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特表2025-503176びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療するための併用療法におけるCD3及びCD20に対する二重特異性抗体
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  • 特表-びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療するための併用療法におけるCD3及びCD20に対する二重特異性抗体 図1
  • 特表-びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療するための併用療法におけるCD3及びCD20に対する二重特異性抗体 図2
  • 特表-びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療するための併用療法におけるCD3及びCD20に対する二重特異性抗体 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療するための併用療法におけるCD3及びCD20に対する二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20250123BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20250123BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K31/454
A61K31/519
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544412
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2023051979
(87)【国際公開番号】W WO2023144290
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/304,424
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【弁理士】
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,クリストファー・ダブリュー・エル
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ミン・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】シュティルナー,マリアナ・シー
(72)【発明者】
【氏名】ザファー-グルスマン,イリアナ・イー
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB06
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
CD3及びCD20に結合する二重特異性抗体をレナリドミド又はイブルチニブ及びレナリドミドと組み合わせて使用する、ヒト対象におけるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(例えば、再発性及び/又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の臨床治療方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を治療する方法であって、前記方法は、二重特異性抗体と、有効量のレナリドミドと、場合により有効量のイブルチニブとを前記対象に投与することを含み、ここで、前記二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記VH領域は、配列番号6のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、前記VL領域は、配列番号7のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、前記VH領域は、配列番号13のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、前記VL領域は、配列番号14のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含み、
ここで、前記二重特異性抗体は、24mg又は48mgの用量で投与され、そしてここで、レナリドミド、前記二重特異性抗体及び場合によりイブルチニブが28日サイクルで投与される、前記方法。
【請求項2】
前記二重特異性抗体が、24mgの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二重特異性抗体が、48mgの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二重特異性抗体が、週に1回投与される(毎週投与される)、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
24mg又は48mgの毎週の投与が2.5回の28日サイクルにわたって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記週1回投与の後、前記二重特異性抗体が、4週間ごとに1回、例えば28日サイクルで、各28日サイクルの1日目に投与される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記4週間ごとに1回の投与が、少なくとも8回の28日サイクル、例えば8回の28日サイクル又は9回の28日サイクルにわたって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記4週間ごとに1回の投与が、少なくとも20の28日サイクル、例えば20回の28日サイクル又は21回の28日サイクルにわたって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
24mg又は48mgの毎週の投与の前に、前記二重特異性抗体のプライミング用量が、28日サイクルのサイクル1で投与される、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プライミング用量が、24mg又は48mgの最初の週の用量を投与する2週間前に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プライミング用量が0.16mgである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記プライミング用量を投与した後で、24mg又は48mgの最初の週の用量を投与する前に、前記二重特異性抗体の中間用量が投与される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記プライミング用量が1日目に投与され、前記中間用量が8日目に投与され、その後、サイクル1の15及び22日目に24mg又は48mgの最初の週の用量が投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記中間用量が0.8mgである、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
レナリドミドが、28日サイクルの1日目から21日目まで1日1回投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル12まで投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル24まで投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
レナリドミドが20~30mg、例えば25mgの用量で投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル12において20~30mgの用量で投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル12において25mgの用量で投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
レナリドミドが10~25mg、例えば25mgの用量で投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル24において10~25mgの用量で投与される、請求項1~14及び21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル24において20mgの用量で投与される、請求項1~14及び21~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
イブルチニブが、28日サイクルの1日目から28日目まで1日に1回投与される、請求項1~14及び21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
イブルチニブが、28日サイクルのサイクル1からサイクル24まで投与される、請求項1~14及び21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
イブルチニブが、280mg~560mg、例えば、280、420mg又は560mgの用量で投与される、請求項1~14及び21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
イブルチニブが、28日サイクルのサイクル1からサイクル24において560mgの用量で、又は、28日サイクルのサイクル1からサイクル24において420mgの用量で投与される、請求項1~14及び21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
投与が28日サイクルで行われ、
(a)前記二重特異性抗体が、以下のように投与され:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4以降では、24mgの用量が、1日目に投与される;
(b)レナリドミドが、サイクル1以降の1~21日目に投与され;そして、
(c)イブルチニブが、サイクル1以降の1~28日目に場合により投与される、
請求項1、2、及び4~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
投与が28日サイクルで行われ、
(a)前記二重特異性抗体が、以下のように皮下投与され:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~12では、24mgの用量が、1日目に投与される;
(b)レナリドミドが、25mg/日の用量でサイクル1~12の1~21日目に経口投与され、そして、
請求項1、2、及び4~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
投与が28日サイクルで行われ、
(a)前記二重特異性抗体が、以下のように皮下投与され:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、24mgの用量が、1日目に投与される;
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして
(c)イブルチニブが、560mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される
請求項1、2、及び4~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
投与が28日サイクルで行われ、
(a)前記二重特異性抗体が、以下のように皮下投与され:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、24mgの用量が、1日目に投与される;
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして、
(c)イブルチニブが、420mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される
請求項1、2、及び4~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
投与が28日サイクルで行われ、
(a)前記二重特異性抗体が、以下のように投与され:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル3以降では、48mgの用量が、1日目に投与される;
(b)レナリドミドが、サイクル1以降の1~21日目に投与され、そして
(c)イブルチニブが、サイクル1以降の1~28日目に場合により投与される、
請求項1及び3~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
投与が28日サイクルで行われ、
(a)前記二重特異性抗体が、以下のように皮下投与され:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~12では、48mgの用量が、1日目に投与される;
(b)レナリドミドが、25mg/日の用量でサイクル1~12の1~21日目に経口投与され、そして、
請求項1、3~27及び31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
投与が28日サイクルで行われ、
(a)前記二重特異性抗体が、以下のように皮下投与され:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、48mgの用量が、1日目に投与され;
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして
(c)イブルチニブが、560mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される
請求項1、3~27及び31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
投与が28日サイクルで行われ、
(a)前記二重特異性抗体が、以下のように皮下投与され:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、48mgの用量が、1日目に投与される;
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして
(c)イブルチニブが、420mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される
請求項1、3~27及び31~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記二重特異性抗体が皮下投与される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
イブルチニブが経口投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
レナリドミドが経口投与される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記二重特異性抗体、イブルチニブ、及びレナリドミドが逐次投与される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記DLBCLが、組織学的に確認されたCD20+疾患を有する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記DLBCLが、MYC並びにBCL-2及び/又はBCL-6転座(ダブルヒット又はトリプルヒット)を有する高悪性度B細胞リンパ腫である、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記DLBCLが濾胞性リンパ腫グレード3Bである、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記DLBCLが再発性及び/又は難治性DLBCLである、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記DLBCLが再発した、すなわち、以前の治療に以前に応答していたが、前記以前の治療の後に進行しており、進行は前記以前の治療の完了後6ヶ月又はそれ以降に開始した、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記DLBCLが難治性である、すなわち、以前の治療中に進行したか、以前の治療に対する客観的応答を達成できなかったか、又は維持療法を含む以前の治療の完了後6ヶ月以内に進行したかのいずれかである、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、抗CD20モノクローナル抗体を含有する少なくとも1つの以前の全身性抗リンパ腫療法に対して再発性又は難治性の疾患を有する、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記DLBCLが、以前のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法に対して難治性でない、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、レナリドミド又はイブルチニブに対して難治性でない、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が、別の全身療法と組み合わせた抗CD20モノクローナル抗体による少なくとも1回の治療を以前に受けたことがある、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記対象が以前にCAR-T療法を受けたことがあるか、又はCAR-T療法に対して不適格であるか若しくはCAR-T療法を受けることができない、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記対象がイブルチニブによる以前の治療を受けていない、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
(i)前記二重特異性抗体の前記第1の抗原結合領域が、それぞれ配列番号1、2、及び3に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3と、それぞれ配列番号4、配列GTN、及び配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3とを含み、そして、
(ii)前記二重特異性抗体の前記第2の抗原結合領域が、それぞれ配列番号8、9、及び10に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3と、それぞれ配列番号11、配列DAS、及び配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3と、を含む、
請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
(i)前記二重特異性抗体の前記第1の抗原結合領域が、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含むVL領域と、を含み、そして
(ii)前記二重特異性抗体の前記第2の抗原結合領域が、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号14のアミノ酸配列を含むVL領域と、を含む、
請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記二重特異性抗体の第1の結合アームがヒト化抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来する、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記二重特異性抗体の前記第1の結合アームが、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むλ軽鎖定常領域を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記二重特異性抗体の前記第2の結合アームがヒト抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来する、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記第2の結合アームが、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含むκ軽鎖定常領域を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記二重特異性抗体が、ヒトIgG1定常領域を有する完全長抗体である、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記二重特異性抗体が不活性Fc領域を含む、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、ここで、前記第1の重鎖及び前記第2の重鎖の両方において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235及びD265位に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E及びAである、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、ここで、前記第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、そしてここで、前記第2の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸がRであり、又はそれらの逆も同様である、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、ここで、
(i)前記第1及び第2の重鎖の両方において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235、及びD265位に対応する位置のアミノ酸はそれぞれF、E、及びAであり、そして、
(ii)前記第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸はLであり、前記第2の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸はRであり、又はそれらの逆も同様である、
請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記二重特異性抗体が、配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24及び25に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖と、を含む、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24及び25のアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27のアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖と、を含む、請求項1~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記二重特異性抗体が、エプコリタマブ又はそのバイオシミラーである、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD3及びCD20の両方を標的とする二重特異性抗体、並びにびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、例えば再発性及び/又は難治性DLBCLの治療のための、レナリドミドと組み合わせた、又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせたそのような抗体の使用に関する。有利な治療レジメンも提供される。
【背景技術】
【0002】
DLBCLは、最も一般的な非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、標準的な第1選択療法はR-CHOPである。新たに診断されたDLBCLの全集団に対するこの組合せの治癒率は、60%~70%である(Sehn et al.,Blood 2007;109:1867-61)。用量の増強及びレジメンを増強するための他の薬剤の添加を含む第1選択療法の転帰を改善する試みは、標準治療を変更するのに十分な証拠を提供することができなかった。
【0003】
第1選択治療に対するCRの割合、疾患再発、及びOSに影響を及ぼすリスク因子は、国際予後指標(IPI)又は改訂IPI(R-IPI)に含まれ、以下の通りである。年齢>60歳、ECOG>1又はKPS<60、LDH>ULN;節外疾患>1(2以上)、及び疾患ステージ3又は4(Project et al.,N Engl J Med 1993;329:987-994;Sehn et al.、前出)。良好なリスク群(1~2のIPI因子)の患者は、標準的な第1選択R-CHOP後に80%の4年PFSを有するが、危険性の高い(高リスク)群(3~5のIPI因子)の患者の45%は、55%の4年PFS及びOSを達成するだけである(Sehn et al.、前出)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sehn et al.,Blood 2007;109:1867-61
【非特許文献2】Project et al.,N Engl J Med 1993;329:987-994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在利用可能な治療に対する危険性の高い対象の限られた有効性及び長期応答を考えると、新規且つ有効な治療が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、例えば再発性及び/又は難治性(R/R)DLBCLを有するヒト対象を、CD3及びCD20に結合する二重特異性抗体をレナリドミドと組み合わせて、又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせて投与することによって、特に有利な臨床治療レジメンによって治療する方法が本明細書で提供される。
【0007】
一態様では、ヒト対象においてDLBCL、例えばR/R DLBCLを治療する方法であって、エプコリタマブとレナリドミドとの又はエプコリタマブとレナリドミド及びイブルチニブとの組合せを対象に投与することを含み、例えば、有効量のレナリドミド、及びエプコリタマブ又はイブルチニブ、レナリドミド及びエプコリタマブを対象に投与することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0008】
一態様では、ヒト対象においてDLBCL、例えば、R/R DLBCLを治療する方法であって、二重特異性抗体(例えば、皮下)及び有効量のレナリドミドレナリドミド(例えば、経口)、又は有効量のレナリドミド(例えば、経口)及びイブルチニブ(例えば、経口)を対象に投与することを含み、二重特異性抗体が、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、VH領域は、配列番号6のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号7のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、VH領域は、配列番号13のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号14のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含み、
二重特異性抗体は、24mg又は48mgの用量で投与され、レナリドミド、二重特異性抗体、及び場合によりイブルチニブが28日サイクルで投与される、ヒト対象においてDLBCL、例えば、R/R DLBCLを治療する方法が本明細書で提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、24mgの用量(又は約24mgの用量)で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、48mgの用量(又は約48mgの用量)で投与される。
【0010】
一実施形態では、二重特異性抗体は、24mg又は48mgの用量で、例えば2.5回の28日サイクルの間、毎週一回投与される(毎週投与)。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、例えば、疾患の進行又は許容できない毒性が生じるまで、隔週投与の後で4週間ごとに1回、例えば少なくとも8回の28日サイクルにわたって投与される。更なる実施形態では、二重特異性抗体のプライミング用量(例えば、0.16mg又は約0.16mg)が、24mg又は48mgの最初の週の用量を投与する2週間前に投与される。いくつかの実施形態では、プライミング用量を投与した後で、24mg又は48mgの週の用量を投与する前に、中間用量(例えば、0.8mg又は約0.8mg)の二重特異性抗体が投与される。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、中間用量の1週間前に投与され、中間用量は、24mg又は48mgの最初の週の用量の1週間前に投与される。
【0011】
いくつかの実施形態では、イブルチニブは、28日サイクルで、1日に1回(毎日の投与)で、例えば、24回までの28日サイクルで、又は、少なくとも24回の28日サイクルで、例えば、24回の28日サイクルで投与される。一実施形態では、イブルチニブは、約420mg/日、例えば、420mg/日の用量で投与される。一実施形態では、イブルチニブは、約560mg/日、例えば、560mg/日の用量で投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、レナリドミドは、28日サイクルの1日目から21日目まで、例えば28日サイクルのサイクル1からサイクル12まで1日1回投与される。いくつかの実施形態では、レナリドミドは、28日サイクルのサイクル1~12で、約25mg、例えば25mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、レナリドミドは、28日サイクルのサイクル1からサイクル24で、約20mg、例えば20mgの用量で投与される。
【0013】
いくつかの実施形態では、レナリドミド及び場合によりイブルチニブ、並びに二重特異性抗体は、同じ日に(例えば、サイクル1~3の1、8、15、及び22日目、並びにサイクル4~12の第1、又はサイクル1~3の1、8、15、及び22日目、並びにサイクル4~24の1日目に)投与される。
【0014】
いくつかの実施形態では、投与は、28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4以降では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように投与され、
(b)レナリドミドが、サイクル1以降の1~21日目に投与され、そして
(c)イブルチニブが、サイクル1以降の1~28日目に場合により投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、投与は、28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~12では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、25mg/日の用量でサイクル1~12の1~21日目に経口投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして、
(c)イブルチニブが、560mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される。
【0017】
いくつかの実施形態では、投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして
(c)イブルチニブが、420mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、投与は、28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル3以降では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように投与され、
(b)レナリドミドが、サイクル1以降の1~21日目に投与され、そして
(c)イブルチニブが、サイクル1以降の1~28日目に場合により投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、投与は、28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~12では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、25mg/日の用量でサイクル1~12の1~21日目に経口投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして、
(c)イブルチニブが、560mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される。
【0021】
いくつかの実施形態では、投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして
(c)イブルチニブが、420mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は皮下投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは経口投与される。いくつかの実施形態では、レナリドミドは経口投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、DLBCLは、組織学的に確認されたCD20+疾患を有する。いくつかの実施形態では、DLBCLは、MYC並びにBCL-2及び/又はBCL-6転座(ダブルヒット又はトリプルヒット)を有する高悪性度B細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態では、DLBCLは濾胞性リンパ腫グレード3Bである。いくつかの実施形態では、DLBCLは再発性及び/又は難治性DLBCLである。
【0024】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第1の抗原結合領域は、それぞれ配列番号1、2、及び3に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3と、それぞれ配列番号4、配列GTN、及び配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3と、を含み、第2の抗原結合領域は、それぞれ配列番号8、9、及び10に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3と、それぞれ配列番号11、配列DAS、及び配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3と、を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第1の抗原結合領域は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含むVL領域と、を含み、第2の抗原結合領域は、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号14のアミノ酸配列を含むVL領域と、を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第1の結合アームは、ヒト化抗体、好ましくは完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体(例えば、配列番号22)に由来する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第2の結合アームは、ヒト抗体、好ましくは完全長IgG1、κ(カッパ)抗体(例えば、配列番号23)に由来する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、ヒトIgG1定常領域を有する完全長抗体である。
【0026】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、不活性Fc領域、例えば、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235、及びD265位に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E、及びAであるFc領域を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、二重特異性抗体の形成を促進する置換を含み、例えば、第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸はLであり、第2の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸はRであり、又はその逆も同様である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、不活性Fc領域(例えば、L234、L235、及びD265における置換(例えば、L234F、L235E、及びD265A))及び二重特異性抗体形成を促進する置換(例えば、F405L及びK409R)の両方を有する。更なる実施形態では、二重特異性抗体は、配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、それぞれ配列番号24及び25に示されるアミノ酸配列を含む(又はそれらからなる)第1の重鎖及び第1軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27に示されるアミノ酸配列を含む(又はそれらからなる)第2の重鎖及び第2軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、エプコリタマブ、又はそのバイオシミラーである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】レナリドミドの存在下でのT細胞活性化を示す図である。T細胞を、固定化抗CD3によるCD3架橋の非存在下又は存在下でアッセイ培地又はレナリドミドと共に3日間プレインキュベートし(x軸上に示す)、その後、CD4及びCD8T細胞上のCD69、CD25、PD-1及びLAMP-1の上方制御をフローサイトメトリーによって決定した。示されているデータは、4名のドナーについての幾何平均蛍光強度(FI)である(各円は1名のドナーについての1つの条件を表す)。プレインキュベーション条件をx軸に示す。
図2】CD20発現Daudi細胞に対するDuobody(登録商標)-CD3xCD20誘導性T細胞媒介性細胞傷害に対するレナリドミドの効果を示すグラフである。T細胞を、固定化抗CD3の非存在下又は存在下で、レナリドミドと共に(5又は50μM)又はレナリドミドなしで3日間インキュベートした。その後、T細胞を、DuoBody(登録商標)-CD3xCD20又はDuoBody(登録商標)-CD3xctrl(CD3アーム及び非結合対照を含有する)及びCD20発現Daudi細胞を標的細胞として用いた細胞傷害性アッセイにおいて使用した(E:T比2:1)。示されるデータは、培地対照(抗体なし、レナリドミドなし)に対して正規化された、複製物の細胞傷害性の平均パーセンテージ±SDである。
図3】全体的な臨床試験設計の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
本明細書で使用される「免疫グロブリン」という用語は、2対のポリペプチド鎖、1対の軽(L)低分子量鎖及び1対の重(H)鎖からなる構造的に関連する糖タンパク質のクラスを指し、4つ全てがジスルフィド結合によって相互接続されている。免疫グロブリンの構造は十分に特徴付けられている(例えば、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989)を参照されたい)。簡潔には、各重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVH又はVと略す)及び重鎖定常領域(本明細書ではCH又はCと略す)から構成される。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3から構成される。ヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域であり、非常に柔軟である。ヒンジ領域内のジスルフィド結合は、IgG分子内の2つの重鎖間の相互作用の一部である。各軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVL又はVと略される)及び軽鎖定常領域(本明細書ではCL又はCと略される)から構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLから構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変領域(又は配列及び/又は構造的に定義されたループの形態で超可変であり得る超可変領域)の領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J Mol Biol 1987;196:901-17も参照されたい)。特に明記しない限り、又は文脈と矛盾しない限り、本明細書のCDR配列は、IMGT規則(Brochet X.,Nucl Acids Res 2008;36:W503-508;Lefranc MP.,Nucl Acids Res 1999;27:209-12;www.imgt.org/)に従って同定される。特に明記しない限り、又は文脈と矛盾しない限り、定常領域内のアミノ酸位置への言及は、EUナンバリング(Edelman et al.,PNAS.1969;63:78-85;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.1991 NIH Publication No.91-3242)に従う。例えば、配列番号15は、IgG1重鎖定常領域の、EUナンバリングで118~447位のアミノ酸を示す。
【0030】
本明細書で使用される「位置...に対応するアミノ酸」という用語は、ヒトIgG1重鎖のアミノ酸位置番号を指す。他の免疫グロブリン中の対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアラインメントによって見出され得る。したがって、別の配列中のアミノ酸又はセグメント「に対応する」1つの配列中のアミノ酸又はセグメントは、典型的にはデフォルト設定で、ALIGN、ClustalW又は同様のもの等の標準的な配列アラインメントプログラムを使用して他のアミノ酸又はセグメントと整列するものであり、ヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の同一性を有する。配列中の配列又はセグメントを整列させ、それによって本発明によるアミノ酸位置に対する配列中の対応する位置を決定することは、当業者の能力の範囲内である。
【0031】
本発明に関連して本明細書で使用される「抗体」(Ab)という用語は、典型的な生理学的条件下で、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日以上等、又は任意の他の関連する機能的に定義された期間(例えば、抗原への抗体結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強、及び/又は調節するのに十分な時間並びに/あるいは抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)等、十分な期間の半減期で抗原に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子を指す。免疫グロブリン分子の重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体という用語は、特に明記しない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、キメラ抗体及びヒト化抗体も包含する。
【0032】
本明細書で使用される「抗体断片」又は「抗原結合断片」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持し、酵素切断、ペプチド合成、及び組換え技術等の任意の公知の技術によって生成することができる免疫グロブリン分子の断片を指す。抗体断片の例としては、(i)Fab’若しくはFab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片、又は国際公開第2007059782号に記載されている一価抗体(Genmab);(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHドメイン及びCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインから本質的になるFv断片;(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体とも呼ばれるdAb断片(Ward et al.,Nature 1989;341:544-46)(Holt et al;Trends Biotechnol 2003;21:484-90);(vi)ラクダ科動物又はナノボディ(Revets et al;Expert Opin Biol Ther 2005;5:111-24)及び(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。更に、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を使用して、VL及びVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーによって連結され得る(一本鎖抗体又は一本鎖Fv(scFv)として知られており、例えばBird et al.,Science 1988;242:423-26及びHuston et al.,PNAS 1988;85:5879-83を参照されたい)。そのような一本鎖抗体は、特に明記されない限り、又は文脈によって明確に示されない限り、抗体断片という用語に包含される。
【0033】
本明細書で使用される「抗体結合領域」又は「抗原結合領域」という用語は、抗原と相互作用し、VH領域とVL領域の両方を含む領域を指す。抗体という用語は、本明細書で使用される場合、単一特異性抗体だけでなく、複数、例えば2つ以上、例えば3つ以上の異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も指す。抗原結合領域という用語は、特に明記しない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原結合断片であり、すなわち抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片を含む。
【0034】
本明細書で使用されるとき、用語「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、又はIgM)を指す。特定のアイソタイプ、例えばIgG1が言及される場合、この用語は、特定のアイソタイプ配列、例えば特定のIgG1配列に限定されないが、抗体が他のアイソタイプよりもそのアイソタイプ、例えばIgG1に配列がより近いことを示すために使用される。したがって、例えば、IgG1抗体は、定常領域の変異を含み得る天然に存在するIgG1抗体の配列バリアントであり得る。
【0035】
本明細書で使用される「二重特異性抗体」又は「bs」又は「bsAb」という用語は、異なる抗体配列によって定義される2つの異なる抗原結合領域を有する抗体を指す。二重特異性抗体は、任意の形式のものであり得る。
【0036】
本明細書で使用される「半分子」、「Fabアーム」、及び「アーム」という用語は、1つの重鎖-軽鎖対を指す。
【0037】
二重特異性抗体が、第1の親抗体「に由来する」半分子抗体、及び第2の親抗体「に由来する」半分子抗体を含むと記載される場合、「に由来する」という用語は、任意の公知の方法によって、第1及び第2の親抗体のそれぞれからの当該半分子を、得られた二重特異性抗体に再結合することによって、二重特異性抗体が生成されたことを示す。これに関連して、「組換え」は、どのような特定の組換え方法によっても限定されることが意図されておらず、したがって、例えば、半分子交換(「制御されたFabアーム交換」としても知られる)による組換え、同様にまた、核酸レベルでの及び/又は同じ細胞における2つの半分子の共発現による組換えを含めて、本明細書に記載される二重特異性抗体を作製するための方法の全てが含まれる。
【0038】
抗体に関連して本明細書で使用される「完全長」という用語は、抗体が断片ではないが、天然のそのアイソタイプに通常見られる特定のアイソタイプのドメイン、例えばIgG1抗体のVH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VL及びCLドメインの全てを含むことを示す。完全長抗体を操作することができる。「完全長」抗体の例は、エプコリタマブである。
【0039】
本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの2つの重鎖のFc配列からなる抗体領域を指し、当該Fc配列は、少なくともヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。
【0040】
本明細書で使用される「第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第2のCH3ヘテロ二量体タンパク質における第1のCH3領域と第2のCH3領域との間の相互作用を指す。
【0041】
本明細書で使用される「第1のCH3領域及び第2のCH3領域のホモ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第1のCH3ホモ二量体タンパク質中の第1のCH3領域と別の第1のCH3領域との間の相互作用、及び第2のCH3/第2のCH3ホモ二量体タンパク質中の第2のCH3領域と別の第2のCH3領域との間の相互作用を指す。
【0042】
所定の抗原への抗体の結合に関連して本明細書で使用される「結合」という用語は、典型的には、リガンドとして抗体及び被検物質として抗原を使用するOctet HTX機器の例えばバイオレイヤー干渉法(BLI)技術によって決定される場合、約10-6M以下、例えば10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、又は約10-11M以下のKに対応する親和性で結合することを指し、抗体は、所定の抗原又は密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合のKよりも少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKに対応する親和性で所定の抗原に結合する。結合のKのより低い量は抗体のKに依存するので、抗体のKが非常に低い場合、抗原への結合のKが非特異的抗原への結合のKよりも低い量は、少なくとも10,000倍であり得る(すなわち、抗体は高度に特異的である)。
【0043】
本明細書で使用される「単離抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。好ましい実施形態では、CD20及びCD3に特異的に結合する単離された二重特異性抗体は更に、CD20又はCD3に特異的に結合する単一特異性抗体を実質的に含まない。
【0044】
本明細書で使用される「CD3」という用語は、T細胞共受容体タンパク質複合体の一部であり、4つの異なる鎖で構成されるヒト表面抗原分類3タンパク質を指す。CD3は他の種にも見られるため、「CD3」という用語は、文脈と矛盾しない限り、ヒトCD3に限定されない。哺乳動物では、複合体は、CD3γ(ガンマ)鎖(ヒトCD3γ鎖UniProtKB/Swiss-Prot No P09693、又はカニクイザルCD3γ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI7)、CD3δ(デルタ)鎖(ヒトCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No P04234、又はカニクイザルCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI8)、2つのCD3ε(イプシロン)鎖(ヒトCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No P07766、配列番号28);カニクイザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI5;又はアカゲザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No G7NCB9)、及びCD3ζ鎖(ゼータ)鎖(ヒトCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No P20963、カニクイザルCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No Q09TK0)を含む。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として知られる分子と会合し、Tリンパ球において活性化シグナルを生成する。TCR及びCD3分子は共にTCR複合体を含む。
【0045】
本明細書で使用される「CD3抗体」又は「抗CD3抗体」という用語は、抗原CD3、特にヒトCD3ε(イプシロン)に特異的に結合する抗体を指す。
【0046】
「ヒトCD20」又は「CD20」という用語は、ヒトCD20(UniProtKB/Swiss-Prot No P11836、配列番号29)を指し、腫瘍細胞を含む細胞によって天然に発現される、又はCD20遺伝子若しくはcDNAでトランスフェクトされた細胞上で発現されるCD20の任意のバリアント、アイソフォーム、及び種ホモログを含む。種ホモログには、アカゲザルCD20(macaca mulatta;UniProtKB/Swiss-Prot No H9YXP1)及びカニクイザルCD20(macaca fascicularis;UniProtKB No G7PQ03)が含まれる。
【0047】
本明細書で使用される「CD20抗体」又は「抗CD20抗体」という用語は、抗原CD20、特にヒトCD20に特異的に結合する抗体を指す。
【0048】
本明細書で使用される「CD3xCD20抗体」、「抗CD3xCD20抗体」、「CD20xCD3抗体」又は「抗CD20xCD3抗体」という用語は、2つの異なる抗原結合領域を含む二重特異性抗体を指し、その1つは抗原CD20に特異的に結合し、その1つはCD3に特異的に結合する。
【0049】
本明細書で使用される「DuoBody(登録商標)-CD3xCD20」という用語は、それぞれ配列番号24及び配列番号25で定義される第1の重鎖及び軽鎖対を含み、配列番号26及び配列番号27で定義される第2の重鎖及び軽鎖対を含む、IgG1二重特異性CD3xCD20抗体を指す。第1の重鎖及び軽鎖の対は、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する領域を含み、第2の重鎖及び軽鎖の対は、ヒトCD20に結合する領域を含む。第1の結合領域は、配列番号6及び7によって定義されるVH及びVL配列を含み、第2の結合領域は、配列番号13及び14によって定義されるVH及びVL配列を含む。この二重特異性抗体は、国際公開第2016/110576号に記載されているように調製することができる。
【0050】
実施例の抗体の重鎖、軽鎖、VL領域、VH領域、又は1又は複数のCDRの機能的バリアントを含む抗体も本明細書で提供される。抗体との関連で使用される重鎖、軽鎖、VL、VH、又はCDRの機能的バリアントは、依然として、抗体が、CD20及び/又はCD3の特定のエピトープに対する親和性及び/又は特異性/選択性、Fc不活性、並びに半減期、Tmax、Cmax等のPKパラメータを含む、「参照」及び/又は「親」抗体の機能的特徴の少なくともかなりの割合(少なくとも約90%、95%以上)を保持することを可能にする。そのような機能的バリアントは、典型的には、親抗体と有意な配列同一性を保持し、及び/又は実質的に同様の長さの重鎖及び軽鎖を有する。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数x100)の関数である。2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、PAM120重み残差表、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた、E.Meyers and W.Miller,Comput.Appl.Biosci 4,11-17(1988)のアルゴリズムを使用して決定され得る。更に、Needleman and Wunsch,J Mol Biol 1970;48:444-453アルゴリズムを使用して、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを決定することができる。例示的なバリアントには、主に保存的置換によって親抗体配列の重鎖及び/又は軽鎖、VH及び/又はVL、及び/又はCDR領域とは異なるものが含まれ、例えば、バリアントにおける置換のうちの10個、例えば9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個は、保存的アミノ酸残基置換であり得る。
【0051】
保存的置換は、以下の表に反映されるアミノ酸のクラス内の置換によって定義され得る。
【表1】
【0052】
別段示されない限り、以下の命名法が変異を記載するために使用される:i)所与の位置におけるアミノ酸の置換は、例えば、K409Rと書かれ、これは、アルギニンによる409位におけるリジンの置換を意味する。ii)特定のバリアントについては、任意のアミノ酸残基を示すためのコードXaa及びXを含む、特定の3文字又は1文字コードが使用される。したがって、409位のアルギニンによるリジンの置換は、K409Rと命名され、409位の任意のアミノ酸残基によるリジンの置換は、K409Xと命名される。409位におけるリジンの欠失の場合、それはK409*によって示される。
【0053】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように修飾された非ヒト可変ドメインと、を含む、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体CDRを、相同ヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)にグラフトすることによって達成することができる(国際公開第92/22653号及び欧州特許第0629240号明細書参照)。親抗体の結合親和性及び結合特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)からヒトフレームワーク領域へのフレームワーク残基の置換(復帰変異)が必要とされ得る。構造相同性モデリングは、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域内のアミノ酸残基を同定するのに役立ち得る。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、非ヒトアミノ酸配列に対する1又は複数のアミノ酸復帰変異を場合により含むヒトフレームワーク領域、及び完全ヒト定常領域を含み得る。DuoBody(登録商標)-CD3xCD20において本明細書で使用されるCD3アームのVH及びVLは、ヒト化抗原結合領域を表す。場合により、必ずしも復帰変異ではない更なるアミノ酸修飾を適用して、親和性及び生化学的特性等の好ましい特徴を有するヒト化抗体を得ることができる。
【0054】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を指す。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的変異誘発又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。DuoBody(登録商標)-CD3xCD20で使用されるCD20アームのVH及びVLは、ヒト抗原結合領域を表す。本発明のヒトモノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えばKohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む様々な技術によって産生され得る。体細胞ハイブリダイゼーション手順が原則として好ましいが、モノクローナル抗体を産生するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルス若しくは発癌性形質転換又はヒト抗体遺伝子のライブラリーを使用するファージディスプレイ技術を使用することができる。ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための適切な動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、非常によく確立された手順である。融合のために免疫化脾細胞を単離するための免疫化プロトコル及び技術は、当技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)及び融合手順も公知である。したがって、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、マウス系又はラット系ではなくヒト免疫系の一部を保有するトランスジェニック若しくはトランスクロモソーマルのマウス又はラットを用いて作製することができる。したがって、一実施形態では、ヒト抗体は、動物免疫グロブリン配列の代わりにヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物(例えば、マウス又はラット)から得られる。そのような実施形態では、抗体は、動物に導入されたヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来するが、最終抗体配列は、内因性動物抗体機構による体細胞高頻度変異及び親和性成熟によって当該ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列が更に修飾された結果である(例えば、Mendez et al.Nat Genet 1997;15:146-56を参照されたい)。DuoBody(登録商標)-CD3xCD20で使用されるCD20アームのVH及びVL領域は、ヒト抗原結合領域を表す。
【0055】
本明細書で使用される「バイオシミラー」(例えば、承認された参照製品/生物学的薬物)という用語は、(a)臨床的に不活性な成分のわずかな違いにもかかわらず、生物学的製品が参照製品と非常に類似していることを示す分析研究;(b)動物試験(毒性の評価を含む);及び/又は(c)参照製品が承認され、使用が意図され、承認が求められている1又は複数の適切な使用条件における安全性、純度、及び効力を実証するのに十分な(例えば、生物学的製品と参照製品との間に、製品の安全性、純度及び、効力の点で臨床的に有意な差がないこと)1又は複数の臨床試験(免疫原性及び薬物動態又は薬力学の評価を含む)からのデータに基づいて、参照製品と類似している生物学的製品を指す。いくつかの実施形態では、バイオシミラー生物学的製品及び参照製品は、提案されたラベル化において処方され、推奨され、又は示唆される1又は複数の使用条件について同じ1又は複数の作用機序を利用するが、1又は複数の作用機序が参照製品について知られている程度にすぎない。いくつかの実施形態では、生物学的製品について提案されたラベル化において処方され、推奨され、又は示唆された1又は複数の使用条件は、参照製品について以前に承認されている。いくつかの実施形態では、生物学的製品の投与経路、剤形、及び/又は強度は、参照製品のものと同じである。バイオシミラーは、例えば、市販の抗体と同じ一次アミノ酸配列を有する現在知られている抗体であり得るが、異なる細胞型で、又は異なる産生、精製、若しくは製剤化方法によって作製され得る。
【0056】
本明細書で使用される「還元条件」又は「還元環境」という用語は、基質、ここでは抗体のヒンジ領域中のシステイン残基が酸化されるよりも還元される可能性が高い状態又は環境を指す。
【0057】
本明細書で使用される「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、発現ベクター、例えば本明細書に記載の抗体をコードする発現ベクターが導入された細胞を指すことを意図している。組換え宿主細胞としては、例えば、トランスフェクトーマ、例えばCHO、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6又はNS0細胞、及びリンパ球性細胞が挙げられる。
【0058】
本明細書で使用される「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」又は「DLBCL」という用語は、びまん性増殖パターン及び高中間増殖指数を有する胚中心Bリンパ球の新生物を指す。DLBCLは、全てのリンパ腫の約30%に相当する。DLBCLのサブタイプは、異なる見通し(予後)及び治療に対する応答を有するようである。DLBCLは、任意の年齢層に影響を及ぼし得るが、主に高齢者に発生する(平均年齢は60代半ばである)。「ダブルヒット」及び「トリプルヒット」DLBCLは、WHO2016分類(内容が参照により本明細書に組み込まれる、Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(Revised ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2017))による、MYC及びBCL2及び/又はBCL6転座を有する高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)のカテゴリに属する、MYC及びBCL2及び/又はBCL6転座を有するDLBCLを指す。濾胞性リンパ腫グレード3Bもまた、DLBCLと同等であるとみなされることが多く、したがって、上記のように治療される。
【0059】
本明細書で使用される「再発性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」又は「再発性DLBCL」という用語は、以前に治療に応答したが治療完了6ヶ月以上後に進行したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を指す。
【0060】
本明細書で使用される「難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」又は「難治性DLBCL」という用語は、治療中に進行したか、以前の治療に対する客観的応答を達成できなかったか、又は治療(維持療法を含む)完了後6ヶ月以内に進行したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を指す。本明細書で使用される「R/Rびまん性大細胞型B細胞リンパ腫」又は「R/R DLBCL」という用語は、特に明記しない限り、再発性及び/又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を指すことを意図している。
【0061】
本明細書で使用される「イブルチニブ」という用語は、化学式C25-H24-N-O及び化学名:1-((3R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ(3,4-d)ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン(Chemical Abstracts Service No.936563-96-1)を有する、潜在的な抗新生物活性を有する経口的に生物利用可能なブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の小分子阻害剤を指す。イブルチニブは、例えば、Imbruvica(登録商標)という商品名で入手可能である。「イブルチニブ」という用語はまた、イブルチニブのブランドバージョン及びジェネリックバージョン(ジェネリック等価物)、並びにその薬学的に許容される塩、異性体、ラセミ体、溶媒和物、複合体及び水和物、無水物形態、並びにその任意の多形形態若しくは非晶質形態又はそれらの組合せを包含することが意図される。
【0062】
本明細書で使用される「レナリドミド」という用語は、化学式C1313及び化学名:3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオン(Chemical Abstracts Service No.191732-72-6)を有するサリドマイド誘導体を指す。レナリドミドは、例えば、商品名Revlimid(登録商標)で入手可能である。「レナリドミド」という用語はまた、レナリドミドのブランドバージョン及びジェネリックバージョン(ジェネリック等価物)、並びにその薬学的に許容される塩、異性体、ラセミ体、溶媒和物、複合体及び水和物、無水物形態、並びにその任意の多形形態若しくは非晶質形態又はそれらの組合せを包含することが意図される。
【0063】
「治療」という用語は、DLBCL等の症状又は病状を緩和、改善、停止又は根絶(治癒)する目的での有効量の本明細書に記載の治療活性抗体の投与を指す。治療は、例えば、Lugano基準及び/又はLYRICによって定義されるように、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、又は安定疾患(SD)をもたらし得る。治療は、例えば、疾患の進行又は許容できない毒性まで継続され得る。
【0064】
本明細書で使用される「投与すること」又は「投与」という用語は、当業者に公知の様々な方法及び送達系のいずれかを使用した、治療剤を含む組成物(又は製剤)の対象への物理的導入を指す。本明細書に記載される抗体のための好ましい投与経路には、例えば注射又は注入による静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄又は他の非経口投与経路が含まれる。「非経口投与」という語句は、本明細書で使用される場合、通常は注射による経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入、並びにインビボ電気穿孔を含むが、これらに限定されない。あるいは、本明細書に記載の治療剤は、非経口経路、例えば局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば鼻腔内、経口、膣内、直腸、舌下又は局所的に投与することができる。投与は、例えば、1回、複数回、及び/又は1又は複数の長期間にわたって行うこともできる。本明細書に記載の方法では、二重特異性抗体(例えば、エプコリタマブ)が皮下投与される。サイトカイン放出症候群予防及び/又は腫瘍溶解症候群(TLS)予防等のために二重特異性抗体と組み合わせて使用される他の薬剤は、静脈内又は経口等の他の経路を介して投与され得る。
【0065】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量及び期間で有効な量を指す。例えば、皮下投与される二重特異性抗体(例えば、エプコリタマブ)について本明細書で定義される投与量、すなわち24mg又は48mgは、そのような「有効量」又は「治療有効量」として定義することができる。抗体の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力等の因子に応じて変動し得る。治療有効量はまた、抗体又は抗体部分のあらゆる毒性又は有害作用よりも、治療的に有益な作用が上回る量である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で治療された患者は、ECOGパフォーマンスステータスの改善を示す。薬物の治療有効量又は投与量は、「予防有効量」又は「予防有効投与量」を含み、これは、疾患若しくは障害(例えば、サイトカイン放出症候群)を発症するリスクがあるか、又は疾患の再発に罹患するリスクがある対象に単独で又は別の治療剤と組み合わせて投与された場合に、疾患の発症又は再発を阻害する薬物の任意の量である。
【0066】
本明細書で使用される腫瘍の「成長を阻害する」という用語は、腫瘍の成長のあらゆる測定可能な減少、例えば少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約99%、又は100%の腫瘍の成長の阻害を含む。
【0067】
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒト患者、例えばびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有するヒト患者を指す。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0068】
本明細書で使用される「緩衝剤」という用語は、薬学的に許容される緩衝剤を表す。「緩衝剤」という用語は、溶液のpH値を例えば許容範囲内に維持する薬剤を包含し、限定するものではないが、アセタート、ヒスチジン、TRIS(登録商標)(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、シトラート、スクシナート、グリコラート等を含む。一般に、本明細書で使用される「緩衝剤」は、約5~約6、好ましくは約5.5のpH範囲に適したpKa及び緩衝能力を有する。
【0069】
本明細書で使用される「疾患進行」又は「PD」は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の1又は複数の指標が、治療にもかかわらず疾患が進行していることを示す状況を指す。一実施形態では、疾患進行は、悪性リンパ腫に対するLugano応答基準(「Lugano基準」)及び/又は免疫調節療法基準(LYRIC)に対するリンパ腫応答に基づいて定義される。完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、無奏効/安定(NR.SD)及び進行性疾患(PD)の定義を含むLugano基準/分類系に関する詳細は、内容が参照により本明細書に組み込まれる、Cheson et al.J Clin Oncol 2014;32:3059-68に提供される(特にCheson et al.,2014の表3を参照されたい)。Lugano基準/分類システムに関する更なる詳細を表3に示す。
【0070】
本明細書で使用される「界面活性剤」は、表面への薬物吸着及び/又は凝集を防ぐために医薬製剤に典型的に使用される化合物である。更に、界面活性剤は、2つの液体間又は液体と固体との間の表面張力(又は界面張力)を低下させる。例えば、例示的な界面活性剤は、非常に低い濃度(例えば、5%w/v以下、例えば3%w/v以下、例えば1%w/v以下、例えば0.4%w/v以下、例えば0.1%w/v未満、例えば0.04%w/v)で存在する場合、表面張力を著しく低下させることができる。界面活性剤は両親媒性であり、これは、界面活性剤が通常、親水性基と疎水性基又は親油性基の両方から構成され、したがって水溶液中でミセル又は同様の自己集合構造を形成することができることを意味する。薬学的使用のための公知の界面活性剤としては、グリセロールモノオレアート、塩化ベンゼトニウム、ドキュサートナトリウム、リン脂質、ポリエチレンアルキルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウム及びトリカプリリン(アニオン性界面活性剤);塩化ベンザルコニウム、シトリミド、塩化セチルピリジニウム及びリン脂質(カチオン性界面活性剤);並びにαトコフェロール、グリセロールモノオレアート、ミリスチルアルコール、リン脂質、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビンタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステララート、ポリオキシルヒドロキシステアラート、ポリオキシルグリセリド、ポリソルベート、例えばポリソルベート20又はポリソルベート80、プロピレングリコールジラウラート、プロピレングリコールモノラウラート、ソルビタンエステルスクロースパルミタート、スクロースステアラート、トリカプリリン及びTPGS(非イオン性及び両性イオン性界面活性剤)が挙げられる。
【0071】
本明細書で使用される「希釈剤」は、薬学的に許容され(ヒトへの投与に安全且つ非毒性)、医薬組成物又は医薬製剤の希釈物の調製に有用なものである(「組成物」及び「製剤」という用語は本明細書では互換的に使用される)。好ましくは、組成物のこのような希釈は、抗体濃度のみを希釈し、緩衝剤及び安定剤を希釈しない。したがって、一実施形態では、希釈剤は、本発明の医薬組成物中に存在するのと同じ濃度の緩衝剤及び安定剤を含有する。更なる例示的な希釈剤としては、滅菌水、静菌性注射用水(BWFI)、好ましくは酢酸緩衝剤であるpH緩衝剤、滅菌生理食塩水、例えば注射用水、リンゲル液又はデキストロース溶液が挙げられる。一実施形態では、希釈剤は、酢酸緩衝剤及びソルビトールを含むか、又はそれらから本質的になる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の値の10%以上10%以下である値を指す。
【0073】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫治療レジメン
CD3及びCD20に結合する二重特異性抗体(「抗CD3xCD20抗体」)、例えば、ヒトCD3及びヒトCD20に結合する単離された抗CD3xCD20抗体を、レナリドミドと組み合わせて、又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせて使用して、ヒト対象におけるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を治療する方法が本明細書で提供される。方法はまた、例えば、再発性及び/又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(R/Rびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を治療するために有用である。本明細書に記載のCD3及びCD20の両方に結合する二重特異性抗体でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(例えば、R/Rびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を治療する方法は、ヒト対象におけるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(例えば、R/Rびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を治療するための二重特異性抗体の対応する使用も包含することが理解される。
【0074】
したがって、一態様では、ヒト対象におけるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療する方法であって、二重特異性抗体及び有効量のレナリドミド(例えば、経口)、二重特異性抗体並びに有効量のイブルチニブ(例えば、経口)及びレナリドミド(例えば、経口)を投与することを含み、二重特異性抗体が、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、VH領域は、配列番号6のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号7のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、VH領域が、配列番号13のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域が、配列番号14のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含み、
ここで、二重特異性抗体は、24mg又は48mgの用量(又は約24mg若しくは約48mgの用量)で投与され、レナリドミド、又はレナリドミドとイブルチニブ、及び二重特異性抗体は、28日サイクルで投与される、方法が本明細書で提供される。
【0075】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は完全長抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、不活性Fc領域を有する抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、不活性Fc領域を有する完全長抗体である。
【0076】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、24mgの用量(又は約24mgの用量)で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、48mgの用量(又は約48mgの用量)で投与される。
【0077】
投与される二重特異性抗体の24mg若しくは48mgの用量(又は約24mg若しくは約48mgの用量)、又は任意の他の特定の用量に関して、この量は、完全長抗体を提示する二重特異性抗体、例えば実施例の節で定義されるようなエプコリタマブの量を指すと理解される。したがって、24mgの用量の二重特異性抗体を、本明細書に記載される二重特異性抗体の用量の投与として投与することを指し得、ここで、その用量は、24mgの用量のエプコリタマブに対応する。当業者は、例えば、使用される抗体の分子量がエプコリタマブ等の完全長抗体の分子量と実質的に異なる場合、投与される抗体の量を容易に決定することができる。例えば、抗体の量は、抗体の分子量をエプコリタマブ等の完全長抗体の重量で除し、その結果に本明細書に記載の特定の用量を乗じることによって計算することができる。二重特異性抗体(例えば、DuoBody(登録商標)CD3xCD20の機能的バリアント)が、血漿中半減期、Fc不活性、並びに/あるいはCD3及びCD20に対する結合特性に関して、すなわちCDR及びエピトープ結合特徴に関して、DuoBody(登録商標)CD3xCD20と非常に類似した特徴を有する限り、そのような抗体は、エプコリタマブ等の完全長抗体について記載される用量で本明細書に提供される方法における使用に適している。
【0078】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の用量は、28日サイクルで週に1回投与される(毎週投与)。一実施形態では、24又は48mgの毎週の投与が、2.5回の28日サイクル(すなわち、10回)で行われる。一実施形態では、24mg又は48mgの毎週の用量が、2.5回の28日サイクルで、サイクル1の15及び22日目、並びにサイクル2及び3の1、8、15、及び22日目に投与される。いくつかの実施形態では、毎週の投与後、投与間隔を4週間ごとに1回に減少させることができる。一実施形態では、4週間ごとに1回の投与が、長期間、例えば、28日サイクルの少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクル、少なくとも6サイクル、少なくとも7サイクル、少なくとも8サイクル、少なくとも9サイクル、少なくとも10サイクル、少なくとも15サイクル、少なくとも20サイクル、又は1~20サイクル、1~15サイクル、1~10サイクル、1~5サイクル、5~20サイクル、5~15サイクル、又は5~10サイクルにわたって実施され得る。好ましい実施形態では、4週間ごとに1回の投与は、最大8回の28日サイクル、例えば8回の28日サイクル、又は9回の28日サイクルで行われる。別の好ましい実施形態では、4週間ごとに1回の投与が、最大20回の28日サイクル、例えば20回の28日サイクル、又は21回の28日サイクル行われる。
【0079】
一実施形態では、二重特異性抗体の毎週の用量が、サイクル1~3(これは、以下に記載されるように、プライミング及び中間用量を含み得る)において28日サイクルで投与され、4週間ごとに1回の用量が、サイクル4以降、例えば、サイクル4~12、又はサイクル4~24において、あるいは、疾患の進行又は許容できない毒性が対象において認められるまで投与される。
【0080】
本明細書で言及される用量は、例えば、毎週の用量及び/又は4週間ごとの用量が同じレベルで投与される上記のシナリオでは、全用量又はフラット用量とも呼ばれ得ることが理解される。したがって、48mgの用量が選択される場合、好ましくは、各毎週の投与、及び各4週間ごとの投与において、48mgの同じ用量が投与される。用量を投与する前に、プライミング又はプライミング及びその後の中間(第2のプライミング)用量を投与することができる。これは、本明細書に記載の二重特異性抗CD3xCD20抗体による治療中に起こり得る副作用であるサイトカイン放出症候群(CRS)のリスク及び重症度を軽減するのに役立ち得るので有利であり得る。そのようなプライミング、又はプライミング及び中間用量は、フラット又はフル用量と比較してより低い用量である。
【0081】
したがって、いくつかの実施形態では、24mg又は48mgの毎週の用量を投与する前に、28日サイクルのサイクル1において、その二重特異性抗体のプライミング用量を投与することができる。一実施形態では、プライミング用量は、サイクル1で24mg又は48mgの最初の週の用量を投与する2週間前に投与される。一実施形態では、プライミング用量は完全長二重特異性抗体0.16mg(又は約0.16mg)である。
【0082】
いくつかの実施形態では、プライミング用量を投与した後で、24mg又は48mgの週の用量を投与する前に、当該二重特異性抗体の中間用量が投与される。一実施形態では、プライミング用量は、中間用量の1週間前に(すなわち、サイクル1の1日目に)投与され、中間用量は、24mg又は48mgの毎週の用量の最初の用量の1週間前に(すなわち、サイクル1の8日目に)投与される。一実施形態では、中間用量は、800μg(0.8mg)又は約800μg(0.8mg)の完全長二重特異性抗体である。
【0083】
本明細書に記載の方法は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(例えば、R/Rびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を有するヒト対象を、レナリドミド又はレナリドミド又はイブルチニブのレジメンと組み合わせて、CD3及びCD20に結合する二重特異性抗体で治療することを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、レナリドミド、又はイブルチニブ及びレナリドミドは、臨床研究によって支持される用量で、現地のガイドラインに従って、及び/又は関連する現地のラベルに従って投与される。
【0085】
いくつかの実施形態では、イブルチニブは、製品ラベル又は製品特性の概要(例えば、https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2016/205552s007lbl.pdfで入手可能なIMBRUVICA(登録商標)(イブルチニブ)処方情報を参照のこと)に従って投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは420mgの用量(又は約420mgの用量)で投与される。他の実施形態では、イブルチニブは、560mgの用量(又は約560mgの用量)で投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブのバイオシミラーが、本明細書に記載される方法において、イブルチニブの代わりに使用される。
【0086】
いくつかの実施形態では、レナリドミドは、製品ラベル又は製品特性の要約(例えばwww.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2013/021880s034lbl.pdfで入手可能なREVLIMID(登録商標)処方情報を参照されたい)に従って投与される。
【0087】
一実施形態では、イブルチニブは、28日サイクルで1日1回(毎日の投与;7QW)投与される。一実施形態では、イブルチニブの毎日の投与は、少なくとも1回の28日サイクル(すなわち、4回)、例えば、少なくとも10回の28日サイクル、例えば、少なくとも20回の28日サイクル、例えば、24回の28日サイクルで行われる。一実施形態では、レナリドミドは、現地のガイドライン及び現地のラベルに従って投与される。いくつかの実施形態では、レナリドミドは、10mg~25mgの用量(又は約10mg~25mgの用量)で投与される。いくつかの実施形態では、レナリドミドは、20mg~30mgの用量(又は約20mg~30mgの用量)で投与される。一実施形態では、レナリドミドは、20mgの用量(又は約20mgの用量)で投与される。一実施形態では、レナリドミドは、25mgの用量(又は約25mgの用量)で投与される。一実施形態では、レナリドミドは経口用量として投与される。一実施形態では、レナリドミドは、経口投与用のカプセルとして投与される。
【0088】
一実施形態では、レナリドミドは、28日サイクルで21日間連続して(すなわち、1~21日目)、すなわち28日サイクルの1日目から21日目まで1日1回投与される。一実施形態では、レナリドミドは、少なくとも1回の28日サイクル、例えば少なくとも5回の28日サイクル、少なくとも10回の28日サイクル、少なくとも15回の28日サイクル、少なくとも20回の28日サイクル又は少なくとも24回の28日サイクルで投与される。一実施形態では、レナリドミドは、最大12回、例えば12回の28日サイクル(すなわち、28日サイクルのサイクル1~12の1~21日目に)投与される。一実施形態では、レナリドミドは、最大24回の28日サイクル、例えば24回の28日サイクル(すなわち、28日サイクルのサイクル1~24の1~21日目に)投与される。一実施形態では、レナリドミドは、28日サイクルのサイクル1~12の1~21日目に、25mgの用量(又は約25mgの用量)で投与される。一実施形態では、レナリドミドは、28日サイクルのサイクル1~24の1~21日目に、25mgの用量(又は約25mgの用量)で投与される。
【0089】
特定の実施形態では、二重特異性抗体、イブルチニブ及び/又はレナリドミドは同時に投与される。いくつかの実施形態では、レナリドミド、及び二重特異性抗体は同日(例えば、サイクル1~12の1、8、及び15日目)に投与される。
【0090】
いくつかの実施形態では、イブルチニブ、レナリドミド及び二重特異性抗体は、同日(例えば、サイクル1~21の1、8、及び15日目)に投与される。
【0091】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体、イブルチニブ、及び/又はレナリドミドは逐次投与される。
【0092】
いくつかの実施形態では、イブルチニブ(例えば、経口)、レナリドミド(例えば、経口)、及び二重特異性抗体(例えば、皮下)は、28日サイクルで投与され、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4以降では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように投与され、
(b)レナリドミドが、サイクル1以降の1~21日目に投与される、
(c)イブルチニブが、サイクル1以降の1~28日目に場合により投与される。
【0093】
いくつかの実施形態では、レナリドミド(例えば、経口)、及び二重特異性抗体(例えば、皮下)が28日サイクルで投与され、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~12では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、25mg/日の用量でサイクル1~12の1~21日目に経口投与される。
【0094】
いくつかの実施形態では、イブルチニブ(例えば、経口)、レナリドミド(例えば、経口)、及び二重特異性抗体(例えば、皮下)は、28日サイクルで投与され、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与される、
(c)イブルチニブが、560mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される。
【0095】
いくつかの実施形態では、イブルチニブ(例えば、経口)、レナリドミド(例えば、経口)、及び二重特異性抗体(例えば、皮下)は、28日サイクルで投与され、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与される、
(c)イブルチニブが、420mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される。
【0096】
いくつかの実施形態では、イブルチニブ(例えば、経口)、レナリドミド(例えば、経口)、及び二重特異性抗体(例えば、皮下)は、28日サイクルで投与され
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル3以降では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように投与され、
(b)レナリドミドが、サイクル1以降の1~21日目に投与される、
(c)イブルチニブが、サイクル1以降の1~28日目に場合により投与される。
【0097】
いくつかの実施形態では、レナリドミド(例えば、経口)、及び二重特異性抗体(例えば、皮下)は28日サイクルで投与され、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~12では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、25mg/日の用量でサイクル1~12の1~21日目に経口投与される。
【0098】
いくつかの実施形態では、イブルチニブ(例えば、経口)、レナリドミド(例えば、経口)、及び二重特異性抗体(例えば、皮下)は、28日サイクルで投与され、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして
(c)イブルチニブが、560mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される。
【0099】
いくつかの実施形態では、イブルチニブ(例えば、経口)、レナリドミド(例えば、経口)、及び二重特異性抗体(例えば、皮下)は、28日サイクルで投与され、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして
(c)イブルチニブが、420mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される。
【0100】
一実施形態では、28日サイクルにおける二重特異性抗体及びレナリドミドの投与は以下の通りである。
【0101】
二重特異性抗体(皮下):
サイクル1、1日目:プライミング用量(0.16mg)
サイクル1、8日目:中間用量(0.8mg)
サイクル1、15及び22日目:全用量(24又は48mg)
サイクル2~3、1、8、15及び22:全用量(24又は48mg)
サイクル4~12、1日目:全用量(24又は48mg)
レナリドミド(経口):
サイクル1~12、1~21日目:25mg/日
【0102】
更なる実施形態では、二重特異性抗体、イブルチニブ及びレナリドミドの28日サイクルにおける投薬は以下の通りである。
【0103】
二重特異性抗体(皮下):
サイクル1、1日目:プライミング用量(0.16mg)
サイクル1、8日目:中間用量(0.8mg)
サイクル1、15及び22日目:全用量(24又は48mg)
サイクル2~3、1、8、15及び22:全用量(24又は48mg)
サイクル4~24、1日目:全用量(24又は48mg)
イブルチニブ(経口):
サイクル1~24、1~28日目:420mg/日又は560mg/日
レナリドミド(経口):
サイクル1~24、1~21日目:20mg/日
【0104】
いくつかの実施形態では、対象は、組織学的に確認されたCD20+疾患を有するDLBCLを有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、DLBCLは、MYC並びにBCL-2及び/又はBCL-6転座(ダブルヒット又はトリプルヒット)を有する高悪性度B細胞リンパ腫である。
【0106】
いくつかの実施形態では、DLBCLは濾胞性リンパ腫グレード3Bである。
【0107】
いくつかの実施形態では、DLBCLは再発性及び/又は難治性DLBCLである。
【0108】
いくつかの実施形態では、DLBCLは再発した、すなわち、以前の治療に以前に応答していたが、当該以前の治療の後に進行しており、進行は当該以前の治療の完了後6ヶ月又はそれ以降に開始した。
【0109】
いくつかの実施形態では、DLBCLは難治性である、すなわち、以前の治療中に進行したか、以前の治療に対する客観的応答を達成できなかったか、又は維持療法を含む以前の治療の完了後6ヶ月以内に進行したかのいずれかである。
【0110】
いくつかの実施形態では、対象は、抗CD20モノクローナル抗体を含有する少なくとも1つの以前の全身性抗リンパ腫療法に対して再発性又は難治性の疾患を有する。
【0111】
いくつかの実施形態では、DLBCLは以前のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法に対して難治性ではない。
【0112】
いくつかの実施形態では、対象は、自家幹細胞移植(ASCT)に失敗しているか、又はASCTに不適格である。
【0113】
いくつかの実施形態では、対象は、レナリドミド又はイブルチニブに対して難治性ではない。この実施形態の文脈において、不応性は、以下のように定義される。
【0114】
安定疾患(SD)又は進行性疾患(PD)の(1又は複数の)以前のレジメンに対する最良効果、又は
(1又は複数の)以前のレジメンの完了から6ヶ月以内の進行性疾患
【0115】
一実施形態では、対象は、別の全身療法と組み合わせた抗CD20モノクローナル抗体による少なくとも1回の治療を以前に受けている。
【0116】
一実施形態では、対象は、以前のCAR-T療法を受けているか、又はCAR-T療法に対して不適格であるか、若しくはCAR-T療法を受けることができない。
【0117】
更なる実施形態では、対象は、イブルチニブによる以前の治療を受けていない。
【0118】
いくつかの実施形態では、対象は、0、1、又は2のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス(ECOG PS)を有する。ECOG PSスコアに関する情報は、例えば、Oken et al,Am J Clin Oncol 1982 Dec;5(6):649-55)に見出され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、対象は、CT又はMRI上で(a)≧1の測定可能な結節病変(長軸>1.5cm及び短軸>1.0cm)又は≧1の測定可能な節外病変(長軸>1cm)として定義される測定可能な疾患を有する。
【0120】
一実施形態では、対象は、(1又は複数の)PET陽性病変を示す陽電子放射断層撮影/コンピュータ断層撮影(PET/CT)スキャン及びCTスキャン又はMRI上の少なくとも1つの測定可能な結節病変(長軸≧1.5cm及び短軸>1.0cm)又は≧1の測定可能な節外病変(長軸≧1.0cm)として定義される1又は複数の測定可能な疾患部位を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、対象は、最初の用量の二重特異性抗体を受ける前に、以下の基準を満たす実験値を有する。
【0122】
- 絶対好中球数(ANC)≧1.0×109/L(成長因子の使用は、骨髄の関与の証拠が認められる場合に許可されるが、対象は、スクリーニング検査の前の14日以内に成長因子を投与されていてはならない)
- ヘモグロビン≧8.0g/dL(RBC輸血は可能であるが、対象はスクリーニング検査の前の7日以内に輸血を受けていてはならない)
- 血小板数≧75×109/L、又は骨髄浸潤若しくは脾腫がある場合は≧50×109/L(血小板輸血は可能であるが、対象はスクリーニング検査の前の7日以内に輸血を受けていてはならない)
- 血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)又はアラニントランスアミナーゼ(ALT)レベル≦3×ULN
- 総ビリルビン値≦1.5×ULN又は≦5xULN(疾患又は非肝臓起源の肝臓関与を有する対象の場合)。ジルベール症候群を有する対象は、1.5xULN超の総ビリルビン値を有し得るが、直接ビリルビンは2xULN未満でなければならない。
- 推定クレアチニンクリアランス(CrCl)≧50mL/分(Cockcroft-Gault式によって計算され、体重等の要因のために必要に応じて修正される)
プロトロンビン時間(PT)/国際標準化比(INR)/活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)≦1.5×ULN(ただし、抗凝固療法を受けている場合を除く)
【0123】
更なる実施形態では、対象は、以下の通りである。
・ 組織学的に確認されたCD20+疾患を伴うDLBCL(濾胞性リンパ腫又は結節性辺縁帯リンパ腫から新たに又は組織学的に形質転換された)の診断を有していなければならず、WHO2016分類による以下のものを含み、病理報告に記録されている。
・ DLBCLを有していなければならず、別段の指定はない(NOS)
・ WHO2016についてMYC及びBCL-2及び/又はBCL-6転座を有する高悪性度B細胞リンパ腫を有していなければならない(「ダブルヒット」又は「トリプルヒット」)
注:高悪性度B細胞リンパ腫NOS又は他のダブル/トリプルヒットリンパ腫(DLBCLと一致しない組織型を有する)は適格ではない
・濾胞性リンパ腫グレード3Bを有していなければならない
・CD3及びCD20を標的とする二重特異性抗体による以前の治療を受けていてはならない
・ 1又は複数の測定可能な疾患部位を有さなければならない:
・ (1又は複数の)PET陽性病変を実証する陽電子放射断層撮影/コンピュータ断層撮影(PET/CT)スキャン及びCTスキャン又はMRI上の少なくとも1つの測定可能な結節病変(長軸≧1.5cm及び短軸>1.0cm)又は≧1の測定可能な節外病変(長軸≧1.0cm)を有していなければならない
・ 治験責任医師の評価に従って症状及び/又は疾患負荷に基づいて治療開始を受ける資格があり、治療開始の必要性を有さなければならない。
・ Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス0-2でなければならない。
・ 脱毛症を除いて、有害事象の共通用語基準(CTCAE,v5.0)、グレード1に解決されていないと定義される、以前の抗癌療法からの未解決の毒性がない。
・ スクリーニング時に原発性中枢神経系(CNS)腫瘍又は既知のCNS関与(軟髄膜疾患が含まれる)の証拠が現在ない。
・ 抗CD20 mAb療法に対する重度のアレルギー反応若しくはアナフィラキシー反応の病歴がないか、又はエプコリタマブのあらゆる成分若しくは賦形剤又は試験薬併用剤(例えば、レナリドミド、イブルチニブ等)の成分に対する既知の有意なアレルギー若しくは不耐性の病歴がない
・ スクリーニング前3ヶ月以内に自家幹細胞移植を受けていてはならない。
・ エプコリタマブの初回投与前の4週間以内又は5半減期(いずれか短い方)以内に化学療法薬、非治験薬、又は治験薬の抗新生物剤(CD20 mAbを除く)を受けていてはならない。
・ 以下を含む臨床的に有意な心血管疾患がない:
登録前6ヶ月以内の心筋梗塞又は脳卒中、
又は
登録前3ヶ月以内の以下の状態:不安定又は制御不能の心機能(例えば、不安定狭心症、うっ血性心不全、ニューヨーク心臓病学会クラスIII~IV)に関連するか又は影響を及ぼす疾患/状態、制御されない心不整脈
又は
安定で適切に治療されているとみなされない限り、登録前6ヶ月以内の他の臨床的に有意な心電図(ECG)異常。
・ 肝炎、現在のアルコール乱用、又は肝硬変を含む臨床的に重要な肝疾患を有さないこと。
・ 活動性B型肝炎ウイルス(HBV)又はC型肝炎ウイルス(HCV)感染を有さない。
【0124】
B型肝炎コア抗体(HBcAb)、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、又はC型肝炎抗体に対して陽性である対象は、登録前にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)結果が陰性でなければならない。PCR陽性の者は除外される。
【0125】
・ ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の既知の病歴がないこと。注:HIV検査は、現地のガイドライン又は施設の基準に従って必要とされない限り、スクリーニング時に行う必要はない。
・ 登録前2週間以内に静脈内(IV)療法又はIV抗生物質を必要とする、既知の活性細菌、ウイルス、真菌、マイコバクテリア、寄生虫、又は他の感染症(爪床の真菌感染症を除く)がないこと。
・ プロトコルの遵守又は結果の解釈に影響を及ぼし得る有意な制御されていない合併症の証拠がないこと。
・ 以下を除いて、他の以前の悪性腫瘍の病歴がないこと:
治癒目的で治療され、試験薬の初回投与の前の3年以上の間の既知の活動性疾患が存在せず、治療医師によって再発のリスクが低いと見られている悪性腫瘍
疾患の証拠なしに適切に治療された非黒色腫皮膚癌又は悪性黒子
疾患の証拠のないインサイチュで適切に治療された癌腫
限局性前立腺癌、前立腺特異抗原(PSA)レベル<0.1ng/mLの上昇を伴わない根治的前立腺切除術後
・ 登録から4週間以内に、病変を標的とする放射線療法又は大手術を受けていないこと。
・ グレード1を超える神経障害がないこと。
・ 過去12ヶ月以内に活動性結核(TB)又は活動性TBの治療完了の病歴を有していてはならない。
【0126】
注:インターフェロンガンマ放出アッセイ(IGRA)試験は、活動性又は潜在性結核が疑われない限り、スクリーニングで行われる必要はない。IGRA陽性、活動性肺結核の対象については、臨床評価及び放射線画像検査で除外しなければならない。陽性IGRAを有し、活動性疾患の証拠がない対象は、潜在性結核感染の治療(合計6ヶ月間のイソニアジド単剤療法の推奨)が開始された後に登録され得る。
【0127】
・ スクリーニング時にCMVウイルス血症の証拠がないこと(検出下限を超える陽性レベルとして定義される)。
・ 毎日20mgまでのプレドニゾン(又は同等物)を除いて、免疫抑制療法を必要とする現在の自己免疫疾患を有さないこと。
・ 治験責任医師の意見では、対象の安全性を損なう可能性がある、又は研究結果を過度のリスクにさらす可能性がある、生命を脅かす病気、医学的状態、又は器官系機能不全がないこと。
・ 治療を必要とする現在の発作性障害がないこと。
・ 既知の活動性SARS-CoV-2感染がないこと。対象がSARS-CoV-2感染を示唆する徴候/症状を有するか、又はSARS-CoV感染者に最近さらされたことが知られている場合、SARS-CoV-2感染症を除外するために、少なくとも24時間空けて分子(例えば、PCR)試験又は2つの陰性抗原試験結果を受けるべきである。
【0128】
SARS-CoV-2感染適格基準を満たさない対象は、スクリーニングに不合格でなければならず、以下のSARS-CoV-2感染ウイルスクリアランス基準を満たした後にのみ再スクリーニングすることができる:
最初の陽性試験結果から少なくとも10日間が無症候性患者において、又は少なくとも10日間が回復(解熱薬の使用を伴わない発熱の解消及び症状の改善として定義される)から経過した。
・ 試験薬の最初の投与から4週間以内に大きな手術を受けていてはならない。
【0129】
一実施形態では、対象は、スクリーニング時に、原発性中枢神経系(CNS)腫瘍又は既知のCNS関与(軟髄膜疾患が含まれる)の証拠を現在有していない。
【0130】
対象は、抗CD20モノクローナル抗体療法に対する重度のアレルギー反応若しくはアナフィラキシー反応の病歴を有していないか、又はエプコリタマブのあらゆる成分若しくは賦形剤又は試験薬併用剤の成分(例えば、レナリドミド、イブルチニブ等)に対する既知の有意なアレルギー若しくは不耐性を有していない可能性がある。
【0131】
一実施形態では、対象は、スクリーニング前の3ヶ月以内に自己幹細胞移植を受けていてはならない。
【0132】
一実施形態では、対象は、エプコリタマブの初回投与前の4週間以内又は5半減期(いずれか短い方)以内に、化学療法薬、非治験薬、又は治験薬の抗新生物薬(CD20モノクローナル抗体を除く)を受けていてはならない。
【0133】
一実施形態では、対象は、以下を含む臨床的に有意な心血管疾患がない:
登録前6ヶ月以内の心筋梗塞又は脳卒中、
又は
登録前3ヶ月以内の以下の状態:不安定又は制御不能の心機能(例えば、不安定狭心症、うっ血性心不全、ニューヨーク心臓病学会クラスIII~IV)に関連するか又は影響を及ぼす疾患/状態、制御されない心不整脈
又は
安定で適切に治療されているとみなされない限り、登録前6ヶ月以内の他の臨床的に有意な心電図(ECG)異常。
【0134】
左室駆出率(LVEF)は、スクリーニング時にマルチゲート収集(MUGA)又は経胸壁心エコー検査によって施設の正常範囲内にしなければならない。
【0135】
一実施形態では、対象は、以下を除いて、他の以前の悪性腫瘍の病歴を有さない:
治癒目的で治療され、試験薬の初回用量の前の3年以上の間に既知の活動性疾患が存在せず、医師の治療によって再発のリスクが低いと感じられた悪性腫瘍
疾患の証拠なしに適切に治療された非黒色腫皮膚癌又は悪性黒子
疾患の証拠なしに適切に治療された癌腫
限局性前立腺癌、前立腺特異抗原(PSA)レベル<0.1ng/mLの上昇を伴わない根治的前立腺切除術後
【0136】
一実施形態では、対象は、登録の4週間以内に病変を標的とする放射線療法又は大手術を受けていない。
【0137】
一実施形態では、対象は、グレード>1の神経障害を有さない。
【0138】
本明細書に記載される治療を受けるヒト対象は、実施例3に記載される1又は複数の組み入れ基準を有するか、又は実施例3に記載される1又は複数の除外基準を有さない患者であり得る。
【0139】
本明細書に記載の方法は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、例えば再発性及び/又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療するのに有利である。治療は、例えば、本明細書に記載の治療レジメンを使用して継続的に維持される。しかしながら、進行性疾患が発症するか又は許容できない毒性が生じると、治療を終了することができる。
【0140】
本明細書に記載の方法を使用する治療に対するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する対象の応答は、実施例3に記載されるように、悪性リンパ腫に対するLugano応答基準(本明細書では「Lugano基準」とも呼ばれる)及び/又は免疫調節療法基準に対するリンパ腫応答(本明細書では「LYRIC」とも呼ばれる)に従って評価され得る。一実施形態では、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、及び安定疾患(SD)が、Lugano基準を使用して評価される。いくつかの実施形態では、Lugano基準に従って、進行性疾患(PD)とも呼ばれる疾患進行を示す患者を、LYRICに従って更に評価する。完全奏効、部分奏効、無奏効/安定疾患、及び進行性疾患の定義を含むLugano基準/分類系に関する詳細は、Cheson et al.J Clin Oncol 2014;32:3059-68に提供される(特にCheson et al.,2014の表3を参照されたい)。Luganoに関する詳細は、本明細書の実施例2に提供されている。
【0141】
いくつかの実施形態では、対象は、例えば、Lugano基準及び/又はLYRICによって定義されるような疾患進行(PD)を示すまで、本明細書に記載される方法で治療される。一実施形態では、対象は、Lugano基準とLYRICの両方によって定義される疾患進行(PD)を示すまで、本明細書に記載の方法で治療される。
【0142】
本明細書に記載される方法に従って治療される対象は、好ましくは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の少なくとも1つの徴候の改善を経験する。一実施形態では、改善は、測定可能な腫瘍病変の量及び/又はサイズの減少によって測定される。いくつかの実施形態では、病変は、CT(コンピュータ断層撮影)、PET-CT(陽電子放出断層撮影-コンピュータ断層撮影)、又はMRI(磁気共鳴画像法)フィルムで測定することができる。いくつかの実施形態では、細胞学又は組織学を使用して、治療に対する応答性を評価することができる。いくつかの実施形態では、骨髄穿刺液、骨髄生検、腫瘍生検、理学的検査及び/又は臨床検査(例えば、腹水又は胸水中の腫瘍細胞)を使用して、治療に対する応答を評価することができる。
【0143】
一実施形態では、治療される対象は、Lugano基準又はLYRIC(例えば、本明細書の実施例2を参照されたい)によって定義されるような完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、又は安定疾患(SD)を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、場合により、別の療法(例えば、レナリドミド又はレナリドミド及びイブルチニブを単独で用いる治療等)と比較して、長期生存(例えば、無増悪生存期間又は全生存期間等)から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらす。
【0144】
一実施形態では、本明細書に記載される方法において使用される二重特異性抗体は皮下投与され、したがって、皮下(s.c.)投与、すなわち、本明細書に記載される用量での薬学的に許容されるs.c.投与を可能にする製剤及び/又は濃度を有する。いくつかの実施形態では、皮下投与は、注射によって行われる。例えば、皮下製剤と適合性であり、本明細書に記載される方法において使用され得るDuobody(登録商標)CD3xCD20のための製剤は、以前に記載されている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019155008号を参照されたい)。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸、水酸化ナトリウム、ソルビトール、ポリソルベート80、及び注射用水を用いて製剤化され得、5.5又は約5.5のpHを有し得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、5mg/mL又は60mg/mLの濃縮物として提供される。他の実施形態では、二重特異性抗体の所望の用量は、皮下注射のために約1mLの体積に再構成される。
【0145】
一実施形態では、二重特異性抗体に適した医薬組成物は、二重特異性抗体、20~40mMのアセタート、140~160mMのソルビトール、及び界面活性剤、例えばポリソルベート80を含み得、pHは5.3~5.6である。別の実施形態では、医薬製剤は、5~100mg/mLの範囲、例えば48又は60mg/mLの二重特異性抗体、30mMのアセタート、150mMのソルビトール、0.04%w/vポリソルベート80の抗体濃度を含み得、5.5のpHを有し得る。そのような製剤は、適切な投与及び皮下投与を可能にするために、例えば製剤緩衝剤で希釈され得る。
【0146】
医薬組成物の体積は、抗体の皮下投与を可能にするように適切に選択される。例えば、投与される体積は、約0.3mL~約3mL、例えば0.3mL~3mLの範囲である。投与される体積は、0.5mL、0.8mL、1mL、1.2mL、1.5ml、1.7mL、2mL、若しくは2.5mL、又は約0.5mL、約0.8mL、約1mL、約1.2mL、約1.5ml、約1.7mL、約2mL、若しくは約2.5mLであり得る。したがって、一実施形態では、投与される体積は、0.5mL又は約0.5mLである。いくつかの実施形態では、投与される体積は、0.8mL又は約0.8mLである。いくつかの実施形態では、投与される体積は、1mL又は約1mLである。いくつかの実施形態では、投与される体積は、1.2mL又は約1.2mLである。いくつかの実施形態では、投与される体積は、1.5mL又は約1.5mLである。いくつかの実施形態では、投与される体積は、1.7mL又は約1.7mLである。いくつかの実施形態では、投与される体積は、2mL又は約2mLである。いくつかの実施形態では、投与される体積は、2.5mL又は約2.5mLである。
【0147】
一実施形態では、イブルチニブは、例えば、現地のガイドライン又は現地の製品ラベルによって指定されるように、現地の標準治療の慣例に従って投与(例えば、経口投与)するための薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物において製剤化される。例えば、いくつかの実施形態では、イブルチニブは、経口剤形、例えば、カプセル剤で提供される。
【0148】
一実施形態では、レナリドミドは、例えば、現地のガイドライン又は現地の製品ラベルによって指定されているように、例えば現地の標準治療の慣例に従って、投与(例えば、経口投与)に適した薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に製剤化される。いくつかの実施形態では、レナリドミドは、経口剤形、例えばカプセルで製剤化される。いくつかの実施形態では、レナリドミドは、レナリドミド、無水ラクトース、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを含むカプセルとして製剤化される。
【0149】
一実施形態では、本明細書に記載される方法において使用される二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、VH領域は、配列番号6のアミノ酸配列内のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号7のアミノ酸配列内のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、VH領域が、配列番号13のアミノ酸配列内のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域が、配列番号14のアミノ酸配列内のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含む。
【0150】
CDR1、CDR2及びCDR3領域は、当技術分野で公知の方法を使用して可変重鎖及び軽鎖領域から同定することができる。当該可変重鎖領域及び可変軽鎖領域からのCDR領域は、IMGT(Lefranc et al.,Nucleic Acids Research 1999;27:209-12,1999]及びBrochet.Nucl Acids Res 2008;36:W503-8を参照されたい)に従って注釈を付けることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、それぞれ配列番号1、2、及び3に示されるアミノ酸配列VHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3と、それぞれ配列番号4、配列GTN、及び配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3とを含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、それぞれ配列番号8、9、及び10に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3と、それぞれ配列番号11、配列DAS及び配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とを含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームと、を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号7のアミノ酸配列を含むVL領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号14のアミノ酸配列を含むVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームと、を含む。
【0153】
一実施形態では、二重特異性抗体は完全長抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は不活性Fc領域を有する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は完全長抗体であり、不活性Fc領域を有する。いくつかの実施形態では、CD3に対する第1の結合アームは、ヒト化抗体、例えば参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015001085号に記載されているH1L1等の完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来し、及び/又はCD20に対する第2の結合アームは、ヒト抗体、例えば参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2004035607号に記載されているクローン7D8等の完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。二重特異性抗体は、例えば、配列番号24及び25、並びに配列番号26及び27に示されるそれぞれの第1及び第2の結合アームを含む2つの半分子抗体から産生され得る。半抗体は、CHO細胞において産生され得、二重特異性抗体は、例えばFabアーム交換によって生成され得る。一実施形態では、二重特異性抗体は、DuoBody(登録商標)CD3xCD20の機能的バリアントである。
【0154】
したがって、いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、配列番号6と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むVH領域、又は配列番号6のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有するVH領域、及び配列番号7と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むVL領域、又は配列番号7のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有するVL領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、配列番号13と少なくとも85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むVH領域、又は配列番号13のアミノ酸配列を含むが1、2、若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有するVH領域、及び配列番号14と少なくとも85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むVL領域、又は配列番号14のアミノ酸配列を含むが1、2、若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有するVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームと、を含む。
【0155】
一実施形態では、二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、配列番号26のアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号27のアミノ酸配列を含むVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームと、を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、配列番号24と少なくとも85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号24のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有する重鎖、及び配列番号25と少なくとも85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、又は配列番号25のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有する軽鎖領域を含む、第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、配列番号26と少なくとも85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号26のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有する重鎖、及び配列番号27と少なくとも85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、又は配列番号27のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有する軽鎖領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームと、を含む。
【0157】
二重特異性抗体には、様々な定常領域又はそのバリアントが使用され得る。一実施形態では、抗体は、IgG定常領域、例えばヒトIgG1定常領域、例えば配列番号15で定義されるヒトIgG1定常領域、又は任意の他の適切なIgG1アロタイプを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、ヒトIgG1定常領域を有する完全長抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第1の結合アームは、ヒト化抗体、好ましくは完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来する。一実施形態では、二重特異性抗体の第1の結合アームは、ヒト化抗体、例えば完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来し、したがってλ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の結合アームは、配列番号22に定義されるλ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第2の結合アームは、ヒト抗体、好ましくは完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第2の結合アームは、ヒト抗体、好ましくは完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来し、したがってκ軽鎖定常領域を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の結合アームは、配列番号23に定義されるκ軽鎖定常領域を含む。好ましい実施形態では、第1の結合アームは、配列番号22に定義されるλ軽鎖定常領域を含み、第2の結合アームは、配列番号23に定義されるκ軽鎖定常領域を含む。
【0158】
二重特異性抗体の定常領域部分は、二重特異性抗体の効率的な形成/産生を可能にする及び/又は不活性Fc領域を提供する修飾を含み得ることが理解される。そのような修飾は当技術分野で周知である。
【0159】
二重特異性抗体の異なるフォーマットが当技術分野で公知である(Kontermann,Drug Discov Today 2015;20:838-47;MAbs,2012;4:182-97で概説される)。したがって、本明細書に記載される方法及び使用において使用される二重特異性抗体は、いかなる特定の二重特異性フォーマット又はその作製方法にも限定されない。例えば、二重特異性抗体には、ヘテロ二量体化を強制する相補的CH3ドメインを有する二重特異性抗体、ノブ-イントゥ・ホール分子(Genentech、国際公開第9850431号)、CrossMAb(Roche、国際公開第2011117329号)、又は静電的にマッチさせた分子(Amgen、欧州特許第1870459号及び国際公開第2009089004号;Chugai、米国特許出願公開第201000155133号明細書;Oncomed、国際公開第2010129304号)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0160】
好ましくは、二重特異性抗体は、第1のCH3領域を含む第1のFc配列を有する第1の重鎖と、第2のCH3領域を含む第2のFc配列を有する第2の重鎖と、を含むFc領域を含み、第1及び第2のCH3領域の配列は異なり、当該第1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用が当該第1及び第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれよりも強いようなものである。これらの相互作用及びそれらがどのようにして達成され得るかに関する更なる詳細は、例えば、国際公開第2011131746号及び国際公開第2013060867号(Genmab)に提供されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、二重特異性抗体は、第1の重鎖に(i)配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸Lを含み、第2の重鎖に配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸Rを含み、又はその逆も同様である。
【0161】
二重特異性抗体は、Fc領域を不活性又は非活性化にするためのFc領域中の修飾を含み得る。したがって、本明細書に開示される二重特異性抗体において、一方又は両方の重鎖は、抗体がFc媒介エフェクター機能を、修飾を有さない二重特異性抗体と比較してより少ない程度で誘導するように修飾され得る。Fc媒介エフェクター機能は、T細胞(すなわち、CD3抗体媒介Fcγ受容体依存性CD3架橋の結果としてのCD69発現)上のFc媒介性CD69発現を決定することによって、Fcγ受容体に結合することによって、C1qに結合することによって、又はFcγRのFc媒介性架橋の誘導によって測定することができる。特に、重鎖定常領域配列は、Fc媒介CD69発現が、野生型(非修飾)抗体と比較した場合、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%又は100%低下するように修飾されていてもよく、当該Fc媒介CD69発現は、例えば国際公開第2015001085号の実施例3に記載されているようなPBMCベースの機能アッセイで決定される。重鎖定常領域配列及び軽鎖定常領域配列の修飾はまた、当該抗体へのC1qの結合の減少をもたらし得る。未修飾抗体と比較して、減少は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は100%であり得、C1q結合は、例えばELISAによって決定され得る。更に、Fc領域は、抗体が未修飾抗体と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%又は100%低下したFc媒介性T細胞増殖を媒介するように修飾され得、当該T細胞増殖がPBMCベースの機能アッセイで測定される。例えばIgG1アイソタイプ抗体において修飾され得るアミノ酸位置の例としては、位置L234及びL235が挙げられる。したがって、一実施形態では、二重特異性抗体は、第1の重鎖及び第2の重鎖を含み得、第1の重鎖及び第2の重鎖の両方において、EuナンバリングによるヒトIgG1重鎖の位置L234及びL235に対応する位置のアミノ酸残基は、それぞれF及びEである。更に、D265Aアミノ酸置換は、全てのFcγ受容体への結合を減少させ、ADCCを防止することができる(Shields et al.,JBC 2001;276:6591-604)。したがって、二重特異性抗体は、第1の重鎖及び第2の重鎖を含み得、第1の重鎖及び第2の重鎖の両方において、EuナンバリングによるヒトIgG1重鎖の位置D265に対応する位置のアミノ酸残基はAである。
【0162】
一実施形態では、二重特異性抗体の第1の重鎖及び第2の重鎖において、ヒトIgG1重鎖の位置L234、L235、及びD265に相当する位置のアミノ酸は、それぞれF、E及びAである。これらのアミノ酸をこれらの位置に有する抗体は、不活性Fc領域又は非活性Fc領域を有する抗体の一例である。
【0163】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、第1の重鎖及び第2の重鎖の両方において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235、及びD265の位置に対応する位置のアミノ酸はそれぞれF、E、及びAである。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、第1の重鎖では、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸はLであり、第2の重鎖では、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸はRであり、又はその逆も同様である。好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、
(i)第1及び第2の重鎖の両方において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域の位置L234、L235、及びD265に対応する位置のアミノ酸はそれぞれF、E、及びAであり、
(ii)第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸はLであり、第2の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸はRであり、又はそれらの逆も同様である。
【0164】
本明細書に記載される二重特異性抗体に関して、3つのアミノ酸置換L234F、L235E及びD265Aの組合せを有し、加えて、上で記載されるようなK409R又はF405L変異を有するものは、それぞれ接尾辞「FEAR」又は「FEAL」で示され得る。
【0165】
野生型IgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列は、本明細書では配列番号15として同定され得る。上記で開示される実施形態と一致して、二重特異性抗体は、F405L置換を担持するIgG1重鎖定常領域を含み得、配列番号17に示されるアミノ酸配列及び/又はK409R置換を担持するIgG1重鎖定常領域を有し得、配列番号18に示されるアミノ酸配列を有し得、Fc領域を不活性又は非活性にする更なる置換を有し得る。したがって、一実施形態では、二重特異性抗体は、IgG1重鎖定常領域と、L234F、L235E、D265A及びF405L置換を有するIgG1重鎖定常領域の一方のアミノ酸配列(例えば、配列番号19に示すように)と、L234F、L235E、D265A及びK409R置換を有する他方のIgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列(例えば、配列番号20に示すように)との組合せを含む。したがって、いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0166】
好ましい実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用において使用される二重特異性抗体は、それぞれ配列番号24及び25で定義される重鎖及び軽鎖を含む第1の結合アームと、それぞれ配列番号26及び27で定義される重鎖及び軽鎖を含む第2の結合アームとを含む。そのような抗体は、本明細書ではDuoBody(登録商標)CD3xCD20と呼ばれる。また、そのような抗体のバリアントは、本明細書に記載の方法及び使用における使用が企図される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、それぞれ配列番号24及び25に示されるアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27に示されるアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖とを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、エプコリタマブ(CAS 2134641-34-0)又はそのバイオシミラーである。
【0167】
医療用途
上に開示される方法において使用するための二重特異性抗体を、本明細書に更に提供する。
【0168】
特定の実施形態では、二重特異性抗体は、ヒト対象におけるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を治療する方法において使用するためのものであり、ここで、二重特異性抗体は、有効量のレナリドミド、及び場合により、有効量のイブルチニブと組み合わせて対象に投与され、ここで、二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、VH領域は、配列番号6のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号7のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、VH領域は、配列番号13のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号14のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含み、
二重特異性抗体は、24mg又は48mgの用量で投与され、レナリドミド、二重特異性抗体及び場合によりイブルチニブが28日サイクルで投与される。
【0169】
上に開示される方法において使用するための医薬品を製造するための二重特異性抗体も本明細書に提供される。
【0170】
特に、二重特異性抗体は、ヒト対象におけるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療に使用するための医薬品を製造するためのものであり、ここで、二重特異性抗体は、有効量のレナリドミド及び場合により有効量のイブルチニブと組み合わせて対象に投与され、ここで、二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、VH領域は、配列番号6のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号7のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、VH領域は、配列番号13のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号14のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含み、
二重特異性抗体は、24mg又は48mgの用量で投与され、レナリドミド、二重特異性抗体及び場合によりイブルチニブが28日サイクルで投与される。
【0171】
キット
DuoBody(登録商標)CD3xCD20又はエプコリタマブ等の本発明によるCD3及びCD20に結合する二重特異性抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を、本明細書に記載の方法での使用に適合した治療有効量で含むキットも本明細書で提供される。キットはまた、イブルチニブ(例えば、経口投与用)及び/又はレナリドミド(例えば、経口投与用)を含有する医薬組成物を含み得る。キットは、レナリドミド(例えば、経口投与用)を含有する医薬組成物を更に含み得る。キットはまた、場合により、実行者(例えば、医師、看護師、又は患者)が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者に、そこに含有される1又は複数の組成物を投与することを可能にするための、例えば投与スケジュールを含む説明書を含み得る。キットはまた、1又は複数のシリンジを含むことができる。
【0172】
場合により、キットは、本明細書に記載される方法に従って単回投与のための有効量の二重特異性抗体をそれぞれ含む単回投与医薬組成物の複数のパッケージを含む。それらはまた、標準的な実施レジメンに従ってイブルチニブ及び/又はレナリドミドの用量を含有する単回用量医薬組成物の複数のパッケージを含み得る。(1又は複数の)医薬組成物を投与するために必要な器具又は装置もキットに含まれ得る。
【0173】
更なる実施形態
1.ヒト対象におけるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を治療する方法であって、前記方法は、二重特異性抗体と、有効量のレナリドミドと、場合により有効量のイブルチニブとを対象に投与することを含み、二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、VH領域は、配列番号6のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号7のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、VH領域は、配列番号13のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号14のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含み、
二重特異性抗体は、24mg又は48mgの用量で投与され、レナリドミド、二重特異性抗体及び場合によりイブルチニブが28日サイクルで投与される、前記方法。
【0174】
2.二重特異性抗体が、24mgの用量で投与される、実施形態1に記載の方法。
【0175】
3.二重特異性抗体が、48mgの用量で投与される、実施形態1に記載の方法。
【0176】
4.二重特異性抗体が、週に1回投与される(毎週投与される)、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
5.24mg又は48mgの毎週の投与が2.5回の28日サイクルにわたって行われる、実施形態4に記載の方法。
【0178】
6.週1回投与の後、二重特異性抗体が、4週間ごとに1回、例えば28日サイクルで、各28日サイクルの1日目に投与される、実施形態4又は5に記載の方法。
【0179】
7.4週間ごとに1回の投与が、少なくとも8回の28日サイクル、例えば8回の28日サイクルにわたって行われる、実施形態6に記載の方法。
【0180】
8.4週間ごとに1回の投与が、少なくとも20回の28日サイクル、例えば20回の28日サイクルにわたって行われる、実施形態6に記載の方法。
【0181】
9.24mg又は48mgの毎週の投与の前に、二重特異性抗体のプライミング用量が、28日サイクルのサイクル1で投与される、実施形態4~8のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
10.プライミング用量が、24mg又は48mgの最初の週の用量を投与する2週間前に投与される、実施形態9に記載の方法。
【0183】
11.プライミング用量が0.16mgである、実施形態9又は10に記載の方法。
【0184】
12.プライミング用量を投与した後で、24mg又は48mgの最初の週の用量を投与する前に、二重特異性抗体の中間用量が投与される、実施形態9~11のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
13.プライミング用量が1日目に投与され、中間用量が8日目に投与され、その後、サイクル1の15及び22日目に24mg又は48mgの最初の週の用量が投与される、実施形態12に記載の方法。
【0186】
14.中間用量が0.8mgである、実施形態12又は13に記載の方法。
【0187】
15.レナリドミドが、28日サイクルの1日目から21日目まで1日1回投与される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
16.レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル12まで投与される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
17.レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル24まで投与される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
18.レナリドミドが20~30mg、例えば25mgの用量で投与される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
19.レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル12において20~30mgの用量で投与される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
20.レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル12において25mgの用量で投与される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
21.レナリドミドが10~25mg、例えば25mgの用量で投与される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
22.レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル24において10~25mgの用量で投与される、実施形態1~14及び21のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
23.レナリドミドが、28日サイクルのサイクル1からサイクル24において20mgの用量で投与される、実施形態1~14及び21~22のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
24.イブルチニブが、28日サイクルの1日目から28日目まで1日に1回投与される、実施形態1~14及び21~23のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
25.イブルチニブが、28日サイクルのサイクル1からサイクル24まで投与される、実施形態1~14及び21~24のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
26.イブルチニブが、280mg~560mg、例えば、280、420mg又は560mgの用量で投与される、実施形態1~14及び21~25のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
27.イブルチニブが、28日サイクルのサイクル1からサイクル24において560mgの用量で、又は28日サイクルのサイクル1からサイクル24において420mgの用量で投与される、実施形態1~14及び21~25のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
28.投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4以降では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように投与され、
(b)レナリドミドが、サイクル1以降の1~21日目に投与され、そして、
(c)イブルチニブが、サイクル1以降の1~28日目に場合により投与される、
実施形態1、2、及び4~27のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
29.投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~12では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、25mg/日の用量でサイクル1~12の1~21日目に経口投与される、
実施形態1、2、及び4~28のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
30.投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして、
(c)イブルチニブが、560mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される
実施形態1、2、及び4~29のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
31.投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、24mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2~3では、24mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、24mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして、
(c)イブルチニブが、420mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される
実施形態1、2、及び4~29のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
32.投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル3以降では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように投与され、
(b)レナリドミドが、サイクル1以降の1~21日目に投与され、そして、
(c)イブルチニブが、サイクル1以降の1~28日目に場合により投与される、
実施形態1及び3~27のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
33.投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~12では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、25mg/日の用量でサイクル1~12の1~21日目に経口投与される、
実施形態1、3~27及び31のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
34.投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして、
(c)イブルチニブが、560mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される
実施形態1、3~27及び31~33のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
35.投与が28日サイクルで行われ、
(a)二重特異性抗体が、以下:
(i)サイクル1では、0.16mgのプライミング用量が1日目に投与され、0.8mgの中間用量が8日目に投与され、48mgの用量が15及び22日目に投与される、
(ii)サイクル2及び3では、48mgの用量が、1、8、15、及び22日目に投与される、
(iii)サイクル4~24では、48mgの用量が、1日目に投与される、のように皮下投与され、
(b)レナリドミドが、20mg/日の用量でサイクル1~24の1~21日目に経口投与され、そして、
(c)イブルチニブが、420mg/日の用量でサイクル1~24の1~28日目に経口投与される
実施形態1、3~27及び31~32のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
36.二重特異性抗体が皮下投与される、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0209】
37.イブルチニブが経口投与される、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
38.レナリドミドが経口投与される、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
39.二重特異性抗体、レナリドミド及び場合によりイブルチニブが逐次投与される、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
【0212】
40.DLBCLが、組織学的に確認されたCD20+疾患を有する、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
41.DLBCLが、MYC並びにBCL-2及び/又はBCL-6転座(ダブルヒット又はトリプルヒット)を有する高悪性度B細胞リンパ腫である、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
42.DLBCLが濾胞性リンパ腫グレード3Bである、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
43.DLBCLが再発性及び/又は難治性DLBCLである、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0216】
44.DLBCLが再発した、すなわち、以前の治療に以前に応答していたが、当該以前の治療の後に進行しており、進行は当該以前の治療の完了後6ヶ月又はそれ以降に開始した、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
45.DLBCLが難治性である、すなわち、以前の治療中に進行したか、以前の治療に対する客観的応答を達成できなかったか、又は維持療法を含む以前の治療の完了後6ヶ月以内に進行したかのいずれかである、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
【0218】
46.対象が、抗CD20モノクローナル抗体を含有する少なくとも1つの以前の全身性抗リンパ腫療法に対して再発性又は難治性の疾患を有する、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法。
【0219】
47.DLBCLが、以前のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法に対して難治性でない、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
48.対象が、レナリドミド又はイブルチニブに対して難治性でない、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法。
【0221】
49.対象が、別の全身療法と組み合わせた抗CD20モノクローナル抗体による少なくとも1回の治療を以前に受けたことがある、実施形態1~48のいずれか1つに記載の方法。
【0222】
50.対象が以前にCAR-T療法を受けたことがあるか、又はCAR-T療法に対して不適格であるか若しくはCAR-T療法を受けることができない、実施形態1~49のいずれか1つに記載の方法。
【0223】
51.対象がイブルチニブによる以前の治療を受けていない、実施形態1~50のいずれか1つに記載の方法。
【0224】
52.(i)二重特異性抗体の第1の抗原結合領域が、それぞれ配列番号1、2、及び3に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3と、それぞれ配列番号4、配列GTN、及び配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3とを含み、
(ii)二重特異性抗体の第2の抗原結合領域が、それぞれ配列番号8、9、及び10に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3と、それぞれ配列番号11、配列DAS、及び配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3と、を含む、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法。
【0225】
53.(i)二重特異性抗体の第1の抗原結合領域が、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含むVL領域と、を含み、
(ii)二重特異性抗体の第2の抗原結合領域が、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号14のアミノ酸配列を含むVL領域と、を含む、実施形態1~52のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
54.二重特異性抗体の第1の結合アームがヒト化抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来する、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法。
【0227】
55.二重特異性抗体の第1の結合アームが、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むλ軽鎖定常領域を含む、実施形態54に記載の方法。
【0228】
56.二重特異性抗体の第2の結合アームがヒト抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来する、実施形態1~55のいずれか1つに記載の方法。
【0229】
57.第2の結合アームが、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含むκ軽鎖定常領域を含む、実施形態56に記載の方法。
【0230】
58.二重特異性抗体が、ヒトIgG1定常領域を有する完全長抗体である、実施形態1~57のいずれか1つに記載の方法。
【0231】
59.二重特異性抗体が不活性Fc領域を含む、実施形態1~58のいずれか1つに記載の方法。
【0232】
60.二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、第1の重鎖及び第2の重鎖の両方において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235、及びD265位に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E及びAである、実施形態1~59のいずれか1つに記載の方法。
【0233】
61.二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、第2の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸がRであり、又はそれらの逆も同様である、実施形態1~60のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
62.二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、
(i)第1及び第2の重鎖の両方において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235、及びD265位に対応する位置のアミノ酸はそれぞれF、E、及びAである、
(ii)第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸はLであり、第2の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸はRであり、又はそれらの逆も同様である、実施形態1~61のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
63.二重特異性抗体が、配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、実施形態62に記載の方法。
【0236】
64.二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24及び25に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖と、を含む、実施形態1~63のいずれか1つに記載の方法。
【0237】
65.二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24及び25のアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27のアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖と、を含む、実施形態1~64のいずれか1つに記載の方法。
【0238】
66.二重特異性抗体がエプコリタマブ、又はそのバイオシミラーである、実施形態1~65のいずれか1つに記載の方法。
【0239】
[実施例]
DuoBody(登録商標)-CD3xCD20
DuoBody(登録商標)-CD3xCD20は、T細胞抗原CD3及びB細胞抗原CD20を認識するbsAbである。DuoBody(登録商標)-CD3xCD20は、CD20発現細胞の強力なT細胞媒介殺傷を引き起こす。DuoBody(登録商標)-CD3xCD20は、規則的なIgG1構造を有する。
【0240】
2つの親抗体、IgG1-CD3-FEAL、それぞれ配列番号24及び25に記載の重鎖及び軽鎖配列を有するヒト化IgG1λ、CD3ε特異的抗体、並びにそれぞれ配列番号26及び27に記載の重鎖及び軽鎖配列を有するヒトIgG1 κCD20特異的抗体7D8に由来するIgG1-CD20-FEARを、別々の生物学的中間体として製造した。各親抗体は、DuoBody(登録商標)分子の生成に必要なCH3ドメイン中の相補的変異の1つを含有する(それぞれF405L及びK409R)。親抗体は、Fc領域に3つの更なる変異を含んでいた(L234F、L235E及びD265A;FEA)。標準的な懸濁細胞培養及び精製技術を使用して、哺乳動物チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株において親抗体を産生した。その後、DuoBody(登録商標)-CD3xCD20を、制御されたFabアーム交換(cFAE)プロセスによって製造した(Labrijn et al.2013,Labrijn et al.2014,Gramer et al.2013)。親抗体を混合し、制御された還元条件に供する。これは、再酸化下で再集合する親抗体の分離をもたらす。このようにして、DuoBody(登録商標)-CD3xCD20(約93~95%)の高純度調製物を得た。更に研磨/精製した後、純度100%に近い最終生成物を得た。DuoBody(登録商標)-CD3xCD20濃度を、理論的吸光係数ε=1.597mL・mg-1cm-1を用いて、280nmでの吸光度によって測定した。最終生成物を4℃で保存した。本製品は、エプコリタマブの国際商標名を有する。
【0241】
エプコリタマブは、皮下(SC)注射用溶液の濃縮物として供給される、無色~わずかに黄色の滅菌透明溶液として調製される(5mg/mL又は60mg/mL)。エプコリタマブは、緩衝剤及び等張化剤を含有する。製剤化された製品中の全ての賦形剤及びその量は、皮下注射製品について薬学的に許容される。適切な用量は、皮下注射のために約1mLの体積に再構成される。
【0242】
[実施例1]
インビトロでのエプコリタマブによって誘導されるT細胞媒介性細胞傷害に対するレナリドミドの影響
この実験は、Duobody(登録商標)-CD3xCD20によって誘導されるT細胞活性化及びT細胞媒介性細胞傷害に対するレナリドミドの影響を決定するために行った。
【0243】
手短に言えば、T細胞を、レナリドミドの存在下(5又は50μM)又は非存在下で3日間、固定化抗CD3で活性化した。レナリドミドの存在下でのT細胞上のCD3の架橋は、レナリドミドが存在しない条件と比較して、T細胞表面上の活性化マーカーCD69、CD25の上方制御、並びにグランザイムB及びIFNγの放出によって測定されるT細胞活性化の増加をもたらした(図1参照)。その後、レナリドミドの存在下又は非存在下で活性化されたT細胞を、エプコリタマブに応答したそれらの細胞傷害能力について試験した。レナリドミド及び抗CD3で前処理したT細胞では、典型的な用量反応曲線において、より低いエプコリタマブ濃度でより高い最大細胞傷害パーセント及びより高い活性が観察されたが、対照はいずれも更なる標的細胞溶解を引き起こさなかった(図2参照)。
【0244】
これは、レナリドミドが、患者において観察されたエプコリタマブによるT細胞活性化を増強し得、これにより、標的細胞に対するより効率的なT細胞媒介性細胞傷害性がもたらされ得ることを示している。
【0245】
[実施例2]
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する対象におけるレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせたエプコリタマブの安全性及び認容性を評価するための第1b/2相非盲検試験
DLBCLと診断された対象における、レナリドミドと組み合わせた、又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせたエプコリタマブの安全性、認容性、及び予備的有効性を評価する第1b/2相非盲検多施設介入試験。この試験には、用量漸増期とそれに続く拡大期が含まれる。
【0246】
エプコリタマブを用いた進行中の臨床試験の概要
単剤療法としてのエプコリタマブは、現在、R/R B-NHLの治療のための臨床試験中である(ClinicalTrials.gov識別子:NCT03625037)。
【0247】
SCエプコリタマブ単独療法を評価する第1相試験は、DLBCLを含むR/R NHLを有する対象を含んでいた。試験の用量漸増部は、用量範囲(12~60mg)を評価した。0.16mgの週1回のプライミング用量及び0.8mgの週1回の中間用量の後、48mgの全用量をRP2Dとして選択した。
【0248】
第2相試験には、漸増期に24mg及び48mgの用量で評価された、DLBCLを含むR/R NHL、並びに治療未経験DLBCLを有する対象が含まれた。エプコリタマブによる臨床的に有意で説得力のある有効性が、第1/2相試験(NCT03625037)試験において再発性又は難治性(R/R)B-NHLを有する患者の間で認められ、これには、管理可能な安全性プロファイルを有する高難治性大細胞型B細胞リンパ腫を有する集団(n=157)における、深く永続的な応答(全奏効率(ORR)、63%;完全奏効(CR]率、39%;奏効期間中央値(DOR)、12ヶ月)が含まれる(J.Clin.Oncol.December 22,2022:DOI https://doi.org/10.1200/JCO.22.01725)。
【0249】
エプコリタマブ及びリツキシマブ+レナリドミド(R2)を用いた併用療法は、進行中の第1/2相試験(NCT04663347)で調査中である。皮下エプコリタマブ+Rによる併用治療は、R/R FLを有する患者において高いCMR率をもたらし、患者の73%(30/41)が完全代謝応答(CMR)を達成した。CRS事象は全てグレード1(27%)又はグレード2(10%)であり、ほとんどが最初の全用量に関連し、低グレードであり、消散した。新たな安全シグナルは検出されなかった(Falchi et al,Blood(2022)140(Supplement 1):1464-1466)。
【0250】
DLBCLと新たに診断された高リスク患者において、GELF基準を満たした以前に未治療のFLグレード1~3Aの患者は、エプコリタマブ48mg+Rを28日の12Cで受けた。エプコリタマブをC1-2及びQ4W+のQWで最長2年間投与した。サイトカイン放出症候群(CRS)を軽減するために、C1の間に段階的投薬及びコルチコステロイド予防が必要であった。2022年6月10日現在、41名の患者が治療を受けていた。年齢の中央値は57歳(範囲、39~78)であり、最初の診断から最初の投与までの時間の中央値は12週間(範囲、2~352)であり、ほとんどの患者(85%)がグレード2/3A FLを有し、90%がステージIII/IV疾患を有し、34%がFLIPI3~5を有していた。4.4ヶ月(範囲、0.7~7.5)の追跡中央値で、患者の88%が治療を継続した。最も一般的な治療下で発現する有害事象(TEAE)は、CRS(51%;34%グレード1、17%グレード2)、好中球減少症、発熱、注射部位反応、疲労、頭痛、便秘、及び発疹であった。ほとんどのCRS事象は最初の全用量後に起こり、全て中央値4日で解消した。ICANS又は臨床腫瘍溶解症候群の症例は観察されなかった。致死的なTEAE:COVID-19肺炎(エプコリタマブに関連しない)が1つあった。有効性評価可能な患者(n=29)において、全奏効率及び完全代謝応答率は90%及び69%であった。全ての応答はデータカットオフ時に進行中であった。
【0251】
この試験から、エプコリタマブ+Rは、新たに診断されたDLBCLを有する患者において、R/R疾患を有する患者と同様に、管理可能な安全性プロファイルを示したと結論付けられた。CRS事象は低悪性度であり、最初の全用量の時点付近で発生した。
【0252】
目的及びエンドポイント
主要目的
・ DLBCLを有する対象における、レナリドミド又はレナリドミド及びイブルチニブと同時投与した場合のエプコリタマブの安全性及び毒性プロフィールを特徴付けること。
・ DLBCLを有する対象においてレナリドミド又はレナリドミド及びイブルチニブと同時投与された場合のエプコリタマブの更なる調査のための推奨用量を決定すること。
【0253】
副次目的
・ DLBCLを有する対象において、レナリドミド又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせて投与した場合のエプコリタマブの抗NHL活性を評価すること。
・ DLBCLを有する対象において、レナリドミド又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせて投与した場合のエプコリタマブの薬物動態を特徴付けること。
【0254】
探索的目的
・ 治療に対する応答又は耐性の潜在的な機構を評価すること
・ エプコリタマブの免疫原性の評価
・ 患者報告アウトカム手段(PRO)、癌治療の機能評価-リンパ腫(FACT-Lym)及びEuroQol 5 Dimensions 5 Levels(EQ-5D-5L)を介した患者の生活の質(QOL)への影響を評価すること。
【0255】
主要エンドポイント
主要エンドポイントは、レナリドミドと組み合わせた、又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせたエプコリタマブの用量制限毒性(DLT)である。
【0256】
副次エンドポイント
・ レナリドミド又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせたエプコリタマブについて治験責任医師によって評価された、Lugano2014基準による全奏効率(ORR)。
・ レナリドミド又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせたエプコリタマブの抗リンパ腫活性:
・ 治験責任医師によって評価されたLugano2014基準に従って決定された奏効期間(DOR)
・ 治験責任医師によって評価されたLugano2014基準に従って決定された無増悪生存期間(PFS)
・ 治験責任医師によって評価されたLugano2014基準に従って決定された完全奏効(CR)率
・ 治験責任医師によって評価されたLugano2014基準に従って決定された奏効時間(TTR)
・ 次の抗リンパ腫治療(TTNT)までの時間
・ 最小残存病変(MRD)陰性の割合及び持続期間
・ 全生存期間(OS)
【0257】
安全性エンドポイント
試験期間中の安全性及び忍容性の評価には、それだけに限らないが、以下が含まれる。
【0258】
・ 特別な関心対象の有害事象(AESI)を含む有害事象(AE)の重症度及び発生率の監視
・ サイトカイン放出症候群(CRS)、免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)、及び臨床腫瘍溶解症候群(CTLS)
・ 臨床検査試験(血液学、化学、及び尿検査)
・ 実験値の変化の発生率及び重症度の監視
・ 身体検査
・ バイタルサインの測定
・ 心電図(ECG)変数
【0259】
薬物動態学的エンドポイント
・ 最大観察血漿中濃度(Cmax)、Cmaxまでの時間(Tmax)、及び血漿中濃度対時間曲線下面積(AUC)を含む薬物動態(PK)パラメータの値を、レナリドミド又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせたエプコリタマブの非コンパートメント法を用いて決定することになる。
・ レナリドミド又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせた、エプコリタマブ抗薬物抗体(ADA)及び中和ADA。
【0260】
研究設計の概要
全体的な試験設計の概略図を図3に示す。
【0261】
試験アーム
以下のレジメンを対応する集団で最初に評価する。
【0262】
・ アーム1:R/R DLBCLを有する対象におけるレナリドミドと組み合わせたエプコリタマブ
・ アーム2:R/R DLBCLを有する対象におけるイブルチニブ及びレナリドミドと組み合わせたエプコリタマブ
【0263】
試験治療
アーム1:レナリドミドと組み合わせたエプコリタマブの12サイクル
・ レナリドミド25mg経口(PO)をサイクル1~12の1~21日目(22~28日目以外)で投与することになる
・ エプコリタマブは、以下に記載されるように、合計12サイクルの28日サイクル投与のために投与されるであろう。
【0264】
アーム2:レナリドミド及びイブルチニブと組み合わせた24サイクルのエプコリタマブ
・ イブルチニブ(420mg又は560mg)をサイクル1~24の1~28日目に経口投与することになる
・ レナリドミド20mgをサイクル1~24の1~21日目に経口投与することになる
・ エプコリタマブは、合計24サイクルの28日サイクル投与のために上記のように投与される。
【0265】
アーム1及びアーム2:(1又は複数の)試験薬物と組み合わせたエプコリタマブは、ステップアップ投与方法を用いて投与される:プライミング用量0.16mg(サイクル1の1日目)、引き続いて中間用量0.8mg(サイクル1の8日目)、及び割り当てられた用量レベルの全用量24又は48mg(サイクル1の15日目以降)。エプコリタマブは、サイクル2~3で1週間ごとに1回(QW)のSC注射として投与され、続いてサイクル4からサイクル12のアーム1)又はサイクル4からサイクル24(アーム2)で4週間ごとに1回(Q4W)投与される。
【0266】
各アームは、用量漸増(各用量レベルに対してn~12名までの対象)及び拡大(n=20名までの対象)の2つの段階からなる。各アーム内で、対象は1つの段階にのみ参加することができる。各アームの用量漸増段階及び用量拡大段階は、スクリーニング期間、治療期間、治療後追跡期間、安全性追跡期間、及び生存追跡期間からなる。
【0267】
用量漸増段階
用量漸増段階は、レナリドミド又はレナリドミド若しくはイブルチニブと組み合わせたエプコリタマブの初期安全性及び忍容性を評価するように設計される。
【0268】
用量漸増は、ベイズ最適区間(BOIN)設計によって導かれる。各アームについて、用量漸増コホートへの初期登録は、少なくとも3名のDLT評価可能な対象からなる。各アームについて、エプコリタマブは、対応する抗新生物剤と組み合わせて最初に投与される。アーム1は、エプコリタマブ用量レベル48mgから始まる。アーム2は、エプコリタマブの用量レベル24mgから始め、許容される安全性及び認容性がDLT期間中に認められるならば、エプコリタマブの用量は、次の用量レベル48mgに増大されるであろう。段階的縮小又はより高用量のエプコリタマブへの段階的拡大の決定は、BOIN設計に従って、且つ用量制限毒性(DLT)を経験した対象の累積数に基づいて行われるであろう。
【0269】
アーム2について、イブルチニブの初期用量レベルは420mgになるであろう。560mgのイブルチニブ用量への漸増は、漸増決定規則によって許容されるならば、検討される場合がある。単一コホートでは、1つの薬剤(エプコリタマブ又はイブルチニブのいずれか)のみが漸増され得る(すなわち、単一コホートは両方の薬剤を同時に漸増しない可能性がある)。
【0270】
以下の表2は、0.25の標的毒性率及びの最適区間(0.204,0.304)を有するBOIN設計のための漸増決定規則を提供する。
【表2】
【0271】
推奨される第2相用量(RP2D)を定義するために、各用量漸増コホート中に用量制限毒性(DLT)を評価する。この試験では、DLT評価期間を最初の4週間、すなわちエプコリタマブの最初の投与後28日間と定義する。
【0272】
ある用量レベルの全ての対象がDLT評価期間を完了した後、全ての利用可能なデータを評価して、次の用量レベルを推奨する。
【0273】
用量漸増段階の完了後、主催者は、累積研究データを検討し、用量拡大段階で使用されるエプコリタマブの用量として宣言すべき用量を推奨する。安全性(すなわち、AE及び安全性検査値、並びにDLT評価期間の終了後に行われた観察)、薬物動態、薬力学、及び予備的有効性を含むデータ全体を評価して、拡大段階の更なる開発を導く。
【0274】
拡大段階
拡大段階の目的は、抗新生物剤と組み合わせた推奨用量のエプコリタマブの安全性、忍容性、及び予備臨床活性を評価することである。
【0275】
研究の拡大段階では、各アームに合計約20名の対象が登録される。エプコリタマブは、用量漸増で行われたのと同じ方法で、レナリドミド、又はレナリドミド及びイブルチニブと組み合わせて、決定された推奨第2相用量(RP2D)で投与される。
【0276】
毒性監視規則は、6名の対象が登録された後、各拡大コホートにおいて実施される。規則は、各拡大コホートにおけるDLTの発生を監視し、DLT率が0.25を超える事後確率が80%を超える場合、コホートへの登録を一時停止する。各拡大コホートにおけるDLT率の以前の分布は、0.25の以前の平均DLT率及び6の有効試料サイズを反映して、ベータ(1.5,4.5)分布に従うと仮定される。これは、用量漸増部分で定義された標的毒性率(0.25)及び予備推奨用量及び用量漸増中の更なる調査のために特定されたスケジュールに登録される対象の最小数(6)に対応する。
【0277】
DLTを経験している拡大コホート対象の数が、6名の対象が登録された後のいずれかの時点で毒性境界を超える場合、そのコホートへのその後の登録は一時停止され、全ての利用可能なデータの総合安全性レビューが行われる。毒性監視規則に基づいて、DLTを経験している対象の数が以下の境界のいずれかを満たす場合、拡大コホートへの登録が一時停止される。
【0278】
・ 登録された6名の対象のうち3名以上の対象
・ 登録された7~9名の対象のうち4名以上の対象
・ 登録された10~12名の対象のうち5名以上の対象
・ 登録された13~16名の対象のうち6名以上の対象
・ 登録された17~19名の対象のうち7名以上の対象
・ 登録された20名の対象のうち8名以上の対象
【0279】
組み入れ基準
対象は、試験に含めるために以下の基準の全てを満たさなければならない:
・ 成人男性又は成人女性、少なくとも18歳。
・ 試験薬の初回投与前のスクリーニング期間内に以下の基準を満たす臨床検査値:
・ 絶対好中球数(ANC)≧1.0×109/L(成長因子の使用は、骨髄の関与の証拠が認められる場合に許可されるが、対象は、スクリーニング検査の前の14日以内に成長因子を投与されていてはならない)
・ ヘモグロビン≧8.0g/dL(RBC輸血は可能であるが、対象はスクリーニング検査の前の7日以内に輸血を受けていてはならない)
・ 血小板数≧75×109/L、又は骨髄浸潤若しくは脾腫がある場合は≧50×109/L(血小板輸血は可能であるが、対象はスクリーニング検査の前の7日以内に輸血を受けていてはならない)
・ 血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)又はアラニントランスアミナーゼ(ALT)レベル≦3×ULN
・ 総ビリルビン値≦1.5×ULN又は≦5xULN(疾患又は非肝臓起源の肝臓関与を有する対象の場合)。ジルベール症候群を有する対象は、1.5xULN超の総ビリルビン値を有し得るが、直接ビリルビンは2xULN未満でなければならない。
・ 推定クレアチニンクリアランス(CrCl)≧50mL/分(Cockcroft-Gault式によって計算され、体重等の要因のために必要に応じて修正される)
・ プロトロンビン時間(PT)/国際標準化比(INR)/活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)≦1.5×ULN(ただし、抗凝固療法を受けている場合を除く)
・ 対象は皮下注射に耐えられなければならない
・ 対象は、スクリーニング時に利用可能な十分な新鮮組織又はパラフィン包埋組織を有していなければならない
【0280】
疾患/状態活動性
・ 組織学的に確認されたCD20+疾患を伴うDLBCL(濾胞性リンパ腫又は結節性辺縁帯リンパ腫から新たに又は組織学的に形質転換されたもの)の診断(WHO2016分類による以下を含み、病理報告に記録される。
・ DLBCL、別途指定なし(NOS)
・ WHO2016によるMYC及びBCL-2及び/又はBCL-6転座を有する高悪性度B細胞リンパ腫(「ダブルヒット」又は「トリプルヒット」)
注:高悪性度B細胞リンパ腫NOS又は他のダブル/トリプルヒットリンパ腫(DLBCLと一致しない組織型を有する)は適格ではない
・ 濾胞性リンパ腫グレード3B
・ 対象は、CD3及びCD20を標的とする二重特異性抗体による以前の治療を受けていてはならない。
・ 対象は、1又は複数の測定可能な疾患部位を有していなければならない:
【0281】
(1又は複数の)PET陽性病変を実証する陽電子放射断層撮影/コンピュータ断層撮影(PET/CT)スキャン
及び
CT又はMRIで少なくとも1つの測定可能な結節病変(長軸≧1.5cm及び短軸>1.0cm)又は1又は複数の測定可能な節外病変(長軸≧1.0cm)
・ 対象は、治験責任医師の評価に従って症状及び/又は疾患負荷に基づいて治療開始を受ける資格があり、治療開始を必要としなければならない。
・ 対象は、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス0~2でなければならない。
・ 対象は、脱毛症を除いて、有害事象の共通用語基準(CTCAE,v5.0)、グレード1に解決されていないと定義される、以前の抗癌療法からの未解決の毒性を有さない。他の適格基準(例えば、検査、心臓基準)も満たされなければならない。
・ 対象は、スクリーニング時に原発性中枢神経系(CNS)腫瘍又は既知のCNS関与(軟髄膜疾患が含まれる)の証拠が現在ない。
・ 対象は、抗CD20 mAb療法に対する重度のアレルギー反応若しくはアナフィラキシー反応の病歴、又はエプコリタマブのあらゆる成分若しくは賦形剤又は試験薬併用剤(例えば、レナリドミド、イブルチニブ等)の成分に対する既知の有意なアレルギー若しくは不耐性の病歴を有さない。
・ 対象は、スクリーニング前3ヶ月以内に自己幹細胞移植を受けていてはならない。
・ 対象は、エプコリタマブの初回用量の4週間以内又は5半減期(いずれか短い方)以内に化学療法薬、非治験薬又は治験薬の抗新生物剤(CD20 mAbを除く)を受けていてはならない。
対象は、以下を含む臨床的に有意な心血管疾患がない:
登録前6ヶ月以内の心筋梗塞又は脳卒中、
又は
登録前3ヶ月以内の以下の状態:不安定又は制御不能の心機能(例えば、不安定狭心症、うっ血性心不全、ニューヨーク心臓病学会クラスIII~IV)に関連するか又は影響を及ぼす疾患/状態、制御されない心不整脈
又は
安定で適切に治療されているとみなされない限り、登録前6ヶ月以内の他の臨床的に有意な心電図(ECG)異常
又は
左室駆出率<45%。
【0282】
・ 対象は、肝炎、現在のアルコール乱用、又は肝硬変を含む臨床的に重要な肝疾患を有さない。
・ 対象は、活動性B型肝炎ウイルス(HBV)又はC型肝炎ウイルス(HCV)感染を有さない。
【0283】
B型肝炎コア抗体(HBcAb)、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、又はC型肝炎抗体に対して陽性である対象は、登録前にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)結果が陰性でなければならない。PCR陽性の者は除外される。
【0284】
・ 対象は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の既知の病歴を有さない。注:HIV検査は、現地のガイドライン又は施設の基準に従って必要とされない限り、スクリーニング時に行う必要はない。
・ 対象は、登録前2週間以内に静脈内(IV)療法又はIV抗生物質を必要とする既知の活性細菌、ウイルス、真菌、マイコバクテリア、寄生虫、又は他の感染症(爪床の真菌感染症を除く)を有していない。
・ 対象は、プロトコルの遵守又は結果の解釈に影響を及ぼし得る有意な制御されていない合併症の証拠がない。
・ 対象は、以下を除いて、他の以前の悪性腫瘍の病歴がないこと:
治癒目的で治療され、試験薬の初回投与の前の3年以上の間の既知の活動性疾患が存在せず、治療医師によって再発のリスクが低いと見られている悪性腫瘍
疾患の証拠なしに適切に治療された非黒色腫皮膚癌又は悪性黒子
疾患の証拠のないインサイチュで適切に治療された癌腫
限局性前立腺癌、前立腺特異抗原(PSA)レベル<0.1ng/mLの上昇を伴わない根治的前立腺切除術後
・ 1つの標的病変のみが関与し、放射線療法を受けていない他の標的病変を追跡することができない場合、又は登録から4週間以内に大手術を受けた場合、対象は病変を標的とする放射線療法を受けていない。
・ 対象はグレード>1の神経障害を有さない。
・ 対象は、過去12ヶ月以内に活動性結核(TB)又は活動性TBの治療完了の病歴を有していてはならない。
【0285】
注:インターフェロンガンマ放出アッセイ(IGRA)試験は、活動性又は潜在性結核が疑われない限り、スクリーニングで行われる必要はない。IGRA陽性、活動性肺結核の対象については、臨床評価及び放射線画像検査で除外しなければならない。陽性IGRAを有し、活動性疾患の証拠がない対象は、潜在性結核感染の治療(合計6ヶ月間のイソニアジド単剤療法の推奨)が開始された後に登録され得る。
【0286】
・ 対象は、スクリーニング時にサイトメガロウイルス(CMV)ウイルス血症(検出下限を超える陽性レベルとして定義される)の証拠を有さない。
・ 対象は、毎日20mgまでのプレドニゾン(又は同等物)を除いて、免疫抑制療法を必要とする現在の自己免疫疾患を有さない。
・ 対象は、治験責任医師の意見では、対象の安全性を損なう可能性がある、又は研究結果を過度のリスクにさらす可能性がある、生命を脅かす病気、医学的状態、又は器官系機能不全がない。
・ 対象は、治療を必要とする現在の発作性障害がない。
・ 対象は、既知の活動性SARS-CoV-2感染はない。対象がSARS-CoV-2感染を示唆する徴候/症状を有するか、又はSARS-CoV感染者に最近さらされたことが知られている場合、SARS-CoV-2感染症を除外するために、少なくとも24時間空けて分子(例えば、PCR)試験又は2つの陰性抗原試験結果を受けるべきである。
【0287】
SARS-CoV-2感染適格基準を満たさない対象はスクリーニングに不合格でなければならず、以下のSARS-CoV-2感染ウイルスクリアランス基準を満たした後にのみ再スクリーニングすることができる。
【0288】
最初の陽性試験結果から少なくとも10日間が無症候性患者において、又は少なくとも10日間が回復(解熱薬の使用を伴わない発熱の解消及び症状の改善として定義される)から経過した。
【0289】
・ 対象は、試験薬の最初の投与から4週間以内に大きな手術を受けていてはならない。
【0290】
アーム1に特異的な更なる適格基準
・ 対象は、再発性/難治性DLBCLを有していなければならない
注:再発した疾患は、以前に治療に応答したが、治療完了6ヶ月以上後に進行した疾患として定義される。難治性疾患は、治療中に進行したか、以前の治療に対する客観的応答を達成できなかったか、又は治療(維持療法を含む)の完了後6ヶ月以内に進行した疾患として定義される。
・ 対象は、抗CD20モノクローナル抗体を含有する少なくとも1つの以前の全身性抗リンパ腫療法(放射線療法は全身療法とはみなされない)に対するR/R疾患を有していなければならない。以前に抗CD20モノクローナル抗体単独療法のみを受けた対象は適格ではない。
・ 対象は、以前のCAR-T療法に対して難治性(SD又はPDの最良効果として定義される)であってはならない。
・ 対象は、以前の自己幹細胞移植(ASCT)に失敗しているか、年齢、パフォーマンスステータス、併存症及び/又は不十分な応答のためにASCTに適格であるとみなされていないか、又はASCTを拒否しているかのいずれかでなければならない。
・ 対象は、レナリドミドに対する不応性が記録されていてはならず、治験責任医師の意見では、レナリドミドによる治療に適していなければならない。
注:不応性は、以下のように定義される。
o 安定疾患(SD)又は進行性疾患(PD)の(1又は複数の)以前のレジメンに対する最良効果、又は
o (1又は複数の)以前のレジメンの完了から6ヶ月以内の進行性疾患
・ 対象は、血栓塞栓性事象のために(又はレナリドミド投与のための現地のガイドラインに従って)アスピリン予防又は予防的抗凝固療法を進んで受けなければならない。
・ 妊娠の可能性がある女性対象は、登録の30日前から試験薬の最後の投与後少なくとも12ヶ月まで有効な少なくとも2つのプロトコル指定の受胎調節方法を実施しなければならない。非妊娠可能な女性対象は、受胎調節を使用する必要がない。
・ 対象は、レナリドミド治療に関連する妊娠リスク最小化計画を遵守する意思がある。
・ 対象は、スクリーニング前の12ヶ月以内にレナリドミド曝露を受けていてはならない。
【0291】
アーム2に特異的な更なる適格基準:
・ 対象はR/R DLBCLを有していなければならない(定義については上記参照)。
・ 対象は、抗CD20モノクローナル抗体を別の全身療法と組み合わせて含まなければならない少なくとも1回の治療を以前に受けていなければならない。
・ 対象は以前のCAR-T細胞療法を受けていなければならないが、エプコリタマブの初回投与の90日以上前に、以前のCAR-Tに対する応答を達成した者については、又はエプコリタマブの初回投与の60日以上前に、CAR-Tに対して難治性であった者については、除外される。
注:不応性は、以下のように定義される。
o 安定疾患(SD)又は進行性疾患(PD)の(1又は複数の)以前のレジメンに対する最良効果、又は
o (1又は複数の)以前のレジメンの完了から6ヶ月以内の進行性疾患
・ 対象は、以前のASCTに不合格であったか、年齢、パフォーマンスステータス、併存症及び/又は不十分な応答のためにASCTに適格であるとみなされなかったか、又はASCTを拒否したかのいずれかでなければならない。
・ 対象は、レナリドミドに対する不応性が記録されていてはならず、治験責任医師の意見では、レナリドミドによる治療に適していなければならない。
・ 対象は、イブルチニブによる以前の治療を受けていてはならず、治験責任医師の意見では、イブルチニブによる治療に適していなければならない。
・ 対象は、既知の出血素因(例えば、フォン・ヴィレブランド病)又は血友病を有していてはならない。
・ 対象は、強力なシトクロムP450(CYP)3A阻害剤による治療を必要としてはならない。
・ 対象は、血栓塞栓性事象のために(又はレナリドミド投与のための現地のガイドラインに従って)アスピリン予防又は予防的抗凝固療法を進んで受けなければならない。
・ 妊娠の可能性がある女性対象は、登録の30日前から試験薬の最後の投与後少なくとも12ヶ月まで有効な少なくとも2つのプロトコル指定の受胎調節方法を実施しなければならない。非妊娠可能な女性対象は、受胎調節を使用する必要がない。
・ 対象は、レナリドミド治療に関連する妊娠リスク最小化計画を遵守する意思がある。
・ 対象は、カプセルを嚥下できなければならず、胃腸機能に有意に影響を及ぼす疾患(例えば、胃若しくは小腸の切除、症候性炎症性腸疾患、又は部分的若しくは完全な腸閉塞)を有してはならない。
【0292】
用量制限毒性
用量漸増段階のDLT評価可能な対象は、最初のサイクルで割り当てられた用量レベルで少なくとも3回のエプコリタマブの投与を受けたか、又はエプコリタマブの最初の投与後28日間の期間中にDLTを経験した対象として定義される。
【0293】
DLT評価期間は、対象がこの期間中に少なくとも3回のエプコリタマブ投与を受けているならば、最初の4週間、すなわち、エプコリタマブの初回投与後28日として定義される。
【0294】
治験責任医師が、その事象を、明らかに特定可能な原因、例えば、基礎疾患、疾患の進行/再発、他の合併症、又は併用療法に起因するものとすることができない限り、以下はDLTに適格である。
【0295】
・ グレード5毒性
・ 米国移植細胞療法学会(ASTCT)基準及びCRSのDLT基準によるCRS分類
o ASTCT基準によるグレード4のCRS又はICANS
o グレード2以下に改善していない、又は48時間以内に消散していない(グレード0)、ASTCT基準によるグレード3のCRS又はICANS
・ CTCAEによるグレードの7日超持続する好中球減少症グレード4。
・ CTCAEグレードの2日超続く発熱性好中球減少症グレード≧3。
・ CTCAEグレードの7日超持続の血小板減少グレード4。
・ 以下を除く、CTCAEによるグレードとしてグレード3以上の非血液学的毒性:
o グレード3の発熱(>40.0℃、≦24時間)
o グレード3低血圧(24時間以内に回復)
o 臨床的結果を有さず、臨床的に一過性であり、本質的に単離され、7日以内に回復する正常範囲外の検査値(これには、医学的介入に応答する電解質異常が含まれる)
o 7日以内にグレード1又はベースラインに戻ったAST及び/又はALTグレード3。
o 3日以内に最適な制吐薬治療に応答するグレード3の悪心。
o 3日以内に最適な制吐薬治療に応答するグレード3の嘔吐。
o 3日以内に最適な下痢止め治療に応答するグレード3の下痢。
o ベースライン時に疲労/無力症が存在した場合、又はエプコリタマブの最後の投与後14日未満継続した場合のグレード3の疲労/無力症。
o ベースライン(グレード1又は2)で存在し、7日以内にベースラインに戻った以前の化学療法に関連する他のグレード3の毒性。
【0296】
脱毛症(悪性度分類なし)
血液学的AEの開始及び回復を実証するために、分画を含む全血球数の頻繁な臨床検査監視を開始すべきである。定義されたDLT評価期間中に発生する全てのAEは、上記の基準に従って評価される。事象がエプコリタマブと無関係であると明確に決定されない限り、DLTに適格でないものを含む全てのAEが監視され、エプコリタマブの毒性プロファイルの評価に含まれる。
【0297】
特別な関心のある有害事象
特に関心のある以下の有害事象を試験中に監視する。
・ サイトカイン放出症候群(CRS)
・ 臨床的腫瘍溶解症候群(CTLS)
・ 免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)
【0298】
CRSの予防及び前投薬
コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、及び解熱薬の前投薬は、運用マニュアルのセクション3.4に記載されているように必須である。エプコリタマブの最初の4つの用量では、抗ヒスタミン剤、解熱剤、及びコルチコステロイドによる前投薬が必須であり、潜在的なCRSからの症状の重症度を予防/軽減するために、これらの最初の4回の投与の各々の後に更に3日間のコルチコステロイドが必要である。エプコリタマブの最初の4回の投与について、対象は、エプコリタマブ投与後の最初の4日間、1日3回(覚醒時間中、およそ6~8時間ごと)、自己投与式経口温度監視を行わなければならない。これらの温度チェックは、CRSの初期徴候である発熱が発生していないことを確実にするためのものである。エプコリタマブを第4の用量(すなわち、第2の全用量)を超えて投与する場合、CRSグレード2以上が生じない限り、コルチコステロイドによるCRS予防は任意であり、この場合、CRS予防は、エプコリタマブの用量がその後のCRSを伴わずに与えられるまで継続すべきである。投薬前のコルチコステロイド投与は、推奨される用量又は同等の用量でIV又はPOのいずれかであり得る。
【0299】
試験評価
疾患応答及び進行性疾患の評価
治療中評価:治療中の時点での応答は、CR、PR、及びSDを示す患者のLugano分類に従って読むべきである。Lugano分類によるPDを示す患者については、対象がIR(LYRICによる)を有するとみなすことができるかどうかを調べるために更なる評価を行うべきである。
【0300】
悪性リンパ腫のLugano応答基準
標的病変及び非標的病変
標的病変は、最大6つの最大の優性結節、結節塊、又は2つの直径で測定可能な他のリンパ腫性病変からなり、好ましくは、該当する場合、縦隔及び後腹膜疾患を含む対象の全体的な疾患負荷を表す異なる身体領域からのものでなければならない。ベースラインにおいて、測定可能な結節は、最長直径(病変の最長横径;LDi)が15mmより大きくなければならない。測定可能な節外疾患は、6つの代表的な標的病変に含まれ得る。ベースラインにおいて、測定可能な節外病変は、LDiで10mmを超えるべきである。
【0301】
他の全ての病変(結節、節外、及び評価可能な疾患を含む)は、非標的病変(例えば、皮膚、GI、骨、脾臓、肝臓、腎臓、胸水又は心膜浸出液、腹水、骨、骨髄)として追跡されるべきである。
【0302】
分裂病変及びコンフルエント病変
病変は経時的に、分裂することがあり、又はコンフルエントになることがある。分裂病変の場合、結節の垂直直径(PPD)の個々の積は、分裂病変のPPDを表すために一緒に合計されるべきであり、このPPDを残りの病変のPPDの合計に加えて、応答を測定する。これらの個別の結節のいずれか又は全てのその後の成長が起こる場合、各個別の結節の最下点を使用して進行を決定する。コンフルエントな病変の場合、コンフルエントな塊のPPDを個々の結節のPPDの合計と比較すべきであり、PDを示すために必要な個々の結節の合計と比較してコンフルエントな塊のPPDが50%を超えて増加する。LDi及び最小直径(LDiに垂直な最短軸;SDi)は、進行を決定するためにもはや必要ではない。
【0303】
【表3】
【0304】
1.多くの対象における3のスコアは、特に中間スキャン時の場合、標準的な治療で良好な予後を示す。しかし、脱漸増が調査されるPETを含む試験では、3のスコアを不適切な応答とみなすことが好ましい場合がある(過少治療を回避するため)。
・ 測定された優性(標的)病変:2つの直径で明確に測定可能であるように選択された最大6つの最大の優性結節、結節塊、及び節外病変。
o 結節は、好ましくは身体の異なる領域からのものであるべきであり、該当する場合、縦隔及び後腹膜領域を含むべきである。
o 非結節病変には、実質臓器(例えば、肝臓、脾臓、腎臓、肺)、胃腸病変、皮膚病変、又は触診で認められるものが含まれる。
・ 非測定病変:測定されたものとして選択されていない任意の疾患、優性疾患及び真に評価可能な疾患は、測定されていないとみなされるべきである。
o これらの部位には、任意の結節、結節塊、及び優性若しくは測定可能として選択されていないか、又は測定可能性の要件を満たしていないが依然として異常であると考えられる節外部位、並びに真に評価可能な疾患(これは、胸水、腹水、骨病変、軟膜疾患、腹部腫瘤、及び確認及びその後の画像化が不可能な他の病変を含む、測定を定量的に追跡することが困難であろう疾患の疑いのある任意の部位である)が含まれる。
・ ワルダイエル輪又は節外部位(例えば、GI管、肝臓、骨髄)では、FDG取込みは、完全な代謝応答を伴って縦隔よりも大きくなり得るが、周囲の正常な生理学的取込み(例えば、化学療法又は骨髄系成長因子の結果としての骨髄活性化を伴う)よりも高くなるべきではない。
【0305】
2.PET 5PS:1=バックグラウンドを超える取込みなし;2=取込み≦縦隔;3=取込み>縦隔であるが、≦肝臓;4=中程度の取込み>肝臓;5=肝臓及び/又は新しい病変よりも著しく高い取込み;×=リンパ腫と関連している可能性が低い新しい取込み領域。
【0306】
出典:Cheson BD,Fisher R,Barrington SF,et al.Recommendations for initial evaluation,staging,and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma:the Lugano classification.J Clin Oncol.2014;32:3059-68.
【0307】
免疫調節療法基準に対するリンパ腫応答(LYRIC)
臨床試験は、癌免疫療法が早期の見かけの放射線学的進行(新たな病変の出現を含む)とそれに続く遅延応答をもたらし得ることを示している。腫瘍サイズのこの最初の増加は、T細胞応答の状況における免疫細胞浸潤によって引き起こされ得るので、この進行は真の疾患進行を示さない可能性があり、したがって「偽進行」と呼ばれる。
【0308】
エプコリタマブ(GEN3013;DuoBody(登録商標)-CD3xCD20)と偽進行との関連は現在のところ不明であるが、その作用機序は、偽進行が予想されることを意味する。
【0309】
現在のLugano応答評価基準は偽進行を考慮しておらず、非定型応答の観察後に潜在的に有効な免疫調節薬の早期中止の有意なリスクがある。非典型的応答は、既存の病変の早期進行、その後の応答、又は他の場所での腫瘍縮小の有無にかかわらず、新しい病変の発生のいずれかを特徴とする。
【0310】
LYRICは、Lugano応答評価基準を修飾したものであり、免疫ベースの治療に適合しており、「不確定応答」(IR)という新たな緩和応答カテゴリを実施する。このIR指定は、生検又はその後の撮像のいずれかによってフレア/偽進行又は真のPDとして確認されるまで、「非定型応答」症例を潜在的に識別するために導入された。LYRIC及びLugano基準をこの試験で評価することになる。
【0311】
不確定応答(IR)カテゴリ
Lugano分類によるPDを示す対象は、以下の3つの状況のうちの1又は複数においてIRを有すると考えられる。
【0312】
IR(1):臨床的悪化を伴わずに、治療の最初の12週間で6つまでの標的病変の50%以上の全腫瘍負荷量(直径の積の和[SPD]によって評価される)の増加。
【0313】
IR(2):治療中の任意の時点での新しい病変の出現又は1又は複数の既存の病変の成長≧50%;治療中の任意の時点で最大6個の病変のSPDによって測定した場合に、全体的な腫瘍負荷量の全体的な進行(SPD<50%の増加)がないという状況で生じる。
【0314】
IR(3):病変サイズ又は数の付随する増加を伴わない、1又は複数の病変のFDG取込みの増加。
【0315】
スクリーニング評価:スクリーニング時に、上記のように、FDG-PET/CT及び診断用CT又はMRIスキャンをLugano分類に従って読むべきである。
【0316】
治療中評価:治療中の時点での応答は、CR、PR、及びSDを示す患者のLugano分類に従って読むべきである。Lugano分類によるPDを示す患者については、対象がIR(LYRICによる)を有するとみなすことができるかどうかを調べるために更なる評価を行うべきである。
【0317】
有効性の統計分析
記述統計及び対象リストを使用して、各エプコリタマブ用量レベル(24mg及び48mg)のデータを要約する。連続変数については、観測値の数、平均、標準偏差、中央値、及び範囲が使用される。カテゴリ変数について、頻度及びパーセンテージを要約する。事象までの時間エンドポイントについては、カプランマイヤー推定値が提供される。
【0318】
主要な副次的有効性エンドポイントの概要及び分析
全奏効率(ORR)は、治験責任医師によって評価されるようなLugano2014基準によって求められるCR又はPRの最良全奏効を達成した対象の割合として定義される。各アームについて、95%の正確な信頼区間(CI)と共にポイント推定値が提供される。
【0319】
奏効期間(DOR)が、CR又はPRの最良総合効果を達成した対象(「応答者」)については、初期CR/PRから、治験責任医師によって評価されるLugano2014基準によって決定される疾患進行又は何らかの原因による死亡のうちの最も早いものの発生までの月数での時間として定義される。放射線学的疾患進行のない生存応答者は、最後の適切な疾患評価時に打ち切りされる。
【0320】
応答者の数、DOR事象の数及び最も早い寄与事象(疾患進行又は死亡)をアームによって要約する。カプランマイヤー法を使用して、各アームのDoRの分布を推定する。
【0321】
無増悪生存期間(PFS)は、全てのアームの対象について、試験薬物の初回投与から、治験責任医師によって評価されたLugano2014基準によって決定された疾患進行又は任意の原因による死亡のうちの最も早いものの発生までの月数での時間として定義される。疾患が進行していない生存対象は、最後の適切な疾患評価時に打ち切りされる。ベースライン後の疾患評価を行わずに生存している対象は、試験薬の初回投与の日付で打ち切りされる。
【0322】
PFS事象の数及び最も早い寄与事象(疾患進行又は死亡)がアームによって提示される。カプランマイヤー法を使用してPFSの分布を推定する。
【0323】
完全奏効率は、治験責任医師によって評価されるLugano2014基準によって決定されるCRの最良総合効果を達成した対象の割合として定義される。各アームについて、95%の正確な信頼区間(CI)と共にポイント推定値が提供される。
【0324】
奏効時間(TTR)を、治験責任医師によって評価されたときのLugano2014基準によって決定されるCR又はPRの最良総合効果を達成した対象(「応答者」)について、試験薬物の初回用量から最初のCR/PRまでの月数での時間として定義する。
【0325】
TTRの記述的要約とともに応答者の数が各アームについて提供されるであろう。
【0326】
全生存期間(OS)は、エプコリタマブの初回投与から任意の原因による死亡までの月数での時間として、全アームの対象について定義される。研究の終了時又は分析時にまだ生存している対象は、最後に既知の生存日に打ち切りされる。
【0327】
死亡数及びOSの分布のカプランマイヤー推定値を提供する。
【0328】
安全性の統計分析
他の薬剤と組み合わせたエプコリタマブの安全性及び忍容性は、試験薬物曝露、用量中断の発生率、減少、遅延及び中断、AESIを含むAE、SAE、死亡並びに有害事象及びバイタルサインパラメータの変化の評価によって評価される。
【0329】
治療下で発生したAEは、Medical Dictionary for Regulatory ActivitiesのSystem Organ Class内のPreferred Termsによって要約される。DLTを経験している対象の数及び割合を要約する。更なる詳細は、SAPに提供される。
【0330】
適用可能な場合、血液化学及び血液学検査室の決定をNCI CTCAEに従って分類し、要約する。更なる詳細は、SAPに提供される。
【0331】
薬物動態の統計分析
各コホート内の薬物について、エプコリタマブの血漿濃度をPKパラメータ値と共に集計する。PK濃度についてのサンプリング時間によって、並びにPKパラメータについてのサイクル及び/又は来院によって、要約統計を計算するであろう。エプコリタマブADA(及び該当する場合はnAb)の結果を要約する。適切であると考えられる場合、追加の探索的分析を行うことができる。
【0332】
予備結果
アーム1:用量漸増(エプコリタマブ24mg+Len 25mg):
登録された対象の数:5名
少なくとも1つのベースライン後の有効性評価で予測された対象の数:5名
利用可能なベースライン後の有効性評価を有する対象の数:3名
・ ORR=100%(3/3)
・ CRR=100%(3/3)
アーム1:用量拡大(エプコリタマブ48mg+Len 25mg):
登録された対象の数:17名
少なくとも1つのベースライン後の有効性評価で予測された対象の数:3名
利用可能なベースライン後の有効性評価を有する対象の数:0名
【0333】
【表4】
【0334】
太字及び下線はF;E;A;L及びRであり、それぞれ位置234及び235;265;405及び409に対応し、当該位置はEUナンバリングに従う。可変領域では、IMGT定義に従って注釈付けされた当該CDR領域に下線が引かれている。
図1
図2
図3
【配列表】
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【国際調査報告】