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特表2025-503257バイオベースのジヒドロジャスモン酸メチル、バイオベースのシクロペンタノン、それらの調製方法、及びそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】バイオベースのジヒドロジャスモン酸メチル、バイオベースのシクロペンタノン、それらの調製方法、及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/716 20060101AFI20250123BHJP
   C07C 49/395 20060101ALI20250123BHJP
   C07C 67/313 20060101ALI20250123BHJP
   C07C 45/62 20060101ALI20250123BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20250123BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250123BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20250123BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20250123BHJP
【FI】
C07C69/716 A CSP
C07C49/395
C07C67/313
C07C45/62
C07B61/00 300
C11B9/00 U
A61K8/35
A61K8/37
A61Q13/00 100
A61K47/08
A61K47/14
A23L27/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544944
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(85)【翻訳文提出日】2024-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2023052268
(87)【国際公開番号】W WO2023144408
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/075273
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イェン, チェン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド, チェンルー
【テーマコード(参考)】
4B047
4C076
4C083
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LF07
4B047LG05
4B047LP16
4C076DD40T
4C076DD45T
4C076FF52
4C076GG41
4C083AC211
4C083AC341
4C083FF01
4C083KK02
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB10
4H006AB12
4H006AB14
4H006AB20
4H006AC11
4H006AC21
4H006BA21
4H006BE20
4H006BJ20
4H006BR40
4H006KA31
4H006KC12
4H006KF21
4H039CA10
4H039CB10
(57)【要約】
本発明は、新規なバイオベースのジヒドロジャスモン酸メチル及びシクロペンタノンに関する。本発明は、更に、それらの調製方法及びそのような化合物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
30%以上のバイオベース炭素含有率を有する、及び/又はバイオベース由来の炭素原子の数が2以上である、ジヒドロジャスモン酸メチル。
【請求項2】
35%以上、好ましくは38%以上のバイオベース炭素含有率を有する、及び/又はバイオベース由来の炭素原子の数が5以上、好ましくは7以上である、請求項1に記載のジヒドロジャスモン酸メチル。
【請求項3】
50%以上のバイオベース炭素含有率を有するか、又はバイオベース由来の炭素原子の数が2以上である、シクロペンタノン。
【請求項4】
70%以上のバイオベース炭素含有率を有する、及び/又はバイオベース由来の炭素原子の数が3以上、好ましくは4以上である、請求項3に記載のシクロペンタノン。
【請求項5】
-25~-8‰、より好ましくは-24~-9‰の平均同位体13C偏差を示す、請求項3又は4に記載のシクロペンタノン。
【請求項6】
90重量%~99.5重量%、好ましくは92重量%~98重量%、より好ましくは94重量%~96重量%、最も好ましくは約95重量%のシクロペンタノンと、
0.5重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~6重量%、最も好ましくは約5重量%の、シクロペンタノール及びテトラヒドロフルフリルアルコールから選択される少なくとも1種の化合物と、
を含む組成物。
【請求項7】
シクロペンタノンが、50%以上のバイオベース炭素含有率を有するか、又はバイオベース由来の炭素原子の数が2以上である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
シクロペンタノンが、70%以上のバイオベース炭素含有率を有する、及び/又はバイオベース由来の炭素原子の数が3以上、好ましくは4以上である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
シクロペンタノンが、-25~-8‰、より好ましくは-24~-9‰の平均同位体13C偏差を示す、請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
バイオベース炭素含有率が50%以上であるバイオベースのフルフリルアルコールからの、請求項1又は2で定義されるようなジヒドロジャスモン酸メチル、請求項3~5のいずれか一項で定義されるようなシクロペンタノン、又は請求項6~9のいずれか一項で定義されるような組成物の調製方法。
【請求項11】
バイオベースのフルフリルアルコールが水素化される工程(a)を含む、請求項10に記載のジヒドロジャスモン酸メチル又はシクロペンタノン又は組成物の調製方法。
【請求項12】
バイオベースのシクロペンタノンがペンタナールと反応させされて式(III)の化合物を形成する工程(b)を更に含む、請求項9~11のいずれか一項に記載のジヒドロジャスモン酸メチルの調製方法。
【請求項13】
式(III)の化合物がマロン酸ジメチルと反応させられる工程(c)を更に含む、請求項9~12のいずれか一項に記載のジヒドロジャスモン酸メチルの調製方法。
【請求項14】
請求項3~5のいずれか一項で定義されるようなシクロペンタノン又は請求項6~9のいずれか一項で定義されるような組成物の、風味料及び/若しくは香料の調製のための又は電子機器における使用、又は請求項1若しくは2で定義されるようなジヒドロジャスモン酸メチルの風味料若しくは香料としての使用、特に香水、化粧品、医薬品における使用。
【請求項15】
食品、飲料、化粧品製剤、医薬製剤、香料からなる群から好ましくは選択される、請求項1若しくは2で定義されるようなジヒドロジャスモン酸メチル及び/又は請求項3~5のいずれか一項で定義されるようなシクロペンタノン及び/又は請求項6~9のいずれか一項で定義されるような組成物を含有する組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年1月31日出願のPCT/CN2022/075273号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、バイオベースのジヒドロジャスモン酸メチル、バイオベースのシクロペンタノン、それらの調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ジヒドロジャスモン酸メチル(CAS24851-98-7)は、ラセミ混合物ではフローラルとシトラスの匂いがする芳香化合物である。この化合物は、香水及び食品の業界で使用されている。ジヒドロジャスモン酸メチルは、天然に存在するジャスミンの成分であるジャスモン酸メチルの合成等価体として利用されている。工業的には、ジヒドロジャスモン酸メチルは、シクロペンタノン調製のための前駆体としてアジピン酸から製造することができる。シクロペンタノンは、その後、ペンタナールとのアルドール縮合、及びそれに続くマロン酸ジメチルのマイケル付加によって官能化することができる。
【0004】
合成風味料は、天然由来の風味料よりも消費者にあまり好まれない傾向がある。そのため、ジヒドロジャスモン酸メチルの他の供給源、及び既存の法律に従って天然又はバイオソースのいずれかに分類できる天然原料を使用する特定のルートに対する関心が高まっている。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、本発明は、バイオベース炭素含有率が30%以上であるか、又はバイオベース由来の炭素原子の数が5以上である、ジヒドロジャスモン酸メチルに関する。
【0006】
別の態様において、本発明は、バイオベース炭素含有率が50%以上であるバイオベースのフルフリルアルコールからジヒドロジャスモン酸メチルを調製する方法に関する。
【0007】
本発明は、更に、バイオベース炭素含有率が50%以上であるバイオベースのシクロペンタノンに関する。
【0008】
別の態様において、本発明は、少なくとも2つのバイオベース炭素原子を有するバイオベースのシクロペンタノンに関する。
【0009】
別の態様において、本発明は、バイオベース炭素含有率が50%以上であるバイオベースのフルフリルアルコールからシクロペンタノンを調製する方法に関する。
【0010】
本発明は、更に、本発明によるシクロペンタノン又はジヒドロジャスモン酸メチルの風味料又は香料としての使用、特に香水、化粧品、医薬品における使用に関する。
【0011】
最後に、本発明は、食品、飲料、化粧品製剤、医薬製剤、香料からなる群から好ましくは選択される、本発明によるジヒドロジャスモン酸メチル及び/又はシクロペンタノンを含有する組成物にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において使用される用語は、当業者に認められる及び公知である意味を有するが、しかしながら、便宜上及び完全性のために、特定の用語及びそれらの意味が以下に示される。
【0013】
冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上を(すなわち少なくとも1つを)指すために使用される。
【0014】
用語「及び/又は」は、「及び」、「又は」の意味だけでなく、この用語に関連する要素の他の可能な組み合わせも全て包含する。
【0015】
特許請求の範囲を含めた本明細書の全体を通して、用語「1つを含む」は、特に明記しない限り、用語「少なくとも1つを含む」と同じ意味であると理解されるべきであり、「~の間」は、その両端を含むと理解されるべきである。説明の継続において、特に明記しない限り、端の値は、与えられている値の範囲に含まれることが明記される。
【0016】
「含む」という表現は、「~からなる」又は「~から実質的になる」を等しく含むと理解されるべきである。
【0017】
濃度、転化率、又は選択率の範囲などの数値範囲を規定する際、任意の特定の上限を任意の特定の下限と関連付けることができることに留意すべきである。
【0018】
特に指定がない限り、パーセンテート含有率は重量基準である。
【0019】
本発明において、「バイオベース材料」、「バイオソース材料」、又は「天然材料」という表現は、全体又は大部分が生物学的製品又は再生可能な農業材料(植物、動物、及び海洋材料など)又は林業材料から構成される製品を指す。
【0020】
本発明において、「バイオベース炭素」という表現は、大気と平衡状態にある自然環境に生息する農業、植物、動物、真菌、微生物、海洋、又は林業材料などの再生可能な材料起源の炭素を指す。バイオベース炭素含有率は、典型的には、炭素14年代測定(炭素年代測定又は放射性炭素年代測定とも呼ばれる)により評価される。更に、本発明において、「バイオベース炭素含有率」は、化合物又は生成物の総炭素に対するバイオベース炭素のモル比を指す。バイオベース炭素含有率は、好ましくは標準試験法ASTM D6866-16に従って、液体シンチレーション計数により、炭素1グラム当たりの1分当たりの崩壊(又はdpm/gC)における、14C(炭素-14)の崩壊プロセスを測定することからなる方法によって好ましくは測定することができる。前記米国標準試験ASTM D6866は、ISO規格16620-2と同等であるとされている。前記規格ASTM D6866によれば、試験方法は、好ましくは、IRMS(同位体比質量分析)手法と共にAMS(加速器質量分析)を利用して、所定の製品のバイオベース含有率を定量化することができる。
【0021】
本発明において、表現「δ13C」は、炭素-13の平均同位体偏差を指す。13Cの平均同位体偏差は、国際標準としてPDBを使用する同位体比質量分析法によって測定される。化合物の同位体フィンガープリントは、特に天然又は化石の前記化合物の起源に関する情報を提供する。
【0022】
ジヒドロジャスモン酸メチル
本発明は、バイオベース炭素含有率が30%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは38%以上であるジヒドロジャスモン酸メチルに関する。通常、本発明によるジヒドロジャスモン酸メチルは、105%以下、好ましくは100%以下、より好ましくは100%未満のバイオベース炭素含有率を有する。
【0023】
別の態様によれば、本発明によるジヒドロジャスモン酸メチルのバイオベース由来の炭素原子の数は、2以上、好ましくは5以上、より好ましくは7以上である。特定の実施形態では、本発明によるジヒドロジャスモン酸メチルの全ての炭素原子はバイオベース由来である。
【0024】
本発明は、更に、バイオベース炭素含有率が30%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは38%以上のジヒドロジャスモン酸メチルを含む、又はジヒドロジャスモン酸メチルから本質的になる組成物に関する。
【0025】
前記ジヒドロジャスモン酸メチルは、本発明による組成物の主要な化合物を構成し得る。したがって、前記ジヒドロジャスモン酸メチルは、組成物の総重量に対して50%超、好ましくは70%超、より好ましくは80%超存在し得る。本発明のより好ましい態様では、前記ジヒドロジャスモン酸メチルは、組成物の総重量に対して90%超、好ましくは95%超、より好ましくは96%超、より好ましくは99%超、最も好ましくは99.5%超存在し得る。不純物は、組成物の総重量に対して、1ppm~5000ppm、好ましくは1ppm~500ppm、より好ましくは1ppm~50ppm、最も好ましくは1ppm~20ppm存在し得る。
【0026】
したがって、本発明の特定の態様では、不純物は、ジヒドロジャスモン酸メチルの総重量に対して1ppm~100ppm、好ましくは1ppm~50ppm、より好ましくは1ppm~10ppm存在し得る。
【0027】
有利には、本発明のジヒドロジャスモン酸メチルは、90%超、好ましくは95%超、より好ましくは96%超、更に好ましくは99%超、更に好ましくは99.5%超、最も好ましくは99.9%超の純度を有する。
【0028】
風味料物質の官能特性がいくつかの不純物の存在及び量に依存する場合があることは、当業者に周知である。そのため、製造方法は最終化合物の風味に重要である。有利なことに、本発明のジヒドロジャスモン酸メチルは満足できる官能特性を示すことが発見された。本発明のジヒドロジャスモン酸メチルの官能プロファイルが、特にアジピン酸、シクロペンテン、又はジシクロペンタジエンから合成された化石由来のジヒドロジャスモン酸メチルの官能プロファイルと同等であることは、特筆すべきことである。
【0029】
シクロペンタノン
本発明は、バイオベース炭素含有率が50%以上、好ましくは70%以上であるシクロペンタノンに関する。通常、本発明によるシクロペンタノンは、105%以下、好ましくは100%以下、より好ましくは100%未満のバイオベース炭素含有率を有する。
【0030】
別の態様によれば、本発明によるシクロペンタノンのバイオベース由来の炭素原子の数は、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。特定の実施形態では、本発明によるシクロペンタノンの全ての炭素原子はバイオベース由来である。
【0031】
本発明は、更に、バイオベース炭素含有率が50%以上、好ましくは70%以上であるシクロペンタノンを含む、又はこれから本質的になる組成物に関する。
【0032】
本発明のバイオベースのシクロペンタノンは、好ましくは、-25~-8‰、好ましくは-24‰~-9‰、より好ましくは-15‰~-9‰の平均同位体13C偏差を示し得る。
【0033】
前記シクロペンタノンは、本発明による組成物の主要な化合物を構成し得る。したがって、前記シクロペンタノンは、組成物の総重量に対して50%超、好ましくは70%超、より好ましくは80%超存在し得る。本発明のより好ましい態様では、前記シクロペンタノンは、組成物の総重量に対して90%超、好ましくは95%超、より好ましくは96%超、より好ましくは99%超、最も好ましくは99.5%超存在し得る。不純物は、組成物の総重量に対して1ppm~5000ppm、好ましくは1ppm~500ppm、より好ましくは1ppm~50ppm、最も好ましくは1ppm~20ppm存在し得る。
【0034】
したがって、本発明の特定の態様では、不純物は、シクロペンタノンの総重量に対して1ppm~100ppm、好ましくは1ppm~50ppm、より好ましくは1ppm~10ppm存在し得る。
【0035】
有利には、本発明のシクロペンタノンは、90%超、好ましくは95%超、より好ましくは96%超、更に好ましくは99%超、更に好ましくは99.5%超、最も好ましくは99.9%超の純度を有する。
【0036】
本発明の特定の実施形態によれば、シクロペンタノンは、90%~99.5%の純度を有し、シクロペンタノール及びテトラヒドロフルフリルアルコールから選択される少なくとも1種の化合物を含む。
【0037】
本発明は、更に、
- 90重量%~99.5重量%、好ましくは92重量%~98重量%、より好ましくは94重量%~96重量%、最も好ましくは約95重量%のシクロペンタノンと、
0.5重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~6重量%、最も好ましくは約5重量%の、シクロペンタノール及びテトラヒドロフルフリルアルコールから選択される少なくとも1種の化合物と、
を含有する組成物に関する。好ましくは、本発明の組成物はシクロペンタノンを含み、シクロペンタノンは50%以上のバイオベース炭素含有率を有する、又はバイオベース由来の炭素原子の数は2以上である。
【0038】
好ましくは、本発明の組成物はシクロペンタノンを含み、シクロペンタノンは70%以上のバイオベース炭素含有率を有する、及び/又はバイオベース由来の炭素原子の数は3以上、好ましくは4以上である。好ましくは、本発明の組成物はシクロペンタノンを含み、シクロペンタノンは、-25‰~-8‰、より好ましくは-24‰~-9‰、より好ましくは-15‰~-9‰の平均同位体13C偏差を示す。
【0039】
風味料物質の官能特性がいくつかの不純物の存在及び量に依存する場合があることは、当業者に周知である。そのため、製造方法は最終化合物の風味に重要である。有利なことに、本発明のシクロペンタノンは、特に、風味料及び/又は香料、特にジヒドロジャスモン酸メチルの調製における使用において、並びに特に半導体製造用の溶剤としての電子機器における使用のために、満足できる特性を示すことが発見された。
【0040】
製造方法
別の態様では、本発明は、バイオベース炭素含有率が50%以上であるフルフリルアルコールから、ジヒドロジャスモン酸メチル及び/又はシクロペンタノン及び/又は本発明による組成物を調製する方法に関する。本発明によるジヒドロジャスモン酸メチル及び/又はシクロペンタノンの調製に使用されるフルフリルアルコールは、バイオベースのフルフリルアルコールである。
【0041】
バイオベース炭素含有率が50%を超えるフルフリルアルコールは、以降「バイオベースのフルフリルアルコール」とも呼ばれる。本発明によるバイオベースのフルフリルアルコールは、70%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、より好ましくは95%超、より好ましくは98%超、より好ましくは99%超のバイオベース炭素含有率を有し得る。バイオベースのフルフリルアルコールは市販品である。通常、本発明によるバイオベースのフルフリルアルコールは、105%以下、好ましくは103%以下、より好ましくは100%以下のバイオベース炭素含有率を有し得る。天然由来であるため、原料のフルフリルアルコールには若干の不純物が含まれる場合がある。前記不純物は、化合物の起源に特異的な場合がある。典型的には、バイオベースのフルフリルアルコール中の各不純物の含有率は、0.005~0.1%、より好ましくは0.01~0.08%に含まれていてもよい。
【0042】
これは、フルフラールのような天然に存在する基質から、水素化などの様々な方法によって自然に得られる場合がある。例えば、フルフラールは、木材のヘミセルロースからキシロースへと分解し、次いでキシロースをフルフラールへと脱水することによって得ることができる。現在の商業プロセスは、通常、木材やトウモロコシの茎葉などのバイオマス廃棄物から開始される。天然由来であるため、原料のフルフラールには若干の不純物が含まれる場合がある。前記不純物は、化合物の起源に特異的な場合がある。典型的には、バイオベースのフルフラール中の各不純物の含有率は、0.005~0.1%、より好ましくは0.01~0.08%に含まれていてもよい。
【0043】
本発明で使用されるバイオベースのフルフリルアルコールは、好ましくは、-25~-12‰、より好ましくは-24~-14‰の平均同位体13C偏差を示し得る。
【0044】
別の特定の実施形態によれば、本発明で使用されるバイオベースのフルフリルアルコールは、-15‰~-8‰、好ましくは-13‰~-9‰の平均同位体偏差を示し得る。
【0045】
ペンタナール
ペンタナールは、バイオベースのペンタナール又は非バイオベースのペンタナールであってよい。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によれば、ペンタナールは、以降「バイオベースのペンタナール」とも呼ばれる、50%を超えるバイオベース炭素含有率を有する。本発明によるバイオベースのペンタナールは、60%超、好ましくは75%~105%、より好ましくは90%~103%、より好ましくは95%~100%、より好ましくは98%~100%、より好ましくは99%~100%のバイオベース炭素含有率を有し得る。
【0047】
ペンタナールは化石由来であってよい。特定の実施形態によれば、ペンタナールはアップサイクルされてもよく、例えば、ペンタナールはプラスチック製造の廃棄物又は副産物から得ることができる。
【0048】
天然由来であるため、未処理のペンタナールには不純物が含まれている場合がある。前記不純物は、化合物の起源に特異的な場合がある。典型的には、バイオベースのペンタナール中の各不純物の含有率は、0.005~0.1%、より好ましくは0.01~0.08%に含まれていてもよい。
【0049】
マロン酸ジメチル
マロン酸ジメチルは、バイオベースのマロン酸ジメチルであっても非バイオベースのマロン酸ジメチルであってもよい。
【0050】
本発明の好ましい実施形態によれば、マロン酸ジメチルは、50%を超えるバイオベース炭素含有率を有し、以降「バイオベースのマロン酸ジメチル」とも呼ばれる。本発明によるバイオベースのマロン酸ジメチルは、60%超、好ましくは75%~105%、より好ましくは90%~103%、より好ましくは95%~100%、より好ましくは98%~100%、より好ましくは99%~100%のバイオベース炭素含有率を有し得る。
【0051】
マロン酸ジメチルはマロン酸から得ることができ、好ましくはマロン酸は-22~-17‰の平均同位体13C偏差を示す。
【0052】
バイオベースのマロン酸ジメチルは、グルコースを発酵させてマロン酸を生成し(例えば国際公開第2021/042058号パンフレットを参照)、続いてメタノールで、好ましくはバイオベースのメタノールでエステル化することによって得ることができる。
【0053】
ステップ(a)-水素化
本発明によれば、シクロペンタノン又は本発明の組成物の調製方法は、
- バイオベースのフルフリルアルコールを水素化する工程(a)
を含む。
【0054】
本発明によれば、ジヒドロジャスモン酸メチルの調製方法は、
- バイオベースのフルフリルアルコールを水素化する工程(a)
を含む。
【0055】
工程(a)の後、バイオベースのシクロペンタノン又はバイオベースのシクロペンタノンを含む組成物が得られる。
【0056】
工程(a)は水素化工程である。工程(a)は、Appl.Catal.B:Environ.2014,154-155,294に記載されている条件に従って行うことができる。
【0057】
工程(a)では、若干の不純物、すなわちシクロペンタノール及び/又はテトラヒドロフルフリルアルコールが生じる場合がある。
【0058】
工程(a)は、通常水性溶媒中で行われ、好ましくは工程(a)は水中で行われる。
【0059】
水性溶媒は、水と水溶性有機溶媒との混合物であってもよく、好ましくは、水溶性有機溶媒は、アルコール及び酢酸エチルから選択され、より好ましくはエタノール、イソプロパノール、及び酢酸エチルからなる群から選択される。
【0060】
通常、水性溶媒中のフルフリルアルコールの濃度は、30重量%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、更に好ましくは8重量%未満である。
【0061】
通常、工程(a)は、2~6、好ましくは3~5のpHで行われる。
【0062】
通常、工程(a)は、H雰囲気で、好ましくは5~50bar、より好ましくは10~40bar、更に好ましくは20~30barの圧力のH雰囲気で行われる。
【0063】
通常、工程(a)は、120℃~200℃の温度、好ましくは150℃~180℃の温度で行われる。
【0064】
水素化反応(工程(a))は、通常触媒され、好ましくは触媒は金属触媒であり、金属は、好ましくはCu、Pd、Pt、Ni、Au、Rh、Ruから選択される。触媒は、好ましくはニッケル系触媒、好ましくはラネーニッケルであってよい。
【0065】
通常、触媒の量は、20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。通常、触媒の量は、0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下である。
【0066】
有利には、最初に、フルフリルアルコールが水素化されて式(I)の化合物が形成され、次いでこれが加水分解されて式(II)の化合物が形成される。その後、式(II)の化合物が同じ反応条件下で水素化されてシクロペンタノンが形成される。このワンポットプロセスは下のスキームに示されている。
【化1】
【0067】
水素化反応後、得られたバイオベースのシクロペンタノンは、標準的な分離技術によって反応混合物から分離することができる。
【0068】
工程(a)の後、
- 1重量%~10重量%、好ましくは1.5重量%~5重量%、より好ましくは2重量%~4重量%のシクロペンタノン、
- 0.01重量%~1重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%のシクロペンタノール、及び
- 0.001重量%~0.5重量%、好ましくは0.01重量%~0.1重量%のテトラヒドロフルフリルアルコール
を含有する水性組成物。
【0069】
工程(a)の後に得られる組成物は、水と、シクロペンタノンと、シクロペンタノールとを含有する組成物の共沸蒸留によって精製することができる。蒸留された共沸混合物は、その後、デカンテーションによって更に精製される。その後、精製されたシクロペンタノンを得るために、有機相が更に蒸留される。
【0070】
蒸留は、大気圧又は減圧下で行うことができるが、好ましくは蒸留は減圧下で行われる。減圧の使用により、シクロペンタノンの分解が防止される。
【0071】
或いは、水素化工程(a)後に得られた反応混合物が、例えば工程(b)においてその既存の形態で使用されてもよい。
【0072】
工程(b)-アルドール反応
本発明によれば、ジヒドロジャスモン酸メチルの調製方法は、
- バイオベースのシクロペンタノンをペンタナールと反応させる工程(b)
を更に含む。
【0073】
好ましくは、工程(b)は工程(a)の後に行われる。ペンタナールは、バイオベースのペンタナール又は化石由来のペンタナール、例えばアップサイクルされたペンタナールであってもよい。特定の実施形態によれば、ペンタナールは脂肪酸、例えばミリスチン酸又はラウリン酸から得ることができる。
【0074】
工程(b)はアルドール縮合である。工程(b)は、米国特許第4260830号明細書又は米国特許第3158644号明細書に記載されている条件に従って行うことができる。
【0075】
工程(b)は、通常、塩基、好ましくはNaOHの存在下で行われる。ペンタナールの量は、通常0.5~1.2当量である。工程(b)は、通常水中で行われる。
【0076】
工程(b)は、周囲温度で行うことができる。
【0077】
炭素-炭素二重結合の脱水及び異性化の後、式(III)の化合物が得られる。
【化2】
【0078】
本発明によれば、式(III)の化合物は、50%以上、好ましくは70%以上のバイオベース炭素含有率を有し得る。通常、本発明による式(III)の化合物は、105%以下、好ましくは100%以下、より好ましくは100%未満のバイオベース炭素含有率を有する。
【0079】
別の態様によれば、本発明による式(III)の化合物のバイオベース由来の炭素原子の数は、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、好ましくは5以上である。特定の実施形態では、本発明による式(III)の化合物の全ての炭素原子はバイオベース由来である。
【0080】
工程(c)-マイケル付加
本発明によれば、ジヒドロジャスモン酸メチルの調製方法は、
- 式(III)の化合物をマロン酸ジメチルと反応させる工程(c)
を更に含む。
【0081】
好ましくは、工程(c)は、工程(b)の後、好ましくは工程(a)及び(b)の後に行われる。マロン酸ジメチルは、バイオベースのマロン酸ジメチルであっても化石由来のマロン酸ジメチルであってもよい。バイオベースのマロン酸ジメチルは、グルコースの発酵(例えば国際公開第2021/042058号パンフレットを参照)とそれに続くバイオベースのメタノールによるエステル化によって得ることができる。
【0082】
工程(c)はマイケル付加である。工程(c)は、米国特許第4260830号明細書に記載の条件に従って行うことができる。
【0083】
工程(c)は、通常、塩基、好ましくはNaOHの存在下で行われる。マロン酸ジメチルの量は、通常1.0~1.5当量である。工程(c)は、通常アルコールを含む溶媒、好ましくはメタノールを含む溶媒中で行われる。
【0084】
工程(c)は、-10℃から周囲温度までの温度で行うことができる。
【0085】
脱炭酸後、ジヒドロジャスモン酸メチルが得られる。
【0086】
通常、ジアステレオ異性体の混合物が得られる(シス及びトランス)。各ジアステレオ異性体は、ラセミ混合物で得られる。
【0087】
本発明によれば、得られるジヒドロジャスモン酸メチルは、30%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは38%以上のバイオベース炭素含有率を有し得る。通常、本発明によるジヒドロジャスモン酸メチルは、105%以下、好ましくは100%以下、より好ましくは100%未満のバイオベース炭素含有率を有する。
【0088】
別の態様によれば、本発明によるジヒドロジャスモン酸メチルのバイオベース由来の炭素原子の数は、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、好ましくは5以上である。特定の実施形態では、本発明によるジヒドロジャスモン酸メチルの全ての炭素原子はバイオベース由来である。
【0089】
本発明の別の態様では、上で開示された方法により得られるジヒドロジャスモン酸メチル及び/又はシクロペンタノン及び/又は組成物は、本発明の主題である。これらの化合物は、これらが天然の又は再生可能な供給源に由来する原料から部分的に又は全体が調製されるという事実により、当該技術分野で既に知られている化合物とは異なる。
【0090】
ジヒドロジャスモン酸メチル及び/又はシクロペンタノン及び/又は組成物のこの特異性は、バイオベース炭素含有率の測定及び/又は平均同位体13C偏差によって決定することができる。
【0091】
本発明のジヒドロジャスモン酸メチル及び/又はシクロペンタノン及び/又は組成物は、風味料若しくは香料として、又は半導体の製造用の溶媒として有利に使用することができる。好ましくは、本発明のジヒドロジャスモン酸メチル及び/又はシクロペンタノン及び/又は組成物は、産業、例えば食品、医薬品、又は化粧品産業、特に例えば香料の製造に使用することができる。
【0092】
本発明の別の目的は、好ましくは食品、飲料、化粧品製剤、医薬製剤、及び香料からなる群から選択される本発明のジヒドロジャスモン酸メチル及び/又はシクロペンタノン及び/又は組成物を含有する組成物に関する。本明細書に引用される全ての特許出願、及び刊行物の開示は、それらが本明細書に記載されるものを補完する例示的な、手続上の又は他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書によって援用される。参照によって本明細書に組み込まれる特許、特許出願及び刊行物のいずれかの開示が、用語が不明確になり得る程度まで本明細書と矛盾する場合は、本明細書を優先するものとする。
【0093】
それぞれの及びあらゆる請求項は、本発明の実施形態として本明細書に組み込まれる。したがって、特許請求の範囲は、さらなる説明であり、本発明の好ましい実施形態への追加である。
【0094】
本発明の好ましい実施形態が示され、説明されてきたが、それらの変更は、本発明の主旨又は教示から逸脱することなく当業者により行うことができる。本明細書に記載される実施形態は、例示的であるにすぎず、限定的ではない。システム及び方法の多くの変形及び変更が可能であり、それらは本発明の範囲内である。
【0095】
したがって、保護の範囲は、上で説明された記載によって限定されないが、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は、特許請求の範囲の主題の全ての同等物を含む。
【0096】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載を優先するものとする。
【実施例
【0097】
実施例1:バイオベースのシクロペンタノンの調製
3gのバイオベースのフルフリルアルコール(バイオベース炭素含有率100%)を、ニッケル触媒(30mg)の存在下、60mLの水の中で水素化した。水素圧力は30barであり、温度は160℃である。
【0098】
3~4時間撹拌した後、反応混合物を分析する。バイオベースのシクロペンタノンが得られ、100%のバイオベース炭素含有率を示す。転化率100%。
【0099】
実施例2:バイオベースのジヒドロジャスモン酸メチルの調製。
実施例1のバイオベースのシクロペンタノン(バイオベース炭素含有率100%)をペンタナールと反応させて式(III)の化合物を製造する。
【0100】
次いで、式(III)の化合物を、バイオベース炭素含有率が100%である100%バイオベースのマロン酸ジメチルと反応させる。
【0101】
ジヒドロジャスモン酸メチルが得られ、62%のバイオベース炭素含有率を示す。
【国際調査報告】