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特表2025-503316脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法
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  • 特表-脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法 図1
  • 特表-脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法 図2
  • 特表-脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20250123BHJP
   C01F 11/46 20060101ALI20250123BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B01D53/50 245
C01F11/46 Z
B01D53/78 ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545834
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 CN2022139777
(87)【国際公開番号】W WO2024011849
(87)【国際公開日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】202210827492.6
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520455014
【氏名又は名称】西安熱工研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】Xi’an Thermal Power Research Institute CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.136 Xingqing Road,Beilin District,Xi’an City,Shaanxi Province,China
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】房 孝維
(72)【発明者】
【氏名】何 育東
(72)【発明者】
【氏名】李 興華
(72)【発明者】
【氏名】陶 明
(72)【発明者】
【氏名】李 楠
(72)【発明者】
【氏名】王 韶暉
(72)【発明者】
【氏名】呉 曉龍
(72)【発明者】
【氏名】彭 芳
(72)【発明者】
【氏名】孟 令海
(72)【発明者】
【氏名】何 仰朋
【テーマコード(参考)】
4D002
4G076
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AC01
4D002BA02
4D002DA04
4D002DA16
4D002FA03
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB08
4D002GB09
4G076AA14
4G076AB18
4G076BA28
4G076BD01
4G076BD06
4G076BH01
4G076CA02
(57)【要約】
脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法であって、スラリー中のCa2+濃度及びpH値を取得するステップと、酸化空気過剰係数(α)及びスラリーのpH値を該酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルに入力し、脱硫スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度を得て、次に、脱硫スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度及びCaSOが沈殿したときのSO 2-の臨界濃度に基づいてCaSO沈殿指数piを算出するステップと、CaSO沈殿指数piに基づいて酸化空気量を制御し、脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御するステップと、を含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法であって、
スラリー中のCa2+濃度及びpH値を取得するステップと、
酸化空気過剰係数(α)及びスラリーのpH値を該酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルに入力し、脱硫スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度を得て、次に、脱硫スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度及びCaSOが沈殿したときのSO 2-の臨界濃度に基づいてCaSO沈殿指数piを算出するステップと、
CaSO沈殿指数piに基づいて酸化空気量を制御し、脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御するステップと、を含む、脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法。
【請求項2】
スラリー中のCa2+濃度は、カルシウムイオン計によりリアルタイムで測定したものであり、スラリーのpH値は、pHメータによりリアルタイムで測定したものである、請求項1に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法。
【請求項3】
様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルを確立するステップと、
CaSOが沈殿したときのSO 2-の臨界濃度を決定するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法。
【請求項4】
前記酸化空気過剰係数αは、排煙が10%のSOを自然酸化できると考えられる条件で、吸収塔によって実際に供給された酸化空気量と吸収塔によって捕集されたSOを完全に酸化するのに必要な理論酸化空気量との比であり、すなわち、
【数1】
によって算出され、Qは、前記吸収塔によって実際に供給された酸化空気量であり、Sは前記吸収塔によって捕集されたSO量であり、Q及びSの値は、いずれもDCSシステムによってリアルタイムデータを取得する、請求項3に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法。
【請求項5】
CaSOが沈殿したときのSO 2-の臨界濃度は、Ca2+とSO 2-の溶解度積定数Kspから式
【数2】
により決定される、請求項3に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法。
【請求項6】
様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルを確立するプロセスにおいて、具体的には、
1)酸化空気量を一定に保ちながら、ユニットの負荷を変更するかバイパス弁の開度を調整することで、吸収塔のSO処理量を調整し、吸収塔のSO処理量が変化すると、酸化空気過剰係数αもそれに応じて変化し、ヨウ素滴定法による化学分析によって様々なSO処理量の条件下での+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度を得て、さらに該酸化空気量の下での酸化空気過剰係数αと+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度との関係を得て、
2)酸化空気量を調整し、ステップ1)を繰り返して、酸化空気量の範囲に吸収塔の低、中、高SO処理量が含まれるようにし、様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数αと+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度との関係を得て、
3)ステップ2)で得られた様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数αと+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度との関係をフィッティングし、フィッティング式を得て、
4)HSO、HSO 及びSO 2-濃度分布関係に対するpHの影響をフィッティング式に導入し、様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルを確立する、請求項5に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法。
【請求項7】
スラリー中のSO 2-濃度を決定するプロセスにおいて、
まず、ヨウ素滴定法による化学分析によってスラリー中の+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度を得て、次に、様々なpHでのHSO、HSO 及びSO 2-の解離平衡関係に従ってスラリー中のSO 2-の濃度を算出し、スラリーのpH値が4~6の間に制御される場合、HSO含有量は無視できる、請求項6に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法。
【請求項8】
前記CaSO沈殿指数piは、スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度とSO 2-の臨界濃度との比である、請求項1に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法。
【請求項9】
0.8≦pi≦1の場合、システムは、酸化が良好であり、酸化空気量をそのまま維持し、pi<0.8の場合、システムは過酸化状態にあり、酸化空気量を減少させ、pi>1の場合、システムは酸化不足状態にあり、酸化空気量を増大させる、請求項1に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学の技術分野に属し、脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法に関する。
【0002】
本願は、出願番号が202210827492.6、出願日が2022年7月14日の中国特許出願に基づいて提出され、当該中国特許出願の優先権を主張しており、当該中国特許出願のすべての内容はここで参考として本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
現在、石炭火力発電ユニットでは、主に石灰石-石膏による湿式脱硫プロセスを使用して、排煙からSOを除去する。排煙中のSOは、スラリーに捕集され、スラリータンクに入った後、還元型の+4価の硫黄物質(HSO、HSO 、SO 2-)として存在し、酸化ファンにより酸化されて、Ca2+と結合して沈殿し、副生成物の石膏(CaSO・2HO)となる。スラリーが酸化不足状態にあると、HSO、HSO 、SO 2-などの+4価の硫黄物質が生成され、脱硫スラリーのpHは4~6に制御されることがほとんどであり、このとき、HSOの含有量も無視できる。吸収塔内の脱硫スラリーの酸化度をスラリー中の亜硫酸塩含有量で評価することができ、スラリーの酸化状態をリアルタイムで制御し、酸化空気量を精密に調整することで、脱硫システムの安全で省エネな運転や自動制御の実現に貢献する。
【0004】
脱硫スラリー中の亜硫酸塩含有量の分析には、主に手動サンプリングと実験室検出方法が採用されている。亜硫酸塩自体は酸化されやすいため、この方法で試験したスラリーの酸化状態は実際の状況に比べて大幅に遅れるため、実験室での検出結果は実際のスラリーの状況から大きくずれるため、石膏の品質を確保することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるために、本開示に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法は、
スラリー中のCa2+濃度及びpH値を取得するステップと、
酸化空気過剰係数(α)及びスラリーのpH値を該酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルに入力し、脱硫スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度を得て、次に、脱硫スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度及びCaSOが沈殿したときのSO 2-の臨界濃度に基づいてCaSO沈殿指数piを算出するステップと、
CaSO沈殿指数piに基づいて酸化空気量を制御し、脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御するステップと、を含む。
【0007】
いくつかの実施例では、スラリー中のCa2+濃度は、カルシウムイオン計によりリアルタイムで測定したものであり、スラリーのpH値は、pHメータによりリアルタイムで測定したものである。
【0008】
いくつかの実施例では、該方法は、
様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルを確立するステップと、
CaSOが沈殿したときのSO 2-の臨界濃度を決定するステップと、をさらに含む。
【0009】
いくつかの実施例では、酸化空気過剰係数αは、排煙が10%のSOを自然酸化できると考えられる条件で、吸収塔によって実際に供給された酸化空気量と吸収塔によって捕集されたSOを完全に酸化するのに必要な理論酸化空気量との比であり、すなわち、
によって算出され、Qは、前記吸収塔によって実際に供給された酸化空気量であり、Sは前記吸収塔によって捕集されたSO量であり、Q及びSの値は、いずれもDCSシステムによってリアルタイムデータを取得する。
【0010】
いくつかの実施例では、CaSOが沈殿したときのSO 2-の臨界濃度は、Ca2+とSO 2-の溶解度積定数Kspから式
により決定される。
【0011】
いくつかの実施例では、様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルを確立するプロセスにおいて、具体的には、
1)酸化空気量を一定に保ちながら、ユニットの負荷を変更するかバイパス弁の開度を調整することで、吸収塔のSO処理量を調整し、吸収塔のSO処理量が変化すると、酸化空気過剰係数αもそれに応じて変化し、ヨウ素滴定法による化学分析によって様々なSO処理量の条件下での+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度を得て、さらに該酸化空気量の下での酸化空気過剰係数αと+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度との関係を得て、
2)酸化空気量を調整し、ステップ1)を繰り返して、酸化空気量の範囲に吸収塔の低、中、高SO処理量が含まれるようにし、様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数αと+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度との関係を得て、
3)ステップ2)で得られた様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数αと+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度との関係をフィッティングし、フィッティング式を得て、
4)HSO、HSO 及びSO 2-濃度分布関係に対するpHの影響をフィッティング式に導入し、様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルを確立する。
【0012】
いくつかの実施例では、酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルを確立するプロセスにおけるスラリー中のSO 2-濃度を決定するプロセスにおいて、
まず、ヨウ素滴定法による化学分析によってスラリー中の+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度を得て、次に、様々なpHでのHSO、HSO 及びSO 2-の解離平衡関係に従ってスラリー中のSO 2-の濃度を算出し、スラリーのpH値が4~6の間に制御される場合、HSO含有量は無視できる。
【0013】
いくつかの実施例では、前記CaSO沈殿指数piは、スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度とSO 2-の臨界濃度との比である。
【0014】
いくつかの実施例では、0.8≦pi≦1の場合、システムは、酸化が良好であり、酸化空気量をそのまま維持し、pi<0.8の場合、システムは過酸化状態にあり、酸化空気量を減少させ、pi>1の場合、システムは酸化不足状態にあり、酸化空気量を増大させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】酸化空気過剰係数αと+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度との関係、及び様々なpH値での亜硫酸根の割合の模式図である。
図2】様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルの3次元図である。
図3】CaSO沈殿指数(pi)に基づいて設計されたオンライン制御の論理図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の態様を当業者がよりよく理解するために、以下、本開示の実施例における図面を参照して、本開示の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、説明される実施例は、本開示の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではなく、本開示の範囲を限定するものではないことは明らかである。また、以下の説明では、本開示で開示された概念の不要な混同を回避するため、公知の構成や技術の説明を省略する。本開示の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行わずに得た他のすべての実施例は、本開示の保護範囲に属するべきである。
【0017】
図面には、本開示で開示される実施例の構造の模式図が示されている。これらの図面は縮尺に合わせて描かれたものではなく、明確な表現のために一部の詳細が拡大されたり、一部の詳細が省略されたりする可能性がある。図に示された各種の領域、層の形状及びそれら間の相対的な大きさ、位置関係は例示的なものであり、実際には製造公差又は技術的制約によってばらつきがあり、当業者は実際の必要に応じて異なる形状、大きさ、相対的な位置を有する領域/層を別途設計してもよい。
【0018】
図1図2及び図3に示すように、本開示に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法は、スラリー中のCa2+濃度とpH値の監視、CaSO沈殿指数piの決定、及びオンライン酸化制御を含む。
【0019】
本開示による脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法は、スラリー中のCa2+濃度及びpH値を取得するステップと、酸化空気過剰係数(α)及びスラリーのpH値を該酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルに入力し、脱硫スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度を得て、次に、脱硫スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度及びCaSOが沈殿したときのSO 2-の臨界濃度に基づいてCaSO沈殿指数piを算出するステップと、CaSO沈殿指数piに基づいて酸化空気量を制御し、脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御するステップと、を含む。
【0020】
いくつかの実施例では、スラリー中のCa2+濃度は、カルシウムイオン計によりリアルタイムで測定したものであり、スラリーのpH値は、pHメータによりリアルタイムで測定したものである。
【0021】
前記CaSO沈殿指数piを決定するプロセスにおいて、1)様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルを確立し、2)CaSOが沈殿したときのSO 2-臨界濃度を決定し、3)CaSO沈殿指数piを算出する。
【0022】
前記酸化空気過剰係数αは、排煙が10%のSOを自然酸化できると考えられる条件で、吸収塔によって実際に供給された酸化空気量と吸収塔によって捕集されたSOを完全に酸化するのに必要な理論酸化空気量との比であり、すなわち、

によって算出され、Qは、吸収塔によって実際に供給された酸化空気量であり、Sは吸収塔によって捕集されたSO量であり、Q及びSの値は、いずれもDCSシステムによってリアルタイムデータを取得する。
【0023】
前記SO 2-濃度を決定するプロセスにおいて、まず、ヨウ素滴定法による化学分析によってスラリー中の+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度を得て、次に、様々なpHでのHSO、HSO 及びSO 2-の解離平衡関係に従ってSO 2-の濃度を算出し、脱硫スラリーのpH値が4~6の間に制御される場合、HSO含有量は無視できる。
【0024】
前記様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルは、試験を通じて取得され、具体的には、
1)酸化空気量を一定に保ちながら、ユニットの負荷を変更するかバイパス弁の開度を調整することで、吸収塔のSO処理量を調整し、吸収塔のSO処理量が変化すると、酸化空気過剰係数αもそれに応じて変化する。ヨウ素滴定法による化学分析によって様々なSO処理量の条件(定常状態条件)下での+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度を得て、さらに該酸化空気量の下での酸化空気過剰係数αと+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度との関係を得て、
2)酸化空気量を調整し、ステップ1)を繰り返して、酸化空気量の範囲に吸収塔の低、中、高SO処理量が含まれるようにし、様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数αと+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度との関係を得て、
3)ステップ2)で得られた様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数αと+4価の硫黄物質HSO、HSO 及びSO 2-の総濃度との関係をフィッティングし、フィッティング式を得て、
4)HSO、HSO 及びSO 2-濃度分布関係に対するpHの影響を導入し、様々な酸化空気量の下での酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルを確立する。
【0025】
CaSOが沈殿したときのSO 2-臨界濃度を決定するプロセスにおいて、具体的には、SO 2-臨界濃度は、Ca2+とSO 2-の溶解度積定数Kspから式
【0026】
により決定され、Ca2+濃度は、カルシウムイオン計によってリアルタイムで取得される。
【0027】
前記CaSO沈殿指数piは、スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度とSO 2-臨界濃度との比であり、脱硫スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度は、酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-モデルによって得られる。
【0028】
前記オンライン酸化制御では、CaSO沈殿指数piを基準にして制御論理が設計される。0.8≦pi≦1の場合、システムは、酸化が良好であり、酸化空気量をそのまま維持し、pi<0.8の場合、システムは過酸化状態にあり、酸化空気量を減少させ、pi>1の場合、システムは酸化不足状態にあり、酸化空気量を増大させる。
【0029】
前記酸化空気量の調整は、酸化ファンの数及びこれらの組み合わせの形態又は酸化ファンの周波数を変えることによって実現され得る。
【0030】
本発明に記載の脱硫スラリー中のCa2+濃度及びpHによってスラリーの酸化状態をオンラインで制御する方法を具体的に実施する際には、スラリー中のCa2+濃度とpH値及び酸化空気過剰係数(α)-pH-SO 2-濃度モデルを利用し、脱硫スラリー中のSO 2-のリアルタイム濃度を決定し、この濃度からCaSO沈殿指数piを算出し、最後に、この指数によって酸化空気量を制御することによって、湿式脱硫スラリーの酸化状態をリアルタイムで制御し、それにより、石膏の品質が確保され、プロセスが簡単であり、監視結果が正確であり、実用性が非常に高い。なお、本開示の説明において、「第1」、「第2」などの用語は、単に説明の目的であって、相対的な重要性を示したり暗示したりするものとは理解してはならない。また、本開示の説明において、「複数」とは、特に断らない限り、2以上を意味する。
【0031】
フローチャート又は他の方式で記載されるプロセス又は方法の記述は、特定の論理機能又はプロセスのステップを実装するための1つ又は複数の実行可能命令を含むコードのモジュール、断片又は部分を表すと理解されてもよい。また、本開示の好ましい実施形態の範囲には、他の実装が含まれ、当業者が理解するべきものとして、関係する機能に応じて実質的に同時に又は逆の順序など、図示又は議論された順序以外で機能が実行されてもよい。
【0032】
本明細書の説明において、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」などの用語を参照する記述とは、その実施例又は例を参照して説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語の概略的な表現は、必ずしも同一の実施例又は例を意味するものではない。さらに、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性は、いずれか1つ又は複数の実施例又は例において適切な方法で組み合わせられてもよい。
【0033】
上記では、本開示について一般的な説明及び具体的な実施形態を用いて詳細に説明したが、本開示に基づいて、いくつかの修正又は改良を行うことができるのは当業者にとって明らかである。したがって、本開示の精神を逸脱することなく行われるこれらの変更又は改良は、いずれも本開示の請求範囲に属する。



図1
図2
図3
【国際調査報告】