(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】コーティングセパレータ、コーティングセパレータの製造方法及び電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/457 20210101AFI20250123BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20250123BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20250123BHJP
【FI】
H01M50/457
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/489
H01M50/403 D
H01M50/414
H01M50/426
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024566702
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2022108551
(87)【国際公開番号】W WO2023155382
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/077087
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518279484
【氏名又は名称】シェンチェン シニア テクノロジー マテリアル カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524286579
【氏名又は名称】シニア (ナントン) ニュー マテリアル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SENIOR (NANTONG) NEW MATERIAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 425, No.42, Guangzhou Road, Development Zone, Nantong, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン イェンチエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ツォーリン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ ジヘン
(72)【発明者】
【氏名】タン ビン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ホイチェン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シャオミン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE08
5H021EE10
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
本発明はコーティングセパレータ、コーティングセパレータの製造方法及び電池を提供し、コーティングセパレータはベース膜と、ベース膜に設けられたコーティング層構造とを含み、コーティング層構造に多層の材料層が含まれ、また、コーティング層構造に1次元ナノ材料及びセラミックス粒子が含まれ、且つベース膜から離れる方向において、各層の材料層中の1次元ナノ材料の平均長さが層ごとに短くなる。各層の材料層中の1次元ナノ材料の平均長さが層ごとに短くなるため、1次元ナノ材料の不規則な分布による可能な大きい空隙の形成を回避することができる。また、コーティング層構造にセラミックス粒子を添加することにより、1次元ナノ材料をセラミックス粒子と混合させ、それにより1次元ナノ材料の積層密度が大き過ぎることを回避することができ、それにより、より効果的なリチウムイオン伝導チャネルを形成することができ、それにより、リチウムイオンの伝導率を向上させ、セパレータ及び電池の性能を効果的に改善することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース膜と、前記ベース膜の少なくとも1つの表面に設けられたコーティング層構造と、を含み、前記コーティング層構造は多層の材料層を含み、前記コーティング層構造は1次元ナノ材料及びセラミックス粒子を含み、且つ前記ベース膜から離れる方向に沿い、各層の材料層中の1次元ナノ材料の平均長さが層ごとに短くなる、ことを特徴とする、コーティングセパレータ。
【請求項2】
前記コーティング層構造のうち前記セラミックス粒子が分布しているコーティング層が前記コーティング層構造の合計厚さに占める割合は80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは100%に達する、ことを特徴とする、請求項1に記載のコーティングセパレータ。
【請求項3】
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料とセラミックス粒子との質量比は1:1~1:14である、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のコーティングセパレータ。
【請求項4】
前記セラミックス粒子は第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を含み、ここで、前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記第1のセラミックス粒子の粒子径より大きく、且つ前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記1次元ナノ材料の直径の2倍以上であり、
さらに、前記第2のセラミックス粒子の粒子径と前記1次元ナノ材料の直径とは少なくとも一桁の差があり、
及び/又は、前記第2のセラミックス粒子の粒子径と前記第1のセラミックス粒子の直径とは少なくとも一桁の差があり、
さらに、前記1次元ナノ材料の直径は5~50nmであり、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmである、ことを特徴とする、請求項3に記載のコーティングセパレータ。
【請求項5】
前記コーティング層構造において、前記第1のセラミックス粒子と前記第2のセラミックス粒子との質量比は5:1~1:5である、ことを特徴とする、請求項4に記載のコーティングセパレータ。
【請求項6】
前記第1のセラミックス粒子及び/又は前記第2のセラミックス粒子は、200℃以上の融点を有し、電気絶縁性を有し、リチウム電池の使用範囲内で電気化学的に安定した無機物である、ことを特徴とする、請求項4に記載のコーティングセパレータ。
【請求項7】
前記第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基がグラフトされ、
さらに、前記リチウムイオン伝導性官能基はヒドロキシル(-OH)、カルボニル(-C=O)、フッ素(-F)、カルボキシル(-COOH)のうちのいずれか1種を含む、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティングセパレータ。
【請求項8】
前記コーティングセパレータは少なくとも、
a)コーティング層の耐穿刺≧7N、
b)イオン導電率≧0.8、
c)容量維持率≧90%、
d)180℃/hでの熱収縮≦4%、
という条件のいずれか1つを満たす、ことを特徴とする、請求項1に記載のコーティングセパレータ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティングセパレータを製造するためのコーティングセパレータの製造方法であって、前記製造方法は、セラミックスの分散、1次元ナノ材料の分散、混合によるペーストの製造、コーティングによる製膜のステップを含み、
セラミックスの分散においては、セラミックス粒子を第1の溶媒に分散させ、セラミックス分散液を得、
1次元ナノ材料の分散においては、異なる長さの1次元ナノ材料を同一又は異なる分散剤に分散させ、少なくとも1種の1次元ナノ材料分散液を得、
混合によるペーストの製造においては、前記セラミックス分散液を前記1次元ナノ材料分散液に混合し、対応する少なくとも1種のペーストを形成し、
コーティングによる製膜においては、前記少なくとも1種のペーストを前記ベース膜の少なくとも1つの表面にコーティングし、乾燥し、前記コーティングセパレータを得る、ことを特徴とする、コーティングセパレータの製造方法。
【請求項10】
セラミックスの分散の前に、セラミックスの選別のステップをさらに含み、
セラミックスの選別においては、異なる粒子径の第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を選択し、ここで、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmであり、
さらに、セラミックスの前処理のステップをさらに含み、セラミックスの前処理においては、前記第1のセラミックス粒子を第2の溶媒に添加した後に反応釜に置き、グラフト対象物を添加してグラフト反応を行い、前記第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基をグラフトする、ことを特徴とする、請求項9に記載のコーティングセパレータの製造方法。
【請求項11】
前記グラフト対象物はポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリウレタン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、メチルイソプロピルケトンのうちのいずれか1種を含む、ことを特徴とする、請求項10に記載のコーティングセパレータの製造方法。
【請求項12】
前記セラミックスの分散は具体的には、
前処理された第1のセラミックス粒子と前記第2のセラミックス粒子とを混合した後に第1の溶剤に分散させ、セラミックス分散液を得ることである、ことを特徴とする、請求項10に記載のコーティングセパレータの製造方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティングセパレータ又は請求項9~12のいずれか一項に記載のコーティングセパレータの製造方法により製造されたコーティングセパレータを含む電池であって、
さらに、前記電池はリチウム電池である、ことを特徴とする、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池セパレータ技術の分野に関し、特にコーティングセパレータ、コーティングセパレータの製造方法及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
セパレータはリチウム電池の主要部材の1つであり、その性能の良否がリチウム電池全体の性能に非常に重要な影響を与え、リチウム電池の発展を制約するキー技術の1つである。リチウム電池の応用分野が絶えず拡大し、リチウム電池製品の人々の生活における影響が絶えず深刻になることにつれて、人々のリチウム電池性能に対する要求もますます高まっている。リチウム電池の発展要求を満たすために、セパレータはリチウム電池の重要な部材として良好な化学的安定性、低い製造コストを有すべきということだけでなく、さらにリチウムイオン電池の安全性能を向上させることが現在のリチウム電池発展の重要な傾向となる。
【0003】
従来の関連技術において、コーティングセパレータは、ベース膜と、ベース膜の少なくとも1つの表面にコーティングされたコーティング層とを含むことができ、コーティング層は1次元ナノ材料を含むことができ、しかし、1次元ナノ材料の堆積方式が乱雑で不規則であるため、空隙が多過ぎ、接触点が少ないなどの問題を引き起こしやすく、それによりセパレータの熱安定性に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、セパレータの性能を向上させるために、コーティングセパレータ、コーティングセパレータの製造方法及び電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、ベース膜と、前記ベース膜の少なくとも1つの表面に設けられたコーティング層構造と、を含み、前記コーティング層構造は多層の材料層を含み、前記コーティング層構造は1次元ナノ材料及びセラミックス粒子を含み、且つ前記ベース膜から離れる方向に沿って、各層の材料層中の1次元ナノ材料の平均長さが層ごとに短くなる、コーティングセパレータが提供される。
【0006】
選択的に、前記コーティング層構造のうち前記セラミックス粒子が分布しているコーティング層の厚さが前記コーティング層構造の合計厚さに占める割合は80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは100%に達する。
【0007】
選択的に、前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料とセラミックス粒子との質量比は1:1~1:14である。
【0008】
選択的に、前記セラミックス粒子は第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を含み、ここで、前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記第1のセラミックス粒子の粒子径より大きく、且つ前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記1次元ナノ材料の直径より大きく、
さらに、前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記1次元ナノ材料の直径の2倍以上であり、
さらに、前記第2のセラミックス粒子の粒子径と前記1次元ナノ材料の直径とは少なくとも一桁の差があり、
及び/又は、前記第2のセラミックス粒子の粒子径と前記第1のセラミックス粒子の直径とは少なくとも一桁の差があり、
さらに、前記1次元ナノ材料の直径は5~50nmであり、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmである。
【0009】
選択的に、前記コーティング層構造において、前記第1のセラミックス粒子と前記第2のセラミックス粒子との質量比は5:1~1:5である。
【0010】
選択的に、前記第1のセラミックス粒子及び/又は前記第2のセラミックス粒子は、200℃以上の融点を有し、電気絶縁性を有し、リチウム電池の使用範囲内で電気化学的に安定した無機物である。
【0011】
選択的に、前記第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基がグラフトされ、
さらに、前記リチウムイオン伝導性官能基はヒドロキシル(-OH)、カルボニル(-C=O)、フッ素(-F)、カルボキシル(-COOH)のうちのいずれか1種を含む。
【0012】
選択的に、前記コーティングセパレータは少なくとも、
a)コーティング層の耐穿刺≧7N、
b)イオン導電率≧0.8、
c)容量維持率≧90%、
d)180℃/hでの熱収縮≦4%、
という条件のいずれか1つを満たす。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様及びその選択的な解決手段に係るコーティングセパレータを製造するためのコーティングセパレータの製造方法が提供され、前記製造方法は、セラミックスの分散、1次元ナノ材料の分散、混合によるペーストの製造、及びコーティングによる製膜のステップを含み、
セラミックスの分散においては、セラミックス粒子を第1の溶媒に分散させ、セラミックス分散液を得、
1次元ナノ材料の分散においては、異なる長さの1次元ナノ材料を同一又は異なる分散剤に分散させ、少なくとも1種の1次元ナノ材料分散液を得、
混合によるペーストの製造においては、前記セラミックス分散液を前記1次元ナノ材料分散液に混合し、対応する少なくとも1種のペーストを形成し、
コーティングによる製膜においては、前記少なくとも1種のペーストを前記ベース膜の少なくとも1つの表面にコーティングし、乾燥し、前記コーティングセパレータを得る。
【0014】
選択的に、セラミックスの分散の前に、セラミックスの選別のステップをさらに含み、
セラミックスの選別においては、異なる粒子径の第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を選択し、ここで、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmであり、
さらに、セラミックスの前処理のステップをさらに含み、セラミックスの前処理においては、前記第1のセラミックス粒子を第2の溶媒に添加した後に反応釜に置き、グラフト対象物を添加してグラフト反応を行い、前記第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基をグラフトする。
【0015】
選択的に、前記グラフト対象物はポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリウレタン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、メチルイソプロピルケトンのうちのいずれか1種を含む。
【0016】
選択的に、前記グラフト対象物はポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリウレタン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、メチルイソプロピルケトンのうちのいずれか1種を含む。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様及びその選択的な解決手段に係るコーティングセパレータを含むか、又は第2の態様及びその選択的な解決手段に係るコーティングセパレータの製造方法により製造されたコーティングセパレータを含む、電池が提供され、
さらに、前記電池はリチウム電池である。
【発明の効果】
【0018】
本発明にて提供されるコーティングセパレータ、コーティングセパレータの製造方法及び電池において、各層の材料層中の1次元ナノ材料は平均長さが層ごとに短くなり、規則的に分布しているため、1次元ナノ材料の乱雑かつ不規則的な分布によって可能な大きい空隙を形成することを回避することができる。一方、1次元ナノ材料の積層密度が大き過ぎてリチウムイオンの伝導に影響を与えることを防止するために、本発明はコーティング層構造にセラミックス粒子を添加することで、コーティング層構造を、1次元ナノ材料とセラミックス粒子とを混合したものにし、セラミックス粒子を添加することにより、1次元ナノ材料の積層密度が大き過ぎることを回避することができ、それにより効果的なリチウムイオン伝導チャネルを形成することができ、それによりリチウムイオンの伝導率を向上させ、セパレータ及び電池の性能を効果的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、本発明の実施例又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、実施例又は従来技術の説明に使用する必要がある図面を簡単に説明し、当然ながら、以下の説明における図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要せず、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本発明の一実施例におけるコーティングセパレータの局所構造概略図である。
【
図2】本発明の一実施例におけるコーティングセパレータの製造方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の具体例における材料層のl50の長さ値がコーティング層の位置に従って変化する場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例に係る図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明瞭且つ完全に説明し、当然ながら、説明される実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、その全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を要せずに得る他の実施例の全ては、いずれも本発明に保護される範囲に属するものとする。
【0021】
なお、本発明の明細書の説明において、用語「上部」、「下部」、「上端」、「下端」、「下面」、「上面」などによって指示される方位又は位置関係は図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本発明を容易に説明し説明を簡略化するためのものに過ぎず、示される装置又は素子が特定の方向を有し、特定の方位で構成及び操作されるものではなければならないことを指示又は暗示するものではないため、本発明を限定するものとして理解され得ないことを理解されたい。
【0022】
本発明の明細書の説明において、用語「第1」、「第2」は説明のみに目的があり、相対的な重要性を指示又は暗示したり、指示される技術的特徴の数を暗黙的に示したりするものではないことを理解されたい。これにより、「第1」、「第2」によって限定される特徴は、1つ又は複数の当該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。
【0023】
本発明の説明において、「複数」は、特に明記されていない限り、多数を意味し、例えば、2つ、3つ、4つなどである。
【0024】
本発明の明細書の説明において、用語「接続」などは、特に明確な規定及び限定がない限り、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよいし、取り外し可能な接続、又は一体化されたものであってもよいし、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続、又は互いに通信可能であってもよいし、直接的な接続であってもよいし、中間媒体を介した間接的な接続であってもよいし、2つの素子内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者は、具体的な状況に応じて、上記用語の本発明における具体的な意味を理解することができる。
【0025】
以下、本発明の技術的解決手段について具体的な実施例を用いて詳細に説明する。以下のこれらの具体的な実施例は互いに組み合わせることができ、同一又は類似の概念又は過程について、いくつかの実施例では説明を省略することがある。
【0026】
出願人は本願を提案する前に、従来のセパレータに対して一連の研究及び実験を行った。
そのうち、コーティング層中の1次元ナノ材料の堆積方式が乱雑で不規則であり、空隙が多過ぎ、接触点が少ないことを引き起こしやすいなどの問題を解決するために、出願人は対応する解決手段を提供し、1次元ナノ材料の長さをコーティング層に従って層ごとに逓減させ(各材料層の1次元ナノ材料の長さ記述値の逓減に具現化される)、長いナノ材料が堆積した空隙が大きいため、下層であればあるほど、その空隙が大きくなり、上層の短いナノ材料はこれらの空隙をある程度充填することができ、層ごとに堆積すると、コーティング層の内部に空隙がそれほど多くなくなり、且つ接触点が増えているため、熱を受けるとき、コーティング層の緊密な構造はセパレータの熱変形の発生を抑制することができ、それによりコーティングセパレータの耐熱性を向上させる。当該解決手段について、出願人は特許出願(出願番号:PCT/CN2022/077087、出願日:2022.02.21)をも提案し、本願はここでPCT/CN2022/077087の全ての内容を組み込ませ、すなわちPCT/CN2022/077087の全ての内容はいずれも本願のサポートとすることができる。
【0027】
しかしながら、出願人はさらなる研究において、1次元ナノ材料が不規則に配列される方式に比べて、上記解決手段がセパレータの耐熱性を向上できるが、セパレータの全体性能が依然として理想的ではないことを発見した。出願人は、研究及び試験により、その原因として、1次元ナノファイバーが層ごとに逓減するという堆積方式により、コーティング層の堆積緻密性が最も大きくなり、ナノファイバー同士の接触が最も多くなっていることがあることを発見した。しかしながら、1次元ナノファイバーの堆積密度が大き過ぎると、リチウムイオンの伝導チャネルを阻害し、リチウムイオンの伝導率に影響を与えるため、セパレータの性能が制限される。
【0028】
この発見に基づき、出願人は一連の研究、試験及び検証により、本願の技術的解決手段を得た。1次元ナノファイバーの規則的な配列が出願人の主要な技術革新であるため、規則的な配列に基づいてさらに研究した課題及び得られた解決手段も主要な技術革新となり、その研究の全過程はすべて本解決手段の不可分な一部とすべきであり、本願の進歩性を評価するときに1つの完全体として考慮されるべきである。
【0029】
図1を参照し、本発明の実施例はコーティングセパレータ1を提供し、前記コーティングセパレータ1は、ベース膜11と、前記ベース膜11に設けられたコーティング層構造12と、を含み、前記コーティング層構造12は多層の材料層を含み、コーティング層構造12中に1次元ナノ材料及びセラミックス粒子13が分布しており、前記ベース膜から離れる方向に沿って、各層の材料層中の1次元ナノ材料の平均長さが層ごとに短くなり、それに対応して、各材料層中の1次元ナノ材料の空隙の平均サイズも徐々に小さくなる。
【0030】
本発明の実施例は1次元ナノ材料のコーティング層が緻密すぎると空隙が小さくなりすぎてイオン伝導速度が低くなるという問題を考慮して、セラミックス粒子を導入することによりイオン伝導速度を効果的に向上させることができるが、1次元ナノ材料が不規則に分布すれば、外部のセラミックス粒子を導入した場合に不規則な混合を引き起こしやすく、そのため一部の領域のリチウムイオン伝導チャネルが小さく、一部の領域のリチウムイオン伝導チャネルが大きくなり、これによって、リチウムイオンの異なる領域における伝導速度の差が大きくなり、リチウムデンドライトの成長発展に問題(自己放電を引き起こしやすい)が生じやすく、さらに電池容量の減衰及び安全性の問題を引き起こす。本願は各層の材料層中の1次元ナノ材料の平均長さを層ごとに短くする上で、1次元ナノ材料にセラミックス粒子を混入し、セラミックス粒子を使用して1次元ナノ材料の積層密度が大き過ぎることを回避することができ、それにより、より効果的なリチウムイオン伝導チャネルを形成することができ、それにより、リチウムイオンの伝導率を向上させ、セパレータ及び電池の性能を効果的に改善することができる。
【0031】
好ましい実施形態として、前記コーティング層構造12中の1次元ナノ材料とセラミックス粒子との質量比は1:1~1:14である。具体的な実施例として、コーティング層構造12中の1次元ナノ材料とセラミックス粒子との質量比は、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14のうちのいずれか1つ又はいずれか2つの間の範囲であってもよい。当然のことながら、コーティング層構造12中の1次元ナノ材料とセラミックス粒子との質量比は他の値であってもよく、その具体的な数値は本発明を限定するものではなく、比が1:1~1:14の間にあれば、いずれも本発明の保護範囲内にあるものとする。
【0032】
好ましい実施形態として、前記コーティング層構造12中のセラミックス粒子は第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を含み、ここで、前記第1のセラミックス粒子の粒子径は前記1次元ナノ材料の直径に相当し、前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記1次元ナノ材料の直径より遥かに大きい。
【0033】
具体的には、前記1次元ナノ材料の直径は5~50nmであり、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmである。
【0034】
本発明の実施例は、階層化されて分布した1次元ナノ材料とマルチサイズのセラミックス粒子とを混合し、底部の1次元ナノ材料が長く上部の1次元ナノ材料が短くするように、均一に分布し、異なる領域の差を小さくすることにより、導入されたマルチサイズのセラミックスがリチウムイオンの伝導を十分に加速できるようになっている。ここで、階層化とは、厚さ方向においてナノファイバーのサイズが顕著に変化して形成された階層であり、実質的に分離可能な複数の層であってもよく、顕著なサイズ変化に基づく人為的な階層化(例えばコーティング層の合計厚さの10%占めを一層と定義するか、又はコーティング層の合計厚さの20%、30%、40%占めなどを一層と定義し、階層化の定義は、構造におけるサイズ変化が顕著な箇所の界面に基づいて行われてもよく、ここでは具体的に限定されない)であってもよい。
【0035】
好ましい実施形態として、コーティング層構造12のうちセラミックス粒子13が分布したコーティング層の厚さがコーティング層構造全体の合計厚さに占める割合は80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは100%に達し、それによりセラミックス粒子をコーティング層構造に比較的均一に分散させて、1次元ナノ材料の積層密度が大き過ぎることをより効果的に回避し、それにより、より効果的なリチウムイオン伝導チャネルを形成することができ、それによりリチウムイオンの伝導率を向上させ、セパレータ及び電池の性能を効果的に改善することができる。且つ、さらに好ましい実施形態として、コーティング層構造に明らかな階層が存在する場合、各層にはセラミックス粒子が含まれるようにすることにより、リチウムイオンの伝導率をさらに向上させ、セパレータ及び電池の性能を改善することができる。
【0036】
第1のセラミックス粒子の平均粒子径(D50)を1次元ナノ材料の直径に相当するように設定することにより、第1のセラミックス粒子が1次元ナノ材料間の空隙を拡張可能となり、リチウムイオン導電率を向上させ、第2のセラミックス粒子の平均粒子径(D50)を第1のセラミックス粒子の平均粒子径及び1次元ナノ材料の直径より遥かに大きいように設定することにより、コーティング層の外部からの穿刺に耐える能力を向上させることができる。ここで、遥かに大きいとは、2倍以上を意味する。出願人が研究により証明したように、第1のセラミックス粒子は平均粒子径が小さ過ぎると、凝集がひどくなり、これによりコーティングのリチウムイオン導電率が低くなる一方、第1のセラミックス粒子は平均粒子径が大き過ぎると、1次元ナノ材料の空隙を十分に充填できなくなる。第2のセラミックス粒子は平均粒子径が小さ過ぎると、耐穿刺能力が低下する一方、第2のセラミックス粒子は平均粒子径が大き過ぎると、コーティング層の耐熱性が犠牲にされる。したがって、本願にて提案される第1のセラミックス粒子の平均粒子径が10~60nmであり、第2のセラミックス粒子の平均粒子径が100~600nmであることは検証された好ましい値である。
【0037】
具体的な実施形態として、第1のセラミックス粒子の平均粒子径は、例えば、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nmのうちのいずれか1つ、又はいずれか2つの間の範囲であってもよい。第2のセラミックス粒子の平均粒子径は、例えば、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、375nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nmのうちのいずれか1つ、又はいずれか2つの間の範囲であってもよい。当然のことながら、第1のセラミックス粒子の平均粒子径及び第2のセラミックス粒子の平均粒子径は他の値であってもよく、その具体的な数値は本発明を限定するものではなく、第1のセラミックス粒子の平均粒子径が10~60nmであり、第2のセラミックス粒子の平均粒子径が100~600nmであるようにすれば、いずれも本発明の保護範囲内にあるものとする。当業者であれば分かるように、1次元ナノ材料の直径が変化する場合、第1のセラミックス粒子の平均粒子径及び第2のセラミックス粒子の平均粒子径もそれに従って変化し、第1のセラミックス粒子の粒子径が1次元ナノ材料の直径に相当し、第2のセラミックス粒子の粒子径が1次元ナノ材料の直径より遥かに大きいことを満たせば、いずれも本発明の保護範囲から逸脱しない。
【0038】
さらに好ましい実施形態として、前記コーティング層構造中の第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との質量比は5:1~1:5であり、それにより、コーティング層のイオン導電率をさらに向上させることができると共に、コーティング層の耐穿刺(コーティング層の耐穿刺≧7N)及び熱収縮の性能(180℃/1h≦4%)をより効果的に確保することができる。出願人は研究により、第1のセラミックス粒子が多過ぎると、耐穿刺能力が悪くなり、第1のセラミックス粒子が少な過ぎると、拡張が限られ、リチウムイオン導電率が低下し、第2のセラミックス粒子が多過ぎると、耐熱性が低下し、第2のセラミックス粒子が少な過ぎると、耐穿刺の性能が低下することを発見した。したがって、本願にて提供されるコーティング層構造中の第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との質量比が5:1~1:5であることは検証された好ましい値である。
【0039】
具体的には、コーティング層構造中の第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との質量比は、例えば5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5のうちのいずれか1つ又はいずれか2つの間の範囲であってもよい。当然のことながら、コーティング層構造中の第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との質量比は他の値であってもよく、その具体的な数値は本発明を限定するものではなく、比が5:1~1:5の間にあれば、いずれも本発明の保護範囲内にあるものとする。
【0040】
さらに好ましい形態として、第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基がグラフトされる。具体的には、第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基がグラフト反応により導入される。第1のセラミックス粒子の表面に大量に含まれるリチウムイオン伝導性官能基はリチウムイオンの伝導能力を大幅に向上させることができる。グラフト官能基はセラミックスの表面においてのみ作用できるものであり、第2のセラミックス粒子径が第1のセラミックス粒子径より大きいため、形成された隙間が大きく、高速イオン伝導性官能基が作用しにくく、第1のセラミックス粒子径が小さいため、形成された隙間が小さく、リチウムイオン伝導性の作用がよりよく発揮され、リチウムイオンの伝導性能が向上する。
【0041】
本発明の実施例における1次元ナノ材料の長さがコーティング層に従って層ごとに逓減する方式について、さらに具体的に以下のように説明する。
【0042】
ここで、コーティング層は
図1に示すような三層の材料層を有し(ここでは階層化の定義は、コーティング層構造における、寸法変化が顕著な箇所の界面に基づいて行われている)、ここで、最下層の1次元ナノ材料は中間層の1次元ナノ材料より平均長さが長く、中間層の1次元ナノ材料は最上層の1次元ナノ材料より平均長さが長く、各層の1次元ナノ材料間の平均長さの差は任意に設定することができ、同じ層における1次元ナノ材料の長さは同じであってもよく、異なってもよい。1つの実施形態において、前記1次元ナノ材料は、ナノセルロース、アラミドナノファイバー、ポリイミドナノファイバーの少なくとも1つであってもよい。本発明の実施例の1次元ナノ材料の材料選択は以上の例に限定されない。
【0043】
1つの実施形態において、異なる材料層の1次元ナノ材料の、同一の第2の目標占有比率により、異なる長さ記述値が形成され、
前記材料層中の1次元ナノ材料の長さ記述値は、
前記材料層構造中の1次元ナノ材料について長さの短い順にその数を順次積算するとき、積算して得られた数と前記材料層中の1次元ナノ材料の総数との比が前記第2の目標占有比率に達する場合に対応する1次元ナノ材料の長さを示し、それに応じて、対応する材料層の1次元ナノ材料において、対応する長さ記述値より小さい1次元ナノ材料の占有比率は目標占有比率に達することができ、以上の説明は1次元ナノ材料の長さ記述値の統計学的意味を示し、実際に当該長さ記述値を決定しようとする場合、実際の計算方式は本分野の常識に基づいて処理することができる。
【0044】
一例では、前記第2の目標占有比率は5%~40%の区間の範囲にあるか、又は60%~99%の区間の範囲にある。例えば、5%、10%、20%、40%、60%、70%、80%、90%、99%のうちのいずれか1つ、又はいずれか2つの間の範囲であってもよい。
【0045】
1つの実施形態において、前記ベース膜から離れる方向に沿って、同一の第2の目標占有比率の場合、各層の材料層の1次元ナノ材料の長さ記述値が徐々に小さくなる。これにより、1次元ナノ材料が層ごとに小さくなる傾向を形成することができる。
【0046】
また、対応する材料層の長さ記述値に関しては、長さ記述値の意味は、以上は積算し且つ積算結果に基づいて長さ記述値を決定するという方式により定義されているが、当該統計過程は実際の製造、検収の過程に必ず含まれていることを示すものではなく、実際の解決手段において、任意の製品について、同じ統計学的意味の数値で材料層中の1次元ナノ材料を統計した後に得られた長さ記述値のルールが以上の説明を満たせば、当該実施形態の保護範囲から逸脱しない。一部の解決手段において、予め1次元ナノ材料の長さを選択し又は1次元ナノ材料の長さに応じて製造することにより、以上の長さのルールの満足を保障することができる。
【0047】
ここで、
材料層の1次元ナノ材料の長さ記述値については、例えば、
前記材料層中の1次元ナノ材料のl10は、対応する材料層中のそれぞれの長さの1次元ナノ材料について長さの短い順にその数を順次積算するとき、積算して得られた数と対応する材料層中の1次元ナノ材料の総数との比が10%に達する場合に対応する1次元ナノ材料の長さを意味し、
前記材料層中の1次元ナノ材料のl50は、対応する材料層中のそれぞれの長さの1次元ナノ材料について長さの短い順にその数を順次積算するとき、積算して得られた数と対応する材料層中の1次元ナノ材料の総数との比が50%に達する場合に対応する1次元ナノ材料の長さを意味し、当該l50は、ある程度で対応する材料層の平均長さを示すことができるものと理解されてもよく、
前記材料層中の1次元ナノ材料のl90は、対応する材料層中のそれぞれの長さの1次元ナノ材料について長さの短い順にその数を順次積算するとき、積算して得られた数と対応する材料層中の1次元ナノ材料の総数との比が90%に達する場合に対応する1次元ナノ材料の長さを意味する。
【0048】
l50(すなわち平均長さ)の逓減を実現した場合に、他の1つ又は複数の長さ記述値(例えばl90及び/又はl10)の逓減を実現することもできる。
【0049】
1つの実施形態において、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL10の長さ値は100~300nmの間にあり、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL50の長さ値は250~400nmの間にあり、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL90の長さ値は350~900nmの間にあり、
ここで、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL10は、10%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値を示し、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL50は、50%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値をしめし、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の平均長さとして理解されてもよく、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL90は、90%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値を示し、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値は、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料について長さの短い順にその数を順次積算するときに、積算して得られた数と前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料の総数との比が前記第1の目標占有比率に達する場合に対応する1次元ナノ材料の長さを示し、
且つ、前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料は、L50/L10>1.3、L90/L50>1.3を満たし、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL10は、10%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値を意味し、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL50は、50%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値を意味し、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL90は、90%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値を意味し、
以上の説明はコーティング層構造の長さ記述値の統計学的意味を示し、実際に当該長さ記述値を決定するときに、実際の計算方式は本分野の常識に基づいて処理することができる。
【0050】
さらに、コーティング層構造の長さ記述値に関しては、長さ記述値の意味は、以上は積算し且つ積算結果に基づいて長さ記述値を決定するという方式により定義されているが、当該統計過程は実際の製造、検収の過程に必ず含まれていることを示すものではなく、実際の解決手段において、任意の製品について、同じ統計学的意味の数値で材料層中の1次元ナノ材料を統計した後に得られた長さ記述値のルールが以上の説明を満たせば、当該実施形態の保護範囲から逸脱しない。一部の解決手段において、予め1次元ナノ材料の長さを選択し又は1次元ナノ材料の長さに応じて製造することにより、以上の長さのルールの満足を保障することができる。
【0051】
一例において、前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料については、L10=110nm、L50=310nm、L90=850nmである。
【0052】
ベース膜から離れる方向において、各材料層中の1次元ナノ材料のl50の長さ値と材料層が位置するコーティング層の位置(コーティング層の厚さ方向の位置)との関係をフィッティングした結果は
図3の曲線1、曲線2a、曲線2bを参照して理解することができ、さらに、曲線において、このl50の長さ値が、厚さの増加に従い(すなわち、材料層が位置するコーティング層の位置とベース膜との距離の増加に従い)、徐々に小さくなることに具現化される。
【0053】
図3において、横軸のコーティング層の位置は、厚さ方向に沿って、材料層が位置するコーティング層の位置がコーティング層構造において位置する位置を示すためのものであり、百分率で示すと、材料層が位置するコーティング層の位置とベース膜との間の距離がコーティング層構造全体の厚さに占める百分率を示すことができ、例えば、ここで、10%は当該コーティング層の位置とベース膜との間の距離がコーティング層構造全体の厚さの10%を占めることを示す。
【0054】
そのうちの曲線1については、材料層中の1次元ナノ材料のl50の長さ値は、材料層が位置するコーティング層の位置とベース膜との間の距離の増加に従い、直線的に変化するとフィッティングして理解することができ、このとき、このl50の長さ値xとコーティング層の位置Yとの関係は、例えば、Y=kx+b(k<0、b>0)のように表され、
そのうちの曲線2aについては、材料層中の1次元ナノ材料のl50の長さ値は、材料層が位置するコーティング層の位置とベース膜との間の距離の増加に従い、最初に速く変化し、その後遅く変化するという傾向となることができ、
そのうちの曲線2bについては、材料層中の1次元ナノ材料のl50の長さ値は、材料層が位置するコーティング層の位置とベース膜との間の距離の増加に従い、最初に遅く変化し、その後速く変化するという傾向となることができる。
【0055】
以上の直線的に変化する傾向、最初に速く変化しその後遅く変化するという傾向、最初に遅く変化しその後速く変化するという傾向を実現するために、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さの設定によって実現することができる。さらに、必要な変化傾向に応じて、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さの設定を選択することができ、
例えば、
直線的変化(例えば曲線1に示す)を実現する必要があれば、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さの設定は、2≧L90/L50>1.5を満たす必要があり、
最初に遅く変化しその後速く変化すること(例えば曲線2bに示す)を実現する必要があれば、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さの設定は、L50/L10>2、1.5≧L90/L50≧1.3を満たす必要があり、
最初に速く変化しその後遅く変化すること(例えば曲線2aに示す)を実現する必要があれば、コーティング層中の1次元ナノ材料の長さの設定は、L90/L50>2を満たす必要がある。
【0056】
従来技術において層状構造を形成するために工夫していないため、従来技術は以上の解決手段において異なる変化傾向に応じて行われる長さの設定を開示又は示唆することができない。
【0057】
また、本発明の実施例は、以上の選択的な解決手段に係るコーティングセパレータを含む電池をさらに提供する。
【0058】
また、
図2を参照し、本発明の実施例は、第1の態様及びその選択的な解決手段に係るコーティングセパレータを製造するためのコーティングセパレータの製造方法をさらに提供し、前記製造方法は以下のS1~S4を含む。
【0059】
S1のセラミックスの分散において、セラミックス粒子を第1の溶媒に分散させ、セラミックス分散液を得る。
【0060】
具体的には、セラミックス粒子を第1の溶媒に分散させ、分散液を得る。第1の溶媒としては、水、N-メチルピロリドン、エタノール、アセトンなどが選択される。分散方式としては高速撹拌、高圧均質化、サンドミル分散などの方式を採用して溶媒に均一に分散し、セラミックス粒子の分散液中における質量濃度は2%~40%である。
【0061】
S2の1次元ナノ材料の分散において、異なる長さの1次元ナノ材料を同一又は異なる分散剤に分散させ、少なくとも1種の1次元ナノ材料分散液を得る。
【0062】
具体的には、異なる長さの1次元ナノ材料を分散剤に分散させ、分散液を得る。分散剤としては、水、N-メチルピロリドン、エタノール、アセトンなどが選択される。分散方式としては高速撹拌、高圧均質化、サンドミル分散などの方式を採用して分散剤に均一に分散し、1次元ナノ材料の分散剤中における質量濃度は2%~30%である。
【0063】
ここで、少なくとも部分的に異なる長さの1次元ナノ材料は、1次元ナノ材料の原料の選択に応じて実現され、例えば、異なる材料の1次元ナノ材料を選択して用いる場合、異なる長さの1次元ナノ材料を形成できる可能性がある。
【0064】
別の例において、異なる長さの1次元ナノ材料は関連する技術的手段によって形成されてもよい。
【0065】
少なくとも部分的に異なる長さの1次元ナノ材料は、1次元ナノ材料の原料又は切断された1次元ナノ材料を切断し、1回又は複数回の切断により、形成される。
【0066】
ここで、1次元ナノ材料に対する切断により、1つの長さの1次元ナノ材料の原料に基づいて、短い1次元ナノ材料を形成することができ、例えば、1次元ナノ材料を原料の半分に切断してもよく、他の例において、半分切断の方式を採用せず実現してもよい。
【0067】
1次元ナノ材料の切断を実現できる任意の既存手段又は改良手段は、いずれも本発明の実施例の具体例とすることができる。具体例において、1次元ナノ材料に対するエッチングにより実現することができ、例えば、1次元ナノ材料に対するエッチングによりそれを原料の半分の長さにエッチングしてもよい。
【0068】
所望の階層化に基づいて、原料に対する1回の切断、又は複数回の切断を実現することができ、例えば、まず1次元ナノ材料を原料の半分の長さにエッチングし、そして半分の長さの1次元ナノ材料を保留し、さらに他方の半分の長さの1次元ナノ材料を切断し、四分の一の長さの1次元ナノ材料を得、このとき、三層の構造を形成することができ、他の例において、さらに四分の一の長さの1次元ナノ材料の一部を切断してもよく、切断回数は需要に応じて任意に設定することができる。
【0069】
当然のことながら、
1次元ナノ材料の原料の、他の原料の一端への接合、
接合された1次元ナノ材料の、前記原料の一端への接合、
接合された1次元ナノ材料の、他の接合された1次元ナノ材料の一端への接合という少なくとも1つの接合の過程を実施し、1回又は複数回の接合により、少なくとも部分的に異なる長さの1次元ナノ材料を形成してもよい。
【0070】
このように、接合の対象は原料の一端と他の原料の一端であってもよく、原料の一端と接合された1次元ナノ材料の一端であってもよく、接合された1次元ナノ材料の一端と他の接合された1次元ナノ材料の一端であってもよい。
【0071】
ここで、1次元ナノ材料に対する接合により、1つの長さの1次元ナノ材料の原料に基づいて、長い1次元ナノ材料を形成することができ、例えば、2つの原料を接合することによって、二倍の長さの1次元ナノ材料を形成してもよく、他の例において、異なる長さの原料(又は接合された1次元ナノ材料)を用いて実現してもよい。
【0072】
1次元ナノ材料の接合を実現できる任意の既存手段又は改良手段は、いずれも本発明の実施例の具体例とすることができる。
【0073】
例えば、1次元ナノ材料の接合は、ヒドロキシル官能基が大量に含まれる材料(例えばポリエチレングリコールPEG)に基づいて、実現されてもよく、この場合、以上に言及された接合は、
接合対象の1次元ナノ材料と、ヒドロキシル官能基が大量に含まれる材料(例えばPEG)とを溶液に混合するステップと、
前記溶液に触媒としてモレキュラーシーブ粒子を添加するステップと、
前記溶液を加熱し、そして冷却し、モレキュラーシーブを濾過して除去すると、接合された1次元ナノ材料を得るステップと、を含んでもよい。
【0074】
具体例において、ナノセルロースを例とする。ナノセルロースポートの端部は中間領域よりヒドロキシル含有量が明らかに高い。ナノセルロースの長さを増加させるために、ヒドロキシルの活性を十分に発揮することができ、やり方は、
(1)ナノセルロースをポリエチレングリコール(PEG)と混合し、PEGの分子量が50000~1000000g/molであり、PEGがナノセルロースの1%を占め、両者を十分に均一に撹拌し、対応する溶液を形成し、
(2)上記溶液に13Aモレキュラーシーブ粒子を加え、粒子のサイズが1mm~10mmであり、当該モレキュラーシーブが触媒であり、
(3)1~2時間かけて80度まで水熱で加熱し、
(4)常温まで冷却し、13Aモレキュラーシーブ粒子を濾過して除去すると、接合されたナノセルロースを得るようになっている。
【0075】
以上の解決手段において、ヒドロキシル基官能基が大量に含まれた材料(例えばPEG)を加えることにより、ナノセルロース同士を架橋結合させることができ、モレキュラーシーブ(例えば13Aモレキュラーシーブ)を触媒とすることにより、PEGとナノセルロースとの間の重合反応を加速させることができ、最後にナノセルロース-PEG-ナノセルロースの構造を形成する。所望の階層化に基づき、原料に対する1回の接合、又は複数回の接合を実現することができ、例えば、まず1次元ナノ材料の原料を原料の2倍に接合し、そして2倍の長さの1次元ナノ材料の一部を保留し、さらに他方の2倍の長さの1次元ナノ材料を原料又は2倍の長さの1次元ナノ材料に接合し、3倍の長さ又は4倍の長さの1次元ナノ材料を得、このとき、3層の構造を形成することができ、他の例において、さらに接合してもよく、接合回数は必要に応じて任意に設定することができる。
【0076】
ステップS2の1つの解決手段において、様々な長さの1次元ナノ材料を同一の分散剤に分散させ、これによって同一の分散剤に対応するペーストに基づいて、コーティング後に階層化を実現するようにしてもよく、ステップS2の別の解決手段において、異なる長さの1次元ナノ材料に基づいて、異なる分散剤を形成し(異なる分散剤中の1次元ナノ材料の長さが異なる)、これによって、異なる分散液とペーストを形成するようにしてもよく、コーティング時に、1次元ナノ材料の長さに基づいて様々なペーストを層ごとにコーティングするようにしてもよい。
【0077】
一例として、ステップS2において、様々な長さの1次元ナノ材料を分散剤に十分に分散させてもよく、分散剤としては、例えば水、エタノール、メタノールなどが選択される。分散方式としては、例えば、超音波処理、高速撹拌、高圧均質化、サンドミル分散などの方式を採用して分散剤に均一に分散することが挙げられる。1次元ナノ材料分散液中における濃度の値の範囲は0.01~50wt%であってもよい。
【0078】
S3の混合によるペーストの製造において、前記セラミックス分散液を前記1次元ナノ材料分散液に混合し、対応する少なくとも1種のペーストを形成する。
【0079】
具体的には、S1で得られたセラミックス分散液をS2で得られた1次元ナノ材料分散液に混合し、混合方式としては高速撹拌、高圧均質化、サンドミル分散などの方式を採用する。次に、混合溶液に接着剤を添加する。接着剤はポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン及びポリイミドのうちの少なくとも1種である。接着剤は分散液中の固体質量の1%~10%を占める。
【0080】
S4のコーティングによる製膜において、前記少なくとも1種のペーストを前記ベース膜にコーティングし、前記ベース膜及び前記ペーストを乾燥し、前記コーティングセパレータを得る。
【0081】
具体的には、コーティング方式により、上記製造されたペーストをベース膜にコーティングし、乾燥すると、コーティングセパレータを得ることができる。コーティング方式はスプレーコーティング、ディップコーティング、マイクログラビアコーティング、印刷コーティング、押圧コーティング、ワイヤーバーコーティングである。ベース膜は、例えばポリオレフィンベース膜であり、厚さは3~30ミクロンであり、乾燥温度は40~130度であり、コーティング速度は10~200m/minである。
【0082】
ここで、好ましい形態として、セラミックスの分散の前に、S11~S12をさらに含み、
S11のセラミックスの選別においては、異なる粒子径の第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を選択し、ここで、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmであり、
S12のセラミックスの前処理においては、前記第1のセラミックス粒子を第2の溶媒に添加した後に反応釜に置き、グラフト対象物を添加してグラフト反応を行い、前記第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基をグラフトする。具体的には、第1のセラミックス粒子を第2の溶媒に添加し、そして一同に反応釜に入れ、さらにグラフト対象物を添加し、一定の反応温度、反応圧力、反応時間をかけて、第1のセラミックス粒子にリチウムイオン伝導性官能基をグラフトすることができる。
【0083】
第1のセラミックスについては、特に限定せず、200℃以上の融点を有し、電気絶縁性が高く、リチウム電池の使用範囲内で電気化学的に安定した物質が好ましい。例えば、アルミナ、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛などの酸化物系セラミックス、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素などの窒化物系セラミックス、炭化ケイ素、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩基性アルミナ(Aluminum hydroxide oxide)、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、カオリン、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、珪藻土、ケイ砂などのセラミックスが挙げられ、これらは単独で使用されてもよいし、又は複数種を組み合わせて使用されてもよいし。
【0084】
第2のセラミックスについても特に限定せず、200℃以上の融点を有し、電気絶縁性が高く、リチウム電池の使用範囲内で電気化学的に安定した物質が好ましく、且つ第1のセラミックスと同じ又は異なる無機材料を選択することができる。第2の溶媒は水、エタノール、アセトン、NMPなどであり、グラフト対象物はポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリウレタン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、メチルイソプロピルケトンなどである。反応温度は100~200℃であり、反応圧力は0.1~0.5Mpaであり、反応時間は10~50minである。反応が終了した後、液体溶媒を除去し、固体を残すと、リチウムイオン伝導性がグラフトされた第1のセラミックス粒子を得ることができる。
【0085】
これに基づき、S1における前記セラミックスの分散は具体的には、
S12で前処理された第1のセラミックス粒子を前記第2のセラミックス粒子と混合した後に第1の溶媒に分散させ、セラミックス分散液を得ることである。
【0086】
以下、本発明のいくつかの実施例の製品性能を実験により分析する。
【0087】
実施例1
本実施例は以下のステップS1~S5により製造してコーティングセパレータを得る。
【0088】
S1のセラミックスの選別において、異なる粒子径の第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を選択し、ここで、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は40nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は300nmであり、前記第1のセラミックス及び第2のセラミックスはいずれもアルミナであった。
【0089】
S2のセラミックスの分散において、第2のセラミックス粒子と第1のセラミックス粒子とを1:1の比で混合し、高速撹拌方式によりN-メチルピロリドンに均一に分散させ、セラミックス分散液を得た。セラミックスの分散液中における質量濃度は20%であった。
【0090】
S3の1次元ナノ材料の分散において、異なる長さの1次元ナノ材料を分散剤に分散させ、分散液を得た。分散剤はN-メチルピロリドンであり、分散方式は高速撹拌であり、1次元ナノ材料の分散剤中における質量濃度は15%であった。
【0091】
S4の混合によるペースト製造において、S2で得られたセラミックス分散液をS3で得られた1次元ナノ材料分散液に混合し、混合方式としては高速撹拌を採用し、続いて混合溶液に接着剤を添加し、接着剤はポリビニルアルコールであり、接着剤は分散液中の固体質量の8%を占めた。
【0092】
S5のコーティングによる製膜において、コーティング方式により、前記少なくとも1種のペーストをベース膜にコーティングし、前記ベース膜及び前記ペーストを乾燥し、前記コーティングセパレータを得た。ここで、ベース膜はポリエチレンベース膜であり、厚さは9ミクロンであり、乾燥温度は100度であり、コーティング速度は100m/minであった。得られたコーティング層の厚さは2ミクロンであった。
【0093】
ここで、1次元ナノ材料は、具体的には1次元ナノファイバーであり、ベース膜の表面に堆積し、層状構造(すなわち階層化された、異なる長さの1次元ナノ材料)を形成し、ベース膜に堆積する過程において、表面エネルギーのため、最も長い1次元ナノ材料(その表面エネルギーが最も大きく、最も不安定であり、一旦小さい表面エネルギーの界面に接触すると、最も付着しやすい)は最初に堆積し、2番目に長いものはその次に堆積し、最も短いナノファイバーは最後に堆積し、このように、長い順に、徐々に堆積した層状構造が形成された。
【0094】
実施例2~29及び比較例1~5は同様の方法を用いて得られ、ここで、実施例1~29及び比較例1~5で得られた対応するセパレータの性能については表1を参照し、表1に示された製造パラメータの差を除き、全ての実施例及び比較例は他の点において実施例1と一致するため、説明は省略する。
【0095】
ただし、表1に示す実施例30は、S2のセラミックスの分散の前に、セラミックスの前処理のステップが行われた点においてのみ実施例1と異なり、セラミックスの前処理においては、第1のセラミックス粒子を第2の溶媒に添加し、そして一同に反応釜に入れ、さらにグラフト対象物を添加し、一定の反応温度、反応圧力、反応時間を維持し、第1のセラミックス粒子にリチウムイオン伝導性官能基をグラフトする。第2の溶媒はアセトンであり、グラフト対象物はポリカーボネートであった。反応温度は150℃であり、反応圧力は0.3Mpaであり、反応時間は20minであった。反応が終了した後、液体溶媒を除去し、固体を残すと、リチウムイオン伝導性がグラフトされた第1のセラミックス粒子を得ることができる。
【0096】
【0097】
表1から、実施例1~8の比較によれば分かるように、1次元ナノ材料が多過ぎる場合(実施例8)、コーティングセパレータのリチウムイオン導電率が他の比率より遥かに低く、セラミックス粒子が多過ぎる場合(実施例7)、コーティングセパレータの電池容量維持率が低下し、且つ熱収縮が低下し、1次元ナノ材料とセラミックスとの比率が(1:1~1:14)である場合、セラミックスの占有比率の増加につれ、高温での電池容量維持率が徐々に低下し、リチウムイオン導電率が徐々に増加し、耐穿刺能力が徐々に向上し、耐熱性が徐々に低下した。この現象を引き起こす主な原因は、セラミックス粒子の占有比率が上がると、ファイバー層間の空隙をさらに拡張することができ、さらにリチウムイオン導電率を向上させるが、空隙が大きくなると、自己放電が強くなり、高温放置容量の減衰を引き起こし、また、空隙の拡大により、コーティング層材料同士の接触が低下し、熱環境下での耐熱性が低下し、且つセラミックス粒子の耐穿刺能力が1次元ナノ材料より優れるため、耐穿刺能力が向上することである。
【0098】
実施例9~14の比較から分かるように、セラミックスにおいて、第2のセラミックス粒子(サブミクロンセラミックス)の占有比率の増加につれ(実施例9~13)、コーティングセパレータのリチウムイオン導電率が徐々に増加し、電池容量維持率が徐々に低下し、耐穿刺能力が徐々に増加し、耐熱性がそのまま変化しなかった。しかし、第1のセラミックス粒子(ナノセラミックス)の含有量が高過ぎる場合(実施例9)、コーティングセパレータのリチウムイオン導電率が低く、耐穿刺能力が悪くなり、ナノセラミックスの含有量が低過ぎる場合(実施例14)、コーティングセパレータの耐熱性が高くなった。この現象を引き起こす主な原因は、サブミクロンセラミックスがコーティング層の大きい空隙の増加に有利であり、これによってリチウム電池の導電率を向上させることができ、且つ大きいサイズのセラミックス粒子が耐穿刺能力に優れるが、空隙が大きくなると、自己放電が強くなり、高温放置容量の減衰を引き起こし、また、空隙の拡大によりコーティング層材料同士の接触が低下し、熱環境下での耐熱性が低くなることである。
【0099】
実施例15~27の比較から分かるように、ナノセラミック粒子径が小さ過ぎる場合(実施例24)、コーティングセパレータのイオン導電率が低くなり、ナノセラミックス粒子径が大き過ぎる場合(実施例25)、コーティングセパレータの電池容量維持率が低くなり、サブミクロンセラミックスの粒子径が小さ過ぎる場合(実施例26)、コーティングセパレータのイオン導電率が低くなり、且つ耐穿刺能力が低下し、サブミクロンセラミックスの粒子径が大き過ぎる場合(実施例27)、コーティングセパレータの電池容量維持率が低くなり、且つ耐熱性が低下した。この現象を引き起こす主な原因は、ナノセラミックスの粒子径が小さくなる場合、凝集問題がよりひどくなり、さらにリチウムイオン伝導チャネルが狭くなり、イオン導電率が低くなり、ナノセラミックスの粒子径が大き過ぎる場合、コーティング層の空隙が大きくなり、さらに自己放電を増加させ、電池容量維持率が低下し、サブミクロンセラミックスの粒子径が小さくなる場合、コーティング層の空隙が狭くなり、イオン導電率が低下し、且つサイズが小さくなることにより外部からの穿刺に耐える能力が弱くなり、サブミクロンセラミックスの粒子径が大き過ぎる場合、コーティング層の空隙が急激に増大し、電池容量維持率の低下を招き、また、大き過ぎる空隙により、コーティングセパレータはセパレータ形成時に空隙の縮小が発生しやすくなり、マクロ的には耐熱性の低下に具現化されることである。
【0100】
比較例1、2から分かるように、コーティング層中に1次元ナノ材料のみある場合、コーティングセパレータは耐熱性に優れるが、リチウムイオン導電率及び耐穿刺能力が悪くなり、コーティング層中にナノセラミックスのみある場合、コーティングセパレータは耐熱性が低下し、耐穿刺能力が低下するが、リチウムイオン導電率に非常に優れ、コーティング層にサブミクロンセラミックスのみある場合、コーティングセパレータは耐熱性が明らかに低下し、リチウムイオン伝導能力が小さくなるが、耐穿刺能力が高くなった。実施例1~8の比較から分かるように、1次元ナノ材料とセラミックスとの比率が1:1を超える場合(実施例8)、コーティングセパレータはリチウムイオン伝導能力及び耐穿刺能力が向上しなかった。1次元ナノ材料とセラミックスとの比率が1:14より低い場合(実施例7)、コーティングセパレータはリチウムイオン伝導能力及び耐穿刺能力が顕著に向上するが、耐熱性が明らかに低下した。第1のセラミックスと第2のセラミックスとの比率が6:1を超える場合(実施例9)、コーティングセパレータは耐熱性及びリチウムイオン伝導能力がいずれも高くなるが、耐穿刺能力が低下し、第1のセラミックスと第2のセラミックスとの比率が1:6未満の場合(実施例13)、コーティングセパレータは耐熱性及び耐穿刺能力が向上するが、リチウムイオン伝導能力が低下した。これらの三者の比率が一定の範囲にある場合のみ、コーティングセパレータの各指標は総合的に最も良い性能を示している(実施例5)。
【0101】
実施例1、2、5及び比較例3~5の比較から分かるように、1次元ナノ材料が階層化されていない場合、そのコーティングセパレータはリチウム導電率が低くなり、且つ電池容量維持率が低下し、この現象を引き起こす主な原因は、1次元ナノ材料が階層化されないと、材料間の凝集現象が非常にひどくなり、凝集体がベース膜の孔路を閉塞し、それによりリチウムイオン導電率が低くなることを引き起こし、また、空隙の大きさが異なり、自己放電の問題がひどくなり、さらに容量維持率の低下を招くことである。
【0102】
本明細書の説明において、「一実施形態」、「一実施例」、「具体的な実施過程」、「一例」などの用語を使用した説明は、当該実施例又は例を参照して説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味している。本明細書において、上記用語についての例示的な説明は、必ず同じ実施例又は例を指すものではない。また、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性はいずれか1つ又は複数の実施例又は例において適切な方式で組み合わせることができる。
【0103】
最後に説明すべきものとして、以上の各実施例は本発明の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではなく、前記した各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として前記した各実施例に記載の技術的解決手段を修正し、又はその一部又は全部の技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱させないことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0104】
1-コーティングセパレータ、
11-ベース膜、
12-コーティング層構造、
13-セラミックス粒子
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池セパレータ技術の分野に関し、特にコーティングセパレータ、コーティングセパレータの製造方法及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
セパレータはリチウム電池の主要部材の1つであり、その性能の良否がリチウム電池全体の性能に非常に重要な影響を与え、リチウム電池の発展を制約するキー技術の1つである。リチウム電池の応用分野が絶えず拡大し、リチウム電池製品の人々の生活における影響が絶えず深刻になることにつれて、人々のリチウム電池性能に対する要求もますます高まっている。リチウム電池の発展要求を満たすために、セパレータはリチウム電池の重要な部材として良好な化学的安定性、低い製造コストを有すべきということだけでなく、さらにリチウムイオン電池の安全性能を向上させることが現在のリチウム電池発展の重要な傾向となる。
【0003】
従来の関連技術において、コーティングセパレータは、ベース膜と、ベース膜の少なくとも1つの表面にコーティングされたコーティング層とを含むことができ、コーティング層は1次元ナノ材料を含むことができ、しかし、1次元ナノ材料の堆積方式が乱雑で不規則であるため、空隙が多過ぎ、接触点が少ないなどの問題を引き起こしやすく、それによりセパレータの熱安定性に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、セパレータの性能を向上させるために、コーティングセパレータ、コーティングセパレータの製造方法及び電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、ベース膜と、前記ベース膜の少なくとも1つの表面に設けられたコーティング層構造と、を含み、前記コーティング層構造は多層の材料層を含み、前記コーティング層構造は1次元ナノ材料及びセラミックス粒子を含み、且つ前記ベース膜から離れる方向に沿って、各層の材料層中の1次元ナノ材料の平均長さが層ごとに短くなる、コーティングセパレータが提供される。
【0006】
選択的に、前記コーティング層構造のうち前記セラミックス粒子が分布しているコーティング層の厚さが前記コーティング層構造の合計厚さに占める割合は80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは100%に達する。
【0007】
選択的に、前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料とセラミックス粒子との質量比は1:1~1:14である。
【0008】
選択的に、前記セラミックス粒子は第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を含み、ここで、前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記第1のセラミックス粒子の粒子径より大きく、且つ前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記1次元ナノ材料の直径より大きく、
さらに、前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記1次元ナノ材料の直径の2倍以上であり、
さらに、前記第2のセラミックス粒子の粒子径と前記1次元ナノ材料の直径及び前記第1のセラミックス粒子の粒子径の少なくとも1つとは一桁以上の差があり、
さらに、前記1次元ナノ材料の直径は5~50nmであり、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmである。
【0009】
選択的に、前記コーティング層構造において、前記第1のセラミックス粒子と前記第2のセラミックス粒子との質量比は5:1~1:5である。
【0010】
選択的に、前記第1のセラミックス粒子及び前記第2のセラミックス粒子の少なくとも1つは、200℃以上の融点を有し、電気絶縁性を有し、リチウム電池の使用範囲内で電気化学的に安定した無機物である。
【0011】
選択的に、前記第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基がグラフトされ、
さらに、前記リチウムイオン伝導性官能基はヒドロキシル(-OH)、カルボニル(-C=O)、フッ素(-F)、カルボキシル(-COOH)のうちのいずれか1種を含む。
【0012】
選択的に、前記コーティングセパレータは少なくとも、
a)コーティング層の耐穿刺力≧7N、
b)イオン導電率≧0.8、
c)容量維持率≧90%、
d)180℃/hでの熱収縮≦4%、
という条件のいずれか1つを満たす。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様及びその選択的な解決手段に係るコーティングセパレータを製造するためのコーティングセパレータの製造方法が提供され、前記製造方法は、セラミックス粒子の分散、1次元ナノ材料の分散、混合によるペーストの製造、及びコーティングによる製膜のステップを含み、
セラミックス粒子の分散においては、セラミックス粒子を第1の溶媒に分散させ、セラミックス粒子分散液を得、
1次元ナノ材料の分散においては、異なる長さの1次元ナノ材料を同一又は異なる分散剤に分散させ、少なくとも1種の1次元ナノ材料分散液を得、
混合によるペーストの製造においては、前記セラミックス粒子分散液と前記1次元ナノ材料分散液とを含む混合溶液を調製することにより、対応する少なくとも1種のペーストを形成し、
コーティングによる製膜においては、前記少なくとも1種のペーストを前記ベース膜の少なくとも1つの表面にコーティングし、乾燥し、前記コーティングセパレータを得る。
【0014】
選択的に、セラミックス粒子の分散の前に、セラミックス粒子の選別のステップをさらに含み、
セラミックス粒子の選別においては、異なる粒子径の第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を選択し、ここで、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmであり、
さらに、セラミックス粒子の前処理のステップをさらに含み、セラミックス粒子の前処理においては、前記第1のセラミックス粒子を第2の溶媒に添加した後に反応釜に置き、グラフト対象物を添加してグラフト反応を行い、前記第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基をグラフトする。
【0015】
選択的に、前記グラフト対象物はポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリウレタン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、メチルイソプロピルケトンのうちのいずれか1種を含む。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様及びその選択的な解決手段に係るコーティングセパレータを含むか、又は第2の態様及びその選択的な解決手段に係るコーティングセパレータの製造方法により製造されたコーティングセパレータを含む、電池が提供され、
さらに、前記電池はリチウム電池である。
【発明の効果】
【0017】
本発明にて提供されるコーティングセパレータ、コーティングセパレータの製造方法及び電池において、各層の材料層中の1次元ナノ材料は平均長さが層ごとに短くなり、規則的に分布しているため、1次元ナノ材料の乱雑かつ不規則的な分布によって可能な大きい空隙を形成することを回避することができる。一方、1次元ナノ材料の積層密度が大き過ぎてリチウムイオンの伝導に影響を与えることを防止するために、本発明はコーティング層構造にセラミックス粒子を添加することで、コーティング層構造を、1次元ナノ材料とセラミックス粒子とを混合したものにし、セラミックス粒子を添加することにより、1次元ナノ材料の積層密度が大き過ぎることを回避することができ、それにより効果的なリチウムイオン伝導チャネルを形成することができ、それによりリチウムイオンの伝導率を向上させ、セパレータ及び電池の性能を効果的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下、本発明の実施例又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、実施例又は従来技術の説明に使用する必要がある図面を簡単に説明し、当然ながら、以下の説明における図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要せず、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本発明の一実施例におけるコーティングセパレータの局所構造概略図である。
【
図2】本発明の一実施例におけるコーティングセパレータの製造方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の具体例における材料層のl50の長さ値がコーティング層の位置に従って変化する場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例に係る図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明瞭且つ完全に説明し、当然ながら、説明される実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、その全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を要せずに得る他の実施例の全ては、いずれも本発明に保護される範囲に属するものとする。
【0020】
なお、本発明の明細書の説明において、用語「上部」、「下部」、「上端」、「下端」、「下面」、「上面」などによって指示される方位又は位置関係は図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本発明を容易に説明し説明を簡略化するためのものに過ぎず、示される装置又は素子が特定の方向を有し、特定の方位で構成及び操作されるものではなければならないことを指示又は暗示するものではないため、本発明を限定するものとして理解され得ないことを理解されたい。
【0021】
本発明の明細書の説明において、用語「第1」、「第2」は説明のみに目的があり、相対的な重要性を指示又は暗示したり、指示される技術的特徴の数を暗黙的に示したりするものではないことを理解されたい。これにより、「第1」、「第2」によって限定される特徴は、1つ又は複数の当該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。
【0022】
本発明の説明において、「複数」は、特に明記されていない限り、多数を意味し、例えば、2つ、3つ、4つなどである。
【0023】
本発明の明細書の説明において、用語「接続」などは、特に明確な規定及び限定がない限り、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよいし、取り外し可能な接続、又は一体化されたものであってもよいし、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続、又は互いに通信可能であってもよいし、直接的な接続であってもよいし、中間媒体を介した間接的な接続であってもよいし、2つの素子内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者は、具体的な状況に応じて、上記用語の本発明における具体的な意味を理解することができる。
【0024】
以下、本発明の技術的解決手段について具体的な実施例を用いて詳細に説明する。以下のこれらの具体的な実施例は互いに組み合わせることができ、同一又は類似の概念又は過程について、いくつかの実施例では説明を省略することがある。
【0025】
出願人は本願を提案する前に、従来のセパレータに対して一連の研究及び実験を行った。
そのうち、コーティング層中の1次元ナノ材料の堆積方式が乱雑で不規則であり、空隙が多過ぎ、接触点が少ないことを引き起こしやすいなどの問題を解決するために、出願人は対応する解決手段を提供し、1次元ナノ材料の長さをコーティング層に従って層ごとに逓減させ(各材料層の1次元ナノ材料の長さ記述値の逓減に具現化される)、長いナノ材料が堆積した空隙が大きいため、下層であればあるほど、その空隙が大きくなり、上層の短いナノ材料はこれらの空隙をある程度充填することができ、層ごとに堆積すると、コーティング層の内部に空隙がそれほど多くなくなり、且つ接触点が増えているため、熱を受けるとき、コーティング層の緊密な構造はセパレータの熱変形の発生を抑制することができ、それによりコーティングセパレータの耐熱性を向上させる。当該解決手段について、出願人は特許出願(出願番号:PCT/CN2022/077087、出願日:2022.02.21)をも提案し、本願はここでPCT/CN2022/077087の全ての内容を組み込ませ、すなわちPCT/CN2022/077087の全ての内容はいずれも本願のサポートとすることができる。
【0026】
しかしながら、出願人はさらなる研究において、1次元ナノ材料が不規則に配列される方式に比べて、上記解決手段がセパレータの耐熱性を向上できるが、セパレータの全体性能が依然として理想的ではないことを発見した。出願人は、研究及び試験により、その原因として、1次元ナノファイバーの長さが層ごとに逓減するという堆積方式により、コーティング層の堆積緻密性が最も大きくなり、ナノファイバー同士の接触が最も多くなっていることがあることを発見した。しかしながら、1次元ナノファイバーの堆積密度が大き過ぎると、リチウムイオンの伝導チャネルを阻害し、リチウムイオンの伝導率に影響を与えるため、セパレータの性能が制限される。
【0027】
この発見に基づき、出願人は一連の研究、試験及び検証により、本願の技術的解決手段を得た。1次元ナノファイバーの規則的な配列が出願人の主要な技術革新であるため、規則的な配列に基づいてさらに研究した課題及び得られた解決手段も主要な技術革新となり、その研究の全過程はすべて本解決手段の不可分な一部とすべきであり、本願の進歩性を評価するときに1つの完全体として考慮されるべきである。
【0028】
図1を参照し、本発明の実施例はコーティングセパレータ1を提供し、前記コーティングセパレータ1は、ベース膜11と、前記ベース膜11
の少なくとも1つの表面に設けられたコーティング層構造12と、を含み、前記コーティング層構造12は多層の材料層を含み、コーティング層構造12中に1次元ナノ材料及びセラミックス粒子13が分布しており、前記ベース膜から離れる方向に沿って、各層の材料層中の1次元ナノ材料の平均長さが層ごとに短くなり、それに対応して、各材料層中の1次元ナノ材料の空隙の平均サイズも徐々に小さくなる。
【0029】
本発明の実施例は1次元ナノ材料のコーティング層が緻密すぎると空隙が小さくなりすぎてイオン伝導速度が低くなるという問題を考慮して、セラミックス粒子を導入することによりイオン伝導速度を効果的に向上させることができるが、1次元ナノ材料が不規則に分布すれば、セラミックス粒子をさらに追加導入した場合に不規則な混合を引き起こしやすく、そのため一部の領域のリチウムイオン伝導チャネルが小さく、一部の領域のリチウムイオン伝導チャネルが大きくなり、これによって、リチウムイオンの異なる領域における伝導速度の差が大きくなり、リチウムデンドライトの成長発展に問題(自己放電を引き起こしやすい)が生じやすく、さらに電池容量の減衰及び安全性の問題を引き起こす。本願は各層の材料層中の1次元ナノ材料の平均長さを層ごとに短くする上で、1次元ナノ材料にセラミックス粒子を混入し、セラミックス粒子を使用して1次元ナノ材料の積層密度が大き過ぎることを回避することができ、それにより、より効果的なリチウムイオン伝導チャネルを形成することができ、それにより、リチウムイオンの伝導率を向上させ、セパレータ及び電池の性能を効果的に改善することができる。
【0030】
好ましい実施形態として、前記コーティング層構造12中の1次元ナノ材料とセラミックス粒子との質量比は1:1~1:14である。具体的な実施例として、コーティング層構造12中の1次元ナノ材料とセラミックス粒子との質量比は、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14のうちのいずれか1つ又はいずれか2つの間の範囲であってもよい。当然のことながら、コーティング層構造12中の1次元ナノ材料とセラミックス粒子との質量比は他の値であってもよく、その具体的な数値は本発明を限定するものではなく、比が1:1~1:14の間にあれば、いずれも本発明の保護範囲内にあるものとする。
【0031】
好ましい実施形態として、前記コーティング層構造12中のセラミックス粒子は第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を含み、ここで、前記第1のセラミックス粒子の粒子径は前記1次元ナノ材料の直径に相当し、前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記1次元ナノ材料の直径より遥かに大きい。
【0032】
具体的には、前記1次元ナノ材料の直径は5~50nmであり、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmである。
【0033】
本発明の実施例は、階層化されて分布した1次元ナノ材料とマルチサイズのセラミックス粒子とを混合し、底部の1次元ナノ材料が長く上部の1次元ナノ材料が短くするように、同一の材料層において、均一に分布し、異なる領域の長さの差を小さくすることにより、導入されたマルチサイズのセラミックスがリチウムイオンの伝導を十分に加速できるようになっている。ここで、階層化とは、厚さ方向においてナノファイバーのサイズが顕著に変化して形成された階層であり、実質的に分離可能な複数の層であってもよく、顕著なサイズ変化に基づく人為的な階層化(例えばコーティング層の合計厚さの10%占めを一層と定義するか、又はコーティング層の合計厚さの20%、30%、40%占めなどを一層と定義し、階層化の定義は、構造におけるサイズ変化が顕著な箇所の界面に基づいて行われてもよく、ここでは具体的に限定されない)であってもよい。
【0034】
好ましい実施形態として、コーティング層構造12のうちセラミックス粒子13が分布したコーティング層の厚さがコーティング層構造全体の合計厚さに占める割合は80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは100%に達し、それによりセラミックス粒子をコーティング層構造に比較的均一に分散させて、1次元ナノ材料の積層密度が大き過ぎることをより効果的に回避し、それにより、より効果的なリチウムイオン伝導チャネルを形成することができ、それによりリチウムイオンの伝導率を向上させ、セパレータ及び電池の性能を効果的に改善することができる。且つ、さらに好ましい実施形態として、コーティング層構造に明らかな階層が存在する場合、各層にはセラミックス粒子が含まれるようにすることにより、リチウムイオンの伝導率をさらに向上させ、セパレータ及び電池の性能を改善することができる。
【0035】
第1のセラミックス粒子の平均粒子径(D50)を1次元ナノ材料の直径に相当するように設定することにより、第1のセラミックス粒子が1次元ナノ材料間の空隙を拡張可能となり、リチウムイオン導電率を向上させ、第2のセラミックス粒子の平均粒子径(D50)を第1のセラミックス粒子の平均粒子径及び1次元ナノ材料の直径より遥かに大きいように設定することにより、コーティング層の外部からの穿刺に耐える能力を向上させることができる。ここで、遥かに大きいとは、2倍以上を意味する。出願人が研究により証明したように、第1のセラミックス粒子は平均粒子径が小さ過ぎると、凝集がひどくなり、これによりコーティングのリチウムイオン導電率が低くなる一方、第1のセラミックス粒子は平均粒子径が大き過ぎると、1次元ナノ材料の空隙を十分に充填できなくなる。第2のセラミックス粒子は平均粒子径が小さ過ぎると、耐穿刺能力が低下する一方、第2のセラミックス粒子は平均粒子径が大き過ぎると、コーティング層の耐熱性が犠牲にされる。したがって、本願にて提案される第1のセラミックス粒子の平均粒子径が10~60nmであり、第2のセラミックス粒子の平均粒子径が100~600nmであることは検証された好ましい値である。
【0036】
具体的な実施形態として、第1のセラミックス粒子の平均粒子径は、例えば、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nmのうちのいずれか1つ、又はいずれか2つの間の範囲であってもよい。第2のセラミックス粒子の平均粒子径は、例えば、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、375nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nmのうちのいずれか1つ、又はいずれか2つの間の範囲であってもよい。当然のことながら、第1のセラミックス粒子の平均粒子径及び第2のセラミックス粒子の平均粒子径は他の値であってもよく、その具体的な数値は本発明を限定するものではなく、第1のセラミックス粒子の平均粒子径が10~60nmであり、第2のセラミックス粒子の平均粒子径が100~600nmであるようにすれば、いずれも本発明の保護範囲内にあるものとする。当業者であれば分かるように、1次元ナノ材料の直径が変化する場合、第1のセラミックス粒子の平均粒子径及び第2のセラミックス粒子の平均粒子径もそれに従って変化し、第1のセラミックス粒子の粒子径が1次元ナノ材料の直径に相当し、第2のセラミックス粒子の粒子径が1次元ナノ材料の直径より遥かに大きいことを満たせば、いずれも本発明の保護範囲から逸脱しない。
【0037】
さらに好ましい実施形態として、前記コーティング層構造中の第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との質量比は5:1~1:5であり、それにより、コーティング層のイオン導電率をさらに向上させることができると共に、コーティング層の耐穿刺(コーティング層の耐穿刺力≧7N)及び熱収縮の性能(180℃/1h≦4%)をより効果的に確保することができる。出願人は研究により、第1のセラミックス粒子が多過ぎると、耐穿刺能力が悪くなり、第1のセラミックス粒子が少な過ぎると、拡張が限られ、リチウムイオン導電率が低下し、第2のセラミックス粒子が多過ぎると、耐熱性が低下し、第2のセラミックス粒子が少な過ぎると、耐穿刺の性能が低下することを発見した。したがって、本願にて提供されるコーティング層構造中の第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との質量比が5:1~1:5であることは検証された好ましい値である。
【0038】
具体的には、コーティング層構造中の第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との質量比は、例えば5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5のうちのいずれか1つ又はいずれか2つの間の範囲であってもよい。当然のことながら、コーティング層構造中の第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との質量比は他の値であってもよく、その具体的な数値は本発明を限定するものではなく、比が5:1~1:5の間にあれば、いずれも本発明の保護範囲内にあるものとする。
【0039】
さらに好ましい形態として、第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基がグラフトされる。具体的には、第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基がグラフト反応により導入される。第1のセラミックス粒子の表面に大量に含まれるリチウムイオン伝導性官能基はリチウムイオンの伝導能力を大幅に向上させることができる。グラフト官能基はセラミックス粒子の表面においてのみ作用できるものであり、第2のセラミックス粒子の粒子径が第1のセラミックス粒子の粒子径より大きいため、形成された隙間が大きく、リチウムイオン伝導性官能基が作用しにくく、第1のセラミックス粒子の粒子径が小さいため、形成された隙間が小さく、リチウムイオン伝導性官能基の作用がよりよく発揮され、リチウムイオンの伝導性能が向上する。
【0040】
本発明の実施例における1次元ナノ材料の長さがコーティング層に従って層ごとに逓減する方式について、さらに具体的に以下のように説明する。
【0041】
ここで、コーティング層は
図1に示すような三層の材料層を有し(ここでは階層化の定義は、コーティング層構造における、寸法変化が顕著な箇所の界面に基づいて行われている)、ここで、最下層の1次元ナノ材料は中間層の1次元ナノ材料より平均長さが長く、中間層の1次元ナノ材料は最上層の1次元ナノ材料より平均長さが長く、各層の1次元ナノ材料間の平均長さの差は任意に設定することができ、同じ層における1次元ナノ材料の長さは同じであってもよく、異なってもよい。1つの実施形態において、前記1次元ナノ材料は、ナノセルロース、アラミドナノファイバー、ポリイミドナノファイバーの少なくとも1つであってもよい。本発明の実施例の1次元ナノ材料の材料選択は以上の例に限定されない。
【0042】
1つの実施形態において、異なる材料層の1次元ナノ材料の、同一の第2の目標占有比率により、異なる長さ記述値が形成され、
前記材料層中の1次元ナノ材料の長さ記述値は、
前記材料層構造中の1次元ナノ材料について長さの短い順にその数を順次積算するとき、積算して得られた数と前記材料層中の1次元ナノ材料の総数との比が前記第2の目標占有比率に達する場合に対応する1次元ナノ材料の長さを示し、それに応じて、対応する材料層の1次元ナノ材料において、対応する長さ記述値より小さい長さの1次元ナノ材料の占有比率は目標占有比率に達することができ、以上の説明は1次元ナノ材料の長さ記述値の統計学的意味を示し、実際に当該長さ記述値を決定しようとする場合、実際の計算方式は本分野の常識に基づいて処理することができる。
【0043】
一例では、前記第2の目標占有比率は5%~40%の区間の範囲にあるか、又は60%~99%の区間の範囲にある。例えば、5%、10%、20%、40%、60%、70%、80%、90%、99%のうちのいずれか1つ、又はいずれか2つの間の範囲であってもよい。
【0044】
1つの実施形態において、前記ベース膜から離れる方向に沿って、同一の第2の目標占有比率の場合、各層の材料層の1次元ナノ材料の長さ記述値が徐々に小さくなる。これにより、1次元ナノ材料の長さが層ごとに小さくなる傾向を形成することができる。
【0045】
また、対応する材料層の長さ記述値に関しては、長さ記述値の意味は、以上は積算し且つ積算結果に基づいて長さ記述値を決定するという方式により定義されているが、当該統計過程は実際の製造、検収の過程に必ず含まれていることを示すものではなく、実際の解決手段において、任意の製品について、同じ統計学的意味の数値で材料層中の1次元ナノ材料を統計した後に得られた長さ記述値のルールが以上の説明を満たせば、当該実施形態の保護範囲から逸脱しない。一部の解決手段において、予め1次元ナノ材料の長さを選択し又は1次元ナノ材料の長さに応じて製造することにより、以上の長さのルールの満足を保障することができる。
【0046】
ここで、
材料層の1次元ナノ材料の長さ記述値については、例えば、
前記材料層中の1次元ナノ材料のl10は、対応する材料層中のそれぞれの長さの1次元ナノ材料について長さの短い順にその数を順次積算するとき、積算して得られた数と対応する材料層中の1次元ナノ材料の総数との比が10%に達する場合に対応する1次元ナノ材料の長さを意味し、
前記材料層中の1次元ナノ材料のl50は、対応する材料層中のそれぞれの長さの1次元ナノ材料について長さの短い順にその数を順次積算するとき、積算して得られた数と対応する材料層中の1次元ナノ材料の総数との比が50%に達する場合に対応する1次元ナノ材料の長さを意味し、当該l50は、ある程度で対応する材料層の平均長さを示すことができるものと理解されてもよく、
前記材料層中の1次元ナノ材料のl90は、対応する材料層中のそれぞれの長さの1次元ナノ材料について長さの短い順にその数を順次積算するとき、積算して得られた数と対応する材料層中の1次元ナノ材料の総数との比が90%に達する場合に対応する1次元ナノ材料の長さを意味する。
【0047】
l50(すなわち平均長さ)の逓減を実現した場合に、他の1つ又は複数の長さ記述値(例えばl90及び/又はl10)の逓減を実現することもできる。
【0048】
1つの実施形態において、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL10の長さ値は100~300nmの間にあり、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL50の長さ値は250~400nmの間にあり、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL90の長さ値は350~900nmの間にあり、
ここで、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL10は、10%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値を示し、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL50は、50%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値をしめし、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の平均長さとして理解されてもよく、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL90は、90%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値を示し、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値は、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料について長さの短い順にその数を順次積算するときに、積算して得られた数と前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料の総数との比が前記第1の目標占有比率に達する場合に対応する1次元ナノ材料の長さを示し、
且つ、前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料は、L50/L10>1.3、L90/L50>1.3を満たし、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL10は、10%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値を意味し、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL50は、50%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値を意味し、
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料のL90は、90%を第1の目標占有比率とする場合にコーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さ記述値を意味し、
以上の説明はコーティング層構造の長さ記述値の統計学的意味を示し、実際に当該長さ記述値を決定するときに、実際の計算方式は本分野の常識に基づいて処理することができる。
【0049】
さらに、コーティング層構造の長さ記述値に関しては、長さ記述値の意味は、以上は積算し且つ積算結果に基づいて長さ記述値を決定するという方式により定義されているが、当該統計過程は実際の製造、検収の過程に必ず含まれていることを示すものではなく、実際の解決手段において、任意の製品について、同じ統計学的意味の数値で材料層中の1次元ナノ材料を統計した後に得られた長さ記述値のルールが以上の説明を満たせば、当該実施形態の保護範囲から逸脱しない。一部の解決手段において、予め1次元ナノ材料の長さを選択し又は1次元ナノ材料の長さに応じて製造することにより、以上の長さのルールの満足を保障することができる。
【0050】
一例において、前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料については、L10=110nm、L50=310nm、L90=850nmである。
【0051】
ベース膜から離れる方向において、各材料層中の1次元ナノ材料のl50の長さ値と材料層が位置するコーティング層の位置(コーティング層の厚さ方向の位置)との関係をフィッティングした結果は
図3の曲線1、曲線2a、曲線2bを参照して理解することができ、さらに、曲線において、このl50の長さ値が、厚さの増加に従い(すなわち、材料層が位置するコーティング層の位置とベース膜との距離の増加に従い)、徐々に小さくなることに具現化される。
【0052】
図3において、横軸のコーティング層の位置は、厚さ方向に沿って、材料層が位置するコーティング層の位置がコーティング層構造において位置する位置を示すためのものであり、百分率で示すと、材料層が位置するコーティング層の位置とベース膜との間の距離がコーティング層構造全体の厚さに占める百分率を示すことができ、例えば、ここで、10%は当該コーティング層の位置とベース膜との間の距離がコーティング層構造全体の厚さの10%を占めることを示す。
【0053】
そのうちの曲線1については、材料層中の1次元ナノ材料のl50の長さ値は、材料層が位置するコーティング層の位置とベース膜との間の距離の増加に従い、直線的に変化するとフィッティングすることができ、このとき、このl50の長さ値xとコーティング層の位置Yとの関係は、例えば、Y=kx+b(k<0、b>0)のように表され、
そのうちの曲線2aについては、材料層中の1次元ナノ材料のl50の長さ値は、材料層が位置するコーティング層の位置とベース膜との間の距離の増加に従い、最初に速く変化し、その後遅く変化するという傾向となることができ、
そのうちの曲線2bについては、材料層中の1次元ナノ材料のl50の長さ値は、材料層が位置するコーティング層の位置とベース膜との間の距離の増加に従い、最初に遅く変化し、その後速く変化するという傾向となることができる。
【0054】
以上の直線的に変化する傾向、最初に速く変化しその後遅く変化するという傾向、最初に遅く変化しその後速く変化するという傾向を実現するために、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さの設定によって実現することができる。さらに、必要な変化傾向に応じて、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さの設定を選択することができ、
例えば、
直線的変化(例えば曲線1に示す)を実現する必要があれば、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さの設定は、2≧L90/L50>1.5を満たす必要があり、
最初に遅く変化しその後速く変化すること(例えば曲線2bに示す)を実現する必要があれば、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さの設定は、L50/L10>2、1.5≧L90/L50≧1.3を満たす必要があり、
最初に速く変化しその後遅く変化すること(例えば曲線2aに示す)を実現する必要があれば、コーティング層構造中の1次元ナノ材料の長さの設定は、L90/L50>2を満たす必要がある。
【0055】
従来技術において層状構造を形成するために工夫していないため、従来技術は以上の解決手段において異なる変化傾向に応じて行われる長さの設定を開示又は示唆することができない。
【0056】
また、本発明の実施例は、以上の選択的な解決手段に係るコーティングセパレータを含む電池をさらに提供する。
【0057】
また、
図2を参照し、本発明の実施例は、第1の態様及びその選択的な解決手段に係るコーティングセパレータを製造するためのコーティングセパレータの製造方法をさらに提供し、前記製造方法は以下のS1~S4を含む。
【0058】
S1のセラミックス粒子の分散において、セラミックス粒子を第1の溶媒に分散させ、セラミックス粒子分散液を得る。
【0059】
具体的には、セラミックス粒子を第1の溶媒に分散させ、分散液を得る。第1の溶媒は、水、N-メチルピロリドン、エタノール、アセトンなどから選ばれたいずれかである。セラミックス粒子は高速撹拌、高圧均質化、サンドミル分散などの方式を採用して溶媒に均一に分散し、セラミックス粒子の分散液中における質量濃度は2%~40%である。
【0060】
S2の1次元ナノ材料の分散において、異なる長さの1次元ナノ材料を同一又は異なる分散剤に分散させ、少なくとも1種の1次元ナノ材料分散液を得る。
【0061】
具体的には、異なる長さの1次元ナノ材料を分散剤に分散させ、分散液を得る。分散剤は、水、N-メチルピロリドン、エタノール、アセトンなどから選ばれたいずれかである。1次元ナノ材料は高速撹拌、高圧均質化、サンドミル分散などの方式を採用して分散剤に均一に分散し、1次元ナノ材料の分散剤中における質量濃度は2%~30%である。
【0062】
ここで、少なくとも部分的に異なる長さの1次元ナノ材料は、1次元ナノ材料の原料の選択に応じて実現され、例えば、異なる材料の1次元ナノ材料を選択して用いる場合、異なる長さの1次元ナノ材料を形成できる可能性がある。
【0063】
別の例において、異なる長さの1次元ナノ材料は関連する技術的手段によって形成されてもよい。
【0064】
少なくとも部分的に異なる長さの1次元ナノ材料は、1次元ナノ材料の原料又は切断された1次元ナノ材料を切断し、1回又は複数回の切断により、形成される。
【0065】
ここで、1次元ナノ材料に対する切断により、1つの長さの1次元ナノ材料の原料に基づいて、短い1次元ナノ材料を形成することができ、例えば、1次元ナノ材料を原料の半分に切断してもよく、他の例において、半分切断の方式を採用せず実現してもよい。
【0066】
1次元ナノ材料の切断を実現できる任意の既存手段又は改良手段は、いずれも本発明の実施例の具体例とすることができる。具体例において、1次元ナノ材料に対するエッチングにより実現することができ、例えば、1次元ナノ材料に対するエッチングによりそれを原料の半分の長さにエッチングしてもよい。
【0067】
所望の階層化に基づいて、原料に対する1回の切断、又は複数回の切断を実現することができ、例えば、まず1次元ナノ材料を原料の半分の長さにエッチングし、そして一部分の半分の長さの1次元ナノ材料を保留し、さらに他部分の半分の長さの1次元ナノ材料を切断し、四分の一の長さの1次元ナノ材料を得、このとき、三層の構造を形成することができ、他の例において、さらに四分の一の長さの1次元ナノ材料の一部を切断してもよく、切断回数は需要に応じて任意に設定することができる。
【0068】
当然のことながら、
1つの1次元ナノ材料の原料の、他の1つの1次元ナノ材料の原料の一端への接合、
1つの接合された1次元ナノ材料の、1つの1次元ナノ材料の原料の一端への接合、
1つの接合された1次元ナノ材料の、他の1つの接合された1次元ナノ材料の一端への接合という少なくとも1つの接合の過程を実施し、1回又は複数回の接合により、少なくとも部分的に異なる長さの1次元ナノ材料を形成してもよい。
【0069】
このように、接合の対象は1つの1次元ナノ材料の原料の一端と他の1つの1次元ナノ材料の原料の一端であってもよく、1つの1次元ナノ材料の原料の一端と接合された1次元ナノ材料の一端であってもよく、接合された1次元ナノ材料の一端と他の接合された1次元ナノ材料の一端であってもよい。
【0070】
ここで、1次元ナノ材料に対する接合により、1つの長さの1次元ナノ材料の原料に基づいて、長い1次元ナノ材料を形成することができ、例えば、2つの1次元ナノ材料の原料を接合することによって、二倍の長さの1次元ナノ材料を形成してもよく、他の例において、異なる長さの1次元ナノ材料の原料(又は接合された1次元ナノ材料)を用いて実現してもよい。
【0071】
1次元ナノ材料の接合を実現できる任意の既存手段又は改良手段は、いずれも本発明の実施例の具体例とすることができる。
【0072】
例えば、1次元ナノ材料の接合は、ヒドロキシル官能基が大量に含まれる材料(例えばポリエチレングリコールPEG)に基づいて、実現されてもよく、この場合、以上に言及された接合は、
接合対象の1次元ナノ材料と、ヒドロキシル官能基が大量に含まれる材料(例えばPEG)とを溶液に混合するステップと、
前記溶液に触媒としてモレキュラーシーブ粒子を添加するステップと、
前記溶液を加熱し、そして冷却し、モレキュラーシーブを濾過して除去すると、接合された1次元ナノ材料を得るステップと、を含んでもよい。
【0073】
具体例において、ナノセルロースを例とする。ナノセルロースの端部は中間領域よりヒドロキシル含有量が明らかに高い。ナノセルロースの長さを増加させるために、ヒドロキシルの活性を十分に発揮することができ、やり方は、
(1)ナノセルロースをポリエチレングリコール(PEG)と混合し、PEGの分子量が50000~1000000g/molであり、PEGがナノセルロースの質量の1%を占め、両者を十分に均一に撹拌し、対応する溶液を形成し、
(2)上記溶液に13Aモレキュラーシーブ粒子を加え、粒子のサイズが1mm~10mmであり、当該モレキュラーシーブが触媒であり、
(3)1~2時間かけて80℃まで水浴で加熱し、
(4)常温まで冷却し、13Aモレキュラーシーブ粒子を濾過して除去すると、接合されたナノセルロースを得るようになっている。
【0074】
以上の解決手段において、ヒドロキシル基官能基が大量に含まれた材料(例えばPEG)を加えることにより、ナノセルロース同士を架橋結合させることができ、モレキュラーシーブ(例えば13Aモレキュラーシーブ)を触媒とすることにより、PEGとナノセルロースとの間の重合反応を加速させることができ、最後にナノセルロース-PEG-ナノセルロースの構造を形成する。所望の階層化に基づき、原料に対する1回の接合、又は複数回の接合を実現することができ、例えば、まず1次元ナノ材料の原料を原料の2倍に接合し、そして2倍の長さの1次元ナノ材料の一部を保留し、さらに他方の2倍の長さの1次元ナノ材料を原料又は2倍の長さの1次元ナノ材料に接合し、3倍の長さ又は4倍の長さの1次元ナノ材料を得、このとき、3層の構造を形成することができ、他の例において、さらに接合してもよく、接合回数は必要に応じて任意に設定することができる。
【0075】
ステップS2の1つの解決手段において、様々な長さの1次元ナノ材料を同一の分散剤に分散させ、これによって同一の分散剤に対応するペーストに基づいて、コーティング後に階層化を実現するようにしてもよく、ステップS2の別の解決手段において、異なる長さの1次元ナノ材料に基づいて、異なる分散剤を形成し(異なる分散剤中の1次元ナノ材料の長さが異なる)、これによって、異なる分散液とペーストを形成するようにしてもよく、コーティング時に、1次元ナノ材料の長さに基づいて様々なペーストを層ごとにコーティングするようにしてもよい。
【0076】
一例として、ステップS2において、様々な長さの1次元ナノ材料を分散剤に十分に分散させてもよく、分散剤は、例えば水、エタノール、メタノールなどから選ばれたいずれかである。分散方式としては、例えば、超音波処理、高速撹拌、高圧均質化、サンドミル分散などの方式が挙げられる。該分散方式を採用して1次元ナノ材料を分散剤に均一に分散する。1次元ナノ材料分散液中における濃度の値の範囲は0.01~50wt%であってもよい。
【0077】
S3の混合によるペーストの製造において、前記セラミックス粒子分散液と前記1次元ナノ材料分散液とを含む混合溶液を調製することにより、対応する少なくとも1種のペーストを形成する。
【0078】
具体的には、S1で得られたセラミックス粒子分散液をS2で得られた1次元ナノ材料分散液に混合し、混合方式としては高速撹拌、高圧均質化、サンドミル分散などの方式を採用する。次に、混合溶液に接着剤を添加する。接着剤はポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン及びポリイミドのうちの少なくとも1種である。接着剤はセラミックス粒子分散液と1次元ナノ材料分散液との混合溶液における固体質量の1%~10%を占める。
【0079】
S4のコーティングによる製膜において、前記少なくとも1種のペーストを前記ベース膜にコーティングし、前記ベース膜及び前記ペーストを乾燥し、前記コーティングセパレータを得る。
【0080】
具体的には、コーティング方式により、上記製造されたペーストをベース膜にコーティングし、乾燥すると、コーティングセパレータを得ることができる。コーティング方式はスプレーコーティング、ディップコーティング、マイクログラビアコーティング、印刷コーティング、押圧コーティング、ワイヤーバーコーティングのいずれかである。ベース膜は、例えばポリオレフィンベース膜であり、厚さは3~30ミクロンであり、乾燥温度は40~130℃であり、コーティング速度は10~200m/minである。
【0081】
ここで、好ましい形態として、セラミックス粒子の分散の前に、S11~S12をさらに含み、
S11のセラミックス粒子の選別においては、異なる粒子径の第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を選択し、ここで、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmであり、
S12のセラミックス粒子の前処理においては、前記第1のセラミックス粒子を第2の溶媒に添加した後に反応釜に置き、グラフト対象物を添加してグラフト反応を行い、前記第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基をグラフトする。具体的には、第1のセラミックス粒子を第2の溶媒に添加し、そして一同に反応釜に入れ、さらにグラフト対象物を添加し、一定の反応温度、反応圧力、反応時間をかけて、第1のセラミックス粒子にリチウムイオン伝導性官能基をグラフトすることができる。
【0082】
第1のセラミックスについては、特に限定せず、200℃以上の融点を有し、電気絶縁性が高く、リチウム電池の使用範囲内で電気化学的に安定した物質が好ましい。例えば、アルミナ、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛などの酸化物系セラミックス、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素などの窒化物系セラミックス、炭化ケイ素、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩基性アルミナ(Aluminum hydroxide oxide)、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、カオリン、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、珪藻土、ケイ砂などのセラミックスが挙げられ、これらは単独で使用されてもよいし、又は複数種を組み合わせて使用されてもよいし。
【0083】
第2のセラミックス粒子についても特に限定せず、200℃以上の融点を有し、電気絶縁性が高く、リチウム電池の使用範囲内で電気化学的に安定した物質が好ましく、且つ第1のセラミックスと同じ又は異なる無機材料を選択することができる。第2の溶媒は水、エタノール、アセトン、NMPなどのいずれかであり、グラフト対象物はポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリウレタン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、メチルイソプロピルケトンなどのいずれかである。反応温度は100~200℃であり、反応圧力は0.1~0.5Mpaであり、反応時間は10~50minである。反応が終了した後、液体溶媒を除去し、固体を残すと、リチウムイオン伝導性官能基がグラフトされた第1のセラミックス粒子を得ることができる。
【0084】
これに基づき、S1における前記セラミックス粒子の分散は具体的には、
S12で前処理された第1のセラミックス粒子を前記第2のセラミックス粒子と混合した後に第1の溶媒に分散させ、セラミックス粒子分散液を得ることである。
【0085】
以下、本発明のいくつかの実施例の製品性能を実験により分析する。
【0086】
実施例1
本実施例は以下のステップS1~S5により製造してコーティングセパレータを得る。
【0087】
S1のセラミックス粒子の選別において、異なる粒子径の第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を選択し、ここで、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は40nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は300nmであり、前記第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子はいずれもアルミナであった。
【0088】
S2のセラミックス粒子の分散において、第2のセラミックス粒子と第1のセラミックス粒子とを1:1の比で混合し、高速撹拌方式によりN-メチルピロリドンに均一に分散させ、セラミックス粒子分散液を得た。セラミックス粒子の分散液中における質量濃度は20%であった。
【0089】
S3の1次元ナノ材料の分散において、異なる長さの1次元ナノ材料を分散剤に分散させ、分散液を得た。分散剤はN-メチルピロリドンであり、分散方式は高速撹拌であり、1次元ナノ材料の分散剤中における質量濃度は15%であった。
【0090】
S4の混合によるペースト製造において、S2で得られたセラミックス粒子分散液をS3で得られた1次元ナノ材料分散液に混合し、混合溶液を形成し、混合方式としては高速撹拌を採用し、続いて混合溶液に接着剤を添加し、接着剤はポリビニルアルコールであり、接着剤は混合溶液中の固体質量の8%を占めた。
【0091】
S5のコーティングによる製膜において、コーティング方式により、前記少なくとも1種のペーストをベース膜にコーティングし、前記ベース膜及び前記ペーストを乾燥し、前記コーティングセパレータを得た。ここで、ベース膜はポリエチレンベース膜であり、厚さは9ミクロンであり、乾燥温度は100℃であり、コーティング速度は100m/minであった。得られたコーティング層の厚さは2ミクロンであった。
【0092】
ここで、1次元ナノ材料は、ベース膜の表面に堆積し、層状構造(すなわち階層化された、異なる長さの1次元ナノ材料)を形成し、ベース膜に堆積する過程において、表面エネルギーのため、最も長い1次元ナノ材料(その表面エネルギーが最も大きく、最も不安定であり、一旦小さい表面エネルギーの界面に接触すると、最も付着しやすい)は最初に堆積し、2番目に長いものはその次に堆積し、最も短い1次元ナノ材料は最後に堆積し、このように、長い順に、徐々に堆積した層状構造が形成された。
【0093】
実施例2~29及び比較例1~5は同様の方法を用いて得られ、ここで、実施例1~29及び比較例1~5で得られた対応するセパレータの性能については表1を参照し、表1に示された製造パラメータの差を除き、全ての実施例及び比較例は他の点において実施例1と一致するため、説明は省略する。
【0094】
ただし、表1に示す実施例30は、S1のセラミックス粒子の分散の前に、セラミックス粒子の前処理のステップが行われた点においてのみ実施例1と異なり、セラミックス粒子の前処理においては、第1のセラミックス粒子を第2の溶媒に添加し、そして一同に反応釜に入れ、さらにグラフト対象物を添加し、一定の反応温度、反応圧力、反応時間を維持し、第1のセラミックス粒子にリチウムイオン伝導性官能基をグラフトする。第2の溶媒はアセトンであり、グラフト対象物はポリカーボネートであった。反応温度は150℃であり、反応圧力は0.3Mpaであり、反応時間は20minであった。反応が終了した後、液体溶媒を除去し、固体を残すと、リチウムイオン伝導性官能基がグラフトされた第1のセラミックス粒子を得ることができる。
【0095】
【0096】
表1から、実施例1~8の比較によれば分かるように、1次元ナノ材料が多過ぎる場合(実施例8)、コーティングセパレータのリチウムイオン導電率が他の比率より遥かに低く、セラミックス粒子が多過ぎる場合(実施例7)、コーティングセパレータの電池容量維持率が低下し、且つ熱収縮が低下し、1次元ナノ材料とセラミックスとの比率が(1:1~1:14)である場合、セラミックスの占有比率の増加につれ、高温での電池容量維持率が徐々に低下し、リチウムイオン導電率が徐々に増加し、耐穿刺能力が徐々に向上し、耐熱性が徐々に低下した。この現象を引き起こす主な原因は、セラミックス粒子の占有比率が上がると、コーティング層間の空隙をさらに拡張することができ、さらにリチウムイオン導電率を向上させるが、空隙が大きくなると、自己放電が強くなり、高温放置容量の減衰を引き起こし、また、空隙の拡大により、コーティング層材料同士の接触が低下し、熱環境下での耐熱性が低下し、且つセラミックス粒子の耐穿刺能力が1次元ナノ材料より優れるため、耐穿刺能力が向上することである。
【0097】
実施例9~14の比較から分かるように、セラミックスにおいて、第2のセラミックス粒子(サブミクロンセラミックス粒子)の占有比率の増加につれ(実施例9~13)、コーティングセパレータのリチウムイオン導電率が徐々に増加し、電池容量維持率が徐々に低下し、耐穿刺能力が徐々に増加し、耐熱性がそのまま変化しなかった。しかし、第1のセラミックス粒子(ナノセラミックス粒子)の含有量が高過ぎる場合(実施例9)、コーティングセパレータのリチウムイオン導電率が低く、耐穿刺能力が悪くなり、第1のセラミックス粒子の含有量が低過ぎる場合(実施例14)、コーティングセパレータの耐熱性が高くなった。この現象を引き起こす主な原因は、第2のセラミックス粒子がコーティング層の大きい空隙の増加に有利であり、これによってリチウム電池の導電率を向上させることができ、且つ粒子径の大きい第2のセラミックス粒子が耐穿刺能力に優れるが、空隙が大き過ぎると、自己放電が強くなり、高温放置容量の減衰を引き起こし、また、空隙の拡大によりコーティング層における材料同士の接触点の数が低下し、熱環境下での耐熱性が低くなることである。
【0098】
実施例15~27の比較から分かるように、第1のセラミック粒子の粒子径が小さ過ぎる場合(実施例24)、コーティングセパレータのイオン導電率が低くなり、第1のセラミックス粒子の粒子径が大き過ぎる場合(実施例25)、コーティングセパレータの電池容量維持率が低くなり、第2のセラミックス粒子の粒子径が小さ過ぎる場合(実施例26)、コーティングセパレータのイオン導電率が低くなり、且つ耐穿刺能力が低下し、第2のセラミックス粒子の粒子径が大き過ぎる場合(実施例27)、コーティングセパレータの電池容量維持率が低くなり、且つ耐熱性が低下した。この現象を引き起こす主な原因は、第1のセラミックス粒子の粒子径が小さくなる場合、第1のセラミックス粒子の凝集問題がよりひどくなり、さらにリチウムイオン伝導チャネルが狭くなり、イオン導電率が低くなり、第1のセラミックス粒子の粒子径が大き過ぎる場合、コーティング層の空隙が大きくなり、さらに自己放電を増加させ、電池容量維持率が低下し、サブミクロンセラミックスの粒子径が小さくなる場合、コーティング層の空隙が狭くなり、イオン導電率が低下し、且つサイズが小さくなることにより外部からの穿刺に耐える能力が弱くなり、サブミクロンセラミックスの粒子径が大き過ぎる場合、コーティング層の空隙が急激に増大し、電池容量維持率の低下を招き、また、大き過ぎる空隙により、コーティングセパレータは熱を受けるときに空隙の縮小が発生しやすくなり、マクロ的には耐熱性の低下に具現化されることである。
【0099】
比較例1、2から分かるように、コーティング層中に1次元ナノ材料のみある場合、コーティングセパレータは耐熱性に優れるが、リチウムイオン導電率及び耐穿刺能力が悪くなり、コーティング層中にナノセラミックスのみある場合、コーティングセパレータは耐熱性が低下し、耐穿刺能力が低下するが、リチウムイオン導電率に非常に優れ、コーティング層にサブミクロンセラミックスのみある場合、コーティングセパレータは耐熱性が明らかに低下し、リチウムイオン伝導能力が小さくなるが、耐穿刺能力が高くなった。実施例1~8の比較から分かるように、1次元ナノ材料とセラミックス粒子との比率が1:1を超える場合(実施例8)、コーティングセパレータはリチウムイオン伝導能力及び耐穿刺能力が向上しなかった。1次元ナノ材料とセラミックス粒子との比率が1:14より低い場合(実施例7)、コーティングセパレータはリチウムイオン伝導能力及び耐穿刺能力が顕著に向上するが、耐熱性が明らかに低下した。第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との比率が6:1を超える場合(実施例9)、コーティングセパレータは耐熱性及びリチウムイオン伝導能力がいずれも高くなるが、耐穿刺能力が低下し、第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との比率が1:6未満の場合(実施例13)、コーティングセパレータは耐熱性及び耐穿刺能力が向上するが、リチウムイオン伝導能力が低下した。1次元ナノ材料と第1のセラミックス粒子と第2のセラミックス粒子との間の比率が一定の範囲にある場合のみ、コーティングセパレータの各指標は総合的に最も良い性能を示している(実施例5)。
【0100】
実施例1、2、5及び比較例3~5の比較から分かるように、1次元ナノ材料が階層化されていない場合、そのコーティングセパレータはリチウム導電率が低くなり、且つ電池容量維持率が低下し、この現象を引き起こす主な原因は、1次元ナノ材料が階層化されないと、材料間の凝集現象が非常にひどくなり、凝集体がベース膜の孔路を閉塞し、それによりリチウムイオン導電率が低くなることを引き起こし、また、空隙の大きさが異なり、自己放電の問題がひどくなり、さらに容量維持率の低下を招くことである。
【0101】
本明細書の説明において、「一実施形態」、「一実施例」、「具体的な実施過程」、「一例」などの用語を使用した説明は、当該実施例又は例を参照して説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味している。本明細書において、上記用語についての例示的な説明は、必ず同じ実施例又は例を指すものではない。また、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性はいずれか1つ又は複数の実施例又は例において適切な方式で組み合わせることができる。
【0102】
最後に説明すべきものとして、以上の各実施例は本発明の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではなく、前記した各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として前記した各実施例に記載の技術的解決手段を修正し、又はその一部又は全部の技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱させないことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0103】
1-コーティングセパレータ、
11-ベース膜、
12-コーティング層構造、
13-セラミックス粒子
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース膜と、前記ベース膜の少なくとも1つの表面に設けられたコーティング層構造と、を含み、前記コーティング層構造は多層の材料層を含み、前記コーティング層構造は1次元ナノ材料及びセラミックス粒子を含み、且つ前記ベース膜から離れる方向に沿い、各層の材料層中の1次元ナノ材料の平均長さが層ごとに短くなる、ことを特徴とする、コーティングセパレータ。
【請求項2】
前記コーティング層構造のうち前記セラミックス粒子が分布しているコーティング層が前記コーティング層構造の合計厚さに占める割合は80%以
上に達する、ことを特徴とする、請求項1に記載のコーティングセパレータ。
【請求項3】
前記コーティング層構造中の1次元ナノ材料とセラミックス粒子との質量比は1:1~1:14である、ことを特徴とする、請求項
1に記載のコーティングセパレータ。
【請求項4】
前記セラミックス粒子は第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を含み、ここで、前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記第1のセラミックス粒子の粒子径より大きく、且つ前記第2のセラミックス粒子の粒子径は前記1次元ナノ材料の直径の2倍以上であ
る、ことを特徴とする、請求項3に記載のコーティングセパレータ。
【請求項5】
前記第2のセラミックス粒子の粒子径と前記1次元ナノ材料の直径及び前記第1のセラミックス粒子の粒子径の少なくとも1つとは一桁以上の差がある、ことを特徴とする、請求項4に記載のコーティングセパレータ。
【請求項6】
前記1次元ナノ材料の直径は5~50nmであり、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmである、ことを特徴とする、請求項5に記載のコーティングセパレータ。
【請求項7】
前記コーティング層構造において、前記第1のセラミックス粒子と前記第2のセラミックス粒子との質量比は5:1~1:5である、ことを特徴とする、請求項4に記載のコーティングセパレータ。
【請求項8】
前記第1のセラミックス粒子及
び前記第2のセラミックス粒子
の少なくとも1つは、200℃以上の融点を有し、電気絶縁性を有し、リチウム電池の使用範囲内で電気化学的に安定した無機物である、ことを特徴とする、請求項4に記載のコーティングセパレータ。
【請求項9】
前記第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基がグラフトされ、
さらに、前記リチウムイオン伝導性官能基はヒドロキシル(-OH)、カルボニル(-C=O)、フッ素(-F)、カルボキシル(-COOH)のうちのいずれか1種を含む、ことを特徴とする、請求項
4に記載のコーティングセパレータ。
【請求項10】
前記コーティングセパレータは少なくとも、
a)コーティング層の耐穿刺
力≧7N、
b)イオン導電率≧0.8、
c)容量維持率≧90%、
d)180℃/hでの熱収縮≦4%、
という条件のいずれか1つを満たす、ことを特徴とする、請求項1に記載のコーティングセパレータ。
【請求項11】
請求項
1に記載のコーティングセパレータを製造するためのコーティングセパレータの製造方法であって、前記製造方法は、セラミックス
粒子の分散、1次元ナノ材料の分散、混合によるペーストの製造、コーティングによる製膜のステップを含み、
セラミックス
粒子の分散においては、セラミックス粒子を第1の溶媒に分散させ、セラミックス
粒子分散液を得、
1次元ナノ材料の分散においては、異なる長さの1次元ナノ材料を同一又は異なる分散剤に分散させ、少なくとも1種の1次元ナノ材料分散液を得、
混合によるペーストの製造においては、前記セラミックス
粒子分散液
と前記1次元ナノ材料分散液
とを含む混合溶液を調製することにより、対応する少なくとも1種のペーストを形成し、
コーティングによる製膜においては、前記少なくとも1種のペーストを前記ベース膜の少なくとも1つの表面にコーティングし、乾燥し、前記コーティングセパレータを得る、ことを特徴とする、コーティングセパレータの製造方法。
【請求項12】
セラミックス
粒子の分散の前に、セラミックス
粒子の選別のステップをさらに含み、
セラミックス
粒子の選別においては、異なる粒子径の第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子を選択し、ここで、前記第1のセラミックス粒子の平均粒子径は10~60nmであり、前記第2のセラミックス粒子の平均粒子径は100~600nmであ
る、ことを特徴とする、請求項
11に記載のコーティングセパレータの製造方法。
【請求項13】
セラミックス粒子の前処理のステップをさらに含み、セラミックス粒子の前処理においては、前記第1のセラミックス粒子を第2の溶媒に添加した後に反応釜に置き、グラフト対象物を添加してグラフト反応を行い、前記第1のセラミックス粒子の表面にリチウムイオン伝導性官能基をグラフトする、ことを特徴とする、請求項12に記載のコーティングセパレータの製造方法。
【請求項14】
前記グラフト対象物はポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリウレタン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、メチルイソプロピルケトンのうちのいずれか1種を含む、ことを特徴とする、請求項
13に記載のコーティングセパレータの製造方法。
【請求項15】
前記セラミックス
粒子の分散は具体的には、
前処理された第1のセラミックス粒子と前記第2のセラミックス粒子とを混合した後に第1の溶剤に分散させ、セラミックス
粒子分散液を得ることである、ことを特徴とする、請求項
13に記載のコーティングセパレータの製造方法。
【請求項16】
請求項1~
10のいずれか一項に記載のコーティングセパレータ又は請求項
11~
15のいずれか一項に記載のコーティングセパレータの製造方法により製造されたコーティングセパレータを含む電池であって、
さらに、前記電池はリチウム電池である、ことを特徴とする、電池。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】