(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ダイナミック・コンプレッサの動作範囲を拡張するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F04D 27/02 20060101AFI20250123BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F04D27/02 A
F25B49/02 570A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544748
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022082320
(87)【国際公開番号】W WO2023146719
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511158339
【氏名又は名称】コープランド エルピー
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】ペレヴォスチコフ,マイケル エム.
(72)【発明者】
【氏名】スワロー,マシュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ゼージ
【テーマコード(参考)】
3H021
【Fターム(参考)】
3H021AA02
3H021BA13
3H021BA15
3H021CA01
3H021CA03
3H021DA11
3H021EA03
3H021EA16
(57)【要約】
システムは、ダイナミック・コンプレッサと、プロセッサ及びメモリを有するコントローラとを含む。コンプレッサは、第1の可変入口ガイドベーン(VIGV)を有する第1のコンプレッサ段と、第2のVIGVを有する第2のコンプレッサ段とを含む。メモリは、プロセッサに、コンプレッサを現在の速度、第1のVIGVの第1の位置、及び第2のVIGVの第2の位置で動作させて作動流体を圧縮させ、条件を満たしているかどうかを判定させるようにプログラムする命令を格納する。条件を満たしていない場合に、プロセッサは、コンプレッサを現在の速度、第1のVIGVの第1の位置、及び第2のVIGVの第2の位置で引き続き動作させるようにプログラムされる。条件を満たしている場合に、プロセッサは、第2のVIGVの第2の位置を第3の位置に変更し、第1のVIGVの第1の位置を維持するようにプログラムされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、当該システムは、
作動流体を圧縮するように動作可能なダイナミック・コンプレッサであって、
第1の可変入口ガイドベーン(VIGV)を有する第1のコンプレッサ段と、
第2のVIGVを有する第2のコンプレッサ段と、を含む、ダイナミック・コンプレッサと、
該ダイナミック・コンプレッサに接続したコントローラと、を含み、
該コントローラはプロセッサ及びメモリを含み、該メモリには、前記プロセッサに、
前記ダイナミック・コンプレッサを現在の速度、前記第1のVIGVの第1の位置、及び第2のVIGVの第2の位置で動作させて前記作動流体を圧縮させ、
前記ダイナミック・コンプレッサを動作させている間に、条件を満たしているかどうかを判定させ、
前記条件を満たしていない場合に、前記ダイナミック・コンプレッサを前記現在の速度、前記第1のVIGVの前記第1の位置、及び前記第2のVIGVの前記第2の位置で引き続き動作させ、
前記条件を満たしている場合に、前記第2のVIGVの前記第2の位置を該第2の位置とは異なる第3の位置に変更し、前記第1のVIGVの前記第1の位置を維持させるようにプログラムする命令が格納される、
システム。
【請求項2】
前記条件を満たしているかどうかを判定することは、前記ダイナミック・コンプレッサと流体連通している弁が開いているかどうかを判定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記メモリには、前記弁が開いている場合に、前記プロセッサに、前記第2のコンプレッサ段の制限速度を決定させるようにプログラムする命令がさらに格納される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制限速度は前記第2のコンプレッサ段のチョーク速度であり、前記条件を満たしているかどうかを判定することは、
前記弁が開いており、前記第2のコンプレッサ段の前記チョーク速度が前記ダイナミック・コンプレッサの前記現在の速度よりも遅い場合に、前記条件を満たしていると判定することをさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制限速度は前記第2のコンプレッサ段のサージ制御速度であり、前記条件を満たしているかどうかを判定することは、
前記弁が開いており、前記第2のコンプレッサ段の前記サージ制御速度がダイナミック・コンプレッサの前記現在の速度よりも大きい場合に、前記条件を満たしていると判定することをさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記メモリには、前記ダイナミック・コンプレッサの所定の動作点のマップがさらに格納される、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記所定の動作点の前記マップには、前記第2のコンプレッサ段の動作点が含まれ、
前記第2のコンプレッサ段の前記制限速度を決定することは、前記所定の動作点の前記マップから前記第2のコンプレッサ段の動作点の値を取得することを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2のコンプレッサ段の前記制限速度を決定することは、コンプレッサ圧力比、及び前記所定の動作点のマップから取得した前記制限速度の値に基づいて、並びに前記コンプレッサ圧力比、及び所定の定数に基づいて、前記第2のコンプレッサ段の前記制限速度を計算することを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のVIGVの前記第1の位置と前記第2のVIGVの前記第2の位置とが同じ位置である、請求項2乃至8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記弁は、一次冷媒ループの一部を二次冷媒ループに流体接続し、該二次冷媒ループは、前記第1のコンプレッサ段の出口を前記第2のコンプレッサ段の入口に接続する、請求項2乃至9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記一次冷媒ループは、
前記第2のコンプレッサ段に流体結合した凝縮器と、
該凝縮器に流体結合した第1の膨張装置と、
該第1の膨張装置及び前記第1のコンプレッサ段に流体結合した蒸発器と、を含み、
前記二次冷媒ループは、
前記凝縮器に流体結合した第2の膨張装置と、
該第2の膨張装置、前記凝縮器、及び前記第2のコンプレッサ段に流体結合した熱交換器と、を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
第1のコンプレッサ段及び第2のコンプレッサ段を有するダイナミック・コンプレッサのためのコントローラであって、当該コントローラは、
プロセッサと、
メモリを含み、該メモリには、前記プロセッサに、
前記ダイナミック・コンプレッサを現在の速度、前記第1のコンプレッサ段の第1のVIGVの第1の位置、及び前記第2のコンプレッサ段の第2のVIGVの第2の位置で動作させて作動流体を圧縮させ、
前記ダイナミック・コンプレッサを動作させている間に、条件を満たしているかどうかを判定させ、
前記条件を満たしていない場合に、前記コンプレッサを前記現在の速度、前記第1のVIGVの前記第1の位置、及び前記第2のVIGVの前記第2の位置で引き続き動作させ、
前記条件を満たしている場合に、前記第2のVIGVの前記第2の位置を該第2の位置とは異なる第3の位置に変更し、前記第1のVIGVの前記第1の位置を維持させるようにプログラムする命令が格納される、
コントローラ。
【請求項13】
前記条件を満たしているかどうかを判定することは、
前記ダイナミック・コンプレッサと流体連通している弁が開いているかどうかを判定することと、
前記弁が開いている場合に、前記第2のコンプレッサ段の制限速度を決定することと、を含む、請求項12に記載のコントローラ。
【請求項14】
前記制限速度は前記第2のコンプレッサ段のチョーク速度であり、前記条件を満たしているかどうかを判定することは、
前記弁が開いており、前記第2のコンプレッサ段の前記チョーク速度が前記ダイナミック・コンプレッサの前記現在の速度よりも遅い場合に、前記条件を満たしていると判定することをさらに含む、請求項13に記載のコントローラ。
【請求項15】
前記制限速度は前記第2のコンプレッサ段のサージ制御速度であり、前記条件を満たしているかどうかを判定することは、
前記弁が開いており、前記第2のコンプレッサ段の前記サージ制御速度が前記ダイナミック・コンプレッサの現在の速度よりも大きい場合に、前記条件を満たしていると判定することをさらに含む、請求項13に記載のコントローラ。
【請求項16】
前記メモリには、前記ダイナミック・コンプレッサの所定の動作点のマップがさらに格納される、請求項13に記載のコントローラ。
【請求項17】
前記所定の動作点の前記マップには、前記第2のコンプレッサ段の動作点が含まれ、
前記第2のコンプレッサ段の前記制限速度を決定することは、前記所定の動作点のマップから前記第2のコンプレッサ段の動作点の値を取得することを含む、請求項16に記載のコントローラ。
【請求項18】
前記第2のコンプレッサ段の前記制限速度を決定することは、コンプレッサ圧力比、及び前記所定の動作点のマップから取得した前記制限速度の値に基づいて、並びに前記コンプレッサ圧力比、及び所定の定数に基づいて、前記第2のコンプレッサ段の前記制限速度を計算することを含む、請求項16に記載のコントローラ。
【請求項19】
作動流体を圧縮しているダイナミック・コンプレッサの動作範囲を拡張する方法であって、前記ダイナミック・コンプレッサには第1のコンプレッサ段及び第2のコンプレッサ段があり、当該方法は、
前記ダイナミック・コンプレッサを現在の速度、前記第1のコンプレッサ段の第1のVIGVの第1の位置、及び前記第2のコンプレッサ段の第2のVIGVの第2の位置で動作させて作動流体を圧縮するステップと、
前記ダイナミック・コンプレッサを動作させている間に、条件を満たしているかどうかを判定するステップと、
前記条件を満たしていない場合に、前記コンプレッサを前記現在の速度、前記第1のVIGVの前記第1の位置、及び前記第2のVIGVの前記第2の位置で引き続き動作させるステップと、
前記条件を満たしている場合に、前記第2のVIGVの前記第2の位置を該第2の位置とは異なる第3の位置に変更し、前記第1のVIGVの前記第1の位置を維持するステップと、を含む、
方法。
【請求項20】
前記条件を満たしているかどうかを判定するステップは、
前記ダイナミック・コンプレッサと流体連通している弁が開いているかどうかを判定するステップと、
前記弁が開いている場合に、前記第2のコンプレッサ段の制限速度を決定するステップと、を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2022年1月27日に出願した米国特許出願第17/585,736号の優先権を主張するものであり、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の分野
本開示の分野は、制御システム、より具体的には、ダイナミック・コンプレッサのための制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
遠心コンプレッサを含むダイナミック・コンプレッサは、プロセス産業、並びに暖房、換気、空調(HVAC)システムで一般的に使用される。コンプレッサは、複数のコンプレッサ段をサポートするシャフトを介してモータに動作可能に接続される。モータは、指定した需要まで冷媒を圧縮するために選択した回転速度及び負荷条件で、シャフトを介してコンプレッサ段を回転させる。モータの速度及び負荷を制御して、コンプレッサを幅広い動作条件下で動作させることができる。コンプレッサの動作範囲は、低流量でのサージ領域と、高流量でのチョーク領域とによって制限される。コンプレッサの正確な動作点の知見は、サージ又はチョークでの動作を回避するのに役立つ。
【0004】
多段コンプレッサでは、冷媒は、異なる圧力及び体積流量で各コンプレッサ段に入る。従って、各段は他の段と「一致する」ように設計する必要があり、そうすることで、各段は前の段から受け取った流体を効果的に処理でき、コンプレッサは幅広い動作条件下で安全且つ効率的に動作できる。
【0005】
ダイナミック・コンプレッサに加えて、殆どのHVACシステムには、ダイナミック・コンプレッサに閉ループで流体結合した凝縮器、膨張装置、及び蒸発器が含まれる。一部のアプリケーションでは、基本サイクルが、追加のコンポーネント又は代替構成で修正され、システムの性能及び効率を向上させる。例えば、一部のHVACシステムでは、低温液体冷媒の一部を凝縮器の下流から熱交換器又はフラッシュタンクを介して迂回させメインフローを冷却するエコノマイゼーションループを使用している。熱交換器又はフラッシュタンクの下流では、フロー(flow:流れ)の追加部分が中温蒸発器に迂回される場合がある。迂回した部分、つまりエコノマイゼーションフローは、次に、低温、中圧ガスとしてコンプレッサ段同士の間に注入され、システム全体の効率を向上させる。他のシステムでは、コンプレッサ段同士の間からフローを取り除き、追加の凝縮器に迂回させて、追加の用途を可能にする。
【0006】
このようなシステムでは、コンプレッサ段同士の間でフローを追加又は除去すると、ステージ(stage:段)がもはや空気力学的に一致(match:整合)しなくなる。ステージの適切な一致がないと、注入の下流ステージが、コンプレッサの残りの部分とは異なる条件で望ましくないフロー状態になり、機械全体の性能、効率、及び安全性が損なわれる可能性がある。こうして、ステージ同士の間の質量流量の変化の有無にかかわらず、ステージ同士の間で空気力学的整合を維持することが望ましい。
【0007】
このセクションは、以下に説明及び/又は特許請求する本開示の様々な態様に関連し得る技術の様々な態様を読者に紹介することを目的としている。この説明は、本開示の様々な態様をよりよく理解できるように、読者に背景技術情報を提供するのに役立つと考えられる。従って、これらの記述は、この観点から読むべきであり、先行技術を認めるものではないことを理解する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本開示の一態様はシステムに関し、システムは、作動流体を圧縮するように動作可能なダイナミック・コンプレッサと、ダイナミック・コンプレッサに接続したコントローラとを有する。ダイナミック・コンプレッサは、第1の可変入口ガイドベーン(vane:翼)(VIGV)を有する第1のコンプレッサ段と、第2のVIGVを有する第2のコンプレッサ段とを含む。コントローラは、プロセッサ及びメモリを含む。メモリは、プロセッサに、ダイナミック・コンプレッサを現在の速度、第1のVIGVの第1の位置、及び第2のVIGVの第2の位置で動作させて作動流体を圧縮させ、条件を満たしているかどうかを判定させるようにプログラムする命令を格納する。条件を満たしていない場合に、メモリに格納した命令は、プロセッサに、コンプレッサを現在の速度、第1のVIGVの第1の位置、及び第2のVIGVの第2の位置で引き続き動作させるようにプログラムする。条件を満たしている場合に、メモリに格納した命令は、プロセッサに、第2のVIGVの第2の位置を第2の位置とは異なる第3の位置に変更し、第1のVIGVの第1の位置を維持させるようにプログラムする。
【0009】
本開示の別の態様は、第1のコンプレッサ段及び第2のコンプレッサ段を有するダイナミック・コンプレッサのためのコントローラに関する。コントローラは、プロセッサ及びメモリを含む。メモリは、プロセッサに、ダイナミック・コンプレッサを現在の速度、第1のコンプレッサ段の第1のVIGVの第1の位置、及び第2のコンプレッサ段の第2のVIGVの第2の位置で動作させて作動流体を圧縮させ、条件を満たしているかどうかを判定させるようにプログラムする命令を格納する。条件を満たしていない場合に、メモリに格納した命令は、プロセッサに、コンプレッサを現在の速度、第1のVIGVの第1の位置、及び第2のVIGVの第2の位置で引き続き動作させようにプログラムする。条件を満たしている場合に、メモリに格納した命令は、プロセッサに、第2のVIGVの第2の位置を第2の位置とは異なる第3の位置に変更し、第1のVIGVの第1の位置を維持させるようにプログラムする。
【0010】
本開示の別の態様は、作動流体を圧縮している第1のコンプレッサ段及び第2のコンプレッサ段を有するダイナミック・コンプレッサの動作範囲を拡張する方法に関する。この方法は、ダイナミック・コンプレッサを現在の速度、第1のコンプレッサ段の第1のVIGVの第1の位置、及び第2のコンプレッサ段の第2のVIGVの第2の位置で動作させて作動流体を圧縮するステップと、条件を満たしているかどうかを判定するステップとを含む。この方法は、条件を満たしていない場合に、コンプレッサを現在の速度、第1のVIGVの第1の位置、及び第2のVIGVの第2の位置で引き続き動作させるステップと、条件を満たしている場合に、第2のVIGVの第2の位置を第2の位置とは異なる第3の位置に変更し、第1のVIGVの第1の位置を維持するステップとをさらに含む。
【0011】
本開示の上述した態様に関連して記載した特徴には、様々な改良点がある。本開示の上述した態様には、更なる特徴も組み込まれ得る。これらの改良点及び追加の特徴は、個別に、又は任意の組合せで存在し得る。例えば、本開示の図示した実施形態のいずれかに関連して以下で説明する様々な特徴は、本開示の上記の態様のいずれかに、単独で、又は任意の組合せで組み込まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】組み立てたダイナミック・コンプレッサの斜視図である。
【
図2】
図1のダイナミック・コンプレッサを線2-2に沿って切断し、外部導管を取り外した状態の断面図である。
【
図3】
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサを設置できる第1の例示的なHVACシステムの概略図である。
【
図4】
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサを設置できる第2の例示的なHVACシステムの概略図である。
【
図5】
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサを設置できる第3の例示的なHVACシステムの概略図である。
【
図6】
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサを設置できる第4の例示的なHVACシステムの概略図である。
【
図7】
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサの制御システムのブロック図である。
【
図8】
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサの動作マップである。
【
図9】
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサの第2のコンプレッサ段の動作マップであり、第2のコンプレッサ段の上流に流れを注入する前と注入した後との現在の動作点を示している。
【
図10】
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサの第2のコンプレッサ段の動作マップであり、第2のコンプレッサ段の上流で流れを除去する前と除去した後との現在の動作点を示している。
【
図11】第2のコンプレッサ段の上流で流れを注入し、第2のVIGVを第2の位置から第2の位置とは異なる位置に移動した場合の、
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサの第2のコンプレッサ段の動作マップである。
【
図12】第2のコンプレッサ段の上流から流れを除去し、第2のVIGVを第2の位置から第2の位置とは異なる位置に移動した場合の、
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサの第2のコンプレッサ段の動作マップである。
【
図13】
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサの動作範囲を拡張する方法である。
【
図14】
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサの所定の動作点のマップである。
【
図15】第2のコンプレッサ段の上流から流れを追加又は除去した場合の、
図1及び
図2に示されるダイナミック・コンプレッサの第2のコンプレッサ段の制限速度を決定するための例示的な制御アルゴリズムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
対応する参照符号は、図面全体を通じて対応する部分を示す。
【0014】
簡潔にするために、遠心コンプレッサに関して例を説明する。しかしながら、本明細書で説明する方法及びシステムは、任意の適切なダイナミック・コンプレッサに適用することができる。HVACシステムの性能及び効率は、メインフローの一部を補助ループ及び循環コンポーネントに迂回させることによって向上させることができる。このようなシステムでは、各ステージが異なる質量流量を有するように、コンプレッサ段同士の間で流れを注入又は除去することができる。しかしながら、望ましくない条件での動作を回避するために、このようなフロー変更の有無にかかわらず、ステージ(段)同士の間の空気力学的マッチングを維持する必要がある。制御戦略を使用して、ステージがフローマッチングされなくなったかどうかを判定して、各ステージの入口にある可変入口ガイドベーン(VIGV)を調整し、適切なステージマッチングを復元することができる。
【0015】
図1を参照すると、2段冷媒コンプレッサが一般に100で示される。コンプレッサ100は、作動流体(例えば、冷媒)を圧縮するように動作可能であり、少なくとも1つの密閉したキャビティを形成するコンプレッサハウジング102を含み、キャビティ内で各ステージの冷媒圧縮が実行される。コンプレッサ100は、第1のコンプレッサ段(
図1ではラベルなし)に冷媒蒸気を導入する第1の冷媒入口110、第1の冷媒出口114、第1のコンプレッサ段から第2のコンプレッサ段に圧縮冷媒を移送する冷媒移送導管112、第2のコンプレッサ段(
図1ではラベルなし)に冷媒蒸気を導入する第2の冷媒入口118、及び第2の冷媒出口120を含む。冷媒移送導管112は、反対側の端部で、第1の冷媒出口114及び第2の冷媒入口118それぞれに動作可能に接続される。冷媒移送導管112は、第1のコンプレッサ段と第2のコンプレッサ段との間の流れを追加又は除去するためのポート122をさらに含む。第2の冷媒出口120は、圧縮冷媒を第2のコンプレッサ段から、コンプレッサ100が組み込まれる冷却システムに送出する(
図3~
図6)。
【0016】
図2を参照すると、コンプレッサハウジング102は、コンプレッサ100の反対側の端部で第1のコンプレッサ段124及び第2のコンプレッサ段126を囲んでいる。第1のコンプレッサ段124は、第1の冷媒入口110を介して流入する冷媒に運動エネルギーを加えるように構成された第1の圧縮機構106を含む。いくつかの実施形態では、第1の圧縮機構106はインペラである。第1の圧縮機構106によって冷媒に与えられた運動エネルギーは、冷媒の速度がボリュート(volute:渦巻)132内に形成された密閉したキャビティ(例えば、ディフユーザ)に移送される際に遅くなるため、冷媒圧力の増大に変換される。第1のコンプレッサ段124は、第1の圧縮機構106の上流の第1の冷媒入口110に配置された第1の可変入口ガイドベーン(VIGV)134をさらに含む。第1のVIGV134は、位置を制御できる複数のベーンを含み、ベーンの位置によって、第1の冷媒入口110に入るガス状冷媒に予旋回(pre-whirl)を導入する。
【0017】
同様に、第2のコンプレッサ段126は第2の圧縮機構116を含み、第2の圧縮機構116は、第2の冷媒入口118を介して流入する、第1のコンプレッサ段124から移送される冷媒に運動エネルギーを加えるように構成される。いくつかの実施形態では、第2の圧縮機構116はインペラである。第2の圧縮機構116によって冷媒に与えられた運動エネルギーは、冷媒の速度がボリュート132内に形成された密閉したキャビティ(例えば、ディフユーザ)に移送される際に遅くなるため、冷媒圧力の増大に変換される。圧縮した冷媒は、第2の冷媒出口120(
図2には示さず)を介して第2のコンプレッサ段126から排出される。第2のコンプレッサ段126は、第2の冷媒入口118の第2の圧縮機構116の上流に配置された第2の可変入口ガイドベーン(VIGV)136をさらに含む。第2のVIGV136は複数のベーンを含み、ベーンの位置を制御して、第2の冷媒入口118に入るガス状冷媒に予旋回を導入することができる。
【0018】
第1の圧縮機構106及び第2の圧縮機構116は、シャフト104の反対側の端部に接続される。シャフト104は、第1の圧縮機構106と第2の圧縮機構116との間に位置付けされたモータ108に動作可能に接続され、第1の圧縮機構106及び第2の圧縮機構116は、第2の冷媒出口120(
図2には示さず)から出る冷媒を予め選択した圧力まで圧縮するように選択した回転速度で回転する。コンプレッサ100には、電気モータを含むがこれに限定されない任意の適切なモータを組み込むことができる。
【0019】
図3は、
図1及び
図2のコンプレッサ100を設置できる第1の例示的なHVACシステム300の概略図である。システム300は、コンプレッサ100、凝縮器320、第1の膨張装置330、及び蒸発器340を含む単一の閉じた冷媒ループ310を有する。冷媒は、低圧、低温のガスとして第1の冷媒入口110からコンプレッサ100に入る。第1のコンプレッサ段124及び第2のコンプレッサ段126は、冷媒に運動エネルギーを加えて圧力上昇に変換し、冷媒は、高圧、高温のガスとして第2の冷媒出口120からコンプレッサ100から出る。冷媒は、第2のコンプレッサ段126に流体結合した凝縮器320に入り、熱Q
outが除去されて冷媒ガスが高圧、高温の液体に変換される。
【0020】
凝縮器320は、冷媒の圧力を下げる第1の膨張装置330に流体結合される。いくつかの実施形態では、圧力は、液体冷媒の現在の温度がその圧力での沸点温度になるまで下げられ、液体冷媒の一部が沸騰してガスに変わると、冷媒は2相混合物になる。第1の膨張装置330は、固定オリフィス、熱膨張弁、電子膨張弁、又はHVACシステム300が本明細書で説明するように機能できるようにする任意のタイプの膨張装置であり得る。第1の膨張装置330は蒸発器340に流体結合され、蒸発器340は、低圧、低温の液体冷媒、又は液体及びガス状冷媒の2相混合物を入口で受け取る。蒸発器340では、冷媒は熱Qinを吸収して液体からガスに相変化する。蒸発器340は第1のコンプレッサ段124に流体結合され、サイクルが再び開始する。
【0021】
図4は、
図1及び
図2のコンプレッサ100を設置できる第2の例示的なHVACシステム400の概略図である。システム400は一次冷媒ループ410を有しており、一次冷媒ループ410は、コンプレッサ100、凝縮器320、熱交換器490の第1の流れ492、第1の膨張装置330、及び蒸発器340を含む。システム400は二次冷媒ループ460も有しており、二次冷媒ループ460は、一次冷媒ループ410の一部に流体接続され、本明細書でさらに詳細に説明するエコノマイゼーション(economization)弁470によって制御される。
【0022】
二次冷媒ループ460には、エコノマイゼーション弁470、第2の膨張装置480、熱交換器490の第2の流れ494、第2のコンプレッサ段126、及び凝縮器320が含まれる。
図4に示される実施形態では、二次冷媒ループ460のコンポーネントは、列挙した順序で流体結合されており、凝縮器320は、二次冷媒ループ460を閉じるために、さらに第2の膨張装置480に結合される。
【0023】
エコノマイゼーション弁470は、完全に開くか、部分的に開くか、又は完全に閉じることができ、その状態によって、冷媒が二次冷媒ループ460を流れるかどうかが決まる。つまり、エコノマイゼーション弁470が完全に閉じている場合に、全ての冷媒が一次冷媒ループ410を通って流れ、システム400は、
図3に示されるシステム300と実質的に同じように動作する。エコノマイゼーション弁470が開いている場合に、凝縮器320から排出される液体冷媒は2つの流れに分かれ、冷媒の大部分が一次冷媒ループ410を通って流れ、残りは二次冷媒ループ460に迂回される。エコノマイゼーション弁470は、電磁弁、電子膨張弁、又はシステム400が本明細書で説明したように機能できる任意のタイプの弁とすることができる。
【0024】
エコノマイゼーション弁470は、開いている場合に、第2の膨張装置480に流体結合され、液体冷媒の現在の温度がその圧力での沸点温度になるまで液体エコノマイザ流の圧力を下げる。二次冷媒ループ内の冷媒は、熱交換器490に入ると液体冷媒の一部が沸騰してガスに変わるため、2相混合物になる。第2の膨張装置は、エコノマイゼーション弁470が開いているときに、二次冷媒ループ460を通して特定の量の冷媒(例えば、総質量流量の0~20パーセント、又はシステム400が本明細書で説明するように機能できる任意の量の冷媒流量)を迂回させるようにサイズ設定及び選択できる。
【0025】
いくつかの実施形態では、第2の膨張装置480は、熱交換器490の熱負荷に基づいて、二次冷媒ループ460を通る冷媒流量を調整する熱膨張弁(TXV)である。TXVは、熱交換器490の第2の流れ494の下流に位置するバルブ(bulb)496と組み合わせて動作する。TXV内の膜は、バルブ内の冷媒圧力と熱交換器490の上流の冷媒圧力とのバランスをとるために可動式である。膜の動きは、弁の位置を設定するニードルに結合され、それにより二次冷媒ループ460を通って流れる冷媒の量を制御する。更なる実施形態では、第2の膨張装置480は、固定オリフィス、電子膨張弁、又はシステム400が本明細書で説明するように機能できる任意のタイプの膨張装置とすることができる。
【0026】
冷媒は、第2の膨張装置480から出て、低圧液体又は2相混合物として熱交換器490の第2の流れ494に入る。第2の流れ494は、一次冷媒ループ410の凝縮器320から高圧液体冷媒を運ぶ第1の流れ492と熱的に連通する。2つの流れ492、494の間の熱接触により、第1の流れ492の冷媒が冷却され、第2の流れ494の冷媒が温められ、沸騰する。第1の流れ492の冷却した冷媒は、低温高圧液体として熱交換器490から出て、第2の流れ494の沸騰した冷媒は、低温中圧ガスとして熱交換器490から出る。熱交換器490は、向流熱交換器、交差流熱交換器、並列流熱交換器、シェルアンドチューブ式熱交換器、混合チャンバ、又はシステム400が本明細書で説明するように機能することができる任意のタイプの熱交換器とすることができる。更なる実施形態では、熱交換器490の代わりに、又は熱交換器490に加えて、フラッシュタンクを使用してもよい。
【0027】
熱交換器490の第2の流れ494から排出される低温中圧ガスは、次に、コンプレッサ100の冷媒移送導管112に注入され、第2のコンプレッサ段126に到達する前に、一次冷媒ループ410の冷媒流と混合される。一次冷媒ループ410及び二次冷媒ループ460は、第2のコンプレッサ段126で合流し、冷媒が凝縮器320から排出された後に再び分岐する。
【0028】
図5は、
図1及び
図2のコンプレッサ100を設置できる第3の例示的なHVACシステム500である。システム500には、低温一次冷媒ループ510、中温二次冷媒ループ560、及びそれらに流体結合した三次冷媒ループ580が含まれる。凝縮器320の下流では、冷媒の流れは第1の膨張装置530で絞られ、液体冷媒の一部が沸騰するまで圧力が下がり、2相混合物が形成される。フラッシュタンク590は、2相冷媒混合物を液体と気体の部分に分離し、それぞれ一次ループ510及び三次ループ580に分岐する。特定の実施形態では、フラッシュタンク590の代わりに、又はフラッシュタンク590に加えて、熱交換器を使用してもよい。一次ループ510内の液体冷媒は、第2の膨張装置532で絞られ、再び分岐し、冷媒の一部は一次ループ510に沿って引く続き進み、残りは二次ループ560に分かれる。二次ループ560では、冷媒は中温蒸発器540を通過し、ここで冷媒が沸騰してガスに変換され、中温空間に冷却を提供する。一次ループ510では、液体冷媒510は、低温蒸発器340に入る前に第3の膨張装置330で絞られ、ここで冷媒は沸騰してガスに変換され、低温空間に冷却を提供する。次に、冷媒は第1のコンプレッサ段124に入り、ここで中温蒸発器540の圧力まで圧縮される。三次ループ580のガス状冷媒は、第4の膨張装置534で中温蒸発器540の圧力まで絞り込まれる。二次ループ560及び三次ループ580のガス状冷媒は結合され、第1のコンプレッサ段124と第2のコンプレッサ段126との間の冷媒転送導管112に注入される。
【0029】
図6は、
図1及び
図2のコンプレッサ100を設置できる第4の例示的なHVACシステム600を示す。システム600は一次冷媒ループ610を含み、一次冷媒ループ610には、コンプレッサ100、凝縮器320、第1の膨張装置330、及び蒸発器340が含まれる。システムには、一次冷媒ループ610の一部に流体接続され、弁670によって制御される二次冷媒ループ660も含まれる。弁670が完全に閉じている場合に、全ての冷媒は一次ループ610を通って流れ、システム600は、
図3に示されるシステム300と略同じように動作する。弁670が開いている場合に、冷媒の流れの一部は、第1のコンプレッサ段124と第2のコンプレッサ段126との間の冷媒転送導管112から二次ループ660を通って迂回される。迂回した流れは、第2の膨張装置630によって絞られた補助凝縮器620を通過し、一次ループ610に再び合流してから、蒸発器340に入る。
【0030】
図7は、ダイナミック・コンプレッサ100を含むシステム700の例示的な実施形態を示す。コンプレッサ100は、コンプレッサハウジング102、圧縮機構707、モータ108、速度センサ717、圧力センサ709、及びコントローラ710を含む。この実施形態では、ダイナミック・コンプレッサ100は2段遠心コンプレッサであり、圧縮機構707は各段のインペラである。他の実施形態では、ダイナミック・コンプレッサ100は軸流コンプレッサであり、圧縮機構707は軸流ロータである。速度センサ717はコンプレッサ100の回転速度を測定し、圧力センサ709は、冷媒入口及び冷媒出口を含むコンプレッサ流路に沿った様々なポイントでの圧力を測定する。温度センサ、流量センサ、電流センサ708、電圧センサ、回転速度センサ、及び任意の他の適切なセンサが含まれるが、これらに限定されない追加のセンサをコンプレッサ100に設置して、動作に関するデータを提供することができる。コンプレッサ100は、システム700内の特定の構成に限定されず、
図1及び
図2で説明したコンプレッサ100と同様に構成してもよく、又は異なる方法で構成してもよい。システム700は、さらに、アンロード装置701、可変周波数ドライブ(VFD)716、及びユーザインターフェイス715を含む。
【0031】
コントローラ710は、コンプレッサ100に動作可能に接続され、上述した測定パラメータに部分的に基づいて、コンプレッサ100の動作を制御する。コントローラ710は、プロセッサ711、メモリ712、及びアンロードインターフェイス714を含む。メモリ712には、コンプレッサ100の複数の所定の動作点50のマップ1000(
図14を参照)が格納され、このマップは、テーブル、又はマトリックス等の任意の適切なデータ構造で格納できる。マップ1000には、第1のコンプレッサ段124のみの複数の所定の動作点、第2のコンプレッサ段126のみの複数の所定の動作点、又はコンプレッサ100全体の複数の所定の動作点が含まれる。メモリ712には、プロセッサ711によって実行される命令も格納され、命令によってコンプレッサ100を動作させて作動流体を圧縮し、第1のコンプレッサ段124及び第2のコンプレッサ段126の流れが一致しなくなったかどうかを判定し、必要に応じて各コンプレッサ段124、126の入口110、118にあるアンロード装置701を調整して適切なステージ(段)マッチングを復元する。所定の動作点50のマップ1000と、コンプレッサ段124、126が一致しているかどうかを判定する方法1300については、以下でさらに詳しく説明する。
【0032】
システム700には、コントローラ710をVFD716に接続するためのインターフェイスと、VFD716をモータ108に接続するためのモータインターフェイス713とが含まれる。特定の実施形態では、VFD716はコントローラ710の制御下で動作する。更なる実施形態では、VFD716はコントローラ710の一部である。システム700には、コントローラ710をアンロード装置701に接続するためのアンロードインターフェイス714も含まれる。
【0033】
コントローラ710は、アンロードインターフェイス714を介してアンロード装置701に動作可能に結合されており、アンロードインターフェイス714は、起動及び停止ルーチン中、検出したサージイベント中、及びコントローラ710によって指示された場合に、コンプレッサ100の負荷を除去及び/又は軽減する。例示的な実施形態では、アンロード装置701は、各インペラ段の入口にある可変入口ガイドベーン(VIGV)である(
図2)。他の実施形態では、アンロード装置701は可変ディフユーザであってもよい。コントローラ710は、各VIGVの位置等、アンロード装置701の少なくとも1つの動作パラメータを制御するように構成される。
【0034】
他の実施形態では、アンロード装置701はバイパス弁である。冷媒バイパス弁等のバイパス弁は、ガスの代替経路を提供し、それによりモータ108が起動時にどれだけゆっくりと加速しているか、又は停止時にどれだけゆっくりと減速しているかに関係なく、コンプレッサ100の圧力上昇を制限し、潜在的なサージイベントを防止する。他の実施形態では、アンロード装置701は膨張弁である。さらに他の実施形態では、アンロード装置701は、サーボ弁等の可変オリフィス又は直径弁、及びデューティサイクルに従って開閉を制御するように構成された電磁弁又はパルス幅変調(PWM)弁等の固定オリフィス又は直径弁であってもよい。ここでは多くの種類のアンロード装置について説明しているが、アンロード装置701は、コンプレッサ100の負荷を軽減する任意の適切な装置、又は装置の組合せであってもよい。アンロード装置701は、さらに、コンプレッサ100の負荷を増やすための負荷装置として使用してもよい。
【0035】
システム700には、システム700に関連する(例えば、ユーザからの)情報を出力(例えば、表示)及び/又は受け取るように構成されたユーザインターフェイス715がさらに含まれる。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェイス715は、ユーザからのアクティブ化及び/又は非アクティブ化の入力を受け取って、システム700をアクティブ化及び非アクティブ化(つまり、オン及びオフ)するか、又はシステム700の動作を有効にするように構成される。さらに、いくつかの実施形態では、ユーザインターフェイス715は、システム700の1つ又は複数の動作特性に関連する情報を出力するように構成され、この出力される情報には、例えば、重大度アラート、発生アラート、障害アラート、モータ速度アラート等の警告インジケータ、及び他の適切な情報等が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
ユーザインターフェイス715には、ユーザインターフェイス715が本明細書で説明するように機能できるようにする任意の適切な入力装置及び出力装置が含まれ得る。例えば、ユーザインターフェイス715は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、ジョイスティック、スロットル、ボタン、スイッチ、及び/又は他の入力装置を含むが、これらに限定されない入力装置を含むことができる。さらに、ユーザインターフェイス715には、ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)又は有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ)、スピーカ、表示灯、計器、及び/又は他の出力装置が含まれ得るが、これらに限定されない。さらに、ユーザインターフェイス715は、システムコントローラ(図示せず)等の別のコンポーネントの一部であってもよい。他の実施形態には、ユーザインターフェイス715が含まれない。
【0037】
コントローラ710は、一般に、コンプレッサ100の動作を制御するように構成される。コントローラ710は、別の装置又はコントローラからのプログラミング及び命令を通じて動作を制御するか、又はシステムコントローラを通じてシステム700と統合される。いくつかの実施形態では、例えば、コントローラ710は、ユーザインターフェイス715からユーザ入力を受け取り、そのようなユーザ入力に応答してシステム700の1つ又は複数のコンポーネントを制御する。例えば、コントローラ710は、ユーザインターフェイス715から受け取ったユーザ入力に基づいてモータ108を制御することができる。いくつかの実施形態では、システム700は、リモート制御インターフェイスによって制御してもよい。例えば、システム700は、システム700のリモート制御及び起動を可能にするワイヤレス制御インターフェイスへの接続用に構成された通信インターフェイス(図示せず)を含むことができる。ワイヤレス制御インターフェイスは、タブレット又はスマートフォン等のポータブルコンピューティング装置上に具体化してもよい。
【0038】
コントローラ710は、一般に、通信可能に互いに結合され、独立して、又は互いに接続して動作することができるコンピュータ、処理装置等の任意の適切な組合せを含む、任意の適切なコンピュータ及び/又は他の処理装置を含むことができる(例えば、コントローラ710は、コントローラネットワークの全部又は一部を形成することができる)。コントローラ710は、1つ又は複数のモジュール又は装置を含み得、そのうちの1つ又は複数はシステム700内に収容されるか、又はシステム700から離れた場所に配置され得る。コントローラ710は、コンプレッサ100の一部であっても、別個であってもよく、HVACシステム内のシステムコントローラの一部であってもよい。コントローラ710及び/又はコントローラ710のコンポーネントは、システム700の他のコンポーネント内に統合又は組み込んでもよい。コントローラ710は、様々なコンピュータ実装機能(例えば、本明細書で開示する計算、決定、及び機能の実行)を実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサ711及び関連するメモリ装置712を含む。
【0039】
本明細書で使用する場合に、「プロセッサ」という用語は、集積回路だけでなく、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブル論理コントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路、及び他のプログラマブル回路も指す。さらに、コントローラ710のメモリ装置712は、一般的に、コンピュータ可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))、コンピュータ可読不揮発性媒体(例えば、フラッシュメモリ)、フロッピーディスク、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、磁気光ディスク(MOD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、及び/又は他の適切なメモリ要素を含むが、これらに限定されないメモリ要素であるか、又はメモリ要素を含むことができる。このようなメモリ装置712は、一般的に、適切なコンピュータ可読命令を格納するように構成することができ、命令がプロセッサ711によって実施されると、コントローラ710が、システム700の制御、モータ108の動作の制御、ユーザインターフェイス715からの入力の受け取り、ユーザインターフェイス715を介してオペレータに出力を提供すること、アンロード装置701の制御、及び/又は他の様々な適切なコンピュータ実装機能を含むが、これらに限定されない、本明細書で説明する様々な機能を実行するように構成又は実行させる。
【0040】
図8を参照すると、例示的な遠心ダイナミック・コンプレッサ100の動作エンベロープ又は動作マップ800が示される。この動作マップ800は、メモリ712が記憶した複数の所定の動作点50のマップ1000の1つのグラフィカル表現である。動作マップ800は、流量、ヘッド(head)、及び速度の観点からコンプレッサの性能をグラフィカルに表示する。動作マップ800は、コンプレッサ100の設計点におけるヘッド対入口質量流量を、それらの値のパーセンテージとして示す。ヘッドは、出口圧力と入口圧力の合計圧力比である。入口質量流量は、圧縮機構707を通って流れる冷媒等の作動流体の量の尺度である。動作マップ800には、複数のコンプレッサ速度ライン807が示される。この例では、設計速度の70%~設計速度の110%までの範囲の5つの速度ライン807があり、各線は10%の差で区切られる。この例では、これらの特定の速度ラインが示されるが、コンプレッサの設計速度の任意の異なるパーセンテージでの任意の数の速度ラインを、任意のタイプのコンプレッサに対して示すことができる。
【0041】
サージ限界ライン804は、サージ領域806(つまり、サージ限界ライン804の左側)でサージが発生する前の最小流量を示す。サージ制御ライン803は、コンプレッサ100がサージに陥るリスクなしに安全に動作できる最小流量を大まかに示す。サージ制御ライン803は、サージ限界ライン804からのサージマージン805によって規定される。サージ制御ライン803の右側で動作することにより、コンプレッサ100はサージを回避する。同様に、チョークライン801は、その右側で動作することでコンプレッサ100がチョークフローで動作することを示す。
【0042】
コンプレッサ100の第1の動作点809は、速度ライン、入口質量流量値、及び総圧力比値の交点として動作マップ800上に表示される。例えば、動作マップ800に示される第1の動作点809は、入口質量流量112%、ヘッド90%、速度100%であるが、任意のタイプのコンプレッサに対して任意の数の動作点を表示できる。動作点は、コンプレッサ100の現在の動作パラメータを規定し、動作マップ800は、現在の動作点が、不安定な状態(すなわち、サージ)又は非効率的な状態(すなわち、チョーク)での動作にどれだけ近いかを示す。
【0043】
図8に示される第1の動作点809は、第1のコンプレッサ段124及び第2のコンプレッサ段126が同じ質量流量を受け取るときのコンプレッサ100の動作を表すことができる。例えば、第1の動作点809は、
図3に示される第1の例示的なHVACシステム300に設置されたコンプレッサ100の動作を表すことができる。あるいはまた、第1の動作点809は、HVACシステム400のエコノマイゼーション弁470を閉じているとき、すなわち、冷媒が一次ループ410のみを循環し、コンプレッサ段124とコンプレッサ段126との間にエコノマイザの流れが追加さないときの、
図4に示される第2の例示的なHVACシステム400に設置されたコンプレッサ100の動作を表すことができる。第1の動作点809は、弁670が閉じているとき、すなわち、冷媒が一次ループ610のみを循環し、コンプレッサ段124とコンプレッサ段126との間から流れが除去されないときの、
図6に示される第4の例示的なHVACシステム600に設置したコンプレッサ100の動作を表すこともできる。
【0044】
図9は、ダイナミック・コンプレッサ100の第2のコンプレッサ段126の動作マップ900を示す。第2の動作点909は、上記の構成のように、第1のコンプレッサ段124及び第2のコンプレッサ段126が同じ質量流量を受け取るときの、第2のコンプレッサ段126の動作を表すことができる。第3の動作点913は、コンプレッサ段124とコンプレッサ段126との間に流れが追加されるときの、第2のコンプレッサ段126の動作条件を表すことができる。例えば、第3の動作点913は、エコノマイゼーション弁470を開いているときの、システム400に設置されたコンプレッサ100の動作を表すことができる。また、第3の動作点913は、
図5に示されるシステム500に設置したコンプレッサ100の動作を表すこともできる。
【0045】
第2のコンプレッサ段126は、同じコンプレッサ速度でより高い質量流量に対して同じ圧力上昇を達成することができない。その結果、第2のコンプレッサ段126の現在の動作点は、100%速度ラインに沿って第2の動作点909から第3の動作点913まで右にシフトする。従って、第3の動作点913は、第2の動作点909と同じ速度で第2のコンプレッサ段126が動作することを示すが、入口質量流量はより大きく、ヘッドはより低い。第2のコンプレッサ段126の第3の動作点913が第2の段チョークライン901を超えてシフトすると、第2のコンプレッサ段126はチョークフローで動作する。これにより、コンプレッサ100全体がチョークフローで動作し、その性能及び効率が低下する。
【0046】
図10を参照すると、第4の動作点919は、上述した構成のように、第1のコンプレッサ段124及び第2のコンプレッサ段126が同じ質量流量を受け取る場合の、第2のコンプレッサ段126の動作の別の例示的な表現である。第5の動作点923は、コンプレッサ段124とコンプレッサ段126との間の流れを除去したときの、第2のコンプレッサ段126の動作条件を表す。例えば、第5の動作点923は、弁670が開いており、コンプレッサ段124とコンプレッサ段126との間の流れを除去したときの、
図6に示される第4の例示的なHVACシステム600に設置したコンプレッサ100の動作を表すことができる。第2のコンプレッサ段126を通る質量流量を減らすと、その動作点は100%速度ラインに沿って、第4の動作点919から第5の動作点923に左にシフトする。従って、第5の動作点923は、第4の動作点919と同じ速度で、ただし入口流量が低減された状態での第2のコンプレッサ段126が動作していることを示す。第2のコンプレッサ段126の第5の動作点923が第2のステージ(コンプレッサ段)のサージ制御ライン903又はサージ限界ライン904を超えてシフトすると、第2のコンプレッサ段126はサージに陥る危険がある。第2のコンプレッサ段126でサージが発生すると、機械全体が混乱し、構造的な損傷につながる可能性がある。
【0047】
図9及び
図10に示される性能及び動作範囲の低下は、第2のVIGV136の位置を調整することによって緩和することができ、それにより第2のコンプレッサ段126の動作マップがシフトされ、第2のコンプレッサ段126がコンプレッサ100の前で全体としてチョークしたりサージしたりすることがなくなる。
図9及び
図10は、第1のVIGV134及び第2のVIGV136が同じ位置にある場合の第2のコンプレッサ段126の動作マップ900を示す。換言すれば、第1のVIGV134の第1の位置と第2のVIGV136の第2の位置とは同じ位置である。
【0048】
図11は、第2のVIGV136が第2の位置とは異なる第3の位置に移動したときの第2のコンプレッサ段126の動作マップ1100を示す。動作マップ1100は、第2の動作点909及び第3の動作点913を含む、
図9に示される動作マップ900に重ね合わされる。第2のVIGV136を第3の位置に調整すると、第2のコンプレッサ段126に入る冷媒ガスに追加される予旋回が変化し、その動作エンベロープが右にシフトしてチョーク範囲が広がる。第2のコンプレッサ段126の速度が同じままなので、現在の動作点は、第3の動作点913から第6の動作点1113まで、第2のコンプレッサ段126の新しい100%速度ラインまで上方にシフトされる。第6の動作点1113が新しいチョークライン1101の左側にあるため、第2のコンプレッサ段126はもはやチョークフローで動作しなくなる。これにより、HVACシステム400、500は、コンプレッサ100の性能及び動作範囲を損なうことなく、エコノマイゼーションループ又はブースターシステムの利点を享受できる。
【0049】
図12を参照すると、第2のVIGV136の第3の位置は、第2のコンプレッサ段126の動作エンベロープが左にシフトしてコンプレッサ100のサージ範囲が拡張されるように選択することもできる。
図12は、第2のVIGV136が、コンプレッサ100のサージ範囲を拡張する第3の位置に調整されたときの、第2のコンプレッサ段126の動作マップ1200を示す。動作マップ1200は、第4の動作点919及び第5の動作点923を含む、
図9に示される動作マップ900に重ねられる。現在の動作点は、第5の動作点923から第7の動作点1223に、第2のコンプレッサ段126の新しい100%速度ラインに下方にシフトされる。第7の動作点1223が新しいサージ制御ライン1203の右側にあるため、第2のコンプレッサ段126は、コンプレッサ100の残りの部分よりも先にサージが発生するリスクがなくなる。
【0050】
メモリ712には、プロセッサ711に、上記のようにコンプレッサ100の動作範囲を拡張させるようにプログラムした命令が格納される。例示的な方法1300を
図13に示す。プロセッサ711は、コンプレッサ100を現在の速度、第1のVIGV134の第1の位置、及び第2のVIGV136の第2の位置で動作させて、作動流体を圧縮する(1302)。いくつかの実施形態では、第1のVIGV134の第1の位置と第2のVIGV136の第2の位置とは同じ位置である。ダイナミック・コンプレッサ100を動作させている間に(1302)、プロセッサ711は条件を満たしているかどうかを判定する。条件を満たしていない場合に、メモリ712に格納した命令は、プロセッサ711に、現在の速度、第1のVIGV134の第1の位置、及び第2のVIGV136の第2の位置でコンプレッサ100を引き続き動作させるようにプログラムする(1310)。条件が満たされる場合に、メモリ712に格納した命令は、プロセッサ711に、第2のVIGV136の第2の位置を第2の位置とは異なる第3の位置に変更させ、第1のVIGV134の第1の位置を維持させるようにプログラムする(1312)。
【0051】
図13に示される例示的な方法では、条件を満たしているかどうかを判定するステップは、コンプレッサ100と流体連通している弁が開いているかどうかを判定するステップを含む(1304)。特定の実施形態では、弁は、
図4に示されるシステム400のエコノマイゼーション弁470である。他の実施形態では、弁は、
図6に示されるシステム600の弁670であり得る。弁は、完全に又は部分的に開いており、一次冷媒ループの一部が弁で二次冷媒ループに流体接続される場合に、開いているとみなされる。弁が開いていない場合には、条件は満たされず、コンプレッサ100は現在の条件で引き続き動作する(1310)。
【0052】
弁が開いている場合に、プロセッサ711は、第2のコンプレッサ段126の制限速度を決定するようにさらにプログラムされる(1306)。弁が
図4に示されるシステム400のエコノマイゼーション弁470である実施形態では、第2のコンプレッサ段126の制限速度は、第2のコンプレッサ段126のチョーク速度であってもよい。このような実施形態では、プロセッサ711が、第2のコンプレッサ段126のチョーク速度がダイナミック・コンプレッサ100の現在の速度以上であると判定した場合に(1308)、条件は満たされず、コンプレッサは現在の条件で動作し続ける(1310)。プロセッサ711が、第2のコンプレッサ段126のチョーク速度がダイナミック・コンプレッサ100の現在の速度よりも遅いと判定した場合に(1308)、条件は満たされ、第2のVIGV136の第2の位置は、第2の位置とは異なる第3の位置に変化し(1312)、第1のVIGV134の第1の位置が維持される。こうして、エコノマイゼーション弁470が開いており、第2のコンプレッサ段126のチョーク速度がダイナミック・コンプレッサ100の現在の速度よりも遅い場合に、条件は満たされる。
【0053】
弁が
図6に示されるシステム600の弁670である実施形態では、第2のコンプレッサ段126の制限速度は、第2のコンプレッサ段126のサージ制御速度であってもよい。このような実施形態では、プロセッサ711が、第2のコンプレッサ段126のサージ制御速度がダイナミック・コンプレッサ100の現在の速度以下である場合に、条件は満たされず、コンプレッサは現在の条件で動作し続ける(1310)。プロセッサ711が、第2のコンプレッサ段126のサージ制御速度がダイナミック・コンプレッサ100の現在の速度よりも大きいと判定した場合に(1309)、条件は満たされ、第2のVIGV136の第2の位置は、第2の位置とは異なる第3の位置に変更され(1312)、第1のVIGV134の第1の位置が維持される。こうして、弁670が開いており、第2のコンプレッサ段126のサージ制御速度がダイナミック・コンプレッサ100の現在の速度よりも大きい場合に、条件は満たされる。
【0054】
方法1300は、メモリ712がコンプレッサ100の所定の動作点50のマップ1000をさらに格納する実施形態において使用してもよい。
図14は、メモリ712が格納した所定の動作点50のマップ1000の代表的な図である。各所定の動作点50は、コンプレッサ速度値とステージ圧力比値の交点として示される。入口質量流量は、各所定の動作点50に対して規定される。マップ1000には、機械サージライン1020及び機械チョークライン1030に沿った点までの範囲の所定の動作点50が含まれる。メモリ712には、各所定のサージポイントのサージポイント質量流量と、全ての所定のチョークポイントのチョークポイント質量流量とが格納される。マップ1000には、サージライン1020より上又はチョークライン1030より下のポイントは含まれない。これは、サージライン1020より上又はチョークライン1030より下のポイントは回避すべきであり、こうして「動作点」ではないためである。他の実施形態では、サージライン1020より上又はチョークライン1030より下のポイントの入口質量流量を含み得る。
【0055】
マップ1000では、所定の動作点50は、速度が10%~35%の範囲、圧力比が5%~50%の範囲にあり、各ポイントは両軸に対して5%ずつ離れている。この例では、これらの特定の動作点50が示されるが、任意のタイプのコンプレッサに対して、任意の数の動作点を任意の値及び任意の解像度で表示できる。各所定の動作点50の速度、圧力比、入口質量流量、及びVIGV位置の値は、コンピュータ上でダイナミック・コンプレッサ100の動作をシミュレートすること、制御した環境でダイナミック・コンプレッサ100をテストすること、シミュレーションとテストを組み合わせること、又は各所定の動作点50の速度、圧力比、入口質量流量、及びVIGV位置の値を予め決定するための他の適切な方法によって生成することができる。
【0056】
図14に示されるマップ1000には、第2のコンプレッサ段126のみの所定の動作点50が含まれる場合がある。マップ1000は、機械チョークライン1032及びサージ制御ライン1020に加えて、コンプレッサ段124とコンプレッサ段126との間に流れが追加されたときの第2のコンプレッサ段126のチョークライン1050と、コンプレッサ段124とコンプレッサ段126との間で流れを除去したときの第2のコンプレッサ段126のサージライン1040とも示す。このような実施形態では、第2のコンプレッサ段126の制限速度を決定するステップ(1306)は、所定の動作点50のマップ1000から第2のコンプレッサ段126の所定の動作点50の値を取得するステップを含む。
【0057】
マップ1000から取得した所定の動作点50は、現在の動作点1009での第2のコンプレッサ段126のチョーク速度又はサージ制御速度を示してもよく、又は、それら動作点50は、現在の動作点におけるチョーク速度又はサージ制御速度をグラフィカルに決定するために使用してもよい。例えば、現在の動作点1009における第2のコンプレッサ段126のチョーク速度は1034で示され、サージ制御速度は1024で示される。所定の動作点50は、第2のコンプレッサ段126の現在の動作点1009と同じ速度、圧力比、及び入口質量流量を有してもよい。更なる実施形態では、現在の動作点1009に最も近い所定の動作点50を取得してもよい。更なる実施形態では、現在の動作点1009に対応する新しいポイントを所定の動作点50から補間してもよい。複数の所定の動作点を使用する質量流量補間の方法は、米国特許出願第17/243,787号に開示されており、この文献の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
マップ1000には、代替的に、コンプレッサ100全体の所定の動作点が含まれてもよい。このような実施形態では、第2のコンプレッサ段126の制限速度は、直接取得するのではなく、計算することができる。
図15は、コンプレッサ段124とコンプレッサ段126との間で流れを追加又は除去するときに、第2のコンプレッサ段126の制限速度を決定する(1308、1309)ための例示的な制御アルゴリズム1510、1520のフローチャートを示す。コンプレッサチョーク速度は、所与の圧力上昇に対してコンプレッサ100がチョークする速度であり、マップ1000からグラフィカルに決定することができる。例えば、
図14を参照すると、現在の動作点1009のコンプレッサチョーク速度1034は、コンプレッサ設計速度の約33%である。システム400のエコノマイゼーション弁470が開いている場合に、第2のコンプレッサ段126のチョーク速度を計算し、コンプレッサ100の現在の速度と比較することができる。
図15に示される制御アルゴリズム1510では、第2のコンプレッサ段126のチョーク速度をコンプレッサチョーク速度から計算することができる。例えば、第2のコンプレッサ段のチョーク速度は、所定の動作点50のマップ1000から取得したコンプレッサチョーク速度と、コンプレッサ圧力比PR及び所定の定数kの積との間の差として計算できる:
N
choke,2S=N
choke,compressor-PR*k
いくつかの実施形態では、所定の定数kは500である。
【0059】
コンプレッササージ制御速度は、コンプレッサ100が所与の圧力上昇でサージし得る速度を超えるが、マップ1000からグラフィカルに決定できる。例えば、
図14を参照すると、現在の動作点1009のコンプレッササージ制御速度1024は、コンプレッサ設計速度の約17%である。システム600の弁670が開いている場合に、第2のコンプレッサ段126のサージ制御速度を計算し、コンプレッサ100の現在の速度と比較することができる。
図15に示される制御アルゴリズム1520では、第2のコンプレッサ段126のサージ制御速度をコンプレッササージ制御速度から計算することができる。例えば、第2のコンプレッサ段のサージ制御速度は、所定の動作点50のマップ1000から取得したコンプレッササージ制御速度と、コンプレッサ圧力比PR及び所定の定数kの積との合計として計算できる。
N
surge control,2S=N
surge control,compressor+PR*k
いくつかの実施形態では、所定の定数kは500である。
【0060】
本明細書で説明する方法及びシステムの技術的な利点は次のとおりである:(a)サイクルの修正により、コンプレッサの性能及び動作範囲を損なうことなく、システムの容量及び効率を高めることで、HVACシステムの効率を向上させることができる、(b)各コンプレッサ段階でVIGVを個別に制御することで、コンプレッサの動作範囲をどちらの方向にも拡張できる。
【0061】
本明細書で使用する場合に、「約」、「実質的に」、「本質的に」及び「およそ」という用語は、寸法、濃度、温度、又は他の物理的又は化学的特性又は特徴の範囲と組み合わせて使用される場合に、特性又は特徴の範囲の上限及び/又は下限に存在し得る変動をカバーすることを意図しており、これには、例えば、四捨五入、測定方法、又は他の統計的変動から生じる変動が含まれる。
【0062】
本開示又はその実施形態の要素を紹介する場合に、「1つの(a, an)」、「その(the)」、及び「前記(said)」という冠詞は、1つ又は複数の要素があることを意味する。「備える、有する、含む(comprising)」、「含む、有する(including)」、「含む(containing)」、及び「有する、含む(having)」という用語は包括的であることを意図しており、列挙した要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。特定の向きを示す用語(「上部」、「下部」、「側面」等)の使用は、説明の便宜のためであり、説明するアイテムの特定の向きを要求するものではない。
【0063】
上記の構成及び方法には、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることができるため、上記の説明に含まれる事項及び添付の図面に示される事項は全て、例示として解釈されるものであり、限定的な意味ではないものとする。
【国際調査報告】