IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン イゾベの特許一覧

特表2025-503090熱可塑性繊維、ガラス繊維およびカップリング剤を含む遮断材料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】熱可塑性繊維、ガラス繊維およびカップリング剤を含む遮断材料
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/50 20060101AFI20250123BHJP
   D04H 1/4218 20120101ALI20250123BHJP
   D04H 3/004 20120101ALI20250123BHJP
   D04H 1/4291 20120101ALI20250123BHJP
   D04H 1/544 20120101ALI20250123BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20250123BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
D06M13/50
D04H1/4218
D04H3/004
D04H1/4291
D04H1/544
F16L59/02
G10K11/162
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543341
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 FR2023050092
(87)【国際公開番号】W WO2023144486
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】2200664
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン セネシャル
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム パイヤール
【テーマコード(参考)】
3H036
4L033
4L047
5D061
【Fターム(参考)】
3H036AB13
3H036AB18
3H036AB24
4L033AA09
4L033AB07
4L033AC11
4L033BA92
4L047AA05
4L047AA16
4L047BA12
4L047CB03
4L047CB06
5D061AA07
5D061AA12
5D061AA22
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】遮断材料を構成するガラス繊維との十分な接着性を有する熱可塑性繊維を含む遮断材料を得ることを可能にする解決策を提案する。
【解決手段】本発明は、熱可塑性繊維と、ガラス繊維と、カップリング剤とを含む遮断材料;本発明による材料から得られる音響および/または熱の遮断製品;熱可塑性繊維とガラス繊維とを混合する第1のステップと、次いで加熱するステップとを含む、本発明による材料を製造するための方法;に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断材料であって、ガラス繊維と、少なくとも1つのカップリング剤と、前記材料の合計重量に対して5重量%~30重量%の熱可塑性繊維とを含む、遮断材料。
【請求項2】
少なくとも1種のカップリング剤が、有機官能性シランであり、前記ガラス繊維がこの有機官能性シランで処理されている、請求項1に記載の遮断材料。
【請求項3】
少なくとも1つのカップリング剤が、前記熱可塑性繊維に含まれる極性カップリング剤である、請求項1又は2に記載の遮断材料。
【請求項4】
前記極性カップリング剤が、無水物、酸および有機官能性シランから選択され、特に、前記極性カップリング剤が、無水物、酸、およびアミンまたはエポキシ官能基を有する有機官能性シランから選択され、好ましくは、前記極性カップリング剤が、無水マレイン酸、マレイン酸および(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)から選択される、請求項3に記載の遮断材料。
【請求項5】
前記熱可塑性繊維が、極性モノマー単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の遮断材料。
【請求項6】
前記極性モノマー単位が、ポリビニルアルコールのモノマー単位である、請求項1~5のいずれかに記載の遮断材料。
【請求項7】
前記熱可塑性繊維が、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)およびそれらの共重合体の繊維から選択され、特に、熱可塑性繊維が、ポリオレフィン、PETおよびそれらの共重合体の繊維から選択され、好ましくは、前記熱可塑性繊維が、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)およびそれらの共重合体の繊維から選択される、請求項1~6いずれか一項に記載の遮断材料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の遮断材料であって、
0.025W/m・K~0.050W/m・K、特には0.028W/m・K~0.048W/m・K、好ましくは0.030W/m・K~0.045W/m・Kの熱伝導率を有する、遮断材料。
【請求項9】
前記熱可塑性繊維が、0.8dtex~4dtex、特に0.9dtex~3dtex、好ましくは1dtex~1.5dtexの番手を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の遮断材料。
【請求項10】
前記熱可塑性繊維が、2mm~100mm、特に3mm~60mm、好ましくは6mm~20mmの長さを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の遮断材料。
【請求項11】
前記ガラス繊維が、アミン官能基を有する有機官能性シランおよびエポキシ官能基を有する有機官能性シランから選択される有機官能性シランで処理されており、特に、前記ガラス繊維が、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランから選択される有機官能性シランで処理されており、好ましくは、前記ガラス繊維が(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)で処理されている、請求項2~10のいずれか一項に記載の遮断材料。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の遮断材料であって、400g/m~12,000g/m、特に500g/m~8,000g/m、好ましくは600g/m~4,000g/mの坪量を有する、遮断材料。
【請求項13】
10mm~300mm、特に15mm~200mm、好ましくは20mm~100mmの厚さを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の遮断材料。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の遮断材料を含む、音響および/または熱の遮断製品。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の遮断材料を製造する方法であって、前記熱可塑性繊維と前記ガラス繊維とを混合する第1の工程、及び、その後の加熱工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維および有機繊維をベースとする断熱および/または防音材料(熱及び/又は音の遮断材料)の分野に属する。より具体的には、本発明は、高い耐久性を有する複合遮断材料に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、多くの分野で使用されている。遮断の分野では、これらの材料は、一般に、ミネラル繊維マトリックスを含み、これは、要求される特性、例えば十分な熱特性、を生成物に与える役割を果たし、バインダによって一緒に連結され、バインダは、典型的には熱硬化性ポリマーに基づいており、アセンブリに、寸法安定性、機械的強度、および/または均質な色を与える。これらのポリマーは容易に実施され、ガラス繊維に対して良好な親和性を有する。
【0003】
しかしながら、材料の耐久性を改善するための継続的な研究の一部として、特にエネルギー消費を低減するためのかつ材料のリサイクル性を達成するための継続的な研究の一部として、熱硬化性ポリマーは、もはや満足のいくものではない。さらに、これらのポリマーは、また、毒性成分を含有することがあり、それらの取扱い中に揮発性有機化合物を放出し得る。
【0004】
今日、熱可塑性繊維は、繊維、健康及び衛生の産業においてバインダとして主に使用されている。固体熱可塑性バインダは、遮断材料の製造に伴う水およびエネルギー消費を低減するために、熱硬化性液体バインダの有利な代替物である。
【0005】
これらのバインダは、また、遮断材料の製造における実施の範囲内で、熱硬化性樹脂物質の硬化温度と比較してより少ない加熱を可能にするという利点を有し、かつ遮断材料の完全なリサイクルを可能にするという利点を有する。
【0006】
しかしながら、熱可塑性ポリマーは一般に非極性であるため、ミネラル材料に対して十分な接着性を示さない。実際、遮断材料内では、これらのポリマーは互いに対して接着するだけである。その結果、それらは、遮断材料として満足のいく機械的特性、例えば上記で開示された特性、を得るためには、大量に実施される必要がある。
【0007】
ガラス繊維を用いて強化された熱可塑性材料を製造することは、他の技術分野に特有の先行技術から知られている。
【0008】
特に、下記の刊行物は、シランで処理されたガラス繊維が強化剤として使用されるポリマーマトリックスを記載している:
- D. Bikiaris et al., Use of Silane Agents and Poly(propylene-g maleic anhydride) Copolymer as Adhesion Promoters in Glass Fiber/Polypropylene Composites, Journal of Applied Polymer Science,Vol.81,701-709(2001), - D.Bikiaris et al, Use of Silanes and Copolymers as Adhesion Promoters in Glass Fiber/Polyethylene Composites, Journal of Applied Polymer Science,Vol.80,2877-2888(2001)
および
- S. H. Pak et al, Acid-Base Interactions on Interfacial Adhesion and Mechanical Responses for Glass-Fiber-Reinforced Low-Density Polyethylene, Journal of Applied Polymer Science,65,143-154(1997)。
【0009】
CN109023719は、ガラス繊維を用いて強化されたポリプロピレン系織布材料を提案している。この文献は、カップリング剤としてシランを用いたガラス繊維の改質に言及している。
【0010】
米国特許出願公開第2008/0142178号は、ガラスフィラメントおよびポリビニルアルコールまたはポリエチレンテレフタレートの共重合体を含有する湿式法によって得られる繊維マットを開示し、カップリング剤としてシランを含有するガラスをコーティングする溶液の使用に言及している。
【0011】
音響遮断の分野では、EP1,659,382が、熱可塑性繊維、耐熱性のために使用されるアラミド繊維上のカップリング剤としてのシランを含む材料の使用を提案している。
【0012】
本発明者らの知る限り、熱可塑性繊維とガラス繊維とを含む遮断材料であってこれらの繊維間の密着性によって所望の最終遮断製品に従う所望の機械的特性を達成することを可能にするものを得ることについては提案されていない。
【0013】
したがって、その実施において満足のいく機械的特性を有することができる耐久性のある遮断材料が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、遮断材料を構成するガラス繊維との十分な接着性を有する熱可塑性繊維を含む遮断材料を得ることを可能にする解決策を提案することによって、従来技術の欠点、特に上で開示された欠点の全てまたはいくつかを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、第1の態様によれば、本発明は、遮断材料であって、ガラス繊維と、少なくとも1種のカップリング剤と、材料の総重量に対して5重量%~30重量%の熱可塑性繊維とを含む遮断材料に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によるこのような材料は、特には、完全にリサイクル可能であり、いかなる水消費も必要とせず、かつ低程度の加熱を伴う一方で、その機械的特性の観点から、特に、熱可塑性繊維およびガラス繊維の互いに対する密着性の観点から、遮断の分野での使用に満足のいくものであるという事実のために、興味深い。
【0017】
用語「ガラス繊維」は、ガラスウール、ロックウール及びスラグウールに含まれる繊維を意味することを意図する。このような繊維は例えば、欧州特許第1,032,542号明細書、欧州特許第1,522,532号明細書及び欧州特許第0,399,320号明細書に開示されている。
【0018】
本発明によるガラス繊維は、ガラス繊維の総重量に対する重量で表される、以下の組成を有することができる:
- SiO 50~75%、好ましくは60~70%、
- NaO 10~25%、好ましくは10~25%、
- CaO 5~15%、好ましくは5~10%、
- MgO 1~10%、好ましくは2~5%、CaOおよびMgOは合計で好ましくは5~20%、
- B 0~10%、好ましくは2~8%、
- Al 0~8%、好ましくは1~6%、
- KO 0~5%、好ましくは0.5~2%、NaOおよびKOは、合計で好ましくは12~20%、
- 1又は複数の酸化鉄 0~3%、好ましくは2%未満、また好ましくは1%未満、かつ
- 他の1又は複数の酸化物、合計で0~5重量%、好ましくは合計で3重量%未満、
残部は、不可避的不純物からなる、
【0019】
本発明によるガラス繊維は、また、ガラス繊維の総重量に対する重量で表される、ロックウール中に通常見られる、以下の組成を有し得る:
- SiO 30~50%、好ましくは35~45%、
- NaO 0~10%、好ましくは0.4~7%、
- CaO 10~35%、好ましくは12~25%、
- MgO 1~15%、好ましくは5~13%、CaOおよびMgOは合計で好ましくは11~40%、
- Al 10~27%、
-KO 0~2%、好ましくは0~1%
- 1又は複数の酸化鉄 0.5~15%、好ましくは3%~12%、かつ
- 1又は複数の他の酸化物、合計で0~5重量%、好ましくは合計で3重量%未満、
残部は、不可避的不純物からなる、
【0020】
本発明の意味の範囲内で、「カップリング剤」は、下記を示すものと理解される:
- 本発明による材料のガラス繊維を処理するための、有機官能性シラン、
- または、本発明による材料の熱可塑性繊維に含まれる、極性カップリング剤
のいずれか。
【0021】
したがって、少なくとも1種のカップリング剤を含有する本発明による遮断材料は、そのガラス繊維の表面上に有機官能性シランを含み、かつ/またはその熱可塑性繊維中に極性カップリング剤を含む。
【0022】
本発明によれば、極性カップリング剤は、極性官能基を有する化合物であり、本発明による材料の熱可塑性繊維中に導入されてよい。
【0023】
したがって、本発明に適した極性カップリング剤は、無水物、酸および有機官能性シランから選択することができ、特に、極性カップリング剤は、無水物、酸、およびアミン官能基またはエポキシ官能基を有する有機官能性シランから選択され、好ましくは、極性カップリング剤は、無水マレイン酸、マレイン酸、および(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)から選択される。
【0024】
本発明の意味の範囲内で、有機官能性シランは、式(I)の化合物である:
(R´O)3-nSi(R´´)-R (I)
式中、
- nは、1、2、および3から選択される整数であり、
- 各R´は、水素原子、C1~C8アルキル、およびC1~C8アシルからなる群から独立して選択され
- 各R´´は、C1~C8アルキルから独立して選択され
- Rは、有機官能基を有する炭素鎖である。
【0025】
特に、Rは、アミン官能基、ビニル官能基、エポキシ官能基、(メタ)アクリル官能基、硫化物官能基、アルキル官能基およびフェニル官能基から選択される官能基を有する炭素鎖である。
【0026】
本発明の目的のために、「(メタ)アクリル官能基」は、代替的に、メタクリル酸官能基およびアクリル官能基を意味すると理解される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、熱可塑性繊維が極性カップリング剤を含む場合、Rは、アミン官能基、エポキシ官能基、(メタ)アクリル官能基、硫化物官能基から選択される官能基を有する炭素鎖である。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、炭素鎖Rの性質に応じて、使用される有機官能性シランは、アミン官能基、ビニル官能基、エポキシ官能基、(メタ)アクリル官能基、硫化物官能基またはフェニル官能基を随意に有するアルキルアルコキシシランである。
【0029】
本発明に適したアルキル官能基を含む有機官能性シランの中で、特に、エチルトリアセトキシシランおよびメチルトリアセトキシシランを挙げることができる。
【0030】
本発明に適したアミン官能基を含む有機官能性シランの中で、特に(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-ベンジル-N´(3-トリメトキシシリル)-1,2-エチレンジアミンを挙げることができる。
【0031】
本発明に適したビニル官能基を含む有機官能性シランの中で、特にビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランを挙げることができる。
【0032】
本発明に適したエポキシ官能基を含む有機官能性シランの中で、特に(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GLYMO)および(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GLYEO)を挙げることができる。
【0033】
本発明に適した(メタ)アクリル官能基を含む有機官能性シランの中で、特に3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシランを挙げることができる。
【0034】
本発明に適した硫化物官能基を含む有機官能性シランの中で、特に(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランを挙げることができる。
【0035】
本発明に適したフェニル官能基を含む有機官能性シランの中で、特にN-ベンジル-N´-(3-トリメトキシシリル)-1,2-エチレンジアミンを挙げることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、本発明に従って使用される有機官能性シランは、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランから選択される。好ましくは、本発明に従って使用される有機官能性シランが(3-アミノプロピル)トリエトキシシランである。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、Rは、C1~C8グリシジルオキシアルキルおよびC1~C8アミノアルキルから選択される。
【0038】
本発明の特定の実施形態において、ガラス繊維は、アミン官能基を有する有機官能性シランおよびエポキシ官能基を有する有機官能性シランから選択される有機官能性シランで処理され、特に、ガラス繊維は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランから選択される有機官能性シランで処理され、好ましくは、ガラス繊維が、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)で処理される。
【0039】
第2の態様によれば、本発明は、本発明による遮断材料から得られる、音響および/または熱の遮断製品に関する。
【0040】
第3の態様によれば、本発明は、本発明による遮断材料を製造するための方法に関し、これは、熱可塑性繊維とガラス繊維とを混合する第1の工程と、次いで、加熱工程とを含む。
【0041】
本発明に従って使用される熱可塑性繊維は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド樹脂(PA)およびそれらの共重合体の繊維から選択されてもよく、特に、熱可塑性繊維は、ポリオレフィン、PETおよびそれらの共重合体の繊維から選択され、好ましくは、熱可塑性繊維は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)およびそれらの共重合体の繊維から選択される。
【0042】
一実施形態では、熱可塑性繊維が、上で定義したような熱可塑性プラスチックの相からなる。
【0043】
本発明の別の実施形態では、熱可塑性繊維が、「二成分」であると言われ、すなわち、それらは、上記で定義されたような熱可塑性プラスチックの少なくとも2つの異なる相からなる。例えば、この実施形態に従って実施される熱可塑性繊維は、コア(核)およびシース(外殻)からなってよく、または並置された熱可塑性プラスチックの2つの連続相からなってもよい。このような繊維を得るための方法は当業者に公知であり、例えば、米国特許第4,406,850号および欧州特許第0,011,954号に開示されている。このような繊維は市販もされており、例えばクラレクラフレックス(Kuraray Kuraflex)によりFELIBENDYの名称で販売されている布帛を構成する。
【0044】
この実施形態は、異なる融解温度を有する2つの相を選択することを可能にし、それによって、遮断材料を製造するための方法の間に、第1の相の融点よりも高いが第2の相の融点よりも低い温度に加熱され、そのようにして、熱可塑性繊維が、一定の構造的完全性を保持するようになる。
【0045】
この実施形態によれば、極性カップリング剤は、熱可塑性繊維の単一相に含まれ得る。特に、熱可塑性繊維がコアおよびシースからなる場合、極性カップリング剤は、熱可塑性繊維のシースを構成する相に含まれる。
【0046】
本発明に開示される遮断材料は、遮断材料の総重量に対して、1重量%~70重量%の熱可塑性繊維、特に3重量%~50重量%の熱可塑性繊維、好ましくは5重量%~30重量%の熱可塑性繊維を含有してよい。
【0047】
本発明による遮断材料は、遮断材料の総重量に対して5重量%~30重量%の熱可塑性繊維を含む。
【0048】
本発明による遮断材料に使用される熱可塑性繊維は、0.8dtex~4dtex、特に0.9dtex~3dtex、好ましくは1dtex~1.5dtexの番手を有することができる。
【0049】
繊維番手は、繊維産業において従来から使用されており、繊維の1000メートルのグラム単位の質量を指す。番手は、tex(1tex=10-6kg/m)で表され、より典型的には、dtex(1dtex=0.1tex)で表される。
【0050】
本発明による遮断材料で実施される熱可塑性繊維は、2mm~100mm、特に3mm~60mm、好ましくは6mm~20mmの長さを有することもできる。
【0051】
以下の実施例に示されるように、本発明者らはまた、本発明による遮断材料におけるガラス繊維および熱可塑性繊維の互いに対する密着性が、熱可塑性繊維における極性化学官能基の存在によって著しく増加することを観察した。
【0052】
これらの機能は、熱可塑性繊維中に極性カップリング剤を混合することによって、または熱可塑性プラスチックと極性モノマー単位との共重合によって導入することができる。
【0053】
したがって、一実施形態によれば、本発明による遮断材料中に存在する少なくとも1つのカップリング剤は、材料中に存在する熱可塑性繊維中に含まれる極性カップリング剤である。
【0054】
この実施形態によれば、極性カップリング剤は、無水物、酸、および有機官能性シランから選択されてもよく、特に、極性カップリング剤は、無水物、酸、およびアミンまたはエポキシ官能基を有する有機官能性シランから選択され、好ましくは、極性カップリング剤は、無水マレイン酸、マレイン酸、および(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)から選択される。
【0055】
このような熱可塑性繊維は当業者に知られている方法に従って得ることができ、例えば、米国特許出願第09/056,875号および国際公開第2009/051283号に開示されている。
【0056】
別の実施形態によれば、本発明による遮断材料中に存在する熱可塑性繊維は、極性モノマー単位を含む。
【0057】
この実施形態によれば、極性モノマー単位は、ポリビニルアルコールのモノマー単位である。
【0058】
例えば、本発明による遮断材料で実施される熱可塑性繊維は、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)共重合体を含んでもよい。
【0059】
このような熱可塑性繊維は、当業者に公知の方法に従って得ることができ、例えば、クラレクラフレックス(Kuraray Kuraflex)によってFELIBENDYの名称で販売されている布帛中に存在する。
【0060】
本発明による遮断材料は、400g/m~12,000g/m、特に500g/m~8,000g/m、好ましくは600g/m~4,000g/mの坪量を有することができる。
【0061】
本発明による遮断材料は、10mm~300mm、特に15mm~200mm、好ましくは20mm~100mmの厚さを有することができる。
【0062】
本発明による遮断材料は、0.025W/m・K~0.050W/m・Kの熱伝導度を有することができ、特に0.028W/m・K~0.048W/m・K、好ましくは0.030W/m・K~0.045W/m・Kの熱伝導性を有することができる。
【0063】
これらの熱伝導率値は、規格NF-EN-12667およびNF-EN-12939に従って測定することによって得られる。
【0064】
本発明はまた、本発明による遮断材料を含む防音および/または断熱製品(音響及び/又は熱の遮断製品)に関する。
【0065】
このような製品は、特にロールまたはパネルの形成で提供される。
【0066】
それは、例えば、建築物において、工業または輸送手段において、特に列車または輸送の手段で使用することができる。本発明による製品は、任意のタイプの建物、三次セクター建物または居住区(複数ユニットの家または個人の家)を断熱するために使用することができる。それは、例えば、外部を介して遮断するためのシステム、木枠住宅の遮断のためのシステム、サンドイッチパネル、換気ダクトなどに使用することができる。
【0067】
本発明はまた、熱可塑性繊維とガラス繊維とを混合する第1の工程と、次いで加熱工程とを含む、本発明による遮断材料を製造するための方法に関する。
【0068】
本発明による方法の加熱工程は、90℃~260℃、特に100℃~250℃、好ましくは110℃~240℃の温度で加熱することを含むことができる。
【0069】
熱可塑性繊維が「二成分」であると言われる実施形態では、加熱工程の温度が、特に成分の融解温度に基づいて選択される。したがって、加熱工程の温度は、好ましくは、熱可塑性繊維の第1の相の融解温度よりも高く、熱可塑性繊維の第2の相の融解温度よりも低い。
【0070】
以下の実施例は、本発明を非限定的に説明する。
【0071】

熱可塑性繊維とガラス繊維との間の密着性を測定するために、これらの材料のサンプルが調製される。各測定には、試料の顕微鏡での観察に従来使用されている3枚のガラス板と、ポリプロピレンのコア及びポリエチレンのシースからなる繊維で構成されるポリマーマットとが使用される。
【0072】
ポリマーマットは、クラレクラフレックス(Kuraray Kuraflex)によって販売されているFELIBENDY市販化合物から得ることができる。以下の実施例で使用されるマットは、0.1mm~1mmの厚さ、並びに約140g/mの坪量を有する。
【0073】
ガラス板を、水、次いでエタノールで洗浄し、バーナーの炎を用いて有機残留物を除去する。
【0074】
各測定について、試料は、3つの層に従って垂直に配置することによって得られる:
- 2枚のガラス板、上部板、下部板、からなる第1の層、2枚のガラス板はそれらの幅で隣接する
- 第1の層の2枚のガラス板に重なり合うようにそれらを部分的に覆う、ポリマーウェブからなる第2の層、
- 第2の層のポリマーマットを覆う、ガラスプレートからなる第3の層。
【0075】
このようにして得られた試料は、140℃で10分間、オーブン中で焼成工程を受ける。
【0076】
次いで、材料間の密着性を、汎用試験機器を使用して測定する;Instron 5965L9952、2580/2kNセルを参照し、機器の移動ジョーに係合させた上側プレートを2mm/分の速度で移動させる。測定された最大力は、システムの破断荷重であるとみなされる。
【0077】
以下の表1は、4つの試験の間に測定された、評価された様々な系、及びそれらの各々について測定された平均破断荷重を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
本発明による実施例1および3については、有機官能性シランによるガラスの表面処理は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)で浸漬された紙を用いた上記の洗浄ステップの後に実施され、ガラス板の表面上を通過し、次いでポリマーマットと接触させる。
【0080】
本発明による実施例2および3については、熱可塑性繊維中に分散された無水マレイン酸をさらに含むポリマーマットが使用される。
【0081】
本発明による実施例1と比較例4の破断荷重を比較することによって、または本発明による実施例3と本発明による実施例2の破断荷重を比較することによって、有機官能性シラン、ここではAPTES、によるガラスの表面処理が、ガラス基材と熱可塑性繊維との互いに対する密着性を著しく改善することを可能にすることが明らかに示される。
【0082】
加えて、本発明による実施例2について測定された破断荷重を比較例4の破断荷重と比較することによって、熱可塑性繊維中における極性カップリング剤の存在、ここでは無水マレイン酸の存在によって、ガラス基材と熱可塑性繊維との相互の密着性が著しく改善されることが可能になることも明らかである。
【0083】
さらに、本発明による実施例3については、ガラスを破壊することなくガラス板およびポリマーマットを分解することができないことにも留意されたい。実際、破断は熱可塑性マット内で起こり、ガラス板との界面では起こらない。この場合、測定された破断荷重は、ポリマーマットの結束のみを表し、前記ポリマーマットのガラス板への密着性を表すものではない。したがって、ポリマーマットとガラス板との間の密着性を表す破断荷重は、実際には、測定された破断荷重よりも高い。したがって、ガラス基材の表面処理に使用される有機官能性シランの形態のカップリング剤と、熱可塑性繊維中に存在する極性カップリング剤とを組み合わせて存在させることにより、この密着性を大幅に改善することが可能になることも実証される。
【0084】
したがって、結論として、上記の表1に示される結果は、カップリング剤が熱可塑性繊維とのガラス基材の密着性の有意な増加を可能にすることを実証する。このカップリング剤は、ガラス基質の表面処理によって導入される有機官能性シラン、又は熱可塑性繊維中に存在する極性カップリング剤の形態をとりうる。特に、ガラスの表面処理によって導入された有機官能性シランと、熱可塑性繊維中の極性カップリング剤とがカップリング剤として存在する場合、密着性は最大である。
【国際調査報告】