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▶ オプティモーション インプランツ リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】人工膝関節
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543451
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(85)【翻訳文提出日】2024-09-24
(86)【国際出願番号】 US2023010870
(87)【国際公開番号】W WO2023141076
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】17/581,941
(32)【優先日】2022-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523362021
【氏名又は名称】オプティモーション インプランツ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴォン ビン グエン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ライナソン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC13
4C097CC17
4C097EE02
4C097SC08
(57)【要約】
患者の第1の膝関節に移植するための人工膝関節システムであり、膝関節には状態が有り、人工膝関節システムは、脛骨ベースプレートコンポーネント、大腿骨関節面を有する大腿骨コンポーネント、および脛骨インサートを含み、脛骨インサートは、大腿骨関節面と関節接合するように構成された脛骨関節面を含み、脛骨関節面は、脛骨外側区画と非対称な脛骨内側区画を含み、脛骨関節面は、大腿骨関節面と協働して、状態の有る第1の膝関節の運動学を適合させるように成形され、脛骨関節面は、状態の無い第2の側の第2の膝関節への移植にも適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の第1の膝関節に移植するための人工膝関節システムであって、前記第1の膝関節は大腿骨および脛骨を含み、前記第1の膝関節には状態が有り、前記第1の膝関節は、右側および左側から選択された、患者の第1の側にあって患者の第2の側にはなく、前記第2の側は、前記右側および前記左側の他方を備え、前記人工膝関節システムは、
前記脛骨に移植されるように構成された脛骨ベースプレートコンポーネントであって、インサート接続部を含む脛骨ベースプレートコンポーネントと、
前記大腿骨に移植されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、大腿骨関節面を含む大腿骨コンポーネントと、
前記脛骨ベースプレートコンポーネントの前記インサート接続部に取り付け可能なベースプレート接合部を備える脛骨インサートであって、前記大腿骨関節面と関節接合するように構成された脛骨関節面を備えた脛骨インサートと、を含み、
前記脛骨関節面は、脛骨内側区画および前記脛骨内側区画に非対称である脛骨外側区画を含み、
前記脛骨関節面は、大腿骨関節面と協働して状態の有る第1の膝関節の運動学を適応させるように成形され、
前記脛骨関節面は、前記第2の側の、前記状態の無い第2の膝関節に移植するのに適している、人工膝関節システム。
【請求項2】
前記大腿骨コンポーネントは、前記第1の側に構成され、前記脛骨インサートは、患者の前記第2の側に構成される、請求項1に記載の人工膝関節システム。
【請求項3】
前記第1の膝関節は、患者の右膝関節であり、
前記第2の膝関節は、前記患者の左膝関節であり、
前記脛骨インサートは、前記左膝関節用に構成されて、前記右膝関節の前記脛骨ベースプレートコンポーネントの前記インサート接合部に取り付けられ、
別の脛骨インサートは、右膝関節用に構成される、請求項1に記載の人工膝関節システム。
【請求項4】
前記脛骨関節面は、前記状態が外反膝関節である前記第1の膝関節の屈曲中に前記脛骨内側区画内で脛骨大腿骨回転を容易にする、請求項1に記載の人工膝関節システム。
【請求項5】
前記脛骨関節面は、前記状態が内反膝関節である前記第1の膝関節の屈曲中に中外側安定性を調整する、請求項1に記載の人工膝関節システム。
【請求項6】
前記脛骨関節面は、前記第1の膝関節の外側側副靭帯に対する拘束を増し、前記第1の膝関節の内側側副靭帯に作用する張力を減少させる、請求項5に記載の人工膝関節システム。
【請求項7】
前記脛骨内側区画は、内側周囲、内側高点、および内側低点を含み、前記脛骨外側区画は、外側周囲、外側高点、および外側低点を含む、請求項1に記載の人工膝関節システム。
【請求項8】
前記大腿骨関節面は、大腿骨内側区画および大腿骨内側区画を含み、前記脛骨内側区画は、屈曲中に外側滞留点で前記大腿骨外側区画と係合し、前記脛骨外側区画は、屈曲中に内側滞留点で前記大腿骨内側区画と係合する、請求項1に記載の人工膝関節システム。
【請求項9】
前記外側滞留点が前方および外向きに移動し、前記内側滞留点が後方および外向きに移動する、請求項8に記載の人工膝関節システム。
【請求項10】
前記大腿骨内側区画および前記大腿骨外側区画が対称である、請求項8に記載の人工膝関節システム。
【請求項11】
前記脛骨インサートは、十字保持脛骨インサート、拘束された顆状膝脛骨インサート、後部安定化脛骨インサート、および内側-外側非対称脛骨インサートのうちの1つを含み、前記状態は、内反状態および外反状態のうちの1つを含む、請求項1に記載の人工膝関節システム。
【請求項12】
患者の膝関節に移植するための人工膝関節システムであって、前記膝関節は大腿骨および脛骨を含み、前記膝関節には状態が有り、前記膝関節は、右側および左側から選択された、前記患者の第1の側にあって、前記患者の第2の側にはなく、前記第2の側は前記右側および前記左側の他方を含み、前記人工膝関節システムは、
前記脛骨に移植されるように構成された脛骨ベースプレートコンポーネントであって、インサート接続部を含む、前記脛骨ベースプレートコンポーネントと、
前記大腿骨に移植されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、大腿骨関節面を含む、前記大腿骨コンポーネントと、
前記脛骨ベースプレートコンポーネントの前記インサート接続部に取り付け可能な右側脛骨インサートであって、前記右側脛骨インサートは、前記大腿骨関節面と関節接合し、前記右側膝関節の屈曲または伸長中に前記右側脛骨インサートの脛骨内側区画を通る前記脛骨の長手方向軸周りに前記脛骨を回転させるように構成された脛骨関節面を備える、前記右側脛骨インサートと、
前記脛骨ベースプレートコンポーネントの前記インサート接続部に取り付け可能な左側脛骨インサートであって、前記左側脛骨インサートは、前記大腿骨関節面と関節接合し、前記左側膝関節の屈曲または伸長中に前記左側脛骨インサートの脛骨内側区画を通る長手方向軸周りに前記脛骨を回転させるように構成された脛骨関節面を備える、前記左側脛骨インサートと、を含み、
右側脛骨インサートの脛骨関節面は、大腿骨関節面と協働して、膝関節が左側膝関節である場合の状態のある膝関節の運動学を変更するように成形され、
左側脛骨インサートの脛骨関節面は、大腿骨関節面と協働して、膝関節が右側膝関節である場合の状態のある膝関節の運動学を変更するように成形される、人工膝関節システム。
【請求項13】
前記膝関節は前記患者の右膝関節であり、
左側脛骨インサートは、左側脛骨インサートが大腿骨関節面を脛骨内側区画内に拘束し、前記状態を緩和するように、右膝関節の脛骨ベースプレートコンポーネントのインサート接合部に取り付けられる、請求項12に記載の人工膝関節システム。
【請求項14】
前記脛骨関節面は、前記状態が外反膝関節である前記膝関節の屈曲中に、前記脛骨内側区画内で脛骨大腿骨回転を容易にする、請求項12に記載の人工膝関節システム。
【請求項15】
前記脛骨関節面は、前記状態が内反膝関節である前記膝関節の屈曲中の内外側安定性を調整する、請求項12に記載の人工膝関節システム。
【請求項16】
前記脛骨関節面は、前記膝関節の外側側副靭帯の拘束を増加させ、前記膝関節の内側側副靭帯に対する張力を減少させる、請求項15に記載の人工膝関節システム。
【請求項17】
前記脛骨内側区画が、内側周囲、内側高点、および内側低点を含み、前記右側脛骨インサートおよび前記左側脛骨インサートのそれぞれが、外側周囲、外側高点、および外側低点を含む脛骨外側区画を含む、請求項12に記載の人工膝関節システム。
【請求項18】
前記右側脛骨インサートおよび前記左側脛骨インサートのそれぞれは、脛骨外側区画および脛骨内側区画を含み、前記大腿骨関節面は、大腿骨内側区画および大腿骨外側区画外を含み、前記脛骨内側区画は、屈曲中に外側滞留点で前記大腿骨外側区画と係合し、および前記脛骨外側区画は、屈曲中に内側滞留点で前記大腿骨内側区画と係合する、請求項12に記載の人工膝関節システム。
【請求項19】
状態の有る膝関節の運動学を適合させるための方法であって、前記膝関節は大腿骨および脛骨を含み、前記膝関節は、右側と左側から選択される、患者の第1の側にあって、前記患者の第2の側にはなく、前記第2の側は、前記右側および前記左側の他方を含み、前記方法は、
前記膝関節に前記状態が有ることを決定することと、
大腿骨コンポーネントを大腿骨に移植することであって、前記大腿骨コンポーネントは、大腿骨関節面を含む、前記移植することと、
脛骨ベースプレートコンポーネント脛骨に移植することであって、前記脛骨ベースプレートコンポーネントは、インサート接続部を含む、前記移植することと、
前記状態に基づいて、前記第2の側用に構成された脛骨インサートを選択することであって、前記脛骨インサートは、前記脛骨ベースプレートコンポーネントの前記インサート接続部に取り付け可能なベースプレート接合部を含み、前記脛骨インサートは、膝関節の運動学を適合させるために前記大腿骨関節面と関節接合するように構成された脛骨関節面を含む、前記選択することと、
前記選択された脛骨インサートを前記脛骨ベースプレートに接続して、前記状態に基づいて前記膝関節の運動学を適合させることと、
を含む、方法。
【請求項20】
膝関節の状態が、内反状態、外反状態、および均衡のとれた状態のうちの1つを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
患者の膝関節に移植するための人工膝関節システムであって、前記膝関節は大腿骨および脛骨を含み、前記膝関節には状態が有り、膝関節は、右側および左側から選択される、前記患者の第1の側にあって、前記患者の第2の側にはなく、前記第2の側は、前記右側および前記左側の他方を含む、前記人工膝関節システムは、
大腿骨に移植されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、前記大腿骨コンポーネントは大腿骨関節面を含む、前記大腿骨コンポーネントと、
脛骨に取り付け可能な右側脛骨コンポーネントであって、前記右側脛骨コンポーネントは、前記大腿骨関節面と関節接合し、右側膝関節の屈曲または伸展中に前記右側脛骨コンポーネントの脛骨内側区画を通る長手方向軸周りに脛骨を回転させるように構成された脛骨関節面を備える、前記右側脛骨コンポーネントと、
脛骨に取り付け可能な左側脛骨コンポーネントであって、前記左側脛骨コンポーネントは、前記大腿骨関節面と関節接合し、左側膝関節の屈曲または伸展中に前記左側脛骨コンポーネントの脛骨内側区画を通る長手方向軸周りに脛骨を回転させるように構成された脛骨関節面を備える、前記左側脛骨コンポーネントと、
を含み、
前記右側脛骨コンポーネントの前記脛骨関節面は、大腿骨関節面と協働して、膝関節が左側膝関節である場合の状態のある膝関節の運動学を変更するように成形され、
前記左側脛骨コンポ―ネントの前記脛骨関節面は、大腿骨関節面と協働して、膝関節が右側膝関節である場合の状態のある膝関節の運動学を変更するように成形される、人工膝関節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手術装置、システム、器具、および方法に関する。より具体的には、本開示は、整形外科用の膝関節置換手術装置、器具、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然な膝の解剖学的構造の折衷的レベルに応じて実装され得るいくつかの膝置換の選択肢が存在する。膝の解剖学的構造の複合体は、大腿骨遠位端と脛骨近位端との間の膝関節、および周囲の前後十字靭帯(ACL、PCL)、ならびに膝関節に支持および安定を提供する内側および外側の側副靭帯(MCL、LCL)を含む。1つ以上の靭帯が、例えば、傷害、疾患、または老化によって損なわれる場合、膝関節を置き換えるために人口膝関節のシステムないしアセンブリが移植されることがある。
【0003】
典型的な人口膝関節システムは、脛骨インサートと呼ばれ得る、脛骨固定コンポーネント、脛骨関節コンポーネントや大腿骨固定コンポーネントを含む。ある患者は、許容される健康な膝とは異なる、片膝または両膝に様々な状態を経験している。例えば、ある患者は、内反状態の右側膝であり、一方、別の患者は、外反状態の右側膝であり得る。もちろん、他の患者が、左膝または両方の膝で、1つ以上の内反および/または外反の状態であることもある。そのような患者の場合、従来の人工膝関節を移植すると、屈曲中に膝関節の脛骨大腿骨回転が制限される場合がある。または、従来の人工膝関節を移植すると、屈曲中に膝関節の中外側の安定性が低下することがある。
【0004】
従って、そのような患者は、患者の状態のある膝を屈曲する際に脛骨大腿骨回転を容易にする人工膝関節を必要とする。そのような患者はまた、屈曲する際に屈曲中の中外側安定性を増す人工膝関節を必要とし得る。本開示は、これらのニーズに対処するものである。
【発明の概要】
【0005】
本開示の様々な装置、システムおよび/または方法は、当該技術の現状に応答して、特に、現在用いることが可能な技術によってまだ完全には解決されていない当該技術における問題およびニーズに応答して開発されたものである。
【0006】
本開示の1つの一般的な態様は、患者の第1の膝関節に移植するための人工膝関節システムを含むことができる。人工膝関節システムは、脛骨に移植されるように構成された脛骨ベースプレートコンポーネントであって、インサート接合部を含む脛骨ベースプレートコンポーネントと、大腿骨に移植されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、大腿骨関節面を含む大腿骨コンポーネントと、脛骨ベースプレートコンポーネントのインサート接合部に取り付け可能なベースプレート接合部を含む脛骨インサートであって、大腿骨関節面と関節接合するように構成された脛骨関節面を含む脛骨インサートと、を含み、脛骨関節面は、脛骨内側区画および脛骨内側区画と非対称な脛骨外側区画とを含み、脛骨関節面は、状態のある第1の膝関節の運動学を適応させるために大腿関節面と協働するように成形され、脛骨関節面は、第2の側の状態の無い第2の膝関節への移植に適し得る。
【0007】
実施態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。人工膝関節システムは、第1の側のために構成された大腿骨コンポーネントを含み、脛骨インサートは患者の第2の側のために構成され得る。特定の実施形態では、第1の膝関節は、患者の右膝関節であり、第2の膝関節は、患者の左膝関節であり、脛骨インサートは、左膝関節用に構成され、右膝関節の脛骨ベースプレートコンポーネントのインサート接合部に取り付けられ、別の脛骨インサートは、右膝関節用に構成され得る。
【0008】
脛骨関節面は、状態が外反膝関節である第1の膝関節の屈曲中に、脛骨外側区画内での脛骨大腿骨回転を容易にし得る。脛骨関節面は、状態が内反膝関節である第1の膝関節の屈曲中に中外側安定性を調節し得る。脛骨関節面は、第1の膝関節の外側側副靭帯の拘束を増し、第1の膝関節の内側側副靭帯に作用する張力を減少させ得る。
【0009】
脛骨内側区画は、内側周囲、内側高点、および内側低点を含み得、脛骨外側区画は、外側周囲、外側高点、および外側低点を含み得る。
【0010】
大腿骨関節面は、大腿骨内側区画および大腿骨外側区画を含み得、脛骨内側区画は、屈曲中に外側滞留点で大腿骨外側区画に係合し、脛骨外側区画は、屈曲中に内側滞留点で大腿骨内側区画に係合する。外側滞留点は前方および外側に移動し、内側滞留点は後方および外側に移動する。一実施形態では、大腿骨内側区画および大腿骨外側区画は対称である。脛骨インサートは、十字保持脛骨インサート、拘束された顆状膝脛骨インサート、後部安定化脛骨インサート、および内側-外側非対称脛骨インサートのうちの1つを含み、状態は、内反状態および外反状態のうちの1つを含み得る。
【0011】
本開示の1つの一般的な態様は、患者の膝関節に移植するための人工膝関節システムを含むことができる。人工膝関節システムは、脛骨に移植されるように構成された脛骨ベースプレートコンポーネントであって、インサート接合部を含む脛骨ベースプレートコンポーネントと、大腿骨上に移植されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、大腿骨関節面を含む大腿骨コンポーネントと、脛骨ベースプレートコンポーネントのインサート接合部に取り付け可能な右側脛骨インサートであって、右側膝関節の屈曲または伸長中に、大腿骨関節面と関節接合し、右側脛骨インサートの脛骨内側区画を通る長手方向軸の周りに脛骨を回転させるように構成された脛骨関節面を含む右側脛骨インサートと、脛骨ベースプレートコンポーネントのインサート接合部に取り付け可能な左側脛骨インサートであって、大腿骨関節面と関節接合し、左側脛骨インサートの屈曲または伸長中に、左側脛骨インサートの脛骨内側区画を通る長手方向軸の周りに脛骨を回転させるように構成された脛骨関節面を含み得る左側脛骨インサートと、右側脛骨インサートの脛骨関節面であって、膝関節が左側膝関節である場合の状態の有る膝関節の運動学を変更するために大腿骨関節面と協働するように成形された右側脛骨インサートの脛骨関節面と、左側脛骨インサートの脛骨関節面であって、膝関節が右側膝関節である場合の状態の有る膝関節の運動学を変更するために大腿骨関節面と協働するように成形された左側脛骨インサートの脛骨関節面と、を含み得る。
【0012】
実施態様は1つまたは複数の以下の特徴を含み得る。膝関節が患者の右膝関節であり、左側脛骨インサートが脛骨内側区画内の大腿骨関節面を拘束して状態を緩和するように、左側脛骨インサートが右膝関節の脛骨ベースプレートコンポーネントのインサート接合部に取り付けられている人工膝関節システム。脛骨関節面は、状態が外反膝関節である膝関節の屈曲中に、脛骨内側区画内での脛骨大腿骨回転を容易にし得る。脛骨関節面は、状態が内反膝関節である膝関節の屈曲中に中外側安定性を調節し得る。脛骨関節面は、膝関節の外側側副靭帯の拘束を増加させ、膝関節の内側側副靭帯に作用する張力を減少させ得る。脛骨内側区画は、内側周囲、内側高点、および内側低点を含み得、右側脛骨インサートおよび左側脛骨インサートのそれぞれは、外側周囲、外側高点、および外側低点を含む脛骨外側区画を含み得る。右側の脛骨インサートおよび左側の脛骨インサートのそれぞれは脛骨外側区画および脛骨内側区画を含み、大腿骨関節面は、大腿骨内側区画および大腿骨外側区画を含み、屈曲中に脛骨内側区画は外側滞留点で大腿骨外側区画と係合し、屈曲中に脛骨外側区画は内側滞留点で大腿骨内側区画と係合する。
【0013】
本開示の1つの一般的な態様は、状態の有る膝関節の運動学を適合させるための方法を含むことができる。この方法は、膝関節に状態が有ることを決定することと、大腿骨コンポーネントを大腿骨に移植することであって、大腿骨コンポーネントは、大腿骨関節面を含むことと、脛骨ベースプレートコンポーネントを脛骨に移植することであって、脛骨ベースプレートコンポーネントは、インサート接合部を含むことと、状態に基づいて、第2の側に構成される脛骨インサートを選択することであって、脛骨インサートは、脛骨ベースプレートコンポーネントのインサート接合部に取り付け可能なベースプレート接合部を含み、脛骨インサートは、膝関節の運動学を適合させるために大腿骨関節面と関節接合するよう構成されることと、選択された脛骨インサートを脛骨ベースプレートに接続して、状態に基づいて膝関節の運動学を適合させることと、含むことができる。
【0014】
実施態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。膝関節の状態が、内反状態、外反状態、および均衡のとれた状態のうちの1つを含み得る方法。
【0015】
本開示の1つの一般的な態様は、患者の膝関節に移植するための人工膝関節システムを含むことができる。人工膝関節システムは、大腿骨に移植されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、大腿骨関節面を含む大腿骨コンポーネントと、脛骨に取り付け可能な右側脛骨コンポーネントであって、右側膝関節の屈曲または伸展中に、大腿骨関節面と関節接合し、右側脛骨コンポーネントの脛骨内側区画を通る長手方向軸の回りに脛骨を回転させるように構成された脛骨関節面を含む右側脛骨コンポーネントと、脛骨に取り付け可能な左側脛骨コンポーネントであって、左側膝関節の屈曲または伸長中に、大腿骨関節屈曲面と関節接合し、左側脛骨コンポーネントの脛骨内側区画を通る長手方向軸の周りに脛骨を回転させるように構成された脛骨関節面を含む左側脛骨コンポーネントと、膝関節が左側膝関節を含む場合、右側脛骨コンポーネントの脛骨関節面であって、大腿骨関節面と協働して、状態の有る膝関節の運動学を変化させるように成形される右側脛骨コンポーネントの脛骨関節面と、膝関節が右側膝関節を含む場合、左側脛骨コンポーネントの脛骨関節面であって、状態が有る膝関節の運動学を変化させるように大腿骨関節面と協働するように成形される左側脛骨コンポーネントの脛骨関節面と、を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の例示的な実施形態の利点、性質、および付加的な特徴は、添付の図面と併せて、以下の説明および添付の特許請求の範囲からよりj十分に明らかになる。これらの図面は例示的な実施形態のみを示し、従って、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解して、本開示の例示的な実施形態は、添付の図面の使用を通じて追加の特異性および詳細とともに説明される。
図1A図1Aは、拡張状態で結合された後部安定化大腿骨コンポーネントと脛骨インサートを含む、本開示のアセンブリの斜視背面図である。
図1B図1Bは、屈曲状態の図1Aのアセンブリの正面斜視図である。
図2図2は、図1Aのアセンブリの分解図である。
図3A図3Aは、図1Aの脛骨インサートの後方図である。
図3B図3Bは、図1Aの脛骨インサートの前方図である。
図3C図3Cは、図1Aの脛骨インサートの上方図である。
図3D図3Dは、図1Aの脛骨インサートの内側側面図である。
図4図4は、図1Aのアセンブリの上面図である。
図5図5は、図6の線B-Bに沿った、図1Aのアセンブリを、上から下に見た断面図である。
図6図6は、図5の線A-Aに沿った、図1Aのアセンブリの後方断面図である。
図7図7は、図8の線C-Cに沿った、図1Bのアセンブリを、上から下に見た断面図である。
図8図8は、図7の線D-Dに沿った、図1Bのアセンブリの後方断面図である。
図9図9は、十字保持大腿骨コンポーネントと拡張状態で結合された図1Aの脛骨インサートを含む、本開示のアセンブリの背面斜視図である。
図10図10は、図9のアセンブリの分解背面斜視図である。
図11A図11Aは、本開示の別の脛骨インサートの背面斜視図である。
図11B図11Bは、図11Aの脛骨インサートの上面図である。
図11C図11Cは、図11Aの脛骨インサートの後面図である。
図11D図11Dは、図11Aの脛骨インサートの前面図である。
図11E図11Eは、図11Aの脛骨インサートの底面図である。
図12A図12Aは、本開示の別の脛骨インサートの背面斜視図である。
図12B図12Bは、図12Aの脛骨インサートの上面図である。
図12C図12Cは、図12Aの脛骨インサートの底面図である。
図12D図12Dは、図12Aの脛骨インサートの後面図である。
図12E図12Eは、図12Aの脛骨インサートの前面図である。
図12F図12Fは、図12Aの脛骨インサートの内側側面図である。
図13図13は、本明細書に開示される脛骨インサートと様々な大腿骨コンポーネントとの互換性を示す表である。
図14図14は、後部安定化大腿骨コンポーネントと後部安定化脛骨インサートを含む、本開示の別のアセンブリの分解背面図である。
図15図15は、図14のアセンブリの別の分解背面図である。
図16A図16Aは、図14Aの脛骨インサートの後方図である。
図16B図16Bは、図14Aの脛骨インサートの前方図である。
図16C図16Cは、図14Aの脛骨インサートの上方図である。
図16D図16Dは、図14Aの脛骨インサートの内側図である。
図17図17は、キールを備えた十字保持大腿骨コンポーネントと図14の後部安定化脛骨インサートを含む、本開示の別のアセンブリの分解背面図である。
図18図18は、図17のアセンブリの別の分解背面図である。
図19図19は、キールのない十字保持大腿骨コンポーネントと図14の後部安定化脛骨インサートを含む、本開示の別のアセンブリの分解背面図である。
図20図20は、図19のアセンブリの別の分解背面図である。
図21A図21Aは、本開示の別の脛骨インサートの背面斜視図である。
図21B図21Bは、図21Aの脛骨インサートの上面図である。
図21C図21Cは、図21Aの脛骨インサートの後面図である。
図21D図21Dは、図21Aの脛骨インサートの前面図である。
図21E図21Eは、図21Aの脛骨インサートの底面図である。
図22A図22Aは、本開示の別の脛骨インサートの背面斜視図である。
図22B図22Bは、図22Aの脛骨インサートの上面図である。
図22C図22Cは、図22Aの脛骨インサートの底面図である。
図22D図22Dは、図22Aの脛骨インサートの後面図である。
図22E図22Eは、図22Aの脛骨インサートの前面図である。
図22F図22Fは、図12Aの脛骨インサートの内側側面図である。
図23A図23Aは、本開示の1つまたは複数の増強部に結合された図14の大腿骨コンポーネントの正面斜視図である。
図23B図23Bは、図23Aの大腿骨コンポーネントの内側側面図である。
図24A図24Aは、非対称脛骨インサートを備えた人工膝アセンブリの後方分解図である。
図24B図24Bは、図24Aの非対称脛骨インサートの後方図である。
図24C図24Cは、図24Aの非対称脛骨インサートの前面図である。
図24D図24Dは、図24Aの非対称脛骨インサートの側面図である。
図24E図24Eは、図24Aの非対称脛骨インサートの内側図である。
図24F図24Fは、図24Aの非対称脛骨インサートの前面斜視図である。
図25A図25Aは、0度の屈曲状態における人工膝アセンブリの後方斜視図である。
図25B図25Bは、内側-外側断面が表された図25Aの人工膝アセンブリの後方斜視図である。
図25C図25Cは、図25Bの人工膝アセンブリの後方図である。
図25D図25Dは、外側関節面を通る前方‐後方断面を表した、図25Aの人工膝アセンブリの外側側面図である。
図25E図25Eは、内側関節面を通る前方-後項断面が表された、図25Aの人工膝アセンブリの内側側面図である。
図26A図26Aは、45度の屈曲状態における人工膝アセンブリの後方斜視図である。
図26B図26Bは、内側-外側断面が表された図26Aの人工膝アセンブリの後方斜視図である。
図26C図26Cは、図26Bの人工膝アセンブリの後方図である。
図26D図26Dは、外側関節面を通る前方-後方断面が表された、図26Aの人工膝アセンブリの外側図である。
図26E図26Eは、内側関節面を通る前方-後方断面が表された、図26Aの人工膝アセンブリの内側図である。
図27A図27Aは、90度の屈曲状態における人工膝アセンブリの後方斜視図である。
図27B図27Bは、内側-外側断面が表された、図27Aの人工膝アセンブリの後方斜視図である。
図27C図27Cは、図27Bの人工膝アセンブリの後方図である。
図27D図27Dは、外側関節面を通る前方-後方断面が表された、図27Aの人工膝アセンブリの外側側面図である。
図27E図27Eは、内側関節面を通る前方-後方断面が表された、図27Aの人工膝アセンブリの内側側面図である。
図28A図28Aは、非対称脛骨インサートを備えた人工膝アセンブリの後方分解図である。
図28B図28Bは、図28Aの非対称脛骨インサートの後方図である。
図28C図28Cは、図28Aの非対称脛骨インサートの前面図である。
図28D図28Dは、図28Aの非対称脛骨インサートの外側側面図である。
図28E図28Eは、図28Aの非対称脛骨インサートの内側側面図である。
図28F図28Fは、図28Aの非対称脛骨インサートの前面斜視図である。
図29図29は、本開示の一実施形態による人工膝システムの前面斜視図である。
図30図30は、本開示の別の実施形態による人工膝システムの前面斜視図である。
図31図31は、本開示の一実施形態による人工膝システムの前面斜視図である。
図32図32は、本開示の別の実施形態による人工膝システムの前面斜視図である。
図33A図33Aは、本開示の一実施形態による右側脛骨インサートの上面図である。
図33B図33Bは、本開示の一実施形態による左側脛骨インサートの上面図である。
図34図34は、本開示の別の実施形態による人工膝システムの前面斜視図である。
図35図35は、状態の有る膝関節の運動学を適合させるための1つの例示的な方法のフローチャートである。
【0017】
図面は、本開示の概念を説明することを目的としており、縮尺通りでない場合があることを理解されたい。さらに、図面は例示的な実施形態を示しており、本開示の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の例示的な実施形態は、図面を参照することによって最もよく理解され、図面全体を通して、同様の部品は同様の数字で示されている。本願の図に概略的に説明および図示されている本開示の構成要素は、多種多様な異なる構成で配置および設計できることは容易に理解されよう。従って、図に表されるような装置、器具、システム、および方法の実施形態の以下のより詳細な説明は、特許請求される本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、単に本開示の例示的な実施形態を表すものである。
【0019】
本明細書では、指示内容および記述用語について医学の標準的な水準を用いている。これらの用語は一般的に人体を指すために使用されるが、特定の用語は一般に物理的な対象に適用することができる。3つの相互に垂直な基準面の標準系が用いられる。矢状面によって、体が左右の部分に分けられる。冠状面によって、体が前部と後部に分けられる。横断面によって、体が上部と下部に分けられる。正中矢状面、正中冠状面、または正中横断面によって、体は等しい部分に分けられ、左右対称となる場合がある。
【0020】
矢状面と冠状面の交点によって、上下軸ないし頭尾軸が規定される。矢状面と横断面の交点によって、前後軸が規定される。冠状面と横断面の交点によって、内側-外側が規定される。上下軸ないし頭尾軸、前後軸、および内外軸は相互に垂直である。前とは、体の前方に向かう側を意味する。
【0021】
後とは、体の後方に向かう側を意味する。上ないし頭側は頭部に向かう側を意味する。下ないし尾は足ないし尾部に向かう側を意味する。内側とは、体の正中線に向かう側、特に、体の左右対称面に向かう側を意味する。外側とは、体の正中線から離れていく側、または体の左右対称面から離れていく側を意味する。軸側とは、体の中心軸に向かう側を意味する。背軸側とは、体の中心軸から離れていく側を意味する。同側とは、体に関して同じ側を意味する。対側とは、体に関して反対側を意味する。近位とは、体幹に向かう側を意味する。近位とは、また、ユーザまたは操作者に向かう側を意味する場合もある。遠位とは、体幹から離れる側を意味する。遠位は、また、ユーザまたは操作者から離れる側を意味する場合もある。背側とは、足の上に向かう側を意味する。底側とは、足の裏に向かう側を意味する。前行とは、近位の配置/位置から遠位の配置/位置へ前方に移動すること、または前方向に移動することを意味する。逆行とは、遠位の配置/位置から近位の配置/位置へ後方に移動すること、または後方向に移動することを意味する。矢状は、身体を左半分または右半分に分割する、患者の解剖学的構造の正中線を指す。矢状面は体の中心にあり得、身体を2つの半分に分割する。
【0022】
本明細書で用いられる場合、“配備する”または“配備”は、インプラントまたは人工器官を、身体の一部、身体部分、および/または患者に挿入するための行為、動作、処理、システム、方法、手段、または装置を指す。“配備する”または“配備”はまた、何かを治療目的で用いらせるための行為、動作、処理、システム、方法、手段、または装置を指すことができる。機器、システム、コンポーネント、薬剤、薬物、化合物、または栄養素は、人間の操作者、機械的機器、自動化システム、コンピュータシステムまたはプログラム、ロボットシステムなどによって配備され得る。
【0023】
本明細書で用いられる場合、“インプラント”は、欠損した生物学的構造を置き換える、損傷した生物学的構造を支持する、または既存の生物学的構造を強化するために製造された医療機器を指す。医療用インプラントは人工機器である。身体に接触するインプラントの表面は、チタン、ステンレス鋼、炭素繊維、別の金属合金、シリコーン、またはアパタイト、または最も機能的なものに応じてこれらの任意の組み合わせなどの、生物医学的材料で作製されてもよく、またはそれらを含んでもよい。場合によっては、インプラントには、人工ペースメーカーや人工内耳などの電子機器が含まれる。インプラントの中には、移植可能な錠剤または薬物溶出ステントの形態の皮下薬物送達デバイスなど生体活性のものもある。整形外科用インプラントは、患者の体の骨および/または関節の問題を緩和するために用いられ得る。整形外科用インプラントは、骨折、変形性関節症、脊柱側弯症、脊椎狭窄症、および慢性疼痛の治療に用いられる。整形外科用インプラントの例としては、骨が共に治癒または融合している間に骨折した骨を固定するために用いられる様々なピン、ロッド、ネジ、アンカー、およびプレートが挙げられるが、これらに限定されない。(Wikipedia.comで“implant(medical)”を検索.2021年5月26日.CC-BY-SA3.0.改訂.2021年6月30日閲覧)
本開示は、内反や外反などの状態を有している、患者の膝関節に移植するための装置、システム、および方法である。一実施形態では、システムは、関節形成術を受ける、膝関節の反対側の第2の膝のために構成された、脛骨インサートおよび/または脛骨コンポーネントを用いる。反対側の膝のために設計された、脛骨インサートおよび/または脛骨コンポーネントを用いることによって、膝関節の状態が改善される。
【0024】
図1A図2を参照すると、大腿骨コンポーネント14および脛骨インサート12を含む、移植可能な人工膝用のアセンブリ10が示されている。本明細書で用いられる場合、“代替”は、ヒトまたは動物の大腿骨に、接続し、結合し、相互作用し、相互運動し、またはそうでなければ関連付けられる特徴、態様、構成要素、機能、属性、構造または部分を説明するものである。本明細書で用いられる場合、“インサート”は、1つまたは複数の他の構成要素、部品、または機器を、挿入または配備するように構造化され、編成され、構成され、操作され、配置され、または設計された装置、器具、構造、機器、構成要素、システム、またはアセンブリを指す。特定の実施形態では、インサートは、2つ以上の他の構成要素または構造物の間に挿入ないし配備されるように構成される。大腿骨コンポーネント14と脛骨インサート12は、図1Aに示すように伸長状態で結合され、また、図1Bに示すように屈曲状態で結合され、図2の分解図に示されるものである。脛骨インサート12は、患者の準備された脛骨(不図示)に移植され得る脛骨ベースプレートコンポ―ネント(図24A参照)にさらに結合され得る。図1A図2に示される、大腿骨コンポーネント14および脛骨インサート12は、右側の大腿骨および脛骨インサートのコンポーネントである。特定の実施形態では、左側の大腿骨および脛骨インサートのコンポーネントは、図1A図2に示される右側の大腿骨および脛骨インサートのコンポーネントの鏡像であり得る。大腿骨コンポーネント14はまた、後部安定化大腿骨コンポーネント14(または“PS大腿骨コンポーネント”)と称され得、脛骨インサート12はまた、後部安定化脛骨インサート(または“PSインサート”)と称され得る。
【0025】
図3A図3Dは、図1A図2のPSインサート12を分離して示している。PSインサート12は、上側の関節側22に対向した、下側の固定側20を含み得る。関節側22は、内側顆状関節25を有する脛骨内側区画24と、外側顆状関節面27を有する脛骨外側区画26と、を含み得る。
【0026】
本明細書で用いられる場合、“脛骨”は、ヒトまたは動物の脛骨に、接続し、結合し、相互作用し、相互運動し、またはそうでなければ関連付けられる特徴、態様、構成要素、機能、属性、構造または部分を説明するものである。本明細書で用いられる場合、“区画”は、セクション、チャンバ、部分または領域、または領域が細分化され得る部分の組のうちの1つを指す。(wordhippo.comで“compatment”を検索。WordHippo,2021.Web.22021年12月8日閲覧。改訂)
中央部分28は、脛骨内側区画24を脛骨外側区画26から分離し得る。柱30は、中央部分28から上方に突出し、柱ベース38から柱上部ないし柱上端部40まで延在し得る。前方からの視点(図3Bに示される)および/または後方からの視点(図3Aに示される)から、柱30は、柱30の柱上端部40に向かって最大の内側-外側幅ないし水平幅を有し得、柱30の柱ベース38に向かって最小の内側-外側幅ないし水平幅を有し得る。柱30はまた、前方および/または後方から見て左右対称とすることもできる。凹部45は、中央部分28の後方、脛骨内側区画24と脛骨外側区画26との間に形成され得、後十字靭帯(不図示)のための空間を提供し得る。PSインサート12は、インサートベース46をさらに含み得、インサートベース46は、脛骨ベースプレートコンポーネントと係合するための係合機構48をさらに含み得る。
【0027】
引き続き図1A図3Dを参照すると、柱30は、柱30の内側、後側、外側、および前側の態様で柱30の周りに延在する関節面31を有し得る。本明細書で用いられる場合、“関節”は、脊椎動物の骨格内の骨または軟骨の間の関節または接合部を指す。特定の実施形態では、“関節”はまた、接合または相互関係の作用または様式、または接合または相互関係の状態を指し得る(erriam-Webster.comで“articulation”を検索。Webster,2021Web.2021年11月15日改訂)
関節面31は、内側関節面32、外側関節面34、前方柱面36、および後方関節面42を含み得る。内側関節面32および外側関節面34は、図3Aおよび図3Bに示されるように、互いに非平行であり、インサート正中線垂直軸2に対して柱上端40から柱ベース38まで内向きに先細りし得る。図3Aに示されるように、垂直軸2と各テーパ面32、34との間の角度θは、少なくとも1つの実施形態では、約6.5度とすることができる。柱30は左右対称であり得るので、角度θは、柱30の内側関節面32と外側関節面34の両方で同じであり得る。本開示の他の実施形態では、角度θは、約6度~11度の範囲であり得る。内側関節面32は、内側顆状関節面25と連続してもよく、図6および図8の断面でさらに見ることができるように、外側関節面34は、外側顆状関節面27と連続してもよい。8前部柱面36は、内側関節面32と外側関節面34との間に延在し得、凸状に丸みを帯び得る。前部柱面36はまた、図3Dに最もよく見られるように、正中線垂直軸2に対して柱端40から柱ベース38まで外向きにテーパであってもよい。PSインサート12の他の実施形態では、前部柱面36は、テーパが少ないか、またはテーパがないこと形態を含み得る。
【0028】
図3Cを参照すると、柱上端40の境界は、上方から見ると、円形包絡線47によって画定される円の一部として形作られた、丸みを帯びた縁44を画定する。柱上端40および縁44は、図示されるように、柱30の後端に向かって凹んだ凹部を有する三日月形であり得、後十字靭帯が通ることを可能にする。柱上端40は、円形であってもよく、縁44は、むしろ正方形または長方形の形状を有して縁のない従来の柱と比較して、大腿骨コンポーネント14に対する回転の運動範囲および面接触を増加させることができる。従って、丸みを帯びた柱上端40および縁44は、これらの特徴を有しない従来の柱によって達成される単なる点接触または端接触とは対照的に、大腿骨コンポーネント14との面接触を可能にし得る。
【0029】
図1図8に表されるPS大腿骨コンポーネント14は、靭帯が無い代わりに後部安定化を与えるためのカム要素ないしカムバー50およびボックス構造52を含み得る。カムバー50は、図1Bおよび図7に示すように、屈曲中に柱30の後方関節面42に接触し得るカム関節面51を含み得る。内部関節面54は、ボックス構造52の内側に存在し、膝関節の関節接合および回転の間に柱30に接触し得る。内部関節面54は、凹状に湾曲してもよく、柱の周りの膝関節の軸回転中に柱30の縁44に接触し得る。PS大腿骨コンポーネント14は、内側顆関節面62を有する内側顆60と、外側顆関節面66を有する外側顆64とをさらに含み得る。内側関節面62および外側関節面66は、それぞれ、PSインサート12の内側関節面25および外側関節面27に対して関節接合することができる。空所68が、内側顆60と外側顆64との間に形成され得、カムバー50は、空所68を横切って内側-外側に延在する。内部関節面54は、外側部分72と連続する内側部分70を含み得る。示される実施形態では、固定柱74が、PS大腿骨コンポーネント14から上方に突出し得る。しかしながら、PS大腿骨コンポーネント14の他の実施形態では、固定柱74は無くてもよく、および/または柱、大釘、ペグ、ウェブ、キール、または歯状突起などの他の固定手段で、PS大腿骨コンポーネント14を用意された大腿骨(不図示)に固定してもよい。
【0030】
図9および図10を参照すると、本開示の別のアセンブリ110の実施形態は、十字保持大腿骨コンポーネント114(または”CR大腿骨コンポーネント”)と結合されている、図1図8のPSインサート12を含み得る。CR大腿骨コンポーネント114は、内側顆および外側顆160、164を含み得、内側顆160と外側顆164との間には空所168が形成される。CR大腿骨コンポーネント114として、カムバーまたはボックスは存在しない場合もある。内側顆および外側顆160、164は、内側顆関節面および外側顆関節面162、166、ならびに内側関節面および外側関節面170、172を備えた内部関節面154を含み得る。
【0031】
柱30の内側関節面および外側関節面32、34は、テーパ状であり得、柱30がテーパ状でない場合に達成できない可能性がある、PSインサート12とCR大腿骨コンポーネント114との自然な関節接合を可能にし得る。例えば、柱30がテーパ状の側面の代わりに直線状の側面を有する場合、柱30の基部における柱30のより広い幅が、内側顆および外側顆160、164の内部関節面170、172と干渉することになる。図1Aおよび図4のように、PS大腿骨コンポーネント14がPSインサート12と結合されてアセンブリ10を形成するとき、柱30のテーパ状の、内側関節面32および外側関節面34と組み合わせた柱上端40の円形形状は、PS大腿骨コンポーネント14が後部安定化された大腿骨コンポーネントの態様で、PSインサート12に対して関節接合することを可能にし得る。しかしながら、PSインサート12がCR大腿骨コンポーネント114と対にされて移植されるとき、結果として生じるアセンブリ110は、十字保持インプラントの本来の関節接合および回転を提供し得る。
【0032】
図11A図11Eを参照すると、脛骨インサート212の代替的な実施形態が示されている。脛骨インサート212は、十字保持脛骨インサート212(または“CRインサート”)と称され得る。本開示のシステムでは、CRインサート212は、CR大腿骨コンポーネント114および脛骨ベースプレートコンポーネント(不図示)と共に移植されて、十字保持人工膝システムを形成し得る。CRインサート112は、上側の関節側222に対向する下側の固定側220を含み得る。関節側222は、内側顆状関節面225を有する脛骨内側区画224と、外側顆状関節面227を有する脛骨外側区画226と、を含み得る。中央部分228は、脛骨内側区画224を脛骨外側区画226から分離し得る。凹部245は、中央部分228の後方で、脛骨内側区画224と脛骨外側区画226との間に形成されて、後部十字靭帯のための空間を提供することができる。CRインサート212は、インサートベース246と、脛骨ベースプレートコンポーネントと係合するための係合機構248をさらに含み得る。CRインサート212は、CR大腿骨コンポーネント114と結合されて、十字保持アセンブリを形成し得る。このアセンブリは、十字保持人工膝として適切な脛骨ベースプレートと共に移植することができる。CRインサート212はまた、PS大腿骨コンポーネント14と結合されて、適切な脛骨ベースプレートと共に移植されてもよい。
【0033】
図12A図12Fを参照すると、脛骨インサート312の別の代替的な実施形態が示される。脛骨インサート312は、拘束された顆状膝(CCK)脛骨インサート312(または“CCKインサート”)と称され得る。CCKインサート312は、上側の関節側322に対向する、下側の固定側320を含み得る。関節側322は、内側顆状関節面325を有する脛骨内側区画324と、外側顆状関節面327を有する脛骨外側区画326と、を含み得る。中央部分328は、脛骨内側区画324を脛骨外側区画326から分離し得る。柱330は、中央部分328から上方に突出し、柱ベース338から上部、または柱上端340へ延在し得る。図12Eに示されるような前方からおよび図12Dに示されるような後方から見て、柱330は、柱330の上端340にその最大の内側-外側幅ないし水平幅を有し、柱330の柱ベース338にその最小の内側-外側幅ないし水平幅を有し得る。柱330は、前方および後方から見て左右対称であり得る。CCKインサート312は、インサートベース346と、脛骨トレイ(不図示)と係合するための係合機構348とをさらに含み得る。
【0034】
柱330は、柱330の内側、後側、外側、および前側で柱330の周りで延在する関節面331を有し得る。関節面331は、内側関節面332、外側関節面334、前方柱面336、および後方関節面342を含み得る。内側関節面および外側関節面332、334は、インサートの正中垂直軸2に関して、柱330の柱上端340から柱ベース338までわずかに内側に先細りし得る。しかしながら、CCKインサート312のいくつかの実施形態は、内側関節面および外側関節面332、334のテーパを含まなくてもよい。内側関節面332は内側顆状関節面325と連続し、外側関節面334は外側顆状関節面327と連続し得る。前方柱面336は、内側面332と外側面334との間に延在し、凸状に丸みを帯び得る。前方柱面336は、図12Fに最もよく見られるように、正中線軸2に関して柱上端340から柱ベース338まで外向きのテーパとし得る。CCKインサート312の他の実施形態では、前方柱面336は、より小さいテーパ、より大きいテーパ、および/またはテーパ無しを含み得る。CCKインサート312の柱330は、例えば、側副靭帯の除去の場合の安定性を増すために、PSインサート12の柱30よりも幅が広く、直径が大きくすることができる。
【0035】
図12Bを参照すると、柱上端340の境界は、上方から見て、円の一部として形作られた丸みを帯びた縁344を画定し得る。柱上端340および縁344は、図示されるように半円形とすることがでるが、縁344は、円形の包絡線347を画定するものであってもよい。柱上端340は円形であって、縁344は、むしろ正方形または長方形の柱を備えた従来の形状の柱と比較して、PS大腿骨コンポーネント14と結合して移植されたときに、面接触および回転運動範囲を増すことができる。従って、丸みを帯びた柱上端340および縁344は、これらの特徴を有しない従来の柱によって達成される単なる点または縁の接触とは対照的な、大腿骨コンポーネント14との面接触を可能にし得る。CCKインサート312は、PS大腿骨コンポーネント14と結合されて、拘束された顆状膝アセンブリを形成することができ、このアセンブリは、拘束された顆状人工膝として適切な脛骨ベースプレートと共に移植することができる。CCKインサート312はまた、CR大腿骨コンポーネント114と結合されて、適切な脛骨ベースプレートと共に移植することができる。従って、本明細書に開示される脛骨インサート12、212、および312の総ては、CR大腿骨コンポーネント114およびPS大腿骨コンポーネント14の両方との間で代替可能である。図13は、コンポーネントの潜在的な組み合わせを示す表である。
【0036】
脛骨インサート12、212、312、PS大腿骨コンポーネント14、およびCR大腿骨コンポーネント114は、1つの非限定的な例では、モジュール式の膝置換システムとして共にグループ化され、1つまたは複数のパッケージ内のキットとして提供され得る。別のキットは、別の非限定的な例として、CR大腿骨コンポーネント114、PSインサート12、およびCRインサート212を1つまたは複数のパッケージに含み得る。さらに別のキットは、さらに別の非限定的な例として、1つまたは複数のパッケージに、PS大腿骨コンポーネント14、PSインサート12、CRインサート212、およびCCKインサート312を含み得る。しかしながら、他のキットの実施形態は、本明細書に記載される脛骨インサートおよび/または大腿骨コンポーネントのいずれかを、任意の数または組み合わせで、1つまたは複数のパッケージで利用し得ることも理解されよう。さらに、本明細書に記載されるキットのどれにも、1つまたは複数のパッケージに、好適な脛骨ベースプレートコンポーネント、膝蓋骨コンポーネントなど他のコンポーネントが含まれ得る。また、本明細書に開示される脛骨インサートのいずれも、ビタミンEポリエチレン、高架橋ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、または任意の他の適切な材料で形成され得ることも理解される。
【0037】
図14および図15を参照すると、移植可能な人工膝のための本開示の別のアセンブリ1010が、様々な分解背面図で示されている。アセンブリ1010は、大腿骨コンポーネント1014および脛骨インサート1012を含み得る。脛骨インサート1012は、用意された患者の脛骨(不図示)に移植することもできる脛骨ベースプレートコンポーネント(不図示)にさらに結合され得る。図14および図15に示される大腿骨コンポーネント1014と脛骨インサート1012は、右側の大腿骨コンポーネントおよび脛骨インサートコンポーネントである。左側の大腿骨コンポーネントおよび脛骨インサートコンポーネントは、図14および図15に示される右側の大腿骨および脛骨インサートのコンポーネントの鏡像となる。大腿骨コンポーネント1014はまた、後部安定化大腿骨コンポーネント1014(または“PS大腿骨コンポーネント”)と称され得、脛骨インサート1012はまた、後部安定化脛骨インサート(または“PSインサート”)と称され得る。
【0038】
図16A図16Dは、図15および図14のPSインサート1012を分離して示している。1PSインサート1012は、上側となり得る関節側1022に対向する、下側になり得る固定側1020を含み得る。関節側1022は、内側顆状関節面1025を有する脛骨内側区画1024と、外側顆状関節面1027を有する脛骨外側区画1026と、を含み得る。中央部分1028は、脛骨内側区画1024を脛骨外側区画1026から分離し得る。柱1030は、中央部分1028から上方に突出し、柱ベース1038から柱上部1040ないし柱上端部まで延在し得る。前方から見て(図16Bに示される)および/または後方から見て(図16Aに示される)、柱1030は、柱1030の上端部1040に向かってその最大の内側-外側幅ないし水平幅を有し得、柱1030のベース1038に向かって最小の内側-外側幅ないし水平幅を有し得る。柱1030はまた、前方および/または後方から見て左右対称であり得る。凹部1045は、中央部分1028の後方で、脛骨内側区画1024と脛骨外側区画1026との間に形成され、後十字靭帯(不図示)のための空間を提供し得る。PSインサート1012は、インサートベース1046をさらに含んでもよく、インサートベース1046は、脛骨ベースプレートコンポーネントと係合するための係合機構1048をさらに含むことができる。
【0039】
図14図16Dを引き続い参照すると、柱1030は、柱1030の内側、後側、外側、および前側の態様で柱1030の周りに延在する関節面1031を有し得る。関節面1031は、内側関節面1032、外側関節面1034、前方柱面1036、および後方関節面1042を含み得る。内側関節面1032および外側関節面1034は、図16Aおよび図16Bに示されるように、互いに非平行であり、インサートの正中線垂直軸1002に関して、柱上端1040から柱ベース1038まで内側に先細りし得る。図16Aに示されるように、垂直軸1002と各テーパ面1032、1034との間の角度θは、少なくとも1つの実施形態では、約6.5度であり得る。柱1030は左右対称であり得るので、角度θは、柱1030の内側および外面1032、1034の両方で同じである。本開示の他の実施形態では、角度θは、約6度~11度の範囲であり得る。内側関節面1032は、内側顆状関節面1025と連続してもよく、外側関節面1034は、外側顆状関節面1027と連続してもよい。前方柱面1036は、内側面1032と外側面1034との間に延在し、凸状に丸みを帯び得る。前方柱面1036はまた、図16Dに最もよく見られるように、正中線垂直軸1002に関して柱上端1040から柱ベース38まで外向きのテーパをなし得る。PSインサート1012の他の実施形態では、前方柱面1036は、より小さいテーパ、より大きいテーパ、および/またはテーパ無しを含み得る。正中線の内側-外側軸1004および正中線の前後軸1006もまた示される。
【0040】
図16Cを参照すると、上端1040の境界は、上方から見ると、円形包絡線1047によって画定される円の一部として形作られた丸みを帯びた縁1044を画定する。上端部1040および縁1044は、図示されるように、柱1030の後端部に向かう凸状突起1041を有し、後十字靭帯の通過を可能にし得る。縁1044を有する円形上端1040は、むしろ正方形または長方形の形状を有した、縁の無い従来の柱と比較して、大腿骨コンポーネント1014に対する、回転運動範囲および面接触を増加させ得る。従って、丸みを帯びた上端1040および縁1044は、これらの特徴を有しない従来の柱によって達成される単なる点または縁の接触とは対照的に、大腿骨コンポーネント1014とのより大きな面接触を可能にし得る。
【0041】
図14図15に表されるPS大腿骨コンポーネント14は、固定増強開口部1080、インパクトドライバ開口部1090、カム要素ないしカムバー1050、および靭帯が無い代わりの、後部安定化を提供するためのボックス構造1052を含み得る。カムバー1050は、屈曲中に柱1030の後方関節面1042に接触し得るカム関節面1051を含み得る。内部関節面1054は、ボックス構造1052の内側に存在し、膝関節の関節接合および回転の間に柱1030に接触し得る。内部関節面1054は、凹状に湾曲し、膝関節が柱1030の周りに軸回転する際に柱1030の縁1044に接触し得る。PS大腿骨コンポーネント1014は、内側顆状関節面1062を有する内側顆1060と、外側顆状関節面1066を有する外側顆1064とをさらに含み得る。内側顆状関節面1062および外側顆状関節面1066は、それぞれ、PSインサート1012の内側関節面1025および外側関節面1027に対して関節接合することができる。空所1068は、内側顆1060と外側顆1064との間に形成され、カムバー1050は、この空所1068を横切って内側-外側に延在する。内部関節面1054は、外側部分1072と連続する内側部分1070を含み得る。示される実施形態では、固定柱1074が、PS大腿骨コンポーネント1014から上方に突出し得る。しかしながら、PS大腿骨コンポーネント1014の他の実施形態では、固定柱1074は無くてもよく、および/または柱、大釘、ペグ、ウェブ、キール、または歯などの他の固定機構が存在して、PS大腿骨コンポーネント1014を用意された大腿骨(不図示)に固定してもよい。
【0042】
図17および図18を参照すると、本開示の別のアセンブリ1110の実施形態は、十字保持大腿骨コンポーネント1114(または”CR大腿骨コンポーネント”)と結合された図14図16DのPSインサート1012を含み得る。CR大腿骨コンポーネント1114は、キール1120、固定部材1130、インパクトドライバ開口部1190、および顆1160と顆1164の間に形成された空所1168を備えた内側顆1160、外側顆1164を含み得る。CR大腿骨コンポーネント1114として、カムバーまたはボックスが存在しない形態もある。顆1160、1164は、内側顆および外側顆関節面1162、1166、ならびに内側部分および外側部分1170、1172を備えた内部関節面1154を含み得る。
【0043】
柱1030のテーパ側面1032、1034によって、PSインサート1012とCR大腿骨コンポーネント1114との自然な関節接合が可能になり得るものであり、このような関節接合は、柱1030にテーパが付けられない場合には達成できない場合がある。例えば、柱1030がテーパ状の側面の代わりに直線状の側面を有する場合、柱1030の基部における柱1030のより広い幅は、顆1160、1164の内部関節面1170、1172と干渉することがある。図14および図15のように、PS大腿骨コンポーネント1014がPSインサート1012と結合されてアセンブリ1010を形成するとき、柱1030のテーパ内側面1032および外側面1034と組み合わせた、柱上端1040の円形形状は、PS大腿骨コンポーネント1014が後部安定化された大腿骨コンポーネントの態様でPSインサート1012に対して関節接合することを可能にし得る。しかしながら、PSインサート1012がCR大腿骨コンポーネント1114と対合して移植されるとき、結果として生じるアセンブリ1110は、十字保持インプラントの本来の関節接合および回転をもたらし得る。
【0044】
図19および図20を参照すると、本開示の別のアセンブリ2110の実施形態は、十字保持大腿骨コンポーネント2114(または“CR大腿骨コンポーネント”)と結合された図14図16DのPSインサート12を含み得る。CR大腿骨コンポーネント2114は、図17および図18に示されるCR大腿骨コンポーネント1114とは対照的に、キールを含まなくてもよく、また、CR大腿骨コンポーネント2114は、大腿骨へのセメント固定および/またはセメント無し固定のために構成されてもよい。CR大腿骨コンポーネント2114は、固定部材2130、インパクトドライバ開口部2190、および内側顆2160と外側顆2164との間に形成された空所2168を有する顆2160、2164を含み得る。CR大腿骨コンポーネント1114として、カムバーまたはボックスが存在しない形態もある。顆2160、2164は、内側顆状関節面および外側顆状関節面2162、2166、ならびに内側部分および外側部分2170、2172を有する内部関節面2154を含み得る。
【0045】
柱1030のテーパ側面1032、1034によって、PCインサート1012とCR大腿骨コンポーネント2114との自然な関節接合が可能となり、このことは、柱1030にテーパが付けられない場合には達成できない場合がある。例えば、柱1030がテーパ状の側面の代わりに直線状の側面を有する場合、柱1030の基部1038における柱1030のより広い幅が、顆2160、2164の内部関節面2154の内側部分2170および外側部分2172と干渉する場合がある。PS大腿骨コンポーネント1014がPSインサート1012と結合されてアセンブリ1010を形成すると、図14および図15に示すように、柱1030のテーパ状の内側面および外側面1032、1034と組み合わせた、柱上端1040の円形形状によって、PS大腿骨コンポーネント1014が後部安定化大腿骨コンポーネントの態様でPSインサート1012に対して関節接合することが可能になり得る。しかしながら、PSインサート1012がCR大腿骨コンポーネント2114と対合して移植されるとき、結果として生じるアセンブリ2110は、十字保持インプラントの本来の関節接合および回転をもたらし得る。
【0046】
図21A図21Eを参照すると、脛骨インサート1212の代替的な実施形態が示される。脛骨インサート1212は、十字保持脛骨インサート1212(または“CRインサート”)と称され得る。本開示のシステムでは、CRインサート1212は、CR大腿骨コンポーネント114、1114、2114および脛骨ベースプレートコンポーネント(不図示)と共に移植されて、十字保持人工膝システムを形成し得る。CRインサート1212は、上側の関節側1222に対向する、下側の固定側1220を含み得る。関節側1222は、内側顆状関節面1225を有する脛骨内側区画1224と、外側顆状関節面1227を有する脛骨外側区画1226と、を含み得る。中央部分1228は、脛骨内側区画1224を脛骨外側区画1226から分離し得る。凹部1245は、中央部分1228の後方で、脛骨内側区画1224と脛骨外側区画1226との間に形成されて、後部十字靭帯のための空間を提供することができる。CRインサート1212は、インサートベース1246、および脛骨ベースプレートコンポーネントと係合するための係合機構1248をさらに含み得る。
【0047】
CRインサート1212は、CR大腿骨コンポーネント114、1114、2114と結合されて、十字保持アセンブリを形成することができる。この十字保持アセンブリは、完全な十字保持人工膝として適切な脛骨ベースプレートと共に移植することができる。CRインサート1212はまた、PS大腿骨コンポーネント14、1014と結合して後部安定化アセンブリを形成し、完全な後部安定化人工膝として適切な脛骨ベースプレートを移植してもよい。
【0048】
図22A図22Fを参照すると、脛骨インサート1312の別の代替的な実施形態が示される。脛骨インサート1312は、拘束された顆状膝(CCK)の脛骨インサート1312(または“CCKインサート”)と称され得る。CCKインサート1312は、上側の関節側1322に対向する、下側の固定側1320を含み得る。関節側1322は、内側顆状関節面1325を有する脛骨内側区画1324と、外側顆状関節面1327を有する脛骨外側区画1326と、を含み得る。中央部分1328は、脛骨内側区画1324を脛骨外側区画1326から分離し得る。柱1330は、中央部分1328から上方に突出し、柱ベース1338から上部、またはポスト上端1340に延在し得る。図22Eに示されるような前方から見ておよび図22Dに示されるような後方から見て、柱1330は、柱1330の柱上端1340にその最大の内側-外側の幅ないし水平幅を有し、柱1330の柱ベース1338にその最小の、内側-外側幅ないし水平幅を有し得る。柱1330は、前方および後方から見て左右対称とすることができる。CCKインサート1312は、後方凹部1345と、インサートベース1346と、脛骨トレイ(不図示)と係合するための係合機構1348と、をさらに含み得る。開口部1350は、柱1330の上面に存在し得る。
【0049】
柱1330は、柱1330の内側、後側、外側、および前側で、柱1330の周りに延在する関節面1331を有し得る。関節面1331は、内側関節面1332、外側関節面1334、前方柱面1336、および後方関節面1342を含み得る。内側関節面および外側関節面1332、1334は、インサート正中線の垂直軸1302に関して、柱1330の柱上端1340から柱ベース1338までわずかに内側にテーパとなり得る。しかしながら、CCKインサート1312のいくつかの実施形態は、内側関節面および外側関節面1332、1334のより少ないテーパ、より多くのテーパ、および/またはテーパ無しを含み得る。内側関節面1332は、内側顆状関節面1325と連続してもよく、外側関節面1334は、外側顆状関節面1327と連続してもよい。前方柱面1336は、内側関節面1332と外側関節面1334との間に延在し、凸状に丸みを帯び得る。前方柱面1336は、図22Fに最もよく見られるように、正中線軸1302に関して、柱上端1340から柱ベース1338まで外向きのテーパとすることができる。CCKインサート1312の他の実施形態では、前方柱面1336は、より少ないテーパ、より多くのテーパ、および/またはテーパ無しを含み得る。CCKインサート1312の柱1330は、例えば、側副靭帯の除去の場合に安定性を増すために、PSインサート12の柱30よりも幅が広く、直径が大きくすることができる。正中線の内側-外側軸1304および正中線の前-後軸1306もまた、図22D図22Fに示される。
【0050】
図22Bを参照すると、柱上端1340の境界は、上面から見て、円の一部として形作られた丸みを帯びた縁1344を画定し、柱1330の後端に向かって凸状の突起を有し得る。柱上端1340および縁1344は、図示されるように半円形であってもよいが、縁1344は、円形の包絡線1347を画定してもよい。柱上端1340は、円形であり、縁1344は、むしろ正方形または長方形の柱を有する従来形状の柱と比較して、本明細書に開示されるPS大腿骨コンポーネントと結合および移植されたときに、面接触および回転運動範囲を増大することができる。従って、丸みを帯びた上端1340および縁1344は、これらの特徴を含まない従来の柱によって達成される単なる点または縁の接触とは対照的に、大腿骨コンポーネント14、1014とのより大きな面接触を可能にし得る。
【0051】
CCKインサート1312は、PS大腿骨コンポーネント14、1014と結合されて、拘束された顆状膝アセンブリを形成することができ、このアセンブリは、拘束された人工顆状膝として適切な脛骨ベースプレートと共に移植することができる。CCKインサート1312はまた、本明細書に開示されるCR大腿骨コンポーネントのいずれかと結合され、適切な脛骨ベースプレートと共に移植されてもよい。従って、本明細書に開示される脛骨インサートの総ては、本明細書に開示されるCR大腿骨コンポーネントおよびPS大腿骨コンポーネントの総てと交換可能である。
【0052】
本明細書に開示される脛骨インサート、CR大腿骨コンポーネント、および/またはPS大腿骨コンポーネントのいずれも、1つまたは複数のモジュール式膝関節置換システムまたはキットとして、任意の数または組み合わせで共にグループ化され得る。特定のキットは、CR大腿骨コンポーネント、PSインサート、およびCRインサートを含み得る。さらに別の特定のキットは、PS大腿骨コンポーネント、PSインサート、CRインサート、およびCCKインサートを含み得る。適切な脛骨ベースプレートコンポーネントは、任意のキットに含まれてもよい。さらに、本明細書に開示される脛骨インサートのいずれも、ビタミンEポリエチレン、高架橋ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(HMWPE)、および/または同様のものから形成され得る。
【0053】
ここで、図23A図23Bを参照すると、図23Aは、本開示の1つまたは複数の増強部1082、1084に結合された図14の大腿骨コンポーネント1014の正面斜視図であり、図23Bは、図23Aの大腿骨コンポーネント1014の内側側面図である。図14および図15を参照して簡易に述べたように、大腿骨コンポーネント1014は、1つまたは複数の増強部1082、1084を大腿骨コンポーネント1014に固定するように構成され得る増強部固定開口部1080、ならびに外科医が大腿骨コンポーネント1014を用意された大腿骨の端部に圧入できるようにする大腿骨コンポーネントインパクトドライバ工具(不図示)を受け入れるように構成されたインパクトドライバ開口部1090を含み得る。増強部1082、1084は、固定部材1086によって大腿骨コンポーネント1014に固定され、増強部1082、1084は、概して、欠損および/または損傷した大腿骨を置き換え、そのような条件下で大腿骨コンポーネント1014を大腿骨に適切に固定することを可能にするように作用し得る。
【0054】
図24A図24Eを参照すると、別の実施形態による、移植可能な人工膝用のアセンブリ2400が示されている。アセンブリ2400は、大腿骨コンポーネント2401、インサート2410、および脛骨コンポーネント2440を含み得る。図24Aは、患者の解剖学的構造を参照して、後方-外側からアセンブリ2400に迫るアセンブリ2400の分解図である。アセンブリ2400は、概して、内側および外側を横切って非対称であり、言い換えれば、左側は、右側に対して非対称である。図24図27には、左膝の図が示され、図28A図28Fは、右膝の図を示す。左右どちらの構成でも、内側は矢状面の近位、または膝の内側にあり、外側は矢状面から遠位、または膝の外側である。
【0055】
大腿骨コンポーネント2401は、後部安定化ないし十字保持であり得る。図24Aでは、大腿骨コンポーネント2401、脛骨インサート2410、および脛骨コンポーネント2440が屈曲して示されている。大腿骨コンポーネント2401は、図9の大腿骨コンポーネント114と同様に、内側顆2402および外側顆2403を含み得る。大腿骨コンポーネント2401は、内側顆状関節面2404を含む大腿骨内側区画と、外側顆状関節面2405を含む大腿骨外側区画とを有する。特定の実施形態では、内側顆状関節面2404は大腿骨内側区画を画定し、外側顆状関節面2405は大腿骨外側区画を画定する。
【0056】
大腿骨コンポーネント2401は、内側顆状関節面2404および外側顆状関節面2405を含む大腿骨関節面を含む。特定の実施形態では、大腿骨関節面は、内側顆状関節面2404および外側顆状関節面2405のうちの1つを含み得る。他の実施形態では、大腿骨関節面は、内側顆状関節面2404および外側顆状関節面2405の両方を含み得る。
【0057】
内側顆2402および外側顆2403は、内側顆状関節面2404および外側顆状関節面2405を含み得る。大腿骨コンポーネント2401は、大腿骨コンポーネント2401を患者の大腿骨に固定するための要素を含み得る。例えば、大腿骨コンポーネント2401は、関連する大腿骨(不図示)の骨を貫通して大腿骨コンポーネント2401を大腿骨に固定する、少なくとも1つのキール2406および少なくとも1つの柱2407を含み得る。少なくとも1つの柱2407は、内側顆2402および/または外側顆2403の大腿骨側に配置され得る。大腿骨コンポーネント2401は、骨の成長および固定を促進するために、骨に面する側に表面組織を含み得る。
【0058】
脛骨ベースプレートコンポーネント2440は、患者の脛骨に固定されるように構成され得る。本明細書で使用される場合、“ベースプレート”は、ベースプレートに結合または接続され得る他の構造、構成要素、装置、またはデバイスの基部またはフレームとして機能する構造、構成要素、装置、またはデバイスを指す。特定の実施形態では、ベースプレートは、概して平面構造を有し得る。
【0059】
脛骨ベースプレートコンポーネント2440は、患者の脛骨に挿入および固定される1つまたは複数の脛骨柱2442を備えた、インサート2410の配置および固定のために構成されたインサート接合部2441を含み得る。脛骨ベースプレートコンポーネント2440は、さらに、脛骨プラトーを貫通するように設計され、また、脛骨の髄内管にさらに深く貫通する別個のキール(不図示)を受け入れ得るベース2443を有してもよい。本明細書で使用される場合、“ベース”は、主要なまたは中央の構造、構成要素、または構造の一部を指す。ベースは、多くの場合、他の構造が、その上にまたはそこから、延在し、それに連結され、または接続される、構造、構成要素、または部分である。ベースは、様々な幾何学的形状および構成を有し得る。ベースは、堅くても柔軟であってもよい。ベースは、中実であっても中空であってもよい。一実施形態では、ベースは、より大きなシステム、構成要素、構造、または機器のためのハウジング、フレームまたはフレームワークを含み得る。特定の実施形態では、ベースは、構造が所望の構成または位置にあるときに垂直に延在するように設計された構造の底部または下部の部分であり得る。
【0060】
図24Aは、左膝に配置するように構成され、およそ90度の伸長、または“屈曲”として示される外側からの分解した状態で表されるアセンブリ2400を示している。脛骨ベースプレートコンポーネント2440および大腿骨コンポーネント2401は、前-後の平面にわたって内側および外側で対称であり得るが、インサート2410は、内側-外側に関して非対称であり得る。インサート2410は、脛骨ベースプレートコンポーネント2440のインサート接合部2441と嵌合または係合するように構成された、固定側ないし接合部2411を含み得る。インサート接合部2411は、インサート接合部2441の形状に相補的な形状を有し得る。相補的な形状によって、インサート2410の取り外し可能な嵌合が可能になる。取り外し可能な嵌合によって、モジュラーアセンブリ2400は、外科医や患者に利益をもたらすことができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、脛骨ベースプレートコンポーネント2440および大腿骨コンポーネント2401は、前述のように対称であってもよく、これによって、左膝または右膝の置換のいずれかに用いることができる。インサート2410のみが、一方の側または他方側について特有であってもよい。左膝または右膝の関節形成術のためのアセンブリは、1つの大腿骨コンポーネント2401、1つの脛骨ベースプレートコンポーネント2440、および2つの(例えば、左および右の)インサート2410のみを含み得る。これにより、システムに必要な在庫が大幅に削減され得る。
【0062】
ベース2411の反対側では、インサート2410は、大腿骨コンポーネント2401上の内側顆2402および外側顆2403と係合するように構成された脛骨関節面2412を有する。脛骨関節面2412は、脛骨内側区画2413および脛骨外側区画2414を含み得る。脛骨内側区画2413は、内側顆状関節面2404と直接係合するための内側関節面2420を含み得る。脛骨外側区画2414は、外側顆状関節面2405と直接係合するための外側関節面2421を含み得る。内側顆状関節面2404は、内側滞留点2435で内側関節面2420と係合してもよい。本明細書で使用される場合、“滞留点”は、関節の屈曲および/または伸長中に2つの関節面が互いに接触する点または領域を指す。
【0063】
外側顆状関節面2405は、外側滞留点2436(後続の図に示される)で外側関節面2421と係合し得る。内側関節面2420は内側斜面2019を含んでもよく、これは、外側関節面2421上に相当するものが無く、脛骨内側区画2413と脛骨外側区画2414との間の非対称性の少なくとも一部を生成し得る。
【0064】
図24B図24Dは、インサート2410の形状の詳細を示す。図24Bは、インサート2410の後面図である。図24Cは、インサート2410の前面図である。脛骨外側区画2414は、外側後方側2416および外側前方側2418を含み得る。外側関節面2421は、外側周囲2429によって囲まれた、外側後方部2424および外側前方部2425を含み得る。脛骨内側区画2413は、内側後方側2415および内側前方側2417を含み得る。内側関節面2420は、内側周囲2426によって囲まれた、内側後方部2422および内側前方部2423を含み得る。
【0065】
図24Dおよび図24Eは、それぞれ、インサート2410の外側および内側の図を示す。図24Dにおいて、外側周囲2429を有する脛骨外側区画2414が示される。外側関節面2421は、外側の高点2430で外側周囲2429に合流し得る。外側低点2431は、外側関節面2421の中心に向かい得る。図24Eにおいて、内側周囲2426を有する脛骨内側区画2413が示される。内側関節面2420は、内側後方部2422の、または内側後方部2422に隣接する、内側高点2427で内側周囲2426に合流し得る。内側低点2428は、内側前方部2423に近く、内側周囲2426に向かい得る。脛骨内側区画2413および脛骨外側区画2414の両方の高点2427、2430および低点2428、2431は、インサート接合部2411に関連している。内側高点2427と内側低点2428との差は、外側高点2430と外側低点2431との間の差よりも大きくし得る。内側関節面の高さの差が大きくなると、内側斜面2419によって表され得る。
【0066】
内側後方部2422は、内側高点2427で開始し、内側高点2427から内側低点2428に向かって前方に延在し得る内側斜面2419を含み得る。内側斜面2419の表面形状に続いて、内側関節面2420は、内側高点2427から内側前方部2423に近い内側低点2428に向かって、かつ内側周囲2426に向かう勾配を有する傾向がある。外側関節面2421の勾配は、外側低点2431に続く。従って、内側関節面2420および外側関節面2421における下り勾配の変化は、非対称であり得る。外側関節面2421は、概して、外側低点2431に向かって凹状であり得る。内側低点2428の位置は、内側関節面2420に沿った内側斜面2419からの勾配の方向性を生じさせ、これは、物体ないし塊を内側斜面2419によって作られた方向に勾配を下方向に変化させる。内側斜面2419および内側周囲2426および内側関節面2420に沿った異なる高さは、勾配に沿った一時的な内側滞留点2435を作り得る。凡その勾配は、図24Fにおいて破線で表される。
【0067】
脛骨内側区画2413の内側後方側2415は、内側周囲2426の内側高点2427によって画定される内側厚さを有し、これは、内側斜面2419および/またはインサート接合部2411に対応し得る。脛骨外側区画2414の外側後方側2416は、外側周囲2429および基部2411における外側高点2430によって画定される外側厚さを有し得る。内側斜面2419があることによってに、脛骨内側区画2413は、脛骨外側区画2414よりも大きな厚さを有し得る。
【0068】
内側斜面2419およびそれが内側関節面2420に沿って内側低点2428に向かって作る勾配は、膝およびアセンブリ2400が、0度の屈曲すなわち伸展から90度の屈曲までの範囲であることから、外側顆2403の並進ないし移動よりも大きい、内側顆2402の並進ないし移動を引き起こし得る。内側顆2402は、屈曲の程度が増すにつれて内側滞留点2435が内側周囲2426に向かって前方および外向きに移動するように、内側斜面2419を下方に移動し得る。外側顆2403は、外側低点2431の近くの概して同じ位置に留まることができるので、外側滞留点2436は概して同じ位置に留まることができる。外側顆2403はまた、膝が屈曲に移行するにつれて移動してもよく、その結果、外側滞留点2436は、内側滞留点2435が前方および外側に移動するにつれて、後方および外側に同時に移動する。内側滞留点2435および外側滞留点2436の非対称な並進によって、伸展と屈曲との間の脛骨大腿骨回転を生じ得る。本明細書で使用される場合、“脛骨大腿骨開店”とは、患者の脚の中心軸に平行な長手方向軸を中心に、脛骨および/または脛骨骨を含む患者の脚の一部を回転させることを指す。
【0069】
図25図31は、アセンブリ2400が屈曲する間の、外側滞留点2436に対する内側滞留点2435の動きを示している。図25A図25Eは、左膝の、0度の屈曲、ないし“下肢進展”における組み立てられたアセンブリ2400の後方図を示す。図25Aは、アセンブリ2400の内側-外側の断面斜視図である。一般に、大腿骨コンポーネント2401は、滞留点でインサート2410に接触する。滞留点は、2つの面間の接触点である。内側顆状関節面2404は、内側滞留点2435で内側関節面2420に接する。外側顆状関節面2405は、外側滞留点2436で外側関節面2421に接する。図25Bおよび図25Cは、0度の屈曲において、開始位置と見なされるものにおける内側滞留点2435および外側滞留点2436を示す。図25Dは、インサート2410の脛骨外側区画2414を通る前方-後方の断面図である。内側斜面2419は、(背後において)可視であり、内側後方側2415と外側後方側2416との間の高さの違いを示している。図25Eは、インサート2410の内側関節側2413を通る前方-後方の断面図であり、内側斜面2419は可視であり、より低い外側後方側2416を見えなくしている。
【0070】
図26A図26Eは、左膝の45度の屈曲における、組み立てられたアセンブリ2400の後方図を示す。図26Aは、アセンブリ2400の内側-外側の断面斜視図である。内側顆状関節面2404は、内側滞留点2435で内側関節面2420に接する。外側顆状関節面2405は、外側滞留点2436で外側関節面2421と接する。図26Bおよび図26Cは、45度の屈曲において、開始位置と見なされ得るものにおける、内側滞留点2435および外側滞留点2436を示している。図26Dは、インサート2410の脛骨外側区画2414を通る前方-後方の断面図である。内側斜面2419は、(背後において)可視であり、内側後方側2415と外側後方側2416との間の高さの違いを示している。図26Eは、インサート2410の脛骨内側区画2413を通る前方-後方の断面図であり、内側斜面2419は可視であり、より低い外側後方側2416を見えなくしている。0度の屈曲と比較して、内側滞留点2435はわずかに移動し、外側滞留点2436は顕著に移動していない。
【0071】
図27A図27Eは、左膝の90度の屈曲における組み立てられたアセンブリ2400の後方図を示す。図27Aは、アセンブリ2400の内側-外側の断面斜視図である。内側顆状関節面2404は、内側滞留点2435で内側関節面2420に接する。外側顆状関節面2405は、外側滞留点2436で外側関節面2421に接する。図27Bおよび図27Cは、90度の屈曲において、開始位置と見なされ得るものにおける内側滞留点2435および外側滞留点2436を示している。図27Dは、インサート2410の脛骨外側区画2414を通る前方-後方の断面図である。内側斜面2419は、(背後において)可視であり、内側後方側2415と外側後方側2416との間の高さの違いを示している。図27Eは、インサート2410の脛骨内側区画2413を通る前方-後方の断面図であり、内側斜面2419は可視であり、より低い外側後方側2416を見えなくしている。0度の屈曲と比較して、内側滞留点2435は、内側周囲2426に向かって実質的に前方および外向きに移動し、外側滞留点2436は、大きく移動していない。伸展から屈曲への移行中、内側滞留点2435は、内側斜面2419から内側低点2428に向かって前方に移動する。側方滞留点2436は、側方関節面2421に沿って実質的に移動していない。
【0072】
インサート2410、特に内側斜面2419の非対称性は、外側滞留点2436と比較して、内側滞留点2435のより大きな並進を引き起こし得る。内側滞留点2436の移行は、単独で、または外側滞留点2435の移行と併せて、脛骨大腿骨回転を自然な膝の回転と同様に引き起こすか、または可能にする。自然な膝の脛骨大腿骨回転は、屈曲時の、大腿骨に対する脛骨と下腿の外向き回転である。自然な脛骨大腿骨回転では、伸展と比較して、屈曲時につま先は外側を指す。内側滞留点2435の移行の程度は、大腿骨コンポーネント2401に対する脛骨ベースプレートコンポーネント2440およびインサート2410の回転に対応し得る。
【0073】
インサート2410の非対称性の結果として生じる脛骨大腿骨回転は、患者に追加の関節安定性をもたらし得る。内側滞留点1540が矢状面に向かって内側に移動すると、膝の内側側副靭帯は、膝が伸展から屈曲に移動するに伴い張力が作用した状態を維持し得る。脛骨大腿部の回転と内側靭帯の張力の維持は、健康な膝の動きをより正確に模倣することができる。アセンブリ2400は、対称な内側関節側および外側関節側を有する人工膝と比較して、膝のより自然な生体力学的運動範囲を可能にし得る。
【0074】
図24Aを参照すると、左膝に配置するように構成され、およそ90度の伸長すなわち“屈曲”として示される、外側からの分解した状態で表されるアセンブリ2400を示している。脛骨関節面2412は、脛骨内側区画2413(通常文字“M”で示される)および脛骨外側区画2414(通常文字“L”で示される)を含み得る。特に、脛骨インサート2410は、患者の左膝と共に使用するために特別に構成および設計され、脛骨ベースプレートコンポーネント2440内に適合するように構成され得る。さらに、脛骨関節面2412は、左膝のために具体的に構成された大腿骨コンポーネント2401に接触し、接合するように構成され得る。
【0075】
図28A図28Eを参照すると、別の実施形態による、移植可能な人工膝用のアセンブリ2800が示されている。アセンブリ2800は、大腿骨コンポーネント2801、インサート2810、および脛骨ベースプレートコンポーネント2840を含み得る。図28Aは、患者の解剖学的構造を参照して、後方-外側から見たアセンブリ2800の分解図である。アセンブリ2800は、概して、内側および外側を横切って非対称であり、言い換えれば、左側は、右側に対して非対称である。図28A図28Fは、右膝の構造を示している。
【0076】
大腿骨コンポーネント2801は、後部安定化ないし十字保持であり得る。図28Aでは、大腿骨コンポーネント2801、脛骨インサート2810、および脛骨コンポーネント2840が屈曲して示されている。大腿骨コンポーネント2801は、図9の大腿骨コンポーネント114と同様に、内側顆2802および外側顆2803を含み得る。内側顆2402および外側顆2403は、内側顆状関節面2404および外側顆状関節面2405を含むことができる。大腿骨コンポーネント2801は、大腿骨コンポーネント2801を患者の大腿骨に固定するための要素を含み得る。例えば、大腿骨コンポーネント2801は、関連する大腿骨(不図示)の骨を貫通して大腿骨コンポーネント2801を大腿骨に固定する、少なくとも1つのキール2806および少なくとも1つの柱2807を含み得る。少なくとも1つの柱2807は、内側顆2802および/または外側顆2803の大腿骨側に配置され得る。大腿骨コンポーネント2801は、骨の成長および固定を促進するために、骨に面する側に表面組織を含み得る。
【0077】
脛骨ベースプレートコンポーネント2840は、患者の脛骨に固定されるように構成され得る。脛骨ベースプレートコンポーネント2840は、患者の脛骨に挿入および固定される1つまたは複数の脛骨柱2842を備えた、インサート2810の配置および固定のために構成されたインサート接合部2841を含み得る。脛骨ベースプレートコンポーネント2840は、さらに、特定の実施形態では、脛骨プラトーを貫通するように設計され、また、脛骨の髄内管にさらに深く貫通する別個のキール(不図示)を受け入れ得るベース2843を有してもよい。
【0078】
図28Aは、左膝に配置するように構成され、およそ90度の伸長すなわち“屈曲”として示される外側からの分解した状態で表されるアセンブリ2800を示している。脛骨ベースプレートコンポーネント2840および大腿骨コンポーネント2801は、前方-後方の平面にわたって内側および外側で対称であり得るが、インサート2810は、内側-外側に関して非対称であり得る。インサート2810は、脛骨ベースプレートコンポーネント2840のインサート接合部2841と嵌合または係合するように構成されたベースプレート接合部2811を含み得る。ベースプレート接合部2811は、インサート接合部2841上の形状に相補的な形状を有し得る。相補的な形状によって、インサート2810の取り外し可能な嵌合が可能になる。取り外し可能な嵌合によって、モジュラーアセンブリ2800は、外科医や患者に利益をもたらすことができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、“接合部”は、2つの別個のおよび/または独立した構造、部材、装置、アセンブリ、コンポーネント、および/またはシステムが結合、接続、結合、または機械的または電子的に互いに会合および作用、または通信する領域、境界、または場所を指す。特定の実施形態では、“接合部”は、2つの本体、空間、構造、部材、装置、アセンブリ、構成要素、または位相の共通の境界を形成する表面を指し得る。(Merriam-Webster.comで、“interface”を検索。Webster,2021.Web.2021年11月15日、改訂)。特定の実施形態では、接合部という用語は、接合部のタイプまたは機能を識別する形容詞と共に使用され得る。例えば、係合接合部は、相互作用または接続して、それぞれが接合部の側面に接続された2つの別々の構造を機械的に結合または接続する1つまたは複数の構造を指し得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、脛骨ベースプレートコンポーネント2840および大腿骨コンポーネント28401は、前述したように対称であってもよく、これによって、左膝または右膝の代替のいずれかに用いることができる。特定の実施形態では、脛骨インサート2810は、患者の一方の側または他方の側に特異的であってもよい。左または右膝関節形成術のためのアセンブリは、単一の大腿骨コンポーネント2801、単一の脛骨ベースプレートコンポーネント2840、および2つの(例えば、左および右の)インサート2410、2810を含み得る。これにより、システムに必要な在庫が大幅に削減され得る。
【0081】
ベースプレート接合部2811の反対側では、脛骨インサート2810は、大腿骨コンポーネント2801上の内側顆2802および外側顆2803と係合するように構成された脛骨関節面2812を含む。脛骨関節面2812は、脛骨インサート2810の上側とすることができる。脛骨関節面2812は、脛骨内側区画2813および脛骨外側区画2814を含み得る。特定の実施形態では、脛骨内側区画2813および/または脛骨外側区画2814は、それぞれ、以下でさらに説明する内側周囲および外側周囲によって画定され得る。
【0082】
脛骨内側区画2813は、内側顆状関節面2804と直接係合するための内側関節面2820を含み得る。脛骨外側区画2814は、外側顆状関節面2805と直接係合するための外側関節面2821を含み得る。内側顆状関節面2804は、内側滞留点2835(後続の図に示される)で内側関節面2820と係合し得る。外側顆状関節面2805は、外側滞留点2836(後続の図に示される)で外側関節面2821と係合し得る。特定の実施形態では、内側関節面2820は、内側斜面2838を含んでもよく、これは、特定の実施形態では、外側関節面2821上に対応するものが無い、脛骨内側区画2813と脛骨外側区画2814との間の非対称性の少なくとも一部を形成し得る。
【0083】
特定の実施形態では、アセンブリ2800は、長手方向軸2846を含み得る。長手方向軸2846は、概して、関節(関節部)屈曲中に生じる脛骨大腿骨回転の間に顆状関節面が回転する領域または近傍を示し得る。本開示は、(図28Aの長手方向軸2846によって示されるように)脛骨内側区画2813内での、長手方向軸周りの脛骨大腿骨回転を可能にし、容易にし、および/またはもたらす、膝アセンブリ、例えば、アセンブリ2800の1つまたは複数の実施形態をサポートする。あるいは、または加えて、脛骨大腿骨回転は、脛骨外側区画2814内の長手方向軸を中心にしてもよい。特定の実施形態では、外側関節面および/または内側関節面の形状および/または輪郭は、長手方向軸が脛骨外側区画(一般に外側関節面によって画定される)内にあるか、または脛骨内側区画(一般に内側関節面によって画定される)内にあるかに影響を及ぼすことができる。
【0084】
本開示は、脛骨関節面2812が、脛骨関節面2812の所望のまたは操作された区画内に脛骨大腿骨回転の長手方向軸を配置するように輪郭形成された実施形態を含む。一般に、脛骨関節面2412、2812が大腿骨コンポーネントの顆に付与する制約が多いほど、脛骨関節面2412、2812のその領域内の軸の周りの回転が多くなる。例えば、長手方向軸2446を脛骨関節面2412の内側関節面2420内に配置するために、内側関節面2420は、外側関節面2421よりも、内側顆2402の内側顆状関節面2404により多くの制約を課すように輪郭形成される。同様に、長手方向軸2846を脛骨関節面2812の外側関節面2821内に配置するために、外側関節面2821は、内側関節面2820よりも、外側顆2803の外側顆状関節面2805に多くの制約を課すように輪郭形成される。
【0085】
本明細書で用いられる場合、“製薬”とは、別の物、部材、構造、構成要素、部品、装置、システム、またはアセンブリの動きまたは動きおよび/または動作を防止、制限、妨害、停止、または制限するように構造化、編成、構成、設計、配置、または設計された装置、器具、構造、デバイス、構成要素、システム、またはアセンブリを指す。(wordhippo.comで“constraint”を検索。WordHippo,2021.Web.2021年12月8日閲覧.改訂)特定の実施形態では、“制約”は、一時的、永続的、前、後、および/または運動中に制約されている物体の状態を指し得る。
【0086】
図28Aでは、脛骨外側区画2814および/または脛骨内側区画2813は、脛骨大腿骨回転のための長手方向軸2846が脛骨内側区画2813内にあるように構成される。図28Aでは、脛骨外側区画2814および/または脛骨内側区画2813は、長手方向軸2446が脛骨内側区画内にあるように構成され、これは、一般に、内側関節面2420によって画定され得る。脛骨大腿回転のために構成、設計、および/または操作された膝アセンブリは、脛骨外側区画2814内にあり、外側旋回設計の膝アセンブリと呼ばれ得る。脛骨大腿骨回転のために構成され、設計され、および/または操作された膝アセンブリは、脛骨内側区画内にあり、内側旋回設計の膝アセンブリと呼ばれ得る。特定の患者では、左膝に外側旋回設計の膝アセンブリを使用し、右膝に内側旋回設計の膝アセンブリを使用することが望ましい場合がある。あるいは、または加えて、左膝に内側旋回設計の膝アセンブリを使用し、右膝に外側旋回設計の膝アセンブリを使用することが望ましい場合がある。あるいは、または加えて、左膝および右膝のいずれかまたは両方で、外側旋回設計の膝アセンブリまたは内側旋回設計の膝アセンブリを使用することが望ましい場合がある。
【0087】
図28B図28Dは、脛骨インサート2810の形状および/または輪郭の詳細を示す。図28Bは、脛骨インサート2810の後方図である。図28Cは、脛骨インサート2810の前方図である。脛骨内側区画2813は、内側後方側2815および内側前方側2817を含み得る。内側関節面2820は、内側周囲2826によって囲まれた、内側後方部2822および内側前方部2823を含み得る。本明細書で使用される場合、“内側周囲”は、内側区画の近くまたは回りにある周囲を指す。脛骨外側区画2814は、外側後方側2816および外側前方側2818を含み得る。外側関節面2821は、外側周囲2829によって囲まれた、外側後方部2824および外側前方部2825を含み得る。本明細書で使用される場合、“外側周囲”は、外側区画の近くまたは周りにある周囲を指す。
【0088】
図28Dおよび28Eは、それぞれ、脛骨インサート2810の外側図および内側図を示す。図28Dでは、外側周囲2829を有する外側関節面2821が示される。外側関節面2821は、外側の高点2830で外側周囲2829に合流し得る。本明細書で使用される場合、”外側の高点”は、外側区画内の他の点または領域よりも外側区画内で高い点または領域を指す。外側の低点2831は、外側関節面2821の中心に向かう外側低点2831としてもよい。本明細書で使用される場合、”外側低点”は、外側区画内の他の点または領域よりも外側区画内で低い点または領域を指す。
【0089】
図28Eでは、内側周囲2826を有する内側関節面2820が示されている。内側関節面2820は、内側後方部2822の、近く、または隣接する内側高点2827で内側周囲2826に会い得る。本明細書で使用される場合、“内側交点”は、内側区画内で、内側区画内の他の点または領域よりも高い点または領域を指す。内側関節面2820は、内側前方部2823に近くで、内側周囲2826に向かう内側低点2828を含み得る。本明細書で使用される場合、“内側低点”は、内側区画内で、内側区画内の他の点または領域よりも低い点または領域を指す。
【0090】
外側関節面2821および内側関節面2820の両方の高点2827、2830および低点2828、2831は、ベースプレート接合部2811に関連している。内側高点2827と内側低点2828との間の差は、外側高点2830と外側低点2831との間の差よりも大きくできる。内側関節面2820における高さのより大きな差は、内側斜面2838によって表すことができる(図28Fの表現を参照)。
【0091】
内側後方部2822は、内側高点2827で開始し、内側高点2827から内側低点2828に向かって前方に延在する内側斜面2838を含み得る。内側斜面2838の表面形状に続いて、内側関節面2820は、内側高点2827から内側前方部2823に近い内側低点2828に向かって、かつ内側周囲2826に向かう勾配を有する傾向がある。外側関節面2821の勾配は、外側低点2831へと続く。従って、内側関節面2820および外側関節面2821における下り勾配の移動は、非対称であり得る。外側関節面2821は、概して、外側低点2831に向かって凹状であり得る。内側低点2828の位置は、内側関節面2820に沿った内側斜面2838からの勾配の方向性を生じさせ、これは、物体ないし塊を内側斜面2838によって作られた方向に勾配を下方向に移動させる。内側斜面2838と、内側周囲2826および内側関節面2820に沿った異なる高さは、勾配に沿った一時的な内側滞留点2835を作り得る。脛骨内側区画2813および/または脛骨外側区画2814内のおおよその勾配は、図28Fにおいて破線で表される。
【0092】
脛骨内側区画2813の内側後方側2815は、内側周囲2826における内側高点2827によって画定される厚さを有し、これは、内側斜面2838および/またはベースプレート接合部2811に対応し得る。脛骨外側区画2814の外側後方側2816は、外側周囲2829およびベースプレート接合部2811における外側高点2830によって画定される厚さを有し得る。内側斜面2838があることによって、脛骨内側区画2813は、脛骨外側区画2814よりも大きな厚さを有し得る。
【0093】
図28Fを参照すると、内側斜面2838およびそれが内側関節面2820に沿って内側低点2828に向かって作る勾配は、膝およびアセンブリ2800が0度の屈曲すなわち伸展から90度の屈曲までの範囲であることから、外側顆2803の並進ないし移動よりも大きい、内側顆2802の並進ないし移動を引き起こし得る。内側顆2802は、屈曲の程度が増すにつれて内側滞留点2835が内側周囲2826に向かって前方および外向きに移動するように、内側斜面2838を下方に移動し得る。外側顆2803は、外側低点2831の近くの概して同じ位置に留まることができるので、外側滞留点2836は概して同じ位置に留まることができる。特定の実施形態では、外側顆2803はまた、膝が屈曲に移行するにつれて移動し、その結果、外側滞留点2836は、内側滞留点2835が前方および外側に移動するにつれて、後方および外側に同時に移動する。内側滞留点2835および外側滞留点2836の非対称な並進によって、伸展と屈曲との間の脛骨大腿骨回転を生じ得る。そのような脛骨大腿骨回転は、健康な膝関節に望ましい挙動であり、少なくとも部分的に、遠位大腿骨の内側顆と外側顆のサイズの違いによって引き起こされる膝関節のスクリューホーム機構(SHM)と呼ばれ得る。
【0094】
図29は、本開示の一実施形態による人工膝システムの前方斜視図である。人工膝システム2900は、大腿骨コンポーネント、インサート、および脛骨ベースプレートコンポーネントを含む。特定の実施形態では、特定の大腿骨コンポーネントおよび特定の脛骨ベースプレートコンポーネントは、具体的には左膝関節用に構成される。特定の実施形態では、特定の大腿骨コンポーネントおよび特定の脛骨ベースプレートコンポーネントは、具体的には右膝関節用に構成される。あるいは、または加えて、大腿骨コンポーネントおよび脛骨ベースプレートコンポーネントは、左膝関節または右膝関節のいずれかで使用するように具体的に構成され得る。左膝関節のための人工膝関節システム2900は、患者の第1の側のために構成され得る。代替として、または加えて、右膝関節用の人工膝関節システムは、患者の第2の側のために構成され、第2の側は、右側および左側の反対側である。
【0095】
図示の実施形態では、大腿骨コンポーネントは、左膝のための大腿骨コンポーネント2401であり(図24Aを参照)、脛骨ベースプレートコンポーネントは、左膝のための脛骨ベースプレートコンポーネント2440である。脛骨ベースプレートコンポーネント2440は、インサート接合部2441を含む。大腿骨コンポーネント2401は、内側顆状関節面2404および外側顆状関節面2405の一方または両方を含む大腿骨関節面を含む。
【0096】
図29は、3次元軸2902を示す。3次元軸2902は、頭-尾軸2904、内側-外側軸2906、および前方-後方軸2908を含む。図29は、左膝に状態を有する患者の左膝のための大腿骨コンポーネント2401および脛骨ベースプレートコンポーネント2440の向きおよび構成を示す。本明細書で使用される場合、“状態”は、その外観、品質、または動作状態に関して何らかの状況を指す。特定の実施形態では、状態は、患者の健康状態または身体適合性、または患者の臓器または解剖学的部分の健康状態または身体適合性を指し得る。特定の実施形態では、状態は、患者の疾患または変形、または患者の臓器または解剖学的部分の疾患または変形を指し得る。(wordhippo.comで“condition”を検索。WordHippo,2021.Web.2021年12月8日閲覧。改訂)図示の実施形態では、患者の左膝は、膝関節が頭-尾軸2904などの垂直軸から約8度離れて角度を付けられたな内反状態を有する。
【0097】
本明細書で使用される場合、“内反状態”は、骨または関節の遠位部分の望ましくない内向き角度(すなわち、体の正中線に向かう内側角度)を有する骨または関節の状態を指す。内反の反対は外反と呼ばれる。“内反”および“外反”という用語は、関節の遠位部分が指す方向を指している。例えば、膝の内反状態は、大腿骨に関連して脚の遠位部分が内側にそれるО脚の外観をもたらす。例えば、膝の外反状態では、膝の下の脚の遠位部分は、大腿骨に対して外側にそれ、X脚の外観をもたらす。(Wikipedia.comで“varusdeformity”を検索.2020年10月20日。変更済。2020年1月6日閲覧)内反状態は、足首関節、肘関節、足関節、手関節、股関節、膝関節、つま先関節、手首関節などを含むがこれらに限定されない様々な関節で経験することができる。内反状態を有する膝は、内反膝とも称され得る。
【0098】
内反状態を有する患者の膝は、膝が様々な角度の屈曲および/または伸展を介して遷移する際に、膝の運動学において1つまたは複数の問題ないし課題を引き起こし得る。例えば、内反膝は、屈曲中に望ましくない安定性(不十分な安定性)を有し得る。この望ましくない不安定性は、大腿骨コンポーネント2401(または大腿骨の遠位端)の内側顆と外側顆との間における空所の不均衡によって引き起こされ得る。そのような不安定性は、中外側安定性と呼ばれる。
【0099】
本明細書で使用される場合、“中外側安定性”とは、関節および/または関節に関連する部分が安定または平衡状態であり、従って、患者の内側-外側軸2906および/または患者の関節に沿って変化することに抵抗力がある状態を指す。(wordhippo.comで“stability”を検索。WordHippo,2021.Web.2021年12月8日閲覧。改訂)屈曲中の中外側安定性の不十分な程度または望ましくない程度は、屈曲中の患者の不安を引き起こし、人工膝関節システム2900の完全性および性能に対する信頼性を低下させる可能性がある。
【0100】
有利には、人工膝システム2900は、人工膝システム2900を配備するときに外科医によって使用される脛骨インサートによって、望ましくない程度の内側安定性を修正することができる。図示の実施形態では、外科医は、術前および/または術中のいずれかで、左膝について、脛骨ベースプレートコンポーネント2440および大腿骨コンポーネント2401と共に脛骨インサート2910aを使用することを選択し得る。脛骨インサート2910aは、配備時に脛骨ベースプレートコンポーネント2440と大腿骨コンポーネント2401との間に配置される。矢印2912を参照のこと。
【0101】
脛骨インサート2910aは、脛骨内側区画2813および脛骨外側区画2814を有する脛骨関節面2812を含む。脛骨インサート2910bは、脛骨内側区画2413および脛骨外側区画2414を有する脛骨関節面2412を含む。有利には、一実施形態では、脛骨インサート2910aのベースプレート接合部2811は、脛骨ベースプレートコンポーネント2440のインサート接合部2441と、相補的であり、および/または互換性がある。脛骨インサート2910bのベースプレート接合部2411はまた、脛骨ベースプレートコンポーネント2440のインサート接合部2441と、相補的であり、および/または互換性がある。互換性のある接合部2811、2441は、外科医が、左膝のために脛骨ベースプレートコンポーネント2440および大腿骨コンポーネント2401を備えた脛骨インサート2910aを配備して、状態を有する患者の左膝関節の運動学を、適応させ、調整し、改良し、または修正することを可能にする。脛骨関節面2812は、大腿骨関節面と協働して、状態を有する膝関節の運動学を適応させるように成形される。例示される実施形態では、状態は内反であり、また、外反および均衡状態のうちの1つであり得る。
【0102】
一実施形態では、脛骨関節面2812は、脛骨内側区画2813、脛骨外側区画2814、内側関節面2820、外側関節面2821、および/または内側関節面2820内の高点および/または低点、および/または外側関節面2821のうちの1つ以上を含んで、膝関節システム2900が配備された膝関節の状態を修正するように構成される。一実施形態では、脛骨関節面2812の輪郭および/または特徴は、内反状態を有する第1の膝関節:内反膝関節の屈曲中の中外側安定性を調節する。一実施形態では、脛骨インサート2910aの脛骨関節面2812は、第1の膝関節の外側側副靭帯の拘束を増すことによって中外側安定性を調整し、第1の膝関節の内側側副靭帯の張力を低下させることができる。
【0103】
図示の実施形態では、外科医は、膝に状態が有るため、左膝に脛骨インサート2910aを配備し得ることに留意されたい。しかしながら、脛骨インサート2910aはまた、患者の状態の無い右膝関節に配備されてもよい(例えば、移植に適している)。本明細書で使用される場合、“移植に適した”とは、患者におけるインプラントの配備が、患者の健康および/またはウェルビーイングに所望の影響をもたらすように構成されたデバイスまたはインプラントを指す。脛骨インサート2910aは、状態の無い、または均衡した状態を有する右膝関節に配備するように設計され得るが、図29に示されている脛骨インサート2910aは、約8度の内反状態を有する左膝関節に配備されている。
【0104】
本明細書で使用される場合、“運動学”は、運動中の物体に関わり、関与する力に関するものではない力学の領域を指す。(wordhippo.comで“kinematics”を検索。WordHippo,2021.Web.2021年12月8日閲覧。改訂)特定の実施形態では、運動学は、相互のおよび他の構成要素との関連で、運動中の構成要素の運動および/または相互作用に関与する態様を指す。運動学に関与する運動には、線形、回転、往復運動、および/または振動が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0105】
本明細書で使用される場合、“屈曲”は、関節、特に骨関節を曲げる動きを指す。伸長と反対の動き。(wordhippo.comで“flexion”を検索。WordHippo2021,Web.2021年12月8日閲覧、改訂済)WW2。屈曲は、関節の部分を非屈曲ないし伸長状態から非伸長ないし屈曲状態に移動させる動きを含み、屈曲および/または伸長の程度で表され得る。伸長および/または屈曲の状態を表現するために用いることができる程度の範囲は、特定の関節の動きの範囲に依存し得る。本明細書で使用される場合、“伸長”は、関節、特に骨関節を伸ばす動きを指す。屈曲と反対の動き。(wordhippo.comで“extension”を検索。WordHippo,2021.Web.22021年12月8日閲覧.改訂済)。伸長は、関節の部分を屈曲状態から伸長状態に移動させる動きを含み、伸長および/または屈曲の程度で表され得る。伸長および/または屈曲の状態を表現するために用いることができる程度の範囲は、特定の関節の動きの範囲に依る。本明細書で使用される場合、“張力”は、細長い構造の両端に加えられる力を指す。例えば、外側側副靭帯などの靭帯は、靭帯が大腿骨および脛骨にどのように取り付けられ、膝関節の屈曲中にどのように伸ばされるかに起因して、張力を受け得る。
【0106】
一実施形態では、大腿骨コンポーネント2401は、患者の第1の側に設定され、脛骨インサート2910aは、患者の第2の側に設定される。図示の実施形態では、第1の側は患者の左側であり、第2の側は患者の右側とすることができる。あるいは、または加えて、第1の側は患者の右側とし、第2の側は患者の左側とすることができる。
【0107】
さらに図29を参照すると、膝関節が内反状態を有する場合、外科医は、脛骨インサート2910aを脛骨ベースプレートコンポーネント2440に結合または接続することを決定し得る。外科的処置が完了すると、左膝関節などの患者の膝関節は、内側顆状関節面2404を含む大腿骨内側区画と、外側顆状関節面2405を含む大腿骨外側区画とを有する大腿骨コンポーネント2401を含むことになる。図示の実施形態では、内側顆状関節面2404は、大腿骨内側区画を画定し、外側顆状関節面2405は、大腿骨外側区画を画定する。左膝が内反状態を呈するため、脛骨インサート2910bの代わりに脛骨インサート2910aを使用してもよい。
【0108】
膝関節に配備された脛骨インサート2910aを用いて、脛骨内側区画2813は、屈曲中に外側滞留点(後の図に示される)で大腿骨外側区画と係合し、脛骨外側区画2814は、屈曲中に内側滞留点(後の図に示される)で大腿骨内側区画と係合する。当業者は、これは、脛骨インサート2910bが大腿骨コンポーネント2401と脛骨ベースプレートコンポーネント2440との間に配備される場合の配置とは異なることを認識する。別の言い方をすれば、左脛骨インサート2910bが左膝関節に配備された場合、大腿骨コンポーネント2401と脛骨ベースプレートコンポーネント2440それぞれの内側区画は互いに係合し、大腿骨コンポーネント2401と脛骨ベースプレートコンポーネント2440それぞれの外側区画は互いに係合する。
【0109】
図30は、本開示の別の実施形態による人工膝システムの前方斜視図である。図30は、図29に関連して開示および説明されたものと同様の構成要素、部品、デバイス、装置、特徴、および態様を含むが、図30の違いは、人工膝関節システム2900が、図29の人工膝関節システム2900に関連した膝関節とは異なる状態を有する膝関節内に配備されることである。図30では、例示的な人工膝関節システム2900は、外反状態を有する膝関節に配備される。
【0110】
本明細書で使用される場合、“外反状態”は、骨または関節の遠位部の望ましくない外向きの角度(体の正中線から離れる外方向の角度)を有する骨または関節の状態を指す。例えば、膝の外反状態では、膝の下の脚の遠位部分は、大腿骨に対して外側にそれ、X脚の外観を呈するものである。内反の反対はが外反と呼ばれる。膝の内反状態は、大腿骨に関連して脚の遠位部分が内側にそれたО脚の外観を呈するものである。(“valgusdeformity”をWikipedia.comOct20,2020.で検索。変更。2020年1月6日閲覧)。外反状態は、足首関節、肘関節、足関節、手関節、股関節、膝関節、つま先関節、手首関節などを含むがこれらに限定されない様々な関節で経験することができる。外反状態を有する膝は、外反膝とも呼ばれ得る。
【0111】
外反状態を有する患者の膝は、膝が様々な角度の屈曲および/または伸展を介して遷移する際に、膝の運動学において1つまたは複数の問題ないし課題を引き起こし得る。例えば、外反膝は、膝関節の屈曲中に脛骨内側区画内の脛骨大腿骨回転が妨げられ、または不自然になった可能性がある。妨害された、または不自然な脛骨大腿骨回転は、人工膝システム2900の構成要素の早期の摩耗を引き起こし、患者の平衡状態を妨げ、患者の歩行または可動性を妨げ得る。
【0112】
有利には、人工膝関節3000は、膝関節の屈曲中の脛骨内側区画内の望ましくない、または容認できない脛骨大腿骨回転を修正することができる。特に、脛骨関節面2812は、状態が外反膝関節である第1の膝関節の屈曲中に、脛骨区内側画2813内での脛骨大腿骨回転を容易にし得る。図示の実施形態では、外科医は、術前および/または術中のいずれかで、右膝について、脛骨ベースプレートコンポーネント2440および大腿骨コンポーネント2401と共に脛骨インサート2910bを使用することを選択し得る。脛骨インサート2910bは、配備時に脛骨ベースプレートコンポーネント2840と大腿骨コンポーネント2801との間に配置される。矢印3012を参照のこと。右膝が外反状態を呈するため、脛骨インサート2910bは、脛骨インサート2910aの代わりに使用され得る。
【0113】
脛骨インサート2910bは、脛骨内側区画2413および脛骨外側区画2414を有する脛骨関節面2412を含む。互換性のある接合部2811、2441は、外科医が、右膝のために、脛骨ベースプレートコンポーネント2840および大腿骨コンポーネント2801を備えた脛骨インサート2910bを配備して、状態を有する患者の右膝関節の運動学を、適応させ、調整し、改良し、または修正することを可能にする。
【0114】
図示の実施形態では、外科医は、膝が外反状態を有するため、右膝に脛骨インサート2910bを配備し得ることに留意されたい。しかしながら、脛骨インサート2910bはまた、患者の外反状態の無い左膝関節に配備されてもよい(例えば、移植に適している)。脛骨インサート2910bは、状態の無い、または均衡した状態を有する左膝関節に配備するように設計され得るが、図32に示されている脛骨インサート2910bは、約8度の外反状態を有する右膝関節に配備されている。さらに図30を参照すると、膝関節が外反状態を有する場合、外科医は、脛骨インサート2910aを脛骨ベースプレートコンポーネント2440に結合または接続することを決定し得る。
【0115】
図31は、本開示の一実施形態による人工膝システムの前方斜視図である。人工膝システム3000は、大腿骨コンポーネント、インサート、および脛骨ベースプレートコンポーネントを含む。特定の実施形態では、特定の大腿骨コンポーネントおよび特定の脛骨ベースプレートコンポーネントは、具体的には右膝関節用に構成される。特定の実施形態では、特定の大腿骨コンポーネントおよび特定の脛骨ベースプレートコンポーネントは、具体的には左膝関節用に構成される。あるいは、または加えて、大腿骨コンポーネントおよび脛骨ベースプレートコンポーネントは、左膝関節または右膝関節のいずれかで使用するように具体的に構成され得る。左膝関節のための人工膝関節システム3000は、患者の第1の側のために構成され得る。代替として、または加えて、左膝関節用の人工膝関節システムは、患者の第2の側のために構成され、第2の側は、右側および左側の反対側である。
【0116】
図示の実施形態では、大腿骨コンポーネントは、右膝のための大腿骨コンポーネント2801であり(図28Aを参照)、脛骨ベースプレートコンポーネントは、右膝のための脛骨ベースプレートコンポーネント2840である。脛骨ベースプレートコンポーネント2840は、インサート接合部2841を含む。大腿骨コンポーネント2801は、内側顆状関節面2804および外側顆状関節面2805の一方または両方を含む大腿骨関節面を含む。
【0117】
図31は、右膝に状態を有する患者の右膝のための大腿骨コンポーネント2801および脛骨ベースプレートコンポーネント2840の向きおよび構成を示す。図示の実施形態では、患者の右膝は、膝関節が頭-尾軸2904などの垂直軸から約8度角度を付けられた内反状態を有する。患者は、患者の第1の側に第1の膝関節の右膝などの膝関節、および患者の第2の側に第2の膝関節の左膝などの第2の膝をそれぞれ有する2つの膝を有し得る。人工膝ステム3000に配備された脛骨インサート2910bは、左膝関節用に構成され、右膝関節の脛骨ベースプレートコンポーネント2840のインサート接合部2841に取り付けられる。そのような実施態様では、別の脛骨インサート、例えば、脛骨インサート2910aは、患者の右膝関節用に構成され得る。
【0118】
内反状態を有する患者の膝は、膝が様々な角度の屈曲および/または伸展を介して遷移する際に、膝の運動学において1つまたは複数の問題ないし課題を引き起こし得る。例えば、内反膝は、屈曲中に望ましくない安定性(不十分な安定性)を有し得る。この望ましくない不安定性は、大腿骨コンポーネント2801(または大腿骨の遠位端)の内側顆と外側顆との間における空所の不均衡によって引き起こされ得る。そのような不安定性は、中外側安定性と呼ばれる。屈曲中の中外側安定性の不十分な程度または望ましくない程度は、屈曲中の患者の不安を引き起こし、人工膝関節システム3000の完全性および性能に対する信頼性を低下させる可能性がある。
【0119】
有利には、人工膝システム3000は、人工膝システム3000を配備するときに外科医によって使用される脛骨インサートによって、望ましくない程度の内側安定性を修正することができる。図示の実施形態では、外科医は、術前および/または術中のいずれかで、右膝について、脛骨ベースプレートコンポーネント2840および大腿骨コンポーネント2801と共に脛骨インサート2910bを使用することを選択し得る。脛骨インサート2910bは、配備時に脛骨ベースプレートコンポーネント2840と大腿骨コンポーネント2801との間に配置される。矢印3012を参照のこと。
【0120】
脛骨インサート2910bは、脛骨内側区画2413および脛骨外側区画2414を有する脛骨関節面2412を含む。脛骨インサート2910aは、脛骨内側区画2413および脛骨外側区画2414を有する脛骨関節面2412を含む。有利には、一実施形態では、脛骨インサート2910bのベースプレート接合部2411は、脛骨ベースプレートコンポーネント2840のインサート接合部2841と、相補的であり、および/または互換性がある。脛骨インサート2910aのベースプレート接合部2811はまた、脛骨ベースプレートコンポーネント2840のインサート接合部2841と、相補的であり、および/または互換性がある。互換性のある接合部2411、2841は、外科医が、右膝のために、脛骨ベースプレートコンポーネント2840および大腿骨コンポーネント2801を備えた脛骨インサート2910bを配備して、状態の有る患者の左膝関節の運動学を、適応させ、調整し、改良し、または修正することを可能にする。脛骨関節面2412は、大腿骨関節面と協働して、状態を有する膝関節の運動学を適応させるように成形される。例示される実施形態では、状態は内反であり、また、外反および均衡状態のうちの1つであり得る。
【0121】
一実施形態では、脛骨関節面2412は、脛骨内側区画2413、脛骨外側区画2414、内側関節面2420、外側関節面2421、および/または内側関節面2420内の高点および/または低点、および/または外側関節面2421のうちの1つまたは複数を含んで、膝関節システム3000が配備された膝関節の状態を修正するように構成される。一実施形態では、脛骨関節面2412の輪郭および/または特徴は、内反状態を有する第1の膝関節:内反膝関節の屈曲中の中外側安定性を調節する。一実施形態では、脛骨インサート2910bの脛骨関節面2412は、第1の膝関節の外側側副靭帯の拘束を増すことによって中外側安定性を調整し、第1の膝関節の内側側副靭帯に作用する張力を低下させることができる。
【0122】
図示の実施形態では、外科医は、膝が状態を有するため、右膝に脛骨インサート2910bを配備し得ることに留意されたい。しかしながら、脛骨インサート2910bはまた、患者の状態の無い左膝関節に配備されてもよい(例えば、移植に適している)。脛骨インサート2910bは、状態の無い、または均衡した状態を有する左膝関節に配備するように設計され得るが、図31に示されている脛骨インサート2910bは、約8度の内反状態を有する右膝関節に配備されている。
【0123】
一実施形態では、大腿骨コンポーネント2801は、患者の第1の側に設定され、脛骨インサート2910bは、患者の第2の側に設定される。図示の実施形態では、第1の側は患者の右側であり、第2の側は患者の左側とすることができる。あるいは、または加えて、第1の側は患者の左側とし、第2の側は患者の右側とすることができる。
【0124】
さらに図31を参照すると、膝関節が内反状態を有する場合、外科医は、脛骨インサート2910bを脛骨ベースプレートコンポーネント2840に結合または接続することを決定し得る。外科的処置が完了すると、右膝関節などの患者の膝関節は、内側顆状関節面2804を含む大腿骨内側区画と、外側顆状関節面2805を含む大腿骨外側区画とを有する大腿骨コンポーネント2801を含むことになる。図示の実施形態では、内側顆状関節面2804は、大腿骨内側区画を画定し、外側顆状関節面2805は、大腿骨外側区画を画定する。左膝が内反状態を呈するため、脛骨インサート2910bは、脛骨インサート2910aの代わりに使用され得る。
【0125】
膝関節に配備された脛骨インサート2910bを用いて、脛骨内側区画2413は、屈曲中に、外側滞留点(後の図に示される)で大腿骨外側区画と係合し、脛骨外側区画2414は、屈曲中に、内側滞留点(後の図に示される)で大腿骨内側区画と係合する。当業者は、これは、脛骨インサート2910aが大腿骨コンポーネント2801と脛骨ベースプレートコンポーネント2840との間に配備される場合の配置とは異なることを認識する。別の言い方をすれば、左脛骨インサート2910aが右膝関節に配備された場合、大腿骨コンポーネント2801と脛骨ベースプレートコンポーネント2840それぞれの内側区画は互いに係合し、大腿骨コンポーネント2801と脛骨ベースプレートコンポーネント2840それぞれの外側区画は互いに係合する。
【0126】
図32は、本開示の別の実施形態による人工膝システムの前方斜視図である。図32は、図31に関連して開示および説明されたものと同様の構成要素、部品、デバイス、装置、特徴、および態様を含むが、図32の違いは、人工膝関節システム3000が、図31の人工膝関節システム3000に関連した膝関節とは異なる状態を有する膝関節内に配備されることである。図32では、例示的な人工膝関節システム3000は、外反状態を有する右膝関節に配備される。
【0127】
図32は、右膝に状態を有する患者の右膝のための大腿骨コンポーネント2801および脛骨ベースプレートコンポーネント2840の向きおよび構成を示す。図示の実施形態では、患者の右膝は、膝関節が頭-尾軸2904などの垂直軸から約8度角度を付けられた外反状態を有する。患者は、患者の第1の側に第1の膝関節の右膝などの膝関節、および患者の第2の側に第2の膝関節の左膝などの第2の膝をそれぞれ有する2つの膝を有し得る。人工膝ステム3000に配備された脛骨インサート2910bは、左膝関節用に構成され、右膝関節の脛骨ベースプレートコンポーネント2840のインサート接合部2841に取り付けられる。そのような実施態様では、別の脛骨インサート、例えば、脛骨インサート2910aは、患者の右膝関節用に構成され得る。
【0128】
外反状態を有する患者の膝は、膝が様々な角度の屈曲および/または伸展を介して遷移する際に、膝の運動学において1つまたは複数の問題ないし課題を引き起こし得る。例えば、外反膝は、膝関節の屈曲中に脛骨内側区画内の脛骨大腿骨回転が妨げられ、または不自然になった可能性がある。妨害された、または不自然な脛骨大腿骨回転は、人工膝システム3000の構成要素の早期の摩耗を引き起こし、患者の平衡状態を妨げ、患者の歩行または可動性などを妨げ得る。
【0129】
有利には、人工膝関節システム3000は、膝関節の屈曲中の、脛骨内側区画内の望ましくない、または容認できない脛骨大腿骨回転を修正することができる。特に、脛骨関節面2412は、状態が外反膝関節である第1の膝関節の屈曲中に、脛骨内側区画2813内での脛骨大腿骨回転を容易にし得る。図示の実施形態では、外科医は、術前および/または術中のいずれかで、右膝について、脛骨ベースプレートコンポーネント2840および大腿骨コンポーネント2801と共に脛骨インサート2910bを使用することを選択し得る。脛骨インサート2910bは、配備時に脛骨ベースプレートコンポーネント2840と大腿骨コンポーネント2801との間に配置される。矢印3012を参照のこと。右膝が外反状態を呈するため、脛骨インサート2910bは、脛骨インサート2910aの代わりに使用され得る。
【0130】
脛骨インサート2910bは、脛骨内側区画2413および脛骨外側区画2414を有する脛骨関節面2412を含む。互換性のある接合部2411、2841は、外科医が、右膝のために、脛骨ベースプレートコンポーネント2840および大腿骨コンポーネント2801を備えた脛骨インサート2910bを配備して、外反状態を有する患者の右膝関節の運動学を、適応させ、調整し、改良し、または修正することを可能にする。
【0131】
図示の実施形態では、外科医は、膝が外反状態を有するため、右膝に脛骨インサート2910bを配備し得ることに留意されたい。しかしながら、脛骨インサート2910bはまた、患者の外反状態の無い左膝関節に配備されてもよい(例えば、移植に適している)。脛骨インサート2910bは、状態の無い、または均衡した状態を有する左膝関節に配備するように設計され得るが、図32に示されている脛骨インサート2910bは、約8度の外反状態を有する右膝関節に配備されている。さらに図32を参照すると、膝関節が外反状態を有する場合、外科医は、脛骨インサート2910bを脛骨ベースプレートコンポーネント2840に結合または接続することを決定し得る。
【0132】
当業者は、本開示と共に使用される脛骨インサート2910aおよび/または脛骨インサート2910bが、様々な異なる人工膝関節システムに構成された脛骨インサートとすることができることを理解するであろう。例えば、脛骨インサート2910a、bは、十字保持脛骨インサート、拘束された顆状膝脛骨インサート、後部安定化脛骨インサート、および内側-外側非対称脛骨インサートのうちの1つまたは複数であり得る。本明細書で使用される場合、“十字保持脛骨インサート”は、十字保持(“CR”)人工器官と共に使用するように構成された脛骨インサートを指す。本明細書で使用される場合、“拘束された顆状膝脛骨インサート”は、拘束された顆状膝(“CCK”)人工器官と共に使用するように構成された脛骨インサートを指す。本明細書で使用される場合、“後部安定化脛骨インサート”は、後部安定化(“PS”)人工器官と共に使用するように構成された脛骨インサートを指す。本明細書で使用される場合、“内側-外側非対称脛骨インサート”は、人工器官の少なくとも1つの構成要素上で、内側-外側非対称関節面を使用する人工器官と共に使用するように構成された脛骨インサートを指す。
【0133】
図33Aは、本開示の一実施形態による、脛骨インサート2910aなどの右側脛骨インサートの上面図である。図29および図30は、左膝の大腿骨コンポーネント2401および脛骨ベースプレートコンポーネント2440を備えた脛骨インサート2910aを使用することにより、脛骨内側区画2813が外側滞留点2436で外側顆状関節面2405(大腿骨外側区画とも称される)と係合し、脛骨外側区画2814が内側滞留点2435で内側顆状関節面2404(大腿骨内側区画とも称される)と係合することを示している。特定の実施形態では、大腿骨外側区画および大腿骨内側区画は、脛骨関節面2812、および外側顆状関節面2405および内側顆状関節面2404の並進および/または回転が、脛骨関節面2812の輪郭によって管理されるように対称とされている。
【0134】
図33Aは、左膝の大腿骨コンポーネント2401および脛骨ベースプレートコンポーネント2440を有する脛骨インサート2910aを含む関節の屈曲中における内側滞留点2435および外側滞留点2436の位置を示す。内側滞留点2435および外側滞留点2436は、屈曲中に並進および/または回転する。少なくとも部分的には、脛骨関節面2812の輪郭に起因して、外側滞留点2436は、前方および外側に移動し、内側滞留点2435は、後方および外側に移動する。特定の実施形態では、滞留点のこの移動は、状態が外反膝関節である膝関節の屈曲中の脛骨内側区画2813内の脛骨大腿骨回転を容易にし、および/または状態が内反膝関節である膝関節の屈曲中の中外側安定性を調整する。一実施形態では、脛骨関節面2812は、膝関節の外側側副靭帯の拘束を増加させ、膝関節の内側側副靭帯に作用する張力を低下させ得る。
【0135】
図33Bは、本開示の一実施形態による、脛骨インサート2910bなどの右側脛骨インサートの上面図である。図31および図32は、右膝の大腿骨コンポーネント2801および脛骨ベースプレートコンポーネント2840を備えた脛骨インサート2910bを使用することにより、脛骨内側区画2813が外側滞留点2436で外側顆状関節面2805(大腿骨外側区画とも称される)と係合し、脛骨外側区画2414が内側滞留点2435で内側顆状関節面2804(大腿骨内側区画とも称される)と係合することを示している。特定の実施形態では、大腿骨外側区画および大腿骨内側区画は、脛骨関節面2412と、外側顆状関節面2805および内側顆状関節面2804と、の並進および/または回転が、脛骨関節面2812の輪郭によって管理されるように対称とされている。
【0136】
図33Bは、右膝の大腿骨コンポーネント2801および脛骨ベースプレートコンポーネント2840を有する脛骨インサート2910bを含む関節の屈曲中における内側滞留点2435および外側滞留点2436の位置を示す。内側滞留点2435および外側滞留点2436は、屈曲中に並進および/または回転する。少なくとも部分的には、脛骨関節面2412の輪郭に起因して、外側滞留点2436は、前方および外側に移動し、内側滞留点2435は、後方および外側に移動する。特定の実施形態では、滞留点のこの移動は、状態が外反膝関節である膝関節の屈曲中の脛骨内側区画2413内の脛骨大腿骨回転を容易にし、および/または状態が内反膝関節である膝関節の屈曲中の中外側安定性を調整する。一実施形態では、脛骨関節面2412は、膝関節の外側側副靭帯の拘束を増加させ、膝関節の内側側副靭帯に作用する張力を低下させ得る。
【0137】
さらに図33Bを参照すると、特定の実施形態では、膝関節は、患者の右膝関節である。左側脛骨インサート2910bは、左側脛骨インサート2910bが脛骨内側区画2413内の大腿骨関節面を拘束し、状態を緩和するように、右膝関節の脛骨ベースプレートコンポーネント2840のインサート接合部2841に取り付けられる。
【0138】
図34は、本開示の別の実施形態による人工膝システム4000の前方斜視図である。人工膝システム4000は、患者の膝関節で使用するように構成される。同じ人工膝システム4000を、状態がある膝関節、ならびに状態の無い同じ膝関節で使用することができる。有利には、そのような人工膝システム4000は、膝関節形成術を実施するために必要な在庫を減少させる。一実施形態では、人工膝システム4000は、大腿骨コンポーネント4001、脛骨ベースプレートコンポーネント4040、右脛骨インサート4010、および左脛骨インサート4012を含む。
【0139】
図示の実施形態では、大腿骨コンポーネント4001および脛骨ベースプレートコンポーネント4040は、本明細書に開示される他の実施形態で同様の名称のコンポーネントと極めて似たものとできる。一実施形態では、同じ大腿骨コンポーネント4001および脛骨ベースプレートコンポーネント4040を、患者の右膝関節または左膝関節のいずれかで使用するように構成し得る。あるいは、または加えて、大腿骨コンポーネント4001および/または脛骨ベースプレートコンポーネント4040は、左膝関節または右膝関節用に特別に設計され得る。例として、人工膝システム4000が患者の左膝に配備される(大腿骨コンポーネント4001上で“M”および“L”によって識別される内側および外側)。
【0140】
大腿骨コンポーネント4001は、第1の膝関節のために患者の大腿骨に移植されるように構成され、この大腿骨コンポーネント4001は、内側顆状関節面4004および外側顆状関節面4005を含む大腿骨関節面4002を備える。脛骨ベースプレートコンポ―ネント4040は、患者の第1の膝関節のために脛骨に移植されるように構成される。脛骨ベースプレートコンポーネント4040は、インサート接合部4041を含む。
【0141】
右側脛骨インサート4010は、脛骨ベースプレートコンポーネント4040のインサート接合部4041に取り付けられるように構成される。一実施形態では、右側脛骨インサート4010は、インサート接合部4041と互換性のある接合部4011を含み得る。右側脛骨インサート4010はまた、脛骨関節面4020を含む。右側脛骨インサート4010が大腿骨コンポーネント4001と脛骨ベースプレートコンポーネント4040との間に設置される場合、脛骨関節面4020は、大腿骨関節面4002と関節接合し、右側膝関節の屈曲または伸長中に、右側脛骨インサート4010の脛骨内側区画4022を通る、脛骨の長手方向軸の周りに脛骨を回転させる。
【0142】
左側脛骨インサート4012は、脛骨ベースプレートコンポーネント4040のインサート接合部4041に取り付けられるように構成される。一実施形態では、左側脛骨インサート4012は、インサート接合部4041と互換性のある接合部4013を含み得る。左側脛骨インサート4012はまた、脛骨関節面4021を含む。左側脛骨インサート4012が大腿骨コンポーネント4001と脛骨ベースプレートコンポーネント4040との間に設置される場合、脛骨関節面4021は、大腿骨関節面4002と関節接合し、左側膝関節の屈曲または伸長中に、左側脛骨インサート4012の脛骨内側区画4023を通る、脛骨の長手方向軸の周りに脛骨を回転させる。
【0143】
右側脛骨インサート4010の脛骨関節面4020は、大腿骨関節面4002と協働して、膝関節が左側膝関節である場合の状態のある膝関節の運動学を変更するように成形される。左側脛骨インサート4012の脛骨関節面4021は、大腿骨関節面4002と協働して、膝関節が右側膝関節である場合の状態のある膝関節の運動学を変更するように成形される。有利には、人工膝システム4000を使用する外科医は、右側脛骨インサート4010(例えば、膝関節が内反または外反の状態を有する場合)または左側脛骨インサート4012(例えば、膝関節に状態が無いか、または均衡がとれた状態を有する場合)を使用するかどうかを手術中に決定することができる。膝関節は、内反状態、外反状態、または均衡のとれた状態を呈し得る。本明細書で使用される場合、“均衡のとれた状態”とは、骨または関節が、骨および/または関節を含む四肢または解剖学的構造の中心軸と所望の整列を有する骨および/または関節の状態を指す。ある特定の実施形態では、均衡のとれた状態とは、骨または関節の状態であって、内反の状態ではなく、かつ外反の状態ではない状態を指す。
【0144】
図34を参照すると、一実施形態では、人工膝システムは、大腿骨コンポーネント4001、および右側脛骨コンポーネントおよび左側脛骨コンポーネントを含み得る。右側脛骨コンポーネントは、脛骨ベースプレートコンポーネント4040および右側脛骨インサート4010の両方の特徴、機能、属性、および態様を含む単一の単一のコンポーネントであってもよい。左側脛骨コンポーネントは、脛骨ベースプレートコンポーネント4040(例えば、不図示の、脛骨ベースプレートコンポーネント4040のコピー)と左側脛骨インサート4012とが1つに組み合わされ、これら両方の特徴、機能、属性、および態様を含む単一のコンポーネントであってもよい。当業者は、脛骨ベースプレートコンポーネント4040に接続された右側脛骨インサート4010の特徴、機能、および利点、ならびに脛骨ベースプレートコンポーネント4040に接続された左側脛骨インサート4012の特徴、機能、および利点が、それぞれ右側脛骨コンポーネントおよび左側脛骨コンポーネントに含まれることを理解するであろう。右側脛骨コンポーネントおよび左側脛骨コンポーネントを使用することの1つの潜在的な利点は、人工膝システムに存在する部分が少ないことであり得る。
【0145】
図35は、状態のある膝関節の運動学を適合させるための1つの例示的な方法5000を示す。図24A図34を参照すると、外科医などのユーザによって方法5000が開始され、患者の膝関節に状態が有ることを決定する(5002)。この決定は、患者の観察、医用画像スキャンなどに基づいて行われ得る。さらに、決定は、膝関節に関する外科的処置の前または処置中に、ユーザによって行われ得る。
【0146】
次に、外科医または他のユーザは、患者の膝関節の大腿骨に大腿骨コンポーネントを移植し得る(5004)。大腿骨コンポーネントは、大腿骨関節面を含み得る。次に、外科医または他のユーザは、患者の膝関節の脛骨に脛骨ベースプレートコンポーネントを移植し得る(5006)。脛骨ベースプレートコンポーネントは、インサート接合部を含み得る。
【0147】
次に、膝関節に有る状態に基づいて、外科医または他のユーザは、第2の側(患者の膝関節を含む側でない側)のために構成された脛骨インサートを選択し得る(5008)。選択された脛骨インサートは、脛骨ベースプレートコンポーネントのインサート接合部に取り付け可能なベースプレート接合部を含む。選択された脛骨インサートはまた、膝関節の運動学を適合させるために大腿骨関節面と関節接合するように構成された脛骨関節面を含む。
【0148】
次に、外科医または他のユーザは、選択された脛骨インサートを脛骨ベースプレートに接続し(5010)、状態に基づいて膝関節の運動学を適合させ、方法5000を終了する。
【0149】
本明細書に開示される方法は、記載された方法を実行するための1つまたは複数のステップまたは動作を備える。方法のステップおよび/または動作は、相互に交換することもできる。換言すれば、実施形態の適切な動作のためにステップまたは動作の特定の順序が必要でない限り、特定のステップおよび/または動作の順序および/または使用を変更することができる。
【0150】
本明細書全体を通して“実施形態”または“その実施形態”への言及は、その実施形態に関連して説明された特定の機能、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体で列挙される引用句またはその変形は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。
【0151】
同様に、実施形態の上記の説明では、開示を合理化する目的で、様々な特徴が単一の実施形態、図、またはその説明に一緒にグループ化される場合があることを理解されたい。しかしながら、この開示の方法は、いかなる請求の範囲も、その請求の範囲に明示的に列挙されたものよりも多くの機構を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の態様は、任意の単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴、構成要素、態様、部品、および/または構造よりも少ない数の組み合わせで存在することができる。従って、詳細な説明に続く請求の範囲は、これによって、詳細な説明に明確に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態として独自のものに基づくものである。本開示には、独立請求項とその従属請求項のすべての順列が含まれる。
【0152】
用語“例示的な”は、本明細書では“例、実例、または例示として機能を果たす”ことを意味するように用いられる。“例示的な”として本明細書で説明されるいずれの実施形態も、他の実施形態に対して必ずしも好ましいまたは有利なものとして解釈されるわけではない。実施形態の様々な態様が図に提示されているが、特に示されていない限り、図は必ずしも正確な縮尺で描かれているわけではない。
【0153】
特徴または要素に関する、請求の範囲における用語“第1”という記載は、必ずしも第2または追加のそのような特徴または要素の存在を意味するものではない。ミーンズプラスファンクション形式で記載された要素は、米国特許法第112条第6項に従って解釈されることを意図している。第本明細書に記載される基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施形態の詳細に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0154】
“接続される”、“結合される”および“連絡する”という語句は、機械的、電気的、磁気的、電磁気的、流体的、および熱的相互作用を含む、2つ以上の物の間の任意形態の相互作用を指している。2つの構成要素は、相互に直接接触していなくても、機能的に互いに結合され得る。“当接する”という用語は、互いに直接物理的に接触している物を指すが、物は必ずしも一緒に取り付けられるものとは限らない。“流体連通”という語句は、一方の機構内の流体が他方の機構に流れ込むことができるように接続されている2つの機構を指す。
【0155】
図面は、簡略化された図面または部分的な図面を示し得、図面内の要素の寸法は、明瞭さのために誇張されてもよいし、そうでなければ比例していなくてもよい。さらに、単数形“a”、“an”および“the”は文脈が特に明確に指示しない限り、複数の対象を含む。従って、例えば、端末と参照するとき、1つ以上の端末への参照を含む。さらに、要素のリスト(例えば、要素a、b、c)を参照する場合、そのような参照は、リストされた要素のいずれか1つ自体、リストされた要素のすべて未満の任意の組み合わせ、および/またはリストされた要素のすべての組み合わせを含むことを意図する。
【0156】
“実質的に”という用語は、列挙された特性、パラメータ、または値を正確に達成する必要はないが、例えば、公差、測定誤差、測定精度の制限、および当業者に知られている他の要因を含む偏差または変動が、特性が提供することを意図した効果を排除しない量で生じ得ることを意味する。
【0157】
本明細書で使用される場合、“近位”、“上部”、“上”または“上方”という用語は、デバイスがその通常の動作で使用されるとき、デバイスを使用する臨床医に最も近く、デバイスが使用される患者に関連して最も遠いデバイス上の位置を指し得る。逆に、“遠位”、“底部”、“下”または“下方”という用語は、デバイスがその通常の動作で使用されるときに、デバイスを使用する臨床医から最も遠く、デバイスが使用される患者に最も近いデバイス上の位置を指し得る。さらに、用語“上部”および“下部”、ならびに“上部”および“下部”、“前部”および“後部”は、説明及び理解を容易にするために、本明細書で相対用語として使用され得る。本開示の実施形態では、上部および下部の実体は、上部および下部、前部および後部と同様に、逆転し得ることが理解される。
【0158】
本明細書で使用されるとき、用語“内”または“内側”は、通常の使用中にデバイスの内側に向かっているデバイスに関する位置を指す。逆に、本明細書で使用される場合、“外”または“外側”という用語は、通常の使用中に、デバイスの外側に向かっているデバイスに関する位置を指す。
【0159】
本開示の特定の実施形態および用途を例示し説明してきたが、その開示の範囲は、本明細書に開示された詳細な構成および構成要素に限定されないことを理解されたい。当業者に明らかである様々な修正、変更、および変形は、技術の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される本開示の方法およびシステムの配置、動作および詳細においてなされ得る。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図23A
図23B
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
図24F
図25A
図25B
図25C
図25D
図25E
図26A
図26B
図26C
図26D
図26E
図27A
図27B
図27C
図27D
図27E
図28A
図28B
図28C
図28D
図28E
図28F
図29
図30
図31
図32
図33A
図33B
図34
図35
【国際調査報告】