(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】発症段階における植物病検出
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20250123BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20250123BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544452
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2023051986
(87)【国際公開番号】W WO2023144293
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521508254
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ アグロ トレードマークス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャンカー,プリヤンヴァダ
(72)【発明者】
【氏名】ムコパダヤ,サヤン
【テーマコード(参考)】
5L050
【Fターム(参考)】
5L050CC01
(57)【要約】
本発明は、発症段階における植物病の検出に関する。農業における植物(12)病の発症及び/又は発症時期を決定するための、コンピュータで実施される方法が提供される。方法は、植物の栽培に関連付けられた圃場データ(14)と、植物が栽培されている場所に関連付けられた気象データ(16)とを含む第1のデータをコンピュータモデル(20)に提供すること(S110)を含む。方法は、コンピュータモデル(20)を用いて、植物に関する植物病存在予測と植物病の蔓延とを決定すること(S120)と、植物病存在予測を含むコンピュータモデル(20)出力と、植物に関連付けられた1つ以上の植生指数を含む第2のデータ(18)とから、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用することにより、植物における発症及び/又は植物病が発症すると予測される発症時期を決定することと、を更に含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業における植物(12)病の発症及び/又は発症時期を決定するためのコンピュータで実施される方法であって、前記方法は、
前記植物の栽培に関連付けられた圃場データ(14)と、前記植物が栽培されている場所に関連付けられた気象データ(16)とを含む第1のデータをコンピュータモデル(20)に提供すること(S110)と、前記コンピュータモデル(20)を用いて、前記植物に関する植物病存在予測と前記植物病の蔓延とを決定すること(S120)と、
前記コンピュータモデル(20)により出力された前記植物病存在予測から、及び前記植物に関連付けられた1つ以上の植生指数を含む第2のデータ(18)から、前記植物病存在予測と前記1つ以上の植生指数の変化とを用いることにより、前記植物において前記植物病が発症すると予測される前記発症及び/又は発症時期を決定することと、を含む方法。
【請求項2】
前記植物病存在予測と前記1つ以上の植生指数の変化とを用いることは、
推定ルールを適用することを含み、前記推定ルールは、前記植物病存在予測において前記植物病が存在する場合且つ前記1つ以上の植生指数の変化がある場合に、前記植物病の前記発症及び/又は発症時期として決定するように適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記推定ルールは、
【数1】
により表現され、
式中、
【数2】
は、前記コンピュータモデルの予測の勾配であり、
【数3】
は、前記1つ以上の植生指数の勾配であり、*は、論理AND演算子である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物病存在予測と前記1つ以上の植生指数の変化とを用いることは、
複数の植物病存在予測の経時変化を含む前記植物病存在予測において、前記1つ以上の植生指数に対して微分演算子を畳み込みすることと、最大勾配を有する点を前記植物病の前記発症及び/又は発症時期として決定することと、を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の植生指数は、規格化差植生指数、NVDI、規格化差レッドエッジ指数、NDRE、及び規格化差水指数、NDWIのうちの1つ以上を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のデータ及び/又は前記1つ以上の植生指数は、遠隔探査データから導かれる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記遠隔探査データは、1つ以上の衛星及び/又は1つ以上の航空機から得られる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記遠隔探査データは、1つ以上のマルチスペクトル画像を含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記圃場データは、前記植物の生長段階、前記植物の播種後の日数、前記植物の植付け月、植付け通日、前記植物の栽培場所、及び以前の作物、のうちの1つ以上に関する情報を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記気象データは、風速、平均風速、相対湿度、平均相対湿度、最大相対湿度、気温、最大気温、降水量、及び5cmの高さでの最低気温のうちの1つ以上に関する情報を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コンピュータモデルは、植物病存在予測のための前記コンピュータモデルの使用前に、前記第1のデータにフィッティングされた訓練データを含むが前記第2のデータにフィッティングされた訓練データを含まない訓練データを用いて訓練される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のデータ及び/又は前記第2のデータは表形式構造で提供される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
出力データとして決定された前記発症及び/又は前記発症時期を、植物保護、又は処置トリガー、アラーム及び/若しくはスケジュールのために使用するために提供することを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
農業における植物の処置をスケジュールするための、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法により決定される発症及び/又は発症時期の使用。
【請求項15】
農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定するための装置であって、前記装置は、
データプロセッサ(30)と、
前記データプロセッサに接続されているデータインターフェースを備え、
前記データインターフェースは、前記植物の栽培に関連付けられた圃場データ、及び前記植物が栽培される場所に関連付けられた気象データを含む、第1のデータと、前記植物に関連付けられた1つ以上の植生指数を含む第2のデータと、を受信するように構成され、
前記データプロセッサ(30)は、前記受信された第1のデータに基づいて、前記植物に関する植物病存在予測と前記植物病の蔓延とを決定するための、コンピュータモデル(20)を実行するように構成され、
前記データプロセッサ(30)は、前記病存在予測を含む前記コンピュータモデルの出力と前記第2のデータとに基づいて、前記植物病が前記植物において発症すると予想される前記発症及び/又は発症時期を、前記病存在予測と前記1つ以上の植生指数の変化とを用いることにより決定するように構成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、コンピュータ支援農業植物処置に関する。具体的には、本出願は、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定する方法及び装置に関する。更に、本出願は、植物病を予測するためのコンピュータモデルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
農業において、栽培された植物、作物等が播種と収穫との間に生じる病気により影響を受ける可能性があり、それが収量を減少させる場合がある。それにより、植物病発生は、主に3つの要因、すなわち、植物固有の脆弱性に影響を及ぼす宿主植物、病気を引き起こすエージェントを表す病原体、及び病気にとって好ましい気象等を含み得る環境条件により引き起こされる。主としてこれら3つの要因が病気の発生を引き起こし、病気の進行はこれら要因間の動的なプロセスである。要因のこのような複雑な相関だけでも、植物病の管理が難題になる。しかしながら、植物は、植物保護手段又は植物処置、例えば、植物保護剤、殺虫剤等の適用により、健康に保つことができる。それでもやはり、例えば、植物保護手段のための最適な時期を決定すること、適切な植物保護剤を特定すること、植物保護剤の最適量を決定すること、などは課題である。
【0003】
この目的のため、植物病を制御するための植物処置をスケジュールするために、植物病、例えば植物病の重症度を予測するためのコンピュータモデルを使用することができる。例えば農業従事者により使用される圃場又は作物管理システムにおいて、このようなコンピュータモデルを使用して植物のケア及び/又は処置を支援する場合、デバイスが、例えば農業従事者に、作物病について通知し及び/又は作物処置及び/又は病気制御のための作業指示を提供することを、システムが、むしろ不正確な、ときには遅すぎる時間に提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、植物病を予測するためにコンピュータモデルを使用する場合、予測精度を改善する必要が依然としてあり得る。本発明の目的は、独立請求項の主題によって解決され、更なる実施形態が従属請求項に組み込まれる。
【0005】
第1の態様では、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定するための、コンピュータで実施される方法が提供される。方法は、植物の栽培に関連付けられた圃場データと、植物が栽培されている場所に関連付けられた気象データとを含む第1のデータをコンピュータモデルに提供することと、コンピュータモデルを用いて、植物に関する植物病存在予測と植物病の蔓延とを決定することとを含む。更に、方法は、植物病存在予測を含むコンピュータモデルの出力と、植物に関連付けられた1つ以上の植生指数を含む第2のデータとから、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用すること、又は植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化と共に使用することにより、具体的には、病気存在予測を1つ以上の植生指数の変化に整合させることにより、植物において植物病が発症すると予測される発症及び/又は発症時期を決定することを含む。
【0006】
換言すれば、農業における植物病を植物病の発症段階で検出するためのコンピュータで実施される方法が提供される。方法は、植物の栽培に関連付けられた圃場データと、植物が栽培されている場所に関連付けられた気象データとを含む第1のデータをコンピュータモデルに提供することと、コンピュータモデルを用いて、植物に関する植物病存在予測と植物病の蔓延とを決定することとを含む。更に、方法は、植物病存在予測を含むコンピュータモデルの出力と、植物に関連付けられた1つ以上の植生指数を含む第2のデータとから、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用すること、又は植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化と共に使用することにより、具体的には、病気存在予測を1つ以上の植生指数の変化に整合させることにより、植物において植物病が発症すると予測される発症及び/又は発症時期を決定することを含む。
【0007】
圃場、圃場のセクション、及び/又は植物における植生を分析するために使用できる任意の指標、例えばグラフィカル指標であってもよい植生指数を補助特徴として使用して、第1のデータに基づいてコンピュータモデルから導かれた植物病存在予測、又は植物病存在予測の経時変化、又は病気重症度予測の経時変化と共に、植物病の早期発症を検出できることを、本発明者らは見出した。換言すれば、植物病の出現を初期段階にて推定して、利用可能な植生指数を考慮して、病気の最初の観察前に圃場での植生の挙動を分析することにより、病気の蔓延を制御するように取り組むための、本明細書における方法、システム等を発明者らは見出した。したがって、本方法は、コンピュータモデルの出力と植生指数の変化との両方の組合せに基づいて、病気進行の初期兆候を予測することを可能にする。換言すれば、本方法は、モデルで予測された病気進行の傾向と植生指数との両方に基づいて植物病の発症を推定する。これは、3種類のデータに依存する:インサイチュデータ若しくは圃場(収集された)データ、気象データ、及び植生指数。
【0008】
このようにして、早期に、更には事前に又は少なくとも病気発生及び/又は蔓延の初期段階に、農業従事者に警告することができ、その結果、植物病を制御する好機が存在する。これは、圃場及び作物管理に対して、例えば持続可能性又は環境に対して、好ましい影響をもたらす。なぜなら、蔓延が少ないこと、適用しなければならない殺虫剤等が減ることなどに起因して、作物処置のための機器を稼働させなければならない頻度が減るからである。発症又は発症時期が決定されると、圃場及び/又は植物管理システムが、発症した植物病に関する情報を農業従事者に提供すること、及び/又は植物処置及び/又は病気に対する処置のための処置スケジュール若しくは計画を決定することができる。圃場及び/又は植物管理はまた、ロボット車両、無人航空機等に指示すること又はこれらを制御することを含んでもよく、及び/又は農業従事者にメッセージを送ることを含んでもよい。更に、初期段階での植物病の良好な制御により、少なくとも病気が蔓延した植物と比較して、良好な又は最大の収量を得ることが可能になる。
【0009】
植物病の発症及び/又は発症時期は、上述した圃場又は植物管理システムであり得る又はその一部であり得るサーバ又はクラウド環境において決定及び/又は使用され得ることに留意されたい。発症及び/又は発症時期は、植物病の発症を農業従事者に通知するために使用すること、例えばメッセージとして送ることができ、それに応じて、農業従事者は、植物病及びその蔓延を制御するために、植物処置のような対策を開始することができる。代わりに又は加えて、植物病の発症及び/又は発症時期は、農業従事者のサイトにあり得るクライアントデバイスにおいて決定及び/又は使用され得る。
【0010】
本明細書で使用する場合、植物病は、任意の望ましくない壊滅的な植物病及び/又は壊滅的な作物病であり得る。例として、植物病は、Puccinia striiformisと呼ばれる真菌によって生じる場合があるが、少なくともこれらが植物の生理学に目に見える影響、例えば、バイオマスの減少、葉面積指数(LAI)の減少、感染によって生じる病変、色素の破壊、及び萎れ等などを生じさせる場合は、他の病気が考えられる。そのような植物病が、例えば植物の収量に影響を及ぼす場合がある。
【0011】
観察され及び/又は処置される植物は任意の栽培される植物でもあってもよく、小麦、米、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆等の作物と呼ばれる場合もある。好ましくは、植物は、植物病の発症及び/又は蔓延時に、植物の生理学に関する目に見える影響、バイオマスの減少、葉面積指数(LAI)の減少、感染によって生じる病変、色素の破壊、及び萎れ等を示す。
【0012】
コンピュータモデルは回帰モデルであってもよく、これは、植物病重症度が連続的な変数であるため好適である。コンピュータモデルは、その使用前に訓練データにより訓練され得る。コンピュータモデルは、ツリーベースアルゴリズム、例えば、XGBoost、ランダムフォレスト、CatBoost等により実装され得る。例えば、コンピュータモデルは、病気重症度を0~1の値として経時的にモデル化するために使用されてもよく、0は病気がないこと、1は最大の蔓延を示す。
【0013】
気象データは、例えば、1つ以上の気象観測所からの観察データ及び/又はモデル化されたデータを含んでもよく、これらデータは、1つ以上のパラメータ、例えば、気温(最高、最低、及び平均)、5cmの高さでの気温、雲量パーセンテージ、露点、降水量(mm及び持続時間)、相対湿度(最大、最小、及び平均)、時間単位での日照継続時間及び風速(最大、最小、及び平均)等を含み得る。例えば、植物病は、一日の平均気温及び最高気温、降水量、日照継続時間、並びに植物の病気の進行に影響を及ぼす他の気象パラメータ、の挙動との相関を有し得る。
【0014】
植物が栽培されている場所は、圃場データから、探索、インサイチュ観察、提供された農業従事者の記録等から知ることができ、地理的座標等で示すことができる。
【0015】
実施形態によれば、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用すること、又は植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化と共に使用すること、具体的には整合させることは、推定ルールを適用することを含んでもよく、推定ルールは、植物病存在予測において植物病が存在する場合且つ1つ以上の植生指数の変化、例えば増加又は低下等がある場合に、これを植物病の発症及び/又は発症時期として決定するように適用される。換言すれば、コンピュータモデルの植物病存在予測において存在が決定された場合、且つ植生指数の変化、例えば増加又は低下が決定された場合に、本方法は植物病の発症の信号を送る。したがって、植物病の発症を非常に正確に決定することができ、それに応じて、農業従事者への早期警告を生成し提供することができる。
【0016】
更に換言すれば、一実施形態によれば、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用すること、又は植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化と共に使用すること、具体的には整合させることは、推定ルールを適用することを含んでもよく、推定ルールは、植物病存在予測において植物病が存在する場合且つ1つ以上の植生指数の変化がある場合に、植物病の発症の決定を信号で伝えることを定義している。
【0017】
一実施形態では、推定ルールは以下のように表現され得る:
【数1】
式中、
【数2】
は、コンピュータモデルの予測の勾配であり、
【数3】
は、1つ以上の植生指数の勾配であり、*は、論理AND演算子である。したがって、推定ルールは容易にコンピュータに実装でき、植物病の発症を非常に正確に決定することができ、それに応じて、農業従事者への早期警告を生成し提供することができる。
【0018】
実施形態によれば、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用すること、又は植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化と共に使用すること、具体的には整合させることは、複数の植物病存在予測の時間経過を含む植物病存在予測において、1つ以上の植生指数に対して微分演算子を畳み込みすることと、最大勾配を有する点を植物病の発症及び/又は発症時期として決定することと、を含み得る。例えば、これら予測の時系列を考慮すると、実際に病気を観察する数日前に、コンピュータモデルが植物病存在予測においてスパイクを示すことが観察される可能性がある。したがって、このスパイクを検出する効率的な方法を適用し、次いで、病気重症度の発症を検出するための観察ウィンドウとして使用できるウィンドウをこのスパイクの周囲に固定することができる。これらスパイクを検出するために、実際の時系列の長さの2倍の長さを有する微分演算子が遠隔探査インデックスに対して畳み込みされ、最大のスパイクが発生した点が最大勾配を有する点である。この手法は、コンピュータモデルのスパイクを検出するのに良好に機能する。
【0019】
一実施形態では、1つ以上の植生指数は、規格化差植生指数、NVDI、規格化差レッドエッジ指数、NDRE、及び規格化差水指数、NDWIのうちの1つ以上を含み得る。上述したように、これら植生指数は、遠隔探査データ、例えば、圃場、その圃場セクション、及び/又は観察される植物が、生きている緑色植生等を含むかどうかを評価するための測定値、を分析するために使用できるグラフィック指標であり、植生の状態及び量の良好な指標である。もちろん、これに関連して、植生の状態及び/又は量を示すいかなる植生指数も使用できる。例えば、健康な植物は通常は緑色であり、これは、健康な植物が、青色光及び赤色光を吸収し、可視波長における近赤外(NIR)及び緑色に対してより高い反射率を有するからである。しかしながら、植物が病気にかかるとスペクトル反射率及び吸収率が基本的に逆転する。したがって、1つ以上の植生指数を手作業での探索への補助として使用することもでき、これを、効率が劣り人間の判断の影響を受ける手作業での探索と比較して、自動化された客観的な形で植物病を検出及び定量化できる診断ツールとして機能させることができる。
【0020】
一実施形態によれば、第2のデータ及び/又は1つ以上の植生指数が、遠隔探査データから導かれ得る。換言すれば、植物病の発症及び/又は発症時期を決定するために本明細書で使用されるデータは、具体的には、インサイチュデータ又は圃場データ、気象データ、及び遠隔探査データを含み得る。これにより、圃場のそのように有用な情報、すなわち1つ以上の植生指数を、いかなる物理的接触も又は多大な手作業もなしで得ることが可能になる。そのような非侵襲探索は、例えば、1つ以上の光学センサを用いて行われ得る。したがって、光学センサの能力を、例えば地理情報システム(GIS)及びモノのインターネット(IoT)と組み合わせることにより、得られた探索結果を精密農業に組み込むことが可能になる。病気検出に使用される光学センサは、RGB(赤色、緑色、青色)センサ、マルチ及びハイパースペクトル反射率センサ、熱センサ、及び/又は蛍光撮像を含み得る。より詳細には、RGBセンサは、植物病のデジタル画像を赤色、緑色、及び青色チャネルで捕捉するように構成されてもよく、そのような画像は、作物の病気を定量化するために、機械学習及び/又はコンピュータビジョン技術により処理されてもよい。更に、マルチ及びハイパースペクトル反射率センサを用いると、病気検出は、電磁スペクトル(EMS)の特定の波長にて作物キャノピーから放出される光量に基づく。例示的なタイプのスペクトルセンサ、すなわちマルチスペクトルセンサ及びハイパースペクトルセンサは、帯域の数及びEMSに対する狭帯域に基づいている。マルチスペクトルセンサは、3~10の帯域、例えば、赤色、緑色、青色、近赤外(NIR)、及び短波長赤外を有する結像をもたらす。これに対して、ハイパースペクトルセンサは、複数のより狭い帯域(100~1000の帯域)を有する。個々の帯域からの反射率をモニタする代わりに、それらを、上述した植生指数(VI)の形で組み合わせることもできる。規格化差植生指数(NDVI)、規格化差レッドエッジ指数(NDRE)、規格化差水指数(NDWI)等のような植生指数が全て、植生状態及び量の良好な指標である。したがって、そのようなスペクトルセンサは、サイト固有の病気管理のために貴重であると考えられる。更に、熱センサは、作物キャノピーから放出された放射線を測定し、それを温度に変換するように構成されている。この温度は、植物の蒸発能力及び土壌水分状態に依存するので、病気の存在が影響を及ぼし、熱的結像を用いて検出できることが示される。更には、蛍光イメージングは、植物の光合成能力を捕捉するように構成され、健康な植物と病気でストレスを受けた植物との間の光合成能力の差の関数として病気を推定できる。
【0021】
遠隔探査は、圃場スケール及び大規模スケールの両方においてほぼ実時間の情報を提供する能力を有し、したがって持続可能な植物保護を可能にしている。本明細書で使用する場合、遠隔探査は、あるエリアの物理的特徴を、ある距離をおいて、典型的には、衛星又は航空機、無人航空機(UAV)等から、その反射された及び放出された放射線を、それらが植生指数を導くために分析することが好適な測定値及び/又は画像を提供する限りにおいて測定することにより検出及びモニタするプロセスとして理解され得る。衛星及び飛行機、UAV等の上のセンサ及び/又はカメラが、地表上の広い領域の測定、撮像などを行うことができる。
【0022】
一実施形態では、遠隔探査データを、1つ以上の衛星及び/又は1つ以上の航空機から得ることができる。この点に関して言えば、遠隔探査は、植物から特定の波長で反射及び/又は放出される光量を測定して、植物の健康の徴候である葉緑素含有量を推定するために、例えば、衛星及び/又は航空機に取り付けられた光学センサに依存し得る。上述したように、健康な植物は通常は緑色であり、これは、健康な植物が、青色光及び赤色光を吸収し、可視波長における近赤外(NIR)及び緑色に対してより高い反射率を有するからである。しかしながら、植物が病気にかかるとスペクトル反射率及び吸収率が基本的に逆転する。したがって、遠隔探査を手作業での探索への補助とすることができ、これを、効率が劣り人間の判断の影響を受ける手作業での探索と比較して、自動化された客観的な形で植物病を検出及び定量化できる診断ツールとして機能させることができる。例えば、遠隔探査のためのデータソースとして使用される衛星は、Sentinel-2、Airbus OneAtlas、ランドサット7又は8等を含み得る。
【0023】
一実施形態によれば、遠隔探査データは、1つ以上のマルチスペクトル画像を含み得る。例えば、マルチスペクトルセンサは、3~10の帯域、例えば、赤色、緑色、青色、近赤外(NIR)、及び短波長赤外を有する結像をもたらす。個々の帯域からの反射率をモニタする代わりに、それらを植生指数(VI)の形で組み合わせることができる。
【0024】
一実施形態では、圃場データは、植物の生長段階、植物の播種後の日数、植物の植付け月、植付け通日、植物の栽培場所、及び以前の作物、のうちの1つ以上に関する情報を含み得る。これらデータは、個々に、グループで、又は組み合わせて、植物病の発症の早期検出に特に役立つことを示している。
【0025】
一実施形態によれば、気象データは、風速、平均風速、相対湿度、平均相対湿度、最大相対湿度、気温、最大気温、降水量、及び5cmの高さでの最低気温のうちの1つ以上に関する情報を含み得る。これらデータは、個々に、グループで、又は組み合わせて、植物病の発症の早期検出に特に役立つことを示している。
【0026】
一実施形態では、コンピュータモデルは、植物病存在予測のためのコンピュータモデルの使用前に、第1のデータにフィッティングされた訓練データを含むが第2のデータにフィッティングされた訓練データを含まない訓練データを用いて訓練され得る。換言すれば、1つ以上の植生指数を、計算モデルを訓練するための特徴として使用せずに、病気の初期発症を決定するための、植物病存在予測モデルに対する補助特徴として使用することを、発明者らは見出した。本明細書に記載されるように、計算モデルは、例えば、植生指数関連データ又は遠隔探査データの他には、時間的で幾何学的でハイパーローカルな天気、以前の作物及び/又は生長段階の特徴、及び/又は本明細書に記載される他のデータだけを用いて訓練されてもよく、コンピュータモデルを使用して、モデルがいつ病気の存在を予測し始めるかを決定し、NDVI及びNDREなどの1つ以上の植生指数を観察して、それらがいつ変化し始めるか、例えば増加し始めるか又は低下し始めるかが確認される。モデルにより予測された病気の存在及び/又は進行の傾向、並びに1つ以上の植生指数及び/又は遠隔探査指数に基づく、上述した推定ルールを用いて、病気の発症及び/又は病気重症度が推定され得る。コンピュータモデルを訓練するときに、植生指数及び/又は遠隔探査データを除外した結果、驚くべきことに、特に正確な病気発症の予測又は推定が得られた。加えて、限定された訓練データに起因して、訓練の労力はより低くなる。
【0027】
一実施形態によれば、第1のデータ及び/又は第2のデータは、表形式構造で提供され得る。第1のデータは、その重要性から以下が選択され得る:考慮する作物の生長段階、作物栽培の緯度、作物栽培の国、作物栽培の及び/又は作物栽培中の最大気温、考慮する作物の植付け月、考慮する作物の植付け日、考慮する作物の植付け通日、考慮する作物の圃場の以前の作物、考慮する作物の植付け年、考慮する作物の播種後の日数、試行年(すなわち、試行が実施された年)、作物栽培の及び/又は作物栽培中の最低気温、考慮する作物の地上5cmの高さでの最低気温、降水期間、作物栽培中の平均雲量パーセンテージ、作物栽培中の最大露点、作物栽培中の最大風速、作物栽培中の平均風速、作物栽培中の最低相対湿度、作物栽培中の最高相対湿度、作物栽培中の平均相対湿度、最良の降水量、作物栽培中の日照継続時間。例えば、病気の発生及び進行にとって気象は非常に決定的であり得るので、選択のためには、その重要性はむしろ高い。上記リストから一組の特徴を選択することにより、コンピュータモデルの予測は更に改善され得る。
【0028】
一実施形態では、方法は、出力データとして決定された発症及び/又は発症時期を、植物保護、又は処置トリガー、アラーム及び/若しくはスケジュールのために使用するために提供することを更に含み得る。例えば、病気管理のための、発症及び/又は発症時期のそのような予測から、植物保護剤の噴霧時点又は時間ウィンドウを導くことができる。例として、発症予測を使用して、使用される植物保護剤を特定することができる。この目的のため、好適なコンピュータモデル、又はデータベースにより得られるデータ等が使用され得る。これは、植物処置の質を更に改善できる。一実施例では、発症予測が農業従事者に通知するトリガーとして使うことができる(例えばメッセージ、警報などで)こと及び/又は指示する、農業従事者ユーザは、例えば特定の時刻に、作物保護のための特定の措置を実行する。更に、例として、発症保護を使用して、例えば、特定の日にち又は時間に、自動的に作物処置を行い、及び/又は、例えば、植物保護剤、殺虫剤などを適用するように適合されてもよいロボットデバイス、例えば噴霧デバイスに提供されるように適合された制御データが生成されてもよく、作物の保護及び/又は急性期処置のために提供される作物保護及び/又は処置計画を決定するために使用されてもよい。計画は、処置周期又は処置時期を含み得る。換言すれば、発症を使用することにより、一方では、少なくとも病気を制御、排除、又は防止するために、他方では、必要な植物保護剤又は殺虫剤の量を可能な限り少なくするために、例えば植物保護剤又は殺虫剤を適用することができる、好適な、好ましくは最も適切な処置タイミング、例えば噴霧タイミングを見つけることが可能になる。したがって、植物保護処置パラメータは、最適処置及び/又は適用時期と呼ばれ得る。これは、農業における効率を更に改善し得る。
【0029】
本出願の第2の態様は、農業において植物の処置をスケジュール又は計画するための、第1の態様による方法により決定される発症及び/又は発症時期の使用に関する。例えば、病気管理のための、発症及び/又は発症時期のそのような予測から、植物保護剤の噴霧時点又は時間ウィンドウを導くことができる。例として、発症予測を使用して、使用される植物保護剤を特定することができる。この目的のため、好適なコンピュータモデル、又はデータベースにより得られるデータ等が使用され得る。これは、植物処置の質を更に改善できる。一実施例では、発症予測は、例えば、メッセージ、警報などを介して農業従事者に通知するための、及び/又は、農業従事者ユーザに作物保護のための特定の作業を、例えば特定の時期に実施させるように指示するための、トリガーとして使用されてもよい。更に、例として、病気保護を使用して、例えば、特定の日にち又は時間に、自動的に作物処置を行い、及び/又は、例えば、植物保護剤、殺虫剤などを適用するように適合された、ロボットデバイス、例えば噴霧デバイスに提供されるように適合されてもよい制御データが生成されてもよい。これは、農業における効率を更に改善し得る。
【0030】
第3の態様では、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定するための装置が提供される。装置は、第1の態様に従う方法を実施するように構成され得る。
【0031】
換言すれば、農業における植物病を植物病の発症段階で検出するための装置が提供される。
【0032】
装置は、データプロセッサと、データプロセッサに接続されているデータインターフェースとを備える。データインターフェースは、植物の栽培に関連付けられた圃場データ、及び植物が栽培される場所に関連付けられた気象データを含む、第1のデータと、植物に関連付けられた1つ以上の植生指数を含む第2のデータと、を受信するように構成され、データプロセッサは、受信された第1のデータに基づいて、植物に関する植物病存在予測と植物病の蔓延とを決定するための、コンピュータモデルを実行するように構成されている。データプロセッサは、病存在予測を含むコンピュータモデルの出力と第2のデータとに基づいて、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用すること、又は植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化と共に使用すること、具体的には、植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化に整合させることにより、その植物病がその植物において発症すると予想される発症及び/又は発症時期を決定するように構成されている。
【0033】
第4の態様は、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定するためのコンピュータプログラム要素を提供し、コンピュータプログラムは、データプロセッサ及び/又はコンピュータデバイスにより実行されているときに、第1の態様による方法を行うように、及び/又は第3の態様による装置を制御するように適合されている。
【0034】
第5の態様によれば、第4の態様に従うコンピュータプログラム要素を保存している又は含むコンピュータ可読記憶媒体又は伝達媒体が提供される。
【0035】
第6の態様は、上記の態様のいずれか1つによる、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定するように構成されたサーバ又はクラウド環境を提供する。サーバ又はクラウド環境は、少なくとも1つのデータプロセッサと、好ましくは第1の及び/又は第2のデータ、すなわち、圃場データ、気象データのうちの1つ以上を提供及び/又は受信するように構成された、少なくとも1つのデータ及び/又は通信インターフェースと、1つ以上の植生指数とを含み得る。
【0036】
第7の態様は、態様1~4のいずれか1つによる、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定するように構成されたクライアントデバイスを提供する。クライアントデバイスは、少なくとも1つのデータプロセッサと、好ましくは第1の及び/又は第2のデータ、すなわち、圃場データ、気象データのうちの1つ以上を提供及び/又は受信するように構成された、少なくとも1つのデータ及び/又は通信インターフェースと、1つ以上の植生指数とを含み得る。
【0037】
第8の態様は、第5の態様によるサーバ又はクラウド環境と、第7の態様によるクライアントデバイスとを含むシステムを提供する。システムは、分散型コンピュータシステムであってもよく、計算ステップは、分散された部品間で分割されてもよい。また第3の態様の上記の装置は、システムの一部あってもよく、またシステムの異なる構成物の間で分配されてもよい。
【0038】
本発明の複数の実施形態が、異なる主題を参照して説明されていることに留意されたい。具体的には、いくつかの実施形態が、方法タイプの請求項を参照して説明されているのに対して、他の実施形態は、装置若しくはデバイスタイプ、又はシステムタイプの請求項を参照して説明されている。しかしながら、当業者であれば、上記及び以下の説明から、別途注記されない限り、1種類の主題に属する複数の特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関係する特徴間の任意の組み合わせも本出願に開示されていると推察するであろう。更に、全ての特徴を組み合わせることで、それらの特徴の単なる合算よりも多くの相乗効果を得ることができる。
【0039】
本発明のこれら及び他の態様が、以下に記載される実施形態から明らかであり、以下に記載される実施形態を参照して解明されるであろう。
【0040】
本発明の例示的実施形態が、以下の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本開示による、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定する原理を概略的ブロック図で示す。
【
図2】遠隔探査を利用する、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定する原理を概略的ブロック図で示す。
【
図3】
図1又は
図2による農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定する原理を適用する使用事例を概略的ブロック図で示す。
【
図4】
図1又は
図2による農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定する原理を適用する使用事例を概略的ブロック図で示す。
【
図5】本開示による、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定するための、コンピュータで実施される方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面は概略的表現に過ぎず、本発明を例示するだけの役割を担う。同一の要素又は等価な要素は、一貫して同じ参照符号が付与されている。
【0043】
図1は、本開示による、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定する原理を概略的ブロック図で示す。
図1に示す原理は、コンピュータで実施することができ、本明細書に記載される方法、装置、デバイス、及びシステムに適用することができる。
【0044】
圃場10、又はその1つ以上の圃場セクション10a、又はその上に栽培されている1種以上の植物12が原理の出発点であり、これは、例えば地理的座標、農業従事者のデータ等を用いて、局所化することができる。圃場10又はその上に栽培されている植物12は、その播種とその収穫との間に植物病に感染する場合があり、それが、収量を低減させる又は損なう場合がある。本明細書に記載されるように植物病の発症及び/又は発症時期を決定することは、例えば、病気をより容易に制御可能であって収量を維持又は増加させることができる初期段階において病気を検出及び/又は制御することを手助けする。
【0045】
図1に示すように、植物病の発症及び/又は発症時期を決定する原理は、植物の栽培に関連付けられた圃場データ14と、植物12の場所、すなわち圃場10の場所又はそれぞれの圃場セクション10a等に関連付けられた気象データ16と、植生状態及び/又は量を示す植生指数データ18とに依存している。圃場データ14及び気象データ16は第1のデータと呼ばれる場合があり、植生指数データ18は第2のデータと呼ばれる場合がある。
【0046】
圃場データ14、気象データ16、及び植生指数データ18は、植物に関する植物病存在予測と植物病の蔓延とを決定し出力するように訓練されたコンピュータモデル20に提供される。
【0047】
病気重症度予測の時間経過を含み得る上述した植物病存在予測と、植生指数データ18とを含む、コンピュータモデル20の出力は、例えばデータプロセッサ30により処理される。コンピュータモデル20は、データプロセッサ30により又は任意の他の好適なコンピューティング手段により動かされ得る。データプロセッサ30、更にはコンピュータモデル20は、例えば、
図1では矢印で示すデータインターフェースを介して、計算結果などのデータ又は上記データを受信又は提供するように構成され得る。
【0048】
具体的には、上述した植物病存在予測を含むコンピュータモデル20の出力が、植生指数データ18の1つ以上の植生指数の変化と整合されるか、又は植生指数データ18から導かれて、その植物においてその植物病が発症すると予想される発症及び/又は発症時期が決定される。
【0049】
例えば、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用すること、又は植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化と共に使用すること、具体的には整合させるために、データプロセッサ30は推定ルールを適用してもよく、推定ルールによれば、植物病存在予測において植物病が存在する場合且つ1つ以上の植生指数の変化、例えば増加又は低下、がある場合に、これを植物病の発症及び/又は発症時期として決定するように適用される。このルールは、コンピュータ命令に実装され得る。
【0050】
換言すれば、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用すること、又は植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化と共に使用すること、具体的には整合させることは、推定ルールを適用することを含んでもよく、推定ルールは、植物病存在予測において植物病が存在する場合且つ1つ以上の植生指数の変化がある場合に、植物病の発症の決定を信号で伝えることを定義している。
【0051】
したがって、推定ルールは以下のように表現され得る:
【数4】
式中、
【数5】
は、コンピュータモデルの植物病予測の勾配であり、
【数6】
は、1つ以上の植生指数の勾配であり、*は、論理AND演算子である。
【0052】
圃場データ14は、植物の生長段階、植物の播種後の日数、植物の植付け月、植付け通日、植物の栽培場所、及び以前の作物、のうちの1つ以上に関する情報を含み得る。
【0053】
気象データ16は、例えば、1つ以上の気象観測所からの観察データ、及び/又はモデル化されたデータ等を含み得る。これらは、気象観測所、気象観測所ネットワーク、データベースから得られることができ、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)を介して提供されてもよく又は取得されてもよい。
【0054】
植生指数データ18は、規格化差植生指数、NVDI、規格化差レッドエッジ指数、NDRE、及び規格化差水指数、NDWI等などの1つ以上の植生指数を含んでもよく、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)を介して提供すること又は得ることができる。
【0055】
図2は、遠隔探査を利用して遠隔探査から植生指数データ18を得ることを伴う、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定する原理を概略的ブロック図で示す。
【0056】
この例示的な実施形態では、遠隔探査は、1つ以上の植生指数を導くことができる探査データを取得するために、Sentinel-2、エアバス OneAtlas、ランドサット、7、ランドサット8等の衛星若しくは衛星データソース100、又は航空機を利用してもよい。例えば、遠隔探査は、衛星又は航空機の光学センサを利用して、圃場10、圃場セクション10a、及び植物14の1つ以上の画像を取得することによって実施され得る。これら画像から、上述した植生指数のうちの1つ以上が決定、例えば計算され、コンピュータモデル20に提供され得る。例えば、遠隔探査によって取得される画像は、マルチスペクトル画像であり、赤色、緑色、青色、近赤外(NIR、又は短波長赤外などの複数の帯域を有する。個々の帯域を組み合わせて、植生指数が決定され得る。
【0057】
図3は、植物病の決定された発症及び/又は発症時期が、例えば農業従事者のための情報として提供される使用事例を示す。農業従事者は、コンピュータ、スマートフォンのような任意の種類のユーザ機器など、クライアントデバイス40を利用してもよく、これらは、植物病の発症及び/又は発症時期を含むメッセージを受信し、本明細書に記載される原理に従って植物病の発症及び/又は発症時期を決定するように構成されている。
【0058】
例えば、上記のコンピュータモデル20及びデータプロセッサ30は、クライアントデバイス40の一部であってもよい。この場合、クライアントデバイス40は、例えばインターネットなどの通信ネットワークを介して、少なくとも植生指数データ18及び気象データ16を得る、例えば受信するように構成された、データ及び/又は通信インターフェースを備え得る。植生指数データ18はまた、遠隔から導かれ得る探査データに基づいてクライアントデバイス18により決定され得ることに留意されたい。
【0059】
クライアントデバイス40、例えばデータプロセッサ30は、グラフィカルユーザインターフェースを有する好適なアプリケーションを実行するように構成されてもよく、手作業で若しくは探索アプリケーションを介して入力され得る又は少なくとも部分的に遠隔から受信される得る圃場データ16と、気象データ16と、植生指数データ18とを導くことを手助けするように構成されてもよい。クライアントデバイス40は、上述したように植物病の発症及び/又は発症時期を決定するために、コンピュータモデル20及びデータプロセッサ30制御するように構成され得る。
【0060】
決定された発症及び/又は発症時期は、次いで、例えばディスプレイ、すなわちGUI、ラウドスピーカ等を介して、農業従事者、すなわちクライアントデバイス40のユーザに信号で伝えられ得る。いくつかの実施形態では、決定された発症及び/又は発症時期を使用して、植物12、及び/又は圃場10若しくはその圃場セクション10aに関する処置計画を決定してもよい。
【0061】
図4は、植物病の決定された発症及び/又は発症時期が、例えば農業従事者のための情報として提供される、別の使用事例を概略的ブロック図で示す。
図3とは異なり、この例示的実施形態では、コンピュータモデル20及びデータプロセッサ30は、サーバ又はクラウド環境50に配置され、したがって、これは、上述したように植物病の発症及び/又は発症時期を決定するように構成されている。更に、サーバ又はクラウド環境50は、決定された発症及び/又は発症時期を使用して、植物12、及び/又は圃場10若しくはその圃場セクション10aに関する処置計画を決定してもよい。後者は、クライアントデバイス40に提供され得る。
【0062】
例えば、圃場データ14は、サーバ又はクラウド環境50の通信インターフェースを介して、クライアントデバイス40から取得、例えば受信されてもよい。
【0063】
植物病の発症及び/又は発症時期を決定するためのいくつかのタスクと、例えば植物処置計画、農業従事者への信号伝達などの更なる処理とが、クライアントデバイス40、及びサーバ又はクラウド環境50の間で分散されてもよいことに留意されたい。
【0064】
図5は、農業における植物病の発症及び/又は発症時期を決定するための方法をフロー図で示す。前と同様に、方法は、上述した原理に従い、
図1~
図4に示す上述したシステムのいずれか又はそれらの組合せに適用され得る。
【0065】
ステップS110において、植物の栽培に関連付けられた圃場データ14と、植物が栽培されている場所に関連付けられた気象データ16とを含む第1のデータが、コンピュータモデル20に提供される。上述したように、圃場データ14は、クライアントデバイス40、又は別の圃場現場デバイス、又は観察デバイス若しくはステーションから得てもよく、データベース等に記録されてもよい。更に、気象データ16は、気象観測所、気象データ提供者等から得ることができる。
【0066】
ステップS120において、コンピュータモデル20を使用することにより、植物12に関する植物病存在予測と植物病の蔓延とが決定される。例えば、データプロセッサ30は、コンピュータモデル20又は任意の他の好適なコンピューティングデバイスを動かすことができる。
【0067】
ステップS130において、植物病存在予測を含むコンピュータモデル20の出力と、植物に関連付けられた1つ以上の植生指数を含む第2のデータ、すなわち植生指数データ18とから、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用すること、又は植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化と共に使用することにより、具体的には、植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化に整合させることにより、植物において植物病が発症すると予測される発症及び/又は発症時期が決定される。
【0068】
前述したように、植物病存在予測と1つ以上の植生指数の変化とを使用すること、又は植物病存在予測を1つ以上の植生指数の変化と共に使用すること、具体的には整合させることは、上記の推定ルールを適用して、植物病存在予測において植物病が存在する地点を決定し、1つ以上の植生指数に変化がある場合、例えば増加又は低下がある場合は、その植物病の発症及び/又は発症時期として決定することであり得る、又は決定することを含み得る。
【0069】
更に、上述したように、出力データとして決定された発症及び/又は発症時期は、植物保護、又は処置トリガー、アラーム及び/若しくはスケジュールのために使用され得る。
【0070】
本発明を図面及び前述した記載において詳細に図示及び説明したが、このような図示及び説明は例証又は例示であって、制限するものではないと見なすべきである。本発明は開示する実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形形態は、図面、本開示及び従属請求項の検討から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解及び実行され得る。
【国際調査報告】