(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-03
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)ケーキから作製される水性コーティング
(51)【国際特許分類】
C08L 101/16 20060101AFI20250127BHJP
B32B 25/06 20060101ALI20250127BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250127BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250127BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20250127BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20250127BHJP
C09D 167/04 20060101ALI20250127BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20250127BHJP
【FI】
C08L101/16
B32B25/06
B32B27/36
B05D7/24 302V
B05D7/00 F
C08L67/04
C09D167/04
C09D5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024541791
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2023010694
(87)【国際公開番号】W WO2023137119
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523348656
【氏名又は名称】ダニマー・アイピーシーオー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラブス・ザサード,ジョー・ビー
(72)【発明者】
【氏名】デューリー,カースン
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス,マイケル・ジェイ
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J002
4J038
4J200
【Fターム(参考)】
4D075BB26Z
4D075BB92Z
4D075CA50
4D075DA04
4D075DB18
4D075EB35
4D075EB52
4D075EB56
4F100AK41A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG10B
4F100EH46A
4F100JC00A
4F100JM01A
4J002AB00X
4J002BE02X
4J002CF03X
4J002CF05X
4J002CF18W
4J002CF19X
4J002GH00
4J002HA01
4J002HA06
4J002HA07
4J038DD011
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA27
4J200AA03
4J200AA04
4J200AA13
4J200AA27
4J200AA28
4J200BA06
4J200BA12
4J200BA15
4J200BA16
4J200DA20
4J200EA20
4J200EA21
(57)【要約】
約35~約75重量パーセントの水及び約25~約65重量パーセントの固形分を含む、基材をコーティングするための生分解性水性混合物が開示される。固形分は、ひいては、固形分の総乾燥重量に基づくと、約40~約99重量のパーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成される。さらに、ポリヒドロキシアルカノエートは、水と混合する前の水分含量が約1重量%以上であり、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合にDv(90)粒度が約10ミクロン以下であるポリヒドロキシアルカノエート粒子の形態をとる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をコーティングするための生分解性水性混合物であって、前記混合物が、
35~75重量パーセントの水及び25~65重量パーセントの固形分
を含み、
前記固形分が、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、40~99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含み、
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、前記水と混合する前の水分含量が少なくとも1重量%であり、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合にDv(90)粒度が10ミクロン以下であるポリヒドロキシアルカノエート粒子の形態をとる、前記生分解性水性混合物。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記水と混合する前に、少なくとも5重量%の水分含量を有する、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合、8ミクロン以下のDv(90)粒度を有する、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが融点を有し、前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの前記融点を5℃下回る温度を前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に前記水と混合されて前記水性混合物を形成する、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項5】
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が95℃を超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に前記水と混合されて前記水性混合物を形成する、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項6】
前記混合物が、懸濁液、エマルション、またはコロイドの形態をとる、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項7】
前記固形分が、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、40~50重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項8】
前記混合物が、45~55重量パーセントの水及び45~55重量パーセントの固形分を含む、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項9】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、75~99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、1~25モルパーセントの、ヒドロキシバレレート、ヒドロキシヘキサノエート、ヒドロキシオクタノエート、及びヒドロキシデカノエートからなる群から選択されるモノマー反復単位と、を含むポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項10】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート(「P(3HB-co-3HHx)」)を含む、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項11】
前記P(3HB-co-3HHx)が、85~98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び2~15モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含む、請求項10に記載の生分解性水性混合物。
【請求項12】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、75~99.9モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、0.1~25モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー反復単位と、0.1~25モルパーセントの、5~12個の炭素原子を有する第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー反復単位と、から構成されるポリヒドロキシアルカノエートターポリマーを含む、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項13】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ASTM D5296-05によって決定した場合、50,000ダルトン~250万ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項14】
前記固形分が、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリ(ブチレンスクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペートテレフタレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、多糖、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、1重量パーセント~25重量パーセントさらに含む、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項15】
前記固形分が、ポリ(乳酸)をさらに含む、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項16】
前記生分解性水性混合物が、ISO1652に従って測定した場合、1~5,500センチポアズのブルックフィールド粘度を有する、請求項1に記載の生分解性水性混合物。
【請求項17】
コーティングされた基材を作製するための方法であって、
第1の側及び第2の側を有する板紙基材を供給するステップと、
前記基材の少なくとも前記第1の側の上に水性コーティング混合物の層を適用するステップであって、
適用される前記コーティング混合物が、35~75重量パーセントの水及び25~65重量パーセントの固形分を含み、
前記固形分が、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、40~99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含み、
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、前記水と混合する前の水分含量が少なくとも1重量%であり、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合にDv(90)粒度が10ミクロン以下であるポリヒドロキシアルカノエート粒子の形態をとる、前記適用するステップと、
40~99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む連続コーティング層が形成されるように前記コーティング混合物を硬化させるステップと、
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記水と混合する前に、少なくとも5重量%の水分含量を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合、8ミクロン以下のDv(90)粒度を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが融点を有し、前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの前記融点を5℃下回る温度を前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に前記水と混合されて前記コーティング混合物を形成する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が95℃を超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に前記水と混合されて前記コーティング混合物を形成する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記コーティング混合物が、懸濁液、エマルション、またはコロイドの形態で適用される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記固形分が、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、40~50重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記コーティング混合物が、45~55重量パーセントの水及び45~55重量パーセントの固形分を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、75~99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、1~25モルパーセントの、ヒドロキシバレレート、ヒドロキシヘキサノエート、ヒドロキシオクタノエート、及びヒドロキシデカノエートからなる群から選択されるモノマー反復単位と、を含むポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート(「P(3HB-co-3HHx)」)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記P(3HB-co-3HHx)が、85~98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び2~15モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、75~99.9モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、0.1~25モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー反復単位と、0.1~25モルパーセントの、5~12個の炭素原子を有する第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー反復単位と、から構成されるポリヒドロキシアルカノエートターポリマーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ASTM D5296-05によって決定した場合、50,000ダルトン~250万ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記固形分が、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリ(ブチレンスクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペートテレフタレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、多糖、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、1重量パーセント~25重量パーセントさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
前記固形分が、ポリ(乳酸)をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項32】
請求項17に記載の方法に従って調製されるコーティングされた基材。
【請求項33】
前記コーティング混合物が、0.5~50グラム/m
2の硬化後コーティング重量で前記基材の前記第1の側に適用される、請求項32に記載のコーティングされた基材。
【請求項34】
前記板紙基材が、前記コーティング混合物で含浸される、請求項32に記載のコーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)生産の分野に関する。より具体的には、本発明は、新規の形態のPHA(本明細書ではPHAケーキと称される)の生産及びこのPHAケーキを含むコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、典型的には、バイオリアクターにおける細菌または他の微生物のバイオマスの発酵によって生産される。最初に、PHAは微生物の細胞によって合成され、その中に蓄積する。次いで、バイオマス中でPHAが増えた後に、細菌を溶解し、細胞デブリからPHAを分離するための多段階プロセスが行われる。最終的に、バイオマスが乾燥器中などで乾燥され、乾燥粉末へと加工される。
【0003】
乾燥粉末は保管及び輸送が可能なものであるが、懸濁液、エマルション、分散液、またはコロイド形態での使用前には再度湿潤化させなくてはならない。再湿潤化には、典型的には、音波処理、超音波処理、低せん断または高せん断、及び乾燥粒子を砕いて粒度を低下させ、界面活性剤による粒子の十分な湿潤化を可能にするための他のプロセスが必要である。材料の再湿潤化に使用されるこうしたプロセスはかなりの時間及びエネルギーを要するものであり、結果的に著しい発泡を招き得る。どのような粉末でもそうであるが、乾燥PHAは爆発及び吸入などの危険をはらんでいる。さらに、乾燥粉末の水和または他の溶媒和を後で生じさせるとなると、粒子を分散及び湿潤化させるための分散剤及び湿潤剤(界面活性剤)などの添加剤のレベルが上昇し得る。こうした添加剤レベルは、材料の規制承認率、生分解性、及び堆肥化可能性を低下させる傾向を有する。PHA粉末の創出に乾燥器を使用する上に、再湿潤化プロセスに水を追加する結果としてエネルギー及び水の消費を増やす必要があることから、粉末へと加工されるPHAのライフサイクル評価は下がっている。このことは、全体として、PHA粉末材料の持続可能性を低下させている。
【0004】
したがって、上に紹介したものなどの問題が少なくとも部分的に減る傾向を有するPHA生産方法に対するニーズが存在する。
【0005】
そのようにして生産された、生産されたPHAを含む、基材をコーティングするための生分解性水性混合物を提供することも望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
上述のニーズ及び他のニーズは、加熱乾燥プロセス、再湿潤化の必要性、分散のための界面活性剤の使用の増加、高せん断分散/音波処理のためのエネルギー利用の増加、溶解後に得られるものの粒度と比較して粒度を増大させる著しい粒子凝集をなくすポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の形成方法によって満たされる。得られるPHAは、PHAケーキと新たに称される。「ケーキ」という用語は本開示で新たに使用されるものであり、上記の特性を有するエンドユース材料を説明する上でPHA加工産業においてこれまでに使用されたことはない。
【0007】
本明細書に記載の方法に従って作製されるPHAケーキは、水ベースまたは溶媒ベースのいずれかであり得、分散液、コロイド、懸濁液、コーティング、及び同様の材料の配合によく適する。さらに、この材料は、有機溶媒系及び無機溶媒系を利用するプロセスへのそのままの使用によく適するものである。このケーキ材料を使用して作製される配合物の例としては、バリアコーティング及び表面コーティングなどの配合物が挙げられる。この材料の使用の追加の例としては、紙製品の中または上への電解液または材料の包含または包埋、分散液、コロイド、エマルション、フィルム、及びヒートシールが挙げられる。当該PHA製品は、水またはエタノールなどの液体におけるPHAの分散液であるが、エマルションのように働く。
【0008】
PHAは、通常のバイオマスプロセスと同様のステップを使用して創出されるが、溶解及びタンパク質抽出の後、有機溶媒及び無機溶媒(アルコール及び水など)を用いて交互様式で代わる代わるPHAが洗浄され、洗浄ステップの間には、加圧、最終ろ過、クロスフローろ過、デカント、またはこれらのうちの2つの組み合わせが用いられる。好ましくは室温での空気または窒素の吹き込みも実施することで、液体含量が約5重量%以上のPHAケーキ、いくつかの実施形態では、PHA含量が約60(+/-10)重量%であり、液体含量が40(+/-10)重量%であるPHAケーキを得ることができる。
【0009】
結果的に、最終的なPHAケーキ製品は、水、界面活性剤、保存剤、レオロジー改変剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、殺生物剤、増量剤、結合剤、及び分散剤が添加されるミキサーに添加したりするなど、さまざまな異なる様式で使用することができる。ひいては、こうした製品は、本明細書の他の箇所に記載されるように、さまざまな異なる様式で使用することができる。
【0010】
温度を上昇させる加熱乾燥プロセスを経ることなく、PHAケーキは、加熱乾燥されて固体になっている標準的なPHA製品と比較して低下したPHA粒度を保持する。この粒度低下は、PHA粒子の湿潤化の良好化、粒子の分散に要する時間/エネルギーの低減、軟凝集及び粒子凝集を阻止するための添加剤(すなわち、界面活性剤)の使用の低減をさらに可能にし、最終的には、PHA材料及び商業的なプロセスにおけるPHAケーキの適用の間に作製される結果的な材料の加工性、性能、及び持続可能性を向上させる。小さな粒子は、それらが融解温度に達し、それらが適用されている基材の上に流れ始めるときのPHA粒子のフィルム形成性質も向上させる。
【0011】
PHAケーキは、水性PHA(分散液、エマルション、コロイド、懸濁液、コーティング)配合物の開発に、より適するものである。PHAを湿潤状態に保つことで粒子凝集及び軟凝集が低減され、その結果、湿潤化の容易化、分散、及びその他の様式での水性配合物の形成が生じる、より小さな粒子が得られる。この手法はPHAケーキ中の粒度を直径約15ミクロン未満に保持するものであり、粒子の約90%は、8ミクロン未満のサイズに収まる。さらに、加熱乾燥なしでPHAをケーキ形態に保つことで、製造のコストが低減される。ケーキを使用して形成されるPHA材料は、乾燥されて粉末状態になっているPHAを使用して作製されるものと比較して、最小フィルム形成温度の低下、脱水速度の低下、レオロジープロファイルの向上、及びバリア性能の向上をもたらす。
【0012】
PHAケーキは、水性(または任意の溶媒ベースの)コーティング材料を開発するための商業的状況において使用され得る。コーティングは、PHAを含有する任意の分散液、溶液、エマルション、コロイド、または懸濁液を言い表すものである。PHAケーキ自体を将来の配合向けに顧客に販売することも、製造後に顧客への販売前に配合することもできる。PHAケーキのいくつかのエンドユーザーには、化学製造会社、紙及び基材の製造会社、成形繊維包装会社、加工会社、ならびにブランドオーナーが含まれる。
【0013】
別の態様では、本開示は、基材をコーティングするための生分解性水性混合物を提供する。一実施形態によれば、この水性混合物は、約35~約75重量パーセントの水及び約25~約65重量パーセントの固形分を含む。固形分は、ひいては、固形分の総乾燥重量に基づくと、約40~約99重量のパーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成される。さらに、ポリヒドロキシアルカノエートは、水と混合する前の水分含量が約1重量%以上であり、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合にDv(90)粒度が約10ミクロン以下であるポリヒドロキシアルカノエート粒子の形態をとる。
【0014】
いくつかの実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、水と混合する前に、好ましくは、少なくとも約5重量%の水分含量を有する。
【0015】
ある特定の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合、好ましくは、約8ミクロン以下のDv(90)粒度を有する。
【0016】
場合によっては、ポリヒドロキシアルカノエートは融点を有し、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を約5℃下回る温度(より好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を約10℃下回る温度、さらにより好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を約20℃下回る温度)をポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に水と混合されて水性混合物を形成する。
【0017】
ある特定の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、約95℃超の温度、より好ましくは、約50℃超の温度、さらにより好ましくは、約40℃超の温度で乾燥されることなくバイオマス及び後続の精製プロセスから直接的に回収されることが好ましく、その後に水と混合されて水性混合物を形成する。
【0018】
いくつかの実施形態では、混合物は、懸濁液、エマルション、またはコロイドの形態をとる。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、固形分は、固形分の総乾燥重量に基づくと、好ましくは、約40~約50重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、混合物は、好ましくは、約45~約55重量パーセントの水及び約45~約55重量パーセントの固形分を含む。
【0021】
ある特定の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは、約75~約99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、約1~約25モルパーセントの、ヒドロキシバレレート、ヒドロキシヘキサノエート、ヒドロキシオクタノエート、及びヒドロキシデカノエートからなる群から選択されるモノマー反復単位と、から構成されるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む。
【0022】
ある特定の実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート(「P(3HB-co-3HHx)」)を含む。より好ましくは、P(3HB-co-3HHx)は、約85~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約15モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートから構成される。ある特定の実施形態では、P(3HB-co-3HHx)は、より好ましくは、約88~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約12モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートから構成される。他の実施形態では、P(3HB-co-3HHx)は、より好ましくは、約93~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約7モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートから構成される。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは、約75~約99.9モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、約0.1~約25モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー反復単位と、約0.1~約25モルパーセントの、5~12個の炭素原子を有する第3の3-ヒドキシアルカノエートのモノマー反復単位と、から構成されるポリヒドロキシアルカノエートターポリマーを含む。
【0024】
ある特定の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエートは、ASTM D5296-05によって決定した場合、好ましくは、約50,000ダルトン~約250万ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0025】
ある特定の実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエートは、ASTM D5296-05によって決定した場合、より好ましくは、約200,000ダルトン~約750,000ダルトン、さらにより好ましくは、約300,000ダルトン~約550,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0026】
場合によっては、固形分は、好ましくは、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリ(ブチレンスクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペートテレフタレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、多糖、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーも約1重量パーセント~約25重量パーセント含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、固形分は、より好ましくは、ポリ(乳酸)も含む。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、生分解性水性混合物は、ISO1652に従って測定した場合、約1~約5,500センチポアズのブルックフィールド粘度を有する。
【0029】
さらに別の態様では、本開示は、コーティングされた基材を作製するための方法を提供する。一実施形態によれば、この方法は、第1の側及び第2の側を有する板紙基材を供給するステップを含む。方法は、基材の少なくとも第1の側の上に水性コーティング混合物の層を適用するステップも含む。
【0030】
適用されるこのコーティング混合物は、約35~約75重量パーセントの水及び約25~約65重量パーセントの固形分から構成される。固形分は、ひいては、固形分の総乾燥重量に基づくと、約40~約99重量のパーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成される。さらに、ポリヒドロキシアルカノエートは、水と混合する前の水分含量が約1重量%以上であり、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合にDv(90)粒度が約10ミクロン以下であるポリヒドロキシアルカノエート粒子の形態をとる。
【0031】
方法は、約40~約99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む連続コーティング層が形成されるようにコーティング混合物を硬化させるステップも含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、水と混合する前に、好ましくは、少なくとも約5重量%の水分含量を有する。
【0033】
ある特定の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合、好ましくは、約8ミクロン以下のDv(90)粒度を有する。
【0034】
場合によっては、ポリヒドロキシアルカノエートは融点を有し、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を約5℃下回る温度(より好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を約10℃下回る温度、さらにより好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を約20℃下回る温度)をポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に水と混合されて水性混合物を形成する。
【0035】
ある特定の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、約95℃超の温度、より好ましくは、約50℃超の温度、さらにより好ましくは、約40℃超の温度で乾燥されることなくバイオマス及び後続の精製プロセスから直接的に回収されることが好ましく、その後に水と混合されて水性混合物を形成する。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、コーティング混合物は、好ましくは、分散液、エマルション、またはコロイドの形態において適用される。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、固形分は、固形分の総乾燥重量に基づくと、好ましくは、約40~約50重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成される。
【0038】
ある特定の実施形態では、コーティング混合物は、好ましくは、約45~約55重量パーセントの水及び約45~約55重量パーセントの固形分を含む。
【0039】
場合によっては、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは、約75~約99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、約1~約25モルパーセントの、ヒドロキシバレレート、ヒドロキシヘキサノエート、ヒドロキシオクタノエート、及びヒドロキシデカノエートからなる群から選択されるモノマー反復単位と、から構成されるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む。
【0040】
ある特定の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート(「P(3HB-co-3HHx)」)を含む。より好ましくは、P(3HB-co-3HHx)は、約85~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約15モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートから構成される。ある特定の実施形態では、P(3HB-co-3HHx)は、より好ましくは、約88~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約12モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートから構成される。他の実施形態では、P(3HB-co-3HHx)は、より好ましくは、約93~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約7モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートから構成される。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは、約75~約99.9モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、約0.1~約25モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー反復単位と、約0.1~約25モルパーセントの、5~12個の炭素原子を有する第3の3-ヒドキシアルカノエートのモノマー反復単位と、から構成されるポリヒドロキシアルカノエートターポリマーを含む。
【0042】
ある特定の実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエートは、ASTM D5296-05によって決定した場合、好ましくは、約50,000ダルトン~約250万ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0043】
ある特定の実施形態によれば、ポリヒドロキシアルカノエートは、ASTM D5296-05によって決定した場合、より好ましくは、約200,000ダルトン~約750,000ダルトン、さらにより好ましくは、約300,000ダルトン~約550,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、固形分は、好ましくは、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリ(ブチレンスクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペートテレフタレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、多糖、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーも約1重量パーセント~約25重量パーセント含む。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、コーティング混合物は、より好ましくは、ポリ(乳酸)を含む。
【0046】
別の態様では、本開示は、前述の方法に従って調製されるコーティングされた基材を提供する。
【0047】
ある特定の実施形態では、コーティング混合物は、好ましくは、約0.5~約50グラム/m2の硬化後コーティング重量でこの基材の第1の側に適用される。
【0048】
ある特定の実施形態では、板紙基材は、好ましくは、コーティング混合物で含浸される。
【発明を実施するための形態】
【0049】
上述のニーズ及び他のニーズは、加熱乾燥プロセス、再湿潤化の必要性、分散のための界面活性剤の使用の増加、高せん断分散/音波処理のためのエネルギー利用の増加、溶解後に得られるものの粒度と比較して粒度を増大させる著しい粒子凝集をなくすポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の形成方法によって満たされる。得られるPHAは、PHAケーキと新たに称される。「ケーキ」という用語は本開示で新たに使用されるものであり、上記の特性を有するエンドユース材料を説明する上でPHA加工産業においてこれまでに使用されたことはない。
【0050】
本明細書に記載の方法に従って作製されるPHAケーキは、水ベースまたは溶媒ベースのいずれかであり得、分散液、コロイド、懸濁液、コーティング、及び同様の材料の配合によく適する。さらに、この材料は、有機溶媒系及び無機溶媒系を利用するプロセスへのそのままの使用によく適するものである。このケーキ材料を使用して作製される配合物の例としては、バリアコーティング及び表面コーティングなどの配合物が挙げられる。この材料の使用の追加の例としては、紙製品の中または上への電解液または材料の包含または包埋、分散液、コロイド、エマルション、フィルム、及びヒートシールが挙げられる。ある特定の実施形態では、当該PHA製品は、水またはエタノールなどの液体におけるPHAの分散液であるが、エマルションのように働く。他の実施形態では、PHA製品は、懸濁液、エマルション、またはコロイドの形態をとり得る。
【0051】
PHAは、通常のバイオマスプロセスと同様のステップを使用して創出されるが、溶解及びタンパク質抽出の後、有機溶媒及び無機溶媒(アルコール及び水など)を用いて交互様式で代わる代わるPHAが洗浄され、洗浄ステップの間には、加圧、最終ろ過、クロスフローろ過、デカント、またはこれらのうちの2つの組み合わせが用いられる。いくつかの実施形態では、好ましくは室温での空気または窒素の吹き込みも実施することで、液体含量が約5重量%以上のPHAケーキ、いくつかの実施形態では、PHA含量が約60(+/-10)重量%であり、液体含量が40(+/-10)重量%であるPHAケーキを得ることができる。ある特定の実施形態では、PHAケーキ中の水分の量は、約1重量パーセント以上であり得る。
【0052】
結果的に、最終的なPHAケーキ製品は、水、界面活性剤、保存剤、レオロジー改変剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、殺生物剤、増量剤、結合剤、及び分散剤が添加されるミキサーに添加したりするなど、さまざまな異なる様式で使用することができる。ひいては、こうした製品は、本明細書の他の箇所に記載されるように、さまざまな異なる様式で使用することができる。
【0053】
温度を上昇させる加熱乾燥プロセスを経ることなく、PHAケーキは、加熱乾燥されて固体になっている標準的なPHA製品と比較して低下したPHA粒度を保持する。この粒度低下は、PHA粒子の湿潤化の良好化、粒子の分散に要する時間/エネルギーの低減、軟凝集及び粒子凝集を阻止するための添加剤(すなわち、界面活性剤)の使用の低減をさらに可能にし、最終的には、PHA材料及び商業的なプロセスにおけるPHAケーキの適用の間に作製される結果的な材料の加工性、性能、及び持続可能性を向上させる。小さな粒子は、それらが融解温度に達し、それらが適用されている基材の上に流れ始めるときのPHA粒子のフィルム形成性質も向上させる。
【0054】
PHAケーキは、水性PHA(分散液、エマルション、コロイド、懸濁液、コーティング)配合物の開発に、より適するものである。PHAを湿潤状態に保つことで粒子凝集及び軟凝集が低減され、その結果、湿潤化の容易化、分散、及びその他の様式での水性配合物の形成が生じる、より小さな粒子が得られる。いくつかの実施形態では、この手法はPHAケーキ中の粒度を直径約15ミクロン未満に保持するものであり、粒子の約90%は、8ミクロン未満のサイズに収まる。他の実施形態では、粒子の90%は、10ミクロン未満のサイズを有し得る。さらに、加熱乾燥なしでPHAをケーキ形態に保つことで、製造のコストが低減される。ケーキを使用して形成されるPHA材料は、乾燥されて粉末状態になっているPHAを使用して作製されるものと比較して、最小フィルム形成温度の低下、脱水速度の低下、レオロジープロファイルの向上、及びバリア性能の向上をもたらす。
【0055】
PHAケーキは、水性(または任意の溶媒ベースの)コーティング材料を開発するための商業的状況において使用され得る。コーティングは、PHAを含有する任意の分散液、溶液、エマルション、コロイド、または懸濁液を言い表すものである。PHAケーキ自体を将来の配合向けに顧客に販売することも、製造後に顧客への販売前に配合することもできる。PHAケーキのいくつかのエンドユーザーには、化学製造会社、紙及び基材の製造会社、成形繊維包装会社、加工会社、ならびにブランドオーナーが含まれる。
【0056】
本開示は、前述のPHAケーキを含む、基材をコーティングするための生分解性水性混合物も提供する。
【0057】
一般に、水性混合物は、懸濁液、エマルション、またはコロイドのいずれかの形態をとり得る。
【0058】
この文脈で使用される場合、「懸濁液」は、少なくとも2つの物質、分散した材料、及び分散媒体の不均質な混合物を意味する。懸濁液の粒子は、ろ過を使用して分離され得る。懸濁液の粒子は、ある特定の他の混合物(コロイドなど)と比較して重力の影響下で沈降する性質が強くもある。
【0059】
本明細書で使用される場合、「コロイド」は、粒度が溶液のものと懸濁液のものとの中間である不均質な混合物である。分散した粒子は、分散媒体(すなわち、液体の水)全体に均一に広がっている。コロイド中に存在する粒子は、チンダル現象として知られる光散乱現象を示す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「エマルション」は一種のコロイドであり、乳化剤(界面活性剤など)が存在する。
【0061】
最も一般的なレベルでは、混合物は、水及び固形分を含む。一般に、混合物は、約35~約75重量パーセントの水及び約25~約65重量パーセントの固形分を含む。場合によっては、混合物は、より好ましくは、約45~約55重量パーセントの水及び約45~約55重量パーセントの固形分を含む。
【0062】
ひいては、混合物の固形分は、少なくともポリヒドロキシアルカノエートを含み、他のバイオポリマー及び/または添加剤も含み得る。典型的には、固形分は、固形分の総乾燥重量に基づくと、約40~約99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む。いくつかの実施形態では、固形分は、固形分の総乾燥重量に基づくと、より好ましくは、約40~約50重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む。
【0063】
当該ポリヒドロキシアルカノエートは、前述のPHAケーキから形成される。上で論じられるように、こうしたポリヒドロキシアルカノエートは、ポリヒドロキシアルカノエートを極度に加熱に供してポリヒドロキシアルカノエートを乾燥させることなくバイオマスから回収される。したがって、ポリヒドロキシアルカノエートは、水と混合する前の水分含量が約1重量%以上であるポリヒドロキシアルカノエート粒子の形態をとる。いくつかの実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、水と混合する前に、好ましくは、少なくとも約5重量%の水分含量を有する。
【0064】
このPHAケーキ中の粒子は、完全に乾燥されているPHA粉末と比較して小さな平均粒度を有することが認められる。具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合、好ましくは、約10ミクロン以下のDv(90)粒度を有する。いくつかの実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合、好ましくは、約8ミクロン以下のDv(90)粒度を有する。比較として、完全に乾燥されている従来のPHA粉末の粒子は、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合、典型的には、約40~約180ミクロンのDv(90)粒度を有する。
【0065】
理論によって拘束されないが、本開示によるポリヒドロキシアルカノエート粒子の平均サイズの低下は、ポリヒドロキシアルカノエート粒子が完全に乾燥するのではなく、むしろ比較的高い水分含量を有するという事実に起因するものと考えられる。したがって、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、乾燥時に、より穏やかな加熱条件に供される。
【0066】
具体的には、いずれの乾燥操作の間にもポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が確実にポリヒドロキシアルカノエート粒子の融点未満に維持されるように注意が払われる。一般に、ポリヒドロキシアルカノエートは融点を有し、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を約5℃下回る温度をポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収される。ある特定の実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を約10℃下回る温度をポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収される。場合によっては、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、さらにより好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を約20℃下回る温度をポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収される。
【0067】
かさねて、理論によって拘束されないが、粒子がその融点まで加熱される場合、ポリヒドロキシアルカノエートのより小さな粒子は一緒に融合して、より大きなポリヒドロキシアルカノエート粒子を形成する傾向を有すると考えられる。一方で、ポリヒドロキシアルカノエートの融点を十分に下回るように温度が維持される場合、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は平均粒度の低下を維持する傾向を有する。
【0068】
さまざまな形態のポリヒドロキシアルカノエートが存在することから、ポリヒドロキシアルカノエート粒子の正確な融点はどの形態のポリヒドロキシアルカノエートが粒子中に存在するかに依存することが理解されよう。
【0069】
一般に、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、典型的には、約95℃超の温度で乾燥されることなくバイオマス及び後続の精製プロセスから直接的に回収される。ある特定の実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、好ましくは、約50℃超の温度で乾燥されることなくバイオマス及び後続の精製プロセスから直接的に回収される。さらにより好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエート粒子は、約40℃超の温度で乾燥されることなくバイオマス及び後続の精製プロセスから直接的に回収される。
【0070】
かさねて、PHAケーキ及びそこから形成される水性混合物においてさまざまな形態のポリヒドロキシアルカノエートが使用され得る。場合によっては、ポリヒドロキシアルカノエートはホモポリマー(ポリヒドロキシブチレートなど)であり得る。より典型的には、ポリヒドロキシアルカノエートは、コポリマーまたはターポリマーである。
【0071】
例えば、ある特定の実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは、約75~約99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、約1~約25モルパーセントの、ヒドロキシバレレート、ヒドロキシヘキサノエート、ヒドロキシオクタノエート、及びヒドロキシデカノエートからなる群から選択されるモノマー反復単位と、から構成されるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む。
【0072】
一例として、ある特定の実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート(「P(3HB-co-3HHx)」)を含む。より好ましくは、このP(3HB-co-3HHx)は、約85~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約15モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含む。ある特定の実施形態では、P(3HB-co-3HHx)は、より好ましくは、約88~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約12モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含む。他の実施形態では、P(3HB-co-3HHx)は、より好ましくは、約93~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約7モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含む。
【0073】
他の実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは、約75~約99.9モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー反復単位、約0.1~約25モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー反復単位、及び約0.1~約25モルパーセントの、5~12個の炭素原子を有する第3の3-ヒドキシアルカノエートのモノマー反復単位から構成されるポリヒドロキシアルカノエートターポリマーを含む。
【0074】
分子量に関して、ポリヒドロキシアルカノエートは、ASTM D5296-05によって決定した場合、好ましくは、約50,000ダルトン~約250万ダルトンの重量平均分子量を有する。より好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエートは、ASTM D5296-05によって決定した場合、約200,000ダルトン~約750,000ダルトン、さらにより好ましくは、約300,000ダルトン~約550,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0075】
上記のように、水性混合物の固形分は、他のバイオポリマーも含み得る。場合によっては、固形分は、好ましくは、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリ(ブチレンスクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペートテレフタレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、多糖、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを約1重量パーセント~約25重量パーセント含む。場合によっては、固形分はポリ(乳酸)を含むことが特に好ましい。
【0076】
さらに、水性混合物は、水性混合物の安定性を改善するために、及び/または混合物から形成されるコーティングされた層の材料特性を改善するために、さまざまな添加剤(保存剤、レオロジー改変剤、可塑剤、増量剤、核形成剤、分散剤、及び湿潤剤など)を含み得る。一方で、驚くべきことに、本開示によるPHAケーキを使用する水性混合物は、混合前に完全に乾燥されているPHA粉末を使用して調製されるPHA混合物と比較して少ない量の添加剤を使用して調製できることが認められている。
【0077】
調製時点で、生分解性水性混合物は、ISO1652に従って測定した場合、典型的には、約1~約5,500センチポアズのブルックフィールド粘度を有する。より好ましくは、生分解性水性混合物は、ISO1652に従って測定した場合、約100~約1200センチポアズのブルックフィールド粘度を有する。ある特定の実施形態では、生分解性水性混合物は、ISO1652に従って測定した場合、さらにより好ましくは、約100~約500センチポアズのブルックフィールド粘度を有する。
【0078】
本開示は、前述の水性混合物をコーティング混合物として使用して、コーティングされた基材を作製するための方法、及びこの方法に従って調製されるコーティングされた基材も提供する。方法によれば、第1の側及び第2の側の両方を有する板紙基材が供給される。次に、水性コーティング混合物の層が基材の少なくとも第1の側の上に適用される。場合によっては、コーティング混合物は、基材の第1の側及び第2の側の両方の上に適用され得る。
【0079】
最終的に、コーティング混合物は、ポリヒドロキシアルカノエートを含む連続コーティング層が形成されるように硬化される。コーティング層の硬化は、好ましくは、コーティング混合物から水が蒸発し、固形粒子が一緒に融合して連続層となるように、基材及びコーティングを約105℃~145℃の温度に加熱することによって実施される。
【0080】
コーティング混合物は、上に論じられる通りである。したがって、適用されるコーティング混合物は、一般に、約35~約75重量パーセントの水及び約25~約65重量パーセントの固形分を含み、より好ましくは、約45~約55重量パーセントの水及び約45~約55重量パーセントの固形分を含む。
【0081】
固形分は、固形分の総乾燥重量に基づくと、約40~約99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含み、固形分の総乾燥重量に基づくと、より好ましくは、約40~約50重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む。
【0082】
さらに、ポリヒドロキシアルカノエートは、水と混合する前の水分含量が約1重量%(より好ましくは、少なくとも約5重量%)以上であり、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合にDv(90)粒度が約10ミクロン(より好ましくは、約8ミクロン)以下であるポリヒドロキシアルカノエート粒子の形態をとる。
【0083】
最終的なコーティングされた基材に関しては、コーティング混合物は、好ましくは、約0.5~約50グラム/m2の硬化後コーティング重量でこの基材の第1の側に適用されている。
【0084】
上記のように、コーティング層は、場合によっては、基材の第1の側及び第2の側の両方に適用され得る。
【0085】
さらに、場合によっては、板紙基材は、コーティング混合物で完全に含浸され得る。このことは、例えば、板紙基材の計量サイズプレスによって達成され得る。
【0086】
実施形態
【0087】
本開示は、下記の実施形態によってもさらに例示される。
【0088】
実施形態1
基材をコーティングするための生分解性水性混合物であって、前記混合物が、
約35~約75重量パーセントの水及び約25~約65重量パーセントの固形分
を含み、
前記固形分が、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、約40~約99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含み、
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、前記水と混合する前の水分含量が少なくとも約1重量%であり、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合にDv(90)粒度が約10ミクロン以下であるポリヒドロキシアルカノエート粒子の形態をとる、前記生分解性水性混合物。
【0089】
実施形態2
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記水と混合する前に、少なくとも約5重量%の水分含量を有する、実施形態1に記載の生分解性水性混合物。
【0090】
実施形態3
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合、約10ミクロン以下のDv(90)粒度を有する、実施形態1または2に記載の生分解性水性混合物。
【0091】
実施形態4
前記ポリヒドロキシアルカノエートが融点を有し、前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの前記融点を約5℃下回る温度、より好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエートの前記融点を約10℃下回る温度を前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に前記水と混合されて前記水性混合物を形成する、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0092】
実施形態5
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、約95℃、好ましくは、約50℃、より好ましくは、約40℃を前記ポリヒドロキシアルカノエートの温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に前記水と混合されて前記水性混合物を形成する、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0093】
実施形態6
前記混合物が、懸濁液、エマルション、またはコロイドの形態をとる、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0094】
実施形態7
前記固形分が、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、約40~約50重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0095】
実施形態8
前記混合物が、約45~約55重量パーセントの水及び約45~約55重量パーセントの固形分を含む、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0096】
実施形態9
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、約75~約99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、約1~約25モルパーセントの、ヒドロキシバレレート、ヒドロキシヘキサノエート、ヒドロキシオクタノエート、及びヒドロキシデカノエートからなる群から選択されるモノマー反復単位と、を含むポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0097】
実施形態10
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート(「P(3HB-co-3HHx)」)を含む、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0098】
実施形態11
前記P(3HB-co-3HHx)が、約85~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約15モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含み、より好ましくは、約88~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約12モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含み、さらにより好ましくは、約93~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約7モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含む、実施形態10に記載の生分解性水性混合物。
【0099】
実施形態12
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、約75~約99.9モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、約0.1~約25モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー反復単位と、約0.1~約25モルパーセントの、5~12個の炭素原子を有する第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー反復単位と、から構成されるポリヒドロキシアルカノエートターポリマーを含む、実施形態1~8のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0100】
実施形態13
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ASTM D5296-05によって決定した場合、約50,000ダルトン~約250万ダルトン、より好ましくは、約200,000ダルトン~約750,000ダルトン、さらにより好ましくは、約300,000ダルトン~約550,000ダルトンの重量平均分子量を有する、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0101】
実施形態14
前記固形分が、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリ(ブチレンスクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペートテレフタレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、多糖、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、約1重量パーセント~約25重量パーセントさらに含む、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0102】
実施形態15
前記固形分が、ポリ(乳酸)をさらに含む、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0103】
実施形態16
前記生分解性水性混合物が、ISO1652に従って測定した場合、約1~約5,500センチポアズのブルックフィールド粘度を有する、先行実施形態のいずれかに記載の生分解性水性混合物。
【0104】
実施形態17
コーティングされた基材を作製するための方法であって、
第1の側及び第2の側を有する板紙基材を供給するステップと、
前記基材の少なくとも前記第1の側の上に水性コーティング混合物の層を適用するステップであって、
適用される前記コーティング混合物が、約35~約75重量パーセントの水及び約25~約65重量パーセントの固形分を含み、
前記固形分が、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、約40~約99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含み、
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、前記水と混合する前の水分含量が少なくとも約1重量%であり、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合にDv(90)粒度が約10ミクロン以下であるポリヒドロキシアルカノエート粒子の形態をとる、前記適用するステップと、
約40~約99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む連続コーティング層が形成されるように前記コーティング混合物を硬化させるステップと、
を含む、前記方法。
【0105】
実施形態18
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記水と混合する前に、少なくとも約5重量%の水分含量を有する、実施形態17に記載の方法。
【0106】
実施形態19
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合、約8ミクロン以下のDv(90)粒度を有する、実施形態17または18に記載の方法。
【0107】
実施形態20
前記ポリヒドロキシアルカノエートが融点を有し、前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの前記融点を約5℃下回る温度、より好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエートの前記融点を約10℃下回る温度を前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に前記水と混合されて前記水性混合物を形成する、実施形態17~19のいずれかに記載の方法。
【0108】
実施形態21
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、約95℃、好ましくは、約50℃、より好ましくは、約40℃を前記ポリヒドロキシアルカノエートの温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に前記水と混合されて前記水性混合物を形成する、実施形態17~20のいずれかに記載の方法。
【0109】
実施形態22
前記コーティング混合物が、懸濁液、エマルション、またはコロイドの形態で適用される、実施形態17~21のいずれかに記載の方法。
【0110】
実施形態23
前記固形分が、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、約40~約50重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む、実施形態17~22のいずれかに記載の方法。
【0111】
実施形態24
前記コーティング混合物が、約45~約55重量パーセントの水及び約45~約55重量パーセントの固形分を含む、実施形態17~23のいずれかに記載の方法。
【0112】
実施形態25
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、約75~約99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、約1~約25モルパーセントの、ヒドロキシバレレート、ヒドロキシヘキサノエート、ヒドロキシオクタノエート、及びヒドロキシデカノエートからなる群から選択されるモノマー反復単位と、を含むポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む、実施形態17~24のいずれかに記載の方法。
【0113】
実施形態26
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート(「P(3HB-co-3HHx)」)を含む、実施形態17~25のいずれかに記載の方法。
【0114】
実施形態27
前記P(3HB-co-3HHx)が、約85~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約15モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含み、より好ましくは、約88~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約12モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含み、さらにより好ましくは、約93~約98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び約2~約7モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含む、実施形態26に記載の方法。
【0115】
実施形態28
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、約75~約99.9モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、約0.1~約25モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー反復単位と、約0.1~約25モルパーセントの、5~12個の炭素原子を有する第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー反復単位と、から構成されるポリヒドロキシアルカノエートターポリマーを含む、実施形態17~24のいずれかに記載の方法。
【0116】
実施形態29
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ASTM D5296-05によって決定した場合、約50,000ダルトン~約250万ダルトン、より好ましくは、約200,000ダルトン~約750,000ダルトン、さらにより好ましくは、約300,000ダルトン~約550,000ダルトンの重量平均分子量を有する、実施形態17~28のいずれかに記載の方法。
【0117】
実施形態30
前記固形分が、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリ(ブチレンスクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペートテレフタレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、多糖、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、約1重量パーセント~約25重量パーセントさらに含む、実施形態17~29のいずれかに記載の方法。
【0118】
実施形態31
前記固形分が、ポリ(乳酸)をさらに含む、実施形態17~30のいずれかに記載の方法。
【0119】
実施形態32
実施形態17に記載の方法に従って調製されるコーティングされた基材。
【0120】
実施形態33
前記コーティング混合物が、約0.5~約50グラム/m2の硬化後コーティング重量で前記基材の前記第1の側に適用される、実施形態32に記載のコーティングされた基材。
【0121】
実施形態34
前記板紙基材が、前記コーティング混合物で含浸される、実施形態32または33に記載のコーティングされた基材。
【0122】
実施形態35
いずれの加熱乾燥ステップも伴わずにバイオマス及び後続の精製プロセスから直接的に形成されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)ケーキであって、水分含量が約5重量%以上であり、Dv(90)粒度が約8ミクロン以下である、前記PHAケーキ。
【0123】
実施形態36
いずれの加熱乾燥ステップも伴わずにバイオマス及び後続の精製プロセスから直接的に形成されるPHAケーキであって、水分含量が約5重量%以上であり、Dv(90)粒度が約8ミクロン超である、前記PHAケーキ。
【0124】
実施形態37
それらが粒度の混合物または粒子のマトリックスとして統合されて、一時的な閉鎖が必要な場合の液体バリアとなる、実施形態35または36に記載のPHAケーキ。
【0125】
実施形態38
ホモポリマーPHA、コポリマーPHA、ブロックコポリマーPHA、分岐コポリマーPHA、及びターポリマーPHA、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0126】
実施形態39
ブチレート、プロピオネート、バレレート、ヘキサノエート、オクタノエート、及びデカノエートなどのうちの少なくとも1つを含む短鎖PHA、中鎖PHA、及び長鎖PHAのうちの少なくとも1つを含む、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0127】
実施形態40
PHAケーキが、約30重量%~約95重量%の最終乾燥質量含量を含む、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0128】
実施形態41
前記PHAが、生物学的プロセスにおいて形成される、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0129】
実施形態42
前記PHAが、発酵によって形成される、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0130】
実施形態43
前記PHAが、反応合成を介して形成される、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0131】
実施形態44
約30重量%~約95重量%のPHA含量を含む、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0132】
実施形態45
前記PHAが、生物学的プロセス及び非生物学的プロセスの組み合わせから生産される、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0133】
実施形態46
前記PHAケーキが、生産前駆物質から分離及び精製された後、機械的脱水系及び機械的脱溶媒系のうちの少なくとも1つを介してろ過される、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0134】
実施形態47
前記PHAケーキが、有機溶媒、無機溶媒、及び溶媒非含有系のうちの少なくとも1つを使用して機械的に脱水される、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0135】
実施形態48
前記PHAケーキが、多段階プロセスを使用して機械的に脱水される、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0136】
実施形態49
前記PHAケーキが、非押し出しベースのプロセスまたは適用において使用される、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0137】
実施形態50
前記PHAケーキが、水性コーティング、溶媒コーティング、エマルション、分散液、コロイド、電解液、及び懸濁液のうちの少なくとも1つにおいて使用される、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0138】
実施形態51
前記PHAケーキが、インク、バリアコーティング、表面コーティング、包埋コーティング、紙製品、フィルム、ヒートシール、化粧品、パーソナルケア、ホームケア、水処理、ろ過、媒体、耐水コーティング、及び耐油コーティングのうちの少なくとも1つに使用される水性コーティング、溶媒コーティング、分散液、コロイド、懸濁液、及びエマルションのうちの少なくとも1つにおいて使用される、実施形態35に記載のPHAケーキ。
【0139】
実施形態52
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)ケーキであって、
PHAの生物学的生産と、
溶解と、
細胞デブリの除去と、
有機液体及び無機液体を使用する交互洗浄での前記PHAの精製と、
前記洗浄の間の前記PHAの加圧/デカントと、
いずれの加熱乾燥ステップも伴わない室温ガスでの前記PHAの部分的な乾燥と、
それによる、水分含量が約5重量%以上であり、調整された用途特異的な粒度を有する前記PHAケーキの生産と、
によって形成される、前記PHAケーキ。
【0140】
本明細書で使用される場合、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」という語句は、A、B、及びCのそれぞれの不在または複数の存在のすべての組み合わせが可能であるが、少なくとも1つのAまたは1つのBまたは1つのCが存在することを意味する。以下が例として挙げられるが、これらに限定されない:A×1、A×2+B×1、C×2、A×1+B×1+C×1、A×7+B×12+C×113。当該語句は、A×0+B×0+C×0を意味しない。
【0141】
本発明のための実施形態の前述の説明は、例示及び説明を目的として示されている。これは包括的であること、または開示の詳細形態に本発明を限定することを意図するものではない。上記の教示を踏まえれば、自明の改変または変形が可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実用的な用途の例示を提供し、それによって当業者がさまざまな実施形態において本発明を利用できるようにするための努力の中で選択及び説明されており、企図される具体的な使用に適するようにさまざまな改変が施される。そのような改変及び変形はすべて、それらが公平に、法的に、かつ公正に権利が付与される広がりに従って解釈される場合、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をコーティングするための生分解性水性混合物を作製するための方法であって、前記方法が、
ポリヒドロキシアルカノエートの生物学的生産と、
溶解と、
細胞デブリの除去と、
有機液体及び無機液体を使用する交互洗浄での前記ポリヒドロキシアルカノエートの精製と、
前記洗浄の間の前記ポリヒドロキシアルカノエートの加圧/デカントと、
いずれの加熱乾燥ステップも伴わずに室温ガスで前記ポリヒドロキシアルカノエートを部分的に乾燥させて、水分含量が少なくとも1重量%であり、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合にDv(90)粒度が10ミクロン以下であるポリヒドロキシアルカノエート粒子を生産することと、
約35~約75重量パーセントの水及び約25~約65重量パーセントの固形分を含む生分解性水性混合物が形成されるように前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子を水と混合することと、
を含み、
前記固形分が、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、40~99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記水と混合する前に、少なくとも5重量%の水分含量を有する、請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、ISO8130-13:2019を使用して決定した場合、8ミクロン以下のDv(90)粒度を有する、請求項1に記載の
方法。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが融点を有し、前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの前記融点を5℃下回る温度を前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に前記水と混合されて前記水性混合物を形成する、請求項1に記載の
方法。
【請求項5】
前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子が、前記ポリヒドロキシアルカノエート粒子の温度が95℃を超えないようにバイオマス及び後続の精製プロセスから回収され、その後に前記水と混合されて前記水性混合物を形成する、請求項1に記載の
方法。
【請求項6】
前記混合物が、懸濁液、エマルション、またはコロイドの形態をとる、請求項1に記載の
方法。
【請求項7】
前記固形分が、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、40~50重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項8】
前記混合物が、45~55重量パーセントの水及び45~55重量パーセントの固形分を含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項9】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、75~99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、1~25モルパーセントの、ヒドロキシバレレート、ヒドロキシヘキサノエート、ヒドロキシオクタノエート、及びヒドロキシデカノエートからなる群から選択されるモノマー反復単位と、を含むポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項10】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート(「P(3HB-co-3HHx)」)を含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項11】
前記P(3HB-co-3HHx)が、85~98モルパーセントのヒドロキシブチレート及び2~15モルパーセントのヒドロキシヘキサノエートを含む、請求項10に記載の
方法。
【請求項12】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、75~99.9モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー反復単位と、0.1~25モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー反復単位と、0.1~25モルパーセントの、5~12個の炭素原子を有する第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー反復単位と、から構成されるポリヒドロキシアルカノエートターポリマーを含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項13】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ASTM D5296-05によって決定した場合、50,000ダルトン~250万ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の
方法。
【請求項14】
前記固形分が、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリ(ブチレンスクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペートテレフタレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、多糖、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを、前記固形分の総乾燥重量に基づくと、1重量パーセント~25重量パーセントさらに含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項15】
前記固形分が、ポリ(乳酸)をさらに含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項16】
前記生分解性水性混合物が、ISO1652に従って測定した場合、1~5,500センチポアズのブルックフィールド粘度を有する、請求項1に記載の
方法。
【請求項17】
コーティングされた基材を作製するための方法であって、
第1の側及び第2の側を有する板紙基材を供給するステップと、
前記基材の少なくとも前記第1の側の上に、
請求項1に従って作製される生分解性水性コーティング混合物の層を適用するステップと、
40~99重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含む連続コーティング層が形成されるように前記コーティング混合物を硬化させるステップと、
を含む、前記方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法に従って調製されるコーティングされた基材。
【請求項19】
前記コーティング混合物が、0.5~50グラム/m
2の硬化後コーティング重量で前記基材の前記第1の側に適用される、請求項
18に記載のコーティングされた基材。
【請求項20】
前記板紙基材が、前記コーティング混合物で含浸される、請求項
18に記載のコーティングされた基材。
【国際調査報告】