(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ナノスラリー及びその調製方法、電池セパレータ及びその製作方法、並びに電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/446 20210101AFI20250123BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20250123BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/403 D
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/451
H01M50/42
H01M50/414
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545002
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2022077088
(87)【国際公開番号】W WO2023155191
(87)【国際公開日】2023-08-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518279484
【氏名又は名称】シェンチェン シニア テクノロジー マテリアル カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523449056
【氏名又は名称】シニア マテリアル (ヨーロッパ) アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】SENIOR MATERIAL (EUROPE) AB
【住所又は居所原語表記】Svista Lagervag 8, Eskilstuna, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン イェンチエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ツォーリン
(72)【発明者】
【氏名】シェン チエンチアン
(72)【発明者】
【氏名】リン ルーチン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ホイチェン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE21
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH07
(57)【要約】
本発明は、ナノスラリー及びその調製方法、電池セパレータ及びその製作方法、並びに電池を提供し、ナノスラリーは、分散剤、セラミックス材料、一次元ナノ材料、線状親水性ポリマー、及び粘着剤を含み、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータ表面コーティング用のナノスラリーであって、分散媒、セラミックス材料、一次元ナノ材料、線状親水性ポリマー、及び粘着剤を含み、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記分散媒の中に、水の含有量は90wt%以上であり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にある、ことを特徴とする、セパレータ表面コーティング用のナノスラリー。
【請求項2】
前記線状親水性ポリマーは、前記一次元ナノ材料に付着して前記セラミックス材料に連結する、ことを特徴とする、請求項1に記載のナノスラリー。
【請求項3】
前記線状親水性ポリマーと前記分散媒の中の水との質量比は、0.01%~0.1%の区間範囲内にあり、前記線状親水性ポリマーの分子量は、1000グラム/モル~10000グラム/モルの区間範囲内にある、ことを特徴とする、請求項1に記載のナノスラリー。
【請求項4】
前記線状親水性ポリマーは、アミン親水性ポリマーを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載のナノスラリー。
【請求項5】
前記アミン親水性ポリマーは、
ポリアクリルアミド、及びポリエチレンイミンの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする、請求項4に記載のナノスラリー。
【請求項6】
前記一次元ナノ材料の直径は、1~50ナノメートルの区間範囲内にあり、前記一次元ナノ材料の長さは、100~1000ナノメートルの区間範囲内にある、ことを特徴とする、請求項1に記載のナノスラリー。
【請求項7】
前記粘着剤と前記セラミックス材料との質量比は、1%~10%の区間範囲にある、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノスラリー。
【請求項8】
前記粘着剤は、
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸リチウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びスチレンブタジエンゴムの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のナノスラリー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のナノスラリーを調製するためのナノスラリーの調製方法であって、
セラミックス材料を、水の含有量が90wt%以上である分散媒に分散させ、セラミックス分散液を得る工程と、
一次元ナノ材料を前記セラミックス分散液に分散させ、所定の分散液を得る工程と、
線状親水性ポリマーを前記所定の分散液に加え、所定の溶液を得る工程と、
粘着剤を前記所定の溶液に加え、ナノスラリーを得る工程と、を含む、ことを特徴とする、ナノスラリーの調製方法。
【請求項10】
線状親水性ポリマーを前記所定の分散液に加えた後、前記調製方法は、
所定の圧力での均質化及び/又は所定の速度での撹拌によって、前記線状親水性ポリマーが加えられた所定の分散液を分散させて、前記線状親水性ポリマーを前記一次元ナノ材料に付着させる工程をさらに含む、ことを特徴とする、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
電池セパレータであって、ベースフィルム及びコーティングを含み、
前記コーティングは、所定のナノスラリーを前記ベースフィルムの少なくとも1つの表面に塗布して形成されたものであり、
前記所定のナノスラリーは、請求項1~8のいずれか1項に記載のナノスラリー又は請求項9に記載の調製方法によって調製されたナノスラリーである、ことを特徴とする、電池セパレータ。
【請求項12】
電池セパレータであって、ベースフィルム及びコーティングを含み、前記コーティングには、セラミックス材料、一次元ナノ材料、及び線状親水性ポリマーが含まれ、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にあり、前記線状親水性ポリマーは前記一次元ナノ材料に付着して前記セラミックス材料に連結する、ことを特徴とする、電池セパレータ。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の電池セパレータを備える、ことを特徴とする、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の分野に関し、特に、ナノスラリー及びその調製方法、電池セパレータ及びその製作方法、並びに電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池のセパレータは、リチウムイオン電池の重要な構成要素の1つであり、その性能の良否はリチウム電池の性能全体に非常に重要な影響を与えており、リチウム電池の発展を制限する重要な技術の1つである。リチウム電池の適用分野が絶えず拡大しリチウム電気製品が人々の生活に与える影響が深まるにつれて、リチウム電池性能に対する要求もますます高くなっている。リチウム電池の発展の要求を満たすために、セパレータは、リチウム電池の重要な構成要素として、化学の安定性に優れ、製造コストが安価であるだけでなく、リチウムイオン電池の安全性能の向上に役立つことも現在リチウム電池発展の重要な趨勢である。
【0003】
従来の関連技術において、リチウム電池のセパレータは、ベースフィルム及びベースフィルムの少なくとも1つの表面を覆うコーティングを含むことができ、コーティングのスラリーは、セラミックス粒子に基づいて調製され得るが、しかしながら、セラミックス粒子の表面によるセラミックス粒子の凝集の問題が発生しやすいため、コーティング表面の均一性が悪くなり、ひいては、その後の電池組立における極板の貼り合わせにも影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、セラミックス粒子の表面による凝集の問題を解決するために、ナノスラリー及びその調製方法、電池セパレータ及びその製作方法、並びに電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、分散媒、セラミックス材料、一次元ナノ材料、線状親水性ポリマー、及び粘着剤を含む、セパレータ表面コーティング用のナノスラリーを提供し、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記分散媒の中に、水の含有量は90wt%以上であり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にある。
【0006】
選択的には、前記線状親水性ポリマーは、前記一次元ナノ材料に付着して前記セラミックス材料に連結する。
【0007】
選択的には、前記線状親水性ポリマーと前記分散媒の中の水との質量比は、0.01%~0.1%の区間範囲内にある。
【0008】
選択的には、前記線状親水性ポリマーの分子量は、1000グラム/モル~10000グラム/モルの区間範囲内にある。
【0009】
選択的には、前記線状親水性ポリマーは、アミン親水性ポリマーを含む。
【0010】
選択的には、前記線状親水性ポリマーは、
ポリアクリルアミド、及びポリエチレンイミンの少なくとも1つを含む。
【0011】
選択的には、前記一次元ナノ材料の直径は、1~50ナノメートルの区間範囲内にあり、前記一次元ナノ材料の長さは、100~1000ナノメートルの区間範囲内にある。
【0012】
選択的には、前記粘着剤と前記セラミックス材料との質量比は、1%~10%の区間範囲にある。
【0013】
選択的には、前記粘着剤は、
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸リチウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びスチレンブタジエンゴムの少なくとも1つを含む。
【0014】
第2の態様によれば、本発明は、第1の態様及びその選択的な解決手段に係るナノスラリーを調製するためのナノスラリーの調製方法を提供し、前記調製方法は、
セラミックス材料を、水の含有量が90wt%以上である分散媒に分散させ、セラミックス分散液を得る工程と、
一次元ナノ材料を前記セラミックス分散液に分散させ、所定の分散液を得る工程と、
線状親水性ポリマーを前記所定の分散液に加え、所定の溶液を得る工程と、
粘着剤を前記所定の溶液に加え、ナノスラリーを得る工程と、を含む。
【0015】
選択的には、線状親水性ポリマーを前記所定の分散液に加えた後、前記調製方法は、
所定の圧力での均質化及び/又は所定の速度での撹拌によって、前記線状親水性ポリマーが加えられた所定の分散液を分散させて、前記線状親水性ポリマーを前記一次元ナノ材料に付着させる工程、をさらに含む。
【0016】
第3の態様によれば、本発明は、ベースフィルム及びコーティングを含む、電池セパレータを提供し、
前記コーティングは、所定のナノスラリーを前記ベースフィルムの少なくとも1つの表面に塗布して形成されたものであり、
前記所定のナノスラリーは、第1の態様及びその選択的な解決手段に係るナノスラリーまたは第2の態様に係る調製方法によって調製されたナノスラリーである。
【0017】
第4の態様によれば、本発明は、ベースフィルム及びコーティングを含む、電池セパレータを提供し、前記コーティングには、セラミックス材料、一次元ナノ材料、及び線状親水性ポリマーが含まれ、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にあり、前記線状親水性ポリマーは、前記一次元ナノ材料を包んで前記セラミックス材料に連結する。
【0018】
第5の態様によれば、本発明は、第3の態様又は第4の態様に係る電池セパレータを備える電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により提供されるナノスラリー及びその調製方法、電池セパレータ及びその製作方法、並びに電池においては、セラミックス材料に一次元ナノ材料を導入し、セラミックス材料の表面エネルギーを低下させ、これによって、形成されたコーティングの表面粗さを低下させることができ、同時に、表面粗さをさらに低下させるために、線状親水性ポリマーを使用しており、これによって、線状親水性ポリマーが一次元ナノ材料とセラミックス材料との間の橋渡し役として機能することにより、両者を完全に結合させ、セラミックス材料の凝集傾向をさらに十分に低下させ、形成されたコーティングの表面粗さをさらに低下させる。そして、線状親水性ポリマーを導入することにより、スラリーの沈降を避けて、スラリーの安定性を向上させることにも寄与できる。
【0020】
また、スラリー状態に関する研究に基づき、一次元ナノ材料の質量の選択は、最終的なスラリー状態(例えば粘度)と一定の相関性があることを発見することができ、これにより、本発明は、この発見を創造的に発見して利用し、一次元ナノ材料とセラミックス材料との質量比を0.01%~20%の区間に選択し、スラリーを容易に塗布できることを効果的に確保している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の実施例又は従来の技術の解決手段をより明確に説明するため、以下、実施例又は従来の技術の記述において使用する必要がある図面を簡単に説明する。当然ながら、以下、記載する図面は本発明のいくつかの実施例であり、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を想到しうる。
【
図1】本発明の一実施例におけるナノスラリーの調製方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例における電池セパレータの製作方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例に係る図面を参照しながら、その技術的解決手段について明瞭、且つ完全に説明し、当然のことながら、記載される実施例は本発明の実施例の一部にすぎず、そのすべての実施例ではない。当業者は、本発明における実施例に基づいて創造的な労働を要することなく、獲得されたその他のすべての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0023】
本発明の明細書の記述では、「上部」、「下部」、「上端」、「下端」、「下面」、「上面」のような用語によって指示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係であり、本発明の説明の便宜及び説明の簡略化のためにのみ使用される用語であり、示される装置又は構成要素は必ず特定の方位があり、特定の方位でもって構築及び操作されることを指示又は暗示する用語ではないため、本発明を制限するものとして理解することができない。
【0024】
本発明の明細書の記述では、用語「第1」、「第2」は、説明目的のためにのみ使用される用語であり、相対的な重要性を指示又は教示したり示される技術的特徴の数を暗黙的に指示したりする用語として理解することができない。したがって、「第1」、「第2」によって限定されている特徴は、1つ又は複数の当該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。
【0025】
本発明の記述では、「複数」は、特に明確に限定されていない限り、多くあることを意味し、例えば、2つ、3つ、4つなどが挙げられる。
【0026】
本発明の明細書の記述では、特に明確に規定及び限定されていない限り、「連結」などの用語は、広義に解釈されるべきであり、例えば、固定的に連結されたり、着脱可能に連結されたり、または一体となるように連結されたりしてもよいし、機械的に連結されたり、電気的に連結されたり、または互いに通信可能に連結されたりしてもよいし、直接に連結されたり、中間媒体を介して間接的に連結されたり、2つの構成要素内部の連通又は2つの構成要素間の相互作用関係となるように連結されたりしてもよい。当業者としては、上記の用語の本発明における具体的な意味について実際の状況に応じて理解することができる。
【0027】
以下、本発明の技術的解決手段について具体的な実施例を用いて詳細に説明する。以下のいくつかの具体的な実施例は、互いに組み合わされることができ、同様な又は類似する概念又はプロセスについて実施例の一部で繰り返して説明しない場合がある。
【0028】
本発明の実施例は、分散媒、セラミックス材料、一次元ナノ材料、線状親水性ポリマー、及び粘着剤を含む、セパレータ表面コーティング用のナノスラリーを提供する。
【0029】
そのうちの分散媒は、材料の分散に使用可能な任意の液体であってもよく、前記分散媒の中に、水の含有量は90wt%以上であり、さらに、エタノール、アセトン、N-メチルピロリドンなどの分散媒を含むことができる。
【0030】
すなわち、水の含有量は、90wt%、92wt%、93wt%、95wt%、98wt%、99wt%、100wt%であってもよい。
【0031】
解決手段の一部においては、分散媒の中の水の含有量が100wt%でない場合には、分散媒の中に、水のほかに、他の溶媒も導入されていることを示しており、これによって、水の中に他の溶媒が導入されているため、混合溶媒の表面張力を大幅に低下させることができ、表面張力の低下は、セラミックス材料、一次元ナノ材料、及び線状親水性ポリマーの分散の均一性をさらに高めることに寄与し、これによって、線状親水性ポリマーを、セラミックス材料及び一次元ナノ材料とより十分に連結して接触させることができるため、セラミックス粒子の凝集の問題をよりよく解決する。
【0032】
そのうちのセラミックス材料は、例えば、アルミナ、酸化ケイ素、酸化チタン、水酸化マグネシウム、ベーマイトなどの少なくとも1つを含み、ここで、セラミックス材料(例えばアルミナ)の粒子径は5~500nmの区間範囲内にあり、当該区間範囲にある場合には、セラミックス材料の表面エネルギーは大きいため、非常に凝集しやすく、スラリーを不安定にさせる。本発明の実施例は、まさに、当該条件下で発生する凝集に対して、一次元ナノ材料と線状親水性ポリマーを導入し、このような凝集の傾向を低下させている。これに比べて、従来の関連技術においては、使用されているセラミックス材料は、通常、600nmよりも大きいため、凝集の技術的問題は通常発生しないことから、当該凝集問題の発見及び解決はいずれも、本発明の実施例の1つの改善となっている。
【0033】
そのうちの一次元ナノ材料は、ナノワイヤ、ナノチューブ、またはナノロッドとして理解してもよく、例えば、ナノセルロース、カーボンナノチューブ、アラミドナノファイバ、ポリイミドナノファイバの少なくとも1つを含むことができる。
【0034】
つまり、本発明は、セラミックス材料に一次元ナノ材料を導入し、材料の表面エネルギーを低下させることによって、形成されたコーティングの表面粗さを低下させることができる。
【0035】
前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にある。例えば当該質量比は、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%であってもよい。選択される材料を変化させ、試験に合わせて、その中から対応する値を選択して変化させることができる。一例では、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は12%~20%の区間範囲内にある。
【0036】
さらに、一次元ナノ材料は、セラミックス材料の1%~20%を占める。
【0037】
スラリー状態に関する研究に基づき、一次元ナノ材料の質量の選択は、最終的なスラリー状態(例えば粘度)と一定の相関性がある(この相関性は、表1を参照して後述する)ことを発見することができ、これにより、本発明は、この発見を創造的に発見して利用し、一次元ナノ材料とセラミックス材料との質量比を0.01%~20%の区間に選択し、スラリーを容易に塗布できることを効果的に確保している。
【0038】
前記一次元ナノ材料の直径は、1~50ナノメートルの区間範囲内にあり、前記一次元ナノ材料の長さは、100~1000ナノメートルの区間範囲内にある。
【0039】
線状親水性ポリマーが一次元ナノ材料とセラミックス材料との間の橋渡し役として機能することにより、両者を完全に結合させ、セラミックス材料の凝集傾向をさらに十分に低下させ、形成されたコーティングの表面粗さをさらに低下させる。そして、線状親水性ポリマーを導入することにより、スラリーの沈降を避けて、スラリーの安定性を向上させることにも寄与できる。具体的な性能の比較は、表1を参照して後述する。
【0040】
さらなる例では、前記線状親水性ポリマーと前記分散媒の中の水との質量比は、0.01%~0.1%の区間範囲内にあり、例えば0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%であってもよい。
【0041】
前記線状親水性ポリマーの分子量は、1000グラム/モル~10000グラム/モルの区間範囲内にあり、例えば1000グラム/モル、2000グラム/モル、3000グラム/モル、4000グラム/モル、5000グラム/モル、6000グラム/モル、7000グラム/モル、8000グラム/モル、9000グラム/モル、10000グラム/モルであってもよい。
【0042】
前記線状親水性ポリマーは、アミン親水性ポリマーを含み、そのうちのアミン親水性ポリマーは例えば、ポリアクリルアミド、及びポリエチレンイミンの少なくとも1つを含むが、これらの例に限定されない。
【0043】
アミン親水性ポリマーの使用について、その機能する原理は次の通りである。
セラミックス材料の表面に欠陥部位があることによって、ダングリングボンドは形成されるが、アミン(-NH-)は孤立電子対を有しており、セラミックス材料の表面のダングリングボンドと結合しやすいため、セラミックス材料との親和性が非常に良い。これにより、アミン親水性ポリマーはセラミックスの表面にしっかりと吸着することができる。アミン親水性ポリマーの他端は非極性の炭素系分子鎖であり、極性の水との相溶性が弱いため、アミン親水性ポリマーを含有するセラミックスは直接に沈降してしまう。炭素含有一次元ナノ材料を導入した後、アミン親水性ポリマー上の炭素含有分子鎖は、一次元ナノ材料上の炭素含有分子鎖と非常に親和しやすいため、セラミックス-アミンポリマー-一次元ナノ材料の構造が形成され、一次元ナノ材料上の親水性官能基は、水中で安定性が極めて高いネットワーク構造が形成され、これによって、当該構造の水中での安定性が大幅に向上する。その結果、アミン親水性ポリマーは、分散剤のような役割を果たすことができる。一実施形態では、線状親水性ポリマーは前記一次元ナノ材料に付着している。
【0044】
スラリー状態に関する研究に基づき、線状親水性ポリマーは分散液の状態に相関している(その相関性は、表1を参照して後述する)ことを発見することができ、これにより、本発明は、この発見を創造的に発見して利用し、線状親水性ポリマーと分散媒の中の水との質量比が0.01%~0.1%の区間範囲にあるように選択し、スラリーの沈降を避けて、スラリーの安定性を確保することができる一方、セラミックス材料の凝集を低下させる役割を効果的に果たしている。
【0045】
粘着剤は、粘着作用を果たすことができる任意の材料であってもよく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸リチウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びスチレンブタジエンゴムの少なくとも1つを含む。
【0046】
さらに、前記粘着剤と前記セラミックス材料との質量比は、1%~10%の区間範囲にあるようにしてもよく、例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%であってもよい。
【0047】
このことに関しては、粘着剤が多すぎると(例えば粘着剤とセラミックス材料との質量比が10%よりも大きい場合)、細孔が詰まりリチウムイオンの輸送率に影響を及ぼすが、逆に、粘着剤が少なすぎると(例えば粘着剤とセラミックス材料との質量比が1%よりも小さい場合)、セラミックス材料と一次元ナノ材料はセパレータから剥がれやすくなる。したがって、1%~10%の区間範囲を選択すると、輸送率と粘着性能を効果的に両立することができる。前述したナノスラリーを得るために、本発明の実施例は、前述したナノスラリーを調製するためのナノスラリーの調製方法をさらに提供し、
図1を参照すると、前記調製方法は、S11~S14を含み、
S11では、セラミックス材料を分散媒に分散させ、セラミックス分散液を得、
S12では、一次元ナノ材料を前記セラミックス分散液に分散させ、所定の分散液を得、
S13では、線状親水性ポリマーを前記所定の分散液に加え、前記所定の分散液を軟化させ、所定の溶液を得、
S14では、粘着剤を前記所定の溶液に加え、ナノスラリーを得る。
【0048】
工程S11の具体例では、セラミックス材料を分散媒に十分に分散させることができ、分散媒の中に、水の含有量は90wt%以上である。分散方式としては例えば、高速撹拌、高圧均質化、砂磨き分散などの少なくとも1つの方式を用いることができ、セラミックス材料を分散媒に均一に分散させ、セラミックス分散液を形成する。一例では、セラミックス材料のセラミックス分散液における濃度は0.01~50wt%であってもよい。
【0049】
工程S12の具体例では、セラミックス分散液に一次元ナノ材料を加え、この後、高速撹拌、高圧均質化、砂磨き分散などの少なくとも1つの方式を用いて、一次元ナノ材料を再度分散させ、セラミックス材料を一次元ナノ材料と十分に均一に混合させる。工程S11における分散の方式は、工程S12における分散の方式と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0050】
工程S13の具体例では、線状親水性ポリマーを加えた後、所定の圧力(例えば500-2000bar)での均質化及び/又は所定の速度(例えば3k-50kr/min)での撹拌によって、前記線状親水性ポリマーが加えられた所定の分散液を分散させて、線状親水性ポリマーを前記一次元ナノ材料に付着させることもできる。
【0051】
付着は、線状親水性ポリマー自体の性能に基づき、分散時に付着を完成させることができる。
【0052】
一部の例では、巨大な表面エネルギーのため、分散液におけるセラミックス材料と一次元ナノ材料との粒子は凝集体として存在しており、これらの凝集体の中に普通のポリマーが入り込むことが困難である。本発明により選択された線状親水性ポリマーは、線形の特徴を有し、凝集体の内部に入り込む抵抗が小さい一方、線状親水性ポリマーとしてアミド材料を選択した場合に、アミドは強い極性の特性を有し、且つ水中での相溶性に非常に優れているため、線状親水性ポリマーは、水とともに凝集体の内部に容易に入り込み、極性の相互作用で、ナノ材料表面を強固に被覆し、外部からの強い力(高圧、高速撹拌など)により、凝集体を破壊し、水へと安定的に分散させていく。
【0053】
工程S14の具体例では、工程S13の後に得られた所定の溶液に粘着剤を加えてもよく、一部の例では、この後に助剤を加えてもよい。上記の具体例における様々な特徴の役割の説明を容易にするために、以下、試験によって得られたデータを説明する。
【0054】
【0055】
比較例2と比較例3から明らかなように、線状親水性ポリマーが加えられていない場合に、スラリーは安定的に存在できず、且つ塗布後のセパレータの表面粗さは1000nm以上であり、この粗さは、ベースフィルムの粗さ(450nm)をはるかに超えているが、線状親水性ポリマーと一次元ナノ材料が全く加えられていない場合(比較例1)よりも依然として小さくなっている。線状親水性ポリマーの添加量が0.15%よりも大きい場合に、セパレータの表面粗さは400nmに達している。実施例1、実施例3~5と比較して明らかなように、このことは、線状親水性ポリマーの添加の有無と粗さとの相関性を示しており、適量の線状親水性ポリマーを加えることによって、粗さの低下に寄与できる。
【0056】
実施例1と比較例5を比較して明らかなように、ナノセルロースが加えられていない場合に、スラリーは沈降しやすく、且つ塗布されたセパレータの表面粗さは1200nmにも高くなっている。実施例1と比較例4を比較して明らかなように、ナノセルロースの含有量が高すぎると(25%)、スラリーの粘度が高すぎて、塗布できなくなる。このことに鑑みて、本発明の実施例は、一次元ナノ材料とセラミックス材料との質量比を0.01%~20%に設定している。
【0057】
その他の一次元ナノ材料と線状親水性ポリマーは、適切な範囲内にあるようにすれば、類似する機能、すなわち、表面粗さを低下させる(実施例3、実施例4、実施例5)機能を有するものとなっている。
【0058】
上記の粗さの問題を引き起こす主な原因は、セラミックス材料の寸法が小さい場合(粒子径5~500nm)、セラミックス材料は、表面エネルギーが非常に大きくなるため、非常に凝集しやすく、スラリーが不安定になり、塗布されたセパレータの表面の粗さが急激に上昇することにある。表面エネルギーを低下させるために、親水性ポリマーを加えることによって達成することができ、親水性ポリマーをセラミックス材料の表面と結合することによって、水との親和性を強化し、これにより、表面エネルギーを低下させることができ、比較例5、6に示すように、線状親水性ポリマーと水との質量比を0.01~0.1%に設定しているとき、セパレータの表面粗さは比較例1よりも優れているが、一次元ナノ材料が加えられていないため、安定性は依然として悪く、且つ粗さも依然として大きい。
【0059】
実施例1を実施例6と比較して、実施例5を実施例7と比較して、実施例3を実施例8と比較して明らかなように、分散媒の中の水の含有量が100wt%でない場合に、水の中に他の溶媒が導入されているため、セパレータの表面粗さを効果的に低下させることができるが、その原因は、他の溶媒が導入されたため、混合溶媒(すなわち分散媒)の表面張力が大幅に低下していることにあり、一次元ナノ材料、セラミックス材料、及び線状親水性ポリマーが加えられた後、セラミックス材料、一次元ナノ材料、及び線状親水性ポリマーの分散の均一性をさらに高めることができるため、セラミックス粒子の凝集の問題をよりよく解決し、コーティングの表面粗さをさらに低下させている。
【0060】
また、以上の実施例と比較例の実装過程においては、使用されているベースフィルムとしては、厚さ11μm、細孔径40nm、孔隙率42%のPEベースフィルムを選択しているため、以上の実施例と比較例によって具現化されている上記の技術的効果は、同じ(または類似する)ベースフィルムを使用して塗布することによって具現化されているものである。
【0061】
前述したナノスラリー及びその調製方法に対応するように、本発明の実施例は、ベースフィルム及びコーティングを含む電池セパレータを提供し、
前記コーティングは、所定のナノスラリーを前記ベースフィルムの少なくとも1つの表面に塗布して形成されたものであり、
前記所定のナノスラリーは、前述したセパレータ表面コーティング用のナノスラリーであるか、または、前記所定のナノスラリーは、前述したナノスラリーの調製方法によって調製されたナノスラリーである。
【0062】
さらに、本発明の実施例は、ベースフィルム及びコーティングを含む電池セパレータを提供し、前記コーティングには、セラミックス材料、一次元ナノ材料、及び線状親水性ポリマーが含まれ、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にあり、前記線状親水性ポリマーは前記一次元ナノ材料に付着して前記セラミックス材料に連結する。
【0063】
本発明に係る任意の技術的用語、技術的手段、技術的効果、及び選択的な実施形態は、前文の関連する説明を参照して理解することができる。
【0064】
上記の電池セパレータに基づき、
図2を参照すると、本発明の実施例は、電池セパレータの製作方法をさらに提供し、当該製作方法は、S21~S22を含み、
S21では、前記したナノスラリーをベースフィルムに塗布して、前記ベースフィルム上でコーティングを形成し、
S22では、前記コーティングを有する前記ベースフィルムを乾燥させて、電池セパレータを得る。
【0065】
工程S21の具体例では、マイクログラビアロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、エクストルージョンコーティングなどの少なくとも1つの方式を用いて、スラリーをベースフィルムに塗布して乾燥させれば、セラミックス材料複合の電池セパレータを得ることができる。なお、塗布は、片面塗布であってもよいし、両面塗布であってもよく、これにより、片面又は両面にコーティングを形成する。
【0066】
本発明の実施例は、上記の選択的な解決手段に係る電池セパレータを備える電池をさらに提供する。
【0067】
本明細書の記述では、「1つの実施形態」、「1つの実施例」、「具体的な実施プロセス」、「一例」などの用語を用いた記述は、当該実施例又は例示を参照して説明する具体的な特徴、構造、材料、または特点が、本発明の少なくとも1つの実施例又は例示に含まれることを意味する。本明細書では、上記の用語の概略的な表現は、必ずしも同じ実施例又は例示を指すものではない。さらに、説明された具体的な特徴、構造、材料、または特点は、任意の1つ又は複数の実施例又は例示において適切な方式で組み合わされ得る。
【0068】
最後に説明すべきものとして、以上の各実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものであり、それを制限するものではなく、前述の各実施例を参照しながら本発明を詳細に説明するが、当業者であれば、依然として前述の各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はそのうちの一部又はすべての技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱しないと理解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の分野に関し、特に、ナノスラリー及びその調製方法、電池セパレータ及びその製作方法、並びに電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池のセパレータは、リチウムイオン電池の重要な構成要素の1つであり、その性能の良否はリチウムイオン電池の性能全体に非常に重要な影響を与えており、リチウムイオン電池の発展を制限する重要な技術の1つである。リチウムイオン電池の適用分野が絶えず拡大しリチウム電気製品が人々の生活に与える影響が深まるにつれて、リチウムイオン電池性能に対する要求もますます高くなっている。リチウムイオン電池の発展の要求を満たすために、セパレータは、リチウムイオン電池の重要な構成要素として、化学の安定性に優れ、製造コストが安価であるだけでなく、リチウムイオン電池の安全性能の向上に役立つことも現在リチウムイオン電池発展の重要な趨勢である。
【0003】
従来の関連技術において、リチウムイオン電池のセパレータは、ベースフィルム及びベースフィルムの少なくとも1つの表面を覆うコーティングを含むことができ、コーティングのスラリーは、セラミックス粒子に基づいて調製され得るが、しかしながら、セラミックス粒子の表面によるセラミックス粒子の凝集の問題が発生しやすいため、コーティング表面の均一性が悪くなり、ひいては、その後の電池組立における極板の貼り合わせにも影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、セラミックス粒子の表面による凝集の問題を解決するために、ナノスラリー及びその調製方法、電池セパレータ及びその製作方法、並びに電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、分散媒、セラミックス材料、一次元ナノ材料、線状親水性ポリマー、及び粘着剤を含む、セパレータコーティング用のナノスラリーを提供し、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記分散媒の中に、水の含有量は90wt%以上であり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にある。
【0006】
選択的には、前記線状親水性ポリマーは、前記一次元ナノ材料に付着して前記セラミックス材料に連結する。
【0007】
選択的には、前記線状親水性ポリマーと前記分散媒の中の水との質量比は、0.01%~0.1%の区間範囲内にある。
【0008】
選択的には、前記線状親水性ポリマーの分子量は、1000グラム/モル~10000グラム/モルの区間範囲内にある。
【0009】
選択的には、前記線状親水性ポリマーは、アミン親水性ポリマーを含む。
【0010】
選択的には、前記線状親水性ポリマーは、
ポリアクリルアミド、及びポリエチレンイミンの少なくとも1つを含む。
【0011】
選択的には、前記一次元ナノ材料の直径は、1~50ナノメートルの区間範囲内にあり、前記一次元ナノ材料の長さは、100~1000ナノメートルの区間範囲内にある。
【0012】
選択的には、前記粘着剤と前記セラミックス材料との質量比は、1%~10%の区間範囲にある。
【0013】
選択的には、前記粘着剤は、
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸リチウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びスチレンブタジエンゴムの少なくとも1つを含む。
【0014】
第2の態様によれば、本発明は、第1の態様及びその選択的な解決手段に係るナノスラリーを調製するためのナノスラリーの調製方法を提供し、前記調製方法は、
セラミックス材料を、水の含有量が90wt%以上である分散媒に分散させ、セラミックス分散液を得る工程と、
一次元ナノ材料を前記セラミックス分散液に分散させ、所定の分散液を得る工程と、
線状親水性ポリマーを前記所定の分散液に加え、所定の溶液を得る工程と、
粘着剤を前記所定の溶液に加え、ナノスラリーを得る工程と、を含む。
【0015】
選択的には、線状親水性ポリマーを前記所定の分散液に加えた後、前記調製方法は、
所定の圧力での均質化及び/又は所定の速度での撹拌によって、前記線状親水性ポリマーが加えられた所定の分散液を分散させて、前記線状親水性ポリマーを前記一次元ナノ材料に付着させる工程、をさらに含む。
【0016】
第3の態様によれば、本発明は、ベースフィルム及びコーティングを含む、電池セパレータを提供し、
前記コーティングは、所定のナノスラリーを前記ベースフィルムの少なくとも1つの表面に塗布して形成されたものであり、
前記所定のナノスラリーは、第1の態様及びその選択的な解決手段に係るナノスラリーまたは第2の態様に係る調製方法によって調製されたナノスラリーである。
【0017】
第4の態様によれば、本発明は、ベースフィルム及びコーティングを含む、電池セパレータを提供し、前記コーティングには、セラミックス材料、一次元ナノ材料、及び線状親水性ポリマーが含まれ、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にあり、前記線状親水性ポリマーを、前記一次元ナノ材料に付着させて前記セラミックス材料に連結する。
【0018】
第5の態様によれば、本発明は、第3の態様又は第4の態様に係る電池セパレータを備える電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により提供されるナノスラリー及びその調製方法、電池セパレータ及びその製作方法、並びに電池においては、セラミックス材料に一次元ナノ材料を導入し、セラミックス材料の表面エネルギーを低下させ、これによって、形成されたコーティングの表面粗さを低下させることができ、同時に、表面粗さをさらに低下させるために、線状親水性ポリマーを使用しており、これによって、線状親水性ポリマーが一次元ナノ材料とセラミックス材料との間の橋渡し役として機能することにより、両者を完全に結合させ、セラミックス材料の凝集傾向をさらに十分に低下させ、形成されたコーティングの表面粗さをさらに低下させる。そして、線状親水性ポリマーを導入することにより、スラリーの沈降を避けて、スラリーの安定性を向上させることにも寄与できる。
【0020】
また、スラリー状態に関する研究に基づき、一次元ナノ材料の質量の選択は、最終的なスラリー状態(例えば粘度)と一定の相関性があることを発見することができ、これにより、本発明は、この発見を創造的に発見して利用し、一次元ナノ材料とセラミックス材料との質量比を0.01%~20%の区間に選択し、スラリーを容易に塗布できることを効果的に確保している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の実施例又は従来の技術の解決手段をより明確に説明するため、以下、実施例又は従来の技術の記述において使用する必要がある図面を簡単に説明する。当然ながら、以下、記載する図面は本発明のいくつかの実施例であり、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を想到しうる。
【
図1】本発明の一実施例におけるナノスラリーの調製方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例における電池セパレータの製作方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例に係る図面を参照しながら、その技術的解決手段について明瞭、且つ完全に説明し、当然のことながら、記載される実施例は本発明の実施例の一部にすぎず、そのすべての実施例ではない。当業者は、本発明における実施例に基づいて創造的な労働を要することなく、獲得されたその他のすべての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0023】
本発明の明細書の記述では、「上部」、「下部」、「上端」、「下端」、「下面」、「上面」のような用語によって指示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係であり、本発明の説明の便宜及び説明の簡略化のためにのみ使用される用語であり、示される装置又は構成要素は必ず特定の方位があり、特定の方位でもって構築及び操作されることを指示又は暗示する用語ではないため、本発明を制限するものとして理解することができない。
【0024】
本発明の明細書の記述では、用語「第1」、「第2」は、説明目的のためにのみ使用される用語であり、相対的な重要性を指示又は教示したり示される技術的特徴の数を暗黙的に指示したりする用語として理解することができない。したがって、「第1」、「第2」によって限定されている特徴は、1つ又は複数の当該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。
【0025】
本発明の記述では、「複数」は、特に明確に限定されていない限り、多くあることを意味し、例えば、2つ、3つ、4つなどが挙げられる。
【0026】
本発明の明細書の記述では、特に明確に規定及び限定されていない限り、「連結」などの用語は、広義に解釈されるべきであり、例えば、固定的に連結されたり、着脱可能に連結されたり、または一体となるように連結されたりしてもよいし、機械的に連結されたり、電気的に連結されたり、または互いに通信可能に連結されたりしてもよいし、直接に連結されたり、中間媒体を介して間接的に連結されたり、2つの構成要素内部の連通又は2つの構成要素間の相互作用関係となるように連結されたりしてもよい。当業者としては、上記の用語の本発明における具体的な意味について実際の状況に応じて理解することができる。
【0027】
以下、本発明の技術的解決手段について具体的な実施例を用いて詳細に説明する。以下のいくつかの具体的な実施例は、互いに組み合わされることができ、同様な又は類似する概念又はプロセスについて実施例の一部で繰り返して説明しない場合がある。
【0028】
本発明の実施例は、分散媒、セラミックス材料、一次元ナノ材料、線状親水性ポリマー、及び粘着剤を含む、セパレータコーティング用のナノスラリーを提供する。
【0029】
そのうちの分散媒は、材料の分散に使用可能な任意の液体であってもよく、前記分散媒の中に、水の含有量は90wt%以上であり、さらに、エタノール、アセトン、N-メチルピロリドンなどの分散媒を含むことができる。
【0030】
すなわち、水の含有量は、90wt%、92wt%、93wt%、95wt%、98wt%、99wt%、100wt%であってもよい。
【0031】
解決手段の一部においては、分散媒の中の水の含有量が100wt%でない場合には、分散媒の中に、水のほかに、他の溶媒も導入されていることを示しており、これによって、水の中に他の溶媒が導入されているため、混合溶媒の表面張力を大幅に低下させることができ、表面張力の低下は、セラミックス材料、一次元ナノ材料、及び線状親水性ポリマーの分散の均一性をさらに高めることに寄与し、これによって、線状親水性ポリマーを、セラミックス材料及び一次元ナノ材料とより十分に連結して接触させることができるため、セラミックス粒子の凝集の問題をよりよく解決する。
【0032】
そのうちのセラミックス材料は、例えば、アルミナ、酸化ケイ素、酸化チタン、水酸化マグネシウム、ベーマイトなどの少なくとも1つを含み、ここで、セラミックス材料(例えばアルミナ)の粒子径は5~500nmの区間範囲内にあり、当該区間範囲にある場合には、セラミックス材料の表面エネルギーは大きいため、非常に凝集しやすく、スラリーを不安定にさせる。本発明の実施例は、まさに、当該条件下で発生する凝集に対して、一次元ナノ材料と線状親水性ポリマーを導入し、このような凝集の傾向を低下させている。これに比べて、従来の関連技術においては、使用されているセラミックス材料の粒子径は、通常、600nmよりも大きいため、凝集の技術的問題は通常発生しないことから、当該凝集問題の発見及び解決はいずれも、本発明の実施例の1つの改善となっている。
【0033】
そのうちの一次元ナノ材料は、ナノワイヤ、ナノチューブ、またはナノロッドとして理解してもよく、例えば、ナノセルロース、カーボンナノチューブ、アラミドナノファイバ、ポリイミドナノファイバの少なくとも1つを含むことができる。
【0034】
つまり、本発明は、セラミックス材料に一次元ナノ材料を導入し、材料の表面エネルギーを低下させることによって、形成されたコーティングの表面粗さを低下させることができる。
【0035】
前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にある。例えば当該質量比は、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%であってもよい。選択される材料を変化させ、試験に合わせて、その中から対応する値を選択して変化させることができる。一例では、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は12%~20%の区間範囲内にある。
【0036】
さらに、一次元ナノ材料は、セラミックス材料の1%~20%を占める。
【0037】
スラリー状態に関する研究に基づき、一次元ナノ材料の質量の選択は、最終的なスラリー状態(例えば粘度)と一定の相関性がある(この相関性は、表1を参照して後述する)ことを発見することができ、これにより、本発明は、この発見を創造的に発見して利用し、一次元ナノ材料とセラミックス材料との質量比を0.01%~20%の区間に選択し、スラリーを容易に塗布できることを効果的に確保している。
【0038】
前記一次元ナノ材料の直径は、1~50ナノメートルの区間範囲内にあり、前記一次元ナノ材料の長さは、100~1000ナノメートルの区間範囲内にある。
【0039】
線状親水性ポリマーが一次元ナノ材料とセラミックス材料との間の橋渡し役として機能することにより、両者を完全に結合させ、セラミックス材料の凝集傾向をさらに十分に低下させ、形成されたコーティングの表面粗さをさらに低下させる。そして、線状親水性ポリマーを導入することにより、スラリーの沈降を避けて、スラリーの安定性を向上させることにも寄与できる。具体的な性能の比較は、表1を参照して後述する。
【0040】
さらなる例では、前記線状親水性ポリマーと前記分散媒の中の水との質量比は、0.01%~0.1%の区間範囲内にあり、例えば0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%であってもよい。
【0041】
前記線状親水性ポリマーの分子量は、1000グラム/モル~10000グラム/モルの区間範囲内にあり、例えば1000グラム/モル、2000グラム/モル、3000グラム/モル、4000グラム/モル、5000グラム/モル、6000グラム/モル、7000グラム/モル、8000グラム/モル、9000グラム/モル、10000グラム/モルであってもよい。
【0042】
前記線状親水性ポリマーは、アミン親水性ポリマーを含み、そのうちのアミン親水性ポリマーは例えば、ポリアクリルアミド、及びポリエチレンイミンの少なくとも1つを含むが、これらの例に限定されない。
【0043】
アミン親水性ポリマーの使用について、その機能する原理は次の通りである。
セラミックス材料の表面に欠陥部位があることによって、ダングリングボンドは形成されるが、アミン(-NH-)は孤立電子対を有しており、セラミックス材料の表面のダングリングボンドと結合しやすいため、セラミックス材料との親和性が非常に良い。これにより、アミン親水性ポリマーの一端はセラミックス材料の表面にしっかりと吸着することができる。アミン親水性ポリマーの他端は非極性の炭素系分子鎖であり、極性の水との相溶性が弱いため、アミン親水性ポリマーを含有するセラミックス材料は直接に沈降してしまう。炭素含有一次元ナノ材料を導入した後、アミン親水性ポリマー上の炭素含有分子鎖は、一次元ナノ材料上の炭素含有分子鎖と非常に親和しやすいため、セラミックス材料-アミンポリマー-一次元ナノ材料の構造が形成され、一次元ナノ材料上の親水性官能基は、水中で安定性が極めて高いネットワーク構造が形成され、これによって、当該構造の水中での安定性が大幅に向上する。その結果、アミン親水性ポリマーは、分散剤のような役割を果たすことができる。一実施形態では、線状親水性ポリマーは前記一次元ナノ材料に付着している。
【0044】
スラリー状態に関する研究に基づき、線状親水性ポリマーは分散液の状態に相関している(その相関性は、表1を参照して後述する)ことを発見することができ、これにより、本発明は、この発見を創造的に発見して利用し、線状親水性ポリマーと分散媒の中の水との質量比が0.01%~0.1%の区間範囲にあるように選択し、スラリーの沈降を避けて、スラリーの安定性を確保することができる一方、セラミックス材料の凝集を低下させる役割を効果的に果たしている。
【0045】
粘着剤は、粘着作用を果たすことができる任意の材料であってもよく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸リチウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びスチレンブタジエンゴムの少なくとも1つを含む。
【0046】
さらに、前記粘着剤と前記セラミックス材料との質量比は、1%~10%の区間範囲にあるようにしてもよく、例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%であってもよい。
【0047】
このことに関しては、粘着剤が多すぎると(例えば粘着剤とセラミックス材料との質量比が10%よりも大きい場合)、
セパレータの細孔が詰まりリチウムイオンの輸送率に影響を及ぼすが、逆に、粘着剤が少なすぎると(例えば粘着剤とセラミックス材料との質量比が1%よりも小さい場合)、セラミックス材料と一次元ナノ材料はセパレータから剥がれやすくなる。したがって、1%~10%の区間範囲を選択すると、輸送率と粘着性能を効果的に両立することができる。前述したナノスラリーを得るために、本発明の実施例は、前述したナノスラリーを調製するためのナノスラリーの調製方法をさらに提供し、
図1を参照すると、前記調製方法は、S11~S14を含み、
S11では、セラミックス材料を分散媒に分散させ、セラミックス分散液を得、
S12では、一次元ナノ材料を前記セラミックス分散液に分散させ、所定の分散液を得、
S13では、線状親水性ポリマーを前記所定の分散液に加え、前記所定の分散液を
分散して安定化させ、所定の溶液を得、
S14では、粘着剤を前記所定の溶液に加え、ナノスラリーを得る。
【0048】
工程S11の具体例では、セラミックス材料を分散媒に十分に分散させることができ、分散媒の中に、水の含有量は90wt%以上である。分散方式としては例えば、高速撹拌、高圧均質化、砂磨き分散などの少なくとも1つの方式を用いることができ、セラミックス材料を分散媒に均一に分散させ、セラミックス分散液を形成する。一例では、セラミックス材料のセラミックス分散液における濃度は0.01~50wt%であってもよい。
【0049】
工程S12の具体例では、セラミックス分散液に一次元ナノ材料を加え、この後、高速撹拌、高圧均質化、砂磨き分散などの少なくとも1つの方式を用いて、一次元ナノ材料を再度分散させ、セラミックス材料を一次元ナノ材料と十分に均一に混合させる。工程S11における分散の方式は、工程S12における分散の方式と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0050】
工程S13の具体例では、線状親水性ポリマーを加えた後、所定の圧力(例えば500-2000bar)での均質化及び所定の速度(例えば3k-50kr/min)での撹拌の少なくとも1つによって、前記線状親水性ポリマーが加えられた所定の分散液を分散させて、線状親水性ポリマーを前記一次元ナノ材料に付着させることもできる。
【0051】
付着は、線状親水性ポリマー自体の性能に基づき、分散時に付着を完成させることができる。
【0052】
一部の例では、巨大な表面エネルギーのため、分散液におけるセラミックス材料と一次元ナノ材料との粒子は凝集体として存在しており、これらの凝集体の中に普通のポリマーが入り込むことが困難である。本発明により選択された線状親水性ポリマーは、線形の特徴を有し、凝集体の内部に入り込む抵抗が小さい一方、線状親水性ポリマーとしてアミド材料を選択した場合に、アミドは強い極性の特性を有し、且つ水中での相溶性に非常に優れているため、線状親水性ポリマーは、水とともに凝集体の内部に容易に入り込み、極性の相互作用で、ナノ材料表面を強固に被覆し、外部からの強い力(高圧、高速撹拌など)により、凝集体を破壊し、水へと安定的に分散させていく。
【0053】
工程S14の具体例では、工程S13の後に得られた所定の溶液に粘着剤を加えてもよく、一部の例では、この後に助剤を加えてもよい。上記の具体例における様々な特徴の役割の説明を容易にするために、以下、試験によって得られたデータを説明する。
【0054】
【0055】
比較例2と比較例3から明らかなように、線状親水性ポリマーが加えられていない場合に、スラリーは安定的に存在できず、且つ塗布後のセパレータの表面粗さは1000nm以上であり、この粗さは、ベースフィルムの粗さ(450nm)をはるかに超えているが、線状親水性ポリマーと一次元ナノ材料が全く加えられていない場合(比較例1)よりも依然として小さくなっている。線状親水性ポリマーの添加量が0.15%である場合に、セパレータの表面粗さは400nmに達している。実施例1、実施例3~5と比較して明らかなように、このことは、線状親水性ポリマーの添加の有無と粗さとの相関性を示しており、適量の線状親水性ポリマーを加えることによって、粗さの低下に寄与できる。
【0056】
実施例1と比較例5を比較して明らかなように、ナノセルロースが加えられていない場合に、スラリーは沈降しやすく、且つ塗布されたセパレータの表面粗さは1200nmにも高くなっている。実施例1と比較例4を比較して明らかなように、ナノセルロースの含有量が高すぎると(25%)、スラリーの粘度が高すぎて、塗布できなくなる。このことに鑑みて、本発明の実施例は、一次元ナノ材料とセラミックス材料との質量比を0.01%~20%に設定している。
【0057】
その他の一次元ナノ材料と線状親水性ポリマーは、適切な範囲内にあるようにすれば、類似する機能、すなわち、表面粗さを低下させる(実施例3、実施例4、実施例5)機能を有するものとなっている。
【0058】
上記の粗さの問題を引き起こす主な原因は、セラミックス材料の寸法が小さい場合(粒子径5~500nm)、セラミックス材料は、表面エネルギーが非常に大きくなるため、非常に凝集しやすく、スラリーが不安定になり、塗布されたセパレータの表面の粗さが急激に上昇することにある。表面エネルギーを低下させるために、親水性ポリマーを加えることによって達成することができ、親水性ポリマーをセラミックス材料の表面と結合することによって、水との親和性を強化し、これにより、表面エネルギーを低下させることができ、比較例5、6に示すように、線状親水性ポリマーと水との質量比を0.01~0.1%に設定しているとき、セパレータの表面粗さは比較例1よりも優れているが、一次元ナノ材料が加えられていないため、安定性は依然として悪く、且つ粗さも依然として大きい。
【0059】
実施例1を実施例6と比較して、実施例5を実施例7と比較して、実施例3を実施例8と比較して明らかなように、分散媒の中の水の含有量が100wt%でない場合に、水の中に他の溶媒が導入されているため、セパレータの表面粗さを効果的に低下させることができるが、その原因は、他の溶媒が導入されたため、混合溶媒(すなわち分散媒)の表面張力が大幅に低下していることにあり、一次元ナノ材料、セラミックス材料、及び線状親水性ポリマーが加えられた後、セラミックス材料、一次元ナノ材料、及び線状親水性ポリマーの分散の均一性をさらに高めることができるため、セラミックス粒子の凝集の問題をよりよく解決し、コーティングの表面粗さをさらに低下させている。
【0060】
また、以上の実施例と比較例の実装過程においては、使用されているベースフィルムとしては、厚さ11μm、細孔径40nm、孔隙率42%のPEベースフィルムを選択しているため、以上の実施例と比較例によって具現化されている上記の技術的効果は、同じ(または類似する)ベースフィルムを使用して塗布することによって具現化されているものである。
【0061】
前述したナノスラリー及びその調製方法に対応するように、本発明の実施例は、ベースフィルム及びコーティングを含む電池セパレータを提供し、
前記コーティングは、所定のナノスラリーを前記ベースフィルムの少なくとも1つの表面に塗布して形成されたものであり、
前記所定のナノスラリーは、前述したセパレータコーティング用のナノスラリーであるか、または、前記所定のナノスラリーは、前述したナノスラリーの調製方法によって調製されたナノスラリーである。
【0062】
さらに、本発明の実施例は、ベースフィルム及びコーティングを含む電池セパレータを提供し、前記コーティングには、セラミックス材料、一次元ナノ材料、及び線状親水性ポリマーが含まれ、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にあり、前記線状親水性ポリマーは前記一次元ナノ材料に付着して前記セラミックス材料に連結する。
【0063】
本発明に係る任意の技術的用語、技術的手段、技術的効果、及び選択的な実施形態は、前文の関連する説明を参照して理解することができる。
【0064】
上記の電池セパレータに基づき、
図2を参照すると、本発明の実施例は、電池セパレータの製作方法をさらに提供し、当該製作方法は、S21~S22を含み、
S21では、前記したナノスラリーをベースフィルムに塗布して、前記ベースフィルム上でコーティングを形成し、
S22では、前記コーティングを有する前記ベースフィルムを乾燥させて、電池セパレータを得る。
【0065】
工程S21の具体例では、マイクログラビアロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、エクストルージョンコーティングなどの少なくとも1つの方式を用いて、スラリーをベースフィルムに塗布して乾燥させれば、セラミックス材料複合の電池セパレータを得ることができる。なお、塗布は、片面塗布であってもよいし、両面塗布であってもよく、これにより、片面又は両面にコーティングを形成する。
【0066】
本発明の実施例は、上記の選択的な解決手段に係る電池セパレータを備える電池をさらに提供する。
【0067】
本明細書の記述では、「1つの実施形態」、「1つの実施例」、「具体的な実施プロセス」、「一例」などの用語を用いた記述は、当該実施例又は例示を参照して説明する具体的な特徴、構造、材料、または特点が、本発明の少なくとも1つの実施例又は例示に含まれることを意味する。本明細書では、上記の用語の概略的な表現は、必ずしも同じ実施例又は例示を指すものではない。さらに、説明された具体的な特徴、構造、材料、または特点は、任意の1つ又は複数の実施例又は例示において適切な方式で組み合わされ得る。
【0068】
最後に説明すべきものとして、以上の各実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものであり、それを制限するものではなく、前述の各実施例を参照しながら本発明を詳細に説明するが、当業者であれば、依然として前述の各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はそのうちの一部又はすべての技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱しないと理解すべきである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレー
タコーティング用のナノスラリーであって、分散媒、セラミックス材料、一次元ナノ材料、線状親水性ポリマー、及び粘着剤を含み、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記分散媒の中に、水の含有量は90wt%以上であり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にある、ことを特徴とする、セパレー
タコーティング用のナノスラリー。
【請求項2】
前記線状親水性ポリマーは、前記一次元ナノ材料に付着して前記セラミックス材料に連結する、ことを特徴とする、請求項1に記載のナノスラリー。
【請求項3】
前記線状親水性ポリマーと前記分散媒の中の水との質量比は、0.01%~0.1%の区間範囲内にあり、前記線状親水性ポリマーの分子量は、1000グラム/モル~10000グラム/モルの区間範囲内にある、ことを特徴とする、請求項1に記載のナノスラリー。
【請求項4】
前記線状親水性ポリマーは、アミン親水性ポリマーを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載のナノスラリー。
【請求項5】
前記アミン親水性ポリマーは、
ポリアクリルアミド、及びポリエチレンイミンの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする、請求項4に記載のナノスラリー。
【請求項6】
前記一次元ナノ材料の直径は、1~50ナノメートルの区間範囲内にあり、前記一次元ナノ材料の長さは、100~1000ナノメートルの区間範囲内にある、ことを特徴とする、請求項1に記載のナノスラリー。
【請求項7】
前記粘着剤と前記セラミックス材料との質量比は、1%~10%の区間範囲にある、ことを特徴とする、請求項
1に記載のナノスラリー。
【請求項8】
前記粘着剤は、
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸リチウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びスチレンブタジエンゴムの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする、請求項
1に記載のナノスラリー。
【請求項9】
前記セラミックス材料と前記分散媒に対する前記セラミックス材料の質量比は、0.01wt%~50wt%である、ことを特徴とする、請求項1に記載のナノスラリー。
【請求項10】
請求項
1に記載のナノスラリーを調製するためのナノスラリーの調製方法であって、
セラミックス材料を、水の含有量が90wt%以上である分散媒に分散させ、セラミックス分散液を得る工程と、
一次元ナノ材料を前記セラミックス分散液に分散させ
、分散液を得る工程と、
線状親水性ポリマーを前
記分散液に加え
、溶液を得る工程と、
粘着剤を前
記溶液に加え、ナノスラリーを得る工程と、を含む、ことを特徴とする、ナノスラリーの調製方法。
【請求項11】
線状親水性ポリマーを前
記分散液に加えた後、前記調製方法は、
所定の圧力での均質化及
び所定の速度での撹拌
の少なくとも1つによって、前記線状親水性ポリマーが加えられ
た分散液を分散させて、前記線状親水性ポリマーを前記一次元ナノ材料に付着させる工程をさらに含む、ことを特徴とする、請求項
10に記載の調製方法。
【請求項12】
電池セパレータであって、ベースフィルム及びコーティングを含み、
前記コーティングは
、ナノスラリーを前記ベースフィルムの少なくとも1つの表面に塗布して形成されたものであり、
前
記ナノスラリーは、請求項1~
9のいずれか1項に記載のナノスラリー又は請求項
10に記載の調製方法によって調製されたナノスラリーである、ことを特徴とする、電池セパレータ。
【請求項13】
電池セパレータであって、ベースフィルム及びコーティングを含み、前記コーティングには、セラミックス材料、一次元ナノ材料、及び線状親水性ポリマーが含まれ、前記一次元ナノ材料と前記セラミックス材料との質量比は0.01%~20%の区間範囲内にあり、前記セラミックス材料の粒子径は5~500nmの区間範囲内にあり、前記線状親水性ポリマーは前記一次元ナノ材料に付着して前記セラミックス材料に連結する、ことを特徴とする、電池セパレータ。
【請求項14】
前記線状親水性ポリマーは、アミン親水性ポリマーを含み、前記セラミックス材料の表面にダングリングボンドが形成されている欠陥部位を有し、前記アミン親水性ポリマーが前記セラミックス材料の表面のダングリングボンドと結合し、前記アミン親水性ポリマー上の炭素含有分子鎖は、一次元ナノ材料と親和することによって、セラミックス材料-アミンポリマー-一次元ナノ材料の構造が形成される、ことを特徴とする請求項13に記載の電池セパレータ。
【請求項15】
請求
項12に記載の電池セパレータを備える、ことを特徴とする、電池。
【請求項16】
請求項13又は14に記載の電池セパレータを備える、ことを特徴とする、電池。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】