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特表2025-503196固定床バイオリアクタのパラメータ検知に基づくバイオマスの予測/推定システム、および関連方法
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  • 特表-固定床バイオリアクタのパラメータ検知に基づくバイオマスの予測/推定システム、および関連方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】固定床バイオリアクタのパラメータ検知に基づくバイオマスの予測/推定システム、および関連方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20250123BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20250123BHJP
   C12M 1/38 20060101ALI20250123BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C12M1/34 A
C12M1/00 C
C12M1/38 Z
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544523
(86)(22)【出願日】2023-01-26
(85)【翻訳文提出日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2023051922
(87)【国際公開番号】W WO2023144266
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/303,133
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/325,701
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520355596
【氏名又は名称】ユニバーセルズ テクノロジーズ エス.エー.
【氏名又は名称原語表記】UNIVERCELLS TECHNOLOGIES S.A.
【住所又は居所原語表記】Chemin de la Vieille-Cour 56/1,1400 Nivelles Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドルグマンド, ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラチリマ, タニア
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC02
4B029FA12
4B029FA15
4B029GA02
4B029GB06
4B063QA01
4B063QQ05
4B063QQ15
4B063QQ61
4B063QR01
4B063QS28
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
バイオマス検知のシステムは、容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含む固定床バイオリアクタを含む。少なくとも1つのセンサが固定床内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知するためのものである。コントローラが、例えば、相関モデルを使用して、1つ以上のパラメータを固定床バイオリアクタのバイオマスの量と相関させるように適合されている。関連するシステムおよび方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含むバイオリアクタのバイオマスを評価するシステムであって、
前記固定床内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知する少なくとも1つのセンサと、
前記1つ以上のパラメータを前記固定床のバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラと、
を備える、システム。
【請求項2】
バイオマスを表す前記1つ以上のパラメータが、グルコースまたは乳酸のような細胞培養副産物を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサが分光センサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのセンサが酵素センサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのセンサが前記バイオリアクタに関連付けられたガスセンサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ガスセンサおよび/またはコントローラは、空気および酸素ガスの流量入力、酸素出口濃度、酸素移動速度、酸素摂取速度、二酸化炭素発生速度、および呼吸比率のうちの1つ以上を決定するように適合されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのセンサが、気泡を最小限に抑えるために前記バイオリアクタの表面以外から液体を引き出す専用ラインの一部のような、前記バイオリアクタ内に配置されるか、または前記バイオリアクタに接続された再循環ループ内に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセンサが前記バイオリアクタからのサンプリングのための自動サンプラーと関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、将来の時点における前記バイオリアクタ内の前記バイオマスの量を推定するように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記バイオマスの量を表示するための前記コントローラに関連付けられたディスプレイをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記1つ以上のパラメータが、グルコース、乳酸、Glu、Gln、Asp、Asn、NH、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、相関モデルを使用して前記1つ以上のパラメータを入力として受け取り、前記相関モデルを使用して前記1つ以上のパラメータを処理して前記固定床の前記バイオマスの量を出力するように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記バイオリアクタが密閉容器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
バイオマスを評価するシステムであって、
容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含むバイオリアクタであって、再循環ループに関連付けられているバイオリアクタと、
前記バイオリアクタ内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサであって、前記再循環ループに関連付けられている前記少なくとも1つのセンサと、
を含むシステム。
【請求項15】
前記1つ以上のパラメータを前記バイオリアクタのバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラをさらに備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラは、将来の時点における前記バイオリアクタ内の前記バイオマスの量を推定するように適合されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラは、相関モデルを使用して前記1つ以上のパラメータを入力として受け取り、前記相関モデルを使用して前記1つ以上のパラメータを処理して前記固定床の前記バイオマスの量を出力するように適合されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記バイオマスの量を表示するための前記コントローラに関連付けられたディスプレイをさらに備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含むバイオリアクタのバイオマスを評価するシステムであって、
前記固定床バイオリアクタ内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知する少なくとも1つのセンサと、
前記1つ以上のパラメータに基づいて将来の時点での前記固定床バイオリアクタ内のバイオマスの量を予測するように適合されたコントローラと、
を備える、システム。
【請求項20】
前記バイオマスの量を表示するための前記コントローラに関連付けられたディスプレイをさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記コントローラは、相関モデルを使用して前記1つ以上のパラメータを入力として受け取り、前記相関モデルを使用して前記1つ以上のパラメータを処理して前記固定床の前記バイオマスの量を出力するように適合されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
システムであって、
容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含むバイオリアクタと、
前記バイオリアクタと流体連通する導管によって少なくとも1つのセンサに提供される液体の1つ以上のパラメータを検知するための前記少なくとも1つのセンサであって、導管が気泡の発生を最小限に抑えるために、バイオリアクタの表面以外の前記バイオリアクタから流体を引き出すための専用ラインを備えている、センサと、
を備える、システム。
【請求項23】
前記1つ以上のパラメータを前記バイオリアクタのバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラをさらに備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記コントローラは将来の時点での前記バイオリアクタ内の前記バイオマスの量を推定するように適合されている、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記コントローラは、相関モデルを使用して前記1つ以上のパラメータを入力として受け取り、前記相関モデルを使用して前記1つ以上のパラメータを処理して前記固定床の前記バイオマスの量を出力するように適合されている、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記バイオマスの量を表示するための前記コントローラに関連付けられたディスプレイをさらに含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含み、前記固定床内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知するセンサと関連付けられたバイオリアクタ内のバイオマスを評価するシステムであって、
前記バイオリアクタからサンプルを取得し、前記サンプルを前記センサと関連付ける自動サンプラーと
前記センサからの前記1つ以上のパラメータを前記固定床のバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラと、
を備えるシステム。
【請求項28】
前記コントローラは、将来の時点での前記固定床内の前記バイオマスの量を推定するように適合されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記コントローラは、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを入力として受け取り、前記相関モデルを使用して前記1つ以上のパラメータを処理して前記固定床の前記バイオマスの量を出力するように適合されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記バイオマスの量を表示するための前記コントローラに関連付けられたディスプレイをさらに含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
バイオマスを評価する方法であって、
固定床バイオリアクタ内で細胞を培養すること、
前記培養ステップ中または前記培養ステップ後に、前記バイオリアクタ内または前記バイオリアクタから放出される細胞培養液から、固定床バイオリアクタ内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知することであって、前記1つ以上のパラメータは細胞培養物の代謝産物レベルおよび/または呼吸レベルを含む、検知すること、
前記1つ以上のパラメータをコントローラに送信すること、および
前記固定床のバイオマスの量を推定するよう前記1つ以上のパラメータを使用すること、
を含む、方法。
【請求項32】
前記使用ステップは、前記プロセッサおよび相関モデルを使用して、前記1つ以上のパラメータを前記固定床内の前記バイオマスの量と相関させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記1つ以上のパラメータを前記コントローラに手動で入力するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記バイオマスの量は、予測される将来のバイオマスの量である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記検知ステップは、前記細胞培養液を前記固定床バイオリアクタの外部の代謝産物センサに供給することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記検知ステップは、空気および酸素ガスの流量入口、酸素出口濃度、酸素移動速度、酸素摂取速度、二酸化炭素発生速度、および呼吸比率のうちの1つ以上を監視することによって前記細胞培養呼吸レベルを検知することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
細胞を含む固定床バイオリアクタ内のバイオマスを評価する方法であって、
前記固定床バイオリアクタのパラメータを測定すること、
前記固定床バイオリアクタの細胞密度の実測値を取得すること、および
前記パラメータと細胞密度の前記実測値に基づいて推定細胞密度の相関モデルを開発すること、
を含む方法。
【請求項38】
サンプリングを必要とせずに前記相関モデルを使用して前記細胞密度を推定するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記推定ステップは、センサを使用して前記パラメータを測定し、前記測定されたパラメータを前記相関モデルに適用することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記実測値を取得するステップは、前記固定床バイオリアクタをサンプリングすることを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記相関モデルを使用して、現在の時点または将来の時点における推定細胞密度を提供するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記推定された細胞密度に基づいて前記細胞を感染またはトランスフェクトする時期を決定するステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項37に記載の方法を使用して得られた前記相関モデルを固定床バイオリアクタの測定されたパラメータに適用して細胞密度を推定するように適合されたコントローラを含み、これにより、細胞培養中に前記細胞密度をサンプリングまたは測定する必要がなくなる、バイオリアクタシステム。
【請求項44】
請求項37に記載の方法を使用して得られた前記相関モデルを適用して固定床バイオリアクタの細胞密度を予測するように適合されたコントローラを含み、これにより、細胞培養中に前記細胞密度をサンプリングまたは測定する必要がなくなる、バイオリアクタシステム。
【請求項45】
第1の固定床バイオリアクタにおける細胞密度の最終予測モデルを開発する方法であって、
細胞密度と1つ以上の第2の固定床バイオリアクタの1つ以上のパラメータとを相関させる予備モデルを開発すること、
前記1つ以上の第2の固定床バイオリアクタから細胞密度の実測値を取得することにより予備モデルを検証して前記最終モデルに到達すること、および
前記最終モデルを前記第1の固定床バイオリアクタに適用して前記細胞密度を推定すること、
を含む方法。
【請求項46】
前記予備モデルを開発するステップは、複数の第2の固定床バイオリアクタにおいて、細胞密度と代謝産物とを相関させることを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記取得ステップは、前記1つ以上の第2の固定床バイオリアクタから細胞密度を表す1つ以上のサンプルを取得することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記取得ステップは、前記1つ以上の第2の固定床バイオリアクタを開き、その中の固定床上の細胞の少なくとも一部を数えることを含む、請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年1月26日に出願された米国仮特許出願第63/303133号明細書、および2022年3月31日に出願された米国仮特許出願第63/325701号明細書の利益を主張するものであり、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、一般的に、相関モデルを使用して、固定床バイオリアクタのバイオマスの量を、その特定のパラメータに基づいて推定または予測するシステムおよび関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
固定床バイオリアクタは、生物学的細胞(動物、昆虫、細菌など)の増殖に最適な環境を提供し、かつ高い細胞密度、または「バイオマス」を有する細胞培養を実現できる。細胞の増殖(または培養)中に細胞密度を正確に測定することは、固定床バイオリアクタのユーザにとってよく知られた課題である。特に、固定床に直接アクセスせずに固定床上に固定された細胞の数を確認することは困難である。固定床へのこのようなアクセスは困難な場合が多く、およびバイオリアクタの内容物が汚染される危険性がある。しかし、米国食品医薬品局のプロセス分析技術(PAT)のイニシアチブでは、細胞培養プロセスを理解して、重要品質特性(CQA)に影響を与える重要なプロセスパラメータ(CPP)をタイムリーに監視することも求められており、コンプライアンスのためにはこのようなバイオマスの測定が必要になる。
【0004】
現在、固定床バイオリアクタ内の動物細胞の密度を監視するための間接的な技術は存在するが、そのような技術の既知の例は複雑である。例えば、細胞が存在する固定床の取り外し可能な部分をサンプリングすることで、バイオリアクタ全体の細胞密度を把握することができる。しかしながら、細胞はサンプリング中に得られた固定床部分に付着したままになっているため、簡単に数えることができない場合がある。細胞数は、細胞を溶解して、染色して細胞核を数えることによって決定する必要がある。細胞培養イベント中または各連続イベント中にこのステップを繰り返し実行する必要があるため、操作のコストと複雑さが増大する。
【0005】
無菌状態を維持しながら固定床を頻繁にサンプリングすることも課題であり、これは、サンプリングには通常、無菌状態になっている可能性のあるバイオリアクタ内部の固定床にアクセスする必要があるためである。静電容量バイオマスプローブによる間接測定が提案されているが、通常は正確性、精密性、または再現性に欠ける。これは主に、プローブの周囲の容積のみが測定されるという事実によるものである。固定床へのプローブの挿入も一貫して行われず、これがこれらの制限にさらに寄与する。
【0006】
そのため、固定床バイオリアクタ内に存在するバイオマスの量、または細胞密度を決定する方法が必要であることが認識されている。この技術は、固定床の物理的サンプリングに関連する汚染の潜在的リスクを最小限に抑えるか排除すると同時に、従来の技術よりも固定床のコロニー形成をより正確に示す。この技術により、固定床におけるバイオマス生産量をリアルタイムで推定できるだけでなく、現在のプロセス条件に基づいて将来のバイオマスレベルを予測することも可能になり、オペレータは希望する結果を達成するためにリアルタイムで調整を行うために必要な情報を得ることができる。この技術は、固定床バイオリアクタに関連する自動化システムを介して適用することもでき、バイオマスの量を推定または予測するためにオペレータの介入の必要性を完全に排除することができる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の第1の態様によれば、固定床バイオリアクタのパラメータ検知に基づくバイオマスの予測/推定システムが提供される。このシステムには、容器(使用前または使用中に密閉される場合がある)と、その容器内に配置された固定床と、を含むバイオリアクタが含まれる場合がある。固定床内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサが設けられる。コントローラは、1つ以上のパラメータを固定床のバイオマスの量と相関させるように適合されている。
【0008】
一実施形態では、バイオマスを表す1つ以上のパラメータは、グルコースや乳酸などの細胞培養副産物を含む。少なくとも1つのセンサは、分光センサ、酵素センサ、ガスセンサ、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。ガスセンサおよび/またはコントローラは、空気および酸素ガスの流量入力、酸素出口濃度、酸素移動速度、酸素摂取速度、二酸化炭素発生速度、および呼吸比率のうちの1つ以上のパラメータを決定するように適合させることができる。センサによって検出される1つ以上のパラメータは、グルコース、乳酸、Glu、Gln、Asp、Asn、NH、またはそれらの組み合わせを含む群から選択することができる。
【0009】
センサはバイオリアクタと関連するか直接接続されている場合もあれば、独立している場合もある。例えば、システムは自動サンプラーを使用してセンサにサンプルを提供する場合がある。センサは、バイオリアクタの表面以外から液体を吸引して気泡を最小限に抑える専用ラインの一部など、バイオリアクタに接続された再循環ループに関連付けられるか、または再循環ループ内に配置することができる。
【0010】
コントローラは、将来の時点でのバイオリアクタ内のバイオマスの量を推定するように適合されてもよい。システム(またはコントローラ)には、バイオマスの量を表示するためのディスプレイがさらに含まれていてもよい。コントローラは、相関モデルを使用して、1つ以上のパラメータを入力として受け取り、かつ相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを処理して、固定床のバイオマスの量を出力するように適合されてもよい。
【0011】
本開示のさらなる態様によれば、バイオマス評価システムは、容器と、そのような容器内に配置された固定床とを含むバイオリアクタを含む。バイオリアクタ内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサ。少なくとも1つのセンサは、バイオリアクタに関連付けられた再循環ループに関連付けられる。
【0012】
オプションとして、この態様によるシステムは、1つ以上のパラメータをバイオリアクタのバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラを含んでもよい。コントローラは、将来の時点でのバイオリアクタ内のバイオマスの量を推定するように適合されてもよい。より具体的には、コントローラは、相関モデルを使用して、1つ以上のパラメータを入力として受け取り、かつ相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを(プロセッサなどを介して)処理して、固定床のバイオマスの量を出力するように適合されてもよい。バイオマスの量を表示するために、コントローラにディスプレイが関連付けられる場合がある。
【0013】
本開示の別の態様によれば、バイオマスを評価するためのシステムは、密閉された容器と、そのような容器内に配置された固定床とを含むバイオリアクタを含む。固定床バイオリアクタ内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサが設けられている。コントローラは、1つ以上のパラメータに基づいて、将来の時点における固定床バイオリアクタ内のバイオマスの量を予測するように適合されている。
【0014】
一例では、コントローラに関連付けられたディスプレイに、コントローラによってバイオリアクタ内に存在すると予測されるバイオマスの量が表示される。予測を行うために、コントローラは、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを入力として受け取り、かつ相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを処理して、固定床のバイオマスの量を出力するように適合されてもよい。
【0015】
本開示のさらに別の態様によれば、システムは、容器と、その容器内に配置された固定床とを含むバイオリアクタを含む。バイオリアクタと流体連通する導管によって少なくとも1つのセンサに提供される液体の1つ以上のパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサが設けられる。導管は、気泡の発生を最小限に抑えるために、バイオリアクタの表面以外のバイオリアクタから流体を引き出すための専用ラインを備えていてもよい。
【0016】
オプションとして、システムは、1つ以上のパラメータをバイオリアクタのバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラをさらに含んでもよい。コントローラは、将来の時点でのバイオリアクタ内のバイオマスの量を推定するように適合されてもよい。より具体的には、コントローラは、相関モデルを使用して、1つ以上のパラメータを入力として受け取り、かつ相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを処理して、固定床のバイオマスの量を出力するように適合されている。コントローラに関連付けられたディスプレイが、バイオマスの量を表示するために設けられている。
【0017】
バイオリアクタ内のバイオマスを評価するためのシステムに関する本開示のさらに別の態様は、容器と、その容器内に配置された固定床と、を含み、および固定床内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知するためのセンサと関連付けられる。このシステムは、バイオリアクタからサンプルを取得して、そのサンプルをセンサに関連付ける自動サンプラーを含む。システムにはさらに、センサによって取得され、および/またはセンサから受信された1つ以上のパラメータを固定床のバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラが含まれる。
【0018】
コントローラは、将来の時点での固定床内のバイオマスの量を推定するように適応されてもよい。具体的には、コントローラは、相関モデルを使用して、1つ以上のパラメータを入力として受け取り、かつ相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを処理して、固定床のバイオマスの量を出力することができる。ディスプレイは、バイオマスの量を表示するためのコントローラに関連する。
【0019】
他の態様では、バイオマスを評価する方法には、固定床バイオリアクタ内で細胞を培養するステップ、および、培養ステップ中または培養ステップ後に、バイオリアクタ内のまたはバイオリアクタから発散する細胞培養液から、固定床バイオリアクタ内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータ(1つ以上のパラメータには、例えば、細胞培養の代謝産物レベルおよび/または呼吸レベルが含まれる)を検知するステップなどのさまざまなステップが含まれる。この方法は、1つ以上のパラメータをコントローラに送信して、1つ以上のパラメータを使用して固定床のバイオマスの量を推定することを含むことができる。
【0020】
使用ステップは、コントローラおよび相関モデルを使用して、1つ以上のパラメータを固定床内のバイオマスの量と相関させることを含むことができる。この方法では、1つ以上のパラメータをコントローラに手動で入力することができる。バイオマスの量は、予測される将来のバイオマスの量である場合がある。
【0021】
検知ステップは、固定床バイオリアクタの外部にある代謝産物センサに細胞培養液を供給することを含み得る。代替的にまたは追加的に、検知ステップは、空気および酸素ガスの流量入口、酸素出口濃度、酸素移動速度、酸素摂取速度、二酸化炭素発生速度、呼吸比率、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を監視することによって細胞培養の呼吸レベルを検知することを含む。
【0022】
本開示によるさらに別の方法は、細胞を含む固定床バイオリアクタ内のバイオマスを決定することに関し、固定床バイオリアクタのパラメータを測定することを含む。この方法はさらに、固定床バイオリアクタの細胞密度の実測値を取得することを含む。さらに、この方法には、パラメータと細胞密度の実測値に基づいて推定細胞密度の相関モデルを開発することが含まれる。
【0023】
相関モデルを使用すると、細胞をサンプリングしたり、侵襲性プローブを使用などして細胞を直接測定したりすることなく、細胞密度を推定することができる。推定ステップは、センサを使用してパラメータをさらに測定し、かつ測定されたパラメータを相関モデルに適用することを含むことができる。実際の測定には、固定床バイオリアクタのサンプリング、またはそれを開いて細胞の少なくとも一部を数えることが含まれる。
【0024】
この方法は、相関モデルを使用して、現在の時点または将来の時点における推定細胞密度を提供するステップをさらに含んでもよい。推定細胞密度の情報は、推定細胞密度に基づいて細胞を感染またはトランスフェクトするタイミングを決定する際に使用できる。
【0025】
本開示の関連する態様は、本明細書に記載された方法を使用して得られた相関モデルを固定床バイオリアクタの測定パラメータに適用して細胞密度を推定するように適合されたコントローラを含むバイオリアクタシステムであり、これにより、細胞培養中に細胞密度をサンプリングまたは測定する必要がなくなる。本開示のさらなる関連する態様は、本明細書に記載の方法を使用して得られた相関モデルを適用して固定床バイオリアクタの細胞密度を予測するように適合されたコントローラを含むバイオリアクタシステムであり、これにより、細胞培養中に細胞密度をサンプリングしたり測定したりする必要がなくなる。
【0026】
本開示のさらなる態様は、第1の固定床バイオリアクタ内の細胞密度の最終予測モデルを開発する方法に関する。この方法は、細胞密度と1つ以上の第2固定床バイオリアクタの1つ以上のパラメータを相関させる予備モデルを開発することを含む。この方法はさらに、1つ以上の第2固定床バイオリアクタから細胞密度の実測値を取得して予備モデルを検証して、最終モデルに到達することを含む。さらに、この方法では、最終モデルを第1の固定床バイオリアクタに適用して細胞密度を推定する。
【0027】
一例では、予備モデルを開発するステップは、複数の第2の固定床バイオリアクタ内の細胞密度と代謝産物を相関させることを含む。同様に、この例または別の例では、取得ステップは、1つ以上の第2の固定床バイオリアクタから細胞密度を表す1つ以上のサンプルを取得することを含む。取得ステップは、代替的にまたは追加的に、1つ以上の第2の固定床バイオリアクタを開き、およびその中の固定床上の細胞の少なくとも一部を計数することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は固定床バイオリアクタ用のバイオマスセンサシステムを概略的に示す。
【0029】
図2図2は固定床バイオリアクタ用のバイオマスセンサシステムの別の実施形態を概略的に示す。
【0030】
図3図3は固定床バイオリアクタ用のバイオマスセンサシステムの別の実施形態を概略的に示す。
【0031】
図4図4は、固定床バイオリアクタの入力ラインと出力ラインに対する代謝産物センサのさまざまな位置を示す。
図4A図4Aは、固定床バイオリアクタの入力ラインと出力ラインに対する代謝産物センサのさまざまな位置を示す。
図4B図4Bは、固定床バイオリアクタの入力ラインと出力ラインに対する代謝産物センサのさまざまな位置を示す。
【0032】
図5図5は固定床バイオリアクタ内の特定のパラメータとバイオマスまたは細胞密度を相関させるモデルを示す。
【0033】
図6図6は相関モデルと対応する代謝産物データの使用に基づいて固定床バイオリアクタのバイオマスを推定および/または予測するグラフを示す。
図7図7は相関モデルと対応する代謝産物データの使用に基づいて固定床バイオリアクタのバイオマスを推定および/または予測するグラフを示す。
【0034】
図8図8はモデルの開発と使用のステップの一つの可能な例を示したフローチャートである。
【0035】
図9図9は、固定床バイオリアクタ内の特定のパラメータとバイオマスを相関させるモデルの使用に関する現在の情報または更新された情報を入力および表示するためのグラフィカルユーザインタフェイスを表す。
図10図10は、固定床バイオリアクタ内の特定のパラメータとバイオマスを相関させるモデルの使用に関する現在の情報または更新された情報を入力および表示するためのグラフィカルユーザインタフェイスを表す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
一態様では、本開示は、固定床バイオリアクタのバイオマス推定(現在)または予測(将来)システムに関する。具体的には、開示されたシステムは、細胞培養に関するリアルタイム情報(例えば、呼吸情報(酸素消費量および二酸化炭素生成量)および/または代謝情報(グルコース消費量および乳酸生成量)などの1つ以上のパラメータ)を利用して、正確なバイオマス推定値を得ることができる。この情報を使用して、相関モデルを採用し、固定床バイオリアクタ内の細胞密度を推定することができる。この相関モデルを採用することで、システムはバイオマスの進化(細胞密度の増加または減少であり得る)の観点から固定床の将来の状態を予測するためにも使用でき、また、従来のアプローチと比較して、信頼性が高く、再現性があり、リスクが低く、コスト効率の高い方法で、完全に自動化された推定と予測を実現できるようになる。推定値(将来の予測である場合もある)は、例えば細胞に感染またはトランスフェクトするステップなど、追加の処理ステップをいつ実行するかを評価するために使用できる。
【0037】
図1を参照すると、例示的な細胞培養システム10には、付着細胞または懸濁細胞の成長のための内部構造を含むような、バイオリアクタ12が含まれる。図1図4図4A、および図4Bに示すように、バイオリアクタ12には、細胞増殖用の内部構造として固定床12bを含む外部容器12aまたは容器が含まれており、この容器12aまたはバイオリアクタは、細胞培養に適した環境(例えば、滅菌または無菌環境)を維持するために密閉することができる。固定床12bは、例えば、3Dプリントされたマトリックスを含み得る、または、織物または不織布材料(例えば、互いに直接接触する、または介在するスペーサー、ビーズ、中空繊維、または接着細胞の成長を促進するためのその他の適切な細胞培養構造を備えた1枚以上のそのような材料のシートなど)で構成され得る。固定床12bは、任意の所望の形状、配向、または形態にすることができ、例えば、3D多孔質モノリス、積み重ねられた層(例えば、米国特許第11,111,470号明細書を参照。その開示は参照により本明細書に組み込まれる)、垂直に配置された平行層、螺旋状または巻き線状の構成で配置された層、または充填床(例えば、米国特許第8,137,959号明細書を参照。その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を含むことができる。
【0038】
一例では、システム10は、固定床バイオリアクタ12のバイオマス濃度を決定するための情報へのインラインまたはインサイチュアクセスを備える。バイオリアクタ内の流体内容物またはバイオリアクタから発せられる流体内容物から得られる情報には、非侵襲的な方法(例えば、インライン、インサイチュセンサまたは分析装置の使用、および図3に示され、かつ以下の説明でさらに概説されるように、自動サンプラー19に接続される可能性)で決定可能なバイオリアクタ12の1つ以上のパラメータに関する情報が含まれる場合がある。このようなパラメータには、例えば、呼吸情報や代謝情報などが含まれる。特に、呼吸情報には、例として、1つ以上の次のパラメータ、
・空気、酸素(および潜在的に二酸化炭素)のガス流量入口(マスフローコントローラ)のリアルタイム監視
・培地中の酸素濃度のリアルタイム監視
・酸素(および潜在的に二酸化炭素)の出口濃度のリアルタイム監視(Bluesens分析器などのシステムを使用)
・バイオリアクタ内のOTR(酸素移動速度)のリアルタイム計算
・酸素摂取率(OUR)、二酸化炭素発生率(CDER)、および呼吸比率(RQ)に基づく酸素/COリアルタイム酸素質量バランス計算
が含まれる場合がある。
【0039】
このような呼吸情報の監視または計算のための情報は、バイオリアクタ12の密閉容器12aなどの容器に関連付けられた1つ以上のガスセンサ14を使用して取得できる。このようなガスセンサ14は、モデルを含むコントローラに出力信号(矢印21)の形で情報を提供することができる。コントローラは、例えば、データを受信するための入力デバイス、データを処理するためのマイクロプロセッサチップ、および処理されたデータを送信するための出力デバイスを含むマイクロプロセッサベースのデバイスを含み得る。このコントローラには、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ、プロセッサ、マイクロプロセッサ、またはモデル18を適用してバイオマスの量を推定および/または予測するための計算をコンピュータ化できるその他の自動制御ユニットが含まれるか、またはこれらと見なされる場合がある。そのため、このコントローラは、以下の説明で概説されているように、システム10の一部を形成し、およびシステムの物理的な一部である場合もあれば、システムから離れた場所にある場合もある。
【0040】
バイオリアクタ12から代謝産物情報を収集するには、例えば次のパラメータの1つ以上
・細胞培養液のグルコースおよび乳酸濃度のリアルタイム監視
・Glu、Gln、Asp、Asn、アンモニア(NH)、ピルビン酸など、バイオマスを反映する他の代謝産物の潜在的な監視
が必要になる場合がある。
【0041】
1つ以上の代謝産物を監視するための情報は、酵素技術(CCITデバイスなど)または分光技術(Irubisデバイスなど)に基づくなど、バイオリアクタ12に関連付けられた1つ以上の代謝産物センサ16を使用して取得することができる。検知を実現するための配置は、例えば、図1および図4に示すように、バイオリアクタ媒体の再循環ループ17に接続されたインラインセンサ16(1)、図2に示すように、インサイチュ(つまり、バイオリアクタに直接統合された)センサ16(2)、および/または図3に示すように、バイオリアクタ12からサンプリングのための自動サンプラー19(例えば、「Trace」/ISI/Novabiomedical)に関連付けられたセンサ16(3)を含み得る。
【0042】
特定の一例では、代謝産物検知機能は、システムへのセンサの統合を伴う場合がある。例えば、代謝産物センサは、図1に示すように、バイオリアクタ12から流れる代謝産物を測定し、かつ関連する固定床12b内の細胞培養条件を表す測定値(例えば、コンピュータ20、または他のプロセッサなどのコントローラへの出力信号の形で)を提供することができるインラインフロー細胞センサ16を含むことができる。このようなセンサ16を固定床バイオリアクタ12を含むシステム10に統合する1つの方法は、例えば再循環ループ17として(必要に応じて適切なフィルタリングを使用して)、このバイオリアクタから流体(上清)をリアルタイムで送出するための導管と「インライン」に配置することである。
【0043】
固定床バイオリアクタ12および再循環タンクTと連通する再循環ループ17を示している、図4図4A、および図4Bに示されるように、センサ16は、入力ライン17a(図4A)、またはバイオリアクタ12と入力ライン17aとの間を連通する専用ライン17b(図4B)に配置され得る。これは、出力ライン17c(図4)とは対照的であり、出力ライン17cには、バイオリアクタ12から得られた液体に気泡が含まれる可能性があり、その気泡は、場合によっては代謝産物の検知に影響を及ぼす可能性がある(センサが気泡の存在に敏感な場合など)。専用ライン17bは、例えば、図4Bに示すように、バイオリアクタ12内の液体の表面の下に配置された導管を含み得る。
【0044】
前述のように、システム10に関連して、1つ以上の異なるタイプの代謝産物センサ16を使用することができる。例えば、再循環ループ17に1つ以上の分光センサ(例えば、Irubis)を設けることができる。1つ以上の酵素センサ(例えば、CCIT)を単独で、または他のセンサと組み合わせて使用することもできる。上で述べたように、使用されるセンサ16のいずれかが正確な測定を行う上で気泡の影響を受けやすい可能性がある状況では、「気泡のない」セットアップを使用することができる。
【0045】
ガスセンサ14または代謝産物センサ16の一方または両方からの情報を使用して、相関モデル18によりバイオマス推定値をリアルタイムで自動的に計算することができる。モデル18は、図に示すように、例えばコンピュータ20などのコントローラによって実装されて、システム10の一部を形成することもある。図1から3にさらに概略的に示されているように、コンピュータ20は、センサ14、16からのパラメータを表す代謝産物情報を入力23として受信して、矢印25で示されているように、プロセッサを介して(または手動でモデルに入力され得る)その情報をモデル18に適用し、およびその処理能力によって、固定床バイオリアクタ12内の推定または予測されたバイオマス量(例えば、細胞密度)の出力27をモデル18から生成する。
【0046】
使用されるモデル18の性質は様々であり、そのバージョンは当業者に知られている。代謝産物に基づく細胞増殖速度相関モデル18の一例を図4に示し、これは、マクロ的な質量バランスと阻害因子を含むモノ型方程式を備えた非構造化メカニズム速度モデルの例である。選択されたモデル18には、予測された状態推定値、修正された状態推定値、これらの推定値を計算するために使用される対応するゲイン、これらの推定値に対応する関連する予測および推定誤差共分散、および離散-離散拡張カルマンフィルタなどの推定出力のための関数も含むことができ、次の例のようなになる。
【0047】
1.サンプリング時間Δt=t-ts-1を有する離散時間における予測方程式(1つのシミュレーション時点tから次の時点ts+1までの解を直接計算する再帰方程式):
【0048】
2.サンプリング時間Δtを有する離散時間における補正方程式(各新しい測定時点tにおける)
【0049】
選択された相関モデル18を使用して、コンピュータ20は、酸素消費量や代謝産物などの1つ以上のパラメータに関する情報を相関させて、バイオマス推定値22を提供する。図1から3に示すように、この推定値22は、固定床バイオリアクタ12に関連する推定バイオマス量を含み、かつシステム10の一部を形成する関連するディスプレイDでユーザにグラフィカルに表示され得る(図9から10も参照)。このディスプレイDは、図1から3に示すように、コントローラとして機能するコンピュータ20の一部であるか、またはそれに関連付けられている場合がある。ディスプレイDは、測定されたパラメータレベル24(例えば、1つ以上の代謝産物)も提供し、図6に詳細が示されている。そのため、サンプリング、またはその他の侵襲的な技術を必要とせずにバイオマスの指標が提供され、かつ無菌状態が確実に維持される可能性がある。
【0050】
予測技術(例えば、上記のような拡張カルマンフィルタ)を使用することで、モデル18は、図7のグラフ26に示すように、固定床バイオリアクタ12内のバイオマスの将来の量を予測するためにも使用できる。グラフ28(例としてグルコースと乳酸)に示されているように、パラメータ(例えば、代謝産物)のレベルに関しても予測を行うことができる。この情報は、コンピュータ20を介して、特定の時点または一定範囲の時間にわたって、グラフ形式または数値形式で表示できる。この情報により、オペレータは、固定床に直接アクセスしたり、固定床をサンプリングして細胞密度を直接測定したりすることなく、固定床バイオリアクタ12の将来のバイオマス生成能力(量がプラスかマイナスかに関係なく)を理解することができる。これにより、無菌状態の侵害に関する懸念が回避されるだけでなく、細胞密度プローブなどのバイオマスのインサイチュ検知に関する過去のアプローチに関して前述した制限も回避される。
【0051】
バイオリアクタ12のパラメータを検知して固定床内の現在のバイオマスレベルを決定したり将来のバイオマスレベルを予測したりすることは、特定の状況で必要であると判断された場合、定期的に実行できる。自動で行われるか手動で行われるかにかかわらず、サンプリングおよび/または検知は、例えば数秒ごとに高頻度で実行される場合がある。状況に応じて、1時間に1回、1日に1回、または、あるいはもっと長いような、低い頻度で実施されることもある。
【0052】
本開示のさらなる態様によれば、バイオリアクタの1回以上のテスト実行のサンプリングに関連するカスタム相関モデルの開発は、後で、バイオマス生産のリアルタイムの非侵襲的モデリングを可能にするために実行されてもよい。図8のフローチャートに示されているように、これは、培養される細胞の種類に依存しないバイオマス/代謝産物相関法100を使用することによって達成できる。この方法100では、ステップ102に示すように、予備的な相関モデルを開発するために、固定床バイオリアクタの複数のキャリブレーション実行を、場合によっては異なるスケールで実行することが必要になる場合がある。このステップ102は、バイオマス生産を示す1つ以上のパラメータ(代謝産物など)を定期的に測定または検知することを含み、固定床に関連するバイオマスの量の実際の測定と組み合わされる(サンプリングによるバイオプロセス中、または完了後)。
【0053】
予備モデルの完全なパラメータ推定と検証が完了すると(ステップ104)、このモデルは、サンプリングを必要とせずに固定床バイオリアクタと接続した最終モデルとして使用でき(ステップ106)、汚染のリスクなしにバイオマス生産のリアルタイム表示を提供できる。より具体的には、予備相関モデルを作製し、検証するプロセスには、固定床バイオリアクタの小規模バージョンを複数回実行することが含まれる場合がある。図8のサブステップ102aに示すように、これには、グルコースや乳酸の生産などの1つ以上のパラメータを測定し、同時に固定床バイオリアクタのバイオマス生産を評価して、対応する細胞密度値を確立することが含まれる場合がある。これは、バイオプロセスが完了したらバイオリアクタを解体したり、またはバイオプロセスイベント中にサンプリングしたりすることを含むさまざまな方法で実行できる。固定床バイオリアクタに適したサンプリングシステムの特定の例は、米国特許出願公開第2021/009933号明細書に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
いずれの場合も、取得され保存された測定値(サブステップ102b)を使用して、サブステップ102cで示されるように、1つ以上のパラメータとバイオマスを相関させる予備モデルを開発することができる。これは、例えば、培養終了時に簡単に開けられるように設計された固定床バイオリアクタの比較的小規模なバージョンを使用して、細胞溶解および細胞核を数えるための染色後の細胞密度の推定のために固定床材料のサンプリングを容易にすることでも実現できる。このようなアクセスが容易なバイオリアクタは、バイオリアクタ容器に取り外し可能に固定された蓋を備えている場合がある。
【0055】
オプションとして、複数の中規模確認実行を実施することもできる。これは、開発されたモデルのスケーラビリティを確認し、かつこのモデルのパラメータを微調整するために行われる場合がある。これには、前述のように、最初の「小規模」ステップと同じパラメータの測定とサンプリングの組み合わせも含まれる場合がある。
【0056】
予備モデルの検証も構築ステップ102の一部として実行できる。これには、例えば、サブステップ102dで示されているように、モデルとそれを構築するのに使用されたデータとを比較することが含まれる場合がある。
【0057】
検証ステップ104は、予備モデルを検証するための検証実行を実行するサブステップ104aも含む場合がある。サブステップ104bで示されているように、データは保存される可能性がある。検証サブステップ104cは、モデルによって得られた予測と、ステップ104aで実行された検証データとを比較することによっても実行できる。
【0058】
これらのステップを使用して予備モデルが完全に開発されると、サンプリングを必要とせずに、バイオマス予測(サブステップ106a)のための固定床バイオリアクタ12の大規模な実行に最終的な相関モデルとして適用できる。これには、例えば、代謝産物の値(例えば、毎日のグルコース/乳酸測定値)に関する情報の入力が含まれ、これは手動または自動で実行できる(サブステップ106b)。最終モデルは、そのような条件の推定細胞密度を出力することができる(サブステップ106c)。
【0059】
そのため、理解できるように、開示されたバイオマス予測/推定技術は、細胞の種類に依存せず、かつプロセスパラメータに応じて、代謝産物および/または呼吸レベルの測定に基づいて細胞密度のリアルタイム推定を提供するために使用することができる。上記および以下の説明でさらに述べるように、推定を実行するために接種物中の初期細胞密度を測定するステップを含め、固定床バイオリアクタの生産性を予測するために細胞密度の将来の予測を行うこともできる。この情報は、感染やトランスフェクションなどのさらなるプロセスステップをいつ実行するか、またはバイオマス、時間などの考慮事項に関して特定の結果を達成するためにバイオプロセス操作の他の態様またはパラメータを調整するかどうかを決定するために使用できる。
【0060】
上で述べたように、また図1に概略的に示すように、バイオマス推定/予測モデル18は、コンピュータ20上のアルゴリズムまたはプログラムとして動作することができる。コンピュータ20は、図9から10に示すように、グラフィカルユーザインタフェイス30を表示するようにプログラムできる。このグラフィカルユーザインタフェイス30には、バイオマスターゲットを入力するための入力32と、測定された代謝産物の表示34(手動で入力することも、前述のセンサを介して自動的に取得することもできる)が含まれる場合がある。インタフェイス30には、モデルとディスプレイを更新するためのアクティベーションボタン36も含まれている場合があり、また、これは自動的に実行することもできる。該当する場合は、利用可能なバイオマス推定モデルまたは予測モデルの中から選択するためのセレクタ38も提供される場合がある。インタフェイス30は、必要に応じて追加の情報(例えば、バイオリアクタおよび関連する固定床の追加のパラメータ、例えば体積対表面積比40)を入力することも可能にする。
【0061】
インタフェイス30は、モデル18からの出力42を、例えばグラフィック表現44の形で、ターゲット到達時間の予測に関してさらに提供することができる。出力42は、例えば、バイオマスの推定量または予測量を示すことができる。インタフェイス30は、表示される情報を切り替えるための対応する選択ボタン46などによって、1つ以上の代謝産物の対応するレベルの選択された表示を提供することができる。グラフィック表現44に加えて、特定のターゲットに到達する推定時間の数値計算48も表示される場合がある。
【0062】
図10に示すように、代謝産物の値は時間の経過とともに更新される可能性があり(この場合も、手動または自動で)、これは表示34に複数の行で表示され、入力34aを使用してデータセットの長さを増やすことが必要になる場合がある。このような場合、出力42は、その特定の時間におけるバイオマスレベルを示すように修正され、かつそれに応じてグラフィック表現44が更新され、ユーザが状況をリアルタイムで理解しやすくなる。出力42は、取得された更新された情報を使用して、所望のバイオマスターゲットを達成するために推定数値時間計算48を修正することもできる。
【0063】
呼吸、グルコース、および乳酸は、検知され、かつ細胞密度と相関し得る可能性のあるパラメータとして挙げられているが、他のパラメータも使用される可能性がある。例えば、パラメータは、グルタミン、ピルビン酸、アスパラギン、および一般的にはすべてのアミノ酸、クレブス回路の中間体、培養培地中に存在する糖類(C5およびC6)などの栄養素の消費に関連する可能性がある。パラメータは、アンモニア、エタノール、アラニンなどの副産物の生成にも関係する場合がある。モデルで使用できる追加のプロセスパラメータには、バイオリアクタのpH、温度、および攪拌速度(酸素移動速度に影響を与える可能性があるため)を含むことがある。培地の量(ml/cm)、培地入口の流量(灌流/再循環)、培地交換などの供給戦略に関するパラメータもモデルに関連して使用できる。
【0064】
この開示が関係する可能性のあるさまざまな態様を要約すると、以下の項目が特定され、任意の組み合わせで配置できる。
【0065】
項目1.容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含むバイオリアクタのバイオマスを評価するシステムであって、
固定床内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知する少なくとも1つのセンサと、
1つ以上のパラメータを固定床のバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラと、
を備える、システム。
【0066】
項目2.バイオマスを表す1つ以上のパラメータが、グルコースまたは乳酸のような細胞培養副産物を含む、項目1に記載のシステム。
【0067】
項目3.少なくとも1つのセンサが分光センサを含む、項目1または項目2に記載のシステム。
【0068】
項目4.少なくとも1つのセンサが酵素センサを含む、項目1から3のいずれかに記載のシステム。
【0069】
項目5.少なくとも1つのセンサがバイオリアクタに関連付けられたガスセンサを含む、項目1から4のいずれかに記載のシステム。
【0070】
項目6.ガスセンサおよび/またはコントローラは、空気および酸素ガスの流量入力、酸素出口濃度、酸素移動速度、酸素摂取速度、二酸化炭素発生速度、および呼吸比率のうちの1つ以上を決定するように適合されている、項目5に記載のシステム。
【0071】
項目7.少なくとも1つのセンサが、気泡を最小限に抑えるためにバイオリアクタの表面以外から液体を引き出す専用ラインの一部のような、バイオリアクタ内に配置されるか、またはバイオリアクタに接続された再循環ループ内に配置される、項目1から6のいずれかに記載のシステム。
【0072】
項目8.少なくとも1つのセンサがバイオリアクタからのサンプリングのための自動サンプラーと関連付けられている、項目1から7のいずれかに記載のシステム。
【0073】
項目9.コントローラは、将来の時点におけるバイオリアクタ内のバイオマスの量を推定するように適合されている、項目1から8のいずれかに記載のシステム。
【0074】
項目10.バイオマスの量を表示するためのコントローラに関連付けられたディスプレイをさらに備える、項目1から9のいずれかに記載のシステム。
【0075】
項目11.1つ以上のパラメータが、グルコース、乳酸、Glu、Gln、Asp、Asn、NH、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される、項目1から10のいずれかに記載のシステム。
【0076】
項目12.コントローラは、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを入力として受け取り、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを処理して固定床のバイオマスの量を出力するように適合されている、項目1から11のいずれかに記載のシステム。
【0077】
項目13.バイオリアクタが密閉容器を備える、項目1から12のいずれかに記載のシステム。
【0078】
項目14.容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含み、かつ再循環ループを含むバイオリアクタのバイオマスを評価するシステムであって、バイオリアクタ内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサを備え、少なくとも1つのセンサが再循環ループに関連付けられている、システム。
【0079】
項目15.1つ以上のパラメータをバイオリアクタのバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラをさらに備える、項目14に記載のシステム。
【0080】
項目16.コントローラは、将来の時点におけるバイオリアクタ内のバイオマスの量を推定するように適合されている、項目15に記載のシステム。
【0081】
項目17.コントローラは、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを入力として受け取り、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを処理して固定床のバイオマスの量を出力するように適合されている、項目14または項目15に記載のシステム。
【0082】
項目18.バイオマスの量を表示するためのコントローラに関連付けられたディスプレイをさらに備える、項目15から17のいずれかに記載のシステム。
【0083】
項目19.容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含むバイオリアクタのバイオマスを評価するシステムであって、
固定床バイオリアクタ内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知する少なくとも1つのセンサと、
1つ以上のパラメータに基づいて将来の時点での固定床バイオリアクタ内のバイオマスの量を予測するように適合されたコントローラと、を備える、システム。
【0084】
項目20.バイオマスの量を表示するためのコントローラに関連付けられたディスプレイをさらに備える、項目19に記載のシステム。
【0085】
項目21.コントローラは、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを入力として受け取り、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを処理して固定床のバイオマスの量を出力するように適合されている、項目19または項目20に記載のシステム。
【0086】
項目22.システムであって、
容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含むバイオリアクタ、および/または
バイオリアクタと流体連通する導管によって少なくとも1つのセンサに提供される液体の1つ以上のパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサであって、導管が気泡の発生を最小限に抑えるために、バイオリアクタの表面以外のバイオリアクタから流体を引き出すための専用ラインを備えている、センサ、を備える、システム。
【0087】
項目23.1つ以上のパラメータをバイオリアクタのバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラをさらに備える、項目22に記載のシステム。
【0088】
項目24.コントローラは将来の時点でのバイオリアクタ内のバイオマスの量を推定するように適合されている、項目23に記載のシステム。
【0089】
項目25.コントローラは、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを入力として受け取り、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを処理して固定床のバイオマスの量を出力するように適合されている、項目23または項目24に記載のシステム。
【0090】
項目26.バイオマスの量を表示するためのコントローラに関連付けられたディスプレイをさらに含む、項目23から25のいずれかに記載のシステム。
【0091】
項目27.容器と、そのような容器内に配置された固定床と、を含み、固定床内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知するセンサと関連付けられたバイオリアクタ内のバイオマスを評価するシステムであって、
バイオリアクタからサンプルを取得し、サンプルをセンサと関連付ける自動サンプラー、および/または
センサからの1つ以上のパラメータを固定床のバイオマスの量と相関させるように適合されたコントローラ、を備える、システム。
【0092】
項目28.コントローラは、将来の時点での固定床内のバイオマスの量を推定するように適合されている、項目27に記載のシステム。
【0093】
項目29.コントローラは、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを入力として受け取り、相関モデルを使用して1つ以上のパラメータを処理して固定床のバイオマスの量を出力するように適合されている、項目27または項目28に記載のシステム。
【0094】
項目30.バイオマスの量を表示するためのコントローラに関連付けられたディスプレイをさらに含む、項目27から29のいずれかに記載のシステム。
【0095】
項目31.バイオマスを評価する方法であって、
固定床バイオリアクタ内で細胞を培養すること、および/または
培養ステップ中または培養ステップ後に、バイオリアクタ内またはバイオリアクタから放出される細胞培養液から、固定床バイオリアクタ内のバイオマスを表す1つ以上のパラメータを検知することであって、1つ以上のパラメータは細胞培養物の代謝産物レベルおよび/または呼吸レベルを含む、検知すること、および/または
1つ以上のパラメータをコントローラに送信すること、および/または
固定床のバイオマスの量を推定するよう1つ以上のパラメータを使用すること、を含む、方法。
【0096】
項目32.使用ステップは、プロセッサおよび相関モデルを使用して、1つ以上のパラメータを固定床内のバイオマスの量と相関させることを含む、項目31に記載の方法。
【0097】
項目33.1つ以上のパラメータをコントローラに手動で入力するステップをさらに含む、項目31または項目32に記載の方法。
【0098】
項目34.バイオマスの量は、予測される将来のバイオマスの量である、項目31から33のいずれかに記載の方法。
【0099】
項目35.検知ステップは、細胞培養液を固定床バイオリアクタの外部の代謝産物センサに供給することを含む、項目31から34のいずれかに記載の方法。
【0100】
項目36.検知ステップは、空気および酸素ガスの流量入口、酸素出口濃度、酸素移動速度、酸素摂取速度、二酸化炭素発生速度、および呼吸比率のうちの1つ以上を監視することによって細胞培養呼吸レベルを検知することを含む、項目31から35のいずれかに記載の方法。
【0101】
項目37.細胞を含む固定床バイオリアクタ内のバイオマスを評価する方法であって、
固定床バイオリアクタのパラメータを測定すること、および/または
固定床バイオリアクタの細胞密度の実測値を取得すること、および/または
パラメータと細胞密度の実測値に基づいて推定細胞密度の相関モデルを開発すること、を含む方法。
【0102】
項目38.サンプリングを必要とせずに相関モデルを使用して細胞密度を推定するステップをさらに含む、項目37に記載の方法。
【0103】
項目39.推定ステップは、センサを使用してパラメータを測定し、測定されたパラメータを相関モデルに適用することをさらに含む、項目37に記載の方法。
【0104】
項目40.実測値を取得するステップは、固定床バイオリアクタをサンプリングすることを含む、項目37から39のいずれかに記載の方法。
【0105】
項目41.相関モデルを使用して、現在の時点または将来の時点における推定細胞密度を提供するステップをさらに含む、項目37から40のいずれかに記載の方法。
【0106】
項目42.推定された細胞密度に基づいて細胞を感染またはトランスフェクトする時期を決定するステップをさらに含む、項目31から41のいずれかに記載の方法。
【0107】
項目43.項目37から42のいずれかに記載の方法を使用して得られた相関モデルを固定床バイオリアクタの測定されたパラメータに適用して細胞密度を推定するように適合されたコントローラを含み、これにより、細胞培養中に細胞密度をサンプリングまたは測定する必要がなくなる、バイオリアクタシステム。
【0108】
項目44.項目37から42に記載の方法を使用して得られた相関モデルを適用して固定床バイオリアクタの細胞密度を予測するように適合されたコントローラを含み、これにより、細胞培養中に細胞密度をサンプリングまたは測定する必要がなくなる、バイオリアクタシステム。
【0109】
項目45.第1の固定床バイオリアクタにおける細胞密度の最終予測モデルを開発する方法であって、
細胞密度と1つ以上の第2の固定床バイオリアクタの1つ以上のパラメータとを相関させる予備モデルを開発すること、および/または
1つ以上の第2の固定床バイオリアクタから細胞密度の実測値を取得することにより予備モデルを検証して最終モデルに到達すること、および/または
最終モデルを第1の固定床バイオリアクタに適用して細胞密度を推定すること、を含む方法。
【0110】
項目46.予備モデルを開発するステップは、複数の第2の固定床バイオリアクタにおいて、細胞密度と代謝産物とを相関させることを含む、項目45に記載の方法。
【0111】
項目47.取得ステップは、1つ以上の第2の固定床バイオリアクタから細胞密度を表す1つ以上のサンプルを取得することを含む、項目45または項目46に記載の方法。
【0112】
項目48.取得ステップは、1つ以上の第2の固定床バイオリアクタを開き、その中の固定床上の細胞の少なくとも一部を数えることを含む、項目45から48のいずれかに記載の方法。
【0113】
この開示の目的上、以下の用語は以下の意味を有する。
本明細書で使用されている「a」、「an」、および「the」は、文脈により明らかに別の意味が示されていない限り、単数と複数の両方の対象を指す。例として、「コンパートメント」は1つまたは複数のコンパートメントを指す。
【0114】
本明細書で使用されている、パラメータ、量、時間的持続時間などの測定可能な値を指す「約」、「実質的に」、「一般的に」、または「おおよそ」は、開示された発明においてそのような変動が実行するのに適切である限り、指定された値の、および指定された値から+/-20%以下、好ましくは+/-10%以下、より好ましくは+/-5%以下、さらに好ましくは+/-1%以下、およびさらにより好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含することを意味する。ただし、「約」という修飾語が指す値自体も具体的に開示されていることを理解する必要がある。
【0115】
本明細書で使用される「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」、「備える(comprises)」、および「備えた(comprised)」は、「含む(include)」、「含んでいる(including)」、または「含む(contain)」、「含んでいる(containing)」、「含む(contains)」と同義であり、かつ後に続くものの存在を特定する包括的またはオープンエンドの用語であり、例えば、「コンポーネントが含む」は、当該技術分野で既知であるか開示されている、記載されていない追加のコンポーネント、特徴、要素、部材、ステップの存在を除外または排除するものではない。
【0116】
本明細書では特定の実施形態が示され、かつ説明されているが、そのような実施形態は例としてのみ提供されていることは、当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および代替を思いつくであろう。本発明を実施する際には、本明細書に記載した本発明の実施形態のさまざまな代替例が採用され得ることが理解されるべきである。以下の請求項は、適用法に基づく保護の範囲を定義し、かつこれらの請求項の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの均等物がそれによってカバーされることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図4A
図4B
図5
図6
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図8
図9
図10
【国際調査報告】