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特表2025-503326高レベルの7-デヒドロコレステロールを含有するトマトおよびその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】高レベルの7-デヒドロコレステロールを含有するトマトおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A01H 6/82 20180101AFI20250123BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20250123BHJP
   A01H 5/06 20180101ALI20250123BHJP
   A01H 5/08 20180101ALI20250123BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20250123BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20250123BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250123BHJP
   C12N 15/74 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A01H6/82 ZNA
A01H5/00 A
A01H5/06
A01H5/08
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
C12N15/63 Z
C12N15/74 100Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024565892
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 KR2023001125
(87)【国際公開番号】W WO2023140722
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0009633
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524277739
【氏名又は名称】ジーエフエルエーエス ライフ サイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ ソンファ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ソンミ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジンファ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンモ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ミン キョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ユ-ナ
(57)【要約】
本発明は、遺伝子編集技術を使用することによって生産される、高レベルのビタミンD3前駆体を含有するトマト、およびその調製方法に関する。具体的には、DWF5-1遺伝子を欠失させたトマトは、高レベルの7-デヒドロコレステロールを蓄積し、種子をそれから産生できることが確認されている。したがって、そのようにして生産されるトマトは、高レベルのビタミンD3前駆体を含有し、高い商業的適用性を有し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度の下記式1の7-デヒドロコレステロールを含有する形質転換されたトマト。
【化1】
【請求項2】
7-デヒドロコレステロールが、前記トマトの果実および根に高濃度で含まれる、請求項1に記載の形質転換されたトマト。
【請求項3】
7-デヒドロコレステロールの濃度が、重量100g当たり0.01mg~1.5mgである、請求項1に記載の形質転換されたトマト。
【請求項4】
野生型トマトと比較して、DWF5-1遺伝子またはDWF5-1タンパク質の発現または活性を低下させるように遺伝子操作されている、請求項1に記載の形質転換されたトマト。
【請求項5】
前記DWF5-1遺伝子が、配列番号63の核酸配列を含む、請求項4に記載の形質転換されたトマト。
【請求項6】
前記遺伝子操作が、前記DWF5-1遺伝子の核酸配列における改変によって誘導される、請求項4に記載の形質転換されたトマト。
【請求項7】
前記核酸配列の前記改変が、置換、欠失または挿入により前記野生型トマトのものとは異なる配列を含む、請求項6に記載の形質転換されたトマト。
【請求項8】
CPD遺伝子またはCPDタンパク質の発現または活性を低下させるようにさらに遺伝子操作されている、請求項4に記載の形質転換されたトマト。
【請求項9】
前記CPDが、配列番号5の核酸配列を含む、請求項8に記載の形質転換されたトマト。
【請求項10】
前記遺伝子操作が、前記CPD遺伝子の核酸配列における改変によって誘導される、請求項8に記載の形質転換されたトマト。
【請求項11】
SMT1遺伝子またはSMT1タンパク質の発現または活性を低下させるようにさらに遺伝子操作されている、請求項8に記載の形質転換されたトマト。
【請求項12】
前記SMT1が、配列番号7の核酸配列を含む、請求項11に記載の形質転換されたトマト。
【請求項13】
前記遺伝子操作が、前記SMT1遺伝子の核酸配列における改変によって誘導される、請求項11に記載の形質転換されたトマト。
【請求項14】
ホモ接合体である、請求項4に記載の形質転換されたトマト。
【請求項15】
種子を形成する、請求項4に記載の形質転換されたトマト。
【請求項16】
DWF5-1遺伝子のヌクレオチド配列およびCRISPR(クラスター化され、規則的に間隔があいたパリンドローム反復、clustered regularly interspaced palindromic repeats)関連タンパク質をコードするヌクレオチド配列に相補的に結合する少なくとも1つのsgRNA(シングルガイドRNA)を含むベクター。
【請求項17】
前記sgRNAが、配列番号20、配列番号21およびそれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
前記CPD遺伝子のヌクレオチド配列に相補的に結合する1つまたは2つ以上のsgRNAをさらに含む、請求項16に記載のベクター。
【請求項19】
前記sgRNAが、配列番号28、配列番号29およびそれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
前記SMT1遺伝子のヌクレオチド配列に相補的に結合する1つまたは2つ以上のsgRNAをさらに含む、請求項16に記載のベクター。
【請求項21】
前記sgRNAが、配列番号32、配列番号33およびそれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、請求項20に記載のベクター。
【請求項22】
前記CRISPR関連タンパク質が、Cas9、Cpf1、c2c1、C2c2、Cas13、c2c3、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Csn1、Csx12、Cas10、Cas10d、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、Csyl、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csxl、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4およびCul966からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項16に記載のベクター。
【請求項23】
前記CRISPR関連タンパク質がCas9である、請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
請求項16から23のいずれか一項に記載のベクターを、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を使用してトマトに導入することを含む、高濃度の7-デヒドロコレステロールを含有する形質転換されたトマトを生産するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度の7-デヒドロコレステロール(ビタミンD3の前駆体)を含有するトマト、およびそれを生産するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンDは、生命を維持するための必須栄養素である。不足したビタミンDにより、くる病、骨軟化症、骨粗鬆症だけでなく、乳がん、結腸直腸がん、および前立腺がんなどの悪性腫瘍;高血圧症を含む心血管疾患;糖尿病;多発性硬化症;乾癬;関節リウマチ;結核なども増加することが報告されている。ビタミンDは、食品を介して摂取することができるが、十分な日光を介してインビボで合成することもできるビタミンである。したがって、日光に十分に曝露しない場合は、ビタミンDが豊富な食品またはビタミンD栄養補助食品を摂取すべきである。
【0003】
特に、現代人は、1日のほとんどを屋内で過ごし、屋外活動を行う場合でも、日光を衣服および帽子で遮るため、ビタミンD欠乏症に注意する必要がある。日光への暴露が不十分な場合、食品を介してビタミンDを十分に摂取しなければならないが、ビタミンDの含有量が高い食品が多くないという問題がある。ビタミンDが豊富であると公知の食品であっても、100g当たりに含まれるビタミンDの量は、0.29μg/約7枚のスライスチーズ(約100g)、2.9μg/100gのマグロ、1.36μg/2個の卵(約100g)、4.4μg/約1カップのレーズン(約100g)である。したがって、これらの食品からビタミンDの1日推奨量を満たすことはできない。
【0004】
さらに、ビタミンD栄養補助食品としての、合成ビタミンDには副作用および有害の可能性があることが報告されており、天然ビタミンDは非常に高価であり、入手が困難であるという問題を有する。一方、韓国特許出願公開第10-2017-0138657号は、DWF5(デルタ5、7-ステロールデタ7レダクターゼ、DWARF5)、CPD(構成的光形態形成DWAF、DWF3)およびSMT1(ステロールメチルトランスフェラーゼ1)遺伝子を欠失させた場合、ビタミンDの前駆体である7-デヒドロカンペステロールを豊富に含むレタスを生産できることを開示している。しかしながら、ビタミンD3の前駆体である7-デヒドロコレステロールを豊富に含むトマトの生産に関する研究は行われていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明者らは、CRISPR技術によって、DWF5-1、CPDおよびSMT1遺伝子を欠失させることによる実験を行った。結果として、DWF5-1遺伝子を欠失させた場合、高濃度の7-デヒドロコレステロールを含有するトマトが生産されることが確認された。以上のことに基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、ビタミンD3産生のための前駆体である高濃度の7-デヒドロコレステロールを含有するトマトを開発するために最適化されたDWF5-1、CPDおよびSMT1欠失部位を同定し、それらを含むビタミンD3の前駆体を豊富に含むトマトを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、高濃度の下記式1の7-デヒドロコレステロールを含有する形質転換されたトマトが提供される。
【0007】
本発明の別の態様では、DWF5-1遺伝子のヌクレオチド配列およびCRISPR(クラスター化され、規則的に間隔があいたパリンドローム反復、clustered regularly interspaced palindromic repeats)関連タンパク質をコードするヌクレオチド配列に相補的に結合する1つまたは2つ以上のsgRNA(シングルガイドRNA)を含むベクターが提供される。
【0008】
本発明の別の態様では、ベクターを、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を使用してトマトに導入することを含む、高濃度の7-デヒドロコレステロールを含有する形質転換されたトマトを生産するための方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により生産される形質転換されたトマトが、DWF5-1遺伝子の変異を含むホモ接合体であった場合、トマトの果実および根に多量の7-デヒドロコレステロールが蓄積された。さらに、ホモ接合体(T2)は種子を産生することができ、したがって所望のトマト形質を保存することができた。したがって、本発明の形質転換されたトマトは、高い商業的適用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】DWF5-1 sgRNAによって標的とされるDWF5-1の部位を示す図である。
図2】CPD sgRNAによって標的とされるCPDの部位を示す図である。
図3】SMT1 sgRNAによって標的とされるSMT1の部位を示す図である。
図4】RGENを使用して、DWF5-1 sgRNAの遺伝子編集効率を確認することによって得られた結果を示す図である。
図5】RGENを使用して、CPD sgRNAのCPD遺伝子編集効率を確認することによって得られた結果を示す図である。
図6】RGENを使用して、SMT1 sgRNAのSMT1遺伝子編集効率を確認することによって得られた結果を示す図である。
図7】DWF5-1 sgRNAをロードしたCas9-sgRNAベクターの概略図を示す。
図8】DWF5-1 sgRNAおよびCPD sgRNAをロードしたCas9-sgRNAベクターの概略図を示す。
図9】DWF5-1 sgRNA、CPD sgRNAおよびSMT1 sgRNAをロードしたCas9-sgRNAベクターの概略図を示す。
図10】アグロバクテリウム(Agrobacterium)を使用して、形質転換されたトマトを構築するためのプロセスを示すフローチャートである。
図11】遺伝子編集により構築されたトマトの発芽プロセスを示す。
図12】DWF5-1遺伝子を編集したトマト植物体を観察することによって得られた結果を示す図である。
図13】DWF5-1およびCPD遺伝子を編集したトマト植物体を観察することによって得られた結果を示す図である。
図14】DWF5-1、CPDおよびSMT1遺伝子を編集したトマト植物体を観察することによって得られた結果を示す図である。
図15】T7E1アッセイを使用して、DWF5-1、CPDまたはSMT1遺伝子が編集されたかどうかを確認することによって得られた結果を示す図である。
図16】サンガー配列決定を使用して、DWF5-1遺伝子が欠失したかどうかを確認することによって得られた結果を示す図である。
図17】DWF5-1遺伝子を欠失させたT1世代の形質転換されたトマト植物体におけるDWF5-1遺伝子表現型を、次世代配列決定により確認することによって得られた結果を示す図である。
図18a】DWF5-1遺伝子を欠失させたT1世代のホモ接合型の形質転換されたトマト植物体の、遺伝子編集効率および採取された種子の量(上)、ならびにヌクレオチド配列(下)を示す図である。
図18b】DWF5-1遺伝子を欠失させたT1世代のホモ接合型の形質転換されたトマト植物体のヌクレオチド配列を示す図である。
図19】DWF5-1遺伝子を欠失させたホモ接合体(T1)の、T2世代の形質転換されたトマト植物に含まれる7-デヒドロコレステロールを測定するためのサンプル調製プロセスを示すフローチャートである。
図20】DWF5-1遺伝子を欠失させたホモ接合体(T1)の、T2世代の形質転換されたトマト植物体に含まれる7-デヒドロコレステロールを測定するための、LC/MSによる測定条件を示す図である。
図21】標準試薬としての市販の7-デヒドロコレステロールと、野生型(WT)トマト植物体に含まれる7-デヒドロコレステロールと、DWF5-1遺伝子を欠失させたホモ接合体(T1)の、T2世代の形質転換されたトマト植物体に含まれる7-デヒドロコレステロールとを、LC/MSにより測定することによって得られた結果を示す図である。
図22】DWF5-1遺伝子を欠失させたホモ接合体(T1)の、T2世代の形質転換されたトマト植物体の果実に含まれる7-デヒドロコレステロールを、LC/MSにより測定することによって得られた結果を示すグラフである。
図23】DWF5-1遺伝子を欠失させたホモ接合体(T1)の、T2世代の形質転換されたトマト植物体におけるハイグロマイシンおよびホスフィノトリシン(PPT)耐性遺伝子の発現を、RT-PCRにより確認することによって得られた結果を示す図である。
図24】抗生物質耐性遺伝子を発現していないT2世代の形質転換されたトマト植物体(D100_3-14-29およびD100_7-1-15)におけるDWF5-1のエクソン6ドメインのヌクレオチド配列を、野生型(WT)トマト植物体のものと比較し、分析することによって得られた結果を示す図である。
図25】抗生物質耐性遺伝子を発現していないT2世代の形質転換されたトマト植物体(D100_3-14-29およびD100_7-1-15)におけるDWF5-1のエクソン6ドメインのアミノ酸配列を、野生型(WT)トマト植物体のものと比較し、分析することによって得られた結果を示す図である。
図26】DWF5-1遺伝子を欠失させたホモ接合型(T2)の形質転換されたトマト植物体(T2)の表現型を示す図である。
図27】トマト植物体の根、茎、葉および果実におけるDWF5-1またはDWF5-2遺伝子の発現レベルを、q-PCRにより確認することによって得られた結果を示すグラフである。****p<0.0001
図28】DWF5-1遺伝子を欠失させたホモ接合体(T1)の、T3世代の形質転換されたトマト植物体の根(培養された根)に含まれる7-デヒドロコレステロールを、GC/MSにより測定することによって得られた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明を実施するための最良の形態
本発明の一態様では、高濃度の下記式1の7-デヒドロコレステロールを含有する形質転換されたトマトが提供される。
【化1】
【0012】
本明細書で使用される場合、「トマト」という用語は、Solanum lycopersicumの科学名を有し、ナス科、ナス目に属する植物またはその果実を指す。中南米原産で、1~3mの高さを有し、黄色の花を有する一年生植物である。この果実はリコペンに起因して赤色であり、食用目的に使用される。本明細書では、トマトは植物体であってもよく、植物器官(例えば、根、茎、葉、花弁(花)、種子、果実など)、植物組織(表皮、篩、柔組織、木部、維管束組織)などであってもよい。具体的には、果実および/または根であってもよい。この場合、トマト植物体は、根の培養物などを含む細胞培養物を含んでもよい。
【0013】
本明細書で使用される場合、「7-デヒドロコレステロール」という用語は、ビタミンD3に変換されるプロビタミンD3である。本発明では、形質転換されたトマトは、重量100g当たり0.01mg~1.5mgの7-デヒドロコレステロールを含み得る。具体的には、形質転換されたトマトは、重量100g当たり0.01mg、0.10mg、0.20mg、0.30mg、0.40mg、0.50mg、0.60mg、0.70mg、0.80mg、0.90mg、1.00mg、1.10mg、1.20mg、1.30mg、1.40mgまたは1.50mgの7-デヒドロコレステロールを含み得る。
【0014】
本発明では、形質転換されたトマトは、野生型トマトと比較して、リコペルシカムDWF5-1(DWF5-1)遺伝子またはDWF5-1タンパク質の発現または活性を低下させるように遺伝子操作され得る。この場合、遺伝子操作は、核酸配列の改変によって誘導されてもよい。
【0015】
本明細書で使用される場合、「DWF5」という用語は、7-デヒドロコレステロールレダクターゼを指す。この酵素はまた、デルタ5,7-ステロールデルタ7レダクターゼとも称される。この酵素は、フィトステロール代謝経路の中間代謝産物である5-デヒドロエピステロールを還元し、それを24-メチレンコレステロールに変換する活性を有する。
【0016】
植物においてDWF5が単一遺伝子として存在するArabidopsis thalianaでは、DWF5遺伝子を欠失させると、フィトステロール代謝が急速に低下し、成体への成長を妨げる矮性をもたらすことが知られている。トマトでは、DWF5は、DWF5-1およびDWF5-2の2つの形態で存在する。この場合、DWF5-1およびDWF5-2は、それぞれ配列番号2および配列番号4のアミノ酸配列を含み得る。DWF5-1遺伝子はフィトステロール代謝経路で機能し、DWF5-2遺伝子は、7-デヒドロコレステロールを還元(7-デヒドロコレステロールレダクターゼ)し、それをコレステロールに変換することにより、コレステロール産生経路で機能することが報告されている。このため、DWF5-1遺伝子を欠失させた場合、フィトステロール代謝を低下させる可能性が高いことに起因して、異常な成長が起こり得ることが予想され得る。しかしながら、植物におけるコレステロール経路は、フィトステロール代謝経路から進化したことが報告されているため、DWF5-1およびDWF5-2が互いに機能的相同性を有する可能性を完全に除外することはできない。本発明におけるDWF5-1およびDWF5-2の遺伝子発現パターンの比較および分析の結果として、DWF5-1は、トマトの葉、茎、根、花、未熟果実および成熟果実のすべてにおいて、DWF5-2遺伝子よりも5~10倍以上高く発現しており、DWF5-2遺伝子はまた、すべての組織において低い発現レベルで発現していた。したがって、DWF5-1およびDWF5-2の機能的相同性を仮定すると、DWF5-1遺伝子は、トマト果実中の7-デヒドロコレステロール含有量をより効率的に増加させることができると考えられた。
【0017】
本発明では、DWF5-1遺伝子のみを欠失させた変異体の植物体は、未熟および成熟トマト果実および根組織のいずれにおいても高含有量のプロビタミンD3を産生し、それらの成長および種子産生は、野生型トマトのものと同様であった(図18図26および表13)。したがって、本発明では、少なくともDWF5-1遺伝子の欠失により、成熟果実においてプロビタミンD3を高濃度に産生するトマトを開発し、DWF5-1遺伝子の単一欠失が、野生型のものと同様に、成長および果実産生することができる産業上有用な技法であることを確認した。
【0018】
本発明では、DWF5は、DWF5-1であり得る。具体的には、本発明では、DWF5は、配列番号2のアミノ酸を含むDWF5-1であり得る。DWF5-1遺伝子は、DWF5-1をコードするヌクレオチド配列を含むゲノムDNA、cDNAまたはRNAであってもよい。より具体的には、本発明では、DWF5-1遺伝子はゲノムDNAであってもよい。本発明では、DWF5、DWF5-1およびSlDWF5-1は、互換的に使用され得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「ゲノムDNA」という用語は、染色体DNAを指し、遺伝的情報が真核細胞においてコードされている形態を指す。真核生物ゲノムDNA(以下、DNAと称する)は、エクソンおよびイントロンを含む。エクソンは、タンパク質をコードする核酸配列を含む部分であり、イントロンは、タンパク質合成に関与しない部分である。生物の機能のために必要な様々なタンパク質を産生するために、DNAはRNAに転写され、この際、イントロンを除くエクソンが一緒に連結される。イントロンは、転写の開始を誘導するプロモーターなどの転写を助ける情報を含み、転写プロセスにおいてプレmRNAを作製するために使用されるが、成熟mRNAを作製するために使用されるのではなく切断される。
【0020】
本発明では、DWF5-1遺伝子は、12個のエクソンおよび11個のイントロンを含み得る。具体的には、DWF5-1は、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、またはエクソン12を含み得る。さらに、DWF5-1は、イントロン1、イントロン2、イントロン3、イントロン4、イントロン5、イントロン6、イントロン7、イントロン8、イントロン9、イントロン10、またはイントロン11を含み得る。
【0021】
より具体的には、DWF5-1遺伝子のエクソン1からエクソン12は、それぞれ配列番号40から配列番号51の核酸配列を含み得るか、またはそれらからなり得る。DWF5-1遺伝子のイントロン1からイントロン11は、それぞれ配列番号52から配列番号62の核酸配列を含み得るか、またはそれらからなり得る。
【0022】
一実施形態では、本発明において、DWF5-1遺伝子は、配列番号63の核酸配列を含み得るか、またはそれからなり得る。
【0023】
本発明では、DWF5-1遺伝子は、DWF5-1の転写を調節するフランキング領域を含み得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「フランキング領域」という用語は、特定の遺伝子の両側に広がるDNA配列であり、RNAに転写されない部位である。遺伝子の5’端に隣接するDNA領域は5’フランキング領域と称され、遺伝子の3’端に隣接するDNA領域は3’フランキング領域と称される。フランキング領域は調節配列を含み、上記の配列を介して転写に関与するタンパク質に結合することによって遺伝子の転写を調節する。特に、真核生物の場合、5’フランキング領域は、エンハンサー、サイレンサー、プロモーターなどを含み、転写因子およびRNAポリメラーゼなどのタンパク質に結合することによって転写を調節する。
【0025】
本発明の一実施形態では、DWF5-1遺伝子の5’フランキング領域は、配列番号64の核酸配列を含み得る。一実施形態では、DWF5-1遺伝子の3’フランキング領域は、配列番号65の核酸配列を含み得る。
【0026】
より具体的には、本発明では、DWF5-1遺伝子はcDNAであってもよい。一実施形態では、それは配列番号1の核酸配列を含み得るか、またはそれからなり得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「遺伝子操作」または「遺伝子操作された」という用語は、細胞またはそれによって産生される細胞に1つまたは複数の遺伝的改変を導入する行為を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「遺伝子またはタンパク質の発現または活性の低下」という用語は、標的遺伝子またはタンパク質の発現または活性が、標的遺伝子またはタンパク質が相当する同じ種の野生型の発現または活性と比較して、低いことを意味する。さらに、「不活性化」とは、野生型の標的遺伝子またはタンパク質と比較して、発現しないかまたは発現しても活性を有しないタンパク質が産生されることを意味する。
【0029】
換言すれば、DWF5-1遺伝子またはタンパク質の発現または活性の低下または不活性化とは、野生型トマトのDWF5-1遺伝子によって通常行われる生物学的機能または役割のすべてまたは一部が失われることを意味する。例えば、DWF5-1遺伝子によって発現されるタンパク質は、未成熟で終結され得るか、またはタンパク質としてのその正常な機能を失い得る。具体的には、遺伝子編集は、標的領域に終止コドンを生成させること、または野生型のものとは異なるアミノ酸をコードするコドンを生成させることにより、DWF5-1遺伝子をノックアウトすることであってもよい。さらに、タンパク質を産生しない非コードDNA配列に変異を導入することであってもよいが、これに限定されない。
【0030】
具体的には、遺伝子操作され形質転換されたトマトは、野生型トマトのDWF5-1遺伝子またはタンパク質と比較して、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上または約100%低減したDWF5-1遺伝子またはタンパク質を有し得る。DWF5-1遺伝子またはDWF5-1タンパク質の発現または活性は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して求めることができる。
【0031】
遺伝子操作は、核酸配列の改変によって誘導されてもよい。具体的には、遺伝子操作は、置換(変換)、欠失または挿入による核酸配列の改変によって誘導されてもよい。上記遺伝子操作により、本発明の形質転換されたトマトのDWF5-1遺伝子は、野生型トマトのDWF5-1遺伝子とは異なる遺伝子配列を含み得、上記遺伝子の生物学的機能を失い得る。
【0032】
より具体的には、DWF5-1遺伝子の操作は、以下からなる群から選択される核酸配列における任意の1つの改変によって誘導され得る:
i)DWF5-1遺伝子のすべてまたは1~50の連続するヌクレオチド配列の欠失;
ii)DWF5-1遺伝子の1~50のヌクレオチドを、野生型DWF5-1遺伝子のものとは異なるヌクレオチドで置換;
iii)A、T、CおよびGからそれぞれ独立して選択される1~50のヌクレオチドのDWF5-1遺伝子への挿入;ならびに
iv)それらの組合せ。
【0033】
より具体的には、遺伝子操作は、以下からなる群から選択される核酸配列における任意の1つの改変によって誘導され得る:
i)DWF5-1遺伝子のすべてまたは一部の欠失、例えば、DWF5-1遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、例えば、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~3または1ヌクレオチドの欠失;
ii)DWF5-1遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチド、例えば、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~3または1ヌクレオチドの、野生型DWF5-1遺伝子のものとは異なるヌクレオチドによる置換;
iii)A、T、CおよびGから選択される1つまたは複数のヌクレオチド、例えば、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~3または1ヌクレオチドの、DWF5-1遺伝子の任意の部位への挿入;ならびに
iv)i)~iii)の組合せ。
【0034】
DWF5-1遺伝子の核酸配列(「標的領域」)が改変される部分は、上記遺伝子における1個以上、3個以上、5個以上、7個以上、10個以上、12個以上、15個以上、17個以上、20個以上、25個以上、27個以上、30個以上、33個以上、37個以上、40個以上、43個以上、47個以上、または50個以上の連続するヌクレオチド配列の領域であり得る。
【0035】
本発明の一実施形態では、DWF5-1遺伝子の核酸配列における改変は、エクソン6(配列番号9)、エクソン7(配列番号10)、エクソン9(配列番号11)、エクソン10(配列番号12)、エクソン11(配列番号13)およびそれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つのドメインの核酸配列に含まれ得る。本発明の一実施形態では、DWF5-1遺伝子の核酸配列における改変は、エクソン6ドメインの核酸配列に含まれ得る。具体的には、DWF5-1のエクソン6ドメインの核酸配列を含む配列番号9のヌクレオチド配列は、核酸配列における置換、欠失または挿入によって改変され得る。より具体的には、配列の改変は、DWF5-1遺伝子もしくはDWF5-1タンパク質の発現もしくは活性を低下させるために、または終止コドンの存在をもたらすために、DWF5-1遺伝子のエクソン6ドメインの核酸配列を含む配列番号9のヌクレオチド配列における置換、欠失または挿入によって誘導され得る。
【0036】
本発明の形質転換されたトマトは、CPD遺伝子またはCPDタンパク質の発現または活性を低下させるようにさらに遺伝子操作されてもよい。遺伝子操作は、上記と同じである。
【0037】
本明細書で使用される場合、「CPD(構成的光形態形成DWAF)」という用語は、DWF3としても公知のシトクロムP450モノオキシゲナーゼのCP90Aファミリーの酵素である。ブラシノリド生合成プロセス中、それはC6酸化経路に作用して、カサステロンをテアステロンに変換し、6-デオキシカサステロンを6-デオキシテアステロンに変換する。本発明では、上記酵素は、7-デヒドロカンペステロールを7-デヒドロカンペスタノールに還元する働きをする。
【0038】
この場合、CPDは、配列番号6のアミノ酸配列を含み得る。さらに、それをコードする核酸は、配列番号5のヌクレオチド配列を含み得る。
【0039】
本発明では、CPD遺伝子またはCPDタンパク質の発現または活性の低下または不活性化とは、野生型トマトのCPD遺伝子によって通常行われる生物学的機能または役割のすべてまたは一部が失われることを意味する。この場合、遺伝子またはタンパク質の発現または活性の低下および不活性化は、上記と同じである。例えば、CPD遺伝子によって発現されるタンパク質は、未成熟で終結され得るか、またはタンパク質としてのその正常な機能を失い得る。具体的には、遺伝子編集は、標的領域に終止コドンを生成させること、または野生型のものとは異なるアミノ酸をコードするコドンを生成させることにより、CPD遺伝子をノックアウトすることであってもよい。さらに、タンパク質を産生しない非コードDNA配列に変異を導入することであってもよいが、これに限定されない。
【0040】
具体的には、遺伝子操作され形質転換されたトマトは、野生型トマトのCPD遺伝子またはタンパク質と比較して、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%低減したCPD遺伝子またはタンパク質を有し得る。CPD遺伝子またはCPDタンパク質の発現または活性は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して求めることができる。
【0041】
遺伝子操作は、核酸配列の改変によって誘導されてもよい。具体的には、遺伝子操作は、置換、欠失または挿入による核酸配列の改変によって誘導されてもよい。上記遺伝子操作により、本発明の形質転換されたトマトのCPD遺伝子は、野生型トマトのCPD遺伝子とは異なる遺伝子配列を含み得、上記遺伝子の生物学的機能を失い得る。
【0042】
より具体的には、CPD遺伝子の操作は、以下からなる群から選択される核酸配列における任意の1つの改変によって誘導され得る:
i)CPD遺伝子のすべてまたは1~50の連続するヌクレオチド配列の欠失;
ii)CPD遺伝子の1~50のヌクレオチドを、野生型CPD遺伝子のものとは異なるヌクレオチドで置換;
iii)A、T、CおよびGからそれぞれ独立して選択される1~50のヌクレオチドのCPD遺伝子への挿入;ならびに
iv)それらの組合せ。
【0043】
より具体的には、遺伝子操作は、以下からなる群から選択される核酸配列における任意の1つの改変によって誘導され得る:
i)CPD遺伝子のすべてまたは一部の欠失、例えば、CPD遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、例えば、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~3または1ヌクレオチドの欠失;
ii)CPD遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチド、例えば、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~3または1ヌクレオチドの、野生型CPD遺伝子のものとは異なるヌクレオチドによる置換;
iii)A、T、CおよびGから選択される1つまたは複数のヌクレオチド、例えば、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~3または1ヌクレオチドの、CPD遺伝子の任意の部位への挿入;ならびに
iv)i)~iii)の組合せ。
【0044】
CDP遺伝子の核酸配列(「標的領域」)が改変される部分は、上記遺伝子における1個以上、3個以上、5個以上、7個以上、10個以上、12個以上、15個以上、17個以上、20個以上、25個以上、27個以上、30個以上、33個以上、37個以上、40個以上、43個以上、47個以上、または50個以上の連続するヌクレオチド配列の領域であり得る。
【0045】
本発明の一実施形態では、CPD遺伝子の核酸配列における改変は、エクソン7(配列番号14)、エクソン8(配列番号15)およびそれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つのドメインの核酸配列に含まれ得る。本発明の一実施形態では、CPD遺伝子の核酸配列における改変は、エクソン8ドメインの核酸配列における改変であり得る。具体的には、CPD遺伝子のエクソン8ドメインの核酸配列を含む配列番号15のヌクレオチド配列は、核酸配列における置換、欠失または挿入によって改変され得る。より具体的には、配列の改変は、CDPの活性を低下させるために、または終止コドンの存在をもたらすために、CDP遺伝子のエクソン8ドメインの核酸配列を含む配列番号15のヌクレオチド配列における置換、欠失または挿入によって誘導され得る。
【0046】
本発明のDWF5-1およびCPD遺伝子に変異を含む形質転換されたトマトは、SMT1遺伝子またはSMT1タンパク質の発現または活性を低下させるようにさらに遺伝子操作されてもよい。遺伝子操作は、上記と同じである。
【0047】
本明細書で使用される場合、「SMT1(ステロールメチルトランスフェラーゼ1)」という用語は、ステロイドの側枝にメチル基を付加する酵素である。具体的には、SMT1は、5-デヒドロエピステロールを7-デヒドロカンペステロールに変換する働きをする。
【0048】
この場合、SMT1は、配列番号8のアミノ酸配列を含み得る。さらに、それをコードする核酸は、配列番号7のヌクレオチド配列を含み得る。
【0049】
本発明では、SMT1遺伝子またはSMT1タンパク質の発現または活性の低下または不活性化とは、野生型トマトのSMT1遺伝子によって通常行われる生物学的機能または役割のすべてまたは一部が失われることを意味する。この場合、遺伝子またはタンパク質の発現または活性の低下および不活性化は、上記と同じである。例えば、SMT1遺伝子によって発現されるタンパク質は、未成熟で終結され得るか、またはタンパク質としてのその正常な機能を失い得る。具体的には、遺伝子編集は、標的領域に終止コドンを生成させること、または野生型のものとは異なるアミノ酸をコードするコドンを生成させることにより、SMT1遺伝子をノックアウトすることであってもよい。さらに、タンパク質を産生しない非コードDNA配列に変異を導入することであってもよいが、これに限定されない。
【0050】
具体的には、遺伝子操作され形質転換されたトマトは、野生型トマトのSMT1遺伝子またはSMT1タンパク質と比較して、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%低減したSMT1遺伝子またはSMT1タンパク質を有し得る。SMT1遺伝子またはSMT1タンパク質の発現または活性は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して求めることができる。
【0051】
遺伝子操作は、核酸配列の改変によって誘導されてもよい。具体的には、遺伝子操作は、置換、欠失または挿入による核酸配列の改変によって誘導されてもよい。上記遺伝子操作により、本発明の形質転換されたトマトのSMT1遺伝子は、野生型トマトのSMT1遺伝子とは異なる遺伝子配列を含み得、上記遺伝子の生物学的機能を失い得る。
【0052】
より具体的には、SMT1遺伝子の操作は、以下からなる群から選択される核酸配列における任意の1つの改変によって誘導され得る:
i)SMT1遺伝子のすべてまたは1~50の連続するヌクレオチド配列領域の欠失;
ii)SMT1遺伝子の1~50のヌクレオチドを、野生型SMT1遺伝子のものとは異なるヌクレオチドで置換;
iii)A、T、CおよびGからそれぞれ独立して選択される1~50のヌクレオチドのSMT1遺伝子への挿入;ならびに
iv)それらの組合せ。
【0053】
より具体的には、遺伝子操作は、以下からなる群から選択される核酸配列における任意の1つの改変によって誘導され得る:
i)SMT1遺伝子のすべてまたは一部の欠失、例えば、SMT1遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、例えば、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~3または1ヌクレオチドの欠失;
ii)SMT1遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチド、例えば、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~3または1ヌクレオチドの、野生型SMT1遺伝子のものとは異なるヌクレオチドによる置換;
iii)A、T、CおよびGから選択される1つまたは複数のヌクレオチド、例えば、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~3または1ヌクレオチドの、SMT1遺伝子の任意の部位への挿入;ならびに
iv)i)~iii)の組合せ。
【0054】
SMT1遺伝子の核酸配列(「標的領域」)が改変される部分は、上記遺伝子における1個以上、3個以上、5個以上、7個以上、10個以上、12個以上、15個以上、17個以上、20個以上、25個以上、27個以上、30個以上、33個以上、37個以上、40個以上、43個以上、47個以上、または50個以上の連続するヌクレオチド配列の領域であり得る。
【0055】
本発明の一実施形態では、SMT1遺伝子の核酸配列における改変は、エクソン7(配列番号16)、エクソン9(配列番号17)、エクソン11(配列番号18)、エクソン12(配列番号19)およびそれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つのドメインの核酸配列に含まれ得る。本発明の一実施形態では、SMT1遺伝子における変異は、エクソン7およびエクソン9ドメインの核酸配列における改変を含み得る。具体的には、SMT1遺伝子における変異は、エクソン7およびエクソン9ドメインの核酸配列を含む配列番号16および配列番号17のヌクレオチド配列における置換、欠失または挿入による改変であり得る。より具体的には、配列の改変は、SMT1の活性を低下させるために、または終止コドンの存在をもたらすために、SMT1遺伝子のエクソン7およびエクソン9ドメインの核酸配列を含む配列番号16および配列番号17のヌクレオチド配列における置換、欠失または挿入によって誘導され得る。
【0056】
形質転換されたトマトはホモ接合体であってもよい。すなわち、核酸配列の改変は、DWF5-1をコードする2つの遺伝子に含まれてもよい。一実施形態では、核酸配列の改変は、DWF5-1遺伝子のエクソン6、エクソン7、エクソン9、エクソン10、エクソン11およびそれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つのドメインをコードする2つの遺伝子に含まれ得る。本発明の一実施形態では、形質転換されたトマトは、野生型DWF5-1遺伝子の核酸配列とは異なる、DWF5-1遺伝子のエクソン6ドメインをコードする2つの遺伝子において改変された配列を有し得る。
【0057】
形質転換されたトマトでは、核酸配列の改変は、DWF5-1、CPDおよびSMT1をコードする2つの遺伝子に含まれてもよい。この場合、形質転換されたトマトは、野生型CPD遺伝子の核酸配列とは異なる、CPD遺伝子のエクソン7、エクソン8およびそれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つのドメインをコードする2つの遺伝子において改変された配列を有し得る。さらに、核酸配列の改変は、SMT1遺伝子のエクソン7、エクソン9、エクソン11、エクソン12およびそれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つのドメインをコードする2つの遺伝子に含まれ得る。この場合、核酸配列の改変は、上記と同じである。
【0058】
本発明の一実施形態では、形質転換されたトマトにおいて、核酸配列の改変は、それぞれがDWF5-1のエクソン6ドメイン、CDPのエクソン7ドメイン、ならびにSMT1のエクソン7およびエクソン9ドメインをコードする2つの遺伝子に含まれ得る。
【0059】
本発明による形質転換されたトマトがホモ接合体であり、かつDWF5-1遺伝子またはタンパク質の発現または活性が低下または不活性化される場合、トマトは種子を形成することができる。形質転換されたトマトがホモ接合体であり、かつDWF5-1、CPDおよびSMT1遺伝子またはタンパク質の発現または活性が低下または不活性化される場合、トマトは果実を生じない可能性があり、種子を形成しない可能性がある。
【0060】
本発明の別の態様では、DWF5-1遺伝子のヌクレオチド配列およびCRISPR関連タンパク質をコードするヌクレオチド配列に相補的に結合する1つまたは2つ以上のsgRNAを含むベクターが提供される。ここで、DWF5-1は、上記と同じである。さらに、DWF5-1遺伝子は、ゲノムDNA、cDNAまたはRNAであってもよい。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ガイドRNA(gRNA)」という用語は、ゲノム編集を通じて細胞内の標的核酸を認識し、標的核酸を切断、挿入、またはライゲーションするポリヌクレオチドを指す。gRNAは、標的核酸中の標的配列に相補的な配列を含み得る。gRNAは、標的核酸中のPAMの5’または3’方向に2~24の連続するヌクレオチド(以下、「nt」と称する)」のヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチドであり得る。gRNAの長さは、17nt、18nt、19nt、20nt、21nt、22nt、23ntまたは24ntであり得る。
【0062】
gRNAは、シングルガイドRNA(sgRNA)であってもよい。sgRNAは、標的核酸配列に特異的なCRISPR RNA(crRNA)および/またはCRISPR関連タンパク質と複合体を形成するトランス活性化型crRNA(tracrRNA)を含み得る。sgRNAは、標的遺伝子中の標的核酸配列(標的領域)(スペーサー領域、標的DNA認識配列、塩基対合領域などとも称される)に相補的なヌクレオチド配列(標的化配列)と、CRISPR関連タンパク質に結合するためのヘアピン構造とを有する部分を含み得る。より具体的には、標的遺伝子中の標的核酸配列に相補的なヌクレオチド配列(標的化配列)、CRISPR関連タンパク質に結合するためのヘアピン構造、およびターミネーター配列を含む部分を含み得る。上記の構造は、5’から3’へと順に順次存在してもよいが、これに限定されない。sgRNAが、crRNAおよびtracrRNAの主要領域と、標的遺伝子に相補的なヌクレオチド配列とを含む限り、いずれの種類のsgRNAが使用されてもよい。
【0063】
本発明では、sgRNAは、DWF5-1のゲノムDNAの核酸配列に相補的に結合し得る。具体的には、sgRNAは、配列番号63に相補的に結合し得る。より具体的には、sgRNAは、DWF5-1遺伝子のエクソン1からエクソン12、イントロン1からイントロン11、5’フランク領域および3’フランク領域からなる群から選択される1つまたは2つ以上のドメインの核酸配列に相補的に結合し得る。より具体的には、それは配列番号40から配列番号62、配列番号64および配列番号65からなる群から選択される1つまたは2つ以上のドメインの核酸配列に相補的に結合し得る。
【0064】
本発明では、sgRNAは、DWF5-1のcDNAの核酸配列に相補的に結合し得る。具体的には、sgRNAは、配列番号1の核酸配列に相補的に結合し得る。
【0065】
本発明の一実施形態では、sgRNAは、DWF5-1遺伝子のエクソン6、エクソン7、エクソン9、エクソン10およびエクソン11からなる群から選択されるいずれか1つのドメインの核酸配列に相補的に結合し得る。一実施形態では、DWF5-1遺伝子のエクソン6ドメインの核酸配列に結合するsgRNAは、配列番号20または配列番号21のヌクレオチド配列を含み得る。一実施形態では、エクソン7ドメインの核酸配列に結合するsgRNAは、配列番号22のヌクレオチド配列を含み得る。一実施形態では、エクソン9ドメインの核酸配列に結合するsgRNAは、配列番号23または配列番号24のヌクレオチド配列を含み得る。一実施形態では、エクソン10ドメインに結合するsgRNAは、配列番号25のヌクレオチド配列を含み得る。一実施形態では、エクソン11ドメインの核酸配列に結合するsgRNAは、配列番号26のヌクレオチド配列を含み得る。好ましくは、本発明の一実施形態では、sgRNAは、エクソン6ドメインの核酸配列に相補的に結合する配列番号20および配列番号21のヌクレオチド配列を含み得るか、またはそれらからなり得る。
【0066】
本発明では、ベクターは、CPD遺伝子のヌクレオチド配列に相補的に結合するsgRNAをさらに含んでもよい。CPD遺伝子に相補的に結合するsgRNAは、CPD遺伝子のエクソン7またはエクソン8ドメインのヌクレオチド配列に相補的に結合し得る。CPD遺伝子のエクソン7ドメインに結合するsgRNAは、配列番号27のヌクレオチド配列を含み得る。CPD遺伝子のエクソン8ドメインに結合するsgRNAは、配列番号28、配列番号29、配列番号30または配列番号31のヌクレオチド配列を含み得る。本発明の一実施形態では、sgRNAは、エクソン8ドメインのヌクレオチド配列に相補的に結合する配列番号28および配列番号29のヌクレオチド配列を含み得る。
【0067】
本発明では、DWF5およびCPD遺伝子のヌクレオチド配列に相補的に結合するsgRNAを含むベクターは、SMT1遺伝子のヌクレオチド配列に相補的に結合するsgRNAをさらに含んでもよい。この場合、SMT1遺伝子のヌクレオチド配列に相補的に結合するsgRNAは、SMT1遺伝子のエクソン7、エクソン9、エクソン11およびエクソン12からなる群から選択される1つまたは2つ以上のドメインのヌクレオチド配列に相補的に結合し得る。SMT1遺伝子のエクソン7ドメインに結合するsgRNAは、配列番号32のヌクレオチド配列を含み得る。SMT1遺伝子のエクソン9ドメインに結合するsgRNAは、配列番号33のヌクレオチド配列を含み得る。SMT1遺伝子のエクソン11ドメインに結合するsgRNAは、配列番号34のヌクレオチド配列を含み得る。SMT1遺伝子のエクソン12ドメインに結合するsgRNAは、配列番号35のヌクレオチド配列を含み得る。本発明の一実施形態では、sgRNAは、エクソン7およびエクソン9ドメインのヌクレオチド配列に相補的に結合する配列番号32および配列番号33のヌクレオチド配列を含み得る。この場合、DWF5およびCPD遺伝子のヌクレオチド配列に相補的に結合するsgRNAは、上記と同じである。
【0068】
本明細書で使用される場合、「CRISPR(クラスター化され、規則的に間隔があいたパリンドローム反復)関連タンパク質」(CRISPR関連タンパク質)という用語は、DNAまたはRNAなどの核酸が二本鎖または一本鎖(dsDNA/RNAおよびssDNA/RNA)を有する場合に、核酸を認識および切断することができる酵素を指す。具体的には、それはsgRNAに結合した二本鎖または一本鎖核酸を認識し、それを切断することができる。CRISPR関連タンパク質には、CRISPR関連タンパク質、およびその機能を有する変異体が含まれる。
【0069】
CRISPR関連タンパク質は、Streptococcus pyogenes、Streptococcus thermophilus、Streptococcus sp.、Staphylococcus aureus、Nocardiopsis dassonvillei、Streptomyces pristinae spiralis、Streptomyces viridochromogenes、Streptosporangium roseum、Alicyclobacillus acidocaldarius、Bacillus pseudomycoides、Bacillus selenitireducens、Exiguobacterium sibiricum、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus salivarius、Microscilla marina、Burkholderiales bacterium、Polaromonas naphthalenivorans、Polaromonas sp.、Crocosphaera watsonii、Cyanothece sp.、Microcystis aeruginosa、Pseudomonas aeruginosa、Synechococcus sp.、Acetohalobium arabaticum、Ammonifex degensii、Caldicelulosiruptor becscii、Candidatus Desulforudis、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Finegoldia magna、Natranaerobius thermophilus、Pelotomaculum thermopropionicum、Acidithiobacillus caldus、Acidithiobacillus ferrooxidans、Allochromatium vinosum、Marinobacter sp.、Nitrosococcus halophilus、Nitrosococcus watsoni、Pseudoalteromonas haloplanktis、Ktedonobacter racemifer、Methanohalobium evestigatum、Anabaena variabilis、Nodularia spumigena、Nostoc sp.、Arthrospira maxima、Arthrospira platensis、Arthrospira sp.、Lyngbya sp.、Microcoleus chthonoplastes、Oscillatoria sp.、Petrotoga mobilis、Thermosipho africanus、Acaryochloris marina、Leptotrichia shahii、PrevotellaまたはFrancisella novicidaの細菌に由来してもよい。
【0070】
本発明では、CRISPR関連タンパク質は、Cas9、Cpf1、c2c1、C2c2、Cas13、c2c3、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Csn1、Csx12、Cas10、Cas10d、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、Csyl、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csxl、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4およびCul966からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。具体的には、CRISPR関連タンパク質はCas9であり得る。
【0071】
Cas9タンパク質は、ガイドsgRNAと複合体を形成して、リボ核酸タンパク質(RNP)の形態として作用し得る。ここで、「リボ核タンパク質(RNP)」とは、RNAおよびタンパク質の複合体であり、本発明ではCas9-sgRNA複合体であり得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、宿主細胞に導入され、次いで宿主細胞のゲノムに組み換えられ、挿入されることができる。あるいは、ベクターは、エピソームとして自律複製することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸ビヒクルであると理解される。そのようなベクターとしては、線状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター、ミニ染色体およびそれらの類似体が挙げられる。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明の一実施形態では、ベクターは、配列番号36から配列番号38のヌクレオチド配列のいずれか1つを含み得る。さらに、本発明では、ベクターは、配列番号36から配列番号38のいずれか1つと約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%の配列相同性を有する。さらに、ベクターは、標的生物または細胞における発現のために部分的または完全にコドン最適化されてもよい。
【0074】
ベクターは、ポリヌクレオチドが宿主細胞において発現され得るように、適切なプロモーターに作動可能に連結されてもよい。本発明のベクターを植物細胞に適用する場合、本発明のプロモーターは、植物体内への遺伝子導入のために使用されるプロモーターを含んでもよい。プロモーターの例としては、SP6プロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、PMプロモーター、トウモロコシユビキチンプロモーター(Ubi)、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリンシンターゼ(nos)プロモーター、ゴマノハグサモザイクウイルス35Sプロモーター、サトウキビバシリフォームウイルスプロモーター、コメリナイエローモトルウイルスプロモーター、リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ小サブユニット(ssRUBISCO)光誘導性プロモーター、イネサイトゾルトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)プロモーター、アラビドプシス(Arabidopsis)アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)プロモーター、およびオクトピンシンターゼプロモーターが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0075】
具体的には、ベクターは、プラスミドDNA、ファージDNAなどであってもよい。さらに、ベクターは、商業的に開発されたプラスミド(pUC18、pBAD、pIDTSAMRT-AMPなど)、Escherichia coli由来プラスミド(pYG601BR322、pBR325、pUC118、pUC119など)、Bacillus subtilis由来プラスミド(pUB110、pTP5など)、酵母由来プラスミド(YEp13、YEp24、YCp50など)、ファージDNA(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAPなど)、動物ウイルスベクター(レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルスなど)、昆虫ウイルスベクター(バキュロウイルスなど)などであってもよい。ベクターのタンパク質の発現レベルおよび改変は宿主細胞に依存して異なるので、目的に最も適した宿主細胞を選択し使用することが好ましい。
【0076】
本発明では、ベクターは、選択マーカーを含んでもよい。選択マーカーは、従来の化学的方法により選択され得る特徴を有する核酸配列であり、形質転換された細胞と非形質転換細胞とを識別することができるすべての遺伝子を含む。マーカーの例としては、グリホサート、グルホシネートアンモニウムまたはホスフィノトリシンなどの除草剤耐性遺伝子、ならびにカナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシンおよびクロラムフェニコールなどの抗生物質耐性遺伝子が挙げられ得るが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、選択マーカーは、ハイグロマイシンおよび/またはホスフィノトリシンであり得る。
【0077】
本発明の別の態様では、sgRNAをコードする遺伝子およびCRISPR関連タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターを、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を使用してトマトに導入することを含む、高濃度の7-デヒドロコレステロールを含有する形質転換されたトマトを生産するための方法が提供される。
【0078】
形質転換された植物は、当技術分野で公知の植物形質転換方法によって構築されてもよい。当業者は、宿主として選択された植物の特徴を考慮して、特定の植物に適した公知の形質転換方法を選択し実行することができる。具体的には、植物の形質転換方法として、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を使用する形質転換方法が使用され得る。
【0079】
「アグロバクテリウム(Agrobacterium)を使用する形質転換方法」とは、植物の根および茎に腫瘍を発生させるグラム陰性土壌細菌であるアグロバクテリウム(Agrobacterium)を使用して、植物細胞に外部遺伝子を形質転換する方法である。これは、Agrobacterium tumefaciensおよびAgrobacterium rhizogenesなどのアグロバクテリウム(Agrobacterium)に見出される腫瘍誘導プラスミド(Tiプラスミド)のT-DNA(トランスファーDNA)を植物ゲノムに挿入する現象を使用する方法である。
【0080】
本発明の一実施形態では、核酸配列の改変が、DWF5-1遺伝子のエクソン6ドメインに含まれる場合、ホモ接合型トマト(T1)は種子を産生することができる(図18)。さらに、DWF5-1遺伝子のエクソン6ドメインの核酸配列に改変を有するホモ接合型T2世代トマトは正常に成長して種子を産生し(図26)、果実および根には7-デヒドロコレステロールが高濃度で蓄積する(表14、図21および図22)。しかしながら、形質転換されたトマトが、DWF5-1遺伝子のエクソン6ドメインおよびCPD遺伝子のエクソン8ドメインにおける核酸配列に改変を含んだ場合、トマトはインタクトな植物体に成長することができなかった。さらに、形質転換されたトマトが、DWF5-1遺伝子のエクソン6ドメイン、CPD遺伝子のエクソン8ドメイン、SMT1遺伝子のエクソン7およびエクソン9ドメインにおける核酸配列に改変を有するホモ接合体であった場合、果実は産生されなかった。
【実施例
【0081】
以下、本発明を、以下の実施例により詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は本発明を説明するためだけのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例だけに限定されない。
【0082】
実施例1.DWF5、CPDおよびSMT1の遺伝子編集のためのCas9-sgRNAベクターの構築
DWF5-1(以下、「DWF5」と称する、図1)、CPD(図2)およびSMT1(図3)の遺伝子編集のためのsgRNAの設計および選択は、Cas-Designerウェブサイト(http://www.rgenome.net/cas-dessdaigner/)を通じて行った。標的遺伝子の名称または配列、および動物または植物の種を選択し、次いで使用されるCas9を選択し、sgRNAを、遺伝子中の必要なエクソン部位、sgRNAのGC含有量、およびミスマッチが存在する場合のオフターゲットの結果に基づいて設計した。Cas9はNGG-3’のPAM配列を有し、トマト(S.lycopersicum)を植物として選択した(図1図3)。さらに、sgRNAをスクリーニングして、遺伝子編集効率を確認した(表2および図1図3)。
【0083】
具体的には、RGEN(RNA誘導型エンドヌクレアーゼ)分析を使用して、sgRNAの標的化の妥当性を行った。DNA鋳型を、上記増幅されたPCR産物(PCR産物)からPCR精製キットを使用して精製し、次いでDNA鋳型の量を測定し、RGENを表1に示す組合せで行った。37℃で1時間インキュベーションした後、3μLの6×DNA-Purple色素をそれぞれに入れ、凍結し、次いで2.5%ゲルにロードした。遺伝子編集効率を、DNA鋳型中の未切断バンドの程度を分析することによって分析した。
【0084】
【表1】
【0085】
結果として、DWF5遺伝子を標的として構築されたsgRNAの場合、D5-4およびD5-6を除くすべてのsgRNAが、DWF5遺伝子を標的化できたことが確認された(図4)。C1を除くすべてのCPD sgRNAがCPD遺伝子を標的とし(図5)、構築されたSMT1 sgRNAのすべてがCPD遺伝子を標的とした(図6)。
【0086】
【表2】
【0087】
sgRNAスクリーニングの結果に基づいて、DWF5、CPDまたはSMT1を標的とするように構築されたsgRNAを含むCas9-sgRNAベクターを最終的に構築した。pNGPJ0014ベクター(配列番号39)を、カナマイシン耐性およびハイグロマイシン耐性遺伝子を有するpCAMBIA1300プラスミドを基礎にして構築した。
【0088】
pNGPJ0014ベクターは、カナマイシンおよびハイグロマイシン抗生物質による選択のための抗生物質カセットと、Cas9を用いて合成されたポリシストロニックtRNA-gRNAカセットとを有する。Cas9は、アラビドプシス(Arabidopsis)ユビキチン10(Ubi10)プロモーターによって発現されるように構築し、tRNA-gRNAは、アラビドプシス(Arabidopsis)ユビキチン6プロモーターによって発現されるように構築した。
【0089】
Cas9タンパク質を核に送達するために、SV40(PKKKRKV)核局在化シグナル配列をCas9オープンリーディングフレームのN末端に付加し、バイパータイト(Bipartite)(KEPAATKKAGQAKKKK)核局在化シグナル配列をC末端に付加した。この際、1~3種類の遺伝子を標的とするCas9-sgRNAベクターを構築した。さらに、1つの標的当たり2種類のsgRNAをロードするように構築した。DWF5遺伝子を標的とするD5-1 sgRNA(配列番号20)およびD5-2 sgRNA(配列番号21)のヌクレオチド配列を含むCas-sgRNAベクターを、「D100」(配列番号36)と命名した(図7)。
【0090】
CPDおよびDWF5遺伝子を標的とするCas9-sgRNAベクターを、「D120」(配列番号37)と命名した。この際、CPD sgRNAは、C2(配列番号28)およびC3(配列番号29)のヌクレオチド配列を含み、DWF5 sgRNAは、D5-1(配列番号20)およびD5-2(配列番号21)のヌクレオチド配列を含む(図8)。
【0091】
SMT1、CPDおよびDWF5遺伝子を標的とするCas9-sgRNAベクターを、「D121」(配列番号38)と命名した。この際、SMT1 sgRNAは、S1(配列番号32)およびS2(配列番号33)のヌクレオチド配列を含み、CPD sgRNAは、C2(配列番号28)およびC3(配列番号29)のヌクレオチド配列を含み、DWF5 sgRNAは、D5-1(配列番号20)およびD5-2(配列番号21)のヌクレオチド配列を含む(図9)。
【0092】
実施例2.DWF5、CPDおよびSMT1の遺伝子編集によるトマトの形質転換
図10の概略図に示すように、トマトの形質転換を行った。各ステップで使用した培地およびホルモンは、表3~表8に記載されたものと同じ様式で調製し、使用した。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】
【表7】
【0098】
【表8】
【0099】
【表9】
【0100】
具体的には、トマト種子を70%エタノールで5秒間消毒し、2%漂白剤で20分間消毒した。消毒した種子を滅菌水で4~5回洗浄し、次いで滅菌濾紙に載せて水分を除去した。消毒したトマト種子を播種培地TMS(表3)に移し、25℃暗培養条件下で3日間培養し、次いで明培養条件下で培養した。播種後、子葉が1cm~1.5cmに成長したら(9~12日間)、トマトの胚軸の頂点を0.7cm~1.0cmにカットし、約18~20個(4、5、5および4、または5、5、5および5、それぞれ合計18~20個)をTPC培地プレート(表4)に植えて、明培養条件(16L/8D)下で1日培養した。
【0101】
アグロバクテリウム(Agrobacteria)(GV3101株、DSMZ、カタログ番号DSM12364)を、100mMのAS(アセトシリンゴン)および50mg/Lのリファンピシン、50mg/Lのカナマイシン(Km)を含有する50mLの細菌培養培地(YEP)で、暗培養条件下、28℃、1日~2日間培養し、OD600値を0.8~1.2とした。
【0102】
培養された細菌を4℃、6,000rpmで15分間遠心分離して上清を除去し、ペレットを同量のトマト共培養(TCC)培地(表5)に再懸濁し、希釈して、OD値を0.5とした。
【0103】
上記方法により調製された細菌培養液(0.5のOD600値)40mLと、明培養条件下で前処理された植物体とを50mLチューブ(200個の種子の播種に基づく)に入れ、25℃、室温で20~30分間培養した。共培養した外植片を滅菌濾紙に移し、乾燥させて、できるだけ水分を除去し、次いで約18~20個(4、5、5および4、または5、5、5および5、それぞれ合計18~20個)をTCC培地プレート(表5)に植え、25℃、明培養条件(16L/8D)下で2日間培養した。2日間の共培養の後、外植片をシュート選択培地(TSI、表7)に移し、次いで植物インキュベーターにて25℃、明培養条件(16L/8D)下で培養した。この際、アグロバクテリウム(Agrobacteria)が増殖している場合には、300mg/Lのカルベニシリンを共培養液体培地に添加し、洗浄し、次いで濾紙上で乾燥させ、次いで再度培地に植えた。
【0104】
カルスは、植付け後3~4週間の間に切断部分から分化した。シュートが分化されたカルスから誘導され、1cmを超えて成長したら、それらを発根培地(表9)に移して根を誘導した。この際、カルスをできるだけ除去し、発根をシュート部分を移植することにより誘導した。根の発根が完了したら、根を水道水で洗浄して根に残っているアグロバクテリウム(Agrobacteria)を除去し、土壌に移し、培養室環境を維持しつつ外部環境(湿度変化および非滅菌条件)に適応させながら培養した。
【0105】
カルスにおける植物体分化の段階に応じた対象物の変化を図11に示す。
【0106】
結果として、図12から図14に示すように、D100(図12)またはD121(図14)で形質転換されたトマトシュートは、植物体として正常に成長したが、D120で形質転換されたトマト外植片は、正常に成長しなかった(図13)。
【0107】
実施例3.DWF5、CPDおよびSMT1の遺伝子編集によって生成されたトマト植物体の配列決定
実施例2で得られたトマト植物体の形質転換を確認するために、T7E1アッセイ(図15)およびサンガー配列決定(図16および表12)を、D100またはD121で形質転換されたトマト対象物に対して行った。
【0108】
具体的には、T7E1アッセイでは、まず標的領域をPCRによって増幅し、次いで増幅されたPCR産物を、PCR精製キットを使用して精製した。精製されたPCR産物をDNA鋳型として、ヘテロデュプレックス形成を、表11の条件下および表10に示す組合せで行った。次いで、1μLのT7エンドヌクレアーゼI(T7E1)を添加し、37℃で30分間反応させた。最後に、1μLのプロテイナーゼKで処理し、37℃で5分間反応させてT7E1酵素の活性を不活性化した。遺伝子編集効率は、PCR産物中の断片濃度の程度で評価した。
【0109】
【表10】
【0110】
【表11】
【0111】
サンガー配列決定を以下のように行った。sgRNA標的領域を、20μLの反応ボリュームで、Q5 High-Fidelity DNA Polymerase(NewEngland Biolabs)を使用してゲノムDNA抽出物から増幅した。その後、PCR産物を、All in one Cloning Kit(Biofact、South Korea)を使用して、TAベクターにクローニングし、サンプル毎に15~20個のクローン化されたクローンを個別に配列決定した。結果として、D100を用いた形質転換により生じたDWF5遺伝子が欠失された14個のトマトホモ接合体を同定した(図15および図16)。さらに、D121で形質転換されたDWF5、CPDおよびSMT1遺伝子が欠失された1個のトマトホモ接合体を同定した(図15および表12)。D121で形質転換された植物体の場合、遺伝子欠失により生じる植物ホルモンの不均衡により、果実が形成されない現象がもたらされた。
【0112】
【表12】
【0113】
実施例4.DWF5遺伝子編集によって生じたトマトの種子および遺伝子表現型解析の取得
遺伝的ハサミにより、DWF5遺伝子が欠失されたトマト(T0世代)7つから得られた種子(DWF5ホモ接合体)を播種し、次世代配列決定(NGS)を行って、次世代(T1)のDWF5遺伝子が欠失されたトマトが得られるかどうかを判定した。
【0114】
結果として、7個のT0対象物から得られた23個の種子(T1)のうち12個がホモ接合型であったことが確認された(図17)。さらに、上記12個の種子のうち、遺伝子編集効率(インデル効率)が100%である6つの種子を選抜し、種子(T2)の発生および得られた種子の量を確認した。結果として、6個の対象物のうち5個で、種子が産生された(図18および表13)。さらに、野生型トマトと比較して、DWF5遺伝子が欠失されたトマトの果実、葉、および茎の表現型に有意差は観察されなかった。この際、野生型トマト(野生型、WT)が対照群である。
【0115】
【表13】
【0116】
実施例5.T2世代の表現型解析
実施例5.1.ビタミンD3前駆体の分析
実施例4で得られた種子(T2)を播種し、T2世代のトマトに含まれるプロビタミンD3の含有量をLC/MSにより測定した。この際、野生型トマト(WT)、#3-14系統(D100-3-14)のT2世代(4個の対象物)および#7-1系統(D100-7-1)のT2世代(11個の対象物)をサンプルとして使用した。動物プロビタミンD3の前駆体である7-デヒドロコレステロール(プロビタミンD3、sigma、カタログ30800、ロットBCBS6021)を、標準試薬として使用した。さらに、対照群として、野生型(WT)トマトをサンプルとして使用した。
【0117】
具体的には、ある特定の量の各サンプルを秤量し、30mLのエタノールおよび1mLの10%エタノール性ピロガロを添加した。その後、3mLの90%水酸化カリウム(KOH)を添加し、80℃の水浴中で10分毎にボルテックスしながら30分間反応させた。反応が完了した後、混合物を室温に冷却し、次いで30mLの蒸留水および30mLのn-ヘキサンを添加し、1時間振盪することにより混合した。その後、上清を分液ロートに移し、30mLのn-ヘキサンを水層に添加し、ボルテックスにより混合した。上清を再度分液ロートに移し、100mLの蒸留水をヘキサン層に添加して水で洗浄した。水を用いた洗浄プロセスを2回繰り返した。その後、ヘキサン層を無水硫酸ナトリウムで脱水し、次いで濃縮し、5mLのメタノール(MeOH)に溶解し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタを通して濾過して、試験溶液を調製した(図19)。
【0118】
上記プロセスにより調製された試験溶液に含まれる7-デヒドロコレステロールを、図20の条件下でLC/MSにより測定した。
【0119】
結果として、7-デヒドロコレステロールは、WTトマトの果実部では検出されなかったが、7-デヒドロコレステロールは、T2世代の#3-14系統では4個、#7-1系統では11個の対象物(計15個)において検出された(表14、図21および図22)。
【0120】
【表14】
【0121】
実施例5.2.トマトの根におけるビタミンD3前駆体の分析
実施例4で得られた種子(T2)を70%エタノールで5秒間消毒し、2%漂白剤で20分間消毒した。消毒した種子を滅菌水で4~5回洗浄し、次いで滅菌濾紙に載せて水分を除去した。種子をMS培地(表15)に播種し、25℃、16時間の明/8時間の暗サイクル条件下で培養した。2~3週間後、根が形成されたら、根をプレートから取り出し、次いで根(毛状根)を回収し、GC-MS法により7-DHC含有量について分析した。
【0122】
【表15】
【0123】
GC-MS代謝分析を、10mgの根と3mLの0.1%アスコルビン酸-エタノールおよび0.05mLの5α-コレスタンとを混合して根抽出物を得ることによって行った。抽出物を80%水酸化カリウムと混合してケン化を進行させ、次いでヘキサンと混合して親油性物質を分離した。分離された親油性物質を、ピリジンおよびN-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミドを使用して誘導体化し、次いでGC-MS(ガスクロマトグラフィー-四重極質量分析)分析を行った。定量的および定性的分析のために、標準物質から計算された検量線を使用した。
【0124】
結果として、7-デヒドロコレステロールは、WTトマトの根では検出されなかったが、7-デヒドロコレステロールは、T3世代の#3系統(3-14-29)および#7系統(7-1-15)において、それぞれ1.3μg/gおよび1.0μg/gの濃度で検出された(図28)。
【0125】
実施例5.3.T2世代での抗生物質不含対象物の選択
実施例4で得られたT2世代の#3-14系統(D100-3-14)および#7-1系統(D100-7-1)の中から、抗生物質耐性のない対象物を選択するために、対象物のmRNAにおける抗生物質耐性遺伝子の発現を、RT-PCRにより確認した。
【0126】
結果として、#3-14系統(D100-3-14)の5個の対象物および#7-1系統(D100-7-1)の11個の対象物が、抗生物質耐性なしの対象物であることが確認された(図23)。
【0127】
抗生物質耐性のない対象物として選択された対象物のうち、#3-14-29および#7-1-15の対象物を、DWF5遺伝子編集についてチェックした。
【0128】
結果として、図24および図25に示すように、当該対象物のヌクレオチド配列は、野生型(WT)トマトのものとは異なり(図24)、エクソン6に相当する配列が欠失していたことから、アミノ酸配列も野生型(WT)トマトのものとは異なることが確認された(図25)。
【0129】
実施例5.4.T2世代の表現型および種子生成の確認
実施例4で得られたT2世代の#3-14系統(D100-3-14)および#7-1系統(D100-7-1)を、表現型および種子産生についてチェックした。具体的には、主に果実で発現されるDWF5遺伝子(DWF5-1、配列番号63)のみを欠失させた場合、野生型トマトと比較して、果実、葉および茎の表現型に有意差は観察されなかった(図27)。したがって、本発明では、DWF5-1(配列番号63)遺伝子のみを欠失させることにより、プロビタミンD3の濃縮を誘導しつつ、種子生成の問題を補完することができるトマトを生産することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18a
図18b
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【配列表】
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【国際調査報告】