遠位方向に運動)してよい(つまり、二次ピストン308が第2のグランド部分304に達したときに、前進中の二次ピストン308のボトミングが生じる)。二次ピストン308が前進するときに第4の室340から放出された流体は、第4のポート344を通って流体リザーバに流れる。
【0051】
他方、加圧流体が、第4のポート344を通って第4の室340に供給されると、流体が、流体力をピストンヘッド324に近位方向で加え、二次ピストン308が後退する(近位方向に運動する)。二次ピストン308が後退するときに第3の室338から放出された流体は、第3のポート342を通って流体リザーバに流れる。上述したように、二次ピストン308の運動によって、この二次ピストン308と共にピストンロッド104と一次ピストン306とが運動させられる。
【0052】
図3を参照すると、二次ピストン308のピストンヘッド324の外径(または二次シリンダ202の内径)が「D1」で示してあり、二次ピストン308の残りの部分の外径は「D2」で示してある。釣合い管326の外径は、D2よりも小さい「D3」で示してある。この構成によって、二次ピストン308を前進させるために流体が作用する第3の室338内の二次ピストン308の環状の表面積が、二次ピストン308を後退させるために流体が作用する第4の室340内の二次ピストン308の環状の表面積よりも大きくなっている。したがって、二次ピストン308を前進させるために第3の室338内の流体により加えられる前進流体力が、二次ピストン308を後退させるために第4の室340内の流体により加えられる後退流体力と異なっている。
【0053】
二次ピストン308を前進させるために第3の室338に供給される流体の圧力レベルをPS、第4の室340内の圧力レベルをPRと仮定すると、遠位方向で二次ピストン308に作用する前進流体力は、
【数2】
となる。他方、二次ピストン308を後退させるために第4の室340に供給される流体の圧力レベルをPS、第3の室338内の圧力レベルをPRと仮定すると、遠位方向で二次ピストン308に作用する後退流体力は、
【数3】
となる。上述したように、供給圧力レベルPSが高い圧力レベル、例えば3000~5000psiであってよいのに対して、戻し圧力レベルPRは低い圧力レベル、例えば50~100psiであってよい。
【0054】
2はD3よりも大きいので、前進流体力は後退流体力よりも大きく、つまり、F2E>F2Rである。しかしながら、アクチュエータ100は、二次ピストン308の釣合いを保つために、F2E>F2Rの間の差を埋め合わせるかまたは補償するように構成されている。
【0055】
静止ピストン330は、第1のセットの交差穴346と、静止ピストン330内に形成された長手方向通路348と、第2のセットの交差穴350とを有している。「穴」という用語は、概して、本明細書では、例えば、中実の物体または表面に設けられた中空の場所(例えば空洞)を示すために使用している。「交差穴」という用語は、本明細書では、別の穴、空洞もしくは通路の経路に交差しているかまたは別の穴、空洞もしくは通路に対して横方向に形成されている任意のタイプの開口(例えばスロット、窓、穴等)を含めるために使用している。
【0056】
この構成によって、第3の室338に供給された流体が、第1のセットの交差穴346と、長手方向通路348と、第2のセットの交差穴350とを通って力釣合い室334に連通される。したがって、第3の室338内の加圧流体が、流体力を二次ピストン308に遠位方向で加えたときに、力を内側シリンダ328に近位方向でも加える。内側シリンダ328は二次ピストン308に結合されており、したがって、近位方向で内側シリンダ328に作用する力が二次ピストン308に伝達され、この二次ピストン308に遠位方向で作用する流体力に抵抗する。
【0057】
内側シリンダ328は二次ピストン308に係止されている。任意の係止または結合機構が使用されてよい。したがって、内側シリンダ328に加えられた軸線方向の力が二次ピストン308に伝達され、また、逆のことも云える。さらに、アクチュエータ100は、一次ピストン306と二次ピストン308とが両方ともシリンダアセンブリ102の内部で軸線方向に運動するときに、一次ピストン306が二次ピストン308に対して相対的に回動することを阻止する回動防止特徴(例えばピン)を有していてよい。
【0058】
改めて図3を参照すると、内側シリンダ328の内径は「D4」で示してあり、静止ピストン330の外径は「D5」で示してある。図2図3を一緒に参照すると、二次ピストン308の前進中、力釣合い室334に連通された流体は、流体力を内側シリンダ328の近位端336に近位方向で加える。内側シリンダ328に近位方向で作用する流体力は、釣合い力と呼ばれることがあり、
【数4】
として決定される。
【0059】
特に、内側シリンダ328と静止ピストン330とは、D4とD5とによって、釣合い力FBがF2EとF2Rとの間の差に等しくなるように構成されている。言い換えると、FB=F2E-F2Rである。
【0060】
したがって、二次ピストン308の釣合いが保たれる。二次ピストン308が前進すると、釣合い力FBが前進力F2Eに抵抗し、これによって、このF2Eが減じられ、後退力F2Rに等しくなる。
【0061】
図面に示した例示的な実施形態では、第3の室338に供給された加圧流体が、二次ピストン308の前進に抵抗するために力釣合い室334に連通されているが、別の構成が可能である。例えば、第3の室338から力釣合い室334に流体を連通するのではなく、アクチュエータ100は、第4の室340からの流体が力釣合い室334に連通されるように構成されていてよい。この例では、二次ピストンが後退するとき、力釣合い室334内の流体を介して内側シリンダ328に加えられる釣合い力FBが、第4の室340内の流体の後退力F2Rに合算される加算力となり、これによって、FB+F2R=F2Eとなる。
【0062】
したがって、アクチュエータ100は、流体を第3の室338または第4の室340から力釣合い室334に供給するように構成されていてよい。第1の事例では、内側シリンダ328に作用する力が、二次ピストン308に作用する前進力F2Eに抵抗し、第2の事例では、内側シリンダ328に作用する力が、二次ピストン308に作用する後退力F2Rに加算される。
【0063】
したがって、アクチュエータ100は2系統アクチュエータとして構成されている。第1の系統が何らかの条件下で作動を停止しても、第2の系統が、ピストンロッド104を運動させるために作動し続けることができる。こうして、アクチュエータ100が冗長性を提供する。さらに、二次ピストン308に加えられた力が、一次ピストン306に加えられた力に加算される。言い換えると、一次ピストン306と二次ピストン308との両方を前進させるために、加圧流体を第1の室314と第3の室338とに同時に供給することができ、その際、両方のピストン306,308によりピストンロッド104に加えられる力が互いに合算される。類似して、一次ピストン306と二次ピストン308との両方を後退させるために、加圧流体を第2の室316と第4の室340とに同時に供給することができ、その際、両方のピストン306,308によりピストンロッド104に加えられる力が互いに合算される。
【0064】
アクチュエータ100の構成は、既存のアクチュエータを上回る数多くの利点を提供することができる。例えば、アクチュエータ100は、冗長性のために、2系統を有している。第1の液圧系統(例えば第1の室314、第2の室316、第1のポート320、第2のポート322等)は、ピストンロッド104を運動させるために、一次ピストン306を作動させる。同時に、第2の液圧系統(例えば第3の室338、第4の室340、第3のポート342、第4のポート344等)は、ピストンロッド104と一次ピストン306とに結合された二次ピストン308を作動させる。一方の系統が損傷しても、他方の系統が作動し続けることができ、したがって、冗長的な構成が提供されている。
【0065】
さらに、アクチュエータ100は、一方の系統に対する損傷が他方の系統に伝播することがないように構成されている。例えば、一次シリンダ200は二次シリンダ202と別体である。したがって、一方のシリンダが損傷しても、他方のシリンダが損傷することはない。特に、一方のシリンダに亀裂があっても、このような亀裂が他方のシリンダに伝播することはない。なぜならば、2つのシリンダが、2つの別体の部分(つまり、第1のグランド部分302および第2のグランド部分304)から構成された中央グランド300によって分離されているからである。言い換えると、亀裂が遮られる。類似して、一次ピストン306は、二次ピストン308と別体の構成要素である。したがって、一方のピストンに損傷または亀裂があっても、このような亀裂が他方のピストンに伝播することはない。
【0066】
一例では、端グランド318が、脆性のグランドまたは構成要素として構成されていてよい。したがって、一次ピストン306が運動したときに、端グランド318が損傷すると、一次ピストン306が動かなくなってしまわないように、端グランド318を崩壊させることができる(例えば破砕することができる)。端グランド318が損傷したことで、一次ピストン306を制御する液圧系統の漏れおよび故障が生じることがあっても、二次ピストン308を制御する液圧系統が作動し続け、これによって、二次ピストン308がピストンロッド104を安全に位置決めすることが可能となる。類似して、中央グランド300の第1のグランド部分302および第2のグランド部分304も脆性の構成要素として形成されていてよい。
【0067】
一例では、アクチュエータ100に損傷を与える恐れがある弾道破片に対する更なる防護を提供するために、シリンダ200,202のうちの一方が装甲されて(例えば、弾道物体に耐えることができる肉厚の焼入れ鋼から形成されて)いてよい。両方のシリンダの代わりに、一方のシリンダを装甲することによって、アクチュエータ100の重量が減じられる。同時に、装甲されていないシリンダが損傷しても、装甲されたシリンダが、各々のピストンと液圧系統とを保護し続けることができ、これによって、アクチュエータ100が機能し続けることが可能となる。
【0068】
さらに、少なくとも部分的に同心のピストンを備えたアクチュエータ100の構成によって、アクチュエータ100を、相並んで位置する3つのピストンを有するアクチュエータと比べて、より剛性にすることができる。より高い剛性によって、アクチュエータ100をより耐振性にすることができる。さらに、アクチュエータ100は、3ピストンアクチュエータに関連した側方負荷または曲げ問題を被らなくなる。
【0069】
図4は、例示的な実施形態によるアクチュエータを作動させるための方法900のフローチャートである。例えば、方法900は、アクチュエータ100を作動させるために使用されてよい。
【0070】
方法900は、1つ以上のブロック902~906により図示した1つ以上の操作または動作を含んでいてよい。ブロックは順番に図示してあるが、これらのブロックは、並行してかつ/または本明細書に記載した順序と異なる順序で実施されてもよい。また、種々のブロックが、より少ないブロックを形成するように互いに組み合わされてよく、付加的なブロックに分割されてよく、かつ/または所望の実施形態に基づき取り除かれてよい。当然ながら、本明細書に開示した上記および別のプロセスおよび方法に対して、フローチャートは、本例の1つの可能な実施形態の機能および操作を示している。本開示の例の範囲内には、適正な当業者に自明であるように、関連する機能性に応じて、機能が、図示したかまたは論じた順序と異なる順序で、例えば実質的に同時にまたは逆の順序で実施されてよい代替的な実施形態が含まれている。
【0071】
ブロック902では、方法900は、流体をアクチュエータ100の第1の室314と第3の室338とに供給して、アクチュエータ100のピストンロッド104を前進させることを含んでおり、アクチュエータ100は、一次ピストン306と二次ピストン308とを備えており、この二次ピストン308はピストンロッド104に結合されており、一次ピストン306は、二次ピストン308とピストンロッド104とに固定されており、これによって、一次ピストン306と、二次ピストン308と、ピストンロッド104とが、軸線方向に一緒に運動し、流体を第1の室314に供給することによって、一次ピストン306が前進し、流体を第3の室338に供給することによって、二次ピストン308を前進させるための前進流体力が加えられる。
【0072】
ブロック904では、方法900は、流体をアクチュエータ100の第2の室316と第4の室340とに供給して、アクチュエータ100のピストンロッド104を後退させることを含んでおり、流体を第2の室316に供給することによって、一次ピストン306が後退し、流体を第4の室340に供給することによって、二次ピストン308を後退させるために、前進流体力と異なる後退流体力が加えられる。
【0073】
ブロック906では、方法900は、流体を第3の室338または第4の室340から力釣合い室334に供給して、二次ピストン308に作用している流体力に抵抗するかまたは二次ピストン308に作用している流体力に加算するための釣合い力を二次ピストン308に加え、これによって、前進流体力と後退流体力との間の差を補償することを含んでいる。
【0074】
方法は、本明細書に記載した別の操作を含んでいてよい。
【0075】
上記の詳細な説明には、開示した系統の種々の特徴および動作が、添付の図面を参照しながら説明してある。本明細書に記載した例示的な実施形態は限定を意味するものではない。開示した系統の特定の態様は、本明細書において全て想定される多種多様な構成で配置されてよく、また、組み合わされてよい。
【0076】
さらに、文脈に特段提案しない限り、各々の図面に示した特徴は互いに組み合わせて使用されてよい。したがって、図面は、概して、1つ以上の総合的な実施形態の構成要素態様と見なすべきものであり、図示の全ての特徴が各々の実施形態のために必要であるとは限らないことを理解されたい。
【0077】
さらに、本明細書または特許請求の範囲における要素、ブロックまたはステップのあらゆる列挙は明確性を目的とするものである。したがって、このような列挙は、これらの要素、ブロックまたはステップが特定の配置に固執しているかまたは特定の順序で実施されることを要求または示唆するものと解すべきではない。
【0078】
さらに、装置または系統は、図面に提示した機能を実施するように使用されてよいかまたは構成されていてよい。場合により、装置および/または系統の構成要素が機能を実施するように構成されていてよく、これによって、構成要素が、実際には、このような性能を可能にするように(ハードウェアおよび/またはソフトウェアを備えて)構成かつ体系化されている。別の例では、装置および/または系統の構成要素が、例えば特定の形式で動作させられたときに、機能の実施に適合させられるか、機能の実施を可能にするか、または機能の実施に適しているように配置されてよい。
【0079】
「実質的に」という用語は、列挙した特性、パラメータまたは数値が正確に達成される必要はなく、例えば、公差、測定誤差、測定精度限界および当業者に知られている別の要因を含む偏差または変動が、特性が提供することを意図している効果を阻止しない程度に生じてよいことを意味している。
【0080】
本明細書に記載した配置形態は単に例を目的としたものである。したがって、当業者であれば、別の配置形態および別の要素(例えば機械、インタフェース、動作、順序および動作のグループ化等)が代わりに使用されてよく、所望の結果に従って、幾つかの要素が完全に省略されてよいことを認識するはずである。さらに、説明した要素の多くは、個別のもしくは分配された構成要素としてまたは別の構成要素に相俟って任意に適切に組み合わせると共に位置させて構成されてよい機能的なエンティティである。
【0081】
種々の態様および実施形態を本明細書に開示してきたが、当業者には、別の態様および実施形態が自明であるはずである。本明細書に開示した種々の態様および実施形態は例示を目的としたものであり、限定を意図するものではなく、真の範囲は、以下の特許請求の範囲と、このような特許請求の範囲が権利を有する等価物の範囲全体とによって示してある。また、本明細書において使用した術語は特定の実施形態を説明することを目的としたものにすぎず、限定を意図するものではない。
【0082】
したがって、本開示の実施の形態は、以下にリストとして列挙した例示的な実施の形態(EEE)のうちの1つに関連していてよい。
【0083】
EEE1は、アクチュエータであって、シリンダアセンブリの内部に少なくとも部分的に配置された一次ピストンと、シリンダアセンブリの内部に少なくとも部分的に配置された二次ピストンであって、一次ピストンと二次ピストンとが、シリンダアセンブリの内部で軸線方向に一緒に運動するように構成されている、二次ピストンと、シリンダアセンブリの内部に形成された複数の室であって、(i)第1の室であって、この第1の室に流体が流れると、一次ピストンが前進する、第1の室と、(ii)第2の室であって、この第2の室に流体が流れると、一次ピストンが後退する、第2の室と、(iii)第3の室であって、この第3の室に流体が流れると、二次ピストンが前進する、第3の室と、(iv)第4の室であって、この第4の室に流体が流れると、二次ピストンが後退する、第4の室とを備え、第3の室内の流体により加えられる、二次ピストンを前進させるための前進流体力が、第4の室内の流体により加えられる、二次ピストンを後退させるための後退流体力と異なっている、複数の室と、第3の室または第4の室から流体を受け取って、二次ピストンに作用している流体力に抵抗するかまたは二次ピストンに作用している流体力に加算するための釣合い力を二次ピストンに加え、これによって、前進流体力と後退流体力との間の差を補償するように構成された力釣合い室とを備える、アクチュエータである。
【0084】
EEE2は、シリンダアセンブリが、一次シリンダと、この一次シリンダに結合された二次シリンダとを備え、一次シリンダと二次シリンダとが、一次ピストンと二次ピストンとを内部で軸線方向に運動させることができる円筒形の長手方向空洞を形成している、EEE1記載のアクチュエータである。
【0085】
EEE3は、一次シリンダがフランジを有し、二次シリンダが各々のフランジを有し、アクチュエータが、一次シリンダのフランジと二次シリンダの各々のフランジとの間に配置された中央グランドと、一次シリンダのフランジと、二次シリンダの各々のフランジと、中央グランドとを互いに結合する複数の締結具とをさらに備える、EEE2記載のアクチュエータである。
【0086】
EEE4は、中央グランドが、一次シリンダのフランジと相互作用する第1のグランド部分と、二次シリンダの各々のフランジと相互作用する、第1のグランド部分と別体の第2のグランド部分とを備える、EEE3記載のアクチュエータである。
【0087】
EEE5は、アクチュエータが、シリンダアセンブリの内部に部分的に配置された、二次ピストンに結合されたピストンロッドをさらに備え、一次ピストンが、二次ピストンとピストンロッドとの間に固定されており、これによって、一次ピストンと、二次ピストンと、ピストンロッドとが、軸線方向に一緒に運動する、EEE1から4までのいずれか1つ記載のアクチュエータである。
【0088】
EEE6は、アクチュエータが、固定されたままとなるように、シリンダアセンブリに結合された静止ピストンと、二次ピストンに結合されていて、静止ピストンの外面を取り囲んでスライド可能である内側シリンダとをさらに備え、力釣合い室が、静止ピストンの外面と内側シリンダの内面との間に形成されており、これによって、釣合い力が内側シリンダに加えられ、この内側シリンダが釣合い力を二次ピストンに伝達する、EEE1から5までのいずれか1つ記載のアクチュエータである。
【0089】
EEE7は、力釣合い室が、静止ピストンに形成された長手方向通路と1つ以上の交差穴とを介して第3の室に流体接続されており、これによって、二次ピストンが前進するときに、力釣合い室が第3の室から流体を受け取り、力釣合い室内の流体が、第3の室内の流体により二次ピストンに加えられている前進流体力に抵抗するために、釣合い力を二次ピストンに加える、EEE6記載のアクチュエータである。
【0090】
EEE8は、力釣合い室が第4の室に流体接続されており、これによって、二次ピストンが後退するときに、力釣合い室が第4の室から流体を受け取り、力釣合い室内の流体が、第4の室内の流体により二次ピストンに加えられている後退流体力への加算力として、釣合い力を二次ピストンに加える、EEE6または7記載のアクチュエータである。
【0091】
EEE9は、アクチュエータが、静止ピストンに結合された、半径方向で内側シリンダと二次ピストンとの間に介在させられた釣合い管をさらに備え、二次ピストンが、この二次ピストンが前進または後退するときに、釣合い管の外面を取り囲んで軸線方向に運動するように構成されている、EEE6から8までのいずれか1つ記載のアクチュエータである。
【0092】
EEE10は、流体をアクチュエータの第1の室と第3の室とに供給して、アクチュエータのピストンロッドを前進させることであって、アクチュエータが、一次ピストンと二次ピストンとを備え、この二次ピストンがピストンロッドに結合されており、一次ピストンが、二次ピストンとピストンロッドとに固定されており、これによって、一次ピストンと、二次ピストンと、ピストンロッドとが、軸線方向に一緒に運動し、流体を第1の室に供給することによって、一次ピストンが前進し、流体を第3の室に供給することによって、二次ピストンを前進させるための前進流体力が加えられる、前進させることと、流体をアクチュエータの第2の室と第4の室とに供給して、アクチュエータのピストンロッドを後退させることであって、流体を第2の室に供給することによって、一次ピストンが後退し、流体を第4の室に供給することによって、二次ピストンを後退させるための、前進流体力と異なる後退流体力が加えられる、後退させることと、流体を第3の室または第4の室から力釣合い室に供給して、二次ピストンに作用している流体力に抵抗するかまたは二次ピストンに作用している流体力に加算するための釣合い力を二次ピストンに加え、これによって、前進流体力と後退流体力との間の差を補償することとを含む、方法である。
【0093】
EEE11は、アクチュエータが、(i)一次ピストンと二次ピストンとを内部で軸線方向に運動させることができるシリンダアセンブリと、(ii)固定されたままとなるように、シリンダアセンブリに結合された静止ピストンと、(iii)二次ピストンに結合されていて、静止ピストンの外面を取り囲んでスライド可能である内側シリンダとをさらに備え、釣合い力を二次ピストンに加えることが、釣合い力を内側シリンダに加え、この内側シリンダが釣合い力を二次ピストンに伝達することを含む、EEE10記載の方法である。
【0094】
EEE12は、流体を力釣合い室に供給することが、二次ピストンが前進するときに、流体を第3の室から、静止ピストンに形成された1つ以上の交差穴と長手方向通路とを通して力釣合い室に供給することと、第3の室内の流体により二次ピストンに加えられている前進流体力に抵抗するために、釣合い力を二次ピストンに加えることとを含む、EEE11記載の方法である。
【0095】
EEE13は、流体を力釣合い室に供給することが、二次ピストンが後退するときに、流体を第4の室から力釣合い室に供給することと、第4の室内の流体により二次ピストンに加えられている後退流体力への加算力として、釣合い力を二次ピストンに加えることとを含む、EEE11または12記載の方法である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】