(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】温水システム
(51)【国際特許分類】
F24H 1/10 20220101AFI20250123BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20250123BHJP
H01M 10/627 20140101ALI20250123BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20250123BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20250123BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20250123BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20250123BHJP
F24H 15/335 20220101ALI20250123BHJP
F24H 15/31 20220101ALI20250123BHJP
F24H 15/296 20220101ALI20250123BHJP
F24H 15/414 20220101ALI20250123BHJP
【FI】
F24H1/10 C
H01M10/613
H01M10/627
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/615
F24H1/00 631A
F24H15/335
F24H15/31
F24H15/296
F24H15/414
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545257
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-09-26
(86)【国際出願番号】 GB2023050193
(87)【国際公開番号】W WO2023144557
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524283682
【氏名又は名称】ルースモア・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LUTHMORE LTD
【住所又は居所原語表記】UNIT H, BRUNEL PARK, VINCIENTS ROAD, BUMPERS FARM, CHIPPENHAM SN14 6NQ, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】グトゥコウィスキ,マーティン・シモン
【テーマコード(参考)】
3L034
3L122
5H031
【Fターム(参考)】
3L034BA12
3L122AA03
3L122AA33
3L122AA46
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
本発明の態様によれば、水を加熱するための電気加熱装置と、バッテリーと、バッテリー管理システムと、ヒートシンク構成と、断熱シェルとを備える温水システムが提供される。バッテリーは、電気加熱装置に電力を供給するために、電気加熱装置に電気的に結合されている。バッテリー管理システムは、バッテリーを充電するためにバッテリーに電気的に結合されている。ヒートシンク構成は、バッテリーに熱結合され、および熱エネルギーを蓄えおよび放出するように構成されている。断熱シェルは、バッテリーおよびヒートシンク構成を取り囲んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱するための電気加熱装置と、
前記電気加熱装置に電力を供給するために前記電気加熱装置に電気的に結合されたバッテリーと、
前記バッテリーを充電するために前記バッテリーに電気的に結合されたバッテリー管理システムと、
前記バッテリーに熱結合され、かつ熱エネルギーを蓄えおよび放出するように構成されたヒートシンク構成と、
前記バッテリーおよび前記ヒートシンク構成を取り囲む断熱シェルと、
を備える、温水システム。
【請求項2】
前記ヒートシンク構成は、過剰な熱サイクルによる前記バッテリーの損傷を引き起こすことなく、前記バッテリーを充電することによって生成されるすべての熱を蓄えるのに十分である熱容量を有する、請求項1に記載の温水システム。
【請求項3】
前記ヒートシンク構成は、前記バッテリー管理システムに熱結合され、前記断熱シェルは、前記バッテリー管理システムをさらに取り囲んでいる、請求項1または請求項2に記載の温水システム。
【請求項4】
前記ヒートシンク構成は、前記断熱シェルの内部と、前記電気加熱装置のインレットに流入する水との間の熱交換を容易にするように構成された熱交換器を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の温水システム。
【請求項5】
前記ヒートシンク構成は、熱交換流体を保持するためのヒートシンク容積を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の温水システム。
【請求項6】
前記ヒートシンク容積は、前記電気加熱装置のインレットに流体的に結合されている、請求項5に記載の温水システム。
【請求項7】
前記ヒートシンク構成は、前記ヒートシンク容積内の熱交換流体と前記電気加熱装置のインレットに流入する水との間で熱を交換するための熱交換器、を備える、請求項5または請求項6に記載の温水システム。
【請求項8】
前記ヒートシンク容積を介して、前記熱交換流体を循環させるためのポンプをさらに備える、請求項7に記載の温水システム。
【請求項9】
前記バッテリー管理システムおよび/または前記電気加熱装置に作動可能に結合された制御部をさらに備える、請求項5から請求項8のいずれかに記載の温水システム。
【請求項10】
前記断熱シェルの内部の温度を測定するための温度センサをさらに備える、請求項9に記載の温水システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記ヒートシンク容積内の流れを開始するように構成された装置、例えば、前記ヒートシンク容積に流体的に結合されたポンプまたは放出弁に、作動可能に結合され、前記制御部は、前記温度センサおよび前記装置に作動可能に結合され、かつ前記断熱シェルの内部の前記温度に依存して、前記ヒートシンク容積から熱を排熱するように、前記ヒートシンク容積内の流れを選択的に開始するように構成されている、請求項10に記載の温水システム。
【請求項12】
前記ヒートシンク容積に流体的に結合されかつ前記ヒートシンク容積からの熱交換流体の放出を容易にするように構成された放出弁、をさらに備え、前記制御部は、前記温度センサおよび前記放出弁に作動可能に結合され、かつ前記断熱シェルの内部の前記温度に依存して、前記放出弁を開くように構成されている、請求項10または請求項11に記載の温水システム。
【請求項13】
前記放出弁はさらに、前記電気加熱装置のインレットに流体的に結合され、かつ前記ヒートシンク容積から前記電気加熱装置の前記インレットへの水の排水を可能にするように構成されている、請求項12に記載の温水システム。
【請求項14】
前記ヒートシンク容積を介して前記熱交換流体を循環させるためのポンプを備え、前記制御部は、前記温度センサおよび前記ポンプに作動可能に結合され、かつ前記断熱シェルの内部の前記温度に依存して前記ポンプを作動させるように構成されている、請求項10に記載の温水システム。
【請求項15】
第二の加熱装置をさらに備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の温水システム。
【請求項16】
前記第二の加熱装置は、商用電源によって電力を供給されるように構成されている、請求項15に記載の温水システム。
【請求項17】
前記電気加熱装置と前記第二の加熱装置は、平行な流体流路上に設けられている、請求項15または請求項16に記載の温水システム。
【請求項18】
前記平行な流体流路の各々における流体流量を制御するための制御可能なバルブ構成をさらに備える、請求項17に記載の該温水システム。
【請求項19】
前記ヒートシンク構成は相変化物質を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の温水システム。
【請求項20】
前記バッテリーは、各々が一つ以上の個別のセルを収容できる複数のモジュールを備え、前記ヒートシンク構成は、複数のコンパートメントまたは取付具を有するフレームを備え、各コンパートメントまたは取付具は、前記バッテリーモジュールのうちの一つ以上を保持するように構成されている、請求項1から19のいずれか一項に記載の温水システム。
【請求項21】
前記ヒートシンク構成は、熱交換流体を保持するためのヒートシンク容積を備え、前記ヒートシンク容積は、それぞれのバッテリーモジュール間を通りおよび/またはそれぞれのバッテリーモジュール内を通る熱交換流体流路、を備える、請求項20に記載の温水システム。
【請求項22】
前記ヒートシンク構成は、熱交換流体を保持するためのヒートシンク容積を備え、前記ヒートシンク容積は熱交換流体流路を備え、一つ以上の熱交換流体流路は、前記フレーム内の導管によって画定されている、請求項20または請求項21に記載の温水システム。
【請求項23】
前記断熱シェル内に取り囲まれているバッテリー加熱装置をさらに備える、請求項1から22のいずれか一項に記載の温水システム。
【請求項24】
前記断熱シェル内にAC/DC電源をさらに備え、前記電源は、前記バッテリーに電力を供給するために、前記バッテリーおよび/またはバッテリー管理システムのうちの少なくとも一方に電気的に結合され、かつ前記電源は、前記ヒートシンク構成に熱結合されている、請求項1から23のいずれか一項に記載の温水システム。
【請求項25】
請求項18に記載の温水システムを制御する方法であって、前記方法が、現在の温水の需要、前記バッテリーの充電状態、前記断熱シェルの内部の温度、および商用電源の現在の値段のうちの少なくとも一つに依存して、前記平行な流体流路の各々における流体流量を制御することを含む、方法。
【請求項26】
請求項1から請求項24のいずれかに記載の温水システムを制御する方法であって、前記バッテリーの充電状態、前記断熱シェルの内部の温度、前記バッテリーを充電する予測コスト、商用電源の現在の値段、および温水に対する予測需要のうちの少なくとも一つに依存して、前記バッテリーの充電を制御することを含む、方法。
【請求項27】
コンピュータによって実行される場合に、該コンピュータに、請求項25または請求項26に記載の方法を実行させる前記コンピュータによって実行可能な命令を含む、コンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を加熱するための電気加熱装置と、バッテリーと、バッテリーを充電するためにバッテリーに電気的に結合されたバッテリー管理システムとを備える温水システムに関する。本発明はさらに、このような温水システムを制御するための方法、およびコンピュータがこのような方法を実行することを可能にするコンピュータプログラムプロダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
セントラルヒーティングのボイラーは、多くの場合、洗濯、入浴、料理または暖房等の家庭内の行動に温水が必要な場合に、要求に応じて水を加熱するために天然ガスを利用する。家庭用ガスボイラーの熱出力は約20~40kWであり、このことは、一般に、一般家庭における瞬間的な温水需要を満たすのに十分であろう。利用可能な温水の供給を増やすために、需要が低いときに加熱されて、温水がボイラーによる加熱よりも速く消費される場合に利用される、断熱性の高いタンクを利用することが可能である。
【0003】
ガスボイラーの明らかな欠点は、天然ガスの連続的な供給が必要で、そのために必要なインフラが存在している必要があることである。別法として、定期的に交換および/または補充しなければならない、場所をとる貯蔵タンクを利用することができる。さらに、化石燃料である天然ガスの燃焼はCO2の排出につながる。そのため、多くの国では、ガスボイラーの利用は徐々に減っており、例えば、ヒートポンプ、太陽熱パネル、および再生可能エネルギーによって電力を供給することのできる電気ボイラーに取って代わられている。
【0004】
電気ボイラーには、設置および接続が簡単であるという利点がある。例えば、電気ボイラーは、例えば、商用電源ソケットへの接続部を介して商用電源の供給部に非常に簡単に接続することができ、また、簡単な方法で給水設備に接続することもできる。したがって、電気ボイラーは、例えば、ヒートポンプまたは太陽熱パネルよりも実用的なガスボイラー代替物である。ガスボイラーと比較した場合の電気ボイラーの重要な欠点は間違いなく、電気ボイラーのヒーター容量は、一般的に、家庭用商用電源供給部から利用可能な電力によって制限されるということである。典型的な家庭用電気ボイラーは、標準的なガスボイラーによって供給される20~40kWと比較して、約15kW以上の加熱出力を供給することができない。水を加熱するために必要なエネルギーは基本量であり、したがって、温度上昇、流量および電力は、基本的に相互に関連している。したがって、典型的な家庭用電気ボイラーは、標準的なガスボイラーの能力に適合するように十分な加熱出力を生成することができず、すなわち、同等の流量で流れる水を同等の温度まで加熱することができない。その代わり、全ての水を加熱するには加熱能力が不十分であるため、より低い温度で温水を供給するか、またはボイラーを通る流量を減らして、ゆっくり流れる水を所望の温度まで加熱できるようにする。
【0005】
他のシステムは、所望の温度で所望の水流量を実現するために温水タンクを採用している。しかし、タンク内の加熱水を一定の温度で永久的に保つ断熱は存在しないため、温水タンクは、常に利用可能ではない可能性があり、および典型的には、効率損失につながる可能性があるスペースをとる。さらに、そのような貯水タンクから来る温水は、多くの場合、本管から直接来る給水部と同じ高圧で供給することができない。さらに、タンクが加熱するのにかかる時間は、ユーザにとっての柔軟性の欠如につながる。
【0006】
独国特許出願公開第102009030999(A1)号として公開されている独国特許出願においては、バッテリー駆動のヒートポンプが、貯水タンク内に蓄えられている水を温める電気温水器が開示されている。タンク内の水を加熱することができ、およびバッテリーは、電気代が安いときに、例えば、特殊夜間関税が適用される夜間に、または、太陽電池パネルから電気を入手可能である日中に充電することができる。バッテリーは、冷却流体が充填されている冷却ジャケットによって冷却される。この冷却ジャケットは、バッテリーの温度を制御するために、およびバッテリーを最適な効率で確実に充放電できるようにするために用いられる。タンク内の水と、バッテリーの冷却ジャケット内の冷却流体との間で熱を交換するために、熱交換器が設けられている。このことは、タンク内の水を温めるための充電中にバッテリー内で生成された熱を利用することを可能にし、このことが、温水器全体のエネルギー効率に寄与する。独国特許出願公開第102009030999(A1)号の電気温水器は、電気的に加熱する水に伴う公知の問題のうちのいくつかは軽減するが、上述した問題の多くを未解決のままにしている。最も重要なことには、この加熱システムのヒートポンプおよび大きな貯水タンクは、多くのスペースを要する複雑な機構をもたらす。
【0007】
本発明の目的は、従来技術に関連する一つ以上の欠点に対処することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009030999号
【発明の概要】
【0009】
本発明の態様によれば、水を加熱するための電気加熱装置と、バッテリーと、バッテリー管理システムと、ヒートシンク構成と、断熱シェルとを備える温水システムが提供される。バッテリーは、電気加熱装置に電力を供給するために電気加熱装置に電気的に結合されている。バッテリー管理システムは、バッテリーを充電するためにバッテリーに電気的に結合されている。ヒートシンク構成は、バッテリーに熱結合され、および熱エネルギーを蓄えおよび放出するように構成されている。断熱シェルは、バッテリーおよびヒートシンク構成を取り囲んでいる。
【0010】
これまでに知られている電気温水システムとは対照的に、本発明によるヒートシンク構成は、充電プロセス中に熱を引き出すことによってバッテリーの過熱を単純に防ぐことに限定されない。公知のバッテリー冷却装置は、過剰なすべての熱を可能な限り効率的に引き出そうとするが、本発明によるヒートシンク構成は、生成された熱を吸収および保持し、バッテリーも取り囲んでいる同じ断熱シェル内で後に利用するために熱を蓄える。有利には、本発明によるヒートシンク構成は、独立した貯水タンクを要することなく、要求に応じて温水を供給するために、バッテリーによって生成された熱を利用することを可能にする。さらに、ヒートシンク構成は、バッテリー温度の変動を少なくし、それによって、過度な熱サイクルによってバッテリーを損傷させるリスクを低減する。本願明細書に記載されている電気温水システムの省スペース特性およびエネルギー効率特性は、現存するヒートオンデマンドガスボイラーに取って代わって使用されるように、または、新築の建物への据付のために使用されるように、およびスペースの制約がある他の用途での利用のために使用されるように適合させる。
【0011】
バッテリーは、電気を貯める手段を備える。好適な実施例において、バッテリーは、一つ以上のセルを備えることができる。例えば、バッテリーは、一つ以上の化学電池を備えることができる。
【0012】
バッテリー管理システムは、バッテリーに電気的に結合され、バッテリーを充電するために構成されている。したがって、バッテリー管理システムは、いくつかの実施例においては、充電器またはバッテリー充電装置と呼んでもよい。いくつかの実施例において、バッテリー管理システムは、断熱シェル内に設けられた独立したモジュール式ユニットであってもよく、バッテリーに電気的に結合することができる。他の実施例では、バッテリー管理システムは、バッテリーと一体化してもよい。
【0013】
好ましくは、ヒートシンク構成はさらに、バッテリー管理システムに熱結合され、および断熱シェルはさらに、バッテリー管理システムを取り囲んでいる。バッテリーと同様に、バッテリー管理システムは、充電プロセス中に熱を生成する可能性がある。この熱も、後に水を温めるために、断熱シェル内のヒートシンク構成に貯めることができる。
【0014】
好適な実施例において、温水システムは、バッテリー管理システム用の電流(DC)パワーサプライに向けるための交流電流(AC)を含む。AC-DCパワーサプライは、壁コンセントのAC電源等のAC電源のソースに電気的に結合されるように構成されている。AC-DCパワーサプライは、いくつかの実施例においては、バッテリー管理システムの一部であってもよく、または別法として、AC-DCパワーサプライは、バッテリー管理システムに電力を供給するように構成された独立したコンポーネントであってもよい。いずれかの実施例において、AC-DCパワーサプライは、商用電源等のAC電力を受けて、バッテリーを充電するために、AC電力をDC電力に変換するように構成されている。例えば、商用電源は、バッテリー管理システムおよび/またはAC-DCパワーサプライを介して充電するためにバッテリーに供給することができる。したがって、AC-DCパワーサプライは、バッテリーに直接または間接的に電気的に結合されている。AC-DCパワーサプライは、例えば、力率補正(power factor correction:PFC)ベースのパワーサプライを用いて、AC電力を、AC電力のRMSよりも高い電圧を有する、DC電力に変換するように構成することができる。さらにより好ましくは、AC-DCパワーサプライは、AC電力を、バッテリー内のセルのフル充電された電圧よりも高い電圧を有する、DC電力に変換するように構成してもよい。
【0015】
バッテリー管理システム用のAC-DCパワーサプライは、好ましくは、ヒートシンク構成に熱結合されている。最も好ましくは、バッテリー管理システム用のAC-DCパワーサプライは、断熱シェル内に位置しており、例えば、断熱シェルは、バッテリー管理システム用のAC-DCパワーサプライを取り囲んでいる。したがって、バッテリーを充電するときに、AC-DCパワーサプライによって生成される熱エネルギーは、断熱シェル内のヒートシンク構成によって蓄えることができる。断熱シェル内の他の電気装置用のパワーエレクトロニクス、例えば、ポンプおよび/またはファンも、断熱シェル内に配置することができ、使用時には、断熱シェル内のヒートシンク構成に蓄えることのできる熱を生成することもできる。
【0016】
好適な実施形態において、ヒートシンク構成は、過剰な熱サイクルによるバッテリーの損傷を引き起こすことなく、バッテリーを充電することによって生成されたすべての熱を蓄えるのに十分である熱容量を有している。例えば、熱は、バッテリーの充電中に、バッテリー管理システム、バッテリー管理システム用のAC-DCパワーサプライ、バッテリー自体、および断熱シェル内の他の電気的コンポーネントによって生成される可能性があり、この熱は、ヒートシンク構成によって蓄えることができる。好ましくは、ヒートシンク構成の熱容量は、バッテリーを充電することによって生成される総熱量よりも大きい。例えば、ヒートシンク構成の熱容量は、好ましくは、バッテリーを充電するときの電気的コンポーネント、例えば、バッテリー管理システム、バッテリー管理システム用のAC-DCパワーサプライおよびバッテリーによって生成されるすべての熱よりも大きい。
【0017】
バッテリーの最適な最高温度および充電中に生成される熱の量は、既知の量または測定可能な量である。したがって、ヒートシンク構成の熱容量要件を計算することができる。また、ヒートシンク構成内の物質の熱容量も既知の量または測定可能な量である。したがって、ヒートシンク構成の熱的要件を計算することができ、およびヒートシンク構成は、ヒートシンクが、過剰な熱サイクルによるバッテリーの損傷を引き起こすことを避けるための大きくて十分な最大畜熱容量を確実に備えるように構成することができる。
【0018】
バッテリーが放電されている間にも熱が生成されることに留意されたい。しかし、バッテリーの放電は、温水の需要期間に起こる。温水に対する要求があった場合、電気加熱装置は、バッテリー内に蓄えられた電気的エネルギーを利用して水を加熱する。ヒートシンク構成内に既に蓄えられているすべての熱、および放電中にバッテリー自体の中で生成されるすべての熱は、電気加熱装置へ流れる水を予熱するのに利用することができる。
【0019】
ヒートシンク構成は、断熱シェルの内部と、電気加熱装置のインレットに流れる水との間の熱交換を容易にするように構成された熱交換器を備えることができる。したがって、断熱シェル内の温度は、熱交換器を介して断熱シェルの内部から熱を除去することによって制御することができる。
【0020】
ヒートシンク構成は、好ましくは、熱交換流体を保持するためのヒートシンク容積を備えている。ヒートシンク容積は、液体または気体のいずれかである熱交換流体を保持するために構成することができる。換言すると、システムは、液体または気体であってもよい、ヒートシンク容積内に熱交換流体を備えることができる。熱交換流体は、断熱シェルの内部からの熱の特に効率的な除去を容易にすることができる。さらに、熱交換流体は、熱が断熱シェルの内部から除去される方法の柔軟性を容易にすることができる。
【0021】
水の予熱がどのように遂行されるかは、ヒートシンク容積が「オープンシステム」であるかまたは「クローズドシステム」であるかに依存する。
【0022】
オープンシステムにおいて、ヒートシンク容積は、電気加熱装置のインレットに流体的に結合することができる。このことは、加熱される水をヒートシンク容積に充填できるようにし、そのことはヒートシンク構成の熱容量を増加させる。また、このことは、水を、電気加熱装置へ流される前に、ヒートシンク構成を通って送ることができるようにする。したがって、水は、さらなる加熱のために電気加熱装置へ送られる前に予熱することができる。クローズドシステムにおいては、電気加熱装置に供給される水とヒートシンク容積は流体的に結合されていない。その代わり、ヒートシンク構成は、ヒートシンク容積内の熱交換流体と、電気加熱装置のインレットに流入する水との間で熱を交換するための熱交換器を備えることができる。このようにして、電気加熱装置によって加熱される水は、熱交換器によってさらに予熱される。クローズドシステムにおいて、熱交換流体は、水、空気、または他の任意の適当な流体(例えば、液体または気体)とすることができる。
【0023】
ヒートシンク容積内での流体の循環を促進して、バッテリーの充電中および放電中の熱エネルギーの均一な分布を確実にするために、ポンプをオープンシステムまたはクローズドシステムのいずれかに含めることができる。例えば、オープンシステムにおいて、ヒートシンク容積を通る水の循環を促進するのにポンプを利用することができる。クローズドシステムにおいては、ヒートシンク容積を通る熱交換流体の循環を促進するために、およびさらに熱交換器を通すことによる、ヒートシンク容積からの熱の除去を容易にするために、ポンプを設けることができる。熱交換流体が気体である実施例においては、循環ポンプは、例えばファンであってもよいことは正しく認識されるであろう。
【0024】
好ましくは、温水システムは、バッテリー管理システムおよび/または電気加熱装置に作動可能に結合されている制御部をさらに備えている。制御部は、例えば、充電コストが確実に抑えられるように、または例えば、温水の高需要が予想されるときにバッテリーが確実にフル充電されるように、バッテリーの充電プロセスを制御することができる。
【0025】
断熱シェルの内部の温度を測定するための温度センサを設けることができる。
【0026】
いくつかの実施例において、制御部は、ヒートシンク容積内でフローを開始するように構成された装置に作動可能に結合することができる。このような装置は、ポンプ(または、熱交換流体が気体である実施例においてはファン)または例えば、ヒートシンク容積に流体的に結合された放出弁とすることができる。制御部は、好ましくは、温度センサおよび装置に作動可能に結合され、および断熱シェルの内部の温度に依存して、ヒートシンク容積からの熱を排熱するように、ヒートシンク容積内のフローを選択的に開始するように構成することができる。開始されたフローは、例えば、ヒートシンク容積から出た熱交換流体である可能性があり、または、熱交換流体と、電気加熱装置のインレットに流入する水との間での熱交換を促進するためのヒートシンク容積内の熱交換流体の循環である可能性がある。いずれかの実施例において、ヒートシンク容積内のフローは、ヒートシンク容積からの熱を最終的に排熱することになる。
【0027】
システムは、ヒートシンク容積に流体的に結合され、およびヒートシンク容積からの熱交換流体の放出を容易にするように構成された放出弁をさらに含んでもよい。温度センサおよび放出弁に作動可能に結合されている制御部は、断熱シェルの内部の温度に依存して放出弁を開くように構成されている。
【0028】
いくつかの実施例において、ヒートシンク容積に流体的に結合された放出弁は、電気加熱装置のインレットに流体的に結合することもでき、およびヒートシンク容積から電気加熱装置のインレットへの水の排水を可能にするように構成することもできる。アウトレットにおいて、温水の直接的な要求がないときに、断熱シェルの内部の温度が、バッテリーの最適な最高温度以上に上昇した場合は、予熱された水を、例えば、ドレーン、または、水ベースの暖房システム等の流体ベースの暖房システムに排熱することよって熱を放出することができる。
【0029】
いくつかの実施例において、流体ベースの暖房システム、例えば、セントラルヒーティングシステムは、追加的なヒートシンクとして機能することができる。例えば、セントラルヒーティングシステム内を能動的に流れる水がない場合でも、セントラルヒーティングシステム内の水が断熱シェル内のヒートシンク容積に流体的に連通し、その結果、ヒートシンク容積に熱結合されている場合には、バッテリーからの熱もセントラルヒーティングシステム内の水に伝導させることができる。したがって、放出弁を開いて、セントラルヒーティングシステムとヒートシンク容積との間の流体的連通を容易にすると、バッテリーおよびシェル内の他の電気的コンポーネントによって放射された熱を蓄えるために利用可能な熱容量を増加させることができる。
【0030】
いくつかの実施例において、制御部は、温度センサと、ヒートシンク容積内で熱交換流体を循環させるように構成されたポンプとに作動可能に結合することができる。そのため、制御部は、断熱シェルの内部の温度に依存してポンプを動作させるように構成することができる。例えば、断熱シェル内の温度が、設定閾値以上に上昇した場合、制御部は、ヒートシンク容積内で熱交換流体を循環させて、クローズドシステムにおける熱交換器を介して、流体から、加熱される水への熱交換を促進するようにポンプを作動させることができる。
【0031】
いくつかの実施例において、制御部は、温度センサ、ポンプおよび放出弁に作動可能に結合することができる。制御部は、ヒートシンク容積から液体または気体のいずれかの状態で熱交換流体を動かして、ヒートシンク容積から熱を排熱するように、ポンプおよび放出弁の両方を作動させることができる。
【0032】
いくつかの実施例においては、断熱シェル内に、ヒートポンプの冷却ループを構成してもよく、または、冷却ループを断熱シェルの内部に熱結合してもよい。したがって、バッテリーおよびシェル内の他のコンポーネントから放射される熱を、ヒートポンプの冷却ループに排熱することが可能である。
【0033】
いくつかの実施形態において、温水システムは、第二の加熱装置をさらに備えていてもよい。第二の加熱装置は、好ましくは、商用電源によって電力を供給されるように構成されている。したがって、第二の加熱装置は、第二の電気加熱装置と呼んでもよい。必要に応じて、第二の加熱装置は、ヒートポンプ構成を備えていてもよい。
【0034】
いくつかの実施例において、温水システムは、第二の加熱装置によって加熱される水が、断熱シェルの内部からの熱によって予熱されるように構成することができる。そのため、オープンシステムにおいて、ヒートシンク容積は、第二の加熱装置のインレットに流体的に結合することができる。クローズドシステムにおいては、ヒートシンク容積内の熱交換流体と、第二の加熱装置のインレットに流入する水との間で熱を交換するように熱交換器を構成することができる。
【0035】
電気加熱装置および第二の加熱装置を含む実施例においては、状況により、(第一の)電気加熱装置、第二の加熱装置のいずれか、または両方を用いる可能性がある。二つの加熱装置が直列に接続されている場合、どちらの加熱装置を用いるかの選択は、例えば、所望される温度上昇、または、一方または他方を作動させる相対コストに依存する可能性がある。いくつかの実施例においては、第一の電気加熱装置および第二の加熱装置を、平行な流体流路上に設けてもよい。(第一の)電気加熱装置と第二の加熱装置が、平行な流体流路上に設けられている場合、両方を同時に用いると、より高いスループット、すなわち、より高い温水流量、ひいては所定の流量の場合のアウトレットにおけるより高い水圧が可能になるであろう。したがって、二つのうちのどちらを利用するかの選択は、温水の需要にも依存する可能性がある。
【0036】
平行な流体流路の各々における流体流量を制御するための制御可能なバルブ構成を設けることができる。例えば、制御可能なバルブ構成は、(第一の)電気加熱装置を備える流体流路内の流体流量を制御する第一のバルブと、第二の加熱装置を備える第二の流体流路内の流体流量を制御する第二のバルブとを備えることができる。好ましくは、第一のバルブは、ヒートシンク容積の下流に配置することができる。このことは、ヒートシンク容積は、第一の流体流路を停止するために第一のバルブが閉じられている状態であっても、確実に水で満たされたままにする。前述したように、ヒートシンク容積内の水は、断熱シェル内の熱容量を増加させる。いくつかの実施例において、第一のバルブは、断熱シェル内の温度を制御するために操作されるように構成された、前述した放出弁として作動することができる。好ましくは、第二のバルブは、第二の加熱装置の下流に配置することができる。
【0037】
(第一の)電気加熱装置および第二の加熱装置を、別々の平行な流体流路上に設けることは、加熱される水が受ける抵抗効果を有利に最小限にする。例えば、第一および第二の加熱装置は、水流に抵抗を与える。加熱装置を平行な流体流路上に配置することにより、所定の加熱装置によって与えられる抵抗は、加熱装置が使用中のときだけ、すなわち、水が流体流路を流れるときにだけ受ける。このような構成は、直列に配置された加熱装置を備えるシステムであって、このような加熱装置が水を能動的に加熱していない場合であっても、水が複数の加熱装置を通って流れ、および複数の加熱装置によって抵抗を受けるシステムに優る利点をもたらす。
【0038】
必要に応じて、ヒートシンク構成は相変化物質を含む。相変化物質は、比較的小さな容積内に大量の熱エネルギーを蓄えるのに非常に適しており、断熱シェルの内部の温度変動を制限しながらそうすることができる。例えば、ヒートシンク構成は、硫酸ナトリウムまたはパラフィンベースの相変化物質を含むことができる。
【0039】
例示的な実施形態において、バッテリーは、複数のモジュール、すなわち、各々が一つ以上の個別のセルを収容するバッテリーモジュールを備えている。モジュールは、好ましくは、セルからヒートシンク構成の残りの部分へ熱エネルギーを効率的に伝達するために、高い熱伝導率を有する物質、例えば、アルミニウムで形成されている。ヒートシンク構成は、複数のコンパートメントまたは取付具を有するフレームを備えることができ、各コンパートメントまたは取付具は、バッテリーモジュールのうちの一つ以上を保持するために構成され、それらのすべては、全体として断熱シェル内のヒートシンクの熱容量を増加させる。
【0040】
ヒートシンク容積は、それぞれのバッテリーモジュール間を通る熱交換流路を備えることができる。いくつかの実施例において、熱交換流路は、それぞれのバッテリーモジュールを通ることができる。このようなモジュール機構を用いて、システムのサイズおよび熱容量を、要求および状況に容易に適応させることができる。モジュール機構はさらに、技術的な故障時にも、個別のモジュールの容易な交換を可能にし、およびヒートシンク容積の流路をバッテリー構造を通すように、および熱伝達に利用可能な大きな表面積を形成するように、より実用的にする。
【0041】
いくつかの実施例において、一つ以上の熱交換流路は、フレーム内の導管によって画定することができる。例えば、このような導管は、フレームの一体部として形成してもよい。したがって、フレームは、これら自体もすべて、断熱シェル内のヒートシンク構成の全体の熱容量を増加させる、バッテリーモジュールを保持することと、熱交換流体をバッテリーモジュールの周囲に送ることと、バッテリーモジュールと熱交換流体との間で熱を伝導させることとを含む多数の機能を実行することができる。フレームは、相変化物質を保持するように構成された一つ以上のコンパートメントを備えることもできる。いくつかの実施例において、個別のモジュールは、相変化物質を保持するように構成された一つ以上のコンパートメントを備えていてもよい。
【0042】
バッテリーを断熱シェル内に収容することは、断熱シェル内の熱容量を増加させ、その結果、バッテリー自体の構造が熱容量を増加させて、熱交換流体がヒートシンク容積内を流れていない場合でも、充電中にセルによって受け入れられない熱を蓄えるのに役に立つ。このような場合は、従来技術における実例とは対照的に、セルは、必ずしも能動的に冷却されない。その代わり、断熱シェル内のヒートシンク構成は、セルが、充電中に放射される予測可能な量の熱エネルギーの結果として、過剰な熱サイクルによって過熱せずまたは損傷を受けないことを確実にするのに十分な熱容量を備えるように構成されている。断熱シェル内にフレームを含めることは、断熱シェル内の熱容量をさらに増加させる。
【0043】
バッテリーに熱結合されたヒートシンク構成を断熱シェル内に設けることは、バッテリー温度の変動を減らすのに役に立つ。温度変動を減らすことは、セルの寿命を延ばす。好適な実施例において、断熱シェル内の温度は、0℃~85℃に、より好ましくは、20℃~40°に保持することができる。断熱シェル内の温度の能動的制御を実行できるように、制御部は、前述したように、放出弁および/または循環ポンプを作動させることができ、および/またはバッテリーの充電を制御することができる。
【0044】
バッテリーモジュール、すなわち、セルは、ヒートシンク容積を通して熱交換流体を循環させまたは流すことにより、能動的に冷却することができる。熱交換流体のこのような移送は、前述したように、オープンシステムまたはクローズドシステムにおいてポンプを用いて実現することができる。いくつかの実施例において、バッテリーモジュールは、例えば、オープンシステムにおいて、電気加熱装置によって加熱される水をヒートシンク容積を通して流すことによって能動的に冷却することができる。例えば、熱は、断熱シェルの内部から放出することができ、そのため、バッテリーモジュールは、例えば、ヒートシンク容積の下流のタップまたは他のアウトレットを開くことによって、温水が要求される場合に能動的に冷却することができる。
【0045】
温水システムは、断熱シェル内に包囲されているバッテリー加熱装置をさらに備えることができる。このバッテリー加熱装置は、バッテリー温度が、高いエネルギー効率および低いバッテリー損耗のための最適な範囲内にとどまることを確実にするのに用いることができる。いくつかの実施例において、システムは、バッテリーを温めるために、第一および/または第二の加熱装置の下流からの加熱水を、断熱シェル内のヒートシンク容積に戻して配管するように構成された戻し導管を備えることができる。戻し導管は、断熱シェル内の温度、ひいてはバッテリーの温度を、バルブを開閉することによって能動的に管理できるような制御可能なバルブを備えることができる。
【0046】
いくつかの実施例において、温水システムは、外部ケーシングを備えることができる。好適な実施例において、バッテリーおよびヒートシンク構成を取り囲む断熱シェルは、外部ケーシング内に収容することができる。さらに、バッテリー管理システムを同じ外部ケーシング内に収容することができる。さらに好適な実施例において、外部ケーシングは、前述した熱交換器をさらに収容することができる。最も好ましくは、外部ケーシングは、電気加熱装置および第二の加熱装置のうちの少なくとも一方を追加的に収容することができる。必要に応じて、制御可能なバルブ構成を外部ケーシング内に収容することもできる。
【0047】
本発明の他の態様によれば、上述した温水システムを制御するための制御手段が設けられる。例えば、制御手段は、加熱水の現在の需要、バッテリーの充電状態、断熱シェルの内部の温度、および商用電源の現在の値段のうちの少なくとも一つに依存して、各利用可能な平行流体流路内の流体流量を制御するのに用いることができる。他の制御手段は、バッテリーの充電状態、断熱シェルの内部の温度、バッテリーを充電する予測コスト、商用電源の現在の値段、および加熱水の予測需要のうちの少なくとも一つに依存して、バッテリーの充電を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
次に、本発明の実施形態を添付図面を参照して例として説明する。
【
図1】本発明の実施形態による温水システムを概略的に示す。
【
図2】断熱シェルに取り囲まれている温水システムのバッテリーを概略的に示す。
【
図3】オープン熱伝達構成を備えた温水システムのヒートシンク容積のインレットおよびアウトレットの概略図を示す。
【
図4】閉ループヒートシンク容積を有するシステムにおいて、ヒートシンク容積と給水部との間で熱エネルギーを伝達するように構成された熱交換器の概略図を示す。
【
図5】請求項1に記載の温水システムに用いるのに適したバッテリーモジュールおよびヒートシンク構成を有するバッテリーフレームの斜視図を示す。
【
図6】
図5のバッテリーフレームの一部の拡大図を示す。
【
図7】請求項1に記載の温水システムに用いるのに適したバッテリーフレームの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明の実施例による温水システム10の概略図を示す。温水システム10は、給水部、例えば、上水道または貯水タンク(図示せず)から水を受け入れるように構成された取水口12を備えている。システム10は、取水口12を介してシステム10に入る水を加熱するための電気加熱装置14も含む。電気加熱装置14は、例えば、電気抵抗加熱素子であってもよい。電気加熱装置14は、バッテリー16が電気加熱装置14に電力を供給できるようにバッテリー16に電気的に結合されている。
【0050】
好適な実施例において、電気加熱装置14は、バッテリー16による直流電流(DC)電源によって電力を供給することができる。他の実施例では、電気加熱装置14は、交流電流(AC)加熱装置14であってもよく、およびシステム10は、バッテリー16からの直流電力をそこを介して、加熱装置14に電力を供給するための交流電力に変換するDC/AC変換器(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0051】
図1に示すように、温水システム10は、バッテリー16の充電を可能にするようにバッテリー16に電気的に結合されたバッテリー管理システム18をさらに含み、すなわち、バッテリー管理システム18は、バッテリー16を充電するように構成されている。バッテリー管理システム18は、好ましくは、バッテリー16を充電するための電力を受け入れるために商用電源20に接続されている。図には示されていないが、いくつかの実施例において、温水システム10は、バッテリー管理システム18のためのAC/DC電源も含んでもよく、管理システムは、商用電源サプライ20からAC電力を受け入れて、これを、バッテリー16を充電するためのDC電力に変換するように構成されている。
【0052】
図1に概略的に示すように、システム10は、バッテリー16の充電を制御するためにバッテリー管理システム18に作動可能に結合されている制御部22も含む。例えば、制御部22は、バッテリー16の充電状態、バッテリー16の予測コスト、商用電源の現在の値段、および加熱水の予測需要のうちの少なくとも一つに依存して、バッテリー16の充電を制御することができる。したがって、制御部22は、バッテリー16の充電のタイミングを制御することができる。いくつかの実施例において、制御部22は、バッテリー16の充電を直接的に命令するためのユーザ入力を受け付けるように構成されている。いくつかの実施例において、制御部22は、使用中の加熱装置14の動作を制御するために、加熱装置14にも結合されている。
【0053】
いくつかの実施例において、電気加熱装置14は、バッテリー16によって供給される電力に加えて、商用電源20によって加熱装置14に電力を供給できるように、商用電源20に電気的に結合することができる。このような実施例において、システム10は、AC/DC変換器(図示せず)、例えば、AC商用電源20を整流して、DC電力を加熱装置14に供給する整流器をさらに備えることができる。したがって、添付図面には図示されていないが、いくつかの実施例において、システム10は、バッテリー16および商用電源20の両方によって電力を供給される加熱装置14を含むことができる。このような実施例において、加熱装置14には、商用電源20によって供給される補足電力とともに、バッテリー16によって主に電力を供給することができる。別法として、加熱装置14には主に商用電源20によって電力を供給してもよく、およびバッテリー16は、従来のガスボイラーの加熱能力と同等の加熱能力を実現するために補助電力を供給することができる。
【0054】
特に、温水システム10は、バッテリー16および他の電気的コンポーネントから放射される熱を蓄えるように明確に構成されているヒートシンク構成24を含み、したがって、このことは、バッテリー16の温度を調整するのに役に立つ。したがって、ヒートシンク構成24は、バッテリー16からヒートシンク構成24への熱エネルギーの伝達を容易にするためにバッテリー16に熱結合されている。好適な実施例において、ヒートシンク構成24は、バッテリー管理システム18から熱を受け入れるために、バッテリー管理システム18にも熱結合されている。同様に、温水システム10が、バッテリー管理システム18のためのAC/DC電源を含む実施例においては、このようなAC/DC電源は、好ましくは、ヒートシンク構成24が、バッテリー16の充電中にAC/DC電源によって放射される熱エネルギーを受け入れおよび蓄えることができるように、ヒートシンク構成24に熱結合されている。
【0055】
ヒートシンク構成24については、
図5、
図6および特に
図7の断面図を参照して、より詳細に後述する。しかし、当初の概観的には、ヒートシンク構成24は、過剰な熱サイクルによるバッテリー16の損傷を引き起こすことなく、バッテリー16を充電することによって生成されるすべての熱を蓄えるのに十分である熱容量を有して構成されている。
【0056】
さらに
図1に加えて
図2を参照すると、温水システム10のバッテリー16およびヒートシンク構成24は、断熱シェル26に取り囲まれている。好適な実施例において、断熱シェル26は、
図2に示すように、バッテリー管理システム18も取り囲んでいる。バッテリー管理システム18用のAC/DC電源を含む実施例においては、好ましくは、このような電源も断熱シェル26内に取り囲まれている。断熱シェル26は、シェル内のバッテリー16および他の電気的コンポーネントによって生成される熱、およびヒートシンク構成24に伝達される熱が、ヒートシンク構成24内に保持されること、すなわち、無駄にされずまたは即座に排熱されることを確実にする。
【0057】
したがって、より詳細に後述するように、温水システム10は、バッテリー16によって生成される熱の有効利用を有利に容易にして、温水システム10の全体効率および寿命を向上させる。具体的には、バッテリー16によって生成される熱を保持することは、
図1に概略的に示すように、予熱された水が電気加熱装置14に送られる前に、水を予熱することを可能にする。また、熱を保持することは、最適な動作範囲内でバッテリー16の温度を維持するのにも役に立つ可能性がある。断熱シェル26の能力を最大限にすること、すなわち、シェル26の熱抵抗を増加させることは、バッテリー16を充放電することの結果として熱損失を最小限にすることにより、温水システム10の効率を向上させる。したがって、いくつかの実施例において、断熱シェル26は、バッテリー16を充放電することによって生成された熱エネルギーの70%、好ましくは少なくとも80%、またはより好ましくは、少なくとも90%をシェル26内のヒートシンク構成24内に保持するように構成されている。例えば、シェル26の熱的性能は、断熱温水タンクの熱的性能に匹敵する可能性がある。
【0058】
好適な実施例において、温水システム10は、
図1の概略図に示すように、第二の加熱装置28をさらに含む。第二の加熱装置28は、好ましくは、商用電源20によって電力を供給されるように構成され、および例えば、電気抵抗加熱素子を備えていてもよい。第二の加熱装置28の包含は、総加熱パワー出力の増加を容易にし、その結果、電気温水システム10の加熱パワーは、それぞれバッテリー16および商用電源20によって電力が供給される両加熱装置14、28が、水を加熱するのに用いられる場合に、典型的なガスで駆動するボイラーの加熱パワーに匹敵する可能性がある。
【0059】
図1に示すように、特に好適な実施例において、電気加熱装置14および第二の加熱装置28は、平行な流体流路30a、30b上に設けられている。例えば、電気加熱装置14は、第一の流体流路30a上に配置することができ、および第二の加熱装置28は、第二の流体流路30b上に配置することができる。温水システム10は、平行な流体流路30a、30bの各々における流体流量を制御するための制御可能なバルブ構成32を含むことができる。例えば、システム10は、第一の流体流路30a上に配置された第一の制御可能なバルブ34aと、第二の流体流路30b上に配置された第二の制御可能なバルブ34bとを備えることができる。
【0060】
制御部22は、好ましくは、制御可能なバルブ構成32に作動可能に結合されている。第一および第二の制御可能なバルブ34a、34bを開閉することにより、その結果として、各加熱装置14、28を通って流れる、取水口12からの水の割合を制御することが可能である。平行な流体流路30a、30bの各々における流体流量は、加熱水の現在の需要、バッテリー16の充電状態、断熱シェル26の内部の温度、および商用電源20の現在の値段のうちの少なくとも一つに依存して制御することができる。
【0061】
さらに
図1および
図2を参照すると、ただし
図7に最も明確に図示されているように、ヒートシンク構成24は、好ましくは、熱交換流体38を保持するためのヒートシンク容積36を備えている。バッテリー16およびバッテリー管理システム18によって生成された熱は、ヒートシンク容積36内の熱交換流体38に伝達される。熱交換流体38をヒートシンク容積36内に設けることは、断熱シェル26内の熱容量を増加させる。したがって、シェル内のバッテリー16、バッテリー管理システム18および他の電気的コンポーネントから放射される熱エネルギーを、断熱シェル26内の熱交換流体38中に蓄えることができる。熱交換流体38は、断熱シェル26内の温度の制御を可能にするのに役に立ち、およびより詳細に後述するように、断熱シェル26の内部から熱を除去するための複数の選択肢を容易にする。
【0062】
図1を参照しながらさらに
図3を参照すると、いくつかの実施例において、温水システム10は、オープンシステムとして構成することができる。オープンシステム構成において、ヒートシンク容積36は、電気加熱装置14のインレット40に流体的に結合されている。換言すると、ヒートシンク容積36は、ヒートシンク容積36からの流体38が、後の追加的な加熱のために電気加熱装置14へ送られるように、電気加熱装置14のインレット40と流体的に連通している。したがって、好ましくは、オープンシステムにおいては、ヒートシンク容積36内の熱交換流体38は、幹線の取水口12を介して温水システム10に導入される水とすることができる。
【0063】
オープンシステムにおいて、水は、取水口12からヒートシンク容積36を通って流れ、その後、例えば、第一の流体流路30aを介して電気加熱装置14へ送られる。このような構成において、水は、電気加熱装置14によってさらに加熱される前に、断熱シェル26内に収容されているバッテリー16、バッテリー管理システム18および他の電気的コンポーネントから放射される熱によって予熱される。このような構成は、余計な熱が、バッテリー16、バッテリー管理システム18、およびAC/DC電源等の他の電気的コンポーネントから直接、加熱すべき水に伝達されるため、エネルギー効率の良い温水システム10をもたらす。したがって、温水システム10に入力されたエネルギーは、水を加熱するために直接または間接的に利用され、その結果として無駄にならない。
【0064】
オープンシステムにおけるヒートシンク容積36のインレット42およびアウトレット44が
図3に概略的に示されている。この実施例において、第一の流体流路30aから運ばれてきた水のすべては、電気加熱装置14に到達する前に、まずヒートシンク容積36を通って流れる。しかし、いくつかの他の実施例においては、システム10は、第一の流体流路30aに流入する水の一部が、ヒートシンク容積36を通って流れるように迂回され、一方、第一の流体流路30a中の残りの水は、ヒートシンク容積36を迂回して、電気加熱装置14に直接送られるように構成してもよい。
【0065】
いくつかの実施例において、温水システム10は、ヒートシンク容積36に流体的に結合された放出弁(図示せず)を備えることができる。いくつかの実施例において、放出弁は、ヒートシンク容積36からの水等の熱交換流体38の排出を可能にするように構成することができる。例えば、水は、第一の流体流路30a内に放出することができる。
図3には図示されていないが、断熱シェル26の内部の温度を測定するように構成された温度センサも含むことができる。制御部22は、好ましくは、放出弁を、断熱シェル26の内部の温度に依存して作動させることができるように、温度センサおよび放出弁に作動可能に結合されている。いくつかの実施例において、前述した第一の制御可能なバルブ34aは、放出弁と同じ機能を実行することができ、すなわち、第一の制御可能なバルブ34aは、断熱シェル26内の温度に依存して開閉することができる。バルブ34aは、電気加熱装置14とは無関係に作動させることができ、すなわち、バルブ34aは、水を加熱するために電気加熱装置14が作動されているか否かに関わらず作動させることができる。したがって、いくつかの実施例において、断熱シェル26の内部の温度は、制御可能なバルブ34aを開閉して、ヒートシンク容積36からの熱を排熱することを可能にするかまたは阻止することにより、ヒートシンク容積36を通る水の流れを可能にするかまたは阻止することによって制御することができる。
【0066】
クローズドシステムは、熱が、熱交換器48を介して断熱シェル26の内部から除去されるように構成されている。
図4は、ヒートシンク容積36と流体流路30aの境界におけるクローズドシステムの一部の実施例を示す。この構成は、ヒートシンク容積36が第一のまたは第二の流体流路30a、30bと流体的に連通していないため、クローズドシステムとして説明することができる。熱交換器48は、断熱シェル26の内部から、電気加熱装置14のインレット40へ流れる水への熱エネルギーの伝達を容易にする。そのため、熱交換機48は、好ましくは、電気加熱装置14の上流に配置されている。したがって、電気加熱装置14へ送られる水は、断熱シェル26内からの熱を利用して、熱交換機48によって予熱することができる。
【0067】
クローズドシステムにおいては、独立した熱交換流体38は、バッテリー16によって放射される熱エネルギーを受け入れるために、ヒートシンク容積36内を循環される。熱交換流体38は、好ましくは、熱交換流体38からの熱を、電気加熱装置14のインレット40に流れる水に伝達するように構成されている。いくつかの実施例において、クローズドシステムのヒートシンク容積36内の熱交換流体38は水であってもよい。しかし、このようなシステムにおいては、熱交換流体38は、加熱された水が消費者に送られるアウトレットに流体的に結合されていないため、クローズドシステムは、他の熱交換流体38の利用も容易にする。そのため、熱交換流体38は、人の飲食に対して安全である必要はなく、および例えば、防食添加剤等の有利な添加剤を含んでもよい。
【0068】
ヒートシンク容積36は、(例えば、
図6および
図7に示すような)複数の熱交換流体路50を備える複雑な構成であってもよい。そのため、ヒートシンク容積36内の流体38の閉制御を可能にするクローズドシステムとしてヒートシンク容積36を構成することが有利である可能性がある。例えば、幹線水は、このような水がその上を経時的に流れる表面に、水垢等の付着物を残す可能性がある異なる天然鉱物を含む可能性がある。クローズドシステムのヒートシンク容積36は、熱交換流体路50がこのような付着物によって損傷せず、制限されず、または塞がれないことを確実にするために、特定の化学剤をヒートシンク容積36内に導入できることを意味している。そして、いくつかの実施例において、断熱シェル26内のバッテリー16および他の物質上および周りを流れる水は、人の飲食に適していないか、またはそれに対して安全ではない可能性があり、したがって、ヒートシンク容積36をクローズドシステムとして形成することは、アウトレットにおいて消費者に供給される水の何らかの可能性のある汚染を回避する。
【0069】
クローズドシステムは、熱交換流体38をヒートシンク容積36を通して循環させるためのポンプ(図示せず)を含んでもよい。また、クローズドシステムは、断熱シェル26の内部に温度センサ(図示せず)を含んでもよい。制御部22は、温度センサおよびポンプに作動可能に結合することができ、および制御部22は、熱交換流体38から熱交換器48を介した流体流路30a、30b内の入って来る冷水流へ熱を排熱することを促進するために、断熱シェル26の内部の温度に依存して循環ポンプを作動させることができる。
【0070】
他の実施例では、クローズドシステムは、放出弁(図示せず)をさらに含んでもよい。放出弁は、ヒートシンク容積36に流体的に結合することができる。制御部22は、放出弁を、断熱シェル26の内部の温度に依存して作動させることができるように、このような放出弁に作動可能に結合することができる。例えば、ヒートシンク容積36内の空気等の気体の熱交換流体38は、断熱シェル26の内部の温度を管理するために、断熱シェル26の外部の環境に直接放出することができる。別法として、断熱シェル26内の温度を制御するために、液体の熱交換流体38を、ヒートシンク容積36から放出弁を介して、例えばドレーン内へ放出してもよい。
【0071】
クローズドシステムのいくつかの実施例において、放出弁は、流体ベースの暖房システム、例えば、水ベースのセントラルヒーティングシステムに流体的に結合することができ、その結果、放出弁の動作を介して、ヒートシンク容積36から暖房システムの流体に熱を排熱することができる。熱をこのように排熱することは、ヒートシンク容積36を介して、熱交換流体38が能動的に流れる暖房システムを必ずしも要することなく、放出弁を開くことにより、ヒートシンク容積36と暖房システムを流体的かつ熱的に結合することによって簡単に容易にすることができる。ヒートシンク容積36と水ベースの暖房システムの間に流体的連通を設けることは、バッテリー16によって放射される熱を蓄えるのに利用できる熱容量を増加させることができる。
【0072】
添付図面には図示されていないが、いくつかの実施例において、システム10は、断熱シェル26内に包囲されているバッテリー加熱装置を含んでもよい。バッテリー加熱装置は、バッテリー16の温度が最適な作動範囲内に確実にとどまるように、制御部22が、必要なときに、バッテリー加熱装置を作動させることにより、断熱シェル26内の温度を上昇させることができるように、制御部22に作動可能に結合することができる。
【0073】
次に、断熱シェル26内に配置されたバッテリー16と、温水システム10の他のコンポーネントについて、残りの図面を参照して、より詳細に説明する。以下の説明は、既に説明されているオープンシステムおよびクローズドシステムに等しく適用可能である。熱は、バッテリー16から熱交換流体38に伝達され、すなわち熱交換されるため、参照しやすいように、ヒートシンク容積36内の流体38を熱交換流体38と呼ぶ。オープンシステムにおいて、熱交換流体38は、加熱装置14を用いて加熱される水であり、またクローズドシステムにおいては、熱交換流体38は、加熱装置14を用いて加熱される水に対して独立した流体であることは正しく認識されるであろう。
【0074】
図5、
図6および
図7を参照すると、バッテリー16は、好ましくは、多数のバッテリーモジュール52を備えている。例えば、バッテリーモジュール52は、各々が、一つ以上のバッテリーセル54、例えば、化学電池セル54を含むことができる。バッテリーモジュール52は、電気加熱装置14に高電流を供給するために、互いに直列に電気的に接続することができる。別法として、バッテリーモジュール52は、高電圧出力が電気加熱装置14に供給されるように、互いに並列に電気的に接続することができる。いくつかの他の実施例においては、バッテリーモジュール52間の電気的接続は、電気加熱装置14に供給される電流および電圧の能動制御を容易にするために、選択的に再構成可能にしてもよい。
【0075】
ヒートシンク構成24は、バッテリーモジュール52のうちの一つ以上を保持するために配置されている多数のコンパートメントまたは取付具を有するフレーム56を含む。バッテリー構造の一部であるため、フレーム56も(例えば、
図2に示すように)断熱シェル26の内部に収容されることは正しく認識されるであろう。したがって、フレーム56は、バッテリー16、およびシェル26内の他の電気的コンポーネントによって放射された熱エネルギーを蓄えるための追加的な熱容量をもたらす。いくつかの実施例において、および
図7に最も明確に図示されているように、断熱シェル26内のヒートシンク構成24は、相変化物質60を含むことができ、および相変化物質60は、フレーム56によって収容することができる。
【0076】
再び、
図7の実施例の断面図をより詳細に参照すると、ヒートシンク容積36は、それぞれのバッテリーモジュール52間を通過する、またはモジュールを通る熱交換流体流路50を備えている。この構成は、熱をそれを介して熱交換流体38に伝達できる高表面積をヒートシンク容積36に与える。参考までに、ヒートシンク容積36の熱交換流体流路50は、
図5および
図6の実施例にも図示されている。
【0077】
次に、本発明の電気温水システム10の利点を、数字を使った実施例によって説明する。しかし、実施例で記載されている数値は、あくまで例にとして記載されており、および添付クレームにおいて定義されている本発明の範囲を限定しようとするものではないことに留意すべきである。
【0078】
実証するために、以下の実施例は、充電効率が90%およびバッテリー容量が10kWhであると仮定する。バッテリー16を充電するために、一体となったバッテリー16、すなわち、電池54およびバッテリー管理システム18は、(10/0.9)-10=1.11kWhの熱エネルギーを排熱する。これは、蓄えられない限り無駄になるであろう熱エネルギーである。
【0079】
この実施例において、各セル54は、0.65kgの質量と、3.2Vの公称電圧と、30Ahの容量を有し、および96Whのエネルギー蓄積をもたらす。このようなセル54の個別の熱容量は、セルの正確な構造に依存するが、典型的には、0.8~1.7kJ/kgKの範囲になるであろう。この実施例のために、各セル54は、1kJ/kgKの比熱容量を有する。
【0080】
10kWhの容量を有するバッテリー16は、百四個の既定のセル54(10kWh/96Wh=~104個のセル)で形成することができる。したがって、この実施例におけるこのバッテリー16におけるセル54の熱容量は、104×1kJ/kgK×0.65kg=67.6kJ/Kである。そのため、1K(=1℃)ですべてのセル54を加熱するのに、67.6kJの熱エネルギーが必要である。1.11kWhの熱エネルギーがバッテリー16およびバッテリー管理システム18によって放射され、それは約4MJであり、4MJ/67.6kJが、59℃の温度上昇をもたらす。
【0081】
バッテリー温度の上昇は、技術的にセル54固有の範囲内にすることができるが、長年にわたるこの範囲内での熱サイクルは、バッテリーの健全性および/または能力を悪化させる可能性がある。そのため、前述したように、本発明の温水システム10は、断熱シェル26内の熱容量を増加させるために、断熱シェル内にヒートシンク構成24をさらに含む。断熱シェル26内のヒートシンク構成24は、バッテリーモジュール52を定位置に保持するためにモジュールを格納する、または取付けるフレーム56を含む。この実施例のために、フレーム56は、鋳造アルミニウムで形成することができる。
【0082】
次に、断熱シェル26内のヒートシンク構成24の熱的能力を実証するために、数字を使った実施例について説明する。実施例のために、フレーム56は、12個の前述したセル54(例えば、
図6を参照)を保持するように構成される。それぞれの数字が観測される限り、任意の数のセルを用いて任意の計算を実施できることを正しく認識すべきである。そうすることで、直接、温度変化を比較することができる。
【0083】
図6に示す実施例について続けると、十二個のセル54は、12×1kJ/kgK×0.65kg=7.8kJ/Kという複合熱容量を有する。この実施例で用いる十二個のセル54は、12×96Wh=1.152kWhの蓄積容量を有する。90%の効率での充電中に放射される熱エネルギーは、(1.152/0.9)-1.512=0.128kWhであり、これは460.8kJである。したがって、シェル26内のヒートシンク24を利用することなく、充電中に放射される熱の結果としてセルが受ける温度上昇は、この実施例では、460.8kJ/7.8kJ/K=59℃になるであろう。
【0084】
しかし、前述したように、断熱シェル内にヒートシンク構成24を設けることは、バッテリー16のセル54が受ける温度変動を有利に低減する。断熱シェル26の内部のフレーム56は、この実施例では、ヒートシンク24の一部である。この実施例のために、フレーム56は、2.5kgの質量を有すると仮定することができ、およびアルミニウムの比熱容量は、0.96kJ/kgKである。したがって、フレーム56の熱容量は、2.5kg×0.96kJ/kgK=2.4kJ/Kと計算することができる。したがって、この実施例において、断熱シェル26内のフレーム56およびセル54の総熱容量は、7.8kJ/K+2.4kJ/K=10.2kJ/Kである。
【0085】
前述したように、この実施例における十二個のセル54は、1.152kWhの蓄積容量を有し、および90%の効率で充電中に放射される熱エネルギーは、460.8kJである。したがって、充電の結果としての断熱シェル26内の総温度上昇は、460.8kJ/10.2kJ/K=45℃と計算することができる。したがって、フレーム56を含むヒートシンク構成24を設けることは、充電中に断熱シェル26内のセル54が受ける温度上昇を低減する。
【0086】
シェル26内の熱容量は、断熱シェル26内のヒートシンク容積36内に熱交換流体38を含むことによってさらに増加する。この実施例のために、熱交換流体38は水である。熱交換流体流路50を含むヒートシンク容積36は、この実施例では、0.466リットルの容積である。したがって、ヒートシンク容積36内の熱交換流体38(水)は、0.466kgの質量と、4.2kJ/kgKの比熱容量を有する。したがって、ヒートシンク容積36内の熱交換流体38は、(4.2kJ/kgK×0.466kg=1.957kJ/Kから)1.957kJ/Kのさらなる熱容量をもたらす。
【0087】
したがって、セル54、フレーム56および熱交換流体38を含む断熱シェル26内の総熱容量は、7.8kJ/K+2.4kJ/K+1.96kJ/K=12.16kJ/Kである。90%の効率で充電中に放射される合計の熱は、460.8kJである。したがって、断熱シェル26内のセル54が受ける総温度上昇は、460.8kJ/12.16kJ/K=37.9℃の温度上昇である。したがって、明らかに、ヒートシンク容積36内の熱交換流体38は、温度上昇をさらに低減する。
【0088】
前述したように、いくつかの実施例において、温水システム10は、相変化物質60、例えば、硫酸ナトリウムを断熱シェル26内にさらに含んでもよい。この実施例のために、相変化物質60は、32.4℃の融点と、252kJ/kgの融解熱を有する硫酸ナトリウムである。したがって、1kgの硫酸ナトリウムを溶解するのに、252kJのエネルギーが必要であり、このことは、32.4℃で起きるであろう。
【0089】
好適な実施例において、温水システム10は、相変化物質60の融点が、バッテリー16を充放電する際に、断熱シェル26の内部で受ける温度の範囲内になるように構成されている。したがって、温度の変化は、所定の容積の相変化物質60を溶解(または凍結)するのにかかる時間の間、停止するであろう。
【0090】
再び本実施例について言及すると、
図6において、例証として示すフレーム56内の九つの熱交換流体流路50のうちの三つには、硫酸ナトリウム60を充填することができる。すなわち、硫酸ナトリウム、すなわち、相変化物質60は、フレーム56によって形成されたコンパートメント内のヒートシンク構成24内に収容することができる。
【0091】
相変化物質60のこの容積を溶解するのに必要なエネルギーは、温度を上昇させるのに利用可能なエネルギーから引くことができる(または、冷却時に受け入れられないエネルギーに加えることができる)。ここで、この実施例においては、熱交換流体38が充填されている熱交換流体流路50は、0.311リットルの容積を有し、したがって、システム10は、0.311kgの質量を有する水をヒートシンク容積36内に含む。水の比熱容量は、4.2kJ/kgKであるため、熱交換流体38を断熱シェル26内に含むことによって加わる熱容量は、4.2×0.311=1.306kJ/Kである。したがって、低減された量の熱交換流体38を有するこの実施例において、断熱シェル26内の総熱容量は、7.8kJ/K+2.4kJ/K+1.31kJ/K=11.51kJ/Kである。
【0092】
しかし、三つの流路内に収容されている硫酸ナトリウム60の質量は、0.414kgであり、また、この質量の硫酸ナトリウムを溶解するのに必要なエネルギーは、0.414kg×252kJ/kg=93kJである。90%の効率で充電中に放射される熱は、460.8kJである。相変化物質60を溶解することによって吸収された熱を取り除くと、460.8kJ-93kJ=367.8kJが残る。この実施例における断熱シェル26内の相変化物質60を含むシステム10内のセル54が受ける全体の温度の上昇は、367.8kJ/11.51kJ/K=32.0℃である。上記の計算は、固体および液体の硫酸ナトリウムの比熱容量を考慮に入れておらず、実際には、温度上昇は、実のところそれほど激しくはない。したがって、要約すると、シェル26内に相変化物質60を含むことは、セル54が受ける温度上昇をさらに低減し、このことは、前述したように、それらのセルの寿命を延ばす。
【0093】
本願明細書に記載され、および添付クレームにおいて定義されている本発明は、バッテリー16によって充電中に放射される熱を有利に蓄え、そのことを、より効率的な水の加熱を可能にし、およびバッテリー寿命を延ばすのに利用する。システムの効率を向上させることは、典型的には、材料および製造コストの増加をもたらす。しかし、本発明の温水システム10は、コストを増加させることのないシステム効率の向上を容易にする。例えば、放射された熱は、後の利用のために、ヒートシンク構成24内に再び捕捉されるため、より大きな熱出力を生じさせる、より高い内部抵抗を有する効率の良くないセル54を用いることができる。このようなセル54の利用は、コスト面での優位性を支える可能性がある。同様に、放射される熱エネルギーは、後の利用のために捕捉されて蓄えられるため、バッテリー管理システム18内の電子装置は、最適とは言えないように、ひいてはより安くなるように意図的に設計することができる。
【0094】
上記のさまざまな実施例に関連して記載されている任意の形状構成は、添付クレームにおいて定義されているような本発明の範囲から逸脱することなく、異なる実施例に関連して記載されている他の任意の形状構成と容易に組合せることができることは正しく認識されるであろう。さらに、上記の説明および添付図面が単に実施例として記載されていることは正しく認識されるであろう。したがって、添付クレームにおいて定義されているような本発明の範囲から逸脱することなく、上記で記載されている具体的な実施例に対する多くの代替例が可能である。
【国際調査報告】