IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビオンテック アーゲーの特許一覧

特表2025-503377医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット
<>
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図1
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図2
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図3
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図4
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図5
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図6
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図7
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図8
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図9
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図10
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図11
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図12
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図13
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図14
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図15
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図16
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図17
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図18
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図19
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図20
  • 特表-医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-04
(54)【発明の名称】医薬品生産のためのモジュール式工業ユニット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20250128BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20250128BHJP
   C12N 15/50 20060101ALI20250128BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20250128BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N15/88 Z
C12N15/50
C12Q1/68
A61K31/7105
A61K39/00 F
A61K39/215
A61P37/04
A61P31/14
A61K9/14
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531026
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 US2022053695
(87)【国際公開番号】W WO2023122200
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/293,480
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/301,834
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/419,690
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/420,508
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519011636
【氏名又は名称】ビオンテック エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラインシュ, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】エスタペ イスキエルド, ダーフィト
(72)【発明者】
【氏名】ペティング, ジールク
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン, ウール
(72)【発明者】
【氏名】ムーイク, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ポーラン, アサフ
(72)【発明者】
【氏名】ラング, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニッヒ, オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ピートロン-カットマン, カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ブルーネン, マンフレート ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】クレーナー, ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ビュットナー, マリオ
(72)【発明者】
【氏名】シュテークマン, スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン, クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルデマン, ホルスト
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB15
4B029BB20
4B029DG10
4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR90
4B063QS39
4B063QX01
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC06
4C076CC35
4C076EE59
4C084AA13
4C084MA55
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB331
4C084ZB332
4C085AA03
4C085BA01
4C085BA71
4C085CC31
4C085DD61
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA43
4C086MA55
4C086NA20
4C086ZB09
4C086ZB33
(57)【要約】
脂質ナノ粒子(LNP)で内包されたRNAを含む製剤を生産するためのポータブルシステムが、複数の原薬製剤モジュールを備える第1サブシステムであって、生体外転写によりRNA溶液を形成するための転写モジュールを備える第1サブシステムと、複数の薬製品形成モジュールを備える第1サブシステムの下流にあって作動可能な第2サブシステムであって、RNA溶液から第1RNA-LNP調製物を生産するためのLNP製剤モジュールを備える第2サブシステムと、を備え、転写モジュール及びLNP製剤モジュールのそれぞれは、別々の標準輸送コンテナ内に収容される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバイオ医薬品生産ユニットを備えるバイオ医薬品製造設備であって、前記バイオ医薬品生産ユニットは、1つまたは複数の装置を収容する2つまたはそれよりも多くのモジュール式に配置された収容ユニットを備え、前記1つまたは複数の装置は、(1)活性成分または活性成分前駆体、及び薬学的に受容可能な担体または賦形剤の受け取り及び処理、ならびに結果として生じるバイオ医薬品製品の生産と、(2)バイオ医薬品製品の品質管理と、(3)バイオ医薬品製品の充填及び仕上げと、に適応可能であり、前記2つまたはそれよりも多くのモジュール式に配置された収容ユニットは、未完成のバイオ医薬品製品のユニット間移送及び完成したバイオ医薬品製品の供給のために配置され、任意選択で相互接続されている、前記バイオ医薬品製造設備。
【請求項2】
前記設備は1~10個の生産ユニットを備え、前記生産ユニットの各々は、
(a)活性成分または活性成分前駆体、及び薬学的に受容可能な担体または賦形剤の受け取り及び処理、ならびに結果として生じるバイオ医薬品製品の生産に適応可能な1つまたは複数の装置を収容する第1収容ユニットと、
(b)バイオ医薬品製品の前記受け取りのために前記第1収容ユニットと連通し、バイオ医薬品製品の品質管理に適応可能な1つまたは複数の装置を収容する第2収容ユニットと、
(3)品質管理評価がなされたバイオ医薬品製品の前記受け取りのために前記第2収容ユニットと連通し、品質管理評価がなされたバイオ医薬品製品の充填及び仕上げ、ならびに完成したバイオ医薬品製品の供給に適応可能な1つまたは複数の装置を収容する第3収容ユニットと、を備える、請求項1に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項3】
前記モジュール式に配置された収容ユニットのうち少なくとも2つは水平に配置されている、請求項1または2に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項4】
前記製造設備は少なくとも部分的にハウジングで囲まれている、請求項1に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項5】
前記活性成分及び前記活性成分前駆体の両方がそれぞれヌクレオチドであり、前記処理は、処理されたヌクレオチドの脂質ナノ粒子内への内包を含み、結果として得られるバイオ医薬品製品はヌクレオチドワクチンである、請求項2に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項6】
前記活性成分はmRNAである、請求項5に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項7】
前記収容ユニットのうち少なくとも1つはISOコンテナである、請求項5または6に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項8】
活性成分または活性成分前駆体、及び薬学的に受容可能な担体または賦形剤の受け取り及び処理、ならびに結果として生じるバイオ医薬品製品の生産に適応可能な前記1つまたは複数の装置は、DNAの受け取り、及び前記DNAのmRNAへの生体外転写に適応可能なバイオリアクタを備える、請求項6に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項9】
活性成分または活性成分前駆体、及び薬学的に受容可能な担体または賦形剤の受け取り及び処理、ならびに結果として得られるバイオ医薬品製品の生産に適応可能な前記1つまたは複数の装置は、前記mRNAからDNA不純物を除去するように構成された精製装置を備える、請求項8に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項10】
前記バイオ医薬品製造設備は、1日あたり約3,000回分~約170,000回分の完成したmRNAワクチンを生産している、請求項9に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項11】
(1)活性成分または活性成分前駆体、及び薬学的に受容可能な担体または賦形剤の受け取り及び処理、ならびに結果として生じるバイオ医薬品製品の生産と、(2)バイオ医薬品製品の品質管理と、(3)品質管理評価がなされたバイオ医薬品製品の充填及び仕上げと、に適応可能な前記装置は、遠隔操作のために処理制御システムと電子的に連通している、請求項1に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項12】
前記電子的な連通は無線であり、
処理制御は少なくとも部分的に自動化され、
前記処理制御システムは1つまたは複数のコンピュータによって制御され、及び/または
前記1つまたは複数のコンピュータは前記設備から離れている、請求項11に記載のバイオ医薬品製造設備。
【請求項13】
脂質ナノ粒子(LNP)で内包されたRNAを含む製剤を生産するためのポータブルシステムであって、前記システムは、
複数の原薬製剤モジュールを備える第1サブシステムであって、前記第1サブシステムは、
生体外転写によりRNA溶液を形成するための転写モジュールを備える、前記第1サブシステムと、
複数の薬製品形成モジュールを備える前記第1サブシステムの下流にあって作動可能な第2サブシステムであって、前記第2サブシステムは、
前記RNA溶液から第1RNA-LNP調製物を生産するためのLNP製剤モジュールを備える、前記第2サブシステムと、を備え、
前記転写モジュール及び前記LNP製剤モジュールのそれぞれは、別々の標準輸送コンテナ内に収容される、前記システム。
【請求項14】
別々の標準輸送コンテナのそれぞれは、幅約8フィート(2.43m)、高さ約8.5フィート(2.59m)、長さ約20フィート(6.06m)~約40フィート(12.12m)を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記LNP製剤モジュールは少なくとも1つの衝突噴流混合ユニットを備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2サブシステムは、前記LNP製剤モジュールの下流に作動可能に配置された精製モジュールをさらに備え、前記精製モジュールは少なくとも1つのタンジェンシャルフロー濾過(TFF)ユニットを備え、前記精製モジュールは別々の標準輸送コンテナ内に配置される、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1サブシステム及び前記第2サブシステムのそれぞれは、別々の標準輸送コンテナ内に配置されたバイオバーデン低減モジュールを備え、各バイオバーデン低減モジュールは、約0.05μm~約0.35μmの細孔サイズを有する少なくとも1つのフィルタを備える濾過ユニットを備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
脂質ナノ粒子(LNP)で内包されたRNAを含む製剤を生産するためのポータブルシステムであって、前記システムは、
生体外転写によりRNA溶液を形成するための転写モジュールを備える第1モジュールと、
第1タンジェンシャルフロー濾過(TFF)ユニットを備える第1精製モジュールを備える第2モジュールであって、前記第1モジュールの下流にあって作動可能であり、そこから前記RNA溶液を受け取る前記第2モジュールと、
第1バイオバーデン低減モジュールを含む第3モジュールであって、前記第2モジュールの下流にあって作動可能な前記第3モジュールと、
RNA溶液から第1RNA-LNP調製物を生産するためのLNP製剤モジュールを備える第4モジュールであって、前記第3モジュールの下流にあって作動可能な前記第4モジュールと、
第2タンジェンシャルフロー濾過(TFF)ユニットを備える第2精製モジュールを備える第5モジュールであって、前記第4モジュールの下流にあって作動可能であり、そこから前記第1RNA-LNP調製物を受け取る前記第5モジュールと、
第2バイオバーデン低減モジュールを備える第6モジュールであって、前記第5モジュールの下流にあって作動可能な前記第6モジュールと、を備え、
前記第1から第6のモジュールのそれぞれは、別々の標準輸送コンテナ内に配置される、前記システム。
【請求項19】
少なくとも1つの原薬を生産するための原薬モジュールと、
前記少なくとも1つの原薬から少なくとも部分的に薬製品を生産する薬製品モジュールと、を備え、
前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールのそれぞれは、1つまたは複数のポータブル輸送コンテナ内に完全に配置され、
前記薬製品は、生産後1、2、4、8、12、24、48及び/または72時間以内に患者の治療及び/またはワクチン接種に使用される、薬生産システム。
【請求項20】
第1RNA-LNP調製物を生産するためのポータブルLNP製剤システムであって、
衝突噴流混合ユニットと、
前記衝突噴流混合ユニットにRNA溶液を供給するための第1流体導管であって、前記衝突噴流混合ユニットを前記システム外部のRNA溶液源に流体的に接続する前記第1流体導管と、
前記衝突噴流混合ユニットに脂質溶液を供給するための第2流体導管であって、前記衝突噴流混合ユニットを前記システム外部の脂質溶液源に流体的に接続する前記第2流体導管と、
前記第1RNA-LNP調製物を前記システム外部の下流モジュールに供給するための第3流体導管と、を備え、
前記システムは単一の標準輸送コンテナ内に配置(及び/または生産施設に輸送)される、前記システム。
【請求項21】
第1RNA-LNP調製物を生産するためのポータブルLNP製剤システムであって、
衝突噴流混合ユニットと、
前記衝突噴流混合ユニットの下流に流体的に結合されたタンジェンシャルフロー濾過(TFF)ユニットであって、少なくとも1つのダイアフィルトレーション工程及び少なくとも1つの限外濾過工程を実行するための前記TFFユニットと、を備え、
前記システムは単一の標準輸送コンテナ内に配置(及び/または生産施設に輸送)される、前記システム。
【請求項22】
前記TFFユニットの下流に流体的に結合されると共に前記標準輸送コンテナ内に収容されたバイオバーデン低減ユニットをさらに備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記衝突噴流混合ユニットにRNA溶液を供給するための第1流体導管であって、前記衝突噴流混合ユニットを前記システム外部のRNA溶液源に流体的に接続する前記第1流体導管と、
前記衝突噴流混合ユニットに脂質溶液を供給するための第2流体導管であって、前記衝突噴流混合ユニットを前記システム外部の脂質溶液源に流体的に接続する前記第2流体導管と、
第1RNA-LNP調製物を前記TFFユニットに供給するための第3流体導管と、をさらに備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
少なくとも1つの原薬を生産するための原薬モジュールと、
前記少なくとも1つの原薬を含む薬製品を生産するための薬製品モジュールと、を備え、
前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールのそれぞれは、1つまたは複数のポータブル輸送コンテナ内に完全に配置される、薬生産システム。
【請求項25】
前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールのそれぞれは、少なくとも3つのポータブル輸送コンテナ内に配置される、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記薬製品は少なくとも1つの脂質ナノ粒子(LNP)を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
少なくとも1つのコンテナに前記薬製品を配置するための少なくとも1つの充填及び仕上げモジュールをさらに備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールを併せた電力の必要量は約200kW~約400kWの範囲であり、無停電電力の必要量は約50kW~約100kWの範囲である、請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールを併せた占有面積は、約500平方メートル~約1000平方メートルの面積を包含する、請求項24に記載のシステム。
【請求項30】
前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールのそれぞれは、少なくとも1つのエアロックを備え、材料及び人員のうちの少なくとも一方が、前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールのぞれぞれの中の操作エリアに入る場合には、前記エアロックを通過する必要がある、請求項24に記載のシステム。
【請求項31】
PCRラボ、RNA/DNAラボ、環境モニタリングコンソール、HPLCラボ、細胞培養ラボ、全体的手順ラボ、冷凍庫モニタリング装置、バイオバーデンラボ、品質管理保管エリア、洗浄エリア、エンドトキシンラボ、及び更衣エリアのうちの少なくとも1つを備える品質管理モジュールをさらに備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項32】
病気の少なくとも1つのローカル株について配列決定するための少なくとも1つのDNAシーケンサーをさらに備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項33】
少なくとも1つのカスタムDNA分子を作成するための少なくとも1つのDNAシンセサイザーをさらに備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項34】
病気の少なくとも1つのローカル株を説明する配列情報をパブリックデータベースにアップロードすることと、
病気の前記少なくとも1つのローカル株を説明する配列情報を前記パブリックデータベースからダウンロードすることと、
病気の前記少なくとも1つのローカル株を標的とするワクチンを作るために使用するDNA合成データを前記パブリックデータベースからダウンロードすることと、
病気の少なくとも1つのローカル株を説明する前記配列情報に基づいて、DNA合成データの基になる標的株の計算を行うことと、
のタスクのうち少なくとも1つを実行するための少なくとも1つのコンピューティングシステムをさらに備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項35】
病気のローカル株を治療するためのワクチンを生産する方法であって、
少なくとも1つの場所のそばで前記病気のゲノムデータをフィルタリングし、それによって局部的なデータを生成することと、
前記局部的なデータから標的株を決定することと、
前記少なくとも1つの場所内またはその近くの施設にDNA合成命令を送信することと、
前記少なくとも1つの場所内またはその近くで、前記DNA合成命令に基づいて、前記ローカル株を治療するための前記ワクチンを生産することと、を含む前記方法。
【請求項36】
前記病気はSARS-CoV-2である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ワクチンを投与すること、及び前記少なくとも1つの場所内またはその近くで前記ワクチンを配布することのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
フィルタリングされる前記ゲノムデータを格納する公的に利用可能なデータベースにアクセスすることをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの場所内またはその近くで、前記病気の前記ローカル株のサンプルについて配列決定し、それによってローカル株配列データを生成することと、
フィルタリングされる前記ゲノムデータを格納する公的に利用可能なデータベースに前記ローカル株配列データをアップロードすることと、をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
日付の範囲及びルックバック期間のうちの少なくとも1つに基づいて前記ゲノムデータをフィルタリングすることをさらに含み、
前記日付の範囲及び/または前記ルックバック期間は、前記病気の局部的なアウトブレイクが発生した期間に対応する、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記局部的なデータと前記病気のベースライン変異体との間の偏差を評価することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記局部的なデータ内の1つまたは複数のサブセットの前記偏差を比較することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記局部的なデータ内の前記1つまたは複数のサブセットの前記偏差の共通性のレベルを評価することをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記局部的なデータから標的株を決定することは、前記局部的なデータと前記病気の前記ベースライン変異体との間の前記偏差に少なくとも部分的に基づいて標的株を決定することを含む、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月23日に出願された米国仮特許出願第63/293,480号、2022年1月21日に出願された米国仮特許出願第63/301,834号、2022年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/419,690号、2022年10月28日に出願された米国仮特許出願第63/420,508号に対する優先権を主張し、それぞれの表題は「モジュール式薬生産システム」であり、それぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
核酸は重要な治療モダリティを代表している。脂質ナノ粒子技術は、具体的にはRNA治療剤を含む核酸治療剤の送達に特に有用であることが証明されている。脂質ナノ粒子、核酸、及び/またはそれらから得られる薬製品(及びその他の薬製品)を、時間制限のある様式で供給する能力は、薬製品の製造を現在のニーズに迅速に適合させる能力と同様に、多くの場合、薬製品の製造能力によって制約される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)組成物、及び他の薬製品を含むモジュール式薬製品製造に関連する技術を提供する。治療及び/または処置を迅速に生成し、患者に提供するには、課題を伴うことがよくある。その課題は、製造能力、製造の柔軟性、薬製品を生産して患者に供給するのに必要な全体的な時間、及びその他の考慮事項に関連するが、これらに限定されない。多くの場合、薬の認証及び承認に関連する現地の要件では、薬製品が国内で生産されているか、または別の国から輸入されているかによって、薬製品の分類が異なる。例えば、国内で生産される薬には、輸入される薬とは異なる、規制承認のハードルが存在する場合がある。
【0004】
本実施形態は、標準的な輸送(すなわち、「海外」)コンテナが輸送可能な世界中のどこにでも輸送し得るモジュール式薬生産システムを含む。本実施形態のモジュール式薬生産システムは、特にRNA-LNP薬製品の生産に有用であるが、他の多くの種類の薬製品にも有用である。本実施形態のモジュール式薬生産システムにより、国内及び/または局部的な地域内で薬を生産できるようになり、それによって、局部的なアウトブレイク及びウイルス株に対処する薬製品を、まさに必要な場所で製造できるようになる。さらに、本実施形態のモジュール式薬生産システムは、全体的な薬製造能力の向上を可能にし、大規模生産(主に最も効率的な様式で最大数の人に役立つことに重点が置かれている)にとって悪影響が出る可能性がある、小規模生産の操業(すなわち、地域的及び/または局部的なウイルス株に対処するため)を引き受けるという、集中型の大規模薬製造設備に対する需要及び/または圧力を軽減する。
【0005】
1つの態様では、本開示の実施形態は、少なくとも1つのバイオ医薬品生産ユニットを備えるバイオ医薬品製造設備であって、前記バイオ医薬品生産ユニットは、1つまたは複数の装置を収容する2つまたはそれよりも多くのモジュール式に配置された収容ユニットを備え、前記1つまたは複数の装置は、(1)活性成分または活性成分前駆体、及び薬学的に受容可能な担体または賦形剤の受け取り及び処理、ならびに結果として生じるバイオ医薬品製品の生産と、(2)バイオ医薬品製品の品質管理と、(3)バイオ医薬品製品の充填及び仕上げと、に適応可能であり、前記2つまたはそれよりも多くのモジュール式に配置された収容ユニットは、未完成のバイオ医薬品製品のユニット間移送及び完成したバイオ医薬品製品の供給のために配置され、任意選択で相互接続されている、前記バイオ医薬品製造設備を対象とする。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記設備は、1~10個の生産ユニット(すなわち、コンテナまたはモジュール)を含み、前記生産ユニットの各々は、(a)活性成分または活性成分前駆体、及び薬学的に受容可能な担体または賦形剤の受け取り及び処理、ならびに結果として生じるバイオ医薬品製品の生産に適応可能な1つまたは複数の装置を収容する第1収容ユニットと、(b)バイオ医薬品製品の前記受け取りのために前記第1収容ユニットと連通し、バイオ医薬品製品の品質管理に適応可能な1つまたは複数の装置を収容する第2収容ユニットと、(3)品質管理評価がなされたバイオ医薬品製品の前記受け取りのために前記第2収容ユニットと連通し、品質管理評価がなされたバイオ医薬品製品の充填及び仕上げ、ならびに完成したバイオ医薬品製品の供給に適応可能な1つまたは複数の装置を収容する第3収容ユニットと、を備える。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記モジュール式に配置された収容ユニットのうち少なくとも2つは水平に配置されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記製造設備は少なくとも部分的にハウジングで囲まれている。いくつかの実施形態では、前記活性成分及び前記活性成分前駆体の両方がそれぞれヌクレオチドであり、前記処理は、処理されたヌクレオチドの脂質ナノ粒子内への内包を含み、結果として得られるバイオ医薬品製品はヌクレオチドワクチンである。いくつかの実施形態では、前記活性成分はmRNAである。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記収容ユニットのうち少なくとも1つはISOコンテナである。いくつかの実施形態では、活性成分または活性成分前駆体、及び薬学的に受容可能な担体または賦形剤の受け取り及び処理、ならびに結果として生じるバイオ医薬品製品の生産に適応可能な前記1つまたは複数の装置は、DNAの受け取り、及び前記DNAのmRNAへの生体外転写に適応可能なバイオリアクタを備える。いくつかの実施形態では、活性成分または活性成分前駆体、及び薬学的に受容可能な担体または賦形剤の受け取り及び処理、ならびに結果として得られるバイオ医薬品製品の生産に適応可能な前記1つまたは複数の装置は、前記mRNAからDNA不純物を除去するように構成された精製装置を備える。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記バイオ医薬品製造設備は、年間約100万回分~約5,000万回分の完成したmRNAワクチン、または1日あたり約3,000回分~約170,000回分の完成したmRNAワクチンを生産している。いくつかの実施形態では、(1)活性成分または活性成分前駆体、及び薬学的に受容可能な担体または賦形剤の受け取り及び処理、ならびに結果として生じるバイオ医薬品製品の生産と、(2)バイオ医薬品製品の品質管理と、(3)品質管理評価がなされたバイオ医薬品製品の充填及び仕上げと、に適応可能な前記装置は、遠隔操作のために処理制御システムと電子的に連通している。いくつかの実施形態では、前記電子的な連通は無線であり、処理制御は少なくとも部分的に自動化され、前記処理制御システムは1つまたは複数のコンピュータによって制御され、及び/または前記1つまたは複数のコンピュータは前記設備から離れている。
【0011】
別の態様では、本開示の実施形態は、脂質ナノ粒子(LNP)で内包されたRNAを含む製剤を生産するためのポータブルシステムであって、複数の原薬製剤モジュールを備える第1サブシステムであって、生体外転写(例えば、DNAテンプレートの)によりRNA溶液を形成するための転写モジュールを備える第1サブシステムと、複数の薬製品形成モジュールを備える第1サブシステムの下流にあって作動可能な第2サブシステムであって、RNA溶液から第1RNA-LNP調製物を生産するためのLNP製剤モジュールを備える第2サブシステムと、を備え、転写モジュール及びLNP製剤モジュールのそれぞれは、別々の標準輸送コンテナ内に収容(または施設へ輸送)される、前記システムを対象とする。
【0012】
いくつかの実施形態では、別々の標準輸送コンテナのそれぞれは、幅約8フィート(2.43m)、高さ約8.5フィート(2.59m)、長さ約20フィート(6.06m)~約40フィート(12.12m)を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記LNP製剤モジュールは少なくとも1つの衝突噴流混合ユニットを備える。いくつかの実施形態では、前記第2サブシステムは、前記LNP製剤モジュールの下流に作動可能に配置された精製モジュールをさらに備え、前記精製モジュールは少なくとも1つのタンジェンシャルフロー濾過(TFF)ユニットを備え、前記精製モジュールは別々の標準輸送コンテナ内に配置される。いくつかの実施形態では、前記第1サブシステム及び前記第2サブシステムのそれぞれは、別々の標準輸送コンテナ内に配置されたバイオバーデン低減モジュールを備え、各バイオバーデン低減モジュールは、約0.05μm~約0.35μmの細孔サイズを有する少なくとも1つのフィルタを備える濾過ユニットを備える。
【0014】
別の態様では、本開示の実施形態は、脂質ナノ粒子(LNP)で内包されたRNAを含む製剤を生産するためのポータブルシステムを対象とし、前記システムは、生体外転写によりRNA溶液を形成するための転写モジュールを備える第1モジュールと、第1タンジェンシャルフロー濾過(TFF)ユニットを備える第1精製モジュールを備える第2モジュールであって、前記第1モジュールの下流にあって作動可能であり、そこから前記RNA溶液を受け取る前記第2モジュールと、第1バイオバーデン低減モジュールを含む第3モジュールであって、前記第2モジュールの下流にあって作動可能な前記第3モジュールと、前記RNA溶液から第1RNA-LNP調製物を生産するためのLNP製剤モジュールを備える第4モジュールであって、前記第3モジュールの下流にあって作動可能な前記第4モジュールと、第2タンジェンシャルフロー濾過(TFF)ユニットを備える第2精製モジュールを備える第5モジュールであって、前記第4モジュールの下流にあって作動可能であり、そこから前記第1RNA-LNP調製物を受け取る前記第5モジュールと、第2バイオバーデン低減モジュールを備える第6モジュールであって、前記第5モジュールの下流にあって作動可能な前記第6モジュールと、を備え、前記第1から第6のモジュールのそれぞれは、別々の標準輸送コンテナ内に配置(及び/または生産施設に輸送)される。
【0015】
別の態様では、本開示の実施形態は、薬生産システムを対象とし、前記システムは少なくとも1つの原薬を生産するための原薬モジュールと、前記少なくとも1つの原薬から少なくとも部分的に薬製品を生産する薬製品モジュールと、を備え、前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールのそれぞれは、1つまたは複数のポータブル輸送コンテナ内に完全に配置され、前記薬製品は、生産後1、2、4、8、12、24、48及び/または72時間以内に患者の治療及び/またはワクチン接種に使用される。
【0016】
別の態様では、本開示の実施形態は、第1RNA-LNP調製物を生産するためのポータブルLNP製剤システムを対象とし、前記システムは、衝突噴流混合ユニットと、前記衝突噴流混合ユニットにRNA溶液を供給するための第1流体導管であって、前記衝突噴流混合ユニットを前記システム外部のRNA溶液源に流体的に接続する前記第1流体導管と、前記衝突噴流混合ユニットに脂質溶液を供給するための第2流体導管であって、前記衝突噴流混合ユニットを前記システム外部の脂質溶液源に流体的に接続する前記第2流体導管と、前記第1RNA-LNP調製物を前記システム外部の下流モジュールに供給するための第3流体導管と、を備え、前記システムは単一の標準輸送コンテナ内に配置(及び/または生産施設に輸送)される。
【0017】
別の態様では、本開示の実施形態は、第1RNA-LNP調製物を生産するためのポータブルLNP製剤システムを対象とし、前記システムは、衝突噴流混合ユニットと、前記衝突噴流混合ユニットの下流に流体的に結合されたタンジェンシャルフロー濾過(TFF)ユニットであって、少なくとも1つのダイアフィルトレーション工程及び少なくとも1つの限外濾過工程を実行するための前記TFFユニットと、を備え、前記システムは単一の標準輸送コンテナ内に配置(及び/または生産施設に輸送)される。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記システムは、前記TFFユニットの下流に流体的に結合されると共に前記標準輸送コンテナ内に収容されたバイオバーデン低減ユニットを備える。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記システムは、前記衝突噴流混合ユニットにRNA溶液を供給するための第1流体導管であって、前記衝突噴流混合ユニットを前記システム外部のRNA溶液源に流体的に接続する前記第1流体導管と、前記衝突噴流混合ユニットに脂質溶液を供給するための第2流体導管であって、前記衝突噴流混合ユニットを前記システム外部の脂質溶液源に流体的に接続する前記第2流体導管と、第1RNA-LNP調製物を前記TFFユニットに供給するための第3流体導管と、を備える。
【0020】
別の態様では、本開示の実施形態は、薬生産システムを対象とし、前記システムは、少なくとも1つの原薬を生産するための原薬モジュールと、前記少なくとも1つの原薬を含む薬製品を生産するための薬製品モジュールと、を備え、前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールのそれぞれは、1つまたは複数のポータブル輸送コンテナ内に完全に配置される。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールのそれぞれは、少なくとも3つのポータブル輸送コンテナ内に配置される。いくつかの実施形態では、前記薬製品は少なくとも1つの脂質ナノ粒子(LNP)を含む。いくつかの実施形態では、前記システムは、少なくとも1つのコンテナに前記薬製品を配置するための少なくとも1つの充填及び仕上げモジュールを備える。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールを併せた電力の必要量は約200kW~約400kWの範囲であり、無停電電力の必要量は約50kW~約100kWの範囲である。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールを併せた占有面積は、約500平方メートル~約1000平方メートルの面積を包含する。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールのそれぞれは、少なくとも1つのエアロックを備え、材料及び/または人員が、前記原薬モジュール及び前記薬製品モジュールのぞれぞれの中の操作エリアに入る場合には、前記エアロックを通過する必要がある。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記システムは、PCRラボ、RNA/DNAラボ、環境モニタリングコンソール、HPLCラボ、細胞培養ラボ、全体的手順ラボ、冷凍庫モニタリング装置、バイオバーデンラボ、品質管理保管エリア、洗浄エリア、エンドトキシンラボ、及び/または更衣エリアを備える品質管理モジュールを備える。
【0026】
とりわけ、本開示は、脂質ナノ粒子組成物で遭遇する可能性がある問題の原因を特定する。いずれかの特定の理論に縛られることを望まないが、本開示は、LNP組成物(例えば、核酸-LNP組成物、具体的にはRNA-LNP組成物)から空気を回避、検出、または除去できない場合、例えば、コロイド安定性の喪失、フィルタを通過する能力の妨害など、1つまたは複数の有害な影響が生じる可能性があることを提案する。さらに、本開示は、関連する組成物が大規模に調製される場合、特定の悪影響が発生する可能性があり、及び/または特に影響が大きくなる可能性があるという洞察を提供する。
【0027】
本開示は、LNPの製造、輸送、及び/または保管を改善するための技術を提供する。当業者は、本開示を読めば、その教示の重要性と適用範囲の広さを理解するであろう。
【0028】
とりわけ、当業者は、COVID19パンデミック中のRNAワクチンの変革的影響を含め、核酸治療(例えば、オリゴヌクレオチド治療、ならびにより長いDNA及び/またはRNA治療)の重要性が高まっていることを理解するであろう。
【0029】
当業者は、核酸治療(具体的には治療用RNA、例えば治療用mRNAを含む)の成功にとって、送達技術、特にLNP送達技術の重要性をさらに理解するであろう。
【0030】
いくつかの実施形態では、提供される技術は、医薬品グレードのRNA治療剤の製造に有用である。いくつかの実施形態では、提供される技術は、例えば医薬品グレードのRNA治療剤などのRNA治療剤の大規模製造に特に有用であり得る。
【0031】
とりわけ、いくつかの実施形態では、本開示は、特定のLNP組成物(具体的にはRNA-LNP組成物を含む)の製造及び/または維持に関連する可能性がある1つまたは複数の課題の原因を特定する。とりわけ、本開示は、例えば、所定の工程内管理、及び/またはロットリリース仕様(例えば、高純度、完全性、効力など)を満たす、一貫した製造を容易にする技術を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、高純度、完全性、安定性(例えば、輸送及び/または保管に対する安定性)などの特定の製品属性を維持しながら、大規模に実行できる技術を含む、LNP(例えば、RNA-LNP)組成物の堅牢な製造技術を提供する。いくつかの実施形態では、関連する製品属性は、例えば、コロイド安定性、粒子サイズ(及び/またはサイズ分布)、LNPトポロジー、さらなる処理及び/または処方への適合性、投与された組成物からの内包された材料の送達の有効性などであってもよく、またはそれらを含んでもよい。
【0032】
とりわけ、いくつかの実施形態では、本開示は、LNP組成物の製造に関連する様々な段階及び/または処理において空気の導入を回避するための技術を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製造は、脂質ストック調製、内包されたエージェント(例えば、RNAエージェントなどの核酸エージェント)のストックの調製、エージェント(例えば、核酸、例えば、RNA)-LNP製剤、安定化(例えば、希釈による)、濃縮、精製もしくは分離(例えば、緩衝液交換、及び/または濾過)、濃度調節、1つもしくは複数の賦形剤(例えば、凍結保護エージェント)の添加、無菌充填、ラベリング、保管、及び/またはLNP含有薬製品及び/またはその1つもしくは複数の成分の特性評価のうちの1つまたは複数を含むことができ、そのいずれかまたはすべてを、薬製品の大規模な大量スループット(例えば、本明細書に記載されるように)をもたらすと共に製品属性(例えば、本明細書に記載されるように)を維持する所定の条件及びパラメータ下で実行してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術を、種々の製造規模で利用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術を並行して利用して、スループット容量をさらに向上させることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される技術は、約0.01g~約500g、約0.01g~約10g、約1g~約10g、約10g~約500g、約10g~約300g、約10g~約200g、または約30g~約60gの範囲内のバッチサイズで製造された核酸(例えば、RNA)を利用することができる。
【0035】
とりわけ、いくつかの実施形態では、本開示は、医薬品製品に使用するのに好適な製造されたLNP製品(例えば、RNA-LNP製品などの核酸-LNP製品)を特徴付けるための方法を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示は、とりわけ、薬製品の製造処理への空気の導入を低減するための技術(例えば、システム及び/または方法)を提供し、それによって、いずれの場合にも、特に大規模の場合に、LNP特性(その例には、例えば、脂質ナノ粒子内への(例えば、核酸、具体的にはRNAの)内包及び/またはナノ粒子調製物の安定性(例えば、コロイド安定性)がある)を破壊及び/または他の方法でそれに影響を与える可能性を低減する。
【0037】
いずれかの特定の理論に縛られることを望まないが、本開示は、いくつかの実施形態では、空気と液体の界面が、LNP構造の1つまたは複数の特徴の破壊(例えば、PEG脂質の他の脂質成分からの分離、及び/またはLNPコロイドの、及び/またはそれら中のLNPの、崩壊または不安定性を引き起こす可能性のある他の変化(複数可))を生じさせることを提言する。
【0038】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の段階で製造処理への空気の導入を防止するための様々なシステム及び/または方法論の使用により、そのような悪影響(複数可)の確率が低減される。特定の理論に縛られることを望まないが、いくつかの実施形態では、空気の導入を避けるために、追加のシステム及び/または処理工程を、少なくとも3つの製造工程に関連して利用してもよく、その例には、1)衝突噴流混合、2)タンジェンシャルフロー濾過(TFF)、及び3)製品の輸送(すなわち、ある施設から別の施設に輸送される中間薬製品、例えば、必ずしも最終製品ではない)がある。いくつかの実施形態では、空気の導入を回避するために、最終的な充填及び仕上げ処理を含む第4工程に関連して追加のシステム及び/または処理工程を利用してもよい。いくつかの実施形態では、RNAの水溶液と脂質溶液は、実質的に空気が導入されないように第1LNP調製物を形成するのに十分な操作条件下で混合される。いくつかの実施形態では、気泡はシリンジによって輸送バッグから手動で除去される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のLNP調製物は、実質的に空気が導入されないように構成された緩衝液交換を含んでもよい。いくつかの実施形態では、TFFは、1つまたは複数のLNP調製物への空気の導入を避けるように構成された1つもしくは複数の空腸造瘻チューブ及び/または1つもしくは複数のディップチューブの使用を含んでもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)で内包されたRNAを生産するための技術(すなわち、システム及び方法)を提供し、その例には、RNAの水溶液及び脂質溶液を独立して混合ユニットに流し込むこと、及び、混合ユニット内で、LNPで内包されたRNAを含む第1RNA-LNP調製物を形成すると共に第1RNA-LNP調製物に実質的に空気を導入しないのに十分な操作条件下で、RNAの水溶液及び脂質溶液を混合することがある。いくつかの実施形態では、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)で内包されたRNAを含む製剤を生産するための技術(すなわち、システム及び方法)を提供し、その例には、RNAを含む水溶液と脂質溶液を混合して、LNPで内包されたRNAを含む第1RNA-LNP調製物を生産するように構成された衝突噴流混合ユニットがある。システムは、溶媒を交換し、及び/または第1RNA-LNP調製物を濃縮して第2RNA-LNP調製物を生産するように構成された1つまたは複数のタンジェンシャルフロー濾過ユニットと、液体に実質的に空気を導入せずにシステム内の液体を輸送するように構成された、衝突噴流混合ユニット及び/または1つまたは複数のタンジェンシャルフロー濾過ユニットと流体連通する1つまたは複数の空腸造瘻チューブと、を備えてもよい。
【0040】
本明細書に記載の技術は、LNP組成物(例えば、核酸、特にmRNAなどのRNAを内包するLNP組成物)の製造に有用になり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術は、病気、障害、または病態(例えば、がん、感染病、タンパク質欠乏に関連する病気など)の治療及び/または予防のためのLNP組成物(例えば、核酸LNP、例えば、RNA-LNP)の製造に有用になり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術は、ポリペプチドをエンコードする核酸を含むかまたは送達するLNP組成物の製造に有用になり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術は、抗原(例えば、LNP組成物に含まれるか、またはLNP組成物によって送達される核酸によってエンコードされる抗原)に対する免疫応答を誘導するためのLNPの製造に有用になり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示は、病気の少なくとも1つのローカル株について配列決定するための少なくとも1つのDNAシーケンサーを備えるシステムを対象とする。
【0043】
いくつかの実施形態では、システムは、少なくとも1つのカスタムDNA分子を作成するための少なくとも1つのDNAシンセサイザーを備える。
【0044】
いくつかの実施形態では、システムは、病気の少なくとも1つのローカル株を説明する配列情報をパブリックデータベースにアップロードすることと、病気の前記少なくとも1つのローカル株を説明する配列情報を前記パブリックデータベースからダウンロードすることと、病気の前記少なくとも1つのローカル株を標的とするワクチンを作るために使用するDNA合成データを前記パブリックデータベースからダウンロードすることと、病気の少なくとも1つのローカル株を説明する前記配列情報に基づいて、DNA合成データの基になる標的株の計算を行うことと、のタスクのうち少なくとも1つを実行するための少なくとも1つのコンピューティングシステムを備える。
【0045】
別の態様では、本開示は、病気のローカル株を治療するためのワクチンを生産する方法を対象とし、前記方法は、少なくとも1つの場所のそばで前記病気のゲノムデータをフィルタリングし、それによって局部的なデータを生成することと、前記局部的なデータから標的株を決定することと、前記少なくとも1つの場所内またはその近くの施設にDNA合成命令を送信することと、前記少なくとも1つの場所内またはその近くで、前記DNA合成命令に基づいて、前記ローカル株を治療するための前記ワクチンを生産することと、を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記病気はSARS-CoV-2である。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記ワクチンを投与すること、及び前記少なくとも1つの場所内またはその近くで前記ワクチンを配布することを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記方法は、フィルタリングされる前記ゲノムデータを格納する公的に利用可能なデータベースにアクセスすることを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記少なくとも1つの場所内またはその近くで、前記病気の前記ローカル株のサンプルについて配列決定し、それによってローカル株配列データを生成することと、フィルタリングされる前記ゲノムデータを格納する公的に利用可能なデータベースに前記ローカル株配列データをアップロードすることと、を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記方法は、日付の範囲及びルックバック期間のうちの少なくとも1つに基づいて前記ゲノムデータをフィルタリングすることを含む。前記日付の範囲及び/または前記ルックバック期間は、前記病気の局部的なアウトブレイクが発生した期間に対応する。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記局部的なデータと前記病気のベースライン変異体との間の偏差を評価することを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記局部的なデータ内の1つまたは複数のサブセットの前記偏差を比較することを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記局部的なデータ内の前記1つまたは複数のサブセットの前記偏差の共通性のレベルを評価することを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記局部的なデータから標的株を決定することは、前記局部的なデータと前記病気の前記ベースライン変異体との間の前記偏差に少なくとも部分的に基づいて標的株を決定することを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術は、コロナウイルス感染病、例えばSARS-CoV-2感染病の治療及び/または予防のためのRNA-LNP組成物の製造に有用であり得る。このことは、以下に記載されている。Walsh et al. “RNA-based COVID-19 vaccine BNT162b2 selected for a pivotal efficacy study” medRxiv preprint (2020), https://doi.org/10.1101/2020.08.17.20176651でオンラインアクセスが可能である;及びMilligan et al. “Phase I/II study of COVID-19 RNA vaccine BNT162b1 in adults” Nature (2020 August), https://doi.org/10.1038/s41586-020-2639-4でオンラインアクセスが可能であり、それぞれの内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本開示の態様による例示的なモジュール式薬生産システムを示す。
図2】本開示の態様による例示的な薬製品製造事業体及び/または処理の概要を示す。
図3】本開示の態様による例示的な薬製品製造施設及び/または処理の概要を示す。
図4】本開示の態様による例示的な薬製品製造施設の概要を示す。
図5】本開示の態様による例示的な薬製品製造施設及び/またはモジュールの概要を示す。
図6】本開示の態様による例示的な薬製品製造施設及び/またはモジュールの概要を示す。
図7】本開示の態様による例示的な薬製品品質管理施設及び/またはモジュールの概要を示す。
図8】本開示の態様による例示的な薬製品倉庫施設及び/またはモジュールの概要を示す。
図9】本開示の態様による例示的な薬製品製造施設の概要を示す。
図10】本開示の態様による例示的な薬製品製造施設の概要を示す。
図11】本開示の態様による、RNAを含む医薬品グレードの組成物のための例示的な製造処理の概要を示す。
図12】本開示の態様による、PCRベースの処理による例示的なDNAテンプレート製造処理の概要を示す。
図13】本開示の態様による、LNP組成物を製造するための例示的な処理を示す。
図14】本開示の態様による例示的な薬製品製造施設及び/またはモジュールの概要を示す。
図15】本開示の態様による例示的な薬製品製造施設及び/またはモジュールの概要を示す。
図16】本開示の態様による例示的な薬製品製造施設及び/またはモジュールの概要を示す。
図17】本開示の態様によるワクチンを作る処理を示す。
図18】本開示の態様によるワクチンを作る処理を示す。
図19】本開示の態様による例示的な薬製品製造事業体及び/または処理の概要を示す。
図20】本開示の態様による例示的な薬製品製造事業体及び/または処理の概要を示す。
図21】本開示の態様による例示的な薬製品製造事業体及び/または処理の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
定義
約またはおおよそ:本明細書で値を参照して使用される「約」または「おおよそ」という用語は、記載された参照値と文脈上類似する値を指す。概して、文脈に精通している当業者であれば、その文脈における「約」または「おおよそ」が包含する変動の関連性の程度を理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、「約」または「おおよそ」という用語は、参照した値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内、またはそれ以下の値の範囲を包含してもよい。
【0058】
投与:本明細書で使用される「投与」という用語は、通常、対象または系への組成物の投与を指す。当業者であれば、適切な状況において、対象、例えばヒトへの投与に利用され得る様々な経路を知っている。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、眼、経口、非経口、局所などであってもよい。いくつかの特定の実施形態では、投与は、気管支(例えば、気管支点滴による)、頬側、皮膚(例えば、真皮への局所、皮内、皮内、経皮などのうちの1つまたは複数であるか、またはこれらを含む)、腸内、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、くも膜下、静脈内、心室内、特定の臓器内(例えば、肝臓内)、粘膜、経鼻、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(例えば、気管内点滴による)、膣、硝子体などであってもよい。いくつかの実施形態では、投与は筋肉内であってもよい。いくつかの実施形態では、投与は、断続的な投与(例えば、時間的に隔てられた複数の投与)及び/または周期的な投与(例えば、共通の期間で隔てられた個々の投与)を伴い得る。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間にわたる連続投与(例えば、灌流)を伴ってもよい。
【0059】
エージェント:概して、本明細書で使用される「エージェント」という用語は、実体(例えば、脂質、金属、核酸、ポリペプチド、多糖類、小分子など、またはそれらの複合体、組み合わせ、混合物もしくは系(例えば、細胞、組織、有機体))、または現象(例えば、熱、電流もしくは電場、磁力または磁場など)を指すために使用される。適切な状況では、文脈から当業者には明らかであるように、この用語を、細胞もしくは有機体、またはそれらの断片、抽出物、もしくは成分であるか、またはそれらを含む実体を指すために利用してもよい。代替的にまたは追加的に、文脈から明らかなように、この用語を、自然界に見られる、及び/または自然界から得られる天然物を指すために使用してもよい。場合によっては、これも文脈から明らかなように、人間が作り出した1つまたは複数の実体(人間の手による作用によって設計、工学的処理、及び/または生産されたという点で、及び/または自然界には見られないという点で)を指すためにこの用語を使用してもよい。いくつかの実施形態では、エージェントを、単離された形態または純粋な形態で利用してもよく、いくつかの実施形態では、エージェントを粗形態で利用してもよい。いくつかの実施形態では、潜在的なエージェントを、例えば、内部の活性エージェントを特定または特徴付けるためにスクリーニングされ得るコレクションまたはライブラリとして提供してもよい。場合によっては、「エージェント」という用語は、ポリマーであるかポリマーを含む化合物または実体を指してもよく、場合によっては、この用語は、1つまたは複数のポリマー部分を含む化合物または実体を指してもよい。いくつかの実施形態では、「エージェント」という用語は、ポリマーではない、及び/または実質的にいかなるポリマーも含まない、及び/または1つまたは複数の特定のポリマー部分を含まない化合物または実体を指してもよい。いくつかの実施形態では、この用語は、ポリマー部分も欠如しているか、または実質的に含まない化合物または実体を指してもよい。
【0060】
アナログ:本明細書で使用される「アナログ」という用語は、参照物質と1つまたは複数の特定の構造的特徴、要素、成分、または部分を共有する物質を指す。通常、「アナログ」は、例えば、コア構造またはコンセンサス構造を共有するなど、参照物質と構造的に著しい類似性を示すが、特定の個別的な様式では異なる。いくつかの実施形態では、アナログは、例えば参照物質の化学的操作によって参照物質から発生し得る物質である。いくつかの実施形態では、アナログは、参照物質を発生させるものと実質的に類似した(例えば、複数の工程を共有する)合成処理の実行によって発生し得る物質である。いくつかの実施形態では、アナログは、参照物質を発生させるために使用されるものとは異なる合成処理の実行によって発生するか、または発生し得る。
【0061】
抗体エージェント:本明細書で使用される「抗体エージェント」という用語は、特定の抗原に特異的に結合するエージェントを指す。いくつかの実施形態では、この用語は、特異的結合を付与するのに十分な免疫グロブリン構造要素を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を包含する。例示的な抗体エージェントには、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体エージェントは、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒトの抗体の特性である1つまたは複数の定常領域配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体エージェントは、当技術分野で知られているように、ヒト化された、霊長類化された、キメラ性の、など1つまたは複数の配列要素を含んでもよい。多くの実施形態では、「抗体エージェント」という用語は、代替的な提示において抗体の構造的及び機能的特徴を利用するための、当技術分野で知られている、または開発された、構築物またはフォーマットの1つまたは複数を指すために使用される。例えば、実施形態において、本開示に従って利用される抗体エージェントは、無損のIgA、IgG、IgEまたはIgM抗体、二重特異性抗体または多特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)など)、抗体断片、例えばFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、及び単離された相補性決定領域(CDR)またはそれらのセット、一本鎖Fv、ポリペプチド-Fc融合物、単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片などのサメ単一ドメイン抗体)、ラクダ科抗体、マスク抗体(例えば、Probodies(登録商標))、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、一本鎖ダイアボディまたはタンデムダイアボディ(TandAb(登録商標))、VHH、Anticalins(登録商標)、Nanobodies(登録商標)ミニボディ、BiTE(登録商標)、アンキリンリピートタンパク質またはDARPINs(登録商標)、Avimers(登録商標)、DART、TCR様抗体、Adnectins(登録商標)、Affilins(登録商標)、Trans-bodies(登録商標)、Affibodies(登録商標)、TrimerX(登録商標)、MicroProteins、Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、ならびにKALBITOR(登録商標)から選択されるフォーマットであるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体は、自然に生成された場合に有する共有結合修飾(例えば、グリカンの結合)を欠いていてもよい。いくつかの実施形態では、抗体は、共有結合修飾(例えば、グリカンの結合)、ペイロード(例えば、検出可能な部分、治療部分、触媒部分など)、または他のペンダント基(例えば、ポリエチレングリコールなど])を含んでもよい。多くの実施形態では、抗体エージェントは、当業者によって相補性決定領域(CDR)として認識される1つまたは複数の構造要素を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、抗体エージェントは、参照抗体に見られるものと実質的に同一である少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/または少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、配列が同一であるか、または1~5個のアミノ酸置換を含むかのいずれかであるという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が削除、追加、または置換されているが、含まれるCDRは、そうでなければ参照CDRと同一のアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して含まれるCDR内の1~5個のアミノ酸が削除、追加、または置換されているが、含まれるCDRは、そうでなければ参照CDRと同一のアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が置換されているが、含まれるCDRは、そうでなければ参照CDRと同一のアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して含まれるCDR内の1~5個のアミノ酸が削除、追加、または置換されているが、含まれるCDRは、そうでなければ参照CDRと同一のアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、抗体エージェントは、当業者によって免疫グロブリン可変ドメインとして認識される構造要素を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、抗体エージェントは、免疫グロブリン結合ドメインと相同または大部分が相同である結合ドメインを有するポリペプチドタンパク質である。
【0062】
抗体エージェントは、当業者が、当技術分野で既知の方法、市販のサービス及びキットを使用して作製することができる。例えば、モノクローナル抗体の調製方法は当技術分野で周知であり、ハイブリドーマ技術及びファージディスプレイ技術を含む。本開示で使用するのに好適なさらなる抗体は、例えば、以下の刊行物に記載されている。Antibodies A Laboratory Manual, Second edition. Edward A. Greenfield. Cold Spring Harbor Laboratory Press (September 30, 2013);Making and Using Antibodies: A Practical Handbook, Second Edition. Eds. Gary C. Howard and Matthew R. Kaser. CRC Press (July 29, 2013);Antibody Engineering: Methods and Protocols, Second Edition (Methods in Molecular Biology). Patrick Chames. Humana Press (August 21, 2012);Monoclonal Antibodies: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology). Eds. Vincent Ossipow and Nicolas Fischer. Humana Press (February 12, 2014);and Human Monoclonal Antibodies: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology). Michael Steinitz. Humana Press (September 30, 2013))。
【0063】
抗体を、標準的な技術によって、例えば適切なポリペプチドまたはその一部(複数可)による免疫化、またはファージディスプレイライブラリの使用によって、生産してもよい。ポリクローナル抗体が望ましい場合、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を、任意選択で別のポリペプチドにハプテン化された、所望のエピトープ(複数可)を有する免疫原性ポリペプチドで免疫化する。宿主種に応じて、様々なアジュバントを使用して免疫学的応答を高めてもよい。このようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチン、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールなどの表面活性物質が含まれるが、これらに限定されない。免疫化された動物からの血清が収集され、既知の手順に従って処置される。所望のエピトープに対するポリクローナル抗体を含む血清に他の抗原に対する抗体が含まれている場合、ポリクローナル抗体は免疫親和性クロマトグラフィーまたは当技術分野で既知の任意の他の方法によって精製することができる。ポリクローナル抗血清を生産及び処理する技術は、当技術分野で周知である。
【0064】
抗原:本明細書で使用される「抗原」という用語は、免疫応答を誘発するエージェント、及び/または(ii)T細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)もしくは抗体に結合するエージェントを指す。いくつかの実施形態では、抗原は液性応答(例えば、抗原特異的抗体の生成を含む)を誘発し、いくつかの実施形態では、抗原は細胞性応答(例えば、抗原と特異的に相互作用する受容体を有するT細胞を伴う)を誘発する。いくつかの実施形態では、抗原は抗体に結合し、有機体における特定の生理学的応答を誘発させる場合も、またはさせない場合もある。概して、抗原は、例えば、小分子、核酸、ポリペプチド、炭水化物、脂質、ポリマー(いくつかの実施形態では、生物学的ポリマー以外(例えば、核酸またはアミノ酸ポリマー以外))その他などの任意の化学物質であるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、抗原はポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、抗原はグリカンであるか、またはグリカンを含む。当業者であれば、概して、抗原を、単離された形態または純粋な形態で提供してもよく、または代替的に粗形態(例えば、他の物質と一緒に、例えば細胞抽出物などの抽出物または抗原含有源の他の比較的粗い調製物)で提供してもよいことを理解するであろう。いくつかの実施形態では、本発明に従って利用される抗原は粗形態で提供される。いくつかの実施形態では、抗原は組換え抗原である。
【0065】
結合:本明細書で使用される「結合」という用語は、通常、2つまたはそれよりも多くの実体間の非共有結合性の会合を指すことが理解されるであろう。「直接」結合は、実体または部分間の物理的接触を伴う。間接結合は、1つまたは複数の中間実体との物理的接触による物理的相互作用を伴う。2つまたはそれよりも多くの実体間の結合を、通常、様々な任意の文脈で評価することができる。その例には、相互作用する実体または部分が、単離された状態で、またはより複雑な系の観点で(例えば、共有結合もしくはその他の方法で担体実体と関連付けられている場合、及び/または生物系もしくは細胞内で)研究される場合がある。
【0066】
バイオリアクタ:本明細書で使用される「バイオリアクタ」という用語は、本明細書に記載される生体外転写に使用される容器を指す。バイオリアクタは、生体外転写に有用である限り、任意のサイズにすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、バイオリアクタは少なくとも0.5リットルにすることができ、その例には1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50リットル以上、またはその間の任意の容量がある。バイオリアクタの内部条件(pH及び温度が含まれるが、これらに限定されない)は、通常、生体外転写中に制御される。バイオリアクタを、ガラス、プラスチック、または金属を含む、本明細書に記載の条件下での生体外転写に好適な任意の材料で構成することができる。当業者であれば、生体外転写の実施に使用するのに好適なバイオリアクタの容量を認識し、選択することができる。
【0067】
キャップ:本明細書で使用される「キャップ」という用語は、通常は非キャップRNA(例えば、5’-二リン酸を有する非キャップRNA)の5’末端に結合されたヌクレオシド-5’-三リン酸を含む、または本質的にそれからなる構造を指す。いくつかの実施形態では、キャップはグアニンヌクレオチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、キャップは、天然に存在するRNA5’キャップであるか、またはそれを含む。その例には、例えば、「m7G」として指定される構造を有するN7-メチルグアノシンキャップがあるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、キャップは、RNAキャップ構造に似ていると共にRNAに結合した場合にRNAを安定化する能力を有する合成キャップアナログであるか、またはそれを含む。その例には、例えば、当技術分野で知られている抗逆キャップアナログ(ARCA)が含まれるが、これに限定されない。当業者であれば、RNAの5’末端にキャップを結合する方法が当技術分野で既知であることを理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、5’三リン酸基を有するRNA、または5’二リン酸を有するRNAをキャッピング酵素系(その例には、例えば、ワクシニアキャッピング酵素系またはサッカロマイセス・セレビシエ・キャッピング酵素系があるが、これらに限定されない)で生体外キャッピングすることによって、キャップRNAを得てもよい。代替的に、キャップRNAを、DNAテンプレートの生体外転写(IVT)によって得ることができ、この場合、GTPに加えて、IVTシステムには、当技術分野で知られているように、例えば、キャップアナログも含まれる。キャップアナログの非限定的な例には、m7GpppGキャップアナログ、またはN7-メチル-,2’-O-メチル-GpppG ARCAキャップアナログ、またはN7-メチル-、3’-O-メチル-GpppG ARCAキャップアナログ、または、例えば、CleanCap(Trilink)、EZ Capなどを含む任意の市販のキャップアナログが含まれる。いくつかの実施形態では、キャップアナログは、トリヌクレオチドキャップアナログであるか、またはそれを含む。
【0068】
比較可能:本明細書で使用される「比較可能」という用語は、2つまたはそれよりも多くのエージェント、実体、情勢、条件セットなどを指す。それらは互いに同一ではないかもしれないが、それらの間の比較を可能にするほど十分に類似しているので、当業者は、観察された相違点または類似点に基づいて結論を合理的に導き出し得ることを理解する。いくつかの実施形態では、比較可能な条件、状況、個人、または集団のセットは、複数の実質的に同一の特徴、及び1つまたは少数の異なる特徴によって特徴付けられる。当業者であれば、文脈から、任意の所与の状況において、2つまたはそれよりも多くのそのようなエージェント、実体、情勢、条件セットなどが比較可能であるとみなされるには、どの程度の同一性が必要であるかを理解するであろう。例えば、当業者であれば、異なる状況、個人、または集団のセット下で、またはそれらを用いて、得られた結果または観察された現象における相違点が、変更されたこれらの特徴における変化によって引き起こされたか、またはそれを表すという合理的な結論を保証するだけの十分な数及び種類の実質的に同一の特徴によって特徴付けられた場合、状況、個人、または集団のセットは互いに比較可能であることを理解するであろう。
【0069】
相補的:本明細書で使用される「相補的」という用語は、塩基対合則によって関連付けられるオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを参照して使用される。例えば、「C-A-G-T」という配列は、「G-T-C-A」という配列と相補的である。相補性は部分的または全体的なものになり得る。したがって、部分的な相補性がオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能にするという条件で、あらゆる程度の部分的な相補性が「相補的」という用語の範囲に含まれることが意図されている。部分的な相補性とは、1つまたは複数の核酸塩基が塩基対合則に従って一致していない状態である。核酸間の全体的または完全相補性とは、ありとあらゆる核酸塩基が塩基対合則下で別の塩基と一致することである。
【0070】
検出:本明細書において「検出」という用語は、目的の実体の存在または非存在を判定する適切な手段、またはサンプル内の目的の実体の任意の形式の測定を含むように広く使用されている。したがって、「検出」には、目的の実体の存在または非存在、レベル、量、及び/または場所を決定、測定、評価、または分析することが含まれる場合がある。半定量的なものも含め、定量的及び定性的な決定、測定、または評価が含まれる。このような決定、測定、または評価は、例えば、目的の実体が対照参照と比較して検出される場合のように相対的になる場合もあれば、または絶対的になる場合もある。したがって、目的の実体を定量化する観点で使用した場合、「定量化」という用語は絶対的定量化または相対的定量化を指すことができる。絶対的定量化を、目的の実体の検出されたレベルを既知の対照標準(例えば、標準曲線の作成を通じて)と相関させることによって達成してもよい。代替的に、相対的定量化を、2つまたはそれよりも多くの異なる目的の実体間で検出されたレベルまたは量を比較することによって達成して、2つまたはそれよりも多くの異なる目的の実体のそれぞれの相対的定量化、すなわち、互いに対する相対的定量化を提供することができる。
【0071】
決定:本明細書を読む当業者は、「決定」の工程は、当業者が利用可能な様々な技術のいずれかを利用し得る、またはそれらの使用によって達成され得る、ことを理解するであろう。その例には、例えば本明細書に明示的に言及されている特定の技術がある。いくつかの実施形態では、決定には物理的なサンプルの操作が含まれる。いくつかの実施形態では、決定には、例えば、関連する分析を実行するように適合されたコンピュータまたはその他の処理ユニットを利用した、データまたは情報の考慮及び/または操作が含まれる。いくつかの実施形態では、決定には、ある源から関連情報及び/または資料を受信することが含まれる。いくつかの実施形態では、決定には、サンプルまたは実体の1つまたは複数の特徴を比較可能な参照と比較することが含まれる。
【0072】
剤形または単位剤形:当業者であれば、「剤形」という用語を、対象に投与するための活性エージェント(例えば、治療エージェントまたは診断エージェント)の物理的な個別的単位を指すために使用してもよいことを理解するであろう。通常、このような各単位には、所定量の活性エージェントが含有されている。いくつかの実施形態では、そのような量は、関連する集団に投与された場合に所望のまたは有益な結果と相関すると判定された投与レジメン(すなわち、治療投与レジメン)に従って投与するのに適した単位投与量(またはその全画分)である。当業者であれば、特定の対象に投与される治療組成物またはエージェントの全体的な量は、1人または複数の主治医師によって決定され、複数の剤形の投与を伴う場合があることを理解している。
【0073】
内包:本明細書において、「内包する」または「内包」という用語は、少なくとも一部の成分が組成物内の別の材料または別の成分によって封入または囲まれていることを指すために使用される。いくつかの実施形態では、成分は、組成物内の別の材料または別の成分によって完全に封入または囲まれることがある。
【0074】
賦形剤:本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、例えば、所望の特性または効果(例えば、所望の粘稠度、送達、及び/または安定化効果など)を提供またはそれに寄与するために、医薬組成物中に含まれる可能性がある非治療エージェントを指す。いくつかの実施形態では、LNP組成物への添加に好適な医薬賦形剤は、例えば、塩、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含んでもよい。
【0075】
エンコード:本明細書で使用される「エンコード」または「エンコードする」という用語は、定義されたヌクレオチド配列(例えば、mRNA)または定義されたアミノ酸配列を有する第2分子の生成を導く第1分子の配列情報を指す。例えば、DNA分子はRNA分子をエンコードすることができる(例えば、DNA依存性RNAポリメラーゼ酵素を含む転写処理によって)。RNA分子はポリペプチドをエンコードすることができる(例えば、翻訳処理によって)。したがって、遺伝子、cDNA、または一本鎖RNA(例えば、mRNA)は、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳によって細胞または他の生物系内でポリペプチドが生成される場合、ポリペプチドをエンコードする。いくつかの実施形態では、標的ポリペプチドエージェントをエンコードする一本鎖RNAのコード領域とは、そのヌクレオチド配列がそのような標的ポリペプチドエージェントのmRNA配列と同一であるコード鎖のことを指す。いくつかの実施形態では、標的ポリペプチドエージェントをエンコードする一本鎖RNAのコード領域とは、遺伝子またはcDNAの転写のテンプレートとして使用し得る、そのような標的ポリペプチドエージェントの非コード鎖のことを指す。
【0076】
発現:本明細書で使用される、核酸配列の「発現」は、以下の事象の1つまたは複数を指す。すなわち、(1)DNA配列からのRNAテンプレートの生成(例えば、転写による);(2)RNA転写物の処理(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端形成による);(3)RNAからポリペプチドまたはタンパク質への翻訳;及び/または(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾である。
【0077】
フェドバッチ処理:本明細書で使用される「フェドバッチ処理」という用語は、反応の開始後のある時点で、1つまたは複数の成分が容器(例えば、バイオリアクタ)に導入される処理を指す。いくつかの実施形態では、反応中にその濃度を低く維持するために、1つまたは複数の成分がフェドバッチ処理によって導入される。いくつかの実施形態では、反応中に枯渇したものを補充するために、1つまたは複数の成分がフェドバッチ処理によって導入される。
【0078】
5プライム非翻訳領域:本明細書で使用される「5プライム非翻訳領域」または「5’UTR」という用語は、転写開始部位から始まり、RNAのコード領域の開始コドン(通常はAUG)の1ヌクレオチド(nt)前で終わるmRNA分子の配列を指す。
【0079】
機能的:本明細書で使用される「機能的」な生物学的分子とは、その生物学的分子が特徴とする特性及び/または活性を示す形態の生物学的分子である。いくつかの実施形態では、生物学的分子は、2つの機能(すなわち、二機能性)または多くの機能(すなわち、多機能性)を有し得る。
【0080】
遺伝子:本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、製品(例えば、RNA製品及び/またはポリペプチド製品)をコード化する染色体中のDNA配列を指す。いくつかの実施形態では、遺伝子にはコード配列(すなわち、特定の製品をエンコードする配列)が含まれ、いくつかの実施形態では、遺伝子には非コード配列が含まれる。いくつかの特定の実施形態では、遺伝子には、コード配列(例えば、エクソン)と非コード配列(例えば、イントロン)の両方が含まれる場合がある。いくつかの実施形態では、遺伝子は、例えば、遺伝子発現の1つまたは複数の態様(例えば、細胞型特異的発現、誘導性発現など)を制御し、またはそれに影響を与え得る1つまたは複数の調節要素を含んでもよい。
【0081】
遺伝子製品または発現製品:本明細書で使用される「遺伝子製品」または「発現製品」という用語は、概して、遺伝子から転写されたRNA(処理前及び/または処理後)、または遺伝子から転写されたRNAによってエンコードされるポリペプチド(修飾前及び/または修飾後)を指す。
【0082】
相同:本明細書で使用される「相同」または「相同物」という用語は、ポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)間及び/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)及び/またはポリペプチド分子は、それらの配列が少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一である場合に、互いに「相同」であるとみなされる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)及び/またはポリペプチド分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%類似している場合(例えば、対応する位置に関連する化学的特性を有する残基を含む場合)に、互いに「相同」であるとみなされる。例えば、当業者には周知のとおり、特定のアミノ酸は、通常は、「疎水性」または「親水性」アミノ酸として互いに類似しているものとして、及び/または「極性」または「非極性」側鎖を有するものとして分類される。あるアミノ酸の、同じ種類の別のアミノ酸への置換は、多くの場合「相同」置換とみなされ得る。
【0083】
宿主細胞:本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、外因性物質(例えば、組換え体または別のものなどのDNA)が導入された細胞を指す。熟練者は、本開示を読めば、そのような用語が特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことを理解するであろう。突然変異または環境影響のうちのいずれかにより、後続の世代で特定の変更が発生する可能性があるため、そのような子孫は実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、それでも本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。いくつかの実施形態では、宿主細胞には、外因性DNA(例えば、組換え核酸配列)を発現するのに好適な任意の生命界から選択される原核細胞及び真核細胞が含まれる。例示的な細胞には、原核生物及び真核生物(単細胞または多細胞)、細菌細胞(例えば、E. coli、Bacillus spp、Streptomyces spp.などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S. cerevisiae、S. pombe、P. pastoris、P. methanolica、など)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、Trichoplusia niなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または例えばハイブリドーマもしくはクアドローマなどの細胞融合体が含まれる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウスの細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は真核細胞である。例えば、真核宿主細胞は、CHO(例えば,CHO Kl,DXB-1 1 CHO,ヴェジ(Veggie)-CHO),COS(例えば,COS-7)、網膜細胞,ベロ(Vero),CV1,腎臓(例えば,HEK293,293 EBNA,MSR 293,MDCK,HaK,BHK),ヒーラ(HeLa),HepG2,WI38,MRC 5,Colo205,HB 8065,HL-60,(例えば,BHK21),Jurkat,Daudi,A431(表皮),CV-1,U937,3T3,L細胞,C127細胞,SP2/0,NS-0,MMT 060562,セルトリ細胞、BRL3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、または前述の細胞に由来する細胞株であってもよい。
【0084】
同一性:本明細書で使用される「同一性」という用語は、ポリマー分子間、例えば核酸分子間(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)及び/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態では、ポリマー分子は、その配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一である場合に、互いに「実質的に同一」であるとみなされる。例えば、2つの核酸またはポリペプチド配列のパーセント同一性の計算は、2つの配列を最適な比較目的で整列させることによって実行することができる(例えば、最適な整列のために、第1配列及び第2配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非同一配列を無視することができる)。特定の実施形態では、比較目的で整列させた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的に100%である。次いで、対応する位置にあるヌクレオチドを比較する。第1配列の位置が、第2配列の対応する位置と同じ残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)で占められている場合、その位置では分子は同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップの数、及び2つの配列の最適な整列のために導入する必要がある各ギャップの長さを考慮した配列によって共有される同一の位置の数の関数である。配列の比較及び2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。例えば、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMeyers and Miller (CABIOS、1989、4: 11-17)のアルゴリズムを使用して決定され得る。いくつかの例示的な実施形態では、ALIGNプログラムでの核酸配列の比較は、PAM120重量残基表と、ギャップ長ペナルティ12と、ギャップペナルティ4とを使用する。2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、代替的に、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用するGCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムを使用して決定され得る。
【0085】
改善、増加または低減:本明細書で使用されるこれらの用語、または文法的に同等の比較用語は、比較可能な参照測定値に対する相対的な値を示す。例えば、いくつかの実施形態では、目的のエージェントで達成された評価値は、比較可能な参照エージェントで得られた評価値と比較して「改善」される可能性がある。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、目的の対象または系において達成された評価値は、異なる条件(例えば、目的のエージェントの投与などの事象の前または後)下での同じ対象または系において、または異なる比較可能な対象において(例えば、目的の特定の病気、障害、もしくは病態の1つもしくは複数の指標が存在する場合の、または病態もしくはエージェントなどに以前に曝露された場合の、目的の対象または系とは異なる比較可能な対象または系において)得られた評価値と比較して、「改善」される場合がある。いくつかの実施形態では、比較用語は、統計的に関連する差異(例えば、統計的関連性を達成するのに十分な患者数及び/または大きさの差異)を指す。当業者は、与えられた文脈において、そのような統計的有意性を達成するために必要または十分な差異の程度及び/または患者数を認識すること、または容易に判定することが可能であろう。
【0086】
生体外:本明細書で使用される「生体外」という用語は、多細胞有機体内ではなく、例えば、試験管内または反応容器内(例えば、バイオリアクタ)、細胞培養物中などの人工的な環境で発生する事象を指す。
【0087】
生体外転写:本明細書で使用される「生体外転写」または「IVT」という用語は、例えば、タンパク質またはポリペプチドの生成を含む、様々な用途で使用するための合成RNA製品を生産するために、非細胞系において生体外で転写が行われる処理を指す。このような合成RNA製品を、生体外で翻訳することも、細胞内に直接導入して翻訳することも可能である。このような合成RNA製品には、例えば、mRNA、アンチセンスRNA分子、shRNA分子、長い非コードRNA分子、リボザイム、アプタマー、ガイドRNA(例えば、CRISPR用)、リボソームRNA、小さな核RNA、小さな核小体RNAなどが含まれるが、これらに限定されない。IVT反応では、通常、本明細書に記載及び/または利用されているDNAテンプレート(例えば、線状DNAテンプレート)、リボヌクレオチド(例えば、非修飾リボヌクレオチド三リン酸または修飾リボヌクレオチド三リン酸)、及び適切なRNAポリメラーゼが利用される。
【0088】
生体外転写RNA組成物:本明細書で使用される「生体外転写RNA組成物」という用語は、生体外転写によって合成された標的RNAを含む組成物を指す。いくつかの実施形態では、このような組成物は、過剰な生体外転写試薬(例えば、リボヌクレオチド及び/またはキャッピングエージェントを含む)、核酸もしくはその断片(例えば、DNAテンプレートもしくはその断片)、ポリペプチドもしくはその断片(例えば、組換え酵素もしくは宿主細胞タンパク質もしくはその断片)、及び/またはその他の不純物を含み得る。いくつかの実施形態では、生体外転写RNA組成物は、製剤及び/またはさらなる製造及び/または処理のための適切な緩衝液中に所望の濃度のRNA転写物を含むRNA転写物調製物を最終的に生産する精製処理の前に、処置及び/または処理されている可能性がある。例えば、いくつかの実施形態では、生体外転写RNA組成物は、DNAテンプレートを除去または消化するために処置されている可能性がある(例えば、DNaseを使用)。いくつかの実施形態では、生体外転写RNA組成物は、生体外転写反応(例えば、プロテアーゼを使用)中に存在するポリペプチド(例えば、RNAポリメラーゼ、RNase阻害剤などの酵素)を除去または消化するために処置されている可能性がある。
【0089】
生体内:本明細書で使用される「生体内」という用語は、ヒト及び非ヒト動物などの多細胞有機体内で発生する事象を指す。
【0090】
ナノ粒子:本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、1000ナノメートル(nm)未満の直径を有する粒子を指す。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、アメリカ国立科学財団によって定義されているように、300nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、アメリカ国立衛生研究所によって定義されているように、100nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、アメリカ国立衛生研究所によって定義されているように、80nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、空間または区画を囲んで封入する膜によってバルク溶液から分離された1つまたは複数の封入区画を含む。
【0091】
核酸/ポリヌクレオチド:本明細書で使用される「核酸」という用語は、少なくとも2つ以上のヌクレオチドのポリマーを指し、例えば、少なくとも3つのヌクレオチド、少なくとも4つのヌクレオチド、少なくとも5つのヌクレオチド、少なくとも6つのヌクレオチド、少なくとも7つのヌクレオチド、少なくとも8つのヌクレオチド、少なくとも9つのヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、またはそれ以上を含む。いくつかの実施形態では、核酸はDNAであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、核酸はRNAであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、核酸はペプチド核酸(PNA)であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖核酸であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、核酸は二本鎖核酸であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖部分及び二本鎖部分の両方を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つまたは複数のホスホジエステル結合を含むバックボーンを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合及び非ホスホジエステル結合の両方を含むバックボーンを含む。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、例えば「ペプチド核酸」のように、1つまたは複数のホスホロチオアートまたは5’-N-ホスホロアミダイト結合及び/または1つまたは複数のペプチド結合を含むバックボーンを含み得る。いくつかの実施形態では、核酸は、1つまたは複数、またはすべての天然残基(例えば、アデニン、シトシン、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、グアニン、チミン、ウラシル)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つまたは複数、またはすべての非天然残基を含む。いくつかの実施形態では、非天然残基は、ヌクレオシドアナログ(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、1-メチル-プソイドウリジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニルウリジン、C5-プロピニルシチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、6-O-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、インターカレートされた塩基、及びそれらの組み合わせ)を含む。いくつかの実施形態では、非天然残基は、天然残基中のものと比較して、1つまたは複数の修飾糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAまたはポリペプチドなどの機能的遺伝子製品をエンコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1つまたは複数のイントロンを含むヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、天然源からの単離、酵素合成(例えば、相補的テンプレートに基づく、例えば、生体内または生体外での重合)、組換え細胞または系における複製、または化学合成によって調製され得る。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、15,500、16,000、16,500、17,000、17,500、18,000、18,500、19,000、19,500、または20,000以上の残基またはヌクレオチドの長さである。
【0092】
医薬品グレード:本明細書で使用される「医薬品グレード」という用語は、一般に認められた国または地域の薬局方(例えば、アメリカ合衆国薬局方及び国民医薬品集(USP-NF))によって確立された化学的及び生物学的原薬、薬製品、剤形、配合調製物、賦形剤、医療機器、及び栄養補助食品の標準を指す。
【0093】
ポリペプチド:本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、通常、少なくとも3つ以上のアミノ酸のポリマーという当技術分野で認識されている意味を有する。当業者であれば、「ポリペプチド」という用語が、本明細書に記載された完全な配列を有するポリペプチドを包含するだけでなく、そのような完全なポリペプチドの機能的、生物学的に活性な、または特徴的な断片、部分、またはドメイン(例えば、少なくとも1つの活性を保持する断片、部分、またはドメイン)を表すポリペプチドもまた包含するほど十分に全体的であることが意図されていることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、またはその両方を含んでもよく、及び/または当技術分野で知られている様々な任意のアミノ酸修飾またはアナログを含んでもよい。有用な修飾は、例えば、末端アセチル化、アミド化、メチル化などを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、及びそれらの組み合わせを含んでもよい(例えば、ペプチド模倣体であるか、またはそれを含んでもよい)。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは酵素であるか、またはそれを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはポリペプチド抗原であるか、またはそれを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは抗体エージェントであるか、またはそれを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはサイトカインであるか、またはそれを含んでもよい。
【0094】
純粋または精製:本明細書で使用される場合、エージェントまたは実体は、実質的に他の成分を含まないならば、「純粋」であるか、または「精製」されている。例えば、特定のエージェントまたは実体が約90%超含まれる調整物は、通常、純粋な調整物とみなされる。いくつかの実施形態では、エージェントまたは実体は、調製物中で少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%純粋である。
【0095】
リボヌクレオチド:本明細書で使用される「リボヌクレオチド」という用語は、修飾されていないリボヌクレオチド及び修飾されたリボヌクレオチドを包含する。例えば、修飾されていないリボヌクレオチドには、プリン塩基のアデニン(A)及びグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基のシトシン(C)及びウラシル(U)が含まれる。修飾リボヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾を含んでもよく、その例には、例えば、(a)末端修飾、例えば5’末端修飾(例えば、リン酸化、脱リン酸化、結合、逆結合など)、3’末端修飾(例えば、結合、逆結合など)、(b)塩基修飾、例えば、修飾塩基、安定化塩基、不安定化塩基、またはパートナーの広範なレパートリーとの塩基対合する塩基、または共役塩基による置換、(c)糖修飾(例えば、2’位または4’位)または糖の置換、及び(d)ホスホジエステル結合の修飾または置換を含むヌクレオシド間結合修飾が含まれるが、これらに限定されない。「リボヌクレオチド」という用語は、修飾されたリボヌクレオチド三リン酸及び非修飾のリボヌクレオチド三リン酸を含むリボヌクレオチド三リン酸も包含する。
【0096】
リボ核酸(RNA):本明細書で使用される「RNA」という用語は、リボヌクレオチドのポリマーを指す。いくつかの実施形態では、RNAは一本鎖である。いくつかの実施形態では、RNAは二本鎖である。いくつかの実施形態では、RNAは一本鎖部分及び二本鎖部分の両方を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、上記の「核酸/ポリヌクレオチド」の定義で説明したバックボーン構造を含むことができる。RNAを、調節RNA(例えば、siRNA、microRNAなど)またはメッセンジャーRNA(mRNA)とすることができる。いくつかの実施形態では、RNAはmRNAである。RNAがmRNAであるいくつかの実施形態では、RNAは、通常、その3’末端にポリ(A)領域を含む。RNAがmRNAであるいくつかの実施形態では、RNAは、通常、その5’末端に、例えば、翻訳を開始するためにmRNAを認識してリボソームに結合させるための、当技術分野で認識されているキャップ構造を含む。いくつかの実施形態では、RNAは合成RNAである。合成RNAは、生体外で合成されたRNA(例えば、酵素合成法及び/または化学合成法による)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは一本鎖RNAである。いくつかの実施形態では、一本鎖RNAは自己相補的要素を含んでもよく、及び/または二次及び/または三次構造を確立してもよい。当業者であれば、一本鎖RNAが「エンコード」していると言及される場合、それ自体エンコードする核酸配列を含むことを意味するか、またはエンコードする核酸配列の相補物を含むことを意味するかのいずれかであることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、一本鎖RNAを、自己増幅RNA(自己複製RNAとしても知られる)とすることができる。
【0097】
組換え体:本明細書で使用される「組換え体」という用語は、宿主細胞にトランスフェクションされた組換え発現ベクターを使用して発現されたポリペプチドなどの組換え手段によって設計、工学的処理、調製、発現、作成、製造、及び/または単離されたポリペプチド;組換え組み合わせヒトポリペプチドライブラリから単離されたポリペプチド;遺伝子トランスジェニックであるか、またはそうでなければ遺伝子(複数可)、もしくはポリペプチドもしくはその1つもしくは複数の成分(複数可)、部分(複数可)、要素(複数可)、もしくはドメイン(複数可)をエンコードし、及び/またはその発現を導く遺伝子成分を発現するように操作されている動物(例えば、マウス、ウサギ、ヒツジ、魚など)から単離されたポリペプチド;及び/または、選択された核酸配列要素を互いにスプライシングまたはライゲーションすること、選択された配列要素を化学的に合成すること、及び/またはそうでなければポリペプチドもしくはその1つまたは複数の成分(複数可)、部分(複数可)、要素(複数可)、もしくはドメイン(複数可)をエンコードし、及び/またはその発現を導く核酸を発生させること、を含むその他の任意の手段によって調製、発現、作成、または単離されたポリペプチド、を指すことを意図している。いくつかの実施形態では、選択されたそのような配列要素の1つまたは複数が自然界に見られる。いくつかの実施形態では、選択されたそのような配列要素の1つまたは複数がコンピュータ内で設計される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の選択されたそのような配列要素は、既知の配列要素の突然変異誘発(例えば、生体内または生体外)から、例えば天然源または合成源(例えば、目的の源有機体(例えば、ヒト、マウスなど)の生殖細胞系列など)から、生じる。
【0098】
参照:本明細書で使用される「参照」という用語は、比較を実行する標準または対照を表す。例えば、いくつかの実施形態では、目的のエージェント、動物、個体、集団、サンプル、配列、または値が、参照エージェントまたは対照エージェント、動物、個体、集団、サンプル、配列、または値と比較される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、目的の試験または決定と実質的に同時に試験及び/または決定される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、履歴参照または履歴対照であり、任意選択で有形媒体に具体化される。通常、当業者には理解されるように、参照または対照は、評価の下にあるものと比較可能な条件または状況の下で決定または特徴付けられる。当業者であれば、特定の可能な参照または対照への依存及び/または比較を正当化するのに十分な類似点が存在する場合を理解するであろう。
【0099】
RNAポリメラーゼ:本明細書で使用される「RNAポリメラーゼ」という用語は、DNAまたはRNAをテンプレートとして使用して、ヌクレオチド鎖にリボヌクレオチド単位を付加することにより、ポリリボヌクレオチド合成に触媒作用を及ぼす酵素を指す。この用語は、自然界に存在する完全な酵素、または単離された活性触媒ドメインもしくは機能的ドメイン、またはその断片のいずれかを指す。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼ酵素はプライマーまたは核酸鎖の3’末端、またはプロモーター配列で合成を開始し、標的核酸に沿って5’方向に進行し、合成が終了するまで標的核酸に相補的な鎖を合成する。
【0100】
RNA転写物調製物:本明細書で使用される「RNA転写物調製物」という用語は、本明細書に記載される生体外転写RNA組成物から精製されたRNA転写物を含む調製物を指す。いくつかの実施形態では、RNA転写物調製物は、医薬品グレードのRNA転写物を含む調製物である。いくつかの実施形態では、RNA転写物調製物は、その1つまたは複数の製品品質属性が特徴付けられ、放出基準及び/または許容基準(例えば、本明細書に記載されているもの)を満たすように決定されるRNA転写物を含む調製物である。このような製品品質属性の例には、外観、RNAの長さ、RNAとしての原薬の同一性、RNAの完全性、RNA配列、RNA濃度、pH、浸透圧、残留DNAテンプレート、残留二本鎖RNA、細菌性エンドトキシン、バイオバーデン、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
室温:本明細書で使用される「室温」という用語は周囲温度を指す。いくつかの実施形態では、室温は約18℃~30℃、例えば、約18℃~25℃、または約20℃~25℃、または約20~30℃、または約23~27℃、または約25℃である。
【0102】
サンプル:本明細書で使用される「サンプル」という用語は、通常、例えば本明細書に記載されているような、目的の源から取得された、またはそれに由来する、材料のアリコートを指す。いくつかの実施形態では、目的の源は生物学的源または環境的源である。いくつかの実施形態では、目的の源は、微生物、植物、または動物(例えば、マウス)などの細胞または有機体であるか、またはそれらを含む場合がある。いくつかの実施形態では、目的の源は、生物学的組織または生物学的流体であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、生物学的流体は、細胞内液、細胞外液、血管内液(血漿)、間質液、リンパ液、及び/または細胞通過液であるか、またはこれらを含んでもよい。いくつかの実施形態では、生物学的組織またはサンプルを、例えば、吸引、生検(例えば、細針または組織生検)、綿棒(例えば、口腔、鼻腔、皮膚、または膣綿棒)、掻爬、手術、洗浄(washing)または洗浄(lavage)(例えば、気管支肺胞、管、鼻腔、眼、口腔、子宮、膣、またはその他の洗浄(washing)もしくは洗浄(lavage))によって取得してもよい。いくつかの実施形態では、サンプルは対象から得られた細胞であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、任意の適切な手段によって目的の源から直接取得された「一次サンプル」である。いくつかの実施形態では、文脈から明らかなように、「サンプル」という用語は、一次サンプルを処理することによって(例えば、一次サンプルの1つまたは複数の成分を除去することによって、及び/または一次サンプルに1つまたは複数のエージェントを添加することによって)得られる調製物を指す。例えば、「処理済みサンプル」には、サンプルから抽出された、または一次サンプルに1つもしくは複数の技術を適用することで得られた、例えば核酸またはタンパク質が含まれる場合があり、その技術の例には、核酸の増幅または逆転写、特定の成分の単離及び/または精製などがある。
【0103】
安定:核酸、及び/または核酸を含む組成物、例えば脂質ナノ粒子に内包されたものに適用された場合の「安定」という用語は、そのような核酸及び/または組成物が、指定された一連の条件(例えば、pH、温度、光、相対湿度など)の下で一定期間にわたってその特性(例えば、物理的及び/または構造的特性、機能、及び/または活性)の1つまたは複数の態様を維持することを意味する。いくつかの実施形態では、このような安定性は、少なくとも約1時間の期間にわたって維持される。いくつかの実施形態では、このような安定性は、約5時間、約10時間、約1日、約1週間、約2週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約8ヶ月、約10ヶ月、約12ヶ月、約24ヶ月、約36ヶ月、またはそれ以上の期間にわたって維持される。いくつかの実施形態では、このような安定性は、約1日~約24ヶ月、約2週間~約12ヶ月、約2ヶ月~約5ヶ月などの範囲内の期間にわたって維持される。いくつかの実施形態では、このような安定性は周囲条件(例えば、室温及び周囲圧力)下で維持される。いくつかの実施形態では、このような安定性は生理学的条件下(例えば、生体内または約37℃、例えば血清中またはリン酸緩衝生理食塩水中)で維持される。いくつかの実施形態では、このような安定性は低温保管下(例えば、約4℃以下、例えば、-20℃、または-70℃を含む)で維持される。いくつかの実施形態では、核酸、及び/または核酸を含む組成物が光から保護されている場合(例えば、暗所に保持されている場合)に、このような安定性が維持される。
【0104】
一例として、いくつかの実施形態では、「安定」という用語は、ナノ粒子組成物(例えば、脂質ナノ粒子組成物)に関して使用される。このような実施形態では、安定したナノ粒子組成物(例えば、安定したナノ粒子組成物)及び/またはその成分(複数可)は、指定された一連の条件下で、一定期間にわたってその特性(例えば、物理的及び/または構造的特性、機能(複数可)、及び/または活性)の1つまたは複数の態様を維持する。例えば、いくつかの実施形態では、安定したナノ粒子組成物(例えば、脂質ナノ粒子組成物)は、ナノ粒子の平均粒子サイズ、粒子サイズ分布、及び/または多分散性が、指定された一連の条件(例えば、本明細書に記載)下で、一定期間にわたって(例えば、本明細書に記載)実質的に維持される(例えば、初期特性(複数可)と比較して10%以内)ことを特徴とする。いくつかの実施形態では、安定したナノ粒子組成物(例えば、脂質ナノ粒子組成物)は、一定期間にわたって指定された一連の条件(例えば、本明細書に記載されるような条件)下で維持された後、検出可能な量の分解生成物(例えば、加水分解及び/または酵素消化に関連するもの)が存在しないことを特徴とする。
【0105】
合成:本明細書で使用される「合成」という用語は、人工的な実体、またはヒトの介入によって作られた実体、または自然に発生するものではなく合成によって生じた実体を指す。例えば、合成核酸またはポリヌクレオチドは、いくつかの実施形態では化学的に合成された、例えば、いくつかの実施形態では固相合成によって合成された、核酸分子を指す。いくつかの実施形態では、「合成」という用語は、生物細胞の外部で作られた実体を指す。例えば、いくつかの実施形態では、合成核酸またはポリヌクレオチドは、テンプレートを使用して生体外転写によって生成される核酸分子(例えば、RNA)を指す。
【0106】
3プライム非翻訳領域:本明細書で使用される「3プライム非翻訳領域」または「3’UTR」という用語は、オープンリーディングフレーム配列のコード領域の終止コドンに続いて始まるmRNA分子の配列を指す。いくつかの実施形態では、3’UTRは、オープンリーディングフレーム配列のコード領域の終止コドンの直後から始まる。他の実施形態では、3’UTRは、オープンリーディングフレーム配列のコード領域の終止コドンの直後から始まらない。
【0107】
閾値レベル(例えば、許容基準):本明細書で使用される「閾値レベル」という用語は、例えば分析で得られた測定結果に関する情報を取得し、及び/または測定結果を分類するための基準として使用されるレベルを指す。例えば、いくつかの実施形態では、閾値レベルは、集団の2つのサブセット(例えば、品質管理基準を満たすバッチ、対、品質管理基準を満たさないバッチ)間の境界線を定義する分析で測定された値を意味する。したがって、閾値レベル以上の値は集団の1つのサブセットを定義し、閾値レベルより低い値は集団の他のサブセットを定義する。閾値レベルを、1つまたは複数の対照サンプルに基づいて、または対照サンプルの集団全体にわたって決定することができる。閾値レベルは、目的の測定が行われる前、測定と同時、または測定後に決定することができる。いくつかの実施形態では、閾値レベルを値の範囲とすることができる。
【0108】
ベクター:本明細書で使用される「ベクター」という用語は、結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。1つの種類のベクターは「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAを指す。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)を、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込み、それによって、宿主ゲノムとともに複製することができる。そのうえ、特定のベクターは、それらが作動可能に結合された遺伝子の発現を導くことができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0109】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)には、標準技術を使用してもよい。酵素反応及び精製技術を、製造業者の仕様書に従って、または当技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように実行してもよい。前述の技術及び手順を、概して、当技術分野において周知である従来の方法に従って、かつ本明細書全体を通して引用され、考察される、全体的かつより具体的な様々な参考文献に記載されるように実行してもよい。例えば、Green and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2012))を参照のこと。これは、いかなる目的においても参照により本明細書に組み込まれる。
[発明を実施するための形態]
【0110】
核酸治療剤、特にRNA治療剤は、様々な病気の治療及び予防のための特に有望な治療法のクラスを表しており、その病気の例には、がん、感染病、及び/または特定のタンパク質の過剰または欠乏に関連する病気または障害がある。
【0111】
特にRNA治療剤は、COVID19パンデミックに対処するためのワクチンとして非常に効果的である。特に、この技術の有望性と、非常に大規模なもの(例えば、SARS-CoV-2向けに開発中のような世界規模でのワクチン接種及び/または治療)を含む多種多様な臨床状況への適応性を考慮すれば、製造技術、特に大規模生産に適用可能な技術の改善は特に価値がある。
【0112】
効果的な送達技術の開発は核酸治療の成功の中心であり、脂質ナノ粒子技術は特に効果的であることが証明されており(例えば、Cullis et al. Molecular Therapy 25:1467, July 5, 2017で概説されている;US Patent 8058069も参照のこと)、特にRNA治療剤にとって効果的である(例えば、Hou et al., Nat. Rev. Mater doi.org/10.1038/s41578-021-00358-0, August 10, 2021で概説されている)。
【0113】
本明細書で提供される技術は、とりわけ、例えば商業規模及び/または商業条件下で、医薬品グレードのLNP調製物及び/または組成物(例えば、核酸-LNP調製物、具体的にはRNA-LNP調製物)の特に効果的及び/または効率的な生産を達成するために有用である。例えば、様々な実施形態において、提供される技術は、医薬品グレード(及び/または規模)の生産に特有の要件の達成を可能にし、及び/または促進する。その要件の例には、例えば、バッチサイズ及び/または生産速度、所定の工程内制御及び/またはロットリリース仕様(例えば、高純度、完全性、効力、及び/または安定性など)などがある。
【0114】
本開示は、LNP組成物(例えば、RNA、例えば、治療用mRNAなどの治療用RNAを含む)を製造するための技術を提供する。いくつかの実施形態では、提供される技術は、医薬品グレードのRNA-LNP治療剤の製造に有用である。
【0115】
いくつかの実施形態では、提供される技術は、LNP(例えば、核酸-LNP、例えば、RNA-LNP)治療剤、例えば、医薬品グレードの治療剤の大規模製造に有用である。例えば、いくつかのそのような実施形態では、本明細書で提供される技術を使用して、少なくとも10,000バイアルのLNP(例えば、核酸-LNP、例えば、RNA-LNP)治療剤(例えば、少なくとも20,000バイアル、少なくとも30,000バイアル、少なくとも40,000バイアル、少なくとも50,000バイアル、少なくとも60,000バイアル、少なくとも70,000バイアル、少なくとも80,000バイアル、少なくとも90,000バイアル、少なくとも100,000バイアル、少なくとも200,000バイアル、少なくとも300,000バイアル、少なくとも400,000バイアル、少なくとも500,000バイアル、またはそれ以上を含む)の医薬品グレードのバッチスループットを生産することができる。例えば、いくつかのそのような実施形態では、本明細書で提供される技術を使用して、少なくとも50LのLNP(例えば、核酸LNP、例えば、RNA-LNP)治療剤(例えば、少なくとも50L、少なくとも60L、少なくとも70L、少なくとも80L、少なくとも100L、少なくとも110L、少なくとも120L、少なくとも130L、少なくとも140L、少なくとも150L、またはそれ以上を含む)の医薬品グレードのバッチスループットを生産することができる。いくつかの実施形態では、各バイアルは、0.01mg~0.5mg(例えば、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.15mg、0.2mg、0.25mg、0.3mg、0.35mg、0.4mg、0.45mg、0.5mg)の量のRNA薬製品を含み得る。
【0116】
本明細書に記載の技術は、病気、障害、または病態(例えば、がん、感染病、タンパク質欠乏に関連する病気など)の治療及び/または予防のためのLNP(例えば、核酸-LNP、例えば、RNA-LNP)組成物の製造に有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術は、ポリペプチドを含むか、または送達する(例えば、それをエンコードするRNAなどの核酸を含む、及び/または送達することによって)LNP(例えば、核酸-LNP、例えば、RNA-LNP)組成物の製造に有用であり得る。
【0117】
いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載の技術は、抗原に対する免疫応答を誘導するためのLNP(例えば、核酸-LNP、例えば、RNA-LNP)組成物の製造に有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術は、コロナウイルス感染病、例えばSARS-CoV-2感染病の治療及び/または予防のためのRNA-LNP(例えば、核酸-LNP、例えば、RNA-LNP)組成物の製造に有用であり得る。このことは、以下に記載されている。Walsh et al. “RNA-based COVID-19 vaccine BNT162b2 selected for a pivotal efficacy study” medRxiv preprint (2020), https://doi.org/10.1101/2020.08.17.20176651でオンラインアクセスが可能である;及びMilligan et al. “Phase I/II study of COVID-19 RNA vaccine BNT162b1 in adults” Nature (2020 August), https://doi.org/10.1038/s41586-020-2639-4でオンラインアクセスが可能であり,それぞれの内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0118】
脂質ナノ粒子
当業者は、脂質ナノ粒子が、例えば、小分子、及び様々な核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、siRNA、mRNA)を含む広範囲の治療エージェントの臨床送達に成功していることを認識している(例えば、Hu et al., Nat. Rev. Mater. https://doi.org/10.1038/s41578-021-00358-0, August 10, 2021で概説されている)。
【0119】
脂質ナノ粒子組成物の投与には様々な経路が提案及び/または試験されており、当業者であれば、特定の組成物に適した経路(例えば、送達されるエージェントに応じて)を認識するであろう。いくつかの例を挙げると、いくつかの実施形態では、LNPは非経口投与され、ほとんどの臨床研究では非経口投与、特に静脈内、皮下、皮内、硝子体内、腫瘍内、または筋肉内注射が利用されている。子宮内注射についても記載されている。いくつかの実施形態では、局所投与が利用される。いくつかの実施形態では、鼻腔内投与が利用される。
【0120】
いくつかの実施形態では、投与されたLNPは肝臓に送達されるか、またはそこに蓄積される。肝臓は本来、タンパク質を生成し分泌する能力に優れていることを考慮すれば、肝臓送達は、LNPで内包されたエージェント(及び/または、RNAエージェントなどの核酸エージェントの場合は、それによってエンコードされるポリペプチド)を血流に送達するのに有用であることが分かる。このような肝臓送達は、例えば、特定の代謝障害または血液疾患で欠損しているタンパク質の発現、または例えば感染エージェントまたはがん細胞に対する免疫応答(例えば、特に抗体応答)を誘発するのに有効なタンパク質の発現に特に有用であると提案されている。
【0121】
いくつかの実施形態では、投与されたLNPは、抗原提示細胞(例えば、皮膚、筋肉、粘膜組織などに存在する可能性がある)に送達され、及び/または抗原提示細胞によって取り込まれる。このような投与は、T細胞免疫の誘導(例えば、感染病及び/またはがんの治療)に特に有用または効果的である可能性がある。
【0122】
様々な実施形態において、脂質ナノ粒子は、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約50nm~約130nm、約50nm~約110nm、約50nm~約100nm、約50nm~約90nm、または約60nm~約80nm、または約60nm~約70nmの平均サイズ(例えば、平均直径)を有し得る。いくつかの実施形態では、本開示に従って有用であり得る脂質ナノ粒子は、約50nm~約100nmの平均サイズ(例えば、平均直径)を有し得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、80nm未満、75nm未満、70nm未満、65nm未満、60nm未満、55nm未満、50nm未満、または45nm未満の平均サイズ(例えば、平均直径)を有し得る。いくつかの実施形態では、本開示に従って有用であり得る脂質ナノ粒子は、約45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、または150nmの平均サイズ(例えば、平均直径)を有し得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の脂質ナノ粒子を形成する脂質は、ポリマー共役脂質と、カチオン性脂質と、ヘルパー中性脂質とを含む。そのようないくつかの実施形態では、全ポリマー共役脂質は、全脂質の約0.5~5モル%、約0.7~3.5モル%、約1~2.5モル%、約1.5~2モル%、または約1.5~1.8モル%で存在し得る。いくつかの実施形態では、全ポリマー共役脂質は、全脂質の約1~2.5モル%で存在し得る。いくつかの実施形態では、全カチオン性脂質と全ポリマー共役脂質(例えば、PEG共役脂質)とのモル比は、約100:1~約20:1、または約50:1~約20:1、または約40:1~約20:1、または約35:1~約25:1であってもよい。いくつかの実施形態では、全カチオン性脂質と全ポリマー共役脂質とのモル比は、約35:1~約25:1であってもよい。
【0124】
本明細書に記載の脂質ナノ粒子中のポリマー共役脂質、カチオン性脂質、及びヘルパー中性脂質を伴ういくつかの実施形態では、全カチオン性脂質は、全脂質の約35~65モル%、約40~60モル%、約41~49モル%、約41~48モル%、約42~48モル%、約43~48モル%、約44~48モル%、約45~48モル%、または約46~49モル%で存在する。特定の実施形態では、全カチオン性脂質は、全脂質の約47.0、47.1、47.2、47.3、47.4、47.5、47.6、47.7、47.8、47.9または48.0モル%で存在する。
【0125】
本明細書に記載の脂質ナノ粒子中のポリマー共役脂質、カチオン性脂質、及びヘルパー中性脂質を伴ういくつかの実施形態では、全中性脂質は、全脂質の約35~65モル%、約40~60モル%、約45~55モル%、または約47~52モル%で存在する。いくつかの実施形態では、全中性脂質は全脂質の35~65モル%で存在する。いくつかの実施形態では、全非ステロイド中性脂質(例えば、DPSC)は、全脂質の約5~15モル%、約7~13モル%、または9~11モル%で存在する。いくつかの実施形態では、全非ステロイド中性脂質は、全脂質の約9.5、10、または10.5モル%で存在する。いくつかの実施形態では、全カチオン性脂質と非ステロイド中性脂質とのモル比は、約4.1:1.0~約4.9:1.0、約4.5:1.0~約4.8:1.0、または約4.7:1.0~4.8:1.0の範囲である。いくつかの実施形態では、全ステロイド中性脂質(例えば、コレステロール)は、全脂質の約35~50モル%、約39~49モル%、約39~46モル%、約39~44モル%、または約39~42モル%で存在する。特定の実施形態では、全ステロイド中性脂質(例えば、コレステロール)は、全脂質の約39、40、41、42、43、44、45、または46モル%で存在する。特定の実施形態では、全カチオン性脂質と全ステロイド中性脂質とのモル比は約1.5:1~1:1.2、または約1.2:1~1:1.2である。
【0126】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質、ポリマー共役脂質、及び中性脂質を含む脂質組成物は、WO2018/081480に記載されているように、全脂質の特定のモルパーセントで、または特定のモル比(互いに対して)で存在する個々の脂質を有することができ、それぞれの全内容は、本明細書に記載の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子を形成する脂質は、ポリマー共役脂質(例えば、PEG共役脂質)と、カチオン性脂質と、中性脂質とを含み、ポリマー共役脂質は全脂質の約1~2.5モル%で存在し、カチオン性脂質は全脂質の35~65モル%で存在し、中性脂質は全脂質の35~65モル%で存在する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子を形成する脂質は、ポリマー共役脂質(例えば、PEG共役脂質)と、カチオン性脂質と、中性脂質とを含み、ポリマー共役脂質は全脂質の約1~2モル%で存在し、カチオン性脂質は全脂質の45~48.5モル%で存在し、中性脂質は全脂質の45~55モル%で存在する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子を形成する脂質は、ポリマー共役脂質(例えば、PEG共役脂質)と、カチオン性脂質と、非ステロイド中性脂質及びステロイド中性脂質を含む中性脂質とを含み、ポリマー共役脂質は全脂質の約1~2モル%で存在し、カチオン性脂質は全脂質の45~48.5モル%で存在し、非ステロイド中性脂質は全脂質の9~11モル%で存在し、ステロイド中性脂質は全脂質の約36~44モル%で存在する。このような実施形態の多くでは、PEG共役脂質は、WO2017/075531(上記参照)に記載されているような構造
【化1】
またはその誘導体であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、PEG共役脂質は、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミドであるか、またはそれを含む。このような実施形態の多くでは、カチオン性脂質は、本明細書の表1のI-1~I-10から選択される化学構造またはその誘導体であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノアート)であるか、またはそれを含む。このような実施形態の多くでは、中性脂質はDSPC及びコレステロールを含み、DSPCは非ステロイド中性脂質であり、コレステロールはステロイド中性脂質である。
【0128】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子には、1つまたは複数のカチオン性脂質(例えば、本明細書に記載のもの)が含まれる。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質ナノ粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのポリマー共役脂質と、少なくとも1つのヘルパー脂質(例えば、少なくとも1つの中性脂質)とを含み得る。
【0129】
図1は、本開示の態様による例示的なモジュール式薬生産システム100を示す。図1の実施形態では、システム100は、底部に3つの輸送コンテナ102、底部3の上に別の2つまたは3つの輸送コンテナ102が積み重ねられた合計5つまたは6つの輸送コンテナ102を備えてもよい。システム100は、システム100内での人員のアクセスを可能にするために、必要に応じて、様々な外部プラットフォーム104及び/または階段106を備えてもよい。システム100は、薬製品の生産に必要な様々な装置108を備える。装置108は、タンク、濾過装置、ミキサー、バルブ、センサー、処理制御及び試験装置(コンピュータを含む)、ならびにその他の装置を備えてもよい。いくつかの実施形態では、システム100は、システム100を所望の温度範囲(例えば、約15℃~約25℃、及び/または約10℃~約30℃、ならびにその他の好適な温度範囲)内に維持するためのHVAC(暖房、換気、及び空調)装置を備えてもよい。1つまたは複数の実施形態では、システムが備える第1セットの3つのコンテナ102は、第2セットの3つのコンテナ102の上に積み重ねられ、第1セットの3つのコンテナ102は原薬生産モジュール及び/または薬製品生産モジュールを収容し、第2セットの3つのコンテナにはHVAC装置を収容してもよい。いくつかの実施形態では、HVAC装置は最上階に収容され、原薬生産モジュール及び/または薬製品生産モジュールは最下階に収容されてもよい。いくつかの実施形態では、相対的な位置が逆転する場合がある(すなわち、HVAC装置が下部になる)。
【0130】
図2は、本開示の態様による例示的な薬製品製造事業体110及び/または処理の概要を示す。図2の実施形態では、事業体110及び/または処理110は、生産設備(例えば、ドイツのBioNTech設備、及び/または様々な場所に配置された1つまたは複数の請負業者及び/またはパートナーの設備)での工程112で、モジュールを構築すること、及びモジュール(すなわち、コンテナ102)を装備させることを含んでもよい。工程114では、事業体110及び/または処理110は、構築されたコンテナ102及び/または装置を薬生産施設に輸送することを含んでもよい。工程116では、事業体110及び/または処理110は、構築されたモジュール(すなわち、コンテナ102)及び/または装置を薬生産施設に設置することを含んでもよい。工程118では、事業体110及び/または処理110は、薬生産施設への供給品(すなわち、原薬及び/または薬製品の生産に必要な処理入力材料)を輸送することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、工程118を工程114と同時に行ってもよい(すなわち、処理入力供給品はコンテナ102とともに施設に輸送される)。工程122では、事業体110及び/または処理110は、原薬及び/または薬製品の生産を開始することを含んでもよい。
【0131】
図3は、本開示の態様による例示的な薬製品製造施設、システム、及び/または処理120の概要を示す。図3の実施形態では、システム120は、概して、8個のコンテナ102を備えてもよい。いくつかの実施形態では、システム120は、8個未満のコンテナ102及び/または8個を超えるコンテナ102を備えてもよい。システム120は、原薬生産124専用の1つまたは複数のコンテナ102の第1グループと、薬製品生産126専用の1つまたは複数のコンテナ102の第2グループとを備えてもよい。さらに、システム120は、品質管理モジュール(及び/またはコンテナ)140と、充填及び仕上げモジュール(及び/またはコンテナ)142とを備えてもよい。原薬生産124専用の1つまたは複数のコンテナ102の第1グループは、DNA転写モジュール128(またはコンテナ)と、第1精製モジュール130(またはコンテナ)と、第1バイオバーデン低減モジュール132(またはコンテナ)とを備えてもよい。薬製品生産126専用の1つまたは複数のコンテナ102の第2グループは、LNP形成モジュール134(またはコンテナ)と、第2精製モジュール136(またはコンテナ)と、第2バイオバーデン低減モジュール138(またはコンテナ)とを備えてもよい。各モジュールまたはコンテナは、前のモジュールまたは隣接するモジュールから入力を受け取ってもよい。例えば、LNP形成モジュール134は、第1バイオバーデン低減モジュール132からの入力として原薬を受け取ってもよい。
【0132】
図4は、本開示の態様による例示的な薬製品製造施設150の概要を示す。図4の実施形態では、施設150は、原薬生産専用の1つまたは複数のコンテナ102の第1グループ124と、薬製品生産専用の1つまたは複数のコンテナ102の第2グループ126とを備えてもよい。第1グループ124及び第2グループ126のそれぞれは、6つのコンテナ102を備えて、各グループの6つのコンテナのうち3つはHVAC装置を収容し(例えば、第1レベルに、または第2レベルに)、同様に6つのコンテナのうち3つは、図3に示すように処理モジュールを収容してもよい(すなわち、第1グループの3つのコンテナ124は、DNA転写モジュール128と、第1精製モジュール130と、第1バイオバーデン低減モジュール132とを収容し、第2グループの3つのコンテナ126は、LNP形成モジュール134と、第2精製モジュール136と、第2バイオバーデン低減モジュール138とを含有する)。いくつかの実施形態では、施設150は、異なる数のコンテナを備えてもよく、本明細書で考察する他のモジュール(例えば、品質管理モジュール140、充填及び仕上げモジュール142、及び本明細書で説明する他のモジュール)を備えてもよい。いくつかの実施形態では、第1グループ124及び第2グループ126は、約800m以下の合計面積(または占有面積(例えば、施設の占有面積))を包含してもよく、年間約5,000万回分のワクチンを生産することができる場合がある。
【0133】
図5及び図6は、本開示の態様による、例示的な薬製品製造施設及び/またはモジュール160の概要を示す。図5の実施形態では、モジュール160は、図3に示され、本明細書で説明されているように、個々のモジュール128、130、132、124、126、128、140、及び/または142(それらの組み合わせを含めて)のいずれかであってもよく、またはそれらを備えてもよい。図5及び6を参照すると、いくつかの実施形態では、モジュール160は、原薬及び/または薬製品の生産に必要なすべての関連装置を単一のコンテナに備えてもよい(例えば、中規模、小規模、及び/またはマイクロ規模の生産用途で使用するため)。例えば、モジュール160を、時間制限のある環境で比較的小規模に個別的な治療及び/または療法が必要とされる病院またはその他の場所に設置してもよい。モジュール160は、原薬(及び/またはその他の処理入力供給)の受け取り及び/または処理のための装置144、タンク148及び/または混合装置148(例えば、LNP(すなわち、RNA-LNP生産)用)、濾過装置152、処理制御装置154、充填及び仕上げ装置146、及び/または保管装置もしくは冷蔵装置156を備えてもよい。より大規模な生産の観点では、混合装置及び濾過装置などの特定の装置は固定サイズでしか市販されていないため、それによって薬生産を行い得る規模が部分的に決定されている。より小規模では、増分サイズの装置の可用性が大幅に向上する可能性があり、これは、薬生産全体(原薬及び薬製品の製造を含む)が単一の輸送コンテナ102内に都合よく収まる可能性があることを意味する。さらに、薬製品が準備でき次第患者に供給(すなわち、投与)される場合、冷凍及び/または倉庫保管などの特定の処理工程またはモジュールは必要ない場合もある。いくつかの実施形態では、モジュール160を、個別のニーズを有する単一の個人の治療に関連して使用してもよい。いくつかの実施形態では、モジュール160を使用して、同じ病気(例えば、局部的なウイルスのアウトブレイクまたはウイルス株)に罹患した個人のグループ向けの薬製品を製造してもよい。
【0134】
図7は、本開示の態様による例示的な薬製品品質管理施設及び/またはモジュール180の概要を示している。いくつかの実施形態では、品質管理評価は、空気の存在及び/または空気が存在したことの1つもしくは複数の兆候(例えば、多分散性の喪失、ナノ粒子構造及び/またはLNP組成物のコロイド構造の破壊など)の評価を伴う。
【0135】
図8は、本開示の態様による例示的な薬製品倉庫施設及び/またはモジュール190の概要を示す。
【0136】
図9は、本開示の態様による例示的な薬製品製造施設200の概要を示す。図9の実施形態では、施設200は約15個のモジュールまたはコンテナ102を備えてもよい。いくつかの実施形態では、施設200は、約10個~約20個のモジュールまたはコンテナ102を備えてもよい。施設200は、図9に示されているもの以外の様々な数の各種類のコンテナ102を備えてもよい。施設200はまた、他の種類のモジュールまたはコンテナ102(例えば、HVACモジュール)を備えてもよいが、いくつかの実施形態では、図9に示されているありとあらゆる種類のモジュールまたはコンテナ102を含まない場合がある。施設200は、図3に示されている各モジュールまたはコンテナ102のほか、1つまたは複数の集結エリアコンテナ158(例えば、施設200への輸送品及び/または訪問者の受け入れ用)を備えてもよい。施設200はまた、人員が清潔な作業着及び/または衣服に着替ることが可能になるようにクリーンルームモジュール162を備えてもよい。施設200は、薬製品を冷凍するための1つまたは複数の冷蔵モジュール164と、薬製品を保管するための1つまたは複数の倉庫保管モジュール166とを備えてもよい。施設200は、施設境界168内に収容されてもよく、この施設境界168は、例えば、巨大なテント、格納庫(例えば、膨張式格納庫)、及び/またはその他の種類の一時的または恒久的な構造物、フェンス、倉庫、及び/または建物を備えてもよい。
【0137】
図10は、本開示の態様による例示的な薬製品製造施設210の概要を示す。図10の実施形態では、施設210は約40個のモジュールまたはコンテナ102を備えてもよい。いくつかの実施形態では、施設210は、約30個~約50個のモジュールまたはコンテナ102、または約10個~約60個のモジュール、及び/または60個を超えるモジュールを備えてもよい。施設210は、図10に示されているもの以外の様々な数の各種類のコンテナ102を備えてもよい。施設210はまた、他の種類のモジュールまたはコンテナ102(例えば、HVACモジュール)を備えてもよいが、いくつかの実施形態では、図10に示されているありとあらゆる種類のモジュールまたはコンテナ102を含まない場合がある。施設210は、図9に示す各モジュールまたはコンテナ102のほか、両方共に施設境界168内に配置された第1薬生産設備172及び第2薬生産設備174を備えてもよい。必要に応じて、第1及び第2薬生産設備172、174を使用して、同じ薬製品及び/または異なる薬製品を生産してもよい。施設210は、発電、貯水、水処理、及び/または廃水処置を含むいくつかのユーティリティ176を備えてもよい。施設210はまた、1つまたは複数の患者治療エリア178、オフィスエリア182、及び/または倉庫保管モジュール166を備えてもよい。
【0138】
図11は、本開示の態様による、RNAを含む医薬品グレードの組成物の例示的な製造処理220の概要を示す。処理220は、本明細書で前述したように、DNA転写モジュール128と、第1精製モジュール130と、第1バイオバーデン低減(または濾過)モジュール132とを含んでもよい。図11の実施形態では、処理220は、医薬品グレードのRNAの例示的な製造処理を含み、この製造処理は、生体外RNA転写と、それに続く精製処理による生産過程で利用または形成された成分の除去と、バイオバーデンを低減するための濾過とを含む(例えば、図11に示すように)。ホールド工程が実行されるかどうかに応じて、任意選択の工程内制御も完了させてもよい。
【0139】
図12は、本開示の態様による、PCRベースの処理による例示的なDNAテンプレート製造処理230の概要を示す。図12の実施形態では、処理230は、本明細書で説明されるように、PCRベースの処理によるDNAテンプレートの例示的な製造処理を含み、この製造処理は、DNA転写モジュール128と、第1精製モジュール130と、第1バイオバーデン低減(または濾過)モジュール132とを含む。最初に、マスターミックスの調製が行われる。その後、フォワードプライマーとベクターが追加された。PCRミックスが試薬貯蔵器に移され、PCRプレートに充填された。PCRは、初期変性、変性工程、アニーリング工程、20~30(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30)サイクルの最終伸長工程、及びホールド工程を含んで、完了する。PCR製品をプールして精製することができる。その後、精製されプールされたPCR製品を濾過し、品質管理試験を行った。図12は、処理230のどの部分及び/または工程が各モジュールまたはコンテナ内に含まれているかを示している。
【0140】
図13は、LNP組成物を製造するための例示的な処理800を示す。概して、工程806、808、及び810(ならびに、本明細書で説明するように、これらの工程に関連付けられた装置)は、LNP形成モジュール134内で行われ、及び/またはそこに配置される。概して、工程812及び814(ならびに、本明細書で説明するように、これらの工程に関連付けられた装置)は、第2精製モジュール136内で行われ、及び/またはそこに配置される。概して、工程816(及び、本明細書で説明するように、工程816に関連付けられた装置)は、第2バイオバーデン低減モジュール138内で行われ、及び/またはそこに配置される。816の後に続く工程は、他のモジュールで行われてもよく、及び/または他の設備で行われてもよい(またはまったく行われなくてもよい)。例えば、本明細書で説明したように、すべての実施形態において冷凍及び倉庫保管は必要ない可能性がある。
【0141】
さらに図13を参照すると、見て分かるように、生産される組成物は、目的のエージェント(例えば、活性エージェント)を運ぶ水性調製物と脂質810を組み合わせることによって調製される。多くの実施形態では、目的のエージェントは核酸(例えば、核酸治療剤)である。図13に示すように、核酸はRNA(例えば、治療用RNA)である。この示された処理の多くの実施形態では、利用されるRNAは、例えば、ワクチン抗原、置換タンパク質、抗体エージェント、サイトカインなどをエンコードし得る少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。いくつかの実施形態では、ワクチン抗原は、がんワクチン抗原または感染病(例えば、ウイルス)抗原であってもよい。いくつかの実施形態では、RNAは、コロナウイルス抗原(例えば、スパイクタンパク質もしくはその一部、または前述の関連変異体(例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはその受容体結合ドメイン、例えばそのプレフュージョン安定化変異体))などのウイルス抗原であるか、またはそれを含むポリペプチドをエンコードする(例えば、mRNA-BNT162a1、mRNA-BNT162b1、mRNA-BNT162b2、mRNA-BNT-162c1、mRNA-1273、CVnCov、CVnCoV2などのうちの1つまたは複数で利用されるように)。本明細書に例示する特定の実施形態では、BNT162b2のRNAを利用した。
【0142】
図13に示す処理のいくつかの実施形態では、RNAは、生体外転写(例えば、DNAテンプレートの転写、例えば、これは線状化プラスミドまたはアンプリコンなどの線状テンプレートであってもよい)によって調製される。
【0143】
とりわけ、本明細書に記載されているように、本開示は、特定のLNP組成物及び/またはその調製に関連する問題の原因を特定し、例えば、空気の存在が望ましくない影響(複数可)を及ぼす可能性があることを認識する。いずれかの特定の理論に縛られることを望まないが、特に輸送条件にさらされる調製物またはシステム内の過剰な空気は、LNP組成に悪影響を及ぼし、例えば、その結果として、凝集、もしくはコロイド安定性のその他の損失、及び/または多分散性の1つもしくは複数のその他の悪影響が生じる可能性があると提言されている。いくつかの実施形態では、本開示は、そのような負の効果が大規模な調製において特に起こりやすく、及び/または特に有害である可能性があるという洞察を提供する。代替的にまたは追加的に、本開示は、そのような負の効果が、例えば図13に示されるような充填/仕上げ工程の前、最中、及び/または後の濾過を意図とした調製物にとって特に問題となる可能性があるという洞察を提供する。
【0144】
図13、及びそれに示されている例示的な処理を参照すると、工程808で、処理800は、脂質810をRNA溶液806に添加することによるLNP形成、ならびに高衝撃混合(例えば、衝突噴流混合による)、及び安定化を含んでもよい。通常、RNA溶液は水溶液である。
【0145】
多くの実施形態では、脂質810は、カチオン性イオン化可能な脂質(簡略化のため「カチオン性」と呼ばれることもある)、リン脂質、PEG脂質、ステロール(例えば、コレステロール)、及び適切な溶媒(例えば、エタノール)のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、LNP形成を、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液)812の存在下で実行してもよい。いくつかの実施形態では、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液)812は、脂質810と混合する前に、RNA溶液806中に存在してもよい(例えば、水で希釈したRNAを緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液)812でインライン希釈して、RNA806の水溶液を形成することにより)。言い換えれば、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液)812を、脂質溶液810と混合する前にRNA溶液に添加してもよい。いくつかの実施形態では、同様にまたは代替的に、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液)812を、脂質溶液を水溶液806と組み合わせて得られる混合液に添加してもよい(図13に示すように、これはRNA溶液であるが、いくつかの実施形態では、異なるエージェントを保持することができる)。いくつかの実施形態では、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液)812は、クエン酸(クエン酸ナトリウム一水和物)及び/または水酸化ナトリウムを含んでもよい。
【0147】
本明細書に記載の実施形態によれば、工程808(LNP形成)は、処理及び/またはその様々な溶液に実質的に空気を導入しないことを含み、それによって、LNPで内包されたRNAを含む第1RNA-LNP調製物を形成する。LNP形成808は、1つまたは複数の処理温度、処理流量、及び/または緩衝液、溶液及び/または懸濁液の比率を、調節することを含んでもよい。LNP形成は、水溶液及び脂質810(例えば、脂質溶液)のそれぞれを独立して混合ユニットに流すことを含んでもよい。水性RNA溶液806及び脂質溶液810はそれぞれ、層流条件下で混合ユニットに流入し得る(流れの中に気泡を取り込むことを避けるため)。
【0148】
さらに図13を参照すると、工程814において、処理800は、第1RNA-LNP調製物の緩衝液交換及び濃縮を行って第2RNA-LNP調製物を形成することを含んでもよい。緩衝液交換及び濃縮工程814を、例えば、例えば18~50リットル/分(LPM)の範囲内の供給流量、例えば1200mbar未満の膜間差圧(TMP)、例えば130~230mbarの範囲内の保持液圧力、及び例えば10~70mbarの範囲内の透過圧力を含む処理パラメータを用いて実施してもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、第1RNA-LNP調製物の緩衝液交換814及び第1RNA-LNP調製物の濃縮は、交互の工程で実行される。1つまたは複数の実施形態では、TRIS(すなわち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)緩衝液を使用してもよい。いくつかの実施形態では、緩衝液交換814はダイアフィルトレーションによって実施され、濃縮は限外濾過によって実施される。いくつかの実施形態では、ダイアフィルトレーション及び/または限外濾過は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)(例えば、タンジェンシャルフロー濾過ユニット及び/またはTFFスキッド内)によって実施される。いくつかの実施形態では、タンジェンシャルフロー濾過は、第2RNA-LNP調製物への空気の導入を避けるように構成された1つまたは複数の空腸造瘻チューブ及び/または1つまたは複数のディップチューブを使用して実施される。タンジェンシャルフロー濾過中、濾過供給液への空気の導入を避けるために、供給タンク内の濾過供給液に浸漬された第1端部を備えたディップチューブを使用して、保持液を供給タンクに再循環させてもよい。緩衝液交換及び濃縮工程の前に、タンジェンシャルフロー濾過用の濾過システムに緩衝液を充填して、第2RNA-LNP調製物に空気が導入されることを防止してもよい。
【0150】
さらに図13を参照すると、緩衝液交換及び濃縮工程814は、ダイアフィルトレーションを介して実施される少なくとも2回の緩衝液交換と、限外濾過を介して実施される少なくとも2回の濃縮とを交互に含んでもよい。緩衝液交換及び濃縮814の間、処理温度を、所望の温度範囲内(例えば、約25℃以下、または約2℃~約25℃、または約15℃~約25℃)に維持してもよい。緩衝液交換及び濃縮814の間、pHを継続的に監視してもよく(目標範囲内(例えば、約7.0~約7.5、または約7.1~約7.3)に維持してもよく)、せん断を、例えば、約2000s^-1~約6000s^-1、または約3000s^-1~約5000s^-1の範囲、または約4000s^-1(±1%、5%、及び/または10%)に維持してもよい。緩衝液交換及び濃縮814に続いて、リカバリーフラッシュを実行してもよく、その間にせん断を約2000s^-1未満(例えば、約1500s^-1未満、または約1000s^-1未満)に低減してもよい。いくつかの実施形態では、緩衝液交換814の後、例えば限外濾過及び/またはダイアフィルトレーションの後に、pHを約7.3~約7.5の範囲内に維持してもよい。
【0151】
いくつかの実施形態では、緩衝液交換及び/または濃縮814の間、第1RNA-LNP調製物のpHを、カチオン性脂質(すなわち、脂質溶液中のカチオン性脂質)のpHよりも高いpHに維持してもよい。いずれかの特定の理論に縛られることを望まないが、そうすることで液体ナノ粒子の泡立ちが軽減される可能性があると提言されている。
【0152】
いくつかの実施形態では、第1及び/または第2RNA-LNP調製物(複数可)を、生産された製剤に実質的に空気を導入せずに殺菌してもよい。いくつかの実施形態では、関連する生産された製剤は、さらなる操作、処理、包装、及び/または輸送のための製品であってもよい。いくつかの実施形態では、生産された製剤は、例えばヒトに投与するための薬製品製剤であるか、またはそれを含んでもよい。
【0153】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の殺菌工程を殺菌濾過によって実行してもよい。いくつかの実施形態では、殺菌(またはその他の)濾過を、濾過処理中に圧力が実質的に上昇することなく目標圧力で、例えば約1.03バール(または約1.02バール~約1.04バール、約1.01バール~約1.05バール、または約1.00バール~約1.1バール)で実施してもよい。
【0154】
いくつかの実施形態では、利用される混合ユニットは、1つまたは複数の衝突噴流混合スキッドを備えてもよい。混合前に、衝突噴流混合スキッドのチューブから空気を除去するために、衝突噴流混合スキッドを通気させてもよく、及び/または浸水させてもよい。水溶液及び脂質溶液の混合を、混合ユニット及び/または1つまたは複数の衝突噴流混合スキッドの境界内で実行してもよい。いくつかの実施形態では、混合前に、水溶液は脂質溶液と接触しない。いくつかの実施形態では、混合ユニットへの水溶液と脂質溶液の流量比は約3:1である。いくつかの実施形態では、第1RNA-LNP調製物に空気を取り込むことを避けるように混合速度を調整してもよい。例えば、空気(及び/または他の不純物)の導入を避けるために、1つまたは複数の混合処理は、混合速度を、わずかな渦が形成されるまで(例えば、目に見える渦が形成された時点か、またはその少し上の時点での混合速度)、ただし泡が形成され始める混合速度以下まで、徐々に増加させることを含んでもよい。
【0155】
さらに図13を参照すると、システム(例えば、衝突噴流混合スキッド、TFFシステム(すなわち、タンジェンシャルフロー濾過ユニット)、及び/またはその構成要素)は、1つまたは複数の時点(例えば、時間の経過とともに、例えば定期的または継続的に監視)で気泡の存在について、評価されてもよい。水溶液、脂質溶液、第1RNA-LNP調製物、第2RNA-LNP調製物、混合ユニット、及び/またはRNAの水溶液、脂質溶液、第1RNA-LNP調製物及び/または第2RNA-LNP調製物を提供するチューブ内で空気が検出された場合、システム内のどこかで空気が検出されたことを示す警告または通知を送信してもよい。いくつかの実施形態では、空気の検出を、1つまたは複数の流量計(例えば、1つまたは複数のコリオリ流量計)によって、及び/または視覚的評価によって(例えば、人間の目及び/または様々な種類のカメラによって)、及び/または他の検出手段によって実行してもよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、水溶液及び/または脂質溶液を、混合ユニットの底部分に配置された1つまたは複数の入口を通して混合ユニットに流入させてもよく、結果として得られる第1RNA-LNP調製物を、混合ユニットの上部分に配置された1つまたは複数の出口を通して混合ユニットから放出してもよい。いくつかの実施形態では、浸漬ミキサーを使用して混合を実行してもよい。いくつかの実施形態では、LNPで内包されたRNAの形成中及び/または形成後に泡が発生してもよく、その後RNA-LNP調製物から除去されてもよい(例えば、泡を第1及び/または第2RNA-LNP調製物から除去してもよい)。
【0157】
さらに図13を参照すると、緩衝液交換814及び濃縮の後に、処理800は、0.2μm濾過、及び/または化合させるためのスクロース及びPBSの添加を含んでもよい。化合の後、処理800は、緩衝液交換及び濃縮814に続くバイオバーデン低減濾過(BBR)816を含んでもよい。バイオバーデン低減濾過816は、0.2μmの細孔サイズ(または、例えば、約0.22μmの細孔サイズ)以下のフィルタによる濾過を含んでもよい。バイオバーデン低減濾過816は、本明細書で説明するように、他の細孔サイズ(例えば、0.45μmの細孔サイズ)を使用することも含んでもよい。本実施形態によれば、また、混合前の脂質溶液及び水性RNA溶液のそれぞれについて、第1RNA-LNP調製物について、及び/または第2RNA-LNP調製物について、0.2μmの細孔サイズのフィルタリングを行ってもよい。バイオバーデン低減濾過816は、懸濁液を(例えば)0.2μm細孔サイズ及び/または0.22μm細孔サイズのバイオバーデン低減フィルタによって濾過する前に、TFF-LNP後の懸濁液を粒子低減フィルタによって濾過することも含んでもよい。いくつかの実施形態では、バイオ負荷低減濾過816は、フィルタリカバリーフラッシュの実行も含んでもよい。
【0158】
さらに図13を参照すると、バイオバーデン低減濾過816に続いて、処理800は、濾過された第2RNA-LNP調製物を輸送バッグ(例えば、Flexsafe(登録商標)バッグ)に充填し、輸送バッグに気泡がないか目視検査818を実行することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、輸送バッグは、例えば、12Lバッグ、50Lバッグ、100Lバッグ、及び/または他の好適なバッグサイズ(例えば、関連するRNA-LNP調製物のバッチサイズに応じて)であってもよく、その例には、12L~50Lの容量を含むバッグ、及び/または50L~100Lの容量を含むバッグがある。本明細書で述べたように、本開示は、LNP組成物(例えば、本明細書で例示されるRNA-LNP調製物)が比較的大規模に製造され、及び/または輸送される必要がある場合に、導入された空気の悪影響(複数可)が特に問題となり得ることを認識している。
【0159】
いくつかの実施形態では、輸送バッグに充填することは、バッグの全容積の約30%から約95%、または約40%から約90%、または約50%から約85%、または約60%から約85%、または約70%から約85%の範囲、及び/またはそれらの間の他の部分的な範囲の容積までバッグに充填することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、充填前に、気泡の導入を避けるために、バッグを、空にし、満たすことなく、及び/またはそうでなければ膨張させないようにしてもよい。
【0160】
いくつかの実施形態では、バッグを所望の容量まで充填した後、気泡を除去してもよく(例えば、シリンジによってバッグから手動で除去してもよく)、バッグを密封してもよい。いくつかの実施形態では、密封中に気泡を内部に取り込まない、または取り込ませないことを確実にするように注意が払われる。バッグが充填され密封された後、目視検査818は実行されてもよく、人間の目及び/またはカメラを使用した目視検査818を含んでもよい。いくつかの実施形態では、バッグ内に気泡が発見された場合、気泡を除去する努力がなされてもよい(例えば、シリンジによって手動で)。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、気泡のあるバッグ(例えば、目に見えて観察可能な気泡のあるバッグ)を廃棄してもよい。
【0161】
充填されたバッグは、約1℃~約15℃(例えば、約2℃~約10℃、または約2℃~約8℃)の範囲の温度で保管及び/または輸送されてもよく、または代替的に、約-70℃(例えば、約-60℃~約-80℃の範囲内)の温度で凍結されてもよい。輸送前(例えば、ひとたびいずれかの気泡が除去された後)、充填及び仕上げ施設への輸送中にバッグが動く、破裂する、及び/または破損することが最小限になるように、バッグをラック内もしくはその上に、及び/またはその他の任意の好適な棚もしくは保管システム内もしくはその上に固定してもよい。例えば、ショックアブソーバを備えたパレット上の積み重ねシステムを使用して、輸送用バッグを特定の様式で積み重ねてもよい。輸送820中及び/または輸送820の準備中、ならびに輸送後、空気がバッグ内に侵入するのを防止するために、バッグが保管及び/または輸送される環境内及びその周囲にプラス圧力(例えば、約1~2バール)の窒素を維持してもよい。輸送820後、空気含有量についてバッグの2回目の評価822を行ってもよい(例えば、目視検査)。いくつかの実施形態では、このような第2評価822中に発見された気泡を除去してもよく(例えば、手動で除去してもよい)、または代替的に、気泡を含むバッグ(複数可)を選択的に廃棄してもよい(例えば、所与のバッグ内の空気の量が閾値を超えた場合)。
【0162】
さらに図13を参照すると、充填及び仕上げ施設に到着した後(及び、いくつかの実施形態では、2回目の空気評価を受けた後)、殺菌濾過824を実行してもよい(すなわち、第2RNA-LNP調製)。いくつかの実施形態では、調製物を輸送バッグから取り出した後、収集容器、貯蔵器及び/または充填タンク内に配置する前に、このような殺菌濾過824を実行してもよい。いくつかの実施形態では、次いで、材料(すなわち、濾過された調製物)を、無菌の充填及び仕上げ826中に収集容器、貯蔵器及び/または充填タンクから分散されてもよい(例えば、薬製品をガラス容器に無菌充填するため)。
【0163】
充填されたガラス容器に対して、気泡が導入されていないことを再び確実にするために、第3空気評価828(例えば、目視検査による)を実行してもよい。次いで、検査され充填されたガラス容器を、処理800の工程830で、例えばヘルスケア管理施設に凍結、保管、倉庫保管及び/または配布してもよい。代替的に、いくつかの実施形態では、充填されたガラス容器を凍結乾燥またはその他の乾燥処理にかけることで、薬製品を乾燥状態で輸送及び/または保管してもよい(例えば、その後の再懸濁のため)。
【0164】
多くの実施形態では、図13に示すように、充填及び仕上げ施設での無菌充填及び仕上げ826は、製品に実質的に空気が導入されないように実行される。
【0165】
さらに図13を参照すると、いくつかの実施形態では、充填及び仕上げ設備をLNP生産設備と同じ場所に配置してもよく、その場合、充填及び仕上げを、ポイントオブフィル(Point of Fill)濾過装置を使用して直接実行してもよい(その場合、輸送820、バッグ充填及び密封、及び1つまたは複数の目視検査工程818、822、828は必要ない場合がある)。さらに他の実施形態では、処理800の様々な工程が追加及び/または他の設備で実行される場合(または、代替的に、単一の設備内での輸送が必要な場合)、処理800は複数の輸送工程820、及び追加の目視検査工程818、822、828を含んでもよい。
【0166】
図14は、本開示の態様による例示的な薬製品製造施設900の概要を示す。図14の実施形態では、施設900は、施設900に位置する様々なエリアを画定する施設境界902を備えてもよい。いくつかの実施形態では、充填及び仕上げ処理904を、異なる場所で実行してもよい(または、施設900で行ってもよい)。施設900は、合計で6,000m~8,000m、または約5,000m~約10,000mの確保された地上エリアと、合計で約3,000m~6,000m、または約4,000m~約5,000mの合計保護エリア(すなわち、合計建物エリア)を包含してもよい。施設900は、両方ともにクリーンエリア境界910内に囲まれた原薬モジュール906及び薬製品モジュール908を備えてもよい。原薬モジュール906及び薬製品モジュール908のそれぞれを、図4に示す配置と同様(すなわち、原薬モジュール124及び薬生産モジュール126と同様)の6つのコンテナ構成で配置してもよい。原薬モジュール906及び薬製品モジュール908は、約800m、または約500m~約1,000mの合計面積を包含してもよい。原薬モジュール906及び薬製品モジュール908に隣接して、施設は更衣エリア912及び準備エリア914を備えてもよく、いくつかの実施形態では、併せて約300mの面積を包含してもよい。電子装置、ユーティリティ、設備制御装置、及びその他の装置用の技術エリア916を、更衣エリア912に隣接して配置してもよい。
【0167】
さらに図14を参照すると、施設900は、倉庫エリア918と、冷凍庫エリア920と、緩衝液調製エリア924と、ユーティリティ及び廃棄物エリア922と、オフィスエリア926と、品質管理エリア928とを備えてもよい。倉庫エリア918は、約600m、または約500m~約800mまでの合計面積を包含してもよく、1,000個のパレット位置(例えば、それぞれが約1000mm×1200mmまたは約800mm×1200mmの標準パレットサイズを有する)を収容するための入庫ロジスティクス及び/または出庫ロジスティクスを備えるように構成されてもよい。冷凍庫エリア920は、少なくとも3つの環境ゾーンを備えてもよく、第1ゾーンでは温度が-70℃またはその前後(例えば、約-60℃~約-80℃)に維持され、第2ゾーンでは温度が-20℃またはその前後(例えば、約-10℃~約-30℃)に維持され、第3ゾーンでは温度が約2℃~約8℃の範囲に維持される。いくつかの実施形態では、緩衝液調製エリア924、ユーティリティ及び廃棄物エリア922、オフィスエリア926、品質管理エリア928、及び/または充填及び仕上げエリア904のそれぞれを、1つまたは複数の標準輸送コンテナで施設に輸送するのではなく、施設が位置する現地の国及び/または地域によって提供(及び/または最初に構築)してもよい。いくつかの実施形態では、品質管理エリア928は約400mのエリアを包含してもよく、緩衝液調製エリア924は約200mのエリアを包含してもよく、ユーティリティ及び廃棄物エリア922は約200mのエリアを包含してもよく、充填及び仕上げエリア904は約400mのエリアを包含してもよく、オフィスエリア926は約800mのエリアを包含してもよい。施設900は、セキュリティゲート/警備室及び/またはその他の好適な構造も備えてもよい。いくつかの実施形態では、施設は第2薬製品モジュール908を備えてもよく(これは生産能力を(例えば、年間5,000万回分を超える、例えば年間約8,000万回分~1億回分の数に)増大させるのに役立つ)、施設の占有面積に約300mを追加してもよい。
【0168】
さらに図14を参照すると、原薬モジュール(またはエリア)906及び薬生産モジュール(またはエリア)908を、少なくとも8mの天井高さを有し、少なくとも9,000kgの点荷重容量を有し、少なくとも4mの幅及び少なくとも7mの高さを有するゲート及び/またはドアを有する建物に収容してもよい。倉庫エリア918(品質管理エリア928、緩衝液調製エリア924、ユーティリティ及び廃棄物エリア922、充填及び仕上げエリア904、原薬モジュール906、薬製品モジュール908などの他のエリアも同様)を、制御された湿度及び約15℃~約25℃の温度に維持してもよい。冷凍庫エリア920は、約10~20台の冷凍庫及び約5~約10台の冷蔵庫を収容できる空間を備えてもよい。ユーティリティ及び廃棄物エリア922は、約2,000kW~約4,000kW(例えば、約3,000kW)の範囲の通常の電力供給を提供してもよく、また、施設全体に電力を供給するために、少なくとも250kW(例えば、約200kW~約300kW)の無停電電源を備えてもよい。原薬モジュール906及び薬製品モジュール908は、合計の(すなわち、併せた)通常電力として約300kW(例えば、約200kW~約400kWの範囲)を必要としてもよく、無停電電力は約70kW(例えば、約60kW~約80kW、または約50kW~約100kWの範囲)を必要としてもよい。ユーティリティ及び廃棄物エリア922は、施設に4m/hrの容積の飲料水を供給できる飲料水供給も備えてもよい。ユーティリティ及び廃棄物エリア922は、施設900へのネットワーク接続のほか、圧縮空気、窒素、二酸化炭素、及び/または酸素(例えば、瓶型の容器で供給される)を提供するための設備も備えてもよい。施設900はまた、図14に示されているもの以外にも、様々な他の構成要素、レイアウト、モジュールの配置を備えてもよい。
【0169】
さらに図14を参照すると、充填及び仕上げモジュール904(またはエリア)は、以下の処理工程を実施するために必要な装置を備えてもよい。すなわち、その工程とは、液体または凍結バルク材料(例えば、グレードC条件)をプールすること;グレードA条件下での1つまたは複数の無菌充填ラインへの殺菌濾過(例えば、アイソレータ技術及び/またはRABSによって);(例えば)最大2.25mLの(例えば)2R ISO 8362-1標準バイアルのキャッピング及びクリンピング;充填済みバイアルの手動、半自動、及び/または全自動の目視検査を実行すること;バイアルのシリアル化及びラベリング;充填済みバイアルの冷凍及び保管;ドライアイス下で梱包すること及び輸送することである。充填及び仕上げモジュール904(またはエリア)は、年間約1,000万本のバイアル(5,000万回分に相当)を処理するために必要な装置を備えてもよい。好ましい実施形態では、充填及び仕上げモジュール904は、1つまたは複数の標準(例えば、cGMP標準及び/またはSiemens PCS7などの処理制御システム)を満たしている。いくつかの実施形態では、充填及び仕上げエリア904は施設900上に配置されており、いくつかの実施形態では、充填及び仕上げエリア904は施設外に配置されている。
【0170】
図15は、本開示の態様による、例示的な原薬モジュール906及び/または薬製品モジュール908の概要を示す。図15の図解は、原薬モジュール906及び薬製品モジュール908の両方に使用できる実行可能なレイアウトを示している。原薬モジュール930及び/または薬製品モジュール930は、生産設備の第1階(例えば、上層階または下層階)に3つのコンテナ932、934、936を備えてもよい。図15の実施形態は、図4に示す6つのコンテナの原薬モジュール124及び/または薬製品モジュール126とレイアウトが類似している。したがって、図15は、HVAC装置を収容する追加の3つのコンテナ(例えば、図15に示す階より下または上の階)を備えてもよい。第1コンテナ932を、主に集結、及びエアロックが維持されていることを確実にするために使用してもよく、第2及び第3コンテナを、主にオペレーションスイート(すなわち、原薬及び/または薬製品の製造用)を収容するために使用してもよい。第1端部において、第1コンテナ932は、人員用エアロックエリア942に隣接して人員入口セクション940を収容してもよい。第2端部内で、第1コンテナ932は、材料エアロックエリア944に隣接する材料入口エリア946を収容してもよい。第1コンテナ932内に入ると、人員及び/または材料は、それぞれの人員エアロックセクション942及び/または材料エアロックセクション944を通過しなくてはならない。その目的は、周囲の空気及び/または環境の空気をフラッシュアウトして(例えば、密封されたドア及び通路と連携した真空ポンプ及び/またはブロワーを介して)、人員及び/または材料が入ったときにオペレーションスイート938に不純物が入らないことを確実にするためである。通常の操作の過程で、人員及び材料はそれぞれのエアロックを通じてのみオペレーションスイート938に入るべきである。原薬モジュール906及び/または薬製品モジュール908は、本開示で説明されているように、オペレーションスイート938内に製造及び/または生産装置を備えてもよい。装置、壁、ドア、及び/またはその他の構造物の位置を、所与の生産処理を最適化するために必要に応じて図15に示されている位置から調節してもよい。
【0171】
さらに図15を参照すると、原薬モジュール906及び/または薬製品モジュール908は、通電され、加圧され、加熱され、及び/またはそうでなければ火災、燃焼、及び/または爆発のリスクを生じさせるあらゆる材料及び/または装置(例えば、ATEX114「装置」指令2014/34/EU及び/またはATEX137「職場」指令1999/92/ECの範囲内の装置)を収容するためのATEXまたは危険装置エリア954を備えてもよい。また、危険装置エリア954を、可燃性物質及び/またはデブリが危険装置エリア954に入る可能性を減らすためにクリーンルームとして維持してもよい。いくつかの実施形態では、危険装置エリア954(または「ATEXルーム」)を、脂質調製に使用される1つまたは複数の薬製品成分またはサブ成分を収容するために使用してもよく、これにはエタノールの使用が必要になる場合があり、このエタノールを(殺菌剤とともに)ATEXルーム954内の1つまたは複数の安全キャビネットに保管してもよい。また、原薬モジュール906及び/または薬製品モジュール908は、1つまたは複数の階段950(例えば、HVAC階に上がってまたは下がってつながる階段)と、1つまたは複数の傾斜路948とを備えて、人員通路940及び材料通路946につながる1つまたは複数のプラットフォーム956に材料(及び/または人員)を容易に輸送し得るように促進してもよい。原薬モジュール906及び/または薬製品モジュール908は追加の外部装置952を備えてもよく、その例には、変圧器、タンク、HVAC装置、及びコンテナ932、934、936の外部に配置されているが、コンテナ932、934、936の内部の構成要素と流体、電気、熱、及び/または動作的に連通するその他の必要な構成要素がある。
【0172】
図16は、本開示の態様による例示的な品質管理モジュール928の概要を示す。品質管理モジュール928は、PCRラボ958、RNA/DNAラボ962、環境監視コンソール964、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)ラボ966、細胞培養ラボ968、全体的手順ラボ970(例えば、pH、色、サンプルロジスティクス、及び/または保管メトリックなどのパラメータを監視するため)、冷凍庫監視装置972、バイオバーデンラボ974、品質管理保管エリア976、洗浄エリア978、化学薬品/エンドトキシンラボ980、及び/または更衣エリア982を備えてもよい。品質を管理する処理(例えば、図16に示されている各処理及び/またはラボ内)を、ばらつきの原因の各ラボへの導入を減らすために厳密に管理及び/または標準化してもよい。更衣エリア経由のみでスタッフ/人員の各ラボエリアへのアクセスを可能にして、品質管理モジュール928内のラボエリアに入る前に適切な消毒及び殺菌措置が講じられることが確実になるように、品質管理モジュール928を構成してもよい。
【0173】
本実施形態のモジュール式薬生産システム100に関連して、モジュール式薬生産システム100の一貫した満足のいく操作を確実にするために、様々な人員及びスタッフ配置のニーズを満たす必要がある。例えば、原薬モジュール906及び/または薬製品モジュール908に関連して、バイオリアクタを操作すること及び層流を確実にすること、精製プロトコルを監視すること、製剤及び濾過処理を監視すること、処理サポートプロトコルのための資格のあるオペレータ/人員、ならびに生産及び/または自動化のエンジニア、科学者及び/または技術者が必要である。品質管理モジュール928に関連して、品質管理の維持を確実にするように様々な試験を実行するために、研究室経験のある科学者及び/または技術者が必要である。充填及び仕上げモジュール904に関連して、充填操作、光学制御、ラベリング、及び梱包を行うスタッフが必要である。倉庫エリア918に関連して、物流と倉庫保管の人員が必要である。他方、オフィスエリア928には、幅広いスキルを持つ人員が必要であり、その例には主題の専門家、科学者、エンジニア、自動化の専門家、品質管理/品質保証の専門家、調達/サプライチェーンのスペシャリスト、財務の専門家、人事の専門家、トレーニングマネージャー、IT管理者、及び全体的運用コーディネーターがある(しかし、これらに限定されない)。
【0174】
本実施形態のモジュール式薬生産システム100を、堅固な道路のアクセス、列車及び/または船舶によるアクセスを有する施設に輸送して(必要に応じてさらに構築または開発して)、各コンテナならびにその他の装置及び材料の施設への輸送を可能にしてもよい。いくつかの実施形態では、モジュール式薬生産システム100を、既存の薬学的施設に輸送(さらにそこで構築)してもよく、そうすることで、既存の実験用設備(例えば、品質管理モジュール928として使用される)及び/または充填及び仕上げ能力を利用してもよい。大学に近いことも、人材のニーズ(例えば、必要な技術的背景を持つ従業員/人員を含む)をより容易に満たすことを可能にするという利点になり得る。好ましい実施形態では、施設は空港、港、及び/または鉄道駅から1時間以内の場所に配置されて、物流及びサプライチェーンの運用を容易にするのに役立つ。いくつかの実施形態では、施設をより遠隔地に置いてもよい。その場合は、材料及び装置が施設に到着するまでに追加の時間を考慮する必要があり、モジュール式薬生産システム100の操作を支援するために必要な資格のある人員の確保が可能になることを慎重に検討する必要がある。さらに、本開示で考察したように、モジュール式薬生産システム100を設置する施設または場所は、電力、飲料水、インターネット/ネットワーク接続へのアクセスが必要であり、継続的に(すなわち、1日24時間、週7日間)セキュリティ保護され得る必要がある。
【0175】
本実施形態のモジュール式薬生産システム100を、12.8グラム、25.6グラム、38.4グラム、40グラム、及び/またはその他のサイズの生産スケールと関連して使用してもよい。例えば、本実施形態のモジュール式薬生産システム100を、12グラムのバッチからなる25Lバッグを含む薬製品出力と関連して使用してもよい。本開示の実施形態に関連して、様々な数のコンテナ及びコンテナの種類が説明されている。本実施形態のモジュール式薬生産システム100を、ここで明示的に説明したもの以外の種類及び数のコンテナと関連して使用してもよいことを理解するべきである。本明細書で説明する標準輸送コンテナは、幅約8フィート(2.43m)、高さ約8.5フィート(2.59m)、長さ約20フィート(6.06m)~約40フィート(12.12m)を含んでもよい。その他の標準サイズ、ハーフサイズ、及び/または大サイズまたは小サイズも使用してもよい。本実施形態のモジュール式薬生産システム100を、様々な生産規模の処理に関連して使用してもよい。したがって、処理パラメータの一部は変更される可能性があるが、全体的な処理フロー及び装置の多くは、微小規模、小規模、中規模、及び大規模の薬生産でほぼ同じままである。本実施形態のモジュール式薬生産システム100は、概してRNA-LNP薬生産に関連して説明されているが、他の薬物の生産にも関連して使用してもよい。
【0176】
早期警報システム
本実施形態は、1つまたは複数の態様では、病気の懸念される変異体(VOC)を特定するための局部的な早期警報システム(EWS)を対象とする。本発明の実施形態は、1つまたは複数の態様では、病気のローカル株を標的とし、その治療に役立つワクチンを決定及び生産するためのシステム及び方法を対象とする。いくつかの実施形態では、株の伝染性、ヒトの体内での株の増殖率、株が既存のワクチン及びブースターを回避する能力、ならびに株がヒトに対して及ぼす重症度のうちの1つまたは複数に基づいて、早期警報システムを使用して懸念される変異体(すなわち、世界的拡散の観点で)を特定する。(Early Computational Detection of Potential High Risk SARS-CoV-2 Variants;Beguir et al, (doi:https://doi.org/10.1101/2021.12.24.474095)を参照)。
【0177】
図17は、本開示の態様に従ってワクチンを作るための処理(方法)1700を示す。工程1702では、方法1700は、配列データを収集すること(例えば、ローカルエリアから採取された試験サンプルに基づいてローカルの配列決定装置を使用すること)を含んでもよい。工程1704では、方法1700は、ローカルデータをGISAID、NCBI、EWSデータベース、及び/またはその他のデータベースなどのパブリックデータベースにアップロードすることを含んでもよい。工程1706では、方法1700は、データ(すなわち、目的のエリアにローカルなデータ)を分析して、標的株を決定することを含んでもよい。標的株は、そのエリアに蔓延している実際の株であってもよく、及び/または目的の配列の異なるセグメントを組み合わせて、1つまたは複数のローカル株を代表するハイブリッド株または「合成」株を標的とするハイブリッドであってもよい。工程1708では、方法1700は、データベース及び/またはクラウドベースのコンピューティングシステムからローカルコンピューティングシステムに合成命令を送信することを含んでもよく、この合成命令は、DNA合成によってDNAを作成することができるように配列決定情報を含む。工程1710では、方法1700は、本明細書で説明されているように、合成命令に基づくワクチンを現地で製造、投与、及び/または配布することを含んでもよい。工程1712では、方法1700は、必要に応じて工程1702~1710を繰り返すことを含んでもよい。
【0178】
図18は、本開示の態様に従ってワクチンを作る処理1800を示す。工程1802では、方法1800は配列データを収集することを含んでもよい。工程1804では、方法1800は、ローカルデータをGISAID、NCBI、EWSデータベース、及び/またはその他のデータベースなどのパブリックデータベースにアップロードすることを含んでもよい。工程1806では、方法1800は、株の伝染性、ヒトの体内での株の増殖率、株が既存のワクチン及び/またはブースターを回避する能力、ならびに株がヒトに対して及ぼす重症度のうちの1つまたは複数に基づいて、収集されたデータに対して従来のEWSアルゴリズムを実行し、潜在的な懸念される変異体を特定及び評価することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、EWSアルゴリズムの実行は、1週間のルックバック期間(すなわち、最新の週に収集されたデータの評価)を含む。工程1808では、方法1800は、EWSスコアを決定すること(すなわち、懸念される変異体がさらなる調査のために特定されたか、及びそれに基づいて可能性のある将来的な措置を講じる場合があるかを判断するために、評価された各株を定量化してスコアを割り当てること)を含んでもよい。工程1810では、方法1800は、目的地域(例えば、施設が位置するローカルエリア、及び/または特定のアウトブレイクアクティビティが発生している可能性のある隣接または近接エリア)を決定することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、目的の地域は、地理的エリアの周囲の単純な半径(例えば、施設の50マイル、100マイル、500マイル、1000マイル以内など)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、目的の地域は、特定の半径内にきちんと収まらない特定の人口中心地を含んでもよい(人口密度が均一になることはほとんどなく、地域間の輸送も通常は非均一であるため(及びよく通行される経路は病気が拡散する伝達ルートになる可能性があるため))。
【0179】
さらに図18を参照すると、工程1812では、方法1800は、目的の地域に基づいてパブリックデータベース上のデータをフィルタリングすること(すなわち、目的の地域内の株からの配列データのみを含めるように)を含んでもよい。工程1814では、方法1800は、ルックバック期間を調節すること(例えば、特定の目的の期間に基づいてデータをフィルタリングすること)を含んでもよい。ルックバック期間の調節は、1週間を超えて振り返って見ること(例えば、場合に応じて1か月または数週間などを振り返って見ること)を含んでもよい。ルックバック期間の調節は、ローカルなアウトブレイクに対応する日付などと一致する日付の範囲を選択することを含んでもよい。工程1816では、方法1800は、フィルタリングされたデータ及び1つまたは複数のベースライン変異体からの偏差を評価することを含んでもよい。偏差の評価は、フィルタリングされたデータセット内の各配列とベースライン変異体との間の偏差の作成を含んでもよい。偏差の評価はまた、フィルタリングされたデータセット内の特定のサブセットの配列とベースライン変異体との間の偏差を作成することを含んでもよい。例えば、フィルタリングされたデータセット内の配列は、1つまたは複数のビンまたはサブセット内に置かれてもよく、平均化されることで、各サブセットについて平均または代表的な配列を決定してもよい。次いで、各代表配列とベースライン配列との間の偏差を判定してもよい。いくつかの実施形態では、偏差を評価することは、ベースライン変異体から逸脱する代表的配列の地域を特定することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、偏差を評価することは、ベースライン変異体から逸脱する各ヌクレオチドに関連付けられた特定の突然変異も含んでもよい。いくつかの実施形態では、ベースライン変異体は、目的の地域内で現在または過去に蔓延すると共に以前に特定された株を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ベースライン変異体は、既存のワクチンの基となる標的株を含んでもよい。
【0180】
さらに図18を参照すると、工程1818で、方法1800は、半径内及びルックバック期間内(すなわち、フィルタリングされたデータセット内)のデータの各サブセットについてベースライン変異体からの偏差を比較して、偏差が発生する配列の地域間及び/または各偏差の特定の突然変異間に共通性があるかどうかを判定することを含んでもよい。工程1820では、方法1800は、フィルタリングされたデータサブセット内の各サブセットのローカリティスコアを確立することを含んでもよく、このローカリティスコアは、各サブセットが、フィルタリングされたデータ内の他のサブセットと共有する共通性に基づいている(それによって、目的の場所及び期間に特有の最も一般的な株が特定される)。工程1822では、方法1800は、ローカリティスコア及びEWSスコアを比較して、懸念される変異体及び/またはローカルワクチンの意思決定の将来の方向性を評価する、及び/または通知することを含んでもよい。例えば、EWSスコアが低い場合、世界的なアウトブレイクの視点から、いかなる懸念される変異体も特定されていない可能性が高いことを意味する。他方で、ローカリティスコアが高い場合、それは、目的の地域及び目的の期間の株がベースライン変異体から大きく異なることを意味し、既存のワクチンが目的の地域内のローカル株の治療に特に適していない可能性がある、及び/またはローカル株がすでにベースライン変異体から大きく逸脱しているため、将来的に突然変異が発生する可能性が高いことを意味する。
【0181】
工程1824では、方法1800は、EWSスコア、ローカリティスコア、及び/またはそれらの組み合わせに基づいて標的株を決定することを含んでもよい。工程1826では、方法1800は、1つまたは複数のワクチンを最終的に承認すること(すなわち、所与の目的の地域の標的株に基づいて、実際の株、及び/またはEWS及びローカル株分析の両方から得られた配列の態様を優先するハイブリッド株もしくは合成株である標的株)を含んでもよい。工程1828では、方法1800は、データベース(またはネットワーク、クラウド、及び/またはコマンドセンター)から施設に合成命令を送信することを含んでもよい。工程1830では、方法1800は、本開示に従って、転写モジュール内(及び/または異なるモジュール内)に配置されたDNAシンセサイザーを使用して、合成命令に基づいてDNA合成を実行することを含んでもよい。本発明の実施形態の態様によれば、本明細書に記載のとおり、DNA合成に続いて転写を行ってもよい。工程1832では、方法1800は、図11及び12に従ってRNA転写を実行することを含んでもよい。工程1834では、方法1800は、図13に従ってLNP形成を実行することを含んでもよい。工程1836では、方法1800は、本明細書で説明されているように仕上げ工程(すなわち、充填及び仕上げ)を実行することを含んでもよい。工程1838では、方法1800は、目的の地域内でローカルワクチンを配布及び/または投与することを含んでもよい。工程1840では、方法1800は、病気のローカル株を治療するためのローカルワクチンの有効性を評価することを含んでもよい。工程1842では、方法1800は、有効性の結果を1つまたは複数のパブリックデータベースにアップロードすることを含んでもよい。工程1844では、方法1800は、必要に応じて工程1802~1842のいずれかを繰り返すことを含んでもよい。
【0182】
図19は、本開示の態様による例示的な薬製品製造事業体及び/または処理の概要を示す。図19の実施形態では、事業体の特定の態様は、施設1922に、または代替的にクラウド(もしくはネットワーク)1912上に配置され、またはそこで発生してもよい。本発明の実施形態の態様によれば、施設1922は、1つまたは複数のシーケンサー1902を備えて、ローカル株の配列を生成してもよい。施設1922はまた、DNAを合成するための1つまたは複数のDNAシンセサイザー1906を備えてもよい(これによって、本実施形態に従ってワクチンを作成してもよい)。DNA合成は、クラウドまたはネットワーク1912から決定されたように、標的株に基づいて行われる。施設1922に通信的に結合され、施設1922にデータを送信することと、そこからデータを受信することの両方が可能なクラウドまたはネットワークは、いくつかの機能及び構成要素を備えてもよく、その例には、機械学習1916、パブリックデータベース1920、データストレージ1918、コンピューティングシステム1914がある(しかし、これらに限定されない)。
【0183】
図20は、本開示の態様による別の例示的な薬製品製造事業体及び/または処理2000の概要を示す。図20の実施形態では、本発明の実施形態の態様による、配列決定データフロー(すなわち、デデュプリケーション2002への)、社会経済及び医学的データフロー(すなわち、変換及び充填2004への)、外部データフロー(すなわち、モデリング及び解析への)、ならびに内部データフロー2008が示されている。
【0184】
図21は、本開示の態様による別の例示的な薬製品製造事業体及び/または処理(または方法)2100の概要を示す。工程2102では、方法2100は、試験を(例えば、施設で)受けることを含んでもよい。工程2104では、方法2100は、試験からの1つまたは複数のサンプルについてゲノム配列決定することを含んでもよい。工程2106では、方法2100は、ゲノム配列決定データをデータベースに入力することを含んでもよい。工程2108では、方法2100は、入力されたゲノム配列決定データを1つまたは複数のグローバルデータベースと照合することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、入力されたゲノム配列決定データを1つまたは複数のグローバルデータベースと照合することは、入力されたゲノム配列決定データを他のローカルゲノム配列決定データ及び/またはグローバル配列リポジトリからのゲノム配列決定データと比較することを含んでもよい。入力されたゲノム配列決定データがリポジトリに存在しない場合、本発明の実施形態の態様に従って、そのデータを追加してもよい。工程2110では、方法2100は、機械学習または人工知能を使用してゲノム配列決定データに対する1つまたは複数のリスク評価を実行することを含んでもよい。工程2112では、方法2100は、1つまたは複数のAIベースのリスク評価に基づいて、潜在的な懸念される変異体のリストを特定することを含んでもよい。工程2114では、方法2100は、生体外ラボ試験を実行して、AIベースのリスク評価からの予測(複数可)を検証及び確認することを含んでもよい。工程2124では、方法2100は、AIまたは機械学習モデルをさらに改良するために、生体外ラボ試験からのフィードバックをAIまたは機械学習モデルに提供することを含んでもよい。
【0185】
さらに図21を参照すると、工程2116で、方法2100は、生体外ラボ試験中の確認及び/または検証に続いて、1つまたは複数の懸念される変異体(VOC)を特定することを含んでもよい。工程2118では、方法2100は、1つまたは複数の懸念される変異体(VOC)を治療するための新しいVOCワクチンの作成を含んでもよい。工程2120では、方法2100は、生体外ラボ試験中の確認及び/または検証に続いて、1つまたは複数のローカル変異体を特定することを含んでもよい。工程2122では、方法2100は、1つまたは複数のローカル変異体の治療するための新しいローカル変異体ワクチンの作成を含んでもよい。いくつかの実施形態では、図21に示す太字の工程(すなわち、工程2102、2104、及び2122)はローカル施設で行われてもよく、太字でない工程(すなわち、図21の残りの工程)は事業体レベル及び/またはクラウドレベルで行われてもよい。
【0186】
本開示の実施形態によれば、監視フィールド試験からの変異体及び/またはローカル株の配列決定データを、サンプルを集中試験場所に輸送する(ターンアラウンドタイムを数日追加する可能性がある)必要なく、リアルタイム(またはほぼリアルタイム)で処理することができる。スーパーコンピューティングインフラストラクチャ(例えば、クラウドベースのネットワークを活用した)上で実行されるAI及び機械学習により、結果及び解析の施設での利用が可能になる。いくつかの実施形態では、開示されたシステム及び方法は、感染力及び免疫逃避リスクの可能性についてすべての既知の変異体をランク付けし、世界的なパンデミック及びローカルなアウトブレイクのライブ監視を可能にする。新規変異配列を、わずか数時間(例えば、4時間未満、3時間未満、2時間未満など)で、コンピュータ内で(すなわち、コンピュータモデリングによって)スコア付け及びランク付けすることができる。本実施形態により、新しい変異体をより迅速かつ徹底的に特定し、グローバルプールまたはリポジトリに追加することが可能になる。同様に、本開示により、最も感染性の高い変異体のほか、免疫逃避が最も強い変異体も検出することが可能になる。本実施形態はまた、生体外で監視及び試験する必要がある変異体のランク付けされたリストを提供し、これは、研究室リソースを最も効果的に利用し得る方法を優先順位付けするのに役立つ。
【0187】
本実施形態は、世界中の場所でmRNA薬製品(例えば、ワクチン)を生産する能力を提供する。モジュール式薬生産施設の分散型ネットワークを世界中の早期警報システム(EWS)に組み込むことにより、本実施形態は、進行中のパンデミック及び将来のパンデミックとの戦いに役立つインフラストラクチャ及び現地能力を提供する。本開示は、社会経済的状態及びその他の要因に関係なく、ワクチン及び病気治療へのより広範なアクセスを可能にするシステム及び方法論を提供する。さらに、局部的な生産設備は、ローカルなアウトブレイクに対して適合したリアルタイム(またはほぼリアルタイム)の対応を提供するのに適している。提供されるエコシステムにより、試験と研究の能力も向上し、コラボレーションが促進される。本実施形態のEWSは、AI活用リスク評価及び確認ラボ試験によって、パンデミックの脅威を引き起こす病原体の可能性の特定を可能にする。さらに、世界的な現地施設ネットワークを有することで、新たな変異体及び/または病原体の検出がより迅速化されることによってパンデミックの脅威に対する透明性の向上が実現する可能性がある。本実施形態のローカルなモジュール式mRNAワクチン生産ユニットはまた、州及び国の外部薬供給及び供給者への依存度を低減し、それによって起こり得る将来のパンデミック情勢に対する迅速かつローカルな対応を確実にする。
【0188】
均等物
当業者は、ほんの日常的な実験を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。したがって、本発明の範囲は上記の説明に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】