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特表2025-503275電気駆動システムのための電力システムおよびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】電気駆動システムのための電力システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20250123BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250123BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20250123BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20250123BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H02M7/493
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
H02M3/28 H
B60L9/18 L
B60L1/00 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545048
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-09-24
(86)【国際出願番号】 US2023011513
(87)【国際公開番号】W WO2023146890
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/303,283
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524281541
【氏名又は名称】スカルビー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バダウィ、モハメド・オサマ・アンワー
(72)【発明者】
【氏名】イブラヘム、アマー
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5G503BA02
5G503BB01
5G503DA02
5G503FA06
5G503GB06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB07
5H125BB09
5H125BC28
5H125EE27
5H125EE51
5H730AS01
5H730BB26
5H730BB27
5H730BB42
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA23
5H770DA41
5H770HA06W
(57)【要約】
車両のための電力システムは、電気駆動システムの電気モータの各相について並列に電気的に接続された1つまたは複数の電力変換システムを含む。各電力変換システムは、エネルギ貯蔵パックの複数のエネルギ貯蔵モジュールのうちのエネルギ貯蔵モジュールのセットに電気的に結合される。各電力変換システムは、電力回路および電力コントローラを含む。電力回路は、それぞれのエネルギ貯蔵モジュールのセットに電気的に結合され、電気駆動システムに駆動電力出力を提供し電力バスに補助電力出力を提供するように構成される。電力コントローラは、電気駆動システムの所望の電力出力に基づいて駆動電力出力を提供するように電力回路を制御するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための電力システムであって;前記車両は、電力バス、電気駆動システム、およびエネルギ貯蔵パックを含み;前記電力システムは、
前記電気駆動システムの電気モータの各相に並列に電気的に接続された1つまたは複数の電力変換システムを含み;各々の電力変換システムは、前記エネルギ貯蔵パックの複数のエネルギ貯蔵モジュールのうちのエネルギ貯蔵モジュールのセットに電気的に結合され;各々の電力変換システムは、
エネルギ貯蔵モジュールの各セットに電気的に結合され、前記電気駆動システムに駆動電力出力を提供し、前記電力バスに補助電力出力を提供するように構成された電力回路;と、
前記電気駆動システムの所望の電力出力に基づいて前記駆動電力出力を提供するように前記電力回路を制御するように構成された電力コントローラ;と、
を含む、
電力システム。
【請求項2】
前記電力回路は、前記駆動電力出力を提供するように構成された3レベル直流-交流(DC-AC)インバータを含む、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記電力回路は、前記電力バスに前記補助電力出力を提供するように構成された直流-直流(DC-DC)回路を含む、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項4】
前記1つまたは複数の電力変換システムのうちの少なくとも2つの電力変換システムの前記電力回路の前記DC-DCコンバータは、前記電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するために直列に電気的に結合される、
請求項3に記載の電力システム。
【請求項5】
前記1つまたは複数の電力変換システムのうちの少なくとも2つの電力変換システムの前記電力回路の前記DC-DCコンバータは、前記電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するために並列に電気的に結合される、
請求項3に記載の電力システム。
【請求項6】
前記車両は、複数の電力バスを含み;
前記1つまたは複数の電力変換システムのうちの少なくとも2つの電力変換システムの前記電力回路の前記DC-DCコンバータは、前記複数の電力バスのうちの第1の電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するために電気的に結合され;
前記1つまたは複数の電力変換システムのうちの第3の電力変換システムの前記電力回路の前記DC-DCコンバータは、前記複数の電力バスのうちの第2の電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するように構成される;
請求項3に記載の電力システム。
【請求項7】
前記電力回路は、
前記駆動電力出力を提供するように構成された3レベル直流-交流(DC-AC)インバータ;と、
前記電力バスに前記補助電力出力を提供するように構成された直流-直流(DC-DC)回路;と、
を含み、
前記DC-ACインバータとDC-DCコンバータとは互いに電気的に絶縁される、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項8】
前記車両は、複数の前記電力バスを含み、
前記1つまたは複数の電力変換システムのうちの第1の電力変換システムの前記電力回路は、前記複数の電力バスのうちの第1の電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するように構成され;
前記1つまたは複数の電力変換システムのうちの第2の電力変換システムの前記電力回路は、前記複数の電力バスのうちの第2の電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するように構成される;
請求項1に記載の電力システム。
【請求項9】
各電力変換システムは、複数の前記電力回路および複数の前記電力コントローラを含み、前記駆動電力出力および前記補助電力出力を提供するように構成された複数のサブシステムモジュールを形成し;
前記複数のサブシステムモジュールのうちの各サブシステムモジュールは、
前記エネルギ貯蔵モジュールのセットの中から選択されたエネルギ貯蔵モジュールのサブセットに電気的に結合された、前記複数の電力回路のうちの1つの電力回路;と、
前記1つの電力回路を制御するように構成された、前記複数の電力コントローラのうちの1つの電力コントローラ;と、
を含む、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項10】
前記電力変換システムの前記電力コントローラは、
前記電気駆動システムの動作条件に基づく所望の電力出力を取得し、
前記エネルギ貯蔵モジュールのセットの各エネルギ貯蔵モジュールの充電状態を決定し、
前記所望の電力出力および前記エネルギ貯蔵モジュールのセットの前記充電状態に基づいて、前記電力変換システムによって提供される電力設定値を決定する、
ように構成される、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項11】
前記電力コントローラは、前記エネルギ貯蔵モジュールのセットの前記充電状態に基づいて仮想抵抗を決定するように構成され;前記電力設定値は、前記仮想抵抗に基づいてさらに決定される、
請求項10に記載の電力システム。
【請求項12】
前記電力コントローラは、前記駆動電力出力が前記電気駆動システムに印加されたことに応答して、各エネルギ貯蔵モジュールの推定充電状態を決定するように構成され;後続の電力設定値は、前記推定充電状態に基づいて決定される、
請求項10に記載の電力システム。
【請求項13】
電気モータを含む電気駆動システム;と、
前記電気モータの各相について前記1つまたは複数の電力変換システムが提供される請求項1に記載の電力システム;と、
を備えるシステム。
【請求項14】
車両のための電力システムであって;前記車両は、電力バス、エネルギ貯蔵パック、および電気駆動システムを含み;前記電力システムは、
前記電気駆動システムの電気モータの各相に並列に電気的に接続された1つまたは複数の電力変換システムを含み;各々の電力変換システムは、前記エネルギ貯蔵パックの複数のエネルギ貯蔵モジュールのうちのエネルギ貯蔵モジュールのセットに電気的に結合され;各々の電力変換システムは、
前記電気駆動システムに駆動電力出力を提供しかつ前記電力バスに補助電力出力を提供するために電気的に結合された複数のサブシステムモジュールを含み;各々のサブシステムモジュールは、
前記エネルギ貯蔵モジュールのセットの中から選択されたエネルギ貯蔵モジュールのサブセットに電気的に結合され、比例駆動電力出力および比例補助電力出力を前記電力バスに提供するように構成された電力回路;と、
前記電気駆動システムの所望の電力出力に基づいて前記比例駆動電力出力を提供するように前記電力回路を制御するように構成された電力コントローラ;と、
を含み、
前記複数のサブシステムモジュールからの前記比例駆動電力出力は、前記駆動電力出力として提供され;
前記複数のサブシステムモジュールからの前記比例補助電力出力は、前記補助電力出力として提供される;
電力システム。
【請求項15】
サブシステムモジュールのための前記電力コントローラは、
前記電気駆動システムの前記所望の電力出力に基づく、それぞれの電力変換システムの電力設定値を取得し、
前記電力設定値および前記エネルギ貯蔵モジュールのサブセットの充電状態に基づいて、前記電力回路によって前記電気駆動システムに提供される前記比例駆動電力出力を決定する、
ように構成される、
請求項14に記載の電力システム。
【請求項16】
電力システムを用いて車両電気駆動システムに電力を供給するための方法であって;
前記電力システムの所望の電力出力を取得すること;前記電力システムは、1つまたは複数の電力変換システムであり;各々の電力変換システムは、複数のエネルギ貯蔵モジュールのうちのエネルギ貯蔵モジュールのセットに電気的に結合されており;と、
各電力変換システムについて、
前記エネルギ貯蔵モジュールのセットの各エネルギ貯蔵モジュールの充電状態を取得すること;と、
前記所望の電力出力および前記エネルギ貯蔵モジュールのセットの前記充電状態に基づいて、前記電力変換システムによって提供される電力設定値を決定すること;と、
を備える方法。
【請求項17】
各電力変換システムについて、前記エネルギ貯蔵モジュールのセットの前記充電状態に基づいて仮想抵抗を決定することをさらに備え;前記電力設定値は、前記仮想抵抗に基づいてさらに決定される、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電力設定値に基づいて、前記電力システムによって前記車両電気駆動システムに電力を供給すること;と、
前記車両電気駆動システムに電力を供給することに応答して、各エネルギ貯蔵モジュールの推定充電状態を決定すること;後続の電力設定値は、前記推定充電状態に基づいて決定される;と、
をさらに備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
各電力変換システムについて、
前記車両電気駆動システムに印加された電圧を測定すること;と、
前記印加された電圧および前記電力設定値に基づいて前記エネルギ貯蔵モジュールのセットの推定充電状態を決定すること;後続の電力設定値は、前記推定充電状態に基づいて決定される;と
をさらに備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項20】
各電力変換システムは、前記エネルギ貯蔵モジュールのセットのうちのエネルギ貯蔵モジュールのサブセットに電気的に結合された複数のサブシステムモジュールを含み;前記方法は、
各サブシステムモジュールによって、前記それぞれの電力変換システムの前記電力設定値を取得すること;と、
前記それぞれの電力変換システムの各サブシステムモジュールによって、前記電力設定値と、前記サブシステムモジュールに電気的に結合された前記エネルギ貯蔵モジュールのサブセットの充電状態とに基づいて、前記サブシステムモジュールによって前記車両電気駆動システムに提供される比例駆動電力出力を決定すること;と
をさらに備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記複数のサブシステムモジュールのうちの各サブシステムモジュールによって、
前記比例駆動電力出力を印加することに応答して、前記車両電気駆動システムに印加された電流を測定すること;と、
前記印加された電流と、前記エネルギ貯蔵モジュールのサブセットのピーク充電容量とに基づいて、前記エネルギ貯蔵モジュールのサブセットの推定充電状態を決定すること;後続の比例駆動電力出力は、前記エネルギ貯蔵モジュールのサブセットの前記推定充電状態に基づいて決定される;と
をさらに備える、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
各電力変換システムは、前記エネルギ貯蔵モジュールのセットのうちのエネルギ貯蔵モジュールのサブセットに電気的に結合された複数のサブシステムモジュールを含み;前記方法は、
前記複数のサブシステムモジュールのうちの各サブシステムモジュールから、前記エネルギ貯蔵モジュールのサブセットの充電状態を取得すること;と、
前記取得された充電状態に基づいて、前記サブシステムモジュールの所望の動作順序を決定すること;と、
前記所望の動作順序および前記電力設定値に基づいて、前記複数のサブシステムモジュールのうちの1つまたは複数のサブシステムモジュールを電力出力モジュールとして選択すること;と、
各電力出力モジュールについて、前記電力設定値に基づいて、前記車両電気駆動システムに提供される比例駆動電力設定値を決定すること;と、
前記それぞれの電力出力サブシステムモジュールに前記比例駆動電力設定値を提供すること;と
をさらに備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項23】
負荷需要および前記エネルギ貯蔵モジュールのサブセットの状態に基づいて、各電力出力モジュールにステータスを割り当てること;をさらに備え;前記ステータスは、能動的にオンであることおよび能動的にオンオフを切り換えることの中から選択される;
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
選択された期間中に能動的にオンであるステータスが提供された電力出力モジュールの第1のセットを有すること;をさらに備え;その間、前記電力出力モジュールの第1のセットとは異なる電力出力モジュールの第2のセットには、前記選択された期間中に能動的にオンオフを切り換えるステータスが提供される;
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記電力出力モジュールの第1のセットおよび前記電力出力モジュールの第2のセットの各々は、少なくとも1つの電力出力モジュールを含む、
請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用電気駆動システムのための電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本項の記載は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、先行技術を構成するものではない場合がある。
【0003】
地上車両および航空車両を含み得る電動車両は、一般に、電気モータを有する電気駆動システム、および電動車両の追加のデバイスに給電するための1つまたは複数のバスに電力を供給する電力システムによって給電される。電力システムに用いられる現在のアーキテクチャは、いくつかの課題を有し得る。たとえば、現在の電気駆動システムは、モデルごとに設計のカスタマイズを必要とし得ることにより、構成要素の開発が遅くなり、スケーラブルでない電力システムが単純なアップグレードの機会を制限する場合がある。さらに、電力システムの現在のアーキテクチャは、フィルタリングユニットを用いることがあり、システムのサイズおよび重量の増加を招き得る。電力システムに関するこれらの問題および他の問題は、本開示によって対処される。
【発明の概要】
【0004】
本項は、本開示の一般的な概要を提供するものであり、本開示の全範囲または全ての特徴の包括的な開示ではない。
【0005】
一形態において、本開示は、車両のための電力システムに向けられ;車両は、電力バス、電気駆動システム、エネルギ貯蔵パックを含む。電力システムは、電気駆動システムの電気モータの各相に並列に電気的に接続された1つまたは複数の電力変換システムを含む。各電力変換システムは、エネルギ貯蔵パックの複数のエネルギ貯蔵モジュールのうちのエネルギ貯蔵モジュールのセットに電気的に結合される。各電力変換システムは、電力回路と、電力コントローラとを含む。電力回路は、エネルギ貯蔵モジュールの各セットに電気的に結合され、電気駆動システムに駆動電力出力を提供し、電力バスに補助電力出力を提供するように構成される。電力コントローラは、電気駆動システムの所望の電力出力に基づいて駆動電力出力を提供するように電力回路を制御するように構成される。
【0006】
以下は、個別に、または任意の組み合わせで実装され得る、上記段落の電力システムの変形例を含む。
【0007】
いくつかの変形例において、電力回路は、駆動電力出力を提供するように構成された3レベル直流-交流(DC-AC)インバータを含む。
【0008】
いくつかの変形例において、電力回路は、電力バスに補助電力出力を提供するように構成された直流-直流(DC-DC)回路を含む。
【0009】
いくつかの変形例において、1つまたは複数の電力変換システムのうちの少なくとも2つの電力変換システムの電力回路のDC-DCコンバータは、電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するために直列に電気的に結合される。
【0010】
いくつかの変形例において、1つまたは複数の電力変換システムのうちの少なくとも2つの電力変換システムの電力回路のDC-DCコンバータは、電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するために並列に電気的に結合される。
【0011】
いくつかの変形例において、車両は、複数の電力バスを含む。1つまたは複数の電力変換システムのうちの少なくとも2つの電力変換システムの電力回路のDC-DCコンバータは、複数の電力バスのうちの第1の電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するために電気的に結合され;1つまたは複数の電力変換システムのうちの第3の電力変換システムの電力回路のDC-DCコンバータは、複数の電力バスのうちの第2の電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するように構成される。
【0012】
いくつかの変形例において、電力回路は、駆動電力出力を提供するように構成された3レベル直流-交流(DC-AC)インバータと、電力バスに補助電力出力を提供するように構成された直流-直流(DC-DC)回路とを含む。DC-ACインバータとDC-DCコンバータとは互いに電気的に絶縁される。
【0013】
いくつかの変形例において、車両は、複数の電力バスを含む。1つまたは複数の電力変換システムのうちの第1の電力変換システムの電力回路は、複数の電力バスのうちの第1の電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するように構成され;1つまたは複数の電力変換システムのうちの第2の電力変換システムの電力回路は、複数の電力バスのうちの第2の電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するように構成される。
【0014】
いくつかの変形例において、各電力変換システムは、複数の電力回路および複数の電力コントローラを含み、駆動電力出力および補助電力出力を提供するように構成された複数のサブシステムモジュールを形成する。複数のサブシステムモジュールのうちの各サブシステムモジュールは、エネルギ貯蔵モジュールのセットの中から選択されたエネルギ貯蔵モジュールのサブセットに電気的に結合された、複数の電力回路のうちの1つの電力回路と;1つの電力回路を制御するように構成された、複数の電力コントローラのうちの1つの電力コントローラと;を含む。
【0015】
いくつかの変形例において、電力変換システムの電力コントローラは、電気駆動システムの動作条件に基づく所望の電力出力を取得し;エネルギ貯蔵モジュールのセットの各エネルギ貯蔵モジュールの充電状態を決定し;所望の電力出力およびエネルギ貯蔵モジュールのセットの充電状態に基づいて、電力変換システムによって提供される電力設定値を決定する;ように構成される。
【0016】
いくつかの変形例において、電力コントローラは、エネルギ貯蔵モジュールのセットの充電状態に基づいて仮想抵抗を決定するように構成され、電力設定値は、仮想抵抗に基づいてさらに決定される。
【0017】
いくつかの変形例において、電力コントローラは、駆動電力出力が電気駆動システムに印加されたことに応答して、各エネルギ貯蔵モジュールの推定充電状態を決定するように構成され;後続の電力設定値は、推定充電状態に基づいて決定される。
【0018】
いくつかの変形例において、システムは、電気モータを含む電気駆動システムと、電気モータの各相について1つまたは複数の電力変換システムが提供される電力システムとを含む。
【0019】
一形態において、本開示は、車両のための電力システムに向けられ;車両は、電力バス、エネルギ貯蔵パック、電気駆動システムを含む。電力システムは、電気駆動システムの電気モータの各相に並列に電気的に接続された1つまたは複数の電力変換システムを含む。各電力変換システムは、エネルギ貯蔵パックの複数のエネルギ貯蔵モジュールのうちのエネルギ貯蔵モジュールのセットに電気的に結合される。各電力変換システムは、電気駆動システムに駆動電力出力を提供し、電力バスに補助電力出力を提供するために電気的に結合された複数のサブシステムモジュールを含む。各サブシステムモジュールは、電力回路と、電力コントローラとを含む。電力回路は、エネルギ貯蔵モジュールのセットの中から選択されたエネルギ貯蔵モジュールのサブセットに電気的に結合され、比例駆動電力出力および比例補助電力出力を電力バスに提供するように構成される。電力コントローラは、電気駆動システムの所望の電力出力に基づいて比例駆動電力出力を提供するように電力回路を制御するように構成される。複数のサブシステムモジュールからの比例駆動電力出力は、駆動電力出力として提供され、複数のサブシステムモジュールからの比例補助電力出力は、補助電力出力として提供される。
【0020】
いくつかの変形例において、サブシステムモジュールのための電力コントローラは、電気駆動システムの所望の電力出力に基づく、それぞれの電力変換システムの電力設定値を取得し;電力設定値およびエネルギ貯蔵モジュールのサブセットの充電状態に基づいて、電力回路によって電気駆動システムに提供される比例駆動電力出力を決定する;ように構成される。
【0021】
一形態において、本開示は、電力システムを用いて車両電気駆動システムに電力を供給するための方法に向けられる。この方法は、電力システムの所望の電力出力を取得することを含み;電力システムは、各々が複数のエネルギ貯蔵モジュールのうちのエネルギ貯蔵モジュールのセットに電気的に結合された1つまたは複数の電力変換システムを含む。各電力変換システムについて、方法はさらに、エネルギ貯蔵モジュールのセットの各エネルギ貯蔵モジュールの充電状充電状態に基づいて、態を取得すること;と、所望の電力出力およびエネルギ貯蔵モジュールのセットの電力変換システムによって提供される電力設定値を決定すること;とを含む。
【0022】
以下は、個別に、または任意の組み合わせで実施され得る、電力システムを用いて車両電気駆動システムに電力を供給するための方法の変形例を含む。
【0023】
いくつかの変形例において、方法は、各電力変換システムについて、エネルギ貯蔵モジュールのセットの充電状態に基づいて仮想抵抗を決定することをさらに含み;電力設定値は、仮想抵抗に基づいてさらに決定される。
【0024】
いくつかの変形例において、方法は、電力設定値に基づいて、電力システムによって車両電気駆動システムに電力を供給すること;と、車両電気駆動システムに電力を供給することに応答して、各エネルギ貯蔵モジュールの推定充電状態を決定すること;とをさらに含み;後続の電力設定値は、推定充電状態に基づいて決定される。
【0025】
いくつかの変形例において、方法は、各電力変換システムについて、車両電気駆動システムに印加された電圧を測定すること;と、印加された電圧および電力設定値に基づいてエネルギ貯蔵モジュールのセットの推定充電状態を決定すること;とをさらに含み;後続の電力設定値は、推定充電状態に基づいて決定される。
【0026】
いくつかの変形例において、各電力変換システムは、エネルギ貯蔵モジュールのセットのうちのエネルギ貯蔵モジュールのサブセットに電気的に結合された複数のサブシステムモジュールを含む。方法は、各サブシステムモジュールによって、それぞれの電力変換システムの電力設定値を取得すること;と、それぞれの電力変換システムの各サブシステムモジュールによって、電力設定値と、サブシステムモジュールに電気的に結合されたエネルギ貯蔵モジュールのサブセットの充電状態とに基づいて、サブシステムモジュールによって車両電気駆動システムに提供される比例駆動電力出力を決定すること;とをさらに含む。
【0027】
いくつかの変形例において、方法は、複数のサブシステムモジュールのうちの各サブシステムモジュールによって、比例駆動電力出力を印加することに応答して、車両電気駆動システムに印加された電流を測定すること;と、印加された電流と、エネルギ貯蔵モジュールのサブセットのピーク充電容量とに基づいて、エネルギ貯蔵モジュールのサブセットの推定充電状態を決定すること;とをさらに含み;後続の比例駆動電力出力は、エネルギ貯蔵モジュールのサブセットの推定充電状態に基づいて決定される。
【0028】
いくつかの変形例において、各電力変換システムは、エネルギ貯蔵モジュールのセットのうちのエネルギ貯蔵モジュールのサブセットに電気的に結合された複数のサブシステムモジュールを含む。方法は、複数のサブシステムモジュールのうちの各サブシステムモジュールから、エネルギ貯蔵モジュールのサブセットの充電状態を取得すること;と、取得された充電状態に基づいて、サブシステムモジュールの所望の動作順序を決定すること;と、所望の動作順序および電力設定値に基づいて、複数のサブシステムモジュールのうちの1つまたは複数のサブシステムモジュールを電力出力モジュールとして選択すること;と、各電力出力モジュールについて、電力設定値に基づいて、車両電気駆動システムに提供される比例駆動電力設定値を決定すること;と、それぞれの電力出力サブシステムモジュールに比例駆動電力設定値を提供することをさらに含む。
【0029】
いくつかの変形例において、方法は、負荷需要およびエネルギ貯蔵モジュールのサブセットの状態に基づいて、各電力出力モジュールにステータスを割り当てること;をさらに含み;ステータスは、能動的にオンであることおよび能動的にオンオフを切り換えることの中から選択される。
【0030】
いくつかの変形例において、方法は、選択された期間中に能動的にオンであるステータスが提供された電力出力モジュールの第1のセットを有すること;をさらに含み;その間、電力出力モジュールの第1のセットとは異なる電力出力モジュールの第2のセットには、選択された期間中に能動的にオンオフを切り換えるステータスが提供される。
【0031】
いくつかの変形例において、電力出力モジュールの第1のセットおよび電力出力モジュールの第2のセットの各々は、少なくとも1つの電力出力モジュールを含む。
【0032】
さらなる適用可能領域は、本明細書で提供される説明から明らかになる。この説明および具体例は、例示のみを目的とすることが意図されており、本開示の範囲を限定することは意図されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示が適切に理解され得るように、以下、添付図面を参照して例として与えられる様々な形態が説明される。
【0034】
図1】本開示に係る電力システムを有する車両のブロック図である。
図2A】本開示に係る電気駆動システムの電気モータを有する複数の電力変換システムを有する電力システムの配線構成を示す。
図2B】本開示に係る電気駆動システムの電気モータを有する複数の電力変換システムを有する電力システムの配線構成を示す。
図2C】本開示に係る電気駆動システムの電気モータを有する複数の電力変換システムを有する電力システムの配線構成を示す。
図3】本開示に係る電力変換システムのブロック図である。
図4】本開示に係る電力変換システムの例示的な電力回路を示す。
図5】本開示に係る複数のサブシステムモジュールを有する電力変換システムの別の形態を示す。
図6】本開示に係るサブシステムモジュールのブロック図である。
図7】本開示に係るサブシステムモジュールの例示的な電力回路である。
図8】本開示に係る電力変換システムのための例示的な制御ルーチンのフローチャートである。
図9A】本開示に係る複数のサブシステムモジュールを有する電力変換システムのための例示的な制御ルーチンのフローチャートである。
図9B】本開示に係る複数のサブシステムモジュールを有する電力変換システムのための例示的な制御ルーチンのフローチャートである。
図10】本開示に係る複数のサブシステムモジュールを有する電力変換システムのための制御ルーチンの別の例のフローチャートである。
【0035】
本明細書で説明される図は、例示のみを目的としており、本開示の範囲をいかなるようにも限定することは意図されていない。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、応用、または用途を制限することは意図されていない。図面を通して、対応する参照番号は、同様のまたは対応する部分および特徴を示すことを理解すべきである。
【0037】
本開示は、車両の電気駆動システムに駆動電力出力を提供し、1つまたは複数の電力バスに補助電力出力を提供するためのモジュール式電力変換構造を有するための電力システムを提供する。一形態において、電力システムは、電力回路および電力コントローラを有する1つまたは複数の電力変換システム(PCS)を含む。本明細書で説明されるように、電気駆動システムおよび電力バス(複数も可)に電力を供給するために複数のPCSが直列および/または並列に結合されることにより、分散型ソフトウェア制御を有するモジュール式および/またはスケーラブルなハードウェア設計を提供することができる。
【0038】
図1を参照すると、他の構成要素の中でも特に、本開示の電力システム100が車両102に提供される。他の構成要素の中でも特に、車両102は、エネルギ貯蔵システム104、電力システム100、電気駆動システム106、および電力バス108を含む。例示のみを目的として、実線109は、電力線を示すために提供され、破線111は、通信リンクを示すために提供される。電力線109は、実際の物理的回路(たとえばワイヤ、ポート、回路)を示すことを意図されず、以下の説明で明らかであるように、同じ電力が供給されることを意味すると解釈されてはならない。通信リンク111に関して、エネルギ貯蔵システム、電気、電気駆動システム100、および電気駆動システム106を含む車両102内のシステムは、たとえば無線通信および/または有線通信などの様々な適切な方法で通信可能に結合され得ることを容易に理解すべきである。
【0039】
エネルギ貯蔵システム104は、エネルギ貯蔵コントローラ110、複数のエネルギ貯蔵モジュール114を含むエネルギ貯蔵パック112を含む。エネルギ貯蔵コントローラ110は、たとえばエネルギ貯蔵パック112およびエネルギ貯蔵モジュール114の各々の充電状態およびエネルギ貯蔵パック112の温度などであるがこれらに限定されないエネルギ貯蔵パック112の動作特性を監視するように構成される。一形態において、エネルギ貯蔵パック112は、電力システム100に電力を供給するために、エネルギ貯蔵モジュール114として複数のバッテリモジュール/セルを有するバッテリパックとして提供され得る。
【0040】
電気駆動システム106は、1つまたは複数の方向に車両を駆動するように構成され、他の構成要素の中でも特に、駆動システムコントローラ116および1つまたは複数の電子モータ118を含む。駆動システムコントローラ116は、電気モータ(複数も可)118の性能を監視し、たとえばモータ速度、トルク、および安全条件などであるがこれらに限定されない1つまたは複数の動作条件に基づいてモータ(複数も可)118に対する所望の電力出力を決定するために構成される。駆動システムコントローラ116は、各モータ118に1つのコントローラが提供され得るように、または1つのコントローラが複数または全てのモータ118を制御するように構成され得るように、様々な適切な方法で構成され得る。電気モータ(複数も可)118は、単相または多相電気モータであってよい。
【0041】
電力バス108は、一般に、たとえばヒートポンプ、電動ステアリング(EPS)ポンプ、補助コンセント、および/またはファンなどであるがこれらに限定されない車両102内の他の電気デバイスに直流(DC)電力を供給するように構成される。いくつかの変形例において、車両は、同じおよび/または異なるDC電力を供給するように構成された複数の電力バス108を含んでよい。たとえば、1つの電力バス108が12VのDCを供給し、別の電力バスが24VのDCを供給してよい。
【0042】
本開示の電力システム100は、電気駆動システム106に駆動電力出力を提供し、電力バス108に補助電力出力を提供するように構成される。一形態において、電力システム100は、電気駆動システム106および電力バス108に電力を供給するための複数の電力変換システム(PCS)120-1、120-2、120-3を含む。PCS120-1、120-2、120-3は、集合的にPCS120と称され、3つのPCS120が示されるが、電力システム100は、1つまたは複数のPCS120を含んでよく、3つに限定されるべきではない。一形態において、PCS120の数は、電気駆動システム106および/または電力バス(複数も可)108の設計および/または要求に基づいてよい。
【0043】
電気駆動システム106に関して、「P」個のPCS120は、同じモータ118に、または別の変形例において「X」個のモータ118に電力を供給するために並列に接続され、「X」は1以上の数である。たとえば、図2A~2Cを参照すると、電力システム100が利用され得る様々な応用を示すために異なる配線構成が提供される。図2Aは、モータ118として多相モータを示し、PCS120を有する電力システム100は、位相Aに提供される。PCS120は、単独星構成で電気モータ118を動作させるために並列に接続される。図2Bは、電気モータ118を動作させるために並列に接続された複数のPCS120を各々が有する2つの電力システム100Aおよび100Bを有する二星構成を示す。図2Cは、単独デルタ構成電気モータ118を動作させるために並列に接続されたPCS120を有する電力システム100を示す。図2A図2B図2Cにおいて、Nはニュートラルであり、L1、L2、L3は、PCS120間の循環電流を低減するために各PCS120の出力とモータ118の端子との間に接続された任意選択的なインダクタであり、u、u、uは電圧を示す。多相モータに関して、各相が本開示の電力システム100を含んでよく、言い換えると、各相が1つまたは複数のPCS120を含んでよいことを容易に理解すべきである。PCSの数は、相ごとに異なり得る。
【0044】
一形態において、各PCS120は、エネルギ貯蔵パック112の複数のエネルギ貯蔵モジュール114のうちのエネルギ貯蔵モジュール114のセットに電気的に結合される。たとえば、図1を参照すると、PCS120は、エネルギ貯蔵モジュールのセットとして、エネルギ貯蔵モジュール114の列に電気的に結合される。本明細書で提供されるように、本開示の電力システム100は、エネルギ貯蔵モジュール114のための様々な電力レベル(たとえば電圧)で作動してよい。ここで、エネルギ貯蔵モジュールの「セット」という用語は、1つまたは複数のエネルギ貯蔵モジュール114を含んでよい。
【0045】
一形態において、図3を参照すると、各PCS120は、電力コントローラ200および電力回路202を含む。本明細書でさらに説明されるように、電力コントローラ200は、所望の電力出力に基づいてPCS120によって供給される電力量を決定し、電気駆動システム106に駆動電力出力を供給するように電力回路202を制御するように構成される。電力コントローラ200は、たとえばソフトウェアプログラムを実行するためのプロセッサ、電力電子スイッチを操作するためのスイッチドライバ、およびデータを受信および/または他のコントローラに送信するための通信ポートなどであるがこれらに限定されない、本明細書で説明されるような動作を行うための様々なハードウェアおよび/またはソフトウェア構成要素を含んでよい。
【0046】
電力回路202は、エネルギ貯蔵モジュール114のセットに電気的に結合され、電気モータ118に駆動電力出力を提供し、電力バス108に補助電力出力を提供するように構成される。特に、一形態において、電力回路202は、駆動電力出力を提供するように構成された直流-交流(DC-AC)インバータ204と、補助電力出力を提供するように構成された直流-直流(DC-DC)コンバータ206とを含む。DC-ACインバータ204およびDC-DCコンバータ206は、互いに電気的に絶縁される。具体的には、DC-ACインバータ204およびDC-DCコンバータ206の少なくとも1つは、コンバータ端子間の貫通故障を防ぐための電気絶縁回路を含む。応用例において、電力回路202は、DC-DCコンバータ206における磁気絶縁、および/または、たとえばコンバータの一次側と二次側とを分離するための誘導絶縁または容量絶縁などであるがこれらに限定されない他の適切な電気絶縁回路を含んでよい。
【0047】
いくつかの応用において、複数の変換システムの電力回路のDC-DCコンバータは、電力バスにそれぞれの補助電力出力を提供するために電気的に結合され得る。たとえば、複数のPCS120のうちの少なくとも2つのPCS120の電力回路202のDC-DCコンバータは、それぞれの補助電力出力を電力バス108に提供するために直列または並列に電気的に結合される。したがって、2つの12Vを生成するDC-DCコンバータを直列に電気的に結合することによって、電力バス108に48Vが供給され得る。また、車両102が複数の電力バス108を含む場合、電力変換システムのDC-DCコンバータ206は、異なる電力バス108に割り当てられ得る。たとえば、2つのPCS120のDC-DCコンバータ206は、第1の電力バス108にそれぞれの補助電力出力を提供するために電気的に結合され、第3のPCS120のDC-DCコンバータ206は、第2の電力バス108にそれぞれの補助電力出力を提供するように構成される。また別の例において、第1のPCS120のDC-DCコンバータ206は、第1の電力バス108にそれぞれの補助電力出力を提供するように構成され、第2のPCS120のDC-DCコンバータ206は、第2の電力バス108にそれぞれの補助電力出力を提供するように構成される。したがって、本開示の電力システム100は、車両102の1つまたは複数の電力バス108に電力を供給するために様々な適切な方法で構成され得る。
【0048】
図4を参照すると、エネルギ貯蔵モジュール302のセットに接続された電力回路300が提供され、それぞれ電力回路202およびエネルギ貯蔵モジュール114として用いられ得る。電力回路300は、電気駆動システム106に駆動電力出力を供給するDC-ACインバータ304と、電力バス108に補助電力出力を供給するDC-DCコンバータ306とを備えるコンバータのストリングを有するものとして説明され得る。DC-ACインバータ304およびDC-DCコンバータ306は、DC-ACインバータ204およびDC-DCコンバータ206として用いられてよい。駆動電力出力は矢印308として示され、補助電力出力は矢印310として示される。
【0049】
一形態において、DC-ACインバータ304は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、トランジスタまたはゲートターンオフサイリスタ(GTO)であってよい電力電子スイッチで構成されたパワーエレクトロニクスを有する3レベルインバータとして提供される。パワーエレクトロニクススイッチは、所望の駆動電力出力を生成するために電力コントローラ200によって操作可能である。一形態において、DC-ACインバータ304は双方向インバータとして提供され、電気モータ118に電力を供給するために出力端子は互いに直列および並列構成で接続される。DC-ACインバータ304は、追加のおよび/または他の構成要素を含んでもよく、図4に示され提供される回路構成に限定されるべきではないことを容易に理解すべきである。たとえば、DC-ACインバータ304は、フィルタおよび/またはDC-DCコンバータ306からインバータ304を絶縁するための構成要素を含んでよい。
【0050】
DC-DCコンバータ306は、たとえばフライバックコンバータ、ハーフブリッジ回路、フルブリッジ回路、および/またはインダクタおよびキャパシタなどであるがこれらに限定されないエレクトロニクスを有する絶縁コンバータとして提供される。図4において、DC-DCコンバータ306は、12Vまたは48Vレベルで調整されたDC出力を提供する。ただし、上述したように、DC-DCコンバータ306は、個々に、または他のDC-DCコンバータ306と関連して、1つまたは複数の電力バス108に補助電力出力(複数も可)を提供するために様々な適切な方法で構成されてよく、図に示す構成に限定されるべきではない。一形態において、DC-DCコンバータ306は、双方向コンバータである。DC-DCコンバータ306は、追加のおよび/または他の構成要素を含んでよく、図4に示され提供される回路構成に限定されるべきではないことを容易に理解すべきである。たとえば、DC-DCコンバータ306は、フィルタを含んでよく、および/またはDC-ACインバータ304からコンバータ306を絶縁するための構成要素を含まなくてよい。
【0051】
一形態において、電力バス108への電力に寄与するエネルギ貯蔵モジュール114の数は、全ての電力バス108の総電力消費量と比較した場合のその電力バス108の総電力消費量に正比例してよい。したがって、複数のエネルギ貯蔵モジュールのうちのエネルギ貯蔵モジュール114は、電力バス108の1つまたは複数に電力を寄与してよく、または寄与しなくてよい。
【0052】
図3の各PCS120は、電気駆動システム106への駆動電力出力を生成するための3レベルDC-ACインバータを含む。図5および図6を参照すると、別の形態において、本開示の電力システム100は、同相に並列に接続され、各々がマルチレベルモジュール式コンバータ構成を有する複数のPCS400-1、400-2、および400-3(集合的に「PCS400」)を含んでよい。特に、各PCS400は、複数のサブシステムモジュール(SM)402を含み、各SM402は、電力コントローラ404および電力回路406を含む。言い換えると、各SM402がPCS120とみなされてよく、複数のPCS120が直列に接続されて変換システム120のストリングを形成する。複数のPCS400が示されるが、PCS400の数は1つまたは複数であってよく、PCS400ごとのSM402の数は2つ以上であってよい。また、複数のPCS400が存在する場合、SM402の数は、PCS400間で同じであっても異なってもよい。一形態において、PCS400の数および選択されたPCS400に関するSM402の数は、電気駆動システム106および/または電力バス(複数も可)108の設計および/または要求に基づいてよい。
【0053】
電力回路202と同様に、SM402の電力回路406は、DC-ACインバータ408およびDC-DCコンバータ410を含む。SM402の電力回路406は、比例駆動電力出力および比例補助電力出力を提供するように構成される。複数のSM402の電力回路からの比例駆動電力出力は、それぞれのPCS400からの駆動電力出力として提供され、複数のSM402の電力回路406からの比例補助電力出力は、それぞれのPCS400からの補助電力出力として提供される。
【0054】
PCS120と同様に、各PCS400は、エネルギ貯蔵パック112の複数のエネルギ貯蔵モジュール114のうちのエネルギ貯蔵モジュール114のセットに電気的に結合される。各SM402は、エネルギ貯蔵モジュールのセットのうちのエネルギ貯蔵モジュール114のサブセットに電気的に結合される。特に、図7を参照すると、SM402のための電力回路406は、電気回路300を用いて実装され得るが、一般に参照番号420で識別されるエネルギ貯蔵モジュール114のサブセットに電気的に結合される。すなわち、DC-ACインバータ408は、DC-ACインバータ304とともに実装されてよく、PCS400のDC-ACインバータ408、304は、直列および/または並列に互いに電気的に結合される。DC-DCコンバータ410は、DC-DCコンバータ306とともに実装されてよく、PCS400のDC-DCコンバータ410は、直列および/または並列に互いに電気的に結合される。PCS400の構成に関して、DC-DCコンバータ306は、矢印422で識別される比例補助電力出力を出力し、DC-ACインバータは、矢印424で識別される比例駆動電力出力を出力する。エネルギ貯蔵モジュールのサブセットは、1つまたは複数のエネルギ貯蔵モジュール/セルを含んでよい。
【0055】
PCS120と同様に、PCS400は、PCS400からの補助電力出力が単一の電力バス108に提供されるか、あるいは1つまたは複数の電力バス108にそれぞれの補助電力出力を提供するために1つまたは複数の他のPCS400の端子に電気的に結合される(たとえば端子が並列および/または直列に接続される)ように配線され得る。
【0056】
PCS400は、電気駆動システム106への(たとえば1つまたは複数の電気モータへの)駆動電力出力と、1つまたは複数の電力バス108への補助電力出力との両方を調整するために、スケーラブルかつモジュール式のマルチレベル電力システム構成を提供する。すなわち、PCS400は、分散型DC-DCコンバータ410およびDC-ACインバータ408を用いて複数のDCおよびAC電力出力を生成するように設計される。
【0057】
本明細書で説明される変形例において、電力システム100は、1レベルまたは2レベルの制御を含んでよい。たとえば、第1のレベルは電力変換制御であってよく、任意選択的な第2のレベルはサブモジュール制御であってよい。電力変換制御は、複数のコントローラを含んでよく、各コントローラが所与のPCS120、400を制御する。たとえば、PCS120に関して、電力コントローラ200は、電力システム100のための電力変換制御を形成してよい。任意選択的なサブモジュール制御は、PCS400のサブシステムモジュール構成とともに用いられ、モジュールコントローラの数は、SM402の数に等しくてよい。たとえば、電力コントローラ404は、第2のレベルのサブモジュール制御を形成してよい。PCS400を有する電力システム100に関して、第1のレベルの制御は、各PCS400のためのコントローラとして提供され得る。たとえば、図6は、SM402に通信可能に結合されたPCSコントローラ430を示す。一形態において、各PCS400は、PCS400のSM402の各電力コントローラ404と通信するための専用PCSコントローラ430を含むことにより、2レベル制御を形成する。別の形態において、複数のSM402の電力コントローラ404の動作は、PCSコントローラ430に実装されるので、SM402のための専用電力コントローラ404は除外され、PCS400の単一レベル制御が提供される。
【0058】
例示的な実装において、電気駆動システム106の駆動システムコントローラ116は、モータ118の1つまたは複数の動作条件を取得するように構成され、電力システム100に提供される電気駆動システム106の所望の電力出力を決定する。たとえば、駆動システムコントローラ116は、所望のモータ速度を受信し、所望の速度に基づいて、たとえば比例積分(PI)制御および/または予測モデル制御などであるがこれらに限定されない閉ループ制御に提供される速度誤差を決定する。閉ループ制御に基づいて、駆動システムコントローラ116は、所望のトルクを決定するように構成され、他の制御モデルを用いて、電気モータに流れる参照電流および/または電気モータに印加される参照電圧を決定する。参照電圧は、逆起電力(Q成分)と同じ周波数および位相を有する参照AC信号の大きさ、および参照AC電圧を生成するためにQ成分から90度の位相シフトを有する別のAC電圧(D成分)の大きさを示すDQ回転参照フレームにおいて表され得る。Q成分およびD成分は、所望の電力出力として、単相および多相システムのために用いられ得る。Q成分およびD成分は、3相の回転ベクトルの結果であってよく、Dベクトルは、Qベクトルを生成する成分から90度位相シフトした3相から生成され得る軸である。Q成分およびD成分の値は、所望の電力出力として電力システム100に提供され得る。また参照電流および/または参照電圧も所望の電力出力の例である。
【0059】
上述した、駆動システムコントローラ116が動作条件に基づいてどのように所望の電力出力を決定するかの例は、1つの条件(たとえばモータ速度)を用いる一例にすぎない。駆動システムコントローラ116は、通常、複数の変数および動作条件に基づいて所望の電力出力を決定するために複雑な制御スキームを用いることを容易に理解すべきである。本開示の電力システム100は、電気モータ118に必要な電力を供給するために、そのような駆動システムコントローラ116とともに用いられ得る。
【0060】
PCS120に関して、各PCS120は、電気モータ118のための所望の電力出力を受信し、PCS120の電力コントローラ200は、所望の電力出力およびエネルギ貯蔵モジュール114のセットの充電状態(SOCまたはSoC)に基づいてPCS120によって提供される電力設定値を決定するように構成される。たとえば、電力コントローラ200は、所望の電力出力としてQおよびD電圧の値を受信してよく、電力コントローラ200は、電力回路202に電気的に結合されたエネルギ貯蔵モジュール114のセットのSOCを推定または計算する。一形態において、電力コントローラ202は、式(1)を用いて決定される出力電圧(
【0061】
【数1】

)としてi番目のPCS120の電力設定値を決定する。
【0062】
【数2】

式(1)において、Vは、所望の電力出力のQ成分であり、Vは、所望の電力出力のD成分であり、
【0063】
【数3】

は、以前の制御サイクルで測定された逆起電力と同位相のDC-ACインバータ電流の成分であり、
【0064】
【数4】

は、以前の制御サイクルで測定された逆起電力から90度位相シフトしたDC-ACインバータ電流の成分であり、SoCは、i番目のPCSに関連するエネルギ貯蔵モジュール114のセットの等価SOCレベルであり、cosΦは、逆起電力の余弦位相であり、sinΦは、逆起電力の正弦位相であり、Kは、全てのPCS120にわたって用いられるグローバル定数であり、KBSは、全てのPCS120にわたって用いられるグローバル安定化定数である。定常状態において、PCS120は、PCS120から電気モータ118に流れる電流が同じ大きさおよび位相を維持するように、同じ値
【0065】
【数5】

および
【0066】
【数6】

を適用する。したがって、x番目のPCS120とy番目のPCS120とは、以下の(2)に記載される関係を適用する。同じ関係が
【0067】
【数7】

および
【0068】
【数8】

にも適用され、これは、各PCSが自身のSOCに比例する電力量を供給し、PCS120のエネルギ貯蔵モジュール間でのSOC均等化がもたらされることを示す。
【0069】
【数9】

同様の制御方式が、少なくとも1つのPCS400を有する電力システム100にも提供され得る。特に、各SM402は、エネルギ貯蔵モジュール114のサブセットに接続され、電力コントローラ404によって制御されるか、あるいは電力コントローラ404がない場合、SM402を有するPCSコントローラ430によって制御される。SM402が電力コントローラ404を含む第1の応用において、電力コントローラ404は、PCS400の電力設定値を取得するように構成される。電力設定値は、PCSコントローラ430によって提供され得る。
【0070】
例示的な応用において、電力設定値は、PCS400によって提供される参照電流として提供される。SMモジュール402、特に電力コントローラ404は、式(3)を用いて電流出力(
【0071】
【数10】

)として比例駆動電流を決定するように構成され、ここで「j」は、複数のSMモジュールの中からSMモジュール402(すなわち、i番目のPCS400の合計J個のSMモジュールのうちのj番目のSMモジュール)を識別する。式(3)において、
【0072】
【数11】

は、PCS400によって指定されるQ成分であり、
【0073】
【数12】

は、PCS400によって指定されるD成分であり、
【0074】
【数13】

は、以前の制御サイクルで測定されたPCS400の電流と同位相のモジュール式コンバータ電圧の成分であり、
【0075】
【数14】

は、以前の制御サイクルで測定されたPCS400の電流から90度位相シフトしたモジュール式コンバータ電圧の成分であり、SoCは、j番目のSM402に関連するエネルギ貯蔵モジュールのサブセットの等価SOCレベルであり、cosΦは、電流の余弦位相であり、sinΦは、電流の正弦位相であり、kは、i番目のPCS内の全てのSM402にわたって用いられるグローバル定数であり、KBMは、i番目のPCS内の全てのSM402にわたって用いられるグローバル安定化定数である。
【0076】
【数15】

定常状態において、全てのSM402は、以下の(4)に記載されるのと同じ値を適用する。
【0077】
【数16】

したがって、x番目のSM402とy番目のSM402とは、(5)の関係を適用し、(6)の関係がもたらされる。同じ関係が
【0078】
【数17】

および
【0079】
【数18】

にも適用され、各SM402が自身のSOCレベルに比例する電力量を供給し、負荷電力を用いてエネルギ貯蔵モジュール114間でのSOC均等化がもたらされることを示す。
【0080】
【数19】
【0081】
【数20】

第2のアプローチにおいて、所望の電力出力は、参照電圧(Vref)として提供され、PCS400に送信される。PCSコントローラ430は、上記の(1)を用いて、参照電圧出力(
【0082】
【数21】

)としてPCS400の電力設定値を決定するように構成され、ここで「k」は、複数のPCS400の中のPCS400(たとえばPCSの総数のうちのk番目のPCS)を表す。
【0083】
k番目のPCSコントローラ430は、それに接続されたSM402の等価SoC(SoC)の推定値およびPCS内のSM402の数(N)を用いて、以下の(7)によって求められる電圧
【0084】
【数22】

を決定する。
【0085】
【数23】

k番目のPCSコントローラ430は、PCS400によって提供される電力設定値としてSMに
【0086】
【数24】

を提供する。m番目のSM402(m=1、2、・・・、N)は、電圧
【0087】
【数25】

を受信し、以下の(8)によって定義される電圧
【0088】
【数26】

として比例駆動電力出力を決定し、ここで
【0089】
【数27】

は、m番目のSM402のエネルギ貯蔵モジュールのサブセットのSOCである。
【0090】
【数28】

したがって、k番目のPCSの端子における電圧
【0091】
【数29】

は(9)によって提供され、さらに
【0092】
【数30】

であるため、(10)によって表される。
【0093】
【数31】
【0094】
【数32】

PCSコントローラは、関係
【0095】
【数33】

を用いることによってSoCの推定値として
【0096】
【数34】

を用いる。SOCは非常に緩慢に変化するため、毎サイクルで用いられるSoCの推定値は、後続のサイクルでSM402によって測定される
【0097】
【数35】

として提供される。したがって、PCS400の電力出力は、(11)として提供される。
【0098】
【数36】

k番目のPCSのm番目とn番目との電力比は(12)によって求められ、ここでiは、PCS400を通過する電流であり、対応するSoCの必要な割合に従う。
【0099】
【数37】
【0100】
【数38】

と合計PCS電力Pとの比は、(13)によって求められる。
【0101】
【数39】

同様に、b番目のPCS400のa番目のSM402に関して、
【0102】
【数40】

である。したがって、(2)に基づく関係(14)、および(15)が提供され得る。
【0103】
【数41】
【0104】
【数42】

異なるPCS400内のSM402によって供給される電力間の比は、それらのSoCの比に比例する。PCS400が同じ数のSM402を有する場合、
【0105】
【数43】

であり、電力比は、対応するSoC間の比に従う。そうでない場合、PCS400の仮想抵抗の値Kは、PCS400ごとに異なる数のSM402に対応するように調整され得る。
【0106】
PCSコントローラは、定常状態においてVoutがVrefと一致するまで
【0107】
【数44】

を調整するように構成される。全てのSM402を同じ電流(i)が通過するので、k番目のPCS400のx番目のSM402とy番目のSM402との間の電力共有は、以下の関係(16)によって互いに関連付けられる。
【0108】
【数45】

PCS400を有する電力システム100のための上記制御方式に基づいて、駆動システムコントローラ116は、所望の電力出力(たとえば参照電圧または参照電流)をPCS430に提供し、PCSコントローラ430は、PCS400に結合されたエネルギ貯蔵モジュール114のセットのSOCに基づいてPCS400の電力設定値を決定し、SM402の電力コントローラ404に電力設定値を提供する。選択されたSM402の電力コントローラ404は、SM402の電力回路406によって電気駆動システム106に提供される比例駆動電力出力を決定し、その後、電力回路406の電子電力スイッチを操作して(すなわち、PWM信号を介してDC-ACインバータのスイッチを操作して)比例駆動電力出力を提供する。電力コントローラ404が提供されない場合、PCSコントローラ430は、各SM402のための比例駆動電力出力を決定し、SM402の電力回路406の電子電力スイッチを制御して比例駆動電力出力を提供するように構成される。
【0109】
図8を参照すると、PCS120のための、特に電気駆動システム106に電力を供給するための例示的な制御ルーチン500が提供される。502において、PCS120は、電気駆動システム(EDS)106のための所望の電力出力を取得する。上述したように、所望の電力出力は、たとえば参照電圧、参照電流などであるがこれらに限定されない様々な形態で提供されてよく、電気駆動システム106の1つまたは複数の動作条件に基づいて決定される。504において、既知の方法を用いて、PCS120は、PCS120が接続されたエネルギ貯蔵モジュール114のセットのSOCまたは等価SOCを決定する。506において、PCS120は、SOCに基づいて仮想抵抗(Rvir)の必要な値を決定するように構成される。たとえば、Rvir=K/SOCであり、ここでKは、各PCS120によって用いられるグローバル定数である。508において、PCS120は、PCS120によって提供される電流の値を取得するように構成される。たとえば、PCS120は、PCS120によって供給される電流(iinv)を測定するための電流センサを含んでよい。510において、PCS120は、PCS120によって適用される電力設定値を決定するように構成され、その後、電気駆動システム106に電力を印加する。たとえば、電力設定値vinvが提供されてよく、vinv=Vref-(iinv×Rvir)として決定され、ここでVrefは所望の電力出力である。PCS120は、たとえば車両に対する電力がオフにされるまで制御ルーチン500を継続してよい。
【0110】
図9Aおよび図9Bを参照すると、PCS400を有する電力システム100のための例示的な制御ルーチン600および650が提供され、制御ルーチン600は、PCSコントローラ430によって実行され、ルーチン650は、電力コントローラ404を介してPCS400の各SM402によって実行される。ルーチン600に関して、PCSコントローラ430は、602において、それぞれのPCS400の等価SOCを初期化し、ここでSOC=1である。ステップ604、606、および608は、図5のステップ502、506、および508と同様である。具体的には、604において、PCS120は、電気駆動システム(EDS)106のための所望の電力出力を取得し、606において、PCS120は、SOCに基づいて仮想抵抗(Rvir)の必要な値を決定するように構成され、608において、PCS120は、PCS120によって提供される電流の値を取得するように構成される。610において、PCSコントローラ430は、少なくとも所望の電力出力およびSOCに基づいて、PCS400によって適用される電力設定値を決定するように構成される。たとえば、PCSコントローラ430は、インバータの電圧をvinv=Vref-(iinv×Rvir)として決定し、その後、モジュールの数に基づいて電圧をv=Vinv/(NSOC)として決定し、ここでNは、PCS400に提供されたSM402の数である。612において、PCSコントローラ430は、PCS400の各SM402に電力設定値として「v」を提供する。614において、PCS230は、PCS400に結合されたエネルギ貯蔵モジュール114のセットのSOCを推定する。たとえば、PCS230は、現在の電力サイクルで印加される電圧を「v」として測定し、あるいは、SOC=v/(v N)としてSOCを推定する。推定されたSOCは、後続の電力設定値を決定するために用いられる。
【0111】
図9Bを参照すると、PCS400の電力設定値を用いて、PCS400の各SM402は、ルーチン650を行って、SM402によって電気駆動システム106に提供される比例駆動電力出力を決定するように構成される。652において、SM402は、SOCを初期化するか、あるいはSM402に結合されたエネルギ貯蔵モジュール114のサブセットのSOCを決定するように構成される。654において、SM402は、電力設定値およびエネルギ貯蔵モジュール114のサブセットのSOCに基づいて、比例駆動電力出力を決定するように構成される。たとえば、比例駆動電力出力は、電圧「vop」として提供されてよく、vop=v SOCである。656において、比例駆動電力出力が電気駆動モータ118に提供され、電気駆動モータに供給された電流が測定される(供給電流は「i」である)。658において、SM402は、エネルギ貯蔵モジュールのサブセットのSOCを推定するように構成される。たとえば、SOCは、以下の(17)によって推定することができ、ここで「i」は供給電流であり、Cは、エネルギ貯蔵モジュール114のサブセットのピーク充電容量である。推定されたSOCは、後続の電力決定のために比例駆動電力出力を決定するために用いられる。
【0112】
【数46】

図9Aおよび図9Bのルーチンは、PCS400が存在し、PCSコントローラ430が少なくとも各SM402との単一方向通信を有する電力システムのために用いられ得る。PCS400は、たとえば車両に対する電力がオフになるまで、制御ルーチン600および650を継続してよい。SM402に電力コントローラがない場合、PCSコントローラ430は、制御ルーチン650に関して説明したものと同様に各SM402の比例駆動電力出力を決定するように構成され得る。
【0113】
別の変形例において、各SM402がPCSコントローラ430にデータを送信することが可能である(すなわち、PCSコントローラ430とSM402との間に双方向通信が存在する)場合、PCSコントローラ430は、各SM402のエネルギ貯蔵モジュールのサブセットのSOCを示すデータを取得してよく、その後、SOCに基づいてSM402を選択的に動作させてよい。たとえば、図10は、PCS400のSM402からSOCを示すデータを受信することが可能なPCSコントローラ430によって実行される制御ルーチン700を示す。制御ルーチン700の一部は、制御ルーチン600の一部と同様であるため、ルーチン600のステップと同じであるルーチン700に記載されたステップは詳しく説明されない。702において、PCSコントローラ430は、SM402から、SM402の各々に結合されたエネルギ貯蔵モジュールのサブセットのSOCを取得し、704において、SM402の所望の動作順序を決定するように構成される。特に、PCSコントローラ430は、各SM402に関連するSOCに基づいてSM402のリストを分類する。706において、ルーチン500と同様に、PCSコントローラ430は、PCS400の電力設定値をvinv=Vref-(iinv×Rvir)として決定する。
【0114】
SM402のSOCに関連する情報を用いて、PCSコントローラ430は、電気駆動システムに電力を供給するためのSM402を選択するように構成される。具体的には、708において、PCSコントローラ430は、所望の動作順序および電力設定値に基づいて、PCS400の複数のSM402の中から1つまたは複数のSM402を電力出力モジュールとして選択する。たとえば、PCSコントローラ430は、電力設定値を得るために何個のSM402が完全オン(FON)になるかをFON=fix(vinv/B)として決定し、ここでBは、SM402の最大電力である。PCSコントローラ430はさらに、電力設定値に到達するために必要な残存電力を決定する。たとえば、残存電力としての残存電圧(V_rem)は、V_rem=rem(vinv/B)として提供される。710において、PCS230は、電力設定値を電力出力モジュールに送信する。受信すると、電力出力モジュールとして選択されたSM402は、ルーチン9Bに記載されたものと同様に動作するように構成されるが、主な相違点は、SMが推定SOCをPCS230に送信することである。
【0115】
SM402がPCS400との双方向通信を有するいくつかの変形例において、PCSコントローラ430はさらに、切換え周波数を改善するために1つまたは複数の電力出力モジュール402が一度にオンオフを切り換えるように電力出力モジュールを選択的に動作させるように構成される。特に、PCSコントローラ430は、たとえば電気駆動システムの負荷需要およびエネルギ貯蔵モジュールのサブセットの状態に基づいて、各電力出力モジュールにステータスを割り当てるように構成される。すなわち、選択された期間にわたり、ステータスは、電力出力モジュールが能動的にオンであるか、または能動的にオンオフを切り換えるかを示す。エネルギ貯蔵モジュールのサブセットの状態は、エネルギ貯蔵モジュールの健康状態、エネルギ貯蔵モジュールのサブセットのSOC、および/または、たとえば温度などのエネルギ貯蔵モジュール114のサブセットの性能特性を含む。したがって、選択された期間にわたり、電力出力モジュールの第1のセットには、能動的にオンであるステータスが提供され、電力出力モジュールの第1のセットとは異なる電力出力モジュールの第2のセットには、能動的にオンオフを切り換えるステータスが提供される。言い換えると、電力出力モジュールの第1のセットが能動的にオンである間、電力出力モジュールの第2のセットは能動的にオンオフを切り換え、選択された期間中の駆動電力出力を提供する。
【0116】
一形態において、PCS120およびPCS400は、電力システム(複数も可)100を形成するために互いに組み合わせて用いられ得る。たとえば、車両102は、第1のモータのためのPCS120を有する電力システムと、第2のモータのためのPCS400を有する別の電力システムとを含んでよい。PCS120および400の両方が、同じモータに電力を供給するために用いられてもよい。
【0117】
図8図9A図9B、および図10の例示的なルーチンは例として提供され、制御ルーチンは、電気駆動システムへの電力を制御するために他の適切な方法で構成され得ることを容易に理解すべきである。
【0118】
本開示の電力システムは、分散型ソフトウェア制御を有するモジュール式および/またはスケーラブルなハードウェア設計を提供し得る。いくつかの応用において、電力システムは、フィルタリングを必要としないため、システムのサイズおよび複雑性が低減され得る。本明細書で説明される制御方法は、電力変換システムの能動的および/または選択的な管理を可能にすることにより、エネルギ貯蔵モジュールの容量および/または車両の走行範囲を増加させることができる。これらの利点および他の利点は、本開示の電力システムによって提供され得る。
【0119】
本開示において、「取得する」という用語は、少なくとも、別のデバイスから受信すること、受信したデータに基づいて計算すること、および/またはソフトウェアアプリケーションに基づいて決定することを含んでよい。
【0120】
本明細書において特に明示されない限り、機械/熱特性、組成割合、寸法および/または公差、または他の特性を示す数値は全て、本開示の範囲を説明する上で「約」または「おおよそ」という言葉で修飾されるものとして理解される。この修飾は、工業的慣行、材料、製造、および組立て公差、および試験性能を含む様々な理由から所望される。
【0121】
本明細書で用いられる場合、A、B、およびCの少なくとも1つという表現は、非排他的論理和を用いた論理的(AまたはBまたはC)を意味するものと解釈すべきであり、「Aの少なくとも1つ、Bの少なくとも1つ、およびCの少なくとも1つ」を意味するものと解釈すべきではない。
【0122】
本出願において、「コントローラ」という用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル、アナログ、またはアナログ/デジタル混合ディスクリート回路、デジタル、アナログ、またはアナログ/デジタル混合集積回路、組合せ可能な論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行するプロセッサ回路(共有、専用、またはグループ)、プロセッサ回路によって実行されるコードを格納するメモリ回路(共有、専用、またはグループ)、説明された機能を提供する他の適切なハードウェア構成要素(たとえば熱流束データモジュールの一部としてのオペアンプ回路積分器)、またはたとえばシステムオンチップなどにおける上記のいくつかまたは全ての組み合わせを指し、それらの一部であり、またはそれらを含んでよい。
【0123】
メモリという用語は、コンピュータ可読媒体という用語のサブセットである。コンピュータ可読媒体という用語は、本明細書で用いられる場合、媒体を通って(たとえば搬送波上で)伝搬する一時的な電気または電磁信号を含まないため、コンピュータ可読媒体という用語は、有形かつ非一時的であるとみなされ得る。非一時的有形コンピュータ可読媒体の非限定的な例は、不揮発性メモリ回路(たとえばフラッシュメモリ回路、消去可能プログラマブル読取専用メモリ回路、またはマスク読取専用回路など)、揮発性メモリ回路(たとえばスタティックランダムアクセスメモリ回路またはダイナミックランダムアクセスメモリ回路など)、磁気記憶媒体(たとえばアナログまたはデジタル磁気テープまたはハードディスクドライブなど)、および光記憶媒体(たとえばCD、DVD、ブルーレイディスクなど)である。
【0124】
本出願において説明された装置および方法は、コンピュータプログラムに具体化された1つまたは複数の特定の機能を実行するように汎用コンピュータを構成することによって生成された専用コンピュータによって部分的または完全に実施され得る。上述した機能ブロック、フローチャート構成要素、および他の要素は、専門技術者またはプログラマのルーチンワークによってコンピュータプログラムに書き換えることが可能なソフトウェア仕様書としての機能を果たす。
【0125】
本開示の説明は、本質的に単なる典型例であるため、本開示の本質から逸脱しない変形例は、本開示の範囲内であることが意図される。そのような変形例は、本開示の主旨および範囲からの逸脱としてみなされない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
【国際調査報告】