(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】感光・熱硬化・現像性樹脂組成物、そのドライフィルム及びその硬化物並びにそれらを用いて形成してなるプリント配線板
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20250123BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20250123BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20250123BHJP
C08F 290/08 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 504
G03F7/004 512
G03F7/027 515
H05K3/28 D
H05K3/28 F
C08F290/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543264
(86)(22)【出願日】2023-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2023142358
(87)【国際公開番号】W WO2024140806
(87)【国際公開日】2024-07-04
(31)【優先権主張番号】202211699084.3
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507149350
【氏名又は名称】太陽油墨(蘇州)有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIYO INK(SUZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.26TaishanRoad,Suzhou New District,Suzhou City,Jiangsu 215129China
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】ドン スーユェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユービン
(72)【発明者】
【氏名】イャォ グゥォロン
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】ワン ピンチン
(72)【発明者】
【氏名】ルゥォ ジンイー
(72)【発明者】
【氏名】プー グゥォビン
【テーマコード(参考)】
2H225
4J127
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC31
2H225AC54
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(57)【要約】
本発明は、印刷性に優れ、且つ優れた硬度及び冷熱衝撃耐性を有するソルダーレジスト層を形成することができる感光・熱硬化・現像性樹脂組成物、そのドライフィルム及びその硬化物並びにそれらを用いて形成してなるプリント配線板を提供する。前記感光・熱硬化・現像性樹脂組成物は、(A)ビニルエステル樹脂、(B)光重合開始剤、(C)リン酸エステル系分散剤、(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び(E)無機フィラーを含有し、前記(C)リン酸エステル系分散剤は、(C-1)主鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーを含み、前記(E)無機フィラーは、タルクとシリカとを含み、(A)ビニルエステル樹脂(固形分換算)100重量部に対して、タルクとシリカの両者の合計量が50~180重量部であり、タルクとシリカの合計量を100重量%とした時に、タルクの割合が20~80重量%であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニルエステル樹脂、(B)光重合開始剤、(C)リン酸エステル系分散剤、(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び(E)無機フィラーを含有し、
前記(C)リン酸エステル系分散剤は、(C-1)主鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーを含み、
前記(E)無機フィラーは、タルクとシリカとを含み、(A)ビニルエステル樹脂(固形分換算)100重量部に対して、タルクとシリカの両者の合計量が50~180重量部であり、タルクとシリカの合計量を100重量%とした時に、タルクの割合が20~80重量%であることを特徴とする感光・熱硬化・現像性樹脂組成物。
【請求項2】
(B)光重合開始剤及び(C)リン酸エステル系分散剤以外の(F)ほかの添加剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物。
【請求項3】
(G)エポキシ樹脂をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物。
【請求項4】
(H)有機溶媒をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)リン酸エステル系分散剤は、(C-2)側鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布し、乾燥させて得られたことを特徴とする光硬化性ドライフィルム。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を銅に塗布し、乾燥させて得られた塗膜、又は当該感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布し、乾燥させ、得られた光硬化性ドライフィルムを銅に積層して得られた塗膜を光硬化して得られたことを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を基材に塗布し、乾燥させて得られた塗膜、又は当該感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布し、乾燥させ、得られた光硬化性ドライフィルムを基材に積層して得られた塗膜を光硬化した後に、熱硬化して得られた硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板のソルダーレジスト剤等の形成に好適な感光・熱硬化・現像性樹脂組成物、そのドライフィルム及びその硬化物に関し、特に、印刷性に優れ、且つ優れた硬度及び冷熱衝撃耐性を有するソルダーレジスト層を形成することができる感光・熱硬化・現像性樹脂組成物、そのドライフィルム及びその硬化物、並びにプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一部の民生用プリント配線板及びほとんどの産業用プリント配線板のソルダーレジスト剤には、紫外線により露光した後に、現像してパターンを形成し、且つ熱及び/又は光照射により完全に硬化(主硬化)するアルカリ性現像型ソルダーレジスト剤が用いられている。また、自動車、列車、船舶及び航空機等の乗り物に用いられる半導体装置では、プリント配線板ソルダーレジスト剤として、高信頼性電子材料向けソルダーレジスト剤が用いられる傾向にある。
【0003】
しかし、一般的なアルカリ性現像型ソルダーレジストは熱膨張などの理由で、通常、冷熱衝撃時のクラック耐性が悪く、環境温度の変化に対する信頼性が悪い。タルクをフィラーとして選択することでクラックを改善できるが、印刷性及び硬度が悪い。また、車載用ソルダーレジストの冷熱衝撃耐性への要求を満たすように、タルク及び硫酸バリウムをフィラーとして用いることはできるが、印刷性及び硬度が悪くなる。
【0004】
例えば特許文献1の光硬化型ソルダーレジストはフィラーとして、シリカ、硫酸バリウム及びタルクを用いた。特許文献2のソルダーレジスト層用硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂、熱硬化成分、難燃剤及びイオン捕捉剤を含有し、前記イオン捕捉剤は、ハイドロタルサイト系イオン捕捉剤とハイドロタルサイト系以外のイオン捕捉剤との混合物であり、無機フィラーとして水酸化アルミニウムを用いた。特許文献3の硬化性樹脂組成物はプリント配線板の永久マスクとして用いられ、分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂と、光重合開始剤と、光重合性モノマーと、アルミナで表面処理された酸化チタンと、硫酸バリウム及び/又はタルクと、有機溶媒とを含む。特許文献4には、紫外線光硬化液状感光性ソルダーレジストフレキインクでは、フィラーが硫酸バリウム、タルク又はシリカであると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:CN114716868A
特許文献2:CN108137791A
特許文献3:CN101798432A
特許文献4:CN106380929A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ソルダーレジストの印刷性及びそれから形成してなるドライフィルム、硬化物の硬度を改善するとともに、長期信頼性をさらに改善することにある。
【0007】
より具体的には、本発明の目的は、印刷性に優れ、且つ優れた硬度及び冷熱衝撃耐性を有するソルダーレジスト層を形成することができる感光・熱硬化・現像性樹脂組成物、そのドライフィルム及びその硬化物、並びにプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、フィラー及び添加剤の種類が冷熱衝撃耐性に大きな影響を与えることを見出した。(A)ビニルエステル樹脂、(B)光重合開始剤、(C)リン酸エステル系分散剤、(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び(E)無機フィラーを含有し、前記(C)リン酸エステル系分散剤は、(C-1)主鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーを含み、前記(E)無機フィラーは、タルクとシリカとを含み、(A)ビニルエステル樹脂(固形分換算)100重量部に対して、タルクとシリカの両者の合計量が50~180重量部であり、タルクとシリカの合計量を100重量%とした時に、タルクの割合が20~80重量%であることを特徴とする感光・熱硬化・現像性樹脂組成物は、上記の課題を解決することができ、本発明を完成することに至った。
【0009】
即ち、本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物は、(A)ビニルエステル樹脂、(B)光重合開始剤、(C)リン酸エステル系分散剤、(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び(E)無機フィラーを含有し、前記(C)リン酸エステル系分散剤は、(C-1)主鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーを含み、前記(E)無機フィラーは、タルクとシリカとを含み、(A)ビニルエステル樹脂(固形分換算)100重量部に対して、タルクとシリカの両者の合計量が50~180重量部であり、タルクとシリカの合計量を100重量%とした時に、タルクの割合が20~80重量%であることを特徴とする。
【0010】
また、(B)光重合開始剤及び(C)リン酸エステル系分散剤以外の(F)ほかの添加剤を含有することが好ましい。
【0011】
また、(G)エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0012】
また、(H)有機溶媒を含有することが好ましい。
【0013】
また、(C)リン酸エステル系分散剤は、(C-2)側鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーをさらに含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明のドライフィルムは、キャリアフィルムに前記感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて得られたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の硬化物は、前記感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を銅に塗布し、乾燥させて得られた塗膜、又は当該感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布し、乾燥させ、得られた光硬化性ドライフィルムを銅に積層して得られた塗膜を光硬化して得られたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明のプリント配線板は、前記感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を基材に塗布し、乾燥させて得られた塗膜、又は当該感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布し、乾燥させ、得られた光硬化性ドライフィルムを基材に積層して得られた塗膜を光硬化した後に、熱硬化して得られたことを特徴とする。
【0017】
本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物は、(A)ビニルエステル樹脂、(B)光重合開始剤、(C)リン酸エステル系分散剤、(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び、(C)リン酸エステル系分散剤として、(C-1)主鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーを含み、(E)無機フィラーとして、前記(E)無機フィラーは、タルクとシリカとを含むことを最も大きな特徴とする。
【0018】
本発明の特徴的な構成に基づき、主鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーを使用し、従来のフィラーである硫酸バリウムの代わりに、タルクとシリカを併用し、且つ両者の配合比を最適化することで、冷熱衝撃耐性を効果的に向上させる上で、印刷性及び鉛筆硬度を改善することができる。
【0019】
これに対して、フィラーとして、タルクと硫酸バリウムを併用することで、ソルダーレジストの冷熱衝撃耐性への要求を満たすことはできるが、鉛筆硬度が悪くなる(例えば特許文献1等)。
【0020】
上記したように、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、タルクがフィラーとして、柔軟性がよく、冷熱衝撃サイクル試験(Temperature Cycle Test、以下、「TCT試験」と略称することがある)では、クラック耐性に優れたが、表面硬度が顕著に低下したことを見出した。また、タルクの吸油量が多いため、インクの印刷性が著しく悪くなる。これに対して、シリカは硬度が高く、吸油量も少ない。タルクとシリカを併用し、且つ両者の配合比を最適化することで、上記本発明の目的を達成した。
【発明の効果】
【0021】
上記したように、本発明によれば、印刷性に優れ、且つ優れた硬度及び冷熱衝撃耐性を有するソルダーレジスト層を形成することができる感光・熱硬化・現像性樹脂組成物、そのドライフィルム及びその硬化物、並びにプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例で印刷性を評価するための基板を示す図である。
【
図2】実施例で冷熱衝撃耐性を評価した際にクラックが生じたイメージ図である。
【
図3】実施例で冷熱衝撃耐性を評価した際にクラックが生じていないイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物の各構成成分について説明する。
本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物は、(E)無機フィラーを含有し、前記(E)無機フィラーは、タルクとシリカを必須成分として含むことを特徴とするため、まず、(E)無機フィラーについて説明する。
【0024】
(E)無機フィラー
本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物では、(E)無機フィラーとして用いられるタルクは、冷熱衝撃耐性を向上させるために用いられるものである。シリカは、印刷性を改善するために用いられるものである。
【0025】
タルクとして、母岩が炭酸マグネシウム、蛇紋石、シリカ/シリカ-アルミナ、マグネシウム堆積物のいずれか1種であればよく、いわゆるケイ酸塩鉱物の1種であればよく、形状が塊状であっても微粉状であってもよい。表面処理は行っても行わなくてもよい。タルクの吸油量は20~100ml/100gであることが適切であり、好ましくは30~90ml/100gであり、より好ましくは40~80ml/100gである。タルクの平均粒子径は、1.0~20.0μmであることが適切であり、より好ましくは2.0~10μmであり、さらに好ましくは3.0~8.0μmである。
【0026】
市販品として、山東省平度市滑石鉱業有限公司製HD25、富士タルク工業株式会社製LMP-100等が挙げられる。
【0027】
シリカとして、アモルファス、結晶のいずれか1つであってもよく、それらの混合物であってもよい。特に好ましくは非晶質(溶融)シリカである。表面処理は行っても行わなくてもよい。シリカの吸油量は15~60ml/100gであることが適切であり、好ましくは20~50ml/100gであり、より好ましくは27~45ml/100gである。シリカの平均粒子径は、0.1~10.0μmであることが適切であり、より好ましくは1.0~8.0μmであり、さらに好ましくは2.0~6.0μmである。
【0028】
シリカの市販品として、江蘇NOVORAY新材料股フン有限公司製CS1002及びCS1002A等、シベルコSibelco有限公司製A-8、Tokuyama Co., Ltd.製SE-40、株式会社龍森製MSV25G、株式会社龍森製MLV-2114、ADMATECHS製SO-E5、ADMATECHS製SO-E2等が挙げられる。
【0029】
タルク及びシリカの配合割合について、両者の合計量を100重量%とした時に、タルクの割合の下限値が20重量%以上であることが適切であり、好ましくは25重量%以上であり、より好ましくは30重量%以上である。タルクの割合の上限値が80重量%以下であることが適切であり、好ましくは75重量%以下であり、より好ましくは70重量%以下である。タルクの割合が上記の範囲内であれば、冷熱衝撃耐性を著しく改善することができる。20重量%未満では、十分な冷熱衝撃耐性が得られなくなる一方で、80重量%を超えると、依然として冷熱衝撃耐性には優れたものの、印刷性及びソルダーレジスト膜の表面硬度が低下する傾向にある。これは、タルクは吸油量が多いため、その使用量が多過ぎると、インクの印刷性が大きく影響されるためであると推測される。これに対して、シリカは硬度が高く、且つ吸油量が少ないため、両者を適切な割合で配合することで、印刷性と鉛筆硬度(少なくとも4H、好ましくは6H以上)を両立するとともに、冷熱衝撃耐性を改善する(-40℃~160℃の冷熱サイクル条件下で少なくとも1000回のサイクルに耐える)ことを実現させた。
【0030】
また、(A)ビニルエステル樹脂(固形分換算)100重量部に対して、タルクとシリカの両者の合計量が50~180重量部であることが適切であり、好ましくは60~160重量部であり、より好ましくは80~150重量部である。上記の範囲内であれば、印刷性と硬度を両立させながら優れた冷熱衝撃耐性を得ることを確保できる。
【0031】
冷熱衝撃耐性、鉛筆硬度及び印刷性をさらに満足する点から、本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物は硫酸バリウムを含まないことが好ましい。
【0032】
(A)ビニルエステル樹脂
【0033】
本発明の光硬化性熱硬化樹脂組成物における(A)ビニルエステル樹脂として、アルカリ現像性を付与するための、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する公知の樹脂を用いることができる。光硬化性、耐現像性の点から、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂が特に好ましい。また、当該不飽和二重結合は、アクリル酸又はメタクリル酸又はそれらの誘導体に由来することがより好ましい。(A)ビニルエステル樹脂として、エポキシ樹脂を出発原料とする樹脂、ウレタン骨格を有するポリウレタン樹脂、不飽和カルボン酸の共重合構造を有する共重合樹脂、フェノール化合物を出発原料とする樹脂が好ましい。以下、(A)ビニルエステル樹脂の具体例を示す。
【0034】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する1種以上の化合物を共重合させて得られるビニルエステル樹脂、
(2)グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基及び不飽和二重結合を有する化合物や(メタ)アクリル酸クロライド等を用い、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する1種以上の化合物とのコポリマーにエチレン性不飽和基を側基として付加させて得られる感光性ビニルエステル樹脂、
(3)グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基及び不飽和二重結合を有する化合物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物とのコポリマーに、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸を反応させ、生成された2級水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性ビニルエステル樹脂、
(4)無水マレイン酸等の不飽和二重結合を有する酸無水物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物とのコポリマーに、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等の水酸基及び不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性ビニルエステル樹脂、
(5)多官能エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成された水酸基に飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるビニルエステル樹脂、
(6)ポリビニルアルコール誘導体等の水酸基含有ポリマーに、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成されたカルボン酸に1分子中にエポキシ基及び不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる、水酸基及びカルボキシル基を含有するビニルエステル樹脂、
(7)多官能エポキシ化合物と、不飽和モノカルボン酸と、1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物との反応生成物に、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるビニルエステル樹脂、
(8)1分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂中の1級水酸基に飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるビニルエステル樹脂、及び
(9)多官能エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応させた後、多塩基酸無水物と反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、さらに、分子中に1個のオキシラン環と1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させて得られるビニルエステル樹脂、
(10)不飽和モノカルボン酸に二官能エポキシ化合物を反応させ、生成された水酸基に飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるビニルエステル樹脂。
【0035】
これら例示されたもののうち、特に好ましいものは、前記(2)、(5)、(7)、(9)のビニルエステル樹脂である。
【0036】
なお、本明細書では、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語であり、以下、ほかの類似表現についても同様である。
【0037】
上記した(A)ビニルエステル樹脂は、主鎖ポリマーの側鎖に遊離カルボキシル基を複数有するため、希アルカリ水溶液を用いて現像することができる。
【0038】
また、上記(A)ビニルエステル樹脂の酸価は、好ましくは40~200mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは45~120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、ラインは必要以上に痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部は区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
【0039】
また、上記(A)ビニルエステル樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000、さらには5,000~100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、基板への塗布、乾燥後のタックフリー性能が劣ることがあり、また、露光後の塗膜の耐湿性が悪く、現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく劣り、保存安定性が悪くなることがある。
【0040】
(A)ビニルエステル樹脂の配合量は、固形分換算で全組成物の20~60質量%の範囲であることが望ましく、好ましくは25~50質量%である。(A)ビニルエステル樹脂の配合量が上記の範囲より少ない場合、塗膜の強度が低下するので好ましくない。一方、上記の範囲より多い場合、組成物の粘性が高くなるか、塗布性などが低下するので好ましくない。
【0041】
(B)光重合開始剤
本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤は、一般的に感光・熱硬化・現像性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤であれば、特に制限されることがない。
【0042】
光重合開始剤として、公知のものを使用することができ、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;及びオキソアントラセン等が挙げられる。
【0043】
また、光重合開始剤として、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤等を使用することもできる。
【0044】
オキシムエステル系光重合開始剤の市販品として、BASF Japan社製のIrgacure OXE01、Irgacure OXE02、ADEKA CORPORATION製のN-1919、NCI-831等が挙げられる。分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤を好適に用いることができ、具体的には、カルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【0045】
アルキルフェノン系光重合開始剤の市販品として、IGM Resins B.V.社製のOmnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127等のα-ヒドロキシアルキルフェノン系が挙げられる。
【0046】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤として、具体的には、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。市販品として、IGM Resins B.V.社製のOmnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 379等を使用することができる。
【0047】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤として、具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、3官能以上のアシルホスフィン系光重合開始剤等が挙げられる。この3官能以上のアシルホスフィン系光重合開始剤は、1分子中に3個以上のアシルホスフィンオキサイド骨格を有する光重合開始剤であってもよく、下式(I)で表されることができる。
式中、
Aは互いに独立して、単結合、O、S又はNR
3を表し、
Gは多官能化合物(コア)G-(A-H)
m+nの残基(ここで、A-Hはそれぞれ、アルコール基又はアミノ基又はチオール基を表す)であり、
m及びnはいずれも整数であり、且つm+nは3~10の間の整数であり、
mは3~8の間の整数であり、
R
1及びR
2は互いに独立して、各々中断されず、又は1個以上の酸素及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換若しくは非置換イミノ基で切断されたC
1-C
18のアルキル基、C
6-C
12のアリール基及びC
5-C
12のシクロアルキル基であり、或いはR
1及びR
2は互いに独立して、それぞれアリール基、アルキル基、アリールオキシ基、アルコキシ基、ヘテロ原子及び/又は複素環基で置換されていてもよい、酸素及び/又は窒素及び/又は硫黄原子を含有する5~6員複素環基であり、
R
2はR
1-(C=O)-であってもよく、
YはO又はSであり、
R
3は水素又はC
1~C
4のアルキル基である。
【0048】
ここで、式(I)で表される光重合開始剤は光硬化性エチレン性不飽和基を含まない。
【0049】
好ましくは、式(I)において、m+nは3~8の間の整数であり、より好ましくは3~6の間の整数である。例えば、式Iにおいて、mは3~6の間の整数であり、より好ましくは3~5の間の整数である。
【0050】
式(I)において、Aが酸素である場合、G-(A-H)m+nは多価水酸基(ポリヒドロキシ)化合物であって、単量体ポリオール、オリゴマーポリオール及び高分子ポリオール並びにそれらの混合物からなる群から選択される。Aが硫黄である場合、G-(A-H)m+nはポリチオール化合物である。式(I)において、Aが窒素である場合、G-(A-H)m+nは線状又は分岐状ポリアミンである。Aが酸素及び/又は窒素及び/又は硫黄の混合物である場合、G-(A-H)m+nは異なる官能基を含む化合物、例えばアミノ基及びヒドロキシ基を含む化合物である。本発明の実施に適する残基G-は光硬化性エチレン性不飽和基を含まない。Aが単結合である場合、G-は上記例示されているG-(A-H)m+nからヒドロキシ基及び/又はアミノ基及び/又はメルカプト基を除去した残基である。
【0051】
好ましくは、G-(A-H)m+nは数平均分子量が1,500以下であり、より好ましくは800以下であり、さらに好ましくは500以下である。
【0052】
nが0でない場合、式(I)で表される化合物は、アルコール性遊離基及び/又はアミノ基及び/又はメルカプト基を有する。
【0053】
式(I)に含まれる代表的な3官能以上のアシルホスフィン系光重合開始剤を表1に示す。中でも、PI-3、PI-4、PI-10、PI-11、PI-12、PI-14、PI-17が特に好ましい。このような3官能以上のアシルホスフィン系光重合開始剤を含むことにより、アウトガスが抑制され、絶縁信頼性により優れた硬化物を得ることができる。
【0054】
【0055】
このような3官能以上のアシルホスフィン系光重合開始剤は、例えば日本特許第6599446号に記載されている方法により製造されることができる。
【0056】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品として、IGM Resins社製のOmnirad TPO、IGM Resins B.V.社製のOmnirad 819、Omnipol TP等を使用することができる。
【0057】
前記チタノセン系光重合開始剤として、具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)(ジフェニル)チタン(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)チタン(IV)ジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)チタン(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタン(IV)等が挙げられる。市販品として、IGM Resins B.V.社製のOmnirad 784等が挙げられる。
【0058】
これら光重合開始剤(B)の配合割合は、前記(A)ビニルエステル樹脂100重量部(固形分換算)に対して0.01~30重量部であることが適切であり、好ましくは5~25重量部であり、より好ましくは10~20重量部である。光重合開始剤の使用量が前記範囲より少ない場合、組成物の光硬化性が悪くなる一方、多すぎる場合、ソルダーレジスト剤としての特性が低下するので好ましくない。
【0059】
(C)リン酸エステル系分散剤
本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物に用いられる(C)リン酸エステル系分散剤とは、主鎖又は側鎖に下式(II)で表されるリン酸エステル構造を有する化合物又はポリマーを指す。
【0060】
中では、顔料と良好な親和性を有し、無溶剤型インク及び溶剤型インクに用いられ、低極性系(例えばアルキド樹脂、アクリレート樹脂、熱可塑性アクリル酸系樹脂及びエポキシ樹脂)で顔料を安定化させるのに適している点から、主鎖又は側鎖に式(II)で表されるリン酸エステル構造を有するポリマーが好ましい。
【0061】
さらに、本発明者らは、インク印刷性とソルダーレジスト層の表面硬度を両立させながら冷熱衝撃耐性を改善する点から、フィラーとしてタルクにシリカを配合するとともに、(C)リン酸エステル系分散剤として、主鎖にリン酸エステル構造を有するポリマー(即ちポリリン酸エステル系ポリマー)と側鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーを併用することがより好ましいことを見出した。この場合、両者の配合割合は重量比で、即ち(C-1)主鎖にリン酸エステル構造を有するポリマー:(C-2)側鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーが1:10~10:1であることが適切であり、好ましくは1:5~5:1であり、より好ましくは1:3~3:1であり、さらに好ましくは1:2~2:1である。このようにして、インク印刷性、ソルダーレジスト層の表面硬度及び冷熱衝撃耐性のすべてにおいて優れた感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を得ることができる。
【0062】
(C)リン酸エステル系分散剤の配合割合は、前記(A)ビニルエステル樹脂100重量部(固形分換算)に対して0.01~20重量部であることが適切であり、好ましくは0.1~15重量部であり、より好ましくは1~10重量部である。(C)リン酸エステル系分散剤の使用量が上記の範囲内であれば、印刷性と硬度を両立させながら優れた冷熱衝撃耐性を得ることを確保できる。上記の範囲を超えた場合、ソルダーレジスト剤としての特性が低下するので好ましくない。
【0063】
リン酸エステル系分散剤の市販品として、Tech-5011(上海泰格聚合物技術有限公司製)、BYK-102、BYK-103、BYK-106、BYK-110、BYK-111、BYK-118、BYK-142、BYK-145(ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0064】
なお、本明細書では、ポリマーとは、ホモポリマー、コポリマー及びそれらの混合物を総称する用語であり、ほかの類似表現についても同様である。
【0065】
(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物に用いられる(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物は、活性エネルギー線の照射により光硬化して、前記(A)ビニルエステル樹脂をアルカリ水溶液に不溶化し、又は前記ビニルエステル樹脂をアルカリ水溶液に不溶化することを助けることができる化合物である。このような化合物の具体例として、
アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキルアクリレート類、
エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコールのモノアクリレート又はジアクリレート類、
N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド類、
N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類、
ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)等のポリオール又はこれらのエチレンオキサイド付加体若しくはプロピレンオキサイド付加体等の多価アクリレート類、
フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加体若しくはプロピレンオキサイド付加体等のアクリレート類、
グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルのアクリレート類、
及びメラミンアクリレート、並びに上記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくともいずれか1種等が挙げられる。
【0066】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂にアクリル酸を反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂や、さらに、このエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートのハーフウレタン(half urethane)化合物を反応させて得られるエポキシウレタンアクリレート化合物等が挙げられる。
【0067】
前記(A)ビニルエステル樹脂100重量部(固形分換算)に対して、このような1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(D)の配合量は、好ましくは5~100重量部であり、より好ましくは10~70重量部である。前記(A)ビニルエステル樹脂100重量部に対して、前記配合量が5重量部未満であると、得られた感光・熱硬化・現像性樹脂組成物の光硬化性が低下し、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像によりパターンを形成することが困難であるので好ましくない。一方、100重量部を超えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下し、硬化塗膜が脆くなるので好ましくない。
【0068】
(F)ほかの添加剤
上記したように、本発明におけるほかの添加剤とは、(B)光重合開始剤及び(C)リン酸エステル系分散剤以外の添加剤を指す。
【0069】
このような添加剤として、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、よう素グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、アシッドブラック等公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert-ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤及びレベリング剤の少なくともいずれか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等の密着性付与剤、シランカップリング剤、フェノール系、リン系、硫黄系等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等のような公知慣用の添加剤類が挙げられる。
【0070】
このような(F)ほかの添加剤の配合割合は、感光・熱硬化・現像性樹脂組成物全量の0.01重量%以上20重量%以下であることが適切である。0.01重量%未満であると、かかる効果が十分に得られない一方、20重量%を超えると、感光・熱硬化・現像性樹脂組成物の印刷性、硬度が悪くなるので好ましくない。
【0071】
(G)エポキシ樹脂
耐熱性を付与するために、本発明に用いられる感光・熱硬化・現像性樹脂組成物に、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、即ち多官能エポキシ樹脂(G)を配合することが好ましい。
【0072】
市販品として、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC株式会社製のEPICLON 840、850、850S、1050、2055、NIPPON STEEL Chemical & Material Co., Ltd.製のEPOTOTE YD-011、YD-013、YD-127、YD-128、Dow Chemical Company製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業株式会社製のSumi-Epoxy ESA-011、ESA-014、ELA-115、ELA-128等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjERYL903、DIC社製のEPICLON 152、EPICLON 165、NIPPON STEEL Chemical & Material Co., Ltd.製のEPOTOTE YDB-400、YDB-500、Dow Chemical Company製のD.E.R.542、住友化学工業株式会社製のSumi-Epoxy ESB-400、ESB-700等(何れも商品名)の臭素化エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjER152、jER154、Dow Chemical Company製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のEPICLON N-730、EPICLON N-770、EPICLON N-865、NIPPON STEEL Chemical & Material Co., Ltd.製のEPOTOTE YDCN-701、YDCN-704、日本化薬株式会社製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-1020、EOCN-104S、RE-306、NC-3000、住友化学工業株式会社製のSumi-Epoxy ESCN-195X、ESCN-220、NIPPON STEEL Chemical & Material Co., Ltd.製のYDCN-700-2、YDCN-700-3、YDCN-700-5、YDCN-700-7、YDCN-700-10、YDCN-704、YDCN-704A、DIC株式会社製のEPICLON N-680、N-690、N-695等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のEPICLON 830、三菱ケミカル株式会社製のjER807、NIPPON STEEL Chemical & Material Co., Ltd.製のEPOTOTE YDF-170、YDF-175、YDF-2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;NIPPON STEEL Chemical & Material Co., Ltd.製のEPOTOTE ST-2004、ST-2007、ST-3000(商品名)、三菱ケミカル株式会社製のYX8034等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjER604、NIPPON STEEL Chemical & Material Co., Ltd.製のEPOTOTE YH-434、住友化学工業株式会社製のSumi-Epoxy ELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;Daicel Corporation製のCELLOXIDE 2021P等(商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のYL-933、日本化薬株式会社製のEPPN-501、EPPN-502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型若しくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬株式会社製EBPS-200、ADEKA CORPORATION製EPX-30、DIC社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル株式会社製のjERYL-931等(商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業株式会社製のTEPIC等(商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日油株式会社製のBRENMAR DGT等のジグリシジルフタレート樹脂;NIPPON STEEL Chemical & Material Co., Ltd.製のZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;NIPPON STEEL Chemical & Material Co., Ltd.製のESN-190、ESN-360、DIC社製のHP-4032、EXA-4750、EXA-4700等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;日油株式会社製のCP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロへキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;CTBN変性エポキシ樹脂(例えばNIPPON STEEL Chemical & Material Co., Ltd.製のYR-102、YR-450等)等は挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
(G)エポキシ樹脂の含有量は好ましくは、(A)ビニルエステル樹脂100質量部(固形分換算)に対して10~100重量部であり、好ましくは20~90重量部であり、より好ましくは30~80重量部である。
【0074】
(H)有機溶媒
本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物に用いられる有機溶媒(H)について、前記カルボキシル基含有樹脂(A)の合成、組成物の調製、又は基板やキャリアフィルムに塗布する際の粘度調整などの目的から、有機溶媒を使用することができる。
【0075】
このような有機溶媒として、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶媒等が挙げられる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶媒等である。上記有機溶媒は、単独で又は2種以上の混合物として使用されることができる。
【0076】
プリント配線板のソルダーレジスト剤を形成する際に本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を用いた場合、必要に応じて塗布方法に適した粘度に調整した後、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の方法により、それを例えば予め回路が形成されたプリント配線板に塗布し、必要に応じて、例えば約60~100℃の温度で乾燥することで、タックフリーの塗膜を形成することができる。次に、所定の露光パターンが形成されたフォトマスクを介して選択的に活性光線により露光し、未露光部をアルカリ性水溶液で現像し、レジストパターンを形成することができる。さらに、例えば約140~180℃の温度まで加熱して熱硬化させることにより、エポキシ樹脂の硬化反応及びビニルエステル樹脂の重合を促進し、得られるレジスト被膜の硬度、冷熱衝撃耐性、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、耐吸湿性、PCT耐性、密着性、電気特性等の諸特性を向上させることができる。
【0077】
上記現像時に用いられるアルカリ水溶液として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液を使用することができる。また、光硬化に用いられる照射光源として、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、半導体レーザー、固体レーザー、キセノンランプ又はメタルハライドランプ等が適切である。
本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物は、液状で直接基材に塗布する方法以外にも、予めキャリアフィルムに感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を塗布、乾燥させて得られた光硬化性ドライフィルムの形態で使用することもできる。本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を光硬化性ドライフィルムとして使用する場合を以下に示す。
光硬化性ドライフィルムは、キャリアフィルムと、樹脂層と、必要に応じて用いられる剥離可能なカバーフィルムとが、この順序に積層された構造を有するものである。樹脂層は、本発明の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をキャリアフィルム又はカバーフィルムに塗布、乾燥して得られる層である。キャリアフィルムに樹脂層を形成した後に、カバーフィルムをその上に積層するか、カバーフィルムに樹脂層を形成し、この積層体をキャリアフィルムに積層すればドライフィルムが得られる。
キャリアフィルムとしては、2~150μmの厚みのポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。樹脂層は、感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等でキャリアフィルム又はカバーフィルムに10~150μmの厚さで均一に塗布し乾燥して形成される。カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、樹脂層との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが良い。
本発明の硬化物は、感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を銅に塗布し、乾燥させて得られた塗膜、又は当該感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布し、乾燥させ、得られた光硬化性ドライフィルムを銅に積層して得られた塗膜を光硬化して得られたものである。
光硬化性ドライフィルムを用いて、銅回路を有するプリント配線板上に硬化物を作製するには、カバーフィルムを剥がし、樹脂層と回路形成された基材を重ね、ラミネーター等を用いて張り合わせ、回路形成された基材上に樹脂層を形成する。形成された樹脂層に対し、前記と同様に露光、現像、加熱硬化すれば、硬化物を形成することができる。キャリアフィルムは、露光前又は露光後のいずれかに剥離すればよい。
感光・熱硬化・現像性樹脂組成物は、プリント配線板上に硬化被膜を形成するために好適に用いられる。硬化被膜としては、永久絶縁被膜であることが好ましく、ソルダーレジストであることが特に好ましい。
【0078】
実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の権利範囲及びその実施形態はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例における「部」又は「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。後述する方法により、本実施例の組成物の性状値の試験を実施する。
【0079】
合成例
攪拌機及び還流冷却器を備えた4つ口フラスコにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂EPICLON N-695(DIC製、エポキシ当量=214)214部を投入し、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103部、石油系炭化水素溶媒(Japan Energy Corporation製、商品名:Cactus Fines SF-01)103部を添加して加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1部及び反応触媒としてトリフェニルホスフィン2.0部を添加した。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72部をゆっくりと滴下し、16時間反応させた。得られた反応生成物を80~90℃に冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸91.2部を添加して8時間反応させ、冷却した後に取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有ビニルエステル樹脂は不揮発分が65%であり、固形分の酸価が87.5mgKOH/gであった。
【0080】
上記合成例のビニルエステル樹脂溶液(ワニス)を用い、表1に示す各成分及び割合(重量部)で配合し、攪拌機で予備混合した後、3本ロールミルで混練し、感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を調製した。さらに、印刷性、鉛筆硬度及び冷熱衝撃耐性を以下の方法により評価した。
【0081】
【0082】
A 上記の合成例で調製されたクレゾールノボラック型エポキシ変性アクリル系樹脂(固形分65%)
F 顔料:フタロシアニングリーン、DIC株式会社製Pigment A
消泡剤:KS-66、信越化学工業株式会社製
C-1 リン酸エステル系分散剤:BYK-110、重合リン酸エステル、ポリリン酸エステル系ポリマー、ビックケミー社製、固形分52質量%、吸油量63ml/100g
C-2 リン酸エステル系分散剤:BYK-142、2-アクリル酸-2-エチルヘキシルと(エチレンジアミン・エチレンイミンポリマー)との反応生成物の、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノブチルエーテルリン酸エステルとの化合物、ビックケミー社製、固形分60質量%、吸油量29ml/100g
B 光重合開始剤:Omnirad 369 E、IGM製
E タルク:LMP-100,FUJI TALC INDUSTRIAL製
シリカ:A-8 シベルコ社製
硫酸バリウム:B-30、Sakai Chemical Industry Co., Ltd.製
H 溶媒:PGMEA、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートCC
G エポキシ樹脂:N-770-75EA、DIC社製、ノボラック型多官能エポキシ樹脂、固形分75質量%
D 1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物:MT-3501G、張家港東亜迪愛生化学有限公司製
【0083】
性能評価
【0084】
(1)印刷性
銅厚100μmのφ400μm、ピッチ600μmの開口パターンが形成された基板上に実施例及び比較例の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をスクリーン印刷で全面塗布し、室温で30分間静置した後、熱風循環式乾燥炉で80℃で30分間乾燥させ、印刷性評価基板を作製した。100倍の光学顕微鏡を用いて印刷性評価基板を観察し、銅開口部の気泡発生率を評価した(
図1を参照)。評価基準を以下に示す。
〇:気泡発生率が40%未満。
△:気泡発生率が40%以上50%未満。
×:気泡発生率が50%以上。
【0085】
(2)鉛筆硬度
上記実施例及び比較例の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をスクリーン印刷で研磨により前処理された銅箔張積層基板上に全面塗布し、80℃で30分間乾燥させ、室温に冷却し、厚み40μmの樹脂層を形成した。樹脂層に対して、高圧水銀ランプを搭載した露光装置を用いて400mJ/cm2でパターン露光を行い、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、噴霧圧力0.15MPaの条件下で50秒間現像した。JIS K 5600-5-4に従い、得られた樹脂塗膜を熱硬化した後の樹脂表面の鉛筆硬度を測定した。評価基準を以下に示す。
〇:鉛筆硬度が6H以上。
△:鉛筆硬度が4H以上6H未満。
×:鉛筆硬度が4H未満。
【0086】
(3)冷熱衝撃耐性
実施例及び比較例の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を、厚みが40μmとなるように、スクリーン印刷で2mmの銅線パターンが形成された基板上に全面塗布し、熱風循環式乾燥炉で80℃で30分間乾燥させた。室温に冷却した後、高圧水銀ランプを搭載した露光装置を用いて400mJ/cm
2でパターン露光を行い、次に、1wt%炭酸ナトリウム水溶液で、0.2MPaの圧力、液温30℃で60秒間現像した後、熱風循環式乾燥炉で150℃で、60分間硬化した。UV搬送炉で積算露光量2000mJ/cm
2の条件下で紫外線を照射することにより、直角形状のレジストパターンを有する冷熱サイクル時のクラック耐性評価基板を17個作製した。以上のようにして作製した評価基板を-40℃~160℃で冷熱サイクルを行う温度サイクル機に複数入れ、異なるサイクル回数を設定し、冷熱衝撃サイクル試験(TCT試験)を実施した。次に、各回数のサイクルにおける外観を観察し、クラックが生じない最大サイクル回数を記録し、その評価基準を以下に示す(クラックが生じた、及び生じていないイメージ図は
図2、
図3を参照)。
○:1000回のサイクルを経過してもクラックが生じていない。
×:1000回のサイクル未満でクラックが生じた。
【0087】
以上から分かるように、実施例1~6の組成に調整することにより、印刷性、鉛筆硬度及び冷熱衝撃耐性のすべてにおいて優れた感光・熱硬化・現像性樹脂組成物が得られる。これに対して、比較例1では、フィラーとして硫酸バリウムのみ用いたため、印刷性及び鉛筆硬度はともに優れたが、冷熱衝撃耐性は極めて低かった。比較例2では、フィラーとしてタルクのみ用いたため、冷熱衝撃耐性に優れたが、印刷性及び鉛筆硬度は大幅に劣化した。比較例3でタルクと硫酸バリウムの組み合わせを用い、比較例4でシリカと硫酸バリウムの組み合わせを用いたが、いずれにおいても印刷性と鉛筆硬度を両立しながら優れた冷熱衝撃耐性を実現することはできなかった。比較例5~比較例8でタルクとシリカを併用し、比較例5で両者の配合比が本願の範囲外であり、比較例6~8で両者の全量を200重量部まで増やした結果、冷熱衝撃耐性はいずれも要求を満足できないに加え、比較例6と比較例8は印刷性や鉛筆硬度に悪影響を与えることがあった。比較例9では、実施例2に基づき、リン酸エステル系分散剤BYK-145を同量で用いた結果、印刷性及び鉛筆硬度が大幅に劣化した。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニルエステル樹脂、(B)光重合開始剤、(C)リン酸エステル系分散剤、(D)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び(E)無機フィラーを含有し、
前記(C)リン酸エステル系分散剤は、(C-1)主鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーを含み、
前記(E)無機フィラーは、タルクとシリカとを含み、
前記(A)ビニルエステル樹脂(固形分換算)100重量部に対して、
前記タルクと
前記シリカの両者の合計量が50~180重量部であり、
前記タルクと
前記シリカの合計量を100重量%とした時に、
前記タルクの割合が20~80重量%であることを特徴とする感光・熱硬化・現像性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)光重合開始剤及び
前記(C)リン酸エステル系分散剤以外の(F)ほかの添加剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物。
【請求項3】
(G)エポキシ樹脂をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物。
【請求項4】
(H)有機溶媒をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)リン酸エステル系分散剤は、(C-2)側鎖にリン酸エステル構造を有するポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布し、乾燥させて得られたことを特徴とする光硬化性ドライフィルム。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を銅に塗布し、乾燥させて得られた塗膜、又は当該感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布し、乾燥させ、得られた光硬化性ドライフィルムを銅に積層して得られた塗膜を光硬化して得られたことを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の感光・熱硬化・現像性樹脂組成物を基材に塗布し、乾燥させて得られた塗膜、又は当該感光・熱硬化・現像性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布し、乾燥させ、得られた光硬化性ドライフィルムを基材に積層して得られた塗膜を光硬化した後に、熱硬化して得られた硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【国際調査報告】