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特表2025-503332高分子ベースフィルムの表面処理方法、機器及び被コーティング製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-31
(54)【発明の名称】高分子ベースフィルムの表面処理方法、機器及び被コーティング製品
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20250124BHJP
   C23C 26/00 20060101ALN20250124BHJP
   C08J 7/043 20200101ALN20250124BHJP
   B32B 15/08 20060101ALN20250124BHJP
【FI】
C08J7/00 304
C23C26/00 B
C08J7/043
B32B15/08 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572068
(86)(22)【出願日】2023-01-01
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 CN2023070002
(87)【国際公開番号】W WO2024119580
(87)【国際公開日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】202211563028.7
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524020157
【氏名又は名称】深▲セン▼金美新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳元 八大
(74)【代理人】
【識別番号】100230086
【弁理士】
【氏名又は名称】譚 粟元
(72)【発明者】
【氏名】臧 世偉
【テーマコード(参考)】
4F006
4F073
4F100
4K044
【Fターム(参考)】
4F006AB73
4F006AB74
4F006BA05
4F006BA07
4F006DA01
4F006DA04
4F006DA05
4F006EA03
4F073AA01
4F073BA31
4F073BB01
4F073BB08
4F073CA45
4F073CA47
4F073CA62
4F073CA69
4F073HA08
4F100AB00B
4F100AK01A
4F100AK49A
4F100BA02
4F100EH66B
4F100EJ541
4F100GB41
4F100JL11
4K044AA16
4K044BA10
4K044BB01
4K044CA13
(57)【要約】
本発明は、高分子ベースフィルムの表面処理方法、機器及び被コーティング製品を開示し、処理方法は、高分子ベースフィルム表面にコーティング材料と化学結合反応を起こす活性界面を形成するように、高分子ベースフィルムのコーティング前の排出端部にベースフィルム表面改質装置を設けることを含み、当該機器は、巻出ローラと、巻取ローラと、フィルム層堆積領域とを含み、フィルム層堆積領域と巻出ローラとの間の高分子ベースフィルムの片側又は両側に紫外線放射装置が設けられ、当該被コーティング製品は、高分子ベースフィルムと、強化層と、機能性コーティング層と、を含み、強化層は、機能性コーティング層と高分子ベースフィルムとの粘着力を強め、高分子ベースフィルムの表面の活性界面にコーティング層材料が化学的に結合して形成されている。本発明は、紫外線放射装置により高分子ベースフィルムの表面に照射して活性界面を形成させ、コーティング膜と高分子ベースフィルムとの粘着力を高めるため、高分子ベースフィルムの表面処理をより容易に実現することができ、無公害、高効率な表面処理の工程になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子ベースフィルムの表面処理方法であって、
高分子ベースフィルム表面にコーティング材料と化学結合反応を起こす活性界面を形成するように、高分子ベースフィルムのコーティング前の排出端部にベースフィルム表面改質装置を設けることを含む
ことを特徴とする高分子ベースフィルムの表面処理方法。
【請求項2】
照射後に前記高分子ベースフィルムの表面に酸素含有基が誘導により導入されるように、高分子ベースフィルムの排出端部に紫外線放射装置を設けることを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の高分子ベースフィルムの表面処理方法。
【請求項3】
高分子ベースフィルムのコーティング前の排出端部に、高分子ベースフィルムの表面に酸素含有雰囲気を搬送する微量ガス分配管路を設けることを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の高分子ベースフィルムの表面処理方法。
【請求項4】
巻出ローラと、巻取ローラと、前記巻出ローラと前記巻取ローラとの間に位置するフィルム層堆積領域とを備え、前記巻出ローラから巻き出された高分子ベースフィルムが前記フィルム層堆積領域を通過した後に前記巻取ローラに巻き取られる高分子ベースフィルムの表面処理機器であって、
前記フィルム層堆積領域と前記巻出ローラとの間には、前記高分子ベースフィルムの片側又は両側に照射してその表面に活性界面を形成させる紫外線放射装置が設けられている
ことを特徴とする高分子ベースフィルムの表面処理機器。
【請求項5】
前記紫外線放射装置の放射強度と前記高分子ベースフィルムの搬送速度とは、正の相関にある
ことを特徴とする請求項4に記載の高分子ベースフィルムの表面処理機器。
【請求項6】
前記高分子ベースフィルムから前記紫外線放射装置までの距離と前記高分子ベースフィルムの搬送速度とは、負の相関にある
ことを特徴とする請求項4に記載の高分子ベースフィルムの表面処理機器。
【請求項7】
前記紫外線放射装置と前記巻出ローラとの間には、前記高分子ベースフィルムの片側又は両側に配置されて、高分子ベースフィルムの表面に酸素含有雰囲気を搬送する微量ガス分配管路がさらに設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の高分子ベースフィルムの表面処理機器。
【請求項8】
フィルム層堆積領域は、高分子ベースフィルムの片側又は両側に位置する機能性コーティング層成膜モジュールを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の高分子ベースフィルムの表面処理機器。
【請求項9】
高分子ベースフィルムと、前記高分子ベースフィルムの表面にある機能性コーティング層とを含む被コーティング製品であって、
前記高分子ベースフィルムと前記機能性コーティング層との間には、前記機能性コーティング層と前記高分子ベースフィルムとの粘着力を強める強化層が設けられ、
前記強化層は、前記高分子ベースフィルムの表面の活性界面にコーティング層材料が化学的に結合して形成されている
ことを特徴とする被コーティング製品。
【請求項10】
前記高分子ベースフィルムと前記機能性コーティング層との間には緩衝層がさらに設けられ、前記強化層は、前記緩衝層と前記高分子ベースフィルムとの間に位置し、前記高分子ベースフィルムの表面の活性界面に前記緩衝層の素材が化学的に結合して形成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の被コーティング製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングの技術分野に関し、具体的には、高分子ベースフィルムの表面処理方法、機器及び被コーティング製品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、高分子ベースフィルムの機能化及び適用分野を更に拡大させるために、最も広く利用されている方法は、高分子ベースフィルムの機能フィルム層の複合化を行うことである。すなわち、高分子ベースフィルムの表面に薄膜を堆積することにより、遮断、導電などの機能を有する複合材料を形成する。被コーティング製品の重要な特性の一つは、コーティングされるフィルム層が良好な付着性能を持っていることである。通常、物理方式(プラズマ、コロナ放電など)と化学方式(表面グラフト改質など)によりベースフィルム表面の改質を行い、塗膜層の付着を強化する。
【0003】
しかし、従来の改質方式のうち、真空環境でプラズマボンバードメントを行う改質方式の場合、機器構造が比較的に複雑である上に、プラズマ機器の運転やメンテナンスのため長時間の生産運転を保障することが難しく、コーティング前のコロナ放電処理の場合、1つの工程を追加する必要があり、表面グラフト改質の方法の場合、追加の工程によりベースフィルム表面の汚染を引き起こす可能性があり、且つ、機器システムは比較的により複雑になる。
【0004】
上述の欠点を解決することに価値がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高分子ベースフィルムの表面処理が容易ではなく、システムの構成が複雑であるという従来技術の欠点を克服するために、本発明は高分子ベースフィルムの表面処理方法、機器及び被コーティング製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術案は以下の通りである。
【0007】
本発明は、高分子ベースフィルム表面にコーティング材料と化学結合反応を起こす活性界面を形成するように、高分子ベースフィルムのコーティング前の排出端部にベースフィルム表面改質装置を設けることを含むことを特徴とする高分子ベースフィルムの表面処理方法を提供する。
【0008】
上記の案にかかる本発明は、照射後に前記高分子ベースフィルムの表面に酸素含有基が誘導により導入されるように、高分子ベースフィルムの排出端部に紫外線放射装置を設けることを含むことを特徴とする。
【0009】
上記の案にかかる本発明は、高分子ベースフィルムのコーティング前の排出端部に、高分子ベースフィルムの表面に酸素含有雰囲気を搬送する微量ガス分配管路を設けることを含むことを特徴とする。
【0010】
別の態様において、本発明は、巻出ローラと、巻取ローラと、前記巻出ローラと前記巻取ローラとの間に位置するフィルム層堆積領域とを備え、前記巻出ローラから巻き出された高分子ベースフィルムが前記フィルム層堆積領域を通過した後に前記巻取ローラに巻き取られる高分子ベースフィルムの表面処理機器であって、
前記フィルム層堆積領域と前記巻出ローラとの間には、前記高分子ベースフィルムの片側又は両側に照射してその表面に活性界面を形成させる紫外線放射装置が設けられていることを特徴とする高分子ベースフィルムの表面処理機器を提供する。
【0011】
上記の案にかかる本発明は、前記紫外線放射装置の放射強度と前記高分子ベースフィルムの搬送速度とが正の相関にあることを特徴とする。
【0012】
上記の案にかかる本発明は、前記高分子ベースフィルムから前記紫外線放射装置までの距離と前記高分子ベースフィルムの搬送速度とが負の相関にあることを特徴とする。
【0013】
上記の案にかかる本発明は、前記紫外線放射装置と前記巻出ローラとの間には、前記高分子ベースフィルムの片側又は両側に配置されて、高分子ベースフィルムの表面に酸素含有雰囲気を搬送する微量ガス分配管路がさらに設けられていることを特徴とする。
【0014】
上記の案にかかる本発明は、フィルム層堆積領域が高分子ベースフィルムの片側又は両側に位置する機能性コーティング層成膜モジュールを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明はさらに、高分子ベースフィルムと、前記高分子ベースフィルムの表面にある機能性コーティング層とを含む被コーティング製品であって、前記高分子ベースフィルムと前記機能性コーティング層との間には、前記機能性コーティング層と前記高分子ベースフィルムとの粘着力を強める強化層が設けられ、前記強化層は、前記高分子ベースフィルムの表面の活性界面にコーティング層材料が化学的に結合して形成されていることを特徴とする被コーティング製品を提供する。
【0016】
上記の案にかかる本発明は、前記高分子ベースフィルムと前記機能性コーティング層との間には緩衝層がさらに設けられ、前記強化層は、前記緩衝層と前記高分子ベースフィルムとの間に位置し、前記高分子ベースフィルムの表面の活性界面に前記緩衝層の素材が化学的に結合して形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記の案にかかる本発明の有益な効果は、本発明がコーティング用の真空チャンバ内に紫外線放射装置を導入し、紫外線放射装置により高分子ベースフィルムの表面に照射して活性界面を形成させることにより、後のベースフィルム表面の堆積プロセス中におけるコーティング層との化学的結合の条件を形成し、さらにはコーティング膜と高分子ベースフィルムとの粘着力を増大させることができることである。コーティングシステム全体に膨大な改質機器を増設する必要がなく、高分子ベースフィルムの表面処理をより容易に実現でき、無公害、高効率な表面処理の工程になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1の構造模式図である。
図2】本発明の実施例2の構造模式図である。
図3】本発明の実施例3の構造模式図である。
図4】本発明の実施例4の構造模式図である。
図5】本発明の実施例5の構造模式図である。
図6】本発明の実施例6の構造模式図である。
図7】本発明の実施例7の構造模式図である。
図8】本発明の実施例8の構造模式図である。
図9】本発明の実施例9の構造模式図である。
図10】本発明の一つの具体的な実施例における被コーティング製品の構造模式図である。
図11】本発明の別の具体的な実施例における被コーティング製品の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面と実施形態を組み合わせて本発明をさらに説明する。
【0020】
真空コーティングの環境において、高分子ベースフィルムに対する表面処理をより容易な方法で行うことにより、コーティング層と化学的結合を形成できる構造をコーティングされる表面に生成させ、コーティング層の付着能力を向上させることができるように、本発明は、高分子ベースフィルムの表面処理方法を提供する。高分子ベースフィルム表面にコーティング材料と化学結合反応を起こす活性界面を形成するように、高分子ベースフィルムのコーティング前の排出端部にベースフィルム表面改質装置を設けることにより、高分子ベースフィルムの表面改質の目的を実現する。
【0021】
当該ベースフィルムの表面改質装置は、紫外線放射装置であり、すなわち、高分子ベースフィルム表面の水分子、酸素分子などが照射された後に高分子ベースフィルムの表面に酸素含有基が誘導により導入されるように、高分子ベースフィルムの排出端部に紫外線放射装置を設ける。具体的には、真空巻取式コーティング機器の真空チャンバ内で、紫外線放射装置により高分子ベースフィルムの表面に照射することにより、酸素含有基を誘導により導入することができる。ここで、酸素含有基とは、単結合酸素(C-O-C,C-OH)、カルボニル基(C=O)、カルボキシル基(COOH)等を含む酸素含有基であり、上記の酸素含有基は、後の工程における高分子ベースフィルムのコーティング層堆積に活性界面を提供するとともに、コーティング材料(例えば、金属)と酸素含有基との化学結合反応を発生させ、界面に化学結合原子価構造を構築し、最終的には、コーティングフィルム層と高分子ベースフィルムとの界面の粘着力を高める効果を達成することができる。
【0022】
後のコーティングプロセスにおいて、活性界面を有する高分子ベースフィルムがフィルム層堆積領域に入り、フィルム層堆積領域のコーティング材料が活性界面と化学的に結合して強化層を形成して、高分子ベースフィルム表面へのコーティング層の付着能力を強化する。具体的には、フィルム層堆積領域に堆積されるコーティング材料は金属材料として、フィルム層堆積領域の金属が活性界面と化学的に結合して金属酸化物を形成して、高分子ベースフィルム表面へのコーティング層の付着能力を強化することができる。
【0023】
金属材料として、良好な緩衝及び粘着性能を有するTi及びTi合金材料、Al及びAl合金材料、Cr及びCr合金材料をしてもよい。即ち、蒸発、マグネトロンスパッタなどの方式により、上記の金属材料を堆積する。活性の非常に高い原子レベル或いはイオンレベルの材料が上記のベースフィルム表面に付着するとき、高分子ベースフィルム表面の活性界面とTiOx、CrOx、酸化アルミニウムなどの類似の化学結合による成分をより形成しやすいため、ベースフィルム表面へのコーティング層の付着性能を強化する。
【0024】
高分子ベースフィルムの材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、PPS(ポリフェニルスルフィド)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PS(ポリスチレン)、PA(ポリアミド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PES(エチレン酢酸ビニルコポリマー)、PEI(ポリエーテルイミド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などとしてもよい。本発明の上記方法は、非極性特性を有する高分子ベースフィルムについてより顕著な特徴を有する。
【0025】
紫外線放射装置としては、紫外線放射直管ランプを使用してもよい。紫外線放射直管ランプは、市販されている従来のUVA波長帯(波長320~420nm、長波黒斑効果紫外線とも称される)、UVB波長帯(波長275~320nm、中波赤斑効果紫外線とも称される)、UVC波長帯(波長200~275nm、短波殺菌紫外線とも称される)、UVD波長帯(波長100~200nm、真空紫外線とも称される)の製品を使用してもよい。紫外線放射装置から発生する紫外線は、高分子ベースフィルムの高分子基に吸収され、その基の結合が開裂し、また、基の表面に吸着された水分子や酸素分子などの物質により、酸素が単結合、二重結合した新たな基が生成される。適切な紫外光を選択することにより、開裂した酸素分子の結合を励起して原子状酸素を生成させ、最終的には、活性の高い基又は界面を有する改質されたベースフィルム表面がより多く形成される。
【0026】
さらに、ベースフィルムの表面により多くの酸素含有基を生成させることができるように、高分子ベースフィルムのコーティング前の排出端部に、高分子ベースフィルムの表面に酸素含有雰囲気を搬送する微量ガス分配管路を設ける。微量ガス分配管路は流量制御装置に接続され、精密な流量制御装置により、ガス分配管路による酸素含有雰囲気の搬送を実現し、その酸素含有雰囲気の導入は後続の薄膜の堆積にも影響することはない。具体的な実現プロセスにおいて、酸素含有雰囲気としては、ガス濃度99.5%のAr+ガス濃度0.5%のO2との混合雰囲気のような、微量混入方式を採用する。酸素の代わりにオゾン源を用いてもよい。
【0027】
図1から図9に示すように、本発明は、高分子ベースフィルムの表面処理機器を提供し、真空チャンバ内の被コーティング材料の原料フィルムの巻出側のベースフィルム引き出し位置の両側に紫外線ランプ照射装置を配置することにより、ベースフィルムの表面処理に必要なハードウェア条件を提供する。
【0028】
当該高分子ベースフィルムの表面処理機器は、巻出ローラ10と、巻取ローラ20と、巻出ローラ10と巻取ローラ20との間に位置するフィルム層堆積領域とを備え、巻出ローラから巻き出された高分子ベースフィルム31がフィルム層堆積領域を通過した後に巻取ローラ20に巻き取られる。巻出ローラ10は、高分子ベースフィルム31の巻き出しを実現し、フィルム層堆積領域は、高分子ベースフィルム31の表面コーティングを実現し、巻取ローラは、コーティング後の被コーティング製品30の巻き取りを実現する。
【0029】
コーティング機器全体内でのフィルム搬送の円滑さを保証するとともに、コーティング機器内部の省スペース化を図るために、巻出ローラ10とフィルム層堆積領域との間に巻出通過ローラ11を設け、高分子ベースフィルム31は、巻き出された後に、巻出通過ローラ11に巻き付けられてから、フィルム層堆積領域に進入する。これに対応して、巻き取り後の被コーティング製品30の平坦性を保証するために、フィルム層堆積領域の末端と巻取ローラ20との間に巻取フラットニングローラ21を設け、コーティング完了後の被コーティング製品30は、巻取フラットニングローラ21に巻き付けられてから巻取ローラ20に巻き取られる。
【0030】
コーティング膜と高分子ベースフィルムとの間の付着力を向上させるために、本発明のフィルム層堆積領域と巻出ローラとの間には、高分子ベースフィルムの片側又は両側に照射する紫外線放射装置が設けられ、高分子ベースフィルムが巻き出されると、紫外線放射装置が動作し始めて、高分子ベースフィルムの表面に活性界面を形成させる。
【0031】
紫外線放射装置は位置調節装置に取り付けられ、位置調節装置により紫外線放射装置と高分子ベースフィルムとの間隔を調整し、さらに、高分子ベースフィルムの搬送速度に応じて照射距離を調節することができる。具体的には、高分子ベースフィルムから紫外線放射装置までの距離と高分子ベースフィルムの搬送速度とは、負の相関にある。また、紫外線放射装置の照射強度も調節可能であり、高分子ベースフィルムの搬送速度に応じて照射強度を調節することができる。具体的には、紫外線放射装置の放射強度と高分子ベースフィルムの搬送速度とは、正の相関にある。
【0032】
通常、高分子ベースフィルムの搬送速度は範囲が非常に広く、一般的な高分子ベースフィルムの搬送速度は2m/min~400m/minである。この場合、紫外線放射装置の放射強度を0.5mW/cm2~500mW/cm2であり、高分子ベースフィルムから紫外線放射装置までの距離は1cm~10cmであるとする。
【0033】
フィルム層堆積領域は、高分子ベースフィルムの表面のコーティング膜を実現し、高分子ベースフィルムの片側又は両側に位置する機能性コーティング層成膜モジュールを含む。片側の機能性コーティング層成膜モジュールは高分子ベースフィルムの片側のコーティングを実現し、両側の機能性コーティング層成膜モジュールは高分子ベースフィルムの両側のコーティングを実現する。その中の機能性コーティング層成膜モジュール、緩衝層成膜モジュールはいずれも成膜クーリングローラ、コーティング層蒸発源、フラットニングローラ及び通過ローラを含み、高分子ベースフィルムはフラットニングローラ、成膜クーリングローラ及び通過ローラに順に巻き付けられるとともに、コーティング層蒸発源は成膜クーリングローラのフィルム搬送外側に位置する。
【0034】
必要に応じて、フィルム層堆積領域は緩衝層成膜モジュールをさらに含み、高分子ベースフィルムのフィルム搬送方向に沿って、緩衝層成膜モジュールは機能性コーティング層成膜モジュールの上流側に位置し、緩衝層成膜モジュールにより高分子ベースフィルムの表面に緩衝層をコーティングし、さらに後の機能性コーティング層成膜モジュールにより機能性コーティング層を形成することにより、機能性コーティング層と高分子ベースフィルムの表面との緩衝及び更なる強化を実現する。
実施例1
【0035】
図1に示すように、本実施例において、紫外線放射装置の紫外線放射直管ランプを高分子ベースフィルムの両側に配置し、紫外線放射直管ランプの照射強度、その高分子ベースフィルムからの距離を高分子ベースフィルムの搬送速度に応じて調節する。
【0036】
具体的には、本実施例は、PIベースフィルムをコーティング材料の基材として用いて、形成される被コーティング製品の構造は、PI/強化層/機能層の形式であるとみなされてもよい。なお、本実施例の高分子ベースフィルムの搬送速度は2m/minであり、紫外線放射直管ランプでは5mW/cm2の放射強度と、4cmの放射距離を使用する。
【0037】
また、本実施例は、片側の蒸着方式を用いてコーティングを行う。すなわち、機能性コーティング層成膜モジュールは、第1の成膜モジュール40を含み、第1の成膜モジュール40は、第1の成膜クーリングローラ41と、第1の蒸発機構42と、第1の成膜フラットニングローラ43と、第1の成膜通過ローラ44と、を含み、第1の蒸発機構42は第1の成膜クーリングローラ41の下側に位置する。高分子ベースフィルムは、第1の成膜フラットニングローラ43、第1の成膜クーリングローラ41、第1の成膜通過ローラ44に順に巻き付けられ、第1の蒸発機構42により片側の蒸着が完了される。
【0038】
上記機能性コーティング層は、金属フィルム層、金属化合物フィルム層などであってもよい。
実施例2
【0039】
図2に示すように、本実施例は、両側蒸着方式を用いてコーティングする点において、実施例1とは異なる。すなわち、機能性コーティング層成膜モジュールは、第1の成膜モジュール40と第2の成膜モジュール50とを含む。具体的には、第1の成膜モジュール40は、第1の成膜クーリングローラ41と、第1の蒸発機構42と、第1の成膜フラットニングローラ43と、第1の成膜通過ローラ44と、を含み、第1の蒸発機構42は第1の成膜クーリングローラ41の下側に位置する。第2の成膜モジュール50は、第2の成膜クーリングローラ51と、第2の蒸発機構52と、第2の成膜フラットニングローラ53と、第2の成膜通過ローラ54と、を含み、第2の蒸発機構52は第2の成膜クーリングローラ51の下側に位置する。
【0040】
高分子ベースフィルムは、第1の成膜フラットニングローラ43、第1の成膜クーリングローラ41、第1の成膜通過ローラ44に順に巻き付けられ、第1の蒸発機構42により片側の蒸着が完了される。それから、高分子ベースフィルムは、第2の成膜フラットニングローラ53、第2の成膜クーリングローラ51、第2の成膜通過ローラ54に順に巻き付けられ、第2の蒸発機構52により他方側の蒸着が完了される。
実施例3
【0041】
図3に示すように、本実施例は、機能層のコーティングが完了する前に、まずは緩衝層成膜モジュールにより両側の緩衝層蒸着を完了する点において、実施例2と異なる。
【0042】
緩衝層成膜モジュールは、第1の成膜モジュール40と第2の成膜モジュール50と、を含み、第1の成膜モジュール40は、第1の成膜クーリングローラ41と、第1の蒸発機構42と、第1の成膜クーリングローラ41に対応する第1の成膜フラットニングローラと、第1の成膜通過ローラと、を含み、第2の成膜モジュール50は、第2の成膜クーリングローラ51と、第2の蒸発機構52と、第2の成膜クーリングローラ51に対応する第2の成膜フラットニングローラと、第2の成膜通過ローラと、を含む。高分子ベースフィルムは、第1の成膜フラットニングローラ、第1の成膜クーリングローラ41、第1の成膜通過ローラに順に巻き付けられ、第1の蒸発機構42により片側の緩衝層の蒸着が完了される。それから、高分子ベースフィルムは、第2の成膜フラットニングローラ、第2の成膜クーリングローラ51、第2の成膜通過ローラに順に巻き付けられ、第2の蒸発機構52により他方側の緩衝層の蒸着が完了される。
【0043】
機能性コーティング層成膜モジュールは、第3の成膜モジュール60と第4の成膜モジュール70と、を含み、第3の成膜モジュール60は、第3の成膜クーリングローラ61と、第3の蒸発機構62と、第3の成膜クーリングローラ61に対応する第3の成膜フラットニングローラと、第3の成膜通過ローラと、を含み、第4の成膜モジュール70は、第4の成膜クーリングローラ71と、第4の蒸発機構72と、第4の成膜クーリングローラ71に対応する第4の成膜フラットニングローラと、第4の成膜通過ローラと、を含む。高分子ベースフィルムは、第3の成膜フラットニングローラ、第3の成膜クーリングローラ61、第3の成膜通過ローラに順に巻き付けられ、第3の蒸発機構62により片側の機能性コーティング層の蒸着が完了される。それから、高分子ベースフィルムは、第4の成膜フラットニングローラ、第4の成膜クーリングローラ71、第4の成膜通過ローラに順に巻き付けられ、第4の蒸発機構72により他方側の機能性コーティング層の蒸着が完了される。
【0044】
具体的な実現プロセスにおいて、緩衝層はTi及びTi合金、Cr及びCr合金であってもよく、機能性コーティング層は金属フィルム層、金属化合物フィルム層などを使用することが多いが、本実施例では、緩衝層として金属Tiを、機能性コーティングとして金属Alを用いて、コーティング後の塗膜層(緩衝層、機能性コーティング層を含む)の総厚さを150nmとしてもよい。
実施例4
【0045】
図4に示すように、本実施例は、紫外線放射装置12による照射の前に、まず微量の酸素含有雰囲気を導入する点において、実施例1と異なる。紫外線放射装置12と巻出ローラ10との間には、高分子ベースフィルム31の片側又は両側に配置されて、高分子ベースフィルム31の表面に酸素含有雰囲気を搬送する微量ガス分配管路13がさらに設けられている。
【0046】
本実施例は、蒸着方式を用いてコーティングを行い、強化層(例えば、酸化アルミニウム)を生成するために、微量ガス分配管路13を用いて微量の酸素含有雰囲気を導入する。微量の酸素含有雰囲気を導入するだけで、酸素含有雰囲気が早くも単結合酸素や二重結合酸素の基を形成していることに加えて、蒸発コーティングの位置から微量ガス分配管路13まで一定の距離があるので、導入される酸素含有雰囲気が蒸発コーティングに影響を与えることはほとんどない。また、酸素含有雰囲気により生成された酸素含有基は、金属と化学的に結合して強化層である酸化層を形成する際に早くも全て消耗されるので、その後の機能性コーティング層の形成に影響を与えることはない。
実施例5
【0047】
図5に示すように、本実施例は、紫外線放射装置12と巻出ローラ10との間にも微量ガス分配管路13がさらに設けられている点において、実施例2と異なる。
実施例6
【0048】
図6に示すように、本実施例は、紫外線放射装置12と巻出ローラ10との間にも微量ガス分配管路13がさらに設けられている点において、実施例3と異なる。
実施例7
【0049】
図7に示すように、本実施例は、スパッタコーティング方式により機能性コーティング層のコーティングを行う点において、実施例4と異なる。すなわち、第1の成膜クーリングローラ41の外周に複数の第1のターゲット45を配置し、第1のターゲット45を介してスパッタコーティングを行う。
【0050】
本実施例はスパッタコーティング方式によりコーティングを行うが、スパッタコーティングプロセスにおいて、スパッタ用ガスを導入する必要がある。本実施例では、巻出ローラ10のフィルム排出端部に微量ガス分配管路13を用いて酸素含有雰囲気を導入し、スパッタ用ガスの濃度値が酸素含有雰囲気の濃度値よりもはるかに大きく、多くのスパッタガスが拡散するため、酸素含有雰囲気がスパッタコーティングの位置に拡散することがない。加えて、スパッタコーティングの位置から微量ガス分配管路まで一定の距離があるので、導入される酸素含有雰囲気がスパッタコーティングに影響を与えることはない。
実施例8
【0051】
図8に示すように、本実施例は、スパッタコーティング方式により機能性コーティング層のコーティングを行う点において、実施例5と異なる。すなわち、第1の成膜クーリングローラ41の外周に複数の第1のターゲット45を配置し、第1のターゲット45を介してスパッタコーティングを行う。第2の成膜クーリングローラ51の外周に複数の第2のターゲット55を配置し、第2のターゲット55を介して高分子ベースフィルムの他方側に対してスパッタコーティングを行う。
実施例9
【0052】
図9に示すように、本実施例は、スパッタコーティング方式により緩衝層及び機能性コーティング層のコーティングを行う点において、実施例6と異なる。すなわち、第1の成膜クーリングローラ41の外周に複数の第1のターゲット45を配置し、第1のターゲット45を介して高分子ベースフィルム31の一方側に対してスパッタコーティングを行って緩衝層を形成する。第2の成膜クーリングローラ51の外周に複数の第2のターゲット55を配置し、第2のターゲット55を介して高分子ベースフィルムの他方側に対してスパッタコーティングを行って緩衝層を形成する。第3の成膜クーリングローラ61の外周に複数の第3のターゲット63を配置し、第3のターゲット63を介して高分子ベースフィルム31の一方側に対してスパッタコーティングを行って機能性コーティング層を形成する。第4の成膜クーリングローラ71の外周に複数の第4のターゲット73を配置し、第4のターゲット73を介して高分子ベースフィルムの他方側に対してスパッタコーティングを行って機能性コーティング層を形成する。
【0053】
上記実施例において、蒸発コーティングには蒸発機構が必要であり、スパッタリングコーティングには、ターゲットが必要である上に、ガス、例えばアルゴンガスを導入する必要がある。また、1つの真空チャンバ内で、高分子ベースフィルムの両側にコーティングを行う必要がある場合、2つの成膜クーリングローラを用い、2つの成膜クーリングローラの位置では同じコーティング方式を用いる。例えば、両方を蒸発コーティング、又は両方をスパッタコーティングとする。
【0054】
なお、上記のコーティングプロセスは全て真空環境内で行われる。スパッタコーティングする場合、スパッタ用ガスを導入する必要がある。微量ガス分配管路を追加する場合、導入される酸素含有雰囲気の濃度がスパッタガスの濃度よりもはるかに小さく、多くのスパッタガスが拡散するため、酸素含有雰囲気がスパッタコーティングの位置に拡散することがない。加えて、スパッタコーティングの位置から微量ガス分配管路まで一定の距離があるので、導入される酸素含有雰囲気がスパッタコーティングに影響を与えることはない。
【0055】
図10図11に示すように、本発明は、改善前に比べて粘着力が100%以上向上して、600N/mに達した被コーティング製品をさらに提供する。この被コーティング製品は、高分子ベースフィルムと、高分子ベースフィルムの表面にある機能性コーティング層とを含み、高分子ベースフィルムと機能性コーティング層との間には、機能性コーティング層と高分子ベースフィルムとの粘着力を強める強化層が設けられ、強化層は、高分子ベースフィルムの表面の活性界面にコーティング層材料が化学的に結合して形成されている。
【0056】
具体的には、図10において、この被コーティング製品30は、高分子ベースフィルム31と、機能性コーティング層としてのアルミニウム層33と、高分子ベースフィルム31とアルミニウム層33との間の酸化アルミニウム層32とを含み、酸化アルミニウム層32は強化層とされて、アルミニウム層33の原料であるアルミニウム金属と高分子ベースフィルム31表面の活性界面とが化学的に結合して形成されている。この被コーティング製品は、アルミニウムを直接コーティングして形成され、金属アルミニウム材料が高分子ベースフィルム31の表面に接触すると、先に酸化アルミニウム層32が形成され、次いでアルミニウム層33が形成される。機能性コーティング層(アルミニウム層33)の厚さは製品の必要に応じて200nm~1500nmの間にコントロールされ、強化層(アルミニウム層33)の厚さは10nm以下である。図4又は図7に示すような微量ガス分配管路を追加して酸素含有雰囲気を導入する場合、酸化アルミニウム層がより厚くなり(10nmを超え、25nm以下)、粘着力がより強くなる。
【0057】
図11に示す好ましい実施例において、高分子ベースフィルムと機能性コーティング層との間には緩衝層がさらに設けられ、強化層は、緩衝層と高分子ベースフィルムとの間に位置し、高分子ベースフィルムの表面の活性界面に緩衝層の素材が化学的に結合して形成されている。
【0058】
具体的には、図11において、この被コーティング製品30は、高分子ベースフィルム31と、機能性コーティング層としてのアルミニウム層33と、を含み、高分子ベースフィルム31とアルミニウム層33との間に強化層としてのチタン酸化物層34(TiOx層)と、緩衝層としてのチタン層35とが設けられ、強化層は、緩衝層の原料であるチタンと高分子ベースフィルム31表面の活性界面とが化学的に結合して形成されている。
【0059】
機能性コーティング層(アルミニウム層33)を形成する前に、まずはチタン酸化物層34を形成し、次にチタン層35を形成し、最後にアルミニウム層33を形成する。微量ガス分配管路を追加して酸素含有雰囲気を導入する場合、チタン酸化物層34がより厚くなり、粘着力がより強くなる。一つの実例において、酸素含有雰囲気を導入する場合の酸化チタン層35の厚さは25nm以内(微量酸素含有雰囲気の導入がない場合は通常10nm以内)であり、チタン層35の厚さは200nm~800nmであり、アルミニウム層33の厚さは200nm~800nmである。
【0060】
上記の具体的な実施例において、機能性コーティング層としてアルミニウム層を用いて、アルミニウム層は、蒸発コーティングやスパッタコーティングの方式を使用することが可能である。機能性コーティング層は銅層であってもよく、銅層の場合も、蒸発コーティングやスパッタコーティングの方式を使用することが可能である。
【0061】
本発明は、比較実験をさらに提供する。
【0062】
基礎となる実施例である実施例1を例に説明する。まず、紫外線放射装置を作動させずに被コーティング試料AA1を得て、紫外線放射装置を作動させて強化層付きの被コーティング試料AA2を得る。
【0063】
1. 被コーティング試料AA1と被コーティング試料AA2の粘着力性能を比較する。
【0064】
コーティング試料AA1とコーティング試料AA2の表面に剥離に1000N/mの力を要する幅20mmの粘着テープを貼り付けてから、引張試験機を用いて180°方式、50mm/minの速度で引っ張って塗膜層粘着力の大きさをテストした。テストの結果、紫外線照射が行われなかった被コーティング試料AA1の粘着力は287N/mに達し、被コーティング試料AA2の粘着力は749N/mに達した。
【0065】
本発明の方式により強化された被コーティング試料の粘着性能が著しく向上した。
【0066】
2. 被コーティング試料AA1と被コーティング試料AA2の粘着性能を比較する。
【0067】
本発明はさらに、リチウムイオン電池用の電解環境をシミュレーションし、被コーティング試料AA1と被コーティング試料AA2とをそれぞれ化学薬品に浸漬した後に、その粘着性能をテストした。
【0068】
通常のリチウムイオン電池用電解液に浸漬して密封した後、85℃の温度で72時間ベーキングしても、被コーティング試料AA1と被コーティング試料AA2は良好な粘着性能を保ち、粘着力はそれぞれ、被コーティング試料AA1:213N/m、被コーティング試料AA2:688N/mであった。両者はそれぞれ原始状態の74%と92%であった。
【0069】
したがって、本発明の方式により強化された被コーティング試料AA2は、良好な粘着性能の利点を保った。
【0070】
3. 被コーティング試料AA1と被コーティング試料AA2の力学強度を比較する。
【0071】
幅10mmの試料を例として、50mm/minの引張速度で試料の引張強度を測定した場合、被コーティング試料AA1の引張強度は195MPa、被コーティング試料AA2の引張強度は231Mpaに達することができる。
【0072】
本発明は、上記高分子ベースフィルムの表面処理方法及び機器により、高分子ベースフィルムの無公害表面処理を実現することが可能になり、従来の表面処理なしで直接コーティング層を堆積させる薄膜に比べて、粘着性能が2倍以上に向上し、また、化学結合により強化層を形成することにより、強化層としての金属酸化物成分が界面の不動態化を実現するように機能することができる。堆積される薄膜材料はより優れた耐化学薬品効果を有し、力学強度(引張強度)が著しく向上する。
【0073】
当業者であれば、上記の説明に基づいて改良又は変形を加えることができ、これら全ての改良及び変形は、本発明に添付された特許請求の範囲に属するものであることを、理解すべきである。
【0074】
以上、添付図面に関連して本発明を例示的に説明したが、本発明の実現が上記の方式に限定されないことが明らかであり、本発明の方法や構想及び技術案を用いた様々な改良、又は改良なしの本発明の構想及び技術案の他の場合への直接な適用は、全て本発明の保護範囲内にある。
【符号の説明】
【0075】
10 巻出ローラ
11 巻出通過ローラ
12 紫外線放射装置
13 微量ガス分配管路
20 巻取ローラ
21 巻取フラットニングローラ
30 被コーティング製品
31 高分子ベースフィルム
32 酸化アルミニウム層
33 アルミニウム層
34 チタン酸化物層
35 チタン層
40 第1の成膜モジュール
41 第1の成膜クーリングローラ
42 第1の蒸発機構
43 第1の成膜フラットニングローラ
44 第1の成膜通過ローラ
45 第1のターゲット
50 第2の成膜モジュール
51 第2の成膜クーリングローラ
52 第2の蒸発機構
53 第2の成膜フラットニングローラ
54 第2の成膜通過ローラ
55 第2のターゲット
60 第3の成膜モジュール
61 第3の成膜クーリングローラ
62 第3の蒸発機構
63 第3のターゲット
70 第4の成膜モジュール
71 第4の成膜クーリングローラ
72 第4の蒸発機構
73 第4のターゲット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】