(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】骨折を治療するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/76 20060101AFI20250123BHJP
A61B 17/80 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61B17/76
A61B17/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545269
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 AT2023060009
(87)【国際公開番号】W WO2023147609
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524284162
【氏名又は名称】アイ.ティー.エス. ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブーレン、ヴォルカー
(72)【発明者】
【氏名】プラゲル、ロナルド
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL27
4C160LL33
4C160LL35
4C160LL44
(57)【要約】
本発明は、骨折、特に、例えば、大腿骨頸部骨折などの大腿近位部の骨折を治療するための装置(1)であって、大腿骨に取り付けるためのプレート(3)、それにより前記プレート(3)が骨内ねじ開口部(14)を通して大腿骨骨幹部(4)に固定されることができる1つ又は複数の骨内ねじ(10)、前記少なくとも1つの骨内ねじ(10)に対して近位方向に配置され、それにより前記プレート(3)が連結装置開口部(6)において前記大腿骨骨幹部(4)及び大腿骨頸部(2)を通して大腿骨頭(7)に結合されることができる連結装置、特に、骨ねじ(5)を備え、前記連結装置はゆとり(21)を有して前記プレート(3)に結合されており、その結果、前記連結装置は前記プレート(3)に対して前記横方向(8)に動かされることができる、装置(1)に関する。ゆとり(21)の特に正確なかつ同時の調節可能性を達成するために、本発明によればプレート(3)に結合され、プレート(3)に対して異なる位置に位置付けられることができ、それによりゆとり(21)が調節されることができる調節装置が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折、特に、例えば、大腿骨頸部骨折などの大腿近位部の骨折を治療するための装置であって、大腿骨に取り付けるためのプレート、それにより前記プレートが骨内ねじ開口部を通して大腿骨骨幹部に固定されることができる1つ又は複数の骨内ねじ、前記1つ又は複数の骨内ねじに対して近位方向に配置され、それにより前記プレートが連結装置開口部において前記大腿骨骨幹部及び大腿骨頸部を通して大腿骨頭に結合されることができる連結装置、特に骨ねじを備え、前記連結装置はゆとりを有して前記プレートに結合されており、その結果、前記連結装置は前記プレートに対して横方向に動かされることができ、前記装置は、前記プレートに結合されて、前記プレートに対して異なる位置に位置付けられることができる調節装置が設けられており、前記調節装置により前記ゆとりが調節されることができる、装置。
【請求項2】
前記調節装置が、前記横方向及び内方方向において実質的に強固に前記プレートに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記連結装置は、前記プレートに対する前記連結装置の内方方向における運動性が第1の停止面によって制限されるように前記調節装置及び/又は前記プレート上の対応する面と連携する、第1の停止面を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記連結装置が、前記プレートと連携して制限停止部を形成する横方向のカラーを有し、前記連結装置が前記プレート内で前記制限停止部まで内方方向に進められ得る、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記連結装置は、前記連結装置が横方向の端部位置にあるときに前記調節装置に対して支えられる第2の停止面を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の停止面の少なくとも一部が、横方向の第2の停止面によって形成され、前記横方向の第2の停止面は、前記横方向の端部位置で、前記調節装置の前記横方向の端部の領域内の前記調節装置の肩又はカラー、特に調節用ねじカラーに少なくとも部分的に支えられている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の停止面の少なくとも一部が、前記連結装置上の内方方向の第2の停止面によって形成されており、これは、前記横方向の端部位置において前記調節装置のねじ山に少なくとも部分的に支えられている、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記調節装置がねじ山によって前記プレートに結合されていることを特徴とし、前記調節装置が取り外されることを防止するために前記ねじ山において摩擦を増大させるスクリューロック、特にプラスチック部品が設けられている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項9】
前記調節装置は、予め規定された位置までしか前記プレート内にねじ込まれることができないことを特徴とし、これは特に、レンチ、好ましくはアレンレンチを用いた設計により実現され、これにより、前記調節装置の予め規定された位置を越えて、対応する相手、特に前記調節装置における内部六角形との接触をもはや生み出さない、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項10】
前記連結装置が、内方方向の端部位置及び横方向の端部位置の間の制限停止部間で可動であることを特徴とし、前記内方方向の端部位置は、前記調節装置と連携して前記連結装置上の第1の停止面によって画定され、前記横方向の端部位置は、前記調節装置と連携して第2の停止面によって画定される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項11】
前記調節方向に沿った前記調節装置の動きが、前記横方向の端部位置及び前記内方方向の端部位置に対して異なる効果を有するように、前記第1の停止面及び前記第2の停止面が、互いに対して停止面角度(δ)で、特に、それに沿って前記調節装置が前記プレートに対して可動である調節方向に対して異なる角度で、特に、互いに対して10度から160度、好ましくは60度から120度の停止面角度(δ)で配置されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第2の停止面が前記調節方向とおおよそ直交しており、前記第1の停止面が前記調節方向に対しておおよそ平行であり、特に、前記調節方向は、前記連結装置の長手方向軸に対して0.5度から15度、好ましくは0.8度から2度の角度(α)で位置合わせされる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記調節装置が調節用ねじとして具現化され、前記連結装置が骨ねじとして具現化されており、前記調節用ねじの長手方向軸は、前記骨ねじの長手方向軸に対して0.5度から15度、特に0.8度から2度の角度(α)で位置合わせされている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項14】
前記調節装置が、前記プレート内のねじ山に配置され、前記ねじ山により可変的に位置付けられ得る調節用ねじとして具現化されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項15】
前記調節装置が、前記プレートに対して、調節方向に沿って、特にねじ山軸に沿って可変的に位置付け可能である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項16】
前記調節方向が、前記連結装置の長手方向軸に対して、0.5度から10度、特に0.8度から2度の角度(α)で位置合わせされており、前記調節方向及び前記連結装置の長手方向軸は1つの平面にある、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記連結装置が、特に面取り領域に隣接する肩を有し、前記肩は、前記連結装置の横方向の端部位置において、特におおよそ前記調節装置の前面において、前記調節装置に支えられる第2の停止面を形成する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項18】
前記連結装置が面取り領域を有し、前記調節装置の少なくともある領域がおおよそ円筒状の外郭を有し、前記連結装置上の前記面取り領域は、前記調節装置の前記外郭と連携して内方方向における前記プレートに対する前記連結装置の運動性を制限する第1の停止面を形成する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項19】
前記面取り領域が、前記連結装置の長手方向軸に対して面取り角度(β)で位置合わせされており、この角度は、前記調節装置が前記連結装置の前記長手方向軸と位置合わせされている角度(α)に対応しており、前記調節装置は、前記調節装置が前記面取り領域に触れるように配置されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記連結装置の長手方向軸に対しておおよそ平行、特に前記連結装置に対して近位に配置された牽引ボルトが設けられており、前記牽引ボルトにより、前記プレートは、牽引ボルト開口部において前記大腿骨骨幹部及び大腿骨頸部を通して前記大腿骨頭に結合されて、前記連結装置に対する前記大腿骨頭の回転を防止することができる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項21】
前記連結装置の長手方向軸が、前記1つ又は複数の骨内ねじの長手方向軸に対して10度から60度、特に35度から45度の大腿骨頸部角度(γ)で位置合わせされている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項22】
前記連結装置が中空設計であり、その結果、前記装置が大腿骨上に配置されたときに、骨セメントが前記連結装置を通して前記大腿骨頭の領域内に導入されることができる、請求項1又は2に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折、特に、例えば、大腿骨頸部骨折などの大腿近位部の骨折を治療するための装置であって、を大腿骨に取り付けるためのプレート、それによりプレートが骨内ねじ開口部を通して大腿骨骨幹部に固定されることができる1つ又は複数の骨内ねじ、前記少なくとも1つの骨内ねじに対して近位方向に配置され、それによりプレートが連結装置開口部において前記大腿骨骨幹部及び大腿骨頸部を通して大腿骨頭に結合されることができる連結装置、特に、骨ねじを備え、前記連結装置はゆとりを有して前記プレートに結合されており、その結果、前記連結装置は前記プレートに対して前記横方向に動かされることができる、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨内ねじを使用して骨プレートの一方の側部を大腿骨骨幹部に結合し、その後、骨ねじとして通常設計される連結装置を介して大腿骨頭がプレートに結合されることによって大腿骨頸部の骨折を治療するための、導入部において説明した種類の装置は従来技術から既知である。これに関連して、連結装置及びプレートの間の可動式の連結が治癒過程を促進させるために有利である。したがって、骨折の部位間の接触面積における、すなわち、通常、大腿骨頸部の領域内の接触面積における小さい動き及び圧迫が、治癒過程を補助するために有利であることが見出されているが、同時に、骨部位同士が互いに対してスライドし過ぎるのを防止することも重要である。
【0003】
しかしながら、特に「バレル式」及び/又は「伸縮式」のねじを利用し、例えばWO2007/109302 A2から知られる、従来技術から既知である装置は、扱いにくいことが証明されている。
【発明の概要】
【0004】
ここで本発明が登場する。本発明の目的は、導入部において説明した種類の装置を提案することであり、これは、操作が単純であるだけでなく、治癒過程のためにも特に有利である。
【0005】
この目的は、プレートに結合されて、ゆとりを調節するためにプレートに対して様々な位置に置くことができる調節装置が設けられている、導入部で説明した種類の装置により本発明に従って解決される。
【0006】
装置の発明的な設計により、結果として、もはや伸縮式のねじなどを使用する必要がないが、本発明の文脈において、ロバストな構造、及び同時に、ゆとりを調節するための単純な方法を、代わりに、単に対応する調節装置を用いて得ることができることが見出された。同時に、調節装置は、その中で連結装置がプレートに対して可動であるゆとりの大きさに影響を及ぼすために、幅広い方法で設計されてよい。
【0007】
調節装置が、横方向及び内方方向において実質的に強固にプレートに結合されている場合、有利である。これは、例えば、プレートにねじ込まれることができる調節用ねじからなる調節装置を用いて達成されてよく、これによりプレートに対する連結装置の運動性が調節され得る。プレートに対する連結装置のゆとりは、調節用ねじのねじ込みの深さにより調節され得る。
【0008】
連結装置は、内方方向におけるプレートに対する連結装置の運動性が第1の停止面によって制限されるように調節装置及び/又はプレート上の対応する面と連携する第1の停止面を有することが特に有利に提供される。連結装置は、結果として、装置が第1の停止面に支えられるまでプレートに対して内方方向に動かされてよく、その結果、プレートに対する連結装置の内方方向の端部位置が第1の停止面によって画定される。
【0009】
原理的には、第1の停止面は、連結装置の予め規定された位置において内方方向に調節装置及び/又はプレートに支えられ、それにより内方方向における任意のさらなる移動を防止するような任意の方法で設計されてよい。そのため、停止面は、特に低い面圧を達成するために、それに沿って当該連結装置がプレートに対して可動である連結装置の長手方向軸に対して垂直に、又は長手方向軸に対して角度をなすかのいずれかで位置合わせされてよい。
【0010】
例えば、連結装置は、プレートと連携して制限停止部を形成する横方向のカラーを有し、連結装置は、プレート内で制限停止部まで内方方向に進められ得ることが提供され得る。連結装置は、次に、単に、プレートに対して大腿骨頭を引っ張る牽引ボルトとして使用されてよい。連結装置は次に、例えば、連結装置開口部より大きくなるように設計されたカラー又は肩を一方の横方向の端部にし、その結果、連結装置は、内方方向においてプレート内をカラーまでしか進められることができない。
【0011】
連結装置が横方向の端部位置にあるときに調節装置に支えられる第2の停止面を連結装置が有する場合、有利である。このようにして、プレートに対する調節装置の位置を単に変化させることによって、停止部間の距離に変化がもたらされるため、ゆとりが変更され得る。
【0012】
第2の停止面は、単一の表面のみによって形成されてよく、これは、横方向の端部位置において連結装置及び調節装置の間の接触を提供する。しかしながら、第2の停止面は、並行して機能し、特に有効に運動性を制限する複数の表面によって形成されることが提供されてもよい。したがって、特に調節装置の内方方向のねじ山端部に支えられる単一の第2の停止面のみが使用されるとき、調節装置が連結装置に沿ってスライドし得る、及び/又はねじ山を介してそれ自体を連結装置上の第2の停止面にねじ込み得、結果として意図したよりも運動性の制限が少なくなるリスクがあることが見出されている。特に、第2の停止面が、並行して機能している2つ又は3つの制限停止部又は接触面によって、例えば、一次、二次、及び三次の第2の制限停止部によって形成されることが提供され得る。そのような場合、一次の第2の制限停止部は例えば調節装置の横方向の端部に支えられてよく、第2の制限停止部は例えば調節装置の中央に支えられてよく、三次の第2の制限停止部は調節装置の内方方向の端部の領域において調節装置に支えられてよい。
【0013】
第2の停止面の少なくとも一部が、横方向の第2の停止面によって形成され、横方向の第2の停止面は、横方向の端部位置で、調節装置の横方向の端部の領域内の調節装置の肩又はカラー、特に調節用ねじカラーに少なくとも部分的に支えられている場合、有利である。好ましくは調節用ねじカラーとして設計されているカラーは、調節用ねじの横方向の端部に配置されてよく、他の調節装置より大きな直径を有してよく、その結果、横方向の端部位置において、連結装置は調節装置に、実際には調節装置の横方向の端部に支えられる。この場合、連結装置上の第2の停止面は、調節装置上のカラーを用いて対応するフォームロック(form lock)を取得するために、末端の横方向の周辺の陥凹部に配置されてよい。
【0014】
好ましくは、第2の停止面の少なくとも一部が連結装置上の内方方向の第2の停止面によって形成され、その少なくとも一部が横方向の端部位置において調節装置のねじ山に支えられることが提供される。特に、調節装置上のねじ山の内方方向の端部は、結果として、横方向における連結装置の運動性を制限するために、連結装置の対応する面のための制限停止部として機能し得る。
【0015】
調節装置がねじ山によってプレートに結合されている場合、有利であることが見出されており、スクリューロック、特にプラスチック部品が設けられ、これによりねじ山における摩擦を増大して、調節装置が取り外されることを防止する。この単純な方法において、プレートからの調節装置の意図しない取り外しが防止される。
【0016】
装置を埋め込むときに深くまでねじ込み過ぎることに起因した過ちを防止するための単純な方法を提供するために、好ましくは、調節装置は、予め規定された位置までしかプレート内にねじ込まれることができないことが提供され、これは特に、レンチ、好ましくはアレンレンチを用いた設計により実現され、これにより、記調節装置の予め規定された位置を越えて、対応する相手、特に調節装置における内部六角形との接触がもはや生み出されない。
【0017】
連結装置が、内方方向の端部位置及び横方向の端部位置の間の制限停止部間で可動であり、内方方向の端部位置は、調節装置と連携して連結装置上の第1の停止面によって画定され、横方向の端部位置は、調節装置と連携して第2の停止面によって画定される場合、有利である。そのため、調節装置は単に、連結装置の運動性を制限する制限停止部を画定する。結果として、端部位置及びゆとりの位置の両方が単純な方法で調節され得る。
【0018】
調節方向に沿った調節装置の動きが、横方向の端部位置及び内方方向の端部位置に対して異なる効果を有するように、第1の停止面及び第2の停止面が、互いに対して停止面角度で、特に、それに沿って調節装置がプレートに対して可動である調節方向に対して異なる角度で、特に、互いに対して10度から160度、好ましくは60度から120度の停止面角度で配置されることが有利であることが見出されている。そのため、制限停止部の位置だけでなく、ゆとり、すなわち、制限停止部間の連結装置の運動性も、調節装置の位置の変化によって変更され得る。特に、停止面が調節方向に対しておおよそ平行である場合、調節方向に沿った調節装置の位置は、対応する停止面及び/又は対応する端部位置によって形成された制限停止部を変化させない。
【0019】
そのため、例えば、内方方向の端部位置が調節装置と連携して、調節方向に対しておおよそ平行である第1の停止面によって画定される場合、調節方向に沿った調節装置の位置の変化は内方方向の端部位置を変化させない。
【0020】
第2の停止面が調節方向とおおよそ直交しており、第1の停止面が調節方向に対しておおよそ平行であり、特に、調節方向は、連結装置の長手方向軸に対して0.5度から15度、好ましくは0.8度から2度の角度で位置合わせされている場合、有利である。そのため、調節方向に沿った調節装置の動きにより、第2の制限停止部の変位が引き起こされるが、第1の制限停止部の変位は引き起こされず、これによりゆとりを変更するための単純な方法が提供される。
【0021】
調節装置が調節用ねじとして具現化され、連結装置が骨ねじとして具現化され、調節用ねじの長手方向軸は、骨ねじの長手方向軸に対して0.5度から15度、特に0.8度から2度の角度(α)で位置合わせされていることが特に好ましく提供される。このようにして、特に、単にこれらの2つのねじの間の相互作用によってゆとりが変更され得る。同時に、ロバストで容易に管理できる設計が生み出される。調節用ねじ及び骨ねじは通常、互いに隣接して配置され、好ましくはプレート内の共通の開口部を通して突出している。これにより、プレートに対する骨ねじのゆとりを制限する、調節用ねじ及び骨ねじの間の停止面が構造的に単純かつコンパクトな方法で実現されることが可能になる。
【0022】
調節装置が、プレート内のねじ山に配置され、ねじ山により可変的に位置付けられ得る調節用ねじとして具現化されることが有利であることが見出されている。ねじ山は好ましくはセルフロック式である。そのため、調節装置は、それぞれの横方向又は内方方向における圧力ではなく、回転によってのみ横方向及び内方方向に可動である。このようにして、ゆとりを特に正確に調節することができる。
【0023】
したがって、調節装置は好ましくは、プレートに対して、調節方向に沿って、特にねじ山軸に沿って可変的に位置付け可能である。
【0024】
調節方向が、連結装置の長手方向軸に対して、0.5度から10度、特に0.8度から2度の角度で位置合わせされていることを特徴とし、調節方向及び連結装置の長手方向軸は好ましくは同じ平面にある場合、特に有利である。これにより、ゆとりの特に正確な調節機能が可能となる。設計が特に単純である第1の停止面が次に実現されてよく、第1の停止面の上で連結装置が内方方向の端部位置において、連結装置の長手方向に対して対応する角度で位置合わせされた調節装置に支えられ、また、第1の停止面の上で連結装置が調節装置に支えられ、結果として、ここで小さい角度のおかげで特に低い面圧が達成される。これにより、特に良好な安定性が確保される。
【0025】
好ましくは、連結装置が、特に面取り領域に隣接する肩を有し、肩は、連結装置の横方向の端部位置において、特におおよそ調節装置の前面において、調節装置に支えられる第2の停止面を形成することが提供される。このようにして、ゆとりが両方の停止面により明らかに画定される。
【0026】
2つの停止面が調節用ねじの調節方向に対して異なる角度で配置され、その調節方向に沿って調節用ねじがプレートに対して動かされ得る場合、特に有利である。このようにして、調節方向に沿った調節用ねじの動きは、連結装置の内方方向の端部位置及び横方向の端部位置に対して異なる効果を有し、それにより、ゆとりを単純に調節することが可能になる。
【0027】
調節装置は好ましくは調節用ねじとして具現化され、したがって、通常、おおよそ円筒状の包絡面を有する。結合要素上の対応する面取り面により、これは次に、面取り面の領域において調節装置及び連結装置の間の線接触を生み出し、これは、連結装置の長手方向軸に沿った連結装置の動きの方向に対して角度をなして、すなわち垂直ではなく位置合わせされた第1の停止面として機能し得る。これにより、第1の停止面における良好な力の伝達が保証される。第2の停止面が、肩、又は面取り領域から、例えばそれに隣接する円筒形区域までのの移行部に位置付けられている場合、第2の停止面は、連結装置の長手方向軸に対しておおよそ垂直に位置合わせされてよく、結果として、調節方向に沿った調節装置の動きは、調節装置と連携して第1の停止面によって通常生み出される内方方向の端部位置の位置、及び調節装置と連携して第2の停止面によって通常生み出される横方向の端部位置に対して異なる強度の効果を有する。このようにして、両方の停止面が調節装置と連携するにもかかわらず、調節方向に沿った調節装置の位置を変化させることによってゆとりが容易に変更され得る。
【0028】
連結装置の円筒形区域は通常、内方方向に円錐領域と隣接しているため、肩は円錐領域及び円筒形区域の間に生成され、この肩は、プレートに対して横方向における連結装置の運動性を制限するための第2の停止面として使用可能である。
【0029】
連結装置が面取り領域を有し、調節装置が、その少なくともある領域が円筒状である外郭を有し、面取り領域は、調節装置のおおよそ円筒状の外郭と連携して内方方向におけるプレートに対する連結装置の運動性を制限する、連結装置上の第1の停止面を形成する場合、有利である。調節装置の円筒状の外郭は、例えば、調節装置が調節用ねじによって形成されている場合に得られる。これにより、連結装置及び調節装置の間の特に有効な力の伝達が保証され、ゆとりを画定するために制限停止部が容易にかつロバストに調節され得ることが可能になる。
【0030】
面取り領域が、連結装置の長手方向軸に対して面取り角度で位置合わせされ、この角度は、調節装置が連結装置の長手方向軸と位置合わせされている角度に対応しており、調節装置は、調節装置が面取り領域に触れるように配置されていることが特に好ましく提供される。調節装置は次に、連結装置と衝突することなく調節方向に沿ってプレート内にねじ込まれてよく、その結果、横方向の端部位置の位置は容易に変更可能である。内方方向の端部位置は次に、通常、調節装置及び連結装置の寸法から得られ、調節方向に沿った調節装置の位置とは独立していてよい。
【0031】
連結装置の長手方向軸に対しておおよそ平行、特に連結装置に対して近位に配置された牽引ボルトが設けられ、牽引ボルトにより、プレートは、牽引ボルト開口部において大腿骨骨幹部及び大腿骨頸部を通して大腿骨頭に結合されて、連結装置に対する大腿骨頭の回転を防止し得る場合、有利である。
【0032】
通常、連結装置の長手方向軸が、第1のねじの長手方向軸に対して10度から60度、特に35度から45度の大腿骨頸部角度で位置合わせされていることが提供される。対応する角度は、プレートにおいて連結装置開口部及び第1の開口部を配置及び位置合わせすることによって得られ、そして、大腿骨頸部及び大腿骨骨幹部の間の角度は通常、約130度の領域にあるため、大腿骨頸部骨折を治療するために最適である。
【0033】
連結装置が中空構造であり、その結果、装置が大腿骨上に配置されているときに、大腿骨頭の領域に連結装置を通して骨セメントを導入することができることが好ましくは提供される。
【0034】
また、牽引ボルトが中空構造であり、その結果、必要であればボルトを通しても大腿骨頭の領域内に骨セメントを導入することができる場合、好ましい。
【0035】
本発明のさらなる特徴、利点、及び効果は、例示的な実施形態についての以下の説明を参照して認識できる。参照がなされることになる図面において、図は以下を示している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、大腿骨骨幹部4、大腿骨頸部2、及び大腿骨頭7を含む大腿骨上の本発明による装置1の断面表現を示す。
図2では、大腿骨を含まずにこの装置1が3Dビューで表されている。
【0038】
各ケースにおいて、大腿骨頸部2の反対側で大腿骨の外側に取り付けられ得、プレート3の下部領域における骨内ねじ開口部14を通して突出する骨内ねじ10によって大腿骨骨幹部4に結合され得るプレート3が設けられていることを見ることができる。
【0039】
ここでは骨ねじ5の形態である連結装置、及び牽引ボルト19は、骨内ねじ10の上方に、かつそれに対して近位に設けられており、軸ねじとして具現化されており、それらの端部領域にのみねじ山15を有する。これにより、その中に当該ねじがねじ込まれる大腿骨頭7を、大腿骨頸部2及び大腿骨骨幹部4に対して引っ張ることが可能になるため、骨折の安定化が達成される。この目的のために、プレート3には、それを通して骨ねじ5が突出する連結装置開口部6、及びそこで牽引ボルト19がプレート3を通過する牽引ボルト開口部20が設けられている。骨ねじは横方向の端部においてカラー22を有し、このカラーは連結装置開口部6に支えられているため、骨ねじがプレート内で内方方向にそこまで導入されることができる制限停止部が形成される。
【0040】
骨ねじ5は、内方方向11及び横方向8にゆとり21を有してプレート3に結合されている。ゆとり21は、それぞれが、ここでは調節用ねじ9によって形成されている調節装置上に位置する、第1の制限停止部及び第2の制限停止部の間でのプレート3に対する連結装置の運動性によって可能となる。調節用ねじ9は、プレート3内のねじ山15に対応するねじ山15を有し、その結果、調節用ねじ9は、調節方向16に沿ってプレート3内へとおおよそ内方方向11に、又は反対方向のおおよそ横方向8にプレート3の外へのいずれかでねじ込まれて、プレート3に対する骨ねじ5のゆとり21に対して、及びそれと共に大腿骨頸部2に対する大腿骨頭7の運動性に対しても影響を及ぼす。
【0041】
第1の制限停止部は、骨ねじ5上の面取り領域17において第1の停止面12によって形成され、この第1の停止面12は、骨ねじ5の内方方向の端部位置において調節用ねじ9上に周方向に支えられている。そのため、調節方向16は、骨ねじ5の長手方向軸に対して平行ではなく、それに対して約1.2度の角度αで配置されている。骨ねじ5の面取り領域17は調節方向16に対しておおよそ平行であり、これは、面取り領域17に対する直交が、調節方向16に対しておおよそ直交であることを意味し、その結果、内方方向の端部位置は、調節用ねじ9のねじ込みの深さとは独立している。さらに、内方方向の端部位置における骨ねじ5は、横方向の端部に設けられたカラー22を介してプレート3に支えられ、結果として、このカラー22も制限停止部を形成して内方方向の端部位置を画定する。
【0042】
第2の制限停止部は、骨ねじ5の肩の領域内に第2の停止面13によって形成され、これは、骨ねじ5の面取り領域17及び円筒形区域18の間の領域に生成される。骨ねじ5が横方向の端部位置にあるとき、当該肩が調節用ねじ9の前面に支えられる。そのため、横方向の端部位置は、調節用ねじ9のねじ込みの深さと共に調節方向16に沿って変動する。このようにして、プレート3に対する調節用ねじ9の位置の変化により、骨ねじ5の横方向の端部位置の変化、及びその結果、ゆとり21の変化がもたらされる。
【0043】
牽引ボルト19が骨ねじ5に対して近位方向設けられ、これもプレート3から大腿骨頭へとねじ込まれている。この追加の牽引ボルト19は、大腿骨頸部2において大腿骨頭7を安定化させること、及び骨ねじ5及び/又は連結装置の周りでの大腿骨頭7の回転を防止することの両方を行う。
【0044】
示されるように、骨ねじ5及び牽引ボルト19は、おおよそ平行に、かつ骨内ねじ10に対して約20度から40度の大腿骨頸部角度γで位置合わせされている。
【0045】
図2aは、
図1の拡大された詳細を示す。ここで、円周のカラー22が特に明らかに明白であり、骨ねじ5が内方方向の端部位置にあるときにプレートに支えられるため、結果として、骨ねじ5がプレート3内をそこまで進められることができる制限停止部が形成される。明白であるように、連結装置開口部6は、カラー22より小さいが、骨ねじ5が連結装置開口部6を通してプレート3内をカラー22まで進められることができることを確保するのに十分に大きい。
【0046】
図3及び4は、
図1及び2に表された装置1の骨ねじ5及び調節用ねじ9を詳細に示す。
図3は、骨ねじ5が内方方向の端部位置にある状態、すなわち、大腿骨頭7及び大腿骨頸部2の間の距離が最大であるときの骨ねじ5及び調節用ねじ9を示す。見ることができるように、骨ねじ5が、調節用ねじ9の円周領域上で第1の停止面12を形成する面取り領域17に支えられているため、その後、内方方向における骨ねじ5のさらなる移動は不可能になる。しかしながら、骨ねじ5、及び骨ねじ5の端部が通常ねじ込まれる大腿骨頭7を、この位置から外れるように反対方向に、すなわち横方向8に動かすことはできる。
【0047】
ここで明らかに示されるように、第1の停止面12及び第2の停止面13は、互いに対して約110度の停止面角度δで配置されている。この文脈において、第1の停止面12は、調節方向16に対しておおよそ平行に配向されており、したがって、第2の停止面13は、調節方向16に対して約110度の角度αで配向されている。その結果、調節方向16に沿った調節用ねじ9の位置の変化は、横方向の端部位置に対してのみ変化をもたらし、これもカラー22によって決定される内方方向の端部位置に対しては変化をもたらさない。
【0048】
図4は、骨ねじ5、骨ねじ5の横方向の端部位置における、すなわち、大腿骨頭7を大腿骨頸部2の近くに動かすことができず、その結果横方向における骨ねじ5のさらなる移動が不可能であるときの調節用ねじ9を示す。見ることができるように、この横方向の端部位置における骨ねじ5は、おおよそ調節用ねじ9条の前面における骨ねじ5上の肩によって形成された第2の停止面13に支えられている。
【0049】
骨ねじ5の長手方向軸に対して面取り領域17が位置合わせされる面取り角度βは、調節方向16及び骨ねじの長手方向軸の間の角度αにおおよそ対応するため、面取り領域17は調節方向16に対しておおよそ平行である。その結果、調節用ねじ9のねじ込みの深さの変化は、内方方向の端部位置の位置に対して効果を有さない。代わりに、この位置は、骨ねじ5及び調節用ねじ9の寸法及び角度αによってのみ決定される。しかしながら、横方向の端部位置の位置は、調節用ねじ9の前面の位置によって決定されるため、調節用ねじ9のねじ込みの深さと共に変化する。結果として、骨ねじ5がプレート3に対して可動となるゆとり21は、横方向の端部位置を介した調節用ねじ9のねじ込みの深さの変化によって容易に調節され得る。この調節可能性が、対応する骨折の速やかな治癒のために特に重要である。
【0050】
図1、3、及び4において見ることができるように、骨ねじ5は中空設計であり、その結果、例えばそこに骨ねじ5を固定するために、それを通して大腿骨頭7の領域へと骨セメントを導入することができる。
【0051】
この文脈において、
図5及び6は、ゆとり21に対する調節用ねじ9のねじ込みの深さの効果を示し、ここで明確性の目的で寸法及び角度αは縮尺通りに示されていない。見ることができるように、第1の停止面12及び内方方向の端部位置は、調節方向16に対しておおよそ平行な骨ねじ5の面取り領域17により、調節用ねじ9のねじ込みの深さと共に調節方向16に沿って変化していないが、ねじ込みの深さは、横方向の端部位置を画定する第2の停止面13に対して直接的な効果を有する。したがって、
図5は、調節用ねじ9がプレート3(図示せず)内へと実質的にねじ込まれており、その結果、ゆとり21が残っていない状況を示す。この状況において、骨ねじ5は、第1の停止面12及び第2の停止面13の両方に支えられている。
図6に示される状況において、調節用ねじ9は、さらに外向きに横方向に配置されている、又は、
図5に示されるほど深くまでプレート3内にねじ込まれていない。
【0052】
調節用ねじ9として具現化された調節装置は、骨ねじ5の長手方向軸に対して約1.2度の角度αで位置合わせされる。円錐領域の円錐角度も対応して設計され、その結果、骨ねじ5の調節用ねじ9及び円錐領域の間に線接触が生み出され、それにより特に良好な安定化及び力の伝達が保証される。ここでもまた、第1の停止面12が、第2の停止面13に対して停止面角度δで位置合わせされていることを見ることができ、この場合の角度は約90度に等しく、結果として、内方方向の端部位置及び横方向の端部位置に対する調節用ねじ9の位置の変化の効果が異なる。
【0053】
実施形態において、第1の停止面12及び第2の停止面13の間の接続部において角又は縁が示されているものの、第1の停止面12及び第2の停止面13が例えば丸みによって結合されてもよく、互いに対して対応する停止面角度δを依然として有し得ることが明らかである。したがって、骨ねじ5は、例えばボールノーズカッター又はシャンクタイプのミリングカッターなどのいずれかを使用して容易に生み出され得る。
【0054】
図7及び8は、本発明による装置1のさらなる例示的な実施形態の詳細を示す。この装置1は、並行して動作する2つの接触面、すなわち、横方向の端部位置において調節装置の内方方向のねじ山端部に支えられる連結装置上の一次的な第2の停止面13、及び、調節装置の横方向の端部上の第2の停止面13aによって形成された二次的な第2の停止面13を有し、
図8の詳細において示される二次的な第2の停止面13aは、連結装置における正面の先細り及び/又は周辺の陥凹部、この場合では骨ねじ5と連動して、調節用ねじカラー23、すなわち、調節用ねじ9の残りの部分より大きな直径を有する調節用ねじ9の領域によって形成される。並行して機能する2つの第2の停止面13、13aの効果は、連結装置に沿った調節用ねじ9の意図しないスライドを防止するための単純な方法を提供し、これにより運動性も確実に制限される。
【0055】
本発明による装置1により、大腿骨の骨折を特に単純に治療することが可能になり、容易に調節可能なゆとり21により特に効果的な治癒が確保される。
【国際調査報告】