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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】家畜育種のための選択方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20250123BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20250123BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALN20250123BHJP
   A01K 67/02 20060101ALN20250123BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6834 Z ZNA
A01K67/02
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543123
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-09-18
(86)【国際出願番号】 US2023060834
(87)【国際公開番号】W WO2023141462
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/300,489
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500273296
【氏名又は名称】ザ・ペン・ステート・リサーチ・ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デコウ、チャド
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA17
4B063QQ03
4B063QQ04
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS33
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
動物において運動不全(MI)のハプロタイプ又は遺伝子型を同定することによって、運動不全を有する家畜を識別するための方法及び組成物が本明細書において開示される。いくつかの実施形態では、方法は、選択育種及び交配プログラムで使用され、いくつかの実施形態では、動物はホルスタイン牛、ホルスタイン交配種、又はホルスタインを祖先に持つ別の品種のウシである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)試料を家畜ウシから取得すること、ここで、前記試料は染色体DNAを含む、
(b)16番染色体上の位置78732954~位置80748266bp又はその断片について前記染色体DNAから遺伝的データを生成すること、
(c)前記遺伝的データにおける運動不全(MI)ハプロタイプを同定すること、ここで、前記MIハプロタイプは、
(i)図5の網掛け部のアレルのうちの1又複数、及び/又は
(ii)16番染色体上の位置79613592bpのDNAプラス鎖上のT
を含む、並びに
(d)前記(c)の同定に基づいて種畜として前記ウシを選択又は取り除くこと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ウシが未経産牛(heifer)又は経産牛(cow)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウシが雄牛(bull)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ウシが、運動不全に対して表現型上は正常である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ウシが、ホルスタイン、ホルスタイン交配種、又はホルスタインを祖先に持つ別の品種のウシである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が精液又は卵母細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が組織試料又は血液試料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が胚又は胎仔由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝的データが、前記ウシの少なくとも1つの16番染色体の位置78732954~80748266bp又はその断片のDNA配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記遺伝的データが、前記ウシの両方の16番染色体の位置78732954~80748266bp又はその断片のDNA配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記MIハプロタイプが、ウシ16番染色体の位置78732954~80748266bp又はその断片のうちの1又は複数の位置に、MI表現型に関連する1又は複数のSNP、及び前記SNPとLDにある遺伝子バリアントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
遺伝的データを生成することが、前記染色体DNA又は増幅されたそれらのコピーをシーケンシングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
シーケンシングが、次世代シーケンシングを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
遺伝的データを生成することが、ポリメラーゼ連鎖反応などの増幅工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ゲノムDNA試料を雄牛から取得すること、前記試料中のホモ接合型陰性MIハプロタイプを検出すること、及び雌牛を受精させるために前記雄牛からの精液を使用することを含み、任意に(optionally)、前記雌牛が体外受精される、選択育種の方法。
【請求項16】
前記雌牛もまた、前記MIハプロタイプについてホモ接合型陰性である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記雄牛が、ホルスタインの雄牛、ホルスタイン交配種の雄牛、又はホルスタインを祖先に持つ別の品種の雄牛であり、前記雌牛が、ホルスタインの経産牛若しくは未経産牛、ホルスタイン交配種の経産牛若しくは未経産牛、又はホルスタインを祖先に持つ別の品種の経産牛若しくは未経産牛である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ゲノムDNA試料を雌牛から取得すること、前記試料中のホモ接合型陰性MIハプロタイプを検出すること、及びインビトロ胚産生のために前記雌牛からの卵母細胞を使用することを含む、選択育種の方法。
【請求項19】
ゲノムDNA試料を雄牛及び経産牛から取得すること、前記MIハプロタイプを確認すること、及び前記MIハプロタイプについてホモ接合型陰性の雌牛を前記MIハプロタイプについて陽性である雄牛と交配することを含む、矯正交配の方法。
【請求項20】
ゲノムDNA試料を雄牛及び経産牛から取得すること、前記MIハプロタイプを確認すること、及び前記MIハプロタイプについてホモ接合型陰性の雄牛を前記MIハプロタイプについて陽性である雌牛と交配することを含む、矯正交配の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの核酸分子を含み、前記核酸分子が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号1若しくは配列番号2の断片を含み、前記断片がMI SNPを含む、組成物、キット、又はシステム。
【請求項22】
前記核酸分子が固体支持体に付着されている、請求項21に記載の組成物、キット、又はシステム。
【請求項23】
ポリメラーゼ活性を有する酵素をさらに含む、請求項21に記載の組成物、キット、又はシステム。
【請求項24】
前記酵素がTaqポリメラーゼを含む、請求項23に記載の組成物、キット、又はシステム。
【請求項25】
前記核酸分子が検出可能なマーカーを含む、請求項21に記載の組成物、キット、又はシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2022年1月18日に出願された米国仮特許出願第63/300,489号の利益を主張するものであり、その内容全体が参照として本明細書に取り込まれる。
【0002】
政府による支援
本発明は、米国農務省によって授与されたハッチ法プロジェクト番号PEN04672の下で政府による支援を受けて実施された。政府は、本発明において一定の権利を有している。
【0003】
配列表
本願は、33,063バイトのサイズであり、2023年1月17日に作成された「2023-01-17_900905.00047_WIPO Sequence listing.xml」と題するXMLフォーマットの配列表を含む。配列表は、Patent Centerを介して本願とともに電子的に提出され、その内容全体が参照として本明細書に取り込まれる。
【0004】
本開示は、遺伝子解析を使用して望ましくない形質に関連するハプロタイプ及び突然変異を同定する、畜産、動物育種、及び動物管理の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
選択育種(人為選択とも呼ばれる)は、特定の動物又は植物、雄及び雌のいずれが有性生殖して子孫を生み出すかを選択することによって、特定の表現型形質(特性)を発生させるためにヒトが動物及び植物の育種を使用するプロセスである。動物育種では、同系交配、系統交配、及び異系統交配などの技術が利用されている。所望の形質を生み出すための選択育種の計画的な活用は、農業及び実験生物学では非常に一般的となっている。
【0006】
乳牛は、酪農家にとって重要な投資であり、かつ体系的な動物育種プログラム及び人工授精などの莫大な努力は、動物の生産性が高く持続性があること、生産された乳が高品質であるか、又は所望の組成を有していること、及び乳牛が健康かつ繁殖可能であることが確実であるという点で投資されてきており、これが継続している。
【0007】
従来の育種技術は、雄親牛の子孫の研究と、さらなる育種を管理するためにその乳生産、健康、及び受胎評価(伝達能力)の評価を含む。この標準的な技術は、数年を要し、各雄牛を後代検定することで真の遺伝的価値を評価する。多くの乳牛は、繁殖して子孫を産まなければならない。雌牛は、表現型形質を決定するために飼育、繁殖され、出産して最終的には一定期間搾乳することが可能でなければならない。成績の良い娘牛がいる雄牛は続いて現役に戻され、少なくとも5歳である。成績が不十分な娘牛がいる雄牛は、相当の金銭的損失を有するものと類別して処分される。これは、精液を販売して雄牛を飼育するという投資を回収する機会がないためである。
【0008】
さらには、純粋に表現型の特性に基づく選択は、複雑な遺伝子作用及び相互作用によって引き起こされる遺伝的多様性、並びに環境バリアント及び発達バリアントの影響を効率的に考慮していない。そのため、表現型レベル及び遺伝的レベルの両方において、育種家が動物を早い段階により正確に選択することを可能とするように動物を遺伝的に評価する方法が必要とされている。
【0009】
マーカー支援による選択は、若齢動物を重要なマーカーの存在/不在について出生直後又は出生前であっても評価することができ、遺伝子検査によって望ましくないマーカーを有していると決定される雄牛などの若齢動物を後代検査することなく、かつ繁殖されなくてもよいことから、高いコストを低下させ、かつ集団を改善させるために使用される後代検定の長期間にわたる関与を低減させることができる。したがって、乳牛などの家畜のより迅速かつより正確な遺伝子検査が当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、運動不全表現型に関連する遺伝的形質を有する、ウシ(例えば、Bos taurus、Bos indicus)などの家畜を識別するための方法、システム、及び組成物が開示される。いくつかの実施形態では、この方法は、(a)試料を家畜ウシから取得することであって、ここで、前記試料は染色体DNAを含む、(b)16番染色体上の位置78732954~位置80748266bp又はその断片について前記染色体DNAから遺伝的データを生成すること、(c)前記遺伝的データにおける運動不全(MI)ハプロタイプを同定すること、ここで、前記MIハプロタイプは、(i)図5の網掛け部のアレルのうちの1又は複数、及び/又は(ii)16番染色体上の位置79613592bpのDNAプラス鎖上のTを含む、並びに(d)前記(c)の同定に基づいて種畜として前記ウシを選択又は取り除くことを含む。いくつかの実施形態では、ウシは、未経産牛(heifer)、経産牛(cow)、胚、又は胎仔である。いくつかの実施形態では、ウシは雄牛(bull)である。いくつかの実施形態では、ウシはホルスタインである。いくつかの実施形態では、ウシは、ホルスタインと別の品種との交配種である。いくつかの実施形態では、ウシは、運動不全に対して表現型上は正常である。いくつかの実施形態では、試料は、精液、卵母細胞、組織、細胞、又は血液のうちの1又は複数を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、遺伝的データは、ウシの少なくとも1つの16番染色体の位置78732954~80748266bp又はその断片のDNA配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝的データはウシの両方の16番染色体の位置78732954~80748266bp又はその断片のDNA配列を含む。いくつかの実施形態では、MIハプロタイプは、ウシ16番染色体の位置78732954~80748266bp又はその断片のうちの1又は複数の位置に、MI表現型に関連する1又は複数のSNP、及びそれらのSNPと連鎖不平衡(LD)にある遺伝子バリアントを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、遺伝的データはウシの16番染色体の位置78732954~80748266bp又はその断片に由来するRNAを含む。いくつかの実施形態では、RNAは、電位依存性カルシウムチャネルサブユニットα1S遺伝子(CACNA1S)に由来する。
【0013】
いくつかの実施形態では、遺伝的データを生成することは、次世代シーケンシングなどによる染色体DNAのシーケンシングを含む。いくつかの実施形態では、遺伝的データを生成することは、ポリメラーゼ連鎖反応などの増幅工程を含む。いくつかの実施形態では、遺伝的データを生成することは、DNAマイクロアレイ、ビーズチップ、又はオリゴヌクレオチド結合を含む。
【0014】
本明細書には、ウシなどの家畜の選択育種の方法も開示される。いくつかの実施形態では、前記方法は、ゲノムDNA試料を雄牛から取得すること、前記試料中のホモ接合型陰性MIハプロタイプを検出すること、及び雌牛を受精させるために前記雄牛からの精液を使用することを含む。いくつかの実施形態では、雌牛は体外受精される。いくつかの実施形態では、前記雌牛もまた、MIハプロタイプについてホモ接合型陰性である。いくつかの実施形態では、雄牛は、ホルスタイン、ホルスタイン交配種、又はホルスタインを祖先に持つ別の品種であり、雌牛は、ホルスタイン、ホルスタイン交配種、又はホルスタインを祖先に持つ別の品種の経産牛若しくは未経産牛である。
【0015】
本明細書には、選択育種の方法も開示され、この方法は、ゲノムDNA試料を雌牛から取得すること、前記試料中のホモ接合型陰性MIハプロタイプを検出すること、及びインビトロ胚産生のために前記雌牛からの卵母細胞を使用することを含む。いくつかの実施形態では、雌牛は、ホルスタイン、ホルスタイン交配種、又はホルスタインを祖先に持つ別の品種の経産牛若しくは未経産牛である。
【0016】
本明細書には、矯正交配の方法も開示される。いくつかの実施形態では、前記方法は、核酸試料(例えば、ゲノムDNA試料又はRNA試料)を雄牛及び経産牛から取得すること、それぞれのMIハプロタイプを確認すること、及び前記MIハプロタイプについてホモ接合型陰性の雌牛(経産牛)を前記MIハプロタイプについて陽性である雄牛と交配することを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、核酸試料を雄牛及び経産牛から取得すること、MIハプロタイプを確認すること、及び前記MIハプロタイプについてホモ接合型陰性の雄牛を前記MIハプロタイプについて陽性である雌牛と交配することを含む。
【0017】
本明細書には、組成物、キット、及びシステムも開示される。いくつかの実施形態では、前記組成物、キット、及びシステムは、少なくとも1つの核酸分子を含み、前記核酸分子は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号1若しくは配列番号2の断片を含み、断片はMI SNPを含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、固体支持体に連結(link)/付着(attach)されている。いくつかの実施形態では、組成物、キット、及びシステムは、Taqポリメラーゼなどのポリメラーゼ活性を有する酵素をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、検出可能なマーカー、(例えば、固体支持体に付着させるための)リンカー、及び/又は非天然ヌクレオチド塩基のうちの1又は複数を含む。
【0018】
本発明のこれらの及びその他の実施形態、態様、利点及び特徴は、後に続く説明に部分的に記載されており、これらは本発明の以下の説明及び参照される図面を参照することによって、又は本発明の実施によって当業者に明らかになるであろう。添付の図面は、1又は複数の実施態様を示しており、これらの実施態様は、必ずしも本発明の全範囲を表すものではない。
【0019】
本発明は、以下のその詳細な説明を考慮した場合、より良好に理解され、上記以外の特徴、態様及び利点が明らかになる。そのような詳細な説明は、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】16番染色体上の有意な領域を用いた、顕性モデルに基づく、101,917個のDNAマーカーと運動不全との関連についての有意水準のマンハッタンプロットを示し(拡大図)、ゲノムワイド偽発見率の有意水準を超えるマーカーは、黒(主要図)及び青(差し込み図)の実線上に存在している。
【0021】
図2】3頭の罹患仔牛に共通している可能性のある祖先牛(Robust)からほとんどの経路を有する家系について運動不全の可能性のある遺伝経路を示しており、遺伝子型は、縦半分が灰色で塗りつぶされた(帰属された遺伝子型に基づく、高可能性キャリア)、縦半分が黒色で塗りつぶされた(遺伝子型判定に基づくキャリア)、横半分が灰色で塗りつぶされた(子孫の遺伝子型に基づく、高可能性キャリア)、黒い輪郭で白抜きの(不確かなステータス)、又は塗りつぶされた(罹患子孫)、四角形(雄)又は円形(雌)によって表される。
【0022】
図3-1】図3は、農場1(a)、農場2(b、c)、農場3(d、e、f)及び農場4(g、h)からの罹患仔牛の8家系における、可能性のある共通祖先牛(Robust)からの運動不全の遺伝経路を示しており、遺伝子型は、縦半分が灰色で塗りつぶされた(帰属された1遺伝子型に基づく、高可能性キャリア)、縦半分が黒色で塗りつぶされた(遺伝子型判定に基づくキャリア)、横半分が灰色で塗りつぶされた(子孫遺伝子型に基づく、高可能性キャリア)、黒い輪郭で白抜きの(不確かなステータス)、緑色の輪郭で白抜きの(帰属された遺伝子型に基づく、高可能性非キャリア)、又は塗りつぶされた(罹患子孫)、四角形(雄)又は円形(雌)によって表される。(h)では、帰属された遺伝子型は、罹患仔牛の遺伝子型、対照の遺伝子型、及び3K~150Kの範囲の遺伝子型密度を有する7622頭のホルスタインの集団の遺伝子型を用いて、findhapf90を使用して導出した。
図3-2】図3-1について記載したとおり。
図3-3】図3-1について記載したとおり。
図3-4】図3-1について記載したとおり。
図3-5】図3-1について記載したとおり。
図3-6】図3-1について記載したとおり。
図3-7】図3-1について記載したとおり。
図3-8】図3-1について記載したとおり。
【0023】
図4】MI(横臥)表現型を呈する、起立不能な仔牛の写真である。
【0024】
図5-1】図5は、遺伝子型が判定された集団に存在する、DNAマーカー、それらの位置、代替アレルのフォワード指定(Allele1_F及びAllele2_F)、代替アレルのトップ指定(Allele1_Top及びAllele2_Top)、及び代替アレルA及びBの指定(Allele1_AB及びAllele2_AB);AA遺伝子型を有する罹患仔牛の数(nAA)、AB遺伝子型を有する罹患仔牛の数(nAB)及びnBB遺伝子型を有する罹患仔牛の数(nBB);並びに16番染色体の末端についての、アレルモデルの未調整p値(p_Allelic)、アレルモデルの偽発見率p値(FDRp_Allelic)、及び顕性モデルの偽発見率p値(FDRp_Dom)を示す。網掛け領域(CHR16BP78732954で開始し、CHR16BP8074266まで続く)は、16番染色体上の共有ホモ接合型領域(ハプロタイプ領域)を表す。
図5-2】図5-1について記載したとおり。
図5-3】図5-1について記載したとおり。
図5-4】図5-1について記載したとおり。
図5-5】図5-1について記載したとおり。
図5-6】図5-1について記載したとおり。
図5-7】図5-1について記載したとおり。
図5-8】図5-1について記載したとおり。
図5-9】図5-1について記載したとおり。
図5-10】図5-1について記載したとおり。
【0025】
図6】bp79613592における罹患仔牛、雄親牛、及び雄方祖先牛の横臥突然変異についての配列アラインメントを示す。各動物の上部パネルは、シーケンス深度を表し、赤色は突然変異を示し、青色は参照遺伝子型を示し、下部パネルは、個々のリードを示しており、赤色は変異遺伝子型を示し、灰色は参照遺伝子型を示している。罹患仔牛のリードはホモ接合型であり、雄親牛及び雄方祖先牛はヘテロ接合型である。
【0026】
図7】MI SNPのいずれかの側で隣接し、MI SNPを含む、ヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。下線が引かれた配列は、イントロンに対応する。配列番号9及び配列番号10もまた表4に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、以下の本願及び本願全体を通して記載されるように、いくつかの定義を使用して本明細書で説明される。加えて、ある特定の属性及び実施形態を説明している情報は、添付の付属書に記載され、すべての目的のためにその内容全体が参照として本明細書に取り込まれる。
【0028】
文脈に特段指定又は示されない限り、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、「1又は複数」を意味する。そのため、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」の言及は、一般にはそれぞれの用語の複数形を含む。例えば、「SNP」、「方法」、又は「形質」への言及は、複数のそのような「SNP」、「方法」、又は「形質」を含む。例えば、「関連」への本明細書での言及は、複数のそのような関連を含むが、一方では「染色体」への言及は、そのような解釈が文脈から排除されていない場合には単一の染色体を含む。同様に、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」は、排他的というよりはむしろ包括的に解釈されるべきである。同様に、「含む(include)」、「含む(including)」、及び「又は」は、そのような構成が文脈から明確に禁止されていない限りは包括的であるとすべて解釈されるべきである。本明細書において使用される場合、「例」は、特に用語の一覧が続く場合、単なる例示的なものであり、排他的又は包括的であると見なされるべきではない。
【0029】
本明細書で使用される場合、「約(about)」、「およそ(approximately)」、「実質的に」及び「有意に」は当業者によって理解され、それらが使用される文脈においてはある程度変化する。使用される文脈を考慮すると、当業者にとって明確ではないこれらの用語が使用される場合、「約」及び「およそ」は、特定の用語の±10%以内を意味し、「実質的に」及び「有意に」は、特定の用語の±10%超を意味し得る。
【0030】
全体を通して使用されるように、長々と記載しなければならない必要性を避け、範囲内のありとあらゆる値を説明するために、本明細書の範囲は省略して記載される。範囲内の任意の適切な値は、適切な場合に、範囲の上限値、下限値、又は終端値として選択され得る。例えば、0.1~1.0の範囲は、終端値又は0.1~1.0、並びに0.2,0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9の中間値、及び0.2~0.5、0.2~0.8、0.7~1.0などの0.1~1.0内に包含されるすべての中間範囲を表す。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「ウシ(bovine)」及び「ウシ(cattle)」は、一般にはBos属のメンバーを指し、Bos taurus及びBos indicus(Bos taurus indicusとも呼ばれる)を含むが、これらに限定されない。開示された組成物、システム、方法、キット、及びプラットフォームは、Bos属のメンバーに限定されることを意図するものではなく、ウシ科(Bovidae)のその他のメンバーについて使用されてもよい。限定するものではないが、例として、いくつかの実施形態では、開示された組成物、システム、方法、キット、及びプラットフォームは、ホルスタイン、ホルスタイン交配種などの家畜牛、又はホルスタインを祖先に持つ別の品種の動物においてMIハプロタイプを検出するために使用される。ウシ産業では、ほとんどの品種が「改良(grade-up)」プログラムを有しており、これによって、例えば異なる品種中に存在するホルスタイン遺伝子を有する動物やその逆の動物がもたらされる。
【0032】
本明細書で使用される用語「遺伝子型」は、個体又は試料中に存在するアレルの同一性を指す。本発明の文脈において、遺伝子型は好ましくは、個体又は試料中に存在する多型アレルの説明を指す。多型マーカーについて試料又は個体を「遺伝子型判定する」という用語は、個体に保有された特定のアレル又は特定のヌクレオチドを多型部位で決定することを指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「遺伝子座」又は複数の「遺伝子座」は、染色体上の特定の遺伝子又はマーカーの物理的な部位又は位置を指す。例示的な遺伝子座は、ホルスタインなどのウシの16番染色体上の位置78732954~80748266bpを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子座は、例えばホルスタインの16番染色体上のbp79613592など、単一の塩基対(bp又はBP)である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「連鎖不平衡」(又は「LD」)は、例えば集団内の、ゲノム中の2つ以上の隣接する遺伝子座の特定のアレル間のアレルの関連を指す。LDは、単一のマーカー若しくは遺伝子座、又は複数のマーカーについて決定され得る。別の言い方をすれば、LDは、(同一の染色体上で観察される)隣接する多型でのアレルがこれらが連鎖していない場合よりもさらに頻繁に集団内で関連しているような、近傍のバリアント間の相関である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「アレル」は、特定の核酸配列の1又は複数の代替形態を指しており、その差異としては、1又は複数の一塩基多型(SNP)、挿入、逆転、又は欠失が挙げられ得るが、これらに限定されない。配列は、遺伝子内にあってもなくてもよく、遺伝子のコード領域内又は非コード領域内にあってもよく、例えば、特定の遺伝子のプロモータ領域若しくは調節領域、エクソン、又はイントロン内にあってもよい。例として、[C]又は[T]として示されているアレル(この場合はSNP)を有する、ホルスタインのbp79613564~79613623のDNAプラス鎖の配列は、
【化1】

(配列番号1及び配列番号2)である。下線が引かれている配列はイントロンを示す。
【0036】
用語「ハプロタイプ」は、1つの染色体上のアレル又はDNAマーカーの組合せを指す。DNAレベルでは、ハプロタイプは、単一の染色体上の遺伝子座中の2つ以上の多型部位に見られるヌクレオチドの配列を指す。育種集団内の所与の染色体領域上には複数のハプロタイプが存在する。本明細書で使用される場合、ハプロタイプは、完全ハプロタイプ及び/又はサブハプロタイプを含む。完全ハプロタイプは、単一個体からの単一の染色体上の遺伝子座において検査されたすべての多型部位で見られるヌクレオチドの5’から3’の配列であり、サブハプロタイプは、単一個体からの単一の染色体上の遺伝子座において検査された多型部位のサブセットで見られるヌクレオチドの5’から3’の配列を指す。関連して、用語「ハプロタイプ対」は、単一個体の遺伝子座について見られる2つのハプロタイプを指す。「ハプロタイプ判定」は、個体中の1又は複数のハプロタイプを決定するためのプロセスについての用語であり、家系図、分子技術、及び/又は統計的推論の使用を含む。限定するものではないが、例として、MIハプロタイプは、ウシの16番染色体の78732954~80748266bpを包含する図5の網掛け領域によって示される。
【0037】
「量的形質遺伝子座」(又は「QTL」)は、本明細書で使用される場合、特定の表現型形質に関連しているゲノム配列である。複数のQTLは、特定の形質について同定されてもよく、これらは異なる染色体上で頻繁に見られる。特定の表現型形質と有意に関連するQTLの数によって、形質の遺伝構成、形質に影響を及ぼす遺伝子の数、又はこれらの遺伝子のうちの1又は複数の影響の程度の指標がもたらされ得る。形質と有意に関連する1又は複数のQTLは、こうした形質の根底に存在する候補遺伝子であり得、これらはシーケンシング及び同定され得る。所与のQTLと特定の形質との関連度の有意性は、例えば、遺伝子座に生じるアレルのQTLマッピング及びこれらが産生する表現型を通じて統計学的に評価され得る。観察された形質との関連が有意であるかどうかを実証するには統計解析が好ましい。QTLの存在及びその位置によって、分析されている形質と直接的(例えば、構造的に)又は間接的(例えば、調節性)に関連している遺伝子を潜在的に含有しているものとして、ゲノムの特定の領域が同定される。関連する確率は、染色体にわたって、又はゲノム全体を通して位置する、形質に関連する様々なマーカーについてプロットされ得る。QTLは、表現型に関連するハプロタイプ中に存在し得る。
【0038】
「ポリヌクレオチド」は、2つ以上の連続的な塩基を含む一本鎖又は多重鎖核酸分子を含み、これは、任意の一本鎖、又は多重鎖核酸の平行鎖及び逆平行鎖を含む。ポリヌクレオチドは任意の長さであってもよく、そのため、非常に大きな核酸、及びオリゴヌクレオチドなどの短い核酸を含む。
【0039】
用語「オリゴヌクレオチド」は、通常は短いポリヌクレオチド、一般には約50ヌクレオチド以下のポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列は、DNA配列(すなわち、A、T、G、C)によって表記される場合、特段指定しない限り、又は文脈や常識によって明確に区別しない限り、対応するRNA配列(すなわち、A、U、G、C、「U」は「T」と置き換わっている)も含まれることが理解されるだろう。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「横臥の」又は「横臥」と互換的に使用される用語「運動不全」は、動物が随意的な筋肉の動きに対して正常に調整、制御、又は応答することができない状態を指す。例として、運動不全は、例えば仔牛において、起立不能であること、補助なしでは起立不能であること、生後最初の24時間にわたって起立不能であること、起立能力を喪失していること、起立不能の後、起立能力が回復し、成長及び健康状態の不良であることなど、記載される形質を含み得る。本明細書で使用される場合、運動不全は、異常な栄養、傷害、又は代謝産物のレベルに伴っているか、又はこれらに起因している。図4は、ホルスタインの仔牛における横臥の一例を提供する。横臥動物は、起き上がることが不能であるか、起立状態を維持することが不能であるにもかかわらず、正常な言及、食欲、及び挙動を呈する。加えて、本明細書に定義されるような横臥は、貧血、コレステロール、セレン又はビタミン欠乏症、及び疾患又は感染症(例えば、ネオスポラ、ウシウイルス性下痢症ウイルス、狂犬病、及びリステリア)などの異常に起因するものではない。本明細書に開示されるような横臥動物は、中枢神経系、末梢神経、及び筋肉組織の平凡な組織切片を呈する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「運動不全ハプロタイプ」(MIハプロタイプ)は、16番染色体上の位置78732954~80748266bpの、ホルスタインウシなどの動物のハプロタイプを指す。陽性MIハプロタイプは、上で定義されるような運動不全を呈するか、呈する可能性が高い動物、又はその子孫に運動不全を伝え得る動物を示す。陰性MIハプロタイプは、運動不全を呈する可能性が低い動物、及びその子孫に運動不全を伝える可能性が低い動物を示す。例として、陽性MIハプロタイプは図5に示されている。図5の網掛け領域に表されているアレル(16番染色体の78732954~80748266bp)は、MIハプロタイプを例示するものである。いくつかの実施形態では、図5の網掛けで表されたアレルは、MIハプロタイプ決定について評価される。逆に、MIを有しない動物を示す陰性MIハプロタイプは、DNAマーカーの異なる組合せによって示される染色体領域にわたって動物が代替ハプロタイプを受け継いでいる場合に同定される。
【0042】
MI表現型はMIハプロタイプに関連するが、これはSNP[C/T]にも関連する。[C]又は[T](79613592bp)で示されるSNPを有するbp79613564~79613623のDNAプラス鎖の配列は、以下に示される。
【0043】
【化2】

(配列番号1及び配列番号2)。
【0044】
下線が引かれた配列はイントロンを表す。
【0045】
この領域のフォワード鎖、リバース鎖、リバース相補体、及びアミノ酸配列は、図7に示されている。本明細書で使用される場合、それぞれ配列番号1又は配列番号2に示されるような[C]又は[T](又はその相補体若しくはリバース相補体)は、MI SNPと呼ばれ得る。
【0046】
MI SNPは、ホルスタイン種のウシの電位依存性カルシウムチャネルサブユニットα1S遺伝子(CACNA1S)に存在する。ミスセンス変異は、GGCコドンをAGCに変化させ、グリシンのセリンへのアミノ酸置換を促進させる。CACNA1Sの完全なタンパク質配列を以下に示す。
【0047】
CACNA1Sのアミノ酸配列(XP_024832342.1 CACNA1S[生物=Bos taurus][遺伝子ID=100337204][アイソフォーム=X1]を以下に示す(配列番号11及び配列番号12)。
【0048】
【化3】
【0049】
CACNA1Sアミノ酸配列をコードする核酸配列(XM_024976574.1 予測:Bos taurus電位依存性カルシウムチャネルサブユニットα1S(CACNA1S)、転写バリアントX1、mRNA)を以下に示す(配列番号13及び配列番号14)。
【0050】
【化4-1】

【化4-2】

【化4-3】

【化4-4】
【0051】
MI SNPを含むエクソン及び両方の隣接するイントロン(CACNA1S/XM_024976575.1/XP_024832343.1 79612962~79614080)を、以下の核酸配列に示す(配列番号15及び配列番号16)。下線が引かれた配列はイントロンに対応する。
【0052】
【化5】
【0053】
図5に示されているハプロタイプは、市販のDNAマーカー検査アレイ、パネル、又はチップ中に含まれた、以前に実証されている多型部位に基づいている。MI SNP 79613592はMIとの関連が発見される前の市販の遺伝子型パネルには記載されておらず、含まれていなかった。
【0054】
MIハプロタイプ決定
【0055】
本明細書には、若齢又は成体のウシ動物、胚、精液試料、卵、受精卵、接合子、胎仔、又はそれら由来のその他の細胞若しくは組織試料を含む、ウシを識別して当該ウシが運動不全(MI)ハプロタイプを有しているかどうかを決定するための方法及び組成物が開示される。ホルスタイン種のウシの16番染色体上の位置78732954~80748266bpに位置するMIハプロタイプの決定は、動物が種畜に使用されるべきかどうか、動物が運動不全を発症する可能性があるかどうか、更なる後代検定を実施するべきかどうかを同定するための、迅速で正確かつ有効な手段を提供する。
【0056】
DNAマーカーは、表現型分析に対していくつかの利点を有しており、分離の測定が容易であり、かつ明確である。また、DNAマーカーは共優性であり、すなわち、ヘテロ接合型及びホモ接合型の動物を特徴的に識別し得る。血液又は組織試料などのDNA含有試料を個々の幼獣から収集することができた後の任意の時間、又は極めて初期の胚が収集される場合には、胚をインビトロで試験することによって早期に、DNAマーカーをアッセイ可能であるので、マーカーシステムが確立されると、選択決定を非常に容易に行うことが可能である。マーカー支援遺伝子選択の使用により、ウシの育種プログラムは大幅に促進かつ加速される。
【0057】
一実施形態では、本発明は、以下に記載のハプロタイプ検査がウシの胚、若齢の成体、又は成体のウシに実施され、その結果に基づいて特定の動物が育種プログラム用に選択されるか又は取り除かれる育種方法を提供する。好ましくは、MIハプロタイプについて陰性である個体が選択される。好ましくは、これらの個体は陰性MIハプロタイプに関してホモ接合型である。例えば、個体は陰性MIハプロタイプに関してホモ接合型である。
【0058】
本開示は、若齢又は成体のウシ動物、胚、精液試料、卵、受精卵、接合子、又はその他のDNA含有生物学的試料(例えば、それらの血液、細胞、又は組織試料)を含むウシからの核酸試料を解析し、当該ウシが、本明細書において開示された運動不全を示すハプロタイプのうちの1つを有しているかどうかを決定することに関する。核酸試料は、16番染色体上の位置78732954~80748266bpのDNA(「MI領域」)又はその断片の代表である。核酸は、ゲノムDNA、cDNA、又はRNAを含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、本方法は、MIハプロタイプの少なくとも1つのコピーについて、16番染色体の位置78732954~80748266bp(「MI領域」)又はその断片のウシDNAにおいて核酸をハプロタイプ判定すること、及び、任意に(optionally)、個体にウシMIハプロタイプスコアを割り当てることを含む。この方法を使用し、動物のMI領域の両方のコピーのハプロタイプを同定し、ハプロタイプ対を動物に割り当ててもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、ハプロタイプ判定法は、MI領域又はその断片の1つのコピーを試験し、そのコピー中の2つ以上の多型部位でヌクレオチドを同定し、ハプロタイプを個体に割り当てることを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、ハプロタイプ判定法は、MI領域又はその断片の1つのコピーを試験し、そのコピー中の1つの多型部位を同定することを含む。いくつかの実施形態では、単一の多型部位はMI SNPを含み、これはウシの16番染色体のbp79613592であり、配列番号1/2に示されており:
【化6】

(配列番号1及び配列番号2)、下線はイントロンを表す。
【0062】
当業者によって容易に理解されるように、MI領域がクローニングされ、シーケンシングされる場合、任意の個々のクローンは、通常、個体中に存在する2つのMI領域のコピーのうちの1つの一部分についてのハプロタイプ情報を提供するのみである。ハプロタイプ情報が個々のMI領域全体の両方のコピーに望ましい場合、更なるMIクローンは試験される必要がある。
【0063】
ウシのMI領域を遺伝子型判定するための方法がさらに提供されるが、これは、存在するMI領域の2つのコピーについて、1又は複数の多型部位でのヌクレオチド対の同一性を決定することを含み、1又は複数の多型部位(PS)は、MI表現型に関連する代替アレルを有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、遺伝子型判定法は、MI領域又はその断片の両方のコピーを試験し、2つのコピー中のMI表現型に関連する1又は複数の多型でヌクレオチド対を同定し、遺伝子型を個体に割り当てることを含む。いくつかの実施形態では、「領域を試験すること」は、その領域を含有するDNA、そのmRNA転写物、又はそのcDNAのうちの1又は複数を試験することを含み得る。当業者によって容易に理解されるように、個体中の遺伝子、mRNA、若しくはcDNA、又はそれらの断片の2つの「コピー」は、同一のアレルであり得るか、異なるアレルであり得る。別の実施形態では、本発明の遺伝子型判定法は、MI表現型に関連する多型部位のそれぞれにおいてヌクレオチド対の同一性を決定することを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、遺伝子型判定は、図5の網掛け領域中のアレル(ウシ16番染色体の78732954~80748266bp)のうちの1又は複数の評価を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子型判定は、以下(下線が引かれた配列はイントロン配列を表す):
【化7】

(配列番号1及び配列番号2)に示されるような、ウシ16番染色体のbp79613592におけるMI SNPについての核酸試料を評価することを含む。
【0066】
本開示はさらに、ウシ試料を遺伝子型判定及び/又はハプロタイプ判定するためのシステム、プラットフォーム、及びキットを提供し、システム又はキットは、容器内に、MI表現型に関連する1又は複数の多型を検出するために設計された1又は複数の核酸分子、及び、任意にそのような検出を実施するための少なくとも別の成分を含む。いくつかの実施形態では、キットは、同一又は別個の容器中にパッケージングされた少なくとも2種類のオリゴヌクレオチドを含む。キットはまた、別個の容器中にパッケージされたハイブリダイゼーションバッファー(オリゴヌクレオチドがプローブとして使用される)などのその他の成分を含有してもよい。加えて、又は代替的には、オリゴヌクレオチドが標的領域を増幅させるために使用される場合、キットは、(別個の容器中に好ましくはパッケージングされている)ポリメラーゼ、及びPCRなどのポリメラーゼによって媒介されるプライマー伸長のために最適化された反応バッファーを含有してもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、システム、プラットフォーム、又はキットは、変異電位依存性カルシウムチャネルサブユニットα1S遺伝子(CACNA1S)などの変異タンパク質を検出するように構成され得る。いくつかの実施形態では、変異は、GGCコドンをAGCに変化させ、グリシンのセリンへのアミノ酸置換を促進させる。
【0068】
したがって、いくつかの実施形態では、システム、プラットフォーム、又はキットは、1又は複数の抗体及びバッファーを含む、変異タンパク質を検出するためのイムノアッセイ試薬を含み、一次抗体又は二次抗体は、酵素用の基質が加えられ、酵素と反応するときに発色する結合酵素を有してもよい。発色する酵素は、抗原又は一次抗体若しくは二次抗体のいずれかと連結されてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、上記ハプロタイプ判定及び/又は遺伝子型判定がウシの胚で実施され、その結果に基づいて、特定のウシが育種プログラム用に選択されるか、又は脱落される、育種方法が提供される。いくつかの実施形態では、MI陰性ハプロタイプを有する個体は、継続的及び将来的な育種のために選択される。
【0070】
関連付けられたマーカー遺伝子座の使用を通じて、異なるハプロタイプは、育種核内での遺伝子改良のための「マーカー関連選択」(MAS)、又は育種核にとって資源となる集団由来の有用なアレルを移動させるための「マーカー関連遺伝子移入」(Soller 1990; Soller 1994、その内容全体が参照として本明細書に取り込まれる)と称する手順によって遺伝子改良プログラムで操作され得る。
【0071】
遺伝子型判定アッセイ
【0072】
I.ハイブリダイゼーションに基づく方法
【0073】
A.アレイ
【0074】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、パネル又は核酸標的アレイを含む、遺伝子型判定プラットフォームに組み込まれ得る。本明細書で使用される場合、「パネル」及び「アレイ」は互換的に使用され、DNA試料からの一塩基多型を並行してアッセイかつ検出するために使用される、通常はガラス、プラスチック、又はシリコンスライドなどの固体基板を指し、遺伝子型データが出力される。多数のパネル/アレイプラットフォームは市販されており、当技術分野で周知である。例として、ウシを対象としたアレイ遺伝子型判定プラットフォームとしては、特に、Neogen製BOVUHDV03及びGeneSeek Genomic Profiler(GGP)Bovine 150K、BovineSNP50 DNA Analysis BeadChipなどのIllumina製ウシアレイビーズチップ及びBovineHD DNA Analysis Kit並びにThermoFisher製Axiom Bovine Genotyping 100K Array及びAxiom Genome-Wide BOS 1 Bovine Array、Affymetrixプラットフォームが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、そのような市販の遺伝子型判定プラットフォームに組み込まれ得る。あるいは、MI SNPを含む核酸配列は、SNPの特定のプールをアッセイするように設計されたカスタム設計アレイに組み込まれ得る。こうしたSNPのいくつかは、市販のプラットフォームと重複してもよい。MI SNPを含む核酸配列の組み込みは、アレイプラットフォームの化学反応に応じて変化するが、アレイ技術の原理に従う。例えば、MI SNPを含む核酸配列を使用し、1又は複数の相補的プローブ配列が設計される。このプローブはアレイに固定される。
【0075】
例として、これらのアレイプラットフォームは、SNP含有量、密度(数)、化学反応、スループット(同時にアッセイされ得る試料数)、又はその他の特性が異なる、多数の市販のアレイプラットフォームのサブセットを表す。ただし、アレイは一般には、通常は25~50bpの長さであり、オリゴヌクレオチドとしても知られている短い一本鎖プローブへの、断片化された一本鎖試料DNAのハイブリダイゼーションに依拠している。プローブは、通常は、ガラス、プラスチック、又はシリコンなどの2次元固体表面上で、格子状にアレイ表面上へ直接的に結合され、印刷され、又は合成される。プローブ配列は、事前のDNA配列知識を使用して設計されるが、これは、試料DNA断片配列に相補的である配列を人工的に合成するために、その種の遺伝子型多様性を表している個体のパネルから収集されてきた。ハイブリダイゼーションは、ヌクレオチド塩基と相補的塩基との結合に応じて変化し、プローブ及び試料DNAの配列が相補的である場合、ハイブリダイズする。完全に一致しないDNAの鎖であってもハイブリダイズが可能である。通常は、DNA試料配列は、100%で、いくつかの実施形態では、99%、98%、97%、96%、95%などから80%まで、プローブと一致する。
【0076】
アレイプラットフォームは、通常は、色素がレーザーによって励起された場合にシグナルを生成する蛍光色素を利用しており、発光スペクトルがカメラによって検出され、これによって、シグナルは、プローブ配列内のアッセイされる塩基対位置において特定のヌクレオチド同一性をレポートする。得られる生画像は、バックグラウンドシグナルを減算するために正規化され、計算アルゴリズム(LaFramboise, Thomas, 2009)を使用して信頼スコアを有する遺伝子型データに変換される。アレイ技術のバリエーションが存在するが、本明細書において提供される詳細は、限定ではなく例として含まれる。
【0077】
B.モレキュラービーコン
【0078】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、モレキュラービーコンとして構成されたプローブオリゴヌクレオチドを使用して遺伝子型が判定され得る。モレキュラービーコンは、ステムループ構造を生成するプローブ配列の各末端に相補配列を有するよう設計された、一本鎖オリゴヌクレオチドプローブである。フルオロフォアがプローブの一方の末端に追加され、蛍光クエンチャーがもう一方の端部に追加される。分子がステムループ状態にあるときに達成されるような近接状態にある場合、蛍光は放出されない。しかしながら、プローブ配列がその標的配列(相補的な試料DNA配列)にハイブリダイズすると、ステムループは変性し、それによってフルオロフォアとクエンチャーとを分離して蛍光を可能とする。特定の位置での個体の遺伝子型は、あるアレルに対してあるモレキュラービーコンを設計し、代替アレルに対して別のビーコンとを設計することによって決定することができるが、各ビーコンに対するプローブの波長は異なっている。異なるアレルは、各フルオロフォアが放出する異なる波長によって区別され得る。
【0079】
C.動的アレル特異的ハイブリダイゼーション(DASH)
【0080】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、ミスマッチヌクレオチドが存在する場合の二本鎖DNAの融解温度の差異を検出することに基づく、DASH遺伝子型判定を使用して遺伝子型が判定され得る。蛍光マーカーは、分子が、アレル特異的オリゴヌクレオチドと試料DNAとの間に形成されるdsDNAに結合した場合にのみシグナルを放出する。反応の温度が上昇するにつれ、dsDNAはssDNAへと変性し、マーカーはそれ以上蛍光を発しない。
【0081】
II.酵素に基づいたアッセイ
【0082】
DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、及びヌクレアーゼを含むSNP遺伝子型判定アッセイを開発するために、いくつかの酵素を使用することができる。
【0083】
A.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく方法
【0084】
いくつかの実施形態では、遺伝子型判定アッセイは、例えば、対象の試料からの核酸を増幅させるための増幅工程を含むが、この核酸はMI SNPを含む。当業者は、MI SNPを含む配列など、目的の核酸標的を増幅させるためのプライマー及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロトコルを設計する方法を理解している。プライマーは、MI SNP並びにフォワードプライマーの任意の配列3’及びリバースプライマーの5’がPCRを介して増幅されるように、MI SNPに隣接する配列に相補的であるように設計されてもよい。プライマー配列は、長さ、配列組成、又はMI SNPに対する位置が可変であってもよく、異なる配列組成の可変長アプリコンを増幅させてもよく、アプリコンはMI SNPを含有する。PCRに基づく遺伝子型判定技術としては、リアルタイムPCR又は定量的PCR(qPCR)、及びエンドポイント遺伝子型判定が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、リアルタイムqPCRを使用して遺伝子型が判定され得る。リアルタイムqPCRアプローチは当技術分野で周知であり、一般には、PCRを用いて実施されるような特定数のPCRサイクル後とは対照的に、各PCRサイクルにわたる(すなわち、リアルタイムでの)PCR産物蓄積を測定することに依拠している。qPCRは、通常は、レポータ分子/酵素に依拠してリアルタイムに対照に対するPCR産物の存在量を決定する。SYBRグリーンは、dsDNAに結合し、結合時に蛍光を発することによって、PCR産物蓄積についてレポートするために使用され得るある種の非特異的色素である。ハイブリダイゼーションプローブもまた使用されてもよく、プローブは、PCR産物内の配列に相補的なオリゴヌクレオチドからなる。プローブは、異なる蛍光色素を用いて、あるプローブの3’末端にある色素、及び第2のプローブの5’末端に異なる色素を用いてタグ付けされる。PCR産物が蓄積するにつれ、プローブが標的DNAに結合し、それによってこれらのプローブは共に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を触媒するのに十分に接近した状態に動き、エネルギーは、短い波長の色素(ドナー)から長い波長の色素(アクセプター)に移動する。PCR産物の量は、検出された蛍光の波長及び強度に基づいて推定することができる。
【0086】
別の実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、特定数のPCRサイクル後のPCR増幅産物を測定することを含むエンドポイント遺伝子型判定を使用して遺伝子型が判定され得る。エンドポイントPCR遺伝子型判定アッセイの一例は、アレル特異的PCR及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく、LGC BiosearchのKompetitiveアレル特異的PCR(KASP)である。別個の蛍光色素でそれぞれ標識されている2種類のアレル特異的フォワードプライマー、及び共通するリバースプライマーによって、そのアレルを含有するかにかかわらず試料DNAの増幅が可能になる。SNP遺伝子型は、検出される発光スペクトルによって決定されるが、ホモ接合型個体は、アレルに応じて2つの可能なスペクトルのうちの1つからなるシグナルによって示され、ヘテロ接合型個体は可能である両方のスペクトルを含有するシグナルによって示される。
【0087】
B.制限酵素断片長多型(RFLP)
【0088】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、制限酵素断片長多型(RFLP)を使用して遺伝子型が判定され得る。このアッセイは、1又は複数の制限酵素によってDNA試料を断片に消化することを含み、得られる断片は、ゲル電気泳動によって分離され得る。バンド形成パターンは、元のDNA配列に関して最終的にレポートする、DNA試料配列内で見られるヌクレアーゼ切断部位の組成を決定する。
【0089】
C.Flapエンドヌクレアーゼ(FEN)(インベーダーアッセイ)
【0090】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、flapエンドヌクレアーゼ(FEN)を使用して遺伝子型が判定され得る。FENは、特異的な分子構造を認識して切断するエンドヌクレアーゼである。クリベース(Cleavase)と呼ばれるFENを利用するアッセイの一例は、インベーダーアッセイである。インベーダーアッセイは当技術分野で周知であり、基本的には、可変SNP部位の3’末端に相補的であるオリゴヌクレオチドインベーダープローブを設計することを含む。インベーダープローブの最後のヌクレオチドは、可変SNP部位と重複するミスマッチ塩基である。第2のアレル特異的プローブは、可変SNP部位の5’末端に相補的であるように設計されるが、この部位の3’側を超えて伸長している。試料DNA及び第2のアレル特異的プローブの配列が相補的である場合、これらはハイブリダイズし、インベーダープローブの存在下では、FENによって認識されて切断される3次元複合体を形成する。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術を使用し、二次切断反応を引き起こすことによって切断反応を検出することができる。二次切断反応は、第2のアレル特異的プローブの3’末端に結合されているクエンチャー分子と、同一プローブの5’末端に結合されているフルオロフォアとの間に生じる。FENによる一次切断は、フルオロフォアからクエンチャーを分離し、これによって検出可能なシグナルが生じる。インベーダーアッセイは、そのような遺伝子型判定アッセイの1つに過ぎず、一例として役立つことが意図されている。インベーダーアッセイのバリエーションとしては、両方のSNPアレルが単一反応で試験されることを可能にする、Serial Invasive Signal Amplification Reaction(SISAR)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0091】
D.プライマー伸長
【0092】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、プライマー伸長又は単一塩基伸長、ミニシーケンシング技術を使用して遺伝子型が判定され得る。検出プライマーは、SNPのすぐ上流の配列を標的とするように設計されている。オリゴヌクレオチドの3’末端は、ジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)を使用し、単一塩基によって伸長される。各ddNPT塩基は、様々な蛍光色素に対応する。結果として、ホモ接合型及びヘテロ接合型の遺伝子型の識別を含む、最大4つのアレルが検出される。質量分析(マトリックス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF))、キャピラリー電気泳動、パイロシーケンス、フローサイトメトリー、又は蛍光プレートリーダーなどのいくつかの検出プラットフォームは、SNPを検出することが可能である。
【0093】
E.5’-ヌクレアーゼ(TaqMan)
【0094】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、5’-ヌクレアーゼを使用して遺伝子型が判定され得る。TaqManプローブは、フルオロフォアがオリゴヌクレオチドプローブの5’末端に共有結合され、クエンチャーが同一のプローブの3’末端に共有結合されている、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術のバリエーションを利用する。PCR産物が蓄積すると、プローブは変性サイクル中にPCR産物に結合し、Taqポリメラーゼが新しい鎖を合成すると、これはハイブリダイズされたプローブに遭遇する。Taqのエキソヌクレアーゼ活性によって、プローブの3’末端で蛍光タグ付きヌクレオチドが放出される。直ちに蛍光は溶液へと放出されてそこで蛍光を発する。これは、蛍光がもはやFRETを実施するのに十分なほどにはクエンチャーに近接していないことによる。
【0095】
F.オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ
【0096】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸配列は、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイを使用して遺伝子型が判定され得る。このアッセイは、SNP部位で2つのDNAプローブを連結する酵素であるDNAリガーゼに依存するものであり、ライゲーションは、両方のプローブが標的配列に完全な塩基対相補性を有する場合に生じる。第1のプローブ配列は、その3’塩基が標的SNPに対応するように標的DNAに相補的となるように設計されたアレル特異的プローブであり、第2のプローブ配列は、その5’末端がライゲーション反応のために提供されるように、その他の方向でSNPに直接隣接する配列にハイブリダイズするように設計されている。ライゲーションは、プローブが標的DNAとマッチし、ハイブリダイズする場合にのみ生じ得る。ゲル電気泳動、MALDI-TOF質量分析、キャピラリー電気泳動を含む、配列長の差異を検出することができる任意のプラットフォームを使用し、産物が連結されているかいないのかを決定することができる。あるいは、オリゴヌクレオチドは、試料にインデックスを付け、ライゲーションされた産物のハイスループットシーケンシングを可能にするようにタグ付け及び/又は標識されることができ、当該産物の遺伝子型が決定され得る。
【0097】
IV.核酸シーケンシング
【0098】
いくつかの実施形態では、MI SNPは、MI SNPを含む核酸配列をシーケンシングすることで検出され得る。シーケンシング方法論は幅広く、プラットフォーム及び化学反応のいくつかのバリエーションが存在する。例えば、第1世代のシーケンシング技術は、サンガーシーケンシングを利用し、連鎖停止産物の電気泳動分離に依拠している。次世代シーケンシング(NGS)を含む最近開発されたシーケンシング技術は、当技術分野で周知であり、一般にはフローセル中でクローン増幅されたDNA鋳型を介した大規模並列シーケンシングを説明している。利用され得るシーケンシング法としては、全ゲノムシーケンシング(WGS)、ターゲットリシーケンシング、RNAseq、エクソームキャプチャ/シーケンシング、及びシーケンシングによる遺伝子型判定(GBS)が挙げられるがこれらに限定されず、シーケンシングされる核酸はDNA又はRNAであり得る。これらの方法は、シーケンシングプラットフォームの使用を必要とし、化学種、所望の多重化レベル、所望のデータ出力量、及びランタイムなどの要素は、プラットフォームを選択する際に考慮されなければならない。シーケンシングプラットフォームの例としては、Roche 454、Illlumina MiSeq、Illumina HiSeq、Life Technologies SOLiD4、及びPacific Biosciences SMRTプラットフォームが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
V.質量分析
【0100】
質量分析法は、より小さな分子がより速く移動する電界における分子移動率を測定することによって、イオン化分子の質量を決定する。いくつかの種類の質量分析計は、異なるサイズのフラグメントを分離し、これらをさらにフラグメント化してオリゴヌクレオチドをシーケンシングする。
【0101】
VI.ハプロタイプアッセイ
【0102】
ハプロタイプの検出は、ハプロタイプを含む1又は複数の多型の検出によって達成され、MIハプロタイプは、表2に示されるように、78,732,954~80,748,266bpの範囲にMI SNPを含む120個のマーカーを含む。MIハプロタイプマーカーの遺伝子型は、上述の遺伝子型判定法のいずれか、又はそれらの組合せを使用して決定され得る。例えば、1又は複数のアッセイは、MIハプロタイプを含む120個のマーカーのすべて又は一部の遺伝子型を検出するように設計されてもよい。MI SNPは、MIハプロタイプマーカーの遺伝子型を検出するために使用されるものと同一のアッセイを使用して遺伝子型が判定されてもよく、又は異なるアッセイを使用して遺伝子型が判定されてもよい。ある実施形態では、ハプロタイプを含む(任意にMI SNPを含む)120個のマーカーのすべて又は一部、及びMI SNPと連鎖状態にある追加のマーカーが、既に説明されたものなどの市販のアレイプラットフォームに加えられてもよい。
【0103】
タンパク質検出アッセイ
【0104】
変異個体を検出するための代替的方法は、目的のタンパク質又は目的の変異タンパク質の存在を検出することができる、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)などのイムノアッセイの使用によるものである。問題のタンパク質に結合するように設計された抗体は、液体試料に加えられ、当該結合又は二次抗体の結合によって、その後に測定され得る検出可能なシグナルが生じる。このようにして、変異タンパク質は、野生型タンパク質に対して変異体に特異的な抗体によって検出され得る。CACNA1S遺伝子によってコードされるタンパク質の野生型及び変異型の両方は、この種類のアッセイを使用して検出され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む本開示の核酸は、現存の遺伝子型判定プラットフォーム、パネル、又はアレイに加えられる。いくつかの実施形態では、核酸は、二本鎖形態でプラットフォーム、パネル、又はアレイに加えられる。いくつかの実施形態では、核酸は、一本鎖形態でプラットフォーム、パネル、又はアレイに加えられる。いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖であり、MI SNPを含むDNAのセンス鎖を含む。いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖であり、MI SNPを含むDNAのアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖であり、MI SNPを含むRNAを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号1及び/又は配列番号2、その相補体、又はその逆相補体を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号1及び/又は配列番号2の断片、その相補体、又はその逆相補体を含み、断片はMI SNPを含む。いくつかの実施形態では、断片は、MI SNP位置の5’の10ヌクレオチド以上及び3’の10ヌクレオチド以上を含む。いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸は、MI SNPの5’、3’若しくは5’及び3’の両方の約10ヌクレオチド以上、約15ヌクレオチド以上、約20ヌクレオチド以上、約25ヌクレオチド以上、約30ヌクレオチド以上、約35ヌクレオチド以上、約40ヌクレオチド以上、約45ヌクレオチド以上、約50ヌクレオチド以上、約55ヌクレオチド以上、約60ヌクレオチド以上、約65ヌクレオチド以上、約70ヌクレオチド以上、約75ヌクレオチド以上、約80ヌクレオチド以上、約85ヌクレオチド以上、約90ヌクレオチド以上、約95ヌクレオチド以上、又は約100ヌクレオチド以上、あるいはMI SNPの5’側及び3’側の長さの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸又はその断片は、配列番号1、配列番号2、これらの相補体、それらの逆相補体、又はこれらのうちの任意の断片に対して、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97%、99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸は、遺伝暗号のバリエーションによって配列番号1又は配列番号2から逸脱する。すなわち、核酸配列は、配列番号1、配列番号2、それらの相補体、又はそれらの逆相補体のアミノ酸配列とは異なっている可能性があるものの、バリアント核酸配列(又は断片)は同一のアミノ酸配列をコードする。
【0107】
いくつかの実施形態では、MI SNPを含む核酸もまた、検出可能なマーカーを含む。検出可能なマーカーは、MI SNPを含む核酸の二本鎖DNAに結合する色素、又はMI SNPを含む核酸とハイブリダイズする蛍光標識されたプローブなど、いくつかのフォーマットを具現化してもよい。
【0108】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を例示することが意図されており、特許請求の範囲に定義されるような本発明の範囲を限定するものであると解釈されるべきではない。
【実施例
【0109】
実施例1.ホルスタインの仔牛におけるハプロタイプ関連運動不全の同定。
【0110】
背景
【0111】
ホルスタインゲノム選択プログラムは、死産及び後期流産(Agerholm et al., 2001; Charlier et al., 2012)及び新生仔生存(Shuster et al., 1992; Schutz et al., 2016; Basiel et al., 2020)に関連するいくつかの遺伝子劣性についてスクリーニングする。ゲノム検査はまた、ハプロタイプ頻度に基づいて存在すると予想される場合、所与のハプロタイプがホモ接合状態で観察されない領域についてスクリーニングすること(VanRaden et al., 2011)によって、胚損失をもたらす遺伝子劣性の発見を加速させた(Fritz et al., 2013, 2018; McClure et al., 2014; Adams et al., 2016)。
【0112】
ゲノム検査が遺伝子劣性の同定に加えて迅速な遺伝子改良を促進させた一方、年間及び世代ベースで見たときには同系交配の加速もまた存在していた(Makanjuola et al., 2020)。近年の増加は、幅広い人工授精の採用に起因する雄系統における縮小期間に付随している(Dechow et al., 2020)。同系交配の上昇及び小さな有効な集団サイズは、有意な数の動物において新たな遺伝的劣性条件が顕在化し得る可能性を増加させた(Fritz et al., 2013)。近年、新生仔牛における運動不全が複数の州の獣医及び農場スタッフによって観察されている。遺伝子異常は、ヒト及びその他の種における神経筋欠陥の主な要因であり(Laing, 2012)、仔牛において観察される問題の根底に存在し得る。したがって、本研究の目的は、罹患仔牛及び正常な家系メンバーのゲノムワイド関連研究を実施し、遺伝子の起源が可能性があるかどうかを決定し、共通祖先に基づく遺伝の信憑性を確立することであった。
【0113】
材料及び方法
【0114】
試料集団。表1は、罹患仔牛の数及び遺伝子型が判定された対照集団に関する詳細を提供する。罹患仔牛(合計34頭)を、ニューヨーク州(農場1及び2)、フロリダ州(農場3)、及びペンシルバニア州(農場4)の農場で記録した。最初に2019年12月にその症状が注目され、最新の観察は2021年の11月であった。罹患仔牛は、様々な重症度、回復、及び再発パターンを有しており、新生仔期間中、再び補助なしで起立することが不可能であった。生後最初の24時間にわたって起立不可能なものもあれば、最初は起立可能であり、その後生後1ヶ月以内に起立能力を喪失したものもあった。21頭の仔牛が安楽死されたが、7頭の仔牛は回復したと考えられ、6頭はデータ収集時点では成長が不十分であり、発育不全であった。表1は、農場による運動不全を有する仔牛の数及び回復ステータス、胚移植から生じた障害性仔牛の数、遺伝子型が判定された障害性仔牛の数、遺伝子型が判定された対照の同胞の数、及び遺伝子型について両親又はその他の近縁の数を示す。
【表1】
【0115】
コーネル大学獣医学部及びフロリダ大学獣医学部で仔牛の剖検を行った。筋肉及び末梢神経の組織学的検査に続き、1つの農場の3頭の仔牛の右の二頭筋及び右の腕神経叢の生検を行った。コレステロール欠乏、貧血、又はセレン欠乏が運動不全に寄与しているかどうかを決定するために農場1の4頭の仔牛から血液試料を採取し、潜在的なセレン欠乏を評価するために、農場3において当該複数の血液試料を採取した。
【0116】
仔牛は、17個の雄親×雌親の組合せに由来しており、22頭の仔牛を、13頭(農場3)、3頭(農場3及び4)、及び2頭(農場2)の完全同胞家系との体外受精から得た。農場3のすべての仔牛は、3頭の雌親牛と交配させた単一の雄牛によって産まれた。
【0117】
ゲノム及び家系図分析。組織、毛髪、又は血液試料は、農場あたり1~12頭範囲で18頭の罹患仔牛から遺伝子型判定するために利用可能であり、残りの仔牛は試料回収が行われ得る前に殺処分した。対照集団については、農場3の2頭の雌親牛からの22頭の健康なすべての同胞(それぞれ17頭と5頭の仔牛)をサンプリングした。加えて、農場3の仔牛の雄親牛、及び農場4の3頭の仔牛の雌親牛に対する完全な姉妹牛をサンプリングした。すべての試料を、139,376個のDNAマーカーについて遺伝子型を判定した(BOVUHDV03, Neogen, Lincoln, NE)。農場3の2頭の雌親牛の遺伝子型を、findhap.f90 (v3; Vanraden et al., 2011)を用いて帰属させ、以降の解析にこれを含めた。
【0118】
運動不全を、対照仔牛及び遺伝子型が判定された近縁種を含む26頭の非罹患動物については1として、又は18頭の罹患仔牛については2として記録した。関連解析を、PLINK(v1.9; Chang et al., 2015; www.cog-genomics.org/plink/1.9/)において行った。99%以上のマーカーコール率(call rate)が課され、解析のために101,907個のメーカが残った。最初の関連解析は、フィッシャーの正確確率検定を使用して生成されたp値を用いて、1自由度を仮定するアレルのカイ二乗検定(アレルBの頻度に対するアレルAの頻度)から構成される。これに、1自由度カイ二乗検定を用いた優性モデル(遺伝子型BBに対する遺伝子型AA及びAB)が続いた。FDR P≦0.05でのゲノムワイドの有意性を判断するため、偽発見率(FDR)p値を実装することによって多重比較検定を検討した。連続するホモ接合性を同定するため、ホモ接合性スクリーニングもまた実施した。
【0119】
33頭の罹患仔牛は、既知の雄親牛を有しており、家系図分析にこれを含めた。雄親識別の2世代(雄親牛及び母方祖父牛)は、農場1の9頭の仔牛については利用可能であったが、6世代以下(仔牛の雄親牛+雌親牛5世代に対する雄親牛)は、残りすべての仔牛について利用可能であった。すべての既知の祖先牛を、各罹患仔牛の雄親牛及び雌親牛について別個に追跡し、雄親牛及び雌親牛の系統に祖先牛が存在した仔牛の数を決定して、妥当と思われる共通祖先牛を識別した。潜在的な祖先牛の帰属された遺伝子型は、罹患仔牛の遺伝子型及び対照の遺伝子型に加えて、3K~150Kの範囲の遺伝子型密度を有する7622頭のホルスタインの集団を使用し、findhapf90を使用して導出した。
【0120】
結果
【0121】
臨床所見。剖検は、仔牛のいずれについても運動不全の原因を決定することができなかった。血清検査結果に基づいたコレステロール欠乏、セレン欠乏、又は貧血の証拠は存在しなかった。確定的な疾患診断は、筋肉及び末梢神経の組織学的検査によっては支持されなかったが、二頭筋生検の筋肉内神経枝は、神経内膜、筋内膜、及び筋周膜の散在したマクロファージ浸潤を伴う中等度の神経下浮腫を示した。同様に、腕神経叢の神経束の散在した単核細胞浸潤とともに、神経内膜及び神経周膜下に中等度の重篤な浮腫を認めた。仔牛の挙動及び食欲は正常であり、適切な運動機能を妨げる明確な臨床的症状は存在しなかった。
【0122】
ゲノムワイド関連。優性モデルによる各マーカーの有意水準を実証したマンハッタンプロットを図1に示すが、16番染色体末端でピークが明らかである。合計でこの領域中の78個のマーカーが、75,332,437~80,448,457bp(ARS-UCD1.2)の範囲にわたる510万bpの領域においては有意(FDR P≦0.05)であった。アレルモデルは、わずかに拡大した範囲(570万bp)にわたるより有意なマーカー(88個)を有する同等の結果を返した。罹患仔牛は、78,732,954~80,748,266にわたる210万bpのホモ接合型の共通する連続部分を有しており、同一領域においてホモ接合型である対照仔牛が1頭存在していた。図5は、罹患仔牛の遺伝子型頻度とともにこの領域のDNAマーカーの一覧を含有する。強調された配列は、MI罹患動物のアレル位置を表す。
【0123】
運動不全表現型を有する78,732,954~80,748,266bpの範囲の120個のマーカーのハプロタイプの関連を、図2に示す。すべての罹患仔牛はホモ接合型であり、26頭の対照のうち1頭はホモ接合型であり、農場3に配置されていた。9頭の対照は、代替ハプロタイプについてはホモ接合型であり、16頭はヘテロ接合型であった。農場3の仔牛の雄親牛及び両方の雌親牛は、この領域のマーカーについてはヘテロ接合型であった。
【表2】
【0124】
3つの有意なマーカーを含有する9,585,914~10,754,653bpの範囲の第2の領域は、優性モデルを有する20番染色体上に存在していた(図1)が、マーカーはアレルモデルでは有意ではなかった。18頭の罹患仔牛のうち17頭は、これらのマーカーについてはホモ接合型であり、残りの罹患仔牛はヘテロ接合型であった。対照にのうち、6頭が同一のアレルについてはホモ接合型であり、18頭がヘテロ接合型であり、2頭が代替アレルについてホモ接合型であった。このことが、症状が複数の遺伝子座に関連するのか、偽の結果であったことを示すのかどうかは定かではない。16番染色体における観察とは対照的に、罹患仔牛は、この領域にわたる残りのマーカーについてはすべてがホモ接合型というわけではなかった。
【0125】
家系図分析。雄親牛が識別されている33頭の罹患仔牛は、1990年以降に生まれ、最も最近では2008年及び2010年に生まれたそれらの雄親系統において、63頭の既知の祖先牛が共通していた。母方系統については、2010年に生まれた雄牛については7頭に対して、少なくとも5世代の既知の母方雄親牛を有する24頭の罹患仔牛すべてが、2008年に生まれた雄牛まで追跡された。加えて、帰属された遺伝子型は、2010年の雄親牛ではなく、2008年の雄親牛が候補領域のキャリアであったことを示唆していた。したがって、雄牛ROYLANE SOCRA ROBUST-ET(Robust)は、これらの家系の起源の最も可能性のある祖先牛であると考えられた。既知の母方祖父牛を有する残り9頭の仔牛を含むように拡大した場合、仔牛のうち30頭はRobustまで追跡可能であった。Robustから罹患子孫まで最も多い経路を有する家系を図2に示し、遺伝子型が判定されたすべての仔牛又は少なくとも5世代の既知の雄親牛を有する家系を図3に報告する。家系の父方側では、33頭の罹患仔牛のうち30頭がSEAGULL-BAY SUPERSIRE-ET(Supersire)まで追跡可能であったが、母方家系の24頭のうち23頭がSupersireまで追跡可能であった。遺伝子型判定は、Supersireもまた疑わしいハプロタイプのキャリアであったことを示していた。
【0126】
結論
【0127】
16番染色体上のハプロタイプについてホモ接合型である仔牛は、起立不能を特徴とする運動不全のリスクが上昇していた。一部の仔牛は部分的に回復したものの、肺炎を含む二次症状の発症により、大部分の症状は悪化して安楽死させた。興味深いことに、仔牛は運動機能障害以外は健康であるように見えた。
【0128】
候補領域についての強力な証拠にもかかわらず、運動不全表現型の一貫しない発症、補助なしでの起立が可能であるホモ接合型仔牛の存在、及び有意なマーカーを有する更なる領域に起因する、ある程度の不確実性が存在する。このことは、同定されたゲノム領域が偽であり、症状が非遺伝的である可能性を高めている。劣性アレルを有する領域についての証拠は、高い統計学的有意性、遺伝子型が判定された両親のヘテロ接合型ハプロタイプの存在、複数の罹患家族にわたって共通するホモ接合型ハプロタイプ、及び妥当である遺伝経路によって支持された。
【0129】
ヒト及び動物モデルにおける観察は、運動不全表現型についての遺伝的な根拠を支持する。CACNA1S遺伝子に欠損があるヒトは、筋力低下することで知られている(Fialho et al., 2018)。いくつかの例では、個体は、数分から数日間にわたって継続し得る、食事及び運動によって引き起こされ得る筋麻痺に関連している低カリウム血症性周期性四肢麻痺に罹患している。MIを有する仔牛における観察と同様に、ヒトにおけるCACNA1S突然変異によって、筋力低下の頻度及び持続期間、並びに症状が最初に見られた年齢にバリエーションが生じる。CACNA1S以外の遺伝子における遺伝的状態もまた、MIを引き起こし得る。大部分の神経筋障害は、遺伝的起源を有しており、幅広い遺伝子における突然変異は疾患を引き起こし得る(Laing, 2012)。遺伝的劣性状態及び優性デノボ突然変異は、ヒトにおける遺伝的小児性神経筋疾患に関連している(Herman et al., 2021)。遺伝性若年発病型運動多発ニューロパチーはネコにおいて近年説明されており、筋肉内神経枝の単核細胞浸潤を特徴とする(Crawford et al., 2020)。骨格筋の単核細胞浸潤は、炎症性ミオパチーの一貫した特徴である(Ascherman, 2012)。
【0130】
この研究における大部分の仔牛は、IVF及び胚移植から生じていた。エピジェネティック異常及び過大仔症候群を含む発達異常は、複数の種においてIVFに関連している(Ventura-Junca et al., 2015)。しかしながら、AIから生じた11頭の仔牛は罹患しており、1頭は自然交配に起因していた。強力なゲノムの関連に関係したこのような観察は、IVFが運動不能の発症については決定的要因ではないことを示唆している。それでもなお、遺伝的欠陥が遺伝する場合に表現型が発現するであろう可能性を高める、IVFとの遺伝子型×環境的相互作用は、無視することはできない。
【0131】
両方の基準及び年間基準及び世代毎の基準での同系交配の割合は、遺伝子選択(Dechow et al., 2020; Makanjuola et al., 2020)の導入後にかなりの量で増加したが、これは、長期にわたる選択反応に対する影響を有し、遺伝的劣性が出現する可能性を上昇させる(Fritz et al., 2013)。図2及び図3の家系は、現在の同系交配の割合を考慮すると、遺伝的劣性がどのようにして急速に拡大し得るかを実証している。家系における雄方祖先牛はすべて、上位のAI雄親牛であり、デノボ突然変異又は低頻度突然変異がどのようにして急速に増幅し得るかを実証している。Supersireは、2021年12月の全国遺伝的評価に従い、乳用牛育種協議会(CDCB、2021)によるホルスタイン種に対して最も関連性が高い子孫の雄親牛として列挙された。現在のホルスタイン集団と無作為に交配させた場合、子孫は、家系に基づいて11.9%及び遺伝子型に基づいて11.5%の予想される同系交配を有することになる。家系及びゲノムの将来的な同系交配値は、Robustに対してそれぞれ、10.2%及び9.5%である。
【0132】
ゲノム検査は、胚性致死をもたらす遺伝的劣性の発見を加速させた(VanRaden et al., 2011)。残念なことには、ハプロタイプスクリーニング法は、仔牛が出生時には正常にあるように見え、正常な管理ルーチンの一部として遺伝子型が判定され得ることから、運動不全などの症状を識別する可能性が低い。未経産牛生存率についてのゲノム選択は、(Neupane et al., 2021)による全国遺伝的選択プログラムに導入されたが、遺伝率は低く(1%未満)、ゲノム予測の精度については中程度である。さらには、未経産牛は、死亡、傷害、及び生殖障害などの様々な理由から生存が難しい。広範な条件が根底に存在する定量的形質のゲノム評価は、大集団の仔牛が特定の症状に罹患していない限り、本明細書で観察されたもののような遺伝的劣性の検出に役立つことは明らかではない。
【0133】
ホルスタイン種における現在の同系交配率は、遺伝的欠陥の迅速な増幅には好ましい。運動不全を与える16番染色体における遺伝的欠損の支持は、複数の交配組合せにわたり共通していたゲノムワイドな有意性、ヘテロ接合型親のハプロタイプ、罹患家系について妥当と思われる共通祖先牛、及びその他の種における同様の遺伝的条件を含む。遺伝的状態の存在に関する強力な証拠にもかかわらず、仔牛の一貫しない表現型提示を理由に、依然としてある程度の注意が必要である。状態を確認し、遺伝子検査及び選択を促進させるためには、正確な位置及び突然変異の種類を同定するための将来的な努力が必要となる。
【0134】
実施例2.配列アラインメント及び候補突然変異の発見
【0135】
横臥ハプロタイプについてホモ接合型であった1頭の罹患仔牛、罹患仔牛の雄親牛、及び表現型的には正常であるが横臥ハプロタイプについてホモ接合型であることが知られている雄方祖先牛を、Illumina(San Diego, CA)HiSeqペアエンドプラットフォームを使用し、30倍の深さでシーケンシングした。遺伝子型が判定されたホルスタイン雄親牛のハプロタイプを追跡することで、ホモ接合型の祖先牛をUSDA動物ゲノム改善研究所で同定した。
【0136】
前記配列を、ウシ16番染色体(ARS-UCD1;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/assembly/GCF_002263795.2)に対してアラインメントした(Bowtie 2;https://bowtie-bio.sourceforge.net/bowtie2/index.shtml)。参照ゲノムからのバリアントを、これらが(1)罹患仔牛においてホモ接合型である場合、(2)雄親牛についてヘテロ接合型である場合、(3)雄方祖先牛においてホモ接合型でない場合、候補突然変異であると見なした。bp79613592(フォワード鎖においてはCからT、リバース鎖においてはGからA)を遺伝子型基準を満たすと同定した。突然変異及び周囲のバリアントは、雄親牛についてはヘテロ接合型であった。横臥ハプロタイプ領域にわたってホモ接合型であった雄方祖先牛では、前記突然変異はヘテロ接合型であった。図6を参照されたい。
【0137】
SNPが[C]又は[T]として示されているbp79613564~79613623のDNAプラス鎖の配列は、
【化8】

(配列番号1/2)である。
【0138】
突然変異は、マイナス鎖上にコードされている電位依存性カルシウムチャネルサブユニットα1S遺伝子(CACNA1S)中に存在する。ミスセンス変異は、GGCコドンをAGCに変化させ、グリシンのセリンへのアミノ酸置換を促進させる。Ensembl(https://useast.ensembl.org/index.html)予測(表3)は、39~44エクソンに及ぶ9種類の潜在的転写物を示しており、突然変異は、転写物の30番目~32番目のエクソンに存在する。
【0139】
【表3】
【0140】
変異エクソンに対応するアミノ酸配列を、仔牛及びその他の5種については表4に示す。強調したアミノ酸は、そのアミノ酸配列が多くの種にわたって保存されていることを示す。
【0141】
【表4】
【0142】
CACNA1S突然変異
【0143】
CACNA1Sは、カルシウムチャネルの電位依存性活性を可能にし、骨格筋において高度に発現される(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/682930)。突然変異は、ヒト(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/779)及びマウス(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/12292)において周期性四肢麻痺を引き起こすことが知られており、これはホルスタイン仔牛で観察された仔牛横臥表現型に対応する。
【0144】
突然変異を、Ensembl Variant Effect Predictor(https://useast.ensembl.org/Homo_sapiens/Tools/VEP)に登録した。SIFT(Sorting Intolerant From Tolerant)スコアは、突然変異が有害であり(SIFTスコア範囲は0~0.01)、中程度の影響が予測されていることを確認しているが、これは、仔牛の横臥の部分的浸透性性質に対応している。
【0145】
実施例3.例示的なアッセイ及び結果
【0146】
CACNA1S遺伝子におけるbp79613592でのCからTのSNPについて、16種類の動物の遺伝子型(図5)を、TaqManアッセイを使用して確認した。遺伝子型が判定された動物は、MIハプロタイプについてホモ接合型であった6頭の横臥仔牛(ハプロタイプ遺伝子型=MI/MI);MIハプロタイプのキャリアであると事前に決定された4頭の正常な動物(ハプロタイプ遺伝子型=+/MI);ゲノム検査されていない4頭の横臥仔牛(ハプロタイプ遺伝子型は未知)、及び遺伝子型が判定されておらず、かつ家系に基づいてMIアレルを含まないと予想された2頭の正常な動物(ハプロタイプ遺伝子型は未知)を含んでいた。ヘテロ接合型動物のうち、2頭は横臥仔牛の祖先であった雄牛であり、残り2頭は横臥仔牛の同胞であった。すべての横臥仔牛は、事前の遺伝子型ステータスにもかかわらず、MIアレルについてはホモ接合型であった。MIハプロタイプについてヘテロ接合型であるすべての動物は、MI SNPについてはヘテロ接合型であった。このことは、bp79613592でのSNPを直接検査することで、MI遺伝子型を正確に確認可能であることを実証した。試験によって、予想されるすべての遺伝子型(MI/MI、+/MI、及び+/+)が同定可能であり、陰性対照は検出可能な増幅を何ら実証しなかった。
【0147】
【表5】
【0148】
References
【0149】
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【0172】
前述の説明では、本発明の範囲及び精神から逸脱しない限り、様々な置換及び修正が本明細書において開示されている本発明に行われ得ることが、当業者には容易に明らかとなるだろう。本明細書において例示的に説明された発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の要素又は限定が存在しない状態でも適切に実施され得る。使用された用語及び表現は、限定ではなく説明のための用語として使用されており、示され説明されている特徴又はそれらの一部分の任意の等価物を除外するそのような用語及び表現の使用においては意図されていないが、様々な変更は、本発明の範囲内で可能であることが認識される。そのため、本発明が特定の実施形態及び任意の特徴によって例示されているものの、本明細書において開示されている概念の変更及び/又は変形は、当業者によって行われてもよく、そのような変更及び変形は、本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0173】
本明細書には、いくつかの特許文献及び非特許文献が引用されている。引用された参考文献は、その内容全体が参照として本明細書に取り込まれる。引用した参考文献における用語定義と比較した場合に、本明細書における用語定義との間に不一致が存在する場合には、その用語は、本明細書における定義に基づいて解釈されなければならない。
図1
図2
図3-1】
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図6
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【配列表】
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【国際調査報告】