(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】車両空力特性
(51)【国際特許分類】
B62D 35/02 20060101AFI20250123BHJP
B62D 35/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B62D35/02
B62D35/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543919
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2023051690
(87)【国際公開番号】W WO2023144144
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522299632
【氏名又は名称】ゴードン・マレー・オートモーティブ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Gordon Murray Automotive Limited
【住所又は居所原語表記】Wharfside, Broadford Park, Shalford, Surrey GU4 8EP United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】マレー, イアン ゴードン
(57)【要約】
車両下部のためのディフューザー要素は、縦断面において、前方から後方へ順に、滑らかにかつ単調に立ち上がる第1パネル、第2パネル、及び第1パネルと第2パネルとの間の間隙を備え、ここにおいて、間隙に隣接する第2パネルの縁部は、実質的に平坦な平面部分を備え、その平面部分は、間隙の前方の第1パネルの平面からオフセットされ、かつ下方に位置する。ディフューザー内のこのタイプの間隙は、ディフューザーを通過する気流から境界層を抽気する働きをし、したがって、ディフューザーの有効性を高め、その結果発生するダウンフォースを増大させる。間隙は、好ましくはディフューザーの前半分に位置し、車両後部の出口につながるダクトへの入口を形成し得る。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に空力要素を備える車両であって、前方から後方へ順に;
滑らかにかつ単調に立ち上がる第1パネル、及び、
第2パネル、及び、
前記第1パネルと前記第2パネルとの間の間隙を備え、
ここにおいて、前記間隙に隣接する前記第2パネルの縁部は、実質的に平坦な平面部分を備え、その平面部分は、前記間隙の前方の前記第1パネルに占有される平面からオフセットされ、かつ下方に位置する、車両。
【請求項2】
前記間隙は、ダクトへの入口を形成する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記ダクトは、前記車両後部に形成された出口に滑らかに通じる、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記ダクトは、気流を妨げることなく前記出口に滑らかに通じる、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記ダクトの断面積が、出口までその長さに沿って単調に増加する、請求項2から請求項4のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記第2パネルは、前記間隙に隣接する前記実質的に平坦な平面部分と、その後方に滑らかでかつ単調な立ち上がり部分とを備える、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記第1パネルの前縁部と前記第2パネルの前縁部との間の水平距離が、前記第1パネルの前縁部と前記車両の後縁部との間の水平距離の1/10から1/2の間である、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記入口における前記間隙の幅が、前記第1パネルに対して垂直に測定して10から50mmまでの間である、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項9】
前記下部は、前記第1及び第2パネルの下に突出する中央スパインの両側に、第1及び第2のそのような空力要素を画定するように成形される、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項10】
それぞれが外側に延びて各々の後輪に接続される一対の駆動軸を更に備え、ここにおいて、前記ダクトは前記駆動軸の上方を通過し、前記第2パネルは前記駆動軸の下方に配置される、請求項2から請求項5のうちいずれか1項に従属する請求項9に記載の車両。
【請求項11】
複数のサスペンションアームを更に備え、そのうちの少なくとも2つは、前記中央スパインの両側から外側に延在し、各々の後輪を支持し、ここにおいて、前記空力要素の各々の前記第2パネルは、少なくとも2つの前記サスペンションアームの上方に位置する、請求項9又は請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記第1及び第2の空力要素は、それぞれ、前記第1及び第2パネルの下に突出する直立壁部によって、各々の外側側面において境界付けられる、請求項9から請求項11のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項13】
前記第1及び第2パネルは、前記第1及び第2パネルの下に突出する直立壁部によって、少なくとも1つの側面において境界付けられる、請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項14】
前後輪によって支持される外装体を有する、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項15】
前記間隙は、前記後輪の中心よりも前方に位置する、請求項14に記載の車両。
【請求項16】
空力要素の地面からの間隔が最小となる点から延在し、滑らかにかつ単調に立ち上がる第1パネル、
排気口、
車両後部に向かって延在し、排気口に隣接し、実質的に平坦な部分を有する第2パネルを備え、
ここにおいて、排気口は、第1パネルに滑らかに接する上面と、第2パネルに鋭角で接する下面との間に画定される、ディフューザー要素。
【請求項17】
前記地面からの間隔が最小となる点と、下部内面と前記第2パネルの接合部との間の水平距離は、前記地面からの間隔が最小となる点と車両後部との間の水平距離の1/10から1/2までの間である、請求項16に記載のディフューザー要素。
【請求項18】
車両下部のためのディフューザー要素は、縦断面において、前方から後方へ順に:
滑らかにかつ単調に立ち上がる第1パネル、
第2パネル、及び、
第1パネルと第2パネルとの間の間隙を備え、
ここにおいて、間隙に隣接する第2パネルの縁部は実質的に平坦な平面部分を備え、その平面部分は、間隙の前方の第1パネルの平面からオフセットされ、かつ下方に位置する、ディフューザー要素。
【請求項19】
前記第1パネルの水平方向の長さが、前記ディフューザー要素全体の水平方向の長さの1/10から1/2までの間である、請求項18に記載のディフューザー要素。
【請求項20】
前記第2パネルは、前記間隙に隣接する前記実質的に平坦な平面部分と、その後方に滑らかなかつ単調な立ち上がり部分とを備える、請求項16から請求項18のうちいずれか1項に記載のディフューザー要素。
【請求項21】
請求項16から請求項20のうちいずれか1項に記載のディフューザー要素、及び
ディフューザー要素の排気口から車両後部に形成された出口に滑らかに通じるダクト、を有する車両用ディフューザー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両後部におけるディフューザー内及びその周囲の車両の空力特性に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の空力特性は、車両の性能及びハンドリングに寄与するように、車両上部及び周囲の空気の流れを制御し、方向付けることに関する。主な目的は、車両が受ける空気抵抗を低減し、いくつかの実装形態において、ダウンフォースを生成することである。他の考慮事項は、抗力及びダウンフォースの特性が、走行状態の範囲にわたって確実に安定にすることで、車両のハンドリングが予測可能かつ安全であることである。
【0003】
一般に、車両の空力特性は、スプリッター、スポイラー、ウィング、ディフューザーなどの、車体に取り付けられる、又は車体の一部を構成する空力要素によって補助され、及び方向付けられながら、空気が流れる車体の形状によって制御される。スプリッターは、車両前方下部に配置され、車両に到来する空気を方向付ける;スポイラー及びウィングは、典型的には車両の上方後部に配置され、走行時に車両から排出する空気を制御して、ダウンフォースを生成し、及び/又は車両の後方に形成される渦を調整する。
【0004】
ディフューザーは、ここでは、車両下方後部の形状をした部分のことであり、車両下部の高速気流と、それよりはるかに遅い車両後方の周囲大気の自由気流との間の移行を促進することによって、車両の空力特性を改善する。これは、車体下部の気流が減速して体積が拡大するための空間を提供することにより、過度な流れの分離及び抗力を引き起こさないようにするものである。車両の下を通過する空気は、ベルヌーイの定理により、車両と地面との間の空間に漏斗状に取り入れられるにつれて加速される;これは、結果として生じる低い圧力が、ダウンフォース効果を生じさせるという点で有益であるが、高速空気が単に車両の後ろのより低速の空気に放出される場合、これはその領域における乱流を助長し、車両が受ける抗力を増大させる。したがって、ディフューザーは車体下部の空間をより緩やかに開口し、高速の空気が減速する空間及び時間を与える。
【0005】
ディフューザーは、車両の形状に合わせて形成され、画定された車両の一体部であってもよく、車体に取り付けられた1つ以上のパネルによって形成されていてもよく、又はその2つの組み合わせであってもよい。
【0006】
フォーミュラ1のいくつかのチームは、車に搭載できる空力要素の量を制限することを目的とした競技規則の変更に応じて、2009年シーズンに「ダブルディフューザー」を開発した。ロードカーとは異なり、フォーミュラ1カーは、その下部に2つの平坦な水平面-シャーシの最も低い部分である「基準面」、及び、基準面のいずれかの側であってわずかに高い位置にある「ステップ面」-があり、それらの間隙を埋める垂直遷移面を有するのが特徴である。2009年の規制では、基準面とステップ面の両方が平坦で連続である必要があったが、遷移面に関しては言及されなかった。いくつかのチームは、ステップ面の下を流れていた空気が基準面上部の容量に横方向に逃げて流れ込むことを許容し、メインディフューザーの上部の事実上の第2のディフューザーに向けて流れ込むアパーチャを遷移面に形成した、したがって「ダブルディフューザー」という用語が用いられる。
【0007】
ディフューザー(F1の「ダブルディフューザー」を含む)の大多数は、その形状が決定され、ディフューザーパネルが車両下部に固定されるか又は形成され、更なる介入がないという点で受動的な装置である。GB2269142及びWO2021/028234は、ディフューザーから空気を選択的に引き出すことができる吸込ファンによって、車両の下の気流を能動的に制御する構成を提案している;GB2269142では、これは、バランスのために車両の空力圧力中心を調整するためであり、WO2021/028234では、これは、境界層を制御することでダウンフォースと抗力のバランスを調整するためである。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、下部に空力要素(ディフューザーなど)を備える車両であって、前方から後方へ順に、滑らかにかつ単調に立ち上がる第1パネル、第2パネル、及び第1パネルと第2パネルの間隙を備える車両を提供し、ここにおいて、間隙に隣接する第2パネルの縁部は、実質的に平坦な平面部分を備え、その平面部分は、間隙の前方の第1パネルに占有される平面からオフセットされ、かつ下方に位置する。
【0009】
ディフューザー内のこのタイプの間隙は、ディフューザーを通過する気流から境界層を抽気する働きをし、したがって、ディフューザーの有効性を高め、その結果発生するダウンフォースを増大させる。
【0010】
間隙はダクトへの入口を形成することができ、これは、理想的にはダクト内の気流を邪魔することなく、車両後部に形成された出口へと滑らかに通じる。このようにして、車両が空気中を通過するときに車両後方に形成される低圧伴流又は「ベースサクション」は、ダクトを通して空気を引き込む吸引効果を提供し、境界層の除去を促進する。この場合、ダクトの断面積は、出口までその長さに沿って単調に増加することが好ましい。
【0011】
しかしながら、ダクトは厳密には必要ではなく、問題となる車両の特定の特性に応じて、ダクト及びそれに関連する重量を省いた方がよい場合がある。我々の研究は、間隙を介して抽気された空気をダクトを通して車両後部に排気することが、ディフューザーの有効性をさらに高めるだけでなく、重量の低減にも有益であることを示している。したがって、いずれを選択するかは、設計者がそれらの相対的な利点を考慮して選択するであろう。
【0012】
間隙に隣接する実質的に平坦な平面部分の後部に近接する第2パネルの部分は、側面から見て理想的には滑らかにかつ単調に見て立ち上がる。
【0013】
間隙は、好ましくはディフューザーの前半分、典型的には後輪の中心より前方に位置する。具体的には、第1パネルの前縁部と第2パネルの前縁部との間の水平距離が、第1パネルの前縁部と車両の後縁部との間の水平距離の1/10から1/2までの間であることが好ましい。
【0014】
間隙の適切な幅は、第1パネルに対して垂直に測定して、10から50mmまでの間である。
【0015】
ディフューザーを収容するための高さを追加で提供するため、車両下部は、第1及び第2パネルの下に突出する中央スパインの両側に、第1及び第2のそのような空力要素を画定するように成形され得る。そして、中央スパインは、車両のドライブライン(駆動系)を収容することができる。2つの駆動シャフトはそれぞれ、各々の後輪まで外向きに延在することができる。このような構成では、ダクトはドライブシャフトの上方を通過し、第2パネルはドライブシャフトの下方に配置されることが好都合である。更に、リアサスペンションアームの少なくとも2つは中央スパインの両側から外向きに延在して各々の後輪を支持することができ、空力要素である各々の第2パネルは、それらのサスペンションアームの上に配置される。
【0016】
その場合、第1及び第2の空力要素はそれぞれ、理想的には各々の外側側面において、第1及び第2パネルの下に突出する直立壁部によって境界付けられ、したがって、空気が流れるためのチャネルを車両下部に画定する。これは、第1及び第2パネルが、第1及び第2パネルの下方に突出する直立壁部によって、少なくとも1つの側面において境界付けられることを意味する。車両が中央スパインを有するように設計されている場合、それはチャネルを定義するのを助けることができる。
【0017】
本発明はまた、縦断面において、前方から後方へ順に、滑らかにかつ単調に立ち上がる第1パネル、第2パネル、及び第1パネルと第2パネルの間隙を備える、車両下部のディフューザー要素に関し、ここにおいて、間隙に隣接する第2パネルの縁部は、実質的に平坦な平面部分を備え、その平面部分は、間隙の前方の第1パネルの平面からオフセットされ、かつ下方に位置する。
【0018】
あるいは、ディフューザーは、前方から後方へ順に、空力要素の地面からの間隔が最小となる点から延在して滑らかにかつ単調に立ち上がる第1パネル、排気口、及び車両後部に向かって延在して排気口に隣接し、実質的に平坦な部分を有する第2パネルを備えるものと定義でき、ここにおいて、排気口は、第1パネルに滑らかに接する上面と、第2パネルに鋭角で接する下面との間に画定される。
【0019】
いずれかの定義によるディフューザーの他の態様は、上述の通りである。例えば、地面からの間隔が最小となる点から下部内面と第2パネルとの接合部までの間の水平距離は、地面からの間隔が最小となる点と、車両後部との間の水平距離の1/10から1/2までの間である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、例示的に説明する。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態における、車両の関連部分を通る垂直断面(
図1のII-II上)を示す。
【
図3】
図3は、第1の実施形態における、車両の下及び中を通る気流パターンを示す。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態における、車両の下及び中を通る気流パターンを示す。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施形態における、車両の関連部分を通る垂直断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明による車両の下部を示し、この例ではパフォーマンスカー10である。車体下部のパネル12は、車両のシャーシに接続されたサスペンションアーム18に支持された前後の車輪14、16を収容するために、それぞれの角部に向かって凹部を有する。
【0022】
車両10の前部20では、グラウンドエフェクトインレット22が床下に空気を導く。一対のディフューザー構造24、26は、車両後部に向かって、リアサスペンションアーム18を支持するために必要なシャーシ要素を収容する中央スパイン28の両側に設けられている。
ディフューザー構造24、26は、車体下部のパネル12の形状によって画定される;
図1に示されるように、これは単一のパネルであるが、実際には必要な形状を全体に画定するいくつかのより小さいパネルセクションから構成される。
【0023】
したがって、車両10の下を通過する空気は、グラウンドエフェクトインレット22によって、ディフューザー構造24、26のすぐ前の低点30に向かって後部に導かれ、ベルヌーイの定理に従って、車両の下に低圧領域を作り出す。これは、従来の方法で車両10に更なるダウンフォースを作り出す。これはディフューザー構造24、26によって補助され、車両10と地面との間に画定されたこの(効果的な)ベンチュリ構造を通過する高速の空気が、車両後方の空気と混合する前に減速されることを可能にする。
【0024】
各ディフューザー構造24、26は、上側パネル構造32を備え、このパネル構造32は、車両10の後部34に向かって概ね立ち上がり、下側リアサスペンションアーム18の上を水平に通過し、その後、車の後部に向かって再び立ち上がる。空気流路は、中央スパイン28によって提供される実質的に垂直な壁によって内側が境界付けられ、実質的に垂直な壁部36によって外側が境界付けられる。アパーチャ(不可視)は、スパイン28及び壁部36に設けられて、サスペンションアーム18がそれらを通過可能となっており、アーム18が荷重下で関節運動するのを可能にするため十分に大きい。
【0025】
開口部38は、上部パネル構造32内であって各ディフューザー構造24、26の途中に、サスペンションアームを通る水平部分のすぐ前方に設けられている。したがって、これは後輪16の中心線の前方であり、後部サスペンションアーム18の前方であるが、後輪16の最前部より後方である。それは、より一般的にはディフューザー構造24、26の前半分内にある。正しい気流パターンを形成するために、ディフューザーの一部が開口部38の前方にあるべきであり、したがって、ディフューザーの長さの少なくとも10分の1が開口部38の前方にあることが好ましい。
【0026】
図2は
図1の線II-IIに沿った断面を示し、ディフューザー構造24のうちの1つの形状を示す。ディフューザー24の上面を画定する上部パネル構造32は、ディフューザー24の前部に向かって、開口部32の前方にある第1上部パネル40と、開口部32から車両10の後部34まで延在する第2上部パネル42とを備える。開口部32は、第1上部パネル40上を流れる空気からダクト44内に向けて境界層を抽気するように設計されている。ダクト44は緩やかに滑らかに立ち上がり、駆動軸46を通って後輪16(図示せず)に至り、次いで、グリルで覆われた車両10の後部34上の出口48に至る。ダクト44は、それに沿った気流を緩和するため緩やかに増加する断面を有し;(この実施形態において)その長さに沿って狭窄又はその他の流れの制限はない。
【0027】
出口48は、いわゆる「ベースサクション」が発生する車両10の後方の領域に開口し、車両10の後方の空間における低圧領域は、車両10が空気を通過する運動によって引き起こされる。したがって、明確な吸引力がダクト44内に生じ、境界層の空気を開口部32に引き込むのに役立つ。
【0028】
開口部32自体は、第1上部パネル40上の気流の境界層を第2パネルに到達する前に抽気するように形成される。このような受動的システムでは、抽気開口部32は、ディフューザー要素の前縁から適度な距離で後方にあるべきで、これにより、境界層を有する気流パターンが開口部32の前方に発達し安定化することができる。本発明者らは、ディフューザーに(水平方向に)沿った距離の1/10から1/2までの間隔が、良好な性能を発揮することを見出した。したがって、
図2に示されるように、その下方で気流が確立され得る、滑らかに立ち上がる平坦な第1パネル40の後、開口部32は、10から50mmまでの間の境界層だけのための排気口を画定する。鋭角に画定されたノーズ50は、気流を、境界層用のダクト44と、リヤサスペンション領域を通って水平に続く第2パネル42の下部のディフューザーの残りの部分とに分割する。ダクト44の下面52を第2パネル42に鋭角で接合することによって、鋭角なノーズ50が画定され、気流を2つにきれいに分離することができる。同様に、ダクト44の上面54を第1パネルに滑らかに接合することによって、開口部32内への境界層流が維持される。
【0029】
図3は
図2のディフューザー構成による気流を示している。車両10はネガティブスペースとして示されており、図は車両の外形の周りの気流の流線を示している。境界層56はダクト44内に向けて効果的に抽気され、ディフューザーを通って車両10の後方の領域内へ向かう残りの気流は、滑らかで層状である;これをさらに補助するために、サスペンションアーム18は空力的な断面を有することが分かる。また、車両10の後方の後流渦58が小さく、かつ制御されることも注目に値する。
【0030】
また
図3には、車両10の上側後縁部に、オプションのアクティブリアスポイラー60が示されている。これは必要に応じて自動で展開されるが、ドライバーが作動させることもできる。リアスポイラー60はハイダウンフォースモードを提供し、ダウンフォースを増加させる。この付加されたダウンフォースは、付加された抗力を犠牲にして生じるので、リアスポイラー60はまた、エアロ強化ブレーキ機能を提供する。したがって、車両10が、タイトなコーナリング、潜在的なオーバーステア、又はハードブレーキ状態のうちの1つ又は複数が存在することを検知すると、自動展開が実行される。
【0031】
図4は、ダクト44の経路に沿ったたわみの程度がより少ない、異なる設計による対応する気流パターンを示している。このようなたわみは、車両10の内部において、駆動軸やサスペンションコンポーネントなどの他の要素の周囲に、十分な間隙を提供しながらダクト44を通すために必要となる場合がある。これは、開口部の中及びその周囲の気流、及び車両10の背後の気流にほとんど影響を及ぼさず、ダクト44の正確な形状が比較的重要でないことを示す。
【0032】
実際、ダクト44は、完全に省略することができる。
図5は
図2と同様に、車両の関連部品の断面図を示すが、図示されていないサスペンションアーム18の代わりに後輪16の輪郭(点線)を含む。同じディフューザー構成、すなわち、鋭角のノーズ50で画定された開口部32につながる第1パネル40と、その後方にある第2パネル42が提供される。しかしながら、ダクト44は省略され、切り取られて短いチャネル62のみが残されている。これは単に、エンジンが配置されている車両後部のオープンスペースに直接通じている。実際、この残存するチャネル62自体を省略し、単純な開口部32とすることもできる。
【0033】
図6は開口部32をより詳細に示しており、開口部32の前方の第1パネル40によって占められる平面64が、鋭角のノーズ50及び第2パネル42の上方に位置し、その結果、チャネル62又はダクト44に流入する気流70内の境界層68に対応する深さ66を画定することを図示している。
【0034】
車両の後方のベースサクションによって作動する境界層除去ダクトを有する例では、本発明が従来のグラウンドエフェクトスーパーカーよりも30%もの効果的なレベルの空力効率を可能にすることを発見した。境界層がエンジンコンパートメント内に抽気されると、すなわち、ベースサクションの利点がないと、空力効率はわずかに低下するが、ダクトの重量は排除される。車両の全体的な空力効率、車両の全重量、関与するダクトの重量、及び要求される性能品質に応じた特定の状況において、どちらも好ましい場合がある。
【0035】
本発明によって提供されるグラウンドエフェクトダイナミクスは、車両の空力性能に著しく寄与し、現代のスーパーカーで一般的な余計なウィング、スカート、及びベントの必要性を軽減又は排除し得る。これらは視覚的に魅力がなく、さらなる抗力負荷を課す。ディフューザー内の抽気開口部の設計及び位置によって可能となる境界層制御は、車両の上方及び下方の気流の最も効果的な相互作用を保証し、抗力、ダウンフォース、及び安定性をあらゆる速度で調和させ、積極的なフロントエンドの空力装置の必要性を軽減する。
【0036】
本出願では、ところどころで「滑らかな」表面、あるいは「滑らかに」接する表面に言及している。これは、全体的な形状が曲面のみで構成され、鋭角的な変化がなく、理想的には曲率半径が100mm以上であることを意味する。また、我々は特定のアイテムが「実質的に平坦」であると言及するが、これは、車両がそのサスペンション及び車輪上に載置されている場合に、関連するサスペンションシステムの固有の弾性を考慮して予想される許容範囲内において、特定のアイテムが使用中に水平であることを指す。
【0037】
当然のことながら、本発明の範囲を逸脱することなく、上述の実施形態に対して多くの変更を加えてもよいことは理解されよう。
【国際調査報告】