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  • 特表-2ステップ調理 図1
  • 特表-2ステップ調理 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】2ステップ調理
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20250123BHJP
【FI】
A23L35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543214
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2023025016
(87)【国際公開番号】W WO2023143861
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】22153379.7
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517338205
【氏名又は名称】ビューラー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウッディング、ヴォーン
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】バルトシュ、クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4B036
【Fターム(参考)】
4B036LH42
4B036LP01
4B036LP17
4B036LP24
(57)【要約】
本開示は、昆虫又は昆虫の幼虫を処理するための方法及びシステムに関する。方法は、昆虫又は昆虫の幼虫を第1の流体中、40℃~105℃の温度で加熱する第1の加熱ステップと、昆虫又は昆虫の幼虫を第2の流体中で冷却する冷却ステップと、昆虫又は昆虫の幼虫を第3の流体中、40℃~105℃の温度で加熱する第2の加熱ステップであって、冷却ステップ後に行われる、第2の加熱ステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫又は昆虫の幼虫を処理するための方法であって、
前記昆虫又は昆虫の幼虫を第1の流体中、40℃~105℃の温度で加熱する第1の加熱ステップと、
前記昆虫又は昆虫の幼虫を第2の流体中で冷却する冷却ステップと、
前記昆虫又は昆虫の幼虫を第3の流体中、40℃~105℃の温度で加熱する第2の加熱ステップであって、前記冷却ステップ後に行われる、第2の加熱ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のうちの少なくとも1つが水又は蒸気である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の加熱ステップ及び/又は前記第2の加熱ステップが75℃~105℃の温度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却ステップが10℃~30℃、好ましくは20~25℃の温度で行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の加熱ステップが5~15分、好ましくは8~12分の持続時間を有する、及び/又は
前記冷却ステップが10~45分、好ましくは25~35分の持続時間を有する、及び/又は
前記第2の加熱ステップが10秒~5分、好ましくは10秒~1.5分の持続時間を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
自動的に行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の加熱ステップ及び/又は前記第2の加熱ステップ及び/又は前記冷却ステップ中に前記昆虫又は昆虫の幼虫を拡散させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の加熱ステップ及び/又は前記冷却ステップ及び/又は前記第2の加熱ステップ後に前記昆虫又は昆虫の幼虫を前記流体から分離することを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の加熱ステップ後に前記昆虫又は昆虫の幼虫をバッファータンクに貯蔵することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
更なる昆虫又は昆虫の幼虫が前記第2の加熱ステップで追加される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記昆虫又は昆虫の幼虫が、前記第1の加熱ステップと前記冷却ステップと前記第2の加熱ステップとの間でポンプによって、好ましくは前記流体と一緒に輸送される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
生きているか又は死んでいる昆虫又は昆虫の幼虫を用いて行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が前記第1の加熱ステップの前に追加の加熱ステップを更に含み、好ましくは前記加熱ステップが90℃~110℃の温度で行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記昆虫又は昆虫の幼虫が、処理時間の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%の間、水中に保持される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を使用して昆虫又は昆虫の幼虫を処理するためのシステムであって、第1、第2、及び第3の処理タンクを備え、各タンクが、それぞれ第1、第2、及び第3の流体中に昆虫又は昆虫の幼虫を含むように構成されており、
前記第1の処理タンクが、前記第1の流体を40℃~105℃の温度で加熱及び/又は維持するための加熱手段を備え、
前記第2の処理タンクが、前記第2の流体を冷却するための冷却手段を備え、
前記第3の処理タンクが、前記第3の流体を40℃~105℃の温度で加熱及び/又は維持するための加熱手段を備え、
前記システムが、前記昆虫又は昆虫の幼虫を、前記第1のタンクから前記第2のタンク及び前記第3のタンクに輸送するためのポンプを更に備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫又は昆虫の幼虫を処理するための方法及びシステムに関する。
【0002】
食用又は飼料製造用の昆虫は、処理する廃棄物から、食品廃棄物、安価な動物飼料まで、広範囲の原料を食べる。これらの原料は、人々に有害であり得る多種多様な病原体の宿主であり得る。通常、これらの病原体は、昆虫自体には有害ではないが、その昆虫を最終的に食べる人には有害であり得る。大半の病原体は、単一の調理ステップ又は混入物除去ステップによって十分に安全なレベルまで死滅するが、ある特定の病原体、例えばbacillus cereusは、極限条件で生き残ることができる耐性芽胞を形成することができる。これらの種類の病原体には、より複雑かつより良好に設計された混入物除去プロセスが必要とされる。
【0003】
更に、変色は、食料品の調理及び熱処理中に極めて一般的である。多くの製品において、変色は許容され得るが、昆虫においては、製品の色及び外観は重要な因子である。
【0004】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものである。特に、本発明は、昆虫のある特定の特性を保存しながら、昆虫又は昆虫の幼虫から更に耐性の病原体を効果的に除去し、それによってより安全かつより魅力的な食料品をもたらす、方法及びシステムを提供する。
【0005】
本発明は独立請求項において定義される。従属請求項は好ましい実施形態を記載する。
【0006】
本開示は、昆虫又は昆虫の幼虫を処理するための方法に関する。方法は、昆虫又は昆虫の幼虫を第1の流体中、40℃~105℃の温度で加熱する第1の加熱ステップと、昆虫又は昆虫の幼虫を第2の流体中で冷却する冷却ステップと、昆虫又は昆虫の幼虫を第3の流体中、40℃~105℃の温度で加熱する第2の加熱ステップであって、冷却ステップ後に行われる、第2の加熱ステップと、を含む。
【0007】
様々な実施形態は、好ましくは以下の特徴を実装し得る。
【0008】
好ましくは、第1の流体、第2の流体、及び第3の流体のうちの少なくとも1つは、水又は蒸気である。流体はまた、ガスであってもよい。
【0009】
流体は、製品、すなわち昆虫又は昆虫の幼虫と直接接触することにより、効率的な熱伝達を可能にし得る。水は、製品を(例えば化学物質によっても、他の添加物質によっても)不純にしないという事実により、有益であり得る。
【0010】
第1の加熱ステップは、好ましくは75℃~105℃の温度で行われ、好ましくは5~15分、より好ましくは8~12分の持続時間を有する。
【0011】
第1の加熱ステップでは、栄養微生物及び幼虫自体(生きている状態で提供される場合)の不活化に加えて、病原体の耐性形態、すなわち芽胞が活性化され、その結果、芽胞は、冷却後に発芽し、栄養細胞となる。温度が高過ぎるか又は低過ぎる場合、芽胞の活性化は起こらず、芽胞は冷却後、芽胞のままとなる。加えて、十分な加熱時間がない場合もまた、芽胞は活性化されない。しかしながら、長い加熱曝露時間は製品の品質(例えば色)に対して悪影響を及ぼすので、加熱時間は必要最小限であるべきである。
【0012】
冷却ステップは、好ましくは10℃~30℃、より好ましくは20~25℃の温度で行われ、好ましくは10~45分、より好ましくは25~35分の持続時間を有する。活性化された芽胞をある一定の温度範囲まで冷却した後、活性化された芽胞は、ある一定の時間後に発芽し、栄養細胞となる。温度が低過ぎるか又は高過ぎる場合、活性化された芽胞は発芽しない。また、十分な冷却時間が提供されない場合、芽胞は発芽のための十分な時間を有しておらず、これは、芽胞が第2の加熱ステップにおいて不活化されないという影響をもたらし得る。芽胞の発芽に必要とされるよりも多くの冷却時間を製品に与えることは、冷却装置が必要とされるよりも長く占有されるので、プロセスの効率を低下させる。
【0013】
第2の加熱ステップは、好ましくは75℃~105℃の温度で行われ、10秒~5分、好ましくは10秒~1.5分の持続時間を有する。第2の加熱ステップでは、冷却中の芽胞の発芽から生じた病原体の栄養細胞が不活化される。これらの栄養細胞の不活化は、温度と時間との適切な組合せにおいて起こる。温度が高いほど、同じ不活化特性を達成するための時間を短くすることができる。温度及び時間範囲の上限を超えることは、製品の品質に悪影響を及ぼす。75℃未満の温度では、非常に長い曝露時間が必要とされ、プロセス及び装置の使用が非効率的になる。熱曝露時間に関する10秒という下限は、これがそれでもなお十分に測定され得また有効であり得るので、選択され、工業操作における要件である。
【0014】
より高い温度では、加熱ステップでより短い時間を適用して、病原体を不活化させることができる。
【0015】
方法は自動的に行われてもよい。工業規模では、人件費をより低いレベルに保つのに役立つので、ステップは手動ではなく自動的に実行されるべきである。
【0016】
第1の加熱ステップ及び/又は第2の加熱ステップ及び/又は冷却ステップは、特に昆虫又は幼虫がクラスターを形成し、ひいては設備を詰まらせることを防止するために、昆虫を拡散させることを伴ってもよい。熱処理においては、製品の全ての点で温度と時間との組合せが適用されることが必要である。昆虫を拡散させることは、製品の表面から中心までの距離を減少させるのに役立つ。それによって、製品全体において所望の温度を達成するのにかかる時間がより短くなる。更に、昆虫を拡散させることで、空気が昆虫に届くようになり、嫌気性細菌の増殖が防止される(例えばClostridium spp.)。
【0017】
方法は、第1の加熱ステップ及び/又は冷却ステップ及び/又は第2の加熱ステップ後に昆虫又は昆虫の幼虫を流体から分離することを、更に含み得る。新たな温度にする必要があるのは製品のみであり、流体もそのようにする必要はないので、異なるステップにおいて異なる流体を使用することは、エネルギーを節約するのに役立つ。加えて、流体はまた、幼虫の表面に付着している場合がある混入物(例えば糞粒残留物)を除去する。したがって、幼虫がステップの間で分離される場合、混入物は一方の流体から他方の流体まで持ち越されない。
【0018】
好ましくは、幼虫は、第2の加熱ステップ後にバッファータンクに貯蔵される。第2の加熱ステップ後に、幼虫の更なる処理(例えば乾燥、凍結)があってもよい。バッファー時間(buffer time)において幼虫を貯蔵する機能は、不活化を更なる処理から切り離すことを可能にし、したがって操作の柔軟性をより高める。
【0019】
更なる昆虫又は昆虫の幼虫が第2の加熱ステップで追加されてもよい。全ての幼虫が芽胞を含有している、というわけではなくてもよい。これらの幼虫では、栄養病原体の不活化のみが必要とされ、これは第2の加熱ステップによって達成される。第2の加熱ステップの前に幼虫の追加を可能にすることで、昆虫製造者が、芽胞を有する幼虫と有していない幼虫とを同時に処理することが可能になる。
【0020】
好ましくは、幼虫は、第1の加熱ステップと冷却ステップと第2の加熱ステップとの間でポンプによって、好ましくは流体と一緒に輸送される。流体は、バッファーとして機能し、幼虫と硬質表面との直接的な相互作用を最小限に抑える。それゆえ、流体における幼虫の輸送は、一方の装置から他方の装置への穏やかな輸送を保証する。
【0021】
方法は、生きているか又は死んでいる昆虫又は昆虫の幼虫を用いて行うことができる。昆虫が生きている状態で加えられる場合、第1の加熱ステップは、食品の安全性に関連する機能に加えて、幼虫を非常に迅速に不活化する。迅速な不活化は動物福祉の観点から必要とされる。しかしながら、幼虫の不活化のための他の技法が2ステップ調理プロセスの前に行われてもよい。
【0022】
方法は、第1の加熱ステップの前に追加の加熱ステップを更に含んでもよい。好ましくは、この加熱ステップは90℃~110℃の温度で行われる。生きている昆虫を使用する場合、第1の加熱ステップでは、幼虫の不活化と芽胞の活性化とが同時に起こる。しかしながら、生きている幼虫は、より高い温度ではより迅速に不活化される。幼虫は、液体が初期温度である100℃(急速な死滅に望ましい)から芽胞の活性化に望ましい温度まで冷却されるような量で、追加され得る。幼虫の不活化を芽胞の活性化から切り離す場合、追加の熱処理ステップが必要とされる。
【0023】
昆虫又は昆虫の幼虫は、好ましくは処理時間の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%の間、水中に保持される。幼虫を水中に保持することで、均一な温度分布が保証され、幼虫が空気由来の酸素と接触しないこと、したがって脂肪の酸化による変色の防止が保証される。加えて、幼虫は、水中に保持される場合、硬質表面に当たることによる損傷からより良好に保護される。最後であるが重要なことに、幼虫を水中に保持することによって、幼虫をポンプ輸送することができ、それによって、セクションからセクションへの輸送がより容易になる。
【0024】
本開示は、上に記載した方法を使用して昆虫又は昆虫の幼虫を処理するためのシステムであって、第1、第2、及び第3の処理タンクを備え、各タンクが、それぞれ第1、第2、及び第3の流体中に昆虫又は昆虫の幼虫を含むように構成されている、システムを更に包含する。第1の処理タンクは、第1の流体を40℃~105℃の温度で加熱及び/又は維持するための加熱手段を備える。第2の処理タンクは、第2の流体を冷却するための冷却手段を備え、第3の処理タンクは、第3の流体を40℃~105℃の温度で加熱及び/又は維持するための加熱手段を備える。システムは、昆虫又は昆虫の幼虫を、第1のタンクから第2のタンク及び第3のタンクに輸送するためのポンプを更に備える。システムは、連続プロセスにより、芽胞の数が減少した安全な製品を達成することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
上記実施形態及びそれに関連する利点に加えて、本発明を、添付の図面を参照して更に説明する。図面において、
図1】本開示の例示的な実施形態の基本的な構成を示す。
図2】本開示の例示的な実施形態の構成を示す。
【0026】
図1は、本開示による昆虫又は昆虫の幼虫を処理するための方法の基本的な構成を示す。図面において、方法は、第1の流体中、40℃~105℃の温度で行われる第1の加熱ステップS1を含む。好ましくは、第1の加熱ステップは75℃~90℃、より好ましくは80℃で行われる。100℃の温度の水を使用することが可能であり、冷却幼虫が追加されると温度は80℃前後まで低下する。幼虫は、芽胞形成を誘導するために80℃の温度で10分間保持され得る。その後、昆虫又は昆虫の幼虫は、冷却ステップS2において第2の流体中で冷却され、ステップS2の後、第2の加熱ステップS3において第3の流体中、40℃~105℃の温度で加熱される。好ましくは、第2の加熱ステップは80℃~95℃、より好ましくは90℃で行われる。第1の加熱ステップS1及び第2の加熱ステップS3の温度及び曝露時間は、同じであっても互いに異なっていてもよい。しかしながら、芽胞形成温度及び栄養細胞の不活化温度が同じである必要はない。
【0027】
流体は、その凝集状態のいずれかの水、又は好適なガスであり得る。第1及び第3の流体は、水又は蒸気であり得る。第2の流体は、冷却トンネルに導入される水又はガスであり得る。本開示では、死んでいるか又は生きている状態で処理され得る昆虫又は昆虫の幼虫を使用することができる。更に、「加熱ステップ」及び「調理ステップ」という用語は交換可能に使用され得る。
【0028】
方法は、90℃~110℃、好ましくは100℃の温度で行われる、第1の加熱ステップS1の前の初期加熱ステップを更に含んでもよい。この初期加熱ステップは、幼虫を迅速に不活化及び死滅させ、これは、動物福祉を考慮すると好ましい。
【0029】
冷却ステップS2は10℃~30℃、好ましくは20~25℃の温度で行われ得る。第1の加熱ステップS1は5~15分、好ましくは10分の持続時間を有し得る。冷却ステップS2は10~45分、好ましくは30分の持続時間を有し得る。第2の加熱ステップS3は10秒~5分、好ましくは10秒~1.5分の持続時間を有し得る。
【0030】
昆虫又は昆虫の幼虫、特に生きている昆虫又は昆虫の幼虫は、上記ステップS1、S2、S3のうちの少なくとも1つの際に拡散されてもよい。それによって、動物のクラスター形成が防止されることとなる。この目的のために、振動スプレッダ、撹拌機(昆虫が液体中に貯蔵される場合)、又は別の好適な手段を利用することができる。
【0031】
昆虫又は昆虫の幼虫は、第1の加熱ステップS1及び/又は冷却ステップS2及び/又は第2の加熱ステップS3後に流体から分離されてもよい。水の場合、水分離器が以下に記載されるように使用され得る。
【0032】
昆虫又は昆虫の幼虫は、第2の加熱ステップS3後にバッファータンクに貯蔵されてもよい。更なる昆虫又は昆虫の幼虫が第2の加熱ステップS3で追加されてもよい。昆虫又は昆虫の幼虫は、第1の加熱ステップと冷却ステップと第2の加熱ステップとの間でポンプによって、好ましくは流体と一緒に輸送されてもよい。あるいは、昇降機又はコンベアベルトが使用されてもよい。
【0033】
方法はまた、自動的に行われてもよい。
【0034】
図1を参照して説明される基本的な方法によれば、本開示は、好ましくは上に記載した方法を使用して昆虫又は昆虫の幼虫を処理するための、対応するシステムを包含する。システムは、第1、第2、及び第3の処理タンクであって、各タンクが、それぞれ第1、第2、及び第3の流体中に昆虫又は昆虫の幼虫を含むように構成されている、処理タンクを備える。第1の処理タンクは、第1の流体を40℃~105℃の温度で加熱及び/又は維持するための加熱手段を備える。第2の処理タンクは、第2の流体を冷却するための冷却手段を備える。第3の処理タンクは、第3の流体を40℃~105℃の温度で加熱及び/又は維持するための加熱手段を備える。システムは、昆虫又は昆虫の幼虫を、第1のタンクから第2のタンクに、及び第2のタンクから第3のタンクに輸送するためのポンプを更に備える。流体の上記温度範囲及び仕様並びに更なる構成は、等しく適用される。
【0035】
あるいは、システムは、第1の加熱ステップ、冷却ステップ、及び第2の加熱ステップに応じて温度が変更され得る1つのタンクを備えてもよい。
【0036】
更なる実施形態では、システムは、幼虫を流体又はガスと共に輸送中に加熱及び冷却する、パイプ又はベルトを備えてもよい。
【0037】
図2は、上記説明と合致する本開示の更なる例示的な構成を示す。最大の構成では、本開示は、死んでいる幼虫10及び/若しくは生きている幼虫11又は昆虫をそれぞれ使用して行われ得る第1の調理ステップ2(第1の加熱ステップS1)を含む、方法、及び対応するシステムの手段を包含する。本例では、水が流体として使用される。第1の調理ステップ2は、死滅ステップとして作用することもでき、幼虫が塊ではなく均一になることを保証するために、拡散デバイスが必要とされる。
【0038】
調理後、幼虫は、冷浴(cool bath)3(冷却ステップS2)において冷却され、水分離器4にポンプ輸送31され得、及び/又は他の手段によって水分離器4に提供され得る。特に、幼虫は、水分離器4まで冷却流体に浮遊していてもよく、幼虫を破壊することなく輸送することができる重力又はスクリュー若しくは昇降機などの機械的手段を使用して移動されてもよい。任意選択で、水は、ポンプ(図示していない)によって水分離器4から冷浴3に再循環されてもよい。冷却浴(cooling bath)3は、昆虫又は昆虫の幼虫が変色しないことに寄与する。
【0039】
次いで、幼虫は、調理ステップ5(第2の加熱ステップS3)に提供され、最終調理済み幼虫6が得られる。更なる生きている幼虫11若しくは死んでいる幼虫10が調理ステップ5に追加されてもよく、あるいは、プロセスが調理ステップ5から、すなわち前処理なしに開始されてもよい。
【0040】
次いで、調理済み幼虫6が、空気、水のミスト又は別の好適な流体によって冷却7され、最終製品8が得られてもよい。調理済み幼虫6の一部又は調理済み幼虫6の全部が、バッファータンク61に輸送されてもよい。幼虫は、水中、別の好適な流体中、又は流体を添加せずに貯蔵され得る。幼虫又は水と一緒になった幼虫を水分離器63に輸送するためにポンプ62が設けられてもよい。任意選択で、流体は、ポンプ(図示していない)によってバッファータンク61に再循環されてもよい。
【0041】
更なる調理ステップ、すなわち第1の調理ステップ2(S1)の前及び/又は後の調理ステップもまた、最後の調理ステップ5(S3)と同様の温度で、但しより長い期間にわたって行われ得る。上で説明されたような図2の流れ図は、昆虫原料に見出される一般的な病原体であるbacillus cereusの良好な根絶に必要とされる第2の調理ステップ5及び冷却ステップ7を示す。これらのステップのいずれかにおける時間は、例えば、ステップ2(S1)については80℃で10分、ステップ3(S2)については25℃で30分、及びステップ5(S3)については75℃で3分であり得る。
【0042】
しかしながら、通常、冷却浴における45分より長い時間は、病原体の再増殖、及び芽胞が消失した(desporulated)病原体による(耐熱性)毒素の産生をもたらし得る。40℃~75℃の調理温度もまた使用され得るが、対応する調理時間も増加させる必要がある。75℃を超える温度は、より短い調理時間をもたらす。
【0043】
ポンプ、バッファー、及び水戻りループは全て、異なるシナリオにおいて使用することができる任意選択のステップである。例えば、図2に示される完全なシステムでは、幼虫は、冷却浴3の後にフォークリフトの島(forklift isle)をわたってポンプ輸送され得る。次いで、最後のバッファー61により、更なる処理ステップを連続ではなくバッチとして行うことが可能になる。
【0044】
【表1】
【0045】
したがって、1ステップ調理構成は、調理5され(すなわち前処理2、3、31、4を伴わない)、冷却7されている、死んでいる幼虫10を利用して、最終製品8が得られる。
【0046】
この例に従った2段階ステップ構成では、第1の調理ステップ2において調理され、冷浴3において冷却されている、死んでいる幼虫10を使用し、その後、水を水分離器4において分離する。更に、幼虫を第2の調理ステップ5、すなわちS3、及びその後の冷却7に曝露する。
【0047】
幼虫の死滅を伴う2ステップ調理構成は、生きている幼虫11を利用し、振動ふるいなどの振動スプレッダによってクラスター形成が防止される。幼虫を調理ステップ2において死滅させた後、冷却3し、冷水から分離4し、第2の時間にわたって加熱5し、その後冷却7して、最終製品8が得られる。
【0048】
振動スプレッダが、場合により配置され得、その後、幼虫が3つの主要なステップ(第1の調理ステップ、冷却ステップ、第2の調理ステップ)のうちの1つに加えられる。特に、生きている幼虫の場合、振動スプレッダは、可能な限り迅速な幼虫の不活性化が行われることを保証する。
【0049】
幼虫のポンプ輸送を伴う2ステップ調理構成は、調理ステップ2、冷却3、水分離器4への任意選択の水の再循環を伴う幼虫のポンプ輸送31、その後の第2の加熱ステップ5及びその後の冷却7を含む。
【0050】
幼虫のバッファーを伴う2ステップ調理構成は、第1の調理ステップ2、すなわちS1、冷浴3、すなわちS2、水分離4、及び更なる調理ステップ5、すなわちS3を含む。次いで、調理済み幼虫6をバッファータンク61に貯蔵し、ポンプ62によって水分離器63にポンプ輸送して、製品8が得られる。任意選択で、水は再循環されてもよい。
【0051】
しかしながら、他の構成も可能であり得る。上の表は限定的なものと見なされるべきではない。
【0052】
本開示によれば、病原体を効果的に排除し、病原体の増殖を防止すると同時に、色などの食料品の特性を保存する、昆虫又は昆虫の幼虫の処理のための方法及びシステムが提供される。したがって、1ステップ加熱プロセスでは制御することが通常困難な病原体の耐性形態、すなわち芽胞を排除することが可能である。更に、本開示は、概ね即座の昆虫死滅ステップを提供し、これは、ひいては、動物福祉の配慮に沿う。方法及びシステムはまた、連続的に又はバッファータンクを使用して行うことができ、したがって連続運転操作又はバッチ運転操作の両方での生産を可能にする。
【0053】
他の態様、特徴、及び利点は、上記の概要、並びに図面及び特許請求の範囲を含む以下の記載から明らかになるであろう。
【0054】
本発明を、図面及び前述の記載において詳細に図示及び記載したが、そのような図示及び記載は、説明的又は例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。当業者によって以下の特許請求の範囲の範囲内で変更及び修正が行われてもよいことは理解されるであろう。特に、本発明は、上記及び下記の種々の実施形態からの特徴の任意の組合せによる更なる実施形態を包含する。
【0055】
更に、特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語は、他の要素もステップも除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。単一のユニットが、特許請求の範囲に記載されているいくつかの特徴の機能を果たし得る。属性又は値に関連する、「本質的に」、「約」、「およそ」などの用語もまた、特に、それぞれ、その属性を正確に又はその値を正確に規定する。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫又は昆虫の幼虫を処理するための方法であって、
前記昆虫又は昆虫の幼虫を第1の流体中、40℃~105℃の温度で加熱する第1の加熱ステップと、
前記昆虫又は昆虫の幼虫を第2の流体中で冷却する冷却ステップと、
前記昆虫又は昆虫の幼虫を第3の流体中、40℃~105℃の温度で加熱する第2の加熱ステップであって、前記冷却ステップ後に行われる、第2の加熱ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の流体、前記第2の流体、及び前記第3の流体のうちの少なくとも1つが水又は蒸気である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の加熱ステップ及び/又は前記第2の加熱ステップが75℃~105℃の温度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却ステップが10℃~30℃、好ましくは20~25℃の温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の加熱ステップが5~15分、好ましくは8~12分の持続時間を有する、及び/又は
前記冷却ステップが10~45分、好ましくは25~35分の持続時間を有する、及び/又は
前記第2の加熱ステップが10秒~5分、好ましくは10秒~1.5分の持続時間を有する、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
自動的に行われる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の加熱ステップ及び/又は前記第2の加熱ステップ及び/又は前記冷却ステップ中に前記昆虫又は昆虫の幼虫を拡散させることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の加熱ステップ及び/又は前記冷却ステップ及び/又は前記第2の加熱ステップ後に前記昆虫又は昆虫の幼虫を前記流体から分離することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の加熱ステップ後に前記昆虫又は昆虫の幼虫をバッファータンクに貯蔵することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
更なる昆虫又は昆虫の幼虫が前記第2の加熱ステップで追加される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記昆虫又は昆虫の幼虫が、前記第1の加熱ステップと前記冷却ステップと前記第2の加熱ステップとの間でポンプによって、好ましくは前記流体と一緒に輸送される、請求項に記載の方法。
【請求項12】
生きているか又は死んでいる昆虫又は昆虫の幼虫を用いて行われる、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が前記第1の加熱ステップの前に追加の加熱ステップを更に含み、好ましくは前記加熱ステップが90℃~110℃の温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記昆虫又は昆虫の幼虫が、処理時間の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%の間、水中に保持される、請求項に記載の方法。
【請求項15】
請求項に記載の方法を使用して昆虫又は昆虫の幼虫を処理するためのシステムであって、第1、第2、及び第3の処理タンクを備え、各タンクが、それぞれ第1、第2、及び第3の流体中に昆虫又は昆虫の幼虫を含むように構成されており、
前記第1の処理タンクが、前記第1の流体を40℃~105℃の温度で加熱及び/又は維持するための加熱手段を備え、
前記第2の処理タンクが、前記第2の流体を冷却するための冷却手段を備え、
前記第3の処理タンクが、前記第3の流体を40℃~105℃の温度で加熱及び/又は維持するための加熱手段を備え、
前記システムが、前記昆虫又は昆虫の幼虫を、前記第1のタンクから前記第2のタンク及び前記第3のタンクに輸送するためのポンプを更に備える、システム。
【国際調査報告】