(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】分娩デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/42 20060101AFI20250123BHJP
A61L 33/06 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61B17/42 520
A61L33/06
A61L33/06 100
A61L33/06 200
A61L33/06 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024566903
(86)(22)【出願日】2023-02-01
(85)【翻訳文提出日】2024-09-30
(86)【国際出願番号】 GB2023050222
(87)【国際公開番号】W WO2023148485
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524288023
【氏名又は名称】バースグライド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIRTHGLIDE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】グオ、ティアンゼ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C160
【Fターム(参考)】
4C081AA07
4C081AA14
4C081BB05
4C081CA02
4C081CA05
4C081CA08
4C081CA09
4C081CA10
4C081CA16
4C081CA18
4C081CA21
4C081CA23
4C081CA27
4C081CB04
4C081CC01
4C081DA04
4C081DA05
4C081DA12
4C081DB01
4C081DB03
4C081DB06
4C081DC13
4C081EA03
4C081EA04
4C081EA05
4C081EA12
4C081EA14
4C160HH04
4C160MM21
(57)【要約】
本発明は、出産を補助する及び/又は分娩停止を防止するデバイス、当該デバイスを作成する方法、出産を補助する及び/又は分娩停止を防止する方法に関連する。本発明は、出産を補助する及び/又は分娩停止を防止するヒドロゲルの使用にも及ぶ。
【選択図】
図1(B)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産道の中で赤ん坊の少なくとも1部分をカバーするため及び/又は出産の最中に産道の少なくとも1部分をライニングするためのヒドロゲルメンブレン、
を含む、出産を補助するためのデバイス。
【請求項2】
赤ん坊の1部分が、赤ん坊の頭、赤ん坊の首、赤ん坊の胴体又は赤ん坊の脚である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
ヒドロゲルメンブレンが、赤ん坊の頭に被せられる王冠の形状を含むか又は該形状であり、かつ、王冠が赤ん坊の頭を受容するための開口部を有する、
請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
デバイスが、丸まったリムを含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
丸まったリムが開口部を画成するか、又は丸まったリムがヒドロゲルメンブレンの全体的外周又は縁部を画成する、
請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
丸まったリムがヒドロゲルから製造されるか又はヒドロゲルを含み、及び/又は、
丸まったリムが高摩擦材料から製造されるか又は高摩擦材料を含む、
請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項7】
丸まったリムが、王冠又はヒドロゲルメンブレンとして、同一のヒドロゲルから製造されるか又は同一のヒドロゲルを含む、
請求項4~6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
ヒドロゲルメンブレンが、合成ポリマ繊維によって補強される、
請求項1~7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
ヒドロゲルメンブレンが、水ベースの潤滑剤又はオイルベースの潤滑剤を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
デバイスがキャップであり、任意的に開口部の外周が少なくとも約24cmである、
請求項1~9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
デバイスが、一端において第1開口部を画成する第1の丸まったリムと、他方端において第2開口部とを含むスリーブであり、
任意的に、第1開口部の外周が約26cm未満でありかつ第2開口部の外周が約28cmを上回るか、又は、任意的に第1開口部及び第2開口部の外周が約28cmを上回る、 請求項1~10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
ヒドロゲルメンブレンが生体適合性のものである、
請求項1~11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
ヒドロゲルメンブレンが、PVA、PEG、PAAm、HEMAコポリマ及びPDMSからなる群から選択される1以上のポリマから製造される、
請求項1~12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
ヒドロゲルメンブレンが、PVA、PAAm、又はHEMAコポリマから製造される、 請求項1~13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
合成ポリマ繊維が、織物である、
請求項8~14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
合成ポリマ繊維がメッシュを形成し、任意的にメッシュがオープンメッシュ、フィルタメッシュ、織りメッシュ又はワープニットメッシュである、
請求項8~15のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
メッシュがワープニットメッシュである、
請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
合成ポリマ繊維が、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブテスタ、ポリ尿素、及びポリウレタンからなる群から選択される1以上のポリマから製造されるか又は含む、
請求項8~17のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
合成ポリマ繊維がポリアミドから製造されるか又はポリアミドを含み、任意的に合成ポリマ繊維がナイロンから製造されるか又はナイロンを含む、
請求項8~18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
ヒドロゲルメンブレンが、0.5以下の値(2Dベンチセットアップに従う)などの低い摩擦係数を有する、
請求項1~19のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、出産を補助するためのデバイスに関する。本開示は、当該デバイスを作成する方法、当該デバイスを使用して出産を補助する方法、及び出産を補助するヒドロゲルの使用にも関する。
【0002】
分娩(labour)は、3つの段階に区分することができる、第1段階:分娩の診断から子宮頸部の最大拡張(full dilation)(10cm)まで、第2段階:子宮頸部の最大拡張から胎児の娩出(delivery)まで。これは、通常、非経産婦(nulliparous women)では2時間未満持続し、多重産婦(multiparous women)では1時間持続する。そして、第3段階:赤ん坊の娩出から胎盤及びメンブレンの娩出完了(complete delivery)まで。
【0003】
分娩の第2段階の間に、胎児の頭は母親の産道から顕著な摩擦を経験する。羊水、胎脂及び腟液の混合物を含む天然の潤滑剤のパフォーマンスは、人によって様々である。天然の潤滑剤は、娩出プロセスに渡ってスライドする表面をフルにカバーできないかもしれない。天然の潤滑剤の不在による露出した皮膚と産道との間の接触は、分娩の間に生じる摩擦力を顕著に増加させ得るし、産道の壊れやすい粘膜に対するダメージをもたらし得る。粘膜に対するダメージは、局部的な腫れ(swelling)を誘発し、分娩の間に生じる摩擦力を更に増加させる。
【0004】
この問題を緩和するために、水ベースの潤滑ゲルなどの人工的な潤滑剤が分娩の間に産道の中に導入され得る。しかしながら、子宮収縮及び母方の押し出し(maternal pushing)によってもたらされる押出力(driving force)は波となって押し寄せる。結果的に、産道を通過する胎児の動きは、低い速度でのスタート/ストップパターンを経る。そのような状況下では、液体潤滑剤はスライド表面(sliding surface)から押し出されて、スライド表面を境界潤滑に対して露出させて、結果として摩擦を顕著に増加させるかもしれない。更に、水ベースのゲル潤滑剤は、適用初期には摩擦を減少させ得る。しかしながら、短い期間の後には、蒸発及び/又は吸収などの要因により、含水率の損失に起因して、通常では摩擦が顕著に増加する。増加した摩擦は、特に、分娩停止(obstructed labour)の際に、赤ん坊の娩出を殊更困難にし得る。
【0005】
分娩停止は、強力な子宮収縮にもかかわらず、胎児の出現箇所が産道から伸長しない時に生じる(第2段階の間)。それは、即座に解消されなければ、胎児及び母方の合併症を導き得る。分娩停止は、帝王切開又は器具の助けによる娩出(例えば、ピンセット、減圧抽出又は恥骨切開術)のいずれかの手術分娩のみによって緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、出産を助けるため及び/又は分娩停止を妨げるための改良された手段に関するニーズが存在する。
【0008】
本開示の第1の視点によれば、
産道の中で赤ん坊の少なくとも1部分をカバーするため及び/又は出産の最中に産道の少なくとも1部分をライニングするためのヒドロゲルメンブレン、
を含む、出産を補助するためのデバイスが提供される。
【0009】
出産の間に赤ん坊の少なくとも1部分をカバーするため及び/又は出産の最中に産道の少なくとも1部分をライニングするためのヒドロゲルメンブレンは、少なくとも約1cm2の総表面積を有する1つ以上のヒドロゲルメンブレンを意味し得る。1つ以上のヒドロゲルメンブレンは、約1cm2~約3、000cm2の総表面積を有し得る。
【0010】
メンブレンは、2D形状であり得る。メンブレンは、産道の中に居る最中の赤ん坊の1部分の周囲をラッピングするためのものであり得る。例えば、メンブレンは、赤ん坊の1部分の周囲をラッピングすることが可能な及び/又は産道の1部分をライニングすることが可能な、2D形状であり得る。メンブレンは、産道の中に居る最中の赤ん坊の1部分の周囲をラッピングすることが可能な及び/又は産道の1部分をライニングすることが可能な、(3Dの)閉じたループであり得る。ラッピングは、赤ん坊をその縦軸を中心にラッピングすること(外周的なラッピング)及び/又は赤ん坊その縦軸に沿ってラッピングすることを意味し得る。つまり、デバイス(例えば、ヒドロゲルメンブレン)は、スリーブであり得る。ヒドロゲルメンブレンは、赤ん坊を外周的にラッピングするためのものであり得る。
【0011】
赤ん坊の1部分は、赤ん坊の頭、赤ん坊の首、赤ん坊の胴体、赤ん坊の脚部、赤ん坊の腕又は赤ん坊の脚であり得る。少なくとも産道の1部分は、産道の表面積の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%であり得る。赤ん坊の少なくとも1部分は、赤ん坊の全身、赤ん坊の頭、赤ん坊の首、赤ん坊の胴体、赤ん坊の脚部(limbs)、赤ん坊の腕又は赤ん坊の脚(legs)の表面積の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%であり得る。デバイスは、赤ん坊の頭、赤ん坊の首、赤ん坊の胴体、赤ん坊の脚部、赤ん坊の腕、及び赤ん坊の脚からなる群から選択される赤ん坊の1か所から他の箇所までをカバーし得る。
【0012】
ヒドロゲルメンブレンは、ストリップなど、1以上の(断続的な)非ヒドロゲル領域(non-hydrogel regions)を含み得る。非ヒドロゲル領域は、高摩擦材料を含むか又は高摩擦材料から製造され得る。
【0013】
1つの実施形態において、ヒドロゲルメンブレンは、赤ん坊の頭に被せられる(worn)王冠(crown)の形状を含むか又は該形状であり、かつ、王冠が赤ん坊の頭を受容するための開口部を有する。
【0014】
つまり、本開示の他の視点によれば、
赤ん坊の頭に被せられる王冠を含み、
王冠が赤ん坊の頭を受容するための開口部を有し、
王冠がヒドロゲルから製造されるか又はヒドロゲルを含む、
出産を補助するためのデバイス、が提供される。
【0015】
デバイス(例えば、ヒドロゲルメンブレン)は、丸まった(丸みを帯びた、丸形)リム(bulbous rim)を含み得る。ヒドロゲルメンブレンの全体的な外周又は周囲は、丸まったリムであるか又は丸まったリムを含み得る。つまり、1つの実施形態において、丸まったリムは、ヒドロゲルメンブレンの外周又は周囲を画成する。他の実施形態において、丸まったリムは王冠の開口部を画成する。つまり、開口部は丸まったリムを含み得る。
【0016】
本開示の他の視点によれば、
赤ん坊の頭に被せられる王冠と、
王冠において開口部を画成する丸まったリムと、を有し、
開口部が赤ん坊の頭を受容するためのものであり、
王冠及びリムが、ヒドロゲルから製造されるか又はヒドロゲルを含む、
出産を補助するためのデバイス、が提供される。
【0017】
丸まったリムは、ヒドロゲルから製造されるか又はヒドロゲルを含み得る。丸まったリムは、王冠又はヒドロゲルメンブレンと同一のヒドロゲルから製造されるか又は同一のヒドロゲルを含み得る。丸まったリムは、非ヒドロゲル材料、例えば、高摩擦材料から製造されるか又は非ヒドロゲル材料を含み得る。丸まったリムは、ストリップ(strips)などの1以上の(断続的な)非ヒドロゲル領域を含み得る。丸まったリム又は非ヒドロゲル領域は、高摩擦材料から製造されるか又は高摩擦材料を含み得る。本願において言及される高摩擦材料は、ゴム、シリコーン、ポリエチレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルクロリド、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリプロピレンを含む群か又はそれらからなる群から選択される1つ以上であり得る。
【0018】
1つの実施形態において、デバイスはキャップであり得る。他の実施形態において、デバイスはスリーブであり得る。
【0019】
本発明のデバイスは、出産を補助すること及び/又は分娩停止を防止することに使用することができる。これは、(i)未出生の赤ん坊と産道の粘膜組織との間の直接的な(粘着性の)接触を阻止すること、及び(ii)産道の粘膜組織に対して接触する(潤滑性の:lubricious)ヒドロゲル表面を作製すること、によって達成される。言い換えると、デバイスは、出産の間に、未出生の赤ん坊の皮膚と産道の粘膜組織との間におけるインターフェイスとして作用する。更に、ヒドロゲルの自己潤滑性の特性は、それが使用される時に、デバイスが継続的に潤滑化されることを保障する。それは、デバイスが、延長された期間にわたって乾燥状態になること無しに使用されることも可能にする。結果的に、デバイスが適切な箇所(産道の中に)あると、それは、
1) デバイスと産道のインターフェイスにおける摩擦の度合と比較して、赤ん坊とデバイスのインターフェイスにおいてより低い度合いの摩擦をもたらし、その結果としてデバイスを伴わない赤ん坊の娩出となる(これはデバイスがスリーブの形状であり、産道に対して固定される(anchored)時に、最も生じやすい)、
2) 赤ん坊とデバイスのインターフェイスにおける摩擦の度合と比較して、デバイスと産道のインターフェイスにおけるより低い度合いの摩擦をもたらし、その結果として赤ん坊及びデバイスの同時の娩出を生じる(これは、デバイスが赤ん坊の頭に被せられるデバイスである時に、最も生じやすい)、
3) (1)及び(2)の組み合わせを提供する(これはデバイスがオーバーサイズである時に最も生じやすい)、又は
4) デバイスが赤ん坊と産道の粘膜組織との間に複数のヒドロゲル表面を提供する実施形態において、表面(複数)が互いに対してスライドする(そして赤ん坊の娩出を援助する)ように、ヒドロゲル表面のインターフェイスにおけるより低い度合いの摩擦をもたらす、又は(1)~(3)の組み合わせを提供する、
ことによって、出産を助ける。
【0020】
デバイスのヒドロゲルは、合成ポリマ繊維を用いて補強することができる。つまり、ヒドロゲルメンブレン、王冠のヒドロゲル、又はスリーブのヒドロゲルは、合成ポリマ繊維を用いて補強することができる。丸まったリムのヒドロゲルは、合成ポリマ繊維を用いて補強することができる。王冠又はヒドロゲルメンブレンのヒドロゲル、あるいはスリーブのヒドロゲルは、合成ポリマ繊維を用いて補強するが、丸まったリムのヒドロゲルは合成ポリマ繊維を用いて補強しないこともできる。丸まったリムのヒドロゲルは合成ポリマ繊維を用いて補強するが、王冠、メンブレンのヒドロゲル又はスリーブのヒドロゲルは合成ポリマ繊維を用いて補強しないこともできる。丸まったリムのヒドロゲルは合成ポリマ繊維を用いて補強するが、王冠のヒドロゲル、メンブレンのヒドロゲル又はスリーブのヒドロゲルは合成ポリマ繊維を用いて補強しないこともできる。
【0021】
一実施形態のデバイス(例えば、スリーブ)は、赤ん坊の胴体をカバーするためのものでもあり得る。つまり、デバイス又は王冠は、赤ん坊の頭からその胴体までをカバーするためのものであり得る。
【0022】
一実施形態のデバイス又は王冠はキャップであり得る。この実施形態において、王冠における開口部は、赤ん坊の頭の外周を受容するためのものである。つまり、キャップは、赤ん坊の頭の頂部(又は脳天)(the top (or crown))から赤ん坊の頭の外周まで、又は赤ん坊の首までをカバーするためのものであり得る。キャップは、少なくとも赤ん坊の頭に被せることができる。キャップは、赤ん坊の胴体をカバーするためのものであり得る。つまり、キャップは、赤ん坊の頭の頂部から赤ん坊の胴体までをカバーするためのものであり得る。キャップは、赤ん坊の頭の頂部から赤ん坊の足(feet)まで、そして足を含んでカバーするためのものであり得る。王冠は、赤ん坊の頭と産道の粘膜組織との間で、ヒドロゲルの2重の層を作製するように折り畳むことができる。
【0023】
一実施形態のデバイス又は王冠は、スリーブであり得る。スリーブは、赤ん坊の皮膚(例えば、頭のみ、赤ん坊の一部分又は全身)と産道の粘膜組織との間の直接的な接触を阻止する潤滑性の表面を作製することによって、出産を補助することに使用することができる。スリーブは、第1開口部及び反対側の第2開口部を含むことができる。スリーブは、一端において第1開口部を画成する第1の丸まった(丸形)リムと、他方端における第2開口部とを有し得る。スリーブは、第1丸形リムと第2開口部との間に位置する(第3の)丸まった(丸形)リムを更に含み得る。第2開口部は、第2丸形リムによって画成され得る。つまり、スリーブは、第2開口部において位置する第2丸形リムを含み得る。第1丸形リムは、赤ん坊の頭の頂部に座る(sitting on)ためのものであり得る。つまり、第1丸形リム又は第1開口部は、赤ん坊の頭よりも小さい直径(又は最も大きい長さ)を有し得る。第2丸形リム及び/又は第3丸形リム又は第2開口部は、第1丸形リムよりも大きい直径(又は最も大きい長さ)を有し得る。第2丸形リム及び/又は第3丸形リム又は第2開口部は、赤ん坊の頭よりも大きい直径(又は最も大きい長さ)を有し得る。第2丸形リム及び第3丸形リムは、同一の長さの外周であるか、又は同一の直径を有し得る。スリーブは、王冠として使用され得る。つまり、王冠又はスリーブは、少なくとも赤ん坊の頭に被せられるものであり得る。スリーブは、赤ん坊の胴体をカバーするためのものであり得る。つまり、スリーブは、赤ん坊の頭から赤ん坊の胴体までをカバーするためのものであり得る。スリーブは、赤ん坊の頭から赤ん坊の足まで、及び足を含んでカバーするものであり得る。スリーブは、赤ん坊の頭(及び任意的に赤ん坊の身体)及び産道の表面との間でスリーブ材料の2重の層を作製するように折り畳み得る。ヒドロゲルの2重の層は、赤ん坊による産道の通過を容易にし得る。
【0024】
王冠は、少なくとも赤ん坊の頭をカバーするか又は赤ん坊の頭に被せられるように使用され得るいずれかの形状であり得る。つまり、1つの実施形態において、キャップ又はスリーブはコーンの形状であり得る。
【0025】
赤ん坊の頭は、通常、その相対的なサイズを理由に、産道から押し出すことが最も困難(Challenging)な身体部分である。一度頭が産道から完全に出現すると、身体の残部(rest)は相対的に容易に押し出され得る。つまり、キャップは、赤ん坊の頭のみをカバーし得る。キャップは、赤ん坊の頭が産道の中にある間に、赤ん坊の頭の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%をカバーし得る。しかしながら、スリーブは、赤ん坊の身体が産道の中にある間に、赤ん坊の身体の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%をカバーすることに使用され得る。
【0026】
王冠は、1以上のヒドロゲルの分離したパネル(panels)から製造するか、または含み得る。キャップの王冠は、キャップの取り外しを助けるためのハンドルを含み得る。キャップは、キャップの取り外しを助けるために、王冠に対して抽出コードを介して接続されるハンドルを含み得る。抽出コードは、王冠の上側半分かつ外側の表面に対して取り付けられ得る。王冠は、ドーム形状であり得る。
【0027】
キャップの開口部は、7cmを上回る、又は8cmを上回る、又は9cmを上回る直径(又は最も大きい長さ)を有し得る。そのため、キャップの開口部は、22cmを上回る、又は25cmを上回る、又は28cmを上回る外周を有し得る。キャップの開口部は、約7cmと約15cmの間、約7cmと約12cmの間、好ましくは約8cmと約14cmの間の直径を有し得る。キャップの開口部は、約22cmと約47cmの間、約22cmと約37cmの間、約25cmと約44cmの間、又は約26cmと約40cmの間の外周を有し得る。好ましくは、外周は、少なくとも約24cm、又は約24cm~約40cm、又は約40cmである。
【0028】
スリーブの第1開口部は、12cm未満、又は11cm未満、又は10cm未満、又は9cm未満、又は8cm未満の直径(又は最も大きい長さ)を有し得る。そのため、スリーブの第1開口部は、37cm未満、又は35cm未満、又は31cm未満、又は28cm未満の、又は26cm未満の、又は25cm未満の外周を有し得る。スリーブの第2開口部は、7cmを上回る、又は8cmを上回る、又は9cmを上回る、又は13cmを上回る直径を有し得る。スリーブの第2開口部は、22cmを上回る、又は25cmを上回る、又は28cmを上回る、又は40cmを上回る外周を有し得る。スリーブの第1開口部は、約7cmと約12cmの間の直径(又は最も大きい長さ)を有し得る。スリーブの第1開口部は、約22cmと約38cmの間の外周を有し得る。第1開口部の直径(又は最も大きい長さ)又は外周は、第2開口部より小さいものであり得る。つまり、第2開口部の直径(又は最も大きい長さ)は、約12cm以上、約14cm以上、又は約16cm以上であり得る。そのため、第2開口部の外周は、約38cm以上、約40cm以上、約44cm以上、約47cm以上、又は約50cm以上であり得る。第2開口部の直径(又は最も大きい長さ)は、約16cmであり得る。第2開口部の外周は、約47cm又は約50cmであり得る。
【0029】
当業者は、デバイスの開口部の寸法がどのようにデバイスを使用することが意図されているかによって最終的に決定されることが分かるであろう。開口部(単数又は複数)の寸法は、新生児の頭の外周によって決定されるであろう。新生児の頭の外周は、26cmと40cmの間である。しかしながら、ほとんどの新生児は、30cmと37cmの間の長さの外周の頭を有する。この視点において、1つの実施形態において、スリーブが産道に同時に存在することなしに、スリーブが赤ん坊の娩出を助けることに使用され得る。つまり、第1開口部の外周が約24cmより大きくかつ第2開口部の外周が約24cmより大きくあり得るし、第1開口部の外周が約26cmより大きくかつ第2開口部の外周が約26cmより大きくあり得るし、第1開口部の外周が約28cmより大きくかつ第2開口部の外周が約28cmより大きくあり得るし、第1開口部の外周が約30cmより大きくかつ第2開口部の外周が約30cmより大きくあり得るし、又は第1開口部の外周が約32cmより大きくかつ第2開口部の外周が約32cmより大きくあり得る。第1開口部の外周が約24cmと40cmの間であるとともに第2開口部の外周が約24cmと40cmの間であり得るし、第1開口部の外周が約26cmと40cmの間であるとともに第2開口部の外周が約26cmと40cmの間であり得るし、第1開口部の外周が約28cmと40cmの間であるとともに第2開口部の外周が約28cmと40cmの間であり得るし、又は第1開口部の外周が約30cmと40cmの間であるとともに第2開口部の外周が約30cmと40cmの間であり得る。
【0030】
他の実施形態において、デバイス(例えば、スリーブ又はキャップ)は、好ましくは赤ん坊と同時に産道の中に存在することによって、赤ん坊の娩出を助けることに使用され得る。つまり、スリーブの第1開口部の外周が約30cm未満であるとともに第2開口部の外周が約37cmより大きいものであり得るし、第1開口部の外周が約28cm未満であるとともに第2開口部の外周が約35cmより大きいものであり得るし、第1開口部の外周が約28cm未満であるとともに第2開口部の外周が約32cmより大きいものであり得るし、第1開口部の外周が約26cm未満であるとともに第2開口部の外周が約30cmより大きいものであり得るし、又は第1開口部の外周が約26cm未満であるとともに第2開口部の外周が約28cmより大きいものであり得る。第1開口部の外周が約0cmと30cmの間であるとともに第2開口部の外周が約24cmと40cmの間であり得るし、第1開口部の外周が約10cmと28cmの間であるとともに第2開口部の外周が約26cmと40cmの間であり得るし、第1開口部の外周が約15cmと26cmの間であるとともに第2開口部の外周が約28cmと40cmの間であり得るし、又は第1開口部の外周が約20cmと26cmの間であるとともに第2開口部の外周が約30cmと40cmの間であり得る。
【0031】
(第1の)キャップの開口部の外周は、約30cm未満、約28cm未満の、又は約26cm未満であり得る。好ましくは外周は、約26cm未満である。
【0032】
(第1及び/又は第2の)(断面が)丸まった(bulbous)リムは、四角形、楕円又は環状などの閉ループ形状のいずれかであり得る。丸まったリム(単数又は複数)は、楕円又は環状であり得る。好ましくは、丸まったリム(単数又は複数)は、開口部の外周に沿って楕円又は環状の形状を形成する。丸まったリム(単数又は複数)の断面は、四角形、楕円又は環状を含むいずれかの形状であり得る。丸まったリム(単数又は複数)の断面は、楕円又は環状であり得る。丸まったリム(単数又は複数)の厚さは、約10mm未満、約9mm未満、約8mm未満、約7mm未満、約6mm未満、約5mm未満、約4mm未満、又は約3mm未満であり得る。リム(単数又は複数)の厚さは、約2mmより大きい、約3mmより大きい、約4mmより大きいものであり得る。リム(単数又は複数)の厚さは、約1mmと20mm又は約2mmと10mmの間であり得る。好ましくは、リム(単数又は複数)の厚さは、約2mmと約5mmの間である。ヒドロゲルの潤滑性の性質は、王冠を掴む又は取り扱うことを困難にする。丸まったリム(単数又は複数)は、デバイス(例えば、キャップ、メンブレン又はスリーブ)の取り扱い性を容易にする。一実施形態のデバイスが取り扱い得るようにする容易さの更なる改善のために、丸まったリムは、非ヒドロゲル材料、例えば、高摩擦材料のから製造されるか又は含み得る。高摩擦材料は、ゴム、シリコーン、ポリエチレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルクロリド、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリプロピレンを含む群か又はそれらからなる群から選択される1以上であり得る。
【0033】
丸まったリムの一部は、ヒドロゲルを含むか又はヒドロゲルから製造され得る。丸まったリムの一部は、非ヒドロゲル材料を含むか又は製造され得る。つまり、丸まったリムは、ヒドロゲルの1以上の領域を含むか又は製造され得るとともに、非ヒドロゲル材料(例えば、高摩擦材料、ゴムなど)の1以上の領域を含むか又は製造され得る。
【0034】
装置は、産道からデバイスの挿入、支持及び/又は除去を助ける手段を含み得る。産道からデバイスの挿入、支持及び/又は除去を助ける手段は、ガイドと称され得る。デバイスの挿入、支持及び/又は除去を助ける手段は、本願において言及されるように丸まったリムであり得る。デバイスの挿入、支持及び/又は除去を助ける手段は、1本以上の指をその中に挿入できるように、メンブレン、リム及び/又は王冠の中のポケットであり得る。デバイスの挿入、支持及び/又は除去を助ける手段は、メンブレン、リム及び/又は王冠に対して取り付けられるか又はそれらと一体的なハンドル又は抽出(引出)コードであり得る。抽出コードは、合成ポリマ繊維に対して固定され得る。抽出コードは、合成ポリマ繊維と同一の材料から製造され得る。抽出コードは、約7cmと30cmの間の長さであり得る。つまり、デバイスの実施形態を使用して出産を補助する方法は、抽出コードを引くことを含み得る。抽出コードは、デバイスを使用する際に、産道の外部に位置し得る。
【0035】
ヒドロゲルは、液体中に浸漬される親水性ポリマの3Dネットワークから製造され得る。液体は、親水性ポリマの3Dネットワークによって吸収され、そのため3Dネットワークを膨張させ得る。つまり、用語「ヒドロゲル」は、ネットワークを膨張させる液体を含むクロスリンクした親水性ポリマの3Dネットワークを意味し得る。一実施形態の一部分としてのヒドロゲルを使用する利点は、それの自己潤滑する特性(property)である。圧力下に置いた時に、ヒドロゲルは、接触表面において液体(例えば、水)を放出し、そのため流動体-フィルムの滑らかさを維持するとともに摩擦(摩擦係数)のレベルを劇的に低減させる。更に、ヒドロゲルは、高度の吸収剤である(吸収性を有する)。
【0036】
デバイスは、単一ユニット式であり得る。デバイスは、単一ユニット式のヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンであり得る。デバイスは、モールド成型され得る。ヒドロゲルは、水などの液体には溶解されない。1つの実施形態において、ヒドロゲルは、例えば、45℃未満の温度では液体には溶解されない。他の実施形態において、ヒドロゲルは、例えば、45℃未満の温度において液体中に溶解される。ヒドロゲルは、物理的にクロスリンクした ヒドロゲル又は化学的にクロスリンクしたヒドロゲルであり得る。
【0037】
ヒドロゲルの親水性ポリマは、天然又は合成のものであり得る。天然の親水性ポリマは、ヒアルロン酸、キトサン、アルギネート、コラーゲン、絹及びフィブロインを含む。合成の親水性ポリマは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)コポリマ、ポリエチレングリコール(PEG)、及びポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。ヒドロゲルの親水性ポリマは合成のものであり得る。ヒドロゲルは、天然又は合成のものであり得る。
【0038】
ヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンは、生体適合性のものであり得る。つまり、親水性ポリマ及び流動体は、生体適合性のものであり得る。生体適合性の親水性ポリマは、PVA、PEG、PAAm、HEMA、PDMS、及びそれらの混合物を含む。つまり、ヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンは、PVA、PEG、PAAm、HEMA コポリマ、及びPDMSからなる群から選択される1以上のポリマから製造され得る。ヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンは、PAAmから製造され得る。つまり、ヒドロゲルのポリマは、PAAmであり得る。PAAmは、非常に低い摩擦係数のヒドロゲルを作り出す。
【0039】
ヒドロゲルは、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート/メタクリル酸(HEMA-MAA)又はHEMA-ビニルピロリドン(HEMA-VP)などのHEMAコポリマから製造され得る。つまり、ヒドロゲルのポリマは、HEMA-MAA又はHEMA-VPであり得る。HEMAコポリマは強力かつ伸縮性のヒドロゲルを作り出し、そのため分娩の際に出くわすせん断力に耐えることがさらに可能である。
【0040】
ヒドロゲルはPVAから製造され得る。つまり、ヒドロゲルのポリマはPVAであり得る。PVAは、伸縮性のヒドロゲルを作り出し、そのため分娩の際に出くわすせん断力に耐えることがさらに可能である。
【0041】
好ましくは、親水性ポリマは、PAAm、PVA、又はHEMAコポリマである。つまり、ヒドロゲルはPAAm、PVA、又はHEMAコポリマから製造され得る。より好ましくは、親水性ポリマは、HEMAコポリマ又はPVAである。つまり、ヒドロゲルは、PVA又はHEMAコポリマから製造され得る。最も好ましくは、親水性ポリマはPVAである。つまりヒドロゲルはPVAから製造され得る。
【0042】
ヒドロゲルのポリマは、約5%PVA~約20%PVA(w/w)であり得る。約5%PVA~約20%PVA(w/w)から製造されるヒドロゲルは、約0.4以下の摩擦係数を有し得る。約5%のPVAを含むポリマから製造されるヒドロゲルは、低い摩擦係数を有する。好ましくは、ヒドロゲルのポリマは、約15%PVA(w/w)である。約15%PVAを含むポリマから製造されるヒドロゲルは、低い摩擦係数(例えば、約0.4以下の)を有するとともにいくらかの可撓性を示す。ヒドロゲルのポリマ(例えば、HEMAコポリマ、PVA又はPAAm)は、水を含むか又は水と混合され得る。つまり、例えば、ヒドロゲルのポリマは、約95%水~約80%水(w/w)及び約5%PVA~約20%PVA(w/w)であり得る。
【0043】
PVAの平均分子量は、約47000g/molと約200500g/molの間、約61000g/molと約195000g/molの間、約125000g/molと約195000g/molの間、約125000g/molと約195000g/molの間、又は約145000g/molと約186000g/molの間であり得る。好ましくは、PVAの平均分子量は、約145000g/molと約186000g/molの間であり、より好ましくは、PVAの平均分子量は、約145000g/molである。そのため、例えば、ヒドロゲルのポリマは、約95%水~約80%水(w/w)及び平均分子量約145000g/mol及び約186000g/molの約5%PVA~約20%PVA(w/w)であり得る。
【0044】
ヒドロゲルのPVAは、少なくとも約88%加水分解物(hydrolysed)、少なくとも約92%加水分解物、少なくとも約98%加水分解物、又は少なくとも約99%加水分解物、又は100%加水分解物であり得る。
【0045】
PVAから製造されるヒドロゲルは、約5mPa-s~約60mPa-s、約10mPa-s~約50mPa-s、約15mPa-s~約50mPa-s、又は約20mPa-s~約mPa-sの粘度を有し得る。好ましくは、PVAから製造されるヒドロゲルは、約20mPa-s~約40mPa-sの粘度を有し得る。最も好ましくは、PVAから製造されるヒドロゲルは、約28mPa-sの粘度を有する。
【0046】
粘度は、200℃の4%水溶液を使用してブルックフィールド同期モータ回転タイプによって測定され得る。
【0047】
ヒドロゲルのポリマは、約7.5%PAAm~約20%PAAm(w/w)であり得る。約7.5%PAAm~約20%PAAm(w/w)から製造されるヒドロゲルは、約0.1以下の摩擦係数を有する。約7.5%PAAmを含むポリマから製造されるヒドロゲルは、低い摩擦係数(例えば、約0.1以下の)を有する。ヒドロゲルのポリマは、約15%PAAm(w/w)であり得る。約15%PAAmを含むポリマから製造されるヒドロゲルは、低い摩擦係数(例えば、約0.1以下の)を有するとともに、メッシュと組み合わせた時に強力(strong)である。そのため、例えば、ヒドロゲルのポリマは、約92.5%水~約80%水(w/w)及び約7.5%PAAm~約20%PAAm(w/w)であり得る。
【0048】
ヒドロゲルのポリマは、HEMAコポリマであり得る。ポリマは、約40%~約98%HEMAコポリマ(w/w)であり得る。約40%HEMA~約98%HEMA(w/w)から製造されるヒドロゲルは、約0.1以下の摩擦係数を有し得る。HEMA-コポリマがHEMA-MAAである実施形態において、ポリマは、約90%~約98%HEMA-MAA(w/w)を含み得る。そのため、例えば、ポリマは、約90%~約98%HEMA-MAA(w/w)及び約10%~約2%水(w/w)であり得る。HEMA-コポリマがHEMA-VPである実施形態において、ポリマは約90%~約40%HEMA-VP(w/w)を含み得る。そのため、例えば、ポリマは、約90%~約40%HEMA-VP(w/w)及び約10%~約60%水(w/w)であり得る。
【0049】
一度ヒドロゲルのポリマが作製されると(例えば、ポリマ(粉末)と水とを混合し、混合物を乾燥させることによって)、液体がポリマ(例えば、乾燥した混合物)に添加されてヒドロゲルが作製される。ヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンの液体は、水(例えば、脱イオン水)、水ベースの潤滑剤又はオイルベースの潤滑剤であり得る。水ベースの潤滑剤は、油又はシリコーン含有潤滑剤を含まない。ヒドロゲルの液体(例えば、水)は潤滑剤として作用し、そのためヒドロゲルを潤滑性にする。ヒドロゲルの高い吸収性の性質は、デバイスに産道からその中で天然の潤滑剤を吸収させ得る。
【0050】
ヒドロゲルにおける液体(例えば、水)の存在は、親水性ヒドロゲルのポリマを膨張させる。ポリマの膨張率は、2-20の間:1であり得る。
【0051】
1つの実施形態において、ヒドロゲルは、親水性ポリマの3Dネットワーク(例えば、PVA、又はHEMAコポリマ)及び水(例えば、脱イオン水)を含み、3Dネットワークの腫脹を助長する。つまり、ヒドロゲルは、PVAの3Dネットワーク及び水(例えば、脱イオン水)を含み得る。
【0052】
デバイスの摩擦係数は、「2D」-ベンチテストセットアップ(
図4(A)参照)を使用して計算され得る。
【0053】
「2D」ベンチテストセットアップ(バイオメータ[BTM, PS Instruments, London])は、赤ん坊の皮膚の頭をシミュレートすることに使用される合成の皮膚(141500, Syndaver, Tampa FL, USA)と、産道の組織をシミュレートすることに使用される合成の膣組織(141690, Syndaver, Tampa FL, USA)との間のスライド接触の際に生じる摩擦力を、任意的に合成の組織と合成皮膚の間のインターフェイスとしてデバイスの実施形態を用いて、測定する。「2D」セットアップにおいて使用される実験条件は以下のものである。
【0054】
「2D」セットアップのアウトプットは、静的摩擦係数である。
【0055】
「3D」分娩シミュレータセットアップは、一実施形態のデバイスを用いてカバーされるものの代わりとなるSynDaver(登録商標)胎児皮膚(141500, Syndaver, Tampa FL, USA[厚さ5mm])でカバーされた人工的な頭部をSynDaver(登録商標)膣組織(141690, Syndaver, Tampa FL, USA[厚さ20mm])でライニング(lined)された人工的な産道を介して押した時の、抵抗力及び移動距離を測定する。言い換えると、3Dセットアップは、一実施形態のデバイス有り/無しでの産道から赤ん坊を押し出すために母親から必要とされるエネルギーの量をシミュレート及び測定する。人工的な頭部は、70mmにわたって1mm/sの速度で産道を通って押され得る。測定されるアウトプットは、瞬発力N及び行われた総仕事量Jである。これらのアウトプット値は、以下の式を使用して、エネルギーの総合喪失量を計算することに使用され得る。
ここで、x
iは、ステップiにおいて「胎児の頭」の「産道」への累積変位を表す。ステップnの合計は7000であり、ここで各ステップにおいて又は0.01s毎に、実際の累積変位及び瞬発力F
iがシステムによって測定される。
【0056】
一実施形態のデバイス、特にヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンは、低い摩擦係数を有する。低い摩擦係数は、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下、又は約0.1以下(2Dベンチセットアップに従って)の値を意味し得る。
【0057】
一実施形態のデバイスのヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンの摩擦係数は、約1以下、約0.9以下、約0.8以下、約0.7以下、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下又は約0.1以下であり得る。PAAmヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンを含むデバイスは、約1以下、約0.9以下、約0.8以下、約0.7以下、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下又は約0.1以下の摩擦係数を有し得る。PVAヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンを含むデバイスは、約1以下、約0.9以下、約0.8以下、約0.7以下、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下又は約0.1以下の摩擦係数を有し得る。PEGヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンを含むデバイスは、約1以下、約0.9以下、約0.8以下、約0.7以下、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下又は約0.1以下の摩擦係数を有し得る。HEMAコポリマヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンを含むデバイスは、約1以下、約0.9以下、約0.8以下、約0.7以下、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下又は約0.1以下の摩擦係数を有し得る。PDMSヒドロゲル又はヒドロゲルメンブレンを含むデバイスは、約1以下、約0.9以下、約0.8以下、約0.7以下、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下又は約0.1以下の摩擦係数を有し得る。摩擦係数は、「2D」ベンリテストセットアップを使用して計算され得る。
【0058】
当業者は、ヒドロゲル層が厚ければ厚いほど、産道の中で赤ん坊の頭にキャップを載置することがより困難になるし、赤ん坊を娩出することをより困難にすることが分かるだろう。しかしながら、ヒドロゲル層がより薄ければ薄いほど、より破れやすくなる。結果的に、ヒドロゲルは、合成ポリマ繊維(例えば、ナイロンなどのポリアミドガイバ)を含み得る。合成ポリマ繊維は、ヒドロゲルの中に包埋又は浸漬(含浸)され得る。合成ポリマ繊維は、ヒドロゲルの全体的な厚さを実質的に増加させること無しにヒドロゲルを補強し得る。用語「実質的に」は、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満の増加を意味し得る。用語「実質的に」は、ヒドロゲルの全体的な厚さにおける無増加を意味し得る。
【0059】
合成ポリマ繊維は、織物(woven)であり得るし、又は織物でなくても良い。合成ポリマ繊維(例えば、ナイロンなどのポリアミドファイバ)は、メッシュを形成し得る。合成ポリマ繊維は、合成ポリマ繊維の少なくとも1つの層、又は2以上の層を形成し得る。合成ポリマ繊維の層(単数又は複数)は、多孔性であり得るし、又は多孔性でなくても良い。合成ポリマの層は、メッシュ、例えば、ニットメッシュであり得る。メッシュは、オープンメッシュ、フィルタメッシュ、織りメッシュ、又はワープニットメッシュであり得る。メッシュは、ワープニットであり得るし、これはスムーズな表面を提供する一方で薄い厚さで合理的な柔軟性(可撓性)を維持する。合成ポリマ繊維は、ヒドロゲル又は水などの液体の中では分解しない。
【0060】
有利には、合成ポリマ繊維は、デバイスのヒドロゲルが最小限の厚さ有することを可能にするとともに低い摩擦及び良好な柔軟性(可撓性)/引っ張り強度を維持する。合成ポリマ繊維は、過剰の腫脹に起因して、親水性ポリマのネットワークが変形することも防止する。つまり、合成ポリマ繊維はヒドロゲルが良好に定義された構造を保持することを可能にする。
【0061】
メッシュの孔(pores)又は合成ポリマファイバの層は、約0.5mm~約20mmの直径(又は最も大きい長さ)を有し得る。この範囲内の孔は、ヒドロゲルを補強してそれの過剰な腫脹を阻止することが可能である。孔は約1.0mmの直径(又は最も大きい長さ)を有し得る。メッシュのファイバは、厚さ/直径が約0.05mm及び0.4mmの間であり得る。メッシュのファイバは、直径/厚さが約0.2mmであり得る。好ましくは、メッシュ(例えば、ポリアミド)は0.4mm×0.4mmの孔サイズ及び約0.2mmの厚さのファイバを有する。
【0062】
合成ポリマ繊維の合成ポリマは、親水性又は吸湿性であり得る。つまり、合成ポリマ繊維は、ヒドロゲル内の水分子と水素結合を形成し得る。水分子は、親水性ヒドロゲルのポリマとも水素結合を形成し得る。つまり、水素結合は、デバイスがストレス下に置かれた際に、ヒドロゲルの合成ポリマ繊維からの剥離(デラミネーション)又は分離の防止を助ける。合成ポリマ繊維の合成ポリマは、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブテスタ、ポリ尿素、及びポリウレタンからなる群からの1以上の選択であり得る。好ましくは、合成ポリマは、ポリアミドであり得る。より好ましくは、合成ポリマは、ナイロン又はエラスタン(すなわち、ポリエーテル及びポリ尿素のコポリマ)である。より好ましくは、合成ポリマ繊維は、少なくとも1つのポリアミド(例えば、ナイロン)の層を形成する。多孔性のポリアミドの少なくとも1つの層は、多孔性であり得る。
【0063】
1つの実施形態において、合成ポリマ繊維がポリアミド(例えば、ナイロン)から製造されるか又は含み、かつヒドロゲルがPVA及び水(例えば、脱イオン水)から製造される。他の実施形態において、合成ポリマ繊維がポリアミド(例えば、ナイロン)から製造されるか又は含み、かつヒドロゲルがHEMAコポリマ及び水(例えば、脱イオン水)から製造されるか又は含む。他の実施形態において、合成ポリマ繊維がポリアミド(例えば、ナイロン)から製造されるか又は含み、かつヒドロゲルがPAAmコポリマ及び水(例えば、脱イオン水)から製造されるか又は含む。合成ポリマ繊維は、ワープニット形成によってメッシュへと作製され得る。
【0064】
ヒドロゲル王冠又はヒドロゲルメンブレンは、2mm未満、1.5mm未満、1.0mm未満、又は0.5mm未満の厚さであり得る。ヒドロゲル王冠は、0.01mmより大きな、0.05mmより大きな、0.1mmより大きな、0.2mmより大きな、0.25mmより大きな、0.3mm以上の厚さであり得る。好ましくは、ヒドロゲル王冠又はヒドロゲルメンブレンは約0.05mmと10mmの間の厚さ、約0.1mm及び2mmの間の厚さ、又は約0.05mm及び0.5mmの間の厚さである。ヒドロゲル王冠又はヒドロゲルメンブレンは、均一な厚さのものであり得る。
【0065】
丸まったリムは、デバイスの王冠又はヒドロゲルメンブレンの壁(残りの部分)より大きい厚さである。丸まったリムは、王冠又はヒドロゲルメンブレンの壁よりも少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍厚い、少なくとも約50倍厚い、又は少なくとも約100倍厚いものであり得るし、好ましくは丸まったリムは約5倍の~約10倍厚く、最も好ましくはリムは約5倍厚い。
【0066】
王冠は、0.5mmと2mmの間の厚さのものであり、かつPVAヒドロゲルから製造され得る。王冠は、0.5mmと2mmの間の厚さのものであり、かつ5%~20%PVAヒドロゲルから製造され得る。王冠は、0.5mmと2mmの間の厚さのものであり、かつ約15%PVAヒドロゲルから製造され得る。ヒドロゲルメンブレンは、0.5mmと2mmの間の厚さのものであり、かつPVAヒドロゲルから製造され得る。メンブレンは、0.5mmと2mmの間の厚さのものであり、かつ5%~20%PVAヒドロゲルから製造され得る。ヒドロゲルメンブレンは、0.5mmと2mmの間の厚さのものであり、かつ約15%PVAヒドロゲルから製造され得る。
【0067】
デバイスの1つの表面は、高摩擦材料を含み得る。高摩擦材料は、王冠又はメンブレン及び/又は丸まったリムの1表面であり得る。高摩擦材料は、本願において言及される材料であり得る。例えば、高い摩擦は、ゴム、シリコーン、ポリエチレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルクロリド、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリプロピレンからなる群から選択される1以上の材料であり得る。デバイスが合成ポリマ繊維を用いて補強される実施形態において、高摩擦材料は、ヒドロゲルの内側から外側の表面へ、例えば、王冠、スリーブ、キャップ、メンブレン、及び/又は丸まったリムの外側の表面に対して突き出され得る。高摩擦材料は、デバイスの内側の表面(すなわち、使用時に赤ん坊に対して接触する表面)に存在し得る。つまり、産道内に存在する際に、デバイスの外側の表面は、赤ん坊に対してスライド移動するデバイスの内側の表面よりも、産道に対してスライド移動し易い。結果的に、デバイスは、赤ん坊の娩出を助けて、好ましくは同時に産道から出ることができる。他の実施形態において、高摩擦材料は、デバイスの外側の表面(すなわち、使用時に産道対して接触する表面)に存在し得る。つまり、産道内に存在する際に、赤ん坊は、デバイスの外側の表面は、産道に対してスライド移動するデバイスの外側の表面よりも、デバイスの内側の表面に対してスライド移動し易い。結果的に、デバイスは、デバイスは、赤ん坊の娩出を助けて、好ましくは同時に産道から出ることができる。
【0068】
本開示の第2の視点によれば、
合成ポリマ繊維を含むヒドロゲル溶液を、出産を補助するためのデバイスの形状へモールド成型すること、
を含む、出産を補助するためのデバイスを製造する方法、が提供される。
【0069】
本開示の他の視点によれば、
ヒドロゲル溶液を、出産を補助するためのデバイスの形状へモールド成型すること、を含む、出産を補助するためのデバイスを製造する方法、が提供される。
【0070】
1つの実施形態において、ヒドロゲル溶液は、合成ポリマ繊維を含む。本発明の方法は、本開示に従ってデバイスを製造するためのものであり得る。
【0071】
モールド成型(モールディング)は、ヒドロゲル溶液をキャスティングしてヒドロゲル溶液及び合成ポリマ繊維を含むキャストを作製すること、ヒドロゲル形成を開始すること、そして出産を補助するためのデバイスの形状にキャストを固化すること、を含み得る。モールド成型は、射出成型、鋳型成型、圧縮モールド成型であり得る。
【0072】
ヒドロゲル溶液は、液体中で親水性ポリマの粉末を混合して混合物を調製することによって作製され得る。液体は、水、好ましくは脱イオン水であり得る。
【0073】
「開始」ステップは、加熱/冷却方法を実行することを含み得る。加熱/冷却方法において、キャスト/混合物は、クリア、透明、粘性の溶液が調整されるまで加熱され得る。キャスト/混合物は、加熱ステップの間において混合され得る。
【0074】
固化ステップは、キャストを室温で固化する(又は冷却する)ために待つことを含み得る。固化ステップは、約10℃~約25℃で実行され得る。好ましくは、固化ステップは、約20℃で実行され得る。固化ステップは、UVライトを使用することを含み得る。
【0075】
固化(curing)ステップは、少なくとも約10分間、少なくとも約20分間又は少なくとも約30分間の時間長であり得る。好ましくは、固化ステップは、約30分間の時間長である。冷却ステップは、少なくとも約10分間~約50分間、又は約20分間~約40分間であり得る。
【0076】
つまり、固化ステップは約10℃~約25℃で約20分間~約40分間実行され得る。
【0077】
本発明の方法は、好ましくは固化ステップの後で、1、2、3又は4回の凍結/解凍サイクルを実行することを更に含み得る。本発明の方法は、固化ステップの後で、2又は3回の凍結/解凍サイクルを実行することを更に含み得る。凍結/解凍サイクルは、ヒドロゲルのメカニカルな特徴に対して影響を及ぼす。
【0078】
凍結/解凍サイクルは、約-35℃~約-15℃で少なくとも約12時間デバイスを凍結し、続いて約4℃で少なくとも約4時間デバイスを解凍することを含み得る。凍結/解凍サイクルは、約-25℃で少なくとも約12時間デバイスを凍結し、続いて4℃で約4時間デバイスを解凍することを含み得る。
【0079】
本発明の方法は、任意的に凍結/解凍ステップの後にデバイスを水馴化(ないし水和:hydrating)することを更に含み得る。デバイスの水馴化は、水(例えば、脱イオン水)又は水溶液などの液体中にデバイスを置くことによって実行され得る。水馴化ステップは、約12~48時間、約18~48時間、又は約24時間にわたって(例えば、水を用いて)実行され得る。好ましくは水馴化ステップは、最大約48時間にわたって水又は水溶液の中で実行され得る。好ましくは、水馴化ステップは、約10℃~約25℃で約24時間にわたって実行される。
【0080】
第2の視点の方法は、本開示に従ってデバイス(例えば、キャップ、スリーブ又はヒドロゲルメンブレン)を製造することに使用され得る。
【0081】
第3の視点によれば、本開示の方法によって製造される又は製造可能なデバイスが提供される。
【0082】
第4の視点によれば、
出産を補助するように被験者の産道内で赤ん坊の頭に本開示の視点のデバイスを置くこと、又は
本開示のデバイスを使用して産道の少なくとも1部分をラインする/又は出産の最中に産道内で少なくとも赤ん坊の1部分をカバーする
ことを含む、特に分娩停止を防止することによって妊婦(妊娠被験者)による出産を補助するための方法が提供される。
【0083】
産道の中で赤ん坊の頭にデバイスを置くこと、又は産道の少なくとも一部分をライニングすること、又は産道の中で赤ん坊の少なくとも1部分をカバーすることは、赤ん坊又は赤ん坊の頭と産道の粘膜組織の間の接触をブレークする。分娩の際にヒドロゲルにかかる力学的(メカニカル)な圧力は、ヒドロゲルにその液体(例えば、水)を放出させて、潤滑性流動体フィルムを生成する。フィルムは、赤ん坊と母の間の動きを必要とせずに生成される。ヒドロゲルの低いコンプライアンス及び相対的な動きが無くても界面の水フィルムを含むことができるその能力に依存するこのタイプの潤滑性は、デバイスと産道の組織との間の安定なかつ低い摩擦の相互作用となる。つまり、本開示の方法は、赤ん坊と産道の間の摩擦のレベルを減少させることによって、出産を補助すること又は分娩停止を防止(阻止)することを可能にする。
【0084】
産道の中で赤ん坊の頭にデバイスを置くことは、赤ん坊の頭と産道の間に補強されたヒドロゲルの2重の層が存在するように、王冠又はスリーブを折り畳むことを含み得る。産道の少なくとも一部分をライニングすること又は産道の中で少なくとも赤ん坊の1部分をカバーすることは、赤ん坊の頭と産道の間に補強されたヒドロゲルの2重の層が存在するように、ヒドロゲルメンブレン折り畳むことを含み得る。
【0085】
本願における用語「出産(childbirth)」は、産道を介した分娩又は非支援膣分娩(unassisted vaginal delivery)を意味する。出産は、帝王切開を介した出産を含まない。つまり、出産は、例えばブリーチポジション(逆子)又は頭位(頭が先)の子供に生を与えることを含む。本開示のスリーブは、逆子の娩出のために使用され得る。
【0086】
産道(23)を通して起きる出産のために、赤ん坊、特に頭(19)は、妊婦の骨盤(25)を通過しなければならない(
図9参照)。
図9は、産道(23)の中でキャップ(21)内にカバーされた赤ん坊の頭(19)を示す。
【0087】
骨盤の骨は、3つの領域へ区分され得る、(1)入口(骨盤上口:superior aperture)、(2)中空部、及び(3)出口(骨盤下口:inferior aperture)。入口は、前後方向(anteroposterior direction)よりも横断方向へ幅広であり、中空部は環状(circular)であるが、出口は前後方向へ幅広である。
【0088】
1つの実施形態において、本発明の方法は、妊婦が分娩の第2段階である間に、赤ん坊の頭にデバイスを置くことを含む。つまり、第4の/第3の視点の本発明の方法は、被験者の産道の中にデバイス挿入すること及び赤ん坊の頭(及び任意的に身体)にそれを置くことを含む。あるいは、第4の視点の本発明の方法は、産道における赤ん坊の皮膚と産道の粘膜ライニングとの間の直接的な接触を防止(阻止)するように、被験者の産道の中に一実施形態のデバイスを挿入することを含み得る。しかしながら、本発明の方法は、産道への挿入の前又は産道の中で、キャップの外側の表面上に、液性潤滑剤を分布させる(塗り広げる)ことを含み得る。
【0089】
一実施形態の方法は、頭位(頭が先)を示す赤ん坊の頭に、デバイス(例えば、スリーブ又はキャップ)を置くことを含み得る。
【0090】
胎児の頭は分娩プロセスの間に通過させなければならない最も幅広な部分であり、一度頭が所定経路を出ると分娩の残りの娩出は相対的に容易である。一実施形態のデバイスは、赤ん坊の骨盤の通過を補助するために赤ん坊の頭(及び任意的に赤ん坊の身体)に置かれ得る。つまり、デバイスは、赤ん坊の頭の最も幅広い部分が入口、中空部、又は出口に一旦あるときに、赤ん坊に置かれ得る。デバイスは、赤ん坊の頭の最も幅広い部分が入口又は中空部を一旦通過すると、赤ん坊に置かれ得る。
【0091】
ステーションレベルは、産道を通った胎児の下り具合(descent)を評価することに使用され、ステーション0は母体の骨盤中空部の中の坐骨棘(ischial spine)によって表される。デバイスは、下り具合が一度ステーションレベル0以降になると赤ん坊の頭に置かれ得る。つまり、ステーションレベル0以降、1以降、2以降又は3以降になるとデバイスは赤ん坊の頭に置かれ得る。最も好ましくは、デバイスは、ステーションレベル1以降になると赤ん坊の頭に置かれる。
【0092】
一実施形態の方法は、頭位の間に赤ん坊の頭にデバイスを置くことを含み得る。
【0093】
赤ん坊の頭は、頭蓋縫合線(sutures)によって連結したプレートを含む。骨プレートの間の頭蓋縫合線は、分娩の間はソフトである。つまり、頭蓋骨の形状は、経路を通ってフィットするように圧力(モールディング)の下で変形し得る。骨プレートは、例えば、モールディングの間に互いに重なり得る。
【0094】
分娩の間に赤ん坊の頭の形状が潜在的に変化することに加えて、胎児の姿勢(attitude)は変化し得る。姿勢は、赤ん坊の体位(posture)(すなわち、屈位(flexed)、脱屈位(deflexed)、又は反屈位(extended))を意味する。すなわち、赤ん坊の姿勢は最も広い直径がどの大きさであるかを決定し、赤ん坊の娩出の容易さに影響を及ぼすだろう。
【0095】
赤ん坊の頭は、骨盤に入る時に常に完全に屈位ではない。頭がより狭い骨盤中段の中へ降りる時に、屈曲(flexion)が生じる。胎児の顎は、プレゼンティング直径がより小さくなって母体の骨盤骨の通過がより容易になるように、その胸部の方向へ押し込まれる(tucks)。
【0096】
赤ん坊の頭の最も幅広の直径は、小斜径:suboccipitobregmatic(良く前屈:well flexed)、後頭前頭:occipitofrontal(部分的に反屈位又は脱屈位)、大斜径:occipitomental(反屈額位:extended brow presentation)、又はサブメントブレグマティック:submentobregmatic(超反屈顔位:hyperextended face presentation)であり得る。
【0097】
デバイスは、赤ん坊の頭が良く前屈しているときに赤ん坊の頭に置かれ得る。デバイスは、赤ん坊の頭が部分的に反屈位又は脱屈位であるときに赤ん坊の頭に置かれ得る。デバイスは、赤ん坊の頭が反屈額位であるときに赤ん坊の頭に置かれ得る。デバイスは、赤ん坊の頭が超反屈顔位であるときに赤ん坊の頭に置かれ得る。
【0098】
1つの実施形態において、デバイスは、赤ん坊の頭が小斜径(良く前屈)又はサブメントブレグマティック(超反屈顔位)である時に赤ん坊の頭に置かれる。
【0099】
赤ん坊の頭は、骨盤の入口へ入り、異なる位置(体位)で出口を出るかもしれない。赤ん坊は、出口において、右方後頭母体前方位、直方後頭母体前方位、左方後頭母体前方位などの後頭母体前方(occipito-anterior:OA)位、で存在し得る。赤ん坊は、出口において、右方側頭母体前方位、直方側頭母体前方位、左方側頭母体前方位などの側頭母体前方(occipito- transverse position:OT)位、で存在し得る。赤ん坊は、出口において、右方後頭母体後方位、直方後頭母体後方位、左方後頭母体後方位などの後頭母体後方(occipito-posterior:OP)位、で存在し得る。好ましくは、赤ん坊はOA位に存在する。
【0100】
つまり、デバイスは、OA位、OT位又はOP位の赤ん坊の頭に置かれ得る。
【0101】
一実施形態の方法は、出産が生じたら直ぐに(すなわち、赤ん坊が娩出されると)赤ん坊からデバイスを取り外すことを含み得る。
【0102】
第5の視点によれば、出産を補助するため及び/又は出産の間の分娩停止を防止するための一実施形態のデバイスの使用が提供される。
【0103】
他の視点において、出産の間の分娩停止の防止における使用のための一実施形態のデバイスが提供される。
【0104】
第6の視点によれば、出産を補助する及び/又は出産の間の分娩停止を防止するためのヒドロゲルの使用が提供される。
【0105】
一実施形態において、ヒドロゲルはヒドロゲルメンブレンである。ヒドロゲルメンブレンは、本願で言及されるヒドロゲルメンブレンであり得る。
【0106】
一実施形態は、1以上の分離したヒドロゲルメンブレンを使用することを含み得る。つまり、一実施形態は、1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上の分離したヒドロゲルメンブレンを使用することを含み得る。一実施形態は、出産を補助する又は出産の間の分娩停止を防止するための一実施形態のデバイスを使用することを含み得る。
【0107】
他の実施形態において、出産の間の分娩停止の防止において使用するためのヒドロゲルが提供される。
【0108】
本願において言及する「デバイス」は、本開示のキャップ又はスリーブであり得る。
【0109】
用語「ヒドロゲル」は、本願において言及するメンブレンなどのヒドロゲルメンブレンを意味し得る。
【0110】
「ヒドロゲルメンブレン」は、ヒドロゲルから製造されるか又は含む不溶性の材料の層を意味し得る。
【0111】
用語「ライニング:lining」は、カバーリング(被覆)を意味し得る。つまり、本開示のヒドロゲルメンブレンは、出産の間に産道の少なくとも一部分をカバーリングする、例えば、少なくとも約1cm2の総表面積をカバーリングするためのものであり得る。
【0112】
用語「含む(comprising)」は、「~からなる(consisting of)」又は「本質的に~からなる(consisting essentially of)」を意味し得る。
【0113】
本願に記載の実施形態及び特徴(添付の請求の範囲、要約及び図面のいずれも含む)
の全て及び/又は開示されたいずれかの方法又はプロセスのステップの全ては、特異的な組み合わせ、例えば、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互排他的である組み合わせを参照して別途説明されない限り、任意の組み合わせでいずれかの上記視点又は実施形態と組み合わせられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0114】
開示のより良い理解のため、及び本開示の実施形態がどのように効果をもたらし得るかを示すために、図面を参照しつつ実施例によって説明がなされる。
【
図1】
図1は、(A)一実施形態のCADのキャップであり、(B)トレーニングダミーの頭の上のキャップの描画である。
【
図2】
図2は、一実施形態のキャップをかぶりつつ分娩ダミーの産道から出現するトレーニングダミーの頭の写真である。
【
図3】
図3は、(A)ナイロンワープニットメッシュで補強されたPAAmヒドロゲルシートの写真であり、(B)メッシュ無しのHEMAコポリマ(HEMA-MAA)ヒドロゲル皿の写真であり、そして(C)ナイロンワープニットメッシュで補強されたPVAヒドロゲルシートである。
【
図4(A)】
図4(A)は、摩擦低下材料の添加でのSynDaver(登録商標)合成膣組織vs合成皮膚組織の摩擦係数を測定することに使用されるテストセットアップの模式的概観である。
【
図4(B)】
図4(B)は、異なる条件の下で2Dベンチセットアップで取得された実験結果を示し、「Syndaver ドライ」は、パッド化されて乾燥状態の下でのSynDaver(登録商標)皮膚vs膣組織を意味し、「Syndaver ウェット」は、過剰の水有りでのSynDaver(登録商標)皮膚vs膣組織を意味し、「SynDaver(登録商標)ヒビテン」は潤滑剤、ヒビテン(商標)有りでのSynDaver(登録商標)皮膚vs膣組織を意味する。「15%PVA(水)」は15%PVA及び水から調製されるヒドロゲルインターフェイスを意味し、「20%PVA(水)」は 20%PVA及び水から調製されるヒドロゲルインターフェイスを意味し、「15%PVAヒビテン」は15%PVA及び水から調製されかつ潤滑剤ヒビテン(商標)の中にコーティングされたヒドロゲルインターフェイスを意味する。
【
図4(C)】
図4(C)は、「皮膚のみ」はスライド表面がSynDaver(登録商標)皮膚vsPAAmヒドロゲルであったことを意味し、「Vagのみ」はスライド表面がSynDaver(登録商標)膣組織vsPAAmヒドロゲルであったことを意味し、「皮膚-Vag」はスライド表面がSynDaver(登録商標)皮膚vs膣組織とそれらの間にサンドイッチされるPAAmヒドロゲルであったことを意味する。
【
図5】
図5は、2Dセットアップ(SynDaver(登録商標)膣/皮膚組織)を使用してテストされる、ウェットヒドロゲルサンプル(15%PVA)の静的摩擦係数に対するローディング力の効果を示す。
【
図6(A)】
図6(A)は、SynDaver(登録商標)膣組織と並べられた(lined)人工的な産道の中に位置する、SynDaver(登録商標)胎児皮膚でカバーされた人工的な頭部を用いた「3D」-分娩-シミュレータセットアップを示す。
【
図6(B)】
図6(B)は、頭と産道の間に視覚可能なプロトタイプを用いた「3D」-分娩-シミュレータセットアップのクローズアップである。
【
図7(A)】
図7(A)は、シミュレートされた母方の押し出しに関する累積的なエネルギー放散結果を示し、ここで胎児の頭は3D-分娩シミュレータの産道を介して固定された速度でかつ同一の距離にわたって押し出され、種々の実験条件は各々3回繰り返し、「ウェット」は過剰の水有りかつプロトタイプ無しでの産道を意味し、「ドライ」はパッド化してペーパタオルを用いて乾燥させてプロトタイプ無しでの湿性の産道を意味し、「ウェットプロトタイプ」は胎児の頭の上の過剰の水及びプロトタイプを用いた産道を意味し、「ドライプロトタイプ」は胎児の頭の上のプロトタイプを用いた産道を意味する。
【
図8】
図8は、
図4の2Dベンチセットアップで取得したPVAヒドロゲル及びHEMA-MAAヒドロゲルの静的摩擦係数を示す。
【
図9】
図9は、分娩の第2段階の間に産道の内側かつ赤ん坊の頭に置いた一実施形態のデバイスの図である。
【
図10】
図10は(A)補強メッシュを含むヒドロゲルの斜視図であり、(B)補強メッシュを含むヒドロゲルの平面図であり、そして(C)ワープメッシュの写真である。
【
図11】
図11はモールド上のナイロンメッシュ(29a)の描画である(親水性ポリマの液体中にメッシュがモールドされる前)。
【
図12】
図12は本開示の1つの実施形態のスリーブの描画である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0115】
図1は、(A)本開示の一実施形態のCADのキャップ(1a)である。キャップ(1a)は、丸まった(断面の)リム(3)によって画成される開口部(図示されない)を含む。
図1(B)において、キャップ(1b) は、ナイロンメッシュ(2)で補強されたPVAヒドロゲルから製造される。キャップは、数枚の補強されたヒドロゲルを一緒に付着する(例えば、縫い付け)ことによって製造されている。つまり、キャップは縫い目(5)も含む。
【0116】
図2には、出産トレーナによって使用されている分娩ダミー(7)が示されている。分娩ダミーの産道の中のトレーニングダミーの頭は、一実施形態のキャップ(1)によってカバーされる。キャップは、赤ん坊の頭が出現する前に、トレーニングダミーの娩出を補助するように、産道の中にそして赤ん坊の頭の上に挿入される。
【0117】
図3(A)には、ナイロンメッシュを含むPAAmヒドロゲルシートの写真が示されている。
図3(B)は、HEMAベースのコポリマ(HEMA-MAA)から製造されたヒドロゲルの写真である。
図3(C)は、ナイロンメッシュを含むPVAヒドロゲルの写真である。ヒドロゲルのつやつやした外観は、ヒドロゲル及びメッシュの孔の中に貯留された水によって生じる。使用において、ヒドロゲルシートは、一実施形態のキャップを作製することに使用される。本開示の範囲内での置き換え及び変形は、当業者にとっては明白であろう。例えば、ヒドロゲルは、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAAm)、HEMAベースのコポリマ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)又はそれらの混合物から製造され得るし、水ベースの潤滑剤を含み得るし、そして合成ポリマ繊維は無孔性の層(non-porous layer)を形成し得る。
【0118】
図4(A)には、スライド摩擦を測定するための「2D」ベンチセットアップが示される。ヒドロゲルの摩擦係数を決定するための摩擦学的なテストは、ビオトリボメータマシン(PCS Instruments)を使用して実行される。マシンは、適用される特定のロードで固定された底プレートに対してスライドする、移動トップ要素によって特徴付けられる。テストは、2つの材料を含む適切なトリボシステムの摩擦係数を決定するために、2つの材料をトップアーム(6)及び底プレート(22)に対して固定することを含む。例えば、SynDaver(登録商標)からの皮膚ミミック(SynDaver(登録商標))(16)及び膣ミミック材料(20)である。SynDaver(登録商標)の膣ミミック材料(20)は底プレート(22)に対して適用され、その一方で皮膚ミミック(16)は標本ホルダ(10)に対して適用され、インビボのシナリオをより近くシミュレートする。ヒドロゲルサンプル(18)は、2つの皮膚ミミック(16、20)の間に置かれ、自由にスライドできるようにされる。例えば、1N、20mmのストローク長、0.5mm/sの速度の適用されるロード(12)が、システムの有効な摩擦係数を評価することに使用される。(4)は、作動システムに相当し、そして(6)は作動アームに相当する。
【0119】
図4(B)は、2Dベンチセットアップを使用して取得した実験結果の概要である。結果は、「膣組織」と「皮膚」の間にヒドロゲル、PVAなどを置くことが静的/スライド摩擦を顕著に減少させることを明確に示す。
【0120】
図5は、標本組織に対して適用された力が強ければ強いほど、一実施形態のヒドロゲルが存在する場合に、摩擦係数がより小さくなることを示す。
【0121】
図6(A)及び6(B)は、合成膣組織でライニングされた産道(11)の中に位置する、合成皮膚組織でカバーされた人工的な頭部(9)を用いた3D’-分娩-シミュレータセットアップ(8)を示す。シミュレータは、産道(11)を通って赤ん坊の頭(9)をスライドさせることに必要なエネルギーの量を測定すること、ならびにユーザが平均定常状態力(average steady state force)を測定可能にすること、に使用される。(13)はフォース(力)トランスデューサー(図示されない)の位置に対応し、(15)は2つの除去可能アライメントビームに対応し、そして(17)は作動プラットホームに対応する。
【0122】
図7(A)及び7(B)は、3D’-分娩-シミュレータセットアップの中への種々のプロトタイプの導入が、産道を介して頭をスライドさせることに必要とされるエネルギーを約40%減少させることを示す。
【0123】
図8は、PVAで製造されるヒドロゲル及びHEMA-MAA(ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート/メタクリル酸)で製造される分離ヒドロゲルの静的摩擦係数を示す。静的摩擦係数は、上記の2D’ベンチセットアップを使用して取得した。HEMAベースのヒドロゲルは、PVAよりも6倍以上小さい摩擦係数を有する。
【0124】
図10(A)及び10(B)は、ヒドロゲル(30)内に埋め込まれるナイロンメッシュ(29)の一例を示す。
図10(C)は、ナイロンワープニットメッシュの一例の写真を示す。
【0125】
図12は、本開示の一実施形態のスリーブ(31)を示す。スリーブ(31)は第1開口部(35)及び第2開口部(39)を含む。第1開口部(35)は、第1の丸まったリム(33)によって画成され、そして第2開口部(39)は第2の丸まったリム(37)によって画成される。
【0126】
実施例1-メッシュを含む15%PVAヒドロゲルキャップを製造する
【0127】
材料
ポリ(ビニルアルコール)「PVA」(146,000-186,000g mol-1、CAS:9002-89-5)及び脱イオン水は、シグマ-アルドリッチUKによって供給された。ナイロン(ワープニット)メッシュ。ホウケイ酸ガラスから製造されるビーカは、晒される高い温度及び圧力に耐えられるので使用した。
【0128】
内容量の例が表1にリストされる。総重量は、モールドされる製造物のサイズに依存して調整することができる。
【0129】
表1-PVAに関する計算された重量、所望のようにスケール[アップ、ダウン]される。
【0130】
プロトコル:
1.モールド内にナイロン(ワープニット)メッシュを置く。
2.DI水及びPVA粉末の成分を測定し、個別のビーカの中にそれらを置く。
3.15%PVA混合物を高温度圧力クッカー又は均等物の中に置き、1時間「高い:high」にセットする。20分毎にクッカーを停止して手動で混ぜる。
4.これは20分後を意味し、クッカーを停止し、ビーカを取り出し、手動、すなわち金属製スパチュラ又は何らかの均等物(溶けてしまうのでプラスチック製のものでない)を用いて徹底的に溶液を混ぜ、そしてクッカー内にそれを戻し、更に20分間「high」にセットし、取り出し、手動で混ぜる、など、およそ1時間の合計クッキング時間にわたって。1時間のクッキング時間の後に、最終の溶液は、クリアで、透明(すべてのPVA粒子が溶けているべき)でありかつ高粘性であるべきである。そうでなければ、正しい溶液が達成されるまで、クッキング及びミキシングサイクルの繰り返しを継続する。溶液がゼリー状であれば、それは全てのPVA粒子が溶けるのに十分なほどに溶液が加熱されていないか、手動のミキシングが不十分であったかのいずれかの理由である。
5.プロセスの間に過剰な蒸発を回避するように注意し、円錐形のフラスコを使用する場合にはスクリュキャップをルーズに嵌めるべきであり、オープンフラスコを使用する場合にはフラスコ開口部をカバーするようにアルミニウムホイルを被せるべきである。
6.ボイルされている間に圧力クッカーからすぐに取り出し、15%PVAをモールド内に注いで、モールドを閉じる。
7.30分間待って、冷却かつ安定させる。
8.フリーザ(およそ-25℃)の中に18時間(オーバーナイトで)置く。
9.4℃(冷蔵庫の中)で4時間解凍する。サンプルを室温(1時間)にする。
10.モールドからはずし、約24時間脱イオン化(DI)水のなかで馴れ(ないし水和:hydrate)させる。
【0131】
実施例2-メッシュを含むHEMA-MAAヒドロゲルスリーブを製造する
【0132】
材料
2-ヒドロキシエチルメタクリラート「HEMA」、メタクリル酸「MAA」、エチレングリコールジメタクリラート「EGDMA」、2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオナミジン)ジヒドロクロリド「Azobis」(Sigma-Aldrich UKによる)、及び脱イオン水「DI水」。 ナイロン(ワープニット)メッシュ。
【0133】
設備
重量計、重さを量るための紙、スパチュラ、ホウケイ酸ガラス製のビーカ及び及びプラスチックのネジ蓋、マグネティックスターラーバー、マグネティックスターラ、プラスチック製ペトリ皿、超音波バス、窒素ガス、化学ヒュームフード、UV固化マシン(12W LED UV 365nmで)。
【0134】
内容成分の例は表2にリストされる。総重量は、モールドされる製造物のサイズに依存して調整することができる。
【0135】
表2-HEMA-MAAゲルに関する計算された重量、所望のようにスケール[アップ、ダウン]される。
【0136】
プロトコル:
1.モールド内にナイロン(ワープニット)メッシュを置く。
2.DI水の重量をガラスビーカ内で直接的に測定する。全ての成分を測定し、ビーカ内の水の中に注ぐ。モノマ粉末/MAAの中に吐息を当てないように注意する。
3.ビーカの中にマグネティックスターラを置き、ビーカの上に蓋を置き、内容成分が溶ける(透明かつクリアな溶液)まで素早くであるが安定した速度で室温で撹拌するようにマグネティックスターラのスイッチを入れ、そして追加の30分間そのままにして撹拌させる。
4.窒素バブリングを30分間と超音波バスを30分間とによって溶液から酸素を除去する。
5.モールド内に溶けたヒドロゲル溶液を注ぐ。
6.溶液が固化するまでモールドをUVライトの下に置く(時間はサンプルの厚さに依存する)。
7.モールド付きのヒドロゲルを過剰な量のDI水(この実施例では、2Lを上回る)の中に少なくとも48時間沈める。
8.成形したヒドロゲルをモールドから外す。
9.グローブをはめ、未反応のモノマを含む水を排出(drain)し、水で数回以上HEMA-MAAサンプルをリンスする。
【0137】
実施例3-メッシュを含むPAAmヒドロゲルキャップを製造する
【0138】
材料
アクリルアミド、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)「Bis」、2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオナミジン)ジヒドロクロリド「Azobis」(Sigma-Aldrich UKによる)及び脱イオン水 「DI水」。
【0139】
設備
重量計、重さを量るための紙、スパチュラ、ホウケイ酸ガラス製のビーカ及び及びプラスチックのネジ蓋、マグネティックスターラーバー、マグネティックスターラ、プラスチック製ペトリ皿、超音波バス、窒素ガス、化学ヒュームフード、UV固化マシン(12W LED UV 365nmで)。ナイロン(ワープニット)メッシュ。
【0140】
内容成分の例は表3にリストされる。総重量は、モールドされる製造物のサイズに依存して調整することができる。
【0141】
表3-PAAmゲルに関する計算された重量、所望のようにスケール[アップ、ダウン]される。
【0142】
プロトコル:
1.モールド内にナイロン(ワープニット)メッシュを置く。
2.DI水の重量をガラスビーカ内で直接的に測定する。全ての成分を測定し、ビーカ内の水の中に注ぐ。モノマ粉末/MAAの中に吐息を当てないように注意する。
3.ビーカの中にマグネティックスターラを置き、ビーカの上に蓋を置き、内容物が溶ける(透明かつクリアな溶液)まで素早くであるが安定した速度で室温で撹拌するようにマグネティックスターラのスイッチを入れ、そして追加の30分間そのままにして撹拌させる。
4.窒素バブリングを30分間と超音波バスを30分間とによって溶液から酸素を除去する。
5.モールド内に溶けたヒドロゲル溶液を注ぐ。溶液は、より複雑なモールドの中に容易に注げるようにするために、低い粘度を有する。
6.溶液が固化するまでモールドをUVライトの下に置く(時間はサンプルの厚さに依存する)。
7.モールド付きのヒドロゲルを過剰な量のDI水(この実施例では、2Lを上回る)の中に少なくとも48時間沈める。
8.成形したヒドロゲルをモールドから外す。
9.グローブをはめ、未反応のモノマを含む水を排出し、水で数回以上PAAmサンプルをリンスする。
【0143】
実施例4-本開示の方法
第1節.出産を補助するためのデバイスの中にヒドロゲル溶液をモールディングすること、を含む、出産を補助するためのデバイスを作製する方法。
第2節.ヒドロゲル溶液が合成ポリマ繊維を含む、第1節に記載の方法。
第3節.出産を補助するためのデバイスの中に合成ポリマ繊維を含むヒドロゲル溶液をモールディングすること、を含む、出産を補助するためのデバイスを作製する方法。
第4節.モールディングが、ヒドロゲル溶液をキャスティングして、ヒドロゲル溶液及び合成ポリマ繊維を含むキャストを作製すること、ヒドロゲル形成を開始すること、及びキャストを固化して出産を補助するためのデバイスを成型すること、を含む第1節~第3節のいずれかに記載の方法。
第5節.出産を補助するように、被験者の産道の中で本開示のデバイスを赤ん坊の頭に置くこと、を含む妊婦による出産を補助する方法。
第6節.産道の中で赤ん坊の頭にデバイスを置くことが、赤ん坊の頭と産道の間に補強されたヒドロゲルの2重の層が存在するように王冠又はスリーブを折り畳むこと、を含む、第5節に記載の方法。
第7節.赤ん坊の頭が小斜径(良く屈折)又はサブメントブレグマティック(超反屈顔位)である間に、デバイスが赤ん坊の頭に置かれる、請求項5(第5節)又は請求項6(第6節)に記載の方法。
第8節.妊婦による出産を、特に分娩停止を防止することによって補助する方法であって、本開示のデバイスを使用して産道の少なくとも一部分をライニングすること、又は出産の間に産道の中で少なくとも赤ん坊の1部分をカバーすること、を含む方法。
【国際調査報告】