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特表2025-503206高純度アルミナを生成するためのプロセス
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  • 特表-高純度アルミナを生成するためのプロセス 図1
  • 特表-高純度アルミナを生成するためのプロセス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】高純度アルミナを生成するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/30 20220101AFI20250123BHJP
   C01F 7/306 20220101ALI20250123BHJP
【FI】
C01F7/30
C01F7/306
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544679
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-09-03
(86)【国際出願番号】 IB2023050449
(87)【国際公開番号】W WO2023144662
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202221005741
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524278541
【氏名又は名称】アディティア ビルラ サイエンス アンド テクノロジー カンパニー プライベート リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524278552
【氏名又は名称】ヒンダルコ インダストリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】カリ チャンドラカラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャドハブ マンゲシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラオ ランガ
(72)【発明者】
【氏名】タタヴァドカール ヴィラス
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB04
4G076BA24
4G076BD02
4G076CA02
4G076DA30
(57)【要約】
本明細書では、高純度アルミナを生成するためのプロセスであって、(a)所定の温度で無水塩化アルミニウムを昇華して、純粋な塩化アルミニウムを回収するステップと、(b)ステップ(a)からの塩化アルミニウムを水に溶解させて、塩化アルミニウム溶液を得るステップと、(c)HClガスをステップ(b)の塩化アルミニウム溶液に導入して、塩化アルミニウム六水和物を結晶化させるステップと、(d)ステップ(c)の塩化アルミニウム六水和物をか焼して、高純度アルミナを得るステップと、を含む、プロセスを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度アルミナを生成するためのプロセスであって、
(a)所定の温度で無水塩化アルミニウムを昇華して、純粋な塩化アルミニウムを回収するステップと、
(b)ステップ(a)からの塩化アルミニウムを水に溶解させて、塩化アルミニウム溶液を得るステップと、
(c)HClガスをステップ(b)の塩化アルミニウム溶液に導入して、塩化アルミニウム六水和物を結晶化させるステップと、
(d)ステップ(c)の塩化アルミニウム六水和物をか焼して、高純度アルミナを得るステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
ステップ(a)の昇華が2段階プロセスであり、無水塩化アルミニウムが異なる温度で加熱を施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記2段階昇華が、50℃~170℃と170℃~300℃の温度で実施される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
塩化アルミニウムの95~97%が無水塩化アルミニウムから回収されるまで前記昇華が実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(a)の昇華が、少なくとも4回繰り返されてもよい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記昇華が、キャリヤーガスの存在下で実施されてもよい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(a)で得られた塩化アルミニウムが、気体又は固体のいずれかである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(b)における塩化アルミニウムの溶解が、30~50℃の温度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(b)が少なくとも4回繰り返される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(c)におけるHClガスの導入が、25~65℃の範囲の温度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
塩化アルミニウム六水和物種結晶を、ステップ(c)の間に加えてもよい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
か焼が1000℃~1200℃の範囲の温度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
強熱減量が0.5%未満になるまでか焼が実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップ(c)の結晶化した塩化アルミニウム六水和物を水に溶解させ、アンモニア又は水酸化アンモニウムと反応させて、高純度水酸化アルミニウムを得てもよい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記高純度水酸化アルミニウムをか焼して高純度アルミナを得るステップを含む、請求項14に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度アルミナを生成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
異なるレベルの純度及び物理的特性を有する異なるグレードのアルミナは、種々の用途、例えばセラミックス、充填剤及びサファイア単結晶、半導体、リチウムイオン電池用途などの作製のような高級な用途に使用される。化学的不活性、電気絶縁性及びその高い使用温度への安定性などの特性は、種々の用途で使用される。純度要件は、不純物の総含有量が100ppm未満に制限されることだけでなく、各重要元素の個別の制限、例えばNa 30ppm未満、Si 20ppm未満、Fe約3~5ppmを達成することに関しても厳密である。全ての他の不純物は、3ppm未満に制御する必要がある。
バイヤー法は、アルミナが水酸化アルミニウムの形態で抽出される主要なプロセスである。バイヤー法では、ボーキサイトを苛性ソーダ(NaOH)溶液に溶解させ、加熱を施し、水酸化アルミニウムを沈殿させる。世界中で生産されたアルミナの大部分は、製錬グレード用途に使用されており、それは純度99.7%である。バイヤー法によって生成された水酸化アルミニウムは、ボーキサイトからの元素不純物も含有する。
【0003】
商業的に実施されている高純度アルミナを製造するための2つの主なプロセスは、(i)アルミニウム金属からのアルコキシド法と(ii)アルミナ粘土からの酸経路である。アルコキシド法は、総HPA要件の80%を占め、出発原料としてアルミニウム金属を使用し、そのアルコキシドを多段階蒸留で処理して所望の純度レベルを達成する。これらのプロセスの利点は、より単純なプロセス、異なるグレードのアルミナの供給が容易なこと、並びに加水分解の制御により粒径が制御できることである(Shinji F. et. al, 2007)。しかしながら、主な課題には、原料のコストがより高いこと、金属からアルコキシドを形成するための反応速度が非常に遅いことがあり、アルコキシドはさらに微細な金属粉末の作製にさらに使用される。使用されるアルミニウムインゴット又は金属粉末は高純度のものであるが、それでも鉄(500~1500ppm)及びケイ素(400~800ppm)のような重要な不純物の存在は避けられない。
したがって、特にシリカと形成された他の複合アルコキシドからアルミニウムアルコキシドを精製するための一連の蒸留プロセスがある(Bains M.S, 1962 & Jeffrey H et. al,1986)。
【0004】
高純度アルミナ生産のための別のプロセスは、アルミナ粘土からの酸経路であり、これは鉄(0.7%)及びアルカリ含有量(Na2O<0.1%)が非常に低いオーストラリアの堆積物からの特別なアルミナ粘土を使用する。前記酸経路によって特別なアルミナ粘土から高純度アルミナを調製するためのプロセスは、欧州特許出願公開第3530623号、豪州イノベーション特許第2018101228号及び豪州特許出願公開第2019204216号に記載されている。
プロセスは、400℃で焙焼した後に粘土の消化のためにHClを使用する(これはケイ酸アルミニウムの構造を破壊する)。その後の精製ステップは、無水HClを使用してHClの濃度を増大させることにより、AlCl3.6H2Oの選択的な沈殿と共に鉄及び他の不純物の除去を伴う(Lewis J. C., 1951)。精製段階の数は、粘土中に存在する不純物の濃度によって決まる。Yves Noel, 2012は、化学物質及びエネルギー消費がより大きい高純度アルミナの生産のための同様の技術を開示する。
米国特許出願公開第20180155206号は、一般的な水酸化アルミニウムを水酸化ナトリウム溶液に溶解してアルミン酸ナトリウム溶液をもたらし、マイクロフィルターを使用してナトリウム以外のほとんどの不溶性不純物を除去して純粋なアルミン酸ナトリウム溶液をもたらす、高純度ナノアルミナ粉末を生成する方法を記載している。それに種を加えて、最適な沈殿条件下でナノ水酸化アルミニウムをナノスラリーとして沈殿させる。ナノ水酸化アルミニウムスラリーをろ過し、乾燥させ、ばらばらにし、次いで900℃以下の低温でか焼し、それによって高純度ナノアルミナの大量生産が達成される。
【0005】
米国特許第8124048号は、Si含有量、Fe含有量、Ca含有量、及びNa含有量が同時に除去される、高純度アルミナを生成する方法を記載している。
国際公開第2018040998号は、気相塩化アルミニウムを空気圧送し、2500℃以上の加熱ゾーン内に噴霧し、次いで超純粋塩化アルミニウムを熱分解してアルミナを生成し、それによって超純粋球状アルミナ粉末を得る、超純粋球状アルミナ粉末を調製するための方法を開示している。
関係する主な課題は、原料の不純物のばらつき並びに多段階精製ステップで生じる大量の酸性廃棄物を取り扱うことである。
したがって、現在開発されているHPA生産のための新しいプロセスは、最小数の処理/精製ステップで目標純度を達成することを目的としている。これは、沸点、結晶化における選択性などに基づく異なる金属不純物を制御するための独特な組合せの精製ステップによって得られる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、前述の問題を解決するために考え出されたものである。
本発明の目的は、高純度アルミナを調製するための方法を提供することである。
本発明の別の特別な目的は、無水塩化アルミニウムを使用して高純度アルミナを調製するための方法を提供することである。
ある態様において、本発明は、無水塩化アルミニウムの昇華から始まる高純度アルミナを調製するための方法を提供する。昇華プロセスは、純粋な塩化アルミニウムを固体又は気体のいずれかとして回収するために特定の温度で実施された。
気体又は固体のいずれかの形態で回収された塩化アルミニウムは、さらに水に溶解させて、塩化アルミニウム溶液を得る。続いて、無水HClガスは、塩化アルミニウム溶液中に導入し、その結果、塩化アルミニウムが結晶化し、塩化アルミニウム六水和物として沈殿する。結晶化塩化アルミニウム六水和物は、か焼を施して、99.99%(4N)を超える高純度アルミナを得る。
前述の要約、並びに以下の本発明の詳細な説明は、添付図面と共に読めばより良く理解されるであろう。発明の説明を補助する目的で、図面には、現在好ましく、例示的であると考えられる実施形態が示されている。しかしながら、本発明は、図面に示されている正確な配置及び手段に制限されないと理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態により無水塩化アルミニウムから高純度アルミナを生成するための工程図である。
図2】本発明の実施形態により無水塩化アルミニウムから高純度アルミニウム水和物を生成するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を説明し、特許請求する際に、以下の専門用語は、下記に記載の定義に従って使用される。特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者による一般的理解と同じ意味を有する。本発明を実施又は試験する際に、本明細書に記載されているものと類似又は同等のいかなる方法及び材料も使用することができるが、好ましい方法及び材料を本明細書に説明する。本明細書では、以下の用語はそれぞれ、このセクションにおける用語に関連する意味を有する。個々のプロセスパラメーター、置換基、及び範囲について下記に列挙した特定の好ましい値は、例示のためだけのものであり、他の定義された値、又は定義された好ましい範囲内の他の値を排除するものではない。
【0009】
本明細書では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に文脈によってはっきりと規定されていない限り複数の対象を含む。
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で一定の利点を与えることができる、本発明の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態も、同じ又は他の状況下で好ましい可能性がある。さらに、1つ又はそれ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを示すものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図していない。
本明細書では、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」、「含有する」、「伴う」などは、非制限的であると理解すべきであり、すなわち、含みはするが、限定はされないことを意味するものと理解すべきである。
本明細書では、「昇華」は、加熱が施された際の物質の固相と気相の直接変換を指す。
本明細書では「か焼」は、揮発性物質(塩化物、水酸化物、炭酸塩など)を除去し、標的となる相転移を生じさせる目的で固体を高温に加熱することを指す。
【0010】
本明細書では、用語「4Nグレード」は、試料の純度99.99%で不純物の合計が100ppmを指す。
本発明を実施又は試験する際に、本明細書に記載されているものと類似又は同等のいかなる方法及び材料も使用することができるが、好ましい方法及び材料について説明する。本明細書で言及された全ての刊行物及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。数値範囲は、範囲を定義している数字を包含する。
高純度アルミナを調製する従来の方法は、一般にエネルギー消費が大きく、廃副産物をもたらす。前述から、本発明の発明者らは、不純物としての元素金属が実質的に除去される高純度アルミナを生成するためのプロセスについて広範囲に研究してきた。結果として、本発明者らは、供給原料中に含まれていた不純物に基づく独特な組合せの精製ステップの選択を伴う、高純度アルミナを調製するためのプロセスを提案している。
ある実施形態では、無水塩化アルミニウム/塩化物供給原料は、炭素-塩素化/塩素化によってあらゆるアルミナ供給原料、例えばボーキサイト、アルミニウム水和物、アルミニウムドロス又は赤泥などから生じる。
【0011】
すなわち、本発明は、高純度アルミナを生成するためのプロセスであって、
(a)所定の温度で無水塩化アルミニウムを昇華して、純粋な塩化アルミニウムを回収するステップと、
(b)ステップ(a)からの塩化アルミニウムを水に溶解させて、塩化アルミニウム溶液を得るステップと、
(c)HClガスをステップ(b)の塩化アルミニウム溶液に導入して、結晶化した塩化アルミニウム六水和物を得るステップと、
(d)ステップ(c)の結晶化した塩化アルミニウム六水和物をか焼して、高純度アルミナを得るステップと、
を含む、プロセスを提供する。
ステップ(a)の加熱は、170~300℃の範囲の温度で実施して、昇華を促進させる。無水塩化アルミニウムの昇華の結果、純粋な塩化アルミニウムが得られる。
【0012】
昇華の間、不純物は、選択的に分離する。ケイ素、ヒ素及びチタンの塩化物などの低沸点の不純物は、塩化アルミニウムの沸点よりも低い、170℃未満、好ましくは50℃~130℃の蒸気の留分を除去することによって選択的に取り出す。続いて、塩化アルミニウムは、170℃~300℃の範囲の温度に加熱する。これにより、鉄、亜鉛、ニッケル、鉛、ナトリウムなどの塩化アルミニウムよりも高い沸点を有するいくつかの他の金属塩化物が除去される。
本発明の他の実施形態では、昇華プロセスの開始時及び終了時に昇華した無水塩化アルミニウムの少なくとも一部、好ましくは5質量%を廃棄すると、塩化アルミニウム(AlCl3)、さらに水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、酸化アルミニウム(Al23)の高純度材料生成が改善される。
【0013】
不純物がない塩化アルミニウムは、気体として捕集し、続いてそれを170℃より低い温度に冷却して、固体の塩化アルミニウムを粉末又は顆粒として得ることができ、或いは冷却せずに気体状形態で水に溶解させ、さらに処理してもよい。昇華プロセスで生じた残留物は、より高沸点を有するグラファイト不純物並びに無機不純物、例えば鉄、亜鉛、鉛、ナトリウム及び他の塩化物を含有する。
ある実施形態では、昇華は、キャリヤーガスの存在下又は不在下で実施する。キャリヤーガスは、好ましくは窒素又はアルゴンなどの不活性ガスである。
別の実施形態では、昇華から得られた純粋な塩化アルミニウムは、固体生成物として又は気体状形態で捕集することができる。
昇華から得られた気体又は固体の純粋な塩化アルミニウムは、水に溶解させて、塩化アルミニウム溶液を得る。溶液の温度は、塩化アルミニウムの損失を回避するために50℃未満に維持にする。
【0014】
ある実施形態では、昇華中に生じた気体は、直接水噴霧カラム/吸収ユニットに通して、1リットル当たり100~400gmの範囲の塩化アルミニウムの濃度を有する塩化アルミニウム溶液、又は言い換えれば10~40%塩化アルミニウムの溶液を生成し得る。
別の実施形態では、昇華中に生じた固体は、水に直接溶解させて、1リットル当たり100~400gmの範囲の塩化アルミニウムの濃度を有する塩化アルミニウム溶液、又は言い換えれば10~40%塩化アルミニウムの溶液を生成し得る。
塩化アルミニウム溶液は、非常に過飽和なHCl酸性溶液(+36%)へのそれらの溶解度に基づいてさらに精製にかける。塩化アルミニウム溶液は、HClの飽和が30~40%に達するまで25~65℃の範囲の温度を維持しながら、無水HClガスを使用してHClを濃縮することにより過飽和になる。ある実施形態では、無水Cl2、AlCl3又はあらゆる塩素含有ガスを使用することができる。
30~40%の範囲のHClの飽和が達成されると、塩化アルミニウム六水和物(AlCl3.6H2O)が結晶化する。酸性溶液中で高い溶解度を有するヒ素、ケイ素、亜鉛及び鉄などの不純物は、溶液中に残るので、このプロセスで分離される。
【0015】
別の実施形態では、図2に示すとおり、少なくとも一部の塩化アルミニウム六水和物は、さらに水に溶解させ、アンモニア又は水酸化アンモニウムと反応させて、特殊な用途用の超高純度水酸化アルミニウムを沈殿させる。水酸化アルミニウムをさらにか焼して、高純度アルミナを得る。
ある実施形態では、HClガスの流量、塩化アルミニウム溶液の初期濃度及び温度を制御して、塩化アルミニウム六水和物(AlCl3.6H2O)の結晶化速度を制御することにより、不純物を最小限に抑えることができる。別の実施形態では、塩化アルミニウム六水和物種結晶を結晶化ステップに加えてもよい。
ある実施形態では、昇華及び結晶化ステップは、2回以上繰り返して、4N、5N又は6N(+99.99)などの高純度アルミナ材料を生成することができる。ある実施形態では、結晶化のステップは、複数回繰り返して、4N、5N又は6Nなどの異なるグレードの高純度アルミナを調製する。
塩化アルミニウム六水和物の沈殿物は、1000~1100℃の範囲の温度でか焼して、高純度アルミナ(HPA)を得る。
本発明の別の実施形態では、昇華及び/又は結晶化ステップは、当技術分野で公知のあらゆる他の精製法、例えば溶媒抽出/有機沈殿と併せて、高純度アルミニウム水和物又は純度が99.99%超のアルミナを調製することができる。
【0016】
このプロセスによって得られた最終的なHPA生成物は、純度が99.99%であり、4Nグレードに規定された厳しい品質基準を保証する。ある実施形態では、温度の段階、特に90℃、360℃及び1000~1100℃でか焼を実施して、プロセス中に放出されたHCl及び塩素を回収し、その後それを再生利用する。
本出願のプロセスは、アルミナ中に存在する不純物を、Naが20ppm未満、Siが10ppm未満、Feが1ppm未満、及び他の全ての不純物が3ppm未満のレベルまで最小限に抑えることに成功した。生成された物質は、高純度アルミナ用途、例えばサファイア単結晶作製、リチウムイオン電池におけるコーティング用途、LEDなどに適している。
高純度アルミナを生成する従来の方法は、所望の純度要件を達成するために複数の精製ステップが必要とされる。しかしながら、本出願で特許請求されているプロセスでは、供給原料中に存在する重要な不純物を考慮し、不純物を分離する手法を考案している。したがって、高純度アルミナ又はアルミニウム水和物は、最小数のステップで生成される。
その上、本出願のプロセスでは、副流の発生量が少なく、それによって最大限の再生利用によるプロセスの持続可能性が確保される。さらに、本出願のプロセスは、化学物質/エネルギーの消費がそれほど大きくない。
【実施例
【0017】
以下の具体例は、本発明の例示的且つ説明的なものであるが、本発明の範囲を限定するものとは解釈されるべきではない。
アルミニウム金属の塩素化によって生成した無水塩化アルミニウムを供給原料として使用した。アルミニウム金属インゴットは、Na:10~100ppm、Si:400~1000ppm、Fe:580~1500ppm、V:50~150ppm、Ti:50ppmの不純物を含有している。溶融アルミニウム金属の塩素化のプロセスは、600~700℃の非常に高い温度で実施したので、塩化物を形成する金属不純物を塩化アルミニウムと共に報告している。
(実施例1)
無水塩化アルミニウムを170℃~300℃の範囲の温度で加熱して、昇華を行った。昇華後の塩化アルミニウムを水に溶解させて塩化アルミニウム溶液を得た。HClガスを塩化アルミニウム溶液中に25~65℃の温度でパージして、塩化アルミニウム六水和物の結晶化を可能にした。沈殿した結晶化塩化アルミニウム六水和物を1100℃の温度でか焼して、高純度アルミナを得た。
【0018】
(実施例2)
実施例1のプロセスでは、昇華を2回繰り返し、酸媒体中での塩化アルミニウム六水和物の結晶化を一段階で実施した結果、Na、Si、K、Znなどの重要な不純物を制御することによってアルミナの純度が増加した。
(実施例3)
実施例1のプロセスでは、昇華は、塩化アルミニウム六水和物の2段階結晶化と併せて単一ステップで実施した結果、主な金属不純物を0.5ppm未満に制御することによってさらに高純度のアルミナが生成された。
本出願のこれらのプロセスによって生成されたアルミナの純度を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
(実施例4)
実施例1のプロセスにおいて、結晶化塩化アルミニウム六水和物をか焼してアルミナを得る代わりに、結晶化塩化アルミニウム六水和物を使用して水酸化アルミニウムを調製する。結晶化塩化アルミニウム六水和物を水に再溶解させ、水酸化アンモニウムをpHが6になるまで加える。したがって、水酸化アルミニウムは沈殿し、それをろ過し、105℃で乾燥させて、水分を含まない生成物を得る。
さらに、沈殿した水酸化アルミニウムを1100℃の温度でか焼して、高純度アルミナを得た。
得られた水酸化アルミニウムの純度は、表2に示し、純度99.99%である。
【0021】
【表2】
【0022】
本発明の前述の説明は、その例示的且つ説明的なものである。本開示を考慮すると、種々の変更は、当業者によって明らかとなるであろう。添付の請求項の範囲及び精神に該当するこのような変形の全ては、それによって包含されることを意図するものである。
図1
図2
【国際調査報告】