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特表2025-503119化粧品に使用するためのペプチドおよび組成物
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  • 特表-化粧品に使用するためのペプチドおよび組成物 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】化粧品に使用するためのペプチドおよび組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20250123BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20250123BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K38/08
A61P43/00 111
A61K8/64
A61Q19/08
A61P17/00
A61P21/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024543517
(86)(22)【出願日】2023-02-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2023053685
(87)【国際公開番号】W WO2023156413
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】22382122.4
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519271311
【氏名又は名称】リポトゥルー,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】グラウ-カンピスタニー,アリアドナ
(72)【発明者】
【氏名】パストル,シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】カルラ,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】エスクデロ,フアン カルロス
(72)【発明者】
【氏名】クレイン,マルコ ハン
(72)【発明者】
【氏名】トリム,スティーブン アンソニー
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AD411
4C083AD412
4C083BB51
4C083CC02
4C083EE12
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA17
4C084BA23
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZC41
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA50
4H045EA15
4H045FA20
4H045FA61
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種類のナトリウムチャネルの活性および/またはシグナルを低下させることができる4個~8個のアミノ酸のペプチドを指す。前記ペプチドはまた、細胞外マトリックスの産生を促進することもできる。また、本明細書には、前記ペプチドを含む組成物、およびシワの治療のための化粧品の分野における本発明のペプチドおよび組成物の使用も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のナトリウムチャネルの活性および/またはシグナルを低下させることができる5個~8個のアミノ酸のペプチド;その許容される異性体、塩、溶媒和物、誘導体および/またはそれらの混合物、ここで、前記ペプチドは式(I)の配列を含み:
-AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-R
(R-配列番号7-R
ここで、AA1は、Lys、ArgまたはIleから選択され;
AA2は、Lys、Arg、His、Asp、TrpまたはGluから選択され;
AA3は、Arg、Gln、ProまたはHisから選択され;
AA4は、Val、Met、Ile、Ser、Thr、Cys、Asn、Gln、Phe、Tyr、LysまたはTrpから選択され;
AA5は、Tyr、AsnまたはTrpから選択され;
AA6は存在しないか、またはAla、Val、Leu、Met、Ile、Ser、Thr、Cys、Pro、AsnもしくはGlnから選択され;
は、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルおよびR-CO-から選択され、ここで、Rは、置換もしくは非置換のC-C24アルキルラジカル、置換もしくは非置換のC-C24アルケニル、置換もしくは非置換のC-C24アルキニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキニル、置換もしくは非置換のC-C30アリール、置換もしくは非置換のC-C24アラルキル、3員~10員の置換もしくは非置換のヘテロシクリル環、ならびに、2個~24個の炭素原子および1個~3個の炭素以外の原子および1個~6個の炭素原子のアルキル鎖の置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択され;および
は、H、-NR-、-ORおよび-SRから選択され、ここで、RおよびRは、独立して、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族基、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアラルキルから選択され;
あるいは、RおよびRは存在せず、AA1は前記ペプチドの最後のアミノ酸に直接結合している、少なくとも1種類のナトリウムチャネルの活性および/またはシグナルを低下させることができる5個~8個のアミノ酸のペプチド;その許容される異性体、塩、溶媒和物、誘導体および/またはそれらの混合物。
【請求項2】
前記ペプチドは、少なくとも1種類のナトリウムチャネルの発現をダウンレギュレートすることが可能であり、および/または、少なくとも1個の神経伝達物質のレベルを低下させることが可能であり、および/または、ECMを維持および/または合成することが可能であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ナトリウムチャネルは電位依存性ナトリウムチャネルである、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記電位依存性ナトリウムチャネルは、Nav1.3および/またはNav1.4である、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
前記神経伝達物質は、ノルアドレナリンである、請求項2に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ECMは、コラーゲンI、エラスチン、ヒアルロン酸またはそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載のペプチド。
【請求項7】
式(I)の配列を有し:
-AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-R
(R-配列番号7-R
ここで、
AA1は、Lys、ArgまたはIleから選択され;
AA2は、Lys、Arg、His、Asp、TrpまたはGluから選択され;
AA3はArg、Gln、ProまたはHisから選択され;
AA4は、Val、Met、Ile、Ser、Thr、Cys、Asn、Gln、Phe、Tyr、LysまたはTrpから選択され;
AA5は、Tyr、AsnまたはTrpから選択され;
AA6は存在しないか、またはAla、Val、Leu、Met、Ile、Ser、Thr、Cys、Pro、AsnもしくはGlnから選択され;
は、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルおよびR-CO-から選択され、ここで、Rは、置換もしくは非置換のC-C24アルキルラジカル、置換もしくは非置換のC-C24アルケニル、置換もしくは非置換のC-C24アルキニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキニル、置換もしくは非置換のC-C30アリール、置換もしくは非置換のC-C24アラルキル、3員~10員の置換もしくは非置換のヘテロシクリル環、ならびに、2個~24個の炭素原子および1個~3個の炭素以外の原子および1個~6個の炭素原子のアルキル鎖の置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択され;および
は、H、-NR-、-ORおよび-SRから選択され、ここで、RおよびRは、独立して、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族基、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアラルキルから選択され;
あるいは、RおよびRは存在せず、AA1は前記ペプチドの最後のアミノ酸に直接結合していることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドは以下から選択され:
-Arg-Trp-Gln-Lys-Asn-Gln-R
-Lys-Arg-Arg-Tyr-Tyr-Cys-R;または
-Lys-His-Arg-Ser-Tyr-R
-Lys-Asp-Arg-Val-Tyr-R
-Ile-Glu-Pro-Tyr-Tyr-Val-R;または
-Lys-Lys-His-Phe-Trp-Ala-R
ここで、
は、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルおよびR-CO-から選択され、ここで、Rは、置換もしくは非置換のC-C24アルキルラジカル、置換もしくは非置換のC-C24アルケニル、置換もしくは非置換のC-C24アルキニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキニル、置換もしくは非置換のC-C30アリール、置換もしくは非置換のC-C24アラルキル、3員~10員の置換もしくは非置換のヘテロシクリル環、ならびに、2個~24個の炭素原子および1個~3個の炭素以外の原子および1個~6個の炭素原子のアルキル鎖の置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択され;および
は、H、-NR-、-ORおよび-SRから選択され、ここで、RおよびRは、独立して、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族基、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアラルキルから選択され;
あるいは、RおよびRは存在せず、AA1は前記ペプチドの最後のアミノ酸に直接結合していることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項9】
はHであり、および/または、RはNHであることを特徴とする、請求項7または8のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のペプチドを含む、組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載のペプチドまたは請求項10に記載の組成物のそれを必要とする対象における、化粧品としての使用。
【請求項12】
前記化粧品としての使用は、皮膚の老化の徴候を軽減し、予防し、および/または除去することであることを特徴とする、請求項11に記載の化粧品としての使用。
【請求項13】
前記皮膚の老化の徴候は、シワであることを特徴とする、請求項12に記載の化粧品としての使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、分子生物学の分野に関し、より正確には、化粧品に適用される分子生物学に関し、さらにより正確には、シグナルおよび/またはその発現の減少を提供するナトリウムチャネルを調節することができ、したがって筋弛緩または筋収縮の減少を提供することができるペプチドおよび前記ペプチドを含む組成物に関する。前記ペプチドおよび前記ペプチドを含む組成物はまた、細胞外マトリックス(ECM)成分を維持および/または合成もしくは増加させることもできる。したがって、前記ペプチドおよび組成物は、上記の態様(例えば、筋弛緩またはECMの維持もしくは合成)の調節に関連する状態の治療に有効であり、化粧品に有用である(抗シワ活性、皮膚の弛みもしくは緩みに対する活性、皮膚のハリおよび/または弾力性の改善)。
【0002】
〔背景技術〕
近年、健康で若々しい外観の皮膚を維持するために、皮膚の欠点を予防、軽減または除去することに対する人々の関心が高まっている。このため、皮膚の欠点の出現につながる原因、および、これらの欠点を予防または緩和できる化合物および組成物の探索に対する関心が高まっている。
【0003】
シワ(例えば、表情ジワ)の形成の基礎またはメカニズムは、皮膚を内側に引きずり込む筋肉の緊張である。この筋肉の緊張は、対応する筋肉を支配する神経の過活動の結果である。前記神経の過活動は、次いで、筋線維を興奮させる神経伝達物質の制御されない過剰な放出によって特徴付けられる。
【0004】
これに関連して、シワと上記の発生メカニズムとに対するいくつかの化粧品的アプローチが生み出されてきた。例えば:
ボツリヌス毒素:表情ジワを軽減および/または除去する目的で広く使用されている。特に血清型A(BOTOX(登録商標)Cosmetic、Allergan Inc.)。前記ボツリヌス毒素は局所的に注射され、その麻痺効果は可逆的であり、平均持続期間は6ヶ月であるため、繰り返し注射する必要がある。ボツリヌス製剤に対する免疫反応を誘発し、治療効果が失われる危険性があることが知られている。この問題を克服するために、B、F、およびEなどの他の血清型のボツリヌス毒素も検討されているが、前記血清型にも免疫反応を誘発する危険性がある。分子レベルでは、ボツリヌス毒素はカルシウムイオン活性化エキソサイトーシスメカニズムに関与する神経細胞タンパク質を分解するプロテアーゼである。例えば、ボツリヌス毒素Aは神経細胞のSNAP-25タンパク質を切断する。
【0005】
SNARE複合体を形成するタンパク質の配列に由来する特定のペプチドは、例えば、SNAP-25のアミノおよびカルボキシルドメインに由来するペプチド(例えば、PCT特許出願WO97/34620、欧州特許EP1180524B1および欧州特許EP2123673B1を参照のこと);シナプトブレビンまたはシンタキシンに由来するペプチド(例えば、PCT特許出願WO97/34620;Blanes-Mira,C., Clemente, J., Jodas, G., Gil, A., Fernandez-Ballester, G., Ponsati, B., Gutierrez, L., Perez-Paya, E., Ferrer-Montiel, A. A synthetic hexapeptide (Argireline) with antiwrinkle activity. International Journal of Cosmetic Science, (2002), 24, 303-310を参照のこと);およびMunc18とSyntaxin-1との相互作用の表面に位置する特異的配列と競合するペプチド(PCT特許出願PCT/EP2019/054479を参照のこと)などの神経細胞のエキソサイトーシスを阻害し得ることも、当技術分野において知られている。
【0006】
当技術分野において、Activen XEP-018(商標)という名のコノトキシンも存在する。これは、インド・西太平洋地域からのイモガイ毒(Conus consors)を模倣した生体模倣ペプチドで、ボトックス様活性を示す。生物学的には、神経筋伝達のモジュレーターとして、ならびに電位依存性ナトリウムチャネルNav1.4の強力かつ選択的なブロッカーとして作用する。化粧品的には、即効性のほうれい線緩和剤として作用し、滑らかな肌の外観を与える。
【0007】
しかし、抗シワ活性を有し、ECMの維持および合成に役立ち得る新しい分子(好ましくは、ペプチド)を見つける必要性が依然として存在する。
【0008】
〔発明の説明〕
電位依存性ナトリウムチャネルは、活動電位の伝搬を管理することで神経シグナル伝達を制御している。ナトリウムチャネルを阻害すると、神経に沿った活動電位の流れが減少し、したがってシグナルの効果が低下する。皮膚では、NaV1.3および近縁のNaV1.4などのナトリウムチャネルが、表皮、皮下脂肪組織、骨格筋、および神経に認められる。これらのシステムは、皮膚の筋肉トーン、ひいては肌におけるシワ(wrinkles)の深さおよびシワ(creases)を改善する。
【0009】
この意味で、Takifugu rubripes(二ホンフグ、トラフグ)は、肝臓および卵巣にテトロドトキシン(TTX)が存在するために極めて有毒であるにもかかわらず、日本では珍重される食用魚であることが注目される。TTXは、電位依存性ナトリウムチャネルに特異的に結合する強力な毒素である。TTXは、電位依存性ナトリウムチャネルに物理的に結合し、前記チャネルを通るナトリウムイオンの流れを遮断し、それによって活動電位(AP)の発生および伝播を妨げる。さらに、前記フグは弾力性のある皮膚でよく知られており、捕食者を抑止するために体を膨らませることができ、危険を乗り越えると短時間で元の形態に回復する。したがって、ヒトの皮膚に対する前記ペプチドには、いくつかの重要な相補的活性が潜在的に同定される可能性があり、その結果、筋肉に関連したシワまたは表情ジワ、および年代的なシワの両方を含むシワに対してプラスの影響を与える可能性がある。
【0010】
本発明者らは、広範かつ徹底的な研究の結果、驚くべきことに、Takifugu rubripes(ニホンフグ、トラフグ)に由来するペプチド(それらのタンパク質またはゲノム由来)および/または保存的置換によってそれらに由来するペプチドが、適切な化粧品用抗シワ活性を提供することを見出した。前記ペプチドは、電位依存性ナトリウムチャネルの調節(前記チャネルによって提供されるシグナルまたは活性を減少させる)によって、必要な筋肉弛緩活性を提供することができる。さらに、本発明のペプチドはまた、電位依存性ナトリウムチャネルの発現を調節すること(前記チャネルの発現をダウンレギュレートまたは減少させること)、およびノルアドレナリンの放出を調節すること(前記神経伝達物質のレベルを減少させ、したがって前記神経伝達物質の放出を減少させること)が可能であることも示されている。さらに、本発明のペプチドはまた、コラーゲンI、エラスチン、およびヒアルロン酸などの主要な細胞外マトリックス(以下、ECM)成分の発現を、遺伝子およびタンパク質の発現レベルでアップレギュレートすることもできる。これらのことは、シワ(好ましくは、年代的なシワ、および、筋肉由来のシワまたは表情ジワの両方)の治療、予防および/または軽減;皮膚の弛みまたは緩みの治療、予防および/または軽減;皮膚の荒れの治療、予防および/または軽減;ならびに皮膚のハリおよび/または弾力性の改善のための化粧品における本発明のペプチドの有用性を実証する。
【0011】
筋弛緩のために電位依存性ナトリウムチャネルを遮断する(シグナル伝達および/またはその活性を低下させる)ことは、まだ広く研究されておらず、現在市場で広く使用されている製品の作用メカニズムとは明らかに異なる興味深い作用メカニズムである。本発明のペプチドは、神経筋接合部に到達する前に神経伝達を減少させる。
【0012】
さらに、本発明のペプチドは、そのサイズにより、例えば、安定性の増加または延長、および好ましくは皮膚からの浸透の増加または改善などの固有の利点を有する。
【0013】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1種類のナトリウムチャネルのシグナルおよび/または活性を低下させることができ、したがって抗シワ活性を有する、4個~8個のアミノ酸のペプチドに関する。
【0014】
第2の態様において、本発明は、本発明のペプチドを含む組成物に関する。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、治療を必要とする対象における、本発明のペプチドまたは本発明の組成物の化粧品としての使用に関する。
【0016】
第4の態様において、本発明は、治療を必要とする対象における本発明のペプチドまたは本発明の組成物の化粧品的な使用に関する。
【0017】
最終的な態様において、本発明は、本発明のペプチドまたは本発明の組成物を対象に投与することを含む、対象における皮膚の老化の徴候を軽減、予防および/または除去する方法に関する。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「非環式脂肪族基」およびその複数形は、当技術分野において前記用語に与えられる一般的な意味を有する。したがって、これらの用語は、例えば、これらに限定されないが、直鎖状または分枝状のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル基」およびその複数形は、飽和、直鎖状または分枝状の基を指し、1個~24個、好ましくは1個~16個、より好ましくは1個~14個、さらにより好ましくは1個~12個、さらによりいっそう好ましくは1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有し、単結合によって分子の残りの部分と結合しており、例えば、これらに限定されないが、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、i-プロピル、イソブチル、tert-ブチル、n-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、ラウリル、ヘキサデシル、オクタデシル、アミル、2-エチルヘキシル、2-メチルブチル、5-メチルヘキシルおよび類似物を含む。アルキル基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプト、およびアルコキシチオなどの1個以上の置換基によって任意に置換され得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル基」およびその複数形は、直鎖状または分枝状の基を指し、2個~24個、好ましくは2個~16個、より好ましくは2個~14個、さらにより好ましくは2個~12個、さらによりいっそう好ましくは2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有し、共役または非共役の、1個以上の炭素-炭素二重結合、好ましくは1個、2個または3個の炭素-炭素二重結合を有し、単結合を介して分子の残りの部分と結合しており、例えば、これらに限定されないが、ビニル基、オレイル基、リノレイル基および類似の基を含む。アルケニル基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1個以上の置換基によって任意に置換され得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「アルキニル基」およびその複数形は、直鎖状または分枝状の基を指し、2個~24個、好ましくは2個~16個、より好ましくは2個~14個、さらにより好ましくは2個~12個、さらによりいっそう好ましくは2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有し、共役または非共役の、1個以上の炭素-炭素三重結合、好ましくは、1個、2個または3個の炭素-炭素三重結合を有し、単結合を介して分子の残りの部分に結合しており、例えば、これらに限定されないが、エチニル基、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、ペンチニル(1-ペンチニルなど)および類似の基を含む。アルキニル基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1個以上の置換基によって任意に置換され得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「脂環式基」およびその複数形は、当技術分野において前記用語に与えられる一般的な意味を有する。したがって、これらの用語は、例えば、これらに限定されないが、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基またはシクロアルキニル基を指すために使用される。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」およびその複数形は、飽和単環脂肪族基または飽和多環脂肪族基を指し、3個~24個、好ましくは3個~16個、より好ましくは3個~14個、さらにより好ましくは3個~12個、さらによりいっそう好ましくは3個、4個、5個または6個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りの部分に結合しており、例えば、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、オクタヒドロインデン、デカヒドロナフタレン、ドデカヒドロ-フェナレン、アダマンチルおよび類似物を含む。シクロアルキルは、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1個以上の基によって任意に置換され得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルケニル」およびその複数形は、非芳香族単環脂肪族基または非芳香族多環脂肪族基を指し、5個~24個、好ましくは5個~16個、より好ましくは5個~14個、さらにより好ましくは5個~12個、さらによりいっそう好ましくは5個または6個の炭素原子を有し、共役または非共役の、1個以上の炭素-炭素二重結合、好ましくは1個、2個または3個の炭素-炭素二重結合を有し、単結合を介して分子の残りの部分と結合しており、例えば、これらに限定されないが、シクロペント-1-エン-1-イル基および類似の基を含む。シクロアルケニルは、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1個以上の基によって任意に置換され得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキニル」およびその複数形は、非芳香族単環式脂肪族基または非芳香族多環式脂肪族基を指し、8個~24個、好ましくは8個~16個、より好ましくは8個~14個、さらにより好ましくは8個~12個、さらによりいっそう好ましくは8個または9個の炭素原子を有し、共役または非共役の、1個以上の炭素-炭素三重結合、好ましくは1個、2個または3個の炭素-炭素三重結合を有し、単結合を介して分子の残りの部分と結合しており、例えば、これらに限定されないが、シクロオクト-2-イン-1-イル基および類似物を含む。シクロアルキニルは、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1個以上の基によって任意に置換され得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「アリール基」およびその複数形は、芳香族基を指し、6個~30個、好ましくは6個~18個、より好ましくは6個~10個、さらにより好ましくは6個または10個の炭素原子を有し、1個、2個、3個または4個の芳香族環を含み、炭素-炭素結合によって結合しているか、または縮合しており、単結合を介して分子の残りの部分に結合しており、例えば、これらに限定されないが、特に、フェニル、ナフチル、ジフェニル、インデニル、フェナントリルまたはアントラニルを含む。アリール基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1個以上の置換基によって任意に置換され得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「アラルキル基」およびその複数形は、芳香族基によって置換されたアルキル基を指し、7個~24個の炭素原子を有し、例えば、これらに限定されないが、-(CH)1-6-フェニル、-(CH)1-6-(1-ナフチル)、-(CH)1-6-(2-ナフチル)、-(CH)1-6-CH(フェニル)、および類似物を含む。アラルキル基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1個以上の置換基によって任意に置換され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「複素環基」およびその複数形は、3員~10員のヘテロシクリルまたは炭化水素環を指し、環原子の1個以上、好ましくは環原子の1個、2個または3個が、窒素、酸素または硫黄などの炭素とは異なる元素であり、飽和または不飽和であってもよい。本発明の目的のために、ヘテロシクリルは、縮合環系を含み得る環式系、単環式系、二環式系または三環式系であり得;窒素原子、炭素原子または硫黄原子は、ヘテロシクリルラジカルにおいて任意に酸化され得;窒素原子は、任意に四級化され得;ヘテロシクリルラジカルは、部分的または完全に飽和していてもよく、または芳香族であってもよい。好ましくは、ヘテロシクリルという用語は、5員環または6員環に関する。複素環基は、1個以上の置換基、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどによって任意に置換され得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリールアルキル基」およびその複数形は、置換もしくは非置換の芳香族ヘテロシクリル基によって置換されたアルキル基を指し、当該アルキル基は1個から6個までの炭素原子を有し、当該芳香族ヘテロシクリル基は2個~24個の炭素原子および1個から3個の炭素以外の原子を有し、例えば、これらに限定されないが、-(CH)1-6-イミダゾリル、-(CH)1-6-トリアゾリル、-(CH)1-6-チエニル、-(CH)1-6-フリル、-(CH)1-6-ピロリジニルおよび類似物を含む。ヘテロアリールアルキル基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1個以上の置換基によって任意に置換され得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指し、その陰イオンはハロゲン化物を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「誘導体」およびその複数形は、化粧品として許容される化合物、すなわち、化粧品の調製に使用され得る目的の化合物から誘導される化合物、および化粧品として許容されない誘導体を指す。これは、これらが化粧品として許容される誘導体の調製に有用であり得るからである。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「塩」およびその複数形は、当技術分野において公知のものの中から任意の種類の塩、例えば、ハロゲン化物塩、ヒドロキシ酸塩(オキシ酸塩、酸塩、塩基性塩および二重塩など)、ヒドロキシ塩、混合塩、オキシ塩または他の水和塩を指す。この用語は、化粧品として許容される塩;および化粧品として許容されない塩を含む。これは、後者が化粧品として許容される塩の調製に有用であり得るからである。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「異性体」およびその複数形は、光学異性体、鏡像異性体、立体異性体またはジアステレオ異性体を指す。個々の鏡像異性体またはジアステレオ異性体、ならびにそれらの混合物は、当技術分野において公知の従来技術によって分離され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「溶媒和物」およびその複数形は、極性溶媒和物、無極性溶媒和物または両親媒性溶媒和物など、当技術分野において公知の任意の溶媒和物を指し、関心対象に(直接的または間接的に)投与または適用されると、関心対象の化合物(本発明のペプチド(peptide)またはペプチド(peptides))をもたらす、任意の化粧品として許容される溶媒和物を含む。好ましくは、溶媒和物は、水和物、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロパノールなど)との溶媒和物、エステル(酢酸エチルなど)との溶媒和物、エーテル(メチルエーテル、エチルエーテルまたはTHF(テトラヒドロフラン)など)との溶媒和物またはDMF(ジメチルホルムアミド)との溶媒和物であり、より好ましくは、水和物またはアルコール(エタノールなど)との溶媒和物である。
【0035】
さらに、本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」およびその複数形は、遺伝暗号によってコード化されたアミノ酸だけでなく、天然であるか否か、およびD-アミノ酸およびL-アミノ酸であるか否かにかかわらず、未コード化アミノ酸も含む。未コード化アミノ酸の例は、特に限定されないが、特に、シトルリン、オルニチン、サルコシン、デスモシン、ノルバリン、4-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、2-アミノイソ酪酸、6-アミノヘキサン酸、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、2-アミノ安息香酸、4アミノ安息香酸、4-クロロフェニルアラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4ジアミノ酪酸、シクロセリン、カルニチン、システイン、ペニシラミン、ピログルタミン酸、チエニルアラニン、ヒドロキシプロリン、アロ-イソロイシン、アロ-トレオニン、イソニペコチン酸、イソセリン、フェニルグリシン、スタチン、β-アラニン、ノルロイシン、N-メチルアミノ酸、α-アミノ酸およびβ-アミノ酸、ならびにそれらの誘導体である。それにもかかわらず、さらなる非天然アミノ酸は、当技術分野において知られている(例えば、“Unusual amino acids in peptide synthesis”by D. C. Roberts and F. Vellaccio, The Peptides, Vol. 5 (1983), Chapter VI, Gross E. and Meienhofer J., Eds., Academic Press, New York, USAを参照のこと)。
【0036】
本明細書で使用される場合、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質に関する「同一性の割合」は、当技術分野において一般的に帰属される意味を有し、したがって、これらの配列の最適アラインメントの後に比較される2個のアミノ酸配列の間で同一であるアミノ酸の割合に関連し、ここで、前記割合は、単に統計的であり、2個のアミノ酸配列の間の差異は、配列全体にランダムに分布する。「最適アラインメント」は、より大きな同一性の割合をもたらすアミノ酸配列のアラインメントとして理解される。同一性の割合は、2個の比較された配列においてアミノ酸が同一である同一位置の数を決定し、同一位置の数を比較された位置の数で割り、得られた結果に100を乗じて2個の配列間の同一性の割合を得ることによって計算される。2個のアミノ酸配列間の配列比較は、手作業で行うこともできるし、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズムなどの、当技術分野において公知のコンピュータプログラムによって行うこともできる。
【0037】
上述のように、第1の態様において、本発明は、少なくとも1種類のナトリウムチャネルのシグナルおよび/または活性を低下させることができる4アミノ酸以上8アミノ酸以下のペプチド(すなわち、4個~8個のアミノ酸を含むペプチド、より好ましくは、4個~8個のアミノ酸を有するペプチド、より好ましくは、本質的に4個~8個のアミノ酸からなるペプチド、より好ましくは、4個~8個のアミノ酸からなるペプチド);その許容される異性体、塩、溶媒和物誘導体および/またはそれらの混合物を指す。
【0038】
上述のように、本発明のペプチドは、好ましくは、フグのタンパク質および/またはフグのゲノムに由来する。フグは、現在知られている、または将来発見される任意のフグであり得る。より好ましくは、フグは、Takifugu rubripes(二ホンフグ、トラフグ)である。本発明のペプチドはまた、好ましくは、保存的置換によって、フグのタンパク質および/またはフグのゲノムに由来するペプチドから得られるか、または誘導されるペプチドであり得る。
【0039】
本発明のペプチドに使用される、または存在するアミノ酸は、L-アミノ酸、D-アミノ酸、またはそれらの組み合わせであることが企図される。好ましい実施形態において、本発明のペプチドに使用される、または存在するアミノ酸は、L-アミノ酸である。
【0040】
好ましくは、上記の異性体は立体異性体である。前記立体異性体は、鏡像異性体またはジアステレオ異性体であることが企図される。したがって、本発明の好ましい実施態様において、ペプチドは、ラセミ混合物、ジアステレオマー混合物、純粋な鏡像異性体または純粋なジアステレオ異性体である。
【0041】
さらに、異性体、塩、溶媒和物、誘導体および/またはその混合物は、好ましくは、化粧品として許容される異性体、塩、溶媒和物、誘導体および/またはその混合物である。
【0042】
以下に含まれる実施例から直接導き出され得るように、本発明のペプチドは、ナトリウムチャネルの調節を提供し、少なくとも1種類のナトリウムチャネルのシグナルおよび/または活性の減少として現れる。少なくとも1種類のナトリウムチャネルの活性および/またはシグナルの前記減少は、好ましくは、前記少なくとも1種類のナトリウムチャネルによってもたらされる電流の減少、すなわち活動電位の減少である。
【0043】
上記のナトリウムチャネルは、好ましくは電位依存性ナトリウムチャネルである。
【0044】
少なくとも1種類のナトリウムチャネルは、任意の種類のナトリウムチャネルであり得る。ナトリウムチャネルの例は、NaV1.1、NaV1.2、NaV1.3、NaV1.4、NaV1.5、NaV1.6、NaV1.7、NaV1.8およびNaV1.9である。本発明のペプチドは、1種類のナトリウムチャネルあるいは数種類(2種類以上)のナトリウムチャネルの活性および/またはシグナルを低下させることが可能であることが企図される。
【0045】
実施形態において、本発明のペプチドは、少なくとも、前記ナトリウムチャネルNav1.3の活性および/またはシグナルを低下させ、より好ましくは、本発明のペプチドは、前記ナトリウムチャネルNaV1.3の活性および/またはシグナルのみを低下させる。
【0046】
さらなる実施形態において、本発明のペプチドは、少なくとも、前記ナトリウムチャネルNaV1.4の活性および/またはシグナルを低下させ、より好ましくは、本発明のペプチドは、前記ナトリウムチャネルNaV1.4の活性および/またはシグナルのみを低下させる。
【0047】
好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、少なくとも前記ナトリウムチャネルNav1.3およびNaV1.4のシグナルおよび/または活性を低下させ、より好ましくは、本発明のペプチドは、前記ナトリウムチャネルNaV1.3およびNaV1.4の活性および/またはシグナルのみを低下させる。
【0048】
本発明のペプチドは、ナトリウムチャネルが存在する場所であればどこでも、少なくとも1種類のナトリウムチャネルの活性および/またはシグナルを低下させることが可能であることに留意されたい。好ましくは、本発明のペプチドは、シナプス前レベルで、好ましくはニューロンにおいて、少なくとも1個のナトリウムチャネルの活性および/またはシグナルを低下させる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態において、少なくとも1種類のナトリウムチャネルのシグナルおよび/または活性を低下させることは、少なくとも1種類のナトリウムチャネルを遮断することを意味し、部分的な遮断または全体的な遮断であり得、より好ましくは部分的な遮断である。
【0050】
さらに、いくつかの実施形態において、この実施形態は、上述の実施形態のいずれかと組み合わせることができ、本発明のペプチドはまた、少なくとも1種類のナトリウムチャネルの発現を調節することが可能であり、より好ましくは、少なくとも1種類のナトリウムチャネルの発現をダウンレギュレートすることが可能である。少なくとも1種類のナトリウムチャネルは、上記で説明した通りである。これらの実施形態において、本発明のペプチドは、前記ナトリウムチャネルが発現している場所であればどこでも、少なくとも1種類のナトリウムチャネルの発現をダウンレギュレートすることが可能である。好ましくは、本発明のペプチドは、シナプス後レベルで、好ましくは筋肉細胞において、より好ましくは骨格筋細胞において、少なくとも1個のナトリウムチャネルの発現をダウンレギュレートする。
【0051】
さらに、いくつかの実施形態において、この実施形態は、上述の実施形態のいずれかと組み合わせることができ、本発明のペプチドはまた、ECMの維持および/または合成、より正確にはECMの維持の促進および/またはECM成分の合成の促進および/または増加も可能である。本発明のペプチドは、ECMの関連遺伝子およびタンパク質の発現をアップレギュレートすることによって前記活性を発揮し;より好ましくは、本発明のペプチドは、ECMの合成および/または維持を担う少なくとも1つの遺伝子および/またはタンパク質をアップレギュレートすることが可能であり;より好ましくは、本発明のペプチドはまた、コラーゲンI、エラスチン、ヒアルロン酸またはそれらの組み合わせから選択される、ECMの合成および/または維持を担う少なくとも1つの遺伝子および/またはタンパク質をアップレギュレートすることが可能であり;さらにより好ましくは、本発明のペプチドはまた、コラーゲンI、エラスチンおよびヒアルロン酸を、全て遺伝子および/またはタンパク質レベルでアップレギュレートすることが可能である。
【0052】
好ましい実施形態において、この実施形態は、上述の実施形態のいずれかと組み合わせることができ、本発明のペプチドは、タンパク質レベルで、エラスチン、プロコラーゲンIα1およびヒアルロン酸の合成(したがって、そのレベル)を増加することが可能である。
【0053】
さらに好ましい実施態様において、この実施態様は、上述のいずれかの実施態様と組み合わせることができ、本発明のペプチドは、ECMの分解をもたらす遺伝子の発現をダウンレギュレートすることが可能であり、および/またはECMの維持または合成をもたらす遺伝子をアップレギュレートすることが可能である。より好ましくは、ダウンレギュレートされる遺伝子は、MMP1、HYAL1またはそれらの組み合わせから選択され;アップレギュレートされる遺伝子は、TIMP2、HAS1、FBLN5、LOXL1、COL4A1、COL3A1、COL7A1またはそれらの組み合わせから選択される。さらにより好ましくは、ダウンレギュレートされた遺伝子は、MMP1およびHYAL1であり、アップレギュレートされた遺伝子は、TIMP2、HAS1、FBLN5、LOXL1、COL4A1、COL3A1およびCOL7A1である。
【0054】
本発明のペプチドは、少なくとも線維芽細胞において、ECMを維持および/または合成する(より好ましくは、ECMの維持を促進する、および/またはECMの合成を促進および/または増加させる)上述の活性を発揮することが可能である。
【0055】
さらなる実施形態において、この実施形態は、上述の実施形態のいずれかと組み合わせることができ、本発明のペプチドは、少なくとも1個の神経伝達物質、より好ましくはノルアドレナリンのレベルまたは量を減少させる。少なくとも1個の神経伝達物質のレベルの前記減少は、好ましくはシナプス前レベルで、好ましくはニューロンにおいて行われる。容易に誘導可能なように、少なくとも1個の神経伝達物質のレベルまたは量の減少は、前記神経伝達物質の分泌の減少または抑制につながる。
【0056】
上記の活性は、以下に含まれる実施例において実証されており、本発明のペプチドが筋弛緩を誘導または生成する(または筋収縮または過剰な筋収縮を回避する)能力を提供し、これは、順に抗シワ効果(好ましくは、表情ジワに対して)を提供する。さらに、上記の活性はまた、本発明のペプチドの、年代的なシワ(好ましくは、その深さ、長さおよび/または粗さ)の予防および/または軽減;弛みまたは緩んだ皮膚の治療、予防および/または軽減;ならびに皮膚のハリおよび弾力性の改善に対する有用性を検証する。
【0057】
好ましい実施形態において、この実施形態は、上述の実施形態のいずれかと組み合わせることができ、本発明のペプチドは、5個または6個のアミノ酸のペプチド(すなわち、5個または6個のアミノ酸を含むペプチド、より好ましくは、5個または6個のアミノ酸を有するペプチド、より好ましくは、本質的に5個または6個のアミノ酸からなるペプチド、より好ましくは、5個または6個のアミノ酸からなるペプチド)である。
【0058】
さらに、好ましくは、本発明のペプチドは、上述の実施形態のいずれかにおいて、少なくとも1個の荷電アミノ酸(正または負)を含む。さらにより好ましくは、1位のアミノ酸および/または2位のアミノ酸は、荷電アミノ酸(正または負)である。いっそうより好ましくは、本発明のペプチドにおいて、最初の3個のアミノ酸は荷電アミノ酸(正または負)である。
【0059】
好ましい実施形態において、この実施形態は、上述の実施形態のいずれかと組み合わせることができ、本発明のペプチドにおいて、1位および3位のアミノ酸は正に荷電したアミノ酸であり、2位のアミノ酸は正または負に荷電したアミノ酸である。
【0060】
さらに、好ましくは、上記の実施形態のいずれかにおいて、本発明のペプチドにおいて、アミノ酸の残りの部分は、電荷を持たない極性、無極性および/または芳香族である。さらに、好ましくは、存在する場合、5位のアミノ酸は芳香族であり、好ましくはTyrまたはTrpから選択される。また好ましくは、存在する場合、6位のアミノ酸は電荷を持たない極性または無極性である。
【0061】
したがって、好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、少なくとも1個の芳香族アミノ酸、より好ましくは、1個または2個の芳香族アミノ酸を含む。さらにより好ましくは:
本発明のペプチドが5個のアミノ酸を有する場合、1個の芳香族アミノ酸を有し、より好ましくは5位に有する。この場合、芳香族アミノ酸は好ましくはTyrである。
【0062】
本発明のペプチドが6個のアミノ酸を有する場合、2個の芳香族アミノ酸を有し、1個は4位にあり、もう1個は5位にある。この場合、芳香族アミノ酸はTyr、Trp、Pheまたはそれらの組み合わせから選択される。
【0063】
上記の実施形態のいずれかにおいて、荷電アミノ酸(正または負)は、好ましくは、Lys、Arg、His、Aspから選択される。
【0064】
したがって、好ましい実施形態において、本発明のペプチドにおいて、1位の荷電アミノ酸はLysである。さらにより好ましくは、本発明のペプチドにおいて、ペプチドの最初の3個のアミノ酸は、Lys-Arg-Arg、Lys-His-Arg、Lys-Asp-ArgまたはLys-Lys-Hisである。
【0065】
好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、式(I)の配列を有する:
-AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-R
(R-配列番号7-R
ここで、
AA1は、Lys、Arg、IleまたはHisから選択され;
AA2は、Lys、Arg、His、Trp、AspまたはGluから選択され;
AA3は、Lys、Arg、Gln、ProまたはHisから選択され;
AA4は、Gly、Ala、Val、Leu、Met、Ile、Ser、Thr、Cys、Pro、Asn、Gln、Phe、Tyr、LysまたはTrpから選択され;
AA5は、Phe、Tyr、AsnまたはTrpから選択され;
AA6は存在しないか、またはGly、Ala、Val、Leu、Met、Ile、Ser、Thr、Cys、Pro、AsnまたはGlnから選択され;
は、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルおよびR-CO-から選択され、ここで、Rは、置換もしくは非置換のC-C24アルキルラジカル、置換もしくは非置換のC-C24アルケニル、置換もしくは非置換のC-C24アルキニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキニル、置換もしくは非置換のC-C30アリール、置換もしくは非置換のC-C24アラルキル、3員~10員の置換もしくは非置換のヘテロシクリル環、ならびに、2個~24個の炭素原子および1個~3個の炭素以外の原子および1個~6個の炭素原子のアルキル鎖の置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択され;および
は、H、-NR-、-ORおよび-SRから選択され、ここで、RおよびRは、独立して、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族基、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアラルキルから選択され;
あるいは、RおよびRは存在せず、AA1は前記ペプチドの最後のアミノ酸、すなわちAA6またはAA6が存在しない場合にはAA5に直接結合している(環式ペプチドを形成する)。
【0066】
は、ペプチドのN末端、すなわちAA1のアミノ基に連結される(AA1のアミノ基からHを置換(substitute)または置換(replace)する)。
【0067】
は、ペプチドのC末端、すなわちAA6のカルボキシ基、またはAA6が存在しない場合にはAA5のカルボキシ基に連結される(カルボキシ基のOHを置換(substitute)または置換(replace)する)。
【0068】
より好ましい実施形態において、上述のペプチドは、少なくとも1種類のナトリウムチャネルの発現をダウンレギュレートすることが可能であり、および/または少なくとも1種類の神経伝達物質のレベルを低下させることが可能であり、および/またはECMを維持および/または合成することが可能である。好ましくは、ナトリウムチャネルは電位依存性ナトリウムチャネルであり、より好ましくは、前記電位依存性ナトリウムチャネルはNav1.3および/またはNav1.4である。好ましくは、神経伝達物質はノルアドレナリンである。好ましくは、ECMは、コラーゲンI、エラスチン、ヒアルロン酸またはそれらの組み合わせから選択される。
【0069】
別の好ましい実施形態において、前記ペプチドは式(I)の配列を有する:
-AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-R
(R-配列番号7-R
ここで、
AA1は、Lys、ArgまたはIleから選択され;
AA2は、Lys、Arg、His、Asp、TrpまたはGluから選択され;
AA3は、Arg、Gln、ProまたはHisから選択され;
AA4は、Val、Met、Ile、Ser、Thr、Cys、Asn、Gln、Phe、Tyr、LysまたはTrpから選択され;
AA5は、Tyr、AsnまたはTrpから選択され;
AA6は存在しないか、またはAla、Val、Leu、Met、Ile、Ser、Thr、Cys、Pro、AsnもしくはGlnから選択され;
は、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルおよびR-CO-から選択され、ここで、Rは、置換もしくは非置換のC-C24アルキルラジカル、置換もしくは非置換のC-C24アルケニル、置換もしくは非置換のC-C24アルキニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキニル、置換もしくは非置換のC-C30アリール、置換もしくは非置換のC-C24アラルキル、3員~10員の置換もしくは非置換のヘテロシクリル環、ならびに、2個~24個の炭素原子および1個~3個の炭素以外の原子および1個~6個の炭素原子のアルキル鎖の置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択され;および
は、H、-NR-、-ORおよび-SRから選択され、ここで、RおよびRは、独立して、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族基、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアラルキルから選択され;
あるいは、RおよびRは存在せず、AA1は前記ペプチドの最後のアミノ酸に直接結合している。
【0070】
好ましくは、式(I)において:
AA1は、Lysであり
AA2は、Arg、His、LysまたはAspから選択され;
AA3は、ArgまたはHisから選択され;
AA4は、Tyr、Ser、ValまたはPheから選択され;
AA5は、TyrまたはTrpから選択され;
AA6は存在しないか、CysまたはAlaから選択される。
【0071】
好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、以下から選択され:
-Arg-Trp-Gln-Lys-Asn-Gln-R(R-配列番号1-R);
-Lys-Arg-Arg-Tyr-Tyr-Cys-R(R-配列番号2-R);
-Lys-His-Arg-Ser-Tyr-R(R-配列番号3-R);
-Lys-Asp-Arg-Val-Tyr-R(R-配列番号4-R);
-Ile-Glu-Pro-Tyr-Tyr-Val-R(R-配列番号5-R);または
-Lys-Lys-His-Phe-Trp-Ala-R(R-配列番号6-R);
ここで、
は、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルおよびR-CO-から選択され、ここで、Rは、置換もしくは非置換のC-C24アルキルラジカル、置換もしくは非置換のC-C24アルケニル、置換もしくは非置換のC-C24アルキニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキニル、置換もしくは非置換のC-C30アリール、置換もしくは非置換のC-C24アラルキル、3員~10員の置換もしくは非置換のヘテロシクリル環、ならびに、2個~24個の炭素原子および1個~3個の炭素以外の原子および1個~6個の炭素原子のアルキル鎖の置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択され;および
は、H、-NR-、-ORおよび-SRから選択され、ここで、RおよびRは、独立して、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族基、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアラルキルから選択され;
あるいは、RおよびRは存在せず、AA1は前記ペプチドの最後のアミノ酸に直接結合している(環式ペプチドを形成する)。
【0072】
より好ましくは、本発明のペプチドは、以下から選択され:
-Lys-Asp-Arg-Val-Tyr-R(R-配列番号4-R);または
-Lys-Lys-His-Phe-Trp-Ala-R(R-配列番号6-R);
およびRは上記に開示されている。
【0073】
さらにより好ましくは、本発明のペプチドは、以下の通りであり:
-Lys-Asp-Arg-Val-Tyr-R(R-配列番号4-R);
およびRは上記に開示されている。
【0074】
上記の実施形態のいずれかにおいて、好ましくは、RはHまたはアセチルであり、より好ましくは、RはHである。
【0075】
また、上記の実施形態のいずれかにおいて、RはNHまたはOHであり、より好ましくは、RはNHである。
【0076】
したがって、最も好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、以下から選択される:
Arg-Trp-Gln-Lys-Asn-Gln-NH(配列番号1-NH);
Lys-Arg-Arg-Tyr-Tyr-Cys-NH(配列番号2-NH);
Lys-His-Arg-Ser-Tyr-NH(配列番号3-NH);
Lys-Asp-Arg-Val-Tyr-NH(配列番号4-NH);
Ile-Glu-Pro-Tyr-Tyr-Val-NH(配列番号5-NH);または
Lys-Lys-His-Phe-Trp-Ala-NH(配列番号6-NH)
【0077】
さらにより好ましくは、本発明のペプチドは、以下である:
Lys-Asp-Arg-Val-Tyr-NH(配列番号4-NH);または
Lys-Lys-His-Phe-Trp-Ala-NH(配列番号6-NH)
さらにより好ましくは
Lys-Asp-Arg-Val-Tyr-NH(配列番号4-NH)。
【0078】
ペプチドの配列番号1~配列番号3は、フグTakifugu rubripes(二ホンフグ、トラフグ)のタンパク質および/またはゲノムから直接誘導されることに留意されたい。より正確には、
配列番号1は、フグTakifugu rubripesの核小体複合体タンパク質2ホモログ(Uniprot参照番号:H2TGB2、アミノ酸88~93)の配列に由来する。
【0079】
配列番号2は、Disabled homolog 2-interacting protein-like isoform X2(Synaptic Ras-GTPase activating domain)(NCBI Reference Sequence:XP_003976523.1、アミノ酸64~68)の配列に由来する。
【0080】
配列番号3は、カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2-γ様アイソフォームX2(NCBI Reference Sequence:XP_011605802.2、アミノ酸7~11)として予測されるゲノム配列に由来する。
【0081】
配列番号4~6のペプチドは、保存的置換によって配列番号1~3のペプチドに由来する。
【0082】
本発明の範囲内には、上述の活性の少なくとも1個(好ましくは、本発明のペプチドについて上述の活性の全て)を保持するか、示すか、または改善する限り、好ましくは1個以上の保存的置換を組み込んだ、上記に開示したペプチドのいずれかから誘導されるか、または得られるペプチドも含まれる。
【0083】
さらに、本発明の範囲内には、上述の活性の少なくとも1個(好ましくは、本発明のペプチドについて上述の活性の全て)を保持するか、示すか、または改善する限り、上述の特定の配列のいずれかと70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは99%の割合の同一性を有するペプチドも含まれる。
【0084】
上記から直接導き出されるように、本発明のペプチドは直鎖ペプチドまたは環式ペプチドであることが企図される。
【0085】
実施形態において、この実施形態は、上記の実施形態のいずれかと組み合わせることができ、ペプチドは環式である。この場合、本発明のペプチドの最初のアミノ酸と最後のアミノ酸とは(上記の説明にしたがって)結合している。したがって、上記の実施形態のいずれかに対する適切な改変を行わなければならない(例えば、RおよびRは、前記部位が結合しているアミノ酸が、現在、互いに結合しているので、存在しなくてもよい)。
【0086】
好ましい実施形態において、この実施形態は、上記の実施形態のいずれかと組み合わせることができ、前記ペプチドは直鎖状である。
【0087】
本発明のペプチドは、当技術分野において公知の任意の手段によって合成および生産され得る。例えば、それらは、化学合成(好ましくは、固相ペプチド合成の手段によって)、細胞培養における前記ペプチドの発現、または植物もしくは動物におけるペプチドの遺伝子導入生産の手段によって合成および生産され得る。さらに、本発明のペプチドは、当技術分野において公知の任意の手段によって精製され得る。
【0088】
好ましい実施形態において、この実施形態は、上記に開示した実施形態のいずれかと組み合わせることができ、本発明のペプチドは、イオン導入法によって、より好ましくは、対象(好ましくは、ヒト)の顔面に塗布するのに適しているか、または適合している。
【0089】
さらなる好ましい実施形態において、この実施形態は、上記に開示した実施形態のいずれかと組み合わせることができ、本発明のペプチドは、皮下、より好ましくは、対象(好ましくは、ヒト)の顔面に塗布するのに適しているか、または適合している。
【0090】
別の好ましい実施形態において、この実施形態は、上記に開示した実施形態のいずれかと組み合わせることができ、本発明のペプチドは、局所的に(好ましくは、クリームの形態で)、より好ましくは、対象(好ましくは、ヒト)の顔面に塗布するのに適しているか、または適合されている。
【0091】
下記に含まれる実施例から直接導き出されるように、本発明のペプチドは、少なくとも筋弛緩の手段ならびにECMの維持および合成の手段によるシワの予防、治療および/または軽減を提供するために必要な活性を有する。さらに、本発明のペプチドは、皮膚の緩みまたは弛み、および皮膚の荒れ(好ましくは、シワ荒れ)の予防、治療および/または軽減;ならびに皮膚のハリおよび弾力性の改善をもたらすために必要な活性も有する。したがって、本発明のペプチドは、上述の技術的課題を解決し、化粧品に有用である。
【0092】
第2の態様において、本発明は、本発明のペプチドを含む組成物を指す。
【0093】
本発明のペプチドは、本発明の第1の態様において上記で開示した通りである。
【0094】
本発明の組成物は、好ましくは化粧品組成物である。したがって、この実施形態において、本発明の化粧品組成物は、本発明の少なくとも1個のペプチドの化粧品的に有効な量を含み、より好ましくは、本発明の化粧品組成物は、本発明のペプチドの0.0001%(重量/体積、g/100mL、以下、w/v)から0.05%(w/v)までを含む。最も好ましい実施形態において、本発明の化粧品組成物は、本発明のペプチドの0.0001%(w/v)から0.005%(w/v)までを含み、より好ましくは、0.0005%(w/v)y0.0015%(w/v)を含む。
【0095】
本発明の化粧品組成物はまた、少なくとも1個の追加の化粧品成分を含むことが企図される。前記追加の化粧品成分は、少なくとも1個の賦形剤および/または少なくとも1個の追加の化粧品活性成分であり得る。前記追加の化粧品成分は、本発明のペプチドの活性に影響を与えないか、または許容できない態様で影響を与えない限り、当技術分野において公知の任意の化粧品成分であり得る。
【0096】
実施形態において、本発明の組成物は、本質的に本発明のペプチドからなる。
【0097】
別の実施形態において、本発明の組成物は、本発明のペプチドからなる。
【0098】
第3の態様において、本発明は、本発明のペプチドまたは本発明の組成物の、治療を必要とする対象における化粧品としての使用を指す。
【0099】
本発明のペプチドは、本発明の第1の態様において上記に開示した通りである。
【0100】
本発明の組成物は、本発明の第2の態様において上記に開示した通りである。
【0101】
本発明のペプチドまたは組成物は、化粧品的に有効な量(amount)または量(quantity)で使用される。
【0102】
好ましい実施形態において、化粧品としての使用は、皮膚の老化の徴候を軽減、予防および/または除去することである。
【0103】
好ましくは、皮膚の老化の徴候は、シワ、皮膚の荒れ(好ましくは、シワの荒れ)、皮膚の緩みまたは皮膚の弛みであり、より好ましくは、シワ、皮膚の荒れ、非炎症性の皮膚の緩みまたは非炎症性の皮膚の弛みであり、より好ましくは、シワ、さらにより好ましくは、顔のシワである。前記シワは、年代的シワまたは表情(筋肉由来)シワであり得る。
【0104】
非炎症性弛緩性皮膚は、化粧品的弛緩性皮膚、すなわち、非病理学的(非医学的状態)な弛緩性皮膚に相当する。
【0105】
非炎症性弛み皮膚は、化粧品的弛み皮膚、すなわち、非病理学的(非医学的状態)な弛み皮膚に相当する。
【0106】
上述したことから直接導き出されるように、本発明において、皮膚の老化の徴候(好ましくは、年代的なシワおよび表情ジワの両方)は、既に上記で説明したように、神経筋収縮の遮断によって、および/またはECMの維持もしくは合成によって、(本発明のペプチドによって、または本発明の組成物によって)予防され、軽減され、および/または除去される。
【0107】
少なくとも1個のナトリウムチャネルおよび少なくとも1個の神経伝達物質は、本発明の第1の態様において上記で説明した通りである。
【0108】
本発明のこの第3の態様において、治療を必要とする対象は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0109】
本発明のこの第3の態様において、化粧品としての使用は、皮膚のハリおよび/または弾力性の改善のためであることも企図される。
【0110】
第4の態様において、上述のように、本発明は、治療を必要とする対象における本発明のペプチドまたは本発明の組成物の化粧品的使用に関する。
【0111】
好ましくは、本発明のこの第4の態様において、化粧品の使用は、皮膚の老化の徴候を軽減し、予防し、および/または除去することである。
【0112】
本発明のこの第4の態様において、化粧品としての使用は、皮膚のハリおよび/または弾力性の改善のためであることも企図される。
【0113】
本発明のペプチドは、本発明の第1の態様において上記に開示した通りである。
【0114】
本発明の組成物は、本発明の第2の態様において上記に開示した通りである。
【0115】
皮膚の老化の徴候および治療を必要とする対象は、本発明の第3の態様において上記で説明した通りである。
【0116】
さらに、本発明の第3の態様において上記で説明した全ての実施形態は、適切な適合を伴って、本発明のこの第4の態様に直接適用可能である。
【0117】
第5および最後の態様において、本発明は、本発明のペプチドまたは本発明の組成物を対象に投与することを含む、対象における皮膚の老化の徴候を軽減、予防および/または除去する方法に関する。
【0118】
本発明のペプチドは、本発明の第1の態様において上記に開示した通りである。
【0119】
本発明の組成物は、本発明の第2の態様において上記に開示した通りである。
【0120】
皮膚の老化の徴候および対象は、本発明の第3の態様において上記で説明した通りである。
【0121】
さらに、本発明の第3および第4の態様において上記で説明した全ての実施形態は、適切な適合を伴って、本発明のこの第5の態様に直接適用可能である。
【0122】
配列表フリーテキスト
配列番号1:フグTakifugu rubripesの核小体複合体タンパク質2ホモログ(Uniprot参照番号:H2TGB2、アミノ酸88~93)の配列に由来するペプチド。
【0123】
配列番号2:Disabled homolog 2-interacting protein-like isoform X2(Synaptic Ras-GTPase activating domain)(NCBI Reference Sequence:XP_003976523.1、アミノ酸64~68)の配列に由来するペプチド。
【0124】
配列番号3:カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2-γ様アイソフォームX2と予測されるゲノム配列に由来するペプチド(NCBI Reference Sequence:XP_011605802.2、アミノ酸7~11)
配列番号4:人工的に合成された配列
配列番号5:人工的に合成された配列
配列番号6:人工的に合成された配列
配列番号7:人工的に合成された配列
Xaaは、Lys、ArgまたはHisから選択される
Xaaは、Lys、Arg、His、AspまたはGluから選択される
Xaaは、Lys、ArgまたはHisから選択される
Xaaは、Gly、Ala、Val、Leu、Met、Ile、Ser、Thr、Cys、Pro、Asn、Gln、Phe、TyrまたはTrpから選択される
Xaaは、Phe、TyrまたはTrpから選択される
Xaaは存在しないか、またはGly、Ala、Val、Leu、Met、Ile、Ser、Thr、Cys、Pro、AsnもしくはGlnから選択される。
【0125】
〔図面の簡単な説明〕
より良く理解できるように、本発明は、同封の図面(例として提示されており、例示的かつ非限定的な実施例の参照を有する)を参照して、以下により詳細に説明する。
【0126】
図1は、以下に含まれる実施例2におけるペプチド配列番号4-NHについて得られた細胞生存率の結果を示す。より具体的には、図1Aは、HEKa細胞における生存率を示し、図1BはHDFa細胞における生存率を示す。両図において、Y軸は陰性対照(未処理細胞)の生存率を100%として、細胞の生存率の割合を指す。両図において、x軸の左から右への列は、陰性対照(未処理細胞);および0.001mg/mL、0.005mg/mL、0.01mg/mL、0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mLまたは1mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞を指す。
【0127】
図2は、実施例3で得られた結果を示す。すなわち、試験した試料の経時電流(応答曲線下面積)、ひいては電位依存性ナトリウムチャネル(NaV1.3)の活性である。Y軸は内向き電流(Amp)を指す。x軸は試験した異なる実験群を指し、各列の組について、左側が陰性対照を指し、右側が処理した試料を指す。x軸において、左から右への列の組は、以下の実験処理または群を指す:配列番号1-NH、配列番号2-NH、配列番号3-NHおよびアミトリプチリン。
【0128】
図3は、実施例4で得られた結果を示す。この図は、電位依存性ナトリウムチャネルの阻害率を示している。Y軸は陰性対照(0%)に対する電位依存性ナトリウムチャネルの阻害率を表し、X軸は試験した異なるペプチドのM単位の濃度の対数を指す。三角の線は配列番号2-NHであり;四角の線は配列番号3-NHであり;十字の線は配列番号4-NHであり;丸の線は配列番号5-NHであり;ひし形の線は配列番号6-NHである。
【0129】
図4は、実施例5において、配列番号6-NHで処理した場合のノルアドレナリンのレベルについて得られた結果を示す。y軸は陽性対照(未処理の脱分極細胞、100%とする)に対するノルアドレナリンの割合を示す。x軸は異なる処理群を示し、左から右へバーで示す:基底状態;陽性対照(処理なしの脱分極細胞);0.05mg/mLのペプチド配列番号6-NHで処理した脱分極細胞;および0.1mg/mLのペプチド配列番号6-NHで処理した脱分極細胞。
【0130】
図5は、配列番号4-NHで処理した実施例5におけるノルアドレナリンのレベルについて得られた結果を示す。y軸は陽性対照(未処理の脱分極細胞、100%とする)に対するノルアドレナリンの割合を示す。x軸は異なる処理群を示し、左から右へバーで示す:基底状態;陽性対照(処理なしの脱分極細胞);0.05mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した脱分極細胞;および0.1mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した脱分極細胞。
【0131】
図6は、0.01mg/mLの濃度のペプチド配列番号4-NHで24時間処理した場合の、実施例6で得られた遺伝子発現結果を示す。各バーは上から順に1個の遺伝子を示す:SCN1B、SCN4A、SCN3AおよびCALM3。左(すなわち、負の値)に向かって伸びるバーは、遺伝子のダウンレギュレーションを示す。
【0132】
図7は、0.005mg/mLの濃度のペプチド配列番号4-NHで24時間処理した場合の、実施例6で得られた遺伝子発現結果を示す。各バーは上から順に1個の遺伝子を示す:RAPSN、SCN3AおよびCALM3。左(すなわち、負の値)に向かって伸びるバーは、遺伝子のダウンレギュレーションを示す。
【0133】
図8は、0.005mg/mL、0.01mg/mLまたは0.015mg/mLの濃度のペプチド配列番号4-NHでHDFa細胞を48時間処理した場合の、実施例7で得られたエラスチンの産生または合成の結果を示す。エラスチンの産生または合成は、100%として確立された基底状態(未処理細胞)に対する割合として表される。Y軸は基底状態に対するエラスチンの割合を示す。x軸は異なる処理群を示し、左から右へバーで示す:基底状態(未処理細胞);0.005mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞;0.01mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞;および、0.015mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞。
【0134】
図9は、0.01mg/mL、0.015mg/mLまたは0.05mg/mLのペプチド配列番号4-NHでHDFa細胞を48時間処理した場合の、実施例8におけるプロコラーゲンIα1の放出について得られた結果を示す。プロコラーゲンIα1の放出は、100%として確立された基底状態(未処理細胞)に対する割合として表される。y軸は、基底状態に対するプロコラーゲンIα1の放出の割合を示す。x軸は異なる処理群を示し、左から右へバーで示す:基底状態(未処理細胞);0.01mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞;0.015mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞;および0.05mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞。
【0135】
図10は、HDFa細胞を、ペプチド配列番号4-NHを用いて、0.01mg/mLのペプチド(MMP1、COL3A1およびCOL4A1)で24時間、0.05mg/mLのペプチド(TIMP2、FBLN5、LOXL1およびCOL7A1)で24時間、0.005mg/mLのペプチド(HYAL1)で6時間、および0.05mg/mLのペプチド(HAS1)で6時間処理した場合の、実施例10において得られた遺伝子発現結果を示す。各バーは上から順に1個の遺伝子を示す:MMP1、HYAL1、TIMP2、HAS1、FBLN5、LOXL1、COL4A1、COL3A1およびCOL7A1。左(すなわち、負の値)に向かって伸びるバーは、遺伝子のダウンレギュレーションを示す。右(すなわち、正の値)に向かって伸びるバーは、遺伝子のアップレギュレーションを示す。
【0136】
〔実施例〕
略語:
アミノ酸に使用される略語は、Eur. J. Biochemにおいて概説された1983年の生化学命名法に関するIUPAC-IUB合同委員会(1983 IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature recommendations outlined in Eur. J. Biochem. (1984) 138:937)に従う。
【0137】
Ala、アラニン;Arg、アルギニン;Asn、アスパラギン;Asp、アスパラギン酸;Boc、tert-ブチルオキシカルボニル;cDNA、相補DNA;C末端、カルボキシ末端;Cys、システイン;DCM、ジクロロメタン;DIPCDI、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド;DMF、N,N-ジメチルホルムアミド;equiv、当量;ESI-MS、エレクトロスプレーイオン化質量分析;Fmoc、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル;Glu、グルタミン酸;Gln、グルタミン;HBSS、Hanks’Balanced Salt Solution;HEPES、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸;His、ヒスチジン;HOBt、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール;HPLC、高速液体クロマトグラフィー;HRP、ホースラディッシュペルオキシダーゼ;Ile、イソロイシン;LSGS、Low Serum Growth Supplement;Lys、リジン;MBHA、p-メチルベンズヒドリルアミン;Me、メチル;MeCN、アセトニトリル;MEM、最小必須培地;MeOH、メタノール;Met、メチオニン;N末端、アミノ末端;Pbf、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル;Phe、フェニルアラニン;Pro、プロリン;RNA、リボ核酸;RT、室温;RT-qPCR、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応;Ser、セリン;SKM-D、骨格筋細胞分化培地;SKM-M、骨格筋細胞増殖培地;tBu、tert-ブチル;TFA、トリフルオロ酢酸;TIS、トリイソプロピルシラン;TPA、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート;Trp、トリプトファン;Trt、トリフェニルメチルまたはトリチル;Tyr、チロシン;Val、バリン。
【0138】
実施例に含まれる化学合成手順に関して、全ての合成工程は、多孔性ポリエチレンディスクを取り付けたポリプロピレンシリンジまたは多孔性プレートを取り付けたPyrex製(登録商標)リアクターで実施したことに留意されたい。試薬および溶媒は全て合成品質であり、追加処理なしで使用した。溶媒および可溶性試薬は吸引によって除去した。Fmoc基はピペリジン-DMF(2:8、体積/体積、v/v)(少なくとも1×1分、2×10分、5mL/g樹脂)(Lloyd Williams P. et al., Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins, CRC, 1997, Boca Raton (Fla., USA))で除去した。脱保護、カップリング、および再び脱保護の段階間の洗浄は、毎回10ml溶媒/g樹脂を用い、DMF(3×1分)およびDCM(3×1分)で行った。カップリング反応は3ml溶媒/g樹脂で行った。カップリングの制御は、ニンヒドリン試験(Kaiser E. et al., Anal. Biochem., 1970, 34:595598)を実施することによって行った。全ての合成反応および洗浄をRTで行った。
【0139】
〔実施例1.ペプチドの合成および調製〕
【0140】
【化1】
【0141】
重量を正規化した。0.52mmol/gの官能基化を有するFmoc-Rink-MBHA樹脂4.8g(2.5mmol)を、Fmoc基を除去するために、当技術分野において公知の記載された一般的プロトコールにしたがってピペリジン-DMFで処理した。2.33gのFmoc-L-Ala-OH(7.5mmol;3equiv)を、溶媒としてDMFを用い、DIPCDI(1.17mL;7.5mmol;3equiv)およびHOBt(1.01g;7.5mmol;3equiv)の存在下、1時間かけて脱保護樹脂に取り込んだ。
【0142】
その後、当技術分野において公知の一般的な方法に記載されているように樹脂を洗浄し、Fmoc基の脱保護処理を繰り返して次のアミノ酸を結合させた。先に記載したプロトコールにしたがって、3.94gのFmoc-L-Trp(Boc)-OH(7.5mmol;3equiv);続いて2.90gのFmoc-L-Phe-OH(7.5mmol;3equiv);続いて4.64gのFmoc-L-His(Trt)-OH(7.5mmol;3equiv);続いて3.51gのFmoc-L-Lys(Boc)-OH(7.5mmol;3equiv)および続いて3.51gのFmoc-L-Lys(Boc)-OH(7.5mmol;3equiv)を、順次、1.01gのHOBt(7.5mmol;3equiv)および1.17mLのDIPCDI(7.5mmol;3equiv)の存在下で各々カップリングさせた。上記ですでに述べたように、各アミノ酸付加ステップの間に、Fmoc基の脱保護処理を行った。
【0143】
合成後、ペプチド樹脂をDCMで洗浄し(各5回、3分間)、真空下で乾燥させた。
【0144】
【化2】
【0145】
重量を正規化した。0.52mmol/gの官能基化を有するFmoc-Rink-MBHA樹脂4.8g(2.5mmol)を、Fmoc基を除去するために、当技術分野において公知の記載された一般的プロトコールにしたがってピペリジン-DMFで処理した。3.44gのFmoc-L-Tyr(tBu)-OH(7.5mmol;3equiv)を、溶媒としてDMFを使用して、DIPCDI(1.17mL;7.5mmol;3equiv)およびHOBt(1.01g;7.5mmol;3equiv)の存在下、1時間かけて脱保護樹脂に取り込んだ。
【0146】
その後、当技術分野において公知の一般的な方法に記載されているように樹脂を洗浄し、Fmoc基の脱保護処理を繰り返して次のアミノ酸を結合させた。先に記載したプロトコールにしたがって、2.55gのFmoc-L-Val-OH(7.5mmol;3equiv)、続いて4.86gのFmoc-L-Arg(Pbf)-OH(7.5mmol;3equiv)、続いて3.08gのFmoc-L-Asp(tBu)-OH(7.5mmol;3equiv)、続いて3.51gのFmoc-L-Lys(Boc)-OH(7.5mmol;3equiv)を、順次、1.01gのHOBt(7.5mmol;3equiv)および1.17mLのDIPCDI(7.5mmol;3equiv)の存在下で各々カップリングさせた。上記ですでに述べたように、各アミノ酸付加ステップの間に、Fmoc基の脱保護処理を行った。
【0147】
合成後、ペプチド樹脂をDCMで洗浄し(各5回、3分間)、真空下で乾燥させた。
【0148】
上述の合成手順を用いて、必要なアミノ酸を選択し、以下の配列を合成した:
Arg-Trp-Gln-Lys-Asn-Gln-NH(配列番号1-NH);
Lys-Arg-Arg-Tyr-Tyr-Cys-NH(配列番号2-NH);
Lys-His-Arg-Ser-Tyr-NH(配列番号3-NH);
Lys-Asp-Arg-Val-Tyr-NH(配列番号4-NH);
Ile-Glu-Pro-Tyr-Tyr-Val-NH(配列番号5-NH);および
Lys-Lys-His-Phe-Trp-Ala-NH(配列番号6-NH)。
【0149】
【化3】
【0150】
上記a)またはb)で得られたペプチジル樹脂のN末端Fmoc基を、DMF中20%(体積/体積、以下v/v)ピペリジンで脱保護した(1×1分+2×10分)((Lloyd Williams P. et al. (1997) Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins. CRC, Boca Raton (Fla., USA))。ペプチジル樹脂をDMF(5×1分)、DCM(4×1分)で洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0151】
【化4】
【0152】
重量を正規化した。c)で得られた乾燥ペプチジル樹脂200mgを、5mLのTFA/TIS/HO(体積比90:5:5)で、撹拌下、室温で2時間処理した。濾液を集め、50mL(8倍~10倍)の冷ジエチルエーテルを用いて沈殿させた。エーテル溶液を減圧下、室温で蒸発乾固し、沈殿物をHO中50%(v/v)MeCNに再溶解し、凍結乾燥した。
【0153】
【化5】
【0154】
d)にしたがって得られたペプチドのHPLC分析は、逆相カラム(150×4.6mm、XBridge Peptide BEH C18、3.5μm、Waters、米国)を用い、HO(+0.045%(v/v)TFA)中、MeCN(+0.036%(v/v)TFA)のグラジエントで流速1.25mL/分で行い、検出は220nmで行った。全てのペプチドは80%を超える純度を示した。得られたペプチドの同一性は、移動相としてMeOHを用い、流速0.2mL/分で、Water ZQ 4000検出器を用いたESI-MSによって確認した。得られた結果から、ペプチド配列番号1-NH、配列番号2-NH、配列番号3-NH、配列番号4-NH、配列番号5-NHおよび配列番号6-NHが正しく効果的に合成されたことが示された。
【0155】
〔実施例2.本発明のペプチドの毒性の分析〕
この場合、MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを用いて、HEKa(成人皮膚由来ヒト表皮角化細胞)およびHDFa(成人皮膚由来ヒト真皮線維芽細胞)初代細胞に対する本発明のペプチドの細胞毒性能を評価した。
【0156】
この実施例では、ペプチド配列番号4-NHを用いて、実施例1にしたがって調製した。
【0157】
ペプチドのストック溶液を蒸留水で25mg/mL調製した。このストック溶液をさらに希釈して、対応する培養液中の最終作用濃度(0.001mg/mL、0.005mg/mL、0.01mg/mL、0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL、および1mg/mL)を得た。
【0158】
未処理細胞を陰性対照試料(Basal)として用いた。
【0159】
簡単に説明すると、HEKa細胞およびHDFa細胞を、最終容量200μLの培地(20,000細胞/ウェル)に1×10細胞/mLの濃度で96ウェルプレートに播種した。HEKa細胞はケラチノサイト増殖キットを添加した真皮細胞基底培地で培養し;HDFa細胞は2%のLSGSを添加した106培地で培養した。細胞は37℃、CO5%、および飽和湿度で培養した。
【0160】
24時間のインキュベーション後、細胞を異なる濃度のペプチド(0.001mg/mL、0.005mg/mL、0.01mg/mL、0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mLおよび1mg/mL)で3連処理し、MTT評価を行った。ペプチドで24時間処理した後、培地を完全に除去し、補充培地中の5mg/mLのMTT溶液100μLを各ウェルに加え、細胞を37℃で3時間インキュベートした。MTTでインキュベートした後、各ウェルの培地を吸引し、形成されたホルマザン結晶を可溶化するためにDMSO150μLを加えた。結晶を完全に可溶化するため、プレートを5分間シェーカーにかけ、次いで、マイクロプレートリーダーMultiskan FCを用いて、培地中の生存細胞の数に直接比例する、各ウェルの545nmの吸光度を測定した。
【0161】
吸光度の値は、非処理細胞(対照)で得られたデータを用いて正規化し、図1Aおよび1Bに示した生存率%を得た。各条件は、3回の独立した実験(N=3)で3回実施した(n=3)。
【0162】
生存率が80%超であるペプチドの濃度は、有効性試験のために安全であると考えられる。逆に、生存率が80%未満の濃度は潜在的に毒性があると考えられ、有効性試験の目的には使用されない。
【0163】
得られた結果は、図1A(HEKa細胞における生存率)および図1B(HDFa細胞における生存率)に要約されている。前記図から直接導かれるように、0.001mg/mL~0.5mg/mLの試験ペプチドで処理した後のHEKa細胞における生存率は80%超であり;0.001mg/mL~1mg/mLの試験ペプチドで処理した後のHDFa細胞における生存率は80%超であり、これは本発明のペプチドの安全性を実証している。
【0164】
〔実施例3.ナトリウムチャネルの活性またはシグナル伝達の調節の分析〕
この実施例では、ペプチド配列番号1-NH、配列番号2-NHおよび配列番号3-NHを実施例1にしたがって調製した。
【0165】
チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞に安定的にトランスフェクションしたヒトNaV1.3を用い、QPatch48 HT(Sophion、デンマーク)を使用して電気生理学的にイオンチャネル活性を測定した。実験は3連で行い、10μMのペプチド濃度を用いた。陰性対照は、各々のペプチドについて別々に行った。陽性対照にはアミトリプチリンを用いた。
【0166】
この実施例で得られた結果は図2に要約されている。前記図から導かれるように、3個のペプチドは全てNaV1.3内向き電流の阻害を示し、その結果、負の電流(Amp)が少なかった。したがって、3個のペプチドは全て、ナトリウムチャネルNav1.3を遮断または調節する(活性またはシグナルを低下させる)ことができた。さらに、驚くべきことに、配列番号2-NHおよび配列番号3-NHは、増大した統計的に有意な効果を示すことができた(それぞれ、p=0.018およびp=0.039)。
【0167】
〔実施例4.ナトリウムチャネルの活性またはシグナル伝達の調節の分析〕
この実施例では、実施例1にしたがって、ペプチド配列番号2-NH、配列番号3-NH、配列番号4-NH、配列番号5-NHおよび配列番号6-NHを調製した。
【0168】
SHSY-5Y細胞を用い、QPatch48 HT(Sophion、デンマーク)を用いて電気生理学的にイオンチャネル活性を測定した。試験した試料は以下の通りであった:
陰性対照:0.05%(v/v)ウシ血清アルブミン
陽性対照:3nM、10nMおよび30nMの濃度のテトラドトキシン(TTX)
配列番号2-NH 0.005mg/mL、0.01mg/mLおよび0.05mg/mLの濃度
配列番号3-NH 0.005mg/mL、0.01mg/mLおよび0.05mg/mLの濃度
配列番号4-NH 0.005mg/mL、0.01mg/mLおよび0.05mg/mLの濃度
配列番号5-NH 0.005mg/mL、0.01mg/mLおよび0.05mg/mLの濃度
配列番号6-NH 0.005mg/mL、0.01mg/mLおよび0.05mg/mLの濃度。
【0169】
各試験用量適用期間の阻害率は、ビヒクル対照(薬物投与前)の終了時に測定されたカーソル値に対する平均カーソル値(ピーク電流)の減少として計算され、TTXの上乗せ添加で記録された最大阻害に対して正規化された。
【0170】
得られた結果は、(不活性化状態の)ナトリウムチャネルの阻害(または遮断)の割合を示す図3に要約されている。試験した全てのペプチドが、用量依存的にナトリウムチャネルを効果的に調節(活性またはシグナルの減少)したことがわかる。テストした2個の高濃度で最良の結果を得たペプチドは、配列番号4-NHであった。その一方で、試験した低濃度で最良の結果を得たペプチドは、配列番号5-NHであった。
【0171】
その結果、本発明のペプチドは、低濃度のTTXで達成されたのと同様の調節効果を示した(高濃度のTTXは、完全な遮断効果をもたらした)。
【0172】
〔実施例5.ノルアドレナリンレベルの分析〕
この実施例では、ペプチド配列番号4-NHおよび配列番号6-NHを、実施例1にしたがって調製した。
【0173】
この場合、分化したSHSY5Y細胞(ヒト神経細胞モデル)におけるノルアドレナリン(NA)レベルを測定した。この試験は、候補物質が神経伝達物質の放出を調節できるかどうかを測定するために用いられた。
【0174】
ヒトSH-SY5Y細胞を、細胞密度250,000個/ウェルで24ウェルプレートに3連で播種した。SH-SY5Yは、レチノイン酸で1週間神経細胞表現型に分化させた後、0.05mg/mLおよび0.1mg/mLの上記ペプチドで30分間処理した。
【0175】
その後、細胞を洗浄し、放出増強のために、まず100nMの12-0-テトラデカノイル-ホルボール-13-アセテート(TPA)で8分間処理し、さらに神経伝達物質の誘発放出を達成するために100mMのKClで、20mMのHEPES緩衝液でHBSS中、5分間処理した。最後に、細胞を溶解し、0.8mmのゲージ針で10回、ウェル上で直接ホモジナイズした。ホモジナイズした細胞懸濁液を4℃で15分間、最高速度で遠心した。上清を回収し、ヒトノルアドレナリンELISAキットを用いて、製造者の指示に従って酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により総ノルアドレナリンを定量するまで-80℃で保存した。各試料の総タンパク質含量は、データを正規化するために、Micro BCA Protein Assayキットを用いて定量した。
【0176】
各条件は、3個の独立した実験(N=3)で少なくとも3回実施し(n=3)、陽性対照(ペプチドを含まないが刺激を加えた試料)で得られたノルアドレナリンに関して、試料の総タンパク質に関して正規化し、陽性対照に関する割合を得た。
【0177】
得られた結果は、図4および5に要約されている。前記図から直接導かれるように、試験したペプチド(本発明のペプチドの代表または例として)は、ノルアドレナリンのレベルを低下させ(30%超の減少)、それゆえ、ボトックス様効果を提供した。したがって、この処理は、刺激され分化したSH-SY5Y細胞における神経伝達物質の放出を調節することを示し、これは、本発明のペプチドが抗シワ活性を提供することを実証している。
【0178】
〔実施例6.発現筋収縮関連遺伝子の分析〕
この実施例では、実施例1にしたがってペプチド配列番号4-NHを調製した。
【0179】
ペプチドのストック溶液を25mg/mLでミリQ水中に調製した。このストックを対応する補充培地でさらに希釈し、最終作用濃度0.01mg/mLおよび0.005mg/mLを得た。未処理細胞を陰性対照試料として用いた。
【0180】
発現が測定された関連遺伝子は以下の通りであった:SCN1B(ナトリウム電位依存性チャネルβサブユニット1)、SCN4A(ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット4)、SCN3A(ナトリウム電位依存性チャネルαサブユニット3)、CALM3(カルモジュリン3)、およびRAPSN(シナプスの受容体関連タンパク質)。各々の遺伝子に使用したプライマーは、市販のTaqMan Gene Expression Assayプローブであった。実験は筋細胞を用いてin vitroで行われ、2種類の濃度のペプチド(0.01mg/mLおよび0.005mg/mL)を24時間で試験した。
【0181】
簡単に説明すると、ヒト骨格筋筋芽細胞を12ウェルプレートに1×10細胞/ウェルの密度で播種し、播種した筋芽細胞が80%~90%のコンフルエントに達するまで、48時間~72時間、標準培養条件(1%抗生物質/抗真菌剤添加SKM-M培地;37℃、相対湿度95%、CO5%)で維持した。その後、筋管分化(筋細胞への分化)を誘導するため、増殖培地をSKM-D培地に交換し、2~3日ごとに新しい培地を加えた。分化工程の開始から6~7日後、筋細胞を0.01mg/mLまたは0.005mg/mLの上記ペプチドでさらに24時間処理した。未処理細胞は基底対照として用いた。最後に細胞を溶解し、Qiagen RNeasy Miniキットを用いて、製造者の指示にしたがってRNA抽出を行った。精製したRNAを、増幅のための鋳型となる逆転写によって対応するcDNAを生成するために使用した。RT-qPCRは、StepOne plus Real-Time PCR装置を用いて、上記に特定したTaqManアッセイプローブのパネルおよび2x gene expression Master Mixを用いて行った。増幅は以下の40サイクルを含んでいた:95℃で15秒(変性)、および60℃で1分(アニーリングおよび伸長)。
【0182】
得られたデータは、ΔΔCt法を用いて分析した。これは、未処理の基底試料と比較した処理試料における標的遺伝子の発現値を倍数変化として提供する。両試料とも、ハウスキーピング遺伝子GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ)の相対発現で正規化した。
【0183】
分析のステップは以下を含んでいた:
1.各条件の平均Ctを計算する
2.ΔCT試験試料およびΔCT校正試料を計算する。
【0184】
3.ΔΔCTを計算する:ΔΔCT=ΔCT試験試料-ΔCT校正試料
4.2-ΔΔCTによって比率を求める。
【0185】
得られた結果は、図6および図7に要約されている。これは、ペプチド配列番号4-NH(本発明のペプチドの一例として)は、試験した関連遺伝子の筋細胞における発現を調節することができ、したがって、このペプチドは、筋細胞におけるナトリウムチャネルおよび筋収縮関連遺伝子の発現を調節(ダウンレギュレート)することができることを示している。
【0186】
〔実施例7.エラスチンの合成の分析〕
この実施例では、実施例1にしたがってペプチド配列番号4-NHを調製した。
【0187】
ペプチドのストック溶液を25mg/mLで水中に調製した。このストックをさらに希釈し、完全培地(2%LSGS添加106培地)中で0.005mg/mL、0.01mg/mLまたは0.015mg/mLの最終作用濃度を得た。未処理細胞を基底状態として使用した。
【0188】
この研究のために、HDFa細胞を12ウェルプレートに120,000細胞/ウェルの密度で播種し、標準培養条件(106培地+2%LSGS;37℃、相対湿度95%、CO5%)で24時間維持した。その後、線維芽細胞を0.005mg/mL、0.01mg/mLまたは0.015mg/mLの上述のペプチドで48時間処理した。処理後、Fastin Elastin Assay Kitを用いて、製造者の指示にしたがってエラスチンを定量するために細胞を採取した。各条件は、3個の独立した実験(N=3)で少なくとも3回行った(n=3)。
【0189】
得られた結果は図8に要約されている。0.01mg/mLおよび0.015mg/mLの本発明のペプチドで処理したHDFaは、未処理の試料と比較して、エラスチンレベルの増加を示した。これらの結果は、本発明のペプチドが皮膚の弾力性を増加させるだけでなく、皮膚の構造的完全性を改善し、皮膚の緩みおよび/または弛みを改善(予防、治療または軽減)する役割を果たす可能性を示唆している。さらに、エラスチンの合成または産生の増加はまた、本発明のペプチドが皮膚のハリおよび創傷治癒能力を改善できることも実証している。
【0190】
〔実施例8.プロコラーゲンIα1放出の分析〕
この実施例では、実施例1にしたがってペプチド配列番号4-NHを調製した。
【0191】
ペプチドのストック溶液を水中で25mg/mLに調製した。このストックをさらに希釈し、完全培地(2%LSGS添加106培地)中で0.01mg/mL、0.015mg/mLまたは0.05mg/mLの最終作業濃度を得た。未処理細胞を基底状態として用いた。
【0192】
この研究では、HDFa細胞を100,000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種し、標準培養条件(2%LSGS添加106培地;37℃、相対湿度95%、CO5%)で24時間維持した。
【0193】
24時間後、細胞を上述の本発明のペプチド(0.01mg/mL、0.015mg/mLおよび0.05mg/mL)で48時間処理した。処理後、上清を回収し、細胞残屑を除去するために遠心分離し、製造者の指示にしたがってヒトプロコラーゲンIα1 DuoSet ELISAキットを用いてプロコラーゲンIα1の定量に使用するまで-80℃で保存した。各条件は、独立した3個の実験(N=3)で少なくとも3回実施した(n=3)。
【0194】
得られた結果は図9に要約されている。前記図から直接導かれるように、プロコラーゲンIα1タンパク質の放出は、全ての試験濃度で、用量依存的に増加し、最高試験濃度(0.05mg/mL)では53%まで有意に増加した。これらの結果は、本発明のペプチドがI型コラーゲンの放出をもたらすことを実証している。
【0195】
〔実施例9.ヒアルロン酸の合成の分析。〕
この実施例では、実施例1にしたがってペプチド配列番号4-NHを調製した。
【0196】
この場合、この実験の目的は、ヒト皮膚線維芽細胞におけるヒアルロン酸(HA)合成または産生を増加させる本発明のペプチドの能力をin vitroで評価することであった。この評価は、細胞をペプチド(以下に記す異なる濃度)で48時間処理した後のHA量を測定することによって行った。
【0197】
簡単に説明する:
実験群は以下の通りであった:
未処理細胞培養(陰性対照)。
【0198】
本発明のペプチドで処理した細胞(0.005mg/mL、0.01mg/mLまたは0.05mg/mL)。
【0199】
48時間処理を行った。処理は3連で、2個の異なる実験セッションで行った。
【0200】
この研究で用いた実験モデルは、ウシ胎児血清10%および抗生物質1%を添加したMEM中、37℃、CO5%で培養したヒト線維芽細胞(SF-TY JCRB)であった。
【0201】
細胞を96ウェルプレートに1×10個/ウェルで播種し、標準培養条件(37℃、相対湿度95%、CO5%)で24時間維持した後、処理を行った。
【0202】
実験期間の終わりに、ELISA法によってヒアルロン酸合成の測定を行った。この目的には市販のキットを用いた。この検査キットは試料中のHAを定量するために2部位サンドイッチELISAを採用した。簡単に説明すると、HAに特異的な抗体がマイクロプレートにプレコートされた;標準品および試料がウェルにピペッティングされ、存在するHAは固定化抗体に結合した;未結合の物質を除去した後、HAに特異的なビオチン結合抗体がウェルに加えられた;洗浄後、ストレプトアビジン結合ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)をウェルに加えた;未結合のアビジン-酵素試薬を除去するための洗浄後、基質溶液をウェルに加え、最初のステップで結合したHAの量に比例して発色させた。発色を止め、色の強さを測定した。既知濃度の標準ヒアルロン酸の検量線を用いて試験試料の定量を行った。
【0203】
得られた結果を表1に要約した。結果は細胞培養培地および細胞培養液中のHA含量の%として表されている。これは、陰性対照中のHA含量を100%とし、残りの試料と適切な比較を行うことによって計算される。陰性対照と試料と間のHA含量の変化率は、ヒアルロン酸の合成または産生を増加させる本発明の試験ペプチドの有効性を示す。
【0204】
【表1】
【0205】
表1から容易に導かれるように、本発明のペプチド(配列番号4-NHで例示される)はHAの合成または産生の増加をもたらす。
【0206】
〔実施例10.ECM関連遺伝子の発現の分析〕
この実施例では、実施例1にしたがってペプチド配列番号4-NHを調製した。
【0207】
ペプチドのストック溶液を25mg/mLのミリQ水で調製した。このストックを対応する補充培地でさらに希釈し、0.05mg/mL、0.01mg/mLおよび0.005mg/mLの最終作用濃度を得た。未処理細胞を陰性対照試料として用いた。
【0208】
発現が測定された関連遺伝子は以下の通りであった:MMP1(マトリックスメタロペプチダーゼ1)、HYAL1(ヒアルロニダーゼ1)、TIMP2(TIMPメタロペプチダーゼインヒビター2)、HAS1(ヒアルロン酸合成酵素1)、FBLN5(フィブリン5)、LOXL1(リシルオキシダーゼ様1)、COL4A1(IV型コラーゲンα1鎖)、COL3A1(III型コラーゲンα1鎖)、およびCOL7A1(VII型コラーゲンα1鎖)。各遺伝子のプライマーには、市販のTaqMan Gene Expression Assayプローブを使用した。
【0209】
簡単に説明すると、HDFa細胞を12ウェルプレートに1.5×10細胞/ウェルの密度で播種し、標準培養条件(1%のLSGSを補充した106培地;37℃、相対湿度95%、CO5%)で24時間維持した。その後、細胞を0.005mg/mL、0.01mg/mL、または0.05mg/mLの上述のペプチドでさらに6時間または24時間処理した。
【0210】
最後に細胞を溶解し、Qiagen RNeasy Miniキットを用いて、製造者の指示にしたがってRNA抽出を行った。精製されたRNAを、増幅のための鋳型となる逆転写によって対応するcDNAを生成するために使用した。RT-qPCRは、StepOne plus Real-Time PCR装置を用いて、上記に特定したTaqManアッセイプローブのパネルおよび2x gene expression Master Mixを用いて行った。増幅は以下の40サイクルを含んでいた:95℃で15秒(変性)および60℃で1分(アニーリングおよび伸長)。
【0211】
得られたデータは、ΔΔCt法を用いて分析した。これは、未処理の基底試料と比較した処理試料における標的遺伝子の発現値を倍数変化として提供する。両試料とも、ハウスキーピング遺伝子GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ)の相対発現で正規化した。
【0212】
分析のステップは以下を含んでいた:
1.各条件の平均Ctを計算する
2.ΔCT試験試料およびΔCT校正試料を計算する
3.ΔΔCTを計算する:ΔΔCT=ΔCT試験試料-ΔCT校正試料
4.2-ΔΔCTによって比率を求める。
【0213】
得られた結果は、図10に要約されている。これは、ペプチド配列番号4-NH(本発明のペプチドの例として)が、試験したECMの関連遺伝子の線維芽細胞における発現を調節できることを示している:0.01mg/mLのペプチド、MMP1のダウンレギュレーション、およびCOL3A1ならびにCOL4A1のアップレギュレーションで24時間;0.05mg/mLのペプチド、TIMP2、FBLN5、LOXL1およびCOL7A1のアップレギュレーションで24時間;0.005mg/mLのペプチド、HYAL1のダウンレギュレーションで6時間;0.05mg/mLのペプチド、HAS1のアップレギュレーションで6時間。MMP1およびHYAL1はそれぞれECMおよびHAの分解に関連する遺伝子である。TIMP2、HAS1、FBLN5、LOXL1、COL4A1、COL3A1およびCOL7A1はECMの合成および効果的な維持に関係する遺伝子である。したがって、本発明のペプチド(配列番号4-NHで例示される)を用いて得られた発現プロフィールは、ECMの維持および合成または増加に有用であることを実証している。
【0214】
したがって、上記に含まれる実施例で実証されたように、本発明のペプチドは効果的に製造され、本明細書を通して言及された活性を示した:
電位依存性ナトリウムチャネルの活性またはシグナル伝達を調節または低下させる
電位依存性ナトリウムチャネルの発現を調節または減少させる
ノルアドレナリンのレベルの低下させる(したがって、ノルアドレナリンの放出の抑制)
エラスチンの産生を増加させる
プロコラーゲンIα1の放出を増加させる
ヒアルロン酸レベルを増加させる
ECM関連遺伝子の好ましい制御。
【0215】
したがって、本発明のペプチドは、シワ(年代シワおよび表情ジワの両方)、荒れ、皮膚の緩みまたは弛みを予防、治療または軽減することができ;ならびに、皮膚のハリおよび/または弾力性を改善することができ、当技術分野に存在する上述の技術的課題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0216】
図1A図1は、以下に含まれる実施例2におけるペプチド配列番号4-NHについて得られた細胞生存率の結果を示す。より具体的には、図1Aは、HEKa細胞における生存率を示し、図1BはHDFa細胞における生存率を示す。両図において、Y軸は陰性対照(未処理細胞)の生存率を100%として、細胞の生存率の割合を指す。両図において、x軸の左から右への列は、陰性対照(未処理細胞);および0.001mg/mL、0.005mg/mL、0.01mg/mL、0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mLまたは1mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞を指す。
図1B図1Aと同じ。
図2図2は、実施例3で得られた結果を示す。すなわち、試験した試料の経時電流(応答曲線下面積)、ひいては電位依存性ナトリウムチャネル(NaV1.3)の活性である。Y軸は内向き電流(Amp)を指す。x軸は試験した異なる実験群を指し、各列の組について、左側が陰性対照を指し、右側が処理した試料を指す。x軸において、左から右への列の組は、以下の実験処理または群を指す:配列番号1-NH、配列番号2-NH、配列番号3-NHおよびアミトリプチリン。
図3図3は、実施例4で得られた結果を示す。この図は、電位依存性ナトリウムチャネルの阻害率を示している。Y軸は陰性対照(0%)に対する電位依存性ナトリウムチャネルの阻害率を表し、X軸は試験した異なるペプチドのM単位の濃度の対数を指す。三角の線は配列番号2-NHであり;四角の線は配列番号3-NHであり;十字の線は配列番号4-NHであり;丸の線は配列番号5-NHであり;ひし形の線は配列番号6-NHである。
図4図4は、実施例5において、配列番号6-NHで処理した場合のノルアドレナリンのレベルについて得られた結果を示す。y軸は陽性対照(未処理の脱分極細胞、100%とする)に対するノルアドレナリンの割合を示す。x軸は異なる処理群を示し、左から右へバーで示す:基底状態;陽性対照(処理なしの脱分極細胞);0.05mg/mLのペプチド配列番号6-NHで処理した脱分極細胞;および0.1mg/mLのペプチド配列番号6-NHで処理した脱分極細胞。
図5図5は、配列番号4-NHで処理した実施例5におけるノルアドレナリンのレベルについて得られた結果を示す。y軸は陽性対照(未処理の脱分極細胞、100%とする)に対するノルアドレナリンの割合を示す。x軸は異なる処理群を示し、左から右へバーで示す:基底状態;陽性対照(処理なしの脱分極細胞);0.05mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した脱分極細胞;および0.1mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した脱分極細胞。
図6図6は、0.01mg/mLの濃度のペプチド配列番号4-NHで24時間処理した場合の、実施例6で得られた遺伝子発現結果を示す。各バーは上から順に1個の遺伝子を示す:SCN1B、SCN4A、SCN3AおよびCALM3。左(すなわち、負の値)に向かって伸びるバーは、遺伝子のダウンレギュレーションを示す。
図7図7は、0.005mg/mLの濃度のペプチド配列番号4-NHで24時間処理した場合の、実施例6で得られた遺伝子発現結果を示す。各バーは上から順に1個の遺伝子を示す:RAPSN、SCN3AおよびCALM3。左(すなわち、負の値)に向かって伸びるバーは、遺伝子のダウンレギュレーションを示す。
図8図8は、0.005mg/mL、0.01mg/mLまたは0.015mg/mLの濃度のペプチド配列番号4-NHでHDFa細胞を48時間処理した場合の、実施例7で得られたエラスチンの産生または合成の結果を示す。エラスチンの産生または合成は、100%として確立された基底状態(未処理細胞)に対する割合として表される。Y軸は基底状態に対するエラスチンの割合を示す。x軸は異なる処理群を示し、左から右へバーで示す:基底状態(未処理細胞);0.005mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞;0.01mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞;および、0.015mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞。
図9図9は、0.01mg/mL、0.015mg/mLまたは0.05mg/mLのペプチド配列番号4-NHでHDFa細胞を48時間処理した場合の、実施例8におけるプロコラーゲンIα1の放出について得られた結果を示す。プロコラーゲンIα1の放出は、100%として確立された基底状態(未処理細胞)に対する割合として表される。y軸は、基底状態に対するプロコラーゲンIα1の放出の割合を示す。x軸は異なる処理群を示し、左から右へバーで示す:基底状態(未処理細胞);0.01mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞;0.015mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞;および0.05mg/mLのペプチド配列番号4-NHで処理した細胞。
図10図10は、HDFa細胞を、ペプチド配列番号4-NHを用いて、0.01mg/mLのペプチド(MMP1、COL3A1およびCOL4A1)で24時間、0.05mg/mLのペプチド(TIMP2、FBLN5、LOXL1およびCOL7A1)で24時間、0.005mg/mLのペプチド(HYAL1)で6時間、および0.05mg/mLのペプチド(HAS1)で6時間処理した場合の、実施例10において得られた遺伝子発現結果を示す。各バーは上から順に1個の遺伝子を示す:MMP1、HYAL1、TIMP2、HAS1、FBLN5、LOXL1、COL4A1、COL3A1およびCOL7A1。左(すなわち、負の値)に向かって伸びるバーは、遺伝子のダウンレギュレーションを示す。右(すなわち、正の値)に向かって伸びるバーは、遺伝子のアップレギュレーションを示す。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2025503119000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のナトリウムチャネルの活性および/またはシグナルを低下させることができる5個~8個のアミノ酸のペプチド;その許容される異性体、塩、溶媒和物および/またはそれらの混合物、ここで、前記ペプチドは式(I)の配列を含み:
-AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-R
(R-配列番号7-R
ここで、前記ペプチドは以下から選択され:
-Arg-Trp-Gln-Lys-Asn-Gln-R
-Lys-Arg-Arg-Tyr-Tyr-Cys-R ;または
-Lys-His-Arg-Ser-Tyr-R
-Lys-Asp-Arg-Val-Tyr-R
-Ile-Glu-Pro-Tyr-Tyr-Val-R ;または
-Lys-Lys-His-Phe-Trp-Ala-R
は、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルおよびR-CO-から選択され、ここで、Rは、置換もしくは非置換のC-C24アルキルラジカル、置換もしくは非置換のC-C24アルケニル、置換もしくは非置換のC-C24アルキニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキニル、置換もしくは非置換のC-C30アリール、置換もしくは非置換のC-C24アラルキル、3員~10員の置換もしくは非置換のヘテロシクリル環、ならびに、2個~24個の炭素原子および1個~3個の炭素以外の原子および1個~6個の炭素原子のアルキル鎖の置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択され;および
は、H、-NR-、-ORおよび-SRから選択され、ここで、RおよびRは、独立して、H、置換もしくは非置換の非環式脂肪族基、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアラルキルから選択され;
あるいは、RおよびRは存在せず、AA1は前記ペプチドの最後のアミノ酸に直接結合している、少なくとも1種類のナトリウムチャネルの活性および/またはシグナルを低下させることができる5個~8個のアミノ酸のペプチド;その許容される異性体、塩、溶媒和物および/またはそれらの混合物。
【請求項2】
前記ペプチドは、少なくとも1種類のナトリウムチャネルの発現をダウンレギュレートすることが可能であり、および/または、少なくとも1個の神経伝達物質のレベルを低下させることが可能であり、および/または、ECMを維持および/または合成することが可能であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ナトリウムチャネルは電位依存性ナトリウムチャネルである、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記電位依存性ナトリウムチャネルは、Nav1.3および/またはNav1.4である、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
前記神経伝達物質は、ノルアドレナリンである、請求項2に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ECMは、コラーゲンI、エラスチン、ヒアルロン酸またはそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載のペプチド。
【請求項7】
はHであり、および/または、RはNHであることを特徴とする、請求項に記載のペプチド。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のペプチドを含む、組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載のペプチドのそれを必要とする対象における、化粧品としての使用。
【請求項10】
請求項8に記載の組成物のそれを必要とする対象における、化粧品としての使用。
【請求項11】
前記化粧品としての使用は、皮膚の老化の徴候を軽減し、予防し、および/または除去することであることを特徴とする、請求項に記載の化粧品としての使用。
【請求項12】
前記化粧品としての使用は、皮膚の老化の徴候を軽減し、予防し、および/または除去することであることを特徴とする、請求項10に記載の化粧品としての使用。
【請求項13】
前記皮膚の老化の徴候は、シワであることを特徴とする、請求項11または12に記載の化粧品としての使用。
【国際調査報告】