(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 29/02 20060101AFI20250123BHJP
B63B 11/02 20060101ALI20250123BHJP
B63B 15/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B63B29/02
B63B11/02
B63B15/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543344
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 KR2023001029
(87)【国際公開番号】W WO2023140692
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0009521
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0183610
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2023-0008447
(32)【優先日】2023-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513235337
【氏名又は名称】エイチディー コリア シップビルディング アンド オフショア エンジニアリング カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520387760
【氏名又は名称】エイチディー ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム ド ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ トン チン
(72)【発明者】
【氏名】ソン チャン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】クォン デ ヒョク
(57)【要約】
本発明は船舶に関するものであり、貨物を貯蔵する貨物区域と、上記貨物区域の前方に設けられる船首区域と、上記貨物区域の後方に設けられる船尾区域と、を含む船舶において、上記船首区域は、船体の内部と外部を区画する船首甲板を含み、上記船首甲板の上部に船室が設けられ、上記船室は、幅が船首の前方に向かうほど減少する形状の平断面を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物を貯蔵する貨物区域と、前記貨物区域の前方に設けられる船首区域と、前記貨物区域の後方に設けられる船尾区域と、を含む船舶において、
前記船首区域は、
船体の内部と外部を区画する船首甲板を含み、
前記船首甲板の上部に船室が設けられ、
前記船室は、
幅が船首の前方に向かうほど減少する形状の平断面を有する、船舶。
【請求項2】
前記船室は、
操舵室及び前記操舵室の下部に設けられる居住室を含む、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記船室は、
前記居住室をなす下部に比べて前記操舵室をなす上部が後退した形状を有する、請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記船室は、
前記操舵室の底をなす操舵甲板を有し、
前記居住室をなす下部と前記操舵室をなす上部が前記操舵甲板を基準として段差を置いて上下に連結される、請求項3に記載の船舶。
【請求項5】
前記船室は、
前記居住室をなす下部は平断面が上方に向かうほど減少し、前記操舵室をなす上部は平断面が上方に向かうほど増加する形状を有する、請求項3に記載の船舶。
【請求項6】
前記船室は、
前記操舵室の後方において前記貨物区域に向かって設けられる貨物管理室をさらに含む、請求項2に記載の船舶。
【請求項7】
前記船室は、
前記貨物区域と離隔して配置されて前記船室において後方に設けられる前記居住室の少なくとも後面が外部に露出される、請求項2に記載の船舶。
【請求項8】
前記居住室は、
前記船首甲板上に設けられて少なくとも前面が外部に露出される、請求項2に記載の船舶。
【請求項9】
前記船首甲板は、
サンクン甲板をなす、請求項1に記載の船舶。
【請求項10】
貨物を貯蔵する貨物区域と、前記貨物区域の前方に設けられる船首区域と、前記貨物区域の後方に設けられる船尾区域と、を含む船舶において、
前記船首区域は、
船体の内部と外部を区画する船首甲板を含み、
前記船首甲板の上部に船室が設けられ、
前記船室は、
少なくとも前方が前記船首甲板と類似する平断面を有する、船舶。
【請求項11】
前記船室は、
下面が前記船首甲板の上方に一定高さだけ離隔されるようにサポートにより支持される、請求項10に記載の船舶。
【請求項12】
前記船首甲板は、
サンクン甲板をなす、請求項11に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は貨物を積載し、海に浮遊した状態で出発地から目的地に移動して貨物を輸送する機能を行う。このような船舶は貨物の種類に応じて船型だけでなく、船内外の構造が異なるようになる。
【0003】
特に、船舶には船室が設けられるが、船舶に形成された貨物区域の形状などに応じて船室の位置は船種別に固定されている。具体的には、ガスを運搬するガス運搬船の場合、船室は船尾に配置され、コンテナ船の場合、船室は中央部分に配置される。
【0004】
ところが、船室の上部には操舵室が設けられるため、船室の配置は船舶の運航時に前方の視野を決める重要な要因となる。また、船室は比較的大きい左右の幅及び高さを有する構造物であり、船舶の運航過程で空気抵抗を引き起こす。さらに、船室は船員の居住区を含むため、安全な空間として区画されなければならない。
【0005】
このような状況下で、船舶の運航効率を上げるために船室の構造や配置などを変更する試みが多数行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するために創出されたものであり、本発明の目的は船室を船首に配置しながら船尾などの配置や構造などを効果的に変更することで、船舶の運航効率を最大化することができる船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面による船舶は、貨物を貯蔵する貨物区域と、上記貨物区域の前方に設けられる船首区域と、上記貨物区域の後方に設けられる船尾区域と、を含む船舶において、上記船首区域は、船体の内部と外部を区画する船首甲板を含み、上記船首甲板の上部に船室が設けられ、上記船室は、幅が船首の前方に向かうほど減少する形状の平断面を有する。
【0008】
具体的に、上記船室は、操舵室及び上記操舵室の下部に設けられる居住室を含むことができる。
【0009】
具体的に、上記船室は、上記居住室をなす下部に比べて上記操舵室をなす上部が後退した形状を有することができる。
【0010】
具体的に、上記船室は、上記操舵室の底をなす操舵甲板を有し、上記居住室をなす下部と上記操舵室をなす上部が上記操舵甲板を基準として段差を置いて上下に連結されることができる。
【0011】
具体的に、上記船室は、上記居住室をなす下部は平断面が上方に向かうほど減少し、上記操舵室をなす上部は平断面が上方に向かうほど増加する形状を有することができる。
【0012】
具体的に、上記船室は、上記操舵室の後方において上記貨物区域に向かって設けられる貨物管理室をさらに含むことができる。
【0013】
具体的に、上記船室は、上記貨物区域と離隔して配置されて上記船室において後方に設けられる上記居住室の少なくとも後面が外部に露出されることができる。
【0014】
具体的に、上記居住室は、上記船首甲板上に設けられて少なくとも前面が外部に露出されることができる。
【0015】
具体的に、上記船首甲板は、サンクン甲板をなすことができる。
【0016】
本発明の一側面による船舶は、貨物を貯蔵する貨物区域と、上記貨物区域の前方に設けられる船首区域と、上記貨物区域の後方に設けられる船尾区域と、を含む船舶において、上記船首区域は、船体の内部と外部を区画する船首甲板を含み、上記船首甲板の上部に船室が設けられ、上記船室は、少なくとも前方が上記船首甲板と類似する平断面を有する。
【0017】
具体的に、上記船室は、下面が上記船首甲板の上方に一定高さだけ離隔されるようにサポートにより支持されることができる。
【0018】
具体的に、上記船首甲板は、サンクン甲板をなすことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による船舶は、操舵室を含む船室を船尾ではない船首に配置しながら船室の形状を流線形に変更し、船室の高さを下げることにより、空気抵抗を減らして運航効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施例による船舶の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施例による船舶の側面図である。
【
図3】本発明の第1実施例による船舶の正面図である。
【
図4】本発明の第1実施例による船舶の正面断面図である。
【
図5】本発明の第1実施例による船舶の平面図である。
【
図6】本発明の第1実施例による船舶の部分側面図である。
【
図7】本発明の第1実施例による船舶の部分側面図である。
【
図8】本発明の第1実施例による船舶の部分斜視図である。
【
図9】本発明の第1実施例による船舶の部分斜視図である。
【
図10】本発明の第1実施例による船舶の部分側面図である。
【
図11】本発明の第1実施例による船舶の部分平面図である。
【
図12】本発明の第1実施例による船舶の部分正面図である。
【
図13】本発明の第1実施例による船舶の部分正面図である。
【
図14】本発明の第2実施例による船舶の部分側面図である。
【
図15】本発明の第3実施例による船舶の部分平面図である。
【
図16】本発明の第4実施例による船舶の部分側面図である。
【
図17】本発明の第5実施例による船舶の側面図である。
【
図18】本発明の第6実施例による船舶の部分側面図である。
【
図19】本発明の第7実施例による船舶の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的、特定の利点及び新規な特徴は、添付の図面に関連する以下の詳細な説明と好ましい実施例からより明らかになるであろう。本明細書では、各図面の構成要素に参照番号を付するにおいて、同じ構成要素に限っては、たとえ異なる図面上に表示されても可能な限り同じ番号を付したことに留意されたい。また、本発明を説明するにあたり、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に不明確にすると判断される場合はその詳細な説明を省略する。
【0022】
また、本発明における従来という表現は、本発明の特徴を説明するための比較例示に該当するものに過ぎず、必ずしも公知の内容であることを意味するものではない。
【0023】
本明細書における船舶は様々な種類の貨物を運搬する商船であってもよい。この場合、貨物は規格化された物品または物質であってもよく、コンテナなどであってもよい。または、貨物はガスであってもよく、このとき、ガスは沸点が常温より低くて液相で運搬する物質であり、LNG、LPG、エタン、メタノール、アンモニア、水素、CO2などであってもよい。即ち、本発明における船舶の種類は限定されない。
【0024】
さらに、本発明の船舶は貨物を運搬する商船の他に、人を運ぶクルーズ船、一定地域に係留して作業するFSRU、FPSO、Bunkering vessel、海洋プラントなどを全て含む概念である。
【0025】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。なお、以下において、船舶の長手方向と前後方向は同じであり、船舶の幅方向は左右方向と同じであり、船舶の高さ方向は上下方向と同じである。また、甲板は船体に水平に設けられる部分であり、甲板は船体の底面から一定の高さの上方に設けられることができる。即ち、以下で甲板の高さとは、船底(Base line)を基準として上下方向への高さを意味する。ただし、甲板は全体的に平らな面の形状であってもよく、または傾斜した面の形状であってもよい。後者の場合、甲板の高さは平均高さ、最小高さ、または最大高さの何れか1つを意味する。
【0026】
図1は本発明の第1実施例による船舶の斜視図であり、
図2は本発明の第1実施例による船舶の側面図であり、
図3は本発明の第1実施例による船舶の正面図である。また、
図4は本発明の第1実施例による船舶の正面断面図であり、
図5は本発明の第1実施例による船舶の平面図であり、
図6及び
図7は本発明の第1実施例による船舶の部分側面図である。また、
図8は本発明の第1実施例による船舶の部分斜視図であり、
図9は本発明の第1実施例による船舶の部分斜視図であり、
図10は本発明の第1実施例による船舶の部分側面図である。また、
図11は本発明の第1実施例による船舶の部分平面図であり、
図12及び
図13は本発明の第1実施例による船舶の部分正面図である。
【0027】
上述したように、本発明は制限されない種類の貨物を運搬する船舶1であってもよいが、以下において、第1実施例は、便宜上、液化天然ガス運搬船であると仮定して説明する。また、以下において、液化天然ガスは液化ガスや燃料などということができ、気相または液相などの状態であってもよい。即ち、液化天然ガスまたは液化ガスなどの表現にもかかわらず、該当物質は気相であることがもできる。
【0028】
図1~
図13を参照すると、本発明の第1実施例による船舶1は船体を含む。船体は船舶1の外面をなす構造物であり、長さが長く、幅と高さが相対的に小さい形状からなる。船体は内部と外部に分けられ、船体の内部には貨物、エンジン421、422などが設けられる。また、船体の外部には船室20、エンジンケーシング40、推進装置、係留装置30、その他様々な艤装設備や電気設備などが設けられてもよい。
【0029】
本発明において、船舶1は貨物区域CA、船首区域FA、船尾区域AAに区分することができ、これらの区域は船体の内部及び外部をすべて包括する概念であり、船体に付加される他の構造物や装置なども包括することができる。貨物区域CA、船首区域FA及び船尾区域AAは本発明の船舶1を長手方向に区画したものであることができる。以下では、区域別に本発明の特徴を詳細に説明する。
【0030】
貨物区域CAは貨物を貯蔵する。貨物区域CAは船体を基準としてほぼ中央部分を意味することができる。船体は長手方向の中央部分の正断面が最も大きく、前方部分及び後方部分において正断面が縮小されることができる。この場合、貨物区域CAは正断面が前後方向に一定である船体の中央部分を含むことができる。
【0031】
さらに、貨物区域CAは船体の正断面が多少縮小される前方部分及び後方部分の少なくとも一部をさらに含んでもよい。一例として、貨物区域CAにおける前方部分は他の部分より正断面が小さい形状を有することができる。
【0032】
貨物区域CAは上述のように制限されない様々な種類の貨物を貯蔵することができる。ただし、本実施例において船舶1が液化天然ガス運搬船である場合、貨物区域CAは液化天然ガスを貯蔵することができる。このために、貨物区域CAには液化ガス貯蔵タンクLTが設けられてもよい。貨物区域CAには船体の内部に液化ガス貯蔵タンクLTが収容されることができる。液化ガス貯蔵タンクLTは船体の長手方向に複数個設けられ、前後に隣接する液化ガス貯蔵タンクLTは隔壁によって互いに離隔して配置されることができる。
【0033】
液化ガス貯蔵タンクLTは液化天然ガスを沸点以下の極低温で貯蔵するタンクであってもよく、この場合、液化天然ガスは気相に比べて体積が約1/600に減少し、貯蔵効率性が大幅に向上する。
【0034】
ただし、液化ガス貯蔵タンクLTは極低温で貯蔵された液化ガスの温度を保持するために、断熱システムを備えることができる。断熱システムとしては液化ガス貯蔵タンクLTの内壁に設けられる断熱壁及び防壁を含んでもよく、断熱壁と防壁は少なくとも2重構造で設けられることができる。このようなタイプの液化ガス貯蔵タンクLTはメンブレン型タンクということができる。
【0035】
一方、液化ガス貯蔵タンクLTは外壁に断熱壁などを設けることもできる。この場合、液化ガス貯蔵タンクLTは船体とは別途に外部で製作された後、船体内に搭載されることができ、このようなタイプの液化ガス貯蔵タンクLTは独立型タンクということができる。ただし、以下において、本実施例はメンブレン型タンクを備えると仮定して説明する。
【0036】
液化ガス貯蔵タンクLTは船体によって上下左右が全て取り囲まれるように設けられてもよく、船体において液化ガス貯蔵タンクLTの下部にはバラストタンク341及びパイプダクトが設けられてもよい。また、船体において液化ガス貯蔵タンクLTの左右にもバラストタンク341が設けられてもよい。パイプダクトには後述する燃料ラインが設けられてもよく、パイプダクトを経由する燃料は貨物である液化ガスとは異なって沸点が常温以上の物質であることができる。従って、パイプダクト内の燃料ラインは断熱が大きく要求されない形状であることができる。
【0037】
船体において液化ガス貯蔵タンクLTの上部には作業者(乗船員)が移動可能な移動通路(passage way)が設けられてもよい。また、液化ガス貯蔵タンクLTの上面は内側甲板(inner deck)ということができ、内側甲板の上部には外部に露出した露出甲板EDが設けられる。
【0038】
液化ガス貯蔵タンクLTは船体の断面形状を考慮して容積を最大限に確保するために、八角形の断面を有することができる。この場合、露出甲板EDも液化ガス貯蔵タンクLTの上部の多角構造に対応して設けられることができる。
【0039】
一例として、露出甲板EDは幅方向に中央部分が最も高くなっており、この部分はトランク甲板TD(Trunk deck)ということができる。トランク甲板TDは内側甲板の上部に設けられ、トランク甲板TDと内側甲板との間には縦方向に縦強度を確保するための縦強度部材(ガーダー、スティフナーなど)が設けられてもよい。このような縦強度部材は船体がホギング(Hogging)またはサギング(Sagging)などの動きをするとき、船体の強度を保持する。
【0040】
後述するが、本発明は貨物区域CAに設けられる縦強度部材で縦強度を確保することに加えて、船室20や貨物処理室41などの構造で縦強度を向上させることができる。即ち、縦強度部材は前後方向に船室20などと連結されることにより、船体に対して縦強度部材の総長が拡張されて縦強度が改善される効果が得られる。
【0041】
トランク甲板TDと内側甲板は外部と液化ガス貯蔵タンクLTを隔離させる空間として活用され、液化ガス貯蔵タンクLTの漏れに備えることができる。ただし、液化ガス貯蔵タンクLTには液化ガス及び蒸発ガスなどの流出や流入のためにドーム(不図示)が設けられるが、ドームは内側甲板及びトランク甲板TDの両方を貫通して上端が外部に露出されていてもよい。
【0042】
露出甲板EDにおいて幅方向の左側部分と右側部分には、トランク甲板TDより低い高さの上甲板UD(upper deck)が設けられてもよい。上甲板UDは移動通路の天井をなす部分であることができる。上甲板UDはトランク甲板TDに比べて低く設けられ、傾斜面を通してトランク甲板TDと連結されることができる。
【0043】
上甲板UDもトランク甲板TDと同様に外部に露出されており、作業者は上甲板UDでも移動することができる。この場合、上甲板UDの左右の端にはハンドレール(不図示)及びサイドライトなどを設けることができる。上甲板UDの左右の端は船体の側面と連結されるが、このとき、船体の側面は船側外板という。船側外板と液化ガス貯蔵タンクLTとの間の空間には上述のようにバラストタンク341が設けられてもよい。
【0044】
上甲板UDは貨物区域CAの前端と後端との間で延長されてもよいが、本実施例の場合、貨物区域CAの前端において上甲板UDは下向甲板LDに切り替わってもよい。下向甲板LDは後述する船首甲板FDと並んで設けられる構成であり、上甲板UDに比べて高さが低い甲板であってもよい。
【0045】
下向甲板LDは複数の液化ガス貯蔵タンクLTのうち最前方に設けられる液化ガス貯蔵タンクLTの一側に位置することができる。下向甲板LDは上甲板UDの前端で垂直または傾斜した段差状に連結されてもよく、このような段差部分は貨物区域CA内において前後方向の最前方の液化ガス貯蔵タンクLTが設けられた部分上に設けられてもよい。
【0046】
後述するが、船首甲板FDは係留装置30を置いて係留を具現することができる。特に、船首甲板FDはサンクン甲板(Sunken deck)で設けられてもよい。しかし、船舶1を係留する場合、船首と船尾の他に、船体の中央部分でも係留ライン301の使用が求められる。従って、貨物区域CAにも係留ライン301が配置されることができる。このために、下向甲板LDは船首甲板FDと同じ高さで設けられ、船首甲板FDと下向甲板LDで統合された係留が行われることができる。
【0047】
一例として、船首甲板FD上に設けられる係留装置30(ウインドラス、ウインチなど)から連結される係留ライン301は貨物区域CAの下向甲板LDを経由して船体の外部へ延長されることができる。即ち、下向甲板LDは、船首甲板FDから延長される係留ライン301が船体の中央部分から左側または右側に延長されるようにする。
【0048】
液化天然ガス運搬船の場合、露出甲板EDはトランク甲板TDと、トランク甲板TDの両側に設けられ、トランク甲板TDより低く設けられる上甲板UDと、を含むことができる。勿論、露出甲板EDは液化ガス貯蔵タンクLTのタイプや構造、形状などに応じていくらでも変わり得る。ただし、露出甲板EDは船体で外部に露出する部分であり、船体の内部と外部を区画する上面であることができる。
【0049】
露出甲板EDは船体の内部に形成された貨物貯蔵空間10の上部に設けられてもよいが、露出甲板EDが貨物貯蔵空間10の上面を直接構成しなくてもよい。即ち、貨物貯蔵空間10と露出甲板EDは上下方向に離隔されて貨物を保護する空間を形成することができる。
【0050】
露出甲板EDには貨物を荷役または積載するための装置が設けられてもよい。また、露出甲板EDは貨物を処理するための付加設備が設けられてもよい。一例として、貨物が液化天然ガスである場合、露出甲板EDには貨物を搬送するためのマニホールド12が設けられることができる。マニホールド12は船体の中央部分に設けられるが、これは船舶1が港に接岸したときに港の搬送アームと容易に連結するためである。
【0051】
マニホールド12は液化ガスの気相及び液相をすべて搬送可能な形態で設けられ、気相ラインと液相ラインなどが交互に設けられる形態を有することができる。マニホールド12は少なくとも3つ以上のラインが前後方向に設けられ、港の搬送アームの配置に対応して気相ライン及び液相ラインが構成されることができる。
【0052】
マニホールド12はトランク甲板TDの左右両端に向かって延長される形態で設けられてもよい。マニホールド12は外部の搬送アームと連結される高さを有するために、幅方向にトランク甲板TDの外側から下向きに折り曲げられてもよく、上甲板UD上で左右方向に延長されてもよい。即ち、マニホールド12は少なくとも2回折り曲げられて階段状に設けられてもよく、マニホールド12で折り曲げられた部分の段差の高さはトランク甲板TDと上甲板UDの高さ差に対応することができる。
【0053】
マニホールド12は液化ガス貯蔵タンクLTと搬送アームを互いに連通させることができ、このためにマニホールド12は液化ガス貯蔵タンクLTのドームから延長される液化ガスラインと連結されることができる。液化ガスラインはドームから前方または後方方向に延長される。船体の中央部に設けられたマニホールド12を基準として後方に設けられる液化ガス貯蔵タンクLTには、液化ガスラインがドームを貫通した後、前方に延長されてマニホールド12に連結される。一方、船体の中央部に設けられたマニホールド12の前方に設けられる液化ガス貯蔵タンクLTには、液化ガスラインがドームを貫通した後、後方に延長されてマニホールド12に連結されることができる。即ち、マニホールド12は前後方向に設けられる複数個の液化ガス貯蔵タンクLTを統合連結する。
【0054】
また、露出甲板EDには液化ガス貯蔵タンクLTから放出される液化ガスを大気中に排出するためのベントマスト11が設けられてもよい。ベントマスト11は液化ガス貯蔵タンクLT毎に少なくとも1つ以上割り当てられることができる。本実施例の貨物区域CAには計4つの液化ガス貯蔵タンクLTが設けられ、ベントマスト11も計4つ設けられることができる。
【0055】
マニホールド12の後方と前方にそれぞれ2つの液化ガス貯蔵タンクLTが設けられる場合、マニホールド12の後方と前方にそれぞれ2つのベントマスト11が設けられてもよい。ベントマスト11はトランク甲板TDの幅方向の中央部分に設けられてもよく、トランク甲板TDに位置する作業者を保護するために、一定以上の高さを有することができる。即ち、ベントマスト11から排出される液化ガスが作業者を脅かさないように、ベントマスト11は一定以上の高さで液化ガスを放出する形態を有する。
【0056】
ベントマスト11は液化ガス貯蔵タンクLTの内圧が過度になった場合、安全バルブ(safety valve)が開放されるときに放出される液化ガスを外部に放出することができる。または、ベントマスト11は液化ガス貯蔵タンクLTとマニホールド12との間で流動する液化ガスを必要に応じて外部に排出することもできる。
【0057】
後述するが、本実施例は、エンジンケーシング40の高さ及び船室20の高さが共に低くなることにより、ベントマスト11の上端が最も高い位置となることができる。これを活用して少なくとも何れか1つのベントマスト11にはマストヘッドライト111、261が設けられてもよい。
【0058】
マストヘッドライト111、261は規定に基づいて船舶1の前方及び後方にそれぞれ設けられ、前方マストヘッドライト261と後方マストヘッドライト111との間の前後間隔は100mを超えなければならない。また、後方マストヘッドライト111は前方マストヘッドライト261より高く設けられなければならない。
【0059】
これを考慮して、本実施例では、一例として、最後端に設けられるベントマスト11には後方マストヘッドライト111が一体に設けられてもよい。即ち、本実施例は、トランク甲板TDにマストヘッドライト111、261を設置するための別途の構造物を適用する代わりに、既存に設けられるベントマスト11に後方マストヘッドライト111を設置することができる。
【0060】
ただし、ベントマスト11は液化ガスを放出する構造物であり、液化ガスは燃焼性及び爆発性を有することができる。従って、ベントマスト11に設けられる後方マストヘッドライト111は防爆諸元を有することができる。
【0061】
後述するが、前方マストヘッドライト261はレーダーマスト26に設けられてもよい。レーダーマスト26は船首区域FAに設けられる船室20においてコンパス甲板21b上に搭載される。レーダーマスト26はベントマスト11より低い高さを有するため、ベントマスト11に設けられる後方マストヘッドライト111はレーダーマスト26に設けられる前方マストヘッドライト261より高く設けられることができる。
【0062】
無論、船室20には前方マストヘッドライト261を設置するための別途のマストを適用することも可能である。この場合、前方マストヘッドライト261はレーダーマスト26の前方または後方などに設けられてもよく、必要に応じてレーダーマスト26に連結されてもよい。
【0063】
また、後方マストヘッドライト111もベントマスト11ではない別途のマストによって設置されてもよく、後方マストヘッドライト111を支持するマストはベントマスト11の周りに配置されることができる。後方マストヘッドライト111はベントマスト11の支持構造を活用するためにベントマスト11に連結されてもよい。
【0064】
液化ガス貯蔵タンクLTを搭載する場合、液化ガスの再液化、燃料供給などの処理を担当する構成を設ける必要がある。当該構成は貨物処理室41として構成され、貨物処理室41は甲板上に設けられる。
【0065】
貨物処理室41は液化ガスを圧縮する圧縮機、圧縮機を稼動させるモーター、そして液化ガスを冷却または加熱するための凝縮器またはヒーターなどを収容することができる。
【0066】
後述する船尾区域AAにおいて船体の外部と内部を区画する船尾甲板ADにはエンジンケーシング40が設けられるが、船尾甲板ADに船室20がさらに設けられる場合、船尾区域AAの空間が十分でないため、貨物処理室41は貨物区域CAの露出甲板ED上に配置されることがある。
【0067】
しかし、本発明は、船室20が船尾区域AAではない船首区域FAに配置される。これについては以下で詳細に説明する。このような特徴により、本発明は貨物処理室41が船尾甲板ADに配置されることができる余裕空間を確保する。
【0068】
従って、貨物処理室41は貨物区域CAではない船尾区域AAに設けられる。即ち、トランク甲板TDにはベントマスト11とマニホールド12及びその他諸設備だけが設けられ、液化ガスを主に処理するための貨物処理室41はトランク甲板TDに配置されない。
【0069】
この場合、本発明はトランク甲板TD上に十分な余裕空間を確保することができる。特に、本発明は貨物区域CAの露出甲板ED上に特定高さを有する六面体状の構造物(Room)がないという点で、貨物区域CAに対する監視が非常に容易である。
【0070】
さらに、本発明は貨物区域CAの露出甲板EDに付加的な装備などの設置を許容することができる。一例として、貨物区域CAの露出甲板EDには風力を利用する補助推進設備が設けられてもよい。風力補助推進設備としてはマグナスローター(Magnus Rotor)、ウィングセール(Wing sail)などがあり得る。このような風力補助推進設備はマニホールド12を基準として前方及び後方の少なくとも一側に設けられてもよく、トランク甲板TDまたは上甲板UDなどに配列されてもよい。
【0071】
または、貨物区域CAの露出甲板EDには風力以外の環境にやさしいエネルギーを活用する設備で、太陽光発電装備などが設けられてもよい。その他にも、船舶1の運航効率を向上させることができる各種の装備が貨物区域CA内に付加されてもよい。
【0072】
ただし、本発明は船室20に含まれる居住室22と操舵室21のうち操舵室21のみを船首区域FAに配置し、居住室22は船尾区域AAに保持する実施例があってもよい。この場合、貨物処理室41が貨物区域CAの露出甲板ED上に設けられることができる。または、この場合、貨物処理室41が船尾甲板AD上に設けられ、貨物処理室41と居住室22が上下に重畳されてもよい。
【0073】
船首区域FAは貨物区域CAの前方に設けられる。船首区域FAは船体において船首部分を含むことができ、船舶1の運航方向を基準として前方部分を包含する。船首区域FAでは船体が前方に向かうほど幅が急激に狭くなる形状を有する。従って、船首区域FAは貨物区域CAとは異なり、船体の内部及び外部における空間が相対的に狭い。
【0074】
船首区域FAの船体の前面には球状船首(Bulbous bow)が設けられてもよい。また、船体の前面は波と対向する船首であり、その形状によって船速による抵抗を決めることができる。船体の前面における球状船首の上部は上端から下に向かうほど後退した形態を有することができる。または、船体の前面は鉛直形状を有してもよい。
【0075】
船首区域FAには船体の内部と外部を区分する船首甲板FDが設けられてもよい。特に、本発明は船首甲板FD上に船室20が設けられる。このとき、船室20は操舵室21を含んでもよく、操舵室21とともに居住室22を含む。
【0076】
このとき、操舵室21は船舶1の運航を調節する装備が設けられた空間であってもよい。ただし、本発明の船舶1に自律運航が適用される場合、操舵室21は内部に配置される装備及び操舵室21の大きさなどが変更されてもよい。
【0077】
居住室22は船舶1内で様々な作業を行う作業者(乗船員)が滞在する空間であることができる。居住室22は作業者が居住する空間の他にも、作業者が休憩や勤務、食事をする空間などを全て包括する。即ち、居住室22は操舵室21の他に作業者が滞在することができる空間を全て含む構成であることができる。本発明の船舶1に自律運航が適用される場合、居住室22は最小化または省略されてもよい。
【0078】
従来の液化天然ガス運搬船は、操舵室21などの船室20が船尾に設けられるのが一般的であった。しかし、本発明は従来とは異なり、船首区域FAの船首甲板FD上に船室20を配置して船尾区域AA及び貨物区域CAの空間利用性を向上させることができる。
【0079】
また、船首区域FAに船室20が配置されることにより、操舵室21から前方を眺める際に船体による死角が生じない。船尾に船室20が設けられる従来の場合、船室20の前方の船体の長さにより死角が生じ、これによる事故の危険性が存在する。一方、本発明は船首甲板FD上に船室20を設け、船室20の操舵室21から前方を眺める際に船体によって隠される部分が(ほぼ)なくなり(Visibility lineの傾斜が大幅に下向するように改善する)、運航中の衝突危険度を最小化することができる。
【0080】
上述のように船尾に船室20が設けられる場合、貨物区域CAに貨物処理室41が配置されなければならないが、本発明は船室20が船首に配置されるため、船尾区域AAに貨物処理室41が配置されることができる。従って、貨物区域CAには貨物処理室41が配置されず、作業者の作業効率性及び作業管理の容易性などが増大する。さらに、本発明は貨物区域CAに対する環境に優しい改造を可能とする。
【0081】
船首甲板FDは船体の形状と同様に前方に向かうほど幅が狭くなる形状であり、前方に向かって凸の曲線状を有することができる。さらに、船首甲板FDには船舶1の係留のための係留装置30が設けられなければならず、係留空間の確保が必要である。従って、船首甲板FDは操舵室21と居住室22などの船室20を配置するための平面積が十分ではない。
【0082】
余裕面積の足りない船首甲板FDに船室20を配置しようとする場合、船室20の層数を高くして船室20の必要面積を確保する方案がある。しかし、この場合、船室20による空気抵抗が相当であるという問題がある。
【0083】
従って、本発明は、船首区域FAに配置された船室20による空気抵抗を最小化しながらも、船室20の必要面積を保障し、係留空間を十分に確保することができる方案を提示する。
【0084】
具体的には、本発明は船室20が船首甲板FDの上部に設けられながらも、船室20の幅が船首の前方に向かうほど減少する形状の平断面を有する。このとき、船室20は船首の前方に向かうほど船室20の幅が減少する程度が非線形的になり、船室20の前方が曲面状となることができ、または船室20は船首の前方に向かうほど船室20の幅が階段のように減少する形状であってもよい。または、船室20は船首の前方に向かうほど幅が線形的に減少するが、一定部分ごとに幅が減少する傾きが変わって多角形状をなすことができる。
【0085】
即ち、本発明の船室20は船尾に設けられる直方体形状ではなく、船首甲板FDと類似する平断面を有してBullet typeに設けられてもよい。これにより、本発明は船室20による空気抵抗を最小化することができる。
【0086】
また、船室20は空気抵抗をさらに低減するために、居住室22をなす下部が下面(A甲板)から上方に向かうほど平断面が小さくなる形状であってもよい。従って、船室20は側面から見て船体の船首のうち上部とともに逆の「く」字状となることができる。
【0087】
船室20は操舵室21と居住室22を含み、居住室22は操舵室21の下部に配置される。操舵室21を基準として底は操舵甲板21a、天井はコンパス甲板21bと定義することができ、居住室22は操舵甲板21aの下部に配置されることができる。コンパス甲板21bは船室20の上面をなして外部に露出されることができる。勿論、操舵甲板21aの上部にも居住空間が一部形成されてもよい。即ち、操舵室21と居住室22はその用語によって機能/用途が必ずしも制限されるものではない。
【0088】
船室20の居住室22は層数に応じてA甲板からB甲板などを含むことができる。このとき、A甲板に比べてB甲板の大きさが相対的に小さく形成される。また、操舵甲板21aは居住室22の甲板より小さい大きさであってもよい。船室20において居住室22をなす下部は平断面が上方に向かうほど減少するのに対し、船室20において操舵室21をなす上部は平断面が上方に向かうほど増加する形状であってもよい。即ち、船室20は側面から見て前端が「く」の字状であることができる。
【0089】
さらに、船室20は居住室22をなす下部に比べて操舵室21をなす上部が後退した形状を有することができる。即ち、船室20において居住室22をなす下部と操舵室21をなす上部が操舵甲板21aを基準として段差を置いて上下に連結される。この場合、操舵甲板21aの周りの少なくとも一部は外部に露出する。このとき、操舵室21から下を見る角度が居住室22の上面をなす操舵甲板21aによって一部制限され得るが、船室20が船首甲板FDに配置される以上、操舵甲板21aによってVisibility lineの下向が一部制限されても、従来に比べて死角を革新的に解消できることは言うまでもない。
【0090】
また、操舵室21は前方にさらに突出した居住室22によって保護されることができる。一例として、運航過程で船首甲板FDに超えてくる波がある場合、波は居住室22によって打ち砕き、操舵室21を打撃しないことができる。特に、船室20の下部は前方に凸の形状であるため、船室20の前面はまるで船体の船首のように波を分ける機能を行うことができる。
【0091】
ただし、船室20の下部の少なくとも前面は、波(green water)との衝撃に備えて構造及び材質が船室20の上部より強化されることができる。一例として、船室20の下部のうち前面に設けられる窓は操舵室21の窓に使用されるものより強度の高い強化ガラスが用いられてもよく、船室20の下部のうち前面をなす金属構造の厚さは、船室20の上部のうち前面をなす金属構造の厚さより相対的に大きくてもよい。
【0092】
船室20の上部である操舵室21が船室20の下部である居住室22に比べて後退した場合、外部に露出した操舵甲板21aはウイングブリッジ24に連結されてもよい。従って、操舵室21内の作業者は操舵甲板21aを経てウイングブリッジ24に移動する。このために、操舵甲板21aはウイングブリッジ24の上面と並んで設けられることができる。また、船室20の両側には作業者の脱出のための脱出装備(Life boatなど、不図示)が設けられてもよく、外部に露出した操舵甲板21aは脱出装備への接近を可能とすることができる。
【0093】
居住室22をなす下部は側面から見て前端が下端から上方に向かうほど後退する傾斜をなすことができるが、操舵室21をなす上部はこれとは反対の傾斜をなすことができる。即ち、船室20において操舵室21をなす上部は側面から見て前端が下端から上方に向かうほど前進する傾斜をなすことができる。
【0094】
それにもかかわらず、操舵室21の最前端は、居住室22の最前端より後方に配置されることができる。即ち、船室20において操舵室21をなす上部と居住室22をなす下部との前後段差は、操舵室21の前端が傾斜した前後の長さより大きくてもよい。
【0095】
このような船室20は船首甲板FDの70%以上に投影される下端面積を有することができる。従って、本発明は船首甲板FDの面積が比較的狭いにもかかわらず、船室20の必要面積を確保することができる。
【0096】
ただし、船室20が船首甲板FDの大部分をカバーするようになると係留空間の確保が問題となる。このために、船室20は船首甲板FD対比で上方に離隔されるように設けられる。即ち、船室20はサポート23を介して下面が船首甲板FDの上方に離隔した構造であり、ピロティ構造をなすことができる。
【0097】
船室20の下面が船首甲板FDの上方に離隔する一定高さは、係留装置30の大きさ及び係留装置30のメンテナンスのための必要高さなどを考慮して決まる。一例として、一定高さは4.7m以上であってもよい。
【0098】
サポート23は係留装置30の使用を妨げないように設けられることができる。即ち、サポート23は船室20の下面と船首甲板FDとの間が最大限開放されるようにすることができる。一例として、サポート23は船室20の前方に設けられてもよい。
【0099】
船室20は船首甲板FDの殆どをカバーする形状で設けられるため、サポート23は船首甲板FDの前端及び船室20の前端を上下に連結することができる。特にサポート23は船首甲板FDの周りに設けられるブルワーク28を利用して船室20を支持することができる。
【0100】
船首区域FAにおいて、船首甲板FDの前方にはブルワーク28が設けられることができる。ブルワーク28は船首甲板FDの前方を囲むように設けられ、船首甲板FDの形状に対応して前方に向かって凸の曲線状の平断面を有する。ブルワーク28は船舶1の運航時に波(green water)が船首甲板FD内に打ち込まれることを防止する。また、ブルワーク28は係留ライン301が貫通する構造を有してもよい。
【0101】
このようなブルワーク28は船首甲板FDの前方の一部に形成されることができ、サポート23は下端がブルワーク28に設けられ、上端が船室20の下端に連結される。船室20において下部は居住室22を形成するため、サポート23の上端は居住室22の下面を支持するように設けられてもよい。特に、サポート23は曲線状のブルワーク28の両端から船室20の下面に延長されるように1対が設けられてもよい。
【0102】
船室20の下面は船首甲板FDの面積より小さく形成され、船室20の下面の周りは船首甲板FDの周りより後退することができるため、ブルワーク28と船室20を連結するサポート23は平面視で下端に比べて上端が後方に傾斜した形状をなすことができる。
【0103】
また、サポート23は側面から見ても下端に比べて上端が後方に傾斜した形状をなすことができ、これにより、本発明はサポート23の下部が係留のための視野を遮らないようにすることができる。
【0104】
従って、作業者が船首甲板FDに配置される係留装置30を使用するにおいて、船首甲板FD上の空間は上方が船室20に塞がれているだけで、周辺はサポート23を除いて開放されている。これにより、本発明は船首甲板FDに船室20を十分な大きさで配置しながらも船室20による空気抵抗を減らし、係留作業の効率性を保障することができる。
【0105】
1対のサポート23は船室20の下面及び船首甲板FDによって囲まれる船首開口(符号不図示)を形成し、係留装置30の係留ライン301は船首開口を貫通する。船首開口はサポート23の配置及び形状などを通じて最大限開放された大きさ及び形状を有するため、作業者の容易な係留を可能にする。
【0106】
さらに、本発明は、船室20の最大高さを下げることによって空気抵抗をさらに低減することができる。船室20の高さは船室20自体の平断面を船首甲板FDの殆どをカバーする大きさ及び形状とすることにより最小化することができるが、さらに船首区域FAは船首甲板FD自体を下げて船室20の上端(コンパス甲板21b)を下げる効果を得ることができる。
【0107】
船首甲板FDは貨物区域CAに形成される露出甲板EDより相対的に低い高さを有する。このとき、露出甲板EDは上述したようにトランク甲板TD及び上甲板UDを含む。即ち、船首甲板FDはトランク甲板TDより低くてもよく、または上甲板UDよりも低くてもよい。
図7を参照すると、トランク甲板TDの高さはH0、上甲板UDの高さはH0より低いH1のとき、船首甲板FDの高さはH2であることができる。
【0108】
従って、船首甲板FDとトランク甲板TDとの高さ差(H0-H2)は、上甲板UDとトランク甲板TDとの高さ差(H0-H1)より大きいことができる。ただし、船首甲板FDと上甲板UDとの高さ差(H1-H2)はトランク甲板TDと船首甲板FDとの高さ差(H0-H2)より小さいことができる。
【0109】
即ち、船首区域FAは船首甲板FDが上甲板UDから下降した高さ(H1-H2)だけ船室20の高さをさらに収容できるようになる。船室20の下面は係留装置30の使用に必要な高さだけ船首甲板FDから上方に離隔されるため、船首甲板FD自体を下降させると、船室20の上面が下降することができる。
【0110】
この場合、船室20は露出甲板ED(トランク甲板TD)を基準として上方に突出した高さ(コンパス甲板21bとトランク甲板TDとの高さ差(H3-H0))が、露出甲板EDと船首甲板FDとの高さ差(H0-H2)より小さい形態であってもよい。特に、トランク甲板TDは船室20に設けられる操舵甲板21aと同一平面上に配置されることができるため、船室20は操舵甲板21aから上方にコンパス甲板21bまでの高さ(H3-H0)が、操舵甲板21aから下方に船首甲板FDまでの高さH0-H2より小さいことができる。
【0111】
さらに、船室20は操舵甲板21aを基準として下側部分に比べて上側部分の高さが相対的に低い形状で設けられてもよい。即ち、コンパス甲板21bの高さをH3とすると、露出甲板EDから船室20のコンパス甲板21bまでの高さ(H3-H0)は、船室20の下面の高さをH4とするとき、露出甲板EDから船室20の下面までの高さ(H0-H4)より相対的に小さいことができる。
【0112】
この場合、船首甲板FDは上甲板UDより低い甲板であって、係留装置30が設けられて係留を具現するサンクン甲板(sunken deck)をなすことができる。船首甲板FDは後述する船尾区域AAの船尾甲板ADよりも低く設けられてもよい。
【0113】
即ち、船首区域FAにおいて船体の上面をなす船首甲板FDは、貨物区域CAにおいて船体の上面をなす最低高さの露出甲板ED(上甲板UD)及び船尾区域AAにおいて船体の上面をなす船尾甲板ADより低く形成される。
【0114】
ただし、このような船首甲板FDは貨物区域CAと船首区域FAの間で貨物区域CAの露出甲板EDと段差を有するのではなく、貨物区域CAの露出甲板EDの一部分と連続して連結される。上述したように、貨物区域CAにおいて上甲板UDの前端には下向甲板LDが設けられ、下向甲板LDは船首甲板FDと並んだ高さH1を有するように上甲板UDと段差をなすことができる。従って、船首区域FAと貨物区域CAの間で船首甲板FDと下向甲板LDが同一平面をなすことができる。
【0115】
このように、船首甲板FDが貨物区域CAと船首区域FAの境界で貨物区域CAと段差をなさずに、貨物区域CAの一部分まで段差なく延長された後、一定地点で段差をなすのは、船首甲板FDに設けられる係留装置30の係留ライン301が貨物区域CAを経由して延長されなければならないためであることは上で説明した。
【0116】
船首甲板FDと上甲板UDとの高さ差(H1-H2)、即ち、下向甲板LDと上甲板UDとの高さ差(H1-H2)は2m前後であってもよい。ただし、船首甲板FDの下降が過度になると、船体の船首の線形を考慮したとき、船首甲板FD自体の面積が狭くなり、船室20の設置はもちろんのこと、係留装置30の設置にも制約が生じる。従って、船首甲板FDは上甲板UDに比べて4m以内の高さで下降されていてもよい。
【0117】
このように、船首区域FAは船室20が前方に向かって凸の平断面及び下端から上方に向かうほど後退した側断面を有して空気抵抗が減少する効果を得ることに加えて、船室20の最大高さを下げて抵抗をさらに減少させることができる。
【0118】
この場合、船室20において居住室22のA甲板とB甲板はトランク甲板TDより低く設けられることができる。また、船室20においてB甲板の上部に形成された操舵甲板21aはトランク甲板TDと同じまたは類似する高さに設けられ、船室20のコンパス甲板21bはトランク甲板TDより上方に設けられることができる。
【0119】
従って、船室20はトランク甲板TDを基準として下方に2つの甲板が設けられ、上方に1つの甲板が設けられることにより、トランク甲板TDより高い部分がトランク甲板TDより低い部分より相対的に小さな高さを有することとなる。従って、船舶1は船室20を比較的狭い面積の船首甲板FD上に配置しながらも船室20の高さが最小化されるようにして、空気抵抗を大幅に減らすことができる。
【0120】
船室20は、操舵甲板21aが貨物区域CAの露出甲板EDのうちトランク甲板TDと並んだ高さH0を有するように設けられてもよい。操舵甲板21aの少なくとも一部は外部に露出されてもよく、外部に露出された操舵甲板21aとトランク甲板TDは互いに同一平面上に配置されることができる。また、操舵甲板21aとトランク甲板TDは互いに連結されて作業者の通行を容易にすることができる。
【0121】
操舵室21で勤務する作業者は、必要に応じて貨物区域CAの監視を行うことができる。このため、船室20において操舵室21の後方には貨物管理室(符号不図示)が設けられてもよい。貨物管理室は貨物区域CAに向かって設けられ、貨物区域CAへの視野を確保することができる。即ち、貨物管理室は貨物区域CAに向かって開放されて貨物区域CAへの移動が許容される構造を有することができる。または、貨物管理室は貨物区域CAを目視で確認できるように、貨物区域CA側に窓を有する構造であってもよい。
【0122】
上述したように、貨物処理室41が船尾区域AAに設けられることにより、貨物区域CAにはベントマスト11及びマニホールド12の他に視野を大きく妨げる要素がないことができる。従って、作業者は貨物管理室で後方を見ながら、貨物区域CA全体の管理を容易に行うことができる。
【0123】
貨物管理室は操舵室21と同じ高さで設けられ、操舵甲板21aが貨物管理室の底をなすことができる。従って、貨物管理室は高さ差なしに貨物区域CAの露出甲板EDに連結されることができる。
【0124】
本発明の船舶1は船尾区域AAに貨物処理室41が設けられてもよく、貨物処理室41の上面が貨物区域CAの露出甲板EDと同じ高さで設けられることができる。この場合、船舶1は船首区域FAの操舵甲板21aから貨物区域CAの露出甲板ED(特にトランク甲板TD)及び貨物処理室41の上面まで同一平面をなすことができる。
【0125】
船室20に設けられる居住室22の少なくとも一部空間は、作業者が居住しながら睡眠をとる空間であってもよい。この場合、該当空間には作業者の基本的な生活水準を保障するために採光が求められる。該当空間が船室20の下部の前方に設けられる場合、採光には問題ないが、波や外部衝突による危険がある。従って、該当空間は船室20の下部の後方に設けられてもよく、衝撃用隔壁31より後ろに位置することができる。
【0126】
しかし、船室20において操舵甲板21aがトランク甲板TDと並んでいると、船室20の下部がトランク甲板TDより下に設けられ得るため、船室20の下部の後方に設けられる居住空間への採光が制限される。従って、船室20は前後方向に貨物区域CAの露出甲板EDから前方に離隔して配置されることができ、離隔された隙間を介して居住空間への採光が行われる。
【0127】
ただし、船室20はブラケット211により貨物区域CAの露出甲板EDと連結されることができる。ブラケット211は露出甲板EDと船室20を連結しながらも船室20の居住区への採光を妨げないことができる。
【0128】
一例として、ブラケット211はトランク甲板TDと船室20の後面を前後に連結するが、トランク甲板TDの両側において船室20の後面の左右両端に連結されるように1対で設けられることができる。即ち、1対のブラケット211は幅方向に空いている空間を形成することができるため、1対のブラケット211の間を通して採光が行われることができる。
【0129】
ブラケット211はトランク甲板TDと船室20の後面を連結するために上部が少なくとも三角形の形状であることができる。即ち、ブラケット211の上端は後端から前端に向かうほど高さが高くなる形状であってもよく、空気抵抗などを考慮してブラケット211の上端は凹んだ形状であることができる。
【0130】
ブラケット211は貨物区域CAの前面に固定されてもよい。貨物区域CAのトランク甲板TDは上甲板UD及び船首甲板FDに比べて上方に突出しているため、トランク甲板TDの前端を垂直に連結する貨物区域CAの前面で、左右方向の両端にブラケット211が固定される。
【0131】
この場合、ブラケット211は貨物区域CAと船室20との間の前後方向のギャップを少なくとも一部カバーするように設けられてもよい。上述のように、船室20は採光のために貨物区域CAの露出甲板EDから前方に離隔されることができ、貨物区域CAと船室20との間に前後方向にギャップが形成されると、ギャップに風が流入して風の抵抗が発生する。ブラケット211はこのような風の抵抗を減少させるギャッププロテクタの機能を一部行うことができる。
【0132】
ただし、ブラケット211が連結される貨物区域CAの前面の左右の幅は船室20の左右の幅より大きいことができるため、ブラケット211は後端から前端に向かうほど中央に向かって傾斜した形態を有することができる。または、ブラケット211は貨物区域CAの前面から前方に延長される部分が船室20までは延長されなくてもよい。
【0133】
ブラケット211は貨物区域CAの前面の周りに沿って前方に延長されていてもよく、構造的強度などを考慮して最適な形状を有してもよい。また、ブラケット211は船首甲板FDにも固定されることができる。即ち、1対で設けられるブラケット211は船室20の後面の左右両端をトランク甲板TD及び船首甲板FDに連結することができる。従って、居住室22は依然として後面が1対のブラケット211の間で外部に露出されて採光が行われる。
【0134】
ブラケット211で船首甲板FDに固定される下部は後端から前端に向かうほど中央に傾斜して設けられてもよく、当該ブラケット211の下部の傾斜は船首甲板FDの傾斜に対応するものであってもよい。即ち、ブラケット211の下部は作業者の船首甲板FDから上甲板UDへの移動を妨げないために傾斜して設けられることができる。
【0135】
ブラケット211は貨物区域CAの前面の両端から延長されて、貨物区域CAと船室20の間のギャップを塞ぐだけでなく、貨物区域CAの露出甲板EDと船室20を連結して縦強度を補強する。トランク甲板TDと内側甲板の間には縦方向に縦強度部材が設けられることは上述したが、船室20が貨物区域CAから前方に離隔すると、縦強度部材は貨物区域CAの前端までの長さを有するようになる。
【0136】
このとき、ブラケット211は貨物区域CAの露出甲板EDと船室20の後面を一体化させ、船室20自体が縦強度部材を前方にさらに延長する構造物の役割をするようにすることができる。即ち、船首区域FAの船室20も縦強度部材として作用して、船体が凹状または凸状に変形することを抑制することができる。
【0137】
ただし、ブラケット211は貨物区域CAの前面の両端から延長されるため、縦強度部材と船室20は左右方向に多少ずれて連結されることができるが、採光を過度に減らさないレベルで、ブラケット211は貨物区域CAの前面の中央部分に付加されてもよい。この場合、ブラケット211は縦強度部材と左右方向に並んで設けられて船室20と縦強度部材を効果的に連結することができる。
【0138】
ブラケット211が船室20の後方を露出甲板EDに連結して支持することによって、ブラケット211は貨物区域CAが船室20の荷重を支持する構造として作用するようにすることができる。また、上述したサポート23が船室20の前方でブルワーク28に連結されて船室20の荷重を支持するため、船室20はサポート23によって船首甲板FDに支持され、ブラケット211によって露出甲板EDに支持される。
【0139】
従って、船首区域FAは船首甲板FDにおいて船室20を垂直に支持する別途の支持構造を最小化または省略することができる。ただし、船首区域FAには支持機能を兼ねる少なくとも1つのダクト構造が適用されてもよく、このとき、ダクト構造は後述する船体内部と船室20を連結して、電力、各種流体(清水、汚物など)の伝達を可能にする。
【0140】
船室20にはウイングブリッジ24が設けられてもよい。ウイングブリッジ24は船舶1を接岸する際に船体の両端で問題がないかを確認するための構造物であり、ウイングブリッジ24の左右の幅は船舶1の最大幅と対応することができる。貨物区域CAの船体の幅が最大であることを考慮して、ウイングブリッジ24は貨物区域CAの船体の幅に対応するように船室20の両側から延長される。
【0141】
船室20は幅が船首の前方に向かうほど減少しながら前方に向かって凸状を有するため、ウイングブリッジ24の突出長さを減らすためにウイングブリッジ24は船室20において比較的後方に設けられることができる。一例として、ウイングブリッジ24は操舵甲板21aの外部に露出される部分のうち後方に連結されることができる。
【0142】
ウイングブリッジ24は作業者が移動可能な形状に設けられ、操舵室21で勤務する作業者がウイングブリッジ24に移動できるように、ウイングブリッジ24の上面は操舵甲板21aと同じ平面をなすことができる。従って、操舵室21に位置する作業者は操舵甲板21aを経てウイングブリッジ24の上面に移動することができ、居住室22に位置する作業者は居住室22から操舵甲板21aに移動した後、ウイングブリッジ24の上面に接近することができる。
【0143】
ウイングブリッジ24の上面には作業者を保護するためのハンドレール(不図示)が設けられていてもよい。また、ウイングブリッジ24には船舶1の接岸を補助するための装備(カメラ、センサ、ライトなど)が付加されていてもよい。
【0144】
本発明の船舶1に自律運航技術が組み込まれて船舶1が自動離接岸を具現する場合、ウイングブリッジ24は削除されてもよい。即ち、ウイングブリッジ24は船舶1の接岸時に作業者が目視で接岸状態を確認するための構造物であるため、作業者の確認なしに接岸が可能な船舶1であれば、ウイングブリッジ24は省略可能である。
【0145】
また、船室20が船首甲板FDと類似する形状を有しながら最大幅が船舶1の最大幅と対応する大きさの平断面をなす場合には、ウイングブリッジ24がなくてもよい。この場合、操舵甲板21aの少なくとも一部分がウイングブリッジ24の機能を担うことができる。
【0146】
ウイングブリッジ24の上面と連結される操舵甲板21aには脱出装備が設けられ、ウイングブリッジ24及び操舵甲板21aから脱出装備への接近は容易であることができる。脱出装備はウイングブリッジ24の後方に設けられてもよく、1対の脱出装備が船室20の左右に設けられてもよい。
【0147】
ウイングブリッジ24は翼状に船室20の両側から左右方向に延長されていてもよいが、ウイングブリッジ24は別途の支持構造なしに船室20に一体化されて、船室20によってその荷重が支持されてもよい。または、ウイングブリッジ24は下面に傾斜した補強台が設けられて荷重が船室20によって支持されてもよい。
【0148】
ウイングブリッジ24は前方を向く前端辺と後方を向く後端辺を有し、前端辺と後端辺のうち少なくとも後端辺は船体の幅方向と並んで設けられてもよい。前端辺も少なくとも一部が船体の幅方向と並んで設けられてもよいが、前端辺において左右両端は端に向かうほど後退する傾斜を有することができる。即ち、ウイングブリッジ24は平面視で比較的直方体の形状を有しながら、前端辺の両端が削られているチャンファ(chamfer)状を有することができる。
【0149】
上述したように、船首甲板FDには船室20の下面が上方に離隔されるようにサポート23、ブラケット211などにより船室20が支持されるが、船首甲板FDにおいて船室20の下方には係留装置30が設けられる。この場合、係留装置30による係留作業は船首甲板FDと船室20の下面の間で行われることができる。
【0150】
また、係留装置30のメンテナンス作業も、船首甲板FDと船室20の下面との間で行われなければならない。特に係留装置30の設置、荷役などのために、船首甲板FDと船室20の下面との高さは係留装置30の高さより余裕分をさらに備えることができる。
【0151】
さらに、船室20には係留装置30のメンテナンスのための荷役装置25が設けられてもよい。荷役装置25は船首甲板FDまたは船室20の下面に固定されることができ、一例として、船室20の下面において係留装置30の設置位置に対応するように設けられることにより、船首甲板FDで作業者の通行を妨げないことができる。
【0152】
荷役装置25はクレーン、ダビット(Davit)などであってもよく、係留装置30を持ち上げて船首甲板FDの外部に取り出したり、外部から係留装置30の伝達を受けて船首甲板FDの特定位置に伝達することができる。このため、荷役装置25は船室20の下面に複数個が固定的に設けられてもよい。または、荷役装置25は船室20の下面において一定空間の範囲内で移動できるように設けられてもよく、レールなどを利用することができる。
【0153】
船体の外部と内部を区分する甲板であって船首区域FAの船首甲板FDや貨物区域CAの露出甲板EDなどは、中央から左右両端に向かうほど低くなる傾斜を有することができる。即ち、船体の甲板にはキャンバー(Camber)が適用される。
【0154】
この場合、船首区域FAを見ると、船首甲板FDから船室20の下面までの最短高さは、船首甲板FDの左右方向に中心部分で形成される。一方、船首甲板FDの左右両端に向かうほど船首甲板FDと船室20の下面との高さは次第に拡張される。
【0155】
荷役装置25は船室20の下面において左右方向の中央部分に設けられてもよく、荷役装置25によって係留装置30がリフト(lifting)された後、左右方向に引き出される場合、十分なマージン(margin)が確保されることができる。
【0156】
勿論、荷役装置25は船室20の下面において左右両端に設けられてもよい。この場合、船首甲板FDのキャンバー形態により、荷役装置25の設置高さだけでなく、荷役空間の高さをさらに確保することができる。
【0157】
船室20の上部は操舵室21をなし、操舵室21の天井はコンパス甲板21bを形成する。コンパス甲板21bには船舶1の運航安全性を確保するためのレーダーマスト26が設けられる。レーダーマスト26は船舶1が運航する方向の前方に対して、レーダーを利用して探知する。
【0158】
レーダーマスト26は探知性能を確保するために、コンパス甲板21bに対して一定の高さを有する柱状に設けられてもよい。また、レーダーマスト26はコンパス甲板21bの左右方向の中央部分に設けられてもよく、前後方向には前方に偏って配置されることができる。
【0159】
レーダーマスト26にはマストヘッドライト111、261が付加されてもよい。上の貨物区域CAのベントマスト11で説明したように、船舶1にはマストヘッドライト111、261が設けられ、マストヘッドライト111、261は前方及び後方にそれぞれ設けられ、前方マストヘッドライト261と後方マストヘッドライト111は一定距離(例えば、100m)以上離隔されることが好ましい。また、前方マストヘッドライト261は後方マストヘッドライト111より低く設けられなければならない。
【0160】
このような要求事項を考慮して、レーダーマスト26には前方マストヘッドライト261が一体に設けられてもよい。本発明は、船首甲板FDが上甲板UDより低く設けられてサンクン甲板をなし、また、船室20が船首甲板FDの殆どをカバーするように比較的広い平断面を有するという点で、船室20のコンパス甲板21bはトランク甲板TDより過度に高くならないように設けられる。一例として、コンパス甲板21bはトランク甲板TDを基準として、トランク甲板TDと船室20の下面との間の高さより低い高さで設けられるため、レーダーマスト26が船室20のコンパス甲板21b上に設けられても、レーダーマスト26の上端の高さH5は上述したベントマスト11の上端の高さH6より低くなることができる。
【0161】
ただし、レーダーマスト26が設けられるコンパス甲板21bはベントマスト11が設けられる露出甲板EDであるトランク甲板TDより高く設けられるため、レーダーマスト26の高さH5はベントマスト11の高さH6より低い値を有することができる。この場合、レーダーマスト26とベントマスト11の高さ差(H6-H5)は、コンパス甲板21bとトランク甲板TDの高さ差(H3-H0)より大きいことができる。これは、前方マストヘッドライト261と後方マストヘッドライト111との高さ差を確保するためである。
【0162】
従って、レーダーマスト26に設けられる前方マストヘッドライト261はレーダーマスト26から一定距離以上の後方に配置されたベントマスト11に設けられる後方マストヘッドライト111より低い高さH5に位置する。また、レーダーマスト26とベントマスト11は前後方向に並んで設けられてもよい。レーダーマスト26はコンパス甲板21bにおいて左右方向の中央部分に配置され、ベントマスト11もトランク甲板TDにおいて左右方向の中央部分に配置される。従って、前方マストヘッドライト261と後方マストヘッドライト111は、船体の長手方向を正確に表示しながら船体の大まかな長さを表示することができる。
【0163】
前方マストヘッドライト261及び後方マストヘッドライト111が船首区域FAのレーダーマスト26及び貨物区域CAのベントマスト11に設けられることにより、本発明はマストヘッドライト111、261の設置のために別途の支持構造を有する柱を配置する必要がなくなるため、甲板上における空間活用性をさらに向上させることができる。
【0164】
また、船首区域FAに船室20を配置し、船室20のコンパス甲板21bにレーダーマスト26が設けられることにより、船尾に船室20を配置する場合に比べてレーダーマスト26は貨物区域CAに対する探知を省略することができる。これにより、レーダーマスト26は前方をレーダーで探知するにあたり貨物区域CAによる影響を受けなくなり、運航安定性などを上げることができる。
【0165】
ベントマスト11に設けられる後方マストヘッドライト111の場合、ベントマスト11から液化ガスなどの爆発性物質が排出されることを考慮して防爆諸元を有するように設けられることができる。ただし、レーダーマスト26に設けられる前方マストヘッドライト261の場合は、爆発性貨物の危険性から自由であるため、非防爆諸元を有するように設けられてもよい。
【0166】
レーダーマスト26が設けられるコンパス甲板21bには少なくとも両側にクレーン(Provision Crane)またはダビット(Devit)などが付加されてもよい。このとき、クレーンは脱出装備の引き出しのために設けられるものであってもよい。または、コンパス甲板21bに設けられるクレーンは係留装置30の荷役を具現することができる。即ち、船首甲板FDに設けられる係留装置30は船室20の下面に設けられた荷役装置25により船室20の下面からずれた位置に移動された後、コンパス甲板21b上に設けられるクレーンによって外部に伝達されることができる。即ち、コンパス甲板21bのクレーンは船室20の下面に設けられた荷役装置25を補助することができる。
【0167】
または、係留装置30の荷役は船室20の下面の荷役装置25によって行われ、コンパス甲板21bに設けられるクレーンは係留装置30以外の他の装備に対するリフト(lifting)を担当することができる。特に、コンパス甲板21bのクレーンは船室20の内部に設けられる装備を搬送するために設けられてもよい。
【0168】
このために、コンパス甲板21bには船室ハッチ27が設けられてもよい。船室ハッチ27はコンパス甲板21b上において開閉可能な形態で設けられ、レーダーマスト26の後方に配置されることができる。また、船室ハッチ27はコンパス甲板21bに配置され得る1対のクレーンの間に設けられてもよい。
【0169】
船室ハッチ27はコンパス甲板21bを貫通することができ、また、船室20において操舵甲板21aは船室ハッチ27と対応する部分にハッチ(不図示)が設けられることができる。従って、船室20はコンパス甲板21bの船室ハッチ27が開放され、操舵甲板21aのハッチが開放されると、コンパス甲板21bに設けられるクレーンなどを利用して船室20の外部から船室20の居住室22の間の装備搬送が可能となる。
【0170】
船室ハッチ27は操舵室21内で使用される操舵装置、居住室22で居住に必要な各種施設や消費品などを搬送するのに用いられてもよく、運航中は密閉状態を保持することができる。
【0171】
上述したように、船首甲板FDには係留装置30が配置されることができ、係留装置30は船首甲板FDと船室20の下面との間に配置される。係留装置30はウインチ、ウインドラス、係留ライン301などを含むことができる。
【0172】
係留装置30は船舶1を安定して係留させるために、様々な方向に係留ライン301が延長されるようにする。一例として、係留ライン301はブルワーク28を貫通し、船舶1の前方に向かって延長されてもよい。この場合、ブルワーク28を貫通する前方係留ライン301は船舶1の前後方向の中心線を基準として左側または右側に45度以内の傾斜を有するように延長される。
【0173】
また、係留ライン301は曲線状のブルワーク28の両端を貫通するように設けられ、船舶1の幅方向と並んで延長されてもよい。また、係留ライン301は船首甲板FDから延長され、船首甲板FDや下向甲板LDに設けられたスタンドローラーやボラードなどを経て延長方向が変化した後、下向甲板LDの左右両側に延長されてもよい。
【0174】
係留ライン301は貨物区域CAにおいても左右両側に延長されて船体を安定的に固縛することができる。このために、貨物区域CAの露出甲板EDのうち前方の一定部分は上甲板UDより低く、サンクン甲板である船首甲板FDと同じ平面をなす下向甲板LDからなることは上述した通りである。
【0175】
以下では、船首区域FAにおける船体の内部構造について説明する。船首区域FAにおいて船首甲板FDの下部である船体の内部は隔壁などにより多数の空間に区画されていてもよい。このとき、隔壁は縦方向の隔壁及び横方向の隔壁などをすべて含んでもよく、少なくとも何れか1つの横方向の隔壁は船体の前方衝突に備える衝撃用隔壁31からなることができる。
【0176】
衝撃用隔壁31は船体の内部において最前方に設けられる横隔壁であってもよく、上下方向に鉛直に設けられ、側面から見て船首甲板FDとは「T」の字をなすことができる。衝撃用隔壁31は船体の前面に比べて一定距離だけ後退した位置に設けられる。衝撃用隔壁31は船舶1が障害物に衝突した際に船体の内部を保護するために使用されるものであり、周辺の他の部分より厚さの厚い鋼材が使用されることができる。
【0177】
船首区域FAにおいて船体の内部にはボースンストア(Bosun store)32が設けられてもよい。ボースンストア32は倉庫の役割を具現することができ、船首甲板FDの直下に形成されることができる。ボースンストア32は衝撃用隔壁31の後方に設けられて、「┤」状の構造をなすことができ、または衝撃用隔壁31がボースンストア32の下部から下方に延長されて「┬」状の構造をなすこともできる。
【0178】
ボースンストア32の左側または右側などには船舶1を係留するために使用されるアンカーチェーンが収納されてもよい。アンカーチェーンはチェーンロッカー(不図示)内に収容されてもよく、チェーンロッカーはボースンストア32の内部において別途の構造物によって分離された空間からなることができる。または、チェーンロッカーはボースンストア32の外部に形成されてもよい。ただし、チェーンロッカーの下端はボースンストア32の下面より下方まで延長されて、チェーンロッカーの高さがボースンストア32に比べて高くなることができる。
【0179】
衝撃用隔壁31の後方にはポンプ室33、タンク室34などが設けられてもよい。ポンプ室33は衝撃用隔壁31の後方においてボースンストア32の下部に設けられてもよい。ポンプ室33は貨物またはその他の燃料などを搬送するためのポンプを収容することができる。
【0180】
ポンプ室33が燃料などを搬送するポンプを収容する場合、ポンプによって搬送される燃料はタンク室34に貯蔵される燃料であってもよい。このとき、ポンプは燃料ポンプを含むことができ、燃料ポンプはタンク室34の燃料をエンジン室42などに伝達する。燃料ポンプによって搬送される燃料は上述したトランク甲板TDの下の移動通路(passage way)またはパイプダクトなどを経由して船尾区域AAに伝達されることができ、オイル燃料などであってもよい。
【0181】
エンジン室42に設けられる推進エンジン421、発電エンジン422などは貨物である液化ガスを主に消費するタイプであってもよいが、推進エンジン421などは必要に応じてオイル燃料を消費することができる。ポンプ室33は推進エンジン421が貨物以外の燃料で稼動しなければならない場合、タンク室34の燃料を推進エンジン421などに伝達することができる。
【0182】
上述したように、本発明は船室20が船首区域FAの船首甲板FD上に設けられることができるが、船室20では汚物が発生し続けるため、汚物を処理するための構成を船室20の周りに配置する必要がある。従って、船首区域FAには汚物処理部35が設けられることができる。
【0183】
汚物処理部35は船室20から排出される汚物で、特に居住室22から伝達される尿や便などを処理することができる。汚物処理部35は船首区域FAの船体の内部に設けられてもよく、船室20の下部である居住室22から船首甲板FDの下に設けられる汚物処理部35に汚物が伝達される。
【0184】
この場合、汚物は船室20の下面と船首甲板FDとの間を通過しなければならず、このとき上述したダクト構造が利用されることができる。即ち、ダクト構造内には汚物が流動する配管が形成されてもよく、居住室22で発生した汚物は船首甲板FDを貫通して船体の内部の汚物処理部35に伝達されることができる。
【0185】
汚物処理部35は微生物を利用して汚物を処理してもよく、またはその他の様々な化学的反応を利用して汚物を浄化してもよい。汚物処理部35は居住室22から伝達される汚物の少なくとも一部を浄化して貯蔵した後、船舶1が港などに接岸したときに陸地に伝達することができる。
【0186】
または、汚物処理部35は汚物を海に廃棄しても環境汚染を大きく誘発しない状態に変化させた後、船舶1の運航過程で海に適正量を排出することもできる。
【0187】
汚物処理部35はボースンストア32の下部に設けられてもよく、汚物処理部35で発生する有害ガスが船首甲板FDでの作業を妨げないように、汚物処理部35は船体の内部の最も底に位置することができる。特に、汚物処理部35はポンプ室33の下部に設けられることができ、ポンプ室33内でポンプが配置された空間上に汚物処理部35が収容されるか、ポンプ室33内の構造的に区画された独立空間内に汚物処理部35が収容されることができる。
【0188】
汚物処理部35で発生する有害ガスは大気中に放出される。
【0189】
汚物処理部35はポンプ室33の底に設けられる代わりに、後述するタンク室34内に設けられてもよい。本発明は船室20が船首区域FAに配置されることにより、船首区域FAの荷重が増加して船首が船尾対比で沈む船首トリム(Trim)が発生し得る。この場合、貨物区域CAの前方及び/または船首区域FAにはバラストタンク341が最小化または省略されてもよい。
【0190】
従って、汚物処理部35はタンク室34に含まれるバラストタンク341が船首トリムを考慮して縮小される場合、バラストタンク341の縮小により確保される余裕空間内に配置されることができる。タンク室34のバラストタンク341は左右に配置されてもよく、汚物処理部35は前後方向にバラストタンク341とポンプ室33との間に設けられてもよい。
【0191】
または、汚物処理部35はタンク室34でバラストタンク341が省略される場合、タンク室34に含まれる燃料タンク342の左側または右側の少なくとも一側に設けられてもよい。または、タンク室34の左右のうち一側にはバラストタンク341が設けられ、他側には汚物処理部35が配置されてもよい。
【0192】
船舶1の運航過程で船室20は汚物を排出し続けるとともに、持続的に一定の電力を受けて消費する。従って、船室20から排出される汚物の処理と共に、船室20への電力の供給が必ず求められる。
【0193】
このような電力需要は一般的に発電機36によってカバーされることができる。発電機36は船尾区域AAのエンジン室42に設けられる発電エンジン422を含むことができる。ただし、本発明の船室20は船尾区域AAではない船首区域FAに設けられるため、発電エンジン422から船室20に電力を伝達するためには船尾区域AAのエンジン室42から船首区域FAの船室20まで(高圧)電力ケーブルの延長が必要である。これを改善するために、本発明は発電機36が船首区域FA上に配置されることができる。
【0194】
具体的には、発電機36は船首区域FAにおいて船体の内部に設けられてもよい。発電機36はポンプ室33の内部などに配置されてもよいが、発電機36の位置はこれに限定されない。ただし、発電機36は船室20と少なくとも二重以上の空間によって隔離されながらも、タンク室34とは分離された空間上に配置されることができる。また、発電機36はポンプ室33の上部に設けられて作業者が比較的容易に発電機36に接近して発電機36のメンテナンスができるようにすることができる。
【0195】
船体の内部に設けられる発電機36はタンク室34の燃料を使用することができる。この場合、タンク室34から発電機36までの燃料ラインは比較的短い長さで設けられることができ、タンク室34の燃料を発電機36に伝達するためにポンプ室33の燃料ポンプが使用されることができる。また、発電機36から船室20までは略上下方向への電力ケーブルのみを敷設すればよいため、電力ケーブルの長さを大幅に短縮することができる。このとき、電力ケーブルは船室20の下面と船首甲板FDとの間に設けられるダクト構造内に収容されてもよい。
【0196】
このように、本発明は、船尾区域AAではない船首区域FAに船室20が配置されることに備えて、電力負荷をカバーするための発電機36が船首区域FAの船体の内部に配置されることができる。このとき、船首区域FA上に設けられたタンク室34に貯蔵された燃料が船首区域FA内に存在する燃料ポンプを介して発電機36に伝達されるため、燃料の供給に関する構成をコンパクト化することができる。また、上述のような場合、船首区域FA内の発電機36から船首甲板FD上の船室20に電力が伝達されればよいため、電力ケーブルの設置及び管理が非常に容易である。
【0197】
ポンプ室33は燃料ポンプの他に海水ポンプを収容することができる。ポンプ室33が海水ポンプを収容する場合、海水ポンプはポンプ室33の下側で船体の外面に形成されたシーチェスト(Sea chest、不図示)などから流入される海水を搬送することができる。海水ポンプは外部から流入される海水をバラストタンク341に伝達したり、バラストタンク341に貯蔵された海水を外部に排出することができる。
【0198】
タンク室34は燃料や海水などを収容する。タンク室34はバラストタンク341と燃料タンク342などを収容することができる。バラストタンク341は貨物区域CAに設けられたバラストタンク341とともに船舶1のバラスティングに使用されることができる。
【0199】
ただし、上述したように、本発明は船首区域FAに荷重体である船室20が設けられることを勘案して、タンク室34のバラストタンク341が最小化または省略されることができる。また、タンク室34においてバラストタンク341が縮小または省略されることにより確保される余裕空間には、上述した汚物処理部35または発電機36などが設けられてもよい。
【0200】
ただし、以下に説明するが、本発明は貨物処理室41が貨物区域CAではない船尾区域AAに後退されて配置されることができる。従って、船室20が船尾区域AAではない船首区域FAに配置されても、貨物処理室41を船尾区域AAに配置することで、船室20による船首トリムを抑制することができる。この場合、タンク室34には左右両側にバラストタンク341が設けられてもよく、汚物処理部35及び発電機36などはポンプ室33に配置されることができる。
【0201】
燃料タンク342はバラストタンク341と左右方向に並んで設けられてもよい。燃料タンク342は発電機36やエンジン室42などで使用される燃料を貯蔵することができる。このとき、燃料は貨物区域CAに貯蔵される液化ガスとは異なる物質であり、沸点が常温より高い物質であってもよい。一例として、燃料はオイル燃料などとしてHFO、MGOなどであってもよい。従って、燃料タンク342は別途の断熱構造なしに一定の空間だけを隔離させる構造であってもよいが、燃料タンク342は内壁などに腐食防止やその他の汚染防止のための塗装が適用されていてもよい。
【0202】
勿論、タンク室34に収容される燃料タンク342も貨物と類似する液化ガスを貯蔵するものであってもよく、この場合、燃料タンク342には断熱が適用されることができる。または、燃料タンク342は外部で別途製作された後に船体の内部に搭載される燃料を高圧で貯蔵する独立型の加圧タンクであってもよい。
【0203】
船尾区域AAは貨物区域CAの後方に設けられる。船尾区域AAは船体の船尾部分を含むことができ、船舶1の運航方向を基準として後方部分を包含する。船尾区域AAにおける船体は後方に向かうほど幅が多少狭くなる形状を有することができるが、船体の幅が狭くならないことも可能である。
【0204】
ただし、船尾区域AAは船体の幅が後方に向かうほど幅が狭くなっても、船尾区域AAにおいて船体の幅が縮小される程度は、船首区域FAと比べて相対的に少なくてもよい。従って、船首区域FAは前端が尖った形状であるのに対し、船尾区域AAは後端が幅方向に切断された形状であることができる。
【0205】
船尾区域AAにおける船体の後面には推進のためのプロペラが設けられる。また、プロペラの後方には船舶1の運航方向を調節するラダーが設けられてもよい。さらに、プロペラの後方やラダーの前方などには推進効率を改善することができるエネルギー低減付加装置(Energy Saving Device)が設けられてもよい。
【0206】
船尾区域AAには船体の内部と外部を区画する船尾甲板ADが設けられてもよい。また、船尾甲板ADは前方部分と後方部分の高さが異なってもよい。船尾甲板ADの後方部分は船首甲板FDで説明したように係留装置30が設けられ、サンクン甲板をなすことができる。
【0207】
船尾甲板ADの後方部分は船首甲板FDと同じ高さを有するか、またはそれより低くてもよい。即ち、船尾甲板ADの後方部分は貨物区域CAの露出甲板EDより低くてもよい。また、この部分は前端から後端に向かうほど高さが低くなる形状をなすことができる。
【0208】
船尾甲板ADの前方部分は後方部分とは異なって一定の高さを有することができ、後方部分より高い高さを有することができる。従って、船尾甲板ADは前方と後方の間で高さ方向に段差が形成されることができる。
【0209】
船尾甲板ADの前方部分と後方部分は船尾甲板ADに設けられるエンジンケーシング40の後面によって区分されることができる。以下では、説明の便宜上、船尾甲板ADは特に言及しない限り、船尾甲板ADの前方部分までを意味するものであることができる。
【0210】
船尾甲板ADにはエンジンケーシング40が搭載され、エンジンケーシング40の後面は船尾甲板ADの後端と並んでいることができる。エンジンケーシング40は船体の外部に設けられて後述するエンジン室42の排気を排出する。エンジンケーシング40は左右方向の中央に煙突(符号不図示)が設けられる。煙突はエンジン室42の排気を排出する構成であり、Funnelということができる。煙突にはエンジン室42から延長される排気を排出する排気管403が収容されてもよい。煙突はエンジンケーシング40の中央ではない位置に設けられることも可能である。
【0211】
煙突は船尾甲板ADに位置する作業者を保護するため、一定高さ以上で排気を大気に排出する。従って、煙突から排出された排気は船尾甲板ADに流動せずに船舶1が運航するにつれて後方に抜け出ることができる。
【0212】
エンジンケーシング40は中央の煙突が上方に突出した形状を有することができる。この場合、エンジンケーシング40は中央の煙突に比べて左右部分がさらに低い形状を有し、全体的に対称の階段状をなすことができる。
【0213】
エンジンケーシング40は煙突の突出部を除いても、左右方向に両端が中央に比べて低い階段状からなってもよい。エンジンケーシング40はこのような階段状において中央部分に煙突が突出していてもよい。即ち、エンジンケーシング40において、相対的に高い段に煙突が設けられることができる。
【0214】
エンジンケーシング40の中央部分に煙突が設けられるのは、エンジン室42に設けられた推進エンジン421などが船舶1の幅方向に沿って中央部分に位置するためである。即ち、エンジンケーシング40の煙突は推進エンジン421の排気口と左右方向にずれないように設けられ、推進エンジン421などから放出される排気をエンジンケーシング40に伝達する排気管403が左側または右側に折り曲げられずに上方に延長されることができる。
【0215】
推進エンジン421の大きさ及び排気量を考慮すると、推進エンジン421の排気管403は折り曲げられた部分がある場合、過度な振動及び騒音を引き起こす可能性がある。従って、エンジンケーシング40の煙突は推進エンジン421と左右方向に同じ位置に設けられて排気管403の折り曲げられた部分を最小化することができる。また、発電エンジン422も推進エンジン421と左右方向に重畳するように設けられることにより、発電エンジン422から煙突に連結される排気管403も左右方向に折り曲げられることを排除することができる。
【0216】
エンジンケーシング40は煙突の他に燃焼装置401をさらに含んでもよい。燃焼装置401は燃料を燃焼する。このとき、燃焼装置401が燃焼する燃料は貨物である液化ガスなどであるか、上述した船首区域FAのタンク室34に貯蔵された燃料などであってもよい。
【0217】
燃焼装置401はガス燃料である液化ガスを燃焼して消費するガス燃焼装置(Gas Combustion Unit)を含むことができる。ガス燃焼装置は推進エンジン421や発電エンジン422に燃料を供給するガスバルブユニット(Gas Valve Unit)を包括する概念であってもよい。または、燃焼装置401はガスまたはオイル燃料を燃やすバーナー(Burner)を含んでもよい。
【0218】
また、燃焼装置401は余剰分の燃料を燃やして消費する装置の他にも、燃料を燃焼してスチームを生成するボイラーを含んでもよい。このとき、燃焼装置401で発生する排気も推進エンジン421の排気と同様に煙突に伝達された後、大気中に排出されることができる。
【0219】
従って、煙突内には推進エンジン421の排気を排出する排気管403及び燃焼装置401の排気を排出する排気管403などが収容される。煙突には複数の排気管403が相互干渉しないように固定されることができる。
【0220】
エンジンケーシング40において相対的に高い段に煙突が設けられ、エンジンケーシング40において相対的に低い段に燃焼装置401が設けられてもよい。このとき、エンジンケーシング40において低い段に設けられる燃焼装置401はガス燃焼装置またはボイラーなどであってもよく、特にガス燃焼装置であってもよい。エンジンケーシング40の低い段にガス燃焼装置が設けられる場合、エンジンケーシング40の上面には燃焼装置401の排気口が煙突とは別途に設けられてもよい。即ち、エンジンケーシング40は煙突の一側に燃焼装置401の排気口が外部に露出するように設けられてもよい。参考として、燃焼装置401の排気口もエンジンケーシング40の中央に設けられる煙突と類似する形状及び機能を有することができるため、煙突ということができる。
【0221】
この場合、エンジンケーシング40は中央部分で煙突を介してエンジン室42の排気が排出され、左側または右側の部分で燃焼装置401の排気が排出される。即ち、エンジンケーシング40は少なくとも2つ以上の排気孔が形成された構造を有することができる。ただし、煙突の排気が燃焼装置401側に逆流したり、逆に燃焼装置401の排気が煙突側に逆流することを防止するために、2つの排気孔は互いに十分に離隔されることができる。従って、エンジンケーシング40から排出される排気は船舶1の運航過程でエンジンケーシング40の内部に逆流せずに大気中に自然に放出される。
【0222】
本発明におけるエンジンケーシング40は燃焼装置401の排気口を煙突内に統合する代わりに、煙突とは別途の位置に設けることができる。この場合、エンジンケーシング40の中央に設けられる煙突の最大高さは、燃焼装置401の排気口を含まない高さに下方調整されることができるため、エンジンケーシング40の全高を大幅に低減させることができる。
【0223】
上述のように、エンジンケーシング40はエンジンケーシング40の左右の部分がエンジンケーシング40の中央部分より低い形状を有することができる。エンジンケーシング40に燃焼装置401をエンジンケーシング40の中央に配置する場合、燃焼装置401はエンジンケーシング40の上端に設けられ、排気口の高さ条件を満たすために、煙突よりさらに高く突出する。従って、エンジンケーシング40の全高が大きく増加する。
【0224】
これに対し、本発明は燃焼装置401をエンジンケーシング40の低い段に配置することにより、エンジンケーシング40の最大高さが燃焼装置401の影響を受けないようにする。さらに、燃焼装置401が煙突内に収容されないため、煙突の高さは船尾甲板ADに位置する作業者を保護することができる最小値に下がることができる。従って、この場合、エンジンケーシング40の(中央部分の)高さはエンジンケーシング40の高い段に、従来より低くなった煙突が突出した程度に減少することができる。
【0225】
ただし、エンジンケーシング40において燃焼装置401を左側または右側に設けるために、従来はエンジンケーシング40に収容されていた消火剤室43または緊急発電室などをエンジンケーシング40ではない他の場所に移動配置することができる。即ち、エンジンケーシング40において低い段に設けられていた消火剤室43などはエンジンケーシング40から削除され、これにより確保された余裕空間に燃焼装置401が配置されることができる。
【0226】
ただし、エンジンケーシング40は燃焼装置401が設けられる低い段が燃焼装置401をカバーする形状に上向されることができる。即ち、エンジンケーシング40は左右部分の何れか一側のみが中央部分より低い形状を有するようにし、中央部分と一側部分でそれぞれ煙突と燃焼装置401の排気が行われるようにすることができる。
【0227】
燃焼装置401をなす構成のうち排気口を除く部分(ファンなど)はエンジンケーシング40の内部に収容されることが好ましいが、本発明のエンジンケーシング40は左右部分である低い段のうち何れか一側段を中央の高い段に合わせて一側段の内部容積を拡大する。特に上下に高さが拡大される一側段は従来に消火剤室43が搭載されていた一側段であってもよい。
【0228】
即ち、エンジンケーシング40は左右部分の一側段を上下に拡張し、一側段に収容されていた消火剤室43を移動配置することにより、エンジンケーシング40の一側段が燃焼装置401から排気口を除いた部分を十分に収容することができる。従って、エンジンケーシング40は燃焼装置401が煙突の内部に収容される代わりに、煙突の外部の一側でエンジンケーシング40の内部に設けられることにより、エンジンケーシング40の全高が減少しても燃焼装置401の設置に必要な条件を満たして燃焼装置401の駆動安定性を保障することができる。
【0229】
エンジンケーシング40は船舶1の排気に適用される各種の環境規制を満たすために、エンジン室42から排出される排気を処理する排気処理装置402を含むことができる。排気処理装置402はエンジン室42の排気及び燃焼装置401の排気のうち少なくとも何れか1つを浄化するものであり、排気に含まれた汚染物質を還元する選択的触媒還元装置を含むことができる。または、排気処理装置402は排気に含まれたパーティクルを除去するフィルタ、排気を海水などで洗い流すスクラバーなどをさらに含んでもよい。さらに、排気処理装置402は既に排出された排気を直接浄化する装置ではなく、今後排出される排気の状態を改善するための排気再循環装置を含むこともできる。
【0230】
エンジンケーシング40は選択的触媒還元装置などの排気処理装置402を経由した排気を煙突を介して排出することができる。即ち、排気処理装置402はエンジン室42から排出される排気を煙突に伝達する排気管403上に設けられてもよく、または燃焼装置401の排気口にも設けられることができる。上述したように、燃焼装置401は煙突とは別途に設けられてもよいため、エンジンケーシング40は複数の排気処理装置402が燃焼装置401の排気口と煙突内の排気管403に割り当てられることができる。
【0231】
または、燃焼装置401の排気が煙突の排気とは別途で行われる代わりに、燃焼装置401の排気口が煙突の内部に連結されてもよい。即ち、燃焼装置401は煙突とは別途で設けられながら、燃焼装置401の排気口がエンジンケーシング40の外部に露出されずに煙突の内部に連結されることができる。この場合、燃焼装置401の排気及び煙突に伝達されるエンジン室42の排気は、統合された排気処理装置402を通じて処理後に外部に排出されることができる。即ち、煙突が燃焼装置401の排気の伝達を受けて排出するように設けられる場合、エンジン室42の排気は排気処理装置402を経て煙突を介して外部に排出されることができ、また、燃焼装置401の排気は煙突に割り当てられた排気処理装置402を経て外部に排出されてもよい。
【0232】
排気管403には消音器404(Silencer)が設けられてもよい。消音器404は上下垂直に設けられる排気管403上に設けられてもよく、排気処理装置402の下流及び/または燃焼装置401の下流などに設けられてもよい。消音器404は多孔構造を利用して騒音を低減する形状をすることができ、また、低周波を減らす機能を備えてもよい。
【0233】
船尾甲板ADにおいてエンジンケーシング40の前方には貨物処理室41が設けられる。貨物処理室41は貨物区域CAに貯蔵された貨物を処理するための構成であり、貨物の種類によって貨物処理室41内に収容される構成が異なってもよい。
【0234】
貨物処理室41は船舶1が港に接岸したときに貨物を積載または荷役するための装置を収容することができ、また、船舶1が運航する過程で貨物の積載状態を安定的に保持するための装置などを収容することができる。
【0235】
一例として、貨物が液化ガスである場合、貨物処理室41は液化ガスのローディング及びアンローディングなどのための装置を収容することができる。具体的には、貨物処理室41は液化ガスのローディング前に液化ガス貯蔵タンクLTを準備するために(ドライング、イナーティング、ガッシングアップ、クールダウンなど)必要な気化器などを含んでもよく、液化ガスのローディング時に液化ガス貯蔵タンクLTで発生する蒸発ガスを処理するための圧縮機(HD圧縮機)などを含んでもよい。
【0236】
また、貨物処理室41は液化ガスの荷役後に液化ガス貯蔵タンクLTへの進入を準備するために(ウォームアップ、イナーティング、エアレーティングなど)必要なヒーターなどを含むことができる。
【0237】
貨物処理室41は液化ガスのローディング及びアンローディングまたはローディング前やアンローディング後の液化ガス処理のための装置を含むほか、液化ガスを運航する過程で液化ガス貯蔵タンクLTの貯蔵安定性を保障する装置を含む。例えば、貨物処理室41は液化ガス貯蔵タンクLTで発生する蒸発ガスを再液化する再液化装置を含むことができる。再液化装置は圧縮機(LD圧縮機)、凝縮器などを含むことができる。
【0238】
さらに、貨物処理室41は液化ガス貯蔵タンクLTの液化ガスをエンジン室42の推進エンジン421などに供給するための燃料供給装置をさらに含む。燃料供給装置は液化ガスを搬送及び加熱する高圧ポンプと熱交換器を含み、蒸発ガスを圧縮及び加熱する圧縮機(LD圧縮機)及びガスヒーターなどを含むことができる。
【0239】
その他にも、貨物処理室41は船舶1が停泊または運航中の状態で貨物である液化ガスを処理するために必要な全ての装置を収容する構成であってもよい。ただし、以下では、貨物処理室41に含まれる圧縮機及びこれを駆動するためのモーターについて説明し、残りの構成の配置に対する説明は省略する。
【0240】
貨物処理室41は船体の外部に設けられてもよく、船尾甲板ADのエンジンケーシング40の前方に設けられてもよい。従来とは異なって、本発明は船室20が船首区域FAに配置されることにより、船尾区域AAの船尾甲板AD上に余裕空間を確保することができる。余裕空間は貨物区域CAとエンジンケーシング40との間の空間であってもよく、この空間内に貨物処理室41が配置される。
【0241】
船尾に船室20が配置される場合には、貨物処理室41が貨物区域CAのトランク甲板TDに配置されなければならないが、本発明は船室20の配置及び形態を改善しながら貨物処理室41を貨物区域CAではない船尾区域AAに移動させて配置する。従って、上述したように、貨物区域CAの露出甲板ED上には一定高さを有する六面体の構造物が省略されるため、貨物区域CAに対する管理が非常に容易となる。
【0242】
貨物処理室41は船尾甲板ADにおいてエンジンケーシング40に比べて前方に離隔して配置されることができる。これにより、船尾甲板ADの下部のエンジン室42は船尾甲板ADのうち外部に露出される一部分と対向するようになる。このとき、船尾甲板ADのエンジンケーシング40と貨物処理室41の間の部分は外部に露出されており、エンジン室ハッチ44が設けられることができる。エンジン室ハッチ44はエンジン室42を開放する構成であり、エンジン室42のメンテナンスが必要な場合に開放される。
【0243】
エンジンケーシング40または貨物処理室41などには上の船首区域FAで説明した荷役装置25やクレーンなどが設置されてもよい。エンジン室42内に設けられた設備に対する交換が求められる場合、エンジン室ハッチ44が開放され、エンジンケーシング40などに設けられたクレーンが交換の求められた設備を引き出すことができる。
【0244】
貨物処理室41は圧縮機とモーターをそれぞれ別途の空間に収容することができる。即ち、貨物処理室41は圧縮機を収容する圧縮機室411と、モーターを収容するモーター室412を含む。圧縮機室411とモーター室412は隣接して配置されるが、隔壁によって区画されてもよく、圧縮機はモーターによって稼動されるため、モーター軸が該当隔壁を貫通するように設けられることができる。
【0245】
圧縮機室411は圧縮機に爆発性液化ガスが流入または流出される空間であるため、危険区域(Dangerous zone)と定義することができ、モーター室412は隔壁によって液化ガスと分離される空間であるため、安全区域(Safety zone)と定義することができる。圧縮機室411とモーター室412は左右方向に隣接して設けられてもよいが、圧縮機室411とモーター室412の配置は多様に決まってもよい。
【0246】
圧縮機室411とモーター室412は同じ高さを有することができる。即ち、貨物処理室41の上面は並んだ1つの平面からなることができる。このとき、貨物処理室41の上面は貨物区域CAの露出甲板EDと並んでもよい。
【0247】
貨物処理室41が設けられる船尾甲板ADは貨物区域CAの露出甲板EDのうち上甲板UDと同じ高さを有することができる。即ち、船尾甲板ADは貨物区域CAの露出甲板EDのうちトランク甲板TDより相対的に低い高さを有することができ、逆に貨物区域CAの露出甲板EDのうち下向甲板LD及び船首区域FAの船首甲板FDより相対的に高く設けられる。
【0248】
船尾甲板AD上に設置される貨物処理室41は、貨物区域CAの露出甲板EDにおける上甲板UDとトランク甲板TDとの高さに対応する高さを有することができる。従って、貨物処理室41の下面は上甲板UDと並んで設けられ、貨物処理室41の上面はトランク甲板TDと並んで設けられることができる。即ち、貨物処理室41は船尾甲板ADと貨物区域CAの露出甲板ED(トランク甲板TD)との高さ差に対応する高さを有する。
【0249】
この場合、圧縮機室411及びモーター室412はそれぞれ船尾甲板ADとトランク甲板TDとの高さ差に対応する高さを有することができる。ただし、貨物処理室41はエンジン室42との隔離のために底である船尾甲板ADにコファダム413が付加されてもよく、圧縮機室411とモーター室412の両方がコファダム413上に積層されてもよい。従って、圧縮機室411及びモーター室412は船尾甲板ADに設けられたコファダム413を介してエンジン室42と離隔され、船尾甲板ADとトランク甲板TDとの高さ差からコファダム413の高さを除いた分だけの高さを有するように設けられることができる。
【0250】
貨物処理室41の上面は貨物区域CAの露出甲板EDと並んで設けられ、露出甲板EDと直接連結されることができる。即ち、貨物処理室41は船首区域FAの船室20とは異なって露出甲板EDとのギャップを設けない。船室20の場合、船室20の下部に設けられた居住室22のうち船室20の下部の後方に睡眠空間を配置することにより、採光のために船室20と露出甲板EDがギャップを置いて前後に離隔される。ただし、貨物処理室41には採光の必要性がないため、貨物処理室41はトランク甲板TDと直接連結されて貨物区域CAとのギャップを形成しなくてもよい。
【0251】
この場合、貨物処理室41に設けられた圧縮機やモーターなどによる振動が貨物区域CAに伝達されることに備えるため、貨物処理室41と露出甲板EDとの間には振動を減衰させる部材が設けられてもよい。または、構造的に部材の厚みや材質、形状、構造などにより貨物処理室41から貨物区域CAへの振動の伝達を抑制することができる。
【0252】
貨物処理室41の上面が露出甲板EDと同じ平面をなして露出甲板EDと一体に設けられる場合、貨物処理室41の上面も貨物を処理する作業空間として活用が可能である。即ち、船体で貨物処理のために作業者が作業する空間は貨物区域CAの露出甲板EDのうちトランク甲板TDなどからなることができ、貨物処理室41はトランク甲板TDが後方に延長される効果を奏することができる。従って、作業者は貨物処理室41の上面も貨物処理の作業空間として活用することができ、一例として、貨物処理のための倉庫などが貨物処理室41の上面に設けられることができる。
【0253】
参考までに、貨物処理室41における圧縮機室411は爆発の危険がある危険区域と定義されるが、貨物区域CAの露出甲板EDにはマニホールド12を介して貨物を搬送するための液化ガスラインが前後方向に延長されており、ベントマスト11などが設けられていることから、露出甲板EDから上方に一定高さだけの区域は危険区域と定義されることができる。従って、貨物処理室41の圧縮機室411は露出甲板EDの上部空間とは別途の隔離なしに配置されることができる。
【0254】
または、圧縮機室411の危険等級と露出甲板EDの上部空間の危険等級とには差があり得るため、露出甲板EDの上方を圧縮機室411と隔離して保護するために、圧縮機室411の上面にはコファダム413などが適用されてもよい。即ち、貨物処理室41の上面には作業者を保護するための構造や材質などが付加されてもよい。従って、貨物処理室41の上面は更なる危険要素の増大なしに、露出甲板EDの延長された構造で活用されることができる。
【0255】
貨物処理室41の上面には圧縮機やモーターなどの引き出しまたは引き込みのためのハッチ(符号不図示)を設けることができる。一例として、モーター室412の上面にはモーターの交換のためにハッチが少なくとも1つ以上設けられてもよい。
【0256】
貨物処理室41の上面は露出甲板EDのうちトランク甲板TDと並んだ平面をなし、特にトランク甲板TDの拡張効果を得るために、貨物処理室41の左右の幅はトランク甲板TDの左右の幅に対応する大きさであってもよい。ただし、貨物処理室41において圧縮機室411及びモーター室412を含む左右の幅はトランク甲板TDの左右の幅より小さくてもよい。
【0257】
上述したように船尾区域AAの船体の外部にはエンジン室42などの消火のための消火剤を貯蔵する消火剤室43が設けられてもよいが、消火剤室43はエンジンケーシング40ではない、他の場所に配置されることができる。一例として、消火剤室43は左右方向の貨物処理室41の一側に設けられてもよい。従って、圧縮機室411、モーター室412及び消火剤室43は左右方向に並んで設けられてもよく、貨物処理室41の上面と消火剤室43の上面はともに同一平面上に配置されてもよい。また、圧縮機室411とモーター室412及び消火剤室43がなす左右の幅はトランク甲板TDの左右の幅に対応することができる。
【0258】
即ち、船尾区域AAは貨物処理室41の上面を介してトランク甲板TDを後方に拡張させた効果を得ることに加え、消火剤室43の上面によってもトランク甲板TDの後方延長効果が得られる。さらに、貨物処理室41と消火剤室43が左右に並んで設けられ、貨物処理室41及び消火剤室43の全幅がトランク甲板TDの左右の幅に対応するようにすることで、船尾区域AAの貨物処理室41などの上面を通じて貨物に関する作業空間を付加的に確保することができる。
【0259】
船尾区域AAにおける貨物処理室41の上面及び消火剤室43の上面は露出甲板EDのうちトランク甲板TDと並んで設けられるため、上述の船首区域FAのトランク甲板TDと並んで設けられる操舵甲板21aも貨物処理室41の上面などと並ぶことができる。従って、船舶1の全体において、船首区域FAの操舵甲板21a、貨物区域CAの露出甲板ED(トランク甲板TD)、船尾区域AAの貨物処理室41の上面は、同じ平面上に並んで設けられることができる。
【0260】
上述したように、船首区域FAの船室20は露出甲板ED(トランク甲板TD)に比べて下部に居住室22が配置されるため、露出甲板EDを基準として上部に突出した部分(操舵室21)の高さが大きくない。また、船尾区域AAのエンジンケーシング40は燃焼装置401が煙突から外れた一側に設けられることにより、エンジンケーシング40の高さが減少する。
【0261】
従って、船舶1を全体的に見ると、貨物区域CAの露出甲板EDを基準として船首区域FAには船室20が操舵室21の高さだけ突出しているだけであり、露出甲板ED上にはマニホールド12やベントマスト11などの必須構成の他に別途の構造物が(ほぼ)なく、船尾区域AAには貨物処理室41及び消火剤室43が露出甲板EDより突出しない。また、船尾区域AAにおけるエンジンケーシング40の高さも最小化される。これにより、船舶1は船体の甲板上に設けられる構造物の上方突出の高さを全て減らしながら平坦化することができるため、船舶1の運航時に発生する空気抵抗を大幅に減らすことができる。
【0262】
また、船舶1内で各種作業を担当する作業者は、船首区域FAの船室20から船尾区域AAのエンジンケーシング40の間を移動する際に船体の長さ分だけ前後に移動することの他に、高さ方向に移動することが最小化されることができる。即ち、作業者の移動経路は前後方向及び左右方向に形成され、高さ方向には縮小されることができる。この場合、船舶1内で作業者の上下移動のために電力を消費する設備(エレベーターなど)が最小化または省略されることができるため、船内の電力負荷を減らせ、該当設備のメンテナンスにかかる人員と費用などを大幅に減らすことができる。
【0263】
また、上のような船舶1は、船舶1で事故が発生したときにエンジンケーシング40や露出甲板ED上に位置する作業者が迅速に脱出できるように脱出経路を改善することができる。一例として、露出甲板ED(トランク甲板TD)と船室20の操舵甲板21aが並んで設けられているため、露出甲板EDで作業していた作業者は、脱出が必要な場合に露出甲板EDと並んだ操舵甲板21aに移動して脱出装備を通じて容易に脱出することができる。
【0264】
エンジンケーシング40と貨物処理室41は船尾甲板AD上に設けられ、エンジン室ハッチ44を設けるために前後に離隔されていてもよい。ただし、貨物処理室41とエンジンケーシング40の間での作業者の移動のために、エンジンケーシング40の一部分と貨物処理室41の上面は互いに別途の通路構造で連結されることができる。
【0265】
エンジンケーシング40は低い段と高い段を有する階段構造で設けられ、エンジンケーシング40の低い段は貨物処理室41の上面と同じ平面に設けられてもよい。または、エンジンケーシング40の低い段は貨物処理室41の上面より多少高く設けられるが、上下に大きな差がなくてもよい。
【0266】
従って、貨物処理室41とエンジンケーシング40の低い段の間には通路構造が階段を含まない形状で鉛直に設けられることができる。これにより、作業者は貨物処理室41からエンジンケーシング40の低い段に容易に行き来することができる。特に、エンジンケーシング40には船室20で述べたように脱出装備が両側に設けられることができるため、貨物処理室41の作業者は必要に応じてエンジンケーシング40に移動してから脱出することができる。
【0267】
また、エンジンケーシング40の両側にクレーンなどが設けられることができるため、作業者は貨物処理室41とエンジンケーシング40の間を容易に行き来しながらクレーンの整備などを行うことができる。
【0268】
以下では、船尾区域AAにおける船尾甲板ADの下部、即ち、船体の内部について説明する。船尾区域AAにおける船体の内部にはエンジン室42が設けられる。エンジン室42は船舶1の推進のための推進エンジン421、船舶1内の電力需要をカバーするための発電エンジン422などが設けられる。
【0269】
また、エンジン室42には発電エンジン422などから発生した電力を需要先に伝達するためのスイッチボード423が設けられてもよい。スイッチボード423は発電した電力の伝達を制御する。また、スイッチボード423に隣接する位置に変圧器(不図示)が設けられ、変圧器は発電した電力の電圧などを需要先の要求諸元に変更することができる。このとき、スイッチボード423と変圧器は1つの室(Room)内に収容されることができる。
【0270】
エンジン室42には推進エンジン421及び発電エンジン422などに燃料を供給するための構成が設けられてもよい。エンジン室42内に燃料を供給する構成は燃料ラインであってもよい。燃料が貨物(液化ガス)である場合、燃料は貨物処理室41で推進エンジン421などが要求する温度及び圧力に変化する。その後、貨物処理室41からエンジン室42に燃料ラインが設けられており、燃料が貨物処理室41からエンジン室42の推進エンジン421に伝達される。
【0271】
または、エンジン室42内に供給される燃料は貨物とは異なる種類の燃料であり、船首区域FAに設けられたタンク室34のオイル燃料であってもよい。このとき、燃料はタンク室34の燃料タンク342から貨物区域CAの移動通路などを経由してエンジン室42に延長されてもよく、船首区域FAのポンプ室33を経由することができる。この場合、エンジン室42内にはオイル燃料が流動する燃料ラインが設けられることができる。
【0272】
即ち、エンジン室42内には推進エンジン421と発電エンジン422にそれぞれ燃料を供給するための燃料ラインが設けられ、また、推進エンジン421などが2種の燃料を使用する場合に備えて、異なる種類の燃料を伝達する燃料ラインが設けられてもよい。
【0273】
また、エンジン室42は推進エンジン421に供給されなかった余剰分の燃料を排出するための排出ラインをさらに含むことができ、排出ラインは貨物区域CAに設けられるベントマスト11に燃料を伝達することができる。または、排出ラインはエンジンケーシング40の燃焼装置401にも連結されることができる。
【0274】
エンジン室42に設けられる燃料ラインは、エンジンケーシング40の燃焼装置401に分岐連結されてもよい。即ち、貨物処理室41からエンジン室42に延長される燃料ラインは推進エンジン421の上流で燃焼装置401に分岐されて燃焼装置401に燃料を配分することができる。貨物処理室41から延長される燃料ラインはガスバルブユニットを介して推進エンジン421、発電エンジン422、燃焼装置401などに分配されることができる。
【0275】
また、エンジン室42には燃料ラインと排出ラインの他に、排気ラインが設けられてもよい。排気ラインは推進エンジン421や発電エンジン422の稼働時に発生する排気を外部に排出するための設けられる配管であり、エンジン室42内の推進エンジン421などからエンジンケーシング40の煙突または排気処理装置402に排気を伝達することができる。
【0276】
排気ラインは推進エンジン421及び発電エンジン422のそれぞれから延長されてエンジンケーシング40に連結されることができる。このとき、エンジンケーシング40の煙突はエンジンケーシング40において左右方向の中央部分に設けられ、推進エンジン421はエンジン室42において左右方向の中央部分に設けられてもよい。従って、推進エンジン421などから煙突に延長される排気ラインは左右方向への延長部位が最小化され、主に上下方向に延長されていることができる。
【0277】
このような配置は推進エンジン421が1台の場合であり、2軸船であって推進エンジン421が2台以上の場合、推進エンジン421はエンジン室42の左側と右側にそれぞれ1台ずつ配置されてもよい。
【0278】
エンジン室42内で推進エンジン421は下部に設けられることができる。推進エンジン421にはシャフトが連結され、シャフトは船尾区域AAの後方に設けられる推進装置と連結されることができる。また、発電エンジン422は推進エンジン421の上部に設けられてもよく、発電エンジン422は推進エンジン421に比べて上方に離隔されてもよい。エンジン室42の上部には発電エンジン422を支持するエンジン甲板GDが設けられ、エンジン甲板GDは推進エンジン421の上部に設けられて発電エンジン422と推進エンジン421の間の空間を確保することができる。
【0279】
エンジン甲板GDはエンジン室42内で前後方向に設けられる水平隔壁であってもよい。即ち、エンジン甲板GDはエンジン室42の内部を上下に区画する構成であってもよく、エンジン甲板GDの上方には発電エンジン422が設けられ、エンジン甲板GDの下方には推進エンジン421が設けられてもよい。
【0280】
エンジン甲板GDはエンジン室42において前後方向に一部分のみ設けられてもよい。即ち、エンジン甲板GDは前後の長さがエンジン室42の前後の長さより小さく形成されて、エンジン甲板GDの前端がエンジン室42の前面に固定され、エンジン甲板GDの後端はエンジン室42の後面から前方に離隔されていてもよい。これにより、推進エンジン421からエンジンケーシング40までの排気ラインなどがエンジン甲板GDを貫通せずに延長されることができる。
【0281】
または、エンジン甲板GDはエンジン室42に対して前後に全長にわたって設けられてもよく、排気ラインはエンジン甲板GDを貫通して上下に延長されてもよい。
【0282】
従来の場合、エンジン室42において推進エンジン421と発電エンジン422は前後方向にずれた位置に設けられることができる。従って、エンジン室42の最小の前後の長さは推進エンジン421及び発電エンジン422の設置長さの合計によって制限されることができる。また、従来の場合、このようなエンジン室42の上部にエンジンケーシング40と船室20が設けられているため、エンジン室42の前後の長さは比較的十分な大きさでなければならない。
【0283】
一方、本発明は、船尾ではない船首区域FAに船室20を移動配置し、船尾区域AAにはエンジンケーシング40と貨物処理室41などを配置する。貨物処理室41は船室20に比べて必要面積が小さいため、貨物処理室41の前後の長さは船室20に比べて大幅に減少する。
【0284】
従って、エンジンケーシング40と貨物処理室41が設けられる船尾甲板ADは、船尾区域AAに船室20を配置する場合に比べて、前後の長さを縮小することができるマージンが確保される。ただし、それでもエンジン室42に推進エンジン421と発電エンジン422が前後にずれて配置されると、エンジン室42の前後の長さは縮小できない。
【0285】
しかし、本発明は、エンジン室42内で発電エンジン422が推進エンジン421と上下方向に重畳するように設けられることができる。即ち、エンジン室42に設けられるエンジン甲板GDは推進エンジン421の直上方に設けられて発電エンジン422を支持し、発電エンジン422は前端と後端の間の部分が推進エンジン421の前端と後端の間の部分に上下方向に重畳するように設けられることができる。
【0286】
本発明のエンジン室42は、発電エンジン422が推進エンジン421の前方または後方に配置される代わりに、推進エンジン421の上方に配置されることができる。この場合、エンジン室42の前後の長さは推進エンジン421の前後の設置長さのみを確保すればよいため、エンジン室42の前後の長さに対する縮小が可能となる。
【0287】
従って、船尾区域AAは船尾甲板ADの上部に居住空間や操舵空間などが設けられず、さらにエンジン室42内で発電エンジン422が推進エンジン421の直上方に配置されることにより、エンジン室42自体の前後の長さを従来対比で大幅に減らすことができる。
【0288】
即ち、本発明のエンジン室42は発電エンジン422を設置するための前後の長さの影響を受けない。エンジン室42はエンジンケーシング40、貨物処理室41、及びその間に設けられるエンジン室ハッチ44の配置に必要な程度の前後の長さのみからなることができる。
【0289】
この場合、発電エンジン422は、エンジン室ハッチ44の開放時にエンジン室42内外の装備の搬送を妨げないように、エンジン室ハッチ44と上下方向にずれて設けられることができる。即ち、エンジン室ハッチ44の下部には発電エンジン422が重畳しない。
【0290】
エンジン室42において推進エンジン421の軸の上方部分、即ち、発電エンジン422の後方部分には燃料ライン、排気ラインなどが多様に配列されてもよい。また、該当部分にはオイル燃料を貯蔵する燃料タンク342が配置されてもよい。ただし、燃料タンク342がエンジン室42内に配置される場合、燃料タンク342はエンジン室42で推進エンジン421などが設けられる空間と分離されるように区画されることができる。
【0291】
上の船首区域FAで説明したように、船首区域FAの船体内部に発電機36が設けられてもよい。従って、エンジン室42には発電エンジン422が最小化または省略されることができる。この場合、エンジン室42の前後の長さは推進エンジン421の搭載に必要な程度に縮小されることができる。
【0292】
図14は本発明の第2実施例による船舶の部分側面図である。
【0293】
以下では、本実施例が上述の実施例と異なる点を中心に説明し、説明を省略した部分は上述の内容に代える。これは他の実施例でも同様である。
【0294】
図14を参照すると、本発明の第2実施例による船舶1は、上述の実施例と比較して船尾区域AAに変更がある。本実施例の船尾区域AAにはエンジンケーシング40及び貨物処理室41などが設けられるが、エンジンケーシング40は煙突などを介してエンジン421、422の排気を外部に排出することができる。
【0295】
また、エンジンケーシング40には燃焼装置401と排気処理装置402などが設けられ、エンジンケーシング40は燃焼装置401の排気を外部に排出し排気処理装置402を経由した排気を外部に排出するにおいて、排気の排出方向を上述の実施例と異ならせることができる。
【0296】
即ち、本実施例は、排気処理装置402などを経由した排気がエンジンケーシング40の上方ではない後方に排出されるようにすることができる。選択的触媒還元装置などを含む排気処理装置402には排気管403が連結され、排気管403はエンジン421、422などから排出される排気を排気処理装置402に伝達する。排気処理装置402を経た排気は再び排気管403を介して外部に抜け出るが、排気処理装置402の下流において排気管403は少なくとも1回折り曲げられて後方に向かって水平に延長される。
【0297】
このとき、エンジンケーシング40は後面に別途の排気口が設けられ、エンジンケーシング40の後面に設けられる排気口は排気処理装置402を経由した排気が配置される構成であってもよい。即ち、排気口は煙突の機能を具現することができる。
【0298】
従って、本実施例では、エンジンケーシング40は左右方向の中央部分から上方に突出する煙突を最小化または省略し、排気処理装置402から延長される排気管403が曲がって後方に向かって排気を排出するようにする。従って、本実施例はエンジンケーシング40の高さをさらに低くすることができる。
【0299】
排気処理装置402の下流に設けられた排気管403には消音器404(Silencer)が付加されてもよい。消音器404は排気管403の垂直部分または水平部分に設けられてもよい。このとき、消音器404は多孔消音器404及び低周波減少器が統合された形態であってもよい。
【0300】
ただし、消音器404は作業者に伝達される騒音を低減するために付加されるものであり、本発明において作業者が主に滞在する船室20は船尾区域AAではない船首区域FAに配置される。従って、エンジンケーシング40の騒音は居住空間や操舵空間などに伝達される恐れがない。これにより、排気管403から消音器404を削除することも可能であり、この場合、エンジンケーシング40の高さをさらに下げることができる。ただし、排気管403が水平に延長される部分は船尾甲板ADを基準として上方に一定高さ以上で形成されることができる。これは、船尾甲板ADで作業する作業者を排気から保護するためである。
【0301】
排気処理装置402を経由した排気が水平部分を有する排気管403を介してエンジンケーシング40の後方に排出されることに加え、燃焼装置401の排気管403にも同じ方式で排気を排出することができる。即ち、燃焼装置401の下流において排気管403は少なくとも1回折り曲げられて後方に水平に延長されて、燃焼装置401の排気がエンジンケーシング40の後方に排出されることができる。
【0302】
ただし、排気をエンジンケーシング40の後方に排出する場合、逆風などの条件によってエンジンケーシング40の後面に対する汚染の恐れがある。エンジン421、422などの排気を煙突を介して上方に排出する場合には、空気より密度の低い排気がエンジンケーシング40を汚染させる恐れが低いが、排気をエンジンケーシング40の後方に排出する場合は、エンジンケーシング40の後面の汚染に備えなければならない。従って、エンジンケーシング40の後面には排気の汚染物質及び排気の高温などからエンジンケーシング40の外面を保護するための物理的または化学的補強が行われることができる。一例として、エンジンケーシング40の後面には特殊塗装が適用されて高温や排気汚染物から十分に耐える諸元で構成する。
【0303】
また、エンジンケーシング40の後方に排気を排出する排気管403は、船舶1の運航過程で雨天時に備えることができる。即ち、エンジンケーシング40の後面から後方に突出した排気管403の上部には別途のレインカバー構造が設けられてもよい。また、排気管403の排出端には雨水の流入を防ぐフィルターや形状が適用されることができる。
【0304】
図15は本発明の第3実施例による船舶の部分平面図である。
【0305】
図15を参照すると、本発明の第3実施例による船舶1は船首区域FAに変更がある。具体的には、本実施例は船首区域FAに船室20を設け、船室20の両側にウイングブリッジ24を適用しながらウイングブリッジ24の形状を変更することができる。
【0306】
ウイングブリッジ24は船体において最大の左右幅だけ船室20から延長されるものであるが、本発明は船室20の形状を前方に向かうほど幅が減少する形状などに改善して空気抵抗を低減しながらも、ウイングブリッジ24が左右に突出するようにする。従って、船室20によって空気抵抗が多少減少しても、ウイングブリッジ24の突出によって空気抵抗が引き起こされる。
【0307】
本実施例は、ウイングブリッジ24が船室20の左右両側に延長される方向を改善することでウイングブリッジ24による空気抵抗を最小化することができる。具体的には、ウイングブリッジ24は前端辺及び後端辺が端に向かうほど後退する傾斜を有することができる。
【0308】
即ち、ウイングブリッジ24は前端辺と後端辺の両方が端に向かうほど後退する傾斜を有する。言い換えると、ウイングブリッジ24は前後中心線が基端から端に向かうほど後退する傾斜を有することができる。
【0309】
ウイングブリッジ24が設けられる船室20は上述したように、前方に向かって凸の曲線状または船首甲板FDと類似する形状などを有することができる。これは、船室20の両側面が前端から後端に向かうほど左右に拡大される傾斜を有するということである。この場合、ウイングブリッジ24は、前端辺と後端辺が船室20の外郭と同じ方向に傾斜して設けられることができる。即ち、ウイングブリッジ24の基端と端の間のウイングブリッジ24の前後中心線は、船室20の側面がなす傾斜と30度以内の差を有することができる。
【0310】
このようなウイングブリッジ24は前端辺が船室20に連結された部分を基準として前後方向に鈍角をなす。また、ウイングブリッジ24は後端辺が船室20に連結された部分を基準として前後方向に鋭角をなすことができる。
【0311】
従って、本実施例は、船室20の形状をBullet typeにして船室20がまるで空気を割って空気抵抗を減らす効果を得ることに加えて、船室20から両側に突出するウイングブリッジ24を後方に傾斜するように変形させることにより、ウイングブリッジ24の突出による空気抵抗の増加を最小化することができる。
【0312】
図16は本発明の第4実施例による船舶の部分側面図である。
【0313】
図16を参照すると、本発明の第4実施例による船舶1は船室20の形態が上述の実施例と異なることができる。
【0314】
一例として、本実施例の船室20は、操舵甲板21aを基準として上部に操舵室21、下部に居住室22が設けられてもよく、操舵室21の前面と居住室22の前面は段差なく上下に連続的に連結されることができる。
【0315】
即ち、側面から見て船室20の下部である居住室22の前端が形成する線(傾斜線または曲線)は、船室20の上部である操舵室21の前端が形成する線(傾斜線または曲線)と滑らかに繋がることができる。
【0316】
上述の実施例の場合、操舵甲板21aを基準として船室20の下部の前端に比べて船室20の上部の下端が後退されて、操舵甲板21aの前方部分が外部に露出している。一方、本実施例は船室20による空気抵抗をさらに減らすために、船室20の下部と船室20の上部との間の段差をなくし、船室20の前面が下端から上端まで1つの傾斜平面(曲面)を形成するようにする。
【0317】
船室20の下部は前端が傾斜した直線をなすことができ、船室20の上部は前端が傾斜した直線をなすことができる。ただし、船室20の上部は船室20の下部と比べて、下端から上端に向かうほど後方に傾斜する程度が相対的に大きいことができる。即ち、船室20の前端は操舵甲板21aを基準として折り曲げられた形状をなすことができる。
【0318】
または、船室20の下部は前端が傾斜した直線をなし、船室20の上部は前端が前方に凸の曲線をなすことができる。この場合、船室20の前端は、下面から操舵甲板21aまで一定に続いた後操舵甲板21aからコンパス甲板21bに向かうほど前方に凸に曲げられていてもよい。
【0319】
または、船室20の下部及び上部は前端がすべて前方に凸の曲線をなしてもよい。この場合、船室20の前端は下端から上端の間で全体的に前方に凸の曲線状をなすことができる。
【0320】
このような本実施例は、船室20の前方で操舵甲板21aが外部に露出されないことができる。ただし、船室20の上部と下部の左右の幅が互いに異なって船室20の両側から操舵甲板21aが外部に露出することができ、外部に露出した操舵甲板21aによって作業者がウイングブリッジ24に接近することができる。
【0321】
図17は本発明の第5実施例による船舶の側面図である。
【0322】
図17を参照すると、本発明の第5実施例による船舶1は、上述の第1実施例における船舶1と異なる船種であることができる。一例として、本実施例の船舶1は貨物として液化天然ガスやアンモニアなどを運搬するガス運搬船であってもよい。即ち、本実施例の貨物は沸点が-100度以上で、常温より低いガスであることができる。以下では、本実施例の船舶1を液化石油ガス運搬船であると仮定して説明する。
【0323】
本実施例の船舶1は貨物区域CA、船首区域FA及び船尾区域AAに区分することができるが、貨物区域CAの露出甲板EDは上甲板UDに対応することができる。即ち、本実施例の貨物区域CAにはトランク甲板TDが突出しなくてもよく、貨物区域CAの全体において船体の内部と外部を区分する上甲板UDが貨物区域CAの露出甲板EDであることができる。
【0324】
貨物区域CAは液化石油ガスなどを貯蔵するための液化ガス貯蔵タンクLTなどを含むことができる。液化ガス貯蔵タンクLTは船体の内部で前後方向に複数個が一定の間隔をおいて設けられることができる。このとき、液化ガス貯蔵タンクLTは外部で別途製作された後、船体の内部に搭載される独立型であってもよい。また、液化ガス貯蔵タンクLTは船体の内部に断熱壁が設置されることにより形成されるメンブレン型であってもよい。
【0325】
貨物区域CAは貨物である液化ガスを貯蔵する場合、上の実施例で説明したのと同様にベントマスト11を備えることができる。ベントマスト11は液化ガス貯蔵タンクLTの数に合わせて上甲板UDに設けられてもよい。また、貨物区域CAにはマニホールド(不図示)が設けられ、貨物のローディングやアンローディングなどを担当する。
【0326】
貨物区域CAには貨物処理室41が設けられてもよい。上述の実施例の場合、貨物処理室41が船尾区域AAに配置されることで、貨物区域CAの露出甲板ED上の別途の突出構造を排除した。一方、本実施例では、船尾甲板ADが貨物区域CAの露出甲板EDと並んで設けられており、貨物処理室41は貨物区域CAの露出甲板EDのうち比較的後方に配置されることができる。
【0327】
後述するが、船尾区域AAには貨物とは異なる液化ガスを貯蔵する燃料タンク342が船尾甲板AD上に設けられてもよいため、貨物処理室41は船尾区域AAではない貨物区域CAに配置されることができる。
【0328】
船首区域FAは貨物区域CAの前方に設けられ、船体の内部と外部を区画する船首甲板FDが設けられる。船首甲板FDの上部には船室20が設けられるが、船室20はサポート23によって支持され、サポート23は船首甲板FDの前方を囲むブルワーク28に連結される。
【0329】
船室20は居住室22と操舵室21を含むことができ、船室20は船首甲板FDから上方に離隔されて船首甲板FD上で係留作業を保障する。即ち、船首甲板FDには係留装置30が設けられ、船首甲板FDは貨物区域CAの露出甲板EDに比べて相対的に下がってサンクン甲板をなすことができる。
【0330】
ただし、トランク甲板TDを備える第1実施例におけるトランク甲板TDと船首甲板FDとの高さ差に比べて、本実施例における上甲板UDと船首甲板FDとの高さ差は相対的に小さいことができる。一方、本実施例では、上甲板UDと船首甲板FDとの高さ差は、上述の実施例における上甲板UDと船首甲板FDとの高さ差より大きいことができる。
【0331】
上述の実施例はトランク甲板TDと船首甲板FDとの高さを考慮して、トランク甲板TDより下方に居住室22の一部の層が設けられることができる。一方、本実施例では、貨物区域CAの露出甲板EDと船首甲板FDの間の高さが係留装置30の設置に必要な高さに対応することができる。従って、本実施例においてサポート23によって支持される船室20の下面は、少なくとも露出甲板EDと並んだ高さ以上で設けられることができる。
【0332】
この場合、船室20のコンパス甲板21bが露出甲板EDより過度に高くなることを解消するために、本実施例の船室20は居住室22の少なくとも一部が船首甲板FD上に設けられることができる。即ち、居住室22は船首甲板FDによって底が形成され、該当居住室22の上面は露出甲板EDと並ぶことができる。
【0333】
即ち、船室20に含まれた居住室22は、船首甲板FDの上部に設けられ、少なくとも一部が露出甲板EDより低く配置される。この場合、船首甲板FDに直接設けられる居住室22の前方に係留装置30などが設けられる。
【0334】
本実施例は液化石油ガス運搬船であり、上述の液化天然ガス運搬船と比べて方形係数が大きいことができる。従って、本実施例の船舶1は、船首区域FAにおける船首甲板FDの面積が第1実施例に比べて大きいことができるため、本実施例では、船首甲板FDに係留装置30を配置し、係留装置30の後方に居住室22の一部を配置することができる。
【0335】
船室20に含まれた居住室22には採光が必ず求められ、船首甲板FDに配置される居住室22は前面が外部に露出される。従って、船首甲板FDに設けられた居住室22は前方から係留装置30を経て採光が行われることができる。
【0336】
上述の実施例の場合、船室20は露出甲板EDに比べて前方に離隔され、ブラケット211を介して連結されるが、これは船室20の下部に設けられた操舵室21に対して後面の採光を保障するためである。一方、本実施例は、船首甲板FDに設けられた居住室22に対して前面の採光が保障され、露出甲板EDより高く設けられる居住室22は後面などの採光が保障されるため、船室20は露出甲板EDに比べて前方に離隔されずに露出甲板EDに一体に連結されることができる。
【0337】
このような船室20は操舵甲板21aとコンパス甲板21bを有し、操舵甲板21aは貨物区域CAの露出甲板EDに比べて上方に高く設けられることができる。ただし、露出甲板EDと操舵甲板21aとの上下の高さ差は露出甲板EDと船首甲板FDとの上下の高さ差より小さいことができる。
【0338】
船室20は平面から見て前方に凸の曲線状を有することができる。また、船室20の下部である居住室22は側面から見て前端が下端から上端に向かうほど後退する傾斜を有し、船室20の上部である操舵室21は側面から見て前端が下端から上端に向かうほど前進する傾斜を有する。従って、船室20においててサポート23によって支持される部分の前端は「<」の字状である。
【0339】
また、船室20の下部に設けられる居住室22は、一部がサポート23によって支持されて船首甲板FDに比べて上方に離隔されることにより係留装置30の設置空間を形成することができ、残りが露出甲板EDより下において船首甲板FDによって底をなすように設けられて、前面を通じて採光が行われる。従って、船室20に含まれる居住室22は「┐」状に設けられることができる。
【0340】
または、船室20はサポート23によって支持される水平面を基準として上部が操舵室21であり、下部が居住室22であってもよい。即ち、船室20において操舵室21の底をなす操舵甲板21aは貨物区域CAの露出甲板EDと並んで設けられてもよい。この場合、サポート23は操舵室21の下面を支持することができる。また、船室20の下部をなす居住室22は露出甲板EDより下に設けられ、船首甲板FDによって底が定義され、前方などが外部に露出されて前面を通じて採光が行われる。この場合、居住室22は操舵室21と比べて前後の長さが相対的に小さく形成されることができる。
【0341】
船首区域FAの船体の内部には衝撃用隔壁31が設けられる。また、船体の内部にはボースンストア32、ポンプ室33、タンク室34などが配置され得ることは上述の実施例と類似する。
【0342】
船尾区域AAは貨物区域CAの後方に設けられる。船尾区域AAには船体の内部と外部を区画する船尾甲板ADが設けられ、船体の内部には推進エンジン421などを収容するエンジン室42が形成される。
【0343】
船尾甲板AD上にはエンジンケーシング40が設けられる。また、船尾甲板ADには燃料タンク342が設けられてもよい。本実施例において貨物区域CAが貯蔵する貨物が液化石油ガスである場合、推進エンジン421が液化石油ガスエンジン421、422であれば、別途の燃料タンク342が船体の外部や内部などに設けられなくてもよく、貨物処理室41を通じて貨物が推進エンジン421に伝達されることができる。
【0344】
ただし、本実施例は液化天然ガスエンジン421、422を推進エンジン421として搭載した液化石油ガス運搬船であってもよく、燃料である液化天然ガスが船尾甲板AD上の燃料タンク342内に貯蔵されてもよい。
【0345】
これにより、貨物処理室41は船尾甲板ADに設けられず、貨物区域CAの露出甲板ED上に配置されることができる。船尾甲板ADにおいて燃料タンク342が左右方向の一側に設けられ、他側に貨物処理室41が設けられることも可能である。
【0346】
図18は本発明の第6実施例による船舶の部分側面図である。
【0347】
図18を参照すると、本発明の第6実施例による船舶1は、上述の第5実施例と比較して船室20の前後面積をさらに確保することができる。一例として、船室20は延長部29を有し、延長部29は船室20の内部容積を拡大するが、船首区域FAではない貨物区域CA上に位置する。
【0348】
本実施例では、船室20は下部の居住室22及び上部の操舵室21を有するが、操舵甲板21aは貨物区域CAの露出甲板EDより上方に設けられていてもよい。このとき、船室20は少なくとも一部が露出甲板EDの上方に設けられ、具体的には操舵室21の一部が露出甲板EDの上方に配置される。
【0349】
船室20の下部をなす居住室22はサポート23によって支持され、底が露出甲板EDと並んで設けられる一部分と、船首甲板FDによって底が定義される残りの部分と、を含む。この場合、居住室22の残りの部分は貨物区域CAの前面によって後方への延長が不可能である。また、居住室22の一部分は後方に延長されない。これは、貨物区域CAの露出甲板EDの上部に船室20が直接搭載されることが国際規定(船級、IMO規定など)を満たさないためである。
【0350】
知られている国際規定によれば、船室20は貨物区域CAの上方に搭載されてはならない。ただし、本実施例では、船室20に延長部29があり、延長部29が貨物区域CAの上方に位置しながらも貨物区域CAの露出甲板EDに直接搭載されない構造を有させることができる。
【0351】
一例として、船室20は上部の操舵室21が後方に延長される。操舵室21の底をなす操舵甲板21aは貨物区域CAの露出甲板EDより上方に設けられるため、操舵室21が後方に延長されて延長部29を形成しても、延長部29は貨物区域CAの露出甲板EDに搭載される構造ではない。
【0352】
この場合、操舵甲板21aは船首区域FAから貨物区域CAまで延長されて設けられ、延長部29は下面が露出甲板EDの上方に離隔して配置されることができる。即ち、このような船室20は規定に従って貨物区域CAの上方に船室20が搭載されるものではなく、露出甲板EDから一定高さ以上に船室20の一部を配置しただけであり、国際規定を満たすことができる。このとき、一定の高さは露出甲板EDから液化ガスが漏れる状況に備えて設定される値であることができる。
【0353】
船室20の上部において延長部29が後方に一定の長さだけ突出すると、延長部29に対する支持が必要であることができる。従って、延長部29には柱291が使用されることができる。柱291は延長部29の下面が露出甲板EDの上方に一定高さだけ離隔されるように延長部29を支持する。
【0354】
柱291は上端が延長部29の下面に固定され、下端が露出甲板ED上に固定されることができる。この場合、柱291は垂直に設けられてもよい。または、柱291は上端が延長部29の下面に固定され、下端が船室20の居住室22の後面に固定されてもよい。この場合、柱291は傾斜して設けられ、延長部29の下面と柱291及び居住室22の後面は側面から見て直角三角形をなすことができる。その他にも、柱291は上端が延長部29の下面に固定され、下端が船体の露出甲板ED以外の部分に固定されて延長部29を支持することができる。
【0355】
このように船室20に延長部29を付加する場合、延長部29は貨物区域CA内に位置するが、露出甲板EDより一定高さ以上で設けられて安全を保障することができる。また、本実施例は、延長部29を利用して船室20の内部容積を確保することにより、船室20の平断面を減らすか、コンパス甲板21bの高さを減らして船室20による空気抵抗を低減することができる。
【0356】
図19は本発明の第7実施例による船舶の側面図である。
【0357】
図19を参照すると、本発明の第7実施例による船舶1は上述の実施例とは異なる船種であることができる。一例として、本実施例の船舶1は液化ガスを貯蔵するガス運搬船であってもよく、特に液化天然ガスを運搬する液化天然ガス運搬船であってもよい。ただし、本実施例は第1実施例と同様に液化天然ガス運搬船であってもよいが、第1実施例がメンブレン型の液化ガス貯蔵タンクLTを搭載したのであれば、本実施例はMOSS型の液化ガス貯蔵タンクLTを搭載した点で異なることができる。
【0358】
または、本実施例は第1実施例とは異なり、液化水素運搬船であってもよい。即ち、本実施例の貨物は沸点の非常に低い水素であってもよく、液化ガス貯蔵タンクLTには十分な断熱(真空など)が適用されていてもよい。または、本実施例における貨物は三重点が高くて圧力容器による貯蔵が必要なものであってもよく、一例として、貨物は二酸化炭素などであってもよい。
【0359】
本実施例の船舶1も貨物区域CA、船首区域FA及び船尾区域AAに区分され、貨物区域CAには液化ガス貯蔵タンクLTが設けられてもよい。このとき、液化ガス貯蔵タンクLTは球状に設けられ、略上半球が露出甲板EDの上部に突出することができる。
【0360】
貨物区域CAには複数個の液化ガス貯蔵タンクLTが前後方向に離隔して配置されてもよく、球状の液化ガス貯蔵タンクLTが露出甲板EDの上方に突出することができる。ただし、貨物区域CAには液化ガス貯蔵タンクLTの上半球を一度にカバーするタンクカバー(不図示)が設けられてもよい。
【0361】
船首区域FAには船室20が設けられる。船室20は船首甲板FD上に設けられてもよく、船室20の下面は船首甲板FDから上方に離隔するようにサポート23によって支持されることができる。サポート23は上面が船室20の下面に固定され、下面が船首甲板FDの前端を囲むブルワーク28に固定されてもよい。
【0362】
本実施例の貨物区域CAは露出甲板EDに比べて液化ガス貯蔵タンクLTの上部が相当な高さで突出している。このとき、船首区域FAの船室20は操舵甲板21aが液化ガス貯蔵タンクLTの上端と並んでいるか、それより低く設けられることができる。この場合、船室20の操舵室21は貨物区域CAの上端より高く設けられることができる。
【0363】
一方、本実施例は船室20が液化ガス貯蔵タンクLTに比べて空気抵抗をさらに発生させないように、コンパス甲板21bが液化ガス貯蔵タンクLTの上端以下の高さで設けられることができる。液化ガス貯蔵タンクLTが突出する高さを考慮すると、船室20のコンパス甲板21bが液化ガス貯蔵タンクLTの上端より低く設けられても、船室20は3層以上の構造物で設けられて十分な容積を確保することができる。
【0364】
ただし、本実施例において船室20の操舵甲板21aが液化ガス貯蔵タンクLTの上端以上に設けられるのは、操舵室21の後方に貨物管理室を配置して貨物管理室で貨物区域CAに対する監視を具現するためである。
【0365】
従って、船室20のコンパス甲板21bが液化ガス貯蔵タンクLTの上端より低く設けられる場合は、貨物管理室が別途で適切な位置に付加されることができる。このとき、貨物管理室は操舵室21より高く設けられることができる。
【0366】
船首区域FAの船首甲板FDは貨物区域CAの露出甲板EDと同じ高さで設けられることができる。これは、貨物区域CAにおいて液化ガス貯蔵タンクLTが突出する高さを考慮すると、船首甲板FDの高さを下げる必要性が大きくないためである。ただし、船首甲板FDは上述した実施例と同様に、船室20の下面に対して上下に離隔されることができ、係留装置30が設置されることができる。
【0367】
船室20の後面と最前方の液化ガス貯蔵タンクLTはブラケット211などで連結されることができる。または、船室20自体が後方に延長されて液化ガス貯蔵タンクLTと一体化されることも可能である。または、船室20の後面は比較的垂直に設けられ、液化ガス貯蔵タンクLTと前後方向に離隔されていてもよい。
【0368】
船尾区域AAは船体の内部にエンジン室42を有し、推進エンジン421などを収容する。また、船尾区域AAにおいて船尾甲板ADは貨物区域CAの露出甲板ED及び船首区域FAの船首甲板FDと並んで設けられることができる。
【0369】
船尾甲板ADにはエンジンケーシング40が設けられてもよく、エンジンケーシング40の前方には燃料タンク342が設けられてもよい。勿論、船尾甲板ADに燃料タンク342を配置するのは推進エンジン421が貨物以外の液化ガスを消費するエンジン421、422である場合に該当する。推進エンジン421が貨物を燃料として消費する場合、船尾甲板AD上の燃料タンク342は省略されてもよい。
【0370】
船尾甲板ADには貨物処理室41が設けられてもよい。または、貨物処理室41は球状の液化ガス貯蔵タンクLTにおいて露出甲板EDの上部に突出した上半球の前方または後方の凹んだ空間に設けられてもよい。
【0371】
本発明は上述の実施例のうち少なくとも何れか1つと公知技術を組み合わせたものと、上述の実施例を組み合わせたものなどを更なる実施例としてさらに含むことができる。
【0372】
以上、本発明を具体的な実施例を通じて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者によりその変形や改良が可能であることは明らかである。
【0373】
本発明の単なる変形乃至変更はすべて本発明の領域に属し、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明らかになるであろう。
【国際調査報告】