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特表2025-503081動いている流体から電気を生成するための装置及び方法
<図1>
  • 特表-動いている流体から電気を生成するための装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】動いている流体から電気を生成するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/16 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
F03B13/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024543307
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-09-18
(86)【国際出願番号】 NO2023050006
(87)【国際公開番号】W WO2023140739
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】20220068
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】324007080
【氏名又は名称】サイン デルタ アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バラット スティーブン
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074BB10
3H074CC03
3H074CC50
(57)【要約】
動いている流体から電気を生成するための装置であって、長手方向軸を有する長尺体であって、地面または海底に取り付けられ、且つ、前記動いている流体に曝されるように、配置された長尺体と、少なくとも1つの張られたケーブルであって、前記長尺体から張力で支持され、且つ、少なくとも部分的に前記長尺体内に配置され、さらに、前記長尺体の揺動に対して揺動または振動するように配置された少なくとも1つの張られたケーブルと、揺動しているか、または振動している少なくとも1つの張られたケーブルの運動エネルギーを電気エネルギーに変換するための少なくとも1つのエネルギーハーベスタと、を備えている、装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動いている流体から電気を生成するための装置であって、
長手方向軸を有する長尺体であって、地面または海底に取り付けられ、且つ、前記動いている流体に曝されるように配置された、長尺体と、
少なくとも1つの張られたケーブルであって、前記長尺体から張力で支持され、且つ、少なくとも部分的に前記長尺体内に配置され、さらに、前記長尺体の揺動に対して揺動または振動するように配置されている、少なくとも1つの張られたケーブルと、
揺動または振動している前記少なくとも1つの張られたケーブルの運動エネルギーを電気エネルギーに変換するための少なくとも1つのエネルギーハーベスタと
を備えている、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記少なくとも1つの張られたケーブルは、少なくとも部分的に前記長手方向軸に沿って配置されている、装置。
【請求項3】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記少なくとも1つのエネルギーハーベスタは、
少なくとも1つの磁石と、
少なくとも1つのコイルと
を備えている、装置。
【請求項4】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記長尺体は、使用時に前記流体に曝されるように配置された円筒構造体を備えている、装置。
【請求項5】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記長尺体の一端部は、使用時に、前記地面に固定して取り付けられ、
前記長尺体は、前記地面から垂直方向にさらに延在し、風に曝される、装置。
【請求項6】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記少なくとも1つの張られたケーブルは、前記長尺体に固定的に留められた一端部を有している、装置。
【請求項7】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記少なくとも1つの張られたケーブルは、前記地面または前記地面付近に固定的に留められた別の端部を有している、装置。
【請求項8】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、さらに、
前記エネルギーハーベスタの少なくとも一部を支持するための支持体を備え、
前記支持体は、前記長尺体内に配置され、且つ、前記長手方向軸に沿って延在している、装置。
【請求項9】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記少なくとも1つのエネルギーハーベスタは、さらに、前記少なくとも1つの張られたケーブルの前記運動エネルギーの少なくとも一部を採取するための振動採取手段を備えている、装置。
【請求項10】
請求項3から9のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記少なくとも1つのエネルギーハーベスタは、さらに、
前記少なくとも1つの磁石を含む振動採取手段と、
前記少なくとも1つのコイルを含む変換手段と
を備え、
前記振動採取手段は、前記少なくとも1つの張られたケーブルによって動かされ、且つ、前記少なくとも1つのコイルに対して動くように配置されている、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
前記コイルは、垂直なコイルまたは水平なコイルである、装置。
【請求項12】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記振動採取手段は、さらに、第1の採取手段と第2の採取手段とを備え、
前記第1及び第2の採取手段は、水平な動きを垂直な動きに変換するように配置され、
前記第1の採取手段は、前記少なくとも1つの張られたケーブルに固定され、
前記第2の採取手段は、前記支持体に取り付けられ、且つ、使用時に垂直方向に動くように配置されている、装置。
【請求項13】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記支持体は、前記地面に固定され、且つ、前記長尺体に対して静止するように配置されている、装置。
【請求項14】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置の使用によって風から電気エネルギーを生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、再生可能資源からのエネルギーの生成に関し、具体的には、動いている流体から電気を生成するための装置及び関連する方法に関する。
[背景]
風や水などの再生可能資源から電気エネルギーを生成したいという要望が高まっている。風力タービンは、タービンを駆動する回転可能なブレードを用いて風の運動エネルギーを採取するのに広く使用されている。風力エネルギーを採取するのに回転ブレードを使用することには、例えば、鳥の死をもたらしたり、騒音公害をもたらしたり、住生活にとっての景観を破壊することなどを含む、いくつかの欠点がある。回転部品は、通常、大きな力及びストレスに対処する必要があるので、寿命が制限され得る。
【0002】
回転ブレードを使用せずに風から電気エネルギーを生成する様々な試みがなされてきた。Journal of Fluids and Structures (Volume 49,August 2014)において発表されたGrouthier、Michelinらによる論文“On the efficiency of energy harvesting using vortex-induced vibrations of cables”は、3つの配置を論じており、第1の配置は、風により動かされる弾性的に装着された剛性シリンダを備えており、第2の配置は、分散型のエネルギーハーベスタが取り付けられた、張られたケーブルを備えており、第3の配置は、単一のエネルギーハーベスタ付きの吊り下げ式ケーブルを備えている。この研究は、低速度の地球物理学的な流れからエネルギーを回収する能力という観点において、3つの配置を比較することを目的としたものであった。
[発明の概要]
本発明の第1の局面によれば、動いている流体から電気を生成するための装置がもたらされ、この装置は、
長手方向軸を有する長尺体であって、地面または海底に取り付けられ、且つ、動いている流体に曝されるように配置された、長尺体と、
少なくとも1つの張られたケーブルであって、長尺体から張力で支持されていて、少なくとも部分的に長尺体内に配置されており、さらに、長尺体の揺動に対して揺動または振動するように配置されている、少なくとも1つの張られたケーブルと、
揺動しているか、または振動している少なくとも1つの張られたケーブルの運動エネルギーを電気エネルギーに変換するための少なくとも1つのエネルギーハーベスタと
を備えている。
【0003】
長尺体は、使用時に、地面に取り付けられてもよい。長尺体は、使用時に、地面から垂直方向上向きに延在してもよい。長尺体は、全体的または部分的に水中に配置されてもよい。長尺体は、地面または海底に固定された艀などの浮遊体に固定されてもよい。動いている流体は、水、空気、及び気体のうちのいずれかであり得るか、それらのうちのいずれかを含み得る。
【0004】
典型的には、少なくとも1つの張られたケーブルは、少なくとも部分的に長手方向軸に沿って配置される。典型的には、少なくとも1つの張られたケーブルの全てが、長手方向軸に沿って配置される。
【0005】
典型的には、少なくとも1つのエネルギーハーベスタは、少なくとも1つの磁石と、少なくとも1つのコイルとを備える。
典型的には、張られたケーブルの第1の端部は、長尺体に取り付けられているので、長尺体の運動エネルギーを、少なくとも1つの張られたケーブルに伝達して、少なくとも1つの張られたケーブルを長尺体と地面または海底との双方に対して揺動させることができるという点において有利であり得る。少なくとも1つの張られたケーブルの揺動は、少なくとも1つの磁石と、少なくとも1つのコイルとを用いることにより、電気エネルギーに変換されてもよい。
【0006】
少なくとも1つの磁石は、少なくとも1つの張られたケーブルによって動かされて、少なくとも1つのコイルに対して動いてもよい。少なくとも1つのコイルは、地面または海底に取り付けられて、地面または海底に対して静止していてもよい。少なくとも1つのコイルは、長尺体に接続されてもよい。
【0007】
典型的には、長尺体は、使用時に流体に曝されるように配置された円筒構造体を備える。
円筒構造体は、流体が長尺体を通過するときに渦の力を誘発し得るという点において有利であり得る。渦の力は長尺体を動かし得る。長尺体は、略テーパ形状を有してもよい。
【0008】
典型的には、長尺体の一端部は、使用時に、地面に固定して取り付けられ得り、長尺体は、地面から垂直方向にさらに延在して、風に曝され得る。
典型的には、装置は、さらに、使用時に長尺体の下端部に取り付けられ得る減衰手段を備える。
【0009】
減衰手段は、長尺体の疲労を防止し得る。
典型的には、少なくとも1つの張られたケーブルは、長尺体に固定的に留められた一端部を有する。
【0010】
典型的には、少なくとも1つの張られたケーブルは、地面または地面付近に固定的に留められた別の端部を有する。
第2の端部を地面または地面付近に固定することは、少なくとも1つの張られたケーブルの一端にとってほぼ静止した固定点を提供することができるという点で有利となり得る。少なくとも1つの張られたケーブルの第1の端部が長尺体によって動かされると、これにより、少なくとも1つの張られたケーブルに沿って動く波が印加される。少なくとも1つの張られたケーブルを固定的に留めることにより、その波を反射させて、運動エネルギーが保存される。
【0011】
典型的には、少なくとも1つのエネルギーハーベスタは、長尺体内に位置している。
典型的には、装置は、さらに、エネルギーハーベスタの少なくとも一部を支持するための支持体を備え、この支持体は、長尺体内に配置され、長手方向軸に沿って延在する。
【0012】
支持体は、使用時に、一端が地面に固定されてもよい。少なくとも1つのコイルは、支持体に取り付けられてもよい。支持体は、長尺体内の少なくとも1つのコイルに静止した支持を提供し得るという点で有利であり得るので、少なくとも1つの磁石は、少なくとも1つのコイルに対して動いてもよい。
【0013】
典型的には、少なくとも1つのエネルギーハーベスタは、さらに、少なくとも1つの張られたケーブルの運動エネルギーの少なくとも一部を採取するための振動採取手段を備える。
【0014】
振動採取手段は、少なくとも1つの張られたケーブルに取り付けられてもよい。振動採取手段は、0.1kg以上の質量を有してもよい。エネルギー採取手段は、1kg以下の質量を有してもよい。エネルギー採取手段は、1kg以上の質量を有してもよい。エネルギー採取手段は、5kg以下の質量を有してもよい。0,1kgを超える質量は、その質量が、揺動しているケーブルによって動かされると、振動採取手段のより安定した揺動をもたらし得る十分な慣性を保持することができるという点で有利であり得る。
【0015】
典型的には、少なくとも1つのエネルギーハーベスタは、さらに、少なくとも1つの磁石を備える振動採取手段と、少なくとも1つのコイルを備える変換手段とを備え、振動採取手段は、少なくとも1つの張られたケーブルによって動かされ、且つ、少なくとも1つのコイルに対して動くように配置される。コイルは、水平なコイルまたは垂直なコイルであり得る。コイルは、支持体上に固定的に配置され得る。例えば、コイルは、支持体の壁構造に統合され得る。水平なコイルは、水平軸を中心に巻回されてもよく、振動採取手段は、例えばコイルの中央領域において、磁石が水平軸に沿った方向に移動可能となるように構成され得る。垂直なコイルは、垂直軸を中心に巻回され得る。そして、振動採取手段は、コイルの巻き線とほぼ平行な方向に磁石が移動可能となるように構成され得る。有利には、複数の垂直軸を有する複数のコイルを円周回りの様々な位置に設けることができることにより、複数の磁石が水平に揺動することができることになり、振動を複数のコイルにおいて電気エネルギーに直接駆動式で変換でき、ひいては、風向きの変化に応じて装置の方向を調整する必要なく、複数の方向において変換を行うことが可能になる。
【0016】
典型的には、振動採取手段は、さらに、第1の採取手段と第2の採取手段とを備え、第1及び第2の採取手段は、水平な動きを垂直な動きに変換するように配置され、第1の採取手段は、少なくとも1つの張られたケーブルに固定され、第2の採取手段は、支持体に取り付けられ、且つ、使用時に垂直に動くように配置されている。
【0017】
典型的には、支持体は、地面に固定され、且つ、長尺体に対して静止するように配置される。
水平な動きを垂直な動きに変換することは、エネルギーハーベスタで任意の水平方向の揺動を採取して、任意の水平方向の揺動を、一方向、即ち、垂直方向の揺動に変換できるようになり得るという点において有利になり得る。磁石が垂直に揺動すると、磁石は、支持体に取り付けられたコイルに電流を誘起し得る。したがって、風向きの変化に応じて装置の方向を調整することを回避できる。典型的には、支持体は、長尺体の内側部分であるか、または、長尺体に取り付けられている。
【0018】
本発明の第2の局面によれば、本発明の第1の局面に係る装置の使用によって風から電気エネルギーを生成する方法が提供される。
[詳細な説明]
本発明の実施形態を、単なる例として、添付した図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】風から電気を生成するための装置を示している。
図2】エンドキャップの詳細図を含む装置の垂直断面を示している。
図3】エネルギーハーベスタの詳細な垂直断面を示している。
図4】わずかに回転された図3の垂直断面を示している。
図5】エネルギーハーベスタの代替実施形態の垂直断面を示している。
図6】エネルギーハーベスタの代替実施形態の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、横及び水平という用語は、主に水平である方向を特定するのに用いられる。垂直という用語は、主に垂直である方向を示すのに用いられる。上向き、下向き、垂直、及び水平とは、装置100が地面上に垂直に載置されたときの装置100の方向を示すのに用いられる。同様に、上方及び下方とは、ハーベスタ100が地面上に垂直に載置されたときのハーベスタ100に関する。
【0021】
図1に示された装置100は、長尺体1及びベース2を備えている。ベース2は、地面9に固定して取り付けられている。長尺体1は、ベース2に取り付けられ、且つ、長尺体1の第1の端部と第2の端部との間でベース2から垂直方向上向きに延在している。長尺体1は、風に曝されると振動または揺動するように配置されている。
【0022】
図2に示すように、装置100は、さらに、長尺体1内に配置された、張られたケーブル5を備えている。張られたケーブル5は、振動または揺動し得る、ワイヤ、ポリマー若しくは有機繊維からなるロープ、または、あらゆる非剛性の、ワイヤ、紐、ケーブル、若しくはロープであってもよい。張られたケーブル5は、上端部または上端部の近傍にて長尺体1に取り付けられた第1の端部51と、ベース2に取り付けられた第2の端部59とを有する。長尺体1は、張られたケーブル5の振動を誘発するように配置されている。エネルギーハーベスタ6は、運動エネルギー、すなわち、張られたケーブル5の振動を、電気エネルギーに変換するために長尺体1内に配置されている。
【0023】
図1を再度参照すると、長尺体1は、概ね円筒形状である、すなわち、円筒構造体12を有している。円筒構造体12は、長手軸X1を有している。細長い空洞122は、軸X1と同軸に配置されている。長尺体は、さらに、円筒構造体12の上端部121に固定して取り付けられたエンドキャップ11を備えていることにより、円筒構造体12の上端部を閉塞し、空洞122を封止している。
【0024】
ベース2は、円筒ハウジング21と、基礎部29とを備え、このベースは、基礎部29を介して、地面に接続可能である。この実施例では、基礎部29は、ベース2の基礎部29を地面9に固定するための孔(図示せず)を有する円形板291を備えている。円形板291は、地面9に水平方向に固定されている。円筒ハウジング21は、当該ハウジング21を板291上に同心円状に接合及び固定することにより、基礎部29に取り付けられている。円筒ハウジング21の直径が長尺体1の円筒構造体12の下部を囲むように調整されていることにより、長尺体1をベース2に固定している。円筒構造体12及び円筒ハウジング21は、軸X1に沿った連続孔を形成している。この実施例では、円筒ハウジング21は、円筒構造体12の疲労を防止するための減衰手段211を備えている。この実施例では、減衰手段211は、円筒形状の金属製の蛇腹212を備えている。図2に示すように、金属製の蛇腹212は、フランジ接続部215によって、円筒ハウジング21の下部219に取り付けられている。他の実施例では、このような減衰手段211は使用されないか、必要ではない。
【0025】
図2は、長尺体1の空洞122内に配置された張られたケーブル5の第1の端部51を示している。エンドキャップ11は、ケーブル引張部13を備え、ケーブル引張部13は、長手軸X1に沿ってエンドキャップ11内において移動可能なピストンヘッド131を備えている。流体通路132は、ピストン121を上方に付勢するためにエンドキャップ11内に配置されている。ナット111及びボルト112がピストンヘッド131の上端に接続されて第1の端部51をエンドキャップ11に固定していることにより、ピストン131を用いてケーブル5の張りを調整することができる。
【0026】
図2がさらに、ベース2に取り付けられた、張られたケーブル5の第2の端部59を示していることにより、張られたケーブル5の第2の端部59のための不動の固定点を提供している。よって、ケーブル5は、上端部の固定点と下端部の固定点との間に張られている。
【0027】
いくつかの実施形態では、ケーブル引張部13は、本装置のベース2に配置されている。この場合、第1の端部51は、エンドキャップに固定的に留められ、第2の端部59は、ベース2内のピストンヘッド131に固定される。ケーブル引張部13をベース内に有していることで、張られたケーブル5の張りを容易に調整できる。
【0028】
使用時に、風が円筒構造体12を通過することで、円筒構造体12の周囲の圧力が変化して長尺体1を動かすので、その上端部を前後移動させながら長尺体1が揺動する。この揺動が第1の端部51に作用することで、張られたケーブル5に波のような動きを加える。よって、張られたケーブル5が地面9と長尺体1との双方に対して動くまたは振動する。この相対運動は、長尺体1内に配置された1つ以上のエネルギーハーベスタ6を用いて電気エネルギーを生成するのに利用可能である。
【0029】
図3及び図4は、エネルギーハーベスタ6をさらに詳細に示している。エネルギーハーベスタ6は、張られたケーブル5の動きを電気エネルギーに変換するように配置されている。エネルギーハーベスタ6は、図2に示すように、ベース2に強固に取り付けられた円筒形状の支持体69を備えている。この実施例では、支持体69は、長尺体1に沿って略半分まで延在している。他の実施例では、支持体69は、長尺体1に沿った別の位置にあってもよい。
【0030】
エネルギーハーベスタ6は、さらに、振動採取手段60と、運動エネルギーを電気エネルギーに変換するための変換手段65とを備えている。振動採取手段60は、支持体69内に配置された第1の採取手段61及び第2の採取手段62を備えている。第1の採取手段61は、張られたケーブル5と共に水平方向に動くことにより、水平方向の振動のエネルギーを採取するように配置されている。第1の採取手段61の水平な動きは、反対方向に配向された磁石を使用することにより、第2の採取手段62の垂直な動きに変換される。
【0031】
第1の採取手段61は、張られたケーブル5が横方向に動くと横方向に動くことが可能となるように、張られたケーブル5に装着されている。第1の採取手段61は、ディスク611と、ディスク611に固定された3つの第1の磁石612とを備えている。張られたケーブル5が当該張られたケーブル5に固定されたディスク611の中心を通って延在しているので、ディスク611は、張られたケーブル5と共に動く。第1の磁石612は、ディスク611上で離隔され、且つ、一方の極が上方を向き、反対の極が下方に向くように配置されている。第1の採取手段61は、さらに、支持体69の内周を囲む第1のリング619を備えている。第1のリング619は、支持体69に固定されている。ディスク611は、複数の弾性バンド615を介して第1のリング619に接続されている。
【0032】
第2の採取手段62は、第1の採取手段61の上方で支持体69の内側に支持されている。第2の採取手段62は、さらに、張られたケーブル5の周りに延在しており、また、張られたケーブル5が振動するときに当該張られたケーブル5が横方向に自由に動けるように配置された中心、を通る孔を有している。第2の採取手段62は、さらに、第1の磁石612とは反対方向に配向された3つの第2の磁石622を備えている。これにより、さらに説明するように、張られたケーブル5が動くと、第1の磁石612の位置が第2の磁石622から離れるので、第1の磁石612と第2の磁石622との対向している組の間の反発力が変動し、張られたケーブル5の横方向の動きを第2の採取手段の垂直な動きに変換する。
【0033】
第2の採取手段62は、アーム621が取り付けられた中央のリング形状構造620を備えている。アーム621は、当該アーム621の外側部に取り付けられた1つ以上の磁石623を有している。第2の採取手段62は、さらに、支持体69に固定装着された円形状の支持構造629を備えている。支持構造629は、ケーブル5が自由に移動できる中心を通る孔を有している。リング形状構造620は、4つのバネ625を介して支持構造629の下部に取り付けられている。バネ625は、長手軸X1周りに配置され、また、軸X1に沿った方向に圧縮または伸長して、第2の採取手段62の垂直な動きを可能にする。
【0034】
第1の採取手段61は、ディスク611の中心が長手軸X1と一直線に整列したときに中心にあると言われる。磁石612及び磁石622は、第1の採取手段61が中心にあるときに、第1の磁石612の各々が、その真上に第2の磁石622があるように、すなわち、それらの磁石の中心軸’が一直線に整列されるように、配置されている。第2の磁石622は、第1の磁石612と第2の磁石622とが互いに反発するように、第1の磁石612の反対方向に配向されている。この反発力は、磁石同士が近接すると強まり、第1の磁石612が遠ざかると弱まる。
【0035】
張られたケーブル5が揺動または振動すると、第1の磁石612は、第1の採取手段61の一部であるので水平方向に動く。第2の磁石622は、第2の採取手段62を垂直方向に動かす変動磁場を観測する。第1の磁石612及び第2の磁石622の方向が反対であるので、第1の採取手段61が支持体68の中心に近づくと、第2の採取手段62は上方に押し上げられる。第1の採取手段61が支持体68の中心から離れると、重力及び/またはバネ625が、第2の採取手段62を下方に、引く、及び/または、押す。このようにして、張られたケーブル5及び第1の採取手段61の任意の水平方向における動きは、第2の採取手段62の垂直な動きに変換される。
【0036】
第2の採取手段62の垂直な動きの電気エネルギーへの変換は、変換手段65に対して動いている第2の採取手段62の磁石623によって得られる。変換手段65は、磁石623と同じ高さで、支持体69内に配置されている。変換手段65は、支持体69の周縁を囲んでいる第2のリング650を備えている。変換手段65は、さらに、第2のリング650の内側に周方向に配置された複数のコイル692を備えている。コイル692は、図3及び図4に示すように、各コイルの中心軸が第2のリング650の周縁の接線と平行になるように配向されている。さらに、コイル692は、隣接する2つのコイル692の間の空間内に各磁石623が延在するように配置されている。
【0037】
図に示すように、この実施例のエネルギーハーベスタ6は、支持体69内において、第1の採取手段61の下方に配置された第2の採取手段62’及び変換手段65’という別の組を有している。この別の組は、第2の採取手段62及び変換手段65と比較して、当該別の組が180度逆さまにひっくり返されていることを除いて、同様に動作する。第2の採取手段62及び変換手段65の2つの組を有していることは、第1の磁石612が対向している磁力を観測して第1の採取手段61の垂直な動きを防止できるという点で有利となり得る。
【0038】
第2の採取手段62がコイル692に対して垂直方向に揺動すると、変動磁場がコイル692に電流を誘起する。コイル692は、電気を利用できるように、バッテリ(図示せず)または電気網(図示せず)に接続されている。生成された電気から電気分解により水素ガスを製造する設備も採用され得る。
【0039】
複数のエネルギーハーベスタ6を長尺体1内で用いることができる。好ましくは、エネルギーハーベスタ6の配置は、張られたケーブル5上を波が進むパターンに基づいている。さらには、張られたケーブル5の張りを変更して、揺動パターンを調整できる。いくつかの実施例では、エネルギーハーベスタ6が定常波の腹の近傍、すなわち、2つの節の中間に位置する定常波を発生するようにケーブル5の張りを調整してもよい。平均風速で1つの腹が生じる場合には、通常、空洞122の中央に位置する1つのエネルギーハーベスタ6が用いられる。2つの腹の場合には、2つのエネルギーハーベスタ6が用いられ、一方は空洞122内の1/3、他方は該空洞等内の2/3にある、等である。
【0040】
図面を参照ながら上述したようにエネルギーハーベスタ6を配置したことにより、任意の水平方向におけるケーブル5の振動を、一方向における、すなわち垂直な、動きに変換できる。これにより、風向きまたは長尺体1の揺動方向にかかわらず、電気エネルギーを生成することが可能になる。
【0041】
別の実施例では、エネルギーハーベスタ6は、水平な動きを電気エネルギーに直接変換するように配置されている。図5及び図6参照。
これについての配置は図5に示されており、図5において、エネルギーハーベスタ6は、水平な磁石体71と、コイル装置72とを備えている。水平な磁石体71の中心は、張られたケーブル5に取り付けられている。磁石体71は、水平方向に細長く、磁石体71の各先端に1つずつ、2つの磁石711が取り付けられている。コイル装置72は、支持体69に取り付けられた2つのコイル721を備えている。コイル装置72は、磁石711の各々を収容し、張られたケーブル5と共に磁石体71が動くと電気を発生するように配置されている。この実施例におけるエネルギーハーベスタ6は、張られたケーブル5を、コイル721の方向によって規定された一方向に動かす必要がある。様々な風向に対して調整するために、支持体69を回転させるための配置を採用することができる。この実施例におけるコイル721は、水平なコイルである。
【0042】
これについての別の配置が図6に示されており、図6において、エネルギーハーベスタ6は、水平な磁石体71と、コイル装置72とを備えている。水平な磁石体71の中心は、張られたケーブル5に取り付けられている。磁石体71は、水平方向に細長く、磁石体71の各先端に1つずつ、2つの磁石711が取り付けられている。コイル装置72は、支持体69に取り付けられた複数のコイル721を備えている。この実施例におけるコイル721は、垂直な軸を回る巻き線を有する垂直なコイルであり、張られたケーブル5と共に磁石体71が動くと、磁石711がコイル721間の領域731を通過して電気を発生する。磁石体71の水平な動きによって、磁石711は、コイル装置72と相互作用することができる。図5とは対照的に、図6の例におけるエネルギーハーベスタ6は、コイル間の領域にあるときの磁石がコイル721によって規制されないので、張られたケーブル5を一方向に動かす必要がない。
【0043】
装置100は、水流及び水波から電気エネルギーを生成することにも使用され得る。水中に配置された場合、長尺体1に作用する力は、風に曝された場合よりも強くなり得る。したがって、円筒構造体12の寸法をより小さくでき、長尺体1を両端部で固定してもよい。この場合、2つの張られたケーブルを長尺体1内に配置することができるので、2つの張られたケーブル5の第1端部51は、長尺体1の中間部分に固定され、2つのケーブル5は長尺体に沿って反対方向に延在する。また、長尺体1は、水からエネルギーを取り込むのに適した、水平方向、垂直方向、または任意の方向に延在してもよい。いくつかの実施形態では、複数の張られたケーブル5は、長尺体の長手軸X1に対して横断して配置され得る。この場合、複数の張られたケーブル5は、両端が円筒構造体12の内側に固定される。円筒構造体12が、通過している水によって動かされると、張られたケーブル5の両端が動かされる。この実施例では、複数のエネルギーハーベスタ6が、張られたケーブル5の各々に1つずつ、円筒構造体12内に長手軸X1に沿って延在している剛性の棒に配置される。
【0044】
いくつかの変更例では、単一の張られたケーブル5は、エネルギー採取手段を通過する必要はなく、エンドキャップにおける第1の固定点から第1のエネルギー採取手段まで延在する第1のケーブルと、第1のエネルギー採取手段からベースにおける第2の固定点まで延在する第2のケーブルとに置き換えられてもよい。また、エネルギー変換は、エネルギー変換デバイスをその上に有するケーブルであって、円筒形状の長尺体の揺動でエネルギー変換デバイスをその上に有するケーブルが振動する、ケーブルの振動を利用して様々な方法で構成され得ることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動いている流体から電気を生成するための装置であって、
長手方向軸を有する長尺体であって、地面または海底に取り付けられ、且つ、前記動いている流体に曝されるように配置された、長尺体と、
少なくとも1つの張られたケーブルであって、前記長尺体から張力で支持され、且つ、少なくとも部分的に前記長尺体内に配置され、さらに、前記長尺体の揺動が前記張られたケーブルに波状の動きを印加することに対して揺動または振動するように配置されていることにより、前記張られたケーブルが前記地面及び前記長尺体の双方に対して、動くか、または、振動する、少なくとも1つの張られたケーブルと、
前記地面及び前記長尺体の双方に対して揺動または振動している前記少なくとも1つの張られたケーブルの前記動きを利用して電気エネルギーを生成するための少なくとも1つのエネルギーハーベスタと
を備えている、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記少なくとも1つの張られたケーブルは、少なくとも部分的に前記長手方向軸に沿って配置されている、装置。
【請求項3】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記少なくとも1つのエネルギーハーベスタは、
少なくとも1つの磁石と、
少なくとも1つのコイルと
を備えている、装置。
【請求項4】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記長尺体は、使用時に前記流体に曝されるように配置された円筒構造体を備えている、装置。
【請求項5】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記長尺体の一端部は、使用時に、前記地面に固定して取り付けられ、
前記長尺体は、前記地面から垂直方向にさらに延在し、風に曝される、装置。
【請求項6】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記少なくとも1つの張られたケーブルは、前記長尺体に固定的に留められた一端部を有している、装置。
【請求項7】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記少なくとも1つの張られたケーブルは、前記地面または前記地面付近に固定的に留められた別の端部を有している、装置。
【請求項8】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、さらに、
前記エネルギーハーベスタの少なくとも一部を支持するための支持体を備え、
前記支持体は、前記長尺体内に配置され、且つ、前記長手方向軸に沿って延在している、装置。
【請求項9】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記少なくとも1つのエネルギーハーベスタは、さらに、前記少なくとも1つの張られたケーブルの前記運動エネルギーの少なくとも一部を採取するための振動採取手段を備えている、装置。
【請求項10】
請求項3に従属したときの請求項9に記載の装置であって、
前記振動採取手段は、前記少なくとも1つの磁石を備え
前記少なくとも1つのエネルギーハーベスタは、さらに、前記少なくとも1つのコイルを含む変換手段を備え、
前記振動採取手段は、前記少なくとも1つの張られたケーブルによって動かされ、且つ、前記少なくとも1つのコイルに対して動くように配置されている、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
前記コイルは、垂直なコイルまたは水平なコイルである、装置。
【請求項12】
請求項8に従属したときの請求項9に記載の装置であって、
前記振動採取手段は、さらに、第1の採取手段と第2の採取手段とを備え、
前記第1及び第2の採取手段は、水平な動きを垂直な動きに変換するように配置され、
前記第1の採取手段は、前記少なくとも1つの張られたケーブルに固定され、
前記第2の採取手段は、前記支持体に取り付けられ、且つ、使用時に垂直方向に動くように配置されている、装置。
【請求項13】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記支持体は、前記地面に固定され、且つ、前記長尺体に対して静止するように配置されている、装置。
【請求項14】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載の装置の使用によって風から電気エネルギーを生成する方法。
【国際調査報告】