(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】コアシェル構造のミセルミクロスフェア及びその調製方法、使用
(51)【国際特許分類】
A61K 9/50 20060101AFI20250128BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20250128BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20250128BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250128BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20250128BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250128BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20250128BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20250128BHJP
A61K 9/52 20060101ALI20250128BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20250128BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20250128BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20250128BHJP
B01J 13/22 20060101ALI20250128BHJP
A61P 37/06 20060101ALN20250128BHJP
A61K 31/436 20060101ALN20250128BHJP
【FI】
A61K9/50
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/24
A61K9/52
A61L29/08 100
A61L29/08
A61L29/12
A61L29/16
B01J13/22
A61P37/06
A61K31/436
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541522
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 CN2023071539
(87)【国際公開番号】W WO2024138798
(87)【国際公開日】2024-07-04
(31)【優先権主張番号】202211697363.6
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523255930
【氏名又は名称】上海百心安生物技▲術▼股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI BIO-HEART BIOLOGICAL TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room 302, Floor 3, Building 4, No. 590, Ruiqing Road, Zhangjiang High Tech Park, Shanghai, 200120, China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】汪立
(72)【発明者】
【氏名】蔡涛
(72)【発明者】
【氏名】王君毅
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲漢▼▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼晨朝
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C086
4G005
【Fターム(参考)】
4C076AA62
4C076AA64
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4G005DD24Z
4G005DD27Y
4G005DD27Z
4G005EA03
(57)【要約】
本発明は、医薬の技術分野に属し、具体的には、コアシェル構造のミセルミクロスフェア及びその調製方法、使用に関する。本発明のコアシェル構造のミセルミクロスフェアは、両親媒性脂質で構成された外層シェルと、親水性の鎖状ポリマーで構成された内層シェルと、網状構造の共重合体に包まれた薬剤分子のコアとを有する。二重層のシェル構造により、薬剤を効果的に送達することを実現し、送達中の薬剤の損失を低減し、薬剤の利用率を向上させることができ、包まれた薬剤分子をコアとして使用すると、薬剤の徐放を実現することができる。本発明はまた、コアシェル材料を最適化し、両親媒性リン脂質を外層シェルとして選択するため、生体適合性及び薬剤の送達効率を向上させ、親水性の鎖状ポリマーを内層シェルとして選択するため、薬剤のバースト放出を効果的に防止し、mPEG-PLGAブロック共重合体を、薬剤分子を包むためのものとして選択するため、更に薬剤のバースト放出を防止し、また、薬剤放出速度への制御を実現し、実際の使用における複雑なニーズを満たすことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル構造のミセルミクロスフェアであって、前記コアシェル構造のミセルミクロスフェアのコアは、共重合体に包まれた複数の薬剤分子であり、前記コアシェル構造のミセルミクロスフェアのシェルは、内から外まで順に鎖状ポリマー層及び脂質層であり、前記共重合体は、網状構造であり、前記鎖状ポリマー層は、鎖状ポリマーが分子間力によって形成した網状構造であることを特徴とする、コアシェル構造のミセルミクロスフェア。
【請求項2】
前記コアシェル構造のミセルミクロスフェアの粒径は、1~10μmであることを特徴とする、請求項1に記載のコアシェル構造のミセルミクロスフェア。
【請求項3】
前記脂質層は、両親媒性脂質で構成され、前記両親媒性脂質の親水端は、シェル内に向き、親油端は、シェル外に向くことを特徴とする、請求項1に記載のコアシェル構造のミセルミクロスフェア。
【請求項4】
前記鎖状ポリマーは、親水性の鎖状ポリマーで、PEG、ヒアルロン酸、キトサン、イオプロミド、セラック、タンニン酸、ポリラクチド、及びPLGAのうちの1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコアシェル構造のミセルミクロスフェア。
【請求項5】
前記共重合体は、mPEG-PLGAブロック共重合体、PEG-PLGAブロック共重合体、及びPEG-ヒアルロン酸共重合体のうちの1種以上から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のコアシェル構造のミセルミクロスフェア。
【請求項6】
前記mPEG-PLGAブロック共重合体のmPEGの質量分率は、0.1~5.0%であることを特徴とする、請求項5に記載のコアシェル構造のミセルミクロスフェア。
【請求項7】
前記脂質層と鎖状ポリマー層との質量比は、1~5:1であることを特徴とする、請求項1に記載のコアシェル構造のミセルミクロスフェア。
【請求項8】
薬剤、共重合体を有機溶媒A内に溶解し、均一に混合し、十分に溶解し、2~8時間静置し、混合液aを得るステップS1と、
脂質、鎖状ポリマーを溶媒B内に溶解し、均一に混合し、混合液bを得るステップS2と、
混合液aを混合液bに加え、均一に混合し、コアシェル構造のミセルミクロスフェア溶液を得るステップS3と、
コアシェル構造のミセルミクロスフェア溶液を乾燥して沈殿させ、コアシェル構造のミセルミクロスフェアを得るステップS4と
を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のコアシェル構造のミセルミクロスフェアの製造方法。
【請求項9】
拡張可能な薬剤バルーンの薬剤コーディング又は注射剤として使用されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のコアシェル構造のミセルミクロスフェア、又は請求項8に記載の調製方法によって得られたコアシェル構造のミセルミクロスフェアの使用。
【請求項10】
前記薬剤コーディングの厚さは、1~10ミクロンであることを特徴とする、請求項9に記載のコアシェル構造のミセルミクロスフェアの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野に属し、特に、IPC分類番号A61L29/12下の被覆カテーテルの複合材料の分野、具体的には、コアシェル構造のミセルミクロスフェア及びその調製方法、使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロスフェア製剤は、近年開発された新規剤形で、マトリックス材料中に薬剤を分散させて球状の粒子を形成し、注射又は介入手術によって投与することができる。投与後、ミクロスフェアの骨格は、分解及び侵食が発生し、包まれた薬剤分子が拡散し、徐放又は遅延放出の効果を果たすことができる。現在、多孔質構造、コアシェル構造、固体構造など様々な構造のミクロスフェア製剤がある。
【0003】
特に、拡張可能なバルーンによる介入療法は臨床的に広く使用されるが、標的を絞った化学療法を実現するために、通常、拡張可能なバルーンの表面に薬剤コーティングが施される。しかし、注射剤でも、拡張可能なバルーンの薬剤コーティングでも、標的位置に到達する前に血中に失われ、薬剤のバイオアベイラビリティが大幅に低下するという問題があり、また、ミクロスフェア製剤のほとんどは、静電作用などの分子間力によって薬剤を担持するため、結合が十分に緊密ではなく、ミクロスフェアの表面にもいくつかの薬部が含まれる場合があり、それらは、バースト放出現象の発生につながり、有害反応の発生の可能性があるだけでなく、薬剤の放出周期が短すぎて長期的な治療効果が得られない。従って、安定した構造と優れた徐放効果を持つミクロスフェアの開発は、医薬品の分野で急務となっている。
【0004】
従来技術のCN105106174Bは、ポリケタール及びポリ(乳酸-co-グリコール酸)の共重合体で調製されたコア-シェルの二重層ミクロスフェアを開示し、バースト放出の現象を解決でき、しかし、該ミクロスフェアが大きく、注入条件に対する要件が高く、拡張可能なバルーンの薬剤コーティングには適しておらず、薬剤の放出率が低いため、薬剤のバイオアベイラビリティが低くなる。
【発明の概要】
【0005】
従来技術の欠陥に対して、本発明の目的は、薬剤の利用率が高く、調製しやすく、粒径が小さく、適用範囲が広く、薬剤の長期の徐放を実現できるコアシェル構造のミセルミクロスフェアを提供することである。
【0006】
一方で、本発明の目的は、条件が温和でプロセスがシンプルである、コアシェル構造のミセルミクロスフェアの調製方法を更に提供することである。
【0007】
その一方で、本発明の目的は、上記コアシェル構造のミセルミクロスフェアの使用を更に提供することである。
【0008】
上記の発明目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を用いる。
【0009】
コアシェル構造のミセルミクロスフェアであって、前記コアシェル構造のミセルミクロスフェアのコアは、共重合体に包まれた複数の薬剤分子であり、前記コアシェル構造のミセルミクロスフェアのシェルは、内から外まで順に鎖状ポリマー層及び脂質層であり、前記共重合体は、網状構造であり、前記鎖状ポリマー層は、鎖状ポリマーが分子間力によって形成した網状構造であることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記コアシェル構造のミセルミクロスフェアの粒径は、1~10μmである。
【0011】
好ましくは、前記脂質層は、両親媒性脂質で構成され、前記両親媒性脂質の親水端は、シェル内に向き、親油端は、シェル外に向く。
【0012】
より好ましくは、前記両親媒性脂質は、大豆レシチンである。
【0013】
本発明によるコアシェル構造のミセルミクロスフェアは、両親媒性脂質で構成された外層を有し、親水端がシェル内に向き、親油端がシェル外に向くという形態で配置され、一方で、親水性の内層と親和性があり、緻密した二重層構造を形成し、コアの薬剤分子が拡散することを防止でき、その一方で、調製時、類似した極性の助けを借りて、溶媒内に二重層の球状シェルを形成できるため、調製プロセスがシンプルである。親油端がシェル外に向くことで、一方で、血液で送達される場合、血液との極性の違いが大きく、シェル外には、疎水性表面を形成でき、薬剤分子が血液中に拡散することを防止でき、送達中の薬剤の損失を低減し、薬物のバイオアベイラビリティを向上させることができ、その一方で、ミクロスフェアが血管壁と接触する場合、親油端と細胞膜との親和性に優れ、特に、リン脂質と細胞膜との構成が類似するため、親和性がよりよくなり、脂質層と細胞膜との親和性により、薬剤送達通路を開き、薬剤の放出を実現し、更に薬剤の利用率を向上させる。特に、本発明のコアシェル構造のミセルミクロスフェアを拡張可能な薬剤バルーンの薬剤コーディングとして使用する場合、標的位置で、バルーンの拡張により、ミクロスフェアが血管壁と接触し、脂質層と細胞膜との親和性により、標的位置での薬剤の滞留を実現し、標的指向性を向上させ、健康な組織への損傷、及び有害反応を軽減する。
【0014】
好ましくは、前記鎖状ポリマーは、親水性の鎖状ポリマーであり、PEG(ポリエチレングリコール)、ヒアルロン酸、キトサン、イオプロミド、セラック、タンニン酸、ポリラクチド、及びPLGA(ポリ(乳酸-co-グリコール酸))のうちの1種以上を含む。
【0015】
好ましくは、コアシェル構造のミセルミクロスフェアにおける前記薬剤分子の質量分率は、30%~50%である。
【0016】
好ましくは、前記脂質層と鎖状ポリマー層との質量比は、1~5:1である。
【0017】
本発明は、親水性の鎖状ポリマーで形成された網状構造をコアシェル構造のミセルミクロスフェアの内層シェルとして選択し、両親媒性脂質層の親水端末と親和性があり、二重層の球状シェルを形成することに加えて、ミクロスフェアが血管壁と親和性がある場合、鎖状ポリマーが分解した後、薬剤を放出し、薬剤のバースト放出を防止し、徐放又は遅延放出の効果を果たす。本発明者は、脂質と親水性の鎖状ポリマーとの重量比を調整することにより、ミクロスフェアの粒径及び外形を制御できることを創造的に発現し、本発明は、特異的には、脂質と親水性の鎖状ポリマーとの重量比の1~5:1を選択し、形状が規則的、粒径が10+0.5μm以下、寸法が適当であるコアシェル構造のミセルミクロスフェアを得て、そのため、ミクロスフェアを拡張可能な薬剤バルーンの薬剤コーティングとして使用することが可能となり、適用範囲も拡大する。同時に、本発明のミクロスフェアを拡張可能な薬剤バルーンの薬剤コーティングとして使用することが可能となる場合、親水性の鎖状ポリマーが吸水し、薬剤コーティングがバルーンの表面から容易に剥離し、バルーンに過剰なコーティングが残るため、薬剤の利用率が低いという欠点を克服する。
【0018】
好ましくは、前記共重合体は、mPEG-PLGAブロック共重合体、PEG-PLGAブロック共重合体、及びPEG-ヒアルロン酸共重合体のうちの1種以上から選択される。
【0019】
好ましくは、前記mPEG-PLGAブロック共重合体のmPEG(メトキシポリエチレングリコール)の質量分率は、0.1~5.0%、より好ましくは、1%である。
【0020】
好ましくは、前記mPEG-PLGAブロック共重合体のmPEGの質量分率は、550~2000であり、PLGAの数平均分子量は、5000~60000である。
【0021】
本発明は、特異的には、数平均分子量が550~2000のmPEGと数平均分子量が5000~60000のPLGAで構成されたブロック共重合体で形成された網状構造を選択し、薬剤分子を包み、標的位置での薬剤の分解につれて、薬剤を放出し、更に、薬剤の放出速度への調整を実現する。本発明者は、mPEGの割合が高いほど、薬剤の放出速度が速くなり、mPEGの割合が5wt%を超えると、薬剤の放出速度が比較的速く、バースト放出さえ発生する可能性があり、mPEGの割合が1wt%の場合、薬剤が初期段階で急速に放出して血中薬剤濃度が上昇し、後期段階で薬剤の放出速度が遅くなり、90日間ほぼ連続的に放出し、mPEGの割合が0.1wt%の場合、ミクロスフェアの薬剤の放出速度が遅くなり、ほぼ直線的になり、ほぼ均一で安定した放出を実現することを予想外に発明する。該創造的発現に基づいて、本発明のコアシェル構造のミセルミクロスフェアは、mPEG-PLGAブロック共重合体のmPEGの割合を調整することにより、異なる薬剤の放出速度特性を付与することができ、臨床診療における様々な複雑な要件を満たすことができる。
【0022】
その一方で、本発明は、上記コアシェル構造のミセルミクロスフェアの調製方法を提供し、該方法は、
薬剤、共重合体を有機溶媒A内に溶解し、均一に混合し、十分に溶解し、2~8時間静置し、混合液aを得るステップS1と、
脂質、鎖状ポリマーを溶媒B内に溶解し、均一に混合し、混合液bを得るステップS2と、
混合液aを混合液bに加え、均一に混合し、コアシェル構造のミセルミクロスフェア溶液を得るステップS3と、
コアシェル構造のミセルミクロスフェア溶液を乾燥して沈殿させ、コアシェル構造のミセルミクロスフェアを得るステップS4と
を含む。
【0023】
好ましくは、前記薬剤は、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、タキソール、ヘパリン及びヒルジンのうちの1種以上から選択される。
【0024】
好ましくは、重量部で、前記薬剤が20~80重量部、脂質が10~70重量部、鎖状ポリマーが5~60重量部、共重合体が5~60重量部である。
【0025】
好ましくは、前記有機溶媒Aは、エタノール、イソプロパノール、アセトン、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトニトリル、酢酸ブチル、エーテル、及び四塩化炭素のうちの1種以上を含む。
【0026】
好ましくは、前記溶媒Bは、メチルアルコール、エタノール、イソプロパノール、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトニトリル、酢酸ブチル、エーテル、及び四塩化炭素のうちの1種以上を含む。
【0027】
好ましくは、前記有機溶媒A及び溶媒Bはいずれも10000~25000重量部である。
【0028】
その一方で、本発明は、上記コアシェル構造のミセルミクロスフェアの使用を提供し、それは、拡張可能な薬剤バルーンの薬剤コーディング又は注射剤として使用され得る。
【0029】
好ましくは、前記薬剤コーディングの調製方法は、前記コアシェル構造のミセルミクロスフェア溶液を超音波で霧状にし、霧粒を形成し、窒素で霧粒を拡張可能な薬剤バルーンカテーテルのバルーンの表面にスプレーし、スプレー過程において溶媒が揮発し、コアシェル構造のミセルミクロスフェアがバルーンの表面に付着し、薬剤コーティングを形成するステップを含む。
【0030】
好ましくは、前記薬剤コーディングの厚さは、1~10ミクロンである。
【0031】
従来技術に比べて、本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0032】
1.本発明のアシェル構造のミセルミクロスフェアは、両親媒性脂質で構成された外層を有するため、コアの薬剤分子が拡散することを防止することができ、シェル外には、疎水性表面を形成でき、送達中の薬剤の損失を低減し、薬物のバイオアベイラビリティを向上させることができ、
【0033】
2.本発明は、両親媒性脂質、特に、リン脂質を外層シェル構造として選択し、細胞膜との親和性に優れ、細胞膜との親和性によって薬剤の放出を実現し、薬剤の利用率を向上させ、標的位置での薬剤の滞留を実現し、標的指向性を向上させ、有害反応を軽減することができ、
【0034】
3.本発明は、親水性の鎖状ポリマーで形成された網状構造をコアシェル構造のミセルミクロスフェアの内層シェルとして選択するため、薬剤のバースト放出を防止し、徐放又は遅延放出の効果を果たし、
【0035】
4.本発明者は、脂質と親水性の鎖状ポリマーとの重量比を調整することにより、ミクロスフェアの粒径及び外形を制御でき、特に、特定の脂質と親水性の鎖状ポリマーとの重量比の1~5:1を選択する場合、形状が規則的、粒径が10+0.5μm以下であるミセルミクロスフェアを得ることができ、コアシェル構造のミセルミクロスフェアの適用範囲を拡大し、
【0036】
5.本発明は、特異的には、特定の分子量のmPEG-PLGAブロック共重合体で形成された網状構造を選択し、薬剤分子を包み、更に、薬剤の徐放を実現し、
【0037】
6.本発明により、mPEG-PLGAブロック共重合体のmPEGの割合と得られたコアシェル構造のミセルミクロスフェアの薬物の放出速度との間の関係を創造的に発現し、mPEG-PLGAブロック共重合体のmPEGの割合を調整することにより、異なる薬剤の放出速度特性を付与することができ、臨床診療における様々な複雑な要件を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施例2におけるコアシェル構造のミセルミクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例2におけるコアシェル構造のミセルミクロスフェアの光学顕微鏡によるトポグラフィー写真である。
【
図3】比較例1におけるコアシェル構造のミセルミクロスフェアの光学顕微鏡によるトポグラフィー写真である。
【
図4】mPEG-PLGAブロック共重合体(黒色)で包まれた薬剤分子(緑色)の概略図である。
【
図5】本発明のコアシェル構造のミセルミクロスフェアの断面構造概略図である。
【
図6】0.1%(実施例1)、1%(実施例2)及び5%(実施例3)のmPEG質量分率を有するmPEG-PLGAブロック共重合体によって調製されたコアシェル構造のミセルミクロスフェアの経時的な薬剤の放出速度の変化曲線図である。
【
図7】9%(比較例2)のmPEG質量分率を有するmPEG-PLGAブロック共重合体によって調製されたコアシェル構造のミセルミクロスフェアの経時的な薬剤の放出速度の変化曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
実施例に記載の部は、重量部を指す。
(実施例1)
【0040】
本実施例は、コアシェル構造のミセルミクロスフェアを提供し、前記コアシェル構造のミセルミクロスフェアのコアは、網状構造の共重合体に包まれた複数の薬剤分子であり、前記コアシェル構造のミセルミクロスフェアのシェルは、内から外まで順に鎖状ポリマー層で形成された網状構造及び脂質層である。
【0041】
前記脂質層は、大豆レシチンで構成され、大豆レシチンの親水端は、シェル内に向き、親油端は、シェル外に向き、
【0042】
前記鎖状ポリマーは、PEGであり、
【0043】
前記脂質層と鎖状ポリマーで形成された網状構造との質量比は、3:2であり、
【0044】
前記薬剤分子は、ラパマイシン分子であり、
【0045】
コアシェル構造のミセルミクロスフェアにおける前記薬剤分子の質量分率は、40%であり、
【0046】
前記共重合体は、mPEG-PLGAブロック共重合体であり、ここで、mPEGの分子量は550であり、PLGAの分子量は60000であり、mPEGの質量分率は0.1%であり、前記mPEG-PLGAブロック共重合体は、贏創特種化学(上海)有限公司から購入する。
【0047】
本発明の実施例は、上記コアシェル構造のミセルミクロスフェアの調製方法を更に提供し、該方法は、
40部のラパマイシン及び60部のmPEG-PLGAブロック共重合体を20000部のアセトン内に溶解し、均一に混合し、十分に溶解し、6時間静置し、混合液aを得るステップS1と、
60部の大豆レシチン及び40部のPEGを20000部の酢酸エチルに溶解し、均一に混合し、混合液bを得るステップS2と、
混合液aを混合液bに加え、均一に混合し、コアシェル構造のミセルミクロスフェア溶液を得るステップS3と、
コアシェル構造のミセルミクロスフェア溶液をスプレーして乾燥して沈殿させ、コアシェル構造のミセルミクロスフェアを得るステップS4と
を含む。
【0048】
本実施例は、上記コアシェル構造のミセルミクロスフェアの使用を更に提供し、それは、拡張可能な薬剤バルーンの薬剤コーディング又は注射剤として使用され得、
【0049】
前記薬剤コーディングの調製方法は、前記コアシェル構造のミセルミクロスフェア溶液を超音波で霧状にし、霧粒を形成し、窒素で霧粒を拡張可能な薬剤バルーンカテーテルのバルーンの表面にスプレーし、スプレー過程において溶媒が揮発し、コアシェル構造のミセルミクロスフェアがバルーンの表面に付着し、薬剤コーティングを形成するステップを含む。
【0050】
前記薬剤コーディングの厚さは、10ミクロンである。
(実施例2)
【0051】
本実施例は、コアシェル構造のミセルミクロスフェア及びその調製方法、使用を更に提供し、その実施形態は、実施例1と同じであり、その違いは、以下のとおりである。mPEG-PLGAブロック共重合体のmPEGの質量分率は、1%であり、前記mPEG-PLGAブロック共重合体は、贏創特種化学(上海)有限公司から購入する。
【0052】
本実施例のコアシェル構造のミセルミクロスフェアの粒径は、2.5~10.5μmであり、走査型電子顕微鏡写真は、
図1に示され、光学顕微鏡によるトポグラフィー写真は、
図2に示される。
(実施例3)
【0053】
本実施例は、コアシェル構造のミセルミクロスフェア及びその調製方法、使用を更に提供し、その実施形態は、実施例1と同じであり、その違いは、以下のとおりである。mPEG-PLGAブロック共重合体のmPEGの質量分率は、5%であり、前記mPEG-PLGAブロック共重合体は、贏創特種化学(上海)有限公司から購入する。
(比較例1)
【0054】
本実施例は、コアシェル構造のミセルミクロスフェア及びその調製方法、使用を更に提供し、その実施形態は、実施例2と同じであり、その違いは、以下のとおりである。前記脂質層と鎖状ポリマーで形成された網状構造との質量比は、1:3であり、その光学顕微鏡によるトポグラフィー写真は、
図3に示される。
(比較例2)
【0055】
本比較例は、コアシェル構造のミセルミクロスフェア及びその調製方法、使用を更に提供し、その実施形態は、実施例2と同じであり、その違いは、以下のとおりである。mPEG-PLGAブロック共重合体のmPEGの質量分率は、9%であり、前記mPEG-PLGAブロック共重合体は、済南聚福凱生物技術有限公司から購入する。
【0056】
性能試験
【0057】
薬剤放出試験では、質量分率が異なるmPEG-PLGAブロック共重合体によって調製されたコアシェル構造のミセルミクロスフェアの徐放効果を検証するために、動物実現によって測定する。本実験は、ミニブタ動物モデルを使用し、ミニブタ体内には、実施例1~3及び比較例2における薬剤コーディングをそれぞれ使用し、0(即時)、1日、7日、14日、30日、60日、及び90日のタイミングを設定する。ブタ血管モデルを取り出すことにより、血管に対して薬剤試験を行う。
【0058】
実験対象は、体重が約25~45kgのミニブタ動物モデルであり、
【0059】
実験品は、薬剤含有量が1~10μg/mm2、実施例1~3及び比較例2における薬剤コーディングである。
【0060】
実験方法は、以下のとおりである。
【0061】
(1)1グループごとに7匹のブタ動物モデルを選択し、それぞれ0(即時)、1日、7日、14日、30日、60日、及び90日のタイミングに対応させる。各グループのブタ動物モデルの心臓血管RCA、LCX及びLADには、実施例1~3、比較例2における薬剤コーディングがスプレーされた拡張可能なバルーンカテーテルのバルーンをそれぞれ移植する。
【0062】
(2)0(即時)、1日、7日、14日、30日、60日、及び90日のタイミングでは、ブタを殺し、血管を取り出して薬剤含有量を測定する。
【0063】
実験結果は、以下のとおりである。得られた薬剤含有量に基づいて、薬剤放出曲線(
図6及び
図7を参照)を描き、縦軸の薬剤放出率は、血管壁の薬剤含有量と移植前のバルーン表面の薬剤含有量との比である。
【符号の説明】
【0064】
1.脂質層、2.鎖状ポリマー層、3.薬剤分子、4.網状構造の共重合体。
【国際調査報告】