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特表2025-503093トール様受容体アゴニストによる肝臓がんにおける免疫機能障害を治療する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】トール様受容体アゴニストによる肝臓がんにおける免疫機能障害を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/711 20060101AFI20250123BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250123BHJP
   C12N 15/117 20100101ALN20250123BHJP
【FI】
A61K31/711
A61P1/16
A61P37/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K48/00
A61K39/395 N
C12N15/117 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543354
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-09-03
(86)【国際出願番号】 US2023061035
(87)【国際公開番号】W WO2023141599
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/302,004
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/423,005
(32)【優先日】2022-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/426,757
(32)【優先日】2022-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521104137
【氏名又は名称】トリサルース・ライフ・サイエンシズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・シー・カッツ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エフ・コックス
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラ・シー・ゴーシュ
(72)【発明者】
【氏名】プラジナ・グーハ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ラポルテ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA10
4C084ZA751
4C084ZB071
4C084ZC412
4C084ZC751
4C085AA14
4C085EE03
4C085GG04
4C085GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB07
4C086ZC41
(57)【要約】
対象において肝臓免疫機能障害を治療するための方法が提供される。肝臓免疫機能障害は、肝臓における転移から生じる少なくとも1つの腫瘍によって誘導されるものであっても、少なくとも1つの原発性肝臓がんによって誘導されるものであってもよい。例示的な方法は、対象にトール様受容体9(TLR9)アゴニスト、例えば、構造: 5'-TCG AAC GTT CGA ACG TTC GAA CGT TCG AAT-3'を有するTLR9アゴニストを投与する工程を含む。TLR9アゴニストは肝臓に投与される、例えば、TLR9アゴニストは、血管系を通した局所療法を使用して肝臓に投与することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:5'-TCG AAC GTT CGA ACG TTC GAA CGT TCG AAT-3'(配列番号1)
を有する治療有効量のトール様受容体9アゴニストを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、肝臓免疫機能障害を治療するための方法であって、
前記肝臓免疫機能障害が、肝臓における転移から生じる少なくとも1つの腫瘍又は少なくとも1つの原発性肝臓がんによって誘導される、
方法。
【請求項2】
前記TLR9アゴニストが、肝動脈注入(HAI)によるデバイスを通して投与される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TLR9アゴニストが門脈注入(PVI)によるデバイスを通して投与される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
投与される前記TLR9アゴニストの前記治療有効量が約0.01~20mgの範囲にある、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
投与される前記TLR9アゴニストの前記治療有効量が、2mg、4mg又は8mgからなる群から選択される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記TLR9アゴニストがカテーテルデバイスを通して投与されうる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記カテーテルデバイスが、局所的な圧力及び/又は流量の変化に動的に応答する一方向バルブを備える、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記TLR9アゴニストが、圧力有効化薬物送達を介するカテーテルデバイスを通して投与される、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記TLR9アゴニストが約10~200分の期間投与される、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記TLR9アゴニストが約10~60分の期間投与される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記TLR9アゴニストが約25分の期間投与される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記TLR9アゴニストの投与が、肝臓における前記転移内で遺伝子発現の変化をもたらす、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子発現の前記変化には、正常な肝臓組織における免疫細胞の活性化及び前記少なくとも1つの腫瘍への活性化された免疫細胞の遊走が含まれる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記遺伝子発現の前記変化には:
TLRシグナル伝達の向上;白血球の増加;疲弊したCD8 T細胞の増加;Th1プログラミングの誘導;Th2プログラミングの低減;T細胞受容体の増加及びT細胞共刺激シグナル伝達の向上;IL9、IL15、CCL7の増加;B細胞活性化;肥満細胞の誘導;NK細胞の誘導;IFNγの誘導;インターフェロンシグナル伝達の向上;ケモカインシグナル伝達の向上;血中の増加を伴わない肝臓中のIL6の増加;M2マクロファージの低下;M1マクロファージの増加;MDSCの低下;血管新生及びVEGFの低下;並びに脂肪酸酸化の低下
のうちの少なくとも1つが含まれる、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記TLR9アゴニストが1種以上のチェックポイント阻害剤と組合せで投与される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記チェックポイント阻害剤が、前記TLR9アゴニストの前記投与と同時に、前記TLR9アゴニストの前記投与の前又は後にいずれかで全身投与される、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1種以上のチェックポイント阻害剤には、ニボルマブ、ペンブロリズマブ及びイピリムマブのうちの少なくとも1種が含まれる、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記TLR9アゴニストの前記投与が、サイクルを含む投薬レジメンを含み、
ここで、前記サイクルのうちの1つ以上が、肝動脈注入によるカテーテルデバイスを介する前記TLR9アゴニストの前記投与、これに続いて前記1種以上のチェックポイント阻害剤の全身投与を含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記1種以上のチェックポイント阻害剤との組合せでの前記TLR9アゴニストの前記投与が、循環腫瘍細胞レベル及び循環腫瘍DNAレベルのうちの一方の低下をもたらす、
請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記1種以上のチェックポイント阻害剤が腹腔内に又は皮下に投与される、
請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2022年1月21日出願の「Cancer Therapy Using Toll-Like Receptor Agonists」と題する米国仮出願第63/302,004号に対する、2022年11月6日出願の「Cancer Therapy Using Toll-Like Receptor Agonists」と題する米国仮出願第63/423,005号に対する、及び2022年11月20日出願の「Cancer Therapy-Using Toll-Like Receptor Agonists」と題する米国仮出願第63/426,757号に対する優先権を主張するものであり、上で特定した全ての出願の内容全体を、本明細書に参照により組み込む。
【0002】
配列表
本出願は、XML形式で電子的に提出している配列表を含み、その全体を本明細書に参照により組み込む。2023年1月20日に作成された前記XMLコピーは、A372-509_WO_SL.xmlと命名され、18,185バイトのサイズである。
【0003】
本開示は全体として、がん、特に肝臓がんを治療する方法、及び血管系を通した局所療法を使用して、肝臓における固形腫瘍にトール様受容体(TLR)アゴニストを送達する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
がんは、細胞の無制御な増殖を伴う荒廃的な疾患であり、これは、皮膚、肝臓及び膵臓等の様々な臓器における固形腫瘍の成長をもたらす恐れがある。腫瘍は、任意の数の臓器で最初に存在する場合もあり、又は他の位置からの転移の結果である場合もあり、若しくは広がりの結果である場合もある。
【0005】
肝臓は、内因的に免疫抑制性であり且つ骨髄由来抑制性細胞(MDSC)等の抑制性細胞のプログラミング及び増殖を駆動するユニークな臓器である。これに関して、MDSCは悪性腫瘍に応答して増殖する。MDSCはまた、T制御細胞(Treg)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)及びがん関連線維芽細胞(CAF)等の他の抑制性細胞タイプの増殖も駆動する。MDSCは免疫細胞をダウンレギュレーションし、免疫療法の有効性を妨げることができる。更に、MDSCレベルが高いと一般的にはがん患者の予後不良が予測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9,422,564号
【特許文献2】米国特許第8,372,413号
【特許文献3】米国特許第8,500,775号
【特許文献4】米国特許第8,696,698号
【特許文献5】米国特許第8,696,699号
【特許文献6】米国特許第9,539,081号
【特許文献7】米国特許第9,808,332号
【特許文献8】米国特許第9,770,319号
【特許文献9】米国特許第9,968,740号
【特許文献10】米国特許第10,813,739号
【特許文献11】米国特許第10,588,636号
【特許文献12】米国特許第11,090,460号
【特許文献13】米国特許公開第2018/0193591号
【特許文献14】米国特許公開第2018/0250469号
【特許文献15】米国特許公開第2019/0298983号
【特許文献16】米国特許公開第2020/0038586号
【特許文献17】米国特許公開第2020-0383688号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特定の送達上の課題及び免疫抑制経路が、肝臓における免疫療法の成功を制限している可能性がある。したがって、肝臓免疫機能障害を治療するための安全且つ効果的な治療法の必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願は、治療有効量のトール様受容体(TLR)アゴニストを使用して肝臓免疫機能障害を治療する方法に関する。例えば、本出願は、構造:5'-TCG AAC GTT CGA ACG TTC GAA CGT TCG AAT-3'(配列番号1)を有する治療有効量のトール様受容体9アゴニストを、それを必要とする対象に投与する工程を含む、肝臓免疫機能障害を治療する方法を提供する。肝臓免疫機能障害は、肝臓における転移から生じる少なくとも1つの腫瘍又は少なくとも1つの原発性肝臓がんによって誘導される。
【0009】
一態様では、本出願は、肝動脈注入(HAI)によるデバイスを通してTLRアゴニストを投与する工程を含む、肝臓免疫機能障害を治療する方法に関する。別の例によれば、肝臓免疫機能障害の治療は、門脈注入(PVI)によるデバイスを通してTLRアゴニストを投与する工程を含む。例えば、TLR9アゴニストはカテーテルデバイスを通して投与することができる。カテーテルデバイスは、局所的な圧力及び/又は流量の変化に動的に応答する一方向バルブを備える。別の例では、TLR9アゴニストは、圧力有効化薬物送達(PEDD)を介するカテーテルデバイスを通して投与される。
【0010】
一部の例では、肝臓免疫機能障害は、ブドウ膜黒色腫の転移である腫瘍等の肝臓における固形腫瘍の結果によって誘導される場合があり、肝細胞癌若しくは肝内胆管癌等の少なくとも1つの原発性肝臓がんの結果によって誘導される場合もある。
【0011】
一部の例では、TLRアゴニストはPEDDを通して投与され、これにはカテーテルデバイス等のデバイスを通した治療薬の投与が含まれる。一部の例では、カテーテルデバイスは、局所的な圧力変化に動的に応答する一方向バルブを備える。一部の例では、カテーテルデバイスは、血管及び/又は標的組織若しくは腫瘍内の流体圧力の正味の上昇を発生し、引き起こし、及び/又はそれに寄与する。一部の例では、カテーテルデバイスは、血管及び/又は標的組織若しくは腫瘍内の流体圧力の正味の低下を発生し、引き起こし、及び/又はそれに寄与する。一部の例では、カテーテルデバイスは、血管及び/又は標的組織若しくは腫瘍内の流体圧力の最初に低下を、次いで上昇を発生し、引き起こし、及び/又はそれらに寄与する。
【0012】
一部の例では、TLRアゴニストは、血管圧をモジュレートするもの等の圧力有効化デバイスを通して投与される。
【0013】
一部の例では、投与されるTLRアゴニストの量は、約0.01~20mgの範囲にあるか又は2mg、4mg又は8mgからなる群から選択される。
【0014】
一部の例では、TLRアゴニストは約10~200分の期間投与される。別の実施形態では、TLRアゴニストは約10~60分の期間投与される。別の実施形態では、TLRアゴニストは約25分の期間投与される。
【0015】
一部の例では、TLR9アゴニストの投与によって、肝臓における転移内で遺伝子発現の変化がもたらされる。例えば、遺伝子発現の変化には、正常肝臓組織における免疫細胞の活性化、及び少なくとも1つの腫瘍への活性化された免疫細胞の遊走が含まれる。別の例では、遺伝子発現の変化には:TLRシグナル伝達の向上;白血球の増加;疲弊したCD8 T細胞の増加;Th1プログラミングの誘導;Th2プログラミングの低減;T細胞受容体の増加及びT細胞共刺激シグナル伝達の向上;IL9;IL15;CCL7の増加;B細胞活性化;肥満細胞の誘導;NK細胞の誘導;IFNγの誘導;インターフェロンシグナル伝達の向上;ケモカインシグナル伝達の向上;血中の増加を伴わない肝臓中のIL6の増加;M2マクロファージの低下;M1マクロファージの増加;MDSCの低下;血管新生及びVEGFの低下;並びに脂肪酸酸化の低下のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0016】
一部の例では、TLRアゴニストは、1種以上のチェックポイント阻害剤と組合せで投与される。一部の例では、チェックポイント阻害剤は、TLR9アゴニストの投与と同時に、TLR9アゴニストの投与の前又は後にいずれかで全身投与される。一部の例では、チェックポイント阻害剤には、ニボルマブ、ペンブロリズマブ及びイピリムマブのうちの少なくとも1種が含まれる。一部の例では、1種以上のチェックポイント阻害剤との組合せでのTLR9アゴニストの投与によって、循環腫瘍細胞レベル及び循環腫瘍DNAレベルのうちの一方の低下をもたらすことができる。ある特定の態様では、1種以上のチェックポイント阻害剤は腹腔内に又は皮下に投与される。
【0017】
一部の例では、TLRアゴニストの投与はサイクルを含む投薬レジメンを含む。一部の例では、サイクルのうちの1つ以上が、HAIによるカテーテルデバイスを介するTLR9アゴニストの投与、これに続いて1種以上のチェックポイント阻害剤の全身投与を含む。具体的には、チェックポイント阻害剤には、ニボルマブ、ペンブロリズマブ及びイピリムマブのうちの少なくとも1種が含まれる。
【0018】
一部の例では、肝臓への血管内デバイスを通したTLRアゴニストの投与によって、骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の低減又はMDSCの機能変化がもたらされて、免疫抑制が制限される。一部の例では、肝臓への血管内デバイスを通したTLRアゴニストの投与によって、抗腫瘍効果がもたらされる。
【0019】
一部の例では、TLRアゴニストはTLR9アゴニスト、より具体的にはクラスC TLR9アゴニストである。一部の例では、クラスC TLR9アゴニストはSD-101である。
【0020】
別の例では、本出願の方法には、肝臓免疫機能障害及び腫瘍誘発性肝臓免疫機能障害を治療するための方法が含まれ、ここで、TLR9アゴニスト、より具体的にはクラスC TLR9アゴニストの投与によって、肝転移(LM)内の遺伝子発現の以下の変化のうちの少なくとも1つがもたらされる:正常肝臓(同じ患者の非腫瘍肝臓)における免疫細胞の活性化、肝転移への遊走を伴う;末梢血免疫細胞(T、NK、B、細胞傷害性T、CD4 Th1 T、疲弊したT、マクロファージ)の活性化及び動員;TLRシグナル伝達の向上;白血球(CD45+)の増加;疲弊したCD8 T細胞の増加(チェックポイント応答性に非常に重要である);Th1プログラミングの誘導;Th2プログラミングの低減;T細胞受容体の増加及びT細胞共刺激シグナル伝達の向上;IL9、IL15、CCL7の増加;B細胞の活性化;肥満細胞の誘導;NK細胞の誘導、IFNg及び関連遺伝子の誘導;インターフェロンシグナル伝達の向上;ケモカインシグナル伝達の向上;血中の増加を伴わない肝臓中のIL6の増加;M2マクロファージの低下;M1の増加/マクロファージ及び関連遺伝子の活性化:CD68、CD86樹状細胞の活性化及び流入領域リンパ節への遊走;MDSC及び関連遺伝子:IDO1、T0D2、ARG-1、NOS2、TIMD4の低下;血管新生及びVEGFの低下;脂肪酸酸化の低下(優先されるMDSCプログラム)。
【0021】
別の例では、本出願の方法には、TLR9アゴニスト、特にクラスC TLR9アゴニストを、より具体的にはチェックポイント阻害剤と組合せで患者に投与するための方法が含まれ、ここで、チェックポイント阻害剤との組合せでのTLR9アゴニストの投与によって、循環腫瘍細胞レベル及び/又は循環腫瘍DNAレベルの低下がもたらされる。患者は、肝臓免疫機能障害及び/又は腫瘍誘発性肝臓免疫機能障害を有する場合がある。例えば、患者は、肝臓において転移性ブドウ膜黒色腫、肝細胞癌又は肝内胆管癌を有する場合がある。
【0022】
本開示の例示的な実施形態のこれら及びその他の目的、特徴及び利点は、本明細書全体と併せて考慮される場合、本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を読み解くことで明らかになるであろう。
【0023】
本開示の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示的な例を示す添付の図面と併せて考慮される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】SD-101の構造を例示する、図である。
図2A】実施例1による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導される総MDSCの量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証するインビトロ実験データを提供する、図である。
図2B】実施例1による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導されるM-MDSC及びG-MDSCの量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証するインビトロ実験データを提供する、図である。
図2C】実施例1による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導されるM1マクロファージの量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証するインビトロ実験データを提供する、図である。
図2D】実施例1による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導されるM2マクロファージの量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証するインビトロ実験データを提供する、図である。
図2E】実施例1による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導されるヒトMDSCに対する、未処理対照と比較した、TLR9アゴニストの効果を実証するインビトロ実験の画像を提供する、図である。
図3A】実施例2による、GMCSFで処理されたマウス骨髄細胞の処理によって誘導されるMDSC(CD11b+Gr-1+)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証するインビトロ実験データを提供する、図である。
図3B】実施例2による、GMCSFで処理されたマウス骨髄細胞の処理によって誘導されるマクロファージ(CD11b+F4/CD80+)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証するインビトロ実験データを提供する、図である。
図3C】実施例2による、GMCSFで処理されたマウス骨髄細胞の処理によって誘導されるM1マクロファージ(CD11b+F4/CD80+CD38+)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証するインビトロ実験データを提供する、図である。
図4】実施例3による、NanoString(登録商標)免疫細胞パネルによって測定された、2mg投薬にてのHAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの後の4週での肝転移遺伝子発現の変化を例示する、図である。
図5】実施例3による、NanoString(登録商標)骨髄パネルによって測定された、2mg投薬にてのHAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの後の4週での肝転移遺伝子発現の変化を例示する、図である。
図6】実施例3による、NanoString(登録商標)骨髄細胞パネルによって測定された、2mg投薬にてのHAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの後の4週での肝転移遺伝子発現の変化を例示する、図である。
図7】実施例3による、NanoString(登録商標)代謝性パネルによって測定された、2mg投薬にてのHAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの後の4週での肝転移遺伝子発現の変化を例示する、図である。
図8】実施例3による、NanoString(登録商標)骨髄パネルによって測定された、2mg投薬にてのHAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの後の4週での肝転移遺伝子発現の変化を例示する、図である。
図9】実施例3による、NanoString(登録商標)骨髄パネルによって測定された、2mg投薬にてのHAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの後の4週での正常な隣接肝臓組織の遺伝子発現の変化を例示する、図である。
図10】実施例3による、NanoString(登録商標)骨髄パネルによって測定された、2mg投薬にてのHAI及びPEDDをそれぞれ介するSD-101注入週に1度を3回の2サイクルにわたるPBMC遺伝子発現の変化を例示する、図である。
図11A】実施例4による、SD-101によるTLR9刺激がIL6及びGMCSFで7日間処理されたヒトPBMCからのMDSC生成を阻害すること、を実証する実験データを提供する図である。
図11B】実施例4による、SD-101によるTLR9刺激がIL6及びGMCSFで2日間処理されたヒトPBMCからのMDSC生成を阻害すること、を実証する実験データを提供する図である。
図11C】実施例4による、SD-101によるTLR9刺激がIL6及びGMCSFで7日間処理されたヒトPBMCからのM1マクロファージ産生を向上させること、を実証する実験データを提供する図である。
図11D】実施例4による、SD-101によるTLR9刺激がIL6及びGMCSFで2日間処理されたヒトPBMCからのM1マクロファージ産生を向上させること、を実証する実験データを提供する図である。
図12A】実施例5による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導されるMDSC(CD33+CD11b+HLADR-)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証する実験データを提供する図である。
図12B】実施例5による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導されるM1マクロファージ(CD14+CD86+)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証する実験データを提供する図である。
図12C】実施例5による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導されるM/G-MDSC(M/G CD14+/CD15+MDSC)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証する実験データを提供する図である。
図12D】実施例5による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導される単球性樹状細胞(CD14+CD11c+CD123-)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証する実験データを提供する図である。
図12E】実施例5による、マウスGMCSFの非存在下で処理されたマウス骨髄(BM)からのマウス骨髄MDSCの量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証する実験データを提供する図である。
図12F】実施例5による、マウスGMCSFの存在下で処理されたマウス骨髄(BM)からのマウス骨髄MDSCの量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証する実験データを提供する図である。
図13A】実施例6による、NanoString(登録商標)mRNA解析を使用して決定した、2日間TLR9Bアゴニストで処理した 対 SD-101(TLR9Cアゴニスト)で処理した、後のヒトPBMCの遺伝子発現を例示するボルケーノプロットを示す、図である。
図13B】実施例6による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導されるMDSC(CD33+CD11b+HLADR-)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証する実験データを提供する図である。
図13C】実施例6による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGMCSFで処理されたヒトPBMCの処理によって誘導されるM1マクロファージ(CD14+CD86+)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を実証する実験データを提供する図である。
図13D図13AのNanoString(登録商標)解析から作成したデータを使用してnSolver.4ソフトウェアにより決定した、TLR9Bによって 対 SD-101によって、影響を受ける免疫調節経路のパスウェイスコアを示す、図である。
図13E図13Aで解析したのと同じ試料のPD-L1発現に関するqRT-PCRデータを示す、図である。
図13F図13Aで解析したのと同じ試料のIFNγ発現に関するqRT-PCRデータを示す、図である。
図13G図13Aで解析したのと同じ試料のIP-10発現に関するqRT-PCRデータを示す、図である。
図14】実施例7による、2サイクルにわたって投与された6回用量のそれぞれの後における、ヒト患者への単剤SD-101 4mg投薬を受けての血漿SD-101レベルの変化を例示する、図である。
図15】実施例7による、第1のサイクルにわたって投与された3回用量のそれぞれの後における、ヒト患者への単剤SD-101及びチェックポイント阻害剤と組合せでのSD-101の投薬レベルの上昇を受けての、血清IFNγの変化を例示する、図である。
図16】実施例7による、ヒト患者への単剤SD-101の異なる投薬レベルを受けての腫瘍内単球性MDSCレベルの変化を例示する、図である。
図17】実施例7による、ヒト患者へのチェックポイント阻害剤とともにSD-101 2mg投薬を受けての循環腫瘍細胞の変化を例示する、図である。
図18】実施例7による、図17のヒト患者のうちの5名へのチェックポイント阻害剤とともにSD-101 2mg投薬を受けての循環腫瘍DNAの変化を例示する、図である。
図19A】実施例8による、ビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答したマウス肝転移の腫瘍進行の変化を例示する、図である。
図19B】実施例8による、治療後10日目にてのビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答したマウス肝転移の腫瘍負荷の変化を例示する、図である。
図19C】実施例8による、ビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与による治療を開始した後の、様々な時点にわたってIVISによる取込み画像を例示する、図である。
図19D】実施例8による、ビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与による治療の10日後に回収された肝臓の取込み画像を提供する、図である。
図20A】実施例8による、治療後10日目にビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答したLM中に存在するMDSCの変化を、例示する図である。
図20B】実施例8による、治療後10日目にビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答した、肝転移からの分離されたCD45+細胞のうちのB(B220+)細胞の変化を例示する、図である。
図20C】実施例8による、治療後10日目にビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答した、肝転移からの分離されたCD45+細胞のうちのT(CD3+)細胞の変化を例示する、図である。
図20D】肝転移からの分離されたCD45+細胞のうちのM1マクロファージ及びM2マクロファージの変化を例示する、図である。実施例8による、治療後10日目にビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答した、FCによって定量化された腫瘍微小環境中のM1(F4/80+CD38+Egr2-)マクロファージ及びM2(F4/80+CD38-Egr2+)マクロファージ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面全体を通して、特に明記しない限り、同じ参照番号及び文字は、例示された実施形態の同様の特徴、要素、成分、又は部分を示すために使用される。更に、本開示を、図を参照して次に詳細に説明するが、それは例示的な実施形態に関連してそのように行われるものであり、図及び添付のパラグラフに例示される特定の実施形態によって制限されるものではない。
【0026】
実施形態に関する以下の説明では、本発明の様々な態様の特徴及び教示を特に説明するために数字を参照する非限定的な代表例を提供する。説明される実施形態は、当該実施形態の説明から、他の実施形態と別個に、又は組合せで実装することができると認識されたい。実施形態の説明を検討する当業者であれば、本発明の様々な説明された態様を理解することができるはずである。実施形態の説明は、具体的にはカバーされていないが、実施形態の説明を読んだ当業者の知識の範囲内にある他の実装が、本発明の適用と一致すると理解される程度に、本発明の理解を円滑にするはずである。
【0027】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用されるある特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。本明細書に引用される全ての特許、公開された特許出願及び刊行物は、あたかも本明細書に完全に記載されているように参照により組み込まれる。
【0028】
単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかに示されていない限り、複数の指示対象物を含む。
【0029】
特に明記されていない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲等のあらゆる数値は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。当該数値は、記載されている値の±1%、±2%、±3%、± 4%又は±5%を含むことができる。本明細書で使用される場合、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、そのような範囲内の整数及び当該値の少数を含めて、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0030】
本明細書で使用される「対象」又は「患者」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。対象の例としてはヒトが挙げられ、同様に、ラット、マウス、及びブタ等の他の動物も挙げることができる。特定の一態様では、対象はヒトである。
【0031】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」及び「治療(treatment)」という各用語は全て、疾患、障害又は状態に関連する少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善又は逆転を指すことを意図する。「治療する」、「治療する」及び「治療」という各用語はまた、疾患、障害又は状態の退縮を引き起こすこと、それらの進行を防止すること、又はそれらの進行を少なくとも遅らせることを指すこともできる。特定の例では、「治療する」、「治療する」及び「治療」とは、疾患、障害又は状態の再発の防止を指す。別の例では、「治療する」、「治療する」及び「治療」とは、疾患、障害又は状態を有する対象の生存率の向上を指す。特定の例では、「治療する」、「治療する」及び「治療」とは、対象における疾患、障害又は状態の解消を指す。
【0032】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、組織系、動物又はヒトにおいて所望の生物学的又は医学的応答を惹起する活性化合物又は医薬品の量を指し、こういった応答には、治療される疾患、障害若しくは状態の1つ以上のバイオマーカーの改善又は治療される疾患、障害若しくは状態の1つ以上の状態の重症度の軽減、例えば、患者における腫瘍の発達及び転移の遅延が含まれる。
【0033】
本明細書において使用される「アゴニスト」という用語は、受容体に結合し、次いで受容体を向上させる、亢進する、感作させる又はアップレギュレーションする化合物を指す。
【0034】
本明細書において使用される「アンタゴニスト」という用語は、受容体に結合し、アゴニストへの受容体応答をブロックする又は減衰させる化合物を指す。
【0035】
「薬学的に許容される塩」という用語は、非毒性であることが知られており且つ製薬分野で一般的に使用される、化合物の塩を指す。一部の例では、化合物の薬学的に許容される塩は、その生物学的有効性を保持し、生物学的にも又はその他の面でも望ましくないことはないものである。
【0036】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」とは、非毒性であり、生物学的に忍容性であり且つ他の面で対象に投与するのに生物学的に適している物質、例えば薬理学的組成物に添加されるかそれとも活性化合物若しく医薬品の投与を容易にするためにビヒクル、担体若しくは希釈剤として使用される不活性な物質、そして活性化合物又は医薬品と適合する物質を指す。
【0037】
トール様受容体アゴニスト
トール様受容体は、微生物病原体関連分子パターン(PAMP)を検出することができるパターン認識受容体である。TLR9刺激等のTLR刺激は、広範な先天性免疫刺激をもたらすことができるだけでなく、肝臓における免疫抑制のドミナントドライバーに特異的に対処することもできる。TLR1-10は、ヒトにおいて発現され、多様な微生物PAMPを認識する。これに関して、TLR9は、微生物DNAを含めて、非メチル化CpG-DNAに応答することができる。CpGとは、シトシン及びグアニンジヌクレオチドのモチーフを指す。TLR9は、B細胞、形質細胞様樹状細胞(pDC)、活性化好中球、単球/マクロファージ、T細胞及びMDSCにおいて構成的に発現される。更に、ヒトMDSCは、その表面上にTLR9を発現する。更に、TLR9及び関連するエンドソームタンパク質TLR7はヒトの肝転移組織で発現される。TLR9はまた、ケラチノサイト及び腸、頸部及び呼吸器の上皮細胞を含めて、非免疫細胞においても発現される。TLR9は、エンドソーム内のそのアゴニストに結合することができる。シグナル伝達は、MYD88/IkB/NfκBを通して行われて、炎症誘発性サイトカイン遺伝子発現を誘導することができる。IRF7を通した平行シグナル伝達経路は、適応免疫応答を刺激する1型及び2型インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-γ等)を誘導する。更に、TLR9アゴニストは、サイトカイン及びIFNの産生、並びに抗原提示樹状細胞の機能的成熟を誘導することができる。
【0038】
一例によれば、TLR9アゴニストは、MDSCを低減し、再プログラムすることができる。これに関して、MDSCを低減させること、変化させること又は排除することは、がんを攻撃する宿主の免疫系の能力、並びにより有益な治療応答を誘導する免疫療法の能力を改善すると思われる。一例では、TLR9アゴニストは、MDSCを免疫刺激性M1マクロファージに変換して、未成熟樹状細胞を成熟樹状細胞に変換して且つエフェクターT細胞を増殖させて、抗腫瘍活性を促進する応答性腫瘍微小環境を創り出すことができる。
【0039】
一例によれば、微生物CpG-DNAの免疫刺激性質を模倣する合成CpG-オリゴヌクレオチド(CPG-ON)を、治療用途向けに開発することができる。一例によれば、オリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である。いくつかの異なるCpG-ODNクラスタイプ、例えば、クラスA、クラスB、クラスC、クラスP及びクラスSがあり、それらは、ある特定の構造的及び機能的特徴を共有する。これに関して、クラスAタイプCPG-ODN(又はCPG-A ODN)は、B細胞並びに最高度のIFNα誘導に対してほとんど影響がないという状況でpDC成熟と関連する; クラスBタイプCPG-ODN(又はCPG-B ODN)は、B細胞増殖を強く誘導し、pDC及び単球成熟、NK細胞活性化、並びに炎症性サイトカイン産生を活性化する;クラスCタイプCPG-ODN(又はCPG-C ODN)は、B細胞増殖及びIFN-α産生を誘導することができる。
【0040】
更に、一例によれば、CPG-C ODNは、以下の属性:(i)非メチル化ジヌクレオチドCpGモチーフ、(ii)隣接ヌクレオチドと並置されたCpGモチーフ(例えば、AACGTTCGAA)、(iii)ヌクレオチドを連結する完全なホスホロチオエート(PS)骨格(細菌DNAに見出される天然ホスホジエステル(PO)骨格とは対照的に)、及び(iv)自己相補性回文配列(例えば、AACGTT)と関連付けることができる。これに関して、CPG-C ODNは、その回文性の性質に起因してそれ自身を結合し、それによって二本鎖のデュプレックス(例えば二量体)又はヘアピン構造を作り出すことができる。
【0041】
更に、一例によれば、CPG-C ODNは、5'-Tがオリゴヌクレオチドの5'末端から0、1、2、又は3塩基に位置する1つ以上の5'-TCGトリヌクレオチドと、1つ以上の非メチル化CGジヌクレオチドを含む少なくとも8塩基の長さの少なくとも1つの回文配列とを含むことができる。1つ以上の5'-TCGトリヌクレオチド配列は、回文配列の5'末端から0、1又は2塩基だけ隔てられていてもよく、又は回文配列は、1つ以上の5'-TCGトリヌクレオチド配列の全て又は一部を含有してもよい。一例では、CpG-C ODNは、12~100塩基長、好ましくは12~50塩基長、好ましくは12~40塩基長、又は好ましくは12~30塩基長である。一例では、CpG-C ODNは、30塩基長である。一例では、ODNは、少なくとも(下限)12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、50、60、70、80、又は90塩基長である。一例では、ODNは、最大で(上限)100、90、80、70、60、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、又は30塩基長である。
【0042】
一例では、少なくとも1つの回文配列は、8~97塩基長、好ましくは8~50塩基長、又は好ましくは8~32塩基長である。特定の例では、少なくとも1つの回文配列は、8塩基長である。一例では、少なくとも1つの回文配列は、少なくとも(下限)8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、又は30塩基長である。一例では、少なくとも1つの回文配列は、最大で(上限)50、48、46、44、42、40、38、36、34、32、30、28、26、24、22、20、18、16、14、12、又は10塩基長である。
【0043】
一例では、CpG-C ODNは、下に指示するように、配列番号1の配列を含むことができる。
【0044】
一例によれば、CpG-C ODNは、SD-101又はその薬学的に許容される塩を含むことができる。SD-101は、30merのホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドであり、以下の配列:
5'-TCG AAC GTT CGA ACG TTC GAA CGT TCG AAT-3'(配列番号1)
を有し、
ここで、30mer配列全体はホスホロチオエート結合によって連結されている。SD-101は遊離酸の形態であってもよい。特に、SD-101原体はナトリウム塩として分離される。SD-101のナトリウム塩の構造を図1に例示する。
【0045】
SD-101遊離酸の分子式は、C293 H369 N112 O149 P29 S29であり、遊離酸形態のSD-101の分子量は、9672ダルトンである。SD-101のナトリウム塩の分子式は、図1に示すように、C293 H340 N112 O149 P29 S29 Na29であり、SD-101のナトリウム塩の分子量は、10,309ダルトンである。
【0046】
更に、一例によれば、CPG-C ODN配列は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,422,564号に記載される配列番号172に相当することができる。
【0047】
一例では、CpG-C ODNは、配列番号1等の前述のうちのいずれかと少なくとも75%の相同性を有する配列を含むことができる。
【0048】
別の例によれば、CPG-C ODN配列は、米国特許第9,422,564号に記載される他の配列のうちのいずれか1つに相当することができる。更に、CPG-C ODN配列はまた、同様にその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,372,413号に記載される配列のうちのいずれかに相当することができる。
【0049】
一例によれば、本明細書で論議のCPG-C ODNのうちのいずれもが、それらの薬学的に許容される塩形態で存在することができる。CPG-C ODNのうちのいずれもの適切な薬学的に許容される塩には、有機塩基及び無機塩基が含まれうる。例示的塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、亜鉛塩、N-Me-D-グルカミン、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、コリン、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、t-ブチルアミン等の有機塩基(例えば、有機アミン)を有する塩、並びにアルギニン、リジン等のアミノ酸を有する塩が挙げられる。一例では、CpG-C ODNは、アンモニウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩又はカリウム塩の形態である。好ましい一例では、CpG-C ODNはナトリウム塩形態である。CpG-C ODNは、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む水剤で提供されてもよい。代替的に、CpG-C ODNは凍結乾燥固形物として提供されてもよく、この凍結乾燥固形物は、次いで、投与前に滅菌水、生理食塩水又は薬学的に許容される緩衝液中で再構成される。
【0050】
本開示の薬学的に許容される賦形剤としては、例を挙げると、溶媒、増量剤、緩衝剤、等張調整剤及び防腐剤が挙げられる。一例では、医薬組成物は、溶媒、増量剤、緩衝剤及び等張調整剤のうちの1つ以上として機能する賦形剤を含むことができる(例えば、生理食塩水中の塩化ナトリウムは、水性ビヒクル及び等張調整剤の両方として働くことができる)。本開示の医薬組成物は、非経口及び/又は経皮投与に適切である。
【0051】
一例では、医薬組成物は、溶媒としての水性ビヒクルを含む。適切なビヒクルとしては、例を挙げると、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水及びリンゲル溶液が挙げられる。一例では、本組成物は等張である。
【0052】
医薬組成物は、増量剤を含むことができる。増量剤は、医薬組成物が投与前に凍結乾燥される予定である場合に特に有用である。一例では、増量剤は、凍結乾燥若しくは噴霧乾燥過程及び/又は保管過程での活性剤の分解の安定化及び防止を補助する保護剤である。適切な増量剤は、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビタール、グルコース及びラフィノース等の糖類(単糖類、二糖類及び多糖類)である。
【0053】
医薬組成物は緩衝剤を含むことができる。緩衝剤は、pHを制御して、プロセシング、保管及び必要に応じて再構成過程での活性剤の分解を阻害する。適切な緩衝液としては、例を挙げると、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩又は硫酸塩を含む塩が挙げられる。その他の適切な緩衝剤としては、例を挙げると、アルギニン、グリシン、ヒスチジン及びリジン等のアミノ酸が挙げられる。緩衝剤は、塩酸又は水酸化ナトリウムを更に含むことができる。一部の例では、緩衝剤は組成物のpHを4~9の範囲内に維持する。一例では、pHは(下限)4、5、6、7又は8よりも大きい。一部の例では、pHは(上限)9、8、7、6又は5未満である。すなわち、pHは、上記下限が上記上限未満である約4から9までの範囲にある。
【0054】
医薬組成物は等張調整剤を含むことができる。適切な等張調整剤としては、例を挙げると、デキストロース、グリセロール、塩化ナトリウム、グリセリン及びマンニトールが挙げられる。
【0055】
医薬組成物は、防腐剤を含むことができる。適切な防腐剤としては、例を挙げると、抗酸化剤及び抗菌剤が挙げられる。しかし、一例では、医薬組成物は、滅菌条件下で調製され、単回使用容器内にあり、したがって、防腐剤の含有を必要としない。
【0056】
Table 1(表1)に、SD-101医薬品 - 16g/Lの例示的処方量を記載する:
【0057】
【表1】
【0058】
一部の例では、単位用量力価は、約0.1mg/mLから約20mg/mLまでを含むことができる。一例では、SD-101の単位用量力価は13.4mg/mLである。
【0059】
CpG-C ODNは修飾を含有することができる。適切な修飾には、それらに限定されないが、3'OH基又は5'OH基の修飾、ヌクレオチド塩基の修飾、糖成分の修飾、及びリン酸基の修飾が含まれうる。修飾塩基は、当該修飾塩基が、ワトソン-クリック塩基対合を通してその天然相補体に対して同じ特異性を維持する限り、回文配列に含めることができる(例えば、CpG-C ODNの回文部分は自己相補性のままである)。5'OH基の修飾の例としては、ビオチン、シアニン5.5、シアニンファミリーの色素、Alexa Fluor 660、Alexa Fluorファミリーの色素、IRDye 700、IRDye 800、IRDye 800CW、及びIRDyeファミリーの色素を挙げることができる。
【0060】
CpG-C ODNは、直鎖状であってもよく、環状であってもよく環状部分及び/又はヘアピンループを含んでもよい。CpG-C ODNは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。CpG-C ODNは、DNAであってもRNAであってもDNA/RNAハイブリッドであってもよい。
【0061】
CpG-C ODNは、天然に存在する塩基又は修飾され天然に存在しない塩基を含有してもよく、修飾された糖、リン酸塩及び/又は終端を含有してもよい。例えば、ホスホジエステルリンケージに加えて、ホスフェート修飾には、それらに限定されないが、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホラミデート(架橋又は非架橋)、ホスホトリエステル及びホスホロジチオエートが含まれるが、ホスフェート修飾は任意の組合せで使用することができる。一例では、CpG-C ODNは、ホスホロチオエートリンケージのみ、ホスホジエステルリンケージのみ、又はホスホジエステルリンケージとホスホロチオエートリンケージの組合せを有する。
【0062】
2'-アルコキシ-RNAアナログ、2'-アミノ-RNAアナログ、2'-フルオロ-DNA、及び2'-アルコキシ-又はアミノ-RNA/DNAキメラ及び本明細書に記載のその他のもの等の、当分野で既知の糖修飾も同様に作製することができ且つ任意のリン酸修飾と組み合わせることができる。塩基修飾の例としては、それらに限定されないが、CpG-C ODNのシトシン(例えば、5-ブロモシトシン、5-クロロシトシン、5-フルオロシトシン、5-ヨードシトシン)のC-5及び/又はC-6への電子求引性部分、並びにCpG-C ODNのウラシル(例えば、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、5-ヨードウラシル)のC-5及び/又はC-6への電子求引性部分の添加が挙げられる。上記のように、CpG-C ODNの回文配列において塩基修飾を使用することで、ワトソン-クリック塩基対合に関与する塩基の自己相補性が妨げられることがあってはならない。しかし、回文配列の外では、修飾塩基は、こういった制限なしで使用することができる。例を挙げると、2'-O-メチル-ウリジン及び2'-O-メチル-シチジンは、回文配列の外側で使用することができ、一方、5-ブロモ-2'-デオキシシチジンは、回文配列の内側と外側の両方で使用することができる。回文配列の内側及び外側の両方で用いることができる他の修飾ヌクレオチドには、7-デアザ-8-アザ-dG、2-アミノ-dA、及び2-チオ-dTが含まれる。
【0063】
ほとんどのODNのデュプレックス(すなわち、二本鎖)形態及びヘアピン形態は多くの場合動的平衡状態にあるが、ヘアピン形態が低オリゴヌクレオチド濃度及び高温で一般には有利である。共有結合の鎖間又は鎖内の架橋は、それぞれ、熱誘導性、イオン誘導性、pH誘導性及び濃度誘導性の構造変化に対してデュプレックス又はヘアピンの安定性を高める。化学的架橋を、物理化学的及び生物学的特性評価に向けてポリヌクレオチドをデュプレックス形態又はヘアピン形態のいずれかへとロックするために、使用することができる。構造的に均質であり且つその最も活性な形態(デュプレックス形態又はヘアピン形態のいずれか)で「ロック」されている架橋ODNは、その架橋されていない対応物よりも潜在的に活性である可能性がある。したがって、本開示の一部のCpG-C ODNは、共有結合の鎖間及び/又は鎖内の架橋を含有する場合がある。
【0064】
ポリヌクレオチド及び修飾ポリヌクレオチドを作製するための技法は、当技術分野において既知である。ホスホジエステルリンケージを含有する天然に存在するDNA又はRNAは、一般に、適当なヌクレオシドホスホラミダイトを3'末端で固体支持体に付着された伸びつつあるODNの5'ヒドロキシ基に順次カップリングさせ、これに続いて中間体ホスファイトトリエステルをリン酸トリエステルへと酸化することによって、合成することができる。この方法を使用して、所望のポリヌクレオチド配列が合成されると、当該ポリヌクレオチドは支持体から取り外され、リン酸トリエステル基がリン酸ジエステルに脱保護され、ヌクレオシド塩基は水性アンモニア又は他の塩基を使用して脱保護される。
【0065】
CpG-C ODNは、リン酸修飾オリゴヌクレオチドを含有することができ、そのうちの一部がODNを安定化すると知られている。したがって、一部の例は、安定化CpG-C ODNを含む。ODN中の糖部分又は糖アナログの部分に付着させることができるリン誘導体(又は修飾リン酸基)は、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミデート等とすることができる。
【0066】
CpG-C ODNは、1つ以上のリボヌクレオチド(唯一又は主糖成分としてリボースを含有する)、デオキシリボヌクレオチド(主糖成分としてデオキシリボースを含有する)、修飾糖又は糖アナログを含むことができる。したがって、リボース及びデオキシリボースに加えて、糖部分は、ペントース、デオキシペントース、ヘキソース、デオキシヘキソース、グルコース、アラビノース、キシロース、リキソース、及び糖アナログシクロペンチル基とすることができる。糖はピラノシル形態であってもフラノシル形態であってもよい。CpG-Cオリゴヌクレオチドにおいて、糖部分は、リボース、デオキシリボース、アラビノース又は2'-O-アルキルリボースのフラノシドであることが好ましく、糖は、いずれかのアノマー配置でそれぞれの複素環式塩基に付着させることができる。これらの糖又は糖アナログの調製、及びそのような糖又はアナログが複素環式塩基(核酸塩基)自体に付着されているそれぞれのヌクレオシドの調製は既知であり、したがって、本明細書に記載する必要はない。糖修飾を同様に、CpG-C ODNの調製において作製し任意のリン酸修飾と組み合わせてもよい。
【0067】
CpG-C ODNに組み込まれる複素環式塩基又は核酸塩基は、天然に存在する主プリン塩基及び主ピリミジン塩基(すなわち、上述のウラシル、チミン、シトシン、アデニン及びグアニン)、並びに前記主塩基の天然に存在する修飾及び合成修飾とすることができる。したがって、CpG-C ODNには、イノシン、2'-デオキシウリジン及び2-アミノ-2'-デオキシアデノシンのうちの1つ以上が含まれうる。
【0068】
別の例によれば、CPG-ODNは、クラスAタイプのCPG-ODN(CPGP-A ODN)、クラスBタイプのCPG-ODN(CPG-B ODN)、クラスPタイプのCPG-ODN(CPG-P ODN)、及びクラスSタイプのCPG-ODN(CPG-S ODN)のうちの1つである。これに関して、CPG-A ODNはCMP-001とすることができる。
【0069】
別の例では、CPG-ODNは、チルソトリモド(IMO-2125)とすることができる。
【0070】
チェックポイント阻害剤
一例によれば、本出願のTLRアゴニストは、チェックポイント阻害剤(CPI)と組合せで使用することができる。CPIには、プログラム死1受容体(PD-1)アンタゴニストが含まれうる。PD-1アンタゴニストとは、免疫細胞(T細胞、B細胞又はNKT細胞)上で発現するPD-1へのがん細胞上で発現するプログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)の結合をブロックし、好ましくは、同様に、免疫細胞発現PD-1へのがん細胞上で発現するプログラム細胞死1リガンド2(PD-L2)の結合もブロックする、任意の化合物又は生物学的分子とすることができる。PD-1及びそのリガンドの別名又は同義語には:PD-1についてはPDCD1、PD1、CD279及びSLEB2;PD-L1についてはPDCD1L1、PDL1、B7H1、B7-4、CD274及びB7-H;並びにPD-L2についてはPDCD1L2、PDL2、B7-DC、Btdc及びCD273が含まれる。ヒト個体が治療されているような本出願の治療方法、医薬及び使用のうちのいずれにおいても、PD-1アンタゴニストは、ヒトPD-1へのヒトPD-L1の結合をブロックし、好ましくは、ヒトPD-1へのヒトPD-L1とPD-L2の両方の結合をブロックする。
【0071】
一例によれば、PD-1アンタゴニストには、PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、好ましくはヒトPD-1又はヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)、又はその抗原結合断片が含まれうる。mAbは、ヒト抗体であってもヒト化抗体であってもキメラ抗体であってもよく、ヒト定常領域を含むことができる。一部の例では、ヒト定常領域は、IgGl、IgG2、IgG3及びIgG4の各定常領域からなる群から選択され、好ましい例では、ヒト定常領域は、IgG1又はIgG4の定常領域である。一部の例では、抗原結合断片は、Fab、Fab'-SH、F(ab')2、scFv及びFvの各断片からなる群から選択される。
【0072】
一例によれば、PD-1アンタゴニストには、PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、好ましくはヒトPD-1又はヒトPD-L1に特異的に結合するイムノアドヘシン、例えば、免疫グロブリン分子のFc領域等の定常領域に融合された、PD-L1又はPD-L2の細胞外部分又はPD-1結合部分を含有する融合タンパク質が含まれうる。
【0073】
一例によれば、PD-1アンタゴニストは、腫瘍細胞及びMDSC、並びにその他の抑制性免疫細胞によって発現されるPD-L1をブロックすることができる。
【0074】
一例によれば、PD-1アンタゴニストは、PD-1へのPD-L1の結合を阻害することができ、好ましくはPD-1へのPD-L2の結合も阻害する。上記の治療方法、医薬及び使用の一部の例では、PD-1アンタゴニストは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、PD-1へのPD-L1の結合をブロックするモノクローナル抗体、又はその抗原結合断片である。一例では、PD-1アンタゴニストは、重鎖及び軽鎖を含む抗PD-1抗体である。
【0075】
一例によれば、PD-1アンタゴニストは、ニボルマブ、ペムブロリズマブ及びセミプリマブのうちの1つとすることができる。別の例によれば、ニボルマブは、4週間毎(「Q4W」)に480mgの用量又は2週間毎(「Q2W」)に240mgの用量で末梢静脈を介して静脈内(IV)に投与される。別の例によれば、ニボルマブは、3週間毎(「Q3W」)にニボルマブ360mgの用量で末梢静脈を介して静脈内(IV)に投与される。別の例では、ニボルマブ投薬は、ニボルマブ3mg/kg Q2W又は10mg/kg Q2Wにての、体重ベースである。別の例では、ニボルマブ投薬は、ニボルマブ1mg/kg Q3Wにての、体重ベースである。更に別の例では、ニボルマブは、SD-101と同時に、同じ時間に、ほぼ同じ時間に、又は同日に投与される。別の例では、ニボルマブは、SD-101の1つ以上のサイクルの投与を受けて、週に1回、隔週に1回、3週間に1回、4週間に1回、又は月毎に1回を原則に投与される。SD-101の投与の「サイクル」については、下で更に説明する。
【0076】
別の例によれば、ペムブロリズマブは200mg Q3W又は6週間毎(「Q6W」)に400mgの用量で末梢静脈を介して静脈内に(IV)投与される。別の例では、ペムブロリズマブは、SD-101と同時に、同じ時間に、ほぼ同じ時間に、又は同日に投与される。
【0077】
別の例によれば、CPIには、PD-L1アンタゴニストが含まれうる。これに関して、PD-L1アンタゴニストは、アテゾリズマブ、アベルマブ及びデュルバルマブのうちの1つとすることができる。
【0078】
別の例によれば、CPIには、CTLA-4アンタゴニストが含まれうる。これに関して、CTLA-4アンタゴニストはイピリムマブとすることができる。別の例によれば、イピリムマブは、3週間毎に3mg/kgの用量で末梢静脈を介して静脈内(IV)に投与される。更に別の例では、イピリムマブは、SD-101及び/又はニボルマブと同時に、同じ時間に、ほぼ同じ時間に、又は同日に投与される。別の例では、イピリムマブは、SD-101及び/又はニボルマブの1つ以上のサイクルの投与を受けて、週に1回、隔週に1回、3週間に1回、4週間に1回、又は月毎に1回を原則に投与される。
【0079】
局所送達を行うデバイス
一例によれば、TLRアゴニストのいずれもが、単独で又はCPIと組合せで、任意のデバイスであって、カテーテル自体を含めて腫瘍への局所送達を行うのに有用な任意のデバイスを使用して、又は、カテーテルと組合せで使用することができる他の構成要素(例えば、フィルターバルブ、バルーン、圧力センサシステム、ポンプシステム、注射器、外側送達カテーテル、植込み式の部分等)とともに上記カテーテルを含むことができる任意のデバイスを使用して、投与することができる。ある特定の例では、カテーテルはマイクロカテーテルである。
【0080】
一部の例では、デバイスは、それらに限定されないが、以下が含まれる1つ以上の属性を有することができる:血管の下流分岐網において療法に関して均一な分布をもたらすことができるセルフセンタリング機能; 注入用医薬組成物、例えばTLRアゴニストを含む注入用医薬液の逆流をブロック又は抑制することができる逆流防止性能(例えば、バルブ及びフィルター及び/又はバルーンの使用による);血管内部の圧力を測定するシステム;並びに、配置時及びTLRアゴニスト注入過程での圧力低下と生理食塩水ボーラス過程又はTLRアゴニストのボーラス注入過程での圧力上昇とを引き起こすことによる等の、血管内部の圧力をモジュレートする手段又はメカニズム(例えば、局所的な圧力変化に動的に応答する一方向バルブ、間欠的に閉塞するバルブ、及び/又は多孔質バルーン)。一部の例では、システムは、手順全体を通してリアルタイムの圧力又は流れを継続的にモニタリングするように設計されている。一例では、圧力をモジュレートするためのメカニズムは、血管及び/又は標的組織若しくは腫瘍内の流体圧力の正味の上昇を発生し、引き起こし、及び/又はそれに寄与する。特定の一例では、圧力をモジュレートするためのメカニズムは、標的位置で局所血管圧力を上昇させることができ、特に、上昇した圧力はベースライン動脈圧よりも大きい。圧力をモジュレートするためのメカニズムは、心拍周期と同期して動作することができ及び/又は順行性の流れを促進することができる。一部の例では、圧力をモジュレートするためのメカニズムは、血管及び/又は標的組織若しくは腫瘍内の流体圧力の正味の低下を発生し、引き起こし、及び/又はそれに寄与する。一部の例では、圧力をモジュレートするためのメカニズムは、血管及び/又は標的組織若しくは腫瘍内の流体圧力の最初に低下を、次いで上昇を発生し、引き起こし、及び/又はそれらに寄与する。
【0081】
一部の例では、本出願の方法を実施するのに使用することができるデバイスは、米国特許第8,500,775号、米国特許第8,696,698号、米国特許第8,696,699号、米国特許第9,539,081号、米国特許第9,808,332号、米国特許第9,770,319号、米国特許第9,968,740号、米国特許第10,813,739号、米国特許第10,588,636号、米国特許第11,090,460号、米国特許公開第2018/0193591号、米国特許公開第2018/0250469号、米国特許公開第2019/0298983号、米国特許公開第2020/0038586号、及び米国特許公開第2020-0383688号に開示されるデバイスであり、これらは全て、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0082】
一部の例では、デバイスは、米国特許第9,770,319号に開示されるデバイスである。ある特定の例では、デバイスは、Surefire Infusion Systemとして既知のデバイスとすることができる。
【0083】
一部の例では、デバイスは、使用過程での血管内圧の測定を支援する。一部の例では、デバイスは、米国特許公開第2020-0383688号に開示されるデバイスである。ある特定の例では、デバイスは、TriSalus Infusion Systemとして既知のデバイスとすることができる。ある特定の例では、デバイスは、TriNav(登録商標) Infusion Systemとして既知のデバイスとすることができる。TriNav(登録商標)は、心拍周期から生じるもの又は注入によって発生するもの等の局所的な圧力及び流量の変化に動的に応答する一方向バルブを備えた単腔カテーテルである。バルブ構造によって、遠位血管圧及び血流がモジュレートされる。これにより、次いで、血管系内での接触時間が延長することに起因して、治療薬の分布及び初回通過吸収を変化させることができる。
【0084】
一部の例では、TLRアゴニストは、PEDDを介するデバイスを通して投与することができる。一部の例では、TLRアゴニストは、血管内の圧力をモニタリングしながら投与することができ、このモニタリングを使用して、注入部位でデバイスの位置を調整及び修正することができ、並びに/又は注入速度を調整することができる。圧力は、例えば、1つ以上の圧力センサを備える圧力センサシステムによってモニタリングすることができる。
【0085】
注入速度は、血管圧力又は流れを変化させるように調整することができ、このことは、標的組織若しくは腫瘍への又はその表面にてのTLRアゴニストの浸透及び/又は結合を促進することができる。一部の例では、注入速度は、送達システムの一部としてシリンジポンプを使用して又は他の任意の方法(例えば、注入流量調節デバイス)によって調整及び/又は制御することができる。一部の例では、注入速度は、ポンプシステムを使用して調整及び/又は制御することができる。一部の例では、ポンプシステムを使用する注入速度は、約0.1cc/分~約40cc/分、又は約0.1cc/分~約30cc/分、又は約0.5cc/分~約25cc/分、又は約0.5cc/分~約20cc/分、又は約1cc/分~約15cc/分、又は約1cc/分~約10cc/分、又は約1cc/分~約8cc/分、又は約1cc/分~約5cc/分とすることができる。更に、ボーラス注入を使用する注入速度は、約30cc/分~約360cc/分、又は約120cc/分~約240cc/分とすることができる。一例では、SD-101注入手順は概10~200分間続ける。別の例では、SD-101注入手順は概10~60分間続ける。別の例では、SD-101注入手順は概25分間続ける。
【0086】
肝臓への投与を含む方法
一例では、本出願の方法には、肝臓免疫機能障害を治療する方法が含まれ、前記方法は、それを必要とする患者にトール様受容体(TLR)アゴニストを投与する工程を含み、ここで、TLRアゴニストは、HAIによるデバイスを通して肝臓に投与される。HAIとは、肝臓の肝動脈又は肝動脈の分枝への治療の注入を指す。一実施形態によれば、TLRアゴニスト又はアゴニスト類は、カテーテル及び/又は圧力有効化送達を容易にするデバイス等の、肝動脈又は門脈の分枝へのデバイスの経皮的導入を通して導入される。一例によれば、TLRアゴニストはTLR9アゴニスト、より具体的にはクラスC TLR9アゴニストであり、一部の例では、クラスC TLR9アゴニストはSD-101である。一例では、患者はヒト患者である。
【0087】
別の例によれば、本出願の方法には、肝臓免疫機能障害及び腫瘍誘発性免疫機能障害を治療する方法が含まれ、前記方法は、それを必要とする患者にトール様受容体アゴニストを投与する工程を含み、ここで、トール様受容体アゴニストは、PVIによるデバイスを通して肝臓に投与される。PVIとは、肝門脈系への治療の注入を指す。一例によれば、トール様受容体アゴニスト又はアゴニスト類は、カテーテル及び/又は圧力有効化送達を容易にするデバイス等の、肝門脈系の分枝へのデバイスの経皮的導入を通して導入される。一例によれば、TLRアゴニストはTLR9アゴニスト、より具体的にはクラスC TLR9アゴニストであり、一部の例では、クラスC TLR9アゴニストはSD-101である。一例では、患者はヒト患者である。別の例によれば、本方法には、男性又は女性であり且つ18歳以上である対象者への投与が含まれる。
【0088】
別の例によれば、本出願の方法は、免疫モジュレーター、腫瘍殺傷剤、及び/又はその他の標的治療剤等の他のがん治療剤とともに投与することができる。
【0089】
一例によれば、TLR9アゴニスト療法、具体的にはクラスC TLR9アゴニストを用いる療法は、細胞療法と組合せで(それにより免疫系のモジュレーションによる細胞療法が可能になる)、化学塞栓術又は放射線塞栓術と組合せで投与してもよい。
【0090】
一例では、肝臓への投与に関する上記の方法は、固形腫瘍全体にわたって、臓器全体にわたって、又は実質的に全腫瘍全体にわたって、トール様受容体アゴニスト、特にTLR9アゴニスト、より具体的にはクラスC TLR9アゴニスト、更により具体的にはSD-101の浸透をもたらすことを意図している。一例では、そのような方法は、腫瘍の間質液圧及び固体応力を克服することによることを含めて、それを必要とする患者へのトール様受容体アゴニストの灌流を向上させる。別の例では、臓器全体又はその一部全体にわたる灌流によって、治療剤に腫瘍を徹底的に曝露させることによって、疾患の治療の効果をもたらすことができる。一例では、そのような方法は、全身循環へのアクセスが悪い腫瘍の領域へのトール様受容体の送達をより十分に与えることができる。別の例では、そのような方法によれば、末梢静脈を介する従来の全身送達と比較して、トール様受容体アゴニストは非標的組織にほとんど送達されないという状況で、そのような腫瘍へとより高濃度のトール様受容体アゴニストが送達される。非標的組織とは、注入デバイスと直接接続している動脈網によって直接灌流される組織である。一例では、そのような方法によれば、固形腫瘍のサイズの縮小、成長速度の縮小、又は収縮若しくは解消がもたらされる。
【0091】
本出願の方法はまた、HAI又は特定のセクタ若しくはセグメントへの選択的注入を実施する前に肝臓の右葉及び左葉につながる血管をマッピングする工程、及び必要に応じて、肝臓につながっていない又はそうでなければ標的ではない血管を閉塞する工程を含むことができる。一部の例では、注入に先立ち、患者は、例えば大腿動脈アプローチを介して、マッピング血管造影を受ける場合がある。
【0092】
体内の血管をマッピングするための及び治療薬の送達のための方法は、当業者によく知られている。閉塞は、例えば、マイクロコイル塞栓術の使用を通して行うことができるが、このことより、施術者は、標的外の動脈又は血管をブロックすることが可能となり、それによって、肝臓への改変された細胞の送達を最適化することができる。マイクロコイル塞栓術は、TLR9アゴニスト、具体的にはクラスC TLR9アゴニスト、より具体的にはSD-101の初回用量を投与する前等の、必要に応じて実施して、TLR9アゴニストを含む医薬組成物の最適な注入を容易にすることができる。別の例では、滅菌スポンジ(例えば、GELFOAM)を使用することができる。これに関して、滅菌スポンジを切断し、カテーテルに押し込むことができる。別の例では、滅菌スポンジは顆粒として供給される場合もある。
【0093】
一部の例では、TLR9アゴニスト、特にSD-101等のクラスC TLR9アゴニストの用量は、約0.01mg、約0.03mg、約0.05mg、約0.1mg、約0.3mg、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mg、約5mg、約5.5mg、約6mg、約6.5mg、約7mg、約7.5mg又は約8mgとすることができる。一部の例では、SD-101は、12mg、16mg及び20mgの用量で投与される。ミリグラム量のSD-101(例えば、約2mg)の投与とは、図1に例示する組成物の約2mgを投与する工程を説明するものである。例えば、このような量のSD-101(例えば、約2mgの量)はまた、このような量のSD-101に加えて、他の関連化合物及び非関連化合物等の材料を含有する組成物内に存在する場合もある。等価モル量の薬学的に許容される他の塩もまた、企図される。
【0094】
一部の例では、TLR9アゴニスト、特にSD-101等のクラスC TLR9アゴニストの用量は、約0.01mgから約20mgの間、約0.01mgから約10mgの間、約0.01mgから約8mgの間、及び約0.01mgから約4mgの間とすることができる。一部の例では、TLR9アゴニスト、特にSD-101等のクラスC TLR9アゴニストの用量は、約2mgから約10mgの間、約2mgから約8mgの間、及び約2mgから約4mgの間とすることができる。一部の例では、TLR9アゴニスト、特にSD-101等のクラスC TLR9アゴニストの用量は、約10mg未満、約8mg未満、約4mg未満又は約2mg未満とすることができる。このような用量は、毎日、毎週又は隔週で投与することができる。一例では、SD-101の用量を、例えば、約2mg、これに続いて約4mg、次に続いて約8mgの投与を通して、徐々に増加させる。
【0095】
一部の例では、本出願の方法は、サイクルを含む投薬レジメンを投与する工程を含むことができ、ここで、サイクルのうちの1つ以上が、HAI及び/又はPEDDを介してSD-101を投与する工程を含む。本明細書で使用される場合、「サイクル」とは、投薬手順の繰り返しである。一例では、1サイクルは、サイクル当たり週に1度の用量を3回(すなわち、連続する3週間わたって週当たり1回でSD-101の投与)を含む。一例では、本出願による治療のサイクルは、SD-101の投与期間、これに続いて「オフ」期間又は休薬期間を含むことができる。別の例では、サイクル当たり週に1度の用量を3回に加えて、サイクルは、SD-101の週に1度の投与の後の休薬期間として1週間、2週間、3週間又は4週間を更に含む。更に別の例では、サイクル当たり週に1度の用量を3回に加えて、サイクルは、SD-101の週に1度の投与後の休薬期間として約38日を更に含む。別の例では、サイクル全体は約52日を含む。別の例では、投薬レジメンは、少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル若しくは少なくとも3サイクル、又はそれより長いことを含む。
【0096】
一部の例では、本出願は、肝臓免疫機能障害及び腫瘍誘発性免疫機能障害を治療するための医薬の製造におけるTLR9アゴニスト、特にクラスC TLR9アゴニストの使用に関し、前記方法は、TLR9アゴニスト、より具体的にはクラスC TLR9アゴニストを、それを必要とする患者に投与する工程を含み、ここで、TLR9アゴニスト、より具体的にはクラスC TLR9アゴニストは、HAIによるデバイスを通して肝臓に投与される。
【0097】
一部の例では、SD-101は、肝臓免疫機能障害の治療のためにHAIを通して2mgの用量で投与され、一部の例では、SD-101は、圧力をモジュレートするデバイス(すなわち、PEDD)を通して更に投与される。一部の例では、SD-101は、CPIと組合せで、HAIを通して、圧力をモジュレートするデバイスを通して2mgの用量で投与され、ここで、CPIはニボルマブである。他の例では、SD-101は、イピリムマブと組合せで、HAIを通して且つ圧力をモジュレートするデバイスを通して2mgの用量で投与される。一部の例では、SD-101は、イピリムマブ及びニボルマブと組合せで、HAIを通して且つ圧力をモジュレートするデバイスを通して2mgの用量で投与される。他の例では、SD-101は、ペンブロリズマブと組合せでHAIを通して且つ圧力をモジュレートするデバイスを通して2mgの用量で投与される。
【0098】
一部の例では、SD-101は、肝臓免疫機能障害の治療のためにHAIを通して4mgの用量で投与され、一部の例では、SD-101は、圧力をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧力変化に動的に応答する、より具体的にはPEDD)を通して更に投与される。一部の例では、SD-101は、CPIと組合せで、HAIを通して、血管圧力をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧力変化に動的に応答する、より具体的にはPEDD)を通して4mgの用量で投与される。CPIは、全身性で投与しても局所性で投与してもよい。例えば、CPIは、静脈内(IV)、皮下(SQ)、腹腔内(IP)で、又は例えば圧力をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧力変化に動的に応答する、より具体的にはPEDD)を通して等のHAIを通して、投与してもよい。
【0099】
一部の例では、SD-101は、HAIを通して、血管圧をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧の変化に動的に応答する、より具体的には、PEDD)を通して、全身性で(例えば、IV又はSQ)又は局所性で(例えば、IP又はPEDDを介する等のHAIを通して)投与されるCPIと組合せで、4mgの用量で投与され、ここで、CPIはニボルマブである。他の例では、SD-101は、HAIを通して且つ圧力をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧の変化に動的に応答する、より具体的には、PEDD)を通して、全身性で(例えば、IV又はSQ)又は局所性で(例えば、IP又はPEDDを介する等のHAIを通して)投与されるイピリムマブと組合せで、4mgの用量で投与される。一部の例では、SD-101は、HAIを通して且つ圧力をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧の変化に動的に応答する、より具体的には、PEDD)を通して、全身性で(例えば、IV又はSQ)又は局所性で(例えば、IP又はPEDDを介する等のHAIを通して)投与されるイピリムマブとニボルマブとの組合せで、4mgの用量で投与される。他の例では、SD-101は、HAIを通して且つ圧力をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧の変化に動的に応答する、より具体的には、PEDD)を通して、全身性で(例えば、IV又はSQ)又は局所性で(例えば、IP又はPEDDを介する等のHAIを通して)投与されるペムブロリズマブと組合せで、4mgの用量で投与される。
【0100】
一部の例では、SD-101は、肝臓免疫機能障害の治療のためにHAIを通して8mgの用量で投与され、一部の実施形態では、SD-101は、圧力をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧力変化に動的に応答する、より具体的にはPEDD)を通して更に投与される。一部の例では、SD-101は、HAIを通して、血管圧をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧の変化に動的に応答する、より具体的には、PEDD)を通して、全身性で(例えば、IV又はSQ)又は局所性で(例えば、IP又はPEDDを介する等のHAIを通して)投与されるCPIと組合せで、ここでCPIはニボルマブであるが、8mgの用量で投与される。他の例では、SD-101は、HAIを通して且つ圧力をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧の変化に動的に応答する、より具体的には、PEDD)を通して、全身性で(例えば、IV又はSQ)又は局所性で(例えば、IP又はPEDDを介する等のHAIを通して)投与されるイピリムマブと組合せで、8mgの用量で投与される。一部の例では、SD-101は、HAIを通して且つ圧力をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧の変化に動的に応答する、より具体的には、PEDD)を通して、全身性で(例えば、IV又はSQ)又は局所性で(例えば、IP又はPEDDを介する等のHAIを通して)投与されるイピリムマブとニボルマブとの組合せで、8mgの用量で投与される。他の例では、SD-101は、HAIを通して且つ圧力をモジュレートするデバイス(例えば、局所圧の変化に動的に応答する、より具体的には、PEDD)を通して、全身性で(例えば、IV又はSQ)又は局所性で(例えば、IP又はPEDDを介する等のHAIを通して)投与されるペムブロリズマブと組合せで、8mgの用量で投与される。
【0101】
一部の例では、本出願の方法は、標的病変、例えば、標的肝臓がん病変又は腫瘍の治療をもたらす。本例では、本出願の方法は、標的病変、例えば、標的肝臓がん病変又は腫瘍の全ての消失を含む、完全奏効をもたらすことができる。一部の例では、本出願の方法は、ベースラインの合計最長径を基準として、標的病変、例えば、標的肝臓がん病変又は腫瘍の最長径の合計の少なくとも30%低下を含む、部分奏効をもたらすことができる。一部の例では、本出願の方法は、治療開始以降の最小の合計最長径を基準として、部分奏効と認定するのに十分な収縮も進行と認定するのに十分な増悪もどちらも含まない、標的病変、例えば標的肝臓がん病変又は腫瘍の安定をもたらすことができる。このような例では、進行は、治療開始以降に記録された最小の合計最長径又は1つ以上の新しい病変の出現を基準として、標的病変、例えば標的肝臓がん病変又は腫瘍の最長径の合計の少なくとも20%増悪によって特徴付けられる。この合計は、5mmの又は約5mmの絶対的な増悪を明示する必要がある。一部の例では、サイズの低下という形での応答が、腫瘍の腫脹をもたらす殺腫瘍及び炎症によって相殺される場合がある(偽性進行として知られる)。
【0102】
別の例では、本出願の方法は、非標的病変の治療をもたらす。非標的病変とは、注入システムと直接連通している動脈網によって直接灌流されない病変である。本例では、本出願の方法は、全ての非標的病変の消失又は全ての生存腫瘍の解消を含む、完全奏効をもたらすことができる。一部の例では、本出願の方法は、1つ以上の非標的病変の存続をもたらすが、一方、完全奏効又は進行をもたらさない。このような例では、進行は、既存の非標的病変の明確な進行、及び/又は1つ以上の新しい病変の出現によって特徴付けられる。
【0103】
一部の例では、本出願の方法は、全体的な奏効に関し継続期間の延長をもたらす。一部の例では、全体的な奏効の継続期間は、完全奏効又は部分奏効(いずれか最初に記録された方)に対して測定基準が満たされる時点から、再発又は進行の最初の日付、例えば、再発又は進行が客観的に文書化される最初の日付(治療開始以降に記録された最小の測定値を進行の基準として)まで測定される。全体的な完全奏効の継続期間は、完全奏効に対して測定基準が最初に満たされる時点から、再発又は進行の最初の日付、例えば、進行が客観的に文書化される最初の日付まで測定することができる。一部の例では、安定の継続期間は、治療開始から、進行が観察される、例えば、ベースライン測定値を含めて治療開始以降に記録された最小の測定値を基準として、進行の基準が満たされるまで測定される。
【0104】
更に他の例では、本出願の方法は全生存率の改善をもたらす。例えば、全生存率は治療開始の日付から死亡時まで算定することができる。特定の例では、治療の治験では、登録の日付から死亡時まで算定することができる。治験研究の最終有効性解析のためのデータカットオフ前にまだ生存している患者又は研究終了前に脱落する患者は、生存していると最後に確認された日付で打ち切られる。
【0105】
他の例では、本出願の方法は、無増悪生存期間をもたらす。無増悪生存期間は、治療開始の日付から、再発又は死亡のいずれか早い方まで判定することができる。特定の例では、例を挙げると、無増悪生存期間は、治療の治験への登録の日付から、CTスキャンが再発(又は疾患の発達のその他の疑いない指標)を文書化した時点又は死亡の日付のいずれか早い方まで算定することができる。文書化された再発を有さず且つ最終的な有効性解析のデータカットオフ前にまだ生存している患者又は研究終了前に脱落する患者は、再発の非存在を文書化する最後の放射線学的証拠の日付で打ち切られる。
【0106】
別の例によれば、本出願の方法には、肝臓免疫機能障害を治療するための方法が含まれる。肝臓免疫機能障害とは、肝臓腫瘍微小環境(TME)における免疫機能障害を指し、患者の免疫系ががん細胞を攻撃する能力及び/又は免疫療法が有益な治療応答を誘導する能力を低減させる。肝臓免疫機能障害は、例えば、肝臓TMEに存在するMDSCレベルの上昇、肝臓TMEに存在するT細胞及び/若しくはマクロファージ(例えば、M1マクロファージ及び/若しくはM2マクロファージ)レベルの低下、成熟樹状細胞のレベルの低下、肝臓がんの免疫制御の低減、並びに/又は抗PD-1療法への応答性の低減等の、いくつかの様々な生物学的特徴によって特徴付けることができる。肝臓免疫機能障害に関する他の生物学的特徴には以下が含まれる:正常肝臓(同じ患者の非腫瘍肝臓)における免疫細胞の活性化、肝転移への遊走を伴う;末梢血免疫細胞(T、NK、B、細胞傷害性T、CD4 Th1 T、疲弊したT、マクロファージ)の活性化及び動員;TLRシグナル伝達の向上;白血球(CD45+)の増加;疲弊したCD8 T細胞の増加(チェックポイント応答性に非常に重要である);Th1プログラミングの誘導;Th2プログラミングの低減;T細胞受容体の増加及びT細胞共刺激シグナル伝達の向上;IL9、IL15、CCL7の増加;B細胞の活性化;肥満細胞の誘導;NK細胞の誘導、IFNg及び関連遺伝子の誘導;インターフェロンシグナル伝達の向上;ケモカインシグナル伝達の向上;血中の増加を伴わない肝臓中のIL6の増加; M1の増加/マクロファージ及び関連遺伝子の活性化:CD68、CD86樹状細胞の活性化及び流入領域リンパ節への遊走;MDSC関連遺伝子:IDO1、T0D2、ARG-1、NOS2、TIMD4の低下;血管新生及びVEGFの低下;脂肪酸酸化の低下(優先されるMDSCプログラム);並びに/又はPD-L1、IFNγ、IP10遺伝子発現の増加。
【0107】
一例では、本出願の方法には、肝臓免疫機能障害を治療するための方法が含まれ、ここで、SD-101の投与によって腫瘍負荷の低減がもたらされる。腫瘍負荷は、適切な任意の方法、例えば、腫瘍病変の最長径の長さ又は腫瘍病変の体積を使用して決定することができる。一部の例では、腫瘍負荷は、約10%だけ、約20%だけ、約30%だけ、約40%だけ、約50%だけ、約60%だけ、約70%だけ、約80%だけ、約90%だけ、又は約100%だけ低減される。一例では、腫瘍負荷は、腫瘍病変の最長径の長さによって決定して、約10%だけ、約20%だけ、約30%だけ、約40%だけ、約50%だけ、約60%だけ、約70%だけ、約80%だけ、約90%又は約100%だけ低減される。別の例では、腫瘍は、腫瘍病変の体積によって決定して、約10%だけ、約20%だけ、約30%だけ、約40%だけ、約50%だけ、約60%だけ、約70%だけ、約80%だけ、約90%だけ、又は約100%だけ低減される。
【0108】
別の例によれば、本出願の方法には、肝臓免疫機能障害を治療するための方法が含まれ、ここで、SD-101の投与によって腫瘍進行の低減又は腫瘍成長の安定化がもたらされる。一部の例では、腫瘍の進行は約10%だけ、約20%だけ、約30%だけ、約40%だけ、約50%だけ、約60%だけ、約70%だけ、約80%だけ、約90%だけ、又は約100%だけ低減される。腫瘍負荷は、適切な任意の方法、例えば、腫瘍病変の最長径の長さ又は腫瘍病変の体積を使用して決定することができる。一例では、腫瘍進行は、腫瘍病変の最長径の長さによって決定して、約10%だけ、約20%だけ、約30%だけ、約40%だけ、約50%だけ、約60%だけ、約70%だけ、約80%だけ、約90%だけ、又は約100%だけ低減される。別の例では、腫瘍進行は、腫瘍病変の最長径の長さによって決定して、腫瘍病変の体積によって決定して、約10%だけ、約20%だけ、約30%だけ、約40%だけ、約50%だけ、約60%だけ、約70%だけ、約80%だけ、約90%だけ、又は約100%だけ低減される。
【0109】
別の例によれば、本出願の方法には、肝臓免疫機能障害を治療するための方法が含まれ、ここで、SD-101の投与によって肝臓TME中のMDSCが低下し、肝臓がんの免疫制御の向上が可能になり且つ/又は全身抗PD-1療法への応答性が改善される。例えば、肝臓免疫機能障害を治療するための方法はSD-101の投与を含み、この投与によって、肝臓MDSCコンパートメントを再プログラムして、肝臓がんの免疫制御が可能になり且つ/又は肝臓TMEからのMDSCの解消を通して全身抗PD-1療法への応答性が改善される。一部の例では、本出願の方法は、肝臓TME中のMDSCの量を制御する上で優れている。一部の例では、本出願の方法には、肝臓免疫機能障害を治療するための方法が含まれ、ここで、SD-101の投与によって、肝臓TME中の、MDSC細胞(例えば、CD11b+Grl+)、単球性MDSC(M-MDSC、例えば、CD11b+Ly6C+)細胞、顆粒球性MDSC(G-MDSC、例えば、CD11b+LY6G+)細胞、及び/又はヒトMDSC(例えば、CD33+CD11b+HLADR-(例えば、m-MDSCについてはCD14+、G-MDSCについてはCD15+))の頻度が低減する。別の例によれば、本出願の方法によって、肝臓TME中のM1マクロファージ(例えば、CD14+CD86+)の量が向上する。更に別の例によれば、本出願の方法によって、肝臓TME中のM2マクロファージ(例えば、CD14+CD163+CD206+)が低減する。更に別の例によれば、本出願の方法によって、肝臓TME中の単球性樹状細胞(例えば、CD14+CD11c+CD123-)が増加する。一例によれば、本パラグラフで記載されるMDSC、M1、M2及び樹状細胞の各効果は、それらに限定されないが:ヒトM-MDSC:(例えば、CD33+CD11b+HLA-DR-CD14+);ヒトG-MDSC:(例えば、CD33+CD11b+HLA-DR-CD15+);ヒトM1マクロファージ:(例えば、CD14+CD86+);ヒトM2マクロファージ:(例えば、CD14+CD163+CD206+);及びヒト単球性樹状細胞(例えば、CD14+CD11c+CD123-)を始めとするヒト表現型に当てはまる。
【0110】
別の例では、本出願の方法によって、例えば肝臓TMEにおいて、NFκB活性化及びTLR9シグナル伝達に関連する他の分子が向上する。更に更なる例では、本出願の方法によって、例えば肝臓TMEにおいて、IL-6が増加する。別の例では、本出願の方法によって、例えば肝臓TMEにおいて、IL10が増加する。更に更なる例では、本出願の方法によって、例えば肝臓TMEにおいて、IL-29が増加する。別の実施形態では、本出願の方法によって、例えば肝臓TMEにおいて、IFNαが増加する。更なる実施形態のように、本出願の方法によって、例えば肝臓TMEにおいて、STAT3リン酸化が低下する。
【0111】
別の例では、本出願の方法には、肝臓免疫機能障害を治療するための方法が含まれ、ここで、TLR9アゴニスト、具体的にはクラスC TLR9アゴニスト、より具体的にはSD-101の投与によって、肝転移内の遺伝子発現に以下の変化のうちの少なくとも1つがもたらされる:
・正常肝臓(同じ患者の非腫瘍肝臓)における免疫細胞の活性化、肝転移への遊走を伴う;
・末梢血免疫細胞(T、NK、B、細胞傷害性T、CD4 Th1 T、疲弊したT、マクロファージ)の活性化及び動員;
・TLRシグナル伝達の向上;白血球(CD45+)の増加;
・疲弊したCD8 T細胞の増加(チェックポイント応答性にとって非常に重要である);
・Th1プログラミングの誘導;
・Th2プログラミングの低減;
・T細胞受容体の増加及びT細胞共刺激シグナル伝達の向上;
・IL9、IL15、CCL7の増加;
・B細胞の活性化;
・肥満細胞の誘導;
・NK細胞の誘導;
・IFNg及び関連遺伝子の誘導;
・インターフェロンシグナル伝達の向上;
・ケモカインシグナル伝達の向上;
・血中の増加を伴わない肝臓中のIL6の増加;
・M1の増加/マクロファージ遺伝子の活性化:CD68、CD86樹状細胞の各活性化及び流入領域リンパ節への遊走;
・MDSC関連遺伝子:IDO1、T0D2、ARG-1、NOS2、TIMD4の低下;
・血管新生及びVEGFの低下;
・脂肪酸酸化の低下(優先されるMDSCプログラム);並びに/又は
・PD-L1、IFNγ及びIP 10各遺伝子発現の向上。
【0112】
別の実施形態では、本出願の方法には、TLR9アゴニスト、具体的にはクラスC TLR9アゴニスト、特にSD-101をチェックポイント阻害剤と組合せで患者に投与するための方法が含まれ、ここで、CPIと組合せで、TLR9アゴニスト、具体的にはクラスC TLR9アゴニスト、より具体的にはSD-101の投与によって、循環腫瘍細胞レベル及び/又は循環腫瘍DNAレベルの低下がもたらされ、それによって腫瘍負荷の低下がもたらされる。一例では、CPIは全身性(例えば、IV又はSQ)又は局所性(例えば、IP又はPEDDを介する等のHAIを通して)で投与することができる。
【0113】
本出願を、以下の実施例において更に例示及び/又は実証するが、これらの実施例は例示/実証の目的のみに与えられており、本発明をいかようにも限定するものではない。
【実施例
【0114】
(実施例1)
実施例1では、ヒトドナーから得た末梢血単核細胞(PBMC)を、IL6及びGMCSFの存在下で又はそれらの非存在下でインビトロで培養した。IL6及びGMCSFの存在を使用してMDSCを誘導する。次いで、処理された細胞をフローサイトメトリーを使用して評価して、MDSC(M-MDSC及びG-MDSC)及びマクロファージ(M1マクロファージ及びM2マクロファージ)に対する様々なTLRアゴニストの効果を決定した。フローサイトメトリーにより作成したデータを図2A図2Dに示す。
【0115】
図2A図2Eに、実施例1による、健康なドナーから収集され且つIL6及びGM-CSFで処理されてMDSCを誘導したヒトPMBCのインビトロ解析を例示する。
【0116】
特に、図2Aに、インビトロ試料中で誘導された総MDSCの量を示す(すなわち、NT(未処理)又はTLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト又はSD101で処理した)。図2Aのデータが実証するところは、IL6及びGMCSFでのヒトPBMCの処理によって誘導される総MDSCの量に対する、未処理の対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果、である。図2Aでは、*はNTと比較してp<0.05を指示し、***はNTと比較してp<0.01を指示し、#はSD-101と比較してp<0.05を指示し、&はSD-101と比較してp=0.006を指示する。図2Bが実証するところは、IL6及びGMCSFでのヒトPBMCの処理によって誘導される単球性MDSC(M-MDSC)及び顆粒球性MDSC(G-MDSC)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果、である。図2Bでは、***はNTと比較してp<0.001を指示し、****はNTと比較してp<0.0001を指示し、%はSD-101と比較してp<0.01を指示し、^はSD-101と比較してp<0.001を指示する。図2A及び図2Bでわかるように、SD-101が実証したところは、(i)肝臓における優勢なMDSCサブセット、例えばM-MDSCの解消がより良好であること、及び(ii)M1/M2マクロファージ比に対するより有利な効果(すなわち、M1の誘導及びM2の低減)、であった。図2C及び図2Dが実証するところは、IL6及びGMCSFでのヒトPBMCの処理によって誘導されるそれぞれM1マクロファージ及びM2マクロファージの量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果、である。図2Cでは、*はNTと比較してp<0.05を指示し、**はNTと比較してp<0.01を指示し、#はSD-101と比較してp<0.05を指示し、@はSD-101と比較してp<0.00001を指示する。図2Dでは、*はNTと比較してp<0.05を指示する。図2A~2Dに示すデータセットそれぞれについて、異なるヒトのドナーの数はn=5である。
【0117】
図2Eに、細胞をTLR9アゴニストで処理する場合にPMBCから誘導されたMDSC細胞の画像を示す。
【0118】
図2A図2Eに示すデータから見て、IL6及びGM-CSFで処理されてMDSCを誘導したヒトPMBCのこれらのインビトロ研究が実証するところは、SD-101は、MDSCの低減、M2マクロファージの低減、及びM1マクロファージの促進に関して、クラスB TLR9アゴニスト及びTLR7アゴニストよりも優れていること、である。
【0119】
(実施例2)
実施例2では、腫瘍の有無にかかわらずマウス由来のマウス骨髄細胞を、GMCSFの存在下で又はそれの非存在下でインビトロで培養した。GMCSFの存在を使用してMDSCを誘導する。次いで、処理された細胞をフローサイトメトリーを使用して評価して、本マウスモデルにおいて総MDSC、総マクロファージ及びM1マクロファージに対する様々なTLRアゴニストの効果を決定した。フローサイトメトリーにより作成したデータを図3A図3Cに示す。
【0120】
図3Aが実証するところは、GMCSFでのマウス骨髄細胞の処理によって誘導されるMDSC(CD11b+Gr-1+)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果、である。図3Aでは、**はNTと比較してp<0.01を指示し、****はNTと比較してp<0.0001を指示する。図3Bが実証するところは、GMCSFでのマウス骨髄細胞の処理によって誘導されるマクロファージ(CD11b+F4/CD80+)の量に対する、未処理対照と比較した、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果、である。図3Bでは、***はNTと比較してp<0.001を指示し、*はNTと比較してp<0.05を指示し、@はSD-101と比較してp<0.05を指示する。図3Cが実証するところは、GMCSFでのマウス骨髄細胞の処理によって誘導されるM1マクロファージ(CD11b+F4/CD80+CD38+)の量に対する、未処理の対照と比較したTLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR9Aアゴニスト、TLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果、である。図3Cでは、***はNTと比較してp<0.001を指示し、**はNTと比較してp<0.01を指示し、*はNTと比較してp<0.05を指示し、@はSD-101と比較してp<0.05を指示する。図3A図3Cに示すデータセットそれぞれについて、異なるヒトのドナーの数はn=5である。
【0121】
図3A図3Cのデータでわかるように、マウス骨髄細胞のインビトロ研究が実証するところは、SD-101はマウス骨髄細胞プログラミングについてクラスB TLR9アゴニスト及びTLR7アゴニストよりも同様に優れていること、である。特に、図3A図3Cに、腫瘍の有無にかかわらずマウス由来の、マウス骨髄細胞のインビトロ解析を図示するが、この場合、GM-CSFを使用してMDSCを誘導した。これに関して、SD-101は、M1マクロファージの誘導に加えて、MDSC及びM2マクロファージの低減においてクラスA TLR9、クラスB TLR9及びTLR7の各アゴニストよりも優れていた。
【0122】
(実施例3)
実施例3では、ブドウ膜黒色腫肝転移の患者においてCPI療法への奏効率を向上させる目的で、肝動脈注入(PEDD/HAI)を介してクラスC TLR9アゴニストであるSD-101の注入を施した。4人の患者を登録し、第1のサイクルにおいてHAI及びPEDDを介してSD-101注入週に1度を3回のそれぞれに当たりSD-101 2mgの用量で治療した。本研究で収集された薬物動態(PK)データが示唆するところは、PEDD/HAI送達アプローチによって、血漿レベルに基づいて決定して、肝臓組織における高濃度のSD-101及びSD-101への一時的且つ低レベル(<2時間、<150ng/ml)の全身曝露を得るというそのゴールが達成されていること、である。細胞媒介性抗腫瘍免疫(Th1、TCR/共刺激、CD8 T細胞、細胞傷害性細胞、B細胞、NK細胞)が、ブドウ膜黒色腫の肝転移において向上した。正常な肝臓組織における同時低下によって、隣接する腫瘍への移動が示唆されたが、このことにより免疫抑制臓器全体を治療することの重要性が示されている。CD8 T、Th1、B及びNKは、血清IFNγ誘導とともにより後の時点で末梢血中で増加した。サイトカインプログラミングに関しては、IFNγ関連遺伝子は肝転移で増加し血清は増加し、Th2の低下を伴ってTh1遺伝子が肝転移で増加した。MDSC関連遺伝子は低下した(NOS-2、ARG-1、IDO-1、TDO-2)。肝臓における変化が、PEDDを介するSD-101 2mgの3回の注入の4週間後に見られた。
【0123】
こういった患者からの治療後の肝転移試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)をNanoString(登録商標)免疫細胞パネルで試験して、細胞傷害性細胞、樹状細胞(DC)、CD45、マクロファージ、T細胞、肥満細胞、好中球、疲弊したCD8、Th1細胞及びCD8 T細胞を含めて、免疫細胞について遺伝子シグネチャの発現をプロファイリングしたNanoString(登録商標)免疫細胞パネルからのデータを図4に示すが、この場合、BL-Tとはベースライン時間を指し、D57-Tとは、注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後の時間を指す。図4に例示のように、治療後の肝転移試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)のNanoString(登録商標)免疫細胞パネルが示したところは、数ある中でも、細胞傷害性細胞、マクロファージ、T細胞及び疲弊したCD8 T細胞を始めとする遺伝子シグネチャの向上と、おそらく流入領域リンパ節への遊走に起因する樹状細胞を始めとする遺伝子シグネチャの低下、であった。これに関して、肝転移試料は4人の患者から採取された(治療前4人と治療後2人からの平均相対遺伝子発現レベル)。
【0124】
こういった患者からの治療後の肝転移試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)をNanoString(登録商標)骨髄パネルで試験して、骨髄遺伝子シグネチャの発現をプロファイリングしたが、これには、血管新生、抗原提示、細胞周期及びアポトーシス、細胞の遊走及び接着、ケモカインシグナル伝達、補体活性化、サイトカインシグナル伝達、骨髄の分化及び維持、ECMリモデリング、Fc受容体シグナル伝達、増殖因子シグナル伝達、インターフェロンシグナル伝達、リンパ球活性化、代謝、病原体応答、T細胞活性化及びチェックポイントシグナル伝達、Th1活性化、Th2活性化、並びにTLRシグナル伝達が含まれる。NanoString(登録商標)骨髄パネルからのデータを図5に示すが、この場合、BL-Tとはベースライン時間を指し、D57-Tとは、注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後の時間を指す。図5に例示のように、治療後の肝転移試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)のNanoString(登録商標)骨髄パネルが示したところは、数ある中でも、リンパ球活性化、Th1活性化、インターフェロン及びTLRシグナル伝達、抗原提示、疲弊したCD8 T細胞を始めとする遺伝子シグネチャの向上と、Th2活性化及び血管新生を始めとする遺伝子シグネチャの低下、であった。これに関して、肝転移試料は4人の患者から採取された(治療前4人と治療後2人からの平均相対遺伝子発現レベル)。
【0125】
こういった患者からの治療後の肝転移試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)をNanoString(登録商標)骨髄細胞パネルで試験して、骨髄細胞の遺伝子シグネチャの発現をプロファイリングしたが、これには、肥満細胞、疲弊したCD8、マクロファージ、B細胞、CD8 T細胞、DC、T細胞、好中球及びCD45が含まれる。NanoString(登録商標)骨髄細胞パネルからのデータを図6に示すが、この場合、BL-Tとはベースライン時間を指し、D57-Tとは、注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後の時間を指す。図6に例示のように、治療後の肝転移試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)のNanoString(登録商標)骨髄細胞パネルが示したところは、数ある中でも、B細胞、CD8 T細胞、細胞傷害性細胞及びマクロファージを始めとする遺伝子シグネチャの向上と、おそらく流入領域リンパ節への遊走に起因する樹状細胞を始めとする遺伝子シグネチャの低下、であった。これに関して、肝転移試料は4人の患者から採取された(治療前4人と治療後2人からの平均相対遺伝子発現レベル)。
【0126】
こういった患者からの治療後の肝転移試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)をNanoString(登録商標)代謝性パネルで試験して、代謝性遺伝子シグネチャの発現をプロファイリングしたが、これには、アミノ酸トランスポーター、AMPK、抗原提示、アルギニン代謝、オートファジー、細胞周期、サイトカイン及びケモカインシグナル伝達、DNA損傷修復、エンドサイトーシス、エピジェネティック制御、脂肪酸酸化、脂肪酸合成、グルタミン代謝、解糖、低酸素IDH12活性、KEAP1NBRF2経路、リソソーム分解、MAPK、ミトコンドリア呼吸、mTOR、Myc、NF-κB、ヌクレオチドサルベージ、ヌクレオチド合成、p53経路、ペントースリン酸経路、P13K、活性酸素応答、TCR及び共刺激シグナル伝達、TLRシグナル伝達、転写制御、トリプトファンキヌレニン代謝、並びにビタミン及び補因子代謝が含まれる。NanoString(登録商標)代謝性パネルからのデータを図7に示すが、この場合、BL-Tとはベースライン時間を指し、D57-Tとは、注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後の時間を指す。図7に例示のように、治療後の肝転移試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)のNanoString(登録商標)代謝性パネルが示したところは、数ある中でも、抗原提示、ケモカイン及びサイトカインシグナル伝達、並びにTCR及び共刺激シグナル伝達を始めとする遺伝子シグネチャの向上と、細胞周期及び脂肪酸酸化を始めとする遺伝子シグネチャの低下と、ARG1、NOS2及びGM-CSF-Rを始めとするMDSC関連遺伝子の低下、であった。これに関して、肝転移試料は4人の患者から採取された(治療前4人と治療後2人からの平均相対遺伝子発現レベル)。
【0127】
こういった患者からの治療後の肝転移試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)をNanoString(登録商標)骨髄パネルで試験して、骨髄遺伝子シグネチャの発現をプロファイリングしたが、これには、炎症及び免疫細胞機能と関連する遺伝子、並びに免疫抑制及び腫瘍進行と関連する遺伝子が含まれる。NanoString(登録商標)骨髄パネルからのデータを図8に示す。図8に例示のように、治療後の肝転移試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)のNanoString(登録商標)骨髄パネルが示したところは、炎症及び免疫細胞機能と関連する遺伝子(例えば、SERPINB2、TREM2、CD18、IL9、CD68、ELANE、IFNA2、TREM1、TNFRSF11A、CD86、PDZKHP1、IL15RA、IL6、CCL7、IL2、CCL2、CCL8、PRG2、及びIFNGR1)の発現の向上と、免疫抑制及び腫瘍進行と関連する遺伝子(例えば、CSF2、RSGRF2、JUN、PROk2、GKS、VEGA、MET、CXCL1、TIMD4)の発現の低下、であった。特に、図には、TREM2(TMB及びMSIと関連)、IFNA2及びIFNGR1、CD68、CD86、IL2、IL9、IL15及びCCL7を始めとする遺伝子シグネチャの向上と、CSF2(GM-CSF)、IDO-1、TDO-2、VEGFA及びTIMD4(MDSC抑制機能における役割)を始めとする遺伝子シグネチャの低下を例示する。これに関して、肝転移試料は4人の患者から採取された(治療前4人と治療後2人からの平均相対遺伝子発現レベル)。
【0128】
こういった患者からの治療後の正常肝臓組織試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)をNanoString(登録商標)骨髄細胞パネルで試験して、骨髄細胞の遺伝子シグネチャの発現をプロファイリングしたが、これには、細胞傷害性細胞、DC、CD45、マクロファージ、T細胞、肥満細胞、好中球、NK細胞、疲弊したCD8、Th1細胞及びCD8 T細胞が含まれる。NanoString(登録商標)骨髄細胞パネルからのデータを図9に示すが、この場合、BL-Tとはベースライン時間を指し、D57-Tとは、注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後の時間を指す。図9に例示のように、正常肝臓組織試料(HAI及びPEDDを介するSD-101注入週に1度を3回の第1のサイクルの4週間後に収集された)のNanoString(登録商標)骨髄パネルが示したところは、SD-101注入は正常肝実質のTh1細胞、CD8 T細胞及び細胞傷害性細胞の低下と関連していること、であった。反対の変化が腫瘍細胞で見られた。免疫細胞の増殖/活性化の欠如が、正常肝臓組織に対するSD-101の効果に関する安全性を裏付けている。SD-101は肝臓及び腫瘍微小環境の免疫機能障害を治療し、「コールド」腫瘍への正常肝臓からの活性化T細胞の動員を促進する、と仮説設定する。換言すると、図9の正常肝臓組織のNanoString(登録商標)データによって、肝内免疫細胞の遊走が示唆されている。
【0129】
こういった患者からの治療後の末梢血単核細胞(PBMC)試料をNanoString(登録商標)骨髄細胞パネルで試験して、骨髄細胞の遺伝子シグネチャの発現をプロファイリングしたが、これには、NK細胞、NK CD56dim細胞、疲弊したCD8、マクロファージ、B細胞、CD8 T細胞、細胞傷害性細胞、T細胞、好中球、CD45及びTh1細胞が含まれる。NanoString(登録商標)骨髄細胞パネルからのデータを図10に示す。図10に、治療後の末梢血単核細胞(PBMC)試料のNanoString(登録商標)骨髄パネルを例示する。これに関して、SD-101 .5mgの単回注入、これにSD-101 2mg注入週に1度を3回の2サイクルが続いたが、この場合、組織収集は上記2サイクルのそれぞれの第1の週に行った。図に図示するように、PEDDによるSD-101肝動脈注入は、NK細胞、Th1細胞、B細胞、CD8 T細胞及び細胞傷害性細胞の末梢血中の増加と関連していた。これらの増加は、第2のサイクルの4回から6回の用量の送達を含む、肝転移内の好ましい免疫変化の後に記録された。SD-101は、肝臓及び腫瘍微小環境における免疫機能障害を治療し、再プログラムされた肝臓からの活性化樹状細胞及びその他の免疫細胞の遊出を促進する、と仮説設定する。こういったPBMC遺伝子発現の変化によって、肝臓を標的としたSD-101注入を受けての全身性の作用が示唆される。
【0130】
要約すると、SD-101及びPEDDによれば、広範な更なるCPIの向上効果を持って、重要な免疫抑制標的(MDSC)に対処する腫瘍微小環境モジュレーションアプローチが提供されるとともに、周囲の非腫瘍肝臓において免疫機能障害が治療される。
【0131】
(実施例4)
実施例4では、骨髄細胞に対する種々のTLRアゴニスト(TLR4、TLR7、クラスB TLR9(TLR9B)アゴニスト及びクラスC TLR9(TLR9C)アゴニスト)の送達のインパクトを評価し、特に、MDSCに対するそれらアゴニストの差次的な効果及び肝腫瘍微小環境(TME)をイムノモジュレートするそれらの能力について調査した。
【0132】
TLR9アゴニストに関し3つのクラスがあり、形質細胞様DC(pDC)のIFNα産生、B細胞及びNK細胞の活性化、及びその他の免疫細胞集団に対して差次的な効果を有する。TLR9Aアゴニストは形質細胞様DC(pDC)を刺激してIFNαを産生する。TLR9BアゴニストはB細胞及びNK細胞を活性化する。TLR9Cはより広範な免疫学的効果を有する。骨髄由来抑制性細胞(MDSC)のユニークなプログラミングを含めて、特定の送達の難題及び免疫抑制経路は、肝臓における免疫療法の成功を制限する可能性がある。
【0133】
種々のTLRアゴニストの効果について、健康なヒトドナーから得られた様々なタイプの細胞を使用して、マウス骨髄(BM)MDSCも同様に使用して、フローサイトメトリーによってインビトロで評価した。
【0134】
健康なヒトドナーから得た末梢血単核細胞(PBMC)を、IL6+GMCSF(20ng/ml)の存在下で又はそれらの非存在下でインビトロで培養した。IL6+GMCSFの存在を使用してMDSCを誘導する。次いで、処理された細胞をフローサイトメトリーを使用して評価して、MDSC(例えば、CD33+CD11b+HLADR-/lo)及びM1-マクロファージ(例えば、CD86+)に対するSD-101の効果を決定した。そのような細胞を用いたフローサイトメトリーにより作成したデータを図11A図11Dに提供する。
【0135】
図11A図11Dに、SD-101によるTLR9刺激が、MDSC生成を阻害し、M1マクロファージ産生を向上させることを示す。図11A図11Dのデータは、IL6+GMCSF(それぞれ20ng/ml)の存在下/非存在下で、SD-101の濃度上昇(0.1~3μM)及びCtrl ODN5328(1μM)を用いて、2日間(図11A及び図11C)及び7日間(図11B及び図11D)処理したヒトPBMCを用いて作成したものである。図11A及び11Bでは、MDSC集団(CD33+CD11b+HLADR-/lo)に対するSD-101又はCtrl ODN5328による処理の効果について評価した。図11C及び図11Dでは、M1マクロファージ(CD14+CD86+)に対するSD-101又はCtrl ODN5328による処理の効果について評価した。図11A図11Dに示すように、SD-101 0.3μM用量により、7日間の処理後にMDSC生成の阻害及びM1マクロファージ産生の向上がもたらされた。一元配置ANOVAに続いてTukeyの事後検定を、図11A図11Dに示すデータに関して実施したが、ここでは、*はp<0.05を指示し、**はp<0.01を指示し、***はp<0.001を指示し、****はp<0.0001を指示するが、対 IL6+GMCSF刺激の1μM Ctrl ODN処理細胞である、n=健康なドナー数。
【0136】
(実施例5)
実施例5では、健康なヒトドナーから得たPBMCをIL6+GMCSF(20ng/ml)中でインビトロ培養してMDSCを誘導し、続いてTLRアゴニストで処理した。フローサイトメトリーを実施して、MDSC(CD33+CD11b+HLADR-)、MDSCのサブタイプ(単球性/顆粒球性CD14+/CD15+MDSC)、M1マクロファージ(CD14+CD86+)、及び単球樹状細胞(CD14+CD11c+CD123-)に対する様々なTLRアゴニストの効果について評価した。評価したTLRアゴニストには、TLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、クラスB TLR9アゴニスト、及びクラスC TLR9アゴニストであるSD-101が含まれる。加えて、骨髄(BM)マウスMDSC(CD11b+GR-1+)をGMCSFで72時間処理し、マウスBM MDSCに対する様々なTLRアゴニストの効果についてフローサイトメトリーによって評価した。様々なタイプのヒト細胞とマウス細胞のフローサイトメトリーから作成したデータを、図12A図12Fに提供する。
【0137】
図12A図12Fに、ヒトMDSC及びその他の免疫細胞(すなわち、マウス免疫細胞)に対する様々なTLRアゴニストの効果を示す。図12A~12Dのデータは、IL6+GMCSF(それぞれ20ng/ml)で刺激され且つビヒクル又は0.3μMのTLR4アゴニスト、TLR7アゴニスト、クラスB TLR9アゴニスト又はクラスC TLR9アゴニストであるSD-101を用いて7日間処理された、健康なヒトドナーから得られたPBMCを使用して、作成されている。図12Aでは、MDSCに対する様々なTLRアゴニストによる処理の効果について評価した。図12Bでは、M1マクロファージに対する様々なTLRアゴニストによる処理の効果について評価した。図12Cでは、M/G-MDSCに対する様々なTLRアゴニストによる処理の効果について評価した。図12Dでは、樹状細胞(CD33+CD11c+)に対する様々なTLRアゴニストによる処理の効果について評価した。
【0138】
加えて、図12E及び12Fに、マウスBM MDSCに対する様々なTLRアゴニストの効果を示す。図12Eのデータは、マウスGMCSFの非存在下で処理したマウス骨髄(BM)から得た細胞を使用して作成されている。図12Fのデータは、マウスGMCSFの存在下で処理したマウス骨髄(BM)から得た細胞を使用して作成されている。スチューデントt検定及び一元配置ANOVAに続いてTukeyの事後検定を、図12A図12Fに示すデータに関して実施したが、ここでは、*はp<0.05を指示し、**はp<0.01を指示し、***はp<0.001を指示し、****はp<0.0001を指示するが、対 Vehである。加えて、%はp<0.01を指示するが、対 TLR4であり、&はp<0.01を指示するが、対 TLR7であり、^はp<0.001を指示するが、対 TLR9Bであり、#はp<0.05を指示し且つ##はp<0.01を指示するが、対 SD-101である。
【0139】
図12A図12Fのデータに示すように、TLR9CアゴニストであるSD-101は、2日目に、ビヒクル(Veh)、TLR9B、TLR4及びTLR7の各アゴニストと比較して、MDSCの増殖を有意に阻害した(p<0.01;n=11)。同様の結果が、マウスBM由来MDSCを用いて得られた(p<0.001;n=5)。SD-101は、Veh、TLR4、TLR7及びTLR9Bの各アゴニストと比較して、ヒトM/G-MDSC比を有意に低減させた(p<0.05;n=11)。加えて、SD-101は、Veh、TLR4及びTLR7の各アゴニストと比較して、樹状細胞を骨髄プログラムに向けてシフトさせた(p<0.05;n=6)。要約すると、SD-101は2日目に、ビヒクル(Veh)、TLR9B、TLR4及びTLR7の各アゴニストと比較してMDSCの増殖を有意に阻害し、上記SD-101は、Veh、TLR4、TLR7及びTLR9Bの各アゴニストと比較してヒトM/G-MDSC比を有意に低減させた。
【0140】
(実施例6)
実施例6では、健康なヒトドナー(n=6)から得たPBMCを、IL6+GMCSF(20ng/ml)中でインビトロで培養してMDSCを誘導し、続いて、TLR9Bアゴニスト又はTLR9CアゴニストであるSD-101のいずれかを用いて、濃度0.3μMで2日間処理した。試料の半分(n=3)のそれぞれについて総RNAを分離し、NanoString(登録商標)解析を使用して評価した。NanoString(登録商標)解析用の試料は、検証に向けてqRT-PCRによっても解析した。試料の残り半分について、フローサイトメトリーを使用して評価して、MDSC(CD33+CD11b+HLADR-/lo)及びM1マクロファージ(CD14+CD86+)に対するTLR9Bアゴニスト及びSD-101の効果を決定した。
【0141】
図13A図13Gが実証するところは、TLR9CアゴニストSD-101によるTLR9刺激によって、TLR9Bアゴニストと比較して、炎症誘発性及び抗腫瘍性シグナル伝達の向上が促進されること、である。具体的には、図13Aに、上記のように調製した試料についてNanoString(登録商標)mRNA解析を使用して決定した、2日間TLR9Bアゴニストで処理した 対 SD-101(TLR9Cアゴニスト)で処理した、後のヒトPBMCの遺伝子発現を例示するボルケーノプロットを示す。
【0142】
NanoString(登録商標)解析を使用して作成したデータをTable 2(表2)に示しており、本データは、SD-101がTLR9Bアゴニストを超える多数の遺伝子をアップレギュレーションすることを実証する。
【0143】
【表2】
【0144】
NanoString(登録商標)解析を使用して作成したデータをTable 3(表3)に示しており、本データは、SD-101はTLR9Bアゴニストを超えて他の遺伝子をダウンレギュレーションすることを実証する。
【0145】
【表3】
【0146】
加えて、図13B及び図13Cに、上記のように調製した試料についてフローサイトメトリーによって決定した、それぞれ、MDSC及びM1マクロファージに対するTLR9B及びTLR9Cアゴニストの効果を示す。図13Dに、NanoString(登録商標)解析から作成したデータを使用してnSolver.4ソフトウェアにより決定した、TLR9Bによって 対 SD-101によって、影響を受ける免疫調節経路のパスウェイスコアを示す。図13E図13F及び図13Gに、図13Aで解析された同じ試料のqRT-PCRデータを示す。図13E図13F及び図13Gのデータは、PD-L1、IFNγ及びIP-10の各発現を向上させる上でのSD-101の優れた効果を示す。
【0147】
多重t検定を、図13Dに示すパスウェイスコア解析について実施した。一元配置ANOVAに続いてTukeyの事後検定を、図13E図13Gに示すqRT-PCR解析について実施した。図13Bから図13E図13Gの両方について、*はp<0.05を指示し、*****はp<0.0001を指示するが、対 Vehである。加えて、^はp<0.05を指示し、^^はp<0.01を指示し、^^^はp<0.001を指示するが、対 TLR9Bである。
【0148】
上に示すように、NanoString(登録商標)遺伝子発現解析が明らかにしたところは、SD-101によって、Veh及びTLR9Bの各アゴニストと比較して、より高い適応免疫、先天性免疫、免疫代謝の各スコアが誘導されること(p<0.05、n=3)、であった。SD-101では、Veh及びTLR9Bの各アゴニストと比較して、TLR、Th1、NFκB及びリンパ球活性化の各シグネチャの誘導がより大きかった(p<0.05、n=3)。SD-101は、Veh及びTLR9Bと比較して、PD-L1、IFNγ及びIP10の各遺伝子発現をいっそう誘導し(p<0.05、n=6)、加えて、Vehと比較してB細胞及びNK細胞の増殖もいっそう誘導した(p<0.05、n=6)。要約すると、SD-101では、Veh及びTLR9Bの各アゴニストと比較して、先天性免疫シグナル伝達経路、適応免疫シグナル伝達経路、TLR、Th1、NFκB及びリンパ球活性化の各シグネチャの誘導がより大きく、SD-101は、Veh及びTLR9Bアゴニストと比較して、PD-L1、IFNγ及びIP10の各遺伝子発現をいっそう誘導した。
【0149】
全体として、SD-101はMDSCの増殖を阻害し、M1マクロファージへ向けての分極を向上させた。広範な免疫活性化効果に加えて、MDSCに対する好ましいインパクトが示唆するところは、TLR9Cアゴニストは、効果的に送達される場合、敵対する肝腫瘍微小環境(TME)内で他の免疫療法剤のより良好な性能を可能にする能力を有すること、である。
【0150】
(実施例7)
実施例7では、クラスC TLR9アゴニストであるSD-101の注入を、TriNav(登録商標)注入システムを用いる圧力有効化肝動脈注入(PEDD/HAI)を介してヒト患者に施したが、この場合、ブドウ膜黒色腫肝転移、進行性肝細胞癌又は進行性肝内胆管癌のヒト患者においてCPI療法への奏効率を向上させることを目的とした。本研究はコホートA、B及びCを含んだ。コホートAにはSD-101を単剤として投与し(ここでn=9)、コホートBにはTriNavを介するSD-101に加えて抗PD-1(すなわち、ニボルマブ又はペンブロリズマブ)の全身投与(ここでn=6~12)を投与し、コホートCにはTriNavを介するSD-101に加えて抗PD-1(すなわち、ニボルマブ)の全身投与に加えて抗CTLA-4(すなわち、イピリムマブ)の全身投与(ここでn=6~12)を投与した。コホートA、B及びCのヒト患者に投与されるSD-101の量は、用量当たり約0.5mgから約8mgまでの用量漸増範囲(すなわち、0.5mg、2mg、4mg及び8mg)にわたるとすることができる。投薬レジメンは、2サイクルにわたってPEDDを介してSD-101を投与する工程を含み、この場合、各サイクルは、SD-101の週に1度の用量を3回(すなわち、連続する3週間わたって週当たり1回でSD-101の投与)及びSD-101の上記週に1度の投与の後の5週間の休薬期間を含む。
【0151】
図14に、コホートAの異なる5人の患者の血漿SD-101レベルの薬物動態プロファイルを例示するが、これは、SD-101単剤4mg投薬を受けて、上で論議の2サイクルにわたって投与された6用量のそれぞれについて注入後6時間にわたるものである。具体的には、TriNavによる注入を受けて、図に図示のように、血漿中に一過性レベルのSD-101(<2時間)が、TriNavによる注入を受けて検出された。全ての用量(図示せず)で、検出された全身曝露レベルは一過性(<4時間)であった。
【0152】
高SD-101レベルが、TriNavを用いるSD-101の注入を受けて、患者の肝臓において観察された。用量当たり8mgでSD-101を投与された患者では、SD-101が肝臓組織において最大2340ng/ml検出された。本ヒト臨床データが実証するところは、TriNavを使用して、全身曝露が制限されるという状態でより高い肝臓のSD-101レベルを達成することができること、である。
【0153】
加えて、SD-101治療を受けて、上記の様式でSD-101を投与された患者からのPMBC細胞を、複数の時点での遺伝子発現レベルについてNanoString(登録商標)によって解析した。具体的には、SD-101単剤2mgのコホートの3人の患者の肝転移における遺伝子発現レベルのNanoString(登録商標)解析により明らかになったところは、ISG15、IL-9、IFNα及びIL-2の各転写産物の増加並びにARG1及びIDOの各転写産物の低下であるが、この場合、マクロファージ、疲弊したCD8 T細胞、Th1細胞、及びTh1活性化のスコアが向上した。NanoString(登録商標)遺伝子発現データが示したところは、TriNavを介して送達されたSD-101は、血中の抗腫瘍ナチュラルキラー細胞の増殖に関する証拠と関連付けられ、これは全身免疫活性化と一致すること、であった。
【0154】
用量応答傾向が、IL-18、IFNγ、IP-10及び可溶性CD25について、2mg、4mg及び8mgの単剤用量レベルにわたる上昇とともに、血清サイトカインにおいて認められた。特に、図15に、第1のサイクルにわたり投与された3回用量のそれぞれの後における、SD-101単剤の投薬レベルの上昇(コホートA)及びCPI(すなわち、ニボルマブ又はペンブロリズマブ)との組合せでのSD-101(コホートB)を受けての血清IFNγの変化を、例示する。具体的には、図に、コホートA(SD-101の用量 .5mg、2mg、4mg及び8mgにての)及びコホートB(SD-101の用量2mgにての、ペンブロリズマブ又はニボルマブとの組合せで)について、TriNavを介するSD-101の注入を受けての血清IFNγレベルの上昇傾向、を図示する。血清IFNγはLuminexアッセイによって決定した。図15のデータは、TriNavを用いるSD-101の注入によりIFNγサイトカイン誘導がもたらされることを、実証する。
【0155】
図16に、上記の様式で単剤SD-101(コホートA)の異なる投薬レベルを受けての腫瘍内の単球性MDSC濃度の変化を例示する。具体的には、図に、(i)2mg用量のSD-101を投与された3人の患者、及び(ii)8mg用量のSD-101を投与された1人の患者について腫瘍内の単球性MDSC濃度の低減を、図示する。単球性MDSC濃度は多重免疫蛍光顕微鏡法によって決定した。腫瘍内の単球性MDSC濃度の低減の%は、最早利用可能時点(1日目又は57日目)から最遅利用可能時点(57日目又は100日目)まで算定した。図16のデータが実証するところは、TriNavを用いるSD-101の注入により、肝臓腫瘍の単球性MDSCレベルの低下で示されるように、MSDC解消がもたらされること、である。
【0156】
液体生検データが入手可能な、SD-101 2mgに加えてCPIを受けた患者の場合、7人中4人が1サイクルの治療後に循環腫瘍細胞の低下を実証したが、この場合、図17及び図18に下に示すように、5人中3人が第1のサイクル後に循環腫瘍DNA(ctDNA)の低下を示した。
【0157】
図17に、治療の第1のサイクル後にCPIとのSD-101 2mg投薬を受けての循環腫瘍細胞の変化を例示する。具体的には、図に図示するところは、7人の患者のうち4人がSD-101単剤2mg投薬を受けて循環腫瘍細胞レベルの低下を有し、それによって、腫瘍負荷の低下がもたらされたこと、である。
【0158】
図18に、治療の第1のサイクル後にSD-101単剤2mg投薬を受けての循環腫瘍DNA(ctDNA)の変化を例示する。具体的には、図に図示するところは、5人中3人の患者が、SD-101単剤2mg投薬を受けて循環腫瘍DNA(ctDNA)レベルの低下を有し、それによって、腫瘍負荷の低下がもたらされたこと、である。図18に提供されたデータは、図17と同じ最初の5人の患者についてのものである。
【0159】
(実施例8)
実施例8では、SQ又はIP送達された抗PD-1抗体と組合せでのPEDDを介して送達されたTLR9CアゴニストであるSD-101によって、マウスのLMが有意に低減した。担腫瘍肝臓から分離された腫瘍浸潤リンパ球(CD45+細胞)の更なる解析が明らかにしたところは、SD-101と組合せでの抗PD-1によって、肝臓のMDSCが有意に低減すること、であった。B細胞のパーセンテージ;CD3+T細胞及びM1/M2マクロファージの比は、Vehと比較して有意に向上した。腫瘍進行を制御する上で又は腫瘍微小環境のモジュレーションにおいて、SQとIPのCPI送達との間に有意差はなかった。本データが実証するところは、送達経路に関係なく、抗PD-1と組合せでのPEDDを介してのTLR9刺激はLMに関して同等の制御をもたらしたこと、である。また、クラスC TLR9アゴニストのPEDDは、TMEをプライミングしてLMにおいて免疫抑制を低減させる能力を有するが、この能力によって、投与経路に関係なく抗PD-1の抗腫瘍有効性を改善することができる。一部の例では、チェックポイント阻害剤は、TLRCアゴニストの投与前に全身又は皮下に投与される。
【0160】
本例では、SD-101を、腹腔内(IP)又は皮下(SQ)のいずれかで投与された抗PD-1抗体と組合せで、PEDDのマウスモデルにおいて送達して、CPI投与経路は肝内TLR9刺激が肝転移を制御する能力にインパクトを及ぼすかどうかを評価した。肝転移を発生させるために、C57/BL6マウスを脾臓内経路を介してMC38-Luc腫瘍細胞を用いて負荷し、これに続いて脾臓摘出を行った。1週間後、マウスを、PEDDを介してSD-101 10μg及びIP又はSQいずれかで送達された週2回の抗PD-1抗体を用いて治療した。腫瘍負荷をIVISでモニタリングし、D10で肝臓を採取してCD45+細胞を分離した。腫瘍負荷をIVISでモニタリングし、DIO上で肝臓を回収してCD45+細胞を分離した。骨髄由来抑制性細胞(MDSC)は、肝転移の状況で免疫抑制腫瘍微小環境(TME)の促進を通して、免疫療法の活性を鈍らせる。フローサイトメトリー解析を実施して、TME中のMDSC(CD11b+Grl+)、B細胞(B220)、T(CD3+)細胞、M1(F4/80+CD38+Egr2-)マクロファージ及びM2(F4/80+CD38-Egr2+)マクロファージを定量化した。
【0161】
SQ又はIPのいずれかを介して送達された抗PD-1抗体と組合せでのPEDDを介して送達されたSD-101によれば、対照と比較して肝転移の進行(D0に対する倍率)が有意に(p<0.0001)低減した(Veh:87.46である 対 SD-101 : 13.90である 対 SQ: 0.002である 対 IP: 0.04である)。担腫瘍肝臓から分離されたCD45+細胞のフローサイトメトリー解析が明らかにしたところは、SD-101と組合せでのCPIによって肝臓MDSCが有意に低減すること(Veh: 37.57%である 対 SQ: 7.18%である 対 IP: 10.18%である; p<0.05)、であった。B細胞のパーセンテージ(Veh: 8.32%である 対 SQ: 18.09%である 対 IP: 15.65%である: p<0.05);T細胞(Veh: 7.14%である 対 SD-101 : 15.18%である 対 SQ: 17.81%である 対 IP: 19.13%である: p<0.05)及びM1/M2マクロファージの比(Veh: 2.25である 対 SD-101 : 12.8である 対 SQ: 12.99である 対 IP: 12.90である: p<0.05)は、ビヒクル(Veh)と比較して有意に向上した。腫瘍進行を制御する上で又はTEMのモジュレーションにおいて、SQとIPのCPI送達との間に有意差はなかった。
【0162】
図19Aに、本実施例で説明の、IP又はSQいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答したマウス肝転移の腫瘍進行の変化を例示する。C57/BL6マウスを、脾臓内経路を介してMC38-Luc腫瘍細胞で負荷し、これに続いて脾臓摘出を行ってLMを発生させた。1週間後、マウスを、PEDDを介してSD-101 10μg及びIP又はSQいずれかで送達されたD0、D2、D4及びD7での抗PD-1抗体を用いて治療した。腫瘍負荷は、インビボイメージングシステム(IVIS)によってモニタリングし、D0腫瘍負荷に対する倍率変化について報告した。二元配置ANOVAに続いてTukeyの事後検定を、図19に示すデータに関して実施したが、ここで、****はp<0.001を指示するが、対 D10 Vehである。
【0163】
図19Bに、治療後10日目にてのビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答したマウス肝転移の腫瘍負荷の変化を、例示する。IVIS値を光子/秒として報告した。二元配置ANOVAに続いてTukeyの事後検定を、図19Bに示すデータに関して実施したが、ここで、#はp<0.001を指示するが、対 D10 Vehであり、^はp<0.0001を指示するが、対 D10 Vehである。
【0164】
図19Cに、ビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与による治療を開始した後の、様々な時点にわたってIVISによってキャプチャされた画像を、例示する。図19Dに、実施例8による、ビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与による治療の10日後に採取された肝臓のキャプチャされた画像を、提供する。
【0165】
図20Aに、本実施例に記載の、治療後10日目にビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答したLM中に存在するMDSCの変化を、例示する。10日目(D10)に、肝臓を回収してCD45+細胞を分離した。特に、肝臓をD10に回収し、コラーゲナーゼ消化後にNPCを分離した;CD45+細胞を磁気ビーズを使用して分離した。フローサイトメトリー(FC)を、CD11b;GR1、NK1.1、B220、PD-L1に対する抗体を使用して行った。FC解析を行って、MDSC(CD11b+Grl+)を定量化した。
【0166】
図20Bに、治療後10日目にビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答した、肝転移から分離されたCD45+細胞のうちのB(B220+)細胞の変化を、治療後10日目にビヒクルと比較した。図20Cに、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答した、肝転移から分離されたCD45+細胞のうちのT(CD3+)細胞の変化を、例示する。図20Dに、肝転移から分離されたCD45+細胞のうちのM1マクロファージ及びM2マクロファージの変化を例示する。治療後10日目にビヒクルと比較した、IP又はSQのいずれかで送達された抗PD-1抗体と組合せでのSD-101のPEDD投与に応答した、FCによって定量化された腫瘍微小環境中のM1(F4/80+CD38+Egr2-)マクロファージ及びM2(F4/80+CD38-Egr2+)マクロファージ。上記の実施例8のデータから見て、IP又はSQで送達されたCPIとの組合せでの、PEDDを介して投与されたSD-101によって、肝転移の制御がもたらされたが、この場合、肝内TLR9刺激によって、いずれの経路を介してもCPIが等しく有効になった。クラスC TLR9アゴニストのPEDDによって、TMEがプライミングされて肝転移における免疫抑制が低減し、このことによって、投与経路に関係なくCPIの抗腫瘍有効性を改善することができると考えられる。
【0167】
上記は、本開示の原理を例示するにすぎない。本明細書の教示に鑑みて、説明される実施形態の様々な変更及び改変が当業者であれば明らかになろう。当業者であれば、多数のシステム、構成、及び手順を案出することができ、これらについては、たとえ本明細書で明示的に示されず又は説明されていなくても、本開示の原理を実施するものであり、したがって本開示の精神及び範囲に含まれるものであることが諒解されよう。当業者であれば理解すべきであるように、様々な異なる例示的な実施形態が、互いに一緒に、並びに互いに互換的に使用されうる。加えて、本明細書を含めて、本開示で使用されるある特定の用語は、限定されないが、例えば、データ及び情報を含めて、ある特定の事例では同義的に使用されうる。互いに同義でありうるこのような単語及び/又はその他の単語については本明細書で同義的に使用される場合もあり、一方、そのような単語が同義的に使用されないことが意図される場合もある、事例がありうることを理解されたい。更に、従来技術の知識が上記で参照により本明細書に明示的に組み込まれていないという範囲で、従来技術の知識は、その全体が本明細書に明示的に組み込まれる。参照される全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
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図11-1】
図11-2】
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図13-2】
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図19-2】
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【配列表】
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【国際調査報告】