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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】リボシクリブ医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20250123BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K47/26
A61K9/08
A61K9/14
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/22
A61K47/46
A61P35/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543298
(86)(22)【出願日】2023-01-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 IB2023050559
(87)【国際公開番号】W WO2023144684
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202211004186
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】チャブダ,アルパクマリ
(72)【発明者】
【氏名】チェルクパリー,ラックスマン
(72)【発明者】
【氏名】デュベイ,ヴィヴェク
(72)【発明者】
【氏名】タリク,ムザミル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD27
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41R
4C076DD43E
4C076DD61T
4C076EE58T
4C076FF09
4C076FF15
4C076FF39
4C076FF52
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA10
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
コハク酸7-シクロペンチル-N,N-ジメチル-2-{[5-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル]アミノ}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミドを含有する医薬製剤、前記製剤を治療法に使用する方法、及びそれを調製するためのプロセスが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約10%~約30%w/wのコハク酸リボシクリブ;
b)約10%~約60%w/wの1種又は複数の希釈剤;
c)約15%~約40%w/wの1種又は複数の可溶化剤;及び
d)約0.1%~約2%w/wの1種又は複数の防腐剤
を含む、経口液剤用粉末。
【請求項2】
e)約0.1%~約5%w/wの1種又は複数の付着防止剤;
f)約0.1%~約2%w/wの1種又は複数の滑沢剤:
g)約0.1%~約2%w/wの1種又は複数の甘味料:及び
h)約0.1%~約1%w/wのフレーバー
をさらに含む、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
前記1種又は複数の希釈剤が、マンニトールである、請求項1及び2に記載の粉末。
【請求項4】
前記1種又は複数の可溶化剤が、酒石酸である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項5】
前記1種又は複数の防腐剤が、安息香酸ナトリウムである、請求項1~4のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項6】
前記1種又は複数の付着防止剤が、タルクである、請求項2~5のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項7】
前記1種又は複数のアンチグリダントが、コロイダルシリカである、請求項2~5のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項8】
前記1種又は複数の甘味料が、サッカリンナトリウムである、請求項2~5のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項9】
前記フレーバーが、オレンジである、請求項2~5のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項10】
経口液剤であって、
a)約10%~約30%w/wのコハク酸リボシクリブ;
b)約10%~約60%w/wの1種又は複数の希釈剤;
c)約15%~約40%w/wの1種又は複数の可溶化剤;
d)約0.1%~約2%w/wの1種又は複数の防腐剤;及び
e)前記経口液剤の最終量を所望の量にするのに十分な量の水性ビヒクル
を含む、経口液剤。
【請求項11】
f)約0.1%~約5%w/wの1種又は複数の付着防止剤;
g)約0.1%~約2%w/wの1種又は複数の滑沢剤:
h)約0.1%~約2%w/wの1種又は複数の甘味料:及び
i)約0.1%~約1%w/wのフレーバー
を含む、請求項10に記載の経口液剤。
【請求項12】
前記1種又は複数の希釈剤が、マンニトールである、請求項10又は11に記載の経口液剤。
【請求項13】
前記1種又は複数の可溶化剤が、酒石酸である、請求項10~12のいずれか1項に記載の経口液剤。
【請求項14】
前記1種又は複数の防腐剤が、安息香酸ナトリウムである、請求項10~13のいずれか1項に記載の経口液剤。
【請求項15】
前記1種又は複数の付着防止剤が、タルクである、請求項11~14のいずれか1項に記載の経口液剤。
【請求項16】
前記1種又は複数のアンチグリダントが、コロイダルシリカである、請求項11~14のいずれか1項に記載の経口液剤。
【請求項17】
前記1種又は複数の甘味料が、サッカリンナトリウムである、請求項11~14のいずれか1項に記載の経口液剤。
【請求項18】
前記フレーバーが、オレンジである、請求項11~14のいずれか1項に記載の経口液剤。
【請求項19】
a)約20%~約30%w/wのコハク酸リボシクリブ;
b)約40%~約60%w/wのマンニトール;
c)約15%~約25%w/wの酒石酸;及び
d)約0.5%~約1%w/wの安息香酸ナトリウム
を含む、経口液剤用粉末。
【請求項20】
経口液剤であって、
a)約20%~約30%w/wのコハク酸リボシクリブ;
b)約40%~約60%w/wのマンニトール;
c)約15%~約25%w/wの酒石酸;及び
d)約0.5%~約1%w/wの安息香酸ナトリウム;並びに
e)前記経口液剤の最終量を所望の量にするのに十分な量の水性ビヒクル
を含む、経口液剤。
【請求項21】
ヒトの癌の治療に使用するための請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
ヒトにおけるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4及び6の阻害に使用するための請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リボシクリブ及び/又はその薬学的に許容される塩を含む経口液剤用粉末(PFOS)、それを調製するためのプロセス、並びにそれを用いる治療方法に関する。例えば、本開示は、癌の治療に使用するための、リボシクリブ及び/又はその薬学的に許容される塩を含む経口液剤用粉末(PFOS)に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)
【化1】

の化合物は、リボシクリブ又はKisqali(登録商標)として知られている。その化学名は、7-シクロペンチル-N,N-ジメチル-2-{[5-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル]アミノ}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミドであり、その合成については、国際公開第2010/020675A1号パンフレットの実施例74に具体的に記載されている。
【0003】
リボシクリブのコハク酸塩は、式(II):
【化2】

により表され、これは、国際公開第2012/064805号パンフレットに記載されている。
【0004】
リボシクリブ及びその薬学的に許容される塩は、有益な薬理学的特性を有し、例えば、(1)サイクリン依存性キナーゼ(特に、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6及びCDK9から選択されるサイクリン依存性キナーゼ)の阻害剤として;並びに(2)グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3(GSK-3)のモジュレータ及び/又は阻害剤として使用することができる。
【0005】
固形の経口医薬剤形は、薬学的に活性な化合物を調剤するための薬剤の一般的且つ有用な形態である。このような形態として、錠剤、カプセル剤、ペレット剤、トローチ剤、及び粉末剤を含め、様々なものが知られている。
【0006】
しかしながら、商業的規模で許容される経口固形医薬剤形の製剤化は容易ではない。インビボで投与する場合、各医薬化合物は、治療薬レベルに関して独特に作用する。さらに、薬学的に活性な化合物、特に抗腫瘍性化合物は、毒性(例えば、遺伝毒性、催奇形性)などの望ましくない副作用、及び望ましくない身体的又は心理的症状を伴うことが多い。薬剤特有の化学的特性と賦形剤の特性との均衡の保持に加え、所望の治療薬レベルをもたらすのに十分で、しかも許容されない副作用プロフィールを呈する量に満たない特定の量で、又はその具体的な薬剤の治療濃度域内で、薬剤を投与しなければならない。さらに、製剤化及び製造工程は、使用されるまでその完全性を維持する一体型剤形を提供するようなものでなければならない。上記剤形はまた、使用時に所望のプロフィールを提供するように、許容可能な溶解及び崩壊特性も備えていなければならない。
【0007】
溶解度が低い、及び/又は溶媒和物形態の薬学的に活性の化合物は、高品質の剤形を調製する上で特定の課題を呈する可能性がある。これらの課題には、薬力学的特性の低下を招き得る医薬組成物中の原薬の安定性及び溶解性が含まれる。
【0008】
リボシクリブは、アロマターゼ阻害剤又はフルベストラントと組み合わせて、進行乳癌の治療に使用するために、200mgフィルムコーティング錠の形態でKisqali(登録商標)として米国、欧州連合、及びその他の国々で承認されている。リボシクリブはまた、現在、テモゾロミド及びトポテカン(TOTEM)と組み合わせて、神経芽腫(NB)、並びに髄芽腫(MB)、高悪性度神経膠腫(HGG)、悪性ラブドイド腫瘍(MRT)、肝芽腫(HB)及び横紋筋肉腫(RMS)のような他の固形腫瘍などの複数の腫瘍型において評価されている。
【0009】
リボシクリブの固形剤形、具体的には50mg、100mg、150mg、200mg及び300mgのフィルムコーティング錠が、国際公開第2016/166703号パンフレットに記載されている。開示された錠剤は、成人への使用は許容されるが、小児又は錠剤を嚥下することが困難な個人に対するリボシクリブの投与には好ましくない。小児集団では、多くの場合、経口懸濁液又は溶液に再構成される粉剤として薬剤を利用できることが要望される。このような粉剤の場合、良好な流動性と含量均一性を備えた粉末ブレンドを提供することを期待して、活性物質と様々な賦形剤をドライブレンドする試みが必要となる。
【0010】
小児用製剤におけるリボシクリブの使用に関しては、さらにいくつかの課題が存在する。例えば、リボシクリブは、溶解性及び浸透性が低いBCS(生物薬剤学分類システム)IV化合物として分類される。リボシクリブ原薬を含む水溶液には、溶解性及び安定性に課題があった。コハク酸塩の形態をしたリボシクリブ原薬は、酸性pHと比較して塩基性pHでの溶解度が限られている。十分な物理的安定性と水溶性を得るためには、コハク酸リボシクリブの経口液剤のpHを酸性域に調節する必要がある。さらに、リボシクリブの経口液剤は、室温では不安定で、冷蔵条件下での保存が必要であり、12ヶ月という限定的な貯蔵寿命を有することが判明した。さらに、リボシクリブの原薬は苦味を有することが判明しており、嚥下性を損なうことなく味をマスキングすることができる風味付け溶液又は懸濁液が必要である。
【0011】
このような懸念を有意に認識すると、リボシクリブのインビボ投与に悪影響を及ぼすことになる。
【0012】
小児集団への投与に適した製剤でリボシクリブを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、リボシクリブの経口液剤用粉末(PFOS)に関するものであり、水による再構成にうまく適合している。本発明はまた、水性ビヒクルと混合したリボシクリブを含む、調製された水溶液、製剤、特に安定な経口医薬製剤に関する。本発明は、これらの製剤の調製方法に関する。さらに、本発明は、これらの製剤をテモゾロミド及びトポテカンと組み合わせて用いて、癌を治療する方法に関する。一実施形態では、癌は、神経芽腫(NB)、髄芽腫(MB)、高悪性度神経膠腫(HGG)、悪性ラブドイド腫瘍(MRT)、肝芽腫(HB)及び/又は横紋筋肉腫(RMS)である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】リボシクリブ30mg/mlを含有する経口液剤を調製するためのプロセスステップを示す。
図2】リボシクリブ30mg/mlを含有するボトル製剤中の粉末を調製するためのプロセスステップを示す。
図3】再発又は難治性(r/r)神経芽腫(NB)及びその他の固形腫瘍を有する小児患者を対象とする、トポテカン及びテモゾロミド(TOTEM)と組み合わせたリボシクリブによる第I/II相多施設試験の試験デザインを示す。
図4図3に描かれた試験の第I相-パートAの用量設定スキーマを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一実施形態では、本発明は、リボシクリブを含有する経口医薬剤形に関し、好適には、上記剤形は粉末形態であり、好適には、この剤形は商業規模で生産される。これらの粉末形態は、安全且つ効果的な治療を提供するのに役立つ。
【0016】
一実施形態では、本発明は、賦形剤及び水性ビヒクルと混合したリボシクリブを含む、調製水性製剤、好適には、安定な経口水性医薬製剤に関する。これらの調製水性製剤は、安全且つ効果的な治療を提供するのに役立つ。
【0017】
本明細書で使用される場合、「経口液剤用粉末(PFOS)」という用語は、医薬賦形剤とリボシクリブを含有する医薬製剤を意味する。投与前に、PFOSは、水性ビヒクルで再構成されて、透明又はわずかに着色した溶液を形成する。溶液は、患者の体重又は体表面積に基づいて投与される。
【0018】
一実施形態では、本発明は、リボシクリブを約10~30%、より好ましくは約30%w/w、好適には30%w/w未満、好適には約25.96%w/wの量で含有する経口液剤用粉末(PFOS)に関する。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「薬剤」、「原薬」、又は「有効成分」及びそれらの派生語は、他に定義されない限り、リボシクリブ又は7-シクロペンチル-N,N-ジメチル-2-{[5-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル]アミノ}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミドを意味し、好適には、コハク酸塩の形態をしている。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「商業規模」及びその派生語は、約800~10,000単位を超えるPFOS、好適には5000単位超、好適には7500単位超、又は少なくとも約10,000単位のバッチスケールの調製を意味する。
【0021】
コハク酸リボシクリブは、酸性pHと比較して、塩基性pHでは限定的な溶解度を有することが判明している。再構成時に、コハク酸リボシクリブの透明な溶液を達成するためには、コハク酸リボシクリブが完全に可溶化するように、液体のpHを酸性域に調節するのに十分な量の酸が必要である。本発明で使用するのに、好適な可溶化剤は、酸の形態をしている。
【0022】
可溶化剤、希釈剤/充填剤、滑沢剤、付着防止剤/潤滑剤、防腐剤、甘味料、及びフレーバーの例は、当技術分野で理解されており、こうした成分は、例えば、以下の文献に概要が記載されている:Martindale--The Extra Pharmacopoeia Pharmaceutical Press,London(1993)and Martin(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences、並びに薬品添加物ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)。
【0023】
本明細書で使用される場合、「可溶化剤」とは、薬剤を溶液中に均一に分散及び溶解させた状態で保持するのに役立つ物質(液体又は固体)である。可溶化剤は、溶解した薬剤の溶液外への沈殿を防止する。本発明で使用するのに、好適な可溶化剤としては、限定されないが、クエン酸、酒石酸、グルタル酸、乳酸、アスコルビン酸、グリコール酸、メバロン酸、リンゴ酸、タルトロン酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸又はコハク酸が挙げられる。また、可溶化剤を組み合わせて使用することもできる。クエン酸は、その吸湿性のために、粉末ブレンドの流動特性を変化させ、クエン酸による水分の取り込みに起因する緩い塊の形成を招くことから、不利であることがわかった。驚くべきことに、クエン酸の欠点は、同じく吸湿性である酒石酸では観察されなかった。好適には、好ましい可溶化剤は、酒石酸である。
【0024】
本発明の一実施形態では、可溶化剤は、約15~40%、より好ましくは、約25%w/w、好適には25%w/w未満、好適には約22.76%w/wの量で経口液剤用粉末(PFOS)中に存在する。好ましくは、可溶化剤は、酒石酸である。
【0025】
「充填剤」又は「希釈剤」という用語は、本明細書では、薬剤学の分野で確立された意味で使用され、これらは、例えば、バルク、例えば、製薬組成物を製造する目的で、加工に実用的なサイズを付与するか、又は例えば、流動性、圧縮性、及び硬度のような改善された物理的特性をもたらすことによって、加工を補助する。本発明での使用のために、好適な希釈剤としては、限定されないが、微結晶セルロース、二塩基性リン酸カルシウム、セルロース、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、及び炭酸カルシウムが挙げられる。好適には、好ましい希釈剤は、マンニトールであり、より好ましくは、マンニトールSD200である。
【0026】
本発明の一実施形態では、希釈剤は、経口液剤用粉末(PFOS)中に、約10~60%、より好ましくは約50%w/w、好適には50%w/w未満、好適には約48.22%w/wの量で存在する。好ましくは、希釈剤は、マンニトールである。
【0027】
「付着防止剤」及び「滑沢剤」の例としては、限定されないが、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、デンプン、タルク、三塩基性リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、粉末セルロース及び微結晶セルロースが挙げられる。
【0028】
本発明の一実施形態では、付着防止剤は、経口液剤用粉末(PFOS)中に、約0.1~5%、より好ましくは約0.75%w/w、好適には0.75%w/w未満、好適には約0.68%w/wの量で存在する。好ましくは、付着防止剤は、タルクである。
【0029】
本発明の一実施形態では、滑沢剤は、約0.1~2%、より好ましくは約0.75%w/w、好適には0.75%w/w未満、好適には約0.68%w/wの量で経口液剤用粉末(PFOS)中に存在する。好ましくは、滑沢剤は、コロイダルシリカであり、より好ましくは、無水コロイダルシリカ(例えば、Aerosil 200 PH)である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「防腐剤」は、液体製剤中の細菌及び/又は真菌の増殖を防止するために使用される。例えば、好適な防腐剤としては、限定されないが、パラベン(メチル、エチル、プロピル、及びブチル)、パラベンナトリウム塩、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、及びソルビン酸が挙げられる。好適には、本発明による製剤中の防腐剤の総量は、約0.1~2%、より好適には約0.75%w/w、好適には約0.75%w/w未満、好適には約0.68%w/wから選択される。好ましくは、防腐剤は、安息香酸ナトリウムである。
【0031】
本明細書で使用される場合、「甘味料」は、製剤の嗜好性を改善するために使用される物質(固体又は液体)である。例えば、好適な甘味料としては、限定されないが、スクロース、グルコース、ソルビトール、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、スクラロース、及びマルチトールが挙げられる。好適には、本発明による製剤中の甘味料の量は、約0.1~2%から選択され、より好ましくは約0.5%、好適には0.5%w/w未満、好適には約0.34%w/wである。好ましくは、甘味料は、サッカリンナトリウムである。
【0032】
本明細書で使用される場合、「フレーバー(香料)」は、製剤に独特の味及び香りを与える物質(液体又は固体)である。フレーバーはまた、製剤の嗜好性を改善する役割も果たす。例えば、フレーバーとしては、限定されないが、イチゴ、バニラ、レモン、グレープ、チェリー、及びオレンジが挙げられる。好適には、フレーバーは、オレンジフレーバーである。好適には、本発明による製剤中のフレーバーの量は、約0.1~1%選択され、より好ましくは約0.75%、好適には約0.75%w/w未満、好適には約0.68%w/である。好ましくは、フレーバーは、オレンジである。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ビヒクル」は、粉末を経口懸濁液又は溶液に再構成するために使用される液体である。ビヒクルは、安定性が達成され、維持され得るように、製剤と適合性である必要がある。例えば、好適なビヒクルとしては、精製水、注射用滅菌水、及び灌注用滅菌水が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態によれば、ビヒクルは、精製水又は滅菌水である。
【0034】
pH調節及び防腐剤
pH調節のために、また、製剤の安定性に悪影響を及ぼすことなくコハク酸リボシクリブの溶解性を改善するために、適合性の酸が必要である。より酸性のpHは、コハク酸リボシクリブの溶解に役立つが、防腐剤などの他の賦形剤の溶解性及び用量投与に対する患者の耐性を損なう可能性がある。防腐系の選択、選択した防腐剤の濃度、再構成された液体のpHが、防腐効果の決定要因である。
【0035】
コハク酸リボシクリブの経口液剤を用いた予備的研究によると、pH3.5~4.5の範囲内で透明な溶液が得られ、防腐剤:メチルパラベンは、4よりわずかに高いpHを必要とし、また、防腐剤:ソルビン酸カリウムは、約3.5のpHを必要とし、防腐剤:安息香酸ナトリウムを用いた製剤には沈殿が観察された。メチルパラベンとソルビン酸カリウムの防腐系は、経口液剤中のコハク酸リボシクリブには適していたが、メチルパラベン及びソルビン酸カリウムは溶解性が低いため、この防腐剤系は、経口液剤に再構成するための粉末には適していない。驚くべきことに、安息香酸ナトリウムは、経口液剤に再構成するためのコハク酸リボシクリブ粉末の有効な防腐系として使用できることが判明し、この場合、十分な振盪及び静置時間を用いて、安息香酸ナトリウムを確実に溶解させ、可溶性濃度を達成することができる。
【0036】
着香料及び甘味料
リボシクリブの味は、要約すると苦いとされている。溶液製剤の味覚は、電子舌(e-tongue)評価実験によって評価された。
【0037】
3つの異なるフレーバー(チェリー、ストロベリー、及びオレンジ)をコハク酸リボシクリブ溶液製剤とそれに対応するプラセボで試験し、マスキング効率を評価した。フレーバーの添加は、味/苦味をマスキングするのに好都合であった。試験したフレーバー間に差は検出されなかった。甘味料の添加は、味に好ましい影響を与えた。
【0038】
一実施形態では、以下を含む経口液剤製剤用粉末が提供される:
a)約10~30%、より好ましくは約30%w/w、好適には30%w/w未満、好適には約25.96%w/wのコハク酸リボシクリブ;
b)約10~60%、より好ましくは約50%w/w、好適には約50%w/w未満、好適には約48.22%w/wの希釈剤、好ましくはマンニトール;
c)約15~40%、より好ましくは約25%w/w、好適には25%w/w未満、好適には約22.76%w/wの可溶化剤、好ましくは酒石酸;
d)約0.1~5%、より好ましくは約0.75%w/w、好適には約0.75%w/w未満、好適には約0.68%w/wの付着防止剤、好ましくはタルク;
e)約0.1~2%、より好ましくは約0.75%w/w、好適には約0.75%w/w未満、好適には約0.68%w/wの滑沢剤、好ましくはコロイダルシリカ;
f)約0.1~2%;より好ましくは約0.75%w/w、好適には0.75%w/w未満、好適には約0.68%w/wの防腐剤ナトリウム、好ましくは安息香酸塩;
g)約0.1~2%;より好ましくは約0.5%、好適には0.5%w/w未満、好適には約0.34%w/wの甘味料、好ましくはサッカリンナトリウム;及び
h)約0.1~1%;より好ましくは約0.75%、好適には0.75%w/w未満、好適には約0.68%w/wのフレーバー、好ましくはオレンジフレーバー。
【0039】
一実施形態では、コハク酸リボシクリブ、1種若しくは複数の希釈剤、1種若しくは複数の可溶化剤、1種若しくは複数の甘味料、1種若しくは複数の防腐剤、1種若しくは複数の付着防止剤、1種若しくは複数の滑沢剤、フレーバー、及び水を含む経口液剤が提供される。
【0040】
一実施形態では、コハク酸リボシクリブ、希釈剤としてのマンニトール、可溶化剤としての酒石酸、甘味料としてのサッカリンナトリウム、防腐剤としての安息香酸ナトリウム、付着防止剤としてのタルク、滑沢剤としてのコロイダルシリカ、オレンジフレーバー、及び水を含む経口液剤が提供される。
【0041】
本発明の経口液剤用粉末(PFOS)は、例えば、上で参照した国際公開第2010/020675号パンフレットに記載されているように、プロテインキナーゼ関連障害を治療するために、治療有効量の他の薬剤と組み合わせて、治療有効量で投与することができる。
【0042】
「有効量」という用語及びその派生語は、例えば、研究者又は臨床医によって求められる組織、系、動物若しくはヒトの生物学的又は医学的反応を誘発する薬剤又は有効成分の量を意味する。さらに、「治療有効量」という用語は、そのような量を投与されなかった対応する被験者と比較して、疾患、障害、若しくは副作用の治療、治癒、予防、若しくは改善、又は疾患若しくは障害の進行速度の低下をもたらす量を意味する。この用語はまた、正常な生理学的機能を増強するのに有効な量もその範囲に含む。
【0043】
本明細書で使用する「共投与」という用語は、リボシクリブを含有する固形又は液体の経口医薬剤形と、化学療法及び放射線治療をはじめとする癌の治療に有用であることが知られている1つ又は複数のさらなる活性剤との同時投与又は個別の順次投与のいずれかの方法を意味する。本明細書で使用される1つ又は複数のさらなる活性剤という用語は、癌の治療を必要とする患者に投与された場合に有利な特性を有することが知られているか、又はそうした特性を示す任意の化合物又は治療薬を含む。本明細書で使用される場合、「1つ又は複数のさらなる活性剤」は、さらなる抗新生物剤又は薬剤と互換的に使用される。好ましくは、投与が同時でない場合、化合物は、互いに時間的に近接して投与される。さらに、化合物が同じ剤形で投与されるかどうかは問題ではなく、例えば、1つの化合物が注射により投与され、別の化合物は経口投与されてもよい。好適には、「共投与」は、主として、リボシクリブを含有する固体又は液体の経口医薬剤形と、さらなる活性剤を含有する第2の医薬剤形から構成される。好適には、「共投与」は、主として、リボシクリブを含有する固体又は液体の経口医薬剤形と、さらなる活性剤を含有する第2の医薬剤形と、別のさらなる活性剤を含有する第3の医薬剤形から構成される。
【0044】
典型的には、治療される感受性腫瘍に対して活性を有する任意の抗新生物剤を、本発明における癌の治療に際して共投与することができる。このような薬剤の例は、V.T.Devita and S.Hellman(editors),6th edition(February 15,2001),Lippincott Williams & Wilkins PublishersによるCancer Principles and Practice of Oncologyに記載されている。当業者であれば、薬剤の具体的な特性及び該当する癌に基づいて、どの薬剤の組み合わせが有用であるかを識別することができるであろう。本発で有用な典型的な抗新生物剤としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:ジテルペノイド及びビンカアルカロイドのような微小管阻害剤;白金配位錯体;ナイトロジェンマスタード、オキサザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、及びトリアゼンのようなアルキル化剤;アントラサイクリン、アクチノマイシン及びブレオマイシンのような抗生物質;エピポドフィロトキシンのようなトポイソメラーゼII阻害剤;プリン及びピリミジン類似体及び抗葉酸化合物のような代謝拮抗物質;カンプトテシン類のようなトポイソメラーゼI阻害剤;ホルモン及びホルモン類似体;シグナル伝達経路阻害剤;非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤;免疫療法薬;アポトーシス促進剤;細胞周期シグナル伝達阻害剤;プロテアソーム阻害剤;及び癌代謝阻害剤。
【0045】
ヒトにおけるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4及び6の活性を阻害する本発明の方法は、そのような阻害を必要とする被験者に、治療有効量の本発明の経口液剤製剤用粉末を投与することを含む。
【0046】
本発明はまた、本発明の経口液剤製剤用粉末の製造におけるリボシクリブの使用を提供する。
【0047】
本発明はまた、癌の治療に使用するための本発明の経口液剤製剤用粉末の製造におけるリボシクリブの使用を提供する。
【0048】
一実施形態では、癌は、神経芽腫(NB)、髄芽腫(MB)、高悪性度神経膠腫(HGG)、悪性ラブドイド腫瘍(MRT)、肝芽腫(HB)及び/又は横紋筋肉腫(RMS)である。
【0049】
別の実施形態では、癌は、再発若しくは難治性神経芽腫(NB)、再発若しくは難治性髄芽腫(MB)、再発若しくは難治性高悪性度神経膠腫(HGG)、再発若しくは難治性悪性ラブドイド腫瘍(MRT)、再発若しくは難治性肝芽腫(HB)及び/又は再発若しくは難治性横紋筋肉腫(RMS)である。
【0050】
本発明はまた、CDKの阻害に使用するための本発明の経口液剤製剤用粉末の製造におけるリボシクリブの使用を提供する。
【0051】
本発明はまた、CDK阻害剤として使用するための経口液剤製剤用粉末も提供し、これは、リボシクリブと、本発明の薬学的に許容される担体を含む。
【0052】
本発明はまた、癌の治療に使用するための経口液剤製剤用粉末を提供し、これは、リボシクリブと、本発明の薬学的に許容される担体とを含む。
【0053】
本発明はまた、CDKの阻害に使用するための経口液剤用粉末製剤も提供し、これは、リボシクリブと、本発明の薬学的に許容される担体とを含む。
【0054】
一実施形態では、神経芽腫、髄芽腫、高悪性度神経膠腫、悪性ラブドイド腫瘍、肝芽腫及び/又は横紋筋肉腫を有する小児患者を治療するための方法法が提供され、これは、トポテカン及びテモゾロミドとの同時投与で本発明の経口液剤用粉末製剤のリボシクリブを投与することを含む。
【0055】
さらに別の実施形態では、再発若しくは難治性神経芽腫、再発若しくは難治性髄芽腫、再発若しくは難治性高悪性度神経膠腫、再発若しくは難治性悪性ラブドイド腫瘍、再発若しくは難治性肝芽腫及び/又は再発若しくは難治性横紋筋肉腫を有する小児患者を治療する方法が提供され、これは、トポテカン及びテモゾロミドとの同時投与で本発明の経口液剤製剤用粉末状のリボシクリブを投与することを含む。好ましい実施形態では、小児患者は、再発又は難治性神経芽腫である。
【0056】
別の実施形態では、神経芽腫、髄芽腫、高悪性度神経膠腫、悪性ラブドイド腫瘍、肝芽腫及び/又は横紋筋肉腫を有する小児患者を治療する方法が提供され、これは、トポテカン及びテモゾロミドとの順次投与で本発明の経口液剤製剤用粉末状のリボシクリブを投与することを含む。
【0057】
さらに別の実施形態では、再発若しくは難治性神経芽腫、再発若しくは難治性髄芽腫、再発若しくは難治性高悪性度神経膠腫、再発若しくは難治性悪性ラブドイド腫瘍、再発若しくは難治性肝芽腫及び/又は再発若しくは難治性横紋筋肉腫を有する小児患者を治療する方法が提供され、これは、トポテカン及びテモゾロミドとの順次投与で本発明の経口液剤製剤用粉末状のリボシクリブを投与することを含む。好ましい実施形態では、小児患者は、再発又は難治性神経芽腫である。
【0058】
別の実施形態では、再発若しくは難治性神経芽腫、再発若しくは難治性髄芽腫、再発若しくは難治性高悪性度神経膠腫、再発若しくは難治性悪性ラブドイド腫瘍、再発若しくは難治性肝芽腫及び/又は再発若しくは難治性横紋筋肉腫を有する小児患者を治療する方法が提供され、これは、28日サイクルの1~5日目に静脈内トポテカン0.75mg/m2/日、及び28日サイクルの1~5日目に経口テモゾロミド150mg/m2/日との同時投与で、28日サイクルの1~21日目に本発明の経口液剤製剤用粉末状のコハク酸リボシクリブを200mg/m2/日、280mg/m2/日又は350mg/m2/日の用量で経口投与することを含む。
【0059】
別の実施形態では、再発若しくは難治性神経芽腫、再発若しくは難治性髄芽腫、再発若しくは難治性高悪性度神経膠腫、再発若しくは難治性悪性ラブドイド腫瘍、再発若しくは難治性肝芽腫及び/又は再発若しくは難治性横紋筋肉腫を有する小児患者を治療する方法が提供され、これは、28日サイクルの1~5日目に静脈内トポテカン0.75mg/m2/日、及び28日サイクルの1~5日目に経口テモゾロミド150mg/m2/日との順次投与で、28日サイクルの6~21日目に本発明の経口液剤製剤用粉末状のコハク酸リボシクリブを200mg/m2/日、280mg/m2/日、又は350mg/m2/日の用量で経口投与することを含む。
【0060】
別の実施形態では、再発若しくは難治性神経芽腫、再発若しくは難治性髄芽腫、再発若しくは難治性高悪性度神経膠腫、再発若しくは難治性悪性ラブドイド腫瘍、再発若しくは難治性肝芽腫及び/又は再発若しくは難治性横紋筋肉腫を有する小児患者を治療する方法が提供され、これは、28日サイクルの1~5日目に静脈内トポテカン0.75mg/m2/日、及び28日サイクルの1~5日目に経口テモゾロミド150mg/m2/日との同時投与で、28日サイクルの1~21日目にコハク酸リボシクリブを200mg/m2/日、280mg/m2/日、又は350mg/m2/日の用量で経口投与することを含む。
【0061】
別の実施形態では、再発若しくは難治性神経芽腫、再発若しくは難治性髄芽腫、再発若しくは難治性高悪性度神経膠腫、再発若しくは難治性悪性ラブドイド腫瘍、再発若しくは難治性肝芽腫及び/又は再発若しくは難治性横紋筋肉腫を有する小児患者を治療する方法が提供され、これは、28日サイクルの1~5日目に静脈内トポテカン0.75mg/m2/日、及び28日サイクルの1~5日目に経口テモゾロミド150mg/m2/日との順次投与で、28日サイクルの6~21日目にコハク酸リボシクリブを200mg/m2/日、280mg/m2/日、又は350mg/m2/日の用量で経口投与することを含む。
【0062】
これ以上詳しく説明しなくても、当業者であれば、以上の説明を用いて、本発明を最大限に利用できると考えられる。従って、以下の実施例は、単に例示として解釈すべきであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0063】
本明細書で利用される賦形剤は全て、当業者に周知の多数の製造業者から入手可能な標準的な医薬グレードの賦形剤である。
【実施例
【0064】
本明細書において、これらのプロセス、スキーム及び実施例で使用されている記号及び慣例は、例えば、米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society)又はジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)などの現代の科学文献で使用されているものと一致している。特に断りのない限り、温度は全て、℃(摂氏)で表す。
【0065】
実施例1
飲み込みやすさのために、リボシクリブを含有する液体製剤は、経口液剤の形態で評価したが、こうした形態は、原薬のインビボ崩壊又は溶解を必要としないため、吸収速度をさらに高め得る。
【0066】
製剤調製
図1のフローチャートに記載した手順に従って、リボシクリブ30mg/mlを含有する経口液剤を調製した。実施例1のプロセスにより、表1に示す下記組成を有する組成物が得られた。
【0067】
【表1】
【0068】
得られた製剤は、リボシクリブ30mg/mLを透明から乳白色のオレンジ風味の水溶液として含有する。この製剤は、室温では不安定であり、冷蔵条件での保存を必要とし、2~8℃の冷蔵保存条件下で12ヶ月という限られた保存期間を有することが判明した。リボシクリブ溶液の色は、室温で6ヶ月間保存するとオレンジ色から暗褐色に変化した。加えて、25℃/60%RHで12ヶ月保存すると、活性成分リボシクリブの含有率に有意な低下が認められた。
【0069】
実施例2
製剤の調製
実施例1の水溶液中のコハク酸リボシクリブの安定性の課題を克服するために、原薬と希釈剤及び他の賦形剤のブレンドを含有する瓶入り粉末製剤を評価した。
【0070】
表2は、実施例1と定性的に類似した製剤を示している。実施例2では、メチルパラベンの代わりに、より溶解しやすいメチルパラベンのナトリウム塩の防腐剤を使用した。他の変更点は、材料に嵩を増し、ガラス瓶への均一な充填を支持するための、水に溶解しやすい希釈剤マンニトールの追加である。
【0071】
【表2】
【0072】
処方に記載される残りの賦形剤とコハク酸リボシクリブをドライブレンドして、経口懸濁液用の最終粉末を形成し;粉末を30mlアンバーガラス瓶に充填した。これらの瓶を40℃/75%RHの加速安定性条件下で保存した(4週間)。加速保存で4週間後の粉末の物理的特性を2~8℃の対照サンプルと比較した。
【0073】
粉末ブレンドは、高温及び湿気に曝露されると硬い塊に変化することが観察されたが;2~8℃で保存された対照サンプルは、流動性の粉末を呈した。粉末の流動特性の変化と緩い塊の形成は、クエン酸の吸湿性のために、クエン酸による水分の取り込みに起因すると考えられる。保存中、湿気から製剤を保護するために、容器密閉システムの適切な選択及びその密閉を考慮する。
【0074】
実施例3
製剤の調製
原薬のブレンドの物理的安定性を改善し、実施例2の製剤中のクエン酸に起因する望ましくない塊の形成に対処するために、1つの瓶に入った原薬のブレンドからクエン酸を分離し、再構成ビヒクル及び保存剤の入った別の瓶に可溶化形態で保持する二相系を評価した。第1相は、表3Aに記載されるようにクエン酸を含まない原薬のブレンドの瓶入り粉末を含み、第2相は、表3Bに記載されるようにクエン酸及び防腐剤を含有する再構成溶媒を含む。
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
第1相(再構成用の粉末相)では、4ステップ製造プロセスを使用し、バッチサイズ3.016kg(瓶260本)のバッチE002Aを得た。第1プロセスステップは、マンニトールを2等分し、アエロジル(Aerosil)と一緒にマンニトールの1部を0.4mm篩にかけることを含む。第2プロセスステップは、ストロベリーフレーバーとサッカリンナトリウムを0.4mm篩にかけ、それを第1ステップのブレンドに添加することを含む。第3ステップは、アイソレーター中の第2部のマンニトールとコハク酸リボシクリブを0.4mm篩にかけ、第2ステップの混合物と一緒にタービュラ(Turbula)内で5分間ブレンドすることを含む。第4プロセスステップは、タービュラにタルクを添加した後、混合物を再度5分間ブレンドすることを含む。得られたブレンドは、手で180mlのボトルに充填し、充填重量は11.443g~11.658gである。
【0078】
第2相である液相には4ステップ製造プロセスを使用して、バッチサイズ26L(瓶260本)のバッチE002Bを得た。第1プロセスステップは、35L容器への精製水の添加を含む。第2プロセスステップは、ナトリウムメチルパラベンを0.4mm篩にかけることを含む。第3プロセスステップは、第1ステップの水にメチルパラベンナトリウムを溶解させることを含む。第4プロセスステップは、第3ステップの内容物にクエン酸を溶解させた後、100ml±5%を180mlの瓶に充填することを含む。
【0079】
実施例4
製剤の調製
瓶入り粉末製剤には乾燥剤を含有させることができないことから、実施例2の製剤中のクエン酸に起因する望ましくない塊の形成に対処するため、代替可溶化剤である酒石酸を含む表4に示す製剤を評価した。
【0080】
【表5】
【0081】
表4に示す製剤を12段階の製造工程で調製して、バッチサイズ3.016kg(瓶260本)のバッチE005を取得した。第1プロセスステップは、半分量のマンニトールをアエロジル(Aerosil)及び酒石酸と一緒に0.4mm篩にかけることを含む。第2プロセスステップは、第1ステップのブレンドをタービュラミキサーで5分間混合することを含む。第3プロセスステップは、第2ステップのブレンドを4つの部分に分けることを含む。第4プロセスステップは、ナトリウムメチルパラベンを0.4mm篩にかけ、第3ステップからのブレンドの部分1とブレンドすることを含む。第5プロセスステップは、第4ステップのブレンドの入ったタービュラミキサーに第3ステップのブレンドの部分2を添加し、5分間混合することを含む。第6プロセスステップは、第5ステップのブレンドの入ったタービュラミキサーに第3ステップのブレンドの部分3を添加し、5分間混合することを含む。第7プロセスステップは、第6ステップのブレンドの入ったタービュラミキサーに、第3ステップのブレンドの部分4を添加し、5分間混合することを含む。第8プロセスステップは、サッカリンナトリウムとストロベリーフレーバーを0.4mm篩にかけることを含む。第9プロセスステップは、第7ステップの内容物と第8ステップの内容物をタービュラミキサー内で5分間ブレンドすることを含む。第10プロセスステップは、残りの半分量のマンニトールとコハク酸リボシクリブを0.4mm篩にかけ、第9ステップの内容物とタービュラミキサー内で5分間ブレンドすることを含む。第11プロセスステップは、第10ステップのブレンドにタルクを添加し、内容混合物をタービュラミキサー内で5分間ブレンドすることを含む。第12ステップは、第11ステップのブレンドの14.7g±0.5%を180mlガラス瓶に充填することを含む。
【0082】
実施例5
製剤調製
表5は、実施例4と定性的に類似した製剤を示している。いずれの製剤も、酒石酸の代わりにクエン酸を用いた以外は、同じ単位操作及び処理パラメーターを用いて製造した。バッチE004は、バッチサイズ2.352kg(瓶160本)で生産した。
【0083】
実施例5のプロセスにより、表5に示す組成を有する製剤が得られた。
【0084】
【表6】
【0085】
実施例6
製剤の調製
実施例1の水溶液中のコハク酸リボシクリブの安定性の課題を克服するために、表6に示すように、水溶液中の原薬を安定化するために抗酸化剤:メタ重亜硫酸ナトリウムを含む溶液製剤を評価した。
【0086】
【表7】
【0087】
表6に示す製剤を6段階製造工程で調製して、バッチサイズ1.6L(瓶160本)のバッチE006を得た。第1プロセスステップは、ステンレス製容器に全量の水の90%を添加することを含む。第2プロセスステップは、メタ重亜硫酸ナトリウム、サッカリンナトリウム及びメチルパラベンナトリウムを第1ステップの水に溶解させることを含む。第3プロセスステップは、第2ステップの内容物にコハク酸リボシクリブを添加して、均一な分散液を形成することを含む。第4プロセスステップは、ステップ3の内容物にクエン酸を添加し、撹拌して透明な溶液を形成することを含む。第5ステップは、ステップ4の溶液にオレンジフレーバーを添加し、残りの精製水を添加するステップを含む。第6ステップは、窒素ガスで容器をフラッシングして、溶存酸素を除去し、得られた溶液をガラス瓶に充填することを含む。
【0088】
実施例7
安定性試験
実施例3~6の製剤について、化学的及び物理的安定性を比較評価した。初期の観察結果に基づき、実施例6の製剤(バッチE006)を用いた試験は、高レベルの不純物のため中止された。表7B、7C及び7Dに要約されるように、25℃/60%RH及び40℃/75%RHの保存条件下で、残りの製剤(実施例3~5)を様々な時点で評価した。実施例3の二相系は3ヶ月目で良好に機能したが、実施例3の製剤(バッチE002A及びE002B)の安定性試験は、6ヶ月後にメチルパラベンの含有率に有意な減少が観察されたため中止された。12ヶ月後の実施例4及び5のバッチの比較観察を表7Aに要約する。
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】
【表10】
【0092】
【表11】
【0093】
実施例5の製剤を用いたさらなる安定性試験は、6ヶ月目後の40℃/75%RHの加速安定性条件下(表7C)及び12ヶ月後の25℃/60%RHの室温制御(CRT)の長期安定性条件下(表7A)でのバッチE004の瓶内のケーク形成の観察に基づいて中止された。
【0094】
実施例8
製剤の調製
30mg/mlのリボシクリブ濃度をもたらすように、水に再構成することができる、原薬と希釈剤及び他の賦形剤のブレンドを含む瓶入り粉末製剤を、図2のフローチャートに記載される手順に従って調製した。実施例8のプロセスによって、表8に示す以下の組成を有する組成物が得られた。
【0095】
【表12】
【0096】
12ステップの製造プロセスを用いて、表8に示す製剤を調製した。最初の2つのプロセスステップは、ハンドシーブ又は適切な装置を用いて1.0mmスクリーンで篩い分けることによって、マンニトールの2つの部分(部分2A及び2B)を粉塊することを含む。プロセスステップ3及び4は、ハンドシーブ又は適切な装置を用いた0.8mmスクリーンによる酒石酸の脱凝集と、ハンドシーブ又は適切な装置を用いた0.5mmスクリーンによる材料の前篩い分けを含む。第5プロセスステップは、安息香酸ナトリウムの入った適切なブレンダー内に、部分2Aのマンニトールを容器/ブレンダーの25%~70%の充填量になるように添加し、内容物を総回転数476でブレンドすることを含む。第6プロセスステップは、第5ステップのブレンドを0.5mm篩でスクリーニングすることを含む。第7プロセスステップは、0.8mm篩を通して第6ステップの材料をスクリーニングすることを含む。第8プロセスステップは、第6及び第7ステップで篩にかけた材料を好適なサイズのブレンダーに添加して、タルク、アエロジル、オレンジフレーバー、酒石酸(第4ステップから)及び残りの量のマンニトール(部分2B)と一緒に、50%~65%の充填量を達成し、内容物を総回転数476でブレンドすることを含む。第9プロセスステップは、第8ステップのブレンドを0.5mmスクリーンで篩い分けることを含む。第10プロセスステップは、第9ステップの材料を0.8mmスクリーンで篩い分けることを含む。第11プロセスステップは、API原薬を第9ステップ及び第10ステップで篩い分けたブレンドと一緒に第8ステップのブレンダーに添加し、総回転数644で混合することを含む。第12プロセスステップは、瓶の充填及び密閉装置を用いて、第11ステップの内容物を180mLのアンバーガラス瓶に充填することを含む。
【0097】
第12ステップの間に、インプロセスコントロール(IPC)によって、外観、コハク酸リボシクリブのブレンド均一性(BU)、防腐剤のブレンド均一性(BU)、含水量、乾燥減量(LOD)、嵩密度、タップ密度、及び粒度分布(PSD)の許容基準に照らして、最終ブレンドを評価する。また、インプロセスコントロールによって、外観、保存剤の含量均一性(CU)、含水量、重量変動、コハク酸リボシクリブの含有率、保存剤の含有率、微生物限度試験(MET)、再構成時間、及び分解生成物に関する許容基準に照らして、最終ブレンドの瓶充填を評価する。
【0098】
実施例9
リボシクリブを用いた臨床試験
再発又は難治性(r/r)神経芽腫(NB)、並びに髄芽腫(MB)、高悪性度神経膠腫(HGG)、悪性ラブドイド腫瘍(MRT)、肝芽腫(HB)及び横紋筋肉腫(RMS)などの他の固形腫瘍を有する小児患者を対象に、トポテカン及びテモゾロミド(TOTEM)と組み合わせたリボシクリブの有効性及び安全性を評価する第I/II相多施設共同試験。試験デザインを図3に図示する。本試験は、第I相-パートA(用量設定)、これに続いて、r/rNB、r/rMB、r/rHCG、r/r MRT、r/rHB及びr/rRMSにそれぞれ対応する複数の拡大コホート(第I相-パートB)から成る。第II相は、r/rNB患者を対象とした拡大コホートにおいて抗腫瘍活性の確認後に開始される。
【0099】
参加基準
1.同意書に署名した時点で年齢が≧12ヵ月且つ≦21歳
2.組織学的又は細胞学的に以下に挙げる固形腫瘍が確認され、該腫瘍は、標準治療にもかかわらず進行しているか、又は有効な標準治療が存在しない。
a.神経芽腫(第I相及び第II相の場合)
i.国際神経芽腫病期分類(International Neuroblastoma Staging System)(INSS)に従って組織学的に証明された神経芽腫
ii.再発:再発又は進行した高リスク神経芽腫
iii.難治性高リスク疾患:フロントライン治療に対する十分な反応がないために、患者がコンソリデーション治療(例えば、骨髄機能廃絶化学療法)に進むことができない場合
iv.抗GD2療法の候補ではない患者
v.断面画像による測定可能な疾患又は評価可能な疾患(骨髄組織画像の有無にかかわらずMIBGスキャンでの取り込み)
vi.ベースラインスキャンは、以前の治療を受けてから少なくとも4週間後に取得すべきである
vii.患者は、スクリーニング前にMYCN増幅状態が取得可能でなければならない。局所MYCNの結果が得られない場合、患者は、MYCN増幅状態の施設検査のために腫瘍生検を提供する意思がなければならない。
b.遺伝子状態(即ち、WNT活性化型若しくは非WNT型、SHH活性化型若しくは非SHH型)に関係なく、髄芽腫(第I相試験)3又は4群
c.高悪性度神経膠腫(第I相試験)WHOグレード(悪性度)III又はWHOグレードIV
d.悪性ラブドイド腫瘍(第I相の場合):非定型奇形/ラブドイド腫瘍(AT/RT)、腎臓のラブドイド腫瘍(RTK)、及び以下の3つの基準のうち2つ;(1)+(2)又は(1)+(3)により定義される他の軟部組織の診断を含む:
i.形態及び免疫表現型パネルがラブドイド腫瘍と一致する
ii.免疫組織化学により確認されたSMARCB1の欠損
iii.SMARCB1免疫組織化学が曖昧な場合は、腫瘍特異的2対立遺伝子SMARCB1欠損/変異の分子学的確認が奨励され、SMARCB1免疫組織化学が取得できない場合は、必須となる。
e.肝芽腫(第I相試験の場合)。注:肝細胞癌(HCC)患者は、本試験について適格性ではない。
f.横紋筋肉腫(第I相試験の場合)
3.CNS疾患を有する患者は、リボシクリブの初回用量投与前の少なくとも7日間は、漸増計画のない安定用量のステロイドを受けるべきである。
4.患者の腫瘍型に応じた標準的な画像診断基準(HB、MRT(原発性非CNS腫瘍)及びRMSについては、固形腫瘍の治療効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)[RECIST]v1.1、MB、HGG、MRT(原発性CNS腫瘍)については改訂神経腫瘍評価(Revised assessment in neuro-oncology)[RANO]基準、NB患者については国際神経芽腫効果基準(International neuroblastoma response criteria)[INRC])により定義される評価可能又は測定可能な疾患。
5.神経芽腫患者に適用可能:患者は、スクリーニング前にMYCN増幅状態が取得可能でなければならない;局所MYCNの結果が得られない場合、患者はMYCN増幅状態の施設検査のために腫瘍生検を提供する意思がなければならない。
6.パフォーマンスステータス:麻痺のため歩行はできないが、補助なしで車椅子に座ることができる患者は、パフォーマンススコアの評価の目的で、歩行可能であるとみなされる
a.≦16歳:ランスキー・プレイ(Lansky Play)スコア≧50%
b.>16歳:カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス≧50%又はECOG<3
7.登録時の余命≧12週間
a.以下のように定義される十分な骨髄機能(骨髄が腫瘍に関与している可能性がある)及び臓器機能:
b.検査後7日以内に増殖因子の支持なしで、末梢血好中球絶対数(ANC)≧1000/mm
c.検査後7日以内に増殖因子の支持なしで、血小板数≧75,000/mm
d.ヘモグロビン≧8.0g/dL(輸血は許可される)
e.総ビリルビン≦1.5×年齢に応じたULN(ギルバート症候群の場合、≦3.0×ULN又は直接ビリルビン≦1.5×年齢に応じたULN)
f.血清総ビリルビン≦1.5×ULN、且つアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)/アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦3×ULN(肝転移の場合は、AST/ALT≦5×ULN)と定義される十分な肝機能
g.十分な腎機能(クレアチニンクリアランス又は放射性同位元素による糸球体濾過量(GFR)≧60mL/分/1.73m、又は血清クレアチニン≦1.5×年齢/性別正常値に基づくULNと定義される)。
h.心エコー図で、補正QT間隔(QTc)≦450msec、且つ短縮率(SF)>29%(3歳未満の小児の場合、>35%)、及び左室駆出率(LVEF)≧50%と定義される十分な心機能。
8.以下の臨床検査値が、正常範囲内であるか、又は試験薬の初回投与前にサプリメントで正常範囲内に補正されている:
a.カリウム
b.マグネシウム
c.総カルシウム(血清アルブミンについて補正)
9.性的に活動的な女性は、治療中及び治療後6ヵ月間、高度に有効な避妊法を使用することに同意しなければならない。さらに、妊娠可能な女性は、試験薬の初回用量投与前の7日以内に血清妊娠検査で陰性でなければならない。妊娠中又は授乳中の女性は本試験に不適格である。
10.性的に活動的な男性(精管結紮術を受けた者を含む)で、禁欲に同意しない者は、試験治療中及び治療中止後6ヵ月間、性交時にコンドームを使用する意思がなければならない。
11.被験者及び/又は保護者は、インフォームド・コンセント文書を理解する能力を有し、且つ署名する意思がある。
【0100】
投与計画
第I相-パートA(用量設定段階)では、リボシクリブ用量を漸増しながら、トポテカン及びテモゾロミド(TOTEM)は、図4に示すように、TOTEMと組み合わせたリボシクリブと最大耐量(MTD)及び/又は推奨第II相用量(RP2D)が見出されるまで固定用量で投与される。
【0101】
患者は、28日サイクルのうち1~21日目にリボシクリブ200mg/m/日PO(経口)の出発用量(用量レベル1)で治療すると共に、1~5日目にトポテカン(0.75mg/m/日IV-静脈内)及び1~5日目にテモゾロミド(150mg/m/日PO-経口)を同時投与する。リボシクリブの用量は、耐性に応じて、続く28日間サイクルで用量レベル2(280mg/m/日)及び用量レベル3(350mg/m/日)まで漸増され、これは、MTD、又は同時投与スケジュールに好適なより低いリボシクリブ用量が見出されるまで継続する。MTDとは、TOTEMと組み合わせたリボシクリブ治療の最初のサイクルで、治療を受ける患者の33%超に用量制限毒性(DLT)が起こらないことが予想される最も高い薬剤投与量のことである。RP2Dは、安全性データ及び潜在的な薬物動態、バイオマーカー及び予備有効性データの包括的レビューに基づいて決定される。
【0102】
追加/即時投与レベルが評価されたにもかかわらず、同時投与スケジュールの場合にリボシクリブのMTD/RP2Dが見出されない場合。1~5日目にトポテカン(0.75mg/m/日IV-静脈内)及びテモゾロミド(1~5日目に150mg/m/日PO-経口)で、続いて、28日サイクルのうち6~21日目にリボシクリブ200mg/m/日PO(経口)の出発用量(用量レベル1)で処置する順次投与スケジュールを探索する。リボシクリブ用量は、耐性に応じて、続く28日間サイクルで用量レベル2(280mg/m/日)及び用量レベル3(350mg/m/日)まで漸増し、これは、MTD、又は順次投与スケジュールに好適なより低いリボシクリブ用量が見出されるまで継続する。順次投与スケジュールのMTD/RP2Dが見出されたら、第I相-パートAの用量設定は完了したとみなされ、第I相-パートBが開始され、順次投与スケジュールの上記MTD/RP2Dをさらに多くの患者について評価する。
【0103】
新たな治療サイクルの開始基準
新たな治療サイクルを開始するためには、患者は以下の基準を満たしていなければならない:
-末梢血絶対好中球数(ANC)≧1000/mm
-血小板数≧75,000/mm
-全ての非血液毒性は、≦グレード1又はベースラインレベルのいずれか低い方でなければならない
-DLT表に記載されているその他のDLTがないこと
【0104】
上記基準が満たされるまで、新たな治療サイクルを開始しない:
-新たな治療サイクルを≦7日後に開始することができる場合は、同じ用量レベルで治療を再開する。
-新たな治療サイクルを>7~28日後に開始することができる場合は、より低い用量レベルで治療を再開する。
-新たな治療サイクルが28日超遅延している場合は、治療を中止する。
【0105】
CTCAE v5.0を用いて用量制限毒性(DLT)を定義するための基準
投与量制限毒性(DLT)は、リボシクリブによる治療に関連することが疑われる(即ち、疾患の進行、併発疾患、若しくは併用薬とは無関係のものとして評価される)有害事象(AE)又は臨床検査値異常として定義され、そのために再治療の基準を満たすことができなくなるか、又は新たなサイクルの開始予定日から7日以内に新たな治療サイクルを開始することができなくなるAE及び検査値異常を含む。DLTを定義するための基準を表9に示す。
【0106】
【表13】
【0107】
【表14】
【0108】
治療期間
患者は、許容できない毒性、確認された疾患の進行(対応する腫瘍評価基準に従う)、死亡、又はその他の理由(追跡不能、被験者/親/保護者の決定、若しくは同意の撤回など)による試験治療の中止まで、治験薬組み合わせ療法の最大12サイクルにわたり組み合わせ治療を継続する。
【0109】
12サイクルの治験薬組み合わせ療法の終了後、許容可能な毒性で臨床的有用性(疾患安定若しくはより良好)が継続する場合、患者は、TOTEMと組み合わせて受けるのと同じ用量でリボシクリブ(第II相試験に登録され、対照アームにランダム化された患者については、対応するプラセボ)の単独投与を、疾患の進行、許容できない毒性の発生により、それ以上の治療が不可能となるまで、21日間連続で継続することができ、その後7日間の休薬期間を置く。
【0110】
本試験では、あるアームから別のアームへの治療のクロスオーバーは認められない。
【0111】
以上、本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は、本明細書に開示された詳細な指示に限定されるわけではなく、以下の特許請求の範囲に含まれる全ての改変に対する権利が留保されることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】