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特表2025-503180超電導磁石用の磁石永久電流スイッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】超電導磁石用の磁石永久電流スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/02 20060101AFI20250123BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20250123BHJP
   H01F 6/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H01F6/02 ZAA
H01F6/06
H01F6/00 160
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544433
(86)(22)【出願日】2023-01-26
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2023051885
(87)【国際公開番号】W WO2023144247
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】22020026.5
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ハム コーネリス レオナルダス ジェラルダス
(57)【要約】
超電導磁石用の永久電流スイッチ10は、1本の超電導ワイヤであって、その端に電気接続ポート16を有している、1本の超電導ワイヤと、超電導ワイヤに熱を供給するためのヒータ13とを備える。1本の超電導ワイヤは、低温超電導材料のLTSセグメント11と、高温超電導材料のHTSセグメント12とを含む。好ましくは、2つのLTSサブセグメント11と1つのHTSセグメント12とが直列に交互に電気的に接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導磁石用の磁石永久電流スイッチであって、前記磁石永久電流スイッチは、
1本の超電導ワイヤであって、前記1本の超電導ワイヤの端に電気接続ポートを有する、1本の超電導ワイヤと、
前記1本の超電導ワイヤに熱を供給するヒータと、
を備え、
前記1本の超電導ワイヤは、低温超電導材料のLTSセグメントと、高温超電導材料のHTSセグメントとを含む、磁石永久電流スイッチ。
【請求項2】
前記HTSセグメントは、セラミック高温超電導材料から形成されている、請求項1に記載の磁石永久電流スイッチ。
【請求項3】
キャパシタンスが、前記電気接続ポートと並列に回路化されている、請求項1又は2に記載の磁石永久電流スイッチ。
【請求項4】
制御可能なスイッチと直列のシャント導体が、前記LTSセグメント及び/又は前記HTSセグメントと並列に回路化されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁石永久電流スイッチ。
【請求項5】
前記HTSセグメントと熱接続ポートとの間にサーマルスイッチを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁石永久電流スイッチ。
【請求項6】
前記LTSセグメントは、複数のLTSサブセグメントを含み、前記HTSセグメントは、1つ又は複数のHTSサブセグメントを含み、前記複数のLTSサブセグメントと、複数のHTSサブセグメントのうちの1つとは、直列に交互に回路化されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の磁石永久電流スイッチ。
【請求項7】
磁石巻線のアセンブリと、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁石永久電流スイッチとを備える、超電導磁石。
【請求項8】
磁石巻線のアセンブリと、前記磁石巻線のアセンブリに結合された極低温システムと、請求項5に記載の磁石永久電流スイッチとを備える超電導磁石であって、前記熱接続ポートは、前記極低温システムの熱バッファに熱的に結合されている、超電導磁石。
【請求項9】
前記HTSセグメントが通常の導電状態である間に、前記シャント導体の前記制御可能なスイッチを開状態で制御するステップを含む、請求項4の超電導磁石をランピングする方法。
【請求項10】
ランプ上昇時に閉状態で前記サーマルスイッチを制御するステップを含む、請求項7の超伝導磁石をランピングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導磁石用の磁石永久電流スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導磁石は、超電導材料の磁石巻線を備えた電磁石として形成される。電流が磁石巻線に流され、磁石巻線が磁石巻線の材料の超電導の臨界温度以下に冷却されると、電流は巻線を通って永久に流れ、永久的な磁石場が発生する。
【0003】
超電導磁石の永久モード動作については、M.Wilsonが著書「Superconducting Magnets」(オックスフォード大学出版局、1983年、ISBN0-19-854805-2)の11.2節で説明している。
【0004】
超電導磁石の永久モード動作は、超電導スイッチと超電導場発生コイルとを直列接続することで実現する。このスイッチは、切り替え可能な電気コネクタの形で、磁石の磁場に寄与しないように支持構造に巻かれた1本の超電導ワイヤの形の電気スイッチを含む。永久的な動作では、完全な磁石電流を搬送する。スイッチを超電導遷移温度を上回る温度に加熱すると、スイッチは抵抗になる。次いで、スイッチに並列に接続された電源を使用して、場発生コイルの電流を変更できる。
【0005】
このような磁石永久電流スイッチは、国際特許公開WO2019/096567から知られている。
【0006】
国際特許公開WO2015/096567から知られている磁石永久電流スイッチは、磁石巻線の一部である、1本の超電導ワイヤを有する。つまり、超電導場発生コイルの巻線の一部は、磁石永久電流スイッチの1本の超電導ワイヤとして動作するように回路化(circuited)されている。
【0007】
欧州特許出願EP 40 24 415から、高温超電導体で作られた磁石永久電流スイッチが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、超電導磁石のランプ上昇に必要な時間を短縮することを可能にする磁石永久電流スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、
1本の超電導ワイヤであって、1本の超電導ワイヤの端に電気接続ポートを有する、1本の超電導ワイヤと、
1本の超電導ワイヤに熱を供給するヒータと、
を備える超電導磁石用の磁石永久電流スイッチであって、1本の超電導ワイヤは、低温超電導材料のLTSセグメントと、高温超電導材料のHTSセグメントとを含む、超電導磁石用の磁石永久電流スイッチによって達成される。
【0010】
本発明の洞察は、ランプ上昇又はランプ下降時、つまり、電流が1本のワイヤを通って流れるときの磁石永久電流スイッチ(MPCS)における熱散逸が、1本のワイヤの材料の電気(オーム)抵抗に反比例することである。1本のワイヤのHTSセグメントは、その標準状態で非常に高い電気抵抗を有する高温超電導体材料で形成される。したがって、HTSセグメントの超電導の臨界温度を上回る温度では、HTSセグメント、したがって、1本のワイヤ全体の熱散逸は、磁石のランピング中に非常に低くなる。超電導磁石から運び出す必要があるのは、磁石永久電流スイッチによる非常に少ない量の熱散逸のみであるため、磁石永久電流スイッチの熱散逸は急速に運び出され、高いランプ速度が可能になる。この高いランプ速度は、主に許容されるより高いランプ電圧によって可能になり、磁石の寒剤システムへの散逸に対する(熱)ペナルティはほとんどない。従来では、5Vのランプ電圧がほとんどの場合、使用される。本発明は、ランプ電圧を、例えば20V又はそれ以上に増加させることを可能にする。高温超電導セラミック材料の抵抗率は、LTSセグメントの低温超電導材料の抵抗率よりも1桁又は数桁高いため、HTSセグメントの長さは、従来のMPCSのワイヤの長さよりも1桁又は数桁小さい場合がある。実際には、LTSセグメントは、低温超電導材料を保持する金属(Cu)マトリックス又はクラッドから構成されており、LTSセグメントの抵抗は金属マトリックス又はクラッドの抵抗率によって支配されることがある。
【0011】
総括すると、本発明のMPCSは、超電導磁石に使用され、それらを通電して永久モードに切り替え、その逆を行ってこれらの磁石を放電する。MRI磁石のための当技術分野の超電導磁石の状態では、磁石コイルはNbTiなどの標準的な超電導ワイヤ(LTS、つまり、低温超電導体とも呼ばれる)でできており、MPCSは同じ材料でできている。スイッチは、ワイヤをワイヤの臨界温度を上回る温度に加熱することで開く(正常になる)。磁石の通電中に、磁石の通電に使用されるのと同じ電圧(=磁石コイルに渡るインダクタンス電圧)が「開」状態のMPCSにも印加される。これは散逸(V/R)につながる。この散逸は、いわゆる密封磁石(液体ヘリウム漕に浸漬されていない磁石)のヘリウムボイルオフや温度上昇につながる。更に、磁石の低温(4K)構造への熱負荷を低減することを実現する。液体ヘリウムに浸漬することによって巻線が冷却される磁石に適用すると、ヘリウム損失量を減少させる。
【0012】
本発明によれば、MPCSは、少なくとも2つの異なる材料の1本のワイヤを直列に含む:一部(LTSセグメント)はLTSワイヤで作られ、別の一部(HTSセグメント)はHTSワイヤで作られている。HTSはセラミック材料であり、その抵抗は標準状態で非常に高い。そのため、LTSワイヤとHTSワイヤとの両方の臨界温度よりも上にMPCSを温めると、MPCSの抵抗は非常に高くなり、通電(又は放電)時の散逸が非常に低くなる。
【0013】
HTSセグメント及びLTSセグメントは、直線又はねじれたワイヤとして成形されるか、例えばソレノイドのように巻かれてもよい。
【0014】
本発明のMPCSは一般的に以下を実現する:
通電時又は放電時のMPCSによる磁石内の散逸の低減(ヒータを除く)。熱負荷が少ないということは、通電時(又は放電時)の磁石の温まりが少なくなることを意味する。そのため、冷却に必要な時間が短縮される。
より高いランプ電圧を持つ磁石電源を使用して、高速ランプ上昇及び/又は高速ランプ下降を使用できること。専用の磁石電源の代わりに、勾配増幅器を使用できる。その結果、ランプ上昇/下降のための通電時間及び放電時間が短縮される。これは、3Tの密閉磁石にとって、つまり、温度範囲(TAutoDischarge-TStartEnergize)内で通電/放電をするために重要であり、クエンチ前に自動放電を終了する機能、又は適切なTAutoDischargeを有する。高速通電を使用すると、より高いTStartEnergizeが可能である。
クエンチボタンを使用する代わりに高速(制御された)ランプ下降が可能(高いランプ下降電圧を使用している場合):1.5T磁石は、例えば5分でランプ下降した。
【0015】
本発明のこれらの及び他の態様は、従属請求項に規定された実施形態を参照して更に詳細に説明される。
【0016】
本発明のMPCSの実施例では、HTSセグメントは、好ましくは金属導電性マトリックス又はクラッドなしで、セラミック材料(MgB若しくはYBaCuO、又は他のHTS銅酸化物)でできており、したがって、HTSセグメント全体が、超電導のその臨界温度を上回るその標準状態において高いオーム抵抗を有する。イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)は、高温超電導を示す結晶性化合物のファミリーであり、93K付近の液体窒素(77K)の沸点以上で超電導となることがわかっている初めての材料が含まれている。多くのYBCO化合物は、YBaCu7-x)の一般公式を有するが、YBaCu(Y124)やYBaCu7O()などの他のY:Ba:Cu比を有する材料も存在する。これは、レアアースバリウム銅酸化物(ReBCO)のより一般的な族の一部であり、イットリウムの代わりに他のレアアースが存在する。これらの材料はHTSセグメントに適している。また、HTSセグメントには、臨界温度が約39KのMgBを用いることができる。
【0017】
MPCSの実施例では、本発明は、2つのLTSセグメントと、LTSセグメント間のHTSセグメントとの直列配置として実施される。
【0018】
LTSセグメント及びHTSセグメントは直列に接続されているため、磁石電源のドリフトや電圧ノイズによって、それらの流れる電流が変動することがある。特に、HTSセグメントの臨界温度付近の遷移状態において超電導磁石のランピングの最終段階においてHTSセグメントがその超電導状態に回復するために冷却されるとき、超電導になる様々な極小経路が発生し、前述の電流変化による局所散逸が超電導状態を弱める場合がある。HTSセグメントがその標準状態からその超電導態に遷移する間、LTSセグメントはその標準(抵抗)導電状態のままである。LTSセグメントの抵抗は、MPCSのHTSセグメント全体の電圧ノイズを下げ、したがってHTSセグメント内の極小経路の散逸を低減する。実際には、LTSセグメントのオーム抵抗は、低温超電導材料(例えばNbTi)が配設された導電マトリックス(例えばCu)(クラッド又はマトリックス)の抵抗率によって支配される。HTSセグメントは、好ましくは、クラッド又はマトリックスとして導電性材料を含まない。ランプ上昇プロセスの最終段階での冷却中、つまり、MPCSを冷却するとき、HTSセグメントが部分的に超電導であり、部分的にその標準状態である瞬間がある。セラミック超電導体材料は、複合要素の比率がわずかに異なるか、結晶構造がわずかに異なるか、又はわずかに異なる温度と異なる(浮遊)磁場にあり得る多数の粒子又は結晶性ドメインで構成されており、したがって、有効超電導臨界温度は、HTSセグメント全体にわたって様々な値の分布を有している。超電導状態の回復の間、ほぼ最終の段階において、いくつかの粒子又はドメインのみがまだ標準の抵抗状態にある。つまり、一連の粒子が超電導状態にあり、1つ又はいくつかの粒子がまだ標準状態にある「ほぼ超電導状態の経路」が存在している。まだ抵抗性である直列のLTSセグメントがあることは、これらの1つ又はいくつかの粒子全体の電圧ノイズ全体を弱める。しかし、このような状況では、熱の大きい散逸は、HTSセグメントと直列にあるLTSセグメントによって対応され、したがって、最終粒子又はドメインも効率的に超電導の臨界温度のそれらの個々の値未満に冷却される。MPCSのワイヤの長さにわたって磁石電源によって印加される電圧は、より大きな寄与がLTSセグメントにわたっているように分割され、電圧の多くても一部のみがHTSセグメントにわたって分割される。したがって、HTSセグメントにわたって、せいぜい低い熱散逸のみがある。したがって、HTS材料の超電導臨界温度の近くで、HTSセグメントは低温システムによって効率的に冷却され、LTSセグメントがまだその標準の抵抗状態にある間に、その超電導状態を確実に回復できる。何らかの形の導電性金属材料又は金属酸化物をマトリックス、基板、又はクラッドとして適用して、冷却中のHTSセグメント全体の散逸の均一性を高めることができる。これは、電流が、標準の導電状態にまだあるセラミック高温超電導材料部分から離れて金属又は金属酸化物へと向けられるためである。HTSセグメントのこの金属又は金属酸化物は、LTSセグメントの電気抵抗よりもはるかに低い抵抗を有するため、HTSセグメントにわたる電力散逸は低く保たれ、したがって、ランピング電圧がより高いため、ランピングに必要な時間が短縮される。HTSセグメントは、標準状態では、LTSセグメントの抵抗よりもはるかに高い抵抗を有する。したがって、マトリックス/基板/クラッドの追加によって、この抵抗は依然として、LTSセグメントの抵抗よりもはるかに高くなるが、標準状態への遷移を容易にする妥協となり得る。
【0019】
本発明のMPCSの別の実施例では、キャパシタンスが接続ポートと並列に回路化される。したがって、電気電圧源(しばしば磁石電源と呼ばれる)をランピングするときに、キャパシタンスが磁石電源と並列に回路化される。これは、ローパスフィルタとして、つまり、ランピング中に発生する可能性のある高周波ノイズへのショートカットとして機能する。コンデンサは、HTSセグメントの導電率の変動によって生じる高周波ノイズをショートカットする。ローパスフィルタは、磁石巻線が敏感である通過する車両などの主電源のなどの外部ノイズ源によって生じる変動によるEM場変動によって生じ、また、MPCSに電圧ノイズを伝播する、MPCSを通る電流の変動を回避する。
【0020】
本発明のMPCSの更なる実施例では、シャント導体が、HTSセグメントと並列に、且つ任意選択でLTSセグメントを介しても回路化されている制御可能なスイッチと直列に回路化されている。制御可能なスイッチは、HTSセグメントが標準状態にあり、高いオーム抵抗を有する間、即ち、ランプ上昇/ランプ下降中に開状態に設定され、電圧が磁石電源によって印加される。制御可能なスイッチは、冷却中に超電導磁石が永久モードになっている間は閉じられる。シャント導体は、HTSセグメントの超電導がクエンチしたときにはHTSセグメントを保護する。この場合、電流がシャントと、HTSセグメントからのエネルギーが散逸する抵抗LTSセグメントとを通過するためである。
【0021】
本発明のMPCSの更に別の実施例では、サーマルスイッチが、HTSセグメントと熱接続ポートとの間に提供される。熱接続ポートは、磁石の極低温システムによって冷却される磁石の低温(例えば4K)構造への熱経路への入口を確立する。超電導磁石に実装されると、HTSセグメントは、超電導磁石の極低温システムの熱バッファにサーマルスイッチを介して熱的に結合される。HTSセグメントの冷却中は、サーマルスイッチは閉じられ、したがって、HTSセグメントから熱バッファへ熱がより効果的に運び出され、これにより、HTSセグメントを冷却して超電導になるまでの時間が短縮される。永久モードでは、HTSリード線が熱的に絶縁されるようにサーマルスイッチは開く。
【0022】
別の実施例では、LTSセグメントは、複数のLTSサブセグメントを含み、HTSセグメントは、1つ又は複数のHTSサブセグメントを含み、LTSサブセグメントと、複数のHTSサブセグメントのうちの1つとは、直列に交互に回路化されている。したがって、HTSサブセグメントは、LTSサブセグメント間で直列に回路化される。特に、LTSサブセグメントは、HTSセグメントを形成するワイヤの比較的短い一片で直列に接続されたソレノイドとして巻かれる。
【0023】
本発明は、超電導磁石巻線のアセンブリと、低温超電導材料のLTSセグメント及び高温超電導材料のHTSセグメントを含む1本の超電導ワイヤを備えたMPCSとを備える超電導磁石にも関する。本発明の超電導磁石は、高電圧でのランピングを可能にし、したがって、ランプ上昇/ランプ下降に要する時間を短縮できる。
【0024】
本発明の超電導磁石の実施例では、極低温システムが磁石巻線のアセンブリに結合され、磁石永久電流スイッチは、極低温システムの熱バッファにサーマルスイッチを介して熱的に結合される熱接続ポートを有する。サーマルスイッチを閉じると、熱接続ポートは、MPCSのHTSセグメントと熱的に対応する。これにより、永久モード動作中にHTSセグメントを熱的に絶縁しながら、HTSセグメントから熱バッファへ熱を運び出す熱経路が提供される。
【0025】
更に、本発明は、本発明の超電導磁石をランプ上昇/ランプ下降する方法に関する。サーマルスイッチは、MPCSを冷却する間、特にランプ上昇プロセスの終わりに向けて閉じられる。サーマルスイッチはまた、ランプ下降プロセスの終わりにも閉じられて、ランプ下降中に生成される熱を制御されたやり方で運び出すことができる。一実装形態では、ランプ上昇/ランプ下降のための方法は、シャント導体内の制御可能なスイッチの制御を含む。別の実装形態では、本発明の方法は、HTSセグメントと、超電導磁石の極低温システムにおける熱バッファに熱的にリンクされている熱接続ポートとの間のサーマルスイッチの制御を含む。制御可能なスイッチ及びサーマルスイッチの制御は、独立して、又は組み合わせて実施できる。
【0026】
本発明により、磁気共鳴検査システムに使用する場合に磁石に組み込まれる勾配増幅器を、磁石電源として使用する可能性を、磁石をランピングするために十分に使用することができ、並びに磁石をランプダウンするための勾配コイルの使用。どちらも高いランプ速度の可能性を有している。過去の発明の開示(特許として提出済み)を参照されたい。当然ながら、高電圧を供給する専用MPSも可能である。
【0027】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施形態を参照して、且つ添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、特定の長さのLTSワイヤのLTSセグメントと、一部品のHTSとしてのHTSセグメントとを備え、HTSセグメントにおけるヒータを有する本発明を組み込んだMPCSの図表現を示す。
図2図2は、特定の長さのLTSワイヤのLTSセグメントと、一部品のHTSとしてのHTSセグメントとを備え、LTSセグメントのためのヒータも有する本発明を組み込んだMPCSの図表現を示す。
図3図3は、HTSセグメントの冷却(超電導状態への回復)中は閉じる電気スイッチを並列に備えた本発明を組み込んだMPCSの図表現を示す。図3では、HTSセグメントのみにわたって電気スイッチがある。
図4図4は、HTSセグメントの冷却(超電導状態への回復)中は閉じる電気スイッチを並列に備えた本発明を組み込んだMPCSの図表現を示す。図4では、HTSセグメント及びLTSセグメント(の一部)にわたってスイッチがある。
図5図5は、MPCS、特にHTSセグメントを素早く冷却するために熱バッファへのサーマルスイッチを備えた本発明を組み込んだMPCSの図表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び図2は、特定の長さのLTSワイヤのLTSセグメントと、一部品のHTSとしてのHTSセグメントとを備え、HTSセグメントにおけるヒータを有する又はLTSセグメントのためのヒータも有する本発明を組み込んだMPCSの図表現を示している。図1及び図2の実施例では、LTSセグメント11は、2つのLTSサブセグメントから形成され、HTSセグメント12は、LTSセグメント11の間で直列に回路化されている。電気接続ポート16が提供されている。電気接続ポート16には、磁石巻線(図示せず)と磁石巻線に電流を注入するための磁石電源とが切り替え可能に接続されている。ヒータ13が、動作時にHTSセグメントだけでなくLTSセグメントにも熱を広げるように、HTSセグメントの近くに配置されている。ヒータ13は制御ユニット14によって制御される。制御ユニットは、HTSセグメント12及び/又はLTSサブセグメント11がそれらの標準の抵抗状態になるように磁石がランプされるときにヒータを作動させる。制御ユニット14は、LTSサブセグメント11及びHTSセグメント12が超電導に回復すると、ヒータをオフにする。これは、ヒータ13、21がオフにされると、磁石の極低温システムによってLTSサブセグメント13及びHTSセグメント12が冷却されるためである。図2の実施例では、LTSサブセグメント21の近くに追加のヒータ21が設置されて、超電導ワイヤ11、12の長さにわたってより効率よく熱を広げる。
【0030】
図3及び図4は、HTSセグメントの冷却(超電導状態への回復)中は閉じる電気スイッチを並列に備えた本発明を組み込んだMPCSの図表現を示している。図3では、HTSセグメントのみにわたってスイッチがあり、図4では、HTSセグメント及びLTSセグメント(の一部)にわたってスイッチがある。図3の実施例では、スイッチ付きシャント導体が、HTSセグメント12と並列に配置されている。図4の実施例では、スイッチ42付きシャント導体41は、LTSサブセグメント及びHTSセグメントの両方にわたって並列に回路化されている。
【0031】
図5は、MPCS、特にHTSセグメントを素早く冷却するために熱バッファへのサーマルスイッチを備えた本発明を組み込んだMPCSの図表現を示している。1本のMPCS10の超電導ワイヤ11、12は、熱伝導性の高い材料で作られた熱導体54に熱的に結合されている。この熱導体は、サーマルスイッチ51の一端と熱的に接触している。サーマルスイッチ51のもう一端は、熱バッファ53との熱的に接触(52)している。制御ユニット14がサーマルスイッチを作動させる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】