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特表2025-503114電子ピルを用いるボビンを備える自動インフレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】電子ピルを用いるボビンを備える自動インフレータ
(51)【国際特許分類】
   F42C 3/00 20060101AFI20250123BHJP
   B63C 9/18 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
F42C3/00
B63C9/18 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543507
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 US2023011453
(87)【国際公開番号】W WO2023141358
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/302,209
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513044256
【氏名又は名称】ハルキー-ロバーツ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Halkey-Roberts Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】アシュラム,エヌエフエヌ
(72)【発明者】
【氏名】クンディガー,デイビッド
(57)【要約】
ボビンを備える自動インフレータに用いられるピルであって、ボビンはばね荷重が付加されたアクチュエータピンをコック位置に保持する少なくとも1本の枢動するアームを有し、ピルはボビンの枢動するアームをコック位置に保持する主要部分と融解する部分を有する小部分と、ヒータ線と、を備え、ヒータ線は小部分と連続的に配置され電気エネルギがヒータ線へ供給されたとき小部分を融解し、それによりボビンの枢動するアームがコック位置から発射位置へと移動することを許容する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね荷重が付加されたアクチュエータピンをコック位置に留めるための、少なくとも1本の枢動する(pivotal)アームを有するボビンを用いる自動インフレータ用のピルであって、
ピルと、
ヒータ線と、
を組み合わせて備え、
前記ピルは、前記ボビンの枢動する前記アームをコック位置に保持するための主要部分と、融解可能な部分を有する小部分と、を有し、
前記ヒータ線は、前記小部分に連続して配置され、前記ヒータ線に電気エネルギが供給されたとき、前記小部分を融解し、それにより、前記ボビンの枢動する前記アームがコック位置から発射位置へと移動することを可能にする、
ピル。
【請求項2】
前記ヒータ線は、前記小部分の周囲に少なくとも1回巻き付けられている、
請求項1に記載のピル。
【請求項3】
前記ヒータ線は、前記小部分が有する少なくとも1つの孔に通されている、
請求項1に記載のピル。
【請求項4】
前記ヒータ線は、前記小部分に付着されている、
請求項1に記載のピル。
【請求項5】
前記ヒータ線は、前記小部分に含まれてその場で成形(molded)されている、
請求項1に記載のピル。
【請求項6】
前記小部分の断面積は、前記主要部分の断面積よりも小さい、
請求項1に記載のピル。
【請求項7】
前記小部分は、前記主要部分の断面積よりも小さい概ね矩形の断面構成を有する、
請求項1に記載のピル。
【請求項8】
前記小部分は、切り欠きを備える、
請求項1に記載のピル。
【請求項9】
前記切り欠きは、概ねV字形の切り欠きを備える、
請求項8に記載のピル。
【請求項10】
前記切り欠きは、前記主要部分の軸に概ね平行に延びる前記ピルの壁のそれぞれ上端及び下端から内側に延びることにより、前記小部分の断面積を前記主要部分の断面積よりも小さく規定されている、
請求項8に記載のピル。
【請求項11】
前記切り欠きは、前記主要部分の外側の面から内側の側面に延び、それにより、前記小部分の断面積を前記主要部分の断面積よりも小さく規定されている、
請求項8に記載のピル。
【請求項12】
自動インフレータであって、
ボビンの軸に概ね平行に延び個別に枢動するアームを有する折り畳み可能な環状の輪を内部に備える円環状の台座を有するボビンと、
個別に枢動する前記アームを有する前記輪の周囲に配置され、前記アームを折り畳まれていない概ね平行な位置に保持し、前記アームが外側に折り畳まれるのを妨げ、個々に枢動可能な前記アームはそれぞれ内側に延びる放射状の台座を有し、放射状の前記台座は円環状の台座を集合的に形成してばね荷重が付加されたアクチュエータをコック位置に保持する環状のピルであって、前記ピルは主要部分と小部分を有し、前記主要部分は個々に枢動する前記アームを折り畳まれていない概ね平行な位置に保持し、前記アームが外側に折り畳まれるのを妨げる、環状のピルと、
ヒータ線であって、自動アクチュエータが水を検知したとき、前記ヒータ線を通って流れる電気エネルギによって融解されるよう環状の前記ピルの前記小部分と連続して配置されたヒータ線と、
を組み合わせて備える、
自動インフレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2022年1月24日に出願された米国仮特許出願、出願番号第63/302,209号に基づく利益を主張し、出願の開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、救命ボート、救命胴衣等の膨張可能な物品のための自動インフレータに関する。より詳細には、本開示は水没時のような緊急時に自動的に作動されるインフレータに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、個人用浮揚装置(救命胴衣、浮き輪、馬蹄形浮き袋)、救命ボート、浮き(buoys)、緊急信号装備等の膨らませて使う物品を膨張させるために設計された多くの種類のインフレータが存在する。手動式のインフレータは通常、二酸化炭素のような圧縮ガスのカートリッジの首の部分を受けるための本体を備える。往復運動するピアスピンがインフレータ本体内に配置されており、ピアスピンがカートリッジの壊れやすいシールを貫通し、圧縮ガスがインフレータのマニホールドアセンブリに流入し、膨らませられる物品に流入することができる。通常、手で動かすことができる発射レバーがピアスピンに作動的に接続され、ボールランヤードを引っ張った時にピアスピンがガスカートリッジの壊れやすいシールを貫通するようになっている。米国特許第3,809,288号は、開示が参照により本明細書に込みこまれ、手動式インフレータの一実施形態を図示している。
【0004】
手動式インフレータは適切に機能する一方で、緊急時には、墜落した飛行士、負傷者、船から落ちた人等、膨張可能な装置による援助を必要とする人が、インフレータを手動で作動させることを失敗したり、作動させることができなかったりすることが、早い段階で判明した。よって、このような緊急時には、インフレータを自動的に作動させる手段を設けるべきであると考えられた。
【0005】
このような先行技術の手動インフレータの欠点に対応するため、水に浸すとインフレータのピアスピンが自動的に作動し、膨張式の装置を膨らませる水作動式自動インフレータが開発された。典型的な水作動式自動インフレータは、しばしばボビンと呼ばれる水により破壊可能又は溶解可能な要素を含む水作動式のアクチュエータにより構成され、ボビンは、ばね荷重が付加されたアクチュエータピンをピアスピンと整列するようなコック位置に保持する。ボビンが水にさらされると、ボビン内部のピルが直ちに溶解を始め、やがて完全に破壊されて、ばね荷重が付加されたアクチュエータピンをコック位置に保持する機能を失う。こうして、ばね荷重が付加されたアクチュエータピンは、コック位置から作動位置へと強制的に移動させられて、直接的に、もしくは中間伝達ピンにより間接的に、ピアスピンを打撃する。ピアスピンを打撃して、ピアスピンがカートリッジのシールを破ることにより、カートリッジの中に封入されたガスが、膨張可能な装置の内部に流入できるようになり、同装置を膨張させる。
【0006】
米国特許第3,059,814号、第3,091,782号、第3,426,942号、第3,579,964号、第3,702,014号、第3,757,371号、第3,910,457号、第3,997,079号、第4,223,805号、第4,267,944号、第4,260,075号、第4,382,231号、第4,436,159号、第4,513,248号、第4,627,823号、第5,076,468号、第5,601,124号、第5,685,455号、第5,562,233号、第5,370,567号、第5,333,756号、第4,488,546号、及び5,694,986号内に、インフレータ用の代表的な自動アクチュエータが開示されており、これらの開示は参照により、本明細書に組み込まれる。
【0007】
溶解可能なピルを備える自動インフレータの欠点は、大気中の過剰な湿気にさらされることにより、緊急でない状況で、意図した時機よりも先にピルが破壊されるという傾向である。さまざまな設計及び化学組成のボビンピルが、ボビンピルの湿度に対する敏感な反応を最小限にするために使用されてきた。
【0008】
例えば、米国特許第10,994,818号の開示は本明細書に参照により組み込まれているが、湿度によるボビンの早期作動を低減する性能を向上するために、ピルを保持するボビンの内部の隣接するアームの一部がウェブによって相互接続される改良されたボビンの構造を開示している。米国特許第6,705,488号及び7,572,161号の開示は本明細書に参照により組み込まれているが、自動インフレータのボビンに用いられるピルの様々な構成を開示しており、意図しない作動や早すぎる作動をもたらす湿気に対する敏感な反応の低減を試みた一方で、ピルが水中に沈んだときに溶解するように十分な溶解性を維持したものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、先行技術の装置の不備を克服して、インフレータ技術の進歩に重大な貢献をする改善を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、インフレータのボビンに備えられた電子ピルを提供することであり、電子ピルは、ばね荷重が付加されたアクチュエータピンをピアスピンと整列したコック位置に拘束するための主要部分(major portion)を含んでいる。
【0011】
本発明の他の目的は、インフレータのボビンに組み込まれる電子ピルを提供することであり、電子ピルはヒータ線で巻かれた小部分(minor portion)を有し、水にさらされると、小部分に電流が流れて脆くなり、そうするとばね荷重が付加されたアクチュエータピンをコック位置に引き留める能力を失う。
【0012】
これらの目的は、意図された発明のより顕著な特徴及び用途のいくつかを、単に例示すると解釈されるべきである。本開示の範囲内で、開示された発明を別の方法で適用することにより、又は発明を修正することにより、多くの他の有益な結果が得られうる。よって、他の目的及び本発明の包括的な理解は、添付の図面及び特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲に加えて、本発明の概要及び望ましい実施形態の詳細の説明を参照することにより、得られうる。
【発明の概要】
【0013】
本発明は添付の図面に示す具体的な実施形態とともに、添付の特許請求の範囲によって定義される。本発明を要約すると、本発明は、溶解可能なピルの代わりに電気的に活性化されたピルを有するボビンを備える自動インフレータを含む。
【0014】
より詳細には、先行技術のボビンは、ボビンの軸に概ね平行に延び個別に枢動する(pivotal)アーム(例えば8本のアーム)を有する折り畳み可能な環状のリングを内部に備える円形のハウジングを、典型的に有する。環状のピルは、個別に枢動するアームのリングの周囲に配置され、アームが折り畳まれていない概ね平行な位置に保持され、アームが外側に折り畳まれるのを防ぐ。個別に枢動するアームはそれぞれ、内側に延びる半径方向の段差を含み、これらの段差らが、ばね荷重が付加されたアクチュエータをコック位置に保持する、一つの環状の台座を形成する。
【0015】
本発明の電子ピルは、環状の構造(中央に孔を有する回転面)を備え、(溶解可能なピルの代わりに)電子ピルがボビンに用いられ得るように先行技術のピルの環状の構造と実質的に類似している。特定の設計のボビンでは、ボビン自体の変更なく、溶解可能なピル形式のボビンに、電子ピルを取り付けることができる。
【0016】
本発明の電子ピルは、その円周の大部分(例えば約350度)である主要部分と、残りの部分(例えば約10度)である小部分とを有する。主要部分は、個別に枢動するアームの輪を折り畳まれていない概ね平行な位置に保持する働きと、これらアームの輪が外側に折り畳まれることを妨げる働きをする。小部分は、ヒータ線によって融解される可融部分として機能する。ある構成では、ヒータ線は小部分に1回以上巻き付けられ又は接着され、ヒータ線が小部分に連続するようにして、ヒータ線を加熱して小部分を構造的に弱める(例えば融解させる)。別の構成では、小部分はヒータ線を通す1つ以上のワイヤ孔を有することもある。
【0017】
インフレータが水に浸かったとき、インフレータに内蔵された電子回路が感知し、その結果、電源(例えばリチウム電池)からヒータ線へと、ヒータ線を加熱するために電流が供給される。熱が小部分を融かすと、アクチュエータの一定の圧力下で、個々に枢動するアームとアームらの台座のそれぞれが、個々に外側へ枢動することによりピルにかかる力は、まず小部分の割れ目を伸展させて、次に小部分を完全に割り、それにより電子ピルが破壊したことで、環状構造はより大きな直径に開いて、拘束されていたアームが外側へ枢動可能となる。アクチュエータからの力を受けてアームが外側へ枢動すると、それぞれの台座も同様に外側へと移動し、もうアクチュエータを保持できなくなるまで環状の台座が拡大し、その結果、ガスカートリッジの壊れやすいシールへとピアスピンを押し込むために、ばね荷重が付加されたアクチュエータを解放する(すなわち発射する)。
【0018】
本発明を実施する最も好ましい態様では、ヒータ線と印加される電圧及び電流は、以下のように考えられる。
【0019】
【表1】
【0020】
以上、本発明のより適切で顕著な特徴を、かなりおおまかに概説した。当技術分野への本発明の貢献が、より十分に理解されるために、以下の本発明の詳細な説明は提供されるものである。以下、本発明の追加の特徴について説明する。これらは本発明の特許請求の範囲を構成する。本発明と同じ目的を遂行するために、他の方法及び構造に改良及び設計するための基礎として、本技術分野に熟練した技術者により、本発明の着想及び開示された特定の実施形態は容易に利用され得る、と解されるべきである。また、本発明の趣旨及び特許請求の範囲から逸脱しない等価な構造は、本技術分野に熟練した技術者によって、想到されるとも解されるべきである。
【0021】
本発明の性質と目的をより簡潔に理解するために、添付図面と併せて以下の説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】種々の内部部品と電子ピルに対する互いの相対位置を示している、典型的な自動インフレータアセンブリに組み込まれたボビンが有する電子ピルの縦断面図である。
図2】ボビンの軸に概ね平行に延びる個別に枢動するアーム(例えば8本のアーム)の折り畳み可能な環状リングを備える円形の台座を有する、先行技術のボビン(電子ピル未装着)の底面透視図である。
図3】個々の枢動するアームを折り畳まれないよう概ね平行な位置に保持し、外側に折り畳まれるのを妨げるため、本発明の電子ピルをボビンの環状の枢動するアームに取り付けた状態を示す断面透視図である。
図4】ボビン内に取り付けられた本発明の電子ボビンの第1実施形態の直径方向の断面図である。
図5】本発明の電子ピルの第1実施形態を示す上面透視図である。
図6図5の線6-6に沿う断面図である。
図7図5の線7-7に沿う断面図である。
図8】本発明の電子ピルの第2実施形態を示す上面透視図である。
図9】本発明の電子ピルの第2実施形態を示す正面図である。
図10】本発明の電子ピルの第3実施形態を示す上面透視図である。
図11】本発明の電子ピルの第4実施形態を示す上面透視図である。
図11A図11の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
同様の参照数字は複数の図を通して同様の部品を指す。
【0024】
図1は、典型的な自動インフレータ10を示しており、インフレータ本体12と、アクチュエータ本体のアセンブリ14と、及び円筒型のキャップアセンブリ16とを備える。インフレータ本体12は、概ね符号18で示される長手方向に延びる中央の孔を有し、中央の孔18はピアスピンアセンブリ20が往復運動可能なように配置できるような寸法である。ガス含有カートリッジ22は、ピアスピンアセンブリ20と整列した状態で、インフレータ本体へとねじ込み可能なように取り付けられる。
【0025】
ピアスピンアセンブリ20は、端部26を有するピアスピン24と、シールガスケット28と、圧縮された小型のばね30とを備える。内側のねじ山34とガスケット36とを有する一般的な金属製インサート32は、インフレータ本体12の内部で形成される。ガス含有カートリッジ22は金属製インサート32にねじ込まれる。ピアスピンアセンブリ20がカートリッジ22に向かって強制的に移動するとき、ガスカートリッジ22の壊れやすいシールは突き破られる。
【0026】
自動インフレータ10は、浸水したとき自動的に始動される場合も、手動で始動させる場合もある。手動の作動手段は、インフレータ本体12を貫通する枢軸ピン40によって取り付けられた概ねL字形状のレバー38と、レバー38の遠位部分に位置する孔42と、及び中間伝達ピン46の第2の細孔44とを備える。枢軸ピン40は、アクチュエータ本体のアセンブリ14をインフレータ本体12に固定する役割も果たす。
【0027】
レバー38の遠位端部分48はカム延長部50を有する。ランヤードハンドル52は、レバー38に繋がれる。ランヤードハンドル52が引かれると、カム延長部50がピアスピンアセンブリ20の端部26に強制的に係合し、それによってガス含有カートリッジ22が貫通される。
【0028】
通常、アクチュエータ本体のアセンブリ14は、アクチュエータ本体54と、アクチュエータピン55と、中間転写ピン46と、一般的なOリング56と、ボビン58とを一般に備える。硬いばね57は、アクチュエータピン55の頭部55Hをボビン58に対して、強制的に付勢している。
【0029】
図2によく示されるように、典型的なボビン58は、概ね円筒形の壁66を備える。複数のアーム68が、ボビン58の長手方向の軸を中心に平行な環状となるように配置され、リビングヒンジ70によって円筒形の壁66の縁に個別に枢動可能なように連結される。
【0030】
それぞれ各アーム68は、ボビン58の長手方向の軸に向かって延びる軸に対して放射状の台座72を有する。ひとまとめとして、個々の放射状の台座72は、ばね荷重が付加されたアクチュエータピン55の頭部55Hを抑えて保持する環状の台座を形成し、それによりばね荷重が付加されたアクチュエータピン55をばね57による力に抗って「コックされた」位置で保持する。
【0031】
図3及び図4に示すように、本発明の環状電子ピル60は、円筒壁66の内腔と環状アーム68との間に配置され、アーム68をボビン58の長手方向軸を中心な位置かつ平行な位置に保持することにより、放射状の台座72により形成される環状の台座がはね荷重が付加されたアクチュエータピン55の頭部55Hを抑えて保持するような直径を維持し、それにより、ばね荷重が付加されたアクチュエータピン55をばね57の付勢力に抗って「コックされた」位置に保持するようになっている。
【0032】
各アーム68は、アーム68のリビングヒンジ端部からアーム68の長さに沿って延びる控壁76を備え得ることを留意されたい。控壁76は、アーム68に追加の剛性を付与する役割と、組み立て時にピル60が環状アーム68の長さに押し付けられる距離を制限する役割とを果たす。さらに、アーム68の各々は、ピル60の環状アーム68への自動的なセンタリングと押し付けを容易にするために、面取りされた端部68CCを含み得ることに留意されたい。
【0033】
図5から図10に最もよく示すように、本発明の電子ピル60は、主要部分100と小部分102とを備える。主要部分は環状の電子ピル60の約350度まで延び、小部分102は残りの10度にわたって延びている。第1の実施形態を図5から図7に、第2の実施形態を図8から図9に、第3の実施形態を図10に示す。
【0034】
各実施形態において、少なくとも1本のヒータ線108は、小部分102に連続して配置され、熱交換関係にある。ヒータ線108は、バッテリ114によって給電される電子回路112に動作するよう接続されている。電子式の水センサ116は、起動できるように回路112に接続されている。水没を感知すると、センサ116は回路112を起動して、バッテリ114からヒータ線108に電流を供給し、小部分102を融解する。ひとたび小部分102が融解されると、電子ピル60の直径は拡大して、環状アーム68の放射状の台座72の外側への移動を許容し、ばね荷重が付加されたアクチュエータピン55の頭部55Hを抑えて保持することができなくなり、その結果、ばね荷重が付加されたアクチュエータピン55を解放してインフレータ10を「発射」させることができる。したがって、小部分102は可溶性リンクとして機能すると解され得る。
【0035】
各実施形態において、主要部分100は外壁104及び内壁106を有し、それらは互いの壁と円環の軸に対し概ね平行に延び、それにより、概ね矩形状の断面構成を有する円環を好ましくは規定する(図6参照)。図に示されるように、壁104及び壁106の上端及び下端は、ボビン58への組み付けを容易にするために、面取りされていてもよい。
【0036】
各実施形態において、外壁104と内壁106との間の距離は、円筒壁66の内腔とボビン58の環状アーム68との間の距離と実質的に等しく、それにより、アーム68はボビン58の長手方向の軸を中心にした平行な位置に保持される。この平行位置において、半径方向アーム68の放射状の台座72によって形成される環状の台座は、ばね荷重が付加されたアクチュエータピン55の頭部55Hを抑えて保持できる大きさの直径を維持し、それにより、ばね荷重が付加されたアクチュエータピン55を「コックされた」位置でばね57の付勢力に反して保持する。
【0037】
各実施形態において好ましくは、小部分102は、主要部分100の断面積よりも実質的に小さい断面積を有する。小部分102の断面の実際の面積は、射出成型された電子ピルの材料組成と、ヒータ線108の寸法と、ヒータ線に供給される電圧と、アンペア数とに基づいて選択され得る。
【0038】
ポリカーボネート又はABS樹脂で射出成型された断面積が0.006平方インチの小部分102を融解するのに必要な、現在考えられているパラメータは次の通りである。
【0039】
【表2】
【0040】
図5から図7に示す第1の実施形態では、ヒータ線108は小部分102の孔110に通されている。ヒータ線108は、孔110の一方に通され、任意に小部分102の周囲に1回以上巻き付けられ、そして他方の孔を通って小部分102へと戻され、小部分102の外面と孔110の内腔とが連続して、それにより、ヒータ線108から小部分102への良好な熱伝達を確保することができる。あるいは、ヒータ線108を小部分102の孔110に挿入し、熱伝導性のある接着剤などで密封してもよい(例えば、下記第3の実施形態参照)。さらに別の方法として、小部分102を成形している(molding)中で、小部分102の中に、ヒータ線108を入れて成形(molded)することもできる。
【0041】
図8及び図9に示す第2の実施形態では、小部分102は少なくとも1つ、好ましくは2つの切り欠き120を有し、切り欠き120はV字形の切り欠きであり、主要部分100の軸と概ね平行に延びる壁104と壁106のそれぞれ上端と下端から内側に延びており、それにより主要部分100の断面積よりもかなり小さい断面積を規定する。図10に示す第3の実施形態では、1つ以上の、好ましくは1つのV字形の切り欠き120は、主要部分100の外面104から内側に延びることができ、それにより主要部分100よりもかなり小さい断面積を規定する。
【0042】
第3の実施形態及び第4の実施形態の両方において、ヒータ線108は小部分102に1回以上巻き付けられるが、ヒータ線108は代わりに、第1の実施形態に関連して記載された方法で、小部分102に形成された1つ又は複数の孔に通されてもよい。
【0043】
図11に示す第4の実施形態では、ヒータ線108は、好ましくは熱伝導性などを有する接着剤150によって貼付される。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態に関連して、ヒータ線108を接着剤で貼付することが代替的に採用され得ると解されるべきである。
【0044】
いったん小部分102が始動(firing)中に融解されると、ピル60の構造的完全性が損なわれ、環状アーム68はばね荷重が付加されたアクチュエータピン頭部55Hの圧力の下で、それぞれのリビングヒンジ70を通じて個々に半径方向外側へたわむようになる。外側へたわむと、環状の台座72は、もはやアクチュエータピンの頭部55Hのための環状の台座を形成できなくなるまで拡大し、そこで、ばね荷重が付加されたアクチュエータピン55の頭部55Hは解放されて、ばね57の付勢力のもと、強制的に移動して、伝達ピン46を介して、ピアスピン20を作動させる(すなわち、アクチュエータ10は自動的に「発射」される)。
【0045】
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されたものだけでなく、前述の明細書に記載されたものも含む。本明細書はある程度の特殊性を有する好ましい態様を説明したが、好ましい態様の本開示はただの例示であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、その構造、組み合わせ、または部品の配置の細部においての多数の変更をされ得る、と解されるべきである。
【0046】
これにて本発明が説明された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-11A】
【国際調査報告】