IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイヘ バイオファーマ カンパニー,リミティドの特許一覧

特表2025-503061ホスホン酸系化合物及びそのプロドラッグ、これらの調製方法及び使用
<>
  • 特表-ホスホン酸系化合物及びそのプロドラッグ、これらの調製方法及び使用 図1
  • 特表-ホスホン酸系化合物及びそのプロドラッグ、これらの調製方法及び使用 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ホスホン酸系化合物及びそのプロドラッグ、これらの調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6561 20060101AFI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C07F9/6561 Z CSP
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P31/00
A61P35/04
A61P35/02
A61P31/22
A61P31/20
A61P31/12
A61P31/18
A61K31/675
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543219
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 CN2023073033
(87)【国際公開番号】W WO2023138637
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202210076676.3
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524091283
【氏名又は名称】ハイヘ バイオファーマ カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】カオ シャンユン
(72)【発明者】
【氏名】ホウ インチエ
(72)【発明者】
【氏名】リー チンチン
(72)【発明者】
【氏名】チャン チャオポー
(72)【発明者】
【氏名】シュイ イェンシアオ
(72)【発明者】
【氏名】トゥー ワンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ ピン
(72)【発明者】
【氏名】チャン イーシアン
(72)【発明者】
【氏名】リー ローピン
【テーマコード(参考)】
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA38
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB31
4C086ZB33
4C086ZC41
4C086ZC55
4H050AA01
4H050AB28
4H050AB29
(57)【要約】
本発明は、ホスホン酸系化合物及びそのプロドラッグ、これらの調製方法及び使用を提供する。具体的には、本発明は、式(I)若しくは式(I-A)的化合物を提供し、式(I-A)の化合物は、式(I)化合物のプロドラッグ形態である。実験により、本発明のホスホン酸系化合物は、良好なENPP1キナーゼ阻害活性を有し、ENPP1関連疾患の治療剤として使用することができ、また、上記ホスホン酸系化合物は、生体内での代謝安定性が良好であることが証明された。さらに、本発明によるホスホネート系又はアミド系プロドラッグ化合物は、経口バイオアベイラビリティが高いため、ホスホン酸系原薬化合物が経口投与できないという欠点を克服することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物若しくは水和物。
【化1】
(式中、
は、単結合又は二重結合であり、
は、N、CR又は結合であり、
は、N、NR又はCRであり、
は、N、NR、-C(O)又はCRであり、
は、N、NR、-C(O)又はCRであり、
は、N又はCRであり、
Xは、N又はCRであり、
ただし、X及びXは、同時にNではなく、且つX、X、X、及びXのうちの少なくとも1つは、独立して、N又はNRであり、n=2、3又は4であり、
、R、R、及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OR、NO、NR、C~Cアルキル、及びC~Cハロアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OR、NO、NR、及びC~Cアルキルから選択され、ここで、前記アルキルは、任意選択でハロゲンによって置換されており、
Yは、O、S、NR又はCRであり、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
mは、1、2又は3であり、
環Aは、C~C10アリール及び5-~10-員ヘテロアリールから選択され、ここで、環Aは、任意選択で、ハロゲン、CN、OH、NO、NR、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、及びC~Cハロアルキルから独立して選択される置換基によって1回又は複数回置換されており、
ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素、及び任意選択でハロゲンによって置換されたC~Cアルキルから選択され、
及びLは、各々独立して、NH又はOであり、好ましくは、L及びLは、両方ともOであり、
及びWは、各々独立して、非置換又はハロゲンによって置換されたC~C10アリール、-CHOC(O)R、-CHOC(O)OR、-CHC(CHC(O)OR、-CH(CH)C(O)OR、及び-CHC(CHC(O)ORから選択され、ここで、Rは、C~Cアルキルである。)
【請求項2】
【化2】
は、
【化3】
好ましくは、
【化4】
は、
【化5】
より好ましくは、
【化6】
は、
【化7】
から選択され、
さらに好ましくは、
【化8】
【化9】
【化10】
好ましくは、
【化11】
は、
【化12】
ここで、各置換基は、請求項1で定義された通りである、請求項1に記載の式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物若しくは水和物。
【請求項3】
前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ式(II)若しくは式(II-A)で示される化合物である、請求項1又は2に記載の式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物若しくは水和物。
【化13】
(ここで、式(II)若しくは(II-A)において、
は、N又はCRであり、
は、N又はCRであり、
は、N、NR、-C(O)又はCRであり、
は、N、NR、-C(O)又はCRであり、
は、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、
ただし、X及びXは、同時にNではなく、且つX、X、X、及びXのうちの少なくとも1つは、独立して、N又はNRであり、n=3又は4であり、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、ここで、前記アルキルは、各々任意選択で0~3個のハロゲンによって置換されており、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、及びC~Cアルコキシから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、及びC~Cアルキルから選択され、
Yは、O、S、NR又はCRであり、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
環A、m、L、L、W、及びWの定義は、請求項1に記載の通りである。)
【請求項4】
前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ式(III)若しくは式(III-A)で示される化合物である、請求項1又は2に記載の式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物若しくは水和物。
【化14】
(ここで、式(III)若しくは(III-A)において、
は、単結合又は二重結合であり、
は、N、NR又はCRであり、Xは、N、NR又はCRであり、Xは、N、NR又はCRであり、
は、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、
ただし、X及びXは、同時にNではなく、且つX、X、及びXのうちの少なくとも1つは、独立して、N又はNRであり、n=2、3又は4であり、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、及びC~Cハロアルキルから選択され、
、R、及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cハロアルキルから選択され、
Yは、O、S、NR又はCRであり、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
環A、m、L、L、W、及びWの定義は、請求項1に記載の通りである。)
【請求項5】
前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ式(IV)若しくは式(IV-A)で示される化合物である、請求項1又は2に記載の式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物若しくは水和物。
【化15】
(ここで、式(IV)若しくは(IV-A)において、
は、単結合又は二重結合であり、
は、N、CR又は結合であり、Xは、N、NR又はCRであり、Xは、N、NR又はCRであり、
は、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、ただし、X及びXは、同時にNではなく、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、及びC~Cハロアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、ハロゲン、OH、及びC~Cアルキルから選択され、
Yは、O、S、NR又はCRであり、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
環A、m、L、L、W、及びWの定義は、請求項1に記載の通りである。)
【請求項6】
前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ式(V)若しくは式(V-A)で示される化合物であり、又は
前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ式(VI)若しくは式(VI-A)で示される化合物であり、又は
前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ式(VII)若しくは式(VII-A)で示される化合物であり、又は
前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ式(VIII)若しくは式(VIII-A)で示される化合物であり、又は
前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ式(IX)若しくは式(IX-A)で示される化合物である、請求項1又は2に記載の式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物若しくは水和物。
【化16】
(ここで、式(V)若しくは(V-A)において、
は、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、且つX及びXは、同時にNではなく、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択され、
、R、及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、
Yは、O、S、NR又はCRであり、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は、請求項1に記載の通りである。)
【化17】
(ここで、式(VI)若しくは(VI-A)において、
は、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、且つX及びXは、同時にNではなく、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、
Yは、O、S、NR又はCRであり、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は、請求項1に記載の通りである。)
【化18】
(ここで、式(VII)若しくは(VII-A)において、
Yは、O、S、NR又はCRであり、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
は、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は、請求項1に記載の通りである。)
【化19】
(ここで、式(VIII)若しくは(VIII-A)において、
Yは、O、S、NR又はCRであり、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は、請求項1に記載の通りである。)
【化20】
(ここで、式(IX)若しくは(IX-A)において、
Yは、O、S、NR又はCRであり、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は、請求項1に記載の通りである。)
【請求項7】
前記式(I)化合物は、以下の化合物から選択され、
【表1-1】
【表1-2】
前記式(I-A)化合物は、以下の化合物から選択される
【表2】
請求項1に記載の式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物若しくは水和物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の式(I)若しくは式(I-A)化合物、その薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒合物若しくは水合物のうちの1つ以上を有効成分とし、及び任意に薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤、を含む医薬組成物。
【請求項9】
ENPP1媒介疾患又は障害により引き起こされる患者の障害又は疾患を予防、治療、又は軽減する薬物の調製における、請求項1~7のいずれか1項に記載の式(I)若しくは式(I-A)化合物、その薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒合物若しくは水合物、又は請求項8に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の式(I)若しくは式(I-A)化合物、その薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒合物若しくは水合物のうちの1つ以上、又は請求項8に記載の医薬組成物の治療有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む、ENPP1媒介疾患又は障害を治療又は予防する方法。
【請求項11】
前記ENPP1媒介疾患又は障害は、癌、又は感染性疾患又は障害であり、
さらに好ましくは、前記癌は、再発癌若しくは難治性癌、転移癌から選択される、例えば、乳癌、肺癌、神経膠芽細胞腫、脳癌と脊椎癌、頭頸部癌、皮膚癌、生殖器系癌、消化器系癌、食道癌、上咽頭癌、膵臓癌、直腸癌、肝細胞癌、胆管癌、胆嚢癌、結腸癌、多発性骨髄腫、腎臓癌と膀胱癌、骨癌、悪性中皮腫、肉腫、リンパ腫、腺癌、甲状腺癌、心臓腫瘍、生殖細胞腫瘍、悪性神経内分泌腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍、軟部肉腫、正中線癌、及び不明な原発癌の実体腫瘍から選択される、又は血液悪性腫瘍、特に白血病、リンパ腫、又は骨髄腫であり、
さらに好ましくは、前記感染症若又は障害感染性疾患又は障害は、単純ヘルペスウイルス感染、ワクシニアウイルス感染、アデノウイルス感染、ヒトパピローマウイルス感染、B型肝炎ウイルス感染、D型肝炎ウイルス感染、ヒト免疫不全ウイルス感染、ヒトサイトメガロウイルス感染、デング熱ウイルス感染、エボラウイルス感染、マールブルグウイルス感染、ジカウイルス感染、リステリア菌感染、結核菌感染、フランシセラ・ノビシダ感染、レジオネラ・ニューモフィラ感染、クラミジア・トラコマチス感染、肺炎連鎖球菌感染、淋菌感染から選択される、請求項9に記載の使用又は請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬化学の分野に属し、具体的には、ホスホン酸系化合物及びそのプロドラッグ、これらの調製方法及びENPP1阻害剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
病原体に対する体の防御の最前線として、体の免疫系は腫瘍細胞と戦う上で重要な役割を果たす。STING(Stimulator of Interferon Gene)は378個のアミノ酸からなるインターフェロン遺伝子刺激因子で、腫瘍細胞への免疫に重要な役割を果たしている。STINGは、cGAMP(cyclic GMP-AMP synthase)に結合することによって活性化され、さらにTANK結合キナーゼ1(TANK-binding kinase 1、TBK1)をリクルートし、インターフェロン調節因子3(Interferon Regulatory Factor 3、IRF3)のリン酸化を引き起こす。リン酸化されたIRF3はI型インターフェロン(type I interferon、IFN)と他のサイトカインを産生し、これらのサイトカインはIFNと連携して、腫瘍細胞や感染症に対する体の適応免疫系の免疫反応を引き起こす。
【0003】
エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(Ectonucleotide pyrophosphatase/phosphodi-esterase 1、ENPP1)はENPPファミリーの7つの酵素のうちの1つであり、II型膜貫通糖タンパク質である。研究により、ENPP1は、高い加水分解性を持ち、リン酸ジエステル結合、ピロリン酸結合を含む多くの作用物を分解することができ、ATPもENPP1の作用する主要な標的の一つであることが明らかになった。ENPP1は、ATPをAMPとPPiに加水分解するだけでなく、cGAMPも加水分解し、ヒトの体内のcGAMPの数を減少させ、STINGの活性を低下させる。そのため、ENPP1の活性は、STINGを介したヒトの免疫系の抗腫瘍及び抗感染症の免疫応答を阻害し、ENPP1の活性の阻害は、cGAMPの合成とSTINGの活性上昇に寄与し、それによって、腫瘍や感染症に対する体の免疫系の抵抗力を向上させる。さらに、ENPP1はヒト乳腺腫瘍で通常より更に際立った発現があることが実証され、これは、ENPP1が乳癌の潜在的な予測マーカーであることを示しただけでなく、その抗癌薬の標的としての可能性と信頼性を際立たせた。
【0004】
腫瘍におけるENPP1の顕著な作用に加えて、研究により、ENPP1の発現は細菌やウイルスによる多くの感染症と関連があることが示された。したがって、ENPP1は感染症の治療にも有用である。
【0005】
癌患者には複数の治療の選択肢があるが、有効かつ安全な治療剤及び併用療法におけるその好ましい適用が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、式(I)若しくは式(I-A)化合物、その薬学的に許容される塩、その医薬組成物、及びその組み合わせを提供する。発明者らは、前記式(I)のホスホン酸系化合物が良好なENPP1阻害剤であることを意外に発見した。発明者又らはまた、驚くべきことに、本開示の化合物が良好な物理的及び化学的安定性、良好なバイオアベイラビリティー、特にホスホン酸エステル系化合物を有することを意外にも発見した。本開示のホスホン酸系原薬化合物は、良好な活性と高い選択性を有する優れたENPP1阻害剤であるが、極性が高く、経口投与には適さない。一方、本開示のホスホネート系又はアミド系プロドラッグ化合物は、生体内で迅速に代謝されて、原薬化合物を生成することができる。したがって、本開示のホスホネート系若しくはアミド系プロドラッグ化合物又はその薬学的に許容される塩は、経口製剤などの広範囲の製剤の有効成分として使用され、体内に吸収された後、有効成分原薬化合物が速やかに生成されるため、本開示のホスホネート系若しくはアミド系プロドラッグ化合物又はその薬学的に許容される塩は、有効成分化合物のプロドラッグとして有用である。ホスホン酸系有効成分化合物をホスホネート系又はアミド系プロドラッグ化合物に調製することにより、原薬の物理的及び化学的特性が改善され、薬物の脂溶性、経口投与性及びバイオアベイラビリティが改善され、副作用が低下し、安全性がより高くなる。
【0007】
本開示は、さらに、有効量のENPP1阻害剤を、これを必要とする個体に投与することを含む、ENPP1媒介疾患又は障害を治療、予防、又は改善する方法を提供する。
【0008】
具体的には、本開示は、式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物を提供する、
【0009】
【化1】
(ただし、X、X、X、X、X、X、W、W、Y、L、L、m、及び環Aの変数は、それぞれ本明細書で定義された通りである。この化合物の立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、若しくは水合物は含まれており、これらは、ENPP1媒介疾患又は障害、特に癌、又は感染症若しくは障害の治療又は予防に有用である。)
【0010】
本開示はまた、本開示の化合物を調製する方法、本開示の化合物を調製する中間体、及び前記中間体の調製方法を提供する。
【0011】
本開示はさらに、少なくとも1種の本開示の化合物、その立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物及び水合物から選択され、を含む組成物を提供する。
【0012】
本開示はさらに、治療有効量の、少なくとも1種の本開示の化合物、その立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物及び水合物から選択されと、1種又は複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
一実施態様では、本開示は、治療有効量の、少なくとも1種の本開示の化合物、その立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物及び水合物から選択され、を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
別の実施態様では、本開示は、治療有効量の、少なくとも1種の本開示の化合物、その立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物及び水合物から選択されと、1種又は複数種の他の治療剤と、を含む、組み合わせ、特に薬物組み合わせを提供する。
【0015】
本開示の化合物は、単独で、本開示の他の化合物と組み合わせて、又は1種又は複数種、好ましくは1種又は2種の他の物質と組み合わせて、同時に又は順番に使用される。
【0016】
本開示の化合物は、ENPP1阻害剤であり、STING活性を生体内で調整することができ、それによって、ENPP1媒介疾患又は障害、特に癌、又は感染症若しくは障害を治療又は予防することに用いられ得る。したがって、本開示の化合物は、ENPP1活性の選択的細胞外阻害を提供して、cGAMPの細胞外レベルを増加させ、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路を活性化することができる。例えば、被験者におけるSTING媒介応答を増強するための本開示の化合物の使用、及び本開示の化合物を被験者における免疫応答の調節に用いる方法である。
【0017】
本開示の化合物は治療法に用いられ得る。
【0018】
本開示の化合物は、ENPP1媒介疾患又は障害、特に癌、又は感染症若しくは障害を治療又は予防するための薬剤又は薬物の調製に用いられ得る。
【0019】
本開示はさらに、治療有効量のENPP1阻害剤、例えば本開示の化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物若しくは水合物を、これを必要とする個体に投与することを含む、個体におけるENPP1受容体活性を阻害する方法に関する。
【0020】
本開示の一実施態様では、本開示は、有効量の第1治療剤及び任意選択の第2治療剤を、これを必要とする患者に投与することを含み、前記第1治療剤は、1種又は複数種の本開示の化合物、その立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、及び水合物であり、前記第2治療剤は、1種又は複数種の他の治療剤である、ENPP1媒介疾患又は障害を治療又は予防する方法を提供する。
【0021】
本開示の別の実施態様では、本開示は、治療有効量の、1種又は複数種の本開示の化合物、その立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、及び水合物を個体に投与することを含む、ENPP1媒介疾患又は障害、例えば癌、又は感染症若しくは病症を治療又は予防する方法に関する。
【0022】
本開示の好ましい方法は、特定の癌を治療し、このような癌には、乳癌、肺癌、神経膠芽細胞腫、脳癌と脊椎癌、頭頸部癌、皮膚癌、生殖器系癌、消化器系癌、食道癌、上咽頭癌、膵臓癌、直腸癌、肝細胞癌、胆管癌、胆嚢癌、結腸癌、多発性骨髄腫、腎臓癌と膀胱癌、骨癌、悪性中皮腫、肉腫、リンパ腫、腺癌、甲状腺癌、心臓腫瘍、生殖細胞腫瘍、悪性神経内分泌腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍、軟部肉腫、正中線癌、及び不明な原発癌が含まれる。
【0023】
本開示の別の好ましい方法は、ENPP1媒介感染症を治療し、この感染症には、単純ヘルペスウイルス感染、ワクシニアウイルス感染、アデノウイルス感染、ヒトパピローマウイルス感染、B型肝炎ウイルス感染、D型肝炎ウイルス感染、ヒト免疫不全ウイルス感染、ヒトサイトメガロウイルス感染、デング熱ウイルス感染、エボラウイルス感染、マールブルグウイルス感染、ジカウイルス感染、リステリア菌感染、結核菌感染、フランシセラ・ノビシダ感染、レジオネラ・ニューモフィラ感染、クラミジア・トラコマチス感染、肺炎連鎖球菌感染、淋菌感染が含まれる。
【0024】
また、本開示は、上記で定義された、1種又は複数種の本開示の化合物、その立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物及び水合物、又はその医薬組成物と、1種又は複数種の他の活性剤とを、抗癌治療法に同時に、別々に、又は順番に使用する併用製剤を含む製品提供する。
【0025】
実施態様
【0026】
具体的には、本開示は、以下の実施態様を提供する。
【0027】
一態様では、本開示は、下記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物を提供する。
【0028】
【化2】
(又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物若しくは水合物、式中、
は、単結合又は二重結合であり、
は、N、CR又は結合であり、
は、N、NR又はCRであり、
は、N、NR、-C(O)又はCRであり、
は、N、NR、-C(O)又はCRであり、
は、N又はCRであり、
Xは、N又はCRであり、
ただし、X及びXは、同時にNではなく、且つX、X、X、及びXのうちの少なくとも1つは、独立して、N、又は(許可する場合)NRであり、n=2、3又は4であり、
、R、R、及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OR、NO、NR、C~Cアルキル、及びC~Cハロアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OR、NO、NR、C~Cアルキル、及びC~Cシクロアルキルから選択され、ここで、前記アルキル、及びシクロアルキルは、任意選択でハロゲンによって置換されており、
Yは、O、S、NR又はCRであり、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素、C~Cアルキル、及びC~Cシクロアルキルから選択され、ここで、前記アルキル、及びシクロアルキルは、それぞれ任意選択でハロゲンによって置換されており、
mは、1、2又は3であり、
環Aは、C~C10アリール及び5-~10-員ヘテロアリールから選択され、ここで、環Aは、任意選択で、ハロゲン、CN、OH、NO、NR、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cシクロアルキル、4-~7-員ヘテロシクロアルキル、C~C10アリール及び5-~10-員ヘテロアリール、並びにC~Cハロアルキルから独立して選択される置換基によって1回又は複数回置換されており、
ここで、R、R、及びRは、各々独立して、水素、C~Cアルキル、及びC~Cシクロアルキルから選択され、ここで、前記アルキル、及びシクロアルキルは、それぞれ任意選択でハロゲンによって置換されており、
及びLは、各々独立して、NH又はOであり、好ましくは、L及びLは、両方ともにOであり、
及びWは、各々独立して、水素、C~C10アルキル、C~C10アリール、-CHOC(O)R、-CHOC(O)OR、-CHC(CHC(O)OR、-CH(CH)C(O)OR、及び-CHC(CHC(O)ORから選択され、ここで、前記アルキルは、任意選択でハロゲンによって置換されており、RはC~Cアルキルである、
本明細書において、Rが記載される場合、Xに対してR、Xに対してR、Xに対してR、Xに対してRを表す。)
【0029】
いくつかの具体的な実施態様では、R及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、ここで、前記アルキル、及びアルコキシは、それぞれ、任意選択で0~3個のハロゲンによって置換されている。
【0030】
好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、ここで、前記アルキル、及びアルコキシは、それぞれ、任意選択で0~3個のハロゲンによって置換されており、
より好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、
最も好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、OH、CN、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、及びエトキシから選択される。
【0031】
いくつかの具体的な実施態様では、R及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NH、CF、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択される。
【0032】
好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、
より好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素、F、Cl、CN、OH、NH、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、及びエトキシから選択され、
最も好ましくは、Rは、水素、F、及びClから選択され、Rは、水素、F、Cl、メトキシ、及びエトキシから選択される。
【0033】
いくつかの具体的な実施態様では、R及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、-NHCH、-N(CH、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、ここで、前記アルキル、シクロアルキル、及びアルコキシは、それぞれ、任意選択で0~3個のハロゲンによって置換されている。
【0034】
好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルコキシ、及びC~Cハロアルキルから選択され、
より好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素、F、Cl、CN、OH、NO、NH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、2,2-ジフルオロメチル、1,2-ジフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、及びシクロプロピルから選択され、
最も好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素、F、Cl、OH、メチル、及びエチルから選択される。
【0035】
いくつかの具体的な実施態様では、R、R、R、及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択される。
【0036】
好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、OH、及びC~Cアルコキシから選択され、R及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、OH、及びC~Cアルキルから選択される。
【0037】
いくつかの具体的な実施態様では、X、X、X、及びXのうちの少なくとも1つは、独立して、N、又は(許可する場合)NRであり、n=2、3又は4であり、例えば
はNであり、又はXは、N、及びNRから選択され、あるいは、Xは、N、及びNRから選択され、又はXは、N、及びNRから選択される。
【0038】
好ましくは、Xは、N又はNRであり、あるいは、Xは、N又はNRであり、より好ましくは、Xは、Nであり、あるいは、XはNである。
【0039】
いくつかの具体的な実施態様では、XはNであり、XはCRであり、好ましくは、XはNであり、XはCRであり、且つXはCRであり、さらに好ましくは、XはNであり、XはCRであり、XはCRであり、且つXはCRである。
【0040】
いくつかの具体的な実施態様では、XはNであり、XはCRであり、好ましくは、XはNであり、XはCRであり、且つXはCRであり、さらに好ましくは、XはNであり、XはCRであり、XはCRであり、且つXはCRである。
【0041】
いくつかの具体的な実施態様では、XはNRであり、好ましくは、XはNRであり、且つXは-C(O)であり、より好ましくは、XはNRであり、Xは-C(O)であり、且つXはCRであり、XはCRである。
【0042】
いくつかの具体的な実施態様では、XはNRであり、好ましくは、XはNRであり、且つXは-C(O)であり、より好ましくは、XはNRであり、Xは-C(O)であり、且つXはCRであり、XはCRである。
【0043】
いくつかの具体的な実施態様では、X、X、X、及びXのうちの少なくとも1つは、独立して、Nであり、例えば
はNであり、又はXはNであり、又はXはNであり、又はXはNであり、
好ましくは、XはNであり、又はXはNであり、さらに好ましくは、XはNであり、
より好ましくは、XはNであり、且つXはNRであり、又はXはNであり、且つXはNRである。
【0044】
いくつかの具体的な実施態様では、X、X、X、及びXのうちの1つのみはNであり、例えば
はNであり、XはNR又はCRであり、XはNR又はCRであり、XはNR又はCRであり、又は
は、CR又は結合であり、XはNであり、Xは、NR又はCRであり、XはNR又はCRであり、又は
は、CR又は結合であり、XはNであり、Xは、NR又はCRであり、XはNR又はCRであり、又は
は、CR又は結合であり、XはNであり、Xは、NR又はCRであり、XはNR又はCRである。
【0045】
いくつかの具体的な実施態様では、X、X、X、及びXのうち多くとも1つは、独立して、N、又は(許可する場合)NRであり、n=2、3又は4であり、例えば
はNであり、XはCRであり、XはCRであり、XはCRであり、又は
は、CR又は結合であり、Xは、N又はNRであり、XはCRであり、XはCRであり、又は
は、CR又は結合であり、Xは、N又はNRであり、XはCRであり、XはCRであり、又は
は、CR又は結合であり、Xは、N又はNRであり、XはCRであり、Xは、CRである。
【0046】
好ましくは、XはNであり、XはCRであり、XはCRであり、XはCRであり、又は
は、CR又は結合であり、XはNであり、XはCRであり、XはCRであり、又は
は、CR又は結合であり、XはNであり、XはCRであり、XはCRであり、又は
は、CR又は結合であり、XはNであり、XはCRであり、XはCRである。
【0047】
いくつかの具体的な実施態様では、X及びXのうちの多くとも1つはNであり、例えば、XはNであり、且つXはCRであり、又はXはCRであり、且つXはNであり、又はXはCRであり、且つXはCRであり、
例えば、
【0048】
【化3】
は、
【0049】
【化4】
好ましくは、XはCRであり、且つXはCRである。
【0050】
いくつかの具体的な実施態様では、X、X、X、及びXのうちの少なくとも1つは、独立して、N又は(許可する場合)NRであり、n=2、3又は4であり、且つX、及びXのうちの多くとも1つはNであり、例えば
【0051】
【化5】
は、
【0052】
【化6】
好ましくは、
【0053】
【化7】
選択され、より好ましくは、
【0054】
【化8】
【0055】
いくつかの具体的な実施態様では、Xは、N又はCRであり、例えば、前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ、下記式(II)若しくは式(II-A)で示される化合物である。
【0056】
【化9】
(式中、
は、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、
は、N、NR、-C(O)又はCRであり、
は、N、NR、-C(O)又はCRであり、
は、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、
ただし、X及びXは、同時にNではなく、且つX、X、X、及びXのうちの少なくとも1つは、独立して、N又はNRであり、n=3又は4であり、
Yは、O、S、NR又はCRであり、R、R、及びRは、各々独立して、水素、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、ここで、前記アルキルは、各々任意選択で0~3個のハロゲンによって置換されており、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、及びC~Cアルコキシから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、及びC~Cアルキルから選択され、
環A、m、L、L、W、及びWの定義は前記の通りである。)
【0057】
いくつかの具体的な実施態様では、式(II)若しくは式(II-A)において、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、及びC~Cアルコキシから選択され、
、Rは、各々独立して、水素、ハロゲン、OH、及びC~Cアルキルから選択され、
、Rは、各々独立して、水素、ハロゲン、OH、CN、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択される。
【0058】
いくつかの具体的な実施態様では、式(II)若しくは式(II-A)において、
は、水素又はハロゲンであり、Rは、水素、ハロゲン、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、及びハロゲンから選択され、Rは、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択される。
【0059】
いくつかの具体的な実施態様では、式(II)若しくは式(II-A)において、
は-C(O)であり、XはNRであり、且つXはCRであり、XはCRであり、又は
はNRであり、Xは-C(O)であり、且つXはCRであり、XはCRであり、R及びRは、各々独立して、C~Cアルキルから選択される。
【0060】
いくつかの具体的な実施態様では、式(I)において、Xは結合であり、例えば、前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ、以下の式(III)若しくは式(III-A)で示される化合物である。
【0061】
【化10】
(式中、
は、単結合又は二重結合であり、
は、N、NR又はCRであり、Xは、N、NR又はCRであり、Xは、N、NR又はCRであり、
は、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、
ただし、X及びXは、同時にNではなく、且つX、X、及びXのうちの少なくとも1つは、N又はNRであり、n=2、3又は4であり、
Yは、O、S、NR又はCRであり、R、R、及びRは、各々独立して、水素、及びC~Cアルキルから選択され、
、Rは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、及びC~Cハロアルキルから選択され、
、R、及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cハロアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は前記の通りである。)
【0062】
いくつかの具体的な実施態様では、式(III)及び式(III-A)において、
は、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、Rは、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、
は、水素から選択され、Rは、水素、ハロゲン、C~Cアルキル、及びC~Cハロアルキルから選択され、
は、水素、ハロゲン、CN、OH、C~Cアルコキシ、及びC~Cアルキルから選択される。
【0063】
いくつかの具体的な実施態様では、式(III)及び式(III-A)において、
、X、及びXのうちの少なくとも1つは、N又はNRであり、n=2、3又は4であり、例えば
は、N又はNRであり、又はXは、N又はNRであり、又はXは、N又はNRである。
【0064】
好ましくは、Xは、N又はNRであり、又はXは、N又はNRである。
【0065】
いくつかの具体的な実施態様では、式(III)及び式(III-A)において、X、X、Xのうちの少なくとも2つは、N又はNRであり、n=2、3又は4であり、例えば、
はNであり、且つXはNRであり、好ましくは、XはNであり、XはNRであり、且つXはCRであり、又は
はNであり、且つXはNRであり、好ましくは、XはNであり、XはNRであり、且つXはCRである。
【0066】
いくつかの具体的な実施態様では、XはNであり、例えば、前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ、以下の式(IV)若しくは式(IV-A)で示される化合物である。
【0067】
【化11】
(式中、
は、単結合又は二重結合であり、
は、N、CR又は結合であり、Xは、N、NR又はCRであり、Xは、N、NR又はCRであり、
は、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、ただし、X及びXは、同時にNではなく、
Yは、O、S、NR又はCRであり、R、R、及びRは、各々独立して、水素、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、及びC~Cハロアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、ハロゲン、OH、及びC~Cアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は前記の通りである。)
【0068】
いくつかの具体的な実施態様では、XはCRであり、XはCRであり、XはCRでああり、XはNであり、例えば、前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ、以下の式(V)若しくは式(V-A)で示される化合物である。
【0069】
【化12】
(式中、Xは、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、且つX及びXは、同時にNではなく、
Yは、O、S、NR又はCRであり、R、R、及びRは、各々独立して、水素、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択され、
、R、及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は前記の通りである。)
【0070】
いくつかの具体的な実施態様では、XはCRであり、XはNであり、XはCRであり、XはCRであり、例えば、前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ、以下の式(VI)若しくは式(VI-A)で示される化合物である。
【0071】
【化13】
(式中、Xは、N又はCRであり、Xは、N又はCRであり、且つX及びXは、同時にNではなく、
Yは、O、S、NR又はCRであり、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は前記の通りである。)
【0072】
いくつかの好ましい実施態様では、XはCRであり、XはCRであり、XはCRであり、XはNであり、且つXはCRであり、XはNであり、例えば、前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ、下記式(VII)若しくは式(VII-A)で示される化合物である。
【0073】
【化14】
(式中、Yは、O、S、NR又はCRであり、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
は、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は前記の通りである。)
【0074】
いくつかの好ましい実施態様では、XはCRであり、XはNであり、XはCRであり、XはCRであり、且つXはCRであり、XはCRであり、例えば、前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ、下記式(VIII)若しくは式(VIII-A)で示される化合物である。
【0075】
【化15】
(式中、Yは、O、S、NR又はCRであり、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は前記の通りである。)
【0076】
いくつかの好ましい実施態様では、XはCRであり、XはCRであり、XはCRであり、XはNであり、且つXはCRであり、XはCRであり、例えば、前記式(I)若しくは式(I-A)で示される化合物は、それぞれ、下記式(IX)若しくは式(IX-A)で示される化合物である。
【0077】
【化16】
(式中、Yは、O、S、NR又はCRであり、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、及びC~Cアルキルから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択され、
は、水素、ハロゲン、及びC~Cアルキルから選択され、
環A、L、L、m、W、及びWの定義は前記の通りである。)
【0078】
いくつかの具体的な実施態様では、Yは、O、S、NR又はCRであり、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、好ましくは、R、R、及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択される。
【0079】
いくつかの具体的な実施態様では、Yは、O、NR又はCRであり、好ましくは、YはNRであり、Rは、水素及びC~Cアルキルから選択され、より好ましくは、Rは、水素、及びC~Cアルキルから選択され、又は
好ましくは、YはCRであり、R及びRは、各々独立して、水素及びC~Cアルキルから選択され、より好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素、及びC~Cアルキルから選択され、又は
好ましくは、Yは、O、S、-NH-、-N(CH)-、-N(エチル)-、-N(プロピル)-、-CH-、-CH(CH)-又は-C(CH-であり、
より好ましくは、Yは、O、NH、N(CH)、CH(CH)又はCHである。
【0080】
本開示のいくつかの特定の実施態様では、Yは、O、S、NH又はCHであり、好ましくは、Yは、O、-NH-又は-CH-であり、より好ましくは、Yは、O又は-NH-である。
【0081】
本開示の別のいくつかの特定の実施態様では、YはOである。
【0082】
本開示の別のいくつかの特定の実施態様では、Yは-NH-である。
【0083】
本開示の別のいくつかの特定の実施態様では、Yは-CH-である。
【0084】
特定の実施態様では、環Aは、任意選択で置換されたC~C10アリール及び5-~10-員ヘテロアリールから選択され、前記置換基は、ハロゲン、CN、OH、NO、NR、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cシクロアルキル、4-~7-員ヘテロシクロアルキル、C~C10アリール、5-~10-員ヘテロアリール及びC~Cハロアルキルから選択され、R及びRは、各々独立して、水素、C~Cアルキル、及びC~Cシクロアルキルから選択され、ここで、前記アルキル、及びシクロアルキルは、それぞれ任意選択でハロゲンによって置換されており、
好ましくは、環Aは、任意選択で、F、Cl、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cシクロアルキル、及びC~Cハロアルキルから選択される置換基によって独立して1回又は複数回、例えば1回又は2回置換されていてもよく、
さらに好ましくは、環Aは、任意選択で、F、Cl、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、及びC~Cシクロアルキルから選択される置換基によって独立して1回又は複数回、例えば1回又は複数回置換されていてもよい。
【0085】
いくつかの具体的な実施態様では、環Aは、任意選択で置換された又は非置換のピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、ピラン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、ナフタレン環、キノリン環、イソキノリン環、インドール環、イソインドール環、インダゾール環又はベンズイミダゾール環から選択され、
好ましくは、環Aは、任意選択で置換された又は非置換のピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、フラン環、チオフェン環、ピラン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環又はナフタレン環であり、
より好ましくは、環Aは、任意選択で置換された又は非置換のピリミジン環、ベンゼン環、ピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環又はナフタレン環であり、
さらに好ましくは、環Aは、F、Cl、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシによって1回又は2回置換されたピリミジン環、ベンゼン環、ピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環又はナフタレン環である。
【0086】
いくつかの具体的な実施態様では、環Aは、以下から選択される。
【0087】
【化17】
(式中、R10各は、それぞれ、同一であるか、又は異なり、独立して、ハロゲン、CN、OH、NO、NH、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、及びC~Cハロアルキルから選択され、qは、0、1又は2であり、
好ましくは、R10は、各々独立して、F、Cl、CN、C~Cアルキル、及びC~Cアルコキシから選択される。)
【0088】
特定の実施態様では、mは、1、2又は3であり、好ましくは、mは、1又は2である。
【0089】
特定の実施態様では、式(I-A)-(IX-A)において、W及びWは、各々独立して、C~C10アルキル、C~C10アリール、-CHOC(O)R、-CHOC(O)OR、-CHC(CHC(O)OR、及び-CH(CH)C(O)ORから選択され、ここで、前記アルキルは、任意選択でハロゲンによって置換されており、Rは、C~Cアルキルであり、好ましくは、Rは、C~Cアルキルであり、例えば、Rは、エチル、tert-ブチル、イソブチル又はイソプロピルである。
【0090】
好ましくは、W及びWは、各々独立して、C~Cアルキル、C~Cアリール、-CHOC(O)R、-CHOC(O)OR、及び-CH(CH)C(O)ORから選択され、Rは、C~Cアルキルであり、例えば、Rは、tert-ブチル、イソブチル又はイソプロピルであり、
より好ましくは、W及びWは、各々独立して、フェニル、-CHOC(O)R、-CHOC(O)OR、及び-CH(CH)C(O)ORから選択され、RはC~Cアルキルであり、例えば、Rは、tert-ブチル、イソブチル又はイソプロピルであり、
さらに好ましくは、W及びWは、各々独立して、-CHOC(O)R、及び-CHOC(O)ORから選択され、
さらに好ましくは、W及びWは、各々独立して、-CHOC(O)Rから選択され、且つL、Lは、両方ともにOであり、
さらに好ましくは、W及びWは、各々独立して、-CHOC(O)ORから選択され、且つL及びLは、両方ともにOである。
【0091】
特定の実施態様では、式(I-A)-(IX-A)において、
【0092】
【化18】
は、
【0093】
【化19】
【0094】
【化20】
は、
【0095】
【化21】
【0096】
いくつかの具体的な実施態様では、前記式(I)化合物は、以下の化合物から選択される。
【表1-1】
【表1-2】
【0097】
別のいくつかの特定の実施態様では、前記式(I-A)化合物は、以下の化合物から選択される。
【表2】
【0098】
別の態様では、本開示は、本開示の化合物を調製する方法を提供する。
【0099】
特定の実施態様では、本開示の式(I)化合物は、以下の方法によって調製される。
【0100】
一般式Aの化合物及び一般式Aの化合物を、炭酸セシウム、Pddba、及びXphos(化合物A中のY’がヒドロキシである場合)又はDPBP(化合物A中のY’がアミノである)の存在下で反応させて、一般式A化合物を生成し、その後、一般式Aの化合物をTMSBrの作用により水解し、式I化合物を生成し、以下の反応式に示する。
【0101】
【化22】
(以上の反応式において、Y’はヒドロキシル基又はアミノ基、R’はC~Cアルキル基、X、X、X、X、X、X、Y、m、及び環Aの定義は前記の定義の通りであり。)
【0102】
別の態様では、本開示はさらに、本開示の化合物を調製する中間体、及びその調製方法を提供する。
【0103】
特定の実施形態では、中間体化合物Aは、
【0104】
【化23】
であり、下記方法によって合成される。
【0105】
【化24】
(以上の反応式において、X、X、X、及びXの定義は前記の定義の通りであり、
以上の反応式に示されるように、前記方法は、以下のステップを含む、
(1)オルトギ酸トリメチル及び2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンに化合物A3-1を加え、反応させてA3-2化合物を得る、
(2)A3-2化合物をジフェニルエーテルに溶解し、反応させてA3-3化合物を得る、
(3)A3-3化合物とオキシ塩化リンを反応させて、中間体化合物Aを得る。)
【0106】
別の態様では、本開示は、少なくとも1種の本開示の化合物、その薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒合物及び水和物、から選択されるを含む組成物を提供する。
【0107】
一実施態様では、本開示は、少なくとも1種の本開示の化合物、その薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒合物及び水和物と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0108】
別の実施態様では、本開示は、治療有効量の少なくとも1種の本開示の化合物、その立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物及び水合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。前記医薬組成物のいくつかの実施態様では、医薬組成物は、静脈内投与、筋肉内投与、経口投与、直腸投与、吸入投与、経鼻投与、局所投与、眼投与又は耳投与などの任意の適切な投与経路用に製剤化される。前記医薬組成物の他の実施態様では、医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル、液体剤、吸入剤、点鼻スプレー溶液、坐剤、溶液剤、乳剤、軟膏剤、点眼剤、又は点耳剤である。
【0109】
別の態様では、本開示は、少なくとも1種の本開示の化合物、その薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒合物及び水和物と、1種又は複数種の他の活性剤と、を含む薬物組み合わせ製品を提供する。
【0110】
別の態様では、本開示は、腫瘍又は感染症により引き起こされる患者の障害又は疾患を予防、治療、又は軽減する薬物の調製における、式(I)若しくは式(I-A)の化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、若しくは水合物の使用を提供する。
【0111】
一実施態様では、前記腫瘍又は感染症は、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)の変化によって引き起こされる。
【0112】
別の実施態様では、本開示は、ENPP1媒介疾患又は障害、例えば癌、又は感染症、又は病症を予防、治療、又は軽減する薬物の調製における、式(I)若しくは式(I-A)化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、若しくは水合物の使用を提供する。
【0113】
別の実施態様では、本開示は、ENPP1媒介疾患又は障害を治療の療法における本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒合物、又は水和物、単独で、又は任意選択で本開示の他の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒合物、又は水和物、及び/又は少なくとも1種の他の治療剤に組み合使用を提供する。
【0114】
別の実施態様では、本開示はさらに、薬剤の調製における本開示の化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、又は水和物、の使用を提供し、前記薬剤は、単独で、又は任意選択で本開示の他の化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、又は水和物、及び/又は少なくとも1種の他の治療剤と組み合わせて、ENPP1媒介疾患又は障害を治療する。
【0115】
別の実施態様では、本開示は、治療法に用いられる、本開示の化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、又は水和物、と1種又は複数種の追加の治療剤との組み合わせ製剤を提供する。
【0116】
別の実施態様では、本開示は、治療法において同時に又は別々使用される、本開示の化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、又は水和物、と1種又は複数種の追加の治療剤との組み合わせを提供する。
【0117】
別の実施態様では、本開示は、ENPP1媒介疾患又は障害を治療するときに同時に、別々に、又は順番に使用される、本開示の化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、又は水和物、と1種又は複数種の追加の治療剤との組み合わせ製剤を提供する。化合物は、本明細書に記載の医薬組成物として投与され得る。
【0118】
別の態様では、本開示は、ENPP1媒介疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、治療有効量の本開示の化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、及び水合物、若しくはプロドラッグ、又はこれらを含む医薬組成物を、これを必要とする個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0119】
一実施態様では、本開示は、ENPP1媒介疾患又は障害を治療する方法であって、単独で、又は任意選択で本開示の他の化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、又は水和物、及び/又は少なくとも1種の他の治療剤と組み合わせて治療有効量の少なくとも1種の本開示の化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、又は水和物を、当該治療を必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0120】
別の実施態様では、本開示は、ENPP1媒介疾患又は障害を治療する方法であって、治療有効量の第1治療剤及び第2治療剤を、これを必要とする患者に投与することを含み、前記第1治療剤は本開示の化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、又は水和物であり、前記第2治療剤は本開示の他の化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、溶媒合物、又は水和物、及び/又は少なくとも1種の他の治療剤である、方法を提供する。
【0121】
本開示のいくつかの実施態様では、ENPP1媒介疾患又は障害は、癌、感染症又は障害、特に再発性又は難治性癌、転移性癌などを含むが、これらに限定されない。
【0122】
別の実施態様では、ENPP1媒介疾患又は障害は、再発癌、又は難治性癌である。
【0123】
別の実施態様では、ENPP1媒介疾患又は障害は、転移癌である。
【0124】
別の実施態様では、癌は、実体腫瘍、特に固形腫瘍、例えば乳癌、肺癌、神経膠芽細胞腫、脳癌と脊椎癌、頭頸部癌、皮膚癌、生殖器系癌、消化器系癌、食道癌、上咽頭癌、膵臓癌、直腸癌、肝細胞癌、胆管癌、胆嚢癌、結腸癌、多発性骨髄腫、腎臓癌と膀胱癌、骨癌、悪性中皮腫、肉腫、リンパ腫、腺癌、甲状腺癌、心臓腫瘍、生殖細胞腫瘍、悪性神経内分泌腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍、軟部肉腫、正中線癌、及び不明な原発癌である。
【0125】
別の実施態様では、癌は、血液悪性腫瘍、特に白血病、リンパ腫、又は骨髄腫である。
【0126】
別の実施態様では、ENPP1媒介疾患又は障害は、感染症、又は障害であり、単純ヘルペスウイルス感染、ワクシニアウイルス感染、アデノウイルス感染、ヒトパピローマウイルス感染、B型肝炎ウイルス感染、D型肝炎ウイルス感染、ヒト免疫不全ウイルス感染、ヒトサイトメガロウイルス感染、デング熱ウイルス感染、エボラウイルス感染、マールブルグウイルス感染、ジカウイルス感染、リステリア菌感染、結核菌感染、フランシセラ・ノビシダ感染、レジオネラ・ニューモフィラ感染、クラミジア・トラコマチス感染、肺炎連鎖球菌感染、淋菌感染を含むが、これらに限定されない。
【0127】
本開示の式(I-A)ホスホネート系又はアミド系プロドラッグ化合物は、生物学的に活性の化合物のプロドラッグの形態であり、具体的には、当該活性化合物の1つ又は複数のヘテロ原子(N、O)上で置換基W及びWによる置換が起こった化合物であり、前記基W又はWが一定の条件で代謝されるか、又は他の方式で変換されて、前記活性化合物(原薬)が生成され得る。本開示の特定実施例は本開示の内容に限定されるものではなく、本開示のホスホネート系又はアミド系プロドラッグ化合物は、生物学的活性を有する原薬の溶解性を高めることができるので、経口バイオアベイラビリティを向上させることができる。置換基W及びWが消化管でホスファターゼにより代謝され、潜在的な活性親薬が生成され、生体により吸収されることは発見された。
【0128】
生物学的活性を有する本開示の活性化合物が既に発見されており、W及びW基を含むプロドラッグの形態に製剤化する場合(すなわち、前述式(I-A)ホスホネート系又はアミド系化合物)、その脂溶性及び経口バイオアベイラビリティは顕著に向上する。このような脂溶性の向上は腸管での有効成分のより良好な吸収に寄与する。
【0129】
特定の実施態様では、本明細書で開示されたEED Alphascreen結合、LC-MS、及び/又はELISA分析によれば、本開示のホスホン酸系化合物は、1μM以下のIC50値、より好ましくは0.5μM以下のIC50値、さらに好ましくは0.125μM以下のIC50値、最も好ましくは0.1μM以下のIC50値を有する、特にナフチリジン系ホスホン酸化合物を提供する。
【0130】
本開示の範囲内では、本開示の技術的解決手段に定義された技術的特徴と、以下(例えば実施例)に具体的に説明される各技術的特徴とは、新規又は好ましい技術的解決手段を構成するように互いに組み合わされてもよいことが理解されるべきである。紙幅に限りがあるので、ここではいちいち累述しない。実施態様の個々の要素は、それ自体の独立した実施態様であることも理解される。
【0131】
本開示の他の特徴は、本開示を限定することを意図することなく、本開示を説明するために与えられた例示的な実施態様の上記の説明において明らかになる。
【0132】
用語の説明
【0133】
本開示において、本開示で使用される用語は、特に明示的に説明されない限り、以下に定義される意味を有する。本開示で明示的に定義されていない用語は、当業者に一般的に理解されている一般的な意味を有する。
【0134】
本開示の文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「1つ」、「1種」、「該」、及び類似の用語は、本明細書で特に指摘されない限り、又は文脈に従って明らかに矛盾しない限り、単数及び複数を含むものとして理解される。
【0135】
2つの文字又は記号の間にない短い横(「-」)は、置換基の連結部位を表す。例えば、-O(C1~アルキル)は、その基が酸素原子を介して分子の残りの部分に連結されていることを示す。しかしながら、ハロゲン、ヒドロキシ等の置換基の連結部位が当業者に自明である場合、「-」は省略してもよい。
【0136】
基が波線「
」を有する場合、波線は、当該基と分子の残りの部分との連結位置を示す。
【0137】
本明細書で使用される場合、「
」は単結合又は二重結合を意味する。当業者は、関連する環原子の価数及び連結した基等の状況に応じて、
が単結合、又は二重結合を表すかを決定することができ、これは、当業者の能力範囲内に属する。当業者であれば、関連する環は飽和、部分飽和、又は芳香族であり得ることが理解される。
【0138】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」とは、窒素(N)、酸素(O)又は硫黄(S)原子、特に窒素又は酸素を意味し、それらは、それらの酸化形態を含めて置換又は非置換であり得る。ヘテロ原子の例としては、-O-、-N=、-NR-、-S-、-S(O)-及び-S(O)が含まれるが、これらに限定されず、ここで、Rは水素、C~Cアルキル又は窒素保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルカルボニル、t-ブトキシカルボニル、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、p-メトキシ-ベンジル、p-メトキシ-フェニル、3,4-ジメトキシベンジルなど)である。結合手が満たされていないヘテロ原子は、別段の記載がない限り、結合手を満たすのに十分な水素原子を有するものとみなされる。
【0139】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」、または「ハロゲン化」とは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。置換基として好ましいハロゲンは、フッ素及び塩素である。
【0140】
本明細書で使用される場合、「アルキル」とは、完全飽和の直鎖状、又は分岐鎖状の一価炭化水素基を意味する。アルキルは、好ましくは炭素数1~10、炭素数1~8、炭素数1~6、炭素数1~4、又は炭素数1~3である。アルキルの前の数字は炭素原子の数を表す。例えば、「C~Cアルキル」は、炭素数1~6のアルキルを表し、「C~Cアルキル」は、炭素数1~4のアルキルを表し、「C~Cアルキル」は、炭素数1~3のアルキルを表す。アルキルの代表例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルなどが含まれるが、これらに限定されない。この定義は、「アルキル」という用語が単独で出現するか、ハロアルキル、アルコキシなどの他の基の一部として出現するかにかかわらず適用される。
【0141】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」とは、ここで定義するように酸素架橋を介して連結されたアルキル、すなわちアルキル-O-基を意味し、アルコキシの前の数字は炭素原子の数を表す。例えば、「C1~アルコキシ」は、炭素数1~6のアルコキシ、すなわち-O-C1~6アルキルを表し、「C1~アルコキシ」は、炭素数1~4のアルコキシ、すなわち-O-C1~4アルキルを表し、「C1~アルコキシ」は、炭素数1~3のアルコキシ、すなわち-O-C1~3アルキルを表す。アルコキシの代表例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが含まれるが、これらに限定されない。アルコキシは、炭素数が約1~6、又は約1~4であることなどが好ましい。
【0142】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」とは、飽和又は部分飽和非芳香族炭素環であって、単環-、二環-又は三環-を含み、好ましくは3~12個、より好ましくは3~10個、例えば3~8個、4~10個、又は4~8個の環炭素原子を有するものを意味する。「C~Cシクロアルキル」は、C、C、C、C、C及びCシクロアルキル基を含むことを意図しており、「C~Cシクロアルキル」は、C、C、C及びCシクロアルキル基を含むことを意図しており、これによって類推する。例示的な単環式シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル及びシクロヘキセニルなどが含まれるが、これらに限定されない。例示的な二環式シクロアルキルとしては、ボルニル、テトラヒドロナフチル、デカリニル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル、6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル、2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチルなどなどが含まれる。例示的な三環式シクロアルキルとしては、アダマンチルなどが含まれる。
【0143】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」とは、1つ又は複数の水素原子、例えば、1、2、3、4、5、6又は7個の水素原子、例えば、1、2又は3個の水素原子がハロゲンにより置換された、ここで定義されるアルキルを意味し、1個以上の水素原子がハロゲン原子により置換された場合、前記ハロゲン原子は互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、「C~Cハロアルキル」は、C、C、C及びCハロアルキル基を含むことを意図しており、「C~Cハロアルキル」は、C、C及びCハロアルキル基を含むことを意図している。ハロアルキルの例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、1,1-ジフルオロエチル、1,1,-ジフルオロプロピル、及び1,1,1-トリフルオロプロピルが含まれるが、これらに限定されない。ハロアルキルの例としては、1つ又は複数の水素原子がフッ素原子により置換された、本明細書で定義されるアルキルを含むことが意図されている「フルオロアルキル」も含む。ここで、「ハロアルキル」は、アルキルの水素原子3個までがハロゲンにより置換されたものであることが好ましい。
【0144】
本明細書で使用される場合、「ハロアルコキシ」は、酸素架橋を介して連結された特定の炭素数を有する、上記で定義されるハロアルキルを表し、ここで、1つ又は複数の水素原子、例えば1、2、3、4、5、6、又は7個の水素原子、例えば1、2、又は3個の水素原子がハロゲンにより置換されている。例えば、「C~Cハロアルコキシ」又は「C~Cハロアルコキシ」は、C、C、C、C、C及びCハロアルコキシ基を含むことを意図している。ハロアルコキシの例としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2-フルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、6~20個、好ましくは6~14個、より好ましくは6~12個、最も好ましくは6~10個、例えば6~9個の環炭素原子を有する、1つ又は複数の環が縮合してなる単環、二環又は三環式の炭素環式炭化水素基であり、少なくとも1つの環は芳香族環であり、他の環(存在する場合)は芳香族又は非芳香族であってもよい。好ましいアリールは、6~10個の環炭素原子を有するアリール、すなわち、C~C10アリールであり、単環式アリール(例えば、フェニル)、又は、1つの環が芳香族環であり、もう1つの環が芳香族環(例えば、ナフチル、ビフェニルの場合)又は非芳香族環(例えば、インダン、テトラリン)である縮合二環系を含む。アリールの非限定的な例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニル、ジヒドロインデニル又はアントラセニルなどが含まれる。
【0146】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」とは、N、O、又はSから選択されるヘテロ原子を1~8個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1又は2個含有し、単環、二環又は縮合多環を含み、残りの環原子が炭素原子である、5~14員、好ましくは5~10員、より好ましくは5~7員又は5~6員の芳香族環系を指す。ヘテロアリールは、好ましくは5~10員ヘテロアリールであり、より好ましくは、5~7員ヘテロアリール又は5~6員ヘテロアリールであり、それぞれ、N、O、又はSから選ばれるヘテロ原子を1、2、又は3個含有する。ヘテロアリールの例としては、ピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、ピリジル、ピラニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、オキサジニル、オキサジアジニル、キノリル、イソキノリニル、シノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾオキサジニル、2H-クロメン、ベンゾピラニル、ベンゾチエニル、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、7-アザインドリル、6-アザインドリル、5-アザインドリル、4-アザインドリル、1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾリルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」とは、本願で定義されるシクロアルキルを意味し、ただし、1つ又は複数の環炭素が、例えば-O-、-N=、-NR-、-S-、-S(=O)-及び-S(=O)2-であるN、O、又はSから選択されるヘテロ原子により置換されていることを条件とし、ここで、Rは水素、C1~4アルキル又は窒素保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、p-メトキシベンジル、p-メトキシフェニル、3,4-ジメチルオキシベンジルなど)である。好ましくは、ヘテロシクロアルキルは、3~20個の環原子、例えば3~12個の環原子、例えば3~8個の環原子、例えば3~6個の環原子を有する、単環、二環、又は三環の飽和及び部分不飽和の非芳香族環である。より好ましくは、ヘテロシクロアルキルは、N、O、又はSから選択されるヘテロ原子を1、2、3個含有する、4-~12-員ヘテロシクロアルキル、好ましくは4-~8-員ヘテロシクロアルキル、より好ましくは、4-~7-員、4-~6-員、又は4-~5-員ヘテロシクロアルキルを含み、前記ヘテロ原子は、例えばC~Cアルキルにより置換されるなど、置換又は非置換のものである。例えば、ヘテロシクロアルキルの例としては、オキシラニル、アジリジニル、アゼチジニル、オキセタニル、アゾリジニル(ピロリジニル)、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチエニル1,1-ジオキシド、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピロリジニル-2-オン、イミダゾロニル、ピペリジニル(ヘキサヒドロピリジニル)、N-メチルピペリジニル、テトラヒドロピラニル、オキサジニル、1,3-オキサジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、ピペラジニル、ピペリジニロニル(piperidinylone)、1,4-ジオキサ-8-アザ-スピロ[4.5]デカン-8-イル、モルホリノ、チオモルホリノ、スルファノモルホリノ(sulfanomorpholino)、スルホノモルホリノ(sulfonomorpholino)、オクタヒドロピロ[3,2-b]ピロリルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
本明細書で使用される場合、「部分飽和複素環」とは、部分的に水素化された非芳香族環を意味し、単環又は二環(縮合環を含む)として存在することができる。別段の記載がない限り、前記部分飽和複素環は、通常、N、O、又はSから選択される少なくとも1個、例えば1~3個、好ましくは1又は2個のヘテロ原子、例えば、-O-、-N=、-NR-又は-S-(ただし、Rは水素、C1~4アルキル又は窒素保護基である)を含む、3-~12-員、好ましくは5-~10-員、より好ましくは9~10員の単環又は二環の環系である。部分飽和複素環は、例えば、ジヒドロピロリル、ジヒドロフリル、ジヒドロキサゾリル、ジヒドロピリジル、イミダゾリニル、1H-ジヒドロイミダゾリル、2H-ピラニル、2H-クロメニル、ジヒドロキサジニルなどの基を含む。部分飽和複素環は、縮合アリール又はヘテロアリール環を有する複素環をさらに含み、好ましくは9~10個の環メンバー(例えば、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ジヒドロインドリル(又は2,3-ジヒドロインドリル)、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾピラニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピリド[3,4-b]ピラジニルなど)を有する。
【0149】
本明細書で使用される場合、「部分又は完全飽和複素環」とは、部分的又は完全に水素化された非芳香族環を意味し、単環、二環(縮合環を含む)又はスピロ環として存在することができる。別段の記載がない限り、複素環は、通常、硫黄、酸素及び/又は窒素から独立して選択されるヘテロ原子を1個~3個、好ましくは1個又は2個含む3-~12-員環、好ましくは5-~10-員環である。「部分又は完全飽和複素環」という用語が使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」及び「部分飽和複素環」を含むことが意図されている。スピロ環の例としては、2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプチル、3-アザスピロ[5.5]ウンデシル、3,9-ジアザスピロ[5.5]ウンデシルなどが含まれる。
【0150】
本明細書で使用される場合、「複素環」とは、「ヘテロシクロアルキル」、「部分又は完全飽和複素環」、「部分飽和複素環」、「完全飽和複素環」及び「ヘテロアリール」を含むことが意図される、完全飽和又は不飽和の、芳香族又は非芳香族の環状基を意味する。例えば、これは、少なくとも1つの炭素原子を含む環上に少なくとも1つのヘテロ原子を含む、4-~7-員単環、7-~12-員二環、又は10-~15-員三環の環系である。複素環のヘテロ原子を含む環は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1~6個、好ましくは1、2又は3個含むことができ、前記窒素原子及び硫黄原子は、任意選択で酸化されていてもよい。好ましくは、複素環は、4-~7-員単環式複素環である。
【0151】
例示的な単環式複素環としては、ピロリジン、ピロール、ピラゾール、オキセタン、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾール、チアゾール、チアジアゾール、チアゾリジン、イソチアゾール、イソチアゾリジン、フラン、テトラヒドロフラン、チオフェン、ピペリジン、ピペラジン、2-オキソピペラジン、2-オキソピペリジン、2-オキソピロリジン、4-ピペリドン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、テトラヒドロピラン、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリノ-S-モノオキシド、チオモルホリノ-S,S-ジオキシド、1,3-ジオキソラン及びテトラヒドロ-1,1-ジオキソチオフェン、1,1,4-トリオキソ-1,2,5-チアジアゾリジン-2-などが含まれる。
【0152】
例示的な二環式複素環としては、インドール、ジヒドロインドール、ベンゾチアゾールなどが含まれる。
【0153】
本明細書で使用される場合、「複素環基」とは、上記で定義される複素環から1つ又は複数の水素原子が失われて形成される基をいう。複素環基は、ヘテロ原子又は炭素原子で連結していてもよい。
【0154】
本明細書で使用される場合、「炭素環」とは、飽和又は不飽和の単環、二環、又は三環の3~12個の炭素原子数の炭化水素基を意味する。炭素環は、環炭素原子が3~8個、例えば、3~7個、又は4~7個であることが好ましい。例示的な単環式炭素環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、シクロヘプテン等が含まれるが、これらに限定されない。例示的なジシクロアルカンは、テトラリン、デカリン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどを含む。例示的な三環式炭化水素基としては、アダマンチルなどが含まれる。
【0155】
本明細書で使用される場合、用語「-C(=O)」は、カルボニルであり。
【0156】
本明細書では、アルキル、アルケニル、アルコキシ、炭素環、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、複素環基、カルボニル、スルホニル、スルフィニルなどの基は、置換基により置換されていてもよく、前記置換基は、OH、Boc、ハロゲン、シアノ、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルコキシ、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換複素環基;NRR’、C(O)R、SOR、C(O)NRR’又はC(O)OR(ただし、R及びR’は、それぞれ独立して、H及び置換又は非置換アルキルから選択される。)を含むが、これらに限定されない。
【0157】
本明細書で使用される「任意選択」、「任意選択の」、又は「任意選択で」は、後に説明されるイベントが発生してもよい、又は発生しなくてもよいことを意味し、この説明は、イベントが発生する場合と、イベントが発生しない場合とを含む。例えば、「任意選択により置換されたアルキル」には、本明細書で定義する「非置換アルキル」及び「置換アルキル」が含まれる。「任意選択でハロゲンにより置換されている」には、「ハロゲンにより置換されている」場合と、「ハロゲンにより置換されていない」場合、例えば、0~3個のハロゲンにより置換されている場合が含まれる。当業者であれば、1つ又は複数の置換基を含む任意の基について、前記基は、空間的に非現実的な、化学的に不正確な、合成的に不可能な、及び/又は内在的に不安定ないかなる置換パターンも含まないことを理解する。
【0158】
任意の変数が化合物の任意の構成、又は式に複数回出現する場合、各出現におけるその定義は、他の各出現における定義とは独立である。したがって、例えば、基が0~3個のRにより置換されていることを示す場合には、この基は非置換であってもよいし、3個までのRにより置換されていてもよく、Rは、出現するたびにRの定義から独立して選択される。例えば、環Aの定義に適用される1回又は複数回の置換、すなわち、環AがC~C10アリール、及び6-~10-員アリールの場合、これらの基は、非置換であるか、又は、出現するたびに所定の定義から独立して選択される1つ又は複数、例えば2つの置換基により置換されている。これは、同様の他のシナリオの定義にも同様に適用される。
【0159】
置換基の結合手が、環内の2つの原子を連結する結合手を通過することが示される場合、当該置換基は、環上の任意の原子に結合することができる。置換基が記載されているが、下記式の化合物の残りの部分に連結するその置換基の原子が特定されていない場合、その置換基は、その置換基中の任意の原子を介して結合していてもよい。
【0160】
置換基及び/又は変数の組み合わせは、そのような組成が安定な化合物を生成する限り許容される。
【0161】
環構造に破線環が使用される場合、環構造が飽和、部分飽和、又は不飽和であり得ることを意味する。
【0162】
本明細書で使用される用語「置換」、「置換された」、又は「…により置換された」は、所与の原子、又は基上の1つ又は複数の水素原子が、所与の原子の通常の価数を超えない限り、所与の置換基群から選択される1つ又は複数の置換基により置換されることを意味する。置換基がオキソ(=O)の場合、単一原子上の2つの水素原子は酸素に置換される。芳香族部分にはオキソ置換基が存在しない。環系(例えば、炭素環又は複素環)がカルボニル基又は二重結合により置換される場合、カルボニル基又は二重結合は環の一部(すなわち、環内)であることが望ましい。このような組み合わせは、置換基及び/又は変数の組み合わせが化学的に正確で安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。化学的に正確で安定な化合物は、反応混合物から分離することができ、化合物の化学構造を決定することができ、その後、少なくとも実用的な有用性を有する製剤に調製することができるほどに、化合物が十分に安定であることを意味する。例えば、置換基が明示的に列挙されていない場合、本明細書で使用される用語「置換」、「置換された」、又は「…により置換された」は、所与の原子又は基上の1つ又は複数の水素原子が、1つ又は複数、例えば1、2、3又は4つの置換基で独立して置換されることを意味する。1つの原子又は基が複数の置換基により置換されている場合、前記置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0163】
別段の指摘がない限り、「本開示化合物」又は「本開示の化合物」という用語は、本明細書で定義される式(I)又はそのサブ式、例えば式(II)、及び(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、ならびに立体異性体(ジアステレオマー、エナンチオマー及びラセミ体を含む)、幾何異性体、配座異性体(回転異性体とアトロプ異性体を含む)、互変異性体、異性体の内部付加生成物、プロドラッグ、及び同位体標識化合物(重水素置換を含む)及び本質的に形成された部分(例えば、多結晶形、溶媒和物及び/又は水和物)などのすべての異性体の1種又は複数を含むものを意味する。塩を形成し得る部分が存在する場合、塩、特に薬学的に許容される塩も含まれる。互変異性体又は異性体の内部付加生成物の存在は、NMR等のツールを用いて当業者が識別することができる。本開示の式(I)化合物は、本明細書に記載されたような互変異性体及び異性体の内部付加生成物を容易に形成することができる。
【0164】
本明細において式(I)が記載される場合、この表現は、文脈上別途説明が必要な場合を除き、そのサブ式、例えば、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、及び(IX)も含む。本明細において式(I-A)が記載される場合、この表現は、文脈上別途説明が必要な場合を除き、そのサブ式、例えば、式(II-A)、(III-A)、(IV-A)、(V-A)、(VI-A)、(VII-A)、(VIII-A)、及び(IX-A)も含む。
【0165】
当業者であれば、本開示の化合物はキラル中心を含んでいてもよく、この場合、異なる異種形態が存在していてもよいことを認識する。したがって、本発明の化合物は、個々の立体異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー)及び任意の割合の混合物の形態、例えばラセミ体の形態で存在することができ、必要に応じて、その互変異性体及び幾何異性体の形態で存在することができる。本明細書で使用される「立体異性体」とは、同じ分子式を有するが、原子の配列と立体配置が異なる化合物を指す。
【0166】
立体異性体には、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び配座異性体が含まれる。本明細書で使用される場合、「エナンチオマー」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である一対の立体異性体である。一対のエナンチオマーの1:1混合物は「ラセミ」混合物である。必要に応じて、この用語はラセミ混合物を指すために使用される。
【0167】
「ジアステレオマー」とは、少なくとも2つの不斉原子を有するが、互いに鏡像にならない立体異性体である。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動やHPLCなどのクロマトグラフィーなどの高分解能分析方法を使用して分離できる。本明細書で使用される場合、「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」は、光学活性を持たない2つのエナンチオマーの等モル混合物を指す。ラセミ混合物は、それ自体の形で使用することも、個々の異性体に分離することもできる。分割により、立体化学的に純粋な化合物、又は1種又は複数種の異性体が豊富な混合物を得ることができる。
【0168】
本明細書で使用される場合、「互変異性体」又は「互変異性形態」とは、低いエネルギー障壁を介して相互変換可能な、異なるエネルギーの構造異性体を指す。たとえば、プロトン互変異性体(プロトン移動互変異性体としても知られている)には、ケト-エノール異性体やイミン-エナミン異性化などのプロトン移動による相互変換が含まれる。原子価互変異性体には、結合電子の一部の再構成による相互変換が含まれる。
【0169】
本明細書で使用される場合、「幾何異性体」とは、二重結合又は環炭素原子の単結合が自由に回転できないことによって生じる異性体であり、シス-トランス異性体とも呼ばれ、置換基が平面の同じ側に位置しているものはシス異性体、置換基が平面の反対側に位置しているものはトランス異性体である。化合物に二重結合が含まれる場合、置換基はE又はZ立体配座をとることができる。
【0170】
本明細書に記載のいくつかの化合物は、1つ又は複数の不斉中心又は軸を含み、したがって、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び絶対立体化学的に(R)-又は(S)-と定義され得る他の立体異性体を生成することができる。
【0171】
「配座異性体」は、1つ又は複数の結合手に関する回転によって異なる異性体である。「回転異性体」は、単一の結合手のみの回転によって異なる配座異性体である。「アトロプ異性体」とは、分子内の回転が制限されることによって生じる軸方向又は平面的なキラル性に基づく構造異性体のことをいう。
【0172】
別段の記載がない限り、本開示の化合物は、ラセミ混合物、旋光活性を有する形態、及び中間体混合物を含む、このような可能性のあるすべての異性体を含むことが意図されている。旋光活性を有する(R)-及び(S)-異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を用いて調製するか、又は従来技術を用いて分割することができる。
【0173】
本開示の化合物は、旋光活性を有する形態又はラセミ形態に分離することができる。旋光活性を有する形態は、ラセミ形態を分割することにより、又は旋光活性を有する原料から合成することにより調製することができる。本開示の化合物を調製するためのすべての方法及びここで調製される中間体は、本開示の一部であるとみなされる。エナンチオマー又はジアステレオマー生成物を調製する際には、クロマトグラフィーや分別結晶化などの従来の方法で分離することができる。
【0174】
本開示の最終生成物は、方法の条件に従って、遊離(中性)又は塩の形態で得られる。これらの最終生成物の遊離形態及び塩形態は、本開示の範囲内である。望ましくは、化合物の1つの形態を他の形態に変換することができる。遊離のアルカリ又は酸は塩に変換することができる。塩は、遊離化合物又は他の塩に変換することができる。本開示の異性体化合物の混合物は、個々の異性体に分離することができる。
【0175】
薬学的に許容される塩が好ましい。しかしながら、他の塩は、例えば分離又は精製ステップにおいて有用であってもよく、調製中に使用することができるので、本開示の範囲内で考慮される。
【0176】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な」及び「薬学的に許容される」とは交換して使用することができ、化学的/毒性学的に他の成分、含まれる製剤及び/又はそれを用いて処理された哺乳動物と適合性である必要がある物質又は組成物を含む。
【0177】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」及び「薬学的に許容される塩」とは、本開示の化合物の生物学的効果及び性能を維持する塩を意味し、この塩は生物学的又は他の点で望ましくないものではない。前記塩の非限定的な例は、本開示の化合物の無毒な無機又は有機アルカリ又は酸の付加塩を含む。塩の非限定的な例としては、本開示の化合物と無機酸との酸付加塩、無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸、リン酸など、及び本開示の化合物と有機酸とからなる酸付加塩を含み、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸など、本開示の化合物と無機及び有機塩基との薬学的に許容可能な塩基付加塩も含み、それから誘導塩の無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなど、特に好ましいのは、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩、及びそれから誘導されて得られる塩の有機塩基としては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン、置換アミン(天然に存在する置換アミンを含む)、環状アミン、アルカリ性イオン交換樹脂など、特に、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミンなどが含まれる。従来の化学的方法によれば、母体化合物(アルカリ性又は酸性部分)から薬学的に許容される塩を合成することができる。一般には、前記塩は、前記化合物の遊離酸の形態を、化学量論量の適当なアルカリ(例えば、Na、Ca、Mg又はKの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩など)と反応させるか、又は前記化合物の遊離アルカリの形態を、化学量論量の適当な酸と反応させることによって調製することができる。このような反応は、通常、水、有機溶媒、又は両者の混合溶媒中で行われる。一般には、実施可能な場合には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。
【0178】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、経口投与または非経口投与に適した形態の本開示の化合物、またはその薬学的に許容される少なくとも1つの賦形剤を意味する。
【0179】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な賦形剤」は、溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定化剤、バインダ、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、矯味剤、染料、これらの類似の物質、及びこれらの組み合わせのいずれか及びすべてを含み、これらは当業者に周知である。従来の担体が活性成分と共存できない場合を除き、治療又は医薬組成物での使用が考えられる。
【0180】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」とは、本開示の化合物と1種又は複数種の有機又は無機溶媒分子との物理的結合物を意味する。この物理的結合物は水素結合を含む。場合によっては、溶媒和物は、例えば1種又は複数種の溶媒分子が結晶性固体の格子に取り込まれる場合に分離することができる。溶媒和物中の溶媒分子は、規則的配列及び/又は非規則的配列で存在していてもよい。溶媒和物は、化学量論的量又は非化学量論的量の溶媒分子を含んでもよい。「溶媒和物」には、溶液相と分離可能な溶媒和物が含まれる。例示的な溶媒和物としては、水和物、エタノレート、メタノレート及びイソプロパノレートが含まれるが、これらに限定されない。溶媒和の方法は、当業者に公知である。
【0181】
本明細書で使用される場合、「結晶多形」とは、同じ化学構造/組成を有するが、結晶を形成する分子及び/又はイオンの空間配列が異なる結晶形態を指す。本開示の化合物は、非晶質固体又は結晶性固体として提供することができる。凍結乾燥法は、本開示の化合物の固体を提供するために使用され得る。
【0182】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」とは、化学的に修飾された活性又は不活性の化合物であって、個体に投与された後、インビボでの生理学的作用(例えば、加水分解、新生代謝など)を経て本開示の化合物に変換する化合物を意味する。プロドラッグの製造及び使用に関する適合性及び技術は、当業者に周知である。
【0183】
本明細書で使用される場合、本開示の化合物の「治療有効量」とは、個体の生物学的又は医学的反応を引き起こすか、症状を改善するか、疾患の悪化を遅らせるか若しくは遅延するか、又は疾患を予防するか等の可能性がある本開示の化合物の量をいう。「治療有効量」は、参加する医師又は獣医師によって決定され得、化合物、治療対象の疾患の状態、治療対象の疾患の重症度、個体の年齢や関連する健康状態、投与経路及び投与形態、主治医、又は獣医従事者の判断等の要因に応じて変化する。
【0184】
本明細書で使用される場合、「個体」とは、動物を意味する。好ましくは、動物は哺乳動物である。個体はまた、例えば霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥などを指す。好ましい実施態様では、個人はヒトである。
【0185】
本明細書で使用される場合、「阻害」とは、特定の病気、症状、病症又は疾患の軽減又は阻害、又は生物学的活性若しくはプロセスベースライン活性の著しい低下を意味する。
【0186】
本明細書で使用される場合、一実施態様では、何らかの疾患又は病症を「治療する」という用語は、疾患又は病症を改善する(すなわち、疾患又はその少なくとも1つの臨床症状の進行を阻止又は遅らせる)ことを意味する。別の実施態様では、「治療」とは、患者に認識されない可能性のある少なくとも1つの身体パラメータを改善することを意味する。別の実施態様では、「治療」とは、身体的(例えば、安定的で知覚可能な症状)、生理学的(例えば、安定的な身体パラメータ)、又は上記の両方で疾患又は病症を調節することを意味する。
【0187】
本明細書で使用される場合、「予防」とは、1つ又は複数の薬物物質、特に本開示の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩を、当該疾患に罹患しやすい体質を有する個体に投与して、当該個体が当該疾患に罹患することを防止することを意味する。
【0188】
化学反応が言及される場合、「処理」、「接触」及び「反応」とは、2種以上の試薬を適切な条件下で添加、又は混合して、示された及び/又は所望の生成物を生成させることをいう。示された生成物及び/又は所望の生成物を生成する反応は、必ずしも最初に添加された2種の試薬の組み合わせから直接得られるとは限らないこと、すなわち、生成された1つ又は複数の中間体が混合物中に存在し、最終的に示された生成物及び/又は所望の生成物の生成をもたらす可能性があることが理解されるべきである。
【0189】
一般には、用語「約」は、本明細書において、与えられた数値を当該数値よりも20%、例えば10%、例えば5%高いか又は低い値に調整するために使用される。
【0190】
本明細書で与えられる任意の式はまた、化合物の標識されていない形態及び同位体標識の形態を表すことを意図している。同位体標識化合物は、1つ又は複数の原子が選択された原子質量又は質量数を有する原子により置換されることを除き、本明細書で与えられる式で説明される構造を有する。本開示の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体、例えば、それぞれH(すなわちD)、H(すなわちT)、11C、13C、14C、15N、1831P、32P、35S、36Cl、125Iがある。本開示は、本明細書で定義されるような異なる同位体標識化合物を含み、例えば、放射性同位体、例えばH、13C、及び14Cを含む。このような同位体標識化合物は、代謝研究(14C)、反応速度論研究(例えば、H又はH)、検出又はイメージング技術、例えば、薬物又は基質組織分布測定を含め、陽電子放出断層撮影(PET)又は単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)や患者の放射線治療に使用できる。特に、18F又は18F標識化合物は、PET又はSPECT研究での使用が特に望ましい。本開示の同位体標識化合物は、一般的に、以下に説明するフロー又は実施例及び調製例に記載の方法を実行することにより、同位体標識されていない試薬を容易に入手可能な同位体標識試薬で置換することにより調製することができる。
【0191】
さらに、重い同位体、特に重水素(すなわちH又はD)による置換はまた、生体内半減期の延長、用量要件の低減、又は治療指標の改善など、より大きな代謝安定性に起因するいくつかの治療上の利点を得ることができる。上記の重水素は、本開示の化合物の置換基と見なすことができることが理解される。このような重い同位体、特に重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって定義することができる。「同位体濃縮係数」は、所定の同位体の同位体存在量と天然存在量との比を表す。
【0192】
本開示の同位体標識化合物は、通常、当業者に知られた従来技術により、又は本明細書に記載されたものと同様の方法により、他の使用される標識されていない試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用することにより製造することができる。このような化合物は、標的タンパク質又は受容体に結合する潜在的薬物化合物の能力を測定するための標準及び試薬として、又はインビボ又はインビトロで生物学的受容体に結合する本開示の化合物のイメージングのための、様々な潜在的用途を有する。
【0193】
本明細書で使用される、具体的に定義されていない技術用語及び科学用語は、本開示の当業者が一般に理解する意味を有する。
【0194】
効果
【0195】
本開示のホスホン酸系化合物は、ENPP1阻害剤化合物であり、ENPP1に対して高い選択性及び阻害活性を有し、副作用が少なく、薬剤耐性が高く、バイオアベイラビリティーが高く、臨床応用価値が高い。本開示の化合物は、ENPP1の阻害を必要とする様々な用途において有用である。
【0196】
本開示の化合物は、ENPP1媒介疾患又は障害、例えばENPP1媒介腫瘍(例えば癌)、感染症、又は障害、特に再発癌、難治性癌、又は転移性癌の治療、予防、又は改善に有用である。
【0197】
特に、本開示の化合物は、例えば、乳癌、肺癌、神経膠芽細胞腫、脳癌と脊椎癌、頭頸部癌、皮膚癌、生殖器系癌、消化器系癌、食道癌、上咽頭癌、膵臓癌、直腸癌、肝細胞癌、胆管癌、胆嚢癌、結腸癌、多発性骨髄腫、腎臓癌と膀胱癌、骨癌、悪性中皮腫、肉腫、リンパ腫、腺癌、甲状腺癌、心臓腫瘍、生殖細胞腫瘍、悪性神経内分泌腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍、軟部肉腫、正中線癌、及び不明な原発癌から選択される固形腫瘍の治療、予防、又は改善に有用である。
【0198】
本開示の化合物はまた、例えば、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫から選択される血液悪性腫瘍の治療、予防、又は改善に有用である。
【0199】
さらに、本開示の化合物はまた、例えば、単純ヘルペスウイルス感染、ワクシニアウイルス感染、アデノウイルス感染、ヒトパピローマウイルス感染、B型肝炎ウイルス感染、D型肝炎ウイルス感染、ヒト免疫不全ウイルス感染、ヒトサイトメガロウイルス感染、デング熱ウイルス感染、エボラウイルス感染、マールブルグウイルス感染、ジカウイルス感染、リステリア菌感染、結核菌感染、フランシセラ・ノビシダ感染、レジオネラ・ニューモフィラ感染、クラミジア・トラコマチス感染、肺炎連鎖球菌感染、及び淋菌感染から選択される感染症又は病症、特に、ENPP1媒介感染症又は病症の治療、予防、又は改善に有用である。
【0200】
医薬組成物及び投与
【0201】
本開示の化合物は、1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤を任意選択で含むことができる薬物組成物の形態で個体に投与されてもよい。
【0202】
本開示の化合物は、経口投与、直腸投与、胃内投与、頭蓋内投与、及び非経口投与、例えば静脈内投与、筋内投与、鼻内投与、真皮内投与、皮下投与、及び同様の投与経路を含む種々の公知の経路で投与することができる。特に、経口投与、鼻内投与、非経口投与が好ましい。投与経路に応じて異なる医薬製剤が必要であり、これらの投与経路のいくつかは、例えば消化管内での本開示の化合物の分解を防止するために、医薬製剤への保護コーティングの塗布を必要とする場合がある。
【0203】
本開示の化合物は、シロップ、輸液又は注射液、スプレー剤、錠剤、カプセル、トローチ、リポソームや座剤等に製剤化してもよい。
【0204】
本開示の化合物を投与するための特に好ましい薬物形態は、無菌の水性溶液又は分散液と、無菌注射溶液又は分散体を即時に調製するための無菌粉末とを含む注射使用に適した形態である。いずれの場合も、最終的な溶液又は分散体の形態は無菌であり、流体でなければならない。典型的には、このような溶液又は分散体は、例えば、生体適合性緩衝剤、エタノール、又は例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、これらの好適な混合物、界面活性剤、又は植物油などの水-緩衝水溶液を含む溶媒又は分散媒を含む。本開示の化合物はまた、リポソーム、特に非経口投与用のリポソームに製剤化することもできる。リポソームは、(遊離薬物と比較しても)循環中の半減期が増加するという利点と、包み込まれた薬物の延長された、より均一な放出を提供する。
【0205】
輸液及び注射液の滅菌は、パラベン、トリクロロt-ブタノール、フェノール、ソルビン酸やチメロサールなどの抗細菌剤又は抗真菌剤などの防腐剤の添加を含むがこれに限定されない、当業者に認められた技術によって達成することができる。さらに、輸液及び注射液に、糖類や塩、特に塩化ナトリウム等の等張剤を含有させることもできる。
【0206】
本開示の化合物の1種又は複数種を含有する無菌注射液の製造は、必要な量の各化合物を、必要に応じて上記の種々の成分を有する適切な溶媒中に含有させ、その後殺菌することによって達成される。無菌粉末を得るためには、必要に応じて上記の溶液を真空乾燥又は凍結乾燥する。本開示の好ましい希釈剤は、水、生理学的に許容される緩衝剤、生理学的に許容される緩衝塩溶液又は塩溶液である。好ましい担体は、カカオバター及びvitebesoleである。
【0207】
本開示の化合物の種々の医薬形態と共に使用することができる賦形剤は、以下の非限定的なリストから選択され得る:a)バインダ、例えばラクトース、マンニトール、結晶性ソルビトール、リン酸水素塩、糖、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び/又はポリビニルピロリドンなど;b)潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク粉、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、水素添加植物油、ロイシン、グリセリド、及びフマル酸ステアリルナトリウム;c)崩壊剤、例えば、架橋カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースナトリウム、寒天、ベントナイト、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリドンなど。他の適切な医薬的に許容される担体及びそれらの調製は当分野でよく知られており。
【0208】
一実施態様では、製剤は、経口投与用であって、アルファ化デンプン、タルク粉、ポリビニルピロリドンK30、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ゼラチン、二酸化チタン、ソルビトール、クエン酸一ナトリウム、キサンタンガム、二酸化チタン、矯味剤、安息香酸ナトリウム、及びサッカリンナトリウムのうちの1種、複数種又はすべてを含む。
【0209】
一実施態様では、本開示の化合物は、乾燥粉末吸入器で、又は、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、例えば1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A(商標))又は1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA(商標))、二酸化炭素、又は他の適切なガスなどの適切な推進剤を用いた加圧容器、ポンプ、噴霧器、又はアトマイザ内からの噴霧剤の形態で投与される。前記加圧容器、ポンプ、噴霧器又はアトマイザは、本開示の化合物の溶液又は懸濁液、例えば、エタノール及び推進剤を溶媒とする溶液又は懸濁液を含んでいてもよく、また、ソルビタントリオレイン酸などの潤滑剤を含んでいてもよい。
【0210】
本開示の化合物の典型的な用量範囲は、0.001~1000mg活性成分/kg体重/日である。前記用量は、1日に1回、又は複数回に分けて投与することができる。適切な用量の決定は、治療すべき疾患の種類及びその重篤度、個体の健康状態と既往歴、併用薬物、投与する具体的な化合物、投与経路などに基づいて主治医が適宜決定する。必要に応じて、本開示の化合物の用量は、この用量範囲を超えてもよい。
【0211】
薬物組み合わせ
【0212】
本開示の化合物は、本明細書に記載された使用のために、単独で、又は1つ又は複数の他の活性剤又は治療法と組み合わせて使用することができ、前記他の活性剤又は治療法は、同じ又は異なる薬理学的効果を有するか、又はもたらすことができる。本開示の化合物は、前記他の活性剤又は治療法と同時に、その前に、又はその後に投与することができる。
【0213】
本開示の化合物を他の活性剤と組み合わせて投与する場合、組み合わせて投与される他の活性剤の用量は、併用する薬物、治療すべき病症、患者の一般的な健康状態、医師又は獣医の判断などの要因に応じて変化する。本開示の化合物は、組み合わせた他の活性剤と同じ又は異なる投与経路で同時に、別々に、又は順番に投与することができる。これらは、同じ医薬組成物に含まれていてもよいし、単独の形態、例えば、カートリッジの形態の組み合わせ製品であってもよい。これらは、同一又は異なるメーカーによって調製及び/又は調合されてもよい。さらに、本開示の化合物及び他の活性剤は、(i)組み合わせ製品を医師に送る前に(例えば、本開示の化合物及び追加の薬物を含むカートリッジの場合に)、(ii)医師自身(又は医師の指導の下で)によって投与直前に、(iii)患者自身によって、例えば、本開示の化合物及び他の活性剤の順番による投与中に、組み合わせ療法に添加されてもよい。
【0214】
一実施態様では、本開示は、式(I)若しくは式(I-A)のいずれかを有する化合物、又はその薬学的に許容される塩と、1種又は複数種の他の活性剤とを含む医薬組成物を提供する。任意選択で、医薬組成物は、上記のような薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。
【0215】
一実施態様では、本開示は、少なくとも1つが式(I)化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、2つ以上の別個の医薬組成物を含むカートリッジを提供する。一実施態様では、カートリッジは、容器、別個の瓶、又は別個のフォイルバッグのような、組成物を別個に保持するための器具を含む。このようなカートリッジの例としては、通常、錠剤、カプセル剤等を包装するために使用されるブリスターパックである。
【0216】
本開示のカートリッジは、異なる用量で個々の組成物を間隔的に投与するために、又は個々の組成物を他のものと比較して段階的に増加させるために、例えば経口剤形及び非経口剤形など様々な剤形を投与することができる。コンプライアンスを向上させるために、本開示のカートリッジは、通常、取扱書を含む。
【0217】
本開示の併用治療において、本開示の化合物及び他の治療剤は、同一又は異なるメーカーによって調製及び/又は調和されてもよい。さらに、本開示の化合物及び他の治療剤は、(i)組み合わせ製品を医師に送る前に(例えば、本開示の化合物及び他の治療剤を含むカートリッジの場合に)、(ii)医師自身(又は医師の指導の下で)によって投与直前に、(iii)患者自身によって、例えば、本開示の化合物及び他の活性剤の順番による投与中に、併用治療に一緒に導入されてもよい。
【0218】
一般的な合成方法
【0219】
本開示の化合物は、以下に記載の方法、実施例に記載の方法、又はこれに類似した方法を含む様々な方法によって調製することができる。好適な一般的な合成スキームが以下に示される。各反応ステップに対して適切な反応条件は当業者には知られている。原料は、市販品として入手するか、又は以下の方法、以下に示す方法に類似した方法、又は当技術分野で知られている方法によって製造することができる。一般式中の各変数は、別段の記載がない限り、上記と同じ意味を有する。
【0220】
一実施態様では、本開示の化合物は、各変数が本明細書に定義された通りであり、具体的な反応条件が実施例と同じである一般的な合成スキームによって合成され得る。
【0221】
フロー1
【0222】
【化25】
以上の反応式において、Y’はヒドロキシであり、Y’’はC~Cアルコキシであり、X、X、X、X、Y、及び環Aの定義は、それぞれ前記の通りである。
【0223】
一般式Aの化合物は、以下の合成方法によって調製することができる。原料A及びリン酸ジエチル、炭酸セシウムをジメチルホルムアミドに加えて、室温で一晩反応させ、反応液に水を加えてクエチングし、ジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムに通して、一般式Aの化合物を得る。
【0224】
一般式Aの化合物は、以下の合成方法によって調製することができる。原料A及びA、炭酸セシウム、Pddba、並びにXphosをジオキサンに加えて、窒素保護下、100℃で撹拌して一晩反応させた。反応液を室温まで冷却し、ろ過して濃縮し、残留物を高速液体逆相分取カラムにより精製し、一般式Aの化合物を得る。
【0225】
一般式Aの化合物は、以下の合成方法によって調製することができる。原料Aとトリメチルシリルブロミドをアセトニトリルに加えて、室温で16時間反応させた後、濃縮し、高速液体逆相分取カラムにより分離して精製し、一般式I化合物を得る。
【0226】
別の実施態様では、本開示の化合物Aは、以下の一般的な合成スキームによって合成することができる。
【0227】
フロー2
【0228】
【化26】
一般式Aの化合物は、以下の合成方法によって調製することができる。オルトギ酸トリメチル、及び2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンを100℃で2時間反応させ、化合物A3-1を加えて、この温度で反応を2時間持続する。反応液を室温まで冷却して、固体を析出させ、濾過して、固体を収集し、A3-2化合物を得る。A3-2化合物をジフェニルエーテルに溶解し、230℃で1時間反応させ、反応液を室温まで冷却して、石油エーテルを加えて、固体を析出させ、濾過して、固体を収集し、A3-3化合物を得た。A3-3化合物及びオキシ塩化リンを100℃で1時間反応させ、室温まで冷却し、過剰なオキシ塩化リンを除去し、残留物に氷水を加えて、アンモニア水でpHを8に調整し、ジクロロメタンで抽出し、有機相を水及び飽和塩化ナトリウム溶液で順次洗浄し、乾燥し、濾過して濃縮し、シリカゲルカラムにより精製して、一般式Aの化合物を得る。
【図面の簡単な説明】
【0229】
図1】マウスにプロドラッグ化合物7(50mg/kg)を経口投与したときの、血漿中の有効成分化合物1の薬物動態曲線グラフである。
【0230】
図2】マウスにプロドラッグ化合物8(50mg/kg)を経口投与したときの、血漿中の有効成分化合物1の薬物動態曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0231】
本願において、化学名と構造式が矛盾する場合、文脈から構造式ではなく化学名が正しいと推測できない限り、構造式が優先されるものとする。
【0232】
当業者であれば明確に理解できるように、簡略化のために、本願に記載の一部の化合物の構造式におけるすべての水素原子が明確に示されているわけではない。化合物中の炭素原子又は窒素原子が空の価数を持つ場合、示されていない水素が存在することを示す。
【0233】
本開示の化合物は、本明細書に記載された方法、反応フロー、及び実施例に従って、有機合成の分野の当業者に知られている様々な方法で調製することができる。本開示の化合物は、以下に説明する方法を有機化学の分野で公知の合成方法を組み合わせて、又は当業者に理解され得る変形の方法を用いて合成することができる。好ましい方法は、以下に記載されるものを含むが、これらに限定されるものではない。反応は、使用される試薬及び材料に適し、かつ行われる転化に適した溶媒又は溶媒混合物中で行われる。有機合成の分野の当業者であれば、分子上に存在する官能基は所望の転化と一致しなければならないことを理解することができる。これは、所望の本開示の化合物を得るために、合成ステップの順序を変更するか、又は他と比較して特定の操作フローを選択するかの判断を必要とすることがある。
【0234】
以下では、本開示について、具体的な実施例を参照してさらに説明する。これらの実施例は、本開示を説明するためにのみ使用され、本開示の範囲を限定するためには使用されないことを理解されたい。以下の実施例に具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、通常の条件に従うか、メーカーが提案する条件に従う。特に明記されていない限り、パーセントと部数は重量パーセント、重量部、又は体積パーセント(液体の場合)である。
【0235】
説明の目的のために、以下に示される反応フローは、本開示の化合物を合成するための潜在的経路と主要中間体を提供する。個々の反応ステップのより詳細な説明については、以下の実施例の部分を参照する。当業者であれば、本開示の化合物は他の合成経路で合成されてもよいことを理解する。具体的な原料及び試薬はフローに示され、以下で議論されるが、他の原料及び試薬は、種々の誘導体及び/又は反応条件を提供するために容易に置換され得る。また、以下の方法により製造される化合物のほとんどは、当業者によく知られている従来の化学を本開示に基づいて使用することにより、さらに修飾されてもよい。
【0236】
本開示の化合物の調製においては、中間体の末端官能基の保護が必要である場合がある。このような保護の必要性は、遠位官能基の性質や調製方法の条件によって異なる。このような保護の必要性は、当業者であれば容易に判断できる。
【0237】
実施例
【0238】
以下の実施例で使用される実験材料及び試薬は、特に記載がない限り、市販品として入手可能である。原料は、通常、商業的な手段から入手することができ、又は当業者に周知の方法を用いて容易に調製することができる。
【0239】
各実施例において、実験機器の説明については、例えば、H NMRはVarian Mercury-300又はVarian Mercury-400型核磁気共鳴装置で記録され、13C NMRはVarian Mercury-400又はVarian Mercury-500又はVarian Mercury-600型核磁気共鳴装置によって記録され、化学シフトはδ(ppm)で表される。質量分析はFinnigan/MAT-95(EI)とFinnigan LCQ/DECA及びMicromass Ultra Q-TOF(ESI)型質量分析計によって記録された。逆相分取HPLCによる分離に使用されるシリカゲルは200~300メッシュである。
【0240】
【表3】
【0241】
重要中間体の合成
【0242】
中間体1a:5-クロロ-2-メトキシ-1,8-ナフチリジン
【0243】
【化27】
【0244】
ステップ1:5-(((6-メトキシピリジン-2-イル)アミノ)メチレン)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンの合成
【0245】
オルトギ酸トリメチル(100mL)を容れた一口フラスコ(250mL)に化合物2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(12.7g、88.61mmol)を加えた。100℃で2時間撹拌して反応させ、次に、化合物1a-1(5.0g、40.28mmol)を加えて、この温度で反応を2時間持続した。反応液を室温に冷却して、固体を析出させ、濾過し、固体を収集して化合物1a-2(10g、黄色の固体)を得て、収率は89%であった。H-NMR(400MHz,CDCl-d):δ9.30(d,J=13.6Hz,1H),7.63-7.59(m,1H),6.63-6.57(m,2H),3.99(s,3H),1.76(s,6H).
【0246】
ステップ2:7-メトキシ-1,8-ナフチリジン-4(1H)-オンの合成
【0247】
ジフェニルエーテル(50mL)を容れた一口フラスコ(250mL)に1a-2(5g、17.98mmol)を加えて、230℃で1時間撹拌して反応させた後、反応液を室温に冷却した後、石油エーテルを加えて、固体を析出させ、濾過し、固体を収集して化合物1a-3(2.9g、黄色の固体)を得て、収率は94%であった。H-NMR(400MHz,CDCl-d):δ11.97(s,1H),8.30(d,J=8.8Hz,1H),7.78-7.75(m,1H),6.79(d,J=8.8Hz,1H),6.05-6.03(m,1H),3.96(s,3H).
【0248】
ステップ3:5-クロロ-2-メトキシ-1,8-ナフチリジンの合成
【0249】
一口フラスコ(100mL)に化合物1a-3(500mg、2.84mmol)及びオキシ塩化リン10mLを順次加えて、100℃で1時間反応させた後、反応液を室温に冷却した後、過量のオキシ塩化リンを除去し、残留物に氷水を加えて、アンモニア水でpHを8に調整し、ジクロロメタンで抽出し、有機相を水及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗品を得て、シリカゲルカラム(PE:EA=5:1)により精製し、化合物1a(400mg、白色の固体)を得て、収率は73%であった。LCMS(ESI):m/z195.1[M+H];RT=1.137min(6.00min).
【0250】
中間体2a:4-クロロ-6-クロロ-7-メトキシキノリン
【0251】
【化28】
【0252】
ステップ1:5-((((4-クロロ-3-メトキシフェニル)アミノ)メチレン)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンの合成
【0253】
IPA(50mL)を容れた一口フラスコに化合物2a-1(3.00g、21.3mmol)及び5-(メトキシメチレン)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(4.75g、25.6mmol)を加えて、70℃で2時間撹拌して反応させ、室温に冷却し、濾過し、固体をメタノールで洗浄し、乾燥し、化合物2a-2(5.80g、黄色の固体)を得て、収率は92.3%であった。LCMS(ESI):m/z256.1[M-40+H];RT=1.08min(2.00min).
【0254】
ステップ2:6-クロロ-7-メトキシキノリン-4(1H)-オンの合成
【0255】
ジフェニルエーテル(100mL)を容れた一口フラスコに化合物2a-2(5.80g、19.7mmol)を加えて、200℃で2時間撹拌した。室温に冷却し、反応液を石油エーテルに注入し、濾過し、濾過ケーキをクロロホルムでスラリー化し、化合物2a-3(2.80g、灰色の固体)を得て、収率は73.6%であった。LCMS(ESI):m/z194.0[M+H];RT=1.08min(2.00min).
【0256】
ステップ3:4-クロロ-6-クロロ-7-メトキシキノリンの合成
【0257】
DIEA(7mL)を容れた一口フラスコに化合物2a-3(1.00g、5.18mmol)及びオキシ塩化リン(2mL)を加えて、100℃で1時間撹拌して反応させた。反応液を氷水に注入し、ジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフィープレートにより精製し、化合物2a(950mg、白色の固体)を得て、収率は86.9%であった。LCMS(ESI):m/z212.0[M+H];RT=1.15min(2.00min).
【0258】
中間体3a:4-クロロ-7-メトキシ-ピリド[2,3-d]ピリミジン
【0259】
【化29】
【0260】
ステップ1:2-アミノ-6-メトキシニコチン酸の合成
【0261】
乾燥した1つ口フラスコ(100mL)に化合物3a-1(5.0g、29.0mmol)、ナトリウムメトキシド(15.7g、290mmol)、及びメタノール(50mL)を室温で順次加えた。80℃に加熱して、48h反応させた。室温まで冷却し、減圧濾過し、濾過ケーキをメタノールで洗浄し、真空乾燥し、化合物3a-2(2.0g、白色固体)を収率40%で得た。LCMS(ESI):m/z 169.0[M+H];RT=1.10min(3min).
【0262】
ステップ2:7-メトキシピリド[2,3-d]ピリミジン-4-フェノールの合成
【0263】
乾燥した1つ口フラスコ(50mL)に化合物3a-2(1.0g、6.0mmol)、酢酸ホルムアミジン(624mg、17.8mmol)、及びエチレングリコールモノメチルエーテル(10mL)を室温で順次加えた。100℃に加熱し、18h反応させた。反応液を濃縮して、(DCM:メタノール=10:1)により精製し、化合物3a-3(200mg、白色固体)を収率20%で得た。LCMS(ESI):m/z177.9[M+H];RT=1.502min(3min).
【0264】
ステップ3:4-クロロ-7-メトキシピリド[2,3-d]ピリミジンの合成
【0265】
乾燥した1つ口フラスコ(50mL)に、化合物3a-3(200mg、1.13mmol)及びオキシ塩化リン(10mL)を室温で順次加えた。100℃に加熱し、16h反応させた。反応液を濃縮して、重炭酸ナトリウム溶液で残留物をpH9までアルカリ化し、ジクロロメタンで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮し、化合物3a(200mg、白色固体)を収率90%で得た。LCMS(ESI):m/z339.7[M+H];RT=1.521min(3min).
【0266】
中間体4a:4-クロロ-7-メトキシ-2-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン
【0267】
【化30】
【0268】
ステップ1:6-メトキシ-2-((4-メトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸メチルの合成
【0269】
室温で、乾燥した一口フラスコ(100mL)に4a-1(5.0g、24.9mmol)、PMBNH(4.1g、29.9mmol)、炭酸カリウム(6.87g、49.8mmol)、DMF(20mL)を順次加えた。80℃に加熱して16時間反応させた。室温に冷却し、酢酸エチル及び水で抽出し、有機相を食塩水で洗浄し、濃縮し、(PE/EA=2/1)により精製し、化合物4a-2(7g、無色液体)を得て、収率は92%であった。LCMS(ESI):m/z303.1[M+H];RT=1.98min(3min).
【0270】
ステップ2:メチル2-アミノ-6-メトキシニコチネートの合成
【0271】
室温で、乾燥した一口フラスコ(100mL)に化合物4a-2(7g、24mmol)、ジクロロメタン(5mL)、TFA(5mL)を順次加えて、室温で16時間反応させた。濃縮し、残滓をジクロロメタンで希釈し、重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し濃縮し、精製し、化合物4a-3(3.5g、無色液体)を得て、収率は80%であった。LCMS(ESI):m/z183.1[M+H];RT=1.42min(3min).
【0272】
ステップ3:2-アセトアミド-6-メトキシメチルニコチネートの合成
【0273】
室温で、乾燥した一口フラスコ(50mL)に化合物4a-3(2.0g、11.0mmol)、DIEA(7.1g、55.0mmol)、DMAP(134mg、1.1mmol)、ジクロロメタン(20mL)及び塩化アセチル(1.7g、22.0mmol)を順次加えた。室温で16時間反応させた。濃縮し、残滓を酢酸エチル及び水で抽出し、有機相を濃縮して、(PE/EA=10/1-1/1)により精製し、化合物4a-4(1.0g、白色の固体)を得た。収率は45%であった。LCMS(ESI):m/z224.8[M+H];RT=1.541min(3min).
【0274】
ステップ4:7-メトキシ-2-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-4(3H)-オンの合成
【0275】
室温で、乾燥した一口フラスコ(50mL)に化合物4a-4(1.0g、4.46mmol)、無水メタノール(10mL)、アンモニア水(20mL)を順次加えた。室温で16時間反応させた。濃縮し、残滓を酢酸エチル及び水で抽出し、有機相を濃縮し、残滓を少量の酢酸エチルでスラリー化し、濾過し、化合物4a-5(200mg、白色の固体)を得て、収率は21%であった。LCMS(ESI):m/z191.8[M+H];RT=1.715min(3min).
【0276】
ステップ5:4-クロロ-7-メトキシ-2-メチルピリド[2,3-d]ピリミジンの合成
【0277】
室温で、乾燥した一口フラスコ(50mL)に化合物4a-5(200mg、1.05mmol)、オキシ塩化リン(10mL)を順次加えた。100℃に加熱して16時間反応させた。濃縮し、残滓を重炭酸ナトリウム水溶液でpH=9に調整し、酢酸エチルで抽出し、有機相を乾燥し、濃縮し、濾過し、化合物4a(210mg、白色の固体)を得て、収率は90%であった。LCMS(ESI):m/z209.8[M+H];RT=2.44min(5min).
【0278】
中間体5a:7-クロロ-1-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン
【0279】
【化31】
【0280】
ステップ1:4-アミノ-1-メチル-1H-ピラゾール-5-ギ酸メチルの合成
【0281】
メタノール(30mL)を容れた一口フラスコに化合物5a-1(2g、10.8mmol)及びパラジウム炭素(400mg)を加えて、水素ガス加圧(15psi)、常温で3時間撹拌して反応させた。濾過し、濾液を濃縮し、化合物5a-2(1.6g、白色の固体)を得て、収率は95.6%であった。LCMS(ESI):m/z156.1[M+H];RT=0.94min(2.00min).
【0282】
ステップ2:1-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オールの合成
【0283】
n-ブタノール(15mL)及びDIEA(15mL)を容れた一口フラスコに化合物5a-2(1.6g、10.3mmol)及び酢酸ホルムアミジン(1.29g、12.4mmol)を加えて、110℃で6時間撹拌して反応させた。反応液を室温に冷却し、濾過し、固体をエチルエーテルで洗浄し、化合物5a-3(1.30g、白色の固体)を得て、収率は84.1%であった。LCMS(ESI):m/z151.2[M+H];RT=0.623min(2.00min).
【0284】
ステップ3:7-クロロ-1-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジンの合成
【0285】
塩化チオニル(20mL)を容れた一口フラスコに化合物5a-3(1.30g、8.67mmol)及びDMF(0.5mL)を加えて、90℃で2時間撹拌して反応させた。塩化チオニルを除去し、ジクロロメタン及び水を加えて、分液した。水相をジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、化合物5a(1.20g、白色の固体)を得て、収率は82.4%であった。LCMS(ESI):m/z169.0[M+H];RT=1.20min(2.00min).
【0286】
中間体6a:4-クロロ-7-メトキシ-1,6-ナフチリジン
【0287】
【化32】
【0288】
ステップ1:3-ブロモ-2-メトキシピリジン-4-アミンの合成
【0289】
無水アセトニトリル(10mL)を容れた一口フラスコ(100mL)に化合物6a-1(1.0g、8.06mmol)を加えた。0℃に冷却した後、それにNBS(1.44g、8.06mmol)をゆっくりと加えて、室温に上昇して、一晩撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルで抽出し、有機相を併せて、有機相を水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮後、カラム(PE:EA=8:1)により精製し、化合物6a-2(1.4g、黄色の固体)を得て、収率は88%であった。LCMS(ESI):m/z203.0[M+H];RT=0.967min(2.50min).
【0290】
ステップ2:5-(((3-ブロモ-2-メトキシピリジン-4-イル)アミノ)メチレン)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンの合成
【0291】
HC(OMe)(10mL)を容れた一口フラスコ(100mL)に2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(709mg、4.92mmol)を加えて、100℃で2時間撹拌して反応させ、化合物6a-2(500mg、2.46mmol)を加えて、反応を2時間持続した。反応液を室温に冷却した後、石油エーテルを加えて、固体を析出させ、濾過し、固体を収集して化合物6a-3(679mg、白色の固体)を得て、収率は77%であった。LCMS(ESI):m/z357.0359.0[M+H];RT=1.517min(2.50min).
【0292】
ステップ3:8-ブロモ-7-メトキシ-1,6-ナフチリジン-4-オールの合成
【0293】
ジフェニルエーテル(20mL)を容れた一口フラスコ(100mL)に化合物6a-3(3.0g、8.40mmol)を加えて、230℃で1時間撹拌して反応させた後、反応液を室温に冷却した後、石油エーテルで希釈し、濾過し、濾過ケーキを収集して化合物6a-4(2.27g、茶色の固体)を得て、収率は100%であった。LCMS(ESI):m/z255.0257.0[M+H];RT=0.957min(2.50min).
【0294】
ステップ4:7-メトキシ-1,6-ナフチリジン-4-オールの合成
【0295】
メタノール(10mL)を容れた一口フラスコ(50mL)に化合物6a-4(2.0g、7.84mmol)、ギ酸アンモニウム(980mg、15.68mmol)及びパラジウム炭素(300mg、wt%:10%)を順次加えて、60℃で1時間撹拌して反応させた。反応液を濾過し、濾液を濃縮して、酢酸エチルで希釈し、水及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、化合物6a-5(1.4g、黄色の固体)を得て、収率は100%であった。LCMS(ESI):m/z177.1[M+H];RT=0.757min(2.50min).
【0296】
ステップ5:4-クロロ-7-メトキシ-1,6-ナフチリジンの合成
【0297】
無水アセトニトリル(10mL)を容れた三つ口フラスコ(100mL)に化合物6a-5(900mg、0.644mmol)及びDIEA(1.7mL、5.62mmol)を順次加えて、窒素保護下、0℃に冷却した後、それにオキシ塩化リン(0.9mL、5.62mmol)をゆっくりと滴下し、70℃で30分間撹拌した後、反応液を室温に冷却し、飽和重炭酸ナトリウムでpH=8に調整し、酢酸エチルで抽出し、有機相を併せて、有機相を水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮後、カラム(PE:EA=10:1)により精製し、化合物6a(1.0g、黄色の固体)を得て、収率は100%であった。LCMS(ESI):m/z195.1[M+H];RT=1.287min(2.50min).
【0298】
中間体7a:8-クロロ-3-メトキシ-1,5-ナフチリジン
【0299】
【化33】
【0300】
ステップ1:5-((5-メトキシピリジン-3-イル)アミノ)メチレン)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンの合成
【0301】
2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(4.64g、16.11mmol)を一口フラスコ(250mL)に加えて、次に、オルトギ酸トリメチル(100mL)を加えた。105℃で2時間撹拌した。次に、化合物7a-1(4g、16.11mmol)を加えて、105℃で保温して一晩撹拌した。室温で石油エーテルを加えて希釈した後、濾過し、石油エーテルで濾過ケーキを洗浄し、濾過ケーキとして粗品7a-2(7g、黄色の固体)を得た。LCMS(ESI):m/z279.1[M-H];RT=0.891min(2.50min).
【0302】
ステップ2:7-メトキシ-1,5-ナフチリジン-4(1H)-オンの合成
【0303】
化合物7a-2(5g、17.97mmol)を三つ口フラスコ(250mL)に入れて、ジフェニルエーテル(100mL)を加えて、窒素保護下、1時間撹拌した。室温で大量のn-ヘキサンを加えて希釈し、濾過し、n-ヘキサンで濾過ケーキを洗浄し、濾過ケーキとして粗品7a-3(2.5g、灰色の固体)を得た。
【0304】
ステップ3:8-クロロ-3-メトキシ-1,5-ナフチリジンの合成
【0305】
化合物7a-3(3.50g、19.87mmol)を三つ口フラスコ(250mL)に入れて、オキシ塩化リン(70mL)を加えて、110℃で12時間撹拌した。室温に冷却し、溶媒を除去し、次に、ジクロロメタン及び少量の水を加えた。重炭酸ナトリウムでpHを9~10に調整した後、酢酸エチルで抽出した。有機相を塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去した。粗品を順相カラム(PE/EA=3:1)により精製し、化合物7a(2.70g、黄色の固体)を得た。収率は70%であった。LCMS(ESI):m/z195.1[M+H];RT=1.271min(2.50min).
【0306】
中間体8a:5-クロロ-1-メチル-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オン
【0307】
【化34】
【0308】
ステップ1:N-(4-クロロピリジン-2-イル)ピバロイルインダンジオンアミドの合成
【0309】
乾燥した100mL1つ口フラスコに、化合物8a-1(1.28g、10.0mmol)、トリエチルアミン(1.31g、13.0mmol)、ピリジン(15mL)及びジクロロメタン(15mL)を室温で順次加えた。その後、氷浴下、tert-ペンタノイルクロリド(1.32g、11.0mmol)を1滴ずつ滴下し、反応させて一晩撹拌した。減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラム(PE:EA=10:1)により精製し、生成物8a-2(1.85g、粉色固体)を収率87.00%で得た。H-NMR(400MHz,CDCl):8.36-8.35(m,1H),8.16-8.14(m,1H),8.10(s,1H),7.05-7.03(m,1H),1.30(s,9H).
【0310】
ステップ2:N-(4-クロロ-3-ホルミルピリジン-2-イル)ピバロイルインダンジオンアミドの合成
【0311】
乾燥した250mL三つ口フラスコに、化合物8a-2(5.7g、26.9mmol)、テトラヒドロフラン(70mL)を室温で順次加えた。窒素保護下、-78℃でn-ブチルリチウム(27mL、2.5Mテトラヒドロフラン)を1滴ずつ滴下し、反応液を-78℃で0.5h撹拌した。N,N-ジメチルホルムアミドを溶解したテトラヒドロフラン(30mL)溶液を加えて、-78℃で1h撹拌し続けた。室温に上昇して飽和塩化アンモニウム溶液(200mL)を加えて、室温で30分間反応させた。反応液をEA(100mL)で3回抽出し、有機相を飽和食塩水(50mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して減圧濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(PE:EA=3:1)により精製し、生成物8a-3(2g、黄色油状物)を収率31.00%で得た。LCMS(ESI):m/z240.8[M+H];RT=1.768min(3.00min).
【0312】
ステップ3:tert-ブチル3-(4-クロロ-2-ピンドンアミドピリジン-3-イル)-3-ヒドロキシプロピオネートの合成
【0313】
乾燥した250mL三つ口フラスコに、化合物8a-3(2.28g、9.5mmol)、及びテトラヒドロフラン(40mL)を室温で順次加えた。窒素保護下、-78℃でリチウムジイソプロピルアミド(10.5mL、2Mテトラヒドロフラン)を1滴ずつ滴下し、反応液を-78℃で0.5h撹拌した。さらに、酢酸tert-ブチルを溶解したテトラヒドロフラン(20mL)を加えて、-78℃で1h撹拌し続けた。室温に上昇して水(40mL)を加えて、EA(50mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して減圧濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(PE:EA=2:1)により精製し、製品8a-4(2.2g、黄色固体)を収率65.00%で得た。LCMS(ESI):m/z356.7[M+H];RT=1.871min(3.00min).
【0314】
ステップ4:5-クロロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンの合成
【0315】
乾燥した50mL1つ口フラスコに、化合物8a-4(1.9g、5.34mmol)、3M塩酸(20mL)を室温で順次加えて、100℃で8h反応させ、反応液を冷却して濾過し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(5mL)、及び水(5mL)で順次洗浄し、乾燥して製品8a-5(440mg、白色固体)を収率46.00%で得た。LCMS(ESI):m/z181.0[M+H];RT=1.20min(3.00min).
【0316】
ステップ5:5-クロロ-1-メチル-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンの合成
【0317】
乾燥した25mL1つ口フラスコに、化合物8a-5(100mg、0.56mmol)、ヨウ化メチル(102mg、0.72mmol)、炭酸カリウム(154mg、1.12mmol)、及びDMF(3mL)を室温で順次加えた。反応液を室温で一晩撹拌した。反応液に水(10mL)を加えて、EA(20mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して減圧濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(PE:EA=2:1)により精製し、製品8a(100mg、白色固体)を収率92.60%で得た。LCMS(ESI):m/z194.8[M+H];RT=1.621min(3.00min).
【0318】
中間体9a:4-クロロ-7-メチル-1,7-ナフチリジン-8-(7H)-オンの合成
【0319】
【化35】
【0320】
ステップ1:2,2-ジメチル-5-(((2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)アミノ)メチレン)-1,3-ジオキサ-4,6-ジオンの合成
【0321】
2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(2.36g、16.35mmol)を、オルトギ酸トリメチル20mLを容れた100mL1つ口フラスコに加えて、105℃、窒素保護下で2h撹拌後、化合物9a-1(1.5g、13.62mmol)を加えて、この温度で反応を2h持続した。室温に冷却した後、固体が析出すると、濾過して固体を収集し、製品9a-2(3.9g、淡灰白色固体)を収率100%で得た。LCMS(ESI):m/z263.1[M-H];RT=0.931min(2.50min).
【0322】
ステップ2:2,2-ジメチル-5-(((1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)アミノ)メチレン)-1,3-ジオキサ-4,6-ジオンの合成
【0323】
DMF 30mLを容れた100mL三つ口フラスコに、9a-2(1.5g、5.68mmol)、無水炭酸カリウム(4.32g、31.22mmol)を室温で順次加えて、0℃に冷却した後、それにヨウ化メチル(0.35ml、5.68mmol)をゆっくりと滴下した。室温で一晩撹拌し、反応液を濾過して、減圧濃縮した。粗品をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)により精製し、9a-3(700mg、黄色固体)を得た。LCMS(ESI):m/z277.1[M-H];RT=0.831min(2.50min).
【0324】
ステップ3:7-メチル-1,7-ジヒドロ-1,7-ナフチリジン-4,8-ジオンの合成
【0325】
ジフェニルエーテル100mLを容れた250mL1つ口フラスコに、9a-3(6.0g、21.58mmol)を加えて、230℃で2h撹拌した。室温に冷却した後、濾過して、濾過ケーキを収集し、9a-4(3.1g、棕色固体)を収率82%で得た。LCMS ESI):m/z177.1[M+H];RT=0.617min(2.50min).
【0326】
ステップ4:4-クロロ-7-メチル-1,7-ナフチリジン-8-(7H)-オンの合成
【0327】
9a-4(3.1g、17.6mmol)を、オキシ塩化リン30mLを容れた100mL1つ口フラスコに加えて、100℃、窒素保護下で1h撹拌した。冷却後オキシ塩化リンを除去し、0℃で砕氷を加えて、飽和重炭酸ナトリウムでpHを8に調整し、ジクロロメタンで抽出し、有機相を水、及び飽和塩化ナトリウムで順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して濃縮し、製品9a(2.1g、棕色固体)を得た。LCMS(ESI):m/z195.1[M+H];RT=0.937min(2.50min).
【0328】
実施例1:化合物1の合成
【0329】
【化36】
【0330】
ステップ1:(4-メトキシベンジル)ジエチルホスホネートの合成
【0331】
メタノール100mLを容れた1つ口フラスコに、化合物1-1(2.0g、12.8mmol)、リン酸ジエチル(2.7g、19.2mmol)、炭酸セシウム(8.4g、25.6mmol)及びジメチルホルムアミド(60mL)を加えた。室温で一晩反応させ。反応液に水を加えてクエチングし、ジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラム(PE:EA=5:1)により精製し、化合物1-2(2.5g、油状物)を得た。LCMS(ESI):m/z259.0[M+H];RT=1.452min(2.50min).
【0332】
ステップ2:(4-ヒドロキシベンジル)ジエチルホスホネートの合成
【0333】
乾燥したジクロロメタン(3mL)を容れた三つ口フラスコに、化合物1-2(200mg、0.8mmol)を加えて、アルゴン保護下、-78℃で1.0Mの三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液(3.2mL、3.2mmol)を滴下した。滴下完了後、反応物を0℃に昇温して1h撹拌した。反応液を飽和塩化ナトリウムでクエチングし、ジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラム(PE:EA=1:1)により精製し、化合物1-3(100mg、白色固体)を得た。H-NMR(400MHz,CDCl-d):δ7.05-7.02(m,2H),6.63(d,J=8.4Hz,2H),4.06-4.00(m,4H),3.05(d,J=21.2Hz,2H),1.28-1.25(m,6H).
【0334】
ステップ3:(4-((7-メトキシ-1,8-ナフチリジン-4-イル)オキシ)ベンジル)ジエチルホスホネートの合成
【0335】
ジオキサン3mLを容れた1つ口フラスコに、化合物1-3(100mg、0.4mmol)、化合物1a(78mg、0.4mmol)、炭酸セシウム(261mg、0.8mmol)、Pddba(触媒量)及びXphos(触媒量)を加えた。窒素保護下、100℃で撹拌して一晩反応させた。反応液を室温まで冷却し、ろ過して濃縮し、残留物をPrep-HPLCにより精製し、化合物1-4(21mg、類白色固体)を収率13.0%で得た。LCMS(ESI):m/z403.15[M+H];RT=2.323min(6.00min).H-NMR(400MHz,MeOD-d):δ8.62(d,J=8.8Hz,2H),7.48(dd,J=8.4,2.4Hz,2H),7.22(d,J=8.4Hz,2H),7.11(d,J=8.8Hz,1H),6.59(d,J=6.4Hz,1H),4.20-4.00(m,7H),3.35(s,2H),1.29(t,J=7.2Hz,6H).
【0336】
ステップ4:(4-((7-メトキシ-1,8-ナフチリジン-4-イル)オキシ)ベンジル)ホスホン酸の合成
【0337】
アセトニトリル(5mL)を容れた1つ口フラスコに、化合物1-4(75mg、0.19mmol)及びトリメチルシリルブロミド(0.12mL、0.93mmol)を加えて、室温で撹拌して16h反応させた。反応液を濃縮し、高速液体逆相分取カラムにより分離して精製し、化合物1(5.15mg、白色固体)を7.98%収率で得た。LCMS(ESI):m/z347.00[M+H];RT=3.262min(6.00min).H-NMR(400MHz,MeOD-d):δ8.83-8.77(m,2H),7.56(d,J=5.6Hz,2H),7.39(d,J=9.2Hz,1H),7.30(d,J=6.0Hz,2H),6.99(d,J=9.2Hz,1H),4.22(s,3H),3.24-3.16(m,2H).
【0338】
実施例2~6:化合物2~6の合成
【0339】
合成方法は、実施例1の化合物1と同様であった。原料として、実施例1の起始化合物1-1を4-クロロメチル-2-フルオロ-1-メトキシベンゼン、4-クロロメチル-2,6-ジフルオロ-1-メトキシベンゼン、4-クロロメチル-5-フルオロ-1-メトキシベンゼン、4-クロロメチル-3,5-ジフルオロ-1-メトキシベンゼン、4-クロロメチル-2,6-ジフルオロ-1-メトキシベンゼンにそれぞれ変更した。各実施例の化合物の構造式を上記の表に示す。実施例2~6の化合物のデータを以下に示す。
【表4】
【0340】
実施例7:化合物7の合成
【0341】
【化37】
【0342】
ステップ1:(4-(ベンジルオキシ)ベンジル)ジエチルホスホネートの合成
【0343】
化合物7-1(3.0g、12.92mmol)を100mL1つ口フラスコに加えて、室温で亜リン酸トリエチル(20mL)を加えた。150℃、窒素保護下で6h撹拌した。濃縮して、シリカゲルカラム(PE:EA=1:1)により精製し、化合物7-2(4.18g、黄色油状物)を収率97%で得た。LCMS(ESI):m/z357.1[M+Na];RT=1.441min(2.50min).
【0344】
ステップ2:(4-(ベンジルオキシ)ベンジル)ホスホン酸の合成
【0345】
化合物7-2(4.80g、14.35mmol)を、クロロホルム(50mL)を容れた250mL1つ口フラスコに加えた。室温でトリメチルシリルブロミド(20mL)を加えて、室温で一晩撹拌し、エタノールを加えてクエチングし、ジクロロメタンで希釈し、減圧濃縮した。PE:EA=5:1(50mL)でスラリー化し、濾過して(PE:EA=4:1、10mL)で濾過ケーキを洗浄し、精製して化合物7-3(2.80g、白色固体)を収率70%で得た。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ7.44-7.30(m,5H),7.15-7.12(m,2H),6.91-6.90(d,J=8.4Hz,2H),5.06(s,2H),2.86(d,J=21.6Hz,2H).
【0346】
ステップ3:((4-(ベンジルオキシ)ベンジル)(メチレン)-l5ホスホリル)ビス(オキシ)ビス(メチレン)ビス(2,2-ジメチルプロピオン酸)の合成
【0347】
乾燥した25mL1つ口フラスコに、化合物7-3(200mg、0.72mmol)、N-メチルピロリドン(5mL)、ピバル酸クロロメチル(0.62mL、4.31mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.71mL、4.31mmol)を室温で順次加えた。75℃で16h反応させた。反応完了後、水20mLに注入し、酢酸エチルで抽出した。有機相を併せて、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して、濾液を減圧濃縮した。粗製品をシリカゲルクロマトグラフィーカラム(PE:EA=1:1)により精製し、化合物7-4(320mg、黄色油状物)を収率87.89%で得た、H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.43-7.30(m,5H),7.20(dd,J=2.8Hz,8.8Hz,2H),6.92(d,J=8.4Hz,2H),5.62-5.56(m,4H),5.04(s,2H),3.17(d,J=21.6Hz,2H),1.21(s,18H).
【0348】
ステップ4:((4-ヒドロキシベンジル)(メチレン)-l5-ホスホリル)ビス(オキシ)ビス(メチレン)ビス(2,2-ジメチルプロピオン酸)の合成
【0349】
乾燥した100mL1つ口フラスコに、化合物7-4(480mg、0.95mmol)、酢酸エチル(30mL)及びパラジウム/炭素触媒(48mg)を室温で順次加えた。室温で1.5h反応させた。濾過して、濾液を減圧濃縮し、7-5(390mg、無色油状物)を収率98.84%で得た、H-NMR(400MHz,CDCl-d):δ7.05(dd,J=2.8Hz,8.4Hz,2H),6.96(s,1H),6.65(d,J=8.0Hz,2H),5.64-5.58(m,4H),3.15(d,J=21.6Hz,2H),1.22(s,18H).
【0350】
ステップ5:(((4-((7-メトキシ-1,8-ナフチリジン-4-イル)オキシ)ベンジル)(メチレン)-l5-ホスホリル)ビス(オキシ))ビス(メチレン)ビス(2,2-ジメチルプロピオン酸)の合成
【0351】
乾燥した25mL1つ口フラスコに、化合物7-5(86mg、0.21mmol)、トルエン(5mL)、化合物1a(40mg、0.21mmol)、リン酸カリウム(87mg、0.41mmol)、Xphos(9mg、0.02mmol)及びPddba(19mg、0.02mmol)を室温で順次加えた。窒素保護下、100℃に加熱し、16h反応させた。反応液を濾過して濃縮した後、prep-HPLCにより精製し、化合物7(8.5mg、無色油状物)を収率7.20%で得た。LCMS(ESI):m/z575.25[M+H];RT=4.181min(6.00min).H-NMR(400MHz,DMSO-d):δ8.71(d,J=5.6Hz,1H),8.58(d,J=8.8Hz,1H),7.42(d,J=7.2Hz,2H),7.26(d,J=8.0Hz,2H),7.17(d,J=8.8Hz,1H),6.57(d,J=5.6Hz,1H),5.64-5.57(m,4H),4.05(s,3H),3.45(d,J=21.6Hz,2H),1.17(s,18H).
【0352】
実施例8、9:化合物8、9の合成
【0353】
【化38】
【0354】
実施例7の合成方法を参照して化合物8、9を合成した。
【0355】
化合物8:LCMS(ESI):m/z579.0[M+H];RT=3.957min(6.00min).H-NMR(400MHz,DMSO-d):δ8.70(d,J=5.6Hz,1H),8.57(d,J=8.8Hz,1H),7.42-7.40(m,2H),7.26(d,J=8.8Hz,2H),7.17(d,J=8.8Hz,1H),6.57(d,J=5.6Hz,1H),5.61-5.56(m,4H),4.85-4.82(m,2H),4.05(s,3H),3.50(d,J=22.4Hz,2H),1.25(d,J=6.4Hz,12H).
【0356】
化合物9:LCMS(ESI):m/z615.5[M+H]
【0357】
実施例10:化合物10の合成
【0358】
【化39】
【0359】
ステップ1:ジエチル(4-ニトロベンジル)ホスホネートの合成
【0360】
室温で、乾燥した100mL1つ口フラスコに、p-ニトロベンジルブロミド(2.5g、11.6mmol)、亜リン酸トリエチル(4.8g、34.9mmol)、及びトルエン(30mL)を順次加えて、100℃に加熱して一晩放置し、反応液を減圧濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(PE:EA=1:1)により精製し、化合物10-2(2.5g、黄色固体)を収率81.00%で得た。H-NMR(600MHz,CDCl):8.19-8.18(m,2H),7.48-7.46(m,2H),4.07-4.04(m,4H),3.25(d,J=22.2Hz,2H),1.27(t,J=7.2Hz,6H).
【0361】
ステップ2:ジエチル(4-アミノベンジル)ホスホネートの合成
【0362】
乾燥した100mL1つ口フラスコに、化合物10-2(4g、14.6mmol)、10%パラジウム炭素(400mg)、及びエタノール(30mL)を室温で順次加えて、水素ガス保護下で一晩撹拌し、反応液を減圧濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(EA)により精製し、生成物10-3(3g、黄色固体)を収率84.00%で得た。LCMS(ESI):m/z244.1[M+H];RT=1.10min(3.00min).
【0363】
ステップ3:ジエチル(4-((7-メトキシ-1,8-ナフチリジン-4-イル)アミノ)ベンジル)ホスホネートの合成
【0364】
乾燥した50mL1つ口フラスコに、化合物10-3(130mg、0.53mmol)、化合物1a(104mg、0.53mmol)、Pddba(48mg、0.053mmol)、Xphos(33mg、0.053mmol)、炭酸カリウム(345mg、1.06mmol)、及びジオキサン(10mL)を室温で順次加えた。窒素保護下、100℃に加熱し、一晩撹拌した。反応液を減圧濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン:メタノール=30:1)により精製し、生成物10-4(150mg、黄色固体)を収率7.0%で得た。LCMS(ESI):m/z402.1[M+H];RT=1.19min(3.00min).
【0365】
ステップ4:(4-((7-メトキシ-1,8-ナフチリジン-4-イル)アミノ)ベンジル)ホスホン酸の合成
【0366】
25mL三つ口フラスコに、化合物10-4(150mg、0.37mmol)、及びクロロホルム(5mL)を加えて、窒素保護下、氷浴でトリメチルシリルブロミド(1Mジクロロメタン溶液)(0.37mL、0.37mmol)を滴下し、室温で撹拌して2h反応させた。反応液を濃縮し、高速液体逆相分取カラムにより分離して精製し、化合物10(30mg、白色固体)を得た。LCMS(ESI):m/z345.9[M+H];RT=3.26min(5.00min).H-NMR(400MHz,DMSO-d):9.02(d,J=9.2Hz,1H),8.32(d,J=7.2Hz,1H),7.46-7.38(m,4H),7.30(d,J=9.2Hz,1H),6.79(d,J=7.2Hz,1H),4.10(s,3H),3.10(d,J=21.6Hz,2H).
【0367】
実施例11:化合物11の合成
【0368】
【化40】
【0369】
ステップ1:4-ブロモメチルベンジルジエチルホスファイトの合成
【0370】
乾燥した50mL1つ口フラスコに、1,4-ジ(ブロモメチル)ベンゼン(1g、3.8mmol)、亜リン酸トリエチル(318mg、1.9mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(2mL)を室温で順次加えた。マイクロ波、150℃で2分間反応させた。反応液に水(10mL)を加えて、酢酸エチル(20mL)で3回抽出し、有機相を併せた後、水洗し(10mL)、食塩水(10mL)で洗浄し、乾燥して減圧濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(PE:EA=20:1)により精製し、生成物11-2(800mg、黄色油状物)を収率66%で得た。LCMS(ESI):m/z322.9[M+H];RT=1.55min(3.00min).
【0371】
ステップ2:(4-((4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキシベンズアルデヒド-2-イル)メチル)ベンジル)ジエチルホスホネートの合成
【0372】
ジオキサン15mLを容れた100mL三つ口フラスコに、化合物11-2(1.1g、3.44mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.31g、5.16mmol)、酢酸カリウム(842mg、8.59mmol)及び1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(触媒量)を室温で順次加えた。窒素環境において100℃で10h反応させ、濾過して、濾液を減圧濃縮した後、残留物について粗製品をカラム(PE:EA=3:1)により精製し、化合物11-3(520mg、黄色油)を収率38.1%で得た。LCMS(ESI):m/z369.2[M+H];RT=1.047min(2.50min).
【0373】
ステップ3:(4-((7-メトキシ-1,8-ナフチリジン-4-イル)メチル)ベンジル)ジエチルホスホネートの合成
【0374】
ジオキサン9mL及び水3mLを容れた50mL三つ口フラスコに、化合物11-3(420mg、1.14mmol)、5-クロロ-2-メトキシ-1,8-ナフチリジン(221mg、1.14mmol)、炭酸カリウム(394mg、2.85mmol)及び1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(触媒量)を加えた。100℃、窒素保護下、3h反応させた。冷却後、反応液に水を加えて希釈し、酢酸エチルで3回抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウムで2回洗浄し、乾燥して濾過した。減圧濃縮した後、prep-TLC(PE/EA=2/1)により精製し、化合物11-4(430mg、黄色油状物)を収率76.1%で得た。LCMS(ESI):m/z401.0[M+H];RT=1.024min(2.50min).
【0375】
ステップ4:(4-((7-メトキシ-1,8-ナフチリジン-4-イル)メチル)ベンジル)ホスホン酸の合成
【0376】
クロロホルム6mLを容れた50mL1つ口フラスコに、化合物11-4(100mg、0.25mmol)及びトリメチルシリルブロミド(191mg、1.25mmol)を室温で順次加えて、室温で一晩反応させ、反応液をメタノールでクエチングした後、濃縮してprep-HPLC(トリフルオロ酢酸系)により精製し、化合物11(45.0mg、白色固体)を収率52.3%で得た。LCMS(ESI):m/z344.9[M+H];RT=3.305min(6.00min).H NMR(400MHz,DMSO-d):δ8.92(d,J=5.2Hz,1H),8.69(d,J=9.2Hz,1H),7.51(d,J=4.8Hz,1H),7.27(d,J=9.2Hz,1H),7.18(s,4H),4.52(s,2H),4.06(s,3H),2.90(d,J=21.6Hz,2H).
【0377】
実施例12~56、58~69:化合物12~56、58~69の合成
【0378】
それぞれ化合物1、7、10、11の合成方法を参照して化合物12~56、58~69を合成し、各化合物のデータを以下に示す。
【表5】
【表6】
【0379】
実施例57:化合物57の合成
【0380】
【化41】
【0381】
ステップ1:イソプロピル((4-(ベンジルオキシ)ベンジル)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニンエステルの合成
【0382】
無水ジクロロメタン10mLを容れた50mL三つ口フラスコに、化合物57-1(700mg、2.52mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(触媒量)を加えて、40℃に加熱し、窒素保護下、それに塩化オキサリル(0.47mL、5.54mmol)の無水ジクロロメタン溶液をゆっくりと滴下し、この温度で3h撹拌して反応させ、温度を30℃に下げて一晩反応させた。製造した酸クロライド溶液を、氷浴下、フェノール(592mg、6.3mmol)及びトリエチルアミン(636mg、6.3mmol)を含有する乾燥したテトラヒドロフラン溶液にゆっくりと滴下し、室温で2h撹拌し、このステップを繰り返し、さらにL-アラニンイソプロピルエステル(464mg、2.77mmol)及びトリエチルアミン(390mg、3.02mmol)の乾燥テトラヒドロフラン溶液に滴下し、室温で一晩反応させ、反応液を濾過して、濃縮し、粗品を得て、カラム(PE:EA=1:1)により精製し、化合物57-2(140mg、黄色固体)を収率11.9%で得た。LCMS(ESI):m/z468.2[M+H];RT=1.296min(2.50min).
【0383】
ステップ2:イソプロピル((4-ヒドロキシベンジル)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニンエステルの合成
【0384】
酢酸エチル10mLを容れた50mL1つ口フラスコに、化合物57-2(0.14g、0.30mmol)及び10%のウェットパラジウム炭素(14mg)を順次加えて、水素ガス保護下室温で2h反応させた。濾過して、濾液を濃縮し、純度60%の化合物57-3(130mg、黄色油)を得た。LCMS(ESI):m/z378.1[M+H];RT=1.179min(2.50min).
【0385】
ステップ3:イソプロピル((4-((7-メトキシ-1,8-ナフチリジン-4-イル)オキシ)ベンジル)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニンエステルの合成
【0386】
無水トルエン6mLを容れた50mL三つ口フラスコに、化合物57-3(65mg、0.17mmol)、1a(35mg、0.17mmol)、無水リン酸カリウム(73mg、0.34mmol)及びPddba(触媒量)、並びに2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(触媒量)を順次加えて、アルゴン保護下、100℃で一晩反応させた。反応液を濾過して、濾液を濃縮し、Prep-HPLC(ギ酸系)により精製し、化合物57(9.75mg、白色固体)を収率5.3%で得た。LCMS(ESI):m/z536.1[M+H];RT=3.821min(6.00min).H-NMR(400MHz,MeOH-d):δ8.61(d,J=5.6Hz,2H),7.56-7.53(m,2H),7.34-7.31(m,2H),7.24-7.09(m,6H),6.63-6.59(m,1H),4.95-4.90(m,1H),4.12(s,3H),3.88-3.86(m,1H),3.51-3.40(m,2H),1.22-1.15(m,9H).
【0387】
生物学実施例
【0388】
化合物のENPP1阻害活性の評価
【0389】
基質2’,3’-cGAMP検出における本開示の化合物のENPP1阻害活性の試験
【0390】
実験目的:確立された実験方法に従って、2’,3’-cGAMPを基質とし、本願の化合物のENPP1に対する阻害IC50を検出した。STF-32を陽性対照化合物として使用した(STF-32は文献Cell Chemical Biology 2020(27),1347-1358に由来する)。
【0391】
実験試薬:hENPP1-ECD-His(ChemPartner,cat.202103121201),AMP-Glo(商標)Assay Kit(Promega,cat.V5011),DMSO(Sigma,cat.D8418-1L),384-ウェル白色プレート(PerkinElmer,cat.6007290),2’3’-cGAMP(MCE,cat.HY-100564A)
【0392】
実験方法:
【0393】
1.1×反応溶液の調製:50mMTris-HCl(pH7.5),10mMNaCl,0.5mMCaCl,1μMZnCl,0.01%トウェイン-20,0.01%BSA。
【0394】
2.化合物の濃度勾配調製:被測定化合物をDMSO(ジメチルスルホキシド)で開始濃度10μMまで溶解し、3倍希釈し、10個の濃度とし、単一ウェル又は重複ウェルを設置して試験した。陽性対照化合物STF-32の試験中の濃度は1μMから始まり、3倍希釈し、10個の濃度とし、濃度ごとに重複ウェルを設置して試験した。384ウェルプレートにおいて、それぞれの最終濃度の1000倍に勾配希釈された溶液とし、Echo550を用いて384ウェル反応プレートに5nL移して測定に供した。最小ウェル、最大孔に5nLの100%DMSOを移した。
【0395】
3.2×タンパク質溶液20μMを1×反応溶液で調製した。
【0396】
4.2×基質溶液40μMを1×反応溶液で調製した。
【0397】
5.反応プレートの各化合物ウェルと最大ウェルには2.5μLの2×タンパク質溶液を、最小ウェルには2.5μLの1×反応溶液を加えた。
【0398】
6.1000rpmで1min遠心分離し、室温で15分間インキュベートした。
【0399】
7.反応プレートの各ウェルに2.5μLの2×基質溶液を加え、1000rpmで1min遠心分離し、室温で60分間インキュベートした。
【0400】
8.反応プレートの各ウェルに5μLのR1溶液(AMP-Glo(商標)Kitより)を加え、1000rpmで1min遠心分離し、室温で120分間インキュベートした。
【0401】
9.反応プレートの各ウェルに10μLのR2溶液(AMP-Glo(商標)Kitより)を加え、1000rpmで1min遠心分離し、室温で30分間インキュベートした。
【0402】
10.多機能マイクロプレートリーダ(2104EnVision)を用いて検出し、試験結果を記録した。
【0403】
データ分析
【0404】
阻害率は次の式で計算される。
阻害率%=(最大シグナル-化合物シグナル)/(最大シグナル-最小シグナル)×100
ここで、「最小シグナル」は陰性対照ウェルの平均値であり、「最大シグナル」は陽性対照ウェルの平均値である。
【0405】
フフィッティング容量応答曲線:
【0406】
X軸に濃度のlog値を、Y軸にパーセンテージ阻害率を用いて、解析ソフトウェアGraphPadPrism5のlog(阻害剤)vs.応答-可変傾きフィッティング容量応答曲線を用いて、本開示の化合物による酵素活性の阻害IC50を得た。
【0407】
フィッティング式は、Y=ボトム+(トップ-ボトム)/(1+10^((logIC50-X)HillSlope))。
【0408】
【化42】
【0409】
【表7】
【0410】
表1から分かるように、本開示のホスホン酸系化合物、特にナフチリジン系ホスホン酸化合物のENPP1キナーゼ阻害活性は、陽性化合物STF32の阻害活性と同等であり、文献化合物STF22よりも著しく優れている(STF22は文献Cell Chemical Biology 2020(27),1347-1358から得られたものである)。文献報告によると、STF32はマウスの体内で代謝的に不安定で、注射投与後の半減期が短く、T1/2=14minである。本開示のホスホン酸系化合物は、生体内での代謝安定性を著しく改善しており、T1/2は3~5hであり、また、そのプロドラッグは、経口バイオアベイラビリティが高いため、ホスホン酸系化合物の経口投与ができないという欠点を克服できる。
【0411】
実験例2:マウスの薬物動態をテストする実験
【0412】
1.投与方式ごとに、体重30~35gの健康なICR雄マウス9匹を用意し、ランダムに3匹ずつ3群(M1、M2、M3)に分け、それぞれ胃内投与(50mg/kg)と静脈内注射(1mg/kg)で被測定化合物を投与した。
試験前に12h断食し、自由に水を飲んだ。投与後4hで統一的に食事を加えた。
【0413】
2.採血時点とサンプル処理
【0414】
胃内投与:投与後0.25h、0.5h、1.0h、2.0h、3.0h、4.0h、6.0h、8.0h、及び24h。
【0415】
静脈内投与:投与後5min、0.25h、0.5h、1.0h、2.0h、4.0h、6.0h、8.0h、及び24h。
【0416】
各時点で動物3匹から連続的に採血した。血漿採取と処理:以上の設定時間点にマウスの眼球後静脈叢から静脈血30~40μLを採取し、EDTA-K2試験管に入れ、3500rpmで10min遠心分離し、血漿を分離し、-20℃の冷蔵庫で冷凍した。
【0417】
3.サンプル試験とデータ分析
【0418】
LC/MS/MS法を用いてラット血漿中の化合物濃度を測定した。Phoenix8.3ソフトウェア(米国Pharsight社)のノンコンパートメントモデルを用いて投与後の薬物動態パラメータを計算した。
【0419】
4.実験結果
【0420】
プロドラッグ化合物7、及び8のマウスへの経口投与実験において、LC-MS/MSを用いて、血漿中のプロドラッグ化合物7、及び8、並びにその有効成分(原薬化合物1)の血中濃度を検出した。その結果、5min後のマウスの血漿中の有効成分(原薬化合物1)の血中濃度は、それぞれ2941ng/mL、及び2432ng/mLであった。これは、プロドラッグ化合物7及び8を経口投与した後、プロドラッグ化合物7及び8がマウスの血漿中で原薬化合物1に急速に(5min以内に)変換されることを示している。
【0421】
具体的には、マウスにプロドラッグ化合物7及び8(50mg/kg)を経口投与した後、マウスの血漿中で検出された有効成分1の薬物動態を図1及び図2に示す。ここで、M1、M2、及びM3は、それぞれ動物群の番号である。図1及び2から、本開示の化合物7、8及び化合物1が良好な薬物動態特性を有することが分かった。化合物7及び8をマウスに投与した後、モニターした化合物1の薬物動態特性(クリアランス率、AUC及びバイオアベイラビリティなど)は、単独で投与した化合物1の薬物動態特性と同様であった。これは、化合物7及び8がマウスにおいて原薬化合物1に変換され、化合物1は薬学的活性を発揮する。化合物1をプロドラッグ化合物7又は8に調製しても、化合物自体の薬理学的活性に影響を及ぼさないことを示している。これは、本開示の化合物1が、腫瘍又は感染によって引き起こされる障害や疾患など、ENPP1発現に関連する疾患に対して顕著な阻害効果を有することを示している。
【0422】
【表8】
【0423】
実施例7及び実施例8の化合物を経口投与した後に、検出した血漿中の化合物7及び8から変換された有効成分化合物1。
【0424】
表2から分かるように、本開示のホスホネート系又はアミド系プロドラッグ化合物を実施例7及び8のようにマウスに経口投与した場合、5min後にはその有効成分である化合物1のみが血漿中に検出された。プロドラッグ化合物7及び8と比較して、本開示の原薬化合物1は、AUC0-tの顕著な改善を示した。これは、本開示のホスホネート系又はアミド系プロドラッグが経口吸収に使用できることを示している。遊離リン酸基を含むホスホン酸系原薬化合物は、過度の極性、悪い脂溶性、低い経口バイオアベイラビリティにより、胃腸管での吸収や経口投与には適していない。この問題は、そのリン酸基をホスホン酸ジエステル又はアミド系誘導体に変換することで解決でき、たとえば、化合物1のエステル化により得られる化合物7及び8などのエステルは、脂溶性が向上し、体内で加水分解されて化合物になり、薬理学的効果を発揮し、経口バイオアベイラビリティが10%~17%に達する。化合物1と比較して、そのホスホネートの形態は、薬物の脂溶性、経口投与性、及び生物学的利用能を改善し、副作用を軽減し、安全をより高くする。
【0425】
実施例3:ラットの薬物動態をテストする実験
【0426】
1.投与方式ごとに、6~8週齢のSD雄ラット6匹を選択し、それぞれ胃内投与(5mg/kg)と静脈内注射(1mg/kg)で被測定化合物を投与した。試験前に12h断食し、自由に水を飲んだ。投与後4hで統一的に食事を加えた。
【0427】
2.採血時点とサンプル処理
【0428】
胃内投与:投与後0.25h、0.5h、1.0h、2.0h、3.0h、4.0h、6.0h、8.0h、及び24h。
【0429】
静脈内投与:投与後5min、0.25h、0.5h、1.0h、2.0h、4.0h、6.0h、8.0h、及び24h。
【0430】
血漿採取と処理:以上の設定時間点にラットの頸静脈叢又は適切な部位から150~200μLの血液を採取した、EDTA-K2試験管に入れ、3500rpmで10min遠心分離し、血漿を分離し、-20℃の冷蔵庫で冷凍した。
【0431】
3.サンプル試験とデータ分析
【0432】
LC/MS/MS法を用いてラット血漿中の化合物濃度を測定した。Phoenix8.3ソフトウェア(米国Pharsight社)のノンコンパートメントモデルを用いて投与後の薬物動態パラメータを計算した。
【0433】
4.実験結果
【0434】
ラットにおけるプロドラッグ化合物7の静脈注射及び経口投与実験において、LC-MS/MSを用いて血漿中の原薬化合物1(有効成分)の血中濃度を検出した。結果を表3に示す。
【0435】
実施例4:犬の薬物動態をテストする実験
【0436】
1.投与方式ごとに、0.5~1.5歳のビーグル犬6頭を選択し、それぞれ胃内投与(2mg/kg)と静脈内注射(1mg/kg)で被測定化合物を投与した。試験前に12h断食し、自由に水を飲んだ。投与後4hで統一的に食事を加えた。
【0437】
2.採血時点とサンプル処理
【0438】
静脈内投与及び胃内投与:投与後0.083、0.25、0.5、1、2、4、6、8、及び24h。各時点で動物3匹から連続的に採血した。血漿採取と処理:以上の設定時間点にビーグル犬の頸静脈叢又は適当な部位から1000μLの血液を採取した、EDTA-K2試験管に入れ、3500rpmで10min遠心分離し、血漿を分離し、-20℃の冷蔵庫で冷凍した。
【0439】
3.サンプル試験とデータ分析
【0440】
LC/MS/MS法を用いてビーグル犬血漿中の化合物濃度を測定した。Phoenix8.3ソフトウェア(米国Pharsight社)のノンコンパートメントモデルを用いて投与後の薬物動態パラメータを計算した。
【0441】
4.実験結果
【0442】
ビーグル犬におけるプロドラッグ化合物7の静脈注射及び経口投与実験において、LC-MS/MSを用いて血漿中の原薬化合物1(有効成分)の血中濃度を検出した。結果を表3に示す。
【0443】
【表9】
【0444】
実施例7の化合物の投与後、血漿中で化合物7から変換された有効成分化合物1を検出する。ラットにはプロドラッグ化合物7(5mg/kg)の経口投与及び活性化合物1(1mg/kg)の静脈内注射が施され、ビーグル犬にはプロドラッグ化合物7(2mg/kg)の経口及び活性化合物1の静脈内注射が施される(1mg/kg)。
【0445】
SDラット及びビーグル犬における薬物動態試験の結果は、活性化合物1の静脈内注射ではクリアランス率が低く、生体内での半減期が長いことを示している。プロドラッグ化合物7は、経口投与すると、体内で迅速に代謝されて活性化合物1になり、経口バイオアベイラビリティが高いことを示している。
【0446】
要約すると、本開示のホスホネート系又はアミド系プロドラッグ化合物は、その自体に生物学的活性を持たないが、IV又はPO投与後の生体内代謝を通じて活性なホスホン酸系化合物に変換され得る。ホスホン酸系原薬化合物は、ENPP1に対する阻害活性が高いが、その高い極性により経口投与には適しておらず、一方、ホスホネート系又はアミド系プロドラッグ化合物は、薬物の溶解度を高め、投与経路を改善するだけでなく、薬物の安定性を高め、薬物の経口バイオアベイラビリティを改善することもできる。
【0447】
本開示のホスホネート系又はアミド系(I-A)化合物は、ホスホン酸系(I)化合物のプロドラッグとして使用することができる。式(I)化合物は、ENPP1阻害剤であることが示されており、したがって、本開示の化合物は、ENPP1関連疾患の治療に使用することができ、ENPP1関連疾患の治療薬として化合物を提供するのに有用である。
図1
図2
【国際調査報告】