(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】HERV由来エピトープを同定するための新規方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20250123BHJP
C07K 14/15 20060101ALI20250123BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20250123BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250123BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250123BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20250123BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250123BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250123BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250123BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250123BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20250123BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C07K14/15
C12N15/113 102Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K39/12
A61K48/00
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024565251
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2023051839
(87)【国際公開番号】W WO2023144231
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524279238
【氏名又は名称】イーアールブイイミューン
(71)【出願人】
【識別番号】521141383
【氏名又は名称】セントレ レオン-ベラード
(71)【出願人】
【識別番号】521141372
【氏名又は名称】ウニベルシテ クラウデ バーナード リオン 1
(71)【出願人】
【識別番号】516086358
【氏名又は名称】サントル ナショナル デ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】505347628
【氏名又は名称】インスティテュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ ルシェルシェ メディカル (インサーム)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】デピル,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アルカザー,ヴィンセント
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ79
4B063QR77
4B063QS25
4B063QS33
4B063QS34
4B063QS40
4B063QX02
4B063QX10
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA03
4C085AA06
4C085BA65
4C085BB11
4C085CC32
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045EA34
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、癌に関連するHERV由来T細胞エピトープを同定するための方法、および本方法により同定されたエピトープを含むかまたはそのエピトープからなるペプチド、本ペプチドをコードする発現ベクター、本ペプチドまたは本ベクターで治療される対象の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、および本ペプチドを認識するT細胞受容体を発現する改変されたT細胞に関する。本発明はまた、ペプチド、発現ベクター、CTL、または改変されたT細胞のワクチンもしくは医薬品としての使用、特に、それを必要とする対象における癌の予防または治療における使用のためのペプチド、発現ベクター、CTL、または改変されたT細胞の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの癌に関連するヒト内因性レトロウイルス(HERV)由来T細胞エピトープを同定するための方法であって、次のステップ:
(a)少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップ、および
(b)前のステップで同定された前記HERVの中でT細胞エピトープを選択するステップ、
を含み、かつ
次のステップ:
(i)前記ステップ(a)で同定された前記癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップであって、前記ステップ(a)と前記ステップ(b)の間である、選択するステップ、および/または
(ii)腫瘍サンプル中の前記ステップ(b)で同定された前記HERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップであって、前記ステップ(b)の後である、評価するステップ
の少なくとも1つ、好ましくは2つをさらに含み、
好ましくは前記ステップ(a)、(b)、(i)および(ii)が、in silicoのステップである、または前記ステップ(a)、(b)および(i)が、in silicoのステップでありかつ前記ステップ(ii)が、in vitroのステップである、
方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)が、腫瘍サンプル中のおよび正常サンプル中のHERV発現を比較するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)が、前のステップで同定された前記HERVの配列をHERVタンパク質と整列させるステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)が、MHCクラスI分子への、HERVタンパク質と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のまたはそれを超える同一性を共有する配列の結合を予測するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(i)における前記癌関連HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性が、各HERVと少なくとも1つのCD4またはCD8T細胞シグネチャの関連性、各HERVとインターフェロン(IFN)-γシグネチャまたは細胞溶解活性のいずれかである機能シグネチャの関連性、および正常な精製されたT細胞またはNK細胞中の各HERVの発現の不在により評価され、好ましくは前記関連性が、機械学習ベースのアプローチにより評価される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)の後でまたは前記ステップ(ii)の前に、前記ステップ(a)で同定された前記癌関連HERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(b)の後でまたは前記ステップ(ii)の後で、前記HERV由来のT細胞エピトープをヒトプロテオームと整列させるステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法により同定されたエピトープを含むまたはそのエピトープからなるペプチド。
【請求項9】
RMLTDLRAV(配列番号3)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、MLLAALMIV(配列番号15)およびYIDDILCAA(配列番号16)を含むまたはこれらからなる群において選択される配列を有するエピトープを含むまたはそのエピトープからなるペプチド。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の1つ以上のペプチド(複数可)の発現を誘導する発現ベクター。
【請求項11】
請求項8もしくは請求項9に記載の1つ以上のペプチド(複数可)、または請求項10に記載の1つ以上の発現ベクター(複数可)で治療される対象の細胞傷害性Tリンパ球。
【請求項12】
請求項8または請求項9に記載のペプチドを認識するT細胞受容体を発現する改変されたT細胞。
【請求項13】
ワクチンまたは医薬品としての使用のための請求項8または請求項9に記載の1つ以上のペプチド(複数可)、請求項10に記載の1つ以上の発現ベクター(複数可)、請求項11に記載の1つ以上の細胞傷害性Tリンパ球(複数可)、または請求項12に記載の1つ以上の改変されたT細胞(複数可)。
【請求項14】
それを必要とする対象において癌を予防するまたは治療することにおける使用のための請求項8または請求項9に記載の1つ以上のペプチド(複数可)、請求項10に記載の1つ以上の発現ベクター(複数可)、請求項11に記載の1つ以上の細胞傷害性Tリンパ球(複数可)、または請求項12に記載の1つ以上の改変されたT細胞(複数可)。
【請求項15】
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌を含む乳癌、卵巣癌、黒色腫、肉腫、奇形癌、膀胱癌、非小細胞肺癌および小細胞肺癌を含む肺癌、頭頸部癌、大腸癌、神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、ならびに他の固形腫瘍および血液悪性腫瘍を含むまたはそれらからなる群から選択される、請求項14に記載の使用のための前記1つ以上のペプチド(複数可)、前記1つ以上の発現ベクター(複数可)、前記1つ以上の細胞傷害性Tリンパ球(複数可)または前記1つ以上の改変されたT細胞(複数可)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌に関連するHERV由来T細胞エピトープを同定するための方法、および本方法により同定されたエピトープを含むかまたはそのエピトープからなるペプチド、本ペプチドをコードする発現ベクター、本ペプチドまたは本ベクターで治療される対象の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、および本ペプチドを認識するT細胞受容体を発現する改変されたT細胞に関する。本発明はまた、ワクチンまたは医薬品としての上記ペプチド、発現ベクター、CTL、または改変されたT細胞の使用、特に、それを必要とする対象における癌の予防または治療のための上記ペプチド、発現ベクター、CTL、または改変されたT細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌における適応型T細胞免疫応答は、腫瘍細胞により特異的に発現される腫瘍エピトープの認識に依存する。腫瘍ゲノムに特異的な非同義変異により生成されるネオ抗原の役割は、過去10年間に広範に研究されており、個別化された癌ワクチン中のネオ抗原の組み合わせを試験する多くの臨床試験が開始され、有望な予備的結果が得られている。しかし、各患者にとって最適なネオエピトープの組み合わせを決定することは、依然として困難である。さらに、多くの腫瘍は、腫瘍変異負荷が低いか中程度であることを特徴とする。したがって、スプライスバリアント、融合タンパク質、または内因性レトロエレメントに由来し、おそらく異なる癌サブタイプ間で共有されるものなどの、腫瘍抗原の他のファミリーを明らかにすることは、固形腫瘍の容易に利用できる治療法の開発にとって極めて重要である。
【0003】
ヒト内因性レトロウイルス(HERV)は、ヒトゲノムの8%に相当する。ほとんどのHERV遺伝子は、DNA組換え、突然変異、および欠失により非機能的であるが、いくつかは、群特異的抗原(Gag)、逆転写酵素によるポリメラーゼ(Pol)、およびエンベロープ(Env)表面ユニットを含む機能性タンパク質を生成する。ほとんどのHERVは、正常細胞中のエピジェネティック機構によりサイレンシングを受ける。しかし、HERVは、挿入変異誘発、染色体異常、またはLTR誘発性癌遺伝子活性化におけるそれらの関与により、発癌の病原体である可能性があると報告された。したがって、HERVは、共通の腫瘍抗原の興味深い供給源であり得る。
【0004】
先行技術の中で、国際公開第2020/049169号は、HERVに由来しかつ特定のCD8+T細胞応答を誘発できるエピトープの同定を可能にする方法を記載する。しかし、この特許出願で開発された方法は、1つの癌種、すなわち限られた数のHERVを有する、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)に適用された。したがって、CD8+T細胞応答を誘導するのに効率的でありかつ複数の癌サブタイプ間で共通のHERV由来の抗原を同定できる、新しいアプローチを開発する必要性が残っている。
【0005】
本出願において、発明者らは、このニーズに対応する新しいアプローチを開発した。特に、本発明者らは、多数のHERV候補の中で、効率的であり複数の癌サブタイプにより共有される、限られた数のエピトープを決定できる選択ステップに依存する方法を開発した。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、少なくとも1つの癌に関連するヒト内因性レトロウイルス(HERV)由来T細胞エピトープを同定するための方法に関し、本方法は、次の:
(a).少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b).前のステップで同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップ
を含み、かつ
本方法はさらに、次の:
(i).ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップであって、ステップ(a)とステップ(b)の間である、選択するステップ、および/または
(ii).腫瘍サンプル中のステップ(b)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップであって、ステップ(b)の後に行われる、評価するステップ
の少なくとも1つ、好ましくは2つを含む。
【0007】
一実施形態では、ステップ(a)および(b)ならびにステップ(i)および/または(ii)は、in silicoのステップである。一実施形態では、ステップ(ii)は、in vitroのステップである。
【0008】
本発明は、癌に関連するヒト内因性レトロウイルス(HERV)由来T細胞エピトープを同定するためのin silicoの方法に関し、本方法は、次の:
(a)癌に関連するHERVを同定し選択するステップと、
(b)前のステップで同定されたHERV間で共通のT細胞エピトープを選択するステップ
を含み、かつ
本方法はさらに、次の:
(i).ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップであって、ステップ(a)とステップ(b)の間である、選択するステップ、および/または
(ii).腫瘍サンプル中のステップ(b)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップであって、ステップ(b)の後に行われる、評価するステップ
の少なくとも1つ、好ましくは2つを含む。
【0009】
本発明は、癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するヒト内因性レトロウイルス(HERV)由来T細胞エピトープを同定するためのin silicoの方法に関し、本方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)前のステップで同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップ、
を含み、かつ
本方法はさらに、次の:
(i).ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップであって、ステップ(a)とステップ(b)の間である、選択するステップ、および/または
(ii).腫瘍サンプル中のステップ(b)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップであって、ステップ(b)の後に行われる、評価するステップ
の少なくとも1つ、好ましくは2つを含む。
【0010】
一実施形態では、ステップ(a)は、腫瘍および正常サンプル中のHERV発現を比較するステップを含む。
【0011】
一実施形態では、ステップ(b)は、前のステップで同定されたHERVの配列をHERVタンパク質と整列させるステップを含む。
【0012】
一実施形態では、ステップ(b)は、MHCクラスI分子へのHERVタンパク質と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを超える同一性を共有する配列の結合を予測するステップをさらに含む。
【0013】
一実施形態では、ステップ(i)における癌関連HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、各HERVと少なくとも1つのCD4またはCD8T細胞シグネチャの関連性、各HERVとインターフェロン(IFN)-γシグネチャまたは細胞溶解活性のいずれかである機能シグネチャの関連性、および正常な精製T細胞またはNK細胞中の各HERVの発現の不在により評価され、好ましくはこの関連性は、機械学習ベースのアプローチにより評価される。
【0014】
一実施形態では、本方法は、ステップ(b)の後でまたはステップ(ii)の前に、ステップ(a)で同定された癌関連HERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップをさらに含む。
【0015】
一実施形態では、本方法は、ステップ(b)の後またはステップ(ii)の後で、HERV由来のT細胞エピトープをヒトプロテオームと整列させるステップをさらに含む。
【0016】
本発明はまた、前述の方法により同定されたエピトープを含むかまたはそのエピトープからなるペプチドに関する。
【0017】
本発明はまた、RMLTDLRAV(配列番号3)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、ALMIVSMVV(配列番号14)、MLLAALMIV(配列番号15)およびYIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはこれらからなる群において選択される配列を有するエピトープを含むかまたはそのエピトープからなるペプチドに関する。本発明はまた、RMLTDLRAV(配列番号3)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、ALMIVSMVV(配列番号14)、MLLAALMIV(配列番号15)およびYIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはこれらからなる群において選択される配列を含むかまたはその配列からなるペプチドに関する。
【0018】
本発明はまた、RMLTDLRAV(配列番号3)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、MLLAALMIV(配列番号15)およびYIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはこれらからなる群において選択される配列を有するエピトープを含むかまたはそのエピトープからなるペプチドに関する。本発明はまた、RMLTDLRAV(配列番号3)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、MLLAALMIV(配列番号15)およびYIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはこれらからなる群において選択される配列を含むかまたはその配列からなるペプチドに関する。
【0019】
本発明はまた、上記のような1つ以上のペプチド(複数可)の発現を誘導する発現ベクターに関する。
【0020】
本発明はまた、上述の1つ以上のペプチド(複数可)、または1つ以上の発現ベクター(複数可)で治療される対象の細胞傷害性Tリンパ球に関する。
【0021】
本発明はまた、上記のようなペプチドを認識するT細胞受容体を発現する改変されたT細胞に関する。
【0022】
本発明はまた、ワクチンまたは医薬品としての使用のための、上述の1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上の細胞傷害性Tリンパ球(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)に関する。
【0023】
本発明はまた、それを必要とする対象において癌を予防するまたは治療することにおける使用のための、上述の1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上の細胞傷害性Tリンパ球(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)に関する。
【0024】
一実施形態では、上記の癌は、トリプルネガティブ乳癌を含む乳癌、卵巣癌、黒色腫、肉腫、奇形癌、膀胱癌、非小細胞肺癌および小細胞肺癌を含む肺癌、頭頸部癌、大腸癌、神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、ならびに他の固形腫瘍および血液悪性腫瘍を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0025】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する:
【0026】
「エピトープ」は、免疫応答を刺激できる、抗原の部分を指す。
【0027】
「ヒト内因性レトロウイルス(HERV)」:感染能力を失ったが転座能力を保持した、生殖細胞系列に組み込まれたレトロウイルスを指す。
【0028】
「ペプチド」は、ペプチド結合により互いに連結された少なくとも2つのアミノ酸のアミノ酸の線状ポリマーを指す。ペプチド中のアミノ酸残基は、次のように略記される:フェニルアラニンは、PheまたはF、ロイシンは、LeuまたはL、イソロイシンは、IleまたはI、メチオニンは、MetまたはM、バリンは、ValまたはV、セリンは、SerまたはS、プロリンは、ProまたはP、スレオニンは、ThrまたはT、アラニンは、AlaまたはA、チロシンは、TyrまたはY、ヒスチジンは、HisまたはH、グルタミンは、GlnまたはQ、アスパラギンは、AsnまたはN、リジンは、LysまたはK、アスパラギン酸は、AspまたはD、グルタミン酸は、GIuまたはE、システインは、CysまたはC、トリプトファンは、TrpまたはW、アルギニンは、ArgまたはR、グリシンは、GlyまたはGである。
【0029】
「予防する」、「予防すること」および「予防」は、予防的手段および防止的手段を指し、その目的は、対象が所与の期間にわたり病的状態または障害を発症する可能性を低下させることである。そのような低下は、例えば、対象における病的状態または障害の少なくとも1つの症状の発症の遅延に反映され得る。
【0030】
「防御免疫応答」は、感染性因子または腫瘍抗原に由来する抗原に対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)および/またはヘルパーTリンパ球(HTL)の応答を指し、これは、疾患の症状もしくは進行を予防するか、または少なくとも部分的に阻止する。免疫応答はまた、ヘルパーT細胞の刺激により促進された抗体応答も含み得る。
【0031】
「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち、温血動物、より好ましくはヒトであり得、対象は、医療を受けるのを待機している、もしくは医療を受けているか、または医療処置の目的物であった、もしくは目的物である、目的物となるであろう、または疾患の発症について監視される。ここでの用語「哺乳動物」は、ヒト、家畜、および動物園の、競技の、またはペットの動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む任意の哺乳動物を指す。好ましくは、哺乳動物は、霊長類であり、より好ましくはヒトである。
【0032】
「治療的有効量」は、標的への顕著な負のまたは有害な副作用を引き起こすことなく、(1)疾患、障害または状態の発症を遅延させるまたは防止する;(2)疾患、障害、または状態の1つ以上の症状の進行、増悪、または悪化を遅らせる、または停止させる;(3)疾患、障害、または状態の症状の改善をもたらす;(4)疾患、障害、もしくは状態の重症度もしくは発生率を低下させる;または(5)疾患、障害、もしくは状態を治癒する;ことを目的とした、本明細書に記載の1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)のレベルまたは量を指す。治療的有効量は、予防的または防止的作用のために、疾患、障害または状態の発症の前に投与され得る。あるいはまたはさらに、治療的有効量は、治療作用のために、疾患、障害または状態の開始後に投与され得る。
【0033】
「治療すること」または「処置」または「緩和」は、治療的処置を指し、その目的は、標的とされる病状または障害を遅らせる(軽減する)ことである。対象または哺乳動物は、本発明による1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上の細胞傷害性Tリンパ球(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)の治療量を受けた後、患者が、次の:癌細胞の数(または腫瘍サイズ)の減少;癌性である全細胞の割合の減少;ならびに/または特定の疾患もしくは状態に関連する症状、の1つ以上のある程度の緩和;罹患率および死亡率の低下、ならびに生活の質の問題の改善、の1つ以上の観察可能なおよび/または測定可能な減少またはこれらの1つ以上の不在を示す場合、癌について良好に「治療される」。良好な治療および疾患における改善を評価するための上記のパラメータは、医師が精通しているルーチン手順により容易に測定可能である。
【0034】
「ワクチン」は、患者に投与されると、体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を誘導し得、かつこの免疫応答が防御的である、化合物を指す。
【0035】
「ベクター」または「発現ベクター」は、宿主を形質転換し導入された配列の発現(例えば、転写および翻訳)を促進するために、それによりDNAまたはRNA配列(例えば、外来遺伝子)が宿主細胞に導入され得る、ビヒクルを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連する、ヒト内因性レトロウイルス(HERV)由来のT細胞エピトープを同定するための方法に関する。
【0037】
一実施形態では、方法のすべてのステップは、in silicoで実施され、本発明の方法は、in silicoの方法である。
【0038】
本発明の方法は特に、腫瘍細胞により特異的に過剰発現され、かつ多数のHERV候補の中で免疫原性が最も高いと思われる、限られた数のHERV由来T細胞エピトープを選択することを可能にする。
【0039】
一実施形態では、この方法は、共有されるエピトープ、すなわち、同じ癌を有する複数の患者において共有されるエピトープ、および/または異なる癌タイプ間で共有されるエピトープ、および/または癌関連HERV間で共有されるエピトープを選択することを可能にする。一実施形態では、本発明の方法により同定されたエピトープ(複数可)は、同じ癌を有する複数の患者により共有される。一実施形態では、本発明の方法により同定されたエピトープ(複数可)は、異なる癌種間で共有される。一実施形態では、本発明の方法により同定されたエピトープ(複数可)は、癌関連HERV間で共有される。
【0040】
一実施形態では、本方法は、以下に記載される少なくとも2、3、4、5個の、またはそれより多いステップを含む。
【0041】
一実施形態では、上述の方法は、腫瘍サンプルおよび正常サンプル中のHERVを同定するステップを含む。HERVは、HERVデータベースにより同定され得る。
【0042】
サンプル中のHERVを同定するための方法は、当業者には周知であり、これらに限定されないが、リファレンスツール、例えばHervquant(C.C.Smith,et al.,Endogenous retroviral signatures predict immunotherapy response in clear cell renal cell carcinoma.Journal of Clinical Investigation.128,4804-4820(2018))またはTelescope(Bendall et al.,Telescope:Characterization of the retrotranscriptome by accurate estimation of transposable element expression,PLoS Comput Biol.2019 Sep 30;15(9):e1006453)の使用を含む。
【0043】
さらに、HERVデータベースは、文献に記載されており、例えば、L.Vargiu et al.,「Classification and characterization of human endogenous retroviruses;mosaic forms are common.Retrovirology.13,7(2016)を参照されたい。HERVデータベースは、Genbankデータベースから取得され得る。
【0044】
一実施形態では、正常サンプルは、癌に罹患していない対象から得られたサンプル、または癌に罹患している対象からの腫瘍周囲の部位において得られたサンプルを指す。
【0045】
一実施形態では、腫瘍サンプルは、癌に罹患した対象における腫瘍組織からのサンプルを指す。
【0046】
一実施形態では、上述の方法は、癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを選択するステップを含む。このステップは特に、腫瘍中と正常サンプル中で差別的に発現されるHERVの選択を可能にする。
【0047】
一実施形態では、癌に関連するHERVの選択は、腫瘍中および正常サンプル中のHERV発現を比較するステップを含む。この比較は、RNAレベルで行われてよく、RNA配列の発現が、腫瘍サンプルと正常サンプルの間で各HERVについて比較されることを意味する。
【0048】
RNA配列は、RNAシーケンシングデータベースから、および/または新鮮な組織からの抽出により得られ得る。
【0049】
一実施形態では、HERVは、HERVが正常サンプル中よりも腫瘍サンプル中で2倍超、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、またはそれより多く発現される場合、癌と関連しており、好ましくは少なくとも1つの癌と関連している。一実施形態では、HERVは、HERVが正常サンプル中よりも腫瘍サンプル中で2倍を超えて発現され、かつその一致する腫瘍中と比較してあらゆる正常組織中で2倍を超えず発現される場合、癌と関連しており、好ましくは少なくとも1つの癌と関連している。
【0050】
一実施形態では、上記の方法は、細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップを含む。このステップは特に、免疫応答を誘導できるHERVの選択を可能にする。
【0051】
一実施形態では、HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、表現型基準により評価される。一実施形態では、HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、各HERVと少なくとも1つのCD4またはCD8T細胞シグネチャの関連により評価される。
【0052】
一実施形態では、HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、各HERVと、CD4またはCD8T細胞表現型の少なくとも1つと関連するトランスクリプトームシグネチャの関連を決定することにより評価される。一実施形態では、このステップは、腫瘍サンプル中にCD4またはCD8T細胞表現型を有する細胞が存在することを示唆する転写産物に関連するHERVを選択することを可能にする。。
【0053】
CD4またはCD8 T細胞の表現型を割り当てる方法の例は、当業者に周知であり、例えば、Xcell法(D.Aran et al.,xCell:digitally portraying the tissue cellular heterogeneity landscape.Genome Biol.18,220(2017))、およびMCPカウンターを含む。
【0054】
ここで使用されるように、Xcellは、64種類の免疫細胞型および間質細胞型の遺伝子発現データから細胞型のエンリッチメント分析を行う遺伝子シグネチャベースの方法である。xCellシグネチャは、広範なin-silicoシミュレーションおよびサイトメトリー免疫表現型解析を使用して検証された。xCellの開発用の細胞型スコアおよびRスクリプトを生成するためのxCell Rパッケージは、https://github.com/dviraran/xCellで入手可能であり、Zenodoに寄託される(割り当てられたDOI http://doi.org/10.5281/zenodo.1004662)。
【0055】
一実施形態では、CD4またはCD8T細胞表現型を割り当てるためのシグネチャは、Xcellのシグネチャに基づく。
【0056】
一実施形態では、CD4 T細胞表現型、特にCD4メモリーT細胞表現型を割り当てるためのシグネチャは、以下の遺伝子を含むかまたは以下の遺伝子からなる:CD6、CD28、GPR183、EIF3E、ITK、PKP4、PREPL、DNAJA2、PTGES3、CD2APおよびICOS。
【0057】
一実施形態では、CD4 T細胞表現型、特にCD4ナイーブT細胞表現型を割り当てるためのシグネチャは、以下の遺伝子を含むかまたは以下の遺伝子からなる:CD27、CLC、CTSW、DNAJB1、RBL2、HAUS3、ANKRD55、ZNF394およびCHMP7。
【0058】
一実施形態では、CD4 T細胞表現型を割り当てるためのシグネチャは、以下の遺伝子を含むかまたは以下の遺伝子からなる:APBB1、CD28、CTLA4、ITK、PLCL1、SNPH、PPWD1、PHF3、ICOS、TRAT1、RAPGEF6、NOL9およびCHMP7。
【0059】
一実施形態では、CD4 T細胞表現型、特にCD4セントラルメモリーT細胞表現型(CD4 Tcm)を割り当てるためのシグネチャは、以下の遺伝子を含むかまたは以下の遺伝子からなる:CCR4、CCR8、CTLA4、DAB1、ERN1、GPR15、DNAJB1、KRT1、POU6F1、TPO、TRADD、DLEC1、ICOS、TRAT1、FXYD7、FBXL8、SIRPG、ANKRD55およびOBSCN。
【0060】
一実施形態では、CD4 T細胞表現型、特にCD4エフェクターメモリーT細胞表現型(CD4 Tem)を割り当てるためのシグネチャは、以下の遺伝子を含むかまたは以下の遺伝子からなる:RPN2、SLAMF1、SPTAN1、TRADD、MYO16、MCF2L2、ESYT1、TRAPPC2L、ARHGAP15およびRIC8A。
【0061】
一実施形態では、CD8T細胞表現型、特にCD8ナイーブT細胞表現型を割り当てるためのシグネチャは、以下の遺伝子を含むかまたは以下の遺伝子からなる:CD8A、CD8B、EEF1D、GPR15、MYL1、NDUFA4、NDUFS5、PSG11、SKI、SON、HIST1H3A、BUD31、GPR52、ZNHIT3、CGRRF1、RRP8、NGDN、C19orf53、SETD2、MED31、SS18L2、CDK5RAP1、DDX24、PCIF1、MS4A5、HAUS3、LIN28AおよびTNKS2。
【0062】
一実施形態では、CD8 T細胞表現型を割り当てるためのシグネチャは、以下の遺伝子を含むかまたは以下の遺伝子からなる:CASP8、CD8A、CD8B、GZMK、PTGDR、SLC1A7、TSPAN32、KLRG1、NPRL2、GIMAP4、CRTAMおよびZNF611。
【0063】
一実施形態では、CD8T細胞表現型、特にCD8セントラルメモリーT細胞表現型(CD8 Tcm)を割り当てるためのシグネチャは、以下の遺伝子を含むかまたは以下の遺伝子からなる:CASP8、CD27、TNFSF8、GZMK、NCK1、GPR171、CRTAM、PARP11およびTMEM30B。
【0064】
一実施形態では、CD8 T細胞表現型、特にCD8エフェクターメモリーT細胞表現型(CD8 Tem)を割り当てるためのシグネチャは、以下の遺伝子を含むかまたは以下の遺伝子からなる:DHX8、GZMH、GZMK、LAG3、ZAP70、COLQ、RGS9、CXCR6、PVRIGおよびPYHIN1。
【0065】
一実施形態では、CD4またはCD8T細胞表現型を割り当てるためのシグネチャは、MCPカウンターのシグネチャに基づく。
【0066】
一実施形態では、CD4またはCD8 T細胞表現型を割り当てるためのシグネチャは、以下の遺伝子を含むかまたは以下の遺伝子からなる:CD28、CD3D、CD3G、CD5、CD6、CHRM3-AS2、CTLA4、FLT3LG、ICOS、MAL、MGC40069、PBX4、SIRPG、THEMIS、TNFRSF25、TRAT1、CD8B、CD8A、EOMES、FGFBP2、GNLY、KLRC3、KLRC4、KLRD1、BANK1、CD19、CD22、CD79A、CR2、FCRL2、IGKC、MS4A1、PAX5、CD160、KIR2DL1、KIR2DL3、KIR2DL4、KIR3DL1、KIR3DS1、NCR1、PTGDR、SH2D1B、ADAP2、CSF1R、FPR3、KYNU、PLA2G7、RASSF4、TFEC、CD1A、CD1B、CD1E、CLEC10A、CLIC2、WFDC21P、CA4、CEACAM3、CXCR1、CXCR2、CYP4F3、FCGR3B、HAL、KCNJ15、MEGF9、SLC25A37、STEAP4、TECPR2、TLE3、TNFRSF10C、VNN3、ACVRL1、APLN、BCL6B、BMP6、BMX、CDH5、CLEC14A、CXorf36、EDN1、ELTD1、EMCN、ESAM、ESM1、FAM124B、HECW2、HHIP、KDR、MMRN1、MMRN2、MYCT1、PALMD、PEAR1、PGF、PLXNA2、PTPRB、ROBO4、SDPR、SHANK3、SHE、TEK、TIE1、VEPH1、VWF、COL1A1、COL3A1、COL6A1、COL6A2、DCN、GREM1、PAMR1およびTAGLN。
【0067】
一実施形態では、HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、各HERVと機能シグネチャの関連性を決定することにより評価される。一実施形態では、機能シグネチャは、インターフェロン(IFN)-γシグネチャまたは細胞溶解活性である。
【0068】
一実施形態では、IFN-γシグネチャは、IFN-γに応答してアップレギュレートされる遺伝子に基づく。一実施形態では、HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、各HERVとIFN-γ応答に関連するトランスクリプトームシグネチャの関連を決定することにより評価される。
【0069】
一実施形態では、IFN-γシグネチャは、データベースに基づき決定される。例えば、IFN-γシグネチャデータベースは、分子シグネチャデータベースを介して利用され得る。
【0070】
一実施形態では、IFN-γシグネチャは、以下の遺伝子の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、40、60、80、100、120、140、160、180、もしくは200個、またはすべてを含む:ADAR、APOL6、ARID5B、ARL4A、AUTS2、B2M、BANK1、BATF2、BPGM、BST2、BTG1、C1R、C1S、CASP1、CASP3、CASP4、CASP7、CASP8、CCL2、CCL5、CCL7、CD274、CD38、CD40、CD69、CD74、CD86、CDKN1A、CFB、CFH、CIITA、CMKLR1、CMPK2、CSF2RB、CXCL10、CXCL11、CXCL9、DDX58、DDX60、DHX58、EIF2AK2、EIF4E3、EPSTI1、FAS、FCGR1A、FGL2、FPR1、FTSJD2、GBP4、GBP6、GCH1、GPR18、GZMA、HERC6、HIF1A、HLA-A、HLA-B、HLA-DMA、HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-G、ICAM1、IDO1、IFI27、IFI30、IFI35、IFI44、IFI44L、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM2、IFITM3、IFNAR2、IL10RA、IL15、IL15RA、IL18BP、IL2RB、IL4R、IL6、IL7、IRF1、IRF2、IRF4、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、ISG15、ISG20、ISOC1、ITGB7、JAK2、KLRK1、LAP3、LATS2、LCP2、LGALS3BP、LY6E、LYSMD2、1-Mar、METTL7B、MT2A、MTHFD2、MVP、MX1、MX2、MYD88、NAMPT、NCOA3、NFKB1、NFKBIA、NLRC5、NMI、NOD1、NUP93、OAS2、OAS3、OASL、OGFR、P2RY14、PARP12、PARP14、PDE4B、PELI1、PFKP、PIM1、PLA2G4A、PLSCR1、PML、PNP、PNPT1、PRIC285、PSMA2、PSMA3、PSMB10、PSMB2、PSMB8、PSMB9、PSME1、PSME2、PTGS2、PTPN1、PTPN2、PTPN6、RAPGEF6、RBCK1、RIPK1、RIPK2、RNF213、RNF31、RSAD2、RTP4、SAMD9L、SAMHD1、SECTM1、SELP、SERPING1、SLAMF7、SLC25A28、SOCS1、SOCS3、SOD2、SP110、SPPL2A、SRI、SSPN、ST3GAL5、ST8SIA4、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、TAP1、TAPBP、TDRD7、TNFAIP2、TNFAIP3、TNFAIP6、TNFSF10、TOR1B、TRAFD1、TRIM14、TRIM21、TRIM25、TRIM26、TXNIP、UBE2L6、UPP1、USP18、VAMP5、VAMP8、VCAM1、WARS、XAF1、XCL1、ZBP1およびZNFX1。
【0071】
一実施形態では、IFN-γシグネチャは、上述のすべての遺伝子を含む。一実施形態では、IFN-γシグネチャは、HALLMARK_INTERFERON_GAMMA_RESPONSE(https://www.gsea msigdb.org/gsea/msigdb/cards/HALLMARK_INTERFERON_GAMMA_RESPONSE.html)である。
【0072】
一実施形態では、IFN-γシグネチャは、癌種ごとの各サンプルについてIFN-γシグネチャデータベースに基づきエンリッチメントスコアを計算することにより算出される。
【0073】
一実施形態では、細胞溶解活性は、グランザイムA(GZMA)およびパーフォリン(PRF1)の発現レベルを評価することにより算出される。一実施形態では、細胞溶解活性は、グランザイムA(GZMA)およびパーフォリン(PRF1)レベルの発現の幾何平均を計算することにより算出される。
【0074】
一実施形態では、グランザイムA(GZMA)およびパーフォリン(PRF1)の発現レベルは、トランスクリプトームレベルで算出される。一実施形態では、グランザイムA(GZMA)およびパーフォリン(PRF1)の発現レベルは、RNA-seqにより算出される。
【0075】
ここで使用されるように、RNA-Seq(RNAシーケンシングの略称)は、次世代シーケンシング(NGS)を使用して特定の時期での生物学的サンプル中の特異的なRNAの存在および量を明らかにするシーケンシング技術である。
【0076】
RNA-seqデータは、NCBI Gene Expression Omnibus(GEO)ポータルのデータベースなどのデータベースにおいて見出され得る。
【0077】
一実施形態では、グランザイムA(GZMA)およびパーフォリン(PRF1)の発現レベルは、プロテオームレベルで算出される。
【0078】
一実施形態では、HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、正常な精製されたT細胞またはNK細胞中のHERVの発現の不在により評価される。このステップはさらに、腫瘍性細胞中で発現され、T細胞またはNK細胞中で発現されないHERVを選択することを可能にする。
【0079】
T細胞またはNK細胞中で発現されるHERVの例は、当業者に公知であり、これらに限定されないが、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40および配列番号41を含む。
【0080】
一実施形態では、HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、上に記載した1つ、2つ、または3つのパラメータ(複数可)の算出により評価される。
【0081】
一実施形態では、HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、(i)各HERVと少なくとも1つのCD4またはCD8T細胞シグネチャの関連性、(ii)各HERVとIFN-γシグネチャまたは細胞溶解活性のいずれかである機能シグネチャの関連性、および/または(iii)正常な精製されたT細胞またはNK細胞中の各HERVの発現の不在により評価される。
【0082】
一実施形態では、HERVと上に記載の1つ、2つ、または3つのパラメータ(複数可)の関連性は、機械学習ベースのアプローチにより評価される。一実施形態では、機械学習ベースのアプローチを使用して、各癌種に対し独立して関連性を試験する。ここで使用されるように、機械学習は、アルゴリズムがトレーニングデータに基づきモデルを構築する、人工知能を指す。
【0083】
一実施形態では、HERVと上述のパラメータの1つの関連性は、回帰、好ましくはL1ペナルティ回帰(LASSO)により算出される。特に、あるモデルが、各癌種に対し構築でき、そのモデルにおいて正の係数を有する各HERVは、パラメータとすると見なされる。
【0084】
一実施形態では、上記の方法は、T細胞エピトープを選択するステップ、特に共有T細胞エピトープを選択するステップを含む。
【0085】
このステップは特に、i)既知のHERVタンパク質と共通の領域を有し、それにより非翻訳配列を選択するリスクを低下させる、かつi)MHCクラスI分子に対する強力な結合剤であり、MHCクラスI分子によるそれらの提示を可能にする、エピトープの選択を可能にする。このステップはさらに、iii)癌に関連するHERVなどの、HERVにおいて最も共有される、エピトープの選択を可能にし得る。
【0086】
一実施形態では、この方法は、T細胞エピトープを選択するステップを含む。一実施形態では、T細胞エピトープを選択するステップは、推定のエピトープを決定するステップを含む。
【0087】
一実施形態では、T細胞エピトープを選択するステップは、1、2、3、4、5、または6個の可能なフレームへとHERV配列を翻訳し少なくとも10、11、12、13、14、15個の、またはそれより多いアミノ酸のオープンリーディングフレーム(ORF)を同定して推定のエピトープを得るステップを含む。
【0088】
一実施形態では、T細胞エピトープを選択するステップは、推定のエピトープとMHCクラスI分子の結合を予測するステップを含む。
【0089】
配列とMHC分子の結合を予測するための分析ツールは、当業者によく知られており、例えば、MHCflurry(T.J.O’Donnell et al.,MHCflurry:Open-Source Class I MHC Binding Affinity Prediction.Cell Systems.7,129-132.e4(2018))またはNetMCH I&IIを含む。
【0090】
一実施形態では、上記MCHクラスI分子は、HLA分子である。一実施形態では、MCHクラスI分子は、HLA-A分子、HLA-B分子、およびHLA-C分子を含むかまたはそれらからなる群から選択される。一実施形態では、MCHクラスI分子は、HLA-A2分子などの、HLA-A分子である。
【0091】
一実施形態では、MHCクラスI分子と結合できると予測されるT細胞エピトープのみが、選択される。一実施形態では、そのエピトープは、その配列が上で定義したようにMCHクラスI分子の強力な結合剤として予測される場合、選択される。
【0092】
一実施形態では、T細胞エピトープを選択するステップは、非翻訳配列を選択するリスクを低下させるために、エピトープを既知のHERVタンパク質の配列と整列させることを含む。
【0093】
一実施形態では、HERVタンパク質は、エンベロープ(Env)タンパク質である。一実施形態では、HERVタンパク質は、群特異的抗原(Gag)タンパク質である。一実施形態では、HERVタンパク質は、ポリメラーゼ(Pol)である。一実施形態では、HERVタンパク質は、プロテアーゼ(Pro)である。一実施形態では、HERVタンパク質は、Recタンパク質である。一実施形態では、HERVタンパク質は、アクセサリータンパク質である。
【0094】
一実施形態では、HERVタンパク質は、HERV-K/HML-2タンパク質である。一実施形態では、HERVタンパク質は、HERV-K/HML-2Gagタンパク質である。一実施形態では、HERVタンパク質は、HERV-K/HML-2Polタンパク質である。
【0095】
HERVタンパク質の例としては、これらに限定されないが、HERV-K10Gagタンパク質(配列番号20)、HERV-K113Gagタンパク質(配列番号21)、HERV-K21Gagタンパク質(配列番号22)、HERV-K113Polタンパク質(配列番号23)、HERV-K9Polタンパク質(配列番号24)、HERV-K6Polタンパク質(配列番号25)、HERV-K113Envタンパク質(配列番号26)が挙げられる。
配列番号:20
MGQTKSKIKSKYASYLSFIKILLKRGGVKVSTKNLIKLFQIIEQFCPWFPEQGTSDLKDWKRIGKELKQAGRKGNIIPLTVWNDWAIIKAALEPFQTEEDSISVSDAPGSCLIDCNENTRKKSQKETESLHCEYVAEPVMAQSTQNVDYNQLQEVIYPETLKLEGKGPELMGPSESKPRGTSPLPAGQVLVRLQPQKQVKENKTQPQVAYQYWPLAELQYRPPPESQYGYPGMPPAPQGRAPYHQPPTRRLNPMAPPSRQGSELHEIIDKSRKEGDTEAWQFPVTLEPMPPGEGAQEGEPPTVEARYKSFSIKMLKDMKEGVKQYGPNSPYMRTLLDSIAYGHRLIPYDWEILAKSSLSPSQFLQFKTWWIDGVQEQVRRNRAANPPVNIDADQLLGIGQNWSTISQQALMQNEAIEQVRAICLRAWEKIQDPGSTCPSFNTVRQGSKEPYPDFVARLQDVAQKSIADEKAGKVIVELMAYENANPECQSAIKPLKGKVPAGSDVISEYVKACDGIGGAMHKAMLMAQAITGVVLGGQVRTFGGKCYNCGQIGHLKKNCPVLNKQNITIQATTTGREPPDLCPRCKKGKHWASQCRSKFDKNGQPLSGNEQRGQPQAPQQTGAFPIQPFVPQGFQGQQPPLSQVFQGISQLPQYNNCPSPQAAVQQ
配列番号:21
MGQTKSKIKSKYASYLSFIKILLKRGGVKVSTKNLIKLFQIIEQFCPWFPEQGTLDLKDWKRIGKELKQAGRKGNIIPLTVWNDWAIIKAALEPFQTEEDSVSVSDAPGSCIIDCNEKTRKKSQKETESLHCEYVAEPVMAQSTQNADYNQLQEVIYPETLKLEGKGPELMGPSESKPRGTSPLPAGQVPVTLQPQKQVKENKTQPPVAYQYWPPAELQYQPPPESQYGYPGMPPAPQGRAPYPQPPTRRLNPTAPPSRQGSELHEIIDKSRKEGDTEAWQFPVTLELMPPGEGAQEGEPPTVEARYKSFSIKMLKDMKEGVKQYGPNSPYMRTLLDSIAHGHRLIPYDWEILAKSSLSPSQFLQFKTWWIDGVQEQVRRNRAANPPVNIDADQLLGIGQNWSTISQQALMQNEAIEQVRAICLRAWEKIQDPGSTCPSFNTVRQGSKEPYPDFVARLQDVAQKSIADEKARKVIVELMAYENANPECQSAIKPLKGKVPAGSDVISEYVKACDGMGGAMHKAMLMAQAITGVVLGGQVRTFGGKCYNCGQIGHLKKNCPVLNKQNITIQATTTGREPPDLCPRCKKGKHWASQCRSKFDKNGQPLSGNEQRGQPQAPQQTGAFPIQPFVPQGFQGQQPPLSQVFQGISQLPQYNNCPPPQAAVQQ
配列番号:22
MGQTKSKIKSKYASYLSFIKILLKRGGVKVSTKNLIKLFQIIEQFCPWFPEQGTLDLKDWKRIGKELKQAGRKGNIIPLTVWNDWAIIKAALEPFQTEEDSISVSDAPGSCIIDCNENTRKKSQKETEGLHCEYAAEPVMAQSTQNVDYNQLQEVIYPETLKLEGKGPELVGPSESKPRGTSPLPAGQVPVTLQPQTQVKENKTQPPVAYQYWPPAELQYRPPPESQYGYPGMPPAPQGRAPYPQPPTRRLNPTAPPSRQGSELHEIIDKSKEGDTEAWQFPVMLEPMPPGEGAQEGEPPTVEARYKSFSIKMLKDMKEGVKQYGPNSPYMRTLLDSIAHGHRLIPYDWEILAKSSLLPSQFLQFKTWWIDGVQEQVQRNRAANPPVNIDADQLLGIGQNWSTISQQALMQNEAIEQVRAICLRAWEKIQDPGSTCPSFNTVRQSSKEPYPDFVARLQDVAQKSIADEKARKVIVELMAYENANPECQSAIKPLKGKVPAGSDVISEYVKACDGIGGAMHKAMLMAQAITGVVLGGQVRTFGGKCYNCGQIGHLKKNCPVLNKQNITIQATTTGREPPDLCPRCKKGKHWASQCRSKFDKNGQPLSGNEQRGQPQAPQQTGAFPIQPFVPQGFQGQQPPLSQVFQGISQLPQYNNCPPPQAAVQQ
配列番号:23
NKSRKRRNRVSFLGAATVEPPKPIPLTWKTEKPVWVNQWPLPKQKLEALHLLANEQLEKGHIEPSFSPWNSPVFVIQKKSGKWRMLTDLRAVNAVIQPMGPLQPGLPSPAMIPKDWPLIIIDLKDCFFTIPLAEQDCEKFAFTIPAINNKEPATRFQWKVLPQGMLNSPTICQTFVGRALQPVRDKFSDCYIIHYIDDILCAAETKDKLIDCYTFLQAEVANAGLAIASDKIQTSTPFHYLGMQIENRKIKPQKIEIRKDTLKTLNDFQKLLGDINWIRPTLGIPTYVMSNLFSILRGDSDLNSKRMLTPETTKEIKLVEEKIQSAQINRIDPLAPLRLLIFATAHSPIGIIIQNTDLVEWSFLPHSTVKTFTLYLDQIATLIGQTRLRIIKLCGNDPDKIVVPLTKEQVRQAFINSGAWQIGLANFVGIIDNHYPKTKIFQFLKLTTWILPKITRREPLENALTVFTDGSSNGKAAYTGLKERVIKTPYQSAQRAELVAVITVLQDFDQPINIISDSAYVVQATRDVETALIKYSMDDQLNQLFNLLQQTVRKRNFPFYITHIRAHTNLPGPLTKANEQADLLVSSALIKAQELHALTHVNAAGLKNKFDVTWKQAKDIVQHCTQCQVLHLPTQEAGVNPRGLCPNALWQMDVTHVPSFGRLSYVHVTVDTYSHFIWATCQTGESTSHVKKHLLSCFAVMGVPEKIKTDNGPGYCSKAFQKFLSQWKISHTTGIPYNSQGQAIVERTNRTLKTQLVKQKEGGDSKECTTPQMQLNLAPYTLNFLNIYRNQTTTSAEQHLTGKKNSPHEGKLIWWKDNKNKTWEIGKVITWGRGFACVSPGENQLPVWMPTRHLKFYNEPIGDAKKSTSAETETPQSSTVDSQDEQNGDVRRTDEVAIHQEGRAADLGTTKEADAVSYKISREHKGDTNPREYAACSLDDCINGGKSPYACRSSCS
配列番号:24
MGQTKSKIKSKYASYLSFIKILLKRGGVKVSTKNLIKLFQIIEQFCPWFPEQGTLDLKDWKRIGKELKQAGRKGNIIPLTVWNDWAIIKAALEPFQTEEDSISVSDAPGSGIIDCNEKTRKKSQKETESLHCEYVAEPVMAQSTQNVDYNQLQEVIYPETLKLEGKGPELVGPSESKPRGTSPLPAGQVPVTLQPQKQVKENKTQPPVAYQYWPPAELQYRPPPESQYGYPGMPPAPQGRAPYPQPPTRRLNPTAPPSRQGSELHEIIDKSRKEGDTEAWQFPVTLEPMPPGEGAQEGEPPTVEARYKSFSIKILKDMKEGVKQYGPNSPYMRTLLDSIAHGHRLIPYDWEILAKSSLSPSQFLQFKTWWIDGVQEQVRRNRAANPPVNIDADQLLGIGQNWSTISQQALMQNEAIEQVRAICLRAWEKIQDPGSTCPSFNTVRQGSKEPYPDFVARLQDVAQKSIADEKARKVIVELMAYENANPECQSAIKPLKGKVPAGSDVISEYVKACDGIGGAMHKAMLMAQAITGVVLGGQVRTFGGKCYNCGQIGHLKKNCPVLNKQNITIQATTTGREPPDLCPRCKKGKHWASQCRSKFDKNGQPLSGNEQRGQPQAPQQTGAFPIQPFVPQGFQGQQPPLSQVFQGISQLPQYNNCPPPQVAVQQVDLCTIQAVSLLPGEPPQKIPTGVYGPLPEGTVGLILGRSSLNLKGVQIHTSVVDSDYKGEIQLVISSSVPWSASPGDRIAQLLLLPYIKGGNSEIKRIGGLGSTDPTGKAAYWASQVSENRPVCKAIIQGKQFEGLVDTGADVSIIALNQWPKNWPKQKAVTGLVGIGTASEVYQSMEILHCLGPDNQESTVQPMITSIPLNLWGRDLLQQWGAEITMPAPLYSPTSQKIMTKRGYIPGKGLGKNEDGIKIPFEAKINQKREGIGYPFLGAATIEPPKPIPLTWKTEKPVWVNQWPLPKQKLEALHLLANEQLEKGHIEPSFSPWNSPVFVIQKKSGKWRMLTDLRAVNAVIQPMGPLQPGLPSPAMIPKDWPLIIIDLKDCFFTIPLAEQDCEKFAFTIPAINNKEPATRFQWKVLPQGMLNSPTICQTFVGRALQPVKVFRLLYYSLY
配列番号:25
NKSRKRRNRESLLGAATVEPPKPIPLTWKTEKPVWVNQWPLPKQKLEALHLLANEQLEKGHIEPSFSPWNSPVFVIQKKSGKWRMLTDLRAVNAVIQPMGPLQPGLPSPAMIPKDWPLIIIDLKDCFFTIPLAEQDCEKFAFTIPAINNKEPATRFQWKVLPQGMLNSPTICQTFVGRALQPVREKFSDCYIIHCIDDILCAAETKDKLIDCYTFLQAEVANAGLAIASDKIQTSTPFHYLGMQIENRKIKPQKIEIRKDTLKTLNDFQKLLGDINWIRPTLGIPTYAMSNLFSILRGDSDLNSKRMLTPEATKEIKLVEEKIQSAQINRIDPLAPLQLLIFATAHSPTGIIIQNTDLVEWSFLPHSTVKTFTLYLDQIATLIGQTRLRIIKLCGNDPDKIVVPLTKEQVRQAFINSGAWKIGLANFVGIIDNHYPKTKIFQFLKLTTWILPKITRREPLENALTVFTDGSSNGKAAYTGPKERVIKTPYQSAQRAELVAVITVLQDFDQPINIISDSAYVVQATRDVETALIKYSMDDQLNQLFNLLQQTVRKRNFPFYITHIRAHTNLPGPLTKANEQADLLVSSALIKAQELHALTHVNAAGLKNKFDVTWKQAKDIVQHCTQCQVLHLPTQEAGVNPRGLCPNALWQMDVTHVPSFGRLSYVHVTVDTYSHFIWATCQTGESTSHVKKHLLSCFAVMGVPEKIKTDNGPGYCSKAFQKFLSQWKISHTTGIPYNSQGQAIVERTNRTLKTQLVKQKEGGDSKECTTPQMQLNLALYTLNFLNIYRNQTTTSAEQHLTGKKNSPHEGKLIWWKDNKNKTWEIGKVITWGRGFACVSPGENQLPVWIPTRHLKFYNEPIRDAKKSTSAETETSQSSTVDSQDEQNGDVRRTDEVAIHQEGRAANLGTTKEADAVSYKISREHKGDTNPREYAACSLDDCINGGKSPYACRSSCS
配列番号:26
MNPSEMQRKAPPRRRRHRNRAPLTHKMNKMVTSEEQMKLPSTKKAEPPTWAQLKKLTQLATKYLENTKVTQTPESMLLAALMIVSMVVSLPMPAGAAAANYTYWAYVPFPPLIRAVTWMDNPIEIYVNDSVWVPGPTDDCCPAKPEEEGMMINISIGYRYPPICLGRAPGCLMPAVQNWLVEVPTVSPISRFTYHMVSGMSLRPRVNYLQDFSYQRSLKFRPKGKPCPKEIPKESKNTEVLVWEECVANSAVILQNNEFGTLIDWAPRGQFYHNCSGQTQSCPSAQVSPAVDSDLTESLDKHKHKKLQSFYPWEWGEKGISTARPKIISPVSGPEHPELWRLTVASHHIRIWSGNQTLETRDRKPFYTIDLNSSLTVPLQSCVKPPYMLVVGNIVIKPDSQTITCENCRLLTCIDSTFNWQHRILLVRAREGVWIPVSMDRPWEASPSVHILTEVLKGVLNRSKRFIFTLIAVIMGLIAVTATAAVAGVALHSSVQSVNFVNDWQNNSTRLWNSQSSIDQKLANQINDLRQTVIWMGDRLMSLEHRFQLQCDWNTSDFCITPQIYNESEHHWDMVRCHLQGREDNLTLDISKLKEQIFEASKAHLNLVPGTEAIAGVADGLANLNTVTWVKTIGSTTIINLILILVCLFCLLLVYRCTQQLRRDSDHRERAMMTMVVLSKRKGGNVGKSKRDQIVTVSV
【0096】
一実施形態では、エピトープは、その配列が上で定義される少なくとも1つのHERVタンパク質と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを超える同一性を共有する場合選択される。一実施形態では、配列は、上記配列が上で定義される少なくとも1つのHERVタンパク質と少なくとも90%の同一性を共有する場合選択される。
【0097】
一実施形態では、エピトープは、その配列が上で定義されるHERVタンパク質と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の、または、それを超える同一性を共有する場合、および/または上記エピトープが上で説明されるMHCクラスI分子と結合すると予測される場合選択される。
【0098】
一実施形態では、上述の方法は、上述のステップの1つで同定されたHERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップを含む。このステップは特に、癌に関連するHERVなどの、HERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択することを可能にする。
【0099】
このステップは、癌に関連するHERVなどの、前述のステップの1つで同定されたHERVにおいて最も共有されるエピトープの中で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の、またはそれより多いエピトープの選択をもたらし得る。
【0100】
一実施形態では、上述の方法は、腫瘍サンプル中のタンパク質またはペプチドレベルで上述のステップの1つにより同定されたエピトープの発現を評価するステップを含む。このステップは特に、選択されたエピトープが腫瘍サンプル中で翻訳されるまたは発現されることを確認することを可能にする。
【0101】
一実施形態では、タンパク質またはペプチドレベルでの上記エピトープの発現は、1つ以上のプロテオームデータベース(複数可)を使用することによりin silicoで算出される。
【0102】
プロテオームデータベースは、タンデム質量分析(MS/MS)データから得られ得る。ここで使用されるように、タンデム質量分析法(TANDEM MS)は、MS/MSとも呼ばれ、2つ以上の質量分析装置を使用する質量分析技術を指す。2つをタンデムにして、前駆体イオンは、第1の質量分析装置により質量選択され、衝突領域に収束され、ここでそれらは次いで生成イオンへと断片化され、それらは次いで第2の質量分析装置により特徴付けられる。
【0103】
データベースからのタンパク質またはペプチドの発現を評価するための分析ツールは、当業者には周知であり、例えば、pepquery(B.Wen et al.,PepQuery enables fast,accurate,and convenient proteomic validation of novel genomic alterations.Genome Res.29,485-493(2019))を含む。
【0104】
一実施形態において、タンパク質またはペプチドレベルでの上記エピトープの発現は、イムノペプチドミクス分析によりin vitroで算出される。イムノペプチドミクス分析は、腫瘍のHLA分子に関連するエピトープの存在を評価することを可能にする。
【0105】
一実施形態では、エピトープは、上記エピトープが腫瘍サンプルにおける翻訳の証拠、および/または腫瘍サンプルにおけるHLA分子の翻訳およびHLA分子との関連の証拠を示す場合が選択される。
【0106】
一実施形態では、上に記載される方法は、次の:
(a).癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b).前のステップで同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップ、
を含み、かつ
本方法はさらに、次の:
(i).ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップであって、ステップ(a)とステップ(b)の間である、選択するステップ、および/または
(ii).腫瘍サンプル中のステップ(b)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップであって、ステップ(b)の後である、評価するステップ
の少なくとも1つ、好ましくは2つを含む。
【0107】
一実施形態では、ステップ(a)および(b)ならびにステップ(i)および/または(ii)は、in silicoのステップである。一実施形態では、ステップ(ii)は、in vitroのステップである。
【0108】
一実施形態では、ステップ(a)は、癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定し選択するステップを含む。
【0109】
一実施形態では、ステップ(b)は、共通のT細胞エピトープを選択するステップを含む。
【0110】
一実施形態では、上に記載される方法は、次の:
(a).癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b).前のステップで同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップ、
を含み、かつ
本方法はさらに、次の:
(i).ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップであって、ステップ(a)とステップ(b)の間である、選択するステップ、および/または
(ii).腫瘍サンプル中のステップ(b)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップであって、ステップ(b)の後である、評価するステップ
の少なくとも1つ、好ましくは2つを含み、
ステップ(a)、(b)、(i)および(ii)は、in silicoで実施される。
【0111】
したがって、一実施形態では、上述のin silico法は、次の:
(a).癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b).前のステップで同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップ、
を含み、かつ
本方法はさらに、次の:
(i).ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップであって、ステップ(a)とステップ(b)の間である、選択するステップ、および/または
(ii).腫瘍サンプル中のステップ(b)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップであって、ステップ(b)の後である、評価するステップ
の少なくとも1つ、好ましくは2つを含む。
【0112】
一実施形態では、本方法は、ステップ(b)の後でまたはステップ(ii)の前に、ステップ(a)で同定された癌に関連するHERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップをさらに含む。
【0113】
一実施形態では、上に記載されるin silicoの方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中でT細胞エピトープを選択するステップと、
(c)腫瘍サンプル中のステップ(b)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップ、
を含む。
【0114】
一実施形態では、上に記載されるin silicoの方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップと、
(c)ステップ(b)で同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップと、
(d)腫瘍サンプル中のステップ(c)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップ、
を含む。
【0115】
一実施形態では、上に記載されるin silicoの方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中でT細胞エピトープを選択するステップと、
(c)ステップ(a)で同定された癌に関連するHERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップと、
(d)腫瘍サンプル中のステップ(c)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップ、
を含む。
【0116】
一実施形態では、上に記載されるin silicoの方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップと、
(c)ステップ(b)で同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップと、
(d)ステップ(a)で同定された癌関連HERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップと、
(e)腫瘍サンプル中のステップ(d)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップ、
を含む。
【0117】
一実施形態では、上に記載されるin silicoの方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップと、
(c)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中でT細胞エピトープを選択するステップ、
を含む。
【0118】
一実施形態では、上に記載されるin silicoの方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップと、
(c)ステップ(b)で同定された癌関連HERVの中でT細胞エピトープを選択するステップと、
(d)ステップ(a)で同定された癌関連HERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップ、
を含む。
【0119】
一実施形態では、ステップは、上で説明されるとおりである。
【0120】
一実施形態では、上に記載されるin silicoの方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップであって、
HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、(i)各HERVと少なくとも1つのCD4またはCD8T細胞シグネチャの関連性、(ii)各HERVとインターフェロン(IFN)-γシグネチャまたは細胞溶解活性のいずれかである機能シグネチャの関連性、および/または(iii)正常な精製されたT細胞またはNK細胞中の各HERVの発現の不在により評価される、選択するステップと、
(c)ステップ(b)で同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップであって、
T細胞エピトープを選択することは、
-推定のエピトープを決定することと、
-推定のエピトープとMHCクラスI分子の結合を予測することと、
-任意により、エピトープを既知のHERVタンパク質の配列と整列させること、
を含む、選択するステップと、
(d)任意により、癌関連HERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップと、
(e)任意により、腫瘍サンプル中のステップ(c)または(d)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップ、
を含む。
【0121】
一実施形態では、上に記載される方法は、次の:
(a).癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b).前のステップで同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップ、
を含み、かつ
本方法はさらに、次の:
(i).ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップであって、ステップ(a)とステップ(b)の間である、選択するステップ、および/または
(ii).腫瘍サンプル中のステップ(b)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップであって、ステップ(b)の後である、評価するステップ
の少なくとも1つ、好ましくは2つを含み、
ステップ(a)、(b)および(i)は、in silicoで実施され、ステップ(ii)は、in vitroで実施される。
【0122】
一実施形態では、ステップ(a)は、癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定しかつ選択するステップを含む。
【0123】
一実施形態では、ステップ(b)は、共通のT細胞エピトープを選択するステップを含む。
【0124】
一実施形態では、本方法はさらに、ステップ(b)の後でまたはステップ(ii)の前に、ステップ(a)で同定された癌に関連するHERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップを含む。
【0125】
一実施形態では、上に記載される方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中でT細胞エピトープを選択するステップと、
(c)腫瘍サンプル中のステップ(b)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップ、
を含み、
ステップ(a)、(b)は、in silicoで実施され、ステップ(c)は、in vitroで実施される。
【0126】
一実施形態では、上に記載される方法は、次の:
(c)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(d)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップと、
(c)ステップ(b)で同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップと、
(d)腫瘍サンプル中のステップ(c)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップ、
を含み、
ステップ(a)、(b)、(c)は、in silicoで実施され、ステップ(d)は、in vitroで実施される。
【0127】
一実施形態では、上に記載される方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中でT細胞エピトープを選択するステップと、
(c)ステップ(a)で同定された癌に関連するHERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップと、
(d)腫瘍サンプル中のステップ(c)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップ、
を含み、
ステップ(a)、(b)、(c)は、in silicoで実施され、ステップ(d)は、in vitroで実施される。
【0128】
一実施形態では、上に記載される方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップと、
(c)ステップ(b)で同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップと、
(d)ステップ(a)で同定された癌関連HERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップと、
(e)腫瘍サンプル中のステップ(d)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップ、
を含み、
ステップ(a)、(b)、(c)、(d)は、in silicoで実施され、ステップ(e)は、in vitroで実施される。
【0129】
一実施形態では、ステップは、上で説明されるとおりである。
【0130】
一実施形態では、上に記載される方法は、次の:
(a)癌に関連する、好ましくは少なくとも1つの癌に関連するHERVを同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された癌関連HERVの中で細胞傷害性T細胞応答に関連するHERVを選択するステップであって、
HERVと細胞傷害性T細胞応答の関連性は、(i)各HERVと少なくとも1つのCD4またはCD8T細胞シグネチャの関連性、(ii)各HERVとインターフェロン(IFN)-γシグネチャまたは細胞溶解活性のいずれかである機能シグネチャの関連性、および/または(iii)正常な精製されたT細胞またはNK細胞中の各HERVの発現の不在により評価される、選択するステップと、
(c)ステップ(b)で同定されたHERVの中でT細胞エピトープを選択するステップであって、
T細胞エピトープを選択することは、
-推定のエピトープを決定することと、
-推定のエピトープとMHCクラスI分子の結合を予測することと、
-任意により、エピトープを既知のHERVタンパク質の配列と整列させること、
を含む、選択するステップと、
(d)任意により、癌関連HERVにおいて最も共有されるエピトープの中でエピトープを選択するステップと、
(e)任意により、腫瘍サンプル中のステップ(c)または(d)で同定されたHERV由来T細胞エピトープのタンパク質またはペプチドレベルでの発現を評価するステップ、
を含み、
ステップ(a)、(b)、(c)、(d)は、in silicoで実施され、ステップ(e)は、in vitroで実施される。
【0131】
一実施形態では、ステップ(d)および(e)は、存在する場合、並行して実行される。一実施形態では、エピトープを既知のHERVタンパク質の配列と整列させるステップと、ステップ(d)および/または(e)は、存在する場合、並行して実施される。
【0132】
一実施形態では、上述の方法はさらに、選択されたエピトープをヒトプロテオームと整列させるステップを含む。このステップは特に、選択されたエピトープがいずれの自己タンパク質とも一致しないことを確認することを可能にする。
【0133】
一実施形態では、選択されたエピトープをヒトプロテオームと整列させるステップは、エピトープを既知のHERVタンパク質の配列と整列させるステップ、存在する場合、ステップ(d)および/またはステップ(e)と並行して実施される。
【0134】
一実施形態では、上述の方法は、選択されたエピトープのin vitroの検証と組み合わされる。特に、上述の方法は、以下に記載する1つ以上のステップ(複数可)と組み合わされてよい。
【0135】
一実施形態では、上記in vitroの検証は、T細胞応答の誘導を算出するステップを含む。
【0136】
一実施形態では、T細胞応答の誘導は、選択されたエピトープに特異的なCD8+T細胞の誘導を測定することにより評価される。CD8+T細胞の誘導を評価する方法の例としては、例えば、選択されたエピトープを用いるin vitroプライミングアッセイが挙げられる(例えば実施例の部分を参照されたい)。
【0137】
一実施形態では、T細胞応答の誘導は、エピトープで刺激された細胞の存在下でIFN-γまたはグランザイムBの産生を測定することにより評価される(例えば実施例の部分を参照されたい)。IFN-γまたはグランザイムBの産生を測定するための方法の例としては、例えば、フローサイトメトリーまたはFluorospotアッセイが挙げられる。
【0138】
一実施形態では、T細胞応答の誘導は、例えばCD107aなどの、脱顆粒マーカーを測定することにより評価される(例えば実施例の部分を参照されたい)。
【0139】
一実施形態では、上記in vitroの検証は、選択されたエピトープに特異的なCD8+T細胞とMCH分子の親和性を算出するステップを含む。このような親和性を評価するための方法の例は、これに限定されないが、3Dモデリング(例えば実施例の部分を参照されたい)を含む。
【0140】
一実施形態では、上記in vitroの検証は、選択されたエピトープに特異的なCD8+T細胞の機能性を算出するステップを含む。CD8+T細胞の機能性を測定する方法の例としては、これらに限定されないが、免疫細胞殺傷アッセイおよび顕微鏡によるT細胞活性化の形態学的兆候の分析が挙げられる(例えば実施例の部分を参照されたい)。
【0141】
一実施形態では、上記in vitroの検証は、癌に罹患した対象の腫瘍組織における選択されたエピトープに特異的なT細胞の存在を評価するステップを含む(例えば実施例の部分を参照されたい)。腫瘍組織は、生検により得られてよい。
【0142】
本発明はまた、上記の方法により同定されたエピトープを含むかまたはエピトープからなるペプチドに関する。
【0143】
本発明は、KLLGDINWI(配列番号1)、FIFTLIAVI(配列番号2)、RMLTDLRAV(配列番号3)、FLSLYFVSV(配列番号4)、TLIAVIMGL(配列番号5)、YLDQIATLI(配列番号6)、FLQAEVANA(配列番号7)、WMGDRLMSL(配列番号8)、ALHSSVQSV(配列番号9)、ILTEVLKGV(配列番号10)、LMAQAITGV(配列番号11)、RLSYVHVTV(配列番号12)、VLQDFDQPI(配列番号13)、ALMIVSMVV(配列番号14)、MLLAALMIV(配列番号15)、YIDDILCAA(配列番号16)、YIIHYIDDI(配列番号17)、YIWCPTWRL(配列番号18)、およびYIWCPTWSL(配列番号19)を含むかまたはそれらからなる群において選択される配列を有するエピトープを含むかまたはそのエピトープからなるペプチドに関する。本発明は、配列番号1)、FIFTLIAVI(配列番号2)、RMLTDLRAV(配列番号3)、FLSLYFVSV(配列番号4)、TLIAVIMGL(配列番号5)、YLDQIATLI(配列番号6)、FLQAEVANA(配列番号7)、WMGDRLMSL(配列番号8)、ALHSSVQSV(配列番号9)、ILTEVLKGV(配列番号10)、LMAQAITGV(配列番号11)、RLSYVHVTV(配列番号12)、VLQDFDQPI(配列番号13)、ALMIVSMVV(配列番号14)、MLLAALMIV(配列番号15)、YIDDILCAA(配列番号16)、YIIHYIDDI(配列番号17)、YIWCPTWRL(配列番号18)、およびYIWCPTWSL(配列番号19)を含むかまたはそれらからなるペプチドに関する。
【0144】
一実施形態では、ペプチドは、RMLTDLRAV(配列番号3)、ALHSSVQSV(配列番号9)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、ALMIVSMVV(配列番号14)、MLLAALMIV(配列番号15)、YIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはそれらからなる群において選択される配列を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、RMLTDLRAV(配列番号3)、ALHSSVQSV(配列番号9)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、ALMIVSMVV(配列番号14)、MLLAALMIV(配列番号15)、YIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはそれらからなる群において選択される配列を有するエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。
【0145】
一実施形態では、ペプチドは、RMLTDLRAV(配列番号3)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、ALMIVSMVV(配列番号14)、MLLAALMIV(配列番号15)、YIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはそれらからなる群において選択される配列を有するエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、RMLTDLRAV(配列番号3)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、ALMIVSMVV(配列番号14)、MLLAALMIV(配列番号15)、YIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはそれらからなる群において選択される配列を含むかまたはその配列からなる。
【0146】
一実施形態では、ペプチドは、RMLTDLRAV(配列番号3)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、ALMIVSMVV(配列番号14)、YIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはそれらからなる群において選択される配列を有するエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、RMLTDLRAV(配列番号3)、LMAQAITGV(配列番号11)、VLQDFDQPI(配列番号13)、ALMIVSMVV(配列番号14)、YIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはそれらからなる群において選択される配列を含むかまたはその配列からなる。
【0147】
一実施形態では、ペプチドは、配列KLLGDINWI(配列番号1)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列FIFTLIAVI(配列番号2)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列RMLTDLRAV(配列番号3)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列FLSLYFVSV(配列番号4)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列TLIAVIMGL(配列番号5)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列YLDQIATLI(配列番号6)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列FLQAEVANA(配列番号7)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列WMGDRLMSL(配列番号8)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列ALHSSVQSV(配列番号9)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列ILTEVLKGV(配列番号10)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列LMAQAITGV(配列番号11)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列RLSYVHVTV(配列番号12)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列VLQDFDQPI(配列番号13)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列ALMIVSMVV(配列番号14)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列MLLAALMIV(配列番号15)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列YIDDILCAA(配列番号16)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列YIIHYIDDI(配列番号17)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列YIWCPTWRL(配列番号18)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。一実施形態では、ペプチドは、配列YIWCPTWSL(配列番号19)のエピトープを含むかまたはそのエピトープからなる。
【0148】
一実施形態では、ペプチドは、KLLGDINWI(配列番号1)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、FIFTLIAVI(配列番号2)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、RMLTDLRAV(配列番号3)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、FLSLYFVSV(配列番号4)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、TLIAVIMGL(配列番号5)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、YLDQIATLI(配列番号6)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、FLQAEVANA(配列番号7)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、WMGDRLMSL(配列番号8)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、ALHSSVQSV(配列番号9)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、ILTEVLKGV(配列番号10)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、LMAQAITGV(配列番号11)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、RLSYVHVTV(配列番号12)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、VLQDFDQPI(配列番号13)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、ALMIVSMVV(配列番号14)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、MLLAALMIV(配列番号15)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、YIDDILCAA(配列番号16)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、YIIHYIDDI(配列番号17)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、YIWCPTWRL(配列番号18)を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ペプチドは、YIWCPTWSL(配列番号19)を含むかまたはそれからなる。
【0149】
上記ペプチドは、標準的な分子生物学的手法によるタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの発現、天然源からのタンパク質もしくはペプチドの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学合成を含む、当業者に公知である任意の手法により作成されてよい。合成ペプチドは一般に、最大で約35残基長であり、これは、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)から入手できるもののような、自動ペプチド合成機械のおおよその上限長である。より長いペプチドもまた、例えば組換え手段により、調製され得る。
【0150】
本発明はまた、上記のような1つ以上のペプチド(複数可)の発現を誘導する発現ベクターに関する。本発明はまた、上記のような1つ以上のペプチド(複数可)をコードする核酸配列を含む発現ベクターに関する。
【0151】
本ベクターは特に、RNAベクター、DNAベクターまたはプラスミド、ウイルスベクター、または細菌ベクターであり得る。ベクターの性質に応じて、宿主細胞ゲノムへの発現カセットの組み込みがあってよく、または組み込みがないこともあり得、これは当業者には周知のことである。発現ベクターまたは発現カセットはさらに、対象における核酸(ポリヌクレオチド)のin vivo発現に必要なエレメントを含んでよい。例えば、これは、開始コドン(ATG)、終止コドン、およびプロモーター、ならびにプラスミドおよびポックスウイルス以外のウイルスベクターなどの特定のベクターのポリアデニル化配列で構成され得る。ATGは、読み取りフレームの5’に配置され得、終止コドンは、3’に配置され得る。よく知られているように、エンハンサー配列、安定化配列、およびペプチドの分泌を可能にするシグナル配列などの、発現の制御を可能にする他のエレメントが存在する可能性がある。
【0152】
RNAベクターに関しては、本ベクターは、例えば、非複製mRNAまたはウイルス由来の自己増幅するRNAを使用できる。従来のmRNAベースのベクターは、目的のペプチドをコードし、5’および3’非翻訳領域(UTR)を含み得る。自己増幅するRNAは、目的のペプチドのみでなく、細胞内RNA増幅および豊富なタンパク質発現を可能にするウイルス複製機構もコードし得る。
【0153】
ウイルスベクターの例としては、これらに限定されないが、レンチウイルスおよびレトロウイルスが挙げられる。
【0154】
一実施形態では、上に記載されるようなペプチドを得る方法は、
-コンピテント宿主細胞中に上述のベクターをin vitroまたはex vivoで導入することと:
-ペプチドの発現に好適な条件下で、上記の発現ベクターで形質転換された宿主細胞をin vitroまたはex vivoで培養することと;
-任意により、上記ペプチドを発現するおよび/または分泌する細胞を選択することと;
-発現されたペプチドを回収すること、
を含む。
【0155】
本発明はまた、上記のような1つ以上のペプチド(複数可)で治療される対象の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に関する。
【0156】
本発明はまた、上述のように1つ以上の発現ベクター(複数可)で治療される対象の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に関する。
【0157】
本発明はまた、上記のようなペプチドを認識するT細胞受容体(TCR)に関する。
【0158】
本発明はまた、上記のようなペプチドを認識するTCRを発現する改変されたT細胞に関する。
【0159】
これらのT細胞を調製するプロセスは、当業者には既知であり、以下のとおりであり得る:(i)TCRα鎖およびβ鎖を、上述のようにペプチドを認識するT細胞から単離し、ベクターに挿入する;(ii)患者またはドナーの末梢血から単離されたT細胞を、所望のTCRαβ配列をコードするように、そのようなベクターで改変する;(iii)これらの改変されたT細胞を次に、治療のために十分な数を得るためにin vitroで増殖し、患者に投与する。注目すべきことに、TCR配列は、TCR親和性の最適化のために改変され得る。
【0160】
本発明はまた、ワクチンとしての使用のための、上述の1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)に関する。
【0161】
本発明はまた、医薬品としての使用のための、上述の1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)に関する。
【0162】
本発明はまた、それを必要とする対象において癌を治療することまたは予防することに使用するための、上に記載された1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)に関する。
【0163】
本発明はまた、それを必要とする対象において癌を治療するまたは予防するための医薬品の製造における、上に記載された1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)の使用に関する。
【0164】
本発明はまた、それを必要とする対象における癌を治療するまたは予防するための方法に関し、本方法は、上記対象における、上に記載される1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)の投与を含む。
【0165】
一実施形態では、上記癌は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)を含む乳癌、卵巣癌、黒色腫、肉腫、奇形癌、膀胱癌、非小細胞肺癌および小細胞肺癌などの肺癌、頭頸部癌、大腸癌、神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、ならびに他の固形腫瘍および血液悪性腫瘍を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0166】
一実施形態では、上記癌は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)を含む乳癌、卵巣癌、黒色腫、肉腫、非小細胞肺癌および小細胞肺癌などの肺癌、頭頸部癌、神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、ならびに他の固形腫瘍および血液悪性腫瘍を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0167】
一実施形態では、上記癌は、乳癌であり、好ましくはTNBCである。
【0168】
一実施形態では、上述の1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)は、T細胞応答などの免疫応答、好ましくは腫瘍関連エピトープに対する免疫応答を誘導する。
【0169】
当業者であれば、腫瘍関連エピトープに対する免疫応答が生じた否かを決定するための様々なアッセイを知っているであろう。ELISA、クロム放出アッセイなどの細胞傷害性Tリンパ球(CTL)アッセイ、末梢血リンパ球(PBL)を使用する増殖アッセイ、テトラマーアッセイ、およびサイトカイン産生アッセイなどの、様々なBリンパ球およびTリンパ球アッセイがよく知られている。
【0170】
したがって、本発明はまた、それを必要とする対象において、免疫応答を誘導するための方法にも関し、本方法は、上記対象における、上で説明した1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)の投与を含む。
【0171】
一実施形態では、上述の1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)は、治療的有効量で投与される。
【0172】
しかし、上に記載される1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)の1日あたりの合計使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医により決定されることが、理解されるであろう。
【0173】
任意の特定の対象に対する特異的な用量は、治療中の症状および症状の重症度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全身状態、性別、および食事;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度;治療期間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;および医療分野でよく知られている同様の要因を含む、様々な要因により異なる。
【0174】
対象への投与における使用のために、1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)は、対象への投与のために配合される。上述の1つ以上のペプチド(複数可)、1つ以上の発現ベクター(複数可)、1つ以上のCTL(複数可)、または1つ以上の改変されたT細胞(複数可)は、非経口的に、吸入スプレーにより、直腸で、経鼻で、または埋め込まれたリザーバーを介して投与されてよい。本明細書で使用される投与という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射技術または注入技術を含む。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【
図1】CTL応答に関連するHERVの汎がん同定を示す図と1つのヒストグラムの組み合わせである。
図1A:腫瘍とその正常な対応物(腫瘍周囲組織)中で過剰発現されるHERVの総数と、腫瘍周囲正常組織とその腫瘍対応物中で過剰発現されるHERVの総数を示すベン図である。少なくとも1つの腫瘍で過剰発現され、いずれの腫瘍周囲組織においても決して過剰発現されないHERVは、癌関連であると考えられる。
図1B:CTL応答に関連付けられるとしてアノテーションが付けられるHERV(cyt-HERV)の選択基準のベン図である。各HERVは、表現型(CD8またはCD4 T細胞シグネチャ)と機能(細胞溶解活性(グランザイムBおよびパーフォリン1)またはIFN-γシグネチャ)基準の両方(AおよびB)と関連付けられる必要があり、かつ正常な精製されたT/NK細胞では過剰発現されない(AおよびBであるがCでない)。
図1C:Aで定義されたCTL応答基準と癌関連HERVの関連性を示すベン図である。合計192個のHERVが、cyt-HERVとしてアノテーションが付けられている。
図1D:癌のサブタイプごとに、cyt-HERVとしてアノテーションが付けられた癌関連HERVの割合。Cyt-HERVは、薄い灰色で表される。CTL:細胞傷害性T細胞応答、Cyt-HERV:癌におけるCTL応答に関連するHERV:TNBC:トリプルネガティブ乳癌。
【
図2】GagおよびPolHERV-K/HML-2から誘導された共通のHLA-A2エピトープの選択を示す1つのヒストグラム、1つのスキーム、および1つの表の組み合わせである。
図2A:cyt-HERV配列からのペプチド選択のフローチャートである。
図2B:192個のcyt-HERVの中で強力なHLA-A*02結合剤として予測された最も多く共有される上位25個のペプチドの棒グラフである。選択されたペプチド(P1~P6)は、星印が付けられる。
図2C:選択された6つのHLA-A2エピトープの特徴。9merペプチドを、それらの予測されるHLA-A*02親和性(パーセンタイルランク≦0.5の強力な結合剤を考慮)およびそれらの配列を含むHERVの数に応じて選択した。
【
図3】保存されたGagおよびPolHERV-K/HML-2モチーフに由来する共通のCD8+T細胞エピトープがTNBCで発現されることを示す図と2つのヒストグラムの組み合わせである。
図3A:TCGAデータベース中の乳癌の各サブタイプで過剰発現されるcyt-HERVの総数のベン図である。
図3B:TCGA基底サブタイプ、Varley et alの独立データベースおよび髄質胸腺上皮細胞(mTEC)で過剰発現される54個のcyt-HERVの平均発現を示す。
図3C:Riboseqにより分析した乳癌の基底細胞株(Hs578tおよびMDA-MB-231)および管腔A細胞株(MCF7およびT47D)における18個のペプチド含有CAHの発現を示す。
【
図4】HERV由来のエピトープが多機能CD8+T細胞応答を誘導することを示すスキームとプロットの組み合わせである。
図4A:In vitroプライミングプロトコルの概略図である。
図4B:11名のHLA-A2陽性HD(HD1〜HD11、1系統につき1名のドナー)由来のPBMCで得られた結果の概要。
図4C:CD8+T細胞でゲートしたIFN-γ(左パネル)、IFN-γおよびTNF-α(中央パネル)、またはIFN-γおよびCD107a(右パネル)染色のプロット。PBMCを、ペプチド(ここではP6、上線)、ペプチドなし(中央線)、またはCMVpp65ペプチド(下線)で刺激した。
【
図5】CDRループおよびCDRループとペプチドの相互作用の可視化を示す表と図の組み合わせである。
図5A: 各ペプチド(P1、P2、P4、P6)ならびに対応する分離されたV、D、およびJ対立遺伝子に特異的なトップクローンのTCRαおよびTCRβ CDR3配列の生産頻度。
図5B:予測される結合親和性(Predict.Δg)を、kcal/molで表す。平均値を報告する。星印は、5%レベルで有意な統計検定(Welch2標本t検定)を示す。
図5C:それらの予測される結合親和性に従う、タンパク質構造データバンク(Protein Data Bank)で入手可能であり結晶学的データから取得されるモデル化されたHERV特異的TCR-pMHCおよび参照TCR-pMHCの複合体のランク付けの図である。CDR:相補性決定領域、TCR:T細胞受容体、MHC:主要組織適合性複合体、pMHC:ペプチド-MHC、TRA:TCRのアルファ鎖、TRB:TCRのベータ鎖。
【
図6】HERV特異的T細胞クローンが機能的であり、腫瘍細胞を認識し死滅させることを示すグラフの組み合わせである。
図6A:正規化されたIFN-γ産生の非線形適合として計算されたCD8+T細胞クローンの機能的結合力。N9-V1およびN9-V2:CMV特異的T細胞クローン(方法を参照)。EC50を、破線とX軸の補間により各クローンについて表す。
図6B:細胞死の定量化を、時間の関数(時間、X軸)におけるベースライン(Y軸)からの蛍光強度の増加として表す。
図6C:48時間での特異的腫瘍細胞溶解。技術的な三重実験の平均パーセンテージを、各条件についてプロットする(データは、少なくとも2つの独立した実験を表す)。
【
図7】腫瘍浸潤T細胞の中にHERV特異的T細胞が存在することを示すグラフおよび写真の組み合わせである。
図7A:TCGA HLA-A2 TNBC患者における18-HERVスコアによる全生存率(n=65)。患者を、スコアの三分位数に従い3つの群に分けた:高い発現(n=22)、中間の発現(n=21)、低い発現(n=22)。
図7B:Nanoliveテクノロジーを使用して様々な時点で取得した、CMV、P1、またはP6特異的CD8+T細胞クローン(上から下へ)と共培養されたTNBCオルガノイドの60倍画像である。T細胞を、白い矢印により示す。
【0176】
実施例
本発明を、以下の実施例によりさらに説明する。
【0177】
材料および方法
データセット
RNA-seqデータについて、raw fastqファイルを、Varley et al.の独立した乳がんデータセットに対するアクセッション番号GSE58135(K.E.Varley et al.,Recurrent read-through fusion transcripts in breast cancer.Breast Cancer Res.Treat.146,287-297(2014))、ソートされたPBMCデータセットに対するアクセッション番号GSE74246(M.R.Corces et al., Lineage-specific and single-cell chromatin accessibility charts human hematopoiesis and leukemia evolution.Nature Genetics.48,1193-1203(2016))、6つのmTECサンプルに対するアクセッション番号GSE127825およびGSE127826(J.-D.Larouche et al.,Widespread and tissue-specific expression of endogenous retroelements in human somatic tissues.Genome Med.12,1-16(2020))で、NCBI Gene Expression Omnibus(GEO)ポータルからアクセスした。TCGA pancancer raw fastqファイルを、Genomic Data Commons(GDC)ポータル(https://portal.gdc.cancer.gov/)からアクセスした。細胞株データを、Broad Institute Cancer Cell Line Encyclopedia (CCLE)ポータル(https://portals.broadinstitute.org/ccle)からアクセスした。
【0178】
HERV発現の定量
HERV発現を、HervQuantパイプライン(C.C.Smith et al.,Endogenous retroviral signatures predict immunotherapy response in clear cell renal cell carcinoma.Journal of Clinical Investigation.128,4804-4820(2018))を使用して評価した。簡単に説明すると、RNAseqリードを、STAR v2.7.3a(A.Dobin et al.,STAR:ultrafast universal RNA-seq aligner.Bioinformatics.29,15-21(2013))を使用して、3,173個のHERV配列のアノテーションでコンパイルされたhg19参照トランスクリプトーム(L.Vargiu et al.,Classification and characterization of human endogenous retroviruses;mosaic forms are common.Retrovirology.13,7(2016))にマッピングした。マルチマップ≦10およびミスマッチ≦7を、元の刊行物と同様に、可能とした。BAM出力を、SAMtools v1.4(H.Li et al.,1000 Genome Project Data Processing Subgroup,The Sequence Alignment/Map format and SAMtools.Bioinformatics.25,2078-2079(2009))を使用して、HERV配列をマップしたリードに対しフィルタにかけ、次いでSalmon v0.7.2(R.Patro et al.,Salmon:fast and bias-aware quantification of transcript expression using dual-phase inference.Nat Methods.14,417-419(2017))を使用して定量化した。生のカウントを、100万個の合計読み取り数あたりのカウントに正規化し、その後log2+1に変換した。
【0179】
品質チェック/サンプルのフィルタリング
原発性固形腫瘍サンプル(TCGAコード01)のみを含め、32の異なる癌種から9,718個のサンプルを再グループ化し、そのうち9,492個が、HERV発現について分析可能であった。品質チェックは、HERV分布が大きく偏っていたためESCAおよびSTADサンプルの完全な除去をもたらし、29の異なる癌種からの8,893個のサンプルの最終的な分析につながった。
【0180】
免疫シグネチャおよび遺伝子変化
表現型免疫シグネチャを、Xcell法(D.Aran,et al.,xCell:digitally portraying the tissue cellular heterogeneity landscape.Genome Biol.18,220(2017))を使用して計算した。TCGA Pancancerサンプルについて、Xcellシグネチャを、Xcell Webサイト(https://xcell.ucsf.edu/xCell_TCGA_RSEM.txt)から直接ダウンロードした。GSM1401648データセットについて、シグネチャを、データセット全体について計算し、免疫シグネチャを、その後フィルタ処理した。インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグネチャを、Molecular Signature Database(http://software.broadinstitute.org/gsea/msigdb/index.jsp)からのHALLMARK_INTERFERON_GAMMA_RESPONSEシグネチャに基づき、単一サンプルの遺伝子セット変異解析(GSVA)(S.Hanzelmann,et al.,GSVA:gene set variation analysis for microarray and RNA-Seq data.BMC Bioinformatics.14,7(2013))により計算した。エンリッチメントスコアを、癌種ごとに各サンプルについて計算した。細胞溶解活性(CYT_score)を、以前に説明したように、グランザイムB(GRZB)とパーフォリン(PRF1)の発現の幾何平均として計算した(M.S.Rooney et al.,Molecular and genetic properties of tumors associated with local immune cytolytic activity.Cell.160,48-61(2015))。TCGA Pancancer遺伝子変化を、Thorsson V. et al.(V.Thorsson et al.,The Immune Landscape of Cancer.Immunity.48,812-830.e14(2018))から得た。
【0181】
癌関連およびcyt-HERVアノテーション
癌特異性を定義するために、差次的HERV発現を、腫瘍サンプルとそれらのそれぞれの正常な腫瘍周囲に一致した組織の間で行った。少なくとも10個の腫瘍周囲サンプルを用いたTCGA試験のみを含めた(n=14の異なる癌種)。HERV発現の差次的解析を、TCGA癌種ごとに個別に実施した。その一致する腫瘍と比較して任意の正常組織中で2倍を超えて発現されるあらゆるHERVをフィルタ処理で除き、正常な対応物(腫瘍周囲組織)と比較して少なくとも1つの癌で2倍を超えて過剰発現される残りのHERを、癌関連であると見なした。
【0182】
潜在的に免疫原性であるとアノテートされるには、各癌関連HERVは、少なくとも1つの表現型(A)基準および1つの機能性(B)基準と関連付けられ、かつT/NK細胞により過剰発現されない(C)必要があった。表現型の基準は、Xcell法により定義されるようなCD4+T細胞シグネチャまたはCD8+T細胞シグネチャのいずれかとの関連を含んだ。機能基準は、グランザイムA(GZMA)およびパーフォリン(PRF1)の発現の幾何平均により定義される、IFN-γまたは細胞溶解活性のいずれかとの関連を含んだ。正常なPBMC発現を、健康なドナーからの選別されたPBMCの独立したデータセットにおいて評価した(M.R.Corces et al.,Lineage-specific and single-cell chromatin accessibility charts human hematopoiesis and leukemia evolution.Nature Genetics.48,1193-1203(2016))。HERV発現を、PBMCの残りに対しT細胞およびNK細胞中で独立して比較した。
【0183】
L1ペナルティ回帰(LASSO)
関連性を、glmnetパッケージおよびc060パッケージを使用するLasso回帰により計算した(J.H.Friedman et al.,Regularization Paths for Generalized Linear Models via Coordinate Descent.Journal of Statistical Software.33,1-22(2010),M.Sill et al.,c060:Extended Inference with Lasso and Elastic-Net Regularized Cox and Generalized Linear Models.Journal of Statistical Software.62,1-22(2014))。ガウス分布を、CYTスコアおよびIFN-γシグネチャについて考慮し、ポアソン分布を、Xcellシグネチャについて考慮した。HERVを、log2(CPM+1)として分析し、さらなる標準化を必要としない。それぞれの癌種ごとに、モデルを、10倍の交差検証で見つかった最適なパラメータに基づき構築した。最終モデルで正の係数を有する各HERV(平均二乗誤差を最小化するラムダパラメーターに基づく)を、変数と関連付けられると見なした。
【0184】
エピトープスクリーニング
オープンリーディングフレーム(ORF)検出を、EMBOSS v6.6.0.0からのsixpackを使用して行った(F.Madeira et al.,The EMBL-EBI search and sequence analysis tools APIs in 2019.Nucleic Acids Res.47,W636-W641(2019))。検出された10個を超えるアミノ酸のORFを次いで、UniProt(UniProt:a worldwide hub of protein knowledge.Nucleic Acids Res.47,D506-D515(2019))で参照される既知のHML-2(HERV-K)Gag、Pro、Pol、Env、RecおよびNp9タンパク質と整列した。レトロウイルスについて最適なパラメータを有するBlastを使用した(ワードサイズ=3、構成ベースの統計、「低複雑性領域」フィルターなし)。90%を超える同一性およびe-値<0.05を有するGagおよびPolタンパク質と整列された保存配列を次に、MHCflurry v1.3(T.J.O’Donnell et al.,MHCflurry:Open-Source Class I MHC Binding Affinity Prediction.Cell Systems.7,129-132.e4(2018))を使用して、予測されるHLA-A*02強力結合剤についてスクリーニングした。ランク<=0.5パーセンタイルを有するペプチドを、強力な結合剤であると見なした。ヒトプロテオームを、Uniprot(ID:UP000005640)でダウンロードして、ペプチド合成およびin vitro検証の前に一致がないことを検証した。
【0185】
累積発現スコア
π値スコアを、Xiaoらにより提案された方法(Y.Xiao et al.,A novel significance score for gene selection and ranking.Bioinformatics.30,801-807(2014))に従い、発現のlog2倍率変化と逆p値のlog10の積として各HERVおよび各組織の比較(TNBC対腫瘍周囲組織)について定義した。累積発現スコアを、エピトープ配列を含むすべてのHERV(CAHおよび他のHERVを含む)のπ値を合計することにより計算した。
【0186】
ペプチドームプロテオームのデータセットの分析
生のMS/MSデータセットを、乳癌研究のためのCPTAC(N.J.Edwards et al.,The CPTAC Data Portal:A Resource for Cancer Proteomics Research.J Proteome Res.14,2707-2713(2015))からダウンロードした(Cancer Genome Atlas Network,Comprehensive molecular portraits of human breast tumours.Nature.490,61-70(2012);K.Krug et al.,Proteogenomic Landscape of Breast Cancer Tumorigenesis and Targeted Therapy.Cell.183,1436-1456.e31(2020))。取得したMS/MSスペクトルを、proteowizardからのmsconvert(R.Adusumilli,P.Mallick,Data Conversion with ProteoWizard msConvert.Methods Mol Biol.1550,339-368(2017))を使用してMGF形式に変換した。次に、ペプチドのリストを、Pepquery(スタンドアロンバージョン)(v.1.6.2.0)(B.Wen et al.,PepQuery enables fast,accurate,and convenient proteomic validation of novel genomic alterations.Genome Res.29,485-493(2019))を使用して分析した。使用したコマンドラインは、java-Xmx10G-jarpepquery.jar-fixMod6,62,108-varMod117-maxVar3-c1-tol10-toluppm-minScore12-e1-um-hcTRUE-n1000-itol0.05-m1cpu12-pep${peptides_list}-db${Reference_database}-ms${MS_database}-o${output_directory}であった。第2のデータセットのために、コマンドラインのfixmodおよびvarModを、次のように調整した:-fixmod6,103,157-varMod101,117。
【0187】
Riboseq解析
リボソームプロファイリングデータを、以前に発表された研究(F.Loayza-Puch et al.,Tumour-specific proline vulnerability uncovered by differential ribosome codon reading.Nature.530,490-494(2016))から得た。生のfastqファイルを、最初の刊行物で記載されるように前処理した。簡単に説明すると、アダプター配列を、パラメータ(--quality-base=33-O12-m20-q5)を用いるcutadapt1.1を使用して、生データからトリミングし、参照hg19-HERVトランスクリプトームにマッピングした。
【0188】
統計分析
すべての分析を、R統計ソフトウェアバージョン3.6.0を使用して行った。差次的HERV発現解析を、DESEQ2 v1.24.0(M.I.Love et al.,Moderated estimation of fold change and dispersion for RNA-seq data with DESeq2.Genome Biol.15,550(2014))を用いて行い、および対数倍率変化を、apeglmパッケージ(A.Zhu et al.,Heavy-tailed prior distributions for sequence count data:removing the noise and preserving large differences.Bioinformatics.35,2084-2092(2019))により縮小した。
【0189】
生物学的サンプル
健康ドナーからの血液を、Etablissement Francais du Sang(Lyon)から入手した。新鮮なTNBC(n=11)を、ヘルシンキ宣言に従い、治験審査委員会および倫理委員会(L-06-36およびL-11-26)からの承認後ならびに患者の書面によるインフォームドコンセント後に、tissue bank of Centre Leon Berard(CLB)(BB-0033-00050,CRB-CLB,Lyon,France;French agreement number:AC-2013-1871)から得た。
【0190】
ペプチド合成
ペプチドを、JPT peptide Technologies(GE、EU)で、ある仕様および90%を超える純度で合成した。凍結乾燥した粉末を、1%DMSO蒸留水に再懸濁した。
【0191】
細胞株
MDA-MB-231基底乳癌上皮細胞を、American Type Culture Collection(ATCCカタログ名:HTB-26)から得て、10%FBS DMEM(Gibco,FR,EU)1%ペニシリン/ストレプトマイシン1%L-グルタミン中で培養した。HMEC初代細胞を、Promocell(GE,EU)から入手し、乳腺上皮増殖培地(PromoCell,GE,EU)中で培養した。
【0192】
In vitroプライミングアッセイ
PBMCを、フィコール密度勾配遠心分離(Eurobio,FR,EU)により得た。それらを、37℃で急速解凍し、徹底的に洗浄し、室温または37℃で一晩放置し、その後それらの生存率を評価した。0.15x106個/ウェルのPBMCを、0日目に5μg/mL R-848(Resquimod)、10μg/mL HMWポリIC(両方ともInvivogen,FR,EU)、20IU/mL IL-2(PROLEUKINアルデスロイキン、Novartis Pharma,CH,EU)、および10μg/mLの目的ペプチドを富化したAIM V培地(Gibco,FR,EU)の入った96ウェルプレートで培養した。3、6、10日後に、100μLの培地を、新鮮な富化培地(6日目はIL-2およびペプチドのみ、10日目はIL-2のみ)に交換し、必要に応じて分割した。12日目に細胞を、採取し分析のためにカウントした。
【0193】
フィーディングプロトコル
デキストラマーにより単一細胞選別されたCD8+T細胞を、10:1の比率での35Gy照射された同種PBMCとBリンパ芽球細胞株から成るフィーダー上で拡張した。フィーダー細胞を、PHA-L1.5μg/mL(MerckKgAa,GE,EU)およびIL-2150IU/mL(NovartisPharma,CH,EU)を含むRPMI5%ヒト血清中で、0.10x106細胞/ウェルの濃度で、96ウェル丸底プレートにプレーティングし、最大で5x103個の選別された細胞を、ウェルあたり添加した。細胞を、14日間培養し、培地を、必要に応じて新鮮なIL-2富化RPMI5%ヒト血清と交換した。このプロセスを、必要に応じて繰り返した。
【0194】
TCR免疫シーケンシング
特定のCD8+T細胞および対応するバルクPBMCからのDNAを、QIAGEN QIAmp(登録商標)DNA Blood Microキット(QIAGEN,GE,EU)を使用して抽出し、TCR調査および詳細な分析のためにAdaptive Biotechnologies(WA,US)に送った。
【0195】
3Dモデルの生成および精緻化
各T細胞クローンのアルファ鎖およびベータ鎖の両方の完全なTCR配列を、以前に公開されたように(A.Gros et al.,Recognition of human gastrointestinal cancer neoantigens by circulating PD-1+ lymphocytes.J Clin Invest.129,4992-5004(2019))免疫シーケンシングの結果から再構築した。可変ドメインについて、TRAおよびTRB CDR3ヌクレオチド配列を、免疫シーケンシングから取得し(
図5A)、TRAV領域およびTRBV領域の5’末端および3’末端を、国際免疫遺伝学情報システム(IMGT)オンラインデータベースから得た。可変ドメインの3’にTRAおよびTRBのヒト定常ドメインを、全長TCRを再構成するために追加した。これらの完全長TCR配列を、MHCおよびペプチド配列とともに、テンプレートベースのモデリングを使用してTCR-pMHC複合体の自動構造モデリング用に特別に開発された、CBS TCRpMHCmodels-1.0 webサーバー(K.K.Jensen et al.,TCRpMHCmodels:Structural modelling of TCR-pMHC class I complexes.Sci Rep.9,14530(2019))に提出した。TCR残基を、標準化された手順(K.R.Abhinandan,A.C.R.Martin,Analysis and improvements to Kabat and structurally correct numbering of antibody variable domains.Mol Immunol.45,3832-3839 (2008);M.S.Klausen et al.,LYRA, a webserver for lymphocyte receptor structural modeling.Nucleic Acids Res.43,W349-355(2015))を用いて、再度ナンバリングする。Webサーバーにより生成された初期モデルをさらに、Bobisse et al(S.Bobisse et al.,Sensitive and frequent identification of high avidity neo-epitope specific CD8+T cells in immunotherapy-naive ovarian cancer.Nat Commun.9,1-10(2018))から適応されたプロトコルを使用して、4ラウンドで精緻化した。簡潔に言えば、CDRループを、Modellerソフトウェアバージョン9.25(A.Fiser,A.Sali,Modeller:generation and refinement of homology-based protein structure models.Methods Enzymol.374,461-491(2003);A.Sali,T.L.Blundell,Comparative protein modelling by satisfaction of spatial restraints.J Mol Biol.234,779-815(1993))を使用してペアごとに精緻化し:ラウンド1でCDRループα1/α2、ラウンド2でα1/α3、ラウンド3でβ1/β2、ラウンド4でβ1/β3であった。初期モデル中のコイル構造の残基のみを、精緻化した。各ラウンドで、500個のモデルを生成し、Modellerの内部DOPEスコアに基づき最も良いモデルを選択し、次のラウンドのインプットとして使用した。
【0196】
4ラウンドの最後に、代表的なモデルを、次のように重み付けされない接触のコンセンサスに基づき、選択した。TCR-pMHC界面での残基間の接触(重原子間の5オングストローム未満の距離により定義される)を、各精緻化ラウンドの最高のDOPEスコアを有する4*25モデルのセットでカウントした。次に、最終ラウンドで最高のDOPEスコアを有する25のモデルの中で、非正規化CONSRANKスコア(G.Launay et al.,Evaluation of CONSRANK-Like Scoring Functions for Rescoring Ensembles of Protein-Protein Docking Poses.Front Mol Biosci.7,559005(2020);R.Oliva et al.,Ranking multiple docking solutions based on the conservation of inter-residue contacts.Proteins.81,1571-1584(2013))と呼ばれる、頻発する接触の最も多い数を有するモデルを、代表モデルとして選出する。
【0197】
TCRとpMHCの潜在的な安定化相互作用の定量的な見解を、各精緻化ラウンドの最高DOPEスコアを有する4*25モデルのセットで観察された残基間接触の頻度により得る。TCRα鎖およびTCRβ鎖の両方のCDR1ループおよびCDR3ループは、MHCおよびペプチドの両方と相互作用する一方で、CDR2ループは、主にMHC分子と相互作用する。
【0198】
3D構造解析
異なる複合体の代表モデル間の構造的類似性を、UCSF Chimera(E.F.Pettersen et al.,UCSF Chimera--a visualization system for exploratory research and analysis.J Comput Chem.25,1605–1612(2004))によりコンピューターで計算されたバックボーンCDRループ間のRMSDにより評価した。予想どおり、構造のばらつきは、CDRβ3ループ内で最も高かった。UCSF Chimeraをまた、水素結合および疎水性接触の検出ならびに構造の可視化に使用した。
【0199】
結合親和性の予測
結合親和性を、界面での接触の数および種類に基づく線形モデルを使用するprodigy法(A.Vangone,A.M.Bonvin,Contacts-based prediction of binding affinity in protein-protein complexes.Elife.4,e07454(2015))を使用して予測した。各複合体について、代表的なモデルに対し1つの予測を実行する代わりに、精緻化プロトコルの第4ラウンドで得られた最高のDOPEスコアを有する25のモデルについて得られた予測を平均した。
【0200】
Fluorospot
AIM V培地(Gibco,FR,EU)中で10:1の比率にてPBMCまたはCD8+T細胞と、ペプチドをパルスしたまたはパルスしないT2細胞を、37℃、9%CO2で24時間共培養した後、IFN-γAF488およびGrz-bCTL-redを使用するダブルカラーFluorospot(CTLGmbH,CA,US)を、製造業者の指示に従い実施した。レベレーションプレート(Revelation plate)を、ImmunoSpot(登録商標)S6 ULTIMATE UVイメージアナライザーで読み取り、ImmunoSpot(登録商標)分析ソフトウェアにより分析した。
【0201】
機能的結合力
選択したペプチド(P1、P2、P6)に対し、デキストラマーにより単離された特異的CD8+T細胞を、酵素結合免疫吸着アッセイ(IFN-γ ELISA,Thermo Fisher scientific,FR,EU)による機能的結合性IFN-γ産生試験において使用した。免疫優勢エピトープN9V(NLVPMVATV)に特異的な2つのCMVT細胞クローンを、使用した。N9V-1は、pp65デキストラマーにより選択されたCD8+T細胞に対応し、N9V-2は、Dr Henri Vieから好意で提供されたCD8+T細胞クローンである。特異的CD8+T細胞応答の機能的結合力を、5時間パルスされたT2細胞に10-4~10-9M(log)の限界ペプチド希釈を実施することにより評価した。洗浄後、ペプチドパルスされたT2細胞を、5%のヒト血清を補充したAIM-V培地(Gibco,FR,EU)中で、1:1の比率で特異的CD8+T細胞と共培養した。18時間後に、上清を収集し、ELISAを実施した。最大サイトカイン応答の半値(EC50)を達成するために必要なペプチド濃度を、決定した(Windows用のgraphpad prismバージョン6.0を、50%EC(EC50)の決定のために使用した、R>0.98)。
【0202】
MSによるエピトープの検証および定量化
MSによるエピトープの検証および定量化を、さらに変更を加えて前述の方法(J.Douglass et al.Bispecific antibodies targeting mutant RAS neoantigens.Sci Immunol.6,eabd5515 (2021))に従いComplete Omics Inc.(Maryland,USA)により実施した。簡潔に説明すると、合計3億個の細胞を溶解し、ペプチド-HLA複合体を、抗ヒトHLA-A、B、C抗体クローンW6/32(Bio-X-Cell)をあらかじめロードした自己充填Valid-NEOネオ抗原濃縮カラムを使用して免疫沈降させた。溶出、解離、濾過、および浄化の後で、ペプチドを、さらなる分析の前に凍結乾燥した。各エピトープペプチドについての遷移パラメータを、Valid-NEOメソッドビルダーバイオインフォマティクスパイプライン(Valid-NEOmethod builder bioinformatics pipeline)により検査し、キュレートして、不純物との共溶出による過剰なノイズを含むイオンを除外し、かつ重要なイオンの再帰最適化による検出可能性を高めた。細胞表面に存在するペプチドの絶対コピー数を、重同位体標識ペプチドを使用する定量化に基づき計算した。MSデータは、ProteomeXchangeにより保管されており、識別子PASS01698によりアクセス可能である。
【0203】
ライブイメージング
細胞を、10%SVF、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM(Gibco、FR、EU)培地にプレーティングした。IncuCyte分析のために、培地を、一晩細胞を接着させた後96ウェルプレートから除去した。ブロッキングHLA-A2抗体(GeneTex,クローンBB7.2,GTX75806,CA,US)を、条件に従い、1時間AIM-V培地(Gibco,FR,EU)に添加した。T細胞を次に、細胞死の定量化のために、IncuCyte Cytotox染料(Essen Bioscience,UK,EU)の存在下でエフェクター対標的(E:T)比2:1で添加した。48時間のライブイメージングを、IncucyteZoomにより37℃、5%CO2で行った。細胞死を、ベースラインでカウントされた染色細胞の数で補正された、カウントされた染色細胞の総数として計算した。最大の死滅を、DMSOを使用して確立した。特異的溶解を、次式に従い計算した:
特異的溶解%=(((HERV特異的T細胞が誘導した標的細胞死-自発的な標的細胞死)-(非特異的デキストラマー陰性T細胞が誘導した標的細胞死-自発的な標的細胞死))/(DMSOが誘導した標的細胞死-自発的な標的細胞死))×100
【0204】
Nanoliveイメージングのために、T細胞を、E:T10:1で追加し、位相イメージングを、Nanolive顕微鏡3D細胞エクスプローラーを使用して1分ごとに実施した。
【0205】
腫瘍の解裂:オルガノイドおよびTILの増殖
腫瘍組織を、約1mm3の断片に切断し、20%SVF富化RPMI中でコラーゲナーゼIVおよびDNAseにより45分間寸裂した。腫瘍溶解物を、1500rpmで5分間遠心分離し、5%ヒト血清富化RPMIに再懸濁した。細胞を、カウントし、1:4のビーズ対細胞の比率で100IU/mLにて抗CD3抗CD28Dynabeads(Dynabeads,Gibco,EU)およびIL-2と共に、平底96ウェルプレートに5x104細胞/ウェルの密度でプレーティングした。
【0206】
オルガノイドの場合、腫瘍溶解物の一部(300万~1,000万個の細胞)を、10mLのAdvanced DMEM/F12培地に再懸濁した。細胞を、500rcfで10秒間遠心分離し、その後全培地に再懸濁した。このプロトコルを、開始時の細胞数に応じて3~5回繰り返して、細胞懸濁液の上皮細胞を濃縮した。これらの細胞を次いで、Drehuis et al.により以前に説明されたプロトコル(E.Driehuis et al.,Establishment of patient-derived cancer organoids for drug-screening applications.Nature Protocols.15,3380-3409(2020))に従い培養した。
【0207】
マルチパラメトリックフローサイトメトリー
T細胞を、カウントし、5:1の比率で同族ペプチドをロードしたT2細胞とまたはロードしないT2細胞と共培養した。1時間後に、CD107a抗体(BD、クローンH4A3)を、ゴルジプラグ(1/1000)(10μg/mL、BD、FR、EU)と共に各ウェルに添加した。5時間後に、生細胞染色、表面染色および細胞内染色を、実施した。CD8+T細胞におけるサイトカイン発現を評価するために、製造業者の指示に従い、FoxP3固定および透過処理用キット(Thermo Fisher scientific, Life Technologies,CA,US)による細胞内染色を用いた。
【0208】
デキストラマー染色を、12日間の培養(プライミングプロトコル)後のPBMCに対しまたは腫瘍の寸裂後14日間増殖させたTILに対して実施した。細胞を、2mLの洗浄バッファー(PBS+2%FBS+2mMEDTA(Sigma Alderich,MI,US))で洗浄し、生細胞および表面マーカー染色の前に、室温でデキストラマー(Immudex ApS,DK,EU)で10分間染色した。洗浄を、非特異的デキストラマー染色を回避するために2回行った。CMV pp65 NLVPMVATVを、陽性対照として使用した。TIL分析のために、非天然の無関係なペプチド(ALIAPVHAV)と複合体化したデキストラマーを、陰性対照として使用した。
【0209】
すべてのサンプルを、試験全体を通じて保存された設定で、LSR-Fortessa(BD Biosciences,FR,EU)で分析した。データを、FlowJoソフトウェア(Tree Star v10.4,NJ,USA)を使用して分析した。
【0210】
結果
機械学習ベースのアプローチは、CTL応答に関連するHERVの同定を可能にする
エピトープ検出を最適化するために、HERVにアノテーションを付ける新規パイプラインを開発した。このために、複数のHERVデータベースを調査し、ほとんどが完全なプロウイルス配列で構成され、そのため翻訳されたペプチドを含むより高い可能性を有する3,173個のHERVの最新でかつ完全なリファレンスを選択した。HervQuantを使用して、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の汎がんRNAseqデータベースから29の異なる癌種からの8,893個の原発腫瘍サンプル中でのHERV発現を評価した。少なくとも10個の一致する腫瘍周囲サンプルを有する癌(n=14)を選択して、腫瘍中で高度に発現され正常組織中で発現されないHERV(癌関連HERVまたはCAH)をフィルタにかけた。差次的HERV発現解析は、1,134個のCAH候補を明らかにした(
図1A)。検査する候補の数を減少させるために、次に第2のフィルターを適用して、CAHの中でCTL応答に関連するHERV(cyt-HERV)のみを保持した。Cyt-HERVのアノテーションは、2つの包含基準、すなわち各HERVと少なくとも1つのCD4またはCD8T細胞の表現型(A)および機能(B)シグネチャとの関連性、ならびに1つの除外基準、すなわち精製されたT細胞またはNK細胞によるその発現(C)に基づいた(AおよびBでありCでない)(
図1B)。偽陽性の関連性のリスクを低下させ、HERV発現との高い共線性を制御するために、これらの関連性を、L1ペナルティ回帰(R.Tibshirani,Regression Shrinkage and Selection via the Lasso.Journal of the Royal Statistical Society.58,267-288(1996))により算出して、癌のサブタイプを制御しながら、CTL応答と高い関連性のあるHERVのみを保持した。機械学習ベースのアプローチを使用して、それぞれの癌種ごとにその関連性を個別に検査して(詳細については方法を参照)、192個のcyt-HERVの最終的な同定に至った(
図1C)。サブ癌解析は、結腸腺癌(COAD)、肺扁平上皮癌(LUSC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、膀胱尿路上皮癌(BLCA)、および肺腺癌(LUAD)が、cyt-HERVの総数が最も多い上位5つの癌(
図1D)であることを明らかにした。
【0211】
全体として、cyt-HERVは、CAH全体の約15%を占め、潜在的な候補の数が大幅に減少した。最も共有されるcyt-HERVのうち、11個は、CD8+T細胞応答を誘導すると以前に報告された3つのHERV(herv_2256、herv_6069、herv_4700)を含む、10種以上の癌種で過剰発現された。TCGA Illumina 450kメチル化データからの10の最も近い周辺プローブの平均ベータ値の分析は、メチル化(n=15)よりも局所的な脱メチル化(n=37)と顕著に相関するより多くのcyt-HERVを明らかにし、これらのHERVの部分的なエピジェネティック制御を示唆する。
【0212】
cyt-HERV間で保存されたGagおよびPol HERV-K/HML-2モチーフの選択は、共通のCD8+T細胞エピトープの同定につながる
次に、最も一般的なHLAクラスI対立遺伝子であるHLA-A2に焦点を合わせ、これらのcyt-HERV間で共通のT細胞エピトープの存在を評価した。192個のcyt-HERV配列を6つの可能なフレームに翻訳し、少なくとも10個のアミノ酸の予測されるオープンリーディングフレーム(ORF)を保持した。偽陽性(非翻訳配列)の数を減少させるために、これらのORFをUniProtで参照される既知のHERV-K/HML-2GagおよびPolタンパク質に対して整列させ、既知の既存のHML-2タンパク質と90%の相同性を有するORFのみを維持した。この保存的アプローチは、27個の異なるORFから57個のHML-2HLA-A*0201エピトープ候補を同定し(
図2A)、保存されたHML-2由来ORFの最も多い数を示すherv_2410およびherv_6069を含んだ。これらのエピトープの分布をよりよく理解するために、すべてのCAH間で各ペプチドを再配置した。最も共有されるエピトープ上位25個を、
図2Bに示す。13個の固有のエピトープが、少なくとも10種の異なるHERV中に存在していた(
図2B)。さらなる生物学的検証および免疫学的アッセイのために、6つの最も共有されるエピトープ候補;Gagから3つ(P1、P2、およびP4)、Polから3つ(P3、P5、およびP6)(
図2C)を、選択した。TCGAおよびClinical Proteomic Tumor Analysis Consortium(CPTAC)からの質量分析(MS)データの分析は、P1、P2、P3、P5、およびP6ペプチドの翻訳の証拠を示した。P4もまた、それが腫瘍からのHLA-I溶出ペプチド中に記載されていたため、選択した(国際公開第2019/162110(A1)号)。重要なことに、ヒトプロテオームに対するアラインメントは、これらのエピトープ候補の配列が、いずれの自己タンパク質配列とも一致しないことを明らかにした。注目すべきことに、これらのHLA-A2エピトープは、他の最も一般的なHLA-AおよびB対立遺伝子に対する強力な結合剤として予測されなかった。
【0213】
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、共通のHERVエピトープを含む多くのcyt-HERVにより特徴づけられる。
TNBCにおけるHERVの十分に特徴付けらた発現および正常サンプルを含むRNAシーケンシング(RNAseq)データベースの可用性のおかげで、本発明者らは、乳癌に焦点を当てた。差次的HERV発現分析は、異なる乳癌サブタイプにわたり発現される合計497個のCAHを明らかにし、そのうち91個をcyt-HERVとしてアノテーションを付けた。これらの91個のcyt-HERVの54個が、基底サブタイプで発現された(
図3A)。これらの54個のcyt-HERVの平均の発現は、独立したデータセットからの腫瘍周囲または正常乳房組織と比較して、TNBCおよびER+サンプルで顕著に高かった(
図3B)。Varley et al.の研究で配列決定された乳癌細胞株中およびBroad Institute Cancer Cell Line Encyclopediaの細胞株中で、これらの54個のcyt-HERVの高発現を確認した。基底サブタイプ中で発現されるすべてのCAHの中で最も共有される上位25のエピトープ候補は、以前に同定された6つのペプチドP1~P6を含んだ。
【0214】
次に、基底サブタイプ中で発現されるCAHの中で、以前に同定された6つのエピトープ候補P1~P6の配列を含むHERVを、選択した。18個の異なるCAHのORFは、それらのORF中に6つのペプチドの少なくとも1つを含んだ(表1)。
【表1】
【0215】
対応する遺伝子座のゲノムマッピングは、染色体上のこれらの18個のHERVの拡散した位置を示した。TNBC対正常組織(ここでは利用可能な各腫瘍周囲サンプルにより示される)におけるエピトープ含有HERVの差次的発現を定量化するために、p値により示される統計的有意性と倍数変化により表される生物学的有意性の両方を考慮するπ値スコアを使用した。累積発現スコアを次に、その配列を含むすべてのHERVのπ値を合計することにより、各エピトープについて計算した。このスコアは、ほとんどの場合10~200であり、これは、評価された各正常サンプルに対しTNBCにおけるエピトープ含有HERVの顕著な過剰発現を確認した。最後に、以前に公開された試験からのリボソームプロファイリング(riboseq)データの分析は、2つの基底サブタイプおよび2つの管腔Aサブタイプを含む4つの異なる乳癌細胞株における18個のペプチド含有CAHの翻訳の証拠を明らかにした(
図3C)。
【0216】
全体として、本発明者らのバイオインフォマティクスアプローチは、腫瘍細胞により特異的に過剰発現され、かつ多数のHERV候補の中で最も免疫原性であろう限られた数のHERV由来T細胞エピトープを選択することを可能にした。
【0217】
HERV由来エピトープは、強力でかつ多機能のT細胞応答を誘導する
次に、効率的なT細胞応答を誘導する選択されたエピトープ候補の能力を評価した。選択された6つのペプチドのHLA-A2親和性を最初に、精製されたHLA-A*02:01分子に対するin vitro結合アッセイを使用して確認した。これらの6つのペプチドの免疫原性を評価するために、HLA-A2陽性ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)に対し、最適化されたin vitroプライミングアッセイを開発した(詳細は、
図4Aおよび方法を参照)。デキストラマーに基づくペプチド特異的CD8+T細胞の定量化は、ドナー間でばらつきを有して、すべてのペプチドに対する特異的T細胞の存在を明らかにした(
図4B)。P1は、11人中9人のドナーで有意なT細胞応答を有する最も免疫原性のペプチドであると考えられ、P4(7/10)、P6(4/9)、P2(3/11)がそれに続いた(
図4B)。これらのペプチドの免疫原性を、5人のHLA-A2陽性の健康なドナーから調製された単球由来樹状細胞(MoDC)を使用する従来のアッセイによりさらに確認した。フローサイトメトリー分析は、ペプチド刺激PBMCを同族エピトープでパルスしたT2細胞と共培養したときに、CD8+T細胞 IFN-γの産生を示した。注目すべきことに、P1はまた、他のペプチドと比較して、最も高いIFN-γ応答を誘導した。バイオインフォマティクスの予測と一致して、特異的T細胞誘導は、HLA-A2陰性ドナー(n=5)由来のPBMCを使用した場合観察されなかった。
【0218】
これらの結果に基づき、さらなる実験のためにP1、P2、P4、およびP6を選択した。多機能性IFN-γ+TNF-α+特異的CD8+T細胞応答が、脱顆粒マーカーCD107aの存在と関連して、刺激されたPBMCとペプチドパルスT2細胞の共培養時に観察された(
図4C)。同じ共培養条件でのFluorospotアッセイは、二重陽性細胞の存在下でのIFN-γおよびグランザイムBの分泌を確認した。
【0219】
エピトープ特異的CD8+T細胞クローンは、高い予測される親和性のT細胞受容体(TCR)により特徴づけられる。
P1、P2、P4、およびP6特異的CD8+T細胞を、デキストラマー染色を用いるフローサイトメトリーにより選別し、フィーダー細胞上で拡張させた(方法を参照)。CD8+T細胞の90%超(90~99%)が、選択-拡張の1つのステップ(P1)または2つのステップ(P2、P4およびP6)の後でデキストラマー陽性であった。TCRβ免疫シーケンシングは、それぞれ、P1、P2、P4、およびP6について拡張されたT細胞の90.8%、90.7%、99.6%、76%である固有のVβ再構成を有するドミナントクローンの存在を確認した(
図5A)。注目すべきことに、これらのクローンを特徴付けるTCRβのV/D/J組換え配列は、ペプチド刺激前のT細胞バルク中に存在しなかった(閾値感度:3x10-6)。TCRα鎖もまた配列決定し、P1、P4、およびP6について固有の主要クローンの存在を確認し、TCRの対形成とモデリングを可能にした。2つの主要なVα再構成がP2について得られたため、60%の頻度で発生する主な再構成を、TCRモデリングのために使用した。
【0220】
ペプチドP1、P2、P4、およびP6に対し特異的なT細胞クローンの親和性を次に、TCR-ペプチド-MHC(pMHC)複合体の3Dモデルを考慮することにより特徴付けた(方法を参照)。巨大分子複合体の安定性は、水素結合、塩橋、および疎水性相互作用などの、界面での好ましい相互作用の形成による。これらの相互作用は、TCR-pMHC界面で露出されるペプチドの特定の側鎖を要する。TCR P1複合体では、ペプチドのPhe1、Phe4、Trp8側鎖が、複数の疎水性相互作用を形成し、Phe4およびIle9のバックボーン原子が、水素結合に関与する。TCR P2複合体では、いくつかの疎水性相互作用が、ペプチド残基Pro4、Tyr5、およびTrp7により媒介される。TCRP4では、ペプチド残基Ile5、Ile7、およびLeu8が、いくつかの疎水性相互作用を形成し、一方でTyr1およびLys6側鎖、ならびにPhe4およびLeu8バックボーン原子が、水素結合に関与する。TCRP6では、Tyr1、Ser4、Asn5、Leu6、およびPhe7が、複数の疎水性相互作用を形成し、一方でSer4/Leu6/Ser8バックボーンおよびTyr1/Ser4/Asn5/Ser8側鎖が、8つの水素結合を形成する。
【0221】
全体として、予測3Dモデルのこの分析は、TCR-pMHC複合体がいくつかの好ましい非共有結合相互作用により安定化されることを示唆し、HERV特異的T細胞のクローン拡張後に同定されたTCRが、HLA-A2分子により提示されるペプチドと安定な複合体を形成することを裏付ける。さらなる洞察を得るために、3Dモデルを結合親和性予測に提出した(
図5B)。タンパク質構造データバンクで入手可能でありかつ結晶構造データから得られる参照TCR-pMHC複合体と比較すると、同定されたTCRの予測される親和性は、MAGE-A3、NY-ESO-1、MART-1、HTLV、またはCMVを標的とするTCRなどの、臨床的に関連するTCRの親和性と一致する(
図5C)。したがって、同定されたHERV特異的TCRは、高親和性TCRを暗示する、それらのそれぞれのpMHC複合体と安定的に相互作用すると予測される。
【0222】
高い結合性のHERV特異的T細胞クローンは、腫瘍細胞を認識し死滅させる
選別され拡張されたエピトープ特異的CD8+T細胞の機能性を、ペプチドパルスT2細胞を用いるFluorospotにより確認した。機能的結合力をその後、T2細胞に低下する濃度の同族ペプチド(10-4~10-9Mの範囲)を添加すること、および細胞の50%でIFN-γ応答を引き起こすために必要な最低のペプチド濃度(最大有効濃度の半分として定義、すなわちEC50)を測定することにより評価した。P1、P2、およびP6特異的T細胞について、それぞれ、6.6x10
-7M、1.9x10
-6M、6.8x10
-6Mと推定される、EC50値は、ネオエピトープ特異的T細胞クローン(28)およびCMV特異的T細胞(それぞれ、N9V-1およびN9V-2について、1.2x10
-6および1.9x10
-6)と同じ階数の大きさであった(
図6A)。
【0223】
次に、腫瘍細胞を認識し死滅させるこれらのHERVエピトープ特異的CD8+T細胞の能力を評価した。本発明者らは、エピトープ配列を含むHERVを発現すると以前に示された、HLA-A2陽性MDA-MB-231基底BRCA腫瘍細胞株を、標的候補として選択した(
図3C)。エピトープが実際に細胞表面上に存在するという証拠を提供するために、MSベースの方法を使用して、HLA分子から溶出されたペプチドを分析した。P1およびP6エピトープは、MSにより明確に検出された。重同位体標識対照との比較に基づき、MDA-MB-231細胞表面に1.8コピーのP1-HLA複合体が存在すると推定した。
【0224】
腫瘍細胞を、エピトープ特異的T細胞と、または同じ条件で選別され拡張されたデキストラマー陰性CD8+T細胞画分(陰性対照)と共培養した。フローサイトメトリー分析は、MDA-MB-231と接触したエピトープ特異的T細胞の約25%によるIFN-γの産生を強調し、非特異的T細胞で観察されたバックグラウンドと比較して顕著な増加(>6倍)を有した。このIFN-γの産生は、HLA-A2ブロックモノクローナル抗体により阻害され、T細胞クローンが、HLA-A2に制限された様式で腫瘍細胞を特異的に認識することを実証した。
【0225】
リアルタイムで腫瘍細胞死を監視するために、IncuCyte技術を使用して免疫細胞死滅アッセイを実施した。T細胞クローンは、標的細胞のCytotox蛍光試薬の量における時間依存的な増加により示されるように、MDA-MB-231細胞の顕著でHLA-A2制限された死滅を誘導した。対照的に、T細胞のデキストラマー陰性画分は、MDA-MB-231細胞(ペプチドでパルスした、またはパルスしない)の顕著な細胞死を誘導しなかった(
図6B)。特異的溶解(エフェクター対標的比E:T=2:1で)を、アロ反応性バックグラウンド(対応するデキストラマー陰性T細胞分画で誘導された標的細胞死により評価される)を引いた後、48時間後の標的細胞死の定量化に基づき計算した(方法を参照)。腫瘍細胞の特に高い特異的溶解が、P1およびP2特異的T細胞で達成され(それぞれ、35%および44%)、さらに中程度の溶解(15%)が、P6特異的T細胞で達成された。特異的溶解は、標的腫瘍細胞を同族エピトープでパルスした場合、さらに増加し、それぞれ、P1、P2、およびP6特異的T細胞では55%、80%、およびさらに95%に達した。注目すべきことに、エピトープ特異的T細胞クローンは、ここで陰性の正常細胞対照として使用したHLA-A2陽性ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)を死滅させなかった(
図6C)。これらの結果を、3D顕微鏡Nanolive技術を使用してさらに検証し、4.5時間後の腫瘍細胞の大部分の死滅に関連する特異的T細胞の活性化の形態学的兆候を示す(E:T=10:1)。ここでもまた、細胞死は、特異的T細胞をHMECと共培養した場合、およびMDA-MB-231細胞を非特異的T細胞と共培養した場合観察されなかった。同様の結果が、標的としてTNBC HLA-A2陽性細胞株HCC1599を使用して得られた。全体として、これらのデータは、選択されたエピトープが、HERVを発現する腫瘍細胞を選択的に認識し死滅させる、高い結合力のCD8+T細胞クローンを誘発することを示している。
【0226】
HERV特異的T細胞は、腫瘍浸潤T細胞中に存在する
HERVに対する適応免疫応答が癌患者において存在し得るという仮説を検証するために、TNBC HLA-A2患者(いかなるペプチド特異的刺激もなし)由来のポリクローナル的に拡張した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)中のHERVエピトープ特異的T細胞の存在を、デキストラマー染色により評価した。HERV特異的TILが、分析した11個の腫瘍サンプルの7個中で、少なくとも1つのエピトープに対し観察され、患者ごとにエピトープ特異性および頻度の点で異なっていた。P1、P4、およびP6が、最も高頻度で認識されたペプチドであり、それぞれ、4/11、4/11、および5/11件で、デキストラマーベースで同定された。
【0227】
これらの結果は、TNBC患者の転帰とこれらのHLA-A2エピトープを含む18個のCAHの発現の間の潜在的な関連性を調査させた。本発明者らは、TCGAコホートからの基底乳癌のHLA-A2患者におけるこれら18のHERVの平均発現に基づきスコアを確立した。興味深いことに、高いまたは中程度の18-HERVスコアを有するHLA-A2陽性患者は、低いスコアを有する患者より有意に良好な全生存率を有した(P=0.0066)(
図7A)。この予後への影響は、集団全体では観察されなかった。
【0228】
最後に、患者8の腫瘍由来のオルガノイドを用いることにより、原発腫瘍細胞に対するHERV特異的T細胞の抗腫瘍活性を評価した(方法を参照)。RNAseq解析は、継代初期および後期での18個のエピトープ含有CAHの発現を確認した。腫瘍オルガノイドを、3D顕微鏡Nanolive実験(E:T=10:1)において、P1、P6、またはCMV特異的CD8+T細胞クローンと共培養した。T細胞の活性化は、CMV特異的T細胞では観察されなかったが、P1およびP6特異的T細胞は、オルガノイドの溶解に関連する活発な増殖の兆候を呈した(
図7B)。
【0229】
全体として、これらの最後の結果は、HERV特異的T細胞が、腫瘍の発達中に誘導され、抗腫瘍免疫応答に関与し得ることを示唆する。
【配列表】
【国際調査報告】