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特表2025-503331酸付加塩、組成物、及びそれらによる治療方法
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  • 特表-酸付加塩、組成物、及びそれらによる治療方法 図1
  • 特表-酸付加塩、組成物、及びそれらによる治療方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-30
(54)【発明の名称】酸付加塩、組成物、及びそれらによる治療方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20250123BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
C07D471/04 CSP
A61K31/496
A61P25/00
A61P29/00
A61P25/16
A61P9/10
A61P25/28
A61P31/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024568165
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 US2023061631
(87)【国際公開番号】W WO2023147576
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】17/588,847
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/931,688
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524287990
【氏名又は名称】ピオネウラ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲルバード,ハリス エー.
(72)【発明者】
【氏名】マッコール,ジョン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ダムスカー,ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】ロメロ,アーサー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA36
4C086ZB11
4C086ZB33
(57)【要約】
3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンの酸付加塩及びその結晶形態が提供される。また、本明細書に開示の酸付加塩及びその結晶形態と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物、並びに治療有効量の本明細書に開示の酸付加塩又は酸付加塩の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、神経炎症に関連する疾患又は障害などの疾患又は障害を治療する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンの酸付加塩。
【請求項2】
酒石酸塩、リン酸塩、及びフマル酸塩から選択される、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項3】
酒石酸塩である、請求項1に記載の酸付加塩。
【請求項4】
実質的に結晶質である、請求項3に記載の酒石酸塩。
【請求項5】
実質的に形態1である、請求項4に記載の酒石酸塩。
【請求項6】
(L)-(+)酒石酸塩と(D)-(-)酒石酸塩との混合物である、請求項3に記載の酒石酸塩。
【請求項7】
(D)-(-)酒石酸塩である、請求項3に記載の酸付加塩。
【請求項8】
(L)-(+)酒石酸塩である、請求項3に記載の酸付加塩。
【請求項9】
酒石酸対3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンのモル比が約1:1である、請求項2に記載の酒石酸塩。
【請求項10】
2θ単位で16.1±0.2、17.6±0.2、21.3±0.2、及び22.8±0.2のピークを含む粉末X線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられる、請求項5に記載の酒石酸塩。
【請求項11】
2θ単位で4.7±0.2、6.8±0.2、8.5±0.2、9.5±0.2、11.3±0.2、13.1±0.2、18.9±0.2、26.6±0.2、28.3±0.2、31.6±0.2、35.2±0.2、40.9±0.2、45.0±0.2、及び48.8±0.2から選択される3つ以上のピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項5に記載の酒石酸塩。
【請求項12】
図2に実質的に示されているXRPDパターンによって特徴付けられる、請求項11に記載の酒石酸塩。
【請求項13】
請求項1の酒石酸塩と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項14】
リン酸塩である、請求項2に記載の酸付加塩。
【請求項15】
フマル酸塩である、請求項2に記載の酸付加塩。
【請求項16】
治療有効量の請求項1に記載の酸付加塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、疾患又は障害を治療する方法。
【請求項17】
前記疾患又は障害が神経炎症に関連する疾患又は障害である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
神経炎症に関連する疾患又は障害が神経変性疾患である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記神経変性障害が、アルツハイマー型認知症、周術期神経認知障害(PND)、認知症併発せん妄(DSD)、HIV-1関連認知障害、海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、脳卒中、外傷、多発性硬化症、パーキンソン病、進行性核上性麻痺及び前頭側頭型認知症を含むタウオパチー、中枢神経系のHIV感染、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性出血、脳アミロイド血管症、及びダウン症候群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
極性プロトン性溶媒中で、3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンを酸と接触させて酸付加塩を形成すること、及び
前記酸付加塩を単離すること
を含む、請求項1に記載の酸付加塩の調製方法。
【請求項21】
前記3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンと酸を1:1の比率で混合し、次いで極性プロトン性溶媒に溶解する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記極性プロトン性溶媒がメタノールである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記メタノールが加熱される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記単離ステップが、前記接触ステップの前記溶液が濁るまでエーテルを添加することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記単離ステップが、前記接触ステップの前記溶液を固体が析出するまで放置することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記固体が濾過されエーテルで洗浄される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記単離された付加塩が熱エタノールに溶解され、冷却され、粉末として析出する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年1月31日に出願された米国非仮特許出願第17/588,847号及び2022年9月13日に出願された同第17/931,688号に基づく優先権を主張するものであり、これらの開示は、その全体が記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
化合物1(3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン)は、経口投与可能な脳浸透性混合系統キナーゼ(MLK)阻害剤であり、MLK1、MLK2、MLK3、及びミトゲン活性化プロテインキナーゼ12(DLK)に対するIC50は、それぞれ19nM、42nM、14nM、及び150nMである。また、化合物1は、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)の活性(IC50は11nM)及びチロシンプロテインキナーゼABL1(IC50は6.8nM)も阻害する。化合物1は、in vitro及びin vivoモデルにおいてオートファジーを誘導する。化合物1は、ミクログリア細胞におけるリポ多糖誘発性腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)放出と、ヒト単球におけるHIV-1 Tat誘発性サイトカイン放出を阻害する。
【化1】
【0003】
in vitroでは、化合物1は、さらに、ミクログリア細胞による培養神経軸索の破壊及び貪食を防止する。化合物1は、in vitroにおいて、野生型好中球のN-ホルミルメチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(fMLP)によって誘発される走化性を低下させる。マウスでは、化合物1は、BID又はqD投与に適した優れた薬物動態特性と中枢神経系(CNS)への浸透性を示す。化合物1(10mg/kgi.p.)は、HIV-1関連神経認知障害のin vivoマウスモデルにおいて、炎症性サイトカイン産生を減少させ、神経構造を保護し、HIV-1 Tat曝露に対するミクログリアの形態学的及び超微細構造的応答を変化させた。化合物1は、野生型マウスにおけるfMLPによる腹膜への好中球動員を大幅に減少させる。化合物1は、HIV-1関連神経認知障害(HAND)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、多発性硬化症(MS)、周術期神経認知障害(PND)、認知症併発せん妄(DSD)、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の神経毒性作用、及び血液脳関門(BBB)の修復のモデルにおいて神経保護特性を示した。化合物1は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)のマウスモデルにおいて、抗炎症性及び抗線維化特性を有し、脂肪毒性肝細胞アポトーシスに対する保護を示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、化合物1は非水溶性であり、ヒトの製剤に禁忌のジメチルスルホキシド(DMSO)などの賦形剤なしで投与すると、低い化合物1の血漿血清中濃度しか得られない。神経炎症に関連する疾患又は障害などの疾患又は障害を治療するために化合物1を投与するための手段に関し、満たされていない大きなニーズが存在する。本開示は、以下の開示の参照から明らかなように、これら及び他のニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンの酸付加塩が提供される。いくつかの実施形態では、塩は、酒石酸塩、リン酸塩、及びフマル酸塩から選択される。また、実質的に結晶質の3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンの酒石酸塩も提供される。
【0006】
また、本明細書に開示の酸付加塩と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も提供される。
【0007】
また、治療有効量の本明細書に開示の酸付加塩、又は本明細書に開示の酸付加塩の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、神経炎症に関連する疾患又は障害などの疾患又は障害を治療する方法も提供される。
【0008】
また、極性プロトン性溶媒中で、3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンを、酒石酸、フマル酸、及びリン酸から選択される酸などの酸と接触させて酸付加塩を形成し、その酸付加塩を単離することを含む、本明細書に開示の酸付加塩の調製方法も提供される。
【0009】
特許開示の進行に伴い、本明細書に開示の本発明のこれら及び他の態様がさらに詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面
図1】マウスにおける、化合物1の遊離塩基、酒石酸塩、及びリン酸塩の時間(hour)に対する平均血漿中濃度(ng/mL)を示す。
図2】化合物1の酒石酸塩のXRPD分析から得られたX線ディフラクトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本明細書で使用される以下の単語及び語句は、それらが使用される文脈から別段の指示がない限り、通常は以下に示す意味を持つことが意図されている。
【0012】
本開示の要素を紹介する場合又は実施形態中の冠詞「a」、「an」、「the」、及び「前記」は、1つ以上の要素が存在することを意味することが意図されている。「含有する(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は包括的であり、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0013】
2つ以上の項目の列挙の中にある場合の「及び/又は」という用語は、任意の列挙された項目が、単独で、又は列挙されている項目の1つ以上と組み合わせて使用できることを意味する。例えば、「A及び/又はB」という表現は、AとBのうちのいずれか一方又は両方、すなわちAのみ、Bのみ、又はAとBとの組み合わせを意味する。同様に、「A、B、及び/又はC」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、又はAとBとCとの組み合わせを意味する。
【0014】
値の範囲が開示され、「nからnまで」又は「nからnの間」という表記が使用される場合(nとnは数値である)、別段の明記がない限り、この表記は数値自体とそれらの間の範囲を含むことが意図されている。この範囲は、整数であっても、終了値の間と終了値を含む連続であってもよい。例として、「2~6個の炭素」の範囲は、炭素が整数単位になるため、2、3、4、5、及び6個の炭素を含むことが意図されている。例として、「1~3μM(マイクロモル)」の範囲を比較すると、これは、1μM、3μM、及び任意の数の有効数字(例えば1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)の間の全てを含むことが意図されている。
【0015】
「約」という用語は、それが修飾する数値を限定し、そのような値を誤差範囲内の変数として表す。データのチャート又は表に示されている平均値に対する標準偏差などの誤差範囲が記載されていない場合、「約」という用語は、記載された値を含む範囲と、有効数字を考慮してその数値に切り上げる又は切り捨てることによって含まれる範囲を意味する。
【0016】
「酸付加塩」という用語は、酒石酸塩、リン酸塩から選択される、3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンと酸塩基反応によって塩を形成可能な無機酸又は有機酸との塩を指す。酸付加塩の形成に使用される無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。有機酸の例としては、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、L-アスコルビン酸、酪酸、カンファー酸、ギ酸、グルタル酸、グルタミン酸、乳酸、アスパラギン酸、リンゴ酸、パモ酸、馬尿酸、キシナホ酸、グルコン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、(+)-カンファー-10-スルホン酸、ジグルコン酸、ゲンチシン酸、グリセロリン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、マロン酸、DL-マンデル酸、メシチレンスルホン酸、ニコチン酸、シュウ酸、ペクチン酸、3-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバリン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ウンデカン酸などが挙げられる。
【0017】
「非晶質」という用語は、(i)三次元で秩序を欠く、又は(ii)三次元未満の秩序、若しくは短い距離(例えば10A未満)のみの秩序、若しくはその両方を示す、任意の固体物質を指す。したがって、非晶質物質には、例えば一次元若しくは二次元の並進秩序(液晶)、配向無秩序(配向無秩序結晶)、又は立体構造無秩序(立体構造無秩序結晶)を持つ、部分的に結晶質の物質及び結晶質の中間相が含まれる。非晶質固体は、X線粉末回折(XRPD)結晶構造解析、固体核磁気共鳴(ssNMR)分光法、示差走査熱量測定(DSC)、又はこれらの技術のいくつかの組み合わせなどの公知の技術によってキャラクタリゼーションすることができる。以下で示すように、非晶質固体は散漫XRPDパターンを与え、典型的には1つ又は2つのブロードなピーク(すなわち約5°以上の2θのベース幅を持つピーク)から構成される。
【0018】
「多形」という用語は、同じ化合物の異なる結晶形態を指し、それらとしては、限定するものではないが、同じ化合物の水和物(例えば結晶構造中に存在する結合水)及び溶媒和物(例えば水以外の結合溶媒)を含む他の固体状態の分子結晶形態が挙げられる。
【0019】
「結晶質」という用語は、非晶質固体物質とは対照的に、シャープな輪郭を示すピークを持つ特徴的なXRPDパターンを与える、三次元秩序を示す任意の固体物質を指す。
【0020】
「実質的に結晶質」という用語は、少なくとも特定の重量パーセントが結晶質である化合物及び/又は塩を指す。特定の重量パーセントには、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、及び99.9%が含まれる。いくつかの実施形態では、実質的に結晶質は、少なくとも70%が結晶質である酒石酸塩を指す。いくつかの実施形態では、実質的に結晶質とは、少なくとも80%が結晶質である酒石酸塩を指す。いくつかの実施形態では、実質的に結晶質とは、少なくとも85%が結晶質である酒石酸塩を指す。いくつかの実施形態では、実質的に結晶質とは、少なくとも90%が結晶質である酒石酸塩を指す。いくつかの実施形態では、実質的に結晶質とは、少なくとも95%が結晶質である酒石酸塩を指す。
【0021】
例えばXRPDパターンを指す場合の「実質的に示されている通り」という用語は、本明細書で示されているものと必ずしも同一でなくてよいものの、当業者が考慮した場合に実験誤差又は偏差の限度の範囲内にあるパターンを含む。例えば、当業者であれば、ピーク位置(2θ)が、使用される溶媒、及び回折を測定するために使用される装置に応じて、典型的には0.1度から0.2度程度ほどの変動を示すことを理解するであろう。さらに、当業者であれば、相対的なピーク強度は、装置間の変動のみならず、結晶化度、優先配向、調製されたサンプル表面、及び当業者に公知の他の要因による変動も示し、定性的な尺度としてのみとらえるべきであることを理解するであろう。
【0022】
同様に、本明細書において、例えば固体NMRスペクトル及びラマンスペクトルについて言及する場合の「実質的に示される通り」は、当業者に公知のこれらの分析技術に関連する変動も包含することが意図されている。例えば、固体NMRで測定される13Cの化学シフトは、明確なピークについては典型的には最大0.2ppmの変動があり、ブロードな線についてはさらに大きくなる一方で、ラマンシフトは典型的には約2cm 1の変動を有する(ラマンスペクトルは典型的には(cm-1)で表される)。
【0023】
「溶媒和物」という用語は、原薬と、化学量論比又は非化学量論比の1つ以上の溶媒分子(例えばエタノール)とを含む分子複合体を表す。溶媒が薬物に強固に結合している場合、得られる複合体は湿度に依存しない明確な化学量論比を有する。しかしながら、チャネル溶媒和物や吸湿性化合物のように溶媒が弱く結合している場合には、溶媒含有量は湿度と乾燥条件に依存する。そのような場合、複合体は非化学量論的であることが多い。
【0024】
「水和物」という用語は、原薬と化学量論量又は非化学量論量の水とを含む溶媒和物を表す。
【0025】
「チャネル水和物」という用語は、結晶構造に大きな変化を与えることなく、水分子が完全に又は部分的にチャネル(空隙)から逃げることができる、開いた構造空隙を持つ水和物構造を指す。
【0026】
「2シータ値」又は「2θ」という用語は、X線回折実験の実験設定に基づく度単位のピーク位置を指し、回折パターンの一般的な横座標単位である。実験設定では、入射ビームが特定の格子面と角度シータ(θ)を形成するときに反射が回折される場合、反射ビームは角度2シータ(2θ)で記録される必要がある。本明細書で特定の多形形態についての特定の2θ値に言及する場合は、本明細書に記載のX線回折実験条件を使用して測定された2θ値(度)を意味することが意図されている。例えば、本明細書に記載の通り、放射線源としてCuKa(波長1.54056A)が使用された。
【0027】
本明細書で使用される「疾患」という用語は、一般的に同義語であることが意図されており、「障害」、「症候群」、及び「状態」(医学的状態において)という用語と互換的に使用され、いずれも、正常な機能を損ない、典型的には特徴的な兆候及び症状として現れ、人間又は動物の寿命又は生活の質を低下させる、人間又は動物の身体又はその部分の1つの異常な状態を反映する。
【0028】
「併用療法」という用語は、本開示に記載の治療上の状態又は障害を処置するために2種以上の治療薬を投与することを意味する。そのような投与には、実質的に同時の形式でのこれらの治療剤の同時投与、例えば固定比率の治療薬を含む単一のカプセルで、又は各治療薬について複数の別々のカプセルで投与することが含まれる。さらに、そのような投与には、各タイプの治療薬を逐次的な形式で投与することも含まれる。いずれの場合も、治療計画は、本明細書に記載の状態又は障害の治療において、薬物の組み合わせの有益な効果を提供する。
【0029】
本明細書で使用される「用量」とは、疾患又は障害を治療又は予防するために特定の時点で個体に投与される化合物の量を意味する。
【0030】
本明細書において、治療に言及する際の「治療を必要とする」及び「それを必要とする」は、介護者(例えば医師、看護師、診療看護師など)によって行われる、個体が治療を必要とするか又は治療から利益を得るという判断を意味するために互換的に使用される。この判断は、介護者の専門知識の範囲内にある様々な要因に基づいて行われるが、それには、本明細書に記載の塩によって治療可能な疾患、状態、又は障害の結果として、個体が病気である、又は病気になるという知識が含まれる。したがって、本明細書に記載の塩は、保護的又は予防的に使用することができ、或いは本明細書に記載の塩は、疾患、状態、又は障害を緩和、抑制、又は改善するために使用することができる。
【0031】
「患者」は一般に「対象」と同義であり、ヒトを含む全ての哺乳類が含まれる。患者の例としては、ヒト、並びにウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、及びウサギなどの家畜、並びにイヌ、ネコ、ウサギ、及びウマなどのペット動物が挙げられる。特定の実施形態では、患者はヒトである。
【0032】
本明細書で使用される「予防する」、「予防すること」、又は「予防」という用語は、特定の障害の予防、又は特定の障害に関連する1つ以上の症状の発生又は発症の予防などであり、必ずしも障害の完全な予防を意味するものではない。例えば、「予防する」、「予防する」、及び「予防」という用語は、最終的には病気又は状態のうちの少なくとも1つの症状を発現する可能性があるが、まだ発現していない個体に対して保護的又は予防的な治療を施すことを意味する。そのような個体は、その後の疾患の発生と相関することが知られているリスク要因に基づいて特定することができる。或いは、リスク因子を事前に特定することなく保護措置として予防療法を行うことができる。少なくとも1つの症状の発現を遅らせることも、予防又は予防法とみなすことができる。
【0033】
本明細書において使用される治療薬、組成物、又は組み合わせの「治療有効量」は、無毒であり、対象又は患者(例えばヒト対象又は患者)に投与した際に何らかの望ましい治療効果をもたらすのに有効な量である。対象に対する厳密な治療有効量は、例えば、対象の大きさ及び健康状態、症状の性質及び程度、投与のために選択される治療法又は治療法の組み合わせ、並びに当業者に公知の他の可変要素に依存し得る。所定の状況に対する有効量は、日常的な実験によって決定され、臨床医の判断の範囲内である。いくつかの実施形態では、治療有効量は標準用量である。
【0034】
本明細書において使用される「治療する」、「治療すること」、又は「治療」という用語は、疾患又は状態のうちの少なくとも1つの症状をすでに発現している、又は疾患若しくは状態のうちの少なくとも1つの症状を以前に発現したことのある個体に対して療法を施すことを意味する。例えば、「治療」には、疾患若しくは状態の症状を緩和、軽減、又は改善すること、さらなる症状を予防すること、症状の根本的な代謝原因を改善すること、疾患若しくは状態を抑制すること、例えば疾患若しくは状態の進行を阻止すること、疾患若しくは状態を緩和すること、疾患若しくは状態の退行を引き起こすこと、疾患若しくは状態によって引き起こされる状態を軽減すること、又は疾患若しくは状態の症状を停止することが含まれ得る。例えば、ある障害に関しての「治療する」という用語は、その特定の障害に関連する1つ以上の症状の重症度を軽減することを意味する。したがって、障害を治療することは、必ずしも障害に関連する全ての症状の重症度を軽減することを意味するわけではなく、また必ずしも障害に関連する1つ以上の症状の重症度を完全に軽減することを意味するわけではない。
【0035】
本明細書に開示の方法において整数が使用される場合、その整数の前に「約」という用語を挿入することができる。
【0036】
本明細書を通じて、文脈上別段の必要がない限り、「含む(comprise)」、又は「含む(comprises若しくはcomprising)」などの変化形は、記載されているステップ若しくは要素若しくは整数、又はステップ若しくは要素若しくは整数の群を含むことを意味するが、他のステップ若しくは要素若しくは整数、又は要素若しくは整数の群を排除することを意味しないと理解される。
【0037】
本明細書全体を通じて、別段の記載がない限り、又は文脈上特に別段の必要がない限り、単一のステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群への言及は、それらのステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群のうちの1つ及び複数(すなわち1つ以上)を包含すると解釈されるものとする。
【0038】
本明細書に記載の各実施形態は、別段の記載がない限り、他のそれぞれの実施形態に準用される。
【0039】
当業者であれば、本明細書に記載の発明では、具体的に記載されたもの以外の変更及び修正が行われ得ることを理解するであろう。本発明には、あらゆるそのような変更及び修正が含まれることが理解されるべきである。本発明は、本明細書で個別に又は集合的に言及又は示されている全てのステップ、特徴、組成物、及び化合物、並びに別段の記載がない限り前記ステップ又は特徴のあらゆる組み合わせ又は任意の2つ以上も含む。
【0040】
本発明は、例示のみを目的とした本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されることはない。機能的に同等の製品、組成物、及び方法は、明らかに本明細書に記載の発明の範囲内である。
【0041】
明確にするために別々の実施形態の文脈で記載されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴は、別々に、又は任意の適切な部分的な組み合わせで提供することもできる。
【0042】
酸付加塩
酒石酸塩、リン酸塩、及びフマル酸塩から選択される、3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンの酸付加塩が提供される。
【0043】
特定の実施形態では、酸付加物は酒石酸塩である。特定の実施形態では、酒石酸塩は(D)-(-)酒石酸塩である。特定の実施形態では、酒石酸塩は(L)-(+)酒石酸塩である。特定の実施形態では、酒石酸塩は、(L)-(+)酒石酸塩と(D)-(-)酒石酸塩との混合物である。
【0044】
特定の実施形態では、酸付加塩はリン酸塩である。
【0045】
特定の実施形態では、酸付加塩はフマル酸塩である。
【0046】
また、実質的に結晶質である3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンの酒石酸塩も提供される。
【0047】
特定の実施形態では、酒石酸塩は実質的に形態1である。
【0048】
特定の実施形態では、酒石酸塩は、(L)-(+)酒石酸塩と(D)-(-)酒石酸塩との混合物である。
【0049】
特定の実施形態では、酒石酸塩は(L)-(+)酒石酸塩である。
【0050】
特定の実施形態では、酒石酸塩は(D)-(-)酒石酸塩である。
【0051】
特定の実施形態では、酒石酸塩は、約1:1の酒石酸対化合物1のモル比を有する。
【0052】
特定の実施形態では、酒石酸塩は、2θ単位で16.1±0.2、17.6±0.2、21.3±0.2、及び22.8±0.2のピークを含む粉末X線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられる。
【0053】
特定の実施形態では、酒石酸塩は、2θ単位で4.7±0.2、6.8±0.2、8.5±0.2、9.5±0.2、11.3±0.2、13.1±0.2、18.9±0.2、26.6±0.2、28.3±0.2、31.6±0.2、35.2±0.2、40.9±0.2、45.0±0.2、及び48.8±0.2から選択される3つ以上のピークを含むXRPDパターンによって特徴付けられる。
【0054】
特定の実施形態では、酒石酸塩は、図2に実質的に示されているXRPDパターンによって特徴付けられる。
【0055】
また、極性プロトン性溶媒中で、3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンを、酒石酸、フマル酸、及びリン酸から選択される酸と接触させて酸付加塩を形成すること、及びその酸付加塩を単離すること、を含む、請求項1に記載の酸付加塩の調製方法も提供される。
【0056】
特定の実施形態では、3-(1H-インドール-5-イル)-5-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンと酸は、1:2~2:1の比率で混合され、次いで極性プロトン性溶媒中に溶解される。特定の実施形態では、その比は1:1である。
【0057】
適切な極性プロトン性溶媒としては、限定するものではないが、水、メタノール、エタノール、及び酢酸が挙げられる。特定の実施形態では、極性プロトン性溶媒はメタノールである。特定の実施形態では、極性プロトン性溶媒はエタノールである。
【0058】
特定の実施形態では、極性プロトン性溶媒は加熱される。特定の実施形態では、メタノールは加熱される。
【0059】
特定の実施形態では、単離ステップは、接触ステップの溶液が濁るまでエーテルを添加することを含む。
【0060】
特定の実施形態では、単離ステップは、固体が析出するまで接触ステップの溶液を放置することを含む。特定の実施形態では、固体は濾過され、エーテルで洗浄される。特定の実施形態では、単離された付加塩は、熱エタノールに溶解され、冷却され、粉末として析出する。
【0061】
医薬組成物
本開示の塩は、原料化学物質として投与することができるが、医薬製剤として提供することも可能である。したがって、本明細書に記載の酸付加塩と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も提供される。
【0062】
特定の実施形態では、単位用量製剤は、治療薬の有効な用量又はその適切な割合を含む。
【0063】
本明細書に記載の塩は、1日あたり300μg/kg~25mg/kg(遊離塩基当量)の用量で経口又は注射により投与することができる。成人の用量範囲は、通常0.02g/日~2g/日(遊離塩基当量)である。
【0064】
適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。任意の周知の技術、担体、又は賦形剤が適切であることができ、当該技術分野で理解され得る。本明細書に開示の医薬組成物は、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、粉砕、乳化、カプセル化、封入、封入、又は圧縮プロセスで製造することができる。
【0065】
本明細書に記載の塩は、様々な形式で投与することができる。最も適切な投与経路は、例えば服用者の状態及び障害に依存し得る。製剤は、単位容量形態で提供することが好都合な場合があり、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製することができる。特定の実施形態では、本明細書に開示の塩は経口投与される。
【0066】
経口で使用可能な医薬製剤としては、錠剤、ゼラチン製の押し込み式カプセル(「ゲルキャップ」)、及びゼラチンとグリセロールやソルビトールなどの可塑剤とから製造された軟質密封カプセル(「ソフトゲル」)が挙げられる。
【0067】
錠剤は、任意選択的な1つ以上の補助成分と共に、圧縮又は成形によって製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤、不活性希釈剤、滑沢剤、表面活性剤、又は分散剤と任意選択的に混合された、粉末や顆粒などの流動形態の有効成分を適切な機械で圧縮することによって製造することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって製造することができる。錠剤は、任意選択的にコーティングされるか又は割線が入れられ、中の有効成分の徐放又は制御放出が得られるように配合することができる。
【0068】
押し込み式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルクやステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意選択的な安定剤と混合された有効成分を含み得る。
【0069】
ソフトカプセルでは、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁させることができる。さらに、安定剤が添加されてもよい。
【0070】
特定の実施形態では、本明細書に開示の塩は、懸濁液として経口投与される。存在する場合、懸濁液は、水などの液体ビヒクルと混合された、本明細書に開示の塩の未溶解粒子を含む。特定の実施形態では、懸濁液は、化合物1の遊離塩基と比較して等モル量の化合物1の酒石酸塩を含む。特定の実施形態では、懸濁液は、化合物1の遊離塩基と比較して等モル量の化合物1のリン酸塩を含む。特定の実施形態では、懸濁液は、保存中に懸濁液を安定化させるための錯化剤をさらに含んでいてもよい。
【0071】
患者に投与される厳密な量は、主治医の責任である。患者に対する具体的な用量レベルは、使用される具体的な塩の活性、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物の組み合わせ、治療される正確な障害、及び治療される適応症又は状態の重症度など、様々な要因に依存する。また、投与経路は、状態及びその重症度に応じて変化し得る。
【0072】
特定の場合では、少なくとも1種の本明細書に記載の塩を別の治療薬と組み合わせて投与することが適切な場合がある。複数の治療薬(そのうちの少なくとも1種は本明細書に開示の塩)は、任意の順序で投与されてもよく、さらには同時に投与されてもよい。同時の場合、複数の治療薬は、単一の一体化された形態で、又は複数の形態(例示にすぎないが、単一の錠剤として又は2つの別々の錠剤としてのいずれか)で提供することができる。治療薬の1つが複数回に分けて投与されてもよく、或いは両方が複数回に分けて投与されてもよい。同時でない場合、複数回投与のタイミングは、数分から4週間の範囲の任意の期間であってよい。
【0073】
治療方法
治療を必要とする対象に、治療有効量の本明細書に開示の酸付加塩、又は本明細書に開示の酸付加塩の医薬組成物を投与することを含む、疾患又は障害を治療する方法も提供される。
【0074】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、神経炎症に関連する疾患又は障害である。
【0075】
特定の実施形態では、神経炎症に関連する疾患又は障害は神経変性障害である。特定の実施形態では、神経変性障害は、アルツハイマー型認知症、HIV-1関連認知症、海綿状脳症、クロイツフェルト-ヤコブ病、脳卒中、外傷、多発性硬化症、感染後パーキンソニズムを含むパーキンソン病、進行性核上性麻痺及び前頭側頭型認知症を含むタウオパチー、中枢神経系のHIV感染、HIV関連神経認知障害(HAND)、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性出血、脳アミロイド血管症、及びダウン症候群から選択される。
【0076】
治療方法は、神経変性障害の症状を軽減又は緩和することもできる。これらの症状としては、限定するものではないが、記憶喪失、物忘れ、無気力、不安、興奮、抑制の喪失、認知能力の低下、皮質感覚モダリティの欠損、読み書きの困難、及び気分の変化が挙げられる。身体の機能に影響を与える神経変性障害の他の症状としては、限定するものではないが、部分的又は完全な麻痺、筋力低下、感覚の部分的又は完全な喪失、発作、原因不明の痛み、及び注意力の低下が挙げられる。
【0077】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、薬剤誘発性末梢神経障害、糖尿病性神経障害、HIV関連神経障害、聴器毒性及び難聴、並びに音響外傷、爆風騒音(例えば軍人が経験するもの)、がん治療のための聴器毒性化学療法剤(シスプラチンなど)への曝露、及びアミノグリコシド系抗生物質による治療を含む内耳への急性障害である。
【0078】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、うつ病又は大うつ病性障害(MDD)、双極性障害、及び心的外傷後ストレス障害を含む心理的障害である。
【0079】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、1型及び2型糖尿病、高血糖、糖尿病合併症(網膜症、腎症、神経障害、潰瘍、微小血管症、大血管症、痛風、及び糖尿病性足疾患など)、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム(シンドロームX)、高インスリン血症、高血圧、高尿酸血症、肥満、浮腫、脂質異常症、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、慢性心不全、アテローム性動脈硬化症、末梢炎症及び肝炎(ウイルス性肝炎など)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び代謝関連脂肪性肝疾患(MAFLD)などの代謝性疾患から選択される。
【0080】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、1型及び2型糖尿病、高血糖、糖尿病合併症(網膜症、腎症、神経障害、潰瘍、微小血管症、大血管症、痛風、及び糖尿病性足疾患など)、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム(シンドロームX)、高インスリン血症、高血圧、高尿酸血症、肥満、浮腫、脂質異常症、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、慢性心不全、アテローム性動脈硬化症、末梢炎症及び肝炎(ウイルス性肝炎など)、及び代謝関連脂肪性肝疾患(MAFLD)などの代謝性疾患から選択される。
【0081】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、肝臓癌、膵管腺癌、神経膠芽腫、又は転移性乳癌などの増殖性障害である。
【0082】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、細菌性敗血症、中耳炎、内毒素血症、粘膜過形成、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、及び潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患、並びに喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び急性吸入誘発性肺障害などの呼吸器疾患及び状態である。
【0083】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、多発性硬化症、関節リウマチ、狼瘡、及びクローン病などの自己免疫疾患である。
【0084】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、脳血管疾患、脳卒中、くも膜下出血、脳虚血/再灌流、心筋梗塞、及び虚血性心疾患などの外傷性脳損傷を含む虚血性損傷である。
【0085】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、脳卒中、くも膜下出血、脳虚血/再灌流、心筋梗塞、及び虚血性心疾患などの外傷性脳損傷を含む虚血性損傷である。
【0086】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、背部痛(椎間板性疼痛など)、関節炎及び自己免疫疾患(関節リウマチなど)の疼痛、並びに骨転移による疼痛を含む癌性疼痛を含む疼痛である。
【0087】
特定の実施形態では、本方法は、SARS-CoV-2に感染した患者、COVID-19に罹患した患者、中枢神経系のCOVID-19感染症の患者、神経学的後遺症を伴うCOVIDに長期罹患している患者、又は末端臓器損傷を伴うMAFLDの患者における、サイトカインストーム、せん妄、又は認知症併発せん妄の治療及び/又は予防のためのものである。
【0088】
特定の実施形態では、本方法は、SARS-CoV-2に感染した患者、COVID-19に罹患した患者、又は末端臓器損傷を伴うMAFLDの患者におけるサイトカインストーム、せん妄、又は認知症併発せん妄の治療及び/又は予防のためのものである。
【0089】
いくつかの実施形態では、本方法は、AIDS化学療法に伴うNAFLD、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)関連脳症症候群(CRES)、及び癌又は免疫抑制化学療法に伴う認知障害(「ブレインフォグ」)など、別の適応症に関連する末梢疾患又は有害事象の治療及び/又は予防のためのものである。
【実施例
【0090】
実施例
実施例1-塩のスクリーニング及び調製
化合物1は、典型的な水性担体及び有機担体への溶解性が限定的である。溶解性を改善するために、適切な酸性のカルボン酸(例えばフマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸)、標準的な鉱酸(例えば臭化水素酸、硫酸、リン酸)、及びスルホン酸(例えばトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)から酸付加塩を調製する試みを行った。
【0091】
少量のメタノールに塩を溶解し、次いでわずかに濁るまでエーテルを添加することによって溶解性を調整することにより、メタノールとエーテルとを含むデュアル溶媒系を使用した。その後、これらのサンプルを、析出するまで必要に応じて反応容器内に放置した。一部の塩については、エタノール及び95%エタノールも検討したが、十分に希釈した場合であっても、塩はこれらの後者の溶媒には概して不溶性であった。
【0092】
リン酸
化合物1のメタノール溶液に、1モル当量の48%リン酸水溶液を含むメタノール溶液を添加し、均一な溶液を得た。溶媒を減圧下で除去し、ポンプで乾燥させてリン酸水溶液から微量の水を除去した。残渣を少量のメタノール中に溶解し(加熱後室温まで冷却)、エーテルを添加した。ほぼすぐに固体析出物が形成された。この白色粉末塩のメタノールへの溶解性は低く、本明細書で開示されている他の酸塩よりも低かった。
【0093】
加熱すると溶解したが、濃縮溶液を冷却すると析出した。白色粉末を回収し、エーテルで洗浄し、乾燥した。C2730P。MW=520g/mol。モノ塩の計算値:C,62.42;H,5.82;N,13.48;O,12.32;P,5.96。実測値:C,61.95;H,5.99;N,13.22。
【0094】
フマル酸
化合物1とフマル酸を1:1のモル比で混合し、少量のメタノール中で加熱して溶解させた。混合物を冷却し、濁るまでエーテルを添加した。溶液を放置して白色粉末を得た。これを濾過し、エーテルで洗浄した。固体を熱エタノールに溶解し、その後冷却して白色粉末を析出させることもできる。C3133 。MW=572g/mol。モノ塩の計算値:C,65.14;H,5.82;N,12.25;O,16.79。実測値:C,65.89,H6.13,N13.05。
【0095】
酒石酸
化合物1と酒石酸を1:1のモル比で混合し、少量のメタノール中で加熱して溶解させた。冷却後、エーテルを濁るまで添加した。放置すると固体が析出した。析出物を濾過し、エーテルで洗浄した。この濾過した粉末はメタノールにはあまり溶けなかったが、加熱するとある程度溶解する。得られた結晶質の物質をXRPDを使用して分析したところ、図2に示すスペクトルが得られた。
【0096】
酒石酸塩は水に対して特異な挙動を示した。乾燥粉末に量を増加させながら水を添加し、加熱すると、サンプルはスラリーから均質なゲルに、そして流動する溶液になった。このプロセス中に冷却して調べると、物質はスラリーから透明な粘性のあるゲルへと進行した。さらに水を添加した後、加熱を続けるとゲルは溶解し、流動する溶液が得られた。サンプルを冷却すると、溶液は均一なままであった。ゲルを逆さまにすると、1分後には流動する。ゲル状の溶液は、ピペットを使用して移すこともできた。2、3日間放置しても、サンプルの外観や挙動は変化しなかった。ゲル状の外観は、流動性を有する均一な溶液を得るために水で希釈することも、或いは典型的な溶液を得るためにゲル形態を加熱することもできる(ただし冷却すると再度ゲルを形成)。光学的に純粋なD-及びL-酒石酸を使用した。モノ塩の計算値:C,67.47;H,6.19;N,12.29。実測値:C,65.89;H,6.13;N,13.05。
【0097】
マレイン酸
マレイン酸についても、その異性体であるフマル酸と同じ手順を使用した。冷蔵庫で一晩保存した後、溶液は析出したが、析出物は若干粘性があり、濾過がうまくできなかった。
【0098】
クエン酸
化合物1とクエン酸を1:1のモル比で混合し、メタノール/エーテル処理を行った。固体析出物のない粘稠な物質が得られた。
【0099】
硫酸
1当量の硫酸を含むメタノール溶液を化合物1のメタノール溶液に添加すると、はるかに希釈される条件下で繰り返しても、タフィーのような糊状物質がすぐに析出した。この物質を溶解する試みは、メタノールで大幅に希釈しても加熱しても成功しなかった。
【0100】
臭化水素酸
化合物1のメタノール溶液に、1モル当量の臭化水素酸(酢酸中33%の臭化水素の溶液を使用)を添加した。均一な溶液を繰り返し減圧乾燥し、持続的に真空下に置いてメタノールに再溶解し酢酸の残留物を除去した。次いで、残渣をメタノールに溶解した。最初に濁るまでエーテルを添加し、その後放置した。粘稠な固体が得られた。繰り返すと、溶液は希釈された。エタノール及び95%エタノールも試した。粘稠な固体はメタノールにあまり溶解しなかった。
【0101】
有機スルホン酸(TolSOH、PhSOH、MeSOH、EtSOH)
化合物1と有機スルホン酸を1:1のモル比で秤量後、混合した。それぞれメタノールに良好な溶解性を示した。しかし、いずれの場合も、濁りが始まった時点でエーテルを添加すると、バイアルの壁と底に粘稠な液体の薄膜として塩が析出した。冷蔵、引っかき、及び希釈率の増加を行っても、酸付加塩の調製は成功しなかった。薄膜状の粘稠な液体は固化も結晶化もしなかった。
【0102】
溶解性
水と塩を混合し、ボルテックスと超音波処理を繰り返しながら加熱し、塩の固体が確実に飽和したまま存在するようにした。サンプルを1時間放置し、その後シリンジフィルターを通して濾過した。アリコートをピペットで取り出し、その後の析出を防ぐためにメタノールで4倍に希釈した。溶液は均一なままであった。Agilent HPLC-MSを使用して、2つのUV波長における「総面積」積分を比較することにより決定される、繰り返し可能な注入量が得られることが予め検証されているオートサンプラーを使用して、それぞれを注入した。
【0103】
加熱せずに過剰の遊離塩基を水と混合すると、遊離塩基固体は水に浮いた。対照的に、3つの酸付加塩は底に沈み、遊離塩基粉末と容易に区別することができた。
【0104】
遊離塩基は室温ではメタノール、エタノール、又は95%エタノールにはあまり溶解しなかったが、加熱又は大幅に希釈すると溶解した。フマル酸、酒石酸、及びリン酸から調製した塩では、メタノール、エタノール、又は95%エタノールに溶解する粉末固体が得られた。リン酸塩は、試験した3つの塩の中でメタノールへの溶解性が最も低かった。フマル酸塩及び酒石酸塩は、熱メタノールに容易に溶解した。
【0105】
以下の塩は、概して上述した方法を使用して製造することができる。この塩を製造した場合、本明細書に開示の実施例で製造したものと同様の活性を有することが期待される。
【0106】
化合物1のメタノール溶液に1モル当量の塩酸を添加する。均一な溶液を減圧乾燥する。残渣を少量のメタノールに溶解し(加熱後室温まで冷却)、エーテルを添加する。固体が溶液から析出する。
【0107】
まとめ
酒石酸、フマル酸、及びリン酸を使用して、薬学的に許容される塩を調製した。酒石酸塩は速度論的に最も速く溶解した。少量の水と共に加熱すると、酒石酸塩は均一なゼラチン状の物質を与え、さらに水を添加すると流動性の溶液になった。
【0108】
酸付加塩の融点及び相対的な水溶性を以下に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例2-X線粉末回折(XRPD)
上で調製した酒石酸塩のサンプルをホウケイ酸塩キャピラリーチューブ(外径1.0mm、肉厚0.01mm)に充填し、その後フレームシールした。2つ目の空のキャピラリーチューブを同じ方法で準備し、バックグラウンドを収集した。X線データは、HyPix-6000HE HPC検出器を備えておりCrysalisPro、v42.59aで制御されるRigaku XtaLAB Synergy-S回折システムで室温(292.3K)で収集した。CuKα線(λ=1.54184Å、スリット全開、9.0mR)は、50kV、1mAで動作するPhotonJet-Sマイクロフォーカス線源によって生成した。
【0111】
34mmのサンプル-検出器間距離で、φを300秒(2.4度/秒)で720度回転させ、ω=-52.16、θ=0.00、κ=134.00度であった。
【0112】
その後、サンプル画像からバックグラウンド画像を差し引き、本明細書に記載のデータを得た。
【0113】
実施例3-マウスにおける試験
典型的な固形錠剤又は丸薬として化合物1を投与することを模倣する条件で投与した場合の、in vivoでの塩の薬物動態挙動を測定した。遊離塩基、リン酸塩、及び酒石酸塩の水性懸濁液を、配合重量に対する酸成分の寄与を考慮して、1.00、1.36、及び1.23の質量比でマウスに等モル量投与した。遊離塩基並びにそのリン酸塩及び酒石酸塩は、同等の活性薬物濃度で投与した。しかし、リン酸及び酒石酸の配合重量への寄与が加わるため、これら2つの塩形態は、投与量に遊離塩基薬物が同じ10mg/kg含まれるように、わずかに高い総重量濃度で投与した。
【0114】
薬物動態曲線(AUC)を作成するために、頻繁に微小出血で血液を採取した。いずれの塩も、より大きなAUC、より短いTmax、及びより大きなCmaxによって示されるように、より優れた曝露を与えた。
【0115】
投与懸濁液は、実際の濃度が確実にわかるように、動物に投与する前に分析した。3つのサンプルは遊離塩基と同じ薬物濃度で投与されたため、AUC値は直接比較可能であった。AUClastは、6時間の試験の時間経過にわたる循環血漿中の薬物のAUC(曲線下面積)又は総量を表し、投与された薬物の経口バイオアベイラビリティの計算に関連するパラメータである。
【0116】
最初の4時間の平均血漿中濃度が表3と図に示されている。Cmaxからわかるように、遊離塩基と比較してリン酸塩と酒石酸塩の溶解性が優れており溶出速度が速いため、投与後最初の4時間でより迅速且つ完全に吸収される(表2)。Tmaxの調査は、酒石酸塩が最も迅速に吸収され、続いてリン酸塩及び遊離塩基の順であることを示している。遊離塩基とリン酸塩のTmax値は、これらが血漿中でピーク濃度に到達するまでに酒石酸塩よりも長い時間を要することを示している。酒石酸塩のTmaxは最も速く到達した。これは、鍵となる薬物動態測定ではリン酸塩が遊離塩基よりも優れていたものの、酒石酸塩の方がリン酸塩や遊離塩基よりも溶出が速いことも示唆している。
【0117】
【表2】
【0118】
同様のng/mlの血漿中濃度の標準偏差を比較すると、遊離塩基はリン酸よりも変動が大きいものの、酒石酸はそうではない。
【0119】
【表3】
【0120】
本出願で引用されている米国又は外国の全ての参考文献、特許、又は出願は、その全体が本明細書に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれまる。矛盾が生じる場合には、本明細書で開示されているものが優先される。
【0121】
前述した説明から、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確認することができる。その後、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなしに、本発明を様々な用途及び条件に合わせるために、本発明に対して様々な変更及び修正を行うことができる。
図1
図2
【国際調査報告】