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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】疼痛治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/14 20170101AFI20250123BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/63 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/245 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K47/14
A61K9/10
A61K47/28
A61K45/00
A61K31/192
A61K31/196
A61K31/405
A61K31/05
A61K31/444
A61K31/5415
A61K31/63
A61K31/245
A61K31/167
A61K31/445
A61K31/4704
A61P29/00
A61P43/00 121
A61P23/02
A61P25/00
A61P25/22
A61K47/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545177
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-08-28
(86)【国際出願番号】 US2023061464
(87)【国際公開番号】W WO2023147480
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/267,256
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524283006
【氏名又は名称】レベル メディシン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REBEL MEDICINE INC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】デイビス、ブレット
(72)【発明者】
【氏名】レイド、ケイレブ
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン、シエラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイタレヴィッツ、スーザン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA16
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC05
4C076DD37F
4C076DD46F
4C076DD46P
4C076DD70P
4C076EE53F
4C076FF16
4C076FF31
4C076FF35
4C076FF43
4C076GG43
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA21
4C084MA66
4C084MA67
4C084NA12
4C084ZA081
4C084ZA261
4C084ZB111
4C084ZC081
4C084ZC201
4C084ZC511
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC15
4C086BC17
4C086BC21
4C086BC29
4C086BC36
4C086BC89
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA21
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA12
4C086ZC51
4C206CA19
4C206DA23
4C206DA24
4C206FA36
4C206FA37
4C206FA38
4C206FA44
4C206GA19
4C206GA31
4C206KA01
(57)【要約】
医薬組成物は親油性油を含むことができる。医薬組成物はさらに、親油性油中に分散された鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、又はそれらの混合物を含むことができる。医薬組成物はさらに、少なくとも一部が親油性油に溶解せずゲルを形成する構造化剤を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油性油、
前記親油性油中に分散した治療剤、その塩、イオン対、又はプロドラッグ、及び
少なくとも一部が前記親油性油に溶解せずゲルを形成する構造化剤
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記親油性油が、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、中鎖トリグリセリド油、ゴマ油、大豆油、ヒマシ油、植物油、トリブチリン油、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記トリグリセリドが、飽和トリグリセリド、一価不飽和トリグリセリド、又は多価不飽和トリグリセリドである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記トリグリセリドが、中鎖トリグリセリド、短鎖トリグリセリド、長鎖トリグリセリド、又はそれらの混合物を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記トリグリセリドが中鎖トリグリセリドを含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記中鎖トリグリセリドが、C6~C12カルボン酸のグリセリド、又はそれらの混合物を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記構造化剤が約40℃~約100℃の範囲の融点を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記構造化剤が約50℃~約85℃の範囲の融点を有する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記構造化剤が約60℃~約70℃の範囲の融点を有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記構造化剤が、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、脂肪酸のポリグリセリドエステル、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記構造化剤が、トリステアリン、ジステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセロール、ジベヘン酸グリセリル、コレステロール、トリミリスチン、グリセリルジミリスチン、グリセリルモノミリスチン、トリラウリン、グリセリルジラウリン、グリセリルモノラウリン、トリパルミチン、グリセリルジパルミチン、グリセリルモノパルミチン、コレステロール、脂肪酸のポリグリセリドエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記構造化剤が、モノステアリン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン、グリセロールモノパルミチン、グリセロールジパルミチン、トリパルミチン、グリセロールモノミリスチン、グリセロールジミリスチン、トリミリスチン、又はそれらの混合物を含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記構造化剤が、前記親油性油の体積に基づいて、前記医薬組成物の約0.1%(w/v)~約25%(w/v)の範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記構造化剤が、前記親油性油の体積に基づいて、前記医薬組成物の約3%(w/v)~約20%(w/v)の範囲の濃度で存在する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記構造化剤が、前記親油性油の体積に基づいて、前記医薬組成物の約3%(w/v)~約10%(w/v)の範囲の濃度で存在する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記治療剤が、前記親油性油中に分散された鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、交感神経遮断剤、抗不安剤、カンナビノイド、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
鎮痛剤、麻酔剤、又はそれらの両方が、対象の疼痛を軽減するのに十分な量で存在する、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が鎮痛剤を含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記鎮痛剤が、非ステロイド性抗炎症薬、COX-2阻害剤、又はそれらの混合物を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記非ステロイド性抗炎症薬が、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、メフェナム酸、インドメタシン、カンナビジオール、それらのイオン対、それらの塩、又はそれらの混合物を含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記COX-2阻害剤が、エトリコキシブ、メロキシカム、セレコキシブ、それらのイオン対、それらの塩、又はそれらの混合物を含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物が麻酔剤を含み、前記麻酔剤が局所麻酔薬である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記麻酔剤がエステル系局所麻酔薬、アミド系局所麻酔薬、又はプロドラッグ、又はそれらのイオン対、又はそれらの塩、又はそれらの混合物を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記エステル系局所麻酔薬が、プロカイン、アメトカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、又はそれらのプロドラッグ、又はそれらのイオン対、又はそれらの塩、又はそれらの混合物を含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記局所アミド系麻酔薬が、リドカイン、プリロカイン、ブピバカイン、レボブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、ジブカイン、エチドカイン、プロドラッグ、又はそれらのイオン対、又はそれらの塩、又はそれらの混合物を含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記アミド系麻酔薬が、ブピバカイン、ロピバカイン、それらの塩、それらのイオン対、又はそれらの混合物を含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記アミド系局所麻酔薬が、ブピバカイン酪酸塩、ブピバカインパルミチン酸塩、ブピバカインラウリン酸塩、ブピバカインミリスチン酸塩、ブピバカインステアリン酸塩、ブピバカインヒドロキシステアリン酸塩、ブピバカインオレイン酸塩、ブピバカインリシノール酸塩、ブピバカインドクサートのものを含むイオン対又は塩である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
鎮痛剤、麻酔剤、及び抗炎症剤の混合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項29】
鎮痛剤及び麻酔剤の混合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項30】
鎮痛剤、麻酔剤、又はそれらの両方が、前記親油性油の体積に基づいて約2%(w/v)~約15%(w/v)の範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項31】
鎮痛剤、麻酔剤、又はそれらの両方が、前記親油性油の体積に基づいて約3%(w/v)~約10%(w/v)の範囲の濃度で存在する、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
抗炎症剤が、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサラート、スリンダク、トルメチン、カンナビジオール、それらの塩、それらのイオン対、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項33】
アジュバントをさらに含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記アジュバントが、コルチコステロイド、α2アゴニスト、ペチジン、バルビツール酸塩、アヘン剤、ツボクラリン塩化物、カンナビノイド、メロキシカム、それらの塩、又はそれらのイオン対、又はそれらの混合物を含む、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
カンナビノイドがカンナビジオール(CBD)である、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記医薬組成物が、前記アジュバントを含まない対応する医薬組成物と比較して、より低濃度の鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、又はそれらの混合物を使用して対象の疼痛を軽減するのに有効であり、及び/又はより長い疼痛軽減効果を有する、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項37】
C2~C12アルコールを含むレオロジー改質剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記レオロジー改質剤が、エタノール、ベンジルアルコール、又はそれらの混合物を含む、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記C2~C12アルコールが、エタノール、ベンジルアルコール、又はそれらの混合物を含み、前記親油性油の体積に基づいて、前記医薬組成物の約0.5%(w/v)~約10%(w/v)の範囲で存在する、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記エタノール、ベンジルアルコール、又はそれらの混合物が、前記親油性油の体積に基づいて、前記医薬組成物の約1%(w/v)~約6%(w/v)の範囲で存在する、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記医薬組成物が、約24時間~約14日間の範囲の時間にわたって対象の疼痛を軽減するのに有効である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記医薬組成物が、約48時間~約96時間の範囲の時間にわたって対象の疼痛を軽減するのに有効である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記医薬組成物が、約96時間~約168時間の範囲の時間にわたって対象の疼痛を軽減するのに有効である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記医薬組成物が、約168時間~約336時間の範囲の時間にわたって対象の疼痛を軽減するのに有効である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項45】
半固体組成物である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項46】
中鎖トリグリセリド、
ヒマシ油、
ブピバカイン、そのイオン対、又はその塩、又はそれらの両方を含む麻酔剤であって、対象の疼痛を軽減するのに十分な量で存在し、前記中鎖トリグリセリド及び前記ヒマシ油の混合物の周りに分散されている前記麻酔剤、及び
トリステアリン、ジステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセロール、ジベヘン酸グリセリル、コレステロール、トリミリスチン、グリセリルジミリスチン、グリセリルモノミリスチン、トリラウリン、グリセリルジラウリン、グリセリルモノラウリン、トリパルミチン、グリセリルジパルミチン、グリセリルモノパルミチン、コレステロール、脂肪酸のポリグリセリドエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、又はそれらの混合物を含む構造化剤を含み、
任意選択で、前記中鎖トリグリセリドとヒマシ油の重量対重量比は約50:50である、医薬組成物。
【請求項47】
前記組成物の粘度が、約37℃で測定した場合に約10Pa・s(約10,000cP)~約1000Pa・s(約1,000,000cP)の範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記組成物の粘度が、約37℃で測定した場合に約10Pa・s(約10,000cP)~約150Pa・s(約150,000cP)の範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項49】
せん断後、前記組成物の粘度が、約37℃で測定した場合に約10mPa・s(約10cP)~約10,000mPa・s(約10,000cP)の範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項50】
せん断後、粘度が低下することでせん断減粘挙動によって注射可能となる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項51】
注射器、及び
前記注射器内に配置された請求項1に記載の医薬組成物
を含むキット。
【請求項52】
前記医薬組成物が前記注射器内に密封されている、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記注射器が、約15~30ゲージのサイズの針をさらに含む、請求項51に記載のキット。
【請求項54】
前記注射器が、約21~約25ゲージの針サイズを含む、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
請求項1に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
a)親油性油及び鎮痛剤、麻酔剤を撹拌及び25℃を超える温度で加熱しながら混合することで、混合物を形成すること、
b)前記混合物を冷却することで前記医薬組成物を形成すること
を含む、方法。
【請求項56】
a)における混合が約50℃~約150℃の範囲の温度で行われる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記混合物が密封された注射器に入れられてb)で冷却される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記医薬組成物を滅菌することをさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記医薬組成物が容器に分配された後に滅菌された後に滅菌が行われ、滅菌がガンマ線照射、電子線照射、X線照射、加熱滅菌、蒸気滅菌、又はそれらの組み合わせを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
請求項1に記載の医薬組成物で対象を治療する方法であって、それを必要とする対象に前記医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項61】
前記医薬組成物が対象の手術部位又はその近くに投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記医薬組成物が対象の創傷部又はその近くに投与される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記医薬組成物が対象の創傷部に近い部位に投与される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記創傷部に近い部位は、神経がブロックされる部位である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記医薬組成物の第1の部分が、対象の創傷部又はその近くに投与され、前記医薬組成物の第2の部分が、対象の前記創傷部に近い部位に投与される、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記医薬組成物の投与が、注射器を介して、約18~30ゲージのサイズの針を通して前記医薬組成物を注射すること、創傷部位又は手術部位又はその近くに前記医薬組成物を擦り込むこと、又はそれらの組み合わせを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
前記医薬組成物が、手術が行われる前、手術中、又は対象が手術を受けた後に対象に投与される、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
前記医薬組成物が対象に投与されてから48~120時間後に、前記対象に非オピオイド鎮痛剤を投与することをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記医薬組成物が対象に投与されてから72~120時間後に、前記対象に非オピオイド鎮痛剤を投与することをさらに含む、請求項68に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
局所麻酔薬は、手術部位の麻酔や術後の痛みを軽減するために手術で広く使用されているが、効果の持続時間が短いため、患者が激しい痛みを感じる期間にわたりずっと鎮痛効果を発揮することはできない。麻酔が切れると、痛みを抑えるためにオピオイド系の薬剤が投与される。これは、効果の弱い鎮痛剤で痛みを抑えられるようになるまで、たいていは3日間以上続く。
【発明の概要】
【0002】
本開示が解決しようとする課題は、手術部位に注射可能かつ手作業で埋め込むのに十分なほど粘性があり、投与部位に十分長く留まって局所麻酔効果をもたらす、2~14日間の強力な鎮痛効果をもたらすことができる注射可能又は埋め込み可能な組成物を提供することにある。したがって、本開示は、
親油性油、
前記親油性油中に分散された薬物、その塩、又はプロドラッグ(例えば、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、又はそれらの混合物)、及び
少なくとも一部が前記親油性油に溶解せずゲルを形成する構造化剤
を含む医薬組成物に関する。
【0003】
本開示はまた、
中鎖トリグリセリド、
ブピバカイン、ロピバカイン、又はそれらの両方を含み、対象の疼痛を軽減するのに十分な量で存在し、前記中鎖トリグリセリドの周りに分散されている麻酔剤、及び
トリステアリン、ジステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセロール、ジベヘン酸グリセリル、コレステロール、トリミリスチン、グリセリルジミリスチン、グリセリルモノミリスチン、トリラウリン、グリセリルジラウリン、グリセリルモノラウリン、トリパルミチン、グリセリルジパルミチン、グリセリルモノパルミチン、コレステロール、脂肪酸のポリグリセリドエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、又はそれらの混合物を含む構造化剤
を含む医薬組成物に関する。
【0004】
本開示は、
注射器、及び
前記注射器内に配置された本開示の医薬組成物
を含むキットに関する。
【0005】
本開示はまた、医薬組成物の製造方法に関するものであり、前記方法は、
a)親油性油及び鎮痛剤、麻酔剤を25℃を超える温度で撹拌しながら混合することで第1の混合物を形成すること、
b)構造化剤を前記第1の混合物と撹拌しながら混合し、25℃を超える温度で加熱することで第2の混合物を形成すること、及び
c)前記第2の混合物を冷却することで医薬組成物を形成すること
を含む。
【0006】
本開示は、本開示の組成物で対象を治療する方法であって、それを必要とする対象に前記組成物を投与することを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面は総じて、本開示の様々な実施形態を、限定ではなく例として示している。
図1】各種油の薬物放出プロファイルを示すグラフである。
図2】各種油の薬物放出プロファイルを示すグラフである。
図3】各種油の粘度を示すグラフである。
図4】油成分の変化が粘度に与える影響を示すグラフである。
図5】各種製剤の粘度曲線を示すグラフである。
図6】体温における製剤の粘度を示すグラフである。
図7図7A~7Dは、各種製剤の貯蔵弾性率の値を示す一連のグラフである。
図8A】各種製剤のピーク融解特性を示すグラフである。
図8B】各種製剤のピーク結晶化特性を示すグラフである。
図9A】各種製剤のラット坐骨神経ブロックデータを示すグラフである。
図9B】各種製剤のラット坐骨神経ブロックデータを示すグラフである。
図10】ブタ切開創モデルにおける各種製剤の有効性データを示すグラフである。
図11】MCT油とヒマシ油の様々な混合物におけるブピバカインの溶解度を示すグラフである。
図12】ブピバカイン及びブピバカインの各種親油性塩のMCT油中における溶解度を示すグラフである。
図13】ブピバカイン及びブピバカインの各種親油性塩のMCT油中における放出特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
開示の詳細な説明
ここで、開示された主題の特定の態様について詳細に言及する。開示された主題は列挙された請求項と併せて説明されるが、例示された主題は請求項を開示された主題に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。
【0009】
本開示は、親油性油成分;親油性油成分中に分散した治療剤、又はそれらの混合物;及び、少なくとも一部が親油性油中に溶解しない構造化剤を含む医薬組成物に関する。これらの成分は、分子集合体、結晶などの自己組織化構造の超分子ネットワーク内に閉じ込められた薬物を含んだ親油性油からなる半固体オレオゲルを形成することができる。この医薬組成物は、ヒト及び獣医学における両方の疼痛制御用途に使用できる。臨床用途としては、手術時、術後、及び外傷に伴う疼痛の治療のための神経軸麻酔、区域麻酔、局所麻酔、筋筋膜痛(例えば、トリガーポイント)及び慢性痛に対する局所浸潤麻酔などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
本明細書に記載の医薬組成物は、オピオイドを含む術後疼痛制御に使用される薬物の代替として、術後疼痛制御に使用することができる。記載された医薬組成物は、オピオイドを含む薬物の完全な代替物となることができ、又は、オピオイドを含む薬物と併用することで、術後疼痛制御に使用されるオピオイドの量を減らすことができる。
【0011】
この組成物は、注射可能な半固体ゲル、ペースト、又は埋め込み可能な固体の形態をとることができる。半固体のゲル又はペーストの形態で、この組成物は手術部位/傷口に適用することができ、その粘性により、ゲルは最初に適用された場所に留まる。手術部位/傷口を閉じると、半固体ゲルが自然の隙間に入り込み、押し付けられた組織の間に浸み込む。構造化剤によって生成される自己組織化超分子ネットワークは、薬物-油相が投与部位から移動するのを防ぎ、それにより、より安全で効果的な局所治療を促進する。構造化剤ネットワークはまた、薬物を含んだ油を周囲の生体内環境(例えば、周囲の水性生体内環境)から保護することで、油から水性環境への拡散による薬物の放出を長時間にわたって可能にする。この組成物は生分解性とすることができるため、時間の経過とともに体内に自然に吸収される。
【0012】
構造化剤の濃度と固有の特性に応じて、様々な機械的特性を持つように組成物を調整することができる。機械的特性の調整は、現在臨床的に利用可能な多くの技術の改良となる、長時間作用型の局所麻酔薬製品の開発に関係している。機械的特性が強固すぎる場合、組成物は小口径(例えば、23ゲージ超)の針を通して注入することができないため、手術創腔内に手作業で埋め込むことしかできなくなる。術後の痛みに対する長時間作用型の局所麻酔薬製品の中には、許容可能な針サイズ(18~25ゲージ)で注射可能でありながら、埋め込み部位に留まるだけの粘性を維持できるように、機械的特性を最適化する必要があるものがある。
【0013】
構造化剤は、組成物に適切な構造及び機械的特性を与えるのに役立つ。例えば、治療剤又は薬物(例えば、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、又はそれらの混合物)が単純な親油性油担体(例えば、中鎖トリグリセリド)に単に入れられた場合、得られる溶液は水溶液のように希薄で流動性のある液体になる。したがって、溶液(構造化剤を含まない)を外科的創傷腔に直接注射し又は埋め込むと、溶液は移動して投与部位からなくなる可能性があり、その結果、標的部位における疼痛制御の有効性が低下する。さらに、薬物が急速に排出されると全身毒性(例えば、心毒性や神経毒性)のリスクが高まり、生命を脅かす可能性がある。したがって、一例として、有利な長時間作用型局所麻酔組成物は、注射可能であること、及び手術部位に手作業で埋め込むのに十分な粘性を備えていることの両方である必要がある。現在の臨床的に利用可能な選択肢には、手術部位に埋め込むことのみができる固体の埋め込み技術が含まれ、これは臨床応用が大幅に制限される。注射用組成物は、局所麻酔用の長期にわたる神経ブロックとして使用でき、これは術後疼痛の非オピオイド管理に広く普及している技術であるが、現在の注射用オプションは24時間未満しか持続しない。したがって、本開示が解決しようとする課題は、手術部位に注射可能かつ手作業で埋め込むのに十分な粘性があり、かつ、局所鎮痛効果を提供するのに十分な時間、埋め込まれた部位に留まることができる、2~14日間の強力な疼痛緩和(例えば、鎮痛効果)を提供できる安全な注射可能又は埋め込み可能な組成物を提供することである。
【0014】
組成物の親油性油は、多くの適切な油から選択することができる。例えば、親油性油としては、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ゴマ油、大豆油、ヒマシ油、トリブチリン油、植物油、又はそれらの混合物が挙げられる。例えば、親油性油としては、中鎖トリグリセリド油とヒマシ油の混合物が挙げられ、それぞれ独立して、5重量%~98重量%、30重量%~70重量%の範囲であるか、5重量%、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は約98重量%のそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超える。ゴマ油は通常、41重量%のリノール酸、39重量%のオレイン酸、8重量%のパルミチン酸、5重量%のステアリン酸、及び微量のその他の有機酸を含む。大豆油は100gあたり、16gの飽和脂肪、23gの一価不飽和脂肪、58gの多価不飽和脂肪を含む。大豆油トリグリセリドに含まれる主な不飽和脂肪酸は、7~10重量%の多価不飽和α-リノレン酸、及び51重量%のリノール酸、及び23重量%の一価不飽和オレイン酸である。大豆油は、4重量%のステアリン酸及び10重量%のパルミチン酸などの飽和脂肪酸も含む。ヒマシ油は、85~95重量%のリシノール酸、2~6重量%のオレイン酸、1~5重量%のリノール酸、0.5~1重量%のα-リノレン酸、0.5~1重量%のステアリン酸、0.5~1重量%のパルミチン酸、0~0.5重量%のジヒドロキシステアリン酸、及び0.2~0.5重量%のさらなる化合物を含む。トリブチリン油は酪酸とグリセロールの反応生成物であるエステルである。トリグリセリドは、中鎖トリグリセリド、短鎖トリグリセリド、又はそれらの両方であり得る。中鎖トリグリセリドの例としては、グリセロールと、C6~C12カルボン酸(例えば、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、又はそれらの混合物)のいずれかとの反応生成物であるエステルが挙げられる。
【0015】
中鎖トリグリセリドは親油性油として特に適している。いかなる理論にも限定されるつもりはないが、中鎖トリグリセリドを使用する利点は、その薄い性質と低い粘度によるものと考えられ、それぞれの性質がこれを注射可能にしている(薬物の溶解性は良いが、粘度が非常に高いヒマシ油と比較した場合)。さらに、中鎖トリグリセリドは、高い薬物充填量と良好な放出速度を提供することが示されている。したがって、中鎖トリグリセリドは、注射可能な粘度を示し、構造化剤を使用して超分子ゲルに構造化され、十分な量の薬物を充填でき、良好な薬物放出プロファイルを示すという点で有益である。
【0016】
親油性油の混合物を使用することもできる。例えば、医薬組成物は、中鎖トリグリセリドと短鎖トリグリセリド、中鎖トリグリセリドと長鎖トリグリセリド油、又は短鎖トリグリセリドと長鎖トリグリセリドの混合物を含み得る。いくつかの例では、ロピバカインなどの薬物の溶解性は、中鎖トリグリセリドと短鎖トリグリセリドの90:10(中鎖トリグリセリド:短鎖トリグリセリド)の混合物中で高まり得る。さらなる例として、中鎖トリグリセリドと親油性油としてのヒマシ油の混合物は、全体の構造における粘度を低下させながら、より高い薬物充填量を達成する。
【0017】
構造化剤(あるいは、有機構造化剤、オレオ構造化剤、又は超分子構造化剤とも呼ばれる)は、親油性油に構造を付与する。例えば、構造化剤はゲルの形成を助ける。ゲルの種類の一例は、超分子ゲルである。これは、水素結合、π-π相互作用、アニオン-π相互作用、カチオン-π相互作用、ファンデルワールス力などの非共有結合相互作用によって結合された分子の複合体である。超分子集合体が形成されるプロセスは、分子の自己集合と呼ばれる。分子の自己集合とは、分子が外部からの誘導や管理なしに定義された配置をとるプロセスを指す。
【0018】
構造化剤は、親油性油の体積に基づいて、医薬組成物の約0.1%(w/v)~約25%(w/v)、約5%(w/v)~約25%(w/v)、約10%(w/v)~約15%(w/v)、約5%(w/v)~10%(w/v)、約5%(w/v)~15%(w/v)、約10%(w/v)~20%(w/v)の範囲、約0.1%(w/v)、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、又は約25%(w/v)のそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超える濃度で存在する。使用される構造化剤又は構造化剤の混合物は、構造化剤の融点などのいくつかの要因に依存し得る。例えば、構造化剤の融点は、約40℃~約100℃、約50℃~約85℃、約45℃~約60℃、約50℃~約70℃の範囲、約40℃、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は約100℃のそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超える温度であり得る。
【0019】
適切な構造化剤の例としては、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、又はそれらの混合物が挙げられる。ここで使用されるポリグリセロールは、ジグリセロール又はトリグリセロールであり得、飽和又は不飽和脂肪酸部分で完全に又は部分的にエステル化され得る。脂肪酸としては、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、アラキドン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、又はそれらの混合物が挙げられる。適切な構造化剤のより具体的な例としては、トリステアリン、ジステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセロール、ジベヘン酸グリセリル、コレステロール、トリミリスチン、グリセリルジミリスチン、グリセリルモノミリスチン、トリラウリン、グリセリルジラウリン、グリセリルモノラウリン、トリパルミチン、グリセリルジパルミチン、グリセリルモノパルミチン、ステアリン酸でエステル化されたジグリセロール、コレステロール、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
構造化剤の少なくとも一部は親油性油中で相分離している。したがって、例えば、構造化剤の一部は親油性油に部分的に溶解し(第1の相)、第2の部分は親油性油に溶解しない(第2の相)。構造化剤の相分離により、構造化剤は医薬組成物が親油性油内で超分子ゲルを達成するのを助けることができる。構造化剤が親油性油に可溶性でありすぎると、構造化剤が油に溶解してしまい、超分子ゲルを形成できなくなる。構造化剤が不溶性すぎると、親油性油と相互作用せず、医薬組成物は構造化剤が沈殿した不均一で不安定なゲルの形になる。
【0021】
超分子ゲル自体は半固体組成物(あるいは、準固体又は半液体とも呼ばれる)として特徴付けられる。半固体組成物は、自重を支え、形状を保持する能力があるなど、いくつかの点で固体に似ているが、圧力をかけられるものの形状に適合したり、圧力下で流動したりする能力など、液体のいくつかの特性も共有している。適切な構造化剤の選択は、医薬組成物の粘度にも影響する。適切な粘度により、医薬組成物は体内の所望の場所に実質的に留まることができる。37℃での適切な粘度の例は、約1,000cP~約1,000,000cP、約100,000cP~約1,000,000cP、約5,000cP~約200,000cP、約10,000cP~約100,000cP、約50,000cP~約150,000cP、約10,000cP~約500,000cP、20,000cP~約90,000cPの範囲、約10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、80,000、85,000、90,000、95,000、100,00、105,000、110,000、115,000、120,000、125,000、130,000、135,000、140,000、145,000、150,000、155,000、160,000、165,000、170,000、175,000、180,000、185,000、190,000、195,000、200,000、205,000、210,000、215,000、220,000、225,000、230,000、235,000、240,000、245,000、250,000、255,000、260,000、265,000、270,000、275,000、280,000、285,000、290,000、295,000、300,000、305,000、310,000、315,000、320,000、325,000、330,000、335,000、340,000、345,000、350,000、355,000、360,000、365,000、370,000、375,000、380,000、385,000、390,000、395,000、400,000、405,000、410,000、415,000、420,000、425,000、430,000、435,000、440,000、445,000、450,000、455,000、460,000、465,000、470,000、475,000、480,000、485,000、490,000、495,000、500,000、600,00、605,000、610,000、615,000、620,000、625,000、630,000、635,000、640,000、645,000、650,000、655,000、660,000、665,000、670,000、675,000、680,000、685,000、690,000、695,000、700,000、705,000、710,000、715,000、720,000、725,000、730,000、735,000、740,000、745,000、750,000、755,000、760,000、765,000、770,000、775,000、780,000、785,000、790,000、795,000、800,000、805,000、810,000、815,000、820,000、825,000、830,000、835,000、840,000、845,000、850,000、855,000、860,000、865,000、870,000、875,000、980,000、985,000、990,000、995,000、1,000,000cPのそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超える。
【0022】
粘度が低すぎると、医薬組成物は所望の場所を超えて分散してしまう。さらに、粘度が低すぎると、薬物が制御不能に放出される可能性がある。逆に粘度が高すぎると、医薬組成物を所望の場所に注射することが不可能になる可能性がある。この場合、手作業での適用(例えば、手で又は器具を使用して組成物を部位に適用し又は広げるなど)が唯一の実行可能な選択肢となり得る。しかし、粘度が高すぎる場合は、手作業での適用も実用的ではない場合がある。適用部位での物質の保持を維持するために必要な粘度は、通常、臨床的に関連する針のサイズ(18g~25gの針)による注射を可能にするには高すぎる。これらの針を通して注射できないことの特に不利な点は、そのような溶液を神経ブロックとして使用できないことである。これを克服するために、開示された医薬組成物はせん断減粘性となるように設計される。せん断減粘性は、せん断が増加するにつれて粘度が減少する物質の能力として定義される。そのような組成物は、注射器に予め充填しておくことができ、せん断を加えると押し出され、機械的負荷が停止すると粘度を回復する、自己修復と呼ばれるプロセスが可能である。この自己修復挙動により、適用の改善と物質の保持の両方が可能になることにより、医薬品の有用性及び有効性が向上するとともに、本明細書に記載のより長い薬物放出特性も発揮される。一例として、0.01hz~200hzの範囲のスイープでせん断された場合、37℃での粘度は、約10cP~約10,000cP、約20cP~約5,000cP、約20cP~約500cPまで、約10cP、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、又は約10,000cPのそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超える粘度まで低下し得る。特に指定がない限り、ここで説明する粘度値はすべて、マサチューセッツ州ウォルトマンのThermo-Fisher Scientific社から入手可能なHAAKE Mars60レオメーターによって37℃で測定されたものである。
【0023】
薬物は、治療有効量で医薬組成物中に存在することができる。治療における使用に関する化合物の「治療有効量」(又は「有効量」)とは、所望の投与計画の一部として(ヒトなどの哺乳類に)投与された場合に、治療される障害又は状態、又は美容目的に対する臨床的に許容される基準に従って、例えば、任意の医療処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で、症状を緩和し、状態を改善し、又は疾患状態の発症を遅らせる、製剤中の化合物の量を指す。
【0024】
「予防的又は治療的」処置という用語は、当該技術分野で認識されており、本開示の1つ以上の化合物を患者に投与することを含む。望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患又はその他の望ましくない状態)が臨床的に現れる前に投与される場合、その処置は予防的であり(例えば、望ましくない状態を発症しないように宿主を保護する)、望ましくない状態が現れた後に投与される場合、その処置は治療的である(例えば、既存の望ましくない状態又はその副作用を軽減、改善、又は安定化させることを目的とする)。
【0025】
薬物の正確な量は様々であり、用途に応じて選択される。非限定的な例として、薬物は、約0.5%(w/v)~約40%(w/v)、約1%(w/v)~約25%(w/v)、2%(w/v)~約15%(w/v)(親油性油の体積に基づく)、約3%(w/v)~約10%(w/v)、約5%(w/v)~約8%(w/v)の範囲、約0.5%(w/v)、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、33.5、34、34.5、35、35.5、36、36.5、37、37.5、38、38.5、39、39.5、又は約40%(w/v)(親油性油の体積に基づく)のそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超える濃度で存在し得る。量が治療上有効であるかどうかは、対象の疼痛が軽減される時間の長さの要因となり得る。例えば、医薬組成物は、約24時間~約14日間、48時間~約14日間、約72時間~約96時間、約72時間~約80時間の範囲、約24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間、36時間、37時間、38時間、39時間、40時間、41時間、42時間、43時間、44時間、45時間、46時間、47時間、48時間、49時間、50時間、51時間、52時間、53時間、54時間、55時間、56時間、57時間、58時間、59時間、60時間、61時間、62時間、63時間、64時間、65時間、66時間、67時間、68時間、69時間、70時間、71時間、72時間、73時間、74時間、75時間、76時間、77時間、78時間、79時間、80時間、81時間、82時間、83時間、84時間、85時間、86時間、87時間、88時間、89時間、90時間、91時間、92時間、93時間、94時間、95時間、96時間、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、又は約14日間のそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超える時間、対象の生体内で疼痛を軽減するのに有効であり得る。いくつかの医薬組成物は、12時間~48時間、48時間~96時間、96時間~144時間、144時間~240時間、又は240時間~336時間などの特定の範囲にわたって疼痛を軽減するのに有効であるように設計できる。正確な薬物放出特性は、医薬組成物の構造に応じて異なる。例えば、親油性油の特定のブレンドは、薬物放出特性に影響を与える。例えば、治療剤と形成される特定のイオン対(例えば、親油性塩)は、放出特性に影響を与え得る。
【0026】
医薬組成物が治療効果を発揮する時間の長さは、親油性油からの薬物の放出速度によって決まる。親油性油からの薬物の放出は拡散によって制御される。特定の親油性油又は特定の親油性油のブレンドに対する薬物の親和性に応じて、薬物は親油性油中に優先的に存在し、水性媒体よりも親油性油に対する親和性が高いため、患者の体内における周囲の水性媒体にゆっくりと拡散する。薬物放出速度は、油性担体と周囲の水性生体内環境との間の界面積にも依存する。前述の界面積は、構造化剤によってもたらされる超分子ゲルによって制御することができる。構造がなければ、医薬組成物は体内で自由に流れて広がることができ、これにより界面表面積が大幅に増加し、したがって薬物放出速度が大幅に加速される。しかし、親油性油が超分子ゲルによって粘性の半固体に形成されると、拡散して界面積を増加させる能力が大幅に低下するため、薬物放出速度が低下し、局所的に制御される非オピオイド鎮痛剤の効果を長期化させる(薬物が鎮痛剤又は麻酔剤として使用される場合)。
【0027】
治療剤は、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤を含む。ベース形態での様々な親油性の治療剤を、共有結合又は非共有結合で修飾して親油性を向上させ、その結果としてベースオイル中の溶解度及び薬剤充填容量を向上させることができる。これは、薬物の物理化学的特性(例えば、融点、極性、疎水性、分配係数)を変更することによって実現される。共有結合修飾を使用すると、はるかに親油性が高く、本開示の組成物に使用するのに適した薬剤のプロドラッグを合成できる。これは非共有結合修飾を使用しても実現できる。例えば、疎水性イオン対形成は、荷電した薬物分子と疎水性部分を有する反対の荷電分子とをイオン対形成するために使用できる。得られた複合体はより親油性かつ疎水性であるため、脂質ベースの製剤への封入が向上し、脂質ベースの製剤からの放出がより制御される。したがって、薬物の共有結合及び非共有結合の両方の調節を使用して、システムからの天然親油性薬物又は天然疎水性薬物の薬物放出を調整することができる。求められる溶解度及びベースオイルからの分配係数は、薬物や用途によって異なる。例えば、logPが2未満の薬物は、記載されたlogP値(例えば、少なくとも2)よりもlogPを大きくするプロドラッグの形成によって改変することができる。これらの共有結合及び非共有結合化学修飾の例は、親油性を高め、ベースオイルへの親和性を高め、より遅い改変放出特性をもたらす。そのような例では、logPが2未満の薬物は、C12~C22カルボン酸とそれぞれエステル又はアミドを形成できるヒドロキシ又はアミノ官能基を含むことができる。得られたC12~C22エステル又はアミドは、記載されたlogP値(例えば、少なくとも3)を有し得る。あるいは、又はさらに、薬物又はプロドラッグは、記載されたlogP値を有し得る疎水性対イオンと組み合わせることによって修飾することができる。例えば、薬物又はプロドラッグを、ドクサート塩として合成することや、イオン交換してドクサート塩を形成することができる。この場合、ドクサートは薬物の対イオンである。他のそのような対イオンは当該技術分野で公知であり、本明細書でも想定される。したがって、本明細書に記載の鎮痛剤、麻酔剤、及び抗炎症剤に加えて、本明細書に記載の医薬組成物は、1つ以上のアジュバント剤(これも共有結合又は非共有結合により修飾され得る)を含むように製剤化することができる。例としては、交感神経遮断薬(例えば、デクスメデトミジン、クロニジン)、抗不安薬(例えば、ミダゾラム)、抗炎症薬(例えば、デキサメタゾン、NSAID、COX-2阻害剤)、及びカンナビノイド(例えば、カンナビジオール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用される分配係数、又はlogPは、薬物の親油性の尺度であり、細胞膜を通過する能力の指標である。これは、平衡状態で有機層と水層の間に分配される薬物の比として定義される。薬物の分配係数は、2つの混ざらない溶媒(水で飽和した有機層と薬物水溶液)を等量加えて、平衡に達するまで振ることによって測定できる。一方の層に含まれる薬物の含有量を測定し、値を計算する。この試験では、オクタノール-水分配が一般的に使用されているシステムである。分配係数だけでは吸収に関する情報は得られないかもしれないが、これは薬物の親油性と親水性のバランスを特徴づけ、化合物の生物学的特性のスクリーニングを支援する。LogPと組み合わせると、薬物の融点は化合物の脂溶性のスクリーニングにも役立つ。融点の高い分子は、LogPから予測されるよりも溶解性が低い傾向がある。融点の低い分子は、LogPから予測されるよりも溶解性が高い傾向がある。
【0029】
ここで理解されるように、鎮痛剤は、鎮痛、つまり痛みの緩和を達成するために使用される薬物のグループの任意のメンバーである。これらは、一時的に感覚に影響を与え、場合によっては感覚を消失させる麻酔薬とは異なる。適切な鎮痛剤の例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、COX-2阻害剤、又はそれらの混合物が挙げられる。NSAIDの非限定的な例としては、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、メフェナム酸、インドメタシン、カンナビジオール、それらのイオン対、それらの塩、又はそれらの混合物が挙げられる。COX-2阻害剤の非限定的な例としては、エトリコキシブ、メロキシカム、セレコキシブ、それらのイオン対、それらの塩、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
ここで理解されるように、麻酔剤とは、疼痛を含む感覚の局所的又は全体的な喪失を引き起こす任意の薬剤を指す。麻酔薬は脳や末梢神経系に作用して感覚刺激に対する反応を抑制することでその効果を達成する。このようにして誘発される無反応状態は麻酔として知られている。全身麻酔は、通常、手術の痛みを和らげる目的で意識を失わせることを含む。局所麻酔は、神経の伝達を遮断することによって、体の一領域の感覚や運動機能を失わせることを含む。
【0031】
本開示では局所麻酔薬の使用について記載しているが、全身麻酔薬を含めることも可能である。局所麻酔薬の適切な例としては、エステル系麻酔薬、アミド系麻酔薬、又はそれらの混合物が挙げられる。エステル系麻酔薬の非限定的な例としては、プロカイン、アメトカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、又はそれらの混合物が挙げられる。アミド系麻酔薬の非限定的な例としては、リドカイン、プリロカイン、ブピバカイン、レボブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、ジブカイン、エチドカイン、それらの塩、又はそれらの混合物が挙げられる。アミド系麻酔薬には、アミド系麻酔薬の遊離塩基形態、アミド系麻酔薬の塩化水素化形態、又は親油性塩を含むアミド系麻酔薬の追加の塩形態又はイオン対が含まれ得る。アミド系麻酔薬の親油性塩は、プロトン化されたアミド系麻酔薬と親油性対イオンとのペアを含み、これにより親油性油中のアミド系麻酔薬の溶解性を高めることができる。これは、医薬組成物中の麻酔剤の充填量を増やすのに有益であり得る。例えば、アミド系麻酔薬の親油性塩又はイオン対は、ドクサート対イオンを含み得る。一例として、アミド系麻酔薬の親油性塩又はイオン対はロピバカインドクサートであり得る。さらなる例として、アミド系局所麻酔薬は、ブピバカイン酪酸塩、ブピバカインパルミチン酸塩、ブピバカインラウリン酸塩、ブピバカインミリスチン酸塩、ブピバカインステアリン酸塩、ブピバカインヒドロキシステアリン酸塩、ブピバカインオレイン酸塩、ブピバカインリシノール酸塩、ブピバカインドクサートのものを含むイオン対又は塩である。
【0032】
前述のアミド系麻酔薬はいずれも望ましいものであるが、ロピバカインは、患者の安全性や感覚選択性などの鎮痛特性が良好であるなど、いくつかの既知の臨床的利点を備えているため、使用が望ましいと言える。しかし、ロピバカインは通常、親油性油(中鎖トリグリセリドを含むがこれに限定されない)への溶解性が低い。比較的溶解性が低いという問題は、ロピバカインの遊離塩基及び塩化水素化形態にも当てはまる。しかし、意外にも、ロピバカインドクサートは中鎖トリグリセリドなどの親油性油中で適切な溶解性を示すことで十分な量のロピバカインが親油性油に溶解し、許容できる速度で放出されることが示された。
【0033】
抗炎症剤の適切な例としては、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサラート、スリンダク、トルメチン、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
医薬組成物はアジュバントを含むことができる。薬物の文脈では、アジュバントとは、鎮痛作用を持ち、疼痛以外の主な適応症を持つ薬物を指す。適切なアジュバントの例としては、バルビツール酸塩、アヘン剤、抗炎症剤、カンナビノイド、交感神経遮断剤、又はそれらの混合物が挙げられる。適切なアジュバントのさらなる例としては、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ペチジン、ツボクラリン塩化物、メロキシカム、デクスメデトミジン、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
アジュバントがカンナビノイドを含む場合、適切なカンナビノイドはカンナビジオール(CBD)であり得る。ただし、他のカンナビノイドには、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビゲロール酸モノメチルエーテル(CBGAM)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビゲロバリン酸(CBGVA)、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメバリン酸(CBCVA)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジオールモノメチルエーテル(CBDM)、カンナビジオール-C4(CBD-C4)、カンナビジバリン酸(CBDVA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビジオルコール(cannabidiorcol)(CBD-C1)、テトラヒドロカンナビノール酸A(THCA-A)、テトラヒドロカンナビノール酸B(THCA-B)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸C4(THCA-C4)、テトラヒドロカンナビノールC4(THC-C4)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、テトラヒドロカンナビオルコール酸(THCA-C1)、テトラヒドロカンナビオルコール(THC-C1)、Δ7-シス-イソ-テトラヒドロカンナビバリン、Δ8-テトラヒドロカンナビノール酸(Δ8-THCA)、カンナビバリノジオール酸(CBNDVA)、カンナビバリノジオール(CBNDV)、Δ8-テトラヒドロカンナビノール(Δ8-THC)、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)、カンナビシクロール酸(CBLA)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビシクロバリン(CBLV)、カンナビエルソン酸A(CBEA-A)、カンナビエルソン酸B(CBEA-B)、カンナビエルソン(CBE)、カンナビバリンセルソイン(cannabivarinselsoin)(CBEV)、カンナビバリンセルソイン酸(CBEVA)、カンナビエルソン酸(CBEA)、カンナビエルバリンソイン(cannabielvarinsoin)(CBLV)、カンナビエルバリンソイン酸(CBLVA)、カンナビノール酸(CBNA)、カンナビノール(CBN)、カンナビバリン酸(CBNVA)、カンナビノールメチルエーテル(CBNM)、カンナビノール-C4(CBN-C4)、カンナビバリン(CBV)、カンナビノ-C2(CBN-C2)、カンナビオルコール(CBN-C1)、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノジオール酸(CBNDA)、カンナビノジバリン(CBDV)、カンナビトリオール(CBT)、10-エトキシ-9-ヒドロキシ-Δ8a-テトラヒドロカンナビノール、8,9-ジヒドロキシ-Δ6a(10a)-テトラヒドロカンナビノール(8,9-ジ-OH-CBT-C5)、カンナビトリオールバリン(CBTV)、エトキシカンナビトリオールバリン(CBTVE)、デヒドロカンナビフラン(DCBF)、カンビフラン(cannbifuran)(CBF)、カンナビクロマノン(CBCN)、カンナビシトラン(CBT)、10-オキソ-Δ6a(10a)-テトラヒドロカンナビノール(OTHC)、Δ9-シス-テトラヒドロカンナビノール(シス-THC)、カンナビリプソル(CBR)、3,4,5,6-テトラヒドロ-7-ヒドロキシ-α-α-2-トリメチル-9-n-プロピル-2,6-メタノ-2H-1-ベンゾキソシン-5-メタノール(OH-イソ-HHCV)、トリヒドロキシ-デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(triOH-THC)、ヤンゴニン、エピガロカテキンガラート、ドデカ-2E,4E,8Z,10Z-テトラエン酸イソブチルアミド、及びドデカ-2E,4E-ジエン酸イソブチルアミド、それらの混合物、又は前述のもののいずれかとカンナビジオールとの混合物が含まれ得る。
【0036】
アジュバントを含めると、アジュバントを含まないことのみが異なる比較医薬組成物と比較して、治療有効量とみなされるために添加する必要がある薬物の量を減らすことができるという相乗効果が得られる。
【0037】
いくつかの態様では、医薬組成物はレオロジー改質剤を含むことができる。存在する場合、レオロジー改質剤は、親油性油の体積に基づいて医薬組成物の約0.5%(w/v)~約10%(w/v)、約1%(w/v)~約6%(w/v)、約1.5%(w/v)~約3%(w/v)の範囲、約0.5%(w/v)、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は約10%(w/v)のそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超える範囲で存在することができる。
【0038】
いくつかの態様では、レオロジー改質剤は、医薬組成物の粘度を低下させる希釈剤であり得る。例えば、医薬組成物が注射されることが意図されている場合、希釈剤は、医薬組成物の粘性を低下させることによって医薬組成物の注射可能性を高めることができるという点で有益であり得る。例えば、希釈剤は、超分子ゲルを少なくとも一時的に破壊し得る。医薬組成物の注射可能性を高めることに加えて、超分子ゲルを少なくとも一時的に破壊することは、医薬組成物の保存期間の安定性を高めるのに役立ち得る。例えば、医薬組成物の成分が互いに均一に分布している場合、超分子ゲルの形成は、生体内で展開されるまで遅延され得る。適切な希釈剤の例としては、C~C12アルコールが挙げられる。アルコールの非限定的な例としては、エタノール、ベンジルアルコール、又はそれらの混合物が挙げられる。エタノール又はベンジルアルコールを使用する利点は、エタノール又はベンジルアルコールを含む医薬組成物が体内に配置されると、エタノール又はベンジルアルコールが水性環境に拡散するので、医薬組成物の粘度が増加し、及び/又は超分子ゲルが完全に形成されることである。
【0039】
他の態様では、レオロジー改質剤は医薬組成物の粘度を増大させることができる。これは、例えば、親油性油と構造化剤の特定の組み合わせが互いによく相互作用するか、又は所望の薬物の適切な分散及び拡散を可能にするが、一緒にすると適切な粘度を有する組成物が得られない場合に役立つ。粘度を高めるためにレオロジー改質剤を含めると、医薬組成物を実現可能なものにすることができる。
【0040】
医薬組成物は、有効量の本明細書に記載の化合物と、任意選択で、薬学的に許容される担体に含まれる1つ以上の他の治療剤とを含む。「薬学的に許容される担体」という用語は、ヒト又は他の脊椎動物への投与に適した、1つ以上の適合する固体又は液体の充填剤、希釈剤、又はカプセル化物質を意味する。「担体」という用語は、適用を容易にするために有効成分と組み合わせられる有機又は無機の天然又は合成成分を指す。医薬組成物の成分は、所望の医薬効率を実質的に損なう相互作用がないような方法で、化合物と、また互いに混合することもできる。
【0041】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」又は「薬学的に許容される担体」という語句は、対象化学物質を身体の1つの器官又は部分から身体の別の器官又は部分へ運搬又は輸送するのに関与する、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを意味する。各担体は、組成物の他の成分と適合性があり、患者に有害でなく、実質的に非発熱性であるという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体として使用できる物質の例としては、(1)ラクトース、グルコース、スクロースなどの糖類、(2)コーンスターチ、ジャガイモデンプンなどのデンプン類、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体、(4)トラガカント末、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバター、坐薬用ワックスなどの賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、ヒマシ油、中鎖トリグリセリド油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油などの油類、(10)プロピレングリコールなどのグリコール類、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール類、(12)オレイン酸エチルやラウリン酸エチルなどのエステル類、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)パイロジェンフリー水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、及び(21)医薬品組成物に使用される、その他の非毒性の適合性のある物質が挙げられる。本開示の医薬組成物は非発熱性であり、すなわち、患者に投与された場合に著しい温度上昇を引き起こさない。
【0042】
医薬組成物は、任意の適切な方法で包装することができる。例えば、医薬組成物は、医薬組成物にアクセスして所望の場所に手作業で適用できるように、瓶、容器などに包装することができる。あるいは、医薬組成物は、注射器の投与チャンバーの中に配置することもできる。注射器は、約14~約30ゲージ、約21~約25ゲージの範囲、約14ゲージ、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ゲージのそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超えるサイズの針を有することができる。あるいは、医薬組成物は、針なしで注射器から(例えば、コーンアプリケーターを介して)配置することもできる。
【0043】
医薬組成物は、a)親油性油と鎮痛剤、麻酔剤(又は本開示の範囲内の他の薬物)とを25℃を超える温度で撹拌しながら混合することで第1の混合物を形成し、b)構造化剤を第1の混合物と撹拌しながら混合し、25℃を超える温度で加熱することで第2の混合物を形成し、c)第2の混合物を冷却することで医薬組成物を形成することによって製造することができる。
【0044】
一例として、医薬組成物は、親油性油と薬物とを室温(25℃)以上の温度で撹拌しながら混合することで第1の混合物を形成することによって製造することができる。例えば、温度は、約50℃~約100℃、約60℃~約80℃の範囲、約50℃、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100℃のそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超える温度であり得る。構造化剤は、室温(25℃)を超える温度で撹拌及び加熱しながら第1の混合物に添加されることで、第2の混合物を形成することができる。例えば、温度は、約50℃~約100℃、約60℃~約80℃の範囲、約50℃、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100℃のそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超える温度であり得る。次に、第2の混合物を冷却することで医薬組成物を形成することができる。第2の混合物が冷却される前に、それを瓶、容器、又は注射器に入れて、その中で超分子ゲルを形成させることができる。
【0045】
医薬組成物及び/又は瓶、容器、又は注射器は、製造プロセスのどの時点でも滅菌することができる。しかし、医薬組成物の安定性の結果として、医薬組成物が完全に形成された後(例えば、冷却後)に滅菌を行うことができる。滅菌は、紫外線処理、電子ビーム、X線、オートクレーブ、蒸気滅菌、乾熱滅菌などの任意の適切な技術を使用して行うことができる。
【0046】
実施の際、医薬組成物は対象に投与され得る。医薬組成物は、損傷又は創傷又は治療部位に、又はその近くに投与することができる。損傷や創傷の例としては、手術部位が挙げられる。医薬組成物は、損傷又は創傷の遠位部に投与することができる。例えば、医薬組成物を神経を遮断する特定の場所に投与することにより、遠位の損傷又は創傷による疼痛を遮断することができる。手術の状況では、医薬組成物は、手術前、手術中(例えば、切開部が閉じられる前の任意の時点)、又は手術後(例えば、切開部が閉じられた後)に適用することができる。
【0047】
本明細書で使用される「キット」という用語は、以下の1つのパッケージ又は1つ以上の個別のパッケージを含む製品(例えば、医薬品、部品キット)を指す:
(i).有効医薬成分及び少なくとも1つのさらなる有効医薬成分、ならびに任意選択で医療デバイスを含む医薬組成物。少なくとも1つのさらなる有効医薬成分は前記医薬組成物中に存在してもよい。すなわち、キットは、2つ以上の有効医薬成分を含む1つの医薬組成物をそれぞれ含む1つ以上のパッケージを含み得る。さらなる有効医薬成分は、さらなる医薬組成物中に存在してもよい。すなわち、キットは、2つ以上の医薬組成物の個別のパッケージを含み、各医薬組成物は1つの有効医薬成分を含み得る。
【0048】
又は
(ii).有効医薬成分及び医療デバイスを含む医薬組成物。
キットは1つのパッケージのみを含んでもよいし、1つ以上の個別のパッケージを含んでもよい。例えば、キットは、それぞれが規定の医薬組成物を含む2つ以上のバイアルを含む製品(例えば、医薬品)であってもよく、各医薬組成物は少なくとも1つの有効医薬成分を含む。例えば、キットは、(i.)規定の医薬組成物を含むバイアル、及び(ii).さらに少なくとも1つのさらなる有効医薬成分を含む錠剤、カプセル剤、粉末剤、又はその他の経口投与剤形を含み得る。キットは、さらに、医薬組成物及び少なくとも1つのさらなる有効医薬成分の投与の仕方を記載したパッケージリーフレットを含み得る。
【0049】
本明細書で使用される「医療デバイス」という用語は、疾患やその他の状態の診断、予防、又は治療に使用され、体内又は体表面での薬理作用によって目的を達成するものではない、あらゆる器具、装置、インプラント、体外試薬、又は類似もしくは関連する物品を意味する。
【0050】
本明細書で使用される医療デバイスは、注射器、インスリン注射システム、インスリン注入システム、インスリンポンプ、又はインスリンペン注射装置であり得る。本明細書で使用される医療デバイスは、機械的又は電気機械的に駆動され得る。
【0051】
医薬組成物中の成分は、一般に安全とみなされている(Generally Recognized as Safe)(「GRAS」)ものとして定義できる。GRAS成分の完全なリストは、米国食品医薬品局が管理するGRAS物質(SCOGS)データベースで確認できる。医薬組成物の成分の約50%~約100%はGRAS成分として分類することができ、医薬組成物の成分の約75%~約100%、約90%~約100%、約50%、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は約100%のそれぞれについてそれ未満、それに等しい、又はそれを超えるものはGRAS成分として分類することができる。
【0052】
実施例
本開示の様々な態様は、説明のために提供される以下の実施例を参照することによって、よりよく理解することができる。本開示は、本明細書に記載の実施例に限定されるものではない。
【0053】
【表1】
【0054】
15種類の組成物を調製した。中鎖トリグリセリドを約70℃に加熱することにより各組成物を調製した。薬物(ブピバカイン遊離塩基、ロピバカインドクサート、又はロピバカイン遊離塩基)を加熱した中鎖トリグリセリドに加えて保存した。続いて、構造化剤(トリミリスチン、トリパルミチン、トリラウリン、又はモノステアリン酸グリセロール)を加熱及び撹拌しながら添加し、十分に溶解させた。得られた溶液を注射器に吸い上げ、気泡を除去し、注射器を気密シールで密閉する。溶液を室温(約25℃)まで冷却すると、超分子ゲルが自然に形成される。15種類の組成物の構成要素は、以下の表2~16に示されている。表2~16では、個々の組成物の構造化剤及び薬物の濃度値が、親油性油の体積に対する重量(w/v)として表されている。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
【表9】
【0063】
【表10】
【0064】
【表11】
【0065】
【表12】
【0066】
【表13】
【0067】
【表14】
【0068】
【表15】
【0069】
【表16】
【0070】
【表17】
【0071】
【表18】
【0072】
【表19】
【0073】
実施例2
ブピバカイン遊離塩基及びMCT油を含むMCT単独の製剤と、ブピバカイン遊離塩基、MCT油(親油性油)、及びモノステアリン酸グリセリル(構造化剤)を含むオレオゲル製剤について、ブピバカイン遊離塩基を経時的に放出する性能を調べた。図1に示すように、オレオゲル製剤ではブピバカイン遊離塩基の放出が遅くなる。
【0074】
製剤の制御放出を、0.5mLの製剤を透析バッグ(10kDa)に入れ、50mLのリン酸緩衝生理食塩水(1×;pH7.4)のシンクに浸漬して評価した。サンプルを37℃の回転インキュベーター(1Hz)に入れた。指定された時点で、2mLの生理食塩水を取り出し、紫外可視分光光度計(272nm)を使用して分析した。薬物がシステムから溶出されなくなるまで、各時点でシンク媒体全体を交換した。
【0075】
実施例3
ブピバカイン遊離塩基、MCT油、及びモノステアリン酸グリセリル(構造化剤)を含むオレオゲル製剤、ならびにブピバカイン遊離塩基、75重量%のMCT油及び25重量%のヒマシ油からなる親油性油混合物、及びモノステアリン酸グリセリル(構造化剤)を含むオレオゲル製剤について、経時的な薬物放出について調べた。図2に示すように、75重量%のMCT油と25重量%のヒマシ油の混合物を含む製剤では、ブピバカイン遊離塩基の放出が遅くなる。薬物放出プロファイルは実施例2のプロトコルに従って測定した。
【0076】
実施例4
本明細書に記載の製剤に使用される様々な油の粘度を37℃で調べた。調査した油には、ヒマシ油、MCT油、及びヒマシ油とMCT油のブレンド(例えば、ヒマシ油50%、40%、30%、20%、残りはMCT)が含まれる。図3に示すように、MCT:ヒマシ油のブレンドは、ヒマシ油単独よりも大幅に低い粘度を有し、MCT単独の粘度値に近くなる。ブピバカインやその他の局所麻酔薬は、MCTよりもヒマシ油への薬物溶解性が高いため、これら2つの油をブレンドすると、良好な薬物溶解性(つまりは薬物充填量)と注射に適した低粘度の両方を実現できる。例えば、これらの特性は、30%~50%のヒマシ油を含めることで、油の基本粘度を大きく変更することなく、薬物充填量を高め、薬物放出を遅らせることができることを意味する。
【0077】
レオメーターを使用して、各製剤のレオロジー特性を測定した。0.5mmのギャップで設定した35mm平行プレートを使用して、約0.5mLの製剤を18Gの針を通してレオメータープレートに注入し、分析した。回転加速試験を20℃で実施し、せん断速度を1~200Hzの間で変化させて粘度曲線を取得した。
【0078】
実施例5
25重量%のヒマシ油と20重量%の構造化剤を含む製剤の粘度を37℃で測定した。構造化剤には、モノステアリン酸塩、モノパルミチン酸塩、及びそれらの混合物が含まれていた。図4は、モノステアリン酸塩とモノパルミチン酸塩の混合物中のモノステアリン酸塩の重量%を変化させた場合の粘度の影響を示している。示されているように、モノステアリン酸塩のみ、又はモノパルミチン酸塩のみを含む製剤は、2つをブレンドして作られたゲルよりも大幅に柔らかくなる。粘度は実施例4のプロトコルに従って測定した。
【0079】
実施例6
25%のモノステアリン酸及びモノパルミチン酸塩、100%のMCT、5%のブピバカインを含む製剤のせん断速度を試験した。図5に示すように、粘度曲線は、せん断速度が増加すると粘度が低下することを示している。この特性は「せん断減粘性」と呼ばれ、この製剤は注射可能性を改善し、その場でゲル化を起こすことを意味する。粘度は実施例4のプロトコルに従って測定した。
【0080】
実施例7
MCT、60:40のモノステアリン酸塩:モンパルミチン酸塩混合物(「GMSP」)、及びブピバカイン遊離塩基を含む製剤の粘度を20℃及び37℃(体温を模倣)で測定した。図6に示すように、十分に強度のあるゲルが得られる。粘度は実施例4のプロトコルに従って測定した。
【0081】
実施例8
ここでは、様々な構造化剤を使用したレオロジーグラフを示す。図7A~7Dは、一部の製剤が37℃で著しく弱まる様子を示している。ゲルが37℃で分解すると、注射可能なデポ持続放出薬物送達システムとしての有用性が低下する。粘度は実施例4のプロトコルに従って測定した。次に、線形粘弾性領域の平均貯蔵弾性率(G’)とクロスオーバーポイントをソフトウェアから取得し、さらに分析した。
【0082】
実施例9
DSC融点及び結晶化温度をそれぞれ表20及び21に示す。示されているように、GMSは37℃超で融解ピーク及び結晶化ピークを有する。前のレオロジーグラフ(図7A~7D)におけるすべてのゲル化剤の中で最も高いピークである。上記の結果を裏付けている。GMSPゲルはより耐熱性が高いため、より有用である。
【0083】
【表20】
【0084】
【表21】
【0085】
表20及び21において:
GMS=モノステアリン酸グリセリル
PMF=脂肪酸(18C長の脂肪酸)のポリグリセリドエステル
TM=トリミリスチン
TP=トリパルミチン
実施例10
図8A及び8Bは、様々な製剤のピーク融解特性及びピーク結晶化特性を示している。オレオゲル(例えば、親油性油及び構造化剤)の熱特性を、示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定した。約25mgのオレオゲルを、室温で中央に穴の開いた蓋が付いた標準的なアルミニウムるつぼ(25μL)に充填した。スキャン速度10℃/分で、サンプルを20℃から100℃まで加熱し、その後100℃で5分間等温保持した後、-20℃まで冷却した。
【0086】
この方法を使用して、曲線下面積、つまり融解エンタルピーとピーク温度を得た。
実施例11
図9A及び9Bはラットの坐骨神経ブロックデータを示している。図9Bは、図9Aと同じデータを示しているが、y軸とx軸の値が異なる。示されているように、オレオゲル中のブピバカインは最も長い効果を有する。さらに重要なのは、オレオゲルは構造化剤を含まないMCT油よりも長い効果を有し、どちらもブピバカインの用量が同じであることである。油をゲル化することで、体内での薬物放出が大幅に延長される。
【0087】
この縦断的実験では、体重360~420グラムのオスCD Sprague Dawleyラット17匹に、4つの異なる治療法:0.3mLの0.5%ブピバカインHCl(1.5mgのブピバカイン)、0.3mLの1.33%リポソームブピバカイン(4mgのブピバカイン)、0.2mLのMCT油中5%ブピバカイン(10mgのブピバカイン)、及び、20%GMS(w/v)(GMS/MCT)を使用した0.2mLの5%ブピバカインオレオゲル(w/v)(ブピバカイン/オレオゲル)(10mgのブピバカイン)のうちのいずれか1つを用いて坐骨神経ブロックを施した。各群は5匹としたが、ブピバカインHClの麻酔効果はすでによく理解されているため、0.5%ブピバカインHClでは例外的に2匹とした。ラットが手術から回復したら、Hargreaves疼痛アッセイを実施するために、加熱した透明ガラスの表面上の個別のアクリル製の囲いに移した。
【0088】
Hargreaves法:指定された時点で、右後足の足底中央部に健康上有害な温熱装置を置き、足が引っ込められたときに手動で電源をオフにした。足が引っ込められるまでの潜時を、個体ごと、時点ごとに3回測定し、平均を算出した。
【0089】
実施例12
図10はブタの効能データを示すグラフである。Alevatrix001=100%MCT。Alevatrix002=75:25のMCT:ヒマシ油。002ヒマシ油ブレンド群は、より良好なブピバカインの放出プロファイルを示した。
【0090】
体重10~13kgのブタ30頭に各製剤の皮下注射を行った。指定された時点で、von Frey法を注射部位から約0.5cmの位置で実施した。この位置に、逃避反応が観察されるまでフィラメントを適用し、適用するフィラメントの直径を漸次大きくしていった。60グラムの力のフィラメントを最大とした。逃避反応は、歩き去るか、脇腹をひねるなどして刺激から離れる行為とみなした。手術後、側腹部の逃避力が≦8gの場合、疼痛(異痛症)が存在すると判断した。
【0091】
処置群(n=6);低用量(L)の投与量は2.5mLであった。高用量(H)の投与量は5mLであった。
実施例13
MCT油とヒマシ油のブレンドにおけるブピバカインの溶解性を調べた。図11に示すように、特定の油のブレンドにより薬物充填量が増加し、油のブレンドに対する薬物の親和性が高くなるため、薬物の放出も遅くなる。薬物親和性が高いほど、薬物充填量が多くなり、放出が遅くなる。油のブレンドの最大溶解度を、300mgのブピバカイン遊離塩基を3mLのMCT:ヒマシ油混合物に加えることにより測定した。混合物を完全に溶解させるために、37℃のオーブン内で回転振とう機で一晩回転させた。回転させた後、サンプルを2000×gで5分の遠心分離機にかけた。次に、30μLのサンプル上清を採取し、1470μLのエタノールに溶解し、紫外可視分光光度計(272nm)を使用して分析した。
【0092】
実施例14
MCT油と、構造化剤としてモノステアリン酸グリセロールとを含み、アニオンが存在する又は存在しない(図12のx軸に表示)製剤におけるブピバカインの溶解度が、図12に示されている。示されているように、ドクサートはブピバカインの溶解度を高める。溶解度は実施例13のプロトコルに従って測定した。
【0093】
実施例15
ブピバカインの放出は、MCT油と、構造化剤としてモノステアリン酸グリセロールとを含み、疎水性を高めるためのアニオンが存在する又は存在しない製剤で示されている。図13に示すように、ドクサートを有するブピバカインの放出は長期化される。製剤の制御放出を、0.5mLの製剤を透析バッグ(10kDa)に入れ、50mLのリン酸緩衝生理食塩水(1×;pH7.4)のシンクに浸漬して評価した。サンプルを37℃の回転インキュベーター(1Hz)に入れた。指定された時点で、2mLの生理食塩水を取り出し、紫外可視分光光度計(272nm)を使用して分析した。薬物がシステムから溶出されなくなるまで、各時点でシンク媒体全体を交換した。
【0094】
使用された用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現の使用には、示され説明された特徴又はその一部の同等物を排除する意図はないが、本開示の態様の範囲内で様々な変更が可能であることが認識されている。したがって、本開示は特定の態様及び任意選択的特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示された概念の修正及び変更に頼ることができ、そのような修正及び変更は、本開示の態様の範囲内にあるとみなされることを理解されたい。
【0095】
例示的な態様
以下に例示的な態様を示すが、番号は重要度を示すものとして解釈されるべきではない。
【0096】
態様1は、
親油性油、
前記親油性油中に分散した治療剤、その塩、イオン対、又はプロドラッグ、及び
少なくとも一部が前記親油性油に溶解せずゲルを形成する構造化剤
を含む医薬組成物を提供する。
【0097】
態様2は、前記親油性油が、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、中鎖トリグリセリド油、ゴマ油、大豆油、ヒマシ油、植物油、トリブチリン油、又はそれらの混合物を含む、態様1の医薬組成物を提供する。
【0098】
態様3は、前記トリグリセリドが、飽和トリグリセリド、一価不飽和トリグリセリド、又は多価不飽和トリグリセリドである、態様2の医薬組成物を提供する。
態様4は、前記トリグリセリドが、中鎖トリグリセリド、短鎖トリグリセリド、長鎖トリグリセリド、又はそれらの混合物を含む、態様2の医薬組成物を提供する。
【0099】
態様5は、前記トリグリセリドが中鎖トリグリセリドを含む、態様4の医薬組成物を提供する。
態様6は、前記中鎖トリグリセリドが、C6~C12カルボン酸のグリセリド、又はそれらの混合物を含む、態様5の医薬組成物を提供する。
【0100】
態様7は、前記構造化剤が約40℃~約100℃の範囲の融点を有する、態様1の医薬組成物を提供する。
態様8は、前記構造化剤が約50℃~約85℃の範囲の融点を有する、態様7の医薬組成物を提供する。
【0101】
態様9は、前記構造化剤が約60℃~約70℃の範囲の融点を有する、態様8の医薬組成物を提供する。
態様10は、前記構造化剤が、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、脂肪酸のポリグリセリドエステル、又はそれらの混合物を含む、態様1の医薬組成物を提供する。
【0102】
態様11は、前記構造化剤が、トリステアリン、ジステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセロール、ジベヘン酸グリセリル、コレステロール、トリミリスチン、グリセリルジミリスチン、グリセリルモノミリスチン、トリラウリン、グリセリルジラウリン、グリセリルモノラウリン、トリパルミチン、グリセリルジパルミチン、グリセリルモノパルミチン、コレステロール、脂肪酸のポリグリセリドエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、又はそれらの混合物を含む、態様1の医薬組成物を提供する。
【0103】
態様12は、前記構造化剤が、モノステアリン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン、グリセロールモノパルミチン、グリセロールジパルミチン、トリパルミチン、グリセロールモノミリスチン、グリセロールジミリスチン、トリミリスチン、又はそれらの混合物を含む、態様11の医薬組成物を提供する。
【0104】
態様13は、前記構造化剤が、前記親油性油の体積に基づいて、前記医薬組成物の約0.1%(w/v)~約25%(w/v)の範囲の濃度で存在する、態様1の医薬組成物を提供する。
【0105】
態様14は、前記構造化剤が、前記親油性油の体積に基づいて、前記医薬組成物の約3%(w/v)~約20%(w/v)の範囲の濃度で存在する、態様13の医薬組成物を提供する。
【0106】
態様15は、前記構造化剤が、前記親油性油の体積に基づいて、前記医薬組成物の約3%(w/v)~約10%(w/v)の範囲の濃度で存在する、態様13の医薬組成物を提供する。
【0107】
態様16は、前記治療剤が、前記親油性油中に分散された鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、交感神経遮断剤、抗不安剤、カンナビノイド、又はそれらの混合物を含む、態様1の医薬組成物を提供する。
【0108】
態様17は、鎮痛剤、麻酔剤、又はそれらの両方が、対象の疼痛を軽減するのに十分な量で存在する、態様16の医薬組成物を提供する。
態様18は、前記医薬組成物が鎮痛剤を含む、態様17の医薬組成物を提供する。
【0109】
態様19は、前記鎮痛剤が、非ステロイド性抗炎症薬、COX-2阻害剤、又はそれらの混合物を含む、態様18の医薬組成物を提供する。
態様20は、前記非ステロイド性抗炎症薬が、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、メフェナム酸、インドメタシン、カンナビジオール、それらのイオン対、それらの塩、又はそれらの混合物を含む、態様19の医薬組成物を提供する。
【0110】
態様21は、前記COX-2阻害剤が、エトリコキシブ、メロキシカム、セレコキシブ、それらのイオン対、それらの塩、又はそれらの混合物を含む、態様19の医薬組成物を提供する。
【0111】
態様22は、前記医薬組成物が麻酔剤を含み、前記麻酔剤が局所麻酔薬である、態様1の医薬組成物を提供する。
態様23は、前記麻酔剤がエステル系局所麻酔薬、アミド系局所麻酔薬、又はプロドラッグ、又はそれらのイオン対、又はそれらの塩、又はそれらの混合物を含む、態様22の医薬組成物を提供する。
【0112】
態様24は、前記エステル系局所麻酔薬が、プロカイン、アメトカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、又はそれらのプロドラッグ、又はそれらのイオン対、又はそれらの塩、又はそれらの混合物を含む、態様23の医薬組成物を提供する。
【0113】
態様25は、前記局所アミド系麻酔薬が、リドカイン、プリロカイン、ブピバカイン、レボブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、ジブカイン、エチドカイン、プロドラッグ、又はそれらのイオン対、又はそれらの塩、又はそれらの混合物を含む、態様23の医薬組成物を提供する。
【0114】
態様26は、前記アミド系麻酔薬が、ブピバカイン、ロピバカイン、それらの塩、それらのイオン対、又はそれらの混合物を含む、態様25の医薬組成物を提供する。
態様27は、前記アミド系局所麻酔薬が、ブピバカイン酪酸塩、ブピバカインパルミチン酸塩、ブピバカインラウリン酸塩、ブピバカインミリスチン酸塩、ブピバカインステアリン酸塩、ブピバカインヒドロキシステアリン酸塩、ブピバカインオレイン酸塩、ブピバカインリシノール酸塩、ブピバカインドクサートのものを含むイオン対又は塩である、態様26の医薬組成物を提供する。
【0115】
態様28は、鎮痛剤、麻酔剤、及び抗炎症剤の混合物を含む、態様1の医薬組成物を提供する。
態様29は、鎮痛剤及び麻酔剤の混合物を含む、態様1の医薬組成物を提供する。
【0116】
態様30は、鎮痛剤、麻酔剤、又はそれらの両方が、前記親油性油の体積に基づいて約2%(w/v)~約15%(w/v)の範囲の濃度で存在する、態様1の医薬組成物を提供する。
【0117】
態様31は、鎮痛剤、麻酔剤、又はそれらの両方が、前記親油性油の体積に基づいて約3%(w/v)~約10%(w/v)の範囲の濃度で存在する、態様30の医薬組成物を提供する。
【0118】
態様32は、抗炎症剤が、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサラート、スリンダク、トルメチン、カンナビジオール、それらの塩、それらのイオン対、又はそれらの混合物を含む、態様1の医薬組成物を提供する。
【0119】
態様33は、アジュバントをさらに含む態様1の医薬組成物を提供する。
態様34は、前記アジュバントが、コルチコステロイド、α2アゴニスト、ペチジン、バルビツール酸塩、アヘン剤、ツボクラリン塩化物、カンナビノイド、メロキシカム、それらの塩、又はそれらのイオン対、又はそれらの混合物を含む、態様33の医薬組成物を提供する。
【0120】
態様35は、カンナビノイドがカンナビジオール(CBD)である、態様34の医薬組成物を提供する。
態様36は、前記医薬組成物が、前記アジュバントを含まない対応する医薬組成物と比較して、より低濃度の鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、又はそれらの混合物を使用して対象の疼痛を軽減するのに有効であり、及び/又はより長い疼痛軽減効果を有する、態様33の医薬組成物を提供する。
【0121】
態様37は、C2~C12アルコールを含むレオロジー改質剤をさらに含む、態様1の医薬組成物を提供する。
態様38は、前記レオロジー改質剤が、エタノール、ベンジルアルコール、又はそれらの混合物を含む、態様37の医薬組成物を提供する。
【0122】
態様39は、前記C2~C12アルコールが、エタノール、ベンジルアルコール、又はそれらの混合物を含み、前記親油性油の体積に基づいて、前記医薬組成物の約0.5%(w/v)~約10%(w/v)の範囲で存在する、態様38の医薬組成物を提供する。
【0123】
態様40は、前記エタノール、ベンジルアルコール、又はそれらの混合物が、前記親油性油の体積に基づいて、前記医薬組成物の約1%(w/v)~約6%(w/v)の範囲で存在する、態様39の医薬組成物を提供する。
【0124】
態様41は、前記医薬組成物が、約24時間~約14日間の範囲の時間にわたって対象の疼痛を軽減するのに有効である、態様1の医薬組成物を提供する。
態様42は、前記医薬組成物が、約48時間~約96時間の範囲の時間にわたって対象の疼痛を軽減するのに有効である、態様1の医薬組成物を提供する。
【0125】
態様43は、前記医薬組成物が、約96時間~約168時間の範囲の時間にわたって対象の疼痛を軽減するのに有効である、態様1の医薬組成物を提供する。
態様44は、前記医薬組成物が、約168時間~約336時間の範囲の時間にわたって対象の疼痛を軽減するのに有効である、態様1の医薬組成物を提供する。
【0126】
態様45は、半固体組成物である態様1の医薬組成物を提供する。
態様46は、
中鎖トリグリセリド、
ヒマシ油、
ブピバカイン、そのイオン対、又はその塩、又はそれらの両方を含む麻酔剤であって、対象の疼痛を軽減するのに十分な量で存在し、前記中鎖トリグリセリド及び前記ヒマシ油の混合物の周りに分散されている前記麻酔剤、及び
トリステアリン、ジステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセロール、ジベヘン酸グリセリル、コレステロール、トリミリスチン、グリセリルジミリスチン、グリセリルモノミリスチン、トリラウリン、グリセリルジラウリン、グリセリルモノラウリン、トリパルミチン、グリセリルジパルミチン、グリセリルモノパルミチン、コレステロール、脂肪酸のポリグリセリドエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、又はそれらの混合物を含む構造化剤を含み、
任意選択で、前記中鎖トリグリセリドとヒマシ油の重量対重量比は約50:50である、医薬組成物を提供する。
【0127】
態様47は、前記組成物の粘度が、約37℃で測定した場合に約10Pa・s(約10,000cP)~約1000Pa・s(約1,000,000cP)の範囲である、態様1の医薬組成物を提供する。
【0128】
態様48は、前記組成物の粘度が、約37℃で測定した場合に約10Pa・s(約10,000cP)~約150Pa・s(約150,000cP)の範囲である、態様1の医薬組成物を提供する。
【0129】
態様49は、せん断後、前記組成物の粘度が、約37℃で測定した場合に約10mPa・s(約10cP)~約10,000mPa・s(約10,000cP)の範囲である、態様1の医薬組成物を提供する。
【0130】
態様50は、せん断後、粘度が低下することでせん断減粘挙動によって注射可能となる、態様1の医薬組成物を提供する。
態様51は、
注射器、及び
前記注射器内に配置された態様1の医薬組成物
を含むキットを提供する。
【0131】
態様52は、前記医薬組成物が前記注射器内に密封されている、態様51のキットを提供する。
態様53は、前記注射器が、約15~30ゲージのサイズの針をさらに含む、態様51のキットを提供する。
【0132】
態様54は、前記注射器が、約21~約25ゲージの針サイズを含む、態様53のキットを提供する。
態様55は、態様1の医薬組成物を製造する方法を提供し、前記方法は、
a)親油性油及び鎮痛剤、麻酔剤を撹拌及び25℃を超える温度で加熱しながら混合することで、混合物を形成すること、
b)前記混合物を冷却することで前記医薬組成物を形成すること
を含む。
【0133】
態様56は、a)における混合が約50℃~約150℃の範囲の温度で行われる、態様55の方法を提供する。
態様57は、前記混合物が密封された注射器に入れられてb)で冷却される、態様56の方法を提供する。
【0134】
態様58は、前記医薬組成物を滅菌することをさらに含む、態様57の方法を提供する。
態様59は、前記医薬組成物が容器に分配された後に滅菌された後に滅菌が行われ、滅菌がガンマ線照射、電子線照射、X線照射、加熱滅菌、蒸気滅菌、又はそれらの組み合わせを含む、態様58の方法を提供する。
【0135】
態様60は、態様1の医薬組成物で対象を治療する方法であって、それを必要とする対象に前記医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
態様61は、前記医薬組成物が対象の手術部位又はその近くに投与される、態様60の方法を提供する。
【0136】
態様62は、前記医薬組成物が対象の創傷部又はその近くに投与される、態様61の方法を提供する。
態様63は、前記医薬組成物が対象の創傷部に近い部位に投与される、態様62の方法を提供する。
【0137】
態様64は、前記創傷部に近い部位は、神経がブロックされる部位である、態様63の方法を提供する。
態様65は、前記医薬組成物の第1の部分が、対象の創傷部又はその近くに投与され、前記医薬組成物の第2の部分が、対象の前記創傷部に近い部位に投与される、態様61の方法を提供する。
【0138】
態様66は、前記医薬組成物の投与が、注射器を介して、約18~30ゲージのサイズの針を通して前記医薬組成物を注射すること、創傷部位又は手術部位又はその近くに前記医薬組成物を擦り込むこと、又はそれらの組み合わせを含む、態様61の方法を提供する。
【0139】
態様67は、前記医薬組成物が、手術が行われる前、手術中、又は対象が手術を受けた後に対象に投与される、態様62の方法を提供する。
態様68は、前記医薬組成物が対象に投与されてから48~120時間後に、前記対象に非オピオイド鎮痛剤を投与することをさらに含む、態様67の方法を提供する。
【0140】
態様69は、前記医薬組成物が対象に投与されてから72~120時間後に、前記対象に非オピオイド鎮痛剤を投与することをさらに含む、態様68の方法を提供する。
本明細書全体を通じて、範囲形式で表現された値は、範囲の限界として明示的に記載された数値だけでなく、その範囲に含まれるすべての個別の数値又は部分範囲も、各数値及び部分範囲が明示的に記載されているかの如く含むように柔軟に解釈される必要がある。例えば、「約0.1%~約5%」又は「約0.1%~5%」の範囲は、約0.1%~約5%だけでなく、示された範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%、及び4%)と部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈されるべきである。「約X~Y」という記述は、特に断りがない限り、「約X~約Y」と同じ意味を持つ。同様に、「約X、Y、又は約Z」という記述は、特に断りがない限り、「約X、約Y、又は約Z」と同じ意味を持つ。
【0141】
本明細書において、「1つ」又は「その」、「前記」という用語は、文脈上明らかに別の意味が示されていない限り、1つ又は複数のものを指すために使用される。「又は」という用語は、特に断りがない限り、非排他的な「又は」を指すために使用される。「A及びBの少なくとも1つ」又は「A又はBの少なくとも1つ」という記述は、「A、B、又はAとB」と同じ意味を持つ。さらに、本明細書で使用されている、別途定義されていない表現又は用語は、説明のみを目的としており、制限を目的としていないことを理解する必要がある。セクション見出しの使用は、文書の読みやすさを目的としたものであり、制限するものではない。セクション見出しに関連する情報は、その特定のセクション内又はセクション外に出現する場合がある。
【0142】
本明細書に記載された方法では、時間的又は操作的順序が明示的に記載されている場合を除き、本開示の原理から逸脱することなく、任意の順序で動作を実行できる。さらに、明示的なクレーム文言で別々に実行されることが記載されていない限り、特定の動作を同時に実行することができる。例えば、Xを実行するという特許請求された動作とYを実行するという特許請求された動作は、単一の操作内で同時に実行することができ、結果として生じる方法は、特許請求された方法の文字通りの範囲内に収まる。
【0143】
本明細書で使用される用語「約」は、値又は範囲の、例えば記載された値又は記載された範囲の限界の10%以内、5%以内、又は1%以内などの変動の程度を許容し、記載された正確な値又は範囲を含む。本明細書において使用される「実質的に」という用語は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は少なくとも約99.999%以上、又は100%のように、大部分、又はほとんどを指す。ここで使用される「実質的に含まない」という用語は、全く含まないか、又は微量しか含まないことを意味することができ、存在する物質の量が、その物質を含む組成物の物質特性に影響を与えないことを意味することができる。例えば、組成物の約0重量%~約5重量%がその物質であるか、又は約0重量%~約1重量%、又は約5重量%未満であるか、又は約4.5重量%、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01のそれぞれについてそれ未満又はそれに等しい、又は約0.001重量%未満、又は約0重量%である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射可能な医薬組成物であって、
前記医薬組成物の約3重量%~約7重量%の範囲のブピバカイン、
前記医薬組成物の約39.5重量%~約46.5重量%の範囲の中鎖トリグリセリド油、
前記医薬組成物の約39.5重量%~約46.5重量%の範囲のヒマシ油、及び
前記医薬組成物の約0.5重量%~約6重量%の範囲のトリステアリン
を含み、前記医薬組成物はレオロジー改質剤を含まず、かつ、前記中鎖トリグリセリドとヒマシ油の重量対重量比は約50:50である、注射可能な医薬組成物。
【請求項2】
神経ブロック組成物である、請求項1に記載の注射可能な医薬組成物。
【請求項3】
約15~30ゲージのサイズの針を含む注射器、及び
前記注射器内に配置され密封された請求項1に記載の注射可能な医薬組成物
を含むキット。
【請求項4】
請求項1に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
a)ブピバカイン、中鎖トリグリセリド、ヒマシ油、及びトリステアリンを撹拌及び25℃超150℃以下の温度で加熱しながら混合することで、混合物を形成すること、
b)前記混合物を密封された注射器に入れて冷却することで前記医薬組成物を形成すること、及び
c)前記医薬組成物を滅菌することであって、前記滅菌は、前記医薬組成物が前記密封された注射器に入れられた後に行われ、前記滅菌は、ガンマ線照射、電子線照射、X線照射、加熱滅菌、蒸気滅菌、又はそれらの組み合わせを含む、前記滅菌すること
を含む、方法。
【国際調査報告】